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野上元君 何といいますか、われわれが若いとき生きた時代と今の時代とだいぶん変わってきていますからね。ことにエレクトロニクスの時代に入りつつあるわけですから、これがもたらす変化というのは非常に重要なものだと私は思っているのです。まず第一に、伝統と古い教義に対する挑戦という姿であらわれているわけですよ。それが大学の
紛争を起こしておるし、あるいは新宿の広場でわれわれが想像もしなかったような風景が見られる。しかし彼らにとってはあれがあたりまえなんですね。
——というようにわれわれの
理解できないようなことが起きつつある。われわれはそれがいいとか悪いとかいっても始まらぬと思うのですね、そういう社会になりつつあると思うのです。しかもそれは人間が発明したエレクトロニクスがもたらしたものであって、みずからまいた種なんで、これはどうしようもないと思うのですね。したがって、そういう変化に即応した行政なり政治なりが行なわれなければならぬというふうに
考えるわけなんです。したがって私の申し上げることが、
管理者のあなた方から見ると、とんでもないというようなことになるかもしれませんけれども、しかしもうそれは好むと好まざるとにかかわらず、私はそこへいくと思うのですね。ガリレオ・ガリレイじゃないけれども、それでも地球は回るのだ、こういうことですね。変化を予測する人をいかに排撃してみたところで、変化は事実が変化をしているんですからね。私は、そういうことを
考えると、そういう点についてやはりどうしても
考えなければならぬというふうに思うのです。
そこで、ミシガン大学の社会
行動研究所の調査の結果があるのですが、私、たまたまあるところで見たのですが、経営
管理についていろいろなことを調査してみたというのです、
従業員を中心にですね。それで
従業員というものを中心にしたタイプの企業、これの生産性、それから職務を中心とした企業の生産性、どっちが高いかという統計をとってみたら、前者の
従業員を中心とした企業の生産性のほうがはるかに高い、こういう結論が出ているわけです。ということは幾つかの示唆があると思うのですが、特に産業民主化というものは、こういう
従業員を
一つの
目的なり主体なりとして見るという行き方のほうが生産性ははるかに高い。これを
手段とし、客体として見るというような経営のやり方は落ちていくというのですね、生産性が。ということが統計上明らかになったというのですね。だから
一つの示唆が含まれていると思うのですが、これは特に官庁経営の場合にはどうしても古い
考え方が出てくるというふうに思うのです。かつてのよき時代を思い起こして、昔はよかったというふうにぼくらも
考えるわけなんですが、そう
考えておったってこれは問題は解決しないわけですからね。時代は変わっているわけですから、そういうこともぜひ
考えてもらいたいと思う。
それからフランスのジャーナリストのシェルバン・シュレーベルという人がこれも
一つの発表をしているのですが、現在のヨーロッパの沈滞した空気、これは一体何だという疑念についていろいろと検討しているというのです。そこで彼が出した結論は、ヨーロッパにおいても社会生活は次第に
アメリカナイズされてきている。ところがヨーロッパの指導者はその変化を見ようとしない。あるいはこの変化から逃避しようとするというのです。したがって、指導者層と社会生活の
関係が非常に薄くなった。その理由は、指導者層が時代おくれのものの見方や、伝統的な論理観から一歩も出ない昔ながらの強圧的
手段にしがみついているからである。このような指導者層は、いままさに生まれつつある新しい社会には全く適合しなくなったと、これが現在のヨーロッパの姿である。こういうふうに言っているわけですね。したがって、やはり変化というものはわれわれに
関係なしにどんどん進んでいっている。したがって、これに順応できない者は、指導者であろうが、だれであろうが、捨てられていかざるを得ないということでありますから、いつまでも同じドグマを信奉して、それで指導していこうということは誤りであるというふうに
考えるわけです。
これは、私はあなたのほうにも言っているけれども、
労働組合にも言いたいわけです。
お互いに大組織の上に乗っているわけですが、変化しつつある世の中に住んでいるわけですから、私はそういう点は
お互いに研究していかなければ、両者から離れたところで別の運動が起こるんじゃないかというような気さえするのです。ですから、その点は、あなた方もとにかく
事業を遂行していく責任者なんですから、
従業員がいいとか悪いとか言っても始まらないわけですから、とにかく道具が悪いといって道具のせいにするのは、へたな大工の言うことだそうですから、
従業員を幾らこきおろしてもしかたがないわけです。そういう
意味でひとつあなたのほうも、そういうものについて将来検討しておいてもらいたいというふうに思うわけです。
この際、
郵政大臣にお聞きしておきたいのですが、国鉄は、御
承知のように三千八百億ですか四千億になんなんとする赤字をかかえて非常に四苦八苦している。そしてこれを何とかしなくちゃならぬということで、いま政府、国鉄あるいは政党等が一致してこの問題に取り組んでおるというわけですが、そのことはそのことでいいんですが、いよいよ国鉄もホテル経営あるいは国鉄に関連する駐車場みたいなもの、あるいはその他のものの経営に乗り出す、こういうふうに言われておるのですが、これは閣議等でそういう点については話があったわけですか。