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1970-11-09 第63回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月九日(月曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  九月十一日     辞任         補欠選任      近藤英一郎君     青木 一男君      松井  誠君     中村 英男君  九月二十八日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     前田佳都男君  十月五日     辞任         補欠選任      前田佳都男君     岩動 道行君  十月六日     辞任         補欠選任      中村 英男君     松井  誠君  十月七日     辞任         補欠選任      戸田 菊雄君     中村 英男君  十月九日     辞任         補欠選任      中村 英男君     戸田 菊雄君  十月二十四日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     河田 賢治君  十月二十六日     辞任         補欠選任      河田 賢治君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         栗原 祐幸君     理 事                 小林  章君                 沢田 一精君                 成瀬 幡治君                 鈴木 一弘君     委 員                 岩動 道行君                 大竹平八郎君                 津島 文治君                 矢野  登君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 松本 賢一君                 横川 正市君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵政務次官   藤田 正明君        大蔵省主税局長  細見  卓君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        水産庁漁政部長  平松甲子夫君        通商産業省公益        事業局長     長橋  尚君        中小企業庁指導        部長       西田  彰君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君        日本銀行総務部        長        中村  進君        全国銀行協会連        合会会長     岩佐 凱實君        全国銀行協会連        合会会長専務        理事       松本 重雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  九月十一日、近藤英一郎君が委員辞任され、その補欠として青木一男君が選任されました。  速記をとめてください。   〔速記中止
  3. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 速記を起こして。     —————————————
  4. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、日本銀行総裁佐々木直君及びその役職員、並びに全国銀行協会連合会会長岩佐凱實君及び同副会長専務理事松本重雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 次に、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、まず経済企画庁長官質問いたしますが、大体質問の焦点は二つ物価問題と経済成長ネックの問題と二つにしぼって質問いたしたいと思います。  その前に、企画庁長官警告を発しなきゃならぬと思うのですがね。物価がこんなに予想外に上がっていまして、国民物価高に非常に苦しんでいる。台所を苦しめている。したがって、国会では、前から、企画庁長官を呼んで、どうして物価がこんなに上がるのか、今後一体どういう物価対策を講ずるのか、これを非常に心配しているわけなんです。再三出席要求しても出てこないというのは、どういうことなんですか。国会軽視もはなはだしいものだと思う。私は、委員長におかれましても、物価問題がこんなに切実な問題になっているときに、企画庁長官出席を再三求めても出席されないということについては、これは十分警告を発していただきたいと思う、今後こういうことがないように。もし企画庁長官に弁明がありましたら一応承り、今後、こういう重要な時期でございますから、つとめて出席されるようにまず要望いたしたいと思います。
  8. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 私も、ただいまのお話のように、物価問題の重要性にかんがみまして、実は毎月衆参両院物価委員会において十分お答えはしておるつもりでありますが、たまたま木村先生の御要求のときには、いろいろなことがございまして、今日までまことに遺憾でございましたが出席できない事情がございました。私としましても、いま御指摘の点は十分了承をしておるつもりでございます。今後ひとつできるだけ遺憾なきを期したい、こう思っております。
  9. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 私のほうからも、長官の趣旨はよくわかりますが、木村委員の要望にこたえられるよう、ひとつせっかく御勉強願いたいと思います。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵委員会物価問題を取り上げるのは、御承知のように、財政金融問題は物価問題と非常に重要な関係があるわけなんです。ですから、物価問題特別委員会出席して物価問題で答弁すればいいということじゃないんですよ。そういう意味で、大蔵委員会でも物価問題については非常に重大な関心を抱いている。そういう立場から質問するわけなんです。それで、再三出席要求したんですから。その点は、もう言うまでもないと思う。佐藤さんは大蔵省出身なんですから、よく知っているわけです。  まず、お伺いしたいのは、四十五年度消費者物価見通しはどうなりますか、この点からお尋ねいたします。
  11. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 四十五年度消費者物価は、全体につきましてはもちろんいま確たる数字実績的に申し上げるということは困難でありますけれども、御存じのように、政府見通し四・八%、これはとてもなかなか実現できないような実情になっております。まことに遺憾に思っておるのでありますが、本年の上半期の実績等から参酌いたしましてそういうふうに判断せざるを得ないと思っております。特に野菜その他の季節商品中心とするところの値上がりというものが非常に高うございまして、そうしたことも含めまして、目下のところ、六%台はもちろん、まあ七%台になるかどうか、そうした点をわれわれとしても注目をいたしているようなところであります。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 七%になるかどうかということになりますと、これはたいへんな問題になると思うんです。この前の国会で、私、佐藤企画庁長官にこの物価問題について質問したときに、佐藤長官は、池田内閣のときには大体六%台の値上がりであったが、佐藤内閣になってから四%台である、あんまり心配ないということを言ったんですよ。昭和四十二年の経済社会発展計画におきましては、政府は、四十二年以後着実に物価を下げていく、昭和四十六年には三%台まで下げると、こういう目標をはっきり示したわけでしょう。これに対して、企画庁長官は、いや、池田内閣のときには大体六%台に推移したが、佐藤内閣になってから四%台である、だから心配ないというようなことを言いましたが、四十四年度は六・四%でしょう。今度四十五年度は七%台になるかもしらぬということでは、池田内閣のときよりあるいはもっと上回るかもしらぬですよ。これは非常に重大な問題です。それで、企画庁長官は、インフレではない、インフレではないということを盛んに言っていますけれども、こういう状況を一体どう判断しますか。これは、私は、これまでと違って、もう一度ここら辺で、物価は安定しないどころかむしろ着実に池田内閣当時よりももっと上回って上がるという状況になってきている、これをどういうふうに認識され、今後一体どうしようとしているんですか、この点についてはいま国民が非常に不安に思っていると思うんですが、この点を伺いたい。
  13. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 池田内閣佐藤内閣と比較をしましたのは、あのときにおける実績を申し上げたわけです。四十年度前半において比較的安定をしておった。したがって、三十年度の後半と比較いたしまして四十年度前半は比較的安定しているという意味において実は申し上げたわけであります。そういうふうに御了解を願いたいと思うのであります。  いま御指摘のように、率直に申し上げまして、物価問題は非常にむずかしくかつ重大な面を持ってきております。率直に言いまして、この物価原因を一体どうとらえるか、こういうところにやはり基本があると思います。従来のいわゆるデマンドプルというもののほかに、やはりコストプッシュの影響というものが相当に出てきているのじゃないか。そういうことになってきますと、これはいわゆる経済成長の積み上げというものがだんだんとコストアップ一つの材料となって蓄積してきておる、こういうような感じもいたします。そういう点から言いますと、なかなか一挙に下がるというよりも、これを徐々に解消していくには時間をかけなければならないという点も出てくると思います。また、デマンドプルということを考えるにいたしましても、この点から言いましても、何ぶんにも過去四年間の高度成長というものは率直に言いまして歴史始まって以来のものでございます。そのデマンドプルの強さというものが異常なものであって、しかも海外のこれまた異常な好景気とちょうど歩調を合わせましてそれが非常に大きな過熱日本経済に与えてきておる。いろいろな条件が重なってきておると思います。そういうようなことからして、デマンドプルの見地からいたしましても、この過熱ぎみの熱を取るということが、これはなかなか相当努力をしなければならない点がある。また、こういう際に、何といいますか、日本経済の構造的な弱みというものがやはり物価の形であらわれてきておる。言いかえますと、農業を中心とするところのいわゆる低い生産部門と、それから工業の第一線を進んでおるところの高い生産部門というものとの格差が、わが国において相当に激しい。そうしたような面が出まして、たとえば季節商品の異常とも言うべき値上がり、もちろんこれはまた農林省等説明によれば、昨年の十二月のように四十年来の干ばつというような特殊な天候現象も伴ってはおりますけれども、いずれにしましても、そういうものが競合いたしましてこういう事情になってきたものと思われます。  どの問題を一つとってみましても、非常に困難な問題を含んでおることをわれわれも十分に認識をいたしております。そういう意味において、この困難な問題をどうやって解決するか、まず実態を十分に解明し、そうしてこれに対処しなければならない。そうして、しかも、それは十分しんぼう強くこの解決に当たらなければならないというふうに、問題の困難性ということを最近もますます痛感しておるようなわけであります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 物価が横ばいならまだいいんですよ。とにかく着実に上昇率が拡大しているんでしょう。あなたが企画庁長官になってからむしろ上がってきている。一体何をやっていたんですか、物価安定のためにですね。いろいろこれまで案を出しても、特にまた、六月の初めに物価対策閣僚協議会で二十五項目の個別対策を講じましたが、作文じゃないですか。問題は、基本的原因につきましてもこの際もっと掘り下げた原因についてのきびしい検討が必要だと思うんです。これは質問あとでいたしまして私の意見も述べたいし思うんですけれどもね。  その前に、この前の国会では、もし四・八%を実行できない場合には——当時、私は、とても四・八%にはおさまらぬと。その場合には改定もするということを言われたんですよ。四十五年度物価見通し改定しなければならぬでしょう。大体どの辺の目安でいろいろな政策を行なうのか。物価が一番基本ですからね。四・八%はほとんど不可能ということはわかっていても、じゃそれをもとにしてその目標に近づけるように今後努力するのか、あるいは、もう四・八%はだめだから、さっき七%ぐらいになるかもしれないと。じゃ七%に改定してその前提のもとで今後施策をやっていくのか。  それからもう一つは、四十二年の経済社会発展計画ですと、来年は三%まで下げるということになっていたんですよ。これは国民に公約しているんですから。この問題を一体どうされるか。  この二つの点ですよ。実態に合わない目標を掲げていては、これは私は無責任だと思う。そこで、この前、改定されると言われたんですから、そうしてこの目標はいつも一ヵ年済んでからあとでこれを検討して、改定しようと思ってももう間に合わないわけですから、前にも私は大臣がおられたいとき政府委員にも質問したんですけれども、前に宮澤君が企画庁長官のとき、四半期ごとぐらいにレビューしてみて、計画実績と非常にズレていますから、そのズレを縮めるために四半期ごとぐらいに計画実績とのズレがどの程度か、また、どうしてこんなにズレているのか検討して、そうして次の四半期にそれを是正するとか、そういう努力をする必要があるのじゃないかということを宮澤君も言っておりましたし、私もそれは同感だというので、この間も質問したわけです。あとでもお話しするネックの問題もありますし、それからいまの物価実績目標とが非常にズレておりますから、そこで、そういう前提質問しているんですから、いまの二つの点ですね、四・八を一体どういうふうにここで改定するのか、それから四十六年に三%の上昇率まで下げるということを公約しているんですから、その点は一体どうされるのか、この二つの点をお伺いしたい。
  15. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 本年の見通しでございますけれども、これは、御存じのように、あの際木村さんにもお答えしたんですが、一つ指標というよりも、物価をもちろん含めましてですが、全体の指標について大きな変化があるということになれば改定するのにやぶさかでない、こういうふうに申し上げております。それで、いずれにいたしましても、来月十二月にはわれわれとしても改定は当然考えておるわけでございますし、ちょうど来月に入りますと、おそまきではありますけれども、昨年度のいわゆる確定的な数字が確報が出まして、これは十分分析をする対象としてのしっかりした数字が出てきますし、それからまた、ただいまいわゆるQE法によるところの速報が出ているんですが、いわゆる国民所得統計によるところの四半期別の四−六月の速報も出てきます。そういうようなことで、いろいろと数字もそろってまいりますし、その数字を見て改定作業を行なうということで、来月になりまして各指標についての改定を考えなければなりません。その際に、物価につきましてもその現状に立って見通しを立てると、こういうふうに考えています。  それからいわゆる新計画の問題でありますが、これは、御存じのように、やや長期の問題でありまして、毎年毎年どうというふうに年度割りで確定的な見通しを立てているわけではありません。率直に申しまして、この計画の初めにあたりましてこういう事情になってきておりますから、そういう意味におきましてはなかなかつらいところでありますけれども、個々の年度について幾らというところまでしているのではないのであります。もちろん、気持ちとして、目標としてできるだけ逐次下げていく、こういう気持ちは当然のことでありまして、そうした目標を立てておりますけれども、具体的にどうと、こういうわけではございません。  それからいわゆる四半期別検討の問題は、われわれもできるだけそれに即した考え方に立っていきたいとは思っております。ただ、率直に申しますと、四半期別というのには数字がちょっと現在おそ過ぎるんです。四半期も大事なんですが、御存じのように、われわれは、あたうる限りの資料によりまして毎月毎月、まあ早いものおそいものいろいろございますが、そうしたものをとりながら月例報告を作成いたしておりますが、そうした際に御指摘のような意味検討を行なう。ただ、四半期ということになると、今日残念ながらまだ統計の上において十分それにこたえるほどのものを持っていません。これについては、実は、われわれも、もう少しこれを繰り上げて資料が手に入るように、いまそれの検討を行なっております。四半期を一ト月繰り上げるということはなかなかたいへんな実情なんでありますが、何とかして一ト月でも早く手元に速報が手に入るように、これはスタッフを総動員して何とかやるようにいま検討をしておるところでございます。そうした意味で、一方において四半期ごと統計というものの整備と、それからできるだけ早く発表するいわゆる促進ということを検討いたしますが、これらは別に四半期ということに限らず、われわれとしては毎月実情を十分に精査をしていくという従来の態度実態に即したように処置をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっき三%と申しましたのは、これは各年度上昇率を言ったんじゃないんです。最終目標年度におきまして三%まで低下させるということを公約しているんですよ、ここではっきり。各年度を言っているんじゃないですよ。こう言っているでしょう。「ここ数年の年六%程度上昇から計画期間の終りには三%程度にまで低下させることを目標とする。」と、はっきりなっている。これは前の経済社会発展計画ですね。それから今度のもそれと同じ文章が書いてあるんですよ、同じ文章が。今度はずらしたでしょう。五十年にずらしたんですよ。これでは政治不信ですよ。そうでしょう。四十六年三%ということを努力目標に掲げておいて、それで今度その年度になったら五十年に三%というんでしょう。こんなまるで国民をだますようなこと、これだから、こういうことが非常な政治不信になるんですよ。努力目標を掲げて、その年度が来る、そうするとその年度に今度は五十年に三%と、こう言っているんでしょう。国民は、これでは、一体政府ほんとう物価を安定させる気があるのかないのか疑っているわけですよ。本気にやるんですか。今度は五十年と目標を掲げたら、その目標に向かってほんとうにやるんですかやらないんですか、ここのところが問題ですよ。
  17. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 前の古い計画で四十六年度三%という点を御指摘になりましたが、まあこれは遺憾ながらそういう事情にはまいらなくなってきておりますが……
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 古い計画といったって、同じ佐藤内閣ですよ。
  19. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) もちろん、そのためにまた経済計画改定も実は行なったわけですから、そういう意味においては、これはまことに残念でありますけれども、いわば新しい計画に発展的に解消したわけです。問題は、新しい計画でやはり逐次下げていくという目標を立てておるじゃないか、こういうことです。これは、もちろん、昭和五十年度にどのくらいになるか、われわれとしてもできるだけ物価問題については努力をいたしまして、そしてあたうる限りこれを安定さしていく、これが安定経済成長基本でありますから、そういう意味において、われわれの目標であることに変わりはございません。目下のところ、まことに遺憾ながらむずかしい実情になっておることははっきりしておりますが、それに対して今後われわれとしてもできるだけのひとつ努力を重ねてまいりたい、これ以外にはないと思っております。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、いくら政府物価を安定させると、特に消費者物価についていま言っているんですけれども、いろんな懇談会を開いて意見を求めてやっても、安定するどころか、逆にどんどん上がってしまっていることについては、やっぱり根本の原因についての認識について不十分な点があるのじゃないかと思うんですよ。それは、抽象的にはそう考えているでしょうけれども、最近になってはっきりしてきたと思うんですよ。この原因が非常にはっきりしてきた。それは、何といっても成長率が高過ぎるということですよ、何といっても。私は最近必要がありまして通産省にもいろいろ調べてもらったんですけれども、日本高度成長を遂げましたけれども、原材料の輸入の依存度が非常に高いですよ。ことごとく高い。成長率があまりに高過ぎるために、粘結炭の問題が起こるでしょう。あれが高くなる。くず鉄だって非常に高くなっていますよ。それから輸送ネックでしょう、オイルタンカーも。ことに、粘結炭なんか、アメリカから二千五百万トンも輸入しているでしょう。それで、そのことが高くさせる。それがまた日本物価を高めるという、そういう面からもインフレ要因というものが最近かなり顕著に出てきていると思う、顕著に。もちろん、黒字が大幅に出るということも、外貨をいま集中制をとっていますから、黒字が大幅に出れば、外為にこれを売って円資金が出てきますから、黒字が大幅になるということも海外からのインフレ要因原因一つになりますけれども、そのほかに、そういう原料面からの物価上昇要因相当、顕著に出てきた。われわれはこれをネックと呼んでいる。特に粘結炭なんかネックです。そういう面が一つあると思う。これは福田大蔵大臣にもこの点を伺いたいのですが、前から、大蔵大臣は、どうも成長率が高過ぎると。大蔵大臣は、四十年年度は一一・一%の実質成長率前提にしましたけれども、一二、三%だと五年ぐらいで倍になっちゃう。そうなれば、いろんな不均衡が出てくると。原材料、あるいは輸送、あるいは電力。ことに、電力なんか非常なネックでしょう。私も通産省から資料をいただきました。電力は来年はたいへんな危機ですよ。予備率マイナス〇・一%でしょう。予備率マイナスになるんです、来年度は。しかも、公害問題が起こって、火力発電所をつくろうとすると、住民は反対しますから、なかなか火力発電所はできない。そういうことを勘案しますと、どうも成長率が何としたって高過ぎる。どうもこれまであんまり慢性的に高い成長率になれてきちゃって、それで、このごろ、ちょっと下がると、もうすぐ不況ムードというようなことになるでしょう。ですから、成長率は私は一一%でもまだ高いんじゃないかと思うんですよ。大蔵大臣は、前に、まあ一〇%でも高いんじゃないか、大体八%ぐらいじゃないかということを言われたこともあったですね。ここですよ。ことに、 いままではそうはっきりしていなかったんだけれども、四十五年度になってから成長率の高いということがネックを生じたと、こう思う。電力不足でしょう。工業用水不足も出てきていますね。それから海外の資源について、それがまた原料高という形になってきている。だから、もう一度ここでとにかく成長率について再検討する必要があるのじゃないか。成長率がちょっと下がると、すぐ不況ムード。それで日本銀行の金利をすぐ下げる。それでは、いつまでたったって解決しませんよ。まず成長率についてもっとはっきりした態度をきめなきゃいかぬ。高過ぎますよ。  それからもう一つ資本構成ですよ。何といったって、日本の場合は、よそに比べまして、他人資本が多過ぎますよ。大体、あれでしょう、最近の大蔵省の法人企業統計によりましても、一七%以下ですよ、自己資本比率が。株式資本だけについて言うと、九%を割っているというんでしょう。先進資本主義国でこんなところはないですよ。自己資本比率が株式資本で九%台を割るなんということはないでしょう。西ドイツと大体逆ですね。八〇%以上九〇%近いものを他人資本でまかなっている。だから、どうしたって操業率を高くしなきゃならない。損益分岐点が高くなる。絶えず成長率を高いものにしなきゃならぬということと、物価が安定しちゃ困るということなんです。どうしてもインフレで貨幣価値が下がって借金負担を軽くしようと、意識・無意識の間にそういうムードが高まっているんですよ。  私はこの二点だと思うんです。これが日本高度成長の特殊の要因だと思う。うんと借金政策でやった。そこから高度成長を絶えずしなければならぬ。しかも、原材料依存度が非常に高い。海外からどんどん原材料を買うと、原材料高になってくる。それがまた輸出の黒字と相まってインフレを刺激する。そのほかにもいろいろあります。それは私は派生的だと思うんですよ。たとえば労働不足とか、輸送不足とか、いろんなネックというのは、やっぱり成長率があまり高過ぎるということの派生的原因だと思うんですよ。だから、ここにもつと根本的な検討を加える必要があると思う。この点ですよ。そうしなければ、いつまでたったって物価は安定しませんよ。国民物価が安定するがごとくに声明を出したり言明することは、私は無責任だと思う。いまの状態をほうっておいては安定できないんですよ。企業の体質からいってもできませんし、それからネックがどんどん生じてきて、そういうことからもできないんです。この点、企画庁長官にお伺いしますとともに、福田大蔵大臣はこの点について前から疑問を持っておられるようですから。  それと、大蔵大臣には、今度の公定歩合の引き下げとの関係ですよ。どうしたって成長率が高過ぎますよ。ネックがどんどん生じてきているんでしょう。まだこんなネックが解消されない、ますますひどくなってきているところで、量的緩和はやむを得ないとしても、あんまり金融引き締めの量的な引き締めを続けると倒産等を起こしてきて社会問題にもなる危険がありますけれども、公定歩合をなぜあんなに急いで下げる必要があったのかですね。日本の六分二厘五毛という公定歩合は、国際的に見てもそんなに高い金利じゃないですよ。高くありません。それをなぜあんなに急いで二十八日に下げたか。アメリカは六%、オランダは六%、カナダは六・五%でしょう。フランスがこの間下げても七%。イギリスが七%、ドイツが七%、ベルギーが七%、スウェーデンが七%でしょう。デンマークの九%は例外ですけれども、あとイタリー、インド、スイスですよ、日本以下のは。ですから、そんなに急いで下げる必要はないと思うんですよ。その点を私は伺いたいのですけれども、時間がございませんから、まず企画庁長官に先ほどの二つの点について、根本的に再検討しなければ、いつまでたっても繰り返しだと思うんですよ。一番肝心なところに手を触れないんですから。
  21. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 実は、木村さんの御意見には私は全く賛成なんです。基本的に成長率が高過ぎると。これを何とかして安定的なものにまで下げなければならない。これは、私は、大蔵大臣もそうだと思いますが、われわれとしては全く同感でございます。問題は、それをどうやって下げていくか、こういうことであろうと思うのであります。なんにもしないでほうっておいたのではないのでありまして、実は今度の引き締めの効果というものもある程度浸透しまして、ある程度の評価をしていいと私は思います。大体本年も政府見通しの一一%程度のところに落ちつくんではなかろうかというふうにわれわれも目下観測をいたしております。もちろん、長期にわたって見ますると、御存じのように一〇%台に落としていくべきであるというふうに考えております。ただ、口でもって一三%とか一四%の成長率を二%にするということは、数字の上では簡単でございますけれども、しかし、それがいざ実際になってみるとどういうことかというと、木村さんも御存じのように、一三が一一になるということだけでただいまのような不況感というか不況ムードというものが出ておるのもこれまた一面の事実でございます。そうしたことを頭に置きながら、実際に相当に押えても押えてもなかなか押え切れないこの日本経済の持っておる潜在成長力というものを頭に置きながら、一三%というわれわれが見ても過度の高い成長をいかにしてスローダウンしていくか、これがわれわれとして非常にむずかしいのであります。今度のことを契機にいたしまして、大体一一%程度のところに落ちつくんじゃないだろうか。そして、これを契機にして大体一〇%そこそこぐらいの経済成長のところに逐次にこれを持っていく。このたびのことを契機にして、そうして徐々にこれを定着させていく、そうして環境を安定的な環境に持っていくと、こういうふうに実は考えております。  ですから、方向においては私は木村さんの御意見と少しも変わりないと思っております。どうやってそうした安定的な環境というものを実現するかという、その方法であろうと思います。そういう意味におきまして、昨年来とりましたところの金融の引き締め、需要の抑制政策というものは、ある程度の効果をおさめつつあると、こういうふうにわれわれは認識をしているような次第であります。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 長官、もう時間がないようですから、あと一つだけ御質問して、また他の機会に譲りたいと思うんですけれども、大体同意見ということですが、問題は、ただ、政府見通しの一一%に金融引き締め等で落ちつきそうだということで満足していたんじゃいけないと思うんです。内容なんですよ、問題は。同じ一一%の成長率でも、中に、たとえば電力がものすごく不足になっている状況とか、さっき言った非常な原料高という問題が起こってきたりしておるんですよ。だから、ただ一一%になったからいいというものじゃない。その内容もやっぱりもっと検討しなければいけないと思うんですよ。  もう一つは、なぜ物価値上がりを問題にするか。あなたは、インフレじゃない、インフレじゃないと言っていますけれども、国民が一番問題にしているのは、それによって資源の適正配分が妨げられるとか、安定成長が妨げられるとか、そういうこと以外に、国民所得の再分配に非常な悪い影響が出てきているんです、最近。厚生省でさえ年金のスライドを考えざるを得なくなってきているんですよ。厚生省の最近の発表によると、厚生年金を受け取る人がだいぶ出てきて、老齢者が非常に生活に困っているんですよ、最近は。あなた、聞いてごらんなさい、老齢者に。最近のインフレによって老齢者の生活苦というものはたいへんなものですよ。そういうことももっと真剣に考えませんとね。しかも、六%が七%台になるのじゃないかなんていうようなそんなことになったら、これはたいへんに国民心配ですし、それから老後の安定についても貨幣価値がどんどん下がってくる。それで、最初、経企庁長官は、インフレになる危険があるということを非常に心配されておったんですから、あなたがインフレということばを最初に使ったときの心境に立ち返ることですよ。側かあれを直されたとかいわれるんですけどね。ですから、最初にあなたが企画庁長官になったときは、ほんとに取り組む姿勢であったと思うんですよ、あのとき。これからも、やっぱりそうした最近の物価値上がりが、国民所得の再分配、特に老齢者に非常に生活難を与えていますから、もっと真剣に取り組む姿勢について伺っておきたいと思う。それで長官については終わります。
  23. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) いまの御指摘の点も、私も十分にそうした趣旨で処置をしてまいりたい、こういうふうに考えております。ひとつまた午後大いに木村さんからも御指摘御批評を受けたいと思いますが、いまのむずかしさというものをわれわれも非常に痛感しておりますので、これからあらゆる方法で物価対策に取り組んでいく、これがこれからの政府の施策の第一であると、こういうふうに考えております。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村委員から常々いろんな経済意見を承ります。私は、その木村委員の御所見に、大体において敬意を表してきておるわけです。けれども、きょうは特に感銘が深い。私はこの三、四年来の日本経済を見ておりまして、これがさて長続きをするかどうか、そういうことにつきまして非常に危惧を持っております。それからいろんないわゆるひずみ現象、物価の問題や公害の問題、いろんな問題が出てきております。その諸悪の根源は成長の高さにある、こういうふうに見てきておったわけです。国民にも、そういうことで、成長の高さを鎮静させるという立場から金融抑制政策をとる、そういうことについての理解協力を求めるための努力もやってきておるのでありますが、きょうは国会の場において私ともう全く変わらない基本的な思想のお考え方を承りまして、私もたいへん心強く、かつ感銘を覚えるというふうに存じておる次第でございます。  それで、昨年の九月以来、金融調整政策をとりまして、さてこの効果がどういうふうに及んでいるかということを注意深く見守ってきたんです。この金融調整政策のねらいは、木村さんのお話のとおりです。つまり、成長の高さを仰制する、それが当面の国の大きな経済課題であり、また一つの現象となってあらわれておる物価問題にも基本的な影響があるだろうというふうに考えてこれをやってきたわけでありまするが、どうも物価問題につきましてはなかなかいい影響というものが出てきておらないのです。これは、物価問題が、需要供給という側面も持ちますが、同時に、生産費というか、そういう要素を持っておる。それによって動くというものであり、最近の物価情勢が、需給要因、つまり成長の高さにつらなる需給要因のほかに、新たにコストプッシュという問題を加えてきておる。そういう新しい複雑な状態下に物価問題が置かれておるという関係かと思いますが、とにかく調整政策の一年二ヵ月の間の推移を見まして、物価の問題のほうはどうもはかばかしい影響は見られない。しかし、物価問題の需給的側面につらなるところの成長の高さ、そういう方面におきましては私は調整政策がかなり効果をあらわしてきていたと、こういうふうに判断をいたしておるわけなんです。いろいろな諸指標を見ましても、私が年来言っておる一〇%、そういう方向に動き出しておる、こういうふうに見るんです。一〇%にそれがなった場合において、日本経済はその成長の高さでいいか悪いか、低過ぎるのか高過ぎるのかという問題は、その時点においてなお検討する、考えてみるという問題かと思いまするけれども、ともかく当面一〇%の方向に経済成長というものが動き出しておる。まあ年度末ぐらいまでにはその辺に行くであろうということが想定、予見せられるに至っておるのであります。そういう際に、日本銀行が金融について調整政策を緩和するという態度に出るということになりましたのは、私は、これはまあ当然の勢いであり、当然の措置であり、その方法として量的緩和の方針も打ち出しておりまするけれども、なお非常に象徴的な意味におきまして金融政策をやや緩和するんだ、流動化するんだというような意味において六・二五%というのを六・〇%というところまで下げたと、これは妥当な措置であるというふうに評価をいたしておるのであります。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは見解の相違になるかもしれませんが、公定歩合を引き下げた後、新聞・雑誌等でいろいろな論評が行なわれておりますが、そういうものをいろいろ見まして感ずることは、何か財界から非常に圧力を受けたような感じがするわけですよ。財界のほうは、さっきもお話ししましたように、他人資本が非常に多いですわね。ですから、何とかして早く金利を下げてもらいたい、金融緩和してもらいたいという、そういう切実な要求があると思うんですけれども、量的緩和をやりましたのがあれが十月の九日ですか、それからまだ二十日もたっていないうちにすぐ公定歩合を引き下げたわけですね。日銀の吉野前調査局長は、六%には下げたけれども、六・二五%に引き上げる前はもっと金利は安かったんだ、五・何%で六%じゃないんだ、六%に下げても前よりはまだ多少引き上げになっているというような弁明をしているようですけれどもね。しかし、私は、まだ、大蔵大臣が一〇%台と言われましたが、金融を引き締めた効果がようやく出てきたのであって、ここでやはり警戒信号というものは残しておくべきものだと思うんです。だから、公定歩合を下げる必要はなかったと思う。将来はまた必要があるかもしれませんよ。しかし、こんなに早く急いで引き下げた根源については、どうも不明朗な感じがします。それは、何か外部から、ということは結局財界から——まあいろいろな雑誌に書いてあることは自民党の内部にわたることですから、私はここで申しません。いろいろな複雑な事情があったように書かれております。しかし、財界から圧力があったことは、これはもう顕著です。水田政調会長は、もう九月ごろから公定歩合を引き下げるべきだということを強調しておったというのでしょう。そういうようなことが言われているわけですから、その点はなぜこんなにあせって公定歩合の引き下げに踏み切らざるを得なかったか。これがまたせっかく一〇%台の安定成長に持っていこうという——私は一一%台が従来の政府の安定成長の線だと思っていましたが、大蔵大臣は一〇%台と言われましたが、そこに持っていくためにも、そんなに急いで公定歩合を引き下げるべきじゃなかった。これを緩和してしまえばまた効果が失われてしまうと思うんですが、その点はいかがですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話し、ごもっともなことと思います。私は、日本銀行が公定歩合の引き下げを行なった、また量的緩和を行なうということになりましたのは、これは当面の措置としては妥当な措置だと、こういうふうには考えておるんです。おりますが、ただいま木村委員の御指摘のように、ここは非常に大事な段階です。せっかく鎮静ムードが出てきた、そのムードがまた逆転するというようなことになりましたら元も子もない、国民経済に与える影響というものは甚大なものがあるだろうと、こういうふうに考えておるんです。ですから、今後といえども金融政策改定後の経済の動きにつきましては十分目を光らしてまいります。そうして、注意に注意を怠らず、また、したがって、所期の傾向つまり鎮静化の傾向が逆転するというようなことがありますれば、これがほの見えるというような事態がありますれば、また金融政策を機動的弾力的に運用するという構えはいささかも失ってはならぬと、かように考えておるのであります。お話しの点はまことにごもっともと存じますので、重々注意してまいりたいと、かように存じております。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、いわゆるネックの問題なんですが、これは経済企画庁長官にもう少し突っ込んで質問したかったんですが、通産省の公益事業局長にも出席をお願いしておいたんですが、まず、概括的に大蔵大臣に御質問しまして、それからあと公益事業局長から特に電力の需給問題について伺いたいんですけれども、私、この前資料要求しまして、電力と粘結炭とくず鉄と工業用水について資料が出てきたんです。それを拝見しまして、これは、四十五年に入ってからネック問題が非常に重大化しているということを痛感したわけなんですよ。ことに、電力は、さっき申しましたが、この間五十年までの需給の見通しを発表がありましたが、今後はたいへん重大な問題で、これが一つネックになって今後の健全なる均衡のとれた成長をここで阻害するのじゃないかと思います。それから粘結炭は、一時非常に不足のようでしたが、その後緩和されたといいますけれども、しかし、粘結炭がものすごく高くなってしまいましたね。ものすごく高いですよ。たとえばトン当たり、四−六月が十八ドル八十セントが、二十七ドルぐらいになった。それからくず鉄も、昨年三月は二十七ドル十七セントが、ことしの九月は四十二ドル五十セントです。そういうように原料面からのネックが非常にある。それから工業用水につきましても、たとえば、京葉臨海工業地帯、名古屋南部、瀬戸内海の臨海工業地域なんかは非常に不足である。こういうふうに、アンバランスが強くなってきたですね。ですから、金融を引き締めて成長をかなり抑制しているにもかかわらず、四十五年度にはこういうネックが非常にはっきり出てきたわけですよ。従来はこんな積極的には出てきていなかったと思います。特に電力ですよ。私は今後は電力が非常に重大な問題になると思うですね。大蔵大臣、今後の四十六年度の予算編成にあたりましても、この点が物価問題とあわせまして非常に重大なポイントになるのじゃないかと思うですがね。まあ公害問題ももちろんそうでありますけれども、均衡のとれた成長発展を遂げていくにあたりましても、あんまり成長が高過ぎるためにこういういろいろなアンバランスが出てきた。これは特に四十六年度予算編成、あるいはまた金融政策についても考慮しなければならぬと思いますが、総括的にひとつお答え願います。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、成長の高さということを問題にしているということを申し上げておりますが、これは平板的な成長の高さということじゃないんです。やっぱりそれは内容におきまして均衡のとれた成長、そういうことだろうというふうに考えておるわけです。ことに大事な問題は、御指摘のように、電力問題、鉄の問題があると思います。また水道、これが案外なかなかむずかしい問題になってくるおそれがある、こういうふうに思います。そういう国の経済基本になるものにつきましては、これは資金対策等も十分整えましてこれが成長、拡大、発展ということを考えなきゃならぬ。しかし、同時に、そういう拡大を考えましても、一三、四%成長というふうな勢いで、電力の需要が五年で倍になります、鉄も倍の需要が起こってきます、そういうような状態では、これは、資源の問題、あるいは労務の問題、いろいろなまたそこにネックがありましてやっていけないのじゃないか。そこで、そういう電力を、水を、あるいは鉄を需要する諸産業においてある程度の節度というものが必要であると、そういう考え方のもとのこれは成長の高さ抑制論だと、こういうふうに御理解を願いたいんですが、ですから、電力だ、あるいは水だ、鉄だと、こういうものについては格別の配慮をしながら需要に立ち向かう施設はするわけです。しかし、これは五年で倍というようなわけにもまいりません。そこで、他方におきましてそれらを需要する面におきましても抑制措置が必要であると、基本的にそういうふうに考えておるわけであります。
  29. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) お答え申し上げます。  電力不足についての御指摘でございますが、まず、最近におきます電力不足問題、電力の需給問題は、戦後一ころのような、電力の絶対量が不足してしまう、年じゅう電力の需給が合わないとか、そこで需要を押えていかなければいけないとか、そういうふうな事態とは根本的に違った点がございまして、年間を通じましての最大電力需要に対して、つまり需要のピーク時に対して供給が不足する事態がある、そういうおそれが出てまいっている、かようなことでございます。そうして、年間を通じまして電力需要がピークに達しますのが、四十二年までの状況では例年十二月であったわけでございます。昨今、特に都市冷房あたりの普及に伴いまして、八月が四十三年以来数年間を通じてのピーク時点ということに相なっております。そうして、八月の最大需要時点におきまして、出水が統計上一番悪い状況、それから需要が非常に多い状況、そういうふうな面を組み合わせまして、最大需要を想定いたし、供給力に対しての不足状況予備率の低下というふうな形で表現しているわけでございます。  そこで、四十五年、四十六年に予備率が非常に低下した状況が出てまいりつつございます。四十四年までは、年間最大需要に対しましての供給予備率というのは七%台で推移していたわけでございます。本年度におきましては、年度当初の想定見通しといたしまして三・二%、それから四十六年度につきましては、最近時点での数値といたしましてはプラスの〇・一%、こういうふうな数字が想定される状況でございます。  そうして、一方、新規電源の開発につきましては、昭和四十年から四十四年までの合計をとりましても、三千七百万キロワットをこえます新規電源の開発をいたしております。これが数年間の時差をとりまして漸次供給力化してまいる。それからまた、本年度につきましても、すでに経済企画庁の電源開発調整審議会におきまして千五百八十七万キロワットの新規電源の開発着工をきめておられるわけでございまして、先々の供給力の確保という点につきましては、かような形で極力新規電源の開発を促進する努力が払われているわけでございます。  ところで、漸次、予備率を、適正予備率と称せられます七、八%の水準に、ここ数年がかりで、少なくとも四十九年、五十年ぐらいにかけて回復してまいる努力を払っているわけでございます。さしあたりまして四十六年の供給力の非常な不足というものに対応いたしましては、まず、供給面につきまして、発電所の完成を急ぐ、供給力をできるだけふやすというような努力、それから試運転に入ります発電機の供給力をできるだけ一般需要に回す努力、それから自家発の活用、あるいはまた発電所の定期修理をピーク時をずらして早目にあるいは若干おくれて行なわせると、そういうふうなことで供給力を確保いたしますと同時に、需要面につきましても、できるだけ需用家の特に大口需要家の協力を確保してまいる、あるいはまた休日の振りかえというふうな面についても需用家の一般的な協力を願うというふうな形で、需給両面短期的な対策を鋭意講じまして、本年度案ぜられました八月の供給力不足問題を回避できましたその経験をさらに生かしまして来年度に処してまいりたい、かような考え方でいる次第でございます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がございませんから、簡単に最後に大蔵大臣に四十六年度の予算編成に関連しまして、税制面については戸田君がこれから詳しく質問されると思いますが、実は付加価値税の問題ですね、それから住民税の問題について簡単に伺いたいと思います。  税制調査会に出された資料を見ますと、水田政調会長が海外調査に行かれまして報告されているんですが、その中で非常に問題だと思いましたのは、付加価値税の採用を強調されていることと、それから付加価値税、新税の施行に伴う税務機構の膨張を回避する観点から、付加価値税の検討と並行して所得税と住民税との一本化による税務行政の簡素化を推進する必要があるというんですね。徴税機構の一本化、今後そういう方向でやられるのかどうか、その点非常に重大な問題だと思うんですがね。もう一つは、住民税ですが、税制調査会に出された資料を見ましたら、事業所得者につきましては、生活保護基準より以下なんですね、夫婦子供三人の場合。こんな住民税の課税最低限で一体いいかどうかですね。生活保護基準以下なんです。こういうのは当然是正されなきゃならないと思うんですけどね。だから、四十六年度の税制改正では住民税が非常に問題だといわれているんですけれども、この二つの点ですね、あと詳しいことはまた戸田さんから伺いますが、その二つの点について御質問して終わります。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま四十六年度の予算編成につきましてはまだ成案を得ておりませんが、まあいろいろ勉強しておる最中でございます。税の面につきましては、いま税制調査会において二つの問題を御審議願っておるわけですが、その一つは、当面の四十六年度予算編成と関連する諸問題、それから第二は、長期税制というか、この数年の間に実現をすべき税制のあり方いかんと、こういう問題であります。で、水田政務調査会長がヨーロッパを回りましてつぶさにヨーロッパの税制を視察してこられまして、その感想というか、その後の意見といたしまして、わが国においても、諸外国において採用せられておる付加価値税を導入するべきではないかということがいわれておるのであります。それは、ただいま申し上げました長期の税制という問題についての所見、こういう形で出ておるのでありまするが、私といたしましては、もちろん長期問題としての考え、その取り上げ方、こういうことにするべき問題であると同時に、取り上げる場合におきましても、これはもうわが国の税制に対する基本的な変改になりますので、これはよほど慎重な検討を要する、また、検討いたした結果、これを採用すべしというふうになりましたその上におきましても、これは実施準備に相当の時間をかさなければならないだろう、こういうふうに考えるのであります。そういうことを頭に置きながら税制調査会に接触をとっておるというのが現状でございます。十分慎重に扱っていきたい、かように考えております。  それから地方税との問題につきましては、私も、かねがね、中央・地方特に中央における所得税と地方の住民課税が、徴収主体は中央・地方に分かれておる。にもかかわらず、これを納付する国民は一人なんです。その点に、税制上におきましても、また徴税上におきましても、もうそろそろくふうをこらすべき段階に来ておるのではないか。終戦直後の何年かの間におきましては、この問題が地方の自治、地方の財政の自主性という問題と非常に深くこんがらがりながら議論をされたんです。地方には地方の独立の税制があるべきだ、また地方には地方の独立の徴税機構があるべきである、国とはせつ然と分くべきであるという、地方自治というその観念的な立場の議論、それが強かった。その時期におきましては、中央・地方の税制の調整というようなことはほとんど顧みられなかったような状態でありますが、私は、最近、中央・地方の税制、これがばらばらになっておるという今日の状態に対しまする国民の受け取り方、また、有識者の考え方、こういうものはかなり変わってきているのじゃないか、こういうふうに見ておるのであります。そういうようなとらえ方に立ちまして、税制はなるべくこれは単一の納税主体を対象にしておるのだと、こういう前提に立って一本化の方向をつくる、統一統合の方向に進む、これがいいのではあるまいか。また、徴税機構につきましても、ばらばらに徴収するのでなくて、この機構を一本化するということが考えられないものかということを常に考えておるのでありますが、これもまあ簡単にすぐというわけにもまいりません。しかし、そういうことを念頭に置きながら長期の構想を持って一歩一歩そういう方向に近づけていくべきではあるまいか、そういうふうに考えております。  いま取り上げられました免税点の問題も、お話しのように、国税と違いまして、地方税における課税最低限はかなり低い、この問題なんか、だんだんと統一をとる、調整をとる、均衡化の方向に努力をする、これが必要ではあるまいか、そういうふうに考えておりまして、私といたしましても、まあ自治省当局に相談を要する問題でありまするが、そういう姿勢でその相談を進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  32. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 四十五年度後半の経済見通しその他につきましては、いま木村委員のほうから質問されましたから、私のほうは割愛をいたしまして、冒頭に、現在政府の予算編成時期にあるわけでありますが、各省庁の来年度予算編成、こういうものも本格化しているわけでありますが、大蔵大臣は、七月の二十八日の閣議で、基本方針を編成内容を説明しておられるですね。それによりますと、二十五%の増の概算要求に押さえると、こういう大臣の要請があるようでありますが、最終的に四十六年度の予算規模というものはどの程度になっていくのか、この見通し、伸び率は一体どの程度伸びるのか、この辺の見解についてお示しを願いたい。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 来年度四十六年度の予算につきましては、まだ今日は素材をこなしておるという段階でありまして、細目の決定はもとより、大筋の方針も具体化されておらぬという状態であります。いまその規模をどうするかというようなお尋ねでございますが、抽象的に申し上げますれば、大体、経済成長率を頭に置きながらその時点における国の財政需要というものをとらえ、また、経済の情勢というものも踏んまえながらきめていくと、こういうことになろうかと思うのです。  それで、国の財政需要につきましては、いま一生懸命各省の要求につきまして審査をいたしております。  それから経済の情勢につきましては、何しろ来年の四月から再来年の三月に至る一ヵ年間の経済見通しを立てるわけであります。予算の編成というのがありまするから、どうしてもこれを年末までには立てなければいかぬ。しかし、いま、二月足らずしかない年末でございますが、それにいたしましても、この二月間というのは非常に大事でありまして、とにかく来年の四月から一年間の経済見通し、その四月に最も接着した時点において四月以降の一年間を展望する、こういうふうにすることが間違いなきを期するゆえんであるというので、いま軽々に今日この時点で四月以降の一年間に経済がどうなるだろうという見通しを立てることは妥当でない、こういうふうに考えておるのであります。したがって、経済見通しがそういう状態でありますので、この方面からの財政への注文、これがまあいまのところは申し上げかねる、こういうような状態にあるわけであります。  そういう経済見通しに立ちまして成長率というようなものは大体概定をされます。その概定、予見されました経済成長率、それを踏んまえながら規模というものが大体きまっていく。経済成長率そのとおりじゃありません。景気の問題、また財政需要の問題、そういうものを踏んまえながらきめられることでありますが、まあ一つの目安を名目成長率に置くということになろうかと思います。
  34. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣から、経済見通しの、ことに後半にかけての明確な回答をいただけないのは残念なんでありますが、これは私が収集した資料でありまするから、あるいは間違いがあるかもしれませんが、四十五年度の後半期の経済見通しですね。これは、日経センター、あるいは国民経済研究協会、あるいは第一銀行、東海銀行、各般の調査によりますると、いずれも言えることは、政府が予算編成当初に成長率としていた一一・二%をはるかに上回った相当高成長になっていることだけは間違いないと思うんですね。たとえば四十六年度成長率の予想は、日経センターでは一七・七%と見込んでいるですね。あるいは国民経済研究協会では一八・五%、実に膨大なものです。ですから、相当経済成長が上がっていることは間違いない状況にあるのだろうと思うのです。  そこで、いま、大臣から、その内容についてはこれから十分慎重に検討してということでありまするから、これはまあさておきまして、新聞等によりますると、四十六年度の予算規模は少なくとも一五%台増ということでいくんじゃないだろうか、こういうことを言われておりますね。そうしますと、九兆一千億円台に大体なると私は予想するんですが、四十五年度が七兆円台で、八兆円台を飛ぶことになりますね。三十年以降を調べてみても、一兆円台の予算規模は六年間続いている。二兆円台が二年、三兆台、四兆台がいずれも二年、こういうことで、年々相当な伸び率を示してきているわけですね。それだけ経済が拡大されたといえばそれまででありますけれども、いずれにしても膨大な伸びを示しておる、こういうのがいまの状態ではないかと思うのです。そこで、四十二年度に五兆円台予算ができて、四十四年度六兆円、四十五年度七兆円台と、一兆円一年刻みで膨張してきたわけでありますが、こういう膨張を予想いたしますと、今回いま査定段階でやっている四十六年度の予算編成というものも、規模は相当膨張的にふくれ上がっていくことは間違いないのじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、この点に対する大臣の御所見はどうでしょうか。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま、財政の規模をきめるのは、一つは景気動向ということである。それからもう一つの問題は、財政需要という問題なんです。景気動向につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これからいろいろ考えますが、財政需要という点になりますと、一つ非常にはっきりしている問題があるんです。それは何かというと、当然増というのがそれだけで実に一兆円ふえる勢いであります。これを一体どうするか。これに対しましては、既定経費のほうの整理節約に相当力を入れる、そういう努力はいたしておるのですが、この当然増一兆円圧力というものはなかなか無視できない、これが大きく予算の規模に影響していくのだろうというふうに考えます。  そういうことを考えますと、九兆一千億円台というようないまお話もありましたが、とてもそういうような状態では財政需要を吸収しきれまい、こういうふうに考えております。つまり、社会資本のほうのまた要請が非常に多いわけであります。あるいは道路の問題、あるいは道路以外の交通対策の問題、住宅の問題、公害の問題、公害の問題等に関連いたしまして下水道の問題とか、いろいろな問題が殺到するというような勢いでまいります。そこへもっていって米価対策に対しましてかなりの金が要るのではあるまいか。そういうようなことを考えますときに、とても九兆一千億円というような状態ではないのじゃなかろうかというふうにいま頭を抱えておるところなんです。まあできるかぎり不用不急のものに対しましては峻厳な態度をもって臨む。しかし、国家国民が要請する経費につきましては、またこれが充足に努めなければならぬ。非常にむずかしい予算の編成になりまするが、鋭意誠心誠意やってみたいと、かように考えております。
  36. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣が緊急所用で帰らなくちゃいけないそうですから、問題をしぼって質問しておきたいと思うのですが、いま大臣もおっしゃられましたように、九兆円台に上った場合に財政需要にとても間に合わない、こういうようなことを言われるのでありますが、裏を返せば、結局、財政硬直化ということになるのだろうと思う。ですから、大臣が、四十三年度以来、財政硬直化、これをやりますよということで今日まで努力をされてきたわけですね。しかし、結果的には、そういうものが全然効果をあらわしておらない、こういうふうにわれわれは見るわけであります。そこで、問題は、いま予算の査定段階に入っているわけですが、むしろこの硬直化の打開をぶちこわしているのは大蔵省の査定に原因があるのじゃないか。そういう意味合いでは、予算編成査定段階において大蔵省はもっともっとこの点検を強めて、財政に対する膨張というものを防いでいったらどうなのか、こういうふうに考えるのでありますが、その辺の考えが一つであります。  それからもう一つは、いまの公務員のベースアップその他を考えますると、予備費が私の推定で六百四十億見当しかないのじゃないかと思うのです。そういうことになれば、当然補正予算というものが出てくるのだろうと思うのですね。だから、その補正予算の時期は一体いつころと考えて、規模は一体どのくらいでやっていくのか、その辺の見解をお伺いしたいと思う。  それから来年度の歳出関係はこれはいま聞いてもとても無理な話ですからやめますけれども、歳入のほうですね。ことに税の関係で、主要な柱の部分となるものの若干の問題点についてお伺いをしておきたいのでありますが、大臣のこれまでのいろいろな言明によりますると、まず所得税減税はやっていかざるを得まいと、こういう見解を述べられておりますね。しかし、それも全くミニ減税で、一千五百億見当じゃないか、あるいは中減税の二千億見当じゃないか、こういうことを新聞やその他にも報道されておるのでありまするけれども、こういう減税対策に対して、一体何を柱にして減税しようとしているのか、その辺の見解をお伺いしたい。  それから具体的な問題になりますが、やっぱり減税の方向として、一つは、いままで何回か問題になってきているわけですけれども、課税最低限の引き上げを考えているのかどうか、あるいは扶養控除の引き上げを考えているのかどうか、あるいは給与所得控除の引き上げというものを考えているのかどうか、基礎控除の引き上げを考えているのかどうか、あるいは配偶者控除の引き上げを考えているのかどうか、こういう具体的な諸措置によって減税の一歩前進の形態がとられると思うのですが、こういう問題については一体どういうふうに考えるか。  もう一つは、この減税財源を一体どのくらい日通しているのか。いろいろ取りざたされておりますけれども、大臣としての率直な御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。たとえば四十四年度補正予算を審議した際でありますが、これは三月三日に私が予算委員会大臣にいろいろ質問したわけでありますが、このとき、政府の補正財源として税収見積もりはあまりに低いのではないかということを私は指摘をしたんです。大体五百億見当ですね、これは増収があるという私の見解を述べておったのであります。木村委員は九百億くらいあるだろう、こう言っておったのであります。これは会議録に明確になっているわけであります。大臣は、そんな数字になってくれれば私も非常に楽で、そんな数字にはなり得ませんと、こういう回答だったんですが、この会議録からずっと推して今日の状況を見ますと、四十四年度補正の予算額で五兆九千三百四十九億円、四十四年度決算で六兆二百四十三億円、差し引き八百九十億円の増収ということになっていると思うのですね。数字が間違っておったら主税局長のほうで御訂正になってけっこうでありますが、私の試算によるとそういう状況になるのであります。ですから、当初補正予算段階で私たちが五百億ないし八百九十億程度あるんじゃないかという数字が出てきているわけですね、予算と決算のかね合いから見て。だから、こういう自然増収の過小見積もりといいますか、そういうことによって減税の幅もおのずからきまってくる、こういうことになりまするから、その辺の見解はやはりあらためて大臣から明確に聞いておかないと、四十六年度の減税体制がどういう柱に中心を置いてどのくらい一体やられるのか、具体的に作業はどういうふうに進められるのか、こういう点が明確になってこないと思うので、大臣から端的な御回答をお願いしたい。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一点の、硬直化に対する打開の努力でありますが、これはまあ一挙にその効果を期するというわけにもまいりません。が、しかし、毎年毎年たゆまざる努力はいたしておるのです。現に、四十五年度の予算におきましても、かなりの多くの種類の補助金の整理をするとか、そういうものをいたしておるのですが、結局、そういうことをさらに果敢にやっていくためには、法令の改廃というか、行政の根拠になる法令の整備、これが必要になるのですね。それと同時に、機構の問題です。この二つにつきまして手を染めなきゃならぬ。これが非常に困難な問題なので、行政効率化努力にも見るべきものがないというのが今日の状況でございますが、来年一兆円の当然増が考えられるその中におきまして大きな問題は、やっぱり米の問題、食管制度ですね、これをどういうふうにやっていくかという問題と、それからもう一つの問題は、総合交通体制といいますか、道路をはじめ国鉄をも含めての大きな交通総合体制の問題であります。これも硬直化問題と大きく関連をしてきておる問題であります。それからさらに健保赤字をどうするかというような問題があり、等々いろいろ硬直化のお題目というものはあるわけですが、どれ一つをとりましても、一つそれ自身が非常に困難な問題でありますか、四十六年度予算の編成にあたりましては、勇断をもってこれらの問題に対して取り組んでまいりたいと、こういうふうに考えております。それから、補正予算は一体どうなんだという第二の問題でございますが、これは、私は、補正なしに行かれれば非常にいいなと、こういうふうに思っておったわけでありますが、予算を編成した後におきまして編成当時は予想もしなかった高率の人事院勧告を受けるということになりまして、給与費が大幅に不足をするわけであります。いまの見積もりでは、予算で見ておったものを差し引きいたしまして、給与費の純不足額が千二百四十億円になる、こういうようなこと、それが予算編成後の実態として出てきておるわけです。それから米価を決定するにあたりまして、政府は、品質改善奨励金を支出するということにいたしました。これが二百三十八億円ということになるわけであります。それから災害に対しましては、かなりの額をもうすでに支出はしておりまするけれども、本年度災害等に対しまして本年度におきまして百五十億円前後はさらに出さなきゃならぬのじゃないか、そういうふうに考えております。さらに、例年に見られるような義務費そういうものを加えますと、そうですね、かなりの、二千億近くぐらいな新しい財政需要が出てくるんじゃないかというふうに踏んでおるわけでありますが、それに対しまして、財源といたしますると、五百五十億円予備費がいま残っております。この五百五十億円の予備費、それに、いま整理節約を計画しておりますが、それから幾らぐらい出ましょうか、まあ二百億円といたしますと、合わせて七百五十億円ぐらいになる。それに、例年不用額というものがかなりの額出ます。それぐらいがいま見通し得る財源なんです。したがって、今日のこの状況を放置いたしておきますと、かなり数百億円をこえる財源の不足を生ずる。私は補正予算はなるべく組みたくないということを申し上げたんですが、組みかえ補正、いわゆる総ワクを変えないで支出の項目を変える補正、これはまあやむを得ない。どうしても例年のことでありますがやむを得ないと考えておるのですが、問題は増ワク補正なんです。これが一体、やらぬで済ませられるかどうかというと、昨今の状態は、たいへん心細くなってきておるというのが率直なところでございます。これからの租税収入の見通しいかんというようなことも見なければなりませんけれども、ぼつぼつ補正問題をどうするかという最後の考え方をきめていかなきゃならぬ段階に迫られておると、かように御了承を願います。  それから四十六年度の財源という問題でございまするが、その中で、租税につきましては、先ほども申し上げたわけですが、来年度の税制をどうするか、いま税制調査会で御調査を願っておりますが、私の気持ちといたしましては、ひとつ減税面では所得税減税をやっていくべきだというふうに考えております。四十五年度税制におきまして三ヵ年長期計画による所得税減税、これを完全実施をしたい。そこで、所得税減税は一休みしたらいいんじゃないかという有力なる意見があるんです。ありますが、私は、所得税減税、これは休んじゃいかぬ、今後とも毎年毎年これを努力を続けていくべきだというふうに考えております。それはやや基本的な問題になりまするけれども、国民租税負担ということを訴えるその最も大きな原因をなすものは、やはり直間比率という問題にある、こういうふうに考えておるからでありますが、その所得税減税は続けていく。その考え方のもとに四十六年度においては所得税減税をやっていく。ただ、これも、毎年毎年努力をしていくということでございますので、そう単年度に大幅なことをすることはいかがかというふうに考えておるのであります。経済事情が変化する、特に物価事情が変化する、そういうものに対する調整と、こういうようなことを考えたらどうだろうか。また、サラリーマン減税というようなことがいわれております。そういうものに対してどういうふうに対処するか、これも検討しなければならぬ問題である。その他まあいろいろありますけれども、とにかく所得税減税ということ、これはぜひやってみたいと、こういうふうに考えております。  それから一方、間接税についてどういう考え方をとるかという問題でありますが、いま、社会資本の充実、特に総合交通体系の整備というような見地から、自動車新税ということがいわれておるんです。いま、しかし、自動車産業というものはかなり苦しい立場に置かれておる。そういう際に、自動車新税だというようなことになることがわが国の産業政策の見地からどうであろうかというようなことも考えます。また、物価政策上の見地、これも配慮しなければならない。いろいろ配慮をしなければならぬ点がありますが、同時に、先ほど申し上げました直間比率の是正という問題も他方においてにらまなければならぬ問題である。来年度の四十六年度における自然増収がどうなるか、これにもよりまするけれども、それらの問題を踏んまえながらいま調査検討を続けておるというのが実情でございます。  なお、詳しく、所得税減税については、課税最低限の引き上げ方式をとるのか、あるいは給与所得者の減税措置をとるのか、いろいろお尋ねがありましたけれども、まだ詳しいことにつきましての私の考え方はきめておりません。国会の御論議、また税制調査会の考え方等を聞きまして、逐次きめていきたい、かように考えております。
  38. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これで大臣のほうは終わりたいと思うのですが、協力いたします。  三点ほどあるわけですけれども、一つは、当初国債発行の総額は四千億あるわけですね。これが、自然増収が、大臣はどの程度に見積もられておるかわかりませんが、私の想定でいけば四千億程度になるのじゃないだろうか。こういうものに対して、財界等からいま政府に対して非常な強い要望が出ておる。一千億見当減額をしてはどうか、こういう要望があるということを聞いておるのでありますが、本件については大臣として減額する意思があるのかどうか、その問題について第一点。  それからもう一つは、これは水田蔵相時代にも——四十二年だと思いましたけれども、その後福田大蔵大臣のほうにも要請をしておったんですが、いまの金利態様が非常にアンバランスになっておるのじゃないかと思うのです。政府貸し出し金利、あるいは各企業に業種別的な貸し出し金利、いろいろあります。ことに、最近は、きのうの新聞なんか見ますると、大蔵大臣が今後は公害重点に——米も全く重点でありまするけれども、公害もその一つに入れるというようなことを言われておる。そういうことになりますると、いま公害防止の施設、設備、あるいは改造、あるいは防止装置の各機械の導入、こういうことが各般やられているわけです。大企業の場合は、いまの各収支決算を見ましても、相当利潤を生んでいるようでありまするから、問題は中小零細企業に対して政府はどういう考えでおられるのか。これに対しての融資態様をもっと幅を広げるべきじゃないか。これは非常に抽象的で申しわけないのでありますが、一括お話を進める意味でお聞き取りを願いたいのですが、そこで、問題は、各関係省から中小企業融資態様に対するところの金利の一覧表をそれぞれ資料としていただきました。こまかいことを申し上げる時間がありませんから省きまするけれども、こういう問題で従来六分利子でやってきたものが、一・五%まけて四・五%にするとか、各般の要求が各省から出ているようです、ことに公害等についてはですね。こういういわば緊急措置としてどうしても人命保全のために公害を防止しなければいけない。企業主がそのことを受けて各般の施設改善を行なうこういう場合に、もっともっとやはり融資に対する金利の引き下げ、ないしは無利子ということになれば一番いいのでありますが、そういうことが考えられておるかどうか、これが一つであります。  それからもう一つは、どうしても地元の企業主だけでは負担できない。もちろん私も原則的には公害防止は企業主負担、これが原則である、それはやっぱり正しいと思うのでありますが、しかし、中小零細企業等については、もう金も満ぱい借りておってどうにも動きがとれない。たとえば宮城県の場合でありまするけれども、塩釜の加工団地の廃液がものすごく松島湾内にいま入っている。それで、ノリ、カキ、こういうものが、いまことにノリなんかは種をまいている時期であります。非常に大事な時期なんですね。そうすると、全部これがだめになっていくというような被害が非常に大きくなっている。そういうところで、加工団地というものを、事業を一ヵ所に集めてそうして団地を形成していこう。その中には公害防止の廃液処理等も含めてやっていこうというのだけれども、金がない。総額十二億くらいかかるんですね。三ヵ年計画でやっても年間四億、もうすでに枯渇状態になっている、資金的にはですね。ですから、そういう問題に対する国としての援助体制が必要じゃないか、と、こういうように思うのでありますが、そういう一つのモデルケースに対するところの試験的な意味合いからいっても、あるいはいま困っている公害を即刻防止をしていくという意味合いからいっても、何といっても融資体制というものが非常に大事であって、国庫補助というものが大事である、こういうように考えるものですから、その辺に対する見解が一つであります。  もう一つは、税金の説明を受けたのでありますが、四十六年度に私はぜひ最大検討をしていただきたいと思うものがあるんです。それは、交際費の課税問題、これは時間がありませんから数字を読みますが、間違っておればあとで事務当局のほうから指摘をいただきたい。私が日本の有力企業の最近一年間の交際費を有価証券から集計したものでありますが、これを見ますと、鹿島建設が十七億四千六百六十一万六千円ですね。それから大成、大林、三菱商事、富士製鉄、伊藤忠商事、清水建設、三井物産、丸紅飯田、日本鋼管、いずれも十億以上の交際費を実は使っているんですね。こういうことになりますと、いまの課税対象からいけば、資本四百万でしょう。千分の二・五でしょう。そして六〇%でしょう。その残額に対して課税をしていくわけであります。四十四年度のケースでいきますと、七千億以上の交際費が全体で使われておる。これは表向き、報告だけですよ。実際はもっとあると思う。ところが、それに対してわずかに一千億そこそこの税金しかかけていないのですね。そういうものは一体どこへ行くかというと、残念ながら赤坂とかあるいは銀座とか、大体全国的に八十万人ぐらいの風俗営業従業者が潤っているのでありますが、まさしく夜のあだ花ですね、そういうところに湯水のごとく使われている。だから、一日平均で日曜を除くと五百万くらい見当使う。十七億何がしというもの、そういうものに対してもっともっと根本的にメスを入れて、そしてこの交際費に対する課税対象というものをびっしりやっていったらいいと思う。それはもう給与所得者とかなんとかというものは満ぱい状況で、いま重税感がひしひしと迫っているのですから、これはぜひひとつ大蔵大臣に強く私は要請をしておきたいと思うのでありますが、この件に対してどういうお考えを持っているか、いろいろありますが、時間がありませんから、大臣に対しては以上で終わります。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず第一は、公債の発行額を予定よりことしは減らすかというお話でありますが、いまことしの自然増収がどういうふうになるかということを注意深く見守っておるのであります。その自然増収は、もし増ワク補正を組むことが必要であるということになりますれば、その財源にまず充当するという考えですが、なおそれでも余りがあるという際におきましては、公債をそれだけ減額するという考え方をとりたいと、かように考えております。  それから次は、公害融資その他公害対策についてのお話でございますが、公害は、これはわれわれが当面する最大の問題であると言ってもいいと思うんです。この公害につきましては、その処理のために必要な資金、これについては政府も最大の配慮をしなきゃならぬと、こういうふうに考えます。その配慮の仕方は、これは企業責任ということで企業の負担になる面が多いわけでございますが、その資金につきましては、あるいは税制で何らかの助成を与えることができないものか、これをいま考えております。それからもう一つは、融資の面です。融資ということになりますると、一般の市中金融というという面につきましては、なかなか特別な配意というわけにはまいらないかと思いますが、政策金融といいますか、政府金融、この面において公害については特別の配慮をしなければならないかと、こうふうに考えております。その配慮は、融資の量においてしかり、また金利につきましても特別の配慮が必要となるかどうか、これもよく考えてみたい。とにかく、特にそういう中におきまして中小企業は経済力が少ないわけでございまするから、そういうものにも重点を置きながら考えていきたい、かような考えでございます。  それから第三に、交際費に対する御所見がありましたが、これは税制調査会のほうでも来年度の税制の問題の一つとして検討してくださると、こういうふうに考えておりますが、もちろんその検討の結果を待たなきゃならぬ、こういうふうに思いますが、私といたしましては、私の気持ちを申し上げますと、交際費課税、これには積極的な構えで取り組んでみたいと、かように考えております。
  40. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣が緊急な御用件がおありのようでございますので、しぼって若干質問したいと思います。  一つは、沖縄の問題でありますけれども、沖縄で非常に不安がられているのは、一つは税制の問題であります。現在、大体、単身世帯で年収千百五十六ドル、約四十一万円程度までが税金はかからないようになっているそうであります。月大体百ドルでも税金がかからないという状態でありますが、これがもし現在のまま——まあ先ほどの御答弁で所得税の減税が行なわれるという話でありますが——進んでまいりましても、現在を見ても、独身世帯の場合は三十三万八千何がしで税金がかかってくる。これが本土復帰等の問題になると、いままでの収入で税金のかからなかった者にも税がかかるというような状態になってくるわけでありますから、この点は、はっきり申し上げて、復帰ショックというものをなくすためには、税についても沖縄だけは復帰の時点において特別の措置を講ぜざるを得ないのではないか、その点をどういうふうにお考えになっておるかということが一つ。  それから、同じ沖縄の問題ですから、三つ重ねて伺いたいと思いますが、もう一つは、これは銀行に関係する問題でありますが、これから沖縄の本土復帰に伴って相当の資金量というものが必要になってくるわけであります。特に金融関係の整備ということは緊急な問題になりますが、御承知のように、現在ある琉球銀行では、半面高利貸し的な、日本の銀行と違って企業を育てていくというような面は非常に欠けているように思われる。そういう点から見ましても、政府関係の金融機関でございますが、これを早急に復帰前から手をつけて、沖縄において活動ができるようにしたらいいのではないかという点があるのでありますが、非常に望まれている声であろうと思いますが、その点はどうかということ。いま一つは、政府資金の導入ということが復帰になれば当然行なわれてくる。いわゆる財政投融資の問題でありますけれども、これも、現在では、十四億ドル、あるいは十億ドル、三十億ドルというふうにいろいろ言われております。で、私は、四十七年からではおそいのではないか、むしろ明年度からこれはぼつぼつ手をつけていただかなきゃならないのじゃないかという感じがするわけでありますけれども、その三つの点についてます御質問をしておきたいと思います。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、政府におきましては、四十七年の某月某日沖縄が復帰になる、それに備えまして広範な準備が要るんです。これはもう非常に多岐にわたる施策が必要なんでありますが、全力をあげてそれの準備に当たっておる。わが大蔵省におきましても、かなり大きな多くの問題をかかえておりますが、その中の一つの問題か税制の問題でございます。税制につきましても、他の諸施策と同じでありまして、これを急に内地の法制を向こうに適用するということになりました場合に、いろいろな混乱が起きるという問題があるんです。ですから、他の問題と同じようなことでありまするけれども、当然経過措置が必要である。必要なものにつきましては経過的に緩和措置をとるということが必要になってくるだろうと思います。ただ、私も詳しいことまでまだ検討しておりませんけれども、所得税につきましてはそう混乱がないのじゃないかというふうに主税局長は申しておりますが、まあ他の諸問題がいろいろありますので、とにかく民心に不安動揺を与えないということを旨としてこの問題を処理してみたいと、かように考えております。  次は、金融の問題でありまするけれども、この方面につきましては、やっぱり沖縄が内地金融の体系に入るということになりますので、銀行がどうなるかという問題もある。また、保険会社——いま保険会社が向こうにあるわけですが、その保険会社をどういうふうに処置するかというような問題もあります。ありますが、これも、税の問題同様、さあ復帰だといってそれで混乱が起きるというようなことであってはならないので、その辺を十分考慮配意をいたしまして円滑に移行を処理したいと、かように考えておるわけであります。特に御指摘政府金融の問題、これも、政府金融諸機関が向こうに支店、出張所を持つということになろうかと思います。特に、過渡期の沖縄でございますので、資金の需要も内地と比べますと多額になるのではあるまいか、そういうふうに考えますが、それらの点も十分配慮しながら努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  42. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの問題で、政府関係の金融機関の支店を設ける、それはわかるんですけれども、私が申し上げたのは、当然設けるでしょうけれども、少なくも明年あたりからすべり出しはできないだろうかということなんです。その点はいかがなんでしょうかということです。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その支店を設ける問題が、明年設けたほうが沖縄のためにいいのかどうか、そういうようなことを考えまして、もしその必要があるということであればそうしたいと、かように考えます。よくこれは検討さしていただきます。
  44. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから政府資金の導入の問題はいかがでしょう、先ほど申し上げた。まあいろいろ援助がありますけれども、財政投融資関係で、もう四十七年というのを待たずに明年あたりから大量投入ということができないかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  45. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 民政府との関係もございますので、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、今後どういう方向で問題を解決してまいるべきか、十分に検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  46. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がないので、この問題はその程度にしておきますが、ここで、参議院の大蔵では初めてでありますのでお伺いしておきたいのですが、今回の富士銀行事件の問題であります。この問題を契機として、いろいろ金融制度のあり方、将来の方向というものがどうしても再検討されなくてはならなくなってきている。そこで、すでに金融制度調査会の答申も出ているし、その中で自由化の問題も取り上げられております。自由化の立ちおくれを取り戻すということとともに、今後の金融のあり方を検討するのに、再編成であるとか、あるいは外資に対抗する金融政策、こういうようなことをあらためてもう一度見直さなきゃならないというところへ来ているのじゃないかと思いますが、もし大臣のほうでこれについての用意がおありになるようであれば、大綱だけでも御説明をいただければと思います。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 富士銀行をはじめといたしまして、銀行でいろいろ不祥事件が起きております。まことに遺憾千万に存じます。これをどういうふうに対処していくか。私は、何よりも、金融機関におきまして金融機関の国家的な任務を担当しているんだという意識に徹するということが最も大事なことではあるまいか、そういうふうに考えるのであります。そういう立場から、金融諸機関に対しましても、今回のようなことがないようにみずからの姿勢を正すということを要請いたしております。また、同時に、大蔵省は銀行の検査監督等の責めに当たっておるわけでございまするが、そういうことを通じまして大蔵省自体としてもこの上とも気をつけていかなければならないのではあるまいか、さように考えておるのであります。  なお、この問題につきましては、反省を要する点が多々あるだろうと思います。これらの点につきましては、この機会にこそ各金融機関と話し合いまして、国民の信頼感の取り戻し、そういうものに努力していかなければならぬと、かように考えておる次第でございます。
  48. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私が質問しましたのは、その反省を要する点が多々あるとおっしゃられたのは、このような不正が行なわれる温床的なものが金融界全般にあるということですから、その点をさされたのであろうと思うのでありますけれども、ではその金融界全体のそういう温床をなくす方向として、金融の再編成であるとかそういう点はお考えになられておりませんかということなんですが、その点はいかがでございますか。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的にこの問題と関連しながら再編成というところまでは考え及んでおりません。しかし、それとは別に、再編成というものは、これは経済の国際化、自由化、資本の日本への上陸、そういうようなことを考えまするときに、どうしても考えなければならぬ問題であるというふうに考えております。もとより、再編成を政府が勧奨するとか、政府が仲立ちをするとか、そういうことを言っているわけではございませんけれども、そういう動きがありました際には、政府は積極的な態度をもってこの問題の処理に当たりたいと、そういうふうに考えるのであります。
  50. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 速記をとめて。   〔速記中止
  51. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 速記をつけて。
  52. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 水産庁にちょっとお伺いしたいのですが、いま塩釜の第二次加工団地造成については報告を受けておるでしょうか。
  53. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) 先生すでに御承知かと思いますが、塩釜につきましては、百七十戸ほどの水産加工業者があるわけでございますが、その共同利用施設部分につきまして第一次の加工団地を造成するということで、引き続き、各個人のアパート工場と申しますか、そういうものとして第二次加工団地を形成しようという話があることは承知いたしております。
  54. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 通産省はどなたか……。
  55. 西田彰

    説明員(西田彰君) 私は中小企業庁の指導部長でございますが、本件につきましては、公害保安局のほうでかねてから厚生省、水産庁のほうと連絡をとって十分承知をいたしております。
  56. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 厚生省のほうにお伺いしますけれども、松島湾ないし気仙沼、いわゆる宮城県の三陸沿岸一帯の各漁区の海水汚濁、こういうものに対して、水質調査なり現地調査というものをやっておられますか、その点が一つ——じゃ、厚生省はきょう出ていないそうですから、それはあとに回します。それで、水産庁にお伺いするんですが、この塩釜の水産加工団地における水産加工廃水処理等に対しまして、現地では、県と、市と、それから公害防止事業団、それから社団法人でありますけれども東北工業技術試験所というのがありまして、この四団体でそれぞれいま加工団地をめぐって各般の廃液処理についての研究をやっているわけです。一つは、加圧浮上機処理によって、いまの廃液というものは一万ppm以上を擁している状況ですね、これを現地では二千ppmあたりまで何とか下げて正常化していこうというような考えなんですが、どうも加圧浮上機の処理が思うように成功しておらぬ、こういう状態です。こういう問題に対して、水産庁としては、漁獲保護の立場からいっても、何か具体的な指導ないし支援ですね、そういうものがあってしかるべきじゃないかと思うのですが、そういう面はどうですか。
  57. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) 当初、塩釜の加工業者が公害防止事業団との間にお話し合いをされて、排出される廃液につきまして排水基準に合致するような形で施設をしたいということで御相談があったようでございますが、その段階では私どものほうはあまりよく承知していなかったということでございますが、工事をやっていく段階、あるいは工事が済んだ段階で、必ずしも所期の成績をあげていないということがはっきりわかりまして、事業団のほうでも、その善後処理と申しますか、具体的にどういうふうな形の改善処置を講ずればよいかということで、委員会をつくられて改善方針を検討されたわけでございますが、その際は私どものほうに要請がございましたので、私どものほうも入って、御一緒に検討してまいった。これはことしの一月くらいだったかと思います。それから累次検討をいたしまして、一応現在のところ、先生がおっしゃいましたように、排出廃液の基準が二千ppm程度というところまで下がってきておって、ノリなりカキなりについては、その程度であれば、最悪の状態ではあったとしても、まあまあ何とかやっていけるということではないかと思います。ただ、県のほうで排水基準ということで定めておるものについてはまだかなり差があるということでございますので、今度の第二次加工団地を造成いたします際に、第二の造成の分とひっくるめてその県の排水基準に合致する程度にまで改善していきたいというふうに考えておられるということを私どもは承知しておるわけでございます。
  58. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは現地では非常に深刻な問題になっているんですね。加工団地も、土地取得その他によって、加工団地建設等を含めて、金融関係は満ぱいである。それからまた、沿岸漁業のノリとかカキとかワカメ、こういう漁民の皆さん方も、この廃液処理でもって——もちろん加工団地の廃液ばかりじゃありません。市下水道から来る廃液もあります。各般のものが入っているわけですけれども、そういう関係でもう一触即発の状況で、お互いがもうなぐり合いの寸前まで来ている。こういう状態でありますから、こういう問題に対してもう少し積極的に水産庁としては善後措置をとって、現在受けておるこの公害の即刻防止を具体策として打ち出すべきじゃないかと、こういうように考えるのでありますが、その辺の見解を聞きたいということ。  それから通産省にもこの問題がいっているわけですね。加工団地というのは、全国のケースからいって初めての試みだろうと思う。おそらく、塩釜でやっていることが全国最初のものだろうと思うのですが、これが成功すればいま各地域に起きている海水汚濁その他から来る漁民の被害というものは相当救済できていくのではないだろうか。ですから、そういう問題に対して、団地造成に対する国庫補助等について十分検討する必要があるのじゃないだろうかと、こう思うのですけれども、その辺の見解をお願いしたいと思います。  それから銀行局長はいまいませんね。じゃ、政務次官にちょっと伺いますが、本件について水産庁から大蔵省のほうに予算計上で要求されているかどうか、その辺の内容をちょっとお伺いしたいと思います。
  59. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) 私どものほうは、加害者のほうと被害者のほうと両方所掌いたしているものでございますから、非常に関心を持っておるわけでございまして、この排水のppmを下げるということについて大きな関心を払っておるところでございますが、そのために、公害防止事業団のほうで行なわれます事業につきましては、私どもとしても積極的に協力いたしまして技術の提供をしておるということでございます。ただ、何ぶんにも非常に数多くの加工業者の集まりでございまして、廃液のppmと、それから排水基準できめられております基準との間に著しい差がございまして、それをその基準に合致させるためには相当大きな施設を要するというようなことでございますので、これを安価に効率的にやるような方法はないかということで、四十六年度予算でも、食品産業センターに委託いたしまして、新技術開発ということで活性汚泥法によって処理いたします前に、前処理といたしまして油分なりあるいは蛋白分なりを分離しておくということができないかどうかということについての調査をやっていただくということと同時に、研究所あたりでもそういう点についての効率的な技術の開発ということに努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  60. 西田彰

    説明員(西田彰君) 先生御指摘のとおり、本塩釜の問題は、共同施設に対しまして公害防止事業団が融資をするという、アイデアとしましても制度としましても非常にいい出発をいたしたわけでございますが、不幸にして当初の処理施設が不十分でありましたために種々の問題が生じているわけでございますが、御指摘を受けましたので、問題は、新しいいろいろな技術研究をいたしまして処理施設をさらによくするという問題と、それから現在の融資の条件あるいは償還期限の問題等について事後措置を講ずるというような点が問題として残っているわけでございますので、これらにつきましては関係省みな関係施設相談をいたしまして十分な事後策を講じたいと思っております。  なお、先生の御指摘のこういった中小企業関係の公害防止対策につきましては、中小企業庁といたしましてすでに種々の制度を持っておりますが、これらの制度を活用することももちろん、それから活用いたしました場合も、このような不首尾に終わらないようないろいろな指導をさらに強化するというような考え方をもちまして、さらにいい防止対策を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。
  61. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 特に塩釜の加工団地につきましての予算の要求は、現在ではないようであります。
  62. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これはけさ資料として水産庁のほうからいただいたものですが、漁業公害関係予算の中で数項目補助金がいっているわけでありますが、項目を見て、当面の一番問題で政府が最も力を入れなければいけないという公害関係の被害その他については、何らまだやられておらないようですね。あえて言えば、水産資源保護対策事業としてこれがまあ公害関連だと、こういうのでありますが、けさちょっと説明を聞いたんですけれども、もっと水産庁としては積極的に——全国にわたっているわけでしょう。ことに、宮城なんかは、気仙沼という漁港では、いまカキの出荷時期です。それが廃液でもって大腸菌が相当含有しているということで、これはもう出荷停止です。それから総体で三千万ぐらいですね、これはどうにもならないんですね。そういう状況まで実は来ているわけでありますから、これは政府全体としても四十六年度予算関係については公害についてウエートを置いてやっていくと、こういうのでありますから、やっぱり必要なものは積極的に要求をして、いま困っているそういう漁民の生存権まで脅かしているという実態を解消していかなければいけないと思うのですがね。そういうことで今後の御努力をお願いしたいと思うんですが、こまかいことはきょうは時間がありませんから、次回に専門にやっていきたいと思うのでありますが、そういう見解についてお願いしたい。  それから通産省のほうでは、いま指導部長の回答で十分検討して善処すると、こういうことでありますから、そういうことでひとつぜひ今後も大いに努力をしてもらいたいと思うんですが、ただ、いまの融資関係ですね、公害防止に対する融資制度の概要ということで資料をもらったんです。これを見ますと、どうしてもやっぱり大企業にウエートがいっているような感じがいたしますね。件数にして中小企業は二十一件、大企業は三十件、額にしまして中小企業が十七億、大企業が二十三億、こういう内容だというのであります。それからいろいろとこまかい資料がありまするけれどもね。だから、いま一番困っているのは、やはり中小零細企業、こういう企業だろうと思うんですね。だから、そういうものに対する融資ワクを拡大して、もっともっといまの困っている実情というものを改善していくような努力を金融部面でも確立をしていただきたいと思うんですね。  それから利子の問題でありますけれども、これも資料としていただいたんですが、「公害防止に対する機関別の融資条件並びに利子」ということになっているわけでありますが、この利子関係を見れば、無利子のものもできてきているですね。だから、私は、でき得れば、どういう程度のものまで無利子でやって——これは事業の規模によってやられているのか、あるいは、資本の評価によってやっているのかわかりませんが、そういう問題について、もっとわれわれが納得できるような融資体制、金利問題、こういうことで御検討願えたらどうだろうか。これは大体貸し出し基準をどういうところに置いているのか、その点をわかっておればお答え願いたいと思います。
  63. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) ただいま大蔵省からお話がございましたように、塩釜の問題につきましては、公害防止事業団におきまして第二次加工団地の造成ということが計画されておるわけでございますから、一応その面に譲りまして、私どもとしては予算要求をいたしていないというのが実情でございます。私どもといたしましては、そのほかに、主要水揚げ地におきまして、流通加工センターということで、荷揚げ機能なりあるいは卸売り機能なり流通関係の事業施設を拡充すると同時に、加工団地みたいなものを造成するという場合については、そういうものについての助成を行ないたいということで、四十六年度予算で要求をいたしております。  それから先ほどちょっと御説明いたしましたように、排水の汚染度を低下させるための新技術開発ということで、委託費として新技術開発のための経費を要求いたしておるということでございます。
  64. 西田彰

    説明員(西田彰君) 公害関係につきまする中小企業に対する融資の助成につきましては、公害防止事業団、中小企業振興事業団、中小企業金融公庫、それから国民公庫等によりまする特別の融資制度がございます。先生御指摘のように、このうち、全体として低利の融資をいたすことになっておりますが、中小企業振興事業団の中小企業が共同して公害防止設備を設けるにあたりましての融資については、無利子ということになっております。で、これらの諸制度を四十六年度におきましてはもっと組織化いたしまして、どういう場合にはどういう恩典が受けられる、どういう場合にはどの制度によるというようなことがわかりやすいようにいたしていくように努力いたしたいと思っております。  それからなお、これは別な一般会計からの資金によりまする制度でございますが、中小企業設備近代化資金制度あるいは中小企業の設備貸し付け制度というような制度がございまして、これらもたとえば近代化資金につきましては利率はゼロになっておりますが、これらの資金ワクも来年度は増ワクをいたしてやってまいりたいというように考えております。
  65. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 全国的にも水産庁としての海水汚濁防止の具体的な対策はまだ何ら説明として聞いておらない。これはもう知り尽くすくらい知っているんだろうと思うのです。いつごろから具体的にいま困っている漁民の全国的な対応策というものを立てていくのか、そういう対策があるんですか。  それから通産省のほうも、やはり何かばらばらになっているんですね。水産庁と通産省というものが連絡を十分にして一体としてこの対応をしていかなければいけないような問題を、どうも、なわ張り根性というか、何というか、そういう点でうまく密接な連絡がとれない。したがって、対策はおくれる、現地のほうの紛争は拡大する、そういう繰り返しなんですね。だから、そういう面についての対応策というものはやっぱり各省それぞれの責任の場で持っていなければいけないだろうと思うんですが、そういう何か具体策はいまあるんですか。具体的にいま困っているわけですから、これを早期に食いとめる、防止しなければいけない、そういうものはないんですか。この辺はどうなんですか。
  66. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) 私どものほうでは、四十五年度中に、調査調整費をいただきまして、河川なり海水の汚濁について非常に問題の多い二百三十ヵ所について汚濁の状況調査するということを現在実施いたしておるわけでございますが、そういう実施されました地点の汚濁の状況につきまして、必要があれば措置をとってまいりたい。政府部内でも、も、排水二法の改正であるとかあるいは公害対策基本法の改正であるとかいうふうなものが計画されておりますので、そういう中にも私どもの要望を持ち出しましてそれが実現できるような体制に持っていきたいというふうに考えておるわけであります。
  67. 西田彰

    説明員(西田彰君) 当該塩釜の問題につきましては、実は、これは私の所管ではございませんが、関係省庁相協議をいたして十分の連絡をとってやっているつもりでございますが、なお至らぬところがありますれば、十分の対策を講じたいと思っております。  それから一般的に申しまして、私ども中小企業庁は、各省関係全般、業種が各省の所管に属するものでも私どもで責任を負ってやらしていただいておりますので、以後も十分各省庁と連絡をとりまして責任を十分に果たしてまいりたいと思っております。
  68. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 主税局長にちょっとお尋ねをするんですが、租税特別措置を使って公害防止対策を推進しようというような構想が大蔵省内部にあるというのですが、その辺はどうですか。
  69. 細見卓

    説明員(細見卓君) 公害対策として税制上とれますことは、公害防止のためのいろいろな施設を企業がつくった場合に、それの資金の回収を早めるという意味におきまして、先ほど大臣も申しましたように、企業負担を軽減する意味において、償却制度を活用して償却の幅を大きくして企業負担を軽くする、したがって金融的にもその部分が楽になると、こういうことが税制でできることではないだろうかと思っております。
  70. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま担当庁としては、この公害等に対して、中小零細企業対象ですが、どういった負担の軽減をはかろうとしているのか。いま御説明になった金利の問題が一つある。それからいま主税局長のほうから説明を受けたような税制上の問題がある。そのほかどういう方策を考えているか、何かありますか。
  71. 平松甲子夫

    説明員平松甲子夫君) 私どものほうでは、現在まで、公害についての考え方といたしましては、企業負担で処理をするという一般的な考え方と対応いたしまして、融資の段階でめんどうを見るというようなことで中小企業庁のほうにお願いをいたしまして種々の制度を考えていただく。それから公害防止事業団について私どもの仕事を第一の事業としてやっていただくというようなことをやっていただいたわけでございますが、四十六年度の予算におきましては、先ほど御説明いたしましたように、全国の主要水揚げ地二百三十ヵ所につきまして、年次計画で四十六年度を最初の年度といたしまして、産地の市場としての機能を果たしていく上で加工団地をつくるというようなことが必要であれば、その加工団地の造成についての公害防止事業についても助成をしてまいりたいということで、現在大蔵省に予算要求をしておるという段階であります。
  72. 西田彰

    説明員(西田彰君) 金融、税制以外で私どもで中小企業の公害防止対策としてやっておりましてさらに強化いたしたいと思っておりますのは、技術開発と経営指導と申しますか中小企業指導一般の関係とございます。  技術開発関係につきましては、中小企業者が自分で自力で技術開発ができないようなテーマが種種ございますので、これを国の試験研究機関による開発テーマの中に入れるというような制度をやっておりますが、これをさらに強化いたしたいと思っております。それから県あるいは商工会議所その他の諸機関を通じまして中小企業の指導をやっております。これは、公害関係につきましては、技術指導、特に技術関係で研修会をするとか、あるいは指導員が技術指導をするというような制度がございます。それから商工会議所に産業公害相談室というようなものを設けまして、中小企業の公害対策一般についてのコンサルタント的な役割りを果たさしておりますが、これは本年度から出発した制度でございますが、来年度さらにこういったものの拡充強化をはかってまいりたいというように考えております。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣との関係でいろいろと錯綜しているものですから、きょうはこれで終わりたいと思います。いずれ機会を見まして大臣と含めでお願いをしたいと思います。いずれにしても、事態は急迫をしているんですね。ですから、その関係省、水産庁ないし通産省としては、本問題に積極的に取り組んで、とにかく現地が安心できるようなそういう措置を早期にとっていただきたい、これは政務次官のほうにもお願いしたいと思います。  そこで、銀行局長にちょっとお尋ねするんですが、これも大臣がおりませんから一点にとどめます。いま、定期金利が、非常に物価上昇によって、この前改正をして若干上げたのでありますけれども、もうすでに物価上昇によってそれは埋没しちゃっている状況ですね。ですから、こういう問題についてもっともっと検討をして、せめて上げた分ぐらい預金がふえていくような仕組みでなければ、預金者としても貯蓄意欲というものが減退してくるんじゃないか。そういう趣旨で昨年やったわけでありますが、ことしの物価上昇はものすごいんで、これは経企長官も言っているように七%前後になるんじゃないだろうか、こういう状況ですね。ですから、こういう問題について、四十六年度の金利態様全般について要望したいのでありますが、ことに預金金利の問題についてどういうふうに考えておられるのか。
  74. 近藤道生

    説明員近藤道生君) まことにごもっともな御指摘をいただいたわけでございます。私どもといたしましても基本的にはそういう方向で検討をいたしておるわけでございますが、何ぶんにも、預金金利の引き上げは、各種金利への影響、さらには政府関係の貸し出し金利等への影響、いろいろございますので、それらとの関連を十分慎重に考慮しながら今後どういう方向で具体化すべきか、その辺をただいま研究いたしておるところでございます。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 主税局長、自然増収は大体どのくらいに考えておりますか、さっき大臣に聞いた本年度の。
  76. 細見卓

    説明員(細見卓君) 自然増収につきましては、率直に申し上げまして、いまの段階では確たることがよう見通しかねると申し上げざるを得ないと思います。現状で見ますと、確かに昨年の収入のペースよりは二、三%良好な収入の進捗状況であります。したがいまして、これを単純に推計すればかなりの自然増収も出るということは言えようかと思いますが、しかし、それは、前提といたしまして、昨年度の下半期のような経済状況がことしも続いて、なおそれよりもこの上半期が昨年の上半期に対しまして高いペースであったそのぺースが続くというわけでありまして、その想定はかなり現実的ではないと思いますので、そういう意味におきまして、これからの税収というのは非常にむずかしいので、先ほども大臣が申し上げましたように、できるだけ決定しなければならないまぎわのときまで資料を収集して、なかなか正確に見通すことはむずかしいと思いますが、できるだけのことをして遺憾なきを期したい、かように考えております。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私が先ほど指摘をしました四十四年度の最終の徴収ですね、これは当たっておりましょうか。それから補正後と比べて余分に入ってきた分、これも大体当たっていましょうか。どうでしょう。
  78. 細見卓

    説明員(細見卓君) 昨年度の税収は、確かに当初予測いたしておりましたよりも多くなっておりますので、その数字は当たっておりますが、ただ、一昨年度四十二年度におきましては、皆さんが出るとおっしゃった数字をかなり下回っておりまして、これはそのときそのときの経済状況でございますので、あるときに当たり、あるときに当たらぬからというのは、これはなかなか一がいに断じにくい問題ではないかと思います。
  79. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、まだわかっておらないということですか、主税局長。どうなんです、その辺。
  80. 細見卓

    説明員(細見卓君) まことに申しわけないのでありますが、いまの段階ではわかりかねております。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 あれじゃないですか、四十四年度補正予算の額が五兆九千三百四十九億、決算で六兆二千二百四十三億、この差っ引きが八百九十四億ということになるんじゃないですか。だから、これは間違いないでしょう。
  82. 細見卓

    説明員(細見卓君) その数字は合っております。
  83. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは合っておりますね。  さっき指摘したんですが、交際費問題ですね。これは、大蔵省としては、意見として、主税局長の見解でけっこうですが、大臣が言われた内容と全く賛成ですね。それから事務面でいまそういうものを具体的に検討されておりましょうか。
  84. 細見卓

    説明員(細見卓君) 交際費の問題につきまして積極的に取り組んでまいりたいと申し上げました大臣の答弁、その趣旨を体しまして目下検討中でございます。したがいまして、具体的な検討は税制調査会にもお願いしておるわけでありますから、今後案をまとめます段階までに、税制調査会、あるいは国会の御議論、あるいはそのほか各方面の御議論をお聞きいたしまして、国民の納得の得られる方向に結論を持っていきたいと、かように考えております。
  85. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 十七日に予定しているそうですから、そのときに譲りまして、きょうはこれで終わります。
  86. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 午後一時二十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  87. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  88. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 総裁、前置きは省略をさしていただきましてお尋ねをしたいと思いますが、今回、公定歩合の引き下げの措置をおとりになったわけですが、世俗では、初めから金融引き締めなんというものはやらなくてもよかったという無用論もございます。それから今度の引き下げ措置に対しましては、いや、そうでない、早過ぎるよと、こういう意見もあると思うんです。そこで、お尋ねしたい点は、日銀として当時公定歩合の引き上げを中心とした一連の金融措置をとられたとき、こういう措置を続けていけばこんなようなかっこうに大体なってくるんじゃないかということを予測されておったと思います。そして、今回公定歩合の引き下げをやられた。そうすると、いまの時点ではこうなんだから、これをはずせばこんなふうになってくるだろう、しかし資金ポジションは指導を続けていかなくちゃならないと、いろいろと予測図を立てられておみえになったと思いますから、その予測図について、いわゆる経済見通しと申しますか、そういうものについての概略の説明を承りたいと思います。
  89. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 申し上げるまでもなく、昨年の九月の金融引き締めに踏み切りましたときは、国際収支は大幅な黒字を続けておりましたわけでございます。戦後の引き締めをいたしました数回は、いずれも国際収支が悪化いたしまして海外に対する支払いに問題が起こるということから実施したのでございまして、非常に、原因と申しますか理由がはっきりいたしておったわけであります。昨年の九月につきましては、そういう点がまた新しい立場から引き締めを実行するようになりました。そのときの判断は、国際収支は黒字を続けておるけれども、それまでわりあいに安定しておりました卸売り物価相当長期にわたって上昇を続けた、こういうことがございました。それから労働力需給の関係でございますとか、あるいは設備投資の動きでございますとか、そういうようなものがやや過熱を予測されているようなものがございましたので、そういう過熱を未然に防ぐということを目的として引き締めを実行いたしました。  そのときに考えました経済指標と申しますか、それは、まあいろいろ数はございますが、まず第一に生産、出荷、在庫、それから卸売り物価、さらに銀行券の増発の状況、それから預金・通貨の動き、さらに企業収益の状態、それから設備投資額、こういうような指標を見て、この辺で引き締めをしないと過熱の状態におちいるんではないかと、こういうふうに考えたわけでございます。したがいまして、そういうものをあらわします指標がだんだん落ちついてくることを期待して引き締めを実行いたしたわけでございます。今度、引き締めの関係で、量的な緩和をはかり、公定歩合の引き下げを実施いたしましたのは、いま申し上げましたような諸指標が、最初に考えましたラインにほとんど近いところへ落ちついてきたという判断で緩和を実行した、こういうのがわれわれのいままでの実情でございます。
  90. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあいろいろといま五つか六つの経済指標のものをおあげになりましたが、これをもう少し具体的に、たとえばこれぐらいの数字を期待した、今度ゆるめたときにはこれでこのぐらいの指標を期待するという具体的な数字は、そのうち全部は言えないかもしれないですけれども、あなたの一番都合のいい数字で、都合のいいと言ってはたいへん失礼でございますが、あげやすいガイドライン、その数字をお聞かせ願うわけにはまいりませんでしょうか。
  91. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 去年の九月に引き締めを実行いたしました場合にも、ただいまあげましたような諸指標数字的に幾らになると、それを具体的に予測して実行したのではないのでございます。たとえば卸売り物価につきましては、ことしの五月に持ち合いになりました。六月には〇・四の下落、それから七月にはまた持ち合い、それから八月、九月とごくわずかながら上昇しておりますけれども、大体こういう数字をながめておりますと、これで卸売り物価は五ヵ月間まずまず横ばいに落ちついてきたと。それまで約十五ヵ月上昇を続けておりましたから、そういう過去の動きに比較いたしまして五ヵ月間の状況は安定してきたと、こういうふうに考えたわけでございます。  それから日銀券の発行残高につきましても、一時は前年同期比二〇%以上もふえてきておりました。そうして、六月に一八・五まで落ちてきたのでありますが、七月、八月にまた一九%台に上がりました。それが九月にはまた一八%台に下がり、十月には今度一七%台に下がってくると、こういうような傾向を見ましてそういう判断をいたしたわけでございます。
  92. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 なかなかむずかしい問題で、これが一つだとかどうとかということは申せませんから、それでは、観点を変えまして、実はあなたが描かれた予想図と申しますかね、ここらあたりで過熱は困るという予想図をお立てになったと思いますが、そういうものに対して、実は、引き締めの措置外にも、たとえば設備投資が一巡したとか、あるいは耐久消費財のほうが一巡したというような、そういうような議論もございますですね。ですから、いわゆる公定歩合の引き上げを中心とする金融引き締め措置について、いまの目的が達成されたとお考えになっておるのかですね。いわゆる中期停滞期あり、設備投資が一巡した、耐久消費が飽和に達したという論議があります。目的が達成されたというのは、引き締め措置だけで目的達成ができたのか、その比重はどちらが大きいかを判断されて引き下げの結論に到達したというのか。あなたが今度ゆるめなきゃならぬと判断をされたのは、どちらがウエートが大きくてこういうふうになったとお考えでしょうか。
  93. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに、今回のいろいろ経済指標の落ちつきと申しますか、変化につきましては、金融引き締めだけがそういう効果をもたらしたものという判断はできないと思います。そのほかに、ここ数年相当高い設備投資が実行されてきておりますので、それに伴う生産力の増大、そういうものが供給の増加としてあらわれて物資の需給関係を緩和させておると、こういう面があろうかと思います。また、アメリカにおけるカラーテレビ等の輸入制限の動き、こういう経済外的な動きが日本のそういう商品を製造しております業界に影響を与え、そういうところの生産が落ち、あるいは在庫がふえるというような状況をもたらしておると思います。したがいまして、さきに申し上げましたように、金融引き締めだけの効果によってそういう落ちつきが出たとは私どもも見ておりません。ただ、しかし、その中で金融引き締めによる総需要の抑制というものが相当な効果を発揮し始めたその結果であるという判断はやはり持っております。ただ、そのパーセンテージがどれくらいであるかということは、正直に申し上げましてなかなかきめにくいものでございますけれども、ただ金融政策の効果というものはやはり相当大きなものがあったというふうには判断しております。
  94. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、そういう引き締め外の要因というものもあったんだと、それも織り込み済みであの措置というものを講ぜられておるのか、あのときはですよ。四十四年度の九月のときに織り込みをされたのかどうか。それからこれがどんなふうに今後変化をしていくかというようなのを見るというのが一つだと思いますね。それからもう一つは、将来予測される特恵関税の問題も大きな問題になってくるだろうと思います。それから自由化の速度の問題もあると思います。あなたのほうは、資金ポジション指導を続けると、こう言っている。維持すると、こうおっしゃっています。しかし、これが巷間はどう伝わっておるかというと、もうあえなくはずすだろうと、こういわれておる。だから、また過熱がすぐ来るんじゃないかということが心配で、公定歩合の引き下げの早期論というものが出ておったと思うんですね。ですから、その辺の判断が、お聞きしておってどうも私らにも——まああなたも非常にデリケートな立場だと思いますから、ぴしっと言えないかもしれませんが、私らにも少しどうもわかったようなわからぬような、遠いところでものごとを聞いて、小さい声でしか聞こえないような感じに受け取れてならないわけですけれどもね。何といったってあなたのほうの動き一つによって大きく経済界がゆれて、それがために、得する人と損する人と言っちゃおかしいわけですけれども、利害相半ばするものがあると思います。ですから、私は影響が非常に大きいと思いますから、慎重な御答弁はそれでいいと思いますが、もう少しずばっと何か御答弁いただくわけにはまいりませんでしょうかね。
  95. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに、昨年の九月に引き締めをいたしますときには、カラーテレビなどについてああいう問題が起こるとは全く予想しておりませんでした。ただ、設備投資につきましては、その設備投資がやがては供給力増加になって物資の需給関係を緩和する役割りを果たし得るものということは、これは原則的にもちろん考えておったわけでございますが、ただ、設備投資には、それが生産力に転化します前には需要要因としての面が非常に強うございますので、そういう意味で、設備投資についてやはり昨年の九月ごろの設備投資の伸びは高過ぎると、それが需要へ圧力として働くのだという判断で需要の引き締めを考えたわけでございます。  それからいまの引き締め緩和の問題につきましてでございますが、資金ポジション指導の問題は、これは十−十二の間の分を十月の九日に決定いたしまして通知いたしたわけでございます。それで、十−十二の間は、その決定に従って多少のもちろん弾力性は加えることも考えてはおりますけれども、引き続き続けてまいります。それで来年の一−三にどういたしますかは、またこの年末から来年の初めにかけての状況を勘案いたしましてきめていくつもりでございます。  いまの公定歩合の引き下げが早過ぎるというようなお話がございましたけれども、私どもといたしましては、昨年の九月に実行いたしました引き締めの目的がほぼ達成せられたという考えをもちましてあのときの引き締め措置の解除を実行したわけでございます。よく言われますように、金融政策というのは、そのときそのときの変化に対応して弾力的に運営し得ることがそれの特徴でございますので、目的を達したと判断した場合にはもとへ戻しておく、そうしてまた次に必要な場合の体制をちゃんと用意しておくというような考え方も必要ではないかと、そう考えて公定歩合の引き下げも実行した次第でございます。
  96. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 目的を達したんだと、だからゆるめますよと、その一つのあらわれとして十−十二月は一六%増、九千四百億出しますよと、これで実質的ポジション指導はやるんだけれども、これを見たら大体日銀の行こうとしておる方向はわかるじゃないかというようなお話にも受け取れます。受け取れますが、これに関連して、私は、年末資金がこれでいいのか悪いのか。あるいは、たとえば財政関係でいえば、支払い超になってまいります、たとえば麦代の払いなんかを見ましてですね。ですから、いいか悪いかということはわからないけれども、いろいろと踏んでみてこれでまあ心配はないというかっこうでお出しになったものであろうと思っております。もしそういうことが年末でまたいろいろとやかましくなってくれば、政府も何か考えるだろうし、日銀もお考えいただくということですから、私は、年末の問題については一応の見通しだ、もしぐっと引き締めのために倒産が出てくるとか、あるいは在庫が非常にふえちゃってということなら、これはまた緩和をされるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  97. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 九千四百億円と申しますのは、これは資金ポジション指導を受けております都市銀行の分だけでございますが、それ以外の金融機関も十−十二にわたりまして相当多額の貸し出しを実行する予定を持っておるようでございます。そういうものを総体合わせてみますと、十—十二の資金供給量の昨年の同期に比較しての増加額は相当なものになるように聞いております。さらに、また、毎年年末には政府関係中小企業金融機関の年末資金の供給も行なわれております。そういうようなことで、資金の総量から見ますと、大体年末決済のために必要なものは供給できるものだというふうに見ておりますけれども、いまのような金融情勢でございますので、また最近のそういう金融政策の方向変換もございます。そういうものをバックにいたしまして今後の資金需要を注意深く見てまいりまして、それの需要いかんによりましては、先ほど申しました九千四百億円につきましても弾力的に考え得る余地があると思っております。先般、十月の下旬に私のほうの支店長会議をいたしましたが、その際も、支店長に対して、年末金融、特に中小企業の年末の金融については十分注意をしてほしい。それで、問題が具体的に起これば、それについて個々によく関係者で相談するように、そういうふうな申し聞けもいたしております。最近、倒産がふえておりますけれども、いまの金融情勢のもとでそういうものをできるだけ少なくするように努力していきたいと考えております。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。先ほど、成瀬君が、公定歩合を一般に見られているよりかなり早目に引き下げたにつきましては、昨年九月、国際収支の黒字下にあるにもかかわらず金融引き締めをやるについては、これこれの指標をにらんで、そして当面卸売り物価中心にして景気が過熱化しそうな状況にあった、そこで、それを鎮静させることが目的であったし、大体その目的が果たされたから引き下げを行なったと、こういう御答弁であったわけです。しかし、私は、いろいろもろもろの指標をにらむその指標の中で、なぜ消費者物価指標に入れないのかということが一つの疑問なんです。  それからもう一つは、当面の過熱を防ぐことももちろん重要ですが、もう少し長期的に見て安定的成長ということも考えながら金融政策は行なうべきだと思うんですよ。この安定的成長ということを考えた場合、当面の過熱を防ぐというだけでなく、安定的成長ということから考えますと、消費者物価値上がり以外に、もう一つ経済に非常に不均衡が生じているんですね、アンバランスが。ですから、その点をもう一つ問題にしなければならぬと思うのです。たとえば、これは先ほども問題にしたんですけれども、電力が非常に不足になってきているということがありますね、電力不足。それから鉄鋼なんかもかなり供給過重的な現象が起こってきているでしょう。それにもかかわらず、通産省の鉄鋼課で聞きましても、まだずいぶん高炉の建設の計画があるようですね、次々と。そういういろんな不均衡がことに最近になってひどくなってきていると思うのですよ。あるいはオイルタンカー不足だとか、船舶、輸送不足、それから労働力不足なんということもいろいろあると思うのです。そういうことを見ますと、どうも、私は、金融を引き締めたにもかかわらず、まだ成長が高い、高過ぎると、こう思うんですよ。ですから、私は、量的な緩和は、これはもうあまり続けていくと中小企業倒産なんかふえる、あるいは年末を控えて倒産等が起こる、それを回避する必要上、量的規制の緩和はまあ納得がいくんですけれども、なぜ公定歩合まで下げたのかですね。しかも、六分二厘五毛というのは、国際的にそんな高い金利じゃないですよ。ですから、消費者物価の問題を考え、それからまた、アンバランスのことは、成長が高過ぎるという感覚なんですがね、私は。そういうことを考えますと、やっぱりある程度の金融上警戒的な要素というものは残しておくべきだと私は思うんですよ。ですから、六分二厘五毛を下げないで、量的規制は緩和したとしても、公定歩合のほうは国際的にそんな高いのじゃないんですからね。それから最近の国際的な資金移動を見ましても、公定歩合の引き下げでそんなに資金が出たり入ったりそんな心配はなくなっているようでございますから、そんなにそういう点を懸念する必要もないと思うのです、その点は。  ですからどうも、そういう意味で、何か別の要素によって、つまり財界の圧力によって引き下げられたのではないか。圧力というのは何かといりと、結局、大企業のほうに対して過剰サービスすることになると思うんですよ。そういう大企業のほうでとにかく他人資本が非常に過剰で借金経済でやってきましたから、ちょっと成長率下がると、すぐ不況ムードだと。不況ムード不況ムードと、一体どれだけ不況なのかですね。それで、私は、来年の三月決算で多少減収減益になってちょうどいいと思うんですよ。それは欠損じゃないですからね。欠損じゃないんですからちょうどいいんで、それにはやっぱり六分二厘五毛というこれを下げないで、余裕を残しておいたほうがいいのじゃないか。何か日銀の自主性というものがそこなわれて、何か他の圧力によって引き下げられたような気もするのでありますが、その点、これは見解の相違になるかもしれませんが、私は私なりにそういう考えを持っているんですが、いかかでしょう。
  99. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの公定歩合は下げないでそのままに置いておいたほうがよかったではないかという木村先生の御意見、確かにおっしゃることは私はよくわかるのでございます。いまもお話がございましたように、いろんなちぐはぐが日本経済に起こっておりますことの原因があまりに高過ぎる経済成長にあるということは、私どもも全く同じ考え方を持っております。いまの状態で落ちついてまいりますと、経済成長も一時予想されたよりは低くなってくるのではないかと思っておりますが、この成長率の落とし方をどのくらいのテンポで落としていくかということは、経済にあまり大きな波動を起こさないうちにやっていくということになりますと、その落とし方がなかなかこれはむずかしいと思います。しかも、計画経済ではございませんので、少し行き過ぎますと案外大きなところまでいってしまうということもございますので、まあわりあいに用心深く持っていかなければならない。それで、私どもは、三十九年から四十年にかけましての推移を振り返って参考にいたしておるのでございますが、そのときに比べますと、現在の経済活動はまだまだ相当深いところにございまして、ですから、一部で言われますように、これに政策不況だとかそういうようなことは別に起こっておらないと思います。したがって、その点については、私どもも、不況を引き起こすおそれがあるから金融を緩和しなければならないとは考えておりません。先ほども申し上げましたように、引き締めを開始しましたときの目的をほぼ達したと考えましたゆえに緩和措置をとったわけで、これで景気を刺激するとかいったような考え方は毛頭ございません。それで、公定歩合につきまして今度引き下げをいたしましたのは、実は、先ほどもちょっと申し上げましたが、昨年九月の引き締めが、資金ポジション指導とそれからいまの公定歩合というものを一緒にスタートさせておりますので、政策変更につきましては、やはりもとへ戻すという意味で両方もとに戻すということが政策の筋としていいのではないか、そしてそこへ戻しておきまして次の変化に対する対応の仕方ができるだけ早くできるように準備しておくことがいまの金融政策の弾力的運用に適当であると、こういうふうに考えたわけでございます。いまお話がございましたが、ほかからの圧力というものは全くございません。大企業の金繰りが苦しいというのは、ことしの一月の下旬からずいぶん大きな声で言われております。大企業の場合には声が大きゅうございますから、それがいろいろよく出てくるのかもしれませんが、私どもは、いま申しました経済の諸指標の動きを十分見まして、目的をほぼ達したという考え方で決定し実行したわけでございます。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 消費者物価の……。
  101. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 消費者物価の問題は、確かに、お話しのように、非常に重大な点だと思います。ただ、私どものいままでの経験、それから全般的なものの考え方といたしましては、金融政策が直接効果を持つ物価は卸売り物価である。卸売り物価の安定を通じて消費者物価の安定につながると。消費者物価につきましては、ですから、金融政策の関係は間接的になる、こういうふうに見ておるわけでございます。したがいまして、卸売り物価が五ヵ月間安定したと。まあ十月がほぼ横ばいでございますので六ヵ月間になりますけれども、そういうことは、やはり金融政策の効果であると。それで、これは、やがて、あるタイムラグはありますけれども、消費者物価に対して安定的な効果はそちらの面から発揮するはずであるというふうに考えております。ただ、消費者物価につきましては、卸売り物価とつながる項目のほかに、料金類でございますとか、あるいは野菜でございますとか、そういうようなほかの科目の変化がございますから、卸売り物価から来る安定的な要素がそれによって消される。それ以外のいまの野菜とかそういったものによって消されるおそれは十分ございます。そういう意味で、われわれとしては、消費者物価国民にとって最も直接的な物価でございますし、通貨価値の維持という面から言っても決して消費者物価を無視するわけではございません。ただ、金融政策との関連におきましては、やはり卸売り物価の安定ということがまず第一の目標であってしかるべきだと、こういうふうに考えておるのでございます。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は今後御検討願いたいんですけれども、ただいま、総裁は、日本銀行は中央銀行として貨幣価値の維持は非常に重要な使命であると言われた。その場合に、卸売り物価消費者物価との関係は、私は、従来の一般説とはちょっと違った考え方を持っているんです。と申しますのは、最近の物価値上がりは、たとえば大企業のほうの生産性が非常に向上する。大企業の生産性の向上と、生産性の低いほうですね、中小企業とか、あるいはその他農村とか、いろいろありますが、そこで、いわゆる生産力格差から消費者物価が上がるという説が通説なんですよ。たとえば、生産性が高いほうは、収益が多いから、そこで賃金を上げる。賃金を上げると、労働力不足だから、中小企業のほうも賃金を上げざるを得ない。そうすると、中小企業はそれを生産性でカバーできないから、結局、価格を引き上げてカバーする。それで全般的な物価上昇になるというのが、一応最近の通説のようですね、近経学者の中では。しかし、その逆のことも私は言えると思うんです。というのは、資金も資材も労働力もそうした大企業のほうに、たとえば重化学工業中心に重点的にそっちのほうに投入する、そういうことによって生産性が上がるわけですね。生産性が上がるから、卸売り物価をあまり上げなくてもよろしい。卸売り物価が安定する。卸売り物価の安定ということは、他面において生産性の低いほうに物や金や労働力が行かないということなんですよね、逆に今度は。そっちのほうに行くのを重化学工業中心のほうに重点的にそっちのほうに向けるから、そっちのほうは卸売り物価はあまり上がらないで済むのであって、そのかわりに、生産性の低いほうは、物も金も労働力も行かないから——本来なら、生産性の低いほうに資金なり労働力なり資材なり十分供給することによって物価値上がりを食いとめることができると思うんです。ですから、卸売り物価消費者物価との関連性につきましては、結局、そういう点に問題があるんで、したがって、ですから、大企業に対する過熱を防ぐために資金面からこれを抑制するということが、今度は生産性の低いほうへ資金を十分流す。それで効率を上げさせる。資金が行けば、それにくっついて労働力も資材も行くでしょうからね。そういう着想に立つべきじゃないかと思うんですよ、私は。そういう考え方に立てば、卸売り物価の安定が逆に消費者物価値上がりを来たしている。つまり、消費者物価値上がりの犠牲において卸売り物価が安定しているという面がある。そればかりじゃないけれども、そういう面がかなり強いと思うんですよ。そういうことから、やはり金融政策として卸売り物価だけに重点を置かないで——卸売り物価に重点は、直接ではそれでけっこうですがね。しかし、それは、いま私が申したような関連においてやはりとらえなきゃいけないのじゃないかと、こう思うんですよ。ですから、今後物価対策として金融政策を考える場合、単に卸売り物価を安定させるというだけでなく、それは結局は従来は消費者物価値上がりを犠牲にして卸売り物価が安定したという認識に立って今後金融政策を運用される必要があるのじゃないか。そこで、私は、特に消費者物価というものも指標の中に入れてやはり考えられたほうがいいんじゃないかと、こういう気がしているんですよ。特に最近値上がりがひどいですからね。その点をひとつ御所見を承りたい。
  103. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに、消費者物価の問題は、先ほども申し上げましたように、国民生活には非常に密接な関係のある数字でございますし、われわれとしても、もちろんそれを別格に考えておるわけではございません。できるだけ消費者物価を安定させる努力をしなければいけない。ただいまの御指摘がありました、大企業が金と労働と資材をたくさんとってそれによって生産を大きく伸ばし、そのために中小企業のほうへそういう金あるいは労力が回らないという点が中小企業製品の価格の上昇を招き、そういうものがウエートの高い消費者物価を上げる、そういう関係にあるのは、御指摘のとおりだと思います。ただ、私どものとりました金融政策も、結局は都市銀行を中心に引き締めを実行いたしました。それは、結局、大企業に対して資金面から伸びを押えていくということをまず目的としたわけでございまして、それで、先ほどもちょっと申し上げましたように、ことしのもう一月の終わりには大企業から資金の不足について不平が大きく出ましたのも、最初の狙いと申しますかが大企業を中心とする経済の伸びを穏やかにするということであった結果であろうと思うのです。いまのような情勢でございますと、結局、日本のいまの重化学工業化してまいりました産業の中で、やはり大企業の経済活動が穏やかになることが、マクロの経済成長を議論するときには一番ポイントであろうと思う。そういう意味での金融政策の狙いは、ただいま御指摘のありましたのとほとんど結果においては同じになっているのではないかというふうに思うのでございます。  それから先ほど、私が、卸売り物価が安定することが消費者物価の安定につながるというふうに申し上げましたのは、実は、物価という段階でとらえますと、それは関連があると。御指摘のあったように、卸売り物価の安定する原因につきましては、また違う見方が確かにあり得ると思うのでございます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、今後、あんまりとらわれなくてもいいんですけど、安定を考える場合に、そのにらむ指標として、消費者物価というものを入れてどうして悪いのかと思うんですよ。やっぱり、日銀としては、通貨価値の安定するのは非常に重要なんですから、消費者物価が非常に上がるということについて、金融政策としても、赤信号なり黄色信号の一つであるというふうに掲げる、そのほうが適切じゃないか、省くよりは。その点はいかがですか。
  105. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私どもも省いておるのではございませんけれども、その動きをどの程度ウエートを置いて考えるかというところであろうかと思うのでございます。実は、ここの手元に消費者物価数字がございますけれども、ことしの四月には全国の消費者物価は前年同期に比べまして八・三の上昇でございます。それが、五月に七・六になり、六月に六・八になり、七月に六・二になり、八月に五・八になり、ここまでずっと下がってきたわけであります。九月になって急にまたジャンプいたしまして七・四になり、それから十月にはおそらくもっと高くなるだろうと、こういうような動きをしておりますので、もちろんこれについて十分注意は払いますけれども、卸売り物価の扱い方とはある程度変えざるを得ない面があることは御了解いただきたいと思います。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 鈴木委員からも御質問があるそうですから、あと一つだけです。それは、もう一つ、通貨価値の安定を考える場合、それから日銀が通貨政策を行なう場合、にらむべき経済現象として、アンバランスの問題ですよね。これは、たとえば成長率を一一・一%程度に落ちつかせればいいというだけではなくて、その中身ですね。これはさっき福田大蔵大臣にも質問したんですが、中身が非常に問題になってくると思うんですよ。やはり均衡のとれた一一・一%でないとですね。特に私は痛感するのは、四十五年になりましてから非常にアンバランスがひどくなってきたような感じがしますし、また、通産省とかその他から資料をもらっていろいろ調べますと、アンバランスがいままでよりひどくなってきている。原料の面とか、それから電力、あるいは工業用水とか、輸送の面とかね。ですから、そういう点もにらんで金融政策をやはり質的に考えていかなければならぬということなんですよ。それで、結局、結論は、そういう面から言って、やっぱり早過ぎたのじゃないか、なぜそんなにあせる必要があったのかということなんです、最後の総括は。
  107. 佐々木直

    参考人佐々木直君) どうも、まだ早過ぎたというお話でございますけれども、私どもといたしましては、先ほども御説明申し上げましたように、やはり一つの総合した政策として打ち出したものでございますから、一応目的を達したと考えられるときには、やはり総合的に緩和するのが適当であると、こう考えた次第でございます。  いまのアンバランスの問題は、いまのような経済体制でございますと、金融面から産業別にこまかい調整をいたすことがなかなかむずかしいことではございますけれども、もちろん、各産業ごとの需給関係につきましては、資金を供給する側でも十分見ておる点でございまして、おそらくそちらのほうからいまいろいろ業界別に持っておられます計画などもだんだん修正されて実行されるのではないかと、こういうふうに考えております。
  108. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 多少質問が重複するかもしれませんが、最初に伺いたいのは、今回まあ国際収支の黒字が続いておる中で金融の緩和となったわけでありますが、まず、国際収支の黒字基調のことでお伺いしたいんですが、これが続くというと、まあ赤字になっていいというわけではありませんけれども、現在の状態がずっと続きますと、国際収支の政策、特に円の平価の問題でありますね、この問題が必ず諸外国から回答を迫られてくるというような事態が出てくるのではないかということは考えられるわけであります。これは御答弁によってはたいへんな問題になってしまうので、深いずばりという御答弁はなかなか容易じゃないと思いますのですけれども、どういうような考えをいま総裁はお持ちかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  109. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに、最近、国際収支は黒字基調が続いておりまして、現に十月も外貨準備は相当金額ふえたわけでございます。したがって、外国でも日本の国際収支の黒字がいろいろ問題にされておることもこれは事実でございます。ただ、私どもが見ております国際収支の実体、この数字を見ますと、昨年は国際収支の総合収支の黒字が非常に大きゅうございましたが、ことしに入りましてからその黒字はやや縮小ぎみでございます。基本的な貿易収支について見ますと、昨年とことしでは貿易収支の黒字の金額はほとんど変わっておりません。そうなりますと、貿易に関連します二つの赤字、一つは運賃関係を中心といたします貿易外の赤字、それからもう一つは延べ払いを中心とします本邦資本の流出、この両方が両方とも赤字になるわけでございますが、これが貿易量の増大に伴って赤字がふえてまいります。したがいまして、貿易の黒字が同じ金額でありますと、いま申し上げた二つを総合した広い意味での貿易の実体の黒字はやや減りぎみであると、こういうことでございます。もちろんまだ貿易の黒字が大きゅうございますから、その赤字の増大で基本的に問題は起こっておりませんけれども、そういう傾向があることは注意しておく必要があると思います。  それからもう一つは、昨年からことしの一、二月ごろにかけての日本の国際収支の黒字には、市場を経由します外国人投資の流入超過がずいぶん大きな割合を占めておりまして、昨年中の数字を見ますと、黒字の三分の一ぐらいはその流入によって行なわれておる、こういうことでございます。そういう諸点を考えますと、もちろん当面国際収支について問題はございませんけれども、そうそう日本の国際収支の黒字が一時のような勢いで拡大して大きな問題を引き起こすということではないのではないか。もちろん、株式投資などにつきましては、情勢の変化によってどういうふうに動くかわかりませんから、あまり予断は許さない点がございますけれども、本質的に考えますと、そういう点がお話しができると思うのであります。  それからまた、いまの日本の置かれております国際環境からいいますと、多角的なまたは企業の立場からする海外援助、海外投資、そういうようなものも今後どうしても増大していかなければならない。そういう点を考えますと、積極的な将来の発展策、あるいは世界の経済へ寄与する態度から申しまして、ある程度のそういう貿易その他によって入ってまいりました資金を海外にまた出すという面の配慮が非常に必要であろうと思います。たとえば、世界銀行に対する資金供給なども、これは多角的な援助のあらわれだというふうに考えておるわけであります。また、今後原材料を確保するための企業の立場からの海外投資ということも、これは将来の経済発展のために必要な条件づくりであるというふうに考えておるわけであります。  そういうようないろいろの点を考えますと、いま当面国際収支の好調によって外貨準備がふえておりますけれども、それが円の問題に影響する、円の相場の問題に関連を持つということは、当面全然考えられないように思っております。私、先先月、国際通貨基金の会議その他で海外に参りましたけれども、その際も、当面の問題として円の評価の問題についての話は全く今回聞かなかったような状況でございます。
  110. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その問題はよくわかりましたが、いずれにしても、国民の間にこの円の問題は非常に不安が底流しているわけでございます。慎重にお願いしたいと思います。  それから先ほど、総裁の答弁を伺いまして、いろいろな目的がほぼ達成されたということで今回の緩和になったということなんですが、前の金融引き締めの際に政府が言っておりましたのは、過熱防止という予防的な意味と、それからわが国経済を安定成長の軌道に乗せるということ、生産第一主義、量的第一主義の経済政策を国民生活優先の政策に変えるということを何度も何度も言ってこられたわけです。総裁として、いま申し上げたような、過熱防止のほかに、経済を安定成長に乗せるとか、生産第一主義から国民生活優先主義にという政策の転換がなされたというような御判断があってこういうような公定歩合の引き下げということになったのかどうかということですね。  それで、先ほども、消費者物価の問題、これを指標にという木村委員質問がありました。ほんとう国民感情のほうから見ますというと、こう物価が上がっているのにどうして引き締めがゆるんでしまうんだろう、引き締めの理由になったいわゆる物価高というものも一向緩和されていないではないかということは、これは国民感情にはものすごくあるわけです。そういう点が今回の引き締めではあまり効果がなかったというふうにしか消費者物価の上では見られない。国民にとってはその点は非常に不満になるわけです。なぜそれじゃゆるめたんだということになってくるわけでありますが、そういうような二点についてまずお伺いしたいと思います。
  111. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 今回の引き締めの目的が過熱を未然に防止する、それから経済を安定成長路線に乗せるという点、これは確かに私どももその目的であったことははっきり記憶いたしております。ただ、国民生活の優先ということ、この問題は、いま申し上げました二つの目的を通じてそれが実現されるというふうに考えたわけでございまして、金融政策によって国民生活優先の経済運営というものを直接もたらすということはなかなかこれはむずかしい。結局、経済成長があまりに高い、そのためから来るいろいろの物資の需給の逼迫その他、そういうものをできるだけなだらかにすることによって国民生活のほうに潤滑ないろいろな影響が出てくると、こういうことを期待したわけであろうかと思います。そういう意味で、これからも、われわれとしては、もちろん、いままでの量的な成長に片寄っておりましたこの成長の行き方を、今度は質的な成長のほうに重点をだんだん移していかなければならないと考えております。そういう点への努力は今後も続けなければならないと思っております。  それからただいま御指摘のありました消費者物価の問題、これは先ほども木村先生から御指摘のあったとおりでございまして、私どもも決してこれを無視するとかないがしろに考えているわけではございません。ただ、重ねて申し上げますように、金融政策の直接な目標というよりは、間接的な目標であるという、そこに多少程度の差があるというふうに考えておるのでございます。
  112. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総裁のことばにあげ足をとるわけじゃないんですけれども、日本銀行として金融問題を取り上げ、また、それを操作していくということになれば、やはり最終的な目標国民生活の安定であろうと思うのですね。そうすると、企業サイドであるとか産業界サイドというものの見方よりも、国民生活サイドからの見方というものを重視する必要があるんじゃないか。先ほどからの御答弁を蒸し返して申しわけないんですけれども、確かに、卸売り物価は、十五ヵ月間連騰を続けたのが、五月以降落ちついてきております。だからといってこれがここではっきりと政策の転換がされたということでない限りは、またこれは上がらないという保証は私はないような感じがする。まあ弾力的に運用すればということで、そのときになればまた考えましょうということになるかもわかりませんけれども、私は、そういう点で、今回の金融の問題にしても、自動車であるとか、家庭電器であるとか、合繊、鉄鋼というような高度成長をささえてきた有力な産業、そういうものの不振、いろいろ理由はあったと思います。カラーテレビの問題等、あったと思いますけれども、そういう有力な産業が多少不振が目立ってきた、そのためのテコ入れというふうな感じを受けないわけではない。そうすると、それは産業界サイドからのものの見方しか日銀はお持ちじゃないんじゃなかろうかと国民としては不安に思うわけであります。はっきり申し上げれば、そういう業界が不振になるのも、見通しを誤った設備過剰、こういうことから来ているわけです。過剰投資とかということが一つの大きな原因になっている。それを、日銀が、国民生活サイドじゃなくて、何かそちらのほうのサイドから金融の緩和をやったというふうに私どもは受け取りたくはないのですがそう受け取らざるを得ない。何か妥協したのじゃないかというふうに思うのでありますけれども、くどいようですけれども御説明をお願いしたい。
  113. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私どもは、金融政策の緩和ということばで呼ばれておりますこの措置というものは、昨年の九月以前の姿に戻ったんだというふうに観念しておるわけでございます。決して、その後に起こったいろいろな経済の需給のアンバランスの問題、たとえばカラーテレビの売れ行き不振とか、そういうようなことをこの措置によってカバーしようとかテコ入れをしようというような思想は毛頭ございません。昨年の八月の段階ではそういうような問題は全然なかったわけでございますから、昨年の八月の状態へ戻すということは、いまの産業側からの要望とかなんとかいうことから全く離れまして、全体の経済の動きとその判断から決定した次第でございまして、この点はぜひひとつ他の圧力によって実行したのではないという点を御了解いただきたいと思います。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連で一つだけ。非常にこだわるようですが、鈴木さんも何回も国民生活サイドと言われましたが、消費者物価の問題ですね、こだわるようですがね。消費者物価に金融政策の影響の仕方は確かに間接ですよね。間接間接と言われますけれども、金融政策の目標としては、つまり通貨価値の安定にあるのでしょう。通貨価値の安定ということは、卸売り物価消費者物価と両方含めて考えなければならないわけですよ。ですから、卸売り物価だけを目標にしたのではいけないのであって、消費者物価というものもあわせて目標にしなきゃいけないと思うんですよ、貨幣価値の安定という場合は。ただ、金融政策の影響としては間接的になってくるでしょう。その点の認識の仕方が、どうも総裁は、鈴木さんがいま言われましたように、国民生活サイドと違ったほうから考えているのじゃないか。目標としては、貨幣価値の安定という場合は、消費者物価というのを非常に重視していくというそういう認識に立つ必要があるのじゃないかということを思うんですがね、非常にこだわるようですけどね。
  115. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私、消費者物価を重視する態度というものを決して否定しているわけではないのでございます。ただ、弾力的に運営しなければならない金融政策の運営につきましては、消費者物価の問題と卸売り物価の問題とこの二つのどちらに機動的な運営のためのものさしをより多く使うかといえば、やはり卸売り物価のほうにより多く使うべきだと、そういうふうに考えておるのでありまして、全体のものの考え方といたしまして消費者物価を大事にしていく、重視していくということは、これは当然必要なことだと考えます。
  116. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総裁に、今度の公定歩合の引き下げによる金融緩和の政策、これについていろいろポイントがあると思うんです。私は五つのポイントを申し上げますので、その見解を伺いたいのですが、実施のタイミングは、目的が達成されたということでされたのか、それとも、このほうが国民の生活のためによいということでやったのかという実施のタイミングの問題。もう一つは、引き下げ幅が、旧に戻したんだというお話でありますけれども、はたして妥当ということなのかどうなのかということ。それからインフレ抑制効果というものはどの程度お考えになってやったのかということが三つ目の問題です。公定歩合の引き下げということとインフレを抑制する効果というこの両方面でございますが、つまり物価抑制ということです、それについてはどういうふうな判断をしたのか、卸売り物価しかお考えになっていないようでありますけれども。それから民間設備投資の先行き、これをどういうふうに判断されたのか、今後の財政とか金融政策というものはそれでは今後はこうなるというのが自然に出てくるわけでありますけれども、そういう五つのポイントについてはどういうふうにお考えで今回の措置となったのかということ。  それからもう一つここでついでに伺っておきますけれども、昨年の引き締めの理由は、過熱予防、それから物価の安定ということだったわけです。安定成長というような問題もありました。ですが、どこまでに成長率をするということを言わなかったということから、黒字国が引き締めをやるということでだいぶ反論もあったと思うんです。で、先ほども成瀬委員からもその点についての質問がありましたけれども、ことしならことし、当年度の政策目標としての経済見通しというものをはっきり立てて、それにレールを乗せるような、政策と金融が一体化したというふうに持っていかない限りは、ほんとうの効果というものは今後出てこないのではないか。いわゆるポリシーミックスという効果というものをあげようとしてもこれはうまくいかないのではないかと思うのでありますが、その点についての見解もあわせてお伺いしたいと思います。
  117. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一の点は、実施のタイミングがどうであったかということでございます。実施のタイミングにつきましては、先ほどから御説明しておりますように、昨年の九月の引き締めを開始しましたときに考えておりました諸指標が大体所期の目的に近く落ちついてきたと、そういう判断から実行いたしたのでございまして、タイミングにつきましては、大体効果が出てきたと判断すればなるべく早いほうがよろしいと、こう考えたわけでございます。国民生活に対する影響につきましては、具体的には消費者物価であろうかと思いますけれども、消費者物価につきましては、先ほども申し上げましたように、上昇の理由が金融政策の直接関係し得ないそういう性質のものであったために、消費者物価の問題に重点を置いてタイミングをおくらせるということが適当ではないと考えた次第でございます。  それから第二の引き下げ幅の問題でございますが、確かに〇・四%ぐらい上げたのを〇・二五しかおろしておりませんけれども、これは日歩建てから年利建てに変えました関係でございまして、ものの考え方としては引き締め前の状況に戻すというふうに考えてこういう引き下げの幅を決定したわけでございます。  それからこれがインフレ抑制の効果をもうあげたと判断したのかということでございますが、この点は、確かに、さっきからいろいろ御指摘のございました点で、消費者物価を見ます限り、インフレが落ちついたということはまだ申し上げられません。しかしながら、金融政策の面で直接効果を及ぼし得る面では抑制の効果がある程度実現できたと、こう考えた次第でございます。  それから設備投資につきましては、最近いろいろ各方面で四十五年度下期の設備投資の予想、あるいは四十六年度の予想などをつくっておられます。そういうものから見ますと、やはり一時に比べますとだいぶ安定してまいっております。それからまた、設備投資につきましての先行指標であります機械受注高の数字などから見ても、だんだん落ちついてきておるということが見られますので、この辺は一時に比べますとだいぶ鎮静して、これも政府見通しに近い数字になってくるのではないかと思います。  それから最後の財政金融政策の問題、ポリシーミックスの問題でございますけれども、長い今後の安定成長を考えますときに、この両者のかみ合わせと申しますか、それは非常に大事なことだと思います。ただ、具体的に、たとえば成長率を一一%でなければならない、それを一〇%台におろさなければならないとか、そういうような数字につきましては、ある程度の見当はつけますけれども、あまり具体的に目標を立てますことはなかなかいまの経済体制ではむずかしい点があるのではないか。ですから、少しあるいは乱暴だとおっしゃるかもしれませんが、ほぼ大体の見当で運営していかざるを得ないのが現状ではないかと考えております。
  118. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、最後に、いま成長率の問題が出てまいりましたが、結局、四十年から四十五年は大体GNPは一二・五%。そうすると、今度、四十五年から五十年ですね、それの大体の見通しを、あなたはいま一二・五ということは決しておっしゃらない、一〇%とかあるいは一一%ということをおっしゃるのですが、それと関連して、いま一番問題になる消費者物価というものと関連があるわけです。ですから、日銀が金融政策をやるということは、民間の設備投資をどのくらいに押えていくかというのと、それからもう一つ、鈴木君が指摘しておる、今後出てくると予測される公害に対する設備投資と財投の投資だと思いますが、こういうのが成長率をきめていくと思います。成長率は幾らかという数字を頭からきめてかかることは容易じゃないとおっしゃるが、片方ではインフレということばもちょいちょい出てくるわけですよ。ことばを認めておみえになるとか認めておみえにならないという問題ではなくて、やはり、みんな、インフレになったんじゃないか、あるいはそういう傾向にあるとか、いろいろな言い方はあると思いますけれども、やっぱし貨幣価値というものがどんどん下がっていったじゃないかと。先ほど木村委員指摘されたのは、老齢年金、いわゆる厚生年金等をもらっておる人たちは、もう貨幣価値が下がることによってたいへんなしわを来たしておると。そういうアンバランスが出てきたじゃないかというような点がありますから、日銀総裁として、これだけの数字ですということになると、これは政府との関係、いろいろなことがあると思いますけれども、しかし、ある成長率というものを見てみえるそのことは、逆にいえば消費者物価はどうだということ、逆にいえば国民の生活がどうだというふうに押えてその金融政策というものをお立てになっておるのじゃないかと思うわけですから、どうもそういうことを言うべきじゃないとおっしゃる問題で話がみんな議論しにくく思うんですよ。ですから、私は、日銀としては、こういう立場に立っておるんだという点を明確にされたほうが、かえっていいんじゃないかと思うわけです。ですから、そういう点が、一番最初に申しましたように、遠いところからものを言っておるような、小さい声でしか聞こえないという歯がゆい思いがするわけですから、ざっくばらんなそういうことをお聞かせ願えないものかと、こう申し上げたいのですが、いかがでしょうか。
  119. 佐々木直

    参考人佐々木直君) どうも、経済成長の今後の見通しでございますけれども、そういうものの作業では、日本銀行政府と一緒にと申しますか、われわれも参画してそういう計画がつくり上げられておるわけでございまして、その数字につきましては、私どもとしては、政府見通しが基準になるものと、こういうふうに考えておるのであります。
  120. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 速記をとめて。   〔速記中止
  121. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 速記をつけて。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多忙中のところ本委員会調査のため御出席をいただき、まことにありがとうございました。  これからの会議の進め方につきましては、まず最初に十五分程度岩佐参考人から意見をお述べいただき、その後委員の方々からの質問にお答えいただくという方法で進めたいと存じます。  それでは、岩佐参考人、お願いします。
  122. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) それでは、最初に、一言富士銀行の頭取といたしましておわびのことばを述べることをお許しいただきたいと存じますが、富士銀行の雷門支店におきましてまことに御承知のような不祥事件を起こしまして、これは全く私の監督の不行き届きからのことでございまして、世間をたいへんお騒がせし、かつ、金融機関、銀行の信用を傷つけましたことに対しましては、私といたしましては、まことに申しわけなく存じておるところでございまして、この機会に心から深くおわびを申し上げたいと存じます。  それでは、本日、私と全国銀行協会の副会長であります松本がお呼び出しを受けた御趣旨は、最近の銀行の不祥事件についてであるとお聞きしております。後ほどの御質問の御便宜もあろうかと考えまして、まず、私から、こうした不祥事件発生の背景、原因、今後の対策などにつきまして、全銀協会長の立場から考えておりますことを申し述べさしていただきたいと存じます。  銀行の不祥事件発生の状況につきましては、金融政策当局からお聞きしておりますところによりますと、最近の銀行の不祥事件の発生は、遺憾ながら件数、金額ともにふえております。ただ、伝えられますように管理者の不祥事件だけがふえておるというわけでは必ずしもございませんので、各階層とも全般的にふえておりまして、ただ、管理者の不祥事件は、権限が与えられておりますだけに金額が大きくなりやすいということであろうかと存じます。  いずれにいたしましても、本来信用を本位とする銀行におきましてこうした不祥事件がふえているということは、経営の任に当たる者といたしましては、社会に対しまことに申しわけない次第でありまして、これが是正に全力を傾けたいとかたく決意している次第でございます。  さて、こうした不祥事件の発生に対し、深い反省の上に立ちましてその原因を考えてみますと、大体次の三点にしぼられてくると存じます。  第一は、金融機関の外部における激しい預金獲得競争のために、結果といたしまして内部管理がおろそかになりやすいということでございます。  第二は、銀行業務の多量化と多様化が急速に進展いたしまして、これに即応する事務管理体制が現在いわば過渡期、試練期ともいうべき時期にあるということであります。  第三は、金銭の価値並びにその取り扱いに対し、道徳的感覚をしっかり持っていなければならない銀行員が、その感覚が鈍くなっているということであります。  以下三点につきまして、若干申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、銀行の過当競争に関してでございますが、その大きな要因といたしましてあえて申し述べさせていただきますと、戦後の経済復興、経済高度成長の過程を通じまして、一貫して資金需要超過の環境が続いたということであると存じます。その原資を銀行が調達するため、預金増強の努力が払われたのでございますが、こうしたことの行き過ぎから外部活動重視の姿勢が生まれ、もちろん銀行経営にとりまして外部・内部は車の両輪でございまして、バランスがとれておることが肝要であると常々注意しているところではございますが、あるべき姿から逸脱した預金勧誘、ひいては内部がなおざりにされるというような環境が結果として生じたと言えるのではないかと存じます。しかし、理由は何であれ、こうした弊害を生じさせている過当な競争は、全銀ベースにより強く自粛していくべきであろうと考えております。  次に、銀行業務の多量化と多様化が急速に進展して、これに即応する事務管理体制が現在いわば試練期ともいうべき時期にあるということでございます。御承知のように、銀行経営におきましては、昭和三十年代から四十年代にかけまして業務の多量化と多様化が急速に進展したわけでございます。具体的に申しますと、都市銀行だけをとりましても、この五ヵ年間に預金口座数が五〇%も増加しております。また、各種の消費者ローン、公共料金等の自動振替決済、クレジットカード、新種預金等々の新しい商品が続々と開発されてまいりまして、現在の銀行経営は戦前あるいは二十年代とは様変わりな状況にございます。こうした銀行の大衆化への努力により、銀行は、国民生活と切り離しがたく密着し、その生活向上の一翼をになったと言えようかとは思います。しかし、このような銀行の大衆化への道は、当然事務量の増加と複雑化をもたらしたわけでございまして、これに対しまして私どもはコンピューターを中心とする機械化と事務手続の合理化により対処してまいったわけでございます。そして、各銀行ともこの課題に全力をあげて取り組んでいるのが現状であろうかと思います。したがって、こうした問題に関して今後全銀協ベースでの情報交換を活発にいたしまして、各行の総知を結集して改善に努力する決意を固めておる次第でございます。  第三に、若干社会的風潮と言えるかとも存じますが、近年のすみやかな高度の経済成長、物質生活の向上の結果、かえって金銭の価値に対する道徳的感覚が鈍くなっておるということでございます。もちろん、大切な預金者、お取引先の金銭を取り扱う銀行員としては、このようなことがあっては断じてなりません。このことにつきましては、常々きびしく指導しているところでございますが、遺憾ながらこのような道徳的感覚の鈍化が金融機関の不祥事件の原因になっているかとも思いますので、今後の行員の指導教育にあたり十分配慮してまいらねばならないと存じます。  以上、最近の銀行の不祥事件について、その背景、原因について考えておりますことを申し述べさせていただきましたが、これに加えまして、金融機関が秘密裏に事態を処理しようという傾向があったことがこうしたことを助長したのではないかと深く反省しておる次第でございます。去る九月八日の全銀協理事会におきまして、最近の銀行経営の全般にわたり抜本的に見直そうということで、業務管理等改善委員会が各銀行の頭取を委員として発足をいたしましたのも、全くこうした問題意識によるものでございます。去る十月十三日、第一回の検討結果を全銀協の申し合わせとして発表いたしまして、早速実施に移した次第でございます。この中には、いまさらの申し合わせであるとの御叱正があるものもあろうかと存じますが、こうした申し合わせを第一段階といたしまして、今後精力的に検討し実施してまいるつもりでございます。一面競争する銀行同士の申し合わせなので、率直に申しましてなかなかむずかしい点はあるのでございますが、一連の不祥事件の発生を深く反省いたしまして、かたい決意をもって臨む所存でございます。  不祥事件を起こしました銀行を経営する者といたしまして、いろいろ口幅ったいようなことを申しましたようでございますが、お許しをお願いいたしまして、最初の陳述をこの辺で終わらせていただきたいと存じます。ありがとうございました。
  123. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 参考人に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。
  124. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最初に、銀行局長から御答弁願いたいと思いますが、いま、会長さんが、最近の不正事件の状況が、大蔵省のほうから聞いておると、件数がふえたり金額もふえておると、こういう話でしたが、ここ三年間くらいは、どのくらい件数があって、どのぐらいの金額か、お聞かせ願いたいと思います。
  125. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ここ三年間の状況を申し上げますと、大体におきまして、件数は四十三年が特に多うございまして、三百件近い二百九十六件という数字でございます。事故金額にいたしまして四十三億三千七百万円、これは相互銀行、信用金庫も含みましての数字でございます。それから四十四年が二百四件、四十二億七百万円。それから四十五年が、これはフィスカル・イヤーでございませんで、カレンダー・イヤーのほうでございますから、十月までで、まだ二ヵ月ございますが、十月までの集計で申しますと、百九十六件、五十一億四千四百万円。したがいまして、件数におきまして、まあ四十三年の二百九十六件は特別でございますが、大体まあ二百件前後、事故金額にいたしまして四十億から五十億というようなところでございます。
  126. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたのほうからこういうりっぱな年報が出ておりますね。これをちょっと見ていたのですが、金額とか件数とかそういうようなことは隠してあるわけだね。いま岩佐さんの指摘されたところに、とかく秘密裏に解決しようとしたというのも一つの誤りじゃなかったか、こういう反省があるんですが、大蔵省は、そういうことについて、同感ですか、それとも、ああいう秘密主義がよかったかというふうにお考えになるのかどうか。
  127. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 全く同感でございます。同感と申しますのは、秘密にすべきではないというふうに考えております。
  128. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、来年度は、こういう年報の中にもそういうような件数が明らかにあがってくると、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  129. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 改めたいと存じております。
  130. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 会長さんにお尋ねしたいと思いますが、私も銀行の姿勢の問題についていろいろとお尋ねしようとしておりましたところ、原因なり、それに対する今後の対策と申しますか、協会としての異例な申し合わせをしたんだと、十分注意をすると、こういうお話で、そういう点はよかったと思いますが、巷間言われておることは、内部監査というのが行なわれておると。私は、大蔵省の監督をあんまりやるなんということは、銀行として恥なことだし、すべきじゃないと思っています。もっと銀行の自己の責任においてこういうことを未然に防いでいただきたい。それには、ダブル・チェックの内部監査というものがあると思う。その内部監査が内示監査のようになっちゃって、同僚がやったり同じ者がやるから内示監査というようなことばで言われて、どうもなれ合いのようになっているじゃないか、そこが悪いんだというようなことが指摘されておりますが、そういう点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  131. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) まさに先生の御指摘にありましたとおりでございまして、従来、ややともすると、予告した上での検査と申しますか、そういうようなことがありがちでございました。これは、検査をやります便宜という点から申しますれば、そういう点に便宜はあるわけでございますけれども、本来検査のあるべき姿を一歩間違えていたんではないかというふうに存じます。そういうような点、あるいは、検査の場合において、自分の担当しておるところの仕事を自分で検査するといったような事例もなきにしもあらずでございます。これも検査の方法としては誤っていたことであろうと思いますので、こういう点につきましては深く反省をいたしまして、富士銀行の場合におきましては、さっそくそれを改めるということを実行いたしましたが、全銀協といたしましても、この検査制度のあり方の問題については、いわば各銀行とも検査というものについてもっと権威を持たしてやるということ、これにはあるいは大蔵御当局の御協力も得ながら、みずからの手で権威をもって、そしてほんとうの検査の実効をあげていくということに努力いたしたいということで、先ほどもちょっと触れましたように、業務管理等改善委員会、これはここに列席の松本君に委員長をやってもらっておりますけれども、ここにおきましても、その検査制度の問題は重要な問題として取り上げて、ただいま全銀協ベースで検討中でございます。
  132. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたが原因にあげられた中に、過当競争の問題がございます。これは、まあ内輪話で言えば、一つは預金獲得競争なんです。預金を獲得するということは、結局、店舗をどれだけふやすかというのが一つの大きな問題で、店舗をふやすということになると、期末残高が預金としてどれだけあるかということです。そこで、まあ悪い話を言えば、貸しておいてそして預金をしてもらうというような、実にそれがために手の込んだやり方というものが行なわれておることは実際だと思うのです。そういうようなものが、大蔵省が監督をしてぴちっとやらなければできないものなのか、それとも、内部でそういうことを自粛しておやりになるのかどうか。もし業務改善委員会があってこれからずっと発展していけば、一つの自由化とも関連してまいりますから、今後の経営の方針と申しますか、そういうようなものにも入ってくるかと思いますが、いわゆる銀行の大きく言えば合併と申しましょうか、業務提携といったようなことにも発展をしてくる問題になってくると思う。過当競争を押えるということになればそうなる。それとも、いまの店舗をふやすのにああいう預金残高をただものさしにしただけでやっておるいまの大蔵省のそういう行政が悪いかということになると思う。だから、協会としては、その辺についてどういうような現時点において考え方をお持ちになっておるか、承りたい。
  133. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの先生の御指摘のような点、いままで若干事実としてあったと思いまして、その点についてはわれわれも深く反省をせねばならないと存じておるところでございます。銀行の経営者といたしましては、自分自身の銀行の中におきまして、いまの先生の御指摘のような、非常な無理をした計数をつくるといいますか、そういうようなことは本来あるべきことではないので、そういうことが万ないように指導しておるつもりでございますけれども、現実の問題として先生の御指摘のようなものが皆無であるということは私も遺憾ながら言い切れない点があると存ずるのでございます。結局、そういう問題を込めまして、つまりいたずらに量的な競争ということにのみ走るということが一番の問題の点であろうかと存じまして、正しい競争原理を生かしながら、そして銀行の経営の効率化をあげまして、そして預金者の皆様方、お貸し出し先の皆様方に奉仕していくというのが、当然銀行としてあるべき姿であろうかと存じておるのでございます。
  134. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一つ、あなたの原因の中にあげられたので、私は先ほどの——ちょっと話は戻りますが、いまの答弁で、過当競争を防いでいくということに対する対策は、今後改善委員会にまつとおっしゃるならばそれでいいと思いますけれども、とにかくこれは根本的な問題だと思いますから、十分御検討されて、もう当然自由化等の問題もありますですから、いまの御答弁の中で今後いろいろと対案が出てくるものと期待をして、この問題についてはそれでは終わります。  そうして、感覚の問題について、あなたは、銀行マンが金の価値に対しての感覚が薄れちゃったんだということを一つ原因にあげておみえになりました。それもそうかもしれませんが、私は、銀行は、金をおれが貸してやるんだ、おまえは借りるやつだ、おれに向かってサービスせいよという、悪いことばで言うとただざけ(酒)を飲むというような銀行マンの姿勢が非常に多いと思うんですよ。目に余るものがあると思っておるんですよ。そういう点についてはどういうふうにお考えになっておるのか、ずばり申し上げにくいことを申してたいへん失礼かと存じますけれども、こういう席ですから、私は銀行の姿勢を正すのが一番いま大切なときだと思いますから、もう遠慮なくずばり申し上げてさしていただきます。
  135. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 先生の御指摘のような点、あるいはいままでにおいてそういうことがあったのかもしれないという気も私は率直に申しまして反省いたしますが、私の考えておりますことは、銀行から資金を借りてくださる方も大切なお客さまでございます。預金をしていてくださる方はもちろんでございますけれども、資金を使ってくださる方も大切なお客さまでございます。したがいまして、預金をしてくださる方、資金をお使いくださる方、ともどもに銀行としてはりっぱなよいサービス、正しいサービスをしていかなきゃならないと、こういう考え方をしっかり持っておるということが最も大事なことではないかというふうに私は存じておるものでございます。
  136. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 感覚の問題について、私は、先ほどざっくばらんに申し上げたことで尽きますから。  その次に、歩積み・両建てですね。これを自粛するとおっしゃる。これは国会でしばしば問題になったことですが、銀行局長、いま大づかみに何%ぐらいありますか。で、あなたのほうの大蔵省から自粛通達が出ました。あの当時出ておったのは、四〇%ぐらいあったんですか、どのくらいあったか知りませんが、いまどのくらい——あの通達の出る前と、出てからいま現時点で何%ぐらいですか。
  137. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 拘束預金比率につきましては、先般公正取引委員会からも御報告がございまして、大蔵省側の調査と両方出ておるわけでございますが、大蔵省側の調査におきましては、都銀、地銀、相銀、信金全部を合わせまして、四十四年の——十一月と五月にいつも御承知のように調査をいたしておりますが——十一月のときに一六・九%でございました。それが、一六・二%に、若干〇・七%ほど低下をいたしております。ただ、その同時点をとりまして公正取引委員会のほうの御調査を拝見しますと、八・四%が九・五%へと、ややふえております。特に広義のものにつきましては、二〇・二が二二・〇と。ただし、これは、四十四年昨年の五月に比べますと、いずれもかすかながら低いということでございます。大蔵省調査の場合には、四十四年五月は一八・〇でございますから、それに対して五月調査が一六・二、それから公取の場合には、狭義が、昨年の五月が一〇・二でございますが、それが九・五、それから広義が二二・一が二二・〇というようなことで、昨年五月に比しますと、公正取引委員会、大蔵省調査、両方ともに下がっておりますが、昨年の十一月との比較におきましてはやや上昇をしておりますということで、今後ともこの点につきましては、まあ金融情勢が緩和をしてまいりますればまた若干この数字は減ってまいるかもししれませんが、なお監視を続けてまいりたいというふうに考えております。
  138. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一つ銀行局長に承りたいと思いますのは、例の架空名義預金なんですね。いま、銀行へ行きますと、みんな張ってございますですですね、その筋からのあれで架空名義はやってくれるなということで。もし問題を起こしてもというようなことで張ってありますが、いいことだと思いますが、それから吉國国税庁長官は、脱税幇助罪で悪質なところは訴えてやるぞなんて、これはどのぐらいあると銀行局長はつかんでおりますか。
  139. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 架空名義預金につきましては、実は銀行自身もわかっておりませんような関係もございまして、なかなか、どのぐらいあるかという感じをつかまえることがたいへんむずかしいしろものでございます。ただ、最近の税務調査等によりますと、税務調査の精度がだんだん上がってきた面もございますが、そこで部分的に出てまいりますところを見ますと、かなり架空名義預金というものは存在するということもわかっておりますので、感じとして申し上げるよりどうもしかたがないような性質の問題でございますが、たまたま無記名預金につきましての数字ははっきりわかっておりまして、無記名預金が、現在、預金残高総額の中で占めます比率が、ことしの三月で二%でございます。それは金額でございますが、口数は〇・七%でございます。それらから考えまして、これはたいへん大胆な推測でございますが、これに似たような水準かなという感じを持っております。
  140. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、大蔵省としては、これを認めておられるわけですね、いまは。無記名、架空名義——架空名義を認めるということはないが、無記名預金は認めておられると思いますが、今後これをなくせようというような方向ですか、それとも、将来ともこれを認めていかれますか。
  141. 近藤道生

    説明員近藤道生君) これは漸減をしてまいる、そしてまた、ずっと将来においては、場合によっては全廃というような事態が望ましいというふうに考えております。無記名預金の場合には、過去五年間に、四十年の三月には総預金に対しまして三・一%ございました。それが、現在、先ほど申し上げましたように、二%まで下がってまいっております。それから、いまのは金額でございますが、口数におきましても、〇・九%が〇・七%まで下がってまいっております。今後ともさらにこの比率を下げていくという方向が望ましいというふうに考えております。
  142. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは岩佐会長のほうにお尋ねしたいんですが、預金獲得競争からいえば、預けるほうの側でいえばやはり何か内緒の金にしておきたいわけですね。それから銀行の窓口で、架空名義でも、実際は顔見知りでいれば、第一線の人は私は承知しておると思うんですよ。全くの飛び込みでひょいと来てやられるそういうものもあるから、全部とは申しませんよ。全部とは申しませんが、顔見知りの方がおやりになることが相当数あるのじゃないかと、これは想像なんですが、そういうものに対して自粛されるということになるとすると、窓口でそういうことを注意すれば、よそへ逃げてしまうと思うんですよ、よその銀行へね。そこらあたりがつらいところだと思いますが、その辺のところをどういうふうに具体的に御指導になろうとしておるのか、あるいは、そういうようなこまかい話は改善委員会なりあるいはいろんなことで今後取り上げてお行きになるのか、まあそこまでは適当に各行とも自粛してやっていこうじゃないかというようなことで流されようとしておるのか、改善委員会の中の一つの議題としてこの架空名義なり無記名に対して自粛するということを、単にここでは申し合せを——歩積み・両建ての問題については自粛するということを申し合わされておるようでございますが、こういう問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  143. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの架空名義預金のほうの問題でございますけれども、これはただいまも銀行局長からのお話もございましたが、四十二年の十二月に全銀協としては次のような申し合わせをいたしておるのでございます。本人名義以外の名義による預金は、取引の安全性を確保するためから申しましても、これを受け入れないことを原則として確立していく。本人名義以外の名義による預金であることを知りえた場合には、本人名義にするように協力を求める。各行は自粛ポスターを店頭に掲示すると、こういうことで、架空名義預金を絶対になからしめるように努力をしてまいってきておるつもりでございます。それから、本年の六月には、さらに全銀協の業務部会で自粛を申し合わせをいたしまして、そして自粛の努力をいたしておるつもりでございます。先生のいまの御指摘のような点も率直に申しまして若干あるのかとは思いますけれども、そういう点は十分に自戒自粛いたしまして、架空名義預金をなからしめるということをさらに全銀協においても互いに努力していかなければならない点であろうかと存ずるのでございます。  無記名のほうの預金につきましては、これはただいまの銀行局長からのお話もございましたが、貯蓄奨励の一つの手段として現在認められております方法でございまして、これはいままでにおきましてはその政策目的としての目的は若干達せられている点もあろうかと思いますが、先生の御指摘のような弊害も一面においてあるものでもあろうかとも存じますが、制度として認められておるのでございますが、その取り扱いにつきましては一そう慎重にやっていかなきゃならないものであろうかと存じておるのでございます。  それで、無記名預金は、現在におきまして総預金の中に占める比率は二%未満でございまして、その比率は漸次低下の傾向にございます。
  144. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 その問題については、銀行から企業への人事派遣の問題等、いろいろあると思いますけれども、そういうようなことは時間もございませんから省略しますが、富士銀行の問題について、岩佐さんも頭取でございますから、両方兼ねていることでございますから、一言意見を述べさしてもらいたいと思いますが、過般責任を明確にするということで措置がとられたようでございます。しかし、御案内のとおり、額が多いということなんですよね。ということになれば、単にこれが支店長の問題であってみたり、審査部がどうこうという問題じゃなくて、少なくても何億という金が出ておれば、フォローアップも当然されておると思います。ダブルチェックも、審査ぐらいで終わっているものじゃないと思うのです。ですから、重役会と申しますか、常務会と申しますか、そういうようなところには当然議題として出ておったと私は思う。そうじゃなくて、審査部の一担当重役だけがその問題を扱って処理したというふうには思えない節があると思うんです。だから、ここの中には責任の明確化というようなことが対策の中にいわれておりませんが、私は、責任というものは明確にするということがこの際何より大切だと思う。信用の失墜をしたら、銀行はたいへんなことですよ。ですから、銀行の信用を回復するということは、責任の明確化ということが何より大切だと思う。しかも、その責任の明確化のとり方というものがあれだけでよかったのかどうかというなら、私は不十分だという意見を持っております。大かたの人がそうじゃないかと思っております。しかし、責任をとる順序は、事件が起きたら、事件を起こした者があと始末をしてそれからやめていくというとり方もあるでしょう。もう一つは、事件を起こした者が一挙にやめて、新しいもとでその原因を究明し対策を立てるという責任のとり方もあると思います。すっきりするなら、問題を起こした者がぬぐっておいてやめていくというより、やめてそしてあとの入った人が新しくやったほうが責任はより明確になると思うのです。これは私の意見でございます。意見だけ申し上げて、とにかく銀行が自己の責任において——大蔵省の監督の強化によってしっかりさせられるなんという情けないことではなくして、銀行にしっかりしてもらいたいということを申し上げまして、姿勢の問題については以上で終わります。  次に、今後の問題について二、三点お尋ねしてまいりたいと思いますが、公定歩合の引き下げが行なわれましたですね。そうしますと、当然貸し出し金利というものが下がっていかなくちゃならぬと思うのです。いまは、実勢で申しますと、銀行のほうでも、優良企業へは、貸し出し金利は安いし、年限も長いし、いろいろするが、系列からはずれておるような弱いところには、金利は高くされるし、担保もたくさん取られるし、歩積み・両建て等を入れれば一割以上になるようなところになると思いますけれども、一体、公定歩合いが下がることによって、長期にすぐいくといわなくても、短期ものは大体下がってくる、この十二月ごろか、あるいは早ければ十一月ごろから、短期ものについては、公定歩合いが下がることによって金利というものは下がると受け取ってよろしゅうございましょうか。  それから金利の問題について次にもう一つお尋ねしておきたい点は、預金金利の問題でございますが、これはいろいろな問題がございますから、そういう全体的なことではなくて、いま市中銀行が貸し出しておみえになる短期ものであっても、実は五年ぐらいの中期ものになっておるというのが大体実態だろうと思うのですね。ということになれば、定期預金の問題に限って預金金利の問題でお尋ねしておきたいと思いますが、一体、中期の定期預金というようなことについてどういうふうにお考えになるのか。たとえばこれを三年ものをつくるか、あるいは五年ものにするか、そのときの金利、まあこれは公社債等のいろいろな問題があると思いますけれども、こういうようなものについてどんなふうにお考えになっているのか、この際承っておきたいと思います。
  145. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 公定歩合の引き下げに伴いましての貸し出しの金利でございますけれども、もちろん公定歩合の引き下げに伴いまして市中の自主規制金利の引き下げを発表いたしまして、これに基づきまして漸次金利の引き下げを実行していく段階でございます。しかし、その引き下げの下がっていく幅がどうかという問題になりますと、今回の場合におきまして、長期金利が据え置きでございますし、それから輸出優遇の金利もそのままであるというような関係もございまして、公定歩合にほんとうにスライドして市中の金利が下がっていくということには必ずしもならないのではないかというふうに率直に私は思うわけでございます。しかしながら、ことにわれわれとして考えなければならない点は、大企業はさておきまして、中小企業の皆さま方に御融通する金利につきましては、われわれとしてもやはり特別な配慮を加えながらそういう方面への金利の引き下げということには努力をしなければいけないのではないかというふうに私個人は考えておるものでございます。  それから預金金利の問題でございますけれども、これは大蔵省で設けられました金融制度調査会におきましても中期預金の問題と関連いたしまして問題が論議されまして、そしてその答申も行なわれておるのでございますが、その中におきましては、普通銀行に中期預金を認めることを検討すべきであろうというような表現でその答申がなされているやに承知いたしております。そして、先生のいまの御指摘のように、普通銀行の一年ものの定期預金というものが、相当の部分が二年あるいは三年に書きかえて継続になってまいっておるというのが実情でございます。そういうような意味から申しますれば、二年ものの定期預金、そして、それは二年ものにふさわしい現在の一年ものに比較しては高い金利をそこに付利していくというようなことも行なわれていいのではないかというふうに私個人としては希望しておるものでございます。
  146. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後に、まあ日銀が公定歩合の引き下げはやったわけですけれども、銀行サイドから見られて、景気の動向と申しますか、経済の動向と申しますか、過熱を防ぐためにいろいろなことをやった、そして今度はゆるめてきたというので、今度の公定歩合の引き下げがあってこの後の見通しはどんなふうに見ておみえになりますか。
  147. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 最近の景気の動向、あるいは銀行の窓口においての感覚から申しますと、いわゆるうしろ向き資金と申しますか、滞貨資金というようなものの需要もかなりふえてまいっております。そういう意味におきましては、いわゆる金融引き締め政策が相当各方面に浸透いたしましたし、あるいはその中におきましては輸出環境が悪化したといったような問題もあるかとも思いますけれども、そういうようなことで、何か多少不況的なムードというものも現実に感ぜられるのでございます。そして、一方、資金の需要のほうから見ますと、いままでの金融引き締め政策の影響もございまして、企業——これは大、中小に限りません、企業の各方面におきましてかなり資金的な無理をしておられるということでもございますし、企業間信用といったようなものも期間が長くなってきているというようなこともございますし、いま申し上げているように、うしろ向き資金というようなものの需要も非常に強く出てまいっております関係上、銀行の資金事情は非常に窮屈な状態でございます。銀行自体もやはりかなりなそういう点については金融引き締め下におきまして無理を重ねてきているという点もございますので、そういう窮屈な状態にあるわけでございます。したがいまして、そういう点から申しますと、この辺で若干の金融の量的な緩和ということも、産業界——大、中、小にかかわりませず、産業界からの要望も強うございますし、われわれとしても若干そういう配慮はしていただかなければならない時期に来ていたのではなかろうかというふうに考えますのが実感でございます。
  148. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後と言っておいてもう一言なんて言ってはえらい申しわけございませんですが、不況ムードというようなお話ですが、十−十二月ですね、これも話で私は実態はよくわかりませんが、九千四百億今度出すわけですね、日銀が。それでいいと、こう言う。ところが、大体先借りをしておるわけですね。無理をして銀行は企業へ先貸しをしているわけですね。それが表に出てくるのがこの十−十二月じゃないかと。だから、新しい資金がほんとうに貸し出されるのは九千四百億じゃないですよと。その中から相当数はもう先食いしちゃっておるんだと。だから、年末は相当資金が苦しいというような説をなす人がおりますが、それはどうでしょうか、そこら辺は。
  149. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 先生の御指摘のような点、私、まことにそのとおりだと存じます。ただ、総裁は御退席でございますけれども、総裁のお話を承りましても、十一月、十二月、ことに年末については若干の量的配慮は考えておりますというお話を私も直接承っておりますので、まあ実情を見ながらその辺は日本銀行の御当局としても御配慮をしていただけるのではないかというふうに考えております。
  150. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初に、銀行局長に伺っておきたいと思いますが、最近、先ほどの統計数字等にあらわれましたように、銀行の不祥事件というものが相次いでいるわけでありますけれども、日本経済の中で非常に大きな役割りを持っている銀行の内部管理というものがきわめてずさんであったという点、こういうことが今回の不祥事件の最大の温床であったということはもう間違いないわけであります。ところで、銀行局として、大蔵省として、事故防止のための通達が出ておりますけれども、いままで毎年のように出されてきたのかどうか、それは実際に効果があがってきたのかどうか、そういう点についてまず伺っておきたいと思います。
  151. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 通達は、過去におきまして大体四、五年に一度ぐらいの割合で出ておる——まあそのつど趣旨は少しずつ違っております。しかし、大体において、不祥事件に対する自粛の通達というものが、過去におきましては、たとえば昭和四十年であるとか三十九年であるとかいうふうな年に通達が出されておるわけでございます。そして、ただいま御質問にございましたように、それで、はたしてどの程度の実効があったかということになりますと、まことにお恥ずかしい次第でございますが、それでほんとうに実効があがったというふうにも私どもも考えておりません。ただ、それらの通達をもとにして、役所側におきましても、銀行側におきましても、絶えざる努力を積み重ねてまいりまして不祥事件の根絶という方向に向かって努力をしてまいらねばならないというふうに考えておるわけでございます。
  152. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 はっきり申し上げると、通達を出した以上は、その内容が確実に行なわれているかどうかということは、それは大蔵省がじかに入ってやるということはあまり好ましいことでないかもしれないけれども、当然銀行協会のほうでやっているのではないだろうか、その点についてはどうなっているかということ等について、いままで、聞いたり、あるいは報告を受けたりというようなことは実際行なわれてきたのですかどうなんでしょうか。  その点と、これについては会長にも伺いたいんですけれども、内部においてはどういうようにこの通達を受けとめてやってこられたか、この姿勢が非常に大事だと思うのでございますが、その点について伺いたいと思います。
  153. 近藤道生

    説明員近藤道生君) まず、私、ことし三月に参りましたときに一番驚きました点は、事故金額が非常に高くなってきておるということと、それから以前に比べまして役席者による事故が多くなってきておるということと、その二つでございました。そして、特にそれの警察当局に対する通報がおくれておるというようなことから事が大きくなるという事例が多いというような点を一番強く気がついたわけでございます。したがいまして、七月に出しました通達におきましても、それらの点を特に強調いたしまして、事件が起こりました場合には直ちに警察当局に通報するようにということも特に触れておる次第でございます。
  154. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) ただいま先生のいろいろな御指摘がございましたが、大蔵省からちょうだいいたします通達あるいは御注意、そういうようなものは、全銀協ベースにおいては直ちに各それぞれの銀行に通知をいたしまして、そしてその励行を期してまいっておるわけでございます。しかし、これは、私率直に申しまして、これは各銀行とも内部的にもそうでございますけれども、いかにこの通達あるいはいろいろな注意というものが厳重なものでありましょうとも、そのとおり実行されなければ、これはいわば空文にすぎないというような面が大事な点であろうかと思いますので、これは自分の身近に今度感じたことでございますけれども、私のほうの不祥事件にいたしましても、機構といたしましては、一応きちっと二重三重のチェック・システムができておるのでございますが、それがそのきめられた規則あるいは規程、そのとおりに実行されていなかったというところに一つの根本的な問題がございますので、その点につきましては、大蔵御当局からのそういうような通達、御注意等を今後全銀協におきまして受けました場合におきましては、それを各銀行において必ずその御注意に基づいて実行していくと、このことが最も大事なことではなかろうかというふうに考えておるものでございます。
  155. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほども冒頭にいろいろお話をしていただきましたその中で尽きていると思うのでありますけれども、今回の不祥事件前後を通じてこのところの何年間かを見てみますと、多い順序で言えば、浮き貸しが圧倒的に多い。それから無断流用、横領、着服というように、はっきり申し上げて全部が内部問題であるという感じ、つまり内部監査体制というものがいいかげんであったということだと思うのです。先ほど、全銀協の申し合わせをやったということでございますし、今後はこういう点についてはっきりレールとしては法制化するのがいいかもしれません、チェックする体制を。しかし、法制化する前に、銀行協会また各銀行の申し合わせでこういう点についてはっきりとレールを敷いて、二度とこんなことの起きないようにするべきであるというふうに考えているわけであります。それがどうにもならないとなれば、これは法の力に頼らざるを得なくなってくるわけでありますが、そういう点についてはいかがお考えですか。
  156. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの御指摘の点でございますけれども、まことに先生のおっしゃるように、これは全銀協会といたしましては、各銀行ともにみずからの手において自主的に内部管理体制をきちっとやっていかなければならないという点につきましては、最近、先ほどもちょっと申し上げましたように、そういう深い反省と自覚の上に立ちまして業務管理等改善委員会というものを特に設けまして、それで松本副会長を委員長として精力的にこの問題には取り組んでおる次第でございます。そして、いま私の申し上げておりますように、要はそこできめられましたことを必ずお互いに実行していくということが最も大事なことであろうかと思いますので、この点につきまして、はたしてそういうことが着実に正しく、実行されておるかどうかということをお互いに、ことばはちょっと語弊があるかもしれませんが、監視し合うというようなことも必要ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  157. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 銀行局長に。いつも大蔵省は預金者保護ということをいつも言っておられるわけですが、それは口ぐせになっております。預金者保護の立場に立ってと、こういうふうに言っておられるけれども、実際は、私は、今回のことやいろいろな銀行行政を見るというと、うらはらではないか、それの反対をいっているのではないかということを思うわけであります。といいますのは、いま問題になってきております信託分離の問題も、行政面での長期・短期の分離というそういうことの発想から出たので、国民のいわゆる貯蓄を増強させようというような考えから来ているというものじゃないように思う。また、先ほどありました脱税という悪質な目的でやっている架空名義の預金通帳の問題についても、これはもう税務署の摘発をおそれて印鑑まで預けてしまうというのは、例の吹原産業事件のときではっきりわかっておるわけであります。そういうようなことで立証されているにもかかわらず、その点についてはなかなか明朗にいっていない。こういうのは、少し銀行に対しての過保護政策という習性があるのではないか。そういうことであまりにも不感性になってしまって、もうそうなると過当競争をやっても野放しになって、当然起こるべくして今回の事件も起きるというふうになってきているのじゃないか。そういう点、国民不在の銀行行政ではないかというふうに、一面を意地悪く見れば私どもはそう思わざるを得ないわけであります。その点についてはどういうふうに今後やるつもりか、考え方をお聞きしたいと思います。
  158. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 確かに、御指摘のとおりに、預金者保護ということで終始一貫やってまいっておるわけでございますが、その保護の仕方をどういう方向でやっていくかということはたいへんむずかしい問題でございまして、いまお示しになりました信託分離あるいは長短分離の発想というようなことは、そのようなことによって、ここ数年間の金融制度調査会の論議を通じまして、できるだけその周辺分野においてはいわゆる相互乗り入れをやるというような形で銀行の体質の効率化、強化、そういうことをはかりまして、その強化された体質をもって預金者なり貸し出し先なりにサービスをする、それによっていわゆる過保護行政からの脱却をはかってまいるということが一つのねらいであったわけでございます。なかなかこれは言うべくして一ぺんに行ないがたいという点もございまして、漸次実施に移してまいるということでございますが、同時に、また、現在のような状況におきまして金融機関が社会的に強い立場にあるというような点から、特に金融機関の公共性、社会性ということについても金融制度調査会の答申は述べておるわけでございまして、金融機関が社会的に強い地位にあるということのために、特に他の産業あるいは一般の貸し出し先、顧客等に対して迷惑をかけない、その両面を銀行行政の目的として進んでまいるということが、ただいま御指摘のような点にも沿うゆえんであり、銀行行政の今後のやり方としてはそういう方向でやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  159. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いずれにしても、今回の事件をいろいろ見ていって、ほんとうに一方ではあれだけの金が出ていながら、中小企業については非常に冷たいではないかというような声も出てくると、信用を業務としている銀行行政がそう曲がってくれば、これは国民からみな離れていってしまうということははっきりしているわけでありますから、この点は十分に留意をしてほしいと思います。  ここでちょっと具体的に富士銀行自体の問題で少し岩佐さんに伺いたいのでありますが、今回の事件でいわゆる詐取されたという十九億円、この金額のうち、十一億二千万円は菅沼とか金東善つまり有馬の財産差し押えとか、ゼネラルベンディングへ債権の肩がわりで回収している、実損は約七億八千万円であると、このように発表しておられますが、この数字は信用していいのかどうか。それから財産とかそういうような債権についての評価は、ほんとうに適正にそういう金額になるようになっている評価をされたのかどうかですね、その点をまずお伺いしたいと思います。
  160. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの先生のお尋ねでございますけれども、担保として取得いたしましたのが約六億一千万、それからゼネラルベンディングのほうへ営業権として債権の譲渡を行ないましたものが約五億ということでございます。そして、現時点におきまして実損と思われますのが七億八千万というふうに見られるわけでございます。そこで、この七億八千万円は、九月末の決算におきまして貸し倒れ引き当て準備金に入れましていわゆる有税償却をいたした次第でございます。  そして、この担保の内訳等でございますが、たとえば不動産につきましては、先方のトムソンの評価によりますれば十一億といったような評価をいたしてまいったのでございますけれども、富士銀行といたしましては、顧問の力も借りまして、そしてそれぞれの不動産の所在の現地の不動産業者の十分なる評価もしてもらいましたし、それからそれぞれの不動産の手続等につきましては銀行の制定用紙によってそのそれぞれの権利者から担保の差し入れの手続をとってもらいましたので、この担保の価値というものは一応間違いないものでなかろうかと存ずるのでございます。  それからゼネラルベンディングのほうの営業権でございますけれども、とにかく自動販売機による清涼飲料水の販売というのは、今後経営よろしきを得れば成長産業として相当な収益をあげていける事業であろうかと思われるわけでございます。そして、専門家の一応出しました数字によりますれば、大体五年間でそのぐらいの収益はあげられるだろうと。もちろん、当初におきましては、やはりいろいろな諸準備がございますので、その当初におけるいろいろな諸準備の期間を二年と見まして、七年間の収益によってこれが回収されるであろうというめどをつけておるわけでございます。  そういう次第でございますので、私どもといたしましては、いまも申し上げておるように、九月末の決算に七億八千万円を有税償却として計上いたした次第でございます。
  161. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それからこれは新聞の報道等でありますけれども、預金や債権などを可能な限り富士銀としては回収して実損を少なくしようと、そういうことで、いわゆる有馬がスイスの銀行に預けているのではないかといわれている隠し預金の取り扱いということが大きな問題になっているようでありますけれども、こういう海外預金の回収がはたしてできる見込みがあるのかどうかということ、これは銀行局長のほうにも伺いたいと思うのでありますが、この点について伺いたいと思います。どうも、法律学者等は、非常に疑問視をしているようでありますが、いかがですか。
  162. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの点でございますけれども、有馬氏が日本の捜査御当局のほうへ引き渡されまして、そうしてその捜査が進みませんければ、海外に同氏がどういうような預金、資産等を持っておるか、判明いたさないわけでございます。しかし、もしも海外のどこかに預金、資産を持っておるというような場合におきましては、可能な限り法律的な手続を踏みましてそれに対する対策を立てていきたいということで、その研究をいたさせております。それで、先ほど申し上げました取得いたしました担保とかというようなものの中にはそういうものは一切含んでおりませんでございます。
  163. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 預金の形態が、架空名義預金であるか、第三者名義の預金であるか、それらの預金の形態によりまして債権確保のむずかしさがまるで違ってまいると思いますので、今後それらの点が司直の手で明らかになりました段階において、ただいまも頭取からお話しがございましたように、極力債権確保に努めるということであろうと存じます。
  164. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この点は大蔵省としても研究はなさっているわけですか、現在。
  165. 近藤道生

    説明員近藤道生君) これはむしろ個別の問題といたしまして預金の種類なり形態なりが明らかになりました段階で研究いたすべき問題とは存じますが、もちろん一般的な問題として一応の検討はいたしておりますが、ただ、あくまでも個別に預金の性格が司直の手で明らかになりませんと、議論をいたしましてもやや空の議論になるというような点もございますので、今後具体的に性格が明らかになりました段階で私どもといたしましても十分研究をいたしたいと考えております。
  166. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 問題は、これは岩佐さんに伺いたいんですが、富士銀行は被害の実額が七億八千万円ということで、先ほどお話しがありましたように損金に入っているようなものでありますけれども、一方で株式配当を前期よりも五分増配をしている。こういうようなことは、だれが考えても、あれだけの事件が起きて、しかも賞与等についても考えたいなんと言っているときに五分の増配をするということは、どうも庶民の感覚としたら納得がいかないことははなはだしい。ほんとうに反省しているのだろうかというような声はこれは町へ行けばみな聞かれる声でありますけれども、この点について私はどうも納得がいかないわけであります。いろいろ御説明はされているのはわかっているんですけれども、どうしても感覚的には胸にぴんとこない。そういう点、私は、世間を少々ばかにしているのじゃないかと、俗なことばで語弊があるかもしれませんけれども、そういうふうに受け取らざるを得ないわけであります。その点について納得のいくような御説明をお願いしたいと思います。
  167. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 先生のいまのお尋ね、私も率直に申し上げさせていただきたいと存じます。先生のお話しのような点、私といたしましてはまことに苦慮した一つの問題でございます。しかし、今回のこの不祥事件によりまして、株主の方々にもそれだけの損害をはっきりお与えしているわけでもございます。しかし、同時に、これは預金をちょうだいしておる皆さま方、それからお取引をちょうだいしておる皆さま方の格別な御支援御好意によりまして、幸いにいたしまして、収益の面におきましては、ただいまもお話ししておる七億八千万円というものを償却いたしましたあと数字が、大蔵御当局の御指導による経理基準に当てはめてみました場合に、一割二分の配当、それから二分の記念配当をできるという数字が出ましたので、これ以上株主の方々に御迷惑をかけてはいけないのではないかというふうな配慮からそういうふうなことに踏み切ったわけでございます。預金者の皆さま方に対しまして、あるいは取引先の皆さま方に対しまして、あるいは社会の一般の皆さま方に対しましては、私といたしましては、今回の事件を深く反省いたしまして、自粛自戒、内部の綱紀も厳格にいたしまして、そして銀行といたしましての正しいよいサービスを皆さま方にしてまいる努力を力の及ぶ限り——もとよりはなはだ微力でございますけれども、力の及ぶ限りいたしてまいりまして、そして皆さま方の御厚情にこたえてまいりたいというのが、私の率直な気持ちでございます。
  168. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その後段のほうはわかるんですけれども、前段のほうは私はさっぱりわからない。はっきり申し上げて、これはそう言うと失礼ですけれども、ほんとうに反省しているのであれば、預金者というのは非常な数があるわけであります。中には一般大衆というのもかなりいらっしゃると思います。そういう方々への御迷惑ということもあるわけです。株主への迷惑を考えれば、何も株主自身に被害を及ぼすべきでないというそれはわかりますけれども、しかし、それはそこだけの道理であって、国民の感情あるいは預金者全体の感情から言うと、これでは銀行は信用できないというものをつくるわけです。私は、そういうような姿勢では、いくらあと今後いわゆるサービス等についても正しいサービスをしていきたいと、こう言われても、もう空文に聞こえてくる。やはり実効というものがなければいけないんじゃないか。ほんとうの反省というものにいっていないのではないかというように思うのですけれども、その点、そういう預金者のことについてはお考えにならなかったのでしょうか、配当をするにあたって。それを伺いたい。
  169. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) 先生の御指摘がございましたが、決してそういうことじゃございませんので、今回の事件につきましては、平素格別な御支援をいただいております預金者、取引先の皆さま方にはまことに申しわけない次第でございまして、私としてもそれは深く心からおわびを申し上げておるところでございます。そういう点もいろいろ考えましての上できめさしていただいたことなんでございまして、その点についてはいまの先生の御指摘も深く反省を今後の問題としてはいたしてまいりたいと存ずるのでございます。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連してちょっと伺いますが、百歩譲って増配するとしましても、記念配当までする必要がどうしてあるんですかね。九月期から配当は自由化されまして、富士とか住友、三菱、三和は、九%の配当だったのを、三%上げて一二%にしましたね。ところが、それにもう一つ二%ふやして、それが何か記念配当なんですね。記念配当をするような状態でしょうか。ですから、一般の配当自由化になって三%上げた、これについても銀行局長に伺いたいんですけれども、一般が三%上げた、それにさらにプラス二%、九%を一四%にしたんでしょう。ほかの四行は一二%ですよ。ですから、そこが、いま鈴木君が言われたように、そういうところからいっても、何かばかにしたような、ほんとうに反省しているのじゃないように思われます。  それから銀行局長も、こういう点については何か指導されなかったんですかね。常識から考えておかしいでしょう。ほかの四行が三%で、こういう不祥事件を起こしたところがほかの四行よりまたプラスして——記念配当というのは自粛するはずだったのじゃないですか。しかも、三%につきましても銀行は過保護ですよ。それは、貸し倒れ準備金とかなんとか、実際不当に銀行は保護されています。それで、配当自由化になって、すぐ三%配当を上げるなんて、これは不見識だと思うんですよ。こういう状況、こういう問題が起こっているときに、九月期決算で三%すぐ上げるということは、いかに配当自由化になったって、こういう不祥事件が起きているときにそれを認めるというのはおかしいと思うのです。今後、この配当については、どういうふうにお考えなのか。自由化になったらもうかまわないのですか。もう野放しなんですか。これは問題だと思うんですよ、非常に過保護ということがね。ことに、あれでしょう、最近資金のボリュームが非常に大きくなっておりますし、そういう点については世間では批判が強いと思うんですよ。その点について伺っておきたい。
  171. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ただいま先生から御指摘のありましたような感じというものは、確かにあろうかと存じます。ただ、銀行の配当規制につきましては、ことしの二月二十日に通達が出されたばかりでございまして、もうすでによく御承知のように、一定の算式で計算をされました範囲内で、しかも、一五%以下であります場合には、いままで何十年間か一々銀行局がくちばしを出しておったわけでございますが、そのくちばしを入れるということを変えて、自由競争といいますか、競争ということばはあまりよくないのでございますが、銀行自体の責任において配当率をきめるというたてまえに変わったばかりでございます。そして、その通達の中で、記念配当につきましても、創立十周年、あるいは二十五周年、あるいはそれらの倍数に該当する決算期にございましては、特に年二%の範囲内でみずからの判断で記念配当を行なうということは、特に収益その他の基準に達しないような銀行の場合は別といたしまして、そうでない場合には、自主的に銀行において判断をするというたてまえに変わったばかりでございます。したがって、今後とも、この配当規制の緩和についての通達の趣旨に沿いまして、これは御承知のように銀行行政の効率化の大きな一環をなすものでもございますので、まあたまたまこういう事件にぶつかりましてただいままで御指摘のような御議論も十分あり得ると思いますが、全体としてできるだけ銀行の体質を効率化して、預金者なり貸し出し先に対するサービスを強化するという銀行行政の一環といたしまして、やはりこういう措置が必要であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 岩佐凱實

    参考人岩佐凱實君) いまの先生のおっしゃいますことは私もよくわかるのでございますが、先ほどもお答えを申しましたように、その点については私も私なりに苦慮いたしましたのでございますけれども、私のほうはことし創立以来九十周年を迎えるということもございまして、いままで長年にわたりましての株主の皆さま方の御支援に報いるということもあるいはいいことではないかというふうにも考えましたわけでございます。先ほども申しましたように、預金者の皆さま方、お取引先の皆さま方の格別な御支援によりまして、収益状態はどうやらそういうことが可能な収益をあげることができましたので、そういうふうにきめさしていただいたわけでございまして、いま木村先生の御指摘、私も今後のことにつきましてはいろいろの角度から反省してまいりたいと思いますので、何とぞ御了承いただきたいと存じます。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで終わりですけれども、しかし、常識からいきまして、記念配当までする必要はないでしょう。記念すべき事態じゃないと思うんですよ。それだけ言っておきます。
  174. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 参考人の方々に申し上げます。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な参考意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。お述べいただきました御意見は、今後の委員会の審議に十分役立たせてまいりたいと存じます。本日はありがとうございました。  本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。午後四時三分散会