○国務大臣(佐藤一郎君) 公定歩合の引き下げの問題は、本来
日本銀行の決定事項ではございますけれ
ども、もちろん、
日本銀行がこれを決定するにつきましては、やはり、いわゆる金融引き締めの効果が実態経済にも
相当浸透してきておるという、もちろん評価をいたしておるわけであります。引き締めを解除したとたんに、また急に景気がおかしくなったから、また大急ぎで引き締めをするというようなことは、中央銀行としてもとれないところでありまして、いわば、公定歩合を引き下げ、いわゆる金融引き締めの解除をこの際行なっても、経済の実態全体として急にそういう反発なんということはない、むしろ鎮静化のムードがここしばらく続くであろうと、こういう判断に、もちろん立って行なっておるわけであります。
ところで、全体の経済が鎮静化に向かいつつある際に、ただし、それについては物価の問題が残っておる。まさしく御指摘のとおりでございます。われわれも、まことに残念、遺憾ではありますけれ
ども、四・八%の見通しというものが実現できないということは、これはもう認めざるを得ません。そこで、今日の異常とも言うべき
消費者物価高と申しますのは、卸売り物価につきましては、実は本年の三月から九月まででとりまして、〇・二%しか上がっておりません。もちろん、この前年がずっと高くなってきておりますから、全体としての対前年度比較におきまして、いわゆる「げた」を計算いたしますと、ある
程度高くなりますが、年度に入りましてからは卸売り物価は鎮静いたしておりまするが、
消費者物価は、残念ながら、
相当高くなっておるのは御存じのとおりであります。
そこで、結局、これには二つ問題がありまして、
一つは、何といいましても、季節商品の問題でございます。それから、季節商品以外のものにつきましても、実は手間賃その他が上がったというようなこともございまして、また、流通系統の
マージンの引き上げ等もございまして、
相当に上がる強含みの
状況を示しております。で、私
どもは、この二つの面の
対策をこれからどうしても推進していかなければならない。
季節商品につきましては、これもまた、残念ながら、野菜が
中心でございます。いまこれを詳しく申し上げる場ではないかもしれませんが、実は、主として食料品の全体の
消費者物価上昇に対する寄与率が五割をこえました。したがって、結局、この食料品を
中心とする、しかもその
中心が季節的な商品を
中心とするこの物価高に対処するということが、さしあたっての重要事でございます。私も、もちろん当然のことですが、非常に事態を憂慮いたしておりまして、農林大臣と、ごく近々に、物価問題を
中心にして全農林行政について
話し合いをいたそうと思っております。率直に申し上げまして、やはり今日の農業が必ずしも正常化しておらない。一方において、農業の
中心である米が生産過剰である。そういうようなゆがんだ農業の姿をしております。そして、農民が主力を米に注いでおりますから、従来の観念としては、どうしても副食の系統である野菜等について必ずしも十分な関心が農林行政において払われておったとは私は思われない。そういう点も、もう一回
基本的に反省してもらわなければなりませんし、この際、いわゆる転作等のこともございますから、こういうことを足がかりにして、蔬菜の生産について、もっと本格的な腰がまえで取り組んでもらいたい、こういうふうに実は
考えております。一例をとりますと、畑地かんがい等につきましても、従来口で言っておりますけれ
ども、あまり実績が進んでおりません。こういうような点も取り上げて、本格的に、季節によって左右されない
——ほかのものがこれだけ文明化しておる際に、われわれの主食の重要な一環であるところの蔬菜があまりにも季節性に左右され過ぎておる。この点について何とかひとつ推進していきたい。こう思っております。
それから季節性以外のものにつきまして、何といいましても、いわゆる高度成長が続いたところのその結果としての異常な
需要の強さ、こういうものを、やはり何とかして鎮静させなければならない。そういう意味で、引き締めも
一つの
方法であったわけであります。最近における経済全体の鎮静化というものを
一つの足がかりにいたしまして、何といたしましても一三%という実質成長率というものは
日本の経済の実力に比してあまりにも過大である、せめてこれは、本年においては、見通しとしては政府は一一%前後といっておりますが、そこいらのところまでは持っていく、そしてこれを足がかりにして今後安定成長を実現していかなければならないということで、まあ一〇%台の経済成長を目途にしていることは御存じのとおりでございます。一〇%の経済成長といいましても、国際的には非常に高いものでございますが、しかし、今日までの実質の一三%平均というものはあまりにも異常な高さである。まず、これを経済の安定的な環境を実現するということを
基本にいたしまして、しかもなお、そのほかにいろいろな構造的な問題、そのほかの問題がございます。これらについては、ひとつ、しんぼう強く、長期にわたって
価格対策を個別的にも総合的にも行なっていかなければならない。
こういうことで、主として季節ものを
中心にいたしまして、その他のものについてもひとつ本腰を入れてこれをやっていく、それにつきましては、関係各省とも十分協議を進める。従来の閣僚協議会のような、どっちかというと大世帯でございますが、こうしたものではなかなか取り扱いにくい問題も、個別の協議という形でこれを進めていこうと、こういうふうに
考えております。
鈴木さん御心配の点は私たちもともに憂うるところでございまして、何とかひとつ、このむずかしい時期を、むずかしい問題を乗り切ってまいりたい、こういうふうに
考えております。