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1970-09-29 第63回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月二十九日(火曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————    委員の異動  八月二十六日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     野坂 参三君  九月九日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 足鹿  覺君                 上田  哲君     委 員                 佐藤  隆君                 柴田  栄君                 玉置 猛夫君                 長屋  茂君                 安田 隆明君                 鶴園 哲夫君                 中尾 辰義君                 峯山 昭範君                 片山 武夫君                 岩間 正男君    国務大臣        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        警察庁刑事局捜        査第一課長    田村 宣明君        行政管理庁長官        官房審議官    浅古  迪君        行政管理庁行政        管理局長     河合 三良君        行政管理庁行政        監察局長     岡内  豊君        防衛庁参事官   江藤 淳雄君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁人事教育        局長       内海  倫君        防衛施設庁長官  山上 信重君        大蔵省主計局次        長        橋口  收君        厚生大臣官房国        立公園部長    中村 一成君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (一般職職員給与についての報告並びにそ  の改定についての勧告に関する件)  (公害行政の改革問題に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛に関する件)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  先般行なわれました国の出先機関公務員制度及び自衛隊実情調査につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。上田君。
  3. 上田哲

    上田哲君 石原理事中尾委員と私の三名は、七月九日から同十二日までの四日間の予定をもちまして、硫黄島及び父島における国の地方出先機関公務員制度及び自衛隊実情等について調査し、あわせてこれらの島内を視察してまいりましたので、以下順を追ってその概要を御報告いたします。  まず、硫黄島の実情について申し上げます。  あらためて申し上げるまでもなく、硫黄島は東京の南、約千二百五十キロメートルの洋上に浮かぶ硫黄列島中央に位置し、西南から更地に延びる瓢状の孫島で、周囲約二十二キロ、面積約二十平方キロメートル、島のほぼ中央にある元山と南西端にある海抜百六十九メートルの摺鉢山の二つの火山からなっております。  昭和四十三年六月、小笠原諸島わが国復帰と同時に、この硫黄島に海上自衛隊硫黄航空基地分遣隊が置かれ、隊員約六十人が常駐しております。この分遣隊は、第四航空群に隷属している下総航空基地隊分遣隊であり、管理隊運航隊航空通信隊及び補給隊等からなっており、飛行場とその関連施設維持及び艦船の航行安全を支援する等の任務に当たっております。  現在、島内にはこれらの隊員のほか、米軍沿岸警備隊ロラン局基地要員の約三十人が居住するのみで、一般住民はおらず、したがって娯楽施設等はなく、また、火山島であるため、河川も沼もなく、飲料水は、滑走路に降った雨水を集め、ろ過して使用している状況であり、気象条件地理的条件からいって、きわめてきびしい環境下で、隊員は困難な業務に努力されておるように感じました。  特に、電力米軍から移譲された発電装置を用いて自家発電しておりますが、これが老朽化しているため その使用については力なり制限を加えており、これがため、日常生活等を圧迫するとともに、故障等を起こした場合の修理につきましても、多くの困難が伴うようであり、この発電装置を近代的なものに取りかえてほしいとのきわめて強い要望があり、関係当局のすみやかなる配慮を願いたいと思います。  また、港湾施設がないため、海上輸送が困難をきわめ、海面状況によっては内火艇でさえ接岸できない場合もあるので、早急な対策が望まれております。  私どもは、島内視察もいたしましたが、島内には大きな樹木はなく、樹高二メートルのギンネムの木がおい茂っているだけの荒野であり、耕地としての開発の余地もほとんどなく、また、日米五万人にのぼる死傷者の血を吸った砂は黒く海岸に広がり、西海岸には赤く錆びた上陸用艦船の残骸が見られました。私どもは、戦没将士慰霊の碑及び摺鉢山の頂上にある日米両国硫黄顕彰碑にもうでるとともに、二百五十メートルに及ぶ地下壕にも入ってみましたが、そこには、かつての日本軍の弾薬、水筒、くわ等が腐敗して散在しており、非惨な状況でありました。遺骨の収集等は、過去三回にわたって行なわれておりますが、私どもは一日も早くこれらの作業が完了されるよう痛感いたしました。  次に、父島実情について申し上げます。  御案内のごとく、父島は、小笠原諸島のほぼ中央に位置する父島列島にあり、東京の南、約千キロメートル、小笠原諸島中、最大の島であります。  昭和四十三年六月、小笠原諸島わが国に返還されましたが、返還後の行政体制につきましては、小笠原諸島復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律により、幾つかの特例が認められ、現在、父島設置されている国の行政機関には、小笠原総合事務所海上自衛隊父島基地分遣隊東京防衛施設局小笠原防衛施設事務所気象庁父島気象観測所があり、都の行政機関として東京小笠原支庁等があるほか、村の行政機関設置されております。私どもは、これらの機関から小笠原諸島の現況をはじめ、それぞれの業務概要要望事項等を聴取いたしましたが、これらの機関に派遣されている職員は、すべて単身赴任であり、潤いのない不自由な生活の中で、小笠原諸島復興開発をはじめ、基地警備爆発物の処理、各種の気象観測など、わずかな職員で、与えられた業務に努力されているように感じました。  次に、各機関要望事項等について、二、三具体的に申し上げます。  まず、海上自衛隊父島基地分遣隊では、現在、二見湾ランプウェイが二基あって、UFI2型飛行艇の離着陸に使用しており、周辺に駐機場がありますが、二見湾整備計画によりますと、四十六年から四十八年までの三カ年間にこの駐機場は岸壁となる予定になっており、一方、四十八年ごろには海上自衛隊飛行艇はPS11に変更されるので、早急にこの駐機場及びそれに必要な施設用地並びに海面確保し、建設に着手しなければならないとのことでありますが、海上自衛隊施設が完成するまでの間は、緊急要務の目的上、現在の駐機場継続使用について配慮してほしいとのことであります。また、艦艇、航空機用燃料等米軍時代から引き継ぎ、島内危険物置場地区内の数カ所に分散貯蔵しているとのことでありますが、危険物貯蔵庫のすぐ近くを一般道路が通っており、かつ土地利用計画によると、同地域住宅地区にする計画があるので、代替地等についての調整が望まれているとのことでありました。  次に、気象観測所では、現在使用中の庁舎及び宿舎がきわめて老朽化し、鉄筋の腐敗膨張により壁面亀裂が多く、個所により剥落もあり、危険でありますので、これらの整備等の必要が望まれているとのことでありました。  以上のほか、各官公署を通じての要望は、電力増強であります。父島では現在、東京電力株式会社島内の配電をしているのでありますが、出力が小さく、十分に電力使用することができないため、冷房装置使用制限を受けており、これがため、湿度、気温等、人体の適正条件をはるかに越えた、むし暑い気温の中での勤務及び日常生活を余儀なくされておりますので、この電力をすみやかに増強してほしいとのことでありました。  次に、私ども島内視察を行ない、気象庁のウェザー・ステイションをはじめ洲崎旧飛行場農業試験場及び漁業協同組合等をもあわせて視察いたしましたが、そこで感じた諸点につき若干申し上げてみたいと存じます。  小笠原諸島わが国復帰して三年目を迎えておりますが、この間約五十億円が投入され、小・中学校をはじめ、漁業のために製氷、冷蔵施設ができるなど、公共施設整備が進み、逐次道路整備も行なわれているのでありますが、小笠原復興開発基幹をなし、産業開発の面からも小笠原の将来を左右する問題は交通の確保であると感じました。  特に小笠原の置かれた自然条件からして、航空路の開設は、小笠原諸島が将来どのような復興開発を遂げるにせよ、その基幹をなすものとして認識されるところであり、大型航空機の発着できる空港の建設の可否はきわめて大きな意味を持つものと痛感いたしたのでありますが、地理的条件気象条件等から、かなりの困難を伴うようであります。  小笠原諸島は、亜熱帯の特異な美しい景観島特有の貴重な動植物資源を数多く有しており、この貴重な資源は保護していかなければならないことは申すまでもありませんが、小笠原諸島復興開発にあたっては、この自然の保護との調和をいかにしてはかっていくかということが十分に考えなければならない問題でありましょう。  一方、産業開発について見ますと、当面その根絶にかなりの困難を伴うと思われるアフリカマイマイ等の病害虫の防除、適作物の選定、農業用水確保等農業については幾多の難問題をかかえているものと思われ、また、農業につきましても、漁業につきましても、漁業協同組合が設立され、漁業復興の第一歩を踏み出しているのでありますが、地理的条件から運搬に問題をかかえているようであります。  小笠原諸島は、四季を通じて温暖な気候、清澄な大気と海洋、特異な海蝕岸海中景観などに恵まれた自然環境を備えており、保養地観光地としての将来性は大きく、今後観光産業が大きくクローズ・アップされるものと思われますが、小笠原諸島観光地として開発するためにも、その立地条件等からして、まず距離を克服する方途を講じなければならないものと痛感いたしました。  最後に、私どもは、五人の小笠原村、村政審議会委員及び現地職員の方々と懇談し、父島での日常生活復興をめぐるさまざまの問題について意見の交換を行なったのでありますが、その際、父島ではテレビは全然見られず、ラジオは夜間だけしか聞こえず、新聞は二週間おくれであり、週二回の野外映画の観賞だけが唯一の楽しみとなっている現状から、関係方面の理解を喚起して、テレビ用ビデオテープをすみやかに送ってほしいなどというきわめて強い要望がありましたことを申し添えます。  以上、概要を簡単に申し上げましたが、なお、詳細につきましては、各視察先でいただきました調査資料を当委員会調査室に保管させてありますので、適宜ごらん願いたいと存じます。  以上で報告を終わります。
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、八田君。
  5. 八田一朗

    八田一朗君 それでは、北海道班派遣報告を便宜私から申し上げたいと存じます。  足鹿理事峯山委員並びに私の三名は、去る七月二十七日から六日間の日程をもちまして、北海道開発行政の、実情並びに北海道所在の国の出先機関及び自衛隊部隊実情調査を行なってまいりました。  私たちは、自衛隊機により稚内に直行し、まず利尻、礼文の両島に渡り、次いで網走を経て知床半島にまで足を延ばし、さらには転じて弟子屈、帯広に回り、帯広よりヘリコプターにて日高連山を俯瞰しつつ札幌に至るという文字どおり北海道一周強行日程を消化してまいりました。視察先も、北海道開発局をはじめとして、札幌営林局札幌統計調査事務所稚内海上保安部網走刑務所長沼町のナイキ基地予定地札幌防衛施設局帯広支局陸上自衛隊北部方面総監部稚内及び礼文島所在の第三〇一沿岸監視隊航空自衛隊第二航空団稚内レーダーサイト、千歳のナイキ基地等々、多数にのぼりました。そのため各視察先における説明聴取は短時間にとどめて、なるべく現地をあまねく視察し、現地説明を聴取することに重点を置いて調査してまいりました。幸い天候にも恵まれ、また同行の北海道開発局官房次長並びに稚内網走、釧路、帯広の各開発建設部長より、車中にてそのつど現地説明を聴取いたしましたので、北海道開発現状はこの目で十分把握してまいりました。  以下、私たちが感じました点や視察先で述べられました要望事項重点を置きながら、順を追って調査概要を申し上げます。  最初に、北海道開発局についてでありますが、御承知のごとく、昭和三十八年度より実施の第二期北海道総合開発計画は、九割以上の達成率をもって本年度完遂見込みとのことであり、明年度より新しく十カ年間の第三期総合開発計画に入るとのことであります。  この計画は、すでにさる七月十日閣議決定を見ておりまして、政府側八兆五千億円、民間側十二兆円、計二十兆円余の巨額を投資し、工業生産額において四・六倍、農業、林業、水産業、鉱業においてそれぞれ一・六倍ないし一・八倍というきわめて高い水準を目標とするものであります。  あの雄大な自然と豊富な資源に恵まれた北海道潜在的発展力を考えれば、わが国では類のない大規模産業展開の場でありましょう。事実、私たちも今回、一周してその感を深くしたのでありますが、最近における東京をはじめとする全国各地公害問題に思いをいたしますとき、北海道こそは国際水準をいく大規模農業基地として、公害のない、すがすがしい空気と緑と太陽に包まれた北海道たらしめるべく、現時点から開発にあたって十分留意されるよう要望してまいったのであります。  この計画事業に当たる開発局の人員でありますが、現在開発局定員は一万一千三百九十六名であります。この定員数は、昭和二十六年の開発局開局当時の二倍強に当たりますが、この間の事業量の伸びは七倍にもなっておるとのことで、現在第一線では、夏季において相当無理な超過勤務を余儀なくされているとのことであります。例の五%削減計画では、開発局に対し八%、九百十九名のノルマが課せられ、本年までに四百九十二人消化できたとのことでありますが、その内情は、毎年一・九%の離職者しか見込めず、新規採用者数を極度に押えなければならない状況で、将来の人事管理上憂慮すべき事態に立ち至っているとのことであり、五%削減計画は三年ではとても達成できないので、年限の延長と削減率の緩和について特に配慮していただきたい旨を要望されました。もちろん開発局としても、政府定員抑制方針にのっとり、工事規模大型化、設計、測量、登記事務外注化電算機導入を通じての給与事務機械化等行政運営合理化の道を検討し、また、従来よりネットとされていた点、すなわち、内地建設局等と異なり、開発局では、道路河川維持及び港湾建設作業直営工事として受け持っている点についても、もはや考え直さなければならぬ段階に立ち至っているとして、これら事業執行体制について検討し始め、職員組合とも相談し、研究していると、るる説明を承り、私どもとしても、開発局当局行政改革への熱意を了としたのであります。ただ、時間の関係もあって、開発局における定員外職員実情について詳しく説明を徴し得なかったのは残念でありました。  次に、農林省札幌統計調査事務所について申し上げます。  私たちはここでは、さきの第六十三回国会に本委員会で審査いたしました農林省設置法の一部改正法案の成立後の実情を見ることに主眼を置いたのであります。御存じのごとく、あの改正法律により、内地の都府県にある統計調査事務所地方農政局に統合されましたが、北海道には農政局がないため、北海道所在の四つの統計調査事務所は従来のまま並列的な姿で残ったのであります。現地での説明では、その後、省令の改正により札幌統計調査事務所に与えられていた他の北海道所在統計調査事務所に対する連絡、取りまとめ権能を拡充強化するとともに、増員もはかられたとのことでありますが、札幌統計調査事務所位置づけをさらに明確にして、地方農政局統計調査部に準ずる位置づけとしていただきたい旨要望されました。私たちも、北海道農政との密着を深めるため、この点は今後農林省設置法改正により明確にすべきものと感じました。  次に、網走刑務所について申し上げます。網走刑務所は、御承知のごとく、明治以来無期刑囚等、比較的重罪を犯した者の監獄として有名でありましたが、現在は長期刑の者は旭川刑務所に移し、収容者六百七十人のうち、七五%は財産犯とのことであります。収容者平均年齢も三十九歳という若さで、その職種のおもなるものはセールスマン、バーテン運転手とのことでありました。職員は所長以下二百二十二人でありますが、同刑務所には親子にわたって刑務官として勤務する者が多く、親子三代にわたる者七組、二代にわたる者五十三組にも及ぶとのことであり、勤務成績もなかなか良好とのことであります。私たちは所内を一巡いたしましたが、施設管理も行き届き、規律も厳正であるように見受けられ、昨今刑務所職員規律についてとかくの問題のあるおりから、私たちは非常に意を強くした次第であります。現地における説明に、「日本における行刑は、矯正教育の点でも作業管理の点でも欧米諸国よりはるかに進んでいる。ただ、遺憾ながら、受刑者食糧費が一日百二円十一銭という低い単価であるので、この増額が望ましい」旨の要望のありましたことをつけ加えておきます。  次に稚内海上保安部についてでありますが、ここで私たちの感じました点は、第一に、巡視船等増強であり、第二に、荒天をおかしつつ海難救助等に励むこれらの職員——海上保安庁職員に限らず同種の職員すべてでありますが、——これらの人々に対し、現行国家公務員災害補償法改正して、後顧の憂いなからしめる必要を痛感いたしました。巡視船増強については、稚内海上保安部に配属されているのはわずか巡視船二隻、巡視艇一隻という状況で、その性能も老朽化しております。現地でも新型巡視船への代替砕氷巡視船及び大型ヘリコプターの配属が強く要望されましたが、私たちも、この気象条件のきびしい北海道管区には特別の配慮が必要であり、特に船艇については高性能のものを増強してしかるべきものと感じました。  次に、札幌営林局においては、北海道における国有林野事業及び定員関係について説明を受けましたが、総定員法施行後も、出先当局としては特に支障はないとのことでありました。  以上の国の出先官署のいずれにおいても寒冷地手当の改善について要望を受けました。そのおもなる趣旨は、給与水準改定に即応する定額分改定現行の定率の引き上げ、石炭加給額増額等であります。  次に、長沼ナイキ基地予定地について申し上げます。ナイキ基地設置に関する長沼保安林指定解除処分、その後の訴訟問題など、いわゆる長沼問題はまさに注目の時の問題であり、本委員会でもすでに取り上げられたところであります。私たち長沼現地に参り、長沼町長町議会議長札幌営林局長札幌防衛施設局長より、本問題に対する地元民意向保安林指定解除に至るまでの経緯並びに保安林指定解除に伴う代替工事内容等について説明を聴取いたしました。長沼町の馬追山保安林は千七百ヘクタールの広さでありまして、そのうち、第三次防に基づくナイキJ基地、すなわち第三高射群の一個中隊配置のための用地として防衛庁に所管がえになったのは昭和四十三年五月でありまして、この広さは六十七ヘクタールであります。そして昭和四十四年七月、問題の保安林指定解除がなされた広さは三十二ヘクタールであります。この詳しい経緯は省略いたしますが、長沼町長としては、四十部落の区長、農業団体理事者、あるいはモニター等を通じて町民の意向把握につとめ、また、町議会議員も大多数が賛成であったので、条件つき同意ということとし、その旨の要望書札幌防衛施設局に提出したとの説明がありました。本年一月、札幌高等裁判所が、保安林指定解除処分執行停止をきめた札幌地裁の判決を取り消して以後、代替工事がすでに進められており、防衛施設局長説明では、本年中に代替工事を完了し、その終了を待ってナイキ工事に着手し、昭和四十七年には完成したいとのことでありました。代替工事は、砂防ダム用水飲料水施設並びに周辺整備工事よりなり、総工費約十億円とのことであります。私たちとしては、これらの代替工事が、地元民要望を十分反映して設計されているか、また、これらの施設の将来の維持管理方式はどうか、維持経費の負担はどうするか等の諸点について、札幌防衛施設局当局の注意を喚起してまいったのであります。  最後に、自衛隊関係について申し上げます。私たちが参った陸上自衛隊第三〇一沿岸監視隊は、北部方面総監直轄部隊として、本隊が稚内に、派遣隊礼文島にあり、宗谷海峡地域の情報の収集に任じている九十名の部隊であります。最北端の土地、しかも一年のうち二百七十三日は十メートル以上の烈風が吹き荒れるというきびしい環境のもとで、日夜沿岸監視任務に精励している隊員の姿に接しまして、御苦労と敬意を表さざるを得なかったのであります。また、稚内にある航空自衛隊第十八警戒群に参り、レーダーサイト業務実情を見たのでありますが、これも二グループに分かれての二十四時間勤務レーダーを見詰める隊員の緊張した顔に接したのであります。  ここで、一言シビリアン・コントロールについて申し述べたいと思います。私たちは旧軍のあやまちに思いをいたしまして、自衛隊設置以来、シビリアン・コントロール確保こそ自衛隊存立の根本であると深く信じておりますし、歴代の防衛庁長官も、このことの徹底に日夜腐心されてまいったこともよく承知しております。しかしながら、今回の自衛隊視察を顧みまして、防衛庁当局におかれては、シビリアン・コントロール意識徹底につき、なお一そうの御努力を期待する感を深くしたのであります。  また、国政調査の一環として、公式に派遣されている私どもを迎える自衛隊のあり方についても、防衛庁当局において至急検討される必要があるのではないかと感ぜられました。  以上で御報告を終わります。
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 別に御発言もないようですから、派遣委員報告はこれをもって終了いたしました。     —————————————
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 山中総理府総務長官より発言を求められておりますので、これを許します。山中総理府総務長官
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先月の当委員会に私が出席しなかったことを、参議院軽視であるという旨のおしかりを受けたということで、副長官より報告がございました。速記録等も拝見をいたしました。私は参議院軽視でなかった理由を申し上げたいと思います。  第一は、いかなる委員会にも呼ばれたら必ず優先出席するという心がけを持っておったわけでありますが、委員長からたいへん懇切な出席方の要請もございましたし、その際に、衆議院が火曜で参議院が水曜というつもりでおりましたので、衆議院も参議院もともに出れないということを申しました。しかしながら衆議院は月曜に開かれましたために、私の出発が火曜でございましたので、月曜の衆議院には出席がたまたまできたということで、衆議院には出て参議院には出なかったという結果が起こりましたことを遺憾に思いますが、佐賀県に参りましたのは公用ではございません。保利官房長官の郷土に帰られましての催しについて同行いたしたわけでございますが、この点は御批判は御自由であると考えますけれども、物理的に、時間的にはどうしても差し繰りがつかなかったことだけは事実でございます。  なお、当初委員長から御連絡をいただきましたとき、もちろん時間を繰り合わせられればと思ったのでありますが、一ヵ月前に参議院において開催が定められていたということと、私に出席要求を求められていたという時点とは、だいぶ開きがございまして、その前に、保利さんに頼まれて佐賀行きを承知いたしておりましたので、保利さんとしては政治家として、自分の選挙区にそれぞれのポスターその他の手配等をしておられましたため、向こうを断わることもその時点ではできなかったわけでございます。これも御批判は御自由にまかせたいと思いますが、参議院を軽視したり、衆議院に出て参議院に出なかったりというつもりはありませんし、今後は弁解はいたしませんから、私自身の行動でもって皆さま方の軽視しているかしていないかを定めていただければ、それに従うつもりでございます。     —————————————
  9. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 一般職職員給与についての報告並びにその改正についての勧告に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。
  10. 足鹿覺

    足鹿覺君 先般の委員会でいろいろと御質疑が行なわれたようでありますが、きょうは総務長官もおいでになりましたので、初めは主として人事院総裁に伺い、締めくくり的に総務長官にあと伺いますが、閣議決定もすでに終わっておりますので、人事院総裁の御答弁に関連をいたしまして、政府の施策決定等を見たものについては、それぞれその際に御答弁をわずらわしたい。そのことを最初にお願いを申し上げておきます。  まず第一点でありますが、本年の勧告は、官民格差一二・六七%を埋める史上最高のものであると言われておりますが、官民格差の一二・六七%という数字は、四月現在の官民給与格差八・五六%と、それに春闘によって四月さかのぼり分四・一一%を加えたものであります。このうち春闘による四月さかのぼり分を見ますと、過去の例によりますと、昭和四十年に一・六%であったものが、年々拡大する傾向でありまして、四十一年には一・七%、四十二年には二・二%、四十三年は二・六%で、去年は三・四%の多きに達しておるのであります。しかもこの積み残し分の数字は、必ずしも民間の実態を的確に掌握したものとは言い切れない反面、公務員給与改定率に大きな影響を与えていることを考え合わせますると、人事院の民間給与実態調査の時点である五月の初旬から六月の十五日までの時期の問題、また人事院の民間給与実態調査方法などについては、いずれ再検討する必要はあろうかと考えますが、これについて人事院総裁はどのような御所見を持っておいでになりますか、まず伺っておきたいのであります。
  11. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 御指摘ごもっともであると思います。そもそもはこれは春のいわゆる春闘といわれます賃金引き上、げ、民間における賃金引き上げの時期との関係から出てくる問題でございまして、春季闘争が非常に早目に行なわれ、早目に終わっておれば、こういうような問題は全然なくして、たまたま近年ややともすればおくれがちになっておりますために、私どもとしては、ぜひそれをとらえ得る限りはとらえたい、これをとらえずにおきますと、来年回しになってしまうということになりますから、やはり公務員諸君の利益等を勘案いたしまして、実はいまの積み残し分を取り入れるということに決断をいたしました。しかし、いま御指摘のように、これが年々減っていけばいいんでありますが、だんだんふえていくということになりますというと、われわれ給与関係の正確さというものを念願しておりますものとしては、たいへんこれがおもしろくないことになります。したがってその点について、抜本的にこれをどうすべきかという問題が当然出てくるわけです。  ここで笑い話半分いつも申し上げておりますのは、まず春闘をもっと早目に終わらしていただけばこっちは楽ですということを申し上げまして、しかし、そういうことは望むべくもないとすれば、やはり正確をとうとぶためには、私ども、いまおっしゃいましたように、六月十五日までということになっておりますが、それでもなおかっこういうことならば、もっと調査時期をずらすか、むしろ七月調査ということでやればそれがまた一つの方法だろうと思います。これは、これについてまた基本的にいろいろ考えをもって配慮すべき問題がありますために、そこまでまだ踏み切ってはおりません。まだ今日の段階はまずまずというところであろう。いま申し上げました正確性においてどうかという点は確かに一つありますけれども、ただ全体の総合格差の面から申しますと、翌年の調査で実は精算の形で出てまいります。これがやはり前年度における積み残し分の算定の一つの判定の材料になります。最近までの数年間の実績は、そのことにおいてあまりたいした見落としはなかったということで、多少自信を持っている面もございますので、現実と照らし合わして、勘案しながら、やむを得ない場合の措置もあるいは考えていかなければならぬのではないか、これはきわめて正直なわれわれの感想でございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 率直な御答弁を聞いたのでありますが、かりに六月の末ないし七月にわたってもいいではないか、こういう御意見もありました。十分御検討を願いたいと思うのでありますが、この期間後における妥結した会社は、本年の改定率にはどうしても入りません。それが相当大幅で、しかも数が多い、こういうことになりますと、ぜひただいま申された六月末か七月に付帯調査を完了されることが好ましいのではないか。そういう御用意をいたされて、今後に対処されることを重ねて強く要望しておきたいと思います。  そこで総裁のほうで積み残し分のあることをお認めになっておりますが、いわゆる積み残し分はかなりある、こうお考えになりますが、どの程度現時点において数字としてあらわれておりますか、そういう点は明らかでありませんか。
  13. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 民間におきましての給与の引き上げの時期がいろいろあるわけでございますけれども、私どもとして従前こういう関係調査してまいっておりますが、大体におきまして年によって違いますけれども、   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕  大体におきまして、四月中におきまして改定されるというのが三分の一と考えております。それから四月に支払いませんでしたけれども、あとから、四月からおくれまして四月の追い払いをするというところが三分の一。で、それ以外のいわゆる春闘的に行なわないところが三分の一というふうに考えておりまして、その三分の一のいわば追い払いをする中で、先ほど御指摘がございましたけれども、本年の場合には二七・四%とらえておるというふうな感じでございまして、そういう点でまいりますと、大体はとらえておるというつもりでございます。なおこの点は今後さらに追跡をしていくというように考えております。
  14. 足鹿覺

    足鹿覺君 具体的な数字上の点を明らかにしていただくことはできませんか。想定でもけっこうです。
  15. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) いま申し上げましたように、四月時点で引き上げるというのが三分の一でございます。それから四月からおくれますけれども、四月に追い払いをするというのが三分の一と考えております。で、これは年によって違いますけれども、本年の場合にはまだそういう点の集計が十分ではございませんが、毎年大体そういう形になっております。そのうちに本年の場合には、この調査のほうで追い払いとしてはっきりつかみましたものが二七・四%ということでございますので、ほぼとらえておるというつもりでございます。
  16. 足鹿覺

    足鹿覺君 人事院調査による官民格差の問題でございますが、今度のアップで一二・六七%、公務員の定昇率を人事院推計によって四%、合わせて一六・六七%ということになるわけであります。それで労働省の調査によりますと、春闘相場の定昇込み、これは時期が明確でありませんが、時点が明確でありませんが、私の資料によりますと、これも一八・三%ということになっておるのであります。そういう面から見ましても、先ほど述べられたような付帯調査の時点というものについて、ぜひ来年度は、先ほど総裁がお述べになったような点で御配慮をわずらわしたい。もう一ぺん確認しておきますが、総裁おやりになりますか。
  17. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) いまの労働省の発表の分は、私どもの調べのデータとは基礎が全然違います。御承知のように労働省発表は、きわめて限られた少数の会社だけをとらえての一八・何%ということになります。一方私どもは七千近い事業所を克明にさらってのものでございます。その点において基礎が違いますから、一八・幾つというものと直ちにお比べいただくことは、これはまた大きな問題だと思います。それはそれといたしまして、したがって、いわゆる積み残し問題と一八・幾つというその問題とは、直接の関連はありませんということをまず申し上げておきまして、しかしながら積み残しの問題は、先ほど御指摘のように、これはわれわれとしてもなかなか見のがし得ない問題だと思います。したがってそのほうの措置は十分考えていきたいと思います。  ただ、先ほど私が申し上げましたのは、付帯調査の時期をさらに六月末まで延ばすかということではなしに、もうこうなったから本調査、いま四月現在のやつを調べておりますが、それを今度は六月に支払われた給与ということでがっちり基礎から六月ということでいきますれば、これまた精密な配分関係もずっと出てまいりますから、これはこれでいいわけです。そこまで踏み切るかという問題が当然出てまいりますけれども、それはそれでおそらくいろいろ各方面から御議論があるだろうということも、研究しなければなるまいというのが現在の心境でございます。
  18. 足鹿覺

    足鹿覺君 十分御善処をわずらわしたいと思います。  第二点は、このたびの勧告を見ますと、中身が盛りだくさんであります。人事院としてはこの大幅勧告の機会に、懸案を一気に解決しようという御意図があったように思います。たとえて申しますと、手当の改善では、扶養手当、通勤手当、初任給手当だけであった昨年に比べまして、今回は住居手当の新設など数多くの手当が追加されております。そのことそれ自体は決して私は悪いことではないと思うのでありますが、人事院総裁はかねてから、給与改善は本俸中心に行なわれるべきものであるという御言明をしばしばなされております。給与理論の上からそのとおりだと思いますが、今回かなりの諸手当の改善を重視されましたことは、従来の言明と何かこう矛盾を感ずるのではないかという気もせぬではありません。総体的に公務員の給与の実質額がふえればけっこうでありますが、退職金あるいは年金の基礎になりますものはやはり本俸でありますから、本俸それ自体の民間格差を埋めて、プラス諸手当の充実を期するということが本体である、これを御確認願った上で、私は諸手当の問題について一、二重要な問題がありますので、御心境をひとつ伺いたい。
  19. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これもたいへん適切なおことばでありまして、確かに私どもが理想とするところはやはり本俸中心主義で行くのが正しい給与制度のあり方である、この信念は変わっておりません。しかし、現実とこの理想との妥協点をどこに求めるかということにわれわれの悩みがあるわけであります。数年前に長年凍結しておりました扶養手当というものをついに上げたことがございました。これなども、この本俸中心主義からいうと、扶養手当などを上げるというのはむしろ邪道だという批判を当然覚悟しておったわけです。しかし、このときは、やはり周辺の経済情勢というものから勘案して、一種のこれは生活防衛の措置であるというようなことで御説明したこともございます。まあそれはそれとして、やっぱり現実の面から受け入れられてきておりますからして、われわれとしては間違った考え方とは思っておりませんけれども、趣旨は要するに本俸中心主義であるべきだということで貫いております。ただ今回の場合、非常に盛りだくさん、いろいろな手当を今度は改善しておりますが、これもやはり現実面ということからいままで積もり積もって——いままでの宿題をここで解決されたようなおことばもちょっとございましたけれども、いままで積もり積もっておった問題で、あるいは職員側の、公務員側の   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕 長年要望して、これが積み重なったものというようなのが相当ございまして、それはそれで相当理由があるというようなことから踏み切ったものでございます。しかし、公務員側の要望としては、たとえば扶養手当をまたことしも上げてほしいというような声も相当ございましたけれども、これらはわれわれとしては取り入れなかったわけであります。そういう面もございます。民間の場合、本俸と諸手当とのバランスを見ますというと、民間の基本給と手当との関係は、基本給が八割三分を占めておる。わがほうの公務員側におきましてはこれが、基本給に当たります本俸のほうが九割を占めておるというようなことで、そのバランスは民間よりもやはり本俸中心主義になっておるということは、その数字の上から御説明ができるわけであります。
  20. 足鹿覺

    足鹿覺君 あとで触れようと思っておりましたが、いろいろな諸手当を数多く解決された。ついででありますので、住居手当の新設に関連をいたしまして一つ伺っておきたいのでありますが、住居手当は、政府としても持ち家政策ということを常々言っておられるようです。最近、自分の家をどうしてでも持ちたいという庶民の願いは、これは給料の多寡を論ぜず切なるものがあります。そこで今度は住居手当というものを組まれたけれども、そういう傾向、持ち家居住者がふえ、また持ち家居住者をふやそうという大体の方向の政府の考え方に対して配慮が私は欠けておったのではないか。いわゆる借家におる者は低賃金者である、必ずしもそうも限りません。現在の住宅事情から見て、限りません。そこで最近の土地や建築費の値上がりによりまして、前借りをし、一時借り入れをいたしまして、その反済額は、公務員たるとを問わず、民間勤務者を問わず、大体十五年賦で、頭金の額によって違いますけれども、大体月一万五千円から三万円ぐらいの月賦でこれを返済していかなきゃならぬ。なかなかつとめ人にとってはたいへんな金額であります。これはある程度家賃にも匹敵し、あるいは家賃よりも上回るのではないかということも言えると思いますが、そういう実態についていかに把握しておられますか。これに対する配慮がなかったことは、どういう理由に基づくものでありましょうか。その間の人事院当局のお考え方はどうでありますか。
  21. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 持ち家対策というような大きな政策の面からこれを申しますというと、先ほどおことばもありましたように、これはやはり政府の大きな問題であろう。したがって、またこれに対処すべき政策としては、安い資金の融通を考えてやるとか、あるいは税金をまけてやるとかというような幅広い措置があるいは考えられるだろうと思います。私どもとしては公務員関係の特にこの給与勧告でございますから、給与の面からこれを見ておるんであります。ただ問題点は、いまおっしゃいましたとおりに、借金をしてやっと家を建てて、毎月毎月、月給の中から借金を返しておる人たちをどうするかというような問題はもう当然出てくるわけであります。しかし、これがなかなかむずかしい問題でございます。ということは、衆参両院の内閣委員会においてもたびたび、なぜ住宅手当に踏み切らないかという追及を受けましたときに、まず民間の趨勢を見守っておるということを申し上げつつ、さて、しからば住宅手当ということをどういうふうにして出すか、これがなかなか大問題でございまして、これは自宅から通っている人でも、いまお話しのように借金をもって建てて返しておる人、これを見のがせるかどうかという問題もある。さらにそれから言えば、借金はしていないけれども、つめに火をともすようにして、毎月の月給から将来の住宅の建設のために積み立てをしている人があるでしょう。それから親譲りの家に住んでいる人でも、やはり修繕というものには相当かける。これらのことを考えたら、それは実施についてもなかなか問題がありますよということを申し上げてきたわけです。  しかし、これにこだわっておっては、いつまでたっても、これは大多数の公務員諸君の要望でありました、しかも多年の要望でありました住宅手当というものは実現できない。そういうことから、ことしは実は踏み切って、主としてねらいは公務員住宅の安い家賃のところに入っている人と、そうでない人とのアンバランスを、せめてこの際是正しようということから踏み切ったわけであります。したがって、いま御指摘のような点は全然問題がないというようなことではないんです。それにこだわっておったら、いつまでもこれは踏み切りがつかないんじゃないかということから決断した。したがって、これは問題は問題として、私どもとしては将来考えていかなきゃならない問題である。しかし、なかなかむずかしいなという気持ちは依然として持っております。
  22. 足鹿覺

    足鹿覺君 非常に御説明を聞いていましても、なかなかむずかしい問題でありますし、また、これは国全体の一つの大きな政策にもなりつつあるわけであります。つまり公務員住宅に住んで、安い家賃で住んでおる者とのまず調整を考えるわけです。次に来たるべきものは、持ち家住宅を推進していく者との調整をどうするか。これはやはり政府の施策に大きく関連が出てくると思います。したがって、いまの人事院総裁の御答弁を、ただ事務的にこれを解決しようといたしましても容易に解決はできないと思うんです。やはり所管大臣である総理府総務長官から、これは政治家としての視野から、また政策推進上に見合うもののお立場から、住居手当等に対するこれに準ずる何らかの措置を速急に講じられるべきだと思いますが、その辺の御所見を承りたいと思います。
  23. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 住居手当新設の時期が早かったのかおそかったのか、その内容ははたして適切であったかどうか、これはいろいろ議論のあるところだと思うんです。しかし政府の全体の施策としては、労働省がたとえば中心になりまして、勤労者持ち家住宅というようなことも推進しておりますが、これは公務員たると民間人たるとは問わず、みなが家と庭とか、家庭というものを終生持ちたい願望を持つということは当然でありますから、これに対して政府の施策に対してどういうことができるか。いままで税制上からも、たとえば自分の家を持つために、指定された金融機関に貯蓄をして、毎年連続して貯蓄行為を行なう、あるいは地方住宅供給公社等を通じて行なうというような、一定の基準のもとに積んでおきます金について税金を免除する。あるいはその場合に、そういうことをやったら、いまあなたの例にあげられました、自分でもすでに四苦八苦して金を借りてつくったんだ。しかしその償還は貯金とは逆に、同じようにさいふの中からは償還金として出ていって、抵当に入っているんだとか、あるいは担保にしているんだとかいうものはどうするんだという議論がありまして、そこらのところも税制上たいへんむずかしい問題であります。  民間等において企業が社員の持ち家としての家をつくって、それを社員に提供する場合等については、めんどうをどういうふうに見るか、国家公務員の場合は、公務員宿舎の充足状況その他のものがいまのてん補率でよろしいかどうか、いろんな各分野からの検討がなされなければならぬと考えます。したがって、そういう政策上の問題においても、国家公務員に限って見ても、公務員住宅あるいは金融、税制、あらゆる問題に関係してまいりますので、要するに目標は、みんなが自分たちの家を持てるように、どうしても転勤、転勤の必要な職域における場合は、一定の推定される転勤のパーセンテージに匹敵する家については、国の責任として公務員住宅を準備しておく義務があるというようなふうの割り切り方で、今後話をさらにあらゆる政策の面から詰めていくべき必要があろうというふうには考えておるわけでございます。その検討もなされておるわけでございます。
  24. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは住宅政策との関連で、そう一ペんに長官から期待する答弁が得られると思っておりませんが、少なくとも思い切って公務員住宅との調整に踏み切られた。しかし、それでは片がつかない。したがって一般住宅政策との関連において、この問題についてとくとひとつ力を入れて、国の施策として御検討いただきたい。このことを強く申し上げておきたいと思います。  そこで、今度の勧告について批判がましいことを申し上げるようでありますが、まあ端的に言って上に厚く下に薄い、こういう勧告の実態になっておると思うんです。これは主として改定率を中心にしていかれますというと、いや、そうではないんだ、上に薄く下に厚いんだという議論もできますが、改定額そのもので見ていきますというと、上に厚く下に薄い、こういうことになるようであります。特に世帯形成期とも申します三十五歳から三十六歳あたりを例にとってみまするというと、大体中堅クラスの四、五等級の昇給間格差は千三百円から三千二百円程度であります。いわゆる東大出、あるいはその他エリートコースを歩んでおる人は別といたしまして、そういう道が歩めない一、二等級の昇給間格差を見まするというと、二千四百円から五千八百円、こういうことになっておるわけであります。したがって今回の俸給表の改善を具体的な例に当てはめてみまするというと、事務次官などは、指定職俸給表適用の職員給与についてでありますが、民間企業の役員の給与を考慮して改定、改善をしたと言っておられますが、次官クラスについては二十九万五千円が一挙に八万五千円も上がって三十八万円となり、これは二八・八%アップになる。局長クラスも、たとえば指定職乙で七号俸の人は、これまで二十一万五千円だったものが二九・八%アップで二十八万円になる。今回の一般職の平均は史上最高といわれるけれども一二・六七%であり、次官、局長クラスの改善率は、いま述べたとおりでありますが、平均して一二・六七%を大きく上回るのはもちろんでありまして、局次長、部長クラスの今回の改善率を一〇%台の水準をもってはるかに上回っておるのであります。今回の次官クラスの改善率は、常識外に高率という公務員諸君の不満があることは御承知のとおりであり、また新聞論調によってもこれは明らかに指摘されておるわけであります。そういう点について、いわゆる率で表現されることもげっこうでありますが、実額でやはり示されないと、平均率だけでは納得がいかない。この点、人事院総裁いかがですか。
  25. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 私どものまず基本的な立場を申し上げますというと、上厚下薄あるいは上薄下厚というふうなことばがございますけれども、私どもは人事院の側としてそういうことばは使いません。これは見る方々のそれぞれの目によって上厚下薄とおっしゃり、あるいは上薄下厚とおっしゃる。これは人によって違うだろう。われわれの基本としておるところは、申すまでもなく、国家公務員法で給与の基準として明文をもって定めております給与は、その職員の職務と責任においてきめろという鉄則は公務員法上もうたわれておりますから、われわれとしては、あくまでもこの給与はその公務員の職務と責任に適応しておるかどうかというその一点にしぼって俸給表をつくっておる。したがいまして、その結果が上厚下薄になるかもしれぬ、上薄下厚になるかもしれぬ、これは末の問題であります。あるいは率の問題とか実額の問題よりも、そのものずばり、この俸給表にあらわれた数字をごらんいただいて御批判をいただきたいというふうな気持ちでおるわけであります。  そこで、いまおことばにありましたように、この指定職の中でも、特に事務次官のごときは飛躍的な上昇をしておるじゃないか。これははなはだ目立つことであることは否定できませんけれども、私どもとしては、この事務次官その他の指定職に当たるような人々の給与については、民間のまたそれに対応する役員級の人々とこれを比べて、そして適当な額を算出しておるわけでございます。実は上厚下薄ということばは、私どもの先ほど申し上げたようなことからは気にする必要はないのであります。われわれとしては、上厚下薄であるじゃないかと言われることは、あまりいい気持ちはしないものですから、従来上厚下薄という批判をおそれておったことは事実。その意味で、伸び伸びとした給与を次官クラスのところにも盛りつけるべきところですが、まあ待て待てということで押えてきたという面は、これは正直なところあります。今日におきましても、平たく民間に比べると、私は四十万円のところにいかなければならぬものだと思いますが、やはりそこはちょっと遠慮しておるわけです。  それから事務次官の場合は、二つの要因が重なっております。まず格づけの点で、御承知のように指定職のトップは東京、京都大学の学長、これがトップであります。その下に旧五帝大の学長がおって、事務次官というのはさらにその下におるわけです。現在までは。これは事務次官の先ほど申しました職務と責任ということから見て、これは大臣を助けてその仕事を全部さいはいを振っておるというきわめて責任の重い地位にある人は、東京、京都大学の学長並みにほんとうは持っていっていいのではないかという考え方が実はあるわけです。しかし、それはあまりきわ立ち過ぎるからというわけで、せめて旧五帝大の学長並みにしてよかろうということで、今度学長並みに上げたわけです。格が上がったということと、一般のベースアップと両方かぶりましたものですから、ちょっと目立つような形になりましたが、われわれとしては、民間に比べてもこれは筋が通っておる。御承知のように指定職には管理職手当もありませんし、昇給もございません。いろいろな手当というものもございませんから、広く勘案してみれば、そう厚いと言い切れるものでもあるまいという気持ちを持っております。
  26. 足鹿覺

    足鹿覺君 総裁の話を聞いておると、まことにしごくもっとものように受け取れますが、世間での批判はなかなかきびしい。そういう点をよく御理解になって今後対処されたいと思いますが、公務員の給与の性格でありますが、民間給与水準に追いつかせる趣旨から、官民の給与の比較を行なっておりますが、公務員の給与というものは、一般民間企業の賃金と違いまして、民間にはない、たとえば灯台だとか、あるいは測候所であるとか、あるいは辺地に職場が置かれておるという地域性、また民間企業とは別に、公共サービス部門に働いておる人々は、いかに人口が縮小、減少いたしましても、一定数の職員が配置されていなければならないなど、公共性というものが公務員の給与を生み出していく一つの条件であり、公務員の置かれておる特殊性だろうと思うのであります。人事院総裁はかねてから、現行わが国の人事院が行なっている官民給与の差額を是正する方式は、アメリカ、イギリス等においても追随し、世界に冠たるものであり、わが国においても十分定着しておるものだと言明してこられましたが、さきに述べましたように、公務の特殊性は公務員給与の中にどう生かされていくべきか、また公務の特殊性を強調するのには、現行勧告制度ではもはや一つの限界がきたのではないか、こういうふうにも受けとめられますが、その点についての自己批判なり御所見はいかがですか。
  27. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 公務の特殊性、それぞれの職種に応じてこれがあります。いまおことばにありましたように、民間にないものもございます。われわれとしては、それらも十分勘案した上で、この俸給表をつくっておるつもりでございますけれども、最初にお触れになりました例で、手当の問題等もこれが関係しておるわけです。非常に特殊な仕事をやっておる人に対しましては、やはりそれ相当の調整額とか、あるいは特殊勤務手当というものを出さぬとバランスがとれないという面もございます。したがいまして、手当の問題の中にはそういう調整のための手当というものもあると、一がいに払拭できないものもあるということをこの機会にまたつけ加えさしていただきますけれども、要するにそういう点は十分考慮の上でやっておるつもりでございます。
  28. 足鹿覺

    足鹿覺君 日経連がこの勧告を見て、五十嵐事務局長の談話だったと思いますが、民間の賃上げ幅を機械的に公務員給与に移しておる点は問題である。民間の場合はその背景に各企業の合理化努力があるが、公務員の場合にはどれほど合理化が行なわれているか、民間の給与水準を参考にするのはよいが、現在のように民間に追随するだけの人事院勧告制度は再検討すべき時期にきたと思うと、こういつたようなことを談話で言っておられておるように思います。これについて総裁はどう反論されますか、勧告の正当性についてどう反論されますか。
  29. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 民間追随主義ということばは、ちょっといやらしい響きを持っておりますけれども、便利でありますから私も使いますけれども、これは申すまでもありません。われわれの給与制度のあり方としては、かつて戦前においてはそうでありましたように、もう民間がどうなっておろうと、公務員の職務あるいは生活の必要性、あるいは体面を保持するというような面から、白紙に立って給与はかくあるべきだということで給与をきめることが、私はあるいは理想かもしれないと思いますけれども、御承知のように現在の憲法のもとにおいては、公務員といえども一般の勤労者であるというふうになっておりますからして、そう特権的な目でもってこれを扱うわけにはいかない。やはり納税大衆が納得していただけるような形にしなければならぬということが一番の基本だと思います。そういう点から申しますというと、やはり何かの確固たる手がかり、基礎というものがないと、きめ手を持っていないと、われわれとしては作業ができない。そのきめ手として一番有効適切と思われるのは、民間の給与を克明に調べて、そうしてわれわれの調べておる民間の従業員が五十万人くらいありますが、これが大体民間のそういう組織のもとに雇用されておる人たちの約半数をカバーしているわけであります。その半数をカバーしている人たちを克明に調べて、給与を算出して、せめてここまでは合わせていただきたいという形をとることが一番手がたくて賢明だということでまいっておるわけでございます。先ほどちょっとお触れになりましたように、英米においてもその方式にだんだん追随して近づきつつある。そういう点でわれわれは世界に冠たるということを、はばかりもなく申しておるわけであります。その意味においては追随主義は、少なくとも当面においては私は一番手がたい方法であるという確信を持っております。  ただ、おことばにありました財界方面の人というのは、やはり金額だけ民間に合わせても、勤務密度は一体どうだいというような、そこに非常に皮肉な響きがある。言いかえれば、役人は民間ほどには働いていないではないか、それにもかかわらず給与だけ合わせるのはこれいかにというところが、私はこの批判のポイントになっていると思います。したがいまして、それはそれとして、役人がもしもなまけているというなら、なまけないようにすべき点がそこにあるのである。なまけているからという批判を基礎にして、当然与えるべき俸給を内輪に見積もるというようなことは、これはわれわれ公務員の採用の大責任を持っております人事院としては、これはたいへんなことです。近ごろは民間の初任給などは御承知のように非常に高い。ことに一流会社のごときはたいへんな額を出しておる。みんな新卒者の人たちはそっちのほうに流れていってしまう。われわれとしても、給与の面においては少なくともこの勧告の程度の線は保証しませんというと、みんな人材は民間に流れてしまう。民間のえり残しのくずだけが公務員になってしまうというようなことになったら、日本の将来はどうなりますかというなことまでたんかを切っているわけであります。公務員の志願者は年々減っております。そういう意味でこれに重大な関心を持って、給与の面においては少なくとも民間並みのものは保証してもらわないと将来が危ういという気持ちを持っているわけです。
  30. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの総裁の御所見で非常に心強く思いますが、国家行政組織を動かしておるものはあくまでも人間であり、その人間に優秀な人材を得られないというようなことが、もし給与面から生じたといたしますならば、これは民間だ公務員だといっておられません。日本の国全体の大きな問題でありますので、その決意で十分今後も対処していただきたいと思います。  そこで、そういう角度から今回の勧告で高齢者の昇給を延ばすという方針が打ち出されたのは妥当でないと思うわけであります。だんだん労働力が減ってきておりますが、どうしてああいう措置・をとられましたか。
  31. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) これはもういろはから申し上げるのはおそれ多いくらいに、給与の理論からいえば当然のことでございまして、昇給制度というものは、なぜ年々年がたつにつれて金額を上げていくかというような面、これはもちろん、だんだん年がたつにつれて扶養家族の数もふえていくだろうし、またその人の仕事も手なれてくるにつれて能力も上がっていくだろうということに置いた措置だろうと思いますけれども、これにはやはりその面からの限界があるわけであります。たまたま給与の理論の上からそうであるばかりでなしに、現実に民間の給与のあり方を見ますというと、これはもう一定の老齢に達した人については給与は据え置く、あるいはまた給与の昇給を延伸するというのがもう八〇%をこえておるという実情でございます。国ばかりがいままでのような体制を維持していくということは、これは全体の官民格差の面から申しましても、将来相当のこれはマイナス要因になって、公務員全体が損になるような一つのもとになるというようなこともあれこれ勘案いたしまして、はなはだつらいことではございますけれども、昨年報告で予告をいたしまして、そしてことしは勧告で踏み切ったということでございます。ただし、現実問題はやはりいろいろございますからして、たとえば行(二)の職員の人人であるとか、あるいはお医者さんは、これは民間においても年齢にかかわりありませんから、お医者さんと行(二)の人々だけは、これは六十歳以上ということにしまして勘案をいたしますとともに、現実問題として、やはり中途採用者の人などであまり月給が上がらないうちにとまってしまうという人などのこともあります。そういう点から、たとえば前歴計算の結果からくる在職者の調整を考えますとか、あるいはやめますときの昇給を、特別昇給を二十年以上続いた人については二号俸上げてやる、こういうふうな形でいろいろな配慮を加えながら、この際これはぜひとも断行せざるを得ないということでおるわけでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは総務長官に伺いますが、いまの御答弁を受けて、小林法務大臣が、裁判官、検察官の定年を二年延長すべきであるという考え方を明らかにされた。これはいつかの閣議であったと思います。この定年後の余命の伸びというものは相当大きいですね。人事院総裁も相当お年を召しておられるけれども、けっこう勉強され、該博な知識をたくわえられて、この大きな問題と取り組んでおられる。といたしますと、一番油の乗ったころに定年だと。また若干延びても、それは定昇の対象、その他勧告の対象からランクをつける、こういうことになっておるようでありますが、各種の統計が示しておるところによりますと、労働力不足は深刻のようであります。定年を延ばすことが私は必要な時代になってきておると思うのです。その立場から考えたときに、このたびランクを設けられたということは、このことそれ自体には合理性があったといたしましても、大局に立った、いわゆる人事体系と申しますか、そういう面から、やはりやめてもらえる人は年齢にかかわりなく、能力のない人にはやめてもらう人もあるでしょう。あまり年齢にこだわり過ぎてもよくない点もあるでしょう。それは一律にいくということでいかなければ、ほかになかなか方法がないと思いますが、全体を通じて見たときには、円熟期に入り、手腕を十二分に発揮できるときにちょん、こういう形では、私は、敬老の日なんかをつくって、老人を大切にせいなんといっても、みんな働きに出たいというのが老人の気持ちなんですね。そんな形式よりも、もっと自分たちは働かしてもらいたい、こういう切実な声のあることは、先般の敬老の日に、各紙やラジオ、テレビが一斉に老人の気持ちを代表しておることからも明らかなことだと思うのです。この際、抜本的にこの問題に取り組む御用意はございませんか。山中さん、ひとつ御所見を承りたい。
  33. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 佐藤総理も、ことしの平均寿命にぴったりの年になっておられますし、私の党には川島副総裁なんという、年齢は一体幾つだいと思うほどかくしゃくとして、かつ行動活発なる政治家もこの世に現実に存在をしておるわけであります。そのような社会環境から問題点があることは、あるいは足鹿さんの言われるとおりであるかもしれませんが、人事院勧告の内容について、私どもがそれに修正あるいは削減、追加等を加えるということになりますと、やはり人事院のせっかく置かれた独立性、あるいはまたスト権のかわりに強力な勧告権を与えられた権能というものに対して踏み込むことになります。  たとえば批判の限度であるならば、住居手当の新設は、私はまだ民間の統計からいって、早過ぎると思います。しかし、それは人事院のほうでちゃんと会社の社宅を持っておるところの企業を対象に、公務員は大体国家公務員の住宅もあることだしということで、対比された数字については実施に踏み切ってもよろしいという、そういう角度からの判断に立って結論を下されたわけでありますから、一般の民間企業全体から見てまだ過半数に達していない、そういう手当支給の状態のときに公務員が踏み切っていいかどうか、こういうことは考えられる範囲の中にあると思いますが、しかし、それも勧告をされた以上は、完全に実施をしなければならぬ。一方、高齢者の定昇延伸の問題についても、それは人事院のほうにおいて、民間と対比された場合に、民間はそのような仕組みの中で高齢者というものが、それぞれ高齢者であって、なおかつ会社並びにそれらの職場において必要とする場所において存分に能力を発揮しておられるわけで、これを強制してそういうことをしておるわけではないわけでありますから、そのような慣習というものが現実的に通念として固定をしておるという事実に対して、国家公務員だけは別である。とるものだけとればいいんだという考え方ではいけないんだという人事院の、やはり民間に素直に右へならえするほうがよろしいという考え方から、いろいろ考えられた結果打ち出されたものでありましょうから、私の立場からそれに対して、それはもっとめんどうを見てあげたらどうだとか、それは今回の勧告から実施については落としてみたいがどうだとかいう気持ちを申し上げるつもりはありませんし、そういう要らざるおせっかいはしない。むしろ皆さま方と人事院との間のやりとりというものは、いま給与担当相として耳を澄ましてよく聞いておりますから、今後あるべき姿については常時なるべく、国家、国民全体の奉仕者としての国家公務員の実態に、どのようなあり方がぴったりと合うのかという点については、不断の検討を重ねていく必要があろうと思いますが、出た結果についてはそれを尊重するということであろうと思います。
  34. 足鹿覺

    足鹿覺君 いまの長官の答弁には満足いたしません。もっと日ごろの歯切れのいい総務長官の御答弁を期待しておったのですけれども、何かきょうは少し歯切れが悪い。ただ、やりとりを耳を澄まして聞いておるといういまの一言は、無関心でもないし、非常に熱意を持っておられる、こういう意味に解して、時間もありませんし、以下長官に主として伺います。  人事院勧告は従来とも、四月の官民格差をとっているので、五月一日から実施するとしておりますが、調査時点が四月でありますから、公労協も四月実施となっておるわけでありますし、民間等の春闘もすべて四月実施でございます。非現業の公務員についてだけ五月実施というのはおかしいではないか。今度四月実施を検討するという、これは政治家としてですよ、御所見を大臣から……。
  35. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いままで政府は値切ってきた、ということばは語弊がありますが、財源上の見地から完全実施というものになれなかった。実行できなかったということが大問題として議論されておりましたから、人事院勧告の五月より実施という、五月そのものの議論についてのあまり問題点が提起されなかったことは事実であろうと思います。しかし、ことしから完全実施をするという決定方針どおり実施をいたしますので、そうすると五月からという勧告が正しいのかどうか、年度開始の四月ということがどうしていけないのか、四月にするにはどのような困難があるのか。これは財源議論を除いて、勧告の立場からそういう議論が次の段階の議論になるであろうということはわかりますが、やはり人事院の御検討というものにこまかないろいろの問題点があるようでございますので、それらを十分承りながら、私どもとしては、ちぐはぐな形で完全実施が行なわれ、一般職並びに三公社五現業等で実施時期が違うということは好ましいことであるとは考えておりません。
  36. 足鹿覺

    足鹿覺君 八月二十五日の閣議で今回の勧告の完全実施をきめられまして、人事院勧告では完全実施と、すみやかに所要の措置をとられることをうたっておりますが、従来とも八月に勧告が出て、十二月に臨時国会を開く——もっとも、われわれは早く開きなさいということをたびたび政府に、社会党、公明党、民社党、共産党、みなそういう要請をいたしておりますけれども、いろいろと政府の御都合で延べられておる。本年もまたそういう傾向が強い。そこで十二月に国会を開いて、年内ぎりぎりに差額が支給されるというのが何か恒例のようになってしまった。六月分も七月分も差額支給というのは決して私は好ましい姿と思っておりませんが、何か人事院でニンジンを前にぶらさげておいて、そうして十二月、年末まで、においだけかがせておくということは、私は政治的な、また人道的な面から言ってもあまりかんばしくないと思うのです。したがって、あとで臨時国会の早期開催の問題については御所見を伺いたいと思いますが、内払制度を、こういうふうに長引くならば、これは当然給与法定主義には反しますけれども、既定の事実でありますから、ですから法律できめなければ支給、支払いができないという法定主義の面にあまりこだわることなしに、内払い制度等を検討して、こういうふうに延びる場合は、何らか公務員のニンジン制策を少しでも是正をする、そういうふうなことが私は生きた政治ではないかと思いますが、どうですか。
  37. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 勧告を受けたら完全に実施するということが当然のことであり、その当然のことがことしその第一歩をしるすことになるわけです。完全に実施するならば、実施する時期からどんどん支給をしていくべきである、これはまた当然の次の段階の議論であろうと思います。現在の予算編成の仕組みが、一般会計予算の中において五%、残りは幾らになるか、勧告の内容が判明した後でなければわからないというので、予備費ということで対処する形式をとっておりますが、大蔵大臣とも相談しながら、完全実施の線を後退することはもう考えられませんので、そうすると大体において過去の経験値、趨勢値等を見ていきますれば、来年度予算においておおむねどの程度の財源を当初から一般財源として組み込んでおくことが必要であるか等の見通しは立つと思いますから、そういうような予算の組み方でまず対処していくことが一つ。そうしてそれに、もしそういうことが予算編成上可能になりましたならば、それを受けて、ただいま言われましたように、現在の法律では内払いはできませんが、そのようなことが可能になれば、財源上も予算に組まれておるということを踏まえた立法ということは考えられないことではないと考えておりますが、ことしはさしあたり完全実施の方針を、一つもおほめのことばはありませんが、勧告を受けたあくる週の閣議で直ちに給与担当相として、また値切るかもしれぬぞという疑惑の目を受けないように、完全実施を閣議決定いたしたということで精一ぱいでございます。これからはそういう問題を逐次煮詰めて、解決の方向に進むのが至当であろうし、どうせ食べさせるものならば、鼻先にニンジンをぶら下げてしばらく走らせるなどという調教は、今日はもう乗馬の調教でもいたしておりませんし、やはりそういうことはきちんとして、始末は始末としておくべきものだということについては同感でございます。
  38. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ、大臣のおっしゃることにも一理があります。時間もありませんし、あまりこの問題に時間を費やすことはできませんが、将来の明るい見通し等を述べられましたので、その成り行きを注視して期待したいと思います。  そこで荒木さんに一つ伺いたいのでありますが、人事院勧告の完全実施をきめた八月二十五日の閣議決定で、公務員のいわゆる定員削減も同時に閣議決定をされておりますが、公務員給与定員削減について、何かこれはいつも並列的に、コンビで出るようですね。特にことしは大幅のようですね。しかも行政機構の簡素合理化というような問題も閣議決定されております。完全実施は簡単に一言書けばそれでいいわけでありますけれども、あとは文句はほとんど合理化に終始しておるようですね。で、この問題について、完全実施と定員削減との関連を基本的にどういうふうに御認識になっておるのでありますか、お伺いしたい。
  39. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 完全実施と合理化は必然的な理論上の根拠はございません。公務員は全体の奉仕者としてベストを尽くして行政サービスの向上に努力する責任は常時持っておるわけでありますけれども、現実には必ずしもそうでないかもしれない。完全実施になるとすれば、納税者たる国民に対する気持ちからいっても、ますます奮励努力してベストを尽くすべきであろうという、公務員の一つの心がまえに期待して、さような閣議決定の文言になったわけであります。五%の定員削減ということは、総定員法の運用上の必要から生じたことでありまして、完全実施そのものとは直接の関係はございません。
  40. 足鹿覺

    足鹿覺君 このたびの定員削減計画を見ますと、非現業の一般職員については三年間に九%削減するという高率のものなんですね。これは非常に高率なものなんですね。それが妥当であるかいなかは、これは議論の分かれるところであろうと思いますが、その根拠は何ですか。
  41. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 平均五%の削減をはかるにつきましては、それぞれの職場に応じまして、九%のところもあり、八%のところもあり、五%以下のところもある、平均して五%でございますから、現業的な性格を帯びてないところは少数情鋭を文字どおり実行しようという心持ちを含めて九%に及ぶこともあるべしという想定をしているわけでございます。
  42. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういうお考えで今後運用なさったときには、行政の効率があがらないという事態が生じはいたしませんか。
  43. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 行政の効率があがらないという懸念はなかろうと思います。
  44. 足鹿覺

    足鹿覺君 思いますではなくて、その理由を。あなたの行管のほうの話を聞いてみましても、こういうふうに定員を削減されたときに、策定した行政監査能力に支障が生ずるということもいわれているんですよ。そういうことを踏まえて長官からもしかと御答弁いただきたいと思います。
  45. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現実に実行します場合には、各省庁と十分相談をして削減率をきめるのでございまして、行政効率が客観的に見て下がるというおそれがある場合は緩和する。その自信がある場合は九%、八%、七%等というような削減率を定めるという基本線に立ちまして、相談づくでやることでございますから、おしなべて申せば行政能率が下がるということはないと存じます。
  46. 足鹿覺

    足鹿覺君 押し問答になりますから、深くはまた別の機会に譲りますが、この閣議決定を見ますと、職員の配置転換も強力に推し進めることになっているようです。総定員法の審議の際も、当委員会の審議の過程において、本人の意思に反する配置転換は行なわないという附帯決議を満場一致採択いたしております。この附帯決議の趣旨にまっこうからこれは反するものだと私は言わざるを得ません。本人の意思に反する配置転換は行ないませんね。
  47. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 行ないません。
  48. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういう御決意で運用をされるということでありますならば、一応きょうはこの程度にしておきます。  今度は、せっかく自治大臣お見えになりましたので、ごく簡単に自治大臣にお伺いいたしますが、地方公務員の給与については法律上、各地方公共団体の人事委員会によって勧告がなされることになっております。また、地方公務員の給与制度については、地方公務員法第二十四条三項の規定に、「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」となっているわけであります。従来、国家公務員について給与改定が行なわれる場合は、地方公務員についてもこれに準じて給与改定が行なわれることが通例となっておりますが、地方公共団体にも人事委員会がありまして、地方公務員の給与のあり方、給与改定についてどのように積極的な機能を果たしているかというと、これは自治大臣、その個々のケースによって違いますが、自主性といい、その機能の発揮といい、そういう面から見て、必ずしも十二分とは思えないように思うんです。その実態についてどういうふうに把握され、今後どういうように御指導なさいますか、お伺いしたいと思います。
  49. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) いろいろ地方の人事委員会の働きについて御意見もございましょうけれども、御承知のように、地方公務員の給与の制度は国家公務員のそれに準ずべしという地方公務員法の規定、あるいはまた教育公務員特例法の規定、あるいはいろいろ給与の種類を法定いたしました地方自治法の規定等は、これはひとしくやはり地方の人事委員会を拘束するものでございますから、やはり地方人事委員会の勧告はこの規定によってさるべきものであって、これに明らかに違反するような勧告というものは、これはされてはならない、適正なこれらの法律の規定による地方人事委員会の勧告がされるものと、こう期待をいたしておるわけでございます。
  50. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間がありませんから肝心な点を二、三伺いたいと思いますが、地方公務員の給与改定のため、今回の勧告に基づいて、所要財源は幾らと見込んでおられますか。交付、不交付の別にお示しいただきたい。
  51. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) お尋ねの一般所要財源が約二千四百億要ると、こう計算をいたしております。そのうち交付団体分が約千八百五十億円、不交付団体分約五百五十億円と見込まれるのでありますが、本年度の場合には年度当初におきましてあらかじめ千四百億円の財源留保がなされておりますので、残り約一千億円の財源不足を生ずることになります。その一千億円のうち交付団体分は七百七十三億円、不交付団体分は二百二十七億円と見込んでおります。
  52. 足鹿覺

    足鹿覺君 昨年度の給与改定に対する財源措置としては、四十四年度分の地方交付税の特例法を制定して、借り入れ金をすることによって対処されてまいりました。しかも、あとに補正予算が組まれて、交付税九百九十五億円を増額する措置がとられたので、借り入れ金も行なわれずに措置ができております。本年度は補正予算を組まぬと大蔵省はしばしば言明をいたしておりますが、組まれるかどうかは不明でありますけれども、前年同様に借り入れ金措置が必要となるとお考えになっておりますか、どうですか。
  53. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) これは、ただいま申し上げましたとおり、七百数十億円という金額、これの財源充当措置につきまして、あるいは既定経費の節約であるとか、これももう地方財政の部分につきましてはそう余裕のあるものじゃございません。その他、まあ今後多少法人税関係の自然増等も見込まれるかもしれませんが、いまのところではこれを補充する確たる財源の見通しというものについて、しかとした見通しはつけがたい状態でございます。ですから、現状でいけばやむを得ない、理論的には借り入れをせざるを得ないということになりましょうが、まあ従来もそうでございますが、ひとつ関係方面とも今後さらに連絡、検討をいたしまして、適切な措置を講じてまいりたいと存じております。
  54. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど荒木長官にもお尋ねをいたしましたが、本人の意思に反しては強制配転等を行なわないということでございました。自治省としてもその方針は変わりはありませんか。
  55. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 変わりございません。
  56. 足鹿覺

    足鹿覺君 特にこの交付団体の所要額七百七十三億円に対して、現段階で法人関係の税の伸びを一幾らぐらいと見ておいでになりますか。
  57. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 九月決算がまだ終わっておりませんので、確たる見通しもまだつけがたい状態でございます。
  58. 足鹿覺

    足鹿覺君 無理もないことだと思いますが、閣議によりますと、国に準じて八%の節約を地方にもしいるという結果になろうと思いますが、地方行政は特に地方住民に密着しておるものが多く、期待どおりの節約がはたして可能であるかどうか疑問があると思いますが、節約額はどの程度お見込みになっておりますか。
  59. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) すでに年度当初百二十四億円の節減額を見ておるわけでありますが、ただいま足鹿先生お話しのように、地方住民に直接に接しまして、そのサービス等を期さなければならない地方行財政でございますので、国にならいまして、なるべく、できるだけ不要のものは節約いたしたいと思っておりますけれども、またお願いもいたしたいと思っておりますけれども、その額につきましてはそう多額を要望できない。とにかく住民サービスの低下を来たさないように、十分その点を注意をいたしたいと考えております。またそのようにお願いをするつもりでございます。
  60. 足鹿覺

    足鹿覺君 借り入れ金で措置をなさるという場合に、交付税の単位費用の改正が当然に必要になってくると考えます。次の国会において、臨時国会ですね。地方交付税法の改正を行なう用意がありますか。同時に山中長官にも、先ほど来保留しておりました、やはり十二月臨時国会で、この勧告実施等に必要な措置を講ぜられる方向でありますか、公式にはまだ伺っておりませんが、長官から一応見通しをこの際承りたいと思います。
  61. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 野党側からの臨時国会要求は、公害問題ということで、共産党は少し最近違った内容も含めた要求をしておられるのでありますが、いずれにしても、憲法で定めた権利による要求でございますので、これに対して政府は臨時国会をいずれ開くことになると思いますが、その臨時国会に、公害臨時国会であろうと、どうでありましょうと、給与関係法案、関連するもし予算等の必要がありますならば、大蔵とまだ補正その他については正確には詰めておりませんが、いずれにしても完全実施という約束をしたのですから、そのために必要な行為は行なわなければなりませんし、泳ぐなら泳ぐでその措置は明確にしなければなりませんから、給与関係法案を提出をいたしまして、できれば衆参両院ひどく意見が違わないならば、短時日のうちに給与だけはすみやかに上げて、支給に踏み切れるようにお願いをするつもりでおります。
  62. 足鹿覺

    足鹿覺君 自治大臣に関連して伺っておきますことは、この義務教育費国庫負担分の問題でありますが、これはたてまえがちょっと普通の地方公務員とは違いますので、これに対する補正のお見込みはどのくらいであり、そのお手当は万遺憾なきを期しておられると思いますが、いかがでありますか、その見通しはどうですか。
  63. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) お尋ねの財源所要額は約五百億円と見込んでおります。もちろん国の部分は別にございますけれども、地方公共団体に課ぜられたのは五百億円、これにつきましては、また一般地方公務員と同様の処置をとりまして、人事委員会の勧告に完全実施の趣旨で処置をいたしたいと存じております。
  64. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に大蔵省にお尋ねをして私の質疑を終わりますが、本年の人事院勧告に伴いまして一般会計、特別会計別にその所要額はどれくらいですか、政府としてそれをどう具体的に処理されるか、昨年と同様に補正予算を組むのか、既定経費でまかなうつもりなのか、どういう方途で完全実施をいたされるのか、新聞、会議録等によりますと、大体正確な数字に近いものが一応出ておりますが、総合予算主義は私はくずれておると思う。食管会計に伴う米改良奨励金二百三十八億円、休耕奨励金追加三百三十億円、災害百億円、計六百六十八億円であって、既定の経費として必要である。したがって、六百六十八億円を差し引けば四百二十二億円しかない。そうすると、所要措置というものは、補正を組まなければやれない。補正を組まざるを得ないこととなる。そうなれば総合予算は完全にくずれた結果になるのでありますが、あくまでも総合予算主義を堅持するという立場から補正予算を組むか組まぬか、大蔵大臣にかわって責任のある御答弁をお願いいたしたい。
  65. 橋口收

    説明員(橋口收君) 人事院勧告の実施に伴い必要とされる追加財政需要の金額でございますが、一般会計は約千八百八十億円でございます。特別会計は約四百二十億円でございます。合計いたしますと約二千三百億円ということになるわけでございます。昭和四十五年度予算に所管別、組織別給与改善費として約五%の金額を計上いたしておるわけでございます。したがいまして、当初予算に計上いたしました給与改善費を引きまして、実際に今後必要となる額といたしましては、一般会計が約千二百四十億円、特別会計が約二百七十五億円でございます。両者合計いたしますと、約千五百十五億円が追加財政需要額になるわけでございます。  お尋ねのございました総合予算の考え方でございますが、これは足鹿先生よく御承知のように、昭和四十三年度にいわゆる財政硬直化打開の有力な政策手段として、総合予算のものの考え方を強く財政当局から打ち出したわけでございます。総合予算主義の考え方は、これも御承知のように、予算編成時点におきまして、当該年度に予想される需要項目及び金額を洗い出しまして、それに対して適正な優先順位を付与し、財源を配分する。さらにそれに必要な財源につきましても調達を行なうというのがいわゆる総合予算の考え方でございます。よく考えてみますと、この考え方は、予算編成の基本的な考え方でございまして、昭和四十三年度以降こういう考え方に基づいて予算の編成並びに財政の運営をやっておるわけでございますが、この考え方は現時点においても依然として強く堅持すべきものというふうに考えております。  お尋ねのございました人事院勧告を完全に実施するために新たに追加財政需要額が必要になるわけでございますが、さらにそのほかに災害関係費あるいは米価決定の際の各種措置に伴う経費等もあるわけでございます。こういう必要とされる追加財政需要額はかなり大きな額にのぼっておりますこと等も考えまして、去る八月二十五日に人事院勧告完全実施の閣議決定をおきめいただきますときに、あわせて本年度の予算につきましても、前例のないような高率の節約額の率をきめていただいたわけでございます。これも御承知のように、行政経費につきまして八%という節約の率を各省協力して現在折衝しておるわけでございます。この節約額はどの程度の金額になるか。それからまた、七兆九千億の大きな予算の執行過程におきまして、ある程度の不用額が生じてまいるわけでございます。それらを勘案いたしまして、財源措置につきまして十分検討した上で結論を出したいというのが、現在の財政当局の検討の実情でございます。
  66. 足鹿覺

    足鹿覺君 四十四年度に初めて七月実施分として五%を組み、それが四百四十三億円あらかじめ当初予算に組んだ。さらに本年度一歩前進して、五月実施五%、全体として六百四十五億円を当初予算に計上した。ということになりますと、五月実施の一二・六七%の勧告が出ると、五%ではとてもまかない切れないではないか。これはもう自明だろうと思うのです。先般八月十七日、山中総務長官が衆議院の内閣委員会で述べられた数字は省略いたしますが、会議録をごらんなさい。ということになりますと、いまはっきりした御答弁がございませんが、従来の総合予算主義というものは財政硬直化に対する一つの対策として考えられたことは事実でありますが、あれは米価を押え、食管会計をいかにして押えるかという一つの道具に使われたことはまごうかたない事実であります。そういう解釈もあったわけでありますが、きょうはあまりその点には触れません。大蔵省は今後給与改善費をどう当初予算に組んでいくつもりか、今後の予算編成の方針が聞きたい。先ほどの山中総務長官の答弁を受けて、お聞きになったとおりでありますが、編成方針を承りたい。
  67. 橋口收

    説明員(橋口收君) 先ほど山中総務長官からお答えがあったとおりでございますので、財政当局として特に国務大臣の御発言に付加して申し上げることはないわけでありますが、ただ五%という金額を計上いたしておりますのは、これも先生よく御承知のとおりに、法律の規定によりまして、五%以上給与改定するという必要が生じた場合に、初めて人事院勧告という措置が発動されるわけであります。したがいまして、財政法定主義の見地から申しまして、どの程度の金額を予算に計上するかということにつきましては、相当慎重な配慮を必要とするわけであります。したがいまして、現在の時点におきましては、五%という率を一つの基準として予算を計上しておるわけでありますが、先ほど総務長官等のお話がございましたので、さらによく検討いたしてみたいというように考えております。
  68. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に、公務員給与の改善を予備費で支弁するということは私は間違いだと思う。お認めになりますね。来年度からそういうことはおやりにならないでしょうね。そういう御覚悟があって、山中総務長官の方針を尊重していくんだ、こういう御趣旨に解しましたが、要するに予知すべからざる支出をまかなうための予備費がある。それをあらかじめ予備費に計上しておく。これは憲法上、財政法上重大な疑義が私はあると思います。なぜなれば、給与改善費という重要な経費は当然に補正予算として、それが組みかえであると、追加予算であろうと、これが国会の議決を経べき条項であるにもかかわらず、いわゆる予備費で逃げる、あるいは定員削減でまかなう、あるいは、あらかじめ相当額の経費を必要以上に組んでおいて、ジェスチャーとして経費を節減したという、国民に対する言うならばいい顔をしておる、これだけ節減をいたしましたとね。こういういわゆるジェスチャーだけを使うということは、国会の議決を避けようとする一つの欺瞞的意図もあると言われても私は弁明の余地はなかろうと思います。したがって、いかなる形をとろう、とも、国会の議決を経るようなそういう態勢に今後方針を立てられるかどうか、この点を明らかにしていただきたい。この五%の問題にしましても、根拠は明らかでありません。経済企画庁が経済の伸び率を五%程度に押えたい、物価の上昇も押えたい、こういうことから大体五%に押えた。しかし、事実は逆行して、その意図に反して、伸び率も大きく上回るし、物価の上昇に政府みずからが拍車をかける。こういう結果が出てきておるわけでありまして、問題は人事院勧告を、この完全実施のために節約だとか、あるいは必要以下の経費を頭で見込むとかといったようなことは、私は好ましくないと思います。昨年は既定経費の削減が五%で、驚くなかれ三百八十二億九千四百万円からの既定経費の削減を行なっておる。国民の側から見れば、いわゆる血税を四百億近くも削る余地が国の財政面にはあるのか。大蔵省はどっかへ隠し財源を持っておるのではないか、そういう疑惑を勢い持たざるを得ない。今日きびしい世論の前にさらされておるいろいろな問題についても、財源難に藉口して、公害対策といい、すべての問題が停とんしておるのに、既定経費の削減が人件費の件については四百億近いものが出てくる。どうも私どもには納得がいかない。今度八%ということになりますと、これは相当大きなものになってくると思います。こういう点は矛盾をきわめたいまの予算編成あるいは執行上に私は非常に表と裏があるように思います。自今、さっきの山中長官の、来年度より完全実施に踏み切る線においてすっきりとした予算編成方針を樹立されることを要望いたしたいが、大臣の御答弁されたことに対してこれにとやかく言わない、こういうことでありますが、それは大蔵省全体としてのそういうお考えと解してよろしいですね。
  69. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の発言を前提にしてのお話でありますが、私は、来年度の予算の編成にあたってはということを申し上げたのであります。財政法上から、予算編成する際にそういう原則を打ち立てるべきだということについて断言したつもりはありません。というのは、いつ世界的に、もしくはわが日本にデフレが襲ってくるかもわからないわけでありますから、そういう状態のときでも、不必要なものであっても、やはり前年度と同額ぐらいのものは予算に計上しておかなければならないかということは問題だと思います。やはり民間給与というものを反映させるいまの方式をとっている間は、われわれはデフレの状態に対してもあり得るんだということを考えてやりませんと、財政法のそれが原則である予算編成の定められた指針であるという形には、ちょっといまここで将来長い展望にわたっての断言はできかねる。来年度予算編成にあたって、いままでのようなむだな、あるいは完全実施をことしからやろうとすれば、すぐには支給できないという状態を何とか改める方法があるかどうか、相談をしようと申し上げておるわけでありますから、そこのところは御理解の上、大蔵省に対してもそのつもりの答弁をさしてもらうようにしていただきたいと思います。
  70. 橋口收

    説明員(橋口收君) 総務長官からお答えがあったわけでございますが、私どもといたしまして、給与改善費としてどの程度の額を、あるいはどの程度の率を計上するかということは、予算編成上の一つの大きな問題でございます。先ほどまあ事務的な立場からお答えをいたしたわけでございますが、やはり現在の制度のワク組みの範囲内で経費を計上いたしますと、やはり行政運用の原則に立脚して約五%程度の給与改定費を計上するか、あるいはそれをこえるものが予想される場合には、やはり現在の財政法上の許された手段としての予備費にこれを計上するというのが、一番穏当な方法ではないかということで、昭和四十三年度以降、いわば両者の方法を併用して今日に至っておるわけでございます。先ほど総務長官からお答えございましたように、このくらい大きな問題でございますから、われわれ財政当局といたしましてもよく勉強してみたい。ただ、いまの時点におきましてどういう方法がいいか、あるいはこういう方法をとったら一番無理がなく処理ができるのではないかという案を、まだ持つまでに至っておらないのであります。  それから、先ほどお尋ねございました予算の執行の過程において過大の節約なり、あるいは不用額が発生しているのではないかというお尋ねでございましたが、節約額は昭和四十四年度で申しますと百十億円でございます。つまり大蔵省と各省とが折衝をいたしまして、既定予算の範囲の中で無理をすれば節約できる金額がどのくらいかということで、いわば両者協力をして発見した金額が約百億ちょっとございます。それが、いま先生おっしゃいました総計四百億に近いという金額は不用額でございます。で、不用額が約二百七十億程度あるわけでございますが、これは先ほどお答えいたしましたように、七兆九千億のいわば世帯でございますので、予算の執行過程におきまして、たとえば予定していた法律が成立しないために不用な金額が発生するとか、あるいは大きな事情の変化によって不用額が生ずるということがあり得るわけでございます。従来はそういうものにつきましても、年度の経過とともに不用額として処理をいたしておったわけでございますが、最近のように高率の人事院勧告を処理するためには、そういういわば不用額についても洗いざらい、どの程度あるかということを、いわばこれまた発見をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう観点から申しまして、四十四年度にしますと約三百八十億の金額が給与費その他の緊要とされる財源に充当することができたということでございます。したがいまして、当初予算におきまして漫然とした計上あるいは査定をいたしておる、そういうことでこういう金額が生じたことではないということは十分御理解をいただきたいと思うのでございます。
  71. 足鹿覺

    足鹿覺君 総合予算なり、臨時国会の問題、その他、多々いま述べられたことに対する数字上の反論の資料もたくさんありますが、他の同僚委員の質疑の時間も迫ってきておりますし、きょうはこの程度で打ち切っておきますが、ただ要望として委員長に申し上げておきますが、このような重大な問題の際に大蔵大臣、ないしはこれにかわる次官、あるいは主計局長等、当然出席されるべきものである、われわれはかように理解をいたします。今後そういうふうにお取り計らいを願うことを強く要望いたしまして、きょうの質問は打ち切ります。
  72. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  73. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をつけて。
  74. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 人事院総裁にまずお尋ねをしたいのですが、何か総裁のほうで配置転換手当みたいなものを考えておられるという話があるわけですね。そういう配置転換手当というようなものを総裁としてお考えになっておられるのかどうか、それをまずお尋ねしたいのです。
  75. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) たいへん御心配をおかけしたようなことで申しわけないのでございますが、これは、たしか九月七日の新聞の記事にそういうことが出ておったと思うのでございます。実際にありのままに申し上げますと、いろいろな記者の諸君との雑談の途中で、たとえば今度の勧告で、御承知の特地勤務手当というものがありまして、生活不便な地に赴任する人には特地手当をやる、見舞金ということばは使っておりませんが、こういうことは、そういうアイデアは、いわゆる配置転換の場合なんかに使えるというふうなひらめきを口走ったことは事実でございます。あれほどはでな記事になるとは夢にも思わなかったので、給与局長自身が、総裁、あれは何ですかとかけつけてきたというのが事実なんです。しかし問題としては、それは昨今の問題かどうか知りませんけれども、抽象的に理論上の問題として考えれば、それは成り立ち得る一つのひらめきなんです。それ自体は間違っておらないと思いますけれども、そういうことで口走ったことが非常にはでに取り上げられた、それだけのことでございます。別段それを私が研究しろと命じたことも、まだやっておりません。
  76. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そういう配置転換手当というようなものが、いま総裁のお話を聞いておりますと、どうも成り立ち得るんだというお話のようですし、あるいはこれからそういうものを考えることだってあるんだというように受け取るのですけれども、そういうふうにお考えですか。
  77. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 新聞記事に出ました一つの取り柄としては、そういう不用意なことではありますけれども、そういうアイデアについて、ちょっと、たまたまお話にありましたけれども、あれは間違っているぞという御批判も出るこれは一つのきっかけになるわけでございます。われわれは全く虚心たんかいに提起した話の種であるにとどまりますけれども、そういう芽ばえはこの際押えたほうがいいぞという御批判もあるかもしれない。アドバルーンのつもりで上げたわけじゃありませんけれども、まあそれが一つの取り柄であるであろうと思います。したがって、この際御批判がありましたらとくと聞かしていただきたい。
  78. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私が念を押して聞きますのは、総裁は、今後そういうことを何かお考えになっていかれるというお気持ちなのかどうか、そういうことをなすっていかれるつもりなのかどうか、それを伺いたい。
  79. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先ほど申しましたように特地の赴任の手当ということからのアナロジーとしてひらめいただけのことであって、まあ考えようか考えまいか、ここでひとつ痛棒を食らわしていただけば、そういうことは夢にも考えまいということになるかもしれません。そういう御批判を願いたいと思います。
  80. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行政管理庁長官にお尋ねしたいのですが、今度の八月二十五日の閣議決定、あの閣議決定の中に九%を目途にして削減すると、全体としまして三年間に五%を上回る削減を行なうと、「この実施に際し、省庁を通ずる職員の配置転換を強力に行なう。」この「省庁を通ずる職員の配置転換を強力に行なう。」ということは、これは省と省との間の配置転換を強力に行なうというふうにとれるのですけれども、そうですが。
  81. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そういうことにも手を染めてみたいということであります。
  82. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、この文面から見ますと、そのようには受け取れない。そういうことにも手を染めてみようというふうには受け取れないように思うのですがね。「省庁を通ずる職員の配置転換を強力に行なう。」——そうですね、いま荒木長官のおっしゃるようにはどうもとれないのですがね。相当ここに省庁間の配置転換を強力に行なうと、そこへ削減の今度の何かねらいがあるように受け取れるのです。そうじやございませんですか。
  83. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ねらいがあるといえばございます。いままで省庁間の配置転換というのは事実上ほとんど行なっておりません。ところが総定員法の有効な運用を期する上からは、省庁間の配置転換も可能な限りやることが妥当である、それについては強力にどうでもゼスチュアを示さなければ言うことを聞かぬだろうという含みでございます。あくまでも相談ずくのことでありまして、従来と事変わって、強力に推進するということでもって各省庁覚悟のほどをまあいわば示したというふうな含みでございまして、強制配置転換などとは関係のないことでございます。
  84. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま大臣の御答弁で理解できるような気もするのですけれどもね。人事院総裁が、先ほど私お尋ねしましたように、配置転換手当というようなことを、まあ何といいますか、ひらめいたといいますか、つぶやいたより、もっとでかいです、つぶやいたでなくて、ひらめいたということになると。八月二十五日の閣議でこういうふうに省庁間の配置転換を強力に進めるという決定があって、そして九月の七日ですか、八日ですか、人事院総裁がひらめいたというのでは、どうも合い過ぎているという気がするのですけれども。何かそのときの話では、人事院総裁は近く行政管理庁長官とお話し合いになるということになっておるのでしょう。ますますそのウマが合うわけですね、これは。これはそういう相談をなさったのですか、総裁は行政管理庁長官に。長官はお受けになりましたですか。
  85. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 人事院総裁とは相談はいたしておりません。いたしておりませんが、くしくも人事院総裁からそういう感触のある御発言があったとすれば、待ってましたという気持ちはあります。何にせよ、省庁間の配置転換となりますれば、原則として、なれない職場に移り変わるわけですから、移り変わるための準備なり、あるいは特別の手当なりというものがあったらばやりやすいだろうということは、かねがね私の念頭にありましたことで、人事院総裁が正式におっしゃったかどうかわかりませんけれども、さっき申したように、待ってましたという気持ちもわく次第でございます。
  86. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ総裁、そうなるとこれは容易ならない問題ですね、それで調子合わせておられるのですか、いや、もちろんそうなりますよ、行政管理庁長官。  そこで、その上にもう一つお尋ねします。そういうふうに省庁間の配置転換に、まあ配置転換なんですから、どこでも配置転換なんだろうと思うのですけれども、いまの荒木長官の話ですと、省庁間の配置転換について、そういうものがあれば便利だという、あるいは都合がいいというお話ですね。そういうところまで具体的に考えていらっしゃるのですか。人事院総裁はどうもさっきはひらめきのような話だし、ひらめきなんだから——どうもこっちは待ってましたというような形、受けとめているような形ですね。もう少しはっきりしてもらえませんかね。
  87. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 気脈を通じてひらめくということは概念上あり得ないことでございまして、ひらめきはあくまでひらめきで御了承願いたいと思います。  しかし、いま待ってましたという表現がございましたのですが、これはもうなるほどそういうお気持ちもあり得るなと思います、それは率直に言って。しかし、それはだめだよというお気持ちがおありなら、ここでこてんこてんにひとつ追及をしていただきたいと、こう思います。
  88. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総裁にだめだとか何とかという問題じゃない。給与上の問題ですから、総裁はこれからそういう方向でいくのですか、どうですか。ひらめきだけではおさまりませんよ、これは。問題が問題なんですから、ひらめきだけではもうすぐそこに、横っちょにすわっている行政管理庁長官も待ってましたということが出てくる。それぐらいのことは考えて言っておられるに違いないと思う。問題は、それはそうでしょう、時が時なんですから。単にひらめきだけじゃこれはだませませんね。これは重大な問題ですよ。ですからそういうことをお考えになるのかどうなのか。  それからひらめきで終わっちまったのか、花火線香みたいに。あなたがお考えにならなければこっちが考えるわけがない、給与上の問題ですから。そこのところです、あなたの考えを聞きたい。
  89. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) ひらめいたままになっておりまして、その後別に取り立てて、先ほど申しましたように、給与局長に研究してくれと言ったこともございませんし、これはそのままでいまのところは終わっている。しかし、出た以上は、いまの鶴園委員のおことばのように、いろいろこれは御意見もあるだろうと思います。ですから、したがってそういう御意見は承っておいて、将来ひらめきが芽ばえることはいいか悪いかという問題はそれはありましょう。私はいまのところこれを成長させていこうと、育てていこうとは夢にも思っておりません。そういう意味できわめて軽くおとりをいただいてけっこうでございます。
  90. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 わかりました。どうも荒木長官待ちぼうけのようですけれども、そのほうはいいです、長官。  そこで、この省庁を通ずる配置転換を強力に進めていくについて何か具体的にお考えですか、進めておられますか。
  91. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 具体的には準備を進めておりません。ただ連想しますことは、常識的なことですけれども、何かしらん新しい職場に転換するについて、転換しやすいような一種の職業訓練的なことができれば都合がいいがなということは連想しておりますけれども、まだ準備はいたしておりません。
  92. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 国家行政組織法の改正がずっと進んでおるんじゃないかと推定をしますけれども、この間の長官の御答弁では、次の通常国会に国家行政組織法の改正をお出しになりたいというお考えのようだったんですけれども、しかし、次の通常国会は御承知のような国会であって、なかなか審議日数等について問題があるのじゃないかという気がするのですけれども、お出しになりますか。これは非常に大きな法案でして、慎重に審議する必要があるのではないかと私どもは考えておるわけですけれども、お出しになるつもりなのかどうか、そういうつもりでお進めになっておるのかどうか。
  93. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お説のとおりでございますが、現在のところ、通常国会に提案するつもりで慎重に検討を進めておる段階でございます。
  94. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行政監理委員会ですね、この行政監理委員会について、これを行政委員会みたいにするような検討も行なわれているのですか。いまの監察局を廃止して、そしていまの行政監理委員会を行政委員会みたいにして、そこを事務局にする。地方の管区監察局というようなものを地方の出先機関とするというようなことが行政管理庁の中で検討されているわけですか。
  95. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 検討しておりません。
  96. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この間出た文章の中にそういうものが出ておるものですから、こういう意見が行政管理庁の中に一部あって、そうしてこういうような意見が表向きに公式に出たのではないかというような感じがしたものですから申し上げておるのですが、行政監理委員会というのは、私この間問題にしたのですけれども、どういう性格のものでしょうかね。これは諮問委員会なんですか、それともどういう性格のものなのか、これは一ぺん総理府総務長官にもひとつ御検討いただきたいと思うのですけれども、一体行政監理委員会というものの性格ですね、どういうものなんですか、それをひとつ……。それでこれは常勤の委員がおるんですね。一体常勤委員というのはどういう定義をするのか、これは人事院の所管かもしれませんですね。常勤の職員、どういう定義をされるのか。その点はどういう委員会なんですか、性格ですね。
  97. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 監理委員会の性格は、諮問に応ずる機関でございます。と同時に、意見を述べることができるという機能も与えられておる委員会でございます。常勤でありますことは、週一回定例の監理委員会を開いておりますが、そのほかに、監理委員の方々が行政管理庁長官に意見を述べることもできますし、のみならず、行政監理委員会に常時仕事をしていただくような性格の仕事も担当していただいておるわけでございます。そこで常勤になっておることかと思いますが、なお詳しくは政府委員から補足さしていただきます。
  98. 浅古迪

    説明員(浅古迪君) お答えいたします。  行政監理委員会委員は、通常は週一回総会ということをもちまして集まってもらっておるわけでございますが、そのほか、行政改革委員側の意見、こういうものも時に応じて考えていただくと、こういうようなこともやっておるわけでございまして、そういうことになりますと、週一回会合しているからという、そのときだけが活動という形でもないわけでございまして、そういう重要なことをお願いいたしておりますので、常勤の形で任命になっているわけでございます。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、この文章を見ますと、行政監理委員会というのはさっぱり動いておらぬということになるわけですね。何をやっておるかということになるわけですね。私は、いま荒木長官が御答弁になりましたように、諮問なり、あるいは意見を述べるというものでありますれば、そうしていまの監理委員会の模様等を見ていますと、これは諮問委員会にしてしまったらどうだろう、名実ともに諮問委員会にしたらどうか。何か監理委員会、妙ですよ、これ、行政組織しては……。私はそういう気がするのです。たいして動いていないじゃないですか。そして、しかも週に一回とか、あるいは諮問に応ずるとか、あるいは意見を述べるということになると、これは審議会でいいのじゃないですか。文字どおり審議会になさったらどうですか。それとも行政委員会みたいにされるのか。何か妙な機構に、この行政監理委員会の印象を受けるのですけれども、もう一ぺん事務当局の方のお考えを聞きたい。
  100. 浅古迪

    説明員(浅古迪君) お答えいたします。  御質問の趣旨は名称の点かと思いますが、行政監理委員会の性格そのものは諮問委員会でございます。名称がどうかという御質問だと思いますが、行政監理委員会は、先ほども申し上げましたように、重要な事項について行政管理庁の長官に意見を述べたり、または行政管理庁長官を通じて内閣総理大臣に意見を述べることができる、そういうような非常に大切な任務を持っているわけでございまして、かねてほかの同じような性格の会にも同じような名称を使っておる場合もございまして、必ずしも行政監理委員会の名称が不適当とは考えていない次第でございます。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は名称を言っているのでなくて、名実ともに審議会になさったらどうかと思う。いままでもずっと行政管理庁には行政審議会というような名称がありましたので、そういうふうになさったらどうか。何か審議会になっているけれども、中身は審議会ではないのじゃないか。常勤の者がおって、審議会じゃないのじゃないか。もっと詰めれば、常勤になるのかどうかということもお聞きしたい。しかしそれは別にして、審議会にしたらどうか。名実ともに審議会にしたらどうかということを私は考えているわけです。これは前回も荒木長官に御質問したところです。その点も検討願いたいのです。長官、いかがですか。これは本格的に論議しなければならない。一ぺんこの行政監理委員会というものは検討してもらいたい。長官いかがです。
  102. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) この前の御質問に対してお答えしたことと同じことを申し上げますが、行政管理庁長官委員長であるということのために、各委員と必ずしも意見が常時一致するわけけではない。したがって、意見が違う場合は、委員長を抜きにした委員の方々が意見を発表されるということがお目ざわりであっての御質問かと思いますが、それはそれなりに相当示唆に富む意見が発表されることだから、現実問題としては尊重しておりますとお答え申し上げました。そこで委員長を兼ねておることが適当でないならば、純然たる諮問機関にして、諮問に応じた答申が執行部の長である私の意見と違うところがあっても、意見が一致したような点だけをより食いして採用するという、取捨選択の余地がある制度になろうかと思いますから、そういう意味においては検討するに値する、検討したいと思いますということをお答えをしたと思いますが、それと同じお答えを以上申し上げてお答えにかえたいと思います。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは長官が会長であるとかいう審議会だってあり得るわけです。それはかまわないです。ですけれども、検討されるということでありますから、この問題はこれで終わります。  それから、人事院総裁にお尋ねをしたいのですけれども、学校の教職員超過勤務手当について、何か人事院として最近結論を出されるという話が出ていますね。これは三十九年の人事院の勧告のときは、学校教職員について超過勤務手当というものを認める必要があるのではないかという勧告を私は見ておるんですが、今度なさろうとするのはそれとは違うものが出るわけですか。どういうことをお考えになっているのかお尋ねいたします。
  104. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) いま御指摘の昭和三十九年の報告書にうたいましたことは、主として問題点の指摘という形にはしましたけれども、しかしこれには両面が——とにかく超過勤務手当の制度というものがいまあるんだから、これがある以上、正規の居残り命令によって勤務した人には超過勤務手当を支給するのがあたりまえだということが一つ柱になっております。一方、第二の柱としては、教員の人々の勤務の特殊性ということもあろう。したがって、その給与制度については抜本的に検討する必要もあろう。二本立てでいっておるわけです。したがいまして、わがほうとしては、この抜本的の方面を考えればどういうふうな方法があるかということは、みずから宿題をそこで明らかにし、みずから勉強して今日まできておるわけです。したがいまして、いざというときにはそのほうのあるいは対案も考えて、われわれとしては勧告その他の措置をとらずばなるまいという気がまえでずっと勉強してきておるわけです。それがたまたまけさの新聞−新聞ばかりお出しになりますが、けさの新聞に私の写真入りで出ておりますけれども、それは私がしゃべったことではありません。それは従来の問題点として当然常識的に指摘できる点を記者の方がお並べになったというふうに考えてけっこうでございます。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 具体的に超勤はどういうふうになさるおつもりですか。それから、いまの俸給の体係についてなにか特殊なことを考えておられるということですが、具体的にはどういうことをお考えですか。
  106. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 先年文部省から実はこの措置についての法案が提出されました。その御審議の場にも私は立ち合って、いろいろ御議論を拝聴したわけであります。しかし、それが今日実現しないままにきております。そういうときの原案、あるいはまたそれをめぐってのいろいろの御論議というものも心に置きながら、けさの新聞に出ているような点は、ポイントとしてはまさに当然検討すべきポイントだと思いますということをめぐって、目下勉強しておるというわけでございます。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ勉強中なら申し上げたいのですが、これは学校教職員の俸給体系についていろいろ御検討になる、これはいまの俸給体系は不備ですから、いろいろ御検討になるということはわかります。ぜひしてもらいたい。しかし、それとは別に、超過勤務手当という制度、これは公務員を通じて存在している制度です。これを何かからめてお考えになるというのは、人事院としては受け取れない。これをやるから、超過勤務手当制度は非常に薄れますよ、意味のないものにしますよというような考え方は、人事院としてはとるべきじゃないと思う。俸給体系は教職員にふさわしい俸給体系にする、公務員を通じて存在している超過勤務手当についてはそのものとして考えるというふうにしていただかないと、私はまずいのじゃないか。どうも受け取りますと、両方とも言いながら、からみ合わせておやりになるようなふうにとれるんですけれども、その点の基本的な考え方はどうお考えですか。
  108. 佐藤達夫

    説明員佐藤達夫君) 昭和三十九年の報告で指摘したその第二の柱に当たる部分は、教員の方々の仕事の実態からいって、普通の行政職のように、そのものずばり完全に超過勤務手当制度に一体なじむものかどうか、そう言い切れないんじゃないかということが一つの基盤になっているわけです。そこから発想が及んで、この基本的な給与体系をどうするかという方向へ持っていくわけでありまして、したがって、現在御承知のように超過勤務手当制度のない職種、裁判官にせよ検察官にせよ、そういうものがたくさんほかにあるわけです。そういうものがどういうわけで超過勤務手当がないのか、そのかわり、しかし俸給は手厚くなっているんじゃないかということなどもにらみ合わせながら、やはりそういう点にもポイントを置きながら勉強すべきことだと思う、その気持ちは持っておるわけです。
  109. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。     —————————————
  110. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 公害行政の改革問題に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。
  111. 峯山昭範

    峯山昭範君 総務長官、時間ないそうですので、総務長官に対する質問を先に集中して進めます。  実は、この内閣委員会でも公害の問題につきましてはたびたび取り上げてまいりました。実は私は特にきょうはその焦点だけしぼって申し上げたいと思うんですが、特にこの公害行政の中でも、公害行政のいわゆる一元化といいますか、そのいろんな面ですね、それを一元化するようにということは、たびたび私たちこの委員会で言ってまいりました。そのたびに政府の答弁としましては、すなわち総理を長にした公害対策会議があるということをたびたび私たち答弁を聞いてまいりました。この点については私も実は議事録等を調べてみますと、確かにその公害対策基本法に基づいて、総理を長として関係機関の長で構成した公害防止に関する基本的な施策の企画、審議、施策の推進を所掌する公害対策に関する最高機関である、こういうぐあいに答弁をいただいております。そういうふうな意味でこの公害という問題を取り上げておられましたし、また、私たちもさような目で見ておりました。今回また新たに公害対策本部ができたということ自体、これは行政改革という面から見ると——私はこういうことを言っても、公害対策そのものについて非協力的ということじゃなくて、やはり公害対策を実質的に推進していくという面で私はきょうは言いたいのでありますが、この二つの組織ができたいわれといいますか、どうしてこういうようなことになったのか、この点について総務長官の見解を初めにお伺いしたいと思います。
  112. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害対策会議のほうは、大きなものを最終的に答申あるいは法律としてきめまする際、それにかけてきめるわけでありますが、その前にやはり国民の声として、公害対策が各省庁で熱心ではあるがばらばらの感を国民に与えているのではないか、あるいはその打つ手が各省ばらばらであることの反映として、後手後手に回っておるきらいがあるのではないか。すなわち対策会議にかける前に主導的に処置すべきことがなされていないのではないかというような批判等もありましたし、また、中央、地方の権限の所在のあり方等についても議論がございましたから、とりあえずは緊急な機能を持つ機関として、総理を長とする公害対策本部を発足させまして、ここで煮詰めまして、次の臨時国会に提案いたしまする基本法から始まる一連の二十をこえる法律を全部仕上げましたならば、公害対策会議にかけて、政府の基本的な方針として決定をして国会に提出をするという手段をとろうと思います。したがって、これは屋上屋でも屋内屋でもなくて、いまの公害対策会議、開いてはおりますが、その前に処理すべき機能というものが一元的に集約された、常時動く機能がないということを考えましてつくったのが公害対策本部であるというふうに御理解願いたいと思います。
  113. 峯山昭範

    峯山昭範君 実は私たちはいま長官がおっしゃったようなことを申し上げて、一元化されてないんじゃないか、もっとちゃんと強力に推進すべきじゃないか、要するに、たとえばいまの公害対策会議というものを、そのもとに事務局なり何なりつくって強化すべきじゃないか、こう申し上げてきているわけです。ところが、いま長官がおっしゃったように——長官のいまおっしゃったことはよくわかるわけです。——そういうことを私たちが言ってきたわけですね。にもかかわらず、そのことについては何ら処置をしないで、新たに対策本部をつくったということ自体は、長官が屋上屋を重ねることにはならないとおっしゃいましたけれども、私たちの目から見ると、確かにそういうふうに屋上屋を重ねるということになるんじゃないか、そういうぐあいに考えられるわけです。こういう点も考えて、どうかこれから公害の面について敏速かつ強力に推進をしてもらいたいと、こういうぐあいに思っております。  そこで、もう少し突っ込んで私は話を聞きたいのでありますが、公害対策会議というのは現在どういうぐあいに開かれておりますか、ことしは何回開かれましたですか。
  114. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 本年に入りまして、四十五年二月の八日、四十五年四月の二十一日、同じく五月の十二日、同じく九月の一日というふうに、合計四回開いております。
  115. 峯山昭範

    峯山昭範君 公害対策基本法の第十九条に基づいたいわゆる公害の問題、いま全国民的な問題になっておりますし、全国的にいろんな問題が上がっております。そこで当然私はこの公害対策会議でも、十九条でいうところのいわゆる公害に対する施策というものは当然ここで取り上げられて、そして審議し、または各都道府県に指示をすべきであると思うのですが、ことしになって四回開かれた議題の中で、各都道府県にどういうぐあいに指示をされたか、この点どうですか。
  116. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 二月は一酸化炭素の環境基準の設定、四月が水質の環境基準の設定、五月が公害白書の決定、九月の一日が水質環境基準の当てはめについて四十九水域を定めたということでありますが、御質問と少し離れるかもしれませんが、その間隙を縫いましていま総ざらいをしておるために、そのつど議題によって関係閣僚の数あるいは役所が違いますが、関係閣僚会議を随時持っておりますけれども、今日まで五回にわたって——関係閣僚会議を八月の四日から始まって五回でございますから、大体隔週一回もしくは三週間に二回というようなことでひん。はんに開いて、公害対策会議に政治の基本姿勢としての公害のあり方についての諮問案と申しますか、かける案、議案をいま作成のために全力をあげているところでございます。
  117. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は公害対策基本法に基づいたと言いましたけれども、そういうようなものが議題になって取り上げられているとすれば、私は特に一つ申し上げたいのでありますが、具体的にあとで名前出しますけれども、いずれにしましても、公害対策本部としては、現在公害が発生しておりまして、その公害を防止するということが非常に大きな問題でありますけれども、現実にこれは悪臭の問題でありますが、具体的に一つ申し上げます。  悪臭の問題でありますが、自分たちが悪臭を出しておる、そのためにまわりの人たちに非常に迷惑をかけている、そのために私たちは悪臭をなくするために何とかしたいということを地元の人たちは考えて、そしていろいろ装置をつくるために何億というお金を出して、自分の家、財産等も売って、そして悪臭防止の設備をつくるためにそれを公害防止事業団にお願いした。ところが公害防止事業団はそれを一生懸命やったけれども、うまくいかなかったというんですね。そのために非常に迷惑をこうむっている。それで地元の人たちは、悪臭をなくするために立ち上がった人たちですから、公害対策本部としては、そういう人たちをうんと応援してやらなければいけない立場にあるわけですね。ところが、現実の面としては、いわゆるその公害防止事業団に全幅の信頼を置いてお願いしたその装置が失敗したために、地元の人たちは非常に苦しんでいる、こういうふうな事例があるわけです。  こういうふうな面から考えてみても——まとめてきょうは申し上げますが、一つは、その公害防止事業団の体制というものがあまりにも弱体なんじゃないか。現実に私も職員等を調べてみましたが、内容的にも非常に弱体だと思うのです。何となく私は殿様商売じゃないか、こういうふうに思う点があります。この点まず何とかしてほしいという要望が非常に強いわけです。そういうふうな面がまず第一点です。  それから、こういうふうな場合、たとえば、特にその悪臭の面については国のほうの施策が非常におくれている。みんな地元の人たちは一生懸命やってるのですけれども、悪臭に対する処理施設がおくれているために、国にたのんでもどこにたのんでも、うまいこといかない、そういうような点があるわけです。そういうような点から考えまして、公害に対するいわゆる公害衛生研究所とか、本格的な公害に対する施設をつくるべきじゃないか、こういうぐあいに思うのです。これが第二点であります。  それからもう一点、続けて申し上げますが、この公害対策本部ができまして、いま一生懸命やっていらっしゃるわけでありますけれども、組織の一元化——その公害対策会議というのは対策本部の上にあって、いわゆるその対策本部の出されたいろんな原案を審議する、そういうふうな意味のお話がございましたけれども、私はちょうどいま予算の編成期にあたりまして、この公害関係の予算、この問題について考えてみますと、実際問題、その公害関係の予算は一体どういうぐあいに今回は処理することになっているのか。実際問題、各省庁がばらばらに要求してやったって実効はあがらないと思うのです。実際の面としてやはり公害対策本部が、もう私たちがかねがね主張しております公害防止庁なりそういうようなものをつくって、そして一本にまとめて要求し、見積もりし、配分する。そういうふうな、たとえば原子力委員会とか、ああいうふうな体制にすれば、ほんとうに一歩前進したものができるのじゃないか、こういうぐあいに思うのです。  以上、幾つか申し上げましたが、大臣の見解を伺いたいと思うのです。
  118. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 悪臭に関連して事業団の権限、質の強化のお話がございました。私ども来年度のそういう公害対策予算の範囲の中で、事業団は融資ワクを中心にして大きな重点を置いていきたいと思いますし、現在事業団が指定された地域に対して行なうことができることになっておりますのを、規制基準等を全国一律基準等を設定する機会に、全国のあらゆるところで事業団活動ができるよう、そういう点についても配慮をしてまいりたいと考えております。  なお、悪臭関係については、基本法に典型六公害の中に悪臭が含まれていながら、その取り締まり法ともいうべき対策法がない。これは一つの政府の怠慢でありますし、さらに企業の費用負担区分等も法律の名において要請されていながら、三年有半たっていまだにこれが国会に提案されていない。これもやはり政府の怠慢でございますが、たいへん内容がむずかしいとしても、しかしむずかしいからといったって、やはり法律の基準に基づいてそういうふうな施設が行なわれ、融資が行なわれ、国の施策がここにある。あるいは住民の側からは被害者の立場にならないような、なった場合にはどうするかというような基準がきちんと定められ、取り締まりがある、基準が定められておるという法律がどうしても必要だと思います。たいへんむずかしゅうございますけれども、悪臭防止法というものも次の国会に出したいと思いますし、さらにそれらについて、国の研究施設等については、現在はやはり各省ばらばらでやっておりますけれども、悪臭の大きなものは畜産もしくは水産の加工処理施設あるいは特殊な産業の廃棄物みたいなものがありますので、これらのものを念頭に置きながら、それぞれの研究機関政府の研究機関において、さらに法律をつくる作業と対応して、どのような研究の成果によってそれが裏づけられた取り締まり法であるか、基準であるかというものも求めてまいりたいと思います。  公害予算は、一応かっこうとしては科学技術庁のほうが中心で研究予算等についてはやっておりますけれども、現在段階では公害対策本部ができましたので、本部長たる総理の了承を得、閣議の了承を得まして、私の手元で、各省がばらばらに大蔵省に要求いたしておりますものを、全部私の手元で聴取、調査、掌握いたしまして、これから私どものほうで大蔵省との間に来年度公害対策予算のあるべき姿等について、公害対策本部としての査定にあたっての注意もしくは感触というものを具体的に出したものをつくりたいと思っております。極端な例をあげますと、新宿副都心や札幌の集中暖房等において二つの省から同じ場所で同じ仕事に対して要求が出ているというようなことはおかしい。現実にそういう事実等もありまするし、またこれは行管長官のほうでチェックされるのでありましょうが、私どもから見ても、便乗的な機構の増設というものが人を伴って非常に多いというようなこと等も、やはり公害予算の中に国民のために、はたして必要とする予算であるかどうであろうかということに関係のある問題ですから、私の手元でやはり大蔵省に対する来年度公害対策予算に関する意見書というようなものをつくります場合には、行管とも相談の上、そういう点については意見を入れて出したいと考えております。
  119. 峯山昭範

    峯山昭範君 もうちょっとだけお伺いして終わりますが、その悪臭の問題でぼくは非常に研究がおくれているという点、またそのたびに、委員会のたびに答弁があるのですが、たとえばいまの海産物の処理場の問題、たとえば具体的に言いますと、塩釜の問題でありますが、ああいうふうな問題は、水産加工工場の処理場は国で初めてつくる処理装置ですから、それが成功するかしないかということは非常に疑問があるわけですね。その初めてやった装置を、やはり地元の人たちに全面的に負担させて、しかも全面的に負担させたというのが失敗したというのじゃあ非常に地元の人たちがかわいそうなんですね。こういうふうな場合、やはり地元の人たちの負担ということも、たとえば私は研究処理というような意味で多少応援してあげられるという点も考えられると思うのですよ。そういう点は、これはもうちょっといろんな面から私は詳しくそういう話をしたいと思ったのですけれども、時間がないから端的に申し上げますけれども、いずれにしてもいまのままではなかなか解決しない。要するになかなか、何といいますか、悪臭をなくするためのいわゆる研究というものが国としてもおくれている、地方自治体としてもおくれているために、なかなかこれは解決しない問題なんですね。こういうような問題は、どうか大臣直接いろいろ聞かれて、こういうような点にも力を注いで予算編成をやっていただきたい、こういうぐあいに思うのですが、この点いかがでしょう。
  120. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの塩釜ですかの問題は、私全く聞いておりませんので、後刻調査いたしまして、国の失態に帰するべきものか、あるいは国の研究能力が未熟あるいは到達し得ない問題としてそういう迷惑を周辺の方に与えているのか、それらの問題をすみやかに処理したいと考えます。
  121. 峯山昭範

    峯山昭範君 これで終わりますが、いずれにしましても、こういうふうないろんな問題がずいぶんありますけれども公害問題につきましては、いま公害対策本部が具体的にいろんな総合調整等の処理をやっていらっしゃるそうでありますが、この公害対策本部というのは、これは恒久的な機関なのか、または将来は、先ほどもちょっと言いましたように、公害対策庁とするのか、または昨年できました公害審査委員会ですか、ああいうようなものを強化して、たとえば総理府の外局にするとか、ここら辺のところについてはどういうぐあいにお考えか、その点をお伺いして終わりたいと思います。
  122. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 機構があればそれでものが足りるものでもありますまいが、一応いまのところ、いままでなかった公害担当大臣というものが指名されて、私がそれを担当大臣として指名を受けたわけでありますが、同時に対策本部の本部長でもあります。ただ、確かに言われるとおり、恒久的な機構であるかどうかについては、これから予算編成にあたって内閣全体の御意見を聞きながら、これをどのような機構として進むべきかについて詰めていきたいと思いますが、しかし、公害対策庁もしくは飛躍して省というようなものをつくる意思は私はいまのところはありません。
  123. 峯山昭範

    峯山昭範君 どうもあと先になりましたけれども、行政管理庁のほうにちょっとお伺いしたいと思いますが、いまの公害の問題と関連いたしまして、大臣は行政監理委員会委員長でもございますので、行政監理委員会の中には、たとえば公害対策本部ができた直後に、これはけしからぬという談話みたいなものを発表した人もいるわけですが、大臣はその公害対策本部のことについてはどういうぐあいにお考えか、お伺いしたいと思います。
  124. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 山中長官からお答えしましたように、公害対策本部を設けたことによって機宜の処置が遅滞なく、比較的遅滞なくとり行なえるという長所がある制度かと思います。
  125. 峯山昭範

    峯山昭範君 それは、私は先ほどもちょっと言いましたように、ほんとうは公害対策本部をつくらなければ公害対策が進まないというのはおかしいわけです、ほんとうを言えば。私たちこの委員会で、公害対策会議があるわけですから、公害の対策について一元化していけ、そういうことは何回も言ってきているわけです、現実の問題として。それが当然事務局がなければ、公害対策会議の下に事務局をつくって、そして推進すればいいわけです、行政改革の面からいえば。これは大臣としては、総務長官が先に発言しましたからいろいろありますけれども、いずれにしても、私はこれだけじゃないわけです。きょうは自治大臣いらっしゃいませんから申し上げませんけれども公害対策本部からも各都道府県に対して公害対策本部をつくれという通達がいっているわけです。その通達を読みますと、いずれにしても公害対策本部を各都道府県につくれという国からの強力な指導ですね。そうしますと、こういうような強力な指導がいくということは、現実に私も各都道府県に行きましていろいろ実情を聞きました。これは全部じゃありません。二、三ですけれども、そういうようなところでは、現実の問題としてすでに公害対策委員会やら公害対策部やら、局やら一ぱいあるわけです。そういうようなのがある上にさらに公害対策本部を各都道府県でつくらなくちゃならないということになると、現実に組織の問題等で、あなたがいつもおっしゃるように二重構造、屋上屋を重ねるという感じになっているわけです。これは国も当然そうでありますし、各都道府県においてもそうなっているわけです。こういうことは行管庁の長官としてはまことに遺憾なことである、こういう答弁が返ってきて私は当然じゃないかと思うのですが、その辺のことについてはどうでしょうか。
  126. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 当然のことであるとまでは申し上げかねます。ただ考えますことは、公害対策基本法によって公害対策会議ができておる。その庶務は厚生省が行なうということになっておりますが、それがはたして適切であったかどうかという点にはいささか問題があろうかと思います。各省庁にまたがる公害対策といいましても、各省庁に深く関連がありまたがっておりますから、内閣の総合調整機能を発揮するのでなければ、縦割り行政のもとにおいては実行不可能である、不可能に近いということからいたしまして、内閣にその事務局を置くというような考え方が一応考え得るわけでありまして、公害対策本部というのは、総理大臣の調整機能を直接的に発揮するために内閣において内閣総理大臣が本部長となり、国務大臣たる山中長官が副本部長となって、総理大臣の調整機能をじかに受けて調整するということが現実には有効である。ことによって着々と鋭意実効をあげておることかと思います。その意味においては実質的に二重機構的ではありますけれども、形式論からいえば、公害対策基本法に基づいた公害対策会議が一応上級の機関としてあって、対策本部がその下働きをするという関係にありますから、相互相助け合って、完ぺきとまではいきませんけれども、完ぺきを期する体裁が整っている、かように理解いたします。
  127. 峯山昭範

    峯山昭範君 私はこういう公害対策本部が設置されましたことによって、現実の面で公害対策が着々と進んでいるということについては、私たちも賛成なんです。当然私たちはこれはおそいじゃないかと、もっとそう言いたいわけです、ほんとうは。すでに公害対策本部、公害対策会議、公害対策審議会というものもあるわけです。こういうようなものの関係は一体どうなっているのですか。それはほんとうに機構の面からはかえってややこしくなっているように私は思うんです。どこかにこれを一本化して、公害対策会議のほうも、公害対策本部一本なら一本にして、やはり仕事を進めていくほうがいいのじゃないか、こういうぐあいに思うのです。こういう点はどうかということを一点聞いておきます。  それから、いま長官がおっしゃいましたように、私は形式論的なことは言いたくないのですけれども、ちょっといま口に出てきましたから、たとえばいま公害対策本部の職員が各省庁から出ていますね。九名なら九名ですか、内閣の職員として出ておりますが、その身分はどうなっているのですか。これ二点お伺いしておきます。
  128. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 内閣の審議官という形で発令されておりまして、一部は内閣に所属し、大部分は総理府に兼務で所属しておると記憶しております。間違いがあっちゃいけませんから政府委員から補足説明をいたします。
  129. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、内閣審議官を兼ねておりますものと、その事務を助けるものにつきましては総理府事務官を兼務で事務をいたしております。
  130. 峯山昭範

    峯山昭範君 公害の問題はこのくらいでおきたいのですが、ということはあれですか、各省から出向いてきました職員は、たとえば厚生省とか大蔵とか、それぞれ出てきた職員は、すべてそれぞれの身分は各省の身分のままじゃなくて、すべて内閣の所属の身分になったということなんですね。
  131. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  内閣審議官に発令いたされておりますものはそういうことでございます。総理府事務官に発令されておりますものにつきましては兼務のものがあるわけでございます。
  132. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、こういうような面についても総定員法というのがあるわけですしね。必要な部門に必要な人を配するという合理的な配置という面から言えば、私は当然こういう点を運用してやるべきだと思うのです。  それで、その点はそのくらいにしまして、次にもう一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、先ほど総務長官がちょっと言いましたように、公害の問題がこれだけ大きくクローズアップされてまいりまして、すでに各省から公害関係のいろいろな人員の要求とか、または省庁の要求がきていると私は思うのですけれども、これについて大臣は、従来からの方針どおり、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドという方針だけで処理できるのかどうか、そこら辺のお考えはどうでしょうか。
  133. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 行政機構の膨張は極力慎んで、少数精鋭でいくということは、当内閣の基本方針でございます。方針としましてはあくまでもスクラップ・アンド・ビルド方式で臨みたいと思います。例外的にどんなことが出るであろうかということは、もっと具体的に検討を進めないとわかりませんけれども、基本方針はあくまでも、スクラップ・アンド・ビルド方式、定員はなるべく増員しないということでまいりたいと思います。
  134. 峯山昭範

    峯山昭範君 私も大臣の方針に賛成でありますけれども、いずれにしましても賛成ではあるが、やはりその必要なところもあると思うのです。私はどうしても必要なところもあると思うのです。そういう点についてはやはり一考しなければならない点も——機構改革の基本としてやはりスクラップ・アンド・ビルドだけではもうやりきれなくなってくる。まあやがて手詰まりになってくると思うのです。スクラップがなくなってきて、もうたいへんなことになってくると思うのです。それはやはりそういう行政改革の面で基本的なことを検討し、何らかの方法を見出していく努力をしていかなければいけないのではないかと思うのです。  それから最後に一点だけお伺いして私の質問を終わりたいと思うのですが、先般自治省の自治省アンケートというやつが行革の本部に提出されまして、それの行革本部の結論が最近出たということを私は聞いているのですが、これは概略でもけっこうですから、どういうぐあいになったのか、お伺いしたいと思うのです。
  135. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 結論を出しました。具体的内容につきましては政府委員から御答弁申し上げます。
  136. 岡内豊

    説明員(岡内豊君) お答えいたします。  大体自治省アンケートの調査項目といたしましては百二件、件数的に御説明申し上げますと百二件あったわけでございますが、その中で改革意見のないものが十一件でございまして、九十一件についていろいろの改革意見が出ておったわけでございます。で、その中で、組織機構に関するものが十三件ございます。これは行政改革計画の中にも載っておるものもございますので、それはそのほうで推進するということにまあなっておりまして、そのほか行政監理委員会でもこの問題を検討いたしまして、大体このうちの二十二項目につきましてはちょっとまあしばらく検討をする必要があるのではないか、すぐに実現が困難ではないかというような意見が出ております。したがいまして、十一件と十三件と二十二件を除きまして、五十六件につきまして私どものほうで関係各省と推進をしたわけでございますが、その結果といたしまして、大体法令等の改正によりまして今後改善につとめるべきものというのが九件ございます。それから運営の改善によりまして合理化を進めるべきものというのが十一件でございます。それからすでにいろいろな関係でもってその趣旨が実現しておるものが十件ございます。たとえば先般の国会で御承認いただきました許可、認可等の整理に関する法律案におきまして、装蹄師法等が廃止になっておりますので、そういったものを入れますと、十件のものがすでに実現をしておる、こういうことでございます。それから行政改革計画の中にあがっております自治省の意見の趣旨に沿って改善につとめるというものが三件ございます。合計三十三件のものが大体処理が見込まれるというものでございます。残余のものについては今後なお検討していく、こういうことでございます。
  137. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいまの自治省アンケートの問題については、詳細後ほど資料で出していただきたいと思います。  それからあと一言ですが、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、公務員給与の今回の完全実施に関連いたしまして、あの定員削減の問題についてはやはり一言言っておきたいと思うのですが、いずれにしましても、この非現業とはいえ、三年間に九%というのは非常にたいへんな私は定員削減だと思うのです、現実の面としまして。まあ具体的には先ほど話がございましたので詳しく聞きませんけれども、九%という根拠、これは先ほども大臣から答弁がございましたけれども、ほんとうに根拠薄弱だと私は思うのですよ。前回のいまの行政改革の三カ年計画でやっております五%削減でも、この五%ができないところはずいぶんあるわけですね、現実の面としまして。ですから、前回の五%のときには、それまでの凍結の欠員というのが七千人ぐらいありまして、実質は五%以下になったのじゃないかと思うのですね、実際問題としては。今回はそういうようなものが全然なしでやるわけですから、これは相当な定員の削減になるわけです。これも実質こういうぐあいに思うのです。実際に国立試験所とかいろいろなところで、こういうふうな社会情勢になって必要なところがあるわけですね。そういうところまでも現実に削減の影響が行っているわけですね。そういう点については今後どういうぐあいにしていくのか。たとえば、具体的に言っても、国家公安委員会とか北海道開発庁とか、そういうふうな現在の三年五%ですかの削減もまだ思うようにまかせないところもあるわけですね。そういうふうな上に、さらに新しい削減計画ということですけれども、これは実質上これがうまいこといくのかどうか、そこら辺についてはどういうぐあいか、お伺いします。
  138. 河合三良

    説明員(河合三良君) お答え申し上げます。  先ほど大臣から答弁申し上げましたとおり、各省庁の実情に応じまして、その実情をよく勘案の上、十分相談の上、この削減計画を策定する予定でございまして、私どもはこれが計画どおりに策定されると期待いたしております。  ただいま御質問のございました根拠でございますが、根拠の一つといたしましては、現在大体公務員全体の非現業の公務員につきましての離職率が四・九%を若干上回る程度になっております。そのうち非常に離職の回転の早い特別な職種を除きまして、行政職の行(一)、行(二)だけについて見ますと、それでもやはりまだ四%を若干こえるぐらいの離職率がございますので、最高の九%程度を目途としてと書いてございますが、非現業の一般の職員の最高の。パーセンテージの場合でございましても、年間三%になりますので、いまだ新規採用の余地はある。全体といたしますとそういう勘定になるわけでございまして、個々の内訳につきましては、各省庁と十分に相談の上、その実情に応じて計画を策定する予定でございます。  なお、先ほどの私の答弁で一点間違いを申し上げておりましたので訂正させていただきますが、先ほど内閣審議官の身分は兼務でないというふうに申し上げましたが、しかし、これは各省の身分を持ったまま内閣審議官の身分を併任するということでございましたので、たいへん失礼いたしました。訂正させていただきます。
  139. 峯山昭範

    峯山昭範君 ということは、いまの一番最後の訂正になった部分、そこだけ総定員法はうまく運用されていないということになりますよね。やはりそこのところはあとでまたこの次の機会に詳細にやりたいと思います。  最後に、もう一点だけお伺いして終わりたいと思うのですが、いまの九%削減の問題ですが、これは要するに各省に対する具体的な削減計画ですか、これは一体いつごろまでにまとめられるのか、参考までにお伺いしておきたいと思います。いずれにしましても、各省関係者と相談をしてやられるということですから、当然必要なところは私は残されるのだと思うのですが、そこら辺のところは、いずれにしましても公害問題等、非常に社会情勢もきびしくなっているおりから、そういうふうな必要なところはやはりそれぞれ残していただいて、それでまたふやさなければいけないところは、やはり行政需要とかいろいろ、スクラップがなくても機構をつくるとか、やはりある程度有機的にやらなければいけない点も私はあると思うのです。そういう点もあわせて最後にお伺いして私の質問を終わります。
  140. 河合三良

    説明員(河合三良君) 削減計画の策定のめどでございますが、これはこの削減計画ができてこれを実施いたしますのは、昭和四十六年度のうちに欠員を保留いたしまして、その欠員を昭和四十七年度の当初に落とし、またその範囲内で、ただいま先生のお話のございましたような新規需要として定員増の必要なところに、その範囲内でこれを認めるという措置を講じます関係上、できれば昭和四十五年度の年度内に計画が策定できればというふうに思っております。ただ前回の三年五%計画を策定いたしました際は、これは四十四年度からの実施でございましたけれども、四十三年度の八月にこれを閣議決定いたしておりますので、必ずしも年度内でなければならぬというふうには思っておりませんが、欠員保留その他の関係などで、できれば四十五年度末までにというように考えております。
  141. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。  午後二時四十分まで休憩いたします。    午後二時三十分休憩      —————・—————    午後二時五十六分開会
  142. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国の防衛に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  143. 上田哲

    上田哲君 四十一年十二月の前の前の上林山長官の訪米以来、満四年を経ての防衛庁長官のアメリカ訪問でありますから、非常に意味するところは大きいと思います。そうした問題と、それから八月の十九日のこの内閣委員会の席上で、防衛庁長官に訪米問題について問いただした際には、まだ決定を見ていないのでということで、確たる御答弁がいただけなかったわけでございます。本日はそうした手続問題を含めて明確にお伺いをしていきたいと思います。  第一点は、今回の防衛庁長官の訪米は、レアード国防長官の正式な招待というふうに伝えられておりますが、そういうことでありましょうか。また、その招待はいつ日本政府に届き、それは日本政府ではどの機関でいつ決定をされたのでありましょうか。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レアード国防長官の招待でございます。招待の目的は、米国当局との懇談、それからアメリカの軍事施設の視察等であります。招待の日付は七月二十一日付で、訪米について正式にきまったのは、九月一日の閣議でその了解を得たときであります。
  145. 上田哲

    上田哲君 過去二代の防衛庁長官はアメリカへ行っておりません。まあ三代目ぶりに、四年目ぶりに中曽根長官が海を渡ったわけでありますけれども、そういうことも含めて、まあ歴代の防衛庁長官が参勤交代で行くわけではないとするならば、あえて招待がきた理由も、また出かけられた理由も、今回特有のものがあったはずであろうと思います。防衛庁長官並びに佐藤内閣は、長官にいかなる任務を与えて渡米せしめたのか。特に長官に、いま承ったような、いわば招待状に書いてあったような意味でなしに、四年ぶりに訪米されることの状況の変化に伴う意味合い、あるいは使命というものをどのように理解されて渡米されたのか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米国と日本の間は、安全保障条約によって相互に協力している中であります。したがいまして、わが方の防衛構想、いわゆる四次防というものも出てきておりますが、そういう諸般の防衛に関するわが方の考え方の基本を先方によく了解させ、特に日本は軍国主義ではない、そういう平和国家としてのイメージをはっきり定着させて、誤解を払拭させるというのが一つの大きな目的でありました。また先方側はニクソン・ドクトリンに伴いまして、アジア政策に若干の変化がきておりますが、これがどういう方向に動いていくのか、そういう点について、こちらもしっかりした認識を持つ必要があります。そういうように両方が話す時期が到達しておりまして、そういう諸般の情勢について懇談をするために行ったわけであります。
  147. 上田哲

    上田哲君 中曽根訪米について嘆これからいろいろ具体的にお伺いをしていくのでありますけれども、いまのお話を大体まとめて言うと、安保体制の新段階を迎えての理解、四次防の概要わが国の核装備のあるなしの問題を含めての問題、あるいは東南アジア市場をかまえての軍需産業の展望、それから重要な問題として中国についての情勢分析、あるいはその政策検討等々について全般的に触れられたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 多くの人と話をしましたから、全部総合するとそういうことに触れたことになりましょうが、レアード国防長官との会談というものは、安全保障問題に主として限定したものであります。
  149. 上田哲

    上田哲君 レアード長官日本に招待をされたと伺っておりますけれども、その事実がございますか。また招待をされたとすれば、いかなる名目、内容で招待をされましたか。そしてまた、先方の返事はどうでありましたか。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、閣僚レベルの政治的会談をする必要があると、いままでややもすればハワイ−東京間の事務レベルの路線であったと思いますが、それを東京−ワシントン間の新線建設をやるようなもので、これが赤字線にならないように、黒字線にするためには、往復を密にする必要がある。そういう意味で、今度は私が来たら次はあんた来なさい、そういう意味で招待をしたわけです。招待を出すについては総理大臣の了解を得て言っております。それで先方は議会の都合で、アメリカの議会はなかなかうるさいので、ひまがないけれども、来年七月以降もしひまができたらぜひ行って話をしたいし、また日本防衛施設等も見たい。こういう話でありましたので、歓迎の意を表してきたのであります。
  151. 上田哲

    上田哲君 それでは内容に入っていきたいと思います。  本委員会の質疑は、先般は十分に御回答を得られなかったことも含めて、長官が帰国されてからの初の国会審議でありますから、このたびはひとつ大いに胸襟を開いて、ナショナル・インタレストを今度はこちら側に向けてしっかり御答弁をいただきたいと思います。  そこで、大きく分ければ数項目についてお伺いをしたいのでありますけれども、第一に伺いたいのは、何としてもまず四次防の問題であります。四次防につきましては、長官が帰国された日の——その次ですか、新聞紙上の対談を読みますと、「私は今後の防衛構想や第四次防」「の概要を米側に説明したら、」「ありがたい、といっていた。」と、こういう表現がありました。なおその記事の見出しには「米、四次防を評価」とうたってあるわけでありますが、ことばじりを私はとらえるつもりは全くありませんので、正確に意味合いを伺いたいのですが、アメリカ側にとって「ありがたい」という受け取りになったというふうに長官が受け取られた真意、どういうふうに理解をされるのか。四次防というのは、後にも触れるいろいろな額の問題もありますけれども、われわれ国民の朝野を問わず非常に大きな関心を集めているわけでありまして、二倍以上にふくれ上がるという常識の中でいろいろな論議が行なわれております。そこで、四次防の増強ということが、日米安保条約ないし、安保体制の中に占める位置づけということに、非常にわれわれは問題のありかをさがさなければならないと思っております。伺いたいのは、「ありがたい」といった表現そのものはどうでもいいのでありますけれども、アメリカにとって、四次防なる防衛計画の大増強ということが、どういう意味合いを持っているのか。  もう一つは、少なくとも四次防のワク組みというのは、全くニクソン・ドクトリンのワク組みの中に位置づけられるという形を、今回長官がアメリカに行かれて国防長官と話し合いをされて、説明をされて、「ありがたい」という答えが返ってきたという了解形式の中に、日本防衛計画というものとアメリカの防衛計画ないしはニクソン・ドクトリンというようなものの間に、不可分の了解の形式というようなものができ上ったと考えることにはならないか。  この二つの問題について御見解を承りたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ニクソン・ドクトリンとの間に不可分の了解の形式というようなものはありません。日本日本独自の構想に基づいて、私が着任以来、アメリカとは関係なく、日本の自主防衛という構想に基づいて防衛整備計画を進めてきたのでありますし、アメリカはまたアメリカで、自分でニクソン・ドクトリンと称するものを展開いたして、それを進めているわけであります。したがってニクソン・ドクトリンのワク内に日本防衛計画や構想があると考えるのは間違いであります。そんな自主性のないことを私らはやっておりません。  それから、「ありがたい」ということは、レアードさんはこういうようなことを言っておりました。ともかく向こうの印象では、日本のただ乗り論というのをやられて、アメリカの国防省当局は議会に対してちょっと気恥ずかしいような気持ちがあったらしいです。しかし、ともかく私は、アメリカに過度に依存することはいかぬ。日本でやるべきところは当然日本がやるべきである。そういう考えに立って自主防衛の考え方を打ち出して、その方向に沿って次の防衛計画も考えてやっておるわけであります。そういう考え方を向こうも見て、アメリカにいままでのように過度に依存する部面が少なくなりつつある、これはアメリカとしては歓迎すべきことである。そう思ったのでしょう。ともかくアメリカの議会では、日本は少ない経費で適当にけっこううまくやっているじゃないか、あれに比べると、アメリカは膨大な金を使い過ぎてむだがあるのじゃないか、そういうことをアメリカの議会でも言われる。日本が自分で自分の国を守るということをやってくだされば、アメリカの議会に対してもわれわれはなかなかやりよくなると、そういう意味でありがたいことだ、そういう意味のことを言ったのであります。これは、アメリカの議会を相手にしている国防省当局としては、われわれとしては推察できる事情であります。
  153. 上田哲

    上田哲君 日本防衛額が膨張する、防衛力がふくらんでいくということが、ほかの国にとって困る場合とありがたい場合と二つあるわけでありまして、日本防衛力が増強されていくということがありがたいことであると受け取る以上は、議会対策であれ世論対策であれ、どういう問題であれ、この二つの防衛力の盛衰の中には不可分の関係があるということは、物理的な関係論でありましょうから、そのことについては私は特にここであらためて論議を起こすつもりはありません。  私が問題とするところは、そういう不可分の骨組み、自明の理である不可分の骨組みの中で、双方に了解の形式というものが新たに生まれたのではないか。長官は全くそういうものはないということでありますけれども、かりにたとえば四次防というものが——先国会で長官自身の御答弁にもありましたように、四次防とあえて言うよりは、新防衛計画とでも称すべきものだというロング・レンジのものであるはずであります。トングである以上、またおいおい修正するということもなければなりません。かりに万一当然あり得るものとして、四次防の計画変更というような基本にかかわる計画変更というものができた場合にでも、一体アメリカ国防総省なりアメリカ政府当局と何らの了解の形式をとることなく、つまり今回の話し合いに拘束されることなく独自に計画変更をでき得る余地は十分に完ぺきにあり得るかどうか、お尋ねをいたします。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 十分に完ぺきにあります。
  155. 上田哲

    上田哲君 それでは具体的に伺います。  長官は、九月の十日の午後のナショナル・プレスクラブで、四次防の総額を百六十億ドルというように演説をされております。五兆七千億弱、まあこの点は五月の十二日の委員会でようやく、さすればこれくらいのところではあるまいかということに対する反応として五兆五千億程度ということが出ているのですから、数字のところについて長官は本委員会をたばかったと言うつもりはありません。しかし、それにしても、きびしく申し上げておかなきゃならぬのは、それ以来の再三の機会についても長官は、四次防の規模というのはまだでき上がっておらぬと、答える段階にはきていないということを再三言われておりました。その近時点において、アメリカのナショナル・プレスクラブにおいて百六十億ドルというはっきりした数字が出てきたということについて、私は若干釈然としないものを持ちます。しかし、その辺は大きくかまえてナショナル・インタレストだと言われるでありましょうけれども、その辺を追及することは水かけ論になりますから、たまたまその直前にそうした積算ができ上がったんだということで了解をいたしてもいい。  ここで伺いたいことは、少なくとも国内ならず、外国の公式の場において明確に百六十億ドルという数字をお出しになったというのならば、いまや四次防の概要については明確に御説明できる段階に総額としては到達をしたと了解をしてよろしいですか。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は国会におきまして、まず衆議院において楢崎議員の出しました五兆一千億ないし六兆二千億という上限下限について、まずその辺でしょうということを申し上げ、また当委員会において、たしかあなたの御質問に対して、五兆五千億前後というお話が出ましたときに、まずその見当でしょうと申し上げました。それを総合しますと大体五兆七、八千億ぐらいになりそうなんです、私らの感じでは。それで上限幾ら下限幾らという表現をするのは、外人に対する演説の上からも非常に不明瞭である。まず百六十億トル前後——前後ということばがついてあります——そういうふうに表現したほうが演説効果もあるし、大体の見当をつけさせやすい、そういう意味で言ったのであります。大体国会の答弁を頭に置いてああいうことばを出したのであるということを申し上げたいのであります。
  157. 上田哲

    上田哲君 われわれの質疑が尊重されてけっこうであります。ただ、日本の国会ではなまくら答弁でも、大体真意は適当なところで影を見るという習性がありますけれども、外国で特にフランクなジャーナリストを前にして百六十億ドルと、これはGNP一%にも——アバウトということばがついていたことを確認しておりますけれども、しかしアバウト百六十億ドルということであっても、残るところは百六十億ドルですから、そういう意味合いで私どもが確認をした五兆五千と大綱において変わっていないことはよく納得をいたしますけれども、一たび対外的に百六十億ドルという数字が出るということについては、単に何カ月間かの野党からの質問に対する答えを全部足して平均値をとったのだというようなことでは、説明が通らないだろうと思います。  そうした経過にかかわりなく伺いたいことは、今時点において百六十億ドルということについてほぼ総額が確定をしたということになるのか、いまもって総額については明確な言い方が、責任ある国会答弁としてはできない段階であるのか、いずれかについてお答えをいただきたいと思います。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 出発いたす直前までの大体の概算の見当は百六十億ドル前後というところに入ってきておりました。まあそれが若干将来のベースアップの影響とか、あるいはその他の影響によりまして、上がったり下がったりすることはあり得ましょうけれども、その出発までの最近における大体の見積もりの総計というものが、その前後に落ちついてきている、まずこの見当ならば間違いなさそうだというところまで積み上げ作業はある程度できましたから、そういう数字を申したのであります。
  159. 上田哲

    上田哲君 念のために確認をいたしますが、今後は四次防の大ワクについては大体五兆七千ぐらいのところに詰まってきたというふうに理解していいわけですね。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 若干の手直しは将来もあり得ると思います。特にベースアップが今度大幅に行なわれましたので、そういう点、あるいは技術開発、そのほかの点について若干の手直しは必要かと思いますが、まあ大体見当としてその前後という感覚でおります。
  161. 上田哲

    上田哲君 この点についてはいろいろもう少しく伺いたいんですが、重複を避けるために、ここでレアード国防長官を中心に防衛庁長官が行なわれた四次防の説明概要をかいつまんででけっこうですから、御説明いただきたいと思います。
  162. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体まず背景としまして核武装しない、それから安全保障条約を維持していく、それで核抑止力については、アメリカの核抑止力が機能している限り日本は核武装しない方針である、そういう表現を使っております。そのほか攻撃的兵器は持たぬ。それで将来、北海道から沖繩に至るまでの本土防衛については、通常兵器による限定戦については日本が責任を持ってやれるように持っていきたい、そういうスケールを考えながら次の五カ年計画を考えた場合に、大体空海という点にいままでよりも重点がかかってくる、そして予算の総ワクは百六十億ドル前後に落ちつくものと見られる、そういうような話をしたわけであります。
  163. 上田哲

    上田哲君 いままでの集大成と言えばそれまでなんですけれども、こういうことをきちんと体系的に説明される機会が意外にないわけです。私はやっぱり、そう言えば防衛庁長官としては、防衛委員会設置してくれという話になるんでしょうけれども、担当委員会としての内閣委員会の質疑などでは、こうした問題をやはり訪米前にきちんとひとつ出されて行かれることが望ましいと私は一言だけ申し添えます。  さてそこで、先ほどの四次防の百六十億ドル前後という、五兆七千といいましょうか、五兆七千という言い方でこれから話をしようということでありますから、その五兆七千について少し追っていきたいと思います。先ほどから積算をしてということばがありましたけれども長官がナショナル・プレスクラブで演説をされた中にも、GNPに対して一%ということばがございます。で、私はここではっきりどちらだということで、ぜひ伺っておきたいのですが、この五兆七千になった数字というのは、下から積算をして五兆七千というところにいったのか、GNP一%から逆算をして五兆七千という数字を頭に置いてはじき出しているのか。この辺をこのいずれかであるか伺いたいと思います。
  164. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) GNPとの関係も見ました。それから新社会経済発展計画の中における公共事業費や社会保障費の傾向も調べてみました。それから防衛庁内部における三自衛隊からの要求、施設庁そのほかからの要求というものも勘案してみました。それで、もちろん三自衛隊からの要求というのは非常に大きなものであります。しかし、諸般の情勢を見まして、この辺の見当は政治的判断として妥当であるという線を、そういう辺の見当にきめたわけであります。
  165. 上田哲

    上田哲君 両々相まってということになるんでありましょうけれども、十分に下から積み上げた、つまり足のある計算が五兆七千ということになるんであれば、款項目節にわたってお話を聞くことができるわけです。そういう形になっているのか、中二階から始まって、大体の大ワクをきめたところへGNP一%とごろを合わせたのか、やはりその辺は原則の方向としては非常に重要だと思うんです。私はまさかGNPの一%というところから発想されてはいないと理解をするから、念のために原則的な質問をしているわけなんでありますけれども、その辺はいかがですか、重ねて御見解を賜わりたい。
  166. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三自衛隊からの要望というものも踏まえまして中身をある程度洗ってみたわけです。そういう面を一つは考えた。それからさっき申し上げましたように公共事業費やあるいは社会保障費の伸びの傾向も考えた。それからGNPとの関係も考えた。そういう総合的判断としてあの線を大体の目算としてきめたわけであります。
  167. 上田哲

    上田哲君 GNPがやはりいまの感じで言うと、私の感覚では三分の一ぐらいの原則にはなっていたということがどうもふつ切れないようなそういう理解で話を進めます。それにしても私の感覚で言えば、三分の二の積算があったというならば、この辺で五カ月前から聞き続けている問題がありますから、そろそろ総ワクがきまり積算があったのだというなら、シンボリックなその辺のところは伺っておきたいと思うんです。空海に重点を置くんだと言われる。レアードさんにもそういう説明をされた。しからば、たとえば海上の総トソ数は二十万トンに達するのかいなか等、ファントムはどのくらいになるのか、その辺のところは総ワクが出ているのでありますから、積算に重点を置いたというのですから、その点はお答えいただきたい。
  168. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましように三自衛隊からはそれを超過するかなり膨大なものも出ておりました。しかし、それを次第次第に切っていって、そしてまだそれが全部おさまつたわけではありません。何回か切って切っていったわけであります。それで大体の傾向でこの程度発表しても責任を持てるという数字について、私からここで具体的に申し上げることは、私数字を暗記しておりませんから知りませんが、防衛局長をして差しつかえない範囲のことは答弁させます。
  169. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 事務的な作業の進捗状況を率直に申し上げますと、私帰りまして、大臣及び私の留守中にもだいぶ作業は進んだわけでございますけれども、あとこれから十月にかけまして、先ほど大臣との御討論のありましたような数字を頭に置きまして、従来積み上げたものをさらに最終的な詰めに入ろうというところが事務的な作業の段階、さらにこれからの段階でございます。いま具体的にお尋ねになりましたけれども、なかなかその辺のところが、最後の三自衛隊のほうの要求と、それからいろんな状況を加味しての全部の要求はなかなか満たされませんので、それをどういうふうに処理するか、これが非常に大事なところでございまして、具体的なところはなかなか申し上げにくいわけでございますが、ごく大ざっぱに、トン数の話が出ましたので、私のいまの感じを申し上げますと一お尋ねの二十万トンという数字がございました。この四次防の終わる五十一年にかけましてはそういう数字に達するのはむずかしいんではなかろうかという感じがいたしております。四次防の計画が達成するのにもう少し時間がかかります。そういう感じでいまおります。それからファントム等につきましては、現在までに四個隊の配備ということが一応きまっておりますが、当時沖繩等の問題がなかったときでご、ざいますので、四次防にかけましては若干増強いたしたいということで、これから作業を詰めたいと思っております。
  170. 上田哲

    上田哲君 バロメーターになることなんで、私もこまかいところ、款項目節にわたって聞いているわけではない。たいへんシンボリックなところですから、これぐらいが十月に発表しようというのに出ていなかったら、これはまるでおかしいわけなんで、きまっているけれども言えないんだということになれば、私はいろんな新たに情報収集もしなければならない。そういうわけで、ここはかなりフランクに、もうアメリカも往復されたことだから、いずれかは問いません。いまのお話のニュアンスはそのとおり受け取りますが、もう少し具体的に伺っておきたいのは、四次防終了時には、四次防の計画から二十万トンにはいかないだろうという、これは単なる実施上の目標なのか、四次防そのものは二十万トンを目ざさなければ、私は意味がなかろうと思っております。だから四次防としては総トン数は二十万トンを考えているのか、ファントムはどうか。つまり十四万トンまでいっているわけですから、あとはちょっと輪投げしてみればわかるはずなんで、その辺そろそろお出しなさい。
  171. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) もう少し時間をかしていただくともう少し具体的な御返事ができるのでありますが、最後の詰めに入るわけですから、最後の詰めでどういうふうに変化するか。もちろん十万トンとか五万トンとかいう大きな数字は変化するわけじゃなくて、これから詰めに入るので、なかなか具体的に申し上げにくいのですが、先ほど二十万トンに達しないだろうと申しましたのは、四次防の終わりの時点——五十一年になりますか、この時点現在でトン数を計算いたしますと、二十万トンには、就役という観点から見ますとならないだろう。計画と申し上げましたのは、たとえば三次防で申しますと、来年末が三次防末でありますが、たとえば十四万数千トンございますが、さらに三次防で計画いたしましたものが三年先、四年先に出てまいります、十七万数千トン、この十七万数千トンに対応するものは四次防が終わってから出てまいります。五次防にかけまして、これにかけまして二十数万トンになるだろうという感じを持っております。
  172. 上田哲

    上田哲君 四次防の艦艇総トン数は二十数万トンと理解していいわけですね。片方だけ答えられましたから、いずれ御報告いただくとして、大体空海に重点を置くというひとつのイメージというものが、艦艇総トン数にして二十数万トンをふやすということが明らかになったと理解をいたします。  もうちょっと大きな問題に移りますが、新聞等の報ずるところによると、長官は、安保問題を政治家同士として率直に話し合ったことは意義深いことだった、こういうふうに語っておられる。会談のほうは、四次防の積算と違って下から積み上げるのじゃなくて、いわば大将同士でぽかんと話をつけて、そこから事務作業に入る。こういう方式をとったと伝えられるわけでありますが、それはそれでけっこうでしょう。  そこでひとつ基本的な問題をこの際開陳していただきたいのは、先ほども長官が二回にわたって言及された。どうも日本はただ乗りしているのじゃないか、こういうふうに言われる。ただ乗り論に対して、ただ乗りじゃないというのはおかしいかもしれないが、われわれのほうでも応分の防衛責任を果たすのだということを長官は自主防衛と言われていると理解しておりますが、そういうことを向こうに理解させるために出かけて行ったのだというふうに聞いております。そのただ乗り解消論というものをどんどん推し進めていくと、今度は向こう側が軍国主義批判というところにくるのだ、いわばただ乗り論と軍国主義批判のまん中のところを選ぶか。なぞらえて言えば、そういうような微妙なところを説明に行ったのだと理解していいのでしょうか。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの一部には、日本が核武装するのじゃないかという危惧がございます。私は東京の外人記者クラブで話しましたときに非常に驚いたのですが、ハーマンカーン氏の影響等もあって、経済大国である日本はいずれ軍事大国、核武装するだろう。そういう西欧的パターンの思考が支配しているわけであります。私はそのことを打ち破るために、東京においても努力いたしましたが、アメリカに行きましても、そういう思考のパターンが非常に強く残っているわけであります。そこで日本が平和安全保障政策と申しますか、平和国家としての防衛政策を持っている。それをはっきり先方に認識させて、日本のイメージをはっきり平和国家として定着させる、これが一番大きな仕事であると思いまして、特にそういう意図を持って言動もいたしましたし、それが日本を正しく評価するゆえんであると思ったのであります。それが一番の関心であったということをここで申し上げます。
  174. 上田哲

    上田哲君 伝えられるところによると、長官は、ただ乗りと非難するから、防衛努力をもってすれば、今度は軍国主義と言う、アメリカはかって過ぎるじゃないかとレアード氏に言ったそうであります。これが政治家としての思い切った発言ということになるでしょうし、そういうことばからすると、いまのお話と合わせて、パターンとしていえば、ただ乗り論の解消と軍国主義非難を含めて、この間のありようというものをゆくりなくも説明することであったということでいいわけですね。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういうふうにおとりになろうと、それは御自由でありますけれども、私の意図しているところは、日本はアメリカの核抑止力がきいている限り核武装しない、日本人が勤勉で得た財貨というものは、核武装のようなマイナスの方向に使わないで、経済協力とか文化協力というような、あるいは日本の民生の向上というようなプラスの面に使うんだ、それがわれわれの哲学である、それが円と禅という関係に表現されておるわけでありますが、そういうことを強く強調して、日本の認識を確実にしようと思って行ってきた。しかしアメリカの内部にはいろんなことをいろんな人が考えていて、上限と下限があるわけでありますが、アメリカの人は、ある者は右と言い、ある者は左と言っている、一体何がセンターなんですかと、こっちから反問すべき余地も十分あるわけです。何もわれわれはアメリカ側の批判や無責任な言動に対して一々気にする必要はありませんけれども、われわれのほうにはわれわれの魂がありますから、何も向こうの言っていることを唯々諾々として聞いているばかりが能じゃない、そういうこともあったということを申し上げます。
  176. 上田哲

    上田哲君 違うんですよ。戦々恐々というようなことばもありましたけれども長官が何を気にされているかと私はいま考ていたんですけれども、いわゆる核武装の話をしようと言っているのじゃないのですよ。私はあなたが核武装されるとは思っていないのです。そんなものは日本の国力なり社会構造、経済構造からいって、核武装なんというのはメリットがないのですから、まさかあなたがそういう戦列に加わることはないと私は理解しています。主義の問題じゃなくて聡明さの問題だと思いますから、そんなことをここで議論しようと思っているのじゃないのです。  私が言いたいのは、あまり勘ぐられると困るからその先言ってしまえば、ただ乗り論じゃないぞということで、だからもう少し努力するぞということを言いたいだろうし、決して軍国主義じゃないということを言いたい、その間を選んできて説明しようとされたんだろう。そう記者会見でおっしゃっているのですから、それは警戒されずに、そのとおりだとおっしゃってもらっていい。私が言いたいのは、この幅が一%になるだろうという関連を突き詰めたいのです。あなたはそういう形の中でGNPの一%にこれがなるんだと言われている。GNPというのはこのごろはやらなくなりましたけれども、しかも、先ほどの二、三回にわたってくどく私が追及しておる中では、GNPではないだろうと言いたいんだが、GNPも十分勘案したということが出ていますから、そうするとGNPが重大なものになってくるので、ただ乗りではない、軍国主義ではない、しからば長官の言われる他国に脅威を与えない専守防衛のありよう、長官のことばで言えば、レアードも多少ありがたいと言ってくれるというような意味も含めてエアリアというのが、これが一%ぐらいになるだろうというイメージになるかどうか、そこを聞きたいから言っているのです。その辺二つ、三つ前に戻ってイメージを合わせていただきたいのですが。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はアメリカの世論をいろいろはかって上下の間をきめるというような、そういう考えは毛頭やっておりません。行く前から、われわれはわれわれの考えを策定して行ったのであって、あなたの固有の設計図の中に私の考えを押し込めちゃ困ります。
  178. 上田哲

    上田哲君 長官はどうもアメリカの世論を気にしていると言われはしないかということばかりを気にされているようでありまして、もうちょっとこう然の気風で日本国国会でお話しになればいいと思うのでありますが、私はこういう形で私の思考の中にあなたを押し込めようとしているのではなくて、あなたの思考の中にぜひ入っていって、その辺の理解をした上で十分な防衛論争をしようと思っているのでありますから、その辺はひとつ、レアードさんよりは手ごわいかもしらぬけれども、率直にお答えをいただきたいと思います。  一%ということを、アメリカの世論をおもんぱかってきめたということであれば、断固として日本国国会は防衛庁長官の言辞を許さぬのです。しかし、私は別にアメリカの世論はどうだというのでなしに、アメリカの世論に投影するならばそういうことになるかもしれませんけれども日本防衛庁長官として作成される四次防というものの規模は、たとえばただ乗り論というものの批判にも耐え、軍国主義という批判をはね返し得る内容として考えなければならないでしょうから、それがGNPという基準に合わせて言うならば一%になるだろうというふうにお考えになって説明をされたのかどうか。ナショナル・プレスクラブで演説された内容の真意を伺っているわけです。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの世論をそういうふうに、上限と下限に分けて、その中の適当なラインというような考えでやったと思ったら大間違いでありまして、そういう考えは毛頭ありません。この四次防の基礎の策定については、もう四月以来われわれ部内でいろいろ検討してきておりまして、アメリカのほうへ持っていってこのサイズが合うか合わぬかという考えを基準にして考えたことは一回もありません。ですから、私は日本の諸政策とのバランス、それから公共事業費や社会保障費、教育研究費との調整、調和、そういうことを基準にして言ってきておるのでありまして、それに忠実に従ってやってきたのであります。
  180. 上田哲

    上田哲君 そうすると、対アメリカの問題は切り離してもいいのです。そうしますと、長官の言われるGNPの一%という意味が持っているものは何ですか。一%ならばアメリカの世論などについて——私はあとでひっかけようというつもりはありませんから、誤解のないように。日本の中で、日本の政治家として、責任者としてお答えいただければ十分なんですけれども、私どもも決してアメリカに向かって日本防衛があっていいなどとはこれっぽっちも思っていない立場に立つ一人ですから、いささかもそういうことに対して議論をしたいというのじゃありません。そこにあなたを必要以上に追い込んで、鬼の首をとろうというさもしい根性を持っているのではない。GNPはこういう計算のしかたが正しいかどうかは別として、まぎれもなく日本のGNPでありますから、日本のGNPの中に生きている一人として、そのGNPの一%ということを、やはり四次防の総額決定のエレメントにされたというふうに言われる以上は、その一%というものが持っている意味は何でありましょうか。
  181. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは昭和三十年代から四十年代にかけて、日本防衛費のGNPに対する比率を見てまいりますと、一%をこして一・数%になって、それがだんだん減ってきて〇・八七%、八八%程度まで下がってきておりました。そういう傾向を見てみますと、大体一%前後ということが、国民経済との関係あるいは他の諸政策との関係を見て、まあまあ妥当な線だ、そういう判定も頭の中の一部にあって、そういう一%ということを頭に置いたわけであります。
  182. 上田哲

    上田哲君 私がここをくどく申し上げたいことは、一%ということの意味合いは——私がお尋ねしたがったのはそこなんですが、一%ということの意味合いは、はなはだ一という数字は小さく受け取れるわけですけれども、かりに成長が今後も続いていくと見られる日本のGNP試算の中で、これを分母にして一%ということを設定していくと、五年後には大体核保有国でない国の軍事費総額としてはナンバーワンになってしまう、こういう数字がはっきりしている——もう少し別な言い方が正しいでしょうか、とにかく膨大な数字になります。一%という数字そのものが、日本防衛費としては非常に大きな意味合いを持ってきた。これは長官が再々言われていることを私は評価するのだけれども、公共事業費であるとか社会教育費であるとか、その他もろもろの、本来国民生活あるいは社会福祉のためにさかなければならない財源に圧迫を加えるということを考慮しなければならないから、機械的なGNP比率ではいけないのだといわれる、そういうことを圧迫してしまうことになるだろうと思うのです。だから一%ということは、当面五兆七千億というのが、昭和四十五年度GNPに対しての云々という言い方でいくならば、それはわかるのですけれども、今後一%というものが何がしかの意味を持ってくるということになると、意味するところははなはだ大きいと言わなければならない、そこが聞きたいことの一つ。  それから、これはまたもとに戻りますけれども、ナショナル・プレスクラブで長官が演説をされたときには一%と言われている。これは原文ではアバウトとなっています。ところが国内ではアバウトというのは一つもついていない。全部一%というふうにわれわれは読んできました。で、われわれが理解しているところでは、こまかい端数はいろいろありましょうけれども、今日GNP換算で言うと、われわれは〇・八%と大体理解をしております。アバウト一%というのが〇・八%までを含めたアバウトなのか、常識的にはちょっと幅が大き過ぎると思いますが、言われたアバウトというのはどうなのか、一%をそのまま将来に向かっての基準にしていくと、非常に大きくなり過ぎてしまうということをどう考えられたかということの、アバウトというのをどの辺まで広められたのか、この点をお伺いしたい。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはアバウト・ワンパーセントというのが真意でありまして、大体次の五カ年計画の大体の策定状況を見ますと、道路計画がたしか十兆三千億円くらいだったと思います。それから水道が三兆五千億とか、そういうものを見ますと、国を守るという基本的な国家存立の基本に関する部面で、しかも非常におくれている部面をカバーしていくという意味において五兆数千億、これは大体一%ぐらいになりますか、その程度は許されるのではないか。それから社会保障費その他を見ると、この伸び率はかなり高いようです。そういう面から見ますと、他の諸政策とのバランスという意味においても一%前後というものは、まあおくれを取り戻すという意味においても認められるのではないか。道路と水道の話を申し上げましたが、ほかの五カ年計画との対比を考えてみた場合に、国家存立の基礎をカバーするという意味においてはそう高額なものでもないし、国民経済の発展を阻害する要因にもならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  184. 上田哲

    上田哲君 そうしますと従来は〇・八%だったのですが、〇・八%前後という表現ではなくて、これからは一%前後ということになるのですね。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の防衛計画においてはそういう考え方でいきたいと思います。
  186. 上田哲

    上田哲君 これは比率が変わったというふうに考えますが、そうしますと、この一%が今後もやはり出発点としてのベースになるのか、次の防衛計画、まあこれはだいぶ先になりますけれども、そういう展望を踏まえておられるのかどうかということと、もう少し具体的に、もう一つは、財界でしきりに四%論が打ち上げられております。一%前後というふうにいま明示されることは、その四%論というものに対して、防衛庁当局としてのはっきりした見解の表明ということになるわけですね。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四%などというのは、われわれは否定いたします。それから一%、約一%というのは、五カ年を通じての平均値が大体一%、こういう考え方であります。
  188. 上田哲

    上田哲君 五カ年のあとは一%ということが必ずしも基調にならないというふうに理解してよろしければ、そのまま私は先に行きます。  そこで、まあ時間の関係もありますから、このことだけやっておられませんが、問題はそういうわけで大ワクがきまった、こういうふうにここで理解ができるわけですが、その大ワクがきまったという四次防の総額、防衛庁原案ですが、先ほど防衛局長のお話では来月にというお話があったのですが、また私どもは仄聞したところでは、どうも来月中に防衛庁原案が示されないことがあり得るのじゃないか。これは前々から防衛庁原案は秋に、十月にということがいわれていたのですが、どうも政治情勢その他の関係からいって、そもそもがこの前提ともなるべき国防の基本方針の改定問題、私は総体的には長官の主張のほうを支持するのですが、大勢は必ずしもそうではない部分もあるようであって、たとえば安保補完論であるとか、非核三原則を入れるとかいうことが非常にむずかしいという政治情勢が一方にあるらしく、そういう意味では四次防の防衛庁原案が十月に出るということがないのではないかという観測をする向きがあります。もう一歩のところまできているという先ほど政府委員の御答弁でありますから、私はその懸念が吹っ飛んでしまったのかなと思うのですが、一体その辺はどうなっておるか、その意味でひとつもう少しちゃんと四次防原案作成及び発表についてのスケージュール、段取りについてお伺いをしたい。それからあわせて国防白書がどういうことになるのか、簡単でけっこうです。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の防衛計画の大綱並びに国防白書は、できるだけ十月中に作業を終えて出したいと思っております。しかし、これはいろいろ諸般の情勢もかかっていることであり、内部の調整の問題もまだきまったわけではありませんので、今後の努力にかかりますが、われわれの目途としては、そういう線で努力してまいりたいと思います。
  190. 上田哲

    上田哲君 その問題はそれで一応切り上げますけれども、四次防が——私は四次防が出てくることを歓迎するわけではないのですけれども、またその四次防の原案なるものが出てこない、それが何か一つの政治勢力間のいきさつが左右するとか、かりにそういうことがあれば、あるいは防衛庁原案が出ないで、局原案というような形で振りかえるというようなことがもし出てくるとすれば、事柄が百六十億ドル、五兆七千億円という大きな額がもうすでに一般に出ておるにもかかわらず、そういう事態にでもなることがあれば、非常・に必要以上のこの安全保障問題、防衛問題というのは不明朗な霧におおわれることになると思います。ひとつその辺は政治家としての中曽根長官が鋭意努力をされて、不必要にあいまいな霧が、こうした問題の作成、発表におおわれないように御努力をお願い申し上げておきたいと思います。  次に、例の防衛問題に関する日米定期協議という問題について伺います。  これも八月十九日の内閣委員会では、まだ訪米がきまっていないからということで、御答弁はありませんでした。伝えられるところでは、この問題が話し合われたということでありますが、どういうふうな御提案をだれに対してなされたのか、そこから伺いたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レアード国防長官とロジャーズ国務長官に対しまして、   〔委員長退席、理事石原幹市郎君着席〕 終局的には現在の安保協議委員会のメンバーを是正をして、向こうの国防長官なり国務長官が参加する、こういう形にしたい。しかし、急にいろいろ手続や何かもあるだろうから、政治家レベルの討議を行ない、でき得べくんば定期協議が望ましい、そういう話をしたわけです。それに対して先方は、レアード国防長官、ロジャーズ国務長官も大体同じ意見でありましたが、定期協議という形にすると、時間的制約をどうしても受けて、そして無理に議題をつくったり、あるいは時間のロス等がかなりある。これは日米経済閣僚会議なんかを考えてみて、大ぜいの閣僚が行ったり来たり、時間的に義務づけられると、そこにむだがあると、そういうセンスもあったように思いますけれども、それよりも随時必要に応じて行ったり来たりするほうが能率的だと自分は思う、そういうような話で、大体そういう線にいくであろうと思います。
  192. 上田哲

    上田哲君 そういうお話を承ると、気持ちはわかるけれども現実的にはそういう定期閣僚級の会議というものは設けられないというふうなニュアンスに受け取られるわけですが、そういうことでしょうか。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 定期閣僚会議、経済閣僚会議の経験にかんがみて、そういう縛るような形でなくて、随時協議という形でやりたい、そういう意味だと解しております。
  194. 上田哲

    上田哲君 そういう意味だということは、つまりそういう形では設けられないというふうに私は理解をするのですが、今後ともそういうような形を、定期、随時ということは問題解釈の感覚の問題だから関係ないといわれるかもしれないけれども、定期、随時ということは、性格上非常に大きな違いだと思うのですけれども、いずれにしてもそういう形の、現在は駐日大使と太平洋軍司令官が出ておる協議会というものを閣僚級の会議にしていこうという方向に、長官は今後とも努力を続けられるのですか。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最終的にはそうしたいと思っております。
  196. 上田哲

    上田哲君 密接不可分な日米両国間の経済を定期閣僚会議でやっていこうというのとは違って、軍事的な問題を閣僚級の定期会合にゆだねようということを志向することは、少し意味合いが違うのではないかとする意見が強いわけです。これは九月七日の読売新聞の社説でありますけれども、「世界戦略のうえにたつ米軍事力と、平和憲法下の日本の自衛力とは本来次元の違うものである。現在の日米安保協議委での双方代表の地位がアンバランスなのは、むしろそうした特殊事情によるものともいえる。これを同一の閣僚レベル協議にすべきだというのは形式論でしかないと思う。しかも日本側から設置を要請することによってそれに伴う責任が増大することも考慮すべきであろう。」といっております。毎日の社説では、「これまで「新しい義務負担を背負い込みはしないか」という不安感から、日本側がむしろ回避してきたところである。それを今回日本側から提案するということは安保条約関係の一つの変化を意味する。同盟関係の対等性をいう以上、こうした制度化に反対すべき理由はないと思われるが、日本政府全体としての安全保障、防衛政策の体系化がまだできていない現状では、そうした閣僚協議は一体どのように運営されるのか。」云々と、こういうふうな文言が見えます。私はこれは一つのナショナル・インタレストを世論の側からとらえた危倶ではないかと理解するのですが、こういう方向を最終的に目、ざそうとする長官は、こういう見解に対してはどういうふうにお考えになりますか。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはそういう危倶があるということは、われわれもよく認識しなければならぬと思います。それは彼我の力の相違から日本の十分な主張ができないのではないか、こちらの政治家がインフェリオリティコンプレックスがある等、現実の力の相違から先方に引きずられる、そういう危惧からきていると思う。その危惧はいままでは十分理解されるところであったと思います。しかし、私はアメリカに行きまして、特に痛感したのでありますが、日本には国際政治の上において非常に大きな力が内在している。日本人自体は知らない。政治家自体も知らない要素がある。この力を引き出す眼力を政治家が持たなければならない。それを、自分たちの手にはカードはあるのだけれども、どのカードがいつ来るかわからない、そういう要素がある。そう実はしみじみ思いました。そういう力の、日本の大きな力の意識を背景に持ってやれば、何らこういうインフェリティコンプレックスを持つ必要はない、私はそういうことを確信してまいりました。したがいまして、いまの社説の言わんとするところはわかりますけれども、私は現在の日本の立場というのは、そういうものを越えてきている段階にある、もっと自信を持ってよろしい、そう思って帰ってきたところであります。  これでまあ事前協議ということが安保条約上の非常に大事な問題でありますが、事前協議というような問題について処理するについては、やはりお互いの考え方や政策のバックグラウンドを常によく知っておくことが必要なんです。それはやはり随時話し合って、お互いにバックグラウンドを認識し合っていくことが必要である。こちらの立場をよく認識しておれば、こちらからノーと言ってもあたりまえだし、向こうがいろいろなこと言ってきた場合に、ふだん話し合っておれば、どういう根拠で言ってきたということもわかります。そういう接触なしに一片の通牒とか話し合いだけで事前協議というようなことが出てくることは非常に危険であります。私は事前協議という非常に大きな問題を踏まえて、日米間の政治家レベルにおいて随時話し合いして、意思疎通することが非常に重要であると感じておるわけであります。
  198. 上田哲

    上田哲君 社説の言わんとしているところは、日米協議委員会のアンバランスというのが、決して、残念ながら向こうに比べて軍事力が足りないからだとか、あるいはそれに基づくインフェリオリティコンプレックスであるということではなくて、それが日本とアメリカの安全保障に対するかまえの違いであるし、それが日本の平和憲法なんだと、そこを単に力の相違だというふうに考えてしまって、日本もアメリカと軍事的に対等になるために、閣僚会議で対等にものが言えるために軍事力を増強すべしということに走ることが、むしろ危険なのではないかということを言っていると思います。長官がそれを誤解しているとは思いませんけれども、やはりそういう戒めをこうした問題の推移の中には置くべきだと私は主張をいたします。  先へ進めるわけですが、それにしても、この問題を進めていくとなると幾つかの問題が出てくる。昨年秋の日米共同声明に、ウイズアウト・モディフィケーションということばがあります。そういうことからすると、そういう考え方には、この際協議委員会を閣僚会議に上げるということは触れてくるのではないかと思われます。この点についてはいかがですか。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御質問の趣旨がよくわからないのですが、ウイズアウト・モディフィケーションということがどういう意味でどこに使っているか、ちょっと私まだ不勉強でよくわかりません。
  200. 上田哲

    上田哲君 それではもっと大きいところへ行きましよう。  だいぶ古くなりますけれども、六〇年段階で岸・ハーター書簡というのがありました。安保条約第四条に基づく安全保障協議委員会設置に関する往復書簡、こういうのがあります。ここではっきり日米安保協議委員会というものが確定をされ、構成メンバーがあるのですけれども、これ自身を改めることになる。これを改める手続がどうのこうのというようなことじゃなくて、これを改めなければならないという、つまり日本における防衛に関する外交政策の変更ということでなければならないことになるわけですが、その辺の検討はどうなっているのですか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この岸・ハーター交換公文に関する限りは、私は直すことが正しいと思っております。
  202. 上田哲

    上田哲君 これは私は直したほうがいいか悪いかという議論ではないので、そこまで踏み込んでの定期協議の発議であったかどうかということをお尋ねしたわけですが、先ほど申し上げたように、世論の動向は、私はこの閣僚級の定期協議を持つことが日本の国威を宣揚することになるとのみ思っているとは思いません。そういう意味でも十分な配慮をお願いしたいと思います。要望しておきたいと思います。  その次に基地問題についてお伺いをいたします。  この基地問題は、長官が訪米されていろいろ話し合いをされた中でたいへん成果をあげたといわれている部分であります。まだ正式には承っておりませんので、百二十二カ所を数える国内の米軍基地のどこがどのように、いっどのような形で返還、統合整理されるということを概要説明いただきたいと思います。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つはこれは沖繩の毒ガスの処理の問題がございました。これは本年末ないし来年早々までに相当部分が撤去される。相手はジョンストン島の予定である。解毒工場等は沖繩にはつくらない。ジョンストン島に建設中である。まあサブスタンシャルということばを使っておりましたが、大部分ということと解していいと思います。それから所沢の米軍施設をこちらに移管する。それから水戸の射爆場に関しまして、射爆撃訓練を廃止する。そういう点について先方の意思表示がありました。  具体的には防衛局長から答弁させます。
  204. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) レアード長官と中曽根長官との間で基地問題に関しまして、最初、いまお話の出ました水戸射爆場を例にあげて、あと数カ所のことを、廃止といいますか、基地使用中止といいますか、そういうことを考えているというようなお話が出ておりました。それが帰りにハワイにも寄ったわけですが、マケーン大将との会談でさらに具体的な話に、所沢等の話になってきたということでございます。沖繩に関しましは、基地の統合整理のことを長官からお話しになって、その趣旨は了解されたというようなことが具体的にありました。それからいまお話に出ました毒ガスの問題について具体的なお話が出た、こういうふうに承知しております。
  205. 上田哲

    上田哲君 基地問題の返還、整理統合、その他のこまかいことは、もうちょっときちんと報告が聞けると思っておったんですが、そんなことですか。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何エーカーなんとかという、そういう詳細については、もし御要望があれば資料をもってあらためて提出いたします。
  207. 上田哲

    上田哲君 防衛庁のほうから事前に御照会があったので、ほかのことはこれからだけれども、この問題に関してはこまかいデータをきちっと用意しておいてくれと、これだけはお願いをしておいたんだけれども、それじゃここでなくてもいいです。きちんとひとつ正確なところを御報告をいただきましょう。  そこで沖繩について伺いたい。沖繩についてはいま長官のほうから触れられたので、B52の問題があとから出てまいりましたけれども、毒ガスの問題をしぼって伺っておきたいんですが、  〔理事石原幹市郎君退席、理事八田一朗君着席〕 当然話し合われた中で、七二年返還後の自衛隊の配置の問題についても話が出たかどうか。出たとすれば、そのことを先にちょっと一言承っておきたいんです。
  208. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 原則的な話が出ております。
  209. 上田哲

    上田哲君 どんな話ですか。
  210. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 沖繩の防衛については日本が第一義的に責任を負うんだということと、それから、特に防空責任について向こうが関心を示しておりました。
  211. 上田哲

    上田哲君 ちょっとその防空というのを、もう少し詳しく言ってもらいましょう。
  212. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 長官同士のお話では、そう具体的なこまかいお話には触れておられません。先ほどからお話に出ております、非常にもう少し次元の高いお話に大部分の時間をとられましたわけで、沖繩の問題についても若干触れられましたけれども、いま申し上げた程度の原則的なお話でございます。長官同士のお話ではその程度しか出ておりません。
  213. 上田哲

    上田哲君 じゃ、ガスのことを聞きましょう。一万三千トンのCB神経ガス、いま大部分と理解していいと長官言われたわけですが、早ければ年内に大部分をジョンストン島に移すと、こういうことだったように伺います。ことばじりをとらえるようですけれども、大部分という意味は、一部は春までは残るということもあるわけですね。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 残りもできるだけ早く向こうへ移転させる、そういう意味です。
  215. 上田哲

    上田哲君 くどいようですけれども、残りをできるだけ早く、完全に撤退されるときはいつごろとお考えですか。
  216. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 話の模様からしますと、やはり来年の春の初めのころにはできるんではないか、そう思っております。年末年初という表現ですから、それで、大部分撤去するというんですから、残りも春の半ばか終わりころには全部撤去される、そういうふうに私は解釈しております。
  217. 上田哲

    上田哲君 沖繩の毒ガスは大部分が年内に、残ったものでも春までに撤去されるというふうに了解ができたと、もしおくれれば、ひとつ長官の責任において完全撤去をすみやかにしていただくというように理解をしておきます。  そこで、このジョンストン島への撤去ですけれども、クラベル上院議員が提出した本土移送禁止法案というのがまだ結論がついていないと聞いております。ただアメリカ議会がこのジョンストン島をも移送禁止区域に含めるということになると、この約束はたいへん当てのないものになってしまいます。聞くところによりますと、われわれの国にはこういうことは報道されておるんでありますけれども、アメリカ側は、このことがアメリカ国内世論を刺激することをおそれてか、米人記者団にはこのジョンストン島移転という大部分が年内、おそくても全部が来春というようなことを発表してないと聞いています。そういう微妙な段階があるとすると、これは非常に額面どおり受け取っていいのかどうかという不安が残ります。この辺も含めて見通しはいかがでありましょうか。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの国防省当局は、やはり議会の動向、あるいはたしかあれはハワイ州その他の関係しているところなので、そういうことについては非常によく注意をしておるようであります。これはやはり沖繩から一日も早く撤去したいという熱望にかられて慎重な配慮をしているので、われわれはその努力を評価していいと思っております。私らは、沖繩の人が一番心配しており、かつ内地の方々も心配しておることですから、いいニュースは早く伝えていただいたほうがいいと、そう思いまして新聞記者団に語ったわけであります。しかし、ある意味においてはそういう意思をアメリカ当局が持っているということを国民が知るということは非常に大事なことであり、アメリカを理解する面においてもやはり大事なことであると私らは思いまして、隠しておくよりはいいのじゃないかと思います。
  219. 上田哲

    上田哲君 長官との話し合いの中では、沖繩に毒ガスを置かれるに至った経緯説明があったようでありますし、そういう経緯からすれば、もはや沖繩に毒ガスを置いておく必要は、少なくとも理由づけは消滅したという説明もついていたはずですから、アメリカのほうは、世論がこの際むしろ毒ガスを沖繩から撤去することに協力をしてくれるべきものだし、そこにおいて日本は、政府当局は大いに発言をしていただきたいと思います。で、ひとつこの点については、アメリカ議会なり、あるいは世論なりへの不必要なアメリカ側の配慮によって、せっかくの話が立ち消えにならないように、特にひとつ長官の御努力をお願いをしておきたい。こちら側の姿勢に大いにかかっている部分があろうと思いますから、ぜひこのことを一言強く申し上げておきたいので、御意見を承っておきます。
  220. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今後も撤去を完成するように努力いたします。
  221. 上田哲

    上田哲君 それからレアード長官はこのときの会見で、沖繩の基地の整理縮小という話し合いの中で、その条件とでも言いましょうか、地元の反対運動などによって基地の機能が低下しないようにということがついていた、こういうふうな発言がレアード国防長官側からほんとにあったかどうか。また、それに対して、つまり基地周辺で反対運動が起きて、基地の機能を低下させないように、長官は、防衛庁はどういう処置をとられることになるのか、その点を伺いたいと思います。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの話の部分は、地元の反対運動というよりも、人員整理等によって、基地撤去を反対する、そういうようなことで、あなた方もそういう点では苦労していらっしゃるだろうが、そういうことがないようにと、そういう意味であったように私、解しております。これはアメリカ側とすれば、基地撤去せい、基地撤去せいと言われるものだから、一生懸命撤去する。今度は首切っちゃいかぬ、整理しちゃいかぬ、それじゃ撤去できないじゃないかというのがアメリカ側の論理ですね。そういう論理で向こうの心配を表明したわけなのであります。しかし、それはいろいろ離職者対策とか、そのほかの面で十分われわれが努力すべきことであると思っているわけであります。
  223. 上田哲

    上田哲君 防衛庁基地周辺の反対運動を弾圧するということではないということに理解をしていいわけですね。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろんであります。
  225. 上田哲

    上田哲君 もちろんでありますというところにひとつ大いに期待をして、具体的にひとつ伺います。  元来、基地返還後のあと地の問題や、そこに働いている労働者をどうするか、この問題がいま非常に大きな問題におそらくなってくるし、現実にそういうことがございます。一般的に言えば、あと地は最も高率的に、できれば民間にも払い下げるということになるだろうし、基地労働者の就業あっせんその他は最大にやるんだという見解は出ているんでしょうから、この辺は時間を省いて先にいきますが、ひとつ具体例でお答えいただきたいのだが、例の山田弾薬庫で五十五人、全員が九月の四日に解雇予告を受けました。これは十月十五日に解雇するということで予告解雇になってくるわけです。これは元来雇用条件として、四十五日前の予告解雇でなければいけないというふうになっていると聞いているのですが、本国からの通知であるということで、四十二日前ということで九月四日、十月十五日ということが出ております。元来、防衛庁の小幡事務次官とフランクリン参謀長との間で、これまでの経過にかかわらず、九十日予告ということを順守しようという紳士協定が成り立っていて、その方向に努力されつつあったと聞いているのですが、にもかかわらず、ここで四十二日通告で、四十五日としても足りない数でばさっとやられた。これは当該組合及び県当局も防衛施設庁のほうに話をして、聞くところによりますと、防衛施設庁からは米軍当局に文書で要求を出されたというところまでは聞いておるのですが、一向にいまもって返事がない。こういう具体的な問題をどういうふうに今後処理していかれるのかということを、この基地に対する御答弁を伺いたいわけです。
  226. 山上信重

    説明員(山上信重君) 米軍基地の従業員の整理の問題につきましては、ただいまお話のありましたように、本年の一月、米軍の参謀長並びに日本側の事務次官との間で、今後人員整理をやる場合においては極力九十日以上の事前調整期間を置くように努力する。こういう申し合わせがなされておるのでございまして、それに基づきまして、われわれといたしましても、米側に対して、人員整理については原則として九十日以上置くようにということで、常に留意してまいってきております。  この間、過去におきます人員整理については、相当程度のものは九十日以上になっておるわけでございます。たまたまこの山田弾薬庫の場合におきましては、ただいまお話のありましたように四十五日に満たない四十二日程度の通告がきておるわけでございます。これにつきましては、御案内のように契約上は四十五日を置くようになっております。これは三十日と十五日と合わせての数でございますが、もしそれに満たない場合におきましては、これは当然米側において解雇予告手当を別途に出すということが契約上にはなされておるわけでございます。ただ、われわれとしては、この契約だけではいけないから、いま言った、できるだけ九十日以上置くということでやってまいった。にもかかわらず、それが四十五日未満であるということは、政府としてはまことに遺憾であるということで、私から参謀長に対して文書並びに口頭の両方で、そういうようなことを極力避けてほしいということを申し入れておったのでございますが、数日前に、これは米軍のやむを得ない事情に基づく、財政上等の事情に基づくものであって、まことに遺憾であるけれども、これをひとつ了とせられたい、契約上不足の分については、これは解雇予告手当を支給しますという返事がまいっております。われわれといたしましてはこの返事を一応受け取ってはおりまするが、この場合だけでなく、全体の場合については、できるだけ九十日以上というふうにしたいという考えがありまするので、今後ともこれらの問題についてはできる限り予告期間を延ばすようにということで、引き続き話し合いを進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  ただ、山田弾薬庫の場合におきましては、現実にはそういうような実情になっておるのでございます。われわれといたしましては、これらの者につきましてはできるだけそういった措置も講じまするが、やむを得ず離職する者につきましては、今後いろいろな方策によりますところの離職対策その他に万全を期してまいるようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  227. 上田哲

    上田哲君 不足分を払うということは、きょう現在地元では聞いてないのですが、それはいっきたのですか。
  228. 山上信重

    説明員(山上信重君) ちょっと日にちは忘れましたが、すでに数日前にまいっております。
  229. 上田哲

    上田哲君 これはひとつ、数日前なら早く聞かしてやっていただきたい。その分は回答がきたというならけっこうです。  ただ根本的に——急いで時間を省きますから、どんどんいきますから、まとめて答えてください、施設長官。根本的には、長いこと基地で働いてきた諸君が一番不安に思っていることは、整理統合ということは、基本的にはいいことだけれども生活権の問題はどうなるか、板ばさみがあるわけです。なくなるということはいいんですよ、なくなるということは。なくなるということはいいんだけれども、全部なくすということは、一番上のほうだけで、つまり日本政府側米軍当局の間できまってしまって、その中には、そこで働いている人の生活権というものは大きなウエートになってない。この基本的な問題をどうしてくれるかということをしっかり入れていただきたい。これが第一。  第二には、微妙な部分ですけれども基地の機能が停止するということと、それから基地が廃止されるということとは違うわけです。基地が廃止ということでない間は、雇用の継続ということを何らかの形で保障してもらいたいということがあるでしょう。  それから大部分は、相なるべくはということがいまありましたけれども、やはり九十日ということを原則としてほしいということなんです。これが第三です。  それから、その九十日がとれないときは、日本政府の責任として——公害と同じですよ、ぜひ足りない分は、今度のような四十二日という場合は、四十八日分は日本政府が補てんするということがあってしかるべきではないか、そうでなければ、アメリカ側と交渉しておるということにはならぬぞということになると思うのです。それが一つ。  それからもう一つ、いま休職手当制度というものの新設を目ざしておられる。それから特別給付金の増額というものを要求しておられる。こういうものをひとつしっかりやっていただいて、そしてこれは施行された日から云々ということではなくて、いまの切られていく人々にも遡及適用していくという道を、何らかの道を考えていいのではないか、抜本的なことはたくさんありませんけれども、もうそこまできているのですから、これくらいのことは具体的に提案して、よしわかったということで先にいきたいと思うのですが、お答えいかがですか。
  230. 山上信重

    説明員(山上信重君) 最初にございました働く者の立場を基本に考えろということにつきましては、まことに同感でございまして、われわれといたしましても、働く方々の立場ということを十分に尊重して、今後処理の万全を期してまいりたいというように考えておる次第でございます。  その次の基地の機能が停止するということと廃止とは違うのではないか、だから停止という限りにおいては継続すべきではないかというような御趣旨であろうかと思いますが、われわれもそういった感じとしては持つのでございますが、停止のしかたにもいろいろございまして、事実上廃止にひとしいような停止というような状況もあるようでございまして、山田の過去の状態がいわゆる停止、今回の場合は廃止に近い停止というふうな実情でございますので、ことばだけではいけないので、基地は今後どういうふうに処理するかということは、新たな問題として基地の処理の問題あるいは共同使用の問題、あるいは返還なり、いろいろあると思います。そういった問題も考えなければならぬ事態ではないかと思っております。ただ米側としては、一応これは管理としては板付の管理下にあるというふうに考えておるようでございますが、今後そういう問題として考えなければならぬというふうに考えます。  それから九十日を原則にするようにということは、おっしゃるとおりでございまして、われわれとしても、これを九十日以上ということを極力この線に足並みをそろえさせるように、今後とも努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そのあとの問題でございますが、九十日に足りない部分の問題につきましては、これはいろいろむずかしい問題もございます。もともと特別給付金を昨年から三倍近く増額いたしました考え方は、最近の実情にかんがみて、相当大量の整理が行なわれるということを予測して、さような事態といたして考えたのでございますので、これをいま直ちに実施ということは非常にむずかしい問題ではないか。  ただ最後に御質問のございました休職手当、特別給付金の増額ということがどうかというお話がございましたが、これはわれわれとして、まだ政府部内において統一しておらないので、ただいましかという御返事を申し上げることは困難な実情でございまするが、これは政府部内においていろいろ検討して、明年度の予算においていろいろ検討してまいりたいというふうに考えておる次第でござい・ます。
  231. 上田哲

    上田哲君 中曽根防衛庁長官、ひとつこれはすぱっとお答えいただけばいいと思うのですが、ぜひ九十日を原則としてほしい。そして足りない分は、たいしたことじゃないのですから、これはぜひ何らかの形で政府の運用でその分を補てんしてやろう、それから、いまの遡及の分を含めてひとつ努力しようということを、隣から聞かないで、よろしいということで、この問題、先へいきましよう。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 九十日を厳守することは、今後ともわれわれは全力を尽くしていたしたいと思います。  手当の問題につきましては、予算その他とも関係いたしますので、私からここでストレートにお答えすることはできませんが、考えてみたいと思います。
  233. 上田哲

    上田哲君 全力でひとつその方向で努力をしていただくという決意があったというふうに私は理解をいたします。ぜひひとつ、これはもう額とすれば、ほんとうに小さなものですから、ぜひともその辺のところを、不必要な点をつくらないようにお願いいたします。  そこで本論にまた戻りますが、九月十日のナショナル・プレスクラブの演説の中で、米軍基地の整理統合後も、日本は有事に際し、米国の防衛活動を支持するために必要な基地に、その兵力を再び進出させることを引き続き許すであろう、こういうふうに長官が演説をされたというふうに伝えられておりますが、そのとおりであるかどうか。そして、これはいわゆる有事の基地使用ということ、まあその保証を与えるということが、日本にあるアメリカの基地の整理統合、返還ということの条件であったのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  234. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう演説をいたしました。また条件ではありませんが、整理統合を促進する意味において私は有益であると考えます。
  235. 上田哲

    上田哲君 私はこれは取引というような政治フィールドの問題をちょっとこえた、基本的な日米安保条約なり、あるいは両体制の合意のワクを出るものだろうと思うのです。つまり、現在アメリカ軍が日本に駐留するときは常時駐留の形しかないわけだし、そして少なくともそのためには地位協定によってまず日米合同委員会の協議というものと、もう一つは双方の意見の一致ということを前提としているはずです。その辺のところを、この基地使用についての保証ということになると、いわばまあ予約提供という形になります。予約提供というのは、いまのところ日米安保条約の理解の中にはないというふうに考えるのですが、いかがですか。
  236. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは前からいろいろ申し上げましたように、安保条約並びに地位協定の弾力的運用ということにおいて、できるだけ可能にしたいと思っているわけであります。
  237. 上田哲

    上田哲君 弾力的な運用という限度を私はこえているというふうに理解するのです。少なくともこういうことを、防衛に関する最高責任者である防衛庁長官が相手国の、アメリカの防衛問題についての最高責任者の国防長官に向かって言われたのは、これが公式には最初ではないかと思うのですが、これを発言されるに至った根拠といいましょうか、認識といいましょうか、それはこういうふうな思い切った提案をすることによってのみ、大幅に在日米軍基地の整理統合ということがきるるというような判断であったのでしょうか。
  238. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地位協定二条四項(a)、二条四項(b)等の弾力的運用ということにおいてできる部面もあると思います。それから、そういう発言をしたのは、整理統合を促進するという意味もあったのであります。
  239. 上田哲

    上田哲君 私はそこは非常に重要だと思うので、明確に御見解を少なくとも三点、四点伺っておきたいのですが、そうなりますと、この予約提供という、いままで日米両国の間では行なわれなかった基地提供、ないしはアメリカ軍における基地使用の様態というものは、第一に日米合同委員会の協議を抜きにして行なわれることになるのですか。
  240. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはおそらく合同委員会にはかるのが普通であるだろうと思います。
  241. 上田哲

    上田哲君 ここは非常に重要なので、もう一ぺんお伺いしますが、これは一々その前にほんとうに協議をされますか。一ぺん引き揚げた軍隊、飛行機その他がもう一ぺん帰ってくるときに、完全に協議ということが行なわれるものならば、何といいましょうか、政治的な取引の対象として道具にならぬわけです。弾力的運用ということは、その協議を省略するということが前提となっていないと、少なくとも有事という場合の概念に当てはまるような運用にならないと私は思うのですが、一体完全に日米合同委員会の協議の議に付するのかどうか。そこのところは二者いずれかしかないわけですから、再度明確にお答えをいただきます。
  242. 山上信重

    説明員(山上信重君) 地位協定に基づくところの防衛施設の提供につきましては、御承知のように、二条四項(b)によって日本側が使っておるものを米側が一定の時期を限って使用させるというようなことが可能になっております。そういった条項を弾力的に運用されるというふうな御趣旨と私は考えます。この場合、米側がしかるべき時期にまた使うというようなことは、二条四項(b)によって米側に提供する場合にはそういう条項が提供の合意の中に書かれるわけでございます。したがいまして、そういった場合でも当然合同委員会の議を経、そして提供の条件として、これこれの条件で提供するということが、地位協定の範囲内であれば可能であるというふうな意味であろうと考えておる次第でございます。
  243. 上田哲

    上田哲君 もう一ぺん伺います。よくわからぬです。つまり事前協議の対象になるのですか。協議をしないでそういうことができ得ることもあるのですか。
  244. 山上信重

    説明員(山上信重君) 二条四項(b)によるところの提供という範囲においては、特に協議を要しないというふうに考えております。
  245. 上田哲

    上田哲君 だから問題になってくるわけで、そこのところが弾力的運用という便利なことばの中で、協議をしないで、一ぺん帰ったものがまた平気でやってこられるということになると、これは非常に重要な問題になってくる。そうでなければ、一般的には協議の対象になるのだ、協議しなければだめなのだと言いながら、実は抜け道がある。抜け道があればくるにきまっています。そこのところが、私はぐるぐることばを弄するのではなくて、そういうことなしにできるわけですね。できるということになると、これは非常に問題になる。  二番目の問題として伺いたいのは、手続なしで基地の再使用ということが予約提供として行なわれるのだということになると、これは少なくとも今日の姿よりは後退であります。そして、それは単に必要ないときには向こうへ帰っていくということにとどまらないわけで、使いたいときはいつでもかってに使うという、もっともっといまよりも便利な形になる。こういうことになってくると、これは実質上の安保の改定、少なくとも安保の目ざす精神の後退ということにならざるを得ない。これは事実上の安保改定ということになるというふうに考えるのですが、いかがですか。
  246. 山上信重

    説明員(山上信重君) 特段と安保の改定というような趣旨ではないかと思います。ただ、この弾力的な運用ということは、二条四項(b)の、一定の期間ということの解釈、考え方というような問題はあろうかと思いますが、そういったやはり姿のもとの再使用ということは、これは二条四項(b)によって米側に提供する場合には、これは一定の時期、一定の期間を限ってやっておるわけですし、したがって、いついつからに使わせるとか、あるいは要求があった場合に、相当期間を限って使わせるということは可能なわけでございますから、そういったこの協定の現在の規定の範囲内において可能な程度のことをなさるという御趣旨であろうと私は考えておる次第でございます。
  247. 上田哲

    上田哲君 条約とか約束とかいうものは、例外的な部分を中心にしてきめるということではないのです。そういうことを、条約とか約束とかいうことを、例外的な規定を重点にしてやっておるということを説明しようというとき、通常三百代言という。私たちはここで心配するのは、もしそういうことでいうと、きわめて例外的な部分だけが拡大されてしまうのではないかということを心配するのです。つまり具体的に言えば、そういうふうな解釈で進んでいくと、いま百二十二カ所のアメリカ軍の軍事基地は、その大部分がいなくなる。まあいなくなるのはいいですが、来たいときには一斉に飛来してくるということになると困る。そういう状態になるとたいへんだ。そういう状態になってくるのではないか、どうですか。
  248. 山上信重

    説明員(山上信重君) そんなふうな事態とは必ずしも私どもは考えておりません。
  249. 上田哲

    上田哲君 私はそういうことになり得るのだとすれば、そういう部分を十分に配慮して、とどめといいますか、歯どめをしておくことが、国際間の防衛協定というものの原則であろうと思うのです。その危険がいま、その危惧が出てきたということになれば、それは運用の妙だということでするのじゃなくて、やはりその部分だけは性格変更だ。私は、政治家同志が腹を割って話をしてきたという長官の姿勢に好感を持っておるのだけれども、それならそれで何か、失礼な言い方だけれども、三百代言にくみするような、そういうふうにとられるような何か運用の妙があるということを言わないで、この部分は性格変更なんだ。少なくとも、ずっといるよりは、いなくなるだけ、半分だげましじゃないかというような説明をされるならまだわかる。それはそれとして、あらためて議論したいと思うのですけれども、何か、なしくずしに非常に大きな性格変更をも危惧しなければならないような、そういう問題もするするとなしくずしの解釈運用ということでいかれてしまうと、これは私は問題が出てくるのじゃないか。特にこういうような状況が出てくる背景は、ニクソン・ドクトリンというものがあって、アメリカが下がっていくということがあるから出てきていることなんですから、そういう面から言えば、ないよりあることの危険を考慮するほうが望ましい。そういう意味で、そういう危険を考えるのだけれども、どうだろう。そこは日米安保条約の性格を変更するというふうに理解しておくほうが、国益に合致して、素直ではないか。重ねてそう思うのですが、長官いかがですか。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約を前提としてその弾力的運用という考え方に立ちますから、これはアメリカが持っておる権原というものは、日本側としてはある程度尊重しなければならない。しかし、ふだんいなくていいというときにはいないほうがいい。公害の問題もありましょうし、周辺との関係もありましょう。だから日本の国益に立ってそういう、いないほうがいいというときには、いないという形をつくり出すということが、日本当局としての配慮であるであろうと思うのです。そういうことを地位協定のワク内でできる限り実現していこうという考え方です。しかし、一朝有事の際や、その他必要が出てきた場合には、またもとに復して帰ってこれるということをしておくことは、日本の安全保障上からも必要なことであって、このことをちゅうちょする必要もなし、拒否する必要もない。その点はあなた方とわれわれの考えは違うところであります。しかし、この点は明確にしておかなければならぬと思います。
  251. 上田哲

    上田哲君 考え方は違うのはいいんです、しかし、いまはっきりしたから、それで私は半分納得する。そこはやはりできる限りはっきりしていただきたいので、半分下がるのはいいじゃないか、そこはいいんですよ。そこから、またやってくるときにちゃんと歯どめをして、話し合いをしてくれということを言わなければ、そこのところは、来るのはもとどおりできる、来るのはかってだというところに危険がないか。ここは危険よりは安全がふえるのだという見解の違いなんだから、これは私は争いません。争わないが、そこのところを、どっちみち事態は変わらないのだというふうなやりくりの説明じゃなくて、やはり、いまおっしゃったように、きちんと説明されるほうが望ましいということは、共通の言い方になるだろうと思います。やはりその意味では、これはあくまでも法解釈上は変わらないのだという主張をされるのは、それはそれで見解の相違だからしようがない。事態としては明らかにいままでと違ってきた部分が半分出てきたと、こういうことになります。だから、これはいままでとは、これを法解釈上、安保条約の性格変更となったというか、依然としてならないというかは、しかたがない。これは政府のほうが大きいのだから、政府のほうがそういう解釈をされれば、有権解釈というものはそういうものだから、私は少数派として指をかむしかないが、これは法解釈としては、安保条約の性格変更だと思っています。しかし、それがいいとすれば、事態は半分だけ明らかに変わった。つまり、なくなるときはなくなる、来るときは協議を前提としないでそこへまたすぐ復元することができる。これの予約提供ということが今回の整理統合の前提となっているということは、事実の問題として、解釈の問題としてでなくて、理解したらどうです。そういうことでいいわけですね。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 要するに安保条約のワク内でやることですから、向こうは権利としてまた入ってくる権利を持っております。しかし具体的に入ってくるという場合には、通告したり、いろいろの面でこちらの準備も必要ですから話し合いが行なわれるでしょう。しかし法的権利という面で見れば、向こうに留保させておく、そういう形になるだろうと思います。それが弾力的運用という形になると思います。
  253. 上田哲

    上田哲君 お認めになったようでありますから、事実関係としてはそういうことが出てくるということですから、解釈は何百時間やったってしょうがないのです。事態がいままでとそういうことで二分の一、すっきりと変わってきたということを理解すれば私はいいのです。  そこで問題が出てくると思うのです。出てくる問題としていえば、たとえば沖繩のB52が帰る、帰るのはけっこうだ。しかし、またいつ来るかもしれぬということが沖繩の非常に大きな不安だ——違う部分が少しありますけれども基地全体の使用論ということから言いまして、そういう不安が依然として残っているということは、基地全体がなくならなければ整理されたことにならないということは、国民感情として残りますよ。そういう問題です。これは二歩前進するよりは一歩ずつ行くんだという議論でしょうから、これは見解の相違として理解してもいいのですけれども、そこのところが今後の問題として、居続けるほうがいいとは言わないけれども、ずっと居続けるためにも、全く歯どめなしに、また必要があれば一方的に向こうからやってくることに文句は言えないということで、もし不測の事態が生じた場合にどうなるのだということはあるだろうと思う。それが一つ。  それからもう一つは、これは質問として一つ伺いたいのだけれども、そういうことになると、アメリカ軍が帰った、基地から引き揚げた。引き揚げたから米軍基地ではないとは思えないわけで、いつ飛んでくるかわからない。そうなると民間のアパートを建てるわけにいかない。子供の遊園地をつくるわけにはいかない。いつ飛んでくるかもしれぬから、日本管理しなければならない。あるいは共同使用という名前のもとで持たなければならない。日本自衛隊は百二十二の基地をアメリカと同じように持てっこないわけですし、持とうとは考えておられないと思います。そうすると、きわめて具体的な問題としては、日本自衛隊は持つことはできない、持つ必要もない軍事基地まで、実はアメリカが来るときまで、俗なことばで言えば倉庫番というようなことをして待っていなければならないことになるだろう。こういう状態というのは一体どうだろうか。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは基地の性格、使用の頻度、そのほかケース・バイ・ケースで話し合いが進むべきもので、日本自衛隊が倉庫番みたいに待っていると、そういうような姿が必ずしもあるとは限らない。それはすべてケース・バイ・ケースで、その基地の態様によって相談がきまる問題であると思います。
  255. 上田哲

    上田哲君 ケース・バイ・ケースと言われるわけですから、そういうケースがあるということはどうしたって起きるわけです。そういうことを私は、自衛隊隊員が、いつやってくるかわからないようなお客さんのためにいつも道路掃除をして待っているということでは、みじめ過ぎると思いますし、また、そのために貴重な国費が使われるわけですから、これはどう考えても正しい方向、適切な方向だとばかりはどうしても言えないだろうと思います。この辺のところはぜひそれを全部まかなつちゃって自主防衛といっていいかどうか、これからも議論を分析しなければなりませんけれども、そういうことがケース・バイ・ケースと言いながら、出てこざるを得なくなってきておるということは、この予約提供という問題が、今回の基地交渉の中で非常に大きなウエートといいますか、問題点を提起しているということを、今後の課題として、具体的な問題を俎上に乗せながら、お互いに議論を進めていかなければならない。これが一体安保条約の質的な改定になる、変更になると私たちは思うのですけれども、そういう理解の問題は別として、事実関係の問題としてなおざりにできない具体例がたくさん生じてくるに違いない、こういうことを指摘しておきたいと思います。  次に、濃縮ウランの問題ですが、私のもらっておる時間がもう終わりますので、相当急ぎます。  濃縮ウランの問題で、長官は政治家個人というタイトルをつけてお話をされたそうですが、レアード、ロジャーズ、キッシンジャー、その他の方とそういう話をされた。ナショナル・プレスクラブで演説をされておりますが、完全な公式とは言えないかもしれないが、準公式の発言だといっていいはずのものでありましょう。出かける前に——単に向こう側のだれかと話をしたということではなくて、政府部内で原子力委員長と事前に打ち合わせをかわされたという話を伺っておりますが、その辺はどうですか。
  256. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は出発前に西田原子力委員長と話をしたし、また科学技術庁の事務次官と電話で話をしております。
  257. 上田哲

    上田哲君 かなり公式的な検討を済ませた御提案だったと思いますが、長官が再々言っているように、日本の核武装に対する疑念を除くためだと言われた。私は、合弁をすれば、あるいは技術提携をすれば、査察が行なわれるから、核武装は避けられるのではないかということは一つの論議だと思いますが、どうもアメリカ世論に与えた影響はそういうことではないようなほうが強いようです。アメリカの九月十一日のニューヨーク・タイムスの第一面の記事として、「一部の米政府高官たちは、平和利用のためだとしても、この種の情報を明らかにすると、日本が核兵器開発の方針を決定するような事態が起こった場合、兵器用核分裂物質をつくりやすくなることを懸念している」、こういうふうに報じております。言うまでもなく、核燃料としての製造工程も、あるいは熱核爆弾としての製造工程も、濃縮ウランは同じことでありますから、そのいずれを選ぶかは、それを持っている人の気持ちだけにかかってくるということもある。だから、アメリカ側としては、これはみだりに日本に出すことはできないぞというエゴイズムというものは当然あるわけです。一体、そういうアメリカ世論なり何なりを踏まえて長官の真意なり、具体的に日米合弁をと言われたわけですから、その具体的な構想を御説明いただきたいと思います。
  258. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのニューヨーク・タイムスの記事は、ウィリアム・ビーチャー君という記者が書いたそうです。私はビーチャー君に会ってまいりましたけれども、アメリカ国内の反応は、それがいいというのと、それを渡したら核武装にいく危険性が出てくるというのと、大体半分半分ぐらいの世論の由だったそうです。その中で、アゲインストのほうをあそこに書いたのだということを言っておりまして、必ずしも十分でなかった、そういう意思表明でありました。アメリカの政府当局の反応はどうかというと、大体これはまあ検討すべき段階にきておって相談しましょうということであります。と申しますのは、アメリカの現在の濃縮ウラン工場は三つありますけれども、大体これからの十年間を考えてみると、自由世界の発電供給量に見合う供給量が足りないわけであります。そこで自由世界の供給量に見合うものを出すとすれば十年間二十億ドル以上の投資をしなければならない。そうなるとほかの国の需要を満たすためにアメリカ国民の税金を使うことについてアメリカの議会——原子力委員会で非難がある。そういう予算は来年計上はされておりません。アメリカではアポロ計画を切ったり、防衛費を切っておるという段階でもあるわけです。   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕 日本の需要を見ますと、御存じのように一体昭和六十年年においては原子力発電が約六千万キロワット、そのときに油が七億三千万キロリットルくらい要る。その原子力発電に見合うウランの量は、アメリカの現有設備勢力の三分の一を日本がもらわなければならないという情勢です。そうなると、日本では電力不足がこの夏ささやかれ、アメリカにおいても現にそういうことなんで、このため停電が行なわれておりますが、そういう前途を見ますと、濃縮ウランの手当というのは、日本産業の立地の上からも非常に重要です。そして七億三千万キロリットルの油を持ってこなければならないということです。二十万トン・タンカーで三千メートル間隔でアラビアまで続くという計算であります。こういった問題を考えてみますと、これは産業の本質に関する大きな問題で、いまから濃縮ウランの手当をすべきである。  それからもう一つは、ドイツあたりは、発電原子炉を外国に売っております。それはアメリカの型を発展させて、相当の特許とノーハウをドイツは握っておりますから、アメリカと対の形でそういう発電原子炉まで売れる状態になってきております。日本はまだそういう技術力が弱い。発電プラントも東南アジア、外国に売らなければならぬ。そのときに燃料の保証がなければ買ってくれる国はない。だからどうしても原理として濃縮ウランを手に入れておくことをしなければ、将来の世界の工業立国としてのたてまえもおくれるわけです。そういういまの情勢から見て、アメリカはユーラトム、ヨーロッパ原子力共同体に対してジョイント・ベンチャーの話を内緒にしておる気配が十分ある。これはユーラトムでは、フランスやイギリスは濃縮ウランを持っております。足りなくなるとそこでカバーして、アメリカがヨーロッパ市場から追い出される危険性があります。それから遠心分離法をドイツ、オランダ、イギリス、合同でやってきている。それをアメリカは重大な関心を持って見ているわけです。そういう点からして、ユーラトムに対して秘密の話し合いをしておる。日本は黙って見ておっていいか。そういう立場で私は発言をしておる。  したがって、私が会った範囲内では、レアード国防長官は原子力委員長に橋渡しをして話し合いをしてくださいと言っておりました。ロジャーズ国務長官は検討すると言っておる。それからキッシンジャー大統領補佐官は賛成だと言っておる。マンスフイールド、フルブライト外交委員長は賛成だとはっきり言っております。だから、アメリカ議会の内部においてもそういう事態がわかっておりますから、いろいろ議論がありまして、たとえばインテルサット方式でやったらどうかという議論もありました。これは総資本——外国資本を合わせると、外国が多い。しかし、絶対量ではアメリカが一番だという、そういうやり方で、資本参加、ノーハウ公開をやったらどうかという議論が一つあります。さらに濃縮ウランの隔膜だけをアメリカが現物だけ出してやらしたらどうかという議論もあります。アメリカがそういうふうにウランの供給問題を心配して検討しておるときに、日本が安閑としていいか、そういう意味で私は発言したのであります。したがって、この問題は時間がかかっていくだろうと思いますけれども、おそらく現実問題として早晩登場してくる問題だろうと思います。
  259. 上田哲

    上田哲君 議論したいところです。西田原子力委員長とも事前に話をして、意見と立場を調整してから出かけられたということの上に立って、アメリカ側にはあえて逆に政治家個人という前置きをして、立場を柔軟にしておこうとしたと理解をしますから、いまの自信に満ちた御表明とあわせて、私は決して政治家個人の発言でなく、多分日本政府としての立場から現実的な方向に努力されるだろうと思う。そのあたりは私も別の機会にとっくり議論をしたいと思います。  時間が切迫しておりますので、その部分は後に譲って、この問題の波及する問題として、これは記者が一面的な面を書いたのだというようなアメリカ国内紙の報道の評価であったが、これは少なくとも善意の平和利用の方向ではなくて、日本の核武装という方向に一これは長官に言わせれば西欧的な発想ということでありますが、西欧的発想を刺激してしまわないためには、われわれは相当配慮が必要だろうと思う。聞くところによると、九月十四日のレアード長官との第二回目の会談で、アメリカは日本との安保条約の義務を遂行するためにあらゆる兵器を使用すると、こういう表現をされたと伝えられております。あらゆる兵器とは、言うまでもなく核兵器というものを含んでおります。六五年の一月十三日の第一回佐藤・ジョンソン会談で、外部からのいかなる武力攻撃に対しても日本防衛するという安保条約の再確認というものを一歩進めて、核兵器でもやるということを明らかにしたと理解すべきでありますけれども、この場合、まさしく日本自衛隊が核武装をしないということを、私は再三にわたって確認をしておりますけれども日本が核武装をしないとしても、一体いわゆる非核三原則ということの中で、つくらない、持ち込まないというようなことだけではなしに、もしこういうふうなアメリカ国防長官の言明が現実の問題になるとすれば、国内の日本自衛隊は非核三原則に立つとしても、われわれの領土の上空で他国の核爆弾の爆発を許すということになるのかどうか。少なくともこうした仮定の現象が日本を核のかさの下に押えているというアメリカの国防長官によって言明されたときに、長官はこれに対してどういう見解を表明されたか、いまそのお考えはどうか、この部分を承っておきたい。
  260. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その言明が核戦争の抑止力として平和を維持している力になっておるのでありまして、私はそのことばを当然と思い、かつ歓迎いたします。
  261. 上田哲

    上田哲君 重ねてお伺いしますが、それは抑止力となるのだという理解であって、まかり間違ってもこの言明が現実の問題となって、日本領土上空においていかなる国のものであれ、核爆弾の爆発することがあってはならないということでありますか。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろんそうであります。
  263. 上田哲

    上田哲君 そういうことをレアード国防長官に向かって十分に意を尽くして話されたということであれば、そうした部分を、やはり濃縮ウランというものを長官は純粋に平和利用の目的のみで論じられたというのであれば、そういう部分の補足説明といいましょうか、印象表現といいましょうか、そういう部分についても慎重にひとついろいろと御努力をいただかなければならぬと思います。自分の国では核を持たぬが、ほかの国が守ってくれるために一発やってくれるならばというようなことを何となく十分に否定することなく、ずるずるとしていくということは、反射的に日本のミリタリズムへの帰還ということを、助長してしまうことになるのだということを、やはり小心翼翼としてわれわれは論ずべきだと思うので、そのことを申し上げておきます。  最後に一つ、中国問題であります。今回の防衛庁長官の訪米の目的というのは、今後の日米安保体制の展望ということを主軸にしているはずでありますから、そういう中ではその最大のポイントの一つが、論議の時間がどのようにさかれたかどうかは別として、対中国問題であらねばならないことは言うまでもないと思います。長官は、伝えられるところでは、グリーン国務次官補やブラウン国務次官補代理とこの問題について話をされたそうでありますけれども、グリーン氏は、日米両国が癒着していると中国がかえってかたくなになるおそれがあるので、日米両国は独自の道をとったほうが賢明だと述べたと言われます。そのとおりであるならば、一体長官はグリーン氏が独自の道と言われた内容を何だとお考えになるか。長官自身は独自な道というのはどういうものであるとお考えになっているのか、御見解を承りたい。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ストレートにそういう表現ではありませんが、そういう感触の表現をグリーンさんはいたしました。私は当然のことであると思っております。それでグリーン氏も言っておりましたが、パートナーという意味は同じことをやることじゃないと、ちょうど弁護士の事務所で片っ方は刑事事件をやり、片っ方は民事事件をやる、しかし公共に奉仕するとか金をもうけるという目的において一致しておれば、刑事をやろうが民事をやろうがいいのだと、それがパートナーという意味だと、二人三脚みたいに足を突っ込んで一緒に歩くのが必ずしもパートナーではないと、彼はそういう意味のことを言いまして、アジア政策においても日本日本の固有の歴史、背景、アメリカはアメリカの歴史、考えがおのおのあるけれども、大きい点において一致していれば役割りややり方は当然違うべきである、そういう考えを示した。私は、この考えは正しいと思っております。
  265. 上田哲

    上田哲君 長官は、中国問題を十年のレンジで考えようということを常々言われたわけです。私はそういうレンジで考えるべきものだろうと思います。またそうした立場で、いまはどうであれ、変転やまざるものとしてのアメリカの対中国政策なり、言わずもがなの日本の対中国政策というものを考えていかなければならぬと思うんです。そういう意味で、その長いレンジの中でひとつ大局を踏まえて、独自の道というものをさがし出していこうというディプロマシー、私はそういうところをひとつぜひ追求していかなければならぬと思うし、そのことでひとつこの訪米問題を踏まえて、最後のきっちりとした胸を開いた御意見を承りたいのですけれども、その十年のレンジというので言うならば、やがて米中ソ三大国による何といいましょうか、世界秩序といいましょうか、そういう方向へ大国は志向していくだろうということはまあ言うまでもないことだろうと思います。そういう中でわれわれの国の生きる道は、一番近いところである日中国交の正常化というところに外交課題を求めるべきであるというのが当然のことであるし、そうしてそれはまた、われわれにとって何よりの安全保障であろうというふうに考えるわけです。そういう全般的な大国の志向の中で日中問題を位置づけるということはいかがですか。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日中問題について私がグリーンさんと話したことは、ここで発言することは差し控えたいと思います。これは個人的に二人で話し合ったことでありますから、これ以上相手がどう言ったとか何とかいうことは言わないほうがお互いのためだろうと思います。ただ私は、さっきのパートナーということに関係しますが、アメリカはワルシャワで大使級会談をやっておる。あれはおはよう、さようならというような、きわめてドライなものでしょう。しかし日本は貿易もやっておるし、また貿易がふえる傾向にあるし、日本の有力な政治家が北京へ行って、周恩来首相に会ったり、新聞記者に会ったり、向こうから新聞記者が来ていたり、何かアメリカと違う有機的な関係日本と中国の間にはある。そういうポジションの相違というものはお互いがよく認識し合って、そうして自分たちの個性を発揮するような形でいくということが、平和のために協力するという意味において必要である。そういう程度のことは言いました。それからアジア問題につきましては、一番大事なことは、ベトナムでも朝鮮でも、大国が介入してくると代理戦争の形になる。中近東のこの間の問題でもわかるように、大国が手を引いて、代理戦争をやめさして、紛争を局地化する、それを局地化をしていけば、軍事的パターンから経済的パターンに変えられる、そうして戦争を蒸発していく、そういう形が現実問題として一番大事なやり方じゃないかということを私言いましたら、それは同感の意を表しておりました。そういうふうにしてわりあいにフランクに話をしてきたということを申し上げたいのであります。
  267. 上田哲

    上田哲君 グリーン氏との話し合いが個人的なものであったということでありますから、こういう場で述べられないということはそれはけっこうでしょう。私が申し上げることについてひとつ見解をいただくという形で、少し意見をいただきたいのです。私はグリーン氏が言ったといわれる中で、独自の道をやっぱりさがし合おうじゃないかということを評価すべきだと思いますし、それを勇敢に独自の道をやはり今後の十年ぐらいのレンジの中で世界の潮流に先がけて先取りをしていかなければならぬということであると、やっぱり日中国交正常化ということはわれわれの悲願でなければなりませんから、そういう時期というのはいつにかまえるかというようなことは考えておかなければならぬ。アメリカがインドシナのどろ沼から手を引くようにならざるを得なくなるとき、あるいは台湾の、台湾保護というものを条約上の保護から離脱をしていくというような時期、こういう時期はあるでしょうし、その時期というのは、やはり力学的にいっても長いレンジの話ですけれども、日中国交正常化という一つの時期が来るのじゃないかというふうに思うのです。その辺のところを目ざして、もちろん防衛問題をうしろにかまえてでありましょうけれども、独自の道というものが設定されて言っていいのではないかと思いますが、いかがですか。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現実問題になりますと、これはいろいろな方法が考えられるので、これは五とか十とか、二十とかいう選択があり得ると思う。しかしそれらはまだ想定の範囲内であって、その中のどれを現実政策として、現に政治家が採用できるものとなるかということになると、それはだんだん狭められてきて、そういう思考の奔放さを許さなくなります。現実政治を扱うものとしては、そういう点を踏まえて慎重にやらねばならぬと思っております。
  269. 上田哲

    上田哲君 禅問答のようなことを避けて、なるべく具体的なことを聞こうと思って努力しようと思うのですが、独自の道というのは何かといいますと、私は独自の道というのはいま日本政府首脳の考え方、認識というものは、日中関係日米関係の中のものだということだと思うのです。日米関係の中に日中関係があるんだという認識、もし日中関係が改善されるとすれば、それは米中関係が改善される日の翌日だ、こういう感覚を述べる、非公式に述べる大使もいる。こういう認識というものが、独自の道というものを許さないのだろうと思います。つまりそういうパターンから抜け出してみる。決して日中関係というのは米中関係の一部ではない、中にあるのではない、あるいは米中関係よりも一日早い日中関係というものがあり得るだろう。こういうことを考えていくことが日米の中国に対する独自の道の開拓だと思うのですが、いかがでしょうか。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはカテゴリーによって違うので、あるカテゴリーでは内であり、あるカテゴリーでは外である。それを混淆すると、外とか内とかいう形になるでしょう。これはやっぱりカテゴリーに仕分けをして考えなければならぬと私は思います。しかし、いずれにせよ、外交というようなものは総合戦略の上に成り立つものであります。一面的な考えのみをもって律することはできない、そういう考えに立って、経済、文化あるいは政治、安全保障、あらゆる面を考えて日中間の問題というのは考えていかなきゃならぬ、そう思います。
  271. 上田哲

    上田哲君 中国に対するあり方というのは、アメリカに比べてはるかにわれわれが近いというおことばでありましたけれども、私は必ずしもそうは思わない。まあわれわれがアメリカに対して、中国に向かってまさっているところは距離だけだと思います、実際問題として。われわれの立場からすれば、そこまでの、貿易というふうな道を開いていないし、また、少なくともおはよう、こんにちはであっても、米中会談が開かれているのに比べれば、わがほうはそういう形をそんな近くでも持っていないということは、決してわれわれのほうが、アメリカよりも中国との距離を実質的に狭めているとは思えない。そこのところがある意味での頭越しのものが出てくるという、外交上の配慮を必要とするゆえんだろうと私は思います。これは国内にいるよりも、国外にいるほうがそういう懸念を持つということをあわせて考えなければならないことだと思います。したがって、その辺のところはカテゴリーの問題として、ほとんど私は貿易の中では合意されていると思うが、やはり中国、日中問題というものが米中問題の部分であってはならない。あるいは一日早い関係論として独立に立てなければならないのだということになれば、そういう、たとえば安保条約がなくならなきゃだめだなんということ、日ごろそういうことを言っているほど中国というのは頭が固いばかりでないという信ずべき情報を持っているが、そういうことはそういうこととしても、少なくともきわめて当面の問題として、独自の道を開拓していく具体論があるんではないか。その具体論がやっぱりポイントになるのは二つの中国だと思います。二つの中国という問題をどのようにしてわれわれはこれからやはり細心の配慮の中でくずしていくか。向こうから言わせれば、二つの中国は陰謀だという問題が出てくるが、そういうことばの好ききらいは別として、二つの中国ということをわれわれは先鋭化させていくんじゃなくて、何とか、どうにか解消させていくという方向に持っていくべきではないか。——代表権問題が出てくる、そういう二つの中国問題に集約されるような見通しというものは、防衛論のもう一つ前の外交論として考えたらどうだろうか、具体的にこう思うのですが。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国は一つであると心得ております。
  273. 上田哲

    上田哲君 木で鼻をくくったような話ですが、どうしようもないですが、防衛庁長官としてそれを具体的に伺います。これから先、ニクソン・ドクトリンが極東地域に示している拠点というのは何かと言うと、第七艦隊と空軍ということになる。これは今回の話し合いの中できわめて具体的なテーマだ、ことばとして出たか出ないかの問題じゃない。具体的な基本認識だったと思います。そうすると、第七艦隊というものが、二つの中国の一つであると認識されている台湾という問題にまあかかわっている、そのかかわり方について、極東の安全を保持しようという日本防衛庁長官として、やはり何かの発言があったほうがいいのではないか。もしまた、第七艦隊を含めて、さらにアメリカの後退ということがロング・レンジの中であり得るとするならば、それを肩がわりしてしまうようなことになるならば意味がないのではないか、その辺の展望をどういうふうにお考えになりますか。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは外務大臣の領域を侵すことになりますから、私は発言を差し控えたいと思います。
  275. 上田哲

    上田哲君 これは防衛庁長官の範囲だと思うので、私はまあお答えがないことのほうが不満でありますけれども、簡単にひとつ、九月二十五日のガーディアン紙の、中国がICBMをインド洋に打ち込むというような話、APがこれを流しているという話がありますが、これをどのようにお考えになりますか。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままでわれわれの手元に来た情報によりますと、中国のICBMの実戦配置は一九七五年前後、十五基ないし二十五基、そういうのがわれわれのところの情報であります。それで、いまのガーディアン紙の情報も知っておりますけれども、私はことし発射実験が行なわれるかどうか疑わしいと個人的に考えております。と申しますのは、インド洋にもし落とすという形になりますと、トラッキングとか、そのほかの施設が相当進捗していなければならない、あるいは回収のための、あるいは観測のための設備が対岸のほうにおいて行なわれなければならない、それはアフリカ諸国に対してそういう施設ができるだろうという可能性が観測されますが、そういうところまでまだ的確に進んでおるという情報はございません。それから、そのために必要な観測船も出さなければなりませんけれども、そういうものが行っているということもいまのところ聞いておりません。そういう諸般の情勢からすれば、ICBMの発射実験が近々行なわれるという可能性は私はまだないと思っております。
  277. 上田哲

    上田哲君 常識的に考えて、ICBMはもう少し先になるということになっていたんで、その辺の信憑性は、大体私はそんなじゃないかと思います。そういう意味で、具体的に中国側の脅威はない。そして中国側が言っていることも、これは長官十分御存じのように、いま日本自衛隊が中国に対して直接の脅威になるとは思っていないと言っているわけです。中国が言っているのは、日本自身がたとえば軍隊を持つことは、それは侵すべからざるところであろう、それがまたこちらに侵略するというなら別だが、その能力がいまあるとは評価してない。問題は軍事同盟のつながりの中で、アメリカの安保条約の中で軍事費が増大されていく、大きく飛躍的に伸びていくということが問題なんだということをしきりに言っている。じゃあ安保体制がなくならなければ日中の正常化はないのかということになると、必ずしもそうではないという微妙な表現が、政府当局者から公式、非公式を含めて出ている。いま、あす、あさっての形でわれわれの国と中国との間にきわめてオープンな国交関係がすぐできるとは私は考えないが、私はやっぱり外務大臣としての領域の問題ではなくて、防衛庁長官に、まさにその領域の問題として伺っておきたいのは、どういう見識があり、あるいは防衛費を増大されるとしても、そのことが少なくとも専守防衛、決して侵略的要素を持っていないという以上は、他国からそういう侵略的意図があるのだと喧伝されないようにしていくのが最大の配慮だということには異論がないと思います。そういうことで言うならば、少なくともいまの長官の言われる専守防衛という意味合いのもの、中国側に理解できるような形でいろいろと手を打っていくといいましょうか、説明をしていくといいましょうか、なぜ私がそういうふうに申し上げるかといえば、四次防というものを中国側が非常に大きく注目をして、いままではそういう直接の脅威だとは考えなかったけれども、これがまあ百六十億ドルにでもなるということになると、いろんな形を含めてたいへん危険なことになって、曲がりかどに来ているということを強調しているから、曲がりかどだと認識している相手国に対して、そうでないというならば、より一そうそういう誤解が生じないような努力をされることが焦眉の急ではないか。特にアメリカ、アメリカと二言目に言う国の前で、アメリカへ防衛庁長官が行かれたと、こういうことであるならば、もし長官が言われるように、長官がハト派として平和を愛する政治家として評価をされてきたということである以上は、その部分を中国に対しても大きく打ち返していくという努力を何らかの形において、あるいは日本国会の中で、アメリカではものを言うけれども、こっちでは言えないということでは、中曽根長官のパーソナリティーからいってもこれはあり得ないと思うのでありますから、そういう意味を含めて、大いにここで見解を表明されることが望ましいのではないか。お帰りになってから最初の国会審議なんでありますから、そういう見解を大きく求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国の政治家も、日本の自主防衛は当然であると、こう言われておる。ただ、自主防衛の性格が問題である。自主防衛自体は当然であるという認識を持っておられるようであります。安保条約プラス自主防衛という点で、中国の政治家はいろいろな疑念を持っておられるように私は見ております。しかし安保条約というものは、内閣がしばしば声明いたしますように、防衛のための条約なのであって、決して攻撃的な性格は持っていない。特に最近は、ニクソン・ドクトリンによってアメリカはアジアから勢力を撤退させておるという事実、こういう事実から見ても、防衛的性格というのはますます顕著に出てきていると私は思います。われわれ日本の現在の防衛当局ないし内閣といたしまして考えているのは、全く専守防衛ということを考えておるのであって、安保条約との込みにいたしましても何ら外国に対して他意はありません。このことは大いに認識していただきたいと思っております。これは中国、ソ連のみならず、近隣諸国、アジア諸国に対してもそういうことを申し上げたいと思います。
  279. 上田哲

    上田哲君 そういう方向をひとっこまめにどんどん公式の場でも発言をされることが望ましいと思うのですが、具体的にいろいろな道があります。時間がありませんからこの辺で、委員長から突つかれておりますからもうやめますけれども、たとえば幾つかの小さな、と言ってはいけない、民間外交的な問題もあります。これは決して防衛担当者のらち外ということではありません。先ほどお話がありましたけれども、日中貿易なんかでも、六六年が往復六億二千万ドル、六九年は実に六億二千五百万ドルで、いままでの最高になっておる。これは日本の対外貿易全体の、こちら側から見れば二、三%だけれども、向こうから見れば一〇%をこえておるわけです。しかも、日本の出超だということになってくると、日本のニードからいっても、こうした日中貿易というものを、少なくとも日本が軍国主義化しておるからとか、日本防衛担当者なり政府首脳がたいへん中国に対する姿勢を固くしておるからという理由によって、こういう日本国内に存在している大きなニードというもの、向こう側に存在しているニード、需要というものを消していくようなことをしないように十分な説明があるべきだろう。あるいはそれにもかかわらずですか、六七年の暮れには北京には七十人ぐらい商社員がいたわけです。いまそういう状況の中で二十人になってしまっている。  もう一つの問題は、記者交換の問題であります。これは六四年の九月には日中交換で九人の記者が向こうに行っておりました。現在ただいまは二人であります。そういうわけで、向こうが日本軍国主義云々と言う一方の問題として、一番大事なパイプの一つである記者交換というのが、五〇年代中ソが一番よかったときだって中ソの交換記者数は六対六だった。そこへ日本からは八人という数の記者。それも頼んで一人ふやして九人行って、こっちには中国から七人来ていたわけです。それが、どんどんビザがそのあと出なくなって、現在は二人だけになってしまった。中国に日本の記者が二人しかいないということは、二筋しかわれわれの国は向こうの国とのパイプがあいていないということになるのです。こういうパイプはどんどん広げていくという努力をしていかなければならないのに、逆に少なくなることをしていくようでは一衣帯水の隣の国との間柄が世界の潮流におくれてしまうということになるだろう。こういう点は、軍事優先ということじゃなくして外交優先だということを、ここで長官の根本的な安全保障の一部の理解として認識をしていただく努力をしていただかなければならぬことだと思うのです。そのことについて長官の御意見をいただきたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 交わりは一朝にしてなるものではありませんから、日ごろから経済交流、文化交流、人的交流を行なって、常に相手方を理解するように、理解を拡大していくようにわれわれはっとめなければならないと思っております。そういう考え方に立ってやっていきたいと思います。
  281. 上田哲

    上田哲君 中曽根長官の訪米を区切りといたしまして、いわゆる四次防体制という季節に入るんだろうと思います。独ソ間なり、あるいは中近東なり、あるいは東南アジアでさえ平和外交の潮流というものが世界の流れになってきている。こういう中でパシフィックという海を渡られた長官が、やはり平和外交ということの一翼としての防衛論議でなければならなかったと私は思うし、そういう四年ぶりに行なわれた防衛庁長官の訪米というものが、やはりそういう潮流にさおさして平和外交の一端として大きく世界に誤解を解くのは当然のことと思います。前向きに理解されるための御努力というものをこれから進めていただきたい。まさに独自の道は何かということ、 ユニークなディプロマシーというものが求められるのがまさに日本の七〇年代であろう。その幕あけにあたって海を渡ってこられた長官が、今後そういう意味で、ただアメリカに追随することでなく、新しい日本の安全保障というものを広く高く外交優位ということの中に位置づけて総合的にとらえるという決意を宣明していただきたい。その決意を伺って、私の質問を終わります。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の平和政策を貫徹して、国際的にもそれが定着するように今後とも努力してまいりたいと思います。
  283. 中尾辰義

    中尾辰義君 上田君のほうからたいへん広範な質問がございましたので、私はこの今回の長官の訪米に際しまして、米首脳部との話し合いの中で、在日米軍基地につきまして、これはただいまも質問にありましたけれども、まあ当面は自衛隊との共同使用から進めて、行く行くは有事の際の米軍使用を込みに自衛隊使用に移すといういわゆる中曽根構想について話し合いがあったと思いますが、具体的にどういうふうになっておるか、その点お伺いいたします。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの基地をお互いに点検し合って、そしてアメリカが従来どおり排他的に使用する重要な基地、それからアメリカが主として使って日本側がこれを一時的に使用する基地、あるいは日本側が主として使ってアメリカ側が一時使用する基地、あるいは日本自衛隊に返して日本自衛隊が使う基地、あるいはその共同使用する、そういう必要のない基地については民間に返してもらう、民間の平和利用に編入さぜる、そういういろいろなふうに一つ一つ点検し合って、できるだけ急いでそういうふうな処理を進めていこう、こういうことで話し合いがまとまっておるのであります。そして先方は、来年の六月までの会計年度内においてできるだけそういう方向に推進すると、そういう考えでありました。
  285. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、現在の在日米軍基地のうち、今後米軍自衛隊と共同使用する基地はどういう点を考えておるのか、いま答弁ができましたらひとつ明確にお答え願いたい。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま点検の相談をしておる最中で、具体的にどの基地がいつから共同使用になるとお答えすることはまことにまだできない状態で、これから促進してまいりたいと思っております。
  287. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで、この共同使用の件につきましてもいろいろと法的解釈の面において疑問点等も出ておるようでありますので、若干その点につきましてお伺いしたいと思いますが、米軍がいない基地自衛隊が使いながら、それを在日米軍基地として機密保持あるいは保全ができるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。  それからその場合の管理の費用、これは一体どっちが出すのか、米軍が出すのか、自衛隊のほうが出すのか、その点について。
  288. 山上信重

    説明員(山上信重君) 機密保持につきましては、これは自衛隊管理する基地米軍が共同使用でおるというような場合のことであろうと思いますが、こういう場合の機密保持につきましては、それぞれにおいて必要なる機密保持をしていく。自衛隊自衛隊のルールに従って機密保持をしていく、米側においては米側の機密保持をしていく。したがって、双方の機密にわたるような点については双方協力してまいる、こういうことになると思います。  それから、管理の費用がどうなるかということにつきましては、これはいろいろ具体的な話がすでに小幡次官の訪米以来、管理費用について日本側において相当の程度の負担というようなことも出ております。これらにつきましては、今後ケース・バイ・ケースで相談しようということで話し合いがまとまっておるように伺っております。
  289. 中尾辰義

    中尾辰義君 米軍基地使用する場合に、えらい簡単にあなたはお答えになりましたけれども、もう少し詳しく、米軍がおる場合は、どういう法を適用してどういうふうに守られるのか。おらぬ場合は、日本防衛関係法律で守られるのかどうか。その辺のところをもう少し詳しくお答え願いたいと思います。  それから費用の面ですが、これもあれですね、米軍基地自衛隊がまた支出するということはどうも納得できないような気もするのですが、その点御意見をお述べいただきたい。
  290. 山上信重

    説明員(山上信重君) 費用の問題について私からお答え申し上げますと、これは共同使用の場合においては、共同使用地域におきますところの全体の管理費用の問題と、それぞれの部隊が個別にいろいろ発生する費用の問題、これがございます。したがって、この共同的に発生する費用をそれぞれの使用のニュアンス、程度に応じて負担してはどうかというようなことの問題でございます。これにつきましては、日本側としては二条四項(a)あるいは(b)の使用形態ということを前提にして考えるということ、あるいはアメリカ側においてはそれぞれの使用の度合いというようなことで考えてはどうかというようなことが、議論の対象になったように伺っております。これらにつきましては、先ほども申し上げましたように、ケース・バイ・ケースに個々の施設について実情に合うようにこれから話をしていこうではないかということで話がまとまったというふうに聞いておる次第でございます。したがって、今後費用をどういうふうに負担していくかということは、個々の施設についてそれぞれ話をしていくというふうに承知いたしておるのでございます。
  291. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 一つの基地日米が共同使用する場合、その場合、米軍の機密をどうやって保持するかという問題でございますが、これは御承知のように、現在地位協定の実施に伴う刑事特別法というのがございます。いわゆる刑特法でございますが、これによりまして米軍基地の機密というものが保持されておるわけでございますが、共同使用する場合におきましては、当然日米間でその共同使用する協定を結ぶ際に、機密保持の関係については十分調整いたします。また、その結果、実際に共同使用である場合も、あるいは米軍が専用する場合におきましても、刑特法の関係においては変わりはございませんので、当然この機密の保持なるものは、現在と変わらない状況で運営されてまいると思います。
  292. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、米軍がおらぬときでも日本関係法でできるのですね、その点。
  293. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 具体的に共同使用といいましても、米軍がいないという場合、具体的にその基地におきまして、実際に保護すべき法益があるかないかという問題で、機密保持の問題が起きるわけでございまして、全く機密保持の必要の法益がないというような場合におきましては、これはもう全然刑特法の関係もないわけでございます。しかしながら米軍が、一時的にしろ実際に共同使用に入ったという場合におきましては、これは提供の場合と全く同じ条件で機密の保持というものがはかられるということになります。
  294. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、これは上田君のほうからもありましたが、自衛隊に移管せられた基地を有事の際に米軍に使わせる、この予約ができるのか。先ほど長官から答弁がありましたけれども、地位協定の第何条によるのか。この点は非常に大事でありますから、確認のために答弁願いたいと思います。
  295. 山上信重

    説明員(山上信重君) 米軍に共同使用を認める場合には、米軍管理しておる基地自衛隊使用する場合は二条四項(a)でございますが、自衛隊管理しておるような基地について米側に使用を認める場合は二条四項(b)でございます。
  296. 中尾辰義

    中尾辰義君 先ほど長官のほうから、まあ安保条約ないし地位協定の弾力的運用によって合同委員会の協議は要らない、こういう発言もあったようですが、これ、再度ひとつ答弁をお願いしたいのです。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ステータスを変えるときにはやっぱり合同委員会で協議する必要があると思う。しかし、一たん協議が済んだものについては、その援用で継続していくのではないかと私は思います。
  298. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで、いま問題になっています神奈川県の座間基地自衛隊移駐の問題ですが、これはまあ地元でずいぶん反対しておりますが、これは地位協定の第何条の適用によってやっていらっしゃるのか、その点ひとつ……。
  299. 山上信重

    説明員(山上信重君) 座間は、現在、米軍管理しておる施設でございまして、これを自衛隊が臨時的に一部使用したいというような場合には、地位協定の三条によるところの管理権による使用ということが考えられます。現在の問題といたしましては、とりあえずの試験的あるいは訓練的な使用ということは、おそらく三条によるところの米軍管理権に基づく使用ということになろうと思います。将来、自衛隊部隊を相当程度あすこに共同使用せしめるという場合は、二条四項(a)によって使用されることになると考える次第でございます。
  300. 中尾辰義

    中尾辰義君 第三条の管理のところとおっしゃったんですが、そうしますと、これは合同委員会のほうの協議は要らないわけですか。
  301. 山上信重

    説明員(山上信重君) 三条に基いて入ります場合は、米軍管理機関の権限の中で使用させておりまするので、これは他にも相当たくさんの例がございますが、したがって当方が地位協定上の権利として当然入れるというような立場を主張できない弱みはございますけれども、この場合はしたがって合同委員会の合意、そのほうは必要としないというふうに考えられております。
  302. 中尾辰義

    中尾辰義君 あなたがおっしゃったのは、三条の項目のどこにあたるわけですか。また、管理という大まかな内容で、管理の解釈によってあなたはそうおっしゃるのか、その辺のところをお伺いしたい。  それからもう一点は、こういった種類の、合同委員会にかけないで米軍の一方的な管理権によって自衛隊使用しておるところですね、そういうのがいま幾つあるのか、それを一つずつあげてみてください。
  303. 山上信重

    説明員(山上信重君) いまの三条のどこかとおっしゃる点でございますが、第三条は、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」という条項がございます。それの解釈として、米側はその権限の範囲内において必要な管理、したがってその一部を民間人あるいは自衛隊その他に使用させることも含まれておるというふうに理解されておるのでございます。ただ、これを権利的に使用しようという場合には、二条四項の(a)によって使用いたしておるのでございまして、そういったような使用をいたしておるものも相当ございます。三条により使用いたしておりますものとしては、現在八つございます。三沢飛行場、府中空軍施設、水戸射爆場、横浜ノースドック、厚木海軍飛行場、沼津海浜訓練所、板付飛行場、芦屋対地射爆場でございます。
  304. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうすると、こういうケースは将来もあり得ると私は思いますが、その場合に、米軍の一方的な管理権であり、合同委員会にかける必要もない、地元との話し合いというものはする必要もないのですか。地元側ですね。座間は地元が相当反対しているでしょう。だから問題が出ておるわけでして、それだから私は聞いておるわけです。
  305. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいま私が申し上げたのは地位協定上の立場を申し上げたのでございまするが、こういうような場合におきまして、実際に入る場合においては、将来のこともございまするし、地元等の御了解を得てやっていくのが最も望ましい姿であると私は考えております。
  306. 中尾辰義

    中尾辰義君 望ましいけれども、座間の場合はどうであったのか。それと、三条適用は違法であると、そういうような見解もあるわけです。それで現在訴訟中のところもありますけれども防衛庁長官の見解をひとつお伺いしたい。
  307. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ地元の了解を得て、地元と摩擦を起こさないように、こういうことが行政上あるいは政治的に妥当であると思われます。座間の問題につきましては、神奈川県知事と私いろいろ話しまして、知事にもお願いし、また地元から関係町村の方がおいでになりましたが、私からも特にいろいろお願いをして、そうしてあのような措置が行なわれたのでありまして、賛成とまでは言いませんでしたけれども、まあ少数が言うのはやむを得ぬかなというような、そういう気分を感得いたしました。しかし、地元の人の完全な了解を得るように今後とも努力していきたいと思っております。
  308. 中尾辰義

    中尾辰義君 もう一つお尋ねしたい。要するに三条適用の管理権を幅広く解釈をしていらっしゃるわけですが、その面につきまして違法であるという見解がある。だから訴訟中のものもあるわけでしょう。ですから私は防衛庁の正確な解釈をもう一度確認をしておきたいと思うのです。
  309. 山上信重

    説明員(山上信重君) 三条による使用は、われわれとしては違法ではないと考えております。
  310. 中尾辰義

    中尾辰義君 中曽根構想も、表面上は米軍基地自衛隊使用させて将来自衛隊に返す、ちょっと聞いたところは非常に好感も持つような気もするわけですけれども、やはり地元としては、土地の狭いところに米軍基地があって、それを民間に返してほしい、こういう希望もあるわけですよ。だから三条適用を強硬にやって、一方的にきめてしまうということは、非常にこれは地元の反対もあるし、やはり地元との話し合いをやってもらわないと、こういう問題があっちこっち起こってくる。だからその点、先ほど長官からも答弁がありまして、それは了解をしますけれども現地状況等もよくひとつ勘案をして、なるべく米軍基地の払い下、げに対して夢を持たせていただきたいと、私はこう思うわけであります。  それはそれで終わりまして、次に、滋賀県の彦根市における自衛隊機の墜落事故についてお伺いをしたいと思います。去る九月の二日、航空自衛隊第五航空団新田原基地に所属するMU2型の自衛隊機が彦根市で墜落、炎上するという事故が発生したわけであります。自衛隊機の乗員四名が死亡し、民家三むねを焼くという被害を出しております。自衛隊機の墜落事故については、昨年の二月、金沢市ではF104機が墜落、多大の被害を与えているほか、ことしに入っても今回で十三件、十五機、死者六人を出しておるということであります。防衛庁においても事故対策について抜本的対策を立てる必要があるのではないか、まあこういうことで、以下若干のお伺いをいたします。  一番目は、事故原因について、防衛庁においても調査団を派遣して原因を調査しておるようでありますが、新聞等の報道では、左側エンジンが停止をして片肺飛行による失速ではないかと、このようなことを言われておりますが、エンジンの専門家による鑑定結果等はどうなったのか、その点についてお答え願います。
  311. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 事故を起こしましたことはまことに申しわけないことでございますが、状況等につきましては、先生御承知思いますので、詳しくは申し上げませんが、その事故の原因の調査でございますが、いろいろ目撃者がおられますので、目撃者に当たりましていろいろ証言を得ております。また器材は焼けましたけれども、焼けた器材等を持ち帰りまして分析検討をいたしておりますが、現在まだ調査中でございまして、あと大体一カ月程度調査が技術的にかかるようでございます。したがいましてまだはっきりしたことを申し上げる段階になっておりませんけれども、一応現在の段階で推定できる原因としましては、エンジンの故障があったのではないかということ、それから燃料系統等の故障があったのではないかというふうなことが考えられます。状況等から見まして、パイロットのミスということではなくて、おそらくエンジンあるいは燃料系統の故障ではなかったかというふうに思われます。
  312. 中尾辰義

    中尾辰義君 その墜落をいたしましたMU2型機は、三菱重工で開発をした多用途機で、海外でも非常に好評を博しておるといわれておるわけであります。会社側でも機体の欠陥、エンジン不良は考えられない、こういうことを言っておりますが、メーカーのほうでは原因調査中ということを言われておりますが、その結果はどうなったんでございますか。
  313. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 事故の調査につきまして、先ほど申し上げましたような段階でございますが、航空自衛隊で事故調査委員会をつくりまして、技術的な調査をするほか、製造いたしました三菱重工のほうにも委託をいたしまして、技術的な検討を加えてもらっております。現在まだその結果の報告が出ていない段階でございます。おそらくまだ一カ月程度、来月になりましてから出てくるものと思っております。
  314. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから当日の乗員の健康状態。それから事故機との航空管制の状況。三番目に事故機の整備状況。特にこの八尾基地で給油の際に点検を行なったのかどうか。四番目、現場付近は悪気流で有名なところであると聞いておるわけでありますが、当時の気象状況はどうだったのか。その辺のところをお伺いしたい。
  315. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 機長の一等空尉の久武という者ほか三名が乗っておりますが、健康状況につきましては特に異常はございません。天候は当時良好でございまして、特別の悪気流等はなかったわけでございます。それから、途中、御承知のように八尾に寄っております。これは新田原から小松に行く訓練飛行でございましたけれども、当初の計画から、八尾に寄りまして燃料補給をするという計画に従って八尾に着陸しておりますが、この間規定どおり点検を実施いたし、かつ燃料補給をいたしております。当時は特別の故障は発見しておりません。
  316. 中尾辰義

    中尾辰義君 この第五航空団の新田原基地所属の救難用の機であったと、こういうふうに聞いてるわけでありますが、新田原基地から八尾基地を経由して小松基地までどういう目的で飛行中であったのか、その点。
  317. 宍戸基男

    説明員(宍戸基男君) 所属は新田原の救難隊の所属のMU2機でございますが、当時の訓練目的は、航法、ナビゲーションの訓練、それから遠距離の通信訓練のために、八尾を経て小松基地に行く、こういう訓練目的でございました。
  318. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから当時、滋賀県の県警本部が彦根署に自衛隊機墜落事故捜査本部を置いて、航空法違反あるいは業務上過失致死等の責任がないかどうか、まあ捜査中であると、こう伺っておりますが、その結果どうなったのか。
  319. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 滋賀県警察におきましては、当日より彦根警察署に捜査本部を設けまして、大体捜査員四十名ほどの態勢でございますが、当日は現場の検分、事故機の検分などを行なうと同時に、その後引き続きまして被害者の方々から事情を聴取し、先ほどもございましたが、目撃者から当時の状況をいろいろお聞きをする。それからもちろん事故機の調査をやる。それから運航管理関係、航空管理関係、あるいはただいまも御指摘のございました機体の整備点検の関係、あるいは燃料故障の関係などにつきまして現在捜査をいたしておるところでございまして、刑事責任があるかどうかということを明らかにするという観点で捜査をいたしておりますけれども、現在のところまだ結論は出ていない、こういう報告を受けております。
  320. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、次に補償の問題につきましてお伺いをしますが、この民間の今回被害を受けられた方々に対する補償につきましては、国家賠償法によって十分な償いがなさるべきであると思うわけであります。そこでこのような事故補償に対する防衛庁内部の具体的な補償基準が確立しておるのかどうか。確立しておるとすれば、その概要についてお伺いしたい。
  321. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 防衛庁の中におきましては、一応の補償基準というものが内規でできております。しかしながら、その具体的な内容につきましては部外秘ということになっておりますので、ここで御説明申し上げることはできませんが、この内規につきましても、時代の推移によりまして、自動車賠償の金額とか、あるいは最近の裁判例等もいろいろ参考にしながら、その内規を逐次改正整備をいたしつつ実際の問題に対処しまして、ケース・バイ・ケースで解決をいたしておるということでございます。
  322. 中尾辰義

    中尾辰義君 この補償ですね、いま被害者の方と防衛庁のほうと交渉の経過はどうなっておるか、その辺のところをお伺いしたい。
  323. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 被害の状況につきましては、すでに先生も御承知思いますが、家屋が二戸ばかり焼失いたしております。したがいまして、その焼失しました二戸の方々には、とりあえず事故が起きましてから一週間以内の期間に概算払いとしまして二百五十万円を支払っております。その後この補償問題につきましてできるだけすみやかに、しかも誠意を持って解決するように現在努力いたしておりまして、ほぼおおむねの方方との間におきましては、その補償額の協議も整っております。ごく一部の方がまだ若干の補償額につきましての意見の相違がございますので、それができましたならば、一括その機会に支払いたいというふうに考えております。
  324. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは参考にお伺いしますが、昨年の二月に金沢市におきましても墜落事故があったわけです。その際、死者が四名、家屋全焼十四戸等の多大の被害が発生したわけでありますが、そのときの補償はどうなったのか、これは参考にひとつお伺いしたい。
  325. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 昨年二月八日に発生しました金沢における墜落事故の補償額でございますが、総額は二億四千五百九十二万八千二十四円となっておりまして、これは本年の一月末にすべての支払いを完了いたしております。その内訳は人的損害、これは御承知思いますが、死者四名、負傷者二十三名でございますが、これに対する賠償額が三千九百七十一万九千二百二十一円、それから物的損害でございますが、家屋の全壊、全焼が十八尺家屋の一部損壊が百二十三戸でございますが、これに対する不動産、動産の賠償額は一億九千五百十九万二千七十七円、それから、そのほか物的損害に伴う休業補償、休業賠償額でございますが、これが九十四万四千八百九十九円、それから金沢市並びに電電公社等に対する賠償額が一千七万千八百二十七円ということになっております。
  326. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、今回の場合も静かな田園都市に頭から急に降ってわいた事故でありまして、被害者も相当なショックを受けており、仕事も休んでおるわけでありますから、どうかひとつ防衛庁におきましても被害者の意向も十分聞かれました上で懇切な補償をしていただきたいと思うわけであります。特に動産は、これはまあ具体的にわかるといたしましても、不動産の問題なかなかわかりにくい。これは両者の意見が違うときもありますので、その点ひとつくれぐれもお願いしたいと思います。  それから最後に、これは自衛隊のほうにお伺いしますが、四名の隊員が殉職をされたわけですが、この補償はどうなっておるか、この点がいつも問題になるように私は思っておると思うのでありまして、むしろこういった職務に忠実に勤務をして、そして殉職をした補償よりか、むしろ交通事故で死んだほうが補償額が高い、そういうような矛盾をした問題が出ておりまして、これは何とか考慮する必要があるのではないかと思いますが、そこら辺の見解につきましてお伺いをしたいと思います。
  327. 内海倫

    説明員(内海倫君) 今回四名殉職いたしました。いまお話のございましたように、自衛隊のこのような殉職いたしました者に対する国の補償というものが、必ずしも十分でないと考えますので、目下長官のもとにおきまして、何とかこれをより多くというふうな努力をいたしておるところでございます。今回の殉職者につきましては、現行の法令の定めるところによりまして、すなわち国の補償といたしましては御承知のように国家公務員災害補償法、これによります補償及び葬祭料こういうふうなものが国が出し得るものであります。さらに別途、防衛庁で定めております功労のある殉職者に対しまする賞じゅつ金というものを与える、こういうことで、いま賞じゅつ金につきましては、なおいろいろ検討いたしているところでございますが、これらが大体国が給与できるものであります。  その中で一例を申し上げますと、三等空佐に昇進いたしました久武君に対するものをやや具体的に申し上げますと、遺族に対する補償年金が五十二万円、これは年金でございますから、十二ヵ月で割りましたのが月額になるわけであります。葬祭料が二十四万四千六百八十円、もし賞じゅつ金を出し得る条件がありますれば、これに対して大体百二十万円程度の賞じゅつ金を交付し得るかと考えますが、賞じゅつ金につきましてはなお検討しなければなりませんので、いまここで確定的に申し上げることはできません。  それからこの件につきましては、若い扶養家族のない者につきましては、遺族補償の一時金ということになりますので、たとえば三等空曹に昇進いたしました松下君につきましては、遺族補償年金にかわりまして、遺族補償一時金というものが百四十七万四千円出ることに相なっております。このほかに国家公務員等退職手当法に基づく退職手当、あるいは共済組合法に基づきます遺族年金あるいは弔慰金、こういうふうなものが支給されることに相なります。なお、これは全く個人的な関係でございますが、四人とも保険に加入いたしておりますので、六百万円ないし七百万円程度の保険金が交付されるものと考えます。
  328. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは最後に、これは長官にひとつお伺いしたい。  いまの補償の問題につきましては、よくひとつ前向きで考慮をしていただきたいと思います。  それで、今後の事故防止対策につきましてお伺いをしたいわけでありますが、どうも最近自衛隊の飛行機がよく落ちる、またも落ちたか自衛隊の飛行機とか、変なことも言われておりますので、その辺は十分注意をして今後の対策を考慮していただきたいと思います。これが一つ。なお、民間の被害者に対する補償につきまして、ただいま局長からの答弁がありましたけれども、大臣からも補償につきましてのひとつお考え、これをお伺いいたしまして終わります。
  329. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊の航空機の事故防止対策につきましては、過去に発生した事故原因を追求してその対策を練るとともに、例年自衛隊の高級幹部から隊員に至るまでその徹底をはかっておる次第であります。私は特に着任以来、この人命を損傷する事故につきましては、うるさく注意をするように幹部等に示達しておりますが、今回このような事件が起きたことは、まことに遺憾でございます。過去に起きました事故の原因は、操縦者の過誤にかかるもの、それから器材のふぐあいによるもの、この二つが大部分でございます。そこで、適確な飛行指揮の厳守、あるいは規律、訓練の充実、それから装備器材の点検、検査等の厳格な執行、こういう問題に厳重に示達を重ねまして、対策を推進してまいりたいと思っております。  なお、被害を受けられました一般の民家の方々に対しましては、まことに申しわけない次第でございますが、できるだけ早く十分の手当てをさせていただくように努力してまいりたいと思っております。
  330. 岩間正男

    岩間正男君 最初に当委員会の運営の問題ですが、一番最後に質問する身にもちょっとなってもらいたいと思うわけです。一応決定した理事会の決定というものはほとんどこれはルールどおりなかなかいかない。そのしわがいつでもくる。こういう形で、長官は六時半にここを退去されるそうでありますが、これじゃやはり私の質問の意を尽くすわけにはまいりません。できるだけもう少し延長を願いたい。そして私はできるだけ協力をして、要点について質問をしますから、要点について答弁をいただきたい、こういうことを先に私は念願しておきます。なお、こういう問題、民主的な運営については十分に当委員会としてもお互いに努力しなければならぬ問題ではないかと思うのであります。  第一の問題ですが、長官に伺います。いろいろ訪米についての問題も私は多く聞きたかったんでありますが、時間の関係もあります。ことに上田議員といろいろダブる面もありますので、そういう問題はまたの機会にして、その中で特に一つお聞きしたい問題がございます。それは、PATO構想との関係の問題であります。長官は訪米前の四日に、毎日新聞記者との会見で次のようにのべているのであります。「七〇年代になって日米の国際環境、国内情勢は非常に変化しつつある。そういう変化に対応して、日米が安全保障上、どう協力していくか。その見通しなど、ハラをわって話してこようと思ってます。また、ニクソン・ドクトリンの実際の適用はどうか。ニクソン・ドクトリンは悪くいえば、米国がアジアの霧とジャングルから脱出しようというもの」ここで「(笑い)」というのが入っています。「それだけでは、すむはずがない。次に出てくるドクトリンは何かもききたい。」、こういうことを言っている。そうすると、ニクソン・ドクトリンの問題についていろいろ見解をもっておられ、しかもそれだけで十分でないだろう、その次にくるドクトリンの問題について聞きたい、こういうことを言っておられるわけですね。これがPATO構想に当たるのかどうか。こういう点について、これはアメリカに行って話し合う機会がたぶんあったんじゃないか、あるいはまた、事前にそういう情報をあなたはもうすでに手にしておられていたかもしれないので、こういう点についてまず伺いたいと思います。
  331. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ニクソン・ドクトリンに関する部分については、アメリカは、ニクソン・ドクトリンをもっていまやっておりますけれども、その後どういうふうにするかということは、正直に言って模索しているのではないかと思います。しかしニクソン・ドクトリンに関しては、なにかニクソン・ドクトリンというと、何でもアメリカが撤退するという印象を受けておるらしいが、そうではない。アメリカはコミットメントは守るし、また、防衛のバランスをくずすようなことはしない。できるだけ陸上兵力は引きたいけれども、それも全部引くとかという早急な決定をするものではない。常にその地域のバランスを考えながら、安全保障については万全を期しつつやるものだ、そういう意味の言明がありまして、何かニクソン・ドクトリンでアメリカ側がすぐに追風に帆を上げて撤去するというような印象を与えていることを払拭しよう、そういう意図がうかがわれました。その後の問題については、現在ニクソン・ドクトリンが進行中であって、まあ大勢的にはニクソン・ドクトリンの方向のもとに、地域の問題は地域の国々が責任をもって原則としてやってくれと、しかしアメリカはコミットメントを守るが、自助の努力というものを非常に重要視している。それから、アジアのその他の問題について、軍事面を重視することなく、生活面あるいは経済面あるいは政治的、いろんな諸施策というものを非常に重要視して、軍事的なフリクションをできるだけ避けたいという、そういう方向に動いているようにも感得されます。私が感じた点はそういう点であります。
  332. 岩間正男

    岩間正男君 私が特にお聞きしたのは、新しいドクトリンというような問題です。したがって、これはPATO構想、いわゆる太平洋アジア防衛機構ですね、こういう構想がずっとさっきからこれは持ち続けておったと思う。それを推進しているのは、あなたも会われたキッシンジャー大統領特別補佐官じゃないか。あなたは会われているでしょう。こういう問題に全然触れなかったのかどうか。これらの話は当然出たというふうに考えられるわけですけれども、この点いかがでしょう。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) PATO構想というものは、あれはニューヨーク・タイムズのハロラン記者が書いたものでありまして、アメリカ政府計画ではありません。またキッシンジャー君にも会いましたけれども、PATO構想なんてことは一向言っておりませんでした。
  334. 岩間正男

    岩間正男君 ハロラン記者がキッシンジャー補佐官の意を受けて、これが発表されたというような通説になっているんじゃないですか。そういう点からいえば、これはアメリカの構想の中に、いまですね、これは定着しつつある一つの構想だというふうに考えられる。あるいはまたこれを日本のような防衛構想の中に全アジアを含むそういう構想の中で、いわばアドバルーンを上げているのかどうか、何かそういうような意味を大きく持っておるだろうと思うのです。それは今後の日本防衛に対して根本的な変革をもたらすような重大な問題であると考える。どうも先ほどのあなたの渡米前の雰囲気ですね、談話の雰囲気を見るというと、そういう問題を含んでいるように考えるんです。これはどうなんでしょう。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は日米安全保障関係を除いた他のアジアの国際的軍事機構に日本は参加しないと、はっきり言ってまいりました。また向こうからそういうものに参加してくれとか、そういうものをつくろうという意図があるということは聞いたことがありません。
  336. 岩間正男

    岩間正男君 それではこれはお聞きしますが、お読みになったと思うんです、世界週報の、どうですか、これについてあなたの見解はどうですか。
  337. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはハロランのあれですか、読みました。読みましたが、これはニューヨーク・タイムズの一記者が自分の私的構想を述べたものであって、何といいますか、ウィッシュフル・シンキングである。われわれ日本にとってはきわめて非現実的な考え方である、そういうように思います。
  338. 岩間正男

    岩間正男君 そういうような非現実的であるというような見解を述べられましたが、これは相当ニクソン・ドクトリンとも非常に深い関係があるし、さらにニクソン・ドクトリンそのものがいろいろ持っている矛盾、そういう問題ですね、そういう問題から、どうしても一方でこのような構想というものは打ち出されているんじゃないか。しかもキッシンジャーが、こういういわばアドバルーンか何か、とにかく構想を打ち出す、こういう形で出されているものが非常に多い。これは非常に定説になっている。そういう点からいいますというと、せっかくあなたがキッシンジャーに会われて、しかも新しいドクトリンについて聞いてきたい、こういうことなんですが、全然そういうことに触れなかった、こういうわけですか。
  339. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く触れてまいりません。先方も申しません。
  340. 岩間正男

    岩間正男君 しかし、日本防衛体制の中でやはりこのような構想の、全体とは言いませんけれども、こういうものに歩調を合わせている方向が、現実進められている面があるんじゃないですか。そういう点はやはり非常にいまの防衛問題を論ずるときに、私はPATOのこの構想というものを今後の考慮の中に取り入れる、そういうことは必要だというふうに考えるわけですが、あなたはそう考えていないわけですか。要するに紙上プランだと、全然考慮の価値はないものだと、そういうふうにこれは考えるわけですか。
  341. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全然紙上プランであると思っております。
  342. 岩間正男

    岩間正男君 それではお聞きしますが、十月の二十二日ごろですか、これは国連総会に佐藤総理が出席をする、そうしてニクソンと佐藤・ニクソン会談を持つといわれている。さらにはそのあとにキッシンジャーが、これは十一月に訪日する、こういうことなんですが、こういう中で、元来このPATO構想なるものを推進している張本人とも見られるキッシンジャー特別補佐官が日本に来るわけです。それが何しにやってくるのか。この問題についてもあなたは向こうで話し合いになって、それでキッシンジャー氏の訪日というものが本格的な取りきめになったのじゃないかと思うわけですが、これは何しに、今度の十一月の訪日というのは、どんな目的で日本にやってくるのか。これはいかがですか。
  343. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どうも岩間議員の情報は間違っているところがあるように思います。PATO構想も何か勘違いしておられるのじゃないかと思いますが、キッシンジャーが来るということも、きまったわけではありません。私が、日本へ来ないか、そう言いましたら、もしひまがあれば十一月の半ばごろ来れたら来たい、しかし中近東問題やその他で、その場になってみないとわからない、そういうことで、来るということを明言したわけではない。そういう情勢ですから、岩間議員がもう来ると先にきめておられるのは、何か情報の間違いじゃないかと思うのです。PATO構想についても、同様な間違いではないかと私は思います。
  344. 岩間正男

    岩間正男君 いまの段階であなたはそういう答弁をされているのです。しかし、来ないという、そういうことでもないでしょう。大体もっと早く来るはずであったけれども、ニクソンの了解、これに対する許可がなくて来れなかった、こういうことで延びていた。そこで今度は十一月あたりに来たい、こういうことですから、あなたは確実な情報じゃないというふうに言われておりますけれども、そういう可能性もこれはあるのじゃないか。  私はPATO構想の問題について、ここで詳細にいろいろあげて実は追及する時間がないわけです。したがって、大筋の問題だけ言うわけですが、当然この構想そのものについては、アメリカがアジアの諸地域から撤退をする、そうしてグアム島、南洋諸島のそういうところの線に後退をする、そうして日本が、日本を含めた韓国、フィリピン、台湾、南ベトナム、タイ、そのような国々におけるところの当然軍事同盟をつくって、しかもその中で日本が当然主役をやる、そういう構想のもとにアメリカが背後からこれは関係を持つ。いわばリモコンかもしれません。そういう体制をとる。ですから、これはNATO構想とは構想も違う。NATO構想だったらアメリカがこの同盟の中に入っておるんでありますが、直接入らない。しかし、それに対しまして背後から軍事的ないろいろな関係を持つ、こういう形で進められているというふうに聞くわけです。そうすると、この問題についてまあ詳細に論議されるときは来ると思うのでありますけれども、当然日本がその中の主役になるということになりますると、海外派兵、このことなしにはアジアの軍事同盟の中核的役割りを推進することはできない。そうすれば当然これは憲法の改正問題あるいは自衛隊法の改正、これは今年三月三十一日のあの「よど」号の事件の中で私はあなたに予算委員会で質問をした。そうすると、自衛隊法の改正については、国連の義務を果たす、そういうような意味から考えても、これは改正の必要があるというような意向も述べられた。あなたはそのあとで記者会見をやって否定した形をとったけれども、あなた個人としては、その考えは変わりはない、こういうふうなんですね。これらの一連の問題をあわせて考えますというと、このPATO構想の持っている性格というのは非常に危険なものだというふうにこれは考えられるわけです。そういう点で明確に、こういう構想については、これは参加することはできないということを、まあ少しこれはこの構想そのものが、いま言ったようにまだ一つのアドバルーン段階かもしれませんが、少し早過ぎるかもしれない問題ですけれども、しかしいまのうちから、こういう事態の中に追い込まれる可能性は相当ある。そういう危険性を持っている。そういう中で明確にこれは防衛庁長官として言い切れるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  345. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何か岩間議員はPATO構想がもうできるものだというような前提に立ってお考えのようでありますが、そういう事実はありません。かりにハロラン君が言うように、PATO構想をやろうとすれば、日本が主役にならなければできないと思いますし、日本が海外派兵しなければそういうことは実効性がないでしょう。日本が現在の憲法を維持してそういう可能性があるか、そのこと一つ考えただけでも、PATO構想というようなものは真夏の夜の夢であると言わざるを得ない。私らはアジアにおいて日米安全保障条約を除く軍事保障関係の国際関係には入らない、そういうことを明言しているのでありまして、そういう点を十分御理解願いたい。全くそれは一記者の机上プランにすぎないということを申し上げるものであります。
  346. 岩間正男

    岩間正男君 あなたのこの委員会におけるいわば証言として聞いておきます。しかし、日本の現実は相当な部分でこれと歩調を合わせつつ進行している、そういう傾向があるということははっきり明言できると思う。  時間の関係から次の問題に進みますが、第二は、今度の訪米の中で一つの重要な問題になりました、先ほどから同僚議員から質問されております基地の返還と整理統合問題です。今度の中曽根訪米で、本土の基地、特に東京周辺の所沢の一部あるいは水戸射爆場などの返還にアメリカが同意した、こういうことが大きく宣伝されておりますが、しかし百二十二カ所に及ぶその他の本土の米軍基地というものは、一体全体的にこれはどうなるのか。ことに横田、三沢、岩国、横須賀、佐世保、これについてはこの前の委員会で質問をしたわけでありますが、これはどうなるのか。こういう問題にも今度の訪米の会談の中で触れたのかどうか。この点お聞きしたいと思います。
  347. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 百余にわたる基地は、おいおい話が進み次第共同使用とかあるいは返還とか、処理が進んでいくだろうと思います。またそういうふうに促進しようと思います。  いまあげられました幾つかの重要基地は、これは日本防衛にとっても、また極東の安全保障にとっても重要な基地であると私は思っております。しかし、部分的にそれらの場所が整理統合されたり、返還されたり、模様がえが行なわれるということは、これはあっていいことでありまして、現地要望等もしんしゃくし、また、われわれの自衛隊としての必要等もしんしゃくして、先方と話を進めていくべきものは進めていきたいと思っております。
  348. 岩間正男

    岩間正男君 横田その他については願望なんですからね。その願望を向こうに伝えたのかどうか。話し合いに具体的にそういうものが話題に出たのかどうか、その辺はどうなんですか。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米側が非常に必要不可欠と思っている基地については、これは米側に使用させておくということはわがほうの方針でもあります。いまあげられましたような基地は、大体そういう種類に入るであろうと私らは思っております。
  350. 岩間正男

    岩間正男君 結局、今度の訪米では触れなかった、こういうふうに了解したいと思います。  ところで、基地の問題ですが、ジョンソン証言でも明らかなように、いま基地返還、それからさらに自衛隊にこれは返す、あるいは民間に返す、こういう形で返還の問題が一つの大きな課題になっているわけですが、この返還の真のねらいはどこにあるのですか、アメリカ側の。これはもうはっきりしているのじゃないですか。ジョンソン証言の中でも言っておりますね。やはり、ドル防衛の立場で国防費を削減する。したがって、その肩がわりを日本側に負わせる。これがやっぱり一番基地返還にアメリカがここで同意している理由じゃないですか。むろん国民感情の緩和ということも、同時に副次的な目的としては出てきているだろうと思う。したがいまして、先ほどから、共同使用の場合の基地の費用はどうなるかとかなんとかいうようなこれは質問もありました。これに対する施設長官の答弁というものは、非常にこれは現実に合わぬですね。はっきり、アメリカのねらいは、日本側に返して日本に費用を負担させる、そこにあるのだ。ですから、あなたはいろいろ、共同使用の場合、両方で持つとか、話し合い、ケース・バイ・ケースというような答弁をされている。これは管理費は日本側が持つでしょう。経常費の負担というのはこれはあたりまえですよ。米軍側がやってきて、そこで燃料を使用したとか、それから食糧、それらの問題について、これは向こうが負担する。はあたりまえだ。基本的には基地の返還というものは、これは日本に返すという目的は、ドル防衛の、国防費のこれは軽減にあるのだという点ですね。この点はやはり明確にしなければならない問題だと思うのです。この点が基地返還の中における一つの性格です。日本側が考えている、あるいは国民感情に基づく、ことに東京周辺におけるところの米軍基地をこれ以上許すことはできないというこれは強烈な要請があります。そういうものにこたえるというような問題もあるでしょうが、アメリカ側の立場は必ずしも同一でないのだという点を、私はやはり当委員会でこの返還の性格として明確にしておくことが必要だ。そういう点を明確につかんでおいて、客観的な事実として、その上に立ってわれわれは事に処さなければならぬということを感ずるわけです。したがって、先ほど施設長官の答弁を聞いておりましたが、非常にあいまいですよ。この点ごまかしてはいかぬと思う。  次に伺いたいのですが、沖繩の基地の問題です。沖繩の基地の問題について三つの問題を聞きたいと思う。  一つは、一体次のような目標を持つ基地というものは、これは今度どうするのかという問題が一つです。第二は共同使用。先ほどから問題になってます共同使用の場合の基地については、一体どういう方法をとるのか。第三の場合は、米軍が依然として継続使用する、そういう基地、その場合には当然これは地位協定の適用というものが新たになされなきやならぬ。それに伴うところの多くの課題を持っているはず。この三つの問題について私はお聞きしたいと思うのであります。  第一の問題ですが、アメリカの第一海兵緊急派遣部隊、この基地、これはあの金武湾の沿岸にあります。私も沖繩に行って見たわけでありますが、さらに普天間に第一海兵航空団基地がある。日本の岩国にもこれはあるわけであります。アメリカの第一海兵緊急派遣部隊は、チャップマン海兵隊総司令がこの前の議会の証言で、太平洋のいかなる地点にも緊張が高まるに応じて急速に展開できると証言しているように、安保条約の目的と範囲を私は逸脱していると考えます。これは明らかであります。しかし、沖繩に全太平洋を対象にした補給中枢を置くというリーサー構想の問題が、これは衆議院の本会議で三月二十六日に問題になりました。中曽根防衛庁長官もそこに同席をしておったはずであります。これに対してはっきりと愛知外相はこう言っているわけですね。「安保条約の目的、範囲を越えるようなものであれば、沖繩返還に際して同意しない」、こういうふうに答弁しているわけです。これはあなたもあの席におられたから御存じだと思います。このたてまえからすれば、返還の沖繩に第一海兵緊急派遣部隊が残ることは認められないと私は考えるわけです。これに対して中曽根防衛庁長官はどうお考えになるかお伺いしたい。
  351. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約が適用されますと極東の安全及び平和維持に寄与すると、そうありますので、その範囲内において海兵隊が機能するということは認められると思います。
  352. 岩間正男

    岩間正男君 さっきから言いましたように、全太平洋を作戦の対象とこれはしている。これはチャップマンの証言でも明確。リーサー構想におきましても、沖繩の補給中枢をあそこに置く、こういうことになっているわけでしょう。それに対する質問で、外務大臣は、この安保の目的を逸脱するようなものについてはこれは同意できないと、こう言っているわけです。したがって、いまのような答弁では非常に部分的答弁になると思う。この性格について、そういう向こうの構想なんですから、その構想に対して、一体安保の範囲を逸脱するのかしないのか、目的に合致するのかしないのか、こういう点が出てくるわけです。それから外務大臣の意見に対してどうですか、あなたは防衛庁長官として。
  353. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣の意見が正当であると思いまして、米海兵隊司令官はどういう考えで言ったか知りませんが、外務大臣の意見どおりそれは適用さるべきであると思います。
  354. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとですね、これは岩国にもおるわけですね、この海兵隊緊急派遣部隊は。ことに最近は岩国のほうがもう主力になってるんじゃないですか。あそこは戦闘部隊なんです。戦闘機の部隊になっている。普天間のほうは本部はございますけれども、ここは御承知のようにヘリコプター部隊、こういう形になっているわけです。そうするというと、この本土の岩国にあなたの言われた望ましくない、そうして外相のこの意見に同意をされておるんでありますが、そういう点から考えれば、岩国の基地というものは撤去しなけりゃならなくなる、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 愛知発言のように、極東の平和及び安全維持に寄与するという安保条約の範囲内においてそれは機能すべきで、その発言は、それを実現する場合には、愛知発言のようにその機能の範囲内において行なわるべきであると思います。
  356. 岩間正男

    岩間正男君 岩国はどうです。岩国についてどういうふうに検討するんですか。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 岩国においても、安全保障の範囲内において機能する、そういうことで実施さるべきであると思います。
  358. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとチャップマン証言並びにリーサー陸軍長官のこの証言というものははっきりアメリカにはあるわけですから、それがこの安保の機能を逸脱しているわけですから、その任務を果たす岩国も当然第一海兵航空団というものは、これは撤去しなければならぬ、こういうことをはっきり言うことができるんじゃないんですか。この点については当然私は確認しておきたい。  次に今度はサイミントン委員会のあの速記録によりますというと、沖繩の牧港地区にある第七心理作戦部隊、これは朝鮮民主主義人民共和国政府の転覆あるいは中国本土進攻をそそのかす謀略宣伝を行なっています。ビラをたくさんまいている。これについて愛知外相は去る十二日の当院の沖繩特別委員会で、ここでもまた安保条約の目的の範囲以外の活動が返還後の沖繩で行なわれないようにするのが政府としての態度だということは、これは言い切っています。そうするとどうでしょう。第七心理作戦部隊が沖繩に安保の目的以外の謀略のような宣伝をやっておる。こういうことについて当面これは検討を加えて、この基地の撤去の方向に進まなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  359. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 条約の解釈に関する問題ですから、外務省の見解に従います。
  360. 岩間正男

    岩間正男君 それでは私は確認しておきたいと思います。しかし、こういう事実をこれは防衛庁長官として当然知っておられると思いますが、知っておられましたか。
  361. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 知っております。
  362. 岩間正男

    岩間正男君 知っておれば、なおさらのことですね。この基地というものは、これは撤去の方向で交渉すべきだと、こう考えてよろしゅうございますか。
  363. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ビラをまいたか、何かそういう具体的なことはよく知りませんが、ともかく外務大臣の言明のとおりやるべきであると思っています。
  364. 岩間正男

    岩間正男君 ことに川崎市でもこれは関係があるのですね。川崎市の木月というところの米軍のシッパーセンター内に第七心理作戦部隊日本分遣隊がいる。そうして謀略活動の宣伝物を印刷している。この部隊もそうなれば当然撤去しなければならないと思いますが、いかがですか。
  365. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう事実は私はよく突き詰めておりませんが、ともかく、外務省の見解に従うべきだと思います。
  366. 岩間正男

    岩間正男君 どうも中曽根防衛庁長官は、ここでは外務省べったりみたいな答弁をして、あなたらしくない。
  367. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外交優先ですから。
  368. 岩間正男

    岩間正男君 外交優先だから、ここでは隠れみのに入っちゃいけませんよ。これは防衛庁長官としての意見を明確に出すべきだと思うのであります。  それでは次に第二の問題に入ります。第二の問題は、一部返還されて自衛隊管理に移されている基地の共同使用についての問題、先ほどから問題になりました。まあ私有地は、これは民間に返すのでしょうね、返還されたもの、これはどうでしょうか。
  369. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは先ほど来申し上げておりますように、基地についてはケース・バイ・ケースで検討していく、そうして結論が出るべきものであります。
  370. 岩間正男

    岩間正男君 いま自衛隊管理に移される基地というものの大部分は、これは米軍との共同使用になるのですか、どうですか。
  371. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは先ほど申し上げましたように、四つか五つのジャンルに仕分けをして、その中に整理していくべきものでありますから、基地によって違ってくるだろうと思います。
  372. 岩間正男

    岩間正男君 むろん共同使用の場合があり得るわけですね、四つか五つに分けた中には。その場合についてそれじゃお聞きしますが、共同使用の場合に当然自衛隊米軍との間に、先ほどから問題になっております地位協定二条四項(b)の使用協定が当然結ばれるわけでしょう。それはいいですね、確認して。施設長官どうですか。
  373. 山上信重

    説明員(山上信重君) 沖繩についての御質問かと思いますが、沖繩についての御質問……。
  374. 岩間正男

    岩間正男君 沖繩です。
  375. 山上信重

    説明員(山上信重君) 自衛隊が共同使用するという場合においては、それは二条四項(a)もしくは(b)というような形態になろうかと思います。
  376. 岩間正男

    岩間正男君 共同の使用、そうですね。米軍のやつを使用する場合と、それから自衛隊管理のやつを使用する場合、私はいま自衛隊に移されて、返されて管理している、その場合を言っているのですから、これは(b)ですね。(b)の場合に、条文ひとつ読んでもらいたい。さっきからの答弁、非常に食い違っています。こうでしょう。「一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。」、こういうのでしょう。そうすれば、これは協定の、安保条約あるいは地位協定全体の適用があるのかどうか、この部分的な適用をするのかという制限規定なんです。ところが、あなたたちがこの前、先月の当委員会で私が要求した冨士演習場に関する協定全文を出してもらいたいと言ったが、出さなかった。あなたたちはとうとう要旨だけは出された。この要旨でも非常に重大な問題がはっきり出ていると思う。これによりますと、「2 本区域を米軍に提供し、使用させる際は、(1)使用期間中は、地位協定上の施設として取扱われる。」、こうなんでありますから、地位協定上の施設ということになれば、地位協定が全面的に適用されることになる。そうでしょう。ところがこの(b)項は、全面的適用とうたっていない。使用される、適用される部分については明記しなければならないといっているのですから。そうするとこれは、この協定は、実は私は二条四項(b)に即応していない。しかし、こういう形でこれは結ばれているのですか。だから私は原文を見たいと言っている。原文見ないと国会審議にならないわけですね。とにもかくにも、こういうふうに全面的に適用されるこの富士の例、そうしてしかも、これは国民に大宣伝をやりましたよ。この前返された十数カ所の基地の中で、東富士演習場というのは、これは面積の上からいうと、もう九〇%以上でしょう、これが返された。そうしてほんとうにこれは国民のそういう要望に沿うことができると大宣伝やったはずだ。ところがその後どうですか。昨年の十月から、この前要求したやはり資料でありますけれども、すでに八回、その後何回もやってきているでしょう。陸海空の総合演習までやっている。返されない前よりも、返されてからのほうがもっと激しいこれは演習を連日やっているでしょう。そうして、これは当然あそこで私有地を持っている地主との間に施設庁が結んだそういう協定があるわけです。その中には、使用する日をきめているわけです。その使用する日さえどんどんこれは越えて演習をやっているのがいまの現実じゃありませんか。これは認めざるを得ません。これは私は事実を述べている。  そうすると、これを沖繩に適用するのじゃないですか、この方式を。そうすれば沖繩の基地米軍に返した、それで、なるほど沖繩県民はだまされもしまいけれども、沖繩県民を一応なだめ、本土の国民をなだめ、そうしておくが、実際は何らこれは返還後も変わりはない。こういう形で推進される沖繩の返還、基地返還というものは、これは非常に重大な問題を私は含んでいると思うので、これはどうなんですか、防衛庁長官にお伺いします。このような東富士演習場のこの協定ですね、こういうのは沖繩に適用しないということをはっきり言明できますか一どうですか。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 東富士の場合には、北富士が使えないものですから、やむを得ず東富士を使っているという状態なんであります。沖繩につきましては、返還がきまって、返還後いろいろ地位協定を適用するに際して、基地の態様について話し合いが行なわれるだろうと思います。その話し合いの結果、具体的にどういうような運用形態が行なわれるかということがきまるので、いま東富士の情勢がすべての基地に適用されると考えることは間違いで、今後の話し合いその他によって決定されていくものであります。
  378. 岩間正男

    岩間正男君 そういう形の答弁では非常にかご抜け答弁です。私が問題にしているのは、返還という名目はやっている。しかし実質は取っている。そうしてしかも費用負担をさしている。そういう形での返還が、そういう協定を適用すれば、これを結べば可能だということです。これは全く国民を欺補した態度になるわけです。したがって、とうてい私は、国民の要求としては、こういうような実は二条四項(b)にも反するようなこういう協定は結んではならぬ、この点についてははっきり言明されるはずだと思うのです、 いかがでしょう。それを言明されない。先に行っていろいろケース・バイ・ケースなどということでのがれても、私は国民は信用しない。どうですか。これは長官に伺います、長官です。
  379. 山上信重

    説明員(山上信重君) 沖繩の場合と東富士の場合と、ただいま大臣が御説明になりましたように、これは問題は全然別でございまして、東富士の場合は、自衛隊管理する演習場を米軍に二条四項(b)によって使用させる場合のことについて、こういうふうに使用させるということが双方に協定されているわけでございます。その場合に、米軍使用の時に際して地位協定の各条項が適用されるということになっておりますが、沖繩の場合につきましては、施設をどういうふうにして米側に提供するかということについては、これはまだきまっておらないわけでございまして、沖繩の返還に伴いまして、施設提供をどういうふうにしてやるか、これは個々の基地について今後十分に日米間で話し合いを煮話めた上にケース・バイ・ケース、個々に、二条一項で提供するものもありましょう、あるいは自衛隊管理するものもありましょう、あるいは返還されるものもございましょう。たくさんございます施設について、今後の問題としてそれぞれケース・バイ・ケースに処理せられる、こういうことに理解している次第でございます。
  380. 岩間正男

    岩間正男君 一般論を聞いているのじゃない。
  381. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 岩間君にちょっと申し上げておきますが、中曽根長官、半というのを、実は六時というのをずっと無理して出てもらっております。もうそろそろ退席してもらいたいと思いますから、これ一問にしてくださいよ、あとまだちゃんと政府委員が大ぜいいらっしゃるのだから。
  382. 岩間正男

    岩間正男君 あなたのは一般論を言っているので、いろいろな場合が出てくるようなことを言っているのです。四つに分けたケースがある。その中で私は限定して聞いているわけだ。返還されて共用する場合があるだろう。おそらくあるだろう。百二十沖繩に基地があるのです。そういうものがあるだろう。そのときの問題について聞いているので、一般論について言っても答弁になりませんよ。あなたはそんな答弁してもだめです。時間を取るばかりだ。あなたの責任だ、いま一分か二分使ったのは。そんなばかな答弁ありますか。これははっきり長官にお聞きしておきます。
  383. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二・4(b)を読んでみますと、私は法律の解釈はよくわかりませんが、「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。」、全部適用があるとすれば全部適用されるということはあり得る。部分的に適用する場合には部分的に適用する。そういうことなので、必ずしも部分的に適用するということばかりではないようです。だからいまの東富士のような場合においても、全部適用されるということも、やっぱりこの中に含まれているんじゃないかと私思います。
  384. 岩間正男

    岩間正男君 なら、そう書くはずです。全部適用して、ちゃんと何も変わりがないと、行政協定上の意思だと、こういうふうに書くはずだ。ところが条文としてはこれに制限を加えている。ここのところのなにから言えば、拡大解釈になりますよ。法解釈は、これはともかく専門家に聞いたってわかりますけれども、これは非常に拡大解釈になるんで、こういうことではまずい。もう一つお聞きしたい。
  385. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 政府委員がおるんですから、どうぞ続けてください。
  386. 岩間正男

    岩間正男君 私が始めてからほんとうにまだあれですよ……。それじゃ、続けます、政府委員で。  施設長官、非常に心もとない答弁はごめんこうむる。きちっとやりなさい。いいですか。現在沖繩のこの中でこういう問題が、三つ目の問題は、返還されないで、そのまま継続される基地の場合に、これは私有地に対して当然安保条約の地位協定の適用がされるわけでしょう。そうなれば地位協定は当然防衛施設庁が民間の私有地の所有者と一つ一つ借用契約を結び、その結果新たに施設庁から米軍に提供する。こういうたてまえをとるのがこれは当然です、そうでしょう。安保を全面的に適用するということで返還が行なわれるんでありますから、そうすればそういうことをやらなきやならない。ところが、現在沖繩の米軍基地は百二十カ所もあって、その基地は、一九四五年、米軍の沖繩占領と同時に県民が収容所に押し込められた中で、一方的に取り上げられ、土地の原形をとどめないほど改造して、飛行場や演習場などにされたのです。それから一九五九年布令二〇号で、米軍と琉球政府との間で基本賃貸契約が結ばれて、米軍に一括提供した形になっている。ところでその契約の公文書が一体あるのかないのか、これはどうですか。いま事務を進めているでしょうから、あるかないか言ってください、時間の関係で……。
  387. 山上信重

    説明員(山上信重君) 個々の所有者との協約は、これは沖繩琉球政府と所有者との間にある形になっております。こういうふうに承知いたしております。
  388. 岩間正男

    岩間正男君 これは公文書をはっきりあなたたち検討してるんですか、いま。どうですか。
  389. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいまそういう総括的な調査をいたしている段階でございまして、今後具体的なものにつきましてさらに詳細な調査を進めたい、こういうふうに考えている段階でございます。
  390. 岩間正男

    岩間正男君 そこで、沖繩戦の砲弾の雨の中で土地登記簿などすべてが失われている。それから土地所有を確定すべき公文を失われている。九九%まではわからないと私たちは聞いているんですが、新しく契約をやり直す場合、一体どうするのか。そうしてこれに対していまどんな措置をとっているのか。聞くところによると、施設庁の防衛施設準備事務所、これは向こうでもうつくられているのですか。定員が二百六十人、しかしこの人たちの力で、約四万人にのぼる地主があるわけでしょう。十三万筆による契約、これを一つ一つ洗い直すということは可能ですか、どうですか。
  391. 山上信重

    説明員(山上信重君) 返還時点におきましてどういう形で提供するかということは非常にむずかしい問題でございます。おっしゃいますように沖繩におきましては民有地が相当多うございます。したがってこの提供の業務につきましては、われわれといたしましては、あくまで所有者との話し合いを前提にしてやってまいりたいということで、明年度において準備事務所の設置をして、そうしてそういったような返還時点におけるところの提供が円滑にいくように準備いたしたいという考えのもとにただいま予算の要求中でございます。まだできてはおりません。明年度においてつくろうかというふうに考えておるのでございます。  それから、これらの点につきまして、具体的な所有権等の問題につきましては、これは単に軍用地だけの問題でなく、全般の土地所有権の問題については、さらに国の機関においていろいろ具体的な調査をいたしております。そういうような確定も必要でございましょう。しかし、われわれといたしましては、当面、所有者とそういったような話し合いを前提にして考え、そして今後もしこれらがさらに国の他の機関によるところの調査によって修正される場合には、その修正に従っていくよう、こういうような方向に進みたいというふうに考えて構想を練っておる次第でございます。
  392. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく非常にこれは複雑でむずかしい問題、そういうものをかかえているわけでしょう。四万人の地主、これを一人一人当たっていって契約をし直す、こういうことは非常に事実上これは、七二年返還だということを言われておりますが、もう一年半です、その間にできますか。そこで、実は防衛施設庁や外務省の中では、これは間に合わない、だから特別立法によって一切の手続を省いて無条件に提供する措置をとらなければならない、こういうことを考えておるということを聞いておりますけれども、これはほんとうですか。
  393. 山上信重

    説明員(山上信重君) 今後、沖繩返還に伴うところの協定に伴ういろいろな立法措置の問題につきましては、これから具体的にどういうふうにするかということを、まだ検討の余地がたくさんある問題でございまして、ただいまどういうふうにするということをきめておるわけではございません。ただ、私が申し上げたこと、先ほどの提供の手続については、そういうものを原則としてまいりたい。そういったような暫定法の必要性があるかどうか今後検討してまいりたい、そういうように考えておる次第でございます。
  394. 岩間正男

    岩間正男君 暫定法とかなんとか言っていますが、これは全く占領下の非常立法ですね。全くファッショ的なやり方で、長い間土地の返還を求めて戦ってきた沖繩の百万県民の要求、こういうものを、当然の権利、こういうものを返還に期待しておった。ところが、実際はこれをじゅうりんする、そういうことになるんです。はっきり言えますか、どうです、こういうような特別立法はしない、こう言えますか。これはどうなんです。こんなやり方は許されない。沖繩返還、そういう期待を裏切るものです。これは正常な返還ではない。非常事態の返還、こういうものをおっかぶせて沖繩返還の中にどろを塗るということはとても許されないことです。どうなんです。この点についてはこういう特別立法はしないということを言い切れますか。どうです。あなたはとにかく施設庁の責任者なんですから、最高責任者としての意見を伺いたい。あなたの見解を伺いたい。だめだったら個人的に答えてください。
  395. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいま申し上げましたような所有者との話し合いを原則としてやってまいりたいというふうに考えておるのでございまして、特別立法、暫定的なそういったような特別立法の必要があるかどうか、今後検討してまいりたい。かように考えております。
  396. 岩間正男

    岩間正男君 要するにあいまいではっきり言い切れないですね。たいへんですさの立法などということになってきたら、非常に重大な問題になりますから、私は、やはりこの委員会を通じて答弁を明確にさしたほうが、実は今後の問題をスムーズに解決できると思いますが、どうですか。もしもそういうような一方的にとぐろを巻いているような非常立法ということになると、非常に沖繩の問題は私は困難に直面せざるを得ない。そういう問題をはらんでいる。それに対するやはり政府の責任というものを明確にしておく必要がある。どうですか。もう一度重ねて聞きます。
  397. 山上信重

    説明員(山上信重君) 先ほどお答え申し上げましたように、原則としてそういったような所有者との合意ということを前提にして、われわれは進めてまいりたいというふうに考えておるのでございまして、暫定法の必要性につきましては、今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  398. 岩間正男

    岩間正男君 あとのほうわからぬ。慎重に検討してまいりたいと。こういうふうにつくりませんと、こう言えば明確です。男も立つけれども、何だか先のほうはうまいこと言っておいて、原則なんということは聞いているのではない。具体的ないま当面している問題、一年半の問題です。そういうふうななまくら答弁で許されると思うのですか。少なくとも私はそういうものを了承することはできない、はっきりしてください。  次に、それではもう一つ最後に、これは第三の課題としてナイキの基地の問題について伺いたい。  第一に、九月二十三日の朝日新聞の報道によりますと、阪神中京地帯のナイキ第四高射群は五カ所に陳地を置く予定であったが、一個中隊の配備を当分断念し、同高射群を四個中隊で編成する方針を防衛庁が固めたとしているが、これは事実ですか。
  399. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 第四高射群は現在岐阜と饗庭野が一応決定してすでに工事に入っております。それから大阪府の深山地区を一応予定いたしております。第四、第五の予定地は一応三重県及び和歌山県の地区で現在調査検討中でございます。したがいまして、第五中隊をはずすというようなことは現在考えておりません。
  400. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとこれはなんですか、当分断念というのは、当分なんであって、全く計画を捨てたというのでなくて、反対運動などが弱まって、機会があれば計画を立てて第五中隊も置く、こういう計画だと、こういうことですね。いいですか、どうなんです。四つでやめるというのか、どうなんです。
  401. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 和歌山県と申しますか、大阪市の南側のほうの基地につきましては、鋭意調査いたしておりますけれども、なかなかこちらの考えているような理想的な候補地が見つかりませんので、さらに今後とも時間をかけて調査検討いたしてまいりたい、こういう趣旨でございます。
  402. 岩間正男

    岩間正男君 それはなんですか、各務原と、それから饗庭野と能勢と、それからいま問題にしようとしている白山町と、この四つのほかですか、大阪の南というのは、そうですが。そうですね。  それじゃ、いま問題になっている三重県一志郡白山町のナイキ基地設置についてお聞きしたいと思います。同じ朝日新聞の報道によりますと、白山町は地主との買収交渉が最終段階に入り、近くまとまる見通しだとのことですが、買収交渉はもうまとまったのかどうか、契約はすでに済んでいるのかどうか、お聞きします。
  403. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 三重県の予定地につきましては、現在地主との間におきまして現地防衛施設局のほうで鋭意交渉いたしておるというふうに聞いております。しかしながら、その結果まとまったかどうかということにつきましては、まだ報告を受けておりません。
  404. 岩間正男

    岩間正男君 怠慢もはなはだしいね。地対空のナイキ基地をいまつくろうという、全く迅速を要する課題でしょう。事務の上じゃ、どうですか、まだ報告を受けていない、鋭意研究中——そんなことを言ったって話になりません。これに対して地元の法務局の職員にこれは確かめた。目下登記中で、謄本を出すわけにはいかないと答えている。二十四日付で登記ができており、いま仕事に追われて大わらわである、と。契約は済んでいるじゃないですか。どうして国会答弁だからといって、そういうことを言うのですか。
  405. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 用地の交渉につきましては、事務的にすべて防衛庁のほうの出先で実施いたしております。したがいまして、防衛本庁のほうには逐一そのような報告が必ずしもまいってはおりません。まだ現在私のほうとしましては詳細な結果の報告は承っておりません。
  406. 岩間正男

    岩間正男君 私が一時ごろでしたか、政府委員室に電話をして、私はこの質問を追加しますからと言ったのです。そのときに電話をかけて聞かなかったのですか。怠慢じゃないですか。そんな、鋭意何とか中——この答弁のことばというのは、答弁用語辞典の中にあることばをみな出してきた。そんなことじゃだめですよ。事実はどうか。われわれは調査したのです。登記中ですよ。二十四日に登記している。ただ手続がいまできないから、この写しはとれなかったということです。あなた方、知らないのですか。われわれより知らない。これは長官いないな。——こういう怠慢じゃいかぬと思うのですがね。相手の地主、これは目下鋭意交渉中であるから、地主はわかるでしょう。だれですか。それから面積どれくらい、価格は幾ら、これを教えていただきたい。
  407. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 現在施設庁のほうで交渉いたしておりまする白山町の用地につきましては、大体面積は六十六万平米程度だというふうに承知をいたしております。それから所有者は一名と申しますか、青山興産という会社が所有しておるというふうに承知いたしております。
  408. 岩間正男

    岩間正男君 価格、値段は。
  409. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 価格等につきましては、現地防衛施設局で行なっておりまして、予算の範囲内において交渉いたしておるものと承知いたしております。
  410. 岩間正男

    岩間正男君 この青山興産の代表取締役の二人くらい名前をあげてください。
  411. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) はっきり記憶いたしておりませんが、村上甚次郎という人と、並びにその息子さんの二名だというふうに承知しております。
  412. 岩間正男

    岩間正男君 村上義治ですね。これは最初はどういうわけで買ったのですか。私たち調べたところによると、三十九年ごろから住宅分譲地にしようとして買い占めた、こういわれているのですね。  そこでお聞きしますが、これだけで十分なんですか。あとはもう買い足す必要はないのですか。どうですか。
  413. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 大体おおむねこれで間に合うというふうに考えておりますが、少なくとも建設工事そのものには十分間に合います。しかしながら、将来さらに十分な保安用地をとるというようなことになりましたならば、若干買い足しをしなければならないようなことが起きるかもしれませんが、当面建設には支障ない面積でございます。
  414. 岩間正男

    岩間正男君 その予定地はわかっておりませんか。
  415. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) その他の、できればほしいという用地は大体町有地であるというふうに承知いたしております。
  416. 岩間正男

    岩間正男君 そこでお聞きしますが、この白山町のナイキ基地設置については、これは防衛庁は地元住民の意見というものを十分聞いたのでしょうね。そう解釈してようございますか。
  417. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) まず私のほうとしましては、ナイキの基地として適当であるかどうかということを専門的に調査いたしまして、さらにその次の段階といたしましては、その予定地を実際に取得できるかどうかということが第二の段階でございまして、そのために現地の所有者と実際に交渉いたしておるということでございます。で、大体用地の取得が見込みがつきましたならば、具体的に地元の町当局なり、あるいは関係者と十分協議いたしてまいりたいというふうに思っております。
  418. 岩間正男

    岩間正男君 これはあべこべじゃないですか。一番地元の青山興産はそういう土地のブローカーか何か知りませんが、利益を得る、もうけるために買ったのじゃないですか。だから、基地ができればだれが一体被害を受けるか、ここのところを無視して法的にかっこうのいい登記関係とか、法的にくぐり抜けるようなやり方をもしか防衛庁がとるとすれば、これは私は非常にここのところは国民との断絶を深めるばかりです。まず地元の人たちの了解を得る、そういうことが必要だと思うのですが、全然これは了解を得なかったのじゃないですか。それともだれかに話しましたか。
  419. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 先ほどお答えいたしましたように、用地の取得という問題が絶対に先決条件になるわけでございまして、その意味におきまして、現在防衛庁としましては土地所有者との交渉に最も力を注いでおり、これが一応めどがつきましたならば十分地元の方々と協議いたしてまいりたいというふうに考えております。
  420. 岩間正男

    岩間正男君 外堀を埋めて内堀の中でやらせようということでしょう。法的に土地をちゃんと登記しちゃいました。これはわれわれ防衛庁土地でございます。国有地でございます。おまえたち反対してもしようがない。その中に追い込んで相談というのは何ですか。相談ですか。これは権利を尊重した相談ということが言えますか。これほど国民というものを無視されているのだ、あなたたちは。それは長沼の問題なんか非常に大きな問題になっているし、当然高射群ができれば、ナイキができれば、しかもこれは核だって積める可能性が多大に開発されてくる。そういう体制の中では地元の人はだいへんなことだと思います。ところが個々には知らせない。そうして、とにかく所有者とだけやって、そうして登記を済ませた。それで形だけはとり、外堀を埋めてしまって内堀。言うことを聞かなければしかたがない、こういう形のやり方を防衛庁はとるんですか。そういうふうにしか思えない、いまのやり方は。どうなっているのか。
  421. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 三重県の予定しておりますところは、ナイキの、一般論としては、一部反対の動きのあることを承知いたしておりますが、特に地元のほうにおきまして特別強い反対があるとも考えておりません。そういう意味におきましては、今後用地取得をその地元の方々と十分打ち合わせいたしまして、ナイキの実情について御説明申し上げ、あるいはその危険性等につきましても十分御説明いたしましたならば、十分に地元の同意が得られるだろうという一応の防衛庁の判断のもとに作業を進めてまいっておるというふうに考えております。
  422. 岩間正男

    岩間正男君 その判断は狂っている。事実に合わない。そうでしょう。あなたたちは四月十八日以降に白山町の町長に会ったでしょう。町長そのほかに会って、そこのところだけで、何というか、合法的な一筋のものをかすかにこしらえて、そういうものだけを持っているでしょう。その結果はたいへんなことになるんですね。一般住民に対してどういう影響を持つのか、このところが一番ですよ。国民の自衛隊とか何とか言っているが、全然国民の自衛隊ではない。一般住民はこういうことを一向知らされていない。そうしてこれが四月十八日の地方新聞に発表されました。伊勢新聞だったと思います。四月二十六日、民主勢力の人たちがあそこの労働者その他平和を守る、あるいは婦人、そういう人たちが、民主的団体が中心になって、地元白山町でナイキ丁基地反対の署名行動を行なったはずです。そのときの資料がここにありますが、これは家城、川口、八ッ山の山地区で、白山町全部ではありませんが、これらを訪問した。そうしたらわずか一日で設置反対の署名を千五十三名分集めた。そうして資金カンパも一万七千九十七円集まった。白山町の有権者は大体九千五百人ですから、九人に一人分をわずか一日で集めたことになる。訪問した家のうちで設置に反対しないとか、考えさせてほしいと言って、反対署名を断わった家はわずか一割しかなかった。あとの九割は丁寧に応待して快く署名してくれておる。これが現地のありのままの姿、これが現実です。以上は四月段階のことであります。その後おもてだった動きもなく、住民の意向は現在も四月段階とそれほど変わっていない。防衛庁はナイキ丁基地設置に対する住民の反対意向を知っていない。知っていると言っても知っていない。このことはすでにあなたは答弁しておる。いいですか。この町長だってそうです。町長はどういう態度をとっておりますか。御存じですか。
  423. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 御質問の趣旨がよくわかりませんが……。
  424. 岩間正男

    岩間正男君 この設置について町長と施設庁のほうでいろいろ話をしたはずです。そうでしょう。
  425. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 町長と、取得の問題につきましては先ほど来申し上げておりますように、現地防衛施設局のほうで折衝いたしておりますが、具体的に現地の町長さんとお話をしたかどうか、私のほうはそのような報告は受けておりません。
  426. 岩間正男

    岩間正男君 それではそういうところを詳しく調べていただきたい。四月十九日付の伊勢新聞によるのですが、白山町の町長は、設置内定の新聞発表のあった当時、はっきり設置反対の態度を表明しておる。これは新聞でははっきり報道した。しかし、これはその後賛成のほうに変わったようです。そこに何か圧力が動いた、そういうことは十分に考えられることなんです。いつでもあることなんです。こういう事態を十分にこれはお調べを願いたい。もう一度これは十二日に内閣委員会がありますから、そのときまでにもつと詳細に御報告をいただきたい。  最後に、時間がございませんから、申し上げたい。大体この場所はどういう場所か。厚生省の公園部長さんおいでになってますか。
  427. 中村一成

    説明員(中村一成君) はい。
  428. 岩間正男

    岩間正男君 私お聞きしたいのは、多くのことじゃありません。東海自然歩道というのは三重県ではどこを通っているか、これをちょっと教えてもらいたい。
  429. 中村一成

    説明員(中村一成君) 東海自然歩道は、三重県の鈴鹿山脈を南へおりてまいりまして、それから鈴鹿峠で実は二つに分かれるわけでございますが、一つは北のほう滋賀県のほうに参るものと、それからもう一つは南へおりてまいりまして、ただいまお話の出ていますところの白山町、青山町あたりを通過しまして奈良県の室生のほうにいく、こういうコースになっております。
  430. 岩間正男

    岩間正男君 これは防衛庁施設庁、御存じですか。
  431. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 厚生省並びに県のほうでそのような遊歩道路計画があるということにつきましては、私のほうは全然承知いたしておりません。
  432. 岩間正男

    岩間正男君 ここでもぶつかっているわけです。最近の公害です。そういうところにやはりハイキングコース、そのために自然遊歩道というのが全国的につくられている。この問題はいまの公害対策の背景を控えているだけに、重大な問題なんですよ。こういう問題とまっこうからぶつかっている。ここに地図があります。全くまん中を通っている。この買収基地のまっただ中をこの遊歩道路は通っている。これはどういうことなんですか。こういう問題について目をそらして、そして公園部が後退するとは私は考えておりませんけれども、公園部長さん、どうです。この問題についていままで御存じだったですか。御存じなかったですか。
  433. 中村一成

    説明員(中村一成君) 私どものほうは、いまの先生のお話は承っておりません。それで、私どもはこのコースにつきましては、三重県の担当部局と相談しながらただいま実施の案を考えておりますが、今日までそういう話は承っておりません。
  434. 岩間正男

    岩間正男君 日本の分裂した行政の姿なんだ。厚生省は厚生省でわが道を行く、防衛庁防衛庁でわが道を行く、これは何だ、典型的だ、こういう形の中で一番苦しむのはだれだ。私はくどく言う必要はないと思う。公害はいま日本列島をおおっている。そういうものの対策として、この自然遊歩道というものはなまやさしい問題じゃないですよ。基本的な問題になってくる。公園部は当然これは進めるだろう。ここで高射砲になっているからここをよけて通るということにはいかぬだろうと思うのですよ。私はそういう点で、長官がお見えにならぬから、この次なお続けてやりたいと思いますけれども、こういう矛盾の中にこれを進められている。そうして三次防の約束でありますからこれをやっておかないとぐあいが悪い。アメリカからレアードも来年来るでしょう。そうすると日本防衛体制、四次防に入る前に三次防はどうなる、そうしていろいろいままで問題にしてまいりました本土の沖繩化の問題が一方ではどんどん進められている。そういう体制の中でこの高射砲というのは急がなければならぬ。そういうことはあなたたちそこのところだけ穴を掘ってみたんじゃ話にならないでしょう。日本の全般のやはり総合された対策の中でこれは問題にされなければならぬ。私はこのような高射砲の設置というようなもの、強引に住民の反対を押し切って、あるいはまた日本のそのような自然を守る計画あるいは公害から健康を守る計画とはっきり対峙をしているこういう問題を押し切ってやるということになれば、これは当然国民の指弾を受けることはあたりまえと思う。そこで私はお聞きしたいのでありますけれども、このような反対運動を押し切ってやる考えがあるのかどうか、あるいは徹底的にこれは住民とこういう問題について話し合い、そうしてできればまあこれは撤回すること、私はそのことを要望して、私の質問を終わります。答弁があったらやってください。
  435. 江藤淳雄

    説明員(江藤淳雄君) 防衛施設の中には国立公園もありますし、国定公園もございます。今度のナイキ陣地の場合におきまして、その遊歩道の計画との関係におきましては十分調整の余地もあり、また可能性があるというふうに考えておりますので、まあ今後そのような問題がございますとしましたならば、厚生省と十分調整した上で相互の実現ができるようにいたしたいと思います。またその可能性が十分あると考えております。
  436. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。  次回は十月十二日午前十時三十分開会の予定でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十一分散会