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1970-03-24 第63回国会 参議院 逓信委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十四日(火曜日)    午前九時五十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         近藤 信一君     理 事                 長田 裕二君                 新谷寅三郎君                 松平 勇雄君                 永岡 光治君     委 員                 植竹 春彦君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 迫水 久常君                 白井  勇君                 菅野 儀作君                 寺尾  豊君                 久保  等君                 野上  元君                 森  勝治君                 塩出 啓典君                 村尾 重雄君                 青島 幸男君    国務大臣        郵 政 大 臣  井出一太郎君    政府委員        防衛施設庁施設        部長       鶴崎  敏君        郵政政務次官   小渕 恵三君        郵政大臣官房長  野田誠二郎君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君    事務局側        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君    説明員        郵政省電波監理        局放送部長    太原 幹夫君    参考人        日本放送協会会        長        前田 義徳君        日本放送協会副        会長       小野 吉郎君        日本放送協会技        師長・専務理事  野村 達治君        日本放送協会専        務理事      竹中 重敏君        日本放送協会専        務理事      川上 行蔵君        日本放送協会専        務理事      志賀 正信君        日本放送協会理        事        松浦 隼雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対し、質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 森勝治

    森勝治君 これからNHK予算について質問をしたいと思っております。  ところで従来の例にならって、本件につきましても所管大臣からつぶさに御所見を拝聴したい、かようについ先刻まで考えておりましたが、大臣人気者だそうでありますので、他の委員会でどうしてもということでありますので、私も残念でありますが、十分大臣の高邁な識見を拝聴できないことを残念に思うわけでありますが、議事をすみやかに進めるということで、その点はできるだけ——何か時間ができて後ほどおいでくださるやに風のたよりで承っておりますので、そのとき折あらば質問をし、政務次官等もおそらくおいででありましょうから、大臣に御質問のしたい向きは政務次官その他に質問をすることにして、これから四十五年度のNHK予算案について項目別質問を行なってみたいと思います。  御承知のように、四十四年度では三億円の繰り越しということに予想がなっておりますけれども、そうなりますと、四十五年度の受信料見込み総額というのは幾ばくになるのか、その点お伺いをしておきたいと思います。
  4. 志賀正信

    参考人志賀正信君) 四十五年度の受信料総額は八百九十五億一千万の予定でございます。
  5. 森勝治

    森勝治君 従来、先般の委員会でも私ども質問したのでありますが、カラー契約の問題でありますけれども、私は昨年度の当委員会におきましても、カラー契約の数というものはどうもわれわれが想像するよりもはるかに内輪NHKは見積もって予算に計上しているような気がしてならぬわけであります。NHKの案から見ましても、四十五年度には二百四十万ということで予算を見込んでおられるようでありますが、この数字は、この前も業界のデータを主として私は質問申し上げたような気がするのでありますが、この電子機械工業会生産出荷台数発表等から見ましても、依然としてNHK積算根拠というものはどうも内輪内輪に見込んでおるような気がしてならぬのでありますが、この点はどうなんでしょう。昨年も私は内輪ということで具体的に指摘いたしましたら、さようなことはございませんという御答弁、これは記録を見ていただけば明らかでありますが、ところがことしもだいぶ内輪……、もちろん在庫数、あるいはその他の、極論いたしますと、輸送途上などということもあるでしょう。それにしてもあまりにもへだたりが多過ぎる。どうも数字というものは六をひっくり返せば九になったりいろいろいたしますから、まさかNHK数字をもて遊ぶとは私は考えておりません。おりませんが、もう少し実態を把握されたらよろしかろうなどというようなことはちょっと僭上のさたでありますから、そういうことばは慎みますけれども、もう少し私どもしろうとから見てもややうなずける程度数字をぜひともことしあたりからお示し願いたいものと、こう勘考しておったのでありますが、どうもこの算出根拠が昨年と同じ方法を踏襲されておるやに私は昨年の質問過程をいまはしなくも振り返りましてその感をどうも深く感じたところでありますが、この算出根拠等についての考え方、もっともおれのところの積算は間違いないのだ、こう一言で片づけられてしまえば、それまでの話でありますけれども
  6. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お答え申し上げます。  過去の実績を見ますと、お説のとおり共感をもって拝聴することができます。しかしながら、予算関係につきましては、必ずしも必要以上に内輪に見えるような考えは毛頭持っておりません。予算の執行でございますので、確実に把握し得る最大限の点を目標といたしまして算出をいたしているわけでございますが、今回の二百四十万件増の算出根拠を申し上げますと、メーカー筋では生産台数六百万と大体発表されております。もっともそのうちには国内向け輸出向けがございます。この内訳は御発表になっておりません。過去の経過を見ますと、輸出は非常に大きなウエートを占めておりましたが、漸次その率が低下しつつありまして、ごく最近における輸出の割合は生産台数の大体二五%、こういうようになっております。そういたしますと 国内出荷に向けますものは四百五十万台である、こう推定されます。このうちで四百五十万台だけでなしに、前年度出荷にかかわりますもので売却に至らないで倉庫あるいは電気商店等の店頭に在庫で残っておるものがございます。大体在庫関係は二七%ばかりというのが最近の実績でございます。そういう点で見ますと、約百八万件というものは前年度在庫として今年度に残っておりますので、これを今年度新しい国内向け出荷が四百五十万プラスいたしますと五百五十八万件になります。そのうち四百五十万件のうちで、さらに従来の実績による二七%ばかりは流通在庫として残るわけであります。その数は約百二十二万でございますが、それを差し引きいたしますと四百三十六万台、こういうものが想定されます。このうちにはいろいろ複数所有のものもあります。また買いかえ等のものもございます。特に、昭和三十八年から四十年度までに生産されましたものは非常に旧型の旧式のものでございますし、調整も非常に困難でございます。こういった面はおよそ年数から申しましても、また受像機の性能から申しましても、全面ほとんど廃棄あるいは買いかえになるものと予想をいたしております。四十一年度あたり購入されましたものもおよそ買いかえの時期にきております。そういう面を想定いたしますと、およそ買いかえにかかわるもの並びに複数所有関係でございますが、これは昨年の十二月にNHKでは全国にわたりまして実態調査を行ないました。テレビ二千五百万所有世帯のうちで複数受像機を持っておる率は四〇%をこえております。この中には白黒複数カラー複数というような区別はいたしておりませんで、十二月の調査ではカラー複数所有台数推定することは困難でございますけれども、昨年の十二月に先だつ六月にその辺の調査をいたしました結果、世帯数の中でカラー複数に持っておるものは大体二%、こういうように調査の結果が出ております。この二%は漸次ふえておると思いますけれども、これは推定にかかわる問題でございますので、そのまま二%をとってみますと、両者を合わせまして約七十六万台というものが買いかえ並びに複数所有台数でございます。そうしますと、三百六十万件ということになるわけでございますけれども、これにはいろいろな制約がございまして、購入から契約に至りますまでに若干の期間ズレがございます。購入してすぐ契約になるというような実態ではございません。この面ではそのようにいたすように努力をいたしておりますけれども法制上も、放送法改正前にこういうような受信者側で届け出の義務を、今日の法制上は課しておりません。立ち入り調査権もございません。しかも、全国で外勤に当たります職員というものはわずかに四千五百名程度でございます。これで日本世帯にわたりましていろいろな努力をしなければならないのでありますけれども、そういう面から、在来の最近の実績を申し上げますと、大体におきまして、購入から契約に至りますまでに三カ月間くらいのズレがございます。そういうズレが前年度からずれていったものもございますし、今年度のものが来年度にずれるものもございます。これを差し引き操作をいたしますことと、さらに移動関係につきましては、かなりひんぱんな世帯移動があるわけでございまして、最近の総理府の調査から見ましても、この移動の率はかなりの数にのぼっております。七・七%でございます。さらに不在等によりまして、何度訪問をいたしましても、かぎがかかっていて会えないものがかなりございます。そういったような面につきましては、大体、移動関係はいろいろな調査をいたしまして、これを把握いたしますに六カ月間くらいの期間がかかるのが実態でございます。また、不在等関係をはっきり把握いたしますためには、およそ平均して九カ月くらいかかるというのが現状でございますし、そういうような面で操作をいたしますと、契約ズレ移動不在等によって約九十三万件ばかりのものが、これは翌年度回しということになりますので、差し引きいたしまして二百六十七万台でございます。これに対しまして二百四十万の純増を見込んでおるわけでございますが、契約をいたしますものは二百四十万ではございません。これをこえる二百六十七万はおよそ一ぱい一ぱい契約をするわけでございますけれども、何らかの事情によりまして、白黒でもカラーでも同様でございますが、加入をして年度内にいろいろな事情廃止になるものがございます。そういう点を勘案いたしますと、二百四十万の純増というものはかなり努力した線であり、おそらく算術的にそういった二百六十七万に対して二百四十万と、こういうように見ましても、九〇%程度把握率は持っておりますし、いわんやその間に実態として過去から連綿とあります廃止数というようなものを勘案をいたしますと、およそ把握し得るものは把握するというたてまえで計算をいたしましたものが、二百四十万の純増でございます。
  7. 森勝治

    森勝治君 いま後段でかなり努力したというお話があったわけでありますが、はたしてそのとおりわれわれがすなおに副会長ことばを受けとめることができますかどうかといいますと、私はそうですと、うなずくわけにはまいらぬのであります、正直に言って。これは何といっても、現代という時の流れNHKのそうした数字の中に幸いしたものであったのがより大きな功績であって、NHKさんのおっしゃる最大の努力などということとは若干私は趣きが違うような気がするわけです。もちろんこれは努力をしないなどということを私は申し上げておるのではない。もちろんおやりでありましょうけれどもNHK努力もさることながら、それを上回る時の流れというもの、趨勢というものからそうなったであろうと、むしろ私はそういうような見方をしているわけです。  ところで、まあるる御説明がありましたが、なるほど四十二年度に受信料体系の変更がありましたが、当時NHKの私に対する説明は、四十三年度末で百四十万、四十四年度末で二百三十万、四十五年度末で三百五十万、四十七年度末で六百五十万、こういう説明をされたわけです。これはカラーテレビ発達契約の想定ということで私に数字をお示しいただいたわけでありますが、これは四十七年を待たずにもう三年間で六百五十万に到達してしまおうというようにこの時代の流れというか、世の中がそこまできたわけでありますね。ですから、私いまことばを返すようでありますが、必ずしもNHK努力だと言って吹聴するほどのしろものではないではないか、こう申し上げているわけです。したがって、この数字というものはますます累増していくだろうと思うのであります。そうなればNHKさんの財政のほうも、それに見合って潤ってくるだろうという素朴な理解をするわけでありますね。ところで、NHKさんのほうは依然としてどうも赤字だとか、借金を返さなきゃならぬとか何とかおやりになっておる。まあそういう問題については、後ほど御質問をしたいと思うのでありますが、さて、そうならば今度は四十六年と四十七年度の増加、もうすでにこれはNHKは当初われわれに説明されたのをさらにまた修正した数字を出されておりましたね。しかし、私はこれをまた上回るような数字が四十六年、四十七年に出てくるような気がしてならぬわけであります。そこで、そういう観点から、私はお伺いしているわけでありますが、この四十六年と七年度とのそういう新たな観点に立った場合の増加推定増収額ですか、それは総額でけっこうでありますが、その点をひとつ四十六、四十七年、まあ四十七年に六百五十万と発表されておりますが、これはだいぶ修正をされる意向であるし、またそれを上回るような私は気配だと思いますので、その点についてあらためてひとつここで四十六年、四十七年のいま申し上げた動向についてお伺いしたい。
  8. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お説のとおり、NHK努力ばかりでなしに、日本の経済の成長に伴います生活の充実、こういった面が非常に大きなプラスの要素になっておることは私も同感でございます。過去の実績を見ましても、四十三年度では百四十万の契約を当初の長期構想では見ておりましたが、実績は百六十九万になっております。四十四年度につきましても、当初百十万の予算を計上したわけでございますけれども、百八十七万はいけるというような状況で当初の予想よりも伸びております。そういうことで、四十五年度御審議をいただいております予算のその以後におきましては、そういう過去の実績並びに将来の趨勢を勘案いたしまして長期構想を見直しております。四十五年度につきましては、当初の構想ではカラーの増は百二十万と見ておりましたが、今回のそれは二百四十万に改定をいたしております。四十六年度におきましても、当初は百四十万と見ておりましたが、三百万と、こういう予想を立てておりますし、四十七年度については当初百六十万のそれを三百十万獲得ともこういうように改定をいたしまして、総計いたしますと、五カ年間で当初の構想では六百五十万件にとどまると、こう見ておりましたが、千二百六万件になるであろう、こういうふうに見直しておるわけでございます。こういう見直しによる増収の額は四十三年度から四十七年度までを通じまして百四十四億の増収が生ずる、こういうふうに見ております。
  9. 森勝治

    森勝治君 いまの御説明、私のほうは協会ことばをかりて私が借問いたしますと、いまの副会長お話でも内輪発表である、こういうように私は理解をするわけです。この内輪発表からいたしましても、この五カ年間に受信料収入が重大な影響を及ぼす、カラー契約というものが倍増する、こういうことは、すでにもういま私どもが推察する内輪数字を拝聴いたしましても、このことが明瞭になったわけであります。そうなりますと、国民のための放送事業というもの、ことばをかえますならば、国民の血税をもって充てておりますNHKの業務の運営というもの、そこでさらに、そうしたばく大な収入源のいわゆる増加が明瞭になるとするならば、当然国民のための放送事業でありますから、そのよって生まれた利益というものは再び国民の手に返す、こういうことが正しいあり方だろうと思うのであります。これは衆参両院の、過去の幾たびかの当委員会皆さんの論議の過程を振り返るまでもなく、これはおのずから明らかなことであります。その辺がいま国民の関心事だろうと私は思います。したがって、そうなりますと、これらのNHK皆さん方の御努力によって生まれた利潤というものを国民の手に再び返すものなのか、従来のように事業規模拡大をはかることによって国民に還元することをおやめになるのか、まあ、おやめになるということばはちょっと失礼かもしれませんが、還元するのじゃなく、利潤があれば、それで事業拡大するのか、その辺でひとつNHK考え方——今日のようにカラーテレビ契約が激増するならば、当然国民視聴はその辺に集まるでありましょうから、NHK考え方はいずれをとるのか、これをひとつこの辺で明らかにしてもらいたい。
  10. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御指摘の点はまさにそのとおりでございます。このような当初の予想よりも増収になれば、その増収の面は国民に還元すべきものと考えておりますし、そういう面で、収入の面を見直しましたばかりでなく、計画の面につきましても、あるいは難視聴地域解消の面を強化いたしまして、カラー放送の拡充をはかりますとか、番組内容の向上をはかりますとか、その他いろいろ国民放送事業の面におきまして、御利便を増大するような面で考えております。問題は、おそらくこれだけの増収があれば、その還元の形はそういう事業計画の面における充実によっておこたえをすることもさることながら、受信料値下げができないかどうかという面にも御意図があろうかと思いますけれども、その面につきましては、現在のところ、当初の構想を立てましたときと比較をいたしましても、当初の構想では、これは十分これをもって採算はまかなっていける構想ではなかったわけでございます。放送債券積み立て法律上の義務によりますものはもちろんのこと、これは全額負債によらなければ自前では積み立てられない。いわんや返還の時期にまいります借金も繰り延べをいたしまして、予定のとおりの返済期限には返せないというような姿であったわけでございます。今回カラー契約の増進を見直しました関係で百四十四億の黒字は出ますけれども、これは当初の構想による五十一億のマイナス分を取り返し、そして四十三億円の放送債券積み立ての方向が可能になりました。しかしながら、法律上の現在の積み立ての方式の是非は別問題といたしまして、予定のとおり法律が命じております前年度末の債務残高の十分の一は積み立てなければならない、こういう計算でいきますと、実に八十三億を積み立てなければならないわけでございます。それが今回の契約増関係増収はありますけれども、その増収の範囲内において、四十三億の積み立て自前で可能になりました。ただあと四十億はまだ借金積み立てなければならないというような姿でございまして、そういう面から申し上げますと、ただいま申し上げましたとおりの予想どおりに的確にいくとは申し上げられません。今後あるいはこのようにいかないかもしれませんし、これを上回るかもわかりません。そういうような情勢を勘案いたしませんと、直ちにそのようなお答えはできないわけでございまして、現在私ども構想を見直しました上に立って申しましても、この五カ年構想内に値下げをするという可能性はないものとこう考えております。
  11. 森勝治

    森勝治君 その値下げ可能性がないときめつけられてしまうと因るのです。なぜかと申しますと、私も若干昔のことを持ち出しますが、衆参においてはしばしばこの問題をお互いに言及し、心にとどめているわけであります。NHK会長以下このことはよく御記憶のところであります。ですから、いきなり金がたくさん入ったからといって、簡単に受信料値下げということはできないというふうに思い込まれては私ともも若干迷惑をするわけであります。そういう点については、後々の質問の中で、私は明らかにしていきたいと思うのでありますが、いま副会長お答えの中では、いわゆる利潤があっても事業規模拡大とか借財等返済に充てるつもりであるから、当面受信料値下げなどということ、国民が最も関心を寄せている問題についてはなおざりにせざるを得ない、こういうお答えだろうと思うのであります。なぜNHKがこういうお答えを出されたかと私は推察いたしますと、先ほどのことばの中でも若干触れられましたNHK修正構想、いわば第三次長期構想修正のしからしむるところがいまの副会長お答えになってきたのだろうと私は思うのであります。受信料値下げなどというのは、NHKの第三次長期構想修正によって当分は不可能ですよ、こういうお話だろうと思うのであります。そこで、しからば第三次長期構想修正というのは一体いかなるものをさすのか、この点をたくさんおありでありましょうが、私どもしろうとにわかるようにひとつお聞かせ願いたい。
  12. 竹中重敏

    参考人竹中重敏君) お答えいたします。  お尋ねの点につきましては、私のほうから資料といたしまして「第三次長期経営構想後期見通し」という資料をお手元に差し上げてあるはずでございます。したがいまして、いまのお尋ねお答えするのには、この資料をお出しいただくことが便利であろうかと存じますので、それによって長期構想考え方がどういう点において変わってきているかということを御説明申し上げたいと存じます。およそこの資料は十二の項目に分けて説明いたしてございますが、初めの十項目につきましては、建設関係がどのように変わってきたか、あるいは事業計画がどういうふうに変わってきたかということにつきましておもな柱を十立てまして、その十についての相違を説明いたしたものでございます。  それから十一番目が四十二年当時、これが四十三年から四十七年までの財政規模はどういうふうになるであろうかということを一応試算いたしましたものと、四十五年の予算をつくりますときに四十五年、四十六年、四十七年の財政見通し、もとより四十三年は実績でございますが、それを比較いたしましてその差を出したものでございます。  十二の項目建設規模拡大いたしますそれが、当初考えておりました建設規模とどう違うかということを図表にして示したものでございます。  大体そういう構成になっておりまするが、以下この参考資料に基づきましてポイントポイントを概要として御説明申し上げたいと思うのでございます。先生、おそれ入りますが、この資料手元にお持ちでいらっしゃいましょうか。この資料説明してよろしゅうございますか。
  13. 森勝治

    森勝治君 はい。
  14. 竹中重敏

    参考人竹中重敏君) 十項目の第一は、難視対策をどうするかということでございます。前の考え方でございますと、置局を中心といたしまして四十七年度のカバレージを九八%までぜひもっていきたいというふうに考えておりました。四十五年現在での考え方は、置局も重点的にいたしますけれども、より多くは共聴施設を大いにふやしてカバレージを〇・一、九八・一まで上げたい、総体として上げたいという考え方をあらわしたものでございます。それは表の右の上にそのことが数字として表現をされてございます。その下にカッコ書きの表が三つございますが、一番目にございますのが難視対策としての置局計画あるいは共同受信計画に相なるわけでございまして、この表をごらんいただきますと、従来共聴と申しますのは、御案内のとおり三分の一助成ということでございましたが、四十四年度からはアンテナ部分を除いては全部協会の自己負担でやろう。これは結局共聴施設というものを置局にかわるものとして視聴者の要望にもこたえ、また協会の効率的な運営も考えまして、この共聴施設のほうに非常に力を入れたということでございます。最後の増減欄のところで置局の数はまさに減ってはおりますけれども、共聴施設を四十五年度から七年度末までに三千六百五十やって、何とかこのカバレージアップを〇・一といえどもアップしようということでございます。それから二番目、三番目は、これは前の構想と同じことでございます。  それから二ページにまいりまして、カラー放送の拡充ということでございますが、これは当初四十七年度末に十五時間にしようと考えておりましたが、これを三時間拡大いたしまして、十八時間ということにいたしたわけでございます。  それから三番目のローカル放送体制の整備ということでございますが、これは御案内のように、大電力の周辺局におきましては、FMの関係局をつくるという計画は当初ございませんでした。これをその後の当局の御指導もあり、われわれとしては基幹局を逐年につくるというわけで、十三局これにプラスになっております。  それから、その下にございます県域のU局でございますが、これは当初の十三局つくりたいという考え方に変化はございません。  それから三ページまいりまして、UHFの普及のためということが前にはなかった考え方でございまして、これを東京、大阪においてUの普及のために波を出すということが前と違った新たなことでございます。  それから五番目の、「放送番組の充実刷新」ということは、これはわれわれの最も大切な事柄でございまして、当初の考え方と現在の考え方に、その充実ということについてはいささかの変わりもないわけでございます。  次のページにまいりまして、(6)の国際放送を推進するということにつきましても、前の考え方と変わっておりません。  それから七番目、これはカラー契約をどう推進するか、先ほど小野会長のほうから、四十七年度末千二百六万にするということについての御説明がございましたので、これは省略さしていただきます。実質五百五十六万件ふやすということが前と変わった点でございます。  それから八番目の項目、これは現に四十五年度の予算で御審議をいただいております。受信料減免の新たなる拡大でございます。  九番目の「調査研究の推進」ということも基本的には変わっておりません。  十番目の「経営の効率化」、これは最後のことばにございますように、「四十七年度末を完成目途に放送センターの総合整備を進める」ということが、前には具体化していなかった問題でございまして、四十五年度を初年度といたしまして、四十七年度までにこれをつくりたいということが新たなる相違点でございます。  一〇一ページのところが、要するに前に財政上の試算をいたしましたものと、今日現在その試算をし直してみたものとの比較の一覧表でございます。先ほど小野会長のほうから御説明がありましたように、第三次——前の構想では、この受信料収入に対しまして、「資本収支へ繰り入れ」の欄が、三角で五十一億とございますが、それはいわゆる赤字を意味するわけでございます。その下に「収支過不足」とありますのが、これに債務償還費用百五十一億を加えまして二百二億と、要するに四十二年度長期構想を考えましたときに、そのままでいけば赤字で借金が返せない状態がくる、これではいかぬ、何とかこれを経営の効率化をはかり、営業努力も重ねてこれを黒字に持っていかなければならぬということを経営としては深刻に考えたわけでございます。そのことが四十三年の実績、当初これは資本収支繰り入れを零と考えておりましたけれども実績といたしましては、十六億ということが出ておるわけでございまして、で、四十四年度、四十五年度は、これは予算数字を使ってございます。四十六年度、四十七年度は見込みでございます。これを総合いたしますと、その左側の数字に相なりまするが、この収入に対しまして、いわゆる資本収支への繰り入れが四十三億という数字が出ております。  その下に、債務償還費用が百九十三億必要だと、四十三億を借金返しにいたしますと、まあ借金の返し足りない分、要するに振り回して借り続けておらなければならぬ金が百五十億ある、こういうことを意味しているわけでございます。一番右側の増減の欄でございまするが、前の構想といまの時点で考えますものを比較いたしますと、収入におきまして百六十二億ふえる。そのおもなものは、先ほどお話が出ましたようにカラー放送契約増加ということで百四十四億増収に相なるわけでございます。この百六十二億を何に引き当てるのだということが下の説明数字に相なるわけでございまして、下のほうをごらんいただきますと、前に赤字の五十一億ということを試算としては見ておったけれども赤字決算、これを解消するほかに法定積み立て金に組み入れるものを四十三億はぜひともこれは経営努力として出したいということでこれが九十四億になるわけでございます。そのほかの金は何に使うのだということでございまするが、この五十億というのが、事業運営費の増加が、前に考えておりましたよりも五十億ふえる、この内容は何か、まあいろいろございますけれども、柱を申し上げますれば、先ほど小野会長から申しましたように、カラー時間を延長する、またその関連の設備もするということ、また営業努力、つまりカラー契約を倍増することのためにはやはり営業の非常な努力を必要とするということから事業運営費の上に五十億を加えるという数字に相なっているわけでございます。ちょっとここでお断わり申し上げておきたいのは、四十四年度の数字予算数字を使ってございます。と申しますのは、この数字を出しますときに、経理局のほうでせっかく本年度の増収見込みは幾らであろうか、あるいはその使途をどういうふうに振り当てるかということを鋭意検討中でございましたので、その数字が確定的に見込みとして確定できる段階でございませんので、そのまま予算数字を使わしていただいたわけでございますが、実績がおそらくはこれより上回るということが期待できますので、これは後ほどまた決算をしてみれば、そういうことが必ず出てまいります。その数字だけはここに想定されるという含みを持っているということを付言させていただきます。最後の、「建設規模」が今日現在の考え方ではこの五年間の計数を寄せますと千六十五億になる、初めは八百五十億で考えておりました。これで二百十五億ふえる計算に相なりますが、そのうちで百二十四億と申しますのは最後に申しましたセンターの経営総合近代化をはかるという意味でのセンター関係建設費が百二十四億でございます。それを差し引きますと、このセンター関係と申しましたが、ちょっとことばを補足さしていただきますと、本館とホールの部分のものが両方あわせまして百二億でございまして、あとの部分は塔の関係でございます。塔の関係につきましては本年度予算でも調査費として二千万円計上してございますが、その残りの二十一億八千万というのは六年、七年、情勢がそういうふうに展開いたしますれば、四十七年度までに二十二億を塔関係に使いたい、そういう希望数字でございます。それを差し引きますと九十一億というものが建設関係の、前に考えておりましたのと比べてふえる、この概略をごく簡単にはしょって申し上げますと、この九十一億のうらで難視対策として二十億使います。U波普及のために九億使います。県域のFM置換局でございますが、これは五十八億使います。それからカラー設備その他について四億、さらに前の計画よりも多く使います。それを集計いたしますと、九十一億という数字に相なります。  以上が概略でございます。
  15. 森勝治

    森勝治君 いま詳細なお話を伺えたわけであります。  そこで、私はさらに質問を進めてみたいと思うんでありますが、そもそも協会予算の制度というのは、いわゆる事業計画規模に従って受信料の料額というものが左右される、こういうたてまえになっているわけであります。そこで、私がちょっと触れましたが、衆、参両院の当委員会におきまして、カラー契約の伸びいかんによっては受信料の引き下げをはかるべきであるという議論がたくさん出され、私どもの附帯決議の中にも、これが表現されておるわけであります。ところが、いまるる御説明のあったものは、事業規模拡大ということはもちろんうなづけますけれども、いま第四点か第五点での修正点の中で、受信料の免除の範囲拡大、こういう面についてのみ配慮がなされて、もちろん難視聴の解消等の問題は冒頭に掲げてありますからそれはさておきましても、国民に直ちに還元するという問題につきましては、受信料の範囲拡大、こういうことのみでありまして、そのほかのことは国民に直接還元しない。いま申し上げたように受信料の還元、低減、引き下げなどということは全然お考えに入っていないようであります。これは前の副会長お答えの中にもそれがあらわれ、いまの詳細な説明の中にも、そういうことが盛られておるわけであります。そうなりますと、私どもがしばしばこの席上で言及いたしました受信料の問題についてのもろもろの要素も、さらに先ほど私がことばの中で申し上げましたように、カラーテレビNHKの想像以上に、努力以上に増収というときには、当然受信料の引き下げ、還元という問題がNHKの中で真剣に討議されてこれを具体化するのがもう当然だろうと考えておりましたところ、いまの御説明でも、その前の御説明でも、それらしきものには何ら触れないで、いきなりもう受信料引き下げなどは毛頭まがりなりません、事業拡大のみを急ぐのですと、こういうお答えのみと私は拝聴したわけであります。なれば、ここで開き直るわけではございませんが、ことばのあやとして私は申し上げたいが、議会のこうした声や国民の声というものをNHK事業の中でどう反映されようとするのか、この点についてお答えをいただきたい。
  16. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 本年度予算御審議に際しても御指摘のような御議論があり、それからまた附帯決議等の関連においても、そのような問題を処理する方向を要請されたことは事実であり、われわれとしても公共企業体でありまして、利潤を追究する必要はございませんので、したがって、基本的な目的の達成の費用以上のものが受信料収入によって出てくる場合には当然受信料の調整を考えるべきだと私どもは考えております。しかし、ただいままで御説明申し上げたように、またなおかつ今年度予算審議に際して、私からもお答えいたしましたように、まあ受信料収入の見通しについては、これはカラーの普及との相関関係でございますので、その辺についての第三次五カ年構想を発足させた当時にはカラー放送時間というものは現在よりも実は伸び得ないような状況下にあったわけでありますが、昨年本年度予算を御審議いただきました際に、私は率直に四十七年度末までの第三次構想を改める必要があると感じており、受信契約カラー契約総数は一千万台をこえるであろうという考え方を持っているということをはっきり申し上げました。しかしこのカラー料金が設定される時期において、私どものかつての料金体制は根本的に変更を来たしたわけであります。その意味では、すでにラジオ料金は無料となっており、さらに白黒料金については値下げを断行しているわけでありまして、それらをひっくるめて、当初の構想発生、スタート当時にはそれでもなおかつ四十七年度末までに二百億内外の赤字経営という形になる、質になる、体質がそうなる、これをどういうふうに私どもとしては経営責任者として赤字を解消していくかということが第一の問題点であり、と同時に、私どもとしては御質問の中でも御指摘をいただきましたように、その後のたとえばFMの局の増設あるいはU局の根本的な、Uテレビジョンの普及のための方策、これらを踏んまえながら、しかもなおかつたてまえとしてはどこまでやっていけるのかということを私どもは考慮の最中心点といたしたわけであります。第一次構想を立てましたときの五年間を通じての物価の上昇率は、当時関係当局の調査の結果並びにいろいろな施策の基本としての三・八%というものを基準に考えておりましたが、すでに今年度予算の実施中においても、この問題は実際上六%に近づくという現象があらわれておりますし、先ほど竹中専務から申し上げた第三次五カ年構想後期三カ年分の修正に際しましては、この経済、物価の上昇率を一応四・八%と見込んでおりますが、私どもとしては四十五年度予算を、御審議いただいている予算を、率直に申しましてその事業の成長率は八・六%であるのに対して、まあ取り上げにくい問題でありますが、賃金の上昇率は一〇・九%を上回っているという状況等もございますし、これらを勘案しながら、なおかつこのような環境の中でも、私どもとしては第一に料金の改定はいたさないという考え方を固めたわけでありまして、その後の新しい需要の要請にこたえると同時に、少なくとも四十七年度末までには積極面では料金の改定は行なわないということをたてまえとしているわけであります。ところで最終的問題は、しからばこのたてまえの中で料金をむしろ低減させる、下げるという意味での改定はどうなるかということであろうかと思いますが、これについては前年度の予算御審議の際にも、森先生に私が率直にお答え申し上げたように、昨年の審議の時期においては、将来五カ年構想の受信契約対象、カラー契約の対象を一千万にふやすとしても、私としては、そういった環境の中では値下げを考える時期には来ていないと思うということをお答え申し上げております。当面、現在においても、物価指数であるとか賃金指数、あるいは新たに社会的要請に基づく置局の増、並びにたびたび御指摘、御決議等においても御指摘いただいております難視聴解消という問題をとらえるときに、はなはだ申し上げにくいのではありますが、この段階においても、当面、値下げという問題は考えられないというように率直に申し上げざるを得ないわけでございます。そういう意味で、しかし今後三年間は絶対に値上げはしたくないという決意を固めながら、遺憾でございますけれども、この時点においては、かりに四十七年度末のカラー契約の総数が一千二百六万になった場合も、NHKの経営の体質の実際から見て、値下げはきわめて困難であるということをお答え申し上げざるを得ないと思います。
  17. 森勝治

    森勝治君 値下げをしないという、だいぶ固い決意のように拝聴するわけでありますが、私のほうは、何もやみくもに値下げせいということを申し上げてるばかりではないのであります。実はそり記録をひもときますと、NHKのほうのお答えからもですね、それらしきにおいが漂ってまいっておりますから、記録上。ですから、私はしつこいようでありますが、あえてそういう質問を繰り広げているわけであります。たとえば、前田会長は、四十三年の受信料体系以来、しばしば私ども委員会におきましては、現行の受信料額は四十七年度末のカラー契約六百五十万を想定し、これを算出したものであります。したがって、この想定をはるかに上回る状況になれば料金調整の原因が出てまいります、こういうふうに明言をきれておるわけでありますから、私どもは、このお答えを素朴に受け取り、四十七年の六百五十万を待たずに、すでに三年間でこの想定というものが、この額が、カラー契約が到達するならば、会長がしばしば言明されたこの内容から推しはかりましても、この辺で受信料の問題についてしかるべき措置の方針が示唆されてもよろしかろうと、私はこう理解をしておるわけであります。したがって、以上の質問をしたところでありますが、ところでいま詳細な御説明の中にもありましたように、大電力周辺の県域放送の実施や、東京、大阪等のU実験局の建設カラー放送下の時間の拡大、放送センターの総合整備、もっとも、これは国民に負担をかけずということで、すなわちいまの放送会館の売却でこれを充てるという構想発表になっておりますが、この総合放送センターのお考えというのは、第三次長期構想以後の発想だろうと私は思うわけであります。まあそういうことはさておきましても、私が、いまはしなくも過去の記録によって、会長の御答弁の趣旨を、いま申し上げたそういう内容から推しはかりまして、カラー契約の倍増というものがもう確実になったわけでありますから、当然この辺で、国民の負担軽減をはかってもよろしかろう、そういうことを一片も触れずに、事業規模拡大のみを推しはかるということでありますならば、国民の放送協会というたてまえからいたしますと、私は、そこに問題が当然派生してくるような気がしてならぬわけであります。したがって、もちろん国民の負託にこたえるための最新の設備をされること、規模拡大されること、これはもとより新時代に対応するためにおやりですから当然でありましょうけれども、従来のそういうお約束等を勘考いたしまして私は申し上げているわけであります。したがって、いま申し上げたように、先般私に、千万になってもだめ、千二百万になってもだめ、こういう答弁をしたとおっしゃるけれども、そういうことになれば、もう事業規模拡大のみに終始し、今日世界に冠たるNHKにさらに重きを加えようと、そういうことにのみ狂奔するかのごとき印象を国民に与えることは、必ずしもNHKの将来にとって私は好ましい姿とは思わないわけであります。繰り返して申し上げますが、事業規模拡大をし、国民の期待にこたえ、放送網の拡充もとより賛成であります。賛成でありますが、NHKがお約束をしているもろもろの特に問題、この受信料の問題あるわけですから、事業規模拡大等にのみ走ることなく、一たんそうしたお約束——私はお約束をしたという理解に立っておるわけですから、この辺がNHKと若干あるいは考え方を異にするかもしれません。しかし私は、そういう理解に立っておるわけですから、したがって受信料値下げ等の問題についても、この辺でしかと御勘考あってしかるべきものと、こういう理解に立っておるわけであります。したがいまして、重ねて会長の御意見を拝聴したい。
  18. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) まず形式的な答えだという御印象を与えるかもしれませんが、昨年三月二十日の森先生の御質問に対して、私は、私としては五カ年構想の最終年度のカラー契約を一千万以上にしたいと思っていると、しかしその場合においても、従来の経緯、今後の社会的要請等勘案するならば、値下げを考えることは非常に困難であるというはっきりしたお答えを申し上げております。私は、心理的にあるいは精神的に、公共放送の経営者として、ことに物価の騰勢が今後の予測を可能にしないような非常にこんとんとした経済情勢の中で、せめてNHKぐらいが何とかいたしたいという考え方を持っていることは事実でございます。しかしながら、経営をするという面から、単にセンチメンタルに私はこの問題を実行するんだというところまで踏み切れない幾多の実情が次から次へと起こりつつあるということについては、特に御理解をお願い申し上げたいと存じます。それからまた、何かNHKが社会的要請とは離れて、NHK自体の、独自の一種の虚栄的な見地から、事業拡大を考えているのではないかという印象を私どもが受けるようなあるいは御発言もあったかと、あるいはこれは私の誤解かもしれませんが、たとえば難視聴の解消であるとか、あるいはまた十三局のFMの大電力周辺における置局の問題であるとか、あるいはまたかりに放送センターに集中するという問題にいたしましても、私といたしましては、第二次六カ年計画を考えたときに、合理化の最終形態はそこまでいかなければいけないだろうという実は予測を持っておりました。この点については、従来三年以上にわたってしばしば経営委員会では私もこの考え方を表明し、経営委員会の御検討も継続的に願って今日に至ったわけでございます。最終的には経営委員会の御了承もいただいて、最終合理形態としては一カ所に集中すべきだというきわめて根本的な問題の解決に指示をいただいたわけであります。その意味で第三次構想の中にこれを織り込んだということであります。で、事実はただいま申し上げたようなことでありますが、しかし今後もちろん私どもといたしましては、まあ収入の面でも一般的社会情勢の中で、受信料を先生のお話になるような方向で制度を検討できるという場合には、もちろん私どもといたしましては、何らそれに対して特別の感情を持つ理由はございません。ただ聴視者への利益の還元は単に私どもが実際の経営をまかせられているというその立場においては感傷的な値下げというものよりも、まず実質的に経営を安定させる。この点についても過去数回にわたって、ことに受信料改定の際の予算の審議に際しましては、特に附帯決議として経営の安定を期せという御要望もいただいたかと記憶しているわけでありますが、当面は私どもとしては放送設備と内容の形において可能な範囲で聴視者に対していわゆる利潤を還元するという方法をとらざるを得ない、その限度においては可能であるというように考えているわけでありまして、私としては、少なくとも四十七年度末までの実態を想起いたしますと、この際私どもとしては近く料金を改定するということを申し上げ得ないことをまことに遺憾だと考えているわけでございます。
  19. 森勝治

    森勝治君 私どもは、いまこの料金の引き下げの問題については、従来とも素朴に考え、今後も素朴に考えていきたいと思うんです。ただ、いま拡大に次ぐ拡大ということで、事業規模拡大をあまり急速に進めますと、私が申し上げたような疑問が生まれてくるわけであります。したがって、あくまでもやはりNHK国民のもの、国民の期待を一身に集めておるもの、こういうこの基本的な考え方をもとにしておやりになれば、ごうも国民と遊離することなく、期待されるNHK像というものがさらに私はクローズアップされてくるだろうと思うのであります。したがって、今後ともそういう面でひとつ御努力を願いたい。御答弁必ずしも私は満足した御答弁をいただけないので若干かすが残るわけでありますが、時間の関係もありますので、その議論は後日に譲ることにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  実は、きょうは防衛施設庁からおいでを願っておりますので、あまり待たせてはなんでありますから、若干飛んで恐縮でありますが、防衛施設庁関係質問をしていきたいと思うのであります。  今回は、かなり広範にわたって受信料の免除措置を講ずるということにしたわけでありますが、私どもは基地周辺の問題についてはしばしば積極的な免除、減免、拡大方針の発言をしてまいりましたが、少なくとも先般の委員会までは、拡大は無理だというお答えと承ったわけであります。ところがまあ今回、突如としてということばを使うような——あながち当を得たことばではないでありましょうけれども、急に広範にわたってのこの方針を出されたわけであります。したがって、その辺が若干——それは、拡大することはけっこうでありますけれども、従来の質疑等の応酬の過程を顧みますと、必ずしもその辺がすっきりいかない節があるような気がしてならぬ。ですから重ねて申し上げますが、減免措置の範囲の拡大を歓迎しながらも、何となくそこにぎごちなさを私は率直に受けるわけであります。したがって、この今回の措置をとるに至った基本的な考え方、いわば経過のあらましをひとつお伺いしたい。
  20. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 前回の基地問題に限定をいたして申し上げますと、会長からこれは前向きに検討をいたすつもりでありますと、こういう御答弁を申し上げております。それまでにはいろいろNHKにも基本的な考え方がございますけれども、必要最小限度の措置はとってまいったわけでございますけれども、そういった面で大体事足れりとこう考えておりましたが、非常に各方面の減免の範囲拡大に対する御要望はきわめて強かったわけでございます。当委員会におきましても、数度にわたりまして、そのような御要望もありました。その御要望にこたえまして会長から前回の国会におきましては、今後将来においてはそのような前向きの措置を検討をいたしますと、こうお約束をしておるわけでございます。そういった過去の経緯にかんがみまして、この際全般的に減免の、現状とあるいはその将来の展望、こういった面に立ちまして検討いたしました結果、あるいは社会福祉関係について現状ではまだ足りない、この限度まではやるべきだ、あるいは教育施設関係についてもそうであります。基地関係につきましても、このような観点から必要にしてかつこの見当なら十分だと思われるような限度の改定措置をとったわけであります。
  21. 森勝治

    森勝治君 たとえば免除範囲の拡大の場合、従来は二キロ、一キロということで、それを私どもは二キロよりももっと広げなさいと言ったら、どうも無理ですというおことばではね返ってきたわけであります。ところが今度は五キロ、一キロということに広げられたり、二つの基地を追加したり、新たに三カ所の対地射爆場をその対象とするようであります。そこでこれは一体、失礼でありますが、十分な実態というものを把握されて、すなわち、調査されて、しかる後に措置をされておられるのか、その辺がどうも特に今度は防衛施設庁ということばが、問題が出てくるわけでありますから、どうも私どもはその辺が釈然としないのであります。したがって、NHK独自の立場で、そういうふうに拡大されたものとは必ずしも私は受け取り得ないような気がするわけであります。これはNHKに対しましてはまことに失礼な発言であります。ですから、その辺のかね合いと、いわゆる実態に即応されたものかどうかということですね。どうも私は、ほかの力が加わっているような気がしてしかたがない、正直に言って。従来のNHKの御答弁を、私もきのう夜、若干過去の記録をひっくり返してみたんですが、努力します、努力しますと。けれどもなかなか無理ですよという、会長の初めの答弁だったわけであります。ですから、くどいようでありますが、免除の範囲の拡大を喜びつつも、なおかつ何か他の力の働きかけがあって、こんなにやったというような印象をどうしてもぬぐい切れないのであります。ですから、その辺のかね合いを一つお聞かせいただきたい。
  22. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) この関係の免除につきましても、基本的な考え方といたしましては、免除の対象として必要かつ十分であり、かつ受信料の制度の上に立っておりますNHKといたしましては、受信者の方々から納得のいかれる限度でなければならないと思います。加えて、NHK財政関係事情も考慮しなければならないと思いますが、今回のそれもいろんな圧力に屈してやみくもにやったわけではございませんので、先ほども申し上げました前向きの検討を会長は約束しました手前、いろいろ実態につきまして、はたしてその必要ありやいなやについて検討をいたしております。四十四年におきまして協会が主体となり、防衛施設庁、郵政省の御協力を得まして、全国ジェット飛行場十八、射爆場三を対象にいたしまして、昨年の十一月から十二月にかけまして精密な実態調査をいたしたわけでございます。その実態調査の結果、今回の措置のごとく横の一キロは、これはそのまま据え置きでかまわないが、縦の二キロは五キロ程度拡大する必要がある。こういうような結論を得ましたので、このような措置を四十五年度の予算にはとっているわけでございます。
  23. 森勝治

    森勝治君 たたみかけて恐縮でありますが、副会長、率直にお答えいただきたいのでありますが、いまのおことばをすなおに受け取りますならば、従来のNHKの方針をそのとおり踏襲をし、それを実施しようとしている以外何ものでもないというお答えに承りますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  24. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろいろ各方面の御要望もありました。NHKといたしましても独自にこの面は、御要望の面がはたして妥当であるかどうか、また、NHK自体といたしましても、基地免除の範囲が現状の一キロ・二キロで足りるかどうかということについては、やはり実態調査に基づいて結論づけなきゃならないと思います。そういう意味合いにおきまして、実態をつぶさに調査いたしました結果出ました結論でございます。
  25. 森勝治

    森勝治君 各方面という中には、いわゆる視聴者も含まれているのでありましょう。国家権力ということばを使うのはどうかと思いますが、そういう方面の働きかけもあったということを、いま率直にお話になったものと私は考えます。そこで今度の基地周辺の視聴者に対する免除範囲の拡大に伴って、その減収額の二分の一相当額というものを国から補助金として交付されるというふうに聞いておりますが、一体これはどういう認識のもとにこの補助金を出そうとされておられるのか、この補助金を出そうとする精神はいかなる法律に基づかれておるのか、しかもそれはどういう科目から出されるのか。しかも、今回の場合は事業を行なうものでありませんから、監査のしようもないわけであります。このことについて、ひとつ明快にお答えをいただきたい。
  26. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいまNHKのほうからお答えがありましたが、従来NHKにおきまして米軍や自衛隊の使用しておる飛行場の周辺について一定の範囲で聴視料の減免をしておったわけでございますが、この範囲につきまして、関係の住民からこの障害の実態に照らして現行の範囲は狭過ぎる、もっとこれを拡大してくれという要望が前々からあったわけでございます。NHKとしましては、そういった住民の声を取り上げまして、自主的な立場から減免範囲の拡大をするということにしたわけでございますが、この減免範囲の拡大に関連しまして、NHKと私どものほうと協議をしました結果、関係住民の立場も考慮し、早期に問題を解決するというような意味合いにおきまして、国のほうからもこの減免額の半分についてはひとつ補助をしようというようなことで予算を要求いたしておるような状態でございます。  そこで、この補助の根拠でございますが、これは特定の法律に基づいてやるものではございません。いわゆる予算補助でございまして、いま申し上げましたような、実際に障害を受けておる関係住民を救済するというような意味から、国としてもこれに対して助成をすると、こういうような意味合いで予算を要求いたしておるわけであります。
  27. 森勝治

    森勝治君 算出根拠というものは、やっぱり法の定めるところから生まれてくるものでしょう。その算出、七千百万ですか、七千百万補助金として出されるということだが、それはやっぱりよって来たるゆえんというものがあるわけです。ですからどういう法律に基づいてこの七千百万という——これがすなわち二分の一だそうでありますが、二分の一相当額、すなわち七千百万をどういう法律に基づいて出されておるのかということを聞いているんですよ。
  28. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) いま申し上げましたように特別な法律に基づいてということでなくて、国の財政支出として予算補助の形で出すと、こういうことでございます。
  29. 森勝治

    森勝治君 ですから予算補助として出されるのはけっこうでありましょう。しかし、それならどういう法律を適用されたかと聞いているんですよ。防衛施設庁ならば、おそらく防衛関係の費用から出されるのでしょう。それならどういう法律からこの金を出してきたのか。やみくもに、あなた、ぱっぱと出すわけにいかぬでしょう、国民の血税でありますから。防衛施設庁というのはそういうところですか。NHKがくれと言えば出すのですか。根拠法律というのがあるでしょう、根拠法律というのが。
  30. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 補助金には二通りございまして、いわゆる特定の法律に基づく補助と、それから財政法にこれは基づくわけでございましょうけれども、特定の法律に基づかない財政措置としての補助金、いわゆる予算補助と、こういう二通りございまして、本件につきましては、後者でございまして特段の法律に基づいて出すということではないと、こういうことでございます。
  31. 森勝治

    森勝治君 法律に基づかなくて、国庫支出をいたずらにできるのですよ。
  32. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) それはいま申し上げましたように、一般的には、これはもちろん財政法に基づいて支出するということでございます。
  33. 森勝治

    森勝治君 ですから、それなら財政法の第何条でしょうか。
  34. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 財政法の三十一条に「予算の執行」というところがございますが、「予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。」ということで、要するに国会の議決を経たならば、その目的の範囲内において予算を支出することができると、こういうことだと存じます。
  35. 森勝治

    森勝治君 それではあまり抽象的です。  さて、それではそれを防衛施設庁という任務についている官庁が補助金という形で出すならば、防衛関係法律に照らして出すんでしょう、いかなる金といえども、一銭一厘といえども。そうでしょう。そうじゃないですか。防衛関係の諸君が外国に留学するのも、戦闘準備訓練に要するものも、防衛施設庁に働く小使いさんの給料に至るまで法律によって支出するんでしょう。そうじゃないんですか。いまのでいいですか。いいですか、いまので。いまの法でいいですか。それならば、それを受ける防衛関係法律、諸規則を出してください。何で受けるのですか。
  36. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいまちょっと、その法律を持ってきておりませんけれども……。
  37. 森勝治

    森勝治君 ここに六法全書、ありますよ。
  38. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 防衛施設庁は、自衛隊や米軍が使用する施設の取得とか、管理、返還、こういうような業務を所管しておりまして、それに関連しまして必要な予算を支出するという任務を与えられているわけでございます。
  39. 森勝治

    森勝治君 防衛施設庁のよって来たる任務というものはつまびらかにしております。しかし、いま総額で七千百万というものを防衛施設庁の名においてNHKに、しかも補助金という名を加味して交付するという法的根拠はいかんと聞いているんですよ。
  40. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいま申し上げましたように、当庁に与えられている任務に関連をしまして、なおかつ、財政法の規定によって支出するということで、この支出そのものについて直接何か法律的な——具体的な法律的な根拠があるかとおっしゃられますと、これは予算補助でございますので、特段にそういうものはないということでございます。
  41. 森勝治

    森勝治君 それではお伺いいたしますが、予算補助とか、補助金というものはいかなる性格のものか。補助金という名前でぱかぱか出すわけにいかぬでしょう。法の定めがある。だから、それならば、いかなる法の定めに基づいて、基地周辺の、今度の範囲拡大におけるNHKの損害の額の総額の二分の一、七千百万をいかなる法律のもとにその金を出したか。防衛関係というのはあれですか、たまを買いますとかなんとかと言えば、いくらでも金を出してくれるところですか。そうじゃないでしょう。ただでさえことしは防衛費がふえておるんです、著しくふえておる。国民の関心はここに向かっておる。支出がいかなる算出法かわからないで、こうポケットからひょいひょいと子供にあめ玉くれるようなわけにはまいらぬでしょう、正しい防衛費というものを使うたてまえから言っても。いいですか、根拠法を明らかにしなきゃならぬでしょう。そうじゃないでしょうか。あなたがたの考えでは、いや、それは補助金だからかまわない。NHKときめたんだからかまわないとおっしゃる。一銭一厘といえども国の金を使用するわけですから根拠法律が明らかになっていなくちゃならない。あるんじゃないですか、そういう法律が。ないんですか、防衛施設庁には。
  42. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) まあ防衛施設庁のいろいろ周辺対策の問題につきましては、防衛施設周辺整備法という法律がございます。しかしながら、この飛行場、射爆場周辺のテレビ聴視料の減免についての補助については、この法律には該当の条項はございません。そこでわれわれとしては、特定の法律に基づく補助と、一般的にですね、そういうものと、予算の補助という形があるわけですが、本件の場合は、予算補助として処理するという考え方である、こういうことでございます。
  43. 森勝治

    森勝治君 ですから予算補助——国が予算補助をするときには、当該公共事業団体が事業を行なう場合にのみ限るのでしょう。そうでしょう。明らかでしょう法律で。六法全書、ありますよ。NHKは聴視者受信料を免除するだけですよ。地方公共団体に国が助成金を出す、補助金を出すのと若干性格を異にするでしょう。そうじゃございませんか、違うでしょう。いまあなたが、はしなくも言われた防衛施設周辺の整備等に関する法律ですか、それは適用しない、こう言われているわけです。私はここで、それの第四条の適用だというようなお答えでもいただけるのではないかと思ったら、一切関係ないとおっしゃる。防衛庁というのは、どこへでもやみくもに金を出せる役所ですか、施設庁というのは。そういう法律になっておるのですか。防衛予算というのは、そういう意味で今度多額に政府に要求をして、あなた方から出して、政府が国会に提案をしているのですか。あたかも湯水の流れるごとく金を使うのですか。やっぱり根拠法律があるのですから、それはもっと明快に答えてもらわなければ国民の疑惑がますます深まるばかりですよ。特に、ことしは安保改定の是非論をめぐって、国会を初め全国が激しくこの問題について渦を巻いておるときですから、かりそめにも防衛という名にかりて、いや法律がどうも適用しませんと、国から予算をもらったのだから、どこでも金を出してかまわないというようなそしりを受けるような発言だけは厳に慎んでもらいたい。ですから、明快にその法律適用の問題を出してもらいたい。
  44. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいまこの聴視料の減免というのは、事業ではないのではないかというお話がございましたが、この聴視料の減免というのもNHKのやはり事業活動の一部であるというふうにわれわれは解釈をしまして、その事業に対して補助をするという考え方でございます。また、この予算補助の問題でございますが、これまでのこの周辺整備の問題についての歴史的な過程をこの際御説明申し上げますと、たとえば東富士の演習場につきまして、いろいろ農業整備というような事業をかなり以前からやっておりまして、これは当時予算補助としてやっておったわけでございます。ところがこの基地問題がだんだん、非常に問題が大きくなってきたというようなことで、単なる行政措置、予算補助という形で個々に処理しておることはあまり適当でないというような声が強まってきました。それならば、ひとつ何らかの法律をつくろうではないかというようないきさつから、現在の防衛施設周辺の整備等に関する法律というものができたというようなことでございまして、この補助の形態としては、いわゆる予算補助、特定の法律に基づく法律補助というのがございます。本件の場合は、ただいま申し上げました予算補助の形でわれわれは執行できるものと、こういうふうに考えております。
  45. 森勝治

    森勝治君 それでは違った角度でお伺いいたしますが、補助金を出せばやっぱり出したところで監査する義務がありますね、そうですね。これは法で定めているでしょう。七千百万円補助金を出したということで、防衛施設庁の権限でいかなる監査方法をもってするのですか、NHKに対して。この点からお聞きしたい。明快にお答えがないから、からめ手からひとつ質問をしたい。
  46. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 私どもとしましては、補助した金の範囲内につきましては、その使途について、NHKからこれは当然執行の結果については御報告をいただくと、こういうふうに考えております。
  47. 森勝治

    森勝治君 監査のしかたはいかなる方法をもってするかという質問であります。
  48. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいま申し上げましたような報告の内容を検討するということでございます。
  49. 森勝治

    森勝治君 いや、しかし監査するのですからやり方があるでしょう、やり方が。ただ報告を受けて、ただそれだけですか。金は出しっぱなしですね。実際は実態監査をしないのですね。そういうように受け取っていいですか。金はやりっぱなし、使いっぱなし、あとは一片の文書で報告すれば事足りる。防衛施設庁のこの国家の金というものは、そういう乱費のやり方でよろしいと断定されてよろしいか。
  50. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) われわれのほうは、直接NHKの実際にやっておる現場に立ち入って調査する権限はないと思います。そういった面は、会計検査院がやはり法的な費用が出ているという面において検査をいたすことになろうかと思います。
  51. 森勝治

    森勝治君 しかし、あれじゃないですか。補助金を出した官庁が監査する責務が法によって課せられているのではないですか、ありませんか。そういうことは会計検査院がもとよりやりますよ。通常検査です。しかし、特定の事業補助について補助金を出せば、当然出したところが監査する義務があるでしょう。あなたその義務を怠ろうとされているのですね。会計検査院などと逃げを打たれて。会計検査院がやるその以前に、自分たちが助成した金の検査をやる義務があるでしょう。それをどうおやりになるかと言っているのです。
  52. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 先ほど申し上げました必要な報告書はいただき、内容を検討し、疑問の点があればNHKにお聞きをすると、こういうことになろうかと思います。
  53. 森勝治

    森勝治君 それでは監査ではないですね、NHKに聞くだけですから。そこできょう、大臣おりませんから次官にお伺いしたい。  以上のやりとりでおわかりのように、監督官庁の——NHKに対する郵政省の態度は、いまのように法律は何もないと言うのですね。いいですか、それで。郵政次官、何もなくて、いいですか、法によらずに出す。監査はしません。監査は会計検査院がやるだろう。使った金は報告してもらえばいい。よろしいか、それで。郵政大臣として、ひとつお伺いしたい。  重ねて質問に付言いたしますが、防衛施設庁とNHKが具体的に話し合う以前に、郵政省がこのことを把握されて、NHKの措置をアドバイスされているわけでありますから、当然郵政省は、いかなる法律を適用してこの助成金を出したかということは、先刻御承知のはずだと私は理解するのです。私のうがち過ぎた質問でしょうが、これだけつけ加えておきます。
  54. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) 前段の御説明をいたす前提といたしまして、ただいま森委員から、NHKが防衛施設庁に対して、その補助金を出すことに対して阻止されたというような事実を御指摘とお聞きいたしましたが……。
  55. 森勝治

    森勝治君 阻止された——阻止というのは、とめるということだよ。そういう発言はしていないよ、阻止だとか……。記録を見てくれ。次官、それはあなたの勘違いだ。
  56. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) そうですか。もう一度たいへん恐縮ですが、再度御質問を……。
  57. 森勝治

    森勝治君 それでは要望にこたえて、もう一ぺん質問の内容をかいつまんで御説明いたします。  今度の、基地周辺の難視聴国民に対して減免措置をとる。これは従来の二キロ、一キロを五キロ、一キロに拡大して、その中の国民皆さん方の御不満を除こうというわけです。したがって、そのために防衛施設庁から、NHKの減収に伴う二分の一の額を——七千百万円です、これを事業補助金というかっこうで、NHKに防衛施設庁から交付するというのです。それで、交付するについては、国民の血税でありますから、当然根拠法規というものがあるわけです。法律は、どういう法律を適用するのかと言ったら、何か知らぬが、大蔵省のようなことを言っておられる。しかも特に言及をされて、重大な発言をされておるのは、防衛施設周辺の整備等に関する法律という法律はあるけれども、今回はこれは適用いたしませんと、こう明言されているわけです。じゃあその金を出す法律は何だと聞いたら、それはないと言うんです。監督官庁の郵政省が、防衛施設庁の名でNHK事業補助金を支出されるのに、監督官庁が知らないはずはないだろうから——防衛施設庁のほうではよくわからないというお答えと私は理解しているわけですから、郵政省としては、この事業補助金の名のもとに出されるこの七千百万円というのはいかなる法律に基づいて支出されるのか、郵政大臣のあなたにお伺いしたい、こういう私の質問の内容でございます。
  58. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  59. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をつけて。
  60. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) 郵政省といたしましても、先ほど防衛施設庁より答弁のとおり、補助金の根拠は、財政法に基づく予算措置としてそれを支出することを郵政省としても認めた次第でございます。
  61. 森勝治

    森勝治君 それではさらに、その法律からまた枝葉に分かれている法律があるでしょう。その中のどれを適用するんですか。
  62. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をつけて。
  64. 森勝治

    森勝治君 ここであまり私はたたみかけるのも、皆さんも不なれでしょうから、このことについては直ちに明快な答えを求めません。ただしかし、私はこれだけ言っておきます。たとえば関係法律とおぼしきものは——適用しないと言われたが、防衛施設周辺の整備等に関する法律が一つ、それから公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律が一つ、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、まあこの辺が関係するのではないかと私の貧しい頭脳では考えているわけです。私もしかし、わかりませんから——この中のどれを適用したのかわかりませんから、お伺いをしているわけです。大体防衛施設庁という立場で補助金をあまり出すなどということは、これは変則だと私は思う。係の方もそう思うと思う、本来の目的はよそにあるわけですから。しかし、そういうことをきょうここで申し上げるのが趣旨じゃないんですから、そういうことは申し上げませんが、いま明快なお答えがありませんから、私も知らないから聞いているわけですから、後日でけっこうでございますから文書で。新任の次官も、私があまりこれ以上言うと、いじめてはいかぬから、これ以上言わぬから、ともかく両者で協議して根拠法というのを明快にして、私へ文書でけっこうですからお示しいただきたい、そのことを。そういうことでいまの問題は議事進行をはかります。  そこで、次に移りますが……。
  65. 野上元

    ○野上元君 ちょっと関連質問。  いま政務次官から御発言がありましたね、郵政省としてもこの補助については、財政法上の云々の法文をとってこれを認めた。こういう発言があったんですが、これは郵政省が認めるとか認めないとかいう、そういう性格のものですか、これは。それと同時に、この問題が起こったときに、NHKとそれから防衛庁は当然協議されたと思いますね。それに郵政省も加わって三者で協議をされて、こういう措置をとられたんですか、この点はどうなんですか。
  66. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) いまおっしゃいました後段の件につきましては、郵政省としては関知しておりません。ただ一キロ、五キロの範囲をきめた場合に、いわゆる技術的な問題としてですね、一キロ、二キロのときも郵政省も一緒に技術調査をしたことがあるもんですから、今回の一キロ、五キロの範囲をきめた場合も、一緒に技術的な調査をいたしました。ただし、いまの補助金の問題については、郵政省は関知しておりません。
  67. 野上元

    ○野上元君 したがって、私はやはりさっきは失言だと思うのですよ。したがってそれは、取り消されておいたほうが、将来こういう問題が起きたら郵政省が全部タッチして、郵政省が法文の解釈をやって、その補助金を認める、あるいは認めないというようなことの権限を持つというようなことになると、これはやはり重大な問題だと思いますよ。したがって、その点ははっきりしておいてもらいたい。
  68. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) 郵政省は、第三十一条によりその処置をとったことでありまして、先ほどの発言中、認めたということは、相談にあずかったということでございますので、訂正いたしたいと思います。
  69. 森勝治

    森勝治君 まあこの問題よく研究してください。お互いのために。  そういうことで実は質問がたくさんありますから、お答えがなかなか明快なお答えが出ないのに、やいのやいの言うのもどうかと思いますので、私は、議事進行上、まげて課題をそちらにお預けしたわけでありますから、後刻、重ねて申し上げますが、文書でお答えをしていただきたいと思うわけであります。  そこで、同じような問題でありますけれども、違ったことについて若干質問してみたいわけです。この補助金というものはですね、どうも法律を見ますとNHKが防衛庁に申請をして、申請よろしいということで、交付するという手続をとるように思うのですが、そのとおりですか。
  70. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 補助金の手続としては、やはり申請をしていただく、こういう形になろうかと思います。
  71. 森勝治

    森勝治君 そうすれば申請がなければ何年たっても出せないということですね。
  72. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 一定の手続がきまっておりますんで、その手続はやはり踏んでいただかなければならない、このように考えております。
  73. 森勝治

    森勝治君 しかし、私はこの種のものはNHKが防衛施設庁に補助金の申請をして、しかるべき後にこれを出してもらうようなしろものではないという理解を持つわけです。当然これはNHKの損失補償として政府がこれを負担すべきもの、あくまでも補助金、助成金などというそういう逃避した表現を用いて金を支払うべき性格のものでない、私はそう思うのです。したがって監査の項でもおそらくあなた方は監査はしないでありましょう、文書か報告を受けるだけで。そういうお答えの一事をもっていたしましても、当然これは損失補償ということで国家が支払うべきもの、したがって、NHKが補助金の申請をしなければ何年たっても支払わない、こういうものではないと思うので、この辺に改善の余地がありと理解するのですが、その点はどうでしょう。
  74. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) いま申請のお話が出ましたが、これは補助金の場合の一般的な手続でございます。そこで先生のおっしゃるような点もございますので、具体的にどうするかは、これからNHKともよく協議してきめたい、このように考えております。
  75. 森勝治

    森勝治君 ちょっと聞いておきたいのですが、これはあくまでも損失補償の一環として措置さるのでしょう。そうじゃないですか。
  76. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 本件は、先ほども申し上げましたように、NHK受信料減免というこれは一つの事業活動の一部でございますが、それに対する政府からの補助金という形で現在予算を要求いたしておるわけでございます。
  77. 森勝治

    森勝治君 NHKにお伺いいたしますが、これはあくまでも私は損失補償だと理解していますが、そのとおりでよろしいですか。
  78. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) この問題につきましては、前々から私どもは基本的な考え方を持っております。今日もこれは変わっておりませんが、航空騒音に対する措置は、これは原因者が負担すべきものである、こういう気持らで一貫しております。ただそれをいつまでも言い続けましても、ものごとはそのように理屈どおりにはまいりません。NHK国民の信頼の上に立たなければなりません。国民的な立場からすれば筋としてよくわかってくれるけれども、国は何もしてくれない、NHKも何もしてくれない、これはつれないじゃないか、こういう怨嗟の声をNHKが受けることも、これまた公共企業体として一考を要する問題であろうと思います。したがって、原因者補償の原則を持ちながらも、実際上のNHKの性格に照らしての措置といたしまして、一キロ、二キロの減免をいたしてきたわけでございます。今回補助金の名前で、拡大分の半額は負担をしようということになっておりますけれども、名前はどんな——予算科目上の整理の都合もございましょう、補助金という名前を借りられたのだと思いますけれども、私どもは損失補てん金である、このように観念をいたしております。
  79. 森勝治

    森勝治君 いま原因者負担、すなわちこれは損失補償という明快なお答えが出たわけであります。防衛庁からいろいろ補助金とかなんとか、金を出す理由はいろいろあるだろうが、いまNHKの言われたような性格はやはり損失補償的な性格であるということについてはお認めを願えますか。出し方はいろいろあるでしょう、補助金とかなんとか。あるだろうが、基本的な考え方としては、当然そうあるのがしかるべきではないでしょうか。
  80. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) この飛行場周辺のテレビ受信料の減免につきましては、三十一年ころからいろいろ問題となりまして、当時、基地等周辺問題対策協議会というようなところで関係機関が寄り寄り相談をしたわけでございますが、考え方としては、こういう受信料の減免問題は、NHKが公共放送であるというような点から、その減免基準に新たに追加して措置すべきであるという考え方と、それから原因は米軍なり、自衛隊の飛行機であるということで、原因者負担でいくべきであるという二つの考え方があったことは、これは事実でございます。そこでいろいろ相談をしておったわけですが、なかなか問題が解決をしない。もう問題が起こってから三年くらいたって、三十九年になってから、これはNHKのほうが自主的に措置するということできたもんですから、われわれとしては、こういったNHKの自主的な措置に対して、今回さらに範囲を拡大するという面については、これは御協力をいたさねばなるまい、こういう趣旨でございます。
  81. 森勝治

    森勝治君 ややこの補助金を出す理由というものが明快になりました。すなわち、それはNHKの副会長が言われている原因者負担、いわゆる損失補償——原因者とは米軍その他というふうな発言がいまあったわけであります。それは空港関係ですから、基地関係ですからであります。それなら、当然、これは国家が全額補償すべき性格のものと、私は明快に申し上げておきたい。したがって、今年度は二分の一という、過渡的措置としてこれをおやりになったものと理解をいたします。したがって、もうすでに、NHK予算も、あと三月三十一日までが年度でありますから、これをいまここでどうのこうの、直ちに全額どうのということになりますと、多少問題も残ろうと思いますから、まあ今年度はやむを得ぬといたしましても、当然これは補助金という性格を変えなきゃならぬ。七千百万円金を出すことはわかるけれども、補助金という性格のものでないということは、この席上で明確になったわけでありますから、この点は違った科目でいわゆる国家が損害補償というたてまえをとって支出すべきものであるという私は理解を得たわけであります。したがって、そうなれば、四十六年度以降は一体どうなるのか。  ことに、私は、この際NHKに聞いておきたいのでありますが、副会長がいみじくもおっしゃったように、原因者負担すなわち損害補償というたてまえをとるなら、補助金などというなまやさしい名題をつけて申請しなければもらえないというしろものではないということが明快になったわけでありますから、当然これは、政府に対しては強く、NHKはむしろ補助金をいただきたいのじゃなくて、補助金じゃなくて、損失補償を出せと政府に迫るのがNHKの正しいあり方だと思うのでありますが、その点についての基本的な考え方を聞かしてもらいたい。
  82. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 前々から、NHKといたしましては、原因者補償の精神を貫いております。あるいは、今回、予算委員会等におきましても、いろいろそのような質疑もあったようでございますけれども、当時の池田内閣の時代におきましても、郵政大臣からそのような御答弁をいただいてまいっておるわけでございます。  今回の措置は、二分の一に——それが、必ずしもNHKは、その二分の一でけっこうだと、二分の一を要望したわけではございません。ただ、いろいろ国家予算の編成上の御都合もございましょう。金額の多寡を問わず、原因者補償の見地に一歩前進せられましたことは、私、非常に高く評価をいたしておる次第でございますけれども、将来といえども、そのような面につきまして、基地関係の問題については、国策上の問題からよる騒音被害でございますので、たてまえとしてはわれわれが基本的に持っておりますような原因者補償の精神で扱っていただくのが正当ではないかと考えております。
  83. 森勝治

    森勝治君 この際、前田会長に見解をお伺いしておきたいと思うのであります。  お聞き及びのように、NHKからは明快にそういうお答えがなされたわけであります。私もそうだと思うわけであります。これはもう明らかになりました。明らかになったにもかかわらず、補助金という名でNHKがこの金をもらうということになりますと、補助金という性格のしからしむるところからしますと監査をされるということになります。監査ということになりますと、もろもろの問題が派生してまいります。特にこれは、防衛関係予算の一部を削減した金というたてまえからいたしますならば、私は、これはあながち杞憂とばかり受けとめてはおりませんけれども、いわゆるNHKの中立性をややもすれば侵されるかのごとききざしが、ここにほのかに見えてきたような気がしてならぬわけであります。もしそうだとするならば、NHKの創立の趣旨とも抵触をしかねまじき形勢にどんどん追い込まれてしまうような気がしてならぬわけであります。かねてから会長NHKの中立性を特に強く説いておられます。その点の勇気については、私は敬服をするものでありますけれども、このように補助金でないもの、損失補償、堂々ともらうべきものを、どうぞNHKに金を下さい、NHK事業の一端として補助金を下さいと言って、NHKがあなたの名前で申請をして防衛費の一部を分けてもらう。しかもそれが今後監査をされる。額の多寡ではなくて、NHKの社会的地歩の問題をゆるがすことになりかねないような気配が私は見えてならぬ、そんな気がしてならぬわけであります。したがって、この点についての会長の見解をひとつ、年じゅう見解を聞いて恐縮でありますが、このことは額は少額でありますけれども、よって来たるゆえんというものは非常に私は重大に受けとめておりますので、ひとつ明快にお答えをいただきたい。
  84. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) たてまえとしてお説のとおりだと私は思っております。今回の件につきましては、先ほど来、防衛庁の施設部長もるる御説明があったようでありまして、私はやはり防衛施設庁がその国家的良心に基づいてNHKの元来のこれまでの主張にミートする形に最大の努力を払われた結果として、ただいま御論議のような項目が出てきたと私は理解するわけであります。この項目財政補助金であるという形をおとりになっているように私も承っておったのでありますが、これは現行のいろいろな行政行為の中で新しい意味での表現を持った根拠を示すものがないという限度での、おそらく防衛施設部長も非常に困惑しながら、先生のおっしゃる意味は十分理解し、かつしかも困惑しながら答弁されたのではないかと、私はひそかにそんたくするわけでありますが、NHKとしては原因者の補償を要求し、かつこれをとることは当然の行為と考えておりますが、現状において、私はこの七千百万円の防衛施設庁からの支出があったからといっても、いかなる意味においても、われわれの放送法の原則を守る意思には変更はございませんし、この点については、先ほど政務次官も申されたようにNHK予算に関しては三十七条の限界を郵政大臣の行為として明確に示されており、われわれのたてまえとしては、免除等については三十二条の原則に従うものでありますので、こういう立場に立って、私は私どもの精神は絶対にゆるがせられることはないであろうと、このように確信いたしておりますし、また同時にぜい言でございますが、先ほど来の防衛施設部長の非常に含蓄のある御発言から考えても、七千百万円の支出によってNHKの内部に一種の威力を行使するというお考え方も全くないであろうというように考えるわけであります。結論的に申し上げるならば、私ども考え方は従来ともNHKの中立性と公平性を守る点においては絶対的に心理的にも実際上も変化はございません。
  85. 森勝治

    森勝治君 施設庁に一点だけお伺いしてあとけっこうです。  一点は、いま申し上げましたように補助金という性格はあいまいもことして、根拠法規もないということ、しかもこれは原因者負担ですから、当然国家がいわゆる賠償という形で支払うべき性質のものでありますから、補助金などという項目を用いること自体がこれは変則だと思うのであります。しかし、これはやりとりの中でもありましたように、過渡的措置としてあるいは今年度はやむを得ない措置といたすにいたしましても、四十六年度以降はやはり本来法があるべき姿を明らかにした上で処置するのがしかるべきだと思うのであります。したがって、いま申し上げたようにくどいようでありますが、ことしは補助金で済ましたのでありますが、これからは損害補償という性格でひとつ四十六年度からは考えるほうが正しいあり方だろうと思うのでありますので、その線に沿って研究するのか、やはり来年度も補助金というのか、その辺の見解だけひとつ聞いてあとはお帰りになってけっこうです。
  86. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) ただいまの四十六年度以降の問題でございますが、われわれはこの減免についての補助につきまして、いかなる方法によるかということについて十分検討した結果現在のような形で予算を御要求しております。したがいまして、四十六年度以降はまた変わるんだというようなことは私としては申し上げるわけにはいかないのでありますが、先生のおっしゃった御意向は、われわれももちろん研究はしてみたいと思います。
  87. 森勝治

    森勝治君 少なくとも、いわゆる補助金という性格でないということは、あなたもお認めになったわけですから、これはもう、うしろの方もうなずいておられますから、補助金でないというものを補助金という形で出すこと自体が、これはもう変則であるから、本来法のあり方に照らしてあるべき姿にしてこれは措置してもらいたい。そういうことで防衛施設庁に対する質問は終わります。  次に、いまお話をお伺いしましたように、基地周辺の問題については、そういう方針が曲がりなりにもきまりました。そうなりますと、国際空港関係視聴者についても当然考慮が払われてしかるべきものというふうに私は考えますが、NHKとしては、国際空港関係はどうされるつもりでしょうか。
  88. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 国際空港に関しましても、これはいろいろの措置の形態は違います。基地関係の扱いのようなまっ正面から放送法規定をとりまして減免の基準として扱ってはおりません。これもやはり原因者負担の基本方針、特にこれが営業行為である航空会社の航空によって騒音が起きておりますので、そういったところが持たれるのが常態であろう、正常であろうと、こういう考えから減額という措置はつくらなくて、運輸省も非常にこの方面には肝いりの役をとられて航空会社並びにNHKが共同で国際空港周辺のいわゆる騒音防止協会をつくっております。この協会において措置をいたしておるわけでございますけれども、免除の範囲といたしましては一応やはり基準としては一キロ‐二キロ、これで措置をいたしておるわけでございますけれども、羽田の空港につきましては、これも将来は成田にかわりますから、事情は変わってまいりましょうが、現在の羽田について申しますと、おおよそ海面に向かって離着陸いたしておりますので、この方面の影響はさしてないものと考えております。大阪の伊丹空港につきましては、基準は一キロ‐二キロでございますけれども、今回の万国博を迎えましてのB滑走路の新設に伴いまして、その関係の面についても措置をいたしておりますし、必要な面については、三キロあるいは五キロの範囲において実行上措置をいたしております。一キロ、二キロの関係世帯計算をいたしますと、約二万二千でございますけれども、来年度実際にこの措置の対象になりますものは四万六千世帯、かなりふえております。それは現実に実際の問題としてこの協会が一キロ‐二キロにこだわらず、必要がある場合には、必要な限度においてその拡大措置をとっているためにそのようなことになっておりますので、全然影響がないとは申せないかもしれませんが、大体において、現状におきましてさしたる影響はないものと、こう考えております。
  89. 森勝治

    森勝治君 しかしあれじゃないですか、基地周辺の問題がいま出されて、いわゆる国家補償という形になったんでしょう、補助金という名目にいたしましても。そうなれば、国際空港も免除距離も一キロ、二キロなどと固執せずに、基地周辺のそれのごとくやはり一キロ、五キロというふうに拡大するのが、これは正しいあり方じゃないですか。同じ被害でしょう、原因者が違うだけであって。聴視者の受ける被害ということは同一でしょう。片や補助金が出るからそれをやる、出ないからやらぬということであってはならぬと思うのです。この辺がやはりNHKの公平というたてまえからいきますならば、当然NHKが勇断をもってそういうところも措置すべきだと私は思うのでありますが、基本的な問題をひとつ聞かしていただきたい。
  90. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 表面的公平論から申しますと、お説のとおりだと思います。しかし基地周辺の問題と、民間航空場の関係のそれは性格的に異なっていると思います。本来は航空会社あるいは航空管理者、この面において措置せらるべきものと思います。したがって、取り扱いも減免の方式によらないで協会をつくって、その協会が受信者に減免されたと同様な結果を得られるような具体措置をとっておるわけでございます。そういうような関係と、先ほど申し上げましたように羽田につきましては、一キロ、五キロと、ここで上げましても、およそ意味がございません。海面に向かって離着陸をしておりますので、ほとんどこの関係については、そういった世帯はないわけであります。また伊丹につきましては、先ほど申し上げましたような具体的措置によって必要あれば五キロのところまで実際には措置をいたしております。そういうところで完全に影響ないとは申せないというおことわりづけはいたしましたけれども、現状においてさしたる影響はないのではないかというふうに考えております。
  91. 森勝治

    森勝治君 くどいようでありますが、伊丹の場合一キロ、五キロを実施しているということですね、いまの話だと。
  92. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 地形によりましては五キロ、あるいは五キロをちょっとこえたところまで具体的な措置をとっております。
  93. 森勝治

    森勝治君 そうすると、基地の周辺も国際空港関係も同一歩調でおやりになっておる、こういうことですね。
  94. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 基準といたしましては明確に相違がございます。民間航空場については、一キロ、二キロという基準は厳然とあると思いますけれども、基地関係は一キロ、五キロでございます。具体的な措置は、この基準どおりには適用しておりませんで、具体的な実情に沿いまして、やはり一キロ、五キロに近いような措置をとっておるわけでございます。
  95. 森勝治

    森勝治君 そういうこそくな手段を払わなくとも、基地周辺は一キロ、五キロにしたのですから、具体的措置をおとりになっているという明言ですから、それならば何も国際空港周辺も二キロ、一キロなんて固執しないで、そのほうも明らかに五キロ、一キロとされたほうがよりNHKらしいんじゃないですか。規則ではやれないけれども実態に合わしてやったというより、規則まで拡大されたらどうですか。よほどそのほうがNHKらしいんじゃないでしょうか。
  96. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは将来の問題として、NHK単独でやっておる問題でもございませんし、航空会社もこの損失補償の関係については、対策の措置については参加をいたしておりますので、この辺とも協議の上で協会においてきまっていくという問題であろうと思います。
  97. 森勝治

    森勝治君 ですから私は、片手落ち的なやり方とは言わないが、本来NHK国民についてひとしく喜びを分かち合う団体だと思うのです。したがって、基地だから五キロにした、あとは国際空港は実際は五キロにするけれども、規則は二キロを改めない。三キロから五キロの間、それはおそらく原因者に負担させようというお考えではないかと私は思うのです。思うのですが、やはりその辺は、いずれも公平に扱ってやるのが正しいと思うのです。基地周辺が五キロまでで、それから今度は国際空港は二キロであります、こう言って、うそぶいておられてはならぬと思うのでありますから、その点は、名実ともに同一歩調でやってもらいたいと思うのであります。  そこで、大臣がおいでになりましたから、いま若干お聞き及びでありましょうが、基地周辺は基地の拡大をして、しかしまあその点は、免除範囲の拡大によるNHKの減収というものは、今年度補助金という名をもってするけれども、補助金であろうとも、損失補償であろうとも、いずれにしても、これは国家がこれを補てんする、こういう方針が明らかになったわけであります。したがって、国際空港についてもやはりそういうふうに同一歩調でやっていくのが正しいあり方であろうと思うのでありますが、監督官庁としての郵政大臣の立場はどちらをおとりになりますか。従来どおりそれはもう、民間だからかまわないとおっしゃるのか、やはり私がいまるる述べておりますように、基地であろうとも、国際空港というこの周辺の問題についても、これは具体的に対処する場合には、個々のケースがあるでありましょう。それはケースバイケースでいく場合もあるでありましょうけれども、基本的にはやはり同一歩調をとるのが私は正しい行政だろうと思うのです。したがって、指導する官庁としての大臣としてのひとつ考え方を聞かしていただきたい。
  98. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) 途中でございましたから御論議のいきさつが十分にわかっておりませんけれども、いま伺いまする範囲では、やっぱり何か平仄は合わしておくほうがしかるべき筋論だというふうに考えます。おそらく、これにはいろいろないきさつ、経緯もありましょうから、そういう点をよく調べまして、NHKとも十分に打ち合わせをいたしたいというふうに考えます。
  99. 森勝治

    森勝治君 せっかく大臣がおいでになりましたから若干質問をしてみたいと思います。  まず、お伺いしてみたいのは、県域テレビ局の性格について若干お伺いをしたいと思うのであります。NHKではこの県域テレビ局というものを、大電力局周辺の県域放送局、こういう呼称をもってきておられるようでありますが、これは東京、名古屋、大阪の各テレビ局を大電力広域放送のまま、すなわち広域圏放送区域内にさらに県域放送を設けようとしておるのか。それとも三局の総合テレビの電力を下げて、いわゆるローカル局、たとえば東京、大阪、名古屋ローカル局という性格に狭めて、——狭めるということばは、あるいは語弊があるでありましょうが、そういう性格にした上で、一般の県域放送と同様なものを行なわせるのかどうか、郵政省の方針をお聞きしたい。
  100. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  来年度のNHK予算におきまして、初めていわゆる広域圏内の県域局ということで三局という要求が出てまいったわけでございますけれども、私どもといたしましては、そのいわゆる広域圏内に県域局が全部できるということになりました場合は、当然その番組の重複ということもありますので、いわゆる広域圏の大電力局は電力を下げあるいは置局を変えまして県域の姿に変えるということを考えております。
  101. 森勝治

    森勝治君 この県域放送用のテレビ局の周波数の割り当ての事情の問題ですが、NHKでは東京、名古屋、大阪の周辺に大電力を十三ですか、それに県域放送のための親局、こういう計画発表しているわけですが、従来郵政省はこの電波の割り当てが困難であるという説明をされておったように私は記憶をするのです。そうなりますと、一体このNHK計画と従来郵政が言われた割り当ての問題については、若干そごというか、見解の隔たりがあるような気がするわけです。したがって、NHKがいま計画されているように周波数の割り当てが可能になるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  102. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  従来こういった県域の問題につきましては、ある程度困難があるというお答えを申し上げていたかと思いますけれども、御存じのようにUHFというものが開拓されてまいりまして、Vよりも広い範囲のチャンネルがとれる、多くのチャンネルがとれるということになりましたので、私どももいろいろ検討いたしました結果、現在NHK計画されております近畿地区におきましては可能であろうかと思います。ただし、御存じのように、放送大学といったものも出てきたわけでございまして、それに対する波の確保ということも考えまして、関東地域ということになりますと、いろいろ問題がありまして、現在可能であるというお答えはできかねると思っております。
  103. 森勝治

    森勝治君 実施可能ということでありますが、テレビ局を広域圏内の県域放送として実施をする場合、当然番組の問題が出てまいります。単にローカル放送を若干増加させるだけだということでは、これは存在価値というのは毛頭なくなるわけでありますから、また全面的に広域圏と別個の番組を流すとするならば、サービスの不均衡をきたす、そういうおそれがあるわけでありますが、そこで郵政省は、どういう見地でこれを許可しようとされるのか、その点をお伺いしたい。
  104. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、広域圏内にすべて県域ができるということになりました暁におきましては、いま先生がおっしゃったような懸念もあるわけでございますので、これは電力なり置局なりを変更いたしまして県域にする。たとえば具体的に申し上げますと、近畿地区におきまして、現在生駒山の上からNHKの総合テレビの電波が出ておりますが、あの生駒山は大体近畿一円といかないまでも、相当な範囲をカバーしておるという状況でございますが、これがNHK計画のように奈良であるとか和歌山であるとかあるいは神戸であるとかそういったところに県域局がだんだんできてきまして全部県域ができたという暁におきましては、生駒山の局を移しまして大阪だけの県域ということにしたい、そういうことを考えております。
  105. 森勝治

    森勝治君 いまお答えの内容でございますが、NHKが、それを活用される場合にはどういう方法をもってされるのですか。
  106. 川上行蔵

    参考人(川上行蔵君) もし今年度申請をいたしておりますような兵庫、それから和歌山、それから大津、そういうところにUの局が認められますならば、いままで以上に、ローカル放送が行なわれなかったその地域に対して、サービスをしてその県独自の番組をつくりたい、このように考えております。その内容はやはりニュースが中心になろうかと思います。さらには行政単位としてのその県のいろいろな行政放送というものもあろうかと存じます。それと同時に、一番顕著な実例といたしまして、選挙放送に関する政見テレビ、こういうものが大きく計画として浮かび上がっております。要するに放送の将来の計画、特に放送の将来の中でローカル放送がどういう地位を占めていくべきか、そういうことを勘案しながら、大電力全体の中における県域放送の重点的な放送の方向を見出しながら番組を充実していきたい、こういうふうに考えております。
  107. 森勝治

    森勝治君 大臣にお聞きします。  先般の当委員会でも、きのうの予算委員会でも、カラー受像機の価格の問題について先輩の白井さんが御質問され、大臣よりるる御答弁を願ったような様子でありますが、今日のようにNHK予算上から見ましても、NHKの計数からさらにはじき出されるほどカラーの需要というものが非常に増高をきたしておるわけであります。この中で問題になりますのは、これはしばしば、先般来もそうでありますが、カラー受像機の価格の問題でありますね。輸出用は安く、国内用は十八万円から十九万円をしておるということ。そこで私はなるほど郵政省というのは電波を割り当てをし、これを監督し、国民の福祉向上のために寄与する監督官庁であろうと思いますけれども、電波の割り当てやそういうのばかりでなくして、国民がひとしく、一日も早くカラーの恩恵に浴すことができるように、受像機の生産の面でも、やはり力を尽くすべき必要があるだろうと思うのであります。したがって、このことについては、大臣就任早々ながら、だいぶん御熱心なようでありますが、こういう生産コストの引き下げの問題につきましても、通産等と積極的に話し合って、所管が違うでありましょうけれども国民の福祉という大乗的見地に立てば、当然郵政省の見解を申し述べることができるわけですから、そういう点につきまして、これは何もカラーと限ったことではございませんが、特に問題になっているのはカラーの価格が問題でありますから、そういうことで定期的にでも通産省と話し合いをして何かこう国民の期待にこたえるように、十八万、十九万となると、白黒は何とか手に入るけれどもカラーは無理だという、月賦でも無理だという声がたくさんあるわけです。それにもかかわらず激増するというのは、それだけ国民の期待がカラーに熾烈に集中している、こういうことだろうと思いますので、ひとつ積極的にこの問題について取り組んでもらいたいと思うのでありますが、どうですか。
  108. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) 昨日も、おっしゃるように予算委員会においてこの話題が出たわけであります。カラーテレビに対して非常に要求度は強くなっておりますし、一方メーカーのほうも量産体制に入っておるわけでございますが、コストに手を入れますと、おそらくもっと安くなってしかるべきものだと思っております。ところが、きのうは受像機自身の質の向上というふうなことにメーカー側も力を入れておると、こういうふうな御説明を申し上げておいたのですが、一般的に申しまして、いま森さんがおっしゃるように、これが高ねの花ではなく、もう手の届くところへ持ってこなければいけませんので、生産のほうは通産にまかせっぱなしということではなく、鋭意配慮するつもりでおります。たとえば、先般も物品税の問題等につきましては当省といたしましても大蔵へ申し入れをして、この処置を講じたというようなこともございまして、十分に注意はしているわけでございます。
  109. 森勝治

    森勝治君 NHKにお伺いしたいのですが、大臣カラーテレビ受像機値下げについては積極的におやりになるという言明をされたわけであります。NHKとしましても、御承知のようにカラーテレビが普及すればするだけ、いわゆるげすのことばで言えば、財政が潤うことなのです。したがって、おそらくNHKでもこの問題については専門的な立場で種々研究がなされているものだと私は思うのであります。したがって、むしろ専門的な立場で成果をあげた研究の諸問題については、積極的にメーカーのほうに働きかけて効率を上げるようにするのもまた一つの仕事だろうと思うのであります。ですから、そういう面で、ひとつ従来こういう問題についてどのように取り組んでこられたか、これからまたどうされようとするのか。おれのほうは放映をすればよいのであって、受けるほうの機械のことまでには手が回らないと言われるのではないと私は思うのでありますので、そういう面で、NHKの立場から国民の受ける利益についての積極策というものをぜひとも聞かせてもらいたいと思うのです。
  110. 野村達治

    参考人(野村達治君) ただいまのお答えを申し上げます。  NHKの研究所におきましては、カラー放送が始まります前からカラーの受像管の試作研究等をいたしまして、受像機メーカーにその技術協力をいたしておりますし、ことに最近のカラー受像機の中に占めております、価格の中に占める大きな要素でありますカラーの受像管でありますとか、あるいは受像管に付属しました回路あるいは真空管のかわりにトランジスター化をいたしまして安定度を高め、サービス回数を減らすというような努力をいたしまして、そういった結果は全部メーカーのほうに技術協力をいたしておるわけでございます。ただ問題は、おそらく受像機の製造原価と申しますものと販売価格との間にはかなり大きな開きがございますので、そららの面につきましては、私どものほうでは手をつけるわけにはまいりませんけれども、技術の開発並びに価格低減あるいは安定化といった面につきましては現在までもやっておりますし、今後とも技術協力を続けてまいりたいと思っております。
  111. 森勝治

    森勝治君 時間がありませんから次に移ります。  放送センターの問題についてお伺いしたいわけでありますが、その前に放送塔について若干お伺いしたいと思うのであります。当初六百五十メートルを考えて、その後六百メートルというふうに発表になったわけでありますが、日本テレビ計画が宙に浮いた今日としては、やはり何といっても、このNHKの六百メートル計画と競合するものがないだろうと思うのであります。ただしからば、公園に建っております塔から日本テレビだけが抜け出ているというような形があるわけでありますが、今度NHKがそれをやり、今度はまた同様に日本テレビがそこから電波を受けることのできない——前のような競争と言いましょうか、陰うつな姿を露呈することは、わが国の放送業界の将来にとっても必ずしも私は好ましくないと思うのでありますので、そういう面につきましては、NHKもいろいろ従来のいきさつがあるでありましょうが、大乗的見地に立って処置してもらいたいと思うのです。このことが第一点です。  それからもう一点は、高さの問題でありますが、御承知のように、NHKの敷地はかつてあれは公園の一部でございました。それをNHKの申請に基づいて公園の一部を割愛して公園から除外をしたわけであります。ところが、除外されましても、あの地区はいわゆる風致地区であります。ですから、建造物その他についての制限があります。東京都では東京都風致地区取り締まり規則というものがあるわけであります。たとえば、敷地面積に対して建物は十分の二から十分の四とかというふうにきびしい制限があるわけであります。そうなりますと、テレビ塔というのは塔屋に建てるという計画らしいのでありますので、塔屋に建てることになるならば、建築基準法からいたしますとこれは工作物、こういう制限を受けるわけであります。そうなりますと、工作物ですと、たとえば十五メートル以上ですかだと、そういう制限を受けてくるわけでありますが、特にこの問題は、東京都で風致地区の管理をいたしておりますから、東京都との関連があるわけであります。ところが、この風致地区の条例、規則というものが六月から変わるというように聞いています。いま審議会ですか等で変わるというふうに聞いております。そこで変わるということは従来の慣例から、他地区との関係からいたしますと、きつくはなっても緩和されることはなかろうと思いますが、かねてから六百メートルのテレビ塔を建てる御希望になっているNHKは、一体東京都とどういう接触をされておられるのか、この二点をとりあえずお伺いしたい。
  112. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 第一点につきましては、お説のとおりでありまして、私どもといたしましては、将来の東京都もしくは首都圏の都市構造からいっても、これを独占にしたり、また他と競合しながらこれを運営するという気持らは毛頭持っておりません。  ただ、高さについては、ことしはたとえば新宿のホテルのごとくすでに百七十メートルをこえる高さのものが出てまいります。現在の東京タワーは三百三十メートル程度でございまして、これを十年後、二十年後を予測するときに、その効率はすこぶる低下するであろう、ことにV、U転換というようなことを考えた場合には、この問題はかなり重大な問題の一つであると考えているわけであります。  建設の場所との関連につきましては、六月に法の改正があるかどうかは、私としてはつまびらかにいたしておりませんが、公園地区、あるいはこれと接近する地区であるという点と、都市の美観その他幾多の関係事項がございますので、これについては非公式に目下事務的に煮詰めてまいりたいと考えている段階でございます。そういう意味で、御審議をいただきます明年度予算の中にも、調査費として二千万円を計上している次第でございます。
  113. 森勝治

    森勝治君 東京都との接触の面ですね、たとえば建設審査会とか、いろいろあるわけですが、前からそういう接触をされておられるかどうか、NHKの頭の中でだけそう考えておられるのか、その辺のことを若干聞いておきたいと思います。いま言った条例等も変更になるおりからでありますから、参考のために聞いておきたい。
  114. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 専門的なことについては、野村技師長から説明してもらいたいと思っておりますが、ただいまのところその鉄塔をどういう形でどこにという問題までは至っておりません。したがって、明年度予算から発足する放送センターの整備計画に関しましては、本館の建設とは切り離して、本館の建設そのものについての事務的折衝は最終段階に至っております。これと関連して、先ほど申し上げた非公式な形で基本的意見を伺うという段階が付随してあるということでございます。
  115. 森勝治

    森勝治君 そうしますと、放送塔の問題は後日に譲ると、こういうことですか。昨年あたりは放送センターよりも、むしろそのほうが先にできそうな勢いの内容のような御説明を受けたような気がするのです。これは塔屋につくるのでしょうから、当然それはセンターと一緒かもしれませんが、そういたしますと、いま放送塔のことを考えないと、私は、塔屋というふうに、塔の上に建てる、そういうふうに理解しておったんですが、いまのところ放送センターと別個な計画ということですね。そうなりますと、全然それは塔屋へ建てるのじゃなくて、全然別個な角度で検討するということですか。
  116. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 当初は塔屋を考えておりました。技術的計画でなくてて、われわれの構想として、それを考えていたということは事実でございますし、ただ塔を先にするという考え方は当時といえども持っていなかったわけです。ただ、現在の段階で申し上げられることは、鉄塔は塔屋ではなかろう、塔屋には建てる計画は現在のところないということであります。
  117. 森勝治

    森勝治君 その点は、塔屋じゃありません。放送塔は塔屋に建てるのではないということが明らかになりました。しかし前の説明の中では放送塔も一緒に、センターをつくるときに同時計画というふうに承ったのでありますが、今度はそういう点では、その点については放送塔だけは別個に切り離すから、いま直ちにつくるということではないと、こういうことですね。
  118. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 現実には、そのとおりでございます。
  119. 森勝治

    森勝治君 放送センター総合整備計画というものを拝見をしたわけであります。この目的は、放送会館を放送センターに移して、いわゆる放送の一元化をはかろう、こういう計画だろうと思うのであります。その点はやはり集中したほうがよかろうと私は思うのでありますが、もし田村町、霞ケ関等を売却して全部代々木に移って、総合的なテレビ放送をあの一角でおやりになるということになるならば、一体どのようなメリットが期待できるか、ひとつ構想をお聞かせ願いたい。
  120. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 現在建物が分散をいたしておりますために、連絡その他非常な不便を感じております。特にNHKは数年来から近代化計画を進めておりまして、いわゆるコンピューターによる番組の企画、制作、演出までこの機械に乗せているわけでございますけれども、これは田村町から一切指令をセンターへ送ってやっているわけでございます。その間におきましても回線があれば済むようにも思いますけれども、なかなか現実にはそうもまいりません。やはり距離の隔たりもございますし、あるいははなはだしい場合には、同じ人が一日に九回から十回ほど両方を往復しなければならないというようなむだもございます。と同時にスタジオの使用、あるいはいろんな事務連絡等の関係からまいりましても二分いたしておりますことは、いろんな不便、不都合を生ずるわけでございますし、これを代々木に集中し、あるいは一元化することによりまして、スタジオ効率もあがることができますし、また事務的ないろんな措置につきましても、非常な精密な管理ができるわけでございます。そういったいろんな点を考えまして、代々木に集中することがいい、こういうことは必ずしも今日初めて考えたことではなく、代々木のセンターを建設いたします当初から、そのような構想を持っておったわけでありますけれども、現在第一期、第二期の工事を終えて、芸能、教育関係の番組はすべて代々木で、ニュース、国際関係並びに全体の管理事務は内幸町でとっていくというような変態形体になっておりますが、これの実現が非常に遅延いたしましたのは、最初にいろんな客観的情勢もあったわけでありますけれども、今日そのような面でどうやらその時期に到達した、しかもこの関係につきましては、集中化によりまして既存の不用になった財産処分によってその財源はまかない得る、このような観点に立っております。ただ、単に建物を一体化するという機械的な問題ではありませんで、機能的に現在よりも精密な管理ができる、非常に合理的な運営ができるという点をねらっているわけでございます。
  121. 森勝治

    森勝治君 相当な予算規模でありますから、私は、こだわるわけではないのでありますが、えてしてカラーテレビ収入が著しく増高を来たしておる。国民にその利益を還元すべきだという議論がちまたにはあふれているから、百億余にのぼるこういうセンターをつくるということになると、誤解が生まれやすいような気がするのです。たとえばホールが三十五億で四千人を収容するという、こういう案が出ております。一体日本の演舞場あるいは劇場その他演劇を主とするこういう場所において四千人を収容するような広大な規模の施設が他にあるかどうか。私は先般、縁がありまして、放送あるいは演劇等のできる全国のおもなる会館を全部見て回りました。そういう見た結果から——私が見ましたのは数年前でありますが、時代ももちろん変わっております。それを承知で発言をしているわけでありますが、NHKが他にない、民間にない四千名の収容のホールをつくるなんということになりますと、どうも金にあかしてNHKはつくるんでないかという、どうもその辺のそしりをまぬがれないような気がしてならないわけです、これは単に私の杞憂ならけっこうでありますけれども、ですからその辺のかね合いを十分お考えくださった上で、諸計画を進められたほうがよろしかろうと思うのであります。いまの論議でもわかりますように、難視聴の解消のために政府から補助金という名で金をもらうというこの現段階において、やはり十分これは検討をしなければならぬような気がするのです。もちろんこの財源は田村町と霞ケ関の用地、建物等を売却してこれに充てるということでありますから、直ちに聴視料にはね返ってくるものではありません。ありませんけれども、その辺はやはり慎重な配慮があってしかるべきもの、私はこう考えておるわけであります。たとえば四千名の収容のホールということになりますと、NHKがいわゆる肉声を直接聴視者に聞かせる。まあ大衆的見地に立てば、これも国民に還元する一つの方法だと言われましょうが、NHKの本来の目的は電波を通じるということであります。民間にない四千名のような広大なホールということになりますと、NHKが電波というよりも直接もうNHKのホールの中で国民にこれを催して見せるという——もちろんこれは国民と結ぶ、親近感を助長する最も適切な一つの方法だろうと理解はいたしますけれども、その辺がどうも割り切れないような気がしてならぬわけであります。もちろん世界に冠たるNHKでありますから、これからの新時代に対応するためには遠大な理想と計画がなされなければなりません。それは承知しております。しかし、このままでこれが進められてまいりますと、そんなに金があるならば聴視料を下げろという声にとってかわってくるような憂いを持ったものですからこういう質問をいたすわけでありますが、したがって、期待されるNHKとして本来ならばもっと早くこういうものをつくってりっぱなものを国民に見せるわけなんだけれども、むしろこれは時期がおくれた感がある。あるいはまた、これが最も適切だという、国民に納得させる方法をもってしなければならぬと思うわけであります。もちろん慎重でりっぱな皆さんがおそろいのNHKでありますから、十分この辺の前後の処置というのをわきまえておやりになっておると思うのでありますが、かりそめにも国民の期待感を裏切ることのないように、NHKの真の放送、これからの計画が華美に流れているのだというようなそしりのないようなものをつくっていただきたい、こういう念願を持つものですから以上の私の発言となったわけであります。したがって、この点についてNHKの見解をお聞かせ願いたい。
  122. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) ごもっともな御意見だと思います。私どもはオリンピックに間に合わせるために代々木に第一期工事を計画した場合にも、実はできるだけ広いホールをつくりたいという考え方を持っておりました。現在東京周辺では御承知のように、まあ音響効果は別といたしまして、武徳殿はすでに一万人を収容できる会館になっておりますし、また来月と聞いておりますが、中野の近くに六千名を収容する大ホールが完成する予定のようであります。それとは関係なく、われわれはなぜこれを考えたかと申しますと、現在の放送会館にも戦後第二期工事の際にホールをつくりました。これは固定席が六百、補助席を入れて約八百という規模のものであります。しかし、いろいろな公開番組をまず考えてみるときに、たとえば現在でも新館ホールでいろいろな公開番組を行なっているわけですが、おおよそ十万近い要望者があるのに対してたった六百名しか——これは無料ですが、入れるわけにはいかない。たとえば年末の紅白歌合戦と申しますか、あれについては日本全国から二十万ないし三十万の御要望をいただくのに二千数百名しか御要望に応じられないという実情でございます。しかも放送法の第九条の2には、「放送番組編集上必要な劇団、音楽団等を維持し、養成し、又は助成すること。」、あるいは「協会が放送することを主たる目的とする公開演奏会その他の催を主催し、又は後援すること。」等の条項とも関連しまして、たとえばN響の場合、これは財団法人になっておりますが、その運営経費のおよそ二分の一強を協会が金によって補助しなければならない実情であります。それはどういうわけかと申しますと、現在東京でN響が年間を通じて借り上げている演奏場の定席数が二千余りでありまして、すでに入会したいという人がその三倍以上に達しているにもかかわらず、ここ数年会員をふやすわけにはまいらないという実情もございます。これはほんの一例でございます。たとえばイタリアオペラを招聘する場合に、そのコスト計算からいっても、単に二千席くらいのところでやればこれは必然的に赤字となるわけでございます。そういうような経営の合理的な運営という点からも、また今日放送センターには最低一日七千名から一万名以上の見学者が参っております。これらは、こういう現象はやはりNHKと聴視者の直結の形が過去に比して非常に密着度が高くなっている、それからまた東京の首都圏という考え方でまいりましても、全国総人口の一割以上が東京都の首都圏に集まっているという点から考えましても、私といたしましては、またわれわれ同僚の幹部といたしましては、やはりオリンピックを迎えるにあたって考えた考え方を、実はその当時、私どもの考えたのは一万席を有するホールでございました。しかしすでに一方では一万席を有する武徳殿が完成し、さらに六千名を収容するものが近々この一カ月以内にこけら落としをするという、そういう環境の中では経済効率を考えると、やはりミニマム四千席くらいであろう。同時にこれには、建築上の音響効果その他を考えながら、これについても技術的な開発はかなり必要となってくるわけでありますが、そのミニマム四千席のホールという考え方を持ったわけであります。これらについて、まあいろいろな御印象を受けられると思いますし、われわれとしては御指摘のように、誤った印象が一般的な形での受け取り方とならないように、全力をあげて御注意の点についてはわれわれも戒心いたしたい、このように考えております。
  123. 森勝治

    森勝治君 いま言われた武徳殿の一万、それから新しくできる六千。ですから、たとえば国民に古典ものを放送するという場合に歌舞伎座を使えばよし、あるいはまた帝劇、あるいはまた武徳殿というように——NHKがみずからの投資によってそれをやらずとも、ホール等がそれぞれ他にあるならば、それをもってかえるということはできないものかどうか。その辺がNHKの四千名がぜいたくだ、ぜいたくでないということの分かれるところであろうが、とうしても四千名——それはなぜなのか。NHKの中で——やはりみずからがロケーションに行かんで、自分の構内でやらなきゃ、なぜりっぱなものができないのか、その辺をひとつ明らかにしていただきたい。
  124. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 十年くらい前までは国民生活の内容、あるいはこういう催しものの数というような関係から、NHKがいろいろな計画を立てて、少なくとも予算を御審議いただく前に、それぞれのホールその他に予約する場合には、これを使用することが可能でございました。ところが、今日では必ずしもわれわれの予想どおりに借りられるというパーセンテージはきわめて低下してまいっております。で、そういう面でも、私どもとしては適当なホールを持つことが必要である。たとえば今日でも、例の新館ホールと、先ほど申し上げた部分があるのでありますが、しかし、たとえば東宝劇場を紅白歌合戦に借りるわけでありますが、これは一年前からお願いしておかないと借りられない、そういう実情は各所にございます。文化会館といえどもそうであり、日比谷といえどもそうでございます。そういう情勢とも勘案しながら、ただいま申し上げたような構想を実現さしていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  125. 森勝治

    森勝治君 そこで資金の問題でありますが、これは先ほどタワーの問題はあとだというお話でありましたが、従来の御説明の中だと、タワー建設も含めていまの田村町、霞が関等の社屋、土地等を売却してこれに充てるということでありまして、もう来年度から具体的に、二十六億ですか、何かもうそろそろ経費を計上されておるようでありますが、そうなりますと、もう現在のところ直ちに処理、処分しなけりゃならぬ必要に迫られる——三年計画ですから——わけでありますが、財源の措置というものは見通しがついたのですか。
  126. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 四十五年度分については、財源の措置としては、霞が関分館を売却する予定でございます。この霞が関に対しては、幾つかの事業体から買いたいという要請を公式、非公式に受けておりますが、その時期とかその他については、今後事務的に厳密な検討をする予定でおります。ただ、原則としては、公開的な競売であるということだけは申し上げられると思います。
  127. 森勝治

    森勝治君 その四十五年度の二十七億ということになりますと、いまの話では、二十七億というのは、いま霞が関の土地を売却した値段で充当するという予想をお立てになっておるわけですか。
  128. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) そのとおりでございます。これは不動産会社のいろいろな資料を取り寄せまして、したがって、四十五年度予算にも御審議をいただいておりますように、大方二十六億、最低価格。これはまあ昨年の末に編成した計数でございますから、それでも一応十分まかなえるという数字でございまして、私どもとしては、できるだけその需要者の、何といいますか、価値判断によって、より効果ある売却のしかたをいたしたいと、このように考えております。
  129. 森勝治

    森勝治君 何か売却は公開の方法をもってするというお話でありますが、五十億、百億という高額なものは、そう右から左にすらすらと処理できるものではないと思うのです。ただ、こういうものは、何と申しましても、これは国民のものだという考え方がなければならぬと思うのです。したがって、新しい建物を建てるときもそうでありますが、これら不要になる建物の売却等に当たっても、やっぱり慎重に対処すべきだと思うのであります。したがって、そこで、こうした売却についてはどういう措置を講じておられるのか。それから、これからもどういう方法をもってされようとするのか、その点伺っておきたい。
  130. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お説のとおり、これは非常に慎重に計画をし、実行しなければならないと思います。特にそのために、特別なやっぱり組織をNHKの内部にも設けておりまして、一担当部局だけでなしに、厳正なる取り扱いをいたすための特別機構をつくっておるわけでございます。
  131. 森勝治

    森勝治君 どうも時間がありませんから、先を急ぎます。  番組編成の基本的な姿勢についてお伺いをしておきたいと思うのです。特にことしは、先ほども触れましたように、日米安保条約改定の是非をめぐる論議が全国的に展開されるときであります。したがって、NHKの中立性というものが今日ほど待望せられるときはないと思うのであります。ところが先ほどのように、補助金等の名目によって、あらゆる方面からNHKに制約を加えよう、あるいは他の方法をもってしようというものが次から次へとあらわれてくるような気がしてなりません。たとえば、言論の統制問題等もその一つでありましょう。しかし、まあ会長は、かねてから勇気をもってNHKの中立性を堅持するということを声を大にしておっしゃっておられますから、そういう点は非常に頼もしい限りでありますけれども、非常に内外ともに時局重大なおりからでありますから、この基本的な中立性という態度は、いかなる圧力があってもくずすことのないように、ひとつぜひとも堅持してもらいたいと思うのであります。ややもすればそういうことで、たとえば極端な話でありますが、基地周辺の免除区域を拡大するという裏には、従来だめだだめだといっておったNHKが貌変した裏には、そういう補助金等の政府干渉等があって、そういうNHKがやわらかくなったとか、いろいろなことをかりそめにもいわれることのないように、もしそういうことがちまたの単にうわさとして人の言の葉にのぼるだけであってもNHKの信頼性が著しくそこなわれるおそれもあるのでありますから、そういう点はごうまつもそういう例のないように処置していただきたいと思うのであります。したがって、この四十五年度の予算編成にあたり、このNHKの中立を堅持する番組の公正を期する、こういう面の考え方をぜひお聞かせを願いたい。
  132. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 私どものたてまえは、単に個人の気持らばかりでなく、放送法第一条の各号及び放送法四十四条と関連する数項目にわたる原則をまず堅持することと考えております。もちろん各方面から放送番組そのものについて、あるいは編成のあり方について各方面から御批判をいただくことは、これはまた、その意味では私どもとしては、当然謙虚に耳を傾けるべきであるという気持ちを持っております。これは第一条の第二、第三と関連するわれわれの態度の基本でなければならない、このように考えております。しかし、いよいよわれわれが番組を制作し送出するにあたっては、われわれはこの精神を具体的な行動として発揮するわけでありますから、その段階においてはわれわれはやはり基本的態度に確信を持つと同時に、われわれの放送自体が片寄っていないことを確かめる必要もあると、このように考えているわけでございます。  先ほど来御質問の基地周辺の免除拡大と関連する点につきましても、いろいろ当委員会あるいは衆議院等においても御要望があり、かつ国会に対して請願が行なわれ、NHKにも直接請願と申しますか、要望がございました。そういう意味で最終的に踏み切ったものであって、防衛施設庁の七千百万円とは全く関係がございません。私どもNHKを運営するにあたって、NHKの本質が番組の編集、制作、送出にあるという点で、この第一条並びに第四十四条の精神を単なる題目としてではなく、身をもって実行してまいりたいと考えておりますので、よろしく御指導を賜わりたいと思います。
  133. 森勝治

    森勝治君 それを拝聴して、やや安心をしたところであります。ところで、職員の待遇是正の問題について若干お伺いしておきたいのでありますが、先ほどの説明の中では、職員に要する費用が予算の一〇・九%、こういう現況だとお話があるわけでありますが、新しい時代に対応しようとするNHKの職員に対する待遇というものは、私は必ずしも万全を期しておるとは思わないのです。もちろん予算等でも制約を見ることは明らかでありますから、会長の意に反して、十分手厚い手当等を出すことはできないかと思うのでありますが、近代文明の先達をもって任ずる放送事業に携わる職員については、より一そうの待遇是正があってしかるべきもの、特に赤字ということならいざ知らず、職員の皆さん方の企業努力によって多大の利潤も生んでおることは、この予算、決算書等を見れば明らかでありますから、そういう面で職員の生産の意欲を向上させるためにも、より一そうそういう面にも心を用いてよろしかろうと私は思うのであります。したがって、組合等のいろいろ話し合いもあるでありましょうが、NHKの使命という点にかんがみて、私どもはぜひとも、そういう待遇是正の問題はわれわれしばしば当委員会でも決議をもっていたしておりますが、そういうわれわれの真意も体してひとつ待遇是正のことにも気を配っていただきたいと思うのであります。  これは一つ要望として申し上げるわけでありますが、それからもう一つ、NHKの中での清掃関係等は何か請負会社等をもって当てておるようでありますが、どうもNHKの職員の給与と——もっともそれは仕事の性格上しからしめるところかもしれませんけれども、これら清掃会社等との給与の差が著しい。これは同一職場における低賃金労働者を生むものでありますから、こういう点も今後、運用については十分気をつけてもらいたい。清掃会社の人といえどもNHKから金を出して清掃さしているわけですから、いわばそれは所属が、民間の会社の名前はわかりますが、何々会社という名でNHKの内外の庁舎の清掃に従事しておるのでありましょうけれども、どうかひとつ、こういう面についても職員との不権衡を来たさないようにひとつ配慮をして、かりそめにも文化の先達のNHKの中に低賃金労働者がおるのだというような世のそしりを受けることのないようにひとつ配慮してもらいたい。この点ひとつお考えを聞かしていただきたい。
  134. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 前段のお話につきましては御要望であるということでありますが、私どもとしては全く同じ考え方でおります。明年度予算では人件費の総額は、先ほど申し上げた数字は明年度のいわゆる基準賃金のアップ率でありまして、人件費の総額受信料収入の三〇%を多少上回っているというのが実情でございます。私どもは社会生活の進展あるいはその他社会環境の水準に従って積極的に処置してまいりたいという基本的な考え方においては先生とは変わっておりません。  第二の点の清掃事業等につきましては、これは私どもも直接行なっているわけではございませんし、会社との年間契約によって行なっているわけでございます。ただ、御指摘のように同じ人間が所属のいかんを問わずNHKの中にあるという点で注意を喚起されたのかと考えますが、私もそういう会社の内容等明らかにしておりませんけれども、これらは私どもとしてはNHKが自主的にもしくは主導的に解決すべき問題とは多少異なっている、ただ人間的フィーリングとして、いま御指摘の点については人間として共感を感じているということでございます。
  135. 森勝治

    森勝治君 だいぶ時間がきましたから、郵政省に一点だけお伺いして終わります。  最近のテレビ、民放等を見ますと、コマーシャルの部分が非常に多いのです。その中で生徒、児童、なかんずく幼児を使ってコマーシャルをする、このことは必ずしも好ましいことではないのであります。したがって、そういう問題について、私はこここで時間がありませんから、たとえば何がどうだ、これがどうだということは、具体的には知っておりますが、申し上げません。たいへん最近は商品の宣伝に子供をかり立てる、いわゆる芸能ということで十二才以下云々ということならばある程度わかりますが、芸能ではなくして売らんかな主義の商品の販売のために子供を使う、芸能でなくしてそれは労働であります。そういうことは教育上からもよろしくない。この点について監督官庁としてこの目に余る行為というものにどう対処され、どう民放関係を指導されるのか。もちろんこれは民送といってもいわゆる宣伝元、スポンサーとの関係もあるでしょうが、やはりいまにしてよく対策を立てておかなければ、これはどうにもならなくなってしまうのではないかと思うのですが、この点、きょうは大臣がおりませんから次官からひとつ基本的な見解を述べていただいて、あと担当局長から具体的な措置をどうされておられるのか、このことを聞いておきたい。
  136. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) 基本的にはコマーシャル自体もこれは放送番組に含まれるものでありますので、その内容は放送事業者が自主的に決定することとなっておる以上は、放送番組が社会生活に与える影響が非常に多い場合、放送事業者はその社会的責任の重大さを認識して健全な放送を行なうことを期待をしておる、こういう態度でございます。
  137. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 具体的な指導という御質問でございますけれども、いま政務次官からの御答弁にもありましたように、私どもとしましては、個々の番組について具体的な指導ということはいたしておりません。こちらといたしましては、番組といったものは放送事業者がみずから決定するということを尊重いたしまして、もちろんこの番組の向上ということは大いに期待しておりますし、また、そういったことにつきましては日ごろも行政的には指導しておるということではございますけれども、また、御存じのように番組審議会といったものもあるわけでございまして、そういったものの活動ということを期待しているという状態でございます。
  138. 森勝治

    森勝治君 どうも雲をつかむような話で、電波ですから、それは雲をつかむような話になるんだろうけれども、しかしそれでは行政の指導官としてよき指導をすると言えましょうか。目に余るじゃないですか、最近は。具体的に何もやってないというお答えと承りますが、それでよろしいですか。たとえば児童憲章等に照らしていかがわしいものがあるわけですね、そうでしょう。テレビに出て、子供が眠いのを承知でこうやってゆり動かしている状態があるでしょう。たとえば午後十時以降は、児童はそういう場合は使っちゃいけない。午後十時以降、午前三時以前は使ってならぬと、こういういろいろあるでしょう、定めが。児童福祉法その他たくさんあるでしょう。そういうものにややもすれば抵触するような、そういう問題が最近あるような気がしてならぬわけです。それでも郵政省は黙ってこれを認めるかというのが私の趣旨です。時間がないから私は抽象——具体的に出すなら出しますよ、このときはこうだと。たくさんありますから出しますけれども、時間がないからあなた方の注意を私は喚起した質問をしているんですよ。担当ですからテレビは見ているんでしょう、どなたか専門で。監督官庁として電波の割り当てのみをもってこと足れりとするんじゃないでしょう。免許の基準にもいろいろあるわけです。免許の基準に抵触したことは監督する責務があるでしょう。それは、どういう放映をされているか、出しものをされているか担当が御存じでしょう、それは。見られておるでしょう。そういうことはやっておらぬのですか。
  139. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 個々の番組につきましては先ほどもお答え申し上げましたように、私どもとしましては、これが、こういった児童を虐待しているとか、あるいはその他のことを特に申し上げてはおりません。いわゆる監督はしておりません、もちろん一般的にはテレビを見ておりますけれども。  それから先ほど申し上げましたように、やはり私どもとしましては、放送番組というのはあくまでも放送事業者の自主的な決定ということを尊重いたしまして、番組審議会あるいは最近できました番組向上委員会、こういったところの活動を期待しているという状態でございます。
  140. 森勝治

    森勝治君 そうすると、電波の割り当てだけして免許制にして営業を許可して、あとはかまわないというふうに消極的に受け取りますが、そうですが。歴代電波監理局長はそういう御答弁ですね。なぜもっと世の中をよくしようという意欲に燃えてこないんですか。番組向上委員会にまかせる、それだけで電波行政がつとまるでしょうか。いろいろ法に抵触するような問題が出てきても、それでも知らぬとおっしゃるんだろうか。私は姿勢のほどを疑う。もう少し前向きのお答えをいただきたい。
  141. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 私どもとしましては、もちろん前向きでの——番組の向上ということについては、積極的であるわけでございますけれども、番組の問題につきましては、放送法上も規定されておりますように、編集権の自由といったこともあるわけでございまして、あくまでも放送事業者の自主的な解決を期待しているという状態でございます。
  142. 森勝治

    森勝治君 たとえば児童権利宣言の第九条2には、「児童は、適当な最低年令に達する前に雇用されてはならない。児童は、いかなる場合にも、その健康及び教育に有害であり、又はその身体的、精神的若しくは道徳的発達を妨げる職業若しくは雇用に、従事させられ又は従事することを許されてはならない。」と、こういうふうにたくさんあるわけですね。これは、児童権利宣言だとか児童憲章だとか、あるいはまた児童福祉法とか、たくさんあります。営利を目的として眠い子供をテレビの前に立たせるというこの姿というものが、これはやっぱり監督官庁でよく指導してくれなければ困るじゃないですか。これが勉強するとか芸をみがくということならまだしも、純然たるパンを売るとか薬を売るとかで、子供にキャッキャッとテレビの前で騒がせる、そういう姿を監督官庁として一体どういうふうに見ておられるのですか。それでもいいのですか。それは民放がやるからかまわないとおっしゃるのですか。放送の倫理というものがあるでしょう。そういう姿をどう見ておられるのですか。時間がないので、きょうは全般論としてしか言わないけれども……。
  143. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 私どもとしましては、先ほど来申し上げているような立場でございまして、まあ民放のほうではいわゆる民放連で放送番組の基準といったものをつくりまして、そういったところで自主的にその番組の向上ということをはかっているわけでございまして、私どもとしましては、そういったところでそういった基準をもとにして放送番組が向上するということを期待しているという状態でございます。
  144. 森勝治

    森勝治君 なぜみずから行政を行なおうとしないのですか。放送番組向上委員会とかそういう第三者の仕事ばかりを期待せずに、なぜみずからそれをおやりになろうとしないのですか。行政というのは、まず当事者みずからがそれを直し、正そうとしないで、どうして政治がよくなりますか。郵政省にはその責務があるでしょう。それとも、児童憲章だからはい厚生省、虐待だからはいどこそこ、はい……、こうやるのですか。教育問題は文部省と、こう逃げを打たれるつもりですか。かりそめにも電波に関することについては、やはり子供のことでも、そういう売らんかな主義の商売に子供が利用されている姿というものは、やっぱり正していかなければならぬでしょう。子供をそういう面から解放されなければいかぬでしょう。それは行政官庁として、電波を預かるあなた方として、責務があるのじゃないですか。時間がありませんから、これ以上論議を繰り返しません。少なくともこういう問題がたくさん出てきておるわけですから、それが他の子供にうつるでしょう。子供がみなまねして、集団でこのごろまねしているじゃないですか。コマーシャルで子供が何かテレビのブラウン管の中でどなった、そのことを遊びの中で子供たちがやっているじゃないですか。教育のことは先生にまかせ、家庭に帰ったら親御さんにまかせちゃいなさいと、よもやあなた方は行政を担当する人として言うはずはないでしょう。もちろん人手の足りないのはわかりますよ。わかるけれども、そういう問題こそよくひとつ積極的に発言をしてもらわなければ困るじゃないですか。ほかのことではちょこちょこ民放に出かけて行って、そうしたことは知らぬ存ぜぬじゃ監督できないじゃないですか。私はそう思う。切にひとつ積極的な——政務次官、せっかくおいでになるのだから、私の言わんとするところはおわかりだろうから、この際あなたから約束のことばをいただきたい。
  145. 小渕恵三

    政府委員(小渕恵三君) 先生御指摘の点につきまして、郵政省としても大いに参考として、行政のあり方についても十分にその責務を果たしてまいりたいと、こう考えております。
  146. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      —————・—————    午後二時四十八分開会
  147. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまから逓信委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  148. 野上元

    ○野上元君 郵政大臣にちょっとお聞きしたいのですけれども、最近新聞を見ておりますと、たとえばCATV法案は今回は見送る、それから放送大学法案も今回は見送る、あるいは公衆電気通信法の改正も見送る、こういうような新聞記事が出ておったのですが、これは全部今国会では見送られるのですか。
  149. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) まあ大体そういう段取りに相なりました。と申しますのは、この国会の会期等を展望いたします場合、今月の二十日に提出法案を締め切ると申しますか、それが時期的に限度である、こういう状況に遭遇をいたしまして、いまおっしゃるような各法案をずっと検討してまいったわけでありますが、まだ政府部内——省といたしましても十分に熟し切らないというふうな感じでございまして、まあ時間切れといったような結末に達したわけでございます。
  150. 野上元

    ○野上元君 ことばじりをとらえるようで恐縮ですがね。大臣の御答弁を聞いておりますと、今回見送ったのは主として今国会の会期が短い、したがって、物理的に不可能である、しかし、それぞれ準備はできておる、こういうことでございますか。
  151. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) そういう会期の問題もあるが、あわせて、いま申し上げましたように、もう少しこれを煮詰める必要もあるということでございます。
  152. 野上元

    ○野上元君 私の聞いておるのは、会期延長よりも、むしろ内容についていろいろと疑義がある、さらに検討を要すべきものだ、したがって、今回は見送ったのだというふうに実は私は解釈しておるのですが、そこで、大臣もそういうお話なんですが、これを一つ一つ見ておりますと、どうも私は、日本における通信行政は、一九七〇年代における通信行政が、個々ばらばらでやられておるというような気がするのです。何というか、こう少し総合的な一つの通信政策があっていいのじゃないかというように考えます。特に将来——ごく近い将来でしょうが、おそらく通信衛星システムというようなものが爼上に乗ってくるでしょう。そういうことを考えますと、ばらばらにやっておってはいまの都市計画みたいに、非常に見にくい発展を見つつあるわけでありますから、それと同じような状態になるのじゃないかというような気がする。そこで、CATVにしても、あるいは放送大学の問題にしても、あるいはデータ通信の問題にしても、いわばまだ幼年期にあるわけです。まだ出始めた時期です。したがって、私はこの辺で急がないで、じっくりかまえて、衛星システムまでを含めてじっくり考えた日本国家の通信行政というものを策定する必要があるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  153. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) 確かに一理ある御所見でございます。先般来この委員会においても、たとえば放送法、電波法等々の改正をどうするのかという御質疑もございました。これらも取りかかるとすればなかなか大きな問題をはらんでおります。一方また、現実がどんどん前進しておるという問題もあると思うのでございます。たとえばデータ通信にしても、公社でやっておる。現在は試行ということでありましょうが、いつまでこれを続けるかという問題がある。あるいはCATVにしましても、従来の山間部だけじゃない、都会のビル陰の問題をどうするといったような、そういった現実をも踏まえますときには、一方ではどうも急がなければならぬ理由もあると思うのでございます。ただいまおっしゃるように、確かに総合性というものが欠けておる、こういう感なきにあらずでございまして、その辺も私踏まえまして、少しじっくりこれはかまえて、準備万端整えなければならぬのではないかと、こういう感じもいたしております。
  154. 野上元

    ○野上元君 御承知のように、アメリカの事情をちょっと見ましても、いま衛星システムについて大論争が行なわれておりまして、結論がなかなか出ない。あるいはまた、先般ジョンソン大統領時代につくった電気通信政策に関する大統領の特別委員会というようなものをつくって、この通信行政全般について検討しておる。しかし、出すには出したけれども、なかなか意見が一致しない、こういう状態にあるわけですね。それは、アメリカと日本とは事情が違うと思いますが、これがいい前例になっておるわけですから、おそらくアメリカの場合はちょっとおそきに失したという感もあるのじゃないかと思うのですが、日本は幸いにしてまだスタートしたばかりです。まだスタートしょうとしておる段階ですから、早いところこの総合的な計画をつくって、通信の交通整理というようなものをきらんときめておくという必要があると思うのです。そこで郵政省だけで頭を悩ませないで、もう少し広い研究のシステムをつくって、あるいは大統領の特別委員会に類似するようなものを日本にもつくって、早くやらなければ、非常に混乱するのじゃないか。そうしてやはり、出したけれども拒否される。業界に拒否される、あるいはどこどこに拒否されるというようなことになってしまって、なかなか実行に移せないままに事態は進んでいくというようなことになりかねないので、特に私は大臣にその点を要望して、早い時期にそういうものをつくって、権威のある通信政策を策定されるように特に要望したいと思うのですが、いかがですか。
  155. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) アメリカの地区放送ですか、ああいったかまえ方ではたして臨むべきかどうか、問題はあると思いますが、おっしゃるように情報社会というものを前にいたしまして、非常に大きな問題だと思います。したがいまして、たいへんいまの御提案は御好意のあるものと、こういうふうに受けとめて、これから腰を入れてやりたいと、こう思っております。
  156. 野上元

    ○野上元君 きょうはあまり多くの時間を与えられておりませんので、そういう根本的な問題について突っ込んだ論争はできないのですが、これからいろいろ質問してまいりますので、それを聞きながらひとつ判断をしてもらいたいと思うのですが、郵政当局においてもやはり、いろいろとこの問題についてはむずかしい問題があると思うので、郵政当局だけで悩まないで、もう少し幅を広げたらどうかということを特に申し上げておきたいと思うのです。  それでまず、電波監理当局に聞きたいのですが、この前の国会でしたか、私はCATVの問題について質問いたしました。局長はかわられたようですが、そのときにいろいろと質疑を行ない、あなた方から御答弁をいただいたわけですが、その中ではっきりされておらない点もあるわけなんで、きょう、それらの点についても再び触れてみたいと思いますが、まず最初に、CATVの法案をすみやかに出さなければならないということで、実は相当急いでおられ、そうして前国会に提出された。そのときの郵政当局の急がねばならない理由というのは何であったか。
  157. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  前国会にいわゆるCATVの法案を提出いたしましたときの理由といたしましては、都市におきまして、ビル陰のためにテレビが見えなくなるといったような現象が相当広まってくるということから、それを解消するためには、ケーブルをもちまして、いわゆる有線テレビでございますけれども、有線テレビを設置いたしまして解消する、救済するということが、いわば、規模が大きくなりますれば唯一の手段である。そのためにはおそらく、いろいろな業者が出てまいりまして、自分の商売になるところだけやるといったようなことも懸念されるし、また、そういった施設をつくりますと、いわば、地域的に独占的になるといったようなことから、非常にその施設自体は公共性の高いものであるというところで、これを大臣の許可制にするというところが出発点であった、こういうふうに理解いたしております。
  158. 野上元

    ○野上元君 私は、その内容はあとで聞きますが、非常に急がれておったわけですよ。急いだ理由は何ですか。やはり、早くやらないと混乱するということではなかったのですか。
  159. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答えいたします。  ちょうど一昨年のメキシコオリンピックのときに、たまたま新宿の地区でいま申し上げたようなCATVを企業としてやりたいというものがあらわれまして、これを開始しようとしたわけです。もちろん、その場合は届け出でよろしいわけですけれども、御存じのように、放送業者の同意が必要でございます。ところが、新宿地区の場合は同意が得られないということで、ということは、放送業者のほうがみずからもやろうというような考えもありまして、企業としてやるということは同意が得られないということになったのでございます。ただ、その場合メキシコのオリンピックということもありましたので、郵政省といたしましては一カ月以内であれば、同意がなくても、届け出がなくてもできるという条項がございますので、それを適用して、メキシコのオリンピックがそう長い間じゃなかったものですから、とにかくそれでひとつやったらいいだろうということで、まずそれを黙認したということがあったわけでございますが、そのとき以来、ビル陰が東京のほかの地区でも起こるというようなことがありまして、われわれとしてはやはりこういった問題は早く法的にも規制をいたしまして、そういった施設が正常に運行されるように、そういった業務が健全に発達するようにということで法案を急いだという経緯でございます。
  160. 野上元

    ○野上元君 じゃ、とにかくあなたのほうはCATVに関する法案を早くつくって、とにかく一応の規制をする必要がある、こういうふうに考えられたわけなんですが、それで前国会に出された。せっかく出したのにどうして引っ込めたんですか、そんなに急いでおるのに。
  161. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 今国会でも出すべく準備をいたしていたわけでございますけれども、先ほど大臣からの御答弁もありましたように、物理的な時間が足りないということもございまして、提出ができなかったということでございます。
  162. 野上元

    ○野上元君 電波監理局長のいまの答弁からいうと、CATVというのは会期が短いということで、物理的理由によって今回は出されなかった、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  163. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) それも一つの原因でござます。先ほど大臣の御答弁がありましたように、いろいろ政府の部内で意見をまとめて出すということになっておるわけでございますけれども、それがうまくまとまらなかったということも原因でございます。
  164. 野上元

    ○野上元君 政府部内の意見が一致しないという理由も一つあるということですか。
  165. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) ということは、結局時間的な問題がございまして、まだ十分に、議論はしていたわけでございますけれども、時間的に、先ほど大臣からのお話がありましたように、三月二十日という期限があるものですから、それまでにはまとまらなかったということでございます。
  166. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、郵政省としては、期限さえ許されれば、ぴしっとした案ができ上がっておるということですか。
  167. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 郵政省といたしましては、そういうことでございます。
  168. 野上元

    ○野上元君 これほど急がれた法案を郵政省が出せるという何があるのに、どうしてそれじゃ出さないのですか。
  169. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) いろいろ郵政省といたしましては、これは私が答弁すべき事柄じゃないとも思いますけれども、ほかにも法案がございまして、まあ私どもの立場からすれば、電波監理局としてはこの有線テレビの法案だけでございますけれども、ほかにもあるといったような事情もございまして、この期間までには間に合わなかったということでございます。
  170. 野上元

    ○野上元君 私は、郵政大臣、この逓信委員会のメンバーですからね、どういう法案がこの逓信委員会に出されるか知っておるわけですよ。片一方に簡易郵便局法案というものがありますね。これは今日の時代から見れば、出しても出さなくてもいいような法案なんですね。というよりも、これは秒単位に急ぐような法案じゃないですよ。むしろその電波のほうこそ、秒単位に急がなきゃならぬと思うのですね。そこに、ゆっくりしてもいい法案を先に出しておいて、秒単位に急がなきゃならぬというような法案をあと回しにするというような——しかも郵政省にはちゃんとできておるというのですね。そういう、もうどこにも相談しなくてもいいものができておるということならば、むしろこれに全力をあげるべきじゃないですか。どうしてそういう郵便のほうに力を入れて電波のほうはあと回しにしたのですか。時代錯誤じゃないですか、これは。
  171. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) まあ御承知のように、簡易郵便局法も長い間の沿革があるようでございまして、数国会ずっと予定をしては、そのままということでございますが、これはこれでひとつ、法案自体はこれこそ固まっていますから、さほど支障はないと、こういうことで提案をしたわけでありますし、それから電波関係の法案は、まあ完全にでき上がるというのには、まだもう少し検討の余地等がありまして、最終的には三月二十日に時間切れで間に合わなかったということでございます。
  172. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、CATVの法案については一〇〇%完ぺきなものは、まだないというふうに承知してよろしいですか。
  173. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) さように御了承願います。
  174. 野上元

    ○野上元君 いやそういう点は、局長、はっきり答弁をしてもらいたいと思うのですね。あるのだけれども出さないのだということを言えばぼくらも勘ぐりたくなる。実際に出すまでに至っていないのだ、まだ検討の余地があるのだということならば、それでけっこうです。  そこで、大臣、聞いてもらいたいのですが、この前国会においては、とにかく急ぐからこれを出さなきゃいかぬということで出してきた。ところが、いまになってくると、いろいろと検討が必要なんだということなんですね。まだまだ時間をかけて検討したいのだ、こういうことなんです。したがって、電波行政についてのあなた方の考え方というものは、行ったり来たりしておるわけですよ。私が先ほど言ったのは、それを言っておるわけです。あまり功を急ぐの余り不完全な法案を出してきて、そうしてわれわれがこれを可決してしまう。そうして世の中の非難を浴びるというようなことになると、これはまた問題があると思うのですね。したがって、私は、こういう問題については、きわめて慎重にやってもらいたいというふうに実は考えておったんですが、そういう点が先ほど言ったような問題とからむわけなんですが、これを心にとめておいてもらいたいと思うのです。  そこで、これまた新聞の報道するところなんでよくわからないのですが、東京ケーブルビジョンというのですか、こういうものを郵政省がつくった——郵政省がつくったというよりは、郵政省が指導してつくった。これは四月を目途に発足させるのだ、こういうような記事が出ておったんですが、これは事実ですか。
  175. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) いま、おっしゃるような東京ケーブルビジョン——公益法人としてこれを発足せしめるのは、これは東京のみならず大阪、名古屋その他の大都市にもほぼ同じようなスタイルで発足させようかと、こういうまあ準備中でございますが、まあその内容、詳しい点は事務当局から必要があれば申し上げます。
  176. 野上元

    ○野上元君 郵政省の考え方は、このケーブルテレビジョンについてはどういうふうにお考えになっておるか。たとえば、公益法人でやることが適当と考えておられるのか、それとも私企業でやるほうが適当であると考えておられるのですか。どちらが適当だと考えておられるのですか。
  177. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) まあただいまは、公益法人でやることが妥当であろうと、こういうことでスタートをいたしております。
  178. 野上元

    ○野上元君 公益法人が有利だという理由は何ですか。
  179. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) 放送を聴視するという一つの機関でございますから、公的な性格もあるでありましょうし、あるいはまた、私企業というものがいたずらに乱立をしても放送秩序の上からいかがなものであろうかと、こういうことで発足をさせたと、こういうことでございます。
  180. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、私企業はできるだけ押えるという考え方ですか。
  181. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) 何せ新しい仕事でございますから、先行き未知の問題もあるいはあるかもしれませんから、当面は、ひとつ、これで事は足りるのではないかというふうに心得ております。
  182. 野上元

    ○野上元君 私は、そういう安易な考え方でこの問題を取り扱うことは危険だと思うんですよ。新しい仕事と言うけれども、この東京ケーブルビジョンがやる営業内容や何か読んでみますと、当面はいわゆる再送信のみなんですね。こんなものは新しくも何でもないんですね。いままでの放送の、何といいますか、継続ですよ。そういうものを新しい仕事なんという考え方でやられると、とんでもないことになるんじゃないかという気がするんですね。どういう考え方で公益法人でなけりゃならぬと考えられておるか、私にはよくわからないんですよ。特に、佐藤さんがいつも言われるように、日本が今日のGNPの伸びを見たのは、自由な経済、これを守ったからだと、こう言っておるんですね。ところが、こういう通信業界においては公益法人であなたのほうで手をつけてしまう、そうして私企業の芽をつんでしまうというようなやり方は、それは逆行じゃないですか。それも、あなたの言われておる理由は、公共性と乱立ですね。公共性——どのくらい公共性があるか。それは私がいつも言うように、新聞はどうなんだ、あるいはあふれておる週刊誌は一体どうなんだ、映画はどうだ——みんな私企業じゃないですか。これは公益事業ではなくして私企業にまかしておいて、ただ電波あるいは電気通信を——ケーブルを通ればこれが公益性を持つんだ、公共性を持つんだというような考え方は、もはや今日の段階において古いんじゃないですかね。そういう考え方でこの問題をコントロールされる、あるいは計画されるということになると、非常なあやまちをおかすんじゃないかという気がするんですがね、私は。その点はどうですか。
  183. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) まあ、野上さん言われますような問題も、これは今後考慮しなければならぬかとは思いますけれども、当面は、いま申し上げたような線でスタートをさせていただいて事に処したいと、こういう考え方であります。
  184. 野上元

    ○野上元君 私は、ものごとは初めが大切だと思うんですよ。初め私企業の意欲をつみ取っておいて、そうしてこれは公益法人でやらせるのだということをやらしておいて、それである一定のところまでいったらおまえらもやってよろしい、こういう行き方は私はあなた方の言う自由経済の精神に反していると思うんですよ。そうじゃなくて、もうどんどんと企業意欲をこれに注げるならば注いでもらえばいいのですね。企業として成り立つならば、おそらくどんどん進出してくるでしょう。それはすべての企業の中で言えることじゃないでしょうか。何も通信業界だけじゃないでしょう。たとえば、無線電波のように有限なものであれば、私も一つの制限という問題を考えてもいいと思うんですね。国家がこれにタッチしてもいいと思うんです。しかし、もう無限なものであるならば、あるいはもう少なくとも無限に近いものであるならば、これは私企業に——あなた方のいう原則にまかしたほうがいいんじゃないですか。それをいきなり最初に芽をつむようなことをしてしまったら、伸びないんじゃないですかね、私は最初が大切だと思うんです。
  185. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 先ほど申し上げましたように、ビル陰を救済するために有線テレビを施設するということ自体は、どうしてもこれは同軸ケーブルといったようなものを引くというようなことになりますと、どうしても地域的な独占ということになるわけでございます。この同軸ケーブル自体は、御存じのように相当高価なものであるわけでございますから、そこに何本も引けると、自由に競争ができるという性質のものではないわけでございまして、地域的な独占ということがどうしても出てくるというのが一点でございます。  それからまた、私企業ということになりますと、いわばもうかるところだけ線を引きまして、たとえば人口の密集しているようなところで採算が非常に合うというところだけをやりまして、ほかはもう知らぬ顔をするといった懸念もございますし、やはり何といってもテレビを見るのに、ビル陰によって見えないところを防ぐということになりますと、役所といたしましても、そういったものの救済のためにはできるだけ値段を安くということも考えるわけでございまして、やはりこういった公益法人といった形で、企業的じゃなく、いわゆる採算ということはあんまり念頭に置かないでやってもらったほうがいいんじゃないかといったような考え方から、公益法人ということになったということでございます。
  186. 野上元

    ○野上元君 いま十二チャンネルは、あれは公益法人ですか、財団法人ですか、あれは私企業ですか。
  187. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 財団法人でございます。科学技術振興財団という財団法人でございます。
  188. 野上元

    ○野上元君 私は、自由経済の社会において財団法人がやっていることは、十二チャンネルを見れば一番よくわかる。あれは成功だと思いますかどうですか、郵政省はどうなんですか。
  189. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 現在の形はあまり成功してないと思っております。
  190. 野上元

    ○野上元君 じゃ、いつ成功の見込みがあるんですか。
  191. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) まあこの十二チャンネルのいきさつは、いろいろ御承知のようなことでございまして、私どもが見るところによりますと、初めの経営的な問題が相当大きく影響しているんじゃないかと思っております。
  192. 野上元

    ○野上元君 なぜ経営的な問題がそこに存在しておるかですよ。今日、私企業は、言うまでもありませんが、アダムスミスの論をかりるまでもなく、極大利潤を求めて動くのが私企業ですが、そこへ財団法人に投資をさしてやってみたって、利潤を生まないのに彼らが意欲を燃やすはずがないんですよ。それは私企業の原則に反するんですよ。自由経済の原則に反するんですよ。だから、今日の自由経済の社会において、十二チャンネルがどうにもならない。しかもあれは教育テレビという銘を打ったんですね。放送の内容は大体教育テレビでなければならぬ、教育でなければならぬ。ところが、教育なんかで、あれはスポンサーは一人もつきやしませんよね。結局映画かなんか、そんなものを流すよりほかに手がない。そういうことになっちゃう。私らから言わせれば、あの波をあそこへ与えるということ自身を郵政省ではもうそろそろ考えてもいいと思う。約款の違反ですわ、おそらく。しかもフルに使ってないでしょう、一日、あれは電波を。私は見たことはないんだけれども、たしか、朝、新聞を読むと、早い時間はあれは空白ですね。ということは、あれは遊んでおるわけですね、あれだけの波が。それが十二チャンネルの実態。これが財団法人の実態なんですよ。これも財団法人。  私はまあこれから質問したいと思うんですが、これを資料で見ますと、八社が出捐するということになっているんですね。出捐するのはいいけれども、ペイバックが全然ないでしょう。出しっぱなしでしょう。寄付行為でしょう。そんなものにどうして向きになって、この加盟団体がやってくれますかね。結局、どこかが背負って全部やらなきゃならぬような状態になるんじゃないですか。銀行なんかが金出してくれますか。あるいは、いままでやっておった私企業も抱き込んだんですね。新宿でやっておった日本ケーブルビジョン、これをこちらに抱き込んで公益法人の中に入れてしまった。そんなところに金を求めるところが私はおかしいと思う。電力だってそうです。こんなもの、向こうから電柱と、それから何ですか、導管使用料をもらいたいくらいのものじゃないですか、電力のほうから言わせれば。それを出捐しろと言って、こういう財団法人をつくってこれはスタートさせる。私にはわからないんだね、私企業もこの中に入れちゃって、おまえらがやっちゃいかぬ、これは財団法人でやるというような行き方は、こう私は非常に時代錯誤だと思う。
  193. 井出一太郎

    ○国務大臣井出一太郎君) そういう御意見、確かに生まれるであろうと私は思います。まあそれにしても、こういう形でスタートしておるわけでございまするから、十分に御批判のあるようなところを注意をいたしまして、そういう御懸念を払拭するようなことに努力いたしたいと考えております。
  194. 野上元

    ○野上元君 大臣、帰られるそうですからもうけっこうですが、一つだけ聞いておいてもらいたいんですが、私は幾ら経験を積んでもそれはえらいとは言えないと思う。経験があるだけではえらくはない。経験にいかに反応する能力を持っておるかということが、私はその人がえらいか、えらくないかをきめる。組織も同じだと思うんですよ。フィードバックの回路がなけりゃこれから生きていけませんよ。経験があると言って、また同じことをやっている。経験に反応していないですよ、私に言わせれば。私はこんなことをやって、これが成功するとは思いませんよ。大臣どうぞ退席してください。  藤木さん、あなたに聞きたいんだがね。この出捐はもう済みましたか、全部寄付は終わりましたか。
  195. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 現在、いわゆる民放会社とNHKは済んでおります。ほかのところもいま準備をしているという状態でございます。
  196. 野上元

    ○野上元君 私は、四月をめどに発足させるというのにまだ寄付も満足に集められないで、どうして発足させるということなんですか、私にはそれがわからない。これは出捐が完了しますか。たとえば銀行とか、電力なんか出してくれますか。
  197. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 多少問題があるところもあるようでございますけれども、初めから全部金がなくても事業はできるわけでございまして、まあ必要のところからどんどんやっていくということで、現在先ほど申し上げました新宿地区から始めるということで計画を進めているということを聞いております。
  198. 野上元

    ○野上元君 これは、どういう比率で出捐するんですか、八社が。
  199. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 初めの予定は八分の一ずつということでございます。
  200. 野上元

    ○野上元君 八分の一というのは現実には幾らになるんですか、百万円ということですか。
  201. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 基本財産が百万円ずつと、それから運用財産として四千七百万円を八分の一ずつ出す。
  202. 野上元

    ○野上元君 いまこの最初の約束に基づいて、八分の一の出捐が終わっておるのは民放とNHKだけですか。
  203. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) そのように聞いております。
  204. 野上元

    ○野上元君 電電公社、新聞、銀行それから、日本ケーブルビジョン、電力、そういうところはどうなるのですか。いつまでに納められるのですか。
  205. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) いつまでという話は、まだよく聞いておりませんけれども、電電公社においても準備をしているというふうに聞いております。それから銀行協会でも出す。そのほか電子機械工業会であるとか、まあ電力のほうは、多少何か問題があるというふうに聞いておりますけれども、まあ一応大体においてみんな出すというふうに聞いております。
  206. 野上元

    ○野上元君 大体においてみんな出すというのですが、あなたのほうは、この大きな事業を指導されておるわけですから、大体においてできるだろうなんていうことでは、これは問題をあとに残すと思うのですよ。もう少しはっきりした考え方を持っておらないと、あとで問題を起こすのじゃないかというような気がしますね。日本ケーブルビジョンなんていうのは、はたしてこんな出損をしますか。吸収されて、さらにこんな出捐をするでしょうか、この財団に。
  207. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) すると思っておりますけれども、私、いまのところこまかい事情をつまびらかにしておりませんので、後刻調査いたしまして御報告いたしたいと思います。
  208. 野上元

    ○野上元君 なぜこの八団体を選んだか、その理由は何ですか。どうして銀行協会が入らなきゃならぬのか、あるいはどうして電力会社が入らなきゃならんのか。どういう理由によってこういうものを加盟団体に入れているのか。
  209. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) これは、私どもが積極的に選んだというよりも、加入さしてくれというところもございまして、こういった八つの団体に落ちついたということでございます。
  210. 野上元

    ○野上元君 加入さしてくれとくるのにどうして出捐料を払わないのか。こんなものは加入を切ったらどうですか。出捐料も払わないような加入者かかえておったって意味ないでしょう。
  211. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 私の言い方がちょっとまずかったと思いますけれども、現在まだ払っていないということでございまして、払わんということではございません。詳しい事情ちょっと私、いま存じておらないものですから、そういったものも含めましてあとから御報告いたしたいと思います。
  212. 野上元

    ○野上元君 詳しい事情を知った人はいないですか。あなたのほうで指導しておいて詳しいことはわからないというのじゃちょっと問題があるのですね。
  213. 太原幹夫

    説明員(太原幹夫君) 電監局長のことばを補足さしていただきます。  出捐の問題につきましては、八団体で均等割りということでございますが、原則的に申しますと、もしもその中で、一団体あるいは二団体が出捐できない場合、あるいは出捐の金額が均等割りにならなかった場合にどうするかという問題に対しましては、残った団体が、その分を均等割りにするということに、原則的にはなっております。  それから、第二点の電電公社のようなところがまだ出さない理由というのは、来年度の予算で出損をするということでございますので、これは時期を待ってくれということでございます。それから、銀行協会につきましては、金を出すというところはたくさんあるのでございますが、出すところがどのように均等割りにするか、あるいは資本金の割合でやるか、そういうことが割り振りがつかないということで、とにかく出すけれども、割り振りがつかないから延ばしてくれということを言っております。電力会社につきましては、基本財産につきましては参加をするけれども、運用財産についてはきわめて困難な事情であるということを聞いておりますので、私どものほうといたしましては、電力会社につきましては、均等割りの出捐をお願いすることはできないものだと考えております。それから、もう一つの団体の電子機械工業会、電線工業会、これは、その二つの団体が一つの団体に途中からなった関係電子機械工業会がどれだけ持つか、電線工業会がどれだけ持つか、これが一点。それから電子機械工業会、電線工業会に加盟している団体がきわめて大きいということと、大メーカーと中小メーカーというものが混在しているという関係で、これもまた割り振りについて多少待ってもらいたいということが一点でございます。それから先ほど御質問にございました日本ケーブルビジョンにつきましては、一昨年投資いたしました、メキシコ・オリンピックのために投資いたしましたケーブルあるいは施設が、当時の建設費の費用で約四百五、六十万ございますが、その現物出資というものの評価、そういうことがまだ確定していないということでございますので、先ほど局長が申しましたように、若干おくれておりますけれども、それぞれの理由でおくれているということでございまして、出捐するということにつきましては、東京電力を除きましては着々と進みつつあるものと、そう考えております。
  214. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、電電とか銀行協会とかメーカーですね、これは内部の事情——割り振りの問題で若干おくれると。したがって、やがて出捐するだろうという見通しがあるわけですね。それから日本ケーブルビジョンですか、これは現金でなくてもあるいは現物で、あるいは現在の施設で、あるいは建物等で出資する、出捐するということも考えておるということですね。そうすると、残るのは電力関係が基本財産については出指してもよろしい、百万円については。しかし運用財産の四千七百万円ですか、これについては疑義があるということですね。ということになると、それはどういうことになるのですか。平等の原則からみて、平等の義務を負うものが平等の権利を持つものだと思うのですね、こういう場合には。その場合には電力はどうするつもりなのですか。この加盟から抜けさせるのですか。
  215. 太原幹夫

    説明員(太原幹夫君) その均等割りにするということをきめましたときに、電力会社はまだ加盟していなかったわけでございます。それでその均等割りを八団体にするということにはなっておりましたが、東京電力会社は、まだその中に相談に乗っていないのに自分のほうは均等割りになっていたということなんですが、私ども事務的にやる人間といたしましては、その場合に一体どうするかと、まだ団体が入っていないのに均等割りということにして、もしも電力会社が、私のほうはどのような都合かわかりませんが、だめだというときにはどうするかということを事務的に詰めましたところ、先ほど申しますように、残った団体がその分を均等割りにすると。したがって、均等割りの原則は八団体が次の七団体になり六団体になるかもしれませんけれども、均等割りでいくということでやっていくのだというふうに、その当時の東京電力を除きました団体におきましては、各団体そのことに意見は一致いたしたわけでございます。
  216. 野上元

    ○野上元君 どうも私にはよくわからないのだけれども、とにかく百万円の基本財産は持とうということは、百万円ぐらいなら犠牲を払ってもよろしいということですよね、一言で言えば。しかし四千七百万円というのは、電力としてみれば何らの益がないわけなんだから、メリットがないものに四千七百万円も出す理由がないということだと思うのです。私はいまの話を聞いておると。そうすると、将来これだけの資産でやっていければいいのですよ。さらにこれをふやしていくということになった場合にまた問題が起こるのじゃないか。そうすると、またほかのものがそれをかぶっていく、そして権利だけは平等に持っておるというようなことが初めから許されるというような、何というのですか経営のやり方というのは、ちょっとぼくにはわからないのですがね。それなら初めから百万円ぐらいなら、電力会社どうしても払わなければならぬという理由があるなら別ですよ、これだけ均等割りをほかの人がかぶってやっても電力は入れておくべきだという気持らがあるならいいでしょう。しかし、無理やりに入れておいて、それでかぶらされるというなら、これは初めからのけておいたほうが問題にならないのじゃないですか、百万円ぐらいなら。どうせ四千七百万円を均等割りするなら、それに百万円にプラス均等割りにしたってたいした負担じゃないでしょう、ほかの団体から見れば。それならそんな問題を残さないためにも初めから御遠慮願ったらいいじゃないですか。向こうも入りたくないのでしょう、おそらくそういう考え方ならば。
  217. 太原幹夫

    説明員(太原幹夫君) これは会社内部の問題で、確答をいまだに得ておりません。会社内部の事情としていろいろ検討しておるので、確答を待ってもらいたいということを言っております。  それから先ほど御質問の中にございましたが、事業をやっていった場合に、また金が足りなくなったらどうするのだ。これも私ども事務をやっていく人間としての重大なる関心事でございますので、三年間で最初の年に七千、次が八千、次が一万、合わせて二万五千世帯をやるということになっておりますので、それが二万五千でなしに、三万になった場合に一体どうなるのですか、こういうことに対して加盟団体に聞きましたところ、この分の金は再び均等割りで拠出をする、こういうふうに私どもは聞いております。
  218. 野上元

    ○野上元君 そのあとのほうだけれども、その二万五千が三万になったというのはあなたの希望なんですな。それは三万になるかもしれない、あるいは四万になるかもしれない、あるいは二万で伸び悩むかもしれないなんということになったら、プラスのときは問題ないわね、また均等で出捐をするということになるでしょう。しかし、足らない場合にこれまた均等で出捐と、補てんということになりますか。その場合、いま最初でさえ均等割りはいやだと言っているのが、これは二回目のときにどうなんですか、どういう態度に出るのですか。
  219. 太原幹夫

    説明員(太原幹夫君) それは先ほど申しましたように、二万五千が三万になりますと、五千世帯分だけ足りないわけでございますので、その分につきまして、この分は加盟団体が均等割りでその分を拠出しよう、こういうことになるわけでございます。そしてつけ加えて申しますと、一般的に申し上げまして、建設費が一世帯当たり大体三万円かかりますが、加入料といたしましては一万五千しか取らない。それから保守費が二、三百円かかるはずでございますが、これは維持費として五百円しか取らない、こういうことでございますので、御質問にございましたように、予定しております世帯よりもふえる場合にはその分だけ拠出金といいますか、運用財産を拠出してもらわなければ事業は成り立たない。ここは私どもが非常に皆さん方の意見を聞かざるを得ないところだったわけですが、これは加盟団体が均等割りで出すと、したがって二万五千で打ち切るということでなしに、事業は存続していくのだ、こういうような確約を得ております。
  220. 野上元

    ○野上元君 わかりました。私もちょっと誤解しておりました。  普通の事業なら需要がふえればふえるほど黒字になるのですが、あなたのほうは需要がふえればふえるほど赤字になる、そういう事業ですね。そういう事業でよくもやったものだとぼくも感心しているのですが、そういうような内容になっている、システムになっているのだとするならば、だれがむきになってそれをふやすという努力をするのですか。ますます出捐は出さなければならない、事業が太れば太るほど。そんな事業経営なんというものは成り立つのですか。私はいまの世の中にそんな人が、いい人たちがおるとは思えないね。だから電力会社が初めからそんなものはとんでもないと言っているのではないですか。よく私は入ったと思う。郵政省の力に感心してるんだけどね。よくこの電力会社がこんなものに入ってきたと思ってふしぎでしようがない。新聞なんか、将来のことを考えればまあ入っておったほうがいいだろうというような気持ちもしますわね。しかし、メーカーやなには、こんなところへむきになって入ってくるなんて考えられないんだがね。そういう点は、そういうシステムというものがはたしてそれ、生き延びるでしょうか。
  221. 太原幹夫

    説明員(太原幹夫君) いまの御質問の、生き延びるかどうかという点はお答えいたしかねますけれども、加盟のしかたという点につきましては、電力会社を除きましては非常に積極的でございます。また、拠出の点につきましても、疑問の点なしに拠出をするというふうに、積極的な申し出がございます。
  222. 野上元

    ○野上元君 私は、まだ四千七百万円だとか百万円だという単位の間はたいして問題にならぬと思うんですが、それがどんどんふえていって出捐がふえてくるということになったら、そんなのんきなことを言ってられないと思うんですよ。金持ちけんかせずなんてことは言ってられないような段階がくるような気がするんですね。だからそういう点はこれはよほど慎重にやらないとたいへんなことになるんじゃないか、十二チャンネルの二の舞い踏むんじゃないかというような気がしてぼくはしようがないんですがね。その点はよっぽど——まあ、ここで論争してみたって、将来のことですからだれもわかりゃしない。ただ私は心配なんです、その点がね。財団法人というものがはたしてこの自由経済の中で生き延びていくなんて威力を持ってるかどうか。——事業をやらなきゃ別ですよ、じっとしておるんなら話は別ですがね。しかし、ふやしていけばふやしていくほど三万円対一万五千円の差で赤字がふえていくというシステムで、よくまあこの人たちが承知したと思うんですが、これはあとでNHKにも聞きたいんですけどね、加盟団体に将来これはみんなかぶってくるんじゃないかという気がするんで、その点後ほど質問したいと思うんですが……。  先ほど藤木さん言われたように、これでやらなければ安上がりにならぬと言われるんですがね。この計画を見ても、加入料が一万五千円ですね。そうして月額の利用料が五百円ですね。そしてこれにプラス、NHK受信料が加わるんでしょう。そうすると、まあ一万五千円は別として、五百円というものは別に払わなきゃならないわけですね。そういうことになるわけですが、これをたとえば、四十四年度にたしかNHKは都市の難視対策として数億円の予算を組んだはずですよね。あのときの計画NHKにありますか。NHKがやったらどれぐらいの計算になるか、どっちが安上がりか、ひとつ比較してみてくれますか。あのときの計算の内容はありますか。
  223. 志賀正信

    参考人志賀正信君) 四十四年度におきましては、当初まだCATVのほうの発足の気配がございませんでしたので、NHK自前で都市難聴の解消をしたいという計画をお出しいたしまして、御承認を得ております。その後、この問題につきまして新しい法人ができましたので、それに参画することといたしまして、この計画は保留をいたしてございます。当時試算をいたしました内容といたしましては、四十四年度は二億八千万円の予算でございまして、その根拠といたしましては、二万八千円の単価で二百五十世帯を一つの地区といたしまして四十地区を救済するということで、一万世帯をとりあえず初年度に救済をしたいという計画でございました。
  224. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、NHKがやられる場合の都市の難視解消の方策は、比較的難視が集中しておるところに、何と言うんですか、メイン・ケーブルというものを引いて、そこからあとは各戸に有線を引くという方法ですか。それでNHKはどこまでその経費を持ち、個人はどこを負担するというふうな計画はないんですか。
  225. 松浦隼雄

    参考人(松浦隼雄君) お答えいたします。  先ほど東京ケーブルビジョンのもくろみの中で一加入当たり三万円ということを申されましたけれどもNHK計画の場合もたまたま数字は一致しております。一加入者当たり大体三万円、そのうら四十四年度の計画では二万五千円をNHKが負担する。その負担する部分は、お話のとおり幹線部分とNHKの受信部分、ここで二万五千円がかかる。あと受信者のほうでは商放部分と、それから各戸への引き込み部分、その引き込み部分が三千二百五十円というふうに見積もってございます。で、これは大体現在の東京の非常に密集した難視の部分で、大体二百五十世帯ぐらいを一つのシステムでカバーするとしたときの平均値でございます。推定値でございます。したがって、もし加入者が非常に同一地区の中でふえていく、つまり同じ幹線の中にたくさんぶら下がるということになりますと、一加入者当たりの所要経費三万円というものは逐次下がってくる、こういうかっこうになるのでございます。
  226. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、この財団法人が計画している一加入者当たり三万円というのは、NHKが見ても大体同じ程度ですね。それで、財団法人の場合には一万五千円はまけよう、こういうわけです。半額にしようというわけですね。NHKの場合には二万五千円をNHKが出そう、こういうわけですね。そうすると残りは五千円ですね。一万五千円対五千円ですね、個人の負担する分は。そのケーブルから引き込むのは三千二百五十円ですか。ということになると、八千二百五十円が設備的な個人の負担になる、こういうことになりますね。そういう理解でよろしいですか。
  227. 松浦隼雄

    参考人(松浦隼雄君) 計算いたしますと、そういうことでございますが、これはこういう事情がございます。東京ケーブルビジョンとして三年間に約二万五千の世帯を対象としようというふうにもくろまれたのは、大体東京でここ数年間予測されますところで、これは実は非常に数字をあげますのはむずかしいのでございます。受信難視の問題は、都市の中では非常に複雑な状況でむずかしいのでございますが、大きく見積もって十万程度ある。その中で非常に難視の程度が、ある程度以上強いものが二万五千ないし三万ある。この規模でもってものを考えましたときに、先ほどから話が出ておりますような数字になるのでございます。それから、これはケーブルビジョン、CATVというものに加入しなくても、一軒の受信される方は、自分のところでアンテナなりあるいはフィーダーなりを引き込みますと、これも大体平均でございますが、あまり平地でない、受信状況に問題のあります地区では大体一万円からひどいときは二万円、平均一万二、三千円は個人負担としてかかるわけでございますから、それがCATVに加入することによって一万五千円払うということは、それほど大きな損——自分でつくるアンテナが要りませんので、相殺とはいきませんけれども大きな負担差にはならないというふうに考えられるのでございます。
  228. 野上元

    ○野上元君 その一万五千円が安い、高い、絶対額として安い高いという論法ではないのです。私もわからないのですが、ただ、財団法人が試算した場合にはこうなる、やればこれだけのものがかかるというわけです。かりにあなたのほうが四十四年度に予算を組んだ二億八千万円ですか、これでやれば個人は八千円の負担で済むということです。八千二百五十円で済むということですね。そして月額の利用料は要らないわけですね。NHKがやる場合には、年間六千円個人の負担が安くなるということですね、そうですね。ということになると、何で高くなるような——そうして初年度に一万世帯は救済できると、こういっている。この計画を見ると三年かかる、一年で七千何ぼしかできないじゃないですか。あべこべじゃないですか。高くかかって、そして少ない救済しかできない、そういう計画をやるというのはおかしいのじゃないか。NHKとしてもそんな何というか、ダウンするような計画に加担するという、その気持ちはどういうことなんですか。あなたのところでやればもっと安くできる。しかも年間六千円の月額利用料は要らないんですからね。これは一般の加入者は、わかったらNHKなぜやらぬのだということになりますよ。そんなものじゃ加入せぬと、これを新聞に発表してごらんなさい、おそらく加入する人いませんよ。NHKでやらないんですよね。そういうことが——どうも私はやり方が納得いかないんだな。どうしてこんなものをつくらなければいけないのか。
  229. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  NHKだけがおやりになるのはそれでいいわけですけれどもNHKは自分のところだけをやられるということになると思います。しかし、見るほうはやっぱりNHKだけじゃなくて、ほかの民放も見たいということになるわけでございまして、東京の民放各社も自分のところでもやりたいという非常に強い希望がございまして、それから出発したわけでございますけれども、そのほかにこの寄付行為にもありますように、すぐではないと思いますけれども、自主番組も中に入れようというような計画がございまして、そういったものも含めて考えますと、NHKだけでやるというのは必ずしも適当ではないんじゃないかというようなことから出発したのでございまして、だんだんと大きくなったというかっこうでございます。
  230. 野上元

    ○野上元君 もちろん私は、NHKだとか電電公社がすべてのものを独占するということは反対ですよ。そういうすべての情報を独占しようなんということは不可能なことですね。そんな無理なことをやってもしようがないと思うんです。その点は私も同感なんだけれども、これでやるとずっと私はおくれていくと思うんですよ。一般の人が迷惑すると思うんです。NHKは当然投資においても難視地域の解消をやらなければならぬですからね。去年はとにかく二億八千万の予算を組んであるんですからね。私ども説明があったんですから。これは実際にはやらなかったということですね。なぜそれをやらない。大衆のためを思っているのか。なぜそれをやっちゃいかぬのですか。なぜNHKはこれをやらないんですか、予算を組んであるのを。
  231. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 郵政省といたしましては、こういった東京ケーブルビジョンといったものを行政指導しておったわけでございますので、NHKがそういった単独でやることは適当でないというわけで、先ほど御説明申し上げたようなかっこうで東京ケーブルビジョンの委員にも加わって一緒になってやるということになったわけでございます。
  232. 野上元

    ○野上元君 私はこう思うんですよ。都市の難視の問題についても、NHKがやるのはどんどんやらせればいいと思う。あなた方が考えているようないわゆる将来のデータ通信だとか、ファクシミリだとか、その他の通信施設はこの中に一緒に入ってくるという構想であるならば、それはまたそれでつくればいいと思うんですよ。何もこれで一ぺんにこの中に入れようとすると、待っておる人はたいへんですよ。結局、去年NHKがやれば一万世帯は救えたわけですから。あなた方が待ったをかけたために一万の人はストップを食っている。そして高いやつに加盟させられるわけです、一年とか二年待って。それは聴視者のためになっているのか。そういうことはどんどんやっていくべきだと思うんですよ。それからあなたのほうで都市の難視について、NHKだけでやるのはいかぬという話があるけれども、九条の四項というところですか、これをちょっと読んでみますと、「協会は、標準放送と超短波放送とのいずれか及びテレビジョン放送がそれぞれあまねく全国において受信できるように措置をしなければならない。」こういうように法律でうたっておるんですね。当然私は、この法律を見ながらNHKはこういうことをやらなければならぬのだと思っているわけですよ、義務があると思っているんですよ。それは自然による障害だとか、人工による障害なんて問題じゃないんですよ、私に言わせれば。あなたはどういうふうに解釈しますか、この九条の四項を。
  233. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 九条の四項は、実はそこに書いてありますことは「標準放送と超短波放送とのいずれか及びテレビジョン放送」といったものをNHKはやらなければならないということでありまして、あまねくやるということは、すでにNHKの、七条のこの目的にあるわけでございますから、あまねくやることは七条ではっきりしているわけでございます。そこに書いてあることは放送というものをやる場合に、一体何をやるかということを書いているわけでありまして、標準放送と超短波のいずれか、それからテレビの放送、そういうような解釈でございます。NHKが難視地域を救済するということ自体はたいへんけっこうでございまして、当然NHKとして電波を出す以上は、それがうまく受かるようにしなければならないということは当然でございます。ただし人工によってできた障害あるいはビル陰のようなものといったような場合に、そこまで、あまねく放送するということになっておりますけれどもNHK義務としてそういったものまで救済しなければならぬというふうには、私どもは考えていないわけでありまして、たとえば自動車雑音というのもございまして、自動車の点火装置から出る雑音がテレビを妨害するわけでございますが、これを救済いたしますと、自動車の一つ一つに雑音の防止器を取り付けてやるということになるわけでございますが、そこまでNHKがやらなければならないということはないのじゃないかというふうに、そういうふうに解釈しているわけであります。
  234. 野上元

    ○野上元君 九条の四項をよく読んでみますと、標準放送と超短波放送とのいずれかですね、どちらでもいい。それとテレビジョンは全国あまねく受信できるように措置しなければならないというふうに私は読めるのです。そうすると片方は標準放送と超短波のいずれかをやる、それとテレビをやらなければなりませんよ。こういうふうに解釈すると、人工とかなんとかじゃなくて、自然現象とかいうことじゃなくて、当然義務だというふうに私は感ずるわけです。そうすると、NHKが免責されるということになると、どこが責任を負うということになるのですか。あなたの言われるように、CATVでやりますと、それはだれが責任を負うかというと、結局個人が責任を負っている。こういうことでしょう。高い料金を払って、そうして聞こえるようにしましょうということなんでしょうが、ただそういうことになると、これはすべて聴視者の責任であって、放送業者のほうには責任がない。都市の難視の場合には、そういうことになってしまうと思う、私はそれがこわい。だから私は、NHKに言いたいのだが、たとえば飛行場のそばに騒音が起きる、あるいは基地に騒音が起きる。だからそういうところはどんどん減額措置をして、そうして救済をしますという、この予算案にも出ております、この減額の範囲を拡大していきまして救済すると、それは私は救済ではない。それはNHKの責任のがれだ、救済というのは美しい絵を見せてもらうということです。どんなことをやっても、大衆からすれば見えないから金を払わぬでもよろしいというのなら、何もNHKの世話にならぬでもいいじゃないか。そうじゃなくて美しい絵を見せてくれる、そのためにはどういうふうにやるべきかという積極的な救済策でなければ、私は救済とは言えない。料金を免ずるなんというのは、見なくてもけっこうだということと同じだ。これは、私は責任のがれだと思う、NHKの。もっときびしく積極的にこの問題を解釈していかなければ——郵政省のように、そんなに言ったってしようがない、そんなことまでやっておったらNHKの仕事がなくなってしまう、いなかのほうだけちょこちょこと放送すればいい、都市は見えなくてもよろしいということになるかもしれませんね。私はそれを実は心配しているんですが、そういう解釈はおかしいですか、私の考え方は、どうですか。
  235. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) もちろんNHKは電波を出して放送する以上、その電波がちゃんと受かりまして、きれいな絵が見られることが望ましいわけでありまして、そういう点につきましては、当然NHKもそれに対する努力をしなければならないと思います。ただ人為的な問題としてテレビの電波が、あるいはラジオの電波がうまく受からなかったり、あるいはよく聞こえなかったりという場合には、そこまでNHKが全部義務を負ってやらなければならないかどうかということになりますと、私どもとしては、そこまではNHKの責任はないんじゃないかと思っているわけです。もちろん、先ほど来申し上げましたように、NHKとしても当然そういった点については大いに努力して、少しでもうまく受かるように努力はしなければならぬ、そういうふうには考えております。したがいまして、東京ケーブルビジョンという問題につきましても、NHKは積極的にそれに参加して、いい絵を見せるように努力するということになるのではないかと思います。
  236. 野上元

    ○野上元君 この法律は、NHKのためにつくられている法律でもあるわけですから、NHKとしては、この九条の四項をどういうふうに解釈されていますか。
  237. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 前回の当委員会でも私が劈頭にお答え申し上げていると思うのですが、私どもとしては第七条、これが完全な放送協会を設立する目的でございますから、これと関連して九条の四項というのはその後放送法の一部が改正されて、標準放送または超短波放送、それからテレビジョンもおそらく昭和二十四年には入っていなかったと思います。その意味で、第七条の主たる目的は、音声の場合はいずれか一波、テレビジョンは当然というように私どもは解釈せざるを得ないわけです。しかも私どもの経営は、受信者からお金をちょうだいするというたてまえに立っているわけですから、このことは当然三十二条の契約の内容とも関連してくるわけです。全国普及の立場から申し上げまして、少なくとも六大都市、これが聴視世帯の一番多い地域でありまして、これに対して客観的な立場で無答責と、責任を持つ必要はないということになりますと、七条と九条の四項との関連ばかりでなしに、三十二条の聴視料と、これと関連する契約の問題、それと実際的には大都市に一番大きな世帯が集中しているという点では、経営者としては無視できない問題になるというように考えているわけでございます。
  238. 野上元

    ○野上元君 藤木さん、NHKとしてはああいう考え方を持っているわけですね。  そこであなたのほうに聞きたいのですが、私もこの料金の問題聞こうと思っておったのですが、たとえば財団法人ができまして、おそらく料金を徴収するかもしれませんね、集金をすることになるのか、払い込みになるのかしりませんが。こういうときにNHK受信料とそのものは一体分離して払い込ませるのか、それはNHKで料金を徴収させるのか、財団プロパーのものだけは払い込ませて、あとはNHKが別に集金に来るのか、NHKのものは、というような方式をとるのですか、どういうことを考えているのですか。
  239. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  その点につきましては、この財団をつくるときにいろいろ議論がございまして、結局事業の中に「有線によるテレビジョン放送の再送信ならびにこれに付随して行なう役務の提供」という表現を入れまして、そこでこの財団のほうが一緒にNHKの聴視料も、料金を取る場合に取るということになっております。
  240. 野上元

    ○野上元君 そうすると、財団プロパーのものとNHKのものをプラスしたものを払い込ませる、こういうやり方でやるわけですね。それでうまくいくと思いますか。たとえば隣の人と比べると、まあ道一歩隔てていわゆる難視地域じゃないところはNHKだけの料金を払って、片一方はそれプラス五百円を払う、それについてうまくいくと思いますか。自信ありますか。
  241. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 自信といっても、私どもがやるわけじゃございませんのであれですけれども、私が新宿の地区の有線テレビを見ましたところ、非常に明瞭に映っているわけでございます。どのチャンネルを回しても非常にきれいに映るということでございまして、普通一般の家庭だとなかなかそこまでできないのじゃないかと思いました。したがいまして、五百円出してもやはりいい絵を見たいということになるのではないかと思っております。
  242. 野上元

    ○野上元君 ただ私心配しているのは、これはNHKのほうはどう考えているか知りませんが、ばらばらに料金を取りにいったら、これはNHKの料金払わぬと思いますがね、どうですか。その点NHKのほう自信がありますか。
  243. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これが非常に問題だと思います。この財団に参加をいたしましたNHKの目的といたしましては、いろいろこの財団はテレビの再送信、難視改善のための再送信ばかりでなしに、あるいは自主放送その他将来起こるでありましょういろいろな議論も想定せられておるようで、当面は難視改善の施策ということでございます。NHKとしてはいろいろな目的はありましょうが、NHKの使命から申しまして、NHKの放送が障害を受けないで十分に到達することが理想であります。したがって、この法人が難視改善に非常に役立つということと同時に、受信料の徴収が円滑に行なわれるということはNHKとして重大な関心を持つ点でございます。その点におきまして受信料の問題につきましても別個に取りにいったのでは、非常に、五百円の使用料を払ってその上にNHKの徴収に応ずる点については危惧なきを得なかったわけでございます。そういうことで非常にNHKとしては強く要望いたしまして、先ほど藤木局長から申されましたような条項を入れてもらって、一括財団において徴収をしてもらう、こういうような措置をとっていただいたわけでございます。
  244. 野上元

    ○野上元君 ちょっと話が飛んでしまいましたけれども、この財団法人で計画されているのは、主としていわゆる難視が比較的集団的に発生している、そういうところについて財団がこれを救済していくということですね。ところが偏在しているものがあるのですね、都市に難視がいっぱい。これはどこでやるのですか、これはもうしようがないのですか、CATVができるまではしようがないのですか。
  245. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) そういった点もたくさんあろうかと思います。特に一つのビルができましてその陰のためにテレビが見えないという例がたくさんあるわけでございまして、そういった場合は、従来そのビルを建てた人が払うのが筋じゃないかということで、実は私ども郵政省であるとか、あるいはほかの建設省、通産省、あるいは電気機械のメーカー、もちろんNHKだとか民放あたりを含めました受信障害対策協議会というのがございまして、そこが主体となりまして、そういった点を指導いたしまして、技術的な指導はやっているわけでございますが、それとともに、そういった場合は建築主が払うようにというようなことを中に入りましてそういう方向で指導しておりまして、現在、たとえば東京都が建てる建物で難視が起きているという場合は都が全部それを持つと、あるいは国鉄の建物が原因でテレビが見えないというところは国鉄が相当程度負担するといったような例が相当ございます。そういったいまは一つのビルのことを申し上げましたが、そのほかにもまだいろいろどこからかの反射によって見えないというところもございましょうし、いろいろなケースがあると思いますが、そういったところにつきましては、先ほど申し上げました受信障害対策協議会というものが主体になりまして、これはもちろんNHKがその中の非常な指導的な立場にある団体ですけれども、そういったところが中に入りまして技術的に指導して、アンテナの位置を変えるとか高さを変えるとかということをやっているわけでございます。
  246. 野上元

    ○野上元君 そういう難視の場合は、建物所有者が払うべきであるという考え方でその協議会で一応指導していると言われるのですが、しかし、それは全然法的拘束力はありませんね。したがって、それはいやだと言った場合にはどこが持つのですか。
  247. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) もちろん、中にはいやだと言う人もあると思います。したがって、そういった場合は自分たちだけでやらざるを得ないという場合もあると思います。そういった場合は、いままでの例ですと、大体やはり先ほどの受信障害対策協議会あるいはNHKあたりが中に入りまして、協会みたいなものをつくりまして、そういった団体が、そういうものをつくって運営するというようなかっこうになっております。
  248. 野上元

    ○野上元君 いずれにしても、それはなかなかむずかしい問題でしょうね、いままでもそれはあったことですから。高層建築がにわかに建って問題が起きたものと、それからいままでもそういう問題が全国各地にしばしば起きていますね。それで話し合いをしていって、結局受信者のほうが負担させられておるというようなことになるわけですね。ということは、結局何といいますか、建物の所有者がなかなかうんと言わないという場合が多いのですね。ところが、受信者は一日も早く見たいというので犠牲を払ってやっているという場合もしばしばあるようなんですね。そうすると、非常に公平な負担の原則からこれは逸脱するわけですね。したがって、今後いわゆる高層ビル都市が建設されるという見通しがあるならば、当然その結果として難視地域をつくるような高層建築については、そういう義務法律的に持たせるというような考え方はどうですか、行き過ぎですか。
  249. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) まあ非常にむずかしいと思います。というのは、一つのビルが建ちまして、それによってそこが難視になるということがはっきりしています場合はそれでよろしいかと思いますけれども、ニューヨークのように高層ビルが一ぱい建ったということになりますと、どことどこが障害であるか、どういうような原因で障害であるかということはちょっとわからないんじゃないかと思います。私どもは、その精神は確かにそういうことでやりたいと思いますけれども、まあ現実の問題としてはむずかしいのじゃないかと思います。しかし私どもとしましては、そういった問題につきましても、建設あたりとはいろいろ話し合いを持っております。
  250. 野上元

    ○野上元君 午前中、森委員からも質問がありましたように、料金の問題がいつも問題になるわけですね。だんだんだんだん文明は開化していくんだが、この放送の料金はますます高くなっていくというようなことでは一般の聴視者は首をかしげるだろうと思うんですね。結局一般の聴視者から見れば、弱い者が負担せざるを得ないんじゃないかというような結果になるということはわれわれとしてもやはり相当心しなきゃならぬように思うのですね。そういう点も、ひとつ十分に研究してもらいたいと思うし、さっき言ったように財団法人で完全に救済できるところはまあそれでもいいでしょう、一つの方法ですし、積極的な方法であることは間違いない。ただ先ほど言ったように、点在している難視地域における救済を一体どうするかという問題についても、これはワイヤード・シティーというような、高度に有線が張りめぐらされた都会になれば、いずれの地域にも安く引っ込み線ができるかもしれませんが、当分の間そういうことは望むべくもないと思うのです。そうすると、点在した難視地域の人は救済ができない。一々話し合いをしなきゃならない。しかも、その話し合いが何年もかかるというようなことでは、結局テレビジョンは放送されておるが、絵は見られないという状態が続くと思うのですが、そういうものに対して、NHKはどういう救済方法がありますか。
  251. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 現実の問題としては、約七、八年前からだんだんと、たとえば東京の例をとりますと高層建築ができてきたわけです。まあ私が直接関与したのは、この問題については経団連のビルというものが最近では一番古いものの一つになっていると思いますが、この場合は、当時の責任者の石坂さんともお話し合いしてその措置をお願いしてまいりました。その後この原則を、午前中の問題でもありましたいわゆる基地の問題あるいは飛行場の問題と同じたてまえで、原因者の責任とわれわれの責任をどう調整するかという問題が根本的にはあるわけなんです。今回は、そういう都市難視解消のための一つの方法としての団体ができましたから、その限りにおいて、われわれは積極的にわれわれの目標を果たすためにこれに参加すべきであるというたてまえを持っておるわけでありますが、これができたからといって、われわれが契約の対象となっているすべての聴視者に対して公平な措置をとり得るとは考えないわけです。したがって、われわれは負担能力その他がまあ加入する能力を欠く場合の聴視者に対しても、われわれとしては当然放送法の原則に従ってわれわれの責任を果たしていくべきであり、この責任を果たすということは、逆に言えばわれわれの経営基盤である聴視料の問題を安定させるということになるという理解のしかたをしているわけであります。したがいまして私どもとしては、いまだにこの第七条あるいは第九条の四、それと聴視料の問題、そのほかに私はかつて当委員会でも申し述べたことがあると思いますが、現在の放送法の原則は、放送とは無線局である、この現実がはたしていかなる場合にもそれ一本で通し得るのかどうか、この問題と関連していわゆる有線テレビジョンというものが出てきているのじゃないですか。まあ初期の段階においては、電波の割り当てのないところ、あるいはいろいろな意味で、技術的な意味で地方にそういうものができましたけれども、現在の都市の問題を将来十年後、二十年後の展望に立って考えるときに、私としてはこの現行放送法の原則と有線テレビジョンの問題を調整して一つの原則を打ち出すべき必要があるのではないかというように実は考えているわけであります。しかし、当面としては先ほど申し述べましたように、われわれの目標のための一つの段階ができたとすれば、その範囲内において、われわれはこれに協力することが聴視者のためであるというように理解しているわけであります。
  252. 野上元

    ○野上元君 まあ放送とは何ぞやという問題も、実はCATVに関連してやろうと思ったのですが、これは法案が出たときにやろうと思っておりますから、きょうは時間がないからこれでやめます。
  253. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連で。さっきの難視聴の問題で、高層建築の問題が論議されている過程ですからその意味で関連するわけですが、私の乏しい知識からいえば、占有権というのは無限に空まで続くわけでしょう、地下も。おれはおれの占有権でこれだけビルをつくったのだ。何で悪いのだ。そこへ電波を送るのはまた電波を送る占有権か何かあって、それをしも排除するというのであれば問題だが、そうでない場合は、これは競合する場合どういうふうに電波局は解釈しているのですか。電波の権利と民法上の私有の占有権ですね。
  254. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 土地の占有権といいますかにつきましては、これはもう私どもは絶対的なものだと考えております。したがって、数年前も——四、五年前になると思いますけれども、いわゆるマイクロ電波が建物によりまして障害を受けるというような場合は、このマイクロ電波が非常に重要なものであった場合、いきなり建物によって途絶するということになりますと、これはたいへんな問題でありますので、御存じのようにこの法律を改正いたしまして、これはあくまでも二年ないし三年という——普通の重要マイクロでありましたら二年、電電公社の場合でありましたら三年ということで期限を切りまして建物を建てるのをちょっと待ってくれということで措置をした法改正をやったわけでございます。したがいまして、私どもとしましてはやはりその建物のほうが当然優先すると思っております。それで先ほどもお話し申し上げましたように、一つの建物によってビル陰障害ができたという場合には、これは当然の権利じゃございませんで、建物のほうにお願いしまして、ひとつ協力してくれということを話しているという状態でございます。
  255. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで野上委員から質問のあった料金の徴収の場合、私は払わないという場合は、これはなかなか問題が起きてくるのではないか、高い建物を建てまして、その付近に対して難視の状況を起こした。だからお前はそれを負担しろ、その大きな建物の持主に対して、あなたは難視に対する責任があるから負担しろと言っても、それは私の占有権だから払う必要はないとがんばった場合の処置というものは、非常にむずかしくなってくるのじゃないですか、法的に解決するという場合は。
  256. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) おっしゃるとおりでございます。
  257. 野上元

    ○野上元君 そこで、藤木さんにちょっと聞いておきたいのですがね。NHKにも聞いておいてもらいたいと思うのですが、いま放送法に基づいて、全国あまねく受信できるようにNHKが置局されております。地方に行きますと、共同聴視施設というものをつくって、NHKが補助をして、そうしてみんなが有線テレビを見るようにしておる場合がありますが、そういう場合と、銚子なんかはたしか、あそこではUに切りかえて、銚子の市内に流しておると思います。Vで銚子まできて、あそこでUに切りかえて、銚子の市内に流しておる。銚子の市内の人はコンバーターでUに切りかえて見ておる、こういう場合がありますね。二つの場合で難視地域を解消しようとしているのですが、たとえば東京都内において、あるいは大阪、名古屋において、見えない、じゃまになっておる高い建物の上に、いなかと同じようにアンテナをマスターアンテナにして、それからこう引いて、救済していく、いわゆる共同聴視施設というようなものも、都市においては、NHKにはやらせないということなんですか。
  258. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) いまのお話の共同聴視施設というものは、先ほどから問題になっております有線テレビということでございましょうか。
  259. 野上元

    ○野上元君 それはCATVという場合に、いわゆるコミュニティ・アンテナという場合と、ケーブルビジョンの場合と二つありますね。コミュニティ・アンテナの場合は、私は完全な放送の補完だと思いますね。したがって、これは放送の継続です、性質的に見ても放送ですね。したがって、NHKが今日やっているやつはコミュニティ・アンテナテレビジョンだと思うんですよ。一つのアンテナを使って、そこからただ自分の映像を難視家庭に送っている。したがって、ケーブルビジョンではないですね。そこには自主放送というものはないわけですね。したがって、これは完全に、純然たるコミュニティ・アンテナですね。これもいかんのですか。NHKが都市でやる場合は。
  260. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 結局コミュニティ・アンテナといっても、あるいはマスターアンテナを使ってといっても、実態は変らないわけでございまして、いなかでやっております、いわゆるアメリカ式のコミュニティ・アンテナと、NHKの来年度予算にもありますように、共同施設といったものであっても、都市におきまして、先ほど来問題になっておりますケーブルビジョンといったものによります有線テレビといったものも、ケーブルを引っ張ること自体は変わらないわけでありまして、その自主放送をやろうと思えばもちろんやれるという状態でありまして、いなかの場合でも、都会の場合でも、施設それ自体、本質そのものは変わっていないということでございます。
  261. 野上元

    ○野上元君 それは変わっていない。変わっていないというのは、NHKの純然たる補完的設備ですね。NHKの画が見えないからそれを見せる、ただ有線で送ってやるだけの話です。これはいなかと都会と同じです。ただこれと財団法人の考えておるものとは、私は性質が違うと見ている。これはおそらく同軸ケーブルか何かを使って、将来多放送をやることをあらかじめ予定しながら、その構想を練っていると思うんですよ。でなければ、こんなばかなことを考える必要はない。NHKにやらしておけばいい、単なる補完だけであれば。じゃあなくて同軸ケーブルを使うと、将来いろいろの問題の、データー通信だとか、ファクシミリだとか、いろいろのものの独占的な傾向が出てくると思う。したがって、その問題をチェックするためにアメリカでも問題になっているわけですね、これは。そういう構想があなた方の中にあると思う。私がいま言っているのは、そうじゃなくて、純然たるNHKの補完的な共同聴視、したがって同軸ケーブルというような、そんなものではなくて、普通のいなかでケーブルを使って、電線を使って各家庭に引っぱっている共同聴視施設。いわゆる完全なコミュニティ・アンテナ・テレビジョンというものはどうなっておるのか。
  262. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 現在NHKがいなかでやっておりまするコミュニティ・アンテナ・システムにおきましてもやはり同軸ケーブルは使うわけでございます。これはまあテレビのような非常に電波の幅の広いものを送るには同軸ケーブルでないとうまく送れないということがございます。まあその質自体は、東京ケーブルビジョンでやるようなものといなかの場合とでは多少違うかもしれませんけれども、同軸ケーブル自体は本質的には変わっていないという状態でございます。
  263. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、NHKがやる場合には、どうしてもそういう方法しかないわけですか、同軸ケーブルを使うというほかに、都市における難視を解消するというわけにはいかないのですね。ほかの方法はないわけですか、技術的に。
  264. 松浦隼雄

    参考人(松浦隼雄君) 現在のところ、規模の大小と、それからその線に乗せますものの数が、これに差はございますけれども、基本的にはいま電波監理局長の申し上げたとおりでございます。
  265. 野上元

    ○野上元君 私も技術的によくわからないので、その点は大体了解をいたしますが、ただ、私が心配するのは、これはNHKに聞いてもらいたいのですが、NHKもこの財団の有力なメンバーとして加盟されているわけですね。したがって、この財団の運営がうまくいくかいかないかはNHK自体の生命に重大な影響を与えると思うのです、私は。これがもし失敗すれば、これはNHK自身の問題にふりかかってくるわけですね。一番被害を受けるのはNHKだと私は思う。そういうことが私は考えられるのだが、NHKはこの財団法人の育成についてどういうふうな決意を持っておられるか、それを聞いておきたい。
  266. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 将来この団体の成果がどのようになるかについては、現在のところ率直に申し上げてどなたも確信を持って御説明できないのじゃないかと思います。  ただ、NHKとしては、この団体が将来あるいは株式会社となり、あるいはいろいろな形で幾つかの事業をもくろむ場合でもNHKはよって立つ基礎である第七条と第八条の限度において、われわれとしては全力を注ぐべきだという考え方を持っております。したがいまして、このCATVが、この目標を達成するための一つの方法であるという限度において私どもはこれに期待しているのであり、そして、その期待は同時に受信料の徴収を安定化させてもらいたいという要望も込めての期待であります。したがって、これでもってNHKとしては、先ほど来申し上げているようにすべての問題が解決できるとは考えておらないわけで、したがってその意味では、もしこの団体の目標が必ずしも到達されなかったという場合には、やはりこれにかわる方策を考えるべきではないかと、私自身は責任者としてそう考えております。
  267. 野上元

    ○野上元君 いまの段階として、会長はどういうふうにお考えになっているのか聞きたいのですが、たとえばこの財団法人が生まれることが、都市における難視地域の解消になるいまは有力な手段であるということは間違いありませんね、あなたのほうで共同施設ができないんですから。ということになれば、これしかないわけですね。したがって、これが発足がおくれたり、この運営がうまくいかなかったりということになると、あなたのほうにとっては重大な影響を及ぼすだろうと思うのですね。したがって、当面NHKとしてもこれを軌道に乗せて、とにかく効果を発揮するような努力をせざるを得ないと思いますが、そういう点についての考え方はどうですか。
  268. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) そのとおりでありまして、このために関係方面当局ともお話申し上げて、われわれもその経営の責任を分担するというたてまえで、われわれの幹部をやはりこの団体の幹部に入れておるということであります。
  269. 野上元

    ○野上元君 ただ、先ほど来私は何回もしつこく言っておりますように、財団法人の経営というのはむずかしいと思いますね。その企業運営に対する何といいますか、インパクトというものがないわけですね。何といいますか、公共心といいますか、社会道徳心といいますか、そういうものがこの基礎にならなければならぬのですね、これは営利じゃないのですから。営利事業なら極大利潤で、強いインパクトになると思うのですが、この場合はそれがないと思うのですね。ということになると、私は当面NHKだけがこの問題にむきにならざるを得ないという気がする。ほかのところはあまり関係ありませんよ、これは。ただ寄付を出しっぱなしで、当然株の配当があるわけじゃないのですから、利益の配分があるわけじゃないのですから、出しっぱなしということですね。ということになると、先ほど言ったように、放送の持つ社会的公器に対する一つの公徳心といいますか、そういうものがなければ、経営できないということになるというような心配があるわけですが、その点をひとつNHKも相当腹に入れて経営してもらわないと、十二チャンネルの轍を踏みゃせんかという心配がある。  こういうものはどこが一体責任を持ってやるのかということになると、非常にむずかしい問題ではないかというふうに考えるのですが、その点はだいじょうぶですか。われわれの心配は杞憂にすぎないのですか。
  270. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) われわれも、その点は十分考えなければならぬと思っておりますが、当面はまだ発足しておりませんので、その限度では仮定の想像でお答えするよりほかに方法がないわけですが、しかし実態的にいいまして、八団体のうちのいわゆるNHKは八分の一の立場に立っている、このことが団体が営業を始めたあとでわれわれの期待する点でいわゆる難視を解消するという点で八分の一の力をもって目標を達成できるかどうかという問題だと思います。  この点については準備時代からこの団体の会合でわれわれは要望し、かつ要望だけではいけませんので同時に積極的協力の上に立ってわれわれのその分野での目標の達成に努力するというたてまえをとっているわけで、その限度が現実の私どものいま努力している実際であるということになると思います。
  271. 野上元

    ○野上元君 これは藤木さん、いま会長が言われたように、問題はその八分の一の責任というのは、私は非常に問題になると思うのですがね。特にこの難視を解消するための方法であるというのが当面のとにかく目的ですね。ということになると、たとえばさっき言ったような、NHK、民放等は確かにこれはもう積極的にならざるを得ないでしょう、自分のところの問題ですから。ところが、ほかのところは関係ないのです、どう考えてみても。電力は、難視の問題についてどうして積極的にわれわれがやらなければならぬのか、メーカーが、どうしてそのことをやらなければならぬのかということにもなるわけです。だから、その関係の、銀行協会にしてもそうですが、そういうものがそれぞれ八分の一ずつの責任を出し合ってやるというところにこれは非常にむずかしい問題があるので、そのほうでよほどこれは行政指導よろしきを得なければむずかしい経過になるのじゃないかというふうなことが心配されるので、特に私はしつこく言っているわけですが、その点をひとつ十分考慮してもらいたいと思います。  それからこれは小野さんに聞けばいいのだろう——会長に聞けばいいんだろうと思いますが、BBCが最近財政的に危機を迎えておりますね。というのは聴視料が全然集まらないというのですが、その集まらない理由は何ですか。
  272. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 非常に不払い関係が続発しておるということはいろいろな面で承知しておりますけれども、その原因が那辺にあるか、その辺のところについてはつまびらかではございません。
  273. 野上元

    ○野上元君 しかし、BBCのあとを追うようなことにもならぬとも限らないのですからね。せっかく他山の石があるわけですからね、あなたのほうも早くそれを究明して、どういう点があるのか、なぜ徴収不能になりつつあるのか、NHKにこれは波及することはないのかどうか。日本の国状と比較してみて、すみやかに、コンピューターを持っておられるのですから、この結論を早く出されることが必要なんじゃないですかね。
  274. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お説のとおりだと思います。BBCのその原因の究明についてはできるだけいたしてみたいと思いますけれども、現状で申し上げますと、NHKの徴収成績はきわめて良好でございます。九九・八%、きわめて高い。いわゆる税金の徴収よりもはるかに高い徴収成績をおさめております。しかも何らの罰則なくして、そのようなことになっておるわけでございます。BBCにおきましては、これはそういった不払いについてはきびしい罰則があるわけでありますけれども、どういう事情なのか、最近そういう現象がふえつつある。しかも、そのことがBBCの財政並びに業務運営に非常な支障になっておるということは聞いております。NHKとしては、これが現状が九九・八%の収納成績をおさめておるということで楽観を許す問題ではないと思います。したがいまして、難視改善につきましても、あるいは番組内容の改善、向上、充実につきましても、その他いろいろなサービス関係を通じまして、ほんとうに受信者の信頼をつなぎ得るようなNHKであらねばならないと思いますし、そういうような点は鋭意努力をいたすつもりでございます。
  275. 野上元

    ○野上元君 BBCの徴収不能続発の傾向、原因はいまつまびらかでないと言っておるのですが、NHKは徴収が非常に良好であるという原因は何ですか。
  276. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これはずばり端的には申し上げられないと思いますけれども、これはやはり日本国民が、BBCその他ヨーロッパ諸国、この辺のいわゆる風俗習慣とは違いまして、日常生活における放送の占める比率といいますか、比重といいますか、これがきわめて高い。特に放送に対する関心というものが非常に高いということは歴然としておりますし、そういう面と同時に、いろいろNHKとしても幾多の努力をいたしておりますけれども、そういった面についての御協力を得ておるものと考えております。
  277. 野上元

    ○野上元君 それでは最後に、藤木さんに御質問しますが、東京以外にもいわゆる東京ケーブルテレビジョンというようなものをつくる計画があるのか。もしあるとするならば、私は有線放送テレビ法もまだできないのに、東京ケーブルテレビジョンを強引に発足させていくというそのやり方は、本来ならば私は好ましい状況じゃないと思うのですよ。だから、その点は慎重にやってもらいたいと思うのだけれども計画はどうですか、近い将来における計画は。
  278. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 現在大阪におきまして、東京と大体同じような方式で設立の準備が進められておりまして、おそらく来月早々ぐらいには出発するんじゃないかと思っております。それからそのほかに福岡、名古屋といったところでもそういった話が持ち上がっておるという状態でございます。
  279. 野上元

    ○野上元君 放送大学の問題等についても聞きたかったんですが、放送大学の問題についてはNHK会長に聞きたいんですが、私は何かのときに三十七、八年ころだったと思いますが、ロンドンのギルドホールにおいて、あなたが何か演説やられたことありますね。まだ労働党党首のウイルソンが野党の時代でしたかね。何かやられたことがありますが、あの中に放送大学の芽があったように記憶しておるんですが、あのときの構想と、放送大学が問題になって、NHKも一枚加わって、この問題を考えているときの考え方と違いがありますか。
  280. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 私自身のことに触れられて非常にじくじとしておるわけですが、昭和三十六年にイギリス側の要請でその年の科学文化協会の講師の一人として、もう一人は当時インド大使であったアメリカの経済学者ガルブレイス、もう一人は考古学の最高権威であったイスラエルの学者です。それについてイギリスは三人の講演をまとめて出版いたしておりますが、その当時私が触れた構想と、今日NHKが考えている大学構想とは実はいささかの変化もございません。
  281. 野上元

    ○野上元君 現在放送大学法がこれまた見送られてしまったので、きょうはあまり深く論争できないんですが、放送大学の目的というのは一体何なのか。たとえばエデュケーションが放送大学の目的なのか、あるいはスペシャリゼーションがその放送大学の目的なのか、その辺はどういうふうにお考えですか。
  282. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 原則的にはエデュケーションであります。そのエデュケーションの原則の中で課程をどうきめるか、目標をさらに並行してどこに置くかによって、スペシャリゼーションも行なわれてくるわけでございます。
  283. 野上元

    ○野上元君 今日大学がたくさんありまして、そうして直接教授が生徒に教えておるわけですね。にもかかわらず、エデュケーションの関係は非常にうまくいっていないといって私は過言でないと思うんですね。そうかといって、スペシャリゼーションのほうがうまくいっているかといえば、これもあまりどうも学生は承服しがたい、こういうことなんです。ということになると、なまの人間がなまの人間に接して教えても、エデュケーションというものがうまくいかないのに、いわゆる絵を使って、放送によってエデュケーションがうまくいきましょうか。
  284. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 社会情勢とか心理的な面で、終戦後単に日本ばかりでなく、世界的な動向の心理的変化あるいは心理的なある意味でのリセッションという点については、これは私どもの立場で申し上げれば当意即妙、即効的妙薬はないだろうと思います。これは社会の発展に応じて、自然に解消可能であると私はきわめて楽観的に考えております。ただ放送による教育というものと、学校という設備の中での教育というものとを考えますと、放送による教育の場合にはその範囲がきわめて全国民的でありまして、したがって、私ども構想の中には入学試験というものもありませんし、それからまたいわゆる全国民の生涯教育を目標とするという点では、必ずしも修学年限を最初から規定する必要もないというように考えているわけで、しかも現在の大学では、まあ明治の当初あるいは大正の中ごろまでのような、世界の一流の外国人教師を雇うということも必ずしも自由でないような環境にあるかと想像されるわけですが、放送による大学の場合には、その面も世界的な広さを持ち得るであろうということを考えております。こういう入学試験のない、可能なときに資格を取りたいと思えば取る可能性もある、しかも、学問的にいっても、全世界的な視野に立って、その教授も科目も決定できるかもしれないという点では、全く現行の大学制度だけを中心として考える大学とは、幅からいっても、性格からいっても、広がりからいっても、全く別のものになるだろうということを私としては考えているわけであります。で、そういう意味では、学びたいと思う人がおそらくこの大学に集中するわけで、それは高校卒業の資格を持っている人あるいは資格のない人も同時に勉強することになると思います。現行大学制度あるいは改良される大学制度との関連においては、いま申し上げたような教育方向の中で、いわゆる具体的な単位の決定、講座の決定によって、努力次第によっては、それも可能であるという部分が含まれるわけですから、したがって大きな網を打ちながら、そこには幾つかの種類のざこもいるでしょうけれども、非常に貴重な魚もまあその網の中で発見することができるだろうというものであります。これについてはNHKは十年来すでに経験を持っておりまして、まあ官公立の大学では実行しておりませんが、私立大学では現在およそ十六大学が通信制を持っておりまして、そのうちの十一大学が、NHKがすでに行なっている大学講座との関連でその資格の決定をしているというのが実情でございます。
  285. 野上元

    ○野上元君 きょうはあまり長くはその点論議したくないと思うのですが、この放送教育のやり方を見てみますと、現在大学でやっている単位獲得というやつをそのままほとんど持ってこの中に入ってきているわけですね。今日大学の紛争があるという原因の中には、こういう何といいますかね、しゃくし定木な単位制度というものが一つの原因なのじゃないですか。それをそのままここに持ってきてやった場合に、はたして有効にこれが機能するかどうか、私は若干疑問があるのですが、その点は自信がありますか。
  286. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 現在の大学制度と申しますと、多少の心理的反響もあるかと思いますが、少なくとも、まあ大学教育には二つの目的が日本でも昔からあったと思います。たとえば、学士号であるとか、そういうものを取らない人のためにも講座が開放された時代がございます。聴講生などと申しますものはそれに属するわけですが、そういう意味で、少なくとも現実的な面に立っていかなる包含のしかたをするかという意味で、単位を中心に置きかえてみるということも御理解をいただくためには必要だと思います。現在科目の一番多いのは日本大学で、これに続くのが東京大学でありますが、少なくともわれわれとしてはこの二つの大学の科目をさらに上回る考え方を持っている、ただたとえば法学部に入った場合には、どれとどれを取らなければいけないといういわゆる自然科学と社会科学を分離する教育方法は七〇年以後の新しい社会開発のためには必ずしも妥当でないかもしれないという私は個人的見解を持っておりまして、したがって学科の分類と申しますか、コースの分類については、幾つかのコースの中でその人が目標としあるいはもし功利的に必要があれば、社会が必要とする単位を取ることによって、新しい意味での学習成果を発揮できる構想もその中に織り込んであるわけでございます。
  287. 野上元

    ○野上元君 私は、何といいますか、放送大学を実施する場合に、アメリカで教育システムの構造についていろいろと考えておるようですが、たとえば教育衛星を打ち上げて、それから下へおっことしてきて、これを各キーテレビ局が取って、そしてコンピューターやあるいはシミュレーションやら、それからティーチング・マシンだとか、あるいはフィードバック回路を使って、いわゆる質問も答弁もできるし討論もできるというようなものができて、初めて放送大学的な内容を充実したものになるんだろうというふうに考えて努力しておるようですが、いまの段階では残念ながらまだそういうものはありませんね。特にフィードバック回路がないと、質問して答弁をするというような状態にはないわけですね。一方的にやっぱり聞きっぱなしというような状態ですね。そういうもので実際に学生を引きつけていくということがはたして可能かどうかということになると、よほど放送技術といいますか、番組編成といいますか、そういうものがすぐれておらないと成り立たないんじゃないかというような気がしますが、その点はどうですか。
  288. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 理想的に考えますとお説のとおりだと思います。しかし、現状においてより効果ある方法は何かということはまた別の問題かと思います。私どもは放送による高等学校を開設して以来四回の卒業生を送り出していますが、これは大体いま正確な数字は記憶しておりませんが、八千名に近づいておると思います。これは全国に散らばって、必ずしも直接その先生に習ったというのではございませんが、いわゆるスクーリング活用によって、そういう問題が解決されていく。現在の技術の発展によって当面使用できるものと考えるのは、その面ではテキストばかりでなしにいわゆるカセットの活用になるであろうというように考えております。ただ日本の教育界で世界的水準から一番社会的評価の劣っているのはこの視聴覚教育でありまして、日本では今日依然として視聴覚教育が直接教育であるか間接教育であるかという問題の論ぜられる段階にしかすぎません。しかし欧米各国、先進国ではすでに視聴覚教育は直接教育の新しい方法であるということになっているわけで、そういう意味では、教育に関しての社会的環境がまだ日本の場合は率直に申し上げて、あるいはおしかりをいただくかもしれませんが、開発途上の社会的状態にある。しかしいろいろなたとえばカセット一つを取り上げてみましても、こういう問題は、ある程度解決する可能性が出てくるのではないかというように私は期待いたしております。
  289. 野上元

    ○野上元君 NHKからいただいたこの放送市民大学の資料によりますと、BBCに対する質問、それからそれに対する見解、それから片一方はアメリカの公共放送協会設立に関する下院の報告等によって見ますと、いまや放送教育については最もすぐれておるのはNHKである、こういうふうにこの資料についておりますがね。ということは、逆にいえば、いままではアメリカあるいはヨーロッパの歩んできた道を歩めばよかった、道は開けておった。しかし、今度はNHKは少なくとも放送大学の問題に関してはトップに入っているわけですから。ということになると、もうモデルなき時代に入ってきたわけですね。あなた方みずからがまずモデルをつくっていかなければならぬ、こういう時代に入ってきておるわけですから、これは非常に苦労をされると思うわけですね。しかし、当然そこに試行錯誤があるでしょうけれども、しかし、こういうふうに世界が期待しておるところですから、十分ひとつ今後とも努力をされるように特に期待をしたいと思うわけです。これからNHK質問したいというふうに思っておったのですが、残念ながらあまり時間がないので、まあ、しかし常識をはなはだしく逸脱しない範囲内においてもう少し時間をお借りして質問したいと思うのですが、いま私が申し上げましたように、一九七〇年代というのは、いろんな問題が起きるだろうと思うのです。われわれが全然知らない時代ですから。いわゆるモデルなき時代ですから。あるいは歴史の質的断絶の時代ともいわれる時代ですから。したがって、NHKが今日国民に与えておる影響から見て、私は重大な影響を持つだろうと思うのです。ある意味では、今日の社会不安の加害者のひとりでもあるのじゃないかというふうに思うのです。というのは、私自身が、とにかくテレビが一日なければいいなあと思うのですね。あるいは新聞がこなければ、きょうはゆっくり休めるなと思うわけですね。そういうことを考えてみると、NHKもやはり今日のばく然たる不安といいますか、フラストレーションを形づくっている加害者のひとりだというふうにも思われるわけです。したがって、一九七〇年代における放送業界の、特にNHKの責任というものはきわめて大きいと思うのです。したがって、一九七〇年代に入った今日におけるNHKの基本的なあり方というようなものをひとつ聞かしてもらいますか。
  290. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 御要望にこたえられるかどうかはなはだ自信はございません。ただ、私どもは概括的にいって、一九七〇年代というのは、単に技術開発によって生活環境あるいはいろいろな手段が著しく変わるということばかりでなしに、少なくとも旧世紀と新世紀のゼネレーションの交代の時期であるということを私は痛感せざるを得ません。NHKがその中で過去において、また将来においてどういう役割りを果たすかということは客観的な面と主観的な意欲の二つがあると思います。客観的な面で見ますと、放送法ができてNHKばかりでなく、民放も並置する、並存するという時代が、実質的には二十年もなかったかもしれませんが、法律的には二十年間あったわけであります。この時代は、それではどういう時代であるかといいますと、私自身はちょうどカントが哲学を確立した時代と環境的には全く同じであると私は解釈をいたしております。カント以前の哲学、カント以後の哲学というものを考えますと、カント以前の哲学はカントによって集大成され、カント以後の哲学はカントを批判することによって新しく生み出されてきたということが言えると思います。この哲学界の動向を見ましても新しくカントを批判することによって生まれてきた哲学は今日概して行き詰まりの実情にあるということが言えるかと思います。率直にいって私は哲学者ではありませんが、ヘーゲルの哲学といえども、この範疇に入るものということが言えると思います。そういう意味で、NHKは、過去においてはNHKの独占であり、昭和二十五年の放送法がつくられて以後は民放との併存であり、民放との関係においても、かつてはNHK修正した方向に民放が向かうことを志向し、世間もまたこれに理解と拍手を送りつつあったというように私は解釈いたします。しかしNHKの教育放送だけをとって考えましても、すでに四十年を経過しようとしているわけですが、このオーソドックスの考え方は、いかなる時代の変遷にもゆるぐことのない一つの確固たる骨組みを持っておるものと私は確信いたしております。これはいわゆる技術という——技術は人類とともにあるわけで、なべをつくったり、かまをつくったり、おのをつくったりという技術から、十六、七世紀にかけて初めて出てきたサイエンスという考え方の技術によって従来の技術が全く一変した、こういう時代のさらにスピーディーな変化を生ずるものは一九七〇年代と考えておりましたが、それにもかかわらず、NHKがこれまで四十五年間追及してきたただ一つの基本的原則は、これを応用することの可能性との関連で変化はあり得ても、基本的方針としては変化はあり得ないだろうという確信を持っております。同時に、私は、最初に一九七〇年代はゼネレーション交代の時期ではないかと考えていると申し上げましたが、このゼネレーションの交代にあたっても、NHK四十五年の基本的態度と方針は何ら根本的な影響を受けることはないであろうと、このように考えております。ただ仰せのように、マスコミがこれほど自由な国は世界中にございません。それからまた、言論が、いろいろな意味で言論抑圧の問題が論じられておるにかかわらず、これだけ自由濶達に言論が歓迎される国も日本ほどのところはないかと思います。そういう意味ではいろいろな錯綜した意見の発表はありましょうが、私どもとしては、NHKの四十五年の歴史をつくり上げたこの根本的精神の維持と発展に努力さえすれば、いかなる時代の影響にも災いされることなく、むしろ新しい世代の発展に寄与できるものであるという確信を持っております。
  291. 野上元

    ○野上元君 会長は、新しいゼネレーションの転換期であるとこう言われましたが、確かに私も同感ですが、マクルーハンに言わせれば、活字時代からエレクトロニクス時代への転換と、こう言っておりますね。活字文化の時代からエレクトロニクス文化の時代へと転換した。したがってあなたの言われるように、その底に流れる人間性というものは、これはもう、オーソドックスというような表現をされたと思いますが、変わらない。したがって、NHKは従来どおりやっていけばよろしいというお話なんですが、現在のNHKの放送の番組のパターンと申しますか、あれはいつごろまで続くと思いますか。たとえばドラッカーはこう言っております。二十年後には現在いささかでも意義のある学問はすべて姿を消すであろう、新しい学問が生まれるであろう、こういうようにドラッカーは言っておりますが、はたしてそれほど極端に変わるかどうかはわかりません。しかし、いまや社会は何を残すかが問題であって、何をつけ加えるかどうか問題ではないのだというほど変わり方は激しいのだ。したがって、いままでの技術進歩の状況を図式であらわしたものをちょっと見ましたけれども、いままではものの理論を発見した、たとえば蒸気なら蒸気の理論を発見して実用に供するまでには百五、六十年かかっておるわけですね。電気もしかり。ところが最近はコンピューターでもあるいはトランジスターでもその他のものでも五、六年でもう実用向きになってしまうというような非常に早い変化、進歩にスピードがあるわけですね。したがって、それに人間がついていかれないで、今日ばく然たる不安が起きておると、こういうふうにもいわれておるわけですが、そういう状況の中でNHKの今日の放送番組のパターンがいつまで続くか、いつまで生き延びるかということは、相当問題があろうかと思うのですが、その点はどうですか。
  292. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) なかなかむずかしい御質問で、私がこれにお答えできる能力を持ってるかどうか疑うわけですが、たとえばマクルーハンの活字からエレクトロニクスへ、あるいはまた、ドラッカーの、一体現在というものはどういう形で——かなり早い時期に終わりを告げるのではないかというような問題は、手段であるとかあるいは考え方、直感的な考え方を端的に表示したにほかならないと思っております。もちろん明治維新当時と今日の教育のあり方は全く異なっております。しかしそれは別に、非常に中身が変わったと考えるならばやはりかなり間違いじゃないか。それは手段が変わった、利用する手段と方法が変わってきているということにすぎないと思います。それは人力車が自転車になり、自転車が自動車になったと全く同じことで、その意味ではスピードが非常に加速度的になったということは事実だと思います。それからまた、何を残すかということよりも、私は何に新しい価値を発見するかという時代になると思います。で、やはり残す場合であっても、価値のないものを残すことはおよそ無意味だと思います。ですから、私どもの個人生活であっても、いわゆる所得増倍以来、ノミナルにせよ、われわれの生活の厚みがふえた今日では、テレビといえども、あるいは自動車といえども家具といえども昔はさらに使ったものをいまは捨てるという時代にもなってきているわけです。そういう意味では新しい価値が将来の生活につながる部分のみ残っていくであろうというように私は考えております。こういう見地から、現在のNHKのパターンはどうかということになりますと、このNHKのパターンという、番組のパターンというものは、固定して存在しておりません。四十五年にわたってというと古過ぎますが、ここ第一次五カ年計画、第二次六カ年計画、現在進行中の第三次五カ年構想の中でも、番組のパターンはどしどし変わってきております。したがいまして、御審議いただいている明年度予算の中でも、番組については、特に七〇年代の番組を打ち出すということをまあ柱の一つにいたしております。そういう気持ちで私はNHKの番組を見てまいりたいというように考えます。
  293. 野上元

    ○野上元君 私は、利用手段が変わっただけだという会長考え方に必ずしも同意できないのですよ。私は問題は、その科学技術の進歩自体が問題ではなくして、科学技術の進歩がもたらした社会の変動、これが私は問題だと思うのですよ。これはあると思うのです。ただ、社会はちっとも変わらないのだと、しかし科学技術が、いわゆる手段だけが変わったのだというのじゃなくて、手段は確かに変わったが、その手段が社会そのものを変えつつある、こういうふうに実は私は見ているのですよ。だからこそ、NHKが性の知識なんていう放送をやりましたね。これはいままでちょっとNHKでは考えられなかったことだと思うのです、NHKからみれば。しかしそういうふうなことをやらざるを得ないというのは、やはり人が、そういうふうに社会が変わってきたということですね、というように私は思うのですよ。だからそれにこたえなければならんのではないかというような気がします。したがって、パターンがないと言われたけれども、徐々には変化していますね。いま一つの例をあげたように変化はしています。しかし、それこそオーソドックスなパターンはあまり変わっておらないというふうに私は見ているわけです。したがって、これでは一九七〇年代では退屈されるのではないだろうかというような気がするわけです。それともう一つの私の考え方は、これもまあ一九六七、八年にパリで世界的な学者が集まりまして、四十人ぐらい集まった。そのうちの二十人はノーベル賞受賞者だというぐらいの権威のある学者のひとつの未来学に対する話し合いがあったわけです。その中でいろいろと検討した結果、将来人類にとって何が問題になるだろうかという問題を検討した結果、三つの問題が出た。これは全会一致であったというのですね。一つは、核の影におびえてさまよい歩く人類の不安、これをどうやって解消したらいいだろうかという問題が一つ、これは永遠にさまようだろう、こういうわけです。第二の問題は、人口の爆発的増大だ、したがってこれにどうわれわれは対処したらいいのかということですね。それから第三の問題は、これはNHKに主として関係あるのですが、閑暇の、いわゆるレジャー、フリータイムの消化、これが問題だと、こういうのです。一九八〇年くらいになりますと、大体一生のうち四万時間ないし三万時間働けばいいだろうというわけです。それはちょっと計算してみると、一日一時間ないし一時間半働けばいい、あとはレジャーだ、これはレジャーじゃなくして、フリータイムだと、こういうふうに言われておりますね。そのフリータイムをどうやって過ごすかが将来の人間にとって最大の問題になるだろう、この問題はもう解決できないだろう、こういうわけですよ。したがっていま仕事を一日八時間やりまして、くたくたに疲れて帰ってテレビを見る、これは一つのストレス解消になるかもしれません。しかし、もうあと十何年すると、これは逆になって、そのフリータイムのほうが多いのですね。これがストレスになるのです。そうして働きに出るほうがむしろレジャーになるというような時代になったら一日テレビ見ておるわけにいかぬ。もしも見させようとするなら、よほどの番組を考えなければ成り立たなくなるだろう、むしろストレスを蓄積していく一つの加害者になる、それが。こういうように言われておるわけですが、そういう点がもうあと十何年か後に迫ってきたとするならば、私はこの辺でNHKとしても、そういう問題についても足下を見ながら、同時に星をながめながら歩んでいかないといけないのじゃないかというような気がするのですが、少しとっぴですかね。
  294. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) まことに私の能力をこえる御質問が出ておりますが、ことし四月京都では未来学者の総会が開かれます。未来学者が先生の御指摘のように、パリの会議で核に対する一種のアレルギー感あるいはまたレジャーの問題、それから第二は人口増加、私はこれらはいつの時代にもあり得た問題だと思っております。まあ人類の歴史が五万年であるか、有史以来一万年であるか、しかし科学の歴史というのは先ほど申し上げたように数百年、二、三百年にすぎないわけです。だから未知の世界の一番多いのは科学の分野でありまして、したがって、科学の分野はいまやその開発の潮に乗ってきたという時代です。しかし人間の本質はまあ科学をはるかに乗り越えた非常に幅の広いものがあるということだと思います。したがいまして、現在日本をはじめとして科学技術、科学技術と、外交まで科学技術と関連があるというようにいわれているわけですけれども、これは新しいいわゆる自然科学上のメディアの発見が次から次へと社会をゆるがしているということを表現しているにほかならないのじゃないかというように私は考えます。人口がふえるということには、二つの理由が歴史的にはあるようです。それは戦争のあとでふえるという問題、戦争のあとでふえた場合には、食糧がこれに追いつかないという事実があらわれてきております。戦後独立した国の多い地域はまさしくこの範疇に入るのではないかと私は考えております。しかし、農業自体が、かつてまあ人口と食糧という点から言えば、人手を要した農業は世界じゅうどこにもなくなってきた。日本でも米作の問題を中心にして、いまや農業人口は全労働人口の一〇%以下になりつつあるという点から見れば、いわゆる科学技術の発展によって農産物の収穫は人手を要せずして増大する傾向にあるということが言えるかと思います。そういう点で、それじゃ一時間半働いて、あとはレジャーに苦しむ時代が来るかどうかということになりますと、私は必ずしもそう思っておりません。先ほど申し上げたように、私は非常に単純に新しい価値の発見ということを申し上げましたが、これを常識的に言えば、新しいメディアと目標を持った新しい産業が起こってくるであろうというように考えるわけです。世界の人口が今後どのくらいのスピードでさらにふえるか。まあ私どもの子供のころは世界の人口は十六億ないし十八億と言われたものが、いまや三十五億から四十億の間にある。これは簡単に言って、私は六十歳をこえておりますから、六十年間の経過が大体その程度のものです。これを考えますと、新しい価値の製造、まあ簡単に言えば、そういう面でこの人口が一日一時間半働いて、それで無聊に苦しむという時代はそう早くは来ないであろう。そのときに、問題になるのはいわゆる教育の普及している国民と普及していない国民との格差が一段と大きくなるであろうということであります。日本の場合、言論の自由が完ぺきであり、ある意味では出版、放送は全く花の時代と申しますか、そういう時代を現出したというのは世界じゅうどこにもない。一つのそれらに対応する可能性を持っているからです。日本義務教育は一〇〇%であるというところに照合した事実があらわれてきた。ただ、先ほどもちょっと触れましたが、日本の社会生活の厚みというものはいまだに浅い。そういう意味ではテレビ、新聞、雑誌、週刊誌、それが話題になっている程度の厚さしかない。しかし、今後十年、二十年間にこの社会生活の厚さは非常に重みを加えてくるであろう。その場合に、むしろ現在の新聞文化、雑誌文化、放送文化というものがそのままの形で長らえられるかどうかということのほうが、まあ私この仕事をやっているものから見ればむしろ心配をいたしておりますが、しかし私は仰せのごとく、時代の変化に応じ得る番組、非常に野望的な表現ですが、できれば時代の変化に先行し得る番組をつくってまいりたいと、それが四十五年度予算の中で頭を出しかけておるということを申し上げたいと思います。
  295. 野上元

    ○野上元君 まあ、あなたの野望、野心は一つ絵で見ることにいたします。今後どういう野心が絵にあらわれるかということを見たいと思うんです。  最後に、非常に問題が飛んで恐縮なんですがね、先般おたくの労働組合が相当長期にわたってストライキをやっていましたね。あれを見ながらいろいろと考えたんですが、いままでの工業社会における争点、いわゆる争いの原点というのは、確かに工場を中心にまき起こっておりましたね。いわゆる物を生産する周辺に争いが起こっておった。これが工業社会の特質だと思うんです。物を生産するものを中心に組織された社会なんですから当然だと思うんですが、ところがそれが離陸してやがて知的生産が中心になる情報化社会に入ろうとしているわけですね。したがって、工場における争いというのは漸次私は少なくなっていくんじゃないかと思うのです。そして今度は、知的生産が行なわれる知的組織のある周辺に争いが起きてくる。しかも非常にばく然たる不安を持った一つの争いが起きてくるというように思うのです。そのエレクトロニクスの社会あるいは情報化社会の先端をいくであろうと思われる放送界においては、特にその問題が起きるんではないかというふうに実は見ておるわけです。したがって、今後問題が起きるとするならば、やはり大学であるとか、あるいは放送であるとか、あるいはまた新聞であるとか、あるいは科学者であるとか、そういう知的な環境の中でも、いわゆる計画に携っておるというようなところに非常に問題が起きてくるのではないかというように思うのですが、そういう点について、NHKあたりはあの争議を、そういう徴候としてみるか、そうでなくてやっぱり工業社会における単なる賃金引き上げの争いとしてみるか、その点はどうですか。
  296. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 非常に未熟なお答えかと思いますが、私はそれを逆に見ております。いままでのわれわれと組合との関係は、むしろ工業という範疇の中での争い方の形式を受け継いできている。今後は、その意味では、御指摘のように新しい形があらわれてくるであろう。まあ最近の一番新しい——そういうことを申し上げると非常にペダンティックでお恥ずかしいのですが、昔は権力というものは、まあ概括的に言えば国家権力だったんですね。それですからたとえば政党も与野党、それから政権をとったほうが一番強いという状況、今日依然としてそうではないかと思うんですが、しかしまあ二十世紀の後半から世界的にそれに新しい社会権力、一種の社会権力というものが発生してきていると思います。これは、ちょうど昭和二十五年に放送法が改正されて、公共、民間事業者併存の時代がきたと同じような、ある意味では意味合いを持っているかと思います。新聞等で圧力団体と称されるものも、社会的権力の中に包含される部分的象徴であると私は思っております。そういう意味でも、私はこれからの組合との問題は非常に別の面を展開させることになるであろうと、その中で特にいわゆる一般的に知識産業と言われているものでは、その傾向が、変化の傾向と変化を基礎とした新しい活動方向というものがかなり急速に展開される可能性はあると私は考えております。ではここで、それではどういうようにこれを収拾し、あるいは調整し、あるいは協力する方向を発見したらよかろうかという問題があります。この問題は、いま言ったような質の変化にもかかわらず、たてまえとしては全く一つしかないであろうというように考えます。それは、組織内の制度を固定させるか、制度そのものを常に活発に発展させるかの問題にかかっていると私は考えております。昔のように、あるいはソビエト革命、あるいは現在の、まあはなはだ——お許しいただいて、これは私見でございますが、いわゆる人口がかなり多くて——これは少なくても同じ傾向になりますが、そして基礎教育が普及しない地域では、一人の考え方によって百八十度の転回を行なうことはそれほど困難なことではないと思います。しかし、先ほど来申し上げてるように、日本のように一〇〇%の同じ範囲の、同じ質の、同じ量の知識を持ってる国においては、まあ社会生活の厚味が加わると同時に、生活の方法がきわめて多様化してくると思います。その中で大筋でいま申し上げたような労使の関係を調整していく方法は何かといえば、やはり第一には、当然社会水準に追いつき得る給与をわれわれ経営者が初めからコスト計算の中に入れるということと、同時に、私としてはあらゆる意欲が発揮できるような、これは一日にして成らないのですが、その目標のもとに、特にNHKの場合は、しかもNHKの主たる責任と義務を果たし得る土台の上に、きわめて定着することのない制度をどんどんと打ち出していくべきであるというように考えているわけであります。説明は非常に簡単ですが、実行はきわめて困難であろう、ということは承知いたしております。
  297. 野上元

    ○野上元君 どうもたいへん長い間失礼をいたしました。  ただ、最後に、NHKに望みたいのは、とにかく、若い者の中に一種のばく然たる不安というものがあることは事実なんですね。これは日本だけではございません、世界的傾向であります。カミユに言わせれば、形而上的反抗に対する衝動だ、こういうふうに表現しておりますが、これはあることは事実なんですね。それに対してNHKあたりは、ただある姿を映像で流していくというだけでは済まなくなるのじゃないか。あるNHKの記者の諸君と論争したことがあるのですが、あんなものを流してけしからぬじゃないかと、こう言って私が詰問したところが、とんでもないですよ野上さん、現実がある、それをわれわれは絵で送っているというだけですよ、おこるなら現実をおこってください、こういう言い方をされました。ただ、それだけではもう済まなくなるんじゃないだろうか、それほど大きな影響力を今後テレビは持つのではないかというふうに考えるわけです。したがって、私は電波行政のほうについても、そういう問題はやっぱり研究しながら、テレビというものはどういうものであるか、どうあるべきか、あるいはラジオ放送はどうあるべきか、一体、人類はどっちに向いていま進んでいるのだということを知らせる義務が出てくるのじゃないかというような気がしますので、そういう点についても、今度また時間があれば、いつかお話を聞きたいと思いますけれども、きょうは要望だけ申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうも長いことありがとうございました。
  298. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会      —————・—————