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政府委員(
橋本徳男君) お配りいたしました
災害の資料二つございますが、その前に、
保安関係の
予算を簡単に御
説明させていただきたいと思います。
いま、
石炭部長のほうから
説明がありました中で、(五)の「
保安対策」というところの
内訳を別紙でざら紙の一枚紙でお配りしておりますので、これにつきまして簡単に御
説明させていただきます。
まず、四十五年度の
事業予算は、十八億二千八百万円になっておりまして、
考え方といたしましては、実は四十四年度の
予算編成にあたりまして、新政策と相まって可能な限りの
保安対策というふうなことを考えまして、四十三年度三億四千二百万を大体五倍
程度に引き上げまして、四十五年度はその線に沿って、なお
不足している部面についての補充をするという
考え方で、
新規項目といたしましては、一番下にございます
充填促進四億一千五百万というものを計上した次第でございます。
一番最初の
鉱山保安技術対策費、これは毎年
テーマをきめまして、
石炭技術研究所あたりへ委託をいたしまして、専門的な研究をしていただき、それを実際に取り入れていこうという
考え方の
予算でございます。
それから次に、
ぼた山災害防止対策費でございますが、これは御
承知のように特に
九州地区におきましては
危険ぼた山が相当ございますので、それを国が三分の二、県が三分の一という
予算措置によりまして、毎年数
鉱山ずつの
切り取り作業をやり公害の予防につとめておる。そのための
事業費予算でございます。本年度は八
ぼた山を処理するというふうなことで、この中に八
ぼた山のうちで
新規は六つでございます。
それからその次に
炭鉱保安専用機器開発費といたしまして、これは
従前どおり三
テーマにつきましての
開発費補助ということで、御
承知のように
保安用機器を製造しておる
企業はきわめて
中小企業でございまして、かつまたその販路がきわめて狭いというために、こういった点にまで
補助を出しておる次第でございます。
それから
放置坑口閉そく対策費といたしまして、これはかつて
閉山をした山がそのまま
坑口を閉塞しないで
閉山をした
関係で、
地域住民あたりにいろいろ危害を及ぼす例が
発生したというふうなことで、全国調べてみますと、大体二百三十
程度の
坑口が放置されておりますので、これを四十四年度から三年
計画で閉塞しようという種類の
予算でございます。
それから
救護訓練教育費でございますが、これは
保安センターに対しまする
定額補助の
予算でございまして、本年はさらにそれを昨年四千万
新規につけたわけでございますが、さらに
充実強化という
意味におきまして、一割
程度のアップをしてございます。
それから次に
石炭鉱山保安確保費ということで、この
備考欄にございますように、
保安専用機器整備拡充のための
補助金それからその他いろいろ
ガス抜きとか密閉とかいったものに対する
補助金、三分の二の
補助をやっておりますが、本年新たに
充填というものを設けたわけでございます。この中で、
専用機器の中に
一酸化炭素自己救命器というものを引き続き
補助対象にしておりますが、これはすでに全
職員にもちろん行き渡っておりますが、その中でいろいろ常時
検査をやっておりまして、不良品が出た場合に置き換えるとか、あるいは
耐用年数がきておるとかいったようなものの置き換えでございまして、これを引き続き助成の
対象にしておるということでございます。
保安関係といたしましては、これが
保安プロパーの
予算でございますが、もちろんこれ以外に
坑道関係につきましても
保安上にはどうしても必要なものもございますし、こういったものにつきましては、
生産関係との
分離が非常に困難でございますので、先ほどのような
坑道補助金へ一本に計上してございます。それから、それ以外にもまた
合理化事業団から
保安用機器に対する無
利子融資を行なっておりますが、それに対する
出資も
会計上の
分離が困難でございますので、
石特会計の
一般ワクの中に織り込んでおるような次第でございます。
簡単でございますが、
予算関係は以上にいたしまして、本年に入りましてから、
重大災害が一月、三月と二回起きまして、まことに遺憾でございますが、それにつきましての模様を御
説明さしていただきたいと思うのでございます。
二枚ございますが、
一つは「
夕張炭鉱の
落ばん災害について」というのがございます。これは、
北海道炭礦汽船株式会社の
夕張炭鉱の第一坑におきまして、本年の一月の二十七日の二時二十分ごろに起きた
災害でございます。
災害の概況といたしましては、一月の二十六日の午後十一時ごろ、実は一番最後のところにその
災害個所の
坑道の
図面が書いてございますので、それを
ごらんいただきながらお聞きいただきたいと思いますが、七
中切坑道というのがございます。第三流
炭昇をクロスいたしまして、右六
中切、右七
中切、右八
中切とございますが、この中の右七
中切でございます。その入り口から約三メートルの
床面に穴があいた。すなわち、このクロスしているところ、交差したところを
斜線でかいてございますが、大体その近辺でございます。その三メートルの
床面に穴があきましたので、係員、
鉱員九名で
山固めの
作業をしておりましたときに、その三時間後の二十七日の二時二十分ごろに、突然
底抜け崩落が
発生した、というのは、この
図面でいいますと、七、六
中切、それから第三流
炭昇の
斜線のところがばっと落ちてきたわけでございます。落ちてまいりまして、その七
中切におりました七名が閉じ込められた。それから、その七名はあとで
救出されましたけれども、その上にございます六
中切の
坑道、
斜線の一番上のほうでございますが、その六
中切の
坑道で休息していたと思われる四名がこれに引き込まれて、罹災した。この四名が結局死亡したわけでございます。
災害後、右七
中切の
坑道に生存した七名は、同日の午後四時十五分までに
救出されまして、引き続きその行方不明となった四名の
救出に全力を尽くしておったわけでございます。五日後の二月の一日の午前五時五分に
全員遺体となって発見された。こういうふうに収容に非常に手間どったわけでございますが、この手間どりましたのは、先ほどの図にございます、この第三流
炭昇に炭が一ぱい崩落しておりまして、これがばらばら落ちるというふうなことで、二次
災害を防止する
意味におきまして、頑強な
施ワクをしながら慎重に取り分け
作業をやってまいったわけでございまして、そのために、非常に
作業がおくれまして、五日間取り分けにがかったという次第でございます。それで、次の
ページにまいりまして
災害の報に接した
札幌鉱山保安監督局からは
監督局長以下
監督官五名が現地に参りまして
罹災者の
救出とか
原因究明等の指揮に当たったわけでございます。なお
災害発生区域の
採炭作業は、こういった
原因の
究明、
対策の樹立までもちろん操業を停止さしてございました。
実は
災害の
原因でございますが、この事故は、もちろん
災害の
個所は
水力採炭をやっております。したがいまして
水力採炭といたしましては非常にかつて例のない
災害でございますが、そのために非常にこの問題については大きな問題を投げかけており、すなわち
水力採炭いわゆる水の問題とその水が
石炭にしみ込み、それが
石炭の
剥離性を増して、そうしてこういう大
災害が起きたのではなかろうか、そうなりますれば非常に将来に大きな問題を投げかけるというふうなことのために、その
原因の
究明にあたりましては慎重を期しまして、
専門家でございますが、北海道大学の
磯部教授をはじめといたします
学識経験者によって
委員会をつくりまして
——その
委員会の名簿は三枚目にございます
——こういった
専門家によりまして
委員会をつくり、それによって二月の十日、十一日をぶつ通しでいろいろ検討していただき、またそれをそれぞれ持ち帰って一週間後の十八日に再度検討をいたしました結果、本
災害は次のようなことが
原因であるということに
委員会としての結論が出たわけでございます。もちろんこの間におきましてはいろいろ書類上の
検査ばかりではない、たとえばボーリングをやりまして水と
石炭との
関係、そういったものにつきましても十分
調査したわけでございます。その
原因といたしましては、右七
中切および右八
中切坑道でございますが、この二つの
坑道は掘進が大体昨年の八月の終わりから九月にかけてやっておったわけでございますけれども、その後あまり使用していなかったために、どちらかといいますと
坑道が非常に荒れておったのであります。それで
坑道の矢木とか
ワクの折損がございまして、その間から炭がばらばら落ちる、あるいは高落ちするというようなことが起こっておりまして、それによって天盤がいたんでおった。すなわちゆるみが生じておった。そのばらばら落ちました崩落した
個所の取り分けをやっておった際に、天盤にゆるみが生じ、
坑道上部の炭柱に空隙が形成された。そしてその空隙が逐次拡大していきまして、結局右七
中切坑道の
床面にその空隙が達しておったというふうに想像されるわけでございます。この七
中切坑道の空隙のために、そこに立っておりました炭柱の足が引きずり込まれた、そうして炭柱としての効用をなくしてしまいましたために、一挙にその七
中切坑道の
ワク脚を取られたことによって順次上が崩落していったというふうに結論が出たわけでございます。これが直接的な
原因であろうということで
委員会として結論が出ましたが、当初われわれはこういったいわゆる穴があいたりあるいはいろいろな
石炭の
剥離性、
石炭の凝集力の壊崩、こういったような問題がなぜ起きたのだろうかというふうなことで、これがもし水による
原因で、水がしみ通ることに
原因があるのではなかろうかということでボーリングをしてその辺を
調査いたしましたところ、結局、結論といたしましては、水の浸透した形跡はなかったというふうにこの
委員会としては結論が出された次第でございます。
ただ、次の
ページへまいりまして、以上が直接的な
原因ではございますけれども、この点をさらに助長したと思われるものといたしまして、その六
中切坑道の天盤、すなわち流
炭昇下の辺だと思いますけれども、こういったところに潜在的な断層が
災害後に判明した。しかも、その断層線が鏡はだで、非常に剥離しやすいというふうなところから、こういう崩落を助長したのではなかろうかというふうに推定されておるわけでございます。
監督局といたしましては、監督上の立場がございますので、こういった
委員会の結論は
委員会の結論とし、別個にまた独自の立場からいろいろ検討していったわけでございますが、やはりこの
委員会の結論が正当であろう、これ以外の要因は、物的な要因その他いろいろな方面からの
調査によっても
究明できないというふうなことで、結局、この
委員会の結論が妥当であろうというふうなことの判断に達したわけでございます。
したがいまして、今後の
対策でございますが、先ほどのように、結局、一番問題は、こういった場所におきまして
中切坑道を掘って、それを長期間放置しておくということによって
坑道のいたみが累積的な
災害を引き起こすというふうなことが明らかになりましたので、この
対策といたしまして、二枚目の終わりにございますように「
中切坑道は掘さく後長期間放置しないこと。そのためには
中切坑道の掘進と
水力採炭の進行とのバランスをとること。」が肝要である。それから「
坑道は崩落しないよう施枠の強化を図ること。」ということで、たとえば、総矢木にするとか、あるいは下ほうからの力がささえられるというような裏込め踏み前矢木
——むずかしいことばを使っておりますが
——そういった全面的に矢木を打ち込むといったようなやり方、こういったものをすべきである。さらに、それでもまだ局部的な崩落がございました場合には、天井炭を崩落させないために差し矢木とかセメントミルクの注入、こういったようなものをやるべきである。それから最後に、こういった
災害の危険性のある
個所につきましては、専任の係員を常時配置さしておく。そうして時々刻々の変化に即応した態勢をとるべきであるというようなことの結論に達しまして、それで二月二十日に至りまして、一カ月近くこういった検討を重ねた結果、これだけの
対策をやることによって今後の
災害は防止できるという結論に達しましたので、生産の再開を認めたということにしておる次第でございます。
それからさらに、こういった問題は、いわゆる
技術的に非常に高度の
技術の問題にもなってまいりますので、会社に対してのこういった事故の社会的責任といいますか、そういったことを迫りまして、
夕張炭鉱の
保安技術管理者及び副
保安技術管理者の解任を会社としては自発的に行なってもらうというふうなことにしたわけでございます。
夕張炭鉱の問題につきましては以上でございます。
それからもう
一つ、同じ会社いわゆる北炭におきまして、この三月の二日に再びガス突出によりまする
災害が起きた次第でございます。死亡者はやはり四名ということになっております。
災害の概況を申し上げますと、三月二日の十三時十四分ごろでございますが、清水沢坑の五片八尺後向ロングゲートの先端におきましてガス突出が
発生して掘進
作業中の四名が埋没したということで、それもこの
災害個所の
図面を次に添付してございますが、このカッコの中にございますように罹災の位置というのが、こういう
坑道掘進の一番先端の上部のほうからガス突出があった模様でございます。
この
災害発見の端緒が次に書いてございますが、
作業を監督しておりました係員が異常な圧風とガスを感じまして、それと同時に可燃性ガス自動警報器が、インターロックされておりますコンベヤーが停止されましたので、
災害の
発生をそれによって知り、直ちに
救出作業にかかりまして、大体一時間半くらいの間に全員を搬出いたしまして人工呼吸等を坑内におきまして行ないました結果、全員蘇生はしなかったということでございます。
災害が
発生した
個所は、この
図面にございますように、この原動機座から約十六メートル先進したゲート
坑道でございまして、この引立から大体九・七メートルくらいのところまで炭が流出しておりまして、そして四名はその引立から約四メートル近くのところに埋没しておったという状況でございます。
で、ガス突出といたしまして、突出炭量は五十八立米でございますので、そう大きな力ではございませんでした。したがって突出炭による倒
ワクとかあるいは崩壊といったようなものはございませんでした。ところが、ここにおきましては実は前々から前兆らしきものが
発生しておりまして、昨年の十二月の二十五日、それからことしの一月の十八日におきまして、やはりこの同じ場所におきまして可燃性ガスの湧出を伴ったわずかな粉炭の噴出といいますか、そういったようなものが認められましたので、さっそく炭鉱側におきましては、これはガス突出の前兆ではなかろうかということで労使協議をいたしまして、いろんな
対策を実はとっておった次第でございます。で、その
対策といたしましては、いわゆるガス突出の通常のやり方といたしまして
ガス抜きボーリングをやるというふうなことでやっておったわけでございますけれども、
ガス抜きボーリングをそれぞれ上側には三十メートル間隔で、下側には二十メートル間隔で設けるとか、あるいはまたゲート
坑道の引立からは二本のボーリングを各方に行なうとかというふうなこと、それからさらに、もしガス突出があった場合の避難方法というようなところまで、相当こまかくいろいろな
対策をやっておったわけでございます。しかもどちらかといいますと、この
ガス抜きボーリングは通常の山以上に強力な形をとっておったことがわかった次第でございまして、たとえて言いますと、通常の場合には大体六十ないし八十ミリ
程度のボーリング、しかも自噴による
ガス抜きというのが通常ではございますけれども、この山の場合には百四十五という大口径の
ガス抜きをし、かつまた強制的な
ガス抜きをやっておった。ところが、これだけのことをやっておって、なぜガス突出が起きたかということがちょっと問題になるわけでございますが、やることは非常にいろんな措置をやっておったのですけれども、そのボーリングが必ずしも進行方向のあらゆる面について完全にカバーされてなかった、すなわち進行方面と下側のほうについては、こういった
ガス抜きの方法によりまして
かなり安全なフィールドになっておったのでございますが、進行の上側のほうにつきましては、どうもこの
ガス抜きが、効果を発揮し得るような形での
ガス抜きが行なわれてなかった、したがって、ここに結局、死角を生じまして、そこのガスが抜けなかった、それがガス突出の
原因になったのであろうということが大体現時点におきましては確実にわかっておる次第でございます。
状況としては以上でございますが、御
承知のようにこの北海道炭礦汽船は昨年来落盤が相次いで起きており、かつまた相当やっておったにいたしましても、どこか抜けておるといったようなためにこういう事故を起こしたというふうなことで、たび重なるこういった
災害の連続ということのために、私社長を呼びまして、この清水沢に限らず北炭として抜本的なひとつ今後の
保安対策を考えてほしいというふうなことを要請し、社長としましても、ひとつ全山について思い切った
対策を立てたいというふうなことで、近くその案が会社から提示されるというふうなことになっておる次第でございまして、相当北炭としては思い切った
考え方の
対策を全山について立てようということでございまして、相当な北炭としては負担の上に立っての
対策になるものというふうに考えておる次第でございます。
以上簡単でございますが、
災害の模様を御
説明いたしました。