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1970-06-09 第63回国会 参議院 物価等対策特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月九日(火曜日)    午前十時五十分開会     —————————————    委員の異動  五月十三日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     瀬谷 英行君  五月二十八日     辞任         補欠選任      竹田 現照君     鈴木  強君  六月二日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     竹田 現照君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         横山 フク君     理 事                 林田悠紀夫君                 竹田 四郎君                 阿部 憲一君                 中沢伊登子君     委 員                 上原 正吉君                 櫻井 志郎君                 鈴木 省吾君                 高田 浩運君                 瀬谷 英行君                 藤原 道子君                 山本伊三郎君                 渡辺  武君    国務大臣        国 務 大 臣  佐藤 一郎君    説明員        厚生大臣官房審        議官       横田 陽吉君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  鴛淵  茂君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  神林 三男君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  小島 康平君        建設省計画局宅        地部長      朝日 邦夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (消費者行政に関する件)  (当面の物価対策に関する件)     —————————————
  2. 横山フク

    委員長横山フク君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査中、消費者行政に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。  竹田君。
  3. 竹田四郎

    竹田四郎君 先に、去る六月三日の朝日新聞に出ておりましたタラコ発色剤の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、これから六月、七月に入りまして、タラコ消費需要というものがふえてくる時期になっているというふうに聞いておりますけれども、しかし、前には、何か、タラコをまっかに染めてありまして、それに対する批判が出ましたけれども、今度はああいうふうに赤く染めないで、亜硝酸ソーダとかあるいは硝酸ソーダという発色剤を、加工の過程において使用しているというわけでありますが、この発色剤というのは一体厚生省のほうではどういう基準でその使用を認めているのかどうなのか、その辺をひとつお聞きしたいと思います。
  4. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま御指摘タラコにつきましては、実は亜硝酸塩使用を認めておりませんので、それを使用しましてタラコは、つまり食品衛生法上違法な食品でございます。したがいまして、ただいま御指摘のような事実を知りましたので、私どものほうでは、さっそく生産地並びにそれを見受けました府県に対しまして、その製造、流通一切をストップするようにいたしたわけでございます。  なお、この亜硝酸塩と申します発色剤使用につきましては、たとえばハムソーセージでございますとか、そういったものについては認めておりますが、タラコのような、なまの食品については認めておらないわけでございます。
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 この発色剤を使うと、どういう形でどういうふうに人体に影響するのか。新聞によりますと、発ガン物質というジメチルニトロアミンというのですか、非常にむずかしい名前でありますが、そういうものが、タラコの中の物質ですか、そういうものと反応してできるんだというのですが、それについては、一体厚生省のほうは、そういう事実があるのかどうなのか、また 具体的にどのくらいそういうものを使うことによっての危険性があるのか、そういうことについてお調べになったことがあるのかどうなのか。あったら、その内容をお知らせいただきたい。
  6. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま御質問の点につきましては、亜硝酸塩魚肉の中にございますメチルアミン類と結合いたしまして、発ガン性を持っておると称せられますジメチルニトロソアミンというものを生成するおそれがあると、こういうふうな学説もございます。ただ、この問題につきましては、昨年度、私どものほうでガンの研究費を使いまして国立衛生試験所においていろいろ検討いたしたわけでございますけれども、現在までの研究の結果では、こういうふうな物質の生成は確認はされておらないわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、ただいま申しましたような、そういった学説もあることでございますので、さらに引き続き検討いたしますし、それからまた、亜硝酸塩自体劇物であるということでもございますので、この使用につきましては、現在認めておりますハムソーセージ等以外にこれを認めるということは全く考えておらないわけでございます。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 この使用基準というのは、畜肉ソーセージには何か七〇PPM、それから魚肉ハムソーセージ、これについては五〇PPMスジコイクラについては五PPM以下だけを許可されておるというのですけれども、この七〇とかあるいは五〇とか五PPMという基準は、かなり大きく幅があるわけですが、どうしてこれだけ大きく開いているのか、どうもその辺がよくわからないのです。たとえば、この魚肉ハムソーセージ等については、これはスジコとかイクラとか、そういうものと似て、やっぱり魚肉あるいはそれに類するものとまあ同じような性格のものだろうと思うのですが、その使用基準が、片方はかなり高く、片方はその十分の一である、こういう点は一体どこからそういう量について段階ができたのか、その点を教えていただきたい。
  8. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま先生からお話しいただきました亜硝酸塩の量でございますが、これは、その食品残存する最大許容限度残存最大許容限度がただいま御指摘の量でございます。それで、これはどういうふうにしてきめたかと申しますと、そのものによりましてどの程度の亜硝酸塩を加えた場合に発色効果を持つか、その辺から検討いたしまして、したがって、ものによって残存量として最大許容量が幾らというふうに差異が出ておる、こういうことでございます。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、この七〇とか五〇とか五PPMというものは発色効果をねらったということであって、先ほどの御答弁の中に、亜硝酸自体がかなり劇薬だと、こういうことなんですが、基準はその発色基準にした、こういうことで、亜硝酸ソーダそのものをかなり人体そのものとして体内に入れてもこれは関係ないのかどうか。何か基準発色基準にしているということになりますと、どうも商品中心基準であって、人間についての安全基準といいますか、そういうものについてあまりないというのはちょっとおかしいのじゃないかと、そういう点で、ひとついまの点の疑問点を解明していただきたい。
  10. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま、いささか御説明舌足らず誤解を招きまして申しわけございません。これは、衛生的に危害がない量と申しますと、大体世界各国においていろいろなものに使っております許容限度というものがあるわけでございます。したがって、その限度よりもできるだけ低い限度、しかも、それで最小限の限度にしておいてなおかつ発色効果を持つリミットはどうであるか、こういうことできめておるわけでございます。したがって、諸外国の使用例等々と比較いたしましても、ここに認めておる最大残存量としての許容量は非常に少ない量である。したがいまして、発色効果を持たせる最小限度ということだけを申しまして、衛生的に危害のある限度量から申しますと非常に少ない量であるということを御説明を落としましたので、たいへん誤解をお受けしたようでございますが、そのようなことでございます。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも、わかったようなわからないような感じが実はするのですが、たとえば、スジコイクラについては五PPM以下、片方魚肉ハムソーセージについては五〇PPMだと、これは、同じ口に入るものでも、口に入ってかまれた以上は同じであると思うのですけれども、その辺、どうも、片方のほうは非常に少ない、片方はこう多いというのは、何か、たとえば魚肉ハムソーセージの場合は皮をむいて食うとかするのだけれどもスジコとかイクラというものはもうそのまま食ってしまう、そういうようなところにこういう基準差異があるのじゃなかろうかと私は思っていたのですけれども、いまのお話ですと、どうもそういうことではなくて、世界的な基準から見て安全だからこうだ、こういう話であるならば、これは何も、スジコイクラあるいはタラコにしても、ほかと特別に差異を設ける必要はなかろうと私は思うのです。これは何か反応する物質関係なのかどうなのか、その辺が私よくわからないのです。いまの御説明だけでは、おのおのこれだけ大きい幅のある基準がつくられているという根拠がどうもちょっとわからないのですけれども、御説明いただきたいと思います。
  12. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 先ほども申し上げましたように、衛生的な観点から考えました場合の許容量基準といたしましては、これは非常にシビアな基準でございます。したがいまして、この中で一番よけい使うようになっておる残存量につきましても、いままでいろいろ検討しておりますその結論に従いますと、衛生的には全然問題にならない量である。ただ、ものによりまして、そのものに含まれておるいろいろな物質、その結びつき関係で、非常に少ない量で発色効果を来たすものと、しからざるものと、こうございますので、したがいまして、ここにございますように、食品品目によって量を異にしておる。まあ、いずれの量につきましても、衛生的な問題からは、現在まで得られております学問的な基準に従いますと、全然問題にならない低い量である、こういうことでございます。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも厚生省基準考え方はそこで抵抗を覚えるのですが、発色基準——いまも発色基準のほうに実は話が戻っていっているような気がします。先ほどは衛生的に見て危害がないということを中心お話があったわけですが、どうも商品をよく見せるための基準というものは厚生省はあまりやる必要はないのじゃないか、むしろそれは他の事業省がそういうことを考えるべきであって、それに対しては、むしろ衛生的な見地から、保健上の見地から厚生省はものを考えるべきではないかと、こういう気がするのです。おそらくこの基準というものは厚生省がおつくりになった基準だと思うのですが、どうも、その辺のものの考え方ですね、しかも、片一方ではそういう学説があるということであって、それに対する研究がどのくらい、どういうふうに衛生試験所でやられたのかわからないですけれども、しかし、そういう危険のあるものということであれば、あるいは魚肉ハムソーセージの五〇PPMにしろ、あるいは七〇PPMにしろ、私はもっとこれは下げるべきではないか、発色効果ということは、まあおそらくこれは食べる人の立場じゃなしに、売る人の立場じゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺の基準についての考え方というものが、どうも私ちょっと納得できないのですが、どうでしょうか。
  14. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいまのお話にございましたように、まあそもそも食品添加物をどのような場合に食品に使わせるかという問題がございますが、私どものほうは、その食品添加物を使う必要性使用目的、そういったものがきわめてはっきりいたしておりまして、そのような目的、用途のために食品添加物使用させることが食生活をよくするための上でも必要であるという場合に限っておるわけでございます。  で、ただいまの発色剤の問題でございますが、そのような発色剤を加えませんと見た目が非常に悪くて商品としての価値云々というよりも、おあがりになる方が食欲をそそられない、ほとんど食欲感じられない、そういった場合等も考慮いたしまして、そういった場合に限ってこのような発色剤を認めておるわけであります。したがいまして、この基準のきめ方につきましては、発色効果を発揮するぎりぎりの最少量というふうに申したわけでございますが、そのほかに、もう一つ関門がございまして、衛生的な見地から考えて最も安全であると、そういうふうな基準がまずあるわけです。その衛生的な基準から考えましてだいじょうぶであるという基準から見ました場合に、ここにあげてございます発色剤残存量としての最大許容量は非常に低い数字である、そういうふうなことを申し上げたわけでございます。したがいまして、発色剤に限らず、食添全般につきましては、先生指摘のように、どうしてもそれがなければ困ると——それはただ単に商品価値云々という点から困るということではございませんで、やはり食物でございますので、ある程度は食欲を増進させ云々という観点も考えなければなりませんので、そのもの自体の色なり何なりがそういった点から非常に不向きであるものについては、やむを得ず相当厳格な基準を設け、かつその食添品目を制限して使用を許可する、まあこういうふうなたてまえにいたしておるわけでございます。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもその辺が私は納得できないわけですけれども、そうした点で、どうも厚生省が業者に肩を持っているんではないかと世上よく言われておりますけれども、私もそれに似た感じを実は受けるわけです。しかし、いまのお話を聞きますと、厚生省食品化学課長さんですか、いらっしゃるかどうか知りませんけれども、この方の談話新聞に出ておりますけれども、ちょっと読んでみますと、「亜硝酸ソーダタラコへの使用は違法だから都道府県は当然取締まるべきだ。硝酸ソーダの方はタラコには使わないと聞いているが、もし使っているなら、使用基準を作って海産物への使用を全面的に禁止したい。」、まあこういうふうにお述べになっているわけなんですけれども硝酸ソーダというのは、おそらく亜硝酸ソーダよりも、そういう点では——私よくわからぬですが、これに書いてある点では、亜硝酸ソーダに比べれば、そうした面ではあまり問題にならないような添加物であるような気がいたしますけれども、こう強く談話を出さなくてもいいような気がするのですね、いまのお話ですと。その辺、片方は、談話のほうでは、新聞に対するお義理でこういうふうに強く言ったのか、ほんとうにそのつもりで言っているのか、どうもこの辺も、私いまの御答弁を伺っておりまして、課長さんがどうしてこんな強い、基準をつくって硝酸ソーダについても禁止すべきだ、こういう発言をなされているのか、その辺の真意が実はわからないわけなんですけれども、いまの説明ですと、そんなに大騒ぎする必要はないような御答弁なんですが、どうなんでしょうか。この課長さんの新聞談話との関係を少し聞かしていただきたい。
  16. 小島康平

    説明員小島康平君) 先ほどどものほうから御説明申し上げましたように、タラコ亜硝酸塩を使うことは禁止されております。ですから、これは違法の行為でございますので、私どもとしても以前から取り締まりを指示しておるところでございますが、今回の報道で、方々で使っているというような報道がなされましたので、新聞記者に対しましては、当然そういうものは違法行為であるから取り締まるべきだということでございまして、これは私どもとしては筋の通ったことではないかと思います。  それから硝酸ソーダにつきましては使用基準がございません。しかし、硝酸ソーダは、これを使いますと、硝酸ソーダが細菌によって分解されまして亜硝酸ソーダとなりまして、そうしてそれが働くわけでございまして、結局、亜硝酸ソーダを使ったと同じことになるわけでございまして、私どもとしては亜硝酸ソーダ使用を許しておりませんから、そういった抜け道的な使用をされたのでは、亜硝酸ソーダを許したのと同じことになってしまう。これはやはり取り締まりませんと筋がおかしくなるということで、そういう話を申したわけでございます。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう意味で、いまのお話は非常によくわかりました。  そこで、新聞によりますと、東京都の築地中央卸売市場市場検査所検査結果というものが一体厚生省に届けられているものかどうか。新聞報道によりますと、かなり前からこれの対策を立ててくれということで、厚生省のほうにそういう要請をしている向きの話が出ているわけであります。一体そういう中央市場検査所からの資料というものは厚生省に入っているのかどうか。また、入れるような機構になっているのかどうか。もしそれが入っているとすれば、いっそういう報告市場検査所からあがってきたのか、その辺をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  18. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいまの問題でございますが、都道府県がそれぞれ市場におきます衛生検査を実施いたしまして、そこで違法のものを見つけますと処理をする、そういうふうなたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、検査成績の結果につきまして、定期的あるいは随時にこれをわがほうに報告をするというようなしかけにはなっておりませんけれども、たとえば、東京市場のように、ここに集まってまいります商品全国各地から集まってくるというような場合には、東京都のみでこれを処理しても、生産地に対する規制について十分な効果をあげ得られませんので、そういった事件の場合には随時厚生省に事実上お届けをいただいておるわけでございます。タラコ亜硝酸塩検査成績につきましても、あの問題が出ました直後、東京築地市場衛生検査所から検査の結果がさっそく届きまして、その結果に基づきまして、厚生省といたしましては、東京都並びにその生産地違反食品取り締まりを厳重にするように通達いたした次第でございます。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 新聞によりますと、東京都のほうは昨年春厚生省に話を持ち込んだ。きちんとした基準を早くつくってほしいと要望したのに一年たっても何の回答もよこさない、こういうふうに述べているわけですが、いまのお話だと、報道に出てから検査所から報告があった、だいぶ違うわけですね。それからもう一つは、国立予防衛生研究所食品衛生部研究官の言っておることにも、「亜硝酸入りタラコから実際に発ガン物質が検出されてからではおそい。国際的にも大きな問題になっている物質であり、厚生省に何度もいったのにとり合おうとしなかった」と、こういうふうに言っておりますね。国立予防衛生研究所東京都の市場検査所との言い方が非常に食い違っているのですが、これは厚生省、来ているでしょう。厚生省に来ていないというのは、どうも私ども常識的に言って、来ていないなんということはないだろうと思います。何らかの形で厚生省報告があがっていたのではないかと私は思いますが、それは全然あがっていないということなんですか、どうなんですか。その辺、はっきりしてください。
  20. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいまお尋ねの二つの件でございますが、まず最初の、東京都の衛生局からの照会でございますが、これはただいま御指摘のように、昭和四十四年二月二十五日付でその照会がございました。東京衛生局公衆衛生部長から私どものほうの乳肉衛生課長あて照会がございました。これに対しましては非常にすみやかな手を打つ必要がございますので、文書による回答という手段をとりませんで、さっそく乳肉衛生課長から電話東京都のほうに、これは違反食品である、そういうふうな回答を即刻いたして、それによって東京都の処置を促しております。  それから第二番目の、国立衛生試験所云々の点でございますが、そのようなことは私どものほうは関知いたしておらないのでございます。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、いまのお話ですと、四十四年の二月二十五日に東京都から問い合わせがあった、それに対して口頭で即刻禁止すべきだということでやっていたとすれば、東京都がずっと続けているというのは、東京都は知っていながらあえてこういう違反行為を犯した、こういうことになるんじゃないですか。どうなんですか。それはどっちに責任があるんですか。もし、それを知っていながらやったとするならば、私は東京都の市場検査所というのはおかしいと思うんですね。この報道によっても、スジコイクラには五PPMまで認められているのでタラコも全然だめだというのはおかしいから、五PPM以上のものは違反として、以下のものは認めた、こう言っております。しかし、イクラスジコについては確かに先ほどお話があったように五PPM、ところが、タラコは全然禁止しているわけですが、亜硝酸ソーダについてそれを使っているのを認めたとしたら、東京都について口頭で言ったぐらいで問題をおさめるというのは、私はこれはおかしいと思うんですね。当然、これはかなりきつい処分があっていいと私は思うんですよ。一年間それが放置されているということはどういうわけですか。
  22. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 先ほど申し上げましたようなことに基づきまして、東京都は、その後タラコに対する亜硝酸塩使用につきまして継続的に検査をいたしてきておるわけでございます。したがって、新聞等には出ませんけれども使用した違反品等が見つかり次第そういったものは即刻流通を停止いたしております。それで、実は、新聞に出ましたような事件は、そういった検査の結果ある程度集中的に出たというようなことで、さらに特に特段の考慮を必要とするというふうな御判断で私どものほうにも御連絡があり、また、私どものほうも、そういった事態に対処して、あらためてまたモーションを起こした、こういうふうに御理解いただければありがたいわけでございます。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 なるほど、東京都に対してはそういうふうに口頭で、この添加物違反ですよ、したがって、こういう流通をしちゃいけませんよと東京都には言っているようですが、ほかの中央市場にはどうしました。これは私は、当然何らかの文書で出してその点は明らかにしなければ——まあ、亜硝酸ソーダについてはこれは使っちゃいけないと禁じられているわけですね。それについていろいろ問題があるというんじゃないですよ。あとのお話を聞けば、それがまだ疑問点があるというお話なんですけれども法律上は禁止されているわけです。それをただ東京都だけに対してそういうことをしているということでは、どうもちょっとおかしいと思うんですがね。タラコというのはおそらく全国あたりに流れているものでありましょうから、東京都の市場検査所だけでそれをはねても、東京都ではいいかもしれません。あるいは名古屋はどうする、大阪はどうする、その他各中央市場関係もあると思うのです。そういうやり方というのは、法律違反していることに対してどうもやり方が手ぬるい。各市場に対してどういう処置をしましたか。
  24. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) これまた、いささか舌足らず誤解を受けまして申しわけございませんが、東京都からこのような照会を受けましたことに対しまして、即刻処理をする必要があるので電話回答いたしたわけでございますが、同時に、このタラコのおもな生産地北海道青森でございます。ほとんどが北海道及び青森でございますので、まず生産地においてこのような違反物質使用されることを根絶しなければなりませんので、同時に、県の主管部長に対しましては、このようなものの使用を一切禁止するように、特に禁止を厳重にするような、そういった指示をいたしてございます。で、そのほかの消費地の各衛生部局に対しましては、その後、いろいろ会議その他の席上でこういったことを指示はいたしてございますけれども、これは明らかに法律違反行為でございますので、あらためて、こういった行為はいけないという、そういった文書による指示という形式はとらなかった、こういうことでございます。したがって、繰り返しになりますが、東京都に対して回答いたしますと同時に、おもな生産地でございます北海道及び青森に対しては、この使用について厳重な監督をするように指示をいたしておりますし、それからその他の消費地市場を管轄いたしております各県当局に対しましては、それぞれ機会あるごとにそういった注意は十分促してきたつもりでおるわけでございます。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 北海道青森に、そういうことで文書を出したのはいつですか。  それから、各都道府県に対して、市場に対して、そういうものを排除するような問題は会議あたりで話をして、それによってやるというような形というのは、これはいけないんじゃないですか。こういうものが出回っているようだけれどもこれは排除しなさいと、もっとはっきり言わなければ、聞いた、聞かないということになるわけですね。これは、ただこの問題だけに限らず、私はほかの問題でも同じだと思うのですよね。どうもその辺、手ぬるいというか、何というのか、食品衛生の大元締めの厚生省として、もう少しぴしっとやってもらわなければいけないと思うのですが、いままでもそういう形でやっているということになりますと、幾らわれわれが食品添加物危害をなくするためにいろいろ言っても、これは何にも通らないという結果になるんじゃないでしょうか。  それから、もしそういう会議で話をしたというなら、その点検は一体いつやるんですか。どうもその辺がしり抜けのような感じを私は受けるわけです。通達でなくて口頭でやっても、点検さえぴしっとやれば、これは私は目的は達していけると思うのです。どうなんでしょうか。
  26. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 確かに、おっしゃられてみますと、そういった文書等によって、はっきり証拠を残すような方法がよかったような気もいたします。しかし、ただ、多少弁解になりますが、問題が明らかに法律違反のものでございますので、明らかに法律違反のものについて明らかに違反であるということを必ずしも文書等によって確認する必要もなかったというふうなことから、文書を使うということをやらなかったわけでございますが、確かに、おっしゃられてみますと、こういった問題につきましては、あるいは先生指摘のような方法によって、きちっときまりをつけるというふうなことも必要かと思いますので、今後の問題につきましては、御意見十分尊重させていただきまして、そのような方向で処理いたしたいと存じます。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 質問の前半を答えていただけなかったのですが、生産地の県に対していつ文書を出したわけですか。
  28. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 先ほども申し上げましたように、生産地に対しましても文書形式はとらなかったわけでございます。それで、東京都の市場においてこういったものが出てきた、これは明らかに法律違反添加物使用である、したがって、おもな生産地である北海道及び青森県当局においてはこれらの検査について十分な注意をして、違反食品市場に出回ることがないようにしてほしい、そういった旨の連絡をいたしたわけでございます。それで文書は使っておりません。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもその辺、すっきりしないし、そういうものを食わされている国民にしてみたら、これは小島課長さん、さっきのあとでこう言っておりますがね。「あるものを禁止すると、別のものを使うという業者のあくどいやり方を、いちいち全部つかむことはむずかしい。」とすら言っているわけですね。これは私確かにそういう面があると思うんですよ。確かに、これが禁止されるとこっちの新しいものというので、まだ基準もつくってない、あるいは法律で禁止していないようなものを、よくても悪くても使っておるという傾向のあることは事実である。それを取り締まっていかなくてはならぬという立場におありのこともよくわかるんです。しかし、こういう問題というのは、ただ単に厚生省だけ、あるいは府県の衛生部だけでなしに、こういう食品添加物の適正でないやり方を排除していくというのには、やはり消費者にも、あるいはその他のそれを売っている小売り店にも、そういうことというものは明確に知らせていかなければ、とても広い日本のすみずみからそうしたものを排除するわけには私はいくまいと思うんです。どうなんでしょうか、もう少しそうしたものははっきりと国民にPRをしていく体制というものを、厚生省、おつくりにならないと、おそらくタラコだけの問題じゃないと思う。いまお聞きして、すべての問題がこういう形じゃなかろうかという気がするわけなんです。これはどうでしょうか、実は大臣がいれば大臣にお聞きしたい事項でありますけれども、こんなに、何といいますか、ルーズといいますか、私に言わせればルーズ、皆さんのほうから言わせれば、それまでにしなくてもいいというお考えかもしれませんけれども、これだけ食品公害として騒がれている時期に、その辺の指示はもう少しぴしっとやっていただかなければいけないと思うんですけれども、今後そういうものをどういうふうにしていくか、横田さんでお答えできれば、これはこうするんだという点をもう少し私は明確にしてもらわなければいけないと思うんですけれども、どうでしょうか。
  30. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 確かに、私ども食品衛生行政は、御指摘のように、非常にPR不足を痛感いたしております。したがって、ほんとうにあぶないものかどうか、その辺の事実の認識につきましても、一般消費者の方から御判断いただけるだけの十分な素材を一般社会に提供しておらない、そういう問題もございまして、場合によりますと、反対の面では、いたずらなる食品ノイローゼを来たしておる場合もあろうと思います。それからまた、ほんとうにあぶない食品が出回ることに対しまして、ただ単に電話等で連絡をしただけの結果、必ずしも末端までその趣旨が徹底されませんで、そういったものが依然出回る可能性がないとは言えないと痛感いたします。したがいまして、こういった問題がございましたならば、この問題の事実関係をまず早い時期に確かめまして、その事実に基づいて打つべき手は一般にも公表しながら、また一般の御協力も得ながら、何とかこういったあぶない食品の解消を期してまいりたいと考えますので、先生指摘の点は痛感いたしましたので、大臣にもよく御報告いたしまして、今後の食品行政はそのような方向に展開してまいりたいと存じます。  それから小島課長云々の話は、新聞の内容でございますので、多少の誇張等もあるいはあったのかと思いますが、たとえば、タラコの問題について申しますと、小島君がそのことに着目して、はっきりそういう認識のもとにおっしゃったかどうかはよく聞いておりませんけれどもタラコの場合ですと、法律上認められた着色料の添加物というものがあるわけです。ところが、この着色の問題につきましては、何か、色がついておりますと、色がついているだけで非常に毒の強い食品であるというふうな一般的な認識が片一方にあるわけです。したがって、タラコを売ります場合に、色がついていなければ商品価値があるんだというようなことで、法律で適法に認められた着色料を使わずに、かえって、こういった違法な発色剤という、見た目では着色してございませんから、一般消費者は自然のタラコそのものだというふうに誤認をいたすわけでございます。したがって、色に対する恐怖感というものがむしろかえってそのような違法な着色剤の使用に走らせる可能性もある、そういった趣旨のことを申したものだと理解しております。ただ、こういった、こっちの穴をふさげばそちらの穴に出ていくのだというようなことがあって、とても役所はそれを追っかけ切れないのだ、だからしようがなかったと、そういった趣旨ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 これで終わりたいと思いますが、この件は、基準がなくてどうのこうのというものじゃないわけですね。確かに基準がない。たとえば、外国で、アメリカでいろいろ、チクロを使っちゃいかぬという場合に、すぐ日本でどうのこうのという問題については、これは私は、原則として疑わしきは罰するというのが食品衛生行政のあり方だろうと思うのです。まあ取り締まる側からいえばいろいろあるのでしょうけれども、しかし、このタラコの問題はそういう問題じゃないわけです。ぴしっとした基準があるわけです。ですから、そういう点はもっと私ははっきりとしていただかなければいけない、こういうふうに思うのです。まあこの点では、先ほど答弁があったように、そうしたものをぴしっとやっていただかなければならない、このことを強く要望しておきます。  時間の関係で、私の質問を終わりたいと思います。
  32. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 一つだけ関連して。  先ほど横田さんから、色がきれいでなければ消費者がおあがりにならないような話がちょっと答弁の中でございました。私、これはたいへんな大きな問題だと思います。そういうものをつけさせられて、色をきれいにさせられて、見た目にきれいなものばかりしか並べられないから、やむを得ずそういうものを食べさせられているわけです、消費者は。特に私なんか、長いこと家庭を切り盛りさせられてきたわけですが、戦前は、そんな、タラコが食べられないということはなかったわけです。最近そういうものが非常に出回ってきている。そいうものをどんどん使っているわけです。ですから、その答弁は私どもはどうしても納得ができません。それで、せっかく赤い色がなくなったら、今度は発色剤を使ってるわけです。色をきれいにしたほうが消費者が食べるのだというような考え方は、私は厚生省はやめていただきたいと思う。ですから、そういうもの、見た目にきれいなものを食べさせるということはやめたほうがいいと思うのです。ちっとも、そういうものをつけたから栄養が増すとかなんとかいうことじゃありませんから、そういうものは厚生省できちっとやめさせる、こういうぐらいの方針をとることを私は要望したいと思います。  それからもう一つ。いま私いろいろ、こう、さがしてみたのですけれども、いまここに持ち合わせがありませんが、薬局にいって劇薬のものを買うときは、うるさくて劇薬はなかなか手に入らない。ところが、それが食品添加物ということであれば、たやすく業者の手に入るものが相当あるように私は聞いておりまして、多少それを調べて持っていたのです。いまここに持っておりませんが、そういうものがあろうかと思うのです。劇薬だからそれは普通には使えない、けれども食品添加物であればそれが容易に使えるという、こういうような分け方には抗議を申し込みたいと思うのです。厚生省の態度としては、そこら辺をもっともっと手きびしくやってもらわなければ……。まるで、色をきれいにしなければ消費者はおあがりにならないということを厚生省自身が言うことは私は非常に問題があろうかと思います。
  33. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいまの着色の問題について多少物議をかもして申しわけございませんが、けばけばしい色をつけたり、不必要な着色、こういったものは一切やめるべきだと存じます。ただ、ものによりましては、多少そういったことをしたほうがというものもあろうかと存じます。その程度のことを申したわけでございますので、原則的に申しますと、できるだけこういったものはないほうがよろしい、これはお説のとおりでございまして、多少その御趣旨に反するような発言を申したとしたならば、おわび申し上げます。  それから、添加物である劇物の問題でございますが、実は、劇薬につきましては薬事法、それから劇物につきましては毒物及び劇物取締法という法律がございまして、大体同じような規制をいたしております。したがいまして、法律体系上は、物であるから手に入りやすい、薬であるから手に入りにくい、そのようなけじめはないはずでございます。ただ問題は、食品製造業者が劇物である食品添加物を業務用使用目的で入手する場合においては、一般消費者が劇物ないし劇薬を手に入れる場合と違いまして、これについては毒物劇物取締法上の規制がゆるい、こういうことはございます。一般消費者が入手する場合におきましては、薬でございましても物でございましても、同じく毒物劇薬である限りは同じような規制がなされておるはずでございます。
  34. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して。  私、もうこのごろ、新聞を見るのがこわいのです。この点に対して厚生省はもう少し強くなってほしい。さっき竹田先生の御質問にもございましたけれども、この食品にはこのぐらいな基準は許される……。けれども、これが幾つも重なった場合には一体どうなるのですか。危険はないのですか。この点をひとつ伺いたい。  それからもう一つ、牛乳ですね。牛乳に、いろいろ、BHCの問題もあれば、ペニシリンが入っているというので、このごろ飲むのがこわいのです。食品にも牛乳にも、お茶にすら、このごろは問題が起きております。まして、お米の問題、こういうようなことになっているのに対して、厚生省はどういう手段をとられるのか。世間では、厚生省やり方がなまぬるい、結局、森永ミルクの問題でも——これはあらためて社労でいたしますけれども厚生省の態度が手ぬるいから起こった被害というのは、かなりあると思うのです。また、ちまたでは、こういうことを言っておりますよ。厚生省は業者に弱い、「通産省厚生局」ではないか、こういううわさすら流れております。私は社労委員としてやっておる関係上、厚生省が非常にこういう批判を受けることに対しては、くやしいのですよ。とにかく食べものは命の問題でございますから、ソーセージも、いまのタラコも、お茶も牛乳もということになれば、国民の不安がどんなにひどいかということをお考えになったことございますか。今後どういう態度で臨むのか。しかも、牛乳の問題に関して田中寿美子さんの質問に対して、農政局では、BHCは結局現在二千五百トンある、この点で、この夏には使い切ってしまう、だからその後別の農薬に切りかえるが、いま急に切りかえることはできない、稲作作業に影響を来たすから。そのとき、同じ厚生省の金光環境衛生局長は、いますぐ全面禁止させるところまでは考えていない。——害があっても考えないでいいのでございましょうか。こういう態度を国民はどう受けとめるかということをお考えになったことがあるでしょうか。まあ、関連でございますから、多くは申しませんが、古々米には有毒カビがある、ウインナソーセージには細菌がうようよしておる。全く、毎日新聞を見るのがこわいのですが、国民がどういう気持ちで受けとめるか、厚生省の態度を私は聞きたい。こう幾つも中に添加物が入っています。これをみな食べているわけです。そういうときに、これがどういう結果になるかという点について、ひとつお聞かせ願いたい。
  35. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) 添加物使用基準の問題でございますが、この基準をきめておりますその根拠といたしましては、藤原先生指摘のように、いろいろのものにいろいろな添加物が複数入っておりまして、一日おそらく何十種類、極端に言えば何十種の添加物を摂取する場合もあろうと思いますが、そういった場合のことを想定し、なおかつこれに相当の安全率を加味した基準のきめ方をいたしておりますので、学問的には、現在の基準であればそれほど問題にすることもあるまいということは一応言われます。ただ問題は、ものに含まれております添加物の計量の方法でございますとか、あるいはそのもの自体の慢性毒性等についての学問的な知見、こういったものが日進月歩、相当変わってきております面もございますので、そういった点を考慮しながら、問題のありそうな添加物につきましては、実は昭和三十九年ごろから、添加物の慢性毒性の洗い直しとか、あるいはまた相乗毒性がどのようになるかという点についても、おくればせながらいろいろ検討は加えてきておるわけでございまして、その結果、いろいろな食品についての残留量の基準も改めなければならないものについては改める、そういった姿勢で臨んでおるわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘のような点につきましては、私ども先生と同じような立場で心配をいたし、学問技術の許す範囲内で再点検をして、現在の基準が一応当時の学問的な所見としては正しかったんだということの上に、何と申しますか、あぐらをかくというようなことは一切いたさないわけでございます。  それからもう一つは、通産省厚生局というお話がございましたが、実は、こういった問題につきましては、健康面、衛生面を取り扱う厚生省と、それからそれぞれの物資の生産についてのいろいろな仕事をしておられます各省とがございまして、正直申しまして、厚生省だけがそうだといっても、生産等の指導に当たっておられます主管省でそのようなことを御了解いただいて適宜の行政指導等を行なっていただかなければならない関係がございますので、わが省単独であらゆる問題について一〇〇%の解決能力を持たない場合がある。そういった点を御指摘いただいたのだろうと思いますけれども、この点につきましては、各省それぞれその持ち分持ち分につきまして協力いたしまして、ただいま御指摘のような問題についての不安を解消するように今後はつとめてまいりたいと存じます。
  36. 藤原道子

    ○藤原道子君 じゃもう一つ。  私は、厚生省は国民の命をあずかっている、幾ら経済高度成長が世界二位だといっても、公害——空も汚れ、水も汚れ、食べものも汚れておる。これでどこに高度成長の恩恵を国民が受けているか。通産省は業者の立場に立つのは、これはどうしてもそうなるでしょう。しかし、国民の命に影響があるという立場からすれば、もっと厚生省が強くなってほしいんです。牛乳の問題でも、三年だか四年も前に専門家から注意があったはずなんです。それをうっちゃっておいて、アメリカで問題になってから調査を始める。これじゃ、あまりに納得がいかないんです。そういう点で非常にいま国民が不安に思っておりますから、これならだいじょうぶだという線を一日も早く出してほしいことを要求して、まあ、あなたでなく、大臣に申し上げたいと思いますけれども、とにかく担当官であるあなたに申し上げまして、今後強い姿勢で臨んでもらいたい、命を守るんだ、こういうことをお忘れなくお願いしたい。  関連でございますから、この辺で終わります。
  37. 横山フク

    委員長横山フク君) 渡辺君。
  38. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、米その他の農漁産物についての農薬の残留の問題について伺いたいと思います。  もう厚生省のほうもすでに御承知のことと思いますけれども、先月の中旬に、長野県の南佐久郡臼田町の日本農村医学研究所の発表したところによりますと、現在、佐久地方に配給されておる精白米、これは八分づきの精白米ですけれども、この精白米の中に、BHCのほかに、BHCよりも毒性の強いアルドリン、ディルドリンなどの有機塩素剤が検出されたといわれております。BHCの残留量は、当時の発表によりますと、デルタとべータがそれぞれ〇・一〇PPM、ガンマが〇・〇六PPMで、さきに千葉県の衛生研究所の吹野技師が日本食品衛生学会で発表した内容とほぼ一致しております。このことは、それ自体非常に重大な問題を提起しておると思いますけれども、特にドリン剤に至っては、アルドリンが〇・〇六PPM、ディルドリンとDDTの混在物が〇・三〇PPMと、きわめて高く残留しております。アルドリンについて言えば、WHOが定めた人体摂取許容量で計算すれば、その約六倍に当たるという異常な高さであります。  また、私がこの日本農村医学研究所から直接いただいた資料によりますと、いま申しました農薬の残留の量のさらに新しい資料が手に入っておりますけれども、時間の都合で、これははしょりますけれども、特に指摘したいことは、土の中にもこれら有毒農薬が含まれておるという例が四例もございます。アルドリンについて言えば、〇・五九PPMから〇・〇〇三五PPMの残留が認められ、ディルドリン及びDDE、これはDDTが土中に入って変化したものですが、これが〇・五一六PPMという残留が認められておるというような重大な検査結果が出ておるわけです。  私が申し上げるまでもなく、これらのドリン剤は急性毒性が非常に強いというだけじゃなくして、人体の脂肪に蓄積されて、長期の間に肝臓、腎臓、脳、それから血液、こういうようなところをおかして、重症者はてんかん状のけいれん発作を起こすに至るという、きわめて有害な農薬だと言われております。このような農薬が日本人の主食、毎日毎日一生にわたって食べている主食に多量に残留しているということは、国民の健康と生命にとって非常に重要な問題であると思いますけれども厚生省としてこの問題をどのように見ておられるか、その点からまず伺いたいと思います。
  39. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま先生指摘の、長野県の佐久病院で行なわれました米の中のBHCの残留量の試験の結果は、私どもも同じような資料をいただいております。ただ、この中で、アルドリンの〇・〇六PPMの問題につきましては、実は、この研究を主宰されました若月先生と私どものほうの担当官とでいろいろお話し合いをいたしました結果、これは一例だけで、他の検体はすべて最高で〇・〇二PPMだと、したがって、この〇・〇六PPMという数値を基礎に云々することはむずかしい、こういうようなお話し合いになっております。それから、私どものほうで行ないました検査によりまして、五十五検体を使ったわけでございますが、米からアルドリン、ディルドリンは検出しておりません。  そこで、問題は、いずれにいたしましても、一検体にしろ、そのような数値が出た、それが全体であるという判断の素材にはできないといっても、そういった問題があるわけでございますので、私どものほうでは、主要な農作物につきまして農薬の残留基準をどのようにするか、残留基準から振り返って散布の基準というものがきまってまいるわけでございますけれども、こういったものについては、御承知のように、昭和三十九年度から逐次いろいろな農作物につきまして、BHC、DDT等の農薬の許容量の設定作業をいたしておるわけでございます。現在まで、キュウリ、お茶、トマトなど十二品目につきましての八つの農薬の許容量を設定いたしておりますが、ただいまお話のございました米につきましても大体研究の結論に近づいておりますので、もうそう遠くない将来にこれを告示する予定にしておるわけでございます。
  40. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま、ドリン剤については厚生省でお調べになった五十五検体については検出していないというようなおことばがありましたけれども、このドリン剤については、昨年の暮れですか、高知県の県の衛生研究所、あそこで牛乳を調べた場合に、牛乳の中にも残留しておるというような報告もあったと思うのです。それで、長野県の例は、アルドリンについては確かに一例ですよ。しかし、ほかのドリン剤についてはかなりの例が出ているわけです。ですから、これはやはり相当直視しなければならないと思うのです。  で、これはドリン剤だけではなくて、BHCにしてもDDTにしても、これは非常に人体にとって有害なものだということは、私がいまさらここで強調するまでもないことだと思うのです。  そこで伺いたいととは、いま三十九年以来米の農薬の残留状況を検査しているというふうに言われましたけれども、その検査結果——もう今年が昭和四十五年ですから、ずいぶんの月日がたっているわけですが、その検査結果の詳細をここで報告していただきたいのですが、時間がないので、おもな点だけでも報告をしていただいて、あとから詳細な資料をいただきたいと思うのです。それで、この検査結果を報告していただく中で、検査の範囲ですね、それから体制、どんなふうにして検査してきたのか、その点についても含めて御報告いただきたいと思います。
  41. 小島康平

    説明員小島康平君) 米の検査につきましては、昭和三十九年から昭和四十五年、本年まで引き続いて行なっております。これは、主要な生産県三県、それから消費地検査消費地におきましては一般の小売店で売っております米ということで、全国的にばらつきのないようにサンプリングを行ないまして、それについて検査を行なったわけでございます。  それで、検査結果につきましては、非常に詳細な資料を後ほど先生のお手元に差し上げますが、実は、私どもが発見いたしました結果では、たとえば有機塩素剤で申しますと、BHCなどはほとんどゼロに近いものでございます。最高でも〇・二二程度でございまして、実は、こういった油に溶けやすい農薬の場合には、外側からまきましてもなかなか内部に滲透しない。それからまた、地面にありますBHC、DDT等も吸い上げられないということが大体わかりまして、また、米の中でもどこについているかと言いますと、ほとんどが胚芽部分でございまして、白米に精白いたしますと、さらに含有量は減ってしまうということがわかったわけでございます。それで、私どもとしては、昨年から農林省のほうとこの米につきましての残留農薬許容量の設定をお打ち合わせをいたしまして、本年秋には告示をいたしたいと考えておる次第でございますが、私どものほうで考えております数字では、非常に低いところにきめることができるのではないかということでございまして、摂取量等から計算いたしましても、ほかの野菜等の場合よりもはるかに米の場合には低い摂取量になりまして、問題はないというふうに考えております。
  42. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまBHCについての御報告がございましたけれども、BHCのいろいろな異性体の中で、特に残留という点で重要だと思いますベータのほうですね、これについてはどうですか。
  43. 小島康平

    説明員小島康平君) 実は、農薬に使いますBHCは異性体を含んでおります。この異性体の残留量は、実はガンマよりも高く出る場合が多いわけでございまして、ただ、先ほど申し上げましたように、ほとんどゼロに近い数字でございますので、その全体を総合いたしましても、あまり問題ないということでございます。ただ、先生御心配のように、DDTあるいはBHCの使用量というものは非常に高くなってきておりますので、そういった点を私どもとしては農林省とも昨年からいろいろ打ち合わせをしてきたわけでございますが、こういう有機塩素剤は実は残効性が非常に高いために、地面等に残って環境汚染等を引き起こすということで、昨年からBHC、DDTは生産中止ということになりまして、私どもとしては今後これでBHC、DDTは減っていくので安心ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  44. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまおっしゃいましたのは大体平均値をおっしゃったのではないかと思うのですけれども、一番最近年のベータBHCの最高はどのくらいか、最低はどのくらいか、平均はどのくらいか、その辺はわかりませんか。また、昭和三十九年以来いままでずっと年々調べておったといえば、年々の傾向はどういう傾向なのか、含有量がふえている傾向なのか、それとも減っていっている傾向であったのか、それから県によっていろいろ高低もあろうかと思うのですけれども、特にきわ立って強いというような県があるのかどうか、また、その原因なども確かめられたかどうか、それからまた、対象薬物ですね、これはどういう範囲の薬物を調べられたのか、その辺と、それから、いまの胚芽のところに多いというのは、千葉県の検査の結果でもその点言われているわけですが、精米についてどうなのか、消費地の県の。その辺などを含めて、もう一回おっしゃっていただきたいと思います。
  45. 小島康平

    説明員小島康平君) 実は、傾向その他についての非常に詳しい先生の御質問でございますが、これはいかがでございましょうか、後ほど私どものほうで資料を作成して委員会のほうに御提出させていただきたいと思いますが……。
  46. 渡辺武

    ○渡辺武君 それではそうしていただきましょう。  先ほどもちょっと御報告の中にありましたが、昨年十一月に厚生省がきめられた食品衛生調査会の答申に基づいた農薬残留許容量ですね、これによりますと、対象作物は野菜、お茶、くだものの一部など、十一品目にすぎなくて、米が入っていない状態です。また、昨年末以来大きな問題となっている牛乳などの酪農製品ですね。牛乳、バター、チーズ、こういうようなものはもとより入っていないし、それから、肉、卵、魚などについての農薬残留許容量がいまだにきめられていないということで、事実上野放し同然になっているのじゃないかというふうに思われます。米についても、いま申しましたように、有害農薬の残留という点がかなり疑問に思われているときに、そうしてまた、すでに牛乳が昨年末以来これらの農薬の残留というものも大きな問題になっているというような状態でありますのに、依然として残留許容量がきめられていないということで、これは非常に大きな問題だと思うのですね。厚生省として、昭和三十九年からもう四、五年にわたってずっと米について調査されておったというような状態であって、なぜ日本人の主食についていまだに許容量が設定できなかったのか。ことしの秋といっておりますけれども、もう、いまあなた、米の作付が始まって、これから農薬をどんどん使おうという時期ですからね。米の収穫期になってから許容量をきめて、厚生省許容量の設定に応じて、収穫期になってから今度農林省が使用基準をきめるというようなことでは、まるっきりこれはもう手抜かりだと思わざるを得ないと思うのですよ。その点、どうしてこんなにおくれたのか、その点をまずおっしゃっていただきたいと思います。
  47. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいま御指摘の、昭和三十九年から実施いたしております農薬の残留基準調査でございますが、これは、米及び農作物、それからくだもの、そういったものについて行なってきたわけでございます。ところが、米につきましては実は二つの事情があったわけでございます。  一つは、従来は、御承知のように、水銀製剤、そういったものを農薬に使っておりまして、私どものほうの調査研究も水銀農薬の残留の点に実は重点が指向されておったわけでございます。それが、ある時点以降、いろいろな問題によりまして、水銀入りの農薬というものが使われなくなりまして、それでその代替的な農薬として別途のものが使用されるようになった。それがただいま先生指摘のいろいろな農薬でございますので、どちらかと申しますと、そういったいろいろ水銀という問題に集中をしてやっておりました研究の成果というのが、ある意味ではあまり役に立たなくなった、農薬自体がなくなりましたから。それが第一点でございます。  それから第二点につきましては、野菜ですとか、くだものにつきましては、おもな生産地等がございまして、そういったところの結果を調べますと大体それで全国的なものが言える。ところが、米につきましては、ほとんど全国むらなくこれを生産いたしておりまして、水田に対する農薬の使い方も、場所場所によりまして、たとえば寒冷地における使用のしかた、温暖地における使用のしかた、それぞれが違いますので、可能な限り日本全国検体を採取いたしまして、広く検討しなければならない。  そういった二つの意味合いで米については結論がおくれておったということでございます。  それから、三十九年から実施しておりました中に、牛乳でございますとか、あるいはお肉でございますとか、そういったものが入っておらなかったわけでございますが、この点につきましても、最近になって、私どもも、場合によってはある程度ショッキングなできごとにぶつかったというようなこともございまして、実は今年度からこれらの問題につきましては多少ながら予算化もいたしまして、その検討を、おくればせながら始めておる。しかし、これにつきましては、そうむずかしい問題でもございませんので、着手いたしましたならば、ある程度早い時期にこの結論が出ようかと思っておるわけでございます。  つまり、米についておくれました点は、多少言いわけじみておりますが、その点と、それからお肉、牛乳については、まあおくればせながらこれから、これについてもそう長い時間はかからないで結論を出すように努力いたしたいと存じます。
  48. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ、これから努力されるというので、けっこうなことですけれどもね。米についてだって、いまおっしゃったようなところがもし理由だとすれば、私はあまり大きな理由にならぬと思うんですね。あとからこれは時間があれば質問したいと思いますけど、とにかくそれは、なんですよ、燐素系の農薬が使われておった、だからBHCその他については調べなかったなんて言ったって、それは理由になりませんよ。いまあなた、日本の農村で、特に米作地帯で、BHCは世界でも類のないほど反当たりに多量に使われてるでしょう。それが人体にどういう影響があるのかというようなことについては、当然これはもうまっ正面から取り組んで、そうして、いまおっしゃったように、地域によっていろいろの使い方の違いがあれば、それだけ、そのこと一つとってみても、非常に重大じゃないですか。使用基準についても、それぞれの使用形態に応じた使用基準もきめなきゃならぬでしょうし、一日も早くやらなきゃならぬことだと思うんですね。それが、新聞などでこうやって問題になってから、やっとことしきめる、しかも出来秋になってから許容量をきめるなんて言ったって、とても間に合いやせぬですよ。そうでしょう。いまきめなきゃならぬですよ。どうですか、もっと早く繰り上げて発表するつもりはないですか。もうこの食品衛生調査会には諮問してあるんですか、この米については。その点、どうですか。
  49. 小島康平

    説明員小島康平君) 実は、私ども使用基準を設定いたしますときには、使用基準に合わせまして農林省のほうが農薬の使い方を一緒にきめまして出すことになっておるわけでございまして、そのために、農林省では、いつどの時間にどのぐらい農薬が残っておるという御試験をいただいておるわけでございまして、それによって農薬取締法に基づいた散布指導が行なわれるわけです。したがって、私どもの告示は、実は収穫期というものに合わせまして、栽培と収穫に合わせましてやるわけでございます。実は、今年度の米につきましてすでに栽培を始めておるわけでございまして、したがって、そういった散布の基準を農林省のほうでつくっていただいて、その御指導をいただいて、そのできた米から私ども適用するという形になるわけでございまして、まあ私どものほうでは数字を告示するのは非常に簡単でございますが、やはり農民の方たちがきちんと農薬というものの使い方というものを指導された形でやらなければいけないんじゃないかというふうに考えておりますので、まことにおくれていて申しわけなく存じております。  それから、実は、先ほど先生がたくさん御質問がありましたので、あらためて詳細な資料提出いたしますが、精米につきまして私どもが全国的にやりました調査では、BHCの含有量は、五十五検体のうち、ほとんどがゼロから〇・〇二で、非常に低い値でございまして、最高でも、先ほど申し上げましたように、〇・一三でございまして、この数字は私どもとしては米の摂取量等から計算いたしましても問題はない数字だ、これは国連なんかのきめている許容量に比較いたしましても非常に少ない数字でございますので、現在のところでは、私どもとしては基準がなくても問題がない数字である、しかし、もちろん基準のあったほうがよろしいわけでありますから、そういった実情でもございまして、しかし先生のおことばのとおり、できるだけ早いほうがよろしいわけでありまして、今後直ちに農林省のほうと打ち合わせをいたしまして、できるだけ早く告示をいたしたいというふうに考えております。
  50. 渡辺武

    ○渡辺武君 何か、農林省に責任あるような、そんなつもりで答弁をされたつもりでないでしょうけれども、聞いているほうはそんなふうに受け取らざるを得ないような御答弁の内容だと思いますがね。しかし、やはりこれは、人体への影響という点からすれば、何といっても厚生省が音頭をとってやらなければならぬ仕事だと思うのですよ。たとえば、いま稲については出穂期まではBHCを使ってもいいという指示が農林省から出ておるようですが、これはあとで時間があれば問題にしたいと思っていますが、こういうような点で、全くしり抜けになっていると私は思うのです。ですから、厚生省がもう三十九年から調査しているなら、早く許容量をどんどんきめて発表して、事実いま申し上げました農林省が出穂期まで使っていいというしり抜けの指示を出しているけれども、各地方の自治体は、それぞれの立場で、BHCの使用を全面禁止しようじゃないかということで、二十県以上の県が事実上BHCを使っていないというような実例さえ出ているわけで、厚生省の行政、それから農林省の行政が、各地方の人たちの自主的な規制から、はるかに立ちおくれているというのが現状じゃないですか。一日も早く出してほしいと思います。  それから、米の農薬残留量が少ないというようなおことばがございましたけれども、米は日本人の主食で、人によっては、たくさん食べる人も、少し食べる人もありますけれども、しかし、とにかく一生の間食べているんですよ。そして、人間は米だけ食べているわけではないのです。野菜も、くだものも、魚も肉も食べるのです。それぞれに有害の有機塩素剤が入っているとすれば、その複合作用等も考えなければならぬと思うのです。その点では非常に米は重大だと思うのです。そういう点を考えていただいて、国民の健康を守ってくれる立場で一日も早くやってほしいと思います。これはひとつ、いまここの席上で、出来秋というようなことでなくて、もうここ何日というようなところで早く出してほしいと思います。その点は要望いたします。  それから、牛乳について許容量をきめるというような話がありましたが、バターやチーズについてはどうでしょうか。それから、豚、牛の肉、それから卵、魚についてはどうか。最近は外国からの輸入食品が非常に多いと思うのです。たとえば、小麦などはアメリカからも大量に入っている。そのアメリカではDDTの使用が大問題になっているというような状態でしょう。この輸入小麦。それからまた、東南アジア諸国からは米を輸入していると思うのです。いまは米が余っているといいながら、昨年などタイから数十万トンの米を輸入したという実績があるのです、輝かしい。そういうふうな状態で、小麦とか米とか、外国から輸入する農産物についての残留の農薬の試験ですね、これについてはやる気持ちがあるかどうか、その点もあわせてお答え願いたいと思うのです。
  51. 神林三男

    説明員(神林三男君) 前段の、牛乳、乳製品及び肉製品についてお答え申し上げます。  これは全国に実態調査を命じておりまして、実態調査の結果が出次第、あるいはまた国立衛生試験所で毒性——特にベータでございますが、これはほとんど世界的にどこもやっておりませんものですから、ベータの毒性というものも実験中でございまして、そういうものを勘案いたしまして、そうして今後、御指摘食品につきまして、特に牛乳、乳製品あるいは肉製品というようなものについてつくっていきたいという所存でございます。
  52. 渡辺武

    ○渡辺武君 魚はどうです。魚。
  53. 神林三男

    説明員(神林三男君) 魚も、実態調査を本年やるように、全部県にお願いしてございます。その結果によって検討していきたいと思っております。
  54. 渡辺武

    ○渡辺武君 輸入食品については……。
  55. 神林三男

    説明員(神林三男君) 輸入食品のうち乳製品は、一部、私たちのほうで、国立衛生試験所でやりました結果がございますが、オーストラリアの脱粉につきましては、ベータはほとんど欧米では使用していない。ベータというか、BHCは使用していないというようなことで、これは検出されておりません。それからアルファとガンマにつきましては、〇・〇〇三ぐらいの値でございます。それからオーストラリアのバターにつきましても、BHCについて私たちのほうでやった結果は、アルファと、同じくガンマは、〇・〇四〇と〇・〇二〇というような結果が出ておりますが、なお、輸入品等につきましては今後DDT等についても調査をしていきたいというふうに考えております。
  56. 鴛淵茂

    説明員鴛淵茂君) 輸入小麦については、主としてアメリカ、カナダから輸入されているわけでございますが、これらの小麦について残留量を一応定めて——BHCについてはないようでございますが、定めておりますので、現在までのところ、特に輸入検査では行なっておりません。まあ、わが国のものにつきましては、先ほどお話がございましたように、四十五年及び四十六年の二年間で実態調査を行なって、残留許容基準が決定される予定でございます。それに従って、基準ができましたものについて検査したいと思っております。
  57. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう時間が来ましたので、これ以上質問を続けることはできませんので、ひとつ、資料要求として次の資料をお願いしたいと思うんです。  いま申し上げました三十九年以来の米の調査ですね。これのくわしいのがいただきたいと思うんですが、同じく米について、先ほどちょっと申し上げました千葉県の衛生研究所の吹野技師ですね、の調査結果、これを資料としてお願いしたいと思います。  それから牛乳については、高知県衛生研究所が昨年未発表したのがございますね。また、それを含めて、ことしの四月厚生省が全国調査をした結果も新聞などに出ておりますが、そのくわしい資料もいただきたいと思います。  それから、お茶について、静岡県の農産園芸課ですか、ここが五月に発表したものがあるそうです、DDTの残留について。これもひとつ取り寄せていただきたいと思います。  それから、いまお話しの輸入食品ですね。これについての調査結果の内容、これも資料としていただきたいと思います。  それから最後に、もう一ついただきたいのは、もうすでにアメリカなどでは、一九五五年以来、農作物については約二百品目以上の農作物を対象として、農薬については百四十種に及ぶ農薬を対象として、残留農薬の規制を始めておるということを私聞いております。私は、アメリカが何もかもいいんだという立場はとっておりませんけれども、この点については日本よりもはるかに進んでおるというふうに思わざるを得ません。そこで、諸外国の残留農薬についての規制の資料と、それからWHOその他の国際的な機関の規制の資料、これは一部いただいておりますけれども、なおほかにあれば、いただきたいと思います。同時に、厚生省、農林省が、昨年の十一月に、十二品目・八農薬しか規制をしてないというようなことでは、これはとてもしようがないと思うんですよ。人によっては、欧米諸国からおくれること十数年と言われておるほどの実績だと思うんですね。今後この点についてどういう計画を持っておるのか、その計画があれば、その資料もいただきたいと思います。  以上のことをお願いして終わりたいと思います。
  58. 横山フク

    委員長横山フク君) いまの資料の提出ですね、それに対して御答弁願います。
  59. 横田陽吉

    説明員横田陽吉君) ただいまいろいろ御要求のございました資料につきましては、そうおそくなくできるものもございますし、なかなか時間のかかるものもございますと思いますが、よく内容を検討いたしまして、可能な限りすみやかに御提出するようにつとめたいと思います。ただ、この中でなかなかむずかしいもの等ございましたら、そのつど、委員長、渡辺先生にも御相談しまして処理いたしたいと思います。  それから一番最後の、残留農薬の点検についての、もうちょっと早くやるための計画はないかという問題でございますが、これは、今年度予算の実行の問題もございますし、それから来年度の予算要求等にも関連いたしますので、それほどコンクリートな事業計画等についてなかなかできかねると思いますが、この点は御了承いただきたいと思います。  それからもう一つは、この問題につきましては、どこでもこういう研究がやれるという体制になっておりませんので、実は私どものほうでございますと、主として国立衛生試験所を使って、そこでしっかりしたデータを出させる。急ぐのあまりいろいろなところに手広く広げますと、結果自体にばらつきが出たり、信憑性の問題も出てまいりますので、この点につきましては、そういった点を勘案いたしまして、検討してまいりたいと思います。
  60. 横山フク

    委員長横山フク君) 本件に関する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  午後一時十五分再開することとし、それまで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  61. 横山フク

    委員長横山フク君) ただいまから物価等対策特別委員会を再開いたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価対策に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。  竹田君。
  62. 竹田四郎

    竹田四郎君 きょう午前中物価対策閣僚協議会をお開きになったようでございますが、まだ終わったばかりでありますので、私どもも具体的にどういうことをおきめになったのかわかりませんし、NHKのニュースを待っていたのですが、これも実はまだ出ておりません。具体的にはどういうことをおきめになったのか、私どもはじめ、国民も、政府がどういう物価対策をこれからやっていくのか、大きな期待を持っていると思うのです。特に、最近、春野菜の出回り等々で、若干物価が一服したという、そういう季節であるだけに、これを一つの契機にして物価対策ということが進められる、これを期待しているわけですが、とりあえず、ひとつきょうの午前中の物価対策閣僚協議会でどういうことをおきめになったか、ひとつ御報告をいただけたら幸いです。
  63. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 本日午前中の物価対策閣僚協議会におきましては、前回の物価対策閣僚協議会におきましてすでに議論をした分の具体化というものを含めまして、数項目にわたって一応決定したわけであります。輸入政策の積極的活用、それから食料品価格の安定対策、それから事業許認可制の再検討、それから物価行政機構の強化と、こういうような四点につきまして対策を協議したわけであります。もちろん、これがすべてではございませんので、今後もわれわれが気のつく限りの問題を取り上げていかなければならないと、こう思っております。  輸入政策の積極的な活用につきましては、  残存輸入制限品目について、本年の末までに自由化することになっている品目が十八品目あることまではきまっておりますけれども、それの具体化については必ずしもはっきりしておりませんでした。そうして、その中でも国民生活に比較的関係の深いレモンジュースとか、マーガリンとか、ショートニングとか、カラーフィルムとか、そうしたものを明示しまして、日常生活に密接な関連を有するものをできるだけ多く含めて自由化を行なう、こういう方針をきめたわけであります。品物の中には、実は対外通商交渉上、明示することが必ずしも適当でない、こういうようなものもある程度あります。  また、豚肉についても、これは、機動的に輸入を行なうということで、しかも自由化の方向でもってこれを検討しなければならぬ、ただし、豚肉については価格安定制度等がございますし、そういうことで、そうした問題との調整をどうするかということの検討もあわせて早急に行なう、こういう考え方であります。  ノリの輸入の問題についても、従来の生産者だけの組織であったノリ協会を改組する、そうしてこれに消費者の代表等も入れてこれを行なうようにするというような点であります。  あるいはまた、バナナの関税につきましても、これをできるだけ現在の税率を引き下げるという方向で検討する。そうして国内果実に対する影響は季節関税で進めていこう、あるいは、前回国内消費量の二%以上の輸入割り当てを行なうという方針を決定しましたけれども、それは方針だけを決定したわけでありまして、これらの品物について、すべて所要の割り当てを本年度上期中に実行に移す、こういうような点等を含めて輸入政策について考えてみたわけであります。  また、食料品の価格安定につきましては、  卸売り市場法案が前国会で継続審議になりまして、私どもまことに残念に思っております。今後これの早期成立をはからなければならないと思いますし、今後、予約相対取引の導入であるとか、大口購入者の売買参加であるとか、いわゆる卸売り市場における取引の改善、合理化を進めなければならないのでありますが、法律案の成立がもちろん重要でありますけれども、他面、法律案の成立を待たないでも処理し得るものについて、これを実行していかなければならない。  あるいは、産地直結取引等につきましても、これまた、小売り店の協同事業であるとか、あるいは消費生活協同組合、こういったものと農協、漁協というようなものとのいわゆる計画的な出荷、あるいは直結したところの取引、こうしたものを一そう促進してまいるということを農林省がはっきり決定いたしまして、これに基づいて具体的に実行をしてまいる。その他、まあいろいろこまかい対策が生鮮食料品等については決定されておりますし、もちろん、これらは地方団体の権限に属する分野が非常に多いわけでありますから、国が地方団体の指導を積極的に行ないまして、そうしてこの方面における体制を一刻も早く実現をしたい、こういうふうに考えております。  流通機構の改善の問題以外に、基本は、何といっても野菜の安定供給の確保であります。これらにつきましても、施設ものにつき、あるいは露地ものにつき、計画的にこの大量出荷が可能なような方向で、これの造成を計画的に進めてまいる、こういう方向を打ち出しております。あるいはまた、現在生産と出荷の計画化と組織化が不十分であるというところに問題があるわけでありますから、そうした面を推進するとともに、それに応じたところの具体的精密な情報というものが、生産者あるいは流通業者あるいは消費者に十分行きわたるような配慮をすることが考えられております。あるいはまた、稲作からの転換の問題、その他、前回サジェストしております点も、相当ここでもって具体的な事項として決定を見ているわけであります。  食肉のプレパッケージの問題、あるいは牛乳の問題におきましても、いわゆるワンウエイ容器の導入を積極的に進めるために、政府として、償却制度あるいは融資等についても相当思い切ってこれをやってまいらなければならない、あるいは共同で受け入れる体制というもの、受乳体制というものの推進をはかってまいる、こういった点であります。  あるいはまた、先ほど輸入について申し上げましたが、ノリの流通機構の改善についても、同じような思想で、小売り業あるいは消費生活協同組合というものとの直結取引の推進であるとか、あるいは産地共販に参加する資格制限を緩和するとか、こまかい具体的な問題を決定しております。  生鮮魚介の輸入の積極的な活用という点につきましても、同様に具体的な決定を見ております。  また、食料品の小売り業者の共同仕入れ、共同配送、公設市場の整備、こういった問題は従来から取り上げられていますが、これの推進を、今度は本格的に、着実に推進していかなきゃいかぬ、こういうことで取り上げております。  それから事業許認可の問題につきましては、薬局の開設制限でありますとか、あるいは酒類小売り業についてのいわゆる新規参入を容易にするための条件の緩和でありますとか、あるいは米穀についても同様の問題でありますとか、あるいは理髪業につきましての、協定による料金つり上げを抑止する問題でありますとか、そういう点についても政府として方針をきめ、各省においてこれをさっそく具体化する、こういうことにいたしております。タクシーにつきましても、これを今後さらに増車する問題を取り上げております。あるいは消費生活協同組合の事業活動の助長であるとか、あるいは大型店舗についての売り場面積増大をさらに進めるという点であります。  また、物価行政機構につきましては、今後も対策協議会を随時開いてまいるということを前提にしまして、また、各省にある審議会について、消費者の意見を十分適切に反映させるように、委員につきまして、委員の構成について、これの改正を行なうようにする、あるいは、都道府県と中央とが密接に一体になって推進する以外にはないことでありますから、都道府県においても、いわゆる物価担当官式なものを置きまして、そうして中央との間に随時会議を開いて、そうして中央の方針が地方において十分浸透されるようにしなければならない、こういうような意味での全国物価行政会議というようなものの新設も考えておるわけであります。また、公共料金に準ずるような重要な行政価格につきまして、今後企画庁に対する協議の範囲を広げる。  こういうような点をおもな内容としているのが本日の協議会の決定でございます。  簡単でありますが、大体以上であります。
  64. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま、詳細に御報告いただいたわけでありますが、書き取れない部分もありますので、あるいは若干、的はずれになるかもしれませんが、その点はお許しいただきたいと思いますが、いま長官がお述べになった非常に多数にわたる項目等につきましては、実は長い間の委員会でそれぞれ言われていたことでありますが、私どもは、論議の段階よりももう実行の段階じゃないのか、こういうことを常に申し上げてきたわけでありますが、いま長官がおっしゃられたことはどういうふうに理解するかという、その理解のしかたですが、いままで各省ばらばらなやり方だったのです。ここに、物価問題のなわ張りによるところの弊害というものがたいへんあらわれていたところに不信があったわけであります。きょうお述べいただいたことは、関係各省が、全会一致、これについてはそのとおりやっていくんだという意見一致を見たという段階なのか、あるいは、これについて具体的な、何月何日以降にはこういうことをする、何日までにはこういうことをするのだという、一つの実施のプランというものをきめたのかどうなのか、この辺、私どもはどう受け取っていいのか。ただ単に、話が出たという項目を並べられたということでは、あまり意味がないと思うのです。どういうふうにその点を私どもは受け取ったらいいのか、この点について御説明いただきたい。
  65. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 話としては、前回出ている点もあるわけでして、それ以後、企画庁と各省で十分事務的な折衝をしまして、そうして各省自身がこれをやる、こういうことで、これはいわゆる協議会でありますけれども、閣僚が中心の協議会であります。総理が主宰されておる協議会であります。ここで決定を見たわけでありますから、もちろん、もう各省はいまのような中身について異存はない、こういうことです。でありますから、これに応じて、各省がこれからさらに具体的な点を、実行細目をきめまして、そうして実施してまいることになる、こういうふうに考えております。そしてまた、今後そうした実施が十分行なわれますように、物価対策閣僚協議会といたしましても十分これについてトレースをやってまいる、こういうふうに思っております。
  66. 竹田四郎

    竹田四郎君 大体御趣旨はわかったわけでありますが、問題は、国民の待っている点は、具体的にどう実行するのか、いつから実行するのか、こういう点を非常に待ち望んでいるわけであります。たとえば、スーパーとか生協で酒やあるいは米を売るようになるとか、あるいは野菜等について、生産者から、流通関係者から消費者に対する情報の提供をやるとか、こういう、いままでからすれば格段の前進というふうに私は評価をしたいと思うのですが、こういう情報をやっていくにいたしましても、これはかなりいろいろな問題があるだろうと思うのですが、一体どこで情報をつかんで、それをどう流していくのか、情報の入るのと出るのとをどうするのか。これは、それに対してのいろいろな国の施設というものも必要だろうと思うのですが、実施の期限ですね、そうしたものについては本日の会議では話が出たのか出ないのか。実施については各省でこれをやるということでありますけれども、実際には、米価の問題一つとらえても、なかなかいろいろな関係者、利益団体がありますので、そうすぐに調整がつくという形になるかならぬか。たとえば、ノリの問題に対して消費者代表を入れるという問題についても協会のほうとの話し合いがあるわけでありますが、きょうきめられたことというのは、大ざっぱに言いまして、大体本年度中にこれを実施するというのか、こういう方向で各省が独自で計画を立てて将来進めていくというのか、その辺は一体どういうことでございましょうか。
  67. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 個別の対策ごとに別に期限はきめておりません。しかし、各省の同意を得てやる政策でありますから、そしてまた、各省大臣もこれを積極的に実施しよう、こう言っておるのでありますから、これをできるだけすみやかに実現する段取りになる、こういうふうにわれわれは考えております。また、そういう前提できょうの決定をしているわけであります。何らか事情によってそれが著しくおくれるようなことがあれば、またわれわれのほうで、それについては、先ほど申し上げたように督促もしなければならないし、事情を十分調査しなければならない、そういうふうに考えています。
  68. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんということと、もう一つ、これに対して資料があまりありませんので、あまり深く突っ込んだことはまた将来に譲りたいと思いますが、今度公共料金を上げる場合には企画庁と協議をしてやる、こういう話でありますが、新聞等では、すでに電電公社の市内通話を七円から十円に引き上げようという考え方もかなり煮詰まってきているようであります。また、一部伝えられるところによりますと、おととしもビールを三円上げたわけでありますが、またことしもビールを上げようとしているような、かなり顕著な動きがあるようでありますし、その他、前々から問題になっておりますところの私鉄の運賃の値上げの問題、これもおそらく、経企庁を中心として、物価対策としてかなり押えておられるのだろうというふうに私ども推測をいたしておりますが、こうした公共料金をまた上げるというような動きがかなり出ているわけでありますが、こうしたものに対して、一体現状、経企庁としてはどういう考え方で進もうとしているのか、その点について伺いたいし、まあ地方ではタクシーなんかの問題もあるし、あるいは公衆浴場の問題もあろうかと思います。こういう公共料金についての考え方をどうされるのか、お伺いしておきたいと思います。
  69. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いまいろいろと御指摘になったような点は、まあ新聞等にも出ておりますけれども、ちょうど予算の時期であったりしまして、いろいろと関係方面においてもそうした情報の流れやすい時期であります。そういうことで、ふだんよりも情報がよけい流れているのだろうと私は推測しているのでありますけれども、全くこれは、その方向できまったわけでもなんでもありませんし、もちろん、われわれのところに来て問題になっている程度の問題でもありません。われわれとしては、そうした問題に対してはできるだけ抑制をする、こういう方針で臨んでおりますからして、今後そういう問題について個々にどういう具体的な相談がありますか、そのときに十分に審査をしなければならない、こういうふうに考えています。
  70. 竹田四郎

    竹田四郎君 最近、政府側と経済団体側との間に、金融引き締め政策についていろいろ違った動きがあるわけでありますが、これについて政府のほうではどう考えているか。これも、この間の新聞で見ますと、佐々木日銀総裁も、来月あたりはひとつ金融引き締めを緩和すべきではないか、こういうことも言っておりますし、また一部では、金融引き締めというものと物価との関係というものは必ずしもそう密着していないじゃないか、であるから、金融引き締めをしたところで物価は下がらないではないか、こういうことを言う学者もかなりいるようでありますけれども、佐藤内閣といたしましては、ここ数カ月にわたるところの金融政策というものを一体どのように考えておられるのか。あるいは話題にもなったのだろうと思いますけれども、そうした点についての考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  71. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 金融の引き締めの効果についてでありますけれども、確かに金融関係については、引き締めの効果というのは金融的に非常に出てきておるということは言えると思います。つまり、非常に金繰りが逼迫をしてくる、企業間の信用というものもなかなかつらくなってきている、金利も上がってきている、いろいろそういう面が出てきていると思います。そういう意味において、産業方面を中心にいたしまして、こういうふうに締まってきているのでは困る、こういう感じの印象が強くなってきております。そうして、場合によっては何とかゆるめてもらえないものであろうかというような希望が部分的に出てきておることは、われわれも聞いております。しかし、政府の判断並びに日銀の判断では、なるほど金融面では相当顕著に出てきておりますけれども、経済の実態そのものの根強さ、とかく物価騰貴を誘発しようとしておる現在のそうした根強い景気の過熱状況というものが必ずしも十分におさまるところまでいっているという感じはまだ持っておりません。第一に、生産そのものがまだまだ根強い動きを示す傾向にある、あるいはまた、設備投資などにつきましては、数字によりましては、だいぶいままでよりも落ちついた様子になってくるのではないだろうかというふうに言われている面もないことはありませんけれども、しかし、一面、たとえば機械の受注、設備投資の将来を卜する機械の受注等の情勢を見ますと、決してまだそう弱気になってはおらない。まだまだ相当強気である。最近の日銀の企業についての調査等を見ましても、やはりそうした傾向がうかがわれます。でありますから、これについては、日銀も政府もまだそうした意味の経済の根強さというものが鎮静化しつつあるというところまで効果がはっきりしてきておるというふうに見ておりません。  先ほど、何かの記事で、日銀総裁が六月はゆるめるという話があったという御指摘がありましたが、これは必ずしも日銀総裁の気持ちを正確には出していないと思います。私たちも日銀総裁に接して受けている感じでは、まだ、いま申し上げたようなくらいのところの感じを持っているように見受けられます。しかし、いずれにしましても、非常に情勢が微妙であります。私たちも、よくこの動向というものを今後見守ってまいりたいと思っております。  また、引き締めをやったからといって必ずしも物価が下がるとは限らない、こういう気持ちが確かに一部にあるのでありますけれども、現在の物価情勢というものは、完全雇用の経済ですべてコスト・プッシュで実現されている、こういう前提に立ちますと、そうした議論もわりあいに有力になってくると思うのであります。現に、アメリカその他の先進諸国においては、そうした硬直的な様相が濃くなっておることも事実であります。でありますが、日本の場合におきましては、まだまだ諸外国に比べまして、そうした、必ずしも経済が硬直化していると断定するまでには至っておりません。相当弾力性があります。したがいまして、一方においては、需要と供給との関係において需要が相当に強い。こういう面から物価の押し上げが行なわれておるという面もあるわけであります。そして、最近におきましては、御存じのように、賃金の上昇というものが相当激しくなってきておりますが、企業によっては、これを物価に転嫁しようとするような動きがあるということも見受けられる。あるいは、今後そうしたおそれが出ないとも限りません。それだけに、金融引き締めというものは今後もこれを継続いたしまして、そうして、そうしたおそれのないようにやってまいらなければならない。そういう意味において、今日われわれの最近の経験では、そのタイムラグというものを必ずしも短かく期待することはできないのでありますけれども、なお、全体としての総需要の抑制ということが重要な物価対策の一環をなしておる、一つの大きな柱になっておる、これは確かに言えることであろうと、こういうふうに確信をいたしております。  そういう意味におきまして、ただいまの情勢というものを十分見きわめる必要がある。そして、少なくとも、いまのところは注意深く見きわめていかなければなりませんけれども、なおまだ金融を引き締めていいという確信の持てるところまではいっておりません。一部で、卸売り物価その他で多少反落をいたしておるものもございます。あるいはまた、消費者物価においても、生鮮食料品その他において反落をいたしておるものもありますけれども、しかし、それで安心できるというところまで、まだ情勢はいっていないと思われます。そういう意味において、政府といたしましては、目下のところは、現在の政策を特にいま変更すると、こういう考えは持っていないようなわけであります。
  72. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんので、この辺で終わりたいと思うのですが、私は、長官に特にここで最後にお願いをしておきたいことは、国民の待っておることは、いろいろな政策の実施だと思うのです。たいへんたくさんの項目が出されまして、私どもも、企画庁がひとつ中心になってこの実施をとにかく進めていってもらいたい。途中でくじけることのないように。一つ一つまた検討する必要もあろうかと思います。全体としてはそういう方向でなければならない、こういうふうに思うわけでありまして、特にその点はひとつ強く、この実施方を、監督、調整をしていただきまして、ことばだけでなしに、実際に今年上半期が終わるころからかなりスピードをもってこういうものが実施できるように、ひとつこれは特に長官の特段の御努力——非常にむずかしいかもしれませんが、特段の御努力をお願いをしたいし、私どもも積極的に、そうした施策が進むように、できるだけのバックアップといいますか、こういうこともしていきたいと、こういうふうにも思っておりますので、その点において、せっかく御努力をいただくように強く希望いたしまして、私の質問を終わります。
  73. 横山フク

    委員長横山フク君) 瀬谷君。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 きょうの物価対策閣僚協議会でもって何をきめたかという、いまの報告をお聞きしたんですが、詳細お聞きしたわけではありませんから、一がいにきめつけるわけにはまいりませんけれども、大ざっぱに言うと、非常に事務的な報告のように聞いたわけです。いま国民が望んでいることは、際限もなく上がり続ける物価を何とかしてどこかでブレーキをかけてほしいということじゃないかと思うのです。ところが、この六月七日の朝日新聞にも出ておりますけれども、物価閣僚協議会では「お題目ばかりとなえて効果があがっていない、との批判が絶えない。」、こう書いてあります。お題目ばかりあげて効果があがらないということじゃ何にもならぬわけですね。だから、物価閣僚協議会を開くのはいいけれども、そこで何をきめ、何をやったかということです。ひまつぶしに閣僚が集まって小田原評定だけやる、実際の効果は何にもあがらない、ということでは意味がないでしょう。だから、その点で、私は、せっかく物価対策閣僚協議会を開くのならば、ひまつぶしの小田原評定じゃなくて、実際に一つでもいいから何かをやってきめていくということをやるべきじゃないかと思うのです。いまお聞きすると、輸入政策の活用だとか、食料品価格の安定だとか、許認可の再検討だとか、こういうふうに言われますけれども、具体的な例としてあげられたのは、レモンジュースだとか、ノリだとかいう話です。しかし、国民生活にとって非常に大きな影響力を持っているのは、たとえば消費者米価の問題であるとか、あるいは野菜の価格であるとか、肉や魚の価格であるとか、そういう問題、あるいは交通費、私鉄の運賃の問題。タクシーはこの間上がったばかりです。これからも上がろうとしている。公共料金をどうするのかという問題。こういう問題と、それから無制限に上昇しつつある地価に対してどういう手を打つかということですね。特に地価なんかの場合は、思惑でもって上がるという影響があると思うのですが、こういう問題に対する根本的な対策というものをはっきりと打ち出さないことには、いくら物価の抑制と言ったところで実効があがらないと思うのですが、はたして長官としては、あなた自身がこの閣僚協議会に臨んで、この閣僚協議会でもって確実に何かをきめ、何かを実行に移せる効果があるというふうにお感じになっているのかどうか、これでいいと思っているのかどうか、そういう点を端的にお聞きしたいと思うのです。
  75. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) ひまつぶしだと言われると、まことに困るのでありますが、きょうも閣僚協議会で、やはり各省の大臣が、特に農林関係にしましても、あるいは厚生関係にしましても、いろいろ問題が多いのでありますが、これについて真剣に取り組んでおられます。そういう意味で、この一つ一つ、問題はまさしく、お話が出たように、実行に移すことでありまして、これを実施に移すということになれば、それだけの効果ははっきりと出てくるはずであります。そういう意味で、私自身は、これはひまつぶしどころではない、この実行をわれわれも見守り、そうして各省もこれをいま一生懸命実行しようと、こういう気持ちでいるのですから、これに十分期待をかけていいというふうに考えております。  個別の価格対策というものは、それ一つとって見れば、それだけだと、あまり何かもの足りないようなお感じを持つかもしれませんが、これは、個別対策としてはやむを得ないことであります。大前提としてのいわゆる総需要の抑制ということをやはりしっかりと打ち立てて、その上に立って個別対策をやって初めて実効があがってくることであります。それから、これを実施いたしましても、その効果が出るのに多少の時間のかかることも、それは当然のことながら、出てまいりますが、しかし、そういう方向が示されるということは、やはり非常に大きなことだと私は考えております。そういう意味において、これについて私は十分効果を期待しておる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 効果があがるのに時間がかかるというふうにおっしゃるけれども、時間をかけて効果があがるということは、物価の抑制という事実があらわれなければ効果があがったということにはならぬわけです。いままで物価が下がったというのはないでしょう、時間をかけても。時間をかければかけるほど上がる一方でしょう。いま長官が言われたように、この閣僚協議会をやって、ちょっと時間をもらえば、あるいはこれとこれは下がります、あるいはこれ以上は上がりません、というような自信を持てるものがあるのかどうか。物価なんというものはごまかしはきかないですからね。いくら口先だけで物価の抑制につとめますと総理大臣が演説しても、事実上いろいろな価格が上がったのでは何にもならない。いま物価というものは慢性的に上がりつつある。ことしの春闘も相場が五けた、こういうふうに言われておる。私は、五けたの賃上げを労働組合が達成したといって喜んでいるということは、これは憂うべき現象だと思うのです。五けたの賃上げということは、インフレがまさに慢性的になって、非常に破局的な傾向に移りつつあるのじゃないかという心配をしなければならないのじゃないかと思うのです、これは。そんなに楽観をしていいものだとは思わない。いま物価が上がっているから五けたの賃上げを必要とすると思うのですよ。しかし、五けたの賃上げそのものよりも、その五けたの賃上げを必要とする今日の物価の傾向をわれわれは心配しなければならぬと思うのです。それには一体何が一番大きな原因になっておるのかということからいかなければならぬと思う。  いまの閣僚協議会の簡単な報告に対して直ちに批判をするのは妥当でないかもしれませんけれども、どうも聞いてみると、火事の本家に向かって水をかけるような作業のようには聞き取れない。火事の本家のほうに水をかけるのじゃなくて、その飛んでいった火の粉を追っかけて、それをたたいていくということに全力を発揮しているような感じを受ける。そうでないというふうにおっしゃるならばたいへんけっこうなんですが、私がいま長官の報告を聞いて受けた感じというものは、そうであります。抜本的に物価を抑制しよう、今日の物価問題に対して大なたをふるおうということであれば、今日の段階でこの程度のことに時間をかけて論議をしているという段階ではないような気がするのですが、はたしてどういうものでございましょうか。いまの物価上昇傾向をインフレというふうに規定をしてよろしいのか、よろしくないのか。もしそのように規定をしていいということになれば、政府としてもかなりの覚悟をもって対処しなければならぬというふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  77. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) もちろん、火の粉だけ追っかけているつもりはさっぱりありませんが、今日の物価の状況というものは、やはりこの三、四年間のとてつもない高い経済成長による過熱ということが非常に基本的なものになっています。そうして、これがいわゆる物価上昇の加速化という感じを与えてきたと思います。ですから、われわれはこの過熱をまず冷やさなければならない。そういう意味で、何といっても一番基本的には、まず金融引き締めを相当やっていかなければならない。これによって景気の過熱を何とか押えていく、ブレーキをかけていく、これはもう何といっても基本的な施策であります。そうしてまた、消費者米価のお話が出ましたけれども、米のような基本的なものは、われわれ政府も申し上げているように、もちろんこれを押える、こういう方針を立てておるのでありまして、これはわれわれとしてもぜひ消費者米価を据え置いていきたい、こういうふうに考えているわけであります。  そうして、このほか、しかし一面において、いろいろとやはり今度は供給をふやしたり、あるいは生産性を上げたり、その面からする対策というものも必要なんでありまして、私が時間がかかると申し上げたのは、そっちのほうであります、主として。そういうものについて急に効果があがって供給がふえるというところまでいかないものもありますけれども、しかし、これはこれで一つの手を抜くわけにはいかない対策でありまして、これはこれで、大いに生産基盤を整備し、そうして供給をふやすような方向でもって、生産性を上げるような方向でもって、このじみちな対策対策でやってまいる。まあ、個々の個別的な事情によって上がっているものについても、同じように個別対策が重要であります。そういう意味で、たとえば、サービス料金などというものは最近非常に上がっております。でありますから、理髪料金その他についても、いままでのようにどんどんどんどん上がるというような体制を建て直さなきゃいかぬ。そういう意味でもって、今日その点についての基本的な対策を、これは事は小さいようでありますけれども、やはり家計費にとっては、ばかにならない負担でありますから、そうしたような意味でもって、一つ一つ対策もこれまたゆるがせにできない。こういう意味で、全体としての政策も、それから個々の対策も、両方合わせてやっていかなければならないと、こういうふうに私は考えております。話がこまかいといいましても、やはりそうした問題も十分意味のあるものであるというふうに私は考えております。  そういうことでありますからして、一体何が下がったかといいますと、下がっているものも事実あるのです。あるいはまた、四十年の最初に少し下がりまして、その後、先ほど申し上げたような過熱のために、また上がってきたものもあります。そういう意味では、今回は基本的なこの引き締めを堅持して、そして過熱をできるだけ冷やしていくと、こういうようなことも、できるだけここでもってやっているわけでありますから、われわれとしては、こうした対策によって効果の実現を期待してまいると、こういうわけであります。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 景気の過熱にブレーキをかけるということをおっしゃっているけれども、このブレーキが相当摩滅しちゃっているのじゃないかという気がするわけです。そうでなければ、今日のように物価が際限もなく上がり続けるということはないと思う。経済成長率というものが諸外国に比べて高いといって自慢をして、はたしていいかどうか、いろいろ問題があると思う。たとえば、GNPの問題、このGNPにしても、水ぶくれでもって数字だけ上がっている実態というものは、必ずしも額面どおりに受け取れないということがあると、問題だと思うわけです。一体GNPをどのように理解してよろしいのか、諸外国に比べて国民の生活実態ははたしてどうなのか、これが問題だと思う。国民生活そのものが、このGNPの数字でもって比較をして、日本が高かったとしても、生活の実態そのものが劣っておれば何にもならぬわけです。ヨーロッパの先進諸国に比較をして、はたしてその点、日本はどういう状態にあるのか。今日いろいろな問題が起きております。公害の問題、物価の問題、交通問題、住宅問題、非常に多岐にわたっておるのでありますけれども、解決しなければならぬ問題がたくさんあり過ぎるわけですよ。だから、GNPだけでもって、これで経済成長だといって大きな顔をしているということになると、国民の不満というものは爆発をしてしまう。もう今日、爆発寸前にまで来ているのじゃないかという気がするわけです。その点、長官としてはどのようにこのGNPの問題をお考えになっておるのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  79. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 私も、御質問の趣旨はよくわかるつもりであります。しかし、一面において、日本のGNPが急速に上昇し、そうして全体としてふえましたから、一人頭もふえてまいりました。そこで、よく最近言われているように、世界でも一人頭で二十番目ぐらいだったのが、最近は十五、六番目ぐらいというふうに上がってきた。今度の新しい計画でもって一〇・六%の伸びでまいりますと、そうすると今度は日本も五、六番目ぐらいのところにいく、こういうふうに期待されておるのでありますけれども、これは、数字は決してごまかしではありません。その点に関する限り、明らかに実体的にそれだけの生活水準が上がってまいっておる。われわれは毎日生活しておりますから、自分自身でもってなかなか生活の向上ぶりというものを実感を持って必ずしも感じられないと思いますが、やはり、十年なり十五年なり、こういう感覚をもって比較してみます場合に、はっきりと日本人の一人頭の生活水準というものは上がってきておることを、これは何ぴとも否定できないと思います。  ただ、同時に、御指摘のように、ただGNPの量がふえればそれでいいんだと、こういうものの考え方については、最近大きな反省が行なわれております。第一、GNPのふえるその中身にも問題がありましょう。われわれもかねがね指摘しておりますように、社会資本の充実のほうが非常に立ちおくれておる。同じGNPがふえるにしましても、どういう部面がふえるかという、そのふえ方がやはり問題であります。そういう意味において、経済力はなるほどついたかもしれない、であるから、効果がだんだんたまっておる、やはりこの効果が現実にたまっておるということは、これはまぎれもない。経済の実態がそこにはっきり出ておることではありますけれども、しかし、効果がそんなにたまっているのに、住宅のほうはそれほど進んでいないじゃないか、こういうような問題があるわけです。つまり、こういう意味において、従来の、GNPの量がふえればいいという、そうした考え方について、われわれにとって大きな反省期が来ていることは御指摘のとおりであります。そうして、特にわれわれが今後GNPを、そういう意味で量から質的なものに考えていかなければならない、その際に一番重要なのが、この物価問題と公害問題の二つであろうと思います。  物価問題は、御説明を申し上げるまでもなく、物価が上がった分だけ、それだけ実質的に割り引かれることになるわけでありますから、そういう意味において、われわれは物価問題と取り組んでいかなければならない。それからまた、公害の問題は、なるほど名目的な収入、賃金収入はふえたかもしれないけれども、その環境が悪化して、そうしてわれわれの健康をむしばんでいく、こういうふうな環境である、きれいな空が見れない、こういうような環境であるということになれば、これは名目的な賃金収入がいかにふえましても、決してそれがよしというわけにはいかないわけであります。そういう意味で、物価問題、公害問題、この二つは、われわれが今日までとかく量的なGNPを追っかけてまいったことに対する大きな一つの困難性を集中的にあらわしている問題でありますし、そういう意味において、われわれもその方面に特に今後政策の重点を置いていかなければならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  80. 横山フク

    委員長横山フク君) 阿部君。
  81. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 長官に二、三お伺いしたいと思いますが、時間の関係がありますので、取りまとめてお伺いいたしますから、お答え願いたいと思います。  最近のこの金融引き締めを緩和しろという声は、業界からも非常に強く出ております。これは大企業に限らず、中小企業、全般の問題でありますが、日銀の五月の月例報告によりますと、企業の資金繰りは事実非常に苦しくなってきておる、しかし、生産はそれにもかかわらず引き続き増加し、また需要も、設備投資、消費を中心に堅調を続けている、こういうふうに報告されております。また卸売り物価は、弱含みであるとはいえ、一般工業製品は依然値上がりを続けております。消費者物価も、季節商品を除いた指数は御承知のように上昇基調が衰えておりません。長官はこのような現象をどのようにごらんになっておるか、お伺いしたいと思います。また、昨年九月金融引き締めを実行なさったわけですが、卸売り物価は思うように下がっておりません。これは締め方が足りないのではないかというような意見もありますし、また、この金融引き締めは実質的に通貨の引き締めにはなっていないという意見もございます。また、国際収支の黒字のもとで、通貨の管理、金融政策をどうすればよいと考えているのか、こういうような金融引き締めに関連した問題につきましてお伺いいたします。お考えをお願いいたします。
  82. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いまの最初の問題でございますけれども、やはり最近においても、相当いろんな、生産をはじめ、引き締め下にもかかわらず、根強い徴候が出てきております。こういう点は先ほどの日銀の調査等にも出ておりますし、そういうことで、私たちもそうした点をやはり重視しなければならない。まだまだそういう意味においては、いわゆる経済の鎮静化が行なわれたというわけにはまいらないと思うのであります。  それから、季節商品につきまして、一部反落をいたしております。これにつきましては、もともと特に卸売り物価はそうでございますが、現在の物価高の一つの要因が、やはり今日の海外の物価高、こういうものの影響が相当来ております、御存じのように。そこで、最近の反落を見ますと、多少海外のそうした価格に鎮静の見えているものもございます。そうしたことの反映である面もあり、あるいはまた、一面において、金融引き締めの効果がやはり多少あらわれてきたという意味で、いわゆる市況商品とわれわれが称しております鉄鋼その他繊維のようなものについて多少の反落が見られる。これは、ですから、ある意味においては、海外の鎮静化が影響しておるし、ある意味においては金融引き締めの効果が出ていると、私は、そこいらは、からみ合っていると思っております。しかしまた、この市況商品の反落も、もうちょっと様子を見ませんと、どの程度に永続性があるものか、これも十分に見きわめなければなりませんし、それからまた、この市況商品そのものが全体の商品に占めるウエート、これも限られたものでありますからして、そうしたことだけでもって鎮静化が行なわれてきたと、こういうふうに言うのも時期尚早である、こういうふうに私どもは見ております。そういう意味で、経済の実態面に金融引き締めの効果が多少出かかってきているのかなというくらいのところでありまして、これがもっとさらに効果が出てくるかどうかをわれわれは見たいと、こういうふうに思っております。  それから、この金融引き締めというものが実はあまりきいていないんじゃないか、こういうお話でありまして、確かに、これについてもいろいろと議論がございます。日銀券の増発の状況その他を見ましても、まだまだそうした点について、もっと締めたほうがいい、こういう議論も一面にございます。あるいはまた、財政についてもさらに締めたほうがいい、こういう議論もございます。また、引き締めといっても大銀行中心で引き締めているんであって、その他の金融機関においては必ずしもそうではない、こういうようなこともありますけれども、まあしかし、総体として、だんだんと——いままで大銀行に引き締めのしわが寄っておって、いわゆる中小金融機関と称せられておるところの信用金庫その他においては必ずしもそうでないと言われておったものが、やはりこのところ、だんだん末端にまで、多少引き締めというものが徐々に響いてきておるのじゃないか、こういう点も金融としては見受けられると思うのであります。しかし、一部の銀行だけを相手にする金融引き締めで一体いいかどうか、こういう問題は確かにありますが、やはり一番大きなところを引き締めている、こういうことがだんだんと効果を示してきているというように言えると思います。  また、ちょっと御質問の趣旨がわからなかったのですが、何か国際的な関係と、こういうことでありますが、これらは、もちろん日本の国内だけでなしに、国際的な経済条件の影響がございますけれども、しかし、たとえば、例の株式の外人投資の問題一つとってみましても、今日各国の経済においても一方においてインフレが進行しつつあるんですが、また、各国においても何とかそれを押えようとする各種の努力がなされております。そうしたいろいろの反響もありまして、そうして国際的な影響というものも徐々に鎮静化していくんではないかというふうに私どもは見ておるのであります。そういうことで、もうちょっと様子を見続ける必要がある。そうしないと、ほんとうに引き締めの効果というものが出てきたかどうか、まだ注意を要すると思っております。
  83. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 長官の御意見、お考えを承りましたが、まあ結論的に申し上げますと、金融引き締めの効果というのは、政府の期待するほどの効果、また金融界が期待するほどの効果は出ていない、しかし出ている部面も相当あるようにも見受けられる、これからもうしばらく模様を見た上でこの引き締めを緩和するかあるいは継続するか、きめたい、こういうようなお考えでございますね。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  84. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) むしろ、目下のところの考えは、いまの引き締めを継続していく、しかし、よく情勢を見きわめまして事に処したい。ですから、まだまだすぐ緩和するというふうには考えておりません。
  85. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 企画庁では、所得政策導入につきまして本格的に検討するために経済審議会を拡大する方針だというようなことを承りましたけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  86. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) これは御存じと思いますが、前に、審議会の中で熊谷委員会あるいは馬場委員会というのがございまして、すでに発表したものもあるいはごらんになっていると思いますが、所得政策についての一つ研究をいたしております。しかし、それは結論として、時期尚早であるといいますか、まだ所得政策をとるには早いというような感じの結論で、これをすぐとれとかなんとかということには、もちろんなっておりません。むしろ、研究をしたという程度のものだと私たちはいま了解しております。それで、あの委員会はまだ存続いたしておりまして、さらにこれについての議論を深めてまいる必要がある。しかし、まあわれわれの知る限りにおきましても、なかなか所得政策の採用ということについては、よほど検討を要します。それから、確かに賃金が上がっておる事実は認めざるを得ませんけれども先ほど申し上げましたように、まだ日本のいわゆる物価高というものは完全なコストプッシュだけで決定されているというふうにも私のほうも断定をいたしておりません。そういう意味におきまして、やはり、いまの金融引き締め政策を中心とし、それに各種の個別対策を加えまして、そうしてできるだけやってまいる。そうした状況というものをよく見守った上で、またいろいろとわれわれが検討しなければならぬ問題が起こってくるだろう。いま別にそういうものを具体的に考えておるというところまではいっていないわけであります。
  87. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま私は、所得政策そのものを企画庁として検討しようというお考えについては別に異議はありませんし、それだけの物価対策についての意義は認めるわけでございますけれども、とかく所得政策といいますると、ただ政府で取り上げるというようなことから見ますと、私どもとして、やはり物価が一向安定しておらないというような物価の騰貴する状況、政府はそれに対して、物価を安定させる力がないというか、まだ効果があがっていない、それを、不可抗力じゃなく、いままでの政策だけじゃなくて、結局、所得政策というのを新しい観点からやろうということは、物価政策が成功しないものだから、それをすりかえるために、所得政策という新しい問題を提起していくというふうに勘ぐる向きもあるわけでございます。  で、私は、やはり熊谷報告にもありますように、あくまでも物価の安定というようなことと経済成長と両立——これは、財政金融政策の運用、また競争条件を整備するというようなことで、オーソドックスに経済政策を立てていくというべきが本筋であって、いかにも所得政策を採用することによって物価が安定できるような、何といいましょうか、ビジョンと申しましょうか、それを持つことはむしろ間違いであると思いますけれども、この辺について、所得政策が物価の上にどのような、何といいましょうか、対策として効果があるものになるか、それとも、いま私が指摘しましたように、政府が物価政策をある程度、何といいましょうか、カムフラージュするために、物価政策の効果があがらないことをカムフラージュするために、総需要というようなことを打ち出してきたのじゃないかというようなことに対して、どういうふうにお考えになりますか。
  88. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 政府は、所得政策はまだ持ち出してきておりません、一度も。そこで、率直に申しますと、西欧諸国でも現在のインフレに手をやきまして、実は最近、OECDの会議におきましても、いままで各国でもって実験をして、必ずしも成功しなかったということを百も承知の上で、もう一回所得政策を取り上げてみる値打ちがあるということで、先般もOECDでもってそういう話が出ております。でありますから、別に意図的にこれをすりかえるとかなんとかということよりも、よくよくせっぱ詰まるというか、そういうところで、そういう議論がなされておるのだろうと思います。この所得政策を成功させるには、むしろその前になすべきことがたくさんある、その前になすべきことをやって、成功すれば所得政策は要らないのじゃないか、結局こういうことになりがちでありまして、私も、むしろ阿部さんの御意見に目下近い考えを持っておるわけであります、そういう意味におきましては。でありますから、まず現在われわれとして行ない得る、いわゆるオーソドックスな対策というものをできるだけやってまいる、こういう心境でありまして、まあ一部に、審議会の中の従来の委員会で所得政策の検討を継続するというようなことから、それじゃさっそく採用するのか、こういうふうに痛くない腹を探られておりますが、別にそういうことは全然ございません。現在も、オーソドックスな政策をできるだけやってまいる、こういうのが目下の心境でございます。
  89. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 企画庁長官は、だいぶ所得政策について新聞等にも取り上げられて、また、いろいろ話をあっちこっちでされておりますから、相当熱意をお持ちじゃないかと勘ぐりましてお伺いしたわけです。他意はございません。  さて次に、先ほど来閣僚協議会の模様などを承りましたのですけれども、御承知のように、消費者物価は過去十年間ずっと上がり続けております。それだけに、国民生活を非常に脅かしておるというのが実情だと思いますが、しかも、この間に一向実効のあがったような政策が樹立されていない。非常に残念だと思います。いままで、どっちかというと安定しておりました卸売り物価も、最近は、いま長官からお話がありましたように、国際価格の変動によりまして一時卸売り物価も下がりましたけれども、しかし、卸売り物価自体もこの四カ月ずっと引き続いて上がってきておることは御承知のとおりであります。また、最近の消費者物価につきましても、一月に七・八%ですか、二月が八・五%、三月が八・三%、四月も八・三%、非常に異常な高騰を続けておるようなわけでございます。五月に入って野菜が少し安定した、こういうことで、総合指数においては下がっておるように見受けられます。東京の場合は六・一%ということになったということを聞いておりますけれども、確かに物価が、ことに消費者物価が安定したとは言えないような状態にあるわけでございます。それに対しまして、きょうも閣僚協議会がありましたそうですが、これまでも二、三閣僚協議会がありましたけれども、実際にとられたといいますか、すぐに打たれた対策というものは、私は寡聞にして、あまり研究していないというそしりがあるかもしれませんが、野菜を直売したということと、ジュースを輸入した、これだけは実行した、その程度じゃないかというふうに思われるのですけれども、そう言っちゃ長官非常にお怒りだと思いますが、その程度じゃございませんか。
  90. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、この物価対策に取り組みまして、もちろん、具体化するということになりますと、何といっても基本の問題は、いまの需要抑制だろうと思います。そういう意味において、私たちは、そのかんぬきをまずしっかりはめる、こういうことがやはり基本になっておりまして、そうして個々の対策をこれから逐次やってまいろう、こういう段階でございました。ですから、われわれとしても十分な施策をする余裕もなかったということは事実でございます。そういう意味において、今度なんかは、あれこれと、いささか盛りだくさんで、今度は逆に、あまり井戸ばた会議ばかりやっているという感じを持たれるかもしれませんが、まあ、できるだけわれわれとしてもやってまいらなければならない。それでも、消費者米価の据え置きにしましても、その他の物価の据え置きにしましても、これは消極的でありますけれども、やはり政府としての気がまえを十分見せておる、こう考えておりますし、それぞれ相当反発もある問題であります。そういう際でありますから、政府としましては、今日まで不十分であったことは私も感じておりますけれども、今後これを推進してまいるようにしていきたい、こういうふうに思っております。
  91. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 時間もありませんから、最後にお伺いします。  先ほど来承りましたのですけれども、長官自身もおっしゃっておられるように、今日の物価対策におきまして、ごたごたといろいろと並べた、けっこうだと思います。ぜひこの対策が、いままでのように、ただ作文になったり、ただごたごた並べた、会議の議題にだけなって、それっきりで終わってしまうということのないように、こういうごたごたと並べられたことを、ぜひ実行していただきたい、こう思うわけです。そうして、その結果を着実に追跡していくべきじゃないか。これだけ実行した、そうしてこれだけの効果をあげた——それは一つでも二つでも私はけっこうだと思います。それを積み重ねていくことによって、ほんとうに物価の安定ということが可能になるのじゃないか、こう思います。長官、長官は非常に頭脳明晰の方でありまして、頭の中ではたくさんおありになると思いますが、それが実行されなければ効果があがりませんので、いままで長官自身がお考えになった物価対策、また、今日のような閣僚協議会なんかできまった物価対策につきましては、ぜひこれを実行し、実現し、そうしてほんとうに物価安定の上にメリットがあるように、がんばっていただきたい、そうお願いしまして、私の質問を終わります。  総括的に、もう一つ物価安定に取り組む決意をお伺いしたいと思います。
  92. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 御趣旨は私もよくわかっておるつもりでありますから、まあひとつ、できるだけ今後もやってまいりたいと思っております。
  93. 横山フク

    委員長横山フク君) 瀬谷君。
  94. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま、阿部委員からもお話があったんですけれども一つ一つ実行してもらいたいという注文があったわけですよ。長官も、物価抑制のために、景気の過熱にブレーキをかけると。おそらく、物価の抑制ということは、企画庁長官として、大臣としては非常に大きな任務であろうというふうに思われるわけです。もし佐藤内閣が物価の抑制について一生懸命にやりたいということばが本気であるとすればですよ、本気であるとすれば、長官の任務は非常に大きいと思う。  そこで、物価対策閣僚協議会なり、あるいは衆参の物価対策特別委員会が一つの区切りになって、ここでもって、はたして政府が言っておったことがどれだけ実行に移されておるのか、それから物価の問題について、これはもう数字的にあらわれることなんですから、前月に比較して今月はどうかといったような、月々の物価の動向といったようなことを、委員会でもって私は報告をしてもらいたいと思うんです。その実績がちっともあがらないってことになれば——さっき私も、ちょっと口が悪いとは思いましたけれども、ひまつぶしの小田原評定と言ったんですけれども、実績があがらなければ何と言われようとしようがないんです、ひまつぶしと言われようと何と言われようと。そのかわり、実績があがれば、われわれ野党といえども、政府はよくやったと言ってほめるぐらいの度量は十分に持ち合わしておる。ほめたくてもほめようがないから、しかたがないから、いろいろ文句をつけてるわけです。  これはまあ委員長にもお願いしたいんですけどね。毎月この物価の特別委員会を開いて、政府のほうからも、これだけのことをやりました、あるいはこれだけの実績があがりましたといったような報告をして、そして閣僚協議会というものも実際に一生懸命にやってるんだという実を示してもらいたいと、こう思うんですが、その点はどうでしょうか。委員長と、両方からお答え願いたい。
  95. 横山フク

    委員長横山フク君) お答えします。  委員会としても、ただ質問のしっぱなしということはよくないし、閣僚協も相談しっぱなしはよくないと思っています。その追跡調査ですね。その次の委員会で必ずするように、委員長理事打ち合わせ会で、そういうことに対しての段取りをきめたいと思います。
  96. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) この物価の実績は、とにかく数字でもって出てまいることでございますから、別に私どものほうも、それを公表すること、少しも差しつかえない問題でございます。その上でひとつ議論していただきたいと、こう思います。
  97. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ、口先だけじゃなくて、これはもう実際に委員会でもって、よかったか悪かったか、経過というものを報告し、どうもよくなかったということであれば、何が理由であるかということも、あわせてこれからは表明をしていただくことにしたいと、こう思います。  当面の物価安定対策についてのパンフレットをいまいただきましたけれども、これを読んでみますと、今日の物価の値上がりの基本的な大きな問題について、こうきめたというふうには理解しがたい面があるわけです。これはもちろん、こういうことも大事だろうと、こう思います。しかし、いま国民が望んでおることは、レモンジュースやマーガリンやノリといったようなことでないと思います。もちろん、こういう品物も安くなればそれにこしたことはありませんけれども、そんな問題じゃない。問題はたくさんありますけれども、まあ時間の関係もございますから、土地の問題についてちょっとしぼってみたい、こう思うわけです。  物価の値上がりの中でも特に顕著なのは土地の値上がりで、これはもう、少しも、中だるみだとか、そういう休憩なしに上がりっぱなしに上がっているわけですね。だから、まず土地の値上がりの現状といったようなものを報告してほしいと思います。
  98. 朝日邦夫

    説明員(朝日邦夫君) ただいま土地の値上がりの状況はどうかというお話でございますが、私の手元にございます資料で、たとえば、日本不動産研究所の全国市街地価格指数でございますけれども、これによりますると、昭和三十年の三月から四十四年の九月までの間に、全国の市街地の平均では一二・七九倍に上昇いたしております。それから特に最近は、商業地とか工業地とか住宅地とかといういろいろな用途地域の中でも、宅地の値上がりが著しいようでございまして、これも同じ研究所の資料でございますが、四十三年の九月までの一年間で一七・六%、それから四十四年の九月までの一年間で二二・二%という上昇率を示しているわけでございます。
  99. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 なぜそういうふうに値上がりを続けるのか、その原因といったようなものについて、もし建設省として分析をしておられることがございましたら、報告をしてほしいと思います。
  100. 朝日邦夫

    説明員(朝日邦夫君) 私ども、たぶんそうあろうかと思っておりますることは、最近特に地価の問題と言われておりまするものは、特に大都市におきます人口、産業の集中に伴いまして、いわば宅地の需給が均衡を失した結果によりまして地価が異常に騰貴をする、こういう結果になっておるのではなかろうか。もちろん、これは基本的な話でございまして、これに伴いまして、土地の買い急ぎであるとか、あるいは売り惜しみというふうな、いわば投機的な作用が働いて、通常の経済原則以上に騰貴をもたらしている、かようなことではなかろうかというふうに考えております。
  101. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これはいろいろな要因があると思いますけれども、需要と供給のバランスがくずれるということが価格を引き上げる大きな原因であることは、ごく単純な原理だと思うのですね。そこで、大都市に人口と産業が集中して、大都市に対する集中というのは無計画に今日続いているわけなんですけれども、これを規制しないで、このままほうっておけば一体どういうことになるのか。コンピューターというものもあるのでありますけれども、この大都市への人口、産業の集中と、土地の値上がりといったようなものが今後どういうことになるか、これから先の見通しといったようなものについて調査されておったならば、それらの点についてもお伺いしたい。
  102. 朝日邦夫

    説明員(朝日邦夫君) 見通しを申し上げるというのも、いささかあれでございますけれども、御承知のように、ただいま首都圏、近畿圏等におきましては、大都市に必ずしも立地をする必要のない工場等は立地の規制がなされておるわけでございます。しかしながら、そういった工場とは別に、事務所その他のいわば中枢管理機能の集中というのが発展の趨勢であるようでございまして、そういったことから、御承知のように、新しい全国総合開発計画等におきましても、依然としてやはり人口の都市集中ということは想定なさっておるわけでございます。
  103. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そこで、今度、大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、いまのように地価がむやみやたらと上がりっぱなしに上がるということは、政治の責任だろうと思うのです。ほったらかしにしておけば、この現象は破局的な状態に立ち至るまで切りもなく続くだろう。そこで、それじゃ、人口なり産業が大都市に集中しないように、過密過疎といったような問題がなくなるようにするにはどうしたらいいかということになると、これは一企業じゃできないわけですよ。その企業がどこかに工場をつくろう、どこかで設備投資をしよう、こういうことは、これは一企業でできる。なるべく土地の安いところを物色して、そこに工場を建てるといったようなことはできる。しかし、計画的に、たとえば、何をつくっても、ろくな作物ができないような土地だってあるわけです。そういう土地に工場をつくり、あるいは港湾をつくり、そうして新しい産業の開発を行なうといったようなことは、これは一企業じゃできません。そういう仕事をやるのはだれかということになれば、これは政府でなければならぬのです。政府の中でどこがやるかということになると、はっきりきまっているかどうかわかりませんけれども、われわれが考えるところは、やはり企画庁あたりがやらなければいけないんじゃないか。だからこそ、経済社会発展計画であるとか、あるいはまた新全国総合開発計画だとか、こういったような名称でいろいろなプランが出てくるわけでしょう。しかし、このプランが出てきても、そのプランがそのまま実行に移されているかどうかということになると、さっぱり実行に移されていないような気がする。プランがプラン倒れに終わってしまっている。これでは、何を言っても問題は解決しないような気がするのです。そういうプランをせっかく役所のほうで立てたならば、なぜそれを具体的に推進できないのか、推進できないその隘路は一体那辺にあるのか、といったようなことについて、長官の見解をお聞きしたいと思うのです。
  104. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 確かに、経済企画庁は、いわゆる計画官庁と言われています。いわゆる行政の実施面ということになると、どうしても各省の権限でもあり、各省と話し合いをして、われわれの考えているところを十分にわかってもらいまして、そうして各省自身で積極的にその方向において政策を推進していく、こういうことが今日までのたて交えであったと思います。また、ある意味においては、それは今後も企画庁の性格としてやむを得ない点があると思います。ただ、そうは言いましても、また同時に、御指摘のように、ただ企画庁では計画だけ立てて、そうして文章をつくって、あとは知らぬ、これでいいのかと言われますと、決してそういうわけにはまいりません。そういうことで、物価の問題一つとりましても、私たちはこういう協議会という組織をつくって、できるだけ各省に呼びかけ、各省とともにやっていく、こういうような体制をしかざるを得なかったわけでありますが、土地の問題は、中でも一番私は率直に言ってむずかしい問題だと思います。そうして、これは単に価格政策といいますよりも、御指摘になりましたように、非常に急速な都市集中、こうした一種の社会現象、こうしたことがやはりその基礎にある。したがって、都市の過密、都市に対する過度集中、こうした現象というものが、ある意味においては今日までも手おくれの面もあるわけでありますけれども、今後もそうした事態がますます起ころうとしている際に、これはやはり何とかチェックしていかなければならぬ、こういうことも私は明らかに必要だと思います。最近の都市計画法の制定によりまして、いわゆる市街地区域と調整区域というものを分け、そうして土地利用区分政策というものがやっと一歩を踏み出した。非常に、私の感じからしても、おそきに失したとは思いますけれども、それでも、とにかくそうした体制がいまできようとしております。  そういうようなことを前提にしまして、そうして今後やはり一定の土地に対する投資の調整というものを今後行なっていかなければ、一方においていくら宅地の造成その他をやってみましても、土地には限度がありますからして、どうしても需要供給の関係からいっても、ある意味において土地の価格が上がってまいる。また、この土地というのは、何らかの転機でもって不況が固定化したりしますと、今度は転落も非常に激しい。逆の現象を生ずる問題でもございますし、取り扱いのむずかしい問題であります。しかし、われわれも、この土地の問題について、もちろんほうっておくわけにはいきません。そういうことで、これはあと、そうですね、一月か二月かかりますか、この土地問題についての準備を、いま建設省が中心でやっておりますが、土地の閣僚協議会というものが別にありますし、これを早急に開催をいたしまして、そうしてこれらについての基本対策の確立を急ごうとしているようなわけでございます。もちろん、それはあくまで土地の問題に直接関係のある対策でありまして、いま御指摘になりましたような、都市の過密をどうするとか、こうした基本的な問題は、これはいわば国土の再編成ということとも関係する大きな問題でありますから、簡単ではありませんけれども、しかし、これらについても、御存じのように、新全総というようなものもできました。これは単なるビジョンではありますけれども、しかし、結局、そうしたものをやはり頭に置いて今後行政なり政策というものが施行されていかなければならないという方向を示しているわけであります。私たちも、いろいろな政策によりまして、過度集中、それからまた、それから来る各種の弊害をできるだけ防止するように、今後各般の政策を実現していかなければならない、こういうふうに考えております。
  105. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ、ちょっと具体的な問題に入りますけれども、新全総、こういうものをいろいろこしらえて、それがたなざらしに終わってしまっては何にもならぬと思うのです。そこで一つの具体的な問題として、全国に新幹線をつくろう、これは議員立法でこの間成立したばかりですね。この全国新幹線ということは、過密過疎といったような格差を解消をして、流通機構にもこれは寄与するというねらいがあると思う。しかし、全国に新幹線を建設するということになると、先般の五月に成立したあの法案の説明を聞いても、財源としては十一兆三千億ですね。今後の物価値上がりを見れば、十一兆が十五兆になるのだか、二十兆になるのだか、見当つかない。こういう問題は、法律ができた以上は、来年度から予算に組んでいく段階になると思うのです。予算に組むということになりますと、十一兆を一ぺんにやるわけではないけれども、じゃ、どこからどういうふうにして新幹線を建設していくかという問題に、もう直面をするわけですけれども、政府としては、じゃこの財源をどうしようかということに直ちに取り組まなければならぬわけです。いま、いろいろ検討はしていると思うのですけれども、各省それぞれの自分の立場だけではなくて、政府が全般として新しい交通体系といったようなものを考えた場合に、新幹線の財源をどこから持ってきたらいいとお考えになっているのか。どういうふうにいま準備をされておるのか。その点をお聞きしたいと思うのです。
  106. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) これは、先般法律ができたばかりでありますが、御存じのように、この新幹線につきましては、新全総計画においてもある程度のものをうたっております。で、この新しい法律は、まだいわゆる年限あるいは年次というような具体的なものが何ら決定しているわけじゃございません。今後新幹線をどういうふうに体系を整えてまいるか、これについては、新全総計画というようなものも頭に置きながら、これをこれから具体化していく、具体的な計画をこれから立てていく、関係省において立てていく、こういうところでありますから、したがいまして、その計画を立てる際に初めて、財源問題、これを具体的に見通しを立てなければならない、こういうことになろうと思います。まあ、新全総に考えているようなことでありますれば、これは十分ある程度行ない得ることでありますけれども、この法律によるところのものは、これは相当大きな規模であります。また、したがって、特定の期限、年次を付しておらないわけであります。これらは今後の具体化を待ってみたいと、こう考えております。
  107. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、この間議員立法でできましたけれども、新全総でもちゃんと計画はあるわけですよ。東北新幹線を建設するとか、成田新幹線を建設するとか、武蔵野線から鹿島線、京葉線から地下鉄、高速鉄道といったように、ちゃんとあるわけですよ。これと新幹線とは別々だというわけにはいかぬでしょう。これは、新幹線網と相まって、まずこの新全総にあるような計画を進めていかなければならぬでしょう。とすると、そういつまでも検討すると言っていられる問題じゃないと思うのですよ、これは。来年度予算から具体的に何かをしなければならぬという問題ですよ。まだ何にも五里霧中で、考えておりませんと言ってすましておられる問題じゃないですよ。とすれば、もう長官としては、目の前の問題として考えるべきじゃないかと、こう思うのですが、いかがですか。
  108. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 私たちも、新全総でも考えておるところでありますから、できるだけ実現に一日も早く着手したいと思いますが、何と申しましても、相当長期にわたる計画であります。そして、いわば大きな、大プロジェクトでございますから、それの計画を立てるにはよほどの下調査も要るわけであります。いま御指摘になりましたように、成田を入れるのがいいのか、その他どういう線を含めるのがいいのか、その際に、新幹線が一体仙台までいくのか、あるいは岩手までいくのか、そこいらのところは、具体的に、いま申し上げましたように、相当しっかりした調査に基づく計画が要りますから、いま、もう、概算要求、来年度の予算要求の問題として、すぐ計画が成立するのに間に合うかどうか、それは私としても疑問に思っております。おそらく、概算要求期までにそうした計画ができるという見通しはむずかしいのではなかろうか。しかし、さればといって、これをずっと放置しておくという意味ではありません。今後引き続き調査をしまして、そうして今後の長期計画を樹立するようにしなければならぬ、こういうふうに考えています。
  109. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 新全総じゃ、もう何から何までみんな書いてあるわけですね。これはもう、予算をつければ具体的に実施をし得るというようなところまで来ているのですよ。だから、いつごろまでにこういう問題について計画を——いままあお答えできないというならば、いつこの問題についての一つの構想を明らかにできるのか。その程度のことはいまから準備しなければならぬことだと思うのですが、どうでしょう。
  110. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 新全総そのものは、昭和六十年までの長期にわたるものであります。これについては、非常に大きなビジョンとして描かれているわけでありますから、これを具体化するためには、また具体的な計画を、そのつど、つくっていかなければなりません。そしてまた、途中において追加補正も必要になると思います。いずれにしましても、いま急に具体化するという段取りにまでまだ至っていないという状況であります。
  111. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 こういう構想に対しても、率直に言って、まだ五里霧中であるということになると、じゃ一体、どこからいつ手がつけられるかわからぬわけですよ。そういうことでは、私は、日本の国土計画というものが推進できるかどうか、不安を持つわけです。この中にもいろいろいいことは書いてあります。この総合開発局で書いた中にも。たとえば、新しく、産業の立地動向との関連で工業港を計画するというようなのがあります。鹿島港なんというのが、いまできつつある。ああいう、何にもないようなところに新たに港をつくるということができるものかどうか、ちょっと私ら、いままでは疑問に思っておったのですが、実際にやってみると、何にもないところに工業港をつくることができたわけですね。できつつあるのですよ。ところが、工業港をこしらえてみても、港のほうはできて、船のほうは出入りするようになったけれども、道路と鉄道のほうはまだ間に合わない、こういう実情ですよ。こういうちぐはぐがあったんではしょうがないと思うのですね。どうも、いままでやっておることは、そういうちぐはぐが多いと思うのです。団地ができても、今度は鉄道ができていない。したがって、鉄道は通勤地獄をますます助長をするだけでもって、その団地に住まった人たちは毎日毎日通勤公害に悩まされる。こういう問題がある。だから、道路をこしらえても、道路と鉄道との利用というものがちぐはぐなんですね。こういう点、むだが多いような気がするのです。だから、そういう点は、各省がセクト的にかってなことをやるのじゃなくて、もっともっと各省が協力をして、同じ投資をするなら、その投資を十分に生かすような方法を考えるべきじゃないか。住宅団地をつくるならば、その住宅団地を結ぶ道路も鉄道も、あるいはまた環境設備も、全部整えるのでなければ、問題は必ず残るわけです。そういう点が、今日までまことにどうもうまくいってないような気がするんですが、そういう問題に対して中心的な調整の役割りを企画庁あたりがしなければならないのじゃないかという気がするんですが、その点、どうですか。
  112. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) それは、まさしく御指摘のように、企画庁あたりでやらなきゃならぬ大事な問題であります。そういうことですね。ただ、今度は、プロジェクトそのもの——たとえば、新全総に出ております小川原の、いわゆる小川原湖におけるところの大コンビナートというようなものは、いま考えられているのは鹿島港の十倍ぐらいとか、そういうふうなことも言われておるわけであります。それで、そういう大きなものができるわけでありますが、鹿島港一つをとりましても、十年かかっております。もっと厳密に言うと、それ以上かかっておると思うんでありますけれども、相当長期にわたるものであります。そして、いま御指摘がありましたように、各方面との連係というものを十分考えてやらなければなりません。そこで、企画庁でも、何といっても計画を立てるまでが一番大事である。これに相当の時間をかけなきゃいかぬ。そして総合的な計画を樹立する。あるいはまた、小川原湖のような場合には、公害問題を同時に設計の中に織り込んで、そしていかなければならない。そうしたいろいろの問題があるわけであります。そこで、企画庁では、新全総を樹立いたしましたが、総合開発審議会というのがございまして、ここに特に特別の研究部会を設けまして、そして総合的にいろんな角度からこれを調査研究をする、そして総合的にこれをやっていくようにする、そういう部会をつくりました。これによって、できるだけ慎重な計画の設定を行なってまいりたい、こういうふうに目下考えております。御指摘のような点は、われわれも、今後は一そう必要になることでありますから、そういう意味で、十分今後考えてまいるつもりであります。
  113. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ、この全国新幹線に関する問題は、まだどうも長官のほうから具体的な答弁がきょうは得られなかったのですが、しかし、これはもう来年度予算から考えなきゃならぬことだと思うんですから、私は、政府としてもすみやかにその財源をどうするか、それから、将来構想といったようなものもはっきりさせなきゃいかぬという気がしますので、その点については、私は注文をつけておきたいと思うんです、早くやってほしいということを。それで、なるべくすみやかに明らかにしてほしいということです。  それはそれとして、それじゃ、今日の地価の問題について全国的な大きな構想というものは、政府にはまずないということがはっきりしたわけですよ。この新幹線と同時に、全国国土計画全般についての構想がないということが明らかになったわけですが、それじゃ、さしあたって一体どうするかという問題がある。今日の交通問題、あるいは公害問題、こういう問題を解決するためには、先ほど建設省からも伺いましたけれども、宅地の需要に対して供給が追いつかないという問題があるわけです。この問題が解決するために、じゃどうするかということが差し迫った問題です。ところが、交通の点から言うと、私鉄の運賃を上げるのか上げないのかという問題が、これは問題になってくると思うんですね、さしあたり。で、私鉄の運賃を上げるということによって、物価にもこれは相当影響を及ぼすんじゃないか。足に関係する問題ですからね。これは一体どうするか。もし私鉄の運賃を上げないで押えるということになると、私鉄は、運賃収入にたよらずに、不動産業といったような、そういうほかの仕事でもって収入の道をはかろうとするということになってくると、これは非常に変則的なことであります。そういう方法でもって地価がますます上がってくるといったことも考えなければならぬと思うのですけれども、私鉄の運賃の問題と、それから交通網の整備ができるかできないかによって、もたらされる地価の問題、これは一体どのように処理されるおつもりなのか、その点をお伺いしたいと思う。
  114. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) この新幹線の問題も、目下具体的な計画がないということを申し上げているのです。それはビジョンの程度であって、それが財源を伴った具体的な計画になるには、その前に下調査が要る。そのための調査費を十分出しまして、そうしてやるのでありますけれども、これは来年の予算要求までにその調査が完了するというわけにはまいらない。そういう意味で、来年度の予算に事業費的なものが出るということは、それは無理だろう、こういう意味で私は答弁申し上げたわけであります。でありますから、計画を樹立する、そのための調査を早急に行なう、こういう点は、これはわれわれとしても、そのつもりでもって用意をしなければならない、そういうふうに考えているわけです。  それから私鉄の問題は、私鉄側からの要望はありますけれども、まだ運輸省からこちらのほうに正式には話は来ておりません。しかし、われわれとしても、運輸省自身としても、まだ基本的な態度をきめてないと思います。いまその問題点を指摘されましたけれども、そうした問題点をよほど検討し、そうして私鉄の経理状況、こういうものも十分考え、あるいはまた、今後住宅地の建設その他に大きな役割りを果たすところのこの私鉄というものの建設計画の見通し、いろいろなものを総合的に見てみないと、何ともまだ、結論を出すのはちょっと早いように思っております。そういうことで、目下のところ、政府としては、いま上げる、こういう結論は出しておりません。
  115. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この結論を出すのは早いという答弁だったのですが、私が言いたいことは、これは土地価格、地価の上昇といったような問題と関連があると思うから、私鉄の問題も、あるいは新幹線の問題も、早く方針は打ち出すべきではないかということを言っているのです。まだ時期尚早だといって、のんびりしていれば、物価あるいは地価のほうは遠慮なくどんどん上がっていくし、政府がまだ早いといっている限り物価が上がらないということであれば、話はまた別です。そうじゃないですからね。特に物価の委員会でありますから、物価の問題を念頭に置いて考えていただきたい。物価がどんどん上がっている、需給のアンバランスということからこれが物価にはね返る、こういう原因がはっきりしているならば、その原因を突き詰めた上で対策をなるべく早く立てるというのが政府のやるべきことじゃないかと思うのですが、むずかしいからといって放っておけばいつまでたったって問題は解決しないと思う。特に、この地価の問題なんかいい例だと思う。何年も前から、佐藤総理は、たいへんむずかしい問題であるけれども、政府としては前向きに取り組むつもりだといったような答弁をしておる。その総理の答弁というのは、いかにそらぞらしいかというのは、今日の地価の現状によくあらわれておると思うのですよ。  そこで、まず、物価の中でも一番上がり方の激しい地価の問題を真剣に取り上げて、そうして対策を立てるためにはどうすべきか、これは、ゆっくりと相談をしていていい問題ではないと思うのですね。そこで、特に最近の傾向としては、企業が不動産業をやるようになってきた、いろいろな企業が。ということは、資金さえ持っておれば不動産業というのは一番もうかるということと、土地がすでにもう投機の対象になってきている。これは悪いことじゃないかと思うのです、傾向としては。こういう傾向を放任しておいてよろしいのかどうか、これは憲法上疑義があるとかないとか、そんなことを論議している段階じゃないでしょう。土地に対する政府としての規制、対策といったようなものは、これは早く打ち出すべきじゃないかと思うのですが、それはどうなんでしょうか。
  116. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 土地価格対策につては、比較的近々中にこれを打ち出したいと思っています。まあこれは建設省が中心になって、私たちも一緒になってこれをやらなければならない問題であります。そういうことで、地価対策についても十分いま検討をしている最中であります。できるだけ近いうちにこの面についても閣僚協議会でもって決定をしたい、こういうふうに考えています。ただ、その背景にあるところの全体の計画、これについては、相当長期の計画であります。そうしたものをどういうふうに取り扱うか、これも相当精密は調査も要ることでありますから、調査自身はできるだけ早くやらなければいけません。これが具体化してまいるというのに少し時間がかかるかなと、こういうふうに私は考えております。これも、おっしゃるように、そう、いつまでも放っておくという意味ではありません。できるだけこれを進めてまいりたい、こう思っています。
  117. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 時間の都合がありますから、この程度にしたいと思うのですけれども、土地問題についてはですよ、私権の制限といったようなことをある程度考えなきゃならぬだろうと思うのですよ。ただ、政府にその勇気がなかった。今日までないということなんですけれども、長官としてはそこまで一歩踏み込んでの土地抑制のために大なたをふるう、蛮勇をふるうという気持ちがあるのかないのか、こういう問題を一つと、それから、いま近いうちにというふうにお答えがあった。したがって、これ以上追及してもしようがありませんが、しからば、次回の委員会までに——これは閣僚協にも注文をつけてもらいたいと思うのですよ。近いうちにと言われた以上は、半年先、一年先のことじゃないと思うのですから、だから、次回の委員会あるいは次回の閣僚協までに、こういう問題について、土地問題ですよ、具体的に突っ込んだ対策というものを示してもらえるのかどうか。政府としてその対策を披瀝できるものかどうか、その点もお伺いをしたいと思うのです。
  118. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 実は、私どもも前々からこの問題についてはできるだけ早く対策を立てたいと思っておったのです。ただ、この土地の問題は制度的にも法律的にも錯綜したむずかしい問題がある。そういうことで、いま建設省で準備をしてもらっておるのですけれども、まあ六月中はなかなか無理じゃないか、そういう感じを私は持っています。でありますから、この次がいつになるかにもよることでありますけれども、この次に必ず間に合うということをいま申し上げることはできませんが、しかし、その次ぐらいまでには何とかなると思っています。いずれにしても、制度的な問題を含めて、相当やはりむずかしい問題を含んでいることも事実でありますからして、そこの一カ月、二カ月のところは私はしいて急がなくても、できるだけわれわれとしてしっかりした対策を立てるようにつとめてまいりたい、こういうふうに考えています。  それから、私権の制限問題ということについてどの程度か、これは実は、この対策の立て方にもよることでありますけれども、私自身は、今後土地問題をやっていく上においては私権の制限を伴うという方向でもって政策が推進されていかざるを得なくなるであろう、こういうふうに目下考えております。しかし、これをどういうふうに具体化していくかということになると、まだいま具体的な中身を、ここでもってどうと申し上げるところまではいっておりません。
  119. 横山フク

    委員長横山フク君) 竹田君。
  120. 竹田四郎

    竹田四郎君 資料をいただきまして、いろいろ見せていただいたわけですが、どうも、先ほど長官が述べたとき受けた私の感じと、だいぶ感じが違うものですから、少し、二、三一括してお聞きしたいと思いますが、この資料を見せていただきますと、すぐできる対策と、かなり先にならなければできない対策と、何か二通りのものがごっちゃに並べてあるというような感じを受けるわけなんですが、具体的に申しますと、たとえば、二ページの「食料品価格安定対策」、(1)を見ましても、「過密都市における中央卸売市場の整備等を緊急に実施する。」と書いてありますが、そのほかにもいろいろな施設をつくるとかなんとかという、そういうものがかなりたくさんあるわけです。こういうものについては、閣僚協議会の中で、具体的に来年度の予算にこれは全部つけるとか、あるいは何カ年計画でこの財源を確保するのだとか、予算をつけるのだとか、こういうような話が一体あったのかどうなのか、その点をちょっと伺わないと、なるほどたいへん広範にわたっての意欲はわかりますけれども先ほどから述べておりますように、要は実行であろうと思うのです。その実行という問題について、どうも危惧を感ぜざるを得ない。こういう点で、施設等の整備をするという、かなり時間がかかる問題については、閣僚協議会で具体的に、これは来年度の予算に計上するというところまでいっているのかどうか、この点が一つと、それからもう一点は、先ほどお話の中では、毎月閣僚協議会を開いて、そのつどそのつどおやりになるのだというふうに、私、感じを受けたのですけれども、これを見ますと、物価情勢に即応して随時に開催するということで、随時というのは、月に三回開くという場合もあるし、あるいは開かないという場合もあり得るだろうと思うのですが、この点、先ほどの御説明を私が聞き違えたのかどうか、よくわかりませんが、どうもそういう点で疑義を感ずるわけです。  それからもう一つ、第三の点は、生産者米価については据え置きということが決定されたというふうに聞いているわけであります。そのかわり、何か、生産奨励金的なものがつくらしいのですが、きょうの閣僚協議会で消費者米価については一体どうするのか、この点はお話が出たのですか。あるいは事前に消費者米価は上げないということが決定されていたわけですか。その辺の事情。  以上三点についてお伺いをして、終わりたいと思います。
  121. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いま御指摘になりました卸売り市場の問題ですが、これは実は、農林省自身が年次計画をつくって、そうしてやっていこう、こういうことで、もともとこの法律案をつくったわけです。ところが残念なことに流れてしまいましたが、できるだけこれ、年次計画をつくってやりますし、それから政府としましても、卸売り市場の整備をできるだけ急いでいます。まあ、法律は流れておりますけれども、いずれ、この次の国会には必ず通ると思っていますが、当然、今度の概算要求で農林省が用意をしているはずであります。そうして、できるだけ、一日も早く、この関係の予算を整備してまいりたい、こういうふうに考えています。  それから消費者米価の問題は、これはもう政府のほうとしては、引き上げない、こういう方針をきめておりますし、それでありますから、きょうは特に閣僚協議会では話を出しませんでした。  それからもう一点は、この協議会ですが、これは、ものによっては比較的短期間に開くこともあるし、そう機械的に考えないほうがいいという、これは私の考えで、随時にしております。
  122. 竹田四郎

    竹田四郎君 あとの二点についてはわかりましたですが、先は、別に卸売り市場の問題だけを聞いているわけじゃなくて、一つの例として出したわけでありまして、その他、これを見ますと、施設整備あるいは生産設備を整備するというような問題が非常にたくさんあるわけですね。特に農林関係、漁業関係にはこういうのが多いわけでありますが、こういう問題についても、いまと同じように、来年度の予算には必ずつける、こういうことですか。すべての問題で金のかかる問題がかなりあると思うんですが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  123. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) この前文に、「この対策のうち新たに法令上、財政金融上の措置を要するものは、すみやかに所要の措置を検討する。」ということで、したがって、これについては、財政上の措置の要るものについては当然各省が概算要求をする、また、われわれとしてもそういうふうに注意したい、こう思っております。
  124. 竹田四郎

    竹田四郎君 この文章は「検討する」と書いてあるわけですね。「つける」と書いてあるわけじゃない。「検討する」という、非常にやわらかい表現なものですから、よけいにそのことが気になったわけですが、概算要求はつけても、いつも大蔵省が削るわけですが、そういうことはないわけですね、これは。そういう点は大蔵大臣も了承しているわけですね。
  125. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあ、この中でも全体として対策をそう具体的にこまかくは書いていません。たとえば、同じ財政措置をするにしても、どういう財政の措置のしかたをするか、こういうことについては、別にこれから各省がその中身をさらに具体化するものを含んでいます。でありますから、これは財政当局を説得して、そしてもちろん効率のある話であるならば、効果的なものであるという認定になれば、当然つく話でありますから、よほど変な案でも持っていかない限り、私は必ず通ると思っています。これはもちろん予算折衝にまかせる問題でありますが、政府としてこうした方針を立てておるんでありますから、これについては、財政当局も、ほかのものと違った格段な配慮をすると、こういうふうに考えています。
  126. 横山フク

    委員長横山フク君) 渡辺君。
  127. 渡辺武

    ○渡辺武君 きょうの物価対策閣僚協議会できまった当面の物価安定対策というものについての長官の御説明も伺い、この印刷物もいま読ましていただきましたけれども、私、これをお聞きいたしまして、率直な感じを申しますと、一言で言えば、これはあきれ返った政策だということです。おそらく、この物価安定対策なるものは、物価安定についてはほとんど効果がなかろうというふうに私は思います。むしろ、これをよく読んでみますと、かえって物価値上がりを促進させる可能性のあるような政策が含まれているという点で、ほとんど効果はないというふうに私は思うんです。なぜかと言えば、この政策は、国民の切実な要望である物価の安定、これに取り組むかのような、いわばゼスチュアですね、ゼスチュアを示しながら、物価安定の口実でそれよりほかの目的を追求しているというところに特徴があるというふうに私は思います。  まず、一番大きな効果——むしろこれは政治的な効果だと思いますけれども、一番大きな効果を申し上げてみれば、これは、いまの物価値上がりの最大の原因を、これを隠そう、免罪をするというところに最大効果があるんじゃないかと思います。私どもは、この委員会でも、いまのこの激しい物価値上がりの元凶はどこにあるか、これは、まず第一には、大企業の製品を、独占価格——普通、管理価格などとも呼ばれていますけれども、実際の値段以上に高く大企業がその製品の値段をつり上げて売っている、消費財と、あるいはまた生産財とに限らず、これがいまの急速な物価値上がりの一つの大きな原因だということをかねがね申し上げてきております。また、政府自民党の、公共料金引き上げ、さらにはまた政府のインフレ政策、これがいまの物価値上がりの最大の根源だということを申してまいっておりますけれども、この当面の物価安定対策の中には、大企業の製品の独占価格についても、公共料金についても、さらにはまたインフレ政策についても、一言も触れていない。この当面の物価安定対策がほとんど強調しているのは、これは主として生鮮食料品の流通過程の問題です。つまり、このことは、いままで政府が、物価値上がりの一つの原因として、重大な原因として、農業、中小企業の近代化のおくれだとか、流通の近代化のおくれだということを盛んに言ってきた。また、これについては政府なりに一定の政策を進めてきたと思う。しかし、それにもかかわらず、いままで物価の値上がりは速度を加えるばかりであって、全然効果がなかったということは、これは明らかだと思う。このいままで言い古し、やり古してきた政策を、あらためてここでもって、物価安定対策であるかのごとくに持ち出してきている、こういうことだと思うんです。したがって、先ほど申し上げましたように、この物価安定対策最大の政治的な効果は、いまの物価値上がりの元凶、これを国民の目からおおい隠して、免罪するというところにあると私は思います。こういう政策では、先ほど、所得政策については当面やるおつもりはないというおことばがありましたけれども、しかし、結局、所得政策もかつぎ出されてくるんじゃないでしょうか。農民や中小企業家や労働者、これは物価値上がりの犠牲者であって、物価値上がりの犯人じゃないですよ。その犠牲者にその責任をなすりつけて、そうして、農業の近代化、あるいはまた流通過程の近代化、こういうようなことを言ってるわけですから、論理の当然の進めぐあいとしては、私は、所得政策をかつぎ出して、賃金に対する国家統制という方向にいくんじゃないかと思うんです。  で、まず最初に、そういう見地から長官にお伺いしますけれども、いまのこの激しい、大企業の製品の独占価格の高い水準ですね、この引き下げをはかるおつもりがあるのかどうか。それからまた、公共料金の引き上げ、これをおやめになるおつもりがあるかどうか。インフレ政策、これもおやめになるおつもりがあるかどうか。この点を、まず伺いたいと思います。
  128. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 一番基本は、できるだけインフレ的な政策をとらないようにしていかにゃならぬ、こういうことでしょう。そういう意味において、われわれも相当引き締め政策を長期にわたって行なわなければならない、こういう基本方針を立てているわけであります。でありますから、そういう意味においては、われわれとしても、はっきりした線を持っているわけです。  それから、大企業の製品ということは、渡辺さん毎度主張なさっていることで、われわれもよくわかっております。これについては、もちろん、本来の競争条件をできるだけ実現していくようにという、競争条件整備の問題でもあります。そうした問題については、われわれとしては、もちろん推進していかなければならない、そういうふうに考えております。ただ、あなたが御指摘しているように、特定の企業について、いま下げろとか、そういう措置をとるというところまで、いま考えておりません。  それから、もう一点、公共料金については、われわれがいつもお答え申しておりますように、できるだけこれを抑制していく、もちろん、事情によって、引き上げをせざるを得ないものもあります。しかし、それはよくよく慎重審査をした後でなければ、われわれとしては値上げをするという考えは持っていない、こういうふうに考えています。
  129. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまのお答えを聞いておりますと、この当面の物価安定対策なるものが非常に詳細にわたっていろいろなことを書いている、それに比べては、何とおざなりな答弁だろうと、率直に私は思います。  独占価格について伺いますけれども、首相自身が、この間の六十三国会の施政方針演説の中で、大企業について、生産性の向上を物価のほうに回してくれるように要請するのだというふうなことを言っておられる。私は、この委員会で、企画庁長官はその点について一言も言っておられないので、一体やる気があるのかどうかということをお尋ねしたこともございました。前企画庁長官の菅野さんは、大企業との話し合いを始めて、実際行動として話し合いを始めておられた。長官は一体、競争条件の整備といまおっしゃいましたけれども、競争条件の整備というのは、主としていまの政府がやっているのは、中小企業やなにかをうんと競争さして、小さいところをつぶしてしまおうというのが、競争条件の整備ということの主たる内容であって、あの新日鉄が生み出されたことでもわかるように、あんな巨大独占体を生み出しているということ、ここに、大企業に対する政府の基本政策があると思うのです。ですから、競争条件の整備でやりますなんと言っても、国民は私は信頼しないと思う。独占価格引き下げについて、具体的にどういうふうにおやりになるのか、これを伺いたいと思うのです。
  130. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まず、政府の方針として、自由化をできるだけ促進していこうという方針は、これを進めてまいるつもりでありますから、そういう意味において、われわれはできるだけ競争条件の整備をしなければならぬ、こういうふうに考えている、そういう意味で私は申し上げた。  それから独占価格の問題というのは、一つ一つの企業についてやるというのについては、これは恣意的な方法はもちろん許されません。そういう意味で、もしこれをやるとすれば、所得政策に一歩踏み入れるという決心が要ります。そういう意味において、われわれとしても、よくこれは慎重に検討をして、その上でもって、もしやるものならば踏み込まなければならない。そういうふうに考えて、私は今度の決定には特にこの点には触れていません。しかし、政府として今後一つの課題になる。それからまた、事実上の話し合いという問題は、これは実は公取委員会もいま研究をしているところでありますが、今後ひとつ、公取委員会やなにかと話し合って、どこいらのところができるか、これは、われわれとしても要検討事項ということになっています。
  131. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもその辺へいくと、特に慎重になるんじゃないかと思われますね。とにかく、前企画庁長官は——私は、そのやり方についても、前企画庁長官に、そんなことでできますかということを申し上げたわけですけれども、話し合いを実際されて、何とかして大企業製品の価格の引き下げをできないかということで、具体的に行動しておられる。いま、長官のお話ですと、どうもその辺もまだやっておられないようなお話です。そうしておいて、労働者の賃金との関係などをお考えになって、大企業の利潤が減らないようにというようなことで、所得政策との関係だというようなことを考えておられる。そんなことでは、私は、大企業の製品価格の引き下げということは不可能だと思うのです。私どもは、この国会に、しかるべき調査権を持った特別の委員会をつくって、それで、ここで独占価格を洗い上げて、適切なる手段で引き下げの方向を打ち出したらどうだということをかねがね申し上げておりますけれども、このことをやる意図があるかどうか。また、いまの独占禁止法の中には、不十分ながらも、やはり一定の反独占条項があります。この間、衆議院の物価対策特別委員会では、公取の委員長が、現在の独禁法によっても価格その他については相当メスを入れられるんだということを答えている。法律的には、だからできるというのです。しかしながら、現在の公正取引委員会にはそれだけの人員もそろっていないし、できないのだというような趣旨のことを答えておられる。もし、長官が本気で独占価格の引き下げをやるおつもりがあるなら、私どもの提案したこと、あるいはまた、いまの公正取引委員会をもっと強化して、反独占条項を最大限に発揮して、そうして独占価格の引き下げをはかるというようなことをやれば、私はできると思う。一番手近な問題だと思う。むしろ、この「当面の物価安定対策について」ということの中に盛り込まれている、これはもう非常にたいへんな問題だと思う。主として地方自治体がやらなきゃならぬことを政府ががあんと打ち出した。地方自治体を通してやらなきゃならぬことですよ。そうしてまた、現在の複雑な流通機構について何のかんのということをやろうというわけですよ。非常に困難だと私は思う。むしろ、こんな困難なことをやるよりも、独占価格の引き下げ、これは政府の権限でできる。公共料金の値上げをとめる、これまた政府の権限でできる。インフレ政策をやめること、これまた政府の権限でできると思う。何で、自分の権限でできることをやらないんですか。この点を伺いたいと思います。
  132. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) たいへんな追及でありますけれども、われわれとしても、できるだけのことをやるつもりでいます。これは地方自治体のやることも入っておりますけれども、主として国のほうでやらなければならないものが多く含まれています。これは具体的に読んでいただけば十分わかります。いまの独占価格の問題は、公取の委員長の言うとおりです。公取委員会においてできるだけのものを、まずやる、それから体制の整備については、これはもうわれわれとしても、できるだけ公取委員会を強化していくと、こういうことで目下考えています。でありますから、そういう点も、もちろん解決していかなければなりません。逐次そうした点を内容を充実していった上で、そうして公取委員会としてできるだけ、まず基礎調査をする、それが基本的でなきゃならぬ、こういうふうに思っています。
  133. 渡辺武

    ○渡辺武君 おやりになるというなら、けっこうなことだから、大いにやっていただきたいと思う。しかし、その場合に、当面の物価安定対策についての中にも、そういうことをやはり大いに強調してほしいと思うのですね。ほんとうにおやりになるおつもりがあるなら。  きょうは時間がないので、公共料金やインフレの問題については触れませんけれども、公共料金の問題についてだって、先ほど私鉄運賃の値上げの問題で質問がありましたけれども、どうも長官の態度はあいまいです。公共料金の引き上げについては極力これを阻止しますと、こういう御答弁なんだけれども、私鉄運賃の値上げという具体的な問題が出てくると、私鉄経営の実態その他を勘案いたしまして……、こういうこと。大企業のことばっかり考えちゃ、物価の安定はできませんよ。大企業こそがいまの物価値上がりの元凶ですもの。私鉄の経営の問題については、いずれ、この委員会で私は具体的な資料でもっていろいろ質問したいと思っておりますけれども、いま私鉄が、経営が苦しい苦しいと言っているけれども、いろんな関連企業で、特に土地会社、これで膨大な土地を買いあさって、べらぼうなもうけをあげているのですよ。ですから、あの経営全体を見れば、たいへんな黒字です。私鉄経営でもうけた金を関連企業にどんどんつぎ込んで、そうして、私鉄自身の改善については全く手を抜いちゃっている。そうしておいて、値上げしてくれなければ旅客の安全も保てない——とんでもない議論をやっているわけです。こういう点についても、やはりひとつ、経済企画庁というのは物価担当庁ですから、断固たる態度で、公共料金の引き上げはもう絶対やらないというくらいのつもりで接してほしいと思う。  それで、次に質問を移しますけれども、そういう肝心なものをこの物価安定対策は除いているだけじゃない。ここでうたわれていることについても、私はいろいろな問題を持っていると思うのです。まず、一番最初にうたわれている「輸入政策の積極的活用」という問題です。これを読んでみますと、いかにも、輸入政策の積極的活用、別のことばで言えば、輸入の自由化、残存輸入制限品目の撤廃、これがいまの物価安定に効果があるかのような印象を与えております。それは確かに、一時期、たとえば牛肉の値上がりが急に激しくなったというようなときに、外国から牛肉を輸入すれば、あるいは急激な値上がりは鎮静するかもわからぬ。しかし、こういう輸入政策というのは、一時的な部分的な効果はあるにしても、これは、長期にわたって日本の連続的な物価の値上がりについては私は効果はないと思う。むしろ、逆な作用をするおそれが非常にあると思う。  たとえば、小麦を例にとってみましょう。私は、きょうここへ来て長官のお話を聞いたので、資料その他。準備がありませんから、数字で申し上げることはできませんけれども、アメリカ小麦を中心として、小麦の輸入が非常に激しい。日本の国内の小麦消費高の中の約八割は輸入小麦が占めているという状態でしょう。この輸入小麦の国際価格はどうですか。ずうっと、この十年ばかり値下がりしているのです。したがって、政府が製粉会社に払い下げる価格もずっと値下がりしている。それにもかかわらず、製粉小麦の値段、パンの値段は上がっているじゃないですか。これは、この「輸入政策の積極的活用」なるものが、これが物価の連続的な上昇を押える力がないということを、はっきり私は示していると思う。この政策の結果生まれてきた結論は何かといえば、日本の農民の小麦生産が大打撃を受けた、こういうことです。  もう一つ例をあげましょう。たとえば、レモンが数年前に自由化された。そうして、広島県を中心とする国内産のレモンの値段は一時大暴落しました。しかし、このために広島県の農民の経営は大打撃を受けた。ほとんどつぶれちゃった。そうして、日本のレモン市場は輸入レモンによって独占された。そういう状態が生み出された。どうです。最近、大阪あたりのレモンの値段は、ずうっと上がり始めておりますよ。これまた、この輸入政策というものが一時的部分的な効果はあるけれども、しかし、その反面で、日本の農民に大きな打撃を与える。そうして、結局のところは、物価の安定に役に立たないということを示していると思う。  先ほど長官は、独占価格の問題で、自由化を進めていく、競争条件を整備する、そのことが価格問題についても有利に作用するものであるかのごとくにおっしゃったけれども、これは私は根本的に間違っていると思う。なぜかといえば、歴史的に問題を見てみましょう。日本の自由化政策が本格的に進められ始めたのは一九六〇年だ。あの貿易為替自由化大綱、あれを発表して以来、日本の自由化というのは本格的に進められた。ところが、どうです。国内の消費者物価の値上がりは、まさに、自由化が本格的に進められた一九六〇年からずうっと急速になっているじゃないですか。なぜこんな現象が出るのです。これは、自由化がやられ、外国から品物が入ってくる、資本も入ってくる、日本の大企業が、これに対抗するために猛烈な勢いで、設備投資、経済の高度成長政策を打ち出していく、その一環として独占価格の引き上げも次から次にやってきた。ここに、六〇年から以降の物価値上がりの大きな原因があると見なければなりません。もちろん、インフレ政策もとった。ですから、自由化、輸入の促進が物価の安定に役に立つんだというのは、これはごまかしにすぎない。すでに歴史的事実がこれを否定しているのです。  結局のところ、この輸入政策の積極的な活用というのは、物価安定ということを口実にして、アメリカから要求されている農産物に対する残存輸入制限を撤廃しよう、物価安定ということを口実にすれば、消費者と農民との間を裂くことができる、農民の反対運動を押えることができる、こうしてアメリカの要求に屈服しよう、という別の意図がある。ここに、「輸入政策の積極的活用」なるものの意味があると私は思う。どうでしょうか。そういう意図で、これは打ち出してきているのじゃないでしょうか。
  134. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 政府がごまかしておるとか、アメリカに協力するためであるとか、そういう表現は私は差し控えていただきたいと思います。もう少し、ことばの表現については私は御注意を願いたいと思う。  自由化について、これが物価に役立たないということは、私は、これはとんでもない迷文句だと思います。自由化が行なわれたときからたまたま価格が上がったといいますけれども、これは、いま指摘のように、成長政策です。この成長政策というもののよしあしは、これは別であります。これは自由化と別に関係はない。それからまた、日本の消費者物価が長い間ひとり高くなっておる。そうして卸売り物価だけが、諸外国と別の行動をとって、長く低い価格でもって安定してきた。これはやはり、いまあなたが言われたように、設備投資をどんどんやって、そうしてやはり競争条件のもとにおいてどんどん設備投資をやり、供給をふやしてきた、そういうことから、ともかくも相当長期にわたって、あれだけの成長を続けながら、卸売り物価というものが安定してきているのです。ですから、何か非常に機械的なお話でありますけれども、私は、ちっともそういうふうには考えていません。  それからまた、はなはだ都合のいい例を引いておられるようでありますけれども、必ずしも的確であるとは思いません。麦なんかにつきましては、これは確かに日本の食管制度というものに一つの問題がある。長い間、米の赤字を麦の黒字によってまかなってきたとか、いろいろの事情が錯綜しております。確かに、麦というものは日本において育たなかった。これはもう明らかに、米中心主義の政策の一つの結果であります。そうして、その費用の割り掛け等をほとんどこの麦にかけるというような結果、そうなっているのでありまして、これらの問題は、それぞれ個別的にいろいろの問題を内包していますから、そう簡単に言うわけにはいかぬのです。こういうふうに思っております。  自由化によって非常に打撃を受けるものも、ないとは言えません。しかし、また、それに対する対策によって、決して打撃を受けないでやっていく、こういうこともわれわれは考えられるのであります。まあ、そういう意味において、たとえば、今後流通機構についてわれわれは考えなければならない、輸入の自由化をただ機械的にするのではなくて、過渡的な調整措置を考えなければならないものもあるし、それから、それに伴うところの流通機構についても、われわれとしても十分配慮をしなければならない問題もある。そういうふうに私たちは考えています。いずれにしても、この輸入を活用する、こういうことは、外貨の蓄積も相当余裕が出てきた今日の日本において、物を輸出ばかりして、そうして貨幣としての外貨だけがたまっている。これが、何といってもやはり今日、日本における物価高の一つの大きな要因になっていることは、これは否定できない。そういう意味において、物を出すと同時に、できるだけそれに見合うだけの物を輸入していく、こうした対策をわれわれも今後考えていく、生活必需物資なんかについても、そうしたことによって、ずいぶん価格の上に大きな影響をもたらすことができると、こういうふうに私たちは考えております。
  135. 渡辺武

    ○渡辺武君 長官のお答えをいただきましたが、いろいろな点で矛盾撞着しております。それじゃ、やはり経済関係担当の閣僚の答弁として私はすなおに聞くことはできませんよ。たとえば、先ほど、自由化というのは競争条件を整備するものだという趣旨のことを答弁されたが、まさに、その自由化によって競争が激化する。だから、国内の大企業が、長官の言う成長政策というものをとった。このために物価は上がってきたのです。ですから、その成長政策によって物価が上がったので、自由化と関係ないというような御答弁は、これは全く、木を見て森を見ない種類の御答弁だというふうにしか考えられません。また、麦と米との関係についても、これは全く主客転倒した御答弁です。もう少し、私は、いまの物価の問題については深く考えていただきたいと思います。  時間もないので、次に移りますけれども、許認可制度の再検討の問題がここで言われておりますけれども、これは全く、もう、考えてみて、どう首をひねっても、物価とどう関係があるのか、私はどうも疑問です。たとえば、ここに薬屋さんの問題が出ております。薬の小売り屋さんの地域制限を取っ払って、薬屋さんの数をふやして、どうして物価を安定させることができますか。いま、薬屋さんの売っている薬で問題になっているのは、いわゆる再販価格維持制度の問題です。別なことばで言えば、大メーカーが自分のつくった薬の定価販売を小売りまで押しつけて、値くずれを防がしておるというところに問題があるのです。むしろ、責任は大企業にこそあるのです。決して、薬の小売り屋さんが地域制限を受けているということによって価格が高くつり上げられているわけではないのです。再販価格維持制度の問題、つまり、独占価格にメスを入れなければ、これはもう問題にならぬのですよ。  酒類の問題も出ております。酒類。いま、スーパーに酒の販売権を与えるということで大問題になっておりますね。これは一体どういうことになるでしょうか。薬屋さんをたくさんふやして、競争さして、小さいところをつぶしちゃう。そうして、結局のところ、残った優良な小売店を、これを薬の大メーカーががっちりと自分の系列下に押えて、結局のところは再販価格を維持するというやり方とよく似たように、スーパーにお酒の販売権を与えたらどういうことになるか。お酒の小売店は次から次に、ばたばたつぶれるでしょう。結局のところは、スーパーマーケットが酒の販売権をかなりな程度に握って、お酒の流通市場を押えていくということになるでしょう。百貨店の売り場面積の拡大。それから、いま言ったスーパーに対する販売権。こういうふうなものを考えてみますと、結局、スーパーや百貨店、これを経営している大資本、これが流通過程を押えるというところに中心の置かれた政策だというふうにしか考えざるを得ません。長官の意図がもしそういうところにないとすれば、結果として、そういうことになってきますよ、この政策は。そうして、アメリカあたりで、長官も御存じのとおり、主婦が、スーパーこそが消費者物価値上げの元凶だというので、スーパーにデモをかけている。こういうこともアメリカでしょっちゅう起こっている事実です。もし、百貨店が売り場面積を拡張し、あるいはスーパーがいままで取り扱うことのできなかったいろんな消費物資を扱って、流通過程をずうっと握るようになったら、どんなことになりますか。これは物価安定には役に立ちません。むしろ、消費者物価の値上げを流通過程から促進させるような条件が生み出されてくるというふうに見ざるを得ません。  ですから、これは物価安定対策と銘打ってはいるけれども、実際のところは大企業育成政策だというふうに考えざるを得ませんけれども、その点、どうお考えでしょうか。
  136. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 私ども、別に大企業を特に育成するという意味で、こういう対策を打ち出しているわけではないのであります。やはり、ここにある程度自由競争というものを入れようと、こういう趣旨でありまして、物価安定政策会議の提言でも、この点は特に重視して言っていることは、御存じのとおりであります。われわれとして別に他意のないところであって、それをあまりいろいろと想像されるのは、これはどうかと思うんです。  まあ、薬について、いわゆる独占的な意味での価格体系という問題、再販価格の問題、こういうものが議論に出ましたが、これは、われわれも公取とよく相談して今後取り上げる問題の一つに考えています。これは今回の閣僚協議会ではまだ間に合わなかったのでありますが、今後のわれわれの課題として十分に考えてまいりたいと、こういうふうに考えています。
  137. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、生鮮食料品の市場対策が非常に強調されておりますけれども、しかし、長官も御存じだと思いますけれども、いま消費者が非常に困っているのは、もちろん生鮮食料品の急激な値上がりですが、同時にまた、加工食品の値上がりも非常に著しい。一九六〇年から一九六九年までの間に加工食品の値上がりは九三%。これは、政府の発表している物価指数で計算して九三%。この間、消費者物価の値上がりは約六四%、こういうことになっております。一般の消費者物価の値上がりよりも加工食品の値上がりがはるかに著しい。しかも、この加工食品というのは、零細企業もかなりメーカーとしてありますけれども、しかし、ほとんど大企業が制覇しているというのが実情です。ですから、大企業製品を中心として加工食品が値上がりしているということは、これは事実を反映して、見通しだというふうに私どもは考えているわけです。この加工食品のことが一言も書いてない。一体、加工食品の値上がりをどうするつもりなのか。特に最近は、ここ一、二カ月加工食品が大幅に全面的に値上げされているでしょう。これは、企画庁長官、よく御存じだろうとは思うのです。この点についてどんなふうにお考えなのか、これを伺いたい。
  138. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 閣僚協議会はこれで終わるわけじゃありません。今後われわれとしてもいろいろと対策を打ち出していくわけでありまして、加工食品の問題も、もちろん大きな問題でしょう。まあ、ハムソーセージを一例にとってみれば、今後われわれとしては相当輸入を実行しよう、こういうふうに考えているわけであります。あなたの説によると、輸入はいかぬということでありますけれども、われわれとしては、そうしたことも一つの価格対策になるであろう、こういうふうに考えています。なお、今後問題点をできるだけ突き詰めまして、そうして対策を逐次実施してまいりたい、こういうふうに考えております。
  139. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、あまり反駁はしませんけれどもね。長官、私の言っていることをそう曲解されちゃ困りますよ。私は、輸入が反対だなんということは一言も言ったことはないんです。この輸入政策はこういうことなんだということを申し上げたのです。部分的一時的でも物価が下がるのはけっこうなことだから、まあ臨機の処置としては輸入政策もけっこうでしょう。しかし、こういうふうに「物価安定対策について」と、があんと麗々しく打ち出して、いかにもこの政策によって現在の激しい物価値上がりが根本的に解決するかのような印象を与えている。これは間違っています。  次に質問を進めますけれども、それでは生鮮食料品の市場対策なるものがはたして効果的なものだろうか。そういう見地から、この「当面の物価安定対策について」を読んでみますと、これまた首をかしげざるを得ない。農協と消費地の生活協同組合を直結させるとか、あるいはまた、団地で青空マーケットをつくるとか——まあ青空マーケットは一時的には多少効果はあるでしょうけれども、これを政府の政策として麗々しく打ち出すのは、ちょっとね、いつかの新聞に、こんなものは噴飯ものだというふうに書いてありました。全くの場当たり政策じゃないかというようなことが書いてありましたけれども、私もその批評には同感です。むしろ、生鮮食料品の流通過程、市場の問題を問題にするなら、現在の卸売り市場、この問題にどうしてもっとメスを入れないのか。ここには、卸売市場法案の早期成立をはかりたいということも書いてありますけれども、あの卸売市場法は全くたいへんなものです。物価安定という点から言ったら全く逆行するものだ。こういうふうに思います。  時間がないので、一つ二つだけ伺うことにしますけれども、現在の市場法ですと、人口十五万以上の都市に卸売り市場をつくることができるということになっています。いま人口十五万以上の都市は幾つあるのか、そうして卸売り市場一体幾つつくられているのか、この点をまず伺いたいと思います。
  140. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) ちょっといま手元に数字がないのです。いずれ農林省から来ると思いますが……。
  141. 渡辺武

    ○渡辺武君 手持ちがないそうなので、私のほうから申しますと、人口十五万以上の都市は約百あります。ところが、法律に基づいてつくることのできた卸売り市場は二十七都市しかない。このためにどういう現象が起こっているか、実に奇々怪々な物価値上げ現象が起こっている。たとえば、東京の中央卸売り市場、ここには、近県の農産物、それから漁産物、これらを中心とする生鮮食料品がみんな集まってくる。そうして、ここで取引されて、これが生産地にまた逆送されるのですよ。だから、千葉県なんかは、野菜の本場でありながら野菜が高い、東京より高い。こういう現象が生み出されてきている。この問題を解決することも、物価安定対策としては当面緊急で非常に重大だと思うのです。青空マーケットのことを考えたり、あるいはまた、生産地消費地の協同組合を直結させる、これは悪いことではないと私も思いますけれども、そういう部分的な政策よりも、現在起こっている中央卸売り市場のこの問題、これを解決する意図があるかどうか。もっともっと卸売り市場をたくさんつくるべきだ。そうして、それぞれの地域でもって、それぞれの土地でとれたものを、これを取り引きするという形でやれば、こんなばかばかしいことは私は起こらぬと思う。この点、やる意思があるかどうか、伺いたいと思います。
  142. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) これは、渡辺さんの御指摘を待つまでもなく、われわれが一番重要な問題として考えているわけです。この市場が十分でない、特に最近は、いわゆる大都市への人口の集中と、そしてまた、その周囲に周辺都市が相当にできておる、相当の人口を擁したいわゆる周辺小都市ができておる、これらのところに卸売り市場というものが十分整備されておらない、そのためにいまのような逆送現象が起こっておる、これは、われわれもつとに指摘しているところでありまして、まあ農林省も、非常に率直な言い方をすれば、おそまきではありますけれども、この卸売り市場の整備法というものをつくって、そして、できるだけ早く地方の中都市まで整備したいと、これが今度の法律改正の一つの大きな眼目になっておるところであります。それでありますから、その点に関する限りは、私は、あなたのおっしゃる点に少しも異論はありません。むしろ、これを積極的にぜひ進めてまいりたい、こういうふうに考えています。
  143. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間も来ましたので、最後に一言だけ伺いましょう。  私がただいまの問題を持ち出したもう一つの理由は、こういう体制が、つまり、法律上ではつくることのできる条件のある都市に卸売り市場がつくられないで、生鮮食料品が東京へ集まってくるという、その一つの重要な根源ですね、これは、中央卸売市場に対する大資本、大会社の支配だと思う。ここにメスを入れなければ、現在の生鮮食料品の不当な値上がり、これを根本的に解決することは少なくとも困難だと思います。たとえば、一、二の実例を申してみましょう。神田の野菜の卸売り市場、ここは、東印東京青果——これは大企業の日冷系と言われております。これが市場の売り上げ高の約五〇%を一社でもって扱っておる。それからまた、築地の卸売り市場、これは、東京中央青果、東京築地青果、この二社が市場の扱い高の八六%を扱っておる。これは青果物の卸売り市場の例でありますけれども、水産物の卸売り市場は、これは言うまでもなく、いわゆる四大会社といわれる東都水産、これは日魯漁業の系列会社。大都魚類株式会社、これは大洋漁業の系列会社。中央魚類株式会社、これは日本水産系の株式会社。それから東京築地市場株式会社、これは日本冷蔵の系列会社。こういう大企業の系列会社四社がほとんどがっちりと東京中央卸売り市場を握っておるという状態です。ですから、あそこでもって生み出されてくる取引上の利潤は、ほとんどこれらの大企業のふところに入り込んでいる。しかも、これらの大企業は——時間がないから詳しく申しません。いずれまたこれは取り組みたいと思うのですけれども市場法を明確にじゅうりんして、市場に入ってきた魚でも野菜でも、値段が下がりそうなときには、どんどん冷蔵庫に入れて、横流しをする、あるいは加工食品にこれを回して、そうして、先ほど申しました加工食品の値上がりが激しいですから、大きなもうけをふところに入れておる、その他等々。しかも、これらは、少なくとも魚屋さんに関する限りは、これはもう、近ごろは遠洋漁業でもってたくさんとってきたり、あるいはまた、マグロ、カツオまで遠洋でとっている。これはもう大企業でなければできない。そうしておいて、それを持ち込んできて指し値でもって売っているというのが実情です。ですから、去年のあのサンマの異常高、あれだってそうです。とれたサンマはたくさんある。それを全部出したらサンマが暴落するので、したがって、これはもうどんどんどんどん冷蔵庫に入れちゃった。ところが、去年の秋になったらサンマのとれ高が少なくなった。冷蔵庫に入れたやつをちびりちびりと出して、あのものすごいサンマの値上がりができた。こういう市場操作が公然と行なわれておる。ここに、生鮮食料品の値上がりの一つの重要な根源があるのです。長官は、この中にはそういう問題を一言も触れていない。今度の卸売市場法、これは、こういう大企業の公然たる市場参加の道を開くという意味では、いまの卸売り市場に対する大企業の支配、価格操作、生鮮食料品の値上がり、これの原因をさらに大きくするものだといっても差しつかえないと私は思う。こういう問題について、物価安定という見地から経済企画庁もよろしくメスを入れるべきだと思います。そういうことをやる意図がおありかどうか、この点を伺って終わりたいと思います。
  144. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いろいろと話を伺いました。われわれとしても、特に魚介類については最近値上がりが行なわれていますし、これは一面において需要の強いという点も影響しています。そういうようなことで、今後十分に対策を講じなければならないと、こういうふうに考えています。そしてまた、市場についてはいろいろと複雑な問題もあることもわれわれわかっておりますから、これらについても、できるだけひとつ、なお一そう検討をしてみたい。特に、さっきお話があったように、この問題については、農林省だけが幾らがんばってもだめなので、東京都と一緒になってやらなければならない問題であろうと思います。ひとつ、今後もできるだけこの市場問題について、われわれも検討しなければならぬというふうに考えています。
  145. 横山フク

    委員長横山フク君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十七分散会