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1970-12-08 第64回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十二月八日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 田中 龍夫君 理事 床次 徳二君    理事 箕輪  登君 理事 川崎 寛治君    理事 中川 嘉美君 理事 小平  忠君       宇田 國榮君    國場 幸昌君       西銘 順治君    本名  武君       山田 久就君    豊永  光君       上原 康助君    渡部 一郎君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         沖繩北方対策         庁長官     山野 幸吉君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アメリカ         局長心得    大河原良雄君         外務省条約局長 井川 克一君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十二月四日  辞任         補欠選任   桑名 義治君     渡部 一郎君 同月八日  理事川崎寛治君同日理事辞任につき、その補欠  として中谷鉄也君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  沖繩問題に関する件      ————◇—————
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  沖繩問題に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。國場幸昌君。
  3. 國場幸昌

    國場委員 外務大臣お尋ねいたします。  沖繩毒ガス移送問題について、新聞報道によりますと、米国レアード国防長官は、去る五日、沖繩に貯蔵されておる毒性化学兵器、いわゆる毒ガスを太平洋上のジョンストン島に移す米陸軍計画を承認したと発表し、沖繩からの最初の積み出しは近いうちに開始されることになっておる、ジョンストン島における貯蔵施設に制限があるので、まず百五十トンだけに限定する、ということになっておりましたが、昨年十二月の米国防省発表どおり進んでいたならば、ことしの春には毒ガス撤去は完了していたはずでございます。また去る九月、同レアード長官中曽根防衛庁長官に確約した、今年末か来年初めまでには大部分の撤去を終えるという計画とも大幅に食い違うものであるが、これに対する釈明は全く見当たらない。沖繩県民早期撤去という強い要求にもかかわらず、米国民反対にあって再三の計画変更を余儀なくされてきたのであり、移送先については米国のオレゴン州、ワシントンアラスカ等候補にあがりながら、いずれも米国住民反対にあい、現在ジョンストン島に決定しているようであるが、これも最近の報道によると、この島から数百キロも離れているハワイからも反対されておるようであるが、撤去のおくれはひとえに危険物はごめんだという米国民気持ちを尊重したからであり、これに引きかえ、沖繩住民気持ちは残念ながら全く軽視されてきたといわざるを得ないのであります。この点大臣はどうお考えのことであるか。  現在沖繩に貯蔵されている毒ガスは、軍当局の明らかにしたところによりますと一万三千トンといわれるが、今回の発表のようにわずか一%の百五十トンから開始するというようなことでは、アメリカ側誠意に疑問を持つと同時に、完全撤去がいつになるかという不安を感じないではおられないわけでございます。  今回の発表では、復帰時七二年に撤去が終了するということであるが、このようなゆうちょうなことでは、現実に危険物の恐怖にさらされる沖繩県民としては、断じて承服することはできないものであります。みずからやっかいもの扱いしている毒ガスを、沖繩住民に押しつけることは何とも思わないというようなアメリカの身がってな態度日本国民が感じた場合、日米友好関係に大きな亀裂を生ずるおそれがあるとともに、これを放置するがごとき日本政府に対して、沖繩住民不信感が増大することを憂慮をするものであります。政府はさらに強力な対米交渉によって早期撤去要求すべきではないかと考えますが、外務大臣のお考えはいかがでございますか、お伺いいたします。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十二月四日に米国防総省から沖繩毒ガス撤去について公式な発表がございました。これに先立ちまして、政府としても、撤去をいよいよ決定して開始するという内報を受けたわけでございます。この問題につきましては、政府といたしましても、従来引き続き機会あるごとにと申しますか、この撤去についてはアメリカ側に対して折衝を強力に続けてまいりました。ただいま言及されましたようなこともございましたし、それから私自身の立場から申しましても、東京においてもワシントンにおいても、国務長官に対しまして強力に撤去の申し入れをし続けておりまして、その間私の率直な印象を申し上げますと、アメリカ政府当局は、国務長官によって代表されていると申し上げて間違いないと思いますけれども、沖繩県県民方々の御心配、御希望を十分に理解して、なるべくすみやかに撤去するということについて誠意のある態度で非常な努力をしてくれておったことを私は確信いたしております。  ただ、ただいまお話もございましたように、米国内の国民のこれに対する反対、あるいは米国議会におけるいろいろの論議というものが予想以上に高まっていたために、これを政府筋が説得をしてまいりますために相当時間がかかった。政府といたしましても、この間非常な心配をもって見続けておりましたが、今回、率直に申しまして、移送ジョンストン島に最終的に決定した。そしてジョンストン島に受け入れ体制の工事が、相当大がかりなもののようでございますけれども、これにも着手をして、そしてきわめて近い機会に第一回の移送作業が行なわれる、その準備のための訓練も誠意をもって行なわれているように承知いたしておるわけでありまして、たいへんおそくなったけれども、とにかく移送決定した、そして返還までにはおそくもきれいになるということが正式に決定をいたしましたことは、その限りにおいて政府としても喜んでおるわけでございます。  何ぶんにもこの移送については、安全に何らの迷惑をかけずに行なわれることも必要であり、そして受け入れの場所におきましても十分な施設等も必要でございましょうから、若干の時間がかかることは容認せざるを得ないと思いますけれども、しかし、これをなるべくすみやかに、そして安全に移送が完了するようにということにつきましては、今後一そう政府といたしましては米側連絡を緊密にいたしまして、その目的がすみやかに達せられるように一そうの努力を続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  いま申しましたようなことで御理解いただけると思いますけれども、ジョンストン島に移送決定し、かつ実行が始まる、これは従来いろいろの経緯があったけれども、もうあと戻りをしないで前向きにこのことがきまったということははっきりいたしたわけでございますから、今度はその速度、並びに安全に作業が進むということに対して、政府としては十二分の関心を持ってアメリカ側とも接触してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  5. 國場幸昌

    國場委員 外務大臣の御答弁は理解をいたしますが、しかしハワイのほうの州議会におきまして、これがまた反対ののろしが上がっているわけでございまして、その後これについては外務大臣に対しては何らの連絡はなく、これが変更なくして続行するということでございますけれども、外務大臣いかがでございますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 情報としてハワイ方面にさような意見が出ておることは承知いたしておりますけれども、一たんアメリカ政府として公式に発表し、かつ日本政府通告があったこの事柄に対しては、先ほど申しましたようにもうあと戻りはしない。過去の経緯におきましても、いろいろの地域候補にあがって、それなりにいろいろの文句がありましたようなことも十分踏まえて、アメリカ政府といたしましても決定をいたしたことでありますから、この政府決定というものはこのまま実行されるということはもう間違いないと思いますし、また間違いなく実行され、かつその速度がすみやかに行なわれるということについて、今後とも十分政府としても善処してまいりたいと思っております。
  7. 國場幸昌

    國場委員 軍機能民生活の分離に関する問題をお尋ねいたします。  沖繩は、過去二十五カ年間、米軍基地存在の中で暮らしてきたのであり、その在様は、沖繩の中に基地があるのではなく、基地の中に沖繩があるとまでいわれるように、米軍基地の谷間の中で、好むと好まざるとによらず、基地にへばりついて生活してきたのが実情でございます。その結果、いろいろの面で住民生活を脅かし阻害するという弊害を常に生じてきたのでありますから、復帰後は、このような基地公害を全面的に排除し、県民生活を守るという立場から、基地機能民生活とを完全に分離するという基本施策方針がなければならないと信ずるものであります。基地容認という大局的な立場に立つといえども、県民生活の上からは、理想的には基地存在を感じさせないというだけの配慮が必要であると考えますが、このような精神が沖繩返還協定交渉の中に盛り込まれているのかどうか、また今後の措置段階において配慮されていくのかどうか、外務大臣の御見解お尋ねいたしたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、返還に際しての最も大切な問題であり、また特に沖繩百万県民方々の最も御関心の強い問題でありますことは、政府といたしましても十分にわきまえておるつもりでございます。そこで、返還協定についての交渉は、いま私は順調に進んでおると思いますけれども、返還協定ができ上がりまして、そして返還が実施されるということになれば、まず大きないままでとの違いは、御承知のように、安保条約関連取りきめがそのまま何らの変更なしに沖繩に適用されることになりますから、返還効力発生の時期と同時に、それ以後の施設区域というものは、日本政府安保条約並びにそれに関連する取りきめ等によってこちらが提供することになり、したがって地位協定その他も全部何らの変更なく適用されることに相なるわけでございます。したがって、その後におけるところのいわゆる基地施設区域あり方、これの縮小その他等につきましては、合同委員会等におきまして日本側意向アメリカ側にも十分協議ができる場ができて、ちょうど本土において過去においてそうでありましたように、日本側が提供される施設区域というものは、本土と全く同じやり方によって協議対象になって、縮小整理等が行なわれることに相なるわけであります。これは返還後における態様の問題と思いますが、しかしこの返還ということはもうすでにきまっていることでございますから、ただいまからこの返還協定ができます場合、あるいはまた完全に効力が発生して本土復帰する前におきましても、不要不急と思われる基地縮小整理、それから沖繩県民の福利の向上あるいは経済発展等のために積極的に必要と思われるような観点、大きく分ければ二つの観点があると思いますが、その観点から基地縮小整理ということにつきまして、返還前においてもできるだけアメリカ側との話を煮詰めて、その目的を達成するように努力をいたしたいと思っております。  このことは、協定それ自体の問題とは別な問題でございますけれども、例をあげて申しますれば、政府としては来年の夏ごろまでには返還協定の調印をいたしたいと思っております。そうすれば、来年の後半においては国会の御審議を願うことになりますが、協定それ自体文言の問題はもちろんのことでありますが、そのときには基地返還前において、どういう方向でどういうふうにこれを整理していけるかということ等につきましても、国会の場を通じまして沖繩県民方々にも御納得のいくような十分な御説明はいたしたい、かような考え方で現在いろいろと必要な作業話し合い等を展開しておるような次第でございます。
  9. 國場幸昌

    國場委員 わかりました。  それからいま軍、民ともで共用しておるところの道路、港湾、飛行場那覇飛行場、そういう共同使用に対しては、従来どおりやはり併用していくことになるわけでございますか。それとも、民のほうはどういうことでやっていき、軍のほうはどういうような、施設の移転とかあるいは新たにまたその施設をつくるとか、こういうようなことでやっていくものであるか、また軍はその使用しているところから全面的に他に移るということでございますか、その点に対してお伺いしたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお尋ねの問題については、いろいろの形態がございまして、簡単にお答えすることも困難と思いますけれども、たとえば、いわゆる黙認耕作地というようなものもある。あるいは旧国県有地の一部で米軍米国の民間の企業にまた貸ししておるというようなものもございます。このような沖繩におきまする、まあ一般的に施設と申しましょうか、これは共用と言えますか、あるいはそのほかの表現をしたほうがいいかもわかりませんけれども、この実態につきまして十分に把握することがまず第一に必要でございまして、これにつきまして、ただいま関係各省が非常な努力をいたしまして実態掌握につとめておるわけでございます。その実態掌握につれて、これを分析をいたしまして、そして将来における必要性、あるいは必要性のあるものにつきましてはその処理の方法をいかにするかということについて、沖繩県民方々の御意向十分参酌をいたしまして、妥当な解決をはかってまいりたい、かように存じておるわけでございますが、いま申しましたようないろいろの複雑な形態もあるようでございますので、ただいま実態掌握に大いに努力を集中しているような段階でございます。
  11. 國場幸昌

    國場委員 次に、裁判権の問題についてお伺いいたします。  米施政権下裁判所の機構は、琉球政府裁判所米国民政府裁判所二元的構成で、しかも二審制であり、法律面では大統領行政命令を頂点にして布告、布令、旧日本法民立法米国法が併存、競合しているのが現状でございます。同一地域内にこのような各種の法律が施行されているということ自体が異常であり、軍民間に幾多の摩擦を引き起こしてきたのであります。わけても日琉間に感情問題を生じたのは、米国軍人の犯罪に対して琉球政府側裁判権が及ばないということであって、沖繩県民の人権の回復、尊重に対する要求はまことに強いものがあるのであります。復帰後は当然本土並みになり、自主裁判権の確立が期待できるものと考えるが、返還協定交渉の中では、このような県民感情にこたえ、すでに行なわれた裁判効力についても配慮すべきと考えるが、どのように取り扱うおつもりでありますか、お尋ねいたしたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に申し上げられることは、先ほど申し上げましたように、復帰と同時に一切の本土の法令それから地位協定がそのまま適用されることに相なりますから、復帰後におきましては、ただいま御懸念のありましたようなことは全部払拭されると思います。  それから、お尋ねの中に裁判の引き継ぎのことに言及されておられるわけでございますが、実は裁判の引き継ぎ問題というのは非常に専門的な問題でもございますので、外務省だけで法律的な点その他十分な考え方もまとめるわけにまいりません。法務省はじめ関係各省の御意見を伺いながら、米側と予備的な話し合いも行なっておるわけでございます。これについては奄美大島が前例と言えるかどうかわかりません、だいぶ規模も違いますし、また年数も違いますけれども、参考になる点もあり、これらの点も十分参酌いたしまして、引き継ぎ問題についても遺憾なきを期していきたい、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
  13. 國場幸昌

    國場委員 次に、軍用地復元補償問題についてお伺いいたします。  軍用地復元補償問題については、沖繩県民は多大の関心を持って見守っているわけでございますが、軍用地として米軍に接収、借り上げられた土地の一部がすでに地主に返却されたが、米国に対する復元補償請求のうち三十万衣いし四十万平方メートルについて決着がついていないわけでございます。   〔委員長退席田中(龍)委員長代理着席米側は、一九五二年の平和条約第十九条により、原則的に琉球人請求権に対する米国責任はないとしているが、これに対する政府の現在の見解はどうか、お尋ねしたいわけでございます。またかりに返還協定作成にあたって日米間で奄美、小笠原の場合と同じように沖繩県民米国に対する請求権放棄を規定するならば、米国にかわって日本政府県民請求権責任を持ってこれを明確にしてこの際やらなければいけないということを考えるわけでございますが、この点に対してはいかがでございますか、お尋ねいたします。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、平和条約第十九条との関係でございますが、平和条約第十九条aにいう日本国領域沖繩が含まれないと解釈することは困難であると思います。それから同様に、沖繩住民が同条にいう日本国民に含まれないと解釈することは困難であると思います。したがって、わが国が平和条約第十九条aによって放棄した請求権の中には沖繩住民に関するものが含まれるというのが従来からの政府の解釈でございます。  なお、この請求権放棄という意味は、日本政府として対米折衝を行ない得ないということであって、沖繩県民の個々の対米請求権を消滅せしめるものではない。これが条約第十九条並びにそれに関連する政府態度である次第でございます。  それから次に、軍用地復元補償の問題でございますけれども、これもなか衣かいろいろの形態がございまして、詳しくはまたお尋ねによってお答えをしたいと思いますけれども、たとえば復帰のときに解放済み軍用地で、形質変更が五〇年七月以前に行なわれたものであって六一年の六月三十日以後に解放されたものとそれ以外のものとの間には、公平の原則からいいましても、請求対象になるというようなものもございますし、またそれとは類の異なったようなものもございますので、それらにつきましては、それぞれの形態実態あるいは過去における取り扱い、それらの点も十分参酌いたしまして米側折衝すべきものは折衝する。いずれにいたしましても、沖繩県民方々地主のお立場というものを十分尊重して処理に当たらなければならない、こういう基本的の態度処理に当たってまいりたいと思っております。
  15. 國場幸昌

    國場委員 次に移ります。  今後の米軍基地規模についてお尋ねをいたします。  現在、沖繩経済外的要因としての基地需要の影響を強く受け、米軍基地の増減に大きく左右されることは明白な事実でございます。沖繩経済開発計画を策定する場合、この基地規模いかんが重大なる前提条件となるものであり、沖繩基地極東情勢いかんにより左右されることは理解しています。返還協定交渉の中でこの点どのように協議されているのか。  また、新聞報道によると在沖米軍一万人が削減されるということであるが、このことについても、住民生活の面から、沖繩県民は重大なる関心を持っておるわけでございます。今後の基地縮小方向とあわせて今後の基地あり方について政府基本的見解お尋ねいたすわけでございます。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもこの点にちょっと触れたつもりでございますけれども、返還になれば完全な本土並みである。したがって、返還後において日本側から提供される施設区域というものは、安保条約目的に照らして必要と思うものを当方が提供するということになるわけでございます。したがって、この趣旨といいますか目的を頭に描きまして、返還前におきましても、沖繩県民方々の御要望に即し、またいま申しました目的から申しましても、不要不急と認められるものは基地を撤廃するというか縮小をしてもらいたい、これが当然の筋であると考えておりますし、また、ただいまお述べになりましたような沖繩県民の積極的な民生安定、沖繩県再建発展ということのために、積極的に、有用であると認められるようなものについての基地活用、つまり返還前提にしての基地活用ということを考えていきたい。これは返還協定文言の問題とは別でございまして、実質的な問題でございますが、先ほども申しましたように、これは非常に大切なことですから、返還協定作成作業とあわせて、そういう方向アメリカ側との話をだんだんと煮詰め、展開してまいりたい、これを政府基本方針といたしておる次第でございます。
  17. 國場幸昌

    國場委員 外務大臣に対してはあと一点を最後にお伺いしたいと思います。  尖閣列島領有権問題について四日の新聞報道によりますと、尖閣列島に対して、さきの中華民国の領有権主張とは別に、新たに中共も領有権主張してきておるのが現状でございます。元来、尖閣列島八重山石垣市登野城の行政区域に属しており、戦前には同市在住古賀商店伐木事業及び漁業を経営していた島であって、琉球列島の一部としてその領有権日本にあることは明白でありましょう。そこで、このような領有権をめぐる他国の主張に対して、日本政府は明確な論拠をもってその立場を明らかにし、日本国固有領土であることを国際的に認めさせる努力をすべきであると考えますが、政府はどのような交渉手段を講ずるおつもりでございますか、お尋ねいたします。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 尖閣列島領有権の問題、主権の問題につきましては、ただいまもお触れになりましたが、あらゆる角度から見て、これが本来固有日本領土であるということについては一点の疑いもございません。この点については、過般外務委員会におきまして西銘委員からも貴重な資料の御披露がございましたこともその一つの有力な根拠でございますが、いかなる点からいっても領有権には一点の疑いもない。それから平和条約第三条によって、施政権アメリカの手で行なわれておりましたが、その施政権対象となっている地域の中にも、きわめて明白に尖閣列島はその中に入っておりますから、沖繩施政権返還の場合におきまして、これまた何らの疑いなしに当然本土復帰するわけでございます。こういうわけでございますから、尖閣列島主権そのものについては、いかなる国との間にも交渉するとかあるいは国際的に論議を提供するとかいう問題ではございませんで、たとえば、通俗で失礼でございますけれども、どこかの国の人が鹿児島県はおれのほうのものだと言っているのと同様であって、何人も鹿児島県が日本のものであるということには疑いがないわけでありますから、尖閣列島主権につきましても、日本としては何らのゆるぎなく、これは自分の主権下にあるものであるという厳然たる態度をとっておることでもって十分である、私はかように考えております。これが政府態度でありますことはしばしば申し述べたとおりでございます。ただ、これと一緒に論議されあるいは主張されていることが東シナ海の大陸だなの問題でございまして、このほうは、海上にあらわれておりますところの領域主権の問題とは、法律的にもその他の点から申しましても、必ずしも同一には扱えないところがあろうと思いますが、これとても、国際条約その他の根拠なくして、ある国が一方的にその地域資源開発のために調査をする、ボーリングをするというようなことを一方的に主張し得るものでないこと、これもまた当然のことでことでございますが、そういう問題については、場合によりますればこれを主張し、あるいは何かやりたいという国との間に話し合いを持つということはあり得ることである、これが日本政府態度でございます。
  19. 國場幸昌

    國場委員 外務大臣に対する質問はそれで打ち切りまして、今度は糖業問題をお尋ねしたいと思います。  沖繩の糖業問題については、すでに現地関係者より沖繩北方対策庁、農林省等に対して切実な訴えがなされ、本委員会においても前回も討議されているわけでありますが、この糖業の問題がいかに切迫した問題であるかという観点から再度お尋ねしたいと考えるわけでございます。  沖繩の農業就業人口は、全就業者四十二万二千名の約三〇%であるが、農業就業者の国民所得は四百九十ドル、すなわち十七万円、第二次産業の千六百ドル、五十七万円の二七・五%、第三次産業の七十二万円の二一・五%にしかならない低所得であります。このために他産業への流出傾向がきわめて著しいのであり、さらに農村人口中十九歳以下と四十歳以上で七六・五%であり、質的低下のやむなき状態に追い込まれておるのが現状の姿でございます。しかしながら、対外輸出額九千五百万ドルのうち四千万ドルは砂糖によるものであって、その総額は少ないとはいえども、沖繩経済に占める役割りはきわめて大きいものがあるのであります。日本において米作農家が食管法の適用を受けて保護育成されているがごとく、沖繩においては糖業が農業の中心的役割りを果たしてきたのであり、基幹産業である以上、沖繩農業の将来、また今日のこの姿を見ましても、この育成策には政府の総力を結集して当たらねばいけないということを考えるわけであります。しかしながら残念なことに、今日まで奄美糖の買い上げ価格に対しては、年々今日までコンスタントに約七千円から七千五、六百円の差で沖繩糖が差別されておるわけであります。  このたび国政参加も実現されたわけでございます。今日までの理由としましては、施政権が及ばないという一点あるいはまた気候、風土に絶対条件を持つところのサトウキビが亜熱帯植物であり熱帯植物であるというような理由をもってでございましたが、そこで私が申し上げたいことは、食管法に従うところの日本のお米の買い上げ価格は、北海道は冷害ありといえども、あるいはまた九州においては適作であり、その態様において差異があるといえども、やはり一物一価という価格において買い上げされておるのが米穀に対する買い上げ価格でございます。奄美においては、いまさっきも申し上げましたとおり七千円の格差があり、沖繩のほうが安いというようなことを考えました場合に、たとえ施政権は別にありといえども、沖繩に対する立ちおくれた格差是正のために、また沖繩農業の実態から、今後農民が安心して農業に従事することのでき、生活ができるということを勘案しました場合には、この際、買い上げ価格において奄美糖と差異のないような買い上げ方式をとっていただきたいということを私はお願いするわけでございます。それに対しまして農林省の荒勝蚕糸園芸局長の御意見を承りたいと思います。
  20. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩の砂糖に関しましては、いち早く本土の甘蔗糖の買い入れを準用いたしまして、いわゆる輸入扱いをいたしませんで関税等の免除をいたしまして、糖価安定事業団によって買い入れ手続を従来からとっておる次第でございます。  砂糖の買い入れ価格の算定方式につきましては、現在南西諸島、いわゆる奄美諸島を中心といたしますサトウキビの買い上げ基準価格につきましては全く同様の取り扱いをいたしまして、たとえばことし、四十五年産の砂糖、蔗糖の買い入れ価格につきまして、奄美大島の場合は、キビ、トン当たり六千五百七十円というものを適用いたしまして、それを基準にいたしまして奄美の砂糖の買い入れを先ほどきめた次第でございますが、ただいまわれわれといたしまして手続をとりつつあり、近日中に最終決定をいたします。沖繩産の砂糖の買い入れ価格につきましても、われわれといたしましては、当然に奄美大島と同様のサトウキビの価格を基準といたしまして、あと操業度や沖繩の置かれております砂糖の経営規模を基準にいたしまして算定をして、適正な価格でサトウキビの買い入れをいたしたい、こういうように考えている次第でございます。
  21. 國場幸昌

    國場委員 おっしゃるとおり原料価格に対しましては、今日まで大体奄美の原料並みの価格を設定されております。ところが問題になるのは、奄美糖は、いわゆる工場側において、原料生産者に対しましてはいろいろの方面からそれに対する奨励補助金みたいな援助をしているわけでございます。また政府におきましても、昭和四十五年サトウキビ生産振興対策予算としまして、蚕糸園芸局あるいはまた自治省から、昨年において六十二万七千八百ドル、ことしにおいて百九万五千六百ドル、こういう間接的な振興対策費も出されておるわけでございます。沖繩は、今日までこういうような振興計画に対するような政府援助が沖繩政府財政ではとてもできないのが現状でございまして、その点に対しましても直接間接に砂糖問題に対しましては沖繩糖と奄美糖との差があるわけでございます。  そこで、私がお願いしたいことは、ことしの砂糖価格に対しての買い上げ価格の設定について意見を述べたいと思うわけでございます。沖繩側の生産計画によりますと、百八十二万トン、これが生産の計画による数字でございます。ところが、それに対しまして日本政府としましては二百万トン、すなわち二十万トンを上回るだけの生産を予想することを前提にした。歩どまりにおきましても一二・〇六%に対しまして一二・二五%、こういうようなことでございます。そこでこの二十万トンという増産をするかしないか、あるいはまた一二・二五と一二・〇六または〇五というところに価格設定の基準として算定基礎にするには差が出てくるわけでございます。昨年の歩どまりに対しまして政府がきめた一二・四、これが実績は一一・一九というような数字にしかなっておらないというような経過を考えましても、その数字は沖繩側の要求する生産見積もりそのものを妥当という前提においてこのたびの価格設定については計算をしていただきたいということが一点。また買い上げ価格に対しましても、従来沖繩糖と奄美糖は一九六六年−六七年期が七千六百十一円、六七年−六八年期が七千円、それから六八年−六九年期が七千百二十五円、六九年−七〇年期が七千二百九十五円、こういうようで毎年毎年七千円という差額をもって買い上げられておるわけでございます。このたび奄美糖の設定価格は九万三千円であり、それから販売経費としての沖繩買い上げ、CIFとFOBの違いによる買い上げ事業団の経費、すなわち四千八百五十円、それを加算しますと、九万七千八百五十円の奄美糖の買い上げ、これが沖繩との同一な買い上げ方式によった場合にはそういう価格になるわけでございます。例年七千円の差額をもって買い上げるとしました場合においてでも九万八百五十円で買い上げるのが沖繩糖の現在までの奄美糖に対するところの買い上げに相当する。そこで、臨時糖業振興費としまして五億を要求しておるわけでございますので、それが、トン当たりに対してそれを配分しますと、二千二百四十二円になるわけでございますので、八万八千六百八円、この価格をもって今度買い上げするということになりますと、例年どおりの七千円の差額をもって買い上げされるということでございます。そこで奄美糖はこのたび五千円買い上げ価格を値上げしたわけでございます。その理由としまして、四千円すなわちトン当たりに対して四千円は暴風雨被害によるところの歩どまり低下、減産によることを理由にあげておるということを聞いておりますが、しかし今日まで沖繩はほとんど毎年再々暴風雨に襲われたわけでございます。三年前の暴風雨の際、ほとんど壊滅状態にあったときにしても、一円七十銭か六十銭かの特別助成金が最初に出されたのが三億円でありまして、それに相当しましても、また、奄美大島と同じような条件のもとにこの価格を設定するにしましても、このたびの価格は、八万八千六百八円というような価格が妥当でないかということを考えるわけでございますが、それに対しまして蚕糸園芸局長はどう考えられますか、お尋ねをいたします。
  22. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま琉球政府を通じまして、四十五年産の砂糖の買い入れ価格について作業、検討している次第でございます。その際、琉球政府から沖繩産糖につきましてのいろいろな基礎資料をいただいておりますが、その中で、沖繩のキビの生産量の見込みにつきましては、われわれといたしましては、従来の実績等も勘案しながら、ただいま数字を検討している次第でございますが、奄美大島の場合は、御存じのように本土の一部でございますので、農林省の統計調査部の出先機関を通じたり、あるいは県からの御報告等あるいは業界からの資料、それぞれの資料を勘案しながら、統計調査部の基礎データを中心として生産量の見込み額を立てることができるわけでありますが、琉球の場合におきましては、ただいまのところ琉球政府からいただきます資料が唯一のよりどころでございまして、それにつきましては、過去五、六年の間におきましても、やはり調査時点の関係で、その後生育状態がよかったり悪かったりということで、その年その年によりまして、あとで調べました実績と生産数量との間には、いろいろな形で多かったり少なかったりしている次第でございます。これはことしの場合におきまして、ただいま御指摘がありましたように、琉球政府からは、総量といたしまして、いわゆる分みつ糖の原料用といたしましては百八十二万トン強の見込み数量が出されている次第でございますが、この調査時点のあとにおきましても、ことしは琉球は天候が相当よくて、キビにとっては好ましい状態ということで、さらにその後生育を続けているのではなかろうかというふうにわれわれはただいま判断している次第でございまして、その結果、あるいは琉球政府側とわれわれとの間に見込みの多少の違いがあるかもわかりませんが、ただいまの段階ではわれわれはそういうふうに理解しているというのが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、先ほど御指摘のありました、沖繩の場合、過去において台風があった、そのときには、最初に、臨時糖業対策費といたしまして、一つの台風の災害の手当て分といたしまして三億円を当時の特連局から支出をお願いしたようなかっこうになっておる次第でございますが、ことしの奄美の場合は、台風規模も相当大きかった。従来、国の助成の場合におきまして、最近の台風被害につきまして、農作物そのものに対する価格の補償をすることはできない、災害補償はできないというふうな農林省の最近の指導方針もありまして、奄美にいかなる台風がありましても、いわゆる天災融資法の発動程度しか、あるいは若干の農作物については苗代ぐらいの助成ができるかできないかというふうな事情もありますので、したがいまして、今回の奄美の場合におきましては、砂糖の買い入れ価格の中にその災害分を織り込んだというふうな形でその値段をきめた次第でございます。その際、きまりました段階におきまして、奄美に、鹿児島県を通じまして、南西諸島の砂糖の値段を決定した際の説明といたしまして、一円がノーマルな値上がり分、いわゆる物価その他の諸事情を勘案した上での値上がり分、あとの四円は、いわゆる災害対策としてキビ代の折損補てんの一部としてこの買い入れ価格を上げるというふうな形で、それは私のほうで責任を持って説明した次第でございますが、それの半面、今回の沖繩の場合の検討はただいまいたしておりまして、まだ作業結果を十分御報告申し上げられませんが、今回の沖繩のサトウキビの生産事情からいたしますと、昨年よりは相当いいのではなかろうかというふうにただいま判断している次第でございます。
  23. 國場幸昌

    國場委員 この砂糖問題に対しましては、さきにも申し上げましたとおり、沖繩の基幹産業としての唯一の主産業でございまして、日本の農業から米をとったときに農民はどうなるか、沖繩から砂糖をとった場合に沖繩農民はどうなるか、こういうような観点に立ちまして、国政参加も実現された今日、国会におけるところの沖繩選出の議員への住民の期待はまことに大きいものがあるわけでございます。私は、日本との一体化というような前提から申しましても、この問題は、同じような日本国民であるし、施政権分離という中にありて二十五カ年間も忍従に耐えてきた、こういうようなことも政治的にも配慮をされまして、このたび奄美並みの——無理は申しません、やむを得ません、来期からは奄美と同等なる措置をもってということを言いたいわけでありますが、このCIF、FOBの取引関係につきましては次期に回しまして、このたび奄美の上げたトン当たり五千円、これは絶対維持していただきたいということを希望するわけでございます。私は、この五千円というものを合わせ、このたび奄美の買い上げ価格に対しての格差、それでも七千円というのが例年どおりである、変化はないわけでございます。三年前のあの大暴風雨のとき、沖繩の被害を受けたときにおいてでも、七千円という格差に対して、それ以上な沖繩糖に対しての特別な補助を何ら受けていないわけでございます。措置も講じられておらないわけでございます。よって、このたび七千円という値段の格差ということを前提に置いてするのでありますれば、絶対的に奄美の値上げした分五千円を維持していただきたい、これらを素望する次第でございます。  それからもう一点、含みつ糖の問題でございます。含みつ糖はいわゆる生産地域指定という買い上げ対象になってございません。もちろん、奄美において買い上げをしてないから沖繩糖もというような説明も聞いておるわけでございますが、しかし、奄美においての含みつ糖というのは、分みつ糖区域、すなわち分みつ糖を合理化する上においてそれが大きな障害になるという観点からしまして、含みつ糖の買い上げは除外されておるということではないかということも考えるわけでございます。また、需要に対しましても、やはり二万トン以上にはあまり要らないということも聞いておるわけでございますが、このたび含みつ糖に対して、沖繩の生産地域というのは、分みつ糖地域におけるところの含みつ糖を買ってくれ、こういうことではございません。沖繩の離島で分みつ糖の工場は成り立たない、生産ベースにも全然合わないという地域にありまして、離島におけるところの農民が、さっきも申し上げましたけれども、これしかない、これ以外に転作すべきものは何ものもない。分みつ糖工場に運ぶのが理想かもしれませんが、島を渡って船に乗せてこれを分みつ糖工場に運び込むということも不可能でございます。でありますので、含みつ糖は現在において約一万三千トンといわれてございますが、つくれば一万六千トンまでは可能でございましょう。ところが奄美大島においての四千トンを合わせまして一万七、八千トンになると聞いてございます。私は、この沖繩の含みつ生産地域というのは、含みつ糖以外には、分みつ糖をつくろうとしても規模が小さくてつくれないという地域、また転作しようとしましてもそれ以外につくれないような地域でございますので、含みつ糖に対しましても特別なる御配慮をもちましてこのたびのこれに対するところの補助をしていただきたい、今後においてはこの買い上げ対象にしていただきたい、これらを希望するわけでございます。  時間がございませんので、これをもって私は質問を終わるわけでございますが、この点に対しましては、ごらんのとおり、沖繩から二週間も三週間もかかって各種団体が、この糖業問題に対しては貴重なる費用も費やし、貴重なるひまも費やしまして陳情に明け暮れしておるのが現在の姿でございます。せんだって糖業界あるいは農業会、主席からの要請電報も来てございますので、意のあるところを十分にお含みの上よろしくお願いいたします。質問を終わります。
  24. 山野幸吉

    ○山野政府委員 ただいま糖価問題を中心にしていろいろ御要望がございましたが、御指摘のとおり、この沖繩の糖業がもうほとんど農作物の大部分でありまして、しかも沖繩の農家の八二%は糖業に従事しており、御指摘のようにちょうど本土の米作と同じ地位を、いやそれ以上の地位を占めておるのでありまして、沖繩北方対策庁といたしましても、今度の砂糖の買い上げ問題については重大な関心を持って、目下農林省と十分折衝を重ねておるところであります。まだ決定になりませんが、ひとつ妥当な結論を得るように最善を尽くしたいと考えます。
  25. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。西銘順治君。
  26. 西銘順治

    西銘委員 対策庁長官お尋ねしたいのですが、質問の第一点は、先ほどの農林省当局の説明によりましても、奄美粗糖の買い上げ価格は、従来どおりですと一円であります。この一円にプラス四円、四円は暴風雨災害対策として考慮された額でありますので、奄美の暴風雨対策に相当するのがいわゆる宮古台風を契機として、従来総理府から出されておりますところの臨時糖業助成費であります。この臨時糖業助成費を産糖量に換算いたしますと、一九六六年から六七年までが、トンに換算いたしまして奄美の四千円に対しまして千五百三十九円、一九六七年から六八年、これが千八百十三円、それから一九六八年から六九年、これがようやく二千円を突破いたしまして二千二十五円、六九年から七〇年にかけまして二千百五十六円であります。これが従来の糖業助成費のトン当たりの助成費として計算されるわけです。ところが奄美の場合におきましてはトン当たり四千円考慮されているわけであります。同時に、販売経費を計算いたしまして、沖繩の臨時糖業助成費いわゆる災害対策費と買い入れ価格を合算いたしまして差し引き計算いたしますと、六六年から六七年にかけて奄美糖と沖繩糖の差が七千六百十一円、六七年から六八年が七千円、六八年から六九年期が七千百二十五円、また六九年から七〇年期にかけて七千二百九十五円、これは意図して奄美糖と沖繩糖との間に七千円以上の差をつけなければならない理由があるのか。毎年きまって七千円以上の差ができているわけであります。これはわれわれは理解できません。その点長官の明確な御答弁をお願いしたいのであります。
  27. 山野幸吉

    ○山野政府委員 砂糖の買い上げ価格の算定基礎等については、農林省のほうが御専門でございますが、現在の奄美産糖と沖繩産糖との買い上げ価格の相違する理由は、御承知のように奄美産糖や鹿児島産糖と沖繩産糖では、製糖工場の規模が違うとかあるいは歩どまりが違うとか、そういうような理由で事業団の買い上げ価格に相違を来たしておるわけであります。したがいまして、そういう基本的な買い上げ価格の相違の理由をまず一応は御了承をいただいて、その上で農林省のほうで積算されています各種の根拠等をいろいろ御相談し、あわせていま御指摘になりました沖繩の臨時糖業助成費の額とも見合いまして、総合的に妥当な価格が決定されてきたものと考えておるのでありまして、今後ひとつ十分関係省庁と協議をしてまいりたいと思います。
  28. 西銘順治

    西銘委員 御承知のように、サトウキビは明治百年の風雪に耐えた沖繩の基幹作物でございます。したがって、現在法域を異にいたしますので、生産地域に指定することもできないという事情はよくわかるわけでございますけれども、これを復帰前に——別に法律の改正は必要ないと思います。法律の範囲内で、生産地域に指定しないまでも、価格においては沖繩糖と奄美糖の間に差をつけてもらいたくない、これが要望の第一点であります。  第二点は、含みつ糖の保護育成でございます。奄美の場合は分みつ地域内における含みつ工場でございまして、値段がよければ含みつをつくり、悪ければ原料を出すといったようなことでございまして、甘味資源の臨時措置法の趣旨によるいわゆる合理化対策の線に沿っておりません。ところが沖繩の離島は、原料の関係からいたしまして、これを分みつ化しようとしても、これはできません。どうしても含みつ糖をつくらなければならない地域がたくさんあるわけでございます。したがって、これらの地域はいわゆる生産地域あるいは生産調整地域に指定いたしまして、糖価安定法による買い上げの対象にしなければならないことでございまして、これが日の当たらない沖繩の農民たちを救済する唯一の方策でなければなりません。したがって、奄美の分みつ地域における含みつ生産でないことを十分に御配慮いただいて、沖繩の糖業に対する政府当局の十分な御配慮をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  29. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 上原康助君。
  30. 上原康助

    ○上原委員 まず私は、これまでも毒ガス問題その他沖繩の当面する諸問題について外務大臣お尋ねしてまいりましたが、あらためて最初に、いま大きな政治的社会問題になっております毒ガス撤去の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一点目に、国際条約でも否定をされておる毒ガス沖繩米軍基地に大量に持ち込まれたという事実、おそらく施政権が切り離されておったから政府としては関与できなかったというお立場をとられるかもしれませんが、ジュネーブ協定あるいは国際的な道義的な立場からも、人道主義の立場から毒ガスの兵器というものは開発、貯蔵、使用というものを禁止をするというのが一般的な概念だと思います。そういうものを米軍がかってに沖繩基地に持ち込んだ。そのことに対して、いま撤去する、撤去しない、いろいろ問題があるんでしょうが、その背景に対して政府としてはどういう見解を持っておられるのか。そこからまずお話を伺いたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまも言及されたようでありますけれども、一九二五年の毒ガスについての議定書についても、ずいぶん長い時間経過はしておりましたけれども、昨年の国連での扱い方等から見まして、政府としては、これを批准することにして、国会の御承認をいただいたわけでございます。日本政府の基本的な考え方として、毒ガスというようなものの使用の禁止につきましては、もうこの態度で明白ではないかと思います。
  32. 上原康助

    ○上原委員 日本政府としての態度はジュネーブ議定書を認めたということで明白だという御答弁ですが、そうであるならば、この毒ガス撤去の問題というのは、昨年の七月に米軍基地内における毒ガスの漏れが明るみに出て、それ以来県民は日常生活を営むことさえ不安定あるいは生命の危機を感ずるという中で、毒ガス早期撤去というものを訴えてまいったはずなんです。先ほども自由民主党に所属しておられる國場委員のほうからも、県民の心情についての御質問がございましたが、少なくとも基地の問題、安保の問題についてはいろいろ見解の相違もあります。しかしB52の撤去ということと、殺人兵器である毒ガス撤去ということは県民の思想、信条を超越した偽らない要求だったと思うのです。そのことについてはくどく申し上げるまでもないと思いますが、本土政府は、その心情を理解した上で、早期撤去ということを絶えず折衝なさっているということもこれまで承ってまいりました。また私どもは、先ほど外務大臣がお答えになった日本政府の政治姿勢、お考えというものが毒ガス兵器を認めないという立場をとられるのであるならば、少なくとも県民のそういった要求、要請というものを受けて、早期にこれが撤去されるということを期待をしておったわけですが、しかし一年有余を経過するまで撤去の意思は明らかにされてなかった。だが、去るワシントン電で四日に、そして日本時間で五日に発表されたわけなんです。これに対して外務大臣は、今回の措置については歓迎をするという見解を述べておられます。いわゆるアメリカが国内に持ち込むことさえ反対をしている毒ガス兵器を、今日まで県民要求なり国民立場というものを無視して、その撤去を遅延をしてきたそのことに対して歓迎をなさるということは、アメリカが七二年までに毒ガス兵器を撤去するということを日本政府として認めたということにならないのかどうか。それに対して、私はきのうも内閣委員会でお聞きいたしましたが、外務大臣の御答弁には納得もいかないし、不満でございます。ほんとうに政府責任ある外交をあずかる担任の大臣として、なぜ、アメリカに持ち込むことさえ反対をしている毒ガス兵器に対して、同じ日本国民である沖繩県民の生命と財産というものを真剣にお考えになるならば、もっと積極的な、そして本土政府の姿勢というものを明らかにできないのか。とのことが私は、一事が万事、沖繩の諸問題に対する本土政府に対する不信にもなるし、いろいろ不満にもなるし、また誤解を招く結果にもなっていると思うのです。大臣の心境と、それに対しての見解をあらためて賜わりたいと思います。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、この席で申し上げるのもいかがかと思いますけれども、沖繩の、特に返還問題の責任者となりまして以来、しばしば私は公言いたしておりますけれども、沖繩県民の一人にさせていただいた気持ちでこの仕事に当たってまいりました。したがって、ただいま大いに語気荒くお話がございましたけれども、私は、こういう毒ガスというようなものが、沖繩県民の一人の気持ちになってみれば、撤去されるということについて全力をあげて努力するのは当然であり、私としてもできる限りのことはやってまいりました。そしてとにかく、先ほど来率直に申し上げておりますように、私といたしましても、ずいぶんこれは骨の折れる仕事でございました。そうして、まだまだこの撤去に時間がかかるとか、その終期がどうなるかということについては、昨日も外務委員会で申し上げたとおり、まことにどうもがっかりした点も多い。しかし、すべてを撤去するということをアメリカとして実行に移すことを内外に対して公表したことは、おそかった、残念であった、また不満足であるということはありますけれども、とにかく撤去がきまったということに対して、私は率直に歓迎と申し上げたのであります。そして、今後においてなお一そうこの撤去がすみやかならんことを、大いに私としてもあらためて努力しようとしているわけです。ことに、とにかく何でもいいからということであれば、安全にこの作業をやらなければならないということが、また沖繩県民としては、私も非常に心配なところだと思います。そういう点について十二分の配慮をして、なるべくすみやかにやってもらうということがこれからのわれわれお互いの努力であろうと思います。撤去にずいぶん長くかかったのは残念だけれども、撤去するということをきめて、これが実行に着手した。先ほども御質疑がありましたように、いまもなおこのジョンストン島からかなり離れたハワイ州その他でも、いまだにアメリカの中でもああいう議論が起こっているのが現実です。こうしたむずかしい問題で、しかもわれわれとしてはほんとうに心からの叫びであることについて、とにかくあとずさりをしないで実行に着手したということについて、これは歓迎を表して悪いのでしょうか。私はあえてそういうことをもってお答えといたします。
  34. 上原康助

    ○上原委員 質問の答えにならない御答弁で不満なんですが、私がお聞きをしておることは中身の問題なんですよ。現象を申し上げているわけではありません。いま外務大臣がおっしゃるように、ハワイジョンストン島に移送することさえ、いまアメリカ選出の上下両院議員あるいは州議会反対しているわけでしょう。それほどこの毒ガスというものは危険なものであり、みんなからきらわれている化学兵器なんですよ。そのことが沖繩にある、日本領土の一部にあるということを政治的に外交的にどう見るかということなんです。しかも、この議事録を見ますと、これは外務委員会でのことですが、致死性毒ガスについて撤去を求め、アメリカも昭和四十五年の春までに撤去することを約束したという答弁を外務大臣はなさっております。四十五年の春までに撤去をするということを約束したのであれば、今年の三月か四月までには撤去されてしかるべきだったと思うのです。外交上において約束したことが不履行になるということはどういう意味ですか。このことを私は中身をお聞きしているのです。確かに外務大臣としてもいろいろむずかしい中で御努力をいただいたでしょう。困難な問題であると思います。しかし、主体的に日本政府立場というものをどうアメリカ主張していったか。ほんとに沖繩県民の心情という立場でこの毒ガス問題を政府としてやってこられたのかどうかということをお聞きをしておるのであって、外務大臣がいろいろやってこられたことすべてを私は否定しようとは思いません。それについてもう一度確かめたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、先ほども申し上げておりますように、こういうふうに長引いたことについては残念であったということをはっきり申し上げておるわけであります。これは条約その他で期限をきめたわけではございませんし、私は、アメリカ政府筋が非常な努力をして、そうしてこれこれの期間までには何とかして完成をしたいというその誠意のあらわれたことを——当時のその答弁をおあげになりましたけれども、その当時の状況はそうであったことに間違いはございませんが、アメリカ側のいろいろ困難な事情もあって、それが延び延びになった、この点は私もたいへん残念であったと、先ほど申し上げたとおりです。  それから、一体中身についてどう考えるか。先ほどお答えしたとおりでございます。だからこそ一日もすみやかに撤去をはかりたい。そうしてようやくこのことが決定をした。あとはこれを促進することであり、安全性を確保することである。どうかひとつこれに御協力をいただきたいと思うのです。
  36. 上原康助

    ○上原委員 そういう答弁では了解できないですね。あと御協力いただきたいということですが、もちろん協力すべき点は大いに県民もこれまでやってきております。いま外相は安全性の問題についてもお話しいただいたわけですが、現にアメリカ発表以来、どういうルートで輸送するのか、あるいはいつ幾日撤去をするのかについても全く明らかにしておりません。現地からの情報によりますと、屋良行政主席が民政官にお会いしていろいろ計画を聞いても、明らかにしていないということなんです。そういう立場で万一事故とか生命に関するような危険な事態が起きた場合に、その責任の所在、人命の保護というものはどうするのか、こういう問題もやはり現地においては現実の問題として起こっております。安全にかつすみやかに撤去ということですが、すみやかにということは、七二年までかかってもすみやかにという意味になるのかどうか。私たちの考え方では、すみやかにということは、もっと短期間に完全に撤去をされるという受け取り方にしかなりません。この安全性の件について、ほんとに県民の生命に全く危険のない状態で撤去されるというようなことで政府米軍側との話し合いがなされているのかどうか、また、現地からのそういった行政主席なりその他の琉球政府からの要請に対してどういう対処をしてきていられるのか、そこいらについてお尋ねしたいと思います。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、上原君におかれても撤去ということになったことは喜んでおられるに違いないと思うのです。これからの問題は安全性の問題、これも御指摘のとおりです。ですから、そういう点につきましては政府といたしましても十二分の配慮をいたしております。ただいま言及されましたが、フィアリー民政官と主席との間の話ということも私も承知しておりますが、フィアリー民政官が言っておるがごとく、アメリカとしてのこれからのプロセスについていろいろの準備や検討をいたしていることは事実でありますが、それらにつきましても、十分政府としては連携を密にいたしまして、これから配慮いたしてまいりたいと思っておりますが、ただいまの段階では、フィアリーが言っておりますように、こうこうこういう安全性についてこうすることにするということについてまだ詳細を発表するまでの段階に至っていない。これは、しかしながら、十分政府といたしましてもその点に配慮をいたしており、いずれそれらの点について申し上げることができる時期の早いことを私も期待いたしております。
  38. 上原康助

    ○上原委員 いまの件と関連するわけですが、いずれそういう対策について発表することもあり得るという。しかし、現に現地では、ほんとうに表現ではできないほど住民は不安を持っておるわけなんです。琉球政府撤去についての対策本部を設けて、あらゆる角度からこれを対策していこうという立場をとっております。このようなことに対して、本土政府として、組織的にあるいは政治的にこういう対策でやっていくのだというお考えはないわけですか。まだ検討中ということですか。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本土政府がみずからこれを撤去するというわけではございませんから、これはアメリカ側との連絡協調をよくするという線で十分の配慮をしていくというのがたてまえでございます。そしてすみやかにそういう点がだんだんと解明されて御納得がいけるようになると思いますが、ただいまそれについて詳細にまだ申し上げる段階ではない、こういうわけでございます。’
  40. 上原康助

    ○上原委員 じゃお聞きいたしますが、五日に毒ガス沖繩米軍基地から撤去されるという正式な報道を受けたという御答弁が先ほど國場委員の質問にありました。その後、少なくとも沖繩の現地の県民、各政党がこぞって、わずか百五十トンのイペリット、しかもその毒性の薄いといいますか弱いといいますか、そういうものしか撤去をしないという発表に対しては不満を持っておる。本土政府に対しても強く新たな対米折衝をしなさいという声が出されていると思うのです。すでに四、五日の間がたっております。ほんとに先ほど外相がおっしゃったような、県民立場を理解をする、あるいはすみやかにかつ完全にという姿勢で臨んでこられたということであるならば、この四、五日の間に少なくとも米側と非公式にしろあるいは公式にせよ毒ガス撤去の問題について、当面撤去される百五十トンの輸送ルートなり人命保護という立場での対策についての外交折衝がなされてしかるべきだと私は常識的に判断をいたします。そういう面の外交折衝なり米側との打ち合わせが日本政府として持たれたのかどうか、その点について明確に御答弁を求めます。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、先ほど申しましたように、沖繩県民の一人の気持ちでもって本件にも対処しているわけでございます。先ほど申し上げましたところでこれは御理解がいただけると思います。先ほど答弁を申し上げたとおりでございますが、それはどういうことからそういうことを言えるかということを御想像願えればけっこうでございまして、私は、十分アメリカ側とも連絡協調をして、十二分の配慮をいたしております。こう申し上げたことによって、どういうふうにどうやっているかというようなことについてまでまだ申し上げる段階ではないと思います。
  42. 上原康助

    ○上原委員 私の受け取り方がまずいのか、また頭が悪いのかわかりませんが、いまの大臣の御答弁からは推測もできないわけです。私がお聞きをしているのは、毒ガス撤去についての発表がなされて以来、政府として米国政府なり現地米軍側と折衝なさったのかどうか。沖繩県民の声というものはこういう立場をとっているんだ、アメリカ側発表した内容には不満を持っているというようなことを米側に伝えるなり申し入れるなりして外交折衝したかどうかということが、日本政府がほんとうにこの問題に対して県民立場に立って、あるいは先ほど外相がおっしゃったような政治姿勢でもって撤去をさせる意思があるかどうかの一つの判断の材料になるわけですよ。そのことをお聞きしているのでありまして、先ほど答弁をなさった内容ではそういう関係にはなりません。端的に外交交渉をなさったかどうか、その点をあらためて御答弁願います。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が再々申し上げておりますように、一番大事なことは根本の姿勢の問題だと思うのです。沖繩県民方々が安心なさるように、あるいは心配が少しでもやわらぐようにということで対処しておるという政府基本方針は御理解いただいたと思います。いつ、どこで、どうやって外交折衝をしたかどうか、そういうことを端的にお聞きになっても、私はそういう角度からのお答えはできないと申し上げておるわけでございますが、基本姿勢をこうやって公言するからには、それだけの段取りの上に立って申し上げているということは、賢明な上原君は十分御理解いただけていると思います。
  44. 上原康助

    ○上原委員 私も立場は違っても長い間答弁させられる立場にも立って、いろいろわかりますが、私は何も答弁を求めて答弁をなさる方をいじめようとか、あるいはまた窮地に立たせよう、そういう立場で質問しているわけではありません。そのくらいの常識は私もわきまえているつもりなんですよ。ただ、私が聞いているのは、少なくともこれだけの社会問題なり政治問題になってきている毒ガス問題について、本土政府としてなぜ対米交渉ができないのか、その一事が私は聞きたいわけなんですよ。ほんとうに外相がおっしゃっているような立場撤去について真剣に考えておられるといま基本姿勢を発表なさったが、これは基本姿勢そのものに問題があるのだ。そこを明らかにしていただかないと困る。おそらくいま大臣がおっしゃるように、県民の不安を取り除くことが先決だ、これは当然なんです。しかし、いまのままでは県民の不安は取り除かれないのじゃないですか。学校は休校しなければならないのか、その隣接の住民は避難をしなければならないのかどうか、それさえもはっきりしないで生活をさせられている県民立場というものを御理解なさるならば、少なくともその安全性について、あるいはもっと早期に撤去できないかどうかということをすみやかに対米交渉なさることが政府の外交の責任者としてとるべき態度だと思いますが、あらためて回答を求めます。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基本の姿勢と目的においては合致しているのでありますし、私がこういうことをこの席で公に申し上げているのには、その基礎がなければ申し上げられるはずがないではございませんか。私が一人で毒ガス撤去できるわけでもございません。これはその基本にそういうふうなことがあるからこそ、私も十分沖繩県民方々に御安心が願えるようにしたい、そしてそれだけの努力をしているということを申し上げるのは、いまお話しになっているような前提がなければ言えないことではないでしょうか。その辺のところを十分御理解をいただきたいと思います。
  46. 上原康助

    ○上原委員 御理解してもらいたいということですので、いま私が申し上げたようなことも含めて、県民の納得のいくように、そして不安を取り除くということですみやかに対米折衝をしてもらいたいと思うのです。  さらに県民の不安というのは、私がただ社会党に属しているからということでいま申し上げているわけじゃありません。屋良行政主席からおそらく各議員に来ていると思います。政府にも私は届いていると思いますが、これをここで読み上げて、いかに県民本土政府に対して強く毒ガス撤去ないし安全の問題について要請をし、不満を持っているかということを御理解をいただきたいと思うのです。  「沖繩に貯蔵されている毒ガス兵器問題に対する米国防長官の発表は、毒ガス兵器の全面即時撤去要求する県民要求に反するものであり、承服できない。これは単に沖繩だけの問題ではなく、全国民的問題として国会において徹底的に究明し、政府は、この際みずからの国民の生命、財産を守る立場から、強力な対米折衝をするよう強く要求する。琉球政府行政主席屋良朝苗」  おととい届いております。このように少なくとも行政主席という立場県民の心情というものが私はこの電文に含まれていると思うのです。外務大臣は、外交交渉の基礎があるからそういう態度をとっておられるということですが、県民がまだ理解をしていないのは、この問題が起きてから一度も対米交渉もしない、安全性の問題についてさえも話し合いが持たれていない、そのことに対する不安であり、また不信であり、疑問なんですよ。ですから、私はいま外務大臣がおっしゃる中身の一部については理解もいたしますが、あらためてこの問題について政府として正式に対米交渉をする意思がありやいなや、その点を聞かしていただきたいと思います。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点については、私は屋良主席の御要請書もよく読んでおりますし、十分それを心に体してやっておるのでございますから、いまさら対米折衝をやったのかやらないのか、いつやるのかというようなことを取り上げられるよりも、私は先ほども申しましたとおり、早ければきょうこの席でも申し上げたいことがございますけれども、しばらく時間をかしていただきたい。対米折衝をやっております、あしたやります、というのでは問題の解決にならないと私は思うのです。こうやって安全の移送ができるはずになるというところまでできれば確信をもって申し上げたい。そしてそれが言えるような時期が一日もすみやかになるように、そのことは対米話し合いがなければできないではございませんかということを申し上げるので、それらの点については、私としては微力ではございますが、できるだけのことは十分やっております。こういう次第でございます。
  48. 上原康助

    ○上原委員 対米折衝をなさる御意思があられると受け取れる節もあるわけですが、雲をつかむみたいで……。ただ甘い期待を持たして、万一不祥事件でも起きた場合の責任問題あるいは補償問題いろいろあると思います。そういうことのないようにあらためて強調申し上げておきたいと思います。  次に、政府のほうから撤去の申し入れについて、いま発表されているのは、七一年の末か七二年の春までだというような計画らしいのです。そうしますと、このことは、少なくとも七二年の施政権返還ということとも関連をいたします。一部の推測によると、昨年の共同声明の立案をなさる時点で、毒ガス撤去については七二年までに撤去していいという密約があったという推測さえ出ております。これについてほんとうに、アメリカ側の理由いかんにかかわらず、アメリカがつくったのだからアメリカの国内に持っていくのは当然なんです。何で日本領土に置くのか。そういう立場で、その問題を含めて、さらに対米折衝をやるのかどうか。また、これに対して、沖繩県民に対する政府の姿勢として、見解なり政府態度というものを明らかにすることはできないのかどうか。それについてもお聞きをしておきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 密約というようなことは、あまりに思い過ごしではないかと思います。毒ガス問題については、もうすみやかに撤去ということが日本政府の基本的な姿勢でありますし、そしてそれに基づいて折衝にこれつとめてきたのが現状までの経過でありますから、返還の時期というようなことを意識して日本政府がそういう折衝をしたというふうなこと、あるいは密約があったというようなことは全然ございません。これは少し思い過ぎが過ぎるのではないだろうか、こういうように感ずるわけでございます。  それから、アメリカ内部におけるいろいろの紆余曲折はそれなりに報道されて、それに対してどういう意見を言うか、どういう批判をするかということは別にあるわけでございますけれども、とにかく紆余曲折を経て、ジョンストン島ということに決定されたわけでございます。そうすると、ジョンストン島というものは、いわば絶海の孤島のようでございますし、そうしてこれに受け入れる貯蔵の施設その他については、いろいろ説明も聞いておりますけれども、相当巨額の金も要る、そして建造その他にもある程度の時間がかかるというのが米側の説明でございます。その説明をそのまま受け取るかどうかは別といたしまして、早期に安全にということで、何とかこちら側の一そうの希望を貫徹するように、それこそ、あなたはこぶしを振り上げて対米折衝米折衝と言っておられますけれども、対米折衝なくしてはこういうことはできぬはずなんです。私が申し上げたいのは、まとまって、ここに確信を持った程度におきまして、できればその中身で御安心を願いたい、こう思いますから、本日ただいまのこの瞬間では、そこまで申し上げるまでまだ話が詰まっていない、こういうわけでございます。いまあなたのおっしゃっていることは、私には私なりに十分わかります。意図されていることは、これに対してこれから十分の努力をしてまいります。
  50. 上原康助

    ○上原委員 別におことばを返すような気持ちはないわけでありますが、対米折衝しなければできないからこそ、私は対米折衝の重要性というものを言っておるわけなんです。私だってアメリカとつき合ったこともありますし、いかに対米折衝の中においてしか問題解決ができないかという点は、次元は違っても、ある程度理解しております。そうであるからこそ、政府として積極的に姿勢を正して、県民要求立場に立ってやっていただきたいということを、御要望を含めて申し上げているわけなんです。中身で理解をしていただきたいということを強調なさっておりますが、残念ながら、いま出ている中身では理解できないわけなんですよ。そのことをぜひ、私のほうからまた御理解をいただきたいと思うのです。これに対しては別に答弁を求めません。  あと一点だけ、この件と関連して、いわゆる毒ガス撤去をするにあたって、かりに琉球政府なり現地のほうから、政府のその筋の権威者を立ち会いをさせるというような申し入れなりがあった場合に、あるいはまた、県民の生命、財産の保護という立場から、そういった化学兵器に詳しい政府の職員なり権威者を、安全性の確保という意味で参加させる方法があるのかどうか、また、その問題が具体的に持ち上がった場合に、政府としてはどういうお立場をとられるのか、この点までお聞きをしておきたいと思います。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それらの点を含めて御安心を願えるような点について話を煮詰めて、いずれまた御説明する機会もあろうと思いますけれども、要は、沖繩方々あるいは日本国民全体が納得できるような安全移送撤去ということをどういう方法でやったらいいか、われわれとして納得ができるかということを中心にいたしまして考えておるわけで、その方法論等につきましては、いままだここで申し上げるわけにはまいりません。そこまで話が詰まっておりませんけれども、御趣旨とされている目的については、私といたしましても十分に考えているつもりです。
  52. 上原康助

    ○上原委員 時間もだいぶ来たようですので、毒ガスの問題については以上で打ち切りますが、少なくともここで私が御要望申し上げた点あるいは質疑をした中身については、政府として十分御理解の上で、撤去の問題ないし安全性の問題について県民の不安がすみやかに、かつ完全に取り除かれるように御努力を賜わりたいと思います。  次に、共同声明の問題と核兵器の関連についてお聞きをしたいと思いますが、先般の外務委員会での私の質問に対して、共同声明の第八項で核抜き本土並みになるということは明々白々であるという御答弁がありました。しかし、第八項をどう読み返しても、核兵器が取り除かれるという答えは出てこない、それが私の解釈なんです。見解の相違ということでなくして、現にある核兵器というものは、ほんとうに七二年の施政権返還の時点で取り除かれるという保証の上に立っていま返還交渉が進められているのか、あるいは現存されている核兵器その他の基地の機能なり密度というものは、米軍施政権下の中でできた既成事実のものだという立場での返還なのか、そこいらについてお聞きしたいと思います。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外務委員会でも詳しく御説明をいたしましたところですが、繰り返すことになってお聞き苦しいかと思いますが、こういう次第でございます。  第一に、沖繩返還というものは本土並みで行なわれるわけですから、安保条約関連の取りきめがそのまま何らの変更なしで適用される。本来ならば、核の問題につきましても、考えようによってはこれだけでも私は十分だと思います。しかし、核の問題については、特に沖繩方々はもちろんですけれども、日本国民全体としてもほんとうのコンセンサスであると私どもは確信しているわけです。ですから、第八項というものを核について特に明記したのが政府の意図であり、そしてアメリカとの合意を得たわけでございます。安保条約そのままの適用ということでございますが、よく御承知のように、本土の場合におきましても核の持ち込みということが条約上禁止されているわけではございません。核の持ち込みということを、観念的な問題ですけれども、考える場合には、これは事前協議対象になるのだということが、これは条約上の約束でございます。そして、その条約の施行といいますか実行について、日本政府としては、全国民の核に対する国民的な感情の上に立脚した核に対する政策を持っておる、その核の政策に背馳することがないように沖繩返還を実施いたしますということでありますから、返還のときに核がないきれいな姿であり、また返還後におきましては、かりに観念的な問題として事前協議ということがありましても、これに対して日本政府としてはノーと言います。そしてその政府の意図に背馳しないで返還は実行され、安保条約が適用される、こういうことになるわけでございます。  さらに、外務委員会でも申し上げましたように、安保条約関連の取りきめは一切何らの変更なしに適用されるということになっておりますから、一九六〇年の岸・アイク共同宣言、これも当然ここにアプライされるわけです。そこにはやはり日本の欲せざるようなことを実行しないということの趣旨が共同宣言で一九六〇年当時からはっきりしております。  さらに、いろいろサイミントン秘密委員会の議事録なども問題にされるわけでありますけれども、その中で私が申したことは、米政府当局の発言といたしましても同様の趣旨が出ていることは御承知のとおりであると思います。こういうわけでございますから、政府としては、米国日本との最高首脳者間の合意である共同宣言でこのことが明確になり、さらに条約的あるいは共同宣言的、沿革的に申しましても、こうした二重三重のかまえ方になっておりますから、核抜き本土並みということについては何らの懸念も持たない。確信を持って沖繩の百万の方々も御安心をいただきたい。これが政府基本方針であり、何ら変わることはございません。
  54. 上原康助

    ○上原委員 ここも私の質問に対する問題のとらえ方がかなり食い違っておりますので、二、三回お伺いしても同じ返答がはね返ってくるわけですが、いま大臣のおっしゃることは三段論法で確かにわかりますよ。それは、安保条約本土並みに適用する、地位協定を全面的に適用する、したがって核抜きになるんだ、本土基地には核がないから、あるいは事前協議があるからということですが、私が聞いているのは、公然の秘密として現存している核兵器というものが——本土政府は核抜き本土並みになるという御見解を持っておられる。何らの懸念もなく安心して七二年に核抜きで返しますというわけですが、しかし不安と懸念はつのるだけなんです。いまの政治情勢なり、毒ガス問題をとらえても、私がお聞きしているのは、現存している核兵器というものが確実に撤去された形で基地の態様というものが本土並みになるかということ、その保証が共同声明の中なり、いま進められている返還交渉の中でできているのかどうかということをお聞きしているわけなんですよ。それに網をかぶせて、非核三原則をなしくずしにして、あるいは事前協議というものをたてにして核抜きになるというような論法では、沖繩の多くの県民を含む国民は私は納得しないと思うのです。そこいらはどうなんですか。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御質問の基本にある御懸念は、あるいはそう思い込まれておれば、幾ら御説明しても、それは信用できないと、こうなってしまえば、私は身もふたもないと思います、率直に申し上げて。  それから、両国の約定として、たとえば先ほども率直に申しておりますように、核というものは条約上禁止だということにでもなっておれば、もっと御安心がいくのかもしれませんけれども、しかし、そういう角度からまだ信用できないできないといえば、結局条約そのものも信用できないとすれば、条約上核が禁止だといっても信用できないということもあるいはあり得るかもしれません。同時に、本土並みなのでございますから、沖繩についてだけ核を禁止するという条約までは考えておりませんから、したがって、本土において十分実績も示されておりますし、これだけがんじがらめに両国の約定ができておりますれば、これはもうどこから突いても両国の約束、合意であって、保証というおことばがございましたけれども、両国最高首脳間の合意でございますから、私はこれで十分に御安心が願えるものと、かように確信いたしております。これは事実の上ではっきりすることと考えております。
  56. 上原康助

    ○上原委員 核については条約上禁止をされたものではないのだということですが、しからば非核三原則の件についても、持ち込まないということは条約上の禁止事項でないという答弁をこの間なさっているわけです。いわゆる二政策にすでにこの件は見解が変わってきている。これについてもまたいずれお尋ねいたしますが、少なくとも非核三原則なり、事前協議というようなものが、政府の、いま大臣のおっしゃるような方向でなすっているというならば、なぜ共同声明の中に非核三原則の精神なり、その政策というものを生かすということを明確にうたえなかったのかどうか、そのことが私は大きな疑惑を持たせていると思う。沖繩安保条約を完全に適用する、あるいはその関連する取りきめというものを本土並みに適用する、そのことが本土並みであって、基地の態様なり形態そのものの本土並みということにはならないわけなんですね、突き詰めていいますと。なぜ非核三原則なり、あるいはいま私が指摘をしたような件について共同声明の中で明確にできなかったのか。少なくともこの共同声明の骨子によって返還協定というのが生まれてくると思うのです。その点についてお伺いしておきたいと思います。  以上、時間が来ましたので、これで質問を打ち切らしていただきます。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもるる御説明したつもりでございますけれども、第八項は、私はもう非常によくできていると思います。ことに第六項と第七項とあわせお読みになれば、そうしてまた安保条約のワク組みの歴史的な両国間の合意、約束ということと照応してごらんいただければ、私はこれはもうほんとうによくできていると思います。私はどうかその真髄を御理解をいただきたいと思います。  それから、基地の態様についてのお尋ねでしたけれども、これは先ほど國場委員の御質問にもお答えいたしましたように、返還後になれば地位協定もそのままずばりかぶっていくわけでございますね。そういう点におきまして全く本土と同様になりますが、さらに実質的に返還前におきましても安保条約目的に照らして、返還後はこちらが施設区域を提供することになりますから、返還前におきましても、そういう目的から見まして不要不急と思うものは整理をしてもらいたい。これは条約上の問題ではございません、話し合いの問題でございます。さらに積極的には、この基地、いわゆるいままでの基地を民生安定の目的のためにあるいは経済再建のために使えばこういう積極的なメリットがあるというようなところについても、できるならば基地縮小するとか、あるいは他の用途にするとかいうことも、沖繩県民方々立場からいえばまことに望ましいことでございますから、これは返還前、協定そのものの文言折衝ではございませんけれども、実質上の問題として政府としては十分の努力をひとつ傾倒してまいりたい。これとあわせてお考えいただきますならば、返還後の基地形態、態様は、地位協定もかぶりますし、事前協議も全部かぶります。そういうわけでございますから、態様というもの、性格というものも本土並みになるということは政府の確信しているところでございます。
  58. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 以上をもちまして午前の委員会を閉じ、午後一時三十分委員会を再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  59. 池田清志

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  60. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まず、外務大臣お尋ねいたしますが、佐藤総理は、沖繩返還交渉は非常に順調であって、来年秋の臨時国会には返還協定国会に提出したい、このように言っておりますが、われわれにはその進捗状況が一向に具体的に知らされていないのが実情であります。おりに触れてわれわれは政府に質問をするわけでありますが、さっぱり核心に触れる答弁が得られないわけであります。外交交渉は秘密であるという例の口実でもって、われわれに対してその片鱗すら知らせようとしないのか、あるいは外交の秘密と秘密外交とを混同しているのではないかとさえ、このように私たち考える次第であります。政府が行なっている交渉で、もしも日本国民にとって受け入れられない事項があるならば、われわれ国民は、憲法上明確に認められている主権者として、政府に対してその矯正を要求する権利があると思います。いきなり成文化した条約を突きつけて、イエスとかノーとか、この二者択一を迫るということになりますと、これは不当であるし、民主主義の原則から逸脱するものであるといわなければならないと思います。愛知外務大臣は二十七日の本会議におきまして、交渉事項として明らかになっているのは対米請求権あるいは裁判などの処理米軍施設の問題、そしてまた沖繩にある外資企業の取り扱いなどである、このように言っておられますけれども、こういったことはわれわれも十分にすでに承知しているわけであります。国民が最も関心を持っているのは、要するにそれらの事項について政府がどのような態度または方針で臨むか、こういうことであって、一方米側がどのような要求をしてきているかということが問題になってくるわけであります。われわれは、外交上の秘密についてこの際その詳細を、交渉中のメモを公表しろとか、そんなことを言っているのではないのでありまして、要は、政府がこれらの事項についてどういう方針で交渉をしようとしているか、こういったことにあると思います。この点に関する政府見解をまずひとつ伺っておきたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定交渉については、しばしば申し上げておりますように、返還協定それ自体作成の問題と、それからそれに関連する実質上の話し合い、大きく分けると二つになると思いますが、政府といたしましては、返還協定作成はもちろんでございますが、これに関連する問題につきましては、午前中の当委員会で申し上げましたように、多くの問題について、政府の方針はもちろんでございますが、米側との折衝を要するものについては十分話を煮詰めて、国会の御審議をお願いいたしますときには、十分御納得のいくような、その段取りを御説明するようにいたしたいということで鋭意準備を進めているわけでございます。そうして本会議で申し上げましたような点が、返還協定自身としての内容的な問題としてはいま御指摘がありましたような点が問題点でございますが、これらにつきましては、その内容等について十分御説明を申し上げる段階までまだ煮詰まっておりませんわけでございます。  ただ、返還協定ということは、前国会でも率直に申し上げておりますように、規模の大きさというようなことは問題になりませんけれども、奄美、小笠原等の例もございまするし、性格的にといいますか、返還協定自身できめなければならない、カテゴリー的にいえばああいう形が一応の想定される基礎である、こういうふうにお考えいただいてよろしいのじゃないだろうか、かように考えております。  なお、国会の審議を仰ぐ協定のことでございますから、政府といたしましては、国会におけるいろいろの御意見はもちろんのこと、国民的に問題とされているようなことについては、世論のおもむくところ、また特に沖繩県民のいろいろの立場における多年の御要望や御期待があるわけでございますから、これを十分踏んまえて、りっぱなものをつくって、そしてその上で御審議を仰ぎたい、かように存じております。
  62. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまの御答弁に対してちょっと感じますけれども、政府は、国民反対できない沖繩返還という泣きどころを押えているといいますか、こういうわけですから、日本が結果的に不利な条件をのんだとしても野党は反発してこないだろうというふうに考えているかもしれませんが、私、現実の問題として、事態はそんな甘いものではない、このように思うわけであります。もし政府国民の合意を求める努力をしないで無理押しに強行するようなことがあると、その後に来るリアクションの重大性というものを十分に認識しておくべきことを私この際申し上げておきたいと思うわけでございます。  先ほどからいろいろ毒ガスの問題が出ておりますので、私なるべく重ならないようにしたいと思いますが、今回の米側報道に対しまして、屋良主席はまたお預けを食ったというようにたいへんな怒りをぶちまけております。  この毒ガス移送についてまず伺いますけれども、毒ガス移送の総合対策本部というものを日米琉で設置することを米側にのませる、こういうことも聞いております。われわれとしては、もう当然ぜひともこういった本部の設置を実現していただきたい、このように思うわけでございますが、政府としては本土の出先機関である沖繩事務局あるいは復帰準備委員会等に何かこのことについて具体的な指示をされたかどうか、この点まず伺いたいと思います。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガス移送については、午前中上原委員とも質疑応答をかわしたわけでございますけれども、政府といたしましては、とにかく移送がきまったということを歓迎すると同時に、これからの政府としての任務は、安全で、すみやかにということを目的といたしまして、米側と十分連絡協議しながら御期待に沿うようにしていきたい。けさほどお答え申し上げましたように、方法論として、どういう点をどういうふうにやっていったらいいかということについて、具体的に非常に急いではおりますけれども、今日ここで申し上げるところまでまだ進んでおりませんが、けさほども対米折衝の話がございましたが、これはアメリカが主体で行なうことでもございますから、政府といたしましては、もちろん米側との話し合いあるいは要請、それにこたえてアメリカ側がどういうふうにやるかということについて、ただいま日本側あるいは琉球側としての専門的な知識も十分活用するようにしなければならないというふうなことで、その方法論等についてわれわれも考え米側にも考えさせるということで、いろいろと事実上の相談はやっておるというのが現状でございます。その成り行きに従って、いろいろ御説明できる段階がすみやかであらんことを私自身も期待しておるような次第であります。
  64. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 たしか四十二年ころだったと思いますけれども、沖繩毒ガスの流出問題が起こったときに、米国防総省は即時毒ガス撤去する、このように発表したわけでございますが、その後それは実現をしていない。そしてその次に四十五年の三月までに撤去する、このように伝えられたにもかかわらず、これもまた実現をしていない。二度もアメリカ側からうそをつかれたということになります。と同時に、米軍は、沖繩からオレゴンあるいはアラスカへの移送発表したときに、その移送量については三千トンである、一万三千トンのうちのたった三千トン、要するに他の一万トンは撤去されない形となっていたわけです。こういうことが次々と言えると思うのです。こういったぐあいでは、大臣米側を信用してとたびたび言われますけれども、完全撤去ということに関して米国を信用することはできないじゃないか、このように思うわけでありますけれども、事毒ガスに関して信用すると言われる根拠は何ですか。この点をひとつ伺いたいと思います。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはアメリカ時間の四日に発表されたものでも明らかでございますが、すべて撤去するということが公表されているわけでございます。それから、これもけさほどお答えしたとおりでございまして、累次の話し合いにおきまして、米国政府としてもほんとうに真剣にいろいろの努力をしたと私は印象を受けておりますけれども、第一、移送先がぐらぐらしたというようなことの不測な事態もあって、おくれおくれになりましたことを私も非常に残念に思っておりますが、今回はジョンストン島ということできまり、そしてジョンストン島の受け入れ体制の整備にもかかって、着手いたしたわけでございますから、今度はこれらの点については間違いない。同時に、いよいよ移送が開始されるわけでございますから、先ほど申しました安全移送ということをまず念頭に置きながら、日本側としてもあるいは琉球、沖繩側といたしましても、十分実践の過程においてよく見守って、こちらの意向というものが十分に反映して撤去作業が行なわれるように最善の努力をしなければなりませんし、またいたし得る状態に立ち至った、私はかような考え方のもとに積極的な努力を展開いたしたいと思っております。
  66. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま御答弁いただいたように、このたびは絶対間違いない、このように大臣はおっしゃいますので、そのようにここでひとつ了承をしておきたいと思います。  また、米軍沖繩からオレゴンあるいはアラスカへの移送について、移送方法を公開して現地住民を説得した、このように聞いておりますけれども、米軍がこのように自国の住民に公開したように、当然これは沖繩県民の前にも日も早く具体的な移送方法を明らかにすべきだ、このように思うわけでありますが、この点はどのように交渉されるか、当然このことについてはもう考えておられると思いますけれども、この点どうでしょうか。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が先ほど来申しておりますように、それらの点についてこういうふうにやることになりましたということを断定的に申し上げる、ただいままだそこまでいっておりませんことは、私自身も非常にいらいらいたしますけれども、それらの点につきまして漸次十分御説明ができるようにいたしたい。またその時期がすみやかであることを私自身も期待して話し合いを進めておるような次第でございますから、どういうふうに専門的に毒性の有無を検定するとか、日本側の技術的専門的な人たちから見て、それが納得のでき、るものであるか、あるいはできないとすればどういうふうにしてもらうべきかというような点を十分踏まえまして、最善の努力をいたしたいと思っております。
  68. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうもたいへん残念ですけれども、そういういまの御答弁の内容からしましても、あまり具体的にまだ進んでいない。それでは移送が開始された時期において、貯蔵庫から那覇港までの沿道の住民に対する事故防止措置についてどのような対策を考えておるかという点を伺おうかと思ったわけでありますけれども、この点も大体似通ったような段階といいますか御答弁しかいただけないのじゃないか、こう思うわけです。それで万一事故が発生してしまった場合に、住民に被害が及んでしまった場合、その損害に対する対米請求権は当然これは確保しておくべきである、このように思います。この点について、政府米側に対して損害補償について強力に申し入れる用意があるかどうかという問題でございますけれども、かつて太平洋におけるアメリカの水爆実験によって第五福竜丸が被害を受けた際、この補償を要求した実例もあるわけであります。このような補償要求の権利というものは国民のために当然確保しておくべきである、このように思いますけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としてのただいまの最大の関心事は、安全移送について十全を期するということでありますから、事故の発生というようなことよりも、まずそういうことが起こらないようにするということに最善の努力を傾倒いたしたいと思っております。そういうわけでございますから、事故が起こるということを前提にしていま政府として見解を申し述べるのは少しどうかと思いますけれども、毒ガス移送の当事者は米国でございますから、何といいましても米国政府自身が責任を負うべきものである、こういうふうに解するのは当然ではなかろうかと思っております。  なお、ただいまお申し述べになりましたことを十分頭に置いて処置してまいりたいと思います。
  70. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、前にも触れました交渉事項の一例でありますけれども、沖繩県民の対米請求権について伺います。  これは前回の上原委員の質問に対しても、講和前のものは平和条約第十九条によって放棄しているので米国に対して請求できない、このような答弁があったわけであります。先ほども午前中國場委員の質問に一部お答えいただいたわけでありますけれども、沖繩県民は国家意思によって私有財産の諸権利を放棄させられたのでありますから、米国に対し請求できないならば、憲法第二十九条の規定に従って国が正当な補償をすべきである、このように思います。当然この中には動産、不動産あるいは人体の障害等、非常に広範囲にわたる請求権が含まれていると思いますが、これらについて政府はどのような解決をされるつもりか、この点を伺っておきたいと思います。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 國場委員の本会議における御質問のときにも若干お答えしましたし、他の委員会でも申し上げている点が多いのでありますけれども、総合的に申し上げますと、沖繩県民方々の全般的な補償要求、これに対しての政府態度は、一番最近にすべてをカバーして取りまとめられて決議の形になっておりますのが、本年八月三十一日付の琉球政府立法院の決議でございます。それから私としまして一番最近ちょうだいしておりますのは、十月に琉球政府要請書、琉球政府がこれまで準備委員会に提出した要請書、沖繩軍用地地主会連合会がこれまで日本政府関係機関等に提出した軍用地問題に関する提議書等々を根拠にいたしまして、沖繩住民方々の補償要求がどういうものがあるかということを申し上げますと、一が講和前補償のうち人身損害に関するものの補償漏れに対する補償、二が軍用地の復権補償、三が米軍の演習等による漁業補償、四が軍用地の接収によって生ずる通損補償、五が軍用地借地料増額の要請、六が軍用地立ち入り制限に伴う入り会い制限による損失補償、七が講和後の人身損害に関する補償、八がつぶれ地に関する補償、九が滅失地に関する補償十が一般的に基地公害に関する補償。これは大別いたしましても十項目になるわけでございますし、本会議のときにもちょっと触れましたが、こうしたものの中で、二十数年にわたってそのときそのときにおける施政権者であるところの米側の取り扱いの中に、現在の時点から見ますと、取り扱い方が違っておるものもございます。それから権利関係がふくそうしておるものもございます。それらをさらに細分し、それらの根拠を十分に徹底的に分析をいたしまして、この一つ一つについて、たとえば対米折衝の問題、あるいはいずれにするか法律関係として必ずしも根拠が明確でないもの、あるいは日本側と申しますか本土政府沖繩との間に内輪の問題として処理すべきもの、いろいろの形態に基づく考え方がございます。これらを通じまして、政府といたしましては、いまもあげましたが、各種の公的の機関ないしはこれに準ずる団体、あるいは個人というような方々から、政府に対していただいておりまする各種の要請を十分考慮に入れまして、沖繩方々の御要請にできるだけこたえるようにしたい、こういう基本的な考え方で、ただいま関係各省庁の非常な協力を得て、そして国内的な問題については、これは当然沖繩北方対策庁が中心になられまして、非常な努力を傾倒して、処理方法を検討中でございます。
  72. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間的に一つ一つをお聞きしていくわけにいきませんので、いま大臣おっしゃった中の軍用道路の処分でありますけれども、これは例外なしに全部返還されるべきものであると考えますけれども、もし米軍が合衆国軍隊の施設及び地域への出入の便をはかるため必要な場合には、地位協定第三条で考慮すべきであって、アメリカの軍用道路、すなわち基地として残すことはあり得ない、このように確信しますけれども、この点をまず念のために伺っておきたいと思います。  それから、続いて伺いますが、軍用道路ということでガードレールもない。したがって今日まで多数のとうとい人命が奪われてきたわけであります。要するに、こういったことで軍用基地というものはすべて金網の中に入れることにして、道路というような国家生活の基幹となるものを米軍の軍用道路として接収を許可すべきでない。私はこのように思うのですが、この点について一括してお答えいただきたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府委員から御答弁申し上げます。
  74. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 現在米軍沖繩におきまして使っておりますいわゆる基地は、復帰の時点におきまして、地位協定に基づく施設区域として提供されることになります。したがいまして、現在米側が軍用道路として使っております道路につきましても、施設区域として地位協定に基づいて提供されるもの以外は日本側返還されることになります。
  75. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間がありませんが、もう一回軍用道路ですけれども、旧地主に対しての補償は具体的にどのようになりますか、この点ちょっと伺いたいと思います。
  76. 大河原良雄

    ○大河原政府委員 現在米側が使っております軍用道路につきましては、私有地を底地といたしますものにつきましては、賃借料を支払いまして、米側が使っております。したがいまして、将来復帰後におきましては、そのときの時点における賃借関係に基づいて処理される、こういうことでございます。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、中国が尖閣列島に対して領有権主張した問題について、先ほどの御答弁を聞いておりますと、どうも国際情勢を無視した一方的な見解としか私には聞こえないわけでありますけれども、ことしに入ってから、カナダ、イタリア、エチオピア等が相次いで中国を承認しており、中国問題が世界的に脚光を浴びておるおりから、中国の側からこのような主張がなされたということについては、政府も相当がっちりした反証を用意されなければならない、このように思いますが、そういった観点から、本問題に対する政府の姿勢並びに見解をもう一度伺いたいと思います。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 反証といいますか、反証ではなくて立証といいますか、むしろ挙証だと思いますけれども、これは中華人民共和国に対してであろうが、中華民国、国民政府、あるいはその他の国に対してであろうが、しばしば申し上げますように、尖閣列島主権ということは、とやかく言われるのは全くおかしなことであると政府考えているわけでございまして、たとえば、たいへん悪いたとえで、それが問題になってはいけませんけれども、先ほど申しましたように、たとえばある一つの県、だれもが疑いのない日本領土であるところに対して、ある他の国がそれはおれのものであるはずだと言ったところで、これは動じてはいけないと思うのです。それと同じ関係にあるのではないか。したがって、政府主権の問題についてはどこの政府ともあるいは協議に乗るとか争うとかいう立場ではなくて、き然として、これはおれの主権のあるところだという態度でいくのが、日本国民あるいは政府態度であってしかるべきであろう、かように存ずるわけでございまして、中国に対するカナダ政府がどうとか、イタリア政府がどうとかいうこの種類の問題とこれとは、私は率直に申し上げますが、全く異質の問題ではないかと思います。同時に、国民政府尖閣列島主権ということを言っていることもまことにおかしなことでありまして、これに対して何らコメントする必要もないことで、現に、現在は米国施政権下にあるわけでありますけれども、先般尖閣列島国民政府の青天白日旗をかけていった者があるようですが、これは事実上こちら側の手で撤去されている、こういう事実も御承知のとおりでございます。返還後におきましては日本主権の発動の行為としてこれを守るのは、あまりにも当然のことではないだろうか、政府の姿勢としてはかように考えております。
  79. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいま御答弁をいただいたわけで、動じてはいけないということもわかりますけれども、先方がそういうふうに表明しているといいますか主張しているということを認めるとか認めないとか、そういうことにかかわらず、現在日中間の正常な国交がないおりから、そういった問題が現実に中国から主張された以上、私としては政府が何らかの日本政府としての意思表明をする必要があるのじゃないか、このように思いますけれども、大臣が必要ありと認めたとき、その時点においてはどのような方法でこれを行なわれようとするか、この点もまず伺っておきたいし、それから、これは万一のことでありますけれども、もし中国が実力をもってこの尖閣列島の領有を主張し、あるいは占有したというような場合、それに対してどのように対処する用意があるか。すなわち、こういったことは絶対にないとも言い切れない。たとえば竹島の場合について言うならば、現に韓国の艦艇が常駐をして、わが国の領土である竹島を占拠しているわけであります。問題はいまだに解決しないという苦い経験があるからこそ、われわれも心配するわけでありますけれども、政府は、このように中国が万一そういった実力行使に出た場合の対応策はどのように考えておられるか、この点を伺いたいと思います。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の尖閣列島に対する見解は、前々からいつも述べているとおりでございまして、貴重な時間をこれ以上費やす必要もないかと思いますけれども、私の申しておりますのは、どこかが日本固有領土に対して何か言っておりましても、一々それに対して両国間の話し合いとかなんとかに応ずるというような、そういう態度は私は日本国としてとるべきでない。これはあるいは次元が違うかもしれませんけれども、私はこの意見を変えるつもりは毛頭ございません。  それからその次に、政府何もしないじゃないかと言っておられますけれども、これは国会を通じてもいろいろの機会に申し上げておりますが、申し上げ方が足りないとするならば申し上げますが、まず沖繩返還の場合におきましても、施政権者が施政権を持っているところの中にあまりにも明らかに入っておりますことは、布令の上においてもきわめて明確に示されているとおりでございます。それから、そしてそれがそのとおりに、そのままの姿で日本復帰することになっておることは、これまた申し上げるまでもございませんから、日本のみならず現状においては施政権者においても、沖繩の範囲内として日本に当然返すべきものとして考えている。これはもう事実まことに明らかなことであります。明治二十八年、一八九五年一月十四日、当時は閣議決定があって沖繩県というものに編入されているということも明らかな歴史的事実であります。それから先ほども触れたつもりですが、数日前の外務委員会西銘委員が御指摘になりましたように、それよりもまだ前だったかと思いますが、当時の中華民国政府を代表する長崎駐在の領事が尖閣諸島でお世話になって、それに対してお礼状を出しておること、この古文書も明らかに保存されております。明治二十九年には古賀辰四郎という人が日本政府から四つのこの中の島を三十年間無償で供与されたという事実もございます。それから昭和七年には辰四郎の息子古賀善次がこの四つの島の払い下げを受けて今日に至っておることも事実でございます。以下は、昭和二十六年九月八日サンフランシスコ条約第三条の南西諸島の一部としてアメリカ施政権を行使中でございます。そのほか、こういったような事実関係はきわめて明らかであり、政府がこれをあらためて確認をして、日本の国内でも申しておることでございますから、これ以上にあるいは国民政府に対してあるいは中華人民共和国政府に対してこの領有権について相談をしてもらうなどという、そういう態度を私は、日本政府は絶対にとるべきでない。これはお断わりいたしましたように、御見解が違うとすれば申しわけございませんが、政府はこの態度を変えるつもりはございません。
  81. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま答弁いただいたように、事実関係は、私のほうも歴史的なことも応よく承知しておりますけれども、話し合いに応ずるとか応じないとかなんとかを私は言っているのじゃなくて、日本政府として何らかの意思表示だけはしなければならないのじゃないか、ただ黙っているということでなしに向こうがそのように主張してくる以上は、何らかの意思表示だけはする必要があるのじゃないか、こういうように申し上げているわけで、時間がないから本件は今回はここまでにしておきたいと思いますけれども、領土問題というのは国家百年の大計であって、民族の誇りの問題であると私は思います。こういった国民の世論を十分に尊重して、政府は今後ともき然たる態度でひとつ臨んでいただきたいということを最後に要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最後のことについてちょっと私補足いたしますけれども、ごもっともなことでございまして、政府がこうして最高の国権の場におきましてこういう御説明をしているということは、やはり日本としての立場国会を通して明確にしている何よりの手段ではないだろうか。こういう点につきましてはまことにごもっともでございますし、そういう点についてはこの上とも配慮してまいりたいと思います。
  83. 池田清志

  84. 安里積千代

    ○安里委員 私は、共同声明と返還協定の問題を中心にいたしまして、本会議におきまする総理並びに外務大臣の御答弁の趣旨と関連づけまして、これに対しまする政府の基本的な態度について質問申し上げたいと思いますが、午前中の御答弁は何となく歯切れが非常に悪かったと思います。私が質問しようと思いますることは、共同声明後何回かの国会におきましても、また時あるごとに政府当局がお答えした問題でございますので、たいへん答えやすいと思いまするし、私の質問もお答えやすいように問いたいと思いますので、歯切れのいいところをお願いしたいと思います。  まず第一に、共同声明におきまして、佐藤総理もまた愛知外務大臣も、平和時において沖繩領土話し合いによって回復したということは世界にも例のないことで、たいへんな外交上の成功である、たいへんなお手柄を立てられたというような趣旨のことが話されましたし、また総選挙の前におきましてもそのように言われましたし、外務大臣沖繩においでになりましたときに同様な趣旨のことをおっしゃっておられたわけでありまするが、現在でもやはりそのようにお考えでありますかどうか、確認しておきたいと思います。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 歴史的に見てみましても、見方によって皆無とは言えないかもしれませんけれども、苦難の道を歩まれた沖繩というところが、異国の占領と申しますかによって統治され、そして平和条約におきまして信託統治等になる、ならない間においては立法、司法、行政の三権が米国にゆだねられるということについて異議を差しはさまないという趣旨のことがきめられておりましたが、これもまあいろいろ御意見のあるところでございましょうが、施政権を持っていたそのアメリカと平和的な話し合い施政権返還ができたということは、私は歴史的に絶無とは言えないかもしれませんけれども、きわめて例のない、話し合いで、一たん本土から離れた沖繩本土復帰することになった、この事実ということは、私はそのとおりではないだろうか。これは、どうしてこれができたかというようなことのプロセスその他についての御批判、評価は別といたしまして、事実は私はそのとおりではないかと思っております。
  86. 安里積千代

    ○安里委員 私がそれをお聞きいたしますのは、いかにもこのことが政府の非常な外交上の成功——もちろん決して不成功ではございません。でありまするけれども、民主国家の中におきまして忘れてはいないだろうか。むしろ沖繩返還という問題がここまできたという、いまプロセスとおっしゃったのでありますけれども、その間には、御承知の二十四年間にわたるところの沖繩県民を含めて日本国民の強い返還への要求、これが私は一つの大きな力であり、原因であり、なお言えば、アメリカ自体の国内におきましても、このような異民族の他国を支配するという不当性、アメリカは御承知のとおりあくまでも政治優先の国だと憲法上いっておりまするけれども、少なくとも沖繩においては軍事目的のために施政権を握るという、そのような政治が軍事に振り回されておる、こういったことの不当性、これはいまから十一年前の一九五九年、昭和三十四年に、アメリカの上院におきまして、アメリカ関係しておりまする各地区の状況調査をしましたコンロン調査団の報告をごらんになっただろうと思うのでありますけれども、あの報告書の中にもはっきりしておりまするとおり、アメリカ沖繩において軍事的な資産を持っておる、けれども政治的な負債だ、だから遠くない将来に沖繩返還しなければならない。しかし日本政府沖繩返還の問題を再優先的な国策として考えてない。これがいまから十一年前に出されたコンロン調査報告であります。上院に提出されたものであります。アメリカは軍事的な資産、政治的なマイナス、負債、これはもうすでに前からこの沖繩を支配しておるということの政治的負債を返そうという気持ちが強くなっておる。なお言うならば、ベトナム戦争の経験も、あれほど五十何万の兵力をつぎ込んで五年間にわたってやってみたけれども、民族的な抵抗にあいベトナムを征服できなかった。軍事的に他国に介入することも不当であるとともに、政治的に他国に介入するということも不当である、こういった反省のもとにおいて、アメリカ自身でも、沖繩返還の動きというものが私は国民の中に政府の中にも強い力となってあらわれたと思います。そういう国民の強い声、これが私は現在の責任者として総理が返還を共同声明にまでこぎつけたという結果をもたらしたものじゃないかと思います。これをおれの力だ、ほんとうに外交上の十分なる大成功だったんだというふうにとるということは、国民の声というものを無視したところの一つの非常に低い政治姿勢じゃないか、感覚じゃないか、こう私は思うわけなのです。  ところで、特にそのことを申し上げることは、もしかような気持ち沖繩返還に対して臨みますならば、沖繩県民にとりましては、おまえたちの長い間の要求であったものを政府はなし遂げた、だから返還の内容についても政府の言いなりにといったら極端かもしれませんけれども、この条件をのめという高姿勢というものが私はそこに生まれてくるのじゃないか。選挙前におきましていろいろな問題というものを政府の閣僚がおいでになりまして言われました。返還する。返還が実現すれば教育委員の制度も当然本土と同じように任命制度になるじゃないか、返還すれば安保条約が適用になるから自衛隊が来るのは当然じゃないか、B52というのは国の大きな立場からすれば小さな問題だ、こういった一連の発言、そういうことの沖繩県民の受け取り方というものは、政府返還問題を大成功だとして、その中におきまする県民の強い戦いの中から生まれたことを忘れて政府考えというものを押しつける政治姿勢がそこから生まれてくるのじゃないか、こういうような疑惑が生まれてまいります。そういう疑惑を一掃する立場からいたしましても、返還問題に対していかに沖繩県民要求というものを重要視するか、こういったことに対します基本的な考えを承りたいと思います。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど私申しましたように、その返還に至るプロセスと申しましたが環境、日米両方にわたる、そして何よりも最大な沖繩県民方々の悲願というものがこの成果をもたらしたものであるということは、私も御同様に考えます。同時に私は、いまいろいろおあげになりました発言等について、一々かわって弁解を申し上げるのもいかがかと思いますから、それは省略いたしますけれども、私の気持ちは、先ほど上原委員にも申し上げましたように、返還問題を手がける責任を与えられましたその以前から、返還については沖繩県民の一人にしてもらった気持ちでなければこの仕事は遂行できない、少なくとも私はそういう気持ちでやってまいっておるつもりでございますから、その点についてはひとつ私の気持ちは御理解をいただきたいと思います。
  88. 安里積千代

    ○安里委員 七二年の早い時期に返還をということはかねてからいわれたことでございます。先般の会議におきまして自民党の代表者の方の問いに対しましても、総理は、七二年の早期にという、できるだけ早い時期にということも御答弁の中にはございます。しかし内容を見ますと、返還協定は進めておる、だがその時期は相手のあることだからしてはっきり言える立場でない、そう申されておりまして、明年春から夏にかけて協定調印の上、明年内に国会の承認手続を完了するよう諸般の準備を進めるということがいわれております。このことは、来年中に協定が出されて、七二年の早々に返るという意味でありまするか。つまり返還協定は来年中に完成をして、七二年の早期に返るというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 七二年のできるだけ早い時期に返還が実現できるようにというのが政府の願望でございます。そこから逆算いたしまして、どうしても来年中には国会の御承認を得なければならない。しかし、これはただいまもいろいろの角度からの御意見がございますように、協定の文章そのものももちろん大事でございますけれども、これに関連する本土とのほんとうの一体化ということについて、言ってみればAからZまで十分の準備をして、国会を通して十分御審議をいただかなければならない。それだけの準備を完了してまいりますのは、ほんとうにこれはねじりはち巻きでやらなければならない。共同声明で七二年中ということが合意されましたことは、そのとき私は率直な自分の感じを申し上げましたが、これはいわば即時返還に通ずるものである。即時と申しましても、本土とほんとうの意味の一体化ということについては、政府をあげて、沖繩方々の御協力をいただき、かつアメリカ側の協力をもって完成しなければならない大仕事でございますから、即時と申しましても、二月や半年あるいは一年以内くらいにとうていそれだけの準備ができないということを頭にしまして、これはもう即時返還と同様のくらいのものであるということを申したことがございますが、そういう意図で、なかなか大仕事でございますけれども、基本の考え方、そして描きつつある最終的なほんとうの本土との一体化という大目的に向かって邁進してまいりたいと思っておる次第でございます。
  90. 安里積千代

    ○安里委員 共同声明によりますと、返還協定が締結されることが条件になっております。したがいまして、この返還協定の調印がおくれればおくれるほど返還はおくれるということになるかと思います。七二年返還政府といたしましてはこれはもう絶対的な要求である、このように考えますが、何らかの都合で七二年に返還が達成できない状況であるとするならば、これは政府の非常な政治的な致命傷になる、このようにも考えられますが、そうとってよろしゅうございますか。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところ、七二年中のかつできるだけすみやかな返還ということについては、だいじょうぶこれはできる。また完成しなければならない。これがいまお尋ねのように七二年中に行なわれないということになりましたら、これはたいへんなことであるということは十分に認識しておるつもりでございます。
  92. 安里積千代

    ○安里委員 それでは、その返還協定の内容でありますが、これはアメリカの了解を得なければならぬというしばしばのお話でございますけれども、一番大きなガンと申しますか困難な問題は、返還協定の内容においてどういうことでありますか。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定の中で重要と思われる項目は累次申し上げておるとおりでございますが、特にその中でガンといわれるようなことがあるかというお尋ねですが、そんなに抽出して、一つこれだけがたいへん困難な問題だというふうなものは、ただいまは私はそういうふうに考えないわけでございまして、いずれもなかなか容易ならざることであるとは思っておりますけれども、十分いま申しましたようなタイミングに間に合わせて、かつ政府から申しますれば、御関係方々に御納得のいくようなかっこうにでき上がり得るようにできると自信を持って作業に当たっているわけでございます。
  94. 安里積千代

    ○安里委員 共同声明には「日本を含む極東の安全をそこなうことなく」ということが大きな前提になっておるかと考えております。当然協定におきましてはこの前提を満たすものがなければ協議は締結されない、まとまらないということになるかと思いますが、その点に関しまして日本を含む極東の安全をそこなわない、この大前提に立ちまして返還協定はどのようにこれを取り扱うつもりか、これに対しまする政府の基本的な考えをお聞きしたいと思います。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 繰り返すようでございますけれども、返還協定交渉上の主たる点は、対米請求とか裁判とか、あるいは米国資産の処理とか、あるいは米系の企業の取り扱いとかいうような点であると予想いたしておりますが、同時に、沖繩地位協定をそのまま適用いたしますために、十分話し合いアメリカと詰めておかなければならない。そこで、「日本を含む極東の安全」ということでございますけれども、これは安保条約全体の問題であって、安保条約がそのまま何らの変更なしに沖繩に適用されるわけでございますから、これは返還協定上の問題というよりは安保条約の問題でございます。そういうふうに御理解いただいていいのではないかと思いますが、日本の安全ということを考えます場合に、「日本を含む極東の安全」ということがどうしてもこれは大切なことである。そしてそこに何らの緊張が起こらないように未然に防止する、そういうワク組みをしたのが安保条約であると思いますから、その目的にかなうように、あるいは逆にいえばその目的以外に逸脱しないように、返還後においての施設区域の提供あるいはその運営ということが確保されなければならない。これは本土並みに全部やっていけばこの点に御心配はない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  96. 安里積千代

    ○安里委員 私は、共同声明を正しく見ますならば、このことが非常に大きな前提になっておるのであって、このことをはっきりさせることなしには、返還協定国民の目を非常にそらすものになってくるのじゃないかと非常に心配をいたします。特に、安保条約によって国の安全を保障するというおことばでありまするけれども、これまでは沖繩安保条約外であります。しかもこの安保条約外に置かれておりました沖繩には、アメリカとの共同声明にも明らかでありまするとおり、沖繩基地の役割りの評価と重要性が確認をされております。そういう立場から見まするならば、日本を含む極東の安全をそこなわないということは、具体的には現在まで維持しておりましたアメリカの現施設、機能、そのことを維持するというたてまえのもとにしかこれが考えられない。そうして現在のアメリカ施設あるいは機能というものを日本が肩がわりするということ以外には考えられない問題でありまするけれども、日本の安全及び極東の安全をそこなわないことを前提としまする場合に、現アメリカがこれまで果たしてきましたところの施設、機能、これを日本が肩がわりし引き継ぐ、あるいはまたアメリカと両方で担当する、こういうことを承認するということが返還前提になっておるというふうにも共同声明からうかがわれますが、その点に対してはいかがですか。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この考え方は、観念的になりますことをお許しいただきたいと思いますけれども、施政権を持っているアメリカ沖繩に対する立場からいえば、在沖繩米軍は、たとえて言えばアメリカ本土におります米軍とその機能や職責や行動というものは同じように考えられてきたものではないかと思います。そこで、沖繩に対しましては、安保条約関連取りきめがそのまま何らの変更なしに本土同様に適用されるわけでございますから、日本から返還後にあらためて提供される施設区域等につきましては、安保条約目的によって運営されるということになって、そして地位協定もかぶれば事前協議もかぶればということになって、米軍の使命あるいは行動の制約ということが現在の本土と全く同じになるわけだ、こういうふうに理解すべきものである、こう考え、そしてその考え方に立って、午前中にも申し上げましたように、返還に先立っても、その目的に照らして現在の施設区域整理というものも考えるべきである。さらに進んでは、沖繩県民方々の福利の増進のために、あるいは経済再建のためにより多く活用できるというところがあれば転用もはかりたい、こういう基本的姿勢でアメリカ側との話を煮詰めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  98. 安里積千代

    ○安里委員 安保条約が廃棄にならぬ以前において沖繩返還されるということであるならば、安保条約が適用されるということになってくることは理屈でございましょう。安保条約によりますと、配備あるいは装備の重大なる変更は事前協議事項になっておることも承知いたしております。そうしますならば、沖繩におきまするところの配備、装備というものは現在の日本の国土にはございません。としまするならば、返還によって安保条約が適用になる現在の沖繩の配備、装備というものは本土にない装備である。これは日本本土の全体のあれから見まするならば、装備、配備の重大なる変更だということになると思いますが、これと事前協議との関係はどうなりますか。返還協定がすなわち事前協議の役割りをなすというお考えでありますか。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定それ自身と事前協議ということとは全然関係がございません。返還された以後においては、先ほども申しましたように、この返還協定交渉と別に、たとえば地位協定をそのままずばりと適用するについての準備の作業がございます、これも非常に重要な仕事でございますと申し上げたところでもおわかりいただけると思いますが、それとこれとは別でございます。
  100. 安里積千代

    ○安里委員 その地位協定、私が問いまするのは、よく皆さん方は本土並みということを言われます。ところで現在のアメリカの軍事基地の機構、配備、装備、こういったものは本土にはないものであります。したがいまして、地位協定で現在のアメリカの軍事施設、これを一応どの範囲において承継なさるかどうかわかりませんけれども、協定の内容になってくるかわかりませんけれども、少なくとも本土とは変わったものが沖繩にはあるのじゃないか。そうしますれば、日本全体の安保条約の適用から見まするならば、日本全体の配備あるいは装備の関係から見ますれば、これは重大なる変更ということになるかと思うのでありますから、その関係をお聞きしたい。これをもう無条件にと申しまするか、政府が承認して引き継がれるところのお考えでありますか。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 例をあげますならば、たとえば核の問題でございますね。これは返還後において本土並みであると同様に、返還のときには核を抜いたきれいな形で返せと言い、これに合意をしているわけでございます。またこれもいろいろと御議論いただきましたが、毒ガスの問題についても同様であると思います。かような次第でございまして、返還後における本土並みということを前提にいたしまして、返還のときにはそういう考え方返還の実現をはかる、そうしてその以後は地位協定、事前協議本土と同じように適用されるという姿に持っていくことが、われわれのいわゆる本土並み考え方、かように御理解をいただきたいと思います。
  102. 安里積千代

    ○安里委員 地位協定がどのようになるかも不明のことでありますけれども、われわれがおそれておりますのは、政府としては、返還という問題は絶対至上命令とされておるし、またこれが実現しなければ、もちろん政府の政治的な大きな責任となされると思います。したがいまして、アメリカ側にとりましては、沖繩返還につきましては、返還協定条件というものが満たされない、アメリカ側の言い分というものを日本側がのまないならば、共同声明にありますところの返還の条件というものがそろわない、だから返還はやらないという口実も与えられるでありましょう。としまするならば、日本政府といたしましては、至上命令であります七二年返還に向けて事前交渉を進めるとするならば、どんな無理でも、極端なアメリカ要求でものまなければこの返還協定は締結できない、こういう立場に立たされておるんじゃないか。もし日本政府からの要求というものをアメリカがのまない、この条件でなければ協定に応じないということであれば、返還の実現はあり得ません。そうしますと、返還をどうしてもかちとらなければならぬということになれば、アメリカ側の言い分というものをのまざるを得ない立場に追い込まれるんじゃないか。こういうふうにも考えるのですが、いかがですか。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうふうにお考えになる考え方も、観念的にはあろうかと思いますけれども、今回の沖繩返還問題については、一番大切だと政府が思っております点は、共同声明で最高首脳部同士が合意しているというところに私は大きな特徴があると思います。一九七二年中の返還、核抜き本土並み、これらについてかなり詳細に合意されておりますから、そのワク組みの中で、何でもかんでも言うことを聞かなければ協定に応じないかどうかという、そういう種類の問題というものは、私はないと思うのであります。核抜き本土並みということが基本でございまして、そのワク組みの中でありますから、先ほども申しましたように、請求権の問題であるとか裁判の問題であるとか資産の引き継ぎの問題であるとかいうことは、返還協定自身の問題でございまして、これはほんとうに、沖繩県民方々から見れば非常に大切なことではありますが、しかし、それよりももっと基本的に一番大切な核抜き本土並みということが具現されることがすべて合意されておる、こういうわけでございますから、ただいま御質疑の趣旨も私には理解できますが、観念的に設定されているそういう御質疑のような御心配というものは考えないで済む、私はかように考えております。
  104. 安里積千代

    ○安里委員 時間がありませんのでこれ以上追及できませんが、核抜き本土並みということばを盛んにお使いなさるようでありますけれども、共同声明の大前提をなしているのは、日本を含む極東の安全をそこなわないというこの条件がついておるわけなんです。ですから、アメリカの軍事的な立場からいたしまして、この程度でなければ日本及び極東の安全に支障を来たすのだといったようなことがいわれてくる場合に、日本がそれをのまざるを得ない。ひいては自衛隊の強化、自衛隊の戦力の増強にもつながった形において沖繩返還が実現されるのではないか、こういう不安を非常に持つがゆえに、あえてこれを申し上げておるわけでありますけれども、御答弁に時間をとりますので、何かの機会にこれをさらにお聞きいたすことにいたしまして、先ほどからお話がございました毒ガス兵器の撤去の問題についてちょっとお聞きしたいと思うのであります。  大臣の御答弁では、アメリカがもう撤去に着手をした、こういうことをたいへん歓迎をされております。問題は、着手したことにあるのではなくして、今後どうするかにあると思うのです。一応手をつけた、しかしその完了がいつかということもはっきりしないと思うのであります。どうもアメリカ側立場に立っての弁解が大臣の口から聞かれたと思うのでありますけれども、この撤去計画につきましては、詳細知らされておりますか、ただ着手したというだけでありますか、その後のことにつきまして詳細連絡されておりますか。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正確に申し上げますと、四日の国防総省から内外に発表されましたものがきまっておるのであって、隠されているような計画というようなものはございません。先ほど来いろいろ申し上げておりましたが、政府といたしましても、とにかくこの決定がなされたことは歓迎でありますが、これからがまた一段とたいへんでございますから、これからの移送計画、そのスケジュール、ことに安全性の確保ということについては十二分にウォッチし、またわれわれの心配が消えるようなことについては十二分にやってまいりたい、こういうわけでございまして、いま今後のプログラムということはまださだかでございません。
  106. 安里積千代

    ○安里委員 沖繩返還後における日本の国土内においては、毒ガスを貯蔵し置くことは許されないんでしょうね。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはあり得ざることと考えております。
  108. 安里積千代

    ○安里委員 それがあり得ざることだといたしますれば、この毒ガス兵器の撤去という問題につきましては、政府とされましてはもっと強くなさなければならぬ問題だと思いますし、場合によっては、われわれが勘ぐるところによれば、先ほどどなたかの質問にあったのでありますけれども、返還までに撤去すればいいといったような考えというものがあるのではないかという疑問を非常に持つ。ですから、このすみやかなる撤去について、私は、政府といたしましてアメリカに対して強い要求がなされることを希望申し上げますとともに、こういうことが返還協定の内容に取り入れられて、そうしてそのことのために返還事務がアメリカの言い分を押しつけられることのないように願いたいと思います。  時間がありませんから、もう一つつけ加えてお聞きいたしますが、いま尖閣列島の問題について前の方からもお話がありましたが、私はこういうことをお聞きしたいと思います。大臣は、これはもう当然日本領土だ、文句を言う筋はないのだ、反駁も必要ないのだといったような趣旨に伺ったのでありますけれども、私がお聞きしたいのは、一体この時期において、台湾国民政府も前に言いましたし、中国政府もいま言ってきました。この時期にどうして中国がそのようなことを言い出してきたかということに対する何かの御判断がありましょうか。しかも中国の言い分によりますと、先ほどお話がありました、アメリカもこれは布令で認めておるし、逆に中共からいたしますならば、アメリカは何で文句を言うかといったような意味のこともいわれております。とするならば、私は、この問題の裏には、日中外交関係が正常化されてないこの時代に、またアメリカ沖繩を統治しておるというこの時代に、こういうことも関連づけてこの時期においてあのような発表になっておると考えておりますが、政府とされましては、日本領土だから文句を言ったって何も反駁する必要はないのだといったようなことではなくして、むしろああいうふうに中国が言ってくるその裏に政治的な何があるか、これをどのように受け取っておられますか、その点だけをお聞きしたいと思います。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そもそもは、尖閣列島の問題につきましては、御承知のように国民政府が言い出したといいますか、最初言ったわけでございます。これがどういう意図なのかということについては、いろいろな見方もございましょうが、はっきりとこういう意図であろうということを申し上げるほどの確信は持っておりません。同時に、国民政府側がそういうことを言ったのが今度は中国大陸側に何らかの影響があったのかとも考えられますが、これもはっきりしたことはわかりません。ただ、しいて、ああもあろうかと考えてくると、東シナ海のむしろ大陸だな資源の問題といささかごっちゃになり、あるいはそれとの関連性があるがごとく取り上げたのかなというふうにも感ぜられるわけでございますが、東シナ海の大陸だな問題に対する政府見解も、しばしば申し上げたとおりでございまして、いずれの国でも方的に権利を行使するというようなことは、これは許し得ざるところではなかろうか。こういう点については、場合によれば話し合い対象になる問題かもしれないと思いますけれども、いずれにしても海の上にあらわれた島嶼に対する主権の問題、それからその周辺の海域の海底に関する問題とがやや混淆されているきらいがあるのではないかという感じを私も持っております。
  110. 安里積千代

    ○安里委員 簡単にもう一言。これで終わります。  総理の国会におきます答弁の中からは、沖繩返還協定の日米交渉は双方の事務当局間において密接にスムーズに進められておるということが言われておりまするし、明年春から夏にかけて協定調印の上国会の承認手続を完了するつもりだというふうに総理はお答えになっております。それで、お聞きいたしたいのでありますが、協定調印の上——これはもちろん前段の答弁から読みますというと、事務当局でもって協議を進めておる、そうして交渉妥結の見通しといったようなことを見ますというと、事務当局においてなされたところの返還協定が調印の上国会の承認手続を完了する、こういうふうに答弁なさっておりますが、協定調印までには国会はこの問題に対しては何ら関与する余地がないわけですか。そうだとしますと、事務当局において作成されたものを国会がこれを事後承認するような形にしかならぬと思います。どのようにして国民の意思というものをこの調印に反映せしめるか、そういった道が閉ざされているのではないか、こういうように思うわけでありますので、その点について、調印までにおいて国会がこれに関与する、国民がこれに関与するところの余地というものはどの程度あるのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実情をお話しいたしますと、本会議の答弁でありましたから、総理の答弁にもちょっと足りないところがあったかとも思いますが、現在の段取りをお話しいたしますと、内容が多岐にわたっておりますし、きわめて専門的な問題でございます。たとえば財産関係でいえば、実態調査、評価の問題ということがあり、それから裁判権の引き継ぎということになりますと、これはどうしても司法当局その他の専門的な知識が必要でございますから、総理が申し上げました事務的ないろいろの協議といりものについて注釈をさらにつけ加えますと、いわばいろいろの意味のタスクフォースが結成されておりまして、そしてそれを取りまとめて、米国政府から本件についての命令といいますか代表権を行使しております駐日米大使と私との間で毎月一回の定期協議をやりまして、その月中の各タスクフォースのやりましたことをさらに分析検討いたしまして、判断を下すべきものあるいは督促を要するものをここで仕分けておるわけでございます。  それから、国会に対する関係でございますが、これはその話し合いの内容等について逐一御報告申し上げるということは私はできないと思いますけれども、一方、国会を通じて、あるいは先ほど来申し上げておりますような直接、間接、公私の別を問わず、沖繩県民の御要請というものはいつも戸をあけて十分伺うようにして、これをこうした作業の上に反映させるようにしてまいりたいと思います。返還協定も、日本側の憲法あるいは政府国会関係から申しますれば、条約のような——条約と申してもいいと思いますが、これは条約案を調印をいたしまして御審議を願うというのが条約についての国会審議の慣行でございますから、その際におきまして十分な御説明をいたしたいと思います。ことに今回の返還協定の場合は、何べんも申し上げておりますように、返還協定自身に取り上げられる問題ももちろん大事でございますが、これに関連した、たとえば国内の立法の問題やあるいはまた安保条約関係の運営の問題等、先ほどもっと高い次元のお話がございましたが、そういう点については、実は率直に申せば、いま別に話し合いをするほどの日米間に意見の相違はないつもりでございますけれども、必要ならばそういう次元の高い話も十分合意をいたしまして、これを返還協定御審議の際に、先ほども申しましたようにAからZまでというふうにこさいにわたって御説明をする、あわせて国内的な立法、法律案もずいぶんたくさんの件数、これは立法技術で、件数はたくさんであっても取りまとめてというような立法技術もありましょうが、内容的には非常に広範な立法事項が必要でございましょうから、協定の調印をして御審議を願いますときには、それら全部にわたりまして十分の御説明をする、こういう心づもりで現在作業を進めているわけでございます。
  112. 池田清志

  113. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣に対して、二つに分けまして質問をしたいと考えます。  一つは毒ガス撤去の問題について、一つは沖繩返還協定の内容について、この二つの問題を質問いたしますが、御答弁をできるだけ簡潔にわかりよくしてもらうために、私のほうで整理しておきたいと思います。  最初に申し上げたいのは、沖繩県民の、心、願い、これはアメリカ沖繩ではなく真の日本沖繩にしたい、これだと考えております。もっと詳しく申し上げますと、沖繩の空も海も、さらに陸地も水源地も、アメリカのものは一つもありません。だが、海も空も陸地の大部分、水源地、いいところはアメリカに支配され、よごされております。ですから、沖繩返還あるいは祖国復帰ということになりますと、そのようなことが一掃されることを念願としているし、日本国民であれば、これはあたりまえの願いであります。  そこで、それを集約しますと、結局、核もない、毒ガスもない沖繩基地もない、アメリカもいない沖繩、それにして初めて返還目的が達成され、日本は真の民族の独立を達成したと世界に宣言し、佐藤総理が六五年八月に沖繩に来て、沖繩の祖国復帰が実現しない限り戦後は終わらないということばは、国土というこの沖繩、さらに百万の日本国民の住んでいる沖繩、これをいまのような状態で置いていては真の日本の国の独立は達成されていないというふうに私は解釈しております。したがいまして、この最初に申し上げました毒ガスも核もない沖繩基地アメリカもいない沖繩ということを実現するためには、単にことばだけのいろいろの誠意を尽くしたのではどうにもならないと考えます。  したがって、その観点に立ちまして最初に毒ガスの問題を外務大臣にお聞きしたいのは、この毒ガスは一体沖繩にいつごろから搬入が開始され、いつまで現在のような毒ガスが置かれておるのか、これを一つ。もう一つは、毒ガスの置かれている場所は一体どこか。さらに、毒ガスの種類、これは、どういう種類の毒ガスがどのくらいの分量あるか。最後に、その毒ガスが三つであり四つであれば、その毒ガスの致死量、これはどの程度であるか。いわゆる殺戮兵器、集団殺戮兵器とよくいわれているこの毒ガスについて、いま申し上げましたような、とき、場所、さらに分量、種類、さらにその致死量、こういったものを最初に明らかにしてほしいと思います。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず最初に、本土並みということについての御見解でございましたが、私はそのお考えに同感を表したいと思います。ただ、基地もない、アメリカの兵隊もいないということについては、安保条約というものを政府としては現在日本の独立、安全を守る最大の賢明なる政策であると考えておりますから、これも本土並み沖繩に適用される、こういうふうに御理解をお願いいたしたいと思います。  それから、毒ガスの問題でございますが、これは問題になりましたときに調べましたところによりますと、一九六二年に第一回が貯蔵されたように承知をいたしております。それから、現在の政府の最大の焦点としては、とにかくこの種のものはすみやかに撤去しなければならない。先ほども私言及いたしましたように、日本政府としては一九二五年の毒ガスについての議定書もあらためて批准をいたしておるような国策に立って内外にこれを表明しておる、こういう状況でもございますから、あくまで全部を撤退するということについて先ほど申し上げたとおりのことで努力を新たにいたしたいと思っておる次第であります。その内容その他については、どこまで御満足のいく御答弁ができますかわかりませんが、御必要ならば政府委員から答弁いたさせます。
  115. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣沖繩県民の一人という立場から、県民の一人になったような立場でということになりますと、私が外務大臣に聞いておるのは、どのような種類のものがあって、これがいかなる危険物であるかということが外務大臣の心の中にしっかり握られておれば、もう少し何とかなりはせぬかなというふうな気持ち県民にあるから、特にその点を聞いておるわけなんです。いわゆる三つ種類があるといわれている。いま一般的に沖繩県民が言っておるのは、死刑台に上げられた状態であり、噴火山上にいるということを考えておるこの事態。この種類がどういう種類があり、その分量がどんなものであるか。一万三千トンあるとアメリカが言っていた。VXがそのうちに幾らあるのか。そういったようなものについての外務大臣のほんとうの考え方、さらに知識、こういったものを実は知りたいわけなんです。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私が無能であるかもしれませんけれども、私の立場におきましては、これは一九二五年のガスの議定書の論議のときにも、その致死性の問題、ガスの種類というようなことについては学問的にも大いに論議が戦わされたわけであります。そういう点について、私は政治家としての立場から、かような種類の問題は何であっても撤去をするということに徹して努力をすべき立場にある、かように存じますし、あまり専門的に立ち入りましてお話をするだけの知識はございません。
  117. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は知識の問題を言っているのではなくて、真に沖繩県民立場からほんとうに政治折衝を強力にやるならば、またやると言われておるので、それをいま信じておるわけであります。そうなりますと、たとえばVX、GB、HD、この三つが置かれておるといわれておる。かりに一万三千トンのうち三千トンがVXであるとすれば、このVXの致死量はもうたいへんなやつである。いわゆる十ミリグラム、この一滴は比重が大きいものですから、目に見えない一滴、これで一分で完全に死ぬ。これを三千トンというと三十億ミリグラムになる。日本国民全体が死ぬという、これほどの分量が、現在一万三千トンのうち三千トン、かりに内輪に見てあるとしても。そういうことがいわれておるものだから、外務大臣は、いろいろの局長その他持っておられますが、そのためには政治折衝を強力にやると、こう言っておる。危険なもの、しかも全日本国民が三千トンで全滅するというふうなことになると、私は政治折衝立場がもっと強力になるのじゃないかと思ったから、それを聞いたわけなんです。いかがですか。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまおあげになりました、まあそれは資料の一端でございましょうけれども、私も非常におそるべき性質のものであるということを認識しておりますからこそ、年来努力努力を重ねてきているわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、幸いに今回の決定はそれらすべてについてということが明確にされておりますので、これをよりどころにいたしまして、すべての早急な撤去、ことに私が、あるいは不必要とお聞き取りになったかもしれませんが、そういうおそるべきものであるから、この移送あるいは解体等につきましても十分の注意を払ってもらわなければいかぬわけでございますから、これらについては日本側のあるいは沖繩側のその道の専門の方々の御協力もいただいて、そうして安全に移行させるということについても十二分の配慮をしなければなるまい、かように考えて、そうしてこれを、方法論についてはまだ申し上げるまでにいっておりませんけれども、いろいろといま検討し、かつ話し合いを進めておる次第でございます。
  119. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間があまりありませんので、この問題でもっとお聞きしたいのがたくさんあるわけですが、すみやかにかつ安全に、これは外務大臣の口ぐせみたいになっておりますが、この点についてわれわれは協力をするにはやぶさかではありません。しかし、すみやかに安全にという内容がわからない限り、どのようにすみやかであるのか、七二年返還の時点までに全部が撤去される、それがすみやかであるのか、あるいは来年の春ごろまでには何とかやるということであるのか、その内容がわからないし、さらに安全の場合、特にVXなるものには危険度が多い。これはアメリカのユタ州において六千頭の羊が一瞬にして死滅したということは外務大臣はおわかりと思いますが、こういった中からもアメリカの市民としては、われわれの国内にこんなものを持ち込んでは困る、アラスカでも反対、どこでも反対で、ついにジョンストンにきまったということのいきさつがあって、私もわかりますが、その安全なるものがどのような形で行なわれるのか、これはだれも知らぬわけなんです。しかも万三千トンといわれておるあの毒ガス兵器、そのうちのわずかに百五十トン、約一%にすぎません。しかもこれがVXではなしに、そのうちのイペリットというものであるといったようなことまで発表されておる。神経性毒ガスのVX、これは一体いつやるのか。これを万一、七二年の時点、あと二カ年沖繩に置いておくなら、一体沖繩県民はどうなるのか。死刑台に上げられておるということばは、ほんとうに私は言い過ぎじゃないと思う。そのように不安を感じておるからこそ屋良主席からもいま要請電が来ておると思います。立法院では、私がいるとき七月の三日に第三回目の決議をして、その三回目には、外務大臣にも来ていたと思いますが、アメリカに対して要求するということまで強い決議をしております。いわゆる立法院で全会一致で決議するということは、自由民主党まで含めての問題であります。全県民的な問題として百万県民が、このおそろしい大量殺戮の毒ガス兵器を即時撤去せよというふうなことをいっているからには、いままでの御答弁では安心はできないんじゃないか、私は率直に言ってそう考えております。ですから、もし外務大臣が、このように努力していても安心できないとするならばしかたがないじゃないかという態度をとられるならば、県民はますます不安に感ずるんじゃないか。そういった点について、安心とかすみやかとかというものについて、もっと具体的な御説明ができるのであれば、簡潔に一言言ってほしいと思うのです。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話はよくわかります。私もそういう気持ちでやっておるのですが、先ほど来申しておりますように、こうこういうふうにしてとりあえず安全が確保された、その次の段階ではこうするというふうなことを、御安心が願えるような言明を私としてもいたしたいわけです。それで、けさほども率直に申しておりますように、そこまで言えるだけ——何しろ移送する当事者が別にございます関係もありますから、ここで話し合いの詰まっていないことを希望的に申し上げましてもいかがかと思いますから、これはもう少し具体性を持った御説明ができるときまで譲らしていただきたいと思います。  ただ、先ほども上原さんに申しましたように、取り上げ方の基本的姿勢は私は非常に大事だと思うのですが、基本的な認識またその強烈なる危険性ということについては、いまも言及されましたけれども、アメリカ国内であれだけの騒動といいますか言論が起こったくらいのことでありますから、われわれといたしましても、その事実を踏まえて、この扱い方についてはほんとうに最大限の注意を払っていかなければならないと思っております。
  121. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 毒ガス撤去の問題につきましては質問の半分もお答えになっておりませんが、時間がありませんので、機会を見て、いろいろな機会を利用して、これを沖繩県民が安心できるようにしたいと考えて、先に進みます。  返還協定の問題についてであります。御承知のように、沖繩がこのような形にさせられたのは、例の五一年の八月に結ばれたサンフランシスコ平和条約、その第三条によって祖国日本から断ち切られた。発効するのが五二年の四月二十八日でありますが、それ以後沖繩県民はほんとうに一日も早く祖国に帰りたいという運動を起こしました。その前は運動は起こりません。本格的に運動が起こったのはその前年、いわゆるその当時のダレス顧問が講和七原則を発表して、その中で、沖繩日本から切り離して信託統治制度にする、このとき以来沖繩県民復帰運動は始まります。これはいずれにいたしましても、まず全面返還という問題、真に沖繩返還するという協定であるならば、いまの沖繩本土、祖国日本から断ち切ったサンフランシスコ平和条約、特にその第三条、この取り扱いをよけて通ることはできないと思います。したがって、ほんとうに全面返還するためには、返還協定の一番骨子は、本土から沖繩を断ち切ったそのサンフランシスコ平和条約第三条の取り扱いをどうするか、すなわちわれわれはその撤廃のためにこれまで奮闘しましたが、まず第一点それであります。条約三条の問題。  さらに二番目には、米軍施政下に現在大統領行政命令あるいは布令、布告、こういったのがあり、書簡なども法令として生きているのもあります。この米占領法規、これは返還の時点には当然なくなるでありましょうが、この米占領法規を実質的に代行する新法令の制定をこの国会でやることを禁止する条項、これがなければいけないと思います。いわゆる基地も置き、アメリカもおって、その上に自衛隊が六千人も派遣されるなどということになると、日米共同管理のもとに置かれる危険性がある。そのためにも、このような米占領軍の法規をここでまた新しくつくる、新法令をつくるようなことを禁止するような条項が含まれなくちゃいけない。  三番目に、すべての米軍基地の即時撤去、一切の米軍の即時撤退の義務づけ、この問題は特に私は重要だと考えます。いつ、どのような形で米軍基地撤去して、そしてどういう形で基地縮小して、さらに最後には撤去するかという問題の義務づけ。  さらに四番目に、米軍の占領の全面期間に生じた県民の有形無形の各種損害に関し、アメリカ政府による完全賠償の義務づけ、これはいまサンフランシスコ平和条約十九条のa項によって請求権放棄したというのだが、沖繩県民請求権放棄したことはありません。これは、そのサンフランシスコ平和条約を締結するとき、沖繩県民はこの三条による切り離しと信託統治に反対する署名運動を起こしまして、政府にも、さらにアメリカ政府に送りましたが、拒否されました。その結果こういう状態になって、サンフランシスコ平和条約三条が結ばれた。そういった意味でもこの請求権、これはわれわれはぜひアメリカに完全賠償させるような義務づけを返還協定の中に入れる必要があると考えます。  五番目に、沖繩における米国政府資産の日本側への無償譲渡、これはいま新聞によりますといろいろな公社関係があります。水道公社、電力公社あるいは開発金融公社、そういったような公社関係で、琉球銀行の株の五一%、こういったのはガリオア資金、これでもってアメリカ国内でガリオア物資に変わり、このガリオア物資が沖繩県内に入り込んできて売りつけられて見返り資金化したものがこの公社関係になっておる。この公社は買い取るのではなくて無償で日本政府に移譲させるという義務づけを必ず行なわなくてはいけない、この問題であります。さらに、現在すでに沖繩に進出しておる米企業をはじめとする外国企業に対する特権の排除、これは絶対やらなくてはいけない。現在、二例ですが、自動車税あるいは所得税、これなどはアメリカの布令によってアメリカは特権を持っております。こういったものを即時排除すると同時に、さらに遡及して、私たちの計算によると、アメリカが出すべきものであったはずの、すでに三千万ドル以上に達しております、こういったものを取るようないろいろの条項、こういうものを基本的に返還協定の中に入れなくてはいけないと私は考えております。この点について外務大臣は現在までの返還交渉が順調に進んでおると言われておりますが、このようなことがどのように順調に進んでおるか、この点について御説明をお願いしたいと考えます。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に広範にわたり、かつ政府の基本的な考え方とだいぶ違った角度に立っての御質問ですから、なるべく簡潔にお答えいたしたいと思いますが、ちょっと時間がかかるかもしれません。  まず、サンフランシスコ平和条約の問題でございますが、これはいまさら申し上げるまでもないと思いますけれども、日本政府は、このサンフランシスコ平和条約によりまして、一口に言えば今日の日本の繁栄を企図し得たものである、あの当時いろいろ御議論が国内にもございましたが、この平和条約締結に踏み切ったことが今日の日本再建のいしずえであった、かような信念に立っておるわけでございまして、この点は御見解が違いますのはやむを得ないことと思います。  それから、第三条の問題でございますが、私はそういう立場に立って申し上げるのでありますけれども、ここに御承知のようにアメリカが、これこれのところを合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度のもとに置こうとする国際連合に対する合衆国のかなる提案にも同意する、しかし、このような提案が行なわれかつ可決されるまでは、合衆国が立法、司法、行政の三権を持っている、こういうことになって今日の状態に及んでいることが、アメリカとの話し合いにおいて施政権の円滑な返還が企図できることになったよりどころであり、政治的に見ましても、この規定によって沖繩返還というものが円滑に行ない得たものである、かように確信をいたしております。  それから第三点は、私ども政府が言っております本土並みということは、冒頭に私お断わりいたしておきましたように、沖繩の風土、どこの水もきれいであり、海もきれい、青空も日本本土と同じように青空をという、このお気持ちは全く私も同感でございますが、本土並みということは、本土における憲法をはじめとして一切の法令、それから本土政府が是なりとし、国民の支持を得て諸外国と締結いたしました条約は、安保条約を含めて、すべてこれを何らの変更なしに沖繩に適用することである、この基本方針によって返還が実現されるということになったことを喜びとしているわけでございます。したがって、返還協定をつくる場合に、一切のアメリカ人はいなくなる、米軍の撤退、一切の基地撤去ということを返還協定で約定せよといわれましても、これは基本的な考えが違いますから、沖繩の百万の県民方々本土の者と同じように平和で安全に心配なく生活していかれるためには、本土の経験上から申しましても、本土並みが最善である、こういう確信の上に立っておりますから、本土並み以上、あるいは本土並みと違ったような角度で沖繩というものを別個に取り扱うということになりますと、政府本土並みということとは基本的に違った精神と申しますか考え方に立つものでありますから、政府といたしましては、そういう御意見も拝聴いたしますけれども、遺憾ながらその線で返還協定を結ぶということは考えておりません。  それから次に、資産の買い取りの問題でございますが、無償で何でもかんでもということは、考え方によっては、一これもつの考え方だと思いますけれども、たとえば電力とか水道とかいうようなことで、現にある施設で引き続き沖繩県民のために大いに有用に使われるというものにつきましては、場合によりましてはこれを有償で引き継ぐということも考えていいのではなかろうかというふうな考え方を持っておりますということは、従来率直に申し上げておる次第でございます。  ガリオア、エロアというようなものについての政府見解は、従来から申し上げたとおりでございまして、ガリオアあるいはエロアということに限定すれば、これは性質上は返還というようなことを当時は考えられていなかったものであろう、こういう考え方に立脚して処理をいたしたいと思いますけれども、これらの資金が、いま申し上げましたように、いわゆる三公社その他今後も沖繩県民のために大いに有用に使われるというその資産として見た場合、その資産をいかに評価するか、そうしていま私が申しましたように、その中でいかなる程度のものが有償であってもしかるべきかということについては、今後も慎重に検討させていただきたいと思いますし、また米側とも十分詰めて協議をいたすべき筋合いの問題である、かように存じます。しかしいずれにいたしましても、沖繩県民方々の御要請、お気持ち、負担をしたくない、率直に言えばそういうお気持ちというものは、政府におきましても十分尊重していかなければならないと考えます。  それから、次の米系の企業の問題でございますが、これはやはり復帰と同時に当然それぞれの業法とか、あるいはそれに基づく許可でありますとか、あるいは税法の取り扱い、あるいは外国に対する送金の問題というようなことは、すべて返還と同時に完全に日本の法令に服すべきものである、こういうことで律してまいるべきものであると考えるものでございます。経過措置等については、これはアメリカの外資系というだけではなくて、ほかにもそういう種類のものがございましょうし、あるいはまた個人的な自由職業等につきましても、資格の問題その他もございましょうが、こういう場合におきましては、どこ系ということではなくて、経過的な尊重ということも考えなければなりますまい。そういう場合におきましては公平の原則でもって取り扱うということが妥当ではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  123. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が切れておりますので、要望として申し上げたいのは、この毒ガスの問題は、いまのような御返事では、午前から午後にかけて御返事がありましたが、これはなかなか安心するわけにいかないと思います。私もますます不安になっております。この点につきましては、あとでまたいろいろな形で御質問をすることにし、返還協定についても、基地の買い取り問題その他基本的な問題が残されておりますので、まとめてあとでいろいろな形で要望し、さらに外務大臣の発言を求めたいと思います。以上をもって本員の質問を終わります。      ————◇—————
  124. 池田清志

    池田委員長 理事辞任及び補欠選任についておはかりいたします。  理事川崎寛治君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定せられました。  引き続き、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、中谷鉄也君を理事に指名いたします。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十一分散会