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1970-12-24 第64回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月二十四日(木曜日)     午後一時十分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 大村 襄治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 田中 龍夫君 理事 床次 徳二君    理事 箕輪  登君 理事 中谷 鉄也君    理事 中川 嘉美君 理事 小平  忠君       宇田 國榮君    小坂善太郎君       國場 幸昌君    西銘 順治君       豊永  光君    上原 康助君       川崎 寛治君    美濃 政市君       山本弥之助君    大久保直彦君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         沖繩北方対策         庁長官     山野 幸吉君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務大臣官房司         法法制調査部参         事官      棚町 祥吉君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省条約局長 井川 克一君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十二月二十四日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     大久保直彦君     ————————————— 十二月十八日  一、沖繩及び北方問題に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩問題に関する件      ————◇—————
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  沖繩問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。國場幸昌君。
  3. 國場幸昌

    國場委員 去る二十日未明の沖繩コザ市における騒乱事件を中心とする最近の沖繩社会問題に関して質問をいたします。  元来、沖繩県民はみずから守礼の国をもって任じ、おとなしい国民性と忍従に耐えるがまん強さを持っていることを特徴としてきました。このことは、何も我田引水ではなく、客観的にも、たとえばプライス勧告は、沖繩には好戦的民族主義は存在しないと表現し、また他の報告では、沖繩人たちは一般的に穏健で、容易に激高しないといっておるのであります。二十五カ年間にわたる異民族支配の重圧にもこれまでよく耐えてきたのは、このような国民性に負うところがきわめて大きいのではないかと考えられるのであります。  コザ事件は、その騒乱の規模の大きさから見ましても、あのおとなしい沖繩の市民が起こしたとは思えない種類のものでありまして、戦前戦後を通じてこのような事件記憶はわれわれには全くないのであります。  残念ながら私はいまだ現地を直接調査する機会を得てはいないのでありますが、新聞報道及び現地からの情報によって事件の大要を判断いたしますと、長年にわたる米軍政へのうっせきした不満が、最近の相次ぐ米軍当局の高圧的な施策によって増大され、偶発的な事故をきっかけとして爆発したものと考えざるを得ないのであります。  私は、いかなる状況下にあっても暴力行為を正当化する理論には反対する立場をとるものでありますが、行為そのものの当、不当は別の次元で論ずるとしまして、このような重大な社会騒乱発生した背景に関して、その社会施政者、すなわち米軍当局、さらに米国施政権をゆだねている日本政府は、深い反省と責任の追及を回避できないものと考えるのであります。  あらためて申すまでもないことではありますが、沖繩は、法的には米国軍隊占領下にあるのではなく、形式上対等な日米独立国間で締結された平和条約第三条により一時的にその統治米国に委託されているにすぎないものであります。この原則は、今回のコザ事件背景考える場合にきわめて重要な意味を有していると考えるので、特に再認識を促したいものであります。  沖繩は、その委託の趣旨に従って、米国によって誠実に統治権行使がなされなければならないのであり、地域住民人権尊重には、米国は自国におけるそれと同等もしくはそれ以上の配慮が示されなければならないのであります。このことは、単に米国国際社会における信義の問題のみではなく、米国平和条約に基づき日本に対して負担している国際法上の法的義務でさえあると考えられるのであります。したがって、日本政府は、米国沖繩地域住民に対する統治権の正当かつ誠実なる行使についてこれを見守る権利と義務を有すると信ずるものであります。琉球におけるところの刑法並びに訴訟手続法典を見ましても、沖繩住民に対しての規制はあるといえども、アメリカ軍人軍属沖繩住民に与えるところの危害あるいは殺傷については、何ら沖繩住民財産、生命を守る上においての法的操典はないのが悲しいことでございます。  そこで、外務大臣の所信をお尋ねしたいのでありますが、過去二十五カ年間の米国による沖繩統治が信頼に足る誠実なものであったかどうか、日本政府はこれをどのように受けとめていたのであろうか、また問題があったとすればどのような点であるか、さらに現在ではどのような考えの上に立って、民生、特に住民人権擁護に重点を置いていく考え方を持っておられますか、お聞きしたいわけでございます。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今月二十日にコザ事件発生いたしましたことは、七二年沖繩返還を目の前にいたしまして、まことに残念な痛ましいことであった。政府といたしましては、この事件にあたりまして、沖繩施政権返還ということについて一そうすみやかに、またかねがね政府が明らかにしておりますような方向で施政権をますますすみやかに実現できるように努力を新たにしなければならないということを痛切に感じたわけでございます。  コザ事件につきましては、二十日当日以来公式、非公式に見解を述べておりますが、二十五年間にわたる異民族支配下にありまして、本土の者としては想像もつかないようないろいろの苦難な御経験をされてこられました気持ちというものがこの事件にあらわれてまいっておるということを痛切に感じなければならないわけでございまして、いま、この二十五カ年間のアメリカ施政に対してどういうふうに評価するか、どういうふうに批判するかというお尋ねがございましたが、何ぶんにも二十数年間という長い間にわたって異常な状態にあられた沖繩県民方々に、あらためて政府としても深い御同情を申し上げる。そして、返還がいよいよ迫ってはまいりましたけれども、その間におきましても、この事件が起こった中には、いま申しました二十五年にわたるほんとうにうっせきした感情というもの、ことに最近におきまして、糸満事件に対する判決納得できない、人権問題としてもこのようなことがあっていいであろうかというような気持ち、その気持ちに対しましては、われわれとしても全く憂いをともにするわけでございますから、返還までの期間の中におきましても、できるだけ米側に対しまして配慮を求め、そしていまでは共通目標になっております返還が円満にかつすみやかに行なえるように、双方協力し合って実現に邁進をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  5. 國場幸昌

    國場委員 沖繩住民人権がどのように考えられてきたか。沖繩における過去の米軍人軍属家族沖繩県民被害者とする犯罪の記録を調べてみますと、次のとおりでございます。在沖米軍軍人軍属は約五万人でありますが、その犯罪発生件数は、一九六六年から一九六九年の四年間で約四千六百件であり、年平均千百五十件となっている。このほかに自動車による事故が毎年三百余件起きております。殺人、強盗、強姦などの凶悪犯について見ると、一九六五年は六十八件であったものが、一九六八年には百二十四件と増大の一途をたどっておるのであります。さらに検挙率を見ますと、一九六五年の六〇・九%から一九六八年度の四六%と、年々低下していく傾向にあり、米軍関係検挙率一般事件に比べてきわめて低いのに、さらに低下しつつあるのが現状でございます。中でも凶悪犯検挙率低下ぶりを見てみると、一九六五年の三九・七%から一九六八年度の二二・五%と、そのひどさは目をおおうべきものがあって、これでは事件が起こっても四件に一件か五件に一件しか検挙されていないというのが実態でございます。ちなみに一九六八年度の沖繩における民間犯罪凶悪犯検挙率は七〇・二%であり、日本全国平均にありて八九%の実態に照らして、二十数%という沖繩米軍関係者凶悪事件に対する検挙率がいかに低いかを明らかに示しておるものでございます。  ここで、過去に発生した事件のうち、われわれの記憶に残っている数件の事実をあげてみますと、一九六八年三月、浦添村牧港に起こったメイド殺人事件、これは事件米軍施設内に発生したため民警察捜査権が及ばず、軍施設に住む有力なる容疑者米人女教師でございましたが、事件後一年後に米国へ帰国し、事件は迷宮入りしておるというのが現状でございます。  一九六九年二月、那覇市辻町で起こったホステス強姦傷害事件、犯人の米兵現場付近で逮捕されたが、軍裁判により無届け欠勤のみで有罪とし、強姦傷害に対しては無罪となっております。  一号線旭橋付近で起こった國場少年轢殺事件横断歩道歩行者青信号のとき横断中、米兵の運転するトラックが赤信号を無視して少年を轢殺して、軍裁判の結果は、信号が見えなかったという理由無罪判決を言い渡されております。  去る九月二十七日、糸満における主婦轢殺事件、ビールを飲んで乗用車を運転していた米兵が、制限速度十五マイルの地点を五十マイル以上で飛ばし、カーブを曲がりそこねて、通りかかった近所の主婦歩道上で轢殺し、米兵公務外であったが、軍裁判判決無罪判決理由の説明を要求するも、回答は拒否されたわけでございます。  以上、忘れ得ぬ事件として、われわれ沖繩県民の脳裏に焼きついている事実は御承知のとおりでありまして、これら軍関係事件損害賠償については、一九五二年十二月以降にすべて外国人損害賠償法に基づき処理されており、死亡事故賠償金平均で六千四十六ドル、すなわち二百十六万円でしかないのであります。請求額に対しましてその支払い額は、平均が二〇・四%にすぎず、本土における一般的損害賠償事件判決の例に比較しまして著しく低下しておることは言うまでもございません。本土内で発生した在日米軍不法行為に基づく賠償例に比しても低額に過ぎるわけでございます。このような、死亡事故ではないが、日常茶飯事発生している民関係自動車軍関係自動車との交通事故損害賠償問題についても、常に一般住民の不利益と犠牲をやむなくされる現状であり、米軍米軍人に対する反感、その憤りは日常生活のすみずみにわたって深く浸透しつつあったと考えられます。  以上によって、言わんとする論拠はおのずから明らかであると思いますが、コザ事件背景となったものは、長年にわたる人権無視に対する沖繩住民の抗議の行動であり、占領政策にも似た無神経な民政施策への不信感の噴出であると考えざるを得ないのであります。  この際、政府は、沖繩県民の切実なる心情を積極的に受けとめて、人権の回復を万難を排して実行すべきであると考えますが、それに対しまして外務大臣いかようなお考えを持っておられますか、お聞かせを願いたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 コザ事件が不幸にして起こりましたその当日から今日に至りますまで、本件をめぐりまする今後のとるべき措置につきましては、さっそく米側と連日あるいは一日に二回も私も直接折衝いたしておるような次第でございます。  基本的には、考え方として人権尊重ということからいたしまして、加えて二十五年にわたる沖繩県民方々感情というものを十分に配慮して、現行の制度のもとにおきましても、公正で納得のできるような措置をとってもらうということがまずとりあえずの措置でございますが、その他、今後、先ほど申しましたように、返還ということはもう既定の事実になっておるわけでございますから、その実現を促進するとともに、その前におきましても、あとう限りの措置を講ずべきであるということにまず米側配慮を求め、その合意の中で善処をする、両方協力いたしまして、その大目的を達成するためにできるだけの努力を傾倒していきたい、こういうことで鋭意米側とも話し合いを進めておるわけでございます。  なお、ただいまのお尋ねとは多少方負が違うことかもしれませんが、このコザ事件について、一つ沖繩毒ガス移送問題につきましては、絶対に本国政府としては既定方針どおりで実行するということを、駐日米大使を通じまして確約をいたしております。もちろんこれについては、かねがね御承知のように、米国毒ガス移送についての決定はけっこうなことでございますけれども、最初の試みが少量であるということ、あるいは今後いつまでたって全部の移送が安全に行なわれるかということ等については、現に折衝が続けられておるわけでございますから、本国政府既定方針に何ら変わりはないというだけで満足しているわけでは毛頭ございませんで、すみやかに安全に移送されることについて、鋭意このほうはこのほうで話し合いを進めておるわけでございます。  また沖繩返還交渉それ自体について、もちろん何らの既定方針に変更はないということの確約アメリカがあらためていたしておりますが、先ほど申し上げましたように、支障がないどころではなくて、むしろ政府といたしましては、こうした事態にもかんがみまして、できるだけすみやかに返還実現をはかるようにしたいという、あらためて確固たる態度話し合いを促進していく、こういう覚悟でおるわけでございますし、米側としてはその基本的な考え方に何ら支障はない。現にこの事件が起こりましてからあとにおきましても、沖繩返還協定並びにこれに関連する定期会談は、予定どおり、あるいは予定を促進しても話し合いを進めているのが実情でございますことをあわせて御報告申し上げておきます。
  7. 國場幸昌

    國場委員 問題は裁判権民移管の問題でございますが、米側態度は、施政権の根本にかかわる問題でありまして、強硬にこれを拒否するであろうということをよく知っております。しかし、ここまで沖繩住民を精神的に追い込んだからには、裁判権をみずからの手でじかに感ずるのでなければ解決はあり得ないと考えられるわけでございます。またとこのような事件を再発させないために、政府は万全を期してその裁判権移管の問題については今後努力しなければいけない、こう思うわけでございますが、外務大臣として、これに対する今後の日米間におけるところの交渉いかようにしていきますか、それに対してのお答えをお願いいたします。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題についての従来の経過は大体御承知のとおりと思いますけれども、先般、御承知のように警察権の運用についてのいわゆる共助協定合意された次第でございます。この共助協定ができますまでに、率直に申しまして、政府といたしましては、ずいぶん苦労と努力政府政府なりに重ねてまいりました。一応あの段階としてはこの共助協定というものがとにかくでき上がりまして、この成果にとりあえず期待を持ったわけでございます。その共助協定ができ上がるまでの過程におきましても、もちろん裁判権問題等について、裁判権と申しましても、これはいろいろの中身があろうかと思いますけれども、それらの問題についても、ずいぶん米側と論議を重ねてまいったわけでございます。従来の経過から申しますれば、一番基本的な裁判権全面移管ということは、返還実現されれば、当然全く本土並みになるわけでございますから、これはただいま返還協定話し合いの中で当然そのことを議題にし、そして同時に政府側といたしましても、これが返還のときに完全に一〇〇%に運営ができますように、いろいろな物理的な準備等も含めまして、鋭意準備を進めていることは御承知のとおりかと思います。  なお、そこまでの段階におきましても、最終的には返還実現されることによって問題は一〇〇%に根本的に解決するわけでございますけれども、その間におきましても、何とか共助協定から進んでよい考え方はないであろうかと、たとえば日本側におきましても、政府意見と必ずしも同じというわけではございませんけれども、日弁連その他においてもずいぶん真剣な検討がなされておりますが、それらにつきましてももちろん米側検討も求めつつあるわけでございます。ただいまのお話の御趣旨を体しまして、政府といたしましてもできるだけの努力は続けてまいりたいと思います。ただ、率直に申しまして、裁判権そのものずばりがそのものずばりと無条件で日本側に返ってくるということは、これはたてまえから言いましても、法理的に申しましても、返還効力発生のときでなければならない、こういうことは申し上げられると思います。
  9. 國場幸昌

    國場委員 質問を終わります。
  10. 池田清志

  11. 上原康助

    上原委員 私も二十日にコザで起きた反米騒動事件の件について、さらに外務大臣質問をいたしたいと思います。  すでに大きく報道されてまいっておりますので、中身については御案内かと思いますが、あの騒動事件が起きた原因なり背景というものは、二十五カ年間アメリカの不当な軍事支配のもとで基本的人権が踏みにじられてきた、本土施政権から分断されてきた、さらに保障さるべきはずの基本的人権そのものも、一方的にアメリカ軍事裁判によって裁判を行なってきた、そういうもろもろの沖繩県民不満要求、さらにそのことは日本政府に対する不満でもあり要求でもあると私は考えます。  二十日にたまたま帰郷いたしておりましたので、現場をつぶさに調査いたしましたが、偶発的にあのような痛ましい事件というものが発生をする、いかに沖繩県民アメリカ統治に対する不満というものが根強いかということがまざまざと証明されていると思います。これまで裁判権民移管の問題なり、毒ガス即時全面撤去ということを政府に対しても強く求めてまいっております。またアメリカ側に対しても県民要求というものは強く出されております。しかしながらそのことが遅々として進展をしない、むしろ七二年の返還が近づくにつれて、米軍人軍属の綱紀というものが乱れておる、そのことに県民不満というものが爆発をしております。いま國場委員質問に対して、七二年の返還までは裁判権返還することは非常にむずかしいという御答弁なのですが、沖繩県民要求というものは、七二年まで待てない、毒ガス撤去にしても、裁判権移管にしても。この本質的な問題というものを解決しない限り、再び同じ事件が起こらないという保証はないのであります。そのことに対して政府が御努力をしておられるという点もある程度理解をいたしますが、少なくともいまの軍事裁判制度のあり方に対して早急に解決をしなければいけない現状だと思います。これに対して、再びあのような事件が起こらないその保証と、県民の不安、不満というものを満たすためにどのような対処策をお持ちであられるのか、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お気持ちは私も全くその気持ちを分かち合う次第でございます。したがって、率直にただいまも國場委員の御質問にお答えしたわけでございますけれども、施政権返還というこの問題は、返還協定で、そして双方がそれぞれの国の定めるところに従って立法府の御承認をいただいて、それで効力発生する、そのときが裁判権司法権全体が解決するときであるということは、これはいまさら申し上げるまでもないところであると思います。いまいろいろの問題の取り上げ方もあろうと思いますけれども、ここまで返還を目前に控えております場合に、機能別返還というようなことはもはや考えないで、一本で進んでまいりたいと思います。  そこで裁判権移管、それを即時ただいま断行せよという御趣旨、これはよくわかりますけれども、この返還実現に至りますまでの間、先ほども申しましたように、警察権共助協定ということが、この間踏み切りができたわけでございます。これをさらに何らかのくふうによって沖繩人権の保障ということができ得るように、あらゆる考慮とくふうをこらしていきたい、これが政府基本姿勢でございます。そしてすでに二十日、二十一日は二回、私も折衝いたしました。さらにその次の日も、もう連日いろいろのお話し合いをやっておりますが、それらの中におきましても、ずいぶん突っ込んだ意見の交換をいたしております。すでに沖繩返還ということがきまって、日米合意に達しておりますから、その共通目標、そして共通目標というのは、円満に納得ずくでもってこれが実現されるということが共通目標でなければならないわけでございます。その点は米側も十分理解していると私は思いますが、今度の事件によって双方とも十分に考えて、そして努力を新たにしていくということから、私は具体的にいろいろのここからのくふうと考慮があらわれてくる、またぜひそうしたいということで努力を新たにしつつある、これが現状でございます。
  13. 上原康助

    上原委員 共通目標に向かって努力をなさるということですが、現に沖繩現地で起きている外人事件なりあるいは県民要求というものは、そういう理解のもとでは解決できないところに私は本質的な問題がひそんでいると思うのです。ちなみに外人事件犯罪内容をちょっと明らかにしてみますと、琉球警察の調べにおいては、一九六六年に千四百七件、検挙率が六四・一%、六七年は千七十九件、六八年九百五件、六九年七百七十三件と、実に千件近い外人事件が、琉球警察の手によって調査された分だけでもあるわけなんです。そのほかに、これにあらわれないいろいろな事故というのが出ております。そういう中で、基本的人権というものが日常茶飯事のように踏みにじられておる、これは七二年の返還時でなければいけないというところに県民の一番大きな不満というものがひそんでいるわけです。たとえば今度の場合ですと、日本にいる米人人権というものは地位協定によって保障されております。第十七条の九項のほうに明記をされておりますが、沖繩のいまの軍事裁判制度というものは、通訳もろくにつけない、そして公開の原則を踏みにじって、傍聴人もごく限られた人々だけしか参加をさせない、裁判権の全面的な移行ができないにしても、納得のいく裁判内容でさえないということ、そのことに日本政府としてどのように米側に進言をしておられるのか。たてまえ論、原則論だけを踏まえてのとらえ方でなくして、実質的に県民納得のいく裁判というものを、直ちに県民人権擁護という立場財産擁護という立場でできる方途がないのか。その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としてアメリカ側に、よく言われることばですが、申し入れということばが使われますが、申し入れただけで結果ができるものではございませんから、ただいまも御指摘のように、少しでも納得の度が進んでいくように、そして全般的に納得が十分できるように——現在のところでは、御指摘のように、軍事裁判というきわめて特殊な、いわば特殊な形態の中の特殊な形態が行なわれているわけでありますが、その裁判のやり方、それから判決の出し方、裁判所の構成といったようなことについてでも、沖繩方々がいまよりも以上に内容を知ることができるということも、私は一つの前進だと思うのです。これは機構全体を認めるか認めないかという問題とは別に、現在の機構のもとで、満足していないが、機構のもとでも沖繩県民方々の御理解、御納得を少しでも進めることができるはずである。こういうところも含めて、そして制度やその運営の点について目的を達し得るように、あるいはすみやかにその達し方が程度が進むように、これを具体的の課題として、政府としてはアメリカ側に対して検討を求めているのが現状でございます。
  15. 上原康助

    上原委員 時間がありませんので、この点はまた後ほどいたしますが、あと一点、二十一日に米民政府は、琉球政府に対して海兵隊のゲリラ訓練地域として使用しておる国頭村の楚洲、伊部、安田一帯の新たな土地接収を通告しております。この地域というものは、水資源の確保あるいは地域農村の重大な生活資源になっております。で、こぞって新しいそういった軍事訓練のための土地の接収に反対をするというのが県民全体の強い要求であります。本土並みの軍事基地、本土並みの基地、あるいは核抜き本土並みというように過大に報道されておるにもかかわらず、沖繩の軍事基地、一方では土地の返還をするかのように、主要な部門における新規の接収もやる。このことについても県民の不安、不満というものは強いわけです。おそらく日米政府で、この件についてはお話し合いがあったと思うのですが、本土政府として、日本政府として新たな軍事土地の接収に対して反対を申し入れるお気持ちがあるかどうか。その点を聞かしていただきたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御質疑の件は、日米間の責任当局間の話し合いの議題としては出ておりません。私の理解しておりますところでは、すでにこれは基地として使われているところの米軍内部の問題ではなかろうかと思いますけれども、しかし突然のお尋ねでございましたから、事実関係については、必要ならば、なお調べてみまして正確にお答えをいたしたいと思います。要するに、日米間の正規のルートにおける協議事項として、あるいはそれに準ずるものとしてその件は出ておりません。
  17. 池田清志

    池田委員長 中谷鉄也君。
  18. 中谷鉄也

    ○中谷委員 施政権下において裁判権沖繩県民の手に取り戻すという非常に困難な問題、しかしその困難が、まず前提として法律的にそのようなことが成り立つ、理論構成ができるということでしかも困難という場合と、法律的にそのことが不可能なのだということで困難だという場合はきびしく分けて考えなければならないと思います。そこで、日弁連の見解を直ちに私は全面的に支持するものではない。しかしアメリカ憲法の関係において、資料を添付いたしておきましたが、施政権返還という形でなしに、日弁連見解によるような琉球裁判所に対する裁判権移管というものは、アメリカ憲法上の問題を生ずるとすればどんな問題が生ずるのか、この点について大臣の御答弁をいただきたい。数年前から裁判権民移管の問題については、当委員会において強く発言をし主張してきたのであります。したがって突然アメリカ憲法の関係が出てきたものではありません。お答えいただきたい。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もかねがねその御意見があることは承知しておりますけれども、これは米国憲法の解釈あるいは米国憲法のワクの中の問題でございますので、たとえば日弁連の御意見なども、私は私なりに勉強しておりますけれども、これはいま法律的に可能であって実際上やらないのか、法律上は可能であって実際上も可能だからやったらいいではないかとか、いろいろに分類されるということはごもっともだと思いますけれども、ただいまの米国の憲法の解釈をどうするかということについては、ただいま新説を政府としては持っておりません。
  20. 中谷鉄也

    ○中谷委員 民移管の問題については、アメリカ憲法とのかかわりあいが出てくるということは、だれだってその点については予想ができる問題であります。それでは、民移管の問題について、施政権下において、施政権の一部返還でなしに成り立つかどうかということについて政府検討されてなかったということに相なるのじゃありませんか。私はそういうことを指摘をいたしたい。そこで私の見るところ、アメリカ憲法との関係においては、三条、六条、陪審制度に問題があると私は思う。  そこで私は、これは全く私個人の提言ですけれども、次のような問題についてひとつ提言をいたしたい。これはぜひ政府において御検討いただきたい。  琉球裁判所に米軍人軍属犯罪地位協定に類するようなところの犯罪については、その部分に限って陪審制度を設ける、そういうかっこうであれば、私はアメリカ憲法との憲法上の問題は解消すると考える。この点について大臣、どのようにお考えになりますか。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は建設的な御意見だと思いますし、そういう学問的な解釈が私も成り立ち得るかと思います。なおよく検討いたしてみます。
  22. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、次に私は大統領行政命令第十節のCは、軍司令官が裁判権移管の権限を持っております。そこで大統領行政命令第十節のCは、私は十節のCを見る限りにおいては、琉球裁判所への移管を禁止しているものではないと大統領行政命令を読みます。だとするならば、施政権下において民移管は可能である、私はこのように考える。日弁連見解とは違いますが、私はそういうふうに考えます。だからもう少し民移管という問題を掘り下げて分析する必要があるのではないか。民移管県民要求だ、われわれはこの委員会においてはそれを分析する必要がある、その点についてはいかがでしょう。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 民移管と申しますと、民政府と、それから琉球政府の場合と、これが通常は一緒にされておりますが、いまお尋ねになりましたのは後者のほうであると理解いたします。この点は大統領令との関係においてどう読めるか、これはちょっと私もイエスともノーともただいま言えないのです。それからもう一つ、これはお尋ねをはずれるかもしれませんが、民政府のほうの裁判の場合、あるいはいまやはりお尋ねがございましたが、陪審の問題、こういうような点については、時間がございませんのでたいへん中谷さんに恐縮ですが、さらにそういうような点につきましてはいろいろ考え得るところがあるのではないかと思っております。
  24. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、政府のここ数日来の御見解と御方針は、民裁判所に移管をしていく、こういう御方針のように私は理解をいたしております。それは大統領行政命令第十節のCを発動させるということを協定する趣旨なのか、それとも大統領行政命令そのものの改定を求める趣旨なのか、この点について御答弁をいただきたい。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねにクリアカットのお答えができないことを非常に遺憾に思いますけれども、実はそれらの点につきまして米側でも、今回の事件を契機にして、ほんとうに少し掘り下げて、法理論的にも米側考えてもらいたい。少し自分のほうでも、それではそれらの点も問題として検討いたしてみようということに現在なっておるわけでございます。そういう状態でございますから、日本政府としてはかくかくであるということではなくて、むしろ共同研究の段階にある、こう申せばよろしいかと思います。
  26. 中谷鉄也

    ○中谷委員 最後の質問ですが、私が当委員会に籍を置いてから裁判権米軍人軍属犯罪について集中的に質問をしてまいりましたが、いままさに復帰を目前にして共通研究課題だといわれることについては、私ははなはだ不満だということを申し上げておきたいと思います。まさにそのような問題は、法律的な問題、理論的な問題はすべて整理されている。ただ交渉だけが残っておって、壁があるんだというのじゃない。私はその点非常に遺憾だということを申し上げておきます。  そこでいま一つ、こういうふうな説があるようであります。民移管、この場合の民移管は、あくまで私は県民の手に裁判権を取り戻すという意味の民移管でございますけれども、その場合については米国議会の承認を必要とするという説がありますが、これは文字どおり施政権のうちの主要な部分である裁判権について地位協定のようなものを結ぶ場合を想定しているのであって、日弁連見解と、それについて日弁連見解を補充した私の見解の場合なら米議会の承認という問題は生じない、このように私は思いますが、この点についての御見解を承りたい。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、地位協定にかかわりがあるような場合には、直接、間接にアメリカ国会の承認あるいは必要な手続が要るということであると思いますが、地位協定以外に何らかの便法が考えられれば、米国の議会との関係はない、こういうふうに考えてしかるべきではないかと思うわけでございます。
  28. 池田清志

    池田委員長 中川嘉美君。
  29. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まず毒ガスについて最初に一点だけ大臣に伺いたいのですが、例の百五十トン移送についてのことでありますけれども、この現段階においての最新の米側の動向についてどういうようなニュースを得ておられるか、このことについてまず具体的な移送方法、それがわかりましたら、まず最初にお答えいただきたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガスにつきましては、このコザ事件というものがあったために、いろいろとまた報道があったり、心配をされたりいたしましたが、これは先ほど申しましたように、非常にはっきりいたしておるわけでございます。移送することはもう決定して、第一回の移送に最近いつとりかかれるかという段階であると思います。そして十二日以来始めております日米間のあるいは東京において、あるいは那覇における打ち合わせ、説明、あるいは協議というものも、相当順調に進んでおります。一番最近のところでは、たとえば現地におきましては、二十三日の午後だいぶ長い時間にわたりまして、石川ビーチでもって関係の市町村の方にお集まりをいただいて、責任者であるヘイズ少将、グレッグ大佐からあらためて移送についての具体的な計画、そしてそれをわかりやすく説明をいたしましたパンフレットを教材にいたしまして、十分の質疑応答が行なわれたというようなことが一番最近の事実でございますが、東京におきましても、先般来申し上げておりますように、公開で、そしてあらゆる危険を排除して、そして日本本土政府からも関係者が立ち会って、そして移送に当たるということがきまっておりますが、さらに納得が十分にできるような計画をはっきりいたしたい、かように存じております。それから東京といたしましては、最も大切なことは、先般の御決議もいただきましたが、一日もすみやかに、かつ安全に撤去する今後のタイムテーブル、これらにつきまして納得のいくような説明を受けたい、そしてその実現をはっきり期したいということに今後は重点を置いてまいりたい、かように存じております。
  31. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま御答弁いただいたわけですけれども、もう少し具体的なこの内容そのものですね、それは二、三点だけでけっこうですけれども、これをあげられればひとつまず具体的にあげていただくことと、こういったことがこの委員会等でも盛んに各党から、早期撤去ということで再三行なわれておるわけでありますけれども、二十三日の会合で、きのうのきょうという感じがいたしますけれども、何らかの形で本土のわれわれの側に対しての発表といいますか、そういうなにを踏まれたかどうか、この二点について、お答えいただきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはただいままで打ち合わせましたことにつきましても、何も隠すことなく公開の原則で、かつ日本側の官憲の関与のもとに行なわれるわけでございますから、政府としては、すべて打ち合わせましたこと、これは全部そのつど発表申しておるわけでございまして、それ以外のまだ打ち合わせが十分できていないことはいないのであって、これはしたがって御説明もまだできないというわけでございます。  まず、貯蔵しておる場所から運びます港への経路というものは、できるだけ沿道の住民、住家がないところを選びます。そして搬出いたしましてからコンボイを組みまして、そして警戒のヘリコプターも先導いたしますが、警護車から、本隊から、それから救急車から、それから万々一の場合の消毒中和剤を運ぶ車、それから日本の官憲の立ち会いの車、それからそのあとの警衛と申しますか、それらにつきましては、自動車の台数から、乗る人員から、その職種から、もうすべて詳細に計画をされ、これが発表いたされております。ただいま申しましたパンフレット等も、ただいまのところ四万五千枚でございますか、これを米軍が用意いたしました。四万五千で足りないとすればさらに増し刷りをいたします。それから船積みに、安全に安全を期しますために四日間かかります。そして出航いたしましてからジョンストン島に到着いたしますのに約十日間かかりますが、その船での輸送中におきましても、万々一の事態が起こらないようにというところも、これは沖繩島民の方々の御心配とはやや関係が薄くなるかもしれませんが、そういう点につきましても万全の配慮をしてまいりたい。それから沿道の方々への御注意というようなことも、かなり事こまかくなっております。それからたとえばこういうことは、従前の経験に徴しても、あるいは今回の配備状況に徴しても、万々一にもそういうことはないということは、技術的にも大体納得されているようでございますけれども、万々一にも容器の破損等から出てきたこぼれがあったような場合には、直ちにその時点においてこれを中和するための納得のできる薬を、そのコンボイの部隊の中に入れておきまして、直ちにそれで中和するということ、そしてその結果がこうなるというようなことにつきましても、かなり詳細な説明が納得されるようにできておるようでございますが、これらの点については、先ほど来申し上げておるようにさらに十二分に、技術家の頭と技術により、そして本土の専門家が関与いたしまして、これを確保するということになっておりますので、まずいまのところではだいじょうぶ心配ないという心証をだんだん得つつありますが、さらにこれを一〇〇%に絶対だいじょうぶであるという心証、これをはりきりさせてから実行に移る。実行に移る時期は、さようなわけでありますから、第一回の搬出はそう遠くない期間であろうかと思います。また搬出の時期がきまりましたならば、なるべく前広に、少なくとも数日の余裕を置いて事前に公表する、こういうことにいたさせたい、こういうことで政府としては折衝いたしておるわけでございます。
  33. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 たいへん御丁寧な御答弁でありますけれども、質問時間が十分間なものですから、ひとつきょうはできるだけ簡潔に要点だけお願いしたいと思います。  あと二問だけお聞きしたいと思いますが、六月十日のこの委員会におきまして、私、裁判権のことについて大臣に伺っておりますが、そのときの御答弁でこのように言われております。「私はたいへん残念で、たいへん遺憾な問題ですけれども、とにかくこれはやはり一九七二年ということですが、一九七二年のなるべくすみやかな機会に施政権返還されるということに、ほんとうに努力を集中してまいりたいと思います。そうなれば一切が本土並みになるのでございますから。」云々、こうなっております。けさほどの外務委員会でも、七二年返還までは困難であるというような御答弁があったようですけれども、どうもこの御答弁と含めて感じますことは、七二年ではもうおそいということは、すでにわれわれは、あのコザ事件ではっきりとわかっているということ。それからまた、警察権の問題について答弁がずっと続いておりますけれども、要するに「裁判権それ自体ということは率直に言って非常にむずかしい」、しかしながら、警察権という行政権のほうの関係におきましては、返還前に何とかしょうという御答弁を、たしかこのときいただいております。この警察権だけではどうにもならぬので、裁判権という問題がどうしても移管されなければならないというのがわれわれの声でありますけれども、この際現地のことについて、もうたくさん質疑が行なわれたことと思いますが、一つだけ伺いたいことは、この事件当日、多くのアメリカ人たちが私服でもって外出していた。アメリカ軍の発表によりますと、これらの外出者のうち六十数名のけが人を出した、このように聞いております。これに対してアメリカのほうはどのように言っているかといいますと、軍人たちだと思いますが、現地からの連絡によりますと、今度はおれたちがノックアウトする番だ、このように言っておるそうでありまして、予想される点からいきますと、コンディショングリーンが解除になった直後、そういった時点においてまたまた激突のおそれが出てくるのじゃないか、このようにも感じられるわけであります。こういった報復は、私たちも当然考えられると思いますが、今後とも、現状のままで、このアメリカ軍人日本人の間のトラブルがエスカレートしていく、こういったおそれが多分にありまして、政府は、こういった危険を防止するために、先ほどからいろいろと答弁がございましたけれども、非常に抽象的で、私どももうひとつわかりかねますので、この具体策について、どのような具体策を考えておられるか、簡潔にひとつ、具体策の要点だけでけっこうですが、お答えいただきたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま現在で収集いたしました情報、報告等から見ますと、これは捜査中の問題ですから、具体的な事実については、これは追って正確なものに訂正されなければなりますまいと思いますけれども、現在のところでは、この事件による負傷者は、米側六十一名、沖繩民間人十四名、琉球警察官六名、合計八十一名でありますが、入院治療を要する者はいないよしでございます。  それから、確かに御指摘のように、またこうした事件が今度は逆の場合に起こるかもしれないという御心配、私もその同様の心配をいたしております。昨日の駐日大使と私との会談で、駐日大使から、ランパート司令官としては、駐沖繩の全米軍に対しまして、軍紀の振粛について特に厳重な命令をあらためて出しました、とりあえずの措置として報告をする、こういう言明がございましたのも、こういう点については役に立つことかと考えております。
  35. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 とても時間がございませんので、最後に、きょうの朝日新聞ですけれども、大臣が、二十三日閣議後の記者会見でもって次のように述べておられるわけです。「裁判権の問題は米側と大いに相談はしている。米側としても、いい知恵があれば考えてみるという態度だが、日本側が申し入れをし、それが実現しなかったということで暴動の種になるというようなことは互いに注意しようという考えだ。したがって日本側が正式に申し入れをし、米側検討を約したということには、まだなっていない。だがやっていないのかということになるとまた騒動を誘うことにもなりかねない。デリケートな問題だ。」こういうことで、私これを読んだときに、非常にあいまいなふうに発言をなさっておられるように感じました。最初のところに、「裁判権の問題は米側と大いに相談はしている。」このように言っておられますけれども、まず第一に、「大いに」とはどういうことかということです。大いに相談したのなら、大いに結果が出なければならない、このように思うわけでありますが、何ら事態は好転していないという感がいたします。また、相談するのもけっこうですけれども、かかる重要な問題は、相談するぐらいではどうにもならない、このようにも思うわけだ。ほんとうに沖繩県民の身になるならば、相談どころか、率直に主張するべきところは主張しなければならない、このように思うわけでありますが、この点最後に、大臣どのようにお考えになっているか、御答弁をいただきたいと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その記事は、どなたかがお書きになったので、私自身直接責任を持つわけにまいりませんが、ある意味では非常によく書いていただいていると思うのです。そして、ただいま仰せになりましたことも、私は非常によくわかります。そのとおりなのでございまして、申し入れ、申し入れ、要請、要請、要請いたしました、これでは済まないことはそのとおりでございまして、政府といたしましては大いにこれから努力をいたしましてよい結果をつかみたい、つかんだらこれをともに喜んでいただきたい、それまでは、できないことを過早に申し入れた申し入れたと言っているだけでは誠意のないやり方で、これがとられ方によっては、かえってまた暴動の種になるのではなかろうかという私の率直な気持ちをその記事も伝えておられますし、またただいまの御質疑の中にもそのお気持ちがあらわれていることを私はたいへんありがたく存ずるわけでございまして、私としては誠意を尽くして——申し入れだけではございません、申し入れる以上は何らかの結果をつかまえたい。微力ではございますが、これからも大いに努力をしてまいりたいと思います。
  37. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 一つ要望だけさせていただきます。これは非常に大事な問題で、沖繩の問題は大臣に山ほど伺いたいことがあるわけです。どうかひとつ、今後委員会等におきまして、こんな大事なことを十分間では何にもお聞きできない、そういう意味におきまして、どうか大臣に十分なる答弁の時間をとっていただくように最後に要望いたしまして質問を終わります。
  38. 池田清志

  39. 安里積千代

    ○安里委員 限られた時間でありまするので、あるいは早口になるかもしれませんし、また、わずかな要点しかお聞きできないと思います。  今回の、コザにおいて起こりました事件につきましては、いろいろの立場から外務委員会におきましても大臣に質疑があったようでございまするし、当委員会におきましても、これまで同僚の方々からお話がございました。そこで、私は、基本的に、このような問題が起こりまする原因は、いろいろ見方もありましょうけれども、総括いたしまして見まするならば、施政権アメリカが持っておるという絶対的な観念、それと、その施政権内容というものが軍事優先である、こういうところの既成観念というものが、現実というものがこの問題を引き起こしておる、このように考えるわけであります。そうしてアメリカ側がそのような考えを持ちますとともに、これまでの日本政府沖繩の政治に対しまする考え方も、施政権アメリカにある、したがって日本政府としては、いろいろな沖繩の問題に対してくちばしをいれることができないという基本的な考えをこれまで持っておったのじゃないか。もちろん最近におきましては、施政権返還ということが具体化されつつありまするために、いろいろな交渉が行なわれておりまするけれども、少なくともこれまでは、沖繩問題に対しては、アメリカ施政権を渡しておる、その施政権行使としてなされるのであるから、いろいろなことを言うことはアメリカの内政干渉になるのだ、こういう考えを持っておられたのじゃないか。往年の沖繩の土地問題に関しましてもそのとおりでありまして、沖繩の地主たちが、農民たちが土地を取り上げられ、一括払い、これに対して日本政府は、当然対米折衝の中から解決すべき問題でありましたが、当時の政府、岸総理大臣時代でありまするけれども、これはアメリカ施政権の範囲内だという観念からいたしまして、問題は沖繩の代表がアメリカまで渡って問題解決に当たって、アメリカ考えを変えさせたという過去の事例もございます。そういうことを考えまするときに、このいま沖繩で起こっておりまするところのいろいろな人権問題に対しまする解決も、私は二つの面、一つは、一体これに対してアメリカが率直にどのように反省しているか、もう一つは、これからの日本政府のこの問題に対しまする対米姿勢、この二つに問題がかかっておると思います。  そこで、問題が起こってからこの方、アメリカといろいろ交渉もなさったでございましょうが、はたしてその中からアメリカはこの問題についてどのように反省しているか、それとも施政権があるし、暴動を起こした沖繩が悪いのだ——暴動ということばは当たらないのでありまするけれども、それがいけないのだというのか、率直な反省がアメリカにあるのか、また日本政府はこれまで以上に積極的にこの問題に取り組んで、前向きになって解決するという熱意があられるかどうか、まず第一にその点をお伺いしたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも率直にお答えいたしますが、私、自分で誠意や熱意を押し売りすべきではございませんから、あえて私の気持ちは申し上げませんけれども、微力でございますが、ほんとうに誠意と力を尽くして、努力を新たにしたいと思っております。  それから米側のほうでございますが、これも率直に申しますけれども、この事件の報が入りまして最初に接触いたしましたとき以来、米側は憂いをともにするという気持ちを持ったということは私は言えると思うのであります。アメリカとしても、国家の大方針として返還がきまっております。そして、あと残りましたわずかな時期の間において、ほんとうに円満に、沖繩人たち気持ちをくんで事に当たらなければならない、こういう意味で、われわれと憂いをともにしたということばが出てくるのではないか、この点は私はそういうふうに評価してよろしいのではないかと思います。それが甘いか甘くないかはまた別に御批判を仰ぎたいところでございますけれども、変わってきているということは、私の二年余りの経験から申しまして、そういう感じを受けましたことを率直にお伝えいたしたいと思います。
  41. 安里積千代

    ○安里委員 これは、もちろん国務省関係を通じての外交関係だと思いまするが、現実に沖繩の政治は軍事優先、アメリカの軍隊がオールマイティーである。そして、いま問題になっておる高等弁務官のあの事件直後における声明から見ましても、軍部は、大臣が受け取った感触とはかけ離れている、むしろこの問題に対して反発を感じておるのではないか、こういう感じもいたすのでありまするけれども、いまのお答えを、軍部を含めてというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 軍部を含めてと申し上げたいと思いますけれども、その辺のところは確かに微妙なところがありますことは私も承知いたしておるつもりでございます。
  43. 安里積千代

    ○安里委員 私は、政治の基本は、これは私が申し上げるまでもなく、どこまでも人間尊重ということが政治の基本であると思います。そしてどんな政治権力でも、これも私が申し上げるまでもなく御承知のとおりに、世界人権宣言に示されておりまするとおり、政治権力というものは人民の意思に基礎を置かなければならないというのが大原則であります。そう考えてきました場合に、どこの民主国家におきましても、人権というものは憲法によって保障されております。沖繩施政権アメリカに渡されたことによって、沖繩県民は一体どういう憲法と申しますか基本的な精神に基づいて施政が行なわれておるとお考えでございましょうか。つまりアメリカの憲法あるいは日本の憲法が沖繩県民人権を保障しておるのであるか。基本的には沖繩県民日本国民としてりっぱに権利を持っているはずであります。施政権アメリカに渡されたことによって、その沖繩県民の権利は一体どこの国の憲法によって、どういう基本線によって保障されておるか。これに対しまして、日本政府といたされましてどのようにお考えでありますか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 何によって保障されているかという憲法論議とか法律論議よりも、私はもっと基本的な問題かと思います。別に世界人権宣言を持ち出すわけでもございませんけれども、これはどこの国の為政者も、国民に対しあるいは人民に対して人権尊重ということが一番最高の責任でなければならない、私はかように思うわけでございまして、法律論はともかくといたしまして、いま施政の責任を持っているアメリカ側としてそのところを十分踏まえてもらいたいということがいわゆる対米折衝においてアメリカ気持ちをゆり動かしていくところの一番基本である、私はかように考えて事に当たっているつもりでございます。
  45. 安里積千代

    ○安里委員 ことばの上ではそうでありますけれども、先ほども申し上げましたとおり、沖繩の場合においては、理屈はどうにいたしましても、現実には、これはアメリカ自身口にいたしておりますが、軍事優先でありまして、そのために軍法会議では、いろいろな問題に対しましても人権無視のことが行なわれております。いまの政治の中におきまして、軍事優先という沖繩の政治の実態、これは一体間違っておると思いますか、それとも、施政権アメリカに渡しておるがゆえにこれはやむを得ないというお考えでしょうか。基本的なお考えをお聞きしたいと思うのです。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その辺のところは、いまも申しましたように、ほんとうに大いに配意をしてもらわなければならない、そこに思いをいたしてもらわなければならないということでアメリカとの間の話し合いを進めていきたい、こういう姿勢でこちらはいきたいものである、またいっているつもりでございます。そして、とにかく、先ほど来申しておりますように、こういうことがあるについても、この経過的な期間に、ほんとうにこれ以上こういうふうなできごとが起こらないように——起こらないようにというのは、こちら側というよりは率直にいって向こう側の考え方、これを態度に示し、具体的な事実の上にあらわしてもらわなければならない、そして共通の目的である返還を一日もすみやかに実現して、最終の目的、基本的な目的を達成いたしたいものであると思います。
  47. 安里積千代

    ○安里委員 時間がないようでありますので、残念であります。私は、アメリカ施政権というものはあくまでも条約によって与えた権利ではございまするけれども、やはり国際法上の大原則に従ってアメリカ統治すべき義務があると考えます。もちろん、国際的な原則というものは、その地域住民の利益を至上のものとすべき義務があると思います。ところがアメリカはそうではなくして、統治国の利益のために政治をしております。そうしていまの軍事裁判。決してアメリカ軍人のための沖繩の政治ではないはずです。アメリカ施政権を持っておるがゆえに軍人に対して特別なあれをするというようなことは、当然、アメリカ施政権行使は非常に違法だと思います。そういう考えからいたしまするならば、先ほどから問題になっておりまするところの裁判権の移官問題というような問題も、アメリカの誤れる統治のあり方に対しまする政府の強い姿勢がありまするならば可能だと思います。  もう一つ、私は、いまの弁務官の発言にもありましたところからうかがいまするならば、施政権返還を前にしてあらゆる犯罪が続発をしておる。本来ならば、立つ鳥はあとを濁さず、アメリカは、ほんとうに真心があるならば、きれいに事なく施政権返還をすべきでありまするけれども、むしろ返還を前にいたしまして軍人などの犯罪が多くなっておる。これはなぜであるかというならば、アメリカの軍人たちが国務省筋に対して、返還という政治問題を解決しようとするのに、軍部としてはむしろ抵抗を示しておるのじゃないか。そういう考えがもとになってきますと、軍部の言い分というものが返還協定の中に相当な部分を占めてくるのじゃないか、これをおそれるわけであります。あくまでも、返還協定の中におきましてもそのような軍部の圧力をはね返すところの強い姿勢がなければ、返還内容を誤るものだということを憂うるがゆえにこれを申し上げるわけであります。  時間がたいへんございませんので、もう答弁は要りません。
  48. 池田清志

    池田委員長 愛知外務大臣とは二時半までという約束でございましたので、大臣の退出を許します。  瀬長亀次郎君。
  49. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 愛知外務大臣を逃がしてしまいまして、非常に残念でたまりません。それで愛知外務大臣に対する質問も関連させて、特に沖繩担当の大臣でありますので、山中総理府総務長官に質問いたします。  その前に、コザ事件について最初に質問いたしますが、ここに持ってまいりましたのは、あの二十日の午前一時十五分から始まったいわゆるコザ事件における県民の怒りがどんなものであったかということを証拠立てております。これはアメリカ自動車、これが焼かれた残骸であります。これを私が持ってまいりましたのは、愛知外務大臣もいま答弁の中で、この事件背景は二十五年にわたるアメリカの支配に対する不満のうっせき、このあらわれだということを言われておりました。表現の違いはありますが、これは沖繩県民アメリカの二十五年にわたる軍事的植民地的専制支配、これに対して沖繩県民は歯を食いしばってがまんにがまんをしていた。そしてときには組織的に大衆の大会を持ち、集会を持ち、デモをやる。そしてB52が落ちたら命があぶないんで、B52を撤去してほしい。そして日本政府にも要請をし、お願いをしてきました。アメリカ政府にも幾たびかそういった人権無視事件を取り上げまして、とにかく命だけは何とかして長らえたいという基本線、これであります。だが、いま、二十日に起こりましたコザアメリカに対する県民の決起、これはほんとに怒りが爆発したものである。この怒りの強さは鉄をも溶かす強さだ。そのために私は証拠を持ってきたわけであります。いずれ総務長官は沖繩現地に行かれて、現実どのくらい怒りが深く、そして広がっておるかという点については現地調査されればわかりますが、屋良政府主席が不在のため、主席代行をしていた知念副主席は、この事件を取り上げまして、いまや対米沖繩県民の姿勢は一触即発であるということを言っております。この一触即発というのは、基地そのものが油である、油田である、そこに一点でも火種を点火すると燃え上がる、この表現だと私は見ております。しかもあの事件、私調査に行きましたが、現場を見、さらに琉球警察、それから公安委員長、さらに基地司令官のクーパー大佐にも会って、あの小学校の焼けあとも見ました。この場合、自然発生的なものであるとはいえ、コザの市民に対する被害は一文も与えておりません。ガラス一つも割られておりません。沖繩県民の相手というのがだれであるか、非常にはっきりわかると思います。この集まった群衆、四時にはすでに一万人余りに達したといわれております。こういったようなことを再び起こさない抜本的な基本的なものは何か、それは基地であります。基地があるがゆえにこのようなことになっておるし、アメリカ沖繩にいるからこのようなことになっておるんだ。ヤンキー・ゴーホーム、あの群衆の中から自然に出たことばは、アメリカ人はアメリカに帰れということがすでに沖繩県民の広範な層に定着しつつあるということを示すものと見なければいけないし、だからこそ知念副主席は一触即発ということばを述べたわけであります。  したがって、私はいま質問に入りますが、このことがありましたのが二十日、二日おいて、いま上原委員質問の中にもありましたが、沖繩北部の国頭郡に約百九十五万坪にわたる実弾演習場を設ける。これは具志川市の天願にあるキャンプ・コートニー第三海兵隊の実弾演習射撃をするということを、民政府を通じて琉球政府に通告があった。これに対しましては、地元の人は、絶対この演習場を許さない。さらに自由民主党の県連会長の大田政作氏も、断固反対するとはっきり表明し、琉球政府主席もこれをはっきり表明しております。国有林が大部分であり、そこは入り会い権の問題もからみ、二百名余りの部落民が、この山を取り上げられたら生活ができないという状態。さらにあの森林地帯は実に美しい森林地帯であり、先ほどノグチゲラという世界にも珍しい鳥がおり、その鳥類保護地域に指定されている。水源地も枯渇する。いろいろな面からこれには断固反対するという、もう県民的な反対運動がいままた盛り上がろうとしております。国有林の問題を含んでおります。これは、なお占領支配の中に沖繩があるということを事実をもって物語っておる証拠である。独立国日本、その独立国日本といわれておる日本の南の沖繩に百万おる。この百万の県民は、このようにして土地を取り上げられる場合にも三百も反対できないという状態に置かれてはいかぬというのが沖繩県民の真の願いであり、心である。さらに、独立国といいながら、殺されてもこれに対する一つの抗弁もできないし、そして強姦されても何とも言えない、強盗を働かれても火をつけられても何とも言えないという状態は、治外法権とかいうことばで名づけられておるが、これが独立国日本の国内の一角にある。しかもそこには百万県民が住んでいる。こういうことを私たちが念頭に置いて、真にいま申し上げました鉄をも溶かす怒りがあの強さの中にいまある。これに対して、きのうの参議院の沖特委での山中総務長官の発言の中に、新聞だけしか見ていないので真疑のほどは知らないが、こういったのはあげて日本政府の責任であるといったようなことが書かれておりますが、はたして日本政府の責任であるとするならば、一つは、いま申し上げましたあの全沖繩県民が反対しておる北部の演習地帯、これを絶対にさせないという方向、これは核抜き、本土並み、七二年返還が宣伝されたようなあの裏がどんなに危険なものであるかということを示すものであるが、誠意をもってこの演習場をやめさせるということが言えるかどうかという問題が一つあります。  もう一つは、糸満町の事件から発生しておると俗に言われておるコザ事件でありますが、糸満町の事件は、夫は七カ年間肺をわずらって寝ておる人であり、その主婦の金城トヨさんが殺された翌日、私も行きました。この事件はあまりにも殺し方もむざんであり、そうしてMPがやってきて、この加害者の車を持っていこうとしたとき、だれも呼ばないのに五十名集まり百名集まり、とうとう包囲してしまって、この車はそのまま置いた。そうしてここで数日間団交が始まる。団交というのはアメリカ軍人凶悪犯罪糾弾協議会、これがつくられたわけであります。この糾弾協議会といろいろ問題が出て、裁判を公開する問題、さらに損害賠償一万七千ドルを要求しておりますその損害賠償の問題、さらにいまでは何を言っておるかというと、サル芝居の軍事法廷を許すな、軍事裁判を許すな、だから無罪判決になったあの結果を、琉球政府が推薦する者をも入れて裁判をやり直せという要求が熾烈になっております。これに対する山中総務長官の見解。  もう一つは、いま外務大臣の数名の委員に対する答弁の中で、毒ガスの問題であれ、さらに軍事裁判琉球政府に移譲する問題であれ、七二年沖繩返還実現するまではどうにもならぬということになっていたが、これまでそのあと二カ年間沖繩県民毒ガスを抱いて生活せよということになるのかどうか。さらに裁判権の問題にいたしましても、七二年まで二カ年間単に警察とアメリカと結んだ協定の改善くらいでがまんしろということであるのか。ここら辺が明確にならないと、沖繩県民は安心して暮らすことができないような状態に置かれております。まずそういったようなことについて山中長官に御質問いたします。
  50. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が昨日参議院の委員会において日本政府の責任であると申しましたのは、敗戦そのものが第一日本政府の責任を持つべき事柄でございますが、そのあと敗戦の際の業火に焼かれた沖繩方々を、サンフランシスコ講和条約において、日本の全権の調印によって、沖繩の人々の意思を聞かずして切り離した。その後今日まで沖繩の人々の苦しみがなお続いておる。しかもそれが昨年の佐藤・ニクソン会談によって復帰が確定をして、さあもうしばらくだという明るい希望の反面に、なおかつ短いようであるけれども残りの二年間われわれはこの苦しみに耐えよというのかというお気持ちであろう。この点について、われわれは沖繩人たちに対して政府に責任があるということを感じますというふうに申し上げたわけでございます。  ただいまのお話しになりました問題点は、いずれも外交折衝のルートに乗って話をしなければならないケースでございますが、演習地の問題については、私の手元には、沖繩北方対策庁の沖繩事務局等々のルートによりいろいろの経過等が報告をされております。現在のところ、お話しのように関係村民はもちろん、琉球政府農林局を中心に一体となって反対であるという御意見であることも承知いたしております。これらの問題は、それらの沖繩県民方々の、しかも旧国有地というところに一方的に占領軍の権限が強制されていくという問題について、われわれの日本政府としてどのような立場をとるべきかについては、外務大臣がまだ具体的な外交交渉の議題になっていないという御答弁があったそうでありますが、私どものほうでもさらに詳細に米側の意向等を確かめる努力外務大臣を通じてお願いしたいと考えるわけでございます。  さらに糸満主婦の轢殺されたことに伴う軍事法廷において無罪が宣告されたことに対する県民方々の憤りというものが、お話しのようにコザ事件の直接の引き金になったであろうということは、再び糸満事件の二の舞いを演ぜよというのか、糸満事件にしてしまおうというのかと口々に叫ばれたということが何より雄弁に物語っておるわけでありますので、私どもも外務大臣を通じてアメリカ側に対して、アメリカ側の少なくとも現在の軍事裁判の仕組み、すなわち日本側にはない陪審員制度その他の運営のしかた、あるいはまた陪審員制度というものが、証拠その他の収集の結果確実に有罪であるという証拠がそろわない場合において、多数決でもって無罪にすることがある、このような日本裁判と軌を異にしておる事情等が県民によくわかっていない、こういうような点について説明が不足しておるし、沖繩県民納得しようにもできないような状態のまま、それはもう抗議をしてもだめなんだ、やり返しはきかないのだという、それだけではあまりにも不親切であるというようなことで、外務大臣からもその問題についてはさらに十分に、先ほど民事賠償の金額のお話等もございましたが、それらの問題も踏まえながら、もう少し親切に、人命に関することであるから、よく取り扱うように、沖繩県民の心をよく知って行動するようにということを言ってもらっておるつもりであります。  さらにこの裁判管轄権の問題については、外務大臣との間においてお話があったことと思いますけれども、はっきり申し上げて、アメリカ側裁判管轄権は施政権そのものの現実の柱であるという姿勢をずっととっております。しかしながら、そのことをいつまでもとっていて、はたして残された沖繩におけるアメリカ施政権行使というものがやっていけるかどうか。そうしてアメリカがもし沖繩復帰後も日本との間において友好関係を持続したいと念願しておるものであるとするならば、沖繩において日米友好に亀裂を生じさせるような道をいつまでもとり続けようとするのであるかどうか、これらは私自身もアメリカ側に問いかけたところであり、やはりアメリカ側においていま少しく、この制度という問題について、沖繩県民のもうがまんできないという心情についてわれわれの意見もくむように努力してくれという外交交渉によって、ようやくアメリカ側もそれに準ずる形としての民政府裁判所に沖繩県民の代表も陪審員制度に加え得るかどうかを含めて、それらのことでもせめて実現できないかというようなことについて若干の反応が出てきたということを聞いておるわけでございますけれども、私どもは原則は、昨日の参議院の委員会においても決議をされました裁判管轄権を復帰以前にでもなるべくすみやかに返せという要求の姿勢をとるべきことは、これは沖繩県民の意思をくんで当然私たちのとるべき姿勢であると考えておる次第でございます。
  51. 池田清志

    池田委員長 中谷鉄也君。   〔委員長退席、床次委員長代理着席〕
  52. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官に最初の質問は次のとおりであります。  軍事裁判というものが不正不当な裁判であって、そして特に糸満事件のごとき、有罪であることが合理的な、疑いをはさむ余地のないものが無罪になった、こういうふうに評価すべきであると思いますが、長官、そのように評価をされますか。
  53. 山中貞則

    ○山中国務大臣 裁判に立ち入ることは私どもはできませんが、感想として申し上げるならば、私もそう思います。
  54. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで私は次のようなことを長官にお尋ねをいたしたい。  要するに、軍事裁判の仕組みというものがベールの中に隠されているなどということでまずわれわれは承知ができません。そこで、一体従来から軍事裁判法廷における記録については閲覧を要求されたことがあるか。糸満事件についてはまずその閲覧を要求すべきである。これが第一点であります。  第二点は、無罪理由は証拠不十分ということ、証拠不十分の具体的な内容が示されていない。それらの問題については、まさにそれらの問題について要求すべき合理的な根拠を持っておると私は思うが、要求される意思があるか。要求すべきであるという主張の中で私はそのことをお尋ねいたしたい。  第三点は、裁判やり直しという問題、これについて政府は全力をあげて徹底的にこの問題について法律的な裁判やり直しの道を検討すべきであると考える。  この三点について長官の御所見を承りたい。
  55. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これも、私はきょう外務大臣と二人一緒に並んで答弁をさしてほしいと頼んだのでありますが、外務大臣がどのような答弁をされたか知りませんが、閲覧はさせないと言っておるそうであります。  さらに証拠について、これは閲覧とほぼ同じようなものでありましょうが、それらのものを要求して、はたして応ずるかどうか。これはいまのところ、外務省として基本的な姿勢はわかっておりますので、要求していないものと私は思っておりますが、まだ打ち合わせをして答弁したわけでありませんので、違っていたら外務省から訂正をしてもらいたいと思います。  さらに裁判のやり直しでございますが、これは日本の法律上の権威が若干でも及んでいるならば、あるいはやり直しその他について日本側の行為が起こせると思うのですけれども、少なくとも現在においては、日本側アメリカ側の軍事法廷の判決をやり直せということは、言ってみることは可能でありますけれども、おそらく実行は不可能であろう。それを受けとめるほうは日本側の発言を正式な外交の要請として受け取らないであろうと思うわけでございます。
  56. 中谷鉄也

    ○中谷委員 それらの問題について、あと政府委員に私は法律上の根拠と経過について詳しくお尋ねをいたしますが、共助協定について、共助協定の改善ということ。共助協定ができたということを政府は高くPRをしておられる。しかし、その共助協定の第二条の第二項、「この覚え書の手続により援助の要請を受けた関係者は、そのときの状況に照らして可能である場合はその要請に応ずるものとする。」とあります。こういうようなことで犯罪の防止をしていこうじゃないかということならば、記録の閲覧もできない、無罪については証拠不十分だという理由だけで、証拠のそのことだけで無罪理由について問題点が指摘されない、ベールに囲まれたままということならば、この共助協定はそういう点こそまず改善すべきものだと思いますが、いかがでしょうか。
  57. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは捜査に関する共助協定でございますから、裁判共助協定ではございません。
  58. 中谷鉄也

    ○中谷委員 捜査の結論が裁判であります。裁判というもののあり方、こういうことで無罪になったのだということの分析をしていくことが将来の捜査にどれだけ重大か。そういうようなことが共助協定の中にあらわれていないということ、その点が私は全くおかしいと思う。いかがでしょう。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 済んでしまったことですから、あっさり経過を申し上げますと、私の主張は、捜査に関する共助協定であっても、琉球裁判所の発行する令状によって琉警が主体的に、米側と関連なく一方的に逮捕、捜査ができるという線まで申し入れをして強硬な折衝をしたのでありますが、琉球政府裁判所の発する令状というものは——やはり施政権の中において琉球政府そのものが独立した、施政権と離れた裁判権行使は行なえないというような立場をとっております。その令状でもって一方的に琉政の警察のみで捜査権行使するということについては、ついに合意を見るに至らなかったという経過がございます。
  60. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官は、というよりも政府は、民裁判所に対する移管ということを見解として数日来述べておられます。これは先ほど外務大臣にもお尋ねをいたしましたけれども、大統領行政命令第十節のC、要するに大統領行政命令の範囲内において、現在開店休業になっておる民裁判所にケース・バイ・ケースで事件を、軍人軍属裁判を移すのだという趣旨なのか、それとも軍人軍属公務外犯罪については一括して民裁判所に移すという趣旨なのか、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 外務大臣とマイヤー大使のルートによる話し合いの点でございますので、そこまで具体的に進捗しておるかどうか知りませんが、少なくとも私がそこまでいきたいと願うのは、沖繩県民に対する米兵犯罪というものがあった場合、それについては原則として民政府裁判にゆだねるべきであるということを申しておるつもりでございます。
  62. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで提言であります。私は次のように考えます。民政府のある筋の報道によりますと、アメリカの憲法との関連においてということがいわれております。私は裁判権施政権の重要な柱であるということは認めます。しかしそのことであっても、裁判権本土へ取り返すということではない。この点は私は日弁連見解のとおり。だとすると、特に沖繩県民の心情、期待、そのようなものを考えてみますと、問題になる点は、沖繩裁判所については陪審制度がない、このところがアメリカの憲法との関係において問題になりそうだ。したがって復帰まで琉球地方裁判所、那覇とかコザ裁判所については、軍人軍属犯罪に限って陪審員制度を設けるというかっこうにして民移管というものを——民移管というのは私の場合は県民の手に裁判権を取り戻すということであります。そういうようなことについて政府が全力をあげて取り組んでいくということに、私はひとつこれはお約束をいただきたい。いかがでしょう。
  63. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは本土においては、アメリカの憲法があることはわかっていても、やはり属地主義の裁判権というものを認めたわけですから、それはもうすでに壁は乗り越えておるわけであります。しかしながら、現在は、復帰まではやはり完全に独立の国家としての琉球政府の権能の行使をおそらく米側は認めないでありましょう。そうするといま言われたようなことは、日弁連の一つの提案というものも傾聴に値いするものがございますし、外務大臣もそれをアメリカ側に伝え、アメリカ側も研究しておるようでございます。一つの御提案として承っておきたいと思います。
  64. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私の言っているのは心日弁連見解にさらに一歩加えて、そうしてとにかく陪審の問題について憲法上の問題が生じてくるというのだから、これは将来本土復帰したときに非常に問題が出てくる。本土のほうと非常に違ったことを復帰直前にやるのだから非常に問題があるけれども、とにかくそこの比較考量の中で沖繩裁判所に陪審員制度を設ける。そこでとにかく少なくとも裁判権移管させようじゃないか。これは私は理論的にはまず全く施政権下においてできることだし、また同時にこれは日弁連見解にさらにプラスアルファしたものだから、私は可能性があると思います。そういう方向でひとつ、これは長官には直ちにここで申し上げたわけだけれども、十分に検討していただくことをさらにお約束をいただきたい。
  65. 山中貞則

    ○山中国務大臣 専門家の見解ですから、私も謙虚に耳を傾けて検討するにやぶさかでございませんが、私自身がアメリカ側との折衝をする立場にございませんので、外務大臣ともよく相談をいたします。
  66. 床次徳二

    ○床次委員長代理 上原康助君。
  67. 上原康助

    上原委員 総務長官に二点ほどお聞きしたいと思います。  まず第一点は、去る二十日に沖繩コザ市で起きました反米騒動事件の件について、すでに大臣の御答弁もあったわけですが、沖繩担当の大臣という立場で、あのように突発事件が、しかも民間地域には何らの被害も与えないというように、秩序正しく行なわれているところに、アメリカ統治に対して、また本土政府がそのような県民の苦悩というもの、心情というものをなかなか早急に解決をしていただかない、そういう県民のやる方ない不満というものが爆発をしたというのが、私は現場を見て偽らない実態だとつくづく思いました。このことに対して、まず第一点、その背景なり遠因なり、ほんとうにどうとらえておられるのか、もう一度明らかにしていただきたいと思います。  それとの関連において、県民が非常な怒りをもって毒ガス撤去の問題なり、金城トヨさん事件無罪判決に対して抗議をしている、裁判のやり直しを求めているにもかかわらず、ランパート高等弁務官の特別声明というものは、全く沖繩県民の意思というものを踏みにじり、心情を理解しない、政治的に考えてもあるいは日米政府の関係を考えても、むしろ不要な摩擦を投げかける結果になっています。この高等弁務官の声明に対してどう受けとめられておるのか。この二点についてお聞かせ願いたいと思います。
  68. 山中貞則

    ○山中国務大臣 コザ事件については、遠因、近因、あるいはまた間接、直接の原因がいろいろあろうと思います。しかし瀬長君にもお答えを申し上げましたように、私たちの祖国が、許されない環境であったとはいえ、沖繩県民の身に長い忍従の生活をしいたということが、結果、その施政権者たるアメリカに対して、しかも実質軍政に対する反感となって、いわば必然の偶発という形で爆発したものである。また近因としては、引き金的な役割りは、幾ら共助協定コザ警察署に連れていって調書をとって双方が了解し合ったといっても、一ぺんMPに引き渡されてそれがゲートの中に姿を消したあとは、また糸満事件みたいなことになってしまうんだという、どうにもならない、いわば自分たちの手の触れられない場所に連れていってしまわれるのだという憤りというものがあったのであろうと私は思うわけであります。その意味において、そのような環境に沖繩県民を今日まで置いてきて、なおかつあとしばらくといえどもその占領治下の施政権のもとに沖繩県民を置かなければならない祖国の責任をまず痛感しておることを申し上げた次第でございます。したがって、このような事件が二度と起こってはならないし、またアメリカ側においても、自分たちの、場合によってはそう悪意でない行為であったにしても、今日までの長い軍政の結果というものが、どのように部屋じゅうに危険なガスが充満し、瀬長さんのお話しのように、たった一本のマッチでも爆発するという事態になっておるかについて十分考えてもらいたいと私は申し上げておるわけであります。マッカーサー元帥でありましたか、どんな善政を施しても、占領政治というものは三年が限度である、というように言ったという記憶がありますが、すでに沖繩は、復帰の時点までとらえれば、その十倍近い歳月を軍政のもとに送るわけでございますので、かりに善政を施していたとしても、やはり限度をこえた長い期間であるということについては、私も大体昨日来御質問をされる議員の方々意見の相違はございませんし、そのことを十分くみ取ってまいりたいと存ずる次第でございます。  なお、ランパート高等弁務官の事件直後のテレビによる見解の表明について、これはたしか上原君が現地で高等弁務官と会われて、直接お聞きになって、自分の言ったことは通訳その他の誤解もあるいはあったかもしれないが、遺憾であった、自分としては搬送そのものが危険にさらされてはと思ってああいうことを言ったのだけれどもまずかった、ということを言ったやに私どもは漏れ承っておるわけでありますが、やはり事件直後の、向こう側としても興奮していた環境もあったのでありましょうから、あるいはそういうような単に通訳の間違いでない、県民から見て神経にぴしっと突きささった感じの姿勢であったこともいなめない点があると思います。この点は私どもも十分機会をとらえて、もちろん弁務官個人としての立場もありましょうけれども、公職の立場からランパート高等弁務官について今後施政権の運用に誤りなきを期するよう、そして県民の心をさかなでするような発言、行動等のないように相談をよくしてみたいと考えるわけでございます。
  69. 上原康助

    上原委員 まず裁判権移送、いわゆる琉球警察裁判権即時完全に移送移管をやれという点、捜査権を含めてでございますが、先ほど、この件については米側とも話し合っているのだが、施政権そのものの現実の柱であるということでなかなか困難だという御答弁もございましたが、しかし先ほどから強調しておりますように、県民の心情というものは毒ガス撤去にしても、裁判権民移管にしても、捜査権を含めて、七二年まで待てないというのが現実の姿なんです。かりに一〇〇%移管できないにいたしましても、現段階でどのような県民納得のいく裁判のあり方ができるのか、そういう現体制、現機構内での改善策についても話し合われたことがあるのか、あるいは日本政府側からそれの提案がなければ、現地米軍側からこの事件以降に、この方法ならばもっと民主的で法廷の原則である公開の面を含めてできるというような提案なりお話し合いはないのかどうか、その点について聞かしていただきたいと思います。
  70. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は直接申し入れる立場にございませんので、外務大臣からマイヤー大使のルートを通じて、目下のところはそのような申し入れをいたし、それに対してマイヤー大使の米側の感触というものが新聞その他において報道されたところであり、また外務大臣から御答弁のあったことになっておると思うわけでございまして、今後引き続き私としては、政府の外交権を行使される外務大臣、所管担当大臣として、沖繩県民立場に立って、あくまでもきびしい姿勢を貫いていきたいと考える次第でございます。
  71. 上原康助

    上原委員 次に、軍雇用員の大量解雇の問題でお尋ねいたしたいわけですが、相次いで県民感情刺激をする、あるいは好ましくない報道だけが続いているわけですが、二十一日、本土を含めて米軍の撤退というものが報道されております。この件については外務委員会、内閣委員会でも政府の御見解を求めてまいりましたが、沖繩の基地問題なり基地労働者の縮小については、政府はまだ関知をしていないという各関係大臣の御答弁があったことを記憶しております。しかしおそらくわかっておったでありましょうが、突如として発表されております。二十一日に発表されているのは、来年一月以降六月まで三千人の日本人労務者が沖繩において解雇をされるという計画が具体的に発表になっております。大臣も御案内のように、昨年十二月以降大量解雇がなされて、大きな社会問題、政治問題に発展をしていることは御承知のとおりであります。ちなみに、沖繩の場合、昨年の一月から六月まで千五百五十七名、七月以降四百五十九人、合わせて二千十六人の人員整理がなされております。そのうちに就職をしている者は、県内において四百九十八人、本土へ八十二人、わずかに五百八十人しか、まだ二千名あまりの解雇者のうちで就職をしていない。しかも失業保険も九月ないし十月段階で大体切れております。深刻な失業問題に発展をしているさなかにおいて、突如としてこのようにまた三千名にのぼる大量解雇が強行された場合に、一体基地で働かされてきた労働者の生活なり今後の雇用対策というものがどうなっていくのかというのが大きな不安となっていま出てきております。貧困と失業は社会混乱のもとだと思います。もちろんこの件については、われわれとしても努力はいたしますが、ほんとうに沖繩のいまの解雇問題の深刻さというものをどのように受けとめて、また今後軍側との交渉なり離職者対策について、予算面を含めて、どのような姿勢でやっていかれるお考えなのか、承りたいと思います。
  72. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいま事前の連絡があっていたことと思うがという話がありました。今日までの慣行からいたしますと、事前の連絡は必ずあるはずであったのですけれども、今回私が知ったのは、日米協議会が開かれている、もう終了直前のころに知りました。そこで、きのうコザ事件が起こった翌日に、現地でランパート高等弁務官が夕方発表する仕組みになっておるということを通知を受けたのでは、とてもわれわれの神経では考えられないことである、だからせめて事前通告の期間その他等についても配慮もあることだろうが、それを解雇を延ばすことによって確保すればいいのだから、この発表を少なくとも年を越すようにしてもらいたいというような連絡もしてみたわけでありますけれども、それは応じられない、もうすでに発表の予定ができ上がっておって、どうにもならないのだということでありました。この点は、私としては解せないところであり、はなはだ残念でございましたけれども、しかし覆水盆に返すことができないものであるならば、私としては、やはり今日まで特例として行なっておりましたけれども、これを今後の問題も含めて、全部やはり本土並みの手当て、その他について同じ待遇をするということについて努力をしていかなければなりませんし、年度内において必要なものは、年度内に処理もいたします。また今年に残っておりました五百名余りの方々は、越年に間に合うように、先週の土曜に大蔵と合意いたしまして、現地でそのような処理をいたした次第でございます。さらに来年の防衛庁の予算要求において、特別給付金の引き上げ等を要求いたしております。私どものほうでは、単独で走って先に要求するわけにいきませんので、その要求をいたしておりませんが、大蔵との間の話し合いで、防衛庁の給付金の引き上げが行なわれたならば、自動的に沖繩の解雇者の方々にもそれを適用するということでもって対処してまいる姿勢をとっておるわけでございまして、そういう方向で対処してまいりたいと思います。   〔床次委員長代理退席、委員長着席〕  なお沖繩の限られた雇用市場の範囲内における大量の解雇者の再就職の問題等は、御指摘を待つまでもなく、非常にそのチャンスが少ない、あるいはまた求人の少ない環境でございます。また中高年齢層等、常識の年齢から考えてもたいへんむずかしい点があろうと考えまして、ずいぶん私も心痛いたしておるわけでございます。何も肉体労働をしろというわけではありませんけれども、来年度予算等においても、なるべくそのような方々がお働きになれるような場所というものが確保できるような一般の仕事を考えてみたい。あるいはまた本土から現地に進出する企業等についても、近く造船業等がその態度を明らかにするようでございますが、幸いに造船業はあまり公害も出さないで、しかも雇用事情に非常に貢献をする産業でございますので、私は軍労務者の方々の長年体得された知識あるいは技能というものが非常に生きると思うので、年齢は若干高いけれども、進出した場合においては、まずそのような、かつて軍労務者であった方々を優先的に採用するような配慮等も必要でありますということをお願いを申し上げて、よく御理解も得ておるつもりでございますが、公的なあるいは民間のものも含めて、あらゆる面で解雇された方々の再就職の機会あるいは必要な技能、職能に適応する職場が得られるように全力を傾けてみたいと思います。
  73. 上原康助

    上原委員 いま大体政府のお考えが明らかにされたわけですが、一言要望だげ申し上げておきたいと思います。  確かに本土でも一万余の解雇問題をかかえて深刻になっておるということはよく理解をしております。しかし沖繩の労働市場の面なり、あるいは基地の密度、解雇のテンポというようなものを考えました場合に、単に本土だけということではどうしても軍労務者の離職者対策というものがはかどらない。ことばは先んじても政策的になかなか伴っていないという現実でございますので、その実情というものを十分御理解いただいて、積極的に大臣の、沖繩の基地労務者問題あるいは復帰問題を含めて、お力添えを願いたいということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  74. 池田清志

    池田委員長 中川嘉美君。
  75. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私、この委員会に出てまいります直前ですけれども、沖繩現地から電話がありまして、けさの沖繩タイムスの記事が連絡されてまいりました。これを全部読んでいると時間がございませんから、一部だけ読みますけれども、「二十一日に米軍が発表した軍雇用員三千人大量人員整理の中で、那覇、嘉手納両空軍、千三百五十人が最も規模が大きいが、空軍関係では、来年三月五日からの解雇に先がけて、千二百人を対象に一月一日から労働時間を週四十八時間から四十二ないし四十四時間に短縮される。この時間短縮は、時給算定の軍職場では実質的な賃下げを意味するもので、それに伴い解雇時の退職金も大幅に削減されることになり、問題になっている。」この次にいろいろずっと算出の基礎が出ております。要するに向こうの経費削減ということでありますけれども、最後の部分に、「時短による退職金の減額は、一人当たり最低六十ドルから最高千ドル、平均七百ドルになっている。米軍は解雇を前に時短で経費節減をはかろうとするものであるが、この節減は数十万ドルにのぼる。」こういう結論的な言い方でけさの沖繩タイムスに出ておったという連絡があったわけですけれども、全軍労の一人の方が、十年以上もつとめてきたのにこのように削られてしまってはたいへんだ、米側もあまりにもひど過ぎるじゃないか、こういうような声もあったようであります。私たちは、今回の発表はどう見ても、時点の上から見ましても報復としか考えられない。そして本件がまたまた感情的に高じた場合にそれこそ暴動のおそれがあるのではないか、このようにさえ感ずるわけであります。ただいまのところ、上原委員質問に対して、国として補償を考えておられるという御答弁もあったわけですけれども、本件に関して、こういった時短に関して政府米側にどのような態度で臨まれるか。まずさっそくこの件についての政府米側に対する姿勢を御答弁いただきたいと思います。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは補償というものではございませんので、沖繩側において雇用者である米側から解雇された方々に対して本土と落差がある、その点を本土並みにしようという特別交付金を支給しておるものでございます。もちろん閣議の決定を経て行なうことを定めておるわけでございますが、この措置については今後とも、上原君に答弁しましたとおり、もう恒久的な復帰までのものとして取り扱ってまいりたいと思うわけであります。  なおそれまでに、ただいまの時間の短縮の問題、これは結果的には退職金算定の場合において御指摘のとおり金額がダウンする結果にもなりましょうし、あるいは退職金の計算の方式そのもの本土と若干違っておりまして、この退職金の計算の方式そのもの沖繩側が若干の不利がございますので、これらの点についてはすみやかに本土並みにしてもらいたいということも折衝をしておるわけでございます。ただいまの時間短縮の問題等は、本土においても再就職する場合等において、全駐労の人たちは週二日制の休みがありますので、それらの点で、実際は日給でありましょうが、月給に換算した場合は、他の民間の土曜日まで働く職場に転換するのにはなかなか条件が苦しいということを、全駐労の委員長であり総評の議長である市川さんから私も聞いておるわけでありますけれども、それらのこと等も考え合わせながら、経費節減でございますので、事務能率の向上ということでそのような計算をするわけでありましょうが、それが結果的にはいわゆる既得権であるべき退職金の計算に響くことになりますので、これらの点については米側にももちろん話は続けてまいりたいと思いますけれども、しかし、どうも財政上の理由、いわゆる緊縮財政という、効率ある行政をあげたいという米側の姿勢があるようでございますので、それらの点は具体的な結論を出すのにはなかなかむずかしい点があろうかと思いますけれども、努力すべき事柄であろうと思います。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この二十一日の米軍発表については、もう長官もよくすでに御存じではあると思いますけれども、私いまお伺いいたしましたのは、こういった発表に対して政府としてどういう姿で、先方、米側に対して要求すべきことはどういうことであり、どういう点を強調しなければならないか。そういう具体的な政府としての米側に対する姿勢をいまお聞きしたわけですが、この点どうでしょうか。
  78. 山中貞則

    ○山中国務大臣 全軍労の方々が疑問な点は、ふに落ちない点は、基地が閉鎖もしくは解除というようなことによって自動的にその働く対象の場所がなくなったために整理されていくということについては、基地撤去という一方の主張もあり、がまんをしなければならないという覚悟は固めておられるようであります。しかしながら、そうでない、基地はどうも一部解除されるところがあったにしても、それと直接関係のないところまで緊縮財政の運用上の問題として解雇が次々と発表されていく、この問題について、自分たちの主張する姿勢と違う、一方的ではないかという、身がって過ぎるという言い方をしておられるようであります。私どもとしては、アメリカが、これは何も沖繩だけでない、本土も含め、あるいはその他の海外基地も含めた軍事予算の削減、緊縮による運用のために、あちこちでそのようなことを行なっておりますし、沖繩からもまたアメリカ軍人その家族も四千名余り引き揚げていくことになるわけでありますから、われわれとして解雇をするなと言ってみても、これはなかなかむずかしいことであろうと思いますが、先ほど答弁いたしましたように、今回は事前の連絡がなかったというのはたいへん遺憾な点でございまして、やはり事前に十分連絡をとり合いながら、そして現地琉球政府やあるいは軍労関係の皆さんとも十分連絡をとって、事前に対処する手段を講じつつ、寝耳に水という感じの不愉快な解雇発表が行なわれないように、そういうふうに交捗をしてまいりたいと考えます。
  79. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この点については、全く時間がないものですからまたあらためてもう少し……。いまの御答弁も、された範囲ではわかるようですけれども、何となくそういう連絡がうまくいかなかったという問題、あるいはまた、どうも政府としても具体的な態度というものは、まだまだこの時点では、本来ならばさっときまっていかなければならないと思うのですけれども、そこまで固まっていないように思いますので、またあらためてお聞きしたいと思います。  そういうわけで時間がほんとうに少ないものですから、要点だけ聞いてまいりますが、国頭村の実弾射撃演習場、この問題は先ほども質問の中に出ておったようでありますが、こういった百九十七万坪に及ぶこの広い演習場の、このたびの発表に対して地元の村議会ですか、たいへんな反対を表明している。ランパート高等弁務官は、これは前にも使っていたことだし、いままでとあまり変わりがないのだ、多少大きい射撃を行なうだけだ、こういうふうに言っているようですけれども、どうも聞くところによりますと、北富士で使用していたところの大口径砲ですか、この大きいものを持ち込もうとしている、十五センチでもって自走砲、何か頭に核兵器がつくような形になっているそうですけれども、いずれにしても、こういったものを持ち込んで演習するということになるというと、こういった光景を見るだけでも、地元としては、これは一体何で本土並みなんだというようなことに当然なるわけで、地元では非常におこっている、こんなふうな連絡が昨晩現地から入ってまいりました。こういうことが次々に発表になるというと、私はこのこと自体は詰めませんけれども、当然反米に片寄らざるを得ない、こういうふうに私は思います。住民の直接行動に移らざるを得ない可能性を多分にはらんでいる。そういうわけで、今回のコザ事件をひっかけてお聞きするわけですけれども、このように現地の声として、日本政府は何をやっているのだ、こういった声を聞くにつけて、政府はどのように米側に対して次々にこういうような問題が出てくるということに対しての善処を考えておられるか、こういった立場からひとつ答弁をいただきたいと思います。
  80. 山中貞則

    ○山中国務大臣 黙認耕作地である軍用地の中で実弾射撃を再開するということは、米側としては言い得る余地もあるかと思いますが、今日のような復帰直前の、しかもコザ事件等の環境もある中で、住民納得しない、あるいはまた関係村民こぞって反対をしておる、あるいは責任ある琉球政府の反対をしておるという場合において、私たちは沖繩県民の人々の反対を体して、米側のほうに反対を押し切って強行しないような方向の姿勢をもって折衝する、連絡をするということは当然なことだと考えておる次第でございます。
  81. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは軍用道路問題に関連して一つだけお聞きしたいと思います。  琉球政府の道交法ですけれども、これは軍用道路に適用されるかどうか、この点が一つあるわけですが、これはどうでしょうか。適用されるかされないか。軍用道路に琉球政府のいわゆる道交法ですね、道路交通法、これが適用されるかどうか、まずこれだけ先にちょっと……。
  82. 山中貞則

    ○山中国務大臣 軍用道路というのは、建設の際に軍用道路であって、あとは維持その他については、やはり琉球警察が交通安全規制取り締まりその他等を行なっておるようであります。したがって、われわれのほうとしては、予算面においても、沖繩の道路というものは軍用の目的のみに急速に完成された感がありまして、一般の住民の交通安全というようなもの等については、最近やっとあちこちに信号機が設置されたくらいの感じの、非常に取り残された部門がございますので、予算面等でも琉球警察を通じて十分に交通安全施設その他を考えていきたい。ただいま予算の折衝中でございまして、その点は問題はないものと考える次第でございます。
  83. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 しかしながら、このように公共的なものに現実の問題として琉球政府の権限が認められないということは、このたびの事件にも関連いたしますけれども、非常に差別待遇もはなはだしい。このように思います。こういったことがこのたびのコザ事件発生した理由一つである、このようにも考えて間違いないと思うのですけれども、たとえば駐車違反の問題、例の黄色のナンバーをつけた車が違反しても一向差しつかえない、こういうような実情であって、琉球警察には全く権限がない。そうしてまたその逆に、日本の車はほんとうに三十秒か一分とまっただけでぱっと罰金を払わなければならない。そういうような実情に対して、いろいろ言えるわけですけれども、コザの大山市長がこのたびの事件に対して言っておられるのを聞きますというと、法律があってわれわれを守らなければ、これは実力でもって立ち向かう以外にないのだ、身を張ってでも戦う以外にないのだ、このように大山市長は言っておられる。引き続きまして、市長は、こういうことを実際やってくれない琉球政府あるいは日本政府に対するわれわれの気持ちはおわかりですか、このように市長が言っておられたそうであります。こういった問題について政府は今後どういうふうに考えておられるのか。ここで二点にしぼって、そのうちの二者択一のような形になりますが、お答えいただきたいのです。今回の事件をはたして暴徒であると見るかどうか、あるいは二十五年のうっせきした怒りと見て大いに同情の余地がある、このように政府は見るか、この二つのうちのどっちであるか、それだけを伺っておきたいと思います。政府の見解によって今後の施策等にも大いに影響するわけでありますので、この二つのうちのどっちか、これをまず伺いたいと思います。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は必然の偶発と申しておりまして、そのような者を暴徒だというふうには思っておりません。暴徒であるならば、略奪、暴行、その他だれかれの見さかいなしにやるはずでありますけれども、米軍ナンバーの車だけがねらい撃ちにされて、しかも周辺の住宅その他に延焼しないように慎重な配慮をしながらやっておるところを見れば、それは当然暴徒と称するにはあまりにも現実が違うということ、私はそう思っております。  なお、アメリカの車については駐車その他について特権がある、この点は私はいいとは思いませんが、それぞれの国においても、外国公館の車については、その国の国内法の現行犯罪以外においてはいろいろの免責がございまして、日本の国内でも、外国公館の車でありますと、不法駐車を許してあるわけではないのですが、ときには、交通事故等をも含めて、トラブルのもとになるようなある種の外交特権が認められておる。でありますから、沖繩はそれでけっこうであるというわけではありませんが、そういうことを全面的に、軍の車の公用、私用にかかわらず適用しておるのではなかろうか。その点を私は好ましいとは思っておりません。
  85. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 慎重な配慮でほかの家を焼かなかった、このようにおっしゃいましたから、それでは二十五年間のうっせきした沖繩県民の怒りというものに大いに同情の余地があるという立場政府がとっておられる、当然のことですけれども、このように了解して次に進みたいと思います。  あと一問だけですが、いずれにしても糸満事故、この琉球警察でつくったところの状況調書は、出しても全く取り上げられなかった。いろいろその事故の詳細が書かれてあったと思いますけれども、無罪になってしまった。こんなことでは、いわゆる捜査協定をしても何ら効果がないのではないかと思うわけです。これを効果あらしめるためには、もっと突っ込んだ対米折衝というものが当然必要じゃないか。同じような事件がまた起きたならば、これは結局繰り返しになってしまう、このように思います。共同捜査ということに関するなお一そうの対米折衝ということについて、長官の見解を伺っておきたいと思います。
  86. 山中貞則

    ○山中国務大臣 犯罪捜査の共助協定にはおのずから限度がありますから、これを幾ら拡大しても、一定の場所まで参りますと、それは裁判管轄権の中に踏み込んでいかざるを得ない。そこで、それらのことを踏まえて、裁判管轄権のあり方の中に入って議論をしながら、できる限り沖繩県民の方の一応納得できるような、琉球警察の主体性による捜査権というものが確立されていくように努力してまいる所存でございます。
  87. 池田清志

    池田委員長 山中総務長官の退席を許します。
  88. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最後に要望だけいたしておきます。  私ここで考えますのは、日本政府の慰留だけでは、よほどの裏づけがなければやはり納得しないのじゃないか、このたびの事件からこのように思います。二十五年間の失政から起きた問題だけに、口先だけのことばでは沖繩人たちは信頼するわけにいかない、このように思うわけです。報復に対する報復が繰り返されるおそれが多分にあると思います。最終的に御要望しておきますけれども、この際贖罪の意味からも、政府は腹を据えて対米折衝を強力にすべきだと思います。百万同胞の生命、財産を保護するために、今後の対米折衝をさらに強力にやっていただくことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  89. 池田清志

    池田委員長 中谷鉄也君。
  90. 中谷鉄也

    ○中谷委員 軍事裁判がベールの中に隠されている、そのような中においてでも、しかし本土政府がどのように沖繩県民人権を守るために努力をしたか、裁判移管の問題についてどのように熱意を持っているか、こういうことがやはり本委員会を通じて実証されなければならないと私は思う。そこで、次のような点についてお尋ねをいたしたいと思います。  統一軍法によりますると、法務官と五人以上の一般の士官によって構成されていることになっております一般軍法会議、ゼネラル・コート・マーシャル、そこの五人以上の士官の氏名、年齢、経歴、法律的資質を持っていた者であるかどうかを、名前はけっこうです、わかっているかどうかをお答えください。
  91. 山野幸吉

    ○山野説明員 ただいま御指摘の氏名等につきましては、わかっております。
  92. 中谷鉄也

    ○中谷委員 法律的資質を持っている者であるかどうかについての判断はできますか。
  93. 山野幸吉

    ○山野説明員 法律的に資質があるかどうかについては、明らかではございません。
  94. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に、糸満事件に限ってお尋ねをいたします。  公開の原則が守られていないという批判がきわめてきびしいのです。そこで、一体本土政府の関係者などがこの法廷に傍聴されましたか。この法廷については、傍聴席は一体幾つあるのですか。そういうことがわかっていますか、いませんか。
  95. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 その点は明らかになっておりません。
  96. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に、閲覧が許されないなどということですが、これは軍法の面から見て規定があることなのでしょうかどうか。共助協定との関係において閲覧を可能ならしめることはできませんか。
  97. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 統一軍法上、訴訟記録の閲覧はできないことになっているようでございます。
  98. 中谷鉄也

    ○中谷委員 それは条文がどういうことになっているか、この機会に、では紹介をしていただきたい。
  99. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 その点につきましては、現在詳細な資料がございませんので、後ほど明らかにいたしたいと思います。
  100. 中谷鉄也

    ○中谷委員 参事官はこの問題についてと申しますか、対策庁に入られてから、私は人権問題について対策庁自身がかなり姿勢が伸びたと思うのです。しかし、その参事官自身もその問題についていまなお的確に把握しておられない。やはり軍法というものに対して徹底的に取り組む中で、軍法というものがきわめて不当なものであったとしても、その中で沖繩県民の権利をどう守るかという努力が私は必要だと思うのです。これは早急に御調査をいただきたい。  次に、無罪理由について、証拠不十分だということだけで、その証拠不十分の説示がなされておりません。この点がきわめて私は不満であります。説示をしなくてもいいというふうな理由は、法上そのようなことは書かれておりますか。その点が一つと、あくまで説示を求めるべきだと思いますが、その点についての交渉はどういうふうにされましたか。されたかされないかだけでけっこうです。
  101. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 その点についての正式の交渉はなされていないと思います。
  102. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に、裁判やり直しということは、言うならば上訴であります。あるいはまた、再審の申し立てであります。沖繩県民裁判やり直しということを強く叫んでいる。だから、本土政府として、また当委員会委員である私自身が努力をすることは、軍法というものを徹底的に分析して、こんな方法があるということを発見をして、沖繩県民にそのことを知らすことだと思う。再審の事由に当たる場合があるとすれば、どんな場合でしょうか。
  103. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 統一軍法典によりますと、上訴ないしは再審理ができるのは、被告人が有罪となった場合でありまして、しかも事実認定、法令の適用に誤りがあり、かつそれが被告人の基本的な権利を侵害した場合にのみ限定されているわけでございます。したがいまして、無罪になった場合に検察側の上訴は認められていないわけでございます。  なお、有罪判決の確定後に新たな証拠が発見された場合、あるいは偽証があった場合等につきましては、判決確定後におきましても再審を行なうことが認められておりますが、これも有罪になりました被告人側にのみ認められた権利とされておりまして、検察官側にはそのような権利は認められていないようであります。
  104. 中谷鉄也

    ○中谷委員 その点についても私は必ずしもそうだとは思えないのです。まず条理の面からいって、証拠を偽造して、そうしてほとんど裁判不存在と思われるような裁判をやったというふうなものが再審の対象にならないはずがないと思うのです。この問題についても、私もそういうことについては若干の調査をいたしましたけれども、何としてでもやはり裁判やり直しの道というものを、対策庁としてもこんな方法があるんだと、それは外務折衝に持っていくかどうかということは外務省の仕事であったとしても、資料的に検討する仕事を長官ひとつおやりいただきたい。御答弁いただきたい。
  105. 山野幸吉

    ○山野説明員 いろいろ関係法令等の調査その他の問題を含めまして、対策庁でも十分慎重に検討してみたいと思います。
  106. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで次にお尋ねをいたしますが、民政府裁判所へ移管された場合に、公開、閲覧、無罪理由の詳細な説示その他上訴——上訴については上訴権があります。当事者の上訴権の規定がある。ただ公開、閲覧、無罪理由の詳細な説示、こういうことは担保されますか。
  107. 棚町祥吉

    ○棚町説明員 民政府裁判所におきましても公開の原則は守られているようでございます。ただ陪審員制をとっております関係で、無罪になりました場合の説示については規定がないようでございます。陪審の無罪裁判につきましては、各陪審員が無罪の表決をした理由等については公表しない制度にいかなる陪審制度もなっているようでありますので、民政府裁判所におきましても、無罪裁判に対するそのような理由の説示はおそらく行なわれないのではないかと思われます。
  108. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、私の言っているのはこうなんです。軍裁判所において公開の原則というものが形式的にあったけれども、公開の原則は守られておらなかったんじゃないですか、だから民政府裁判所においても公開の原則は事実上守られないことになるとなれば、民政府裁判所へ移管したといっても公開の原則については同じことにしかなりませんね、という点が一点。  閲覧ができるかどうかという点が明確にならなければ、これだって軍裁と同じになりますね、という点が一点。  無罪理由について説示されなければ、沖繩県民不満というものは、なぜ無罪になったのだということについては、これは軍裁と全く同じじゃないかという問題が出てまいります。上訴についてはとにかく上級裁判所へ上訴できる、この点のメリットはある、それからまた陪審員の構成について沖繩県民が入る可能性はある、この問題のメリットがあるということは、私は必ずしも政府がPRされるように民政府裁判所への移管ということがたいへんな前進だというふうな評価は断じてできない。何としてでも裁判権を、施政権の中において理論構成をして県民裁判所の手に取り戻さなければいけないということについて、対策庁としてはひとつ理論構成をまずやっていただく。先ほど私は外務大臣お尋ねしましたけれども、法律的にそのことは可能なんだ。それで折衝するという場合と、法律的に大体おかしいのだけれども、折衝するという場合とでは、全然姿勢が違うと思うのです。その点について、私はやはり長官として全力をあげてやっていただきたい。長官の御答弁をいただきたい。
  109. 山野幸吉

    ○山野説明員 大統領行政命令によりますと、軍司令官が軍事法廷の裁判を放棄した場合、そして高等弁務官に移送を要請した場合には、軍事法廷以外の他の裁判所に移ることができるとございまして、この規定から見ますと、民政府裁判所に移管できることはもう当然でございます。関係布令もございます。それで、それが琉球政府裁判所を含めて移管できるかどうか、この点は必ずしも明らかではないのですが、おそらく中谷先生からおっしゃるように、限定がしてないからそれを含めるのじゃないかという見解も私は可能だろうと思うわけであります。この点につきましては、なおよく民政府のほうとも十分話し合いまして、いま御指摘になりましたような方向でさらに相互の意見を交換していきたいと考えております。
  110. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官から御答弁があったので、私からもう一度私の質問要旨に書いてあることを申しますけれども、大統領行政命令の第十節の(C)は、施政権下において琉球政府への裁判権移管、要するに琉球政府裁判所への裁判権移管を法律的に可能にしている。それを制限しているというふうに私は思えない。それで読む限り、思えない。ただし、布告八号の米国政府刑事裁判所四のCの関係において異説をなす人がおる。けれども、この問題は、とにかくわれわれのせねばいかぬ仕事というものは、県民の怒りというものを実感として受けて委員会で発言すると同時に、やはり理論的に構成することだと思うのです。これはやはり対策庁の一つの大きな仕事として、私自身も努力いたしますが、対策庁もぜひともこれを全力をあげてやっていただきたい。私はここに一つの活路があるのではないかと思う。それが一点です。  それから最後に、私は次のようなことをお尋ねをいたしまして質問を終わりたいと思います。  少し微妙な質問になりますけれども、本日外務大臣の外務委員会における発言をお聞きいたしますと、逮捕された諸君が全員釈放をされたということの御発言を承りました。私は、そのことについては非常に現地におけるいろいろな問題がからまって、そういうふうなことになったと思う。そこで問題は、なるほど山中長官の言われるように、必然的偶発犯というような評価あるいはまた偶発的必然犯かもしれない。いずれにしても、そういうふうなできごと——事件ということばを私は使わない。できごとだとするならば、私はやはり本土政府としても、この件については起訴しないという方向、裁判にかけないというふうな方向についての努力というものがやはりあってしかるべきだと思う。この点については、まさに折衝の問題になりますけれども、ひとつ長官の御答弁を承っておきたい。  それから、質問用紙に書いておきましたけれども、こんなばかげたことはまさかあり得ないでしょうね、ということなんです。サンマ事件だとか友利事件のような、こんなばかげたことはまさかありませんね。まず私は起訴すべきでない。しかし、万一将来の進展の中で、何かそういうふうな私の意図、私の希望あるいはまた、とにかく本土政府の多くの人たち考えているそういう希望に沿わない場合に、万一にも十節のaの(ハ)のようなことについては、もう断じてそういうことは政治的な問題としてはあり得ない。もうとにかくそういう見通しは当然のこと、これだけとにかく問題になっていることについてあり得ない。要するに事件ごとに取り上げてしまうというようなことは絶対にあり得ないということは、これは私はそういう方向で、また対策庁としても側面的な、あるいはまた全面的な努力をされることがしかるべきだと思います。これで私の質問を終わりますが、ひとつ長官の御所見を承りたい。
  111. 山野幸吉

    ○山野説明員 第一点の、理論的にこの移管問題について対策庁で検討すべきだという点につきましては、そのとおり私どもはひとつ真剣に取り組んで検討したいと思います。  それから、第二点の起訴の問題でございますが、これは何ぶん日本政府に直接施政権がないわけでございますので、これは今後の米側の出方を待って、経緯を十分聞きながら、その時点において日本政府としては十分慎重に対処したいということでございますが、私どもとしてはそういうことのないことを希望するわけでございます。  以上でございます。
  112. 池田清志

    池田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十分散会