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上田哲君 念のために申し上げておくのですけれども、私は〇・四%じゃこれはまあ問題にならないけれども、実はこれが四〇%だとか三〇%だろうとかいっているのではないのです。
日本の
産軍複合体なるものが決定的にもうゆるがすことのできない形をつくり終わってしまっているのじゃないかということを、私も目下論証できるわけではないのです。けれども、
長官が軍事支出が、
GNPの中に占めるウエートが〇・八%だ、兵器生産は〇・四%だという
数字を出されたことは、率直にいって
長官への失望ですよ。これは違うのですよ、明らかに。
人件費、給料まで含めて、言ってみればここのところから波及効果が出てきた結論が
GNPなんでしょう。年度の初めと年度の終わりを比べているようなものでありまして、こんな比較論はないですよ。こういう比較論は鶏と卵と、卵の重さと鶏の重さを比べておるようなものでありまして、これは違う。経済学的に論理にならないということですよ。どっちみち〇・八%を私のほうで
計算しても三・七%くらいにしかならない。だから三・七%になったら
産軍複合体ができ上がっているんじゃないかということは、その
数字では私も言えないでしょう。ただ少なくとも
防衛庁がそれだけのいろいろなPR文書を出しているのであるならば、それならばまるで年度の当初と年度の終わりとをくっつけて、年度の終わりに波及効果を通じて太っちゃった
数字を分母にして、入り口のところのもとの
数字を分子にするような形で〇・八%じゃないかといってるのじゃ、これはおかしい。これは痛くもない腹をさぐられてもしかたがないということになるのじゃないか。私もあえて近代経済学の手法をもって問うのだが、そういう
計算をするのでないと、経済学的にこれは落第ですよ。私はそういうことを言いたい。
防衛庁は隠したということでなければ、この論理を知らないということになる。
防衛庁にこれだけのスタッフがいて、やはりそういう
計算をされてしかるべきじゃないか、これは率直にいって。
長官がいま正直にやってないとおっしゃったから私はその点はけっこうだと思うのです。やるべきですよ。
国民は
防衛費の大きさや兵器産業の大きさに、
防衛庁の発表の
数字とは別な実感を持っている。
たとえば一九五八年におけるアメリカの軍事支出は四一九・五億ドルであった。そのうち燃料動力産業に例をとると、この産業はこの年にペンタゴンに対して九・九億ドル納入したのですが、このためにこの燃料動力産業は二六・三億ドルの生産を行なわなければならなかったのです。このようなことが理論的に
考えられるわけですから、軍事支出というものは、非常にその分まで見越して
考えなければならない慎重さが必要になるわけですね。
もう一つの
考え方として
検討しなければならないのは、軍事支出の乗数効果の測定です。
防衛庁当局から資料を出していただいたんですけれども、四半期ごとの支出
状況をもとに経企庁の経済研究所のパイロットモデル、それからマスターモデルというのがあります。これは私どもがしろうとでやったんですから、ずいぶん大ざっぱな
計算なんですけれども、四十二年度以降、つまり第三次防が推進され始めてからの波及効果を四十五年度で累計してみると、大体二兆六千億円ぐらいになるわけです。
昭和四十二年度以降装備品費というんですか、として支出された軍事支出が、本年度まで影響を及ぼして、本年度に生み出す有効需要の累計額が二兆六千億円だと、これは大体今年度の
GNPの推計額は大体七十兆円だということになると、これを分母にして分子を割ると、さっき申し上げたような三・七%になるんですよ。このような
考え方からすると、〇・八%だというのは、これは分母と分子が全然次元の違った
数字を使っていることになりますね。ここから出ていった金が一年かかって子供を産んで大きくなったのを分母にして、もとの出口のところの
数字を分子にして割っていれば、当然パーセントは小さくなるんです。そういう形でない
数字を出すべきじゃないか。これは三・七%なんていっても、小数点以下の
数字まで私は責任が持てない。たいへん大ざっぱな、しかも大ざっぱにならざるを得ないことだと思うんですけれども、そこで
政府が〇・八%にすぎないんだといっているのは、そこで煙幕を張っている結果になるんじゃないか。四次防という大規模なのが出てくるということになると、この辺の問題は、いずれもう少し緻密な経済理論的な精緻さをもっての追及が必要になってくるのでありましょうから、私はぜひひとつ産業連関分析、それから経企庁の計量モデル等による方法で実態を洗い直して、その
数字を御報告いただきたいと思うんです。何か生活実感としても、どうもいまの
防衛庁が出しておられる
数字というのは、やっぱりぴんとこないのが
国民の実感なんであって、何かもっと大きなごうごうと音をたてる軍事費が動いているような気がする。
防衛庁が胸を張って
国民の疑惑に
答えようとされるなら、そういう分析論の批判にたえるような
数字を出していただいて、その上で
産軍複合体の危険というのはこの
程度、まだこの
程度だけれども、こういう注意をしなきゃならぬじゃないかということをひとつ
議論の土俵の上に乗せていただきたい。経企庁にそういう機関もあるんですし、
防衛庁でも十分そういうこともできるはずなんでありますから、ぜひ試算をしていただき、そうした
数字も御発表をいただきたい。