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1970-09-10 第63回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月十日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  八月十二日     辞任         補欠選任      占部 秀男君     松井  誠君  九月十日     辞任         補欠選任      青木 一男君     近藤英一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          栗原 祐幸君    理 事                 小林  章君                 沢田 一精君                 成瀬 幡治君                 鈴木 一弘君                 瓜生  清君    委 員                 岩動 道行君                 大竹平八郎君                 近藤英一郎君                 矢野  登君                 木村禧八郎君                 松井  誠君                 松本 賢一君                 横川 正市君                 上林繁次郎君                 渡辺  武君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        大蔵政務次官   藤田 正明君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省主計局次        長        橋口  收君        大蔵省関税局長  谷川 寛三君        大蔵省理財局次        長        小口 芳彦君        大蔵省理財局国        有財産第二課長  庄司 俊夫君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       奥村 輝之君        国税庁長官    吉國 二郎君        通商産業省重工        業局鉄鋼業務課        長        杉浦  博君        日本専売公社総        務理事      遠藤  胖君     —————————————    本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月十二日、占部秀男君が委員辞任され、その補欠として松井誠君が選任されました。  また、本日、青木一男君が委員辞任され、その補欠として近藤英一郎君が選任されました。     —————————————
  3. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 次に、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 瓜生清

    瓜生清君 私は、政府委員方々に、ごく簡単に数点をお伺いしたいと思います。  まず、一つは、先般来から例の富士銀行の問題が起こっておりますが、衆議院におきまして堀さん、参議院では和田さんという社会党の方々が御質問をなさっておられますけれども新聞の報道する範囲内で見てみますと、あれを深く追及していった場合に、いろいろな銀行法上の手続によって岩佐頭取改任というようなところまで発展するんじゃないかというようなことを聞くわけでありますが、そういうふうなことがはたしてできるのかどうか。  それからまた、過去におきまして類似の事件が多少ございましたけれども、そういう場合に、銀行責任者なりあるいは担当重役なりを大蔵省自体が表なりあるいは裏から肩をたたいてやめたらどうだというような事例があったのかどうか。そういう点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  5. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 今回の不祥事件は、その金額におきましてもたいへん大きなものでございますし、それからまた、高度の公共性を要求されております金融機関といたしまして、まことに社会の期待を裏切ったことであるという意味におきまして、銀行重々責任を感じておりますし、私ども指導監督上の責任を感じておる次第でございます。  そこで、ただいまお尋ねのございました改任権発動、これは銀行法二十三条に規定されておるわけでございますが、この銀行法二十三条の改任権発動がされるのかどうかという問題が第一点であろうかと存じます。その点につきましては、銀行法二十二条が直接対象といたしますのは、銀行自体がその意思によりまして公益を害する行為を行なった場合等でございまして、今回のように、金額そのほかが非常に大きい、また、社会的な影響の大きい事件ではございますが、銀行自体が行なったというよりも、銀行の一幹部職員銀行の目をくらまして行なったという事態の場合には、直接的に二十三条の該当はないというふうに考えられるわけでございます。  そこで、第二点の御質問の、過去におきまして、改任権発動したか、もしくは、発動する前に、それをうしろだてにして肩をたたいて何らかの処置をした事例があるかどうかということでございます。この点につきましては、金融機関というものが本来信用秩序の根幹をになうという意味におきましても、銀行法二十三条の改任権発動まで責任のある頭取なり社長なりというものが居すわるという形よりは、まず当局改任権発動考えざるを得ないという事態においては、とにかくやめてもらうという形のほうができ得れば望ましい。もちろん、ケースによりましては、直接改任権発動をしなければならない場合もあろうと存じますが、大体において前者のほうがとられてきたわけでございまして、その具体的な事例といたしましては、もうだいぶ古い話になりますが、たとえば、十数年前に某銀行がかなりの不正融資頭取の決断によって行なったというような事態におきまして、改任権発動というところまでいく直前と申しますか、前にやめた。あるいは、これも古い話でございますが、やはり十数年前に、某相互銀行が大口の導入預金というものをきっかけにいたしましてたいへん世の中を騒がしたという事態で、やはり改任権発動の決意がなされる直前関係役員全部がやめたというような事例があるわけでございます。
  6. 瓜生清

    瓜生清君 次に、もう一つ銀行のことでお伺いしたいんですが、先日の衆議院答弁を見ますと、定期検査から定期検査の期間が、何といいますか、非常に長い、だからそれを短縮したいということをたしか銀行局長かだれかおっしゃったと思うんですが、そういうふうなことがいま検討されていると思いますが、次の通常国会にでも出すくらいのいわゆるスピーディな処理のしかたをされるのかどうか、その点を伺います。
  7. 近藤道生

    説明員近藤道生君) これは、確かにそういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。と申しますのは、たとえば、今回の富士銀行に対しての前回検査が四十三年の一月でございます。その当時において今回の事件は全くまだその芽ばえもなかったという事態でございます。したがって、今回の事件が起きましてから検査を一度もやっておらないということで、それは都市銀行に対します検査周期が従来三年前後というようなことであったわけでございます。だんだん短くしてまいりまして、本年度に入ってからは二年七カ月というところまできてはおりますが、これをさらにできれば短くしていきたいということを申し上げたわけでございますが、ただ、検査官の定員をそう急激にふやすというわけにもまいりませんし、また、ふやしましても、それだけの経験を持った人間が急にふえるというわけにもまいりませんので、どうしても都市銀行検査周期を短くするという場合におきましては、その検査やり方自体を重点化して簡素化していくか、あるいは、他の地方銀行であるとか相互銀行であるとかそういうところに対する検査を従来二年周期ぐらいでやっておりますものを若干周期を延ばすとか、いろいろくふうをいたしましてやらざるを得ない。そういう意味でのくふうをしてやるということは、もう直ちにでも実施してまいりたいというふうに考えております。
  8. 瓜生清

    瓜生清君 それじゃ、次の問題に移りますが、吉國国税庁長官に伺いたいと思います。あなたは答弁がじょうずだから、あんまりはぐらかさないようにひとつお答え願いたいと思うのですが、つい最近酒の値上げ申請があると思うのです。それからまた、ビールが一本十円値上がりになると、こういうふうなあれがありますが、これに対して国税庁はいかなる態度でおられるのか。ということは、なぜ私がこういったことを申し上げるかといえば、三年ぐらい前だと思いますが、泉さんが国税庁長官のときにそういう質問をしたら、もう酒の値上げはやりませんという意味のことをおっしゃったが、舌の根のかわかぬうちに一カ月たってからやっちゃった。吉國さんとしてはどういうお考えなのか、尋ねたいと思います。
  9. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) お尋ねの酒の価格の問題でございますけれども値上げ申請という問題は、実は現在はないわけでございます。前々申し上げておりますように、酒類につきましては、昭和二十五年に洋酒について公定価格を廃止いたしました。それから昭和三十五年に公定価格を廃止いたしました。その際、酒の値段につきましては、長らく公定価格制度のもとにあって、また、妙な話ではございますけれども公定価格最高価格ということにはなっておりましたが、実際はこれが一定価格のような運営をしてまいっております。そのために、公定価格を廃止することは、酒類業界、ことに清酒業界に非常な混乱を起こすという議論がございまして、御承知酒団法を改正いたしまして基準価格制度というのを残した。基準価格というものは、いわば公定価格ではないけれども、基準的な酒類業者が製造した場合の妥当な価格ということでこれを告示をするという形で制度ができました。この基準価格をしばらく実行いたしまして、おいおい自由化のほうに持っていこうという考え方で、昭和三十九年にはこの基準価格制度告示も廃止いたしました。それで、価格については、実は制度的には何ら行政の介入の余地はないというのが現在のたてまえでございます。泉長官が言われたのも、おそらく、昔からの因縁と申しますか慣習から申して、理由のない値上げ業界に対して行政指導としてやめさせたいという意味で申されたと思うのです。私どもも、権限としてはないことでございますけれども、やはりいろいろな意味で酒の製造販売を監督し指導する立場にございますので、そういう意味では、便乗的な値上げとかあるいは理由のない値上げをすることについては、業界に対して強く反省を求めるということは当然だと思っております。したがいまして、その値上げ要因その他をやはりわれわれとしては分析をしてこれに対して対処していくべきものだと思いますが、たてまえといたしましては、現在、価格については拘束性が全然ない。それを、事実上、実は清酒につきましては価格届け出制というものをしいておりまして、一応自分が売る価格は届け出ろということにいたしておりますので、そこへ何らかの拘束力があるような感じを受けております。現に、新聞等でも、値上げ申請が行なわれたということで、これはいわば通告でございまして、実質的には拘束力はないわけでございます。しかし、その通告が出た段階でも、これがあまりおかしなものであれば、やはり行政立場から勧告をし指導をするということが全く排除されているものではないと私は思っております。そういう意味では、できるだけ合理的な価格を構成するように全力をあげて行政指導してまいるべきものだと思っておりますが、あくまでもこれは拘束力のあるものではないというのが現在のたてまえでございます。  そこで、いま御質問のありました問題でございますが、清酒については現在ほうぼうで値上げ事前通告が相当出てまいっております。六百社ぐらい出てまいっておる段階でございます。これについては、御承知と思いますが、四十三年に清酒値上げをいたしました。ところが、四十三年産米は当時若干価格引き上げが行なわれた。四十四年、四十五年は据え置きになりましたが、四十三年産米を使った四十四年度に売られる清酒については価格引き上げが行なわれておりません。そういう意味では、ベースとして四十三年の米の値上げ価格水準というものが織り込まれていないという問題は確かにある。その後人件費の高騰とかその他いろいろな問題がございまして、コストアップ要因があることはこれは事実でございますけれども、同時に、コストアップ要因があれば直ちに引き上げるという問題ではなく、それに対してはやはり生産性向上というようなことでこれを相殺する努力をすべきものであるということは常に言っております。ただ、遺憾ながら、二級酒につきましては、最近生産性向上の指標であるべき売り上げの伸びというものが落ちておりまして、むしろ逆に対前年九九%というふうなことで減りぎみになっております。したがいまして、二級酒専門のメーカーについては、コストアップがそのまま大きく採算圧迫要因になっているという事実はございます。前回国会でも御論議がございましたが、ただ、清酒の場合には、構造改善のためにカルテルが行なわれておる。その際に、一斉値上げをするようなことはいかぬということはごもっともだと思うのでありますが、ただ個々の業者コストアップの実情に応じてやむを得ず値上げするというものまでとめることはできないというのがたてまえだと思っております。  ビールにつきましては、御承知のように、ビールを製造しておりますのは四社でございます。そういうことで、それぞれの採算というものもかなりよくわかるわけです。ビールにつきましては、実は、私ども、まだ製造業者から値上げをしたいという意向は受けておりません。ただ、ビール卸売り業者が非常に採算が悪化しているということでほうぼうで大会を開いてビール値上げということを主張していることも事実でございます。ところが、新聞等にも値上げ必至というふうに出ておりますけれども、私どもはまだ業界から直接にそのことを聞いておりませんし、ビールがこの夏場に非常に消費が拡大したという事実もございます。生産性が非常に拡大しているとすれば、そこにまた十分反省余地があるはずだ、直ちに値上げ申請をすることはあり得ないのではないかというふうに考えているのが現在でございます。
  10. 瓜生清

    瓜生清君 大体の様子はよくわかりましたので、その問題はそれで打ち切ります。  次にお伺いしたいのは、どなたかわかりませんが、この間人事院勧告が公務員の場合に出まして、山中総務長官をはじめ政府部内では、完全実施を五月からやる、こういう言明を衆参両院でなさっているのですけれども、具体的にそれを予算化する。プログラムといいますか、そのことについて私はお伺いしたいと思うのです。といいますことは、たとえば佐藤総理国連総会にお出になるというようなこともささやかれておりますけれども、帰国されて臨時国会でも開いて補正を組むのか、それとも、通常国会の冒頭に明年度予算と切り離してその人事院勧告の分だけを補正として編成するのか。いまのところは、人事院勧告は全面的に了承しよう、完全に実施します、こういうことだけであって、じゃ一体それがどういうふうにして勤労者のふところに入ってくるのかというところまでの明示がないわけです。この点について、主計局だと思うのですが、どういうふうなお考えがあるのか、聞かしてもらいたいと思います。
  11. 橋口收

    説明員橋口收君) 去る八月に、人事院から給与に関する勧告をちょうだいいたしたわけでございますが、政府といたしましては、八月の末に、これを完全実施するという方針をきめたわけでございます。ただいまお尋ねがございましたのはその後の段取りについてでございますが、人事院勧告実施いたします際には、法的並びに予算的な措置が必要になるわけでございます。法的措置につきましては、いわばいつ法律改正国会に提出するかということでございますので、国会開会の時期についての今後の政府方針によって左右されるということになろうかと思います。財政的措置につきましては、御案内のように、人事院勧告を完全に実施いたしますためには相当多額の経費を必要とするわけでございます。当初予算におきまして五%の給与改善費を計上いたしておりますが、それを充当いたしましても千百億円を上回る追加財政需要が必要になるわけでございます。したがいまして、これに対処する方針といたしまして特に行政経費の高い節約を各省にお願いをいたしているわけでございます。行政経費節約によって人事院勧告実施のために必要とされる経費を全部まかなうことができるかどうか。そのほかにも幾つかの追加財政需要が予想されるわけでございます。それらを総合いたしまして、予算措置をどうするかということは今後検討いたしてまいりたい、こういうことでございます。
  12. 瓜生清

    瓜生清君 時間が来たそうですから、最後にお伺いしたいのは関税関係のことですが、これはやめます。そこで、変な話ですが、先般の報道によりますと、専売公社総裁が、パチンコ屋たばこを少し安く売ってもいいんじゃないかと。大蔵大臣もそれを肯定するかのごとき発言があったのですが、そういう動きがあるのかどうか。パチンコというようなものは、これは大衆娯楽一つであるけれども、やっぱり若干のギャンブルというものが入っていると思うんですよ。そういうものに、これは新聞が書いていることだから、大蔵省がずばっとそこまで明確に言われたのかどうか知りませんが、そういったことについての見解をひとつ聞きたいと思います。  これで私は終わります。
  13. 遠藤胖

    説明員遠藤胖君) 過日の当院の決算委員会において総裁の北島からお答えをいたしましたのでありますが、それがパチンコ店に対して優遇と申しますかそういうふうなことになるのではないかという御指摘であろうかと思います。実は、当日総裁がお答えいたしました趣旨は、パチンコ店への大量販売大量取引、そういう際に、いわゆる値引き——定価外販売と私ども言っておりますそういう事実があるのではないかというお尋ねに対しまして、私ども、これは違法でございますので、従来からも取り締まりを行なっておりますけれども、いろいろ取引複雑化をしておる、あるいは現金取引で行なわれておるというような点で、遺憾ながらなかなか取り締まりが徹底いたしておりません事実を認めざるを得ません。したがいまして、これは長年の問題でもございます。総裁としては、法律改正をしてもこの問題の解決に当たりたいという趣旨を申し述べたわけでございまして、必ずしもパチンコ店あるいはギャンブルを優遇しようという趣旨でお答えしたわけではないのでございます。  それで、現在の段階公社といたしまして検討をいたしております段階であり、まず、ただいま申し上げました定価外販売の事実が、取り締まりをいたしておりますけれどもなおあとを絶たない。したがいまして、従来以上に取り締まりを行なってまいりたいということが一つと、ただ、一般の商慣習におきまして、大量の売買が行なわれます際に価格の割引を行なうというような例が多いというふうに私ども考えております。現行のたばこ専売公社では、そういった大量の取引というものを必ずしも予想しない法の立て方になっておりますので、ただ取り締まりを強化するだけで一体この一種の取引上の実態のようなものを根本的に排除できるのだろうかという点については私ども多少疑問を持っておるのでございます。したがいまして、現在の専売法のたてまえを大きくくずさないで何かこの事態を解決する方法はないか。たとえて申しますと、特定の取引については、それに適合するような方法検討してみたい。ただ、法律を改正するという問題になりますれば、当然関係の各方面とも御協議申し上げ、あるいは御理解を得るということが必要になるわけでございます。そういうような方向で目下検討をいたしておる、かようなわけでございます。
  14. 藤田正明

    説明員藤田正明君) ただいま専売公社から御答弁申し上げたとおりでございまして、そのような案が専売公社から出てきますれば大蔵省といたしては検討してみるという旨を大蔵大臣は答えたわけでございます。誤解のないように願いたいと思います。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、四十六年度予算概算要求締め切りがもう過ぎまして、四十六年度予算編成過程に入ったわけですけれども、それに関連しまして、予算編成前提経済情勢ですね、あるいは景気情勢、そういう点と、それから税制の問題等について、大蔵大臣質問したかったのですけれども大蔵大臣は病気のため出られないということですから、あらためてまた次の機会に大蔵大臣質問したいと思いますが、その前提として事務当局に尋ねたいことがあるわけです。これはかなり具体的に計数的に聞きますから、具体的に答えてもらいたいと思います。  私はなぜこれからこういう質問をするかといいますと、ずっと前から問題なんですけれども予算編成のときに政府経済見通しを発表します。ところが、実績と比較しますと、いつも大きくそごしておるわけです。そこで、この点については、前に宮澤企画庁長官予算委員会で論争したんです。そのときに、やはり、そういう点があるから、今後は、大体四半期別くらいで検討してみる必要がある、こういう話もあったんです。ですから、これは、国会においても、これまでの例もございますから、やはり四半期別くらいで政府見通し実績検討して、どの程度にそごがあり、また、どの程度アンバランスがあるかということを検討する必要がある。もう過ぎてしまったでは問題にならぬのですから、私は、ここで、第一・四半期ですね、四——六月が済んで、いま第二・四半期過程にあるわけですから、そこで、第一・四半期実績と、それから四十五年度予算編成のときに見通しを行ないましたが、それとの比較を知りたいわけです。比較しまして、どの程度にこれが開いているか。私は最近新聞等で部分的に知るのでありますが、いろいろな点にアンバランスが出てきているわけですね。それは、私は、どうも経済成長行き過ぎから出てきているのじゃないかと思うんです。見通しよりもはるかに成長のほうが大きい、金融引き締め等をやっておるようですけれどもね。そこで、今後の金融政策なり財政政策についてここでやはり根本的に再検討しなきゃならぬ時期じゃないか。おくれてしまってわれわれがいつも文句を言ってもしょうがないわけです。ですから、第一・四半期ではっきりとそういう問題が起こってきましたから、これを明らかにして、今後第二・四半期なり第三・四半期、第四・四半期金融政策なり財政政策を行なう場合にこれを参考にして行なうべきであろうと思うんです。野党もこういう点についてはやはり十分に警告をし、そうして注意を促す必要があると、そういうことを私は痛感したので、これから質問するわけです。大きな政策につきましては、大蔵大臣にまた聞きますが、あるいは経済企画庁長官等に聞きますが、その前提として具体的に聞くわけです。  最近、粘結炭が非常に不足になっている。これは私はやっぱり成長行き過ぎの結果と思うのでありますが、どの程度に粘結炭不足になっているか。それでアメリカあたりでは、足元を見て粘結炭値上げをしてきているわけでしょう。それからもう一つ、きょうの新聞にも出ているくず鉄ですよ。これも非常に不足になっている。アメリカがやはり日本足元を見て、日本があまり買い過ぎるというのでこれが値上げが醸成されております。それから電力不足ですね。関西では電力規制をやったと聞いておりますが、その実態を伺いたい。それからオイルタンカーですね。日本では造船は非常に能力が大きくて船を輸出しているくらいですけれども、このごろはオイルタンカーの不足で用船が非常に多いと、こういうことを聞いておるんですよ。私は成長行き過ぎと関連があるのじゃないかと思います。それから水の不足、いわゆる工業用水がまた非常に問題になってきていると聞いているんです。これらの現象が私はやはり成長行き過ぎと関連があるのじゃないかと思うわけなんです。  そこで、この五つの点について具体的に担当の係の人から伺いたい。まず、第一に、粘結炭の需給関係は、いまどうなっていて、今後どうなるか。アメリカとのいま問題になっている粘結炭の値段の引き上げの問題はどうなっているか。それからく、ず鉄の問題、電力の問題、タンカーの問題、水の問題を担当の方々からそれぞれ具体的にその需給関係と今後の見通しについてお伺いしたい。——あのね、持ち時間というのがありまして、あなた方が時間を食うとわれわれの時間がなくなりますから、なるべく簡潔に早くやってください。それから答弁がここで長くなるようでしたら、簡潔に答弁していただいて、あとで資料かなんかで出していただきたい。
  16. 杉浦博

    説明員(杉浦博君) ただいまの問題で粘結炭の問題でお答えを申し上げますと、いま先生の御指摘のとおり、非常に重大な問題を今後呈するものと思います。昨年約二千万トン輸入をいたしましたけれども、今年はそれより若干オーバーした購入が必要になるのではないか、こういうふうに考えておりますけれども、御指摘のように、アメリカ全体がエネルギー不足になっておりまして、一説によりますと、日本の過当競争によって値段が上がっておる、こういう非難が一部あるものですから、全体から見ますと必ずしもそういった非難が当たらない面もあるかと思いますけれども、少なくとも日本側の姿勢としてはそういうことのないようにいま慎重に検討しておりますし、アメリカともいろいろコンタクトを始める、こういう段階になっております。特に粘結炭につきまして申し上げますと、長期に契約しております分と、それからスポットで買う分とございますけれども、そのスポットで買う分が非常に値段が高うございまして、問題はそこかと思います。われわれの態度としても、そういう非難をこうむることがないように慎重に検討し、現在鋭意考慮中でございます。  それからくず鉄でございますけれども、これは特に最近輸入がふえたという事情ではございませんで、大体五百万トンから五百五十万トンぐらいの輸入になるかと思いますけれども、これは粘結炭ほどのシリアスな問題に現在なっていないように考えますけれども、これにつきましても業界としては慎重に対処するようにいろいろと検討を続けておると、こういうことでございます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し数字的にあとで何か資料的にいただきたいと思うのですけれども、これに対して対処するしかたですね。ただ業界に過当競争のないように、とか、そういうようなことで済むのかどうか。これはあとでもだんだん触れていきますけれども、やはり全体の景気調整の問題とも関連してくると思うんです。部分の問題だけではないと思うんです。いろいろまた新聞を見ますと、粘結炭不足に対して、技術的に改善を施すとか、研究中だとか、そんなことでは間に合わないこともありますし、まだまだそれがいまだけの問題ではなくて、今後また成長がこのような状態で続くとなればいっそうシリアスな問題になると思うのです。ですから、その点は、事務当局としてはどんなふうに考えているのですか、その対策のほうは。
  18. 杉浦博

    説明員(杉浦博君) 抽象的に申し上げましたけれども、問題が御指摘のように非常に重大な問題でございますので、少なくとも大部分をアメリカから資源を買い入れてやっておる産業でございますので、その関係を円滑に維持するということも必要かと思いますし、特に、最近、超スポット物——と申しますと、船が向こうへ入りましてスペースがあいたというようなときにかき集めるような姿勢で買うようなことがございますので、少なくともそういうようなことをやらないという措置考えようということで実施に移そうということを考えております。その辺が、日本側の対策がアメリカのいろいろな法律関係がございまして、明確に打ち出したりあるいは実施をするまでにいろいろと慎重に検討しなければならぬ事項がございますので、その辺を十分に検討し尽くした上でそういう措置をとりたい、こういうふうに考えております。  こまかい数字その他は、またお話しを申し上げたいと思います。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料として出してください。  次に、電力事情について。
  20. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 先ほど先生の申されました石炭の問題、あるいはくず鉄の問題、電力問題、それぞれ私どもとしましても昨年以来の経済拡大がスピードが非常に速過ぎたという点から来る問題点と思います。そのことと関連しまして、具体的な問題につきましては、実は、電力、オイルタンカーの問題、こういう具体的な資料は準備しておりませんが、抽象的に一般的に申し上げますと、電力の問題は、昨年あたりから一四、五%の需要が伸びておるということで、現在やっております建設のテンポに間に合わなくなったということで、昨年度から年度途中から大幅な投資計画の増加をやるというふうな状態になっておりまして、地域的に不足の状態も出ておりまして、何といいますか、適正予備率というものを若干下回っているというような状態になっておりますことは、御指摘のとおりでございます。また、オイルタンカーの問題につきましても、原油の輸入が最近ふえまして、そういったことで日本船による積み取り比率も低下しておるということも事実でございます。工業用水の問題も、産業活動の全般的な活発な生産活動を反映しまして、かなり不足しておる模様でございます。  具体的に数字をもってお答えできませんが、大体そういうふうに考えております。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合、この対策として、大筋の考え方として、これまでの電力の長期計画がありますね、それを需要がオーバーしたという場合に、そのオーバーした需要に追いつくように計画をきめるのか、あるいはまた、そういう需要が計画より上回るときには、計画に合うように需要を押えていくのか。ですから、成長行き過ぎる場合、財政政策とか金融政策として計画に合ったように押えるのか、あるいは、需要が計画より上回ったときに、需要に追いつくように計画を拡大していくのかですね。御承知のように、最近のGNPの増大も、公害対策のためにGNPがふえるとか、非常な浪費がふえてくる。その浪費のためにGNPがふえると、そのためにいろいろな成長行き過ぎちゃって、そしていろいろなネックが出てくる。そういう場合に、需要に追いつくように計画をふやすのか、計画に合うように需要を押えるのか、そこのところが、あいまいというより、むしろ拡大する需要に生産計画が追いつこう追いつこうとしている。じゃ、その需要というのは、私よく検討してみると、公害を起こしておいて、その公害を防止するためにまた生産をふやすと、こういうような矛盾がたくさんあるように思うんですよ。そこら辺ですね、これは大局的には大臣に聞かなきゃならぬけれども事務当局の姿勢として、どっちの方向を向いて調整しようとしているのか、また、すべきと思うのか、伺っておきたい。
  22. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 基本的には、たとえば電力にしましても、政府の長期計画をベースにしまして、電力の投資の長期計画に基づいて毎年投資をやっているわけでございます。したがいまして、急に電力不足するような状態ということは好ましくないわけでございまして、やはり資源あるいは労働力全般から見た一つの安定成長のラインに沿って電力の投資をやっていくというのが当然であろうと思います。ただ、昨年来、御承知のように、予想以上に経済成長のスピードが速かったために、やはり電力の供給ということをそれに対応してやらなければいかぬということで、追加投資を願っている、そういったこともやむを得ないかと思います。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、事務当局としては、当然一つの計面の線に沿って、特に一応予算編成のときに経済見通しというものをやっているわけですから、大体それに合うようにやるのがたてまえでしょうけれども、実際は非常にそごをしちゃって、やはり計画より需要が上回る、そうしてその需要に合うようにまた計画を変えるというような形になっていると思うんですよ。これを繰り返していたのでは、いつでも計画と実績がそごをする。そごをするだけならいいんですけれども、非常にアンバランスが出てくるし、それがまた国民経済的にものすごいロスでしょう。たいへんなロスですよ。今後それが激化しようとしていますから、ここで国会の場ではっきりさせて、これに対して関心を向けなきゃいけないと思うんですよ。こんなことをやっていたのでは、今後不均衡は拡大するだけだと思う。  それから水はどうなんですか。工業用水はいまどうなんでしょうかね、わかりましたら。わからなければ、どなたか……。これはどこが担当ですか、工業用水等は。
  24. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 通産省が担当しております。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまたあとで数字的にわかればけっこうですから文書等で出してください。これもあなた御存じと思うんですよ。これも深刻なる問題になってきています。  電力も、関西のほうで電力の規制をやったとか新聞に出ていましたが、それはほんとうなんですか。それはどういう事情になっているのでしょうか。
  26. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 具体的に存じませんので、後ほどやはり資料としてお出ししたいと思います。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、それも資料を出してください。  それでは、いま部分的に聞いたのですけれども経済企画庁の調整局の方に伺いたいのですが、四−六月の実質成長率はどのくらいですか。
  28. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 実は、国民所得統計の四−六月の速報が十月になりませんと出てまいりませんので、そういったベースの数字は現在ないわけでございます。ただ、一つの推計で申し上げますと、これはいわゆるQE法といっておりますけれども一つの相関値をもって非常に単純に推計する方式でございますが、まだ信憑性その他についてははっきりしたものは確立されておらないのでございますが、それによりますと、前年同期比で実質で一一・五という数字が現在ありますけれども、これがどの程度正しいか、もう少し検討を要する数字ではないかと思っております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 調整局の方ですか。
  30. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 調整局長でございます。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そちらでファインチューニング作業をやっているんでしょう。それはどういうことになっているのですか。
  32. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) ただいま申し上げました数字が私のほうの研究所で一番早く実績をフォローする方法でございまして、それによりますと、ただいま申し上げました一一・五という数字がございます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一一・五ですか、四−六月が。少しおかしいですね。私が聞いたところでは、大体一三%くらいになるのじゃないか、もし金融引き締めをやらなかったならば一五%くらいになったであろう、こういわれているんですよ。それは確かな数字ですよ。確かと言っちゃ悪いですけれども
  34. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) ただいま申し上げましたのは、前年同期比の数字で試算値でございます。それを織り込みまして実は成長の拡大のテンポというものがあるわけでございますが、そのテンポを一応試算しまして、昨年の十−十二月の三カ月をベースにしまして、ただいま申し上げました試算値の四−六月の四半期の平均伸び率を年率で直してみますと、一三%という数字が出ております。これが一つのスピードになると思いますが、これが年度間の平均伸び率とどういう相関関係になりますか、これはちょっといろいろむずかしい問題がございまして、一応カーブとしてはそういった形になっております。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それを聞いているわけです。ですから、ファインチューニングがなぜ必要かといえば、やっぱり微量調整をやらなきゃいけないでしょう、おくれてはいけないからやっておるのであって、そうすると、一三%の年率にするとそうなるということになるでしょう。それを聞いているわけですよ。ということは、政府の年率が大体一一・一くらい平均伸び率を見ているわけでしょう、四十五年度は。だから、それに比べて、四−六月は、今後はわかりませんが、金融引き締めをやっているにもかかわらず、いまの一三%でしょう。もしこのままずっと続いていって一一・一%平均にしようとすれば、あとになってものすごいデフレ政策をとらざるを得ないでしょう、このままで行けばね。年度間一一・一%にしようとすれば、あとでものすごい引き締め政策でもとらない限りは一一・一にならないですよ。ですから、すでに年率に直して四−六月は一三%というあれが出ているとすれば、実は、専門家の間では、もし金融引き締めがなかったら年率が一五%くらいいったろうと。引き締めても一三%くらいなんですから。そこで、さっき質問したように、そのアンバランスがほうぼうに出てきているし、これからまたいろいろほうぼうに出てくると思うんですよ。労働不足、輸送不足、いろいろなものにたくさん出てきて、非常なアンバランスが出てきて、インフレーションも問題ですけれども、公害も問題ですけれども、それ以外に全体の国民経済アンバランスという問題がいま非常に重大化しつつあるわけですよ。そこでいまそれを伺ったんですよ。ですから、これに対しては、これから大蔵大臣に、このままでいいのかどうか、今後の財政政策より金融政策をどうするか、こういう四十五年度実績にかんがみて四十六年度予算編成はどういうふうにするべきか、聞かなきゃならぬのですけれども、昨年の第三・四半期に比べて年率一三%だと。そうすると、七−九月はいつごろわかりますか。
  36. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 四−六月の速報が出るのは十月でございます。いま申し上げました試算値で出ますのは十一月ごろになると思います。  それで、ちょっと補足いたしますと、いまの同じような計算を、昨年の一−三と昨年の十−十二のカーブを描いてみますと、一五・一という数字が出ております。したがいまして、逐次減速はしておると思いますが、水準といいますか、拡大のテンポが速いということは事実でございます。ただ、最近の減勢のほうはかなり強うございますが、先行きかなり鈍化の指標も出ておりますので、逐次スローダウンしておるものというふうに考えております。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかります。昨年一五%ぐらいのあれですから、金融引き締めをやったと思うんですよ。金融引き締めを九月やったのですけれども、それにしても一三%というのは高いのじゃないかと思うんですね。大蔵大臣はよく一〇%台、一〇%台と言っておりますから、それから見ればまだ非常に高いと、こう思われるのですがね。  それじゃ、次に、大蔵省に伺いますが、民間設備投資はどういう状況ですか。
  38. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 日本銀行の短期観測によりますと、八月時点の調査で一八・一%の伸びということになっております。これは二月時点が一二・八でございまして、五月時点が一六・一であったかと思います。そのころに比べまして、最近の設備投資の動向としてはかなり高い数字になっております。  なお、日本長期信用銀行が七月一日時点で調べております数字によりましても、工事ベースでは一八・一というような数字になっておるようでございます。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十五年度予算編成前提と一応なっているといわれている政府の主要経済指標の見通しによると、民間設備投資の伸び率は一七・二になっている。ですから、四−六月に限ってはオーバーしているんですね。やっぱり、金融引き締めをやっているのに、かなりオーバーしているんですね。ですから、これはどういうふうに考えていいか。それは行き過ぎの方向に行くような感じですね。それから、設備投資だけでなく、全体の、さっき質問したでしょう、ああいうことと関連して、やっぱりどうなんですか、金融をゆるめるとかゆるめないとかいろいろな問題になっておりますけれども大蔵省はどういうお考えなんですか。
  40. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ただいま御指摘がございましたように、設備投資もかなり強いわけでございますが、そのほか、生産指数にいたしましても、六月に四・三というようなかなり強い数字が出まして、七月がそのまま横ばいということでございます。それからまた、機械受注にいたしましても、六月に二三・二のマイナスというかなりのマイナスであったわけでございますけれども、七月には二九・九の上昇ということで、かなり強いわけでございます。そのほか、百貨店売り上げにいたしましても、七月期に二二・六ということでございまして、やはり二〇%をこすかなり強い数字でございます。同じく消費動向を示します日銀券にいたしましても、八月の一九・一に比べまして昨日あたりで一八・三ぐらいというところで、やや落ち着きぎみでもございますけれども、やはりかなり強いということでございますので、そういう情勢に応じまして、基本的な態度は、従来の態度を持続するということで大蔵省、日銀ともに現に一致しておるわけでございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、この分では、ちょっと金融をゆるめるというような情勢ではないですね、こういう指標から見ますと。どうですか。
  42. 近藤道生

    説明員近藤道生君) その点は日本銀行総裁がおきめになる問題でございますが、ただいままでのいま申し上げました指標等から見まして、従来の態度を持続する——もちろん、こういう景気動向に対する対策というものは、そのときそのときの情勢、数字などを見ながら弾力的に対処すべきものではあろうかと存じますけれども、ただいま申し上げましたような状況から申しますと、ただいまの引き締めを持続するということが基本方針であろうかというふうにに存じております。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、経済企画庁の方にもう一つ伺いたいんですが、鉱工業生産は四−六月はどのくらいになっておりますか、伸び率は。
  44. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 一八%でございます。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これも、政府としては約一五%ですね、平均の伸び率は。よく企画庁あたりで警戒信号とか言うんですがね。しょっちゅう見通し調整をやっていて、そして行き過ぎのような判断をする場合の一つの目安として、やはり鉱工業生産が一つの主要な指標と思うんですけれども、一八%というのはちょっと高くはないでしょうか。
  46. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 四−六月の一八%という水準は、かなり高い数字と考えております。ただ、七月が横ばいになりまして、やはり前年度一八%ということで、水準としては非常に高いと思いますけれども、この伸び率は少し鈍化している。一方、出荷のほうが生産よりももっとはっきりスローダウンの傾向があり、したがって、引き締めの効果が発揮するということが基調としてございます。大体、出荷が先にスローダウンして、生産があとでいくというふうな経過を従来とっておりますから、そういうことで当面の伸び率のテンポというものが今後かなり全体の総需要のスローダウンに伴いまして下がっていくだろうというふうに考えております。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前年度は相当高かったわけですけれども、前年度の平均が一七・六ですかね。前年度実績はどうなんですか。
  48. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 一七・七でございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前年度かなり行き過ぎたと言われるそれより上回っているのですから、かなりテンポが速いと言わなければなりませんね。  それから前年度の実質成長率は結局どうなったんですかね。四十五年度予算編成のときには一三・二の実績見通しだったんですけれども実績はどうなっておりますか。
  50. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 一三・〇でございます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああ、そうですか。  それから、もう二つばかり聞きたいんですが、物価のほうはどうなんですか。消費者物価と卸売り物価について聞きたいんですがね、やはり四−六月を。
  52. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 卸売り物価は、四月まで御承知のようにずうっと上昇カーブをたどったわけでございますが、五月に横ばいになりまして、六月に若干下がりまして、七月にまた横ばいということで、五月以降やや安定の状況にございますが、ただ、八月に入ってから若干反発しておるというふうな状況でございます。それで、消費者物価は、五月以降季節商品を中心に比較的落ちついた動きをしておりましたが、やはり七月に若干上っておりますので、両物価ともそう楽観はできない状況でございます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一番最近わかっているのは何月ですか、指数は。
  54. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 卸売り物価は八月、消費者物価は七月でございます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああ、そうですか。そうすると、それは前年同期比はどうなんです、どのくらいの……。
  56. 新田庚一

    説明員(新田庚一君) 卸売り物価の七月が前年度三・七でございます。それから消費者物価の七月が六・二でございます。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 六・二ですか。最近は多少横ばいのときがありましたけれども、前年同期比で見ると、まだかなり高いですね。  それからもう一つ伺いたいのは、国際収支はどうなんです。
  58. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) ことしの四月から七月までの数字がまとまっているのでございますが、船出のほうは前年同期比二一・二%の増加でございます。去年の対一昨年同期比は二四・八%増ということになります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはいつからいつまでですか。
  60. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) 四月から七月でございます。  次は輸入でございますが、本年の前年度同期比は二九・五%増ということでございます。昨年度につきましては、その前年度比は二二・二%の増加ということになっております。  輸出・輸入合わせまして貿易収支の黒字でございますが、前年度は四−七月に十二億八千万ドルの黒字でございます。本年度は四−七月に十二億三千万ドルの黒字ということに相なっております。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、四十五年度予算編成のときに前提とした輸出入の伸び率及び黒字幅よりは、年率に直しまして非常に高いですね。
  62. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) お説のように、当初の政府見通しに比べまして輸出も輸入も高い水準に推移しております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最初の政府見通しですが、輸出が一四・六、輸入が一七・五ですね。もしいまの四−七月——それから輸入のほうは、四−八月ですか、同じですか。
  64. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) 同じでございます。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、もしこの調子でいくと、黒字幅も予想よりかなり大きくなるし、結局、年間で十億七千万ドルの総合収支の黒字を見込んであるでしょう、これが年率になるとどうですか。黒字幅も最初の見通しよりかなり大きくなるように思うのですが、どうでしょうか。
  66. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) これは季節調整のない数字でございます。したがって、今後の問題を考えます場合には、国内金融の動向はどうなるか、海外の情勢はどうなるか、いろいろな要因が考慮に入れられなければならぬと思うのですが、私どもいまの感じでは、政府見通しの貿易収支の黒字は四十億ドルでございまして、まずこのあたりの黒字というものはいままでの傾向と今後の見通しとして出るのではないかというふうに考えているのでございます。  それから総合収支についてお触れになったわけでございますが、十億七千万ドル、これはかなり資本収支の動向が影響してまいります。私ども、経常収支についてはそれほど大きな狂いはないというふうに感じておりますが、資本収支のほうは株式のポートフォリオの形による外資の流入というものが去年はかなり大きなウエートを占めたと思います。これは、本年度は、どちらかといえば鎮静をしております。必ずしも悪い傾向ではないと思っております。したがって、こういうものがどうなるかということによって十億七千万ドルというものがどういう形に落ちつくかということになるわけでございますが、一方、インパクトローンなどもかなり押えたかっこうで運用いたしております。まあ、短期資本、長期資本、それぞれの動きが今後不確定な面もございます。そうかといって、いま十億七千万ドルというものを大きく変化させなければ非常に困った見通しの変化が起こっているということでもございません。もう少し様子を見てまいりたいというふうに思っております。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 様子を見るというのは、たとえば株式投資等が前年度より鎮静化して、総合収支では十億七千万ドル以下になるだろうというあれですか。
  68. 奥村輝之

    説明員(奥村輝之君) 株式投資は、これは私どものほうでコントロールがきかない要素があるわけでございます。したがって、これがいまのような鎮静状態でありますれば、十億若干下回るような予想になると思います。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。  いままで経済情勢質問してまいったのですが、それに関連して質問に対して十分な御答弁のできなかった面もあったようですが、それはあとで資料等文書の形でひとつ補いとして出していただきたいと思います。また、私が質問しないことにつきましても、そういういまの情勢の変化について注意すべき点がありましたら、やはり資料として出していただきたいと思うのです。その趣旨はおわかりだと思うのですが、非常にアンバランスが出てきているそのアンバランスを知りたいわけですから、それを数字的に私が指摘した以外にもこういうアンバランスがあるとお気づきになったら出していただきたいと思います。ただ、大蔵大臣がおりませんから、こういうアンバランスを金融面で調整するのか財政面で調整するのか、金融と財政を総合してどういうふうに調整するか、こういう点が非常に聞きたかったところですし、それからこれまで金融を引き締めてさえこんなに高いから、じゃ財政の面で——結局、四十五年度予算はインフレ財政であったと、こういうことになると思うんですけれども財政の面で今後どういう考慮を払うのか聞きたかったのですが、それはこの次に大蔵大臣に大局的な政策面については質問したいと思います。  それから次に伺いたいのは、時間がなくなりましたが、特恵関税の問題です。これは今後非常に重大な問題になると思うのであります。それで、これは、聞くところによると、OECD会議が開かれておって、まだ政府のほうでは案ができない、急遽まとめつつあるというのですが、それから通常国会に特恵関税に関する特別の法律が出されると、そうしてこれについては通産省で作業しているということが新聞に出ているわけです。これは、特別の法律として出るのか、あるいは関税定率法の一部改正等で出るのか。それからいまの作業が、どこまで作業して、そうしてどういう形でOECDに出すのか。それからその影響ですよ。もしたとえば韓国等が低開発国として認められて韓国からの輸入が生糸なんかが無税になるなんという場合ですよ。中国から生糸を輸入している場合、一五%ぐらい関税かかっているそうです。韓国から今後無税で入ってくると、中国が一五%かかれば、中国からの生糸の輸入は完全にストップしちゃう。そういう面もあるわけです。そうなると、非常に大きな変化と、それからまた経済的にも非常な影響が出てくると思うんですが、どういう作業をやっておってどういう影響が見通されるか、この辺について伺いたいと思います。
  70. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 事務的なお答えを申し上げることになりまして恐縮でございますが、御案内のとおり、わが国の特恵関税供与案につきましては、昨年の十一月にUNCTADというところへ出しております。これにつきましては、御案内と思いますけれども、開発途上国から、いろいろと文句といいますか要望が出てまいっております。  簡単に申しますと、一つは、農産物でございますが、これにつきましては、私のほうでこれこれの品目につきましてはこういうふうに関税を軽減いたしますというオファーをいたしておりますが、これをなるべくふやしてくれぬかという要望が出てまいっております。  もう一つは、工業製品あるいは半製品でございますが、これにつきましては、国内産業にとりましていろいろ問題のある方面がございますから、センシチブ品目と申しておりますが、関税の軽減幅も若干制限をしております。それからあとで申しますが特別のセーフガードみたいなもの、これにつきましては、センシチブ品目はさっき申しました農産物と違ってもっと減らしてくれぬか、こういう要望が出てきております。  第三点は、ただいま申しました一種のセーフガードでございますが、話をこまかくいたしますとなにでございますが、時間もございませんので概略申し上げますと、日本の特恵供与案が、開発途上国からの輸入を無制限に認容しまして、そのあれで特恵を供与するというわけではございませんで、一定のシーリング——と申しておりますが、過去の輸入実績によりましてワクを設けております。各物品ごとにそのワクの中でいま申しましたいろいろな特恵をお与えするということになっておりますが、私が申し上げるまでもございません、これはとにかくできるだけ多くの国にこの特恵を受けるようにしてあげたい。それからまた、それが開発途上国の工業化、経済開発を促進するゆえんでもあると思いますから、そのワクが昨年の実績がたとえばことしのワクの半分をこえているというような比較的開発途上国の中でも工業化の進んでいる国につきましては、ひとつ御遠慮いただけぬだろうか、そうして、その分はほかのもっとおくれている国に与えたいと思っているということで、まあ追い出し条項と通称しておりますが、そういうあれがございます。それで、比較的工業化の進んでいる国からひとつ撤廃をしてくれぬかという要望が出ております。  まあ大きく分けましていまの三つが各国からの開発途上国からの要望でございます。そこをどうするか、ただいま実は検討しておりますが、日本を取り巻く国際情勢を見まして、特に開発途上国に対する経済援助の重要性にかんがみまして、あまり消極になって各先進国の供与に比べて見劣りのするものでありますと日本の国際的な立場につきましても影響があると思いますので考慮する。もう一方は、このために国内産業に対しまして無用の混乱を起こすことは避けなければいけませんので、どうしたらいいか、ただいま検討中でございます。十四、十五日にOECDの貿易委員会が開かれますので、それには間に合わせるように政府で鋭意検討中でございます。とにかく、国際的にも国内的にも一番いい案をつくろうということでございます。  それからもし順調にまいりますと、いま申しましたOECD、それから引き続きましてUNCTADの特恵の特別委員会がございますが、そこで議論をいたしまして各国の案がまとまりますと、御案内のとおり、この秋に開かれます国連の創立二十五周年の記念事業の一つといたしまして一九七〇年代における国連開発計画というのが策定されまして、その中の大きな柱として採用されることになっております。したがいまして、わが国といたしましても、順調にまいりますと、事務的なお答えを申し上げますと、通常国会関係法案を出しまして、各国の施行の状況を見ながらできるだけ早く実施するような方途を考えるべきじゃないかというふうに考える次第でございます。  それからただいまの各省の対策案のお話が出ましたが、これは、まだ全くそのもとになる計画がきまっておりませんで、したがいまして、どういう対策を講ずるかは基本の計画がきまりましてからいろいろな状況を勘案いたしまして慎重に検討をしたいと、こういうふうに思っております。  影響でございますが、確かに、特恵が供与されますと、国内産業につきまして若干の影響がある。それからまた、各国の案がわかりませんけれども、これからのこっちからの輸出につきましても、競争する後進国の物品につきましては、たとえばアメリカで非常にドラスチックな特恵供与がなされますと、また影響を受けるかもしれないというふうに考えております。  たいへん抽象的な答えを申し上げまして恐縮でございますが、そういうことも考えまして、どうしたら国内産業に無用の混乱を起こすことのないようにできるか、慎重に検討していきたいと思っております。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、いまのお話を聞きますと、かなり急速に案をまとめなければならぬ段階に来ているわけでしょう。また、その案いかんによっては影響が非常に各方面に及ぶわけですよ。ですから、早く案を国民は知らなければなりませんしね。そうして、これはずいぶんいろいろな方面で影響が出てくる。それから工業国十八カ国のうちで全部が同じであるとは言えない。たとえばカナダなんかは、低開発国に適用する国については必ずしもよその国と同じじゃないとか、そういうことも聞いておりますし、かなりいろいろな影響があるわけですよ。したがって、これは、国連の今度の記念事業であるからというので国内のほうの影響を十分に考慮しないで拙速に案をどんどんつくってしまって抜き差しならぬようになると、これはたいへんな問題になると思うんです。ですから、これは、そういう案になった場合に影響がどういう影響があるのかをはっきりとわれわれとしては知りたいわけですよ。実態がどういう影響があるのか、そういう点は、これはもう作業しているのだからわからなければならぬはずですよ。通産省あたりも、新聞で見ると、法案をいろいろもう検討しているわけでしょう。だから、こんなに差し迫っていてまだわからぬというのはおかしいですね。もしそういう調査がありましたら出してください。  たとえば、こういう場合には何品目くらいが該当し、そのうち、たとえば韓国からこれが無税になったらどのくらいのものが入ってきて、よその国からはどういうものがもう入ってこなくなるとか、それから一体台湾を低開発国と認めるのか認めないのかということ自体が問題ですね。たとえばロストウなんか、もう台湾もテークオフしたのだと、低開発国じゃないと言っていますよ。そういう場合に、佐藤・ニクソン会談でああいうところから政略的に台湾を特に低開発国としてあそこの輸入を無税にするとか、あるいは韓国、台湾への資本進出はみんな日本の資本でしょう。日本の資本がどんどん進出していって、それでそれを逆輸入する場合には無税になるなんという、そういうこともあるんですよ。なんだかこれは利害ふくそうしていまして、たいへん重要な問題になると思うんですけれどもね。あまり実態が国民にわからせられないうちにOECDのほうの記念事業として急いで案をつくっていくというんじゃ、われわれは困るわけです。だから、どういう影響があるか、その実態をよく調査して、なにか資料か何かで出してもらいたいんですよ。ずいぶん広範な品物になると思うんですよ。何百種類となるんじゃないですか、該当する種類がね。非常に広範な、また、こまかい雑貨品なんかたくさんあると思うんですよ。その影響は非常に大きいと思うのです。それを資料として出してください。作業をやっていないはずはないですから。
  72. 藤田正明

    説明員藤田正明君) ただいま、関係各省と詰めの段階に入っているところでございます。その全体のことにつきましては確たることがここで申し上げられないということであります。  なお、また、特恵を与える国につきましても、国際情勢その他いろいろな微妙な点もございますし、これらもまた詰めの段階に入っている、そういうふうなことでございます。  いま御要望のできるだけの資料を提出しろということでございますが、その点につきましては、できるだけのことをいたしたいと思います。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その詰めの段階というのは、十分に、こういう案にしたらばこういう影響がある、この案ではこういう影響がある、そういうことを調査した上での詰めでなければならぬでしょう、詰め詰めといいますと。詰めの段階というのは、やはりその影響というものを十分調査ができているはずです。それでなければ詰めばできないのですから、どういう影響があるか、それについては資料があるはずと思いますから、その資料を出してください。
  74. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 大蔵省一省だけじゃございませんで、各省とそれぞれ協議をいまいたしておる最中であります。そこで、大蔵省はこう思うけれどもしかし農林省はこう思うというふうな問題が多々ございますので、ここで申し上げられかいということを話しておるわけであります。  御要望の資料は、できるだけのものは御提出をいたします。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は具体的な例を一つ示しますが、たとえば生糸というものは、いま、韓国からも一五%の関税がかかっている。中国からも一五%課税をされている。もし中国を低開発国と認めないとしますね、かりに。あるいはまた、国連に入っていないという名目で中国のほうは一五%依然としてかける。韓国のほうを無税にしちゃう。こうなったら、どういう影響があるか。そっちの貿易を扱っている人にはこれはもう決定的な打撃でしょう。それからまた、雑貨でこまかいものがたくさんありますよ。たとえば自動車の車体のごみを払うああいうものが、あるいは中国から入ってくる、台湾から入ってくる。結局、これをだんだん結めていくと、台湾と韓国が無税になると、これはもうものすごい優遇をすることになるんですよ。それで、たとえば中国なんかのあれを差別されますと、そっちのほうの貿易は非常に大事で——もう中国貿易なんか要らないというならいいですけれども、これが全体の貿易に影響したら、たいへんだと思う。長崎事件みたいに発展したらたいへんですよ。ですから、私は、こういう場合にはこういう影響がある、しかしこれは大した打撃ではないとか、それを聞きたいんですよ。ですから、影響影響というのは、そういうことなんですよ。いま、農林省でどれだけの品物を取り寄せるとか、いや通産省でこれだけ入れるとか、そういうことをいろいろやっているようですけれども、それだけじゃないのですから、影響はもっと広範だと思う。そういう調査を出してもらいたいと思う、こう差別しても大して影響はないんだというならば。それでなければわれわれは判断のしょうがないでしょう。その法案を出してきたって、それに対する態度をきめるのに、実態の影響なんか十分内容がわからなければわれわれは判断できませんから、資料を出してください、いまお話ししたような資料を。これをひとつ要求しておきます。
  76. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 各省ともよく相談いたしまして、できるだけの資料を提出いたします。
  77. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、国有財産の管理並びにその処理ですね、これらについてお尋ねしたいと思います。きょうは、この問題について大蔵大臣から新しい方向を示していただけるかというような期待をもって出てきたわけですけれども、お休みなのではなはだ残念でございますが、大蔵大臣にかわって責任ある立場の政務次官あるいは局長、そういう方々がいらっしゃるので、相当明確に御答弁いただけるものと、このように期待をいたしております。そういう立場質問に入っていきたいと思います。  最初にお尋ねしたい点は、いわゆる国有財産の登記についてですが、国有財産というのは登記しなければならない、こういうことだと思うのですが、この点はどうでしょう。
  78. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの点は、旧軍未登記財産という問題であると存じますけれども、これは戦時中に旧陸海軍が土地を買収いたしましてそれを未登記のままに置いておきまして、それを大蔵省が引き継ぎましてその処理に当たっているということでございますけれども、登記しなければならないかどうかというふうな御質問はまあ一般的な御質問であると思いますけれども、これは登記を極力促進してやるべきでございまして、たとえば登記をしていないというふうな場合におきましては、当然登記をしていないという法律上の効果が出てくる、そういうふうに判断しております。
  79. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、もし登記をしていないということになりますと、世間に対して国有財産としての公証力、そういうものはないのだと、こういうふうに考えてよろしいですか。
  80. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) それは法律にきめられております登記としての効力を主張できないということになるわけでございまして、たとえば善意の第三者が取得した場合には、登記をしていないということから権利を主張できない、そういうふうな事態になります。
  81. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。  それでは、いまあなたが言った旧軍に関係した土地の未登記の分、この未登記の分は一応国有財産というふうな見方をしておる、こういう未登記のものは全国でどのくらい現在あるのですか。
  82. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは完全に整理がついておらないような状況でございますし、したがって、確定的な件数であるというふうに申し上げられないわけでございますけれどもお尋ねの旧軍未登記財産につきまして、昭和四十四年度末現在における数量を申しますと、三千三百十三件、面積にしますと五百七十一万八千九百二十七平米ということになっております。
  83. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、これは坪数にするとどのくらいになりますか。
  84. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 三・三で割りますので、約百七十万坪くらいになります。
  85. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 百七十万坪も未登記の財産があるというこういうことなんですが、これはいま土地の値上がり等が非常に問題になっておりますけれども、これは金額的に換算したことがありますか。このくらいの価格であるというものを出してみたことがございますか。
  86. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは何しろ件数が三千件以上で全国的に散らばっておりまして、それぞれの地域によって土地の価格も違うということもございますし、お尋ねの点の土地の価格でどのくらいになるかという計算はしておらないわけでございます。
  87. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 金額の面ではわからないということですが、相当膨大なものだということだけは一応感ぜられますね。そこで、この未登記の財産の中にもいろいろと分類されているようです。これは内部的な処理の方法らしいが、たとえば、甲類、乙類、丙類とこういうふうに分類されておるようですけれども、その内容といいますか、甲類とはどういうものであるか、乙類とはどういうものであるか、丙類とはどういうものであるか、こういう分類、その内容ですね、それについてひとつ御説明願いたいと思います。
  88. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの点につきましては、この膨大な件数を事務的に整理するというふうなたてまえから、ただいま御発言がございましたように、甲、乙、丙というふうな分類をいたしております。それで、甲類につきましては、買収の挙証資料が十分にあるもの、それから乙類につきましては、買収に関する資料が完全に整っていない、そういうふうなもの、それから丙類というものにつきましては、努力しておりますけれどもなかなか資料の収集が困難である、そういうふうな一応内部的な基準を設けまして、整理しているわけでございます。
  89. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大体その内容はわかりましたが、そうしますと、三つに区分されておる甲類、乙類、丙類で、それぞれ甲類はどれくらいの件数、面積、乙類はどうであるか、それぞれの立場でどのくらいの面積あるいは件数があるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  90. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは、実は、いろいろ資料を収集いたしまして、資料が集まってまいりますると、資料が比較的十分なほうに分類し直すとか、あるいは、現在資料の収集が十分でないというふうなものでも、今後出てくる可能性もあるというふうな点もございまして、ここで申し上げられるように甲、乙、丙についてそれぞれどのくらいあるかというふうな整理はついていないような状況でございます。
  91. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 まあ理屈を言うわけじゃないですけれども、そんなばかなことはないでしょう。ほんとうから言えば、そういったことが、三千何百件かの未登記財産があるのだ、その内容はこうであるとその内容がわかる以上、もちろん甲、乙、丙に分けられるでしょう。したがって、甲とはどれだけだ、乙とはどれだけだ、丙とはどれだけだということがわからなければおかしいと思うのですよ。で、大蔵大臣はそういったことも絶えず掌握していなくちゃならないという法律があるのじゃないですか、どうなんですか。
  92. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 法律の問題と申しますか、とにかく、国有財産の管理を所管している大蔵省といたしましては、当然でき得ればおっしゃるような点まで把握しなくてはいかぬということはおっしゃるとおりでございまして、よくわかる次第でございますけれども、何ぶん旧軍から一構して受け継いだ資料でございまして、非常に内容が多岐にわたっておりますので、なかなか整理が行き届かないというふうな状況でございます。
  93. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その点もわからないではないけれども、整理ができないからいろいろな問題が発生しているということになると、これは問題だと思うのですね。そこで、その点は突っ込んでみたところでそれ以上の答弁がないと思うので、それでは、甲類はさておいて、乙、丙という比較的根拠の薄い問題について、乙類、丙類、これらがいままでどう処理されてきたか、その点についてお聞かせを願いたいと思います。
  94. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 何ぶんにも、御質問の乙類、丙類につきましては、こちらのほうでも資料が不十分という点がございまするので、具体的にその相手方とどういうふうな折衝をしておるかというようなことを一がいに申せないわけでございますけれども、それぞれ財務局あるいは財務部等の出先機関等を通じまして何らかの話し合いはしておるというような状況のものもあるわけでございます。
  95. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、その点が明らかじゃないわけですね。そうすると、ちょっと話にならぬのですよ、そういうことがわかりませんとね。そちらのほうから資料をいただいておりますけれども、あなたがおっしゃるように、乙類については、「訴訟に移行してもその維持が可能と認められる程度には買収挙証資料が存在しないもの」と、ずいぶんややこしい表現ですけれども、こういうふうにうたってあるわけですよね。また、丙類については、「買収挙証資料が皆無のもの」と、こうなった場合に、じゃだれのものだというんですね、この財産は。国のものと認められるのですかね。その点はどうですか。
  96. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 御質問の点でございますけれども、資料と申しましても、いろいろな資料がございまして、それで、完全に資料がそろっていないというふうなものは乙の分類に一応なっておりまして、買収資料が皆無のものという丙類の問題がございますけれども、これも現在いろいろ調査をして収集に努力をしているわけでございますが、究極的な問題としまして、たとえば買収資料が全然ないというものにつきましては、この処理についてはこちらのほうでもいかんともしがたいという状況にございますので、それに相応したやはり措置考えなければならないのではないかというふうに思っております。
  97. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 調査だとか資料がどうだとかこうだとか言うけれども、戦後もう二十五年たっておるんですよ。あとから具体的な問題を申し上げますけれども、ガタガタやっているわけですよ。二十五年もたって資料がない、まだこれからさがすんだと。これはたいへんなことだと思うんですよ、そんなことでまごまごしていたのでは。私の聞きたいことは、丙類に例をおきましょう。そうすると、これは買収挙証資料が皆無であると。そうなると、もう国の財産だなんということはだれが考えても認めるわけにいかないですね、常識的に考えて。法の上からいっても何も根拠がないのだから、国の財産だというわけにいかぬでしょう。それをなぜいままであたかも終戦後二十五年も国の財産のような顔をして置いておったのか、その辺はどうなんですか。
  98. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) それは現在資料収集をなお続いてやっているのだというふうに先ほどお答え申し上げたわけですけれども、国有財産を管理いたします大蔵省といたしましては、できる限り資料の収集につとめてそうして管理を十全にやっていくという意味におきまして、とにかくいまのところ見当たらないものにつきましても極力資料の収集に努力するということではないかというふうに思っております。
  99. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、いままでに乙、丙というものに対して処置されたことがあると思うんですよ。どういうふうに処置されたのですか、それは。
  100. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 資料の収集につきましてこれ以上どうしても困難であるというようなものにつきましては、法務省とも相談いたしまして、所要の手続をとりまして、そうして国有財産の台帳から落とすというふうな処置をしております。
  101. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、国の台帳から落としたということは、それは国の財産ではないということですね。したがって、それは、そこへ来るまでの過程として、旧地主という表現をいたしましょうか、旧地主は、国に向かって、これはおれのものだ、こういうような申し出があったと思いますね、大体において。それは国のものでない、いや、そうじゃない、国のものである、こういうようなことでもんちゃくが起きておる。しかし、結論的には、乙、丙というものについては、国のものであるという確たる根拠がない。したがって、これはもう最終的には台帳から落とす以外にない、こういうことで落としたことだと思うのです。そうすると、その落としたという時点でこれはいま言ったようにいわゆる旧地主に返還されたものであるかどうか、返還ということばが適切であるかどうかわからぬけれども、いわゆる返されたものであるかどうか、この点はどうですか。
  102. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 本件につきましては、結局、国に対する所有権の移転ということがなされておらないわけであります。それで、国のほうで台帳から落とすというふうな処置をいたしますと、本件の登記は国に移転されないままそのまま残っておるわけでございます。ですから、結局、その権利関係が継続して存在するということであろうと思います。
  103. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、ややこしいですね、いまのところは。もともと所有権の移転というものは国になされておったということじゃないわけですからね、こういう問題は、大体において。そうでしょう。所有権の移転が国になされておったということだったらそんな問題は起きるわけはないので、それがないから問題になってきているわけですから、当然あなたの言うとおり旧地主は所有権というものは持っているわけですね。そこで、国のほうでは台帳から落とした。そうすると、台帳から落としたということは、国の財産ではもうないのですね、旧地主に返ったんですねと、こう聞いておるわけです。
  104. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) いまの点でございますけれども、所有権は、その当時の契約によりまして、まあこれは旧陸海軍がやったわけでございますが、所有権は国に移っているわけでございますけれども、登記が済んでいない、そういう件であると思います。
  105. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 理屈ばっかり言ったんではだめなんですよ。もっと現実に即して答えてもらいたい。  そこで、法的な問題がいろいろなものが出てくると思うけれども、丙類については、国のものであるという根拠が全然ないので、これは台帳から落とすわけですよ。根拠があれば落とすわけはないのですからね。そうでしょう。そうすると、それはもう国の財産と言うわけにいかぬでしょう、こういうわけです。そうだとすれば、当然旧地主のものに帰するのだ、そういうことなんですねと、こう聞いているわけです。
  106. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの点につきましては、そのとおりでございます。
  107. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そのとおりでございますということですから、そのように確認していいわけですね。そうすると、それまでの段階は、これはちょっとくどいようですけれども、そういうふうに結着がつくまでは、旧地主というのは、国のほうからどれだけかの拘束を受けておる。おまえのものではないのだという拘束を受けておる。じゃ、いまあなたの言うように国の台帳から落とした時点で、相手のものであるという表示、それは相手方に明らかにわかっているわけですか、通知がしてあるのですか。
  108. 庄司俊夫

    説明員(庄司俊夫君) ただいまお話しの丙類のような場合につきましては、国のほうといたしましても挙証するような資料が十分ないということでございまして、積極的に旧地主に対しまして、これは国のものであるから所有権の移転の登記に応じてくださいというような折衝はやっておらないわけでございます。
  109. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、いままで、丙、乙という部類は、これは相手のほうは全然知らないのだと。知らないで、たとえば旧陸軍から財産目録か何か知らぬけれども台帳を受け取ったらそれがあったと。だから国のものだと。それで、国が勝手に国のものだ国のものだと思っていたと、こういうわけですか。相手には何も言っていないわけですか、これは国のものだということを。
  110. 庄司俊夫

    説明員(庄司俊夫君) 少なくとも、丙類につきましては、国のほうでも積極的に所有権を移転していただきたいという話し合いをする資料がないわけでございますので、そういうものにつきましては相手方と話をしておらないわけでございます。国のほうの内部で、旧軍から引き継ぎました財産につきまして、これは一応丙類に該当するのじゃないかという分類をいたしまして、ただ、先ほど次長が申し上げましたように、極力資料の整備にはっとめたわけでございますけれども、いろいろやってみても資料は集まらない、法務省とも相談いたしましてもこれは断念しなければならないということになりますならば、自発的に台帳から落とす、こういう処置をいたしております。
  111. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、これは丙については当然旧地主のものである、こう確認してよろしいですね。
  112. 庄司俊夫

    説明員(庄司俊夫君) ただいまおっしゃられたとおりでございます。
  113. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、その点は明らかになりましたのでけっこうだと思います。  それでは、現在、まだ三千何百件の中には乙、丙という部類のものがある。これは早く——いかがわしいものですよ、二十五年たってもまだもたもたしているということもおかしな話で、これは早く処置すべきである。乙についても、国のものであるという根拠が非常に薄いのですから、少なくともいまのあなたの話からすれば乙については相手が拘束を受けておるわけですから、いつまでもこれを拘束をして、国が二十五年もさがしてまだはっきりしないのに、これからまださがそうといったって、どこをさがすのだということを言いたくなるので、これは早く処置してやるべきだ、こう考えるわけです。その点、政務次官、どう考えていますか。
  114. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 未登記といえ、これは国の財産であるというふうな一応の考え方をもって台帳にものっけたものであります。貴重なる国民の財産でもありますし、慎重にこれを検討しなければならぬ問題だと思いますが、ただいま言われましたごとく、この事務処理の促進については今後大いにやっていきたい、かように思います。
  115. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、今度は、具体的に少しお尋ねをしてみたいと思います。いまからお尋ねする問題については、もうすでに資料もお出し願ったそういう問題なので、くどくど私が申し上げなくてもそちらのほうである程度調査が進められておる、こう思います。  そこで、私がお尋ねしたいのは、千葉県船橋市三山町字大久保、この一帯の民有地が、昭和二十年の二月、終戦直前、言うならば本土決戦であるというような非常に混乱したときに旧陸軍と民間との間で結ばれた土地があるわけです。この問題について、現在までのいきさつ、今日どのようになっておるか、またその見通し、こういった点についてお答え願いたいと思います。
  116. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの船橋市三山町所在の件につきましては、資料が比較的そろっておるわけでございます。それで、国のほうでは、いろいろ資料を総合いたしまして、そうしてこれは国有財産であるということを確認するという意味におきましても、所有権の移転登記をするとか、そういうふうな処置をしていただく方向で進めていきたいというように考えております。
  117. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そのいままでのいろいろな事情を私は聞きたいと、こう思っておるわけです。あなたの話は、ある程度書類は整っておる、国の財産であるという書類は整っておる、したがって、これは言うならば裁判にかけても勝つ見込みがあると、こういうふうにとれるわけです。そこで、やはり法律的な問題もあろうと思う。しかし、社会正義という一般的なものの考え方もある。で、私は、法律立場ということよりも、この契約がどういう情勢、状況の中で結ばれてきたかということをやっぱり十分に考えていかなければならぬじゃないか、こう思うんです。  じゃ、お尋ねをしたいのは、この売買契約がどういう情勢、状況の中で結ばれたか、この点をひとつ知っている範囲でお話し願いたい。
  118. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) それは私ども実は存じませんので、推定する以外にはございませんけれども、終戦のまぎわの相当あわただしい状況において行なわれたものだというふうに想像しております。
  119. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それは、だれが考えても、あなたのおっしゃるような状況であったであろうという一応の判断はできると思います。これはそれほどあなた方と国民との間に断絶があるという証拠をあなたは暴露したようなもので、地元へ行って聞いてごらんなさい、みんなこういう状況ですと話をする。ほんとうは、そこまでつかんでいかなければこういう問題を親心をもって解決するというわけにはいかぬと思うんですよ、実際は。全然知らない、それでただ書類があるからどうのこうのと、それだけで国のものと主張する国の姿勢が、私はまるきり国民を無視した姿勢というものがおかしいと思う。  そこで、これは昭和二十年二月の十五日に売買契約がされて、なるほど登記承諾書というものもあるでしょう。だけれども、御承知のとおり、これはもう終戦直前です。ここにはいわゆる戦車隊があった。そこに訓練場があった、戦車隊の。そこの用地としてここを買収すると、こういうことです。そこで、この地主は、二十年二月十五日に、判こを持って来いと、命令ですね。役場に呼ばれた。で、来たんです。そうしたところが、もうすでに契約書ができておる。ここに判こを押せと、こういう状況だった。判こを押せって、いやだと言えますか、そのときに。だれ人といえども、あのときの情勢からいえば、これはいやだと言うわけにはいかない。たちまち国賊になっちゃう。そこで、判こを押さされた。まあそれだけならばまだいい。ところが、その契約を結ぶときにはすでにもう戦車壕が掘られておった、人の土地に。そういう状況で契約が結ばれたわけです。そうしているうちにたちまち終戦になった。それで、その契約が生きているのだか死んでいるのだかわからないような状況下にあった。で、御本人たちが言うには、この金銭の授受はないというんです。あなた方書類は整っていると言うかもしれないですけれども、金は一銭ももらっておらぬと、こういうわけです。だから騒いでいるんです。それで、金はもらっていないのだ、すぐ終戦になったと。そうすると、この地主たちは、金ももらっていないのだから、契約は当然消滅あるいは解除されたであろうという判断です。その上、所有権の移転も済んでいない。常識的にいう所有権の移転は済んでいない。これは登記簿謄本です。大蔵省のものだというのはどこにもない。全然ないんです、本人のままですから。ですから、当然、金ももらっていないし、戦争は終わってしまったし、これは契約解除あるいは消滅であろうという立場から途中で売ったんでしょう。また、自分のものだと信じているから、終戦後固定資産税をずっといまだに払っている。そうでしょう。国の財産だとはあなた方は言うけれども、この人たちは自分でもって固定資産税を払っている。それから突っ込んで言うと非常にこまかくなるから申し上げませんけれども、そういう状況の中でこの契約が結ばれた。また、その結ばれた後もそういう状態です。国のほうからは十何年もあるいは二十数年もなんにも言ってこないということで、地主たちは、金ももらっていないし、自分のものだと思い込むのは当然じゃありませんか。それを、今度は書類がある程度整っているとか整っていないとかというふうなその点から国のものであると主張するというその考え方は、私はこれは妥当ではないと思う。したがって、この状況では、決して正常な状態で契約が行なわれたというものではない。だから、私から言わせるならば、戦争が終わった時点で、たいへん迷惑かけたということで国が本人に返すという姿勢が最も妥当な姿勢だと、私はこう思うんですよ。  そこで、まあ言い過ぎていますけれども、こういう状況で結ばれたその契約を——それはなるほど契約は契約です。状況というものはそういう状況です。それを正常な契約というふうに考えられるかどうか、その点の解釈はどうですか。
  120. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) ただいまお話がございましたわけでございますが、その当時軍がこれらの土地を取得したという状況はおそらくお話のとおりであったかというふうに私どもも推定いたすわけでございますけれども、旧軍からこの財産を引き継ぎまして処理をしております大蔵省立場といたしましては、やはり国有財産でございまして、その国有財産を法令に従って的確に管理していくという立場がございますので、その点はやはりするべきことはしなくちゃいかぬというふうに考えておるわけでございます。  それで、代金の授受がなかったというふうなことを現地では言っておるというお話でございますけれども、こちらのほうの資料では代金の授受はあったというふうに推定できる資料があるわけでございます。  それから登記簿につきましては、これはまさにおっしゃるとおりに、所有権の移転登記が済んでおらないわけでございますから、以前のままの所有者が登記簿上にあらわれておる、それはそうなっておるということは当然であると思っております。  それから固定資産税等の点につきましては、非常に遺憾なことになるような結果であると思いますけれども、これは市のほうとの問題もございますし、そちらのほうでいろいろ検討していただく問題じゃないかと思います。
  121. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私の聞いているのは、そういう状況で——私も建設的に言っているつもりですよ。なんとかやはり解決しなければならないという立場、正しい見方でこれが解決されていかなければならない、こういうことでお話をしておるわけです。だから、そういう状況の中で結ばれた契約というのは正常であるかどうかということを私はお尋ねをしておるわけですよ。正常と判断するのか。いま、私は、いろいろ事由を話してきた。それは、あなた方がそういう状況を知らないから、知らないで書類だけをたよってこれが国のものであると言っているから、非常に浅い。もう一歩突っ込んでその事情を把握したときに、考え方というものも変わってこなければならぬ、そういう意味でお話ししておるんだから、正常な契約であるかどうかということを私はお尋ねをしておるわけです。
  122. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 確かに、おっしゃいますように、正常ではないと思います。
  123. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。正常でない、これはもう大事な問題だと思うんです。  そこで、いまお話があったある程度金銭の授受が行なわれておる、こういう証拠があるんだというようにおっしゃったんですけれども、それはどういう証拠ですか。
  124. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) ただいま御質問中の船橋市の三山町所在のものにつきましては、こちらのほうには、たとえば、売買契約書とか、あるいは所有権の移転登記の承諾書とか、それから支払請求票番号とか、あるいは支払小切手番号とか、そういうような資料があるわけでございます。
  125. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それが全部整っているということですか。
  126. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 完全に全部かどうか、その点は一、二例外があると思いますけれども、大体そういうような状況になっております。
  127. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そういういいかげんな返事じゃ困るじゃないですか。大事な話をしておるんですよ。国民の側にとっては、自分の財産が、自分のものであるにもかかわらず、いま国に取られるかどうかというせとぎわじゃありませんか。自分の身にとってみなさいよ、たいへんなことですよ。それが全部かどうかわからないというふうな答弁じゃ、それじゃ答弁になりませんよ。全部そろっているんですか。全部そろっているんなら、あなたがいままで言ったことが生きてくる。ところが、いま聞いてみれば、全部そろっているんだかそろっていないんだかわからないようなな答弁じゃ、話になりませんよ。その点はどうですか。
  128. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) その点につきましては、先ほど実は具体的に申し上げませんで失礼をいたしたわけでございますけれども、問題になっている件数が十三件ございますけれども、そのうちの二件につきましては、先ほど申し上げましたような資料が不十分でございます。あとの十一件につきましては、先ほど申し上げましたような資料がございます。
  129. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、その二件ははっきりしない、あとは全部はっきりしておると。それはいつでも公開できますか。銀行振り込みでやったとか、こういう方法で払い込んだというその証拠、それが明らかでなけりゃ、これは一方的に主張するということも私はおかしいと思うんでね。その点、どうですか、見せてくれますか。
  130. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) その点につきましては、資料は先ほども申し上げましたようにございますから、場合によりましてはお見せするということもできると思います。
  131. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 場合によってはって、地主のほうはその点に疑問を持っているんですよ。一番大事なポイントじゃないですか。それを国のほうで場合によってはということじゃ、いつまでたっても解決しませんよ、これをはっきりしなきゃ。
  132. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 先ほど、実は、公開という意味が私どもにはちょっとどういう御趣旨かわからなかったわけでございますけれども、たとえば相手方の本人が見せてくれというような状況でございますれば、これはお見せするということになっております。
  133. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、見せてくれるんですね。いままでは見せてくれなかったそうですよ。だから念を押しているんです。それで、こういう領収証があるんだと、あなたが受けたという、そういうことであれば、これは本人は納得するでしょう。そういうものを見せないで、それで国のものだ国のものだということでは、これは納得するわけはないでしょう。  それじゃ、まあ銀行の払い込みがあったと。払い込んだというけれども、またもう一歩突っ込みますけれども、本人に金が届いたという証拠がありますか。——どさくさですからね。
  134. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの点でございますけれども日本銀行が受領証を発行しているのではないかというふうに推定される資料がございます。
  135. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 だって、それはみんな憶測であって、二十五年たっているんです。いまどきそんなこと言っていたんじゃしょうがないじゃないですか。それははっきりしないということですかり、その辺もまだあいまいだということですね。そこで、二件だけは金を払った事実が認められないということを言っておりますね、あなたがいま。その二件については、いままで、同様に扱われてきた。この二件についてはどうするんですか。
  136. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは、お尋ねのように同様にというふうなことでありますれば、やはり区分して扱わなければならぬというふうなことになりますので、その方向で極力検討して促進していきたいというふうに思っております。
  137. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 同様に扱われてきたとするならばという言い方はおかしいですよ。同様に扱われてきたんですよ。だからいままで解決しないのですからね。それがわかっていて、それでいまだに国のものだというふうに拘束されているわけですからね、相手は。そこまではっきりしているものに対して、早急にやはりその手を打たなければいかぬと思うんですよ。金を払ったという根拠はない。当然これは本人の手に戻るべき筋のものだと、こう考えます。私はそう思うのですが、あなたの見解はどうですか。
  138. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) この二件につきましては、おっしゃるような方向で処理したいというふうに思っております。
  139. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。  まあもっといろいろと突っ込みたいと思うんですけれども、時間も制限されておりますので大体この辺で終わる以外にないと思うんですが、一つ申し上げておきたいのですけれども、そういう異常な状態でもって契約が結ばれたということをまず頭に置かなくちゃいかぬ。金銭の授受についてもまだ明らかでない、こういう問題が残されている。われわれ常識として考えられることは、われわれが所有権を移転する場合、当然金銭の授受というものが先行すると思うんですよ。ですから、金が払われたということによって所有権は移転する。契約書にこうある、登記承諾書がある、それだけをもってこの問題は解決であると、こうはいかぬと思う。われわれ常識論から言って、必ず金銭の授受が確認された上で所有権の移転ということがある、これは常識問題です。だとするならば、金を払った以上は払ったという証拠がなければならないし、受けたということであれば受けたという証拠がなければいかぬ。それを提出する、そういうことでしょう。だから、そういうものが明らかでないということは、これは国のものであるというふうに一方的に主張するわけにはいかない、こう私は思います。その辺のところをいろいろな状況を加味しながらやはり十分に再検討する必要があると思う。いままでの姿勢は、一方的にこれは公共に属するものとして国が有利であるという立場から進めてきているわけですから、これは再検討しなければならぬ、こう私は思うのですが、その点はどう思いますか。
  140. 藤田正明

    説明員藤田正明君) まことに正常でない状況において終戦前に契約されたものであります。契約された地元の方々に対してはたいへん同情すべき状況であったと思います。戦後ああいう混乱の中で旧軍の土地が返還されたという混乱によってたいへん御迷惑をかけている向きもあるかと思いますが、しかし、大蔵省といたしましても、国民の貴重なる財産を預かるという立場もございます。多少事情が大蔵省側の見解と入れ違っているような点もあろうかと思いますので、今後は事務当局におきまして十分に再検討させましてこの問題の解決の促進に当たりたいと思います。
  141. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ちょっと満足じゃありません。いまの次官の答弁は満足じゃありません。だからといって、あげ足をとってとやかく言うつもりはありません。これで最後にしますけれども、いろいろの疑問がある。これは仮定ですが、あなた方がもし国の財産であるというふうに強く主張するならば、その場合にはどういう結果が出てくるかということも私は考えなくちゃならない。あなた方は大事な国民の財産財産と口では言いながら、言うならば二十五年間ほったらかしたんじゃないか。こういう問題がいっぱいあって整理がつかなかったと、それだけでは済まない。もし国の財産として主張するならば、二十五年間ほったらかしたその土地が、国有地とあなた方が言うその土地が、もう第三者に売られて何の役にも立たないその面積が大体一万坪ある。時価七万円といわれているから七億、それが三千三百分の十三件です。こういう金が二十五年間もほったらかされておるということになるわけです。その責任はどう負うか。国のものだとするならば、これは仮定ですよ、その責任はどう負うか。大事な国民の財産だと言いながら、一方では現実にはそういう事件が起きている。国の財産が第三者の手に渡ってしまっている、それでもつい最近までわからぬというような、言うならばずさんな管理、この責任についてどう国民に弁明するのか、私はこういう問題が残ってくると思う。  いずれにしても、私は、大きな問題だろうと思います。したがって、私は、この問題については十二分にいろいろなそういう申し上げた点を考慮に入れて、そして十分地主が納得のいく解決方法というものを見出して、そしてこれは一日も早く解決しなければならぬ、こういうふうに強く要望して、終わりたいと思います。
  142. 渡辺武

    ○渡辺武君 沖繩県におけるアメリカのいわゆる管理資産の処理の問題について伺いたいと思います。  この点については、琉球政府の屋良主席から、無償で沖繩県民に返還されるべきであるという趣旨の要請書を日本政府に昨年のうちに送っていると思います。これは大蔵大臣あてにも届いていると思うのですが、特に今年の七月八日には屋良主席が大蔵大臣に会ってこの点を直接重ねて要請しております。琉球政府のこの要請は沖繩県民の要求に基づく正当なものだというふうに思いますけれども、きょうは大臣がお見えになりませんので、政務次官から、この屋良主席の要請をどのように思われるか、お答えいただきたいと思います。
  143. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 確かに、渡辺委員の言われるとおり、七月八日に屋良主席からこの問題についての要請を受けております。「米国によって沖繩に支出した資金または資産等について、沖繩県民の所有に属するものであり、沖繩県民はもとより、本土政府においてもその返還の義務はないので、資産問題の処理にあたっては県民の意思を十分に反映してほしい」というような要請であります。この点でございますが、日米の両国政府間で沖繩返還協定交渉の際に当然問題になることでございますが、現実に沖繩にある米国資産でございますし、復帰後において必要かつ有益なものはこれを措置するということで交渉を進めておるわけでありまして、買い取るというふうなことばは一切使っておりません。引き継ぐということであります。これは日米の会議におきまして妥当なる価格をお互いに認め合った上でそれを引き継ぐべきではなかろうかというふうに考えておる次第で、現在ではその評価作業を実施しておる段階でございます。
  144. 渡辺武

    ○渡辺武君 妥当な価格で引き継ぐと。結局、一般国民の常識からいえば、買い取るということですね。これでは、私は、屋良主席の要請、したがってまた沖繩県民の要請——これは、先ほど申しましたように、無償で沖繩県民に返還されるべきだというのが根本の趣旨だと思うんですね、これに沿わないと思う。特に、昨年の六月二十七日の衆議院大蔵委員会で保利官房長官が次のようなことを言っております。「みなただもらうのだというようなことじゃ事は片づくものではない性質のものじゃないか。払うべきものは払うべきだ。」というのが保利官房長官のことばなんです。ここに言われている「ただもらう」ということばですね、これは私は言語道断だと思う。いま申しましたように、屋良主席の要請書を御一見いただけばわかりますけれども、沖繩県民は、アメリカの支出金やアメリカの管理資産、これは占領者としてのアメリカの当然の出費だ。また、沖繩県民を収奪して蓄積したものが多い。すべて沖繩県民の所有物であるから、当然の権利として無償返還を要求するのだというのが立場だと思う。それをただもらうのだというような形で表現する。沖繩県民も、日本国民も、これはこじきじゃないですよ、正当な要求をしている。その要求に対してこんなことばで表現するというのは、これは私は言語道断な中傷だと思う。しかし、この保利官房長官の言明にしましても、いまの政務次官の言明にいたしましても、いずれにしても沖繩県民の要求に反している、有償だという点で。このように言明されるところをみますと、やはり日本政府は原則的に買い取りの立場という立場をとっておられるのじゃないか。その買い取りの範囲ですね、これをどの辺のところに考えておられるのか、その点を伺いたいと思います。  それからもう一つ、ついでに伺いますけれどもアメリカの下院の歳出委員会の対外活動小委員会が五月十四日に発表した議事録によりますと、アメリカのランパート高等弁務官は次のようなことを言っています。沖繩返還後に残る電力・水道施設などアメリカの資産は日本に買い取りを求めるというふうに述べております。この点からしましても、アメリカから買い取りの要求があったと思う。どんな要求がどんな範囲であったのか、それも合わせて御答弁いただきたいと思います。
  145. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 第一点の資産の引き継ぎの範囲の問題でございますけれども、これは六月十日から十二日までの間に第一回交渉を東京において行ないまして、その際、沖繩にありますところの米国所有の民生用財産、すなわち、内容を申し上げますと、琉球電力公社、琉球水道公社、琉球開発金融公社、この三つの公社と、行政構造物、たとえば琉政の建物、あるいは文化センター、図書館、こういうようなもの、次に軍事基地の外にありますところの道路、それから石油施設、通信航海用の援助施設、琉球銀行株式の五一%の米国民政府の持ち分、こういうようなものが引き継ぎの対象に一応のぼったわけでございます。しかし、そのうち、石油施設と琉球銀行株式の五一%の民政府所有分につきましては、これはほかの資産と少々性格が異なるものでございますから、これはまたその処分のやり方につきましては別途検討しようということで、それを除いた米国所有の施設について引き継ぎを検討していきたい、こういうことにきまったわけでございます。  それから第二の御質問の、米国のほうから買い取ってほしいというような申し出があったかと、こういう御質問でございますが、これは引き継いでほしいと、こういう話でございまして、決して買い取ってほしいというような表現の問題ではございません。
  146. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺ったのは、引き継ぎの内容じゃないんですよ。先ほど申しましたとおり、表現は、妥当な価格で支払うという表現になるか、それとも買い取るという表現になるか、これは表現上の問題であって、いずれにしても有償で引き継ぐということについてはいま政務次官の言明があったとおりだと思うのです。これはいま言ったようなものは全部有償引き取りということになりますか。
  147. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) これはただいま評価作業が行なわれておる段階でございまして、そのうちのどれとどれがどういうふうになるというふうな判断をまだ下す段階にはなっておりません。とにかく、こういうような資産を、施政権の返還に伴いまして当然所有権の移転がございますので、それに伴ってどういうような解決をすれば日米間におきまして公正妥当な解決になるかということは、この評価作業が終わりまして十分検討をしていきたい、こういう順序でございます。
  148. 渡辺武

    ○渡辺武君 その御答弁はちょっとおかしいと思いますね。七月八日の新聞報道によりますと、屋良主席が大蔵大臣に会われたときに、大蔵大臣から次のような話があったということが伝えられております。つまり、わが国にとって必要のない軍事施設など買い取る必要のないものには支払わないが、沖繩県民に必要な資産などは買い取るというような言明があったというんですね。この沖繩県民に必要な資産などは買い取るというのが大蔵省方針じゃないですか。
  149. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) これは、あくまで、ただいまあげました財産につきまして沖繩県民のために今後とも必要かつ有益である、こういうような判断においてその引き継ぎについて項目的には合意したわけでございます。それについて、それに関連しまして支払いというものがあり得る、こういうことはそのとおりでございますけれども、そのうちのどれとどれをどういうふうにというような点については、まだきまっておらないわけでございます。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほどの御答弁によりますと、六月、七月のこの問題についての実務的な日米会談ですね、この中でアメリカ側の提起したものの中から、石油施設とそれから琉球銀行アメリカの保有している分の株式ですね、これを除いた四項目、これについて引き継ぐことが合意されたというような御答弁ですけれども、その四項目を見てみますと、先ほどおっしゃった点からもわかりますけれども、大臣の言っている沖繩県民に必要な施設、資産ということに該当することになるのじゃないですか。したがって、この四項目は、全部有償というのが日本政府方針じゃないですか。その点はどうですか。
  151. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) これらの資産は必要かつ有益である、こういう点については合意をみまして、それを引き継ぎましょう、こういうことになったわけでございますが、それに関連して支払いが起こるという場合におきまして、そのどれとどれをどういうふうにどうなるかというそういう問題はまだきめておらないと、こういう趣旨でございます。
  152. 渡辺武

    ○渡辺武君 日米間ではその点はきまっていないとして、かりにあなたのおっしゃることを一応受け入れるとして、しかし、政府として、あなたのおっしゃるような公正妥当云々というような基準でやる場合、どのような基準で買い取りを考えるのか、その点をおっしゃっていただきたいと思う。つまり、どのような法律に基づいてやるのか、あるいはまた、法律に基づかずして別の見地から考えておられるのか、その辺も含んで。
  153. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) この資産の引き継ぎの問題は、これは施政権の返還に伴いまして所有権の移転ということが当然起こる問題でございます。その場合に、必要かつ有益なものについてはこれを日本政府が引き継ぎましょうと、こういう趣旨でございます。あくまでそういう趣旨でございまして、そこにはっきり有用かつ必要であるということが資産価値として認められる、そういうようなものが沖繩の住民の方々に今後とも有益性を発揮していく、そういうような資産価値を中心にこれを引き継いでいく、こういう考え方でございまして、そのために日米間においてどういうふうな処理をしたらばこの両国間における公平妥当な解決になるであろうかと、こういう観点からこれを処理していく、こういうことでございます。
  154. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは答弁にならぬですね。どのような法的根拠に基づいてこの支払い、あるいは買い取りということを考えておられるのか、あるいは、そういうことを全然考えていないのか、その点はどうですか。
  155. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) ただいま申しましたとおり、どういう法律と、そういうことではなくして、客観的に有用な価値のある資産がそこにある、それを引き継ぐにあたりましてどういう処理をすれば日米間においてこれが公正妥当な解決になるであろうかと、こういう観点からの解決を考えていきたい、こういう趣旨でございます。
  156. 渡辺武

    ○渡辺武君 法律に基づかずして国の金を使うと。しかも、沖繩県民は、正当にこれは無償でもって引き渡すべきだということを言っている。それまで無視して、法律に基づかずして国の金を使ってアメリカに支払う、これが公正妥当な解決でしょうか。
  157. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) もちろん、かりにそういう支払いが何らかの支払いがその資産の引き継ぎに関連して起こるということになりますれば、当然それははっきりした形で国会の御審議を願うと、こういうことになるわけでございますから、決してそれを法律に基づかずしてそういうものを使う、こういうことではございません。
  158. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは政務次官に伺いますが、きのうわが党の公開質問状に対する回答の中で、総理府の山中総務長官が、この問題について、一つはガリオア資金関係のものは支払わないということを言明された。それからもう一つは、電力公社アメリカの財務省から借りている借り入れ金、それから開発金融公社が行なった余剰農産物借款、これは返したほうがいいと。それからもう一つは、アメリカに接収された市有地、県有地、国有地は買い取らないと、こういうふうに答えていますけれども大蔵省はこの点についてどうお考えになりますか。
  159. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 山中総務長官のその答弁のことについて詳しくは聞いていませんのでわかりませんが、そのようなことにつきましては、大蔵省といたしましては、総理府並びに関係省庁とよく検討して進めていこうということでございます。
  160. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省としてのお考えを伺っているんです。それじゃ、具体的に伺いますけれども、基地の引き渡しについてはこれは支払うかどうか。それからまた、先ほどお話のあった石油施設、それから琉球銀行アメリカ保有株、これについて支払うかどうか。それからガリオア関係のもの、これは支払うかどうか。それからいま申し上げた電力公社や開発金融公社の借金ですね、これについて支払うかどうか。それからアメリカの接収地、これについて支払うかどうか。この点を回答いただきたいと思う、具体的に。
  161. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) まず、基地は、これは今回の民生用資産ではございませんので、対象外になっております。それから石油施設と琉銀の二つにつきましては、今後処分方法については別途検討するということになっております。それから借金でございますね、電力公社の借り入れ金、あるいは琉球開金の借り入れ金についてどうするか、こういうような問題については、これは資産の全体の問題といたしまして今後十分検討していかなければならないということでございます。
  162. 渡辺武

    ○渡辺武君 ガリオア関係は。
  163. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) ガリオア関係につきましては、先ほど政務次官からお答えいたしておりますように、今後慎重にいろいろの観点から検討してまいりたい、こういうことでございます。
  164. 渡辺武

    ○渡辺武君 接収地は。
  165. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 接収地につきましては、資産の引き継ぎと直接関係しておりませんので、私たちのほうといたしましては、先ほど申しました資産の四項目でございますか、これについてだけ交渉を日米間でやるということになっております。  それからガリオアの問題につきましては、これはあくまで債務としてそれを考えていくということではございません。
  166. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは日米間の折衝の窓口は大蔵省だと思うんです。私は、あんまり国民にものを隠してはいかぬと思うんです。もうすでに四月に福田大蔵大臣とケネディ財務長官との会談があり、それに基づいて六月、七月に二回にわたって会談が行なわれておるのです。だとすれば、この買い取りの問題についてもうすでに話がかなり進んでおると見なければなりません。それをいまだにそんな御答弁で、これは国民を侮辱するもはなはだしいと私は思いますよ。窓口の大蔵省が何の方針も持たぬということですか。この点はどうですか、政務次官。
  167. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 決して国民を侮辱いたしておるとか、そういうことはございませんので、慎重に返還協定とにらみ合わせてその作業を進めておるということでございます。
  168. 渡辺武

    ○渡辺武君 結局のところ、屋良主席がわざわざ東京まで来て大臣に会って要請した根本的な内容は、先ほど申し上げたとおり、沖繩県民の正当な権利として無償で返還されるべきだというのがほんとうの立場です。ところが、大蔵省は、いまはっきりしたことは言わないけれども、いずれにしても有償で支払う分があるということについてははっきり言明されました。これでは、沖繩県民の要求と反していると思う。何でこういうようなことになるのでしょうか。私は、やはり、アメリカが沖繩に置いているアメリカの軍事基地に依存してアメリカのアジア侵略戦争に積極的に加担していこう、そういう政府の対米従属的な立場があればこそ、こういうことにならざるを得ないのじゃないかというふうに思います。  最後に、もうなにですから一問だけですけれども、最近、自民党の国会議員あるいは大臣が沖繩に行かれて、近い選挙のいろいろ応援をやっておられますけれども、その応援の演説の中で、たとえば野原労働大臣は、次のようなことを言われている。これは八月二十九日に開かれた自民党の時局演説会でのことばですけれども、自民党の議員が今度の選挙で当選するのが少なければ、政府の沖繩に対する援助は少なくなるというような趣旨のことを言っております。これは、もう沖繩県民に対する脅迫だと思います。あるいは、別のことばで言えば、選挙における利益誘導だと思います。一体、沖繩県への政府の援助、これは選挙によってふえたり減ったりするものなのか、この点はどうでしょう。
  169. 藤田正明

    説明員藤田正明君) 野原労働大臣のそのような事実があったかどうかは存じ上げませんが、選挙の結果によって援助の額が多くなったり少なくなったりということは絶対にございません。
  170. 栗原祐幸

    委員長栗原祐幸君) 本件に対する本日の質疑は、一応この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十五分散会