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亀田得治君 要するに、最近ずっと起きておる
司法行政の上のほうからの発言を見ておりますと、結局は、青法協なり、
憲法を成立当初の純粋な形で擁護していきたい、そういうことに対する攻撃としてこれはあらわれておるわけですよ。中立でおれおれといいますが、結局は現在の政治権力が
考えているような方向でこう戒めておる、そういうふうにずっと結びついておるのですね。そこに、どれだけ
最高裁のほうできれいなことばでおっしゃっても、専門の若い
法曹から見たらいやな感じがする。それから、昨年問題になった例の平賀問題ですね。平賀問題から、あなたの談話、
最高裁長官の記者会見、こう発展しておるのですが、たとえば平賀問題にしても、
最高裁ではきわめて中途はんぱな判断しか示さなかったわけですね。ほとんど全国の
法曹というものが、平賀さんの行動に対して、これは
裁判に対する干渉だという
考え方を示しておるわけですね。例外はあります。鹿児島の果てのほうにおられる方とか、いろいろこれはまたありますが、それはどこでも例外はありますよ。だけれども、ほとんどの方がそういう見解、そうして地元の札幌
地裁においても、これは弁護士会等の表現よりは多少やわらかいのですが、やはり介入、干渉という印象が強い決定ですね。
最高裁が一番あいまいな結論になっておる。だから、こういうことを若い
法曹の人が見ておるわけですね。
裁判官の一番生命としておる、干渉されない、独立でやっていこう、
憲法と
法律と
良心を尊重してやっていこう。
最高裁がああいう平賀問題についてもきちんとした処理をすれば、これは非常に若い人の
裁判官の志望に影響があるのですよ。それを何か、先輩のアドバイスとして親切心から出たものであってというような、半ば是認しておるようなかっこうで、そうして処分としてはきわめて微温的なことをやっておるのですね。そういうことをやっておって、
裁判官が足らぬ足らぬと言っておるのです。足らぬように追い込んでおるわけでしょう。私はまあ、平賀問題についても、
法務委員会で聞く機会を逸しておりましたので、この際、これは岸さんからお聞きしたいのですがね。おそらくまあ、
最高裁がこういう決定をやられたについては、まあ平賀さんの
立場もいろいろ考慮されたのだと思いますが、これは個人の問題ではありませんので、実際に
裁判の干渉を受けたということが事実とすれば、事実をはっきり認めていかぬと、結局はあの程度のことは今後もあるぞということになっていくわけでして、これは
司法制度の運用上大問題ですよ。で、干渉があったかないか、新聞の記事だけ等で、私も
在野法曹の一人として、簡単にそんな批判はいたしません。私も何回もこれを検討してみたんですよ。しかし、これを
裁判に対する干渉、介入でないと言ったら、一体どうなるのかということをおそれるわけですね。あの平賀書簡、これは
最高からもらったやつ、ここにありますがね。ちゃんと結論としては、
政府の
考え方を尊重すべきだと、こういうことですね。そうして、その
理由も一、二、三と分けて書いて、もう
裁判書きの
理由のような書き方で、メモというものじゃないですよ。きちんと文章までできたものとして渡されておるわけですね。なるほど初めのほうには、「一先輩のアドバイスとしてこのような
考え方も有り得るという程度で結構ですから、一応御覧の上、もし参考になるようでしたら大兄の判断の一助にして下さい。」、こう書いてあることは事実なんです。しかし、こういう前ぶれを書けば、肝心の本文のほうはどんなことを書いてあったって免れるということなら、これこそあなた、脱法的に幾らでもいたずらできますよ。私は、こんな前文があろうがなかろうが、こういう本文自体を渡したこと、この形式自体から、これはもう
裁判に対する干渉、介入と断定すべきだと思うんですよ。それができておらぬ。
それからもう
一つは、いま訴追
委員会でいろいろ調べておる最中ですがね、この八月十四日の書簡というものは、突然にあらわれたものじゃないんですね。
皆さんもう平賀さんから
事情を聞かれておるから御承知だと思いますが、八月四日に平賀さんは福島
裁判官の上席の平田
裁判官に対しメモを渡しておるわけですね。この行動はね、
事件を担当しておるのは福島
裁判官なんですから、その上席の人に渡すんですから、ひとつあっちのほうを説得してくれいと、こういう行動であることは、これはもうはっきりしますわね。平賀さんがどういうふうに弁明されておるかもわかりませんが、これは
ほんとうに親切なアドバイスなら、そんな人を介しなくったって、直接に言うたらいいじゃないですか、
ほんとうの
意味の親切なアドバイスなら。やはり
司法行政のルートを通じて干渉していっているわけでしょう。
それと、われわれの聞くところによると、八月十二日の
裁判の告知、これを延期さした。表面の
理由は、平賀さんとしては、その日が不在になるので、庁舎管理の必要上
裁判の日を延ばしてくれ、こういうことになっておりますがね。しかし、どうもそれだけでは
理由薄弱でしょう。所長がおらぬとき重要な
裁判の告知を延ばさなければならぬと、ほかの
裁判所だってそんなことないでしょう。平田
裁判官を通じて工作をしたけれども、どうもうまくいっておらぬようだ、十二日に悪い判決が出てしまえば、これはもう手おくれになるから、とりあえず十二日を延ばそうということで、こう延ばしたものとわれわれとしては思える。延びた直後、八月十四日に例の平賀書簡、今度はきちっと書かれたものが福島
裁判官に渡されておるわけですね。その前後の経過から見て、これはあんた、干渉でないとしたら、こんな親切な念入りな干渉なんて、これからあるとしても、そうざらにないと思う。なかなか念が入っていますよ。これに対して
最高裁が、多少の軽率さを認める程度で、干渉としてこれを見なさない、これははなはだ私は
最高裁として大事な問題についてみずから誤ったと思っているんです。何か問題が起きたときにこそ、きちんとけじめをつけるべきなんでしょう。機会を逸したと思うんですね。どうして、あれだけの批判が全国で起きておるのに、
最高裁としてああいう手ぬるい処理で終わらしておるのか。これはもう一連の最近の問題ですから、この際総長から御
説明願っておきたいと思うんです。