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1970-04-06 第63回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月六日(月曜日)    午前十時十九分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月六日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     八田 一朗君      玉置 猛夫君     中村喜四郎君      近藤英一郎君     川上 為治君      片山 武夫君     向井 長年君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         堀本 宜実君     理 事                 木村 睦男君                 柴田  栄君                 任田 新治君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 横川 正市君                 矢追 秀彦君                 向井 長年君     委 員                 岩動 道行君                 大森 久司君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 西郷吉之助君                 白井  勇君                 田村 賢作君                 高橋文五郎君                 中村喜四郎君                 初山瀧一郎君                 増原 恵吉君                 柳田桃太郎君                 小野  明君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 亀田 得治君                 鶴園 哲夫君                 羽生 三七君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 三木 忠雄君                 中沢伊登子君                 春日 正一君                 青島 幸男君    国務大臣        法 務 大 臣  小林 武治君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  保利  茂君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        警察庁警備局長  川島 広守君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     矢野 智雄君        科学技術庁計画        局長       鈴木 春夫君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        公安調査庁次長  内田 達夫君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       高木 文雄君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省理財局長  岩尾  一君        国税庁長官    吉國 二郎君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        文部省管理局長  岩間英太郎君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省児童家庭        局長       坂元貞一郎君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林大臣官房長  亀長 友義君        農林大臣官房予        算課長      大場 敏彦君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  池田 俊也君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        食糧庁長官    森本  修君        通商産業省貿易        振興局長     後藤 正記君        通商産業省企業        局長       両角 良彦君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省航空局長  手塚 良成君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       住  榮作君        建設省計画局長  川島  博君        自治省税務局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本航空株式会        社航務本部運航        部長       長野 英麿君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についておはかりをいたします。  委員異動に伴い、理事が一名欠員になっておりますので、その補欠選任を行ないます。選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に、向井長年君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  まず、航空機乗っ取り事件について、外務大臣運輸大臣から報告を求めます。外務大臣
  5. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日航機の乗っ取り事件につきましては、御承知のとおり、昨日午前九時に、山村政務次官、乗員、機体ともに無事に羽田に帰ってまいりました。これをもちまして本件についての結末が一応ついたわけでございます。ここに至りますまでの間、本委員会を通じまして、一昨土曜日までの間に、経過等については御説明を申し上げてまいったわけでございますけれども、委員会皆さま方に非常な御激励と御協力をいただきましたことを、あらためて感謝申し上げる次第でございます。  本件につきましては、橋本運輸大臣がソウルから帰ってこられましたので、詳細につきましては運輸大臣から経過をさらに御説明申し上げ、また、御質疑にお答えさせていただきたいと、かように存じますので、よろしくお願い申し上げます。  あらためて、絶大な御協力、御激励に対しまして、衷心から感謝申し上げる次第でございます。
  6. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 橋本運輸大臣
  7. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 最初に、今回の事件に関しまして、各党の皆さん協力一致されまして、私たちを、及びこの事件に対して非常な御支援と御激励を賜わりましたことは、現地におります私としては、ほんとうに心強く、そうして与野党各位誠心誠意の御協力に対しましては、感謝感激にたえません。その基盤がありましたればこそ、多少の問題がありましたにいたしましても、ことに私たちの不行き届きからその点のことがありましたにいたしましても、一応このような、人命全部を無事帰還せしめることができましたのは、皆さんの御協力、御激励の結果でありまして、厚く感謝申し上げます。皆さん激励してくだすっておるということは官房長官を通じて私の手元までに、このように国会はあげて、国民とともに、この「よど」号の救出に対しては心から協力しているからしっかりやれと、こういう御激励を賜わったので、非常に私としては心安んじてこの問題の解決に全力を注ぐことができました。ほんとうに厚く御礼を申し上げます。  いままでの経過につきましては、おそらく政府当局から皆さんのほうに御報告があったと思いますけれども、御承知のように、この事件が発生いたしまして、そうして福岡から北朝鮮に向けて出発をするという報を受けましたので、私は、これはたいへんな問題になったということでおりまするうちに、「よど」号は金浦飛行場に着いたと、事情はわからぬけれども金浦飛行場に着いたということを確認いたしましたので、直ちに大臣命令として、山村政務次官を私の代理として、関係者を連れて特別機で、三月三十一日の、時間にいたしますというと昼過ぎに向こう到着をさしたわけであります。その後、翌朝、官房長官から、問題はなかなかむずかしいところに到着したのであるからして、よその国に到着したのであるからして、したがって、いろいろの問題もあろうから、なお運輸大臣最高相談役として関係方面との十分なる連絡をとるために直ちに出発するようにと、こういうことで、私は、四月一日の午後一時半――ほかにチャーター機がありませんので、海上保安庁の使用しておる救難捜索機YS11機、これを急速整備させまして、四月一日の一時半、羽田飛行場を出発いたしまして、三時十分ごろ金浦飛行場到着をいたしたのであります。  私が到着いたします前に、すでに前の日に到着しました山村政務次官政府の代表として関係方面といろいろの打ち合わせをいたしておりましたが、すでに韓国政府当局は、「よど」号、いわゆる犯人の乗った「よど」号が到着しますと、直ちに、とにかく乗客全員をおろせ、ここは韓国政府管轄下である、したがって、人道上の立場から、非常に疲労しておるであろう乗客人々をまずおろせというようなことを、山村政務次官が行く前にすでに犯人に向かって放送をした。御承知のように、金浦飛行場軍用飛行場と兼用であります。したがって、現在、われわれの承知するところでは、金浦飛行場というものは一種の軍の管理下に置かれておる。したがって、管制塔軍用といわゆる民間用とに共用されておる。その飛行場内には空軍のいわゆる司令部がある。こういうような状態のところであります。私は、到着しましてから直ちに、その空軍司令部といいますか、そこが対策本部になっておりましたので、そこに金山大使山村次官に案内されまして、韓国側当局首脳部といろいろ相談をした。  私から関係者韓国政府お願いしたことは、とにかく犯人がエキセントリックな精神の持ち主である、したがって、われわれ内地で赤軍派行動を、犯人たち行動を見ておって、これらは異常な神経持ち主であるからして、絶対に犯人を刺激しないような取り扱いをしてもらいたい、しかも、伝えられるところによれば、日本刀とか短刀とか以外に爆弾もあると言われておる、短刀や刀のあることはもうすでに福岡で確認されておりますが、自爆用のために爆弾も持っておるということであるから、したがって、いわゆる犯人に対して興奮さしたり刺激したりするようなことは絶対にやめてもらいたい、同時にまた、乗客に対して人命は必ず保証するんだというような安心感も与えてもらいたい、この点はかたく日本政府最高責任者としてお願いをいたします、こういうことを強く申し入れたのであります。  それに対して、韓国政府側も、この問題は犯人によって起こされた事件であり、人道上の問題であるからして、運輸大臣からの申し入れは快くこれを承知し、その方針でこれを処置をいたしてまいることに同意をするというような態度をもって迎えられたわけであります。私は直ちに犯人に向かって説得をしようということを申し入れたのでありまするが、金山大使山村次官ほか韓国政府方々が、どうもこの際は、犯人態度から見て、大臣が直接話をするということはかえって逆効果になる心配がある、ということは、彼らは百何人という人質を持っておるのであるからして非常な強気だ、要するに、いままでの説得状況を見ても、このまま全員を立たせろというだけの要求で、繰り返しそれだけほか返事をしてこない、そういう状況からして、かえってこれは危険を増すことになる、彼らを興奮させることになる、こういうことであるから、ぜひそれはひとつやめてもらいたい――これは、金山大使山村次官も、また韓国政府も同様に全く一致した意見であります。私は、もちろん説得一つ目的ではあるが、ただ、全体を調整をし、かつまた重大な決定に対して私の判断を求めるということが主たる目的であるから、したがって、その方法等については皆さんの御指示に従いましょうということで、私はまず、方針としては、この犯人の異常な神経、狂暴な状態を何としても静かにせしめる、それから乗客安心感を与える、何としても乗客安心感を与える、そうして、そのためにはやはり二、三日の時間は必要であろう、まあ私は腹の中ではどうしても二、三日間は落ちつかせるために必要であろう、もう一つは、向こう飛行場――私はいろいろ飛行場関係者に聞いてみましたが、だれも平壌飛行場様子がわからない。ああいうような大型飛行機を持っていける飛行場なのか、あるいは計器ができておるのか、こういうことについては、私は日航金浦責任者、あるいはそのあと松尾社長も来ましたが、聞いてみても全くわからない。おそらく十分な設備はないとわれわれは聞いておると、こういうことであって、非常に大型飛行機を満ぱいをして飛ばせるのには危険な状態であるような話を聞いておる。そういう意味で、私はもちろん技術的に詳しいことはわかりませんから、そういう関係者と話してみますと、なかなかむずかしいところだ、それだけを言って、そこで、しかしながらまあ何とかして乗客はこの場でおろすということに最大の力を、最善の努力をして、おろすということが何としても必要な状況ではないか、それが、そういう飛行着陸等の点から考えても、また安全に人命を救出するといいましょうか、安全を保つためにも必要じゃないか。そのためには、できるだけ犯人及び操縦士等にも休養を与える、また犯人にもなごやかな状態を与えることが第一だということで、まずその方面全力を注いだ。  そこで、食事その他のことについて十分な手配をしてもらう必要があろうと感じて、韓国政府お願いしたところが、韓国政府は快く受けて、とにかく食事だけは十分にしましょうということで、私か着いてからでありまするが――その前にももちろん食事は持って行ったようでありますが、向こうが受け付けない。われわれは断食をしても飛行機を飛ばせるのだ、こういうことをもって受け付けない。しかし、韓国の空港の当局から、そんなこと言ったところで操縦士が疲労をしたら飛べないじゃないか、だから食事を持って行くから十分に食べろということでありましたが、なかなか受け付けなかったそうであります。それは前の晩。私が参りましてから、そこでいろいろ相談をし、お願いをして、夕食の十分な、約二百人分の夕食食事、それからミカン、ジュースの類、それから薬、その他非常にこまかい点まで配慮してくださいまして、それを飛行機のそばまで飛行場関係者の人が持って参ったわけであります。しかし、これはなかなか向こうは受け取らなかった。ところが、繰り返し、韓国飛行場関係者が、とにかく食事を持っていくのであるからして、諸君食事を食べろ、飛ぶにしても休養する必要があるじゃないかといって、いろいろ説得されましたところが、夜の八時過ぎ、十時ごろでありましょうか、向こうから、非常に空気が悪くなったから空気を取りかえてくれ、同時にまた、その機会に食事ももらおう、しかし、飛行場係員以外は近づいてはいかぬ、こういうわけで、飛行場係員、それに日本JAL支店長がおりますから、その人に、従業員にかわってもらって、それを一人加えて、平田という人ですが、その人に一緒に行ってもらって、様子をひとつ見てもらおうということで――機長の窓口があります。ドアは開けません。そこからその者らの食事を全部入れた。向こう機長を通じて、犯人でなく、機長を通じて、それを中に運び入れて、そうして全部に配分をしたのであります。  しかし、あと山村政務次官に聞いてみますというと、運んだ食事は、まずみんなに丁寧に配って、自分たちは二時間ぐらいそれを食べなかった、ということは、何か毒味をさしたのではないかと言っておりましたが、食べなかったそうであります。二時間ぐらいたってから初めて自分たちが食べたと、こういうことを、これは山村君が一緒になってからの話でありますが、そういうことを聞いたようであります。  そういうことで、私は、食事を全部受け取ったということと、ずっと見ておりまして――作業員の人は何人かはかなり近くまで、五十メートル、百メートルまでは近づけるわけですが、その連中報告を聞きまして、喜々としてみんなも食事を食べているということを聞いて、まあ私たちの考えた、乗務員をはじめ、犯人及び乗客人々が安心して食べておるという状況を聞いて、これは一歩前進したと私は判断したわけです。あれが狂暴のままでいるというと、何をしでかすかわからぬ、であるからして、これは一歩前進したということで、まあわれわれは一つめどが、私の考えておっためどが一応ついたわけであります。  そこで、全員はそのまま残っておった。機内の連中は、食事を終わって、何時でありましょうか、おそくなりましたけれども、休んだ。私は、機長及び機関士、副操縦士、この人々休養を与えなければ、万一全員を飛ばすということになっても非常に危険だ、何としても休養を与えなければだめだ、であるからして、十一時に寝たか十二時に寝たかわかりませんけれども、休養を与えたということは、私にとっては、一つの気持としては、ほっとしたわけであります。  で、私たちはもちろん帰るわけにはいきませんからして、その金浦飛行場の中にそのまま残りまして、そうして様子を見守りながら、また翌朝から首脳部打ち合わせをしまして、そこで、あくまでも乗客だけはおろそう、向こう飛行場状態がわからない、当方ではもちろん、韓国政府もわからないわけです。日本でも飛行場がわからない。であるからして、とにかくできるだけ身軽な状態が安全に送る上においては必要だ。韓国政府方々も非常にこれは親切にしてくれました。そうして、何といっても人命をそこなわないように、安全にしなければいかぬ、そのためには、できればここで全員をおろすことが一番いいのです。犯人もろとも。しかし、犯人は無理だということは考えまして、諸君は必ず送る、必ず北朝鮮に送るからして、とにかく乗客だけはおろせ、これは心身ともに疲れているし、するからして、人道上の問題なんだ、君らは向こうに行けばいいじゃないか、必ず向こうにやるからして乗客はおろせと、こう言って韓国飛行場当局説得をしますけれども――管制塔を通じてやるのです。目の前ではできないのです。一キロくらい離れておるわけですから。けれども、何としても聞かない。いや、おれは全員とこのまま行くんだ、だから飛行機をちゃんと滑走路に乗っけろと、こういうわけなんです。  それはできないと、こういう危険な状態で、人命尊重の上から、そんなたくさんの人を――飛行士もまた、皆さんが御承知のように、石田機長以下、だれもこの韓国を飛んだ経験がないんです。しかも、国内飛行場ですから、航空地図も持っていないということを日航の人から聞いておる。だから、めくら飛行なんです。そういう状態をわれわれは日本航空諸君から聞いておる。まあ韓国の人も聞いておる。であるからして、そんな満ぱいの状態で飛べということは、非常にこれはもう危険がある。こういうことを韓国飛行場当局諸君も心配し、JALの、日本航空諸君も心配しておる。しかも、神経は、いかに一晩休んだからといっても、疲れておる。しかし、石田航空士は、最悪の場合は全員を乗っけて行かなければならぬと思ったんでしょう。その晩の様子を聞きますというと、その晩は副操縦士放送に出て、石田機長は一番奥のところでもって休んでおるということでありました、翌日の朝も。であるから、石田機長としては、最悪の場合は全乗客を乗っけて行かざるを得ないだろうということで、からだを休めておったんだろうと思うんです。しかし、石田機長にしても、みんな、だれもその航空地図は持っていないんですからして――ただ、あとで聞きますというと、福岡飛行場で、小学校の韓国地図、小さい地図を、それをコピーしたものだけを差し入れがあっただけで、もちろん、日本航空にも北朝鮮地図はないわけなんです。いわゆる飛行地図はないわけです。定期航路がありませんから、ない。であるからして、京城平壌といったところで、あの小さい地図から見ると、二分か三分だけの違いなんですから、それですからして、おそらく石田機長も、めくら飛行をせざるを得ないというので、神経は十分に休ます必要があると思ったんでしょう。ゆっくり休んでおったようであります。  こういうことで、まあ私の判断としては、非常に疲れておること及び神経をおさめるということがまず最大の要件だということで、犯人が言うとおり――今度は第二回、第三回になりますというと、今度はチューインガムを入れてくれと。チューインガムをどうするのかしらぬが、チューインガムを入れてくれとか、少し運動不足だから胃腸がおかしいから胃腸薬も入れてくれとか、歯みがき・ブラシも入れてくれ、水も十分、かわいておるというようなことで、われわれから見るというと、まあまあこれはある意味においては平静な状態になったと、私としては非常に喜ばしい状態になったわけです。  で、そういう状態になってまいりましたので、――しかし、それにいたしましても、いろんな関係から、あまり長期にここに残すことはできません。しかも、犯人は一日も早く出せと言っておるのですから、したがって、私としては、判断としては限度があります。ここでもって持久戦をやるわけにはいかない、国際関係から見ても。そこで、私は、二日の昼に、もうやっぱり限度としては、最後の切り札を用いる以外に道はない。それに山村政務次官も、前からして、私が到着するなり、最悪の場合はひとつ私を出してほしいという申し入れがあった。私は、それに対しては、いかぬと、いまさようなことを口に出すべき時期ではない、まだ。機内の人心が安定しておらないということで、また翌朝もその申し入れがありましたが、それもいかぬと、 こう言って――ところが、そうすると金山大使が、それなら私が外交官で人命尊重をするのだから、私はどうですか、それはいかぬ、韓国大使がそんなばかなことはできない。いずれにせよ、私が、必要なときには最終の判断をすると、こういうことで、二日の夕刻、午後になりまして、四時前後でありましたが、――時間は、ああいう状態ですから、多少こまかい時間等については食い違いがあることは御了承願います。四時前後と思いますが、最終的に韓国当局も、おまえたち乗客をおろさないで出発できると思うのか、それならかってにしろというような、表面上は強いことばで言われた。金山大使も、もうこれだけ言っても、おまえたちはどうしてもわからないのか、もうこれ以上言うべきことはない、君らはほんとうに安全に送ってやるんだから、したがってよく考えろと、こういうことで一応打ち切ったわけであります。三時前後でありましょう。  そのあとで、私はいろいろ判断をしまして、いろいろの状態日本の国内状態なり、その他の関係各国、その他の機内の状況等から考えて、もう私は大体限度に来ておる、前から、午前中から、私は、きょうの午後もしくは明日の午前中をもって最後の時間とする、そのときに最終的な、腹に持っておる山村君と打ち合わせた、そのいわゆる決断を下す時期だ、こういうことを考えておった。そこで、五時ごろになりましてから山村政務次官を呼びまして、山村政務次官に対して、もう自分としてはあしたの朝でもいいと思うが、いろんな状況から考えて、きょうこれは決行するのが最大のチャンスだろうと思う、向こうもだいぶなごやかになってきておる、多少日本側を信用しようという気持ちになってきておる、であるから、はなはだ君に対して御苦労だが、わしが行けばいいかもしらぬけれども、ちょっと大臣の立場で行くとなればいろんな問題を起こすであろう、しかも、君は政府の責任を代行しておるという形で話をしておるのであるから、君のほうがかえって向こうも安心しやすいかもしらぬ、そこで、はなはだ自分としては断腸の思いである、自分の部下に対して、人道上の問題であるから危険はないとはいうようなものの、いかなることが起きるかわからぬ、その中に出すということは上司として忍びがたい、しかしながら百十数名の命をここで安全におろすことができれば――しかし、犯人はそれでよろしいと言うかどうかわからない、どうしても彼らがそれでもだめだと言うときには、やむを得ない、韓国政府日本側が正式にお願いをして、このまま立つような、それで安全策を講ずる以外に道はない、しかし、先へ行って着陸等のことで失敗があるかもしらぬけれども、これはやむを得ないということで、初めて山村政務次官に対してその交渉をさせることを承認を与えたわけです。  したがって、そのときに金山大使山村政務次官に言ったんだが、万一のことがあれば、これは運輸大臣の責任において処置したことであるから私が最終の責任を負うべきものと思っておると。山村政務次官が、いや、私がみずから要請し、また、政治家としてこれぐらいやることは私は当然のことだと思いますと、ことに運輸政務次官として航空行政をあずかっておるのであるからして、私としては、だれが、あるいは野党の方々であろうとだれであろうと、もう政治家としては当然このような行動に出ることは当然であって、決して私はそれがために他に責任をとってもらう、さような考えはもちろん持っておりません、幸いにして何人か何十人か、あるいは全員かが助かることが、私と交代することによってできれば、これに越したる喜びはありません、決して大臣に御迷惑はかけません――それは形式はそうであるが、実は私に責任がある、とにかくそれ以外の道はもうない、こうなったら。向こうは何にも要求していない、もうわれわれは日本政府韓国政府に対して要求すべきものは何もない、食事も十分にもらってある、ただわれわれを送ってくれ、これだけでありますから、ないと、こういうことで、やむを得ず最終的に……。山村政務次官の要請がありましたが、その決断、処置は私の責任であります。私の責任において、その旨を、山村次官金山大使にも、私の責任において決定をする、こういうことで決定をいたしました。  そこで、これはもう決して韓国政府相談の上でもありません。また、韓国政府から要請されたわけではない。日本政府としてやるべきことでありますから、日本政府として。ただ、了解は求めなくちゃならぬ、これは韓国政府の。で、直ちに私は韓国政府責任者のところに参りまして、公邸に参りまして、そうして、こういう事情で、もう私としては最終的な措置として事を行なう以外に道がない、結果としてどうなるか別問題にしても、ひとつ日本政府のとる措置に対して御了解を願いたい、こういうことで、三十分にわたって了解を求めまして、やむを得ないであろう、それは日本政府の責任においてやってもらいたいということで、その了承を得ました。そのうちに、実はすでにもう政務次官は向こうさんにその交渉を訴えて、交換のことを申し入れたわけであります。その結果が、御承知のように、君は山村政務次官と言っているけれども、われわれは知らぬからして、おまえが本物かどうかわからぬ――非常にああいう異常な神経を持っているから疑ぐり深いのでしょう、そんなものわからぬ。それなら証明する方法は何だといって山村君が聞いたら、社会党の阿部助哉代議士を知っておる、その人に首実験をさせるから、その人を日本からすぐ呼べ、こういう田宮かなにかの申し入れです。山村君が、そういったって、阿部代議士がはたして東京にいるのかどこにいるのかわからぬから、時間かかるかもしれない、いいから至急にその人をこっちに呼び寄せろ、こういうことで、このことに関しては皆さん承知のとおりであります。阿部代議士にもたいへんに御苦労かけまして、心から御礼を申し上げます。ということで、阿部代議士が参りまして、これは山村政務次官に間違いがないということを証明して、初めて、そうか、それなら山村政府代表と自分たちは具体的な相談をするということで、御承知のように、その間にいろいろなこまかい点がありましたけれども、全員をおろして、そして山村政務次官がかわりになって北朝鮮に行くことになったのであります。  その後の問題については、またいずれ山村君が皆さんに御説明する機会があろうと思いますけれども、全員をおろしましてから機体の整備をし、そうして御承知のように、スタートがいわゆる金浦飛行場でありますからして、金浦飛行場のいわゆるフライト・プランといいますか、飛行命令に従って、この旨はMAC委員会を通じ、北朝鮮側にも通告をし、そして出発をした。山村政務次官の帰ってからの報告によりますというと、たいへんなショックであって、飛行場におりましたときには、いわゆる飛行場状態が、石田機長の言によると、百分の一だけ安全があって、百分の九十九は危険な状態であったそうです。誘導も何もない。全くめくら飛行場にそのままおりざるを得なかったということでありましたが、無事おりることができて、北朝鮮側の寛大なる人道的な立場によって無事今日帰還することができたのであります。  今回の全体を通じまして、私は、韓国政府及び北朝鮮も含めましてでありまするが、特に私の知っておる範囲におきましては、韓国政府人道的立場に立って、食事の世話から医薬の世話、あるいはそうした嗜好品に至るまで、しかも首脳部諸君がほとんど三日間にわたって徹夜の状態で、いわゆる人道的立場からこの問題の解決に協力してくださった状態は、ほんとうに心から感謝にたえません。北朝鮮もまた、人道的立場によって関係者に対し即座に帰還の方法をとられたことに対して、私は心から御礼を申し上げます。国内に、私たちの人が足りませんために、報道関係の人が不十分であったために、刻々と事実を皆さんに十分にお伝えすることができなかった。まあ、ああいうような非常にあり得べからざる大事件のものでありますからして、現地の大使諸君をはじめとして日本航空関係者及び韓国政府人々ほんとうに一致団結してこの事件の処理に当たってくれましたが、ただ報道の面において、私が経験者でありながらも、ああいうような大事件になりますというと、非常なたくさんの人を要する。そのために、刻々として状況皆さんのところにお伝えできなかった、その点の不手ぎわについては心からおわびを申し上げます。ただ、私としては、百余名の人命をいかにして安全に措置するかということに最大の主眼を置き、しかも、それにもいろいろの制約がある中で、いかにすべきかということに苦心惨たんを重ねた。その三日間というものは一睡する余地も時間もなかった。このとおり疲れておりますので、声も不十分であり、皆さんに十分のことを説明できないことを心からおわびを申し上げます。  ただ、この問題を通じて、私は、何としてもこのようなハイジャックを防ぐ方法を、ほんとうに国会の皆さんの挙党一致の精神のもとに、法的にも整備をしてもらいたい。また、飛行機会社も金銭を離れて、これらのいわゆるハイジャックに備える道も考えてもらいたい。われわれ運輸当局も最善の措置を講じて、今後再びこのようなことがないようにいたしたい、かように考えております。また、いろいろの意味において、国交上から考えましても、この問題がいろんな問題を含んでおりまするが、結果としては、関係各国の、私は、人道という、人道上の問題というものがいかに大事であるかということにおいて深い意義を持っておるものではないであろうか、この点は私の所管でありませんので詳しくは申し上げません。ほんとうに国会の皆さん全員一致の御協力によっての激励、御支援、この結果が――とにかく、まあまあ人命を全部安全に救出することができましたことは、われわれの努力ではありません、皆さんの心強い御支援、御協力の結果でありまして、その点心から御礼申し上げまして、概略の報告にかえる次第であります。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  8. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 三木君。
  9. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 今回の乗っ取り事件に対しましては、山村次官あるいは石田機長乗客等が無事に帰国されたことに対して、私は心から喜ぶものであります。また、特にこの問題に当たられた関係当局の努力に対して敬意を表するものでありますが、しかしながら、事故の再発防止あるいはまた治安、外交面において若干の疑問を残した点があるのじゃないか、この問題について私は関係大臣に若干の質問を申し上げたいと思うわけであります。  最初に、官房長官にお伺いしたいと思うわけでありますが、今回のこの問題に対して、外務省あるいは運輸省あるいは防衛庁、各関係庁との連絡というか、指揮権というか、このコントロールが非常に私は弱かったのじゃないか、こういう問題を考えるわけであります。特に、あわよくば国内で解決できる問題が国際的にまで波及した、こういうふうに私は考えるわけでありますが、この問題に対してどうお考えになるか。
  10. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) ちょうど事件が私どもの耳に入りましたのが先週の火曜日の九時からの閣議直前でございまして、閣議で運輸大臣から御報告がありまして、閣議後直ちに、運輸大臣外務大臣を中心としまして、防衛庁長官、国家公安委員長等、直接間接関係のありそうな閣僚の方々にお寄りをいただいて、そうして時々適切な措置をとらなければならない――と申しますのは、その閣議で総理大臣が発言をされて、これは異常な事件である、しかし、乗客乗務員の救出は非常にむずかしいようだが、最善を尽くしてもらいたい、という強い指示がございました。これを受けましてそういうことをいたしました。  自後、国会の御審議もあるものでございますから、大臣を一々長時間、そう、なにしていただくということもできませんし、そこで、右に申した各事務当局の首脳者と私が直接情報を伺いながら――いろいろな情報が乱れ飛んでまいりまして、御承知のとおりでございます。その情報を、情勢を、冷静に受けとめながら、そしてまあ、とにかく何と申しましても人命の救出第一であると。金浦飛行場に着いたという報を受けてすぐ山村次官一行を急派する、また、当委員会にも御報告、了承を求めましたように、総括質疑の最終日でございましたけれども、橋本大臣政府代表として金浦に行っていただくというようなことをいたしました。まあごらんになっておりますと、何か対策本部でも設けてやっておればというようなことであろうかと思いますけれども、 これが事国内だけの問題でございませんもんですから、そういう点を考慮して、しかし、実質的に各関係省庁の機能をフルに働かしていただくためには私はまあ最善の努力をいたしたつもりでございます。特に外務省は、二晩ぐらい、おそらく関係の向き向きは全く不眠不休徹宵して機能をあげていただいたと思って、私としては、政府機能としては最善を――まあとにかく、あとあとではごさいますけれども、追っかけながらも、最善を尽くし得たんじゃなかろうかと……。いろいろまた、ごらんになりますと、ああもあれば、こうもあればという御指摘等もございましょうけれども、とにかく、総理大臣が指示しておりますように、乗客乗務員の身になってやってもらいたいということには、専心やってみたつもりでございます。
  11. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 外務大臣にお伺いしますが、今回の事件を通して特に北朝鮮あるいは韓国の誠意を十分感じた、こう具体的に申されておるわけでありますが、今後これが両国に、北朝鮮あるいは韓国に対して外交面でどういうふうに前進させていこうか、どういうふうに考えていらっしゃるか、この点についてひとつ……。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今回の事件については御報告を累次いたしておりますように、韓国政府に非常な世話になりましたし、また、北鮮側におきましても、こちらの、人道的な立場に立って人命保護に徹して理解と協力を示してもらいたいということについて、事実において、結果において、この点をよく理解し協力してくれたということについて、ほんとうに感謝をいたしておりますわけでございます。しかし、本件経過につきましては、いろいろと教えられることも多かったので、それらの点につきまして、ひとつ冷静に、十分慎重に、今後考えなければならぬところは十分考えてまいりたいと思っております。  問題は、こうしたハイジャッキングという事件についてどう考え、どう対処すべきであるかということと、それと、それ以外の、たとえば連絡交通の方法というようなことと、まあひとつ、関連はもちろんございますけれども、分けて、ただいま申しましたように、今回の経験というものをいろいろの角度から慎重に真剣に十分考えてまいりたいと、かような気持ちで、これから鋭意検討してまいりたいと思っております。
  13. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ、日本の周辺を取り巻く国々は分裂国家があるわけでありますけれども、この問題に対して、いまのと関連しますけれども、日本の今後の外交姿勢として、こういう分裂国家等に対して前向きの姿勢をとられると思いますが、どういうふうな方途でやっていかれるか、これについてお伺いしたい。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまもちょっと申しましたように、今回の事件については、人命の保護、人道の上に立っての措置について、幸いにして北鮮側の理解と協力を示してもらった、こういうふうに私考えております。  それから北鮮側とのいろいろの連絡等につきましては、現状におきましては、今回の事件についても、われわれとしては、なし得る最大の努力をいたしたつもりでございますけれども、やはり、与えられている条件が条件でございますから、その間にいろいろ至らぬところや行き違いや、あるいはミスもあったことと思いますけれども、そういったような点について、今後こうした事件が起こることは何としてもまず未然に予防しなければならないと思いますけれども、今回のこういったような点についての経験、実績等については十分検討してまいらなければならないと思います。  ただ、私は、今回こういう事件ほんとうに突発的に起こったからといって、そこで百八十度に外交姿勢を転換するのだというふうに考えるのには、あまりにも国際情勢という現実の姿というものはきびしいものであるということも、またわれわれに貴重な経験をさせたものであると考えざるを得ないのでございまして、これは、今回の事件があったからといって、そこで直ちに外交政策の転換というようなことを軽々に考えるのは、政府としては慎重でなければならない、冷静に私は対処しなければならないことである、かように存じております。したがいまして、いまこの瞬間において、どういうことをどういうふうに転換するのかというようなお尋ねに対しましては、私は、慎重に冷静にこれから検討すべきものである、これにはまたいろいろの複雑な要件その他を十分考慮の中に入れていかなければ国益を守り得ぬではないか、かように考えておる次第でございます。
  15. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 今回の事件を通して、まあ特に、金浦空港へ着陸した、こういう問題について、新聞紙上等においても、また国民の間にも、非常に疑問視をされているわけでありますが、特にこの日韓米の共同作戦、あるいはまた、すなわち日米共同声明を実地に証明した一つの実例じゃないかと、こういうふうにも言われているわけでありますが、この金浦着陸に事前計画があったのかどうか。あるいはまた、「よど」号がなぜ北朝鮮からUターンをした、そうして金浦空港に着陸したか、こういう問題に対しては非常に私たちも理解に苦しむわけでありますが、この問題に対して、福岡から飛び立ったあとに、あるいはその前後において、外務省としては、どういうふうに関係当局等において手を打ったかどうか、この点について伺いたいと思います。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点につきましては、すでに先週の土曜日までの御報告の中に私率直に御報告をいたしておるつもりでございますけれども、外務省といたしましては、板付から、あるいはその前に、板付に着く前からもそうでございますが、この成り行きが、どういうふうにこの飛行機行動をとるのかということにつきましては、予想されるいろいろの状況を考えまして、場合によりますれば、これはいろいろの点において各国に要請やお願いをしなければならないということで十分の備えをいたしたわけでございます。  たとえば、先ほど官房長官からも説明がありましたが、ちょうど当日は九時から定例の閣議があったわけでございますが、閣議と同時に私は、この事件の起こったことを知って、外務省におきましては緊急の幹部連絡会議を開いて、そしてハイジャックですから平壌に進路をとることが考えられる、そういうことで、そういう際における関係国の協力ということを考えつつこの成り行きを非常に心配して見詰めておったわけでございます。  板付に着きましてから、しばらく板付でとまっておりましたことは事実でございますから、あるいはそこで解決をするのではないかという期待を持って、そうすればこれでわれわれとしては安心ができると考えつつ、しかし同時に、それからどういうふうな状況が展開されるかということを心配しながら見守っておったわけでございます。  ところが、板付から発進をした。そうすれば、これは平壌を目ざしているということは、その公算はきわめて大きいわけでございますから、平壌に行くとすれば、これは国交のない間柄の国でございますから、前々から御説明申しておりますように、政府としては、ソ連の政府とかあるいは赤十字とか、あるいはまた軍事休戦委員会の線を使わせてもらうことも一つの便宜の措置であるというようなことを考えまして、それぞれの手配をいたしつつあったわけでございます。  ところが、金浦に着陸をしたということで、今度は金浦に着いたというその与えられた条件のもとにおいてその後の措置を、各関係政府――関係政府というのは、要請をいたさなければならないと考えられる各国の政府、あるいは赤十字というような別の機関、あるいはMACと通称されておりますが、休戦委員会当局とか、そういうところに急遽また、その金浦に着いたということですから、それまで手配をしつつあったことをこれを取りやめて、そして今度は金浦に着いたその状態において、それからどういうふうになるだろうかということについていろいろの措置を検討しておりまして、それからさらに金浦から平壌に向かうということがいよいよ決定的になり、そして山村政務次官がこれに搭乗するということになりましたので、最終的にはいよいよ発進をするという時点において、それに適切なる処置をとるというふうに、そのときの状況によりましてなし得る最大の私どもとしては努力をいたしてまいったと。これは、従来、土曜日までの状況において、そのときそのときにおいて、ものによりましては機微な点もございますから、その当該の時点において正確にお伝えしなかったこともございますし、また、そういう点につきましては、先ほど申しましたように、事態が事態でございますから、われわれとしてもいろいろの点で至らぬことがあったこともあろうかと思いますけれども、まあわれわれ自身といたしましては、与えられた条件のもとにおいての最善の措置、そして与えられる条件ということについて、人命の安全ということにどうやったらいいかということにつきまして、これは考え得る最善の措置をとったという次第でございます。
  17. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 公安委員長に伺いますが、福岡の県警が給油員に変装して、そうして機長に北鮮へ飛ぶのをやめろと、こういうふうな指示をしたという話が報道されているわけでありますが、この事実は確かでしょうか。
  18. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申します。  そういう事実は全くございません。
  19. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸大臣に伺いますが、この板付の飛行場の問題でありますが、管制塔の指揮権は米軍にあると、こういうふうに私は聞いておるわけでありますけれども、板付の飛行場のそのコントロールタワーの指揮権は米軍にあると、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  20. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 指揮権は米軍にあります。
  21. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、金浦の空港のコントロールタワーの指揮権も米軍にあると、こういうふうになりますと、今回のこの福岡での六時間の待機中に、ある場合には、いろいろな報道によりますと、日航からその米軍基地のほうに連絡をとったと、こういうふうにいわれているわけでありますけれども、この日航から米軍に依頼した事実はございますか。
  22. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私、はっきりその金浦の空港の指揮権が米軍にあるかどうかはわかりませんが、私のおりました経験から見ますというと、これは韓国軍にあるようであります。一人も米軍の兵士はおりませんでした。したがって、韓国政府韓国軍、まあ一緒でありましょうが、それの管制下にあったようであります。  なお、米軍からそのような連絡があったかどうかは、機長からはそのようなことを聞いておりません。
  23. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 その問題ではなしに、日航から――こちらの日本のほうから米軍に依頼をしたことはございますか。
  24. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) そのような事実はありません。
  25. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、この福岡日航機が給油中に、その日航の本部長あるいは長野日航運航基準部長が、板付の米軍基地を通じて進路妨害をしてくれとかあるいはいろいろなことを話をされたと、こういうふうに、あるいはまた、無線非常用の一二一・五メガサイクルですね、これに合わすようにということを機長に指示をしておる。この一二一・五メガサイクルというのは大体非常発信用で、連絡用で、大体パイロットとして考えてみれば、常識的に連絡がつくような形になっているそうでありますけれども、この点が非常に不審を抱く点が私は考えられるわけでありますけれども、こういう問題についてはどうお考えになりますか。
  26. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私、技術上の問題については不正確でありますから、航空局長からその点はお答えさせます。
  27. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) お答え申し上げます。  一二四・一メガサイクルといいますのは、福岡の管制部で通常航空機と連絡する周波数でございます。  なお先ほどの、日航と米軍との関係についての御質問がございましたが、まだ私のほうで確認中でございますけれども、聞くところによりますと、日本航空は米軍を通じまして韓国、北鮮等へ日航機が参りました際には、地上から撃たないでくれというような依頼をしておるやに聞いております。
  28. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 防衛庁長官に伺いますが、防衛庁長官として、米軍にこの福岡から飛び立つことについて何か連絡をとったことばございませんでしょうか。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 福岡日航機が滞留しておりますときに、ひょっとすると、北鮮のほうへ飛ぶかもしれない、その際には撃墜とか、事故の起きないように米軍に指示してくれ、そういうことは念のために申しておきました。それ以外は何もございません。
  30. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、福岡を立って一時間か一時間半ぐらいで金浦到着する、こういうコースでありますと、三分も待たずですか、何か空幕のほうにどんどん連絡が入っておったと、こういう話を聞くわけでありますけれども、その件については、防衛庁長官はどういうふうに受け取られますか。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 質問の内容がよくわからなかったのですが、いつ、どういう連絡がこちらにあったかというお話でしょうか。
  32. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうです。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう連絡はないのです。いま申し上げましたように、こちらとしまして、もし万一北鮮のほうへ向かった場合に、撃墜とか、事故がないように頼むと、そういうことを米軍にわれわれは依頼いたしました。それ以外米軍から公式にああだこうだという通報はございません。
  34. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、防衛庁内でいろいろ怪情報が飛びかった、あるいは米軍から対空砲火の連絡等も航空自衛隊のほうでキャッチしておると、こういうふうに私たちは聞いているわけですけれども、この問題についてはどうですか。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは米軍から断片的な情報が、不確認と申しますか、未確認の情報として入ってきておりました。しかし、われわれはそれを、正式の情報ではございませんから、未確認の不確定な情報として参考にしておった程度でございます。
  36. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 その情報はどこへ入るのですか。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こちらの航空幕僚監部のほうへ入ってまいります。
  38. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、どうも私も納得はできないのですけれども、日本海上空まで自衛隊機がついていった。それから別れたとたん三分も待たずして、今度は韓国飛行機が「よど」号を誘導した、そうして空港にはもう擬装兵が、赤旗が立ったり、いろいろな準備が行なわれておった、こういうふうな話を私は聞いておるわけでありますけれども、こうしますと、ただ機長の帰ってきた記者会見等の報告を聞きますと、機長判断でそちらに行ったと、そういうふうにも言われておるわけでありますけれども、どうもここらあたりが私たちは納得できない。こういう問題についてどうしてもやはり日韓米の非常に緊急連絡というか、密接な連絡がとられているのじゃないかと、こういうふうにもうかがえるわけでありますけれども、防衛庁としては、この問題に対してはそれ以上のことは、いろいろ連絡等は受けておりませんでしょうか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれのほうも、百数名にわたる大事なお客さんの人命を預かっておるわけでありますから、政府としても最大限の措置をしなければならぬ状態にあったと思います。そこでわれわれは、米軍のほうに万一でも撃墜とか、そういう事故が起きないようにこちらから頼んでおきましたが、おそらく米軍のほうも日本側のそういう心配を知っていてくれて、向こうが把握した情報を断片的なものにせよ、こちらに念のために通報してくれたんじゃないかと私は思います。ああいうような百数名にわたるような大事なお客さんの運命がどうなるかというときには、やはり米軍であろうが、韓国軍であろうが、あるいは北鮮であろうが、人命尊重という意味から最大限の努力をすべきは政府として当然の責任であると私は思います。したがいまして、そういう場合における連絡通報というものは、できる限り人命を救うためにやるべきである、やらなければ政府は責任を回避しておると、そういうふうに私は思います。
  40. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、外務大臣に伺いますが、この問題は、機長判断でもう金浦に着陸をしたと、こう理解をせざるを得ないと思うのですけれども、これはどうでしょうか。
  41. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、先ほど申しましたように、との飛行機がどういうふうな航路をたどってどういうふうに行くかという行動については、的確に判断ができませんでしたから、したがって、私どもの最初の判断は、これはもう平壌に飛んでいっているのであろうということで、それに対応して何としても人命を確保、安全をはからなければならない。したがって、その航行が安全であることについてなし得る最大の備えといいますか、お願いを各方面にいたしたわけでございます。それが金浦に着いたということによって、それからその時点においては、金浦に着いてからこれからどうしたらいいかということに、また急遽お願いの方法、要請の方法等も即時切りかえるというようなことで、非常にわれわれといたしましても、その間におきましてはいろいろと苦労があったわけでございますけれども、先ほど来申しておりますように、この飛行機がどこに着くかというようなことについては、私どもとしては、これは捕捉することが困難であったということは率直に申し上げざるを得ないと思います。
  42. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ今回のこの問題を通しまして、やはり自衛隊なりあるいは日本国においても、いろいろな情報のキャッチが非常におそかった、あるいは怪情報にまどわされた、こういうような例がいろいろ言われているわけでありますけれども、今後の問題としまして、日米安保条約の運営等の問題に対しても、こういう情報の判断を誤った、非常に危険を感ずるわけでありますけれども、この情報のキャッチといいますか、特に航空の情報をキャッチするという、こういう問題に対しては、自衛隊としてどういうふうな体制になっているでしょうか。
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから私は、主体的な情報機能を強化して、自分で信認できる情報をできるだけ獲得して、日本の自主性を高めなければいけないということを着任以来言っているところでございます。今回のような事件を反省してみまして、やはり情報に振り回されるという危険性が非常に大きいように思いました。したがって、自分で自主的な情報を持たなければ自主的な防衛行動はできない、相手に引きずり回されてしまう、そういうことを非常に痛感したのでございまして、法の範囲内においてできるだけ自主的情報を把握できるような体系が専守防衛の任務を持っておる日本の自衛隊の場合は必要である、このように感じた次第であります。
  44. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 山村運輸次官に伺おうと思ったのですが、いませんね。  それでは、運輸大臣官房長官、どちらかにお願いしたいと思うのですが、運輸次官が帰られて、平壌で記者会行が行なわれた、二回行なわれたと、こういうふうに私は伺っているわけでありますけれども、この内容等についてはお聞きになっているでしょうか。
  45. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) これはひとつ、私も、非常に疲れて帰ってきておりますから、事こまかにまだ微妙な点は伺っておりませんけれども、先ほどちょっと……。それが記者会見なのか、当局の中に新聞記者がおられて会ったものか、とにかくあそこには日本の特派員は赤旗の特派員が一人おられる。それはその赤旗の特派員は、乗務員とは会見されたようですけれども、山村君とは会見されていない。どうもまだ彼も頭の整理が十分ついていないんじゃないかと思いますから、ある適当な時期に直接お聞きいただいたら、私も伺いたいと思っおりますけれど、どうぞそういうふうにお願いしたい。
  46. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸大臣
  47. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 山村政務次官から記者会見があったということは聞いておりますが、詳しいことはまだ聞いておりません。非常にテレビ会談等その他に引っぱり回されておりまして、ゆっくり会う時間がありませんものですから、ただ記者会見はあったと、しかし簡単なことのような話であります。なお、これは参考でありますが、先ほどどうして金浦飛行場におりたかという事情は私も詳しいことはわかりませんが、ただ私が到着しましたときに、空軍の幹部当局もそれから金山大使も、飛行機がおりてから初めて通知を知って、十分前後おくれて飛行機に来たということを韓国政府空軍幹部も言って、金山大使もそのように言っておりました。その点だけを参考のために申し上げます。
  48. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは、もうひとつ防衛庁長官に伺っておきますが、今回の乗っ取り事件の情報を警視庁から連絡があったと思うんですけれども、そのように私は伺っているんですが、こういう問題に対する自衛隊の緊急発進の指示ですね、あるいはまた、その法的根拠はどういうふうにになっておるのか、それを伺いたと思います。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回は日航機からの緊急発進に対しまして、直ちに佐渡のレーダーともう一ヵ所の大滝根山のレーダーがキャッチしまして、直ちにそれが緊急手配となりまして、七時五十一分でありましたか、たしか十分以内に小松の飛行場からF86が二機飛び立ちまして、それから直ちに築城の飛行場並びに新田原の飛行場からF86並びにF104が飛び立ちまして、それぞれエスコートを受け継いでまいりました。それから日航機福岡に着きましてからは上空で二機旋回しておりましたし、それから航空当局からの要請がありまして、日航機が給油している間に滑走路にT33及びもう一機をつけておいてくれと、飛び立てないように、そういうお話が航空長からありましたので飛行機滑走路につけておきました。その後、犯人機長との話ができて、滑走路飛行機を除けば二十数名の婦人や病人を出すという、そういうことができまして、滑走路飛行機をのけてくれというので滑走路飛行機をのけました。それから、飛行機が飛び立ちましてから同じくF86で追尾いたしまして、防空識別線のところまで追尾して、それから引き返したというのが実情でございます。これは緊急発進を受けますと、直ちに航空総隊にその緊急発進が参りまして、各飛行場に手配するという準備になっておるわけでございます。
  50. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 運輸大臣に伺いますが、運輸省としてですね、このような事件に対して今後具体的にどういうふうに対処されていくか、今後航空法の改正等も、あるいはまた、この間のいろんな閣議ですか、話しになったような、機長をはじめ乗務員に司法警察権を与える機関を新設すると、こういうような話も私は伺っておるんですが、具体的にどのようにこれを取り行なっていこうとされているんでしょう。
  51. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 事件が起きました直後、直ちに官房長官を中心にして、運輸大臣、国家公安委員長、法務大臣関係者で協議をいたしまして、直ちに緊急として行なえるもの、すなわち飛行場における荷物の検査及び不審なる者に対しての監視といいますか、さようなものについてひとつ警察側で十分なる手配を直ちにしてもらいたい。また飛行機に対しては、日航その他の飛行関係会社に対して、いわゆる飛行機内の十分なる予防措置、一つはまあ乗客等にする注意を喚起すると同時に、操縦室のドア等については厳重なる遮断の方法を考えてもらいたい、こういうような緊急措置を関係方面に直ちに通達をいたしまして、それを励行して、実施に移っておるわけであります。  ただ、飛行会社関係から言いますれば、何といっても国内飛行になりますというと、離陸五分前にお客さんが来て乗るという状態で、なかなかこまかい点の、いわゆるいまわれわれが指示したような小荷物の検査とかなんかまではなかなかできにくいのみならず、人権の問題もあります。日本では身体検査もできない、かようなことがありまして、もちろんできるだけの措置を講ずるけれども、非常にむずかしい。しかし、できるだけこれはやらなくちゃいかぬので、機械等によっての探知、探知機等の、これについても急速にこれが可能なものから始めろ、同時にまた、そういうものの開発に対して惜しみなく金も使って全力を注げ、こういうことで、その措置を目下関係会社は講じつつあります。これは緊急問題であります。ただ、いま御質問がありましたように、現在この飛行機乗っ取りについて、日本は国内法においても十分でありません。また、国際条約も、東京条約がありますが、まだこれに批准を与えておりません。これは急速にこの批准を完了すべきものでありまするが、ただ、この条約は参加しておる条約でありませんというともちろん効果はありませんが、それにしてももちろんこれは急ぐ必要があると思います。それから国内法として、整備はいわゆる航空法で整備するのがいいか、あるいは刑法で整備するほうがいいか、あるいはこれに関する単独方法をつくるほうがいいか、緊急に検討をさしておりまするが、私は、とりあえず多少こまかい点までは及ばないにしても、このような事件が起きたのでありますからして、野党各位の御協力を得て、いわゆる乗っ取り事件に対する法律だけは単独でも至急にやってもらいたい。こまかい点まで刑法等いじりますというと、なかなか広範になって、かえって時間を要することになりましょうし、航空法によりましてもまたいろいろな点まで触れてまいらなければならぬというめんどうがありますからして、とにかくこの国会でひとつできれば、政府提案でなかなかめんどうな点がありますれば、これは与野党一致でこのような問題に対しては厳重な処罰と、そうして機長に対する警察権の付与及び航空公安官といいますか、そういう者を私は乗せる義務も与えていいんじゃないか。また、航空会社としては費用がかかることでありますけれども、人命尊重にはかえがたい。でありますからして、やはり鉄道にありますような公安官と同じようなものを、いまや十人や二十人の人を運んでおるんじゃないんであります。国内航空としても百五十人前後、国際航空に至れば、ジャンボのごときはもう三百五十がもうすぐ来年は五百人の人を運ぶんです。そういう状態でありますからして、機長最大限のいわゆる権能を、警察権を与えると同時に、やはり飛行機の公安官というものをやっぱり法律で規定してほしい。そうして万全のかまえをしてなおかつ起きる場合は、一種の不可抗力でありますけれども、現在の状態では全くこれは心配であります。しかもこれは緊急を要する。緊急を要するためにはいろんな問題がありましょうけれども、最初、いわゆるこまかい問題はお互いにがまんをして、まず大綱をきめてもらいたい、この二つの条項をきめて、そうしていやしくも乗客が安心して乗れる状態、これはもうもちろん国際飛行機ばかりじゃなく、国内飛行機に関してもこれを適用する、こういうような措置をほんとうに急速にやってもらう必要を私ば心から痛感いたします。どうかその点について御支援と御協力を心からお願い申し上げます。
  52. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私もその航空保安官制度を設置するということは非常に必要じゃないかと思うのです。海上保安官あるいは鉄道保安官があるように、やはり航空保安官の制度も設置してはどうかと、こういうふうに私は考えるわけであります。これは意見として申し上げておきます。  それから、乗客に対する今回の問題でありますけれども、補償の問題ですね、あるいはまた、傷害保険の問題等については、どういうようにこれは考えているでしょうか、運輸大臣
  53. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま関係方面と検討中でありますが、なお検討中のことについて答弁申し上げる必要があれば、航空局長から答弁させます。
  54. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) お客さまに対する補償につきましては、もしお出しするならばお見舞いということになるかと思いますが、これは国際慣例、あるいは今回の事態の内容等十分調査の上、目下航空会社当局と検討中でございます。
  55. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 公安委員長に二、三伺いますが、佐藤総理が、事件が終わった直後ですか、治安の一元化と、こういうことで指示をされたと聞いておるわけでありますが、公安委員長としては、この一元化の問題に対してどのように対処されていく予定でしょうか。
  56. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  現在、治安関係機関は相互に緊密な連携のもとに活動しているので、今後とも有機的な連携体制の確保につとめ、治安の万全を期してまいりたいと思います。
  57. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そのようなことはわかるのですが、具体的にどういうふうにやっていくか、こういう問題について、やはりもう少し明確に私たちに教えていただきたい。
  58. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) それぞれの守備範囲の限界がはっきりしない、そのことを明確にするために関係省庁とも十分打ち合わせて、実質的な一元化の方向を発見したいと思います。
  59. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは今回の万博ともいろいろ関係がありますが、万博で治安当局の手が非常に手薄になっている。ちょうど三十一日もスボボダ大統領ですか、こういう賓客が来ている。こういう場合に間隙をぬって行なわれた事件、こうも考えられるわけでありますが、こういう万博等で治安当局の手薄になっている、こういう問題に対して、今後どういうふうな対策の手が打たれておるかどうか。
  60. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 万博の関係で手薄になったすきをねらわれたのじゃないかというふうな意味合いのお尋ねかと思います。そういうことはございません。万博治安関係約三千名ばかり用意しておりますけれども、これは関西の府県警備関係を動員いたしまして整備しておるのでありまして、実際上は東京の警視庁管下の警備勢力は温存しておりますから、そのゆえに間隙をつかれてどうだという懸念はございません。
  61. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この赤軍派については、常々当局としても状況は握っておったのじゃないかと思う。聞くところによると、当日横浜で下車したことなんかもいろいろ状況をキャッチされておった、こういうふうにも漏れ伺っておるわけでありますが、赤軍派に対する公安委員長としての考え方ですね。あるいはまた、この事件に対する手落ちの問題、あるいは今後の検討すべき問題、こういう問題について伺いたいと思います。
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 赤軍派の動向につきましては、かねて厳重な警戒をいたしておりますが、今度の事件につながる意味におきましては、キャッチできなかったことを遺憾に存じております。
  63. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 法務大臣に伺いますが、このハイジャック防止処置として、乗っ取り罪に対する刑法の改正が用意をされていると、このように伺っておりますが、どのように立法処置を考えていらっしゃるのか、具体的にお願いしたいと思います。
  64. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 航空機の乗っ取りの防止、あるいはこれに対する刑罰、その関係のことは、私は四日のこの委員会鈴木委員の御質問に対してある程度お答えをしたのでございますが、私どもとしては、純粋な刑事犯として、これを刑法犯として捕えると、したがって、今回私どもが国会側の御理解を得てできたら提出いたしたいと、かように考えておるのには、行政関係等の規定は一切排除しまして、純粋な刑事罰としてこれを捕えると、こういうことにしておりまして、これは実は前々から法制審議会等においても考究中でありますが、今回はこれらの成立を待ついとまがないと、こういう観点からして、われわれとしましては、単行の法律として、この航空機奪取の問題を直蔵簡明にひとつ規定をすると、こういうつもりでございます。これらの問題につきましては、国会側とも十分ひとつ御協議を申し上げ、事前にも内容等も御相談いたして、そして何とかひとつこれの解決をはかりたい。したがって、これらの問題については、どうしても未遂罪等も処罰をしなければならぬと思いまするし、また、従前検討している案では無期ということが最高の罰としておりますが、この問題によって、たとえば死者を出したと、こういうふうな場合には、死刑等の問題も考えざるを得ないのじゃないかと、こういうことでただいま法務局において法案を準備いたしておりまして、これらができ次第、皆さんのほうともよくひとつお打ち合わせを申し上げたい、かように考えております。
  65. 鈴木強

    鈴木強君 関連。関連ですから四つばかりまとめてお尋ねしますので、お答えをいただきたいと思います。  第一点は、いまも質問がありましたが、赤軍派の事前における破壊行為ですね、それと今度の計画を察知できなかったことに対して公安委員長にお尋ねしますが、この赤軍派というのは、御承知のように、大菩薩峠で悪いたくらみをしまして、われわれは非常に警戒をしておったわけです。警察庁のほうもこの赤軍派の暴力学生については、格別の配慮をしていただいているということも新聞等で見ておりましたから、まさかこういう飛行機の乗っ取りということが起きるとは思わなかったわけです。そういうこの一連の暴力学生の平素における監視といいますか、マーク、こういうものに対して落ち度はなかったのでしょうか。落ち度がなかったということはなかったでしょうか、そういう点を非常に私は疑問に思うから伺います。  もう一つは、飛行機羽田を出発しましてから福岡に着陸をしたんですが、その際、これは新聞にもはっきり書いてあるから伺いますが、警察庁が福岡県警に対して四つの指示をした。その一つは、犯人説得して乗客をおろすということ。それからその時間をかせぐために給油に時間をかける。それから飛行機が飛び立てないようにタイヤの空気を抜くなど手を打つ。もう一つは、この対策が失敗したら、離陸するというような事態になったら韓国に着陸させるように何らかの方法で機長に連絡をする。こういうことが指示されたというんですが、この事実はどうか。  それから第二点は、福岡金浦金浦平壌間の運航についてですけれども、どうもさっきからのお話を聞いてわかりません。それで、私は防衛庁あるいは警察庁、外務省、運輸省、四つが要するにそれぞれ動いておったような気もするので、こういう点は将来この問題については窓口を一本にしてやったほうがいいと思いますけれども、とっさのことでしたから、それぞれできるところからやったと思います。そういうことで、多少食い違いがあると思うのですが、聞いておりますと、防衛庁も外務省も運輸省も、どこでもそういう連絡はしない。別に金浦へ着けという連絡はしなかった、こういうことが明らかになりました。  それで、きのう帰ってきました機長の話を聞きますと、これは江崎副操縦士が言っておるのですけれども、三十一日の午後二時五分に福岡を立って、北緯三十九度線の日本海上で西に方向を変えた。そのときに韓国のインターセプトがあった。これははっきり江崎副操縦士が言っております。この飛行機は米国製で、マークも米国機によく似ていた、私は韓国空軍であろうと予想した、こう江崎さんは言っているわけですね。そこで江崎さんは問題の一二一・五メガサイクルで地上局を呼んだ。そしたら地上局から平壌は一三一・四メガサイクルだからこれでコンタクトしろ、こういう無線をキャッチした、江崎さんが。それで一三一・四メガサイクルに周波数を変えて交信したところが、こちらは平壌空港だ、誘導する、こういう連絡を受けて、それ以来「よど」号はその平壌空港だという一三一・四メガサイクルの周波数によって誘導されているわけですね。だからして、これを出したのは明らかに金浦飛行場であったこともこれは間違いないと思うのです。  ですから、結論的にいうと、防衛庁も米軍に対して、この「よど」号が北に向かった場合に心配があるから、航路の安全についてはひとつ頼むということを言ったそうですから、そこから韓国のほうにどう米軍から伝わったか。そこらが問題の焦点になって、やや明確になったように私は思うのであります。しかし、この一三一・四メガサイクルに切りかえて、エマージェンシー・フリケンシーという異常事態に使う周波数に変えたということも非常に私は問題だと思います。こういうことについて、もう少し御調査も願い、対策も立ててもらいたいと思いますが、そこのところに問題点が明らかになったと思う。  そこでこの問題は皆さん、よく知らぬというのですね。わからない。したがって、私はぜひ委員長にもお願いしたいのですが、午後われわれはさらにこの問題を掘り下げて質問をしたいと思いますから、日航の運航部長さんを参考人としてぜひ呼んでいただくように、お願いしたいと思います。そうしませんと、政府当局でよくわからぬと思いますから、そのことはぜひ呼んでいただいて、今後このことは再びないと思いますけれども、あっちゃいかぬと思いますけれども、最初のことでもありましたし、問題がそこらにあって、結局平壌に直接福岡から行ったほうが、平壌が朝鮮民主主義人民共和国も保証しておったわけですから、福岡から直接行ったほうがなおもっと早く救出できたかどうかという点ですね。金浦へおりたために数日間の時間がかかってしまってなおかつあとに問題を残した、こういうことの判断になるわけですから、ここはどうしても明らかにしておく必要があると思うので、私は運航部長さんにもぜひ来ていただくように委員長のお取り計らいを願いたいと思います。  それからもう一つ金浦から平壌に向かう場合に、板門店の休戦委員会を通じて、朝鮮民主主義人民共和国は、飛行航路を指示してきたということが言われております。これは金浦を午後六時五分に立って平壌に七時十一分に着いた。さっき運輸大臣のお話のようにたいへん危険な中で、日が暮れた中で着陸をされた。これは私は機長からもテレビで聞きました。しかし、板門店の軍事休戦委員会で三日の朝、西のほうを回ってきなさい、――これはもう新聞にはっきり書いてありますね。北朝鮮の指示は、金浦から西の方向に進んで黄海に出て、黄海から真北に進路をとって、今度はまた右に向いて平壌におりろと、こういう指示までしてきておったというのですが、この指示は午前十時半に金浦の国際空港に届いておると、にもかかわらず西を回らないで東を通ったということも、これは一つの問題点として残っております。これはまあ当時の金浦でどういうふうな話があったか知りませんけれど、運輸大臣金浦におられたわけですから、あるいは山村政務次官おられたわけですから、そのことははっきりしてもらいたいと思うのです。食い違いが出ておりますね。そして結局は東を回って、非常に危険な状態でおりざるを得なかったということになっておるわけですから、これをひとつはっきりしてもらいたいと思います。  それからその次は、犯人の引き渡しのことですけれど、これは山村さんが帰ってきてからのお話の中に、またこれは五日の平壌放送がやっておるのですが、KNS通信の電報が載っておりますけど、朝鮮民主主義人民共和国の社会安全省の代表が山村次官に、日本政府は二度とこの学生たちの問題を論議しないこと、こういうことを山村さんに通告をしたというふうに聞いておるわけですね。したがって、これを日本政府として引き渡してほしいと、こういう態度を従来持っておったわけですけれども、はたしてこの犯人は入国を認められたものかどうかですね。山村さんは、入国を認められたと、こう言っておる。こうなりますと、今後この犯人の引き渡しについては、政治亡命として認められれば何ら手がつかないということになるわけでありまして、今後この犯人の引き渡しについてどうするか。これが三つ目です。  それから最後に、先ほど今後の朝鮮民主主義人民共和国との友好関係について外務大臣は、なるほど、百八十度転換をする方向はとれない、これはよくわかります。ただしかし、この問題を契機にして、わが国が一そう朝鮮民主主義人民共和国と友好を深めていくという、そういう基本的な立場に立つべきだと私は思います。そういう意味でできる二とからやっていく。たとえば今度の場合を思っても、通信というものは国境や思想をこえてやっぱり行くべきものだと思いますから、通信線を開設する問題だとかあるいは文化の交流、それから人間の往来、あるいは貿易の拡大、こういったものは私は進んでこの際やるべきではないかと思います。そういう点について外務大臣の所見を伺いたいと思います。以上。
  66. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 第一の点について、赤軍派の動きに対してどういう具体的な措置を講じたかにつきましては、政府委員からお答えさせていただきます。  第二の点でございますが、警察庁及び福岡県警が、本事案の処理について日航機韓国に着陸させるなどということを方針としたことはないし、ましてや関係機関に対しそのようなことを要請したことは全くございません。警察庁としては、事案発生の第一報を受けた警備局長が、午前八時二十分福岡県警本部長に対し、事案処理の方針をただすとともに、乗客の安全救出を第一とし、板付に着陸したならば、あるいは手段を尽くして離陸を阻止することの方針をもって臨むことといたしました。自後、警察としては、一貫してこの方針により処置してきたところであります。  なお、警察庁の四項目の指示と伝えられるものは、福岡県警から電話で連絡があった際に、赤木警備課長が警備局長の指示を受けるまでの間に、とりあえず県警の係員との間において乗客の安全救出を期すること、給油の引き延ばし、タイヤの空気抜きなどの発進阻止をはかること、やむを得ずして離陸した場合でも、乗客の早期安全救出をはかるために近くの飛行場、たとえば国内か韓国の空港への着陸を検討できないかどうかなどの点を話したことが伝えられているのではないかと思います。この内容は指示というものではなく、折り返し上司にその内容を報告した際に、すでに警察庁の方針は明確であるので、そのような考えはとる余地がないものとされ、自後の警察処置には何らの影響も及ぼしてはいません。私も人命尊重、国内で、板付飛行場に着陸しましたその段階において処理することを再三にわたって注意をし、その方針に沿って動いておったものと思います。
  67. 川島広守

    政府委員川島広守君) 赤軍派に対します取り締まりの当時の状況でございますが、御案内のとおりに、赤軍派は昨年の九月の四日に結成されましたものでございまして、その自後ただいまのお話にもございましたように、十一月五日、いわゆる大菩薩事件等もございまして、事後逮捕を含めますと六十三名あの事件で逮捕しているわけでございます。昨年の七月六日に明治大学の和泉校舎で内ゲバがございまして、そこから事案が発生しておったわけでございますが、現在まで不法事案一切を含めまして四十四件ございまして、延べで二百八十八名を逮捕いたしております。特に三月に入りましてから赤軍派のいわゆる議長といわれております塩見孝也を含めまして最高幹部四名を逮捕いたしております。さらに四月の一日には日比谷の公会堂でいわゆる全日本革命戦線結成大会というものを開くという予定になっておりまして、これは後日東京都の公安委員会によって集会は不許可になりましたけれども、このような動きを目ざしまして、三月の中旬以降全国的にこれら赤軍派と称しますものが動き出しておったわけでございます。したがって、これらの赤軍派の活動家を中心といたしまして、警察といたしましてはいろいろな手段を使いまして、彼らの行動確認につとめ、不法事案の未然防止につとめてまいった次第でございます。その間、ただいま申しましたような最高幹部の塩見等の逮捕もできたわけでございます。ただ、はなはだ残念でございますけれども、今回の乗っ取り事件そのものにつきましての情報を事前につかみ得ず、さらにまた、現場でその行動を確認できなかったということは、はなはだ残念に存じておる次第でございます。今後につきましては、彼らの動きは、この秋にいわゆる彼らのことばで申せば武装蜂起をするということを広言しておるような情報もございます。十分今後につきましては厳戒体制をとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  68. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 「よど」号が金浦飛行場を立つにつきましてのフライトプランにつきましては、私もその場におりましたが、そこで韓国政府といいますか、金浦飛行場当局、空港長の決定は、いわゆる現実に飛んだようなプランを決定したということを私と金山大使――形式的には政府代表としては金山大使でございますから、金山大使が私のそばにおりましたが、もちろん私もいましたが、このように韓国空港当局は決定をした、これが一番安全の道である、こういうことで決定をして、その旨を軍事休戦委員会を通じて、韓国側からもまた日本からも、それについてはぜひ飛行の安全をお願いするという意味のことを金山大使もつけ加えて通告をいたしました。それから三、四十分、もう少し時間か――ちょっと時間がはっきりしませんけれども、三十分間ないし一時間たったときに北側から、いわゆる反対側からですね、平壌から黄海に出てそうしてこちらに入ることが適当である、適当なるコースであると、こういうような指示が向こうからありました。それに対して飛行場最高幹部の意向は、当方、飛行機を出発させる当局の決定すべきものである、であるからしてこれが安全の道としてこのようにすると、こういうような決定をされて、もちろんわれわれは権限の及ぶところじゃありませんから、そのとおりに安全に飛行できればそれでけっこうであるからして、ぜひ安全に飛行を頼みたいと、そうしてまた私、これはしろうとの考えですが、今度平壌から日本に「よど」号が帰ってくるときにも、やはり同じコースを通ってきたところをみますと、黄海に出てあのコースを通ることはやはりいろいろな問題があったのではなかろうかと私は想像します。ということは、いま御承知のように、帰り、平壌から日本に帰る場合も同じコースを通っていわゆる韓国側が指示したフライトプランと同じコースを通ってきております。半島を横断して日本海に出てそうして東京に帰ってきておる、こういうことから見れば、まあいろいろな事情がお互いにあるでしょうが、やはりあれが適当なコースでなかったかと、私はしろうとですからわかりませんけれども、結局さように考えざるを得ません。大体その点についてはわれわれも事前にあっちを通ることは了承しておったということであります。
  69. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 犯人の引き渡しの問題でございますが、これは私からだけお答えするのはあるいは適当でないかと思いますけれども、いまの政府の姿勢は、日本国内に行なわれましたこういう重大な犯罪容疑でございますから、日本としては、たてまえとしてこれを引き渡してもらって、国内の法律で処置するのが筋道でございます。同時に、これはかりに犯罪人引き渡し条約等に相互が加盟しておりまする場合でありましても、これは現に身柄を持っておるほうと申しますか、そのほうの意見がこれは優先する、そうして政治犯であるかどうかの認定権は、現在これは身柄を持っているほうの国の意見が優先をする。しからざる場合におきましては、政治犯でないという場合におきましては、これは身柄を引き渡してもらうというのがこれが通常の行き方かと思っております。それでありますから、日本側のものの考え方はそういう考え方に立っておりますけれども、同時に、今回のような非常に異常な事態がございましたし、それから私の個人的な意見になるかと思いますけれども、現実のこれからの措置をどうするかということにつきましては、この異常なる事態下におきまして、北鮮の立場を、私は向こうの立場になって考えてみましても、たいへん異常なやっかいなことを持ち込まれて、いろいろ先方としても困っておられるだろう。いろいろの考え方でいろいろとまた調べてもみなければわからぬということは、これは山村次官の話にも出ておりますような次第でもございますから、いましばらくこの状況を見ましてから考えることにいたしたい、かように存じているわけでございます。
  70. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ただいまの点につきましては、警察としては犯人の特定、捜査に専念しておるところでございます。九名のうち七名はおおよそ見当をつけておりますけれども、何にしましても政府方針が決定しました後のことでございますから、その準備行動をいたしておる次第であります。
  71. 山本利壽

    ○山本利壽君 まず、今回の事件に対して運輸大臣山村政務次官さらには外務大臣等、直接その衝に当たられました方々の御苦労を心から感謝しておる者でございます。そうして、その御奔走に応じて、韓国政府においても、また、北鮮政府においても、非常に協力していただいたということに対しては、国会議員の一員としてもまた、わが党としては特にそうでございますが、感謝の意を表します。そうして先ほど来あるいは先日来各野党と申しますか、各党の方々がこの点に対しても心から国家的見地から協力的な発言をされましたことに対しても喜びを感ずるわけでございます。  いま国民一つ不安に思っておることは、先ほど来の質問にもありましたが、今後飛行機を利用することについて、国内でまだ赤軍派とかいうグループの人も相当おるし、そのほかここ一、二年来の大学紛争等についても強い姿勢を示した若い人たちがたくさんいるわけでございますから、これが安心して乗れるという体制を一日も早く整えてもらいたい。そのことについては公安官等の配備によって一元化していきたいということを先ほど御答弁がありましたが、これもよほど事こまかにやらないといけないと思うのでございますが、一体いまの、ことにその整備ができます間も、乗客はたくさんいるわけでありますから、今日乗客及びその荷物に対しての検査というか、検査の判断を下しているのは各航空会社でございましょうか、あるいは羽田とか大阪とか板付とかといったような飛行場が責任をもって飛行場の職員をもってやるということになっておるのか、あるいは運輸省が責任をもってやっておるのか、さらにはこういうことは警視庁のほうでやることになっておるのか、そこらのところが、一体どこで今日までは統轄しておられるのか。それで今後これを一本化していくということについては、どこへまとめようとしておられるのかということを、国家公安委員長にお尋ねをいたしたいと思います。  もう一つの点は、先ほど運輸大臣から、今回の朝鮮半島における飛行のコースであるとか、その他詳細にわたっての御報告をいただいたのでございますが、平壌へ向かって飛び立つまでの時間が相当かかっておる。その間に一体どういうことが行なわれたか。ある種の人たちは、その間に韓国とかアメリカとか日本とかでいろいろと謀議をしたのではないかといったような疑惑もある際でございますから、さらに詳しく御報告がいただけるものならば、この点について、韓国飛行場で非常な時間をとったということについての補足の御説明をいただけたらありがたいと思います。
  72. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 飛行場のいわゆる小荷物等の検査等につきましては、運輸省が飛行場飛行会社に命じて十分な検査をせしめるということであります。もちろん飛行場内におけるまあ整備といいましょうか、空港内の問題については運輸省もこれに関係を持っておりますが、もし不審な点とかその他の点に関しては、もちろんこれは警察権がなければできませんから、警察権として発動してもらうことになっております。この点なかなか完全な、おっしゃるような飛行場内における警備体制というものが完全に一致しておるという状態は――なかなかむずかしい、法律上むずかしい問題がありますから、できておりません。この点はこれは検討して、より密接な関係を持つということにしたいと思っております。  それから私への第二の飛行プランのことにつきましては、説明申し上げましたから、これは御了承願いまして、ただ今回私が到着いたしましたときに、山村政務次官からも報告を得たんですが、非常に韓国政府方々が、この問題について人道的問題、かつまた何とかして乗客を救い出したいということには、韓国首脳部、ほとんど閣僚の多くの人が集まって、そして何とかして日韓の関係から見ても乗客を救い出したい、人道上から救い出したいということで、非常な御苦労をかけた。この点は、まあ、ことばの中にはとんだものが飛び込んできて迷惑であったけれども、これはしかし、こうなった以上は全力を尽くしてお客を救おうと、こういうことで、これは韓国政府だけでなく、韓国民も、これは官民一致して、この問題をひとつ人道上の問題としてお客さんを救い出したいと、非常な、私はそばにおりましてその点心から感激いたしました。その意味で、荒っぽいこともしなくて、何としてもまず乗客を出すことだということで、その点については日本政府人道的な立場からぜひやってほしいという気持ちを十分にのみこんでやってくれた。であるから逐次、先ほど申しましたような嗜好品から歯みがき、ブラシに至るまで、全部韓国政府のお世話になって、韓国政府が出してくれたのであります。  私は、あの飛行機よど」号が向こうへ飛び立っていきましたが、山村政務次官が帰ってきてからの報告を聞いて、飛行場が不十分であるということを聞いて、私はあの場合、乗客をあそこで百余人をおろすことができたということは、全くこれはよかった。もしあれだけの全員の人を運んでいったならば、はたして無事に着けたかどうか、私はしろうとですからわかりませんけれども、石田機長山村政務次官の体験を聞きますというと、まあいろいろなことがあったにしても、ほんとう人命尊重という上からいって、あそこで百余名の人をおろすことができた、身軽になってあの「よど」号が飛ぶことができた。であるからああいうような無理な着陸ができたということで、その結果をもたらしてくれた韓国政府、官民の努力に、また皆さんの非常な御激励、御協力に、私は北朝鮮のその後における非常な人道態度をとっての寛大なる措置とあわせて、非常に心から喜びにたえません。その意味において、先ほど来の説明にも申し上げましたが、再度この点につきましては、私は最高責任者として参りましてほんとうによかったと心から喜んでおる次第であります。
  73. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  第一義的には空港事務所、税関、各航空会社などの関係機関と十分連携をはかって、人権上の配慮をしながら善処する。挙動不審の者があれば警察独自の立場においても警戒に当たるということかと思います。一般乗客協力を得なければできませんし、危険物の機内への持ち込みをさせないように、的確な警備措置をとるということが必要かと思います。航空機乗っ取りを企図するおそれがある者などに対する情報活動を強化して、事案の未然防止につとめるという、総合的な配慮を加えるほかには当面方法がないものと思います。
  74. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 簡単に三点だけお伺いします。  第一点は、先ほども少し問題が出ておりました日本航空とそれから米軍との関係であります。先ほどの航空局長の答弁では依頼をしたやにという、かなりその事実をにおわされたように私は受け取ったんですが、この問題については、その真相については、また後ほど当事者に来ていただいて、御要求がありますので――真相の部分は私は伺いませんが、もしそういうことが事実あった場合、そういうことは法的に可能なのかどうか、もし可能であるとすれば、いかなる法律あるいは条約でそういうことができるのかどうか、その点が第一点。  その次に、防衛庁長官が情報収集の問題について、法の範囲内でと、このように言われましたが、その法の範囲内というのは何を意味するのか。情報収集になりますと、やはり情報収集艦あるいは偵察機、さらに電波等が問題になってくると思いますが、現在の自衛隊のやられておるその収集のあり方の範囲がどのように拡大されるのか。拡大のしようによってはいろんな問題が起きてくると思います。その法の範囲内という、それをどのように運用されるおつもりなのか。まあこまかい具体的な問題はいままだおきめになっておらないと思いますので、方向だけでも伺えたらと思います。  最後に、朝鮮民主主義人民共和国との外交関係について二、三お尋ねが出ましたけれども、具体的な問題も先ほど鈴木委員のほうからも話が出ましたが、私たちが前から言っております、この北朝鮮を侵略国としてきたあの決議の共同提案国を、やはり今年の国連総会では共同提案国にはならないほうがいいんじゃないかと、このように思いますが、その点については前向きで検討されるおつもりなのかどうか。その点をお伺いして、関連質問を終わります。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法の範囲内とは、憲法並びに自衛隊法等の規定する範囲内という意味でありまして、まあ専守防衛というのがわが国防衛力の本旨でございますから、そういう趣旨に立脚して、いやしくも外国から疑いを抱かれるような、そういうことのないように努力しつつ密度を深めていく、そして確実性を増していく、そういう方面について努力していきたいと思います。目下検討中でございます。
  76. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 朝鮮問題に対する共同決議案の取り扱いにつきましては、従来のものでありましても、民主的に、分裂がないように、統一されるように、平和裏に、という趣旨が出ておったように思いますけれども、今後の場合におきまして、その決議の内容等にも大いに関連すると思います。たとえば新たにこれが決議の内容が変わるというようなことにも関連するかと思いますけれども、ただいまの御高見につきましては、先ほど申しましたように、冷静に、慎重に検討をいたしたいと考えております。
  77. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 国内を飛んでおる場合は、まあこれは航空局なり、あるいはその飛行場から種々の手配をする場合も、日本航空に対してあると思いますが、これは外国でありますからして、運輸省としては直接指示することはもちろんできません。ただ実際上日本航空としてはたくさんの人を乗っけて人命の安全のために、あるいはまあこれが民間航空であるところは民間航空の会社に連絡しましょうし、これが一種の軍管理にあるところは軍の関係者に連絡をとることもあるだろうと思いますが、具体的な事実については、日航当局でないと明確には申せないと思います。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 具体的なことを聞いているのじゃないのです。法的に可能かと聞いている、米軍に対する依頼が。
  79. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) その点は運輸省の問題でもありませんので、外務省なりあるいはそこでお答えを願いたいと思います。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 防衛庁どうか、いまの問題、外務省でも、どっちのほうですが、いまの問題。
  81. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ちょっと御質問の御趣旨をあるいは取り違えておるかもしれませんと思いますけれども、今回の事件については、政府の一番関心を集中し、そして焦点をしぼって対策に苦心いたしましたのは人命の安全ということであって、その限りにおきまして、あらゆるルートを活用させてもらったと申しますことが適切かと思います。たとえば、軍事休戦委員会というものがあることは事実でございますけれども、これの本来の役割りは今回のような事件を取り扱う機関では御承知のようにないわけでございますけれども、たまたまこういうものもあるからには、人命の保護ということについては、何とか権限外でも協力してもらえないかということで、これを要請し、かつそれに実際問題として非常な関心と協力を示してくれましたことは、御案内のとおりでございます。そうした場合には、この種の問題については人命の尊重ということについて、あらゆるルートを通し、相手がアメリカであり、ソ連であり、あるいはいま申しましたように、別の任務を持っている国際機関というようなことにまでお願いをし、要請をしたわけでございまして、いわば普通の場合の、正常な場合の外交関係における要請とか、依頼とか、応諾とかいう場合とは全く違った場合であることは、事柄の性質上御理解をいただきたいと思いますし、そういうことの扱い方その他について、先ほど来申し上げておりますように、まことに緊急に思わざる事態であり、かつ事は百名以上の人命に関することでございましたから、平常ならば考えられないようなことも、各国に対し、あるいは各機関に対してお願いをいたしたと、こういうことになるわけでございまして、また別に正常な場合、あるいは将来そういう場合にどういうことを考えなければならぬか、あるいはあらかじめ用意しなければならぬかということについては、真剣に今後考えなければならない、かように考えているわけでございます。ただいまもお断わりいたしましたように、お尋ねの直接のお答えにならぬかもしりませんけれども、本件の取り扱いに関する、外国に対する要請のやり方は、いま申しましたようなやり方でございます。
  82. 向井長年

    向井長年君 突如として起きた問題ですから、これは政府当局も最善を尽くして、結果的には人命の救助ができたということにつきましては、これは私たちも喜ぶものであります。ところが、率直に言って、結果論になるかもしらぬが、この問題に対して、特に当初板付飛行場に着陸した当時のこの状態の中では、政府の意思統一が事実上できておらなかったのではないか。先ほど鈴木君からもお話がありましたが、外務は外務、運輸は運輸、あるいはまた防衛は防衛と、こういう立場で、それぞれの立場で人命救助のための努力をされた。こういうことで政府の意思統一がほとんどなかった、こういうように私は考えるのですが、この点いかがであったか。  あわせて、一般国民は救助されて非常に喜んでおりますけれども、政府のこれに対する時間をとった小細工があまりにも多かったのではないか。これは結果論でございますけれども、そういう批判が強く出ております。したがって、この問題について国際的な例を見ますならば、こういう事犯については犯人の言うことを聞いてやるほうが安全であるという例が各所にあるようであります。それに対して、御承知のごとく、金浦空港に着陸したそのいきさつ、あるいはこれに対する石田機長と江崎副操縦士の意見の違いもあるようであります。われわれが聞く範囲におきましては、したがって、そういう具体的な問題につきましては、いずれまた日をあらため、時間をあらためまして質問いたしたいと思いますけれども、やはり結果的にこの問題についていろいろ反省せられる問題がたくさんあると思います。特に、政府の意思統一の不足、こういう問題をひとつ私は提起いたしたいと思いますので、この点についてお答えをいただきたいと思います。  あわせて、北朝鮮のほうは、人命救助という人道的立場から全員を受け入れるというような態勢があったようでございますけれども、韓国でこれがおろされて、人質になった山村政務次官はじめ、操縦士が乗って行かれましたが、そのときには一変して態度が変わったようであります、情報を聞きますと。しかし、これが直ちに帰国せしめた。こういう真相は、その点、もしわかっておれば、ひとつお聞きいたしたいと思います。  最後に、ひとつ法務大臣にお聞きいたします。先ほども答弁がございましたが、かかる事案に対する単独立法で、今国会でこれを成立せしめると、こういう強い決意を持っておるかどうか。この点を私はお聞きいたします。  以上でございますが、ほか、また日航の運航部長来られましたらお聞きいたしたい点もございます。
  83. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま最初のほうの、政府に意思統一がなかったかということでございますが、この点は、急遽官房長官を中心にしまして、外務大臣も、国家公安委員長、私、防衛長官、法務大臣も出席と思いまするが、関係者が集まりまして、まず第一には、人道上から、この人命を何とかして保護する、助けるというところに第一の主眼を置くという方針を決定して処置をいたしました。皆さんが板付における状況をごらんのように、とにかく日本刀を持って、乗客がいる場合も、殺気立っておる状態であります。また、機長は、そのときにはナイフをもって首にあてがわれている状態であります。緊急状態であります。ですからして、できればもちろん、政府としてはあそこで全員をおろすことができれば、これはもう最大の、最良の策でありますけれども、皆さんが十分に目の前で、新聞で、あるいは多数の人が板付でごらんのように、いわゆる犯人どもは日本刀を抜いて、万が一のことがあれば乗客をそこでたたっ切るという情勢であり、機長はのどに単刀を突きつけられて、そうして、 いわゆるこっちからの逮捕しようといいましょうか、それを食いとめるような措置はやらせないという状況でありましたので、したがって、人命上から考えても、とてもあそこで阻止することはできないという判断のもとに、犯人の命ずるままに行かせる以外に道がないと、こういうことで、最終的には犯人の命ずるようなことになったわけであります。金浦飛行場に着きましても、そのような状態のもとに行ったのでありますからして、犯人たちは殺気立っております。しかも、現実に爆弾を持っている。そういうことで、彼らがもしほんとうに腹をきめ、九人と百何人を取りかえようということになればたいへんなことでございます。それでありますからして、最善の措置は、先ほど申しましたように、何とかして、乗客はこれを安全におろしたい。しかも、あとで聞いたことでございますが、山村政務次官が来て申しましたように、もし、あの全員があのまま飛んで行ったならば、はたして無事にあの飛行場へ着けたであろうか。ですからして、そういう状況は、たとえば、これがニューヨークヘ行けとか、あるいは地図のわかったところへ持って行けというなら、そのままやってもいいと思います、実際上は。けれども、全く日本飛行機会社も、われわれも向こう平壌飛行場は何たるかわからない。そうして帰って来てみれば、とてもいわゆる少数の人間ですら、あれだけの、自分らの経験したことのないようなショックを受けざるを得なかった、慎重にやってもなったと。はたして、全員でもって行って無事――あるいは無事に着けるかもしれませんよ。着けるかもしれませんけれども、非常に危険な状態であった。まあ、結果から申しますれば、あすこへ大部分おろして身軽になったということは、私はいろいろなことがありましても、これは全く結果的にはよかったのじゃなかろうか、こういうことを強く感ずるわけであります。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま運輸大臣から、御説明申し上げたとおりでございまして、政府の中に意思統一がないところか――まあ何としても、皆さんを安全にどうやって人命を救出することができるかと、一点に集中して、それぞれ各省庁の全力をあげたわけでございます。その一つである外務省といたしましても、前々からるる御説明申し上げておりますように、板付から飛び立った。まず、これは平壌に行くものと、私どもはその公算が一番大きいと想定をいたしました。そうして、その想定のもとにおきまして、沿岸の各方面に対して安全の航行というものをお願いするのは、あのときとして当然とるべき第一の措置ではなかったかと思います。ところが平壌に着かないで、金浦に着いたということがございましたので、それまで措置したことをまた急遽転回いたしまして、今度は金浦に着いた、この条件のもとに最善と思う努力をいたしたわけであります。何ぶんにも予想し得ない突発事故であり、かつ、申し上げるまでもございませんが、飛行機は非常なスピードでもございますので、そのとるべき万全の措置といいましても、まあ、私どもの考えた限りのことをやったわけでございますが、それらの点については、いろいろのそごや反省ももちろんあるわけでございますが、まずまず、結果においては皆さんの救出ができてよかったというのが私の偽らざる心境でございます。どうか、あのときの環境、状況を思い出していただきまして、私どものとりました措置につきましても、御理解を与えていただきたいと思います。また、足らざるところ、いろいろの建設的な御意見につきましては、あらゆる角度から御批判や御教授をいただいて、万万一に、またこういうことが起こりました場合には、どうしたらよいかということにつきまして、どうかひとつ御協力を賜わりたいと存じます。
  85. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 航空機の乗っ取りに対する刑罰に関する立法は、いまのところアメリカその他二、三にすぎないのでありますが、わが国における今回のこともあり、私どもといたしましては、この国会においてぜひ成立をさせていただきたいと、かような強い願望を持っておりますので、皆さんの御協力お願いいたしたいと、かように考えます。
  86. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 先刻御要求のありました参考人の件は、後刻理事会で協議をいたして決定いたしたい、かように存じております。  三木君の質疑の途中でありますが、午後一時二十分再開することといたしまして、これにて休憩をいたします。    午後零時四十二分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十九分開会
  87. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  本日、日本航空株式会社航務本部運航部長長野英麿君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  89. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 三木君の質疑を続けます。三木君。
  90. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は、日本の映画の振興に伴う映画の輸出振興あるいは映画の自由化、映画産業の助成あるいは再編成等、あるいはまた映画の入場税との問題に関係しまして若干の質問を関係大臣に行ないたいと思います。  まず、具体的な問題としまして、昭和四十一年度から発足した社団法人日本映画輸出振興協会の設立の目的あるいは事業の役割り等について、政府委員のほうから説明願いたいと思うのです。
  91. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) お答えをいたします。  日本映画輸出振興協会は、御指摘のとおり、昭和四十一年度から発足をいたしまして、わが国の映画輸出を高めますために必要な製作資金の融資を行なうにあたりまして、この輸出振興協会が適格の映画の選定並びに融資の実行に当たることになっておりまして、今日まで相当の成果をあげてまいってきておる次第でございます。
  92. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 その設立の目的ですね、あるいは具体的な事業内容等について説明願いたい。
  93. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、映画が不振産業というと語弊があるかもしれませんけれども、テレビに押されておる。そこで映画産業全体の振興をはかる必要があるわけでありますが、同時に、わが国の映画を海外でも見てもらおうじゃないか。それには海外向きのいい映画をつくりまして、そうしてその輸出を促進することを助成いたしたいと、こういうふうに考えまして、通産省が指導いたしまして、ただいま御指摘のような協会ができたわけであります。協会に対しまして日本興業銀行が融資を行なうと、その融資の資金を財投から手当てをいたすと、こういうことで、いままで六十二億円ぐらいになりますか、融資が実行されたわけであります。もちろん輸出すれば、輸出の代金として回収が行なわれるわけでありまするから、きちんきちんと金は返しております。いま三十五億足らず、まだ残高として残っておりますが、その他は全部完済されまして、この三十五億も、現在製作中の映画が輸出されますときに、これが回収されると、こういうことに相なり、かなりこれは日本の輸出映画振興上役に立っておると、かように見て、まあ、興長銀の発行するところの債券を資金運用部で買い取る、そういう方法によって日本興業銀行において資金の供給をする。現に昭和四十五年度におきましても、二十億円の興銀債の買い取りを計画をいたしておる次第でございます。
  94. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、輸出振興を重点に置いているわけでありますけれども、この映画産業の発達をはかるために協会が設立されたわけでありますけれども、実際に協会が四十一年に設立されてから四十四年までのこの融資の作品の輸出収入実績はどの程度あったか、これについてお伺いしたい。年度別にこまかくやってください。
  95. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 映画振興協会を通じまして融資をいたしました作品によりまする輸出の実績でございますが、四十一年度におきまして十一万ドル、四十二年度で五十七万ドル、四十三年度で三十七万ドル、四十四年度におきまして約十六万ドル、合計百二十一万ドルに相なっております。
  96. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、約四億三千万円ですね。そうしますと、協会設立から四年間で、融資の作品の輸出実績が約四億三千万と。ところが、この日本映画界の輸出の総実績というのは約六十二億円になっているわけですね。融資の金額と、そうして輸出実績とを比べてみると、約一割にも満たないと、こういうふうな計画なんですけれども、こういう実態なんですがね、これはどういう理由か、輸出の振興がふるわない、輸出がふるわないという何か特別な理由があるのでしょうか。
  97. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 御指摘のとおり、わが国の映画の輸出は大体年間五百万ドルに及ばない線で過去数年推移をいたしております。したがいまして、これら融資を受けました映画がその中においてさらに割合の低い役割りしか果たせなかった実績に相なった点は御指摘のとおりでございますが、これはいかなる事情かと申しますと、一つにはわが国の映画の特殊性、特に風俗、言語の違いというようなものが世界各国においてなお理解を深める余地があるということを意味しておるかと存じます。さような見地から、今後とも優秀な映画を作成をいたすこと、さらにこれを広く海外に紹介いたすこと、この二つの点で一そうの努力をいたすべき余地があろうかと存じております。
  98. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、まあ輸出実績から比べると、約十六分の一くらいが、融資の割合から見ると十六分の一にしか満たないわけです。そうすると、何かまあ協会を設立した大きな大義名分の輸出というこの目的からずいぶん離脱しているのじゃないか、こういうふうに考えられるわけでありますけれども、この点はどうですか。
  99. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 協会は、先ほど大蔵大臣のお話にございましたように、過去四年間におきまして六十三億の融資を行ないまして、これによりまして相当の、年間を通じ、まして合計百二十一万ドル、相当の輸出実績をあげたと考えております。なお、協会の本来の目的に従いまして、今後とも各社に一そう優秀な映画を製作できるよう、所要の振興策を講じてまいる必要があろうかと考えております。
  100. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もうね、いろいろ言うは言われるのですけれども、輸出実績の実態から見まして、いろいろマスコミでも報道されておりますけれども、輸出振興ということが表向きの顔で、ほんとうのところ、いろいろ政治的な配慮とか、あるいはまた銀行から借りられなくなった映画会社のつなぎ融資ではないかと、こういうふうな疑惑すら持たれるような状況でありますけれども、この点については事実を明らかにしていただきたいと思います。
  101. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) わが国の映画産業界は確かに好況にあるとは申せません。かつて最盛期でございました昭和三十三年当時に比較いたしますと、最近におきましては観客数等も著しく減少いたしておりまして、さような面から映画会社等の経理状況も必ずしも好転を見ておらない現状であります。さような意味からいたしまして、わが国の映画産業を振興いたす必要の一端といたしまして、輸出の活路を打開するということが望ましいと、その役割を輸出振興協会が果たしておる次第でございまして、かつその融資にあたりましては、厳格な審査並びに推薦制度をもってこれを行なっておりまして、決して一部会社の赤字救済というような趣旨をもって運営をされておるものではございません。
  102. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ厳格な審査が行なわれておるという話でありますが、二、三伺いたいと思うのです。融資の問題についてでありますけれども、そうしますと融資を受ける資格はどうなっておりますか。
  103. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 融資を受けまする資格といたしましては、一つは融資を受けまする企業の資格でございまして、これは十分な財産的な基礎を持っておること、さらに、常時継続して営業を行なっておること、さらに、優秀な作品を作成する能力のあること、こういうことを総合的に勘案をいたしまして、資格ある企業を選定をいたすということであります。  第二に、作品の資格でございますが、これは第一に、海外における市場性があるということ、それから第二に、その製作費が適正であるということ、この二つの要件をもって審査の基準といたしておる次第でございます。
  104. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 本年のこれは協会の二月の理事会で独立プロに対しても融資の資格を与えることになった、こういうふうに聞いておるわけでありますが、昨年までは大手会社に限って、実質的には大手三社しか融資が行なわれていなかった。こういう点はどういうわけで大手三社に限られておったか。あるいは映画の輸出振興というこの協会の設立の目的とは何か反しているのではないか、こういうふうにも感じられますが、どうでしょうか。
  105. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 映画輸出振興協会が発足をいたしました当時は、これを組織いたしましたのは大手五社が組織をいたした次第でございます。しかしながら、その後のこの協会の運営の実績にかんがみまして、ただいま御指摘の独立プロというようなところからも参加の申し出が来ておるように伺っております。さような意味におきまして、今後ともより広く、ただいま申し上げました資格に該当する企業に対しては融資の道をあけていくことが適当ではなかろうか、こういう趣旨で目下協会におきましても検討をいたしておる次第でございます。
  106. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうすると、五社のうち三社に限られた何か理由は特別にあるのですか。
  107. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 資格の上で限定をいたした理由はございませんので、ただ融資の申し出というものがこの三社から行なわれまして、そのほかの二社、東宝、東映からはなかったという事実でございます。
  108. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 大蔵大臣に伺っておきたいのですけれども、この映画輸出振興協会の設立にあたって、当初は三年限りと、こういう資金運用部の融資を受けることになっておりましたけれども、四十四年度には十億、あるいは四十五年度にはさらに二十億は財投として計上されておるわけでありますけれども、この期限を延長されたわけですね、どういうふうなわけですか。
  109. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、先ほど財投と申し上げましたが、正確に言いますと、財投じゃなくて資金運用部資金の余裕金の運用として興業銀行債を買うと、こういう方法をとるわけでございますが、発足当時は確かに二十億円だったかと思うのです。それを、昨年資金の状況から見て十億でよかろうというので、四十四年度は十億になったわけですが、また業界からのいろいろな見通しからいいまして二十億要るのだということで、二十億円を四十五年度としては一応予定をいたしておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、輸出映画を何とかつくって、斜陽というか、テレビに押されぎみの映画に活を入れたいという通産省並びに映画界の要請に従ってそういうことを考えておるわけであります。
  110. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、輸出振興と、こう言われるのですけれども、実際上は実績から見ましても案外あがっていないと、そういう点、あるいは映画界を救済するというか、確かに振興させなきゃならないことはわかりますが、輸出振興という名目の陰に隠れて、救済策のために期限を延長されたのではないかと、こういうすりかえ予算じゃないかというような感じも私は受けるのですけれども、その点いかがでしょうか。
  111. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) なお、通産省でこの問題につきましてはよく内容を見ておるはずですから、政府といたしましては、これがはたしてそういう実績をあげ得るかどうか、そういう点を検討してみるということにいたしいたと存じます。これは日本興業銀行が銀行の立場として十分その返済等の保証ということを考えまして金を貸すのです。ただ、政府として関与する部面は、日本興業銀行債を資金運用部の運用として買ってあげるというだけのきわめて薄い関係でございまするけれども、十分運用につきましては気をつけていきたいと、かように考えます。
  112. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 融資の条件とか、あるいはいろいろ厳格な審査をされていると言うんですけれども、通産省あるいは映画輸出振興協会へ行ってみますと、何人か、数ふるほどしかいないわけですね。こういう点で、はたして映画輸出振興協会がその具体的な審査が行なわれているだろうか、あるいはまた、製作費等の問題が具体的にチェックされているだろうか、あるいは担保の問題等も銀行とは関係ありますけれども、具体的に映画輸出振興協会が推薦し、あるいは通産省のほうもこれに立ち会っていると思いますけれども、こういう点については何らのチェックもなされていない。言うがままの融資が行なわれている。資金運用部のお金といっても、やはり大事なお金であります。こういう問題に対して実際に厳格な審査あるいはどういう方法で製作費の計算等が行なわれておるかどうか、この点について参考意見を伺いたい。
  113. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 輸出適格映画の審査につきましては、通産省に輸出適格映画の審査委員会が非公式に設けられておりまして、各界の専門の方にこの委員としてお願いをいたしておる次第でございます。これら委員方々が、先ほど申し上げましたように、当該映画の企画が輸出の適格性があるかどうか、また、その製作資金の計画が適正妥当なものであるかというような点につきまして、客観的に御審査を願って、その推薦を得ましたものを当省から映画輸出振興協会を通じまして興長銀に推薦をいたしておる次第でございます。  なお、これら計画の金額が妥当なものであるかどうかという点につきましては、映画の製作計画自体の内容にわたりまして相当詳細に委員会において御検討願っておるところでありますが、なお、さらに厳正適確にこれを行なうよう一段と努力をいたしてまいるつもりでございます。
  114. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 適確にやられているそうでありますが、具体的に二、三の例をお聞きしたいと思うんですが、作品の「ジェットF104脱出せよ」、こういう映画が上映されております。この問題についての融資の概要をこれを説明していただきたいと思うんです。製作費あるいは融資の決定額、あるいは融資の年月日、これらについてお尋ねします。
  115. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) ただいま御指摘を賜わりましたジェットF104に関する映画でございますが、この製作費としましては一億九千万円というものが計上をされた次第でございます。これに対しまして、融資を決定をしました額が一億五千万円でございます。この際、担保といたしまして大映系の映画館並びに土地を徴しております。この一億五千万円につきましては、昭和四十五年十一月をもって最終償還日といたしております。確実に償還をされることに相なっております。
  116. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 防衛庁にお伺いしますが、防衛庁としてジェットF104のこの映画に対して、製作ロケ協力をしていると思うんですが、ロケ協力の概要等について御説明願いたいと思います。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この映画は、高校卒業をして航空学生として入隊した五人の学生が、きびしい訓練を克服して、初級操縦課程からF104の操縦士として育つまでの過程を描いたものでありまして、防衛庁の広報上非常に有効であると判断されましたので協力したものであり、しかも、これに対する協力は、航空部隊の戦技訓練等各種の訓練を兼ねて実施したものでございます。詳細は政府委員をして答弁させます。
  118. 島田豊

    政府委員(島田豊君) この映画は、昭和四十二年四月に大映のほうから防衛庁に対しまして、映画製作についての協力依頼がございました。そこで航空幕僚監部並びに内局の広報課におきまして、その主内容、あるいは協力内容等について慎重に検討いたしましたが、シナリオにつきましては、ただいま長官から御説申し上げましたようなことで、防衛庁としましては、広報上相当の効果があるというふうに受け取られましたし、協力の内容につきましては、訓練中の航空機を航空機から撮影をするということ、それから防衛庁ですでに製作しておりますこの種の映画を無償貸与するということ、さらにまた、航空自衛隊の各基地につきまして、施設においてロケをするということでございまして、防衛庁といたしましては、この種の協力につきましては、一つは広報効果が十分あるかどうかという問題、それから、航空自衛隊の訓練あるいは業務に大きな支障がないかどうかという問題、あるいは、自衛隊が協力をいたさなければこの種の映画製作は不可能あるいは非常に困難であるかどうか、こういうふうな一応の基準でこの内容を慎重に検討いたしました結果、協力するのが妥当であろう、こういうふうに認めたわけでございます。協力内容につきましては、ただいま申し上げましたようなことでございますが、部隊といたしましては、第一、第二、第五、第七各航空団、第十一、第十三飛行教育団、それぞれの部隊におきますところの戦技訓練あるいは練成訓練、あるいは地上におきますところの操縦教育、こういうものにつきまして、場合によりましては、自衛官が訓練中の航空機から撮影に協力をする、あるいは地上につきましては、取材を認める。こういうふうな方向で協力をいたしてまいったわけでございます。
  119. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的に、協力の期間とかあるいは協力に要した費用等について伺いたい。
  120. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 自衛隊が協力いたしました期間は、昭和四十二年十月八日から十一月三十日までの約二ヵ月でございます。この費用としましては、教育訓練に要する経費、つまり、通常の訓練に要する経費でまかなっておりますので、特に、このために特別に経費を支出したということはございませんが、飛行いたしました航空機の燃料費あるいは酸素、こういうものの経費をかりに合計いたしますと、約二百万円ということでございます。
  121. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 航空機をどのくらい使いました。飛行機は何機。
  122. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 航空機は、撮影をいたしました航空機並びに訓練中の航空機、全部合わせまして延べ八十一機でございます。
  123. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 こういう種の映画は、防衛庁独自としても広報活動の一環として、映画に携わっていると思うわけでありますけれども、たとえば、この「ジェットF104脱出せよ」、こういう映画を外注した場合、どの程度の製作費が予定されるでしょうか。
  124. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 自衛隊自体におきましても、広報映画を製作いたしております。毎年数本ずつ製作いたしておりますが、大体一本の製作費が、ものによりますが、一千万から二千万程度であろうと思います。ただ、この場合におきましては、一般の映画と違いまして、いわゆる俳優等は用いません映画でございますので、そういう意味におきまして、非常に廉価に仕上がる、こういうふうに考えております。
  125. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 防衛庁として、こういう教育訓練用の映画を、広報上相当な効果があるとしていろいろ製作をされているそうでありますけれども、この映画に関して非常に手を加えられて、シナリオに相当手が加えられていると、こういうふうな点がうかがわれるわけでありますけれども、この脚本と、そうして防衛庁でこのシナリオに手を加えた内容あるいは変更というのはどの程度のものであったか、これについてお伺いいたします。
  126. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 防衛庁として特にどの点を修正いたしたかということにつきましてはつまびらかにいたしておりませんが、要しまするに、防衛庁として協力をいたします場合に、先ほど申し上げましたように、平素の訓練なり教育の状況を撮影いたすわけでございますので、自衛隊の業務に支障のない範囲において、したがいまして、この映画に協力いたします場合におきましても、そういう条件を付しておるわけでございますので、そういう自衛隊の実情に合わせたような形において修正をしておるということはあろうかと思います。
  127. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私の聞くところの範囲によりますと、航空幕僚監部の手で教育訓練の教材として相当手が加えられたと、そのためにも――まあ、これは話でありますので、真偽のほどは何でありますが――結局シナリオが相当変わったために一般向きもしなかった、こういうような話も聞くわけであります。防衛庁としてこの映画を実際に完成後大映から一本幾らで買っておりますか。
  128. 島田豊

    政府委員(島田豊君) この映画を自衛隊におきまして購入いたしますのにつきましては条件がついておりまして、一年間は上映館において上映をする、その後におきまして自衛隊に購入せしめる、こういうことでございますが、その一本の値段は十一万円でございます。
  129. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 通産省に伺いますが、こういうふうに、いまいろいろ防衛庁の製作協力等を考えましても、実際にかかった費用が、どう見積もっても、外注した場合でも二、三千万円程度、あるいは有名な俳優を使っても、これは大体五千万円から六千万円程度でどんな大作でもそういうふうにできるという映画界の通念だそうでありますけれども、こういう映画、いわんや防衛庁からも協力を得ておりながら、実際に一億九千万も製作費を見積もって、そうして実際に融資が一億五千万、これはあまりにも融資の決定に対してずさんというか、あるいは常識で考えられないというか、こういうふうに私は考えられるわけでありますけれども、この点に対しては通産省はどう考えていますか。
  130. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) わが国におきまする映画の通常の平均の製作費というものは大体四千万円前後のようでございますが、大作の場合、あるいは特に海外ロケあるいは大量のエキストラを雇うといったような場合には、きわめて大きな費用がかかるわけでございます。このような経費がどの経費程度が妥当であるかということは判定はなかなかむずかしいわけでございますけれども、一応各社が提出しました資料をもとに十分これを審査いたしまして、この「F104」につきましては一億五千万円の融資ということを決定いたした次第でございます。決してこれが水増しであるといったような趣旨のものではなく、十分われわれとしては審査をしました結果の数字であるということにお答えを申し上げます。
  131. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 あまり深くあれしたくありませんけれども、いずれにしても、こういうふうな一億五千万の、えらい慎重審議、検査をしたと言われますけれども、映画輸出振興協会は実際検査できる体制の機関であるかどうか、あるいは実際にそれだけの陣容があるのかどうか、あるいはそれだけの権限があるのかどうか、こういう点を調べてみますと、非常にずさんでもあるし、実際行って見られればわかりますけれども、この輸出協会それ自体の問題が、ほんとうに適格であるかどうか、こういう点は私は非常に疑わしいと思うんです。じゃ何を算定基礎にして一億五千万円になったか、その具体的なデータを出してみてください。
  132. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 積算の詳細につきましては、資料として提出をいたしたいと存じます。
  133. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 防衛庁長官に伺いますが、今後もこういうふうな映画の製作に防衛庁として協力する意思があるのかどうか、あるいはまたこういう融資といいますか、私たちから考えてみればちょっと常識では考えられないこういうふうな映画の融資でありますけれども、防衛庁も自分の、防衛庁のPR映画と、こういうように考えて協力されたんではないかと思いますけれども、この防衛庁と民間の映画会社との製作協定の問題ですね、こういう問題に対しては今後どういうふうな態度で防衛庁長官として臨まれるのか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 費用と効果を見まして、最も合理的で防衛庁の目的を達することができるものについては実行していきたいと思っております。外国の例を見ましても、たとえばイギリスの――この間も私ちょっと見てきましたが、ヒットラーの上陸作戦を阻止した「バトル・オブ・ブリティン」とか、あるいはノルマンディ上陸作戦の「ザ・ロンゲスト・デー」とか、ああいう映画は、やはりその国民の士気を鼓舞し、教育的にもいい要素もあったように思います。そういうものは、自分でやるのはPRとしては下の下でありまして、第三者がうまくやってくれるのが一番うまいやり方だと私は思いますから、費用と効果を見まして実行していきたいと思います。
  135. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 費用と効果の面でいろいろ検討されると言いますけれども、実際に民間会社が、いわんや斜陽産業が非常に赤字にきている、そういうところに加えて、いろいろシナリオ等にも手を加えられると、これは海外の輸出にもあまり向かないんじゃないか、あるいは国内でも、あまりそれが営業成績というか、そういう点、上がらないんじゃないか、こういうような問題を考えますと、いささか私は疑問を持つような点があるんですけれども、こういう点についてどうお考えになりますか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの「F一〇四脱出せよ」という映画は、私はどれくらいかかったか知りませんが、映画自体は、見てきた人の話を聞きますと、非常に感動したと、ある議員のごときは、涙ぼうだとしてあふれてとどまるを知らなかった、そういうことを述懐した議員もございました。自民党だから特にそういうふうに感動したのかもしれませんが、私も自分で見たわけじゃありませんが、これはかなりきき目があったんじゃないかと、そういう気がいたしております。
  137. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そのほかの二、三にも、たとえは――通産省にこまかく伺いたいんですが、「天狗党」とか、あるいは「荒い海」、これは実際に四億二千五百万円が実際の申請額になっている。ところが融資は、三億四千万円もこれは融資されている。あるいは「富士山頂」、こういうような問題については、実際に日活が製作したのではなしに、独立プロが製作をした作品であるにもかかわらず、ただ書類申請で融資が行なわれている。こういう点におきまして、一つ一つあげていけば時間がありませんのでやりませんけれども、こういう問題が、製作の融資の問題において非常に疑念に思われるところが数多くあるわけです。こういう点について、たとえばいまあげました三つの作品についても、製作費、あるいは融資、あるいはどれだけ返金が行なわれているかどうか、この問題について具体的に説明を願いたいと思うのです。
  138. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 「荒い海」という作品につきましては、製作費が四億二千万円ということで申請が出されておりまして、これにつきまして三億四千万円の融資が行なわれたことに相なっております。この場合、担保としましては日活の本社ビルを徴しております。すでにこのうち一億四千万円が返済を受けておりまして、最終的には四十六年の八月をもって償還が終わる予定でございまして、順調に償還されつつございます。その他の二作品につきましては、別途資料をもって御説明申し上げたいと存じます。
  139. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まああとでそれじゃ資料をもらうことにしまして、通産省に伺いたいのですがね、今後の方針として、この輸出振興に対してどういう姿勢で取り組んでいくか、こういう問題を私は伺いたいと思う。あるいは、斜陽産業と言われる映画産業を、通産省としてどういうふうに行政指導し、盛り上げていくか、こういう今後の見通しについて私は伺いたいと思います。
  140. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) わが国の映画産業が斜陽の傾向にあるというととは、テレビの普及、あるいは昨今におきまするレジャー産業の発展等の影響を受けまして、これは否定すべくもない現象になっておる次第でございます。したがいまして、今後映画産業をさらに立ち直らせるためには、映画界自身の積極的な努力に待つべきところが多々あるかと存じますが、とにかく、いかなる方向にわが国の映画産業を再建するかという点につきまして、映画界全体のビジョンの統一をやりまして、これに政府としても所要の援助を与えてまいりたいと考えております。特にこの再建にあたりましては、わが国映画の輸出ということが、きわめて日本の文化の宣伝、またわが国国情の海外における理解を深めるという意味から有効であろうと考えますので、これのためによい映画をたくさんつくること、さらにつくられた映画を海外によく宣伝をいたしましてこれを多数輸出できるような条件を整える、そういう方向で日本映画振興協会を中心に今後とも積極的に努力してまいりたいと考えております。
  141. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一点、映画業界の資本の自由化について伺いたいわけでありますけれども、映画産業がこの資本の自由化に対してどう対処していくか、この問題について伺いたいと思います。
  142. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 映画産業におきまする資本自由化の問題でございまするが、映画館はすでに第一種自由化を終わっておりますが、映画の製作並びに配給部門につきましての自由化をどうするかということは今後の外資審議会等の御検討を待つところであります。しかしながら、早晩来たるべき自由化に対処いたしましては、わが国映画産業の体質の改善、特に映画業界の再編成といったような点を中心に、国際的に見て優秀な企業が存立できるような基盤を整えてまいりまして、りっぱな作品をつくれるような体質、能力というものを拡充しておくことが先決であろうかと考えます。さような方向で、十分今後とも映画業界とも協力いたしまして体制整備を進めまして、自由化の条件を整えてまいりたいと考えております。
  143. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 映画問題の最後としまして、大蔵大臣に、入場税の問題ですが、これ常々問題になっておるのですけれども、また大蔵大臣も四十五年度の予算から積極的に取り組むと、こういうふうにも申されておったわけでありますけれども、やはり文化国家として、この入場料金を改定される意思ですね、あるいはどういうふうに具体的にこの入場料金の問題に取り組んでいかれるか、姿勢をお願いしたいと思います。
  144. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは映画ばかりじゃございませんが、入場料がいま課税最低限が三十円ということになっておるんです。これはどうも低きに失する、こういうふうに常々考えておるわけであります。ただ、入場税と申しましてもいろいろあるわけでありまして、あるいは競輪だ、競馬だとか、そういう種類のものについても入場税を課しておるわけでございますが、そういうものは別として、文化だとか、そういう使命を持った施設もまた入場税の対象になっておる。そういうようなことから、この三十円の限度はいかがなものだろうかと常々考えておるわけでありまして、お話のように、四十五年度はぜひともこの問題を解決したいと、こういうふうに思っておりましたが、諸般の都合上できなかったのです。しかし、何とかなるべく早い機会にこれを是正をいたしたいと、かように考えておる最中であります。
  145. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 なるべく早いということですが、もう四十六年度にはすっかりこれが改定されると、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  146. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一応、ただいまのところは、そういうことを考えながら、なるべく早いと、こういうふうに言っておるのであります。
  147. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、次に物価問題についてお伺いしたいと思うんです。  特に、最初に経企庁長官に伺いますが、四月一日に物価対策閣僚協議会が開かれて数々の協議が行なわれたわけでありますけれども、具体的に、どういうふうな点にもう着手されておりますか、この点について伺いたい。
  148. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) あそこでは、御存じのように、一つは金融引き締めの問題を取り上げ、それから一つは、今後におきますところの物価、賃金を含めた総合的なあり方の問題を議論し、それからまたもう一つは、いわゆる個々の対策について、従来多くの提言を見ておりますが、それらのものにつきましてさらにもっと実効的な方法によって具体化しようと。それにつきましては、もちろん、全内閣にわたることでございますから、関係各省と十分に連絡もとり、また関係各省の発意によって具体化をするということが必要であります。ただ、いわゆる従来の官庁作文に終わっては困りますので、閣僚会議を中心にしまして、できるだけひとつ政治的に、各閣僚率先して検討をしていただくと、こういう体制をしこうということで、それらの議論をいろいろしまして、できるだけ早い機会にそれをひとつ取りまとめてみたいと、こういうふうに考えて発足したようなわけであります。
  149. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 いつもそういうことなんですがね。この四月一日の席上においても、新聞を拝見しますと、特に宮澤通産大臣等は、物価担当官庁である経企庁は、各省がそれぞれ物価対策を打ち出すのを待っているんじゃなくて、企画庁自身でこの問題を提起するぐらいの強い姿勢で臨むべきであると。こういうふうに閣僚の中から声が出ているわけでありますけれども、もっと、私は、経企庁長官として、この物価問題に対して具体的に手を打っていく必要があるんじゃないか、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  150. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 全く私も同感です。そういう意味で、企画庁が率先してやると。まあ、いままでのように作文が出てくるのを待つという形ではない。ですから、率直に言いまして、企画庁のほうからこういうふうにやろうというふうな対策をむしろ呼びかける。しかし、これはいずれにしても各省が実行するべきことではございますから、やはり各省をはずして企画庁だけで一人相撲をとってもしかたがない、そういう意味で大いに議題も提供しようと、そういうつもりであれを開いたわけであります。
  151. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一つ長官に伺っておきますが、物価に特に関係の深い貿易の自由化の問題、あるいはまた輸入の割り当ての問題、あるいは関税政策、あるいは流通機構の問題、こういうことについての効果ですね、あるいは輸入割り当て等の政策の運用の問題等について、どういうふうなメリットをお考えになっているのかどうか。
  152. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) もちろん、輸入の自由化ということも一つの大きなポイントでございますし、また、輸入が自由化されないまでも、輸入のワクをふやすとか、あるいは緊急輸入をするとか、いろいろ輸入については問題があります。また、御存じのように、ケネディラウンドに基づく関税の引き下げを日本はいま逐次進めておりますが、それをもう少し積極的にやる必要のあるものがあるんじゃないかと、こういうようなことでございます。それで、従来の閣僚会議と違って、そういうものにつけても、どんどん積極的に輸入をやるならやるでもって申し出ようと、各省が自分の判断だけで輸入をするというのでなくして、もっと輸入してもらったらいいんじゃないかと、こういうようなところまでいきたいというのが私の気持ちであります。そういうふうに運用してまいりたい。そして、極端な品不足に対処するというようなことから、さらには、ある意味におきまして、国内の産業について刺激も与える、そして近代化、合理化を促進する、そういうことにもなるわけでございます。まあ、われわれとしましては、やはり競争条件というものが整備されませんと、どうもいわゆる原価の高い企業がそのまま温存されがちである。そういう意味におきましては、やはり適度な輸入というものを活用いたしまして、そうしてできるだけ効率化するところへ持っていかなければならない。それがすなわち物価政策にも寄与すると、こういう考え方に立っています。
  153. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 農林大臣に農産物の輸入の問題について伺いたいわけでありますが、四十六年末までの自由化の方針についてはわかるわけでありますが、それ以後の残された約四十品目ですか、酪農品とか、あるいはノリ、あるいは魚類等の問題について、まあ国内農業の、あるいは産業の保護という政策的な目的がいろいろ考慮されますけれども、物価安定の立場と、あるいは総合農政の推進の観点から考えて、この問題をどういうふうに処理をされていくか、自由化に踏み切っていくかどうか、このことについて伺いたいと思います。
  154. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 一昨年の閣議決定、それからその後の閣僚会議等で、昭和四十六年末までに三十一品目の自由化を行なうという方針を決定いたしましたことは、御存じのとおりであります。そこで、残余の輸入制限品目の具体的な取り扱いにつきましては、いまお話のありましたような、今後の農政の展開に支障を来たさないように配慮しながら、慎重に事を進めてまいる考えでありますが、物価の安定ということは緊急な要務でございます。同時にまた、一般の生産物が消費者との合意の上で大体価格というものが決定されることが望ましいのでございまして、実は私どものほうでかかえております農業の国際競争力等を考えてまいりますときには、いろいろ困難もございますが、政府としてきめております大局的方針を尊重しながら、しかも国内の生産については生産性をあげて競争力を維持することに最善の努力を払いながら、なるべくすみやかに目的を達成するように努力をいたしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  155. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一点伺いますが、この自由化の問題にからみまして、国内の、特に酪農品等についての問題を一つ考えてみましても、実際にこの自由化の問題が産業保護なのか、あるいはまた消費者保護なのか、どの観点に立って農林省としてはお考えになっているか、これはもちろんわかる問題でありますが、あるいはもう一つは、流通機構の問題ですね、この農産物の流通機構の問題等に対しても、農林省はもっといろいろ考慮されたほうがいいんじゃないかと、こういう私は意見を持つわけでありますが、この点について……。
  156. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 酪農につきましては、御存じのように、不足払い制を採用いたしまして、いま総合農政の展開に伴いまして――こちらへ参る前にも、いろいろ地方の農家の人々の陳情を受けてまいったのでありますが、とにかく百五十万トンという大きな生産調整をやる、そうしてそれから後に私どもは何をやるべきであるかということがいま農家の方々の一番の大きな問題でございます。で、将来性のありますいわゆる選択的拡大の目標を立てておりました酪農、畜産等につきまして、私どもはかなり多くの適地をわが国にも持っておると存じまするので、そういうことについて奨励はいたしますけれども、いまお話のございました価格の問題でございます。したがって現在は、先ほど申しましたように、国際競争力にかち抜けるような、そういう価格体系ができるようにするためには、現在のところは、わが国の酪農についてはいわゆる過渡期であろうかと存じておりますが、これはやはり国内において飼料作物あるいは草地の造成等いたしまして、この生産性を上げることにまず努力をする。したがっていまお話しのございましたように、消費者を目標にするのか、生産保護が目的であるかというお話でございますが、私どもといたしましては、やっぱり全体の国民経済の中において、できるだけ消費者に納得のいかれるような価格で生産するために、あらゆる努力を払いまして、生産コストを下げて競争力を増すような努力をしなければならないと思って苦労しているわけであります。  もう一つお話しのございました流通機構につきまして、これは私どももかねがねいろいろ苦労してやってまいりましたけれども、いまのところは不足払い制で、そしてまた、メーカーが限られております。しかし、まだ一般市乳の販売方法等につきましても、いろいろ問題があるようでありますので、農林省はそういうことも一切くるめて、流通機構の改善について鋭意努力をしてまいるつもりであります。
  157. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 大蔵大臣に伺いますが、この自由化と関連しましていろいろ考えられる問題は、関税政策の問題じゃないかと思います。大蔵大臣としまして、この当面する物価問題解決という点から、この関税政策をどのように運用されていく方針であるか。あるいは物価に与える影響が、この関税との関係ですね、これをどういうふうにお考えになっているか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 関税には財政関税、保護関税と二つの種類がありますが、財政関税につきましては、財政収入を上げるという趣旨でこれを賦課しておるのでありまするので、保護関税とは多少性格を異にしますが、保護関税につきましては、国内の産業をなるべくこれを強化いたしまして、関税を引き下げてもこれに対抗し得る、こういう生産性の向上政策をとりながら、これに対応しながら関税は下げ、そして国内の物価に寄与さしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。ただ、自由化という問題がいま進行過程にありまして、さあ自由化をいたしますというその対策として、場合によると逆に保護関税を引き上げることが有効な手段であるというふうに考えられる場合もあるのであります。そういう場合はなるべく少なくいたしたいと、こういうふうには考えておりまするけれども、しかし、やむを得ずそういう場合をとることもあり得る。しかし、これとても自由化の、国内の物価政策というようなことを考えますると、自由化対策としての臨時的、経過的措置、そういう性格のものにいたしたいと、かような方針であります。
  159. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 企画庁長官に伺いますが、先日の新聞にも報道されておりましたし、あるいは本日行なわれたのではないかと思いますが、物価の安定政策会議の提言ですね、この内容について具体的に伺いたいと思います。
  160. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これは、ちょうどいま物価政策会議におきまして、政府に対して提言が出されようとしております。それで、この問題は、実はごく二、三例示的に伝えられたことがあるのですけれども、まだこれは表向きになっておりません。それで、私どももこれを受け取りましてから、早急に検討して、閣僚会議等にも議題にしたいと、こういうふうに思っておりまして、目下のところでは、私どもからはまだ何とも申し上げられない段階になっております。
  161. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ現在の段階ではそういう状況だそうでありますけれども、いろいろ提言、総理の諮問委員会で、中山氏だと思いますが、具体的ないろいろ提言、これはいろいろ、世論だと思うのですが、こういう声が出てくると思うのですが、実際に行政介入と物価の関係が非常に私は重要な問題ではないかと思うのであります。実際に物価の問題いろいろ考えてみましても、直接介入という、実際に政府が価格を直接決定したり、あるいは認可をするという、こういうものが物価の約一九・五%を占めている、あるいはまた間接介入が、双方合わせますと約六割までがこういうように物価に与える影響がある。こういうようにいわれているわけでありますけれども、こういう行政介入と物価の問題について、企画庁としまして、実際この行政指導が産業保護なのか、あるいはまた消費者保護の立場に立っての考え方なのか、この点についてのお考えをお聞きしたいと思うのです。
  162. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) まあこれはケース・バイ・ケースでほんとうは検討しないといかぬものもあると思います。と申しますのは、国会なんかでも、介入をやめたために上がったじゃないかというような議論も出てまいりまして、これはよく現実を認識して十分取り扱いをして検討してみたいと、こう思っておりますが、概して言いますと、率直に言いまして、いわゆる本来価格政策の見地からの介入でなくて、ほかの行政目的から介入しているというような場合におきましては、とかく、むしろ価格とか物価とかいう問題を無視して運用されがちな例も多かったと思います。今後はそういう点を、やはり今日の物価政策の重要性にかんがみまして、物価という観点からあわせてこれを検討するようにしなければならない。その運用自身を改善するというものもございましょう。また介入自体がもう時期的にも必要ないというようなものもあろうと思います。ここいらのところは、ひとつよく検討してみたいと思っております。
  163. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 農林大臣、けっこうでございます。  それでは、国税庁長官に伺いたいのですが、具体的に一つの問題として、私は酒の問題についてお伺いしたいと思います。  酒類等については、酒税法に基づいて、まあ常に酒税確保の見地から製造及び販売について具体的にいろいろ免許制度がとられているわけでありますけれども、実際に卸売りあるいは小売り販売業の免許等の付与の基準は、どういうふうな基準になっているでしょう、これについてお伺いしたいと思います。
  164. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 小売り業の免許につきましては、地域ごとに等級を分けまして、それによりまして、その等級ごとに最低の販売見込み数量とか、あるいはその地域における他の販売業者の数であるとか、あるいは消費者の数であるとか、かようなものを幾つか客観的に想定をいたしまして、具体的に免許をいたしておりますが、実際問題といたしまして、昨今は年間約二千件程度の新規免許をいたしております。現在免許を受けました小売り業者数は十四万件に達しております。相当弾力的な運営をいたしております。  卸売り業につきましては、これは経過的な問題がございまして、現在全国で五千九百軒ばかりの卸売り業がございますが、これは非常に数としては多過ぎるとも言える点がございまして、いずれも中小企業でございますので、現在原則としては新しい免許はあまりおろしておりません。むしろ構造改善の事業を営ませることによりまして、卸売り業そのものの構造改善をはかっていくという方向で現在は進んでおるというのが実情でございます。
  165. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ長官の話によりますと、相当ふえているという話なんですが、現実にこの小売り販売業の新規参加というのは非常に困難になっているわけですね。したがって、自由競争による合理化とか、あるいはいろいろ近代化が著しく妨げられている。こういう具体的な例としまして、私は、小売り免許を取るのに小売り販売業の組合の何か推薦がないと認可がおりない、こういうような話を聞くんですが、こういう事実はございますか。
  166. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) この小売り業関係が、免許についてそういうような主張をしていた向きもございます。しかし、現在小売り免許をおろす際には、その地域の組合の意見は聞くことにいたしておりますが、推薦がなくとも、あるいは意見が反対であっても、客観的にその地域が消費量として十分に免許にたえるものであるというときは、積極的に免許をおろしているのが実情でございます。実際問題として、もし小売り業者が反対していれば免許をおろさないということになりますと、おそらく一軒もおりないという事態が起きるんじゃないかと思うのでございまして、現在二千軒も毎年免許をおろしているという点は、やはり実情に即して運用している点をあらわしているのではないかと、かように考える次第でございます。
  167. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ方面によっていろいろあるとは思いますけれども、実際に、たとえばいまの長官の意見のように、組合の意見を聞くと、それが大きな作用を及ぼすということになりますと、これは公取委員長に伺いたいんですが、独禁法の八条一項三号にあるこの「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。」というこの独禁法に私は触れるんじゃないかと、こういうふうに考えるのですが、この点についての見解はいかがでしょう。
  168. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) すべての業種を通じまして、原則としてさようなことを、たとえば組合なり同業者の団体なりがいたします場合に、これが非常な拘束力を持っておるような場合にはさようなことになると思います。ただ、特別の組合等につきましては、独禁法上の例外の扱いということが法制上認められておるわけでございます。
  169. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 国税庁長官に伺いますが、一つの例をあげますと、秋田県で生活協同組合、これが小売り業の販売免許の申請をしたけれども、返ってきた理由が、距離が百メートル以内であるからとか、なかなかわけがわからないような認可がおりないという通達書、こういうものが来るわけでありますが、何か特別なやはりそういうふうな締めつけというか、あるいは推薦組合の強硬な意見、こういうものがこの酒の問題についてはとり行なわれているのではないか。特にこの生協の販売小売り免許の申請等については、国税庁として根本的にどういうふうにお考えになっているのかどうか、これについて伺いたい。
  170. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 販売先が特定のものに限られているものの場合には、これに免許を付与いたしましても、消費者の購入先が限定をされますので、そういう意味からは、小売り免許の場合にかなり難色があるというのは事実でございます。しかし、最近はいろいろ地域の実情その他により、弾力的に対処するように指導をいたしております。現在までに消費生協で免許を受けたものもございますけれども、これはかなり限られたものであることは事実でございます。
  171. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう時間が限られておりますので、少しはしょって申し上げたいと思います。  酒の場合は、これは自由価格ですね。ところが末端の小売価格あるいは卸売りの値段、こういうのが大体きまっているんですね。これは行政指導価格というのが実際にあるのかどうか、あるいは建て値というのはどういうことなのか、これについて伺いたいと思います。
  172. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 御承知のとおり酒類につきましては、非常におそくまで公定価格が存在いたしておりました。この公定価格を何とかしてはずしまして自由価格に移したいということから、御承知のとおり昭和三十五年に酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律を改正いたしまして、ここに基準価格という制度を導入いたしまして、公定価格をそれと引きかえにはずしました。さらに基準価格そのものも、経過的な措置といたしまして、これをはずしまして、現在価格についての統制というものは一切ないわけでございます。  ただ、ただいま申しましたように、酒税確保の必要がある場合に、基準価格が設けられるということにいたしておりますが、現在これもつくっておりませんし、それから級別のあります酒につきましては、下級の酒が実際上コストがより高くて高く売れてしまうということでは困るので、制限販売価格という制度がやはり同じ法律に設けられております。それらが価格統制の根拠でございまして、それ以外には現在は一切国税庁に価格に関する権限はないわけでございます。  ただ、長らく統制価格のもとにあり、しかも、それをはずした場合にも、一時に価格が多様化すると非常に困るというので、統制価格をはずす条件として基準価格をつくるというようなことをいたしました関係で、いま現在ごらんいただきますと、ことに清酒等におきましては、びんも一定いたしておりますし、内容もほぼ同じでございますので、自然に値段が同じところに落ちついているというのは、これは事実でございます。ただ、それでも銘柄によってかなりの格差が出てまいります。二級酒でも二百円見当の差額は、幅は出てきておると私は思っております。そういうことで、私どもといたしましては、できるだけ銘柄の実質によって差がついてくるように、そしてそれによって自由な競争ができるようにということで指導いたしておりますが、何と申しましても、長い伝統とくせがついておりますので、まだ十分に価格展開が行なわれる段階まで至っておらないというのが実情でございます。
  173. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 酒の中小メーカーが酒を販売するのに、国税庁――税務署ですか、に価格を届けることになっているわけでありますが、何か中小メーカー等が、少し安い価格で売らないと実際に企業はもたない、こういう関係で中小メーカーが税務署のほうに届けると、少し低いと全然受け付けない、見向きもしないというような、そういう例が実際にあるというんですが、この問題についてはいかがですか。
  174. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 現在清酒につきましては、その販売価格について建て値を届けるということをやっております。これは届け出でございますから、拘束はないわけでございますが、まあ先ほど申しました多年の沿革で、この届け出で何か価格の承認を得たような気持ちになっている面もなきにしもあらずでございます。ただ税務署といたしましては、価格政策を実質的に行なうということではなくて、一般的に酒税確保の見地から、コストを割るような価格というものはやはり適正ではないんではないかという忠告をいたしておることは事実でございますが、それで拘束しているということはないと思います。
  175. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 公取の委員長に伺いますが、まあ私たちが酒を小売店でいろいろ求めますと、どこへ聞いても、大体特級酒というのは千百七十円で価格が一定なんです。どうして下がらないんだろうといろいろ考えるわけなんですけどね、これはもう下がらないようになっているという、こういう通念だそうなんですね。これは、大手メーカーが価格を協定をしているのか、どこで価格協定しているのか、もしこういう事実があるとすれば、これは独禁法の第三条にひっかかるんじゃないかと、こう私は考えるんですが、この問題についていかがでしょうか。
  176. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) おっしゃるとおり、もしたとえば、大手メーカー等がお互いに協定その他何らかの形で通謀いたしまして、お互いに値段のつけ方を拘束し合っているとすれば、独禁法第三条の問題が起こってくると思います。  それから、現在酒類業組合法等に基づきまして、酒は再販売価格維持の商品としては法律上はなっておりますけれども、実際は、そういうことは大蔵大臣のほうで認可しておりませんから、再販価格というのはないはずでございます。したがって、もし再販というようなことをしているとすれば、それも問題になるかと思います。しかし、私どもは、先ほど国税庁長官の答弁のように、実際にメーカーが自分のところの製品についてこういう値段でひとつ小売りは売ってほしいという希望を言っているということは承知いたしておりますけれども、その値段で必ず売ってもらわなきゃ困るというふうにやっているというふうには実は聞いていないのでございます。
  177. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は公取委員長にいろいろ調べていただきたいと思うんですがね。特級がやはり同じように価格が一定されているということは、消費者としてはなかなか納得できないものだ。あとで具体的な問題で私は申し上げますけれども、ちょっと中小メーカー等が企業内容が悪いとか、いろいろな理由をつけられて、消費者に直接売ろうとしても、売る権利は与えられているんだけれども、実際売れない。そういうところで、どこかに価格の調整、あるいは圧力が加えられてしまっている。こういう点は私は非常に酒の問題に対しては疑問を持つんです。したがって、この特級がデパートへ行っても、あるいは小売り店を何軒かいろいろ調べてみましても、私は決して小売り店が悪いとか、いいとかいう問題じゃなしに、もう少し自由競争したほうがもっと酒は伸びるんじゃないか、私はある意味じゃ、こうも思うわけです。この問題について私は公取委員長お願いしたいと思うんです。
  178. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 基本的にはただいまの御発言のように私も考えておりますし、国税庁長官が先ほど答弁いたしましたような、何やら沿革とか何かがあるかも存じませんが、できるだけ自由にして、公正な競争が酒類業界においても行なわれて、国民一般消費者のためになるようになっていくのがほんとうであるというふうに考えますし、また、御発言のように、私どももさような事態になりますように努力いたしたいと考えております。
  179. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一つ公取委員長に伺いますが、私は中小メーカーが非常に酒造業界では困っている。これは私は非常に聞くわけです。あるいは中には小売り店も、そういう点でいろいろな価格があって困っておる。特に中小メーカーは、広告あるいは宣伝力が非常にない、あるいはまた販売力が非常にないために、大手メーカーにどうしてもおけ売りで売らなきゃならない。こういうふうになっているわけですね。そうしますと、大手メーカーは、その中小メーカーからおけを、できあがっているものそのまま買ってきて、ただ、びんに詰めるだけで、そうして酒を売っている。こうなりますと、ぴんと中身がずいぶん違うんじゃないかと思うんですね。中小メーカーでつくった酒をそのまま持ってきて、ただラベルを張って、大手メーカーが販売力、宣伝力にまかせて酒を売っている。こうなると酒もますますうまくないはずなんです。こういうことは、私は独禁法の不当景品類及び不当表示防止法に当たるんじゃないか。こう考えるわけでありますが、この問題についていかがでしょう、公取委員長
  180. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) おけ買いということが実際問題としてあることは承知いたしておりますが、私どもの聞いておりますところでは、いろいろそういう形で原料になるお酒を仕入れて自分のところの責任において自分のブランドをつけて、そうして出しておるというのが通常の例であるというふうに聞いておりますし、したがって、その表示は、まさにその表示をつけた会社の責任においてなしておるものでございますので、中身は、それはいろいろなところに、いわば下請さしてつくっておるかもしれませんけれども、不当表示の問題は、さようなものについてはないと存じます。  それから、また、あるいはこれは国税庁長官のほうがお詳しいかもしれないのですが、全然現品も見ず、物も調べず、何やら遠いところでつくっているところが、かってにその店の名前のラベルだけを送ってもらって、ぽんぽん貼って売っていると、かりにさようなことがあり得るかも存じませんけれども、その場合におきましても、お互いの間でどういう契約ができておりますか、少なくともそのブランドの品物であるということで売る。そして、それはその会社の責任においてやるんだ、お互いにやり、また酒税なんかどっちで納めておるか存じませんけれども、さようなことであれば、やはりいきなり不当表示という問題には私はならないのではないかと思っておりますが、なおよく具体的な問題について研究をいたしたいと思います。
  181. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 国税庁長官に伺いますが、酒の――これは酒論議。特級とか、あるいは一級、二級ですね、これをきめるのは何を基準にしてきめているか、これを伺いたいのですが。
  182. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 税法におきましては清酒特級の基準度数は十六度、それから一級は基準度数が十五・五度、二級が十五度、こうなっておりますが、もちろん度数は二級でも十六度のもので出すことはできますが、その場合は税率が加算されるという考え方でございますので、一応特級、一級、二級は度数が若干ずつ違うということが前提にございますけれども、その主たる点は、やはり味の問題でございまして、これはすべて、いわゆる官能検査ということによることになっております。そうして特級、一級に指定を受けたい業者がそれに申し出まして、それに対しまして国税局の付属機関として酒類審議会というものがございます。中央に中央酒類審議会、地方に地方酒類審議会がございまして、そこで学識経験者九名以上が厳重な官能検査をいたします。その結果、優良であると認められたものが特級になり、佳良であると認められたものが一級になる。かようなことになっておりますが、この官能検査というのは決していいかげんなものではございませんで、非常に修練した人になりますと、普通の人間の何十倍、何百倍の検査能力が出てくるものでございます。私どもがやったのではこれはわかりませんが、審議会の官能検査というものはそれだけの実効性のあるものでございますので、それで、特級、一級と指定されたものは、そのおけ全体が特級酒として指定を受けまして、そこから出荷する場合は、特級酒として出荷される。かようなことになっているわけでございます。
  183. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ時間がありませんので深くいきませんけれども、まあアルコールは、十六度であれば一級でも、二級でも、特級でも入る。あとは五官で判断するという、こういう非常に私は中身の問題についても不安な問題があると思うのです。ここへ酒を持ってきて二級か一級か味わってくれと言ったら、だれもわからないと思うのです。こういう点はもう少し改良されたほうがいいのじゃないか、こう考えるわけですけれども、どうです。
  184. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) 御承知のとおり酒については従量税制度をとっておりますので、たとえば安い酒を売っている場合には、その中に含まれる税額が非常にウエートが高くなります。高い酒を売りますと消費税のウエートが非常に減るという問題がございます。そういう意味で、いわゆる級別制度というものを設けまして、この特、一、二というような級別にし、級別ごとに税率を変えまして、高い酒を売るならば高い税金を納めるという形にいましておるわけでございます。ですから、将来の対策として一つの考え方としては、いわゆる従価税制度をとれば、この問題は解決をするわけでございます。ただ、従価税制度は課税上非常にめんどうな問題が多いために、いまとっております級別従量制度というのは、実は大ざっぱな従価税制度としての機能を持っているわけでございます。これは将来の問題としては、確かにその価格に応じた課税という方向を検討する必要があるかと思いますが、現在のところでは、この級別制度はしばらくやめられない。でないと、高い酒に対する負担が非常に軽くなるという問題が解決しないわけでございます。
  185. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは大蔵大臣に伺いたいんですが、中小メーカーが非常に経営の悪化が報ぜられているわけです。それで、直販制度を認めるべきじゃないかと、こういうふうな意見も出て、実際に生産者から消費者に直接売ろうという制度もいろいろ何回かやってみた例はありますけれども、いろんな圧力がかかってなかなかできない。神奈川でも、あるいは秋田でも、あるいは福島でもこういう問題が起こっているわけです。こういうことについてはやはりもう少し自由競争、あるいは小売り業者ですら小売り――消費者に直接に売ろうとして安い酒を引き入れてきても、いろんな圧力が加わってなかなかできないと、こういう問題は私はもう少し自由競争をしっかりさせるべきじゃないか。あるいはもう一つは中小企業の酒造メーカーに対しての振興対策を、ただその制度だけではなしに、販売の面においての構造改善が必要じゃないかと、こういうふうにも考えるわけでありますが、この点について大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  186. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまでも中小メーカーでかなり直販をいたしておるわけです。三割以上のものがそういうやり方をやっておりますが、ときどき弊害のあるような、いまちょっとお話しの出た古市酒造というようなこともありますが、そういうものは別といたしまして、直販によって安くコストをやっていくということは、これはけっこうなことじゃあるまいかというふうに考えております。それで、清酒業者につきましては、今回自由米制度の導入に伴いまして、米の割り当て制度がなくなると、そういうものに関連いたしまして酒造権というものの担保価値がなくなるんです。そうしますと、金融上支障があるので、これに対しまして援助をしなけりゃならぬというので、今回法律案も提案をいたしまして、これが対策をお願いしておりますが、酒の販売の方面につきましては、ただいまいろいろ御意見も承りましたが、まあそれらの御意見等も参考といたしまして、なるべくこれがコストを安くやっていけるようにという方向に努力をいたしたいと思いますが、これという具体的な考え方はただいまこの段階では持っておりませんでございます。
  187. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 じゃ、最後に国税庁長官に伺いますが、新聞報道等によりますと、酒が一級酒で二十円程度値上げになると、こういうふうに報道されているわけでありますが、当然値上げが新製品という名目でとか、あるいはメーカーが個々に値上げをするというこのプライスリーダー、こういうふうなやり方は国税庁としては私は黙認していくつもりであるのかどうか、もう少しこの値上げ等の問題に対しても自由に競争ができるように、いわんや米が自主流通米で自由な中でありますので、もう少し私は上げるよりも下がるのがほんとうじゃないかと、こういうふうに考えるわけでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  188. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) ただいま大臣が申し上げましたように、清酒につきましては現在自由流通米を使うということになりまして以来、五ヵ年間を目途として完全な自由化のために一種の規制をやっております。その規制下において、その規制を奇貨として一斉に値上げをするようなことは、私どもは権限はございませんが、極力これはもうやらせない。もしそういうことをやれば規制自体を考え直すという強い態度で臨んでおります。ただ御指摘のように、最近自由流通米を使って、非常に米を多くみがいて昔風のいい酒をつくるというようなことをやっておるものもございます。そういう意味で、実質的に価値の高い新製品をつくったもの、それが旧来の銘柄と違って価格が高くなったり、あるいは安くなったりする、こういうものについては、私どもは別にそれをどうするということは考える必要はない、実質に応じた価格がむしろ展開されていくほうが全体の自由競争のためにもいいんではないかと、かように考えているわけでございます。
  189. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 以上です。
  190. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上で三木君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  191. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、中沢伊登子君の質疑を行ないます。中沢伊登子君。
  192. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 初めにスモン病についてお伺いをいたします。  厚生省は最近スモン病の実態調査をされたようでございますが、その実態調査の結果をお示しをいただきたいと思います。
  193. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 厚生省の傘下にスモン病調査協議会というものをつくっていただきまして、甲野博士が協議会会長におつきになってスモン病の実態調査をいたしました。その結果の発表が昨年末にございましたが、おおよそのことを申し上げますと、四十二年、四十三年の二ヵ年間に全国の医療機関が診察した結果、スモン病ないしはスモン病の疑いがある者として報告になりました総人員が四千二百八十人でございます。この中でスモン病確実と思われる人数が二千六百六十九人、疑わしいと思われる人が千六百十一人と、こういうことになっております。なお、この四千二百八十人のうち、四十二年、四十三年の間に初めて発見された患者の方が二千八百七十七人、こういうようなことでございまして、総数の中で占める人員も、いま申し上げますように、昭和四十二年、四十三年、わりあいに新しい人が多いということであります。  それからもう一つの調査結果によりますと、いまの患者数のうちで、大体三十五歳以上の中年齢、さらにまた高年齢に進むに従いまして患者がよけい発生しておるというような、そういう結果が報告されております。一番多い年齢層では、六十五歳から六十九歳という年齢層が一番多いようでございます。また男性よりも女性のほうの患者の数が多いということも報告をされております。ことに主婦の方などで、一定の激しい職業についておられるという方よりも、家庭におられる主婦の方の患者数がわりあいに多いということも報告をされております。それから、ことに気がつきますことは、スモン病は非常に治療の困難な、なおることがむずかしい病気というようなことも言われておりますが、この四千二百八十人のうちで完全になおった方が百九十七人、五・七%、それからよくなっておる、快癒しつつある方が千七百九十三人で五一・六%、これによりますと、つまり半数以上の方々か完全になおっているか――これはまあ少数でございますが、しかし軽快になりつつあると、こういうことが報告をされております。ただし、原因でありますとか、あるいは治療法とかいうようなことにつきましてはなおまだ不明でありまして、いろいろの見方があるようでございます。
  194. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは生活実態はお調べにならなかったわけですか。
  195. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 生活実態は、この病気が病気でありますために、非常に家族の方々が悲惨の状態にあられる方が多いということは一般論として聞いていますが、報告の結果につきましては政府委員からお答え申し上げます。
  196. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 概要につきましては、ただいま大臣が御説明申し上げたとおりでございますが、お尋ねの生活の調査については、今回の疫学調査班としては実施いたしておりません。ただ先般の班会議において、今後生活環境の調査をやっていく必要があるのではないかという趣旨の提案があって、討議をされたと聞いております。
  197. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまも大臣がおっしゃいましたように、このスモン病の治療費が非常に高くついて、負担能力を越えているために、相当貧困で困っていらっしゃる方が多いように私も承っております。中には自殺をどんどんしていくということで、自殺が非常にふえている、こういう話も聞いているわけでございます。あるいは中には、なおらない病気だということで家出をしたり、離婚問題も起こったりしているようなことでして、非常に大きな社会問題にいまなりつつあるわけです。そこで、原因究明にもようやく力を入れかけたようではございますけれども、今年度五千万円の予算が組まれているようですが、これではたして十分研究ができるでしょうか、あるいは対策が立てられますか。
  198. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 研究費は五千万円に限っておるわけではございませんで、すでに前年から相当の予算を組みましてやっております。四十五年度におきましては一応五千万ときまったわけではございませんが、私どものほうでもこの種の奇病と言いますか、むずかしい病気で調査研究をいたさなければならない幾つかの新しい病気もかかえておりますので、それらの研究費との権衡におきまして、一応いまお話がございましたような五千万円程度かという心組みにいたしておるわけでございます。
  199. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 聞くところによりますと、五千万円ぐらいの調査費ではチンパンジーも飼えないとか、モルモットも飼えないとか、いろいろなうわさが飛んでいるわけです。しかし先ほど申し上げましたように、非常に悲惨な、しかも足がしびれてきたり、視力が衰えたりするような病気ですから、早急にこれは研究していただきたい、このように思います。  それから、私の聞いた範囲では患者自身の経済の負担能力です、いま一生懸命に治療されると月二十万ぐらいかかる。国民健康保険でも本人の負担分が六万円ぐらい、その家族においては十万円ぐらいかかるということで、結局これはやり切れない、こういうような話を私も聞かされているわけです。そこで、最近ビールス説が出ているわけですけれども、まあこのビールス説というものは非常に微妙なものでございまして、一般には感染病だということで、赤痢やチフスのように患者に近づくと、すぐにうつるんじゃないか、こういうふうに普通思われるわけです。そのために患者が非常に家庭や周囲の者に気がねをしたり、自閉的になったり、あるいはあまりの孤独さから自殺をしたりするようなことになっていると思います。そういうわけでスモン病ということで共同社会からつまみ出されるとしたら、これは人権にもかかわる問題だと思います。どんな病気でもそうですけれども、特に初診の対策が一番必要でございます。初診段階であやまってしまいますと、これは取り返しのつかないことになります。そこで、もしもビールス説というようなものがあるならば、スモンらしい患者、そういう患者を見つけたらすぐ保健所へ連絡させるようにしてはどうか。その後の診断でスモン病だということを認定したら、健康保険にこだわらずに健康保険のワクを越えて治療させるようにするのが、当然ではなかろうかと思います。第一、厚生大臣は健康保険の給付だけでスモン病の治療が可能だと考えられますか、いかがですか。
  200. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 可能の場合もあるし、また、いまお話がございましたように、非常に患者負担が多くて困難をされている方々も多いことと思います。ありていに申し上げますと、いまスモン病というものはむずかしい病気ではありますけれども、必ずしも結核でありますとか、あるいはまた精神病患者、さらにはまた、らい患者のように、何といいますか、反社会的な要素を帯びておるものということにも断定をいたしておりませんので、したがって、公費でこれだけの病気を対象にして診療するという制度は、なかなか確立いたしにくいところでございます。ガンのようなものでも、患者にとりましては非常に大きな負担でございますけれども、研究には力を入れておりますが、公費負担の制度をとっておりませんことは御承知のとおりであります。そうではありますが、いま中沢さんからお話のとおりの悲惨な家庭の状況もございますので、研究費の中におきまして薬剤費のごときものは、実際はまかなっておる。したがって、本人あるいは家族の負担というものも、さような限度におきましてはできるだけ研究費の中でかぶる場合もある。これは大蔵大臣がいらっしゃいますからそれ以上のことは申せませんが、しかしそれはそれといたしまして、大蔵大臣も総理大臣も、このスモン対策については研究費のほか、いまお話のような見地から何らかの対策を考えてみたらどうかという、たいへん理解のある話もございますので、私も、それに対する対応策をいませっかく考えておる段階でございます。
  201. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 このほかにカシンペック病とか、ちょっと名前も覚えられないようないろいろな原因不明の、しかも治療方法もさらに不明のような病気も最近起こっております。このようなときに常に後手に回っているような厚生行政に、私は疑問があると思います。特殊病の場合で、医学上の対策も未確認で、患者負担が多過ぎるものは、特に治療費を見るのが私は当然ではないかと思います。スモンの場合、健康保険のワクを越えて――これは健康保険ですと使われる薬がきまっておりますから、そのワクを越えて、奇病でもあり、不可抗力で発生する病気ですから、治療方法等の明らかになるまでは治療費や生活費のめんどうを見るべきだと、私は思います。特に、大蔵大臣にもお願いをしたいのですけれども、これはある県では、自分のところ単県で一千万円の予算を組んで、薬を与えている県すらいまございます。救済措置をほんとうに考えていただきたい。このように考えますので、大蔵大臣からもひとつ御答弁をいただきたい。
  202. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) スモン病につきましては、先般来衆参の委員会でよくお話を承り、きょうは中沢さんからも、その非常に重大な問題であることを御指摘を受けたわけでありますが、厚生大臣からもお話がありましたように、この種の病気をどういうふうにするか、まずその原因を究明することが先決だというので、特別調査費――厚生省にありますが、いままで六千万円あったわけです。これを五千万円ふやして一億一千万円にして、ひとつスモン病対策を至急にやろう、これをまず急いでいただきたいと思います。それから同時に、ただいま厚生大臣からお話のありましたように、総理大臣も非常に心配をして、何かこれは臨時的な対策はないものか、検討せよと、こういうお話でございます。そういうこともありますので、十分厚生大臣相談をいたしまして、何かいい対策がないか考案をしてみたいと、かように考えます。
  203. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど厚生大臣がおっしゃいましたように、厚生省の中にスモン研究協議会ですか、こういうものがあるようでございますから、それがどのような構成になっておりますか、それをひとつ伺いたいのと、スモン病の外的要因として、先ほどおっしゃいましたように、年齢が三十五歳以上というのが非常に多いとか伺いました。女子が非常に多いと、これもございました。そしてまた、私の聞いたところでは、女子の中で体重が五十キログラム以下のたいへんやせている人に多いと、こういう話も聞いております。それには代謝障害があるのだ、こういうような話も聞いておりますので、私は、そのスモン研究協議会の中に栄養学者というものもひとつ入れる必要があるのではないか、これはたいへんしろうとの考え方ですけれども、あるお医者さんがそういうようなことも発言をしておられました。それですから、今後このスモン研究協議会を通じて、さらに一生懸命にこの原因追求をやっていただきたい。いま大蔵大臣からも非常にいい御答弁をいただきましたので、どうかひとつこのスモン病対策については十分御配慮がいただきたいと思います。  それから、私のところにも、いま京都のほうで病院に入院をされている患者さんから一通の手紙をいただきました。視力が衰えているのですから、こんな大きな字です。――持っているかと思ったのですが、ちょっと忘れてまいりました。――こんな大きな字で便せんに一ぱい、何とか助けてほしい、こういうような手紙もいただいております。いま承りますと、公明党さんのほうにも、何とかスモンをやってくれ。こういう意見があるのだ、こういうことですから、ひとつ全力をあげて、このスモン病対策をやっていただきたいと思います。
  204. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) スモン調査研究協議会の構成とか、また、ただいまお尋ねがございました諸問題につきましては、ちょうどここに村中医学博士・政府委員が参られておりますので、答弁をしていただきます。
  205. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) スモンの調査研究協議会の構成でございますが、これは総員が四十四名でございまして、四つの班に分かれておりまして、申し上げますと、疫学班、それから病原班、臨床班、それから病理班。全国の大学、研究機関、衛生研究所、こういったところから神経学者、それから内科学者、それから病理学者、整形関係というふうな方々で構成されておりまして、ただいま御指摘の疫学調査の結果にも栄養と関係のある向きの患者の発生がある。この点についてのお尋ねでございますが、先ほど大臣がお触れになりましたように、このスモンの原因の中にはいろいろの学説が現在あるわけでございまして、その中の一つに、たとえばビタミンの代謝障害によるものじゃないか、あるいは栄養障害にも原因があるのじゃないかというふうに、御指摘の栄養問題が相当出てまいっておりまして、現在臨床班及び疫学班の中でも、そういう関係の専門家が解析をしたり、患者の診断をしているという実情でございます。なお、医学の中で栄養学の専門家をさらに分けて、そういう専門家を求めていることが適切かどうかという点につきましては、私のほうから協議会にもこういう点の御意見があったということをお伝えを申し上げたいと存じます。  それから、視力の衰えた患者についてのお触れがございましたが、今回の中間報告を聞きますと、以前は最終的には視力障害が伴って非常に不幸な転帰をとるということになっておりましたけれども、視力障害を伴う場合がある、多少従来よりは視力障害に対するウエートが軽くなったような、そういう臨床班の報告もございますが、私どもが見聞きいたします範囲内では、視力障害がくる場合には神経障害が相当強いということも聞いておりますし、早くこれらの治療法の確立ができるように心から期待をいたしているわけでございます。
  206. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは次に、物価問題についてお尋ねをいたします。  この問題も、当委員会でも専門的な立場からいろいろな方がいろいろな角度から質問をされておりますが、私は家庭の主婦でもございますから、ひとつ台所の問題を質問してみたい、このように思います。  まず、最近の生鮮野菜の異常な値上がり、このことはよく御存じのことでございますが、大根といえば、昔は女の子の足を大根足と、こう言いました。あるいは大根役者という呼び名もございました。あるいは主婦の一番粗食の代表としては、たくあんにお茶漬け、こういうふうなことがいままで言われてきたほど、大根というものは一番何か下級な野菜みたいに思われていたわけであります。ところがいまや、その大根を三分の一ずつ買ったり、大根はこわいというようなタイトルでNHKの「こんにちは奥さん」にも出てくるようになってしまいました。昭和四十一年の四月二十八日の参議院の本会議で、野菜生産出荷安定法案というものが提案をされました。そのときに私は質問をさしていただいたわけでありますけれども、その際に私はこう申した一言がございます。もはや夕食の食膳に一皿の大根おろしもぜいたくになったと、こういうふうに私は申した記憶がございます。それからちょうどまる四年経過をいたしております。ところが相も変わらず大根が高いどころか、大根がこわいとまで言われるような現状になってしまったわけです。消費者は精一ぱいのはかない抵抗として、この大根を三分の一ずつ買ったり、ジャガイモやタマネギの一個買いをしたり、あるいはキャベツを四つに割って四分の一ずつ買ったりしておるのが、いまの現状でございます。つい先日までは、月給日の前にサラリーマンが、お金が足りなくなったときは、大体、野菜のくずかごにジャガイモやタマネギがいつでもあるからライスカレーにしよう、こういうふうに言っておったわけですけれども、最近はジャガイモやタマネギが特に高いですから、月給日の前にはライスカレーなんてなかなかできないわけです。そこでこの間、神戸のほうで、ひとつ消費者グループに、いま現在ライスカレーをつくるとすれば、どれくらいお金がかかるか、こういうことを私は調べてもらいましたら、大体親子四人で、牛肉、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、ショウガ、ニンニク、リンゴバター、あるいはカレー粉、スープ、グリーンピース、これくらいの程度で合計が五百九十四円七十銭かかるわけですね。これを昭和三十五年のときのライスカレーの値段に比べてみますと、大体タマネギが当時の七倍、それからジャガイモが当時の四倍、ニンジンも相当高くなっておるわけですね。その当時のお米の値段が一キロ、八十七円です。いまはお米の値段が大体一キロその倍の百七十円から百八十円くらいになっておるわけですね。それじゃ月給はどれくらい上がったかいいますと、大体所得倍増政策でそれから二倍くらいにはいま月給もなっておると思いますが、そういう中で毎晩毎晩もしもライスカレーを食べたとしても、お米をのけて大体六百円の三十日間で一万八千円かかってしまう。ライスカレーだけ食べてです。その上にお米代が親子四人で一ヵ月二十キロとして三千円くらいかかるわけです。そうすると、これだけでもうすでに二万一千円、ライスカレーを食べるときは紅ショウガだの、花ラッキョウだの、福神漬けだのいろいろなものを食べるわけでありますけれども、そういうものはここに入っていない。そこで大体三十歳ぐらいのサラリーマンで平均賃金というものは四、五万だろうと思います。それで家族をもしもかかえておりますと、ライスカレーばかり一ヵ月食べてみても、収入の約半分がライスカレー代になってしまう。こういうようなことになるわけであります。これは、ほんとうに奥さん方が困っている現状でございます。これをひとつどうかお含みくだすって、一体、野菜生産出荷安定法案というものをせっかくあの四十一年に成立させても、その効果が今日までちっともあがっていない。この四年間は野菜はなるがままにしてあったのか、物価対策というものをちっとも持っていなかったのか。あるいは一歩譲って、政府は生産を安定だけさせれば、それでよいと考えておったのかどうか。これは多少片手落ちではなかったのではないか。こういうふうに思いますが、ひとつお考えをいただきたい。
  207. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話のとおり、冬野菜はたいへん出荷がおくれまして、これはもう何べんか申し上げましたように、私どものほうでも産地のいろいろな状況を調べてみましたが、やはり昨年の暮れ数回にわたる寒波、それからめずらしい五十日余りの異常干ばつ等によって、産地の出荷が非常に品薄になりまして、そういうことがたいへん値上がりをいたしました一つの大きな原因でございますが、御存じのように、施設もの、キュウリ、トマトなどは、したがって平常に出てまいって、値段もそう上がっておりません。そこで四月に入りますというと、端境期でもありますし、出回り期になりますので、ぼつぼつ値下がりしてまいっておりますが、ただいまお話のございましたような野菜生産出荷安定法等は、私はこれの活用によりまして、もっとこの生産とそれから出荷の調整がかなりうまくいくものであると思っておりますが、何しろいま値が上がって品不足になりましたときでありますから、いろいろ困難性を述べてもいけないことでありますが、私どものほうでは、御存じのように四十五年度予算でも野菜指定産地を六百十一ほどにふやしておりますし、これからはさらに生産を増強できるように、地方農政局を通じて産地に指導いたして、出荷をなるべく早くすみやかにやれるように指導いたしておるわけであります。
  208. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 まあ野菜は露地ものが、なかなか今度の天候なんかに左右されて出てこなかったんでしょうけれども、タマネギなんというのは指定生産地で指定野菜になっているわけですね。そういうものまでが非常に品不足になったということ、私はそこに問題があろうかと思います。そこで、今度の国会で卸売市場法というのを提出されるように聞いておりますけれども、これが流通対策になるわけですか。
  209. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 最初にお話のありましたタマネギにつきましては、これは急速に台湾の輸入幅を大ワクに広げまして、もうすでに第一船はこっちへ到着いたしております。したがって、野菜などにつきましても、あとう限り適時に輸入を弾力的に用いて、価格の安定に資そうとしております。  それからこの国会に提出をいたしまして御審議を願いたいと思っております市場法は、従来の流通機構についてかなりの改善を加えようという目的のために考慮いたしておるものであります。
  210. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 野菜は、最近はもう農産物ではなくって、工業品みたいなかっこうにもなりますね。もうビニールハウスの中に入れておけば、少しでき過ぎたかと思えば何かかぶせればそれで済むし、少し早く成長させようかと思えば、ビニールをそのままにしておけば早く成長するし、いろいろ野菜を生産する技術も進歩しているわけです。そこで、いまの流通機構の問題ですけれども、物価対策委員会でも私は言ったかもしれませんけれども、去年のちょうど十二月の十五日に、私、鹿児島まで参りまして、そのときにちょうど鹿児島のあるスーパーマーケットで売っていた白菜が、百グラム一円でございました。ちょうどそれは白菜の非常に最盛期でございましたけれども、二日ほどたって神戸に帰ってきて、市場に飛んで行ってみますと、やっぱり神戸ではその白菜が百グラム五円から七円いたしておりました。こういうふうなところに、私は流通機構の欠陥が非常にあるんじゃないかと思うのですね。どこでだれがどうもうかっているか、こういうことを考えるわけです。そこで今度の法律案でございますけれども、これは生鮮食料品の価格の安定にねらいがあるのだとすれば、大消費地なんかの周辺に集配センターをつくるほうが私はほんとうではなかろうかと思います。そして今度の法律案でございますけれども、その法律案を運用するにあたって、市場の構造やら、あるいは市場の持っている機能を近代的にしていかなければ、この法律案が出たからといって、決して私は価格安定のねらいが定まるものではなかろうと思います。たとえば大消費地における卸売り市場のもっと構造的な欠陥といえば、つまり卸売り市場がその大都会の中心にあるわけです、まん中に。そうすると、そこまで輸送コストが非常に高くつくのに、そこへ持ってこなくてはいけない。そうすると都会の中は非常に交通が繁雑ですから、またその交通事情を悪化させて、そうしてしかも交通事情が悪化したことによってまたコストが上がってくる。あるいはまたその需給調整の機能を果たす面からいっても、いままでは同日中にこれは処理をしなければならないというたてまえできております。そこで私どもは何べんか言っておりますけれども、保蔵設備をつくって、その野菜をきょう要るだけで、あと非常に大量に入荷したそれは、もうその保蔵設備に入れておいて、もういまエア・コンデショニングというのはすぐできるんですから、冷風を送って、そうしてそういうところで需給調整をやらなければ、たいして威力はないのではないか、このように私思います。それから今度の法律案では、何かせりをなさる人たち、仲買い人ですか、そういう人たちにも私どもは多少何か首をかしげなくてはならないような点がございますけれども、そういうものの改革もこの際近代的にやらなければならないのではないかと思いますが、その辺の御答弁をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  211. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今度改正しようといたしております市場法には、まず市場のそういう取引状態等について改善をするという意思を持っているわけでありますが、ただいまお話しのような、わが国の流通機構をいろいろ調べてみますと、確かにどうかなと首をかしげられるようなもの、また改善したいと思う点がたくさんございます。そういう点を、この間もここでどなたかの御質問にお答えいたしたんでありますけれども、私どもはこれはひとつ野菜だけではございませんで、いろいろなものの流通過程について、生産者というものの取り分がわりあいに少ないのに、消費者に渡るときにはかなりの価格になっております。この過程をもっと掘り下げて、生産者から消費者に渡る過程をひとつ追跡してみて、十分調査研究しなければならないと私どもは考えておるわけでありますが、農林省は生産だけやる役所ではございませんで、やっぱり消費者に渡るまでの過程もわれわれがやらなければなりませんので、そういうことについては一生懸命で努力いたすつもりでただいま考えておるわけであります。
  212. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで今度は、消費者保護基本法が一昨年できたわけですけれども、その附帯決議が五項目ついているはずでございます。その五項目について、「所要の措置を早急に講じること」というような希望条件がついているわけですけれども、その後のこの附帯決議の所要の措置というものは講じられつつあるのでしょうか、いかがでしょうか。
  213. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 昭和四十四年の十月でしたか、第二回の消費者保護会議というのがございました。そのときの論点がいろいろございますが、一つ関係法令をもっと整備しなきゃいけない、こういう問題がございました。これにつきましては、例の食品衛生法、こういうものを中心にいたしまして、その後、改正追加等を行なっていく、こういうことで、たとえばこの添加物製造業のようなものを追加しますとか、それからまた標示制度について任意制を義務制にさせますとか、あるいはまた添加物を規制する対象を広げまして、漂白剤等に広げるとか、まあそういうような各種のことをやってまいっておるようであります。またガスの事業法の改正あるいはまた例の農林物資の規格法、これはとうとう六十一回国会で流れまして、今国会にも提案をいたしております。そうしていわゆる表示の任意制を義務制に切りかえる、こういう提案をやっておるところであります。またその際に、消費者の教育をもう少し徹底しなければいかぬ、こういう問題がありまして、これは主として地方の消費者センター等で講習会をやったり、展示会をやったり、いろいろな方法を講じておりますが、今回また国民センター法案ができまして、この方面についても大いにやってまいらなければいかぬと、こういうふうに思っています。それから同じように苦情処理の体制、これもやはりセンターに関係することが中心になろうと思っています。それから地方団体の消費者行政を推進しなきゃならぬ、これも今度地方の行政センターをだいぶふやしましたが、特に窓口の処理体制について助成をする、こういうようなことを進めようとしております。それからなお不当表示や誇大広告につきましては、御存じの独禁法の運用をさらに強化をしてまいらなければいかぬ、これは進みつつあるわけでありますが、大体そういうような進行状況であります。
  214. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一つ再販問題ですね、この再販問題に対しては長官の態度はどうなんでございますか。
  215. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これは御存じのように、従来の経緯に照らしまして、例の独占禁止法で特に例外的に認められておるものもございます。まあ率直に言いまして、いわゆる普通の商品が株価のようにあまりまた上がり下がりするということは、これはこれで問題がある、こういうこともありまして、そういう例外があるわけです。しかし、そういう過去の制度になれて合理化が怠られる、あるいは非常にコストの高い企業を温存するための制度にそれが転嫁され、利用されていると、こういうようなことがあってはいかぬわけでありまして、したがいまして、独占禁止法におきましても条文によって常にこれを再検討するという仕組みにもなっておるわけであります。こういう点についてはこれは公取委員会ともよく連絡をとらなければなりませんが、常時監視をしなきゃならぬと、こういうふうに思っています。
  216. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私はその再販の問題は一部の、何といいますか、大メーカーですか、そういうところの何か保護政策みたいなことにいまはもうなってしまっているような感じを受けます。これからこの問題は、たとえば参議院の物価対策特別委員会では、まず一つ再販なら再販の問題だけを取り上げて一ぺん議論をしてみようかと、こういうような話もございますから、またこの再販の問題はそちらの委員会でこれからいろいろ質疑応答を繰り返していきたいと、このように考えております。  そこで、きのうからきょうにかけて各新聞がみな取り上げておりますのは、あぶない化粧品という題で石けんとヘアースプレーと、それから私の持っております――これは神戸新聞ですけれども、神戸の新聞には、昨日また今度は有毒のサツマイモが出回ったと、これは水銀がついているサツマイモだと。この間たしかジャガイモでは赤い色のついたジャガイモであって、これはさっそく回収をしたということでしたけれども、なぜいつまでもこういうふうなものが繰り返し繰り返し出てくるのでしょうか。このヘアースプレーなんというのは、業者も新聞でちゃんと発表されまして、あぶないからということでしたのに、やはりまた相当の数出ているわけです。こういうようなことも次々にやっぱり起こりますと、あまり私どもは知らずして使っていることが多い、こういうことですから、やはりこの辺で先ほどの消費者基本法の附帯決議のお話もありましたように、やっぱり厚生省がここら辺で非常な奮発をして食品法を提出されるようなお考えはないものかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。実は昨年からこの問題がだいぶあちこちで議論がなされました。前厚生大臣の斎藤大臣も、この場において食品法はまだ提出しないとは限りませんと、こういう御答弁が六月ごろにあったわけです。   〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 ところが、最終的には昨年の国会は非常にいろいろな問題があったものですから、とうとうその食品法も顔を出さないままに済んでしまった。この間テレビで拝見しますと、内田厚生大臣が非常に意欲を持ってこの食品法のことを、また提出しようかと考えられたらしいけれども、やっぱりいろいろな隘路があって、ひょっとしたらこれは出せないのではないかというようなテレビのニュースを私は承りました。一体どこにどんな隘路があって、どうしてこれができないものか、消費者を守るためには私はもう食品衛生法ではとってもいまの時代は追っつきませんから、何とかして内田厚生大臣の間にひとつ勇気をふるって食品法を提出していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  217. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) もう中沢さんよく御承知のとおり厚生省がやっております食品行政は、国民、消費者を衛生上の危害から防止するということを主眼といたしまして、食品衛生法でありますとか、あるいは栄養改善法というような法律を中心といたしまして行政をやっておるわけであります。チクロの問題にしても御承知のとおりでございます。ところが、まあ世の中で一番食品について問題がありますものは、そればかりでなしにインチキ食品でしょうか、ごまかし商品でしょうか、そういったような不当表示防止法を中心として、いまの公正取引委員会、あるいはまたものによりましては、食品以外におきましては通産省等も取り締まっておるような、そういう課題があり、またいまお話にございましたが、農林省の関係では農産物の規格法のようなものもございます。そこで、この食品法として一本にまとめることをいたしたといたしましても、はたしてそれでその行政能率があがるだろうかという問題が一方にありまして、その消費者基本法のような法律ができまして、附帯決議もいただいておるわけでありますから、それぞれの役所がそれぞれの立場において消費者の衛生的見地からの危害防止、あるいは消費者の価格面とか、あるいはごまかし商品の防止とかいうようなこと等々でその職責を果たしていくということがうまくできれば、まあそれでいいわけなんですけれども、しかしこれは私の意欲としては、できますならば、厚生省は、とにかく食いもののことで口から入るわけですから、単に衛生上の危害ばかりでなしに、その他、消費者が厚生省の言うことを聞いておれば間違いないのだ、こういうような形の法律なり、あるいは行政制度ができることが一番好ましいという、私は意欲、野心を持っております。ところが、実は法律だけをつくりましても、結局ぶち当たりますところは不当表示防止法についての行政的任務を果たしておる公正取引委員会からそれだけの人間を厚生省にいただいてこなければなりませんし、また農林物資規格法の運営に当たっておられる農林省からそれだけの人間を厚生省にいただかないと、りっぱな法律はつくったけれども、いまのチクロでさえももてあましておりますのに、はたして厚生省がやれるか、正直に申しまして、こういう行政組織上の問題もある。また、先ほど申しました能率上の問題もある。それに、何と申しましても、厚生省がそれらをお預かりいたしましても、手足といたしましては結局都道府県の知事なり、あるいは保健所というようなもの、あるいは公正取引委員会の地方事務所というようなものが手足になって働いていただく以外にないわけでありまして、これらの手足のつけ方というようなものがなかなか私の思うにまかせないというところに、どういう隘路があるかといえば問題がありますので、それらの問題もこなしまして、私はこの国会に提出するということで作業を命じたり、また有識者の御意見を承ろうというわけではなしに、できるだけまとめるものならまとめて、最も近い将来に御趣旨に沿いたい、こういう気持ちでおるわけであります。またその趣旨をくんでいただきまして、総理府中心で、企画庁長官もおられますが、さっきの閣僚ベースの消費者会議のもとに食品行政検討会といいまして、各省庁の食品関係を担当せられる局長、次長クラスの方々の会合を持ちまして、そういう面でもこの問題は検討をしていただいておるというのが現状でございます心
  218. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま仰せのとおり、物価問題は経済企画庁や通産省や農林省や、いろいろなところに関係がございますね、いろいろなところに関係があるということは、責任の所在が明らかでないということにもなるわけですね。そこで私はこの際、この際と言っても前からもう申し上げているわけですけれども、国民生活局ですね。その国民生活局を格上げをして、そういういろいろな問題について国民生活庁というものに格上げをしていただいて、そこでやってもらったらどうだろうかと、こういう意見を前から持っているわけです。この間ここで岩動委員も、もうすでに動力燃料省をつくったらどうかという御意見を持っていらっしゃるようにお漏らしになりました。あるいは保育所は厚生省、幼稚園は文部省、こういうことである議員は児童省がほしいと、こういうふうなことを言っておられる時代になってきておりますので、そこら辺を何とか真剣に一度検討をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでございますか。
  219. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いま御指摘のように、この物価行政関係方面、非常に広うございます。なかなか率直に言いまして、この広い関係のものをいわゆる有機的に一体的に動かしていくというのは、たいへん苦労の要ることでございます。まあしかし、最近物価問題についての認識もだいぶ変わってまいりまして、各省自身がそれぞれ相当物価について力を入れてくると、こういう気運になってきたと私は思っております。そこで、機構の問題なんですが、まあ機構をいじるほうがプラスかマイナスか、これはいつものことですけれども、なかなか議論がございます。ただ、いまの御提案は国民生活局という一局を庁にすると、こういうことでございますから、まあやや範囲の狭い問題でございます。ただこれもまあ私といたしましては、いま御存じのように、この行政簡素化の時期でもございますし、あんまり機構だけ膨大にしてからだを重くするのがいいのか、身軽にひとつできるだけやっていくのがいいのか、私といたしましてはもうちょっと考えさしていただきたい。よくあるんですが、庁ということになりますと外局ということになりまして、多少省から独立したような形になります。   〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕 そのほうが、いまの御説の御趣旨に合うような結果になるのでありますれば、これはまた一つの検討事項であります。目下のところはひとついまの機構をフルに活用してやってまいるつもりでおりますけれども、やはりこういうふうになってきますと、機構の問題いろいろ御提言もございます。私もいろいろ検討はしてみたいと、こういうふうに考えております。
  220. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一つお尋ねをいたします。物価問題懇談会から物価安定推進会議になって、そしてまた物価安定政策会議だ、名前がだんだん変わってきたように思いますが、そしてまた別に物価対策閣僚会議というのがある、物価担当官会議というのもございますし、いま消費者基本法の中で消費者保護会議というのもございます。これだけいろいろな会議があったり、あるいは国民生活審議会というのもございますね。そういうのがあるのに一向に物価問題では実効があがっていないように思うわけです。それはどうしてでしょうか。そしてそのいろいろな会議の関連はどうなっているのでしょうか。この間たいへん憎まれ口をききますけれども、これは私が言うのではなくて新聞が発表していたのですけれども、政府はこのほど緊急物価政策閣僚会議を開き、物価騰貴抑制のために実効のある具体的な対策をすみやかに策定し、その実施をはかることを申し合わせたが、現実には物価上昇政策のほうに熱が入っているようであると、こういうふうな記事もございまして、何だか会議をするたんびに私どもも物価が上がっていくような感じすら覚えるわけです。口では物価物価とおっしゃりながら、やっぱり企業には過保護で、たとえばずいぶん前の話ですけれども、山一証券の例でもわかりますし、チクロの問題でもそうですし、ノリや砂糖の問題でもそうです。企業の保護のほうにどうも力が入ってしまって、消費者がおろそかにされている。こういうことで、いままでもそれぞれの会議から提言はもう十分されていると思います。それですから、結局は政府が本気にやる気があるのかないのか。ほんとうにその気でやってくれるということが大切だと思いますが、この辺の御決意をひとつ伺って、佐藤長官にはお帰りいただいてけっこうでございます。
  221. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いまいろいろと各種の会議の名前をおあげになられましたが、実を言いますと、私もあまり会議が多いのでびっくりしたのですが、この中には質の違うものもだいぶあります。上下関係といいますか、物価対策閣僚会議あるいは物価安定政策会議とその担当官会議のようなものは、上下みたいな関係になるわけでありますが、担当官会議というものを一つとりましても、どうもいままでは経過報告であるとか、まあ情勢の報告であるとか、お互いに情報を連絡するとか、そういうふうな連絡がどうも多いように思うのです。まあこれからもう少し中身に入った議論を十分にしなきゃならぬと思います。そういう意味におきまして、私たちも従来の会議の運営のしかたについては、大いに反省をしなきゃならぬことは多いと思います。たびたび申し上げているのですが、私は今度の閣僚会議は各閣僚に発言していただく、そうして事務的な観点もいろいろあろうけれども、もっと大局的な判断でもってフリーディスカッションをしてみる。それから先ほどもございましたけれども、まあ企画庁はもちろん率先して各省に提案を行なう、各省から出てくるのを待つという気持ちは私にはございません。そういう意味では大いにこちらからも提案する。しかし、もちろん各省自身がそのつもりになっていただくことが、何よりも大事なことでありますから、各省のアイデアというものも大いに私は尊重していいと思います。そういうことで十分会議をし、そうしてまたそうすることによって、閣僚会議のような中心的な存在が働くことによって、その下の担当官会議もまた動いてくる。それから物価安定の政策会議ですけれども、これにつきましては、この間創立第一回――、これは昨年にまたできたものですから、約一年近くかかりまして第一回の答申が、御存じの総需要の抑制についてなされまして、第二回の答申が例の行政行為の介入によるところの物価問題、そうして私のほうで特に急いで御検討願っておるのが生鮮食料品でございます。これは五月か六月にはぜひ出していただきたい。それで、先ほども御指摘がありましたように、いまの流通機構というのは、なかなかつかめないのです。それで一つのポイントをあくまでずっと断続しないでもって最終のところまでトレースしていく。そういうような調査の方式をとらないとだめなんであります。いままでも各種の提言があったのですが、私率直に申し上げまして、非常に抽象的なものが多かったように感じます、振り返って見てみましても。そういうことでできるだけ具体的にやってまいる今度の野菜問題に間に合わなかったのは残念でありますけれども、できるだけひとつ詰めてやってまいりたいと、こういうふうに考えています。
  222. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 次に、農林大臣にお尋ねをしたいと思いますが、総理大臣がこの間の衆議院の予算委員会で、食品添加物の総点検をすると約束をされましたが、農林大臣はこの際、農薬の使用管理の総点検をしてばいかがでしょうか。農協などに農薬に関する専門指導員を置く意見はございませんか。どうも、この間の新聞でございますけれども、農薬が要らなくなって、それを川の川床を掘って捨てたというような事件もございまして、農家がわりあいに農薬に対する知識が十分ではないのではないか、こんな感じがいたしておりますが、ぜひこの際、農薬の使用管理の総点検をやっていただきたい、このように思いますがいかがでしょうか。
  223. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどお話しのございました農薬でございますが、不要になった農薬のことをちょっと申し上げます。これはある農薬のメーカーが、栃木県でこれを河川敷に埋めたという話があります。これにつきましては、この廃棄の方法について、県の保健担当、それから農林省が打ち合わせまして、心配のないように徹底的に処理するようにいたした次第であります。  それからいまのお話でございますが、私どもも農薬につきましては御存じのように、有毒な水銀剤等はもうすでに製造を禁止しております。比較的そういう有害でないものを使うようにいたしておりますが、いまお話しのございました病害虫防除所というのは全国に百八十ヵ所ございますが、地方の県の役人で病害虫防除員、これは一万八百名おりますが、この人々が農薬の安全対策について指導いたしておるわけであります。かなりの予算も計上いたしておりますが、たびたびいろいろな事件もございますので、農業団体等も打ち合わせまして、もうすでにそういう有害の農薬は使用禁止または製造禁止をしておるわけでありますから、なおその趣旨が徹底されますように努力をいたします。
  224. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 農薬を最近非常にたくさん使いますから、私はこの次は食品添加物と同様に、今度は水が非常に心配になってくるのではないかと、このように思います。地下水が汚染をしていないかどうか。先ほど申しましたカシンベック病というのは、何かそういう汚染された水が原因だとさえ言われておりますので、その地下水が汚染していないかどうか、その辺をひとつわかっていたら御答弁をいただきたい。
  225. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 先ほどお尋ねの、栃木県の農薬を河川敷に埋めたということにも関連いたしまして、私どものほうでそういう場合に地下水あるいは井戸水等の汚染があるかどうか、そのことについても厚生省といたしまして調べました。しかしあの場合には、地下水なりあるいは井戸水の汚染はございませんでした。しかし、一般的にこれは当然私どもも関心を持たなければならないところでありますので、今後まあでき得る限りのケースを集めて、そしてその安全性をはかっていくつもりでございます。が、それと同時に、飲料水につきましては、簡易水道をでき得る限りつくっていただく、そのためにその予算の助成費も、まあこの四十五年度は昨年に比べますと約十割近くも実は増加をいたしていただいたようなわけでございまして、そういうことで対処をいたしてまいる方向を固めております。
  226. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その簡易水道が全部に普及してればいいですけれども、なかなかそれも普及をしていないで、井戸水を使ってるような家もたくさんございますのでね、私は非常にこの地下水の汚染が心配になります。どうかその辺を十分また対策を立てておいていただきたいと思います。  それから、農村僻地では、国民健康保険の保険料が引き上げられたけれども、そして負担は大きくなったけれども、なかなか十分な医療が受けられないと、非常に訴えられておるわけです。そこで、僻地医療対策はどのようにされますか、そういう対策を持っておられますか。あるいはまた医療の抜本改正ですね、この前もああいうことでございましたので、医療の抜本改正は一体いつごろなされるか、御答弁をいただきたい。
  227. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 国民健康保険などの保険料の値上げの問題、さらにまた僻地医療の問題、また医療保険の抜本改正の問題と、こういうことについてお尋ねでございますが、国民健康保険につきましては御承知のように国が四五%、医療費の四五%の補助を出しておるわけであります。四十五年度におきましても、そのうち若干を地方公共団体の負担に切りかえるかというような問題も出てまいりましたが、結局これは政府全体といたしまして、従来どおり医療費の四割五分は国が持とうというようなことをいたしまして、でき得る限り保険料の、保険料と申しますか、保険税の値上がりもこれを行なわないようにいたしておりますが、それでもしかし、若干の値上げというものは私はあるのではないかと思います。これは医療が非常に普及したとか、医療が高度化したとか、また医療費の値上げもこれは影響があることと思います。それらの場合に対応いたしましては、低額所得者につきましては保険料、保険税の減額というようなことも、自治省のほうと相談をいたして考えております。  僻地医療につきましては、これは従来から僻地診療所というものを計画的につくることをいたしておりますが、この中に入っていただくお医者さんの確保ができないという一番痛い問題がございますので、僻地診療所をつくります場合には、必ずその間近なところの国立あるいは公立病院等を親元病院として指定をいたしまして、そこから定時または随時にお医者さんと看護婦さんのチームを編成してそして派遣をするようなことをいたしてまいりましたが、昭和四十五年度、本年度からはさらに、そのような場合に、親元病院がなかなか応じてくれない場合もありますので、親元病院の医師派遣費等につきまして、公立病院に対しては新しく国から助成費を出す、こういうこともいたしております。  またそれがなくても、国立病院などにおきましては、国立でございまして、厚生省の管下にありますので、国立病院あるいは療養所のお医者さんと看護婦さんを編成いたしまして、これも親元病院の仕組みとは別に、僻地診療所にできるだけ回っていただくようなことをいたしております。巡回診療車あるいは患者輸送車、こういうようなものも国からそれの調達費あるいはその運営費というようなものにつきましても、四十五年度は新しい助成もいたしまして、最近は僻地のほうも道路がよくなりましたので、患者輸送車あるいは巡回診療車の運転もかなりやりやすくなりましたので、それに応じまして助成費などを組んで、いま申すようなことをいたしております。  それから医療制度の抜本改正、これはもうぜひやらないことには、国といたしましても政府管掌医療保険などの赤字対策として策が立ちませんので、昨年の八月から一つの案をつくりまして、関係の審議会にそれの御検討をお願いをいたしております。これは抜本改正でありまして、なかなかむずかしいので、全体の抜本改正はこれは一、二年あとになるにいたしましても、それに軌道を敷く、レールをつけるだけの、さしあたり抜本改正の前提となるべき事項につきましては、ことしの夏中にも審議会から御答申をいただいて、来年度からの実施に間に合うような、そういう段取りで進んでおります。
  228. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間がなくなってきましたから、この問題はこのくらいにしておきまして、次に看護婦の問題について御質問を申し上げます。  厚生大臣はおとついの答弁で、もう暗記をされるくらいあっちでもこっちでも看護婦問題を聞かれてというようなお話がございましたけれども、まあ二、三質問をさしていただきます。この看護婦の不足問題も、女性議員の中ではずいぶんいろいろ議論をいたしまして、事あるたびにこの看護婦の不足問題は質問をさしていただいてるわけですけれども、厚生省も、やっと看護婦対策に力を入れかけたような感じがいたします。それは今年度の予算を見ると、看護婦の対策のために倍額の予算が組まれたようでございますから、非常に私どもは期待をしているわけですけれども、まず高等学校卒業プラス一年の今度の法律ですね。あれで看護婦の充足ができるとお考えになっていらっしゃるでしょうか。高卒プラス一年の准看護婦学校は、進学課程の予備校的な養成制度になりはしないかということを、私は心配をしております。それから養成施設をつくるだけで、人数をふやせば事たりると思ったら、これも私は間違いではなかろうかと思いますね。まずそこを卒業した准看護婦が就職をするようなしむけ方をしなければ、これはやっぱり解決にならないと思います。そしてまたこの法律案は、看護婦の質が低下にならないか、インスタント看護婦の養成ということになるのではないかということが、非常に危険だと言われております。なぜなれば、看護婦というのは人命を対象とする仕事でございますから、現在の医薬の進歩や医療技術の目ざましい進展や進歩の前には、一年の教育ではとっても無理ではなかろうかと思います。で、少なくとも臨床も含めて二年か三年の養成が必要ではなかろうかと、このように考えますが、いかがでございましょうか。
  229. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私が公式論をたびたび申し上げますよりも、ちょうど医務局長が見えておりますので、御満足のいくようなお答えをさしたいと思います。
  230. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) お答えいたします。  医学が進歩いたしました現在におきまして、高等学校卒業一年で質の低下なしに准看護婦の確保ができるかという問題でございますが、これは御承知のとおり、いままでの准看が中学卒業を基礎にいたしました二年でございます。したがいまして、基本的な学力あるいは看護婦に必要ないろんな基本的な理科、生物、数学その他を含めまして、そういう知識というのは非常に低い段階にございます。しかしながら、今回の場合には、高等学校卒業という段階でございますので、そのような非常に基本的に大事な知識というものについては、相当高いレベルの素養を持っておるわけでございます。したがいまして、そういう前提に立ちましたならば、直ちに専門的な教育をいたしましても、一年で十分従来の准看にまさるいい教育ができるのではないかということが基本になっておるわけでございます。なお、この問題につきましては、私どもだけで一方的に申し上げても何かと存じますので、厚生省内のこういう専門のいろいろな方々にもおはかりをいたしましたし、また保健婦・助産婦・看護婦審議部会というのが医療関係者審議会の中にございます。この中には相当なそういう専門家がおられるわけでございます。ここにも逐次報告をいたしまして、細部のカリキュラムに至りますまで御検討賜わった上で、これで大体いいんじゃないかという御結論をいただいたわけでございます。もちろん、こういう制度をいたしますにあたっては、ただいま御指摘のように、質を低下させない、いい教育をすることが必要でございます。したがいまして、新しい教育に任じますところの専任教員等につきましても、また再度いろいろな再教育等を行ないまして、いい教育のできる資格も与えたい、こう考えておるわけでございます。  それから第二の点で、高等学校卒業のこういう制度をつくりましたならば、いわゆる看護婦になりますための進学コースと称するところへみな直ちに行ってしまって実務につかないのじゃないか、こういう御懸念であろうと存じますが、現在でも高等学校卒業をいたしました者が、中学卒業の資格でいい、いわゆる准看養成所の中にすでに三割以上入っておるわけでございます。そういう方々を含めました、看護協会が調べました進学課程を見ますと、約一万人ほど進学課程に入った者の中で、高等学校卒業いたしまして、実務経験なしに直ちに入ったというのは約二三%程度であります。そういうことから見ますれば、また別の面から見まして、やはり早く職業につきたいという御希望の答えも相当あるように聞いておりますので、そういう面から見ますれば、私どもは、やはりそれが直ちに進学化するとは考えられない。ただし、ただいまございますように、いろいろな夜間課程の進学課程ということも十分いまあるわけでございます。今後は、そういう働きながら、さらにそういう方々が進学できるような道、これは十分にまた開いてまいらなきゃならないと思っております。
  231. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、いま一番早急に看護婦の不足を補うためには、看護婦の離職防止と有資格の潜在看護婦の掘り起こしが必要だと思います。それにはそれだけの対策をせねばならないと思いますが、まずそれには処遇改善とか、労働条件の改善がどうしても必要になってまいります。  そこで労働大臣にお尋ねをいたしますが、看護婦の賃金があまりに低過ぎると思うのですが、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。そしてまた夜勤の手当ですね。夜間の看護手当というのが、去年まで一回百円でございました。これをことしは二百円にしてくだすったそうですけれども、ある病院ではこれを七百円にしたために、夜勤をやりたくてしょうがないというような話もございます。夜勤をする人を求めるのに苦労はしない、こういうことでございますので、そこら辺のことについてお考えを伺いたいと思います。
  232. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) お答えいたします。看護婦の方々の賃金が非常に低いというのでありますが、まあ大体月四万二千四百円と言われておりますが、一般の平均から見ますると、一万六千円ほど高いことになっております。しかし、実際は非常な夜間勤務やら職務上の御苦労がございまして、やはりそれにふさわしい賃金であるかどうかは、これは必ずしも言えないと思いますが、いずれにしましても、非常な御苦労をされておる、特に夜間勤務などをやっておられるという点から考えまして、できるだけ、待遇上の配慮をはかる必要がある。特に夜間については、どうも二百円程度の、一回につき二百円ないし三百円と言われておりますけれども、どうも私もさっきいろいろ聞きまして、どうもその程度では少ないのじゃないかと言われておったのでありますが、これはやはり看護婦というものに対するまあ労使関係の十分な理解があり、看護婦さんに対するそういう問題を十分考えてあげたいと思います。  それから一般に働いておる方々で、やはりどうしても家庭に入ってしまって、看護婦をやめているという御婦人の人たちも、できるだけ看護婦の仕事に再就職をしてもらうとか、経験を生かしてもらうということは必要だと思います。それに対しましては、託児所の施設などを十分につくりまして、安心して子供を託し、家庭と看護婦の仕事とが、両立できるような条件を与えてやるというような点につきましても、職場において、託児所の設置等につきましては、融資の道を開いておるようなわけでございますが、今後はできる限り、ひとつ看護婦さんの待遇の改善という問題につきましては、真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  233. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一つお伺いをいたしますが、労働基準法で、子供を生んだ人たちは、授乳時間が午前と午後と二回与えられておるわけです。ところがいまの乳児院とか保育所とか、そういうものを病院の中に置きませんと、あるいは看護婦さんの住む家が病院のそばでございませんと、せっかくの授乳時間が与えられていても、ほんとうはちっともお乳をやりにいけないわけですね。その辺のこともお考えくだすって、どうか看護婦さんのために、保育所、乳児院、そういうものも、あるいは寄宿舎の制度ですね、あるいは住宅を近くに、こういうことにもひとつ力を入れていただきたいと思います。
  234. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 御意見の点は、十分に検討いたしまして、実現に努力いたしたいと考えております。
  235. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで最後に、今度は大蔵大臣に御答弁をいただかなくてはいけないかもしれませんが、看護婦という仕事を一生の仕事とみなすか、あるいは嫁入り前の仕事とみなすかによってこれはだいぶ変わってくると思いますが、おそらくいまの状態から、看護婦さんは一生の仕事である、こうみなすのが普通だと思います。それには看護業務が専門職であるということを明確にする必要があると同時に、職業意識を持たせて質の向上をはかることだと考えます。それには、お医者さんの教育が文部省の所管でございます。看護婦さんや、医療従事者の養成が厚生省所管となっているわけです。これはまるで各種学校並みで、ずいぶん矛盾をしているのではないか、こう思います。そこで、看護婦さんたちも非常に要望していることは、どうか教育基本法の第一条に基づいてこの看護婦の勉強をさせるべきだ、こういうふうな要望が非常に強いのです。これはほんとうは総理大臣からお答えをいただく問題かもしれませんけれども、総理大臣が出席をされませんので、福田大蔵大臣にひとつお答えをいただきたいと思います。
  236. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 看護婦の養成がいま厚生省になっておる。これを教育基本法に従って文部省でしたらどうか、こういうお話でございますが、私まだ不勉強でありまして、この問題あんまり検討しておりません。両大臣ととくと検討してみる、ということをここで申し上げさしていただきます。
  237. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは御参考までにひとつ申し上げてみたいと思いますのは、アメリカでは看護婦の学校ですね、正看護婦の学校が千二百校あるそうです。そのうちの二百二十校が四年制から五年制の大学で、その中の五十校が修士課程を持っております。またその中の六校がドクターコースまで持っているわけです。ところが日本の看護大学というのは、四年課程というのがやっとこの四月から六つになりました。それから短大では三年課程というのが九校、それから二年の短大が三校、 これだけしかないのです。それですから、私は質のよい看護婦を養成するためには、どうしても看護婦さんのまた先生を養成しなくてはいけない。そうして看護婦の質を高めるためには、最後は大学にでも行く、これくらいの意気込みの看護婦さんをつくらなければ、看護婦さんの質が向上しないし、誇りも持てないし、こういうことになりますので、そこら辺も含めて、どうか皆さんと御相談の上、何とか看護婦さんの要望に沿うように、当然これはお医者さんと同じように文部省の所管で私はやるべきだと思います。それから国立ぐらいは月謝を取る。看護婦さんの養成というのは、もうみんなお仕着せでございます。そうすると、そこに何かひもつきみたいなかっこうになりまして、看護婦さんの地位がなかなか高まらない。そこで、国立ぐらいは月謝を取るくらいの自信のある内容のものを持って、どうかりっぱな看護婦さんを養成するようにお力添えをいただいて、そうして看護婦さんにほんとうに誇りを持たしていただきたい。この辺をひとつ皆さんで御検討をいただくように特に要望いたしまして、質問を終わらしていただきます。
  238. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いろいろと、非常に貴重なヒントを与えていただきまして、ありがとうございました。とくと検討さしていただきます。
  239. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 中沢君の質疑は、終了いたしました。     ―――――――――――――
  240. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、岡三郎君の質疑を行ないます。岡君。
  241. 岡三郎

    ○岡三郎君 質疑に入る前に、きょうにわかに質問の内容を変更されましたので、当初予定の文教問題を中心にする質疑が変更されたことについて、たいへん待たせたり、いろいろとぐあいが悪いことがあって申しわけないと思うのですが、この点御了承願っておきたいと思います。  最初に国家公安委員長に質問いたしますが、三十一日の亀田議員並びに戸田議員の質問に対する答弁で「抜かった」ということばを使われたわけですね。この情報ということを、どういう点が抜かったのか。「週刊現代」という雑誌の中身をちょっと見たわけですが、これはよくまだ見ておりませんけれども、この中では、すでに過激派学生が飛行機を乗っ取るということを、一月二十二日号で予告しておった、「週刊現代」が。しかもこれを受けて、ハイジャック計画のうわさがずっと広まっておって、同志社大学の三年のY君の談として、自分が赤軍派の活動家の友人のところへ遊びに行ったところが、「机の上に白い大きな紙が置いてあって、飛行機の図が書かれていたんです」「『赤軍派の残党が三月に飛行機の乗っ取りを計画している』と聞いてハハーンと思った。」そうしてまた、ほかのことも書いてありまするが、「警察庁から万国博対策委員会に派遣され、警備を担当している同庁刑事局の田中八郎参事官の『反博行動一つとして、ハイジャックも充分考えられる』との見方もあわせて紹介した警告記事」も載っておった、こういうことがここに書いてあるわけです。こういう点について、そういうことを知っていて対策を怠ったのか。こういう点について、この記事はこれは真実ではない。そういうふうな、いわゆるハイジャック計画というものについては、国家公安委員会としては全然関知してなかったのだということなのか。これは、私のこの前の質問に対して、学生運動の問題についてただしたところ、万全の警備体制をしいていく一これはほかの問題ではなくて、学生に対する対策としてそう述べられておるわけですが、この間について、警備体制の抜かりということで率直に公安委員長が言ったのかどうか。この点について具体的に御説明を願います。
  242. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 警察は、赤軍派の不法行為を未然に防止するため、従来から活動家の行動を徹底して視察するとともに、協力者からも必要な情報を入手するようにつとめております。その結果、昨年十一月の総理訪米阻止闘争の際、総理官邸襲撃を企図して、大菩薩峠で爆発物を投げるなどの訓練をした一味五十三人を一網打尽に現行犯逮捕をしたのをはじめ、これまでに四十四件、延べ二百八十八人を検挙し、四月五日現在、五十四人を勾留中であります。特に三月に入ってからも、赤軍派最高指導者である塩見孝也議長ら四人の幹部を検挙しております。しかし、残念ながら、今回の日航機乗っ取り事件に関する動きは把握できなかったのであります。赤軍派では、相つぐ検挙によって、最近では組織も地下にもぐらせて非公然活動を強めており、この種の地下活動を事前にキャッチすることは、かなり困難な状況になっていますが、警察としては、引き続き赤軍派の不穏行動把握に万全を期する所存であります。  お示しの週刊誌の報道その他もむろん参考にいたしまして、十分に警戒を怠らないでやってきたつもりでありますが、あの日にそのことが行なわれるということについて十分の情報把握ができなかったのであり、抜かったと申しますのはその点について事前にキャッチできなかったことについて遺憾の意を表したつもりであります。
  243. 岡三郎

    ○岡三郎君 週刊誌の記事について、その真実性についてはいろいろと問題があるにしても、この記事の内容がどこまで正確であるのかどうかは別にしても、少なくとも三月にこういうふうな計画があるということをこの一月二十二日号で指摘しておった。こういうことについて全然警戒心がなかったのかどうか。これはまあそういうふうな情報が正確であるかどうかについての調査もある程度しておるのが私は当然ではないかと、公安調査庁がこういう問題について全然警戒をしていなかったのかどうか、この点についてちょっとお伺いしたい。
  244. 内田達夫

    政府委員内田達夫君) お答えいたします。  公安調査庁といたしましても、赤軍派につきましてはかねてから鋭意調査してまいっておったところでございます。  赤軍派につきましては、これは昨年の九月初めごろ共産主義者同盟、まあこれを略して共同、あるいは共産同と呼んでおりますが、これから分離したグループでございまして、非常に過激派でございます。その動きにつきまして昨年来調査してまいっておるわけでございますが、大体その勢力は関東、関西を中心にしまして数百名、まあ動員力全体では七、八百名と思われます。代表者は議長が塩見孝也と申す者でございます。かねてこの派は武装蜂起して臨時革命政府樹立ということを目標に掲げております。そして昨年の四十四年の秋、大阪戦争あるいは東京戦争と呼びまして街頭等で暴力活動をいたしました。そして十一月五日に例の大菩薩峠におきまして軍事訓練中、これが当局、警察のほうで探知しまして五十数名を検挙いたしました。そういう関係からかなり検挙者――今日まで二百数十名の検挙を見ております。大菩薩峠で五十数名つかまり、その主勢力は大体壊滅的な打撃を受けたと考えられておったわけでございます。ところが本年に入りまして、一月の十六日都内で赤軍派の集会が持たれました。その際に赤軍派がまたここで勢力を盛り返してきたということがわかったわけでございます。この本年の一月から同派は組織の再建をはかったと見られまして、党と軍団の二つの組織を漸次盛り返してまいりました。そしてこの派はこの秋、本年の七〇年の秋を期して武装蜂起をしようというようなことを機関誌等で主張しております。その一環としまして、武装蜂起の一環としまして赤軍派による国際根拠地をキューバあるいは北鮮あるいは中共、アメリカ合衆国、メキシコといったようなところにこしらえて、日本から軍事要員を送り込んで、そこでゲリラの訓練をやり、あるいは必要な武器等をそこからまた仕入れて、日本国内の赤軍と相呼応して武装蜂起をしようといったような計画のあるというようなことは機関誌等から承知しておったわけでございます。
  245. 岡三郎

    ○岡三郎君 その承知しておったということから、それに対する対策というものをどう立てておったのですか。機関誌で承知しておったが、こんなことはまさかあるまいと、こう思ってほおっておったのか、ですね、具体的にそれが実行計画されているというふうに察知して、計画に対する手を打ったのかどうか。
  246. 内田達夫

    政府委員内田達夫君) さような動きにつきまして機関誌等あるいは各方面からも聞いておりましたけれども、その計画が具体的にたとえばいつ何日どのような方法でなされるか、それからどういう人間がそれをするかというような点までの事前情報を入手することはできなかったのであります。鋭意その情報に基づいてその具体的なものをつかむように努力はしてまいったのでございますが、今回のような事件の具体的事前情報の入手ができなかったのでございます。
  247. 岡三郎

    ○岡三郎君 具体的に公安調査庁にもう一ぺん伺いますが、手を打ったと言うが、具体的にどの程度手を打ってきたのかどうか、そのことを聞きたいのです。つまり見過ごしてしまったというわけにはいかぬから手を打ったと言っているのかどうか。具体的にどういうふうに手を打たれてきたのかどうか。率直に打ってなければ打ってないと言われてけっこうなんです。
  248. 内田達夫

    政府委員内田達夫君) 具体的のこちらの対策でございますけれども、その対策としては公安調査庁としての業務上調査という権限と任務がございます。その調査権に基づきまして、赤軍に関する各方面、いろいろこれは非公然的な部面もございますのですが、その方面の情報、具体的な情報を得るために一生懸命にやってはおりますが、こういった日航事件のような、ほんとうの事前の具体的な情報をつかむところまではいかなかったということでございます。
  249. 岡三郎

    ○岡三郎君 私はこの点でその政府の調査という問題について、いろいろといま権限の問題があると言われておりますが、一応その海外に基地を求めるということになるならば、それは方法というものはいろいろとあると思うのですが、そういう情報がかりに入手されたということになるならば、警備の体制がどうなっているか、これ伺いたいのですがね。たとえば警視庁ですね、警察庁、公安調査庁ですね、有機的などういう連絡体制があるのか、その点をちょっと聞きたいのです。これはあとで公安委員長からも聞きたいと思います。
  250. 内田達夫

    政府委員内田達夫君) 私の公安調査庁と警察と治安機関との連絡の関係でございますが、まあ密接な連絡をとっているつもりでございます。たとえばかりに四・二八記念闘争、そのような闘争の行なわれる前には必ず機関誌その他を通して情報をいろいろ集めております。そのような具体的な情報がわが庁で得られました場合には、これを警視庁あるいは警察庁あるいは検察庁にすみやかに報告をしております。報告をし、また警察、警視庁方面からの情報もこちらで入手いたしまして、その情報の確度と申しますか、確実さというものを確かめて、わが庁としては、そういう情報に関する機関でございますので、情報については十分相互に連絡をとってまいっておるつもりでございます。
  251. 岡三郎

    ○岡三郎君 公安委員長は先ほど知らなかったと言われておられるが、警察庁長官、警察庁としては、いま公安調査庁のほうから連絡をとったと、それを受けて、どういうふうにやったのかどうか。その点ちょっと答弁してもらいたいと思います。
  252. 川島広守

    政府委員川島広守君) ただいま公安調査庁次長からお話がございましたように、常時の場合におきましては、相互に情報連絡をいたすことになっておりまするし、また交換をいたしております。ただ、いまお話もございましたように、今回の事件に関しては何らそのような情報は受けておらないわけでございます。今回の赤軍の問題につきましては、四月の一日に日比谷公会堂でいわゆる全日本革命戦線結成大会というものを彼らがもくろんでおりまして、大体のところ申請は十名でございましたけれども、おそらく五百から六百程度の集合人員であろうと考えておりました。そこで警察といたしましては、大体赤軍が所在しております府県は二十三都道府県にわたっておりまするし、大学にいたしますれば、おおむね六十に近い大学に点在しておる組織でございます。したがいまして私どものほうといたしましては、関係都道府県に対しまして、いわゆる赤軍の活動家を中心といたしましてそれらの行動の確認につとめますよう、三月の上旬に実は指示をいたしました。その指示に従って三月の中ごろから一斉に行動確認の体制に入っておったわけでございます。その行動確認の過程の中で逮捕状が出ておりましたいわゆる先ほど話がたびたび出ておりますが、議長でありますその塩見孝也という者をはじめといたしまして、三月に入って続いて四名の最高幹部を実は逮捕しておるわけでございます。  繰り返しになりますけれども、そのような情勢で、四月の一日の大会等の規模もよく考え、さらに今後の、秋におきます彼らの言っております武装蜂起、これに至ります過程の中でさまざまな不法行為の発生が当然予想されまするので、そのために一そう行動の確認と情報の収集につとめてまいっておったわけでございますけれども、たびたびで申しわけございませんが、残念ながら、今回のいわゆるハイジャックというふうな企図につきましては、事前の情報を探知できなかったわけでございます。先ほど先生がおっしゃいましたこの一月二十二日の「週刊現代」の記事なりあるいはその他のいろんな情報も事前にございまして、もちろんこれにつきましては私のほうは、かねて最大の関心を払っておる対象であります関係上、関係府県はもちろんのこと、関係方面に対していろいろ情報の入手に当たったわけでございますが、残念ながら、そのようなことについての確認を得るに至りませんでした。さらにまた、そのような心証も実はつかめなかった。こういうふうな経緯でございます。
  253. 岡三郎

    ○岡三郎君 その点について、いま言われたように、これは過激派の中においても最も過激派であるというふうに言われておって、しかも先ほどからの答弁で、大量検挙をして、あとごく少数だったと、それがまあ一月の段階に入って盛り返したという話があったわけですが、大体三月の段階で最高幹部級を四名とらまえることができた。そういうふうなかげんの中で大体安心しておったのではないかというふうな節があるわけなんですね。こういう点について公安委員長、どう考えますかね。これは安心して、壊滅しておるから大したことはないと、こう思っていたんじゃないんですか。その点どうですか。出し抜かれたなら出し抜かれたというように……。
  254. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申します。  大量検挙をしたから安心しておったということはございません。ハイジャックのようなことをあの時期に起こすであろうということをキャッチできなかったことが残念でございますけれども、終始注視をしながらおりましても、いかにも最近は地下にもぐったような形での作戦に変わってきております関係もありましてつかまえようがなかった、情報をキャッチする方法がなかったということでございまして、楽観しておった状態ではなかったと申し上げねばならぬと思います。
  255. 岡三郎

    ○岡三郎君 そうするというと、もう一ぺんもとに戻りますが、現在においての赤軍派の勢力状況ですね、それば一体どうなっているのか。つまり、シラミつぶしにこれはマークしてもマークでき得る量ではないかと私は思うのですよ、率直に言って。したがって、警察庁の警視庁に対するそういう面についての指示とかそういう点については、どうも私は手抜かりがあった、万全の対策という関係からいって手抜かりがあり過ぎたのじゃないか。量的に見てもそれほど大した量ではないというふうに言われておるわけです。こういうものに対する警察官の増員等をはかる中において、最大なる過激派に対する注意というものがまことに欠けておったというふうに断定されてもしかたがないのじゃないかと、その思うのであります。これは警察庁。
  256. 川島広守

    政府委員川島広守君) お話ございました赤軍派の現有勢力と申しますのは、概数で申しますと約四百を若干上回る程度でございます。現在、先ほど申しました四月一日の結成大会におきましての行動確認を始めまして以来、完全に彼らの一人一人の所在を確認しております数が二百名でございます。現在拘置所に入っておりますのが五十四名ございますから、それ以外の約百数十名につきましては所在の確認ができない現状でございます。これは詳しく申し上げねばならぬと思うのでございますけれども、この赤軍派と申しますのは、お話しのとおりに、現在の暴力集団の中では最も過激な集団でございます。昨年の十一月五日の大菩薩峠を契機にいたしまして、ほとんどいわば壊滅状態に入ったのでございますが、これが年末から一月にかけまして、それぞれ全国の大学等にオルグ活動をいたしまして、そうして他の派閥から赤軍の中になだれ込んできて、そして一月の十六日の段階では、都内で行なわれました集会にはおおよそ二百名程度の勢力に回復をしたわけでございます。この二百と申します数字は、昨年の九月四日の当初結成をいたしました当時が大体二百名でございまして、したがって当初の勢力に回復をしたと、こういうふうに私のほうは判断をいたしたわけでございます。ただ、彼らが、昨年の壊滅的打撃のいわば教訓と申しましょうか、反省いたしまして、政治と軍事の組織を分離する、言ってみますれば、新たに地下組織をつくるというようなことでございまして、先ほども申しましたように、これらの勢力はいわばまとまった勢力でございませんで、それぞれに点在、大学なんかで申しますと、関西等、都内にも相当ございますけれども、大学の数で六十くらいの大学のうちに散在しておるわけでございますから、二、三名のところもございまするし、非常にばらばらないわば組織でございます。したがって地下組織になりまして以来、わがほうといたしましても懸命に実は捜査に努力をし、現にまだ令状が出て未逮捕の者が数十名おりますけれども、今回このハイジャッキングを行ないました田宮以下の面々と申しますのは、いずれも令状が出ておる者がその中の大半を占めておるわけでございます。したがって塩見孝也もそうでございましたように、ともかくも未逮捕の令状発付をされております者の逮捕に実は懸命に努力をして、先ほど先生がおっしゃいましたように、四名の逮捕だけには成功したわけでございますが、それ以外の者について懸命は実は捜査を続けてまいった経過なんでございます。  繰り返しになりますけれども、わがほうのそういう意味では捜査能力が足りないというおしかりがございますれば、これはすなおにお聞きしなければならぬと思いますけれども、いずれいたしましても、非常に地下組織的な、たとえば例を申しますと、彼らの連絡の方法と申しますのは、経験的に申しますれば、都内でも、一つのところに集まるのではなくて、電話番号を次々に変えまして、都内の喫茶店のところへ、そのつど、時間ごとに、何時間おきに、そこへ、連絡場所を変えまして連絡をするというようないわば手口でございまして、わがほうとしても懸命に努力してまいったつもりでございますけれども、残念ながら彼らの手口がいわば地下非公然活動的なスタイルで活動しておりましたこともございまして、残念ながらそういう意味では手が及ばないと、こういうように率直に申し上げたほうがよろしかろう、申し上げべきだと考えております。
  257. 岡三郎

    ○岡三郎君 この問題だけに時間をとるわけにいきませんが、問題はやはりそういうふうな気配とかそういうふうな徴候というものがあったということにおいて私は手抜かりがあったというふうに断定しなければならぬと思う。この点についてやはり数が少ないのですから、具体的にこういう点についての実行計画というものを立てられて、そうでないものを追っかけ回しているようではこれは話にならぬと思う。そういうふうな点について十分措置をしていかなければならぬと思うのです。  次に武装のための準備の件ですね。この九名――当初十四名ないし十五名と言われた。――これは機内のことですから情報がなかなか正確にとれないことですからこれはやむを得ないとしても、この九名の者が刀なりああいったような武器弾薬、こういうものをいろいろとつくったり仕込んできたりしている。こういうものの入手についていまどういうふうにお取り調べになっておりますか、この赤軍派の武器の入手について。
  258. 川島広守

    政府委員川島広守君) 赤軍派が武装をいたして、昨年の秋口に、大菩薩峠もそうでございますが、その前の九月の段階におきます大阪の阿倍野署管内の派出所に対する火炎びん攻撃でございますとか、あるいは九月の三十日にございました本富士署に対する襲撃事件でございますとか、それから十月二十一日に東京薬科大学の中で二十八本のいわゆる鉄管爆弾と申しますか、そういうものも押収いたしたような経緯もございますが、そのほかつくられました、捜査の過程で明らかになりましたのは、弘前大学の中でつくられてそれが福島医大の中に持ち込まれ、そこから東京の薬科大学の中に持ち運ばれてきたというふうな経緯でございますとか、あるいは大菩薩峠の中で訓練いたしましたのもおおむねそのような手法で彼らが爆弾のようなものを準備しておる、こういうことでございます。そのほかさらにつけ加えますと、本年に入りましてから、岩手県で検挙いたしたのでございますが、これはある赤軍派の一人でございますけれども、これが自分の世話になりましたお医者さんの自宅からいわゆる猟銃を盗みまして、これを持っておりましたのを通常逮捕いたしたような経緯もございます。さらに兵庫県でも一件、自分の自宅から猟銃を持ち出した。これはいずれも片方は銃も押収いたしておりますが、片方の銃は自分の実家に送り返されてきたというふうな事件もございます。  いずれにいたしましても、彼ら自身といたしましては、警察官の拳銃を奪うないしは銃砲火薬店を襲撃をして銃砲刀剣を奪う、あるいは自分の身寄りあるいは可能な限りそのようなところがら銃を集積、集めるというようなことを考えておりましたし、東京薬科大学事件等の経過を見ますれば、大学の研究室の中からいろんな薬品等を持ち出したというようなことも実は明らかになってるわけでして、そんなようなことで、彼らとしましては、先ほどお話がございましたけれども、国際的にもそのようなことで、国際的な根拠地の設定をした上で、いわゆるそういうような武器類の密輸と申しましょうか、そういうものを将来はかろう、こういうことを彼らが企図しておることは彼らの言動等の中にもはっきりあらわれておる次第でございます。
  259. 岡三郎

    ○岡三郎君 ピストル、日本刀……。
  260. 川島広守

    政府委員川島広守君) 今回のことにつきましては、まだ犯人向こうへ行っておるわけでございまして、どういうふうな経路で今回の凶器を入手したかにつきましてはつまびらかにすることはできないわけでございますが、昨日あの飛行機の中を検証いたしまして、本日も引き続きいまやっておる最中でございますが、日本刀あるいは短刀あるいは登山ナイフ、そういうふうなものがあるようでございます。鉄管爆弾の容器も本日押収しておると思いますが、そういうこともあるようでございますが、このような鉄管爆弾と申しましても、これは要するに水道管その他の鉄管の継ぎ手でございますから、そういうものは容易にどこでもこれは手に入るわけでございます。
  261. 岡三郎

    ○岡三郎君 日本刀は、それはわからないならわからないと言えばいいのですよ。
  262. 川島広守

    政府委員川島広守君) 日本刀につきましては今回の田宮その他がどのような経路で入手したかは、それはもちろんわかっておりません。
  263. 岡三郎

    ○岡三郎君 次に私、日航機三五一便、時間的にいろいろとちょっと追ってみたわけですが、説明その他重複する部面があったらばお許し願いたいと思うのですが、七時十分に羽田を発してそれで間もなくベルトをはずすころになって犯人たちがいよいよ行動を開始したと、それで八時十四分に入間の基地からF86Fが発進して、少しおくれて福岡の基地から二機出ている、それから八時五十八分に板付に着いているわけですがね。この間において一番初めにこのいわゆる乗っ取り事件が起こったということの報道がこの三五一便から地上になされておるというふうに考えざるを得ないのですがね。このときにだれが発してだれがその発信を受けたのか、この点について運輸大臣のほうで取り調べておると思うので、お答え願いたいと思います。質問わかりますか。
  264. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ちょっと時間的なこともありますから、航空局長のほうから……。
  265. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 当該飛行機からVHFを使いまして、――超短波の通信でございますが……。
  266. 岡三郎

    ○岡三郎君 VHF……。
  267. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) VHF。
  268. 岡三郎

    ○岡三郎君 機上からですね。
  269. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 機上からです。それによって通報がなされておりました。これを受けましたのは東京管制部。
  270. 岡三郎

    ○岡三郎君 東京管制部……。これは羽田ですか。もうちょっと具体的にはっきりわかるように言ってくれ。
  271. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 東京管制部というのが埼玉県にあります。これは飛行機の航空路における管制をやる機関でございます。その管制部がこれを受けまして、これを直ちに東京空港事務所、それからさらにこの東京管制部から自衛隊に通報がいっております。さらにこの内容は府中にあります米軍へ連絡がされております。それから福岡の管制部――福岡にもこの東京と同じようなものがございますが、福岡の管制部というところへ通報が出ております。
  272. 岡三郎

    ○岡三郎君 そうするというと、それを受けた時点において、各局、各省ですね、こういうものがどういうふうな経路で大臣にそういう報告をしておるのか、その具体的な点を説明願いたい。これは防衛庁からそのほかの点全部。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁では、三月三十一日午前七時四十二分に新潟県に所在する佐渡レーダーサイト及び福島県に所在する大滝根レーダーサイトが日航機のイマージェンシー航路を受信しました。そのため、直ちに午前七時五十二分、石川県小松基地のFHF二機が緊急発進したのをはじめ、日航機が板付方面に進むにしたがって福岡県築城基地及び宮崎県新田原基地からも引き続きF86F及びF104が逐次緊急発進を行ないました。これは直接タッチいたしまして、それによって総隊司令官から緊急発進の指令が出て実行したのであります。私は緊急発進したということをこの予算委員会におりまして、すぐ秘書官からその伝達を受けました。
  274. 岡三郎

    ○岡三郎君 そのほか運輸省、外務省――外務省は全然受けなかったわけですか。
  275. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私はちょうどその日が閣議のある日でありましたが、七時五十分ころ航空局長から連絡を受けました。
  276. 岡三郎

    ○岡三郎君 外務大臣は受けなかったんですか。関係ないかな。
  277. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は当日、御承知のように午前九時から院内で定例の閣議がございます。これに際しまして、ちょうど八時ごろに自宅を出まして、その途中におきまして、そのことを承知いたしました。たしか役所からの連絡ではなくて、間接にそういう情報があるということをこの玄関に着きましたときに承知しましたのが最初でございます。
  278. 岡三郎

    ○岡三郎君 それを受けて、この問題について関係閣僚が協議したのはいつごろの時間ですか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 記憶違いがありましたから訂正いたします。私が緊急発進を知りましたのは、閣議に入る直前でございました。ちょっと間違っておりましたので訂正いたします。
  280. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ちょうどその日は、閣議の前に経済閣僚会議、物価問題の。これは午前の八時からあったんで、その直前でありましたので、直ちに官房長官から、私とそれから防衛庁長官、国家公安委員長、法務大臣も入っておったかもしれませんが、外務大臣もそのとき入りましたかな、そのあとで……。
  281. 岡三郎

    ○岡三郎君 はっきりしてください。
  282. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 相当ばく然としておりますが、ちょうど閣議が始まるころにはもう着きましたから、板付に。着いた直後にすぐ相談官房長官を中心にしてやったわけであります。
  283. 岡三郎

    ○岡三郎君 そのときの会議の内容ですね、それをはっきり。どういうふうにその関係閣僚で協議したのか。いわゆるもう板付に着いていると、これに対してどういうふうに手だてをするのかということについて相談をしたと思うんです。この内容を御説明願いたい。
  284. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 閣議早々にいたしまして、官房長官を中心にして相談をしたわけですが、とにかくできるだけ板付でこれを解決できるように努力しようと、直後のことでありますから、一応その後の調べは、経過を聞きながら処理しようということで、御承知のようにこの委員会の途中でもときどき連絡をいたしたわけであります。
  285. 岡三郎

    ○岡三郎君 そうすると、そのときの閣僚の協議は、要するに板付でこのお客を、乗客を安全におろすことに最善を尽くすということにとどまって、そのときにいわゆる犯人たちが、飛行機の上で機長に対してこのまますぐ北鮮に向かえということに対して、油がないということでとにかく板付のほうへ来ておるわけですが、しかしその間において、機上のほうへ政府のほうとしても、向こうのほうでVHFですか、連絡がきているということになれば、その間において機上と連絡がとれておったと思うんですが、この間についての経緯はどうなっておりますか。これは事務当局でもかまわない。
  286. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) その問題は事務当局のほうの空港長との関係のようでありますから、航空局長から。
  287. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 航空局といたしましては、先ほどの機上のVHFの通信によりまして、間もなく当該機が燃料不足のために板付へ着くということが通報されました。したがって、板付へ向けましてその旨を通報をいたしております。
  288. 岡三郎

    ○岡三郎君 その間について、航空局長のほうとしては機長のほうから北鮮に行けというふうな、そういう犯人の強い指示があったとか、そういう連絡はございませんでしたか。もう少し具体的に言ってもらいたいと思うんだ、内容を。
  289. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 最初の連絡が入りましたときに、すでに飛行機内における若干の情報が機長から通報されております。
  290. 岡三郎

    ○岡三郎君 それを具体的に。
  291. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) その内容は、赤軍派と称する連中、これに日本刀短刀その他でコック・ピット――乗務員室、コック・ピットに押し入られましたと、キャビン――客室のほうにも十五人ほど乗っているそうなんで、北朝鮮へ行けということを言われておりますと、キャプテンの、機長の意向としては、乗客の生命安全のためにもそちらのほうへ行こうと思っております、この報告が一番最初にまいったわけであります。それを先ほどの経路でそれぞれ連絡をしている。
  292. 岡三郎

    ○岡三郎君 いまから判断して、それは江崎副操縦士ですか。
  293. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) これは確か機長だと考えます。
  294. 岡三郎

    ○岡三郎君 それで、それが第一報で入ってきて、そうすると油がなかったというのはトリックであって、要するに、これから北へ行こうと思うと、いわゆる機長がそういうふうに判断をして第一報を入れた、乗客の生命を守るために。ところが、そこでやはり下のほうからそれに対して具体的に板付につけろという指示がなされておると思うんですよ。この点についてどうですか。
  295. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) 私のほうからは、その際に下から格別どこへどうしろということは言っておりません。間もなく機長のほうから、赤軍の乗っておる連中と連絡をとって、福岡で燃料補給してから行こうということになっておりますという通報が出てまいりました。したがって、この飛行機福岡へ必ず着陸するということを想定いたしました。
  296. 岡三郎

    ○岡三郎君 それがわかったのは、福岡に着くということがわかったのは、おおよそどのくらいの時間ですか。
  297. 手塚良成

    政府委員(手塚良成君) ただいま申し上げました、福岡で燃料を補給してから行こうということを機上から連絡しました時間が大体七時四十六分ごろということになっております。
  298. 岡三郎

    ○岡三郎君 警察庁のほうへ質問しますが、警察庁のほうから福岡県警のほうに何項目かの指示をしたということについて、これはどのくらいの時間ですか。
  299. 川島広守

    政府委員川島広守君) ただいまお尋ねございました、警察庁のいわゆる四項目とかいう指示につきましては、これは指示としてはいたしておりませんことは、先ほど国家公安委員長が御答弁したとおりでございます。
  300. 岡三郎

    ○岡三郎君 何にもしていない……。
  301. 川島広守

    政府委員川島広守君) 措置いたしましたのは、七時四十九分に羽田日航の空港管理室から警視庁の一一〇番――通信指令室に入りまして、それから直ちに警視庁の指令室から警察庁の総合当直、それから警視庁から関係の管区警察局あてに一斉にその旨を連絡したわけであります。福岡県警では直ちに八時五分に三個中隊、約三百名の制服警察官を現場に派遣いたしまして、乗客の安全救出を第一義といたしまして、絶対に発進を阻止するという方針のもとに臨んだわけでございます。
  302. 岡三郎

    ○岡三郎君 その方針はどこできめたんですか。
  303. 川島広守

    政府委員川島広守君) 何ですか。
  304. 岡三郎

    ○岡三郎君 発進を阻止するという……。
  305. 川島広守

    政府委員川島広守君) 警察側といたしましては、警察本部長に対して、私が八時二十分に電話で警察本部長に対しまして警察の基本的な方針をただしたわけでございます。警察の任務は申すまでもございませんが、乗客の安全なる救出を第一義とすべきことは当然でございまするし、同時に、この犯人を検挙するということが与えられた責務でございますから、その点に立って、とにもかくも飛行機を板付から出さないということを基本方針に県警本部長にいたしたわけでございます。
  306. 岡三郎

    ○岡三郎君 それは警察庁のほうの判断でそれをやられたのか、公安委員長のほうから指示があって、板付に着いたならば絶対に発進を阻止するという方針を得て福岡県警との連絡をとったのか、それを具体的に言ってもらいたい。
  307. 川島広守

    政府委員川島広守君) 申すまでもございませんが、私が県警本部長に電話かけましたのは八時二十分でございますが、その時期には長官に報告し、一方秘書官から大臣にもその旨を報告してございます。
  308. 岡三郎

    ○岡三郎君 指示を受けたんですね。
  309. 川島広守

    政府委員川島広守君) さようでございます。
  310. 岡三郎

    ○岡三郎君 どうも答弁がはっきりせぬね。いやならしようがないけれどもね。  そこで、日航から参考人の方が来ておりますか。――記録によって、斎藤さんという方が対策本部長になられたということで、この対策本部長の斎藤さんのほうからは政府に対して、やむを得ない場合は北鮮に行かせなければしかたがないといって政府に申し入れたが、断わられたと、こういうことになっているわけです。だから、この点について日航のとった態度、これをひとつ御説明願いたいと思う。
  311. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) ただいまの件に関しましては、私は本部長のほうが政府にそのように申し入れたということについては特に聞いておりませんが、そのときに、このハイジャッキングが起こりました直後に、私は日本航空管制室におりまして、この状態を逐一追っかけながら、種々指図をしておりましたので、その間におきまして、政府のほうへあらゆる手段を斎藤本部長がお願いしておるのは聞いております。ですが、詳しい、このようにしてくれという内容については私はちょっと存じておりません。
  312. 岡三郎

    ○岡三郎君 いわゆるハイジャックの行為が行なわれたときに、まあVHFで東京管制官に入って、それが羽田の東京空港にも行ったと。直ちに受けて、どういうふうに対策本部としては措置をとられたのか。
  313. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) これは、日本航空はまた別に会社としての波長を持っております。カンパニー・フリークエンスといっておりますが、この波長を通じまして、七時三十三分に会社のほうへ情報が入っております。これば機長から羽田のオペレーション・センターに直接入っております。これによりまして、いわゆるハイジャッキングが起こったということは知っておりました。直ちに本部長はインフォメーションを受けまして、本部長は八時前後に到着しておると思います。私はちょうど統制室に八時二十分に入っております。八時二十分以前のことは記録以外はわかりませんが、八時二十分以後のことは大体の様子はつかんでおります。八時二十分以後の様子について申し上げますと、一応日本航空といたしましては、赤軍の連中が北鮮へ行きたいと言っております。で、御承知のようにこの機長、搭乗員は国内線を飛んでおる機長でございまして、いきなり中途から北鮮へ行けと言われても何の用意もしておりません。地図も持たなければ、 コース、距離、方角、地上施設、一切わかっておりません。機長としては当然そういうことも顧慮いたしまして、まず、ともかくも福岡へおりなければ様子がわからないということで、福岡到着いたしましても、現在手持ちの燃料が一万二千ポンド――福岡到着したあとでございますが、これではたして北鮮へ行けるかどうかもわからないわけでございます。それで、ともかくハイジャッカーの人たちに対しまして、この旨を説明いたしまして、この飛行機の能力としては北鮮へ行くだけの力がない、それで福岡へおりたいということを説明いたしまして、この説明と同時に、私たちもすぐ北鮮の情報を入手しようと努力いたしました。と同時に、いかにして犯人説得して、乗客福岡で何とか無事におろしたいということを考えました。これに対しまして、各関係官庁並びに福岡のうちの支所へ連絡をいたしまして、用意をいたしました。それでその用意をしたあと機長に対しまして、やはり燃料が足りないと、だから犯人に対しては福岡にしか行けないのだということを説得するようにいたしました。  以上でございます。
  314. 岡三郎

    ○岡三郎君 それで。
  315. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) これは空中におけるときの対策でございます。
  316. 岡三郎

    ○岡三郎君 私の聞こうとしているのは、いわゆる機長のほうに対していろいろと連絡はとれておったと思うのですが、その点について、機長のほうとしては、福岡からその後におけるところの処置ですね、そういう点についてはやはり問い合わせが私はあったと思うのですがね、その点はどうですか。
  317. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 機長のほうからは、福岡へ着陸後燃料補給をして北鮮に立ちたい、最初こう言ってまいりました。
  318. 岡三郎

    ○岡三郎君 それに対して……。
  319. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 私のほうとしては、できるだけ旅客の安全を考えて、機長の希望に沿うように努力すると、そういうふうに答えております。
  320. 岡三郎

    ○岡三郎君 それで政府に対しては……。
  321. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 政府に対して御連絡申し上げましたのは、八時二十五分に空幕の運用課のほうへ連絡いたしております。事件の概略の経過報告しております。しかし、この時点におきましては、もうすでにスクランブルで戦闘機は発進しておりました。それから本部長のほうから、さらに運用課長に対しまして、何とかしてこれを福岡で解決したいというふうに努力したいと、何か方法はないだろうかというようなことを御報告していたようです。
  322. 岡三郎

    ○岡三郎君 それで。
  323. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 空中におきまして、着陸までは大体そのぐらいのことしかできませんでした。
  324. 岡三郎

    ○岡三郎君 着陸まではね。着陸後だ。
  325. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 着陸後もでございますか。
  326. 岡三郎

    ○岡三郎君 そう。
  327. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 着陸後は、われわれとしましては、まず対策としまして、一応できるだけ犯人説得の時間をかせぐために、日本航空といたしましてはいろいろな対策を講じました。同時に、防衛庁、それから航空局を通じまして、もし本機が福岡で解決できなくて、飛行機が発進してしまった場合、韓国並びに北鮮に対しまして連絡をお願いすると、こういうことをお願いいたしております。
  328. 岡三郎

    ○岡三郎君 政府に……。
  329. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) はい、しております。
  330. 岡三郎

    ○岡三郎君 それに対して。
  331. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) それに対しまして、航空局のほうから外務省からの返事と……。
  332. 岡三郎

    ○岡三郎君 何だかちょっと……。
  333. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) よろしゅうございますか。……九時五十五分に国際課長のほうから、外務省から返事がありまして、韓国への通告はできるが、北への通報は非常にむずかしいということでございました。
  334. 岡三郎

    ○岡三郎君 だいぶあなた、しゃべるのに苦労しておるようですがね。とにかくいまのいろいろと質問の中で、政府のほうは関係閣僚が協議をして、福岡でとにかくとめろと、おろせと、日航のほうは事態の推移を見ていて、これではとてもいかぬというので、平壌に行く場合のことを考えて、そのことをお願いに行っている。それに対して、政府のほうはだめだと言っている。この間について橋本さん、どうなんです、詳細に。
  335. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) とっさの問題でありますからして、ことにわれわれは東京におりますから、こまかい具体的な事情はよくわからないのであります。ただ、できれば乗員、乗客福岡でおろしたい。あと向こうの情勢を刻々と聞いておりまして、赤軍の少し異常なる神経でありますから、その諸君が刀を持ったり、短刀持ったりしておるという、自爆するぞというようなことなども言ってきておるようでありますから、そこで、現地において緊急の措置をとる以外に、とても連絡しようがないのです、非常に危険な状態ですから。ただ、われわれとしてはできるだけ、少なくとも乗客はそこにおろしてもらう、そこにおろすことができるように努力をしてほしいという、残念ながら決定的な措置がとれないわけです、私のほうとしては現場見ておっての指図じゃありませんから。そこで、現場としては、おそらくその瞬間においては関係の、たとえば飛行場関係者あるいは福岡県警とか、あるいは自衛隊の諸君とかいう者たちが、特にもう刑事事件にもなってしまっておりますから、問題は刑事事件に移っておるわけですから、それらの指揮に従って、そこで、政府の考えているように、できるだけひとつ乗客はおろすように努力をして、なおやむを得なければ、犯人の脅迫のもとにではありますけれども、北朝鮮に行くほかはない。しかしそれには、先ほど来関係者が説明しておるように、十分なる燃料等を持たなければ、これはどうにもしかたがないわけです。何せ国内飛行機で北側へ行くだけの燃料だけは積んでおりませんから、ましてや地図のわからない、全然わからないところへ行くわけですからして、おそらく一時間とか二時間とか余分のものを持たなければ、飛行士としては行かれないだろうと思うのです。そういう準備のためにもちろん時間を要したろうと思います。その間に、いわゆる説得をして幾らかでもおろさせようという努力を続けられたと考える、事実そのように努力をせられたようであります。その結果が婦人、子供二十三名がおりる結果になった。こういうことにわれわれ理解――その間のこまかい一分おき、三分おきの指示は私のほうではできませんので、現実には現地の判断及び機長の機知によって、そうしてこれが進められたということであります。
  336. 岡三郎

    ○岡三郎君 大体の状況がわかってきたんですが、福岡に三五一便が到着したのが八時五十八分ですね、板付へ。そうしてこの飛行機北朝鮮に行けたとして、離陸したのが大体二時ちょっと過ぎになっているわけです。この間に五時間あるわけですね。その前に閣僚が協議をして、いろいろとそれに対する措置をとった。先ほど警察庁のほうで言うように、その面については公安委員長のほうから指令、指示を受けてやっている。運輸省のほうも指示をしてやっているに違いないし、これはもう私が聞くまでもないと思うのです。これをやってないなんと言ったら、これはでくの棒ですからね、それは問題にならぬと思う。そのときに、外務大臣はもうその間において、これが外交関係にいよいよなるんだというふうな情勢というものを、福岡説得することについて全幅の期待を持っているという答弁ですね、ずっと、外務大臣。ところが、それが二時幾分に立ってしまった、残念だ。残念だと拱手傍観しているのではなくて、これはいわゆるハイジャックの通例として、キューバの問題等考えてみても、これはとにかく命がけでやっていくんだから、向こうへどうしても強引に行くだろう。これは外交関係ができる、そういうふうな判断の中で、外務大臣向こうへ行った場合ということを考え出したのはいつですか。これは初めっからですか。
  337. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは前にも御報告しておると思いますけれども、先ほど来申しておりますように、閣議の前後にそのことを知りましたので、私は外務省にすぐ院内から連絡をいたしまして、こういうつまりハイジャックの問題は日本では初めてではあるけれども、どういう事態になるかわからぬから、万全の措置、手配だけは内々にしておくように、またその方法等については十分検討しておくようにということは、とっさの判断として指示をいたしておいたわけでございます。同時に、その後の経過を見ますると、これは当時の私の希望的観測が間違いであったわけでありますけれども、あるいは板付で解決ができるかという希望も持っておりましたけれども、万一発進することになった場合のことも内々には想定しながら、とるべき措置については十分のかまえをすると、こういう態勢にあったわけでございます。
  338. 岡三郎

    ○岡三郎君 それをもうちょっと外務大臣具体的に言ってもらいたいと思うんだがな。どういう措置をどういうふうにとったのか。
  339. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 万一板付から発進をいたしまして、平壌に向けて発進をするということになった場合には、先ほど日航のほうからも御説明があったようですけれども、まず飛び立てばどうしても朝鮮半島を北上するわけになります。どういう航路で、どういう飛び方をするかは別といたしまして、この航行について安全を確保してもらいたい。これを狙撃したり、その他の妨害をすることのないように、これを韓国政府に依頼をする。急を要しますから、これは直ちに電話で連絡もいたしました。  それから、飛び立っってからあとのことになりますと、ソ連政府それから赤十字その他を通じまして、北鮮側に、平壌に行くような形勢にあるということを協力を依頼いたしました。  それから、急を要しますから、これはかねがね、いま申しましたように、時間的な経過はございますけれども、たとえばNHKの海外放送に依頼をいたしまして、放送によっても北鮮向けにこの「よど」号が飛んで行きつつある模様である、その際には北鮮側に受け入れてほしいという旨もNHKの海外放送にも依頼して放送もいたしました。こういうふうな措置をとったわけでございます。
  340. 岡三郎

    ○岡三郎君 私はまあ先般の答弁の中から見て、とにかくいまのところは乗客を無事におろすことだけで、あとは考えたくないと答弁しておられるわけですよ。もう仮定の問題ということで、戸田君の質問に対して、仮定の問題については私は考えたくないと言っているくらいにがんこに言っているのですね。ところが仮定の問題については考えていてこそ私は常識的であって、それを考えたくないと言っている、そのがんこさは私は答弁、速記録を見てあきれたんですがね。韓国に対してあなたのほうから言うと同時に、これは私は防衛庁長官に聞きたいのですが、防衛庁としていよいよこれは板付から発進するということになるといった場合に、閣僚協議会を開いたんじゃないかと私は思うのですがね。そのときの状況をちょっと話してもらいたいと思う。その間における五時間の時間があるわけですから。
  341. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、ここで予算委員会開かれておりまして、保利官房長官愛知外務大臣ともにここにおりましたけれども、福岡の情勢を秘書官のメモによって聞いてみますと、なかなか犯人は言うことをきかない、それで飛行士をおどかしておる、そういう情報が入りましたので、これは相当重い事態になるかもしれぬ、そういう予感がしまして、外務大臣と保利官房長官に、これは至急大臣室に移って、三人でいろいろ善後策を講じ、各省各省ごとに手を打つべきところは打たなくちゃいかぬ、そういう緊急な事態だ、そう言いまして、お二人とも賛成しまして、委員長に御了解を求めてわれわれ三人は院内の大臣室へ行ったわけです。それで各省の情報をその場から収集して持ち寄りまして、どういう措置をやるべきかということをたしか相談したと思います。その当座は何といってもああいう犯罪行為が行なわれているものでありますから、当然でき得べくんばお客さんの生命安全を第一にするけれども、わが領土内でこれは処置すべきである、第一段階としては。それは主権を持っている政府として当然のことでありまして、外国にそう迷惑をかけるということは慎むべきであると、そう考えて全力をふるって福岡で解決する。それはともかくお客さんをおろしなさいと、そうして乗務員犯人が行くことはやむを得ないだろう。ともかくお客さんをおろすということが最大であるというふうに私たちは当然感じてそういう措置をしていたように思います。しかし、その間にいろいろ情報があって、そのタイヤの空気をはずすであろうとか、あるいは電気系統の中へペンチを入れるとか、まあそんないろいろな情報がございまして、私らは内心そういうことをやってくれるものだと実は思っておったのです。しかし、だんだん時間がたつにつれて、犯人との交渉が少し進んできておって、私の分野では、空港長から要望がありまして、T33と飛行機滑走路に置いておいてくれと、そういうことでありますからすぐ置くようにということを言って置かせまして、しかし、なかなか交渉が長引いてきておるので、万一、これは飛び立つ事態になるかもしれぬ。その場合にはいま外務大臣が申されましたように、そういう万一の際に備えて、韓国側に対して安全に飛行さしてもらわなければいけないと、そういうことも感じて、外務大臣とも相談いたしまして、われわれは米軍並びに米軍を通じまして韓国に対しまして、もし万一そういうことになるかもしれぬ。なった際には安全に航行できるように配慮願いたいということをたしか連絡さしたと思っております。そうしているうちに、病人と女の人だけおろすというような話になって、犯人はT33をのければおろさせると、そういうことが入ってまいりましたから、じゃ至急のけろと、そういうことでのけて滑走路まで飛行機が行ってそして降ろさしたわけです。それでも私はまだ福岡にとめることができるだろうと実は思っておりました。しかし機長の全くの独断で飛行機が出発したのを見て非常に驚いたわけであります。
  342. 岡三郎

    ○岡三郎君 そのときに韓国のほうへ連絡をしたと、で、三人で大臣室へ集まって協議をしたと、いよいよこれは最終段階としてですね、いよいよ板付を飛び立つような状況になりそうだと、まあそういうふうな条件下の中で、手配をして韓国のほうへ言った。韓国のほうからはどういうふうな応答があったのですか。
  343. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) やはり時間的の要素がございますから、電信を出した。その電信に回答があったというような正常の場合と違いますから、電話で東京から、あるいは在京の韓国大使館からわれわれのほうとしては連絡をいたしまして、平壌に向かうと想定される途中の航行、これの安全について配慮してもらいたい。それから同時に、先ほど申しましたように、ソ連とか、赤十字とか、あるいはNHKの海外放送も利用させてもらいまして、平壌への呼びかけをいたしたわけでございますが、これは時間的には、双方ともにその事態に対する回答というものはとうてい、結果においてもそう思いましたけれども、時間的にその余裕はございませんでした。
  344. 岡三郎

    ○岡三郎君 防衛庁長官に伺いますが、当然米軍とも連絡をとってですね、韓国のほうとも連絡をとっておられたと思うのですが、米軍のほうに対する連絡ですね、それから韓国に対する連絡、要するに三十八度線で平壌から韓国へ、金浦へ持ってこいというふうな話については、それはどういうふうに話があったのですか。私は、現在の佐藤内閣としては日韓条約とかそういうふうなたてまえで、これは外務大臣が日ごろ言っていられるように、とても北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国の平壌にこれをやられたのでは、とてもたまらぬという気持ちであったことは私は間違いないと思うのです。これは防衛庁長官もそれから官房長官もそうだと思う。これは心理分析ではないので、私はそうだろうと思う。そういうふうなたてまえからいって、防衛庁長官が米軍と韓国軍に連絡をして、こういう問題について北鮮にやらぬためにはどうしたらいいかという協議をなされたのですか。
  345. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう協議をしたことはありません。われわれのほうはシステムからいきましても、米軍と連絡するだけがまず第一です。米軍が韓国にまた連絡をする、米軍は中継としての役目で、われわれは韓国軍に直接連絡するということはございません。それから第二に、いまのように北鮮行きを阻止するというようなことを協議したとかというようなことはございません。われわれのほうはともかくお客さんの生命ということが一番大事なことでございますから、でき得べくんば、日本の領土内でこれは処置すべきである。しかし、それがどうしてもできないという場合には、北鮮へ飛んで行ってもこれはやむを得ないだろう。しかしその場合に、韓国と北鮮は敵対関係にありますから、途中で要撃されるとか発砲されるとか、そういうことがあってはいけませんから、米軍を通じまして安全に航行させてもらうように、私らのほうからも頼んであります。
  346. 岡三郎

    ○岡三郎君 その場合に、米軍のほうはどういう回答をなされたのですか。
  347. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 時期的には忘れましたけれども、先方に連絡したというのを受けたこと、記憶に残っております。
  348. 岡三郎

    ○岡三郎君 承知したということ……。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ええ。韓国軍に連絡したと、そういう報告を私は受けた記憶があります。それが何時何分であったかよくわかりませんが、とにかくそういう通知は受けました。
  350. 岡三郎

    ○岡三郎君 運輸大臣、そうするというと、この三十八度線を越えて平壌にこう向かった三五一便、この石田機長が途中で対空砲火があった、あるいはミグ戦闘機が途中でじゃまをしたというふうな報道が入ったということについて、これは外務大臣ですか、お答えがあるわけですね、これはこの委員会で。私、この速記録をいま持っているわけです。そういうふうに答弁されて、やむを得ず平壌に向かおうとした飛行機が、いわゆる北鮮の抵抗にあって、そうして金浦におりざるを得なかったというふうな形の説明があったと思うのですよ。そのときに対空砲火があって、ミグ戦闘機が八機ですかあらわれて、そうして北鮮には行けなかったということを答弁せられておるのですがね。この点については、その情報というものが防衛庁のほうから入っていたのですか、これはどうなんですか。
  351. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それは説明というのではなくて、未確認された情報が当時いろいろございましたから、未確認情報ではそういうものもございますということを申し上げたのでございまして、政府としての見解とか、私の意見とかということではございません。
  352. 岡三郎

    ○岡三郎君 それを受けたのは、情報、ニュースソースを……。
  353. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは当時そういうことはすでにラジオとか、あるいはそのほか報道関係にも出ておりましたので、そういう未確認情報もございますということを申し上げたわけでございます。
  354. 岡三郎

    ○岡三郎君 防衛庁長官、これは米軍からそういう通報を受けたということでこのニュースが広まっているということになっていますが、この点について的確にひとつ御答弁を願いたい。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当時はいろいろな情報が断片的に入ってきておりまして、おそらくその情報も韓国筋から米軍を通じて日本に入ってきたのだろうと思っております。そういう情報を断片的に私も聞きました。しかし注が付いてありまして、未確認情報でありますと、そういうことでありました。そういうような情報は当時かなりきておったと思います。
  356. 岡三郎

    ○岡三郎君 それは米軍からですか。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米軍から。しかし真相はまだわからないと思うのです。ミグ戦闘機が八機あったとかなんとかいいますけれども、あるいは韓国のレーダーに写っておったのかもしれません。その戦闘機の位置が、日航機は九千五百フィートくらいで飛んでいますから、それよりも高い一万二、三千フィートで飛んでいればわかりっこないわけです、前のほうばかり見ているのですから。あるいは対空砲火にいたしましても、機長はお客さんの運命とか自分のそばにいる赤軍に気をとられているわけですから、あるいはほかのところであったのかもしれません。しかしないのかもしれない。だからそれをどうだというふうに断定することはまだわれわれは軽率であるだろうと思います。しかし、いまのような情報が部分的に入ってきたということは事実であります。
  358. 岡三郎

    ○岡三郎君 この問題については非常に意図的に、計画的に流れができているように一部では想像されているわけですよ、つまりこのいろいろな情報とか記事を見てみるというと、当初からこういう計画があったのではないか、したがって、私は少なくとも北鮮に入る石田機長は、対空砲火があるか、ミグ戦闘機が来るかということについてはかなり神経質に、その時分において機内のほうはかなり犯人等も気を許しておったという情報なんですから、そういう点に集中されると思うのです。したがって、私は石田機長が言っているように、ミグ戦闘機とか対空砲火はなかったということを信ずるのが私は当然だと思うのです。それは私はそういうふうなことにならなければいかぬと思うのですが、そういうことを考えていった場合に、では一二一・五メガサイクルで連絡をとった、ところが地上のほうから、こちらはピョンヤンだと、平壌だといって韓国のほうがこれを誘導した。しかも一三一・四というサイクルです。こういうふうなことを連絡をしてきて、とにかくここは平壌だというふうなリードをして、誘導をしていったということについて考えていくと、一連の問題として、これは韓国に、とにかく北鮮にはやりたくないということで思い切った措置をここでとっているようにこれは推察されるわけなんですがね。  そこで私が一つお伺いしたいことは、石田機長がこういうふうなところで、まあいろいろと緊張した中にとられた措置、こういったものを考えてみると、平壌飛行場であるというふうに、こういうふうにカムフラージュしてうそをつくり上げたということは、これは韓国空軍がこういう始末をしたということになりますね、そうすると。これは橋本さんどうですか。
  359. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私にはその間の軍事知識もありませんからわかりませんが、ただ私が行きましたときに、金山大使は、私も到着には間に合わなくて十分過ぎに、飛行機到着した十分過ぎに飛行場に着いたのだと、なお韓国空軍の幹部の人も、自分らは間に合わなかったと、十数分後に初めて、あの飛行場の中に空軍司令部があるわけですが、そこに着いたと、こういうことを言っておりました。それだけであります。ただ、御承知のように、あの地帯は準戦時体制ですから、その準戦時体制下においては作戦上どういうことが行なわれるのか、それは私には知るよしもありません。
  360. 岡三郎

    ○岡三郎君 その点はそれでいいでしょう。しかし私はこの点が非常に重要な問題で、平壌に向かって航行の安全ということを頼んだと、ところがいつの間にか誘導されて、平壌へ行っているものが金浦に着陸しておった。そこで犯人が激高して、まあ激高した事件がここにかなり緊張場面が起こったということを報ぜられているわけですが、こういうふうなことを繰り返して、そうして片っ方のほうでは人命の尊重というものをまず云々と、こう言われている。しかし、実質的に、もしもあの場合にですよ、犯人が、これも仮定の問題ですが、犯人山村政務次官との交換をあくまでもこれは拒否するといった場合に、韓国のほうは発進はあくまでも阻止すると、こういうときに、橋本大臣はかなり真剣にこの事態の中において考えられたと思うんですよ。この場合の心境というものは、いまから私が想像しても非常な苦難な問題だと思うんです。これはあなたが向こうへ人質に行くどころの苦難ではなくて、進退かなりきわまってその措置についてやられた。この点について、犯人のほうが山村政務次官と人質を交換するということでオーケーしたからまあああいう事態になって時間がおくれたけれどもそういう措置がとれたということですが、あの場合について、もしも犯人のほうが頑強に乗客との交換を拒否した場合について、あなたはどう考えておったのですか、そのときには。
  361. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私が金浦飛行場到着いたしましたのは、一日の三時二十分ごろであります。いや、五時二十分ごろであります。そうして、私が最終の判断をして山村政務次官と交換を申し入れさしたのが翌日の七時十分ごろであります。約二十四時間のわずかな時間であります。その時間が、私が韓国にいました最も重大な時間でありました。その時間において私がとりましたことは、何としてもこれは犯人神経を休めなくちゃいけないと。大学に行っておる連中であり、あるいは卒業した連中なんであるから、何とかして神経を休めて、そうして人命の尊重ということを理解してもらいたいと。そのためにどうすればいいかということで私はそれに全力を注いで、韓国側も私の意見に同意であって、ぜひ鎮静して、そうしてその間に何らか冷静の手段をとりたいということで、その点はほんとう韓国政府諸君協力一致して私の方針に従ってくれました。であるからして、食糧、嗜好品、まあたばこはもちろんのこと、ジュース、あるいはチューイングガム、犯人連中が希望するとおりに、ほんとうに時間も置かずにそれらを入れたのであります。そうして、私は、結果において二十四時間のわずかな時間でありましたが、韓国政府従業員作業員がおりますから、その連中はわりあいに近くまで機長の窓越しに見ることができるわけでありますから、その連中からその様子を探らせまして、そこでもうこの時期ならばある程度反省してくれる、考えてくれるに違いないということで、私は最後の決断として韓国政府の了承を得ないで、そこで山村政務次官の申し出どおりこれを許可したのであります。そこが、直ちに向こうさんが、約三十分ぐらいでありましたが、そういうことであるならば、全員をおろすことを考えてもよろしいということで、一つの幕がいわゆる百八十度変わったわけであります。その間は約二十四時間であります。  私は、もしそれができなかった場合――できると思いません。必ずしもできると思わない。できなかった場合は、これはもう韓国政府に、日本政府の責任においてこの飛行機全員そのままやる以外に道はないと、これは私は説得する自信もあります。そうして、韓国側は、いろいろな意味から私は前もってその二十四時間以内に打診しておりましたから、その間に、私は、責任をもって、日本政府の正式の承諾を得るならば全員を送ることが可能であると。しかし、ただ、心配なのは、そこの飛行場関係の人に聞きましても、まだ機長は全然いわゆる平壌飛行場なるものを知らない。あるいは北鮮の地理もわかりません。そういうときに、はたして安全に全員を送ることができるだろうかという心配がありながらも、これはもうただ赤軍派犯人どもが直ちに自爆すると言っているんですから、これはそうされれば問題はもうないのですから、万が一にも全員を送れる可能性もあるかもしれぬ。しかし、情勢を聞きますというと、まことに困難な状態である。そのような十分な滑走路もあるともどうも答えてくれない。あるいは、これだけの飛行機が行ったらスターターももちろんないと、はっきり関係者も言っておる。でありますからして、もし万が一飛ばすことになっても、乗客ほんとうにこれはたいへんなことだ。私が政府の責任において政府の了承を得て飛ばすということになっても、ほんとうに着くまでは私としては死ぬ思いである、感じとしては。はたして安全に着けるかどうかということでありましたが、しかし、韓国政府説得する自信だけは、私はその瞬間においてその前から持つに至っておったことは事実であり、最後の場合にはその措置をとらざるを得ないと、かように覚悟しておりました。
  362. 岡三郎

    ○岡三郎君 そういう経緯を顧みて、私はこういうふうな事件が再び起こっていいものとは考えない。しかし、世界のある一つの流行みたいなものですから、こういう事件はまた精神的な一つの平衡状態に戻ったときにどういうふうにこれが考えられるかわからぬ。そういった場合を考えてみてこういうものに対しては、アメリカとキューバの関係は非常にむずかしい関係があったけれども、とにかくいまの場合においてはこういう問題の処理はきちっとできている。だから、こういう点について乗客の安全というものを考えたならば、やはりこれはとっさの問題であるし、韓国と北鮮との関係が非常にむずかしいということもあるので、やりたくないという気持ちはわかりますが、しかし、乗客の安全を考えた場合においては、事前に時間があったわけでですから、やはりスムーズに平壌というものに直行して、そうしてあとあととして返してもらう、その間においては北鮮自体のほうも航行の安全とか生命の安全は人道主義の立場に立って守るということをしばしばいってきておりますから、これに対する一つの結論として、政府が今後対処すべき方法として、繰り返したくないけれども、万が一あった場合についての橋本さんの心境はどうですか。
  363. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 岡さんも、石田機長平壌といいますか向こう飛行場様子を新聞でごらんになったと思います。あのまま全員飛んでいってはたして安全だったかどうか、こういうことを考えますと、もちろんこれがニューヨークとかあるいはちゃんとしたりっぱな飛行場であれば、たとえこれが国交のない国でありましても、たとえ相手の飛行場が十分にわからなくても、たとえば上海飛行場のごときは、国際飛行場として西側から定期飛行機が飛んでおりますから、そういうことであるなれば、もちろん原則としては内地で片づけるべきものでありますが、どうしてもああいうような狂暴な諸君によってそれが不可能であるという場合は、これは直行させなければならない。ただ今度の場合は、あの石田機長が新聞あるいはテレビ等で言っておるように、あの身軽な飛行機ですらも九死に一生を得たと言っておるときに、百三十五名というものを乗せていって、はたして安全に着けるだろうか、あるいはかえってそのほうが惨劇が多かったかもしれないということも想像されます。しかし、今回の事件は別にして、それらのことは将来の問題としてお聞きになったのでありますからして、この種の事件が絶対に起きないとはこれは保証できない。あらゆる方法で今後もわれわれは絶対に起きないように努力をいたし、あるいは単独立法もお考えおきを願ったり、あるいは航空会社としてはこれに対するところの警備も行なってもらう、あるいは飛行場における調査等も十分にやりたいと、こうやりましても、いまや国内飛行機というものはバス同様であります。五分前に行けば乗せるんです。飛行機の荷物の検査もできません。こういう状態でありますからして、したがって、このようなことが起きないとは限りませんので、そういう場合に処しての、たとえば未承認国であっても、できるだけ人道上の問題についてはほんとうに相互に理解して、そうしてこれを片づけるという事前の考え方あるいはそれはやっておくべきである。その意味において、東京条約はもちろん加盟国でなければできませんけれども、それにしても一つの方法でありますから、東京条約というものもできるだけ早く批准をすると同時に、この種の問題は、未承認国であれば当然第三国もしくは赤十字団体を通じて行なうわけでありまするが、これらとの関係はより密接に行なっておく必要があり、また、日本としては、平和の立場からして、あくまで日本は平和自由を守っていくという立場があるのでありますから、できるだけ国際条約の可能な範囲内において関係国との友好関係は結んでいくべきであると、かように考えております。
  364. 岡三郎

    ○岡三郎君 外務大臣から同様にひとつ御答弁を願いたい。
  365. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま運輸大臣が御答弁申し上げたと同じ私ば気持ちであります。私は、 ハイジャッキングというようなものについて、やはり真剣にその対策を検討しなければならないと思っております。たとえば、東京コンベンションというものも、これは十全に目的を達し得るものではないと思いますけれども、しかし、前進の一歩としてこれを批准をする。さらに、日本としても、この経験に徴しまして考え得ることがあればそれを積み上げて、関係国との間にもそういうことに対する協力をさらに建設的にしなければならないと思います。しかし、同時に、これは私はきわめてデリケートな問題だと思うのでありまして、そのほうがあんまり整備してしまいますと、第二、第三がまた起こる可能性をむしろ醸成するおそれもあるのではないか。ですから、私の担当範囲外になりますけれども、どうかして国民的な御協力の上にこういう事件が起こらないようにしていただくということに何とかひとつ効果のある対策を至急に立てていただきたいと、かように考えますけれども、万々一起こったような場合にまたそれに応じた対策ができるようにと、これは先ほど来いろいろお話もございましたが、万々一に備えておくことももちろん大切だと、かように考えております。
  366. 岡三郎

    ○岡三郎君 私は、いま外務大臣とそれから運輸大臣の御答弁を聞いていて、現地に行った人の苦労さというものが外務大臣には足りない。外務大臣は、北朝鮮をいやがっている敵視している韓国と同調しているんだから、何もこれと仲よくせいと私は無理に言う必要はないけれども、しかし、先ほど言ったように、人道上の面とかそういう面についてこれは法務大臣にもあとで伺いますが――法務大臣はいなくなったかな。私は、こういう面について、人命尊重ということを真に考えるならば、先ほども言うように平和に徹するということばの中ででき得るだけのことはしていくんだというふうなたてまえが日本国民にない以上、絶対にないことを期待すると言っても、こういうふうな世の中のことについてそういう絶対ということはあり得ないと私は思うんですよ。だから、そういうたてまえに立って必要以上の緊張さというものを続けるということは、これは国益ではないのじゃないかと、そう考えるわけですが、これについてはいろいろと法律案をつくってやるといいますが、法律は私は万能じゃないと思うのです。いまの外務大臣の御答弁を聞いても。しかし、この問題についてどういうふうに措置をするかについては、私は公安委員長にも法務省にも言っておきますが、こういう事件があったからといって、一般の学生とかそういうものに対して必要以上にいろいろな面において刺激をするというふうなことは私はまずいと思う。だから、的確に午前中に法務大臣が言ったように、そういうふうな直接的な暴力を行なっていくというふうな者に対しては刑法として措置するような単純率直なものをつくるんだと。もう一つは、言われているように、空港における警職法的なものですね。こういうものをどう考えているのか、こういう点について小林法務大臣のほうから簡単に率直な意見を聞きたいと思う。
  367. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) いま私どもの考えておるものは純刑法的の問題であって、その他の問題を付加する意向はないと、こういうことを申し上げておきます。
  368. 岡三郎

    ○岡三郎君 空港のほうのいわゆる警職法的なものは。
  369. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) そういうものは考えておりません。
  370. 岡三郎

    ○岡三郎君 概括的にいうと、やっぱり新聞に言われているようなあれですか。
  371. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) いま私どもの考えているのは、その行為自体を処罰すると、こういう純粋な刑法的なものだけを考えておると、そういうことであります。
  372. 岡三郎

    ○岡三郎君 公安委員長……。
  373. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) こういうことが絶対に起こらないようにということならば、教育の問題であろうかと思います。人の命を軽く見て、自分の目的のためには手段を選ばないというものの考え方をすることがそもそも間違っている。そういう教育の場の課題としてまず取り上げらるべきだと思います。  警職法の問題でございますが、警職法など現行法のもとにおいては、法定の要件がない限り空港管理者及び航空会社の協力のもとに、一般旅客や貨物託送者の方々の理解を得て行なうにとどまるものであります。すなわち、まず調査のために警察官が空港施設や航空機内へ立ち入るについては、通常の場合はその管理者の承諾が必要であります。しかし、人の生命、身体または財産に対して危害が窮迫しているような場合には、管理者の承諾がなくても警察官はこれらの場所に立ち入ることができるのであります。  次に、旅客等の所持品を調査するについては、航空会社が運送約款に基づいて行なう場合や、空港管理者がその管理権に基づいて行なう場合には別として、警察としては、警職法第二条に基づく職務質問として行ない得る範囲においてそれをなし得るにとどまります。すなわち、事前の情報その他周囲の事情から判断して、何らかの犯罪が行なわれようとしているような場合には、必要な範囲のものについて質問を行ない、所持品の内容等についても確かめることができます。しかし、この場合でも所持品の提示を拒む者に対し、強制力を用いてこれを開いて見るようなことはできないということに相なります。したがって、警職法の改正をするかどうか問題はありますが、いま直ちにそのことに触れようとは思いません。たとえば会社側の運送約款に基づいて所持品の何であるかを提示を求めることができますときに、どうしてもこれを拒めば運送契約は破棄してもいいわけですから、そのことに関連して何らかの処置がとれないものかということを考えるわけであります。まだ十分に検討を経ておりませんけれども、さきおりそんなことを考えます。
  374. 岡三郎

    ○岡三郎君 公安委員長としての公務権に対する、抜かったということばに対する考え方はさっき聞いたわけですが、これに対してどう責任をとられるつもりか、責任を感じておられるのか、今度の事件についての公安委員長としての。
  375. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  さっきも申し上げましたように、抜かったということは、情報がキャッチできなかったことに基づいて事前措置がとれなかったことが残念しごくということを申したつもりであります。
  376. 岡三郎

    ○岡三郎君 最後に、私は橋本さんに申し上げますがね。橋本さんは、平壌に行くことについては飛行場が非常に貧弱で危険だと言われておるが、私は、あの場合の石田機長のことばを聞いてみると、夕刻が迫ってきたと、発進が非常に金浦から出る時間がおそい。地形がわからぬ。しかも夕やみが迫ってきた。もっと時間的に余裕があって、そうして向こう地図なら地図というものも福岡で渡せば、私は、こういう問題についての処置はとれると思うのです。しかも、その間において十分に連絡をとって、赤十字なりあるいはソビエトなりその他ととって、そして誘導を頼むというふうな形の措置がとれるようにしておくべきだというふうに考えるわけです。犯人が凶悪であればあるほど、今度の犯人は凶悪であるけれども最終的には折れているから、折れたからこれで何とかなったけれども、折れないような犯人が出てきたとき等も考えて、橋本さんが言ったように、直行させるときの場合を考えて、こういう問題に対する人命の尊重というものを具体的にやってほしいというふうに考えるわけです。  以上で終わります。
  377. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) おっしゃるとおり、今回の事件に関しましても、また将来の事件に関しましても人命を尊重するというたてまえであります。ただ、あの場合、全然地図が――飛行地図がないですから、残念ながら北朝鮮のほうの。そこで聞きますというと、小学校の小さな半島のそれを写してやったということ、京城平壌もほとんどくっついている、こういうような地図ですから、ほとんどめくら飛行であったといういろんな問題がありましたことも一つの問題があるようでありますが、将来も、もちろん人命尊重のたてまえで、相手が承認国であろうとなかろうと、そういう問題は、私は、まず別の問題として、そうして人命尊重の上からイデオロギーを越えてこの問題は協力一致解決すべきものと、かように考えます。
  378. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。長野さんたいへん御苦労さまでした。一つだけあなたに伺いたいのですが、三十一日の午後一時ごろは、長野さんは羽田日航運航統制室においでになりましたでしょうか。
  379. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) はい、おりました。
  380. 鈴木強

    鈴木強君 私は、ちょっといま思い出したのですけれども、当時いろいろと情報がありまして、私、いま記録をちょっと調べてみたのですが、そうしますと、あなたが日航の運航統制室から、直接電話でアメリカ軍の板付基地にある司令室を呼び出しまして――司令室ですね。米第五空軍韓国空軍が「よど」号を捕捉するというか、そうしてもう一回板付か韓国内の空港に着陸さしてもらいたい、こういう依頼をしたということを申しておりますね。そのときに、日航機との連絡は、御承知の周波数一二一・五メガサイクルを使う、こういうことまで連絡をしたということですが、これは事実でしょうか。
  381. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) その件について説明さしていただきます。  私ども、いわゆる板付におきまして、日本航空はあらゆる手段を尽くしましてお客さまをおろすべく努力いたしました。しかし、非常に犯人が頑強で事態が刻々に悪くなってまいりました。ことに犯人は、一応婦人とそれから子供たちをおろすことは同意いたしましたが、他の乗客に対してはおろすことをがえんじない、そういう種々の試みがなかなかうまくいかない状態におきまして、非常に「よど」号が北鮮へ飛ぶ可能性が強くなってまいりました。そのときに、私のほうとしましては、先ほど申し上げましたように、各官庁に対しまして、韓国並びに北鮮へ飛ぶ可能性があるので、当然そのときに、機長からの報告は、板付を離陸した飛行機はまっすぐ北上して韓国の東海岸を見ながら北上するという話でございました。そのために、私のほうとしましては、当然韓国のFIR、これはフライティング・インフォメーション・レジオンと申しまして、韓国飛行通報区域内を通過しなければなりません。そうしますと、当然私どもとしては、韓国空軍及び北鮮軍の迎撃機が上がってくると考えられました。普通の場合ですと、無通告で入った場合に迎撃機の指示に従わなければ撃ち落とされてもしかたがないことであります。そのために、何とかしてこれを通報したい、いわゆるこういう状態でやむを得ず行くのであるということを知らせたかったのであります。先ほどの防衛庁長官のお話にもありましたように、当時、私のほうとしましては、防衛庁に対しまして韓国空軍に何とかこの旨を伝えていただきたいと申し上げましたところが、直接のホット・チャンネルがないというお話でございましたので、やむを得ず、私は十一時四十五分に米軍の板付の基地司令官を呼び出しました。電話がなかなか通じませんで、電話が通じたあとも司令官が席におられませんで、私が直接司令官とお話ししたのは十二時二十分でございます。そのときに司令官に私がお願いしたことは、一番最初に、韓国空軍へ直接のチャンネルはお持ちですかということです。向こうでは持っていると。その次には、その場合に日本航空の727の現在の置かれている状態は御存じですかと、向こうは知っていると。それでは現在非常に事態が悪いので、もしどうしてもハイジャッカーの言うとおりに飛行機が北鮮へ飛ばなければならない場合に韓国空軍へ次のことをお願いしたい。一つは、まずどんな場合でも撃ち落とさないでいただきたいということが一つ。もう一つは、もしインターセプターと申しますが、迎撃機が機長と交信ができる場合には、機長に対し板付に帰ってほしい、板付に帰れというオーダーを出していただきたい。これは当然機長が、そのときの状態としましては、 ハイジャッカーにうしろから凶器を突きつけられておるので、自分の意思で戻ることは非常にむずかしいかったので、迎撃機によるオーダーであればあるいは戻れるかもしれないと考えたからであります。第三は、やむを得ずそのうち727が、「よど」号が三十八度線を突破いたしまして北鮮へ向かう場合には、これを撃ち落とさないでそのまま行かしてくださいと、これは普通、迎撃機の命令に従わない場合には撃ち落としてもいいということがあるので、私のほうとしては、それを頼んだわけであります。それに対しまして、司令官のほうから、操縦士にはどういう波長を使ったらいいかという質問がありましたので、それは普通操縦士は、非常の場合一二一・五を常時――これは何も国内ばかりでなく、国際線でもそうですが、ウォッチしているという状態でございます。そのために、チャンネルは一二一・五を使ってくださいと。それだけを申して、向こうの司令官は、よろしい、伝えますと。これは米軍をお願いしたのじゃなくて、米軍を通じて韓国空軍お願いしただけであります。以上であります。
  382. 鈴木強

    鈴木強君 長野さんね、これは非常に私は今度の事件の重大なポイントだと思うんです。それで、いまあなたもここにおられましたから、岡委員の質問によって、当時政府のおとりになった措置についてはお聞きだと思います。われわれもこの問題については非常に重大な関心を持ってこの委員会でも取り上げてまいりました、何回か。あなたは、この重大な板付に帰れという、こういう連絡を米軍を通じて韓国に、あるいは機長にどういうふうに連絡されたか知りませんけれども、したということは、これは、私は、あなたの個人の判断によってやったこととは思えないのです、これは。
  383. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 私の判断でございます。
  384. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと、ちょっと。これは日本航空のあなたの上司もおられるでしょうし、またこの問題については、いませっかく国際的な問題であるだけに政府はあげて措置をしておるときですから、そういう米軍の司令室と直接お話をしてそういう重大な要請をするということには、これは私はもっとその方面とも連絡を密にすべきではなかったかと思うんです。これはまあ過ぎたことではありますけれども、今回の事件のポイントがどうもここらにあるような気がして私はなりません。したがって、この点についてあなたも感ずることありますか。日航の上司あるいは政府のほうと相談をしないで独断で十二時何分にやったと、そういうことについてはどう考えますか。
  385. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) 私は、現在日本航空の運航の担当をしておりまして、運航のほうの基準部を担当しておりまして、私は自分自身がパイロットでございます。その場にパイロットのほかの責任者はおりませんでした。私は、パイロットの立場を少なくとも理解しておるつもりであります。私はとり得るあらゆる手段を尽したつもりでございます。もちろん、時間的にタイミングの問題がございまして、第一に、乗客の生命安全をはかることが第一なのはもちろんでございます。その場合に、私としましては、できるだけそういうことを努力いたしまして、先刻からいろいろお話がございましたような事態が推移しておりましたときに、もう事情やむを得ないということと、それから先般の、いわゆる国境を侵犯した場合の他国機に対するインターセプターの処置というものを大体存じております。そういう事態というものを予測した場合に、私が司令官へ電話をいたしましたときは十二時二十分でございます。そのときに飛行機のエンジンをスタートする予定は、いわゆるランウエーを、滑走路をクリアにして、上がる予定時が十二時三十分でございました。わずか十分の時間しかございません。そのときに私が取り得た処置としては、私は私自身の判断で、私どもの日本航空のマニュアルにも緊急の場合には、あらゆる意味でそのときの状況に応じた最も適切な処置をとれと、その場合にはマニュアルにも逸脱してよろしいという規則がございます。私はパイロットの一員といたしまして、もう時間的余裕がないと考えまして非常手段をとりました。  以上です。
  386. 鈴木強

    鈴木強君 これは、もう私はこのことについてこれ以上は言いませんですけれども、もう一つ伺っておきたいのは、一二一・五メガサイクル、これは緊急の場合の発進周波数だったと思いますが、さっき岡委員もおっしゃり、私もけさ聞いたのですけれども、一三一・四メガサイクルに変えて、こちらは平壌空港だ、アプローチはこの周波数でということに切りかえたことは、特に国際民間航空条約というのがありますが、これは三十八年に日本も批准しておりますね。したがって、この条約の附属書の第十で、国際的にこれはきめられた周波数だと思う、緊急事態の場合に。だから、これをそういうふうに一三一・四メガサイクルに変えたということは、この条約から見て違反するんじゃないでしょうか。これは、政府のほうからもちょっと聞きたいのですが。
  387. 長野英麿

    参考人(長野英麿君) ただいまのお話でございますが、私は、一三四・一の間違いではないかと思いますが、実際存じません。これはアプローチコントロールの波長でございまして、これはVHF――先ほど出ましたベリイハイフリケンシィ――、超短波でございます。これの到達範囲は百五十キロ程度でございます、まあよくて二百キロ。ですからこの波長はどこでも使っております。どこの飛行場でも使っております。それで別にこれは特に金浦とか、平壌とか限ったことではなくて、それぞれの飛行場で同じ波長を使っておりますが、それはそれぞれの飛行場の、ごく限られた範囲内だけに到達するものでございます。ですから、特にこれは一二一・五というものは――飛行機には二つの受信機がついております。片っ方一二一・五にしまして、片っ方が平壌のアプローチの波長であると、こう言われれば、片っ方に一二一・五、片っ方にその一三四・一をセットいたしまして、それでそれを受けるわけでございます。これはパイロットとしては実に普通のことでございまして、特に違反でも何でもございません。
  388. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 以上で岡君の質疑は終了いたしました。  明日及び明後日は午前十時から公聴会を開会することといたします。本日はこれをもって散会いたします。    午後六時八分散会