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国務大臣(山中
貞則君) 私
どもの国が諸外国から堕胎天国と呼ばれることは、決してこれは好ましいことではありませんで、日本にアメリカその他の国から、ことにカソリック系のきびしい戒律の国から、ひそかに堕胎のために訪日する婦人が相当あるということは、これはどうも私
どもとしてはあんまり感心しないことであって、やはり人工妊娠中絶というものを認めておる法律の趣旨というものが、相当ルーズに行なわれておることの実態を雄弁に物語っておると考えます。ですから、胎児であっても一個の貴重な生命というものが、やみからやみに葬られることの罪というもの、あるいは人間の道徳意識、モラルの立場からいかに重大なことであるかということで、これは厚生省でありますけれ
ども、いま少しく現在の法律のやむを得ない場合ということを厳密に条件を明示していかないと、日本の将来はたいへんなことになるのではないか。ことに日本の家族構成人員が、核家族化という表現等がされておりますけれ
ども、いまや夫婦子三人といっているのは、大蔵省の福田大蔵
大臣以下の税務
当局者だけであって、総理府統計局においては、厳然として夫婦子一・九人が日本の標準世帯であると、こういうふうにいっておりますので、税もそういう方向に努力するというお考えを持っておられるようでありますけれ
ども、これは
現実はそうだから税も合わしていかなければなりませんが、せっかく日本の国家が一億のバイタリティでもってこれだけの
国民総生産の力を見せてきておるのに、その内部が一人ぼっちの老人が疎外されて死んでいっても大都会の中では実子が、実際の子供が十日目に来て発見したりするような
状態が日本にも見られてくるようになりました。憲法に親を養う義務がなくなったからといっても、これでは私
どもはやはり今後の日本というものは発展は期待できないのではないか、子供の多い、世帯数の多い国がいいとはいいません。しかし、だんだんそのように結婚当時の二人きりの老夫婦がふえる、あるいは一人きりの老人がふえる、家族とは血縁であっても一緒に住めないというそのような
状態にならないような何らかの努力がいまのうちに払われないと、日本民族の未来は、経済が発展しながら全く空洞化した民族の構成になるおそれがある、私はそのようなことも心配しております。ですから、今日の青少年の間でフリーセックス等が行なわれておることの背景に、なに、妊娠をしてしまえばそれは簡単に近くのお医者さんで処理してくれるからというような、安易な気持ちが背景にあることも立証はできませんが、意識でありますから。やはり調査等についてはそれらのところもそういうことを念頭においたフリーセックスというものが行なわれておるのか等も、調査する必要がある。あるいはフリーセックスが世界的なこれは現象であってやむを得ないのだ、とめることは不可能だと考えましても、これが青少年のみにとどまらないで、御
指摘のように、中高年齢——、高年齢というのはちょっと無理かもしれませんが、中年齢の層にまで広がっていった結果、性病というものがおそるべき勢いで家庭の主婦に蔓延しつつある、私の友人に東京近郊で婦人科医を開業しておる者がありますが、実は婦人方が自分が性病にかかっているのだということの自覚が全くないそうです。ほとんど皆無である。ですから妊娠の診断をしてあげたときに、あなたは実は性病であるといっても、そんなはずはないというので、性病とは何ぞやということがだんだんとみなわからなくなってきておる。昔は性病というものの撲滅にも努力いたしましたし、そのかわり即効薬もあまりなかったせいもありまして、まあ有田ドラッグみたいなものが性病のおそろしさを絶えず興業的に見せたりしまして、とにかく性病というものはおそろしいものだ、民族の純血の上からいってもたいへんなことなんだという意識は
国民の間にあったわけです。ところが最近は、相当子供を産む年齢もしくは産んだ経験のある経産婦等の間においても開業医から、あなたは病気だと言われても、絶対に
承知しない。そんなはずはないと言うて、証明をしてあげてもなおかつ自分はそんなはずはないんだと言っておられる。いろいろと突き詰めていくと、そのことによって離婚になったケースもあるそうでありますが、そこらのところは、やはり日本人が戦争に負けたことによって取り落としたものの一つに、人間性とか、日本人の心とかいうものも確かにあるはずです。私たちはそういうことの現象というものがこれ以上進んでいかないような——これは
政府、政治家、あるいはすべての社会の指導者各位の自覚も含めて、われわれが重大な問題として自覚していかなければならぬところと私考えます。私のほうでも青少年対策のほかに、売春対策
審議会をあずかっておりますので、性病等その他の問題がやはり売春とも関連をいたしまして、いろいろと議論されておりますから、人ごとと見ないで、これらの問題に対するたゆまない努力を続けていきたいと考えます。