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1970-12-24 第64回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月二十四日(木曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君       石井  一君    小坂徳三郎君       西銘 順治君    村田敬次郎君       豊  永光君    松本 七郎君       安井 吉典君    中川 嘉美君       西中  清君    東中 光雄君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁労務         部労務調査官  相場 正敏君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省条約局長 井川 克一君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 十二月二十四日  辞任         補欠選任   山本 幸一君     安井 吉典君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     山本 幸一君   東中 光雄君     松本 善明君     ————————————— 十二月十八日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣愛知揆一君
  3. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十二月二十日、沖繩コザ市において発生いたしました事件につきまして、ただいままで各方面から入手いたしました情報あるいは報告等を総合いたしまして、ただいまの時点におきまして御報告を申し上げます。  まず事件の発端でございますが、十二月二十日午前一時十五分ごろ、コザ市中之町で、米軍関係者の運転する車が沖繩県民翁長清一という人に接触いたしまして、全治一週間の傷を負わせる事故が発生したことから始まりました。この事故に際し、米軍憲兵及び琉球警察官が出動、加害者及び被害者コザ警察署に連行され、事情を聴取されましたが、被害者負傷が軽微であったので、両人とも帰宅を認められました。  その間事故現場において琉球警察及び米軍憲兵群衆を説得して事故調査処理にあたっておりましたが、たまたま付近で第二の事故が起こりました。それは沖繩住民の車に米人運転の車が追突いたしまして約二千円程度の損害を与えるという事故が発生いたしたのであります。これも刺激となりまして、当初五十ないし六十名であった群衆は次第に数を増しまして、最高時には二千人程度に達したよしであります。群衆の中から、また糸満事件のようなことをするのかとの声が上がり、投石が始まりましたので、米軍憲兵は空に向けて二十発程度威嚇射撃を行ないました。群衆はこの威嚇射撃を契機に激化いたしまして、付近に駐車中の車のうち米人の車数十台に火を放ち、約千名は嘉手納空軍基地に向かい、第二ゲート入口を約二百人が突破、同ゲートわき通行証発行所基地内の米人小学校用建物米軍用車等に放火をいたしました。  その結果、本日までに判明いたしておるところでは、焼かれた車両は約八十台で、その内訳は軍車両六台、軍消防車一台、米人個人所有車七十一台、同じく米人モーターサイクル一台、計七十九台及び沖繩県民所有モーターサイクル一台、合計八十台が焼かれたのであります。コザ警察署は隣接の警察署及び琉球警察本部等の応援を得まして四百人の警察官を動員、その他米軍関係者も出動し、群衆琉球警察機動隊の隊列を突破しようとした際には、催涙ガス弾八発を用いて制止に当たり、その結果、当日午前七時過ぎ事態はほぼ鎮静化いたしました。  との事件による逮捕者コザ現場付近で二十名、第二ゲート内で一名、合計二十一名に達しましたが、現在は全員釈放されたと承知いたしております。この事件による負傷者米側六十一名、沖繩民間人十四名、琉球警察官六名、合計八十一名でありますが、いずれも入院治療を要する者はいないよしであります。  以上がただいままでに政府として入手いたしました情報調査等概要でございますが、これは今後さらに調査をいたしますと若干の変更があろうかと思います。  今回の事件の経緯はこうした概要でございますが、政府としては事件発生の報に接しまして、直ちに関係方面と連絡をとり、まず事実関係の掌握につとめ、そして対策検討、実施に当たった次第でございます。今回このような事件が発生いたしましたことは、七二年の復帰を目前に控えましてまことに残念なことであるといわざるを得ません。事態は一応平静になり、死亡者はなく、負傷者もおおむね軽傷と聞いておりますが、これは不幸中の幸いであったと存じます。  事件発生根底には、戦後二十五年にわたる沖繩住民の経験してきました非常な苦難特に最近の米軍人による自動車事故に関する裁判の結果等の影響が作用しておりますことは十分に察せられるところであります。  私は事件の発生いたしました当日から対策に鋭意当たっておる次第でございますが、翌二十一日にはたまたま予定されて開催されました日米第十二回安保協議委員会がございましたので、まずその席上において、また引き続き米大使を特に招致いたしまして二回目、さらに翌二十二日の沖繩返還についての定時の会談を利用いたしまして、その機会にさらにマイヤー駐日大使との間に本件の善後処理その他につきまして協議をいたし、あるいは申し入れをいたした次第でございます。  私といたしましては、先ほども申しましたように、七二年復帰を控えましてこのような事件が起こりましたことは、まことに残念であるということを前提にいたしまして、沖繩県民気持ちを十分くみ取って今後措置に当たってもらいたいということを基本にいたしまして、米側に対して話し合い折衝を行なっておる次第でございます。類似の事件が再び起こらないよう今回の事件原因について虚心にそのよって来たるところを究明すべきこと、そして沖繩の円滑な本土への復帰という日米双方の共通の目的達成のために相互にあらためて建設的な方向で協力していきたいことを基本申し入れたわけでございますが、米側におきましても日米双方がより一そう緊密な協力をしてまいりたい旨申し述べておる次第でございます。  なお、特に申し添えたいと思いますのは、今日までの米側との折衝申し入れ等におきまして、沖繩返還、七二年核抜き本土並みワク組みの中で行なわれる返還協定の作成、あるいはこれに関連する諸問題の取り運びについては、今回の事件によってこれが支障を与えるものでないということが一つ。それから一つは当面の最大の問題でございますところの毒ガス移送ということにつきまして、これまた今回の事件影響しない、既定方針どおり米政府として実行をするということの確約を取りつけております。毒ガスの問題につきましては、その確約のもとに、前々から御報告申し上げておりますように、この移送が一日もすみやかに行なわれること、全部が撤去されること、そして安全移送ということについて県民納得のもとにいけるような方法でこれが確保されるということ、これらにつきましては、したがって今後とも鋭意折衝を続けてまいりたいと存じます。  いま一つは、とりあえずの措置といたしまして、現地におけるランパート高等弁務官から、あらためて在沖繩米軍の厳粛な軍紀の粛正について、厳重に全軍に指令をいたしましたということを昨日駐米大使からも通報を受けておる次第でございます。  以上、御報告申し上げます。     —————————————
  4. 田中榮一

    田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘順治君。
  5. 西銘順治

    西銘委員 沖繩施政権返還は御承知のとおりすでに進められておりまして、きわめて複雑かつ膨大な返還準備を伴う大事業であると思っております。この施政権返還の大事業をわれわれはでき得る限り混乱を起こさぬよう配慮して完成することに努力をしなければならないと考えております。そのためには、日米両国政府はもちろんのこと、両国国民特に沖繩住民相互の深い理解協力が必要欠くべからざるものであると考えております。したがって、この相互理解協力をつくり出すためには、関係者はあらゆる努力を惜しんではならないと思っておるのであります。  去る二十日、コザ市に発生し、ついに嘉手納基地にまで及んだ不祥事件は返す返すも遺憾なことであります。結局のところ在日米軍沖繩住民の間にある不信感の率直なあらわれであると私は見てとっております。もちろん、たとえ理由のいかんにかかわらず、暴力的な行為は断じて許されてはならないと思っております。関係者が特に戒めなければならない点でありますが、同時にその背景にある重要問題の解決はまたもって緊急の課題であると考えております。  その一つ裁判権の問題であります。今度の事件コザ市における交通事故を直接の原因として惹起されておるのでございまするけれども、糸満町の交通事故の件を取り上げてみましても、制限速度を越えまして、しかも歩道を歩いている婦人をひき殺しまして、その事件に対する判決無罪となっております。また、数年前那覇市内におきまして、中学校の生徒が青信号のときに横断歩道を渡って大型トラクターにひき殺されました。そのときの軍裁判判決無罪となっております。私たち沖繩県民日本国民であります。しかしながら、日本憲法の適用もございません。またアメリカ統治下に置かれながらアメリカ憲法で規定された人権は何ら擁護されておりません。沖繩人の生命は虫けらのごとく扱われておるわけでございまして、したがって私はこの不祥事件が再発しない、続発しないためにも裁判権移管を早急に実現することが抜本的な解決であると考えておるのでありますが、これに対する外相見解を伺いたいのであります。  裁判管轄権の問題は憲法上の原則あるいはこれまでの慣行などむずかしい壁もあろうと思うのでありますが、この際この移管をはかることが事態解決する不可欠の要件であると思っておるのであります。この際、七二年までの中間措置といたしまして、米民政府裁判所への移管、これが考えられます。二番目に軍事裁判所陪審員沖繩住民参加をさせる、こういう方法も論議されているようでございますが、この際、こういう小手先の細工をもてあそぶだけでは逆効果のおそれがあると思うのであります。また七二年返還までにはわずか一年余りしか残されておらないのでございまするので、ぐずぐずしておりましたら、時間がないことなどを考えまして、この際思い切った措置をとりまして、しかもそれは早急にとらなければならないと思うのでありますが、これに対する大臣見解をお伺いしたいのであります。  沖繩住民感情でもう一つ重要なことは、米軍人の日常の生活姿勢と申しますか、特に住民に対する態度改善を求めなければならないと思っております。長い二十五年間に及ぶ統治時代を経まして、米軍人の中には統治者としての誤った思い上がりがあると思うのであります。これが世界の各地でアメリカがきらわれている要因になったと思われるのでありますが、最近の沖繩ではたとえ一部ではありましても、返還が近づくにつれまして一種のあせりを見せておりまして、傍若無人の態度をとる軍人が間々見受けられるのであります。沖繩側感情的に過ぎてはいけないと同様にあるいはそれ以上にアメリカ側態度を改めさせなければならないと思うのでありますが、これに対する外相の御見解を聞きたいのであります。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお述べになりましたことは、沖繩県民感情先ほども申しましたように、二十五年間にわたる非常な御苦労の上に立った感情あらわれ、ことに最近における裁判の結果に対する不満というものが根底になっているということは、政府といたしましても十分認識しておるわけでございますから、その認識の上に立ちまして、今後いかにすべきかということについてはいろいろと考究をいたさなければならぬと考えておる次第でございます。  具体的に申しますと、まず裁判権全体の問題でございますが、これは申し上げるまでもなく、施政権の自主的な重要な一環をなしておりまするので、返還協定の上におきましてもこの裁判権の問題というものが非常に重要な要素をなしておる。すでにこの返還協定上の問題といたしましては、裁判権返還のときに即時完全な移行ということについては、もちろん問題なく実現をされるということに考えております。当然のことでございます。同時にそれまでの期間、もうわずかな期間だからいいではないかというような説もあるようではあるが、それではいけないのではないかという御趣旨でございますけれども、その中に、いま御提案になりましたたとえば民政府への移管であるとかあるいは軍事裁判のあり方について陪審員の問題とか、いろいろ具体的な御提案もございましたけれども、これらにつきましても、われわれとして考えるべきところはいろいろと検討をし、特にまずさしあたりのところといたしましては、御承知のようにいわゆる共助協定というものが、政府といたしましても関係方面の御協力を得て、率直に申しますと相当に難航いたしましたけれども、あの協定ができ上がりましてこの運用の面の改善というようなことについては、私は相当に考え得る点も多いと思います。そのほかの点については、ただいまお話もございましたように、裁判権全体の問題といたしますと、従来も御説明を申し上げておりましたように、施政権一環としてなかなかむずかしい問題がございますので、それも頭に入れていかなければならないと思いますけれども、なお御趣旨に沿うようにできるだけの交渉といいますか検討といいますか、これも進めてまいらなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  7. 西銘順治

    西銘委員 事件発生直後に高等弁務官が、このような不祥事態が起こるようでは毒ガス撤去作業はやらないというきわめて高圧的な発言をされておるわけでございまするけれども、その弁務官発言内容については詳しくいたしておりませんが、ただ心配いたしますのは、この事件毒ガス撤去と絶対にからませてはならないということでございます。したがいまして、この撤去作業に対する安全性確保ということとジョンストン島における収容能力が完成でき次第早急にこれを移すということがわれわれ沖繩県民の願いでございます。したがって、この安全性輸送についての具体的な計画を明らかにいたしまして、県民の不安を取り除いていかなければならないと考えておるのでございますが、この点について大臣の御見解をお聞きしたいのであります。  いずれにいたしましても、コザ事件コザ事件として、真相を明確にしていかなければなりません。お互いに冷静にこの問題に取っ組んでいかなければならないと考えております。そうして、これを機会にいたしまして、相互不信を解かなければならないと思っておるのでございます。いま七二年返還を迎えまして、お互い理解協力がなければ円満な、しかも膨大な復帰準備作業は進められないと考えておるのでございます。これについての大臣見解をお伺いしたいのであります。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガスの問題につきまして、ランパート高等弁務官発言が、これはわれわれといたしましても、その報道されましたときには非常な心配をいたしたことは事実でございますが、幸いにいたしまして、先ほど報告をいたしましたように、直ちに開始いたしました対米話し合いで、毒ガス撤去については米国本国政府決定によって、いささかもこれに影響させることはないということが明確になりましたので、これはもう私は当然のことと思いますけれども、それだけで満足いたすことは政府としてもできないわけでございまして、移送決定されたのは米国政府決定であるが、しかしただいまもお尋ねのようにその安全性についてはどういうふうに納得ができるか、あるいは時期については一日もすみやかにという御決議両院委員会等においてもいただいているわけでございますから、その両院決議に従って、政府としては対米折衝をなお一そう強力にやらなければならぬわけでございます。この点についてはまだ十分な結論を得ておりませんですから、この点についてはさらに強力な折衝をいたしまして、随時明らかにしてまいりたいと思っております。その中で安全撤去安全移送については今月の十二日以来御報告を申し上げておりますように、米側最高責任者東京に招致いたしまして、関係方面専門家ともども点検——点検といいますか、その計画についての点検をいたしまして、ただいままで明らかにされておりますことは、累次御報告のとおりでございますが、公開をして、たとえば輸送等についても日中に限定してこれを行なう、あるいは日本側の官憲が現場において立ち会う、参加をする、そしてコンボイの編成それからその内容等についても相当具体的なところまでは納得ができたわけですが、さらに一そう納得のできるような状況において、そして県民方々の御納得の上に立った御協力をいただいて、まずこの百五十トンは私は一つの試みであると思います。そしてこれがうまく実施できましたならば、この一回の輸送量百五十トンというものは単位の上から申しましても十倍以上の量が一回で運べるということは確実に行なえると思いますから、ジョンストン島の整備を急いでもらうと同時に配船計画その他を十分米側でも考えてもらいまして、そして一万三千トン全部がなるべくすみやかな機会撤去されるようにということについて、ぜひ具体的な結論を得て県民方々に御安心を願うようにいたしたい、かように存じております。
  9. 西銘順治

    西銘委員 基地周辺で枚挙にいとまのないくらい傷害暴行事件が相次いで起こりまして、これが裁判制度の上で軍事裁判でさばかれまして、その判決が非常に公正を欠いておりまして、これが結局遠因となって今度のコザ暴動事件になったと思っております。したがいまして、この抜本的な解決はあくまでも裁判権移管することが欠くべからざるものでございますから、これが七十二年復帰、あと一年半しかございません、実現されるかどうか。けさの現地民政府当局見解を見ましても、憲法上不可能であるということがいわれておるのであります。したがって、次善の策としてこれを琉球列島の管理に関する大統領行政命令の十節、この中で、民政府裁判所刑事裁判権民事裁判権が付与されておるわけでございますけれども、これは当事者が琉球人である場合が除外されているわけでございまして、それさえ改廃できれば、陪審員の構成を沖繩人を入れることによって裁判の公正を期することができると思っておるのでございますが、要はそういうこまかい議論は別といたしまして、もう一年半しかございません、早急にこの事態を円満に解決し、そういう事件が二度と起こらないように、続発しないように当局外交努力を要望いたしたいのであります。  同時にわれわれが心配いたしますことは、これが複雑かつ膨大な施政権返還に伴う作業に大きな影響を与える、また毒ガス撤去に対する安全性確保、早急なガス移送等について支障を来たしたら、これはたいへんなことになるということで非常に心配をいたしておりますので、その点、毒ガス撤去とこの問題とをからませずに、早急に毒ガス撤去について当局努力を要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  10. 田中榮一

  11. 安井吉典

    安井委員 先ほど愛知外務大臣から事件の経過並びに政府のそれに対する処理についての御報告がございましたが、私は今度のコザ事件は、ずっと二十五年間にわたる長い沖繩の置かれてきた事態の中から発生したものだと思います。私もその後アメリカ大使館のほうに出向いて、話し合いもしたのでありますけれども、やはりアメリカ側は何かささいな原因によるもの、あるいはまだどんなものであっても暴行はいけないという、それが二つの基本になった発言になっておるようであります。なるほど東京の町の中でいつでも行なわれているような交通事故処理の問題、さらにまた暴行行為はいついかなるものであっても、それは正しいと言えるようなものではもちろんございません。しかしながら、沖繩の二十五年間の今日まで続いてきた事態は、米軍はもっともっとひどい殺人行為もやっているわけであります。あるいは強盗や婦女暴行だとか、略奪とか、しかし、それをやっても罪は免がれ沖繩県民は殺され損、そういうふうなことで今日まできているわけであります。特に、最近の糸満事件、あるいは毒ガス撤去について住民の要求は少しも入れられそうもない、そういう事態に対するぎりぎりの不満の爆発、私はそういうものではなかったかと思います。問題は小さかったかもしれませんけれども、あのコザ事件は、ガスが充満していてそこへマッチ一本とまでいかなくても、石ころがぶつかりあって火花が出ても爆発する、そういう事態だったと思います。そういうことをまず根本的な理解に置いて問題を考えていかなければ私は間違ってしまうと思うわけです。  ところが、それに対するいまも御指摘がございましたけれども、ランパート高等弁務官発言であります。特に、特別声明ということで、放送局まで出かけてテレビにも出られたそうでありますけれども、その発言の中で、このような事件が起きる脅威が完全になくならない限り、第一回の毒ガス積み出しは私が承認しないであろうことを確言しておく、これは新聞の記事でありますけれども、こういうふうな暴言を吐いているわけであります。私は、この問題は、問題のとらえ方があべこべで、こういう事件があったので毒ガスはどうというのじゃなしに、たった百五十トンの第一回の積み出し、全部行なわれるのは、祖国に復帰してもまだ終わらない。こんな始末では、そういうふうな事態の中に置かれているからこそ、こういう問題が起きたのではないか、こう考えるわけであります。問題のとらえ方が、あべこべですよ。私は、こういうふうな全く反省のない発言をすることに対して、がまんができない一人であります。参議院のきのうの沖繩対策特別委員会もきわめて強い調子の非難をした決議をしております。ガス撤去は、これは本国の意向として明確にされたといま西銘君に対して大臣は御説明になりました。なるほど本国はそうかもしれぬが、それを実行に移すのは出先高等弁務官の仕事であります。本国はそうかもしらぬが、出先はサボタージュするかもしれない、ほんとうの気持ちは、毒ガスを戦略的なあるいは戦術的な意味から、まだ沖繩に置いておきたい、私はそれが本心ではないかと思うのです。それがはしなくもあの特別声明というふうなことに出たのではないか。その後屋良主席などが会っての話では、あれは通訳の誤訳であったとか、そういうふうなことを言ってのがれようとしておるそうでありますけれども、私はこれはどうも許せないような気がするわけであります。やはりこれは、アメリカ政府責任においてああいう特別声明を取り消させるべきではないか。毒ガス撤去の前にあの特別声明を撤回させるべきではないか、こう思うわけであります。特に、これも新聞によりますと、米国務省のスポークスマンは、コザ事件についての初めての論評を二十一日にやった中で、毒ガス撤去に関するランパートの判断は正しい、こう言っているようです。だからやはりこの際、日本政府は、アメリカ政府に対して、ランパート声明は間違いだったのだ、その取り消しを要求する、こういう態度が必要であろうと思うのですが、どうですか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど報告あるいは御答弁申し上げましたとおりでございまして、毒ガス問題につきましては、本国政府が非常に明確な態度日本政府に対して表明をいたしております。それからランパート高等弁務官も、自分の特別声明についての釈明的な、補足的な説明もいたしておりますことは、ただいまもおあげになりましたとおりでございますから、私はこの毒ガス撤去については、この日米の公約と申しましょうか、これに基づいて、しかも安全ですみやかな輸送については、すでに十二日以来具体的、技術的な折衝が非常に熱心に行なわれておりますから、これをどんどん促進いたしまして、一日もすみやかな実現をはかってまいりたい。この軌道はもう十分でございますから、あとは県民方々あるいは本土のわれわれを含めまして、事実の上におきまして納得のできるようなことにしてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  13. 安井吉典

    安井委員 いま大臣の御答弁からすれば、あの特別声明内容は現実には取り消されたと同じようなことになっている、そういう御趣旨のように承るわけですが、そうでしょうか。そしてまた、現地ではランパートの退去要求、沖繩に必要がないから帰れという、そういう激しい要求まで盛り上がっているという事実を、政府ははっきりのみ込んで処理していただかなければ困ると思うのです。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 取り消されたと同様というよりも、もっと強い意味におきまして、私は毒ガス撤去については、日本政府としては十分これでやっていけるという確証を得たと考えております。  ただ、先ほども念のためですが、私、西銘委員の御質問にお答えしたのですが、そもそもこの撤去が十二月四日にようやくアメリカ政府としての態度が明確になりましたけれども、しかし全部の移送がいつ終わるのか、あるいは安全輸送に対してどれだけわれわれが納得してできるかということについては、政府としてももちろん不十分だと考えておりますために、その折衝を鋭意続けておるわけでございますから、その点については今後といえども、政府といたしましてはますますもって積極的に、そして十分な折衝話し合いをして具体的な成果をあげたい、こう思っておるわけでございますので、これできまった、安心だというふうには毛頭考えておらぬわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、今後とも米側の積極的な現場においての理解協力を求めていくことがどうしても必要であろう。これできまったなどとは決して思っておりませんので、その点念のためですが、申し上げておきたいと存じます。
  15. 安井吉典

    安井委員 軍事裁判のあり方についての問題でありますが、先ほど西銘委員の質問に対して、大臣は、裁判移管の問題についてもいろいろ検討をしながら折衝を続けていくという御発言であります。私は、それより前に、政府が、一体、これまで沖繩で行なわれてきた軍事裁判のあり方についてどういうふうな考え方を持っているのかということを、ひとつ伺っておきたいわけであります。  さっきも御指摘のありました八年前の、中学生が青信号で渡っているところへ米軍の車が突っかけてひき殺した、そのひき殺した米軍人無罪、そういう問題をはじめ、五月の具志川市の女子高校生の刺傷事件だとか——それだってろくな判決は出ていません。——今度の糸満の問題もそうであります。酔っぱらって八十キロ以上のスピードを出して歩道を歩いている女の人をひき殺して、それで無罪という判決のあり方であります。その裁判移管の問題について、非常に消極的な言い方を今日まで政府はされているわけでありますけれども、こういう裁判のあり方について矛盾は感じてないのか、これでけっこうだと思っているのかということであります。昨日の参議院の沖繩対策特別委員会では、山中総務長官は、残念なあり方だというふうな表現をされているようでありますけれども、外交の折衝責任に当たっております外務大臣の、折衝に当たる感覚といいますか、そういうものをひとつ伺っておきたいわけであります。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど西銘委員にもお答えいたしましたように、私も、その認識といいますか、そういう点においては、全く御同感で、結局根本は他国の施政権下にあるということに基づく、かつ、その施政権のあり方というものが、沖繩県の方々に非常な何ともいえないうっせきした民族感情と申しましょうか、これを醸成しておるということが、結局こういう問題の基本であるということの認識におきましては、私も十分に憂いをともにしておるつもりでございます。  ただいまのお尋ねに対しましては、私は、まず、在沖米軍人たちがそういったような犯罪行為を次々に起こすということ自体がまことに困ったことであって、この点については、この事件が起こる直前でもございましたけれども、私自身といたしましても、東京において、あるいは、沖繩に参りましたときにも、直接、最高責任者であるランパート氏にも、もう切々と日本の国民感情というものに立脚した米軍人のビヘービアに対しての警告を発し、あるいは、最大の配慮を求め、これに対してランパート氏も、彼は司令官の立場においては、私は十分こちらの考え方も理解を示しておったと思うわけでございます。したがって、今回のこの事件の直後においての日米話し合いの中においても、積極的に、先ほど申しましたように、全軍に対する軍紀粛正ということについてあらためて全将兵の反省を求めた、あるいは、具体的な指示をしたということが、直ちに駐日大使を通して通報がありましたことも、まあそういったようなことで、ある程度のきき目はあったのではないかと思っておるわけです。  それから、裁判のあり方については、これは必要によって専門的にもいろいろその道の人からも御説明を申し上げたいと思いますけれども、軍の裁判であるというところに特殊の中のまた特殊性があるわけでございますが、裁判のやり方について、ほんとうに公正であり、また、沖繩県民感情を十分にくみ取って裁判をやってもらいたいということについては、日本政府としては、もちろん期待するところであり、また、その期待というものは十二分に米側に対しても累次申し入れいたしておるようなわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、今後におきましては、こういった日本政府の対米折衝のルートを通しましても、できるだけのよい結果が出るようにいたしたい。  それから、さらに、先ほども触れましたが、いわゆる共助協定をつくり上げましたときにも、これはこちらが考えておりましたよりも時間もずいぶんかかりました。そして、それだけに、米側協力も、その当時としてはぎりぎりのところまでの協力を得たように思うのでございます。そして、今回のコザで第一回といいますか、発端になりました事件につきましても、共助協定による琉球警察の発動というものがとにかく保障されていたようでございますけれども、しかし、まだ共助協定ができましてから間もなくのことでもあった関係か、この現場における運用その他につきましては、私はそういう点でしろうとでございますけれども、しろうとなりに、改善の余地もあるのではないかと考えましたので、そういう点につきましても、現在の制度のもとにおいても改善の余地があるのではないか、十分それらの点も考えてくれということも、あわせて米側にも申し入れ、また、それらの点については、米側としても考えて、よい考えがあったらばひとつ十分考えてみようという態度が表明されておる次第でございます。
  17. 安井吉典

    安井委員 どうも大臣の御答弁は、軍紀を粛正すれば犯罪は少なくなるだろうし、起きた犯罪の捜査についてもいろいろ努力をしているということで、肝心の裁判が公正か公正じゃないかということについてまともからお答えになりませんでした。しかし、裁判沖繩県民の意思をくんでやってくれという申し入れをしているということは、裏を返せば、いまの裁判のあり方について大臣自身も、困ったことだと、こう思っておることは明らかなようであります。  いま沖繩では、この間の糸満事件について、裁判のやり直しをせよという世論が強く巻き起こっております。あるいは、ずっと以前から続いてきた、私どもから見れば、決して公正ではないと思われる軍事裁判の記録を公開せよという要求も強まっています。私は、ほんとうに大臣も、公正じゃないというふうなお考え方がどうも裏にあるようだし、また、アメリカ軍のほうは、公正に行なわれているという自信があるならば、少なくも、軍事裁判記録をはっきり公開をする、どこから見てもこれは正しいのだということを示すことによって、沖繩県民納得できると思うわけでございます。やはり県民感情を非常に大切だというお気持ちがおありなら、私は、アメリカ政府に対して、県民納得させるためにも、正しい裁判が行なわれているんだ、その実態はこうなんだということの公表をするようにという交渉を、あるいは要求を大臣にしていただきたいと思うのですが、どうですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、これが軍事裁判であるという特殊の中の特殊の状況でありますだけに、これを外交上の話し合いにいたしますのにも、いろいろとこちらにも苦労があるわけでございます。これは御了承いただけると思いますが、しかし、ただいまのお述べになりましたような趣旨基本にあるお気持ちは私どもは先ほど来申しておりますように同様でございますので、要は県民方々納得ができるように、裁判がこうこうこういうことであるのだというようなことについての説明を、十分にしてもらうというようなことについては、現在の制度のもとにおいても格別の配慮を求むべきである、こういう考え方で、先ほど申しましたように、それらをも含めて警察権の運用とか、それから裁判のあり方についての配慮、あるいはその裁判の結果について、県民納得できるような説明をしてもらうというようなことについては、われわれとしても米側の善処を求めている次第でございます。これは今回に限りませんで、前々から裁判のあり方ということについては、政府としても大きな関心を持ち、それに基づきまして、アメリカ側ともいろいろ話し合っているような状況でございます。
  19. 安井吉典

    安井委員 どうもいまの御答弁では沖繩県民世論はおさまりそうもありません。ほんとうに県民納得できるような裁判が行なわれているのなら全文でなくても概要でもいいですよ。概要といっても、どういうやりとりがあってどういう原因でどういう結果が出たかというものを明確にできるような、そういうものを出すのが私はほんとうだろうと思います。出さないのは、結局それを出せばかえって世論を刺激する、こういうことだからではないかと思うのです。そういう点、さらにまた御検討を願っておきたいと思います。捜査権の問題については、いま共助協定のお話が出ましたが、これはちょっと時間がないようですから、あればあとで伺うことにして、いま裁判の問題について私の見方や考え方をちょっと申し上げてみたいと思うのです。  いろいろな意見等を総合して現在の軍事裁判のあり方を考えてみますと、大きな問題は三点あるように思います。  その第一点は、裁判官をはじめ裁判所構成が全部軍人で構成されているということであります。これは戦場で殺し合いが行なわれている段階なら、あるいはこれでもいいのかもしれませんけれども、現在の沖繩は形はなるほど占領下であるかもしれませんが、もう観光客も一ぱいぞろぞろいて、みやげもの屋もそれで繁盛しているという段階であります。国政参加もできて、間もなく施政権返還、こういうところだと大臣も繰り返し言われるような段階です。そこで、そのまま戦場の論理がまかり通っているというところに私は問題があるように思う。軍の中で起きた事件なら軍人だけで陪審員まで構成した法廷でもいいのかもしれませんけれども、軍人住民との間の問題ということになると、これは勝った者と負けた者、勝者対敗者という関係あるいは支配者対被支配者、もっといえば一つの民族対他民族、そういうような関係もどうしても避けられないように思うわけです。だから私はこういうふうな法廷で公正な裁判ができるわけはないと思う。  それから二番目には、この陪審員制の問題ですね。陪審員制というものは裁判に対する民衆参加ということにおいてメリットを持っていることは多くの人が認めるところです。本来的にはそうだと思います。しかし、この軍事法廷という中において、特に勝者対敗者という論理の中では必ずしも公正に働かない場合が出てくる。だから陪審員が、この人は婦女を暴行をしたけれども、ベトナム戦争に功績があったから無罪だ、こういうふうな結論が出がちであります。糸満のときでもこの被告は航空隊の二等軍曹で、報道によりますと陪審員はほとんどが空軍の将校であったというわけです。そして、これは新聞報道ですからよくわかりませんが、道路が悪かったからというふうなことでノットギルティー、こうなっているということであります。だからここにも一つ問題がある。  三番目は、公開が原則ということになってはいるそうでありますけれども、大体基地の中で行なわれておる裁判が公開されたからといって、だれも入りゃしないわけであります。結局糸満のときでも遺族二人と報道関係五人を入れて通訳なしという法廷になっております。だから、こういうふうな形の軍事裁判、これが今日の段階においてはもう不合理になってきているのではないか、私はそう思うわけであります。だから琉球裁判所に移せという主張は以前からあったし、今日特に強まってきているということではないと思います。日弁連の主張はもう大臣承知のとおりです。施政権一環として、琉球政府裁判所も民政府裁判所もそれからいまの軍事法廷も三つとも施政権の中にある。何か琉球政府裁判所というのは日本裁判所の出先みたいな気がする、そういうふうな印象をアメリカのほうは伴うのかもしれませんけれども、それなら日本施政権沖繩に及んでいるということになるわけですから、われわれのほうはむしろ喜ばしいわけです。そうじゃないということを彼らは言っているわけでありますから、琉球政府裁判所も今日の段階では施政権一環の中に組み込まれているわけです。だから、内部的に事務分掌を変えればそれでいいのだというのが日弁連の主張のようでありますけれども、これも私は一理があるのではないかと思います。先ほど西銘委員からも一つの御提案がございました。しかし、昨日の参議院の沖繩対策特別委員会決議も、民移管ということを主張して、必ずしも先ほどの御主張をそのまま取り入れた決議ではなしに、民間の裁判所に移管すべきである、こういう内容を持っているのが参議院の決議だ、こういうふうに私確かめてきたわけであります。相手があることだから、これは外務大臣そう言われるだろうと思いますけれども、私は日本政府の姿勢だと思います。きっぱりした態度でさらに交渉に当たるべきだと思うのですが、この辺についていかがですか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま分析して非常に建設的な御意見を伺いまして、非常に参考になりましてありがたく考えるわけでございます。確かにただいま御指摘になりましたように、民政府裁判あるいは琉球政府裁判あるいは裁判権全体の日本への移管、いろいろこう内容があるわけでございますが、それらについてただいま御言及にもなりましたが、参議院の昨日の御決議もそういう点を十分御理解の上でなされた決議であると承知いたしておりますが、それらの点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私としてもコザ事件が起きてから連日駐日大使とも会談をしているようなわけでございます。日弁連の決議、御意見というようなものも十分に参考にして善処してまいりたいと考えております。ただ私は、やはり制度としては非常にむずかしい問題でございますから、その間に処して一言で申せば、沖繩県民方々の心を心として、この返還までの比較的短い期間でございますが、何とかよい知恵をしぼり、日米間で協力して一つの線を出したいものであると考え、同時に、またそういうことを言うかとおしかりを受けるかもしれませんけれども、もうすでに年も押し迫っておりますから、いよいよ七一年になりますれば、七一年の上半期の終わりころまでには返還協定を作成をして、両国の合意をするというところまでこぎつけたい。かなり具体的に進んでおりますので、その返還協定の上では、裁判権全体の問題が、先ほど申しましたように完全に本土移管されるわけであります。それらについても、あわせて真剣に検討いたしております時期でございますから、私はその返還協定の作成並びにその後における国会の審議を通しまして、沖繩本土復帰が七二年と申しましても、その中のすみやかな時期に実現が期し得るように、抜本的にこういう問題がクリアーされるように、その日の一日も早く来たるような努力をまたひたむきにやるべきときであると、かように私としても決心を新たにいたしているような次第でございます。
  21. 安井吉典

    安井委員 時間が過ぎましたので、戸叶さんに譲ります。
  22. 田中榮一

    田中委員長 戸叶里子君。
  23. 戸叶里子

    戸叶委員 同僚の議員がいろいろ御質問になりましたし、私どもに割り当てられた時間が十分しかありませんので、簡単にお伺いをいたしたいと思います。  沖繩方々は、たいへん長いこといろんな面で人権無視の政策をアメリカ施政権のもとに行なわれていて、最後に一人の婦人がひき殺され、しかもそのひき殺した人が無罪であったというような結果から、もうがまんできないで爆発的にコザ事件が起きたと私どもは解釈しておりますし、また本土の人はみんなそう考えていると思います。  そこで私は、あの婦人のひき殺し事件というような不当なことが起きたときに、政府としては当然、もしも高等弁務官がわけがわからないならアメリカ政府に向かってでも何でも、こういう不当な裁判というものはけしからぬとか、あるいはまた婦人に対する補償なりなんなりということを要求すべきではなかったか、国としてもそういうことはできたではないかというふうに考えますが、こういうことはできなかったものかどうか。そして、もしも国として、高等弁務官がいるんだからそういうことはできないんだというならば、その裁判に対する不当性というものに対して何らかの申し入れをするなり、あるいはまた補償なりなんなりをとってあげるというような態度というものが必要ではなかったか、こう考えますけれども、これは過ぎたことだからしかたがないというのでなくして、今後の問題にもからむことであり、そういう態度に対して、なぜおとりにならなかったか。それは日本自身としては裁判の成り行きをこれまでも見守っていましたということだけで片づけるべき問題ではないと思いますけれども、この点を外務大臣はどう御判断なさいますか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもまたまことにごもっともなお尋ねでございます。この糸満事件判決がああいうふうになりましたことは、政府としても非常に納得ができない、こういう見解を持ちましたので、直ちに東京におきましても、あるいは那覇の日本政府代表部を通しましても、米側に、日本人としての気持ちからいって割り切れない気持ちである、何とかこれに対して米側として対処する措置はないかということの話し合いもいたしたわけでございますが、その結果は思わしい結果がいまもって出ておりませんうちにこういう事件が発生いたしました。このことはまことに遺憾に存ずる次第であります。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 遺憾であるということだけでは私ども解決つかない問題ではないか、どうしても割り切れない問題だと思います。したがいまして、今後もぜひ慰謝料なりなんなりの問題で折衝を続けていっていただきたい、こう考えますけれども、この点に対する大臣の御決意のほどをまずお伺いしたい。  それから時間がないので続けてお伺いいたしますが、沖繩の人たちは法治国家の状態に置かれておらない。無法状態に置かれているとしか私どもは考えられない。そこで返還までの間にやはり人権を尊重されるようなそういう態度でもっているならばいてほしいということを外務大臣として具体的ないろいろな提案を出して、人権無視されないような形で施政をするならするようにということを申し入れていただきたいと思いますが、この点に対するお考えはいかがでございましょうか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 糸満事件の慰謝料を含めまして、アメリカ側に何らかの措置を求めておりますことは先ほど申しましたとおりで、これは結論はまだ出ておりませんことは遺憾でございますけれども、現在の私の心証といたしましては、米側におきましても何らかこれは日本の国民感情にこたえるところがなければならないという考え方が出てきつつあるやに私は考えておりますが、なおこれはただいま率直に申しまして結論が出ておりませんことは非常に私も遺憾に考えております。  それから第二の人権尊重の問題は、もちろんこれが大前提でございまして、今回のコザ事件が起こりましてからも、連日にわたって私自身が折衝いたしておりますのもこの人権尊重、これがすなわち沖繩県民感情に最も響くところでございますから、こういうことで折衝をずっと続けておりますこと、この点は御理解をいただきたいと思います。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 ぜひそういうことを強く申し入れていただきたい。  そこで先ほど、今回の事件で検挙された人は全部釈放された、しかし事態の推移によっては変わることもあり得るということを大臣がつけ足されました。私はそのことがちょっとひっかかったわけですけれども、今後において何らかの、アメリカランパート高等弁務官がいろいろと調査をして、そしてこの人たちはもう一度検挙しなければならないなんというようなことが出てくるかもしれない。そういうことがあり得るのかどうかと思って私は心配して聞いたのですが、そういう場合にも決して軍法会議なり民政府裁判には付されないのだということをはっきり私は日本政府としてくぎをさしておくべきではないか、こう考えますが、この点は大臣はどうお考えになるか、これが一点。  それから時間がないですから続けて伺いますが、先ごろなくなられました森長官が、かつて教育権だけでも沖繩から分離してというような話も出ましたけれども、これはそれよりももっと大きく施政権返還になったわけですが、そこで今回の事件を考えまして、多くの人たちが、裁判管轄権の問題で、日本側に移すべきだという意見が強いわけです。それで一年半後に返されるとしても、それまでの間にいわゆる分離ということではないですけれども、地位協定の十七条の裁判管轄権だけでも今日沖繩に適用させるようにという交渉を始められたらどうかと思いますが、この点についてどうお考えになるか。  それからもう一点は、大統領行政命令というものがあるために裁判権日本にないわけですが、この十節も改正するようという話し合いをぜひ私はこの際やって、そして裁判管轄権の問題を解決してほしい、こう考えますけれども、こういう点に対しての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一点ですが、率直に申しまして、そういうふうに私の報告をお聞き取られになったとするとたいへん残念でございまして、私は、こういう事件は捜査に付されているわけでありますから、こちらに施政権がある状態ではございませんし、また捜査の結果損害の状況、その他が、私がいまここでいままで集めました情報調査によって御報告すれば、こうと申し上げたわけでございますから、捜査の結果当局が調べたことで損害の件数、その他が違うことがございましょうということを留保して申し上げたわけでございまして、その後の措置について言及していま言ったことと別なことを言うかもしれぬということは全然ございません。  それからコザ事件の状況は、先ほど申しましたように、現に全員釈放された由でございます、と御報告申し上げておきました。これも私が権限をもって釈放したわけでも何でもございませんから、さように間接的に御報告申し上げた次第でございますが、事案の大部分は、琉球警察が現に捜査に当たっているものと私は承知いたしております。そしてこれが米軍系統のほうに行くということは、私は万々ないかと思います。しかし、御案内のように、最初の発端になったことは、加害者米軍人であったわけです。それからその後にいろいろ起こった事件については、沖繩の人がまた調べられる対象になるわけですから、これは当然琉球警察の捜査権が発動する、現にそうであると私は了解いたしております。しかし、あくまでも本土の警察権による捜査等ではございませんから、内容の事実関係等については、あるいは今後若干の訂正をして御報告をしなければならぬことがあろうと思いますが、それは事実関係だけでございます。  それから、あとの問題は、率直に申し上げますが、いま返還協定について、裁判権の問題をしさいに点検して、完全にこちらに移行するようにいろいろとやっておりますので、その中でやはりこういう問題も一環として取り上げるのが筋じゃないかと私は思います。具体的のコザ事件につきまして、今後とるべき措置につきましては、米側においても何か沖繩県民方々の要請にこたえ、そしてまた日本政府の累次の申し入れと申しますか、相談に対して、何らかのよい知恵が出ないものかということを米側でも考えておるということは、申し上げることができますが、的確に、これを廃止するとか廃止しないとかいうところまで、まだそこまでの段階ではございません。そういうことになりますと、率直に申しまして、事柄の性質上結論には相当の時間がかかると思います。一方、返還協定のほうもどんどん進んでおりますから、それらとにらみ合わせてひとつ御理解をいただきたいと存じます。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもの割り当てられた時間がなくなりましたからやめますけれども、先ほど安井委員も言われましたように、たとえば軍法会議に付されるなり、それから民政府裁判にかけられた場合に、不当なことをしてもほとんどみな無罪にされるということは、黙っていられないことだと思います。したがいまして、今後におきましても、人権無視されるということに対して、政府は強い姿勢をもって臨んでいただかなきゃいけない。そのためにはやはり裁判の問題というものが重要な問題でございますから、私はいま申し上げましたような提案で、何とかそれを、これから先まだ一年半あるんですから、施政権返還をもっと早めるなり、あるいはまた、いまのような具体的な行政協定の適用をするなり、あるいはまた大統領の行政命令を改正してもらうというような話を進めるなり、そういうふうなことをして問題の解決をしていただいて、うやむやにこの際していただきたくない、こういうことを再度要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  30. 田中榮一

  31. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 同僚委員から種々御質問がございましたので、重複を避けたいと思いますが、ただいま問題になりました、今回のコザ市の事件の背景となっております、いわゆる裁判の不公正の問題について、私も触れておきたいと思います。  大臣、重々御承知かと思いますが、民政府の布令によりまする第百四十四号の刑法並びに訴訟手続法典第二部第二章「安全に反する罪」という中で「合衆国軍隊要員である婦女を強姦し又は強姦する意志をもってこれに暴行を加える者は、死刑又は民政府裁判所の命ずる他の刑に処する。」、この種の罪をもし沖繩県民が犯しますと、これは死刑、こういうことになっておる。  また自動車事故交通事故等の問題は過失の範疇に入るかと思いますが、「過失により、合衆国軍隊要員に傷害を与える者は、断罪の上、一万円以下の罰金若しくは一年以下の懲役又はその両刑に処することができる。」、「過失により、合衆国軍隊要員を死に至らしめた者は、断罪の上、五万円以下の罰金若しくは五年以下の懲役又はその両刑に処することができる。」、こういうように規定されておるわけでございますが、これが事件が、立場が逆になりますと、ただいま種々同僚議員から御指摘がありましたように、いずれも無罪というような形をとっている。われわれの同胞の命がそういう虫けらのように扱われていることは黙っているわけにはいかない。はたして沖繩は法治国家なのか。法の前の平等ということはどうなっているのか。これは先ほど大臣も憂いをともにするという御答弁がございましたが、いま戸叶委員が申されましたように、なぜ日本政府として、正弐な外交権を行使して、こうした法の前の不平等、われわれの同胞の生命をたっとぶという観点から抗議ができなかったのか、私はこの点をまずお伺いしておきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、たとえば糸満事件に対しましても、政府としてはとるべき措置はとってまいっておるつもりでございます。それから今回のコザ事件につきましても、起こりましたその当日から対米折衝を始めて連日やっておりますことも、先ほど来詳しくお話しをいたしましたようなことであって、考え方としては、ただいまお示しいただいた考え方と政府の私どもも全く同じでございます。そういうことを基礎にいたしまして、一面において復帰が一日も早く実現できるように努力を新たにすると同時に、それまでの期間の中におきましても、米側の人道的な立場を呼び起こしながら、しかるべき納得のできるような方法を探求し、かつ実行するように、この上とも全力をあげてまいりたいと思っております。
  33. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 この事件が起きまして、ランパート発言が行なわれた後に、日本の総理はじめ政府見解として、沖繩返還交渉に支障がなければという危惧の色が若干出ておりましたけれども、私はむしろこういう事件が今後起きないためにも、日本政府としては一日も早く七二年沖繩返還を実現するという前向きな姿勢に立っていただきたい。そういう観点からしまして、ただいまも、返還協定の中にこの裁判権、警察権の問題が組み入れられて検討中である、その旨御答弁がございましたけれども、七二年返還前に、沖繩の人道上の立場からしても、生命を守る、人権を守るという意味で、裁判権の移譲ということは不可能なんでしょうか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、こういう事件にかんがみて、基本がきまっている話ですから、七二年のなるべくすみやかな時期に返還を実現をすることにますます努力を新たにしたい、この発想は私自身の考え方でもございます。支障を与えるどころか、むしろ積極的に急がなければならないというのが私の瞬間的に頭に映じた考え方でございまして、どうか、そういう点につきましては、政府としてそういう姿勢でありますことを御理解をいただきたいと思います。  そのくらいでございますから、第二段の点につきましても、気持ちは私は同じなんでありますが、ただ返還協定の中の制度といいますか、アメリカ憲法が施行され、またアメリカ憲法の中で規定されているところの軍事法廷の構成その他ということになりますので、抜本的な機構上の改革というものは、一方事務的なドラスチックな準備ということも考え合わせまして、本土と同様に完全な裁判権が移行されるということは、返還協定が実現されるとき、このとき考えなければならない。これはまあものごとの条理から申しましてそうだと思います。実行上それと同じ趣旨が行なわれるように、沖繩県の方々に御納得ができるような諸種の改善を進めてまいりたい、というのが私の考え方でございます。
  35. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いろいろ伺いたいんですけれども、時間がありませんのではしょりますけれども、わが党の同僚議員が、現在コザ市の事情を調査現地へ行っておりますけれども、コザ市長からの状況の聴取の中で、コザ市長が涙ながらに訴えておったことは、先ほど大臣報告の中にもございましたが、MPが空に撃った威嚇射撃二十発というお話がございましたけれども、これが最後のほうは水平に近い状態で撃たれておった、このようにコザ市長は、私はそのことを言明するためにどこでも参ります、このように申しておるそうでございます。また、この群衆の鎮圧のために米軍が催涙弾を使用したという御報告先ほど大臣からございましたが、聞くところによりますと、かなり強力な催涙弾であったといわれております。この辺はどのように認識されておりますでしょうか。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この辺が先ほど戸叶委員との質疑応答のときも申し上げましたところで、ただいままでに各方面から総合いたしました情報報告をもとにして御報告を——事実関係が大事でございますから、申し上げたわけでございますけれども、これはその後の捜査や調査によって、事実関係は御報告申し上げたことを訂正しなければならないかもしれません、ということを留保いたしたわけでございまして、政府としては、ただいまの時点で得たところの情報を率直に申し上げているわけでございますから、その後そういう事態が明確にされました場合には、日本側といたしましてももちろん御報告もいたしますし、またそれによって今後とるべき態度あるいは対米折衝ということにも、その事実をもとにしてこれは変更があり得ることは当然であると思います。
  37. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 本日は十二月二十四日でございますけれども、二十一日付の沖繩タイムスに、「二十日コザ騒動事件米軍憲兵隊はガス手榴弾を投げ、群集を鎮圧していたが、沖繩県原水協事務局長が調べた結果、当日使用されたガス手榴弾は最新型の戦闘用ガス弾=M二五A12=であることがわかった。事務局長によると、CSガス弾と呼ばれ、クロムベンジルマロノニトリル剤が充填されている。効力としてはセキや流涙をもよおし、直接浴びると皮膚が腐れていく。とくに水と混合して受けた場合の被害は大きいといわれる。」こういうことを報道しておりますが、大臣はこの記事をごらんになりましたでしょうか。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外務省といたしましても、沖繩の各種の新聞その他は、十分にできるだけすみやかに届いて読むようにいたしておりますから、沖繩の各報道がどういうふうにされているかということは承知いたしております。先ほど申し上げましたところは、いまの報道が政府といたしましてはその真偽について確報として申し上げるところに至っておりませんので、これについては何ともただいまのところ申し上げられません。
  39. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私もまだこの種のものがどの程度のものか、正確な認識は持ってないわけですが、もしここに報道されるように沖繩県民の鎮圧に戦闘用の催涙ガスが使われたということになれば、これはゆゆしき大事件だと思う。私はこれは日本国内、本土で警察当局がデモ鎮圧等に使用するものとは全く内容を異にするものだ、こういうふうに思っておりますが、今後こういった事件先ほど大臣も危慎されておりましたようにもし起きたときに、再びこういった催涙ガスが使用されるようなことになりますと、これはもう取り返しがつかないことになってしまう。こういうことをおそれるためにも、政府としてこの事実確認だけは厳重にしていただきたい。そしてもしそれがこの沖繩タイムスの報道どおり、沖繩県民の鎮圧のために戦闘用のものが使われておったという事実が判明したときには、どのような態度をおとりになるお気持ちでいらっしゃるか、お伺いしておきたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、しかるべき筋合いからの情報において確認をまだいたしておりませんから、何とも申し上げかねます。
  41. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 お伺いしておりますのは、もしもこの催涙ガスがこの沖繩タイムスの報道どおりのものであったとしたときに、大臣はどのような態度をおとりになるか、これを伺っておるわけです。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは申すまでもないことでございますけれども、さようなことが事実であるといたしましたならば、これは日本政府といたしましても、これに対しては重大な関心と重大な対策をとらなければならないと思います。
  43. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私は今回の事件を総括してながめますのに、先ほど同僚議員からいろいろ質問がございましたように、沖繩の二十五年間の苦悩、こういうものの端的なあらわれである、こういうふうに受け取りますが、毒ガス撤去問題にしましても、大臣は、米国本土の国務省との正式外交ルートによって百五十トンの移送は話がついている、こういう答弁をされておるわけであります。私も確かにそのとおりであると思いますが、しかし現地最高司令官であるランパートがこういった発言を軽々にすることについて私は非常に遺憾である。まだそれがただいま大臣の御報告の中にありましたように、今後自粛するというようなことで片づけられていいものかどうか。これは受け取り方によりましては沖繩県民に対する脅迫にも似るような、私はランパート発言ではなかったかと思うのです。先ほどの同僚議員の御質疑に対しても、大臣御答弁ございませんけれども、今回のコザ事件に関するランパート発言、これに対して大臣はどういう御見解を持っておられますか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申しましたように、伝えられたようなランパート発言というものは、それこそきわめて微妙な、またうっせきした沖繩県民感情というものに対する十分な理解が欠けていたものと、私も判断せざるを得ないわけでございます。その後、米側としてはこうこうこういうことの言明であったというような説明は、私も聞きましたけれども、もはや文言がこうであったとかあるいは通訳がどうであったとかということではなくて、基本的な取り上げ方の姿勢と態度である、これを十二分に反省してもらうことと、それから具体的に毒ガス撤去については、本国の指令、また日米間の打ち合わせどおりにこれが行なわれるということをまず確認できましたから、それだけでは満足ができませんで、前々から折衝しておりますように、すみやかでかつ安全、同時にこの移送についてはほんとうに国民をあげての悲願でございますから、十分納得できるということになりましたならば、その移送が円滑にすみやかに行なえることについて沖繩方々にも御協力をいただきたい、かように存じておる次第でございます。
  45. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 今回のこのような事件が二度と起こらないためにもランパートさんから軍紀粛正の旨、全隊員に伝達がなされた、そのような先ほどの御報告のように伺っておりますが、私はその伝達をする大将がこういう軽々な発言をすることからかんがみまして、その事実はあまり信用ができない。まことに残念でありますけれども、そういった点からして、これ以上御答弁求めませんが、どうかこういった事件が二度と起こらないような万全の策を講ずるように努力を続けていっていただきたい。このことを強く要望いたしておきます。  先ほども御答弁にございましたが、現在の沖繩にございます毒ガスの量は一万三千トン、今回の第一回の撤去計画百五十トンはほぼ百分の一の量でございます。今後、この第一回百五十トンが、安全ということを先ほどもおっしゃっておられましたけれども、いつジョンストン島に移す予定であるのか。そしてまた、その成功云々ではなくて、それが成功することを前提にこの安全輸送が行なわれるのだと思いますが、その後一万二千八百五十トンの毒ガス撤去については、どういうタイムテーブルになっておるのか。この辺がもし答弁いただけましたらお願いいたします。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はそこが私も知りたいところなのでございまして、そこが毒ガス問題についてのただいまの対米話し合いの焦点でございます。同時にいままで米側説明その他から想像されますところは、たとえば百五十トンは安全に移動したいということで、そして第一回のことでございますから、特に沖繩県民方々の御納得の上で行ないたいということで、相当アメリカ側としてもいろいろの点で配慮をし、計画をしたわけでございますが、日本側としてはなかなか納得できませんので、先般来御報告いたしておりますように、相当程度こちらの意見をいれた計画ができておりますが、この百五十トンは、したがってそう長くない時期に移送が行なわれると思っております。それからこれが最初の実行ができますれば、船の輸送力などからいたしますれば、一船で二、三千トンは積めるようですから、そうすれば、一万三千トンと申しましても、配船の都合とジョンストン島の格納の体制さえ整備されれば、これは当初伝えられましたように、一九七二年にずり込むというようなことがなくてやれるはずである、そこを大いに政府といたしましても突っ込んで、今後のタイムテーブルというものに確信を得たい、かように存じておる次第でございます。
  47. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いま大臣の答弁の中でジョンストン島の話が出てまいりましたけれどもこの百五十トン分のガスの貯蔵庫、これは日本政府がたびたび発言をしておりますように、いま新たに新設をして沖繩からの毒ガス撤去を準備しているのではなくて、前々からこの百五十トン分の貯蔵庫があるように私は聞いておりますが、この辺の真偽のほどはいかがでしょうか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としてアメリカ政府から確言をとっておりますことは、ジョンストン島にはもともとこういう施設がなかった。その点からいっても——百五十トンはいまの状況においてはもういつでも格納ができる。むしろその百五十トンという、お話のとおりでございまして、まことに全体からいえば微量でございますが、この微量にとどめたというのは、今度積み取りに参ります米国の船の積載可能量から申しましてもうんと少ない量なんでございますが、安全に撤去し、安全に移送するということに非常に重点に置いて、一番最初が大事であるからということで百五十トンということにした。これでいけば、あとは、先ほど申しましたように二、三千トンずつ運ぶことはその面からいえば可能である。そういうことになりますと、ジョンストン島のほうの格納の施設に、いま六十万ドルでございますか、経費を投じて鋭意作業しておるので、それの進行状況とにらみ合わせて二、三千トンずつは運べる。こういうところまでは、私はしろうとでございますけれども、そういう見通しがつくように思いますので、この点を中心にしてはっきり合後の移送計画というものに確信を得たい、こういう段階でございますから、ただいまのところ、どういうスケジュールでいつまでに完了できるというところまで申し上げるところまでまだ話が煮詰まっておりませんことを、私は率直に申し上げます。この点がいまの最大の政府としての関心事でございます。
  49. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間がありませんので最後の質問をしたいと思いますが、某——あえて名前を控えますが、米高官が、一九六三年に毒ガス沖繩に持ち込んだときは何ら問題にならなかった、しかし撤去計画を発表するとこういう大問題になる、こういったことをコメントしているということでございますが、私はこういう発言をすることは非常に問題があると思いますけれども、先ほど大臣の答弁の中で、安全撤去、この安全ということでございますが、この安全の認識のしかたは、毒ガスそのものが取り扱い、輸送に非常に危険なものであるので安全を期しておられるのか、よもや、この撤去について今度のコザ市のような、住民群衆的行動が起こるから、それを考慮しての安全というふうにとっておられるのか、最後に、先ほど相当数こちらの意見をいれた計画ができ上がっている、このような御答弁がございましたけれども、この、相当数こちらの意見を取り入れた計画の中では、こちらはこの毒ガス撤去の日程につきましてはどのような意見を向こうに申し入れているのか、この三点お伺いして質問を終わりたいと思います。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安全ということについては、要するに、なるべく人家の少ないような道を選んでやる、それから公開の原則で、すでに報道界の方方にもおおよその計画現場について御説明をした、移送実行につきましても日中に限って行なう、公開の原則でやる、それからコンボイの編成については、一々詳しく申し上げますと——御必要なら幾らでも御説明申し上げますけれども、コンボイの編成などについても具体的に車の配車計画、これなどももう具体的にでき上がっております。それから万々一に備えて中和剤を積み込んだりするようなことも、その中にははっきりしております。しかし先方の技術的な説明でいえば、大ぜい不必要に人がたかってきたり何かすると、いろいろの点で危険に通ずることもあろうかもしらぬ、万々一にもどういう事故も起こらないようにやりたい、こういう配慮をしておりますので、さらにそれらについては琉球警察側の警備でありますとか、あるいは日本本土専門家の参与でありますとか——これは技術的危険防止のほうでございますが、そういう点については当方の希望を、いまのところ相当程度にいれておるようですが、さらにそれらの点については十分に検討して、そして公開の原則で行なうわけでございますから、秘し隠すところなく、堂々とやってもらえば、そうすればそれでこちらも安心、納得できるのじゃなかろうか、とにかく安全であることが第一ですが、同時にすみやかに全部をということがまた必要でございますから、それにつきまして沖繩県民全体の方々に、たとえば必要ならば、まだわからないというところがあればこれをいろいろのメディアを使い、あるいは関係方々に詳細な文書を作成して説明書をお配りするというようなこと等についても相当程度日米間の打ち合わせは進行中でございます。
  51. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 その六三年の時点で、アットワンスではなかったかと思いますが、一夜明けたら沖繩に一万三千トンの毒ガスがあったわけです。今度持ち出すときに非常に危険である云々ということがいま前面に出ている。しかし私はやはりこれは意思の問題であり、姿勢の問題だと思うのです。ランパートさんやまたはマイヤー大使が言っているように、住民感情群衆の行動があるがゆえに撤去できないなどというような論理は全く節違いだ。毒ガス撤去計画の日程が具体的に発表になれば、沖繩県民は沿道に並んでちょうちん行列でもしてこの毒ガスを見送ることにやぶさかではないと思う。私もできれば見送りに行きたいと思っている一人でございますが、どうかそういった点も重々考慮いただきまして、一日も早くこの沖繩から毒ガス撤去されるように鋭意努力を重ねていただくことを心から要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  52. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  53. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は去る十六日の本委員会における質問の問題である米軍の大量削減の問題について御質問申し上げるつもりでございますが、その前に、ただいま同僚委員から御質問がありましたコザ問題について、二点だけ伺います。  第一は、今度の事件の背景はいろいろお話がありましたように、沖繩県民のうっせきした対米感情あらわれであり、それは必ずしも軍事裁判だけでない。そのことは、はしなくもランパート高等弁務官が不用意にも言及したように、毒ガス問題のごときは、アメリカ本国もしくは付近に来てもらっては困るのだ、こういうアメリカ人の感情があるのに、何ゆえにそんな危険なものを沖繩にいつまでも置いておかなければならないのか、こういったことのうっせきした感情が爆発し、また一面においては、復帰近きにありということがかえって焦燥感をかり立てた点もあると思うのです。そういう意味からいってランパート高等弁務官発言はきわめて不適当である。これは議論の余地ないと思う。ただ、それのあと始末がついてないのじゃないか。なるほど上級官庁と認められるところから、毒ガス撤去については本国計画どおりやるということを言われておりますが、少なくともランパート高等弁務官が公に、記者会見の中で、毒ガス問題に対する不幸なる言及をしている。その問題について、たとえば上原議員の質問に対しては通訳の誤りである。私はこれはどうも納得できない。もし通訳の誤りであるというならば、そのランパート高等弁務官の英語の記録があるはずですから、それを本委員会にお出し願いたい。それとどういうふうに通訳したのか。これはあるいはその部分だけでも英語でもいいからぜひ読み上げてもらいたい。読み上げてもらう意味は、その点だけを追及するのではなくて、やはりこういう問題ははっきりとみずから取り消す、その部分をリトラクトする、こういう措置が必要なのではないか、私はかように思いますので、まずその一点についてお答えを願います。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ランパート高等弁務官発言は、英文の原文がございますから、お配りいたすことはやぶさかでございません。
  55. 曾禰益

    ○曽祢委員 時間がございませんので、あとで配ってください。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それから、先ほども私言及いたしましたけれども、これについて、アメリカ政府としての説明とか、あるいはランパート自身の上原委員に対する、これは新聞の報道で見たわけですが、そういうことよりも、政府といたしましては、毒ガス移送に対しての方針、やり方に全然影響を与えないという本国政府の言明、これは本国政府を代表して駐日大使が明らかにいたしておりますし、それからランパート高等弁務官のその後の行動等につきまして、もはや、そのことにとやかくいたしますよりも、実行の問題である。これは私は間違っているかもしれませんが、私はさように処理してまいりましたし、今後もそうしてまいりたいと思います。
  57. 曾禰益

    ○曽祢委員 その点については私は意見を異にします。やはり向こうから自発的に取り消すのを至当と思いまして、そのことが実現することを強く要望しておきます。  第二点は、これも皆さんの触れられた問題ですけれども、アメリカ側がいま軍事裁判から民政府裁判あるいは日本側に移すということについての一つの反対の理由に、憲法上の権利云々というようなことを言っているようでありますけれども、確かに外務大臣の言われるように沖繩返還協定の中には当然にこの裁判権の問題が含まれて、おそらく地位協定第十七条のような内容のあれができるのだろうと思うのです。しかし考えてみると、はたして憲法上の制約があるから部分的にも返還ができないのかということになると、やはりそこにもう一つ法律論の問題があるのじゃないか。たとえば地位協定そのものは、向こうから見ると、要するに行政的なアグリーメントであると思うのです。地位協定は非常に重要です。六〇年の改定安保に伴う地位協定というものは非常に重要な、裁判権の不合理をかなり訂正していますね。しかしその地位協定そのものは米国議会の、上院の協賛といいますか、批准を経たわけじゃないと思うのです。そういう点からいっても、もし日米が合意すれば、沖繩というところにおけるアメリカ軍人裁判権に関しても——たとえば日本との地位協定にあるように、向こうの軍令に反したような純粋の向こう側の問題なら、これはいまでもアメリカ軍に裁判権が残っておる。それは差しつかえない。しかし被害者日本人である通常の犯罪については、これは私は地位協定がアドミニストラティブ・アグリーメントならできないことはないと思う。憲法上できないという議論は、ちょっと承服しかねるのですが、法律論としていかがお考えですか。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はそれらの点につきましては、これは率直に申しますけれども、日本政府見解というものについては、従来述べてまいりましたような見解をただいまのところとっております。しかし日本でも、たとえば日弁連のような権威のあるところで、これらに対するまた別の一つの解釈もとっておられますので、通例の場合ではそういうことをやるのもいかがかと思いますけれども、こうした各種の日本側の意見というものについても米側にも前向きに検討してほしいというようなことで、いま返還問題につきましては、交渉の段階というよりは、もうすでに基本がきまっておるわけでございますから、共通の目的、すなわち沖繩県民方々納得の上に立って円満に返還が実現する、これがわれわれの共通の目的でございますから、折衝ということよりは一緒に相談をし合ってくれという形の意味におきまして、日弁連その他のいろいろな意見をアメリカ側にもひとつ前向きに検討してほしいということは、やってあるわけでございます。そういう経過がございますことを率直に申し上げておきます。
  59. 曾禰益

    ○曽祢委員 先ほど来のお話といままでの御答弁でお気持ちはわかるのですけれども、やはり返還協定の中にあるからというんじゃ、私は実際政治的には済まないと思うのです。ですからいま言われましたように、私の意見も含めて、日弁連ほど権威があるかどうか知りませんけれども、やはり憲法上の障害ということはおかしいと思うのです。したがって地位協定十七条のそれに触れたような裁判権移管も不可能ではないように考えますが、それをしも困難な場合には、ほかの委員も言われておるように、あるいは民政府移管の問題もありましょうし、いろいろなことを考えて、とにかく一番大切なことは返還協定の批准、調印、実施まで待っていられないという緊急な事態に対する、いわゆる過渡的な問題の解決をぜひ進めていただきたいと思います。  それから時間がないのでさっそく駐留軍撤退の問題に触れますけれども、私は今回の日米安保協議委員会決定、これはアメリカのニクソンドクトリンの実施の段階に入ったものだと思うのですけれども、いわゆる在日戦闘部隊がほとんどいなくなる。少なくとも本土に関しては岩国の部隊以外はほとんど実戦部隊はいなくなる。沖繩の問題もあとに残りますけれども、しかしこういう基本的な方向は私は健全な方向だと思うのです。われわれがかねて主張しているような一種の常時駐留なき、基地がほとんどなくなるような安全保障が、少なくとも条約上じゃないけれども、制度、運営上そっちに行くということは、日米間のトラブルに対する一つの緩和剤になることは間違いない。そういう意味では、基本的な方向としては、私はこれを大いに歓迎するものでございます。ところが、今度の大量の米軍の撤収とこれに伴う大量の日本基地従業員のいわゆる首切り、解雇が行なわれるに比べてみると、といいますか、その基地日本に対する返し方が非常にけちけちしている。結局、アメリカ軍がそのまま留保しているというのが非常に多いのですね。それでは駐留なき安保、あるいは有事来援といってもいいですけれども、そういう形にほど遠いと思うのです。それは私はいろいろの理由があると思いますけれども、外務大臣にぜひお考え願わなければならないと思うのは、やはり外務省が言っておられるように、いまの地位協定の第二条の(a)ですか(b)ですか、とにかく日本の現在の地位協定の考えからいいますと、日本返還した以上、ごく一時米軍が使うということの余地はあるけれども、そういう事態は望ましくないけれども、有事に使うというようなことについて、あるいは継続的に使うというようなことは、いまの地位協定がほとんど予見してない事態だと思いますね。したがって、私はそういう事態に応じてやはり日本側がなるべく飛行場等を移管してもらい——特に飛行場の場合だと思うのです——その中の不要のものは民間に返す。どうしても日本の自衛隊が必要なものについては、そしてアメリカ軍が将来有事来援というものについては、これはいさぎよく日本側移管させるためには、どうしてもやはり地位協定のその点を少し直す必要がある。ところがどうもその問題になりますと、外務大臣及び政府一般のお考えかもしれませんが、沖繩返還は現在の安保条約及び地位協定をそのまま適用するのだ、これが沖繩本土並み返還の根幹である、というこのお考えは、原則論としては正しいと思うのです。しかしあまりそっちにとらわれているとやはりおかしなことになるので、少しでも本土から早く米軍が常時駐留の形をやめたほうがいいのに、それを何か米軍がいまの行政協定——地位協定関係では十分に充足されないかもしれないから、一応念のために欲ばって米軍が留保しておこう、そういう状態が続くのは、決して日本のためにならないし、日米両国のためにもならぬ。だからそういうことの必要があれば、沖繩に関してだけ特例をつくるのじゃないのですから、全体については新たなニクソンドクトリンといいますか、日米両国の安全保障の具体的なあり方が変わってくるなら、それに応じて有事来援ということも過渡的には必要だと思います。ただその場合、日本からの外に対して出撃については、日本の拒否権というものが厳としてなければなりませんけれども、有事来援の形によって、大部分の基地をなくしてしまう。常時駐留がなくなることは私はいいことだと思うので、そのいいことのために必要なら、地位協定の改定くらい考えてもいいんじゃないかと思うのです。どうも私は外務大臣はその点に関する考え方がかた過ぎるという感じがするのですが、いかがですか。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは全体として考えてみますと、二十一日の日米安保協議委員会できまりました線は、私も曽祢委員と同じように基本的には歓迎すべきことである。これは一昨年末五十あるいは五十以上の基地返還、共同使用等がきまりましたのに次いで相当大きなできごとである、歓迎すべきことであると考えておりますが、ただ問題は駐留軍労務者の問題これはまた非常に国内的には大切な問題でございますから、関係各省庁の積極的な御協力を得て、これらの方々の再就職あるいはその他の点について十分の配慮をやってまいりたいと考えております。  それからもう一つは、率直に申しまして受け入れ体制の問題でございまして、日本側として受け入れ体制を急速に整備するのにちょっと時間がかかるというようなこともございましたので、欲を申しますと、もう少しできることもあるのではないか、これはむしろ国内体制のほうの問題、受け入れ体制のほうの問題であると思います。  そこで地位協定の問題ですが、これは私も実は自分でも少しかたくなかと思っておりますけれども、お話しのような将来の問題としては地位協定の——全体の状況が変わるのに従って、好ましい姿になりつつあるのですから、地位協定もそれに応ずるように改善すべきものである。この点は私も考えておりますが、ただ実際問題として、沖繩返還作業は実はたいへんなことでございまして、そして同時に基本線として、何らの変更なしということにこだわるわけではございませんが、かつてわりあい最近の他の委員会におきましても、地位協定の問題が取り上げられますと、私は改善するほうのつもりなのでありますが、沖繩返還を前にして、地位協定を改悪して、沖繩に改悪したものを適用するがための地位協定の改悪であろうというふうな誤解がともすると起こりかねない。また沖繩方々の、返還を前にしての今回の事件にもあらわれましたようないろいろのことを配慮いたしますと、沖繩の問題がきれいに片づきましてからあと、この地位協定の問題は、沖繩を含めて、日本のコンセンサスといいますか理解とか納得の上に改善をすることが、政治的にも妥当ではないか、こういう判断を私自身持っているわけでございます。地位協定の将来考えられなければならない改善案については、いろいろな検討はいたしております。しかしその時期はしばらくあとにお願いをしたい、こういう考え方はいまもって変わりませんので、これは御意見が違って恐縮に存じますけれども、率直に申しましてそういう心境でありますことを申し上げておきます。
  61. 曾禰益

    ○曽祢委員 その点は、私はぜひお考え直し願いたいという希望を申しておきます。アメリカ軍の撤退のテンポは非常に早いのですから、やっぱり早くあれしないといけないという気がしますので。  きょうは、ほんとうはこの国内体制の受け入れの問題について、外務大臣と防衛庁長官あるいは少なくとも防衛施設庁長官に来てもらって、両方に御質問申し上げ、両方から御答弁いただくつもりでおったのですけれども、全く時間がないので、私からさっと希望を申し上げますから、外務大臣からだけでけっこうです、あとで場合によったら施設庁あるいは防衛庁との話を続けてもらいと思いますので、簡単に外務大臣、御答弁願いたいと思います。  大量解雇の問題でございますけれども、御承知のようにアメリカ側が六月一ぱいにやろうという、予算主義にあまりとらわれて、最初一千数百名の第一回の解雇分については、すでに約束している九十日の予告期間を満たない者を切るということがあるのです。これはどうも不当であるし、ことに四月一日をもって待遇改善をされるのですから、非常にその境に三月中に首を切られる人は気の毒だ。これはぜひアメリカとも話して、四日一日の新制度によって、この九十日の満了とともにベターな退職の特別給付金の利益を受けられるようにしていただきたい、これが第一点であります。  第二点は、そういう意味で、やはり今度の事件から考えまして、特に横須賀のごときはほとんど全員が解雇されるわけですから、解雇手当の特別増額をぜひ政府において考えてほしい。  第三点は、駐留軍労働者は、先任古参権によりまして、首を切られるときは若いほうから切られていくもので、残っている人は非常にお年寄りなんですね。全体の平均が四十五歳くらいじゃないかと思うのですけれども、横須賀あたりでは四十八歳ないしは九歳。こういう人が民間に入って再雇用するということは、これは非常に至難なわざですね。あまりペイが高過ぎるからといってきらわれるという、こういうふうな事態があるわけです。したがって、この人たちの再雇用の障害を考えたら、何とかそこにやはり温情はぜひひとつやっていただきたい。つまり、再教育あるいは雇う人にそのための補給金をくれてやるくらいのことをやってもらわないと、駐留軍に二十何年働いた人にとても報いることができない。古い人ばかりなんですから。  それから最後に、その関連にもなりますけれども、先般も私が特に申し上げました横須賀の基地内の船舶修理施設、これは少なくとも日本的な規模における非常に新しい造船施設にはなりませんけれども、少し古いですけれども修理施設としては優秀な施設なんですね。これをそっくりそのままに残して、アメリカ軍の寄港等に対しての修理もやってやるし、日本の海上自衛隊の修理、あるいはさらに民需で——東京湾内にこれだけの修理施設は、新造施設は別として、ないといわれるくらい、これを活用して、いわゆるアメリカ軍需、日本の自衛隊及び民需、いずれに対してもこの修理施設を生かしていく、こういう一つの構想をぜひ政府において、横須賀市とかあるいは神奈川県だけでなくて、中央政府の段階でこれをお考え願いたい。ことにその問題は、かりに民需でやるといたしましても、この千五百名の優秀な修理工の方々は、いま申し上げましたみんな五十何歳という方ばかりなんですね。この方を使いながら、その方が円満に自然に退職されるまでは従来の給与条件で働けるように、そういった温情のあることをぜひお考え願わなければならぬ。そのためには、場合によったらいわゆる国有民営という形がいいのか、あるいは政府の補給金がいいのか、特殊法人がいいのか、相当な修理施設の活用を継続的にやるという意味においてぜひこの点をお考え願いたい。  以上四点にわたって、要望的なことですが、伺うことができれば、大まかな態度でも御答弁を願いたいと思います。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私だけで十分御答弁できないところもあろうかと思いますが、まず第一の解雇者の解雇予告期間等の問題でございます。この点は政府としても非常に苦慮いたしまして、米側とも安保協議会開催を急いだりあるいはその他いろいろの手を尽くして折衝いたしましたわけでございますが、ただいまのところ解雇見込みが約一万人にのぼるわけでございますが、そのうちの大部分は九十日が確保されますが、一割ちょっとのところがちょっとこれを下回るかもしれないという状態で、たいへん遺憾に思っているわけでございます。  それから特別給付金については、これは防衛庁長官も他の委員会等で申し上げたかと思いますが、四月一日から実施されるような制度、と申しますか準備をいたしておりまして、これがある程度過去にさかのぼって遡及できるかどうかというようなことをいま政府部内で検討中でございます。  それから再教育等の点につきましても、これは実は十八日でしたかにこの関係の閣僚協議会をいたしまして、主として解雇者に対する対策、それから先ほどもちょっと申しましたが日本側の受け入れ対策について関係閣僚の間で協議をいたしまして、そして具体的に横須賀のお尋ねがございましたが、これは考え方は大体関係閣僚もいま曽祢委員の御指摘のような考え方でございます。といいますのは、修理施設としては相当りっぱなものであって、これは将来ともに民需も含めて日本側で活用できる、あるいは活用しなければならないものである。これの受け入れ体制として、ただいまも御指摘がございましたが、どういう組織が適当であろうか、あるいは公社、公団的な考え方もあるようでございますが、これらの点については運輸省と防衛庁との間でとっくり、しかし至急に対策を考える。そして千五百人の熟練、老練な従事員をできるだけそのまま働いていただくことを基本に考えていきたいという、大まかでございますが基本的考え方は、いまも拝聴いたしましたが、大体政府も同じような考え方でございます。  そういうわけでございますから、さらに建設的ないろいろの御要望や御意見を承ることができれば政府としても歓迎するところでございますから、よろしくお願いいたしたいと思います。
  63. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  64. 田中榮一

    田中委員長 東中光雄君。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 田中榮一

    田中委員長 速記を初めて。
  66. 東中光雄

    東中委員 沖繩対策庁の人に聞いておきたいのですが、糸満事件についてですが、私、実はきのう現場へ行って、この糸満警察がつくった一件捜査記録、白人兵による業務上過失致死被疑事件の記録という全記録を見てきました。現場を見てきたわけですが、この事件が簡単な轢殺事件でなくて、カーブで追い越しをやって、そして道ばたに置いてある自動車に当たって、それから歩道を歩いている人をはねて、次いで電柱、鉄製の街灯柱、これを倒して、そしてさらに進んで次の電柱に当たって、被害者を一メートル八十飛ばした、そして即死させた、こういう状態ですが、現場での警察官の指示を見ても、これはだれが考えたって歩道上にスピード違反で飛び込んできてはねている。私も弁護士を二十年やっていますけれども、これを無罪だというのは、これはどうしたって理解できない。こういう沖繩県人を虫けらにしたような扱いをしたこの事件に対して、対策庁として、あるいは日本の外務省として、あの無罪判決に対して抗議をしたのか、その事実関係についてもどう考えているのか、ひとつはっきりしていただきたい。
  67. 田辺博通

    ○田辺説明員 お答え申し上げます。  先般の糸満事件は、おっしゃるとおり非常に遺憾な事件でございまして、その詳細の事実関係は、新聞報道等によってわれわれが知っておるわけでございますが、そういった報道で見る限りは、私個人としてはきわめて不注意な運転の結果起こった事故ではないかと想像いたしますけれども、軍法会議のもとにおける軍事法廷では、御承知のとおり無罪という判決が下っております。しかしながら、これは現在の施政権下にあります裁判制度のもとでは、軍事法廷の規定の構成によりまして、正式な裁判手続によって行なわれたものでございますので、対策庁として、その結果に対して正式にどうこうというような手続はとっておりません。
  68. 東中光雄

    東中委員 正式な手続によってやられたから黒が——明白な黒ですね。しかも琉球政府のつくっている一件記録のこの写真をごらんなさい、ひどいものです。こういうひどい事件の歴然とした黒の事件が白にされている。それも正式の手続だからやむを得ないんだということで一体済まされるのかどうか。裁判は事実上公開されていない。無罪にした理由が明らかにされていない。しかも、これが卒然としていま起こっただけではなくて、去年の二月二十一日の那覇市西本町で起こった我部さんの婦女暴行刺傷事件、これも証人が出てこなかったからといって、それが理由で無罪判決がされているんですね。被害者は出ていっているのです。運転手が出てこなかったからといって無罪判決をしている。これら一連の軍事裁判のやり方というのを見てみますと、これは、もはや裁判と言うに値しない、こう言わざるを得ぬのです。むしろごまかしている。一種のトリックにしかすぎないとさえ考えられる。  こういう点で、この沖繩県民の人命を無視した裁判のやり方、そういう制度自体について外務省としていままで交渉され、あるいは抗議をされたことがあるかどうか。この点、外務次官どうですか。
  69. 竹内黎一

    ○竹内説明員 この点につきましては、先ほど愛知大臣からも答弁した次第でございますが、捜査権並びに裁判権の適切な運用については、従来も米側に対して申し入れをしておりましたし、特に最近愛知・マイヤー会談が二度にわたってございました際にも、大臣から微妙かつうっせきした沖繩県民感情を十分配慮してもらいたいということは申し入れている次第でございます。
  70. 東中光雄

    東中委員 軍事裁判というのは、アメリカ軍の軍紀を保持していくということ、そこを目的にしているわけです。沖繩県民の命や財産、これを守る、こういう観点での裁判ではないわけです。軍事裁判の性格からいって当然そうなんです。ですから、単なる捜査協力というふうなことで問題の解決がつかない。この十一月につくられたあの協定を見ましても、これは、こうした糸満事件での無罪判決あるいは婦女暴行刺傷事件での無罪判決、こういう犯人を野放しにしていく、こういう実際上のあり方、これを解決する何の足しにもならないわけです。そういう点では、こういう無罪判決がされているということに対して抗議したことがあるのかないのか、その点をまず第一にお聞きしたい。  それと同時に、この制度自体、アメリカの軍事法廷でやっているということ自体が非常に問題なんで、琉球裁判所へ移管するということについての要求をやるのかやらないのか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  71. 竹内黎一

    ○竹内説明員 御質問の前段の部分につきましては、ただいまも御答弁申し上げたように、米側に十分な配慮を求めておるわけでございます。  それから後段の部分につきましては、何か前向きに改善の余地があるか、今後協議を続けようということを、愛知外務大臣のほうからこれまた在日大使にも申し入れをしております。
  72. 東中光雄

    東中委員 沖繩における米軍人、軍属の凶悪犯というのはずっとふえているわけです。私、昨日、琉球警察本部で調べてきたのですが、たとえば去年、米軍人、軍属による凶悪犯罪は百二十三件、検挙件数は四十二件、検挙率は三四・一%です。ところがことしは、十月までの数字しかありませんが、十月ですでに昨年一年間と同じ程度、百二十一件起こっている。そして検挙件数は二十四件です。二〇%を切っているのです。協力体制を強めているんだ、こう言っていますが、米軍人、軍属による凶悪犯罪は検挙率はもう二〇%を切って一九・八%、一そうひどくなっている。しかも裁判はそういう形で、無罪で犯人を逃がしてしまう。犯人をかばってしまう。こういう状態で一そう起こってきているわけです。だから前向きでと言われるけれども、これは明らかに一そうひどくなってきているわけですから、そういう点で裁判権の琉球裁判所への移管、これは先ほど来言われておりますけれども、日弁連のあの意見でも、現在の状態のままで法理論上はできるんだ、こう言っているわけです。できることをアメリカがやらないだけなんです。そして現実の事態は一そう悪くなっている。前向きにと言うだけではなくて、昨日参議院の決議もありましたようですけれども、民への移管について外務省、努力されるかどうか、その点重ねて聞いておきたいと思います。
  73. 竹内黎一

    ○竹内説明員 日弁連の御意見は私ども有力な参考意見として承知しておる次第でございます。その他につきましては、先ほど申し上げたことと同じであります。
  74. 東中光雄

    東中委員 先ほどと同じだとおっしゃったのですが、結局協力ということを言われているだけで、移管の問題についてはどうなんだ。もう一回、現にこういうふうにふえてきているのですから、その点重ねてはっきりしていただきたい。
  75. 竹内黎一

    ○竹内説明員 今日の裁判に対する沖繩県民感情は、私ども十分理解できるわけでございます。その意味におきまして、先ほど大臣も言われたように、米側に、沖繩県民納得するような説明について、もっと十分配慮してほしいということをすでに申し入れておりますが、さらに裁判権の運用につきましても前向きに改善の余地があるかどうか、私ども真剣かつ慎重に検討したいと思います。
  76. 東中光雄

    東中委員 沖繩県民の意見、感情を尊重して、こういうことでございますけれども、これは当然ですが、事実は、先ほど申し上げたように、明白な黒が白にされている、こういう具体的な正義に反することが行なわれておるんだ、そこから出発をしてもらわなければいかぬのじゃないか、こう思うわけであります。  それで、今度のコザ事件についてお聞きしておきたいのですが、この事件が起こると同時に、佐藤総理が、大事な時期だから米側に悪い印象を与えても困る、こういうことを言われたと伝えられていますが、保利官房長官も記者会見で、米側にもあやまちがあろうし、こちらにもあやまちがあろう、こういうふうに言われた。私ここではっきりしていただきたいのは、今回の事件について、これが起こった原因米軍側にあると思っていらっしゃるのか、あるいは沖繩県民の側にあると思っていらっしゃるのか、外務省としてどっちを加害者だと思っていらっしゃるのか、この見解を示していただきたいと思います。
  77. 竹内黎一

    ○竹内説明員 先ほど大臣から、今日まで私どもが知り得た情報に基づいての事件の経過は御説明申し上げたとおりでございますが、捜査はなお進行中でございまして、どちらが加害者かという先生のお尋ねでございますが、その点の答弁は、なお捜査中でもありますので保留させていただきます。
  78. 東中光雄

    東中委員 この事件の個々の捜査の進展のことについて聞いているのではなくて、政府態度アメリカに対する気がねというのが先に出てきているんではないか。この事件の起こった背景、根本的な原因、これがアメリカの二十五年間にわたる軍事的な専制的な、権力的な支配、そこからきているんだ、それに対する沖繩県民の行動なんだということをつかんでいらっしゃるのかどうか。この事件の本質をなおざりにした態度というのは、私は許せないと思うわけでございます。だから、この事件の本質を明らかにするその内容を、いま外務省はどう考えてアメリカに接しておられるのか、その点を重ねて聞いておきたいと思います。
  79. 竹内黎一

    ○竹内説明員 今回の事件の発生の根底と申しますか、ここにはやはり戦後二十五年にわたります沖繩住民方々が経験してきた種々の苦難、特に最近の糸満事件のああいう自動車事故に対する判決に対する非常な不満といったものが影響しておることは、私どもも十分承知しております。
  80. 東中光雄

    東中委員 ランパート声明についてですが、あれは現地でははっきりと報復的な脅迫だという形で受け取っている。コザの市民の皆さんに私は無差別に入っていろいろ聞いてみましたが、こういう意見であります。高等弁務官が報復的な脅迫的な発言をしているのですから、米兵による報復が起こってくるんじゃないかという心配さえしておられる人がいます。こういうランパート発言に対して、政府ランパート不信任、更迭、これを米政府に要求される考えがあるかないか、その点どうでしょう。
  81. 竹内黎一

    ○竹内説明員 今回のランパート高等弁務官のいわゆる発言が、特に沖繩県民の心情に対する十二分の配慮と理解に欠けておったのではないかという点は、先ほど愛知大臣からも答弁申し上げたとおりでございます。しかし、私どものほうからランパート高等弁務官の地位についてとやかく申し上げるべき筋合いではないと思います。
  82. 東中光雄

    東中委員 政府は今日まで、米兵による無数の暴力行為、不当な裁判結果等に対して何一つ抗議もされてこなかったし、抗議をしようともされなかったし、アメリカの占領者意識むき出しの蛮行を放置されてきた、こう言わざるを得ぬわけですが、その意味で政府沖繩県民に対する加害者の立場に立ってしまう。私は現地で聞きましたが、ある六十歳のおばあさんがこう言いました。日本政府も、いいくちまあいしないでほしい。方言ですけれども、言っている趣旨は、いいかげんなことばかりしないでほしい、こういう声です。コザのあの事件のまん前の商店の人ですが、そう言っています。こういう状況で、この問題を解決していく根本的な方向は、結局は、日本の領土沖繩に対するアメリカの不法占領、サンフランシスコ条約三条に基づく施政権行使そのものを即時やめさせること、そして軍事基地を完全になくしていくこと、これが一番基本でありますけれども、いまでもすぐにできる捜査権、裁判権を全面的に琉球政府移管させること、この方法をとる以外に事件を繰り返させない保証はないと思います。この事件を再び繰り返さないようにしようということは言われるわけですが、政府としては、それをやっていく保証は一体何なのか、最後にお聞きしておきたいと思います。
  83. 竹内黎一

    ○竹内説明員 この点については、午前中来ずっと愛知大臣が答弁申し上げたこと全体を総合していただくと御理解いただけると思いますが、ともかく私どもといたしましては、沖繩県民の立場に立ち、その心情をよく米側理解してもらうということで、再びこの種の事件の起こるようなことはぜひとも避けたいと思っております。
  84. 東中光雄

    東中委員 そのために具体的にどういう保証をやっていくか。再発をさせない保証は一体何か。具体的にどういうことをやるのかということについては、単なる努力で、ないということになるのですか。最後にそれを明らかにしていただきたい。
  85. 竹内黎一

    ○竹内説明員 まず米側沖繩県民の心情をよく理解してもらうということが何よりも基本である、こう私ども理解するわけでございます。そういう立場からいまお答え申し上げたわけでございます。また具体的な問題につきましても、前向きな、改善の余地があるものであれば、米側との協議を通じてそういう前進もはかってまいりたいと思います。  特に先ほど愛知大臣からも答弁申し上げましたが、毒ガス撤去の問題につきましては、ランパート声明によっていささかも影響をされるものでないのでありまして、私どもは、むしろ事実をもって早く県民の方に納得していただくよう、さらに努力をいたしたいと思います。
  86. 東中光雄

    東中委員 時間がございませんから、終わります。
  87. 田中榮一

    田中委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会