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国務大臣(
宮澤喜一君) はっきり
お答えができます
ような
知識を実は持っておらないわけでございますけれ
ども、
想像し得る限りにおいて
考えておることを申し上げますと、一九七〇
年代という十年先をいま申し上げることはとても私にはよく見当がつかない点がございまして、七〇
年代のどうやら半ばごろまでということで、ある
程度予測が申し上げられるかと思います。
七〇
年代の半ばぐらいの時期には、おそらく
わが国の
国民生産が大体四千億ドルになるであろうと思われますので、そういたしますと、一人
当たりの
国民所得はほぼ三千ドルということになるわけでございます。この三千ドルと申しますのが、よく議論されます
工業化社会が次の
段階に入る
一つのめどだといわれておりますが、そういう
段階に七〇年の中期ごろには入るのではないかと思われるわけであります。そしてその
所得の使い方でございますけれ
ども、いわゆる衣食住という
ようなものにさかれる割合が、これは当然のことながら低下してまいりまして、現在
雑費というふうに
分類されておりますものの
支出が
所得の五〇%に近づいていくのではないかと思うわけでございます。そういたしますと、この
雑費というものの
支出先でございますが、現在でも
旅行とか
レジャーとか、あるいは
教育、衛生なんというのが
分類では
雑費ということになっておりますが、もし
国民の
所得の非常に大きな
部分がそういう
方面に使われるといたしますと、その
消費に対応するだけの供給がなければならない
理屈だと思います。と申しますことは、現在の
分類で申しますと第三次
産業になるわけでございますが、その第三次
産業というものが
国民所得の半分
程度の
支出の対象になるだけに大きくなっていなければならないと思うのでございます。
その第三次
産業というのは少し
分類としては私はいまのままでは不適当であろうと思いますけれ
ども、かりにいまの
分類のまま言わせていただくとしますと、それだけの投資が第三次
産業に向かってあり、またそれだけの雇用が第三次
産業になければならない
理屈になりますので、その点がつまりいわゆる二次
産業を
中心とした
工業の
比較的の
ウエートが小さくなるというのでポスト・インダストリアル・ソサエティーといわれているのだと思います。
それで、第三次
産業の中身でございますが、いまの
レジャーとか、
旅行とかいうのはむろんでございますと思いますが、
教育でございますとか、あるいは医療でございますとか、ことに私は
教育なんかの持つ
ウエートは大きくなるのではなかろうか。これは先だっても御議論のございましたいわゆる
成人教育、生涯
教育の問題につながっていくかと思います。それから
電子計算機の
ソフトウェアの
部分も一応ただいまの
分類では第三次
産業でありますが、そういう
知識産業というものがそれだけ大きくなっていなければ、それらに向かう
消費というものに立ち向かえるものがないわけでございますので、私は
産業的にはそういう
変貌をするであろうというふうに
考えておるわけでございます。
それから他方で、しかし現在われわれが
未来産業と
分類しておりますところの
海洋開発でありますとか、あるいはこの
ような
電子計算機の
産業でありますとか、あるいは新しく
材料を合成する
材料産業でございますとか、それから
先ほど御
指摘のありました
都市化に伴うところのもろもろの
産業、それは
都市の
計画でありますとか、あるいは
廃棄物でありますとか、
公害でありますとかいうものがそれに当たると思いますが、その
ような
産業が伸びてまいるであろうという
ように
考えております。
それから
数字的にということになりますと、たとえば原油でございますとおそらく五億キロリットルとか六億キロリットルというものになろうかと思いますし、鉄鋼はちょっと
想像がつきませんが、いまのまま伸びてまいりますと非常に大きなものになるはずでございます。かりにいま五十年が一億八千万トンとかということを申しておるわけでございますが、もう少しあるいは大きくなるのではないか。しかしその場合に、それらのものを輸送する船舶などがどうなるのかということになりますと、いまの
造船能力からいきますと、どうもその辺のバランスが少し合わない点がいろいろ出てまいるのではないかと思っております。
それから
工業立地は、おそらくいま申し上げました
ようないろいろな関係から、
わが国の現在はほとんどいわば未開の
地方に、たとえば鹿児島の南でありますとか、四国の南部でありますとか、あるいは
東北地方の北部、あるいは
裏日本の一部、
北海道等に非常に
規模の大きな
工業立地が行なわれるのではないかというふうに
考えます。
そうして
わが国全体は、おそらくその
段階では、
新幹線網がかなり発達しておりますことと、
高速自動車道路がほぼ南北に縦貫をしておるということと、先だって以来お話のございます
電信電話線の大綱によってデータ通信というものが、これもネットワークとして形成される、そういうふうに
考えてほぼいいのではないかというふうに思うわけでございます。で、国際的にはこれはますます
予想のむずかしいことではございますけれ
ども、戦争のない
状態を想定いたしますと、いわゆる現在の
後進国がだんだん
経済的にも
向上をしてまいりまして、そうしてそのことはおそらくは
世界貿易の量も飛躍的に現在よりも増大するということになるのではないか。
つまり私
ども考えられますことは、その
ように一人
当たり国民所得三千ドルになったときに、
所得的にも
余裕があり、時間的にも
余裕がある、それらの
エネルギーが、
先ほど申し上げました
ような
方面に向かって使われるということで、
人間らしいいわゆる創造をなし得るか、あるいはそれらの
エネルギーと時間はもっと全くむだに無意味に使って、むしろ
人間疎外が起こるか、これはもう私は心の持ち方の問題であろうと思いますので、この
状態は非常にやり
ようによっては
人類にとつて進んだ楽しい
状態になるかもしれませんが、やり
ようによりましてはむしろ非常に悲惨な
状態になり得る、そのいずれもの
可能性を私は含んでおるのじゃないかと
考えます。