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1970-02-18 第63回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年二月十八日(水曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和四十五年二月十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。   日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)。  去る十四日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。松澤兼人君。    〔松澤兼人君登壇、拍手
  4. 松澤兼人

    松澤兼人君 私は、日本社会党を代表して、佐藤総理大臣施政方針及び関連する国政の諸問題につき、関係大臣質問をいたしたいと思います。去る十四日、総理はじめ各大臣から、四十五年反の政府施策とこれに基づく国政の運用の構想を伺ったのであります。総理演説が従来の型を破った新しい発想である点に注目いたしました。その構想で新しい一九七〇年代国政を推進していこうとする発想には理解ができるのであります。しかし、演説内容を見ますと、ビジョン倒れの国民不在政治の姿が強く感じられます。総理は、日本軍事的手段世界政治上の役割りを果たす国でもなく、単なる福祉至上主義を目標とする国でもないと規定し、第一の指針を、内面の充実をはかり、豊かな国民生活基礎を築くことに置き、第二の指針として、内における繁栄と外に対する責務とを調和することをあげております。次に、内政の課題の達成を述べているのでありますが、これがきわめて多岐かつ羅列的でありまして、内政重点が明らかでないことはまことに残念であります。国民総理施政方針で聞きたいことは、公害に対する積極策物価は必ず安定させるという決意行政的な措置であると思うのであります。それが聞けない国民の立場では、旧態依然たるお題目の羅列としか映らないと思うのであります。本年に始まる一九七〇年代は、人類の歴史にとっても重要な年代であります。経済成長重点を置いてきた一九六〇年代自民党政策をそのまま持続するならば、それに伴って生じてきた公害交通事故物価の問題、これらに対する積極的な施策を見なければ、人間権利人間生活は失われていくと考えなければなりません。企業の巨大化に伴って生ずる人間疎外、すなわち独占と機械化の虚像に埋没してしまった人間成長と幸福を新しい政策で取り戻して、見せかけの繁栄ではなく、真の人間の幸福を具現する方途を講ずべきではありませんか。  政府は、共同声明を通じて安保条約をそのまま無期限に延長する方針を打ち出し、防衛力の強化の予算を作成しております。しかし、内政を軽視していると思われるのであります。米国では、一九七〇年を内政の年とし、一九七一年度予算における優先国家目的の変更を発表し、国防からの人間資源の諸計画への移行を明らかにしたのであります。国防費は一九五〇年以来の最低となり、人間開発には全国家予算の中で四一%を占めるといういわゆる新しい方向に進み始める予算を示したのであります。この予算内政重視予算であります。わが国もあらためて内政に目を向けて、一九七〇年を豊かで実りのある内政年代の第一年とすることにつとめるべきではないかと思うのであります。(拍手)  施政方針では、どこに国政重点を置いているか明らかでありません。この点を明確に打ち出すべきであったと思うのであります。施政方針演説はある意味でのイメージチェンジのあとを見るのでありますが、行政の実態については政策転換の肉づけがないのであります。いたずらに訓示的であり、期待的であり、公害物価についてこれをやりますという突き詰めた決意が示されておらず、できなければ責任をとるというかまえが見えておりませんのはまことに遺憾であります。米国軍事から人間生活確保に移行したように、わが国においても公害交通事故のない生活環境をつくり、安定した生活を営む新しい高福祉、低負担の政治を内外に示されてしかるべきではないかと思うのでありますが、御方針を明らかにしていただきたいのであります。  政治姿勢の第二の問題は、国政基礎国民的合意に置くべきではないかという点であります。一党一派に偏することなく、各種各様意見の調和の上に国策を決定し、これを推進することが政治あり方としては最も望ましいものではないかと思うのであります。新しい政治年代を迎えるにあたり、いかにして国民的合意をつくり出すべきかを探求してみる必要があると思うのであります。  自民党は、衆議院において三百議席を占めておりますが、総投票数の五〇%を割る支持であります。半数以上の人が反自民であります。これは、もし特定法案の可否を国会の場で採決すれば自民党が勝ちますが、国民一般投票に問うならば、あるいは敗れるかもしれないことを示すものであります。したがって、国民的意思や希望を国会の場で論議する場合に、多数決だけにたよることのない運営が必要であると思うのであります。多数の独裁ではなく、国民的合意を尊重して、新しい政治姿勢を築き上げる必要があるのではないか。総理総裁としてのお考えをお聞きいたしたいと思います。  政治姿勢に関する第三の問題は、今後の国会に対する総理あるいは自民党総裁としての抱負についてであります。日本社会党が昨年暮れの選挙で退潮いたした事実は率直に認めなければなりません。ただ、今後の国会がどのような姿で運営されるかは、私たちとしても、また国民としても、大きな関心を持たざるを得ない点であります。そのために、自民党も勝利におごることなく、理にかなった国会運営をすべきであり、実行しなければなりません。思い起こすもまことにいやなことでございますが、大学運営臨時措置法案の採決のときのような理不尽な議事運営は、今後一切なすべきではないと思うのであります。参議院独自性あるいは自主性など、国会正常化については、今後各党各派話し合いをしなければならない問題であります。私たち参議院議長責任を問題にしたのでありますが、議長は一党の私物ではありませんから、党のさいはいで議長を左右するなどということは、今後厳に慎むべきであると思います。  議会制民主主義は、日本の進歩へのきずなであり、総理もこの点は認めておられるのであります。したがって、その趣旨に基づいて、今後、国会を真に国民の信託にこたえる議会とするためには、与野党一致した責任を感じなければなりません。選挙後の新情勢に即した国会運営について、自民党総裁たる総理の基本的な態度をお聞かせ願いたいのであります。  一九七〇年代は、国際関係におきましても、また重要な変革の行なわれる年代と想像することができます。政府は新しい国際関係外交関係におきまして、日米安保条約の無期限延長一つの強力な背景または基盤として、今後の外交関係を組み立てていくことは明らかであると考えられます。共同声明により、日本安保条約において新たな任務を背負い込み、日本以外の特定地域かかわりを持つことになったのであります。これがわが国の新しい外交路線であるといたしますと、まことに重大なことであります。一九七〇年代国際関係はどのような姿で進展するか、私たちの予想のできる問題ではございません。ただ、もしそこに二つの道があり、私たち選択権利があるとするならば、私たちは少しでも平和な道を選ぶことは好ましいことであります。一つ一つ選択や決定を、現在の平和維持基礎の上に考え、さらに、将来、国際関係が平和の方向に進み得る道を考えていくのが外交の基調でなければなりません。新しい日本の平和への選択を力づける国際関係は、ベトナムの問題では、古い政策戦略から新しい政策戦略へ移行し、あるいはベトナムに平和が確立するために、アメリカは最大の努力を払っているようであります。そのため、ニクソン政権担当当初に比べて、ベトナム米軍は十一万五千五百人削減するということを申しております。ソ連を中心といたしましての国際的な動向は、あるいは核拡散防止への動き、核軍縮の会議進行中であり、ソ連西独あるいはSALTについての米ソ話し合いなど、表面上は平和への道が敷かれつつあります。この中で特に注目すべき点としては、ソ連西独との間に武力不行使宣言協議が行なわれ、また、米ソの間では、いま申しました戦略核兵器使用禁止、あるいは生物化学兵器使用禁止等協議が行なわれているようであります。このような動き考えてみますと、もちろん参加各国決意いかんによっているとは思いますけれども、これが積み重ねられて、新しい意味の緊張の緩和と国際的な協力と信頼が生まれてくることに大きな期待を持ち得るのではないかと思うのであります。このような国際的な動向総理としてはどのように評価され、また、平和への道に日本としてはどのような態度をとるか伺いたいのであります。  日本を取り巻くアジアの政情について見ましても、ソ中、米中の協議進行中でありますし、特に米国の対中共貿易緩和は、ある意味におきましては相互依存関係回復とも見られないことはありません。国連における中共加入運動も過小評価するわけにはいきませんし、また、それに対して日本が協力する必要もあると考えるのであります。総理選挙中に、大使クラス以上の接触という積極的な態度を示されたのであります。その御心境のほどをお聞きしたいと思うのであります。しかし、対中共関係につきましては、先ほども申しましたように、共同声明において台湾という問題が出てまいっているのであります。これらの問題を考えてみるときに、今日の段階におきまして、対中の問題は、貿易の問題あるいは国交回復の問題、いろいろ考えてみましても、まことに重大な問題があると思うのであります。特に日中覚え書き貿易の切りかえの時期を迎えまして、総理はどのようなお考えを持っておいでになりますか、承りたいのであります。  次に、沖繩返還背景と今後の見通しについてお伺いいたします。沖繩が七二年に返還されることになりましたことは、戦後処理一つ解決を見たものとして評価さるべきであります。しかし、一九五三年に奄美群島日本復帰したときのように、われわれがほんとうに心からの感激、歓喜を持ち得ないのはどういうことでありましょうか。それには復帰そのものにいろいろと問題が残されていることが原因であろうと思うのであります。共同声明はこれに対して明確に答えてくれないのであります。去る十二月二日、衆議院が解散され、臨時国会はこの問題について慎重審議をなさないままに解散されてしまったのであります。特に参議院におきましては総理所信表明があっただけで、各党代表質問も行なわれないまま臨時国会は幕となってしまったのであります。国民はいまに至っても共同声明内容について半信半疑、まことに何を信じていいかわからない状態に置かれてあります。  第一に総理にお伺いしたいことは、返還の時期一についてであります。もとより七二年に復帰ができることが予定されておりますが、また同時に、第四項のベトナム情勢がそれにからんできているのであります。いわば条件つき返還とも考えられないこともございません。ベトナム最終処理は、声明も言っておりますように非常にむずかしい、困難な条件が幾つも重なっているのであります。その時点で両国が協議することが一つの担保となり、あるいは返還の時期、基地の態様、あり方などがあらためて検討されるのではないでしょうか。ベトナムが片づかなくとも、七二年に返還されることが確定的であるとするならば、その場合、協議が行なわれることは、何の協議が行なわれるのでありましょうか。このことにつきまして詳細に承りたいのであります。  次に、共同声明によって安保条約内容解釈適用に異質の変化が加えられたのではないかと、国民が疑っているものがあります。すなわち、共同声明の中で、あらためて韓国台湾地域が特別にメンションされ、韓国の安全が日本の安全にとって緊要——エッセンシァルであるといい、台湾地域についてもまたその安全が日本の安全にとってきわめて重要な要素——モスト・インポータント・ファクターであるというふうに言っておるのであります。この論理からするならば、安保条約を変えずに、共同声明によって、日本日本以外の国々の事情の変化によって、条約上、重大な責任と義務を負うことになったのであります。共同声明安保条約そのものを変更しないで内容を変えているのであります。ジョンソン国務次官の説明によると、緊急事態の際の核の持ち込みは、もちろん日本政府同意を得たときに限られるが、それと同時に、共同声明によって、日本本土東南部米軍基地に関しても沖繩同様に適用されるのであって、この点何がしかの変化があるといい、また、他の地域防衛日本かかわりを持つということも今度の重要なできごとである。理論的に考えるならば、アメリカ行動沖繩に関しては制限されるかもしれないが、在日基地に対しては、アメリカ理論上の行動は、理論上拡大されることになると述べているのであります。これは日本にとって安保条約はいままでにない新しい重要な意味を持ってきたのであります。たとえ、事前協議制度というフィルターはあるにいたしましても、結果からするならば、本土基地沖繩化するという心配が生じてくるのであります。総理は、韓国台湾緊急事態が生じた場合、事前協議において、日本国憲法のたてまえやあるいは核に対する日本国国民感情を尊重して、核の持ち込みにあくまでもノーというき然たる決意で対処される考えでありますか、伺いたいのであります。(拍手)  なお、この際お伺いしたいことは、国会におきましてはしばしば非核決議をしようとする動きがあったのであります。しかし、自民党反対のために今日まで成立を見ておりません。核の問題は、安保条約でも、あるいは核防条約でも今後関連してくる問題でありますから、国会国民的感情のあらわれを反映させ、非核決議をすることは最も時宜に適したものであると考えるのであります。総理は、核に対する日本国民感情について共同声明の中でも述べておられるのでありますから、国民的合意決議として成立させる努力をなさるべきであると思いますが、総理として、また自民党総裁として、その意思がおありであるかどうか承りたいのであります。  次に、沖繩日本復帰が一九七二年に実現するものとするならば、当面、日本政府としては復帰準備のために必要な措置は多くあり、それを漸次実施していかなければならないと思います。米国予算教書によると、詳細は明らかでありませんが、一九七一年会計年度では、沖繩に対する経済援助は三百八十四万五千ドルとなり、前年の一千七百五十万ドルから一挙にその二二%に落ち込むことが予想されているのであります。四十五年度日本政府沖繩援助関係費は、財投分九十億を含めて三百五十億円となり、その増減は重大な結果を来たしているのであります。琉球政府にとりましては、一九一七年度の予算編成をきわめて困難ならしめるものではないかと思うのであります。現地では、突然の米国援助費削減によりまして、当然の責任者であるアメリカ沖繩に対して援助大幅削減を押しつけてきたのは、ある意味では米国責任の回避であり、あるいは施政権の放棄ではないかという考えも出ております。沖繩復帰を前にして、日本政府は、施政権がないことを理由として本土並み行政水準を確保することをせず、米国政府は、返還を前にして従来の援助方針を大幅に変更するのであっては、沖繩同胞の立つ瀬が全くないと言わざるを得ません。日本政府は、復帰を二年後に控えて、当面、琉球政府行政を助け、沖繩県民福祉経済発展向上のために思い切った事前措置を講じて、二年の間に徐々に本土経済社会水準に見合う地位を確保するために特別の援助をすべきであると思うのであります。大蔵大臣総務長官に率直な御見解をお聞きしたいのであります。  なお、これに関連して、沖繩における米軍雇用職員離職解雇の問題につきましてお尋ねをいたします。米国政府は、在アジア米軍の引き揚げなどを行なっておりますが、沖繩においても米軍雇用日本人従業員解雇を申し渡し、今日まで一千七百三十八人の大量解雇をしているのであります。沖繩全軍労は、これに対抗して二回のストを決行し、近く第三次ストが予定されております。  この問題について特にお尋ねいたしたいことは、米軍基地従業員地位を、現在の米軍直接雇用制度から間接雇用制度に切りかえることはできないか。もし米国側交渉中でありますならば、その経緯をお聞かせ願いたいのであります。  第二に、退職金解雇予告期間本土並みにすることはできないか。あるいは便法として、この際、本土並み扱いとしての日本政府が一時立てかえ払いとし、後日復帰の際、精算するという方法はとれないものであるか。沖繩基地従業員感情や、これまで基地に依存してきた沖繩経済特殊性などを考慮して、日本政府として、その全軍労関係要求米国側外交ルートを通じて率直に伝え、交渉すべきであると思いますが、政府はどのような交渉をしているのか、その詳細を承りたいのであります。  当面の沖繩関係の第三は、国政参加と、これに伴う渡航自由の問題であります。政府沖繩国政参加準備費として一億円を来年度予算に計上しており、おそらくは衆参各選挙ともこの秋に実施となる可能性があると思います。こういう事態で、一つ一つ沖繩本土の一体化が行なわれているときに、渡航が現状のように制限されていることは、幾多の不便と不合理を生ずることは必然であります。この問題は至急に解決されなければならない問題であると考えます。米国側との交渉経緯見通しについて、総務長官から御答弁をいただきたいのであります。  次に、核防条約の問題についてお尋ねをいたします。  核防条約は、一般的軍縮核実験核兵器使用などの禁止への路線の一環として考えるという見方からすれば理解できるのであります。しかし、これには、調印後の政府声明にもありますように、幾多疑問点なり、確認すべき点が含まれているのであります。総理に対しまして次の諸点を質問いたします。  第一は、この条約は現在の核保有国戦略上の優位を固定化するのではないか。この条約締約国に対して核兵器の所持、使用禁止しておりますが、核兵器国がさらに新しい核兵器開発、研究、所有を禁止するものでありませんから、核兵器国非核兵器国との国際的力量または発言力の隔絶がいよいよはなはだしくなり、この核防条約成立によって、ますます激化していくのではないかと懸念されるのであります。政府の所見を伺いたいのであります。  第二に、核兵器国非核兵器国軍事的な相互援助協定なり安全保障条約を締結している場合  に、非核兵器国第三国からの脅威を受けた場合に、核兵器国援助の名目で、第三国に対抗するための核兵器持ち込み禁止していませんから、核兵器拡散は、これを防止することができないのではないか。また、核兵器国がみずから非核兵器国基地を利用する核兵器使用禁止することができませんから、この点につきまして非常な心配があります。したがいまして、総理見解を求めたいのであります。  第三には、米ソ英核保有国同意調印と、他の非核保有国調印を得て成立を見ることになるわけでありますが、現在、核保有国の全部がこれに加入しても、なお幾多の問題がある上に、仏・中の二国が参加していないことは、この核防条約の根本的な弱点であると思われるのであります。政府は、これらの国々条約参加に対してどのように考えているのか、あるいは日本として、政府声明にかかわらず、核保有国としての中共参加を呼びかける何らかの手がかりがあるかどうか、お聞きいたしたいのであります。中国の核防条約参加可能性、または接触方法について、具体的なお考えがあるならばお聞かせ願いたいのであります。  第四は、非核保有国に対する核の脅威からの保障の問題であります。これは、核保有国による非核保有国安全保障条項条約では十分でないのであります。現実には、非核保有国は、ある核保有国の核の脅威を感じ、自国の安全のために、他の核保有国核戦力かさもとに身を寄せなければならない事態に追い込まれる危険性があります。好むと好まざるとにかかわらず、事実、世界は両陣営に分かれております。この核防条約によって、中立的な国々もいずれかの系列に組み込まれ、対立はいよいよ激化するのではないか。わが国が核の脅威からみずからを守る方途は、この条約でどのように約束されているか、承りたいのであります。いずれにせよ、非核保有国が大国の核のかさもとに身を置かなければならないということは悲しむべきことであり、また、われわれとしては重大な関心を感じているものであります。  最後は、原子力の平和利用に対する条項についてであります。政府は、いわゆるユーラトム並みが絶対に必要な条件であり、この点が見きわめられない限り批准手続はとらないと外務大臣は力説しておるのであります。もとより当然のことでございますが、批准手続を留保する、または納得のいった上で初めて批准手続をとるということは、以上申しましたような、ユーラトム形式まで査察が標準化されるということを見きわめてから批准をするのであって、反対に言うならば、われわれの要求が十分に取り上げられない場合には、批准もしないという強い意思表示まで含んでおるのかどうか、伺いたいのであります。  次に、お尋ねいたしたいことは、日米繊維交渉の経過と見通しについてであります。総理通産大臣からお答えをいただきたいと思います。  現在の日米間の懸案事項のうち最も大きなものは、繊維自主規制の問題であります。元来、この問題はガットの場で議論さるべき性質のものであり、一歩を譲っても、関係多国間で十分検討さるべき問題であります。米国側は、当事者二国間だけで協議し、結論を出そうとしておるところに無理があるのではないでしょうか。米国繊維業界に対する日本繊維製品の実害の報告についても事実に反するものがあり、不十分でもありますので、さらに、事実に基づいた調査を要求する必要があると思いますが、通産大臣のお考えをお聞きいたしたいのであります。この問題は早急を要する問題でありますが、同時に、また、拙速であってはなりません。この問題について、総理は、大統領と懇談をされたということを聞いております。私は、それを信用しませんけれども、いわゆる密約説なるものが流布されております。その真相はどのようのものでございましょうか。また、外務大臣はこの問題の窓口であり、通産大臣所管大臣であります。両相の間に心ずし意見の一致を見ていないといううわさもあります。これは、単に外務省の事務的な交渉だけでなく、日本業界、特に中小繊維業界の重大な問題であります。したがって、解決いかんによりましては他の製品にも波及する問題であり、通産大臣から経緯見通しを承りたいのであります。  特に通産大臣に対しましては、毛と化合繊の対米輸出の実績、伸び率について、また米国側が主張する二国間の交渉、毛と化合繊包括規制日本業界に及ぼす影響等について詳細に承りたいのであります。  最後に、予算の問題、簡単に触れておきます。  今回の政府予算は非常に膨張した予算であり、当初の「経済持続的成長物価の安定」ということを考えておりました大蔵大臣意思とは全く違った形のものになり、過熱的、刺激的であり、物価予算規模の増大と、特に一八%四にも及ぶ公共事業費の増のために、来年度におきましては、政府が全体の経済見通しの中で消費者物価を四%台に押えることを期待しているのでありますが、おそらくはこの見通しを越える消費者物価の上昇が予想され、また、卸売り物価の最近の騰勢も注目を要します。この膨大な予算物価あるいはインフレに与える影響について大蔵大臣から伺いたいのであります。  第二の問題は、この予算重点が明らかでないということであります。私たちは生産と生活のバランスのとれた国民生活を確保するために実行性のある計画的な予算を希望いたしておったのでありますが、それがむざんにも破られたことは、まことに残念に考えます。  また、財政硬直化の問題につきまして、財政硬直化は毎年の問題であります。これは、政府自民党その他の圧力団体に弱く、圧力のために健全財政がくずされている結果にほかならないのであります。財政の硬直化を避けるためにどのような大蔵大臣考えを持っておりますか、お聞かせ願いたいと思います。  地方税制の問題につきましても、あるいはまた所得税の問題につきましても幾多の問題があります。特に、私、心配いたしますことは、いわゆる税調の答申は四十四年、四十五年度で完全実施が終わったから、もう今後は所得税の大幅減税というものはあり得ないという説が流れております。しかし、物価の値上がりに見合う減税は将来も考えていかなければならないと思いますので、大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。  以上をもちまして質問を終わりますが、一言、総理総裁に対して御希望を申し上げたいと思います。  一九七〇年代の第一回の国会として、この国会が真にわが国の平和と民主主義の基盤として国民の信頼と支持をかちえられるものとするためには、実りある論議を通じて国民の建設的な意見が十分に予算案、法律案、条約案の審議に反映し、必要によっては、各党各派意見の一致を見た場合には、修正等を通じて国民の利益、権利、幸福が守られなければならないと思います。国会の正常な運営のために総理総裁の特段の御留意をお願いいたしたいと思います。  以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  5. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  松澤君から、まず一九七〇年代政治あり方について種々お尋ねがありました。施政方針演説によって明らかにした政治指針をいかにして具体化するのかということであろうかと思います。私は、これからは日本の国力が世界に対し前例のない重みを持つ時代に入ると申し述べたのでありますが、このような認識のもとに七〇年問題を展望いたしますと、内政外交ともに幾多の大きな課題が存在していると指摘せざるを得ないのであります。特に内政上の課題として、物価問題や公害問題など、国民生活上の諸問題の解決が重要であることは、御指摘のとおり、申すまでもありません。松澤君は、米国予算教書が明確な内政への移行を示す具体的裏づけをしているにもかかわらず、わが国の場合、予算措置が十分でないとの御指摘でありますが、との点は政府としてもできる限りの努力をしていることは御理解いただきたいのであります。しかし、ビジョンと現実の間には距離があることはこれまた当然でありまして、私は、この距離を縮める努力こそが進歩であると、かように考えるのであります。今後とも一段と努力する所存であります。  次に、国会運営正常化の問題でありますが、総選挙によって国民の審判を受けたこの機会に、衆参両院とも国民の期待にこたえる国会運営が行なわれるよう念願するものであります。とるべき少数党の意見を尊重すると同時に、多数決原理が確立されることが肝要であります。自民党は、常にみずからを戒めて国会審議に臨むと同時に、安保、防衛、教育など、常に国民的合意を求める努力を尽くしてまいりますので、各位の御協力を切にお願いするものであります。何とぞよろしくお願いいたします。  外交問題のお尋ねのらち、まず国際関係における平和努力についてお答えをいたします。  最近の国際情勢の中において、米中、米ソの間に安定した国家関係が確立される見通しは立っておりませんが、ヨーロッパを中心にして東西間の話し合いによる平和への努力が行なわれていることは好ましいことであり、注目しなければなりません。特に、その背景にあるものを見落としてはならないと思います。これはNATO諸国の戦争抑止力が十分に機能しているため、長い時間をかけて徐々に緊張緩和政策が可能となったことであります。すなわち、平和の維持、増進のためには、一面において抑止力を持つと同時に、他面において緊張緩和政策を推進することが必要であることを物語るものであります。同様に、アジアの平和を確保するため、戦争を抑止する強い決意と不断の努力が必要であることは申すまでもありません。かかる見地から、政府日米安保条約の戦争抑止力としての機能を重視し、その有効な機能の維持をはかることとしているのであります。これまでも繰り返し述べてきたように、わが国の安全は、極東の平和と安全なくしては十全を期し得ないのであります。特に韓国や中華民国のような近隣諸国の安全は、わが国の安全にとって重大な関心事であり、万一これが侵されるような事態が発生すれば、まさしくわが国の安全にとってもゆゆしきことであります。このような場合に、わが国が自主的判断により事前協議を適正に運用し、前向きの態度をもって事態に対処することは、わが国の国益に照らし当然のことと考えます。また、中国大陸との関係は、わが国にとってきわめて重要であり、その改善をはかることは政府の基本方針であります。可能な限り接触の幅を広げてまいりたいと考えているのでありまして、政府としては大使級会談を考慮していることはすでに明らかにしたとおりであります。  日中覚え書き貿易については、できる限り増大したい考えであります。昨年のわが国と中国大陸間の貿易量は六億二千五百万ドルにのぼったのでありますが、近く自民党の古井君が貿易協定改定のため訪中いたすので、その交渉に期待しております。  なお、国連における重要事項指定の問題については、今後慎重に検討する方針であります。  沖繩返還の問題について、参議院においてももっと審議したかった、突然の解散でその機会が与えられなかった、こういうお気持ちでございますが、その点は私もまことに残念に思っております。  昨年秋の日米共同声明にある、沖繩返還予定時までにベトナムの平和が実現していない場合の日米協議の問題についてお尋ねがございましたが、沖繩返還予定時までベトナム戦争が現在のような形で続いているという事態が望ましくないことは言うまでもありません。しかしながら、米国としても特定の時点までに必ず戦争を終結させることを一方的にコミットし得ないととも当然理解し得るところであります。そこで、沖繩返還予定時になっても、ベトナムにおける平和が実現していないという万々一の事態となった場合には、その時点で、日米双方でさらにあらためて協議することとした次第であります。なお、ここにいう協議は、予想し得ざる事態に備えたものにすぎないので、いまからその協議内容を具体的に申し上げることはもちろんできません。いずれにせよ、ここにいう協議は、日米間で合意を見ている一九七二年中、核抜き、本土並みという施政権返還の大綱のワクの中で行なわれる協議であって、この点も誤解のないようにはっきり申し上げておきます。施政権返還後の沖繩には、事前協議の制度が本土の場合と全く同様に適用されることになっており、いかなる場合におきましても、米軍基地の自由使用などということはあり得ません。なお、伝えられるジョンソン次官の説明なるものは、日本政府として論評すべき筋合いのものでないと考えます。しかし、本土における事前協議そのままが沖繩に適用されるということは、はっきりこの機会にも申し上げられることでありますから、誤解のないように願っておきます。  次に、核兵器持ち込みに対する問題についてお答えをいたします。政府は、今後とも非核三原則を堅持する方針であり、返還後の沖繩につきましても同様な方針で臨むことは、すでに明らかにいたしてきたとおりであります。一方、わが国の安全にとってゆゆしい事態が生じた場合に、わが国が自主的判断により事前協議を適正に運用し、前向きの態度をもって事態に対処することは、むしろ当然のことであると思います。しかし、誤解のないように申し上げますが、このことと、あるいは核を持ち込まさない、持ち込まないという政府方針は、別に矛盾するものでないことを重ねて申し上げておきます。国会決議等については、すでにたびたびわが党の態度を明確にしておりますから重ねて申し上げません。  次に、核防条約についてお答えいたします。この条件内容で問題点となる点の第一は、核兵器国の核軍縮義務が明示されていない点でありましょうが、わが国などの主張により、軍縮交渉を誠実に行なうとの規定が設けられ、また五年ごとの条約再審査会議で軍縮の進行状況を検討することになっております。  次に、非核兵器国安全保障が十分に確保されていないという点でありますが、すでに申し述べたとおり、核による侵略またはその脅威に対しては、国連で援助提供のための行動がとられ得るようになっております。原子力の平和利用に関する不平等性もたしかに問題であります。この条約核兵器国は査察を受ける義務が規定されていないことは遺憾でありますが、米英両国は自発的に国際原子力機関の査察を受ける意図を表明しております。他方、わが国について、査察の実施の面での差別待遇がないよう、実際に査察協定を作成する上で努力してまいります。いずれにいたしましても、この条約の問題点については、今後、国会で十分討議、御審議をお願いしたい、かように考えていますので、何とぞ御審議のほどお願いいたします。中共、フランスの条約参加に対する働きかけでございますが、両国がこの条約に入って、核軍縮のための交渉を誠実に行なうよう希望しており、この点、特に政府声明においても明らかにいたした次第であります。  次に、この条約により米国の核のかさ政策かさの下にいるという政策が定着化するのではないかとの趣旨のお尋ねがありましたが、この条約核兵器の全廃を究極の目標としているのであり、また、それまでの間でも、非核兵器国に対する核の侵略あるいは威嚇には、国連による援助行動を受け得ることになっておりますので、米国の核のかさ政策を定着化する云々は当たらない、かように私は考えております。  繊維問題についてでありますが、私とニクソン大統領との会談におきまして、繊維問題をいたずらに放置しておくことは、日米友好関係にとっても好ましくないとの観点から、なるべく早く合理的な解決をはかる必要があるということで意見が一致し、このため、当時すでにジュネーブにおいて進行中であった予備会談の成り行きを注視していくことになったのであります。しかし、解決の具体的方法について合意したことはありませんし、したがって、密約などといったものはありません。事柄は、大統領と私との間の話し合いでございますので、その詳細な条件など等について論議するような事柄ではありません。この点特に誤解のないようお願いしておきます。  最後に、各党からの予算修正の要求を受け入れて、りっぱな予算にせよとの御提案がありましたが、昨日の成田委員長の御質問にも関連してのお尋ねと思います。昨日私が申し上げましたのも、国会予算修正権を全く無視したものでないことは、正確に速記録をごらんいただければ直ちにおわかりいただけると思います。私が申し上げたいのは、政府としては、必要な手だては十分に踏んだ上で、七〇年代初頭の内政の年にふさわしい予算を編成したという確信を披瀝したものであります。それ以外の何ものでもありません。各党からの具体的な修正意見につきましては、いずれ予算委員会において、その内容を伺った上で討議の対象となるものであると、かように考えております。  最後に、国会運営について非常な建設的な態度で、また真摯にこの問題と取り組め、かように仰せられたこと、私も全く同感でありまして、ことに、松澤君からこの御意見の出たことに対して心から敬意を表します。  以上で終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  6. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十五年度予算が警戒中立型と称しながら、その実がないじゃないか、刺激型ではないかというお話でございますが、私は終始この方針を堅持してまいったつもりであります。私は、いまのこの日本において景気の持続的成長、これは非常に大事なことだと考えておるのであります。総理大臣から、いろいろ七〇年代のビジョンを述べられましたが、これを実現する、その上におきましては、どうしても経済成長が続くということが絶対的条件である。そういう意味において、財政も金融も特に慎重を期さなければならない段階である、かように考えておるのであります。  財政はなるほど規模は少し大きくなりました。しかし、社会資本の要請があり、あるいは地方交付税の問題があり、あるいは医療費の問題がある、あるいは農政費の問題がある。規模は大きくなりましたけれども、しかし、その内容はどういうことであるかといえば、これは財貨サービス一四・八%の増加である。これは経済成長の一五・八%、これを下回る。これを見ましても、内容的には刺激的ではない。これは御理解いけるのじゃないか、かように考えております。また、財政、予算上におきましても、公債を減らすとか、これもなかなか容易なことじゃないのでありますが、これを減らした。あるいは政府保証債も、これを減らした。さらに、いま金融調整中でありまして、企業は非常に苦しんでおります。しかし、その際にもかかわらず法人税の増税を断行する、こういうことまでいたしておる。これはなぜかというと、財政が景気を刺激しないようにという配意であるということも、とくと御了承願いたいのであります。  なお、物価問題につきましては、今度の予算では、一切物価引き上げに必要な財源、そういうものは見込んでおりません。米麦をはじめ、物価引き上げというものは、一切これを見込んでおりませんということを御了承願いたいのであります。  なお、所得税減税につきましてのお話がありましたが、この所得税減税は、これは今度規模が三千五十億円、非常に大きな規模でありますが、景気の動向から見ますると、いま所得税減税を行なうべき時期ではないのであります。つまり、購買力を向上させるという機能を持つ所得税減税であります。しかし、いろいろ考えますると、サラリーマン等を中心として非常な叫びがある。また国会における経緯もある。そういうようなことを考えますと、この際、所得税減税を行なったほうがいい。しかもまた、半分半分に割って、四十五年度、六年度に分けてやったらどうだというような意見もありましたが、これはこの際一挙にやったほうがいい、こういうふうな判断に立ったわけであります。今後も国民負担の軽減につきましては大いに努力をするつもりであります。  圧力団体の影響で予算の焦点がぼけたというようなお話でありますが、圧力団体の影響は少しもありません。さようなことは何らかの誤解であると、かように考える次第でございます。  また、沖繩援助につきましてのお尋ねでございますが、昭和四十五年度におきましてはかなり思い切ったつもりであります。七二年には沖繩本土に返ってくる。その際には本土と一体化の体制になければならぬ。そのための財政援助は、この上ともこれを強化してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手
  7. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、松澤さんが、沖繩復帰の七二年決定がきまったときに、奄美大島のような喜びを感ぜられなかったというおことばは、これは確かに事実でありまして、四分の一世紀以上の長い期間の忍従と屈辱の歴史の上に立っての私たちは同情、そしてそれに対する償いの気持ちというものからこの事実を厳粛に受けとめていきたいと考えております。  具体的な問題といたしまして、米国沖繩援助費削減による日本政府考え方は、財政的にどのような措置をしたかというお話でありますが、御指摘のように、米国政府は明年度の対沖繩経済援助額を、総額三百八十四万ドルとする案を議会に提出したようでありますが、これは現年度に対しましては非常な減額であります。しかしながら、米国政府当局としては、弁務官資金を約一と千八十万ドル援助することを考慮しており、全体しては、明年度、琉球政府に対する米国援助資金は一千三百五十万ドル程度となるものと予想している。これは、本年度に比較して約五百万ドルの減少であります。  この問題については、先般開かれた第十八回日米協議委員会の席上において、私からも、米国政府沖繩に対して、引き続き、でき得る限りの財政援助を行なうよう申し入れた次第でありますが、御案内のごとく、日本政府としての明年度の沖繩援助費は、総額において三百五十億余円を計上予定いたしており、前年度援助費に比して、実に五四%の大幅な伸び率を示しているのでございます。このことは、復帰を二年後に控え、施政権はいまだ米国にあるとはいえ、沖繩県民本土政府に対する強い要請にこたえたものでございまして、沖繩県民本土復帰を喜んで迎え得るよう、  各般の対策に配慮したところであります。この結果、日米政府琉球政府に対する援助額を合算いたしますると、一九七〇年度に比し、明年度は約二千九百万ドル程度の増加が予想され、伸び率においても三六%程度となる見込みであります。また、日本政府援助費内容においても、私といたしましては、一九七〇年度の米国政府沖繩援助費が、米国議会において二百万ドル減額修正されました経緯にかんがみまして、七一年度における援助費においても、相当程度の削減があることを予想いたしまして、琉球政府財政収入の減少を緩和するよう、行政運営費あるいは調整費等、新規の援助措置を講ずることといたしております。これによって、米国政府援助金の減額による影響は大かた解消できるものと考えております。  御指摘のごとく、沖繩は、戦後二十数年にわたり本土施政権を異にしていたため、産業基盤をはじめ、社会福祉、文教等、各般にわたり、本土相当県に比較して相当の格差が認められるところでございます。日本政府としても、二年後に復帰を控え、従来から進めてまいりました一体化の諸施策を、復帰対策の一環としてなお一そう強力に推進することとしており、さきにも申し述べましたごとぐ、琉球政府財政強化のための二十億円余の行政運営費、あるいは社会福祉、医療対策費の大幅な増額、市町村財政充実のための援助の拡大等をはじめ、主要島嶼の一周道路の整備、水資源開発のための調査等を中心とした復帰記念事業を新たに計画する等、援助費の質、量を通ずる大幅な拡大をはかっており、したがって、明年度の沖繩援助費は、復帰を二年後に控えた援助予算として十分の額であると考えております。  なお、今後においても、さらに今年度の援助予算を踏まえまして、本土類似県にほぼ対応する援助額の増額につとめつつ、根本的には、琉球政府の歳入並びに歳出及び行財政の実態が本土と著しく異なった条件の上に成り立っていることを配慮いたしながら、それらの諸問題についても激変を及ぼさないよう経過的特別措置をあわせ検討してまいるつもりでございます。  第二の沖繩の軍労問題、解雇者の問題でございますが、沖繩の軍関係労務者の解雇問題につきましては、沖繩本土復帰が二年後に予定されておることでもあり、また、その社会的影響が沖繩においては非常に大きいウエートを持っておる点を配慮いたしまして、政府は、昨年十二月の閣議了解に基づき、離職者に対し、本土の駐留軍関係離職者に準じて、特別給付金の支給、離職者の再就職を容易にするための職業訓練の推進、本土就職希望者に対する職業紹介の実施、沖繩における転業指導、職業紹介等の充実強化のための技術援助に必要な財政援助措置を講じてまいりました。  一方、沖繩の軍関係離職者の退職手当及び解雇予告期間等について、本土のそれに比較して落差が認められますので、米国政府に対し、退職手当の増額、解雇予告期間の延長、基地内における配置転換について努力すること、基地内職業訓練の実施等について要請しているところであります。また、明年度予算においては、琉球政府の軍関係離職者等臨時措置法に基づく対策費、失業保険事業に必要な経費、職業安定所及び公共職業訓練所の施設整備等、総額四億八千七百万円の財政援助を行なうことといたしております。  間接雇用の問題につきましては、沖繩復帰する時点において、現在本土において適用されている地位協定が何らの変更なく沖繩にも適用されることになりますので、沖繩の軍労務者の雇用制度も同協定のもとにおける間接雇用制度に切りかえられることは当然であります。しかし、施政権返還前に本土と同様の仕組みによる間接雇用制度に切りかえることには、法律的にも実態的にもそのままではなかなかむずかしい問題が存在しておりますが、政府としては、間接雇用への切りかえについて、復帰準備の一環として日米間で検討を進めるとともに、当面、沖繩の軍労務者の労使関係の安定をはかる観点に立って、復帰以前に雇用制度を改善すべく、外交ルートを通じて折衝していく決意であります。なお、退職金の立てかえ払い等の問題につきましても、雇用制度の改善と関連して善処いたしたいと考えております。  第三は、国政参加に関連をいたしまする渡航制限の問題でございますが、政府といたしましては、本土沖繩の渡航制限の緩和について、日米間の定期的協議を通じて、許可手続の改善及び促進に努力し、これまでにも相当の成果を見ているところであります。しかし、今後、沖繩復帰対策準備等のための渡航者がますます増加するものと予想されまするので、これら渡航者が円滑に旅行できるよう、米側に対し、入域許可手続の簡素化並びに許可証の迅速な発行を要請するとともに、一方、国内的には、渡航に必要な身分証明書の手続の簡素化並びに税関、入管、検疫の簡素化を検討中であり、すみやかな解決をはかるつもりでございます。  以上をもってお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手
  8. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 繊維の問題でございますが、友好国からの強い要請でございますので、私どもといたしましても、誠意をもって、できるだけすみやかに対処すべきものと考えております。  ただ、問題の性質上、政府としてなし得ますことにはおのずから限度と制約があるわけでございまして、限度と申しますのは、問題は、文字どおり自主規制でございますから、関係業界の理解が前提にならなければならないという意味でございます。制約と申しますのは、事の性質上、ガットのもろもろの原則にのっとって考えていくととが必要であるという意味でございまして、そのガットのもろもろの原則の中には、先刻、松澤議員の御指摘になりました幾つかの点が含まれている、こういうふうに御了解願いましてけっこうでございます。仰せられますように、事の進展によりましては業界に大きな影響を与えますので、関係業界が深い関心を示しておりますことは無理からぬことである、こういうふうに思っております。(拍手)     —————————————
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 剱木亨弘君。    〔剱木亨弘君登壇、拍手
  10. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に対して若干の質疑を試みたいと思います。    〔議長退席、副議長着席〕  昨年十一月、アメリカを訪問せられました佐藤総理は、ニクソン大統領と隔意ない懇談を行ない、その結果、沖繩施政権は、一九七二年末までにわが国返還せられることになりました。しかも、日本国民として最大の関心事でありました沖繩核兵器はどうするかという問題につきましては、アメリカ政府は、非核三原則を堅持している日本政府政策に背馳しない形で返還を実現することを約束されました。いわゆる核抜き、本土並みという国民多数の要望は完全に満たされたのであります。戦争によって失われた領土が平和な話し合いによって復帰し得たことは、歴史上きわめてまれな事例でありまして、このたびの沖繩返還に関する日米取りきめは、佐藤内閣の輝かしい外交的功績として高く評価せられるべきであると信じます。  なおまた、先般の日米会談によりまして、日米安全保障体制は、相当長期にわたって維持せられることが明らかとされました。国連の平和維持機能が必ずしも完全な効果をあげるに至っていない今日、日米安保体制の存続は、わが国の平和と安全、したがって、また極東の平和と安全にとってきわめて重要な意味を持つものであります。一九七〇年代におけるわが国外交並びに安全保障に関する基本的な路線ははっきりと定められたと言わなければなりません。  アメリカより帰国されました総理は、日米会談の成果を踏まえて、信を国民に問うため、衆議院の解散に踏み切られたのであります。総選挙の結果、わが自由民主党が三百名の多数を獲得しましたことは、自民党国民多数の力強い支持と信頼を得たことの証左として、何人も否定し得ないところと信じます。このたびの総選挙でかかる結果の出ましたことは、国民の大多数の方々のわが自民党内政外交に関する政策に対する強い支持の発露であると思われますが、しかし、私はこのほかにいま一つ見のがしてはならない点があると思います。  一昨年以来の大学紛争において、現体制を破壊せんとする過激な行動は次第にエスカレートし、学園の平和と秩序に対し重大な影響を及ぼすばかりでなく、一九七〇年を控え、国内的動乱の導火線ともなりかねない様相を呈するに至った際、政府並びに自民党は、多数大学当事者、いわゆる革新的社会人及び野党各派の根強い反対があったにもかかわらず、き然たる態度をもって、断固、大学の運営に関する臨時措置法を通過成立せしめたのでありましたが、この法律制定以来、大学紛争は漸次沈静に向かってまいりました。自由主義、民主主義国家としての日本を守り抜かんとする国民大衆が、この政府並びに自民党のき然たる措置に対し、異常なる共感を持ち、自民党責任政党として祖国擁護の方針を力強く打ち立て、この道に邁進するであろうことの期待が、総選挙に際し大きな力として働いたであろうことは、否定できない事実だと信ずるのであります。(拍手国民の期待が大なれば大なるだけ、この期待を裏切るようなことがあれば、国民感情の帰趨はおそるべきものがあると存じます。総理は、選挙の勝利にあぐらをかくことなく、一九七〇年代の試練を乗り越えるため、こん身の努力を払うことを力強くお誓いになりました。私は、この総理の御心境に満腔の敬意を表するものでありますが、願わくば、これが口頭禅に終わることなく、真に全国民の信頼を得るため、実行をもってこれにこたえられんことを、質問の冒頭に強く要望するものであります。  まず、総理施政方針演説にありました「新しい指針」についてお尋ねいたします。  総理は、一九六〇年代を分析して、わが国経済力の著しい充実を背景にして、国際社会での地位の向上をはかることができた時期であると規定しておられますが、私は同時に、六〇年代は、一面急激なる経済発展の陰に、わが国民が日本民族たる意識を忘れ、日本民族の持つ伝統的美風をまさに捨て去らんとする社会的風潮が生まれたことこそ、真に憂うべき現象として反省すべきではないかと思います。  総理はまた、わが国が「われわれの愛国心を高い普遍的な人類愛にまで昇華し得るか」との問題を提起しておられますが、私は、国民一人一人が普遍的な世界人となる前に、まず、日本人よ、日本人たる自覚と誇りを取り戻せ、そして、われらの祖先の残した古来の美風を想起しつつ、日本国民全部が日本の国土と同胞に無限の愛をもって結合せられ、その基盤をまず確立し、その基盤の上に立って世界人類の普遍的人類愛にまで昇華すべきではないか。総理は、心中深くこのことをお考えになりながら、あえてこれを避けて述べられたのか。もはや日本民族という狭い観念にとらわれることなく、全世界に通ずる普遍的人間像こそ七〇年代日本人の行くべき道と考えられるのか。総理は、日本の国家目標とか、日本の特色に触れられておりますが、日本経済の飛躍的発展による明るい面だけを述べられ、現下日本の思想的混乱を軽く見過ごしておられるのではないかと感じられます。  一九七〇年代こそ、私は、日本の精神面での本来の姿を取り戻すための努力が敢然として払わるべきであると思いますが、総理のお考えをお伺いしたいと存じます。  次に、外交安全保障の問題について伺います。まず、自主防衛についてであります。昨年七月末、グアム島での記者会見の際、ニクソン大統領は、アメリカアジア政策の基本方針を明らかにし、さらに十一月三日の演説でもその原則を繰り返しております。それによりますと、アメリカはその公約を守る、そして他の国に核のかさを提供する一方、アジアの諸国は、核兵器を用いない侵略に対して自国を防衛する責任を負うべきであり、アメリカ経済援助軍事援助を与えるが、その軍事援助は、派兵ではなく武器供与ということになろうということであります。われわれはかねてから自主防衛を唱えております。すなわち核攻撃によらない侵略に対しては、わが国の力で国を守るだけの防衛力を整えることを理念としております。ニクソン大統領の原則は、われらのこの理念にまさに合致したものと言わなければなりません。  ところで、通常兵器による侵略に対して、独力で国を守るに足る防衛力というのはどの程度のものでありましょうか。現在は、国の防衛を相当程度までアメリカの戦力に依存しておりますから、現状の程度で自主防衛の実をあげることができないことは明らかであります。政府が第四次防衛力整備計画を立てようとしておるのも、現状では不十分であるからにほかなりません。それぞれの国の防衛努力の程度をはかる尺度はいろいろございましょう。国民総支出に占める国防費の比重をもってこれをはかるのも一つ方法であります。政府は、現時点で、自主防衛の立場から、防衛力の限度をいかにすべきかを策定する必要があると思うが、これに対する総理の御所見を承りたいと存じます。  次に、核兵器拡散条約について伺います。この条約は、核兵器を保有しない国の原子力の平和利用に不利益をもたらさないという点で必ずしも十分な保障を与えておらない条約であるとして、政府もこれまで調印に慎重でありましたが、むしろ中に入って主張すべきことは主張するという立場から、今回その調印に踏み切ったものと存じます。調印にあたっての新聞論調を見ますと、この条約についての完全な国民的合意はまだ得られておらないように思われるのであります。すでに調印を了した今日ではありますが、政府としては、国民的合意を得るための積極的な活動を行なうべきではないかと存じます。この条約に対する国民の合意を取りつける最良の方法は、調印にあたって発表された政府声明に盛られている批准に必要な三つの条件、すなわち、核大国が具体的な核軍縮措置をとること、二、非核保有国核兵器による威嚇を受けないよう安全保障理事会が適切な措置をとること、三、平和利用の査察の面でわが国が不利な取り扱いを受けないこと。この三つの条件条約機構の中で力強く主張することにあろうかと思われます。日本政府が提示したこの三つの条件に対して、米ソその他の諸国はどのような反応を示したでありましょうか。これらの条件が満たされる可能性は、現に開かれつつあると考えられるのでございますか。また、これらの条件が満たされるために政府が払うべき努力の用意について所信を伺いたいと存じます。  外交の問題につきましては、このほか北方領土の問題、対中共貿易の問題、海外援助の問題などについて一言触れておきたいと思います。  北方領土については、ソ連は、この問題は解決済みであると申しておりますが、われわれの断じて承服できないところでございます。これに対処する政府方針を伺いたいと存じます。  対中共貿易につきましては、今回、中国大陸に渡られる古井、松村さんの一行に政府としてバック・アップをしてやり、ぜひ成功させたいと思いますが、政府はどのようなバック・アップをなさるおつもりでございますか、承ります。  また、海外援助については、これまで主として産業経済面が重視されておりますが、教育、医療等の面を一そう積極化することが、わが国と被援助国の国民との結びつきを親密にするゆえんであると考えますが、御所見を承りたいと存じます。  次に、経済の問題に移ってお尋ねしたいことは、経済政策の基本についてであります。まず端的に、望ましい経済成長率は何%であるか、また、それは政策努力によってどの程度まで達成が可能であるかという問題を提起したいと思います。池田内閣の国民所得倍増計画は、実質経済成長率を七・二%と見込んでおりました。その実績は一〇%をこえるものでありました。途中で改定されました中期経済計画の想定成長率は八・一%、経済社会発展計画のそれは八・二%でありましたが、これもまた現実によって追い越され、経済社会発展計画の計画期間である昭和四十二−四十六年の平均実績成長率は、おそらく一二%をこえるであろうと予測されております。われわれは日本経済の潜在成長力をあまりにも低く評価してまいりました。ですから、新しい経済社会発展計画では八%台の成長はほとんど問題外とされ、一〇%をやや上回る成長率が適正なものとして計画が策定されようとしております。そして、成長率が一〇%をやや上回る場合、消費者物価は年率四%をこえ、五%に近い上昇を来たすであろうという試算がなされております。これは望ましい適正な成長の姿であるかどうか、お伺いをいたしたいと存じます。  かりにこれが望ましい成長の姿であるとして、その望ましい成長率を達成する上に、われわれの政策努力はどの程度に寄与し得るかということが一つの問題であります。寄与するとは、過去の経験に徴すれば、多くの場合行き過ぎようとする成長の手綱を引き締めることを意味するものでありましょう。しかしそれにしても、自由経済は自由経済であります。政策努力をもってしても、いかんともなしがたい面があります。自由経済である以上、そうした面があることは当然であります。そこで、望ましい経済成長を達成するために、政治経済に介入し得る分野を、今後一そう広げていくことが適切であるかどうか、あるいは必要であるとお考えになっているかどうか、お気持ちを伺いたいと思います。  このように問題を提起いたしますゆえんは、賃金と物価と生産性について、われわれはあまりにもこれを規制する力に乏しいと痛感するからであります。賃金の上昇は、それ自体国民生活の向上につながるものであり、経済成長に伴って当然のことでありますが、問題はその上昇の程度であります。今日、超完全雇用ともいうべき状態にあるわが国では、賃金、所得の平準化の作用が強く働き、中小企業、農業は窮境に追い込まれ、消費者物価の上昇に苦しんでいるのであります。政府は、例年、施政方針演説において、生産性上昇の著しい業種にあっては、その成果を単に企業と労働に分配するのでなく、価格の引き下げによって消費者にも還元すべきであると述べられておりますが、それは今日まで政府の願望にとどまって、実効をあげていないようであります。総理は、この点について具体的にどのような施策をお考えになられておるか、承りたいと思います。  次にお伺いいたしたいことは、民間設備投資と社会資本投資の関係についてであります。民間設備投資に対する社会資本投資の割合は、昭和三十年代には五〇%ないし五五%でありましたが、四十年代に入ってからその割合が年々減少し、最近では四〇%をわずかにこえるところまで落ち込んでおります。それは、社会資本投資の対前年度伸び率が、民間設備投資の伸び率の半分以下というような貧弱な伸び方になっているからであります。その結果が、国民経済全体の効率を減退させるとともに、交通難その他の公害の原因ともなり、人間尊重の政治に逆行することになっておると思います。およそ、社会資本投資は、民間企業設備投資と異なって、それ自体直接に生産の増加につながりません。したがって、企業設備投資を押えて社会資本投資をふやすことは、一時的には経済成長率を押えるが、長期的には国民経済全体の効率をよくすることによって、いわゆる安定成長をもたらす道でもあると考えます。  政府は、昭和四十五年度には、臨時的に法人税の増税を行なうとともに、公共事業費伸び率をふやしております。その点、努力のあとがうかがわれるのでありますが、民間の設備投資意欲から見て、四十四年度に二六。二%であった民間設備投資の伸び率を、四十五年度に一七・一%に押えることがはたしてできるかどうか、かなりに困難ではないかと思われますが、いかがでありましょうか。私は、大企業が自主的に急激な設備投資を抑制することが、安定成長物価の安定を達成する最も有効な方法であると考えますが、政府は、経済界にこのことを積極的に呼びかけて、協力を求める考えはないか、お伺いをいたします。高い賃金をもって労働力を確保し、盛んな設備投資を行なって生産力を高めているのは大企業であります。これに反して、中小企業は、先ほど申しましたように、労働力の入手難、不十分な設備投資からくる低い生産性を悩みとしております。中小企業に対しては、特段の配慮を必要とするものと思われますが、御所見を承りたいと存じます。  さらに、ここ数年前まで、わが国経済は、労働力過剰と外貨不足という条件もと成長してまいりました。しかるに、ここ一両年来、このパターンは変化し、労働力の不足と外貨の過剰という局面を迎えようとしております。労働力の流助化が大きな問題となってきました。また、貿易の黒字は定着し、外貨準備は急激な増加を来たしました。この趨勢が続いてまいりますと、外貨の過剰が国内の流動性を高め、インフレーションを招来して物価を押し上げる方向に働くと思います。外貨の過剰は、円平価の切り上げの要求をも強めるでありましょう。現に、国際通貨市場では、円の投機が行なわれる機運すらあります。これを避けるには、資本の輸出、海外経済協力の強化あるいは輸入の増加をはかる施策が要請されます。輸出の増大が至上命令であった時代と引き比べて、今昔の感があるのでありますが、情勢はそのように変化しつつあります。経済政策の基本について再検討が求められるゆえんであります。これらの点について、政府はどう考えているか、御所見を承りたいと思います。  次に、当面の経済動向昭和四十五年度予算についてお伺いいたします。わが国経済は、これまでにない長期の繁栄を持続しております。政府見通しによりますと、国民総生産の名目成長率は一五・八%、実質成長率一一・一%となっておりまして、四十四年度に比べて若干落ちるとはいえ、五年続きの好況は間違いないものと予想されております。ニクソン大統領の予算教書は、この見通しが閣議決定を見た後に発表せられました。大統領の予算教書によりますと、アメリカ政府は、経済政策の転換を行なって、思い切った緊縮政策をとっております。アメリカの景気のスローダウン、世界貿易伸び率の鈍化は、もともと予想されるところでありましたが、予算教書内容は、一般の予想をこえるきびしいものがあります。アメリカ政府の緊縮政策は、世界経済全体に少なからぬ影響を与えることでありましょう。それは、わが国経済にどう波及するか、政府の四十五年度経済見通しに手直しを施す必要はないか  どうか、お伺いをいたします。  また、政府見通しによりますと、四十五年度の消費者物価は、対前年度四・八%の上昇が予想されております。過去の趨勢から見ましても、物価上昇を四・八%にとどめるためには、相当の政策努力が必要であるというのが一般の観測でありますが、政府としては、四・八%に十分自信を持っているかどうか、お尋ねをいたします。  昭和四十五年度予算は、総額七兆九千四百九十七億円と、相当大型予算であり、政府は、これを警戒中立型の予算と申しておりますが、新聞論調など、いずれも、かなり刺激的要素を持つ予算であると評価しております。予算の性格について、政府見解を披瀝せられたいと思います。もし、新聞などの批評のように、刺激的な要素がありとした場合、それは、先ほど申しましたアメリカの緊縮政策によるアメリカ及び世界の景気後退の影響を当然に受けるであろう日本経済にとっては、幸いにして、あらかじめ、てこ入れの道が講じられていたことにもなろうかと考えられますが、この点はいかがでありましょうか。  さらに、財政の硬直化ということが両三年来問題となっておりますが、硬直化は解きほぐされてきたでありましょうか。一方では、硬直化の新たな要因も生まれてきているのではないでしょうか。長期にわたる好況の持続に幸いされて、年々相当の自然増収があったために、これまではどうやら切り抜けることができました。しかし、将来景気のスローダウンが生じることがあると、予算は非常な編成難におちいることでありましょう。財政硬直化の要因は、したがって、常にこれを取り除くことにつとめなければならないと思うのでありますが、昭和四十五年度予算においては、この点にいかなる配慮が加えられているのでありま  しょうか、お伺いをいたします。  次に、農業政策についてお尋ねいたします。農  政の面で、今日、焦眉の問題となっているのは、  申すまでもなく、米の過剰生産の対策と、総合農政確立の問題であります。政府は、過剰米対策として、昨年度は、生産者米価の据え置きと自主流通米制度の導入を行ないましたが、四十五年度には思い切った米の生産調整を行なおうといたしております。このことは農政としては、どう見ても、うしろ向きの施策であり、かつ、その実施はきわめて困難であると予想され、政府の異常なる努力と、全農家、農業団体及び地方自治体の力強い協力が要請されると存じます。  私は、いま、かつてのいわゆる河野構想なるものを想起いたします。河野構想は、米価を一定し、その価格においては、無制限に政府が買い入れを行なって、食管制度の根幹を堅持すると同時に、いわゆるやみ米——今日言う自主流通米であります。やみ米を認め、その価格は自由取引にまかせ、農家が良質米の生産に転換するようすすめようとするものでありました。この構想は、各方面の非常なる反対にあい、ついに構想に終わったのでありますが、そのときに河野さんが申されたことを、いまもなお私は記憶しております。それは、米の問題は、米が全需要に不足する場合は対策はむずかしくはないが、数年後には必ず米が余るときが来る。米が余った場合の対策はきわめて困難で、いまから過剰米対策を考えておかなければ、たいへんなことになると言われました。いま、現実に過剰米を生じ、生産調整という非常手段をとり、米価の据え置き、自主流通米制度の創設等を考えるとき、河野構想がいかに先見の明があったか、農林省当局は、もっと事前に過剰米を予測し、その対策を購ずべきではなかったか。農林省当局の農政が、変転きわまりなく、近視眼的に過ぎることに、農政に全くしろうとの私は、心中穏やかならぬものを感ずるのであります。過去のことは問わずとしても、農林大臣は、真剣に過剰米処理に取り組むばかりでなく、総合農政の策定にあたっては、真に十年、二十年の将来を見通しわが国農業の安定的発展のため、将来悔いなき最善の方策を樹立するよう努力されんことを切望するものであり、この点に関する倉石農林大臣のお考えを承りたいと存じます。  最後に、教育問題についてお尋ねをいたしますが、質問に先立ち、人工衛星打ち上げの成功に一言祝意を表したいと思います。  去る十一日、全国民の待望の的でありましたラムダ五号の打ち上げがみごとに成功し、世界第四番目の人工衛星保有国になりましたことは、まことに慶賀にたえないところであり、東大宇宙研の皆さんに対し、過去四回の失敗にもめげず、かつ世評を黙々としてたえ忍び、ついにその目的を完遂せられましたことに対し、全国民とともに、心からなる感謝の意を込めてお喜びする次第であります。今後、なお、科学衛星の開発研究に一段の努力を望みます。他方、種子島における実用衛星打ち上げ計画も着々と進んでおります。今後の問題として、宇宙開発であれ、海洋開発であれ、国家的ビッグサイエンスについては、全学術研究者が協力体制をとり、一体化の方向に進むことを要望したいと思います。(拍手)  次に、質問に移ります。  大学紛争は、大学運営に関する法律の成立以来、大学当局の自発的努力も増大し、漸次鎮静に帰し、本年の入学試験も、警戒体制下ではあるが、全大学がとにかく実施できるようになりましたことは、大学並びに政府努力に対し一応敬意を表します。しかしながら、これをもって大学における研究と教育が完全に平穏に行なわれるようになったとは決して認めるわけにはいきません。大量検挙により、反代々木派の組織が一時的に崩壊に向かったといっても、いまだ各所にくすぶりが残り、組織の再建も行なわれていると思われるし、ことに最近における高校生の動向は、まことに寒心になえないものがあります。総理は、教育の内容や教育制度を再検討すべき時期にきていると申されており、四十五年度予算においても、新構想大学等の調査費を計上しております。もとより、大学紛争の解決は、相当根本的かつ慎重なる態度を要する点はあるとしても、さしあたり、急を要する問題が多々あると考えます。ことに、国立大学の運営上の欠陥は、大学紛争によって遺憾なく暴露されたところであり、その改革は、焦眉の急を要する問題だと思います。国立大学の管理は、選挙せられたる学長のもと、教授会、もしくは評議会の議によってのみ行なわれ、大学の自治は、すなわち教授会の自治であり、平穏無事の間はとにかく、一朝有事に際しては、全く決定能力を失い、事を誤った場合、簡単に学長一人その職を去るだけで、教授の一人一人に何らの責任なく、全く無責任体制であると言えると思います。管理機構の改革は、多年要望せられながら、いまだに完全に実現に至っていません。大学の管理機構を早急に改革する意思がおありかどうか、文相のお考えを承りたいと思います。  また、私学助成につきましては、四十五年度予算において、私学に対する人件費を含む経常費に対する助成が計上せられ、私学振興会を改組して、私学振興財団を設立し、財団をして、私学の自主性を尊重しつつ、公正かつ適切な助成を行なうことの方針が確立せられましたことは、全私学に対してはもとより、わが国教育の発展のため、きわめて画期的英断であると考えます。明治以来、わが国教育の勃興期においては、学校は、国または公の経費により設立せられ、私学は、その補完的作用を持つにすぎなかったが、現在では、少なくとも大学においては、全く国立と私学の地位は逆転し、私学教育に依存せざるを得なくなりました。しかも、国立と私立における授業料の格差は極端になり、私学の授業料の増額もその限界に達したとも言わなければなりません。私は、多年の懸案であった、私学経常費補助の制度が確立したことを心から喜ぶものであります。しかしながら、この助成金は、国  民の血税であり、もとより、有効適切に使われなければなりません。とともに、私学の発達は、これまでその自主的努力によってつちかわれてきたものでありまして、その伝統と自主性は、あくまで尊重されなければなりません。ここに、私学助成の具体的実施面に困難性があると思います。慎重かつ適切な方策が必要だと思います。文相の具体的施策について承りたいと存じます。  以上をもって私の質疑を終わらしていただきます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  11. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) さきの総選挙でわが自由民主党が、沖繩の一九七二年返還日米安保条約の堅持、教育の刷新、米の生産調整等、画期的総合農政の展開の場を掲げて国民の信を問うたのでありますが、国民大多数の信任を得、政局を安定するに足る三百の議席を与えられ、引き続き政局を担当することになりました。私は、その責任の重大さを思い、身の引き締まる思いであります。今後とも清潔な政治に徹し、一九七〇年代の民族的課題の解決に全力を傾ける所存であります。特に、平和と繁栄を追求する方策については、国民各位から明確な進路が示されたのでありますから、今後とも、謙虚に国民の声を聞き、その期待にこたえたいと念願しております。  次に、日本民族たるの自覚と誇りが失われつつある風潮を是正すべきだという剱木君の御指摘は、まさに当を得たものであると考えます。私が、施政方針演説における政治指針で、内面の充実をはかると申したのはその点が中心であります。私どもが若いころは、衣食足って礼節を知るということばがあったのでありますが、最近の世相には当てはまらなくなったということをよく耳にします。もとより、古い考え方で現代を律することはできませんが、民族の誇りとか、自負心とかいうものは、時代の流れとは無関係に維持されなければならないものと私は思います。ただし、このような心の問題は押しつけるものではなく、国民の間からおのずとわき出てくるべきものであると、かように考えております。  自主防衛の規模についてのお尋ねがありました。国力、国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところを日米安保条約によって補完するというのが政府政策であります。わが国は、非核三原則のもとに、核抑止力については米国に信頼する政策をとっておりますから、防衛力の規模についても、おのずから、限界があると申せます。しかし、現状では、わが国の自衛力についてもまだ改善すべき点は多く、また、軍事技術の急速な進歩に対応するためにも不断の努力を要するものと考えます。当面は、第三次防衛力整備計画の線に沿ってこれを着実に実現していく方針であります。なお、自主防衛基礎をなすものは、何よりも国民の意識であり、国民の国を守る気概に期待するところ大きいことをあらためて申し述べたいと思います。  次に、核防条約についての啓発努力についてでありますが、このようなわが国の長期的利益に関する条約こそ、国民的合意が必要であります。政府としましては、本条約批准について、国会で十分な討議を期待するとともに、国民各位の理解を得るために十分な啓発の努力を行なら所存であります。  さらに、北方領土については、今後とも粘り強くわが国の正当な要求を主張し、国民の皆ざまの強力な支持を背景に、その解決をはかる決意であります。  さらに、中共との貿易増大は、政府も深い関心を有するところで、覚え書き貿易協定については、従来どおり、できる限り支持し、協力する方針であります。また、大先輩、松村謙三氏の訪中に敬意を表し、成果を心から期待しております。  海外援助において、教育、医療面を重視すべきことは御指摘のとおりでありまして、政府としても、従来、この面の技術協力に努力してきました。東南アジアを中心に、今後ともますます強化、拡大したいと、かように考えております。  次に、経済問題について、剱木君からは、まず適正な経済成長率についての見解を求められました。長期的に見て、適正な経済成長率がどの程度であるかについては、国際収支の動向物価の安定等の種々の観点から考えなければなりませんが、これらの点については、現在、新しい経済社会発展計画の策定とも関連して、慎重に検討しているところであります。その過程において、望ましい発展の姿を見出すため多くの試算を行なっており、御指摘のように、経済成長率が一〇・八%として、計画期間における消費者物価の上昇率で、平均四・五%程度という試算もありますが、なお、構造政策、その他物価安定のための各般の政策努力を強化することによって、さらに物価の引き下げをはかることも不可能ではないと考えております。政策努力の限界という御指摘もありましたが、わが国経済が、基本的に自由経済体制のもとに、民間の創意とくふうが発展の原動力である以上、政府施策に限界があるのは、むしろ当然ともいえますが、極力的確な見通しもとに時宜に即した経済政策の展開をはかり、政府、民間、両部門の活動の調和をはかりつつ、望ましい経済発展を実現してまいりたいと考えております。  次に、剱木君は、政策努力の限界の具体例として、賃金と物価と生産性の問題を指摘されました。これらは、率直に言って、私自身最も政策努力の限界を感ずる分野の一つであります。いわゆる春闘も近い時期になってまいりましたが、私は、それぞれの企業が、その企業の立場のみにとらわられず、産業全体の立場、日本経済全体の立場を考えていただくことが、ひいては、その企業の発展の基礎となることをよく理解していただきたい。これは、労働者諸君にも全く同様だと思うのであります。お互いができるだけ共通の政策目標を持つことによって、調和のある発展がもたらされるものと考えます。この意味合いにおいて、さきの施政方針演説がその一助ともなれば幸いだと、かように思うのであります。  また、剱木君の指摘された民間設備投資の抑制問題についても、全く同様のことが言えようかと思います。今回実施した法人税の引き上げも、政府と民間の資源配分の適正化をはかる一つ施策であり、昨年来行なわれている金融引き締め措置も、その条件の醸成のための一手段であります。私は、日本経済の国際化に即応した企業ないしは産業のあり方として、政府施策に対する一そうの御理解と御協力を期待するものであります。  次に、中小企業についてでありますが、中小企業は、従来からの体質の弱さに加え、内外環境の急激な変化に直面しており、物価の安定をはじめ、当面する諸政策の課題にこたえるためにも、中小企業近代化に特別の配慮を払うべきことは御指摘のとおりであります。このため、政府は、従来から中小企業政策を最重点施策一つとして推進してきたところであり、明年度におきましても、中小企業振興事業団及び政府関係中小企業金融三機関の融資の拡大、構造改善対策の推進、小規模企業対策の強化等、その一そうの充実をはかったところであります。  次に、労働力不足と外貨過剰の局面を迎え、経済政策の基本について再検討が迫られているという剱木君の御意見には全く同感であります。先般の施政方針演説において、私は経済政策を国際的視野で見直すべきであると申し述べましたのも、剱木君と思いを同じくするからであります。この意味におきまして、最近の国際収支面でのゆとりは、まず、貿易資本の自由化の推進、経済協力の充実等、対外経済政策の積極的な展開に活用さるべきであると考えます。とのような政策を進めることにより、わが国経済を、国際化に即応した体制に急速に整備し得ると同時に、経済規模が世界第三位に達した国際的地位にふさわしく、世界の平和と繁栄に貢献する道が開かれるものと信じます。  また、剱木君から御指摘のありましたアメリカ動向につきましては、政府経済見通し策定の際に、あらかじめその鎮静化の傾向と、それに伴う世界貿易の伸びの低下を十分に見込んでおりますので、昭和四十五年度の経済見通しを手直しする必要は全くないと考えております。  以上お答えをいたしましたが、その他のことについてはそれぞれ担当大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手
  12. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず核防条約につきましてでございますが、すでに外交演説で御説明いたしました経緯は省略いたしますが、この条約には、たとえば原子力平和利用につきまして一番大切な査察についての協定については守るべき義務は規定してございますけれども、肝心の守るべき基準を含む協定というものは、この条約が効力を発生いたしましてから二年間に関係国の間でつくられることになっておるわけでございます。平和利用につきましては特に重大な関心を持っておりまするわが国といたしましては、こういう関係もございまするので、この際署名はいたしておきますが、しかし、こうした査察協定とか保障協定の作成に積極的にひとつ参加をいたしまして、わが国考えているような、たとえばユーフトム諸国とは平等の待遇を受けなければならない、こういう趣旨に基づく協定ができるように積極的な努力をして成果をあげることが国益に即するゆえん  ではないか、かように考えて署名をいたしたような次第でございます。したがいまして、その今後の成り行き、あるいはわがほうの努力の成果によって批准ということを考えるということは当然の成り行きであると思いますし、また、こういう種類の性格の条約でありまするので、ユーフトム諸国その他相当の国々が署名はしておりますが、批准については態度を留保いたしておるわけでございまして、この点が一般の、たとえば二国間の条約等についての考え方と、私は変えて真剣に取り扱っていくべきものであると思うのであります。したがいまして、ただいま総理が言われましたように、十分ひとつ国会を通じて今後御論議をいただきまして、日本の国益が守れるように、あるいはまたもっと大きな、核兵器保有国の義務であるとか、あるいはそれらの国の非核兵器保有国に対する安全保障の問題というような、大きな国際政治動きというものも十分に見通しながら態度を決定していくということが最も望ましいやり方ではないかと考えますので、今後私どもも大いに努力を新たにいたしたいと思いますが、国民的に大いに論議をしてもらい、また国会において、もちろん活発な御審議を願いまして、今後に処すべき確立した方針というものを立てるようにしていただきたいと、かように考えておるわけでございます。  次の北方領土でございますが、これは御説明いたしますと長くなりますので端的に申し上げますけれども、ひとつこの際、一八五五年に日魯通好条約というものがありますことをお互いに想起いたしたいと思うのでございます。  この条約によりましては、国後、択捉というものがいわゆる千島というものとさい然と区別されて、国後、択捉は日本の固有の領土であるということがきわめて明確になっております。そうして、その後この条約は、樺太千島交換条約その他の面におきましても、常に明確にすることが踏襲されております。この一例をもっていたしましても、わが国の、現に政府として主張しておりまするところは、いかなる意味合いにおいても、条約上からも、沿革上からも、あるいは歴史的な事実から申しましても、日本の領土であり、日本以外の他の国の領土であったことは絶対にないということが確信を持って主張されるわけでございます。  私は昨年の九月にソ連に参りましたときも、こういったような、いかなる意味からもわがほうが固有の領土として主張せらるべき根拠に基づいて強く主張してまいったのでありますが、なかなかソ連の厚い壁というものが厚いものであるということは、私も十分に認識をせざるを得なかったわけでありますが、その経験からいたしましても、一番大事なことは全国民的な世論であり、願望であるということが、ますます必要であると痛感いたしたわけでございまして、どうかひとつこの考え方からいたしまして、固有の北方領土に対してこの上ともに国民的な願望に基づく世論に基づいて、政府の折衝に対して御支援と御協力を賜わりたいと存ずるわけでございます。  第三の御質疑は、開発途上国への支援についての点でございまして、まことに御同感でございますが、ことに開発途上国の文化、教育面での協力ということは、これまでのわが国自身の経験からいたしましても、非常に必要なことであることを痛感いたしまして、今回御審議を願っております予算の上におきましても、これは外務省だけではございませんが、各省の御協力をいただいて相当の配慮をいたしておるつもりでございます。  なお、今後文化面と申しますか、一般的な問題に関連いたしますが、医療関係の協力ということがやはり非常に望まれる問題であると思いますので、この点についても、ほんのわずかでございますが、政府としても意図を予算の上にも表明しておるつもりでございますので、よろしく御審議のほどをお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  13. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、円の切り上げに対する所見いかんというお話でございますが、円の切り上げにつきましては、一切考えておりません。現在私の頭のどこのすみにも切り上げしたいという考えはございませんですから、これははっきりとそのように御承知願います。円の価値が三百六十円対一ドル——二十年前にきめられたわけでありますが、その当時は確かに円の価値が少し重く見られ過ぎておったというふうに考えられますが、その後日本経済の勢いもつきまして、最近におきましては三百六十円対一ドルというものが、何らの抵抗なしに行使されておるというような現状でございますが、しかし、この三百六十円対一ドルという関係は、一つ日本経済が厳重な為替管理に守られておる、また輸入制限によって支持されておるというところにも大きく援護されておるわけでありまして、いわば温室経済の中の三百六十円対一ドルだとも見られる面があるのでありまして、この問題で急ぐべきは、やはり輸入の自由化、また対外経済協力の推進、そういうことかと思います。  第二に、硬直化問題について努力せよ、またどんな努力をしておるかというお話でございます。なかなか非常にむずかしい問題でございまして、まず定員の問題でございますが、総定員法が成立をいたしておるのでございます。この総定員法を基準といたしまして、そのワク内において定員の増加を抑制するということを、四十五年度においても実行いたしておるのであります。  また、補助金がいつも問題になりますが、補助金につきましては、かなり今回は努力をいたしました。まあその使命を達成されたと見られる。たとえば十割補助というようなものにつきましても、かなりこれを廃止する、あるいは低減をするという措置をとるようにいたしております。また、地方財政が中央財政に比べて好転をしておるという状況から考えて、今後、各種の交付金また補助金のようなもの、これについて、中央、地方間の調整をはかるということもいたしておるわけであります。  また、非常に大きな硬直要因であります食管会計の繰り入れでございます。この問題につきましては、百五十万トン生産制限ということを中心といたしまして、この食管問題の硬直化の要因を主として取り除くという努力を始めようといたしておるわけでございます。今後とも、硬直化につきましては、粘り強く対処していきたい、かように考えております。  それから最後に、この予算が刺激的性格でないということを十分徹底させよというお話でございますが、これは先ほど松澤さんに対しましてお答えをいたしたとおりでありまして、刺激的な要素というものは、専門的によくごらんになりますると、そういうことはないのであります。ただ一点、予算の規模がふくらんだという外形的事実を見ると刺激的だというようにとれるというふうに考えておりますが、非常にデリケートな景気情勢の段階でもありますので、この予算の運用にあたりましては、先ほどアメリカやヨーロッパの話がありましたが、内外の情勢をよくにらみ合わせながら、弾力的、機能的に運営をいたしてまいりたい、かように考えます。経済成長率の問題に関連して、財界の自主調整というお話がありましたが、まことに私はそのとおりだと思うのです。いま金融調整措置をやっておる。これに対しまして財界がかなり圧迫を感ずるような空気がありますが、しかし、やっぱり私は財界が自主的に、たとえば、業界ごとに設備の調整をやるというような状況になりますれば、金融政策のほうはそのようなぎしぎしとした考え方をとる必要はないんです。そういう方向を財界が打ち出してもらいたいということを切に期待をし、話し合っておるわけでございますが、どうかひとつ、それに対しましては御協力のほどをお願い申し上げたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手
  14. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答えいたします。  農業基本法は、昭和三十六年の六月に公布されたわけでありますが、先ほどお話しの、いわゆる河野構想が発表されましたのは七月ごろだと思っております。その翌年の昭和三十七年に政府が公表いたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」でございますが、ここでも、すでに長期的には米の生産は需要を若干上回わって、米の需給は緩和方向に向かうであろうと公表いたしているわけであります。ところが、その年以来、すなわち昭和三十七年以来の実績を見ますというと、需要は昭和三十八年をピークといたしまして少し減ってまいる。ところが生産は、御承知のように気象条件その他によりまして、三十八年から四十年までの間著しい停滞を見たわけで、かなり需給は逼迫してまいりました。この間、御存じのように、各地方の県知事などは、それぞれ自分の県において米づくり運動を展開されましたことは御承知のようであります。ところが、その後わが国は、経済成長に伴いまして国民の所得水準がだんだん上がってまいりましたので、食生活が変わってまいりまして、一人当たりの米の消費量は三十九年以来どんどん落ちてきているわけであります。ところが、一方において、農業の技術は非常に向上いたしまして、同時に、政府施策であります土地改良その他のことが成功いたしてまいったものでありますから、米は安定的に増加するようになりまして、今日の結果を見たわけでありまして、そこで、このままでまいりましたならば、たいへんなことになるであろうということは、米づくりの農家も、地方の県知事、市町村長もよく理解しておられますので、昨年来やってまいりました政府の生産調整について協力をいただいておるわけでありますが、ことに今年の、農林省で地方に依頼いたしました生産調整につきましては、幸いなことに県知事会、市町村長会、それから農業団体等、みな結束して政府方針に協力しようということを申し合わせていただいておるのでありまして、たいへんありがたいことだと思いますが、これについて、成功するように努力を続けてまいるつもりであります。  ただ、しかし、お説のように、生産調整というふうなことは決して前進的なことではありませんので、これはこれとして、やはり米も必要量だけは確保しなければなりませんから、そのほかの農業につきましても、御存じのように、昭和四十五年度予算で御審議を願うために提出してあります構造改善事業、土地改良、あるいはその他予算にあらわれております流通、加工の面であるとか、あるいは価格対策、生産対策については、新しいビジョンを持って農業に従事してもらえるような農政を続けてまいりたいと、このように思っておるわけでございます。(拍手)    〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手
  15. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほど剱木先生が、わが国初めての人工衛星「おおすみ」の成功についてお触れになりましたが、これまでの苦難に満ちました道程でありましただけに、私も非常にありがたく思っておるわけでございますが、この機会に、私もまた、東大の宇宙航空研究所のスタッフの方々、たとえば玉木教授をはじめとする方々でございますが、さらに、この独創的な日本独自の、たとえば固体燃料、あるいは無誘導というような独得のことを考案をされました糸川博士、あるいはその次の高木教授等の方々のお骨折りに対しましても、深く敬意と感謝を申し上げたいと思います。また、あわせまして、この人工衛星の実験がなされましたのも、宮崎県その他の各県の漁民の方々の御協力をいただいたことに対しましても、この機会に感謝を申し上げたいと思う次第でございます。  最近の大学紛争の経験を通じまして痛感するのでございますが、従来の大学の管理体制はあまりにも学部自治のみを重視する結果、全学的意思の決定が適宜、適切に行なわれなかったり、あるいは最近の教育研究の発展に即応できず、大学独自の改革も効果的に進めることができないように思われます。これを改めるためには、第一に、学長がリーダーシップをとり、大学の中枢管理機関の指導性を高め、かつ学内の管理機関相互の役割り責任を明確にし、機能的かつ合理的に大学の意思決定や執行が行なわれるようにすること、第二には、学生の意思をくみ取り、さらには社会一般の声をも反映させるような方策を講じ、内にも外にも開かれた大学として新たに出発する必要があると考えております。現在、大学制度全般の改革につきましては、中央教育審議会におきまして鋭意審議が行なわれておりますが、同審議会でもこのような方向で議論が進められております。答申が得られますならば、さらに各界、各層の意見を聞いた上で、管理機構の改革も含め、大学制度の改革が実現されるよう最大の努力を払ってまいりたいと思っております。  第二の、私立大学の援助の問題、経常費助成の問題でございますが、私立大学、また短期大学及び高等専門学校に対する教育の充実向上並びに経営の安定に寄与するため、昭和四十五年度から新たに人件費を含む経常費助成を行なうことといたしましたが、補助金の性格及び私学の自主性尊重の趣旨にかんがみ、公正かつ効率的な運用が保障されるよう特に留意してまいりたいと思っております。すなわち、個々の私立学校について、その運営状況、教育研究の条件、学校法人の経営実態等を十分把握した上で、それぞれの学校の実情に応じた助成を行なうことが必要であると考えるのであります。  このために、現行の私立学校振興会を発展的に解消しまして、私学振興財団、これは仮称でございますけれども、私学振興財団を新設し、その調査機能を充実いたしまして、私学に対する助成の業務を総合的かつ合理的に行ない得る機関とすべく諸般の準備を進めております。  また、私学に対しては、この経常費補助制度の確立を契機として、私学が公共性と社会的役割りの重要性を一そう自覚し、会計経理を明確にするとともに、常に教育研究水準の維持向上につとめることを、この補助金交付の条件とすることといたしたい考えでございます。(拍手
  16. 安井謙

    ○副議長(安井謙君) 通商産業大臣から、答弁の補足があります。宮澤通商産業大臣。    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手
  17. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどの松澤議員の御質問に対して私のお答え申し上げましたうちで、次の三点についてお答えが明白でなかった由でございますので、お許しをいただきまして補足をさしていただきます。  一つ米国の被害報告は、わがほうから見て不十分と思われるので、再報告を求める意思はないか。米国から送られてまいりました資料は、私ども見まして十分でないと考えておりますので、追加資料を提出される意思があるかどうかということについて、ただいま照会をいたしております。  一つ包括規制わが国の業界、特に中小業界に及ぼす影響、実はこの点を中心に先ほどお答えを申し上げたつもりであったのでございますが、つまり、ガットで実害あるいは実害を及ぼすおそれということを申しますときに、個々の商品につきまして具体的にそれを考えるのが、御承知のようにガットの考え方でございますので、この業界全体に、被害があるから、何となく全体を規制しようというような考え方は、私はガットの考え方からは出てこないと思っているわけでございます。それが先ほど申し上げました点でございます。したがって、包括規制というようなことは、ガットのルールにのっとってと申しましたところからおわかりいただけますように、私はそういうことはあり得ないことであるというふうに考えておるわけでございます。  一つ、この自主規制米国側の主張が通った場合、他の商品に対してどのような影響があると思うか。この点につきましては、アメリカ政府責任者は、かりに繊維についての自主規制日本の業界によって行なわれる場合には、これはもう繊維だけの特別なケースであって、他の商品については及ぼすことはしないということを申しておる由でございます。私はその善意は疑いませんけれども、米国内のいろいろな動きから考えますと、この点なども私どもがよほど用心をしてかからなければならない点ではないか、そう考えております。(拍手
  18. 安井謙

    ○副議長(安井謙君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 安井謙

    ○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十分散会