○吉田(賢)
委員 時間の関係がございますので、
あと簡単にしたいと思うのであります。
このたびの例の
郵便料値上げの問題でございますね。非常にこれはいろいろ苦慮された結論の
一つかと思います。また
郵政審議会の諮問を経、その答申に基づいておるということになりますと、あらゆる角度からかなり
検討なさったものであろう、こう思うのです。
そこで
一つの問題は、たとえば
郵政審議会におきまして、諮問事項は、
郵便事業の正常運営を
確保するための方策いかん、こういうことであったようでありますが、これについて、その諮問の趣旨の説明もついております。しかし、これは結論的に見ると、
郵政審議会の答申なるものの大きな柱は何か、これはやはりどうも
郵便料値上げに帰しておるのではないだろうか。もちろん
配達の速度を安定せしむるという面もありはします。あるいはその他、若干いろいろな面におきまして機械化し、あるいはその他
国民の協力を求めたりするような面も出ておりますけれ
ども、しかし、どうも姿勢といたしましては、要は、財政の健全化のためには、
赤字を生まないためにはこの際
郵便料を値上げする以外に方法はない。答申といたしまして平均三割五分値上げするというような、大体そういうようなことになるようでございますが、
大臣、この問題はすでに省としてもあるいは閣僚
会議も経ておる問題でございますので、ちょっと三分や五分の議論では意を尽さないのでありますけれ
ども、ただ
考えていただきたい点は、いま一口に申しますと、日本人は、言うならば、政府も国会もインフレ歓迎のような空気に満ちておるのではないだろうか。少々物が上がっても、つまり上がることはやむを得ない、上がらざるを得ない、上がること必至なり、インフレは世界の傾向なり、したがって、上がってもよろしい、月給がふえたらよろしい、所得がふえたらよろしい、そうしたら遊びにも行けるし、物も買えるじゃないか、こういうふうな風潮が満ちておるんじゃないか。
郵便料の値上げは、これに対する
一つの刺激剤をまた与えることになりはしないかということを
心配いたしますので、もちろんこれは今後の見通しとしまして、累年
赤字がずっと見通されておるようであります。四十六年から五十年まで総額六千数百億円の累積
赤字になるような見込みが大体されておるようでございます。せっかく黒字であったものが
赤字に転換した、
赤字がだんだん累積していく、どうにも身動きがならぬというふうになっていくのが
郵便事業の今後である、これが大体今後の見通しらしいのでございます。
そういう点から、そこに重点を置いてのこれは
一つの答申の姿勢であろう、こう思うのでありますけれ
ども、反面において、やはりどうするならば、事業をもっと合理化して、もっと原価
計算を厳格にして、そして企業として成り立ち得るかということの面に対する深謀な配慮、もっと端的に言いますならば、これはやはり
大臣、長期計画を立てねばいくまいと思うのであります。何もあなたの任期がというか、
大臣の任期が短いからというわけではございませんが、ともかく、ともしますると計画が短期に終わりまして、そしてある
大臣がこっちを向くと、またある
大臣になるとあっちを向くというような面が、過去の
事例ではなきにしもあらずでございます。また、
郵便事業というものはアメリカでも
赤字になっておりますし、ヨーロッパにおきましては大体黒字でありますが、しかしこれは
郵便と電話と両方一緒にやっておりますですからね。しかし、日本の
郵便事業は完全に電報、電話が抜けてしまった
郵便事業でありますから、言うならば、かすをつかんでおるわけであります。そういうかすをつかんでおるわけですから、これを黒字に転換するのは容易ではありませんけれ
ども、それなりの立場で、私は、徹底的な長期計画を立てるという面から、なお
検討の余地があるのではないだろうかということで、すぐ
郵便料値上げに踏み切っていくということは少し即断ではなかったであろうか。もっとも、権威者ばかりお集まりの審議会でありますから、一知半解なこのような批判は当たらないかもしれませんけれ
ども、私は、
国民の批判といたしましては、こんなようなインフレの横行時代、インフレ必至なりというあきらめの時代におきまして、またインフレの拍車になるようなこの
郵便料値上げについては、実は幾多の疑問を持つのであります。もっとも、すでにあなたのほうで省議決定をして、
大臣の決意も相当あり、まあ
国民に問うとか、あるいは大蔵、企画庁等、三者一緒に御相談になるようなことになったらしいのでありますけれ
ども、私はやはりこの問題は日本の経済と財政に与える影響が大きいと思うのですが、何かその点について特に配慮をしておいて対処しようと——いまの基本姿勢をやめてしまわねばいかぬというほど強い根拠を私は十分持ちませんけれ
ども、しかしこのままではいくまい。何かいま言うような憂慮すべき幾多の
条件が周囲にはありますから、これに向かって取り組んでいく面が必要ではないか、こう思うのですがね。