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説明員(
中橋敬次郎君) まず、第一点の御質問でございますが、今回一段落いたしました金融調整を反省いたしまして、確かに、御批判のありますように、今回の金融調整がたとえば三割規制にすぎなかったのではないかというようなことが言われております。それは主としましては日銀の資金ポジションの指導が都銀十五行を
対象としておりましたから、その貸し出しのシェアを見てみますと、民間の貸し出しの中で都銀の占めますウエートが約三割でございますので、三割規制ではないかという批判があったことは事実でございます。そこで、成瀬
委員のいま御
指摘のように、政保、損保あるいは農業の系統金融機関の持っておりますところの預金、あるいはそれに見合いますところの貸し出しのウエートがかなりある。そういうものが今回の金融調整の
ワク外にあって影響を及ぼしたのではないかというお考えも出てまいるかと思います。確かに、私どもも今回反省いたしまして、そういう金融調整の場におきましてもう少しこれが強く及ぶ体制というのは、幸い今回の金融調整ではその必要がございませんでしたけれども、奨来いつの日かそういうことが必要になる場合もあるという前提のもとに、いろいろ反省もし研究もしておるわけでございます。その場合に、ただ単にいま日銀の資金ポジション指導が三割規制でございましたけれども、そのほかにもいろいろ金融調整
措置というのがございます。たとえば、その中で、わが国ではまだ
程度は非常に低うございますけれども、預金準備を日銀に積ませるという制度がございまして、これは率は少のうございますけれども、なお今後の金融調整のもとにおきましては、諸外国の例からもかんがみまして、かなり大きな役割りを果たすのではないかというふうに思われております。その場合に、実は、この預金準備を積む
関係のある金融機関の貸し出しが、民間金融機関の全体の中で占めますものは約半分ぐらいでございます。あるいはまた、公開オペレーションによりまして日銀がいろいろ金融上の操作をやっております。それにつきましても、そういうオペの
対象の金融機関というものの貸し出しのウエートが、民間の金融機関の中でどのくらいあるかということを反省いたしますと、やはりこれもほぼ五割ぐらいのシェアを占めております。したがいまして、単純に
先ほど申しましたように都銀十五行の資金ポジションが三割規制であるからということで、全体の金融調整が三割に
しか及んでいないということは、こういったほかの制度をかみ合わせ、あるいは都銀が占めますところの質的な重要さというものから考えれば、必ずしも三割という
数字に代表されるものではないと思いますけれども、
先ほど申しましたように、もう少しこういった新しい角度からの
検討を加える必要があるということは十分言えるわけであります。その場合に、まず第一に考えられますのは、
先ほど触れましたように、預金準備制度というものをもう少し幅広くあるいは層を厚くするという問題がございます。層を厚くする問題につきましては、実は率の問題が
検討対象になります。それから範囲を広くするという問題が、
先ほど成瀬
委員御
指摘のように、生保、損保あるいは農協系統の金融機関というようなもの、あるいは現在相銀、信金でもある一定の資金量以上のもの
しか対象にいたしておりませんけれども、こういうものをどうするかという問題がございますので、今後とも十分
検討してまいりたいと思っております。
それから第二の御質問の点でございまして、銀行行政については、自由化が実は配当の自由化だけに終わっておるのではないかという御批判でございます。確かに、現在までのいわゆる金利の動きというものが、金利の持ちますところの調整作用というのを十分活用していないという批判がありました。この点につきまして、
前回におきますところの金利
改定において、臨時金利調整法に基づきますところの告示で、預金金利の最高限度を規制いたします際に、従来かなりこまかく規定いたしておりましたのを、たとえば一年定期を想定いたしました五・七五一本に規定をいたしまして、その中において、日銀のガイドラインの指導ということはございますけれども、弾力化しようではないかという機運が出てまいったことは事実でございます。それで、まだその幅は非常に少のうございますけれども、そういった法的な形式からまずそういう預金金利の自由化の一歩を踏み出したのが現状でございます。貸し出し金利のほうにおきましては、これはかなり最高限度も高うございまするから、あるいはまた、プライムレートがたとえば八・五ということにきめられましても、それを基準にいたしまして金融機関と相手先の企業との間での協議でもってかなりバラエティーをもってきめられておると思います。問題は、やはり、預金金利というものを、最近の金融機関の収益の
状況あるいは経済の動向からの貯蓄増強の必要性から申しまして、もう少し金融機関の利益を預金者に還元してはどうかという気待ちがわれわれにもありますし、また、預金者には一そう強くあるわけでございます。そういう観点からも、私どもとしましては、できるだけそういう方向で今後の預金金利の問題を考えてまいりたいと思うわけでございます。ただ、もちろん、そこで急激に預金金利の規制を撤廃いたしまして、あまりにも激しい過当競争が生ずるということは、銀行の公共性の問題から見ましてできがたいと思いますけれども、そういった方向に逐次進みつつあることは事実でございます。問題は、配当の自由化でございまして、一五%の最高限度がございまするけれども、その中で金融機関がこの九月期からの配当をかなり自由にし得るという体制になったわけでございまして、御
指摘のように、いままで九%、一〇%であった銀行の配当が、最高は一二%、それに記念配当を二%つけまして一四%というようなところも出てまいりました。その配当率を高くするために業容の拡大に走るということは、これは厳に戒めなければならぬことだと私ども思っております。いま、配当率を算定いたします算式におきましても、実は、利益そのものだけが反映するような方式をとっておりませんで、たとえば
経費を一般基準よりも圧縮をしました場合にはそれが有利に働くように、あるいは自己資本を一般の基準よりも厚くしましたならばそれが有利に働くようにという配慮もいたしておるわけでございます。
しかし、その中でも、そういう算式の結果出てまいります配当をいたずらに高くするだけが金融機関のよさを誇示するものではない。金融機関のよさというものは、質的に安定的な資金の供給という問題を十分果たさなければなりませんから、そういう面での配当の問題を考えてまいりたい。いままで、とかく、一律配当のもとにおきましては、経営自体が非常に過保護であって、能率ということを十分考えないという弊害がございましたものを、この点から打破してまいりたいという気がございまするけれども、金融機関の効率化という問題につきましては、おっしゃいますように、
経費を少なくする努力をする、あるいは預金金利で預金者に利益を還元するという方向、ないしは貸し出し金利を十分適正に持っていく、いたずらに貸し出し金利を高めるということだけが銀行の仕事でないというような点については、今後とも配慮をしてまいりながら金融機関の効率化という問題と、それから銀行の占めますところの果たさなければならない公共性という問題、両方を進めてまいりたいと考えております。