運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-10-12 第63回国会 参議院 物価等対策特別委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月十二日(月曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  九月十七日   委員吉江勝保君は逝去された。  十月九日     辞任         補欠選任      藤原 道子君     鈴木  強君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         横山 フク君     理 事                 小枝 一雄君                 竹田 四郎君                 阿部 憲一君     委 員                 櫻井 志郎君                 鈴木 省吾君                 高田 浩運君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 渡辺  武君    国務大臣        国 務 大 臣  佐藤 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        通商産業省重工        業局次長     山形 栄治君        通商産業省鉱山        石炭局審議官   礒西 敏夫君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省自動車局        業務部長     小林 正興君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君        日本放送協会営        業総局総局長  遠山寛一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (消費者行政に関する件)  (当面の物価対策に関する件)     —————————————
  2. 横山フク

    委員長横山フク君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  議事に入るに先立ちまして一言申し上げます。  すでに御承知のことと存じますが、当委員会委員、本委員会委員長であられました吉江勝保君は、去る九月十七日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。ここに、つつしんで同君の多年にわたる御功績をしのび、各位とともに御冥福をお祈りいたします。     —————————————
  3. 横山フク

    委員長横山フク君) 委員異動について御報告いたします。  十月九日、藤原道子君が委員を辞任され、その補欠として鈴木強君が選任されました。     —————————————
  4. 横山フク

    委員長横山フク君) 参考人出席要求に関する件について、おはかりいたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査のため、本日の委員会に、日本銀行総裁佐々木直君及び日本放送協会営業総局総局長遠山寛一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 横山フク

    委員長横山フク君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 横山フク

    委員長横山フク君) 当面の物価等対策樹立に関する調査中、当面の物価対策に関する件及び消費者行政に関する件を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  鈴木強君。
  7. 鈴木強

    鈴木強君 きょう、私、カラーテレビの二重価格の問題をただしたいと思うのですが、電子機械工業会会長さんを参考人として御出席要求しておきましたけれども、これはどうなりましたか。
  8. 横山フク

    委員長横山フク君) 御要求のありました時点においては、すぐ連絡をとったんですが、時間的に、もうすでに予定を組んでおって出席ができないという返事が上屋専務理事からこちらにございましたので、今回の十二日には出席できないということでございます。御指定の会長及び副会長ということでしたから、その二人に、あれが八日の日だったと思うのですね、八日の日にすぐ連絡をとったのですけれども、十二日は時間的に、連休明けであったので、来れなかったのかと思いますが……。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。次回に、また呼んでいただきたいと思います。  きょうは、佐々木総裁には、たいへんお忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございました。  実は、昨年九月から金融引き締めをやっておるのでございますが、この金融引き締め効果が十分に発揮されているかいないかということは、たびたびこの委員会でも、また国会の中でも論議をしてまいりました。まあ、そのときそのときで、段階的に引き締め政策効果というものがあらわれておるというお話を政府からも承っておったのですけれども、特に最近の経済動き等からしまして、この際大幅に金融緩和政策転換すべきではないだろうかというふうな意見も出ておるようであります。で、私は、最近の経済企画庁月例経済報告とか、あるいは日銀月例報告等十分関心を持って見せていただいておりますが、確かに、景気に対して、まあ、かげりと申しますか、出てきた。これは、いろいろ、設備投資の面とか、鉱工業生産の面とか、製品在庫率の問題とか、生産受注卸売り物価、あるいは企業倒産ということもございますけれども、そういう点からして、確かに効果があがってきたというような判断に立っておられると思いますが、問題は、その効果判断、この意見が完全に一致しているかどうか、日銀、あるいは政府当局の間に。この点が非常に問題になるわけです。ですから、効果が完全にあらわれて、もはや、いままでとってまいりました金融政策は大きく転換をするというか、もうここで打ち切ってしまう、そういうような方向へいくのか、あるいは、ある程度大幅な緩和をして、もう少し様子を見るようにしたらいいのか、こういうところに来ていると思うわけです。日銀が、九日でございましたか、おきめになりました、十月から十二月までの資金ポジションの規制の指導、こういうものを見ますと、どうも、要するに、とりあえずは中型程度金融緩和をして、その後、その推移を見守った上で、あるいは公定歩合引き下げということもやろう、こういう御判断に立っておられる。——私は、今度のこの金融緩和については、純粋に経済効果の面から、金融引き締め効果の面から論じられておると思いますけれども、たまたま、産業界、あるいは経済界、あるいは政府自民党筋からも、かなり積極的に金融緩和すべきであるという意見が出ておる、特に通産省あたりは、公定歩合を〇、二五引き下げるべきだというような、そういうところまで言っておるというふうに聞いております。何か、積極的に金融引き締めというものを打ち切ってしまって、もう大転換をして、公定歩合引き下げまでいくべきだ、そういう考え方に一致しておるように聞いておるわけです。そこに何か理解できないものを感じますが、そこで、日銀がおきめになりました、当面十月−十二月の資金を大幅にふやして、状況を見て、その上で、あるいは公定歩合引き下げということまでいくかもしれない、こういう御判断について、きょうは、その根底になる日本景気動向というものを含めて、総裁からぜひ御意見を承りたいと、そう思いますので、最初にその点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 御承知のように、戦後数回日本金融政策引き締め経験を持っておりますけれども、その引き締め契機になりました、原因になりましたものは、いつも国際収支の悪化でございました。日本として戦後荒廃から立ち上がって、海外とのいろいろな国際決済、そのための力というものが非常に弱かった。したがって、海外に対する決済力がなくなっては日本経済の運営ができませんから、結局、せっぱ詰まって引き締めを行なうという経験を重ねてきたわけでございます。ところが、御承知のように、今回の引き締めは、大幅な国際収支の黒字のもとにおいて行なわれた戦後初めての経験でございます。これが、なぜそういう引き締め策が行なわれたかと申しますと、全体の経済上昇があまりにも急速であるために、物資の需給労働力需給その他に無理がまいりまして、久しく落ちついておりました卸売り物価も一昨年の暮れぐらいから反騰に転じまして、しかも、それがなかなか落ちつかない。それからまた、その他、商品の需給も、あるいは労働力需給もなかなか窮屈である。これでは結局経済過熱状態になって、全体の安定した成長が阻害されるという判断から、引き締め政策をとったわけでございます。したがって、今度の金融政策効果その他を判断いたしますものさしが、かつてのように国際収支という、非常に率直に、わかりやすい一本のものさしでないという点が、判断に非常にむずかしさを与えておるわけでございます。もちろん、こういう場合に考慮さるべき経済指標というものは、あるいは生産でございますとか、出荷であるとか、在庫であるとか、あるいはまた物価の面、あるいはさらに金融関係銀行券流通高とか、その他いろいろ指標があるわけでございます。そういう指標動きは、いつも大体経済の中で必ずしも同じ方向にばかりには動きません。したがいまして、その多くの指標から実態推移を把握いたしますことは、なかなか困難な点がございます。  今年の引き締めを昨年の九月に開始しまして、昨年中はほとんど影響らしいものは見当たりませんでした。一つは、今度の引き締めに予防的な措置であるという感じがあったせいもあるかと思いますが、年内は、金融面には多少の変化はございましたけれども経済実態にはほとんど何らの影響もなかったと考えられるのであります。今年に入りましてから、逐次、企業金融、特に大企業中心とする産業資金需給にやや遍迫の点が入ってまいりました。そういう声がだんだん強くはなりましたけれども、先ほど幾つかあげました経済指標には、なかなか具体的の影響が出てまいりません。効果が出てまいりません。最初効果が出てまいりましたのが、卸売り物価でございまして、今年の五月に、久しぶりに持ち合いということになりました。六月には〇・四%のマイナスということで、卸売り物価の面ではやや引き締め効果が出てきたという判断がございました。ところが、鉱工業生産のほうでは、六月に四・以上の増加が見られたということで、生産は依然として非常に強い。生産の非常な高さ、増加が全体の経済緊迫度を加えているという判断から申しますと、そういうふうに高い生産伸びがあるということは、まだまだ引き締め効果が十分でないという判断を与えたのでございます。その後、卸売り物価のほうは、引き続いてまずまず安定しております。七月も持ち合いであり、八月は〇・二の上昇にとどまりましたが、九月の卸売り物価は明日発表予定でございますが、〇・一の上昇。これは季節的に九月が卸売り物価の上がる時期であることを考えますと、やはり相当な落ち着いた姿であると思います。それから鉱工業生産が、八月に入りまして減勢に転じました。八月という月は、最近、ずいぶん工場がたくさん休むようになっておりますので、生産の実勢についての季節調整のしかたということに問題があろうかと思いますけれども、六月に非常に高い増加を示しました生産が、八月になってマイナスに転じたということは、一つの事実としてあるわけでございます。そのほか、出荷のほうも、鉱工業出荷のほうもやや鈍ってまいりまして、そういうことを映じます在庫の増大、在庫率上昇ということが出てまいりました。金融面指標について申し上げますと、日銀券平均発行残高の前年同月比増加率、これが、六月には前年比一八・五%というふうに、やや落ち着き数字を示したのでありますが、七月になりまして増加率が一九%台に乗せまして、八月には一九・一と、こういうところまでいったわけであります。これには万博の影響その他もあったかと思うのでありますが、九月に入りまして、これが一八・二というふうに下がってまいりました。十月に入りましてもその傾向が続いておるわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたように、いろいろな指標が、七、八月ぐらいまでは右に向いたり左に向いたりしている感じがございましたが、最近そろいました指標では、大体そろって落ち着き方向を示してきた、こういう状態でございます。ただ、しかしながら、いま申し上げました生産数字も、八月になって初めてそういうような変化がございましたので、たった一月の事情で基本的な傾向についての判断をすることはまだ早いと思います。しかしながら、金融面において、相当、もうすでに一年も引き締めを続けておりまして、最初は大企業中心でございました金融の引き締まりも、逐次中小企業影響が及んでまいっております。そういう点がこの年末を控えまして相当問題でもございますし、そういうような経済指標推移から考えまして、今度年末関係を考慮した総体としての資金投資指導について、量的な緩和をはかることにいたしたのでございます。  いまさら申し上げるまでもございませんが、大体金融政策は、緩和の時期には徐々に行なうことが原則でございます。せっかく各方面にいろいろ御迷惑をかけて引き締めをやってまいりました、それを中途はんぱに解除して、またもとへ戻るということがあってはたいへんな問題でございますので、引き締めの開始のときには、事情やむを得ざるものがありますから急速な手を打ちますけれども緩和のときには、徐々に状況変化を見、推移を見ながら緩和をしていくのが常道だろうかと思います。したがって、ただいま御質問がありましたように、現在の段階では、まず量的な調整を一応いたしまして、その影響その他を見ながら、もし必要であれば次の機会に手を打つ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 鈴木強

    鈴木強君 たいへん私の考えておるような点を総裁がお述べいただきまして、かなり理解いきました。ただ、佐藤経済企画庁長官もお見えになっておりますから、政府側意見も承りたいと思いますが、そうしますと、結論的に言って、金融引き締め効果はかなり出ておるが、ここで根本的にこの金融引き締め政策というものを大転換するという段階にはまだ立ち至っていない、ですから、総裁の御意見ですと、徐々に金融緩和をしていくというのがベターである、したがって、まだ引き締め政策そのものは従来のとおり堅持していく、というふうに私は理解したわけですけれども、そういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  12. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 実は、先般生命保険大会がございまして、そのときに、私、意見を申し述べる機会を与えられたんでございますが、そのときの私の申しましたことばは、引き締め政策の大ワクは維持しながら、状況変化に対して適応していきたいと、こういうふうに申した次第でございます。
  13. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、設備投資の問題ですね、設備投資動きが一体どういうふうになっておるか。私は、物価との関係を非常に重要視しているわけです。昨年のこの金融引き締め当時の目的が経済過熱物価鎮静化にあったと思いますから、ですから、そういう点をかなり重視していかなきゃならない。在庫がふえたというのは、たとえば自動車の場合でも、家電の場合でも、繊維の問題でもそうですが、御承知のように、自動車欠陥車の問題が契機になりまして、やはり売れ行きが悪くなってきている。これはだいぶふえてまいりました。カラーテレビのごときは、ああいう二重価格制をとって消費者を欺瞞するような方法をとっておりますから、最近ずっとふえてきてます。それから繊維も、これはアメリカの御事情があるわけでして、これは金融引き締めによる効果があるとかないとかいうこととは全く条件が違うと私は思うのですね。ですから、そのために在庫がふえたからといって、景気鎮静化したということは言えないと思いますが、物価については、卸売り物価はなるほど多少の効果は出ておりますけれども消費者物価というものは依然として上がっております。最近なんか、また特に消費者物価はひどいですね。サンマ一本買ったって百六十円してますよ。最近なんか、キャベツ、白菜、大根、この秋は二、三月ごろと同じくらい値上がりがしてきています。これは、設備投資にかなり投資をして、借金で生産をふやして、そしてそれをコストにぶっかけてくるような、そういうような政策をとって設備拡張をする、そのことがやはり物価を刺激している。私は、ただ金融引き締めそのものだけで物価が下がると思いません。これはいろんな作用がありますから。と思いますけれども、やはりそういう基本的なところにもメスを入れていかなければならない。したがって、設備投資が一体どう動いているかということは、きわめて重要視しなければならぬ。そのことを、物価との関係で重要に私はとらえているわけです。  だから、あなたがいま金融引き締め政策を、まだここで解除するということでなくて、それを継続しながら推移を見て、さらにやっていくという考えだという、それは私も正しいと思います。私もそういうふうに思いますから、そこは同感なんですけれども、しかし、そういう中で私がこういう質問をするのは少しおかしいと思いますが、そういう、あげられましたようなものが景気が多少鎮静化してきたということであれば、私はちょっと問題が違うと思いますけれども、その辺に対する総裁の御見解を。
  14. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 総需要の中で一番量的に大きいのは一般の国民の個人消費需要でございます。その次に政府需要があり、それから企業需要があり、輸出需要がある。この四つの需要、いまさら申し上げるまでもございません。その中で、金融政策の直接の影響を受けますのは企業需要でございます。企業需要には、いま御指摘のありました設備投資需要と、在庫投資需要と、二つがあろうかと思います。したがいまして、私どもが今度金融引き締めをやりましたときの、そういう当面と言いますか、正面に考えましたのは、民間企業設備投資需要の非常に高かったことでございます。四十四年度の伸びが前年度に比較しまして二十数%にもなるというような設備投資伸び方でございましたので、それの物価に対する影響等考えまして、設備投資需要を押えるという面で、したがって、主として大企業中心とした都市銀行貸し出しを押えていくという方針をとったわけでございます。したがいまして、今後の物価動向につきましても、そういう民間企業投資需要というものがどういうふうになるかということが、金融政策の面から言うと最も関心があるところでございます。設備投資需要は、このごろは設備自身が相当大型になっておりまして、完成いたしますのに数年必要だというものもございまして、なかなかそう弾力的に変化はいたしませんけれども、最近になりまして、新しい工事への着手というものは、だいぶ落ちついてきたように感じられます。最近の機械の受注高等の、設備投資に関します先行指標を見ましても、だいぶ落ちつきが感じられる、こういう情勢でございまして、いまのところでは、設備投資に関しましては、金融引き締め政策もようやく効果を発揮してきて、今後にその鎮静が期待される。先ほど申し上げました卸売り物価が五カ月間大体安定してきているということとあわせまして、そういう企業金融の面からの効果はある程度期待できるような状況になったのではないか、こういうように判断しているのでございます。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、一応総裁が今度おとりになりました当面の金融緩和策都市銀行に対する貸し出しワクをふやして、九千五百億くらいですか、で、とにかく当面はいこうというお考え方のようですが、それで、はたして日本経済というものが、政府がお考えになっているような名目一五・八%、実質一一・一%、こういうふうなところに四十五年度いくようになるかどうか、これは非常にむずかしいと思いますけれども、そういうふうなものも十分これは御勘案いただいていると思います。それからまた、経済社会発展計画というような、ある程度長期政策もその中にあるわけですから、短期間の金融の問題を論ずる場合でも、当然長期のそういう計画の上に立って御判断をされなければならぬと思うわけです。  それで、いずれ年末になりますと特別な決済期に来るわけですから、中小企業はじめ、かなり金が必要になってくると思います。ただ、一面、御承知のように、政府が四十五年度の国家予算の中で公共投資の面における予算支出をある程度下半期に延ばしております。それがどの程度になっておりますか、あとから経済企画庁にお伺いしたいのですが、それと、また、米の収穫期に入ってまいりますから、そういうものの代金もかなり入ってくる。したがって、金融面ではある程度そういう面からの緩和も想像されると思いますが、総じて、公定歩合引き下げまで金融引き締め緩和ということをやらなければならない時期が来ると思うのでございますけれども、この点については、総裁は大体どの時期を一応いまの段階で御想定になっておられるのでございましょうか。経済企画庁長官は、新聞の発表を拝見しますと、六日の経済閣僚協議会あと記者会見で、自民党総裁選挙前に引き下げをするようなことはない、こういうふうにおっしゃっておる。そして、おそらく来年度の予算編成の問題ともからんで、これは非常に大事なことであります。ですから、四十六年度の経済見通しについて、そういう点も配慮しつつ、その時期を考えておるようにも聞いておるのです。したがって、いまここで、にわかに総裁がお答えになれますかどうですか、わかりませんけれども、おおよその時期はいつごろになるのか、また、その幅はどのくらいにしたらいいとお考えになるのか、これはもし時期が非常にむずかしければ、その幅等も大体どの程度にしたらいいかというような、そういうお考えがありましたら、ひとつ聞かしてほしい。  というのは、通産省のほうが非常に先走っておるように私思うのですけれども、たしか五日でしたか、当面の景気情勢と今後の景気政策のあり方について協議をしたとき、もはや金融引き締め政策の大転換をする時期に来ておる、もしこれをやらないと、政策不況にもなるかもしれぬし、来年の経済成長というものが実質一〇%くらいになるかもしらぬ、こういうようなことから大転換の時期に来ておる、そうして、公定歩合についても〇・二五%下げるべきである、というような意見通産省はまとめているように思いますが、そういうふうな点との関連がありますから、びひひとつ総裁の御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。
  16. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 季節的に、九月から米の代金その他の支払いがございますので、金融市場における資金需給緩和するのが通例でございます。ことしもその例と異なっておりませんで、十月の一日からコールレートが〇・二五%下がるというような状況でございます。政府支出も下期に大体相当ふえてくるということも例年の姿でございます。その点については、ことし特別に例年と違ったものがあるように思いません。ただ、違いますのは、昨年の九月から引き締めを実行してきておりまして、企業金融の面で資金の不足が続いておるという点が、その他の普通の年とは違っておる点かと思います。しかし、年末につきましては、今回の量的な緩和もございますし、それから例年中小企業金融については政府において特別な措置もとられるのが例でございますので、いま私どもの推定しておりますところでは、この年末特別に金融の面で問題が起こるということはないのではないかと思います。  こういう情勢を前にしまして、ただいま公定歩合についての御質問でございますが、実は、私どもは、いまようやく十月−十二月の資金ポジョン指導についての態勢をきめたばかりでございまして、それの効果と申しますか、それがどういうふうに一般に影響を及ぼしますか、あるいはまた、いろいろな経済指標でも、たった一月の変化では、全体の推移傾向がはっきりつかみかねるものもございます。そういうものを今後いろいろにらみ合わせながら態度をきめていくべきだというふうに考えておるわけでございまして、時期等につきまして、全然いまのところ何も考え方をまだ持っておりません。  幅についての御質問でございますが、幅も、もちろん、そういう環境のいかんによって決定さるべきものでございますが、ただ、昨年の九月の公定歩合の引き上げ以来、金利の建て方を日歩から年利に変更いたしました。そうして、六・二五という金利にきめたわけでございますが、年利にきめますと、年利の場合の動かし方というのは、おのずからそこに幅がきまってまいる傾向があろうかと思います。いままでのように、日歩一厘とか二厘とかいうことではなくて、たとえば〇・二五とか〇・五とか、そういうような何分の一刻みということになろうかと思います。そういう技術的な点は一応ございますけれども、今後の実行面での幅いかんは、すべて今後の検討に待つべき問題だと考えております。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、はっきりまだ、先ほどからの論理的に一貫したお考えの中からでは、ちょっと無理な御質問かと思いますから、その程度でやむを得ないと思いますけれども、そこで、さっき私が質疑の中で申し上げました設備投資ですね、それから在庫がふえているという問題、それから当然物価政策との関連、こういう面について、やはり景気動向判断する場合に非常に大きなウエートになると思うのですね。私は、こういう点については、いまお話しになったような、設備投資が、大体、経済報告を見ますと、前年度二〇%強の伸びに比べて本年度は一七%のラインに伸びているから若干の落ちつきが出ているという程度ですけれどもね。この辺は、金額にして最近どういうふうな特別な動きをしておりますでございましょうか。もし資料がありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。  それから在庫の面ですけれどもね。これは、カラーテレビ関係とか、家電関係を主でけっこうですけれども、その点はどんなふうに推移しておりますか、おわかりでございましょうか。
  18. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 設備投資の関連の指標は、実は年度間のものは、いま各企業計画をもらって各方面でまとめておられる数字がございます。これは、いまのような、何といいますか、景気動きをそう敏感に反映いたしません。したがいまして、私どもは、そういう設備投資関連の、わりあいに早くつかまえられる指標といたしましては、一般の資本財——資本財といいますものは結局設備に当てられるべき性質の資材でございますが、その一般資本財の出荷数字機械の受注高、そういうようなもので判断をいたしておるわけでございます。資本財の出荷数字を見ますと、ことしの五月が前月比〇・四の増、六月が七・七の増と、わりあい高かったのが、七月に〇・四の増、八月にはマイナス〇・四と、こういうふうに落ちついてきております。それから機械受注のほうは、これは電力とか船舶とかいうものが相当大幅に動きますから、そういう面ではそういうものを調整する必要がございますけれども、大体このところ、五、六、七と、前月に比べましてマイナス数字が出ておるのでございます。こういう、わりあいに早くつかまえることのできます設備投資関連の指標によって、設備投資のごく最近の動きについては判断をいたしておる次第でございます。  それから、もう一つお尋ねがございました品目別の在庫数字は、ちょっと本日ここへは用意しておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 それから、いま私申し上げた設備投資とか、あるいは在庫の問題ですね。生産、受注、卸売り物価とか、いろいろ幾つか、もちろん景気警戒の指数があるわけですけれども、その中で特に私が申し上げた設備投資在庫がふえるというような、こういう問題について、金融引き締めの本筋から来る影響のほかに外的な影響がうんとあるわけですからね、そういうものは、ただ単に在庫がこれだけふえましたといっても、ちょっとこれは筋違いでしょう。そういう点をちょっと私お伺いをし、今後、金融経済動向その他を御判断なさるときに——専門家の総裁に、うもたいへん言い過ぎのようなことになるかもしれませんけれども、やはり十分にそういう点を配慮しませんと国民は納得しませんから、念のために申し上げておきます。  それから、もう一つ最後にお願いしたいのは、中小企業資金繰りの面では、比較的金融引き締めの中でもその影響は少ないと私ども聞かされておりました。また、事実そうだったと思います。しかし、中小企業そのものに対する一般会計からの予算支出を見ると、四十五年度わずか五百三億しかありません。五百三億しか。そのほか、融資面で確かにいろいろふえておりますから、そういう点で救われているんじゃないかと思うんですけれども、根本的に中小企業対策そのものは非常に不十分だと私思うんですけれども、それは政府のほうの問題でありますけれども、最近、そういう中小企業に対する資金面からの影響があらわれてきて、たとえば手形期間の長期化とかというようなことが出ておるようでございますね。これから年末を控えて一そう、毎年のことですけれども中小企業は困難に当面するわけです。倒産も、確かに従来の景気の悪いころから見ますと、数も少なくなっていると思いますけれども、しかし、かなり倒産もふえてきておりますので、特に中小企業に対する金融政策、こういったものを、この十月、十一月のおきめになりました資金ワクを、量をふやすというその中で特別の御配慮をいただいておりますかどうですかですね。中小企業実態の御判断と、総裁がどう判断されているかですね。それと同時に、もし悪い状況にあれば、それに対してどういうふうな手当てをするかという、そういうお考えを承っておきたい。
  20. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初に御指摘のございました、最近の在庫増加には、いわゆる経済外的な要因から来るもの、要するにアメリカのいろんな政策の結果でありますとか等々、そういう問題から来ておるものがございますことは私ども十分承知いたしております。したがいまして、最近の金融緩和を求める声の中に、何かそういうような問題まで金融緩和によって解決されるかのごとき印象を与えるものがありますのは、私どもとしては、はなはだ心外に考えておるわけです。これは、金融緩和をいたしましても、あるいは公定歩合引き下げましても、決して解決する問題ではない。この点は一般財界において誤解のないように、私どももいろんな機会をつかまえて説明をしておる次第でございます。したがって、そういう面から来ます在庫数字その他の変化につきましては、十二分に考慮してまいっておるつもりでございます。  それから第二番目の、中小企業の問題につきましては、いまお話がございましたように、やはりだんだん大企業の決済条件の悪化等から、中小企業金融にも今回もやはり次第に影響が及んできたということは私どもも具体的にいろいろ見ております。したがって、それに対する対策は、全体の引き締め政策を成功させる上からいいましても、非常に大事だと考えておるわけです。私ども地方の支店長に連絡をいたしまして、地方でいろいろ関連の方に集まってもらいます委員会どもつくりまして、実情の把握に手抜かりがないように注意しておる次第でございます。今月下旬に支店長会議を開催するつもりでございますが、その際にも、中小企業金融につきまして十分配慮するよう、重ねて申すつもりでございます。金融の量的な面につきましては、今回の緩和が、ある程度企業の手元をも楽にすると思います。それが結果において中小企業に対する決済を早くするというプラスも出てくるんではないかと思います。しかしながら、年末にまいりましてからは、やはり具体的な問題が起こりましたときに、きめのこまかい対策を立てることが必要だと思いますので、そういう考え方で準備をいたしておる状況でございます。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 どうもありがとうございました。  ちょっと経済企画庁長官にお尋ねしますので、総裁、十一時までということでございますので、あと五分間、総裁のいらっしゃるところで伺っておきたいんですけれども佐藤長官にいろいろ伺いたいと思いますけれども最初に、九月の月例報告を経済企画庁がお出しになりました。私も内容をよく拝見いたしました。その内容に入る前に、実は景気動向に対する考え方でございますが、おたくの方では、当初、現在の経済状況について、景気のあり方について、原案を、景気は落ちついてきたと考えられると、こういうように断定的にまとめたようでございますが、これに対して、日銀側は、いま総裁もおっしゃいましたような、非常に慎重論、しかもよくわかります、私も。そういうふうな考え方があったのでしょう。それで、もしこういうふうに経済企画庁が報告をされると、すぐ公定歩合引き下げというところまで話が進んでいくような情勢にくる、そして政策転換ということが迫られてくるので、もう少しゆとりのある表現をしてもらいたい、こういうことを日銀側が意見として強く出されて、その結果まとまったものは、われわれが拝見しております「商品市況の軟調、機械受注の鎮静化、製品在庫の増大などからみて、」と、製品在庫の増大ということをおっしゃいましたけれども、実はここらにこういう文章が出てくると、非常に誤解を受ける。この中には、さっき申し上げたような経済条件より別にこういうものがあるという、金融政策などからは全くはずれたものがあるということを注でも書いてもらわないと誤解を受ける。——これはまあ注釈ですけれども、「からみて、景気は落着きつつあるものと入とめられる。」、こういうように修正された。ここに私は、今度の金融引き締めに対して、産業界あるいは経済界、あるいは自民党ですね、政府の一部もそうだと思いますが、かなり強気で転換をしようというような、そういう動きがあったのではないか。また、報道によると、それは、佐藤四選の後に日本経済が下向くということになってはまずいので、というような配慮があったのじゃないだろうかというようなことまで報道に書かれている。ですから、そういう点について、国民が、今回の政府のとった中間的な態度、結果的には日銀がおきめになった態度できまったわけですけれども、その間における政府の態度というものに非常に疑義を持っておりますからね。この際、長官から、もしそれがそうでないならば、はっきり、そうでないと正式に——この報道の中には文章に出ているから、もし新聞が違っているなら新聞が間違いということを、そ点を明らかにしておいてもらいたい。
  22. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いま鈴木さんから御指摘になりました、先般発表しました月例経済報告に関連しまして、私どもは、最後の結論のところで、「景気は落着きつつあるものとみとめられる。」、こういう表現をいたしております。これに関連しましてただいまの御質問でございますが、経済企画庁が月例報告をつくります際には、もちろん、各種のデータを参酌いたしまして、そうして最も事態に適切な表現を用いる、こういうふうに、当然のことながら、心がけておるわけでございます。その各方面のデータという際には、あるいは通産省意見も参考に入れる、日本銀行の御意見も参考に入れる、これは当然でございます。しかし、最終的にこの報告をつくりますのは経済企画庁でございまして、私が最後にこれを見まして、そうして表現をきめるのでございます。その過程におきまして、経済企画庁は落ちついておる、それを日本銀行の要請でこういうふうに変えたという経緯は絶対ございません。これはもう、私もまあ、あるいは不注意でそういう新聞報道を感じておりませんが、もしあるとしたらば、きわめて遺憾でございます。したがいまして、当然のことながら、これについて何ら政治的な配慮とか、そうしたものはないことはきわめて明白でございます。私たちは、純粋に経済の事態に即して、現実的に最もどれが現実の事態であるかということを国民の皆さまに知っていただかなければならないのでございまして、そういう意味におきまして、ただいま鈴木さんの御指摘になったようなことは絶対にないということを、この際、はっきり申し上げておいたほうがいいと思います。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 これはね、ここで水かけ論になりますから、これ以上申しませんけれども、しかし、現に、しっかりした新聞が書いておりますからね。——これ以上私は申し上げませんが、事実文字になって全国に報道が流れているわけですから、長官は、全然ないと、こうおっしゃるのですが、その原案をつくる過程においてそういうことがあるいはあったかもしれない。そういうことがやはりあったとすれば、これは誤解を受けますよ。今度の通産省なんか、ほんとうにあれ、自分の見解だから何も人にとやかく言われる筋合いはないと言われるかもしれないけれども、やはり少しタイミングからしても、まずいと思う。ですから、その点はよく内部事情も調べていただいて、そういうことがないように今後ひとつ注意していただきたい。こういうことをお願いしておきます。
  24. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 何か、まだ鈴木さん、心の底でもって納得されてないような感じでありますから、私はさらに重ねて申し上げるのでございますが、もちろん、企画庁の中にも意見はいろいろございます。しかし、最終的に幹部のところでこれを決定するという際に、御指摘のような経緯は絶対ございません。大体こういう企画庁が正式に発表したものを、まあ一部の新聞でありますが、この報道はあくまで憶測、推測に過ぎません。企画庁が最終的な意思決定をするまでの過程というものは、本来、外部から見れば憶測に過ぎないわけでございまして、その憶測というものをあまり重視していただくと間違うのじゃないか。これは企画庁が明らかに、いろんな意見を総合調整いたしまして——内部にも、もっとこれについて、落ちついたという判断をする向きもないではございませんでしたが、しかし、最終的には、幹部のところでいろいろ審議いたしまして、そして企画庁自身の判断でこういうふうに落ちついたわけであります。でありますから、その点だけはひとつ、くれぐれも鈴木さんのお気持ちの上でも十分御理解をいただきたい、こういうふうに希望いたすものであります。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 長官のおっしゃることはよくわかりますが、しかし、調べてみてくれますか、経過についてね。そういう原案をどこの課でつくるか知りませんがね。その当時、私が指摘したように、景気は落ちついてきたと考えられると断定的に表現しておったのかどうなのかということは、ひとつ、新聞に出たからには、やっぱりはっきりする必要があると思う。幹部の段階で……。わかりました。これは確かに最終決定が経済企画庁の決定ですから、私はそのことはよくわかりましたが、少なくとも、そういう過程の問題でも報道になりますと、これは国民から見ると、今度の政策転換ということがだいぶ四選にからんで強引にやられるのじゃないか。また、しかも、財界のほうも、金融引き締め効果というものがはたして出ているのか出ていないのか……。この判断は当事者がやるわけでしょうけれども、当事者というか、政府自身がやるわけでしょうけれども、何かいまたいへんな段階に来て、金融引き締めということをやらなきゃ、もたないのだというような切迫感を持ったような空気もあるときですから、純粋な、政府のとりきたっておる金融引き締め政策というものの効果の上に立っての論議ではないという批判もあります、これは。ですから、それだけに、そのやりとりの中における一こまがたいへん国民の関心を呼んでおったということでありますから、その点も大臣は御了承いただいて、ひとつ、まあ内部のことでございましょうけれども、一回お聞きいただいたらどうかと、こう思いますので、お願いしておきます。  それから、今度の景気に対する対策というのは、一応日銀の態度できまったわけですけれども、私どもが四十五年度の国家予算を審議する場合に、四十五年度の経済見通しについて、あなたからよく伺いました。一五・八%なり一一・一%という目標が、はたしてそのとおりいくかどうか。当時、卸売り物価はもうどんどん異例な上昇を続けている段階で、あるいは九月期になってその目標を修正しなければならぬかもしれぬというようなことまで言われたわけです。四・八%の消費者物価の問題もあわせまして。そこで、大体上期が終わった段階で、一体日本経済政府がお考えになっているような方向におよそいっておるのかどうなのか、この点を最初に伺いたい。その修正する必要があるのかないのか。あなた九月ごろやるかもしれぬと答弁をしておりましたが。
  26. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 最初に、前のことでありますが、私はよく経緯を知っております。でありますから、別に調べる必要もございませんので、先ほど申し上げましたように、もう幹部の段階では最終的にこの発表したままでございます。したがいまして、私が受け取りましたのもそういうことでございますから、それだけはひとつ御了解願います。  それから経済見通しでございますが、これにつきましては、もちろん、いま日銀総裁の話にもありましたように、これからの見通し、非常にむずかしいところであろうと思います。したがって、いますぐ軽々に申し上げるわけにはいきませんが、しかし、総体に金融引き締めというものが経済実態引き締め効果をもたらしつつあることは、はっきり出ております。そういうこともございまして、今後の先行きを考えてみますると、おおむねわれわれの経済見通しに近い線に来ているのじゃないか、こういう感じを、実は大ざっぱに持っております。ただ、物価の問題についてだけ、その点については、まことに遺憾でありますけれども、今日の実情というものは、特に消費者物価におきまして、相当強い上昇の気配を示しておりまして、卸売り物価は私はますます鎮静ぎみになっておると思うのですが、その点だけが気がかりでございます。その他の点につきましては、まあ、ほぼ当初政府が見通しておったような姿の方向に向かっておる、こういう感じをいま受け取っております。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 それで、長官としては、現状の経済効果については、さっき日銀総裁がお述べになりましたような考え方でございますのでしょうか、どうでしょうか。  それから私がもう一つ聞きたいのは、六日に経済関係閣僚協議会がございましたですね。その際に、宮澤通産大臣から、さっき私が総裁に伺ったような政策転換公定歩合引き下げですね、これを思い切ってやるべきだという御意見が出たと思うのですね。それに対して関係閣僚の御意見がどうだったか、もしお差しつかえなければ伺いたいと思いますし、特にあなたの、経済企画庁長官としての、経済の元締めですね、あなたの考え方は一体どうであったのでしょうか。今度の日銀のとった措置でまあいいと思っておられるのか。当初私はもう少し通産省に近い考え方だったのだが、まあ日銀がこの程度のことをやられたので、それで私も相談に乗って、いいと思う、こういうふうになっておるのか。もちろん、最終的には、相当日銀とは意見を統一してやっておると思いますけれども、ちょっと仮定の問題で恐縮ですけれども、大事なところですから、差しつかえなかったら、そのところの経緯を教えてもらいたいと思います。
  28. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) この経済閣僚協議会におきまして、通産大臣から政策転換について発言はありませんでした。ただ、中小企業の倒産状況、それから中小企業の金繰りがなかなか詰まってきておるというようなことの説明があっただけでありまして、政策転換について何ら触れておりません。したがいまして、当日は、われわれはそういう事態の報告として受け取ったのであります。したがいまして、転換についての話も出なかったわけであります。  それから、日本銀行の今回の措置というものが適当であったかどうかという点でありますけれども、もちろん、これは本来、日本銀行自体の判断において、他のいかなる意見をも排して日銀が自分できめることでございますけれども、まあ、われわれとしては、かねがね引き締めの実体経済に対する効果が進んでおることを認めつつも、なお全体として引き締めワクというものを維持していく、これはむしろわれわれの強い希望であります。そういう意味におきまして、今度特に資金繰りが窮迫しておるという事態に対処してとられましたこの日銀措置というものは、これは私の個人的な見解になるかもしれませんが、適切なものであったのじゃないか、こういうふうに考えております。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 ジグザグになりまして、ちょっと恐縮でした。  それで、大臣も消費者物価についてはたいへん頭を悩ましているようでございますが、全くそのとおりで、どうも、私鉄の運賃の値上げなんかを見ておりましても、まことに私たちには奇々怪々の気がするのであります。まあ、そういったものも、公共料金であるだけに、あれを認めることがかなり他の物価の値上げを誘発していくということもよくわかっているわけですね。あなたがちょうど御出席にならなかった委員会で一度私は質問したことがあるのですけれども、その当時も、経企庁としては、原則としては引き上げないようにしたいという前提になっておりました。あとのほうで雲行きがあやしい発言がありまして、結局、そういうことになってしまった。最近も酒が上がり、また、朝日麦酒が大びん小びんとも十円ずつ上げるようなことになっております。それから、せんだって中山先生の提言された生鮮食料品の、特に野菜等の流通段階におけるもう少しの簡素化というようなこと自体も議題になっておったやさきに、さっきもちょっと触れましたように、最近大根なんかもずいぶん高くなりましたね。キャベツとか白菜とか軒並み上がっているわけですが、特に私がきょう大臣に伺いたいのは、ビールです。  これは、四十三年でしたか、宮澤通産大臣のときに、私たちもかなりやり合ったのですね。しかし、権限が、いまの法律制度の中では、ないわけですから、他の、ビール会社の工場を大きくするとかなんとかいうときには大蔵の認可になりますので、そういう点で政府の干渉する余地がありますけれども、値上げのような問題については自由企業でどうにもならないということでしょう。しかし、理屈のない値上げだと思うのですよ。たとえば、ちょっと私も調べてみたのですけれども、大びん一本百三十円を十円上げて百四十円にするというのですけれども、これは国税庁にも通告してしまったわけですから、問題になるのは——これは公取のほうにも、あとから委員長来ると思いますから、伺いたいと思っておりますけれども、おそらく、前回もそうですけれども、朝日、サッポロ、麒麟、それとサントリー、この四社が日本のシェアを独占しているわけですね。したがって、この値上げというのは相当響いてくるし、おそらく他の三社も、おっつけ、さみだれ的に上げてくると思うんですよ。そうなると、独禁法違反の疑いがどこかの時点で出てくると思います。向こうだってばかじゃありませんから、一ぺんには上げませんよ。やはりさみだれ的に値上げする、独禁法違反をのがれようと思って。悪意を持ってやればできるわけですから。その点はまたあとで調べなければならぬと思いますが、しかし、ビールの消費量というのは非常にふえておりますね。それから、われわれがどうも納得できないのは、麒麟が一割五分の株主配当をしておりますね。それからサッポロ、朝日がそれぞれ二二%株主配当をしておりますよ。サントリーは上場されておりませんから、ちょっとわかりませんけれども、とにかく相当の高配当をしていると思うのですね。前回のときは増税がありまして、七円は増税分だったのですね。それで三円ぶっかけて十円にしたのですが、増税分であるからある程度わかりますけれども、今回のは全くそれと違うわけでして、しかも、さきに中山先生が提言された消費段階における合理化ですね。こういったことについても何らビール会社はやっておらないというような諸条件からいたしまして、今回の措置というのは全く私は納得できないわけです。経済企画庁長官としては、一体、法律的には問題はないとしても、大蔵大臣なり関係の皆さんとよく相談をして、値上げを何とかして押えるような措置をおとりになってきていただいていると思いますけれども、いい機会ですから、ひとつぜひ、その際の経緯を含めて長官のお考え方を承りたいと思います。
  30. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、われわれといたしましても、結論的に申し上げますと、非常に遺憾であります。この会社の経営内容というものは、やはり打ち続く人件費の増大と、それから各社間のシェアにだんだん格差が出てきたというようなことで、これを必ずしも一律に判断することがますます困難になってきている。したがいまして、人件費の増大等によりまして、非常に経営が苦しくなってきている。今後の決算の見通しというものはなかなか楽観を許さない状況のものも出てきている。そういうようなことに対処するためにやはり値上げをしたいのだと、こういうような要望が一部の会社に出てきておる、こういうことも事実でございます。私たちは、しかし、いま御指摘になりましたように、すべてそういう状況ではないのであります。でありますから、これが一律値上げにつながるようなことになるのは最も好ましくないということでありまして、したがって、さらにこれは当該会社の合理化によって解決すべきである、こういう前提のもとに、国税庁に対しても善処方をきびしく要求をいたしたわけであります。ただ、いま御指摘のような実情でありますので、国税庁としても努力をしてもらったと私は思いますけれども、遺憾ながら、なかなか効を奏さない。それが実情でございます。御指摘のように、もしやみカルテルというようなことがあれば、これはもちろん、もうきびしく追及しなければならない問題でございますが、全般としまして、そういう意味において、今回のビールの値上げというものは非常に政府としましても遺憾である。これは国税庁に対して強く要求すると同時に、また、われわれとしてその意向をはっきりと表明しておるところでございます。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、いろいろこれは、押え込んでいく行政指導の面のむずかしさがあるものですから、たいへんだと思うのですけれども、しかし、理屈がよくわれわれにわかるように、もっと明細に、会社の経営状態はこうなんだと、収支決算はこうで、人件費はこうなって、あるいは設備投資がこうなって、どうしても上げなければならぬという具体的な説明があれば国民も納得できますよ。しかし、われわれが見ても、「男は黙ってサッポロビール」、ああいうようなコマーシャルを流して、半年に十一億も使っているじゃないですか。年間二十二億も使ってますよ、宣伝費を。あんなことをしなくても、大体日本人は霞が関ビルの大体五倍半も一年間にビールを飲んでいるから、宣伝しなくてもちゃんと飲むんですよ。しかも、四社しかないんですから。それを、ああいうはなやかな宣伝をしている。そういう宣伝についても自粛するとか、何らかのもっと合理化——長官おっしゃるように、対応について国民が納得できるようになればいいのですよ。私鉄運賃のときも私はそう思いましたよ。どうしても輸送力増強のために上げなければならぬ、会社の経営はこうなんだ、しかも、あすこは不動産屋さんをやったり、ホテルをやったり、いろいろやっているわけですよ。そういう総合経営の中で、なおかつ鉄道網に対しては上げなければならぬという根拠ですね、そういうものがどうしてもはっきり出てこないところに問題があるので、出し得ないということは、これは余裕があると見ますからね。だから、せめてそういう点だけでも指導の面で私はやるべきだと思います。これは、大蔵大臣がきょういらっしゃいませんけれども、そういう点はひとつ連絡をとっていただいて、もう少し、こういう段階に処して……。政府としても不満だと言うのでしょう。不満だというのは、やはり問題があるから不満だとおっしゃるのでしてね。政府もやむを得ないということであるならば、またこれ、どういうわけだと聞く必要があるんですが、政府も、いや全く同じだと言われているんですから、そうなれば、やっぱり不当な値上げだとお考えになっているからこそそういうお話が出てくるので、それには、内容等についてもよく理解をしておられるわけで、ほんとうはもっと聞きたいのですけれども、まあ担当が大蔵ですから、ぜひ大蔵大臣とも連絡をとって、他の三社はまだ上げていないわけですから、変なカルテルがないとすれば、上げなくて済むわけでしょう。だから、その点もまだありますから、ひとつ、あきらめないで、積極的に、もっと値上げを押える対策を行政指導の面でやってほしいと思いますけれども長官の決意をちょっと伺っておきたい。
  32. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 私も御意見に賛成であります。なお、今後の問題もあるわけであります。われわれとしても、やはり今後そうした点について警告を発するとともに、国税庁にも、国税庁としてできる範囲においてひとつできるだけの指導方をお願いする、こういうつもりでおります。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 長官が十二時までの御都合だそうですから、阿部委員の御質問もありますので、私はこま切れになっちゃってあれですけれども、まあ、いずれカラーテレビについては関係の業者に聞きますが、参考人がきょうは来ていただいておりませんから、非常にやりにくいのですが、そういうわけで、長官、私は三十分まで時間をもらっておりますから、あと十分でカラーテレビのことについてちょっと伺っておきたいんですが、これはもともとアメリカの市場において日本カラーテレビがダンピングだということから問題が起きておるわけでして、扱いが非常に微妙ですから、対外的のこともありまして、慎重にやらなければならぬと私も思うんですけれども、ただ問題なのは、先般電子機械工業会発表したモデル価格の問題ですけれども、この公表については私もかなり突っ込んで勉強をしてみたんですけれども、どうも納得できないんです。むしろ、十九インチのコンソール型の機種のほうが最新型であって、国内においても需要が多いわけですから、こういうものについて実際の販売価格というものを公表すべきではないかと思うんです。これも、会社のほうからすれば勇断をもってやったんでしょう。なかなかむずかしいところでやったんですから。ところが、出してみて、かえって消費者の誤解を招いておるということですね。ですから、二重価格というものがどうして生まれてこなければならないのか、現金正価というものと実販価格というものがどうなっているかということがさっぱりわからない。そして、何か流通段階で三八%のマージンを取っているという。そうすると、そんなに取ってないと、小売店の人たちはおかしいと言い出したんですね。ですから、メーカーに対して今度は結束して、適正価格をきめろと、こういう運動をしてきている。消費者のほうも、そんなことならばカラーテレビは買わないという運動を起こしている。  ですから、ことし一年間六百五万台ほど、電子機械工業会の当初計画によると、生産することになっていると思うんです。しかし、いまは真空管からトランジスタへと機械も性能も変わってきているわけですね。ですからして、真空管時代のものはもう大体さようならで、スイッチを入れるとぱっと画像の出るトランジスタに移行してきてますよ。私は、電子機械工業会会長さんが来た場合に、一体その製品が在庫としてどれだけ残っているのか、真空管が幾ら、トランジスタが幾らあるのか、現在までの生産高と在庫高を全部聞きたかったんですよ。そうすると、真空管なんていうのはだんだん買わなくなっちゃうんです。そういうような問題もあるときだけに、在庫がふえて、いま幸いというか、そういうふうな問題が出てきたわけですから、ここで謙虚に電機業界も反省をして、適正価格というものをはっきり打ち出して、そして国民がせっかくカラーテレビを見ようという意欲があるのですから、その意欲にこたえるようなやっぱり政策転換をすべきだと思うんですよ。ところが、何か、生産を少し調整をして、在庫はそのままにしておいて、いずれ買うだろうからそのとき売ろうというような、そんな根性を持っているとすれば、とんでもない間違いだと私は思うんです。やはり通産省は、その間の直接の監督指導に当たると思うんですけれども、長官としても、このカラーテレビの二重価格制については、もう少し国民の納得できるところまで詰めてはしいと思うんですよ。  私は「週刊朝日」のをここに持って来ましたが、大臣もひとつごらんになってくださいよ。ごらんになりましたか。十月九日号ですよ。これに、「まや商会」の山崎さんの意見が載っております。この人は有名な安売りで名をなして、しかも、相当売り上げ高を伸ばしているようなんですけれども、ここなんかにも、「正価なるものは十七万三千円。今日の仲値が十一万三千円」——仲値というのは、メーカーから山崎さんに売る値段だそうですよ。「わたしどもでお売りするのが十三万円。」、ですから「一万七千円ほどもうけるわけです。わたしどもでは、ことさらな目玉商品はないんです。一律に一割三分くらいの線で、ピシャッとまや価格を出してしまいます。」。だから大体「仲値の一割三分が利益ですか。それにしても、現金正価とは大きな開きがあるんですね。」と、こういう飯沢さんの質問に対して、山崎さんが、「いやもう、現金正価なんてデタラメで、不当表示もいいところです。」と、こう言っているわけですね。ですから、一体現金正価がわからぬものですから、三八%マージンがあると言うのですよ。そうして、モデル価格のときの発表ですと、卸売りの店の経費が八%、販売促進費という据えつけ費八%、小売りの経費が二二%、結局三八%。だから、どう見ても、小売りのほうは、モデル価格の十四万八千円ですか、これについては納得できないのですよ。二二%・八%・八%、三八%ももうけているようなことを言うものですから、小売り業者がだいぶ反対の意見を出している。ですから、私は、松下がやられた系列会社、これについては、約手方式で、何かいろいろな紐がついているようですけれども、ああいうものはなくしたい。どこの店でも、どこのテレビでも売れるようにしたらいいのですよ。ところが、いままで松下さん一流の系列会社、系列販売店というものをつくり上げて、そこではいろいろ、店舗改造とか、いろいろなめんどうを見てもらえる、そういうものがみんなテレビの価格にかかっていくわけです。だから高くなるわけなんですよ。そういうものは宣伝費とか販売促進費とかが入っている。小売りのほうは中間でとっているのか、あるいはメーカーのほうにこの分が入っているのか、その辺がよくわかりませんけれども、いずれにしても三八%というのはでたらめだと思うのです。そういう点に納得できない点があるのです。私も非常に困ったものだと思うのですよ。  一方では、カラーテレビのほうは、NHKでも番組をふやして、さあさあといってやっているわけですよ。ところが、いまボイコット運動が出ておりますから、後ほど業界の方に聞いてみようと思うのですけれども、おそらく、カラーの契約なんかも、九月ぐらいから、当初の販売計画から見て、落ち込んでいるのじゃないかという気もするわけです。これは大臣も御承知のように、当初カラーテレビをスタートするときに、国際的な基準をきめなければいかぬという論議が日本の国会の中に圧倒的に与野党一致であったのです。ところが、正力さんのあの構想が植竹大臣のときに承認されてスタートした。だから、いま日本カラーテレビは、NTSC方式というアメリカの方式ですよ。ヨーロッパの方式とは違うのです。だから、いまアメリカが不況になったからといって、ヨーロッパ、イギリスへ切りかえるというわけにはいかぬですよ。また製造工程を変えなくちゃいかぬですからね。先般、日立が、テレフンケンですか、あそこと契約したそうでして、また他の業者もわれ先にとこれに追随していくような動きがあるようですけれども、そういうやっかいなものまであるわけですよ。だから、メーカーのほうも、われわれの言うような国際基準をつくってやればいいものを、少し先走ったから、いまになって困っているというような、そういうような過去の経過もあるわけですよ。  ですから、もう少し通産省と相談して、根本的に、もう一回、カラーテレビのあり方について、小売り店と流通段階の問題を含めて、思い切った改革のメスを入れてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 実は、いわゆる現金正価というものと、それから実勢価格、こういうものの乖離現象、これについては、われわれもぜひ是正してほしいと思っているのです。何といいましても、現金価格というものが一応いわゆる消費者に対するメルクマールになるわけでありますから、もしこの間の乖離が今日のように激しいというようなことになりますと、これはまあ、いわゆる現金正価としての機能を、いわゆる本来の正しい消費価格を示すものとしての機能を間違えることになる。消費者をミスリードするわけですから、われわれとしてもぜひ一体化を、この乖離をなくする方向措置が進むことを希望しております。まあ私は、率直に言いまして、そういう意味においては、この間のダンピングの問題は一つ契機ということになったと思います。こういう機会に、やはりできるだけ実態を究明する。率直に言いまして、いま御指摘がありましたような、なかなか実情がちょっとやそっとの調査ではわからないという実態を持っておられると思うのです。そこで、この問題が起こりましたときに、さっそく通産大臣にも、これは十分究明してもらうようにという要求を私も出し、通産大臣も進んで、ぜひひとつこういう機会実態を調べたい、こういうことでありました。そこで、ただいま通産省でも、これの実態の究明、実情の把握の検討に入っております。消費者モニターその他の方法を使ってこれの対策の検討を始めよう、こういうところであります。それからまた、公正取引委員会は、御存じのように、いわゆる二重価格というのでありますが、これがいわゆる不当表示につながるかどうかという点について、その観点からいま検討をしておるところであります。いずれにしましても、十分そういう点をはっきりさせて、いわゆる消費者中心とする天下の誤解のないようにしていく、これがやはり業界自体にとっても将来にわたってプラスになることであると私は信じております。業界の中にもいろいろと実際の格差があるだろうと思いますが、それだけに問題が複雑になっている。できるだけひとつ実態の把握をこの際しなければならぬ、こう考えております。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 系列販売店の件は、もうすでに公正取引委員会から審決が出まして、独禁法違反ということが出ておりますので、おそらく今度もカラーテレビにからんでくると思いますけれども、そういう時期ですから、ぜひひとつ根本的なメスを入れてもらいたい。  それから、ちょっと大臣に聞いておいてもらいたいのですが、いま阿部委員にお許しいただいて、もう一つ追加していただきますが、NHKのほうに……。最近におけるテレビジョンの契約、まあ、このダンピング問題が出てから、時間的なタイミングのズレがありますから、総契約にあらわれていると思いませんけれども、おそらく九月から十月、十一月、この時期にそういう影響が出てくるのではないかと思いますが、現状を、国会で審議する際に、NHKが増設しようとするその計画から見て、四月から八月、できれば九月末までほしいんですけれども、契約の状況はどうであるか、この点をひとつ協会のほうから伺いたいんですけれども
  36. 遠山寛一郎

    参考人遠山寛一郎君) 昭和四十五年度のカラー契約の増加目標は、ただいまお話がございましたように、二百四十万件を予定しておりますが、現在まで、八月末までが正確な数字が出ておりまして、百二十三万の増加になります。九月ははっきりした集計が出ておりませんけれども、おそらく二十五万程度ではないかと予想をしております。したがいまして、九月を合計いたしまして上半期百三十八万の増加を予想いたしております。したがいまして、現在の時点では、二百四十万に対しまして、過半が九月末で達成できる見込みでございます。十月以降の見込みについては、まだはっきりいたしておりません。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、ダイピング問題の影響がまだないように思いますから、けっこうですけれども、これからしかし、いまお聞きとりのような状況がありますから、NHKとしてもたいへん普及の面で苦労があるのじゃないかと思うのですね。そういう点はひとつぜひ留意しながらやってほしいと思いますが、これは要望しておきます。  藤木さんに電波監理局長として来ていただいておりますが、国会でNHKの予算を通すときに、こういう附帯決議をつけました。「カラーテレビジョン放送の拡充に伴い、良質廉価な受像機の普及対策を積極的に推進すること。」こういうことをいたしまして、もちろん物品税もできるだけ減免しなさいということも含まれておるわけですけれども、NHKも通信技術研究所を持っておられ、また監督官庁である郵政省も研究所を持っておられるわけでして、それぞれ技術開発等を通じてメーカーとも十分タイアップして、できるだけ安いカラーテレビをつくって、国民のためになるようにということで努力されていると思うのですが、一体、いままで良質廉価な受像機の普及対策というものを具体的にどう郵政省としてはやられたか、その点をひとつ伺いたい。
  38. 藤木栄

    説明員(藤木栄君) お答え申し上げます。  御承知のように、カラーテレビの国内出荷台数に占めますいわゆるオールチャンネルの比率というものは非常に高うございまして、ほとんど一〇〇%近く、九八%くらいまで占めておるというわけでございまして、また、一方におきまして、郵政省といたしましては、いわゆるテレビジョン放送の周波数帯をVHF帯からUHFに移行するという方針を持っておるわけでございますので、こういったことから、いわゆるカラーテレビを含めましてオールチャンネルテレビの全体の低廉化をはかるということが、より有効適切であるというふうに考えまして、その委員会の附帯決議もございますので、去る八月には、公文書をもちまして、私どものほうから通産省の重工業局、あるいは電子機械工業会というものに対しまして、オールチャンネルテレビの低廉価というものにつきまして格段の配慮をするように要望いたしておるわけでございます。郵政省といたしましては、さらに今後とも、通産省連絡を密にいたしまして、機会あるごとに業界を指導するように、一そうカラーテレビの低廉化をはかっていきたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと答弁は不満でございます。具体的に行政介入ができないわけですから、ですから要望するということはわかりますけれども、もう少し技術開発の中でいろいろあると思います。パテントも出てくると思いますけれども、そういうものもできるだけ——成功しているんでしょう。そうであるならば、そういうものに関連して、もっと積極的にカラーテレビの値段を下げるために、NHKともタイアップできるのじゃないか、それを、電子機械工業会会長に要望したという程度のことでは、これは納得できませんよ。ですから、NHKはやっぱり普及をしなければならぬ、また、郵政省としてもそれを援助していかなければならぬという立場にあるわけですから、この附帯決議というものはもう少し慎重に扱ってもらいたいと思う。何か附帯決議が形式的になっておってはいけない。そういうことがもっとはっきり出ておれば、カラーテレビの二重価格についてはおかしい、これについてもぜひ何とか考え直していただかなければ、せっかくカラーテレビの番組をふやしておっても普及はできませんというような点をよく話し合えば、私は多少の前進があったと思うんですよ。そういう話はやらなかったでしょう。そういう話をして、なおかつ、向こうが聞かなかったというのかどうなのか、そういう点もはっきりしていただきたいと思う。  それなのに、あなたのほうでは、東京を中心にして、来年度から、NHK・民放のテレビ番組に対するモニター制度なんというものを実施するという構想を明らかにしたようですけれども、この方法と内容につきましては、私も拝見しましたけれども、たいへん問題がありますよ。私は、原則として、放送法というものがあって、それに基づいて番組審議会がある、あるいは番組向上審議会というものがある、だから、そこで自主的にやるべきであると思う。それは、中にはくだらないものもありますよ。CMとか番組の中には、ちょっと目をおうようなわい雑なものがありますよ。だから、ああいうものは確かに直さなければいけません。しかし、根本的にはやはり自主規制というような方向でやりませんと、行政がこれに介入いたしますと言論報道の自由の侵害にもなってくる。そんなことはあと回しでもいい。もっと価格の問題を積極的にやってほしいと思うんです。だから、先般大臣が発表したらしいですが、ああいうものは取り消すように、あなたも担当の局長としてやってくださいよ。あれ、あなたが大臣に進言したのですか。ああいうことは取り消していただきたいと思うのです。それよりも、もっとちゃんと普及のほうをやったほうがいいですよ。この機会だから、このこともちょっと答えてください。
  40. 藤木栄

    説明員(藤木栄君) お答え申し上げます。  放送番組のモニターの問題の御質問がございましたけれども、これは、趣旨は、いろいろ番組の低俗化ということが言われているものでございますから、私どもといたしましても、一体どの程度のものかということを把握する必要があるというわけで、こういったことを予算的に要求しているという段階でございまして、まだこれ、予算がどうなるか、今後の問題でございまして、わかりませんけれども、いずれにしましても、趣旨といたしましては、郵政省としましても、一体番組の実態がどうであろうかということをまず把握したいというわけでございます。もちろん、モニター制度といたしましても、私ども自体がモニターするわけではございませんで、外部の人たちに頼んでやりたい、そういうふうなことを考えているわけでございます。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 だから、一歩運動を誤まると、たいへん言論報道の侵害になるから、やめたらいいですよ。やめたらどうですか。やり直したらどうですか。
  42. 藤木栄

    説明員(藤木栄君) お答え申し上げます。  一応、先ほども申し上げましたように、大蔵省に対する予算要求というかっこうをやっているわけでございます。また、この番組の内容自体をどうのこうのしようというようなことは全然考えておりません。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 だから、私からそういう強力な反対の意見があったと、内容をもう一回再検討しなければならぬし、やめるべきだと私が委員会で言っておったと、あなた、大臣に伝えてください。
  44. 藤木栄

    説明員(藤木栄君) そのように大臣にはお伝え申し上げます。
  45. 横山フク

    委員長横山フク君) 阿部君。
  46. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 企画庁長官に二、三お尋ねしたいと思います。  この夏場物価のほうも多少安定したかのようなしるしも見えたわけでございますけれども、秋を迎えるにつれまして、いろいろと逆に物価の高騰が始まった、そのような印象を受けております。現に、消費者物価につきましても、すでに九月においても、東京都の区部の消費者物価指数が、御案内と思いますが、前月比二・二%というような大幅な高騰を示しております。また、そのために、四十五年度上半期の消費者物価の値上がりは、前年同期に比べて五・九%、ほとんど六%になんなんとする上昇を示したわけでございます。このような事情から、政府のお考えになっているよりも物価上昇というものは、なかなかきびしいというような感じを受けております。特に昨今、秋が深まるにつれまして、それとともに物価がますます、運賃あるいはまた衣料費、食料費、軒並みに上がっているような感じがしておりますけれども、特に秋野菜がだいぶ高騰しております。御案内だと思いますが、農林省の十月の生鮮食料品の価格の見通しとしては、秋野菜を中心に、生鮮食料品が全般的に安くなります、こういうふうに、今月の一日ですか、農林省は見解を発表しましたけれども、その見解の発表と前後して、といいますか、ほとんどその発表が、天気予報と同じように、すぐ即座に違っている。といいまするのは、タマネギが昨年の二倍以上、それからキャベツは小型のものでも百円から百二十円と、非常にひどい。ついこの間、キャベツにつきましては、夏ごろは大暴落で、産地では捨てているということで、一面においてはほっとした感じがしましたけれども、これがむしろ逆になっている。実に五倍以上。それからなお、上がったものを見ますと、白菜、大根、レタスは特に上がり方がひどい。大体昨年の七割くらいから、物によっては二倍、三倍というような暴騰をしております。このようにして、酒だとかビールなんかの値上がりに伴って、これらの野菜の値上がりは、私たち国民の日常生活というものを非常に脅かしているわけでございます。このような現象に関しまして、企画庁長官としてどのようにお考えになっているか、また、この対策はおありになるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  47. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 御指摘のように、私たちも実は前々から、生鮮食料品の値上がりというのは非常に季節性の高いものであるし、また、天候気象というようなことの影響も相当免れない、特に野菜は、御存じのように、二年サイクルというような問題もある、こういうようなことで、当初の見込みを立てますときにも、もう少し野菜は——昨年の暮れからことしの正月にかけてのような、ああいう異常な天候というものはいつも続くというものでもないということで、もう少し下がり方が激しい、実はこういう期待を持っておったわけであります。もちろん、この九月は季節的にも多少上がる季節にはなるのですけれども、しかし、全体としてのベースはもう少し落ちついたところに来るものと実はわれわれも非常に期待をしておりました。また農林省においても、昨年がああいうふうな不作でもあったものですから、むしろ相当供給の増加があるのではないかというふうに年度当初から見込んでおったようでありますけれども、どうもそれが、率直に言いまして、期待はずれに終わりました。われわれもまことに残念なんでありますが、まあ、これにはいろいろな原因があろうと思いますが、何ぶんにも、現在の農業生産の置かれておる全体の条件の変動が激しい、そしてそれに対する見込み方がやはり適正を欠いていたのではないか、こういう点があります。従来よく気象条件だけを害われておりましたけれども、最近におきましては、たとえば労働力も、なかなか野菜の生産という方面に十分に集まってまいりません。そういうふうな基本的な事態に対する認識が不十分であったのではないかと私も思うのですけれども、まあこれはそれぞれ専門家が見込みを立てておったわけであります。そうした点、また一部には、多少気象等の見込み違いもあったと思うのですが、まことに期待はずれに終わっております。  これは、基本的には、生産のつかみ方というか、生産体制の不備ということが、こういう変化の激しいときにこういう結果になって出てくるのではないだろうか。こういう時代でありますから、もう少し全国的な規模において野菜の需要供給の関係を的確につかむということは、それほど私は困難ではないと思うんでありますけれども、なかなかこっちのほうの作業も思うように進んでいない。いわゆる出荷安定法ができて、もうずいぶん年がたつんであります。そういう意味においても、さらにこういう方面の対策を相当馬力をかけて進めてもらわないことには、毎年毎年こういう愚を繰り返すようなおそれが十分出てくるんじゃないか。気象条件の点は免れないとしましても、もう少し政策としてもやるべきことがたくさん残っております。特に、私は、やはり生産計画化といいますか、見通しを少なくとも的確に立てる、こういうことは一番大事なことであろうと思っております。その他いろいろと生鮮食料品につきましては打つべき対策が残されております。物価対策閣僚協議会におきましても、その提案はすでに十分になされておりますから、問題は、それをいかに実現するかということにかかっておるんでありまして、そういう点につきましては、今後さらに農林当局とも対策を練りまして、そうしてできるだけ、こういうむずかしい問題だと私も思うんですけれども、もう少し的確な判断をなし得るように、そうしてまた、それに対する適切な措置を行ない得るように、特に私、最近の事態を見まして、よけいその感を深くしております。今後もさらに農林大臣とも相談して進めたい、こう思っております。
  48. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 野菜の不足が、結局このように価格を暴騰さしていると思います。私は、根本的には、野菜に対する需要が年々非常に増加しているのに、それに対して生産の裏づけがないというようなことも、野菜が大きく暴騰する原因の一つだと思いますが、この生産について、もちろん計画的な生産が必要でございますけれども、いまいろいろ言われておりまする例の米の減反ですね。来年は二百五十万トンくらいしなきゃいかぬとか、三百万トン必要とか、いろいろ意見がございますが、いずれにしましても、休耕地というのが相当できる。これに対しては、野菜の方面にも相当活用されるような気もいたしますし、これが野菜の価格の安定というようなものに対していい影響を与えることを私ども期待しているわけですけれども、これについて長官のお考え方はいかがでしょうか。
  49. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 実は、われわれもその点には非常に期待をかけております。こういう際でありますから、米の作付反別を減らすということは、これはもう衆目の見るところ、今後の方針なんであります。この作付反別を野菜の方面にも転換する。まあ、見渡しましたところ、そう何にでも転換できるというわけでもなく、それぞれにミクロ的に見ると、それぞれの地理条件、気象条件、いろいろあると思いますが、しかし、野菜に転換できる部分がずいぶんあるんじゃないか。特にオカボが過剰になっておる際ですから、そうした地帯においては特にそうしたことが日程にのぼっていいと思います。それからまた、野菜につきましては、その生産は、水稲よりも、いわゆる基盤整備その他についてはもっと簡単にできることですから、われわれとしても大いにこれについて期待を持っておるんです。で、問題は、やはり労力の問題が基本にあると思います。この労力を確保するというようなことは、もう少しこの方面に生産当局も力を入れてもらわないと、ただ作付の余地ができたというだけでは私はなかなか進まないんじゃないかと、こういう気がいたします。それからまた、いわゆる露地栽培に向かうべきか、施設栽培に向かうべきか、そうしたような問題もあると思うんであります。最近は、施設栽培は、二毛作で行なったり、ずいぶん実績をあげている面もあるようでありますが、そうした面をもう少し推進していかなければならないというふうにも考えております。  いずれにいたしましても、おっしゃいますように、一方において、やはり何と言いましても、都市集中化の傾向はいまもってやんでおりません。したがって、都市集中化が進むということは、やはり需要が強まる。そうして、特に特定の地域に対して輸送のネックとか、その他のいろいろな困難な問題を生じつつ、やはり需要というものが強まる。そうしてしかも、消費の中身が徐々に変化していく、こういうことも無視できません。それに対して、生産の今日の状況が、そうした強まりつつある、変化しつつある需要に対して十分に機動的に対応し得る体制がどうもまだ整備されておらない。今日、農村は、ある意味においては日本経済成長の被害者だと私は思います。そういう意味におきまして、刻々と変わりつつある条件に対応していくということは、人的にもその他の面においても、いろいろと不足しがちな状況下において、非常に困難であることはよくわかるのでありますけれども、しかし、いずれにしましても、食糧の安定的供給ということがやはり国の経済の基本でありますから、そういう意味におきまして、今後一段と、そっちの方面に対して努力を重ねなければならない、そういう点についてまだまだ不十分な点がある、こういうふうに考えます。  なお、これらの点は、具体的な個々の政策につきましては、まあ経済企画庁物価問題の総括官庁でありますけれども、実は私、ほんとうは個々の問題に立ち入るということについては相当控えておったんでありますけれども、こういう問題はなかなかそうも言っておられません。さらにひとつ、関係当局とも相談しまして、この方面の行政を推進していきたい、こういうふうに考えています。
  50. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 先日、物価安定政策会議が、野菜の価格安定のために提言をいたしております。これはなかなか含蓄に富んだ対策であると私も考えておりますが、特にその中で、卸売り市場で現在やっています、せりですね、これをむしろ押えていく、やめる方向に持っていく、そうして相対取引を原則とするというようなこと、これは非常に変わった考え方だと思います。また、現在の卸売り市場流通という一元的な流通システムを多元的なものに変えていく、そうして相互競争的な場をつくっていく、これなんかは、私は物価を安定させる上に非常に大きな効果をあげるのじゃないかというふうにも考えられますが、このような野菜の暴騰を押える一つの手段として、市場改革といいますか、市場の機構を改めるということに対して、長官のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  51. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、私もこの提言を非常に心待ちしていました。実は、もっと早く出るということで、私も、もっと早く出るということを何回ももう皆さんに申し上げていたんですが、これは審議会の審議の過程の問題ですから、われわれが介入し得ることではありません。だいぶ御苦心を願って、やっとこういう提言が出たのですけれども、これでもなお、率直に言いますと、時間的な制約とか、いろいろなものがございまして、私は十分満足に思っておりません。と申しますのは、この流通問題全体から見ますと、集中的には行なわれていますけれども、まだ問題が非常に限定され過ぎているような感じを持っておりまして、また、今後もこの方面についてもう少し研究を進めていただきたいと思っていますが、一つ中心問題である、いわゆる今日における卸売り問題を中心とするむずかしい流通問題について一応の提言が行なわれまして、われわれもできるだけこれを取り上げて検討しなければならない、そういうふうに考えております。  ただ、これについては、私率直に言いまして、二つ問題がございます。  一つは、やはり限られたる取引の問題の改革ということだけで、今日のむずかしい生鮮食料品の対策というものが、これで十分に効果を発揮するかどうかと言いますと、結局、供給が不足しておるという限りにおきましては、需要に対する供給の不足という事態が激しく起こるような前提のときには、なかなかこの取引段階の改革だけでは済まない。そういう意味におきまして、私は、流通問題の取り扱い方にもある限界があるという感じはいたします。  もう一つは、この基本的な問題として、いま阿部さんからも御指摘がありました、いわゆる相対取引の増加、こういう問題につきまして、実は審議会の過程におきましても、これに対して疑問を投げかけておる節も実はあるわけであります。御存じのように、過去においていろいろとスキャンダルがありましたために、日本は、神経質なまでに、いわゆるせり中心の取引方法に固執してまいりました。そして、それが長年の慣習として固定化してまいりました。そして、今日考えてみますと、昨年度のような異常な事態の際には、今日までに固定した取引方法というものは、やはり相当非現実的な結果をもたらした。不作のときには不当に値を上げ、豊作のときには不当に値を下げるという、そうした結果をもたらしたように私は思います。そうしたわれわれの経験から、これではいけないということで、この提言にも見られますように、いわゆる相対取引の方法というものを導入いたしまして、その豊作不作によって価格の変動は免れないけれども、しかし、その中にあって、もう少し安定的な価格の形成というものは可能ではないのではないか、そういうような見地からこの提言も行なわれていると思います。これにはある程度の限界はありますけれども、そういう意味において、私はこの提言は十分検討しなければならぬ。われわれとしても、その長所を取り上げたい。諸外国においても、すでにこういう方法を採用しておる国がたくさんありますし、そして相当成功をおさめておると思います。そういうことも考えて、いろいろと議論は根本的にありますけれども、少なくとも日本の現時点においては、この方法は採用するに値する方法である、こういうふうに私は考えていいと思っています。  ただ、一番問題は、いわゆるせりという価格形成行為が卸売り商人によって今日まで担当されてきた。私的利益を追求する立場にある卸売り商人が、同時に価格形成というむずかしい問題を担当してきた。本来、この価格形成は、消費者生産者に対して対等に公平でなければならない。そうした機能をこの卸売り商人に与えてきた。これをいかにして変革をするかという基本的なむずかしい問題がございます。そして、これは実は、市場の管理権というものが自治体にもあるわけでありますから、問題を、政府だけでなく、地方自治体にもよほどこれに協力してやってもらわないと実現できません。しかし、せっかくこういう方法が出てきたんですから、ひとつ何とか推進をしてまいりたい。ただ、問題は、先ほどの議論にも返るわけでありますけれど、それでは、今日まで単純なるコミッションマーチャントとしてやってきた、そうした卸売り商の諸君に対して、今後は、ほんとうの意味での取引主体として、いわゆるもっと実力のある立場を持たせる点が出てくるわけであります。そこいらの点をどういうふうにやるか。そしてまた、このいわゆるせりと、それから相対売買とのウェートの置き方、これの併用のしかたについては、いろいろと検討しなければならない。いずれにしましても、私はこの方向を十分尊重しまして、関係当局とも相談して、至急にやってまいりたい。  で、たまたま、御存じのように、卸売り市場法案がすでに継続審議になっております。これはこの提言も十分に入ってはおりませんけれども、相当部分が入っております。でありますから、私は、さしあたって、この法律をまず成立さす、そして、その運用面においてこの提言が実現されるような方向でひとついろいろ検討を進めてまいりたい、こういう気持ちでおります。
  52. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 その提言が、長官のおっしゃるように実現されることを期待しております。  ちょっと話題を変えますが、先月、清酒が一斉に値上げになりまして、それで私ども非常にびっくりしたわけでございますが、次いで、私どもちょっとおそれていましたビールの問題これは、予想されたとおり、突然朝日麦酒によって値上げが発表されたのであります。非常に私ども残念に思っております。先ほど鈴木委員からこの点についてお話がありましたけれども、どうも会社側の値上げの理由というのは、はっきりしません。先ほど長官のおっしゃられたとおりですけど、ビールの生産費や人件費、包装費、それから輸送費の上昇で、一本、この五年間で五円上がった。これはわかりますけれども、もう一つの理由としては、卸・小売り業界から、人件費上昇でマージンの引き上げ要求がある、まあ要するに、下から突き上げられた、私どもとしては上げたくなかった、こういうような言い方をしておりますけれども、これも私、多少理解できないこともないんですけれども、やっぱり値上げの一番の大きな理由は、三番目に会社があげている、前期の決算は税引き後利益は九億五千万円だったが、この中で六億円は不動産売却費であって、今度値上げをしないと赤字に転落しそうであるという理由らしい。要するに、会社の経理、これが私は本心じゃないかと思っております。  ですから、その額面どおり受け取りましても、しかし、現実に朝日麦酒は一割三分の高率配当をしております。この高率配当が維持できないというようなことが値上げの大きな理由だと思いますけれども、この朝日麦酒が利益が減るという原因の一つとして、私はもう一つ考えられるのは、結局、シェアが減ってきた、御存じのように、朝日麦酒は相当広いシェアを持っておりましたけれども、麒麟その他に押されて、いま二〇%ぐらいですか、になった。これが一つの、利益が減ってきたといいましょうか、懸念されるところじゃないかと思いますが、それならば、私らがふしぎに思うのは、値上げするということは朝日がかってにやったとすれば、そのビールが売れなくなるのは目に見えてわかる。ですから、市場を開拓するとかシェアをふやすのは、値上げどころか値下げすべきだ。それが逆に値上げしたというのは私どもふしぎにたえないわけでございまして、結局、これが何といいましょうか、いわゆるプライスリーダーに自分がなったんだというようなことを想像せざるを得ないわけであります。  結局、この今度の値上げ問題も、ただ朝日が単独にやったわけじゃない、自分の判断によってやったんじゃなくて、ある程度のやはり価格に対する協定というようなものがあったと、こういうふうに思うわけでございますが、これはあくまで想像であって、現実に証拠がないわけでございますから。しかし、いろいろな、いま申し上げたような理由からしても、そういった協議があって、おそらく他の会社もすぐ追随してくるという見込みで値上げに踏み切ったんじゃないかと、こういうふうに思うわけでございますが、そうすると、この値上げ自体が結局管理価格を形成している。結局、ビール関係生産者四社が管理価格をつくっている。このビールぐらい寡占状態になっているのはありませんから、寡占、独占の強みでもって、こういうふうなことを断行したんじゃないかと思われるわけでありますが、これにつきましては、先般、一昨年ですか、ビールの十円値上げのときにも、当時の宮澤長官がだいぶこれを阻止したと聞いております。今回の値上げについても、長官、物価担当の立場から配慮されるということであります。また、その行動もなさっていると思いますけれども、しかし、前回もそうでしたが、今後も何か、ほかの会社がくっついて上がってもやむを得ないんだというようなムードがあるような気がいたします。そうすると、結局、この寡占状態をつくったのは政府自体も認めざるを得ない。やむを得ない、極端に言えば。ビール会社が幾ら、十円なんという幅じゃなくて、極端に言えば、二十円、三十円上げてもどうにもならないんだ……。これは私どもやはり物価の上に、ことにはビールのように広く国民から愛用されているこの品物に対して、放置するということは決して望ましいことじゃないと思いますが、この辺についての長官の考え方をお伺いしたいと思います。
  53. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、われわれも、おっしゃるような点を一番心配しておるわけです。まあ、一物一価といいますか、値段は一本なんだという式で押してまいりますと、とにかく他の社もこれに追随して値上げしてくるかもしれぬ。そしてまた、他の社も、朝日ほどではないけれども、やはり人件費その他の点から見て、やはり苦しいことには変わりはないだろう、こういうような論理で、もし値上げをいたしますると、いま御指摘のような問題になります。価格形成自体は、これは各企業が自発的にきめるのでございますけれども、結局、私は、ビール業界全体について、みずからを将来自繩自縛におちいるような方向に持っていくのではないかと、むしろ思っております。まあ、公取委員会は別に目下これをいわゆるやみのプライスリーディングである、こういうふうには考えておらないようでございますが、しかし、いま御指摘のような点がありますから、そうした点が今後議論されるようになると思います。どうしてもこの方面の業界は長い間大蔵省の保護政策のもとに育ってきたわけでありますから、そうした意味においても、やはりとかくそうした甘える気持ちが多い。これは私はどうもぬぐい切れない点があるんじゃないか、こういう際にそうした点をもっときびしく考えなければならぬわけでありまして、高率配当を維持するために値上げをするとか、あるいは当然のことだから、他社が上げたんだから、われわれも上げるんだ、こういう態度はやっぱり自滅的な行為じゃないか。御指摘のように、本来値を下げなければならぬところを値を上げるのでありますから、こうしたことが続くのでは限界がある、こういうふうに私も考えておりますが、いずれにしましても、今後の点も十分監視をしまして、この相談を国税庁としなければならない、こういうふうに考えております。
  54. 横山フク

    委員長横山フク君) 瀬谷君。
  55. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私鉄運賃の値上げに関連をして若干質問をしたいと思います。  この間私鉄の運賃が上がったばかりだし、この運賃の値上げというのは、輸送力を増強したり、あるいは安全を確保するということが一つの目標になっておるんじゃないかという気がするのでありますけれども、先般の委員会のときは、上げるんだか上げないんだか、企画庁長官も運輸大臣も、はなはだ答弁はあいまいだったわけです。検討するということだけだったわけです。全然見当がつかないでいたわけです、前回は。今回は、もうすでに上がってしまった。ところが、たまたま値上げが行なわれた直後に、東武鉄道で大きな事故がありました。この東武鉄道の事故は、いろいろな報道がありますけれども、東武に限らないと思うんですよ。こういう事故の危険性というのは、平面交差をしている鉄道は国鉄にもあるし、東武以外にも、どこの鉄道にも平面交差はまだたくさん残っているわけです。おまけに、電車のスピードが早くなる、自動車の通行が多くなるということになれば、これだけでもって事故の確率はそれだけ高くなるわけです。だから、この間東武で事故が起こったから、東武のほうで恐縮をすればそれでもう事故は起きないというものじゃないと思うんです。いつ何時また始まるかもしれぬ。これはやはり重要な政治問題だと思うのです。一体、政府としてはどのように考えておるのか、まず、東武鉄道の事故の概況、その原因、それと、今度は、この間の東武のような場合は、死傷者の補償金とか、見舞い金とか、そういうものは一体どういうことになっているか。たとえば、過失の原因が鉄道にある場合には鉄道の会社が全部負担をするということになると思うのですけれども、原因があのダンプカーにあるということが明白になった場合、一体負担能力があるかないかというと、おそらく負担能力が、ダンプカーの運転手の場合、あまりないと思う。そうすると、死んだ人や、けがした人は何百人、自賠責とか、いろいろ法律はありますけれども、こういう場合に役に立つような法的な措置というものは考慮されているのかどうか、そういうこともあわせてお伺いしたいと思います。
  56. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、これは目下運輸省で検討しておる問題でございますから、私からいますぐに、はっきりしたことを申し上げるまでの段階じゃないと思いますが、もちろん、これは常識的に見まして、伝えられるように、ダンプカーの運転手が直接の責任者ではございましょう。しかしながら、同時に、間接的に、これの工事をしてまいった公団側の責任もございましょうし、あるいはまた、私鉄の踏切につきましては、かねがね、いわゆる無人踏切ということで、これを早急に改善するということでスケジュールがすでに組まれておったということでありますけれども、しかし、残念ながら、それは間に合わないで事故が起こったという意味におきまして、やはり現実にはこの無人踏切は存在していたわけで、特にその踏切の近所でああした特殊な突貫工事というものが行なわれて、そうして、近所の人々に言わせますれば、やはり事故の発生する可能性というものは非常に高い雰囲気であったというようなことがあるわけでありますから、今後、一面において、法律的な責任がどの程度の範囲において断定されるものか、さらには、法律的な責任はともかくといたしましても、やはり道徳的な責任、社会的な責任、そうしたものがやはりどの程度考えられるか、これらの点は、ほんとうにもう少し直接関係当局が十分に事態を究明いたしまして断定しなければならない問題だと思います。  個々の問題としてはそうだと思うのですが、まあ全体としまして、いま御指摘のありましたように、とにかく一刻も早くこうしたことの起こらないように対策を進めていく。まあ、従来もスケジュールがあったと申しますけれども、やはり、まだまだ個所数の多い事態を考えてみますると、なまぬるいという感じがいたします。これらについて、やはり早急に安全対策をやっていかなければならない。そういう意味におきまして、実は、運輸省におきましても、今度の私鉄値上げともからみまして、明年におけるところのこの方面に対する投資をできるだけ積極的に進めていくという意味におきまして、大蔵省に対しても開銀融資その他もできるだけ増額をはかるように、その方向でもってひとつ十分考慮してほしい、こういう申し入れを行なっております。まあ、これは予算のときに、できるだけその方向で実現をしなければならないと思っておりますが、そうした点で、いわゆる、もうそうした事故の起こらないような対策を、できるだけ積極的に、できるだけすみやかに実施する、こういう方向で、さらにこの際もう一回この方面の政策について再検討しなければならぬ、こういうふうに考えます。
  57. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ちょっと長官、もう一問だけお伺いしたいのですが、国鉄の経営も、相当深刻な問題になってきております。私鉄の経営にしても、事情は似てると思うんです。ただ、私鉄の場合は、関連事業等ができるということはあるわけですけれども、本質的には、私鉄であっても、レールの利益でもってレールを確保するという方向をとるのがたてまえであろうと思うんですね。そうすると、最近は、私鉄が新線を建設するという話はほとんど聞かない。つまり、投資をしても引き合わないからやらないんだと。ということは、保安の面においてもなるべく手抜きをしようということになるおそれがある。だから、運賃値上げをしてみたところで、その運賃値上げが、はたして安全確保のために、あるいは輸送力増強のために使われるかどうかということに疑問が持たれる。そうなると、やはり国鉄と同じように、国として、政府として、この大衆の運搬機関である鉄道に対してどういうふうに助成するかということを考える必要が出てくると思う。これは、ほかの面には、たとえば利息のつかない金を貸して、そして埠頭の建設やらなにやらもやらせるようになってるんですから、陸上輸送の面に、特に公害でもって自動車輸送が限界に来たということを考えるならば、これから先、地下鉄であるとか、あるいは高架鉄道であるとか、こういうふうに平面交差をしない鉄道をたくさん指導してつくらせなきゃいかぬ、つまり、平面交差を立体交差にさせるということをやらなきゃいかぬ。その場合の措置というものですね。税制の面においても、あるいはまあいろいろ、たとえば国鉄で言えば、予算上の面においても考慮しなきゃできないと思うんですよ。だから、そういう面は、政府のほうで、根本的に、国鉄も私鉄もあわせて、交通機関に対する政府政策として考える必要があると思うんです。その点は、来年度予算において政府でどのようにお考えになるつもりなのか。経済企画庁としても、これは運賃の問題とあわせて非常に重要な問題であると思うので、その点をひとつお伺いしておきたい。
  58. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、率直に言いまして、なかなか私鉄の経理も、先般見まして、苦しい面もあります。私鉄だけ、いわゆる鉄道軌道の経営の経理だけをとって見ますと、苦しい面もあります。したがって、私鉄——鉄道軌道経営だけをやってる会社は非常に苦しいと思います。まあ、別に不動産とかその他の業を営んでおりまして、できるだけ全体として判断をしていいと思いますけれども、そういう意味において、私は会社によってまちまちだと思うんです。まあ、こういう経営のあり方がいいのか、いつまでも他の業態の所得というものを当てにしてやっていく、そういう経営がどの程度続くものか、そこいらのところは運輸当局においても目下十分検討していると思います。今度値上げをいたしまして、われわれも、これはいわゆる路線の延長につながると、路線の延長ということは結局住宅地の供給と住宅の増加につながる、そういう期待を持って、このいわゆる路線の延長、増強というようなものをわれわれも考えに入れて、そして、そういうことを前提にしている私鉄値上げでありますからして、一面において、安全の問題と両方あわせて、ぜひこれを実行してもらわなきゃならぬ。これらについては、監督官庁である運輸省も、十分その態勢でもって今後私鉄の経営に臨むことと思います。  で、いま御指摘の、いわゆる長期的な展望のもとに今後私鉄の経営をどうするかということになりますと、いま申し上げたように、やはりいろいろと、今日、私鉄経営の無理というような点も十分考え、今後対策を講じなきゃなりません。まあ、私が申し上げました開銀融資の増額というか、財政投融資の増額というようなことも、やはりその面を十分に考えてのことであります。これをどの程度のテンポで、どの程度の規模で行なうか、これら具体的な問題になりますと、今後運輸当局の検討を十分待ちたいと思いますし、企画庁としても、今後十分これに関心を持って相談にあずかりたい、こう思っております。
  59. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、運輸省のほらに聞きたいと思うのですがね。私鉄の値上げ、あるいは国鉄の値上げというのは、これは利用者にとって選択の余地がないんですね。ビールの値上げならば、一社がビールを値上げをしただけで、あわ食うことはないわけだから、飲まなくたっていいんだし、ほかのビールを飲んだっていいのだということになるが、鉄道の場合は、それ以外に利用するという道が、大多数の利用者の場合はないわけですから、そうすると、たよりにして乗っている電車がひっくり返って、まごまごすると命を落とすということは、非常に重大な問題です。なくなった方にほんとうに気の毒だと思うのですけれども、特にこれは、この間の東武だけでなく、前にもああいう例は何回もありましたけれども、ああいうような、ダンプカーとぶつかって電車がひっくり返って死傷者が出たという場合の、死傷者に対する補償といったようなことと、事故の報告を、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  60. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 事故の概況並びに原因等につきまして若干申し上げておきます。  九日の二十時十七分ごろでございますが、東武鉄道の伊勢崎線の鷲宮——花崎間の第三種踏切道におきまして、浅草発伊勢崎行き準急列車にダンプカーが衝突いたしました。このため、死亡五名、重傷五十一名、軽傷百一名、計百五十七名という非常に多くの死傷者を生じましたことはまことに遺憾でございまして、死亡なされた方々に対しましては心から哀悼の意を表するところでございます。事故の原因並びに内容につきまして、直ちに本省並びに東京陸運局から係官を派遣いたしまして、詳細に調査をいたしましたところ、現段階調査段階におきましては、まず、踏切道自体の欠陥というようなものは認められません。原因は、ダンプカーの警報無視による直前横断というもののように存じます。  踏切道の安全に対しましては、鉄道の安全対策の大きな問題でございまして、三十六年に、このために踏切道改良促進法を制定いたしまして、当時増加傾向にございました踏切事故の防止というものに鋭意つとめてまいったのでございますが、幸い、その効果が着々とあらわれまして、全体的な傾向といたしましては踏切事故というものは減少し、死傷者も減少をしておるという傾向でございます。ただ、最近におきまして、大型の自動車、特にダンプカー等の警報無視による事故というものが増大をいたしまして、したがいまして、これに対しましては、減少傾向を示しましたけれども、従来の対策では不十分であるというふうに私ども考えておりまして、今後抜本的な対策といたしましては、立体交差化の促進並びに踏切自体の警報機あるいは遮断機等の整備ということでございますが、抜本的には立体交差化の促進でございますが、そういったような方向をできるだけ進めてまいるということが必要であると存ずるところでございまして、この点につきまして、今後ともさらに強力に推進すべく考えております。  なお、事故によりまする死傷者に対しまする補償問題でございますが、もちろん、これにつきましては十分な補償をいたさなければならぬわけでございますが、鉄道側が責任の場合には、もちろん十分な補償をいたすわけでございますが、何ぶんにも事故の原因が鉄道側にないような場合につきまして、これに対しまして適切なお見舞いを申し上げることはもちろんでございますけれども、補償につきましては、今後具体的な問題につきまして御相談をしてまいらなければならぬ、このように考えております。
  61. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 具体的な問題について、どの程度になるのか。たとえば、同じ事故でも、鶴見事故だとか、あるいは飛行機が墜落した事故だとか、こういう場合の事故の場合には、なくなった人には、かなりまとまったお金が出ていると思うのです。ところが、こういう、相手がダンプカーといったような場合には相手側に補償能力がないということで、それきりになる。死んだ人は全く運が悪かったで済まされてしまうということになるおそれがあると思うのですね。こういう場合、前例等も特に東武の場合はあるのですけれども、どういうことになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  62. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 鉄道側に事故があります場合、もちろん、鉄道会社は、多くの場合、賠償能力がございますから、これに対しまして完ぺきなる賠償をいたすということでございまして、その点は、従来そのように私どもやっておるというふうに承知をいたしております。ただ、問題は、鉄道側に事故がないような場合でございまして、この場合に、鉄道自体が完ぺきな補償をするというわけにはいかぬわけでございまして、これに対しましては、適切なお見舞いはもちろんいたすわけでございますが、事故の補償等につきましては、自動車損害賠償保障法等によるもののほかは、具体的に自動車運送事業者との協議等によりまして具体的にきまってまいるということになろかと思います。
  63. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それで、具体的にどの程度になっているのか。前回もそういう例がありましたけれども、その点をお伺いしたいと思うのです。
  64. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 申しわけございませんが、ただいまちょっと資料を持ち合わせてございません。
  65. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連して。  山口さん、鉄道側に、原因というか、責任がないというふうなお話なんですけれども、あそこは遮断機というものが、何か、ないように聞いているのですね。しかも、トラックが相当通る。だから、遮断機をおろさなければならないという基準があるわけでしょう。こういうところへ遮断機を置かなければならない、そういう基準には、そこは適合しないというところだったのでしょうか。それでなくても、相当に通行トラックが多いということを、テレビで言うのを見ておりましたが、そうであれば、少なくとも安全対策上、そこに遮断機をおろすということは、私は当然の、やっぱり会社側の責任であったと思うのです。それをサボっておったのじゃないでしょうか。もう一つは、そこを通った車が白ナンバーで、もぐりのやみトラックだということを報道で聞きましたが、問題は、公団でしょう。道路公団は来てないけれども、公団がそういうやみトラックを雇って輸送をしているわけです。そういうところにも、これが国の事業だけに非常に疑問を持っています。こういう点は、一体、瀬谷委員の問題と関連して、もう少しはっきりしてもらわないと、責任がただ鉄道側にないといっても、そうはいかぬ。ですから、そこをはっきりしてもらいたいと思います。
  66. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) この踏切は、いわゆる三種踏切でございまして、警報機がついている踏切でございます。したがいまして、警報機に従ってさえいれば事故は発生をしないということでございまして、今回の場合も、警報無視ということが原因であろうと推察されているところでございます。  なお、この踏切につきましては、踏切道改良促進法という法律に基づきまして、実は四十六年の三月までに一種化すべく踏切道の指定をいたしておりまして、そういった方向で現在事業者が踏切を整備の準備をいたしております。
  67. 鈴木強

    鈴木強君 警報機をつけて遮断機をつけているというのもあるでしょう。そういう、警報機が鳴って、そうして遮断機がおりる、これが一番完ぺきなんでしょう。確かに信号が鳴っているのにひょっと飛び出したりするのがいます。あれは確かにいけないでしょうけれども、信号機があり、なお遮断機を置いておくというのは、そういう人たちも含めて完全に安全を確保しようということなんですから、遮断機をおろすということはやはり必要なんです。特に最近の砂利トラなんていうのは、全く走る凶器もいいところで、とんでもない無謀運転をやっています。センターラインをオーバーしてやったり。ですから、それはそれとして、警察当局なり取り締まりの面で十分にしていただくと同時に、まあいま交通安全週間——もう過ぎたのですか、そういう、要するに運転手自体が交通規則を守るという、そういうことにもあると思いますけれども、やはり、なぜ遮断機をおろすようにしなかったか。それが近く、一種というのですか、そういうふうに指定されるようになっておったのですか。ですから、それであれば、特に東北道の建設に伴なって相当に輸送量が多いのですから、そういうことをなぜ親切に、遮断機をつけてやらなかったのですか。そういう点は手落ちじゃないですか。
  68. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) ただいま申しましたように、この踏切は三種踏切といいまして、警報機だけがついている踏切でございます。従来、この踏切につきましては、列車回数も比較的少ないし、それから車両も、通過両数も比較的少ないわけでございますので、従来それで大体いいだろうということであったわけでございますが、最近におきまする通行量の増大ということに関連しまして、ことしの二月に踏切道改良促進法の指定をいたしまして、四十六年三月までに踏切道の改良、一種化といいまして、つまり遮断機をつけるということに指定をいたしまして、それに従って会社としては準備をいたしておる、こういうことでございます。
  69. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今度の事故の場合、ダンプカーは、東北自動車道を建設するためにダンプカーが踏切内に走っておったというわけなんだそうですが、そうすると、そのダンプカーそのものの運転手なり車が、下請のまた下請であろうとどうであろうと、目的というのは東北自動車道建設のために動いておったダンプカーである。それが踏切でぶつかってああいう事故を起こしたということになるわけですけれども、ダンプカーがどういう労働条件で働いておろうとも、それは、無謀運転をしておったということであれば、無謀運転をするようなノルマが課せられておったものかどうか、そういったようなことまでさかのぼって追及をしてみる必要があるのじゃないかという気がするし、特にそれは政府としても全然関知したことじゃないといって済ますわけにいかないのじゃないかという気がするのです、この事故というものの背景を考えてみても。だから、そういう監督という点は一体どういうふうになっているのか、その点もあわせてお伺いしたいと思うのです。
  70. 小林正興

    説明員(小林正興君) ダンプカーに対します法規制は、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」という法律によりまして、届け出の規制があるわけでございます。ダンプカーを使用する者は、この法律によって、あらかじめ届け出をしておきます。このダンプカーが今回のような交通事故を引き起こしたというような場合には、法律上一定の要件がございますが、たとえば、飲酒運転、居眠り運転、引き逃げ等、そういった場合には、警察においてそういった事実が明らかになりまと、陸運局に通報されます。  また、ただいま先生の御指摘の労働関係でございますが、これにつきましては、労働基準法に定める規定に違反しておるかどうかということにつきまして、労働基準局長から、事件を調査した結果、陸運局に通報し、やはり問題がございますれば、その際に聴聞等の一定の所定の手続を経た上で、ダンプカーの使用の制限あるいは禁止ということをいたすたてまえになっております。本件に関しては、いずれそういった関係の証拠が明らかになりますれば、いま申し上げましたような線で何らかの処置がとられるかと思います。
  71. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、トラックがやみであったといった場合に、これは一体どういうことになるのか。監督官庁として手が届かないのかどうか。そういう場合、どうなんですか。
  72. 小林正興

    説明員(小林正興君) ダンプカーについての法規制はただいま申し上げました規制法がございまして、これは、ダンプの事業の特殊性、つまり単なる荷物を運賃を取って運送するという一般のトラック事業というようなものと多分に業務の実態が異なっているわけです。砂利、土砂等を直接採取して、そして運ぶというようなことで、いわば一般の商品価値のある荷物を運ぶというような場合と若干趣を異にしておりますので、ダンプカーというものの特殊性にかんがみて特別措置法ができておるわけでございます。ただいま御指摘の、やみの運送ではないかというような問題は、おそらく道路運送法に定めます、運賃を取っていわゆる運送事業をやっているかどうかというようなことでございますが、一般的に、こういった建材業は、運賃とその他作業がほとんど一体となって行なわれる場合が多いわけでございます。したがいまして、道路運送法上の問題は、運賃を取ってそしてトラック運送事業を免許を持たないでやっておるというような場合に、これは道路運送法違反になるということがございます。この場合、建材業としてのダンプ規制法による届け出がなされておりますので、そういった関係については今後調査してみないと、いかんとも申し上げられないと思います。
  73. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかし、どうあろうとも、たとえばダンプカーがどういう雇用関係であったとか、あるいはどういう契約であったとか、やみであったかどうかとか、そういうことがどうあろうとも、事故が起こったことは事実です。そうすると、この種の事故を根絶をするためにはこれからどうしたらいいかということを考えなければならぬ。その場合に、私鉄のほうじゃ、おれのほうの責任じゃない、ダンプが悪いのだと。それから片っ方、建設省のほうは、東北自動車道の建設のためにダンプを使っておったけれども、あれは自分のほうで直接契約したわけじゃないから知らぬと、こう言ったり、それから労働省は労働省で、労働条件の問題はそういう問題とは別々に調べるというようなことをやっておる。そうすると、総合的にこの種の踏切事故を根絶するための対策といったようなものは、なかなか、ばらばらになって、立たないような気がするのですね。だから、こういう問題は、建設省も関係しておるだろうし、運輸省も関係しておるだろうし、労働省も関係しておるだろうけれども、私鉄の運賃の値上げは、一般の国民にとっては、運賃は値上げになった、しかし事故はちっとも減らないということになると、利用者としては全く割り切れないものが残ると思うのです。だから、この種の問題は、やはり運輸省が中心になって、関係各官庁と連絡をとって、そして事故を根絶をするための根本対策というものを立てていく必要があるんじゃないかという気がするのですがね。その点はどうですか。
  74. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) まことに先生のお話はごもっともでございまして、私どもも、そのようにしなければいかぬと考えております。それで、実は、踏切問題というのは非常にむずかしい問題で、鉄道と道路側、自動車側というものとの両面からこれを規制をし、いろいろ手を打っていかなければならぬということでございまして、その意味でも、関係する省庁が非常に広範にわたるわけでございます。そこで、運輸省といたしましても、この踏切道の総合対策というものを、先般申し上げました昭和三十六年度の踏切道改良促進法以来手をつけてまいっておるわけでございますが、実は、こういった最近におきまする事故の増大にかんがみまして、さらに来年度から抜本的な方策をひとつ打ち立てていこうじゃないかということで、踏切道総合対策を立てまして、現在各省庁といろいろ相談を申し上げておりまして、そうして立体交差化を促進することによりまして抜本的に踏切道の安全を高めていく、さらに、保安設備というものを強化するというようなことによりまして事故を少なくする、さらに道路側、自動車側につきまして、これに対する取り締まりの強化あるいは交通規制の強化あるいは整理統合というようなことによりまして事故を少なくしていく、その他各般の施策をとってまいりたい、このように考えまして、先生御指摘のように、各省を全部ひっくるめた統一的な方策というものを立てていくべく現在立案中でございます。
  75. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今回の票故に関連をした問題等について、あまりまだはっきりしない点があるようですけれども、しかし、先ほども申し上げたように、いまのように電車がスピードアップされて、踏切を通る自動車が多くなったということになれば、この種の事故の危険性というものはあとを断たないわけですから、これはやはり総合的に安全の面で対策を立てる必要があると私は思うし、急がなければならぬと思う。  そこで、今度は私鉄の運賃の問題に入りますけれども……。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連して。運賃に入るそうですから、その前に。  鉄監局長ね、いま私はできることだと思いますからやっていただきたいのは、一種踏切にするのが来年の、四十六年の三月と言いましたね。そんなことを言わないで、これはもう直ちにやるように、ひとつ実施時期を早めて私鉄に命令してくださいよ。そうしなければ実情と合いませんからね。もうさっとやるようにしてください。はっきりここでひとつ約束してください。
  77. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 実は、踏切の工事でございますが、これは当然電気的ないろいろな設備上の問題がございまして、それに対する設計等をいたした上で工事をいたさなければいかぬというようなことがございますので、四十六年三月までに完成すべしという一応の命令をいたしておりますが、ただいま先生の御指摘のように、これはできるだけ早く完成させる必要があると思いますので、私ども督促をいたしまして、これを早期に完成させるようにいたしたいと思います。
  78. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私鉄経営者の感覚の問題が一つあるのですけれども、これは「京成ライン」といって、京成電鉄がPRのパンフレットをつくって、そして一般の乗降客に配布をしているというものだそうです。ところが、このパンフレットの中に、「通勤者のための運賃論」というのが入っておりまして、運賃の抑制で得をするのは大都市の企業だけだ、運賃を上げなければだめなんだということを言わんとしているわけです。しかし、この中を見ると、非常に一方的で、われわれとしても納得しがたいものがあるんです。「運賃をおさえることは、ほんとうは国民の利益を守ることではなく、大都市の勤労者を、通勤難の中に置き去りにし、通勤者の苦労のうえに座り込んで「物価対策をやりました」という顔をすることです。」と、こういうことですよね。こういうことを書いてあります。そうすると、経済企画庁長官が先月あるいは先々月の委員会等でもって、私鉄運賃の値上げを押えているということを言ったことは、この京成のほうによれば、通勤者の苦労の上にすわり込んで、物価対策をやりましたという顔をしているということになってしまうわけです。その面では、企画庁長官あるいは運輸大臣等に対する皮肉もここには出ているわけです。それからさらに許しがたいのは、運賃値上げの公聴会といったような問題に触れて、この公聴会は、「団地の自治会の役員や、主婦代表という顔をした婦人やらが、定期代の値上げは反対だ、と叫んでいます。こういう人たちも通勤難とは関係がなさそうです。野党の代議士と同じく「運賃値上げ反対」ととなえていれば、その人達の地位と収入は確保される、ということなのでしょう。」、こういうことを書いてあるわけですね。公聴会なんかで反対意見を述べるやつは、通勤難とは関係がなさそうな連中で、ちょっとした値上げ反対と言っておれば地位と収入が確保されると、非常に不適当なことを言っているわけですね。これじゃ公聴会なんかやる必要ないと言っているのとおんなじですよ。ルールに従って公聴会を開いているんだから、その公聴会で、団地の役員であろうと主婦代表であろうと、そういう人たちが出てきてしゃべったことに対しては、それはしろうとだからいろんな一方的なことを言うかもしれないけれども、謙虚に耳を傾けるという態度が私は必要だろうと思うんです。いわんや、野党の代議士も、通勤難とは縁がないから、自動車の排気ガスがどうだとか、ベトナムがどうだとか言うが、通勤輸送については値上げ反対とお題目のように唱えているだけですと、こういう断定をしているわけです。これは実に許しがたいことだと思うんですね。しかも、これが私鉄経営者の意向を代表しているといったようなことまで、何日か前の新聞には弁護する人は書いておるわけです。こういうセンスでもって私鉄の経営をやっておるということになると、これから先、はたして利用者の安全とサービスの向上ということが期待できるのかどうかと、たいへんわれわれとしても不安に思うわけです。こういうものを私鉄の経営者が刷りものにして乗降客に配って、てんとして恥じないといったようなことを監督官庁として一体黙って見ておっていいものかどうか。私は、京成に対しては十分に注意を喚起をしなきゃならないし、あるいは釈明を求めなきゃならぬと思う。そういう点で、監督官庁としての私鉄に対する監視といいますか、指導といいますか、そういう面で、一体この問題をどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。
  79. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) ただいま先生御指摘のございました京成電鉄のPR資料でございますが、その中に、御指摘のような、「通勤者のための運賃論」と称しまして、いろいろな内容のことが書いてございます。で、私ども、まあこの種のPR資料その他私鉄が刊行いたしまする資料につきまして、これを一々統制をしたり、あるいは検閲をしたりというようなことはすべきではないことであるというように私どもは基本的には実は考えております。ただ、先生御指摘のように、この中の論文と申しますか、PRの内容は、一部の個人の方が、職員である方が書かれたものでございますが、内容としては、かなり不穏当な点があるということでございまして、また、これが会社のPR資料というふうに発行されている以上は、個人が表現をしたといたしましても、会社にそういう責任がないということは決して言えないものであろうと思います。したがいまして、私どもこの内容を拝見いたしまして、これは相当問題であるということでございまして、さっそくその責任者を呼びまして、今後このようなことのないようにというように十分に注意をいたしました。会社といたしましても、今後これに対しては十分注意をするということでございます。なお、未配布のものにつきましては、その配布を取りやめさしたというような措置をとったわけでございますが、今後とも会社を指導いたしまして、PRにつきましても十分戒心をするようにさせたいと思います。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もう一つ問題にしなければならぬのは、これが正直な私鉄経営者の感覚であるというふうにわれわれが見れば、これから先、監督官庁としてもかなり気をつけなければならぬと思うことが一つあるわけです。「私鉄は、私企業として鉄道事業を担当しています。赤字の鉄道部門に金をかける義務はありません。まして、不動産業の利益を鉄道部門の赤字の穴うめにあてる義務などありません。」と、こういうように断定しているわけです。さらに、「日本が世界の経済大国になり、国民所得の向上が世界の注目をあびているのに、大都市勤労者の通勤条件が改善されないのはだれの責任なのでしょうか。少なくとも、私鉄にはその責任はないようにみえます。」、こういうように言っております。つまり、私鉄は運賃は上げるけれども、運賃を上げてもらっても大都市勤労者の通勤条件を改善をする責任はないと、こういうように言っているわけです。こうなりますと、運賃を上げたということは私鉄の内部のそろばん勘定の問題であって、これから先も通勤条件を緩和するという意思はございませんと、あるいはそういう責任はないのですということを断わっているようにわれわれには聞き取れるわけです。これは非常な問題だと思うのです。表向きは、運賃の値上げというのは通勤輸送の緩和を含めて輸送力の増強にある、安全の確保にある、こういうふうに言っておりながら、内面的には、私鉄には通勤条件を改善をする責任はないのだと、赤字に対して、たとえ不動産業の利益があったとしても、赤字の穴埋めに充てる義務はないというふうに断言しているわけですね。こんなことでは、幾ら運賃を上げてみても、私鉄には、これから先利用者のためを考える意思はないというふうに私どもには受け取れるわけなんです。この記事の細部について一々とやかく言うつもりはありませんけれども、この思想というものはまことに不穏当じゃ、ないか。こういうことで、こういう考え方の経営者に私鉄の企業をまかしておいていいものかどうか、大衆の足をまかしていいものかどうか、こういう疑問が出てくる。だから、その点は、私は、監督官庁としては、単に文章が不穏当であった、野党の代議士云々ということを書いておったのがいいとか悪いとか、そんなことじゃないと思う。その根本的な考え方について強くこれは注意を喚起をすると同時に、考え方を改めさせなければならぬ、経営者の考え方を改めさせなければならぬと思うのでありますが、その点はどうですか。
  81. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) ただいま先生御指摘のように、この文章の中には、赤字の鉄道部門に金をかける義務はないとか、特に不動産業の利益を鉄道部門の赤字の穴埋めに充てる義務はないとか、いろいろそういうことが書いてございますが、この文章は、私どものその後調べました範囲では、もちろん運賃改定より前に書かれたものでございますし、また、この書いた人も一職員でございます。しかしながら、私ども、この考え方自体は基本的に実はけしからぬ、不穏当というよりも、もっとけしからぬことであるというふうに考えているわけでございます。鉄道事業は免許事業でございまして、そうしてその免許事業であるゆえんのものは、その事業の公益的な性格という点から、国民の福祉の向上ということを第一義的に考えて仕事をしていただかなければならぬということでございまして、そうしてそのためには、必要な輸送力の増強をし、さらに必要な運転保安の確保のための工事をしていただかなければならぬということであろうか思ういわけでございまして、したがいまして、私どもといたしましては、鉄道部門がたとえ赤字であろうとも、必要な輸送力増強工事というものをぜひやっていただかなければならぬ、こういう趣旨で、先般の運賃値上げに関連いたしまして、輸送力増強並びに運転保安工事の指示をいたしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、その指示に従った完全な工事の実施ということをぜひやってもらうということを考えておるわけでございまして、この点は、何としても、こういう考え方をもし持っているものがありますとすれば、これは十分直してもらいまして、完全な工事を行なわせるように指導したい、このように考えております。
  82. 横山フク

    委員長横山フク君) 山口鉄監局長、あなたの答弁の中に、一個人が書いたということがさっきも出たし、いまも出ましたけれども、いやしくも印刷物にし、外部に出た限りにおいては、その会社の個人、一個人が書いたということにならないのよ。京成電鉄が書いたということになるのですから、そういう考え方で答弁されると、答弁が責任回避的な答弁だけになりますから、もう少し責任のある答弁のしかたをしてください。
  83. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) ただいま、一個人が書いたということで、まさに先生御指摘のようなことであろうかと思いますが、なお、先ほどの輸送力増強工事につきましては、会社に指示をいたしまして、会社の責任者、社長以下が、このとおりに実施をするということを言っております。したがいまして、私どもそういう方向でこれを指導してまいるということにするつもりであります。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いま委員長からもお話がありましたけれども、これは一職員がどうこうというのではないのですね。これは京成電鉄の企画室長が書いておって、「通勤者のための運賃論」と、こう書いてあるわけです。このパンフレットというのは、駅頭で利用者、お客さんに配っている、こういうものであります。そうなると、こういう方法でもって配布されたパンフレットの中に、公聴会で発言した主婦代表やあるいは団地の自治会の役員というものを全く侮辱をしているということ、野党の代議士もそれと一緒くたにされておりますけれども、与党だけはこれに触れておりませんが、こういうようなことは、単なる筆がすべったということでは済まされないということだし、会社としても、あるいは経営者としても、責任を持ってもらわなければならぬ。  私が指摘したいのは、大都市勤労者の通勤条件が改善されないというのはだれの責任なのか、それは少なくとも私鉄にはその責任はないと、こう言っている。その責任はないということになると、私鉄は、運賃は上げてもらうけれども通勤条件を改善する義務はないということを言い切っているわけなんですね。だから、そういう感覚でもってやっているのかどうかということが問題なんです。だから、そんなふうな感覚でこれからも私鉄の経営をやるというのでは、私は、路線の拡張なんかは認めることはできないと思いますよ。京成電鉄は、成田に新空港ができるというので、成田の空港まで延長をする申請をして、運輸省もこれを許可をしているわけですね。そうやって、成田空港と東京との間の輸送をやろうというふうにして、投資もしようとしているわけです。だけれども、少なくとも通勤輸送を改善するということはわれわれの責任じゃないというようなことを、もし会社が考えているとするならば、京成電鉄のこれからの経営のあり方については、かなりきびしく監視の目を光らせる必要があるのじゃないかと思う。私は、赤字であってもかまわないからやれというのは、なるほど酷だと思う。そうはなかなかいかないと思う。赤字であれば赤字を何とかして改めなければならない。そのために会社がやめてしまうということになると、通勤者の足は確保できないことになるわけです。だから、赤字対策は赤字対策として、そして何とか方法を考えてやるということが必要だろうと思いますけれども、はなから輸送というものは自分たちのもうけるためであって、利用者のことはどうでもいいという考え方は、私は許せないと思う。   〔委員長退席、理事竹田四郎君着席〕  きょうも、実は、東武鉄道の人と私は話をしながら来たのですが、四千人の合理化による人員削減ということを会社のほうで提案しようとしているという話をしておりました。その人が言っておったことは、会社は、合理化ということで、幾ら人間を減らすかということだけに、もうすべて集中している。輸送の改善とか、輸送力増強であるとか、サービスをよくするということは、もう二の次、三の次になっているのじゃないか、こういうことを心配しておりました。私も、その心配はもっともだと思います。これは私鉄に限らないと思います。国鉄についても同じことが言える。国鉄の監査報告書を見ましても、合理化によって幾ら人間を減らすかということだけを特に強調しているわけです。利用者のために輸送力を増強するとか便宜をはかるということは、もうまるっきり触れていない。だから、私は、そういう考え方を国鉄とか私鉄が持つということは、監督官庁である運輸省の責任になると思う。だから、運輸省としては、何よりも利用者の便宜を考えることが大事だ、公共事業なんだから。だから、そういうことを忘れるような、考えないようなものには経営をさせないというくらいのきびしい態度が必要じゃないかと私は思うのです。  それに関連して東武鉄道のことをもう一つ引き合いに出しますと、群馬県と埼玉県の間にまたがる上武鉄道をつくれという運動が、群馬県の東部、太田地区を中心にして、もう何十年も前からある。ところが、東武鉄道は、熊谷から妻沼線というものをいま経営しておりまして、その妻沼線を太田に延ばし桐生につないで両毛線と高崎線を結ぶ鉄道というものを——これは東武がやりさえすればできることであるが、それを地元でもかなり要望しているのですが、なかなか、認可だけ取って工事はやらない。   〔理事竹田四郎君退席、委員長着席〕  もし工事をやれば、みんな国鉄のほうにお客を取られてしまうという心配をしているのじゃないかと思うが、そういう事例があります。しかし、私は、私鉄の経営者が、こことここを結びます、そのために何十億かけてやるつもりですということを天下に公約した以上は、その公約をほったらかしにするということは許せない。できないならできないで、権利を放棄する、できるならばやる。——人に取られないように、つばをつけておくといったような、そういうきたないことを私は許しちゃならぬと思う。だから、やるならやる、やらないならやらない、どちらかにはっきりするのが利用者に対する義務だと思います。その点についても、私鉄の経営者の考え方がどうもふに落ちない点がある。監督官庁としては、それらの問題についてもやはりはっきりした態度で指導すべきではないかと思いますので、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  85. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 私鉄の経営は公益事業でありますから、利用者の便益というものを中心考える、そうしてまた鉄道自体の安全というものを第一と考えなければならぬということは、先生御説のとおりでございまして、本来、鉄道事業というものが免許事業として国がこれを規制していくゆえんのものも、まさにそこにあるわけであります。私ども、そういう点でございまして、今回のこのPR資料がそういうふうでないようなふうに見える表現を使っておる、しかも、これが私鉄経営者の考え方であるということになれば、まことに遺憾でありまして、こういった点はどうしてもたたき直さなきゃならない、このように考え指導をしてまいるつもりでございます。  なお、東武の妻沼線の問題でございますが、これは、先生御存じのとおり、現在、熊谷——妻沼間につきましては一応の開業を見ておりますが、残区間の妻沼−新小泉間につきましては、一部着工をいたしましたまま——これは戦前でごさいますが、戦後の情勢変化によりまして工事を中断をいたしまして、竣工期限を延伸をいたしまして現在に至っております。この点につきましては、実はいろいろと事情もあるようでございまして、残区間につきましては、利根川の橋梁なんかの建設設置も行なわれておりますが、ただ、現在太田付近の新しい貨物の基地構想というような構想もございまして、そういったような大貨物設備の建設の構想と関連いたしまして、熊谷駅の改良計画というような問題も実はあるようでございまして、そういった点で、現在国鉄と協議中であるというように聞いておりますが、基本的には、先生おっしゃるように、私鉄がこれを免許をもらって、そしてやるというようにした以上は、これは当然建設を行なうべきものであろうというように考えるわけでございまして、その点につきましては、しかるべく指導をしてまいりたい、このように考えます。
  86. 横山フク

    委員長横山フク君) 鈴木君。
  87. 鈴木強

    鈴木強君 公取の委員長が見えましたからお尋ねしますが、実は、あなたが午前中おいでいただければ、経済企画庁長官との質疑の内容を十分御承知いただいてお答えをいただければよかったんですが、御都合でお出になっておられませんので、多少……。私の質疑の時間が制約されておりますから重複は避けます、議事進行上、委員長の御意向もありますから。  そこで、朝日麦酒が九日に大びんを十円、これは中びんも十円ですが、とにかく十円ずつ値上げをするということを国税庁に通告をいたしましたね。おそらく、残る麒麟、サッポロ、それからサントリーと、こういう各三社も、さみだれ的に値上げをしてくるだろうという予想がつくわけです。これは、四十三年当時のいきさつもわれわれよく調べて見ますとね、そういうように思うんです。そこで、これは今後の問題でございますから、多少仮定のようなことですけれど、物価の問題で非常に大事ですから、委員長に確認をしてお願いをしたいんでありますが、もしさみだれ的に値上げをするようなことになりますと、いつか、どこかで価格協定的なものを話し合いがあったかどうかということも一つ問題になってくるわけですから、今後引き上げの推移を十分公取としても監視をしていただいて、もし値上げが行なわれるような場合には、独禁法違反の疑いがあるとわれわれ思うわけですから、ぜひ、いつも御苦労いただいておりますけれども、この問題についても、ひとつ徹底的に公取として調べていただくように、御調査をしていただくように、お願いしたいんですけれども、いかがですか。
  88. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) 御質問の点につきましては、いろいろの問題があるというふうに私は考えております。具体的に、今回の値上げの問題がどう展開してくるかということは、もとより、私どもといたしましても、深甚なる関心を持っているところでございますが、御承知のように、業界は四社、そのうち三社が非常に強い体制にあり、もっと極端に言えば、そのうち一社が約五割のシェアを占めるというような、そういう業界構造になっておりまして、現に、私どもは、いわゆる管理価格調査と申しますか、寡占企業における価格並びに流通の実態調査するという目的で調査をしている、そういう業界でございます。幾つか御指摘ありましたが、時間の制約もございますので、私は二つほどポイントをちょっと申し上げてみたいと思います。  一つは、十円値上げしたというふうにおっしゃいましたが、ビールは別に再販売価格維持契約をしているわけではございませんで、メーカーが幾らで卸におろすかということは、これはメーカーが自分で考えてきめられますけれども、卸から小売りへ、小売りがお客さんへというところで、十円になるかどうかということは、これは業者が一応そう希望して考えておるということは言えましようけれども、十円現実に値上げになるかならないかというふうな問題は、これは小売り段階において実際にどういうふうになるかという、こういう問題であると思います。これは、非常にかってなことを申しますけれども、やや、お酒の値段やなんかについては、統制経済時代の頭が残っておりまして、メーカーが十円値上げするというふうに、とかく思われがちであり、また、新聞などにもそう書かれますけれども、ただいまの実態としては、メーカーが幾らで卸におろすかというところまでがメーカーのやれる範囲でございまして、それから先のことは、それぞれの卸、小売りの責任においてやる問題になると思います。したがって、ビールの値段が最終末端において幾らになるかということは、実は、実態的には小売り業者といろいろなメーカーとの間の関係が裏にございましょうけれども、たとえば、相変わらずというふうにはいかないと思いますが、百三十円じゃおそらく売れますまいけれども、百三十五円で売る店があっても、百三十八円で売る店があっても、たくさん買ってくれるお客さんにはサービスする店があっても、これはいいわけだと、こういう基本的な問題があるのが、どうも忘れられがちになっているように私は思います。それが第一点。  それから第二点は、これが非常にむずかしいところなんでございますけれども、いわゆるプライスリーダーシップを持っているようなところが先に値上げをするという問題ではなくて、むしろ、業界で言えば、シェアが二〇%に達していないようなところが、まず値上げの口火を切ったということの持つ意味を一体どう考えるか、こういう問題が実はあるように思います。で、それこれいろんなことを申しますが、その裏に、どういう事情、と申しますか、あるいは姿があるかということは、これは実際に考えてみないとわかりませんけれども、少なくとも、いま御指摘になったような問題を、今回の値上げの問題だけでなしに、一般的に考えて、どうこれから対処していったらいいかということは、これは、私どもにとってたいへん大きな問題である、さような気持ちでこの問題を見ていきたいと思っております。
  89. 鈴木強

    鈴木強君 この基本的な論争は、もう午前中経済企画庁長官とやっておるから、あなたが出てきて、こうやられても、またわれわれ反論すると時間がなくなるわけで、それはやめますけれどもね。私の言ってるのは、もう時間がないから、簡単に、価格協定をした疑いがあるかどうかということが独禁法上残るだろうから、この点については、あなた方はそのための番人なんですから、十分にひとつ調べてみてくれと、それからまた、そういうふうな方向にいかないように、今後もできるだけ監視体制というのを強めておいていただきたい。自由価格で、それがどうなるかぐらいのことは、あなたがそこで言わなくてもよくわかっていることで、そんな論争を私はしようと思っているわけではない。ですから、結論的に、時間がないから、あなたにその点だけ聞いたんだから、その点だけ答えてください。
  90. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) ただいま申し上げましたとおり、深甚なる関心を持って見ていくようにいたしたいと思います。
  91. 鈴木強

    鈴木強君 それから、通産のほうにお尋ねしますけれども、午前中、大臣との間に、カラーテレビの二重価格の問題をめぐって、何とかこれが適正価格にならないかどうか、こういう意見をかわしました。そこで、時間もありませんので、ひとつこの点は資料として出していただきたいと思います。電子機械工業会がことし生産目標としておるのは、カラーテレビなど、六百五万台ですね。それから白黒が七百二十九万台。この生産目標は、カラーが六百五万のうち、大体内需外需に分けて、どの程度をあらかじめ考えておったのか、同様に、白黒で内需外需についてどのように考えておったのか、これをひとつ資料として出してもらいたい。  それからもう一つは、このカラーと白黒のうち、真空管のもの、それから新しいトランジスタのテレビ、こういうものが一体どのくらいずつ、この中に入っておるのか。それともう一つは、上期の実績として、九月末で、この六百五万あるいは七百二十九万、こういうものがどのくらい生産をされておるか、これをひとつ資料にしてもらいたい。  次に通産に伺いたいのは、さっきも景気動向について佐々木総裁以下経済企画庁長官と、いろいろと一時間近くやりました。そこでもちょっと問題になりましたが、カラーテレビと白黒と両方ですが、一番最近調査してわかっている資料で、在庫数量がいま一体どのくらいあるか。メーカー、卸、小売り、こういう流通段階がありますが、一説によると百万とも言われておりますし、百三十万とも言われておるし、最近在庫数量がふえておることは間違いない。そこで、通産で把握しておるメーカーの手持ち、卸、小売りのそれぞれの手持ちにおける在庫数量というのはどのくらいあるか、カラー白黒別にひとつ示してもらいたい。
  92. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 最初の資料要求につきましては、後刻御提出申し上げたいと思います。  それから、ごく最近時の在庫数字でございますけれども、現在、私どものほうの手元でわかっておりますのは、カラーテレビの八月末のメーカー在庫が七十八万三千台、流通在庫につきましては、実は統計が流通段階のほうはおくれますので、六月末で五十六万四千台。このそれぞれは、対前年同期比で、メーカー在庫のほうが二一〇%、二・一倍ということです。それから流通在庫は、六月末が一四六%、こういう数字を示しております。
  93. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、次長の判断ですけれども、九月末がちょっと私ほしかったですけれども、これはまあちょっと間に合わないそうですから、あとからまた調べていただきたいのですけれども、いずれにしても、ダンピングの問題にからんで非常に不信を買っておりますね。ですから、不買運動、一カ年以上は買わないというような、そういう運動も起きております、これは午前中ありましたけれども、あなたおられましたかね。それで、実際に九月になり、あるいは十月になって、これは在庫がふえると、こう、普通常識的に考えられるのでございますけれども、その点はいかがでございますか。
  94. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 先生のおっしゃいますとおり、現在相当買い控え的な動きもございますので、生産のほうは若干落ちておりますけれども、その結果としての在庫につきましては相当ふえるのではないかと、こう考えております。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 午前中長官とやりましたこの十九インチの卓上型のカラーテレビですね、この六社の平均数字というものを、国内価格の構成として先般モデル価格発表しました。これを契機にして、むしろ逆に不信を強めたということで、いろいろやりとりをいたしましたが、それは繰り返しませんけれども、問題は、この現金正価、それと卸までの値段、それから小売りにいく値段、それからまた実際に消費者に渡る値段、要するに実売価格というものがどうなっておるのか、さっぱりわからぬわけです。要するに、十四万八千円という、これは物品税を入れてのことですが、十四万八千円、中間マージンが小売り、卸を含めて流通段階で三八%ある。結局、メーカーからの出し値は九万一千七百六十円、物品税を抜いてくると七万九千七百九十円、こういうのが現金正価の例のモデル価格になっているわけです。それで、結局、業界のほうでは、外国のほうでも消費者に渡るときは大体十四万九千四百十円であるからダンピングではない、こういうことになっているわけですけれど、私がけさ指摘したように、十九インチコンソール型の機種がむしろ最近はよく売れているわけですから、これらの価格の実売価格をどうして発表できないか、こういう点をまた指摘したんですけれども、なかなかこれはまた自由価格の問題ですから、むずかしいと思います。しかし、「まや商会」の山崎さんの、この週刊朝日に出ております——ちょっとけさ申し上げましたけれども、現金正価が十七万三千円でしょう。「まや」さんがメーカーから受け取る値段が十一万三千円、実際の消費者に渡るのは十三万円、マージンが一万七千円。そうすると、三八%もマージンというものは取っていない。流通段落でそういうような点もあるわけですね。ですから、要するに、現金正価と実売価格とのあれがはっきりわかりませんから、十四万八千円で売れた場合のことを言っておると思うのですね。  そこで、「まや」さんの、この中にありますように、コンソール型は高過ぎる。メーカーは、木製のキャビネットが高いからだ、一万五千円もするんだ、と言っておりますが、山崎さんの意見によりますと、このキャビネットをつくっている人に、メーカーが言うように一万五千円もするのか、その半分の値段くらいするのかと聞いたら、「それで引き取ってくれるなら非常にありがたい」というようなことを言っておる。そうすると、この一万五千円という木製のキャビネットの値段というものもメーカーが言うような高いものではないというふうに判断するわけですね。これは、いずれにしても実態調査をしないとよくわかりません。これは「まや」さんの言っておることですから、自分が実際やっておられるからこれは間違いないのですけれども、一般に言われておる二重価格の問題についても、もう少し実態調査をしなければわからないと思います。そこで、通産省としても、今後流通段階の問題を含めて、もっと適切な指導をしてもらいたいと思うのです。これは、おたくに取引条件適正化委員会というものがあるわけですからね。その諮問機関の御意見もよく聞いて、ぜひひとつやってもらいたいと思います。たまたま毎日新聞のきょうの記事に出ておりますが、通産省の適正化委員会委員長をつとめ、流通問題の権威者である三上富三郎明大教授の意見が載っております。それを見ますと、「過去の成長期にはメーカーの系列店育成にはメリットがあった。しかし、スーパーが成長した現在のような流通革命期には弊害が多い。メーカーが販売店助成策をとるため、どうしても小売店の経営自主性が失われる。またリベート、販売促進費など正規のマージン以外のあやふやな流通経費が多くなるので、流通コストが高くなる。それが最終的には消費者に転嫁されることになる」、こう言って系列化政策の悪を指摘しているわけです。これは、公取が先般松下の系列について審決を下して、独禁法第十九条違反ということで出しております。これは、そうした問題とも大きく関連をすると思います。また、全国電器小売商組合連合会というのがございますが、先般そこの方々が集まっていろいろ相談をされたようですが、そこでも、一つは一地域一販売会社制の廃止、それからリベートの簡素化、それから現金正価制度の撤廃、系列小売店における共同仕入れと混売、こういうものをひとつ認めろというようなことで、現在系列小売店を持っております松下、東芝、日立、これからのがっちりした系列販売店網に対して批判をする決議をしておるわけです。ですから、どうしてもこういうところにメスを入れないと、私は実際の価格安定にはならないと思います。  そこで、通産省にお願いしたいのは、ぜひ二重価格制の問題について、もう少し価格実態を調べてほしい。と同時に、公取におきましても、同様に、これらの実態がどうなっているか、もう少し突っ込んだ御調査をしていただいて、適正価格方向にぜひ御配慮いただきたい、こう思いますので、公正取引委員会委員長通産省のほうから御意見を承りたいと思います。
  96. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) おっしゃるような方向で私どもは現に調査を進めておりますし、また、今後も進めたいと思っております。
  97. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 通産省といたしましては、ただいまのお話の大綱に非常に同感いたす次第でございまして、すでに先週、通産省のモニター調査を開始いたしまして、それと並行いたしまして、より徹底しました基本的な実態調査を近く行なうべく、現在調査方法なり調査項目の検討に入っております。いずれにしましても、非常に数の多い、小売りを含めた非常に複雑な業界でございますので、今後前向きにこれに取り組みまして、二重価格の解消等について真剣に検討していきたい、こう思っております。
  98. 鈴木強

    鈴木強君 これは、従来政府の答弁というのは、大体あなたの言われたような答弁が多いのですけれども、現実に在庫はふえている。しかも、けさ言ったように、真空管、トランジスタと、品種がだんだん改良されていくわけですから、だから、いまお話しのように在庫がどんどんふえております。結局、業者も困ります。一方、カラーテレビは、NHKもああいうふうにカラー番組を増加して、できるだけ安いものでカラーを見たいというそういう層もあるわけです。私はまだカラーテレビは買っておりません。というのは、いろいろ考えるところがあるから買わないのですけれども、やはり、いまの段階では、かなり金を持ってどんどんと買えるような人たちは一通り買ったということだと思います。これから買おうという人たちは、まあ隣の人が買ったから、うちも買おうということでなくて、まあひとつ何とか自分の収入の中で月賦ででも買いたいという人たちが買うわけですから、それだけに、需要の面におきましても、従来のようなどんどんどんどん売れたという時代ではないから、多少需要の面が変わってきていると思います。いずれにしても、真空管などは、どのくらいあるかわかりませんが、そういうものはお蔵の中に眠ってしまいます。もう、スイッチを入れたら、ぱっと画像が映るというふうに変わっているわけです。だから、そういう方向でいくと、やがて乱売をしなければならない。すでに、スーパーでは、どんどんどんどん安売りを始めております。そうなってくると、メーカーも実際困ると思いますよ。消費者のほうも、できるだけ安く早く買いたい、買おうと思っているけれども、どうもインキチがある、不当にもうけているのじゃないかということがはっきりしたものですから、消費者五団体が中心になって一年間買わないでおこうじゃないかという動きが出てきております。私も、そういうことを外で言います。もう少し一年待ちなさい、安くなりますと。  ですから、もう少し業者のほうも——きょうは参考人に来てもらおうと思ったけれども、御都合で来られないので、ほんとうなら大久保会長にここに来てもらって、会長でなければ副会長、副会長でなければどなたかに来てもらって、ほんとうに国会でこの問題を真剣に論議するのですから、メーカー側の誠意を示してもらって、われわれの意見も聞いてもらって、安くなるものは安くして、商売繁盛するようにやるべきじゃないですか。それを、来ないということは、私には納得できないのですが、まあ御都合で来られなかったのでしょう。ですから、もう少し誠意をもって、この問題は前向きで、しかも早急に検討しなければならない問題だと思います。  今度、日立さんがテレフンケンと新しい契約をしました。私はけさも大臣に言いましたが、NTSC方式というものを先走ってやった。国際会議できまってからやればいいものを、日本はスタートを早くした。ヨーロッパとアメリカは違うんです。日本はアメリカのものをそのまま持ってきて、NTSC方式でやっているから、こういうことが出てきている。今度ヨーロッパに輸出するときには、違った工程を踏まなければいけない。たいへんむだなことになっている。今度ヨーロッパのほうへ販路を拡張するから、アメリカのほうは多少はどうでもいいと、もしそういうことがあればたいへんな話だ。他の会社もそれに追随して契約をするそうですが、とにかく、こういうむずかしい段階に来ていると思いますから、それだけに、メーカー側も直すべき姿勢は直して、ほんとうに国民が理解と納得する線で売買できるようにしてほしいというのが国民のみんなの声です。あんなモデル価格なんか出すものですから、全く不信を買ってしまった。しかも、さっき申し上げたように、十九インチのものは出さないで、ほかの、少し次元の違うようなものを出してきている。こういうところに問題がある。だから、ただことばの上でなくて、ほんとうにひとつやってください。スケジュールをちゃんときめて、あとでもいいですから、私に見せてください。そうでないと、国民は納得しません。不買運動がどんどん盛り上がってきていますよ。いかがですか。もっと積極的に大臣とも御相談なさってやっていただきたいと思います。
  99. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) われわれのほうは、現在、数次にわたりまして工業会と話し合いを進めております。また、小売り商の集まりでございます全商連とも懇談を重ねておるわけでございまして、むしろ、こういう対米ダンピング問題、モデル価格発表問題等々を契機にしまして、非常に世論が、多年の積弊といいますか、業界の積弊をつくようなかっこうが出ておりましたことを、われわれとしては、むしろいい機会であるという考え方をとっております。しかし、何ぶんにも全国で小売り商は五万軒と称されております。それからカラーテレビをつくっておりますメーカーが十三社現在売り出されております。カラーテレビの銘柄が百二十七機種。そのメーカー間におきましても、力の強いもの、弱いもの、ブランドの売れているもの、売れていないもの、非常に格差もございますし、それから、先生先ほどお話しのように、非常にモデルチェンジも激しい業界でございまして、絶えず新型を売り出し、その裏として必ず旧型が発生する。そういう状態もございます。それから、月賦販売でみんなこれはつながっておりますので、長期間にわたる月賦販売形態を消費者との間でとらえていく、その中間における価格形成、価格変動ということは、なかなかその辺でむずかしいというような、いろいろな問題がございますけれども最初に申し上げましたように、これを機会に、これをのがすと、もう非常にまずいという感じをいたしておりますので、通産省といたしましても、大臣非常に強い決意で、実態調査を徹底的にやるべきだ、そこから、単純に二重価格をただ価格面で解消するということでなく、その裏にございますさらに複雑な流通形態、多年の悪習慣といいますか、その辺まで徹底的に入りましてこの問題を解決すべきである、こういうことで、いま鋭意検討に入っておる段階でございますので、御了解を願いたいと思います。
  100. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。かなり決意を持っておられるようですから、ぜひそれで進んでもらいたいと思います。  それから、時間がありませんから、資料で、松下、東芝、日立、この製品を販売しているメーカーさんの約手による取引、いわゆる系列販売店、これが全国で幾つありますか。これを会社別にひとつ提出してください。  それから、従来の実績のわかるところでけっこうですから、これらの全国の会社別の販売台数、こういったものも、ひとつ調べてもらいたいと思います。  それからもう一つは、現金決済の非系列下のお店屋さん、これは、スーパー、百貨店なんかも入れ、神田の商店街、大阪の日本橋街、ああいうところも入れまして、全国的にどのくらいありますか。それと、いま言った、そこで売っておられる各会社の品種、幾つぐらい売っておられるか、そういうような点も、ひとつ資料で出してもらいたい。  それから、とりあえずは、さっき言った全商連の小売りになっておりますものの中で、直せるものは直ちに直していくような指導通産省としてぜひともやっていただきたいと思います。それだけを特に強くお願いしておきたいと思います。  それから次に、公取の委員長に、たいへん御苦労願っておるので、私は国民の一人として、いろいろ最近何かにつけて勇断にやっていただいて、感謝しておるのですけれども、特に誇大広告の関係ですね。これは目に余るものがありまして、いろいろ御調査をいただいておるようですけれども、これは、テレビ、ラジオ、それから特に新聞の折り込み、ああいったものが、パンフレット的なものが出ているのですけれども、最近、特に自動車の、ホンダの欠陥車の問題も国会で論議されたのですけれども、新車の広告なんかを見ましても、たとえば、「隣の車が小さく見えます」とか、それから「大きくなった」とか、「最高と言わず、マックスと言ってください」とか、「ナイセストカー」、「七〇年代のトップファッション」とか、「本物登場」とか、「本物はここが違う」とか、「御注文はお早く、もうすでに何万台売った」とか、そういうふうなものとか、要するに、これを見ると、各社が、お互いに、自動車メーカー同士が、あっちゃならぬことだと思うのですけれども、他社を批判するような、自分のものこそ本物だと、そういうような考え方で広告を出している点もあると思うのです。ですから、むしろ、もっとわが社の車はどこがいいということを、人のことはかまわずに、やったらいいと思うのですよ。そういうふうにして競争するのはいいのですけれども、どうもこれは、ちょっと内容を見ましても少し問題があると思う。それから不動産売買業なんかの場合もたくさん問題が出ているのですけれども、特に私はこの広告を見まして感じたのですけれども、やはり不当表示防止法というものがあるわけですから、そういうことを業界もよく御存じの上でこういう宣伝をなさると思いますけれども、どうかすると、やはり行き過ぎになってしまって、競争とはいっても、少し、国民から見るとどうかと思うわけです。ですから、そういうところに公取が目を光らしていただいて、適正な宣伝広告活動というものをやっていただくように御配慮いただかなければならぬと思うのです。  最近、特に中古車なんかについても、われわれが見ると、中古車——ユーストカーというのですか、これを売っているところがあります。ただ十万円とか八万円とか書いてあるだけであって、機種が何で、どのくらい使ってあるかということは全然ないわけです。ですから、ああいうものも、もう少し親切に、フロントのところに書くとか、何か、買う人から見て納得できるような内容の説明がほしいと思うのですけれども、こういう点も、これは公取になるか、通産になるか、運輸になるかわかりませんけれども、そういう点も、もう少し、もう一歩立ち入ってやっていただきたいと思うのですけれども、最近の不当表示についての公取としてのお考え方と、特に新車広告について委員長意見をこの際伺いたいと思います。
  101. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) だんだん国民生活の問題に重点を移していろいろ政府の施策もしなければならぬときでございますので、表示の問題は、いまおっしゃいました点、一々ごもっともだと思っております。具体的にどういうケースがどうかということが、また問題でございますが、いずれにしましても、特に公取だけがハエを追うようにしてやっていても、むずかしいことでございまして、まず業界で、自分たちはこういうルールに従ってやっていこうという、いまおっしゃったように、人を非難しない、自分のいいところをこういうふうに表現しよう、こういう表現のしかたはやめよう、これを公正競争規約というふうに言っておりますが、そういうことで、自主的にそういうルールを立てていただいて、それを守ってもらうという業界のほうの態勢が一つ必要かと思います。それから政府側としては、これはいまも最後のほうでお話が出ましたが、私どもだけではなくて、政府の各官庁、所管の各省庁も、そういう方向で一緒になって、この不当表示の問題——正当な表示をして消費者の利益を守る、そういう方向にこれからの行政を向けていっていただく、私どもと一緒になってやっていっていただきたい、そういう態勢でぜひやっていただきたい、そのように思っております。もちろん、私どもがやらなければならないことは一生懸命するつもりでおります。
  102. 鈴木強

    鈴木強君 それから、なお最後に、石油の値上げについて伺いたいのですが、丸善石油、それから日石ですね、こういう大手のメーカーが、石油タンカー運賃の上昇、それから加鉛ガソリンの無鉛化、こういうふうなものに経費がかかるという理由で、先月の末から今月にかけて値上げを特約店に通告をしたようです。この値上げの幅が、ガソリンが一キロリットル当たり千円、それから灯油が同じく千五百円、重油が同じく五百円、このほか、ガソリンスタンドとかあるいは燃料店は、人件費が値上がりしているということで、さらにこの上に一リットル一、二円の上乗せをする、そういうふうな気配を見せておるわけです。これからいろいろ需要期に入っていくわけでして、昨年も暖房用の灯油がたいへん値上がりをして、私どものところにもかなり陳情が参りました。ただ、私は、昨年は国会で質疑をする機会がなくて、陳情された方にもたいへん申しわけなかったのですけれども、ことしもまたそういう傾向にあるようですけれども日本のガソリンは輸入に依存しているわけですけれども、値上げをしなければならないような、供給の面で輸入その他が逼迫をしてきているとは思わない。輸入はそんなに減るとは思わないのですけれども、一体こういう動きについて、これは通産のほうですね、御所管でしょうから、最初、通産としてはどういうふうにこれを受けとめておられるか、やはりこれから暖房期に入って家庭への影響というものはかなりありますので、ぜひお聞かせ願いたい。
  103. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) ただいま先生の御指摘の、丸善、日石が、特約店に、最近の状況問題にからんで仕切り価格の値上げを言うたというふうな話でございますが、その話、一部耳に入っております。で、問題は、現在の世界の原油事情の問題でございまして、御案内のように、一九六七年のスエズ運河以来の情勢にかんがみまして、最近現地の原油の価格が相当上がっております。それに加えまして、中東のパイプラインが一部故障しておりまして、それの輸送問題が一つございます。さらに、最近の世界の重油の消費あるいは原油の消費が相当ふえてまいりまして、それに伴うタンカーの価格が高騰しつつございます。そういうふうな状況にかんがみまして、一部そのような動きがある、いわゆるそういう要因があるということは、いま確かな事実でございます。しかしながら、こういう問題につきましては、われわれといたしまして、できる限り企業内部の合理化によってそういうものを吸収すべきであるというふうに考え、かつ、そういうふうな問題に対しましてできる限り原油の手当て、いわゆる材料の手当て、それをはかって、あるいは施設の増強をはかるというふうなことによって、できる限り、ショートする、つまり製品ショートの問題について、心を配っておるような次第でございます。  で、先ほど灯油の問題をおっしゃられましたですが、灯油につきましては、現在、四十五年度上期におきまして約五十二日分の在庫の見通しでございまして、相当数の在庫でございます。一般の在庫は、製品で、上期におきまして大体二十一日分確保しておる状況でございますが、特に灯油につきましては五十日分余りを現在在庫として持っておるような状況でございますので、特に灯油を主体にした値上げというものは考えられないのじゃないかというふうに考えます。
  104. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、いま値上げの動きがありますけれども、通産としては、できるだけ値上げを——できるだけというか、値上げをしないようにという立場でいろいろ指導していただくわけですか。
  105. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) 先ほど二、三の点を申し上げましたのは、世界的にそういうふうな値上がりの要因があるということを申し上げました次第でございますが、できる限り、企業利益に、あるいは企業内部の合理化によって吸収するように指導いたしますけれども、そういうふうな要因が出てまいりますとどうなるかという問題でございますが、できる限りそういうものを押えるように努力しておるということを申し上げたいと思います。
  106. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、世界の原油事情を三つおあげくださいました。そのうち、原油の価格が上がっているということと、パイプラインが故障になっておるということと、需要がふえて大型タンカーになってきているということ、以上それが、具体的に日本通産省で計算した場合に、幾らそのために上がるようになるのですか。高くなると思われますか。
  107. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) 現在のところ、長期ものとスポットものと、いろいろあるんでございますけれども、その辺の契約内容はいろいろあるものですから、各社各様にいろいろございますので、わかりませんが、一応タンカーフレートにつきましては、原油キロリッター当たり約三百七十円程度の値上がりが出てきております。
  108. 鈴木強

    鈴木強君 石油タンカーの運賃というのは、これはちょっと私も不勉強で申しわけないんですけれども、国内のあれと違いまして、自由なんですか。運輸大臣が認可するということにはなっていないんですか。
  109. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) タンカーの契約というのは各社が各自でやるんだと思います。ただ、われわれといたしましては、邦船引き取り——わが国の船の引き取り、それによった場合には非常に安くできるものでございますので、運輸省にお願いをいたしまして、計画造船の中にそのタンカーの造船計画でございますか、それをできる限り織り込むようにお願いしておるような情勢でございます。
  110. 鈴木強

    鈴木強君 それでは、これだけははっきりしていただけますね。特にこれから暖房期に入って、灯油が各家庭でたかれるわけですけれども、審議官もおっしゃるように、上期五十二日分の在庫があるわけですけれども、一般のガソリンその他は二十一日ですね。ですから、これだけあれば、大体灯油に関する限りは、そういう原油が上がったとかなんとかいう、いまおっしゃった三つの条件が当てはまらないでしょう。どうなんですか。これだけ、五十二日というと、二カ月ぐらいですね。あるいは一月、二月に、もっとふえるのか減るのか。減ってくるでしょうね、だんだん。したがって、やはり全体的にさっきの値上がりになる三つの中にひっかかってくるわけですね。そうすると、やっぱり灯油の値上がりということもあり得るわけですか。あなたの話を聞いていると、そういう要素もひっかかってくると、キロリッター当たり三百七十円というのは、これによって実際値上がりになるということであれば、これはまた国際的な事情ですからやむを得ない点もあると思うんですけれども、灯油の千五百円値上げというのはとんでもない話だと思うんですけれども、灯油だけはだいじょうぶですか、上げないんですか、どうですか、最悪の場合。
  111. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) 価格の問題につきましては、やはりそのおりおりの需給バランスによっていろいろきまっていく問題だと考えております。私の申し上げましたものは、原油と重油につきまして世界的な情勢を申し上げたわけであります。御承知のように、原油からは重油もとれますし、ガソリンもとれますし、灯油もとれますのは御案内のとおりでございまして、その辺をどういうふうにするかという問題が一つございます。しかしながら、灯油の問題につきましては約五十日分の在庫を——われわれ冬場になって欠乏しても困るし、変なぐあいに値上がりしてもいかぬものですから、その辺を極力行政指導してやっておりますので、その辺の需給バランスによって価格はきまっていくものだと、こういうふうに考えております。
  112. 鈴木強

    鈴木強君 だから、少なくともいまある五十日分については、ないということははっきりするわね。今後原油で入ってくる中で、先ほど言った三条件があるから、多少ひっかかった場合に幾らか値上がりがあるとしても、この五十日分については……。あなた指導していらっしゃることはありがたいと思うのです。そういう配慮をしていただいて、できるならば五カ月なら五カ月分くらいやってもらうと一番いいのですが、ストックさして。金の支払いとか、いろいろあると思うのですが、しかし、五十日分はそういう配慮を通産省がしておったことは、これは感謝しますけれども、だから、この分についてはだいじょうぶ、あとは行政指導によって、需給関係で多少変わるかもしれぬが、そこは通産として、できるだけ押えていくという指導をやってほしいと思うのです。その点いかがですか。
  113. 礒西敏夫

    説明員礒西敏夫君) 先生御承知のように、ただいま申し上げましたように、需給バランスの点から、五十日分というと相当な量でございますので、その点については何とも言えないのでございますが、今後の需給の逼迫というものがどういうふうに、はね返るかということは、まだわかりません。ともかく五十日分あれば大体いけるのではないかと思いますけれども、御承知のように、地区別あるいは店によりまして、いろいろな価格でもってやっておるという状況でございます。ただ、われわれといたしまして、物が潤沢にあれば、あるいは非常に余剰ぎみであるならば、そういう値上がりとか、そういうことは起こらぬと思いますけれども、しかし、今後の情勢により、地域別の輸送とか、いろいろございますので、他の要因によってどうなるかという問題が別個にあるのではないかと考えております。
  114. 鈴木強

    鈴木強君 少しぼやけている点があるから、はっきりしてもらいたいのですが、われわれの情報では、先月の末から今月にかけて値上げを特約店に通告しておると、ぼくらは思っているわけだ、あなたはそういうふうな話を聞いているという、何か遠いところを吹いている風の音みたいにしか言ってないわけです。そこで、その辺、もう少しはっきりしてもらいたいのですが。  一方、公取のほうにちょっとお尋ねしたいのですが、もし丸善石油、日石が、いまお話しになりましたように一斉に値上げをするとすれば、これはやはり独禁法違反という疑いが出てくるようにも思うわけです。それは、さっき最初委員長が言われたような、価格のことはわかりませんからね。そういう意味において、最終的な販売における段階ですね、したがって、これが、したかどうかということはなかなかむずかしいのでして、事実をつかまなければわからぬのですが、たいへんな苦労もあるし、また、業界のほうも、公取があるということは百も承知ですから、その上に立ってやるということですから、なかなかむずかしいと思いますけれども、だからといって、それを調査しないでおくこともおかしいと思うのです。この辺、公取としてもたいへんだと思いますけれども、何か、新聞報道でちょっと見ましたら、神奈川県の石油商業組合を価格協定の疑いがあるというので立ち入り調査をされたということを聞きましたけれども、もしこれが事実とすれば、いまどの程度調査をされておられるのか、また、いつごろ結論がお出になるのか、そういう点だけ、きょう委員長から承っておきたいと思います。
  115. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) いまお話が二つあると思います。一つは、いわゆる精製業者、元売りと申しますか、大手の会社が輸入して精製して出す、それをどうするかというのが、先ほどから日石とか丸善とかいうお話も出ている問題だと思います。  それから第二におっしゃった神奈川県の石油商業組合でございますか、そういうのは、いわゆる各地にありますスタンド業者と申しますか、小売りの方々の問題であって、これがまた通産省の御当局もよくいろいろ指導してらっしゃるようですが、たいへんな競争のようであると思うのでございます。それを何とかということで、いろいろ各地で商業組合における価格協定問題というのが、ここ二、三年発生しているような状況でございます。御指摘になりました点は、神奈川に限らず、神奈川はたしか先月の下旬であったと思いますが、確かに立ち入り調査をいたしましたが、それ以外のところでも、そういう小売り業者の問題がございます。人件費の問題、その他経営の姿がいろいろでございますので、そこにいろんな形での小売り業者としての動きがございます。これだと思います、問題は。そちらもそちらで見ていかなきゃならぬ問題でございますけれども、大手のいわゆる精製業者の動きがどういうふうになっていくかという点、これはたしか先週も衆議院のほうで私たちのほうから御答弁申し上げておると思いますが、やはり注意して私どもとしては見ていかなければならない問題であると、かように思っております。
  116. 横山フク

    委員長横山フク君) 渡辺君。
  117. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、前回に引き続き、カラーテレビの問題について質問したいと思います。  質問に入る前に、委員長にお願いしたいことがあります。前回私お願いしまして、電子機械工業会会長ないし副会長参考人として呼んでいただきたいということをお願いいたしました。きょうはお見えになっておりませんけれども、次の委員会には必ず出席してくださるよう、特別にお計らいいただきたいと思います。  それからもう一つは、小売り商の団体ですね、全国電器小売商業組合連合会ですか、ここの方もぜひ参考人としてお呼びいただきたいと思います。これは、メーカーと小売り商をかみ合わせようというようなつもりじゃないんです。あとからこれは質問の中で明らかにしたいと思いますけれども、いまのカラーテレビの流通機構ですね、これは非常にいろんな問題を含んでいると思うんです。したがって、やはり流通機構の実態などをよく説明していただくことが必要じゃあるまいかというふうに思いまして、特別にその点をつけ加えてお願いしたいと思います。この点、どうぞよろしく。
  118. 横山フク

    委員長横山フク君) そのように努力いたします。
  119. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは質問に移ります。  これは通産省に伺いたいと思うんですが、電子機械工業会の大久保会長が、十月七日の家電メーカー六社の社長会が終わったあと記者会見で、カラーテレビのいわゆる二重価格を解消して現金正価を引き下げる、それから、このために通産省に正式に行政指導を申し入れるという趣旨のことを発表しているそうであります、私どもの気持ちからすれば、いままでカラーテレビ価格については、もう久しい間、国民の間から強い指弾を受けてきている。いまに至ってこういう発表をするというのは、おそきに失するというふうに思いますけれども、しかし、通産省に行政指導を申し入れるというふうに言明しているそうでありますので、そういう申し入れがあったかどうか。  それから、先ほど鈴木委員の御質問に答えられて、通産省としても二重価格制の解消につとめるという趣旨のことを答弁していらっしゃいましたけれども、二重価格制の解消といっても、私は二通りあると思うんです。いまの不当に高い現金正価を、これを実販価格のところまで引き下げるという意味の解消ということもあるし、また、実販価格を、これを現金正価のところへ引き上げるという意味での二重価格制の解消ということもあると思うんです。通産省としては、どちらのことを考えておられるか。私は、不当に高い現金正価、これを引き下げるという方向で行政指導をすべきだと思いますが、その点、あわせて伺いたいと思います。
  120. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 十月七日に工業会の会長が、いま渡辺委員のほうからお話しのような発言をしたということは、後ほど私のほうに報告がございました。通産省に行政指導を正式に申し入れたということは、現在の段階ではございません。これは、業界のほうで、私の聞いておるところによりますと、非常に利害がまだ錯綜しておりまして、業界の内部でいろいろと検討した末で、もし独禁法に抵触するような改善案といいますか、方策をとらざるを得ないときには、通産省に、何というんですか、その間に立ってもらいたいということを申し入れるつもりであるということは言っておりましたですけれども、正式なる申し入れば、現在のところ、ございません。  それからもう一つの御質問の、今後の方向といたしまして、現金正価を引き下げ方向考えるのか、実販価格を上げる方向考えるのかということにつきましては、これは前者の現金正価を引き下げるという方向が当然な方向だと、かように考えております。
  121. 渡辺武

    ○渡辺武君 ただいまもちょっとお話がありましたけれども電子機械工業会に参加している六大メーカーのうち、松下、三洋、日立、この三者が、最近、傘下の系列店に対して現金正価を引き下げることはできないという趣旨の文書を送っております。私はここに、松下電器産業株式会社の社長の松下正治ですか、この方が、「ナショナル店会店ご主人様」というあて名で出した文書を持っていますけれども、この日付は九月十日になっています。通産省は、これら松下、三洋、日立などのこういう動きを御存じかどうか。  それからまた、こういうことは、電子機械工業会の内部の有力メーカーが大久保会長の発言の趣旨と正反対の方針を小売り店に押しつけているということを示していると思います。私は、この動きは実に言語道断の動きだというふうに思います。先ほど、カラーテレビ在庫についての数字の御報告がありまして、伺ってみますと、メーカー在庫は前年同期の二一〇%、二倍以上です。それからまた流通在庫は前年同期の一四六%、つまり一倍半にもなっておる。もう倉の中にテレビが一ぱい詰まっているのが実情でしょう。この原因は、いろいろあると思いますけれども一つには、やはりアメリカでのダンピングの問題で輸出がふるわなくなった。また、国内では、不当に高い価格のために消費者の不買運動が発展している。根深い不信ですよ。これが大きな原因だと思う。こうしてテレビの在庫は一ぱいある。だからして、普通の需給関係ということから考えてみれば、テレビの値段は下がるのが当然ですよ。ところが、値段を下げちゃいけないという趣旨のことを、別のことばで言えば、現金正価でもって売りなさいということを小売り店に通知している。言語道断だと私は思う。もちろん、業界の話を聞いてみますと、この三社のほうは、これはまだトランジスタ型のテレビの切りかえに準備が十分整っていない、この三社以外の他の三社、これは新製品に切りかえる準備がもう整っているので、だから古い型の製品は、この際値下げでも何でもして全部売りさばいてしまうというつもりで、値下げ要求に応じようというような動きになっているそうでありますけれども、そのこと自身、私はけしからぬと思う。しかし、何よりもけしからぬのは、自分の都合を主にして、あくまでぼろもうけしようということで、これほど問題になった国民の激しい指弾をまっこうから踏みにじって、小売り店に高い価格の販売を押しつける。これは言語道断だと思う。こういうことを固執する三社の動き、これをやめさせるべきだと思いますけれども通産省としてはどういうふうに措置をされるのか。  また、このように業界が不一致であるわけですから、いま御答弁されたように、価格引き下げについて行政指導をするとおっしゃいましたけれども、業界の内部が不一致であるという、こういう事態を前にしてどのようにされるのか、その点も、あわせて伺いたいと思います。
  122. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 松下、三洋、日立の各傘下の系列店に対します文書につきましては、私のほうには正式には三社から届いておりません。ただ、そういうことを各傘下の小売り店に対して言ったということは口頭で伝わっております。で、いま先生のお話のように、十月七日には、一応工業会の会長が、今後二重価格の解消につきましては前向きにやっていくという趣旨の発言もしておるわけでございますけれども、その業界の中に、御指摘のとおり、いろいろな利害がふくそうしておりまして、有利なところと不利なところと、いろいろございます。  それからもう一つは、その系列店というものに対する考え方でございますけれども、確かに、過去に、資本力のまだ小さな小売り店が非常に高い電機製品を売りさばいていかなければならない、技術力も非常に足りない、こういうような段階におきましては、メーカーの責任に、おきまして、この小売り店を技術的、資金的に指導して、それでまあ現段階まで来たわけです。過去のやはり歴史的な意味といいますものは、私は、存在しておったんではないか、こう思っておる次第でございますけれども、今後、消費者のあり方等の変化も関連しまして、現に、量販店といいますか、大量に仕入れて、まあ廉価、廉売していくという量販店のシェアが毎年向上しております。いま、家電業界、その販売業界におきましては、非常にその変化が急速に起こりつつある現段階ではないかと思います。いずれにしましても、今回の対米のダンピング問題、モデル価格発表の問題等々を契機にいたしまして、非常に世論がこれを追及するということになってまいりましたことは、それ自体、多年の悪いうみを出すいいチャンスだと思いますが、何ぶんにも、各メーカーは、いま業界内部におきまして、業界全体としてどういう取り組み方をしていったらいいかということを検討している段階でございまして、われわれも側面からこれと対応してやっていきたいと、こう思っております。いずれにしましても、単純なる価格の問題だけでなく、そういう長い間の流通形態、流通経過、これに関連するリベートの是正の問題等々、非常に幅広い概念が入っておりますので、現在の中小会社の足並みがそろうには若干時間がかかる現状かと私は思いますが、松下、三洋、日立の九月に行なわれたといわれておりますその声明といいますか、通達は、本質的に妥当なものでないとわれわれは考えております。
  123. 渡辺武

    ○渡辺武君 この三社の通達は本質的に妥当なものでないと考えておるという御答弁ですけれども、いまの御答弁、ほかの点なども伺ってみますと、まるで人ごとのような話を聞いている気がしますよ。一体、監督官庁の立場にある方の御答弁なのか、それともまた、傍観者の御答弁なのか、疑いたくなるような答弁ですね。そうでしょう。テレビの価格の問題というのは、きょうきのうはっきりした問題じゃないでしょう。問題になってきたのは、もうここ数年、国民の中からもいろいろ問題になっている。アメリカがこれはダンピングじゃないかという疑いを持ったということも、これはもう最近の問題じゃない。かなり前からあるんですよ。いまあなたのおっしゃった流通機構におけるリベートの問題その他等々、これも何もきょうきのう明らかになった問題じゃないんですよ。前から問題になっている。それを、通産省が、おそらく私は知っていなかったということは言えないと思う。知っていて、何の行政指導もいままでしなかった。ここに、問題がこれほど重大になってきた一つの大きな理由があると思う。もちろん、最大の責任者は、これは大メーカーだ。しかし、同時に、行政上の直接の責任者ということになれば、これは通産省が負わなければならぬと思う。それを、いやダンピングの問題が問題になった、国内でもこの価格の問題が問題になって、多年のうみが出たことでございます、というようなことじゃどうにもしようがないじゃないですか。もう少し責任のある立場で、はっきりと行政指導してほしいと思う。好ましくないという動きが大メーカー三社から出ている。しかも、これは、先ほど私申しましたように、九月初旬の段階で出ている。それからもう一カ月もたっている。何の行政指導もしなかったわけですか、こういう不当な動きに対して。どうでしょうか。  それからついでに、もう一つ伺いますけれどもね。カラーテレビのこの現金正価引き下げ方向で行政指導したいという趣旨の答弁ですけれども、この行政指導というのは、これはカラーテレビ業界の申し出があって初めてやるおつもりなのか、それともまた、申し出がなくっても、通産省として職権でこれをおやりになるつもりなのか、あわせて御答弁いただきたい。
  124. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 最後のほうからお答えいたしますと、現在、先ほど来申し上げましたように、カラーテレビ業界——これはカラーテレビだけでございませんで、いわゆる広い意味の家電業界でございますけれども、非常に複雑な状態を呈しているわけでございまして、先般、九月四日の国会におきましても、通藤大臣は詳細なる調査をこの際もう一回やりたい、二カ月以内に調査項目を選定して、業界の流通形態、それから価格形成機能全体を一回整理して、それで、その結果に基つきまして、通産といたしましては自発的に対策を講じていきたい、こういう答弁をなさっておるわけでございますけれども、現時点、非常に動きが早くなりましたので、われわれといたしましては、もう先週、通産省のモニター調査を数回開始いたしております。それから、いま申し上げました実態調査につきましても、その時期をできる限り繰り上げるべく、現在検討を急いでおるわけでございます。ただ、われわれも行政官庁でございますので、相当程度のデータといいますか、を把握しておりませんと、それに基づく一つの行為といいますか、は、それ自体、むしろ紛糾の的になる可能性もあると思いますので、われわれといたしましては、実態調査を急いで、その結果に基づいて、業界から申し出ることがなくとも、自発的に役所としても適当な対策をやっていきたい、こういう態度でございます。
  125. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一つ答弁が残っているでしょう。
  126. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) この九月の三社の系列店に対する文書の問題でございます。これは、先ほど申し上げましたように、われわれのところにはその段階で何ら通知がございませんで、ごく最近に至って、そういうことをやったということを口頭で聞いた次第でございます。いずれにしても、その段階におきましては、もうこの三社の文書ということでなく、業界全体として、この二重価格問題をどう取り扱うかということが業界全体の問題になっておりまして、先ほど申し上げましたように、会長としてもそういう記者会見をしたような状態でございますので、確かに、ちょっと弁明がましいんでございますけれども、ことしの九月から行政指導というようなことをしておりませんが、現在は、関係社の検討の結果を一応見ておるという段階でございます。
  127. 渡辺武

    ○渡辺武君 まことになまぬるいと言う以外にないんじゃないですか。そうでしょう。いまに至って、この価格実態その他についてどういうふうに調査するか、調査項目などを研究しているというようなことで、いつ一体調べることができますか。その上に、好ましくないとあなた自身が表現されたような行為をメーカー三社がやっているんだ、現に。これについてですね、何の具体的な措置もとらないんですか。もう一度重ねて伺いたい。とるべきだと思う、私は。
  128. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 非常に弁明がましいんですが、現在、非常に各社も前向きに、これは業界全体の問題として取り扱うということに姿勢がなっております。われわれとしては、その転換といいますか、それを非常に評価しまして、一緒に今後の基本的な改善について取り組んでいきたい、こういうことであります。
  129. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、時間の都合もあるので、質問を前に進めましょう。  いま、価格調査をやっているということをおっしゃいましたけれどもね。確かに、おっしゃるように、九月四日の衆議院の大蔵委員会でも、通産大臣がその旨答弁しておられるわけですけれども、この調査をどんなふうにやられるのか。その前に、通産省としては、この価格などの実態調査する権限ですね、あるいはまた、流通機構の実態などを調査される権限、これは、どのような権限を持っているのか、それからまた、この調査もどのようにやられるのか、この点を伺いたいと思う。  で、答弁を正確にやっていただくために、私、問題を提起しますけれども通産省は、職権によってメーカーから資料提出を命ずることができるのか、これを検査したり、あるいはまた必要な人物を呼んで質問などを行なって独自に調査することができるのか、それともまた、ただ単に業界に質問書を出すとか、あるいはまた、報告を求めるというような程度調査をやることしかできないのか、もし業界が報告や調査を拒んだ場合、どのような措置をとることができるのか、この辺を伺いたいと思います。
  130. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) まず、いまの調査権限につきましてお答え申し上げます。  現在、家電業界につきましては特別の業法みたいなものがございませんで、通産省の全般的な設置法に基づく権限でこれを行使する以外にないと思うのでございますけれども、その場合、いま先生おっしゃいますような詰めた御議論でございますと、職権に基づいて強制的に調査を行なうという権限は、私はないと思います。
  131. 渡辺武

    ○渡辺武君 職権で調査をする権限がない、と。それでは、価格引き下げ方向で行政指導をするとおっしゃいましたけれども価格引き下げを命ずるような権限はお持ちなんでしょうか。
  132. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 法律的には、価格引き下げを命ずる権限は、私はないと思います。これは官庁全体の問題でございますけれども、ある客観的な事実等の把握の前提で勧告的な行為を行なうことは当然できるし、それに当該業界が従うか従わないかというようなことを、国民全体が広くこれを監視するということは当然行なえると思いますが、法律に基づいて強制的に価格引き下げをするという権利は役所にはないのじゃないかと思います。少なくとも、このテレビにつきましては、ないと私は思います。
  133. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、徹底的に調査するなどと先ほどおっしゃいましたけれども、この調査もまことにあいまいもこたるものになる可能性があるわけですね。おそらく、業界にいろいろ質問書その他を出して、報告を求める、その結果をまとめて通産省発表するということであって、結局のところ、業者の言い分を、これを通産省が代弁をして、権威づけて発表することになるおそれがある。また、価格引き下げについても勧告をする。勧告しないよりはいいけれども、政治的には勧告したほうが確かにいいでしょうけれども、しかしながら、価格引き下げを命ずることはできないというようなことでは、何ですか、まるっきり水の中でへをしているみたいですね。そんなものですか。これほど大きな問題になっている。国民もまた期待をしているんですよ。通産省というのはそんな権限の状態で、大メーカーを取り締まることも何もできない、そんな状態でいいと思っておられるですか、どうでしょうか。何か、その点を改善することを考えていらっしゃるかどうか、御答弁いただきたい。
  134. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) 非常に形式的な答弁になって恐縮でございますけれども、一応、現在の行政というものは法律に基づいて行なうたてまえになっておりまして、先ほど申し上げましたように、特別の、現時点におきましては、強制的な価格引き下げ命令というものが出せるような立法——現行法にはございません。先生のおっしゃいますようなことをやりますためには、現在の通産省設置法では私は無理だと、こう考えます。
  135. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、価格の問題からちょっと離れて、流通機構の問題について伺いたいと思うのです。この流通機構についても、もうあなた方御存じだと思うのですけれども、小売り商泣かせの不当な支配が大メーカーによって行なわれている。これが、消費者に対する高い現金正価を押しつけるということと、それからまた、いま問題になっているこの二重価格制の、私は、重要な原因になっておるのじゃないかというふうに思います。現在、小売り商は、メーカーの支配、特にその重要なてことなっている差別的なリベート制度、これに、がんじがらめに縛り上げられておる。非常に強い不満を持っております。通産省は、当然、こうした実態についてすでに把握していらっしゃると思いますけれども、このリベート制度の実情、これを報告していただきたいと思います。
  136. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) リベートの実態につきましては、各社非常にまちまちでございまして、ことばをかえて言いますと、いい悪いは別に、このリベートのつくり方というものがどういうあり方であるかということが、むしろ販売促進のポイントであるという時代もあったわけでございます。詳細につきましては私もつまびらかにいたさない点もあるわけでございますけれども、このリベートというものは、どちらかといいますと、値段の割引ということにもつながりますけれども消費者に対する利益還元がちょっと行なわれにくい面もあると思いますので、これがあまりにも過度にわたるということは、いろいろな意味で、流通形態としては望ましくないのではないか、こう考えております。ただ、リベートといいますのは、広告とかセールスマン活動等、広義の販売促進活動の一分野でございますので、こういう広いつながりのある一つのあらわれでございます。このリベートの点だけを取り出しまして、これを画一的に規制するというようなことは、なかなか現実問題として困難ではなかろうか。いずれにしましても、基本的には、現在の——これは家電業界に限りませんけれども、自由主義経済のもとで各社が猛烈な競争を行なっておることでございますので、これが現実の姿でありまして、これをわれわれのほうの、先ほど来出ておりました行政指導で、ある時期を区切って非常に画一的にこれを整理するということは、なかなかむずかしい面があるのじゃないか、こう思っておる次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  137. 渡辺武

    ○渡辺武君 このリベート制度、これも前からいろいろ問題になっておる点ですね。ですから、特にこのカラーテレビのモデル価格発表されたときから、もう数カ月たっておるわけでして、いま、責任者のあなたから、詳細をつまびらかにしていないという御答弁を私はこの席で聞くとは思いませんでした。これは私は職務怠慢だと思います。本気でこういう流通機構の改善ということをあなた方がやろうとするならば、もうその実態についてはかなり深くつかんでおるということが私は前提条件だと思うのです。そうでなければ、流通機構の改善なんといっても、そんなもの、できるものじゃないですよ。実態もつかめないで。私どもがほんのちょっと調べただけでも、ある程度のことはわかる。いわんや、権力を持っているあなた方が本気になって調べれば、もうとっくに十分な調査ができておる、そう考えて私は差しつかえないと思う。  時間が惜しいけれども、しようがないから、私の口から、われわれが調査したこのリベート制度の一端を申し上げてみたいと思います。これはあなたも御存じのとおり、秘密の霧に包まれて、なかなかこれはわからない。ですから、いまから私が申し上げることは、その全貌だということは申し上げません。その一端を御参考までに申し上げて、そうして、今後あなた方が調べる上にこの報告を役立たしていただきたい、こう思います。  まず、これは一番典型的だと言われている松下電器の場合だけを取り上げて申しますけれども、松下電器は、よく知られてるように、全国を多数の地区に分けている、販売地区に。そうして、その地区に、直営もしくは人的、資本的に強い支配を及ぼしている系列下の卸売り店を一地区に一つだけつくるというやり方をとっております。ですから、ほかの地区の小売り商が別の地区の卸売り商から仕入れをしようと思っても、これはできないことになっている。また、事実やったとしても、いろんな形でこれが禁止される、こういう制度がとられている。そうして、この一地区ただ一つの卸売り商を通じて、松下電器産業は、末端の小売り商に対して強い支配を及ぼしているというのが私は実情だと思う。その支配の最も有力な手段は、先ほども申しましたけれども、現金正価販売の押しつけと差別的リベート制度です。松下は、各小売り商に価格表を送っている。私はここに参考までに持ってきました。これは日立が送ってる価格表です。これは松下電器が各小売り商に送っている価格表です。こういう価格表を送って、一方では——先ほど時間がなくて、ちょっと触れませんでしたけれども、一方では、公正取引委員会が最近松下電器のやみ再販について審決案を出しました、あの中にもはっきり書かれておりますように、一割以上の値引きは許さないというような形で、現金正価の販売を事実上小売り店に押しつけているというのが実情です。そうして、一方で、こうして消費者に高い値段でもってテレビを売りつけさせながら、ばく大な暴利をむさぼって、その暴利を一部分を、これを販売拡張などのえさとして、小売り店にリベートとして出してる。ところが、このリベートをよく調べてみますと、非常に零細な一般の小売り店、ここにはリベートが非常に少ない。しかし、いわゆる量販店などをはじめとする、大量に販売のできる大商社、ここには特別優遇したリベートが与えられている。ですから、末端の零細な小売り商は必死になって販売を拡張し、消費者に高い現金正価を押しつけなければ営業ができないというようなことに追い込まれているというのが実情です。  中身を簡単に一、二申しますと、まず、台数リベートというのがある。これは、小売り店の販売台数に応じて、一台について仕入れ値段の二%、三台について五%、五台について八%等々、つまり、たくさん売ったその台数に応じて差別的なリベートが与えられるということになっている。さらに、総売り上げ高の一%を積み立て金として松下本社に積み立てさせ、百億円になったらこれを各小売り店に還元してやるというようなことになっている。しかし、実情を聞いてみると、ことしの春ぐらいで、すでにこの額が百億円にたったにもかかわらず、何らの説明ももせずに、いまだにこの百億円を事実上横領している。返してない。そういう事実も松下電器はやっております。いずれにしても、こうしてリベートをえさにして販売拡張にかり立てて、そうして消費者に高い現金正価での販売を、これをやらしているというのが実情だと思うんです。さらに、特に販売の拡張をしようとする商品に対しては最高二〇%にも及ぶ拡張費リベートを出す。また、月二百万円以上継続して販売する店には二、三%の販売報奨金というのを特別につけるというような形。さらには、現金仕入れを奨励して手形仕入れを押えるための、現金仕入れのリベート、それから手形仕入れについても、手形の期間の少ないものにも特別に手形リベートを出すというようなことをやる。特に松下電器は、これはもう世間周知のところですけれども、販売成績の良好な店を松下ショップ店として系列下に結集して、年二回にわたり二%ずつの特別リベートを与える。また、先ほど申しました現金リベートについても、松下ショップ店については四%、五%、特別に有利な取引条件を保証するという形になっているわけです。いま、こういう松下の大量販売店などに対する、あるいは松下のショップ店に対する特別な優遇措置、これが、消費者の強い不満と、そうしてメーカー間の競争によって値くずれの一つの原因になっている。量販店では、高いリベートが来るから、どんどん販売値段を下げて売ることができる、零細な小売り店では、マージンが少ないために、リベートが少ないために、どうしても現金正価でもって売らざるを得ない、こういうことで、零細な小売り店が、消費者と、そうしてメーカーから、両面からはさみ打ちにされて、いま窮状に立っているというのが実情だと思う。いまの二重価格制というのも、そういう仕組みから生まれていると思うのです。  いま申し上げたことをお聞きいただいて、通産省としてどんなふうに思われるのか。たくさんの消費者にたいへんな迷惑をかけている。また、松下の販売する商品の半分以上を売っているといわれる零細な小売り店、こういうところにたいへんな犠牲を強要している。この不当な差別リベート制度、これはやめさせなければならないのじゃないだろうか。そうして、末端の零細な小売り商には安心して営業のできるようなマージンを保証しながら、しかも、先ほどあなた御自身が言明していたように、現金正価を、これを少なくとも、量販店が売っている低い実勢価格あるいはまた適正な値段にまで引き下げさせるように指導すべきだと思いますけれども、その点、どうでしょうか。
  138. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) これは、家電業界に限りませんけれども、特に非常に競争の激しい、しかも、成長といいますか、新製品の発売の速度の早い、かつモデルチェンジの非常に早かった家電業界において、特にいろいろなそういう、いま先生御指摘のような、複雑怪奇な販売形態が行なわれてきたし、現在も行なわれているのであろうと考えるのでございますが、いまお話を聞きながら感じておりますのは、一番大事なのは消費者でありまして、消費者が、地区及び場所、それから物によって著しい格差が賢い値につくというのは非常におかしいのではないか。もちろん、大量に現金仕入れをしたようなところは、当然、経費が少なくていいわけでございますので、一品ずつの仕入れで一品ずつに売るところよりは、それは安く売れると思いますけれども、その差、合理的な差というのはしようがないと思いますが、問題は、異常なる違いがそこに出るというのを是正すべきではないか、こう考えるわけであります。  それからもう一つの、小売り店の窮状の問題でございますが、先般、全国小売り商の幹部の方々とも懇談をしたわけでございますが、私は話を聞いて全く同感であったわけでありますが、全商運の幹部の方のやはり認識といいますのは、いまここに出ておるいろいろな現象というのは長年の積弊が出ておる、しかし、これを直すにあたって、自分たちは、メーカーの悪い点は直してもらわなければいかぬけれども、家電業界全体としての問題としてこれと取り組みたい、そうしない限りにおいては、一時非常にドラスティックな、ある解決が一見なされたように見えても、それは、家電業界全体の百年の計と申しますか、体系的な発展をむしろ阻害するものである、したがって、先ほど言いましたように、大量販売店と小売り店で買う場合のリーズナブルな差がつくような価格形成は当然であるけれども、それを前提にしつつ、この際、メーカーに対する対決ムードよりは、むしろ、これを機会に、長年の悪いところを直していただく、そして、相ともにやっていきたい、こういうことを幹部の連中は申しておったわけであります。私も全く同感でございまして、先ほど来、先生から非常に手ぬるいというおしかりがあったわけでございますけれども、何ぶんにも、まあ俗なことばで言いますと、自由主義で、非常に競争の激しい業界でございますので、これを、何らかきっかけをつくりまして、消費者と小売り店とメーカーとが、体制的といいますか、一番いいかっこうで、長期的に安定する道をこの際見出すべきではないか、こう考えておるわけであります。
  139. 横山フク

    委員長横山フク君) 重工業局の次長さん、やっぱり答弁は率直に答えてほしい。時間がないのに、小売り商を呼んでの何とかという話をここでしないで、率直に答えて、簡潔に、時間がだんだんおくれていますから、その点、御協力願いたいと思います。
  140. 渡辺武

    ○渡辺武君 確かに委員長がおっしゃるとおりでして、私も聞いていて若干いらいらするという感じですよ。  通産省に対する質問はこれで打ち切りますけれども、最後にお願いしたいことがあるのです。それは、大メーカーの利益を、これを主にして今度の問題を処理したらいかぬということですね。問題の根源は、大メーカーの不当なやり方にある。あの横暴な価格のつり上げ、横暴な小売り商に対する締めつけ、ここに問題の最大の根源がある。だから、この問題を正しく改善しようと思ったら、何よりも消費者の利益を守ること、そうしてまた、零細な小売り商の利益を守ること、その点をしっかり土台としてこの問題の解決に取り組んでほしいと思う。まあ権限もないとかなんとかといって、肝心なところになるとお逃げになるかもしれませんが、やれるところの範囲でひとつ徹底的にがんばってほしい。この点をお願いして、通産省に対する質問を終わります。  なお、せっかく公正取引委員会委員長さんにおいでいただきまして一言も御質問申し上げないということでは失礼ですから、時間もちょっとたちましたけれども、なお少し時間をいただきたいと思います。  まず、一番最初に伺いたいことは、先ほども申しました、松下、三洋、日立、この三社が系列下の小売り店に出した通知ですね、この点について伺いたいと思うのです。松下産業が出したものについて、私ここに現物を持っております。ここにはこういうことが書かれておる。「世間より誤解を招いているいま一つの遺憾な点は、真の事業の本質を忘れ、故意に価格を下げ、競争関係にある真面目な電器専門業者を排除せんがために不当な安売りを行ない、これがためかえって消費者の疑惑を招くような、一部業者の不当な商行為であります。」、こういうことばが入っている。この前には、テレビの値段をもう四十何%も下げたということで、もう下げる余地はないのだということをにおわせ、そして、ここでは安売りはけしからぬということを言っている。そうして「消費者価格のみによって購買を決定されるのではないという信念をもって顧客奉仕に徹し、説得こそ極めて重要な決め手であるとお考えいただき、気慨をもって事に当っていただきたい」ということなんです。これをずっと読んでみまして、また、お聞きくださってお気づきだと思いますけれども、たいへんに表現は独禁法違反になることを避けるうな表現になっている。しかし、実質上テレビの値下げをやっちゃいかぬということを言っているのがこの通知の内容だと思います。つまり、別のことばで言えば、現金正価を守れということです。さっき私が申しましたように、松下では、一〇%までは値引きを許すということになっているそうでありますから、あるいは一〇%までの値引きは許すけれども、それ以上に値引いてはいかぬというのがこの通知の趣旨だと思う。これは明らかにやみ再販の強要であると思うけれども、この点、委員長としてどんなふうにお考えなさるのですか。  また、これは、原価より不当に高い価格引き下げるという国民の要望、それからまた、差別的リベート制度をやめてほしい、卸し値も引き下げてほしいという小売り店の要望、これを頭から踏みにじり、しかも同時に、公正取引委員会が十月一日に出しました松下電器に対する審決案の内容にも私はまっこうから挑戦するものだと思う。この審決案は、もう委員長が御承知のとおりですけれども、この松下電器が傘下の小売り店に対して、一〇%以上の値引きは認めないという形で現金正価販売を強要したことが、独禁法十九条違反のやみ再販であるとしたものでございます。問題は、この審決案に反対して、いま異議の申し立てをしておりますけれども、その異議の申し立ての最中に、いま私が申しましたような、同じような内容を持った通知を傘下の小売り店に出している。これは全く法の権威を無視した、不遜きわまりない態度だと私は思う。こんなことを許しておいたら、私はたいへんなことだと思います。公正取引委員会の権威からいっても、こういう松下電器その他三社の動きを当然私は取り締まるべきだと思う。独禁法の第六十七条を見てみますと、緊急に必要のときには、このような独禁法違反の行為や命令を取り消すように裁判所に申し立てることができるという趣旨のことが定めてありますけれども公正取引委員会は、この緊急停止命令を裁判所に申し立てるべきであると思いますけれども、その点、どのようにお考えか。
  141. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) 二つお尋ねのポイントがあると思います。  第一に、九月の初句でありますか、中旬頃に、三社が出したという小売り店に対する要望を、おまえはどう考えるか。これは、一言にして申し上げれば、私ども考え方は、私どもの審判官が作成いたしました先般の松下電器産業に対する審決案に尽くされていると思いますので、あの線を私はただいま——これからほんとうのいわは審決にまた異議の申し立てが来るとしなければならぬ、いわば係争中のことでございますので、具体的にその問題について触れるのは、ただいまの立場上遠慮しなければならぬと思いますが、公正取引委員会考えている基本的な考え方は、審判開始決定書及び先般の審決案に書かれている線であるというふうに思いますので、そのように御承知願いたいと思います。審決案が出たのは十月でございますが、権威を無視したとかどうとかいうような話が、かりにあるとしても、それは九月の話でございますけれども、私は、先ほど通産省の言いましたように、いまの段階においては、三社といえども、現金正価の問題については深く考えなければならないというふうに思っておるのであるというふうに私は見ております。九月の何日ごろかのお話の、そのときのことは、そのときの状態において何かそういうふうに言ったのだろうというふうに思います。ただ、それは要望であるのか、拘束であるのか、どの程度締めつけであるのか、これは具体的に調べてみないとわからない問題であると思います。  それから第二番目の問題でございますけれども、したがって、具体的に独禁法違反の不公正の取引状況が起こっていて、それを是正するために道がない、あとからやったのではおそいというときには、おっしゃるとおり、たとえば、必要とあれば、いまおっしゃったような停止命令を裁判所のほうにお願いするということもございましょうけれども、本件については事態は刻々と動いておりますし、先ほど申し上げたような状況でございますので、ただいまの段階で、私は、それについて何らかの措置をとるということは考えておりません。
  142. 渡辺武

    ○渡辺武君 事態は刻々と動いているとおっしゃいますけれども、しかし、こういう行為をやったということについては、これはもう否定すべくもない事実です、これは。私は、この行為自身を言っているのです。この行為自身は、先ほども申しましたように、公正取引委員会の審決案の内容から考えて見れば、私はやはりやみ再販だ、やみ再販の強要だと思う。この点についてお調べになるおつもりがあるかどうか。また、やみ再販の強要だというふうに私は思うけれども委員長もそのような疑いがあるというふうに考えていられるかどうか。その点を伺いたい。
  143. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) 私は、本日ただいまそのお話を伺いましたのでございますから、この段階で、そんなものは全然調べる必要がないとも申せませんし、絶対これは調べてみなければならないとも申し上げる段階にないと思います。したがって、私はよく事情を聞いてみたいと思います。
  144. 渡辺武

    ○渡辺武君 よく事情を聞いて、お調べいただきたいと思うのです。  先ほども申しましたように、この三社の動き通産省だって、好ましくない動きだと言っている。われわれ一般国民からすれば、全くこれは言語道断な動きですよ。これをもし取り上げないとすれば、私は、せっかくあの審決案を出されて、松下のやっていることはこれはやみ再販だというような内容のものを出されたけれども、竜頭蛇尾に終わるおそれがあるのではないだろうかというおそれも感じます。具体的に生きて動いているこの問題を、いち早く緊急に取り上げて、公正取引委員会として、しかるべき結論を出してほしいと思う。重ねて、この問題の調査に乗り出してくださること、これを私要望しますけれども、どうですか。
  145. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) 当委員会における議員の御発言として、御要望として、私として承っておきます。
  146. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、私の発言ですけれども、ひとつ尊重して、調査に乗り出してほしいと思います。  それから、先ほど私、カラーテレビ業界の、特に松下の流通機構の問題を申しました。お聞きくだされば、もうおわかりになったと思いますけれども、この流通機構、これまた独禁法違反の疑いに私は満ち満ちたものだと思う。  まず、申し上げますと、さきにあげた松下電器の一地区一販売店制の問題、つまり、同じ地区内の小売り店はその販売店からしか買うことができない。ですから、そこの地区の小売り商が別の地区の卸売り商から買うということは禁止されている。事実、私小売り店から聞いてみました。ある小売り店は、これは別の地区の卸売り商から安い値段で買うことができた。自分の地区の卸売り商より安い値段で買うことができた。ところがどうですか。それを業界のことばでは「密番」と言うのです。つまり、スパイです。メーカーのスパイがやってきて、このテレビをどこから仕入れたかということを調べて、そうしてこれを通報する。そのことによって、別の地区の卸売り店はその小売り店に、もう売らないよと言って禁止する。そうしてまた、いままで自分が買っていた同一地区の卸売り店、ここから差別的な措置を受けた。こういう実例がある。ですから、これが松下電器の市場独占をささえる著しい市場制限行為だというふうに私は思いますけれども、この点、どんなふうにお考えになるか。  それからまた、私が先ほど申しました松下の差別的なリベート制、これは、零細な小売り店には少なくて、量販店などの大きな商店には多くのリベートを与えるなどして、零細小売り店に著しく不公正な取引方法を押しつけております。また、このリベート制度が、零細小売り店をかり立てて、カラーテレビの市場条件に合わない不当に高い現金正価を維持させる武器ともなっております。これは独占禁止法第二条その他に違反する行為と思いますけれども、どうでしょうか。  公正取引委員会は、このような不法不当な一地区一販売店制度や差別的リベート制度をやめさせて、小売り店に安心して営業していけるマージンを保証して、不法に高い現金正価を引き下げて、市場の公正を取り戻すべきだというふうに思いますけれども、この点はどんなふうにお考えになるか。
  147. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) これも、二つ問題を御指摘になりました。  一つは、いわゆる一店一地方制のような流通経路の拘束でございますが、これにつきましても、ただいまお引き合いに出されましたように、先ほどの審決案で触れておる問題でございます。公正取引委員会のほうの考え方というものはそこに出ているわけでございますが、現に、これは異議申し立てが来れば審決問題として私がかかわり合うことになる問題でございますので、ここではそういう問題について触れることをお許し願いたいと思います。しかし、私どもの審判開始決定書並びに審決案において指摘している点は御了知いただきたいと思います。  それから第二に、いわば差別的なるリベート問題、これは電機製品等に限らず、いろいろなところに見られる問題であり、そしてそれはまた、いわゆる再販の価格を維持するような契約をしておるところにも、ときどき見られるような問題でもございますが、この問題は、どこまでがいわゆる自由な営業上の競争の問題であり、どこからが今度は不公正な取引競争の問題になるかという、きわめて経済実態におけるいわば接点の、むずかしい問題でございます。  そこで、一般的に私はこの二つについて申し上げますと、やはり業界でもって自由に創意くふうをこらしていただいて、競争していただく、自由な競争ということも大事でございますが、一方で、御指摘のとおりの、消費者を特に害するような結果になる不公正な競争ということも、またこれ、規制しなければなりません。で、これは、先ほども質問がありましたが、業界によっては、たとえばリベート問題等につき、あるいは景品などにつきまして、特殊指定という形におきまして、こういう業界ではこういうやり方をしますと、それをはずれたら不公正な取引ということになりますよという、そういう制度が独禁法の上にございます。したがって、こういう問題についての考え方は、ある程度業界におけるそれぞれの何と申しますか創意くふうの問題もございますが、一方において、お互いがお互いに公正な競争をしようという意味での特殊指定の問題を今後考えるかどうか、これは御承知かと思いますが、当該関係業界等を含めて、公聴会を開いてやらなければならないという手続がございます。先ほど鈴木委員にお答えしました景品とか表示については公正競争規約という形のものがございますが、一般の取引についてはそういう公正競争規約という制度がございませんで、いろいろ実情を聞いた上で特殊指定と、こういう形のものがございます。それで、そういうことで今後の公正な競争のルールというものをいろいろな業界において立てることができるかどうか、特に家電業界等においてそういうことができるかどうか、これからの問題であると思いますが、ただいま渡辺委員の御指摘になりましたポイントは、まさにそういう方面にこれから問題が発展するかもしれないということを暗示しておられるように私は受け取ったわけでございます。
  148. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ、いろいろ公正取引委員会にメーカーあたりから風当たりが強いということは、かねがね承っておりますけれども、どうも、伺っておりますと、学術的な論文を読んでいただいているような感じがするのです。やはり、公正取引委員会が勇気をもって、通産省自身も多年の積弊だと言っているこの差別的なリベート制度の問題、流通機構の問題、これはよろしく取り組むべきだと私は思う。  重ねて要望しますけれども、この差別的リベート制度、これを取り上げて調査をお始めになるかどうか、その点、おっしゃっていただきたい。
  149. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) すでに審決等において問題にされました事件について調べた範囲においてわかっておりますことはございますが、ただいまの現状についておまえ把握しておるかということになりますと、おしかりを受けることになりますが、現在全面的にまだ把握しておりません。したがって、御質問の趣旨が、これからそういった問題もよく調査するか、そうして調査した上で対策を立てるかという問題であるとすれば、人手も限られておりますけれども、とにかくやれるだけ一生懸命やりたい問題の一つであるということを申し上げておきます。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問。時間もだいぶ過ぎましたので、まだたくさん伺いたいことがございますけれども、いずれ次の機会に譲って、最後に一言だけ伺いたいと思う。  いま、公正取引委員会カラーテレビ価格を不当表示の疑いで調査しつつあるということを私聞いております。しかし、この問題は、ただ単に不当表示だけの問題ではないと私は思うのです。大企業による価格の不当なつり上げというところに、このカラーテレビ問題の一つのポイントがあると思う。表示も、確かに二重価格などで問題を持っておりますよと言っているけれども、むしろ、大企業によるこの価格の不当な引き上げこそ、いま一番一般的に行なわれている大企業価格の引き上げのやり方だと思うのです。で、先ほども他の委員から質問がありましたけれども、この九日から行なわれた朝日麦酒の値上げ、これも、これから秋口にかかって売れ行きも悪くなる、したがって、需給関係からすれば、当然値段を引き下げるべきようなときにむしろ値段を引き上げるというようなことで、客観的に見て、それだけのことから考えてみたって、明らかに不当な価格の引き上げ、しかし、これに対して、監督官庁である大蔵省、これが価格の値上げを押えるだけの権限はないのだというようなことを言って、関連値上げをしないようにというので朝日麦酒以外のビール会社に要望を出しているというような程度のことなんですね。私は、こうして大企業がその独占力を十分に行使して、かってに不当に値段を高くつり上げ、これを何ら押えることができないなどと言っているところに、現在の物価政策の大きな抜け穴の一つがあると思っております。先ほど鈴木委員質問に対して、委員長御自身も、この朝日麦酒の引き上げについては、どうも私伺っていると、やみ再販だというようなふうには断じられないのじゃないかというようなお気持ちが腹の中にあっての御答弁だというふうに承りますし、また、価格協定の疑いということについても、どうもこれは実証がむずかしいというようなことがおなかの中にあっての御答弁だというふうに承りました。四十三年のビールの一斉値上げのときにも、結局のところ、前公取委員長は、いやこの価格協定を実証することは非常に困難でございましてということで、とうとうあのビールの、事実上これはもういわゆるプライスリーダーシップで引き上げているあの問題に対してメスを入れなかった。そういう実例もありますので、結局のところ、こういう大企業の横暴な価格引き上げについて、いまのところは何ら押える手段がないというようなことになっているわけですね。  しかし、前回の当委員会で私が経済企画庁長官に、この問題について、つまり明確な価格協定という事実はつかめない、しかし、大企業がかってに不当に自分のところの製品の値段をつり上げる、こういう問題についてどうするのだと言ったところが、経済企画庁長官は、公正取引委員会調査をやってもらう権限を付与したいという旨の答弁をされております。しかし、私は、あらためてこれは公正取引委員会に権限を付与するということはけっこうなことですけれども、しかし、あらためて権限を付与するまでもなく、こういう価格調査は現行法で十分できるのじゃないだろうか、そう思います。独禁法第二条七項二号に、これはもう委員長よく御存じのとおり、「不当な対価をもって取引すること。」、これが不公正取引の内容の一つとされているわけですね。明らかに不当に高い値段でもって品物を売っている。これは独禁法二条七項の二号、これに私は該当するのだと思います。特に独占禁止法第四十条、これによって公正取引委員会調査権を与えられている。かなりこれは強い調査権です。大いに私はやれると思います。この点から、カラーテレビ、それからまたビール、これらの不当な価格引き上げについても、さっそく調査を開始されるべきだというふうに思いますが、この点、どうでしょうか。
  151. 谷村裕

    説明員(谷村裕君) 初めにお断わり申し上げておきます。  ただいま渡辺委員から、さっき、十円のことについて、小売りがどう、卸がどうと言ったことについて、それが何か、どうもやみ再販をやっているのを認めているようないないような表現だというようにおっしゃいましたが、私の言おうとした真意は、新聞その他で十円上がると言われていることそれ自体は、本来ならば消費者の手によって十円上がらさないで済むはずだ、メーカーというのはほんとうは自分の売り値だけしかきめることができないのだ、そのことを言いたかったのであります。その点、御了承いただきたいと思います。  第二に、このビールの問題、あるいはカラーテレビ等の問題もございますが、いわゆる大企業の市場支配力、別なことばで言いますと、寡占業界における一種の管理価格的な動きというものをどう考えるかということは、実は大きな課題でございます。現に、私どももそういう課題を受けて、ビール業界についても調査をしているわけでございます。しかし、現実に値上げそのものが不当であるかどうか、一体内容的にどうであるかという問題は、いまの経済体制では、そこまで立ち入るという姿に実はなっておりません。御存じの、四十条をいまお引き合いになりましたが、四十条は、そういう意味では一般的な調査権限を私どもに付与されております。また、罰則もございます。現に、私どもカラーテレビ等についての実態調査いたします際には、背後にこの四十条を持っております。しかし、具体的なある一つの会社の原価の内容までこの四十条でいけるかどうかということについては、非常にまだ問題があるかと思います。そこらが、非常に私どもとしても、法の執行にあたって、ある意味では国民のために、しっかりやらなければならないと思いながら、一方では、やはりその法に許されている限界というものをどこに置いて考えるべきかという、法の執行の立場にある者として、やはり慎重にしなければならない問題であるというように考えているつもりでございます。しかし、いずれにいたしましても、ビールの値上げの問題については、簡単なことを申しますと、おれがちょっと先に行ってみるが、あとからうまいことついてきてくれるかという、一つの冒険をやっているかっこうになっております。はたしてその冒険を成功する見通しがなくてやったのか、冒険を成功するつもりでやっているのか、あるいは、そこが何らかの意味で話がわかっているのか。こういう辺を、先ほど渡辺委員は、前の委員長がどうもうまくできなかったところだというように御指摘になったのだと思います。まさに、そこらが寡占業界等における一番むずかしいところでございます。そういう意味で、私は、この問題についての動きを、やはり公取の立場としては非常な関心を持って見ている、かように先ほど御答弁申し上げたようなわけでございます。  御質問の御趣旨に直接お答えする形になっておりませんが、私の気持ちをお汲み取りいただければ幸いだと思います。
  152. 横山フク

    委員長横山フク君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時七分散会