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参考人(
天日光一君) 私は
石炭鉱害事業団の
理事長を拝命しております
天日でございます。本日当
委員会におかれましてはわれわれのところの
業務の
概要と、また四十五
年度の
事業もくろみ、またさらには将来に対する多少の
見通し等につきましてお聞き取りに相なるように承りましたので、いま申し上げたような順序によりまして
概略を申し述べさせていただきたいと思います。
業務の
概容等につきましてはお
手元に差し上げましたごく簡単なものでございますけれども、要点を書き連ねておきましたからして、まずそれに従いまして多少の
説明を付け加えてまいりたいと思います。
御
承知のとおり、私どもの
事業団の根拠となっておりますものは
臨時石炭鉱害復旧法とそれから
石炭鉱業賠償等臨時措置法、この二法が根底をなしているわけでございまして、過ぐる四十三
年度にこの二法の御改正をいただきました結果によりまして、従来ありましたところの
鉱害復旧事業団即ち福岡、中国、東海、常磐の四つの
復旧事業団を、すでに当時からありましたところの
鉱害基金に
統合合併いたしたのでありまして、
統合合併によりまして吸収いたしました四
復旧事業団の
業務、
権利義務一切を承継いたして今日に至っているわけで、
統合後まさに二カ年をけみせんといたしておる
状況でございます。したがいまして、
業務の中枢をなしますものは、従来の
鉱害復旧事業団の
業務でありましたものと、また
鉱害基金の
業務でありましたもの、この両面の
業務を総括的に運営いたすことを命ぜられておるわけであります。
現況を申しまするというと、
事業団の
出資金はただいまのところ二十八億円の累積となっておるのでありますが、ただいま当院で御
審議を願っておりますところの四十五
年度の
予算が幸いにして成立いたしましたならば、その結果十九億円の
政府出資が追加されることになるのでありまして、累計いたしますというと四十七億円に相なるわけであります。この
政府出資金は当初は毎年一億、あるいは三億、あるいは二億というふうな
程度で
政府出資がされておったのでありますけれども、四十四
年度から十五億円に増大いたしたのであります。その理由といたしますところは、従来
事業団に貸し出しますところの
資金源としまして
財政特別融資から
借り入れをいたしておったのでありますけれども、諸般の事情からいたしまして四十四
年度からは
財政特別融資はやめることに相なりました。振りかえて
政府出資する財源とされるに至りました結果、従来一億、三億というような
程度の毎
年度の
出資でありましたのが四十四
年度からは十五億円となり、四十五
年度は十九億円を想定いたしておるわけであります。
なお、機構についてごく簡単に申し触れますというと、ただいま当
事業団は役員八人、うち一人非常勤でございますが、八人となっております。
統合前は五つの団体の役員総数は三十人であったのでありまするが、これを
統合の際圧縮いたしまして八人となったわけであります。なお
事業団と心たしましては、鉱害復旧ということが最も大きな仕事の分野でありますし、かつまた九州
方面が何と申しても
事業量の九割、九〇%を九州
方面で施行いたしております
関係上、役員の配置等にいたしましても東京本部よりは九州のほうにより多くの役員を配置いたしておる。職員についてもまたしかりでございます。配置の場所はカッコして書いてございますからごらん願いたいと思います。
なお、当
事業団の一つの特異な姿といたしまして、鉱害復旧の基本
計画等の
審議に当たっていただくために評議員会というものが設けられておりますが、評議員の定数は三十人でございます。この評議員も
統合前は全国で九十一人を置いたのでありますが、合理化の線に沿いました結果、ただいま申し上げたとおり三十人に圧縮いたしておるわけであります。
なお、機構といたしましては、東京に本部は置きまするが、これはごく限られた少数の人員を置きまして、大部分は
業務の多いところの九州——これは支部といたしておりますけれども——それから中国、常磐、東海、これらの支部に配置をいたしておるわけであります。
業務につきましては、先刻申し上げましたとおり、復旧
業務それから
融資業務、それから鉱害の担保の管理と、この三つが大きな法定
業務の柱でありまするが、細目にわたります点は印刷物でごらん願えればけっこうかと思うのであります。
この
業務のうちの一番大きな分野でありまするところの鉱害復旧、この点に少しくことばをつけ加えさしていただきますならば、御
承知のとおり近年の石炭情勢の激変に伴いまして、いわゆる無資力鉱害というものが非常に大きな割合を占めるように相なったのであります。これは復旧法の制定当時に、あまり多く予見、予想されなかった事態と相なっておるわけでありますが、ごくかいつまんで
数字的に申しますると、たとえば四十
年度を例にとりますると、いわゆる有資力鉱害復旧というものが二十三億円で、無資力が十三億円のような
程度で、またさような
比率であったのでありますが、一例を、その後の経過を省略しまして四十四
年度を例にとりまするというと、有資力は五十八億、無資力鉱害と申すものが五十一億、まさに相半ばせんといたしておる姿であります。四十五
年度を想定いたしましても有資力は六十三億円と想定いたしております。無資力は六十二億円とほとんど同額、相半ばしておるという姿になってまいるわけであります。鉱害復旧
業務は御
承知のとおり、二十七年から施行してまいったのでありますが、年々各
方面の御
援助によりまして
予算も増大いたしてまいっておるわけであります。四十四
年度は復旧
事業の
総額は百十億円であったのでありますが、二十七年以降の累計をいたしますというと五百四十五億の復旧をいたしたことになっております。物価換算・インクレーターを加味いたしますと、もっと大きな
数字になることはもとよりでありますが、四十五年、これはあとで総括して申し上げますけれども、四十五
年度においては百二十五億の復旧
業務を想定いたしておるわけであります。これを加えますると、四十五
年度末におきましては六百七十億の復旧
業務を
遂行さしていただいたことになるわけであります。
なお、次の四ページの表をごらん願いますと、申すまでもございませんが、復旧
業務のうちの九三%は九州でございまして、
事業の七%が中国、常磐、東海等の
地区にわかれるわけでございます。なお、これもこまかいことではございますが、四十四
年度の復旧
業務の財源
関係を申し上げますというと、国の
補助金が七十八億円、県の
補助金が十四億円、地方公共団体の負担されたものが一億九千万円、
事業団が負担いたしましたものが一億二千万円、それから鉱業権者、
炭鉱側が納付いたしました
納付金が十四億円、これらをもって百十億円の復旧
業務を
遂行いたしたのであります。
復旧
業務につきまして最近の特に著しい現象は、前申し述べましたとおり、無資力鉱害というものの復旧が、復旧の半ばを占むるに至りますに伴いまして、この無資力鉱害はもっぱら当
事業団がこの
事業にあたらざるを得ないはめになってきております。この無資力復旧
業務を団が直接施行いたしまして、団営工事と略称しておるのでごさいますが、この
数字を申し上げまするというと、二十九年から四十三年までに
事業団が直接施行者となりました工事は累計百五十二億円でありますが、四十四
年度におきましては四十五億円となりますので、合わせて百九十七億円、なお四十五
年度を想定いたしておるのでありますが、
事業団直営工事として五十二億円を
遂行いたさなければならぬかと、かように考えておるわけであります。これらやはり九割は九州でいたしておるわけでございます。
次に、
業務の一端といたしまして
融資業務でありますが、これはまあ鉱害賠償
資金の貸し出し、また鉱害発生予防のための
資金の貸し出しをいたしておるわけでございます。こうして申し上げますというと、一言
説明を加えますならば、抗内充てんでありますとか、あるいは廃水の
処理でありますとか、あるいはボタ
処理というようなことを大きな対象にされておるわけであります。
貸し付け金、この融
資金は当初は二年据え置きの三年均等償還というような条件を持っておったのでありますけれども、
関係方面の御
理解によりまして、最近は八年以内に償還ということで、おおむね三年以内を据え置き期間として、条件を緩和いたしておるわけであります。また、
貸し付け金の利息は、従来は
財政特別融資を財源といたしておりました
関係で、これらは大蔵省に六分五厘の利息を納付いたしますからして、当然六分五厘の利息を徴しておったわけでございますけれども、諸般の情勢からいたしまして、
貸し付け金の利息は三分五厘に低減されることになったわけであります。したがいまして、従来の利率の差額三分は
政府から補給を受けるという仕組みに変えられたのでございます。
貸し付け金はおおむね所要
資金の七〇%、また終
閉山につきましての
貸し付け金は所要
資金の八〇%までを
貸し付け得る仕組みにいたしておるのであります。
なお、
業務の一端でありますけれども、書きましたとおり、復旧
計画を樹立いたしまするための基本
調査ということを
政府の
援助のもとに費用も出していただいてここ一両年施行いたしておるわけでございます。特に力を九州に置きまして、水系別に鉱害の発生
状況を
調査いたしました。あわせて残存鉱害量の把握にも資するという目的で施行いたしておるわけでございます。
なおまた、終
閉山、ことにいわゆる三鉱山の
特別閉山に伴いまして、その三社の鉱害
実績、今後の
処理のしかた等のために、台帳
整備というようなこともあわせていたしておるわけであります。
以上で
概略を申し上げたのでありますが、なお申し落としましたけれども、鉱害発生予防につきましては九州よりはむしろ北海道、ことに石狩川沿岸の
炭鉱の汚濁水を石狩川に放水するのを防止するために相当の
設備に対して
貸し付けをいたした
実績がございます。
以上、申し述べましたとおり、おおむね触れたところでもございますが、要約いたしまして、四十五
年度の
事業計画を
概略申し上げますというと、鉱害の復旧
業務といたしましては百二十五億四千八百万円というものを想定いたしておるのであります。このうちの五十二億円は団施行ということにいたしておるわけでありますが、
融資関係は、四十五
年度におきましては二十五億五千万を貸し出しの
規模に考えておるのであります。内訳は、賠償
関係で十九億五千万円、防止
関係で六億円、かような概数を想定いたしておるわけであります。それから「担保の管理」と申しまするのは、従前は、法令に基づきまして日本
政府、法務省が
石炭鉱業権者からいわゆる鉱害賠償のための担保という形で、御
承知のとおり供託金という名で法務局に積んでおられたのでありますけれども、これが活用をはかるためにということからいたしまして、当
事業団が法務省から引き継ぎを受けまして、自後は
石炭鉱業に関しては、供託金という名前にかわって積み立て金という名前で、当
事業団が受け入れてそれを管理いたし、通産局長の証明があればそれを還付するというようなことをやっております。預かりました金は死蔵いたすことはないのでありまして、
貸し付け財源の一部に充てておるわけでありますが、おおむね担保のつまり旧供託金にかわるものは二十億円を累計受けておりますが、若干、
年度、
年度に返すのもありまして、
本年度末にはおおむね二十億円
程度を保留いたすことになろうかと考えておるわけでございます。
さて、
最後にちょっと時間をいただきまして、将来の見通しということもお聞きになるように承りましたので、一言申し触れさしていただきたいと思うのでありまするけれども、四十二
年度に
調査されましたときの残存鉱害量は八百五億円という
数字が計上されておったわけでありますが、その後、四十三年に九十五億、四十四年に百十億、四十五年に先刻申しました百二十五億円を復旧
遂行をいたしますると、算術的には残高は四百七十五億円くらいになるわけであります。しかしながら、ここに考えなくちゃなりませんのは、復旧工事費が年々おおむね一〇%くらいの値上がりを来たしておる
現状でありますので、この算術的引き算の
数字そのままでは将来を考えるわけにはまいらぬ、こう思うのであります。
なお、先刻申し上げましたとおり基本
調査ということで残存鉱害量
調査をいたしておるわけでありますが、これも目下集計を急いでおるわけでありますけれども、いま申し上げましたとおり、従来統計にあらわれていなかったものであらわれてくるものがありましょうし、また工事費の値上りからくる
数字の変動もあろうかと思うのでありまして、この時点での残存鉱害量というものはかなり大きな
数字がやはりあらわれてくるのではないかと予想いたすわけでありますが、このかなり膨大な残存鉱害量、鉱害
関係の法律の残存期間四十七年七月でありますけれども、この法律の存続期間内に工事を完了し終わることは、事実上はすこぶる困難な点があろうかと考えるわけであります。しかしながら、いずれにいたしましても、今後毎年復旧
事業量を増大さしていただきまして、われわれも鋭意これに当たりまして、この
石炭鉱業の宿命的に不可避的に発生しましたところの鉱害というものは、できるだけ早いうちに完了いたさねばならぬ、かように考えるわけであります。
なお、今後の見通しに申し触れたわけでありますけれども、さらに一、二をつけ加えて申しまするというと、先刻申しましたとおり、無資力鉱害というものはもうほとんど復旧の過半を占めており、今後さらにその
比率を多く増すのではないかという情勢にかんがみまするときに、これが対策はよほど考えねばならぬかと思うのでありますが、なお私見ではございまするが、無資力鉱害というものは国、大まかに申すと、国と県の費用で復旧いたすわけであります。したがいまして、加害者すなわち
石炭鉱業会社と被害者との間の、私の間の損害賠償という観念、損害を与えたから賠償するのだという観念から、だいぶ違った姿になってきている。私のごとき頭をもっていたしますならば、その復旧費用が国と県の費用をもっていたすならば、いわゆる公共
事業的な色彩を多分に持ってきたというふうに思わざるを得ないのであります。したがいまして、いまの復旧
関係の法律が二十七年にできました当時は、加害者、被害者——法律には加害者ということばはありませんけれども、通俗にわかりやすく加害者、被害者と申しておきますが、その損害を与える原因作成者と被害を受ける被害者との間の損害賠償、そして損害賠償ならば御
承知のとおり原則として民法
関係の問題でありますが、私法
関係の分野の問題であったわけでありますけれども、公共
事業的色彩を持ってきた以上は、いまの法律に多少の事情の変遷に伴う補正が必要じゃないか、かように思っておるわけであります。
なお
最後に、皆さんの十分なお考えを、
国会なり
政府のお考えをお示しいただきたいと思っておりますのは、最近特にその声が高まってまいりましたところの総合農政の問題であります。総合農政の今後の進め方、あり方と、いわゆる鉱害復旧、なかんずく農地の復旧というものとの関連性をどの辺に置いて調和さるべきであるかということが一つの新しい時点の問題であろうかと思うのであります。これは私どもは使命といたしましては、法律の命ずるところに従いまして鉱害復旧というものに専念いたすことにはなっておるわけでありますが、しかしながら、法律に書いてありますように国土の保全、民生の安定という見地からいたしまして、新しく展開されんとする新農業総合政策と鉱害農地、水田、畑等の復旧と、どの点において調和さるべきかということの大きな基本線をやはりお示しいただきたいと、実は念願しておるわけであります。
これらの将来の見通しについて三点ばかり申し上げたのでありますけれども、これは、いずれこの鉱害
関係の法律の存続期間を延長すべきやいなや、また、延長は必然とは思いますけれども、何年延長が適当と御決定に相なりますか、さような点の御検討と、また来たるべき改正の時期までには、いま申し上げた復旧
方式の検討でありますとか、また新農政との関連性について基本的な線を御
審議、おきめいただけるものと、お願いし、かつ期待しておるのであります。はなはだ粗雑でありましたけれども、
概略だけ申し上げました。
ありがとうございました。