○渡辺武君 それでは、その九十七条の
国税不服審判官の
質問検査権について
質問したいと思います。
国税不服審判所は、
改正案の第八十条で、
行政不服審査法第一条の適用を認めているわけですが、この第一条は、私よく申しますとおり、「この
法律は、
行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く
行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な
手続による国民の
権利利益の
救済を図るとともに、
行政の適正な
運営を確保することを
目的とする。」というふうにはっきりうたっているわけです。つまり、一言で言えば、
行政庁の違法または不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関して不服
申し立て人の
権利を
救済するということが根本の
趣旨だと思うのです。ですから、
国税不服審判所もこの
権利救済機関なんだということを繰り返しあなた方は言明しておられるわけで、したがって、この審判官の持つ
調査権もこの
趣旨に沿って主として税務争訟の原因となった
原処分庁の違法または不当な処分、したがって、
原処分時の
課税資料の
調査に置かれなければならないというふうに思います。
権利救済を求めている
審査請求人に対しては、その主張を
補正する程度の
調査、したがって、
行政不服審査法第三十条にいっている「審尋」の程度にとどめるべきだというふうに考えますが、私が申し上げるまでもなく、
審査法三十条の審尋というのは、これは
質問を受けた人、がそれに応じなくても別に罰則はない。そうですね。あるいは、今度の
改正案に出されているように、
質問に応じないためにその主張の基礎を明らかにすることができなかった場合でも、その主張を採用されないというような、そういう事態もない。非常にゆるやかなんです。私は、不服
申し立て人、つまり、国家権力の
行政庁の違法不当な行為によって、それに対して不服を
申し立て、
権利救済を
申し立てているその人に対して、
権利を
救済するという立場に立つならば、当然、
行政不服審査法第三十条のように、不服
申し立て人に対しては罰則のないきわめてゆるやかな審尋程度にして、そうして彼の
申し立てを
補正する程度にする。しかし、この事件の根源になった
行政庁の違法不当な
行政処分に対してこそ主要な
調査の目標を向けるべきだというふうに考えます。
行政不服審査法のこの立場、これが現行
国税通則法の中にも全面的に取り入れられている立場だ。先ほどのような解釈でなくて、
国税通則法をこれをすなおに書いてある条文のとおりに読めば、現行の
国税通則法で与えられている
協議団の
権限、あるいは
異議審理庁の持っている
調査権、これは不服
申し立て人に対しては審尋程度の
調査権しか持っていない。ところが、今度の
改正案では、
権利救済制度については全く不相応な、あなた方がよく使うことばで言えば全くなじまないきびしい罰則を伴った広範な強大な
調査権なんです。
たとえばですよ、
所得税法二百三十四条でさえ、これは
納税者に
納税義務を履行させるというつもりの
調査権、それでさえ、
調査対象を厳格に特定しているでしょう。時間がないからその点については読みませんけれ
ども、
納税者あるいは
納税者と認められた者、その他厳格に特定していますよ。ところが、今度の
改正案には、
審査請求人、それから特殊
関係人ですか
——これはもとより法的には全く限定されていない
——関係人、参考人など、きわめて広範な範囲を
調査対象としている。この点では、いまの
所得税法二百三十四条よりもはるかに広範な
調査権を
国税審判官は持っているというふうにに言わなければならない。
もう
一つ指摘したいことは、
行政不服審査法の二十七条から三十一条の
調査権したがって、先ほど申しましたように、現行
通則法の
不服審査の際の
調査権、あるいは現行
協議団令五条などの
調査権に、
権利救済制度としては当然のことですけれ
ども罰則がないわけですね。ところが、今度の
改正案によれば、審判官の持つ
調査権というのは、これはきびしいものです。三万円以下の罰則がついているというような状態です。
もう
一つ申し上げたいのは、
調査に応じないでその主張の基礎を明らかにすることができなかった場合にその主張は採用されないなどという、事実上の強制力を不服
申し立て人本人に及ぼそう、こういうものだと思う。これは現在の
通則法にない新しい点で、ここに法
改正の核心の
一つがあると私は思う。皆さんはいままでの
調査権よりももっと軽い
調査権になったんだと盛んに宣伝してるけれ
ども、現在の
国税通則法を、条文に基づいて、これをねじ曲げないですなおに読めば、現在の
国税通則法で与えている
異議審理庁の持っている
調査権というのは、不服
申し立て人に対しては審尋程度のものにしかすぎない。罰則もない。
調査に応じなければその主張を取り上げられるなんというそんなばかなことはない。ところが、いま申しましたとおりです、この
改正案では。私は、この
改正案の
一つの重要なねらいがここにあると思う。現行
国税通則法、これは
行政不服審査法の
手続規定を全面的に取り入れている。これをすなおに読めば、常識のある人がすなおに読めば、先ほど私が申しましたように、不服
申し立て人に対しては審尋程度の
調査権しか及ばないんだということが明らかだ。あなた方は、各税法の
調査権が及ぶんだというような、私の立場から言えば牽強附会な解釈でもって、不服
申し立て人に対してきびしい罰則のついた
調査権を発動する。めちゃくちゃなことをやっておられる。しかし、正常な理解力を持った人なら、それはおかしいということは明らかだと思う。そこで、そういう
手続規定全部を入れた現行
国税通則法がぼつぼつじゃまになってきた。だから、そこのところをそっくり抜いて、そして、今度の
改正案に見られるように、きびしい罰則のついた広範な
調査権を
国税審判官に与えたというところに今度の法
改正の
一つの重要な核心があるというふうに思います。
ちょっと前置きが長くなりましたが、そこで伺いますけれ
ども、
改正案の九十七条の一項に、「担当審判官は、審理を行なうため必要があるときは、
審査請求人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。」ということで
質問検査権を規定しているわけですが、その第一号に、「
審査請求人若しくは
原処分庁又は
関係人その他の参考人に
質問すること。」と、その他第四号まで規定されているわけですけれ
ども、
原処分庁が
更正処分をしたときに使った資料ですね、これを
審査請求人が審判官に提出さしてくれと、あるいは、ここが
争点だからこの点について
原処分庁に
質問してくれというふうに
申し立てた場合ですね、その場合に必ず
審査請求人の主張を取り上げて審判官は
原処分庁から
原処分についての資料を取り寄せるかどうか、あるいは
質問などをするかどうか、この点を伺いたいと思います。