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国務大臣(
中曽根康弘君)
総理が申されたとおりでございますが、陸上自衛隊について限度がきているという
意味は、定員について限度、当分の間は限度である、そういう
意味であると私解釈しております。
日本の防衛力の問題を考えますについては、
アメリカとの安全保障条約との
関係を抜きにしては考えられないと私考えます。それで、この
アメリカの安全保障条約との結合状態を見ておりますと、
日本はいままでいろいろ敗戦以来の歴史的
事情もございまして、
日本の防衛というものが不自然な形にあった、そう思います。これを自然体に戻していこう、本来あるべき姿に次第に回復していきたいというのは私の念願でございます。
昭和二十七年に独立しましたときは、
日本の防衛力はほとんどゼロにひとしい状態で、そこで安全保障条約を締結してほとんど
アメリカにおぶさっておったという状態です。そのために裁判権も向こうに取られておるとか、あるいはそのほかいろんな面において
日本は弱い劣弱的な地位にあったと思います。その後経済成長が進みまして、国力が次第にふえるに従ってこの自然体に回復しようとする努力が行なわれてきたと思うんです。少なくとも自民党はそういう考えでやってきたと思います。そこで
昭和三十五年の安保条約の改定ということが出てまいりまして、これで裁判権を回復するとか、内乱条項を削除するとか、行政協定を地位協定に変えてNATO並みにするとか、あるいは十年の期限を設定して、これを再
検討する期間を設けるとか、そういう努力がなされたと思うんです。その後また十年たちまして、
日本の国力はまた回復してまいりました。そこで
アメリカに依存し過ぎている部分を是正して、
日本独自でやれる部分をできるだけ回復していこうと、それが自然体であると。ただしそれは憲法及びいままで制約された範囲内においてできるだけ行なおうと、そういう努力をやって
日本の自主性をかなり回復しておきませんと、もし万一非常事態が起きたという場合になりますと、あまりにも依存し過ぎておると、どうしても向こうに引っぱられ過ぎるという危険性もあります。自主性を持っている部面が強ければ強いだけ、
日本の自分の
意思で貫かれるという要素もございます。そういう面からしまして、憲法の範囲内でまた
国民的コンセンサスのいわゆる範囲内においてできるだけ外国に依存する部分を減らしていこうという考えに立って私は防衛問題というものをとらえておるわけでございます。ことしは六月二十三日以降安保は自動継続になりますが、一年の予告でいつでも安保は一方的に廃棄できるという情勢になってきておるわけです、法律的には。そういう情勢を見ましても、やはり自主性を高めて外国に依存する部分をできるだけ減らしていこうということは、国家としても当然すべき努力であると思うんです。しかしそれについては、
国民的コンセンサスとか、あるいは憲法の諸条項の規定するところに従うということは非常に重要な要件でありまして、その範囲内においてどの線を座標の交点として求むべきかということを努力しているわけです。そこで数量的にこれを表現することは非常にむずかしいと思うんです。数量的な表現にやや近いのが国力国情に応じてという国力という部面が
一つあります。たとえば国力の一番大きな要素は経済力とかGNPということにすぐなります。に応じてということになると、比例してというふうに考えられます。そうするとGNPがおそらく十年後には百四十兆になるとか何とかいっておりますが、それに比例してということになると、かなりの大きな数字になる。それが適当であるかどうかは私は
検討を要すると思っているわけです。そこでこの四次防の編成に当たりまして、毎日自分は考えておりますが、いままで自分が考えてきたことや申し上げたことを整理いたしまして、私の四次防に対する心組みとして個人的にあの自主防衛五原則というのを申し上げたのであります。あれにつきましては、いろいろ御批判をいただきまして、直すべき部面があれば十分直したいと思います。要するに
国民の皆さんに私の考えをむしろ積極的に開陳いたしまして、いろいろ御批判をしていただきたい。そしてその声を聞いて公のものとして次第に整備していきたい。そういう
考え方に立っておるわけでございます。そこで現有勢力とそういう考えとを考量してみまして考えますところでは、陸上においては定員はもうこの程度でよろしい。しかし機動力というものは足りないであろう。それから海上におきましては、これは海上要員を海上訓練のために練習をするという
意味における単位の程度のものはできておる。しかし、有効なる防衛力という点にまで至って整備しておりません。そういう
意味におきまして、海上は整備していく必要がある。ただし、これは
日本近海、
日本本土及び近海及び海峡等を防衛するという点に主力を置いていくべきである。そういう点から、いままで
日本の海軍が持っておったような太平洋渡洋決戦みたいなああいう思想は一擲しなければならぬ。むしろ小回りのきく非常に性能のいい小艦艇を整備するということも考える必要がある。そういう点について補強する必要があるのではないかと私、考えます。
それから航空につきましては、いろいろナイキとかホークとかという防空体制においても、まだ完全ではございません。それからファントム、そのほかの要撃戦闘機隊の整備につきましても、まだ十分とはいっておりません。そういう部面において防空部面ももう少し増強する必要がある。そういうところを
中心にいろいろ考えて推進していきたいと思っておるのでございますが、要は数量的なものよりも、政策の考えの基準が一番大事だと思うのです。これが政治であると思いまして、幾つかの選択がある中で、どれを選択するかという政治の考えの基準というものを
国民の皆さまに明確に御理解をいただき、また御批判をいただき、その基準から具体的にどういう政策が出ていくか、それは次の
段階でまた皆さんの御批判をいただきたいと思うわけでございます。そういう考えに立ってこれからやってまいりたいと思います。