○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、ただいま
報告のありました
昭和四十四年度中小企業白書について、物価安定、情報化社会、労働力、公害防止の観点から、
総理並びに
関係大臣に若干の
質問を行なうものであります。
まず第一に、物価の安定と中小企業政策についてであります。
総理は、施政
方針演説の中で、「
政府は経済成長を適切に保ちつつ競争条件を整備し、中小企業、流通部門の近代化をはじめとして積極的な生産性向上施策を進めてまいります。」と述べ、さらに
政府は、先日発表された新経済社会
発展計画の中で、第一は、「従来から実施されてきた構造政策をよりいっそう強力に推進し、労働力不足下にふさわしい
国民経済の効率化をはかることである。とくに、農業、中小企業、流通部門など生産性上昇率が低く、各種の保護
措置もあって、非能率な状態が残されている分野を
中心として、産業の近代化、合理化を強力に進め、農産物や大衆的工業製品などの廉価にして豊富な供給体制をつくらなければならない。」と提言し、そして
政府は、中小企業部門の高度化の必要に伴い、「これら生産
段階における効率化が消費者物価の安定にむすびつくよう流通
段階の効率化を進め、とくに産地直送方式を含めた流通の大量化などによって、労働力が過剰であった時代に成立したこれまでの流通経路を合理化し、取引に関する制度慣行を改め、また協同一貫輸送体制やコールドチェーン・システムの導入など物的流通の改善を行なう。」と、その
方針を打ち出しております。しかしながら、
現状においてますます物価は高騰し、
国民の中には、
政府の物価政策に対する不満はつのる一方であります。
本年度予算編成における
政府の
態度も、いたずらに景気を刺激する超大型予算を組み、物価に対する配慮はほとんど見られないばかりか、ますます高度経済成長によるひずみが
国民生活の中にひたひたと押し寄せ、これが大きく中小企業に種々の圧迫となってきていることは
周知の事実であります。このたびの中小企業白書に見られる特徴は、機械
関連産業、消費財産業、流通部門についてどのような分野が小回りのきく中小企業に適しているのか、そのための条件は何であるかを解明し、部門別に新環境への適応策を示唆した点については一応
納得のいくものであります。
しかしながら、中小企業政策の中で、
さきに
政府が強く主張している消費者の
立場からの物価の安定という命題への配慮が欠けていたのではないかと思うものであります。すなわち、新経済社会
発展計画と白書に見られる施策との一体化が実際に貫かれているのかどうか、
政府のいう生産性向上が
実現する前に、中小企業がその近代化のために必要な種々の負担がかえって物価の上昇を招く結果とはならないか、あくまでも、
政府は、物価の安定という大目的に向かって、中小企業の健全な育成をはかりつつ
国民生活を充実させる具体的な方策はあるのかどうか、この白書が絵にかいたもちに終わらない
確信がおありかどうか、
総理並びに通産大臣にお伺いしたいのであります。
次に、物価の安価の面から重要な問題は、中小企業カルテルのことであります。卸、小売物価上昇の元凶は、農水産物と中小企業製品ともいわれております。さらに、中小企業団体法に基づく組合カルテルによる価格の維持が一役買っているともいわれております。中小企業製造業のカルテル数は、昨年末現在で五十八業種、三百四十七件に達しているのであります。このカルテルを
政府は大幅に整理すると伝えられておりますが、もともと中小企業カルテルは、大企業が独占価格を高く維持し、大企業の独占力を取り締まる
政府の力が弱いために、中小企業が自衛手段ともいうべきものとしてつくったものであり、大企業のカルテルを放任したまま、中小企業のみ整理することは不合理であるとの非難を免れないと思いますが、中小企業製品の価格を中小企業者に圧迫を与えないで調整する方策はないものか、これを
政府はどのように
考えているのか、カルテル整理の方策とあわせて
お答え願いたい。
第二は、情報化社会に適応した中小企業の方途についてであります。近年におけるところの知識、情報量の爆発的な増大とコンピューターの目ざましい
発展は、情報処理の生成、
発展を促し、これらを原動力として展開される情報革命の波は、
わが国においても加速度的に全く新しい社会である情報化社会へと移行しつつあります。こうした情報化への進展の中で、
わが国の中小企業が生き抜くことは、ますますきびしさを増すことでありましょう。この情報化社会に対応するため、白書は、消費財
関連工業や商業においては、積極的に市場を開拓していくため、情報指向的になる必要があると
指摘しているのであります。私は、白書で示している一部の産業に限らず、中小企業全般にわたって情報化への指向は重大な問題であると思うのであります。
政府は、今後も情報化社会を迎えての中小企業対策にもっと積極的に取り組んでいくべきであると思うが、
総理並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。
一方、情報化社会を迎える七〇年代にとって、中小企業のたどる道はすこぶるきびしいことが予想されているのであります。すなわち、労働力不足による大幅賃金の上昇や技術革新の波及、さらに、情報化の促進に伴い中小企業の存立基盤そのものがゆらぎ始めているのであります。その上、
発展途上国からは特恵関税の早期実施、先進国からは
貿易、資本の自由化の促進を迫られるなど、内外の圧力にはさみ打ちを受けようとしており、中小企業はかつてない重大な転換点を迎えようとしているのであります。
このような
情勢の中で、七〇年代の中小企業にとって最も大切なことは、自助
努力への指向と、その自助
努力が実を結ぶための
政府の助長をいかに施すかということであります。中小企業政策に魂が入るとも
考えられている中小企業に対する自助
努力の助長に対して、いかに
総理は取り組んでいかれるつもりであるのか、所信を伺いたいのであります。
第三に、労働力の不足の問題についてであります。労働力の不足については、新経済社会
発展計画の答申を見ますと、
昭和四十五年度から五十年度の年平均労働力人口増加率は一・一%であり、三十八年から四十三年度の年平均増加率一・六%を大幅に下回ることが予想されているのであります。このデータで見る限り、雇用面において、中小企業が、一般的に見て、大企業に比べて不利な
立場に置かれることは事実であります。そのために、
政府は、経営の合理化や設備の近代化をはかり、省力化に
努力することの重要性を示しているのでありますが、中小企業にとっては、設備の近代化をはかることは資金的な制約があり、なかなか容易なことではないのであります。そこで、
政府は、企業のグループ化や協業化、あるいは業界全体の構造改善などの方法をも
考えられているのでありますが、労働力が豊富な時代は、労働時間の延長や低賃金によって中小企業の経営が維持できたのでありますが、今日ではそれが許されなくなってきているのであります。このような労働力の減少に伴う中小企業の圧迫に対して、労働大臣はいかなる対策を講じようとされているのか、所信を伺いたいのであります。
最後に、公害防止の問題についてであります。公害防止については、白書では都市化の進展と過密公害の問題の顕在化について簡単に取り上げているのみであります。私は、ことに中小企業の公害防止問題について、もっと積極的に
政府は重点施策として取り組むべきであると思うのであります。最近、都市化の進展により工場廃液や騒音問題が社会問題の
一つとして大きくクローズアップされてきており、これらの
解決を怠るようなことがあっては、中小企業にとって大きな存立の基盤を失うことにもなると思うのであります。
政府は過密防止や公害防止のために工場団地づくりを前向きに進めておりますが、中小企業についてももっと深刻にこの問題を
考え、積極的に取り組まなければならないと思うのであります。人命
尊重の
立場を守る上からも、ともすれば投資に大きな負担がかかるために、公害防止にはあまり力を入れられない中小企業をいかに指導し、また、財政的な面からいかなる助成をしていくべきであるのか、
総理並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。
以上をもちまして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕