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1970-11-09 第63回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月九日(月曜日)    午前十時二十八分開会     —————————————    委員異動  十月九日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     塩見 俊二君      戸田 菊雄君     中村 英男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 上原 正吉君                 渋谷 邦彦君     委 員                 黒木 利克君                 高田 浩運君                 山下 春江君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君        労 働 大 臣  野原 正勝君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        厚生大臣官房総        務課長      信沢  清君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省児童家庭        局母子福祉課長  岩佐キクイ君        社会保険庁年金        保険部長     宮田 千秋君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        日本専売公社理        事        三角 拓平君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (財団法人厚生団経営する老人ホームに関す  る件)  (診療放射線技師等待遇改善に関する件)  (予防接種に関する件)  (厚生白書に関する件) ○労働問題に関する調査  (労働基準監督行政に関する件)     —————————————
  2. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十月九日、長田裕二君及び戸田菊雄君が委員辞任され、その補欠として塩見俊二君、中村英男君がそれぞれ選任されました。
  3. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大橋和孝

    大橋和孝君 きょうは、この前も渋谷委員のほうから御質問がありましたことと関連をいたしますけれども、別な角度から一、二お尋ねをしたいと思います。  厚生年金保険法福祉施設でありますが、これの運営は一体どういうふうにされておるのかということを具体的にお話を願いたい。特に、財団法人としてやっている厚生団法的根拠あるいはまたその運営の面についてもひとつ詳しく御説明を願いたいと思うわけです。
  5. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 厚生年金保険法におきましては、被保険者及び受給者のための福祉施設設置することといたしておりまして、これは厚生年金保険特別会計国有財産として設置をいたしまして、それからその運営財団法人である厚生団委託をいたしておるものでございます。厚生団は、財団法人といたしまして昭和十八年の十一月に厚生大臣の許可を得て設立せられまして、現在、厚生年金保険福祉施設実施について国より委託を受けて実施をいたしておりますが、経営をいたしております施設は病院が七ヵ所、厚生年金会館が三ヵ所、老人ホームが十二ヵ所、スポーツセンターが東京と西宮と二ヵ所、合計延べ数で二十四施設看護学院を入れまして二十七施設、都道府県の数にいたしまして十六府県にわたりまして厚生年金福祉施設経営いたしておるものでございます。
  6. 大橋和孝

    大橋和孝君 この厚生年金保険法の中で、福祉施設は第七十九条の二項で、「政府は、前項の施設のうち、年金福祉事業団法——これは三十六年のあれですが、「第十七条第一号に掲げるものを年金福祉事業団に行なわせるものとする。」という、この法律があるわけでありますが、こういう法律があったにかかわらず、なお年金福祉事業団ができてから十年以上になっているわけでありますが、これが実施されていないというのは、何か法的に違反しているんではないかと思うんですが、どうですか。
  7. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 厚生団のほうが経営いたしておりますのは、戦前の十八年から二十数年間の長きにわたっていたしておるのでございますけれども、八年、九年ほど前に年金福祉事業団法ができまして、ただいま御指摘法律の条文の第二項でそのように規定をせられておるわけでございます。ところが年金福祉事業団は、できましてまだ日も浅いことと、それから、何といいましても還元融資の非常に大きな資金量を持ちまして、福祉施設融資をするという年金融資業務でただいま手一ぱい体制でございます。それに加えて施設経営に当たるというような体制にいま整備をされておりませんので、やむを得ず戦前から行なってきたやり方を踏襲をいたしておる、かようなことになっております。
  8. 大橋和孝

    大橋和孝君 この辺のことは、前にも渋谷委員から御指摘もあったかと思うんですが、特にこの昭和三十六年の十一月の一日に出ておる年金福祉事業団法なんかを調べてみますと、十七条の「事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。」という中で、第一に「厚生年金保険法第七十九条の施設のうち、老人福祉施設療養施設その他の施設政令で定めるものの設置及び運営を行なうこと。」ということで、これはもう政令でやれということで法律はできているんですね。こういうことから考えますと、いまこの資金運用だけで手一ぱいだと言っていることは、これは法律無視じゃないかと私は思うんですが、そういうようなことがそのままほうっておかれていいのかどうか。そこらのところに疑義を持つのですが、どうですか。
  9. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 申し上げましたように、融資業務手一ぱいな態勢で、施設経営体制にまだ至っておらないということから、その施設設置する政令もまだ公布をされておらないということでございますが、なお当分の間、年金事業団融資業務に専念をすべき体制にあるということでございますので、その間は従前どおりの方式を踏襲していくと、かように考えております。
  10. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっとここら辺のところは大臣にお伺いしたいと思うんです。こういうふうに法律で規定されておるんですが、融資業務で手一ぱいだからそれをせぬでもいいというふうな解釈で、いままた話を聞くと、今後もそれでやっていくということなのですが、それではちょっとおかしいように思うんですが、大臣の見解はどうでございますか。
  11. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 大橋さんの御発言の中にもございましたように、この問題は、しばらく前に渋谷委員からだいぶ責め立てられまして、私、防戦これつとめたところでございますが、一応宮田年金保険部長から御説明をいたしたとおりでございまして、年金福祉事業団のほうはほんとうは両手つかいで、一方では融資業務、また他方では直営業務をやるたてまえにはなっておりますけれども、まだ右手左手も弱い、もう少し右手融資業務について体制整備ができてこないと、あわせて左手までも使い得ないような実は現実状況にある。他方、その厚生団のほうは、戦前から厚生年金積み立て金による直営事業をやってまいってきた長い歴史もございます。ほんとうは、いま年金福祉事業団と統合してしまって、年金福祉事業団の私の申す左手と申しますか、一方の手にして、同法十七条に関する業務をやらせるということがオーソドックスではあると考えますが、やや長い経過的で、非常に恐縮だと私はほんとうは腹の中では思っておりますけれども、その年金福祉事業団がもう少し厚生団事業を吸収し得るだけの余力がつくまでの間、しばらく現状でいくことが現実的だと考えられる面もありますが、それによって生ずる業務弊害等があってはなりませんので、これらの弊害の一部と世間では考えられるような面についても、渋谷先生から御指摘もございましたので、そういう面についての人的構成でありますとか、制度監督等につきましては、これは実は責任者である大臣といたして、今回参議院の委員会においてああいう御議論さえもあったんだから、私が主張しておったような、厚生団というものの活動を存続させることによって万一不都合のようなことが起こってはならぬから、直ちにひとつ厚生団責任者にも、国会の御意図のあるところ、また大臣としての私の希望をも通達をして、運営上遺憾なきを期するようにという通達を直ちに出してほしい、こういうことで、文書並びに口頭によって厚生団のほうについてはできる限り——間違いがあってはならないことでございますし、また私どもの考える趣旨が生きるように、こういうことで実はあの後もやっておるようなわけでございます。これは私どもの力の足りないところを暴露するようなことに正直に言ってなるかもしれませんが、公団公庫につきましては、御承知のような締めつけもございまして、なかなか定員増加とか機能の拡大とか、いわんや厚生団というようなものを新しい特殊法人として、年金福祉事業団とは別個のようなものに直すとかいうようなことはとうてい考えられませんし、その辺もございまして、これを法規に合致したような形で融資直営業務運営させることが必ずしもいまの年金積み立て金運営に関する一番いい事態になるとも思っておらないというところに、こういう長々した言いわけもしなければならない点がありまして、どうかひとつしばらく御了解をいただきたいと思います。
  12. 大橋和孝

    大橋和孝君 大臣のおっしゃることもわからぬではない。非常によくわかるわけでありますがいま私がこういうふうな指摘を申し上げました法律上の解釈もありますし、それから特殊法人である厚生団として立っている——私、あとから二、三御質問したいと思いますが、そういうふうな矛盾が出てきておるし、いま大臣が懸念しておられるような非常に悪い面もあるように思うわけであります。それをひとつただしたいと思いますが、まずその前段階として私が申し上げたいのは、やはりこういうふうな特殊法人法人格でやっておるところに無理がある。たとえば政府と同じようなぐあいにベースアップもできないし、また、いろいろな経営上の問題から、いま大臣指摘されたような定員云々ということもなかなか十分できない、待遇改善もなかなかしにくい、こういうようなことがあり得るわけであります。同時にまた、いま大臣のおっしゃっているような考え方でもって、もっとそういうふうな業務一つに集める、たとえば厚生施設事業団とか何かというようなことにしまして、健康保険のいろいろな施設がございます——これは比較的短期のものが多いわけでございましょうが、健康保険あるいはまた船員保険保養所とか、いろいろなそういった施設があるわけでありますが、そういうものも一緒に含めて、そこで厚生省の中の福祉事業団というものにして、そこの構成員というふうに一つにまとめて、もう少し大きなところに包括して、いま大臣がおっしゃってるような形で早く出すのがいいのではないかと、こういうふうに思うのであります。そういうような点はまだ考慮したり、検討されていないのかどうか、あるいはまた、そういうような方向でやってもらうことがどうか。いま年金部長のほうからは、当面のままで、このままだというふうな考え方のようにおっしゃいましたけれども、もう少しここらのところを配慮してもらう時期ではないかと思うのですが、その点どうですか。
  13. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 厚生省といたしましても、従来から始終これは心にかかっていた問題のようでございます。国会から御批判がなければ忘れておるという問題ではないようでございますので、先ほど来申しますように、いろいろ現実面利害得失あるいは困難性どもございますので、そういうことをあわせ研究をいたしながら、先般来の渋谷さんのおことば大橋さんのおことばを引き続いて私どもに対する御忠告と考えながら、前向きの検討を続けてまいりたいと思います。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 先ほどの報告で、この厚生年金でやっておられる老人ホームがあるわけでありますが、これの運営実態、ちょっと概略を御説明願いたい。
  15. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 老人ホームは、先ほど申し上げましたように十二ヵ所経営をいたしております。大体全国にばらばらに散在をいたしておりますが、小さい型の老人ホームが多いようでございまして、十二ヵ所でございますけれども収容定数は五百八十六名で、現在五百八十五名入居いたしておりますからほとんど一〇〇%でございますけれども、十二ヵ所で五百八十名と申しますと、一ヵ所あたりの経営規模としては五十人前後のかなり小さい型のものであるというふうに言えるかと思います。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 これの経営委託を受けておる厚生団ですが、この組織機構を一ぺん御説明願いたい。と同時に、この小規模施設をこうして運用されておるという面に特別な何かの理由があり、あるいはまたこの厚生団経営をする上においてどういうふうな方針を持ち、どういうふうな考え方でこれが行なわれておるのか。そういう点についても少し踏み込んだ状態、考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  17. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 初めに厚生団組織でございますが、法人評議員が二十五名ございまして、これは労働者を代表する者五名、使用者を代表する者、それから本事業団と密接な関係を有する施設の長、それから学識経験者等、労・使・公益、三者構成からなる評議員会がございまして、そこから執行部門理事部門選任する。そのようになっておりまして、理事長一名、太宰博邦でございますが、常務理事を二名、それから常務理事でない理事が労・使・公益からそれぞれ六名、合わせまして理事は八名でございます。それから監事が労使おのおの一名ずつ二名、かような執行部門選任をいたして事業経営に当たっております。職員の数は、二十七ヵ所の施設を全部経営いたしておりますので、職員の数はちょっといま正確にあれしませんで申しわけありませんが、二千八百十五名でございます。  それから第二点の老人ホーム経営方針と申しますか、の実態でございますが、厚生年金年金保険受給者のための福祉施設としてできるものでございまして、厚生省関係で申しますと、社会局社会福祉施設として、あるいは老人福祉設置される養護老人ホーム特別養護老人ホームあるいは軽費老人ホーム等社会福祉的のカテゴリーと少し違いますので、それよりも別と申しますか、年金受給者が入ってくる、年金を受けておる人がその中から入居料を払って入る、全額自己負担ということで入る施設でございますので、そういう入居者方々の好みといいますか、需要に適合できるように中を快適に明るく、合致したようなものとして運営をいたすということを方針といたしておりますが、そのために、非常に大きな山の上に大きな建物を鉄筋コンクリートでつくって何百人も入れるというようなことはかえって家族的ではございませんので、先ほど申しましたような、わりに小さい家族的な形のものとしてつくられております。そのために、その経営コストから申しますと、かえって経費としてはローコストではなくて、コスト的には高くつくようなかっこうではないかと考えておりまして、たとえば経営的な面からいいますと、もっと小さく、所長所長の奥さんとで家族的にやって、もう二十人ぐらいしか入っていない、一つの大きな家族にすぎないというような形でやるほうがあるいは安いかもしれませんし、あるいはもっと大きく思い切って何百人というようにすれば安いかもしれませんけれども、そのような年金受給者のための快適なサービスという見地から五十人前後という規模を選んでおりますので、経営的にはあまり楽ではない、かような実態に相なるかと思います。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 この厚生団職員数は二千八百何名だというようなことを承りましたが、この職員給与はどんなふうになっているか、またこのうちで厚生年金老人ホーム職員の数、それから職員給与はどういうふうになっているのか、お知らせいただきたい。
  19. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 二千八百十五名の職員のうち、老人ホームに従事しております職員は八十七名でございますが、全体の給与総額が昨年度二十七億でございます場合の職員一人当たりの給与月額平均額、毎月の平均給与というものが八万三百二十二円、約八万円についております。これに対しまして老人ホームだけに従事しております八十七名の職員平均給与というのは六万三千三百十二円ということで、この各種の厚生団経営しております施設の中の給与ベース平均が八万円の中でも一番安い給与ベースになっております。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 この厚生年金老人ホーム所長さんとか事務長さんとか、これは前歴はどんな方ですか。
  21. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 現地の県のごあっせんなどで所長を採用しているのが多いと思いますけれども、性質上厚生年金保険社会保険等に従事いたしました者もございますが、それ以外の県の中のそういう施設経験者、あるいは民生行政経験者等もございまして、社会保険関係前歴を有する者は七名、その他が五名でございます。それから事務長は特に置きませんで、所長のもとに事務主任及びその他の職員、さような小さな経営やり方でございます。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 この厚生団のメンバーを先ほど聞きましても、比較的そういう経験者になってもらうという意味もありますけれども、また別面から言えば比較的天下り式やり方がある。特にこういう厚生業務関係方々厚生団の中へ入られることは、むしろ厚生省はこういうところの監督をすべき立場にあるというふうなことを考えますと、そういうところの方々がみんなそこへ入っていってそれを運営をしていかれるということは、やはりそこがこの厚生団運営の中での多少問題を残すことになるのではないかというふうに思うのでありますが、実際厚生省側からこれを見られて、そういうことはまあないとおっしゃるのがあたりまえでありましょうけれども、少しそういうことに対して分析されたことがあるのか。私ども通俗的に考えますと、そういうようなことも考えられるので、そこらにも少し納得のいかない面が起こってくるのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  23. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 厚生団本部のほうに評議員として役人の者が出ておったわけでございますけれども執行部門理事ではございませんが、評議員ということで現職——たとえば私も評議員になっておったのでありますけれども、この前の渋谷先生の御指摘もございまして、現職の私どもがタッチするのは問題があるということでございますので、私はさっそく辞任をする手続をとったところでございます。  それから施設の現場のところは、何と申しましても、たいへん不便なところにありますし、老人ホームというような特殊な施設でございますから、いまどきなかなか人を得ることは困難でございますので、得られないときには、あまり高い給与も払えませんので、どうしても社会保険なり社会福祉なりの経験者をもって所長に充てるということもあるいはやむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 その点もわからぬではありませんが、やはりある程度この運営そのものに、先ほど申しましたような問題点もあるように思いますので、特にそういうこともひとつ配慮を願っておきたいと思います。  それでは、入居料金の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのですが、厚生年金老人ホームのこの入居料金の実情はどうなっておるのでございましょうか。それからまた過去の経過と比率をあわせて説明していただきたい、いままでの上昇率をずっと。
  25. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 老人ホーム利用料金につきましては、老人ホーム運営を行なっております厚生団におきまして、そこの中の食糧費人件費等運用に要する費用を勘案をして定めております。現在の入居料は、老人ホームの所在いたします地域なり、部屋が四畳半、六畳で異なりますけれども平均をいたしまして毎月一万四千六百円でございます。この入居料金は、昭和三十六年に老人ホームの第三万が函館にできましたときに、平均七千二百円と定められまして、それ以来昭和四十五年十月——この間の改定で一万四千六百円というように値上げをいたしましたので、金額で七千三百五十円、率で二〇一%、九年間に約倍、二〇一%の上昇となっております。これに対しまして地方公共団体等設置されております低所得層を対象とするいわゆる軽費老人ホームについて見ますと、同じ函館ができました三十六年に、軽費老人ホームのほうは七千円の入居料金でございましたものが、今年は一万九千九百六十円となっておりまして、金額で一万二千九百六十円、率で申しますと二八五%、二・八倍、三倍近い上昇になっておりますので、軽費老人ホームのほうの値上げの動きから見ますと、わがほうのほうはかなりそれを下回っているというふうに考えております。
  26. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまお話しのように、十月の一日に値上げされたのですが、その内容理由、これは一体どういう根拠で試算した結果これを上げられたのか。
  27. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 本年十月一日から入居料改定を行ないましたけれども、その理由といたしましては、物価、生計費上昇がございます。人事院勧告等によります人件費の増大がございまして、利用者に対する食事その他のサービスを適正に行なうため必要な経費であると、かように考えております。内容は、前年度に比しまして本年度の見込みの所要経費のうち、給与費において一八・四%、材料費において一八・一%、その他を含めまして全体の支出で一五・九%の経費の増が見込まれますので、この費用の増について入居者負担をお願いをいたします入居費のほうは、前年度に比しまして一四・四%の負担増をお願いいたしまして、そのほか厚生団においてはもっと多い一七・一%の増加分負担するようにいたしまして入居者負担の軽減をはかり、料金改定を行なったわけでございます。厚生団負担のほうは、前年度は千九百九十八万円でありましたやつを、今度の値上げに伴いまして二千四百七十六万円を負担することにいたしまして、総経費の中で厚生団本部のほうの負担が占める割合は一五・六六%であったやつを一五・八二%にふやして、なるべく本部からの補助といいますか、繰り入れをふやして、御本人の負担はなるべくふやす割合を少なくする、そういう方針値上げをいたしたわけでございます。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 やはりかような内容を聞いてみますと、厚生団としてもいろいろ苦しいところがあるだろうと思うのですが、別に入居者のほうを考えてみますと、大体が退職した人あるいはまた隠居者でありますので、現在勤労収入はないと思われるわけでありますが、そのような状況について調査をされたことがございますか。入居者の中でどのような……。
  29. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) これは小さい施設でございますので、常時所長が掌握をして調査をいたしておると思いますが、特に最初入居希望がありましたときに、その希望者資産状況その他収入状況、特に保証人資産状況その他の収入状況を詳しく調査をいたし、利用料金を支払うことができるかどうか、支払いができると認められるものについて入居承認をする、かようにいたしておりますので、入居者資産状況は所において把握をされておると考えております。
  30. 大橋和孝

    大橋和孝君 そういう調査の上で、このようにして入居料が上がってくるというものを計算されているわけですが、独立採算的な経営方針であるならば、物価が上昇すると入居料はどんどん引き上げられていくというわけで、入居者負担は増強するばかりだと思われるわけです。ところが、年金のほうは一定になっていて、五年間、十年間の据え置きのままになっておるということになると、これはいま所長は把握しておられるだろうと思いますが、その結果もひとつ私は伺いたいと思うのですが、そういう点から勘案していきますと、スライド的にどんどんと入居料が上がっていくということには非常に問題があるように思うのですが、あなたのほうではどういうふうに考えておられますか。
  31. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 受け取る人の年金も物価にスライドして上がれば好ましいわけでございますけれども、まだ追いついておりませんが、入居料金のほうは、独立採算とは申しましても、厚生団がたくさん経営しております中では、老人ホームはかなり苦しい経理のグループでございますので、独立採算制でスライド的に上がっていくたてまえではありますが、苦しいところですから、本部のほうから補てんするというか、補助をする。かようなことをいたしておりまして、それが昨年千九百万であったのをことし二千五百万近くにふやしたわけでございますが、今後も独立採算の原則は維持しますけれども、苦しい限りにおいては、本部からの繰り入れ額をますますふやしていく、かような方針で善処いたしたいと思います。
  32. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまのようなシステムの中で、やはり財団法人委託してやって、そしてこういうふうにどんどんと人件費なりあるいはまた物価がこのようなパーセントで上がっていくということになればどうしても、先ほど来本部から負担しておるといいながらも、なかなか経営面では苦しくなるから、いまのように入居費は上がって、その年金のほうはなかなか上がらない、こういうふうなことになるわけですが、現在の入居料年金額の関連、こういうものは、あなたのほうでは非常に考慮して、こういうことならばこれくらい上がってもだいじょうぶだという自信のもとにやられておるのかどうなのか。それがもし監督のほうで十分でなければ、やはり入居者に大きなしわ寄せになってくることになっちゃうだろうと私は思うわけであります。また現在のように、物価なり人件費が上がって、これが全部入居料金にはね返っていくということになるならば、やっぱり国、経営者が負担をして、入居者負担を少なくするということがもっともっと積極的に考えられなければいけないわけで、本部のほうから少々負担をしておりますという御答弁だけでは、入居者だけにしわ寄せになると思いますから、この点は調査のもとに、この範囲の値上げならばだいじょうぶ、これから以後はどこからどういうふうにしてこれを調整していくかということ、あるいはまた、そうでなければ年金をスライド制にしてしまおうという方向へいくと、何かそのような見通しがついてないから、いまの運営は何と申しますか、ずさんのような感じがするのですが、その点はいかがですか。
  33. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) いま年金の額と必ずしも結びついておりませんので一がいに申し上げられませんが、現在の受け取っております厚生年金の全国の一般的な平均というものが月額一万三千七百円、ことしの一月から改定をされましたもので申しますと一万五千五百円でございますので、これらのことも勘案をし、また先生の御指摘の、本部厚生団の内部からの繰り入れ金だけではなくて、もっと別のてこ入れ方策はないかというようなことにつきましても、なお今後検討してまいりたいと思います。
  34. 大橋和孝

    大橋和孝君 この点ひとつ大臣に特にお願いをしておきたいと思うのですが、ちょっと口がきたないかもしれませんけれども厚生団には、やはり比較的厚生省関係の人が中にタッチしておられる。こういうふうな運営の状態を見ていきますと、そこに入居している人たちはもう年寄りや、収入があまりない隠居のような形で入っておる。そうして厚生年金をもらっておる人も厚生年金をもらっておる量はあまり物価にはスライドしていない。実際運営をしていくためには、法人経営でありますから、そんなに余分な収入もないから結局高くなって、人件費なりあるいはまた他のいろいろな諸物価の値上がりというものを入居料にある程度寄せていかなければならぬという現況で、この十月にも上げられておる、こういうふうに私ども解釈するわけですが、こういう形ですと、いま私が申し上げて部長もおっしゃいましたように、ほかから繰り入れするとか、あるいはまたどこまでだったら上げたらいいのか悪いのかという判断をするときに、やはり入居者に対して十分におもんぱかるだけのことが入り得るような制度にしていかないといけないと思うのでありますが、そういう点についてひとつ大臣は前向きに考えてもらいたいのですが、その点の所信もちょっとあわせて聞いておきたい。
  35. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) ごもっともの御意見でもあり、また非常にむずかしい点もございます。これはできるかできないか、いまのところ私も言明はできませんが、厚生年金保険年金額につきましても、御承知のとおり、今日財政再検討期におきまして年金額の調整、是正というようなことをやることになっておりますが、私は、そういうことを離れましても、物価とかあるいは国民生活水準の上昇とかいうような見地から、厚生年金法にいまある規定よりももう一歩さらに踏み込んで、進んだスライド制のようなものを何とかして導入したいという実は野心を持っておりまして、厚生年金につきましても、現実には本年度から若干の引き上げが行なわれましたが、さらに来年続いて引き上げたいという申し入れを財政官庁のほうにも実はいたしております。したがって、年金のいま申しますようなスライド制というようなものにつきましても、前向きで検討いたすというつもりでおります。それが一つ。  それから第二は、もうこれ釈迦に説法、十分御承知の先生でありますが、老人ホームにも、ほんとうの意味の社会福祉事業としてやっております特別養護老人ホームとかあるいは養護老人ホーム、あるいはまた軽質老人ホームといったような、老人福祉法に基づく施設としてやっております施設につきましては、これは入居者の収入等に関連しつつ措置費もだいぶ公共団体から出ておりまして、したがって本人の所得、これは財政というようなものが十分でなくても、たてまえとして反映させ得る仕組みになっておりますが、厚生団がやっておりますものは、これは実は今度初めて私のところにもたくさん陳情が参りましたので、いろいろ私もみずから事情をただしましたが、みな有料老人ホームで、老人福祉法の対象のワク外にある施設でございます。ある程度実費を出してもよろしいから気持ちのよい老人ホームというような仕組みになっておりますので、したがってその有料ホームだけをとらえて厚生団がやっておるのですが、率直に言って、厚生団がこういうものをやると世間的にも、これは私をはじめ、厚生団というものは何か人助けの社会福祉的機関なんだから、それが料金をかなり大幅に一ぺんに上げるというようなことについてはもう批判が集中することはあたりまえのことなんで、世間では有料もあるいは軽費老人ホーム養護老人ホームも同じように見たがるので、はたして厚生団がこういうものをやるのが適当だろうか。お金を回すにしても何らかの特別機関にお金を回すような行き方、これは最初に御意見のあった点にも戻りますが、そういうようなことをもう一ぺん再検討の上でないと、なかなか有料老人ホームというようなものを今後方々にふやせるだろうかというような気持ちなきにしもあらずでございます。しかし、厚生年金受給者から、有料老人ホームであってけっこうだから、厚生団による有料老人ホームをあちこちつくってほしいという要望がありますことも事実でございますので、その辺の調整を十分考えながらやはり厚生年金加入者あるいは年金受給者希望にも応じていくことがよいとも思います。しかし、それらの点は、また先生からいままでございました点も、だれがやるにいたしましても要するに厚生省管理下でやることですから、無理がかからないようにやるべしと、こういうことを私も申し渡しをいたしておりますので、今後は十分さらにこの点については細心の注意を加えてまいりたいと思います。
  36. 大橋和孝

    大橋和孝君 じゃ、あと一つ。  長野においていま問題が起こっているようでありますが、所長入居者の個人的な手紙を開封したりあるいは老人ホーム間の連絡文書などを隠匿したりするというような話が出ておりますが、これは一体事実であるかどうか、それを伺いたい。  第二点は、入居者が人権擁護委員会に訴えたという話も聞いておるのでありますが、この問題の経緯もまたひとつ御説明をいただきたい。  それから第三点は、入居者の人権を無視するような所長は、私は、管理者として失格と思われるのですが、所長なり、または厚生省社会保険庁は、この監督上の責任も考えられると思うのですけれども、今後このようなことが起こらないように厳重に監督する必要、こういうものがあると思うのですが、この点についてひとつ明確にお答えをいただきたい。
  37. 宮田千秋

    説明員宮田千秋君) 長野県に起きました事柄について、一部の報道では、お話のように、所長が個人的な手紙を開封したというように伝えられておりますけれども、私どもさっそく厳重に調査をいたしまして、開封ということはございませんでしたけれども、一部ほかの老人ホームから長野の老人ホーム入居者御一同様というあて書きの文書で回ってきた手紙を、開封じゃございませんで、隠匿ということばがございましたけれども、預かってすぐ渡さないで、十日余り預かりっぱなしにして、十日ほどたってから世話人に渡した、かような事実があることが判明をいたしました。これはたいへん遺憾なことでございますので、かようなことがないように、私ども厚生団に対しまして厳重に注意をいたしたところでございます。  二番目の、人権擁護委員会への申請のことにつきましては、さようなこともございまして、入居者の代表八名が連名で申請をいたしております。内容は、入居料値上げ反対ということと、それから先ほどの郵便物の保管、保留のことと、それから所長の言動、態度がけしからぬという、これを改善せよという、その三つであるやに伺っております。その値上げの問題が端緒になり、郵便物の保留云々が起こっておることでございますけれども、元来、ここでは入居者所長との間の対話の不足と申しますか、ヒューマンリレーションが前から若干よくなかったようなところでございまして、そのようなことが今回の値上げなり、郵便物の扱いをきっかけとして起こって人権擁護委員会に申し出をするというようなことに発展をしたのではないかというように考えております。  この件につきましては、所長のほうからさっそく入居者に対して陳謝をいたしますとともに、厚生団本部からも担当の課長を現地に派遣をさせまして、所長に対して厳重に注意するようにということを言いますと同時に、入居者に対しましても、入居料値上げに至りましたいきさつ、理由、必要性などを詳しく説明をいたしまして、入居者に対するサービス等、さらに職員に対しても懇切な指導をいたしたわけでございます。それで、そのように平素からこう何かとヒューマンリレーションが悪かったような地盤がありましたためにそのようなことになったわけでありますが、これにつきましては、厚生団本部のほうから人を派遣させ、所長に対しても注意をしたという報告も受けておりますし、所長もまた非常に非を悔いて反省をいたしておるということを申しておるそうでありますが、いずれにいたしましても、そのようなことは非常に遺憾なことでございますので、私どもも反省をいたしまして、今後かようなことが起こらないように厳重に注意、指導、監督につとめたいと思っております。
  38. 大橋和孝

    大橋和孝君 じゃ、この問題はこれくらいにいたしまして、私、時間がありませんので、ちょっと急いで次の問題をお伺いしたい。  ここ数年来、歴代の厚生大臣は人事院に対しまして、医療制度及び社会福祉制度に勤務しておる公務員の給与改善を要望してきておるのでありますけれども、今年も去る七月八日に、内田厚生大臣から佐藤人事院総裁に対して要望書が提出されました。この要望書の前文にもうたわれていますように、国民に対する医療及び福祉サービスにこたえるためにも、現在置かれているこれらの政府職員、とりわけ専門職にある職員待遇改善というのは、これをはかることはまさに焦眉の急だと、こう言われておりますが、過去数年にわたりまして、これらの要望が実際面において人事院勧告の中でどのように生かされてきたか、まずこういうような点について第一に私は伺いたいと思うわけであります。  それは厚生省と人事院からお答えを願いたいと思うのです。  それから第二点は、診療放射線技師の問題について二、三ちょっと伺っておきたいと思うわけであります。昭和四十三年の五月、第五十八国会におきまして、診療エックス線技師法の一部改正案が成立いたしました。その際この改正案に携わった者の一人といたしまして、その後この改正案の法の精神が実際の運営面でスムーズにいっているかどうかということについて常に気になっておるところであります。  そこで、まず伺いたいと思いますことは、在職者の給与改善の問題でございますけれども、初任給のほうは本年四月一日付で国家公務員放射線技師は医療職第日表の五等級の三号俸に格付けされて、二号俸アップされたわけでありますが、在職中国家試験に合格をし、それから診療放射線技師の厚生大臣免許を得た者については、初任給同様加算年数二年以上の給与改善が当然であろうと考えられておるようであります。このことにつきまして、本年六月の十九日に自治労の委員長の栗山さんから人事院に対して文書でも意向をただしておられるようでありますが、これに対する人事院の給与二課長の回答が七月八日に出されているのでありますが、その内容を見ますと、きわめてあいまいな表現となっておるのであります。この在職者調整につきましては、全国の市立病院なり自治体病院、日赤、済生会など一号俸ないし二号俸アップを続々と行なっているのに対しまして、なぜ国立病院は行なわれないのか。厚生省及び人事院の御方針を伺いたい、こういうように思います。これが第二点であります。  それから第三点は、放射線技師は、言うまでもなく、従来のエックス線技師業務に加えて、さらに高度の技術が要求されております。高エネルギーの発生装置、ライナックとかあるいはベータトロンなどがあるわけでありますが、その取り扱いは被曝度の高い放射線同位元素でありますので、そういうものによる治療であるわけでありますが、これは将来大きな問題となり、放射線公害にもつながるものだろうと、こういうふうに思うわけであります。また検定、測定あるいはまた線管理などの技術革新による高度な技術が要求されておるわけであります。これに対しまして、現在放射線手当として国家公務員で日額八十円しかつかない。二十五日でわずか二千円ぐらいしかつかない低額であると、こういうように聞いておるのでありますけれども、高い技術と危険的なものを含むこの職務の内容から見まして、せめて一万円ぐらいの手当をつけることが妥当じゃないかと考えるのでありますが、この点、放射線技師を専門職として位置づける人事院ではどのようにお考えになるのか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  39. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 国立関係の医療職員待遇改善につきましては、ただいま先生からも御指摘がございましたように、大臣みずからが非常に熱意を持って毎年努力をしていただいております。その御指示をいただきまして、もちろん私どものほうでも、人事院との間でいろいろと強いお願いも申し上げてまいったわけであります。その結果といたしまして、従来もそういう傾向でございましたけれども、特にことしの勧告におきましては、一般の平均の俸給の引き上げが約一二%でございますけれども、医師及び看護婦につきましては、さらにそれを上回りまして一三・五という実績でございます。また、その他の診療エックス線技師等の技術者につきましては、それを上回る回答をいただいております。そのほかに、こういう本俸以外に、御承知のとおり、医師につきましては、特に官民格差が著しいものがございまして、私どもは、それを一挙に解決していただきたいと強い御要望を申し上げておりましたが、ほぼその半分程度、従来に比べますと例のないような改善ができました。また看護婦の夜勤者に関します例の夜間看護手当というものにつきましても、昨年百円から二百円に上げていただきましたが、さらにことしまた五十円この上に積み上げていただくというようなことで、全般といたしましては、必ずしも十分ではないにいたしましても、かなり全般の中では医療の関係について厚い配慮をしていただいたというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の点につきましては、診療放射線技師の問題でございますけれども、ただいま御指摘のとおり、従来エックス線技師の初任給が五号俸の一号であるというものをさらに診療放射線技師というものができましたためにその初任給は二号俸アップというところに、ことしの四月から決定をしていただいております。その際に、そういう従来の養成課程におきましても三年課程の専攻科等を経ております者については、現在認められておりますところの診療放射線技師と実質的に同じ質のものでございますので、この点については、それをそのまま採用するように調整をやっていただいておるわけでございます。ただいま御指摘のございました、現にエックス線技師であった者が業務に従事しつつ例の特例試験によりまして新しい資格を獲得した場合、この点についても、私どもはやはりそういう並行的な取り扱いが望ましいと考えておるわけでございますけれども、ただいまの人事院のいろいろな取り扱い規定というものがございまして、その規定によりますと、あらためて従来の在職期間というようなものについて再計算をするという、こういう仕組みについて規則がなっております。その問題を機械的に適用いたしますと、必ずしも有利になると限らないような問題がございますので、今後の問題ではございますけれども、そういう分につきましては、いま二号俸アップということも直ちに取り計りかねると、こういう事情にあるわけでございます。
  40. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) ただいま厚生省のほうからお話がございましたけれども、私のほうの立場から申し上げたいと思いますが、厚生大臣から御要望のございました医者の給与につきましては、官民格差が相当ございますので、もっとも官民格差の中には、民間におきましては、いわゆる超過勤務手当的なものはあまり支給されておりませんで、そういうものもいわば入っておるというふうに見ておるわけでございますけれども、そういう関係も考慮しまして、格差がしかし相当あるということで俸給表面で一三%、それから、いわゆる調整手当と申しまして、都市に支給される調整手当がございますけれども、この分を医師につきましては全国にどこにおっても支給するという特別な措置を講じました。さらに初任給調整手当の増額をいたしまして、全体といたしましてほぼ二五%程度の改善を行なったわけでございます。それから看護婦につきましては、官民格差の実情も考慮しまして、特に若手につきまして俸給面について改善を加えてございます。なお、手当につきましても二百円から二百五十円に上げるというふうにいたしたのでございます。それからその他の職員につきましても、薬剤師、診療放射線技師等の初任給につきましての引き上げの御要望がございましたので、民間の実情を考慮しましてそれぞれ措置をしたのでございます。  なお、今後の問題といたしまして、たとえば准看護婦の三等級の昇格なり、診療放射線技師長等の一等級昇格の問題、あるいは看護婦養成所の教務主任の特一等級の昇格の問題、あるいは看護婦の臨床実習指導手当の新設の問題、あるいは身体障害者更生施設等の指導当直者に対する当直手当の新設の問題、そういう問題がございますので、その点につきましては今後の問題として検討いたしたいというふうに考えております。
  41. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまのお話で、少し私時間を急ぎましたので、質問をまとめて一、二、三としたわけですが、だからその問題について一つ一つやらないと、都合よく飛ばされちゃかえって時間がかかりますから、明確に答弁をしてもらいたいんですが、全般的な考え方はそういうふうな考え方であろうと、しかし、これに対しましてももっとほんとうの官民の格差を十分配慮をして、そして現状に即したものにしないと、なかなか運営上にたいへんな欠落を生じて、実際問題として運営ができなくなるような形になっておるという現状でありますので、私は、そういうことをいま申し上げているわけでありますから、ことに看護婦さんについて、放射線技師にしましても、医者にしましてもその格差というものが非常に大きくなっておる。こういうのをどういうふうに人事院では踏んまえていくかということは、今後の問題として非常に大きな問題です。焦眉にやらなきゃならぬ問題だと思うので、この問題を申し上げたのでありますが、いまのは全体的にはそうでありますが、その次に放射線技師について民間ではそうしておるのに、なぜ人事院ではこれをやらないのか。いま局長の答弁を聞いてみますと、初任給から計算していったら得になるか損になるかわからぬ、こういうふうな見方でありますが、では民間のほうはどういうふうになっておるか。ある程度民間のほうもここで厚生省としても、あるいはまた人事院としても考慮すべきじゃないか。この問題点を両方の局長——厚生省のほうも、それから人事院のほうの答弁も十分できていないと思うのです。その次の一万円出したらどうかという考え方にはどうだ——私は、その一万円ということを口に出したくないのでありますけれども、一応そういうものを出して問題を提起しておるんですが、この問題点に対してはどういうふうに考えておられるのか。これは両方ともまだ答弁が抜けておるのですから、うまく答弁してもらわないと時間がかかります。
  42. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 診療放射線技師関係につきまして、しぼって二点ほど御説明申し上げたいと思います。  診療放射線技師制度が制定されまして、本年四月から高卒三年の養成施設の卒業生が出たわけでございますけれども、それに対しまして、ことし初任給基準の改正をしたわけでございます。その際の基準といたしましては、従前の、たとえば衛生検査技師の三年制の施設の問題とか、あるいは看護婦さんの問題とか、そういう関係との均衡を考慮いたしまして、実質的に一号の引き上げということをいたしたわけでございます。で、これに基づきまして、これは新制度に適用するものでございますけれども、これに関連いたしまして、従前の専攻科というのがございまして、一年よけいやっているという面がございましたので、そういう諸君に対します均衡という点を考えまして、若干の調整をするということをしたわけでございます。これが、先ほど御指摘のございました自治労の委員長に対する事務的な回答でございます。これは、従前の専攻科卒業生に対します調整のしかたでございまして、本年実質的に一号改善をいたしましたので、昨年の卒業生に対しましては九ヵ月昇給短縮する、その前は六ヵ月、その前の卒業生が三ヵ月という形のいわゆる収斂方式をとりまして、在職者調整をしたわけでございます。このしかたは必要最小限というふうに言っておりますけれども、結局、初任給などを改正した場合の在職者調整のしかたというのは、新しい制度で入ってくる人との均衡といいますか、逆転防止と申しますか、そういう関係から、必要最小限の調整をいたしておりまして、私どものいままでのやり方としては、常にそういう形をやっているわけでございます。したがいまして、いま申し上げた内容で調整をするということでございます。  それから、他の自治体病院その他との調整のしかたはよく承知しておりませんけれども、全体の官民格差、放射線関係の官民格差は、本年は約九%程度でございます。全体が約一二%程度でございますので、放射線関係技師は九%程度と把握をいたしております。  なお、手当でございますけれども、こういう被曝関係におきまして、特別な手当を支給しているわけでございますが、被曝した場合一日八十円という現行制度になっておりまして、来年度予算におきましてその関係をどのように検討していくかという問題に関連しまして調査をいたしておりますけれども、大体民間の診療所、病院等の放射線手当は、月額で支給されている者の平均が二千百円でございます。それから、日額で支給されている者が八十三円ということでございまして、私どものほうとそんなに違わないという状況になっておるわけでございます。
  43. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 危険手当の問題が、私、先ほどお答え申し上げなかった問題だと存じます。  この問題につきましても、他との均衡の問題がございますし、ただいま人事院からお話がございましたような他との比較という立場に立って当然きめられるべき問題だと思います。  ただ、ここで、先生も御承知だと思いますが、こういう技術者の手当ということも考えなければなりませんが、同時にやはり私どもは、被曝ということをなるべく避けるということが原則ではなかろうか。幾らもらいましても、被曝をしたということになりますとたいへんなことだというのが基本的に私どもの考えなければならない問題だと思っております。そういう意味では、今後ともやはり人事院ともよくこういうあり方につきましても御協議申し上げたいと思っておりますので、こういう八十円ということを上げるのがいいか、それを含めた上でもう少し基本的なものを上げるのがいいか、私どももそういう基本的な大きな問題をかかえながら、ひとつ十分検討さしていただきたいと思います。
  44. 大橋和孝

    大橋和孝君 人事院のほうにもう一つ追加して聞いておきたいと思いますけれども、人事院のほうでは、一号俸上げるとか、今度特別な措置をとられたことに対して非常にその範囲を設定する上に問題があるわけですけれども、特に在職中に試験を受け、そして放射線の技師としてのいろいろな資格をとった人もたくさんおられると思いますが、なぜもっと号俸アップする方向を明確にしていかないのか。一方では二号俸上がっているのに、片方一号俸とめられているのも変じゃないかというような形を見まして、もっと号俸アップについて官民の格差を縮める意味で——一二%と九%、だいぶ違うわけでございまして、九%だからいいということにはならないわけでありますから、そこのところをひとつ考えて、こういうような危険的な仕事をやっておられる、しかも今後そうした利用面が非常にふえてくる中でありますから、危険手当も八十円、一方八十三円だからこれでいいということではなくて、そういう手当も出すかわりに、しかも先ほど局長言われたように、明確に被曝をしないような監督も、あるいはまた法令もつくるというふうな形がないと、やはり低く押えることは危険をまたよけいに受けることにもなろうと思いますので、そこいらのところは十分配慮していただきたいわけであります。局長のお話のように、何か初任給を上げたら計算をし直すから云々という点もあるであろうと思いますけれども、民間との格差をできるだけ縮めていこうという考え方からいけば、そういう消極的な考え方のほかに、もっとやはりそれが現実として報いられるような点でやっていかなければならないと思うわけです。そういう点から言いましても、人事院の考え方、同時にまた厚生省考え方としても、やはりそういうふうなことをワクづけしなければならぬし、特に被曝手当というものはもっと前向きに考えてもらうべきだ。二千百円だからよく似ているじゃないかというだけではいけなくて、むしろ国のほうがそういう場合であればこの際あれを示して、民間のほうにも刺激を与えるくらいのほうがよりベターではないかと思いますが、考え方の点ではそういう点を十分にひとつ配慮していただきたい、こういうふうに考えております。  それから次に、もう一点ちょっと伺っておきたいと思うのですが、従来のエックス線業務に加えてさらに高度の技術の要請されておる高エネルギーの発生装置、そういうようなものがいろいろ考えられているわけでありますからして、特にエックス線技師法の一部改正に伴いまして診療放射線技師が生まれたのでありますけれども、そのエックス線技師から放射線技師への移行経過措置として、五十年の十二月三十一日までの期間を定めておられるわけでございますが、この放射線技師のほうになれば、非常にいま申し上げたように高エネルギーを取り扱うわけでありまして、その過程において、非常な便法上の差もあると思うのでありますけれども、特に二年制の教育制度は実質的に昭和四十六年四月の入学者まで改正法が適用されるわけでありますが、全国にある二十三の技術学校あるいは養成所ですか、のうちで、文部省関係の十二校はもうすでに全部三年制になったと聞いておりますが、厚生省認可のうちで数校はまだ三年制へ移行していないと聞いておりますけれども、この法律の附則第六項の精神にのっとりまして、早急に三年制の教育制度への移行をすべきではないかというふうに思っておりますが、民間の養成所への指導も必要であると思う点からあわせまして、厚生省考え方をお聞きしておきたい。それから現状についてお聞きしておきたい、こういうふうに思います。
  45. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 従来のエックス線学校からさらに診療放射線技術者として資格を得るような課程に直す、この問題は附則にございますように、五十年末までの時点に間に合うように努力をするようにという規定がございます。ただいま御指摘のとおり、文部省関係の十二につきましては、全部ことしの四月現在で移行は完了いたしました。厚生省関係の所管いたしております十校につきましては、すでに三つは移行いたしました。残りのうちの六ヵ所は私どもがいろいろ接触をし、指導いたしておりますが、来年の四月一日に大体六校は切りかえができる予定でございます。最後に残りますのは一校だけということでございますが、これもまだ時間的余裕もございます。引き続いて指導を加えまして、他と軌を一にいたしますように、さらに指導いたしたいと存じます。
  46. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) ただいま御指摘ございましたように、従来の診療エックス線技師さんたちは、それぞれ勉強をされまして新しい診療放射線技師の制度に入っていくという方が非常に多うございます。したがいまして、初任給関係による、いわゆる逆転防止関係は先ほど申し上げたようなことでやむを得ないと思っておりますけれども、そういう次第に資格が高くなっていっているということでございますので、厚生省からも大規模施設の技師長に対しましては一等級昇格を認めてもらいたいというお話もございますし、今後そういう関係として職務評価の上で民間の事情もよく調べながら、優遇するように考慮してまいりたいという気持ちでおります。  それから、手当の関係でございますけれども、これも現在いろいろ検討中でございまして、ほかの手当との関連で、来年度予算におきまして、どのように改善の方向を考えていくかということをいま検討しているところでございます。
  47. 大橋和孝

    大橋和孝君 じゃあ、最後に大臣と、またこれは人事院の総裁のほうに伝えておいてもらいたいと思うんですが、いまお話を聞いておりまして、そういうような前向きの方向でひとつ考えようということで、私も了解をするわけでありますが、特に予算前のことでもありますので、こういうふうな問題をとにかくまず何でもいいからひとつ大臣のほうからそういうような線に乗るような方向を推し進めてもらいたい。特に申し上げたいのは、先ほど申したように、放射線技師というものは相当やはり危険な状態にあるから、そういう人に対しては相当手厚く処置をする——いま看護婦さんの業務のえらいこと、あるいはまた手術の担当者の非常に業務の激烈なこと、あるいは腰が痛くて、非常に相当回復のできないような腰痛症なんかも起こっておるという施設の用務員の人たち、あるいはまた施設の寮母さん、こういうようなものを考えても非常に大きな問題が出ているわけです。看護婦さんの問題でも、また医師の問題でもそういうことが言えるだろうと思います。特にどこの突破口でもいいわけですからひとつ放射線の技師法も改正されて、そして非常に地位向上もされるように、ことに勉強されて今後放射線の高エネルギーのそうしたものをやっていくという立場を考えて、こういう人たちに対してのいろんな手当というものを特にひとつ今後の時期に大臣としても、人事院総裁にしても、これを大きく打ち出して、一つの突破口としてそういうようなものを確立していく。だんだんそのほうにほかのものも合わしていくということで解決してもらいたいという気持ちで私はこの問題を取り上げているわけでございます。そういうことの観点から申しますと、やはり非常に勉強している、途中からではありますけれども、放射線技師の資格を得た人、こういう人は初任給から計算したらあんまり得にならないということじゃなしに、そういう危険なことをやって、後輩の人のためにやっていこう、また責任を持っていこうという人たちには、やはりそれに見合うようなアップをしていかなければならない。ということは、アップになるような制度にしなければ——損するような考えでは相ならぬと思うんであります。ですから、そういうことから考えまして、ひとつこういう放射線技師の問題に対してひとつ前向きにして、しかも危険手当の問題も考え、便法を考えてもらいたいし、同時に、また号俸の問題も特にあわせてそういうような方向にやってもらいたいというようなことをひとつ打ち出していただくことが今後パラメディカル、あるいは医療全体の問題からいっても一つの進歩ではなかろうかというふうに考えますので、そういう点についてひとつ大臣のお考え、またひとつ人事院のほうも人事院の中でそういうような意思統一をしていただいて、相ともにこの放射線技師の待遇の問題に対して、一つ一つ前進をしてやってもらいたい、こういうふうに考えるわけでございますが、これを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  48. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 十分考慮して、また人事院の御協力を求めてまいる所存でございます。
  49. 占部秀男

    ○占部秀男君 ちょっと関連。いま大橋委員から老人ホームの問題が出ておりましたが、同じ老後保障の問題で、けさの新聞では老人の医療について厚生省は公費負担というか、無料診療というか、そうした問題に手をつけるといったようなことが出ていたわけであります。  そこで、私は大臣に三つの点だけ簡単にお聞きをしたい。  一つは、この問題は、長く国会で問題になっていたことであり、当委員会でもたびたび問題になっていたわけでありますが、最近、都政をはじめ府県あるいは市等で老人の無料診療というか、公費の負担というか、これはどんどん実現されておる状態であります。したがって全国的な規模で、結局政治としてこの問題について決着をつける義務というか、時期になってきておるのじゃないか、かようにわれわれ考えておりますが、大臣の御見解を承りたいことが一つ。  もう一つは、厚生省としては、それではどういうような案の内容、こまかい点は別でありますが、大筋というか大綱というか、どういう点に重点を置いていま考えられているかということが二つ。  それから三つめは、次の通常国会——臨時国会は当然間に合わないと思いますが、通常国会あたりにはこの問題は法案として出して、一日も早く実現をして、老後保障を充実さしていく、こういうような考え方でおられるのかどうか、この三つの点だけお伺いしたいと思う。
  50. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 老人医療の問題は二つの角度から私どもは詰めてまいってきております。その二つの角度の接点でこの問題がきまるのではないかと考えております。一つの角度は、これはもう私が常々申しているのですが、老齢者福祉対策というものは、わが国の社会福祉の課題として、量的にも質的にも、いままでよりもはるかに重要性を加えてくる。その中の一環として、いろいろな問題はあろうが、老齢者の疾病対策というものを何らかの形においていままでより前進をさしていきたいという老齢者福祉対策としての角度でございます。もう一つは、医療保険の抜本的と申しますか、総合的な改正の角度から従来この老人医療の問題を取り上げてきております。これは抜本改正の、ことに入口としても一つの老人を対象とする医療保険制度を新しくつくりたい。これはもちろん政府からも一部の財源を繰り入れるでありましょうけれども、従来、老齢者をかかえているところの、あるいはまた、かかえておらないところの各種の医療保険の体制からも財源を繰り入れていただいて、かくして被用者であった、つまり会社、企業等につとめておった老齢者についても、あるいはまた自営業者、農民等のそういう一般市民の老齢者につきましても老齢者保険制度というものをつくりたいという意味で関係の審議会に諮問をいたしておるわけであります。したがって、その考え方の接点でこれをきめていきたいと考えます。しかし、御承知のとおり、審議会の結論がなかなかこの問題については出されませんでしたが、数日前に、たまたま医療保険審議会のほうから医療保険制度そのものの答申ではなしに、それの前提問題としての御意見書の一番末尾に、老齢者の医療対策については、保険で考えることのみならず、公費医療等の線に沿って考えらるべきだという多数の意見がある、こういう御意見の表明などもございますので、これは公費医療とあるいは保険制度等の折衷案というようなものもないことはないと私は思います。しかし、一応厚生省といたしましては、老齢者につきましては老齢者保険という特別の制度をつくりたいということで関係の審議会に諮問をいたしておるところでございますので、その御検討をいただきつつこれを処理してまいりたいと考えます。したがって、これは完全な姿で決着いたしますのには若干の時間を要する場合もありましょうが、私としては、次の通常国会あたりにおきましては何らかの形においてこの老齢者医療の問題につきましては触れた案を、あるいは制度を出したいという非常な意欲をもってこの問題に対処をいたしております。
  51. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 初めに確認しておきたい事項についてお尋ねをします。  先ごろ三種混合ワクチン接種死亡事故をきっかけといたしまして、医師会の予防接種ボイコットという異常な事態を引き起こしたわけでありますが、その後十月十五日に医師会では今後の収拾策を検討した結果、予診制度という新しい試みを通しまして予防接種ボイコットというような方向にはならない、そういう結論になった由でございます。しかし、はたして今後予診制度というものが整備されることによって将来における接種ボイコットというような異常な事態が起きないという保証があるのかどうなのか。この点について厚生省としての受け取り方、また今後に対する対応策、それを最初にお伺いしたいと思います。
  52. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 今回の品川におきまして発生いたしました三種混合ワクチンによる事故に関しましては、これを契機にいたしまして各地区に予防接種非協力の声明が出されましたり、地区的でございますけれども、かなり強いしこりが一部にはまだ残っておるように承知いたしております。ただいまの予診の強化あるいは医師会の申し込れ事項の中にございます健康診断、そのほか母親の衛生教育の徹底、こういうような項目につきまして、御指摘のように、改善をはかる話し合いがほぼつきまして、特に健康診断というものの理解のしかたあるいは実際の健康診断を予防接種に導入していく具体的な方策につきまして、さらに来たる十二日に医師会と話し合うことになっております。いま御指摘の予診というものをやることによって事故を防ぎ、あるいはなお拒否というような発展が今後も起こらない保証ができるか、こういう御指摘でございますが、この点に関しましては、はなはだまあ基本的な問題といたしまして、従来免疫のない乳幼児等に新たにたん白抗原をもとにした接種液を注入するというこの予防接種という行為そのものに、人体に対していまだ科学的に医学的に必ずしも全部解明できない、非常に避けられない事故というものが絶無であるという保証が、国際的にも、また当然日本の医学の現状においてもそれが絶無であるというふうに断言ができない状態でございますので、その点につきましては、予診並びに健康状態の確認という接種方法の改善でさらに努力はいたしますけれども、あるいは実施主体の責任と、明らかに過失等があった場合の医師の責任、そうでない場合の、無過失の場合の取り扱い等につきまして、ただいま各地の医師会と市町村との間にいろいろの問題点の調整をいたしておる次第でございますが、これらのことがどのように協定されましても、最終的にいま申し上げましたような医学的に不可避な事故ないしは副反応による若干の障害というようなものが絶対今後起こらないという保証ができないわけでございます。ただ、それによって、その内容を解明することによって、それが即医師会が予防接種を拒否するというような発展にならないような協定なりあるいは注意を守るなり、あるいは健康診断を強化するなり、こういうような方策で対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 再び医師会との会合を持たれて、おそらく近い将来に結論が出るものと思いますけれども、この種の問題はやはりすみやかにその結論が出なければならないと私は思うのであります。いま御答弁を伺っておりますと、将来やはり予防接種拒否という事態が絶対起きないということは考えられない、あるいは起こり得る可能性のほうがむしろあり得るというふうな響きにも聞こえるわけでありますけれども、そうした問題を含めまして現在の予防接種法という法律を改正する用意を現在されているのかどうか。
  54. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 六月十五日に二、三年来、四十三年以来やっておりました伝染病予防調査会の中間答申が出まして、これをもとにいたしまして、伝染病予防法と予防接種法と二つ関連して法の改正を審議していただくために伝染病予防調査会の中に制度改正特別部会を発足させまして、すでに三回会合を重ねております。当面、伝染病予防法の取り扱いを並行して論議する問題がかなりございますけれども法律の制定の取り扱いといたしましては、予防接種法の中に救済制度の確立という大きな課題をかかえておりますので、この予防接種法の改正を当面御審議願いまして、われわれの事務当局の予定といたしましては、来たる通常国会予防接種法の改正を、この救済制度ともう一点、最近の伝染病の流行状況、あるいは医学の進歩による治療の進展、あるいは伝染病そのものの態様の変化等に応じまして、予防接種そのものをどの疾病を義務づけ、どの疾病は義務づけからはずす、そのような根本的な整理を含めまして、来たる通常国会予防接種法の改正を提案したいという心組みで、部会の活動をお続け願っておる次第でございます。
  55. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 医師会との今後の折衝いかんが非常に焦点になるだろうと思うのでありますけれども、その結論が大体いつごろ出るのか。そして、今回の伝えられる医師会の意向というものに厚生省が全面的に近い了承を与えたような印象を受けております。そうしたことから見ると、国あるいは医師側よりも特に母親の責任というものが非常に重くなってきているような傾向にあるように思われます。もちろん親が当然子供の養育にあたって責任を持つのは言うまでもないでしょうけれども、あるいは無過失責任というような問題がどういうふうに一体処理されていくものなのか等々、まだまだやはり前面に当然整理していかなければならない問題が横たわっていると思うのであります。現在医師会の要望というものと、厚生省が現在今後の方向として描いている考え方というものががっちりかみ合っているのかどうなのか。もしかみ合ってないとすれば、どういう点は今後の折衝の段階で煮詰めてそして調整をとり、そして新たなる結論を出すのか。今後の予防接種にあたってやはり非常に大きな関心事になることは必然でありますので、その辺をもう一ぺん明確に今後の方向をお聞かせいただきたいと思います。
  56. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 母親の責任等の問題、まあ責任というよりも、今回の医師会との話し合いの中で、特に今回の品川の三混事件が非常に母親の側に——御存じのように、解剖の結果は吐乳による窒息が直接的な死亡の原因、これはわが国で年間約三百例程度乳児の吐乳による死亡等があるわけでございますが、直接的にはそれが原因であるという事実があったものですから、今回の話し合いの中で、母親の責任というか、母親の協力あるいは教育と申しますか、非常に端的に申しますと、大体会場を去っていくおかあさんが三〇%ぐらい、きょうの予防接種が何であったかを十分承知していないというような事実が、医師会の討議中のメンバーの中から発言として出てまいったりいたしまして、非常に今回の話し合いの基本には、母親の予防接種に対する理解、協力あるいは責任というよりも、それに対する地方自治体の教育が不十分である、こういう問題が出てまいりまして、したがって母親に対する衛生教育の徹底ということが主眼でございまして、必ずしも法的に母親の責任を規定するかどうかというような問題は、現在改正部会でも、第三回目に多少論議されましたけれども、個人の保護者に法律上の責務を課するということは非常に問題があるというような点も論ぜられておりまして、われわれは当然母親が子供のことについて十分保護者としての必要なる注意義務を守っていただくことの必要性を何らかの形で徹底しようという方向でございまして、決して責任を母親に転嫁するというようなことは、法的にもなかなかむずかしい問題があろうと思うのでございます。また、特にこの医師会の要望と今後の改正がどうからみ合うかということでございますが、今度の改正部会には、医師会の代表も入っていただいておりまして、この線を通じまして、医師会の意向が制度部会でそれぞれ話し合いに具体的に出てまいるということが考えられますので、当面、具体的にどういう点がからみ合っていなくて、どういう点が問題になっているかということは、具体的ではございませんけれども制度部会そのものがそういう非常に関係の深い学者、団体の代表等によって構成されておりますので、その点については問題が問題であるだけに、十分論議されまして調整が行なわれるものと期待いたしております。
  57. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 接種につきまして、集団接種と個別接種と両方あるように聞いておりますけれども、理想としては、個別接種のほうがいろいろな事故を最小限度に食いとめる上からも理想とされている。今後こうした問題も当然調整の段階で問題になるのではなかろうかと、こう考えられるのでありますけれども、その点に対する今後の方向でございますが、個別接種といっても、施設その他医師の数等々から見て不可能と思われる場合も十分予測されないわけではございませんけれども、むしろ事故を最小限度に食いとめる、あるいは事故を絶対引き起こさないという面から見れば、当然個別接種のほうがよろしいのではないかというふうに考えられます。また親としてもそのほうが安心感があるというような、非常に素朴なそういう感情というものがあるのではないだろうかというようなことから、やはり理想に一歩近づけるという意味で、その辺を一体どう取り扱っていくかということについてお伺いしておきたいと思います。
  58. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 御指摘のとおり、今回の六月以来の種痘の事件を契機にいたしまして、個別接種という問題が特段推進を要望されてまいりまして、厚生省といたしましても、通知の中に個別接種に対する勧奨、これを進めていくということを方針として打ち出しております。ただ御指摘のように、地域によりましては、ある一定の期間に免疫を獲得する、特に種痘等のように、現状のわが国の情勢といたしましては、子供のときに接種をしないでおいて、流行という危険があるときにやればいいんじゃないか、この考え方もございますけれども、ドイツなどで発生した例のように、子供のときに基礎免疫を全然与えておかずに、流行のときにのみ接種をやりますというと、たいへんな副反応を来たした例がございまして、やはり種痘などは、現状においては、基礎免疫を与える仕組みとしても、現在流行の危険があるないというよりも、そういう人間の健康の基礎的な問題といたしまして、やはりある一定の期間に、いわゆる定期接種という形をとる必要がございますけれども、そうした場合、地域によって免疫を一定の期間に確保していくという仕組みからいって、個別接種だけでは困難なところもございましょう。また一部現行では、医師会との契約の方法によっては個別接種と集団接種とをちょうど、ミックスしたような形で、一定の医療機関と日時をきめまして、人員もほぼ割り当てまして、ワクチンその他のむだのないようなことを考慮してやっている接種方法もございます。これは言うならば集団接種でございましょうが、かなり個別的に取り扱っておる。それから全く個別の方法というものもおっしゃるとおり理想的な方法でございます。ただこの場合、医師会から特段起きておる意見の一つといたしまして、個別接種の場合は患者と一対一、母親と一対一という関係で、役場の職員が一々そこに立ち合うといったようなことができない関係上、理想ではあるけれども、また、先ほど申し上げました不可避的な反応等に対して、全く一対一の関係であることによる医師の責任の証言的な要素がなくなるということを理由にいたしまして、若干個別接種に対しては、検討を要するというような意見も一部出ておりますが、結論的に申しますと、諸外国の例に見られますように、現在の小学校あるいは公民館等の医療施設外の場所で集団で行なう接種方法というものは、これは逐次改善する必要があろうと思います。地域的な必要性はしばらく残るものと考えておりますが、理想としては個別方式を採用していくという方向で検討いたしております。
  59. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回の混合ワクチンの事故といい、また種痘禍という問題といい、その背景を考えてみると、ワクチンの開発というものが何かこう非常に立ちおくれているのではないかという感じが強いわけであります。とりわけ種痘においては象徴的にこれがいままでもおくれているということから、外国の優秀な株を輸入すべきではないかというようなことも言われておりますけれども、このワクチンの新しい開発ということについてはどうなっているのか。もし経過措置として他に優秀な、たとえばいま申し上げた種痘の場合、リスター株を輸入するとか、やはりその子供の健康を阻害しないという基本的な面から考えましても、当然それだけの積極的な姿勢というものを厚生行政の上で明確にこれからも進めていく必要があるのではないか。言うなればワクチン行政が非常におくれているというふうに感じるわけでございますけれども、今回のこうした予防接種拒否という問題に関連いたしまして、この点はどうこれからお進めになっていくおつもりなのか。これは基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  60. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) ワクチンそのものの所管は薬務局でございますが、われわれといたしましては、お説のとおり、特に種痘の痘苗につきまして、六月の事件以来、いろいろ御議論があるところでございます。各国の実情を調べてみますというと、WHOがリスター株を推奨しているというので、一般的にかなりの国がリスター株を採用しているというように考えられておりますが、事実は必ずしもそうではございませんで、それぞれの国がそれぞれの株を長年の研究と成果に基づきまして採用しておるというのが実態でございまして、池田、大連株をいままでわが国は採用してまいり、その免疫効果その他につきましても学問的には自信を持っておるわけでございますけれども、たまたま、今回の事件を契機にWHOのリスター株の採用を考慮すべきではないかという御意見がございまして、たとえば業者の一部ではリスター株の製造に取りかかっておりまして、おそらく来年の春にはこれらの製品も検定を済み使用にたえる状態で——数量等のことについてここで申し上げる私根拠も持っておりませんが、希望するところでは、リスター株による接種が実施可能になるというふうに期待しております。ただし、学問的な検討されましたデータによりますと、リスター株即副反応がきわめて少ないというデータは必ずしもございませんで、皮膚の発赤その他の反応では若干池田、大連株より少のうございますけれども、軽微な副反応的な症状等については必ずしもデータの上では少なくない。また諸外国の報告等でも、脳炎その他重症の副反応というものはリスター株によっても起こっておる報告がございます。しかしながら、もちろんわれわれは単にそういう意見があったからリスター株を製造し、採用をしていくというだけじゃなくて、やはり学問的な根拠で十分検討した上にリスター株も採用できるという方向を確認して採用してまいりたいというふうに考えております。
  61. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そこで、新たな創意に基づいて開発——むしろ私はそこに力点を置いていただきたいと思うのでありますが、また当事者はそれなりの開発の努力をされていると思うのであります。現段階におきまして、現在使用されているワクチンというものが相当な効果をおさめて——まあ、いなければこれはたいへんなことになります。しかし、一歩突っ込んで、十二分に開発されると予測される現段階にあるのか、国内においても十分そういう研究体制というものが整っているのかどうか、また進めていく方向に現在向かっているのかどうなのか、この辺は現在どういうふうに動いているのか御説明いただきたい。
  62. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) ワクチンの開発につきましては、ただいまリスター株以外、基本的に安全性のある新しいワクチンの開発ということで、これは過ぐる国会等でもお答えいたしているように、二、三年の時日を要しますけれども、研究調査費を出しまして、ただいま予研を中心にこれが研究に努力いたしておる次第でございまして、その他一般的な種痘以外の、痘苗以外のワクチンにつきましても、力価の検定の方法あるいは現在接種されております力価の問題等は、先ほど申し上げましたように、流行の状態、社会の改善の状態、こういうものとあわせまして予防接種部会等で検討されまして、安全にしてかつ有効、現状における有効性を確保するワクチン、こういう方向で努力いたしております。
  63. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に補償問題でございますけれども厚生省では死亡事故に対して、三百三十万円と記憶しておりますけれども、国として当然補償しなければならない向きについてはそれを支払う。この三百三十万円という金額は確実なのかどうなのか、そしてまたその算定の基礎はどうなっているのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  64. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 三百三十万という、閣議の決定事項に盛られまして三百三十万を限度として救済金を支給する、死亡並びに後遺症の一等級、十八歳以上の場合でございます。これは自賠法で採用しております損害賠償額算出の方法によってホフマンの方式を使ったわけでございますが、ゼロ歳の場合、男女平均額で約二百五十万、こういうことになります。これは四十三年の平均金額によった場合でございますが、これをもとにいたしまして実際の事故発生例による年齢の分布がございますので、それを補正いたしますとまあ二百七十万ということで、これは十八歳未満の方の二百七十万でございます。十八歳以上の者につきましては、この二百七十万円をもとにいたしまして、全労働者平均賃金から算出されます金額を使いまして一部、まあ一部と申しますよりも、前例として水俣病等の例を勘案いたしまして一応三百三十万という金額を定めた次第でございます。
  65. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、家族の構成、それから社会的なその家族の位置等々、いろいろ一律に三百三十万ということで妥当性があるのかどうなのか、ここにもやはり非常に疑問があるのじゃないかと私は思うのです。ホフマン方式で計算された結果、あるいはその水俣病の例をとって三百三十万、こういうふうに計算の基礎を置いたというふうにおっしゃっておりますけれども、しかし事実関係として、もし後遺症でもって将来、あるいは二十年、三十年生きるかわからないそういう子供をかかえて生活をする家族の苦痛というものは、これはしばしば言われておりますように言語に絶するものがある。はたしていまの物価指数というようなものを考えてみました場合、三百三十万という補償でもって十分といえるかどうか、これはたいへんな疑問が私はあると思うのです、おそらく。先月でしたか、種痘禍による被害者同盟の方方か何かが厚生省に陳情に行かれて、とても三百三十万の金額では困るというようなことから、補償額の増額、そして一刻も早く支給してもらいたいという意味の折衝が当局に対して行なわれたように伺っております。やはりそうした直接被害にあった方々の心情としては、たいへんごもっともだと私思います。しかし、出すほうにしてみれば、一応限度というようなことがありましょう。他の触れ合いというものがあるかもしれません。しかし、少なくとも予防接種法という国の法律によって義務づけられたことから事故が起こったということになれば、やはりそれに相応した国家賠償、国としての補償というものをやるのが最も適切な方法ではないか。水俣病というのは企業の原因によって受けた被害でありますので、またその場合には企業間との折衝ということもございましょうけれども予防接種に関する限りあくまでも国が中心でございます。としたならば、やはり将来の先例といたしましても十分その辺にあたたかい配慮というものをすべきではないだろうか、こう考えるわけです。大臣、いかがでございましょう、三百三十万円でよろしいんでございましょうか。
  66. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) これは私ども、いいとも悪いとも言えないのですが、いままで数十年間やり得なかったこと、しかも法律がないのに何とか私はやりたいという非常な努力と情熱を持って財政当局とも話し合いました結果、一応こういうことで事実上の行政措置を始めることにいたしました。また、お尋ねにはございませんが、その三百三十万円も、過去の死亡の時期等によりまして金額が逓減されているというような方式を取り入れているということは、私自身の考え方としては、これはまた将来物価とか、あるいは人の命に対する考え方はもちろんのこと、それから数字等の変動によりまして、この金額は、将来の事故については直るものであることと、私は実はそういう思想も持っておりますが、一応とにかくここで三百三十万円として出発いたしました。決してこれで十分ではございませんし、また自慢できるものではございませんが、やり得なかったことをとにかく無理しまして閣議まで持ち込んでここまでやりましたし、しぶしぶではございましたが、政府、大蔵省財政当局もそれをのんでくれたということを一応評価していただきたいと思います。しかも、この出し方が、損害賠償とか補償とかということでなしに、つまり故意とか過失とかということにとらわれないで、因果関係がある程度認められました場合には、全く故意、過失を超越して出すと、こういう形をとっております。これはある意味におきましては、私は、無過失損害賠償責任原則への一つの突破口であると考えます。しかし、国の司法制度としてまだそこまでいっておりませんので、私自身の発案で特別措置とか救済とかいうような、皆さんから御批判のございましたようなことばも使いましたのは、そういう意味で、補償は補償として、今日の法律原則のもと、法律理論のもとにおいて、決して訴訟権を阻却するという意味じゃなしに、行政上という意味でことばを使いながらそこまで踏み切ってまいりました。こういう次第もぜひ御理解をいただきたいと思います。
  67. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 非常にあれですね、いま大臣の御答弁を伺っておりますと、えんきょくな言い回しなものですから、どこらあたりにほんとうの焦点があるのか私も明確にできないのです。おそらく閣議に提出されるときには、大臣としても腹づもりがおありになっただろうと思うのです。そしてまた同時に厚生行政に積極的な大臣が、おそらくいままでの国会審議を通して、三百三十万という額それ自体にも大臣御自身は抵抗があったのではないかというふうに私は想像するわけです。先ほど自賠責の問題が出ましたけれども、自賠責それ自体も改正しなければならぬ段階にきているのです。自賠責をもってすべての基準にされたんでは、実際は被害を受けたほうはありがた迷惑です。もうすでに先進国家では、一千万以上という補償が死亡者に対してきているということは少なしとしない状況でございます。したがいまして、いま大臣の御答弁の中でおっしゃったように、将来におきましては改正する余地、行政措置で改正していく考えを十分お持ちになっていると、こういうふうに私は受け取ります。ならば、小刻みにやるよりも、現在の時点に立って、将来の物価指数というものも当然何年後にはどうなるという見通しがあることでございましょう。そういう観点に立ってもう一ぺん再検討の上、現在のきめられた三百三十万円という額を増額できないものかどうか、これが一点。  それから第二点は、死亡年代によって、いまもおっしゃられましたように、減額をするというこの措置をやはり全面的に改める必要があるのではないか、死亡事故の年代によって違う——残された家族にしてみれば苦痛というものはそう大差はない。あまりにも死亡事故の年代によって補償額の開きがあり過ぎるのではないかというような印象を私は受けるわけです。そういった問題をこれからどういうふうに調整していかれるおつもりなのか。増額の点と、第二番目の問題と大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  68. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) いま出発の段階におきましては、三百三十万円の金額を改めて引き上げるということはできません。これはまあいろいろ苦心をいたしまして、この金額で閣議にも持ち出しまして強硬に通したものでございます。  第二点につきましては、過去に事故のあったものは安いということは、将来事故のあったものについては、私は、社会情勢、物価情勢等によって当然上げられると、こういう含みと、そういうふうに私は理解をいたしておりますので、今後の分につきましては、決して三百三十万円でフィックスされるものとは考えないで、それは私自身において、そのときにはまた将来において違った数字の案を持ち出すつもりでおります。
  69. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それから後遺症によって何年余命があるかどうかということはわかりませんけれども、とにかく後遺症のまま生活をしなければならないという場合には、前にも私お尋ねしたことがございますけれども、当然その場合には国が責任を持って適切な医療施設に収容するとか、またそういう後遺症の患者に対しても適切な、一方においてはそういう医療施設、一方においてはやはり損害補償と申しますか、ことばが適切ではないかもしれませんけれども、両面をきちんと考えていく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思いますけれども、再度この点も確認しておきたいと思います。
  70. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 後遺症につきまして「母親の会」から将来の補償というようなことを強く希望しておられますことはたいへんごもっともだと思うのでございますが、この点につきましては施設を、特に種痘による後遺症の脳症の子供は、いわゆる重症でありながらかってに動き回るという非常に親の手のかかるケースが多いということでございますので、現在重症心身障害児の収容施設に一部種痘の後遺症の子供もおるようでございますが、一般的には、激しく動いて非常に養護に手がかかるので、そういう施設設置してくれという希望が親から出ております。  それから後遺症について、特に将来の親の希望としては、一時的なものでなく、年金的なものを希望するという声が出ておりますが、これらの点につきましては、いずれにいたしましても今回の緊急的な行政措置でございますので、いろいろ御意見もあろうと思いますが、今後の調査部会で救済制度全般を御検討願うときに御議論いただく、あるいは議論の対象としてこの問題が出るものと思っておる次第でございまして、その調査会の御意見に従いまして、いろいろ検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  71. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあ、この問題は現在の時点において一切が解決するということはとても不可能でございます。厚生省が今後どういう措置をとられていくかという経過と相まって、次の機会にまたお尋ねをしてまいりたいと、こう思っております。  次に、厚生省は去る九月二十八日でございますか、長期厚生行政の構想というものを発表されたわけでありますが、十項目からなって、一々ごもっともだと私思います。むしろおそ過ぎたうらみがあるのではないかという感じさえいたします。一応とにかく新たな厚生行政のビジョンというものをここに示されたということは一歩の前進だろう、こう思いますけれども、はたしてこの問題をこれから具体化する、もちろん財源というものも必要になってまいりましょうし、あるいはまた細部にわたれば一つ一つの問題がどの時点でどういうふうに一体実現していくのだというようなことまであまり触れておられないようでありますけれども、いずれにせよ、この厚生行政の長期構想というものについて、大臣としてこれから具体的に計画を遂行される場合、その財源措置等を含めて、どのようにこれを進めていかれるおつもりなのか、基本的な考え方を最初に伺っておきたいと思います。
  72. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 実は、御承知のように、厚生省は毎年厚生白書というようなものを閣議決定をいたし、発表をいたしておりますが、これは、読んでみましても、おおむね厚生省はどういうことをしているかということに重点を置いておるようでございまして、非常に激動する今後の社会に処して、厚生省社会福祉あるいは医療等の目標、ビジョンというものがどこにあるかというところまで触れておらないように私は思います、正直に申しまして。そういう点につきまして省内にもただしましたところが、もし私がいま申しましたような将来のビジョンに触れるような厚生白書をつくりましても、これはまあ、言い過ぎかもしれませんが、なかなか政府部内では決定になりません。したがって、いわば実績報告を主としたような、あるいは事態の分析を主としたような報告にならざるを得ないので、今日まできているようでありますが、しかし、日本の経済がここまで成長をいたしてまいりまして、私がいつも申しますように、これからわが国のいくべき道はやはり福祉目標ということが国家の目標にもなるというようなことを言いますし、これはだれが考えてみましても、ここまで経済が成長してまいりますと、その裏打ちの福祉行政というものがなければ、ほんとうの人間の幸福は得られないということにもなるわけで、福祉行政を大きく取り上げてもいい時代にきたと考えまして、いままででやろうとしてやり得なかった厚生行政の長期目標的な、野心的なものを何とか出したいと実は努力をいたしまして、しかもその努力を半分ぐらいに削りましてまとめたものが今回のこの厚生行政の長期目標というわけでございます。  実は、これもかなり思い切ったことが、書いてないようなふうをしながらかなり思い切ったことを実は書いておりまして、昭和五十年なり、あるいはそれより少しあとには、もうすべての要保育児というものは全部保育所に収容するだけの施設を整えるとか——まあ、これは社会福祉施設関係でいきましては、あるいは先ほど問題になりました養護老人等につきましても、全部の老人を収容し得るそういう施設をやるとか、その他すべてのことにつきましてかなり具体的な年次目標みたいなものを想定した思い切ったものも厚いほうのものには実は載せてございます。したがって、これをすぐに大蔵省がのんで約束するかというと、それは大蔵省としてはとても約束できないし、またこういう具体的な中身のあるところまで閣議決定に持ち込むということのためにはまだまだ若干の日時を要するので、とにかく私ども考え方を思い切ってびょうぶにかき出してみよう。絵だけで、それはそれこそ絵にかいたもちじゃないかと叱られるかもしれませんけれども、とにかくかいてみないことには一歩も二歩も前進できないので、まず総論と言いますか、第一部におきましては、そういうものを必要とするような世の中、いまの時代になった。その意味から取り上げ、またわれわれが何をやるかにつきましては、ただ社会を追っかけて社会福祉支出なり、あるいは振替支出というもののパーセンテージが外国並みに大きくなればいいということだけではなしに、これから数年間あるいは十年間の日本の社会の変動というものを見通しながら、それにマッチするような社会福祉、社会保障の政策をとる。場合によっては、むしろ私どもが先行、先導して、私は、公害の対策などについてはそうなければならないと思う者でございますが、その他の面におきましても、物価もどうせ上がるのだ——これはしかし政府は物価は上げない努力はいたします。上げない努力はいたしますが、生活水準も上がる、物価も上がるとすれば、先ほど触れました年金なんかの支給額とか、あるいは支給の制度とか、あるいはその財源関係なんかにつきましても、むしろ私どものほうが社会変動を先に見て、そうして指導的な思想まで出していく必要があるというようなことを総論にうたいながら、こういうものを実はつくってまいりました。これを頭におきながら私どもは毎年のこれから予算要求を積み上げていったり、あるいはまた法律の改正もしたり、あるいはまた厚生白書というようなものも、こういうものとの結びつきにおいてつくってまいるような努力をいたしたいと、こういうことでございまして、したがって、これは外にも実は正式発表してございませんし、中身もそういう性質のものでございますので、いろいろ御批判をいただいて、直すべき多くの課題を含んだものでございますので、その点をぜひ御理解をいただいた上、いろいろまた御指導いただきたいと思います。
  73. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 おっしゃることも理解されないわけじゃございません。全体の文々あるいは句々、これは抽象的にならざるを得ない面もございましょう。しかし、いま一番望まれることは、御答弁にもございましたように、一方においては目ざましい経済力の伸長、しかし、一方においては公害等をはじめとして、あるいは日常生活を脅かすような諸問題が起きている。加えて所得が決して先進国家並みに高いとは言えない。せめてその足りない分を社会保障制度の充実強化によって補っていくところに、いま言われたように多少でも日常個人的な生活の上で潤いを持たせなければならないし、それが本来の社会保障制度のあり方である、全くその点はごもっともだと私は思うのです。けれども全体的に見ましても、先進国家と比較してみた場合に十年以上はおくれている。ものによっては五十年以上おくれているものがあるといっても決して言い過ぎではない。それだけ日本の場合には社会福祉問題を軸とした全体の社会保障制度というものが立ちおくれている。やはりここで指導的な立場をとられて、今後の国民生活に密着するこの問題をどう一体切り開いていくかということはきわめて大事でありまして、確かに今回のこの考え方というものを基本に置きながら一つ一つ具体的に目標を定めて示していただくことが国民の一番待望しているところではないだろうか。確かに絵にかいてそれが何も値打ちがないというのでは何のためにこういう構想を打ち出したのかということのそしりをまぬかれない、こう実は考えておるわけでございます。いま、大臣はこれからの課題としてこれを基本にしながら推し進めていくというふうにおっしゃっておりますので、今後また具体的にこれがどういうふうに進められていくかということを見守りながら伺ってまいりたい。きょうは時間の関係等もありますので、焦点を一つにしぼってお伺いしたいと思います。  今回の構想の中で特に沖縄対策というものを取り上げていらっしゃいます。これは非常に重要であり、また厚生省としても異常なくらいの決意を迫られて対処しなければならない問題ではなかろうか、こう思うのでございます。特に私どもが痛切に感じますることは、復帰を前にした時点において、やはり加速度的に福祉行政全般にわたる問題を一つ一つ取り上げながらこれを強力に推し進めていくということが非常に必要に思われてなりません。  まず最初に、いま総理府が主体になって沖縄の問題解決のために当たっているようでありますが、本土に復帰すれば当然厚生省主管のさまざまな問題がここに浮かび上がってくることは言うまでもございません。しかし、その以前に、ただいま申し上げましたように、あるいはアドバイスをする、あるいはバックアップするということは、これは当然考えられることでございまして、まず総理府と厚生省との関係というものを明らかにしていただいて、今後の沖縄に対する援助というものをどういうふうに考えていかれるのか、大臣の基本的な沖縄の福祉行政全般にわたる問題をまず伺っておきたいと思います。
  74. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は、明後年には政府が言明をいたしているように、沖縄の施政権は完全に日本に帰ってくることと考えます。しかし、そのときになりまして、私ども担当する厚生行政あるいはその中身でありますところの社会福祉なり、医療なりというものをそのときから準備を進めたのでは、実際、沖縄県民百万人の地位といいますか、社会的なあるべき生活上の地位というものが、本土におるわれわれと一緒になるのにはさらに先に延びてしまうと考えますので、明後年からいろいろな制度ができ得る限り直ちに実施できるような準備的な面はいまのうちからやっておくべきだと考えます。そうしないと、社会福祉につきましても二十五年間の空白がございますので、どうしても事前にいろんな準備の手配を整えて、法律制度でもやり得るものはもう沖縄のほうの法律制度そのものを改正をしてもらって、そして七二年の行政権復帰のときに直ちに日本の法律制度の中に吸収し得るような準備もすべきだと考えておることが一つでございます。そのためには総理府に沖縄北方対策庁というものが設けられ、これが当面の責任官庁で、山中君が責任大臣であると思いますが、それに全部をまかせるというのでなしに、私どものほうに沖縄対策準備室——これは名前は少し違うかもしれませんが、沖縄問題準備室というようなものを官房に設けまして、そうしてそこに専任者を置きまして、いろいろな面からプロジェクトを取り上げまして、準備チームを発足さしてやらせております。したがって今度のいま問題になっております厚生行政の長期計画の、なぜこういうものを取り上げるか、どういう見地から取り上げられるのかという取り上げる動機、考え方が四つございますが、その四つのうちの一つとして、いま私が申し述べましたような沖縄に対する厚生行政の手の伸ばし方というものをこういう観点からやるのだという一つのこの長期計画をつくる動機の一つにもいたしたわけでございまして、一々の細目につきましては私もまだ十分承知はいたしておりません。しかし医療保険の制度であれ、あるいは社会福祉施設の現状であれ、日本とかなりかけ離れたものがございますので、これらについて私どもは果たすべき任務が相当大きいと覚悟いたしております。
  75. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの御答弁の中にもございましたように、復帰前に予備的措置として当然できるものは、これを進めていかなければならぬとおっしゃるが、いま大臣として、何と何を一体復帰前に手がけてこれを具体化し、あるいは琉球政府でつくった法律の改正をすみやかに折衝してその足がかりをつくろうと試みられているのか、または検討の段階なのか。せっかく復帰準備室というものまでおつくりになった以上、何らかの具体的措置というものが相当進められているのじゃないかというふうに考えられるのでありますけれども、この点を明らかにしていただきたい。
  76. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私が幾つもある中で自分の知っておることだけ、思いつきだけ申し上げてもいけませんので、準備室の主幹をいたしております総務課長がたまたま見えておりますので、一応検討の過程における重要な問題を担当官から説明をさしていただきたいと思います。
  77. 信沢清

    説明員(信沢清君) ただいま大臣から申し上げましたように、準備室を設けまして、お話のような問題につきまして積極的に対処する、こういう姿勢をとっておるわけでございます。問題は広範多岐にわたるわけでございますが、何と申しましても民生の安定に一番関係のある事項に重点を置いて私どもとしては処理をいたしたいと、こういう方針で取り組んでおるのでございます。ただ、実際問題といたしまして、御承知のように、沖縄北方対策庁というものも政府部内にできておるのでございますから、私どもといたしましては、対策庁と連絡をとりながら、同時に厚生省が重点と考えておりますような問題、この問題について取り組んでいる、こういう姿勢をとっておるわけでございます。問題の重点はいろいろございますが、一つは、やはり医療関係、これは医療保険制度が沖縄についてはすでに一部について実施されておるわけでございますが、本土法を適用いたします場合にいろいろな困難な問題があることは、先生御承知のとおりでございます。したがってこれを技術的にどう解決し、復帰に伴って原則として本土法を全面的に適用する、こういう方針を持っておるわけでございます。それを円滑に行ないますために、どういう技術的配慮をするか、事前にどのような準備を進めるかという点を当面の重要事項として考えております。  さらに医療を行ないます場合に、現在政府立の病院等がございますが、これを国立に移管すべきかどうか、あるいは従前どおり政府——当然県立ということになりますが、県立で経営をしていくのか、その場合、国としてどういう援助をするのか、あるいはさらに離島医療の問題、こういったような問題について現在いろいろやっておるわけでございますが、相当程度、現在の方式を残しながら、逐次本土の水準に近づけるような、そういうような問題を進めておるわけでございます。  それから第二の問題は、これは社会福祉の問題でございます。生活保護の基準もだいぶ違っております。当然、復帰いたしますれば本土の基準をそのまま適用すると、こういうことになるはずでございますが、これについてもかなり技術的な問題がございまするし、それから施設整備の面につきましても非常に本土よりおくれている。もちろん本土自身が十分じゃないという事情もあるかもしれませんが、それにも増して沖縄の事情はおくれている。したがって、早急に少なくとも本土の水準に近づける、あるいは本土についても施設整備拡充を今後はかってまいるわけでございますが、大急ぎでそれにテンポを合わせるような仕組みを考えていかなければならぬ。当然その場合に国庫負担なりあるいは資金の道なりをどうするか、こういうような問題があると思います。これについても当面の重点事項としていろいろ考えておるわけでございます。そのほか、現在幸いに公害問題等あまり起きてないようでございますが、将来起こり得るという前提のもとに、いわばそれを未然に防止するというような意味合いから、公害防止のみならず、積極的な環境保全の問題、具体的に申しますれば、現在政府立の公園がございますが、これを将来国立公園なり国定公園という中でどう取り組んできて、それと公害対策とどうかみ合わせていくか、こういったような問題、いま申し上げましたような問題を重点にしながら検討しておると、こういう段階でございます。
  78. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま急がれておりますことは、一日も早く具体化してもらいたいと、大臣のいまおっしゃられた考え方、もっともなんです。それをやってもらわなければどうしようもない。ただ、いま現実的にこれを復帰前にできるものとできないものと、当然それはございましょう。私は、かりに不可能と思われる問題でも、可能性を十分持たせながら一日も早く解決してもらいたいと、こう願うわけです。いま御答弁の中にありました医療問題にしても、福祉施設の問題にしても、これは緊急を要する課題ではないか、こう思います。最近の新しい資料によりますと、東京を基準にして示されております物価指数、東京を一〇〇といたしますと、沖縄は御承知かと思いますが、二六〇です。もう驚くべき高率を示しているわけです。しかも所得はきわめて低い。しかも保険制度は完備されておりません。だから病気になったら最後だ、そういう考え方が定着しているわけです。もうとにかく病気になっても医者にかかる金がないというような問題がもうどうしようもないところまできているんですね。これは何とかやはりこれを解決してあげることが、ほんとうに復帰してよかったと心から沖縄県民が喜んでいただける最善の策ではなかろうか。もう検討の段階なんということはどうかという感じもするんです。これは厚生省当局がいままでそういう政治的課題という問題についてはいろいろ知ってもおられるはずだし、しかも、これからの対応策としてはどうしなければならないかという問題も、すでに考え方というものはまとまっているはずだし、要はどう一体これを具体化して、あるいは場合によったらアメリカ政府とも接触して、そうして救済の道を講ずるわけにいかないだろうか。これは県民としての素朴な疑問も出てくるのは当然だと思うんですね。もう考える段階じゃない、検討している段階じゃない、いかにして早く具体化するか、こう私は痛切に感じるわけです。大臣は沖縄にいらっしゃってしさいにそういう状態をごらんになったかどうかわかりませんけれども、それはもういらっしゃらないとするならば、なかなかそういう実感というものはわいてこないんじゃないかと思います。だから、その辺あたりも本気になって、沖縄県の厚生行政というものを強力に考えていかれるとするならば、そういうような実際にはだで感じなければならない、そういう方途も十分大臣御自身としても考える必要があるのじゃないかと、こう思います。いかがでしょう。
  79. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私どもも同じような考え方でおります。そのとおりやろうと努力をいたします。
  80. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 やろうというと——もうちょっと具体的におっしゃっていただけませんか。たとえば時期的に見た場合、いま医師が不足している。これは前回も医務局長からも御答弁いただいておりますので、理解しているつもりでございます。医師が少ない、病院が少ない、病院は早急に建ちません。これは医師の問題については何とかもう少し増員するとか、年々もう減ってきているわけですから、御存じのとおり、医師の確保を何とかしてもらいたいという声も切実であります。そうした現実に少なくとも問題があるわけですよ。こういう点で何とか手が打てないものかということを大臣としても決意をここで新たにしていただく必要があるのじゃないかという観点でいま申し上げているわけでございます。いかがでしょう。
  81. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) その一々のことについては、私は、正直に申してつまびらかにいたしていない点もございますけれども、要するに七二年に復帰してからでは沖縄県民の生活の本土並みの向上というものが間に合わないので、復帰する以前にやり得ることはでき得る限りやっておく。そうして復帰のとたんにでき得る限り本土と一体的なレベルのもとに沖縄県民の福祉が維持できるというようなことをやるべきだと、こういう考え方のもとに準備をいたさせておると、こういう次第でございます。
  82. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 来年度の沖縄復興対策費ですね、総理府から発表になっておりますこの予算の内容を拝見いたしますと、社会福祉医療関係費として、総額七百三億三千九百万円のうち百九億が見積もられておるようでございますけれども厚生省としては、この予算内容についてはどういう方面に使われるかということを十分御理解されてはいらっしゃると思いますけれども、こういう予算の内容ですね、それがどういう方面に使われるのか、これは御答弁いただけますでしょうか。
  83. 信沢清

    説明員(信沢清君) ただいまお話しございましたように、従来沖縄援助費という形で組んでおりました予算を来年は沖縄復帰対策費という形で、ちょうどいま先生御指摘のように、本土復帰を踏まえた形で予算を組むと、こういうことを政府としてはきめているわけでございます。その中で厚生省関係、ただいまおあげになりました数字でございますが、手元に資料がございませんので、恐縮でございますが、概括的に内容を申し上げますと、一つはやはり先ほど申し上げました医療関係でございまして、僻地医療を含む医療についての経費がかなりの部分を占めております。それからもう一つは、これは先ほど私が申し上げました生活保護を主体といたしまして、いわゆる福祉関係経費、こういったものが中心になっておるわけでございます。大体本土におきまする国の負担等を基準にいたしまして、ものによってはそれを上回るという意味合いのものを予算として要求していると、こういう状況でございます。
  84. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 医療関係の問題に焦点をしぼったようなきらいがありますけれども、いま総務課長のお話しのとおり、福祉関係についても当然であります。たとえば保育所の問題につきましても、これはすごい切実な要望があるんですよ。御存じのとおり、あそこは所得が少ないために共かせぎが非常に多い。これは本土の比じゃございません。けれども、母親が安心して子供を預ける場所がない。現在公私合わせて五十八ヵ所、本土における類似県を比較いたしますと、二百六ヵ所、これが保育所の状況であります。こういうような問題なんかも、これはやろうと思えば幾らでもできるのじゃないか。せっかくこういう予算的措置までしていただいたわけでありますので、これをどういうふうに使うかは琉球政府の責任になるかとは思いますけれども、こういう問題を踏まえて、やはりいま要望されている切実な問題というものを、医療福祉というものを何とか解決してあげられないものかなと、こういうふうに感ずるわけです。大臣、こういう問題ひっくるめて、ただ抽象的な言い回しじゃ非常に困るんでありまして、ほぼ大体こういう見込みでいまから進めていきたいと、医療の問題についてはこうだ、福祉問題についてはこうだ、まあ総務課長の答弁であらましのことは理解できるにいたしましても、やはり責任ある大臣の答弁から伺っておいたほうがより明確になるんではないだろうか、こういうふうに私は思うわけであります。その点、あらためて大臣の今後積極的に取り組まれる沖縄対策に対する姿勢というものを、そういう問題を含めてもう一ぺん所信を伺っておきたい。
  85. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 先ほど来お答え申し上げているとおりで、私は、沖縄復帰に備えて、沖縄県民の社会福祉水準が本土の国民並みに上がるための時期を失しない手配をぜひしたいと考えております。百何億かの概算要求を出しているんですが、いまここにその表も持ちあわせておりませんのですが、その百何億というものは、握りで百何億ということで概算要求をいたしておるわけではございませんで、概算要求は、もちろん沖縄北方庁を通して大蔵省に出しておりますが、沖縄北方庁のほうには、その中身の具体的な案件につきまして、これをこうしたいからこのくらい来年は金を出してほしいということで出しておるはずでございます。これは数字や事項のことでございますので、しかも沖縄のことでございますので、いま私がそらで申し上げられないのは遺憾でございますが、準備室を設けさせて、そういう問題についてもできるだけ具体的な配慮をしておりますので、適当な時期にまたその中身を御説明申し上げ得ると私は考えます。
  86. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回は明確な結論を伺えないわけでございますけれども、いまおっしゃられたように、近いうちに明らかにされるということであれば、その時期を待ちたいと私は思うのであります。とにかく、福祉行政に関する問題、厚生行政に関する問題、あまりにも山積していることは事実でございます。そしてまた一刻も早く、先ほど来から申し上げておりますように、解決を要望しているその声も非常に強いものがあります。とりわけ、いま御答弁された中にもございましたように、医療問題その他の福祉施設は緊急を要する、こういう状況であります。私がなぜこの問題に焦点をしぼったかと申しますと、今回の構想の中に沖縄対策という問題が含まれております。ならば、当然それを考える以上は十分な下地ができているはずであるし、下地がある以上はこれから具体的なその時期あるいはその予算措置等々も付随的に考慮されながら、配慮されながら復帰前、復帰後ともに復帰ショックを起こさないというためにもこれからの施策を進めていくということになるのではないかと思うのです。また大臣考え方の中にもそういうことが含まれていると私は思います。しかし、あと四十七年といったらあっという間に来てしまうんですよ。まごまごしていると、しまったということになりかねない。これを私ども非常に心配するわけです。どうかその点についてまた次の機会に——いま一つ一つの項目をただしてまいります時間がありませんので、次の機会に私は譲りたいと思いますけれども、いずれにしても、大臣自身もそうした現状というものを一日も早く細部にわたってごらんいただきたいと思うのです。離島と一口に言っても、行かれた方は御存じかもしれませんけれども、やはり百聞は一見にしかずです。あるいはせっかく行かれても、那覇だとか、そういう都市部を見ただけでは何にもならない。やはり北部だとか、非常に辺境のそういう地域はどういう一体苦しい思いをしながら、また生活をしいられてきたかというようなことが考えられるわけであります。いままで佐藤さんが、沖縄の犠牲の上に立って今日の本土の繁栄があるということを言われた手前もあるのでありますから、せめての罪の償いとしても、一日も早くこの解決に踏み切っていただきたい、これをひとつお約束していただきたいと思います。この次に大臣から答弁を私求める場合に、より具体化されたものをその機会にお示しをいただきたい。特にいま議論いたしております医療問題、それから福祉行政の上でやり得るという可能性がある問題については、くどいようでありますけれども、その時期、そしてまたその規模、それから予算措置等々についてぜひとも御回答いただきたいということをお約束いただけないでしょうか。それをもって私はきょうの質問を終わっておきます。
  87. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 私は、実は残念ながらあるいは不勉強ながら沖縄に行ったことはまだないのでございます。しかし、いま国政参加でいろいろやっております最中に参りますこともいかがかと思いますので、いずれかしかるべき機会に沖縄の現地をぜひ見てまいりたいと思います。また本土におきましての厚生行政が非常に最近、特に面が広くていろいろな問題も御承知のように掘り出されて、私も全く神経衰弱になるぐらいのかっこうであそこに腰かけておるわけでございまして、正直に申しまして、沖縄のことについてはお尋ねいただきましても、いま直ちに私は自信をもってお答えできるほどの勉強もいたしておりません。したがって次回か適当の機会に私がわかる限りの、また私が考える限りの、まとまる限りのお答えだけはぜひさしていただきたいと、かように考えております。よろしくお願いいたします。
  88. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時七分休憩      —————・—————    午後二時二十六分開会
  89. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  労働問題に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この前の当委員会で労働大臣に対して、労働省は、最近の動向から見て労働者の保護の役割りが忘れられて、企業に対する労働力の提供サービス機関化しているのではないかとお尋ねいたしました。ところが大臣は、大きく首を振って否定されました。つまり労働者の保護は忘れてはいないということでございましたが、大臣の気持ちを再確認してから質問に入りたいと思います。いかがですか。
  91. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 藤原先生の御指摘のとおり、私は決して労働者の立場というものを無視しているわけではございませんで、いかなる場合であろうとも働く人たちの立場を十分に守ると、尊重すると、そういうことにおいて、しかもそこに日本の経済の発展にみんなが、全体が喜んで協力できるような体制というものが必要であるというふうに考えております。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで、これから私が質問いたします問題は労働者の保護の問題が中心でありますので、企業やその他の省庁に遠慮せずに、大臣のお心持ちを率直に、前向きでひとつ御答弁を願いたい。血の通った御答弁をお願いしておきます。  労働省設置法の第三条には「労働省の任務」として「労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」とうたわれております。はなはだ抽象的ですが、これを裏づける行政としては何がなされておりますでしょうか。お伺いいたします。
  93. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 具体的なことにつきましてはこれは分かれておりますけれども、要するに労働省の関係法規、法律等はすべてその精神を中心としまして立案されたものであるというふうに考えております。現在行なわれておるわが国の労働行政はすべて根本的にはそこから出発しておるというふうに理解しております。
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 ほんとにそうならうれしゅうございます。確かに労働省設置法の第三条には「労働条件の向上及び労働者の保護」とか、「労働者の安全及び衛生の確保」、さらに「婦人の地位の向上」など、けっこうなことのみ書かれております。こういった施策なりあるいは政策というものがうまくいき、労働条件の向上ないし保護、労働者の安全衛生、婦人の地位の向上に大きく貢献し、問題の解決に、現実の姿を見て、なっていると思いますか。この条項どおりになっておるとお考えですか。
  95. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) おおむねなっておると思いますが、必ずしも完全に、法律はございましても、それがことごとく理想のとおりいっておるとも申せない面もございましょう。しかし、これはやはり労働省設置法の精神を中心にして強力に行政を進めていく。また、国民の理解と協力を求め、あらゆる企業の方々にも御協力願うという点で、おおむねそうした点は理解されておるというふうに考えております。
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、わかり切ったことかもしれませんけれども、ここで言うところの労働条件の向上というものは、労働基準法で定められた最低の労働条件以上の労働条件と見てよろしいわけですね。その実現に労働省は努力するという義務が課せられていると解釈してよろしゅうございますか。
  97. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) そのとおりであると思います。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 さらに労働基準法第一条には労働条件の原則が書かれて、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」と規定されております。この人たるに値する労働条件とは具体的にどういうものなのか、だれにでもわかるような御答弁をお願いしたい。
  99. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ただいま御指摘法律の条文にございます「人たるに値する生活」ということにつきましては、これは各具体的に法律によって規定はこれ以上のものはございませんのでございますが、この立法の趣旨は、これを社会通念的に、その社会経済の中から人たるにふさわしい生活ができるということを基本に考えて、個々のケースで判断していくべきだ、こういうふうに考えております。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、いまの労働者は人たるに値する生活をしていると、そのためにあなた方は努力しているとおっしゃるわけですか。
  101. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 労働者は本来働いて賃金その他の所得を得て、それで生活をいたしておるわけでございますから、その生活の維持向上のために適正な労働条件の確保が必要である。そういう意味で、そういう面からこの労働者の生活の問題に取り組んでまいりたいということを考えておるわけでございます。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 「人たるに値する」というのは、どういうことですか。
  103. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) それは、憲法その他の法規によります国民が現在において享受できる健康にして文化的な生活を営むというようなことに相なるかと思います。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 これは総論でございますから、この点はあまり申し上げません。  以上承わりました大臣の答弁を前提にして、私はこれから各論の部分に入っていきますが、ぜひ前向きな答弁をお聞きしたい。  いままでの出てきた労働者の福祉の向上、または人たるに値する労働条件と言った場合に、人間らしい生活の実現でなければならないと思いますが、そのとおりでしょうね。
  105. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 御質問のとおり、ここにございますように、人たるに値する生活ができるような労働条件ということになっております。
  106. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、次にお尋ねしますが、あなた方が見た人間らしい生活とは、具体的にいま一度お伺いしたい、どういうものか。  それから、私の考えでは、今日の労働者が置かれている実情、たとえばこれからお伺いしますけれども、交代制とか、深夜業とか、時間外労働、休日労働、年休権の否認、婦人の権利否認、さらに激増かつ大型化している労働災害を見て、人間らしい生活を奪われていると見ているのですが、どうですか。
  107. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 先ほどからの若干の繰り返しになって申しわけございませんが、まあ人たるに値する生活と申しますのは、やはり健康であり文化的な生活が維持できるということを目標に各般の施策を行なうということになり、それが目標になろうかと思います。それで、先ほど御指摘の点につきましては、私ども労働行政の立場から、やはり日本の経済産業が非常に発展してきているけれども、そこに働らく労働者には、またいろいろな面で別な問題が起こってきていると、そういう事実、そういう点は改善してますます生活の向上をはかっていくべきだというふうに考えております。
  108. 藤原道子

    ○藤原道子君 答弁はまことにいいようなことをおっしゃるけれども、最近経済の発展とともに、労働者の生活権というのか、こういうものがだんだん奪われているんですよ。外国では、日本の経済成長は労働者の犠牲の上になり立っているんだと、こういうことが一般に評判されているじゃありませんか。私は、経済の発展とともに労働者の生活が向上しているとは思えないのですよ。カラーテレビがかりにあったとしても、それが即労働者の人たるに値する生活の向上になっているかどうかということになれば、まことに大きな盾矛だらけだと思います。私は、国民の大部分を占める労働者の人間らしい生活は、これを実現させる有力な法律が労働基準法であり、その厳格な適用と、法律を守る順法精神の高揚にあると思うのですが、もっと言うと、労働基準法で定められた労働条件以上の条件が確保されて実現するものだと思うのです。ところがなかなかそうはいかない。むしろ労働基準法違反がふえてきているんですよ。この際、労働基準法の役割りについて率直なことを聞かして下さい、あなたの口から。
  109. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 労働基準法は、先ほどから先生御指摘のように、働らく労働者の最低労働条件を保障するというその最低労働条件というのをどう見たらいいかと、その点が基準法の基本的なまず姿勢を示している。その最低基準に反した場合に、それに対してそれをどう改めさせ、どう改善していくかということにあろうかと思います。そういう意味で、労働基準法が、いわば労働条件の最低限をささえるための基本的な法律で、ただ一般の労働条件は、御承知のように、労使がいろいろ話し合いによりまして協約その他を通じて決定をされてまいりますが、その場合に、これ以下になってはならぬという下ざさえをしている法律であるというふうに思っております。
  110. 藤原道子

    ○藤原道子君 私の記憶では、労働基準法は、昭和二十二年の制定時から今日に至るまで、企業からじゃま者扱いを受けてきている。たとえば昭和二十年代の後半から三十年代の前半において、おもに中小企業経営者から労基法の改正の要請が出された。そのときには、臨時労働基準法調査会が昭和三十二年に、法改正をすべきではなく運用面で操作すべきだという答申をしておりますね。法律改正は打ち切られましたが、しかしながら、この結果、法律運用労働者の保護規定が大きくゆるめられてきている。それは御承知だと思いますね。しかし、今度は独占企業、たとえば鉄鋼とか自動車産業が中心になって、人手不足、貿易の自由化を理由に労働基準法の改正を政府に対して強く要請しておる。具体的にはさきの東京商工会議所から労働省に対して、女子の労働条件規制規則に対する大きな緩和を求めた要望書が提出されておる。この一連の改正——改悪ですね。の動きに対して労働者を保護すべき労働省はどのように考え対処されるか。
  111. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 労働基準法につきましては、御指摘のように、制定されましてから二十年以上今日までたってまいっております。その間、基準法に対しましては、そのときの経済社会の情勢から、当初はいろいろな批判がございました。しかしながら、現実にはやはり基準法がささえとなりまして、もちろん全体の経済、産業の発展の裏づけになっておりますが、一般的には、私は、基準法が労働条件の下ささえになってきたという機能は否定はできないのではないかと思います。ただ、その中でいろいろな項目につきましては、現実の雇用の場におきまするいろいろな変化等に関連する問題あるいは生産工程その他の改変等に伴いまして、必ずしもその規定が現実に合わない等の問題もあったのではないか。法律そのものの基本的姿勢は、これはいわば労働の基本的な法律でございますので、軽々に改正をすべきではない。しかし個々の細部の規定につきましては、現実運用上もし問題があるならば、いろいろ御意見を承りながらこれは改正していく必要もあろうということで従来から運営をしてまいった。そこで、最近に至りまして、東京商工会議所等からいろんな御意見が出ておるわけでございますが、私どもは、この基準法につきましては、一方的に使用者側あるいは使用者団体の意向をもとにしてこの問題を考えようという気はございません。これにつきましては、一方、労働組合側からもいろいろな意見が出ておりますので、こういった問題については総合的に検討してまいる必要があろうかと思っております。あくまで慎重に、しかし情勢によりましていろいろ問題点がどういうところにあるかということは、十分実情に即して検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  112. 藤原道子

    ○藤原道子君 さらに、四十四年の九月の三十日に、労働大臣の私的諮問機関として労働基準法研究会というものが設置されましたね。私に言わせれば、この会は、さきの臨時労働基準法調査会をもっと法改正の方向に強化する七〇年版調査会ではないか。この研究会は、企業に有利な法改正の世論づくり全般の役割りをになっておるように思えてしかたがないのですが、どういう目的で、何をやらせるためにつくったものか、大臣の御答弁を伺いたいのです。
  113. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 労働基準法制定以来、すでに二十年余を経過しております。したがってその間、一方においては技術革新があり、日本経済の非常な発展があるということから、最近におきましては、ようやく労働力不足という時代に入ったという観点から、いろいろな方面からの御意見があるわけでございますが、その点で学識経験者二十名で労基法研究会ができまして、いま盛んに研究を願っておるわけでございます。これはあくまでも実態に即して、いかにしたらいいかという点で御検討いただく、あまり問題が重大でございますから、そう急いで結論を得るというわけにいかないとは思いますけれども、まあ、しばらく御勉強願って、その間にひとつできるだけ新しい一つの案を考えていただきたい。そのことは、やはり労働者の地位の向上あるいは働く人の文化的な生活がなし得るように、また同時に日本の経済がますます今後も発展していくということにおいて、両立できるような方向でひとつお考えを願えれば幸いと思っております。いま研究会のほうでやっておりますので、われわれのほうとしましては、どういうふうにするというふうな案をむしろ持たないで、そのほうの研究会の御意見にしばらくはまかしておきたいというふうに考えております。
  114. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、この研究会が少なくとも七回以上くらい討議されているのですね。現在は安全衛生関係を討議中だといわれておりますけれども、いまだにこの討議の内容というものは全く公にされていない、その理由はどういうことなんでしょうか。私どもは、どうもこの研究会が法改正のほうへ向いて討議されているように思えてならないので、この点を明確にお伺いをしたい。
  115. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 研究会につきましては、基本的には、ただいま大臣から御答弁がございましたように、あくまで事実をはっきりさせるということを主眼において、たとえば裁判例がいろいろございましたり、あるいは解釈の問題があったり、現実にどう適用されているか等の実態の問題もあったりいたしますので、それらを法制的にあるいは実務的に研究をするということになっております。したがいまして、いままでいろいろ研究会を重ねておりますが、特別にまとまったものをどうこうという、いまの段階でつくるという意図を持っておりませんので、結局、ああいう問題についてはこういう事実、こういう事実ということをいま研究しておりますので、したがいまして、外に出すようなものが現在ないわけでございます。外に出しておらないというのはそういう趣旨でございまして、決して特定の意図を持って、特に先生御指摘のように、企業の経営者あるいは使用者の意見を重点としてあれするとか、あるいは改正を前提としての研究というようなことではございません。研究についてはあくまで慎重にすべきだと思っております。したがいまして研究会でいろいろな事実を総合的に検討いたして、その上で、もしあまりにも現在の基準法の各規定が実情にそぐわないというようなことがありますれば、その段階でどうするかということを考えていきたい。目下のところは、あくまで事実をどう把握するかということに全力をあげているわけでございます。
  116. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、あくまで研究会は法改正を目的としたものではないということをはっきり大臣から伺いたい。
  117. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ちょっと補足的にあれして、その上で大臣から……。私が申しましたのは、法改正を前提としてではないという目的——まあ、目的とも直接はしておりませんで、ただ法改正をするかしないかということとは無関係だということを申し上げておりますので、するかしないかはそのときの判断によるということで申し上げておりますので、その点は、いまのように御了承いただきたいと思います。
  118. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 基準法ができましたのが戦後間もなくのことであります。まだ日本の労働基準法というものは、私も一応読んでみましたが、なかなかよく書いてある。実は労働基準法というものがここまで書いたこと、これはたいへんなことだと思って私は見たのでありますが、しかし現在のように、非常に時代は変わってまいりまして、非常に機械化も進み、近代化も進んできた。しかも最近は公害の問題がこのとおりやかましいのでありますが、そういった点を考えてみますると、必ずしもあれでいいかどうかということになって、議論がある。ですから、やはり絶対改正はいかぬというふうなものでもなかろうと、やはり大ぜいの人が衆知を集めて案をつくられる、大いに研究願うと、そこでその案がどうまとまりますかわかりませんけれども、その段階において十分その研究会の意見等を尊重する必要があるということになりますというと、そこでまた改正問題は国会へおはかりして御検討いただくということになりますけれども、一切改正はしないんだという前提もどうかと思います。現状で、いまのままでよろしいということは言い切れないと、しかし、いずれにしましても非常によくできておる労働基準法というものをそう軽々に改正して、労働者負担なり、労働者がむしろかえって不利をこうむるようなものであってはならないというたてまえで、この問題については研究会の研究にしばらくおまかせしておいて、時代の推移を見、あるいは日本の経済の発展あるいは勤労者の地位の向上という問題を考えながら対処したいというふうに考えております。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 私も、労働基準法が完ぺきだとは思ってない、改正は必要だと思う。だけれども、いま私たちが心配するのは、企業側に押されて改悪という方向へどうも流れる傾向があるので心配をしておる。したがって、何といいますか、研究会が、東商だとかいろいろな企業の要望にこたえて、法改正のために設けられたものではないかということを御質問しているのであって、そこで労働問題を研究して、そしてあらゆる角度から研究した結果が改正にいくなら私たちはいいんです。しかし、いまの流れは改悪ですからね。それで研究会がそういう方向でつくられたのじゃないかということを御質問しているわけです。それでは、その目的ではないと、いろいろな角度から研究しているんだと、その結果があらゆる方面と協議した上で云々ということで、そのままきょうはその程度にこの問題はおさめておきますから、どうか企業の圧力に屈しないようにひとつお願いしたいと思います。  いまの研究会の設立といい、あるいはさきの東商会議所の要望書の提出といい、その底に流れるものに労働基準法の改悪の動きがひしひしと私たちには感ぜられるわけです。私の考えや感じが誤まったものであれば幸いだと、こう考えておる。  それではお尋ねいたしますが、昭和四十三年の十月六日の朝日新聞によりますと、最近の急激な技術革新に伴って、労基法に定められている労働条件の基準には、労働の実態と適合しない点がふえてきたという理由によって、労働省に労働基準法の改正の考え方があると報じております。この改正の項目と、さきの東商が指摘した改正要望事項と基本的な部分で一致していますが、この労働省の考え方、つまり改正するという新聞報道を否定しますか、肯定しますか。
  120. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ただいまの新聞の記事につきましては、先ほど申しましたように、私ども、労働基準法が現実に実情に即しているのかどうかということについては、これは常時研究をいたしておりますし、また研究会にもそういう意味のお願いをしておりますが、いま改正についてのその項目というようなことの記事もあったようでございますが、そのようなものは手元に何もございません。したがいまして、現段階においては、先ほど大臣の御答弁にございましたように、いまどの点について改正をするんだというようなことは一切考えておりません。ただ、問題点のある項目について、どういうところに問題があるかということについて研究を続けているということでございます。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は繰り返して申しますけれども、現行労働基準法は改正すべきだと思うのですよ、基本は。ということは、現行法規は制定当時においてすら十五のILO条約違反をしておるのですよね。そうしてまた、二十三年の間に世界の労働基準法は非常に進歩した。ところが、日本の労基法は一度も労働者に有利な改正がなされていない。むしろ労働条件制限緩和の方向に規則で悪くなっておる。自由主義国の中で第二位の国民総生産を謳歌しておるわが国で、これにふさわしい労働条件が労働者に与えられてしかるべきではないか、私はこう思う。そこで現在、労働組合が中心になって、現在の労働基準法を国際水準にまで高めて、人間性を取り戻そうとする労働条件の確立の運動が展開されていることは御案内のとおり。これに対して、あなた方はどのように評価しておりますか。少なくとも企業家の味方ではなく、労働者の保護の責任がある労働大臣としての御答弁を伺いたい、どうですか。
  122. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 労働省は、先ほどの労働省の設置目的にもございますように、あくまで労働者の生活の向上また安全衛生というようなことを考えて、それを最大の優先的な目標として掲げるべきでございますし、それから特に労働基準法の基本的精神は、労働者の労働条件をできるだけ高めていくと、これは御指摘のように、日本の経済が非常に発展をしてまいって労働条件だけが取り残されるという事態は、これは当然好ましくないことでございますし、私どもがその実情に沿って労働条件をできるだけ引き上げていくというのは、これは労働基準法の精神、あるいは労働省全体の立場としても当然であると思います。そういう意味のいろいろな御意見についても十分これは傾聴して、今後の検討にあたってもそういうものも十分検討してまいる必要があろうと、こういうことであって、十分それを評価してまいりたいと思っております。
  123. 藤原道子

    ○藤原道子君 局長の御答弁をきょうはそのまま聞いておきます。  私は、次に女子労働者と労働条件について若干御質問してみたいと思います。  さきにも触れましたように、東商会議所の要望事項、労働省の法律改正に対する考え方内容、さらには労働基準法研究会の研究項目で共通するものは、労働基準法の改正、中でも労働力不足に対処するやり方として、女子労働者に対する労働条件の制限緩和でございます。ところが現行労働基準法のもとでも、合理化が進められ、それが労働強化になって女子労働者の母体が破壊され、これからの労働力の保全ばかりではなく、現実労働者の家庭生活がめちゃくちゃにこわされております。それが法律改正によって合法的にいまあげた深刻な問題をさらに深刻化させようとする企業家や政府あるいはまたある公社関係のエリート女子職員考え方に私は全く憤りを感ずるばかりでなくて、納得のいかないものがございます。  そこで、私の冒頭の質問に答えた労働省の使命、人間尊重の立場からこれからの質問に御答弁を願いたいと思います。  第一に、労働基準法第六十一条の「(女子の労働時間及び休日)」の問題がありますが、法律でそれぞれ制限されておりますことは、御案内のとおりの一日に二時間、一週に六時間、一年に百五十時間というふうに定められておりますが、最近の六十一条による所定外労働の時間はどうなっているでしょうか、これをひとつお答え願いたい。
  124. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 女子の時間外労働時間が全体にどの程度になっておるかにつきまして、実は的確な資料を持っておりませんが、女子労働時間の延長その他に伴いますそういう事項についての監督等の結果によりますと、労働時間の延長その他で規定に違反をしておるのが大体一〇%程度というようなことになっておりますので、まあ、一般的に問題となるような時間についてはその程度、ただいま申しました実態としていま何時間全体で時間外労働をしているか等については——いまここにございます平均の月間労働時間数でそのうち女子についてのがございますので、所定外労働時間は月間で昭和四十四年、規模三十人以上で七・三時間ということになっております。
  125. 藤原道子

    ○藤原道子君 あなたのほうの統計で見ましても、六五年には六・七時間、六七年には七・一時間、六八年には七・二時間というふうにだんだんふえてきているのですよね。これはでたらめじゃございません。ここに資料がある。そういうふうにしていまでもそういう状況にあるところで、さきの東商の要望書の中で、女子の時間外労働の制限緩和がございます。その理由として人手不足の補助労働として女子労働力に対する期待が高まっておるとか、女子の体位が向上しているなどをあげております。ところが補助労働は低賃金を意味して、女子の体位の向上は確かに戦時の体位よりは向上しているけれども、母体保護という考えを忘れた問題の発想があるのではないか、私はこのように思います。労働者の保護行政をつかさどる労働省は、女子の時間外労働をふやすよりは、野放しにされておる男子の時間外労働こそ制限するよう指導するのが本来の姿ではないかと思いますが、これはいかがでございますか。外国では労働時間がだんだん短縮されてきている。こういう点はどう思いますか。
  126. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 先生御案内のとおり、労働基準法には、特に女子に対する保護規定が数ヵ条ございます。これは女子の持っております母性を尊重するという国の姿勢をあらわしたものとして、きわめて意義が深いと思うのでございます。この基準法が施行されて二十年、その間にこの基準法を下ざさえとしまして婦人労働者の地位の向上というものはやはり大きなものがございますし、また婦人の積極的な職場進出というものもやはりこの基準法というものを下ざさえにして進んでまいったと、そのように私ども考えております。したがいまして、基準法の諸規定を、特に女子の保護に関する諸規定を軽々に改正すべきであるかどうかということについて即断することは許さるべきではないと基本的に考えるところでございます。ただいま御指摘の労働時間、所定外労働、それから休日、深夜業等に関しましては、これも諸外国の例等を見ますと、ILOの条約では、特に時間外労働の制限、休日の労働の禁止についてはございません。しかし諸外国におきましても、やはり女子につきましては時間外労働については一定の制限を設ける、また休日労働についても禁止をするという例が多いようでございます。また深夜業の禁止につきましては、御案内のとおり、ILO条約でも定めをしておるところでございます。また実情といたしましても、一般的に労働時間短縮という方向に向かっていることも世界の趨勢でございます。そのようなことを勘案いたしまして、私どもといたしましては、女子労働者につきましては、女子がその母性を十分に守られ、また家庭責任との調和も保ちながら、しかもまたその能力を十分に発揮するという姿で職業生活を営むことができるように環境の整備をしてまいりたいと思いますので、この労働時間、休日等に関する規定につきましても、その改正は慎重に考えるべきものというふうに考えております。
  127. 藤原道子

    ○藤原道子君 きょうの朝日新聞を見ましても「働く女性は過保護か」と、こういうことが出ておりますね。読んだでしょうか。このごろ仕事が楽になった楽になったというようなことを言うのだけれども、労働密度は高まっているのですよ。決して過保護ではない、むしろもっと保護すべきだと思いますが、これは労働科学研究所の所長の談話が出ているわけですが、これらを見ましても、まさにこれがもしわかってくれたらなと思うのです、企業家側に。そういう点をひとつお考えになりつつ母体保護を考えてほしい。特に最近婦人の体力がむしろ低下して、あるいは献血なんかにおいても血液が薄くなってきて、それで輸血の用にならないというような血がふえていますね。それから異常出産ですか、これらも家庭婦人は九%、それから労働婦人は全体すれば二三%、そしてまた看護婦さんとか、立って働く職場の人たちは実に五〇%が異常出産となっている。それで心身障害児の出生の原因も妊娠中にあるのが大多数である。こういうときに、女子の深夜業、時間外労働の制限を撤廃するとか、危険作業の制限も撤廃しろ、このごろ危険なことはなくなってきたじゃないか、こういうあり方はあまりにも一方的で、生命というものに対しての冒涜だと思う。これをひとつ考えていただきたい。大臣が、かりにあなたがホワイトカラーであるとかあるいはブルーカラーであるとかいうようなことで、奥さんがつとめなければならない共かせぎ家庭であったと仮定した場合、奥さんが毎日残業する、あるいは交替勤務で深夜に帰ってきてごらんなさい。あなたは上きげんでいられますか。あなたの奥さんの健康は心配しないでよろしいでしょうか。私は、同じ人間であるという立場から、婦人労働に対しての配慮が願わしいと思いますが、どうですか。
  128. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 先生のお話にもございましたように、最近は職場で働く婦人の構成も変わりまして、既婚の婦人が非常に多くなってまいっております。それに伴いまして出産のケースというものもたいへんに多くなってきているようでございます。この職場で働く婦人にとって出産というものが非常に大きな負担になるということも当然でございますし、またさらに出産後の子供の保育を含めた家庭責任が大きな負担となってまいっていることも私ども常に気をつけている点でございます。これからはこのような中高年の家庭を持つ婦人がますます職場に多くなってまいると思われます。その際、これらの婦人たちがその健康をそこなうことなく、また家庭生活にも破綻を来たすことなく、また児童の福祉というものも侵すことなく、またそのみずからの能力を十分に生かして仕事を続けていくというためには、積極的な施策による保護ということが非常に重要になってまいると思いますので、そのような方向で諸施策を進めてまいりたいと考えております。
  129. 藤原道子

    ○藤原道子君 とにかく家庭のいざこざ、家庭が円満にいかないということがあると翌日の労働にも大きく影響するのです。そういう点で特に生産性を高める、労災を引き起こさないようにするという、こういうことがかえって逆の効果をあらわしているということをひとつお考えいただきまして、女子の時間外労働、こういうものに対しては慎重に検討してもらわなければ困ると思います。  で、労働時間等の問題ですが、毎勤統計を見ましても、六十一条関係の時間外労働が多くなっている。一ヵ月当たりでは、先ほど申し上げましたように、六四年は七・七時間、六五年は六・七時間、六六年は七時間、六七年は七・一時間、六八年は七・二時間、六九年は七・三時間、だんだんこうふえてきている。これとともに六十一条違反は当然多くなっていると思うのですが、最近の傾向をひとつ御説明を願いたいと思います。
  130. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 先ほどちょっと触れたのでございますけれども、四十四年中に定期監督実施いたしました約二十三万五千の事業場について、いまお話のございました女子保護に関する規定の違反状況等は、労働時間の違反で九・六%、休日労働の違反で三・七%、深夜業違反で〇・四%というようなことになっております。  そのいままでの全体の推移ということでございますが、四十三年に比べますと、たとえば労働時間につきまして、六十一条関係等は四十三年が一〇・二%でございまして、先ほど申しましたように、四十四年は九・六%、わずかながら下がっております。休日の関係については、四十三年が四・七%、四十四年が三・七%でございます。深夜業が〇・六%から〇・四%、四十三年では若干いまの定期監督をしたものの中の違反件数は若干は減っているということでございますが、さらに長いその時系列の比較は、いまちょっと手元にございませんので御了承いただきたいと思います。
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 四十三年、四十四年がずっと上がっているのですよ。おそらく四十五年ももっと上がっていると思いますが、それは水かけ論になりますからよく調べてください。決していい方向へは進んでおりません。私の調査によりますと、そういうふうにふえてきている。ところが休日労働の禁止に違反したり、女子に労働を強制させる事業所が多くなってきていると思いますが、その実態はどうでしょう。結局、昭和四十四年の監督業務実施状況によると、定期監督で、全産業では女子が三・七%、男子が八・五%、これが女子の場合は食品製造業は一三・二%になっておる。製造業全体では一〇・一%の違反が出ているのですが、その状況をひとつお聞かせ願いたい。
  132. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) いまの違反の状況でございますが、四十四年度女子の関係のものにつきまして、ただいま先生御指摘のように、労働時間、休日、深夜業、割り増し賃金その他で、全般的に男子に比べましては、たとえば労働時間の問題は、全産業で見ますと男子の一七・九に対しまして女子は九・六、それから休日については男子八・五に対して女子は三・七というようなことになっておりまして、この監督実施から見ますると、男子の全体の違反に対しましては女子の違反率は若干低い。ただ、全体の労働者の数から申したり、あるいはその監督実施した対象事業場等の選び方等の問題もございますので、一がいに全体に低いとは申せませんが、こういう意味からは女子の規定についてはまだまだ違反がございますが、全体の男子についての違反に比べれば若干は低い情勢ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  133. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが女子を男子と比較してばかり答弁したってだめなんですよ。母体保護ということを忘れているのがそこにあらわれてきているのじゃないか。それをちょっと御忠告申し上げまして、この点違反がないようにするのがあなた方の指導だろうと思います。これをひとつお忘れなくお願いしたい。  深夜業の禁止ですが、ILOの八九号「工業に使用される婦人の夜業に関する条約」、言うまでもなく、この条約の夜間の定義は、夜の十時から朝の七時までの十一時間になっているのです。ところが日本の場合は、夜の十時から朝の五時まで七時間になっているのですね。それでもってILO条約では、その三条に「婦人は、年令に拘わらず、同一の家に属する者のみを使用する企業を除くの外、公私一切の工業的企業又はその各分科において夜間これを使用することができない。」と規定されているのです。残念ながら、多くの国がこの条約に批准をしているのに、わが国は批准していない。さらにいままでの説明によると逆行しているのです。批准できない積極的な理由を示してもらいたい。批准できないとするなら、国際連合において指導的地位を確保しようとしている——つまり非常任理事国ですね。一方、国際的信用を失うことになっているのではないかと、こう思いますが、この問題は二十年以上放置されておりますが、少しは国際信義を考えたらどうか、こう思いますが、これに対しての労働省のお考えはどうでしょうか。
  134. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) いま御指摘のように、婦人の夜業に関する条約二条の規定、これと労働基準法の六十二条との間には御指摘のような違いがございまして、そういう違いがございますために、実はこの条約の批准ができない状態でおるわけです、逆に。そこでこの問題についてどう考えるべきか、全体に、先ほどもちょっと婦人局長触れましたが、ILOのこの条約については、まさにいわば抵触をいたしておりますから、非常に問題でございますが、基準法全体の女子に対するいろいろな規定の中にはILO条約の水準以上のものも中にはあるというようなこともあるわけでございます。そこでやはり全体を通じて総合的にいろいろ検討すべきだ、もちろん基本的には母体保護等、女子に特別の保護をすべきだという観点に立ちながら、現実にはいろいろな規定を総合的にどうかみ合わしていくべきかという問題もございまして、こういう点も先ほどの研究会等でやはり国際水準等も十分考慮しての検討をお願いする必要があろうと思いますので、今後そこいら辺でも十分この問題も研究をしていただきたいと思っております。
  135. 藤原道子

    ○藤原道子君 どれだけ優秀なあれがあるか、あとでちょっと触れるのに関係すると思いますが、わずかなことをたてにして重要なことを言い逃れられちゃ困る。  そこで、労働基準法の六十二条では、婦人労働者を午後十時から午前五時までの間は使用してはならないと規定してあるわけですね、日本ので。ところが深夜業は禁止されているが多くの例外規定を認めているのですね。基準法の精神をゆがめた運用がなされております。法の精神を正すために例外規定を縮小の方向で検討すべきではないかと、こう思いますが、いかがでしょう。
  136. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 御指摘のように、例外規定その他が運用にあたりましてとかくいろいろな問題を生みやすいということもございます。ただ例外につきましては、本則と合わせて検討を要する問題もございますので、十分先ほどの御指摘の点もございますので、今後の研究会でいろいろ現実にどういうふうに運用されておるか等の問題も含めて実証的に研究をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  137. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは次にお尋ねしますが、現在六十二条によって例外が認められておる業種別の女子労働者がどのくらいいるか、はっきりわかる資料を要求したいと思う。それとともに、労働省は、業種別の深夜業に従事している婦人労働者を保護する管理体制がどうなっているか、説明してください。さらに、この関係の基準法違反がどうなっておるか、これもお伺いしたい。
  138. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ただいま御指摘のこの例外の規定に沿って事実上就業している業種別の婦人労働者の数でございますが、これは実は統計をそういうとり方をしておらないそうでございますので、いま直ちに御提出することができないと思いますので、あとでよく調べてみまして、いまの先生御要望の資料に何かできるだけ近いもの等がございましたら提出させていただきたい。そんなことでまことに申しわけございませんが、そういう分類のしかたでとった統計がないそうでございますので、申しわけありません。
  139. 藤原道子

    ○藤原道子君 だって例外を認めるにはよほどの事情があるから認めるのでしょう。その例外が認めた業種別、そこに働らく労働者がどのくらいいるかくらいのことはわかりそうなものですね。
  140. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 実はそこまであれいたしますと非常によろしいのでございますが、実はこの例外規定は、監督署その他の認可にかかわらしておりませんので、事実上こういうふうに例外を認めたらそれで就業をさせることになっております。したがいまして、一般の認可その他にかかわらしておるものについてはそういう面からの押え方もできるわけでございますが、そういう例外のしかたをとっておりませんので、いま申しましたように、十分把握する資料がとれないと、こういう状況でございます。
  141. 藤原道子

    ○藤原道子君 結局、昼間労働の労働監督体制も満足にはやっていないのです、人数が足りないとかなんとかで。だから深夜労働なんかはほとんど管理をやっていないのじゃないですか。野放しなんでしょう。そうだとすると、ハンディのある女子労働者の保護の怠慢と言わざるを得ない。労働省はただ企業のいいなりになって例外規定のみは認めたけれども、そこで深夜に働く婦人労働者がどういう状態でやっているかすら野放しになっている。労働監督体制が非常に弱い。人が少ない、こういうことで、企業はどんどんふえるのに、何回か当委員会監督官のことを御質問しても、一こうにこれが拡充されておらないのはどういうわけですか。大臣御答弁願います。
  142. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 女性に対する対策が十分でないという御指摘、もしそうでありますれば、これから改めて、十分女性のことについては慎重にひとつ保護してまいりたいと考えます。
  143. 藤原道子

    ○藤原道子君 もしそうだとすればじゃないんです、そうなんですよ。監督官が非常に少ないんですよ。一つのいまの企業で一人の監督官がどれだけ受け持っているかということになると、お話にならないんです。こういうところからひとつ改めていただいて、と同時に、このごろ違反がふえているんで、婦人の深夜業などは特に保護してもらわなければ困るんですよ。ところがそういうやり方はしていないとおっしゃるから、私は、もっと体制を強化して十分保護してもらいたいと申し上げている。  そこで、深夜業について二十代の青年労働者でも深夜勤務を三日続けてやると体重が非常に減る。人によっては口の中に口内炎ができるといわれておる。深夜業に従事する婦人労働者にとって、どのような健康管理がなされているのか、またこのような肉体的条件を無視した利潤追求のみを考える企業家や一部の公社のエリート女子職員の態度はまことに許せないと思いますが、あなたは深夜業が体に及ぼすこうした問題をどう見ておりますか。深夜業はうんと体を痛めるんですよ。
  144. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 女性の労働者については、深夜作業などは禁止しておる、例外規定である程度やむを得ざる場合にやっていただいておる。しかし、これが健康をむしばむことは事実でございます。したがって、女性の健康という点を十分留意しまして、今後の対策はひとつその点も十分に考えていきたいというふうに考えております。
  145. 藤原道子

    ○藤原道子君 深夜業は婦人労働者のみでなく、男子労働者の健康をも害することは常識なんで、これをさらに認めることは、あなた方は労働者の生命を縮める、つまり合法的な殺人の予備行為の役割りを果たすことになるんじゃないかと私は思うんです。  そこで、東京の商工会議所が長期の検討テーマとして、女子の深夜労働禁止の緩和について労働省の労働基準法研究会に持ち込もうとしていると聞きます。婦人労働者の生命を縮めたり、家庭生活を破壊するこのような提案を労働大臣はどのように受けとめ、どのように考えるのか。冒頭の労働者の保護、人間らしい生活の実現の基本を踏まえて、大臣の所信を聞かせてほしい。人間らしい生活の保障とは、家族とともに生活する問題も含んでいると私は思うんですが、どうですか。
  146. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 女性に対する深夜業などはできるだけこれはやらしたくないわけでございますが、しかし、日本経済の今後の状況によりましては、ある程度例外を認めざるを得ないような情勢も出てまいるかと思います。その際にありましても、年少の者あるいは女子等につきましては特に十分配慮をして、健康のためあるいは家庭生活を破壊しないように十分な対策をあわせ講ずるということで考えていきたい。できるだけ深夜業等はあくまでも避けたいという考え方でいきたいと思っております。
  147. 藤原道子

    ○藤原道子君 昭和四十三年の八月三十一日に、日本電気事件で、東京地方裁判所は家族と引き離されるということが一体人間らしいかという主張を認められて、これを判決をされたことがありますね。「人たるに値する」という基準法第一条に標準家族も含めていることを労働基準局は認めているはずです。とにかくお願いしたいことは、いま、あなたは産業の発達に伴ってやむを得ない場合もあるというようなことを言われた。けれども、幾ら産業が発達しても人間性が破壊されて、このごろのようにいろいろな問題が起きておりますよ、社会的に。非行少年の問題もあるし、精神異常者がふえているという問題もあるし、こういうことは正常な生活が許されていないような状態から生まれることが多いのです。私は、産業発展、発展といって人間性を無視することを認めるような労働省であってもらっては困るということを申し上げている。それから今日、多く発生する労働災害の根本的な原因が安全衛生教育の欠如だけでなく、合理化による労働の強化を促す労働条件にあると思いますが、私の基本的な考え方に誤りはあるでしょうか。
  148. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 御指摘のように、労働力の量の面から言いますと、最近は、特に若年労働力、技能労働力が不足してまいっております。そのために、やはり未熟練の人あるいは中高年の人を代替していくというような傾向が出てまいっております。そういうために作業に十分順応できないようなのが出てまいることは、御指摘のとおり、それが災害等の原因の一部にもなろうかと思います。そこで私ども、全体として、そういう場合にはできるだけ適応できるような態勢で労働力の代替配置をしていくというようなことで進めていくべきではなかろうか。ただ、御指摘のように、そういう災害の原因の一つにいまのようなことがなり得るということは御指摘のとおりだと思います。
  149. 藤原道子

    ○藤原道子君 結局、労働者は生きものなんですよ。労働に伴って必ず疲労現象というものがあらわれてくる、これはあたりまえです。労働時間が長いと当然労働者の疲労が高まり、労働災害がふえてくることは常識です。一方、合理化によって作業密度が高まり、労働者は十分注意していても災害を引き起こすことになる。この点、労働省も安全衛生問題として調査していると思われますが、説明してください。たとえて言えば、非常に密度が高まってくる。空きびんを洗うときでもちょっときずがあればはねなければならない。どんどん流れてくるでしょう、見ているとすわっていてやるんだから楽だ、こういうふうに思う。ところが製薬会社へ行って見ましても、やはり薬のちょっとのきずもはねなければならない。目も離せない。そうすると、全体の神経でなく集中的に神経を使わなければならない。この疲労度というのはとてもたいへんなものです。ですから、こういう問題に対しても安全衛生上、体はすわっていて楽だというものじゃない。仕事の量、質によって疲労度は違ってくるのですが、この点についての調査等はしておられますか。
  150. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 御指摘の点につきまして、いわゆる作業の態様によりましてどういう——たとえば災害もそうでございますが、最近問題になった職業病等との関連もございます。それらにつきましては、ある業種によりまして、それが問題になりそうな業種についてはそれぞれ専門家に委嘱いたしまして、そういう病気と業務との相当因果関係と申しますか、それがどういう形で出てくるかということをいろいろ調査をさせておるところでございます。
  151. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで労働時間と疲労、それから労働密度と疲労による労働災害の関係調査した資料があったらいただきたいと思います。
  152. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) いま産業全体について、そういう時間あるいは密度との関連の総体的な資料はちょっと手元にないようでございますので、ただたとえば単調労働の問題とかあるいはキーパンチャーの問題とか、そういう特殊なものについてはそれぞれ必要なデータはございますようなので、あります資料を提出さしていただきたいと思います。
  153. 藤原道子

    ○藤原道子君 お願いします。  さらに危険有害業務と労働災害の発生率とは大きな因果関係がある。そこで危険有害業務には一定の資格を持った者とかあるいは経験豊富な者が当たり、災害の発生を食いとめるために設けられたのが基準法第六十三条の危険有害業務の就業制限であると思いますが、どうですか。
  154. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 御指摘のとおり、危険有害業務につきましては、それに従事することから生ずる危険を予防するために一定の就業制限を設けているわけでございます。
  155. 藤原道子

    ○藤原道子君 そうだとすると、東京商工会議所が出しておる女子の危険有害業務の就業制限緩和は、あなた方は、これからどのように検討していきますか。
  156. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 危険有害業務の就業制限につきましては、基本的な底にある考え方として、女子を年少者と同じ取り扱いをしておる、そういうところに若干現実の問題があるのではないかということが指摘されておるんではないかと思います。と申しますのは、ある業種でも、いろいろな危険有害業務がございまして、その中で年少者と同じに十八歳以上の女子について、しかもある一定の資格経験を持てる場合、あるいは持とうとする者も、そこまで就業制限をしなければこの有害業務の就業制限の規定の趣旨が達成できないのかどうかというようなことが問題になるんではなかろうかと思いまして、したがいまして、危険有害業務として就業制限をされております各業務の中身につきまして、それがはたして女子の場合に、たとえば一定の経験と資格を持っている者あるいは持ち得る者がついた場合に、しかも、なおかつどういう問題が起こるであろうかというようなところを具体的に研究をすべきであり、その上でいろいろ考えていかなきゃならぬ問題だと思います。
  157. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうもあなたの話を聞いていると、この東商の言うことを認める方向で考えておるのですか。
  158. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 東商を認めるわけではございませんで、従来からそういう問題が提起されておるわけでございます。たまたま東商も触れておりますが、この問題は、東商が触れたから取り上げるというわけではなくて、現実にいまたとえば車等について、車の運転等男女全然差別しておらぬわけです。それから若干のたとえば機械の運転等につきまして、これは女子でも、もしそういう資格がとれるような能力がある人がおるとすれば、その人にさらに就業制限を課する必要があるのかどうかというような点が現実に問題になるんじゃなかろうかと、ですから、そういう業務によりまして、その点の事実をはっきりさせた上で検討をしなきゃならない。ただ女子の就業制限を年少者と一緒にしておるだけでは困るんだと、ただ、それを緩和しろというだけのことでは問題の具体的な検討、解明にはならぬと思いますので、そういう趣旨で申し上げたので、東商で言っておるからということではございません。
  159. 藤原道子

    ○藤原道子君 問題は、東商あたりでは、機械化が非常に進んできたとか、保護具が改良されたとか、安全設備の格段の進歩により危険有害とは必ずしも言えなくなった作業も見受けられる云々と言っている。ところが毎年毎年六千人からの災害による死亡者も出ているし、あるいはけがをしたりなんかする数は膨大になっておる。ですから、あなたが言うように、完全な機械などの操作ということだけなら、それは女性の進歩ということになるかもしれぬ。ところが有害業務の制限が緩和されると、あらゆるところへ企業家というものが、いわゆる水は低きに流れる、こういうことが私たちには憂えられるのです。ですから十二分の上にも十二分に検討して、危険有害業務というものの緩和というもの、危険有害とはどういう定義であるかというようなことが問題になると思う。そういうときには官僚的な考え方でなく、あらゆる方面の意見を聞いてからやることでなければ、こういうときに危険業務の制限を緩和するというようなことはさらに危険であると私は憂えておりますので、この点を強くただしておくわけなんです。  それで毎年どのくらい女子労働者が労働災害にあっておりますか、それをひとつ数字をあげて説明してほしいのです。さらに、ここ数年の安全衛生関係の基準法違反件数、またそれが全体の違反率の中でどれくらいを占めておるのか、お伺いしたいと思います。
  160. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 監督によります違反の問題でございますが、四十四年の主要定期監督に基づくものでございます。定期監督実施いたしました総事業所は四十四年で二十三万四千九百七十二でございます。そのうちで危害防止その他の、要するに安全基準あるいは衛生基準の違反率は、安全基準の場合には四七・七%、衛生基準で四・六%、それから男女別の災害の率は、ちょっと手元にないようでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  161. 藤原道子

    ○藤原道子君 基準法の違反でも四十四年の場合には、全体を一〇〇とするとその七四・二%が基準法違反の事業所になっておるのですね。そのうちの危険防止、安全基準、衛生基準だけで半数以上の五二・三%を占めておる。こういう場合に、基準監督署としてはどういう指導とどういうあれをしておりますか。
  162. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 実はこの定期監督の場合に、定期監督のできる事業所の数も制限されます。それで重点的に事業所を取り上げて、主として製造工業その他を取り上げてまいるわけでございまして、そのときに、いまの安全衛生関係の基準違反が非常に多い。そこで私どもは、この面のいわゆる安全衛生の行政を基本的に推進しなければならないのじゃないか。たとえば安全につきましては、災害率の非常に高い——災害といいますか、安全違反、衛生違反のあるところには、特別に安全衛生の指導対象の事業所としてその対象に選びまして、その中に特別な管理者を設定しておくとかということで、以後の安全衛生関係の違反の是正、またそれによる災害の防止につとめていくというようなことで、行政指導面でその部分をカバーしながら、監督違反のあったところについてはその後の是正改善にそういう指導を加えていく、こういうことにいたしております。
  163. 藤原道子

    ○藤原道子君 結局、資本の論理から言ったら、女子労働者も商品としての労働力でしかないから東商のような要望も出るのだろうと思います。ですから、少なくとも労働者を人間として見て、その保護をはかることが大きな仕事である労働省から見ると、以上のような企業の労働基準法違反の実態、さらには労働災害の増加する労働環境を見たら、制限緩和などできないと思われるのです、私は。それでいまの監督ですね、これもちょっと問題があるのじゃないか。私は、現在のような役人だけによる安全衛生管理体制というものあるいは研究では、抜本的に労働災害を絶滅することは不可能だと思います。というと、どうもあなた方は気に入らないかもわからない。結局、何といいましょうか、労働基準局に一体何人の専門家がいるかということです。各県に、役人によってでなく、専門家による委員会をつくらせて、それを安全衛生医学の専門家による研究組織にして、積極的に調査研究をやらせる、その結果が安全衛生行政にすぐに反映できるようにすべきではなかろうか、こう思うのです。ところが現在労働省内に安全衛生の専門家が少ないというけれども、それは定員の問題もあると思うけれども、根本的にはそれらの人たちの待遇が悪いのじゃないですか。事務官と専門家の給与待遇はどうなっているか。技術革新は日進月歩進歩する中で、新しい職業病、労働災害が発生しているのに対処するためには、現在の安全衛生管理体制から脱皮しなければならないのじゃなかろうか、こういうふうに考えます。真剣に考える、そういうことについてはどうお考えですか。
  164. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ただいま先生御指摘のように、限られた数の監督官で監督をして違反を見つけ是正をしていく、こういうやり方ではとても安全衛生の確保ということはできない。そこで、御承知のように、基準法に衛生管理者、安全管理者を置くということになっております。その数が全体でいま三十万程度置かれておるわけでございますが、そういった企業に置かれる安全管理者、衛生管理者等が各職場において実際の安全衛生管理上の指導者になる、それと監督署が一つの結びつきを持ちまして、むしろ監督署は定期監督等監督実施いたしますが、それ以外の場合にはいわば安全衛生のアドバイスをやるとかあるいは相談に応ずるとか、いろいろな安全衛生のセンター的な機能を果たすということにしていかなければならないのじゃないかということで、鋭意いまその組織づくりをやっているところなんです。  なお、特別に災害なりが発生しやすい事業所あるいは下請等の関係でいろんな問題が出るようなところについては、特別に看板を掲げまして、特別な安全の指導対象となる工場、事業所というようなことで、特別指導を加えていくというようなことを総合的に進めておりますので、ただいまの御意見も十分承りましたので、さらにそういう点を織り込みまして進めてまいりたいと思っております。  なお、先ほどちょっと、死傷者数で男女の数がございます。休業八日以上が、四十四年は男子が三十三万二千に対しまして、女子が四万二千——これは十八歳以上でございますが四万二千、こういうことになっております。
  165. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、ぜひ基準監督を励行してほしいのです。あなたのほうで出している定期監督実施状況ですが、この違反率を見ましても、ずっと見ていくと食料品製造業では八二・六%違反している。驚くべき数字なんです。ところが調査したばかりで野放しになったんじゃ幾ら調査されてもこわくはない。食品製造業とかあるいは鉄鋼業も多いですね。金属製造、ずっと見てきて驚いたのは病院、診療所その他医療保健業では九一・三%が基準法違反です。それから飲食業が九〇%。とにかく違反していない事業所は少ないですね。これは調査して違反していた場合にはどういうふうな対処をしておいでになるんですか。
  166. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) 違反を発見いたしましたときには、それの是正の命令を出すわけでございます。それに基づいて再監督実施いたしまして、さらに必要があります場合には法的な手段をとって是正の実施を行なわせる、こういうことになっております。
  167. 藤原道子

    ○藤原道子君 さらに調べて直っていますか。ほとんど直っていないでしょう、こんなにたくさん違反して。大臣、ぜひ労働基準監督をもっと強化してください。それだけの権限はあるでしょう。どうですか、大臣
  168. 岡部實夫

    説明員(岡部實夫君) ちょっといまのを補足的に。  いまお話のように、是正をあくまでさせるというたてまえでやっておりますし、再監督等によってそれを確認してまいることになっておりますが、はたして、いま御指摘のように、全部が完全に是正されたかどうかについていまさらに——まあ、ほかの同じ系統の事業所に同じような違反があるということを見ますと、ここでいま申しましたようなことが確実にそうだということを申し上げるわけにもいかぬかと思いますが、今後、これは実は私まだ最終的にどういう方法がいいのか結論に達しておらないのでございますけれども、限られた監督官だけで年々ふえる事業場を対象に監督をしていくということになりますと、どうしても制限が出てまいります。そこで何らかの形で自主的な監督体制というものを企業側のサイドにもとってもらって、その上で、それとどう結びつけるかによっていろいろこの監督の完全な実施といいますか、それに近づけるような何か方法がないものかといっていま検討をいたしておるところでございます。基本的には、もう御指摘のように、監督をして違反があれば完全是正させるということのたてまえで、それをどう現実に実現可能にしていくかということについてのやり方を十分考えてまいりたいと思います。
  169. 藤原道子

    ○藤原道子君 労働者が法に触れるようなことをすれば、有無を言わさず処分するのでしょう。企業家が堂々とこういう違反をしていても、注意したけれどもやらなかったからしようがないというようなことですごしておる。これを見ると、医療関係が九一・三%ですか、ことしの春だか、お調べいただいたところによると、国立関係だけで、調査によると九三%が基準法違反だ。こういうことが野放しになっている。これじゃ、一体、労働者はどこで守ってくれるか。企業にはゆるやかに、そうして労働者にはきびしいいまの監督行政というのですか、いまいろいろな問題が私には気に入らないわけです。もう少し基準監督官をふやして、もっと企業に弱い労働省と言われないように、企業家に強い規制ができるような方向に進んでほしいことを強く要望しておきます。これ全部読み上げるひまありませんが、これによると、そういう違反がずらりですわね。これをお願いしたいと思います。  そこで、論点を変えまして、最近の生理休暇を女子労働者がとっている実情を説明してほしい。また生理休暇をとることが母体にどのようなよい影響を与えているかも説明してください。さらに、生理休暇がなかなかとれないという女子労働者からの不満も聞きますが、この原因がどこにあるのかを説明してほしいと思う。
  170. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 生理休暇に関するお尋ねでございますが、まず、最近、生理休暇を取得と申しますか、とっておる者がどの程度あるかという点でございます。これは、昭和四十四年の数字で見ますと、年に一回以上生理休暇を請求した者の割合は、全女子労働者の二五%、すなわち約四分の一ということでございます。産業別にあるいは企業別にかなりの格差がございますが、これは、やはりその産業あるいはその規模等によって婦人労働者の年齢的な構成等にも大きな差があるというようなこともその基本にはあることであるかと思います。また一人当たり年間にとっております回数としては五・七回、それから休暇の日数としましては九・一日、一回平均の休暇の日数は一・六日というような数字でございます。  第二点は、ちょっと失念いたしましたが、とりにくいという状況という点を……。
  171. 藤原道子

    ○藤原道子君 とりにくいという状況と、生理休暇をとることが母体にどのような影響があるか。
  172. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 第二点の生理休暇をとりにくいというような点につきましては、最近そのような声を確かに聞くことがあります。これにつきましては、私どもも、その実態について個別のケースはつまびらかにいたしませんのですが、一つには、この生理休暇の規定につきまして、その運用の面で従来いろいろと問題があった、そのことがはね返って正当に生理休暇をとるべき女子もとりにくいというような状態に追い込まれやすいと、このようなことが大きな原因ではないかと思っております。  それから生理休暇がその女子の健康に及ぼす影響という点につきましては、私どもつまびらかにできない次第でございます。
  173. 藤原道子

    ○藤原道子君 確かに生理休暇は他の休暇と比較してとりにくいのですね。それからまた、私から見れば、とっている実情は満足すべきものではないと思います。そこで、さきの東商の要望書の中にも生理休暇の規定の削除の要請がある。具体的にこの要望についてあなた方はどのように理解し、今後検討なさるおつもりであるかを聞かしてほしい。
  174. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 生理休暇につきましては、労働基準法の六十七条で規定しているところでございまして、一つには「生理日の就業が著しく困難な女子」、それからもう一つには「生理に有害な業務に従事する女子」であって、それらの者がその生理休暇を請求した場合に「その者を就業させてはならない。」と、このような条件になっているわけでございます。この生理休暇の規定をめぐりまして、いろいろと労使双方から問題が出されているところでございますが、それらの問題は、主としてこの規定そのものというよりは、個別企業におきますその運用実態から生じている問題が多いように思われるわけでございます。この問題につきましても、基本的には基準法研究会の今後の検討でまたいろいろな実態もわかってくるかと思いますが、この規定がいうところの生理日の就業が著しく困難な者あるいは生理に有害な業務に従事する者にとりましては、生理休暇は母性保護という点から意義のある制度であると私どもは思っております。労使間の協議によりましてその運用が適正にはかられるということが望ましいことと思われますので、そういう方向で行政指導に力を入れてまいりたいと思います。
  175. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、母体の保護あるいは異常妊娠、出産をなくすためにどれだけこの休暇が有意義であるかということが、学校の先生方の調査でもはっきりしている。しかし女子の過保護の典型的規定とか、各国においても例がないからはずせという企業の要求が盛んにあることは承知いたしております。しかし、各国にないからつて、一つぐらいいいことならば模範になるものがあっていいじゃないですか。同時に、私は、生理休暇が永遠に必要とは思っていない。生理休暇を必要としない労働条件の獲得、労働条件が諸外国のように整備されてくれば、これは生理休暇はやめてもいいと思う。私が外国を各国回ってみまして、生理のときには文句なしに軽作業に回します。あるいはトイレに行ってみると、何といいますか、冷蔵庫のような機械が置いてあって、その中にほとんど生理に必要なものが全部入っている。それから気分が悪いときには横になって休めるような休養室も整備されている。日本のように、深夜業といえば朝五時までなんていう規定ではなくて、その点ははっきりしている。だから、生理休暇を必要としない労働条件の確保、これが必要なんです。しかし、いまの日本の段階では生理休暇は必要だ、こう私は主張しているものでございます。結局、言うまでもございませんけれども、銀行あたりで計算違いをしたり、あるいは紡績あたりで試験するところがありますね。そういうところでミスをおかすのはほとんど生理日に多い。家庭婦人でも夫婦げんかするのは生理日に多い。あなた方のほうも調べてみなさい。そういうことが言われておる。それは男にわからないからあなた方は冷淡なんです。この間ある労働組合に行ったら、わしらも生理休暇をほしいと言うんです、男の人が。生理があったらやるよと私は言うんです。特殊な母体保護という観点に立って必要性でこうやっている。確かに病気じゃないんです。けれども、だからといって苦痛がないか、母体に影響ないかということになればあるんですから、労働省としては、生理休暇を必要としない労働条件をつくることにもっと熱意を持って当たってほしい。それから中には不正使用というんですか、生理日でもないのに生理休暇をとって、それでレジャーに出かける、あるいはどうとかいうことを口実にする。中にはないとは私言いません。けれども、ごく少数の者がそういうことがあったからといって、鬼の首でも取ったように生理休暇廃止を強く要望する企業側の姿は許せない。こういうことについてどうお考えですか。今度東商がこういうことを出してきたけれども、重大問題だと思うんです。この点をお伺いしたい。
  176. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 生理につきましては、これは確かに女子に特有な現象でございますし、また個人差も非常に大きなものであるかと思います。したがいまして、基準法が定めておりますように、生理日の就業が著しく困難な女子という人も確かにいるわけでございますし、また仕事の性質によっては生理に有害な業務というものもあるわけでして、たとえばよく引き合いに出されますバスの車掌さんのように、非常に振動の激しい——まあ最近は道がよくなりましたけれども、振動の激しい業務、これらは常識的にいいまして生理に有害な業務ということであろうかと思います。したがいまして、こういう者たちに対して生理休暇が必要であるということは、この法律が定められたときの考え方でございましたし、また、今日においても基本的な考え方はそこにあるかと思います。問題は、繰り返しになりますが、その運用面におきまして必ずしも労使が十分な理解をし合えないというような点が多々あるようでございますし、また先生御指摘のような、労働条件がすべての企業を通して十分な水準に達していないというようなこともございますので、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、この規定につきましては、この趣旨を尊重して守っていただくようにしていただきたい。また行政指導においてその運用面の改善ということを進めてまいりたいと思っております。
  177. 藤原道子

    ○藤原道子君 聞くところによりますと、これから触れる専売公社の問題にも関係があるんですが、「女子保護の概況」という資料が労働省の婦人少年局から毎年出ておりますね。専売公社内では女子職員がかなり多いから、生理休暇は他の産業、企業と比較してとりやすい事情はわかるが、この状態が本来の基準法を守る姿だと思うんです。ところが、この資料を年を追って気をつけて見ますと、奇妙なことに気がついたんです。つまり四十三年度のを見ますと、生理休暇請求の実人員の割合が専売公社で八三・四%となっている。生理休暇を与えた事業場が九七・八%となっておる。しかし、四十四年度、つまりことしの八月に出された同じ資料を見ると、たばこ製造業と食品製造業と合わせたものが一つになって数字が出ている。全般的に低い取得状況になっておる。つまり食品製造業とたばこ製造業の請求を合わせると有給が三七%、無給が八・三%で、合計しても四五・三%で約半分の低い率になっておる。  そこでお尋ねしますが、なぜ従来から二つに分けて数字を出していたものを一緒にして数字を落としたのか、合理的な理由があるのかどうかを伺いたい。この資料にはっきり出ている。四十三年度にはたばこ製造業は八三・四%となっております。ところが、四十四年度をみますと食料品製造業とたばこ製造業、これの合計されたものが三七%、無給の事業場における請求者が八・三%、非常に納得がいかない。なぜ四十三年度には専売たばこ製造業と食品製造業を別にしておいて、つまり食品製造業は二〇・五%、たばこ製造業は八三・四%となっておる。ところが、ことしのは両方合わせて三七%、これはどういうわけなんですか。なぜ急速にこんなに減ったんですか。
  178. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) お尋ねの点につきましては、毎年行なっております女子保護の実施状況調査の集計の方法でございますが、実は、たばこ製造業に含まれる調査対象者の数が非常に少ないものでございますので、きわめてこれは機械的な理由でございますが、この統計の集計の段階におきまして、たばこ製造業に属するところの調査対象者の数がサンプリング調査でございますので少ないわけでございます。絶対数もたばこ製造業の人は少ないわけでございますから、それで食料品製造業と便宜上合わせた、このようなことでございまして、別に作為はなかったわけでございます。
  179. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、四十三年度にこんなに多くて四十四年度に半分以下になるというのはどういうわけか、そんなに急に減ったんですか。
  180. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 二点ございまして、第一点は、前は二つの項目になっていた数字をなぜ一つにしたかというお尋ねでございました。それにつきましては、食品製造業とたばこ製造業の二つの項目に、確かに四十三年度までは別々に出しておりましたが、四十四年度は合わせました。その合わせました理由は、たばこ製造業というもののこの調査における対象人員が少ないもので、食料品製造業と合わせて一つにしたというきわめて技術的な処理方法であったわけでございます。  それから率が急に下がったという点でございますが、それはいま申したこととも関連いたしまして、たばこ製造業では取得者が多かったわけでございます。食料品製造業のほうは従来取得者が少なかったわけで、従来からそれと合わせて一本にいたしまして、しかも、たばこ製造業のほうは人数が少ないものですから、低いほうが響いて低くなったと、このようなことであるかと思います。
  181. 藤原道子

    ○藤原道子君 じゃ、なぜ前からわかり切ったことをそうしなかったのか。こういうふうにして出ると作為的なものをわれわれは感ずる。いままでは少ないか多いか知らぬけれども、別々に出ている。ところが、専売公社にいろいろな問題がある。企業側から生理休暇はやめろ、こういう意見が出てきたとたんにこういう集計のあり方は、これは誤解を生むのはあたりまえです。作為的なものと私は思います。
  182. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 先ほど申し上げましたように、全く機械的、技術的な処理であったようでございまして、私も実はいま気がつきまして申しわけございません。決して作為的なものではございませんで、やはり統計の処理方法として、サンプルが非常に少ない場合、このような数字が出るそうでございます。
  183. 藤原道子

    ○藤原道子君 私もまさか労働省が作為的に資料をつくるとは思いたくないんです。ところが、さきに触れたように、企業側から労働省に対して生理休暇の取得権利をはずすように強い要望があることは御案内のとおり。それに屈服して、ほとんどの労働者が生理休暇をとっている産業なり企業の存在を国民の前に明らかにすることが好ましくない、こういうことでやられたのかと私はいまも思っているんですよ。一応あなたの説明は、きょうはそれで、時間もだいぶ過ぎましたのでその程度にしますが、とにかく統計とか何かはみんなが読むんです。去年のをことし出して読むというわけじゃないんです。私は、今度質問しようと思っていたから去年のと比較したわけです。こういう誤解を生むようなやり方は今後おやめになっていただきたいことを強く要望しておきます。そうしたならば、そこに説明をつけておけばこういう質問をしないで済む。  そこで、たいへんお待たせをいたしまして専売公社の方には失礼をいたしました。私は、現在専売公社で進めようとしております合理化計画によって、大多数の現場労働者がそれによって今後どんな悪い労働条件がしいられるのか、あるいはまた今後予想される問題点について、若干関係者にひとつ御質問をしてみたいと思いますので、どうか率直な御意見をお聞かせ願いたい。お願いしておきます。  企業によって、有利な労働条件が役所や公企体から出されると、民間に及ぼす影響は非常に大きいと思います。今回専売公社がとった二交代制はその最たるものだと思います。そこで、労働省としてはこの問題についてどのように考えておいでになりますか。大臣にひとつお願いします。
  184. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 専売公社の二交代制の問題は、この前も国会で御議論があったわけでございますが、これは昭和四十七年十月以降実施をされると聞いておりますが、その影響につきましては、慎重に見守ってまいりたい。最近では、二交代制につきまして、組合側と自主的にいろんな話し合いがどうやらまとまってきたと伺っておりますが、円満にこのことがまとまっていくならばたいへんけっこうであると思っておりますが、何と申しましても、婦人労働の、特に夜間においてある程度御無理を願うという関係は、どうもわれわれも非常に心配しておりますが、一歩前進して今後ますますこういう問題につきましてはいい方向に向けていただきたいと考えております。
  185. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、公社が導入しようとする二交代制勤務は、公社の国際化、自由化に対応できるたばこ企業の発展という名目によって、労働者とその家族に加えられた最も非人間的な計画だと思うのです。人間生活のあるべき姿を否定する人間疎外の最たるものと基本的には考えます。  そこで、提案されている交代制勤務はどこに合理性があるのかということをまずお聞きしたい。
  186. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) お答えをいたしますが、先生いまおっしゃられましたように、これからの産業というものにつきましては、世界的に貿易自由化という問題が進展をしてまいっておりますが、この私どもがあずかっておりますたばこ事業につきましても、近い将来必ず外国からのそういう競争にさらされるのではないかというふうに考えております。一例をあげますと、外国のたばこ産業でございますが、国内では他の産業にまで手を伸ばしているということ、それからさらに海外へのたばこ市場に進出をしていく、それからもう一つは、自分の銘柄を外国に持っていって、それをお互いに契約をいたしまして、その外国のプラントを、たとえば日本の中で売るとか、そういうような動きがあるようでございます。そういうような状況の中で、これからのたばこ産業の将来ということを考えますと、やはり国際競争に十分耐え得る基盤なりをつくらなければいけないということが一つございます。それから御承知のように、たばこの消費の実態と申しますか、だんだん軽い方向に向かっております。そういうような製品をつくりますのには、やはり国際水準に合ったような品質のものを確保していきたい、確保する必要があるだろう、こういうふうに考えるわけでありますが、そういうことを考えますと、やはり設備なり機械というものがかなり金のかかる大型なものになら、ざるを得ない。それから最近のように技術革新のテンポが非常に早いわけでございますが、このテンポに十分合って機械等を更新をする必要がございますけれども、そういう更新をするにつきましては、やはり早く償却をしておかないといけないのではないかという状況にあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしまして、建てる新しい工場につきましては、やはりそういうような高能率で、しかも高品質なものをということを目標にいたしまして、設備も近代的なもので、しかも外国のたばこ産業に負けないような設備を備えていきたいと、そしてりっぱな製品をつくって供給をしたいという考え方をとっておるわけでございます。そういうようなたてまえをとりますと、やはり現在の日勤のままでそういうことをやりますと、生産性の維持向上という問題がかなり問題になってきます。それから、やはりできるだけ早く償却をしていろいろ対応していく。それからもう一つは、二交代をやりますと、やはり使用機械の稼働時間と申しますか、これが連続運転で、いわゆる専門語で言いますと、きざみあげ品ということになるわけでございますが、それの品質を維持していくのに非常にいいということもございまして、やはり機械をとめずにできるだけ長い時間できるようにものを考えていったほうがよろしかろう、こういうようなことから、私どもはこれから新しい工場を建てるものについては二交代制勤務を導入をするということで、本年の二月から労働組合といろいろ折衝をしておりますが、幸い先月の中ごろ大綱において結着を見ている。大体申し上げますと、そういうようなことで、これからの日本のたばこ産業も基盤をしっかりさせて生きていくためには、どうしてもこういう二交代制勤務というものは必要であるということで踏み切ったわけであります。
  187. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、提案されておる交代制勤務が公共的にも、生産技術的にも必要はないんじゃないか。結局、労働者の犠牲の上にあくまでも利潤の追求をするものであると断定せざるを得ないんです。それで、一体専売公社というところは、性格からして利潤のみを追求する機関でしょうか。私、納得いきませんのは、大蔵大臣は、衆議院の大蔵委員会で広瀬議員の質問に答えて、専売の使命として、財政専売なんだ、だからはっきり言えば国家財政のために収益をあげなければいけないのだから、企業の利潤追求を第一にすべきだというような意味の答弁をしている。ところが、また労働大臣は、公共性のある企業である、だから利潤追求だけを目的にしてはいけないと思うと、これは労働者の立場から言われたと思うんです、労働大臣は。大蔵大臣は、国家財政のために収益をあげなきやならない、企業の利潤追求を第一にすべきだ、こういうことを言ってらっしゃるんですがね。専売公社としては、これはどういうふうに解釈するのですか。
  188. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) お答えをいたします。私のほうの組織法に日本専売公社法というのがございます。その目的の中に健全にして能率的な運営をはかりなさいというような趣旨のことがあるわけでございます。私どもといたしましては、やはりたばこという商品を製造、販売してお客さんに供給することによって、その反射として収益があがるわけでありますけれども、国民の負託を受けまして、存立の目的としてそういう企業経営の方式をとりながら専売制度の実効があがるようにというような要請を受けているというふうに考えている次第でございます。もちろん企業でございますので、合理的な経営と申しますか、そういうものについてやはりつとめなければならないと思います。かねてから私どもに対しましては、専売公社は非能率ではないかというような指摘も間々あるようなわけでありますが、私どもといたしましては、できるだけ能率的な運営をはかって、しかもお客さんに喜んでいただけるたばこを供給をしてそれで目的を達したい、こういうふうに考えております。
  189. 藤原道子

    ○藤原道子君 それはお客さんの気に入るように、もうかるようにたばこをつくるということはわかります。だが、それだからといって労働者の人間性を破壊するようなやり方はどうでしょうか。  そこで、あなた方がお考えになっておる交代制勤務の方法についてちょっと御説明願います。
  190. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) 大体簡単に申し上げたいと思いますが、現在日勤でやっておりますけれども、これから建てる新しい工場が六つございます。四十八年度までに建てるその工場につきましては、勤務の時間につきましては、まだはっきり労使で約束ができ上がっておりませんけれども、大体の考え方は、六時半から夜の九時五十分の時間帯におきまして二組の従業者に分けまして、そうして早番とおそ番に区分をして勤務をしていただきたいということに考えております。
  191. 藤原道子

    ○藤原道子君 いま私が聞いたところでは、最初北のほうからやるわけですね、四十七年から。あたたかいときはいまおっしゃった六時半から二十一時五十分まで、寒いときにはこれを若干ずらして七時から二十一時二十分までというような構想があるやに伺っております。  そこで伺いたいと思いますのは、専売公社の婦人労働者は約七〇%を占めておるということでございます。もちろん子を持った婦人が多いことは想像がつきます。いま説明があったような時間の出勤体制をとるとすると、どんな家庭生活に支障が出てくるか。婦人の健康の問題もさることながら、乳幼児の問題も無視できない。自分がその場に立って考えてみますと非常にたいへんだと思うのです。これに対して、あなたも自分の家庭というようなことをお考えになったときに、朝六時半までに行くにはどうしても家を出るのは六時前ですね。五時には起きて御飯の仕度をして、そうして子供に食べさせ、その子を連れて六時半までには仕事をしなければならない。おそ番の人は九時五十分までといっても——私も職場の体験がございますが、あと片づけだなんだということになって、家へ帰るのは十一時から十一時半になる。そのとき子供を——あなたのほうでは、三歳までのを今度は六歳まで上げる、託児所を。ところがそんな小さな子供が朝五時半から六時におかあさんと一緒に家を出る、夜十一時、十二時に寝かされる、こういうことが子供に対してどういう影響があるだろうか。また、おかあさんは早く起きて御飯の支度もしなければならない、あるいは御主人がつとめに出る時間と格差があった場合には、主人一人を残して子供連れで、夜の夜中ですよ。外国では七時までが夜ですからね、朝の。常識からいえば朝七時までは夜です。それが夜中に起きて工場に行かなければならない。これが子供の健康とかあるいはその性格の成長等に対してどう影響するというふうにお考えでございましょうか。
  192. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) いろいろ家庭の婦人の勤務について家庭生活なり子供の問題をどう考えるかというお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、家庭婦人に全然負担はないとは考えておりませんが、先ほど申し上げましたように、いまのたばこ産業なり、公社の置かれている立場からものを考えますと、やはりどうしても二交代制を導入をするという必要があるということでございますが、そういうことから家庭生活と仕事の関係を十分できるだけ調整をしていただきたいというふうに考えますし、私どもといたしまして、やはりそういう勤務に対しまして、できるだけ許す限り努力をしたいということで、一般の二交代勤務につきましては通勤バスを運行するとか、それから託児所の運営の時間を広げる、それから託児年齢を三歳から引き上げまして、就学年齢までやるということあるいは仮眠施設を設ける、そういうようなことをいろいろやっておりますし、先生御承知だと思いますが、私どもの各工場では診療所もございますし、かなり婦人の健康なり、そういうものについては留意をしているつもりでございます。それからさらに、そういうことをやりましても、なおかつほんとうに乳飲み児があって、どうしても勤務ができないというような方に対しましては、まだ労働組合と完全に話し合いはついておりませんけれども、公社の職員としての身分を残しながら、確保しながら一定期間休職、育児のために休職をしてもいいというような制度の導入も考えておるようなわけでございます。それからさらに、それは一般的な二交代に従事する方たちに対しての対策でございますが、いろんな事情、健康上の理由なり、特殊の事情があって家庭的な問題からどうしても二交代をやることができない、二交代勤務に従事することができないというような方に対しましては、本来ならば、合理的ではございませんけれども、日勤作業のくふうをいたしまして、六工場いろいろ違いはございますけれども、三十名前後の日勤作業帯を設けて、それに従事をしていただくということを考えております。それからシフト、朝番、おそ番ございますが、これにつきましては、原則として一週間で交代をすることになっているわけですが、そういう特殊な事情のある方については、事情の許す限り、早番に固定するとか、おそ番に固定するとか、そういうようなことも考えて、これは現地の労使の問題になろうかと思いますが、そういうような処置、それからさらに、これは工場の勤務はできませんけれども、最寄りの事業所で日勤として仕事ができるような職場、そういうようなものがありますれば、そういうものに配転も考えましょうというような対策を考えて、労働組合と話をしております。ここで、非常に恐縮でございますけれども、先生が御心配になっておられる点、やはり労働組合なり職員全体、非常に関心を持ちまして、交渉の場面におきましても、中央交渉、地方交渉ございますが、現地におきましては全員出て、その全員が交渉の時間帯に残りまして、交渉の経過を十分見守りながら話し合いがついたというような状況でございます。  私どもといたしましては、十分誠意を尽くしてやったというふうに考えておりますし、先生がおっしゃるように、必ずしも非人間的な扱いをしたというふうには考えておりませんので、私ども事業がこれから生き残るためにやむを得ざる措置ということで、せざるを得なかったという点は十分御理解をいただきたいと、こう思っております。
  193. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、いろいろ伺うけれども、その底に流れるものは人員整理だと思うのです。  それから労働組合と話がついたとおっしゃいますけれども、私は労働組合から頼まれたのじゃない、婦人の立場から納得できないから伺っておるし、過日、地方へ参りまして現場の人たちと会ったけれども、婦人の中にはまだまだ納得のいかない人がたくさんございます。たとえて言いましても、結局、こうした不規則な生活ですね、これが一体はたして可能であろうかどうかということになるんですよ。子供連れが多いということが一つです。家庭生活はどうする、亭主との問題もございましょう、子供の問題もございましょう。さらに、いま幼児教育の問題が大きく取り上げられている。ところが専売さんの場合には託児所はあります、三歳まで。初め、私は託児所があっていいなと思っていた。けれども、あなたのところはあくまで託児所ですよね。保育所とは内容が違うんですよ。かりに三歳まで——それはいいといたしまして、六歳までに延ばすというから。しかし、このごろは幼児教育がやかましくなって、保育所と幼稚園の一体化が叫ばれておりますときに、あなたのところで働く人の子供は六歳までただ預けっぱなし。これがその子にどう影響するだろうか、これも私は非常に心配なんです。それから食事が不規則になりますから、胃腸が悪くなります。あるいはいまのような物価事情で家庭の主婦の買いものその他にも問題が起きる。夫婦のすれ違いとなって不和の原因になる。家族の団らんの時間がなくなる。さらに、もっと問題はたくさんありますが、子供との断絶がひどくなるのですね、おかあさんの。こういうこともあると思う。それから、もう一つ心配になりますことは、六歳までは預かってくれた、さて学校へ行くようになったら、いままではおかあさんと一緒に家を出ていたのが、今度は学校へ行くのは八時ごろ出ればいい。そうすると母も弟や妹もいなくなって、その坊や一人で八時まで家にいるんですか。あるいは御主人がつとめ先の関係が違えば、御主人をうっちゃってどんどん行かなければならぬ。それからまたおそ出のときには、御主人が出たあとで出て行くにしても、自分が帰ってくるのは十一時、十二時になってくる。こういうことが家庭の破壊につながらないだろうか、こういう心配をするのです。子供が学校へ行くようになれば、皆さんの御家庭でも、やはり当分は母の愛情というものが非常に必要なのです。そのとき、おかあさんは行っちゃった、六つか七つの子がたった一人で二時間も家にいる。こういうことが子供の成長によき影響を与えるとは思われない、これが心配なんです。これについて厚生省なり、労働省の婦人少年局としてこういう問題はどうお考えになりますか。また、あなたの御答弁もお願いいたします。
  194. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) 託児の問題でございますが、私どもの託児所といいますのは比較的長い歴史を持っておって、完備とまではいきませんけれども、かなりいいものであろうというふうに考えておりますが、今回託児年齢を引き上げていろいろやるわけでございますが、三歳児以上の扱いについてはやはり組合なり現地の職員のいろんな声がございます。先生のおっしゃるような声がございますが、これにつきましては、私どもといたしましては、企業内の福利厚生施設としての託児所のあり方という問題がございます。そういうものも含めまして、操業までに現地の労使で話し合いをして結論をみたい、こういうふうに考えております。  それからいろいろ家族の時間のすれ違いからいろんなことが起こる、特に子供が鍵っ子みたいなことではまずいじゃないかという御指摘がございますけれども、この問題につきましては、先ほど御説明いたしましたように、特別なそういうような事情のある御家庭におきましては、先ほどの日勤作業帯でいろいろ考えるものの一つの大事な要素になっておるわけでございます。ですから、いろいろ事情もございますが、各家庭のそれぞれの御事情なり、あるいは子供さんのめんどうを見られる方のおられる家庭もございましょう。いろいろございますが、そういう子供を一人で置いておくような事態は起こらないんじゃないかというふうに私どもは理解をしておりますが、最近のように、非常にいろんな生活の時間なり社会活動という面から考えますと、やはり生活の活動範囲と申しますか、活動時間帯がかなり大きく変わりつつあるというふうに私ども理解しておりますが、できるだけ仕事と家庭生活とが調和がとれるようにぜひ調整をとっていただいて、勤務をしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  195. 岩佐キクイ

    説明員岩佐キクイ君) 日本専売公社におかれましては、新工場の設置に伴いまして、女子従業員の二交代制の勤務を導入されていくという御計画があるそうでございまして、いま藤原先生のほうからいろいろと御指摘もあったわけでございますが、特に幼い乳幼児を擁しております母親が働くということと乳幼児の保育という問題、これがそれぞれの福祉を阻害しないように調和をはかりつつ進めていかなければならないということにつきましては基本的な問題があろうかと思うわけでございます。その点につきましては、いま専売公社のほうからいろいろ御説明もございましたようでございますけれども、児童福祉という観点から、あくまでも乳幼児の保育が児童の福祉を阻害することのないように行なわれなければならないということは当然のことであろうかと思うわけでございます。したがいまして、この点に関しましては、どのような実態になっているかということをまだ私どものほうでも十分把握いたしておりませんわけでございますが、今後そういう問題につきましてもいろいろと、どのような実態になっているかをお伺いしながらお互いに十分緊密な連絡をとりまして、これらの児童の福祉が阻害されることのないように努力してまいりたいというふうに考えております。  なお、お尋ねの三歳以上児まで保育をなさることに御計画されるようになったという問題に関しまして、託児のみではない、幼児教育という面も当然考えなければならないのではないかという御指摘でございますが、この問題につきましてはおっしゃるとおりだと私も存ずるわけでございますが、したがいまして、その保育に万全を期することのできますように、なるべく保育に対しましては有資格の保母さんを入れてもらうように、こちらのほうからもいろいろ話し合いをするとか、また都道府県知事が行ないます保母研修会等にも積極的に参加していただくような機会をはかることによりまして、ただいまの幼児教育に対応するような施策を考えるようにしたいと、こういうふうに考えております。
  196. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 専売公社の二交代制に伴うところの保育の問題につきましては、先ほど来の御説明のように、個別に非常にきめこまかな配慮をされるという態度でお進めのようでございますので、私どもも、その労使間の緊密な連絡、話し合いによって万全の処置がとられますことを期待いたす次第でございます。また一般的に申しまして、既婚婦人の職場に進出することがふえ、したがってその婦人の労働と家庭における責任、特に保育の問題との調和をはかってまいるということが非常に大きな社会的な課題となってまいっております。私どもといたしましては、関係機関と緊密な協力をいたしながら婦人がその能力を生かして働けると同時に、子供あるいは家庭の福祉が阻害されないための施策というものを広く進めてまいるように努力いたしたいと考えます。
  197. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間がたいへんおそくなりまして——大臣、五時からですか、御用事があるのは。ではどうぞ。
  198. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ちょっと。きょうも長時間にわたって論議を聞いておりまして、また何回かの委員会を通じまして、しばしば問題にされているような点が未解決である。いわゆる労働行政全般を見た場合の欠陥、盲点あるいは矛盾。取り組まれておる姿勢はわかるにしましても、今後、何を柱にして前進的な労働行政の推進をはかるか、その一つ考え方として労働行政全般にわたる長期計画というか、ビジョンですね。臨時国会も迫っているし、またさらに通常国会等その時期が来ております。そうした国会に先立ちまして、労働省としてのあるいは大臣自身としての決意を示す用意はないのかどうか。監督官の問題なども、私も前にお尋ねしましたけれども、先ほども基準局長の話を聞いておりましても、いまだにはっきり見通しがつかない状況であるならば、今後の労働基準監督にはたして合理的、理想的な指導監督、行政指導というものができるのだろうか、多大の疑問を持ちます。したがって、そうしたものを全部ひっくるめてもっと本格的な労働行政に取り組まれる、そのための予算措置というものはどうすべきであるかという各般にわたる問題は当然出てこようと思うのであります。大臣のそうした最も基本的な問題に対する所信を明らかにしていただきたいし、また何回も何回も同じようなことで検討中である、慎重に配慮していきたいというようなことはもう聞きあきているし、またその具体性を労働者一般は待ち受けているのではなかろうかと、こういうふうに判断されるわけです。したがってその点について、せっかく大臣何か会にお出になるそうでありますから、それをきょうはひとつお伺いして、次の機会にそれをもとにした質問をさしていただきたい、こう思います。
  199. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) 私に対するきわめて基本的な見解の表明をしろということですが、憾ながらそれには相当の時間を要します。したがって御満足のいくような御答弁がただいまできないと思いますが、これから四十六年度の予算の編成という問題になりますが、すでに労働省は幾つかの重点的な施策について大蔵省と折衝を開始しております。項目だけ申し上げますと、豊かな勤労者生活の実現のための勤労者財産形成の政策を強力に進めるという政策が第一点。それから公害問題とあわせ考えて労働基準局の機能の強化、基準監督官の数の増員、そしてあらゆる企業に対して適正かつ厳重な指導監督の強化という問題を強力に進める、同時に職業訓練でありますが、職業訓練生の倍増計画を立てまして、これは倍増でなく三倍になるわけですが、強力に職業訓練工の拡充強化あるいは共同訓練施設等に対する思い切った助成を行なう。同時に海外からの相当の数の研修生を入れまして、国内で訓練をする。労働力としては、外国の労働力を日本に誘致するようなことはいたさない。しかし、日本が低開発国に対する経済援助を強化していくという必要もございますので、そのためのいろいろな対策を講ずるという点から、職業訓練に最も力を入れていこうという政策、これには相当大幅な予算の増額が必要でございます。それから総合農政と職業訓練あるいは職業の新しい開発の問題でございますが、この点にも大いに力を入れていきたい。問題は、勤労青少年福祉法が制定を見まして以来、青少年ホームであるとかあるいは婦人ホーム、あるいはいろいろなスポーツセンター、いろいろな働く人たちの慰安、休養、修養、娯楽、各般にわたってそうした施設の強化等を思い切って大幅にふやしたいといったような問題があるわけでございます。具体的には申し上げる機会がまたいずれあろうと思いますが、そういった政策につきまして鋭意省をあげまして今後の予算要求、その実現に向かって強力に進めていこうと、こういうわけでございますので、皆さま方の特段の御協力をお願いしたいと考えております。まことに残念でございますが、きょうは時間がございませんので、以上簡単に申し上げまして、あとは次回にゆっくりとお答え申し上げることにいたしたいと思います。
  200. 藤原道子

    ○藤原道子君 まことに不満足でございますが、大臣主宰の会議だそうでございますから。  そこで、時間もあまりございませんので、大急ぎで質問を終わりたいと思いますが、いま申し上げましたように、いまの家族構成から見て、これは家庭の破壊になるということが一番心配、それから学童に対して母親の教育する時間が奪われ、情操教育の面からも問題がある。さらに私心配いたしますのは、朝六時ごろの出勤というと乗りものの問題がある。それから夜十時半、十一時になって帰宅する場合、これは一体どうなるのか。それから専売局のあるところは比較的いなかが多いのですよ。だから交通事情等を考えるときに、いま社会の治安というものは非常に悪いのですよね。こういう場合に、働いて疲れて帰る人の上に不慮の問題が起こりはしないだろうか。聞くところによると、あなた方は、各家庭までバスで送るつもりというけれども、ずいぶん離れているのですよ。そういう場合に一人一人送っていたら一体何時になるか。これは不可能なことで、一時逃れの考え方ではなかろうかと私は疑わざるを得ない。それから寒いところは雪がこれから盛んになりますが、そういうときに朝の六時ごろに出かけるなんということはなかなか苦しいことだろうと思いますから、要するに今度の考え方は実質的な人員整理ではないのかと思う。特別の人の場合には日勤を認めるというけれども、三十名予定でしょう。三十名以上希望者があったら一体どうなるのか。職場にまたおもしろからざる問題が起きるのじゃないか。こういうことも重ねてお伺いしておきたいのです。一定人員の範囲内ということで、これは三十名程度というふうに伺っておりますが、そうなんでしょう。一体こういうことはどうするのか。それから外国でも二交代制をやっているところはたくさんあると、この間おっしゃいました。ところが住宅が工場の近くに整えられているところはそれでも済むと思う。ところが、日本のような住宅事情の悪い、遠くへ遠くへと住宅を求めなければならないというときに、こういう点は納得がいかない。これに対して専売公社が新しく建てるのなら、それならばその周辺に労働者住宅を建てる計画でもおありになるのか。
  201. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) 通勤の問題でございますが、先ほどもお話を申し上げましたように、二交代制勤務に従事するために足の問題がございますが、通勤バスを出してできるだけ御不自由のないようにしたいというふうに考えておりますが、具体的には創業時の住居の分布の状態を十分に調査しなければなりません。その調査に基づいて運行経路なり運行時間というものをきめてまいりたい。こう思っておりますが、今回の交渉におきましてもやはりそういう問題が出てまいっておりますが、その先生御心配になられるような遠方の方はそうたくさんいないというふうに理解をしております。  それから家の問題でございますが、これはそういう通勤バスを運行いたしましてもなおかつ通勤ができないというような方に対しましては宿舎を確保するというふうに対策を講じてまいりたい、こう思っております。私どもの今回新しく建てかえる工場は、どちらかといいますと中都市でございます。職員の方もやはり工場中心にいろいろ住居をかまえておられる方がきわめて多いわけでございますが、先生の御心配になられるほど極端なものは少ないのじゃないだろうかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、四十七年の十月の操業なり四十八年の十月の操業、そういう工場に分かれておりますので、その操業時点において十分検討をしてみたい、こう思っております。
  202. 藤原道子

    ○藤原道子君 とにかく婦人の働く権利というものについてももう少し理解を持ってお進めになっていただきたい。中都市が多いけれども、私、この間、金沢のほうに行きましたけれども、それほど公社の近くにばかり住んでおりません。それから盛岡にも行ってきた。盛岡でも私は同じような危惧を感じました。働く婦人の集会で、専売の方は二、三人来ておりましたけれども、その方たちはあまり発言がなかった。だけれども、心配だという不安は持っております。中央段階でかってにきめたようなことも言っていましたが、一般の働く婦人からいろいろな質問が出た。家庭の破壊になりはせぬか、たいへんなことで住宅が心配だということは異口同音ございました。通勤、それから子供の問題、こういうことを非常に心配しておりますので、労働組合の幹部との話はついたからこれでいいんだというようなことでなく、もっと真剣にお考えになってほしいということを強く要望いたしておきます。  それから、この問題は衆参大蔵委員会を中心に質疑がいろいろ展開されておりますし、その速記録も私拝見しております。また、ことし四月十四日の参議院の予算委員会第四分科会でも、田中寿美子さんから労働大臣に婦人労働者の保護の観点から質疑がありました。そのときに野原労働大臣は、公社の二交代制は非常に無理な点がある、既婚婦人が八〇%あるいは九〇%という、これから考えてみると、これはよほど慎重に考えてもらわないと容易でないというふうな感じを持ちます、率直な話が、という答弁があるわけなんです。だから、既婚婦人労働者の保護を明確にしてもらいたい。大臣が帰っちゃったから、いまでも大臣は変わりがないかということは聞けないけれども、おそらくそういう気持ちだろうと私は思うのです。ところが、専売公社の幹部が労働組合に対して、一連の大臣答弁に対して労働大臣発言の趣旨は詳しくはわからないが、公社の計画しておる二交代制勤務についての正確な認識が不足している、これはその発言の随所に散見されると言っているのです。だから、そこでお尋ねしたいのは、野原労働大臣の誤った発言ということは一体どういうことなんでしょうか。この公の場所で公社から明らかにしてもらいたい。はっきり言っておるのです。速記録にあるのです。野原大臣の言うことがまず認識が不足しておるというようなことを公社が言っておられるのですが、どういう点の認識が不足しておるのでしょう。これは重大な問題ですから……。
  203. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) お答えをいたしますが、労働大臣の御答弁なりお話がいろいろあるようでございますが、私どもといたしましては、その内容の詳細についてはよくわかっておりません。しかし、私どもの職場は比較的婦人が多いわけでありますが、いままででもいろいろお話がありましたように、かなり私どもとしても、できるだけの努力をしておるわけでございます。今回の二交代制勤務導入についての提案について、女子のそういう立場を考えながら提案をしている内容を十分御存じじゃなかったのじゃないかというふうに理解をしたような次第でございますけれども大臣の御趣旨は、私どもはそういう婦人の立場を十分尊重しながらよく話し合って、納得のいく線できめてもらいたいという御趣旨じゃなかろうかというふうに私も考えておるのですが、労働組合に対して、労働大臣が十分知らないからというような、そういうことがあったかどうかわかりませんけれども大臣の御趣旨はそういうことであろうというふうに推察をしておる次第でございます。
  204. 藤原道子

    ○藤原道子君 たいへん長くなりました。私は、いずれにしてもこの問題は、婦人労働者はもとより、家庭生活を根底から破壊するというような危険があることなんで、したがって、公社はもとより、労働省におきましてももっと真剣にこの問題の討議をしてもらいたい。もう私たちが一番心配するのは、専売公社が中都市では一番大きい企業なんです。とすると、専売公社が二交代制をとったのだから、おらほうでもそうすべい、こういうふうな動きが非常に出ておる。ことに指宿ですか、のほうにそういう傾向が強い。そうすると、だんだん婦人の保護というふうなことが薄れてくるのじゃないか、こういうことを私は心配するわけなんです。要するに、私が要求したいことは、大蔵大臣が、財政専売なんだと、だからはっきり言えば、国家財政のために収益をあげなければいけないのだから、企業の利潤追求を第一にすべきだというような発言を公の場で、委員会でやっていらっしゃる。私はこういうことで今後専売公社が運営されていくとすれば、これは重大な問題だと思う。それは利潤もあげなければならないでしょうけれども、人間性尊重ということもこれは尊重してもらわなければ、大きな社会問題になるのじゃないか、こういうふうに考える。したがって、専売公社の三角さんもいろいろ御答弁になりますが、ぜひともこの点は慎重に考えて、遺憾なきを期してもらいたい。私はこの婦人労働者の保護規定の破壊というようなことがいま大きく問題になっておるとき、専売公社を私は実は高く評価していた。そこへ突然こういうことになって、そのあり方が家庭生活の破壊になる、婦人の母体の破壊になる、あるいは子供の保護、情操教育の上に非常に大きな影響があるということになりまして、きょうはお出ましを願った。労働基準法の関係から、たいへんお待たせいたしましたが、公社の立場をお伺いし、さらに十分検討してほしいということを要求して、私のきょうの質問を終わりたいと思います。  専売公社に、最後の一言をお願いしたい。
  205. 三角拓平

    説明員(三角拓平君) いろいろ御指摘なりお尋ねがございましたけれども、私どものやはり基本的な立場は人間尊重、労働尊重ということについては、これは変わりはございません。ただ公社の置かれている立場という点から考えますと、やはり企業でございますので、能率的かつ合理的な運営をはかるという面からいろいろな調和をはかりながら、できるだけ無理のないように十分努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  206. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会