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国務大臣(愛知揆一君) 昨日午後、本
委員会を途中で中座をお許しいただいたわけでございますが、それからしばらくしてからソウルから橋本
運輸大臣からの電話の連絡によりまして、山村運輸政務次官の身がわり案を軸とする案というものが
考えられ始めたということの報に接したわけでございます。これに対しまして、政府としても直ちにその線に沿うた具体的な
対策を速急に協議いたしましたわけでございますが、そうしておりますうちに——途中のいろいろの経過は省略いたしますけれ
ども、午後六時十分になりましてから、山村政務次官の勇気のある英雄的な行動を
中心といたしまして、犯人と申しますか、いわゆる赤軍派との間に、山村君が身がわりになることによって全乗客を飛行機からおろすということについて原則的な合意が一応できたわけでございます。そのことの報告に接したわけでございます。ただ、この合意については、社会党の阿部助哉代議士によって山村新治郎君のことを確認したいということが条件になっておりました。政府といたしましては、直ちに阿部助哉代議士に御協力を求めましたところ、即座に御快諾をいただいて、山村君の人物を立証するということをお引き受けいただきまして、さっそく、ほとんど即座に金浦に飛んでいただいたわけでございます。そうして、今朝来現地におきまして赤軍派との間にいろいろの経過がございました。これもこまかい点は省略いたしますけれ
ども、午後の二時五十九分に山村政務次官がこの飛行機に搭乗いたしまして、その前に五十数名の乗客が無事に飛行機からおりたわけでございますが、山村君が飛行機に乗りまするのと引きかえに、残りの五十数名の乗客の
方々が無事に地上におりることができました。これで、おかげさまをもちまして、全乗客——私正確に名簿によって確認をいたしたいと思いましたが、そのいとまがございませんでした。全乗客と申し上げて、まず間違いはないと思いますけれ
ども、全員がようやく七十九時間後に自由になられた次第でございます。
こういう結果になりましたことにつきましては、国会における議員の
方々の御熱心な御激励、御協力、御支援のほか、
国民皆さまの非常な御心配と御激励をいただいた結果でありまして、政府といたしましては衷心からお礼を申し上げる次第でございます。
なお、昨日も申し上げましたが、今回の事件が起こりましてから、それぞれいろいろの立場で各国あるいは各機関の御協力を求めてまいりましたが、特に韓国政府におかれては、日本側の気持ちを十分くみ取って、日本の欲する線におきまして十分な支援をしてもらいましてこういう結果になりましたことについて、あらためて謝意を表しておきたいと思います。
かくして、乗客の
方々はようやく自由を取り戻されて、いわばほっとしたわけでございますが、直ちにこの飛行機は北鮮向け、これは平壌に向かうことになっておりまして、こう申しておりまする間にも離陸をしたのではないかと思っておりますが、この飛行につきまして、これまた、韓国政府、ソ連邦その他に非常な協力をいただいております。さらに、軍事休戦
委員会、赤十字、それからたとえばNHKの海外放送、国際電電というようなところの御協力——これは実はあらかじめ相当具体的にこれらの線を通して北鮮の協力を求めておったわけでございますが、これらの点につきまして、北鮮側におきましても、この飛行機、その乗員、乗っておる人
たちの飛行の安全、人命の安全はもちろんでございますが、着陸後の人道的の取り扱いというようなことを保証しておりまするし、また、早期に帰れるような措置、特に山村君の早期の帰国というようなことについては、今度のこの称賛すべき行動に対しましても、政府といたしましても、ぜひすみやかに帰国をしてもらえるように、今後とも万全の措置をとりたいと
考えております。前々から申し上げておりますように、本件につきましては、人間の生命の尊重、人道的立場、この線に徹して政府も措置してまいったつもりでございますし、また、
関係各国、各機関もそういう線の上に立って協力をしていただいた。あるいはまた、今後も協力を続けていただけるということになっておりますことは、これまた政府といたしまして、ほんとうに感謝すべきことであると思っております。
最後に、あらためて、先ほ
ども申し上げましたように、社会党の阿部代議士にもほんとうにお願いしにくいところを即座に快諾されて、この結果が実りますことに非常な御協力をいただいて、また各党各派、超党派的な御協力をいただきましたことに対しまして、重ねて御礼を申し上げる次第でございます。