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1970-12-04 第64回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十五年十一月二十四日)( 火曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 の通りである。    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君       池田正之輔君    石井  一君       宇都宮徳馬君    大平 正芳君       木村武千代君    鯨岡 兵輔君       小坂徳三郎君    中山 正暉君       野田 武夫君    福田 篤泰君       藤波 孝生君    村田敬次郎君       山口 敏夫君    豊永  光君       加藤 清二君    堂森 芳夫君       松本 七郎君    山本 幸一君       中川 嘉美君    樋上 新一君       松本 善明君 ————————————————————— 昭和四十五年十二月四日(金曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君       石井  一君    西銘 順治君       野田 武夫君    福田 篤泰君       藤波 孝生君    村田敬次郎君       上原 康助君    堂森 芳夫君       松本 七郎君    山本 幸一君       中川 嘉美君    西中  清君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長心得    大河原良雄君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 十一月二十四日  辞任         補欠選任   木村武千代君     西銘 順治君   樋上 新一君     西中  清君 同月二十八日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     中島 茂喜君 十二月四日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     加藤 清二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中榮一

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 田中榮一

    田中委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘順治君。
  5. 西銘順治

    西銘委員 初めに、本委員会の劈頭におきまして、冒頭に発言の機会を与えてくださいましたことにつきまして、各党並びに各議員方々に対しまして、衷心より御礼を申し上げるものであります。  私たち沖繩県民は、今次大戦によりまして本土から切り離されまして、二十五年間米国統治下に置かれてまいりました。その間、百万県民復帰についての悲願がいやが上にも盛り上がりまして、ここに七二年核抜き本土並み機会を得たのであります。  特にこのたびの沖繩施政権返還につきまして、佐藤総理をはじめ、特に愛知外務大臣におかれましては、百万県民の心を心とされまして、七二年返還までこぎつけられたなみなみならぬ御労苦に対しまして、百万県民を代表いたしまして、衷心より敬意を表するとともに、感謝を申し上げる次第であります。  次に、順を追うて外務大臣質問をしたいと思っております。  このたびの佐藤ニクソン共同声明内容は、その骨子をなすものは七二年返還核抜き返還本土並み返還だと私たちは受け取っておるのであります。ところが、この七二年核抜き本土並み返還につきましては、当局の誠意ある答弁にもかかわらず、国民の間に非常な疑惑を生じておるのであります。この点についてあらためて大臣の明確な御答弁をお願いしたいのであります。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外務委員会におきまして、西銘委員沖繩からお迎えいたしまして、最初の御答弁に立ちますことは、私もまことに感慨無量の感じがいたす次第でございます。ただいままたたいへんありがたいおことばをいただきまして、感謝申し上げる次第でございます。  御質問の点につきましては、ただいまもお触れになりましたように、政府としては機会あるごとに誠意を尽くして昨年十一月の佐藤ニクソン会談による共同声明内容あるいはその意味するところを御説明いたしてまいったわけでございますけれども、あらためて沖繩県民を代表されるお立場で御質問でございますから、お答えを申し上げたいと思いますけれども、この沖繩返還の問題につきましては、共同声明においては、その根幹となっておりますところは、十分に共同声明の上に明確にされておると思います。  一つは七二年中に返還ということであり、一つ本土並みということであり、一つ核抜きということでございまして、七二年中の返還ということについては、共同声明の上で、それぞれ立法府に対する手続ということが条件になっておりますけれども、これは特に日本側におきましては、返還協定が締結された場合、これを国会承認を求めるということは当然のことでございますから、その当然のことをここに書いたわけでございます。  あとでいろいろ御質疑もあろうと思いますけれども、ただいまのところといたしましては、返還協定に関する日米間の協議も順調に進んでおりまするから、七二年のなるべく早い時期に返還の効力が発生して返還が実現されるようにということを念頭に置きまして、逆算いたしまして、来年の夏ごろまでには返還協定の調印を終わり、そして来年後半におきましては、国会の御審議をいただくということを心組んで、その日程と申しますかを描きながら現在返還協定作成努力を傾倒しているわけでございますが、ぜひそういうふうな日取り政府としての最終的な努力を詰めてまいりたいと思っておりますから、七二年返還ということには何らの疑いも持っておりません。米側におきましても、あらゆる機会におきましてそのことは確認いたしております。  それから、本土並みということにつきましては、憲法をはじめ本土の一切の法令、それから本土として締結いたしておりました一切の外国に対する条約、その関連の取りきめ、特に重大な意味を持ちますのは日米安保条約でありますけれども、この関連の取りきめを含めまして、一切何らの変更なしに適用されるということが、共同声明におきましても合意されているわけでございますから、これがいわゆる本土並みということの実態をなすものであります。この関係につきましては、アメリカとの間の交渉においては、日米安保条約はもとよりこれに関連する一切の取りきめが何らの変更なしに適用されるということが合意されておりますから、それを前提にいたしまして、返還協定並びにこれに関連するいろいろの協議が、その基本線のワクの中で現在話し合いが行なわれておるわけでございます。  それから、核抜きの問題でございますが、本土並みということでございますれば、核抜きということが当然のことでございますけれども、特に沖繩県民方々のお気持ち、そしてまた日本国民の基本的な考え方から申しまして、これは非常に大事な特殊な問題でございますから、特に共同声明におきましても第八項という一項を起こしまして、特に核抜きにつきましては、アメリカ側として、日本国民の核に対するかねがねの国民的な感情考え方というものを十分に理解して、その上に立って日本政府政策に背馳しないように返還を実行するということに相なっておるわけでございます。核につきましては、申すまでもないところでございますけれども、核を入れないということが条約上の約束になっているのではありませんけれども、核を持ち込むというようなことが事前協議対象になっていることは明白であります。このことは、しばしば米側におきましてもその点ははっきりさせておりまするし、また日本政策を十分に理解をして、それに背馳することのないように実行するということは、核の持ち込みに対しては日本ノーという立場を常にとっているのであるということがここに明確になっているわけでございます。  なお、さらに申し上げれば、古く一九六〇年の日米安保条約が改定されましたときの、当時の岸・アイク共同声明において、日本の欲せざるようなことはやらないのだという趣旨共同声明がございますが、これは先ほど申しましたように、一切の安保条約関連する取りきめというものが沖繩返還に対しても何ら変更なしに適用されるということになっておりますので、この共同宣言も当然これにかぶってくるわけでございますから、それらと相照応いたしまして、核抜きということはここに確約をされているということは御理解をいただきたいと思います。  なお現実の問題といたしましても、この共同声明が出されましてから核が現実に撤去されたということも御承知のとおりでございまして、すでに核についてはきれいな状態になっておる。さらに返還後におきましては事前協議対象になって、しかも日本政府がこれに対してノーということは明確になっておりますから、これらをあらゆる角度からごらんいただきまして、核抜きということが確立されておる、かように政府は確信をいたしておるわけでございます。  そして返還協定につきましてはあとで御質疑に応じてまた御説明いたしたいと思いますけれども返還協定作業それ自体も非常に大切なことでございますけれども返還協定国会で御審議をいただきます場合には、直接返還協定文言あるいは約定に入らないことであって、しかも日本側におきまして、あるいは米側との折衝においてはっきりさせておかなければならないこと、そしてそれはまた沖繩県民方々の非常に具体的な御心配や御希望にかかっている点でございますから、これらの点を明確にさせて、そして来たるべき返還協定審議国会におきましては、それらの点についてすべて十分に解明をし、かつ沖繩県民方々にも御安心願えるようにということで、ただいま国内的なつながりの問題は沖繩北方対策庁が主管いたしまして総務長官の指揮のもとに鋭意努力を傾倒しておるわけでございます。そういうわけでございますから、来年の春から夏にかけてというところを時間的なめどにいたしまして、それまでにできるだけ、万般の問題についても結論をはっきりさせるように、ほんとうにねじりはち巻きで関係者一同努力を集中、傾倒しておるわけでございますが、この機会沖繩選出議員方々国政に参加していただいて、直接こういった問題について御意見を伺うことが議場を通じてもできますことは、私どもとしても非常に勇気づけられておる次第でございますので、この上ともいま申しましたような趣旨十分徹低、理解していただけるように、あるいは沖繩県民方々の御要望をこの議場を通じまして、政府に対しましても十分に御要請いただきますように、十分の御協力をいただきたい、かように存じておる次第でございます。
  7. 西銘順治

    西銘委員 ただいま返還協定について大臣からお話がございましたけれども、いま沖繩県民が一番関心を持っておりますものは、返還協定内容についてでございます。この返還協定の中に、十二分に百万県民意向が取り入れられるかどうか、期待と不安の中に県民は見守っておるのでございます。第三、第四の沖繩不在沖繩処分になりはしないか、こういうことが関心の焦点になっておるのであります。外交上の機密もあろうかと思いまするけれども、できるだけ項目別にその内容を明らかにしていただきたいのであります。  次に、返還の時期でございますが、一部新聞報道によりますと、アメリカ会計年度の切れる六月一日だというふうに報道されておりますけれども、これはむしろわが国予算年度の始まる四月に返還めどを置くべきではないかと考えております。もちろん返還協定折衝の中でこの問題が取りきめられると思うのでございまするけれども、私どもとしてはむしろめどを四月一日に置くべきではないか、かように考えておりまするけれども大臣の御見解をただしたいのであります。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともなお尋ねでございまして、返還協定内容について沖繩県民要望が十分に入るように、県民不在交渉されることがないように、私どももその点については十二分の配慮をしておるつもりでございます。対米交渉のこの協定に直接関係する問題といたしましては、沖繩県民方々の対米請求の問題の取り扱い、これが一つの大きな問題でございます。それから裁判に関する問題の取り扱い。それから米国の資産をいかに処理するかという問題。それから沖繩米国資本系統の企業の取り扱い。こういう点が直接対米関係協定作成上の大きな問題でございます。そして協定の上にいかようにこれを規定するか。それにはこの内容的な考え方がはっきり合意されなければいけないことはもちろんでございまするが、こういう点につきまして関係当局協力を得、また前々から琉球政府、それから立法院、それから関係諸団体あるいは個人的に、いろいろの御要請を直接事実上政府としても非常にこまかく承っておりますので、それらを十分頭の中に入れましてこの処理に当たっておる次第でございます。  それから協定文言には直接関係しないかもしれませんが、実際の問題としてあるいは運用上の問題として、先ほど申しましたように、安保条約関連取りきめがそのまま何らの変更なしに沖繩に適用されることになっておりますから、地位協定がそのまま沖繩に適用されるわけでございます。したがいまして、その地位協定返還のときにそっくりそのまま何らの変更なしに適用いたしますためには、その準備過程、それまでに至る過程におきまして十分話を煮詰めていかなければならない。これが大きなまた一つの問題でございます。  それから返還復帰の時期を前にいたしまして、日本側として、先ほど申し上げましたように完全な沖繩県状態にしなければならないわけですから、その準備を十分に詰めておく必要がございます。これは先ほど申しましたように、主として沖繩北方対策庁が中心になり、またこれらの点についても準備委員会等それぞれ活用いたしまして、誤りなきを期していきたいというふうにいま仕事を進めておるわけでございます。  復帰の時期につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ日米間の実態交渉中でございますから、時期についての合意というところまでには至っておりません。日本側としての気持ち、また米側といたしましても、一たんこういうふうに約束をした以上は七二年中に——向こう気持ちとしても、私の想像では、できるだけ早く実効が発生するようにしたいという気持ちは十二分に持っているように想像いたしております。情報としては、先方は七月一日が望ましいというようなことも、情報として出ておることは私も知っておりますけれども政府間の折衝の上で七月一日というような日取りが上程されておることはございません。ただいまのところは七二年中のなるべくすみやかな機会に実現できるようにということについては、抽象的ではございますが、合意といいますか、そういう心組みで、できるだけ現在の作業を進めていきましょう。そういう点では合意されております。  それから四月一日という御提案でございますが、いま申しましたような状況でございますから、これについて確たることを申し上げるような段階にまだございませんけれども、要するに七二年中のなるべくすみやかな時期に一切の手続あるいは憲法上の所定の手続、すなわち国会の御審議その他が全部両方で済むということを、なるべくすみやかにしていかなければならない。日本側としては明年中には国会の御審議等も全部終了していただけるようにお願いをしたい、こういう心組みでいるわけでございます。
  9. 西銘順治

    西銘委員 次に、米軍基地について質問をいたします。  ただいまの答弁によりますると、沖繩における米軍基地については、復帰後においては当然地位協定が適用されるというお話でございました。私たち心配いたしておりますることは、この地位協定の適用について、ほんとう名実ともに何らの修正なくこれが適用されるものかどうか、こういうことを非常に心配いたしておるのであります。その際、米軍に提供されておりまするところの施設区域などに関しまして、政府軍用地主の権利などを十分に守りまして、軍用地代また現実に即したいろいろな配慮がなされなければならないと思うのでありまするけれども、これについての大臣の御見解をお伺いしたいのであります。  次に、最近本土における米軍引き揚げ方針が発表されました。沖繩といたしましては、この在日米軍引き揚げによって、沖繩基地がかえって強化されるのではないか、こういうふうに私たち心配をいたしておるのであります。たとえば発表になりました横田基地あるいは三沢基地におけるファントム戦闘爆撃機引き揚げについてでございまするけれども、この百八機のファントム戦闘爆撃機は、半数ずつ朝鮮、沖繩基地に移駐をされる、こういうふうに発表されておるのであります。そういたしますると、本土米軍の縮小は、かえって沖繩基地の強化になる。なぜ県民のきらう、この日本人のきらうファントム爆撃機沖繩基地に持っていかなければならないか、こういうことを私たちは非常に心配をいたしておるのであります。これにつきまして、沖繩基地の態様について、大臣見解をお聞きしたいのであります。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、返還の際に米側に提供されることになります施設区域は、当然安保条約及び地位協定手続によって提供されることになるわけでございます。  それから基地整理統合の問題については、不要不急基地もあろうと思います。それから積極的に沖繩の民生や経済開発、発展のために移転や返還が必要な施設区域も当然考えられてしかるべきかと思われますので、政府といたしましては、これらの点を踏まえて、安保条約の目的に照らしながら、米側と鋭意検討を進めて、日本側意向が十分に反映された形で決定が行なわれていくように、現に努力もいたしておりますし、今後も努力を続けたいと考えております。  それから、返還に際して米側に提供されるという施設区域については、日本政府地主から土地などの使用権を取得することになるわけですが、その際におきましては、地主要望というものを十分考慮に入れまして、最善の努力をいたしたいと思います。したがって、軍用地料の問題につきましても、地主要望十分くみつつ、公正妥当に処理いたしますように、これも現在鋭意検討中でございます。  こういうふうな趣旨で、今後も努力をしたい気持ちでございますが、最後に御質疑になりました点につきましては、これはまだ正式に公表というようなことではなくて、今後安保協議会等、あるいは合同委員会等におきまして十分——これは本土のほうの問題もございます。十分これらの機関を通しまして協議に応ずると申しますか、あるいは場合によりましてこちらから協議を求めるということで事を進めてまいりたいと思っておりますので、いまいろいろと報道されていることは私も知っておりますけれども、これは正式に米側から発表されたものでもないようでございます。いわんや日本側としての意思がそれに加わっているものでもございませんので、これは今後の協議にまつべき問題である、かように存じております。
  11. 西銘順治

    西銘委員 次に尖閣列島の問題についてお伺いいたします。この尖閣列島領有権につきましては、中華民国も戦前から同諸島が沖繩県に所属していたことを認めておったはずであります。たとえば一九一九年五月二十日付で中華民国長崎馮領事感謝状の事実があるのでございますけれども政府はこれを知っておられるかどうか。この件について申し上げますと、これは私たちの郷里の大先輩でございます大浜信泉先生が発見されました資料でございますが、感謝状が、長崎駐在馮領事から出ております。その内容を概略申し上げますと、   一九一九年(民国八年)福建省恵安県の漁民三十一名が悪天候で尖閣諸島にたどり着いたとき、日本帝国八重山石垣村職員の熱心な救護を受けたおかげで、無事全員帰国できたことを感謝する。  中華民国駐長崎 馮領事 こういう感謝状があるわけでございます。最近、台湾政府役人ども尖閣列島に参りまして、国旗を掲揚いたしました。これに対しまして、アメリカ民政府琉球政府が一体となりまして、この国旗を引きおろしまして、わが日の丸の国旗を掲げて、中華民国国旗沖繩に持ってかえったのであります。この感謝状からいたしましても、わが国の固有の領土であることには間違いはないと思っております。  ただ尖閣列島油田開発の問題につきまして、台湾との間で領有権の件について、お互いに論じなければならないということはまことに残念なことでございます。アメリカ新聞報道によりますと、この尖閣列島油田は、何兆億円の油田だといわれておりまして、台湾政府アメリカの商社の間で、この油田開発に対する取りきめがなされたと聞いておるのであります。これについての大臣の御見解をお伺いしたいのであります。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 尖閣諸島わが国領土でありますことは、全く議論の余地のないところであると思いますので、政府としては、この領有問題について、いかなる他国の政府とも交渉する考えはないということは、すでに明らかにしておるところでございます。ただいま、一九十九年五月二十日付、当時の中華民国長崎駐在馮領事から感謝状を出しているということは私も承知しておりましたが、この感謝状についてあらためて大浜さんが十月十二日に石垣市を訪問しましたときに、牧野清石垣市助役からその写しを入手された。そして、これについてただいま西銘委員から御指摘がございましたことを、あらためて政府としても感謝いたす次第でございまして、その内容はただいま御指摘のとおりでございます。こういう次第で、尖閣諸島に対する領有権問題というものが歴史的にもきわめて明白であり、また国際的にもはっきりしているという事実が、ここにさらに明らかになりましたことは、まことに御同慶に存ずる次第でございます。  それから尖閣諸島周辺の東シナ海の大陸だな資源開発問題につきましては、国民政府との間に円満な話し合いで解決することがよろしいかと思っておりますけれども政府としては、今後とも国民政府の一方的な措置は認めない、そういう基本線をぜひ貫いてまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 西銘順治

    西銘委員 最後に一点だけお尋ねいたします。  新聞報道によりますと、復帰の時点におきまして主席の任期が切れますので、自治大臣による暫定知事の任命の問題が出ております。この件につきましては、せっかく主席公選制度にもっていったのでございますが、これを再び自治法関係法令によりまして暫定知事を任命するということは、沖繩県民感情がこれを許しません。当然このことにつきましては、大統領行政命令の改正をまたなければならないことでございます。したがって、いま一番妥当な方法といたしましては、現在の主席の任期あるいは立法院議員の任期を延長いたしまして、延長した時点で、公職選挙法による知事、県議の選挙をやったほうが、県民感情にぴったりする方策だと思っておるのでございます。これは大統領行政命令の改正に伴いまして、どうしても大臣の御配慮をわずらわさなければなりません。したがって、日米間の交渉といたしまして、暫定知事を任命することなく、主席、立法院議員の任期の延長方について、大臣の特別な御配慮をわずらわしまして、私の質問を終わることにいたします。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの御意見はひとつ十分体しまして、とくとまた御相談をいたしたいと思います。
  15. 田中榮一

  16. 上原康助

    上原委員 あらじめ大臣に御要望申し上げますが、質問が相当広範囲にわたりますので、できるだけ要旨に対して明確な御答弁を求めたいと思います。  ただいまも西銘委員沖繩返還に伴ういろいろな御質問に対する大臣の御答弁があったわけですが、さらに私は返還協定の中身について質問をいたしたいと思います。  先ほどの大臣の御答弁によりますと、返還協定準備は着々と進んでおる、あるいは去る本会議での私の質問に対しても順調にいっているんだという総理や大臣の御答弁があったわけですが、しかし率直に申し上げて返還協定の全貌というものが具体的に明らかにされていない。そのことに沖繩県民あるいは国民の間からいろいろ疑惑が持たれて——おると思います。  まず第一点は、施政権が返還された時点でのいわゆる返還協定条約第三条との関係はどうなるのか、これをお聞きしたいと思います。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、必ずしも御質疑趣旨を十分了解できなかったかもしれませんけれども、平和条約第三条との関係におきましては、奄美、小笠原の返還協定というものと同じような立場に立って返還協定をつくるということが基本でございます。
  18. 上原康助

    上原委員 この件はまた次の機会にさらに突っ込んでいたしたいと思います。  次に、対米請求権の問題ですが、大臣は、去る七月二十七日の衆議院沖北特委の審議の中で、対米請求権を全面的に放棄する考えはないという御答弁をなさったという記事がございます。しかしわれわれが理解する限りにおいて、政府のそういう御答弁なりあるいは姿勢があるということが報道される反面、いわゆる対米請求権については放棄をする、請求できないという立場に立っていま返還交渉が進められているというような点もございますが、ほんとうに対米請求権について、政府はどういう立場でいま返還交渉の中で進めておられるのか。そのことを協定の中に十分織り込む立場での交渉を進めておられるのか、また織り込むおつもりがあるのかどうか、それを明確にしていただきたいと思います。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 対米請求と私ども言っておりますけれども、この対米請求というものの中にはずいぶん複雑な各種の問題がございますから、その中には返還協定作成以前に解決できるものもあろうかと思います。それから、この点はしばしば従来も論議になっておりますところでございますけれども本土として日本が独立をいたしましたときに、請求権を放棄したということが原則になっておりますから、その原則的な考え方というものは、これはやはり返還の後におきまする沖繩の場合におきましても、その考え方を踏襲しなければならないと思います。しかし、同時に、沖繩の二十数年間におけるいろいろの事情もございますから、対米請求権問題として、その中には返還協定作成以前におきまして解決できるものもあり得る、こういうふうな考え方で進んでまいりたいと思っております。
  20. 上原康助

    上原委員 そうしますと、たとえば請求権の中で、二十五年の米軍支配の中で県民がこうむったいろいろの犠牲というものがあります。たとえば、一方的な裁判による県民の権利侵害の問題なり、あるいは米軍の不法行為による損害、そういうものが現在たくさん積もっております。そういう事柄については、県民立場で請求する、あるいは要求をするという場合には、日本政府としては当然権利として要求できるという立場に立って、返還の時点においてのそういう問題の処理をなさるおつもりなのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これらの点については非常に沖繩方々としての御関心や御懸念の深い問題でございますから、政府といたしましてもそのお気持ちを体して、本会議でもただいまも申しましたように、沖繩県民方々から公式にあるいは私的に詳細にわたる御要請に接しておりますが、それらを私のことばで申しますと対米請求というふうにくくった問題にすればいいのじゃなかろうかと思っておるわけでございます。その中には、たとえば軍用地の開放復元に伴う問題とかあるいは人身事故に関する問題でありますとか、そして、それらの問題につきましては、たいへんこまかくなりますから、ごく問題の所在だけを申し上げますが、たとえば一九五〇年の七月以前に軍用地でいえば形質変更されているものがどういうふうな扱いになっていたか、一九六一年六月三十日以降に開放されたものについては復元措置、補償はどうなっていたかというような時間的な経過において、米側の施政権下におきましても、御承知のように取り扱いが変わっているところもございます。そういう点等につきましては、十分に米側と話をしなければならない問題だと思います。それから、たとえば人身事故についての補償問題ということにつきましても、たとえば、時間的に追うてみますと、一九五〇年七月一日以降は米国法令が整備されたが、それ以前はどうなっているか。あるいはそのときに米側としては、こういうものについては補償したからそれは処理済みであるという見解をとるものもございましょうが、それに対して日本側としてはどういうふうにこれを解釈し、どういうふうに事実を調査して主張していくべきかというふうな、ずいぶんこまかい、事を分けて検討し、かつ米側と話し合わなければならぬ問題で、これらの点につきましては鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  22. 上原康助

    上原委員 そうしますと、いま私が質問申し上げた一、二の事例あるいはその他の請求権の範囲等については、確たる結論は政府としてはお出し願っていないという理解でいいですか。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に率直に申しますと、非常に沖繩県民方々としては大切な重大な問題でありますだけに、これらにつきましては十分の根拠と事実の調査の上に立って日本側の主張すべきものは主張し、話し合いに入らなければなりませんので、それらの点について、法律的にもあるいは経過的にもずいぶん複雑な経過をたどっておりますだけに、いまだそれらを集積して一つの基本的な線というものを出すに至っていない。その辺のところが先ほど返還協定の要交渉事項として重大な問題として私は第一にあげたわけでございまして、そういう次第で、これは交渉中でございますので、まだ基本的な線を確立してお話し申し上げるところまでいっていない点を御了承いただきたいと思います。しかし、沖繩県民方々の御要請、御要望を十分に踏まえてあくまで善処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  24. 上原康助

    上原委員 そういうお立場であるならば、ぜひ県民要望なりあるいはまた確たる根拠、事実に基づいた請求権の確保ができるようなことで今後交渉を進めていただきたいという要望を申し上げて、次の質問に移ります。  これとの関連があるわけですが、経済的な側面から考えての請求権の問題、いわゆる米民政府資産の引き継ぎや通貨の切りかえ、さらに旧国有地あるいは県有地等もいま米国政府が管理をしております。そういう米国政府の管理権の問題は、返還の時点で日本政府の管理になるのか、あるいはまた沖繩県としての管理に権利を移譲なさるのかどうか、そういうような事項に対してはどのように話し合いが進められておられるか、それをお聞きしたいと思います。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大きく分けますと、米国資産の中で兵舎、飛行場といったような軍事施設でございますね、この軍事施設は除きまして、民政用の資産で、たとえばいわゆる三公社のもの、それから行政上の建造物といったようなもの、こういうふうなものは、施政権返還後において沖繩県民方々に対して有益であると認められるような資産の引き継ぎにつきましては日米間の協議事項でなければならない、そしてその協議によりまして公正かつ公平な解決をはかるべきものである、こういう基本的な考え方に立って協議を進めつつある次第でございます。
  26. 上原康助

    上原委員 国県有地の問題についての御見解をぜひ賜わりたいと思います。  それと公平妥当な処置をとられるということですが、いわゆる米国資産、民生、県民生活と関係のある資産について、伝えられるところによりますと、米国政府はいわゆるその資産の買い上げというものを、返還交渉の中で日本政府に具体的に示している、五億ドルから七億ドルという話も聞いております。そういう、ただいま大臣が御指摘なされた三公社の問題や、あるいはその他の通信施設、航空施設、いわゆる民政機構の資産について、ほんとうアメリカ政府日本政府返還の時点で買い上げを要求する形、要請する形で交渉を進めておられるのかどうか、その具体的内容についてぜひお聞かせいただきたいと思うのです。このことについては県民は非常な関心を持っておるし、われわれとしても、当然米国が施政権を握っている中で県民生活との関係で建設されたところの公社や、あるいは現在琉球政府が使用しているビル、そういうものは無償で譲渡すべきだという立場に立っているわけですが、それに対する交渉内容、さらに日本政府としてどういうような姿勢で臨まれるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御質問の点がたいへんいろいろの問題を含んでおりますので、あるいは私のお答えが的はずれになるかもしれませんが、第一におあげになりました問題は旧国あるいは県の所有地、国県有地はどうなるか、これは政府見解といたしましては、布告第七号に基づいて、御承知のように米側の管理官の管理のもとに置かれておって、軍用地、琉球政府用地、日本政府用地となっているほかに、有償で沖繩県民の方あるいは外国の民間人にも貸し付けられておると承知しておりますので、この実態につきまして関係方々の御協力を得まして、まず実態を明白に掌握したい、これがまず第一だと考えておるわけでございます。  それからその次は、先ほどもちょっと触れた点でございますが、復帰に際してわが国が引き継ぐことがいわば適当かと認められるものでございますね、復帰後においても沖繩県民方々のお役に立つ、有用であるというようなものにつきましては、これは先ほど申しましたように、日米協議をいたしまして、こちらから、日本側から米国に対してあるいは何らかの支払いを行なうことが適当であるというものもあり得ると思います。それらの点につきましては、十分実態調査に応じました日本側立場に基づいて米側との折衝をいたしたい、こういうふうに考えております。
  28. 上原康助

    上原委員 重ねて米国資産の問題で、いまの御答弁によりますと、話し合いの中身いかんによっては金で換算するのもあるという御見解のようで、ちょっと政府の姿勢というものがはっきりしないわけですが、少なくとも三公社や、あるいは米国民政府の建物というのは施政権をアメリカが握っておった、いわゆる県民福祉という立場での米国資産だったと思うのです。しかもそういうものについては琉球列島住民に譲渡をするということまでアメリカ政府は明確に打ち出してきております。そういう資産について、本土政府が金でこれを換算をして、県民に買い取ったというような疑惑なり誤解を与えない、そういうものを返還協定の中でぴしっと打つべきだと思います。いま一度、それに対する御見解を賜わりたいと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はさっき率直にと申しましたように有用で、あるいは沖繩県民方々に引き続き御活用いただけるというものもありますし、その対米交渉折衝の中において、ある部分日本政府として適当な金を支払うということがやむを得ないという結論になるものもあり得ようかということを申し上げたわけでございまして、これはやはり内容的にとことんまで詰めて話し合っていかなければならない問題である。いま原則論だけで——もちろんこれも大事なことでございますが、お話をする段階でなく、もう少し詰めて実態的にこまかく論議しなければならぬ問題かと思っておりますが、私は率直な問題の取り上げ方の気持ちを申し上げただけであります。
  30. 上原康助

    上原委員 次に、共同声明との関係質問いたしたいわけですが、先ほども大臣の御答弁がありましたが、いわゆる沖繩施政権返還にあたって、県民を含む国民立場で、いろいろの疑惑なりあるいは本土政府がいま絶えず強調なさっておられる核抜き本土並みということとはうらはらに、核つきで返還されるのではないかという疑問を持っております。また私も、核抜き本土並みになるという政府考え方なりその姿勢に対して多くの疑問を持っております。先ほど、共同声明の第八項で核抜きになるということを明らかにされていると言いますが、第八項に核抜きという表現は全然ありません。また本会議での私の質問に対して、総理も非核三原則は復帰沖繩に適用されるという御答弁をいただいたわけですが、しかし非核三原則を確実に適用するということも共同声明には見当たらないわけなんです。それと、現実に大量の核兵器が沖繩基地に貯蔵されておるというのは、これはもう否定できない事実であります。そういう面から考えて、ほんとう核抜きの形での返還というものが実現をするのかどうか。共同声明内容にそういう文句はありません。さらにジョンソン証言と相関連させて、ますますこの面に対する国民の疑惑というものがいま生まれてきております。そこらはもっと国民の納得のいく、県民理解できる政府の姿勢というものがあらわれて初めて核抜きというものも実現をすると思いますが、いま一度、私が申し上げた県民の不安なりあるいはジョンソン証言なり共同声明にそういう文句がない、表現がないということとの関連において、直接交渉に当たった大臣として、どういう立場でそういう核抜きというものが打ち出されているのか、これに対して明確な御答弁をいただきたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、私は幾らでも経過なり共同声明内容なり御説明いたしたいところですが、時間の関係もございましょうから、できるだけ簡潔に申し上げたいと思います。  沖繩返還本土並み、何らの修正なしに本土並みに安全保障条約関連取りきめが適用されるということが眼目であり、そして核の問題は一番関心が深い問題でございますから、共同声明でも第八項を特掲したわけでございます。理論的に言えば、本土並みということで核抜きになるという見方もございましょうけれども政府としては、その点特に念を入れて八項を起こしたということがまず第一。それからその次に申し上げたいことは、御承知のように、安保条約関連取りきめで核の持ち込みは禁止ということになっていない、これはそのまま本土並みでございます。つまり事前協議対象になるわけです。これは両国が約束しているわけです。そしてそれに対して、先ほど申しましたように、古くは一九六〇年当時の岸・アイク共同声明に基本を置いて、日本の欲せざることはアメリカはやらないという筋がざっと一貫して通っております。そして、その核に対する政策というのは、日本国民の悲願の上に立脚した、日本の全国民のコンセンサスの上に立ったものであるということを先方がよく理解をしている、そしてその趣旨に沿うて返還を実行するというのがこの第八項の趣旨でございますから、これでもう核抜きということは、条約的、了解的あるいは共同声明的、そして今回の共同声明ということで、がんじがらめに、そして本土並みなんですから、そして本土には核はございませんし、核の持ち込みということが観念的に問題になるとすれば、それは事前協議で押えたい、事前協議に対して日本国民の願望に基づく日本政府の核に対する政策によってこれを処理する、つまりノーということであります。これで一貫して現実の事態がそうなっておるわけでございます。これらの点につきましては、よくジョンソン説明というのが問題になりますが、サイミントン小委員会におけるジョンソンのあれが行なわれて、そして日本国会でもあらためて御質疑が盛んにあった、その後におきまして、ションソン次官が直接私に——日本のあなたが、沖繩返還問題について一連の公式の見解、説明をされていることに、自分は全く合意しているのであるということを特に申しておりましたようなこと、それらを全部ひっくるめまして、私は確信を持って沖繩核抜きということを申し上げている次第でございます。
  32. 上原康助

    上原委員 大臣の御熱心な答弁理解いたしますが、しかしそれでは核抜き本土並みになるという判断は生まれてこないわけですよ。率直に申し上げまして、いま日本政府が主張しておられるところの本土並みということは、本土並み安保条約沖繩に適用する、返還後は地位協定を適用するというのが本土並みであって、基地の形態なり態様が本土並みになるという判断はわれわれはできません。現にある核兵器というものを撤去して、七二年の何月に沖繩返還されるという確証がございますか。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども西銘委員にお答えいたしましたように、現に共同声明が発表されて間もなくメースBの撤去も行なわれた、それから返還のときにはもちろん核抜き状態返還されなければ、アメリカ日本との約束に反するものである、そういうことは全然予想されないことであります。そうして返還後におきましては、いま申しましたような仕組みでがんじがらめに、二重にも三重にも押えてある、こういうことをもって、私は自分の確信を持って政府見解を申し上げているはずですから、どうかひとつそういうような点について御理解をいただきたい。見方によってそれでも信用できないとおっしゃられれば——率直に言うとおしかりをいただくかもしれませんが、それまででございますけれども日米両国の関係におきまして、最高首脳者の間柄の約束であり、しかもこれは条約に基づく約束でもございますから、さような点は、もしこの問題をかえて、沖繩について返還の際に、核というものは安保条約以上に、本土並み以上に何らかの取りきめをすべきだという御趣旨ならば、またこれは別だと思いますけれども政府といたしましては本土並み、これが何よりの眼目でなければならない、そして核抜きということを確保した、これが沖繩返還に際する最善の措置であると存じます。それから、やはり何よりも大切なことは、返還後におきましては地位協定がそのまま、何らの変更なしに適用されるわけでございますし、それから返還後において残ります基地は、その一つのものは同じかっこうに見れるわけですけれども、根拠が全く違いまして、安保条約に基づいて、その目的に応じて日本政府施設区域を提供する、そしてそれには地位協定がかぶるということになりますから、あたかも本土で歴史的にごらんいただけますように、合同委員会等を通じまして、不要不急のものについては、返還後におきましては、日米間の協議でこれを返還とか、あるいは共同使用とか、あるいは民間移譲ということが、きちっと日米双方の立場協議事項になる、私はそのワク組みをして返還をするということが最善の政府としての考え方であるのだということを、御理解いただきたいと思います。
  34. 上原康助

    上原委員 この件についてはもっとつっ込んだ質問もいたしたいわけですが、時間がございませんので、いずれかの機会に譲りたいと思います。  次に、毒ガス問題についてお尋ねいたします。  いわゆる三万五千トンともいわれている致死性毒ガスの撤去ということは、昨年来本土政府なり、またアメリカ政府も早目に撤去するという公式の見解を述べてきているわけですが、現在に至るまでこれが撤去されていない。そういう意味でもますます核抜きあるいは基地の態様が何ら変化されないという県民不安というのが強いわけなんです。一体どうして日米の両政府が早急に撤去をするということを打ち出しながら、撤去されないのか、また、日本政府はその後この問題についていかような対米折衝をなさっておられるのか、いつ撤去される見通しなのか、その件についてあらためてお聞きをしたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガスについての御心配、御意見は、私全く同感でございます。私自身といたしましても、たとえば国務長官はじめ、対米話し合いをするときにこの問題を持ち出さざることはない。要するに、早く撤去の事実を示してもらいたいということで続けておりますことは御承知かと思います。米国政府の態度は、ジョンストン島への移転計画をきめて、その実行に移りつつある、そして、これは御案内のように、すでに議会の中にもいろいろの論議があったようでございまして、それらの関係もあるようでございますが、議会に通報をして、そして撤去計画の具体的日時、順序等を発表することにしている、なるべくすみやかに、そのすみやかということも、私はそれがごく最近であるということを期待しておるわけでございます。なお、撤去に際しまして、安全対策ということについても、沖繩県民方々の御心配に対して十分話し合ってまいりましたが、その撤去は安全に実施する、米側としては万全の準備を講じておりますということを確言いたしております。綿密に検査をし、そして移転作業のために万万一にも危険が起こらないように、万全の措置をとることにいたしておりますという通報に政府としては接しておるわけであります。
  36. 上原康助

    上原委員 時間が参りましたので、たいへんむずかしい面もいろいろあるかと思いますが、沖繩県民の意思というものが十分反映できる、あるいは毒ガス、そういった核の問題に対する不安というものを御理解をした上で、今後政府がなお一そうの対米折衝を強力に進めていただくことを御要望申し上げて質問にかえたいと思います。
  37. 田中榮一

  38. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、中国問題について二、三点大臣にお伺いをしておきたいと思います。  この前の委員会でも中国問題は取り上げられましたが、この問題は非常に重要な問題でありますし、カナダ、イタリアに次いでエチオピアが中国承認という状態になってきておりますし、政府の時々の発表などを見ましても、国連での重要事項指定方式の問題とか、あるいはまたアルバニア案とかいうものにとらわれないで、日本としても独自の案を見つけていきたい、こういうようなことをおりに触れ言っておられるようでございますが、この中国問題に対する日本考え方というものをいつごろまでをめどにしておまとめになる御意思があるか、大体その辺のことを最初にお伺いしたいと思います。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題は、ただいまも御指摘のように非常にむずかしい問題でございますし、前々から申しておりますようにイタリア、カナダ、エチオピアというようなところの対策を批評するわけではございませんけれども、一口に言えば、日本が置かれている立場から見れば気軽だと申してもよろしいのではないかと思います。それだけに日本といたしましては、総理大臣の所信表明に言っておりますように国際信義、国際の緊張の緩和、そして日本の国益ということの上に踏んまえて、日本としていかにすべきであるかということについては慎重に対処してまいりたい。したがって、ただいまいつどういうふうに展開するかという時間的目標はきめておりません。
  40. 戸叶里子

    戸叶委員 私も厳格にいっていついつまでにどういうふうにおきめになりますかというようなことを伺っているわけじゃなくて、日本としての独自の案とか考え方というものをなるべく早く出すべきではないかというふうに考えるわけでございますので、この点を伺ったわけです。政府も置かれている立場等を考慮していろいろ模索していられることはわかりますけれども、しかし基本的な線だけははっきり打ち出すべきではないか、こういうことを考えるわけでございます。来年の国連の総会までにはある程度のめどがつくとか、あるいはそうでないとかというようなことを伺いたかったのですが、この点はいかがでございましょうか。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二つに分けて考えることも必ずしも適当じゃないかと思いますけれども日本として主体的にただいま申しましたような基本的な考えるべきところの上に立ってどういうふうに対処していくかということを練り上げることが一つ。もう一つは、国連総会が毎年ございます。来年の総会でも必ずこの問題の取り上げ方についてはいろいろの議論が予想されると思いますが、このほうはそう言うとまた論議を起こすかもしれませんが、国連の場におけるところの代表権問題の扱い方についてどうしたならばいいであろうか、これは時間的な一つの制約もございますから、これはもちろん念頭に入れまして考えてまいらなければならない。もちろん両方が全く相関連する面も非常に多いわけでございますけれども、そういうふうに考えます。
  42. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣から大体二つの点が発言されました。たとえば日本として基本的にどういうふうに考えていくかということと、国連の場というようなことと、その二つの考え方というものは私はぜひ必要だと思います。  それで日本立場で考えられた場合に、政府はこれまでずっと中国は一つであるというたてまえをとってこられました。それは今後も変わらず、日本政策としては中国は一つであるというお考えの上に立って進まれると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点も前回の当委員会でも申し上げたと思いますけれども、この中国の問題の沿革をあらためて考えてみましても、やはり第二次大戦後の国境紛争ということから端を発してまいっておる。そうして両者とも一つの中国、そうして自分のほうが唯一の合法政権でなければならぬということを非常に強く主張しておられるわけでございますから、隣国であります日本立場——これは隣国でなくともそうじゃないかと私は思うのですけれども、内輪の問題としてひとつ双方で平和的な話し合いでこの問題についての結論を出していただきたいものだ、こう私は考えたいと思います。そうしてそういったような話し合いといいますか、それの結果が出ればこれはほかの国としてもそれを尊重し、それを受け入れるということでなければならぬのではないだろうか。ただ特に隣国としての日本立場においては、またこれは国際的な面から見ましても、国際紛争が起こらないようにということを念願としております。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 政府としてはこの問題を武力で解決するということだけは何としても、これは俗なことばで言えばかんべんしていただきたい、これは重大な関心を持たざるを得ない、こういうことが私は一つの中国というような問題に対する基本的な考え方でいいんじゃないだろうかというふうに思っております。ただ日本としてはもう一つ、二十年以上にわたりまして国民政府との間に日華平和条約を締結しておる。そのもとに正常な国交関係が設立され、そうして親善友好関係があるということが、これまた事実である。そうしてその間に処して、これは過去のことになりますけれども中国大陸との間にいわゆる政経分離ということで、事実上経済上とか人事往来等においてはできるだけの接触を保っていこうとするのがこの二十数年にわたるところの日本のとってきた政策であり、その間にそうやってまいりましたことは私は日本にとっては賢明なやり方ではなかったか、こういうふうに考えております。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 私が質問いたしましたその質問にいまのお答えは直接のお答えではないかもしれません。大臣が非常に苦労されて答弁されていることはわかるのですけれども、やはり私たちとしては日本政府がどう考えているかということを聞きたいと思うわけなんです。  そこでいまおっしゃったように双方が武力を使ってほしくない、これはだれでも望むことだと思います。中国のその内容がどうあろうともこのことはだれでも望むと思います。ただ問題はいま大臣答弁されましたように、双方が話し合って平和のうちに何らかの結論を出してほしい、そうしてその結論に日本が従ってまいりましょうといいながら、日本台湾政府関係のことなどもいろいろ述べられたわけです。そこで私どもが聞きたいこと、そしてまた本会議でもわが党の下平氏が伺いたかったことは、政府がこれまでやはり中国は一つです、こうお答えになってきている、こういうお考えは変わらないかどうか。これは日本政府考え方というよりも、中国がそう言うからそうなんだという非常に他動的なものなのかどうか、この辺がちょっと私理解しかねるわけですけれども、これをどう判断していいかお伺いしたいと思います。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 他動的という御批判もございましたけれども、これは同時に事実がそうでございますので、そうした向こうさんのいわば内輪の問題に対して外の国が、こうなければならぬぞというようなことを言うのはいささか行き過ぎではないだろうかというような気持ちも私は持っているわけでございます。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 ずっといまの御答弁を伺っておりますと、中国がお互いに一つであると言っているから、日本も中国は一つなんだというふうに国会答弁をしていたのであって、日本政府としては一つだというふうには考えておらないわけなんですか、この辺のところをもう少しはっきり解明していただけないでしょうか。たとえば日本政府は、やはりこれまで国会答弁していたように中国は一つなんだ、こういうふうなお考えをお持ちになっていると了解してもよろしいわけなんでしょうか。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 というのは、それ以上にいま日本政府として申し上げるのはつつしんだほうがいいのじゃないか。事実を申し上げる、そして先ほどの御質疑にございましたが、日本政府はいまどう考えているのか、日本政府考え方がここにございましてそして御批判を仰ぐというならば、これも一つの行き方でございましょうが、日本政府としては先ほど来申し上げておりますようにいろいろの要素を考え、慎重に検討をいたしておりますという段階であって、軽々にこうした非常に大きな問題について政府として意見を申し上げる段階ではないというのが私の見解でございまして、その点を御理解いただきたいと思います。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、政府としてはいま意見を言うべきときでないというのですから何もおっしゃらないと思いますけれでも、これまで私どもが伺いましたときに、中国は一つであるという答弁をたびたびされました。そこで私たちが伺いたいのは、政府の考えている中国は一つというのは一体どれをさすのだろうか。台湾を含んだ北京政府をいうのか、それとも大陸を含んだ台湾政府というのか、どれなんだろうということが非常に疑問にのぼってきたわけです。そこで本会議での質問もその点を質問したわけですけれども、それに対して具体的な御答弁がなかったものですから、それでは委員会でやはり政府考え方を聞きたいというわけできよう質問をしたわけです。  そうすると、政府としてはいま中国は一つであるということも言うべきときではない、こういうふうにお考えになるわけですか。その点だけはおっしゃってもいいのじゃないでしょうか。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そうかたくななことを申しておるわけではございませんで、繰り返すようですが、北京政府国民政府もともに二つの中国という考え方には非常に強く反対しているということは事実でございますから、政府としましても、両万の当事者が中国という国は一つであるべきだとおっしゃっているのですから、なるほどそうでございましょうという意味において一つの中国である、これ以上はコメントはできないのじゃないかと思います。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 わかりました。政府としても二つの中国という考え方にはいまでも反対をしているのだというそのお立場はわかるのですが、そこで一般論として考えましたときに、中国は一つであるといわれたときに考え方が二通りございますね。たとえば台湾を含んだ北京政府とそれから大陸を含んだ台湾政府、後者のほうはいま世間に通用しない意見だと思います。それから前者のほうは、カナダとかイタリアというようなところが考えているところだと思います。そうした二つの考え方があるわけですが、もう一つ台湾台湾として離して、台湾を含まない中国、こういうふうな考え方一つの中国とはいえませんね。これは二つの中国と考えてしかるべきでございましょうね。この点を伺いたいと思うのです。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 また同じようなことを申し上げるのですが、双方とも一つの中国だ、全中国に対して一つの中国だという主張をされておるのが現実の事態でございます。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 どうも私の質問大臣お答えになっていただけないわけですけれども、しかしこれ以上追及しません。ただ一般論としてはそういうことはお認めになるわけですね。  ただ私の伺いたいのは、台湾を含まない中国ということになりますと、つまり北京政府ということになると、これはやはり二つの中国論としか考えられないのですが、一般論としてそういうふうに理解していいわけですか。一つの中国ということはいえませんね。台湾それから北京政府といった場合には二つの中国としか考えられません。一般的に見てこれは一つの中国ということは解釈できないと思いますが、いかがでございますか。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 冒頭に申し上げましたように、通俗的なことばで言えば、気楽な国は、それらの国の政府筋あるいはそれに準ずるようなところの人たちは、いろいろそれなりの意見を言っており、その中にいまのようなお話の出ていることは私も承知いたしております。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣答弁をそらすのがたいへんおじょうずなんですが、私の言っているのはそういうことじゃなくて——気楽なことを言っている人があることは私も知っています。気楽だからそう言っているのだと思いますが、私たちは中国問題をほんとうに真剣に考えていかなくてはいけないと思うのですね。そこで私が言っているのは、いまの大臣と違って、台湾というものを離して北京政府というものを取り上げたときには二つの中国論になりますね、一つの中国論にはなりませんねということを伺っているのですけれども、これにはお答えはいただけないわけですか。いただけないならいただけないでしかたがないと思いますが、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府考え方はとおっしゃられますと、この問題については先ほど来るる申し上げた以上には、私現在意見を申し上げることは差し控えたいと思います。いまも気楽な国や人々ということを申したわけでございますが、気楽ではなくて——たとえば国連におきましてもいろいろ意見が出ておるようです。それは一つの中国ということからいえばまた別の意見があることも事実だということを私も承知いたしておりますが、それらに対して政府は、極端に言えばどちらに加担するかとかなんとか言えば、それは政府の意見を表明したことになりますから、そういうことを言うべきものではないというふうに私は考えております。慎重に検討すべきものだと思います。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 慎重に検討すべきことは私もよくわかりますけれども、基本的な考え方なりあるいはこれはこうなんだという解釈ぐらいははっきりしておきませんと、政府の態度というものはきまらないと思うのです。そこで私どもはいろいろと分析をしてみて、こういうときはどうなんだろう、こういうときは一つの中国になるのだろうかあるいは二つの中国になるのだろうかということを、私どもは私どもなりにいろいろ苦労しながら研究をしているわけなんです。だからそういう意味で大臣質問しているわけですけれども、私たいへん同情的といわれてもしかたがないのですが、大臣にこれ以上のことを伺ってもこの問題では答弁いただけないと思いますから、これ以上追及しません。しかしいまのことは非常に大切なことですから、いつかお答えのできるようにしておいていただきたいと思います。  そこでもう一つの大きな問題は、台湾を含めた北京政府とたとえば国交回復をするというようなことが出てくるかもしれない。そういう場合には当然平和条約というものを結ぶ必要があると思いますけれども、これはどうでしょうか。  続いてお伺いしたいのは、たとえばアメリカの言うような二つの中国論というものをとったとした場合に、台湾を除いた北京政府と国交回復というような場合には、当然これもまた戦争終結というような手続が必要だと思いますけれども、戦後処理というようなことをするための平和条約は必要だと思いますが、これはいかがでございましょうか。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはやはり非常に大切な、基本的な政策関連する問題ですから、私はクリアカットにお答えできないと思います。それを前提にしていただきたいと思います。  観念的に、法律論というか、条約論というようなことだけからいえば、日華平和条約は、結んだときの状況や政府の説明等をずっとごらんいただければ、戦争状態の終結というようなことが約定されているわけですね。ですから、これは観念的な、あくまで仮定の問題として申しますけれども、それに対して新しい政権ができた場合には、これを承継するということが、日本側からいえばそうなってしかるべきじゃないかということは観念的には考えられると私は思います。しかしそれ以上のことは、私はやはり国際信義ということから申しましても、現に国民政府との間に条約を結んでおり、そうして友好親善関係にあるこの状態において、この平和条約が廃棄された場合はどうかというようなことにまで言及して、政策としてお答えをすることは差し控えたいと存じます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 平和条約が廃棄された場合とされない場合と両方あるわけですね。たとえば、台湾を含めた北京政府というような場合には、その平和条約というものはなくなるわけですけれども、しかしアメリカが、たとえばこの間の国連で言ったような形の、台湾を除いた北京政府との間の日本の国交回復というときには、当然戦争処理ということで平和条約の取りきめが必要だと思いますけれども、この点はどうなんでございましょうか。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうところへ入る前に、基本的に、両方の中国がこういうふうに主張しておるという厳然たる事実があるのでありますから、そこがまず当事者の上において解決されるということが最前提であって、少なくとも、現状において日本政府がこうこうあるべき姿を想定して何か言うということは、政策の大問題でございますから、そうした種類の政策の大問題、基本のことについては、私は、政府として何らコメントするわけにいかない、こういうふうに考えます。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうなお答えばかりでは、一体中国問題に対してどの程度の取り組みをされるのか、どれだけ前進されるのかということ、まことに心細い限りだと思うのです。それなればこそ私たちは、一体いつごろ日本一つの線を出すのかということがよけい知りたいわけです。  私が最初にそれを伺ったのは、こういうふうに、これは大切なことですからいま言わないほうがいい、これは大切なことですから、向こうの言うとおりにある程度待っていようというような形であっては、日本独自の中国政策というものがいつまでたっても出てこないから、そこで私がいま、一体どういうふうなお考えでいつごろまでにするのですかという、期限を切るわけではないですけれども、やはり期限を指定して質問せざるを得ないわけです。そういうようなことであっては進まれないのではないかと思うのです。そこで、もっと早くそういう問題をほんとうに煮詰めて、結論を早く出していただかなければいけないのではないでしょうか。私がそう申し上げますと、こういう問題は重要問題ですから、せいては事を仕損じますというお答えが返ってくるかもしれませんけれども、やはり基本的な線くらいはきめておいていただかないと困ると思います。  先ほど大臣のおことばの中に、ちょうど承継国家のような話が出ました。この問題は、四、五年前にアメリカが中国に対して承継国家論というようなものをとりまして、世界でいろいろ批判されたものですから、その案は引っ込んでしまったわけですけれども、そういうふうな形、つまり二つの中国論というようなものがまたアメリカのほうにも出てきているわけですけれども、こういうことに対しては、外務大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。これを伺いたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうも私のお答えは戸叶委員が御想像なすったようなお答えを繰り返すだけでございまして、特に外務大臣としてはということで答弁を求められましたが、私はこういう重大な問題については期限を付して国策をきめるというべき筋合いの問題ではない、こういうふうに思います。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 別に期限を付して云々というのではなくて、やはり基本的な線はなるべく早くきめておいていただきたい、こういう意図から私は出ていることです。  それで先ほどの承継国家の問題なんですけれども、もし承継国家論ということが生きてくるとするならば、中国との間の平和条約というものも必要なしに、国連に台湾がいるまま北京政府が入っていくという形になるわけですね、承継国家論からいうならば。これはアメリカが四、五年前とっていた意見ですけれども、そういう考え方は正しいのですか間違っていますか、この点をまず伺っておきたい。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はさっきもう重々お断わりしたわけですけれども、承継国家論を私の説として申し上げたわけでは全然ございません。ただ、そういうふうに何か一言二言申し上げますと、それが外務大臣見解というふうに、先生はおとりにならないでしょうけれども、世間ではそういうふうに発言を拡大解釈されますから、それでかたくなにならざるを得ないので、どうか御了承願いたいと思います。承継国家論は私の説というふうにおとりになったとすれば、その点はそうでございませんということをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 私ははっきり申し上げまして、外務大臣が承継国家論をとったとは思えません。  それでは条約局長に伺いますけれども、承継国家論ということがもし出てきた場合には、かつてアメリカがそう言っていたような承継国家論ということになると、別にトラブルなしに、宣言か何かするだけで、北京政府も国連に、台湾政府がいるままはいれるわけですね。現実の問題としてはこういうことはむずかしいことですよ。むずかしいことですけれども、承継国家論ということはそういうことになるわけですね。そのことだけ、ちょうど外務大臣がそのおことばをお使いになったので、念のために伺っておきませんと、私の知識が間違っているといけないと思いますので、念のために伺っておきたいわけです。
  65. 井川克一

    ○井川政府委員 私きわめて不勉強でその承継国家論の内容、それから私が聞いておりますことですと、単に新聞に出ていただけの問題だそうでございます。そのいわゆる承継国家論の法的基礎について全く知識を持っておりません。現実面において法的基礎につきまして全く知識を持っておりませんので、申しわけございませんけれども、私の現在の能力ではお答え申し上げることはできません。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 冗談じゃないですよ。私は外務省に抗議を申し込みたい。というのは、私は承継国家論についてはしろうとですよ。条約局長は専門家ですよ。専門家がしろうとに答えられないなんということがありますか。それが許されていいことですか。これは私は問題だと思うのです。私みたいなしろうとに、答えられないなんと言われたら、私はどうしたらいいんですか。しろうとはどうしたらいいんですか。どう解釈したらいいんですか。どう勉強したらいいんですか。そういうことでは私は非常に困ります。  では武士の情けでもないですけれども、しかたがないですから、条約局長この次までに、私は教えていただきたいと思いますから、はっきりした答弁をまとめておいていただきたいと思います。いいですね。約束してください。一週間あればそのくらいだったら研究できますでしょう。それまでどうぞ研究しておいていただきたい。私も私なりに研究したいと思いますから、どうぞしておいていただきたいと思います。  時間がなくなりましたのでもう質問できませんが、もう一点だけ伺いたいのは、中国問題に関して佐藤総理の本会議での答弁を、私は一生懸命耳をそばだてて聞いていましたが、これに対する答えは、レコードを回したように同じことを繰り返してお答えになっていらっしゃった。その中でわからないことは、国益ということばがございました。国益ということばはなかなか重宝なことばで、何かごまかされるようなことで、ちょうど私たちが戦争中何か政府に反対するようなことを言うと、非国民呼ばわりされたというのと逆のことばじゃないかというふうに思うわけですけれども、今度の国益ということば、中国との関係の国益というのは一体何を意味するのかということが、私はどう考えてもわからない。たとえば重要事項指定方式に賛成することが日本の国益である、中国と国交回復をまだしないほうが国益であるというふうにしか現段階ではとれないのです。ですから中国との間の国益というのは一体どういうことをさすものであるかを明確にお答えいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国益ということばは、御指摘のように、ほんとうにずいぶん広い意味を持っていると思いますけれども、国際緊張の緩和ということも同時にあげておるわけでございまして、やはりそれとの関連におきましても、先ほど私もちょっと申しましたが、近隣に武力抗争が起こるというようなことを何としても防ぎたい、未然に防止したいということが、これがかねがねの政府見解でございますから、そういうことも私はもちろん入る、かように考えてしかるべきではないかと思います。そのほかあげればいろいろ具体問題切りがないかと思いますけれども、要は、先ほど私が、抽象的ではございますが、基本的な考え方を申しましたように、いわゆる一つの中国論に対する基本的姿勢を申し上げましたところにもその趣旨はあらわれているのではなかろうか、かように存ずる次第でございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 それではいま日本が中国にとっている対策といいますか、政策というものは、いまの日本の国益に反しない、こういう了解のもとに今日のような態度をとっていらっしゃるのかどうか、この点だけを念のために伺って、私の質問を終わります。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府は常に国益を考えてまいっております。過去においても現在においても将来においても、これが一番大事なところであると考えます。
  70. 田中榮一

  71. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私は、きょうはおもに日中問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に二、三繊維問題についてお伺いをいたしたいと思います。  現在、日米繊維交渉が非常に難航を続けているわけでございますけれども、その妥結の見通しについてはいかがでございましょうか。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に申しまして、まだ見通しがはっきりついておりませんけれども政府といたしましては、かねがね申し上げておりますように、国会の御決議もあり、それから本件は、国内的には自主規制という方向ということがそれこそ国益に合致することでもあり、そして国際経済に対する基本的な考え方からいっても、これがしかるべきものであると思いますから、そういう線に従って話し合いを進めてまいっております。なかなかアメリカにはアメリカの事情があるようでございまして、もう何とかひとつ話し合いを詰めたい段階なのでございますけれども、まだ見通しを確と申し上げるところまでいっておりません。
  73. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 けさ方の外電によりますと、政府が駐米大使を通じて提案いたしました最終案に対しまして、アメリカ政府が非常に硬直した態度を示して拒否している段階である、こういうふうに打電をしてきておるわけでございますが、大使は政府の訓令待ちだと思いますけれども政府としてこのアメリカの拒否という態度についてさらに譲歩をしようとしているのか、また現段階で突っぱるおつもりであるか、その辺のところはいかがでございましょう。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 訓令というものは、政府としてもいろいろの要素を考えて練りに練り上げた訓令でございますから、そう簡単に変えるべき筋のものではないと思います。ただ私もこれから——実は外電はここにも来ておりますけれども、公電が詳細に来ておるはずでございますから、それを検討いたしました上で今後の措置を通産省その他とも十分協議をいたしまして、これからとるべき措置を考究いたしたいと思っております。
  75. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 繊維の問題の最後にお伺いいたしたいと思いますけれどもアメリカの輸入制限措置が実施されております段階において、わが国としてガット二十三条による対抗措置に踏み切る考えはおありになるかどうか。もちろん通産省との御相談もあると思いますけれども、その辺の外務大臣の御見解を伺って繊維の問題を終わりたいと思います。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御承知のように、この一九七〇年通商法案というものが成立すれば、これはたいへんなことになりますよということを中心とする日本政府の、これは繊維交渉中でございましたけれども、別途訓令によってアメリカ政府に申し入れをいたしております。ガットによるところのいろいろの権利の留保ということにつきましては、そういう際にも明らかにしておるのでありますから、これは事態の推移いかんによりますし、また関係省その他関係方面とも十分練りに練った結論をつくらなければならないと思いますけれども、そもそもから繊維交渉につきましても、やはりガットと関連を持たせて妥結したいということがわれわれの考え方一つの線でございますから、そういう点から割り出されてくる結論はおのずから予見できるとお思いいただいてもいいのではなかろうかと思います。
  77. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 確認でございますけれども、練りに練った最終的訓令だということで、現在アメリカが拒否している段階を見て毛、それを変更する用意はない、こういうふうに受け取ってよろしいわけでしょうか。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この外電を引くわけでもございませんけれども、たとえばホワイトハウス筋によると、米側は外電や米有力紙の東京電が、日本大幅の譲歩といった書き方をしているのにかなりの不満を持っているようだ。つまり自分のほうでも相当歩み寄って妥結をはかりたいという気持ちを裏からあらわしているのではなかろうかとも思いますので、これらの点を十分頭に入れながら、それからこちら側も、ここにも指摘をされておりますように、何も譲歩に次ぐ譲歩ばかりしているわけでは決してございませんことを御理解いただきたいと思います。
  79. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 これこそ国益を考えて奮励努力されることを心から要望いたしておきます。  中国問題に入りたいと思いますが、さきの国連総会におきまして、重要事項再確認決議案が過半数を占めるとともに、アルバニア決議案も過半数を占めた。そしてカナダ、イタリアに次いで最近におきましてはエチオピアがまた中国承認に踏み切った、こういう事実を踏んまえまして、私の聞き及ぶところによりますと、さらにルクセンブルグまたはオーストリア、南米でも、チリ、ペルー等が中国北京政府承認するやの動きがある、このように聞き及んでおるわけでございますが、こうした国際的な動向といいますか情報をどのように見通していらっしゃるか。またいま申し上げた以上のニュースなり、外務省としてまた外務大臣としてほどのような認識を持っておられるか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最近、あるいはこれから各国がどういう動向を示すであろうかということにつきましては、特に新しく申し上げるような情報はございません。しかし、過去のことではございますけれども、先般の国連総会における両決議案に対する表決の状況あるいはそれに至るまでの公の発言はもちろんですけれども、いろいろの経過などを見てみますと、まだまだ何とも捕捉できないような状況にあるのではなかろうかと存じます。たとえば、重要事項決議案に対しては、アルバニア案に賛成をして、そして同時に中共承認あるいは国連加盟に賛成をしておる国の中の有力な国にも、重要事項については賛成している国も現にあるわけでございます。それから、アルバニア決議案に対しては、御承知のように約三十カ国に近い棄権がありましたわけで、その棄権のゆえんというものも必ずしもつまびらかではないと思います。たとえば、これは先ほど戸叶委員との間の質疑応答にも出た問題でございますけれども台湾のステータスに対してどう考えるかというようなことについて、かなりいろいろの国々がいろいろの考え方を持っているのではなかろうかと想像される節もございます。アルバニア決議案なるものは必ずしも一つの要素ではないという点もございましょうが、これらの点につきましては、十分ひとつ念には念を入れて情勢を分析していく必要がある。私は、あくまで日本の中国政策というものは主体的に独自に持つべきでありますが、同時に、これは代表権問題ということではあるけれども、やはり国連の場でもこれだけ問題になっているわけでございますから、国際情勢というものも十二分に注視していかなければならない、かように存じております。
  81. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 正直に申し上げまして、私自身もアルバニア案がことし過半数をとるということでかなり驚いたわけでございますけれども日本以外の各国におきましても、この事実を見てかなり驚いている国も多数あるのではないかという感じがいたしているわけであります。いま数カ国がエチオピアに次いで中国承認の動き、その気配があるということを先ほど申し上げたわけですけれども、現在までのカナダ、イタリー、エチオピアまでの段階を見ても、またはアルバニア案の過半数を得たというこの事実を見ましても、中国の問題、国連を中心にしていま世界の大きな中心になっておるこうした中国を取り巻く動向が、いま北京政府承認というふうに流れを変え始めているのではないか。世界の潮といいますか時流が、いままで私たちが認識していたよりもより足並みが早く北京政府承認というふうに動きを早めているのではないか、このように私自身は思うわけなんですが、大臣はこの点について、エチオピアまでの段階でもけっこうでございますが、この世界の時流といいますか動向について、それをどういうふうに評価しておられるか、どういう見解を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 表決の事実にあらわれたところは、まさにアルバニア決議案が過半数を制したわけですが、私はそのときも申しましたが、その事実というものは、ほんとうにこれは心静かにその結果を見るべきものである、こう申したわけであります。掘り下げて分析すれば、いま申しましたように、相当多くの国が棄権をしておる。それからアルバニア決議案に賛成した国の総数は五十二ですか、これは国連加盟国全体からいえば、まあ比率からいえば五分の二ぐらいの程度でございますから、そういうふうないろいろの分析のしかたがあると思いますけれども、ただいまお話しになりましたように、従来よりは中共に、まあ有利ということばをかりに使うとすれば、中共に有利な情勢が従来より強くなってきたということは事実だと思います。ただ、この中はやはりいろいろ分析してみて、そう簡単に割り切れる状況ではないということは当然だと思います。
  83. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいま御答弁ございましたように、いままでの流れが左から右へ流れているとすれば、中国問題に関する流れがいまや右から左へ流れを変えたとまでいかないまでも、変える入口にといいますか、初歩的段階にあるのではないか。わが国としても、いままでと同じような政策をこのまま続けていくということは、あまり望ましいことではない、これは大臣の口からも再三伺っているわけでございますが、昨日の参議院の外務委員会におきましても、重要事項については再検討をするという御答弁を見ましても、いまのままであってはならないのだ、こういう段階にきている。正直に申し上げて非常にむずかしい段階だと思います。私も元来政府がとってこられた態度については残念ながら反対の態度を持つ者ですけれども、この戦後二十数年間の歴史というのは、確かにその重みというものは理解できないではない、いろいろ台湾を含めての問題もわかりますけれども、ここで世界の潮流が左から右へ変わった段階で、わが国だけが依然としていままでと同じような流れを保つことが、はたして日本の将来にとってまさしく国益をかんがみてプラスになるかということについては大きな疑念がある。  私は、そこで大臣から重要事項について再検討云々という御答弁を伺い、その重要事項を再検討するという姿勢の根底に中国問題を前向きに処理しようとなされておるのか、それとも現状といいますか、いわゆる台湾を中国の合法的な代表政府として認めるという立場を変えないでこの重要事項を再検討しようというお考えであるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず昨日の参議院の外務委員会でも申したことでありますけれども、私の真意というものは、国連における代表権問題の取り扱い方について、従来のようにアルバニア決議案と重要事項指定方式と、これが二つ固定的にずっと扱われてきたというようなことだけではどうだろうかなという気持ちを私は持つのでありますけれども政府としては、先ほど来申しておりますように、まずどういうふうに考えるべきであるかという新しい情勢下と申しますか、先ほど御指摘にありましたような情勢も踏んまえて、そしてこのままでいつまででもいいという意味ではない、そういう意味で前向きといわれれば前向きということになるかもしれませんけれども、これは総理の答弁どおりだと私は思うのですが、日本の考えるべき基本の考え方の上に立っていかに処すべきかということを慎重に検討していくということに尽きると思います。そしてやはり、先ほど非常に失礼なことを申したようでありますけれども、こういう問題については、時間を切っていつまでにきめなければならぬという種類の問題ではなくて、かりにいま発車しているバスがあるとしても、私は安全運転のバスの運転手になるべきものである、こういうふうな気持ちでおるわけでございますので、そういう点については御理解をいただきたいと思います。
  85. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 ただいまの御答弁の時間を切って云々ということは、私もそのとおりだと思いますが、そういう御発言があったので伺うのですけれども、やはりいままでの歴史といいますか、政府のとってきた態度というものは、ある程度継続して、百八十度転換するわけにはいかないだろう、こういう気持ちでおりますけれども、そこで私は、この重要事項を再検討するということがいま前向きかうしろ向きかということでお尋ねしたのですが、別のアングルからお伺いしますと、あくまで一つの中国論の上に立って重要事項を再検討されるという考えであるのか、それとも一つ台湾一つの中国、とうした考えで、私はいままで戸叶先生の質問をいろいろ伺った上での再度の質問でございますけれども、そういう立場での再検討であるのか。いついつまでにという期限を切ったということにからんで、鶴岡さんが国連で、中華民国の国連除名ということについては、非常に遺憾の意という発言をなさっております。これはアルバニア案に対する反論だという御意見もあるかもしれませんが、ここでこういう例が適当であるかどうかわかりませんけれども、私がいま外務委員会に議席を占めておりまして、あそこに席があるわけでありますけれども、これがもし私以外の、次の総選挙か何かで私の七十倍くらいの支持を得た議員が来たとする。そんなことはないと思いますけれども、来たとします。それでその人が当然この席にすわるべき権利を持っておる、また本人も主張しておる、しかし私はここに二十数年来すわっておりますので、また委員長ともじっこんにしておるので、私の席はここで非常に保護を与えられるというか、みんなに協力を得て私はこの席から動こうとしない。それをあたかも肯定するかのごとき鶴岡さんの国連の代表演説ですね。私を——私ではありません。中華民国を追放することは、いままで「中華民国は国連の主要な創設国の一つであり、憲章により課せられた責任と義務を誠実に履行し、国連の権威と威信を終始一貫して高めてきた。これは何人も否定することのできない周知のかつ論議の余地のない事実である。もし国連において中華民国政府が中華人民共和国政府にとってかわられるようなことがあれば、それは加盟国の除名にひとしいものだろう。」というようなことまでコメントしている現段階において、もし私の席をそれだけ確保していただくならば、すわらせるべく主張している者に対する新しい議席をもう一つ用意せざるを得ないのではないか。そういうことにならざるを得ないのではないかという懸念を私は持つものですから、いままた重ねて、大臣のおっしゃっている重要事項再検討云々ということが、いままでどおりの一つの中国論という立場で申されておるのか、さらには一つの中国、一つ台湾という態度、そういう方針をとらざるを得ないということを含んでの発言であるのか、非常にこのような微妙かつ重大な問題でありますので、所見をお伺いしておきたいと思います。
  86. 愛知揆一

    愛知国務大臣 微妙で複雑でありますだけに、クリアカットなお答えができないと思いますけれども、先ほど申しましたように、たとえば国連における扱い方の問題にしても、従来何年かやってまいりましたようなアルバニア決議案あるいは重要事項指定決議案とかいうような固定した考え方で、国連としてもいつまでもやることが、はたしていいのだろうかというようなことも、考えるに値するのではないかというような程度に考えておるだけであって、政府としてどうやったらいいかということについては、全然私としても意見を申し上げているわけではございません。要するにもっと突っ込んで過去の経過等もなにし、内容的にも検討し、各国の動きも見きわめて、真剣な検討が必要ではないかという、そういう趣旨を申したわけでございまして、政府として具体的な提案をしているわけではないことを、あらためて申し上げておきたいと思います。  それからいまの御質問はやはり仮定の上に立ってのことであって、昨年の正月からの国会も思い起こすわけでございますけれども、たとえば沖繩問題につきましても白紙の状態において十分考えさせていただき、国会の非常に盛んな御議論も十分聞かしていただきました。これが政府のその後の行動にあたりまして、おかげさまで非常な成果をあげることができたと私は思いますが、このようなさらに複雑で真剣な問題に対処するにあたりまして、政府が軽々に政府の態度というものを出すべき時期ではない、ほんとうに真剣に考えまして私はそう思うのです。したがって誠意をもってお答えできるべきことはお答えにつとめたいと思いますけれども、同時にその端々の中から、政府見解をいますぐにお求めになりましても、私といたしましてはお答えできないことが多いことをたいへん申しわけなく思います。  そこでいまのお尋ねでございますけれども、これはまた国連の運営上の問題にからんでくる、一体いまの加盟しておる人を追い出すというようなことが、どういう形でできるのかできないのか。できないとしたらそれにどういうふうなことをするのか。これはまた仮定の問題ですけれども、それなりにいろいろ複雑な技術的な問題もあるのじゃなかろうかと思いますし、それから第二十五総会で鶴岡君が演説いたしましたのは、本省の訓令に基づく演説でございまして、これはあすこに書きましたとおり、この二十五総会においてはこれが日本政府としての正しい見解である、こういうふうに考えたわけでございます。
  87. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 いま私が引いた例は仮定でございましたけれども、御質問趣旨は仮定のつもりで伺ったわけではないのです。いまアルバニア案また重要事項指定方式だけで代表権問題を扱うのはどうかという御答弁があったわけですが、そうなりますと何か代案をというふうに考えを持っていかざるを得ないわけですけれども、そのことについてはまだ白紙であるというふうな御答弁でございます。そのことにちょっと関連して、前回私、伺ったことでちょっと国連局長に伺いたいと思うのですけれども、もし日本が、また日本だけでなく、重要事項再確認の決議案が出なかった場合においても、それはバリッド、有効である、前回、西堀さんはバリッドということばをおつけになって御答弁になっておるわけですけれども、これは国連における大多数の見解もそういうふうにとられたわけですか。
  88. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 前のこの委員会において申し上げましたとおり、この重要事項指定というのは六一年に最初に行なわれたわけでございます。したがいましてそのあとのセッションを、これが拘束するものであるかどうかという点につきましては、これは理論的にはあとの会期は拘束しないのだということもございます。それからまた政治的に見ましてもそういったことがございますので、これはやはりまた確認したほうがいいだろうというようなことで、そのあと六二年、六三年はいたしませんでしたけれども、六四年からはずっと再確証の決議ということでやっておるわけでございます。したがいまして、これが今後たとえば二十六総会におきまして、この再確認の決議がない場合、これが有効であるかどうかという点は、日本政府としてはいままで有効であるという解釈をとっております。しかしながらこれはあくまで国連がきめるべき問題でございます。それで国連がきめるべき問題でございますけれども、いままでのところはその点について公式のと申しますか、有権的な解釈というものは行なわれていないというのが実情でございます。
  89. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 日本政府としては従来そういう見解を持っておったけれども、いまも御答弁ありましたように、これは有権的な解釈ではない。もし再確認決議案が提案されない場合においては、六一年の重要事項そのものの決議がどうなるかということについては、いまここでさだかな結論はないということでございますね。それでよろしゅうございますか。
  90. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 そのとおりでございます。
  91. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 次いで、いままで重ねて政府が提案してまいりました大使級会談のことについて、二、三伺いたいと思うわけでございますが、考えてみますと、日華平和条約を締結した三年前に新政府といいますか、中華人民共和国の政権が誕生しておる、そして現に大陸を統治している、そういう事実にのっとって、いわば大陸のほうとしてみれば、日本とは戦後処理がまだ終わっていない、こういう認識に立つこともやむを得ないのではないかというふうに私たち考えるわけでございますが、そういう立場において日本が大使級会談を呼びかけたところで一体それは何を目標として、何をねらっての大使級会談であるか、私たちも非常に疑問に思うわけなんです。われわれが疑問に思うくらいですから、北京側はもっと疑問に思っているんじゃないかと思うのですけれども、この辺についてどういうことをねらって、何をねらって大使級会談ということをいままで再三口にされてきたのか、これについてお伺いしたいと思います。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この沿革についてはいまさら御説明するまでもないと思いますけれども、抑留邦人というような人道的な問題がございますから……。これについては、かつてジュネーブで双方の総領事級の会談をやりました事実もあり、大使級の会談あるいは外交機関同士の会談で抑留邦人の問題を解決をしたいということを申し入れました事実がありますことは御承知のとおりでございます。その後も公に言っておりますように、大使級会談というものができれば、わがほうとしては、いついかなる場所でも、何といいますか、門戸は開きますということを意思表示はいたしております。  そこで、何を話すのか、向こうの態度がわかるから言ったって応ずるはずはないではないか。なるほどこれも一つのりっぱな見方であり、推測であると思いますけれども、私思いますのに、たとえば日本に対して、実情あるいは日本政府考え方というようなものも基本的にもう頭から非難をされておるわけですけれども、昔のことばですが、話せばそういうところはわかるのではないか、また向こうさんの基本的な対日観ということも伺えるのではないか。まずその辺から門戸を開いて話し合いを始めるということに、私はできるなら意味があるのではないか。対外折衝の場合におぜん立てを並べまして、こういうごちそうを食べていただけませんかという出方もございましょうけれども、私はいまの日中関係はそういう出方はむしろ不適当ではないだろうか。たとえばお互いに内政不干渉、そしてできるなら武力行使というふうなことは欲せざるところである、日本の軍国主義というようなことは全く思いもよらない、また意図に反したことであるというようなことも、それなりに、これは政府の責任をもって話し合うことによって理解の度が少なくとも進むのではなかろうかということを期待しておるわけでございます。いま申しましたように、いろいろの案件を並べて折衝に入るというようなやり方よりはそのほうがよろしいんではないか、こういうふうに思っておりますので、ただいまのところは大使級、政府機関間の接触ということができれば望ましいという態度をとっておるわけでございます。
  93. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 現実問題として大使級会談が実現した場合、その大使級会談を担当される大使の方は自由裁量にまかされて向こうの大使と会談をするわけではないと思うのです。むしろしかるべき訓令を受け取って後大使級会談に臨むんだと思うのです。政府としても、そういう大使級会談の用意があると言った以上は、その訓令を出す用意も当然あったと思うのです。親交を深めろとかまたは世間話をして来いとか、一口に言うとどういうことを望んでいらっしゃるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま申したとおりでございまして、日本政府の基本的な考え方、特にまずもって北京側が日本に対して一つ考え方を持っていることは、これは公表されて明らかなところでありますけれども、こちらとしてもそういう点についてもっと聞いてみたいと考えるわけでございまして、そういう点からだんだん話がほころんできて中身に入るようになれば、またそれに応じてこちらの対処策もある、私はそういうふうな考え方でございますから、かりに訓令とかなんとかいうことになれば、やはりそういう基本的な考え方で大使にやってもらいたいという考えでございます。
  95. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 先ほど申しましたように、現段階におきまして日本から再三呼びかけましても、大使級会談というのは実現する可能性は非常に私はないのではないかという悲観的な立場に立っております。しかし、過日の総理の各党代表質問に対する御答弁にもありましたように、また台湾と北京との武力不行使というような問題、武力による解決は望ましくない、これは当然でございますけれども日本と中国との両国間においても武力による解決は望ましくない、これは言わずもがなでございますが、そうなると、話し合いの場を積み重ねて北京との接触、アプローチをはかる以外には方法はない、こういうことになってくるわけなんです。私は、もし大使級会談で向こうが応じてこないならば、むしろ外務大臣が直接乗り出して、政府交渉を始めるという正式申し入れをするような用意があってもいいのではないか。もし外務大臣でもだめだったというんだったらば、総理並びに閣僚級のそうした会談の用意があるというところまで、日本としては何を向こうの、いわゆる俗にいう土下座外交をするということではありませんけれども、やはり中国問題に対する真摯な態度を政府としては貫いていくべきではないか、こういうように私自身は考えております。一挙に外務大臣の会談といいましても、なかなかそこには踏み切れないと思います。またいろいろなむずかしい問題もあると思いますが、前々から話題になっておりました航空協定でありますとか、または気象、郵便協定等は、もう具体的な交渉のステップを踏んでもいいのではないか。むしろそうすべきではないか。そういうことがやはりいまのこの台湾を含んだ非常に複雑な中国問題の解決の私たちの具体的な前進になっていくのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この郵便、気象、航空、漁業、こういった協定についてそれを具体化する御意思その他についてはいかがでございましょうか。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外相会談ということについては、ただいまのところは考えておりません。こちらとしては大使級あるいは政府機関間の接触ということで、いま態度を示しているわけでございます。  それから、気象、郵便等々のお話は、いわゆる民間の実務者間の協定というようなことを想定なすっておられるかと思いますけれども、ある程度これらの点は実効を現にあげておりますし、漁業問題なども実際漁業の実務者同士で話もできておるというようなことでもございます。なおよく検討はいたしたいと思いますけれども、特にいま新しいことを考えているわけではございません。
  97. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 総理の答弁でもきわめて慎重にということを重ねられておりますし、ただいまの大臣の御答弁でも、きわめて複雑な要素をはらむ問題だけに慎重に考慮していきたいという御答弁をお伺いしているわけなんですけれども政府だけでなくて、私たちも日中問題については非常に慎重に、なおかつ真剣にただいま考えております。それで台湾の問題——私は、この台湾問題というものが日中問題の解決の入口であっては解決はほど遠いのではないか、むしろ日中問題の出口として台湾問題を考えるべきではないかという個人的な意見を持っておりますが、大臣の御答弁を伺っておりましても、ここではなかなか御発言できないような含みもあるやに私たち感じておりますけれども、もしこの中国問題または台湾問題等について、きのうも参議院でそういう発想があったように伺っておりますが、もし秘密会議であればもう少し政府また私たち野党も含めて、この問題を詰めるお気持ちがあるかどうか。その点はいかがでございましょうか。
  98. 愛知揆一

    愛知国務大臣 秘密会議等につきましては、これは委員会としておきめいただくことに政府は何の異存もございません。
  99. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私がお伺いしておりますのは、委員会がきめても大臣のお気持ちがなかったら何も意味はないわけなので、そのことを先にお伺いしているわけなんですが。
  100. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあ私としては、民主的な日本の世界に誇るような青天井の国会で、ここでの御議論はすべて一瞬のうちにどこへもキャリーされるような状況でございますから、これはあくまで尊重し、またそれだけに私としてもお答えがぎくしゃくするところがあることはお許しいただきたいと存じますが、そういう前提で別のことを委員会としてお考えになるならば、それに異存はございません。
  101. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 非常に微妙な御答弁で、何とも判断がむずかしいわけなんですが、これは委員長にぜひ衆議院の外務委員会として秘密会議を持つことを要請いたしておきます。よろしくお願いいたします。
  102. 田中榮一

    田中委員長 委員長として検討いたします。
  103. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 最後にお伺いするわけでございますけれども、ただいま戸叶委員からも時期的な問題について云々という御質問がございましたけれども、それは私たちは期限を切るというようなことは毛頭ございません。ただ、いろいろ試行を重ねていく上において、大臣はいつごろまでをめどにこの問題のある程度の結論を出したい、いつごろが最も妥当な時期であろうかという客観的な観測がもしございましたらお伺いしておきたいと思います。
  104. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど戸叶委員にもお答えいたしましたように、期限を切って考えるというようなことは私は考えておりませんけれども、しかしそうはいうものの、たとえば国連総会というようなものは毎年ございますですから、そういうことも考慮に入れなければいけないと思っております。
  105. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 終わります。
  106. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  107. 曾禰益

    曽祢委員 去る十一月十七日の本委員会におきまして、もう迫り来る国連総会における中国代表権問題の表決等のことも踏まえながら私の意見も申し上げ、また外務大臣の御見解を伺ったのでありますが、きょうまず最初に伺いたいのは、とにもかくにも今国連総会におきまして、初めてアルバニア決議案が過半数をもって、つまり有効投票の過半数をもって通過した、政府が非常に力を入れておった重要事項指定方式も通ったけれども。こういう事態を的確に予想した人はおそらくなかったと思いますけれども、アルバニア決議案はあるいは通るかもしれないという予想は当時からもうわかっておったわけでありますが、これに関連いたしまして外務大臣はいかにこの表決の内容を評価されるのか。この点をまず念のために伺っておきたいと思います。
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この結果が明らかになりましたときにも私は報道界の方々にも申したのですけれども、ちょっと書生らしいことばでたいへん恐縮だったのですけれども、私は敬虔にこの結果というものを見ていろいろこれからも考えていかなければなるまい、率直にそういうふうに申したのでございます。その気持ちに変わりはございません。
  109. 曾禰益

    曽祢委員 外相としては非常に何といいますか、慎重な言い方をされるのは当然ですが、私は国会議員の一人として率直に評価いたしますと、この前の委員会でも私が申し上げましたように、わが国がよその国の態度に左右されて中国代表権問題あるいは中国政策を変えるということはいけない。しかし世界の大勢を見て、そして適時適切な政策をとる必要がある、こういう意味からいいますと、今度の表決は、両方の決議案を通じてやはり大陸中国、北京政府を国連に迎えるべしということがもう圧倒的な力になってきた。これが一つ。それから第二に、それにもかかわらず、特にアルバニア決議案の棄権が非常に多い。二十五票、これは何を物語るか。この点についても、私が先般申し上げましたように、国連の中では、中国の代表権を北京政府に認めるということは、憲章の精神、国際平和からいって毛当然である。フィクションを排して現実に眼を向けるならば、それは当然である。同時にこのアルバニア決議案のそれならば、国府を直ちに除名といいますか追放といいますか、議席を奪っただけで済ませておく、このことに対してはそうかなあと、むしろ反対あるいは非常に懐疑的だ。これが棄権の数が多いというところにあらわれているのではないか。まさにこれが国連における少なくとも気流といいますか、傾向ということがいえるのじゃないか。私はそういう点を考えるのですが、それに対しては外務大臣はいかにお考えでしょうか。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まずお断わりいたしておきますが、私が申しますことが政府見解と今後の中国政策とおとりにならないでいただきたい。これは慎重に検討中でございますから。  この投票の内容の分析について、どういう点が特徴的であるかということについては、大体曽祢委員の御指摘のとおりではないかと思います。なぜ多くの棄権が出たか。これは一人一人探究したところまで調べているわけではございませんけれども、やはりいろいろの理論的な根拠や現実的な見方が基礎だと思いますけれども、やはり憲章の原則その他からいって、いま中国のほうのことをメンションされたわけですが、逆に台湾のステータスに対してやはりこれを追い出すというところには抵抗を感ずる、あるいは積極的にこれを擁護して、国際社会の中にりっぱに一つの存在として認めるべきだ。その比重その他いろいろの考え方でございましょうが、そういうことがこの棄権のためらいの相当の要素を占めていたのではないだろうか。それから、アルバニア案に賛成投票したある国々の間にも、あの半分には賛成なんだが、半分にはためらいを持ちながら賛成投票をしたという、これは留保という国際法上のあれではないかもしれませんが、そういう見解もあったように思われます。ですから概していえば、ただいま曽祢さんの御分析のようなことで、客観的な事実はあったのじゃないかと私も思っております。
  111. 曾禰益

    曽祢委員 私は、現状の少なくとも国連における中国問題、代表権問題に関する底流というもののとらえ方は客観的でなければなりませんから、私は見解が一致した、評価が一致したと思います。  そこで、これから先がいよいよ問題のあれなんですけれども、その後の外務大臣の御見解の発表等については非常に慎重にやっておられたけれども、少なくとも私はその中で、やはりそういったような抵抗、すなわち北京政府を国連に迎えるということについてはこれを妨げる人為的な一かつてのたな上げ方式、あるいは重要事項指定方式、これはもう適当でない。だからそういうことでなく、またアルバニア決議案も必ずしもコンセンサスのものにならないのではないか。そういうことで、何かここに新しい一つの国連対策といいますか、これを模索中である、こういうことではないかと思うわけであります。  私はその点、当然そうなくてはならないと思うのですけれども、ただ残念なことには、現時点においてはまだ政府の方針は統一してない。そしてこれを総理大臣の表現をもってすれば、実際何を言っているんだかよくわからないような、国際情勢あるいは国連の動向等を勘案して、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資するという意味で慎重に考える、これは全く、雨が降っているときは天気が悪いと同じことで、まことにあたりまえだらけであって、これでは方向すら見出すことはできない。国益に合致しないような外交なんてありっこないんだし、日本の外交である限りは、極東の緊張緩和に資するためにやるにきまっているのですけれども、しかし問題は、国際信義を重んじということ、これがなかなか一つの問題だろうと思うのです。その点についてこの前も私申し上げましたように、わが国条約を守るということは当然の原則であって、その意味で、気軽なあるいは身軽な諸国のように、ただそれをまねして、バスに乗りおくれるなという態度はよろしくない。しかしいまや、問題は何といっても次の国連総会におけるわが国の態度をきめるという問題だけでなくて、総会を待たずとも、いろいろ国連の安全保障理事会でもこういう問題が議論になることもありましょうし、もはや国連における中国代表権の問題については、やはりわが国の基本的姿勢というものをきめていかなければならないのではないか、抽象論だけでは済まない段階にきているのではないかと思うのです。  それかあらぬか、外務大臣の最近の新聞報道にあらわれる、あるいはきのうの参議院外務委員会等における議論、本日の議論等を伺っておっても、少なくとも一つの微妙な変化、しかしその変化を私はいい方向だと思うのです。つまりそれは、いままでは何かというと、一つの中国でいきます、ただしその一つの中国というのは、国民政府オンリーで、大陸は事実上、政治上あるいは条約上無視している。そこから一歩抜け出そう、それに必ずしも拘束されないで、確かに中国という一つの民族国家に二つの政府が争っておる。それがいずれも自分が完全な全中国、台湾を含めた全中国に対する支配権を主張している。そういう一つの事実がある。それに日本が頭からさからっていくような、一つの中国プラス台湾方式というようなことを言うのではない。しかし必ずしもいままで言っているような台湾だけが中国だということにとらわれないで、もう少し、単に国際連合におけるコンセンサス及び動向から見ても、それではいけなくなっている。むしろ逆に中国を代表するものは大陸を有効に支配する北京政府である。だけれども、われわれは国府に対し、条約上その他のいろんな関係から、特殊の考慮を国連において求める。こういう方向に私はすでにもう発車しつつあるのではないか、政府はこの辺で見切り発車かどうか知りませんが、いつまでも考えておられるだけでなくて、一つの方向をはっきり打ち出していかれる必要があるのではないか、こう考えます。少なくとも国連の場合における議論としても、先ほど来議論になっておりました、いつまでとかなんとかという問題は、私は必ずしも決定的じゃないと思うのです。いますぐとかの問題じゃないけれども、来年の国連総会まで待てというのんきな問題でもなし、国連の代表権問題に対する基本的なかまえとしても、私は日本政府の態度を、いま申し上げたような方向で、北京政府の国連参加はこれを妨げない、しかし台湾といいますか、あるいは国民政府の問題については特殊の考慮が必要である、こういう方向を確立されるのがいいのではないか、これは私の意見でございますが、外務大臣の御見解を伺いたいのであります。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、くどくなりますけれども、ただいまもお話がありましたように国共相克から始まった第二次大戦後の経過をずっと見てまいりましても、現在双方が一つの中国という看板を絶対に譲らない、しかも自分のところだけが唯一の合法政権であるということは、たいへん率直にいえばお互い同士で解決していただくよりほかに道がないのじゃないか、ただ武力行使ということだけはやめてもらいたいということがやはり基本ではないかと思います。そして同時に、話し合いがつけばその結論というものを一これはどういう結論になるか、またその話し合いなんといったって、他人まかせでもっと日本はせっかちにやれ、こういうせっかちな議論もありますけれども、事柄の道理からいって、私はそう考えるべきものではないかと思います。そうしてその考え方に対しては私はあまり異論は——少なくとも事柄の筋からいっては、道理が立つのじゃないだろうかと考えておるわけでございます。そしてそういう考え方の基本のもとに立って、これからどういうふうに展開していったらいいかという方法論その他に及ぶべきではないだろうか。ずいぶん方法論だってこれはたいへんなむずかしさがあると思いますが、しばらくこれらの点についてそれこそ慎重に考えさしていただきたい、また大いに各界各層で御議論を出していただきたいというふうに、政府のただいまの立場はとっているというわけでございます。
  113. 曾禰益

    曽祢委員 私は一つの中国論をとるかとらないかというふうに詰め寄ることをいたしません。私はむしろ御返事いただくのもちょっとかえって苦しめることにもなると思うし、必ずしも政治的でないと思うから、私が一方的に言っているようですけれども、少なくとも政府一つの中国、それは国民政府であるというところから離陸しようとしているのだ、そのことはいいのじゃないか。ただその場合に国民の中には、だから一つの中国それは北京だ、台湾に対する北京の領有権あるいは解放権まで認めるべきだ、少なくともそこまで決意しないと日中問題の打開はないというふうに言う方もありますけれども、私は必ずしもそれが日本の国益に合致すると思わない。したがっていまこの一つの中国論即国民政府中国論から離陸しようとしているものとして一応それだけに評価したい。  そこで、国連における代表権の問題等についての方式はいろいろございましょう。戸叶さんも触れられたように、継承国方式ということが通俗的で条約局長はむしろわからぬと言ったのでしょうけれども一つの中国に二つの政府が継承国みたいになって、そういうことで両方とも継承国として認めたらいいじゃないかというような意見もあろうし——これは戸叶さんの意見というのじゃなくて、そういう意見もあろうし、あるいは台湾に関しては、いま外務大臣が言われたように、少なくとも台湾と北京政府とが話し合いで解決してくれる限りは、だれも異存がない、こういうこともあろうし、それをまた国連の事務総長にあっせん役をやれという政治論もあろうし、いろいろあろうと思いますが、その詳細は別の機会に譲りますが、私はやはり国連における代表権問題と日本の二つの政府に対する対策といいますか、両政府に対する中国政策、これは同じものじゃないことはわかっている。つまり、かりに国連において北京政府だけが祝福されて国連のメンバーになって、台湾がアウトになったとしても、アメリカ台湾との条約が直ちに失効するわけでもなし、日本台湾との関係条約的、政治的、経済的に直ちにどうということはない。両者は別ものであるけれども、だからといって、これだけの大きな問題をわが国の中国両政府に対する基本的な姿勢というものと無関係に、ただ国連の場における議事手続的な動きとして取り上げることもできないと思います。ですから、やはりいま外務大臣が言われたように、われわれの、日本の基本的姿勢は何なんだ、それを往々にして誤りに導きやすいただ一つの中国論か一つの中国プラス台湾かというふうに簡単にフォーミュラ化しないで、基本的な考えはどうなのか。確かにネーションステートとし七は一つであるけれども、二つのガバメントが争っていることも事実。それとわが国条約関係等々を踏まえて、新段階に応じて一体どういうふうな方向でわが国の中国政策一つの方向づけしていくのか。これなくしては大使会談も全く夢物語であるし、また、ただ両政府よ、何とか話し合いしてくれということも全くおとめの祈りにすぎない。政治外交政策にならないのですね。したがって、そこら辺の方向をやはり十分にお考え願って、やはり筋道のある——かといって、いま総理の言っているようなただ抽象論だけでなく、現実を踏まえながら、日本の中国政策はいままではこうだったけれども、ここまで前進する、その態度で国連ではこういうふうな手を打っていこう、北京政府とはこういう意味で会談なりあるいは従来の民間協定から政府協定への積み上げをやっていこう。また国府に対しても、私はやはり何といってもいつまでも二十年前のただ歴史の上に存在するということはかえって孤立するだけだという友人としてのアドバイスも必要だと思うのですね。そういうような一連の政策決定というものがなされなければいけないのじゃないかと思うのですが、そういう基本的な姿勢、特に国連における議事手続上のテクニックでなくて、新情勢に応じて中国に対する基本政策というものをこの際固める。それに基づいて二つの政府にそれぞれ対処していき、またその裏返しとしてあるいはその先駆として、なかなかむずかしいから、まず国連の場でコンセンサスをつくって、その裏打ち、裏返しを両政府にひとつ持っていこうという迂回作戦も私はあっていいと思うのですね。そういう意味で、国連対策もそのラインに沿うて考えるというようなことをお考えであるかどうか、伺いたいのであります。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも率直にお答えするのですけれども曽祢委員最後のお考えは私想像できるのですが、その点に触れることはいまお許しをいただきたいと思います。  問題の取り上げ方あるいは進め方ということについては、私も同じような考えを持っておりましたので、たいへんその点はありがたく思うのですけれども、やはり前にこの委員会でもお話が出たかと思いますが、国連での取り扱い方というのは次元が低い問題だと総理が言ったことがあるが、どういう意味だというお尋ねをいただいたことに関連して私がお答えしたこともありますけれども、やはり本質論と国連の代表権問題の扱い方というものは分けて考えなければならない。しかしこれは本質論があることによってそこへ行く問題であります。  それからいまもお話がございましたように、日本がこういうことが一番望ましいということのコンセンサスが積み上げられましたならば、それを胸に置いて国連における代表権扱いのしかたをなるべく多くの国々の協調を得るという行き方もありましょうし、そこは両々相まって、別にどっちが次元が高いとか低いとかいうことではなくて、考え方として大切なのは前者であって、後者のほうはむしろそれに裏表の関係で目的を達成するようにやっていくべきことである、大体こういうお考えと思いますが、私は事柄がそういう事柄ではないかと思います、まず本質的にどういうところへ終点を想定するかがだんだん盛り上がってきましたならば、それに応じて代表権の取り上げ方については、たとえば決議案のつくり方にしてもどういうつくり方をやるか、あるいは複数の考え方はどういうふうな考え方があるのかというようなことがおのずから出てくるのではなかろうか。私どももそういうことを頭に置きまして、今後とっくりと周到にみずからも考え、またこういう重大な問題につきましては、党派を越え、国民的に百家争鳴であってしかるべき問題ではないか。そして政府の責任において取りまとめて、その方向で動きだすということが私は外交の正道ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  先ほどお答えいたしましたように、終点が東京駅であるのが望ましいか上野駅であるのが望ましいかということについては、あるいは曽祢委員の想定されていることと必ずしも同じではないかと思いますけれども、列車の仕立て方については御同感であります。
  115. 曾禰益

    曽祢委員 私も両政府話し合いできめてくれる、これは一番望ましいのですけれども、なかなかそういかないところにむずかしい問題がある。もっとはっきりいえば、少なくとも、どうきめられるかは平和的であるならばかまわない。しかしいずれにしても実力による解放とか、武力による解決ということは、わが国としては国際平和の見地から絶対反対である、こういう態度が基本的になければならない。外務大臣のことですから、ぼくみたいにあまり強い表現はされないことはわかりますけれどもわが国国民からいえば、わが国の付近でとにかく武力によって解決するということだけはわれわれとしては断じて賛成できない。その範囲内においてぜひ平和的に解決してほしい。台湾と北京政府とが一本になって、それがどういう自治区になるとかならぬとか全部おまかせだ、あるいはその一つの行き方としては話し合いによっていわゆる国家が別にできることもあるかもしれない。こっちから、こうしなければならないとか、口を出すとか、差し出がましいことはしないのだ。しかしその基本としては、私は国連憲章の第一条の精神、民族自決の精神が尊重されなければならないということは考える。また条約について、みずからがこれを破ることはない。こういうような基本線があろうかと思うわけです。ひとつ十分にお考えを願いたい。  それからきのう、私は参議院の外務委員会のあれを聞いておったわけでもございませんし、むろん速記録をとったわけじゃありませんが、NHKの七時か何かのあれを聞いておりまして、黒柳さんの御質問趣旨がどういうことかよくわからなかったのですけれども日本があまり刺激的なことをするなという意味で言われたのじゃないかと思うのですが、台湾との経済関係等についても慎重でなければならぬのじゃないか、こういうような趣旨の御質問らしいのですが、それに対して十分に検討するというようなお話があったというふうに伝えておりました。その真意はどういうことなのか。——経済関係といってもいろいろございましょうけれども、純粋な経済関係、貿易もあろうし、あるいは借款もあろうし、こういう点を——御質問のほう知らないのですけれども外務大臣答弁というものについてちょっと私が正確に知りたいので、その点お答え願いたい。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国民政府からは、かねての円借款の期限といいますかが到来したわけでございますが、新しくこれをどうするかという問題は、先方からの申し入れもありまして、政府としてはそれに対する態度をいま関係各省とも相談中でございますが、私の考え方は、たとえばこれは他の国に対すると同じことですが、軍需産業的なもの等についてはこれはできるだけ避けるべきが当然だと思います。平和的に、民生の安定のために、千四百万人の国民のためになるようなプロジェクトについてケース・バイ・ケースでこれを検討するという態度が私はしかるべきであると思います。つかみで何億ドルの円借款というような取り上げ方ではなくて、合理的に、プロジェクト・バイ・プロジェクトで考えるべきものである。これは台湾に対するだけではございませんで、現在の政府の基本的経済協力の姿勢でございます。これはアジアの諸国に対しましても、あるいは近東、アフリカ、南米その他に対しましても全く同様の立場でございます。あるいは韓国に対しましても。そういう面で十分配慮してやれよという、私御趣旨は——短時間でこざいましたから、あるいは軍事協力というようなふうに誤解されるようなことについてまでやる気か、そういうことは十分検討してやれよという御趣旨かと思いましたから、十分慎重に配慮いたしますとお答えしましたが、内容的にはいま申しましたような考え方で律していくべきものである、こう思っております。
  117. 曾禰益

    曽祢委員 中国問題はこれで一応締めくくりますが、最後に私の申し上げたことをもう一ぺん申し上げさしていただきたいのですが、一たび新しい情勢に基づく前向きの中国政策——それは基本において北京政府を国連に迎える、北京政府が中国の代表者である、こういう基本に立ちながら、しかし条約等のこともあって、われわれはこういう問題を必ずしもバイラテラルな話では非常に困難がある、そういうときに、従来政府が国連の場における中国代表権問題をいわば肩透かしといいますか、やっていたのですが、そうではなくて、私はむしろ国連のコンセンサスを求めて、そこから一つの突破口というと語弊がありますが、進展へのきっかけをつかむというくらいな積極性を持って、国連の場を使うというような積極性を持つのがいいのではないかという考えでございます。その点についてもぜひひとつ十分な考慮をされることを希望しておきます。御返答は要りませんが。  そこで第二に、先ほどどなたか同僚委員からの御質問があった点ですけれども、実は、アメリカ軍のわが国からのいわゆる縮小といいますか、この問題について伺いたいと思います。  先ほどの応酬を聞いておりましたが、まだ固まっておらないからというお話でございますけれども、私はこれも非常に重大な一つの方向だと思うのです。わが国の安全保障のあり方から見まして、やはり基本的にいま直ちに日米安保条約を破棄するということの危険、プラス・マイナス等を考えますと、私は安保条約のメリットはある。しかし、駐留の形式、基地の使用等については大きく変わっていかなければ、安全保障の約束そのものがむしろ空洞化されるというか、日米間の離間の問題にすらなっていく、こういう意味でいゆるニクソン・ドクトリンといいますか、わが国の駐留も減らしていくということは基本的には健全な方向だと思うわけです。こういう意味で単にまだはっきりした向こうからのあれじゃないというようなお答えでなくて、こういったような駐留軍の撤退、減少、そうしてこの基地を平時の駐留をほとんどなくして、そうして一種の有事来援といいますか、必要なときには共同使用するというような方向を基本的に外務大臣はどういうふうにお考えであるか、まずこれを伺っておきたい。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 米軍基地あるいは駐留米軍の問題につきましては、私も就任以来大体いま曽祢委員のお述べになりましたような基本的な考え方でずいぶんいままでも努力してまいったつもりでございますし、また相当程度合意といいますか、進捗が今日まで見られてまいりました。これを、その根拠についてはアメリカのほうのまた一方的なかってで云々というような批評をされる方もあるようでございますけれども政府といたしましても、傾向として歓迎すべき傾向であると私も考えております。  そこで、現実の、最近新聞報道されている件でございますが、これはまだ米政府としても正式あるいは非公式に公表したものではございませんし、それから公式に私も受け取っているわけではございませんが、ああいう線の検討がかなり具体的に米側においても行なわれていることは事実のように存じております。  そこで今後のなんでございますが、これは日米協議委員会の議題の問題でございますから、国会などの御都合もしんしゃくして、私に時間をちょうだいできる時間に、もう少し具体的に言えば、できればクリスマス前くらいに一度日米協議委員会を開きまして、そうして十分米側と私自身も意見の交換をいたしたいと思っております。そうしてそれによりまして具体的に作業に移るというふうになればたいへん望ましいことと思っておりますが、まだその日取りその他等についても米側と最終的な打ち合わせばできておりませんので、いま私の心組みだけでございます。  ただ、率直に申しまして、国内的ないろいろの問題も想定されるような性格の問題でございますから、防衛庁、防衛施設庁はもちろんでございますが、その他関係省ともこの種の問題は十分にとっくりと周到に検討いたしまして、この基本の線が望ましい線だろうと思いますから、その線によって国内的にフリクションが起こらないように万全の受け方をしたい、こういう心組みでおる次第でございます。
  119. 曾禰益

    曽祢委員 これはまだ正確ではないかもしれませんが、大体方向としては間違いないと思うのですけれども新聞の伝うるところによれば、横田の戦爆の三飛行隊及び戦闘偵察中隊が一つと、三沢の戦爆の三飛行隊及び戦闘偵察一飛行隊、これが全部米本土あるいは韓国に分かれていくということのようでございますし、厚木からも海軍偵察機が全部いなくなる。いろいろな関係で横須賀においてはもう第七艦隊も佐世保のほうに行ってしまって、横須賀のほうには海軍司令部しか残らない。以上を通じて残留部隊は実戦部隊としてはほとんど横田の、要するに陸軍の空輸部隊、これは実戦部隊かどうかは別として。それから岩国の第一海兵航空師団だけが残るのではないかというような、これは相当思い切ったドラスティックな実戦部隊の減少だと思うのですね。ほとんどなくなるといってもいい。むろん沖繩と岩国等に相当な海兵師団を中心とする航空兵等及びあれが残るわけでございましょうけれども本土だけのほうからいえば画期的なものになるのじゃないかと思う。したがってこれはいわゆる安全保障条約のあれからいえば、やはりこれだけの大きな兵力がなくなるということについては、当然事前協議をかけてくる問題なんでしょうか。その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは安保条約上の事前協議ではございません。しかしいまも申しましたように、安保協議委員会におきまして十分こちらも——これは経過はあまりこまかくなりますから申し上げませんでしたけれども、たとえば一昨年五十カ所の基地を整理ということになりましたような背景、経過も、日本側からのかねがねの要望にこたえて向こう側から出てきた。今回のものも、先ほどちょっと先回りしたようなことも申しましたけれども、一部には米軍関係で一方的にかってに云々という批評もございましょうが、政府立場からいえば、かねがねの政府要望にこたえて、少なくともこたえる部分が相当あって、そして米側としてもこういう体制を示してきたものであるので、歓迎すべきことである。十分協議委員会を通じまして協議連絡をいたしてまいりたいと思います。
  121. 曾禰益

    曽祢委員 事前協議対象にならないというのはどういうわけですか。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それでは条約局長から……。
  123. 井川克一

    ○井川政府委員 事前協議に関します交換公文にありますとおり、その第一でございますが、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、」アメリカ軍が日本に入りますときの重要な変更というふうになっておりまして、(「撤退は配置じゃないか」と呼ぶ者あり)「日本国への配置」というふうになっているわけでございまして、引き揚げその他は、ただいま外務大臣がおっしゃいましたようにもろもろの協議ということを経て行なわれるわけでございますが、この事前協議事前協議ではございません。
  124. 曾禰益

    曽祢委員 そうすると、撤退の場合には正確な意味でいう事前協議に入らない。ただ実際上は、これは政治的にも非常に大きな問題だから、その事前協議の解釈とは別に必ず協議するわけですね。こちらから早く基地をあけてくれという問題もあろうし、駐留の場合は向こうから話をしかけてくる、こうこういうことですね。基地の場合はこっちが早くあけろということもありますけれども、駐留軍の場合には観念上は、帰るけれども云々ということを向こうからいってくる、こういうことですか。駐留軍の引き揚げの場合ですからね。日本から帰れということもあるかもしれないけれども、現政府においてはそういうことがないと思うから、駐留軍引き揚げの場合には、向こうからこうしたいと思うがということで話をしかけてくるのですか。これはどういうふうになっているのですか。
  125. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 従来、米側在日米軍の兵力について移動を行ないます際には、事前にしかるべく日本側に話を持ってきておる例は多々ございます。しかしこれは、先ほど来問題になっております条約上のいわゆる事前協議とは全然別種のものでございます。
  126. 曾禰益

    曽祢委員 最後に、もう時間がなくなったのですが、いわゆるこういうアメリカ軍の引き揚げ、しかし事実上おそらくこれはこれからは事前協議内容になると思うのですけれども、想像されるのはやはり飛行場等については有事来援、有事使用という含みがあろうと思う。そういう場合には、この前から問題になっている地位協定の改定等がやはり必要なんではないか。その点もお考えの上、対策上そういうことも必要ではなかろうか。  それから単なる国内的措置といえばそれまでですけれども、駐留軍の離職者に対するあたたかい態度。それからもう一つ、横須賀の船舶修理施設というものが全くもったいないわけで、佐世保がそうであるように横須賀も何らか民間的な、あるいは場合によったら政府の関与した公社的なものにして、そして佐世保でやっているようにアメリカ軍あるいは日本の自衛隊のそういう需要に応ずる、しかし一般の民間の船舶修理、補修もやるというようなことを考えていく必要があろうかと思うのです。これは第七艦隊の修理等は必ず日本に残るわけと思いますから、その点についてのお考え、三点ですね。  一つは、いわゆる地位協定の解釈上ちょっと無理だと思う有事来援的な共同使用については別個の協定が必要ではないか。第二は、駐留軍離職者にあたたかい対策をとって不安をなくする。それから米海軍がいままで直接に使っていた横須賀がもし解除されるようになれば、それは日本側が積極的にアメリカ日本の軍需、それから民需を通じた船舶修理施設というものを、要すれば政府が関与してそういうものを残すのが必要ではないか、この三点についての御所見を伺います。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一の点は、政府としていわゆる有事駐留という説をとっておりませんことは御承知のとおりでございまして、安保のワク組みの中でこうしたことは処理していく。そして地位協定の問題については、前にも私申したことがありますが、改善の余地がないではないと思いますけれども、これは大切な沖繩返還を控えておりまして、何らの変更なしに地位協定沖繩に適用したい。これは何らか誤解を生むおそれがあってはいけませんから、完全な本土並みということで沖繩返還を実行いたしまして、その後の時期において沖繩本土も一体の状況において必要な改善が考えられれば、その後の問題として取り上げることにいたしたいと思っております。  それから先ほど私、国内的なむずかしい問題があると抽象的に申しましたのはまさに御指摘の二点でございまして、これに関連いたしまして労働界あるいは雇用問題ということに関連があり得る性格の問題でございますから、これについては、もしあれば周到な国内的な準備と対策が当然必要である。そういう点についても十分準備しなければならないと思います。  それから先ほども申しましたように実は協議委員会をまだ開いておりませんので、こまかい点について私御説明するだけの準備がまだできておりませんが、おそらく艦艇の修理施設あるいは具体的には横須賀の問題等、御指摘になったような問題もあり得ようかと思います。十分御趣旨に沿うような対処をしたいと思っております。
  128. 田中榮一

  129. 松本善明

    松本(善)委員 私は、中国問題についてお聞きするつもりでありますが、その前に、先ほど上原委員にお答えになりました点について二、三確かめておきたい点がありますので、それを先にお聞きしたいと思います。  外務大臣は先ほど、アメリカに対する請求権の問題につきまして、本土として日本が独立したときに請求権を放棄している、この考え方は踏襲しなければならないのだ、こういうことを言われました。これはサンフランシスコ条約のことを言っておられると思いますけれども、サンフランシスコ条約の発効前の請求権は放棄をするのだ、きわめて不当でありますが、これはかって政府がいったことがあります。きょうおっしゃったことは、サンフランシスコ条約締結後のアメリカに対する請求権につきましても、サンフランシスコ条約の放棄というこの考えを原則としては踏襲しなければならない、こういう意味を言われたのであるかどうか。この点をはっきりさしていただきたいと思います。
  130. 井川克一

    ○井川政府委員 愛知大臣の御答弁は、私がすでに衆議院の外務委員会あるいは参議院の外務委員会で申し上げました従来よりの政府の解釈でありまするいわゆる講和前補償についてのお話でございます。
  131. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、講和後の、サンフランシスコ条約締結後のアメリカに対する請求権は日本の権利として賠償要求する、そういう立場でおやりになるということでございますか、大臣にお聞きしたいと思います。(愛知国務大臣「法律関係ですから」と呼ぶ)法律関係と申しますよりもアメリカに対する折衝の態度であります。外交交渉の態度でございます。これは上原議員もお聞きになった点であります。明確に大臣がお答えにならなかった点であります。お答えいただきたいと思います。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約的な話をまず聞いていただきたい。
  133. 井川克一

    ○井川政府委員 ちょっと私御質問趣旨があるいは理解できなかったかと思いますが、第一に講和前補償につきましてはすでに御答弁申し上げたとおりでございます。講和後のものにつきましては、これは大臣が本会議におきまして根拠があるものについてはアメリカ折衝するというふうにお答えになっているとおりでございます。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 大臣は。
  135. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま条約局長が申し上げたとおりであります。
  136. 松本善明

    松本(善)委員 それではお答えになっていないと思いますけれども政府アメリカに対する折衝の態度は非常にはっきりしていない、これはきわめて遺憾だということを申し上げてもう一つお聞きしたいと思います。  沖繩県の三公社、行政上の建造物についての買い取りの問題について公平な解決をしたいということであります。これは有償を前提としての考えではないか。いろいろな場合があるということ、何らかの支払いを行なうことが適当であるという場合があり得るということでの御答弁がありましたけれども、これは三公社と行政上の建造物、これは行政府の建物その他だというふうに思いますけれども、これについての質問であります。これを有償ということを前提にお考えになっておるのかどうか、この点をもう一度お答えいただきたいと思います。
  137. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほども上原委員にお答えしたように、買い取って日本が代価を支払うことが適当であると判定すべきものがあろうかもしれない。いままだ内容的な検討をいたしておりますから、それから先は断定的に現在責任を持った御答弁はできない。しかしあり得るということを申し上げたわけです。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 きょうはこの程度にしておきますが、中国問題についてお伺いしたいと思います。  中国問題についての政府の主張は先ほど来同じことを繰り返されておられるわけでありますが、中華人民共和国と蒋介石政権とがそれぞれ自分のところが中国を代表すると主張しておる。これを平和的に話し合いで解決をしてもらいたい。それからそういう事態になってからどう考えるかきめたいということを前の外務委員会でも言われ、きょうも繰り返されたのでございます。私は外務大臣の政治的な見通しをお聞きしたいのでございますが、一体そういうようなことが将来あり得るかどうか。いつごろそういうことがあり得るというふうに外務大臣はお考えになっておるか。一国の外務大臣が何の政治的見通しもなしにそのようなことを御発言になるともとうてい思えない。外務大臣の政治的な見通しをお聞きしたいと思います。
  139. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は先ほどくどくどと申し上げておりますように、ものの考え方、道理の筋合いはそうでございましょうということをお答えいたしたわけでございます。第二次大戦後の経過から見ましてもそういうことに道理の筋合いは期待し、希望するのが自然ではございますまいかということを申し上げたわけです。
  140. 松本善明

    松本(善)委員 大臣にお聞きしたいのでありますが、いま国際的にも中国の国連復帰とか日本でも国交回復という問題がこれだけ大きな問題になっておるのに、外務大臣が政治的な見通しなしにただ事柄の筋合いはそういうもんだというようなことを政治家として発言をされるということはきわめて無責任なことではないかと私は思いますが、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  141. 愛知揆一

    愛知国務大臣 責任を感ずればこそ道理の筋合いからものごとは発しなければならない、そうでなければ国民的なコンセンサスを積み上げていくのに私は不誠実な行き方ではないかと思います。
  142. 松本善明

    松本(善)委員 私はきわめて遺憾だと思いますが、もう一つ別のことをお聞きいたしましょう。平和的な話し合い一つになるまでは中華人民共和国と国交回復をしないというお考えでございますか。
  143. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中国政策について政府としてまだ見解を申し上げる段階ではございませんということをくどくど申し上げておる次第でございます。
  144. 松本善明

    松本(善)委員 私は先ほど来お聞きしておりまして、この国民も国際的にも注目をしておる事態について政府が慎重に考慮するとかまた言えないとかいうような態度を繰り返しているということが、私はいまの事態で政府がこの問題を解決する意思もないし、その能力もないときわめて明白に立証しておることではないか、私は外務大臣にそのことを考えていただきたいと思う。そのような答弁をしなければならないということについて、佐藤内閣は、外務大臣は責任を感ずべきだというふうに私は思います。  私はもう一つお聞きしますが、木村官房副長官が十月十四日付の東京新聞で中国問題の解決はカナダのような直接方式と国連で中国加盟——正確ではないと思いますが、中国加盟と言われました——中国加盟を承認する間接方式がある、日本の場合国連での間接方式が適当ではないかと思っているというふうに述べられております。外務大臣にお聞きしたいのは、この木村副長官の考え方についてどうお考えになるかということであります。
  145. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまいろいろの方がいろいろの意見を表明されるということが一番大事なことであって、私はあえて木村君の発言はコメントいたしません。
  146. 松本善明

    松本(善)委員 いろいろな方と申しましても政府の重要な立場にある方でございます。それについて論評されないということは、まことに政府は無責任だというふうに言わざるを得ない。  もう一つお聞きしたいのは、中華人民共和国と蒋介石政権との間での武力行使には反対だということをきょうも何度も言われました。私がお聞きしたいと思いますのは、この武力行使というのは国内問題、内戦として見ておられるのか、それとも国家間の戦争と見ておられるのか、それについての外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  147. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は先ほどから申しておりますように、これはいわば常識的に内輪の問題として解決をしていただきたい問題だというふうに言っておるわけでございます。それからとにかくどういう姿と見るかは別として、実際問題として武力闘争が起こることは私はたいへん困ることだ、日本国民として重大な関心を持たざるを得ない、またそれを起こらないように期待するのは、他の国の人たちのやることですけれども日本政府としては当然の願望でなければならないと思います。
  148. 松本善明

    松本(善)委員 これは外務大臣はっきりお答えいただかなければならないと思います。といいますのは、この武力行使を内戦と見るか国家間の戦争と見るかによって、この政府政策は決定的に変わるわけであります。内戦と見るならばこれに対していろいろな干渉をするのは内政干渉になろうかと思います。武力で一方を支持するというようなことは内政干渉になる、当然であろうかと思います。これについて考えがなしに政府がこの問題を論じておられるとすれば、私はまことに不可解きわまるといいますか、無責任きわまるといいますか、そういう問題ではなかろうかと思います。当然に外務大臣お考えがあるはずでございます。もう一度明確にこれを内政問題と見られるのか。先ほどのお話であれば内輸の問題といわれました。内政問題であるというふうにお答えになったというふうにも取れないことはありませんけれども、事が大事でありますので、内政問題とごらんになるのか、それとも国家間の紛争というふうにお考えになるのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  149. 愛知揆一

    愛知国務大臣 きわめて常識的に明確な問題だと思いますが、いま私が申し上げましたとおり、どこが何をやるにしても大きな勢力がぶつかり合って戦争を展開されることは困るということは、私は全国民がよく理解されることだと思います。
  150. 松本善明

    松本(善)委員 大臣はしいて答弁を避けておられるように思います。一九五二年五月二十八日に本院の外務委員会における石原幹市郎外務政務次官がこの問題についてはっきり答えております。国民政府本土に作戦をする場合も、中華人民共和国が台湾を解放する場合も国内問題であるというふうに答えておるのであります。この立場は変わっているのか変わっていないのか、この点をお聞きしたいと思います。
  151. 愛知揆一

    愛知国務大臣 とにかく国際的な紛争になりかねない性質の問題であるから武力不行使ということを私は特に強調しておるわけでございます。
  152. 松本善明

    松本(善)委員 私は事柄の性質を内戦と見るかどうかということをお聞きしておるわけでございますが、別に外務大臣がこの場合において否定をされなければ、いま私が申しました一九五二年の政府立場はそのまま続いておるというふうに見なければならないと思います。内戦だ、内政問題だというふうに政府は考えているというふうに見なければならないと思います。これについて別にそれは間違っているとか訂正するとかいう御意思はございませんか。
  153. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その答弁一つ一つの区切りをお取り上げになればそういうことの答弁があったことも事実でありましょうけれども、とにかく私が強調いたしたいのはいまも申しましたとおりでありまして、それなら内政の争いならばどんな武力を行使してもいいのかというふうに問題を取り上げてみなければならないと思います。私は、その武力行使が困ることである、こういうことに力点を置いて問題は考えなければなるまいと思います。内政問題だと取るならば、あえてこちらから質問するわけにもいきませんが、それならどんな大戦争が起こってもよろしいのでございましょうか。私はそうは思いません。
  154. 松本善明

    松本(善)委員 私は大臣にお聞きしておるので、もう一回いまのお話を分析してみますと、内政問題であるが内政問題だからといって武力行使をしてもらってはやはり困る、これが政府立場である、こういうお答えでございますか。
  155. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはアカデミックな議論として内政問題であるかどうかというような問題を離れて、とにかく台湾海峡その他において武力行使の戦争が行なわれるということは、日本国民としてだれでもわかると思うのですが、これは困るのだ、こちらは対岸の火災視することはできないのではないか、これがすなおな基本的な日本の中における国民感情だと私は思います。
  156. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣は内政問題であるというようなニュアンスでお答えになったというふうに私は受け取りましょう。(「片思いだ」と呼ぶ者あり)片思いであるというやじが出ましたので、これは片思いかどうかお聞きしたいと思います。
  157. 愛知揆一

    愛知国務大臣 少なくとも私は遺憾ながらあなたとは同志ではございません。
  158. 松本善明

    松本(善)委員 そのことはお聞きしなくてもわかっておりますが、私が共通の立場は違うが国民の前に問題を明らかにしたいと思ってお聞きしておることは、これは内政問題かどうかということをお聞きしなければならない、そのことをお聞きしておるのですが、この問題に関係をしてなぜ大事かということを申しますと、私がかつて安保条約と防衛問題等に関する質問趣意書というものを政府に出しました。それに対する答えで、その中で、内乱発生の場合の国連憲章五十一条集団的自衛権の発動に関する問題をお聞きしました。これについて政府答弁は、武力攻撃は、一国に対する他国の組織的、計画的武力攻撃と解される、五十一条にいうのは。したがって内乱の場合には集団的自衛権の発動ということにはならぬのだということを言われている。これは国際的な紛争にどういう態度をとるかということについても、内戦と見るかどうかということはきわめて重大な問題なのであります。そういうことに発展をしますので、この点について政府はあいまいな態度をとることはできないはずだというふうに私は考えるわけであります。あらためて内戦、内政問題とお考えになるかどうか。私が先ほど申し上げました一九五二年のいままでの政府の態度を変えられるつもりであるのかどうか、この点をもう一度明確にお聞きしたいと思います。
  159. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点については、先ほどお答えいたしました以上に私はお答えはいたしません。私が申し上げていることは——とにかくしかし内政問題ということに解釈を、片思いで思われて、それならいまの理論をずっと延ばしていかれるならば、実際問題として戦争を容認されるんですね。私はそれは反対であり、そういうことが未然に起こらないように、ひとつ関係者の間でさようなことはやらないようにしてくださいという願望を申し上げ、そういう考え方の基礎の上に立って中国問題を考えるというのが道理の筋ではございますまいかという、私の素朴ではあるかもしれないけれども、誠意を尽くしてお答えをしておるわけでございます。
  160. 松本善明

    松本(善)委員 大臣は問題をそらしておられますが、これはそういう問題の性質ではないはずであります。特に日米共同声明で、事実上台湾の安全は日本の安全と同視をする、そういう場合には、アメリカ軍の日本からの出動を容認するという態度を示しておられる。一体これはどういう性質のものであるかということは、きわめて重大な問題なんです。  私は、さらに続けてお聞きいたしますが、この日米共同声明が発表された後のナショナル・プレス・クラブでの総理の演説によれば、米国中華民国に対する条約上の「義務が発動されなくてはならない事態が不幸にして生ずるとすれば、そのような事態は、わが国を含む極東の平和と安全を脅かすものになると考えられます。」というわけであります。米華防衛条約は、これは中華蒋介石政権が、台湾のみならず中国本土についてまでも自衛権の行使という名目で武力の行使をすることを認めておる、そういう立場条約であります。その台湾政府の安全を日本の安全と同視をするという立場、これが一体内政干渉になるかどうか、これはきわめて重大な問題なんです。私は、先ほどの外務大臣が内輪の問題であるというふうにお答えになったという点から見るならば、これは内政干渉ではないかと考えますが、どうですか。
  161. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こうなりますと、そもそも共同声明から安保条約の根本に返って議論しなければならないと思いますけれども、この共同声明やあるいはプレス・クラブの演説などを一貫している考え方は、一つ台湾海峡などでそういう事態が起こらないことを期待し予見しながら、そういう危険が未然に防止されるようにという考え方が基礎になっているということはしばしば申し上げているとおりでございます。これは私のそれこそ素朴な考えでいえば、内戦という名目であろうがあるいは外戦という名目であろうが、とにかく台湾海峡に大動乱、戦争が起こったならば、これは政府見解としては日本の安全を期するために、日本を含む極東の安全がこれに完全な関係がある。そういう観点から日米安保条約を守り、そして屡次御説明しているように、そういう事態が起こらないように未然に防止するという考え方でこのワク組みができている、こういうわけでありますから、その基本にそういう事態、戦争状態が発生するということは全く困ることであり、そういう事態が起こらないように備えているわけですから、こいねがわくは当事者もそういうことはやらないんだということが保証され、担保されるような状態になることが願わしいわけです。そうなりますれば、それからあと日本をめぐる国際情勢日本のものの考え方も非常に考えやすくなるんじゃないかと私は考えております。
  162. 松本善明

    松本(善)委員 私はかなり重大な御答弁のように思います。といいますのは、内政問題と見るかどうかはともかくとして、そういう事態が起こればやはり日本の安全を考えなければならないということであろう。それは内政問題と考えた場合であっても、この場合蒋介石政権を支持する立場に立つ、中華人民共和国と敵対する、そういう立場日本政府が立つということであります。それはまさに中国敵視政策であります。そしてこれは、私はまさに内政干渉であろうと思います。内政問題と考えた場合であっても、この日米共同声明立場というものは国際的に適法であり、内政干渉にはならないというお考えでございますか。
  163. 愛知揆一

    愛知国務大臣 あなたのお説はそこへ持っていきたい、その前提がそうなんですから。ですから私はあなたに反問するのですけれども、それなら戦争状態がこの日本の周辺に起こることを容認されるのですか。日本国民としてはわれわれが安全でありたい。あなたもそうだと思うのです。そういう状態をつくり上げたいためにいろいろと考えているのであって、論理を飛躍させたり曲がり道をしてそこへ落としていきたいという御意図はわかりますけれども、私は、あえてそれに反論すれば時間がかかるだけですから別なお答えをしているのです。私も私の言いたいことを言わしていただいてお答えにかえたいと思います。
  164. 松本善明

    松本(善)委員 せっかくの御質問だからお答えいたしますけれども、もちろんそういう事態が起こることを——一般的に武力行使は好まないでしょう。しかしこれは内政問題であるならば、それについては論評すべからざる問題なんです。だから政府が内政と考えるかどうかということは、これが一番のもとなんです。私はひっかけて外務大臣に答えさせようというような意図ではありません。この問題について日本政府がどういう態度をとるかということは、日本政府のいまの佐藤内閣のもとで一体中国との国交回復ができるかどうか、または日本が中国との国交回復ができるかどうかという問題につながるからなんです。私は外務大臣気持ちもわからぬではない。内政問題だというふうに言い切れば内政干渉じゃないかというふうに言われる、これを避けたい。そうしてまた内政問題ではないというふうに言えば二つの中国論を認めるのかというふうに言われるおそれがある。だから進退きわまって答えを避けておられる。逆に質問者に質問をするというような国会答弁としてはきわめて正しくない、公正でない、国民ほんとうに自分の立場を明らかにするという立場ではないというふうに考えざるを得ません。そういう態度では、私は中国との国交回復は絶対できないと思います。  もう一度私はお聞きしたいのであります。  この日米共同声明というのは明らかに中華人民共和国を敵視をしているという立場ではありませんか。
  165. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ひとつ、まあきょうだけでもよろしいけれども、きょうの外務委員会で私が中国問題についてるる申し上げたことをもう一ぺんひとつ議事録ででもお調べをいただきたいと思います。私はその点について、北京政府国民政府三それぞれ一つの中国ということをこれだけがんばり、これだけ言っておられるではありませんか、これはどうか両当事者の間で平和的に話をつけていただきたいものであるというのが日本国民の願望ではないだろうか。われわれとしてはこれがどういう形でなければならないんだということを言うべきではないと思っておるのであります。  この考え方と、それからたとえどういうような集団であろうが政府であろうがと申しましょうか、そこへまた食いつかれるかもしれませんが、どういう集団であろうとも、近代的武力を使って大戦争を展開されるということは日本として迷惑でございますから、それをやめるようにしていただきたいということを言っていることは私は正しいと思います。そうしてそういう考え方日本の周辺にそういう騒動が起こらないように未然に防止をするということを現実状態においてかまえていこうというワク組みをつくっているのが日米共同声明であり、安保条約の体制である、これが私どもの一貫した考え方でございます。
  166. 松本善明

    松本(善)委員 まとめに入りますが、そういう答弁国民は納得しないという事態が私は必ずくると思います。  最後にお聞きしておきますが、先ほど戸叶委員に聞かれたことに関して、条約論からいえば日華条約を新しい政権ができてもこれは承継するのが当然であるという趣旨答弁をされました、条約論としてではあるが。この立場を貫いていきますと、中華人民共和国と国交回復するということはあり得ない、条約的には少なくともそういうことはあり得ないということになると思います。そういう筋道に、外務大臣のお好みの話の筋合いはそういうことになるんじゃないかという点からお聞きするわけでございますが、話の筋合いはまさにそういうふうに中華人民共和国とは国交回復をするという立場にはないということになるのではございませんか。
  167. 愛知揆一

    愛知国務大臣 話の筋合いからいえば、われわれとしては中国に対して敵視とかなんとかいうことを全然考えているわけではございません。そして日華平和条約というもののでき方及び内容は中国と戦争状態は終結したんだということが約定まれておりますし、そして平和条約のでき方からいえば、この考え方は中国全体に及ぶべき考え方でもってつくられているものであるから、われわれのこれも常識的な願望からいえば、それが考え方がつながっていくことが望ましい、それが条約論的といいますか、そういうことからいっても考えられる一つ考え方ではないでしょうかということを、仮定の上に立って戸叶委員に、仮定の御質問ですから、日本の中国政策を私はいうわけではございません、日華基本条約の戦争状態終結ということについての条約的な問題として取り上げた場合にはどうなるであろうかということに常識的な条約論としてお答えをした、ただそれだけのことでございます。
  168. 松本善明

    松本(善)委員 全体としてきわめて遺憾な答弁であると思いますけれども、きょうはこの程度にしたいと思います。
  169. 田中榮一

    田中委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十九分散会