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国務大臣(
内田常雄君) 実は、御承知のように、
厚生省は毎年
厚生白書というようなものを閣議決定をいたし、発表をいたしておりますが、これは、読んでみましても、おおむね
厚生省はどういうことをしているかということに重点を置いておるようでございまして、非常に激動する今後の社会に処して、
厚生省の
社会福祉あるいは医療等の目標、ビジョンというものがどこにあるかというところまで触れておらないように私は思います、正直に申しまして。そういう点につきまして省内にもただしましたところが、もし私がいま申しましたような将来のビジョンに触れるような
厚生白書をつくりましても、これはまあ、言い過ぎかもしれませんが、なかなか
政府部内では決定になりません。したがって、いわば実績報告を主としたような、あるいは事態の分析を主としたような報告にならざるを得ないので、今日まできているようでありますが、しかし、日本の経済がここまで成長をいたしてまいりまして、私がいつも申しますように、これからわが国のいくべき道はやはり福祉目標ということが国家の目標にもなるというようなことを言いますし、これはだれが考えてみましても、ここまで経済が成長してまいりますと、その裏打ちの福祉行政というものがなければ、
ほんとうの人間の幸福は得られないということにもなるわけで、福祉行政を大きく取り上げてもいい時代にきたと考えまして、いままででやろうとしてやり得なかった厚生行政の長期目標的な、野心的なものを何とか出したいと実は努力をいたしまして、しかもその努力を半分ぐらいに削りましてまとめたものが今回のこの厚生行政の長期目標というわけでございます。
実は、これもかなり思い切ったことが、書いてないようなふうをしながらかなり思い切ったことを実は書いておりまして、
昭和五十年なり、あるいはそれより少しあとには、もうすべての要保育児というものは全部保育所に収容するだけの
施設を整えるとか
——まあ、これは
社会福祉施設の
関係でいきましては、あるいは先ほど問題になりました養護老人等につきましても、全部の老人を収容し得るそういう
施設をやるとか、その他すべてのことにつきましてかなり具体的な年次目標みたいなものを想定した思い切ったものも厚いほうのものには実は載せてございます。したがって、これをすぐに大蔵省がのんで約束するかというと、それは大蔵省としてはとても約束できないし、またこういう具体的な中身のあるところまで閣議決定に持ち込むということのためにはまだまだ若干の日時を要するので、とにかく私
どもの
考え方を思い切ってびょうぶにかき出してみよう。絵だけで、それはそれこそ絵にかいたもちじゃないかと叱られるかもしれませんけれ
ども、とにかくかいてみないことには一歩も二歩も前進できないので、まず総論と言いますか、第一部におきましては、そういうものを必要とするような世の中、いまの時代になった。その意味から取り上げ、またわれわれが何をやるかにつきましては、ただ社会を追っかけて
社会福祉支出なり、あるいは振替支出というもののパーセンテージが外国並みに大きくなればいいということだけではなしに、これから数年間あるいは十年間の日本の社会の変動というものを見通しながら、それにマッチするような
社会福祉、社会保障の政策をとる。場合によっては、むしろ私
どもが先行、先導して、私は、公害の対策などについてはそうなければならないと思う者でございますが、その他の面におきましても、物価もどうせ上がるのだ
——これはしかし
政府は物価は上げない努力はいたします。上げない努力はいたしますが、生活水準も上がる、物価も上がるとすれば、先ほど触れました
年金なんかの支給額とか、あるいは支給の
制度とか、あるいはその財源
関係なんかにつきましても、むしろ私
どものほうが社会変動を先に見て、そうして指導的な思想まで出していく必要があるというようなことを総論にうたいながら、こういうものを実はつくってまいりました。これを頭におきながら私
どもは毎年のこれから予算要求を積み上げていったり、あるいはまた
法律の改正もしたり、あるいはまた
厚生白書というようなものも、こういうものとの結びつきにおいてつくってまいるような努力をいたしたいと、こういうことでございまして、したがって、これは外にも実は正式発表してございませんし、中身もそういう性質のものでございますので、いろいろ御批判をいただいて、直すべき多くの課題を含んだものでございますので、その点をぜひ御理解をいただいた上、いろいろまた御指導いただきたいと思います。