○
政府委員(
荒玉義人君) アメリカの
審査状況をまず申し上げますと、いま矢追先生のおっしゃいましたのはおそらく一九六五年にやりました新しい
審査方式のことだと思いますが、その前後の
審査期間を御
説明いたしますと、一九六二年、二年二カ月。六三年二年九カ月。六四年、二年十カ月。六五年、二年。六六年、二年三カ月。六七年、二年一カ月。六八年、一年十カ月。まあこの数字を大ざっぱに見ますと、大体現在二年とお
考えになって、その前は一九六二年が二年二カ月でございますから、まあ大体平均しまして二年六カ月ぐらい。したがって新しい
審査方式で六カ月ぐらいの短縮を行なったというのが事実でございます。どういうやり方をやったかといいますと、要するに、できるだけ集中審理をする、そうして
出願人の応答期間を短縮するわけでございます。具体的に言いますと、
審査官がこういうふうに直したらどうかという指令、リファインメントと言っておりますが、これを二回で打ち切っちゃう。二回目でもう最終的な
処理をする。そうしますと、いろいろ往復の時間が短縮になる。それで拒絶
理由に対しまして
出願人とのいろいろ面接をやりまして、そこで即決をしていく、いわば集中審理とお
考えいただければいいかと思います。
で、アメリカの場合と
日本の場合、いささか事情が異なる面がございますが、われわれといたしましては、
趣旨は生かしておるつもりでございます。で、昭和四十二年の暮れから、われわれもこの
趣旨をどこで生かしたかといいますと、
出願人に対しまして、いわば拒絶
理由通知を出す場合に、できるだけ詳細にいたしまして、
出願人が受け答えが楽にしていくということによって集中審理までとはいきませんが、できるだけ早く
出願人が応答ができ、的確な答えが出ていくということが、このアメリカの新しい方式をわが国で採用する唯一の道だと思って、実行しておるわけでございます。アメリカとどこが違うかといいますと、まず第一にアメリカの場合ですと、
審査官の相手になるいわゆる
日本で言う弁理士パテントアトーニー、これは強い権力を持っています。ただ、名目的のみならず実質的に、そういった
出願人からの全権委任をもって
審査官と応待する。したがってそこで即決できるという、これはアメリカで一番うらやましい点でございます。
それから第二に、アメリカの請求範囲でございますが、これはいわば多項制で、特にアメリカの先発明主義をあらわしておりまして、きわめて具体的な請求範囲でございます。したがって、同時に請求範囲を直すということはきわめて厳格に制限されております。請求範囲は、詳細であると同時に補正その他の制限がきわめて厳格である、つまり、そのままで
審査官が
判断できるという請求範囲の書き方でございます。したがって、ある程度この方式が
適用しやすい風土にございます。
ひるがえって
日本の場合ですと、なかなか弁理士さんで、全権委任して
審査官といろいろ折衝するということには残念ながら一般的にはなっておりません。それともう
一つ日本の場合は、いわゆる一発明一項主義でございますので、アメリカのようにすぐそこで勝負がきまるというものと違い、少し請求範囲が抽象的でございます。そういった面がございますが、もちろんわれわれといたしまして、アメリカのやり方も当然学ぶべき点はあるわけでございます。四十二年の暮れから先ほど申し上げました方式を採用しておるわけでございます。