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根本国務大臣 いま卜部さんが言われるように、
日本の
下水道のおくれは、端的に言えば二百年おくれておると私は思う。先ほど申し上げましたように、欧州は大体降雨量が非常に少ない。
河川も少ない。そしてまた、あの小さな大陸に数十カ国が相接続しておる。しかも、御
指摘のように、資本主義の発展過程において海外とも非常に交流が多かった。非常に伝染病が多い。これは十八世紀、十九世紀ですが、それで一番おそろしかったのがコレラ、ペストであり、赤痢である。こういうために、一国家、一
都市のみならず、欧州全体が被害を受けた。こういうことからして、水に対する関心が非常に違ってしまったのですね。だから、国防に次いで下水という問題と取り組まなければ、国家、特に
都市国家として発達した欧州ではちょっとできないことになった。ところが、
日本のほうは毎年雨が降るし、至るところに清流が流れて、そして
都市が非常に少なかった。しかも慣習として、屎尿は全部農地に還元して、むしろこれは
都市のほうに野菜や金を出してまで処理をしてくれたというのがごく最近までの現状でございました。ところが、
都市化してくるというと、その肥料に対する感覚が全然変わったためにこれがにわかに問題にされてきたということと、それから工業の発達が飛躍的であったために
都市集中が行なわれて、下水に対する何らの認識もなく、
投資もしておらなくて、特にこの約十四、五年間の水に対するところのマイナス作用が集積してきたというところにこの問題があると思うのです。それだけこれは非常に切実な問題であると同時に、これを解決するのに一挙に——議論としてはいろいろ手法があります。手法があるけれ
ども、現実にこれをやるとなれば、若干の忍耐と時間的な経過が私は必要だと思うわけでございます。そして、従来はこれほどまでに深刻に
考えていなかったものだから、
下水道事業はほとんど
市町村の固有の事務にしてしまって、国は、端的に言えば何もしてやらなかったということだと思います。
都道府県に至っては、これは
市町村がやっておることなんだからということで、これにたいした関心もなかった。これを一気にやらなきゃいかぬという
段階にきたところに問題の深刻さがあり、またそれだけの困難さがあると思います。
そこで、まず第一に、いまの
補助率の問題でございまするが、
昭和三十三年に
下水道法ができてからなかなか
政令がつくられなかったというのは、わずかにあの当時——私が振り返ってみますというと、たしか私がこの前
大臣をやめてから後であったと思いますが、これをやったのは、そのときより年間十億程度の国費の投入よりしていないのです。そうして
補助率も国費が全体の一〇%程度なんです。そういう
段階で、もしあれがその具体的な計数のまま
政令をつくったならば、これは全然処置ないのですよ。そこで、ある程度まで
下水道の
事業を伸ばし、国民の関心も深めて、しかる後
政令をやらなければ、
政令がむしろ逆に拘束してしまうというきらいがあったと思います。が、しかし、いまやそういう時期ではない。去年ことしと
伸び率を相当ふやし、それからまた実際の
投資額もふやしたから、今度は皆さんの御激励を受けまして、第三次五カ年
計画が策定した
段階で
政令をやろうということで準備をさしております。
ただし、その場合において、いまの
補助率のことでございますが、先ほど御
指摘になりましたように、
補助率の前に
補助対象率が非常に小さい。そうすると、
補助率を上げると、その
補助率を上げたところの
事業をやるところが負担は楽でありますけれ
ども、結局
事業量が今度はぐんと減ってしまいます。ところが、現在は、どこでも
都市という
都市はいまじゃ何よりも
下水道をやらしてくれというのです。私は去年から——去年は私は党におりましたが、去年からことしにかけての私に対する
下水道に関するところの要請の最大なるものは、
事業率もありますけれ
ども、どっちかというと、むしろ
事業量を多くしてくれ、それから
補助対象の
ワクをふやしてくれ、そうして
起債をとにかく早く許してくれ、
起債の
条件をよくしてくれ、これが一番強いのです。現在の国家
財政の
状況は、
市町村長も知事諸君も、みんなそれぞれよく知っているのです。しかも、彼らは、屎尿処理の問題から、
都市計画の問題から、
住宅の問題から、あらゆるものを持っておって、その上で来ておりますから、ただ単なるムードによる陳情ではなくして、一つの
理事者として、地方自治体の責任者としての
考えからそういうふうに来ているようであります。私もこれがしかるべきことと思います。
まず第一に、現
段階では、この
事業量をふやすということと、
補助対象率をふやすということ、これが第一
段階で、それから後に今度は
補助率アップというような作戦をとらざるを得ない。そのほうがより現実的であるというのが現在の私の心境でございます。