○
国務大臣(宮澤喜一君) 非常に問題の提起が大きいので、どういうふうに申し上げていいのか……。やはり、
一つはいろんな
要因があると思いますけれども、わが国の一人当たりの生産性というものを考えますと、たとえば西ドイツなんかと比較いたしますと、
GNPと就労人口との比から申しますと、わが国の労働生産性は二分の一程度ということになります。そのことの裏返しを考えますと、わが国の
経済社会全体が、いわば合理化でありますとか、近代化でありますとか、あるいは機械装備率でありますとかいうものがもう
一つまだいける。少なくとも西ドイツ並みまでは当然いけていいはずでございますから、そういう施策によって、すなわち生産性の向上、あるいは生産性の低いほうから生産性の高いほうへ労働力が自由に障害なく流動できるというような施策、これは社会形成のあり方でもあるかと思いますが、そういうことをすることによって一人当たりの生産性をあげていく、賃金の上昇ということは労働の需給
関係から当然避けられないと思いますので、生産性上昇によって賃金の上昇が
物価にはね返るその度合いを減らしていく、生産性上昇でカバーをしていくというような努力が、国全体として必要ではないかと考えるわけでございます。これは大企業についてはもちろんでありますけれども、問題がありますのは中小企業でありますとか、農業でありますとか、流通とかというところでございますので、そういう生産性上昇のための努力というのをわが国はまだまだ払うべきだし、払えばその効果はあらわれるはずだというふうに考えております。この系列のことが
一つだと思うのでございます。
それから、先ほども
羽生委員から御
指摘もございましたが、そういう過程の中で、保護をするつもりで過保護におちいっているような施策がありましたら、それは改めていかなければならないと思います。そういうことのあり得る
——あると申しませんが、あり得る領域は、やはり先ほども申し上げましたが、中小企業のカルテルであるとか、あるいは再販であるとか、あちこち、農業についてもあるかと思いますが、そういう領域であろうと思います。そうして、おしなべて可能な限り自由競争の原理を働かす、農業とか中小企業の一部には、いわゆる市場性、
経済性に乗らない領域が従来ございましたから、そこが保護を受けておったわけですが、それが過保護になっていないかという問題が
一つやはりあると思います。
それから国全体として生産性の向上の範囲内で労働賃金を上昇させてほしいということはしばしば私ども考えることでございますけれども、原則としてはそれは正しいと思いますが、実際にはなかなか行ない得ない場合が多いし、そういうことは常に
国民各層に考えておいてもらいたいということはやはり
一つのポイントではないだろうか。
それから何と言っても、毎年、最近でございますと二〇%に近い日銀券の平残がある、伸びがあるということも
物価にはもちろん無縁ではないと思います。この点はやはり総需要を適当に保つということに関連をするというふうに考えております。
それからもう
一つつけ加えますと、消費者の自覚、あるいはそれに対する協力というようなことも必要ではないか。たとえば、ことに大
企業製品においてそうでございますけれども、いわゆるデラックス化するということの
意味が、そのものの効用を、本来の効用を離れてあまり必要のないところに商品の改善といいますか、
変化があらわれて、そうでなければ下がるべき商品の価格が下がらない、デラックス化しただけ安くなっておりますというような
議論があるわけでございますけれども、それはスタンダードのものを使えば当然そういうものは逆に下がってしかるべきものと思いますけれども、メーカー側もそういうことはいたしませんし、消費者もなかなかスタンダードのものを買わないといったような消費の性向でありますとか、あるいは商品に対する消費者の知識についての啓発のおくれ、そういったようなこともやはりひとつ、これも結局
物価に
関係があるのではないか。
あといろいろございますと思いますが、生鮮食料品等につきましては御
承知のとおりでありますし、一般的に自由化というものが
物価の
関係からいえば
物価を引き下げる、あるいは少なくとも上がる幅を押える効果がありますことは、もう何度も申し上げておりますし、御
承知のとおりだと思うのでございます。