○国務大臣(福田赳夫君) まず、対外
経済協力の問題ですが、
木村さんが、日米共同声明で総理が約束をしたというお話ですが、約束はしておりません。あの共同声明は、ごらんのとおり、両方の政府がその意図表明をしているのです。別に約束をしているわけではないのです。国会において言っているのとちっともその
意味は違いません。約束ではございませんから、その辺はひとつお含み願いたいんですが、いま、海外
経済協力問題につきまして、ピアソン報告というものがあるんです。これはなかなかやっかいな重大な問題となってきているわけでありますが、元カナダ首相のピアソン氏が報告書を書いておるわけでありますが、この報告書によりますと、各国は一九七五年までにGNPの一%の援助をすべきである。それから第二は、その一%の中で、つまり内訳ですが、七〇%、GNPでいえば〇・七%でありますが、それは政府資金によるべきものである。それを一九八〇年までに実現をすべしと、こういうこと。それから、さらに第三点として、
条件の緩和についていろいろなことを言っておりますが、これはさておき、GNP一%という問題であります。いまわが国は一体どんな援助をしておるかということを見てみますと、大体〇・七五%ということになっているわけであります。それで、いま
経済協力する主要な国というと、米、日、独、仏、英、こういう国々になっておりますが、アメリカが何といっても飛び抜けてその額は多いのであります。しかし、その傾向を見ておりますと、だんだんとアメリカの対外
経済協力はGNPに対する比率におきましては下がってきております。一九六〇年からずっと申しますと、六〇年には〇・七五、それが〇・八六、〇・七七、〇・七六、O・七四、〇・七九、〇・六六、〇・六九、〇・六五――これはおととし一九六八年度でありますが、こうなっておる。わが国では、それに反して、〇・五八、〇・七一、〇・五〇、〇・四七、〇・四五、〇・六八、〇・六六、〇・七二、〇・七四――これが六十八年度で、六九年度は〇・七六、こういうことになってきて、アメリカの
水準をかなりこしておる
状態であり、実額におきましても昨年は第四位になりますが、ことしあたりはあるいは二位または三位くらいに行くかもしれない、こういうような
状態であります。そこで、これをどういうふうに持っていくかというと、ピアソン報告を基礎にいたしまして国際的な協議が始まると思うのでありますが、こういう線は目標としてはよかろうというふうに思いますが、年限を区切られまして、七五年度に一%だとか、あるいは政府負担は〇・七%一九八〇年でありますとか、その期限に問題があるように思うのであります。しかし、わが国も、とにかくここまで来た以上、これに対してしり込みをするわけにはいくまい。そういう期限については問題は残しながらも、その趣旨についてはこれと積極的に取り組んでいかなければならないと思います。ただ、その問題につきまして私
どもとして諸外国に言いたいことは、わが国はGNPでは確かにいいんです。しかし、
国内の蓄積資産というものは、諸外国に比べると比較にならないように少ないわけでございます。したがいまして、われわれの生活
水準なり社会環境というものは、GNPが高いにもかかわらず、また、一人当たりの国民所得もおそらく数年後にはアメリカに次ぐくらいに行くと思いますが、それにもかかわらず、生活の実感というものは先進諸国よりかなりおくれたものになっておる。これは蓄積がないからであります。この点は諸外国によく了解してもらわなければならない点ではあるまいかと
考えます。そういう点を強調しながらも国際協力には取り組んでいくというのが私
どもの
考え方であります。
それから為替相場の問題ですが、これは昨年の秋為替相場の問題につきまして世界的に不安があり、また、この不安をいかに打開するかという議論が戦わされたわけです。ところが、この国際通貨不安というのが、ことしになりますると、とにかく当面安定だということになった。その環境、雰囲気のもとに、為替相場論議というものがたいへん調子が変わってきておるのです。当時は、かなりラディカルな改革案なんか唱道されておったわけです。為替相場は場合によると制度的にたいへんな変更があるのじゃないかと思われるような事態であったわけでありますが、まあ環境の変化とともにそういう一時の空気はだんだんと薄れてまいりまして、いま、国際
経済社会、特に論議の中心となるIMFなどの場におきましては、あまり極端な変更は好ましくない、こういうふうな空気になってきておるようであります。何らか今日の制度に変更というか、まあ運用上といいますかあるいは制度上といいますか多少の変更を加える余地がないとは言い切れないまでも、根本的にいまの為替制度を変更するのもいかがであろうかというような大勢のようであります。
いずれ、この問題は、この秋のIMF総会において問題になると思いますが、わが国としては固定為替相場を堅持するという従来の基本線を堅持しながらこの
会議には臨みますが、わが国のそういう
考え方とかけ離れた結論が出るようにはただいま想像しておりません。