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1970-04-09 第63回国会 参議院 逓信委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月九日(木曜日)    午後一時十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         近藤 信一君     理 事                 長田 裕二君                 新谷寅三郎君                 松平 勇雄君                 永岡 光治君     委 員                 植竹 春彦君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 白井  勇君                 菅野 儀作君                 久保  等君                 野上  元君                 青島 幸男君    国務大臣        郵 政 大 臣  井出一太郎君    政府委員        郵政大臣官房長  野田誠二郎君        郵政省郵務局長  竹下 一記君        郵政省貯金局長  山本  博君        郵政省簡易保険        局長       上原 一郎君        郵政省人事局長  中田 正一君        郵政省経理局長  溝呂木 繁君    事務局側        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○簡易郵便局法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件について、おはかりいたします。  郵政事業及び電気通信事業運営並びに電波に関する調査のため、国際電信電話株式会社の役員を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 簡易郵便局法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法律案に対し質疑のある方は、順次御発言願います。
  6. 野上元

    野上元君 郵政省全逓との間の紛争が長く続いておりまして、国民の間でも相当問題になっておったようでございますが、きょうの新聞を拝見いたしますと、郵政大臣全逓委員長との間のトップ会談によって事態収拾をする可能性が出た、こういう記事を拝見したんですが、大臣の御努力に対しまして、敬意を表したいと思っておりますが、どういう状態なのか、一応ひとつ簡単でもけっこうですから、御説明願いたいと思います。
  7. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 長い間御心配をかけました郵政関係紛争でございますが、本日未明に解決のめどがついたわけでございます。この間約十五日、たいへん焦慮をいたしながらも長引きまして、国民の皆さまにたいへん御迷惑をかけましたことをおわびをしたいと思うのであります。  今回の争点は非常に抽象的でございまして、経済的な要求というふうなものではなく、当局側管理の体制に対しまして組合は不満がある、こういうところに中心があったわけでありますが、まあこの姿勢がいいとか悪いとかいう問題は、なかなかきっぱり割り切れない問題ではございますが、相互誤解があったのではいけませんし、できるだけひとつアプローチしながら問題の所在を発見したいということで、鋭意組合幹部と省の首脳との間で何度かにわたって会談を持って煮詰めてもらいました。まあその結果は本朝の新聞等でもごらんでありましょうが、省のほうに行き過半があるとするならば、これは厳に戒めなければならないし、組合の側においても十分に御理解をいただいて、御協力を願う点は歩み寄っていただく、まあこういう趣旨でございまして、幸いその点の理解に達して、こまかいことはもう申し上げませんが、個々の細目にわたりましては、一つ一つ、できるものはできる、むずかしいものはむずかしいと申し上げて、その間の仕分けをして、そうして歩み寄りが成立をしたと、こういうふうにひとつ御了解を願いたいと思います。  なおまた、この郵政労使関係というものは、皆さんも御心配くだすっておりますように、かなり歴史沿革もありますし、まあ根も深いと言わなければなりますまい。そういう点は、今後にわたりまして、なおひとつたゆみない注意を払いながら努力をしてまいろう、かように心得ておるわけでございます。どうか、そういう際にも、またよろしく御協力をちょうだいしたいと存じます。
  8. 野上元

    野上元君 私も、こまかい内容についてここでお聞きしようとは思いません。ただ私も、この間この委員会大臣も御列席のところでこの問題を若干取り上げまして、質問したことがあるわけですが、そのときに申し上げたのは、とにかく会って話をされたらどうですか、会わないで、お互いまた聞きでお互いを評価し合うというようなことは、これはもう不幸の始まりだ、したがって郵政大臣もちょくちょく向こうトップとお会いになって、そうして向こう考え方もよく聞き、あなたの考え方もよく話をし、そこに相互理解が生まれるだろうというような話を申し上げたわけですが、まあそれを実行していただきまして、私ども非常に敬意を表しているわけですが、このトップ会談をやられてどういうふうにお考えになりましたか、トップ会談というものについての効用を。
  9. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これは話せばわかると言いましょうか、対話がどうも従来あるいは少しく疎通を欠いておったのではないかという感じはいたします。いずれにせよ両者が協調せずして郵政事業の発展はあり得ないですから、そういう大乗的な立場に立てば、お互いに肩ひじを怒らしていてもまことに知恵のない話ですから、そういう点の打開のために私もたいへん参考になりましたし、全逓側におかれてもそういう点を御理解が増したのではないか、かように存じております。
  10. 野上元

    野上元君 法律的にやかましく言いますと、団体交渉権というのは、限られた人々が持っておるわけであって、その人たち法律の定めに従って交渉し、ものごとを決定していくということは当然だと思うわけですが、それだけではやっぱり決定できないものがあるわけです。そういう場合には、進んで私はトップ会談をやられることが好ましいというふうに常々考えておったわけですが、大臣もいい経験をされたということでありますから、将来ひとつこれを生かしてもらいたいと思うんです。  それと同時に、もう一つお聞きしておきたいのは、これは、この事件が——紛争が発生したのは三月でしたね、三月の下旬ですか、中旬ごろからですか。
  11. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 二十五日です。
  12. 野上元

    野上元君 したがってその間に、労働組合のほうとしては、第四波あるいは第五波というふうに戦術を強めていっておるわけですが、そのために全国的に相当多くの郵便物が滞留しておる、こういうことで、国民に迷惑をかけておるわけですから、そのタイミングの問題ですね。トップ会談タイミングの問題についてお聞きしておきたいんですが、これだけ長引かさなければトップ会談効果がなかったのか、もっと早く国民に御迷惑をかけないうちにトップ会談収拾する道はなかったのか、その点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  13. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私も、少し長引き過ぎたという感はいたしておりますが、ただ組合側要求項目というものがかなり広範多岐にわたっておりまして、それを一つ一つ整理をするためには、事務当局の側でも鋭意汗をたらして努力はしたはずです。これは私もずっとその経過を見守っておりました。そういう点がやはり少しく長引いた理由ではないか、こういうふうに考えています。
  14. 野上元

    野上元君 そうしますと、やはりトップ会談としては、あのタイミング以外にはなかったというようにお考えですか。
  15. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ずっと経過を見守っておりまして、一体いつがその適切な時期かということを注意しておったんですが、まずまずこんなところではなかったかという感じがしております。
  16. 野上元

    野上元君 いずれにしても喜ばしいことだと思います。  そこで、この前もこれは大臣にちょっと示唆しておいたんですが、いま地方紛争が起きるケースもかなりあるわけです。というのは、御承知のようにいま郵政局長は直接交渉の責に当たっておらない。ちょうど大臣のような立場に立っておるわけですね。したがって労働組合郵政局長が会うということはなかなかないんですね。だからそういう点について、もう少し検討が必要なんじゃないか。やはりあまり労をいとわずに郵政局長みずからが組合最高幹部と会って、ものごとを解決していくというような昔あった慣例を、この際もとへ戻してやるような御意向はないですか。
  17. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その点、私はあまり歴史沿革には詳しくないんですが、最近は郵政局長地方でそれぞれ労組の幹部と会うようにしておるという報告は受けておりますが、それにかかわらず、こういう問題をかみしもつけて、ともかくかた苦しい立場で会っておるんでは意味がありませんから、今後の指導は十分そういう点も御指摘の方向に指導してまいりたい、こう思います。
  18. 野上元

    野上元君 先ほど申し上げましたように、やはり人を間に置いての話し合いとなりますと、どうしても曲がって伝えられる、あるいはまた小さなものが大きく伝えられる、大きいものが小さく伝えられるというような、つまらぬ誤解相互に生じるという可能性があるんですね。直接話しすれば、そのときの雰囲気とか、あるいはことばづかいだとか態度だとか、いろいろな要素があるわけですから、それらを総合的に判断をして、向こうはどういう態度でこれが出てきておるかというようなこともわかるわけですから、私はぜひそのことはやっていただきたいと思うのです。今回でも私は、全逓委員長郵政大臣がお会いになって、お互いがそのことばづかいやら態度やら等を判断しながら、これが最後の回答だなというふうに思うか、いやまだ八分だというふうに思うかは、そのときのやっぱり雰囲気というものが大切だと思うんですね、私もずっと経験してみまして。だから、私は特にそういうことを申し上げておるわけですが、トップの人がどういうことを考えておるかということを直接にお互いが知り合うということは、私は事業にとってプラスにこそなれ、決してマイナスにはならぬというふうに考えますので、ぜひそういうふうに指導してもらって、郵政局長みずからに地方における最高責任者の責めを果たしてもらうというふうに、ぜひ指導願いたいと希望しておきたいと思います。  そこで人道上の問題でございますから、どうぞ若干の時間、御退席いただいて食事をとっていただいてけっこうでございます。  中田さんに質問したいと思いますが、これも人のことばを引用して申しわけないのですが、ゲーテがこういうことを言ってるのですね。夕方、私は千匹のハエをたたき殺した、しかし早朝、私ば一匹のハエに起こされた、こういうのですね。これはどういうふうに解釈されますか。
  19. 中田正一

    政府委員中田正一君) 私、不勉強でゲーテの詩をあまり読んでおりませんので——突然の御質問で、それはまあゆっくり——いろいろの面から考えられると思うのでございます。具体的に先生のほうからお示しいただいて……。
  20. 野上元

    野上元君 いや、私も別に実は勉強しておるわけじゃないのです。たまたまきのう汽車の中である部分を読んでおったら、そういう字句が出てきた。これは郵政省労務管理対策によく似ているのじゃないかなあというふうに実は考えて、あなたに質問してみたのです。で、従来ややもすると労務政策というものは、すなわち治安対策だと、こういうふうに考えられがちだったのですね。石田博英さんが論文を発表しておるのですが、それにもやはりみずからそれを認めるような発言をされておるわけですよ。従来ややもすると勤労者対策といえば治安対策社会保障対策といえば貧乏人に対する施しの政策と、こういうふうにわれわれは言われてきた。確かにわれわれはこれを反省しなければならぬ。そうでなければ自民党の生きる道はないのだと、こういうふうに言われているわけですね。その自民党政権下にある郵政当局においてもやはり同じような考え方で今日まで来られたのじゃないかという気がするのです。すなわち、労働政策というものは治安対策の一部である、こういうふうにもう労働組合の諸君を感じておるようですね。その点はどうですか。
  21. 中田正一

    政府委員中田正一君) いろいろの立場から、その立場立場の解釈があったのであろうと思いますけれども、郵政省としては労働対策労務管理の基本というものは、これはやはり話し合いによって、職員との意思疎通によって、組合との対話によって解決していく、ごく常識的にものごとを処理していく。ことさらに作為を加えるということなしに、まあなかなかうまくいきませんけれども、たとえば水の流れるがごとく進めていくべきものであろうというふうに——ごく常識的に進めていくべきものであるというふうに考えております。
  22. 野上元

    野上元君 きょうは、それが本来ではありませんから、あまり突っ込んだ話は遠慮しますけれども、この問題はやはり郵政事業運営にとって最も重要な問題であることには変わりはないと思うのです。特に労働集約的な郵政事業ですから、どうしても従業員の全面的な協力がなければうまくいかない。将来機械化するといってもその効果はなかなか期待できない、これは郵政審議会公社化に対する答申の中にも述べられておるように。したがって労務対策というのは——従業員対策というものは、非常に重要な要素を持っておるというように思うので、その点は特に人事局長のあなたの肩にかかっておるわけですから、慎重にやっていただきたいというふうに実は考えるわけですが、そこで先ほどのゲーテことばではないけれども、千匹のハエを全部たたき殺しても一匹残っておると、朝その一匹のハエに起こされるわけですから、やっぱりもっとうまい方法があるのではないかということを示唆しておるのではないかと私は思うのです。そのことをわれわれ自身もやはり考えていかなければならないし、郵政当局もその点はまあ覚えておいていただきたいと思うのです。  それから、アメリカでやはり郵政省従業員全面的ストライキをやりましたね。そして軍隊が出動して郵便事業をやるというような大問題にまで発展したけれども、結果的にはベースアップ政府側がのみ、この事態収拾したということなんですが、アメリカにおける郵政労働者労働組合に対しては、法律ストライキ権が許されておりますか。
  23. 中田正一

    政府委員中田正一君) 法律上は許されていないというふうに承知しております。
  24. 野上元

    野上元君 そうしますと、あなた方から見てアメリカ労働組合のやり方は非合法だと、けしからぬというふうに見ておられますか。
  25. 中田正一

    政府委員中田正一君) 詳細にアメリカ法制承知しておりませんけれども、おのおの国情、またその国の法制、またいままでの運用、そういうものによって、国によって差異がございますので、一がいにアメリカ事情日本法制日本現状をもって判断することはむずかしいであろうと思うのでございますが、ただわれわれのいままでの過去の例、現状から見ますれば、アメリカの場合も一般的、抽象的には合法的でないストライキであったんだろうというふうに思います。
  26. 野上元

    野上元君 これも、私も新聞記事内容しか読んでおりませんからよくわかりませんが、私もあなたが言われたように、アメリカ郵政労働組合にはストライキ権は許されておらないというふうに承知しておるのですが、しかし今回違法なストライキによってもこれは処分はしたくない、こういうふうに言っております。処分するどころか、一般労働者の六%のベースアップの上にプラス八%のベースアップを加算して、この事態収拾したということなんですね。これは非常に含蓄のある、示唆に富んだ私は収拾策であろうと思うのですが、その点について日本郵政当局はどういうふうにお考えですか。
  27. 中田正一

    政府委員中田正一君) 先ほど申しましたように、その国情、またその法制運用、最近の具体的な仕組みということによって違うわけでございますが、日本の場合、郵政省全逓との間では具体的にこういった問題をめぐってあらかじめいろいろの話し合いがなされ、ある事態に到達した場合にはある措置が行なわれるということを十分申し入れ、警告しておった経緯があります。労働組合側も覚悟の上であるということで、そういった面は割り切っておるという事情もございます。まあアメリカの場合には、はたしてそういったことについて事前にどういうような、こういった問題についての意思疎通が行なわれておったのか承知しておらないわけであります。この問題についても部内でいろいろ、これは非公式に、雑談的に意見交換が行なわれたり、あるいは労働組合幹部ともこれまた非公式に、雑談的に意思疎通を行なったことはありますけれども、その場合、ただいまお示しのような問題が提起されたことはございます。その場合、まあわれわれ次のようなことを申し述べたわけであります。これは国情、いままでの運用が違うということになるわけでありますが、アメリカの場合、今回のストライキというものは百年に初めてである、百年に一回であると。だから、ある意味から言えば、百年に一回だから重くすべきではないかという議論もありますが、しかし、百年に一回の与件であるということと、年に何回かあるいはそれ以上というような場合、まあすでに戒めてきておるけれども、なおかつそれが改まらない、その上に立ってまた措置をする場合というのとではいろいろ違うと。でありますので、郵政労使の場合も、たとえば将来にわたってストライキというものはこれから百年間はやめるとか、あるいは百年と言わずとも、これから三十年間一切ストライキはやめるというようなことを組合側で確約する、あるいはその実証が得られるということでありますれば、おのずから過去の違法な闘争に対する当局側措置というものもその時点で新たに考究されるであろうと思うのでありますが、現在、実際問題としてそのような確約、実証が得られる可能性はきわめて乏しいというわけでございますので、結局、従来の例によって、日本においては日本国情日本法制、またこれは郵政労使だけでなしに、他の、三公社現業あるいは国家公務員、そういう例に徴して慎重に事を進めるべきことであろうというふうに思うのでございます。
  28. 野上元

    野上元君 百年に一回の大ストライキであったというふうにいまお話があったんですが、私もそれはつまびらかにしておりませんが、かりにそうであったとするならば、百年間とにかく労働組合ストライキをやらぬでもいいように郵政当局先手先手を打って待遇改善していったというふうにも言えますね。ストライキというのは御承知のように、ストライキをやるためにストライキをやってるわけじゃないんですから、これは手段なんで、目的じゃないわけですから、ストライキ手段とするためには何かの目的があるわけですが、その目的がなけりゃストライキなんてのは起こらなくてもいいわけですから、そういう反面のことも考えてみなきゃならぬのじゃないですか。ただ起きた、起きなかったということよりも、起こさないように先手先手を打っていったということも考えられるんじゃないかというように思います。ところが、今回のストライキを見てみると、とにかく他の産業の労働者プラス八%のベースアップをしておるということは、それだけやっぱり待遇が悪くなってきた、もうがまんができなくなってきたという裏づけがあってストライキというものが起きてるんじゃないか、そういうふうにわれわれは判断したんです。だから、それを日本の場合に当てはめて見るということは、必ずしも完全なものではないと思いますが、賃金だけではなくて、賃金はともかく三公社現業には劣らないのだとか、あるいは他の一般公務員には劣らないのだ、だからストライキは絶対許さぬのだというような考え方ではなくて、賃金だけで彼らは生活しているわけではない、また勤労条件改善ということもおのずから大きな、重要な問題になると思うのですが、そういう問題を全部ひっくるめてみて、他の三公社現業に絶対ひけをとらない、したがってストライキをやられるいわれがないというような、自信の持てる郵政省になってもらいたいというように実は考えるわけですが、中田さんどう考えますか。
  29. 中田正一

    政府委員中田正一君) 私どもも、仰せのようなことでまいりたいというふうに思うのでございますが、ただ、現実に違法な行動が出た場合には、これまたやはりその場合その場合において具体的措置を講ぜざるを得ない。しかし、将来のあり方としては御指摘のようなことであろうというふうに思うのでございます。
  30. 野上元

    野上元君 将来は私の言うような郵政省の姿にしたいというようにお答えなんですから、その裏返しをすれば、現在は自信がない、こういうことになるわけですね。したがって現在、若干の紛争が起きてもやむを得ない、郵政省としてはそう大きな口はたたけない、こういうことですか。
  31. 中田正一

    政府委員中田正一君) 先ほどの答弁は、ごく一般的に申し上げましたけれども、具体的にただいまのお示しのようなことでございますれば、私ども必ずしも三公社現業内で郵政職員処遇が劣っておると思っておるわけではありませんし、また万一そうであったといたしましても、であるからストライキその他の違法の行動が許されるというふうには考えておりません。と申しますのは、御承知のように、三公社現業関係職員につきましては、公労法の適用によりまして同じような労働運動が期待されておりますし、またその処遇内容にいたしましても、公共企業体等労働委員会を通じて最終的には大きな賃金問題とか、勤務時間問題というものは律せられる仕組みになっておりますので、大体三公社現業職員給与というものは、これは民間賃金とも均衡がとられ、三公社現業部内職員関係均衡がとれているということになっているというふうに思うのでございます。たとえて申しますると、平均給与ベースというものでは、おのおの年齢平均が高い、低いというようなこととか、あるいは職種の違いというようなことで、これは簡単に比較できないものがございますが、実質的には年齢職種労働の密度、そういうようなことを勘案いたしまして均衡がとれておるというふうに私ども信じておるのでございます。
  32. 野上元

    野上元君 これは、どなたにお聞きしたらいいかわかりませんが、アメリカストライキの結末に関する新聞を拝見しますと、今度の改正によって、八年間で郵政従業員最高賃金に到達することができるようになった、旧来は二十一年かかった、非常に大きな改善である。こういうふうに言われておりますが、どういう賃金体系になっているんですか、だれか御存じの方おりますか。
  33. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) よその国のことでございまして、詳細はわからないのでございますけれども、いまお話になりましたとおりに、従来でありますると初任給が年間六千百七十六ドルでありまして、二十一年の勤続後に八千四百四十二ドルになるということでありましたのが、今度の一四%のベースアップによりまして、初任給が八千四百四十二ドル、つまり先ほどの二十一年勤続後の金額に相当する額、これが初任給になりまして、最高は一万一千七百ドルでありますが、これはおっしゃるように八年後に最高の俸給のランクに到達する、こういうことになったそうでございます。
  34. 野上元

    野上元君 そうしますと、その内容はともかくとして、大改善であるということは間違いないわけですか。
  35. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そのように思います。もっとも、いままでの郵政職員給与ベースはたいへん悪かったようでありまして、警察官あるいは消防官に比べてかなり劣っておったというように聞いております。
  36. 野上元

    野上元君 やはりストライキというのは、そういう原因があって起きるものだと思うのですよ。その点は人事局長にもよく研究してもらいたいと思います。  それで、賃金の問題だけでなくて、その他の問題についても経済的な要求がたくさんあるわけですが、そういう問題についてもやはり心を配りながら、要するに紛争が起きないように、あなたのことばをかりれば、水が流れるようにスムーズな運行が望ましいと思うのです。そのためにはどうしても郵政省は使用者側ですから、先手先手を打って先取りしながら、そういう問題に取り組んでもらいたいというふうに思うわけです。  それから人事局長に、これも聞いておきたいと思うのですが、郵政事業もだんだんやはり組織が大きくなってきましたね。いまおそらく三十数万の世帯だと思うのです。日本でも有数の大組織だと思うわけです。その大組織にはやはり大組織の弱点を持っているわけですね。たとえば人間的な交流がだんだんなくなってくる。あるいは昇進の道がふさがれるとか、個人の価値が低下していくとか、あるいは疎外感を生むとか、いろんな問題がこの大組織の弱点としてあるわけです。で、今日若い人たち郵政従業員の人口の大半を占めてくるだろう。あと四、五年もすればそうなるだろうというようなことになりますと、われわれと、その昭和二十年以後の人たちとの間のものの考え方というものは非常に違ってくるということも考えられるわけです。したがって、私いつも考えるのですが、あなたが全従業員に対して、あなたは困ったときにだれと相談しますかというようなアンケートを一ぺんとってみたらどうですか。それによって私は、従業員考えていることがわかると思うのです。たとえば、局長と相談する、あるいは課長と相談するということが圧倒的多数であるならば、私は、これは郵政省側の善政の勝利だと思うのですね。そうじゃなくて、いや労働組合の役員と相談するというような圧倒的な回答が出るとするならば、労働組合の勝利だと思うのです。そうじゃなくて、だれとも相談しません。同僚と相談するだけです。こういうことになると、これは管理者も労働組合も、考えなければならぬということだろうと思います。だからそういう問題を一ぺんやってごらんになったらどうですか。
  37. 中田正一

    政府委員中田正一君) お示しのような調査、これは非常に重要なものでございまして、郵政省といたしましても、すでにそういった調査は不十分ながらいたしております。ただいま手元に資料がございませんけれども、おおよその記憶によりますれば大体次のようなことになっております。まあやはり、何かものごとがありまして、もっとも相談する内容がこれは全くぼうばくとしている面もあります。仕事上のことか家庭上のことか、全部そういう限定をしないで、何かがあったらばという設問のしかたでありますが、必ずしも正確なものではないわけでありますが、まあやはり一番相談相手にいたしますのは、これは友人、同僚、それから直属の上司、それからさらには飛び抜けての最高上司、あるいは組合というような、いろいろなケースがございます。一番身近い友人、同僚というようなところが大きなウエートを占めておるわけでございます。したがいまして、現在郵政省といたしましては、新人——新しく職場に入ってくる職員の指導にあたりましても、こういった調査の結果を活用いたしまして、いわばフォーマルな関係だけでなしに、インフォーマルな面をも大いに重要視しなきゃならぬと、係長とか課長、あるいは現場では主任、主事、課長と、そういった職制上の上司だけですべての指導が行き届くものでも必ずしもないという面から、いわば兄貴分、そういうものの力を活用するようにと、そういった仕組み考えていこうというようなことで、現在いろいろ検討中のところでございます。
  38. 野上元

    野上元君 いま、あなたがお話しになったように、どこの会社においても、大企業の場合にはやはり同じような回答が出ているようですね。頼むのはやはり自分の友だちしかないんだというような回答が非常に多いわけです。というのは、やはり大組織というのは非常に冷酷無情なものである。これはもう官でも労働組合でも同じだと思うんです。大きな組織になればなるほど個人は疎外感を受けるというようなことがこの結論にあらわれているわけですから、この点はあなた方もやっぱり相当慎重にやらないと、今後労働力不足の状態においてこれを定着させるということになると、相当思い切ったことをやらなきゃうまくいかないんじゃないかというように感じますから、その点はまあ私の思いつきですが、検討してみてもらいたいと思います。  それから、若い管理者というのが相当現場におりますね。たとえば六級職を出た若い人たち、これは私は悪いことじゃないと思う。管理者の全部がもう年寄りばかりだと、やはりなかなかうまくいかないと思います。やっぱり若い者を注入して、管理者の中においても議論があるような状態が望ましいというように私は考えるんです。ところが、私が歩いてみたところでは、若い管理者のおるところにそういう労働問題の紛争が起きている。というのは、さっき言ったように、この六級職出身の管理者が郵政省の目付役のような形になっていっている、というふうにいわれておるわけです。したがって、さっき言ったように千匹のハエの問題になるんですが、とにかく自分の言うことを聞かぬやつは全部たたきつぶしてしまうというような考え方で臨んでおるところに問題があるような気がしますので、そういう点をもう少し改めて、労務対策はやはり強圧政策だけではだめなんだ、むしろ若い人同士が——若い管理者が若い従業員の中に飛び込んでいって論争すればいいと思うんですね。そうすれば私は、おのずから道は開けてくるような気がするんですが、どうもそういう点の対話がないというふうに思うんですが、その点どうですか。もう労働組合の問題についてのみ話し合う、その他についてはあまり接触がないというような、お互い立場にあるように思うんですが、そういう点は特に郵政当局としては特別な指導をされておるんですか。
  39. 中田正一

    政府委員中田正一君) ただいまお示しのところでは、若い管理者のおるところがうまくいっていないということでございますが、まあ私どもの承知しておるところでは必ずしもそうではないと、若い郵便局長、若い郵便局の課長がおることによって新風が巻き起こされる、あるいは職員との関係も若さというようなことで相通ずることを基盤にして、非常によくなったという例を多々聞いておるわけであります。また一面、お示しのようなこともなきにしもあらず、これは十分そういった管理者の場合には、これは反省もし、将来十分考えなければいかぬところであるというふうに考えて、われわれも指導を強めていくというふうにしております。ただ、そういった場合よくよくずっと調べてまいりますと、前の職場において、これは前々からのいきさつがあって非常に苦労したというか、不信感があったとか、常に職員から突き上げを受けておったというふうなことなどがあって、若干新しい職場へ行った場合でも身がまえざるを得なかったというようなことも因をなしていたということもあるようであります。しかしそれはそれとして、先ほど申しましたように、十分考えていくように指導いたすことにいたしております。
  40. 野上元

    野上元君 私も自信があるわけじゃないんですが、いろんなことを調べてみますと、青年の特徴として教えられるということを非常にきらうというのですね。それよりも、みずから刺激を求める、刺激されるということを非常に好む。教えられるというのは非常に圧迫を感じるんだ、押しつけられるということは……ということを盛んにあらゆる心理学者が言っているわけなんですが、確かにそういう点があると思うのです。ところが、われわれはどうしても教えようとするところに、もんちゃくが起きるというようなことが考えられるわけです。  そこで、話がそれて恐縮ですが、たとえば、ある一部の局でやっているように、ストップウオッチを持ってうしろから回って時間をはかる、能率をはかるというようなことをやることも、私どういう目的でやっておられるのかよくわかりませんが、必ずしも私は、ああいうやり方は目的を達しないと思うのです。ドラッカーなんかに言わせますと、十八歳までは軍隊が非常に向いているというのですね。しかし二十になると、もう軍隊なんかだれもがいやがるというのですね。これはアメリカの例ですが、日本との年齢の差があるかもしれませんね。アメリカでは十八歳までなら軍隊は非常に好むというのです。ああいう規律のある集団生活というのを好む。しかし二十になると、とたんに変わってしまって自由奔放な生活をしたくなるというふうに変わるというのです。したがって、そういう点を考慮しなきゃならぬし、また同じドラッカーが言っておるのですが、平和部隊というのをつくりましたね。ピース・コーというのをつくりましたが、これには二十歳代の者は全然行かぬという。三十歳代になると非常に使命感に燃えてやるという。そういうふうに非常に心理的に微妙な作用を及ぼすということがあるので、そういう点もひとつ十分に考慮してもらって、ああいう新聞等でもたたかれておるように、監視労働というのはまことに、二十世紀後半の日本においては使われてはならぬことばだと思うのですがね。そういうことが郵政当局で行なわれているということは、われわれ関係者として非常に肩身の狭い思いがするわけなんですが、そういうことをやめて、ほかの方法を考えられたらどうか、もっと別のことを考えられたらどうかというふうに思うのですがね。その点はどうですか。
  41. 中田正一

    政府委員中田正一君) 職員管理する上において職員の創造性、創意というものを生かして、上からの圧力でもって事を進めるというのでないほうがよろしいということは、これはもう当然でございまして、省としてもそういったことで事を進めるように考えておるわけであります。したがいまして、ある職場において作業をなす場合でも、これはやはりその職場における規律、基準というもの、これは当然なくてはなりませんから、それをできるだけ自発的意思によって守ってもらうという方向で職場が運営されるようにということで、現場管理が行なわれておる。大体そういうところが多いわけでございますが、間々そういう職員の自発性にまかせておきますと、だんだんだんだん規律、その基準が乱れるという場合がございます。それに対して規律をもとに復するように、基準に到達するように、これはやはり注意いたさなければならぬわけでありますが、その場合に、先ほどお示しのように、若い職員の一部にはそれに反発する傾向もあって、トラブルの種になる場合なきにしもあらずであります。しかしできるだけ、そういったことのないように、職場の規律が守られるようにということを考えながら対処しておるというわけであります。しかし、いろいろのその職場の過去のいきさつがございまして、必ずしも思うようにならないという場合に、万やむを得ない措置として、いわゆる監視研——私どもは対策班と称しておりますが、そういったものを出さざるを得ないという事情もあるわけでございますが、これは先般問題になりました例も、これは何も郵政部内でそういった措置をすべてとっておるとか、今後もとるということでございませんで、非常にまれな例であったわけでございます。今後とも、そういったいわゆる監視班というようなことは行なわないで済むようにしたいということに変わりございません。  今回の全逓との紛争解決にあたっても、ただいまお示しの問題はいろいろ議論いたしまして、いわゆる監視班の派遣のないように、その事前においていろいろ労働組合側との意思疎通を深めていく、事態改善をはかる、組合協力も求めていくということで話が進んだわけでございます。で、その話の場面におきましても、そういうことで進めるけれども、万やむを得ない場合があるということは、労働組合もこれは了承する。その場合には事前に組合に通知する、そういった対策班、監視班の派遣について事前に通知する。それによってまた組合の上部組織などが下部の組織を指導するというようなことで、とにかくそういった事態にならぬようにいろいろの方法を講ずる。なおやむを得ぬ場合には事前に通知して事を進めるというようなことで話し合いができ上った経緯もございます。今後こういった問題でいたずらなるトラブルを起こさないように、それによって郵政業務の運営をしっかりと維持してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  42. 野上元

    野上元君 何といいますか、われわれが若いとき生きた時代と今の時代とだいぶん変わってきていますからね。ことにエレクトロニクスの時代に入りつつあるわけですから、これがもたらす変化というのは非常に重要なものだと私は思っているのです。まず第一に、伝統と古い教義に対する挑戦という姿であらわれているわけですよ。それが大学の紛争を起こしておるし、あるいは新宿の広場でわれわれが想像もしなかったような風景が見られる。しかし彼らにとってはあれがあたりまえなんですね。——というようにわれわれの理解できないようなことが起きつつある。われわれはそれがいいとか悪いとかいっても始まらぬと思うのですね、そういう社会になりつつあると思うのです。しかもそれは人間が発明したエレクトロニクスがもたらしたものであって、みずからまいた種なんで、これはどうしようもないと思うのですね。したがって、そういう変化に即応した行政なり政治なりが行なわれなければならぬというふうに考えるわけなんです。したがって私の申し上げることが、管理者のあなた方から見ると、とんでもないというようなことになるかもしれませんけれども、しかしもうそれは好むと好まざるとにかかわらず、私はそこへいくと思うのですね。ガリレオ・ガリレイじゃないけれども、それでも地球は回るのだ、こういうことですね。変化を予測する人をいかに排撃してみたところで、変化は事実が変化をしているんですからね。私は、そういうことを考えると、そういう点についてやはりどうしても考えなければならぬというふうに思うのです。  そこで、ミシガン大学の社会行動研究所の調査の結果があるのですが、私、たまたまあるところで見たのですが、経営管理についていろいろなことを調査してみたというのです、従業員を中心にですね。それで従業員というものを中心にしたタイプの企業、これの生産性、それから職務を中心とした企業の生産性、どっちが高いかという統計をとってみたら、前者の従業員を中心とした企業の生産性のほうがはるかに高い、こういう結論が出ているわけです。ということは幾つかの示唆があると思うのですが、特に産業民主化というものは、こういう従業員一つ目的なり主体なりとして見るという行き方のほうが生産性ははるかに高い。これを手段とし、客体として見るというような経営のやり方は落ちていくというのですね、生産性が。ということが統計上明らかになったというのですね。だから一つの示唆が含まれていると思うのですが、これは特に官庁経営の場合にはどうしても古い考え方が出てくるというふうに思うのです。かつてのよき時代を思い起こして、昔はよかったというふうにぼくらも考えるわけなんですが、そう考えておったってこれは問題は解決しないわけですからね。時代は変わっているわけですから、そういうこともぜひ考えてもらいたいと思う。  それからフランスのジャーナリストのシェルバン・シュレーベルという人がこれも一つの発表をしているのですが、現在のヨーロッパの沈滞した空気、これは一体何だという疑念についていろいろと検討しているというのです。そこで彼が出した結論は、ヨーロッパにおいても社会生活は次第にアメリカナイズされてきている。ところがヨーロッパの指導者はその変化を見ようとしない。あるいはこの変化から逃避しようとするというのです。したがって、指導者層と社会生活の関係が非常に薄くなった。その理由は、指導者層が時代おくれのものの見方や、伝統的な論理観から一歩も出ない昔ながらの強圧的手段にしがみついているからである。このような指導者層は、いままさに生まれつつある新しい社会には全く適合しなくなったと、これが現在のヨーロッパの姿である。こういうふうに言っているわけですね。したがって、やはり変化というものはわれわれに関係なしにどんどん進んでいっている。したがって、これに順応できない者は、指導者であろうが、だれであろうが、捨てられていかざるを得ないということでありますから、いつまでも同じドグマを信奉して、それで指導していこうということは誤りであるというふうに考えるわけです。  これは、私はあなたのほうにも言っているけれども、労働組合にも言いたいわけです。お互いに大組織の上に乗っているわけですが、変化しつつある世の中に住んでいるわけですから、私はそういう点はお互いに研究していかなければ、両者から離れたところで別の運動が起こるんじゃないかというような気さえするのです。ですから、その点は、あなた方もとにかく事業を遂行していく責任者なんですから、従業員がいいとか悪いとか言っても始まらないわけですから、とにかく道具が悪いといって道具のせいにするのは、へたな大工の言うことだそうですから、従業員を幾らこきおろしてもしかたがないわけです。そういう意味でひとつあなたのほうも、そういうものについて将来検討しておいてもらいたいというふうに思うわけです。  この際、郵政大臣にお聞きしておきたいのですが、国鉄は、御承知のように三千八百億ですか四千億になんなんとする赤字をかかえて非常に四苦八苦している。そしてこれを何とかしなくちゃならぬということで、いま政府、国鉄あるいは政党等が一致してこの問題に取り組んでおるというわけですが、そのことはそのことでいいんですが、いよいよ国鉄もホテル経営あるいは国鉄に関連する駐車場みたいなもの、あるいはその他のものの経営に乗り出す、こういうふうに言われておるのですが、これは閣議等でそういう点については話があったわけですか。
  43. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私の知る範囲では、まだそういう話題があったということはございません。まあ国鉄と私鉄などを比較して、私鉄がわりあいに自由奔放な、たとえば土地開発だとか観光的な仕事などに積極的に乗り出しておるのに比べて、どうも国鉄は非常に窓口が狭くて、そういうことを経営の一助たらしめる手段がいままでなかったのではないか、こういう議論は与党の政治家の中にはございますが、まだ閣議でそういう話題が取り上げられたということは、以前は知りませんが、私関与するようになってからは、そういうことはございません。
  44. 野上元

    野上元君 国鉄も、御承知のように公共事業の一方の雄ですが、これがホテル経営あるいはその他関連の産業の多角経営に乗り出すというようなことは、やはり国鉄の経営が非常なピンチにおちいった。これを再建しなければならぬということに一つの原因があると思うのですが、そのためには、ここにも書いてありますが、国有鉄道法はじめ関連法令を全面的に洗い直して、こういう多角経営ができるような方向に持っていくために検討を始める、こういうふうに言われておるわけですね。ところが、従来御承知のように、国鉄がそういうことをやれば民間の企業を圧迫するとか、あるいは国鉄本来の使命感にもとるとか、品格を落とすとか、いろんなことを言われてきたわけですが、そんなことは言っていられないんだというような事態にまでおちいった。したがって、このどろ沼からはい出すためには、少しぐらいどろをかぶってもやらなければならぬ。品格を落としてもやらなければならぬというところに踏み切ったと思うのですが、そういうことを考えてみますと、独立採算でやっておる事業というものは、最終的にはこういう考え方におちいるのではないかというふうに思うのですが、その点、郵政事業等を考えながら、国鉄のこういう考え方について郵政大臣としてはどういうようにお考えでしょう。
  45. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 公共企業体の立場において独立採算制をしいられるという場合、一つは公共性という原則をどう貫徹するか、同時に企業でございますからそこにはやっぱり営利原則というものを全く無視はできない。そういう調整がなかなかむずかしいと思いますが、事、郵政に関しまして、はたしてどの程度の関連事業というものが考えられますか。まあこれは外郭団体としては、たとえば弘済会がやっておる仕事、互助会がやっておる仕事みたいなものもございますけれども、どうも直接郵政事業がそういうものにタッチをするというのにはどうも国鉄にくらべて、少しこちらのほうが制約が多いのではないか。これはまあ私の感じでございますが、まあ何かいい知恵でもおありならば御示教をいただいて検討をしてみようと思うのです。
  46. 野上元

    野上元君 いや、そのためには国鉄でも今日国有鉄道法を改正しなければならぬ、あるいは関係諸法令を洗い直さなきゃならぬわけです。郵政の場合は純然たる官業ですから、これはいまのままでやれるわけがないんですから、やるとすれば抜本的な法改正をやらなければならぬということはもう当然のことなんで、そこまでいま私は考えておるというわけじゃないんです。ただ、大臣の言われたように公共性をいかにして貫いていくかという問題なんですね。これはとにかく貧しいサービスでもいいから、とにかく郵政郵政一本でいく、あるいは国鉄は国鉄一本でいく、これが公共性を貫くかといえば、私はもう時代は変わったと思うんです。先ほどの話じゃないけれども、やっぱりよりよいサービスをより安く大量に提供するというのが公共性を貫徹するゆえんだと思うんです。ほかのごじゃごじゃとした事業をやっておれば、公共性が不純になるというものではないと思うんです。そういう考え方——君の考え方はもうやめなきゃいかぬのじゃないか。ほかの事業をやっても、この本来の国鉄の仕事が——サービスがよりよく提供されれば公共性は貫徹されたことになるわけですね。私は、郵政事業でもやっぱり同じだと思うんですね。そういうふうに、やっぱり郵政事業をよくするためには——公共性を貫くためには、さらに言いかえれば安くていいサービスを提供するためには、どういう経営が必要かということは、何も郵政事業一本でやれ、とにかくどんなに赤字を出しても一本でやれと言うんじゃないと思うんですね。それは公共性を貫いたということにはならぬという気がするんですね。私は、そうでなくて豊かな財政のもとに、そしてよいサービスが提供できれば、それは公共性を貫いたことになると思うんですがね。私の考え方はどうですか。
  47. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど伺いましたようにまさしく変化の時代、激動の時代、こういうところにいまわれわれは置かれておるということは確かでございます。まあ私、わずかな経験ですが、郵政の仕事をながめてみまして、前島精神と言いますか、これはまあ非常に純粋性というような意味から言えば、たいへんとうといものだと思います。そういった伝統の束縛というものが、やっぱりかなりここでは濃厚に残っておるんではないかと思いますね。したがって、それをはねのけて、いまおっしゃるようなよりよいサービスを大量に提供するためには、少しこの際躍進をすべきだ、これもわからぬではありませんが、まあそのどちらへよけい傾斜するかという問題になりますと、これは私も、もう少し研究をさせていただきたいというふうに思います。
  48. 野上元

    野上元君 郵政事業には、常に前島精神というのが出てくるんですね。私は、これが気に食わぬのですよ。要するに、発明者の名前が百年も残っておるような事業は、ろくな事業ではないんですよ。もう発明者なんというのはどんどん変わっていかなきゃならぬのですよ。いつまでも前島精神にたよっておる郵政事業なんというのは、時代から取り残されてしまうのじゃないかというような気がするんですよ。いまの進歩した社会を見てごらんなさい。もう前島精神なんて言っている会社はありませんよ。もう発明者はだれかわかりませんよ。もうどんどん新しいのが出てきて、そういう事業でなきゃこれからは生きていけないというんですね。いつまでも初めの発明者が残っておるような事業は、この時代には生きていけないというふうにさえ言われているわけです。たとえば、郵便は独占専業であり、一極独特の事業ですから、まだ前島精神が許されるんでしょう。しかし前島さんという人は、はがきを発明しているんですからね。あれからだれも発明していないのですからね。はがき以外のものを何も発明する人が出てきていないと思うのですね。いつまでも前島さんにおんぶしているのはおかしい気がするのですが、それは別として、そういうふうにまあ考えるわけです。  そこで、この簡易郵便局の問題に関連するんですが、この簡易郵便局法の改正は、将来の郵政省公社化との関連はありますか。たとえば、公社化考えながらこの問題を出されておるのか。あるいは公社化はもう遠い先になったというふうに考えて出されておるのか。その点はどうなんですか。
  49. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 簡易郵便局のあり方と郵政事業のあるべき姿とは、これは決して矛盾しないように思うわけでございます。つまりこの公共性と経済性とうまく調和させつつやっていくという究極の目標は全く同じだと思うわけでございまして、簡易郵便局方式でいなかのほうに窓口機関をふやしていくという構想は、かりに公社になりましても、またかりになりませんでも、ちっとも矛盾することなく、そのまま生かしていけるものだと考えております。
  50. 野上元

    野上元君 全然関係がないとは私は言えないような気がするのですがね。たとえば簡易郵便局の数をどんどんふやしてつくっていくということは、言い方を変えれば簡易郵便局と同じ程度の無集配局の新設が相当制限されるだろうというふうに思うのですがね。その点の関係はないのですか、全然。
  51. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 無集配局につきましては、これはそれなりに設置基準をつくっておりまして、無集配局を置くべき地況のところに置くということは、基本的に現在と変わらないで今後もまいるわけでございます。したがいまして、簡易局が今後ふえていけば、無集配局のほうがだんだん少なくなっていくんじゃなかろうかというようなお尋ねであったかと思いますが、そういうことはないじゃないかと、つまり無集配局のあるべき地況と簡易局の置かるべき地況とは、おのずから差がございますから、そういうことにはならないのではなかろうかと考えております。
  52. 野上元

    野上元君 その問題はあとでまたお尋ねをするとして、先ほどの話の公共性を貫くためにはどういう経営がいいかという問題なんですが、郵務局長として今日の郵便事業をながめ、そして将来を見通す中で、いまの経営の方針でよろしいか、自信があるかということをひとつ聞きたいんですがね。
  53. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 何ぶん郵便の物量の膨張というのがございまして、それが押しかぶさってきておりまして、いまのやり方ではこの物量をどうさばくかということについて、いまのやり方では早晩大きい壁にぶつかるのではなかろうかということを考えるわけでございます。と同時に、この非常に大きい物量の中身でございますけれども、中身が実はどんどん変わりつつある。在来の個人通信にかわりまして、産業通信といいますか、業務用通信と申しますか、そういったものに性格的に変わりつつあるのでございまして、今後の郵便の事業のあり方としては、そういう需要構造の変化というものに着目いたしまして、それに即応した一つのサービス基準といいますか、これは新しい基準になっていくと思いますが、そういうものを新しく打ち立てていかなければならないのではなかろうか。いまのやり方では、やっていけないということを考えております。
  54. 野上元

    野上元君 日本人は、われわれも含めて、時間的に不正確なんです、表現が。たとえばあなたも、いまのままじゃだめだ、早晩行き詰まるだろう、こう言うわけですね。そういうものの言い方を日本人は非常にするわけですね。日本人の特徴だと思う。アメリカ人だったら、これは二年あるいは三年目には行き詰まると、こういうふうにはっきり言いますね。その点、聞きたいのですよ。早晩というのは一体何年ぐらい先なのか。
  55. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 実は、そこまで詰めていないのでございまして、アメリカは三年と申したかどうか存じませんが、イギリスはもうぶつかりまして、一昨年の秋からこの郵便のサービス基準種別体系、そういったものに大幅な変更をやっておるわけです。フランスにつきましてもたしか去年あたりからこのサービスの大改革をやったというふうに聞いておりますので、ただいま申しました早晩というのは、そう遠くない将来ではなかろうかと思います。
  56. 野上元

    野上元君 もっと近い将来にそういう行き詰まりがくるとすれば、あなた方はそれがわかっておれば、手を打たなければならぬと思うんですがね、その打つ手はどういうものですか。
  57. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そのことにつきまして目下いろいろと勉強中でございまして、まだ披露をするに至っておりませんです。目下勉強中でございます。
  58. 野上元

    野上元君 まあ私も内容をこまかく聞きたいと思っているわけじゃない。あなたは一つの構想を持っておられると思うんですね。こうありたいというものがあると思うんですね。おぼろげながらでも浮かんでくると思うんですね。そのために現在の法律関係でいいのか、現在の行政の中でそれができるのかという問題も当然そこへ入ってこなければならぬことですね。そのために私は、郵政審議会にあなた方が諮問されたと思うんですね。現在、郵政事業というのは、これはもう早晩行き詰まるだろう、公社化等についても考えられるだろうかというようなことを諮問されたわけでしょう。その答申が出た一つの契機をつかんだわけですね。その契機は埋もれてしまって、またバックしてしまったのですね。それを非常に私は残念に思っているのです。やはりこういうのは一つモメントですね、こういうチャンスをつかんで、契機をつかんで、何といいますか、刺激を与えていくというところに改革の道が開かれてくるというふうな気がするのですが、何で埋もらしてしまったのですか、そういう契機を。
  59. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 郵便事業は、御承知のようにすでに財政的に非常な危険信号が出てきておりますので、これこそ早晩ということで、これはもう一年先には問題になってまいると思います。それに関連いたしましてやはり郵便事業という事業運営のやり方というものが、やはりメスを当てられる時期が来ると思うのでございまして、ただ財政上の赤字を埋めるというだけでなくて、事業のやり方についてもやはり再検討を迫られる時期が来ると思っております。そういうこともございまして、いま、おっしゃいましたように何らかの形で審議会でありますとか、そういった第三者機関に御高見を仰ぐということも、そのうち具体的に考えていかなければならないかと存じます。私ども事務屋として考えておりますことは、目下勉強中でございまして正確には申し上げられませんが、世界のほかの国がやっておりますこと等を参考にいたしまして、非常に荒い方向的なことを申し上げると、非常に膨大化してまいった郵便物数の物量、それと、その中身につきましてもいろいろと千差万別の種類の中身を持っておる郵便物数、こういったものを画一的に、あるいは均一的に同じ扱いをしていくということについては、これは非常な問題があるのではなかろうか。いまの郵便法のたてまえからしますると、これは料金が同じであれば同じ扱いをしなければならない、緊急性が強いもの、あるいはそう急がないもの、あるいは広告、こういったいろいろなものがございましょうが、皆同じ扱いをしなければならないというところに、運営上非常にむずかしい点があるわけでございます。ひとつ、そこにくふうを加えまして、この通信の需要の分析をいたしまして、まあわかりやすく申し上げると、急ぐ郵便、そう急がないゆったりした郵便、そういった内容の区別をさせてもらいまして、それにその区別に応じてこの郵便の扱い方をやらしていただきますならば、これは案外スムーズにいける面も開けてくる。一種の差別扱いというような、非常に荒っぽい構想でございますけれども、そういったようなことも勉強の項目の一つとして考えておるわけでございます。
  60. 野上元

    野上元君 私は、具体的にはいろいろあると思いますね。専門家が考えられることですからいろいろあると思いますが、そういうことを実現するためにいまの制度がいいとか、いまの制度では障害があるのだ、だからもう少しやりやすい自主性に重点の置けるような一つの企業のあり方、あるいは制度というものが必要なんじゃないかというふうに考えられると思うのですがね。いまのままで、それはできるというなら、何も公社化なんか諮問することはなかったわけですね。その点はどうなんですか。
  61. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) いま申し上げましたようなことは、これは相当の荒療治になってきますから、いまの国営の方式でやってやれないことはもちろんございませんけれども、法律改正、予算上の問題その他いろいろとまあぶつかる壁があるわけでございまして、かりに公社といったような形になれば、先ほど申し上げたようなことはずいぶんとやりやすくなる面が出てくる、そうは考えます。
  62. 野上元

    野上元君 私は、その点が問題だと思うのです。現行で何でも改革できるならどんどんやればいいのだ。やらぬのは怠慢なんです。しかし現行では法律的にできないのだというものがあるならば、すみやかに改革すべきなんですね。それは私は、国民に訴えればできると思うのですね。われわれがやりたいようにやらしてくれれば国民によいサービスができますということをあなた方が確約できるならば、国民はそれを承諾すると思うのですね。しかし現行でもできるというなら、現行でやるべきなんです。その点が、ぼくはどうも、はっきりしないような気がするのですよ。  それと、もう一つは、日本はいままでヨーロッパあるいはアメリカというふうに、いわゆる欧米先進国の切り開いた道を歩いてきたわけですね。したがって、いまでもその癖が直らないで、すぐヨーロッパのまねをしようとする。ヨーロッパの様子を見てから何かしようとする。しかし昭和六十年に、この間も話したように、EEC六カ国を合わせたよりも日本のほうが、GNPが大きくなるわけですね。もはやヨーロッパは先進国じゃなく、中進国なんですよ。その六十年のときは、日本は最先頭を切っていかなければならない。道を切り開いていかなければならないことになるわけです。もう十五年もしたら、そうなるのですよ。それこそ、早晩じゃないけれども、なるのです。そういうときですから、私は、日本郵政局の持つ責任、負わされた責任というものは非常に大きいと思うのです。今度はヨーロッパの諸君が、日本の郵便制度にならってついてくるというくらいのことをやらなければならぬのじゃないか。それくらいの実力を持った国になるだろうというふうに思うのですが、そういう点をぜひ考えてもらいたいと思うのです。と同時に、昭和六十年には御承知のように、新全総ですか、新全国総合開発計画によれば東京は二千五百万人になる。二千五百万人の住民を持つところはもう都市じゃありませんよ。もう一つの国家といってもいいくらいですな。ヨーロッパへ行けば、それよりも小さい国は幾らもある。そういう変貌を遂げようとする日本においては、ヨーロッパにないものをやっぱりつくり上げていかなければ、とてもじゃないが、やっていかれないんじゃないか。そのためには一体、いまの郵政省あるいは郵便法、あるいは国会との関係、いろいろな問題がありましょう。そういう現行でいいのか、現在のままでいいのか。それとも、こんなものは断ち切って、新しい角度から始めなければ郵便はもうつぶれてしまうのだという危機感があるのか、それによって違うと思いますね。せっかく公社化案が出てきたのだから——私は何も、公社化を推進しろと言っているわけじゃないのだけれども、私も自信がないから——しかし、一つのインパクトを与えることは事実なんですよ。よし、公社になったのだから、ひとつ思い切って責任を持ってやろうじゃないかと、そういうことになるかもしれませんね。あるいは総裁が今度は八年もやれるようになるかもしれませんね。そうしたら、それこそ、それに一生をつぎ込んで第二の人生をつぎ込めるというような仕事になるかもしれません。いまの制度で、はたしていま竹下さんが言ったような、郵務局長さんが言ったような改革ができるかどうかといったら、非常に私は疑問だと思うのです。まあいいじゃないか、ナショナルミニマムでいこうじゃないかというようなことになってしまうのじゃないかという心配がされるわけです。そのことは従業員にもぴんと響いてくるわけです。そういうバイタリティーを喪失した郵政省の将来は非常に私は混乱が起こると思うのです。いろいろなつまらぬ問題が一ぱい起きてくると思う。したがって、少なくともこの辺で活力を与えなければいけない。そのためには、何か方法を考えなきゃならぬという気がして私はならぬのですよ。郵政大臣はどういうお感じですか。
  63. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 野上さんと、せんだってもこういう議論が出たように記憶しますが、非常に行き詰まっておることは事実である。なかなかさりとて壁は厚い。しかし座しておって、それで事が足りるというものでもないとすれば、ひとつ城門を開いて討って出るということも必要になってくるかもしれませんね。そういう意味において公社案なるものが一つのモメントであるということは私も同感なんです。この間も話題に出ましたように、いまの全くの直営の事業では、郵政大臣になった者がある程度の構想を持っていても、なかなか一年や何ぼの任期でそれを実践に移すということは実際問題たいへん困難であって、構想はどうやら芽は出てもさっぱり定着しない。したがって、そこにある安定した任期を持つリーダーが思う存分なことをやれるということは確かに望ましいことであって、国鉄が非常に困難な中にも、たとえば十河さんとか、それから続いての総裁の石田さんとか、ああいう特殊なパーソナリティーを持った人がやっぱり非常な意義のある仕事をされたと思うのですね。それは本質に赤字要因というものがずいぶん大きくのしかかって、国鉄の財政自体は決して好転したとは思えないが、何かやっぱり魅力あるあの人たちの個性というものがリーダーシップを発揮したと思うのです。だから、そういう意味でやっぱりこれは十分に考究に値する案であるということは私も考えるのですよ。さりとて、それじゃおまえはいますぐ踏み切るかと言われると、私もどうももう少し事態の検討をしてみないことには、まだこの席で、わずか二月や三月郵政を眺めてみて、ただ冒険をおかすということもいかがなことかというあたりを、ただいま模索しておるというところでございます。
  64. 野上元

    野上元君 私は、内容の模索はこれは当然だと思うんですが、しかし、大臣一つのモメントであると、そのモメントをせっかくつくったんですが、それに対する執着が郵政省はないように私は思うんですよ。ほんとうにそれを考えておられるならば、私は公社化について推進されるはずだと思うんですね。ところが、さっぱり最近そういう動きがないということにたると、また昔の姿に沈潜してしまうんじゃないかというような気がするんですね。これも郵政審議会の中にも問題点が出されておりますが、これは経理局長に聞きたいんですが、この審議会の中の答申を見ますと、人件費はもういまや八〇%に及んでいる。毎年だんだんその率、プロポーションが大きくなっていくというんですね。そういうことになりますと一体、人件費というのは何十%までが限度なんですか、郵政の経営から見て。八〇%でもまだやっていけるんですか。
  65. 溝呂木繁

    政府委員(溝呂木繁君) 御承知のように、郵政事業は、特に郵便事業を中心にして非常に労働集約性の高い企業でありますので、当然人件費率が高いのは、これは日本ばかりでなしにアメリカでも、イギリスでも同じような傾向をたどっておるのであります。そこで日本も同じでありますが、諸外国でも機械化とか、そういうものを入れて、少しでも人件費率を下げる努力をいたしておりますが、しかし、最近の経済成長の結果と思いますが、所得というものが非常に伸びております。したがいまして、どうしても相当の機械化等を入れましても人件費率というものは、それ以上に伸びていくという形でもって、日本郵政事業でも、外国でも人件費率が少しずつ上がっていく、こういう状況でございまして、それならば、幾らならいいんだというお尋ねでございますが、いまのところ、それが何十%になったらどうということはちょっと答えにくいと思います。しかし、少なくも人件費率を下げるように、少しでも設備の機械化をして生産性の向上にもっていくということば、当然企業性の上から言って要請されなければならないということを、一般論としては申し上げられますが、それではそれが何%というふうにはちょっとお答えできないというふうに考えます。
  66. 野上元

    野上元君 この八〇%でも、他に物件費その他雑費がありますね、出張がありますね。そういうものを入れると、いわゆる新規事業につぎ込める資金というものは非常に少ないものになってしまうと思います。人件費が八〇%あれば全部つぎ込んでも二〇%ですから、その中に物件費もあり、交通費等もあるでしょうから、こういうことになると、その残りが新規事業につぎ込めるものということになると、郵政事業改善というものは遅遅として進まないということがいわれるわけですね。それは人件費の比率に比例するわけでしょう。だから八〇%が今度八五%になっていけば、新規事業というものはほとんどできない。あるいは九〇%になったらもう物件費も節約しなければならないという一つの限度があると思うんですが、その限度を聞いておるんですよ。物件費が何%で人件費が何%で、新規事業につぎ込めるものがいまの段階で何%であるか。
  67. 溝呂木繁

    政府委員(溝呂木繁君) いま人件費率と申し上げておりますのは、業務費、いわゆる損益的な意味の中の比率を申し上げております。  そこでいま、お尋ねのいろいろなものに投資していかなければならぬ部分、これはどちらかといえば、建設勘定の投資ということになるだろうと思います。現にアメリカの大統領委員会等もそれを非常に重要視しまして、局舎とか機械化とか、大きなものはやはり資本投資をしなければいかぬということが非常に強くいわれております。しかし、これは人件費率という形の中に出てまいりませんで、損益の中にはね返ってくるとすれば、減価償却とか、あるいは他から借りているとすれば、借料という形でしか出てきませんので、その分は、この比率を大きく左右するほどにはならないと思いますが、おっしゃいましたように、投資といいますか、われわれのほうで言えば局舎投資とか、あるいは輸送関係であれば集配運送費の関係、これは投資といいますか、その集配運送関係の施設を拡充してもらえば、それに対するこっちの使用料という形でもって物件費率が上がってまいりますが、いずれにしろ、そういった分をふやすということによって事業の近代化をはかるということになると思います。そこで、再びお尋ねの、人件費率がそれなら何十%ぐらいになったときに赤信号かということですが、ちょっと計算は、先ほどお答えしましたように、すぐここには、将来計画で、たとえば局舎計画をどれだけ持っていて、こうこうこうという数字が出ておりませんので、ここまできたら事業が破滅に近くなるというようなことは、ちょっと申し上げられないという状況でございます。
  68. 野上元

    野上元君 いずれにしても、この郵政審議会の答申を見ますと、先ほど来話題になっておりますように、何とかせにゃならぬ、何か契機を、活力を与えなきゃならぬということだけははっきりしておるわけなんですがね。そのことについていろいろと伺いたいんですが、あんまり時間もありませんからきょうはやめますが、少なくとも私は、とにかくあなた方が改善されるというその熱意ですね、そういうものを期待するわけですよ。そういう中から私は新しいものが生まれてくると思うんですね。いまのままでやっていっては、なかなかそう簡単にいいものは出てこないというふうに考えるわけです。それで、私の申し上げたいのは、独立企業で、独立採算をモットーとする企業として生きていくなら生きていくような一つの制度なり関係法令の整備が必要だし、そうじゃなくて、これはもう政府の補助を仰いでやっていくんだというようなことであるならば、あるようにやっていくということが必要なんじゃないかというような気がするんです、いまの時代は。いままでは何とかかんとかやってきましたが、いよいよこれはどん詰まりになってきたような気がしてしようがないんですね。あなた方は、そうじゃないんだ、まだまだ余裕があるんだと言われるなら別ですが、しかし見ておると、そういうような気がするんです。特に長期経済計画がいまあらゆる機関から発表されておりますが、それを見ると、もう昭和五十年になると相当なものになるわけですね。賃金なんかも相当なものになるわけです。一人当たりの国民所得が二千数百ドルにまでなろうというときなんですからね。そうなると、郵政事業従業員も相当な高い賃金になると思うんですね。しかし、物数がそれだけふえて収入がそれだけふえるかというと、私は、それはやっぱり逆比例になっていくんじゃないかという気がする。そうすると、事業は成り立たぬ。しかし独立採算であるということ。他に活力のある制度も求められない。一体どうすればいいということになるわけで、そういうことを考えますと、せっかくチャンスをつかんだんだから、私は、公社化に何もぶら下がる必要はないから、とにかく現行ではだめなんだ、どうすべきなんだという問題について、もう少し取り組んでもらいたいというような希望があるんです。  で、アメリカで、これは経理局長承知かどうか知らぬが、相当なベースアップですね、今度のやつは。あの財源は、郵便料金を値上げして少しその財源を求めていますね、一部を。他はどういう財源を求めているんですか、あれ。
  69. 溝呂木繁

    政府委員(溝呂木繁君) 今回のアメリカにおける処理について、私も新聞報道でございますので、はっきりしたことは申し上げられませんが、この間の新聞によりますと、今度のベースアップに必要なために郵便料金の値上げをして、約二十六億ドルの増収をはかるというふうに言っております。そこで、この二十六億ドルの増収をはかった場合に、アメリカの収支がどうなるんだろうかということでございますが、たまたま私の手元にあります資料によりますと、一九六七年のときには、郵便事業の収支は十一億四千万ドルの赤字になっております。それから一九六八年では十億二千万ドルの赤字になっております。そこで、今回の新聞報道による二十六億ドルは、これは七一年度のことを考えているようでございますので、七一年ごろになったときに、六八年の十億ドルの赤字がどれくらいふえていくかという問題とも関連すると思いますが、いずれにしろ、郵政関係の収支をとんとん近くに持っていこうという考え方じゃないかと思います。ただ、御承知のようにアメリカでは、あれは一九五八年かに、郵便政策法か何かで、公共的サービスを一般会計の補てんにするという方針ができまして、それが一九六三年か何かに、支出の一〇%は大体公共サービス用のための赤字とみなして一般会計のほうから繰り入れるということを行なっておりますので、それが六七、八年ごろですと、約五、六十億ドルありますので、それをもらった上での黒字を意図しておるのか、あるいは、それをもらわないで黒字にするために今回のこの値上げを行なっているのか、その辺がちょっと、私まだ分析が十分できておりませんが、いずれにしろアメリカの場合は、六七年、八年、十億ドル近くの赤字をずっと続けておりまして、しかも、それは料金値上げをしないで赤字が続いているのじゃなしに、一九六二年でもかなり大幅に、これは三年間にわたる段階別料金値上げをやっておりますし、それから一九六八年でも八億八千万ドルぐらいの収入増になるような料金値上げを行なって、なおかつ、ただいま申し上げましたように一九六七年、六八年の赤字を出しておりますので、こういった、一方料金値上げをしながら、一方それに対してそれ以上の支出増というものによって赤字が続いているというようなことでございますので、今回の新聞報道による二十六億ドルの増収になった場合に、はたして完全に黒字になるかどうかということについては、ちょっと私もまだはっきり申し上げられないということですが、いずれにしろ、思い切った料金値上げを考えているようでございます。
  70. 野上元

    野上元君 郵政大臣、いまお聞きのようなアメリカのシステムですがね。そこで私は大臣にも要望しておきたいんですが、もしも郵政審議会の答申のように、公社化に対して政府の中に異論があるとするならば、せっかく郵政が立ち上がって再建をしようとした意欲をつむことになるわけですからね。少なくとも、できるできぬは別として、その意欲をつむことになることは間違いないわけです。とするならば、先ほどの、アメリカがやっておるように、公共サービス部門に対する投資は一般会計から補助するというふうな法律ができておるということですがね、そういうことについても、私は郵政大臣としては閣議で十分にひとつ説得してもらいたいと思うんですね。それでなければ結局は毎年毎年赤字の累積ですよ。やがてパンクする。そのときに一体どうするか。大きな料金値上げをしなきゃならぬ。そうしてまた、それが物価政策にひっかかって、なかなかうまくいかぬということになると、結局郵政事業、ひいては郵政従業員、そうして国民は、悪いサービスを提供される、こういうことになるわけですからね。その点をよくひとつ考えていただいて、せっかくのチャンスなんだから、生かすようにやってもらいたいということをお願いしておきたいんですがね。もう毎年、大臣にはお願いするんですけれども、わかった、わかったと言ってはやめていくものですからね、そのやめた人まで追っかけるわけにいかない。つい、同じことを繰り返さなきゃならぬ。結局困るのはだれかといえば、最終的には受益者である国民なんだということに、めぐりめぐってはなるわけなんで、その点をぜひ考えてもらいたいと思います。特に一般会計からの繰り入れなんということは、これは私がここで簡単に言っておりますが、省内においてはなかなか意見が統一しないだろうと思いますけれども、しかし、公社化というような芽をつまれてしまって、立ち上がろうとする気力をつまれるならば、それぐらいの対価を政府は払うべきである。ナショナルミニマム理論で葬り去られるということは、国民が迷惑するということになるわけですから、その点はぜひひとつ大臣にお願いしておきたいと思うんですが、どうですか。
  71. 溝呂木繁

    政府委員(溝呂木繁君) ちょっとその前に、ただいま私答弁した中で、公共的サービスによる一般会計の補てんの問題が出ましたので、いま答弁いたしましたように、六七年でも約十一億四千七百万ドルの赤字のうち、その公共サービスによる補てんが五億数千万ドルあるわけでございますが、実はこれは大統領委員会において相当批判されまして、漫然と公共的サービスという名のもとに一般会計からもらっているが、それをよく調べてみると、当然郵便料金によって回収すべきものまで公共的サービスという名のもとに漫然と一般会計にたよっているのはいかぬということで、その大統領委員会なりに自分で分析したのによりますと、ほとんど十一億四千七百万万ドルの赤字のうち九億七千万ドルは、これは当然料金等でもって吸収すべきものであって、せいぜい公共サービスは二億四千万ドルぐらいだという分析をいたしておりますので、先ほど申し上げましたように、五億数千万ドルの公共的サービスをもらっているということは、事実としてはそうでございますが、その問題がかなりまたアメリカにおいても鋭く批判され分析されているということだけ、ちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。
  72. 野上元

    野上元君 よくわかりました。いずれにしろ公共料金というのは、時の政府の物価政策に非常に大きな影響を受けることはもう御承知のとおりですが、したがって、公共料金をきめるのにあたっては、公共料金そのものの性格が理論的なものじゃないんですね。いわば現実的なものなんですね。ところが、実際に公共料金というものは、即国民に対するサービスですよね。だから高い料金はいいサービス、低い料金は悪いサービスということにならなきゃならぬですよ、これはほんとうならばね。高く取ってもいいからいいサービスをするなら国民はそう文句言わない。高く取って悪いサービスをすれば文句言いますからね。しかし、悪いサービスでいいとは言わぬと思うんですね、いまの国民は。そういう点はよく公共料金の性格というものを考えなきゃならぬというふうに思うんですね。これはもう株式じゃないんですから、とにかくあるものは、生まれた余剰は全部サービスにつぎ込んでいくわけですからね。この点はすべて国民に還元されるものだというふうに理論的には納得しているわけです。ところが理論的に決定できないのが公共料金、だからその理論的なものを削られるとするならば、そこに何らかの補償がなければ郵政省としてはやり切れぬというので、それで何といいますか、非難を浴びるのは郵政従業員なんですね、郵政省を含めた郵政従業員。そうしてわれわれ逓信委員会の者は実際たえられないですよね、関係者はしょっちゅう何か国民にしかられているようで。したがって、しかられぬでも済むような、水の流れるような郵便事業運用というものをぜひやってもらいたいと思うんです。
  73. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 御所論はよくわかります。ただ問題は、それじゃひとつどこに突破口を求めるかと、おまえはその自信があるかと、こう言われますと、野上さん御承知のとおり、なかなかこれは困難であることも私よくわかるわけでございます。その中からひとつ何か活路を開かなければならぬ、こういう気持でただいまおるわけでございます。
  74. 野上元

    野上元君 この問題を論じておると貯金、保険のほうにも当然及ばなければならぬので、あるいはまた、三位一体でなければ郵政省としては絶対に合理化には——三位一体以外の公社化ということは考えられないというようなことも考えておられるようだし、いろんな問題がありますし、いろいろと聞きたいのですが、きょうは時間がないので、この次に譲るとしまして、この機会に貯金局長が見えておりますから、貯金局長にちょっとお聞きしたいのですが、最近の郵便貯金の増強状況というのはどういう状態ですか。
  75. 山本博

    政府委員(山本博君) ちょうど四十四年度が済んだところでございますが、この一年間の大体の伸び率というのは、純増——総純増でなくして、これは非常に技術的なことばでございますが、いわば利子を入れない残高、この純増というのは約二九%前年度に比べまして増、利子を入れました総純増にしますと約二二%、こういう伸び率でございます。この伸び率というのは大体現状においては、類似の仕事をしております諸機関と比べましてまさるとも劣らない数字だと思っております。
  76. 野上元

    野上元君 その残高が二九%伸びたというのは、四十三年度末の残高に比べて四十四年度の残高が二九%ふえたと、こういうことですか。
  77. 山本博

    政府委員(山本博君) そのとおりでございます。
  78. 野上元

    野上元君 きょうの朝日新聞に各都市銀行の残高の発表がありました。局長、ごらんになりましたか。このふえ方は、これはどういう比較をしているのですか、パーセンテージが出ていますが。
  79. 山本博

    政府委員(山本博君) 銀行の場合には、やはりそこに表がございますが、前年度の残高に対してことしの年度末の残高、これを比較したものでございまして、それは特に大銀行、都市銀行の表だと思いますが、都市銀行の伸びというのは、各こういう貯蓄関係の機関の中では一番低い率しか伸びておりません。したがいまして、そこにあります表でいきますと、私がいま申し上げました郵便貯金の比率に比べますと、非常に低いのが現状でございます。なお、私のほうの昨年度末の残高というのは約六兆二千億でございまして、上位銀行の三つまでには至りませんが、二つ半ぐらいの額になっております。
  80. 野上元

    野上元君 この新聞に出ておる都市銀行の増加率の比較は、これは半年分ですね。
  81. 山本博

    政府委員(山本博君) そうです。
  82. 野上元

    野上元君 半年分ですね。したがって、おおむねこれの倍くらいの伸び率になるというように計算してよろしいですね。それに比較して、郵便貯金のほうの伸び率というのは、それの倍くらいに伸びておる、こういうように判断してよろしいですか。
  83. 山本博

    政府委員(山本博君) 大体、都市銀行に比べますと、おそらく年間にしますと十数%の伸びじゃないかと思いますが、私のほうはそれに比べまして、いま申し上げましたパーセンテージで、だいぶ高い数字になっております。
  84. 野上元

    野上元君 最近、御承知のように経済インフレ的な様相を帯びてきております。したがって、金融引き締めしなければならぬ、あるいは設備投資を引き締めなければならぬというようなことがいわれているわけですが、そういうものは郵便貯金の伸び率にどれくらい影響があるのですか。
  85. 山本博

    政府委員(山本博君) 御承知のことでございますけれども、郵便貯金を利用しておる国民の大半の方が、実はきわめて零細な貯金をしておられる方でございまして、金額にしますと、大体一口座当たり二万円台の平均にしかなりません。したがいまして、直ちに政府のいろいろとります経済政策、財政政策、そういうものが郵便貯金に大きく反映をするという現象は、長い時間をかけますとあらわれてまいりますけれども、半年ないし一年ぐらいの間に直ちにそれが反映するということは、従来といえどもあまりございません。したがいまして、郵便貯金の伸び率というようなものにそういうものが影響しているという現象がはっきり出ておりません。
  86. 野上元

    野上元君 最近の国民生産の伸び率から見て非常に大きくなりましたね、国民経済が。いま、たしか四十四年で七十二、三兆円になるだろうと、GNPが。そうすると昭和五十年にはそれの一・五、六倍にはなるということですから、百十兆になるということになりますと、その比率でいくとぐんぐん大きくなっていくわけですね、これからの伸びは。いままではかりに一〇%でも、わずか一兆円か二兆円あるいは三兆円という小さな伸びだったのですけれども、今度は土台が大きいですから、一〇%でも非常に大きな伸びを見せていくわけですね。そうすると郵便貯金の持つ性格というものも変わってくるんじゃないかというふうに思うわけです。もうあと二、三年しますとGNPは相当大きくなると思いますが、その場合に、いまの最高制限額というようなもので、はたしていいのかどうか、国民の経済要求にマッチするものかどうかというようなことはどうですか。
  87. 山本博

    政府委員(山本博君) 先ほども申し上げましたけれども、郵便貯金の伸び率が二〇%をこえておる。これは日本国民の貯蓄性向全体、すべての貯蓄関係のものを平均いたしますと、可処分所得の約二〇%を貯蓄に回しております。したがいまして、その年のいわば国民の家計に入っていく所得の伸び率よりも相当上回っているということが言えると思います。しかしながら、これは物価というものがある程度異常な形で上がりますと、これは相当影響が出てくるんじゃないかと思いますが、現状の程度のところでございますと、貯蓄性向が二〇%というのが大体平均して続いてきております。したがいまして、今後GNPが非常に上がって、国民所得自身が相当ノミナルな形では上がると思いますけれども、同時にノミナルな貯蓄額が上がりましても、それは社会全般から見ますと、やはりいま郵便貯金が持っております社会的機能あるいは意味というようなものは、そう違った形ではなくて、そのまま継続していくんじゃないか、そのように思います。ただ後段お話がありました最高制限額の問題は、これはノミナルな問題と直ちに関係がございますので、現在の百万円というのが妥当かどうかというのは、これは国民の所得が上がっていくということと同時に、実はこの百万円というのは、利子の免税の問題とからんで、百万円までがそこで限界といいますか、そういうものがつくられておるわけでございまして、あわせて免税点の引き上げということと、それから国民所得の上昇ということとあわせて、これは早晩何らかの解決を見なければならない問題ではないかと思っております。
  88. 野上元

    野上元君 貯金局長もやっぱり郵務局長と同じく、早晩ということばを使われたわけですけれども、いまのところ、郵政省としてはその点については全然考えておらないということですか。
  89. 山本博

    政府委員(山本博君) 郵政省といたしましては、この百万円が妥当かどうかということにつきましては意見を持っております。しかしこれを最終的に免税の問題とからめ合わせて判断をするというのは、最終的に政府全体の意見の一致を見なければならない点でございますので、郵政省自身としては、これが現在妥当だというふうに直ちに思ってはおりませんけれども、政府全体としてはもう少し意見を詰めていく必要があるんじゃないかと思っております。
  90. 野上元

    野上元君 貯金の利率の問題ですが、これも経済企画庁の発表によると、今後五年やそこら、あるいは今後十年ぐらいは年率五%以上の物価上昇が続くだろう、こういうように判断しております。これだけの経済成長があれば、当然物価は五%以上の伸びがある、こういうように言っておりますが、そうしますと、郵便貯金の定額貯金の利率というのはたしか五・五%、そうしますと、せっかく貯金をしても——定額貯金をしても、現実には物価と相殺されてゼロになってしまう、あるいは減価するかもしれないというような状態なんですが、これは郵便貯金ばかりじゃなくて、全般的な問題ですが、そういう点について、貯蓄推進委員会ですか、そういうところとか、あるいは金融機関等で話し合いはないんですか。
  91. 山本博

    政府委員(山本博君) 一般論としてはお説のような意見はあちこちで聞きますけれども、特に貯蓄増強推進委員会の本部、そういうようなところでまとまった形として意見を発表するという形はまだ聞いておりません。
  92. 野上元

    野上元君 そうしますと郵政省としては、物価の上昇が今後五年や十年、五%ぐらい年率上がっていっても、郵便貯金としては落ちていくということはないというように考えておられますか。
  93. 山本博

    政府委員(山本博君) 先ほどもこの点触れましたけれども、やはりお話のように貯金をしておりましたら物価の上昇のほうが高くなって、貯金をしたほうが損であるというような状態が長く続きますと、これは私は、郵便貯金には限りませんけれども、貯蓄意欲というものを相当阻害する要素として軽視できないと思います。ただ現状持っております郵便貯金の利子も、ただいま御指摘になったような点もございますので、今度一般民間銀行が長期性の一年定期について二厘五毛利子を上げることに四月二十日からなりました。それに伴いまして郵便貯金も、いろいろなこまかい調整も含めまして、長期のものは二厘五毛上げるという措置を近くとり、同じ四月二十日以降そういうふうに上げたいというので手続を進めておるということでございます。
  94. 野上元

    野上元君 いままで、物価の上昇等によって郵便貯金の実績ががくんと落ちたというような経験はありますか。
  95. 山本博

    政府委員(山本博君) いままで物価の上昇率が、郵便貯金の利率よりも、しばしば、かつ非常に高く抜きん出ていたという事態というものは、いままであまり存じません。やはり最近の物価の値上がりというようなもので初めてそういう問題にぶつかってきておるんじゃないかと思います。過去において非常に顕著な、そういう相関関係というようなものがある事例を私は存じません。
  96. 野上元

    野上元君 わかりました。  それから次に御質問申し上げたいんですが、先般私は電電公社のコンピューター施設を見に行ったんですが、銀行の窓口のコンピューターと、いわゆるセンターのコンピューターとが直結をして、即座に残高がわかるというような機械化が進められておるということですね。従来、御承知のように銀行はその銀行に原簿があって、そうしてその銀行の限りで払い戻しが無制限に行なわれるといういうようなことであったが、郵便貯金の場合はそうではなくして、他の局へ行っても払い戻しができた、ある一定の制限は受けるけれども、払い戻しができたという非常に便利なものであったということがあるわけですね。それも一つの有利な条件としてあったと思うのですが、このコンピューター・システムができて、銀行の窓口でどこでもとっととおろせるというようなことになると、その有利な条件というのは消えていくと思いますが、その点、郵便局に及ぼす影響というものはありますか。
  97. 山本博

    政府委員(山本博君) 銀行の場合は、その銀行の支店の所在地で他の支店に預け入れたものをおろすときに、いまおっしゃったようにオンラインによって直ちに必要な額だけおろせる、こういう措置が可能になったわけでございます。郵便貯金は、これはむろんシステムとしては郵政関係の店舗である郵便局を通さなければならないのば当然でございますけれども、店舗の数からいいまして全国非常に多い数でございまして、いわば郵便局のあるところでさえあれば、全国どこであっても郵便貯金が、現在は十万円になっておりますけれども、十万円まではおろせる、こういう利点、これは銀行が支店の所在地だけでおろせるということに比べまして、まだまだ大きな利点だと思っております。
  98. 野上元

    野上元君 そこで私は、一つ提案を持っているんですが、将来やっぱりコンピューター時代が郵便局の窓口にも入ってくると思うんですよ、これは当然。そうすると郵便の窓口と貯金局の間にコンピューターで連絡して、そうして残高をすぐ報告できるようになるというようなシステムがやがてはくると思うんです。その場合に、いまの貯金局の分布では足らないんじゃないかと思うんですが、一県に一つぐらいの貯金局を持って、もうそこですぐ払い戻しができるというようなシステムが将来必要になるんじゃないですかね。たとえばいま私千葉に住んでおりますが、千葉で全払いをするということになると、仙台のほうまで行かなきゃならぬわけですね。そうすると、相当の時間がかかりますね。特に郵便遅配の問題なんかにひっかかりますと、すぐ相当な日にちになるわけです。そういうことを省くために各県に一つの貯金局を置いてコンピューターで県下の窓口とつなぐ、少なくとも大局とつないでいくというようなシステムということは考えたことないですか。
  99. 山本博

    政府委員(山本博君) 現在、各郵便局の窓口に、これは簡易局の相当部分まで含めまして窓口会計機という、現在ではオンラインにはなっておりませんけれども、そういう機械を置いてございまして、そこで磁気テープを自動的に郵便局でつくることができるようになっております。現在これは横浜の貯金局、それから本年度は大阪の中央貯金局、ここにEDPSを入れまして、そこで郵便局でつくりました磁気テープを送らせまして、そこで現在中央貯金局でやっております約七〇%ぐらいの仕事の量をそのEDPSで処理をするということが、ことしの九月から本実施ということで進行いたしております。ただ郵便局は、先ほど申し上げましたように、全国一万数千の出先機関がございますので、これを全部オンラインで結ぶということは、これはまあ技術的な問題それから経費の問題、こういうような点で非常にたいへんな規模になりますので、この点についてはなお相当研究をしなければならない問題である。しかし、いま御指摘になりましたように、非常に少数の拠点をつくりまして、そのところとある中央の処理機関との間を結ぶということにつきましては、現在私のほうでそういう特別な研究室をつくりまして、制度の問題、組織の問題、要員の問題、その他もろもろの、機械の経費の問題、それから効率の問題、それを総合的に研究をいたしまして、できるだけ早く成案を得たいということで進めております。
  100. 野上元

    野上元君 わかりました。  それからこれは最近、これもアメリカあたりでいわれておることですが、キャッシュレスの社会ができ上がるだろう、こういうふうにいわれていますが、金なんか全然持たないで買いものができるということなんですが、私もまだその内容はよくわかりませんが、はたしてどうやって保証するのかということはよくわかりませんが、そういう時代になったときに、貯蓄との関係はどうなんですか、関係ありませんか。
  101. 山本博

    政府委員(山本博君) ごく最近でございますけれども、私が聞いた情報だけでございますので、すべてを網羅しておるとは言えませんけれども、例の銀行がやっておりますキャッシュレスのいろいろな方式というのは、実は非常に問題がございまして、信用をどこまで与えることができるか、これはみな貸し越しになるものですから、信用をどこまで正確に確かめ得られるかということ、それから逆に、そのことが預金の吸収にどれぐらい結びつくかというようなことを、いろいろ金融機関でやったしばらくの経験からは、負担のほうが非常に多くて必ずしも実効があがっていないというふうに聞いております。しかし、これはまだ短期間のことでございますから、必ずしも最終的な結論とは思いませんけれども、郵便貯金の問題とこれを結びつけてみますと、郵便貯金ではありませんけれども、郵便局の窓口で例の振替という制度を現在とっております。この振替の制度によりまして、現在民間でキャッシュレスに対応するいろいろな施策に代替し得る私は内容的なものを持っておると思います。ここ数年間の振替の利用率というのは非常に急激な数でふえております。これは公共料金にいたしましても、国のいろいろな支払い、あるいは収入、こういうものも郵便局の窓口を通じて振替を利用してやれる制度もいろいろ現在ございます。こういうものの利用というものが非常な数でふえておりますので、これはキャッシュレスの時代に、もう少し改善を加えて、それに対応していく余地は十分残っておるのじゃないかと思います。ただ、これが非常に発達をいたしましたときに、郵便貯金といたしましてはどういう影響があるかということは、最終的な判断をまだいたしておりませんけれども、必ずしもあまり相関関係が直接に出てくるということはないのじゃないだろうかというように予想をいたしております。
  102. 野上元

    野上元君 キャッシュレスの制度、制度といいますか、キャッシレスを実際にやっておるところはアメリカだけですか。
  103. 山本博

    政府委員(山本博君) 私がいろいろな情報で多少目に触れるものはアメリカのものを目にしておりますし、あるいは日本の銀行のいろいろなそういう制度というものぐらいしか存じておりません。
  104. 野上元

    野上元君 わかりました。  郵務局長にまた逆戻りしてお聞きしますが、簡易郵便局をつくる目的というのは一体どこにあるかということなんですが、これはおそらく白井さんも御質問されたかとも思いますが、真の目的は一体どこにあるかということを教えていただきたいと思います。
  105. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 郵政事業の窓口は、今日相当普及をしておると思いますけれども、まだ地方のへんぴなところにおきましては窓口が足りないというところがあるわけでございます。昨年、簡易郵便局を置くに適当であろうと思われるところにつきまして、地方郵政局から報告を求めましたところ、二千百カ所ばかりあるということでございます。そういうところに窓口を置きまして、地元の人たちの便宜に供したいというのがねらいでございますが、同時に郵政窓口を置くにつきましては、やはり費用の関係がございますから、極力経済的な考慮を払いまして、安い費用で置けるということを同時に考えておるわけでございます。
  106. 野上元

    野上元君 この簡易郵便局の設置については、これは郵政省の計画に従ってやっておるのか、それとも地方の請願に基づいてやるのか、どっちの性格を持っていますか。
  107. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) やはり無集配の特定局を置く場合と同様でございまして、私どもの計画に基づいて置くというわけでございますが、片や予算上の制約もございまして、一挙に置けませんから、緊急性の強いところから置いていくと、こういう配慮も必要でございます。必ずしも請願によるものではございません。
  108. 野上元

    野上元君 これはもともと請願という性格のものじゃなかったのですか。もとから計画によってやっておったのですか。
  109. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) こちらの計画がございまして、そこに逐次置いていくということでございますけれども、先ほど申し上げましたような予算上の制約もありますし、緊急性の強いところから置いていくという方針に変わりはございませんけれども、緊急性の強いか弱いかという判断の一つといたしまして、やはり地元の方々の要望の程度ということも考慮しなければならない、請願ということもそのあらわれの一つかと思いますが、請願は、そういう緊急性の度合いの判断の材料にさしていただいたということはございます。
  110. 野上元

    野上元君 そうしますと、請願の数と、あなたのほうの計画の数とは、必ずしも一致しないですね。
  111. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 必ずしも一致いたしません。
  112. 野上元

    野上元君 どちらが多いですか。
  113. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 簡易局につきましては、請願のほうが少ないように思います。
  114. 野上元

    野上元君 これは長田さんも質問されておったようですが、ある一時期非常に設置が多くて、ある時期になると非常にダウンしてきた。というのは、設置すべき場所がなくなったのか、請け負ってくれる人がなくなったのか、どちらですか。
  115. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) だんだん窓口が普及してきたということが一つあろうかと思いますが、同時に、いまおっしゃいましたように、請け負ってくれる対象の地方公共団体あるいは農業組合等の施設がだんだんなくなってきたという事情もございます。
  116. 野上元

    野上元君 そうしますと、一応地方公共団体あるいは農協というような施設には、受け入れてくれれば、ほとんど簡易郵便局というのはつくられてるわけですか、現在。
  117. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 公共団体あるいは組合等でもって簡易郵便局を受ける意思があり、かつ、その場所は簡易郵便局を置くにふさわしい地況である、つまり私どもが計画上持っております設置基準を充足しておる場所であります場合には、これは従来どしどし置くという方針であり、また、それで実施してきております。
  118. 野上元

    野上元君 昭和三十七年には五百三十三局が設置されたわけですね。四十四年には八十一局というふうに、非常に数が落ちておりますが、これはおおむね普及したというふうに考えてよろしいんですかね。
  119. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) この受託すべき公共団体の施設がだんだんなくなってきておるというふうに御理解いただいたほうがよかろうかと思います。いまの数字の八十一というのは、その後少しふえまして、今日百六という数になっております。
  120. 野上元

    野上元君 四十四年度の予算から見まして、郵政省が計画された簡易郵便局の数というのは幾つくらいですか。
  121. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 予算成立の置局数は三百でございます。
  122. 野上元

    野上元君 そうすると、おおむね三分の一しか実現できなかったと、こういうことですか。
  123. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そのとおりでございます。もっと置けるんですが、置きたくとも、そこには公共団体の施設がない。またそういう施設がありましても、そこでは何らかの事情がありまして、簡易局の受託を受けたくないというところでございます。
  124. 野上元

    野上元君 この法律が通りますと、四十五年度には幾つ設置できるのですか。
  125. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 四十五年度予算では三百局予定しております。ただし、簡易郵便局の運営経費は、人件費ではございませんし、物件費支弁でございますから、三百局ということに必ずしも拘泥することもございません。多少の弾力的な操作はできるわけでございます。
  126. 野上元

    野上元君 四十四年度で余った二百近くのものは、翌年にその設置は繰り越されるのですか、それを含めて三百ですか。
  127. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 繰り越しを見ないで、新たに四十五年度において三百を予定したわけでございます。
  128. 野上元

    野上元君 この無集配局との局種の区別がありますね。いろいろと問題があろうと思うんですが、区別のしかたに非常にむずかしい問題があろうと思うんですが、将来請負者が一人ではやれないというような事情になった場合に、事情というのは、取り扱い数がふえてきたとき、また一人助手を雇うというような場合も予想されておるのですか。
  129. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 予想いたしております。何らかの事情でもって、その地況が非常に人口がふえると、そういったことは当然起こり得るのでございますので、取り扱い事務量が一人をオーバーいたしまして、二名とか三名とか、こういうふうになりました場合には、これは無集配特定局のほうに切りかえるということも予定をいたしております。
  130. 野上元

    野上元君 そうしますと、簡易郵便局が無集配局に昇格というのはおかしいですが、種別がえが行なわれることもあり得るということですね。
  131. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) やかましく申し上げますと、簡易局は設置法上の郵便局ではございませんから、簡易郵便局を廃止して、解約いたしまして、新たに無集配特定局を設置すると、こういうことになります。
  132. 野上元

    野上元君 この簡易郵便局をつくる、受託する場合には、やはり受託者は、一応自分の生活のことも考えてやられると思いますね。その場合に、契約を破棄されて、新しい無集配局ができるという場合に、前の受託者は一体どうなるんでしょうか、これはあなたのほうの勝手で、切ってしまうわけですか。
  133. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) これは契約書を取りかわすわけでございますので、それによりますると、省側の解約といたしましては、解約をするに値する理由が起きました場合には、即刻解約できる、こういうたてまえになっておるわけでございますが、実際の運用といたしましては、いまおっしゃったようなことも考慮しなければならないと思います。また簡易局をやめて無集配特定局を新たに設置いたします場合には、従来簡易局を受託しておりました個人という人は、一応その意思がございますならば、無集配特定局の局長候補者として出てまいりましょうから、そのときに選考の対象になると、そういうことでございます。
  134. 野上元

    野上元君 やかましく言えばそういうことになりますね。一応解約して、郵政省との関係は切れるわけですから、そして、新しい設置法に基づく郵便局ができるわけですから、新しくまた局長の人事については選考をする。その候補者たり得るということは、理屈ではそうなりますね。しかし彼はそういうつもりで受託したのじゃなかったかもしれませんね。そして郵政当局としては、そういうところでやってくれることは非常にありがたいのだということでやってもらったのを、だんだん取り扱う部数が多くなったから、もうおまえはよろしいと、新しく郵便局をつくるからもうよろしいと。そして郵便従業員として、局長としてつとめたいなら、あらためて、選考基準があるから選考の候補者になりなさいというのでは、ちょっと冷た過ぎるような気もするわけですがね。その点どうですか。優先的にそういうのは昇格というふうにみなすべきじゃないですか、実質的に。
  135. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) お気持ちはわかるのでございますが、手続といたしましては、やはり先ほど申しましたような手続を踏みまして、無集配特定局の局長選考につきましては、一つのはっきりした内規といったものもございますし、そういうものを無視するわけにもいきませんので、そのほうで選考のふるいにかけるという手続はどうしても踏まなければいけないかと思います。
  136. 野上元

    野上元君 私は、手続はわかります。しかし、いわゆる内規的なものでそういう優先順位を与えるということは当然考えられてしかるべきだと思うのですが、どうですか。
  137. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) これは、新しく置かれる無集配特定局長の選考のときに十分考慮される条件の一つになるということは予想されるわけでございます。その地元におりまして、それまで毎日郵便局の業務をやってくれた人でございますから、その業務経験、事務処理能力、そういったものは評価してしかるべきでございますから、相当有利なる条件になると思います。ただ、年齢といったものは、これはどうにもいたしかたのない一つの条件かと思います。
  138. 野上元

    野上元君 私は、この際、郵務局長にお願いしておきたいのですが、無集配局というのは、ややもすると政治的考慮が払われてつくられたり廃止されたりする可能性があるわけですね、いままでの経験から見まして。ということになると、簡易郵便局そこにあっても、無集配局というのを別の力でつくり上げるというようなことが往々にしてあるわけですね。その無集配局がつくられるということは、その裏にいつも局長がついてきているわけです。これが問題の種にいつもなってきたわけですね。そういう場合が多いわけです。無集配局の場合に、まず地元で局長の選考が行なわれておって、そしてそこへ局をつくって局長にしてやるというような政治的な動きが非常に強いわけですよ、残念ながら。そういうものに巻き込まれたら、簡易郵便局を受託しておった人たちは全く無力ですからね、そういうことになると、非常に私は気の毒な処遇になると思うのですね。そういうことのないように、これはもうここで論争する問題じゃありません。ありませんが、そういう可能性が非常に強いですから、私は、そういうことのないようにあらかじめ十分な配慮をしていただきたいというふうに思うのです。
  139. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) おことばがございましたが、いまの無集配の置局につきましては、まず局長候補者がきまってからというお話でございましたが、昨今の実情はそうではございませんで、かりにそういう申し出がございましても、無集配局を置くに値するところならば置きますけれども、基準に合わないところは絶対に置かないと、そんなに予算で置局がとれないわけでございます。大事なとらの子ですから、そうやたらに設置するわけにまいりません。置くべきところ、緊急性の高いところを選んで置いてあるわけでございまして、そういう御心配はまずないと思うのでございますが、そういうことでなくして、無集配局が自然の姿で置かれるような場合には、それまでやっておりました簡易局の受託者の身分ということにつきましては、運用上いろいろな点について考慮を払っていく要があろうかと思います。
  140. 野上元

    野上元君 まあ無集配局の設置についてそういう不純性は絶対にないという郵務局長のお答えでありますから、その点は非常にけっこうなことだと思います。従来そういう例がしばしばあったので申し上げたわけで、最近はないということですから、そのことが望ましいと思いますから、そういう点については十分ひとつ配慮してもらいたいと思います。  それから、さっき言いましたように、簡易郵便局でも、局長一人ではどうしても無理だ、たとえば設置基準には、〇・五人の事務量があるところは簡易郵便局にするのだという一つの基準がありますね。取り扱い量が〇・五人分あるというようなところは無集配局にしないで簡易郵便局にするという一つの基準がありますね。ところが、それをこえて、〇・七なり〇・八なりになって、しかも兼業をやらなければならぬ、食えないという場合がありますよね。そういう場合に、どうしても助手がほしいと、パートタイムの助手がほしいというような場合には、当然、簡易郵便局といえども二人の場合もあり得ると、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  141. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) それは実態だと思います。かりに事務量が一人に満たないで〇・五というようなことでございましても、受託者たる個人が窓口時間中しょっちゅうその場所にいるということは、これはなかなか困難でございまして、生理的な事情もあるし、また何かのことで入院をしなければならないといったような事態も起きますし、緊急の用向きで旅行をしなければならぬということも起こり得るわけでございます。まあそういうことも想定いたしまして、受託者たる個人に、そういった事情でもって勤務場所を離れます場合には、しっかりした代務者を置くと。その代務者につきましては、郵政局にあらかじめ契約書の中で届け出をしていただきまして、郵政局がそれを承認する形において、代務者の名前もはっきりさせておくと、郵政省はそれを承知しておくと、こういった形にしてまいりたいと思います。
  142. 野上元

    野上元君 そうしますと、その代務者というのは、郵政局と直接どういう関係にありますか。それは雇用関係には全くないのですか。その正式の受託者と代務者との間の個人契約になるのですか。それとも、代務者というのは郵政省がやっぱり認可するのだと、認めるのだということになれば、郵政省との間の契約、雇用契約というか委託契約というか、そういうものもあるのですか。
  143. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 委託契約の上からは、郵政省との相手になりますのは受託者たる個人だけでありまして、代務者ではございません。代務者はあくまでも受託者たる個人との間の一つの契約になると、かように存じます。
  144. 野上元

    野上元君 その点は、その代務者というのを認めるということになれば、そして郵政当局との間の何らの契約がないということになるとすれば、全然何にもない人が窓口をやると、郵政省と何の関係のない人が窓口をやるということになりはせぬか。
  145. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そういうことになるわけでございますが、したがいまして、受託者である個人の方は、法律で書いてございますように、「誠実に自ら」ということになっておりますが、「自ら」と申しますことは、受託者たる個人が責任をもってやってもらう、かりに自分がその場にいない場合に代理の者にやらせるといたしましても、その人の責任においてやってもらうと、こういう趣旨のものでございます。
  146. 野上元

    野上元君 そのことはこれはもう当然なことだと思うのですが、郵政事業から見て、先ほど言われるその重要な公共性をつかさどっておる郵政事業から見て、全然郵政省との関係のない人が窓口をやっておるということは、郵政事業としてどうなんですか。受託者がいかに誠意があり責任を持ってといっても、現実には全くの他人が来て郵便局の窓口へすわっておる。それで郵政省事業を行なっておるという姿になるではありませんか。その点は許されるのですか。
  147. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そういうこともございますので、代理をする人につきましては、やはりしっかりした人にやってもらわなければならないという意味も込めまして、契約書の中に代務者の名前をうたってもらう。これは通達でもって取りきめたいと思っておりますが、一人じゃ不足ですから二人ぐらいはひとつ名前を申告しておいてもらうというわけでございます。また、それを承認するにあたりましては、やはり受託者である個人につきまして、いろいろと人物その他について調査をいたしますときに、あわせて代務になる人につきましてもいろんなことをひとつ調べさせてもらう。そういった慎重な措置を講じたいと思います。
  148. 野上元

    野上元君 その点わからぬでもないんですが、私の言いたいのは、そういう全然無関係な人じゃなくて、何らかの関係を持たせる、郵政当局と。というようなことが必要なんじゃないかという気がするんですが、その点は後ほど検討してもらいたいと思います。  それからその人の、たとえば何といいますか、働いたものに対する対価ですが、それは当然受託者が受ける請負料の中から払われる、こういうことになるわけですか。
  149. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) そのとおりでございます。
  150. 野上元

    野上元君 この無集配局と簡易郵便局と見ますと、郵便物の取り扱い数、あるいは窓口の取り扱い数から見て、ほとんど変わらない数量を取り扱っておる簡易郵便局というのは相当あるわけですね。にもかかわらず、その待遇は著しく違うわけですね。これに対して私も非常に矛盾を感じるわけですよね。経営上のことはわかりますよ。経営上のことはわかりますが、しかし、だんだん本人にとってみると、隣りの無集配局の事務量と自分の簡易郵便局の事務量を比べて、うちのほうがはるかに多いと、しかも貯金もうちのほうが実績が多い、郵政省に対する貢献度もはるかに高いと、いろいろなことを考えると私は思うんですね。そうすると、そこに不満が生じてくると思うんです、どうしても。そういう問題についてはどうですか、割り切らざるを得ないですか。
  151. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 簡易局と申しましても、地況によりましては事務量が相当多いというところが間々ございまして、それはお話のとおりです。これは一般の無集配局程度よりも、ケースによりましては事務量が多いというところもあるわけでございますが、それにつきましては、無集配局を置くにふさわしい地況であるとはっきりするならば、これは無集配局に切りかえるということは、やぶさかではございません。それからもう一つは、手数料の出し方に問題があると思いますが、御承知のように手数料は三本立てで手数料を組んでございますけれども、その中で、取り扱いの事務量に応じた手数料の立て方、これのやり方を相当考える必要がございます。今日相当考えておるわけでございますけれども、扱い数量が多ければ手数料の実入りも多くなるというわけでございまして、現実に年額百数十万円の局もあります。これは月額にすれば十万円近くになる簡易局もあるわけであります。働きに応じたペイをどういうふうにするかということで、いまおっしゃったような問題の解決もつくのじゃないか、かように存じております。
  152. 野上元

    野上元君 多いところは問題がないと思いますが、ただ、かりに簡易郵便局を置いているところを最低の無集配局に切りかえた場合、年間に要する郵政省の経費というものは、比較は簡単に出ると思いますが、相当に違うと思う。おそらく十対一くらいじゃないか。とすれば、一のほうはあまりにみじめじゃないか。これは郵政省に搾取されているというふうな考え方が出ないとも限りませんよ。初めのうちはやらしてください、やってくださいといってうまく話し合いがついても、だんだんと時がたつにつれて人間というのはそういうことになるんです。これはしようがないことだと思います。これはどんな雇用契約でもそうでありますから。そういうことを考えると、あまりバランスがくずれていると、あなたのほうの説得力がなくなるのじゃないかという気がするのです。したがって、手数料の算出については相当配慮を加えて、不満が起きないようにやるべきじゃないかと思うのです。それと、最低制限額というものはあるのですか、この点はどうですか。
  153. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 最低制限額と申しますか最低保障額と申しますか、いわゆる基本額相当部分はそれに相当するわけでございまして、取り扱い物数のいかんにかかわらず、とにかく簡易局を設置して窓口を開いておく、そこに人間を一人配置する、そのための必要最低限の経費といたしましては、これは四十五年度の予算で一万四千九百七十円というものであります。これは予算額でありますが、予定しているわけであります。いまのは月額です。それからもう一つは、取り扱い事務が多くなった場合には、やはりそれだけのものを取り扱い手数料として見てあげるというその方針は、決して今後もやぶさかでございませんし、実は毎年のように取り扱い手数料の単価も一年ごとの物件費、人件費のアップを見込みまして改定をしている。そういう措置も講じておりまして、その労に報いる体制というものは十分実施していると思うのであります。
  154. 野上元

    野上元君 最低保障額というものは、ある物数に達しなくてもこれだけだ、一万四千九百円だということですね。そうすると、これは最低保障額であると同時に、実行上の最低でもあるわけですね。そうすると、最高というのはどのくらいのことを考えておられるか、個人受託の場合には、あなたの予算上の計算で最高というのはどの程度に考えておられるか。
  155. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 簡易局の取り扱い、いかに少ないと申しましても、全然ゼロということもございませんが、理論としては、取り扱いが一件もなくても、さっき申しました基本額は支給されるわけであります。それから最高が、これは予算として想定するのはなかなかむずかしいわけでございまして、これは目見当で申しますよりも四十三年度の決算で、実績で申し上げたほうがいいと思いますが、最高といたしまして、年額百十八万七千九百五十五円というのが最高の手数料になっております。
  156. 野上元

    野上元君 最高の場合は、少なくとも地方公共団体あるいは組合等があるような地域ですね。今度は個人委託の場合は、もっと人口が過疎の状態にあるんじゃないですか。そうすると、最高というのはずっとこれから落ちるんじゃないですか。そのことはこれからの計算、実績を見なければわかりませんが、予想としてはそういうような気がするんですがどうですか。
  157. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 今後新しく設置される簡易局につきましては、おっしゃるように最高額はずっと落ちてくると思います。ただ従来、団体受託の形式のものが、何らかの事情によりまして個人委託に切りかえられるという場合には、個人委託の簡易局といえども相当の最高額手数料になるというケースも生まれてくると思います。
  158. 野上元

    野上元君 個人委託に切りかえるというのは、すでに予想されているわけですか。
  159. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) この予想もなかなかむずかしいのでございます。この団体、いまの形の団体委託の場合でございましても、個人色の非常に濃い形でやられておる簡易局が相当あるわけでございます。それらの局につきましては、今度の法改正によりまして、相当部分が個人委託のほうに切りかえられるのではなかろうかという、これは予想でございまして、実際ふたをあけてみませんとほんとうのところわからないわけでございますが、一応の予想として考えております。
  160. 野上元

    野上元君 個人委託への切りかえに対するイニシアチブはだれがとるんですか。地方公共団体の人ですか農協ですか。あるいはそこから委託されてやっておる人がやるのか、それとも郵政省が切りかえてくれと、こう言うのか。どこがイニシアチブを……。
  161. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) その簡易局がありまするところの、それは団体からかあるいは実際のその取り扱い者からか、どちらかがやるんじゃなかろうか。あるいはそれをどういうふうにやるのか知りませんが、郵政側のほうから持ち出すことは考えておりません。
  162. 野上元

    野上元君 そうしますと、完全なそれは予測であって、わかりませんね。  それから、しつこいようでありますが、待遇について相当の差があるということがどうも頭にこびりつくわけですが、たとえば、無集配局の場合は、定まった法律に従って給料が支払われる。そして賞与も支払われるというわけですが、この受託者の場合には賞与というものはないわけでしょう。
  163. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) ございません。  それと、もう一つ申し上げたいことは、手数料額が少ないところは気の毒ではないかというお尋ねでございますが、そういうところは事務量も少なうございますから、私どもといたしましては、その受託者たる個人は、簡易郵便局の仕事に専念されるということはおそらくないという見込みでございます。つまり、兼業という形で何か仕事を持っておりまして、簡易郵便局の仕事と兼業という形においてなされることが多いということを考えておりますので、簡易局からの収入は、まあ仕事に見合った収入をもって、かりに少なくとも、別のほうの収入もあることでございますので、よろしいのではなかろうかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  164. 野上元

    野上元君 賞与の制度というのは、これはなかなかむずかしいことかもしれません。が、少なくとも賞与月においては、手数料に何割かかけて、原価にかけて計算をするというような方法はとれないのですか。
  165. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) これは手数料の立て方ですから、技術的にそういうことをやってやれなくもないと思いますけれども、簡易局の性格、取り扱いの実態等々をながめまして、その要はないのじゃなかろうかと考えております。
  166. 野上元

    野上元君 まあその要があるかないかは、今後やってみなければわからぬと思いますが、私は人情として、人が賞与をもらうときに、同じ仕事をしておるものが全然何らの考慮がされないということは、必ずその不満が起きると思うから、きまった賞与が出せないとするならば、賞与月における算出根拠を少し高くして算出するというような方法がとれれば、希望としてあなたに言っておきたいと思うのですが、特に待遇は非常に差別があるが、義務と責任は無集配局長と何ら変わりないわけですね。郵政事業を行なうにあたっての責任と義務という点については全く同じなんですね。しかし処遇のほうは十対一くらい違うということでは、あまりにも差があり過ぎるという気がするので、それのギャップを埋める方法があるならば、なるべくはギャップを埋めていくべきじゃないか。でなければ、責任と義務を軽くしていくという方法を考慮すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  167. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) やはり簡易局の仕事を委託を受けてやっていただくわけでございますから、やはり張りを持って、やる気を出していただいて仕事をやってもらうということが私どものねらいでございますから、非常に失望するような手数料を差し上げるということはもちろん考えておりません。仕事の実態に見合った適正なる対価を支払いまして、喜んでやっていただけるような、そういう手数料をつくっていきたいと考えます。
  168. 野上元

    野上元君 まあ抽象的で、それはなかなか理解がむずかしいと思うのですがね、適正な手数料とはどういうものだということになると、なかなかむずかしいのですが、先ほど言ったように、感情として、同じ仕事をやり、しかも事務量から見てこっちのほうが多いというところがあるので、実際には十対一の待遇では、これは早晩それこそ文句が出てくるに違いないと思う。そういう文句が起きないように、ひとつ先手、先手と打ってもらいたいと思う。  それからもう一つ、最後に伺いたいのですが、受託者になろうとする場合に、たとえば資産が五十万円ぐらいある者だとかあるいは保証人がどうのこうのというように、非常に制約がきついのですね。したがって、郵政省から見ると、おまえらにやらしてやるのだというような、いわゆる官庁的ポーズが見えてしようがないのですね。そうじゃなくて、非常に少ない仕事だけれどもひとつ引き受けてくれませんか、国家のために、というようなポーズがないような気がするのだな。おまえらやりたいならやらしてやろう、しかし資産は何十万だ、保証人は何人だ、事故を起こしたら全部おまえら補償しろというような、非常に押しつけがましい考え方ば、伝統的な郵政省考え方かもしれぬけれども、そうでなくて、やっていただくのだという気持ちでやってもらったほうがうまくいくのじゃないかというような気がするのですよ。特に保証金五十万円というのが具体的にこの間話が出ましたがね、かりに郵政省に何十年もつとめて、無事故でりっぱに働いた人が、いよいよ第二の人生を生きていこうというような場合に、その人の四十年間無事故でやってきたというのは大きな資産だと思うのです。五十万や百万にかえられない大きな資産だと思う。そういう人たちにも、やっぱり五十万も出せというようなことを言われるのですが、そういう点はどうですか、それは資産とみなせないですか。正直、信用と郵政省に対する貢献、金にはかえられないものだと思うのですがね、どうですか。
  169. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) やはり大事な郵便の取り扱い、大事な現金を取り扱うということですから、私どもとしては、たいへん手固いことを考えておるわけでございます。ただし、実際受託者たる個人を選考するにあたりましては、経済力、保証能力という点につきましては、もちろんこれを全然無視するというわけにはまいらないと思います。けれども、保有の財産が台帳価額で五十万あるいは三十万、そういった形式だけにはこだわることは考えてはいないのでございまして、そこはいまどういう形にするか、いずれ通達ということで地方へ示さなければいけませんけれども、おっしゃるようにがんじがらめな形式だけでなくて、弾力的な措置もできるような、そういう基準ができないものか、目下その点につきましては検討し、かつ作業中でございますが、最終的な結論は得ておりませんけれども、運用の上でもう少し考えてまいりたいと思います。
  170. 野上元

    野上元君 いろいろと質問してきましたので、これで私はやめますが、いずれにせよ、簡易郵便局の場合は一人で窓口を切り回さなければならぬ。代理者を置くにしても少なくとも一人で責任を負わなければならぬということでありますから、郵政事業を遂行する能力のある者というような一つの制限があるようですが、そういう点ではいま私が申し上げたように、郵政部内からやめていくというような者が受託するというような場合は、まことに適任だと思うわけですね。したがって、この間も答弁にありましたように、一つの有力なそれは優先条件になるだろうというような答えがありましたけれども、再度ひとつ局長から聞いておきたいのです。というのは、一人でやるということになれば、もう全くずぶのしろうとがやるということになるとたいへんなことなんです。もしも全くのずぶのしろうとが引き受けるというような場合には、どうやって訓練をするのですか。そういう点をひとつどういうふうにお考えになっているか、聞かしてもらいたいと思います。
  171. 竹下一記

    政府委員竹下一記君) 受託者の選考につきましては、法律に明記してございますように、まず地元住民から絶大の信頼を持った方、信用の高い人ということが第一条件だと思います。まあ郵政事務について、あるいはしろうとかもしれませんが、受け持ちの集配特定局でしばらくの間勉強してもらうとか、それからもよりの集配特定局が、これはもう日常電話連絡もつきますし、手に手をとっていろいろ指導をするということも可能でございますので、いままで仕事の経験がない人も、努力次第で十分やっていけると、かように存ずるわけでございます。また、おっしゃるように事務の経験があります人は、事務能力につきましてはこれは文句がございませんので、選考にあたりましては非常に有利なる条件の一つになると、かように存じます。
  172. 野上元

    野上元君 これで終わります。
  173. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 他に御発言がなければ、本法律案に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十四分散会