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1970-09-11 第63回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第4号 公式Web版

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  1. 社会保障制度等に関する調査 (会議録情報)

    昭和四十五年九月十一日(金曜日)    午前十一時九分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月十二日     辞任         補欠選任      武内 五郎君     中村 英男君      松井  誠君     占部 秀男君  九月十日     辞任         補欠選任      中村 英男君     武内 五郎君  九月十一日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     長田 裕二君      占部 秀男君     小柳  勇君      武内 五郎君     松井  誠君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 上原 正吉君                 吉田忠三郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 長田 裕二君                 高田 浩運君                 大橋 和孝君                 小柳  勇君                 武内 五郎君                 藤原 道子君                 松井  誠君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣官房内閣審        議官       遠藤 寛二君        文部省社会教育        局社会教育課長  鹿海 信也君        厚生大臣官房国        立公園部長    中村 一成君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  加藤 威二君        厚生省社会局老        人福祉課長    永原 勘栄君        厚生省年金局長  廣瀬 治郎君        厚生省援護局長  武藤琦一郎君        通商産業省企業        局工業用水課長  原田  稔君        通商産業省公害        保安局公害部公        害第一課長    児玉 清隆君        運輸省自動車局        業務部長     小林 正興君        運輸省自動車局        整備部管理課長  福田  稔君        海上保安庁長官  手塚 良成君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省職業安定        局長       住  榮作君        労働省職業訓練        局長       石黒 拓爾君        建設省都市局参        事官       石川 邦夫君        建設省住宅局住        宅建設課長    滝沢  慧君        日本国有鉄道常        務理事      山口 茂夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (都市産業廃棄物処理対策に関する件)  (自然公園等清掃に関する件)  (下水の終末処理に関する件)  (敵前党与逃亡罪による処刑に対する遺族の不  服申立てに関する件)  (老人対策に関する件) ○労働問題に関する調査  (中鉄バス株式会社労働争議に関する件)  (仙台鉄道管理局管内不当労働行為に関する  件)     ―――――――――――――
  2. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十日、中村英男君が委員辞任され、その補欠として武内五郎君が、本日、占部秀男君、塩見俊二君が委員辞任され、その補欠として小柳勇君、長田裕二君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 初めにお尋ねしたいことは、最近、海洋汚染というのが各方面から指摘をされ、おそらく日本列島を囲む港湾をはじめとするその周辺地域海洋というものが汚濁に満ちている。したがって魚介類をはじめ地域住民に及ぼす影響というものは看過しがたいということがいろいろな実験証明を通して発表されております。  そこで、特にこの海洋汚染、とりわけ港湾汚染というものは聞きしにまさる状況であります。海上保安庁といたしまして、この汚染状況捜査対象として、独自の立場でその汚染の実態というものにいままで取り組んでこられたかどうか、まずその辺からお伺いをしてまいりたい、こう思います。
  5. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 私どものほうでは、海上汚染そのものについて、いわゆる公害という立場から独自の調査あるいは取り締まりというようなことにつきましては、実は法体系との関係もこれあり、全般的なものはいままでやってはおりません。ただ私どものほうで問題といたしますのは、船舶の交通安全あるいは港内整とん、こういう立場で、法律でいきますと港則法というものがございます。それから海水汚濁防止法というものがございます。あるいは清掃法という法律がございます。あるいは水産資源保護法というものがございます。こういったそれぞれの法律に基づきましたところの違反容疑というものについての取り締まり調査、こういうものを実施してきております。この実施の過程で、東京湾におけるヘドロ不法投棄事件、あるいは四日市におきますところのアエロジル事件あるいは石原産業事件、こういったもの等々が今日までの間捜査取り締まりあるいは送検という段階に至っております。
  6. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 ただいま述べられたその法律の上から見ましても、海上保安庁法律第一条でございますか、これから見ましても、法律に違反すると思われるものはこれを捜査する、そしてまたそれに対して一つの取り締まりをする、こういう文句がうたわれております。これは運輸省設置法にもそうしたことが明確にうたわれております。法律という非常に抽象的な言い回しでありますけれども、いま述べられたような問題について、当然その役割りというものがあることはいまお認めのとおりであります。ならば、少なくとも水質の保全という問題を通じましても、いま廃油その他の原因を通しまして、当然港湾における船体に限らずに、魚族の保存という問題から考えましても、住めないという状態捜査をするのは、当然公害対象とした一連の問題になるのではないだろうか、こう考えておりますけれども、その辺の解釈といいますか、保安庁自体がいままでの法令ともいろいろな関係があるとおっしゃっておりますけれども、どういうふうにこれからその辺を整理して進められていくのか。
  7. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) ただいま申し上げましたようなのが現行法におきます港内整理整とん船舶交通の安全との関連における法体系でございますので、そういう法体系におきます限度においてその取り締まり不法事件というものは厳重に今後も取り締まりを続けていくつもりでおります。
  8. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 厳重もけっこうでございますけれども、しからばその厳重に取り締まりを続けるというのは具体的にどういう方法か。これからどうされていくのか。私が現場でいろいろな方に聞きましても、実際その衝に当たる人のお気持ちの上から、現状設備状態、また監視体制からいきますと、とてもじゃないけれども現在の港湾のよごれ、あるいは広くはその港湾外監視にいたしましても、とても十分な機能というものを発揮するわけにいかないという苦情が出ております。今後そうした問題を踏まえた上で、海上保安庁としても、当然現在問題になっております公害処理一環として取り組んでいる当面の姿勢というものが示されてよろしいのではないか、こういうふうに感ずるわけでございます。また独自の方法でぜひともその捜査を続けていきたい、こういう問題もいま私ども聞いております。その辺については、本庁は一体どういうこれからの見通しとその判断を持っておられるか。また昭和四十六年度についても、予算編成にあたってその辺をどう考慮されて盛り込まれていくおつもりなのか、基本的な問題に関連して具体的に今後どうされるのかということをお尋ねしたい。
  9. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 従来海上保安庁で保有いたしますところの船艇航空機、これらをいろいろ整備するにあたっては、やはり主目的が海難の救助ということが主になり、一部海上警備というほうに主眼を置きまして、こういった施設整備を行なってまいっております。したがいまして、今度のような公害問題というのがいろいろ多発をしておりまして、これに伴う取り締まり体制といたしましては、われわれのほうの現況の施設船艇等では必ずしも十分でないということは、先生の御指摘のとおりであります。そういうことでございますので、具体的な話といたしましては、来年度予算等におきまして目下お願いを申し上げておりますのは、こういう公害専門部課組織をまずつくりたい、その組織をつくった上で専門要員の確保をいたしたい、さらにこういった調査にあたりますところの施設機材等整備をいたしたい、かようなことで一連予算要求をいたして、こういう方面対策に万全を期したいと考えております。
  10. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いま、一点に焦点をしぼりましてお尋ねしたいわけでありますが、最近の港湾のよごれというものはいろいろな原因があると思うのです。工場廃液もございましょう。あるいは船それ自体から出るところの廃油による影響というものもあるでしょう。実際、船を持っている人の話を総合して判断いたしますと、一番船の生命といわれるスクリューが簡単にもうだめになってしまう。当然シャフトもそうだと思います。それから船体につきましても、もうせっかくペイントまで塗って整備をしたはいいけれども、三ヵ月もすると、それがもうぼろぼろに腐食してしまう。そういう不安というものを、じかにそういう立場に置かれている人から聞いております。もしそれに気づかずに、かりに遠洋航海に出た場合、不測の事態というものは十分予測される。それに伴って当然冒頭に申し上げましたように、その一環として、特に港湾整理整とんということを先ほどおっしゃいましたけれども、厳重な取り締まりの当然の対象としてそういう工場廃液についてもあるいは船の廃油についても言えるのではないだろうか。その辺の当局としての今日までの実情調査というものはどういうになされて、具体的にどういうデータが出ているのか、まずそれをお知らせ願いたいと思います。それは概要でけっこうです。
  11. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 今日まで非常に問題となりましたのは、名古屋の四日市でもって酸性流出物が非常に多いという事実がございまして、この方面におきましていろいろ調査内偵をいたしました結果、御承知かと思いますが、日本アエロジル株式会社というところから中和不完全のままに非常に濃度の高い濃塩酸、PH一・五以下というものが流されている、港内排出をされておる。こういう事実、あるいは同じ四日市港内におきまして、非常に酸性の高い、これまたPH二ないし四という廃硫酸石原産業会社から港内排出をされておる。こういう事実は、従来きわめて具体的な事例として捜査をやられましたので、これらについて関係者の検挙、さらにまた地検に送致をいたしておるということがございます。
  12. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いまのは一、二の例をあげられたのだろうと思いますが、おそらくそうした問題というものは東京湾あるいは大阪湾、あるいは瀬戸内海等々においても類似のそういう事象というものが観測できるのではないだろうかと、こう思うわけであります。そうした場合に、確かに保安庁としてもその危険を排除する一面から独自の立場でおやりになっていらっしゃるだろうと思いますが、結論がなかなか出にくいのですね。結局、困るのは大企業ではなくして、いま申し上げたような中小漁業者あるいは中小船舶業者等、こういった人たちが常に不安におびえなければならない。その問題解決のためにも、いま法律整備がなされておりませんので、一体どこまでそういう問題が保安庁自体として処理できるものなのかどうなのかという問題が非常に疑問視されるわけであります。おそらくいろんな人の風評、それから各地方公共体におけるそれぞれ独自の立場で検査したそういう分析結果というものをもとにして、連携をとられながら海上保安庁は独自の捜査をしておると、こういうふうに感じられるわけでありますけれども、むしろそういう事態というものは単にもう地方公共体にまかしておけないと現状であるということは、当局としても十分掌握をされておると思う。いま四日市の例が出ましたけれども、それは単なる一例でありまして、伊勢湾においても、東京湾においても、いまそれが例外ではないといったような場合に、一体いま申し上げたような方法でもって、はたして万全の捜査体制、それから監視体制というものができるのかどうなのかということでありますが、先ほど答弁の中にありましたように、必ずしも十分とは言えない。十分と言えなければ、いま国民的な世論を喚起しつつあるときに、これは放置し得ない問題であることは当然でございます。したがって、かりに独自の立場でもけっこうだと私は思うのです。政府には公害対策本部というものができてはおりますけれども、はたしていま具体的な行動というものは何をしておるのか、それすらも疑問が出てくるような状況でございます。ならば、せっかく現在限られた範囲ではあるかもしれないけれども、最高の機能というものを発揮してこれに取り組まなければならないのは言うまでもない。そういう観点から、今後そうした問題を時間的に見ても早く処理するということが、これは国民の期待であろうと思うのですよ。そういうためには、現在のその機構といい、また捜査体制というものをどういうふうにしなければならないかということをお聞かせいただきたい。
  13. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 私どものほうの公害関連におきましては、あくまでも先ほど申し上げましたように、法違反を取り締まるその法の体系が海上交通の安全、港内整とんという立場からのみのことになっておりますので、現在海洋についていろいろ問題になっておりますものを全般的に取り上げてどうこうするというのには、はなはだ諸般の面におきまして不十分、不徹底であると思います。これを抜本的に解決するということになりますと、これはとうてい私どもだけの手では負い得ない。しかし、さればといって、これをわれわれの任務からはずすわけにはとうていまいりません。そういう立場で、いま現在やっておりますのは、先ほど来申し上げておるようなことで取り上げつつあるわけでございます。しかし、これを広範にやはりいろいろ手をつける必要がありますし、情報入手あるいは入手してからのこの根源の調査、そういったものをだんだんやりますについては、やはりこの地元公共団体、あるいは現在できております公害対策本部、こういったものとの総合的な連携のもとに実施をせざるを得ないというふうに思うわけでございまして、たとえばそういう意味で私どものほうからは公害対策本部にも人間を派遣いたしておるわけでございます。そういった体制の中で、また地元関係の皆さんの協力のもとで、いま言った情報入手あるいはそれに伴ないますところの原因の発見、調査、そういうことで逐次明白になり、犯罪要件を構成いたしますものを取り上げていく、こういうような体制でやっておるわけでございます。田子の浦事件ども非常に問題が大きくなっておりますけれども、これなどもどものほうだけでこれを取り上げてどう処置するということはなかなかむずかしい。現在告発を受けてもおりますが、あの問題については別途そういう告発の面からの現在捜査地検において行なわれております。これはやはりいま申し上げたような関係各般の御協力のもとで私どもとしてやるべきものに全力をあげる、かようなことであろうと思います。
  14. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 そこで、先ほど質問の中で触れたのでありますけれども保安庁としても独自の立場に立っての捜査を進める一環として、いろいろな測定器等のそういう緊急迫られる設備というものが必要である。これは出先の保安部あたりから強い要望があるわけであります。これは人の問題等もございましょうけれども、その辺はある程度調整しても、問題は、捜査に当たっての具体的な行動をするためにそういう器具、設備の完全ということがございませんければ、実際にいつも後手後手に回って、一々情報入手しなければ行動ができないというそしりを免れないのだろうと思います。私は、むしろ現行法に許された範囲でもって保安庁がもっと積極的に取り組む姿勢というものがこの際緊急のことではないだろうか、このように判断をするわけであります。先ほど石原産業を例に出されて御答弁がありました。私ども調査では、あの辺の海水を採取してPHの測定をやりますと〇・一です。問題にならない。そのときの工場の操作のいろいろな状況で出方が違ったのかもしれません。その設備、これはもう見捨てておくわけにはいかないわけです。したがって、そういうような設備の充足ということについても当然並行的に、考えるどころではない、むしろ早急に準備をしなければならないという段階にきているのじゃないかと思います。そうした問題等につきましても今後どうされるおつもりなのか、その点もあわせて伺っておきたい、こう思います。
  15. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 仰せのごとく、先ほどもちょっと触れましたけれども、私ども船艇にしろ、あるいはこういった公害に取り組む要員施設にしろ、必ずしも十分だとは考えておりません。そこで、たとえばこの油関係におきまして、実際油濁を測定しますような油濁計というものについては、先般予備費をもってその一部を増強するというような措置をとっております。要員等につきましては、やはりこの関係の非常に多いと思われますところの東京湾大阪湾伊勢湾あるいは瀬戸内、こういったところを管轄いたします保安部に対して特に重点的に配転を行なうようなことを一部やっており、また目下検討をいたしております。あるいは海水油濁の問題等について、これらの監視をいたしますための船艇航空機運用等につきましても、目下のところまずこういうほうに相当なるウエートをさくということで現に実施をし、行なっておる。かようなことで、現時点におきましては、実質的にプラスの形でこういったものの操業は行なえませんけれども現有勢力の中においての、ただいま申し上げるような重点配備なり、あるいはでき得る限りの施設の確保なり、そういうことをやり、来年以降の予算においてさらにこういったものの整備をはかっていこう、かような考え方でいま進めておるわけであります。
  16. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 そうした、どちらかというと、きわめて政府当局公害に取り組む姿勢というものは、やっといまみこしをあげたという段階でありまして、常に国民が、地域住民が騒ぎ出してから、やっと捜査あるいは調査という段階に入っておる。これは事件が起きてからでは間に合わないのでありまして、とにかくいままでのこの公害に限らず一貫して言えることは、問題は大事件が起こってから初めてどうしようかというていたらくではもう間に合わない。当然のことだろうと私は思うのであります。その船体の問題に焦点をしぼっていまお尋ねしたわけでありますけれども、これからもそういうような危険にさらされている船体というものが非常な勢いで数を増すであろうということが予測されるわけです。先ほど来からの質問を通してお聞きであろうかと思うのでありますが、そこで船体自体がどういう背景と申しますか、原因によって腐食し、あるいはスクリューシャフトあたりが摩滅あるいは破損するかということ、おそらくこれも海上保安庁としては、権能内の立場でございますから、調べられたかどうか。どういうことが原因で、いままでよりもよごれた港湾に停泊する船の腐食率が非常にはなはだしい状況になっているか。この点については当然データがあがっているだろうと思いますので、この点についての原因関係をお聞きしたいと思います。
  17. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) ただいまの御質問の内容になりますと、きわめて一般的な公害、特に船舶のそういった腐食の問題ということにもなりますので、私どものほうでも、公害研究所なり、あるいは船舶研究所なり、そういう運輸省管下の各機関と一様に連携を持ちまして、そういうものを調査し、あるいは研究をしていくというような立場で現在取り組んでおります。私どものほうで、やはり具体的な事件としてそういった腐食問題等がはなはだしい明白な原因結果が出てまいりますものについてこれを取り上げて、具体的な事例として捜査取り締まりを行なう、こういう立場でおるわけです。したがいまして、全般的な問題では、いろいろまだデータ不足ではございますが、先ほどのような強酸性のものが出る、あるいは強い塩酸性のものが出ておる、それがやはり直接に影響があるというような、先ほどあげた四日市のような事例のものにつきまして、そういったものを捜査一環として調査をしておるというのが現状でございます。
  18. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いずれにしても、そういう損害をこうむった中小あるいは零細漁民というものが、損害補償においてどこにも持っていきようがないのですね。非常に困っておる。結局泣き寝入りという形になって、借金しながらも操業を続けなければならない、こういう事態であるわけです。さらにその因果関係というものがはっきりすれば、当然工場から出たであろう廃液によって損害を受けておるというようなことが明確になりますれば、その人たちもあるいは交渉の相手というものがはっきりしますから、やりいいのじゃないか。ところがいつまでたってもその辺の関係というものが明確にされない。聞くところによりますと、工場廃液等についても、少なくとも港湾に流れるものについてはやはり厳重に捜査をしている、こういうようにわれわれは了解しております。ならば、船から出る廃油のみならず、当然港の周辺に存在する工場等から流出する廃液等についての分析研究というものが進められていいはずであるし、公害専門の部門というものが海上保安庁内にあるとするならば、この辺の明快な結論というものが当然出ていいのではないか。出ると同時に、当然それがまた捜査対象になるであろう、こういうふうに感ずるわけでありますけれども、その辺の脈絡というものはどういうふうに一体つながって、どこでどういうふうに捜査というものを妨げているのか。あるいは現行法の中でできないのか。あなた方として、現在、不備であるとするならばこれを解消するために海上保安庁にゆだねられた範囲でもってどういうふうに――法律改正という問題にまで触れてくるかもしれません。これは当然私の問題の範疇に入る中身かもしれませんけれども、しかし、それにつけてもやはり当局としても積極的な政策、協力体制というものがありませんと、国民の苦しみというものをいたずらに見過ごすという結果になりかねないというような観点先ほど来から申し上げているわけであります。いま述べたように、どこにそういう盲点があるのかというようなことを含めてお答えをいただきたい。
  19. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 公害につきましていろんな種類の公害があるわけです。先般も委員会お話がありましたが、瀬戸内海等養殖魚が多数死ぬについて赤潮というような問題がある。これらの問題についてもやはりその原因がどうであるかということで、場合によって刑事事件等にもなりかねないのではないかというようなお話どもあるわけです。これらの原因、あるいはよって来たるゆえんのものというのになりますとなかなか複雑であり、一朝一夕にその原因が見出せないというものが多数あるわけです。したがいまして、いま赤潮の問題でもそうでございましたが、私どもとしましては、極力そういった一般的なまず原因というものについてこれを調査をする、そのため地元公共団体等の関係を密にする。そういったところの一般的な公害研究所あるいは公害センター、そういうものとの連絡を密にしてそういうものの緊急調査を依頼する。こういうことで、それが具体的な、先ほど来申し上げておるような法体系に確実につながってくるというものは、それはまた独自の立場調査をする。かような順序と体制を踏まえて進んでおるわけであります。一部御指摘のございましたように、現在の法体系を見ますと、私どものほうの感覚では必ずしも十分だとは思いません。たとえば船舶から流れます油というものだけについて見ましても、現行法海水油濁の防止法では非常に除外例が多い。たとえば五百トン以下の一般の船、百五十トン以下のタンカー、こういったものにつきましても、これは極端に言えば、何らの規制なしにどこでも油を流してもよろしいというようなことに相なっておりまして、これなどもやはり今日の現状から見ますと、法律としてははなはだ不備ではなかろうかというような感じがいたすわけです。先生十分御承知のとおり、現在そういった意味で対策本部が設けられ、本部自体とされていろいろそういった面の検討が行なわれております。そういったものの成果を待ってさらに十全なるわれわれの使命を果たしていく、かようなことに相なるかと考えます。
  20. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いま具体的にどうしようという結論を求めることは、いま伺っておりまして非常に不可能であろうということを感じますけれども、いま一番問題とされている中に、もう一つは屎尿あるいはヘドロの海洋投棄という問題があります。これは当然地方自治体の責任においてそれを監視するということになっているわけでありますけれども、ところがやはりこの状況を見ましても、とてもじゃないけれども監視体制なんていうのはできないですね。したがって、それを、バックアップする意味におきまして当然協調体制というものがとられなければならない。だから、そうしたことを考えると、これは海上保安庁がやはりもう一つそういう任務を持って十分な監視というものを今後も続けなければならないし、不法投棄をしたもりについては厳重な処罰を加えられるような行き方をしなければならない。これは言うまでもないと思うんです。目に余るものがあるんですね。物的証拠が残りませんから、いたしませんというだけでもって問題が解決したとは決して言い切れないわけであります。最近港湾からくみ出されるヘドロというものはもうまことにおびただしいものがあるわけですよ。田子の浦がその象徴的な例かもしれません。けれども、昨日伊勢湾調査した結果によりますと、これは田子の浦よりもひどいヘドロが出ているんです。これはもうスクリューが、われわれが乗った船がそのヘドロのために途中で動かなくなっちゃった。それでいろいろ操作をいたしましてやっと船が動くというようにしましたけれども、当然そのヘドロをかき上げてどっかへ持っていかなくちゃならない。けれども、持っていく先がどこもありませんから海洋に投棄する以外にない。こうしたことがこれからも続きますと、海洋全体が汚染されていくことは火を見るよりも明らかであります。港湾内における海難ということ、ヘドロによって生ずるであろうと思われる海難、同時に不法投棄によって海洋それ自体汚濁されるという問題、これはもう水産資源の確保という面から見てもゆゆしき大問題であることは当然であります。したがって、そういう面も広く含めて海上保安庁においては何らかの手を打てないものかどうなのか、そういう問題につきましてですね。この点はいかがですか。
  21. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) いま具体的なヘドロの投棄のお話でございますが、これは田子の浦問題で一番の焦点になっておりまして、国全体といいますか、対策本部自体で、国の立場としてどうするかということを地元公共団体その他企業も含めていろいろ検討されておりますが、われわれ自体立場で申しますと、こういった海洋投棄をいたします場合には一応港長に対する許可というものをとることになっております。この許可の過程を通じまして、いまのような海洋汚濁、あるいは漁業資源に悪影響を与えるというような場所などは許可をしないというようなことがわれわれでとり得る一つの方法だろうと思います。しかし、いずれの場所に捨てるかということになって、魚族などとの関係になりますと、これはまた私ども単独できめ得ない、水産庁当局その他といろいろ検討しなければならぬということになってきて、私ども独自の立場ではなかなか踏み切れないという問題がございます。さらにこういったヘドロの処理につきましても、海洋投棄そのものが最終的、抜本的な処理のしかたではないのではないか。田子の浦の処理問題等につきまして私どもが仄聞いたしますところでは、やはり海洋投棄というのは、これは短期的、暫定的といいますか、現在やむを得ざる措置である、こういうふうに聞いておるわけでございまして、その上にやはり抜本的なこういったことの対策を立てていく必要があるのではなかろうか。そういうことを考察いたしますと、これはやはり私ども自体のやるべきことのほかに、関係各般のところで抜本的なことをお考え願うことが必要ではなかろうか、かように考えるわけでございまして、当面、私どもの港長業務なり、そういった犯罪取り締まりという立場におきましては、先ほども申し上げておりますように、関係方面ともろもろの関連がございます点も考えて協調提携をしながら事を進める、かような考え方でいきたいと考えております。
  22. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いまわかりましたけれども、その関係方面連携をとってそれを進める、まことにそのとおりだと思いますが、どの程度の速度でいま進んでいるんですか。
  23. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) いまのヘドロの投棄の問題自体の御質問かと思いますが、田子の浦問題につきましては、実は私ども立場としては、現在告発されておりますので、この告発段階におきましてはやはりそういった立場における動きしか目下できない。あれの投棄についてどこの場所に捨てるかということについていろいろ水産庁を中心に現在検討がなされております。地元港湾管理者の立場と両方でいろいろ検討されておると思いますが、こういった関係の団体に私ども関連の者は常時連絡をとって、こういったヘドロの具体的な処理を考えつつ進めておるほかにいろいろあるかと思いますが、そういった点については、まず基礎的な調査というのが現在の私ども立場でございます。
  24. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 基礎的な調査がおくれているんですよね。長官は御存じかどうか知りませんけれども、潜水してみるとよくわかる、ヘドロの状態は。透視度の上から見ると、ある地域においては上から見た場合、一応きれいじゃないかと見えるようなところがありますよ。ところが潜水してみて、それが一メートル半を出ないくらいでヘドロがもうたまっている。これが港湾の今日の平均的な実態じゃないか。なるほど数万トン前後の船が航行する地域については、しょっちゅうかいておるでしょうから、そこのところの水深は深いので、そういうような危険な状態というものはまず考えられないというふうにお考えになっていらっしゃるかもしれませんけれども、一番ヘドロのたまるのはまん中によくたまるんですね、岸壁寄りの。ですから、上から見てたまっていないだろうと思っても、二メートルあるいは三メートルぐらい下にはすごい層でヘドロがたまっているわけです。ずぼずぼ入るんですから、からだがこのくらいまで入りますよ、ヘドロが。そうした場合に、先ほど私が申し上げたように、船がもしヘドロに引っかかってあるいは転覆というような大事件が起これば、これはたいへんなことになりますけれども、航行に重大な支障を来たすというようなことになったならば、これはしまったというようなことで、それからみこしをあげるようなことでは間に合わないんじゃないかということを最初からずっと申し上げてきているわけです。はたして海上保安庁あたりでも、先ほど来繰り返し申し上げておるように、独自の立場でやるならば、そういう角度からもどういう実態になっておると、基礎というのはそのことも含めていらっしゃるだろうと私は思いますけれども、そういうところまでいままで調査をされているのかどうなのか。それを前提としながら公害対策本部なりと連携をとって、実情はこうなんだと、いま早急にこの問題の処理をしてもらわなければ港湾の安全というものは保たれない、のみならず水産資源についてもこれを守るというようなことはとうてい不可能だというような意見なり、そういう積極的なアドバイスというものがなされているのかどうなのかですね。
  25. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 港湾には、先生も御承知の港湾管理者というのが別にございます。この港湾管理者は港湾現状について、これの設置管理ということについて万全の責任をもってやっておるわけであります。港の航路で非常に浅くなるというような事態になりますと、港湾管理者においてしゅんせつ事業としてこれをしゅんせつをするというような事態で進められております。私どもは港長という立場におきまして、こういった港湾管理者との連絡において船舶の運航が安全に行なわれるようにということで、水路等が浅くなりますと、そういうしゅんせつの申し出を港湾管理者にお願いをして実施してもらう、この従来のやり方で今日まできておるわけです。いまのように、一部浅くなりまして非常に船の運航にも危険があるというような事態を招来いたしますと、私どものほうでは水路警報というものを出しまして、この港のこういう位置においては水深がこれくらいであるということを出す。それによって船長は、自分の船はそういうところにははいれない状態であるということから、自分でその泊地なり航路をきめていく、こういうふうな仕組みでしておるわけでございます。私どものほうでいまそういったそれぞれの港湾における全般的な調査ということを、そういう意味からいたしましても全部をやるべきかどうか。航行の安全という立場から出ていけばただいまのようなやり方でありますが、現在のヘドロ堆積による港湾の相当広範にわたる機能の阻害ということになりますと、やはり県当局あるいは港湾管理者、こういった方々との連携においてまずやはり基礎的な調査をやり、そうして今後の対策を打ち立てる。かようなことにならざるを得ないと考えるわけでございます。そういう意味で港湾管理者には特に強く、これはいままでもやっておりますけれども、こういった事態に相なりましたからには、私どものほうでも非常に連携を強くして、絶えずそういった申し入れをして、港湾管理者において相当総合的な調査をなされておりますし、私どもも極端にひどいというところについてそういった調査実施をしておるというのが現状でございます。
  26. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いずれにしても、今日まで海上保安庁がともあれ独自の立場調査をされてきたその実態を通しましても、おそらく万全であるということは言い切れないと、不測の事態というものはいつ起こるかわからないという観点からも、今日の港湾汚濁状態というものはあまりにもひど過ぎるということをお認めになっていらっしゃるだろうと私は思うんです。のみならず最近の一つの傾向としては、これは八丈島でもってわれわれが調べた結果明らかになったんですが、油のかたまり、それからタールのかたまりが岸壁にもう浮遊しているわけです。こうしたことはおそらくその辺の海水というものもやはり相当によごれているということが指摘されるわけであります。直接のあれではございませんので、その辺の答弁を私必要とはしませんけれども、もう全般的にとにかくよごれている。そのよごれているということは、とりもなおさず船舶の航行また魚族の確保という面から見ましても、いろんな形で地域住民に対する甚大な影響を与えているということは否定できない事実だろうと思うんです。したがって、先ほど私お尋ね申し上げましたように、せめて現在の保安庁の許された範囲で自己の働きというもの、役割りというものを果たす上から設備整備あるいは人員の配置というものを可能な範囲でもってぜひやってもらいたい。そうして同時に、あるいは多少行き過ぎになるというような点があってもこれは捨てておけないという、港に流出するところの工場廃液につきましてもやっぱり厳重な調査対象として、それこそ関係官庁と連絡をとって、実際問題としてこういう海上に廃液が流れておる、これについてはもうあらゆる面からこの港湾はもう危険な状態にさらされているというような建言をなしてしかるべきではないだろうか。いまここで、さらに具体的にどうこうという問題は、次の機会にあらためて私は運輸大臣なりにその政治的な判断というものを尋ねてまいりたいとは思いますけれども、しかし、当局関係者のお一人として、いまお尋ねした締めくくりの上から、今後保安庁長官としてそういう問題に、いま私が申し上げたような点から関係官庁とも十分連絡をとるとはおっしゃいましたけれども、独自の立場でもっともっと積極的にやっていただきたいという点についての所信を伺っておきたいと思います。
  27. 説明員(手塚良成君)(手塚良成)

    説明員手塚良成君) 結論的に申し上げますと、私どもの使命といたすところの先ほど法律に違反する事態、あるいはこの船舶航行の安全の確保という見地からの問題としては、さらに一そう厳重に取り締まりを続けていくという決意でございます。ただやはり繰り返して申し上げますようでございますが、港湾の管理についての港湾管理者があり、あるいはまた魚族資源についての問題になりますと、水産庁自体の直接的な問題だとも考えられます。この問題は非常に関係方面が多いということで、われわれの立場におきましては、やはりある程度の限度がある。したがって、今後はやはりそういう関係のところとまた密接な連絡をとって抜本的な対策をそれぞれの官庁にお願いをする。こういう立場でもって進んでまいりたいと考えております。
  28. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 次に、ごみの問題で若干時間の許せる範囲でお尋ねをしておきたいと思いますが、一口にごみと、こう言いますが、昨今産業廃棄物は非常な勢いで増加をしている傾向であることは指摘されているとおりであります。  そこで、局長に伺いたいことは、最近のこのごみの排出実態はどうなっていますか。
  29. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 全国的な規模でいわゆる実態調査ということは行なっておりませんが、それぞれたとえば通産省で行ないました調査あるいは大阪府におきまする調査、これらのものをもとにいたしまして、さらに私ども関連しておりますいろいろ公共の処理施設から出てまいります汚泥その他の廃棄物、これらの量を私どものほうで推算いたしました結果を申し上げますと、昭和四十二年末におきまして、大体一日の排出量が約百十万トン見当であると推定いたしております。その内訳で申しますと、畜産業関係からの廃棄物、これが十三万二千トン余りでございます。これは飼育頭数からの推計でございます。それから、製造業にかかる廃棄物でございますが、これが同じく約十三万一千トン、それから建設業の廃棄物でございますが、三十二万八千トン。これらは大阪府の調査に基づきまして出荷額百万円当たりの廃棄物量を定めまして、それによって全体的に引き伸ばして推計したものでございます。それから、いわゆる産業排水から出ます処理汚泥、これが二十六万トン、上水道汚泥、下水道汚泥合わせまして約七万三千トン、屎尿処理施設から五万トン、その他第三次産業の廃棄物として約六万トン、公共事業から二万トン、しゅんせつによる汚泥が五万千トンといったところで、合わせまして約一日量百十万トンと推計しております。
  30. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 ごみの問題は、これからもうごみ公害という新しい世論を巻き起こすであろう、こう思われます。そこで、おそらくその述べられたのは一日に排出されるであろうごみの量だろうと思いますが、ならば、それに対する処理状況は完全な状態ではないわけであります。地方自治体で処理している状況を見ましても、もう手一ぱいどころではない。どんどん残されていっている。結局、施設が不完全であるということにほかならない、端的に申し上げればそういう状況になっているわけであります。したがって、これからますますふえるであろうもろもろのごみという問題についての処理方法については、もう重大な関心事となっていることは言うまでもありません。厚生省当局としては、そうしたこれからの深刻な問題をかかえて、まず基本的にはどうされるおつもりですか。
  31. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) このような非常に重大化してまいりました廃棄物、ことに都市からの廃棄物及び産業に起因するところの廃棄物の処理につきましては、私どものほうでは、かねて生活環境審議会のほうにその処理に関する答申を諮問していたところでございますけれども、先般第一次答申を得まして、それに基づきまして私どもは八月十七日に都市産業廃棄物広域処理対策要綱というものをきめました。早急に具体的な措置を講じていきたいと考えておるところでございます。その内容でございますが、必ずしもこれらの膨大な都市産業廃棄物を現行の清掃法によって措置するということにつきましては、やはり適当でないと思われる面も出てまいりましたので、たとえば現在は市町村単位でもって清掃を行なっておるということでございますが、これを市町村の連合、場合によっては県単位あるいはさらに県の連合といったような、いわゆる広域処理体系というものを確立して当たる必要があるのではないか。それらは、一つは非常に高度の処理技術を要する、また広大な埋め立て地あるいは場合によりましては大規模な海洋への還元事業というものも検討していかなければならないといったようなことで、従来の市町村を単位とする限られた範囲内での清掃事業の範囲ではすべてを完全に処理することは不可能に近いという考えに基づくものでございます。この広域処理体系を確立することによりまして起こってきます問題は、それぞれその体系内における排出者あるいは国、地方公共団体等の役割りでございます。これらにつきましては、第一点といたしまして排出者の責務ということを明確にする、つまり廃棄物を可能な限り減量するための再生利用等の促進、また収集、輸送を安全化し、能率化するための廃棄物の種類に応じたいわゆる前処理、その他輸送処分に要する費用の負担といったようなものは排出者の責務として原則的には考えていくべきではなかろうか。それから市町村の役割り、それらにつきましては、近ごろふえてまいりましたごみの量の原因の一つとして耐久消費財の粗大ごみの問題がございます。また産業廃棄物のうちで焼却、破砕、圧縮といったようなことをやりまして、減量化、安定化をはかるわけでございますが、これらのものは、やはりいままで市町村がある程度清掃に対する処理能力を備えておるわけでございますが、それらについては市町村で分担していただく。  それから新たに都道府県に登場願うわけでございますが、都道府県におきましては、ひとつさらに市町村段階では処理できないようなあるいは処分できないようなものにつきましては都道府県の役割りとして、責任としてその施設あるいは場所の提供、さらには技術的な援助といったようなことを分担していただく。国といたしましては、これらの広域計画の策定に関しまして、場合によりましては、各都道府県間にわたるという問題もございますので、それらに対する調整と指導、さらには廃棄物の処理処分に関しますいろいろな基準等の策定並びに技術の開発、これらに対する援助でございます。  それからもう一つは、地方公共団体に対しまして、これらの膨大な廃棄物の処分につきましては、やはり財政的な援助をする必要があるということで、それらに対する財政的な援助を考えておるわけでございます。  なお、これらをやはり強力に推進するためには、どうしても関連法律というものをそのつど再検討する必要があるのじゃなかろうかと、そのような方向で考えておる一わけでございます。
  32. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いま述べられたことは、いまこの段階で初めて発想された内容ではない。もう前々からすでに論じられていたにもかかわらず、今日まで延引してきた。とにかく世論が起きてこないとなかなか手がつけられないということは、非常にまずいやり方ではないかと思うのですね。  そこで、いまの御答弁の中で、たとえば地方公共団体がある程度のことは処理できる――ことばじりをつかまえて言うわけではありませんけれども、裏返しにしてみると、ほとんどができてない、能力がない、それを国がバックアップをしなければならない、そういう意味にとれたわけであります。しかし、それはむしろ正直な答弁かと私は思うのであります。現状においては、あなたも御承知のとおり、できてない。もうリミットを越えておるという状況であることはわれわれも知っております。そこで、いま差し迫った問題として、ごみ処理については、大まかに言いますと、焼却だとかあるいは海洋投棄と、先ほども出ましたように、そういうような処理方法というものが当然考えられる。いま企業側にも今後責任を持たしていく方向を考えているのだという意味のことを言われました。そんなことはあたりまえのことでありまして、それだけでは始末できない一般の家庭から出るごみというものがあるわけであります。こうした場合、特に最近、合成樹脂なんかを使うものが非常にふえておる。これを焼却をいたします。それが今度は煙害となってまたその付近の人たちにたいへんな迷惑をかけてしまう。悪循環が絶えず繰り返されていくような考え方というものはどうして是正できないのだろうか。その辺は一体どういうふうにこれから取り組んでいかれようとしておられるのか。法律改正も、当然現行法では十分とは言えないから、次の国会あたりでぜひともそれを考えていきたいという意味の発言がありましたから、それはそれでけっこうでございましょう。けれども、それに臨むためには、現在どういうふうな判断でそれの対応策というものを立てていらっしゃるのか。これがやはり一番ポイントになるのじゃなかろうかと思う。これはおそらく再三再四にわたって、ごみという問題についてもいままで言われてきたわけでありますけれども、やっとひどくなってきた状態からその対応策を考えてみたらどうかというのでは先が思いやられる、こういう感じがいたします。その点について大臣の意のあるところを、今後の基本的な取り組む姿勢としての方針というものをお聞かせいただきたい。
  33. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 産業廃棄物処理のことにつきましては、私も渋谷先生と全く同じ感想を持ってまいりました。私は、就任以来、そのことにつきましては事務当局をほんとうに督励をいたしてまいりまして、何をもたもたしているんだ、法律改正の必要があれば新しい法律体制をひとつつくろうじゃないかと、また、御承知かと思いますが、いま五カ年計画がございまして、その遂行途上にあるわけでございますが、当時五ヵ年計画の対象としておったごみというものと今日大きな課題になっておるものとだいぶ内容が違ってきておると思いますので、そういうものの改定も検討をしようじゃないか、また、清掃、ごみ処理というものは、本来は地方公共団体の住民に密着する固有の業務の面も多いとは思いますが、しかし、現状においては地方公共団体だけの財政負担等にまかせておっても現実にできない面もあるので、国はやはり奨励といいますか、刺激と申しますか、そういう面からも助成などについては足らざるところを補っていきたい。ことに私が聞いておりますところによりますと、従来のごみ処理については、焼却施設だけが国の助成の対象になっておって、粗大ごみの処理等に関連する、たとえばクラッシュをするとかあるいはプレスをするとかいうような施設については助成の対象になっておらないというような点もあるようでございますので、問題はその家庭から出るお勝手のごみもさることながら、経済水準の上昇に伴ういわゆる耐久消費財などの廃棄に関連する粗大ごみというものの処理産業廃棄物と同じような隘路にもなっておる状況に対応する助成の措置も必要ではないかということで督励いたしまして、これはまあ局長を前に置いてまことにどうも相済まぬことでありますが、御承知のように、役所の仕事というものはなかなか進まない。どうしておるかと言うと、いや審議会で審議中で間もなく審議会の答申も出るというようなことでありますが、審議会の御答申も急いでもらいまして、これもお耳に達しておると思いますが、審議会の答案も出ましたので、その審議会の答案もすぐ実行に役立つように要綱化しろ、要綱化ができたらすぐこれを法律化、予算化しろということを私は実はせき立ててやっておるわけでございます。また、ごみ処理というものを単に清掃という側面からだけでなしに、一般的な公害原因とも関連いたしまして公害対策基本法を今度全面的に再検討する時期になっておりますので、そこにもこの廃棄物の処理というものの頭を出させ、それにつながるような形で清掃法を改正するなり、あるいは産業廃棄物処理に関する特別立法を立てるなりというようなことで現在着々と立案をさせております。  もう一つ、これは政府のそういう対策もございますが、私ども郷里の状況など、これは局限された観測かもしれませんが、いろいろ助成をいたしたいと思いましても、そのごみ処理、廃棄物処理施設の立地につきまして、せっかく助成の対象や計画の対象に入れてまいってきているものが地元の反対等がありましてそれが一向に進まないというような現地の問題もあるようでございます。しかし最近のごみ処理場等は、私も視察をいたしましたが、全く臭気も煙も出ないようなものが出てきておりますので、そういうところを各都市相互に視察をしたり研究をしていただくようなことも推進をいたし、また多少お金がかかってもそういうものをつくることによって清掃処理地元の受け入れ態勢というものも阻害されないようにさせることもこの問題を実際に処理させるための大きな課題であるとも考えておりますので、単に私がここでことばで申すということで終わらせないで、ほんとうにこれはもう世論がそこまできておりますので、私どももやりやすい仕事の一つだと考え、またやらなければならない仕事だと考えまして進めてまいる、こういう気持ちでおるわけでございます。また、それらをやってまいります場合には企業とのいろいろな関連も出てまいりまして、当然発生原因者としての企業に義務づける面などもございまして、公害の問題などと似通っておる問題もございまして未解決の問題もございますが、そういうことも含めて一日百万トン以上も出る都市産業廃棄物、建設廃棄物などの処理態勢を整えてまいる、こういうことでございます。
  34. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 局長ね、次の質問に移る前に、百十万トンに対する現在の処理能力はどのくらいになっておりますか。
  35. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) これは産業廃棄物あるいは都市廃棄物そのものずばりということではございませんが、現在、私どもは、いわゆる清掃施設整備五カ年計画の第二次分といたしまして、ごみの主として焼却処理施設整備をはかっておるところでございますが、その処理能力で申し上げますと、まず昭和四十四年現在におきまして施設数で累計二千四十六カ所、それから処理能力といたしましては四万七千百八十二トン毎日でございます。しかしながら、これはいずれも全部焼却処分にするというための施設でございまして、実際の問題として、たとえば都市廃棄物の主たるものであります下水道終末処理施設からの汚泥、これらにつきましては乾燥いたしまして、場合によっては農村に還元するといったような措置もとられておりますので、全体としてこの処理能力を考える場合にはなかなか一がいにそれがどうだというふうな計算がしにくい点もございます。
  36. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 いずれにしても、もう数字がけたはずれに違っておるわけですね。それは詳細に聞けばそれぞれの実態というものが解明されるだろうと思うのですけれども、百十万トンに対しましてごみ処理だけで五万そこそこという、これじゃ残る一方であることは常識的にだれが考えても判断できるわけであります。二千四十六カ所の処理場をフル回転してもそういう状況であるとすれば、一体どうするのだ、もう数年を出ずしてわれわれはごみの中に埋もれた生活をしなければならない。決して極端な表現では私はないと思うのです。先ほど大臣はそういうことも処理するために地方自治体の財源だけではとうていこれは処理できないというので、国からも適切な援助をしていきたいという意味のことを申されました。そのとおりだと私は思うのです。けれども、すでに出された原案を見ますと、これで一体処理できるのだろうか。いままでできなかったのですから、多少十億程度の予算をふやしてみたところで総体的に見た場合に、それはいま局長答弁されたごみというものを処理するにはとうてい不可能に近い。しかし、せめて一歩でも二歩でも漸進的にこれを解消するためにはあるいは薬品処理というもの、いわゆる公害を招かない薬品処理というものと本格的に取り組まれておるのかどうか、こういう点も当然問題として指摘されなければならない。はたしてわずかばかりの予算の増額でもってできるとは、大臣自身もお考えになっていらっしゃらないと思うけれども、しかし実情がこういうことであるならば、非常に前向きに取り組まれてる大臣としても、これはもう捨てておけない。せめて昭和四十六年度からはそれを裏づけるような予算措置というものも当然とらねばなるまいということが、おそらく胸中の中に秘められてるんじゃないだろうか。ここで予算をもう一ぺん修正されて、何とか地方自治体を助ける意味からも、予算の増額というものは考えられないのかどうなのか、また現在検討中なのかどうなのか、この点いかがですか。
  37. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 四十五年度、まあ若干の補助金も組んでおりますが、その四十五年度分を増額補正するということは、まず私はむずかしいと考えられますので、四十六年度に向かいましては、広域処理等を対象とすることも考慮いたしながら補助金の予算も組み、またこの補助金は刺激的のごくわずかばかりの、おそらく何分の一以下というような補助金でございましょうから、資金をまかなう意味において年金の還元融資というような、つまりそれは特別地方債になりますが、そういうものをできるだけ多く組むように努力をいたしてまいりたいと思います。これは法律をつくります際に、むろん市町村が末端の主体になりましょうし、また市町村の一部事務組合あるいは都道府県というようなものも事業主体に新しく入れることになろうと思いますが、これは場合によりましては、地方に今日ありますところの住宅公社とかあるいは地方の道路公社というようなものがございますが、そういう仕組みについても考えてみたらどうかということを事務当局に、これは私の個人的な思いつきの段をまだ出ておりませんが、検討を実は依頼をいたしております。たとえば産業廃棄物排出するような、そういう企業からも設備費用を出させる、地方公共団体ももちろん設備費用を出すというようなことで、いまも地方の道路とか住宅とか、同じような一つの公共企業体と申しますか、あるいは地方公社のような、そういう第三形態をも考えて、これはたいへん必要なものでありますけれども、厚生省から補助金などの要求を一もちろん要求をいたしましても、それが認められる限界というものもおおむね出てくるわけでございますので、私がいま申しましたようなことも、場合によっては一つの方法となるのではないかということで、今後に向かっては資金捻出の方法として検討をさしてるわけでございます。
  38. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 最後に聞きたいと思うのでありますが、また別の機会にお尋ねするとしても、先ほど説明を伺っております中に、企業者側にも責任を分担さしていく方向である、当然だろうと思います。現在の公害基本法についても、その改正が迫られてるという段階でありますので。ただし、企業と一口に申しましても、一体どのあたりに焦点を置かれているのか。中小企業まで焦点を当てられていきますと、またばたばたと中小企業が倒産をするというような、また逆の面が出てこないとも限らない。この辺はどういうふうに考えられてるのかですね。企業側に責任を持たせる、まことにけっこうだと思うのですが、それはあくまでも大企業だけに私はしぼってもらいたい。むしろ大企業の中から関連中小企業のそういうごみ処理等の設備についてはお金を出してやるくらいの、そういう措置が講じられるような方法当局としても行政指導なり、あるいは法律の中にそういうことを盛り込むかどうかということは考えてもいいんじゃないだろうか。その点、大臣いかがでございましょう。
  39. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 私も同感でございます。企業の廃棄物に対する負担を考えます際に、いろいろの面があると思うものでございまして、これはお金の面だけではないので、企業廃棄物を出して、ただそれを公共団体に処分を要求しさえすればいいということでなしに、企業から出てくる廃棄物については、企業自身がそれをクラッシュしたり、仕分けをしたりして、そして回収再生し得るものは企業にそういうことをやってもらうし、自分で処理が可能なものは企業にやらせて、そしてそれを外に集めて公共団体なり、あるいは私がさっき申すような協会ができるかどうかしりませんが、そういうもので処理させるには、やはり企業から出る分をできるだけ少なくする。百十万トンあるからといって百十万トンみな出てくるのではなしに、企業処理というものをまず第一次的には考えるということも要求をいたしたい。そういうまた法律上の組み立てもいたしたいと思うし、また外に出された廃棄物を処理するために有料制も当然私は考えていかなければならないと思います。しかし、前段の企業処理等について必要な資金は、いわば公害防除のための企業自身の施設と同じでございまして、これは公害対策基本法などにも、そういう場合、中小企業等に対しては国がその資金面などについても協力援助すべきだというような規定もございますので、いま私が申し述べましたような企業負担の制度を設けます際には、同じような趣旨において、さらに中小企業については渋谷さんのお説のとおり、中小企業そのものがそういうことができるような、可能ならしめる道を国が資金面等において考えていくようなふうにいたすことは当然だと私は考えております。
  40. 渋谷邦彦君(渋谷邦彦)

    渋谷邦彦君 せっかく総理府の公害部長が出席しておりますから、一点だけお尋ねして質問を終わりたいと思いますが、現在、政府の一つの機関として設けられた公害対策本部機能的に必ずしも円滑な運営というものがなされておるだろうか、いまだに私は疑問を持つわけです。さっきあなたがかたわらにいて海上保安庁長官答弁をお聞きになっておりましても、非常に複雑多岐にわたり、あらゆるところに連携をとらなくちゃならない。連携をとっているうちに次の手が打てなくなっちゃう。いま一番大事なことは、いかにして迅速に対応措置がとれるかという、これが望まれておるわけであります。この点について責任者の一人であるあなたに伺いたい。現在の公害対策本部というものを設けられて、はたして円滑な機能が発揮できるような運営というものがなされているのかどうなのか。もし、なされていないとすれば、どういう面をこれからの課題として調整していかなければならないのか。これはむしろ大臣の答弁を求めたいところでありますが、これは事務的に処理する立場のあなたにこの点を確認しておきたいと思うから、その点を総括的に答弁をしていただきたい。
  41. 説明員(遠藤寛二君)(遠藤寛二)

    説明員(遠藤寛二君) 公害対策本部が七月末にできまして一ヵ月たちましたわけでございますが、その間まだなれない点もございまして、いろいろ目につく仕事をしておらない点は御指摘のとおりだろうと思います。私ども、スタートいたしますと同時に、田子の浦の問題に取り組みまして、それが一つの大きな課題となってまいりました。この点につきましては各省庁、県、それから企業関係集めまして、かなりいままでと違った形で円滑な連絡をとって進めたと思っております。それから次の課題といたしまして、私ども、いま全力をあげて取り組んでおりますのは、先ほど厚生省からも御発言がありましたように、公害対策関係の諸法の整備の問題でございます。たとえば先ほど先生の御指摘のございましたごみの問題につきましても、何らかの形で公害対策基本法の中にそういったものの処理関係を位置付けようというようなものも含んでおりますが、その他土壌汚染公害六法のほかに加えていくというふうなことも検討しております。それに関しましては非常に多くの法律がございまして、御承知のように、先ほど海上保安庁からおっしゃいましたとおり、海上保安庁関係だけでも四つも五つも法律をあげておられます。ああいう関係法律整備等もございまして、それについて、私どもとしては、幸い各省庁からほとんど全部出てまいっておりますので、各省庁と十分な連絡をとりまして、目下それの案の何といいますか、作成についてやっておりまして、そういった面で、表に出ない面でかなり機能的に働いていると思っております。ただ、何ぶんにも私どもトップヘビーでございまして、審議官と申しますのが十五人おりまして、下のほうの数がはるかに少ないという構成になっております。連絡事務というのが仕事でございまして、実務をやるというところじゃないわけでございます。まだ十分に御期待いただいておりますような能力を発揮しているとは申しかねますけれども、今後、こういった一つの何か大きな機構をつくってどうかするというようなことも一つの方法でございましょうけれども、私どもとしましては、幸いにこういう各省庁から出ておりますかなりなメンバーをそろえて、各省庁と連絡をしていくという機能の発揮という点でなお一そうの努力をしてまいりたい、そのように存じておるわけでございます。
  42. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。  本件に対する午前中の調査はこの程度にいたします。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十分開会
  44. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  45. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私は、きょうは清掃事業並びに下水、上水問題についてお伺いしたいと思います。  先ほど渋谷委員から若干の御質問がございましたけれども、どうも答弁を聞いておりましても絶望に近いような感じを持たざるを得ない。したがって、ぜひ前向きの姿勢でしっかりした御答弁をまず最初にお願いいたしておきます。  そこで、清掃事業についての基本的な考え方を伺いたい。清掃事業は環境衛生、公害防除等における基盤的な施策であります。また国民の日常生活にきわめて身近な事業であるのにもかかわらず、行政的にも技術上からも他の分野に比して著しく立ちおくれているといわれております。最近における経済社会の変貌に伴い、清掃事業はますます重要かつ近代化をはかる必要があるが、この際清掃事業に対する政府の基本的な考え方、まずこれをお伺いしたいと思う。
  46. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 清掃事業につきまして、最近の社会経済の情勢が、たとえば今日ございます清掃法がつくられた時代とすっかり変わってきておる、私はこういう認識に立ちまして、現実の事態に処し得るような法制的あるいはその他の制度的の改革をぜひやるべきだということを事務当局に要求をいたしております。私が理解をいたしておりますところは、今日の清掃法対象になっておりますのは、屎尿の処理と、もう一つは家庭から排出されるごみを対象といたしておることと、その事業主体といたしましては、主として第一線の公共団体であります市町村というものを事業主体に考えておるということと、それから第三番目には国の助成でありますが、国の助成が非常に限られておる。たとえばごみ処理につきましても、ごみの焼却施設というようなもののみを対象として国の補助金が出される仕組みになっておるというような、非常に限定的な仕組みになっておりますのを、第一番目には、家庭ごみよりも今日一番大きな課題になっておりますのが都市産業廃棄物あるいは建設廃棄物というようなもので、これこそ今日の大きな公害原因になっておることでございますので、そういう新しい意味のごみあるいは家庭のごみにいたしましても、御家庭のごみのみならず、従来は耐久消費財として各家庭に保存されておったようなものがどんどん捨てられるようになってきました。この粗大ごみというようなもの、これらを対象とするように法律の仕組みを直すこと。それから第二番目には、当然それに対応いたしますが、市町村単位、市町村当局を事業の主体とする仕組みだけではとうてい事態に応じられないので、より広域に、市町村組合けっこう、さらにまた都道府県というようなものを事業の主体にするような、そういう仕組みも導入をいたしまして、市町村主体だけでは処理できないものを広域に処理するというような仕組みを取り入れること。それから第三番目には、国の補助助成などの対象を家庭ごみを主とした焼却施設などに限らず、焼却前にそれをクラッシュするとか、プレスするとか、産業廃棄物などにつきましては新しい処理方法も技術開発と並んで当然設けられなければならないこととなると考えますので、そういうものにつきましても助成なりあるいは資金上のめんどうを国がお手伝いをする、こういうことにすべきだと私は考えるものでございます。また、他の面から申しますと、これらの廃棄物の処理というものをごみ処理というような面からだけとらえないで、広い意味の公害対策一環としてこれをとらえまして、今日現存しているものに今回相当広範囲な新しい見地に立っての改正を企図しております。公害対策基本法にもこれらの廃棄物の処理の方向を規定するような主要事項を取り入れる、こういうことを一方にいたしながら、現行の清掃法をいま申し述べましたような各種の角度から、次の国会にぜひひとつ改正案を出すようにいたしたいということで省内を督励し、また関係方面とも打ち合わせしておりますのが私の考え方でございます。
  47. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 いま国の責任とか、地方の自治体とか、いろいろおっしゃいましたが、企業責任はどういうふうに考えますか。実は工場、事業場などの廃棄物については、清掃法においても排出者責任、要すれば前処理の義務等の考え方が明らかにされているけれども、法令全体の組み立てからみると具体性に乏しい。したがって、これらの点については、法令の技術的並びに制度上の整備をはかる必要があろうと思います。これらについてはどのようにお考えですか。
  48. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) その点は、私のただいまのお答えから漏らしておりましたが、これは私ども清掃対象産業廃棄物というようなものを主としたところに置きかえるということになりますと、現行清掃法の中にもその片りんが出ておりますところの企業責任ということにつきましては、さらに違った角度からこの問題を取り入れていかなければ産業廃棄物処理というものは完全を期することができないと思います。まず企業は廃棄物の前処理というようなものを十分して、企業内においては処理できないようなものを公共の立場において広域的に処理するというようなことにすべきであると私は考えますし、また前処理の済んだものにいたしましても、企業から出されるところの廃棄物の処理につきましては、当然その費用の一端はこれらの排出企業が負うような、そういうたてまえもとるべきものであろうと考えます。なお、先ほど渋谷さんからも御意見が出ておりましたが、このようなことをいたします場合に、その企業にも、そういうことに耐え得るような大企業もありましょうが、中小企業もございまして、廃棄物の前処理等に一つの施設を必要とするものもあろうかと考えますが、そういう施設の新設等につきましては、国も資金的にめんどうを見る、あっせんをするというようなことも必要でございましょうし、あるいはまた廃棄物処理の料率等の立て方につきましても検討をすべき部分があろうかと思います。そういうことにつきましては、今後整備さるべき法律の中においてあるいは条文化し、あるいは法律そのものではなしに、法律に基づく基準を国から示すようなたてまえも考えられるべきであると存じます。さらにお尋ねがございませんでしたが、私がいま申しますような体制整備いたしますためには、当然これらの廃棄物処理の新しい技術開発という面に多くの未開発の分野があると考えますので、そういう面の技術開発あるいは技術指導、あるいは処理施設などについての基準というようなものを国が示す、こういうことが必要になってまいろうかと、かように考えます。
  49. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私は消費財の廃棄物の発生基準と申しましょうか、こういうことに対して、これを発生源からその処理、処分に至る過程を適切に見通すことが必要じゃないかと思います。その処理法、処分法、類似性に基づいた検討が必要であり、主要構造部分に対しても、材質ですね。材質が木製品、金属製品その他とか、焼却処理に適応するかどうか、こういうことも配慮してやるべきではなかろうか。あるいはその耐用年数、あるいはまた恒常的な陳腐化、だめになるというようなことも、もう少し製造過程においても強いことを考えてごみ処理を、今後はばく大に出てくるのですから、そういうところまで考慮して生産面と処理面とが絶えず連携ですか、こういうものがなければ今後の問題のなかなか解決はむずかしいように思いますが、いかがですか。
  50. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) おっしゃるとおりだと私も考えます。  従来の清掃法が構想いたしておったような清掃というものは、焼いてしまえばすべてが片がつくというような、そういうたとえば家庭廃棄物というようなものを主とした対象におきまして法律やらあるいは助成やらの体制ができておったように私は思うわけでありますが、現在の廃棄物、または今後さらにふえるであろう廃棄物というものは、いままでのお勝手くずのような家庭廃棄物ももちろん生活水準とともにふえるわけでございましょうが、家庭においても耐久消費財を主とする粗大ごみのようなもの、また企業から出てまいりますものには物理的性質がことごとく違うような、そういう廃棄物も多くなると思いますので、これらの処理については簡単に焼けばいいというものでは決してないと思います。最終的には焼いたり埋め立てたり、あるいは場合によっては害のない方法海洋投棄というものも考えなければならないと思いますが、その前にプッシュしたりプレスしたり、あるいはその一部を企業が回収してさらに原材料として使えるような方法も考えられるかもしれませんが、さらにさかのぼってはこれは通産省、工業技術院のほうで御研究をされていると思いますが、廃棄処理しやすいような物質を開発していく。たとえばポリエチレンやポリプロピレンというようなものにつきましても、これが要らなくなった場合にはある種の方法によって処理しやすいような、そういうプラスチックの開発というような面まで入っていかなければならないと思います。ひとり厚生省だけでできる課題でもございませんので、中央公害対策本部というような機能にも参加を願ったり、あるいはまた発生源に特に関係のある通産省もいろいろ御研究をなさっておられるようでございまするので、そういう面とも有機的な連携を保ちながら新しい体制というものをつくるということに相なると思います。実は私も先生と同じような意味で、早くやれ早くやれといって、先ほども申しますように、当局を督励いたしておるのでありますが、なかなか当局になると、法律だけをつくればいいということで解決もできない面もあるようでございます。補助金さえ出せば済むというようなことでもないようなことでございまして時間がとれているようでございますが、これは一日も早くこの処理体制をつくり上げてまいりたいと思います。
  51. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 そこが一番大事だと思うのです。結局、世間ではこういうことをいっている。厚生省は国民の環境衛生を守る意味から努力するけれども、これが他省から――通産省来ていますが、通産省その他からの何といいますか、横やりでなかなか思うように進まないのだ、だから私がこの間憎まれ口をききましたけれども、通産省厚生局だなんていわれるような状態になっている。これを何とかして排除して、通産省もあるいは建設省も同じ気持ちでやってくれなければ、先ほど渋谷さんもお話ございましたけれども、われわれはごみの中に埋没をする生活に落ち込むのじゃないかということを憂えるわけなんです。  そこで、先ほど総理府の方にお残り願いましてたいへん失礼いたしましたが、実は私、ゆうべ、十月号の「世界」を見たのです。ところが、多くは申しませんが、この間都道府県議長会がありましたね。そのとき総理が発言して、公害が発生しているからといって経済成長をゆるめるわけにはいかない、こういう発言があった。それからその二日前に同じく、一部公害対策はすべて国の責任だという人がいるがこれは間違いだ、公害問題は国、地方自治体、企業国民の四者が一体となって対処しなければ解決できないのだと、まあ加害者の責任はあいまいにする一億総ざんげ的な発言なんですね、総理の発言が。そういうことでこの公害対策、ごみ処理等に取り組まれたのでは百年河清を待つで、なかなか目的は達成できないと思います。また一部には中央公害対策本部発足の目ざすものは、従来、一応厚生大臣が主務大臣であったが、公害から国民の健康を守るたてまえで政府公害対策の窓口であったが、総理府に移ることによって通産省や経企庁の発言権がぐっと強まったと見る、こういうことなんです。その三年前の基本法ができたときにも産業界が強く望んだことは、厚生省の独走を押えるということで、各種の基礎づくりも厚生省だけではやれないような仕組みにするためだった、こういうようなことがいわれておるし、「世界」にも出ているのです。こういう不信感があったのではやろうと思ってもあれだろうし、また、もしこれが本心だとすれば私たちは許せない。少なくともこういう疑いが国民の中にあるということになると、いくら産業が、経済が成長したところで、いまのような状態でどこに国民のしあわせがあるか。空も、川も、海も全部よごれている。このごろ食べるものさえ、米さえ安心して食べられない。こういうことになっているということをよくお考えになっていただきたいし、また諸外国のニュース等を見ますと、日本はもうけ主義第一であって国民生活を顧みない、産業汚水は、それこそ成長にまかせてもうけ第一主義だから、結局経済成長は世界第二位かもわからない、だからダンピングするのだ、こういうことで非常な不信感を持って日本の公害対策に対しては注目しているのですね。スイスあたりでも、純利益の六、七%をこの公害対策に向けるというようなことが制度化されている。いまになって金がないからできない、公害排除には金がかかる、こういうことをいったって、それをかける上において、それを処理することによってまた信用も回復すればまた生産も上がるのじゃないか。もうけ第一主義で国民の命はどうなってもいいというような日本の産業のあり方はいかがかと思う。これに対して、どうかでき上がりました中央対策本部がそういう世論を粉砕するように、国民の信頼を回復するような方向でやっていただきたいことを私は強く望みたいんです。あなたに申し上げてもあれですけれども、ぜひ担当責任者にそのことをようくおっしゃっていただきたい。こういうことを雑誌に書かれるだけでもまことに不見識じゃないか。そういうことのございませんようにと思いますが、いかがでございますか。
  52. 説明員(遠藤寛二君)(遠藤寛二)

    説明員(遠藤寛二君) たいへんありがたい御示唆でございまして、私ども、もちろんいろいろ雑誌新聞等に伝えられております総理の発言、私も詳しく存じておるわけではございませんけれども、私どもの本部が設立されました当日の総理の訓示の中でも、そのことについて非常に憤慨されました一面もございまして、必ずしもその言い方についてあるいはその報道についてそのとおりであったかどうかということについては私いま疑問に思っておりますけれども、しかし先生の御指摘のように、本部をつくってかえって厚生省がいままで努力をしてこられたことの足を引っぱるのではないかというような、半ば私どもに対しまして非常に不信があるような記事が本部設立の直後あちらこちらに見えましたことは事実でございます。私ども、もちろんそういうつもりでやっておるわけではございませんで、先ほど来いろいろお話がございますように、国民の健康を守るという立場の厚生省、それから産業なりその他いろいろな面で、それに環境というものに関係をいたしております各省の問題、そういったものを横に広げて調整をしていくという必要が非常に大きくなってまいります。そのためにこういう機能というものを持って、しかも総理大臣がみずから長になりまして、総理大臣としての各省に対します指示権というものを活用して、全般を向かうべきところに向かっていくようにしようという趣旨で設立されました。私ども各省から出てまいりまして、本部に籍を置いておるわけでございますが、出ております者一同、もちろんそういうような外からの批判のあるようなことをやっておるわけではございませんで、全く誠心誠意国民の健康、環境というものについて真剣に取り組むつもりでやっておるわけでございます。諸外国におきましても、日本だけが悪いようなことがよく言われますけれども、今度の本部が設立されまして以来、各方面から、諸外国からもいろいろな情報をとっておりますけれども、やはり同じような条件が出ておりますように、そういった、いままでたとえばアメリカなんかで書いております、年報なんかに書いてありますところを見ますと、いままでは量がふえるという量の行政であり、社会であった。しかしこれからは質の社会になるということを非常に強く言っております。私ども、世界じゅう大体同じような視点で、同じような問題に逢着いたしまして苦しんでいる状態でございますが、各国の協力の問題もございましょうし、国内におきましても、もちろん各省の協力を仰ぎまして今後やっていくつもりでございまして、決してよそから言われるようなことはない。しかしながら、そういう批判が今後起こりませんように、私ども実績において何かやっていかなければならないということでございます。その点はまことにありがたい御示唆でございまして、今後とも努力をいたしてまいりたいと思っております。
  53. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 大体世界も同じようだというけれども、日本はおくれていますよ。それは率直に認めて、そのおくれを取り返すようにひとつ奮発していただきたいことを強く要望いたしておきます。  次に、清掃施設整備緊急措置法に基づく五カ年計画、これの進捗状況はどのようになっておりましょうか。
  54. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 御案内のように、清掃施設整備緊急措置法が成立いたしましてから、これに基づきまして清掃施設整備五カ年計画を立てまして閣議決定を受けているわけでございます。その第一次は昭和三十八年から四十二年にわたる五カ年でございます。四十二年に至らずして第二次の四十二年から四十六年までの計画を立てまして、目下それに沿って整備を進めているところでございます。  続いて申しますと、この整備状況は、着工ベースに基づきまして、昭和四十四年度末現在では、屎尿処理施設で申しますと、施設数は千百十三カ所に及んでおります。その処理能力は一日量で六万二千八百五十八キロリットルでございます。  それからごみ処理施設でございますが、この施設数は、午前中申し上げましたのは四十四年の末の数字でございましたが、午前中もしも渋谷先生に申し上げた数字が食い違っているとすれば、こちらのほうが正確でございますので、それをあわせて訂正させていただきますが、ごみ処理施設は、施設数で二千四十六ヵ所でございます。それから焼却能力で四万七千百八十二トンでございます。これは日量でございます。  五カ年計画によりまする整備予定事業量四十五年度分を申し上げますと、屎尿処理施設で七十九カ所、ごみ処理施設で百七十五カ所を予定して、大体四十六年までには計画量の達成は可能ではないかというふうに考えております。
  55. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私、実は驚いちゃったのですけれどもね。こんなにごみって出るものかなと思ったのですが、これは大阪で産業廃棄物排出量が一日で九万トンも出ているんですね。それでこの九万トンというのは、東京の三十六階建ての霞ケ関ビルの二個分だ。これは大阪だけなんですよね。それからきのう、私も東京湾の視察に海上を四時間半ばかり見て回ったんですけれども、川崎でもどれだけのものが出ているかということがここに出ております。これを地方公共団体でやるったってできるわけのものじゃないですよね。それに今度は、どんどんどんどん廃棄物がふえてくるんですからね。今後の見通しはどういうふうになっているんですか。私、あなたのほうの資料で見ると、何年かにふえた量というのはすごいんですよね。こういうことで、いまの状態ではたして間に合うだろうか、今後の計画ではどのように考えておいでになるのか、もう一ぺん聞かしてちょうだい。
  56. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) ただいま御説明申し上げました処理施設整備計画は、これは御案内のように、主として家庭から排出されるごみ、屎尿はもちろんそうでございますが、に対する処理施設でございます。ところが、御指摘のように、大阪府あるいは東京、川崎、その他大都市におきましては、ことに重要な問題として、いわゆる産業から出てくる廃棄物、この量は、先生御指摘のとおり、膨大なものでございます。それから、先ほど申しましたこれら屎尿処理施設あるいはごみ処理施設処理いたしましたものでも、さらにたとえば屎尿処理施設からは汚泥が最終的にはかなりの量が出ます。それからごみにつきましても、実は焼却いたしましても二〇%近くのものは残るわけでございます。これらのものは都市廃棄物と申すべきものかと思います。それから下水道の終末処理場あるいは水道の浄水場からも汚泥が出るわけであります。  なお、産業廃棄物といたしまして各種のいろいろな、たとえば畜産業から出る汚物あるいは製造業から出る廃棄物、建築などの際に出ますいろいろな廃材などといったようなことでございます。これらに対する処理ということと、清掃施設整備五カ年計画との関連は、これは正直申しまして必ずしもあるとは申せません。しかしながら、これらに対してどのように処していくかと申しますと、はなはだ技術的な問題にもわたりまして恐縮でございますけれども、まず何と申しましても、私どもといたしましては、やはりこれらを衛生的にまず処理していただくということが一つの要件かと思います。その衛生的に処理していただくためには、まず企業者のほう、その排出者のほうでもってできるだけ衛生的に処理をしていただくというのが大前提になろうかと思います。それを受けまして、今度は化学的に薬品を加えるとかあるいは物理的に焼却するとか、先ほど大臣が御説明いたしましたように、破砕するあるいは圧縮するといったようなことで処理をいたします。それからこの処理だけでは問題が終わらないわけでございますので、さらに最終的にこれらをしかも衛生的に処分しなくてはならないという問題が残ってくるわけでございます。これらの最終処分の方法といたしましては、まずやはりどうしても自然界の循環の経路の中に、ルートの中に入れていくということで、何と申しましても大地に対する還元、まあいろいろとやり方によっては問題が生ずるので、この点は十分に、ことに衛生的な面からは詰めなくてはならないことでありますけれども、やはり埋め立て、それから海洋への還元といったような経路をたどらざるを得ないのでございます。この中で、いま申し上げました経路に従って言いますと衛生的処理施設、この衛生的な処理施設は、先ほど大臣からも御説明ございましたように、この清掃処理施設整備計画の中の施設に能力を加えていく、つまり破砕できる機械あるいは圧縮できる機械といったような設備を加えていくといったようなこと、それからさらには、いま持っております処理施設の能力というものを高めていくといったようなこと、それからもう一つの問題は輸送力でございます。輸送力をしかも計画的に――現在の都市におきまするラッシュをごらんいただきましてもわかりますように、輸送という問題は非常にむずかしい局面がございますが、計画的な輸送、輸送計画、能力、それと十分にこれらの最終的に衛生的に処分され圧縮されたものを始末していく適地の確保でございます。それから適切な根拠に基づいた海洋への還元でございます。こういったことでございますので、処理施設そのものにたよるという部分ももちろんこれが根本になりますけれども、すべて全般的な処理体系というものを確立していかなくちゃならないということで、従来の清掃施設整備五カ年計画、これがさらにその後、先生が御指摘になりましたように、家庭から出るごみそのものも非常に量も変わっておりますし質も変わっておりますので、これに対する改定計画を立てていくことはもちろんでございますけれども、それに加えまして、あるいはさらに加えるというよりも別の角度から、いま申しましたような都市並びに産業廃棄物に対する処理計画並びにそれの具体的な実施にすみやかにかからなくちゃならない。来年度におきましては、それらの計画を重要な府県、緊急度の高い府県におきましてその計画を推進する、それからすでに着手しておる府県に対しましては施設に対する財政的援助をする、さらにこれらを従来の清掃法でもって必ずしも明確にし得ないいろいろな責任体制の問題もございますので、関係の法令の改正を検討していくといったようなことで努力してまいりたい、かような段階でございます。
  57. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私、後に触れようと思っておりますが、さっき大臣からもちょっと出たし、いまもあなたのほうから言われましたが、どうも処理不可能なもの一といったらおかしいですが、ポリエチレン等のいわゆる石油製品ですか、こういうもののあとの処理ということが大きな問題になっている。これは多くは家庭のごみですよね。それで聞くところによると、これを燃した場合にはガスが発生するのです。同時に、非常に「かま」がいたむというようにも聞いておりますが、これはどうなんですか。こういうものは安くてできるから許したのかもしれませんけれども、通産省としても、こういう場合にはこのあと処理が可能かどうかということまで検討されてあれは許可されるものですか。私たちしろうとでその点わからないのですけれども、これ一番頭が痛いとどこへ行っても言われますが、どうなんでしょうか。しろうとにわかるように話してください。
  58. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 各種のプラスチック製材がことに包装材料として使われて、それが結局は各家庭から排出されまして、収集されて焼却炉にいくという経路をたどるわけでございますが、御指摘のように、このプラスチック製品は有害なガスも排出いたしますし、また非常に高温で燃焼するといったようなこともございまして、焼却炉の損耗が非常に早いのでございます。これらが近年だんだんに排出量がふえるにつれまして、焼却炉を持っておる市町村では非常に重要な問題として頭を悩ましているというのは、御指摘のように事実でございます。したがいまして、あと始末のほうから申しますと、これらはやはりいまの焼却炉で処分するわけにはまいらぬ。ぜひそれ専用の炉をつくり、また出てくる有害なガスが空中に高い濃度で拡散しないように、しかるべき処置をするといったようなことも必要でございますので、専用の炉をつくるということがまず一つ考えられる。それで、これらにつきましては、来年度の整備計画の中で考えていきたいということで検討中でございます。  それから非常に奇妙なお話を申し上げるようでございますけれども、場合によりましては、プラスチックを食べていく、消化してくれる微生物もあるいは存在するかもしれないといったようなことで、そういった生物学的な処理方法はいかがであろうかということで、その方面研究もお願いして進めているところでございます。しかし、何と申しましても、そのままにしておきまするというと、いつまでたっても消滅しないものでございます、いまの技術でもってしては。私どもは、これはやはり物をつくる、生産の段階においてあとの始末までひとつ考えていただきたいと、このようにひとつ各省の関係のところにもお願いをしまして、全体として清浄な生活環境が保たれるようにということで処してまいりたいというように考えております。
  59. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 通産省、どうですか。
  60. 説明員(児玉清隆君)(児玉清隆)

    説明員(児玉清隆君) ただいま御質問ございましたプラスチック関係処理の技術開発の点でございますが、現在工業技術院の傘下に十五の試験所がございまして、その中で大なり小なり公害処理対策ということで取り組んでおりますのが十一ございます。特に最近私ども新しいテーマとして、ここ一、二年来重点を置いておりますのは、プラスチックの処理技術の開発でございます。世界的な情勢から申し上げますと、現在でもまだアメリカにしましても、イギリスにしましても自信のあるプラスチックの大量廃棄処理技術というものは確立されておりません。いま厚生省のほうから御説明ございましたように、現在都市ごみの約一〇%程度を占めておりますが、それにつきましても、大量になりますと処置がほとんどデッドロックに乗り上げているような状態でございます。今後これが非常に一たとえば年率二〇%というような量で伸びていく趨勢にございますので、おそまきとはいいましても、相当早いテンポで、早く大量処理の技術を開発する必要がある。  その例としまして、現在実施中あるいは来年度の予算要求につなげておりますのを一、二御紹介させていただきますと、まず第一は、物理的な処理方法といたしまして、破砕及び切断という問題がございます。破砕する及び切断する。これは機械工学的な分野がございまして、機械試験所で八百万円の予算をことしに引き続きまして来年度も集中的にやることにいたしております。これが非常に単純なようでございますけれども、物理的な処理というのは、きわめて効率的な破砕機を使いまして、そこで相当量的に問題のないように粉砕してしまうということは、これはやっぱり研究テーマとしては非常に重要な問題であります。そういった破砕機のいわゆるメカニックの開発を機械試験所で実施する。現にやっておりますし、来年またそれを引き続きやることにいたしております。それから特に大型のプラスチック製品でございますが、粗大ごみといわれますように、大型のプラスチック廃棄物につきましては、特にそれ用の切断技術が必要になってまいります。あまり小さいのと大きいのとごっちゃに処理いたしますと、これもまた非常に能率に影響いたしますので、そこら辺もきめのこまかい分析研究をやっております。  それからガスの分析でございますが、先ほど来のプラスチックの焼却に伴う有毒ガスの発生問題がございます。これにつきましては、全然ガスを出さないということはおそらく不可能だろうと思います。ただ、どの程度のコンテントを持ったガスが実際に発生するかということについて常時これを監視する分析技術が必要でございますので、そういったガス分析技術というのを東京工業試験所でことし五百万円かけて研究続行中でございますが、来年度引き続きこれを集中的にやるということが第二の問題でございます。  それから第三番目といたしまして、分解とそれから焼却によりますところの処理技術でございますが、特に先ほどお話ございましたように、そういった燃したら有毒ガスを出すし、それから埋め立てに使っても全然腐らないという、そういった性格をそのままにしてマーケットに出しているという点も御質問あったわけでございますが、そこら辺が確かに一番問題でございまして、分解性というふうに呼んでおりますが、いわゆる風化しやすいプラスチックの組成にしていく。現在は風化しにくいところにプラスチックの意味がございまして、それで非常に珍重されているわけでございますけれども、やはりこれからは処理を考えて、生産の組成を考えなければいけませんので、風化しやすいような分解性のプラスチックを開発していこうという研究をいたしております。これはまだことしはやっておりません。来年から繊維高分子材料研究所でやることになっております。  もう一つは基本的な問題でございますけれども、アメリカ等でも最近テクノロジー・アセスメントということばで呼んでおりますが、技術の評価制度あるいは技術査定制度と呼んでおりますが、私どもが大蔵に予算を要求すると、査定とか評価を受けますと同じように、新しい商品を出すときに、あらかじめその処理処分の末端まで考えて、はたして有用かどうか、問題がないかどうかということを新しい商品を出します前にチェックしようということでございます。そういった新しい技術評価制度というものが日本ではまだ確立いたしておりません。アメリカでも、特に最近飛行機騒音等に関連いたしましてそういった制度を確立しようという動きがございます。私どものほうで、単に試験研究を工業技術院の試験所で展開すると同時に、それだけにとどまりませんで、工業技術院の本院のほうで、新しい技術開発で新しい商品を出す場合には、あらかじめ学識経験者のスクリーニングを経て、そして問題ないということではじめて安心して出していくということを慎重にやるべきじゃないかという声が民間でも強くなっておりますし、私どもも問題意識として強く持っております。したがいまして、来年度からそういったことを試みに――はっきりした審議会になるかどうかわかりませんけれども、相当学識の高い方々に集まっていただきまして、そういう制度を検討していただこうというふうに考えております。そういった事前チェックを考えませんと、御指摘のように、石油化学はいまものすごいテンポで伸びておりますけれども、使うときの便利さだけに着目されましていち早く出てきちゃったということで、これは世界中で困っておるという状況でございますので、そういうことの繰り返しにならないようにという配慮を基本的に加えたいというのが私どもの考え方でございます。
  61. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 その点はぜひ通産省で大いに研究努力してほしい。処理するほうは厚生省だといわれても困ってしまいますからね。それで、これは非常に必要以上に使われているんじゃありませんか。買物にしましても中身よりはそういうもののほうが多い。なぜそういう必要があるのか。  それから最近火事なんか起こりまして、焼け死ぬよりも窒息死のほうが多いですね。この間ちょっと聞いたけれども、畳ですね、非常に軽い畳ができている。畳の中にしんとして使われておるということですね。こういうこと御承知でしょうか。
  62. 説明員(児玉清隆君)(児玉清隆)

    説明員(児玉清隆君) 私は知りません。
  63. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 これは非常に軽くて、子供でも畳一畳持てるそうです。そういうものの中に、いま言いましたポリエチレンですか、ありますね、詰め合わせの。あれを小さくしたものが入れられて、わらがバラハラと置かれて、またそれが入れられて、わらが置かれて畳表が張られている。それはわらを入れるのは縫えないからだそうです。あれだけでは割れるから。そういうことがやられておりますが、そうすれば高層建築であればなるべく軽いものをねらうのはあたりまえです。そういうものは、火事になることを考えるとそれこそ身ぶるいするほどこわいことだと思います。そういうことがあるのかどうか。やるならばあぶなくないような対策を立ててもらわなければわれわれは非常に不安だと思います。通産省でそういうものに対しては製造過程から検討していただいて、問題が起こらないようにしていただきたい。もうけんかな、もうけんかなで、もうかりさえすればいいということでは人間は生きていかれませんので、生産を上げると同時に、それの事後の処理に対しても通産省でひとつお考えを願いたいと思います。  あちこち飛びましたけれども、とにかく生活水準の向上から生活革新をもたらして、いろいろな物で、いわゆる粗大ごみというものが出てくる。これの処理がほんとうにお説のとおり、どうするんだろうというくらいふえておりますよね、統計を見ておりましても。これは一体どうなるんだろうと思うのですが、いままでの処理体系ではとても対応できないと思いますから、こういう点に対してはひとつ厚生省関係、各省が――幸い中央公害対策本部ですか、そういうものも発足されたことでございますから、やっていただきたいと思うのでございます。  それから自動車なども非常に方々へ廃棄されていますね。地方へ行ってみますと、あき地へ行くとうんと積まれておりますが、こういうものの処理運輸省でございますか――運輸省ですね。それは一体どういうふうになっているんでしょうか。廃車処理をする際には登録抹消するとがなんとかということはできないものでしょうか。
  64. 説明員(福田稔君)(福田稔)

    説明員(福田稔君) お答えいたします。先生御承知のとおり、自動車につきましては、すべての業者が登録ということをしております。したがって、ナンバープレートを持っておりますが、廃車にしますときには十五日以内に登録を抹消してもらう。したがって、ナンバープレートもそのときに返上してもらうという手続になっております。ただ、問題は、その登録といいますのは、人間でいいますと戸籍簿みたいなものでございますので、実際に廃車にされました車がどういうふうになっていくかということが問題でございますが、一つは、通常のルートでございますと、古い車を販売業者に下取りでとってもらいまして、新しい車を買う。下取りに取った古い車は、販売業者がまだ使えるものは中古車として売るわけですが、使えないものは解体業者に出す。これが一つの大きなルートだと思います。もう一つは、車を持っている人が直接捨ててしまう、冷蔵庫あるいは洗たく機を捨ててしまうと同じように捨ててしまうという例がかなりあるのじゃないかと思います。いずれにしましても、現在そういう廃車の台数が非常に多いわけでございますので、解体処理といいますか、一方では自動車を解体しまして、それをくず鉄として使うとかあるいは非鉄金属として回収するとか、資源回収の点で非常に意味がありまして、それらを専業とする事業も各地にぼつぼつ起きておるようでございますので、そういうものを育成していくということによって解体をうまくやっていくということが可能じゃないかと思います。関係の各省庁とも御連絡をいたしまして、前向きに検討いたしたいと思います。
  65. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 このごろ急に廃車処理というのに大手メーカーなんかもずいぶん乗り出しておるのですよ。むしろ競争になるのじゃないかというようなことが新聞にも報道されておるのです。けれども、そこまで持っていても五千円かそこらでしかとってくれない。持っていくのは計算が合わないというようなことでうっちゃらかすのがあるのです、多いと思うのです。そういう場合には、廃車処分にするところに持っていくとかあるいは自動車メーカーに持っていくとかさせる。そうして、受け取りですか、そういう領収証ですか、そういうものを持ってこなければこれは認めないとかなんとかということでもって、持ってこないでやったならば罰金をとるとか、そういう強い規制はできないものですか。
  66. 説明員(福田稔君)(福田稔)

    説明員(福田稔君) ただいま、登録の抹消をする場合には、解体事業者のところで解体したとかあるいは廃車したとかいう一種の自認書といいますか、証明書といいますか、そういうものをとっておりますけれども、そういう手続をなさらないで放置してしまう人につきましては、いまのところちょっと法律的に手だてがないものでございますから、その辺も含めまして、関係の省庁とも御連絡をとりながら対策研究さしていただきたいと思います。
  67. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 非常に困ると思いますよ。それから自動車だけでなくて、大臣、テレビだなんだ、たいへんなものですがね、あんたやれるのですか。
  68. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) やれます。
  69. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 それで、生活環境審議会の答申で、「都市産業廃棄物にかかる処理処分の体系および方法について」という答申がなされております。ところが、この答申に基づいて厚生省は対策要綱を作成されているが、先ほど言った大阪その他の地域におけるいろんな点の具体策、こういうものはもうできていますか。
  70. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 細部についての事業ということになりますと、まだでき上がっておりませんが、来年度の都市及び産業廃棄物処理方策をどうしようかという大綱並びにそれの中身というか、その柱、これについては固まったものを持っておりまして、来年度これについての予算要求その他必要な措置を講じていくということになっております。そういったことで、来年度からは具体的に手をつけてまいりたいというふうに考えております。
  71. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 あまり具体的に聞くと長くなるし、時間制限を受けているので、聞けないのは残念でございますが、この対策要綱によって現行の市町村の清掃体系はどうなるのか。それからもう一つは、関係法令の整備を行なうとあるが、その内容だけちょっぴり聞かしてください。
  72. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 現在の市町村が行なっております固有事務については、これはそのままでまいりたいと思っております。したがいまして、都市産業廃棄物処理対策を考えます場合に起こってまいりますいろいろな関係法令の改正の問題、整備の問題は、いまのところ、もしも清掃法を改正してやるとすれば、その部分だけ新たなものとして追加していくといったようなことも考えられるのではないか。あるいは場合によりましては、特別法というような形も考えられるのじゃないか。いずれにいたしましても、現行の市町村の固有事務で処理しております家庭からの廃棄物の処理体系はいまのところは変える考えはございません。  それから後段の、それでは都市産業廃棄物にかかる処理対策関係の法案の改正はどのように考えているかということでございます。現在改正を要すると考えておりますおもな点、検討を進めておりますおもな点を申し上げますと、第一点は、都道府県等の連合体を事業主体とする処理体系、いわゆる広域処理体系を整備することができないか。それから第二点は、前処理に要する費用負担等排出者責任の範囲を明確化したい。第三点は、廃棄物の収集輸送処理処分に関する技術基準等の規定を設けたい。第四点は、広域事業等に対する国庫補助及び資金のあっせんに関する規定を設けたい。その他都市産業廃棄物の定義を、現在の清掃法で必ずしも明確でない点もございますので、それらに関連いたしまして明確にしていきたい。以上でございます。
  73. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 その点非常に大事なことでございますが、厚生省の発言力を弱めるのだというようなことをいわれておるのだから、そういうことのないように勇気をもって取っ組んでください。お願いします。  それからもう一つ、これは動物のふん尿処理状況ですね。これは所管が農林省ですか、だけれども処理のほうはおたくのほうでしなければならないのでしょう。これは生活環境衛生の立場から見のがせないのですよ。現地に参りますと、これが非常に大きな問題になっておりますが、一体御承知でしょうか。それからその点について関係省との打ち合わせ、協議等がなされておるのか、その対策はどういうふうにしていかれるのか一
  74. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) 近年、畜産方面ではいわゆる多頭飼育ということで、従来農家において副職でもって豚、鶏その他家畜を飼っておった状態と違いまして、全然性質の変わったような問題が起こってきております。それは非常に多量の排出物を排出してそれを処理しなくちゃならないという問題で、少ない頭数を飼っているときは、それらは自分の庭先あるいは自分の所有している畑地その他でもって十分に処理されておったわけでありますが、それができなくなっておるというのは御承知のとおりであります。ただいま私ども生活環境審議会の中で、これは農林畜産の関係専門の方々にも入っていただきまして、鋭意それらの排出物の衛生的処理に関する技術的な問題について検討を進めております。近々それに対する答申がなされる段階になっておるわけであります。  なお、それと別に、厚生省の来年度の予算要求の中に屠畜場あるいは動物から出てまいりますそういった汚物の処理についての施設に関するいろいろな財政的な援助あるいは基準その他についての経費を要求してございます。
  75. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 非常に重大なことですからしっかりやってほしいと思います。  そこで伺いたいのは、今度は国立公園とか、自然公園あるいは観光地等の清掃対策はどのように取り組んでいられるか。私の見たところでは、あまりにも目に余るものがあるので、こういうことはどのようにしてやられておるか。いまの状態を真実御承知でしょうか、大臣は。自然が破壊されておる、さんざ。ごみは放置されている。この自然公園だとか、観光地等の現状が非常にたいへんなところまできていると思いますが、これに対してはどのように考えておられるか。この清掃等はどういう方法でやっておいでになるのか。対策もあわせてお伺いしたいと思います。
  76. 説明員(中村一成君)(中村一成)

    説明員中村一成君) ただいま先生御指摘のごとく、自然公園の区域内あるいは観光地が最近非常にごみでよごれておるということは私どもも承知いたしております。特に最近におきましては、産業廃棄物とは違いますが、従来のごみと違いまして、かん詰めであるとかあるいはぴんというようなものがふえてまいりまして、それの清掃には頭を悩ましておるところでございますが、現在どういうふうにやっておりますかと申しますと、自然公園の中におきまして国立公園、国定公園、都道府県公園と三種類ございますが、国立公園の場合におきましては、国立公園の中で、専門的なことばで申しますと集団施設地区という地区がございます。ここには特にたくさんの人々が集まるという地区でございますが、そういう地区につきましては、厚生省のほうの管理員が原則として駐在をいたしておるのでございますけれども、管理員が中心となりまして国、それから都道府県、市町村、それから観光の業者の人々、そういう方々が清掃のための組織をつくりまして、いろいろ地区によってやり方は違っておりますが、清掃をみんなで共同してやるという態勢でやっておるわけでございます。しかしながら、現実におきましては、先生御指摘のとおり、非常にシーズンが短い期間にワッと集中してくる点もございます。それから、先ほど申しましたようなごみの種類が最近非常に変わってきたということと、それから自然公園の性格上非常に広い地域にまたがりますし、またごみを搬出するのに非常に苦労するといったような特徴がございまして、見苦しい状況を呈しているところがあることは事実でございます。そこで、私どもといたしましては、自然公園等清掃は、これは市町村長の責任というだけでは――法律上そうなっておるわけでございますが、それでは不十分であるし、かつ地元の市町村長だけに責任を負わせることはいかがかと思われますので、私どもは、この際そういう自然公園におきましては、ごみの問題あるいは屎尿の問題、両方ございますけれども、国といたしまして、県と共同いたしまして清掃の行政的あるいは予算の面におきまして十分に力を尽くし、またそのために自然公園法の改正もいたしたいということでただいま準備いたしておるところでございます。
  77. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 準備いたしておると言って、できますか。いまあすこには、別に国立公園だってだれも管理人がいるわけじゃないでしょう、いるのですか。
  78. 説明員(中村一成君)(中村一成)

    説明員中村一成君) おります。
  79. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 何人ぐらいいるのですか。あれでやれるのかしら。ちょっと聞かしてください。やれる自信がありますか。
  80. 説明員(中村一成君)(中村一成)

    説明員中村一成君) 管理員は全国に五十五名でございます、国立公園の管理員が。もとより五十五名でできるわけじゃございませんので、先ほど申しましたとおり、いろいろな方々の御協力を得て、その地区地区の管理員の連中は非常に苦労をいたして組織づくりをして現実はやっておるのですが、力足りずしてよごれておるところも相当にあるわけでございます。
  81. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私もときどきあれし、この間も、小鳥の音楽堂なんて、とてもいい名前がついてる、そこへ行ってみたらごみの山だし、ベンチはこわれちゃっているし、何やら変なものもその辺にたれ流しになっているし、ああこれが小鳥の音楽堂かと思ってがっかりしたのです。よほど覚悟を新たになさらなければ、名前が泣くと思う。大衆の楽しみをどこへ持っていったらいいか。そういうことだから変なことが社会に起こってくると思う。したがって、大臣、こうした自然公園だとかあるいは観光地等に対しての規制というのですか、対策はよほど強化していただかなければ名前が泣きます。と同時に、ある人はこういうところへ入る人から金を取ったらどうだと言う人もある。だけど、どこへ行くにも金でしょう。と同時に、金を出したのだから、ちらかしてもいいんだという態度になられちゃまたこれもたいへんだと思うのですけれども、何らかの対策をとらなければえらいことになると思いますが、もう一度大臣からお覚悟を聞かしてほしい。
  82. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) これは決して藤原さんに迎合して申し上げるわけじゃないので、私自身がそのことを常に実は考え、そのことにつきましても、特別命令をここにおる中村公園部長、また環境衛生局長にも出しております。ちょうど公害対策本部の参事官もおられますから、一緒にお聞き願うといいんですが、わが国のこれまでの公害対策の一つの清掃法体制でも、よごれてどうにもならぬところを何とかしなければならぬというたてまえの法律と私は考えます。たとえば水質保全法とか、それに伴う工場排水の規制法というようなものがございましても、これは御承知のように、水域指定という制度がございまして、よごれてしょうがないというところを水域指定して、そこに対していろいろ規制を加えるが、いまお話しのような国立公園あるいは国定公園のようなきれいなところについては規制がかからないたてまえになっております。これは大気汚染防止法でも同じで、東京都とか、川崎とか、千葉県、四日市についても指定地域になっておりますが、たとえば私の郷里の山梨県でも、富士五湖周辺が指定地域になっておるわけでもございませんし、富士五湖そのものが指定水域にもなっておらない。田子の浦でも指定水域になっておらぬことは御承知のとおりでございます。そういう体制は改められなければならぬということを、私は厚生大臣就任以来常に申して、指定制度というものを取っ払って、よごれておるところをよごさないようにということがこれからの公害施策なんだと、つまり環境汚染防止策というものが真の公害対策だということを私は提唱をいたしまして、あるいは国会においても述べ、あるいはテレビその他の会合においても勇敢に私は述べております。それとちょうど同じように、屎尿の処理あるいはごみの処理、下水道などの処理についても同じだと思いますが、清掃法に例をとりましても、市町村長が清掃処理の義務を負っておるわけでございますが、それは市町村の全区域について義務を負っておるわけではないので、人が密集して住んでおるようなところ、すなわち市街地を中心として清掃区域というのですか、特別清掃区域という区域を設定して、その中のごみ処理ですか、あるいは屎尿処理は一定の基準に従ってやらなきゃならないと、こういうふうになっておりますが、山の中やあるいは海岸べりや湖水べり、おっしゃるような自然公園の地域については、それは市街地と同じ扱いを受けているところではないと思います。下水道などについても、私は、これは下水道は所管ではございませんが、やはり湖水の回りなどについても、下水がどんどん湖水に入りますために、私どもの郷里の富士五湖にしても、あるいは芦の湖にしてもそうかもしれませんが、このごろそういう家庭下水で非常によごされてきているという状況でありますが、法律体制はそういうものを優先的に処理する体制にはなっておらないと思います。そこで、今後の清掃法の改正等においてはそのことを顧慮して、清掃法法体系でいま藤原先生から御指摘のありましたようなことをやるか、そうでなければ、幸い自然公園法というものは自然公園の区域については何でもできる、いわば厚生大臣あるいは厚生大臣から委任を受けた都道府県知事がその中の規制は何でもできるというたてまえになっておる。建物を建てるのも、工場を建てるのも、ホテルをつくるのも、いろいろな施設をするのも、木を切るのも、みんな自然公園法の中で規制を受けるたてまえになっておるから、自然公園法の法体系の中においていまの清掃処理あるいは屎尿処理、あるいは下水道、あるいはまた公害対策などからはずされているような場合には、公害対策の実質的機関として自然公園法の法制のたてまえの中において、そこに特別の規制をかけるというようなことを検討すべきだということを実はもう口が酸くなるぐらい私は言っておりまして、どういうものをつくってくるか、ここにおられる両局長並びに部長に答案を私のところへ持ってこさせて、次の国会に何とか出させて、公害対策中央本部というものもできましたので、中央本部のほうでもその調整をとっていただきたい。これが実は一両同前の閣議で私が同じ発言を中央本部長である総理大臣のおられるところで実はしておるわけでございます。なかなか口で私が申しましてもさっとすべてが整うわけではございませんが、国会にいらっしゃる皆さん方と、また国民の健康や環境の正常化をあずかる私どもが全く同じ気持ちでその方面を督励いたしておりますことをぜひひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  83. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) ちょっと補足させていただきます。  観光地におきましては、現在季節的清掃地域ということで県知事が指定すれば、そこの市町村長が責任を持ってやるという体制にはなったわけでございますが、なかなか実際問題としてはかばかしくいかない。熱心な県はおやりになるけれども、そうでない県はどうもなかなかおやりにならないといったような点もございまして、現在のいろんな不備な、よごれが生じているという状況だと思います。したがいまして、いま大臣おっしゃいましたように、私ども大臣から御下命を受けまして国立公園部長とも連絡しまして具体的にそれらの不備も補えるように法体系整備も検討しようということで、努力中でございます。
  84. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 大臣が局長課長に指令をしても予算が出ないんですよ。地方の県知事や市町村長が何でもやれる権限があるけれども、何でもやれないわけですよ。結局、問題がある。総理大臣だの大蔵大臣がその気にならなければだめだと思いますから、局長等に下命なさいますと同時に、上を説得してもらいたい。そしてできるようにやっていただきたいことを強く要望いたします。  次に建設省にお伺いしたいんですが、下水道については計画がおくれているために第三次下水整備計画が四十六年より考えられているんですね。これで清掃施設整備事業の進捗状況から第三次計画が必要となったのかどうか、非常に仕事がおくれてきて、そうしてこういうふうになったのか、予算がなくてできなかったのか、この第三次計画ということについてその内容等をお聞かせ願いたい。
  85. 説明員(石川邦夫君)(石川邦夫)

    説明員(石川邦夫君) 御指摘のように、下水道事業はたいへんおくれておりまして、現在第二期計画を実施中でございますが、九千億円の投資規模でもって昭和四十五年度で第四年度を迎えておるわけでございます。現在までの投資は大体七〇%程度でございます。一方、最近の水質公害、水質汚濁に対する対応策、新しく四十九水域が環境基準を設定されるというような事態に対応いたしまして、さらに新しい都市計画法に基づきまて市街地の面積が――市街化区域と申しますか、先行的に今後整備すべき面積が百十八万ヘクタールになるというような事態を踏まえまして、昭和四十六年度から思い切ってこれを拡大改定するというふうな考え方で、明年度以降五カ年間二兆六千億の第三次下水道整備事業五カ年計画を発足させたいというような考え方で現在予算を要求いたしておる次第でございます。
  86. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 もとは下水道の終末処理施設は厚生省でしたね、それがおたくへ移ったわけね。それでいま下水道の果たす役割りは非常に大きいわけなんですよ。このヘドロ問題でも各地を見て歩いても、下水道がもっと完備していたら、いま公害と言われておるけれども、それは相当違ってくると思うのですよね。このおたくからいただいた四十五年のこの資料ですけれども、この世界のをずっと見ると、日本は悲しいかな、まだ一八%しかできていないことになる、下水道が。よそでは一〇〇%のもあれば九〇%のところもある。経済力が世界第二位だなんといいながら、日本はビリから三番目の下水道の現状ということはあまりにもおかしいと思う。ですから時間ももうだいぶきたようですから、あまり詳しくはいたしませんけれども、下水道の整備が今度行ないます第三次計画によるとどの程度までできるんですか。
  87. 説明員(石川邦夫君)(石川邦夫)

    説明員(石川邦夫君) 第三次の目標を五十年に置いております。市街地面積は大体五十九万ヘクタール、それからその市街地の人口が六千二百八十万人、これは四十五年度末の数字でございますが、排水面積が十三万五千ヘクタール、それから排水人口二千百八十万人ということでございます。したがいまして、排水面積の普及率が四十五年度末におきましては大体市街地の二二・八%、これを二兆六千億の投資をいたしますことによりまして三八%まで上げていきたいというふうに考えております。と申しますのは、一方におきまして、現在の市街地が毎年どんどん広がっておるわけでございます。御承知のように、都市化の現象によりまして都市に人口が集中する。したがって、そういう面積も広がる。それからやはり都市人口と申しますか、下水道を整備すべき区域に集まる人口がやはり非常に大きくふえてまいりますので、かなり大きな投資をいたしましても現在の計画では三八%くらい、五十年度末では排水面積の普及率は三八%くらいというふうに考えております。われわれとしましては、少なくも六十年の長期的な目標におきましては、これを一〇〇%に持ってまいりたいというふうな考え方でおるわけでございます。
  88. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 第二次五カ年計画における排水人口と処理人口との差は終末処理場がおくれておることを意味しておるが、第三次下水道整備計画ではこのアンバランスは解消できるんですか。
  89. 説明員(石川邦夫君)(石川邦夫)

    説明員(石川邦夫君) 下水道は、ことに公共下水道は、御承知のように、大きなパイプと、それから終末処理場からなっておるわけでございます。これを一緒にやるということもございますが、下水は汚水を処理するということと同時に、都市内の排水という面もまた受け持つわけでございます。大体現実といたしまして汚水を排除し、それからあとに処理をするというようなことで、排水人口と、それから処理人口というのが必ずしも一致しておらないのでございます。もちろん理想といたしまして、将来これを一致させるというふうなことで、第三次計画におきましては、できるだけこれを近づけてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  90. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 そこで、終末処理場で処理しました水ですね、これはどういうふうになるのですか。
  91. 説明員(石川邦夫君)(石川邦夫)

    説明員(石川邦夫君) 終末処理しました水は、これは放流するわけでございます。これはきれいにして放流するということで、もちろん一定の基準以下のよごれ方と申しますか、にいたしまして放流する。水質基準に合いました水質にいたしまして放流するわけでございます。
  92. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 これは通産省の関係か、建設省の関係かわからないのですけれども、諸外国では終末処理をしてきれいになった水を再び工業用水に使っているのですね。そういうところはたくさんあるのですよ。私は、当委員会で前にも一度質問したことがあるのですが、日本でもその方向へいっております、実験的だということを初め言われた。その後質問したときは相当使い出したと、こういうことでございましたが、終末処理をしてきれいになった水がどの程度工業用水に使われておるか、その点伺いたい。
  93. 説明員(原田稔君)(原田稔)

    説明員(原田稔君) まず下水処理水を再び工業用水に使うという問題でございますが、現在非常に工業用水の水源が逼迫してまいりまして、そういった意味からしましても、下水処理水を再び工業用水に使うという点は非常に有効な方法だろうと思っております。現在下水処理水を使って工業用水道をつくっておる、それで工業用水を供給しているというのが全国で四カ所あるのでございます。その能力が一日当たり四十八万トンにのぼっております。この大半が東京都でございますが、東京都で経営いたしております江東地区の水道で、その能力が一日当たり大体三十三万トン弱になっております。そのほか名古屋、大阪、川崎といったところで実施されております。ただこの下水処理水を再び工業用水に使うという点につきましては、まだ水質上相当の問題が残っております。この水質の問題をどうするかという点につきましては、四十五年度から三カ年計画で実は実験プラントをつくりまして各地方団体、国、こういったところと共同で実験をする。できますれば昭和五十年度ぐらいからそれを実用化するという方向で研究いたしておるところでございます。
  94. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 これは非常に大事だと思うのです。まだどうかと思う点もあるというけれども、それは技術的にまだ何か欠けるところがあるんじゃないですか。外国でやれているのが、それこそ日本でやれないはずはないと思うのです。ことに最近の地盤沈下は非常に大きな問題です。その主たるものは工業用水のくみ上げだと、こう言われているのです。そのことのためにこのごろは地盤沈下、あるいは富士市などでも地盤は沈下しないけれども、あすこは溶岩がありますからね。それを突き破って水をくみ上げているということになると海水が入ってきて、あの富士市の今泉というところは雪解けの水が豊富なものですから、ちょっと掘っても掘抜き井戸で飲用水はどんどん間に合っていた。ところが最近掘り抜きしても出てこないし、井戸水は塩辛くなって飲用に適さなくなってきた、こういうことで憂えられております。ただ、しかし溶岩だから地盤沈下はないそうですが、東京都の場合を考えても非常に危険な段階にきていると思うのです。この問題はまた別の機会にお尋ねしたいと思いますけれども、この工業用水の再生産というのですか、こういうことにはもっと力をいたしていただきたいということを私はこの際強く要望いたします。外国では海水の塩分を抜いて使っているところもありますよ。こういう実験をやってもいいんじゃないか、やればできることです。そういう研究に金をかけないで、もうけ一方でそれを支持してきた通産省に責任がありますよ。この点はぜひお考えを願いたい。  私は、この間田子の浦港の視察に参りまして、大昭和製紙を視察したんです。ところがあすこで沈でん槽というんでしょうか、施設があるんですよ。そこでやるとあのヘドロで大騒ぎをしている水がきれいになって、このきれいな水を再使用している。それだけをなぜするかというと、その中に残ったヘドロですか、かすですね、これがちり紙等をつくるために、そのかすがまた使えるんだそうです。そのためにすばらしい施設があって、そこでぐるぐるやっていくとおしまいにはほんとうにきれいな水になる、それを工場で使っているんですよ。それならば、やはりもう少し研究していけば、企業が金を出せば、あのヘドロ問題は起こらなかったと思う。そういう点もあるし、再使用を現にしているんだから、これをもっと通産省あたりが指導されて、ぜひそういう方向へ進んでいただきたいと思います。私は、大昭和の例を見てこれだということを非常に感じた。もうかりさえすればやるんです。だから一つの義務規定を設けて、それで大企業に責任を持たせるというやり方が私は大事じゃなかろうか。いまの日本のやり方は企業優先で、国民不在の行政だといわれてもしかたないじゃないでしょうか。今度このヘドロ問題で企業責任を負わせるということがいわれておりますね。ところがこれに対して赤字だからとてもやりきれない、こういうことをしきりに言っておる。ところが大昭和あたり、ごらんなさい。伊豆から富士山ろくあたり広大な土地をべらぼうに買い占めておる。その金はどこから出たか、国民を犠牲にした産業のもうけからそういうものを買い占めて自腹をふやしているでしょう。こういう点でぜひ企業に対する指導というんですか、企業責任というものを明確にしてやっていただきたいと思います。  私は、きょうは下水道の問題とその再生産の問題を企業に指導していただきたいということを通産省にくどく申し上げます。それで新しいものを開発したときでも、それの処理ができるかどうかというところまでやはり親切に指導されて、さすが日本の政治は行き届いておるというようなことを諸外国からも評価されなければ、これはえらいことになるだろうと思うんです。ことに私が納得ができないのは、もうけ主義でなりふりかまわずに有害な煙を吐きっぱなしだし、あるいは有害な廃水もたれ流しだし、国民の苦情が出れば国民の税金で政府はこれを処理しようとする。私は公害ということばが気にいらないんです。外国では産業汚染公害のことを呼んでおりますよ。日本ではこれを公害といっている。それで国民の税金でこれを処理する、それも国民の中からこういう盛り上がる反対意見が出てきたから、やっと重いしりを上げたように思えるんです。  どうか厚生省も国民の健康を守る――ことに富士郡では最近異常産がふえてきたというようなことも聞いております。ぜひ国民の健康を守り、生活を守る、日本の産業はそれと見合ってやっていくのでなければ、公害対策は産業と何とか調和していかなければというそんななまぬるいことでなくて、ぜひ正しく御指導あらんことを特に要求いたしまして、申し渡されました時間が五十分でございますから、私はこれできょうの質問を終わりたいと思います。
  95. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 通産省と建設省、来ておられますか。――私、一問だけ関連してさしてもらいたいと思いますけれども、京都あたりでは、いま大阪の飲料水となっている淀川汚染というものがやかましく言われておる。特にまた京都ではいろいろ捺染の工場があるために、工業用水として使ったあとの非常にきたないのが淀川へ流されておる、こういうので、いま水質汚染の問題が非常に大きく京都、大阪では問題になっておるんですが、御存じのように、京都あたりでは非常に中小企業でこれをやっているために、土地の問題からも、また企業の規模からいっても、個々の企業じゃこの汚水を処理することができない、これがもう非常に問題だろうと思うんです。過日は参議院のこの社会労働委員会からも実態調査にそこへ行ったこともございます。いろいろな問題を見ましても、なかなかそれが処理されてない。結局どういうことになるかというと――いまちょうど両方の方がおられるからその点を聞きたいと思うけれども、私は、あれを完全にするためにはやはり下水道を完備して、下水によっていま言ったような終末処理をしてそしてきれいな水にするということがされない限り、なかなかあれを一カ所に集めてみることも、あるいはまたそれ個々についての防止処理ということもなかなかできないことじゃないかと思うのであります。先ほどから下水道の六十年あるいはまたこれから五十年の計画を聞いて実にさみしく思うわけでありますが、こういう状態ではなかなかもつてそういう根本的な問題には触れられないだろうと思うのでありますが、そういう点で、通産省の側からも、そういうふうな中小企業からたくさん出しているところの工業的なそういう汚水、こういう問題に対してもっともっと積極的な処理方法というものを下水道と結びつけてやる必要があるんじゃないかと思うんですが、そういう点はどういうふうに見ておられるのか。それからまた、下水道を完備するための計画の中には、やはりそれを利用する事業主から負担金が入れられて、そして下水が完備されるような方法に前進することはできないのか。企業負担ということをそこに入れるべきである、もっと強く入れるべきではないか。そういうことによってもしそういう中小企業あるいはまた企業汚染というものが防止できるならばよりベターではないかと思うのですが、そういうことに対してもっと積極的なプランニングなり、将来のビジョンなりというものがどうあるかということを一言聞いておきたい。
  96. 説明員(児玉清隆君)(児玉清隆)

    説明員(児玉清隆君) ただいま御質問ございました特に京都地区の捺染業者、これの排水の問題が一番根っこのところでございます。昨年「一日通産省」を京都で開催いたしましたときも、現地の業界からも特に強い要望がございまして、一番ネックになっておりますのは公害処理技術及びそれをあらわしております施設の問題でございますが、なかなか中小企業向けという手軽なものがございませんで、敷地が非常に狭隘化しているということで、もう根本的には、私どもの意見もそうでございますけれども、下水道の整備、まずここに求めざるを得ない。ただ、これにつきまして、もちろん政府部内でございますので、建設省のほうにもいろいろお願いをしておりますけれども、それだけで済む問題でございませんので、何らか手軽な処理技術をまず開発させよう、そういうことが一つと、それから、できればあそこで黒川さんのところがございますけれども、あそこのように若干処理施設をすることができるような中堅以上の企業につきましては、やはり処理施設をつくってもらうということを並行してやはり進めていく必要があろうということでございます。特に、あそこから全部染色屋さんにほかへ移っていただくわけにはなかなか簡単にはまいりませんし、やはりあすこの地区で公共的な側面と、それから私的な処理施設を拡充する、これについては私どもも知恵をかしていろいろやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  97. 説明員(石川邦夫君)(石川邦夫)

    説明員(石川邦夫君) 京都市の下水道、現在鋭意努力しておるのでございますが、なかなか先生御指摘のとおり進捗してないということであります。われわれといたしましては、これはただいま通産省のほうからございましたように、一定以上の悪質なものにつきましては企業側で負担してもらって、そうしてそれを処理しまして、それから普通の家庭汚水以上に多量にそういうふうな質のものを出す場合におきましては、水質料金といいますか、そういうものでもって処理するというふうな方法を考えておるわけでございまして、除害施設、できるだけ処理できるものはこちらに引き受けて、ただ、そういうものを料金面でもって普通の家庭下水とまた別の形でもって負担してもらうというような方法をあわせて考えてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  98. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 いま料金で云々と言っているんですが、私の言うのは、その施設に対しての、いわゆる下水施設をするときに負担金を取ってやるべきであるという考え方であって、いま京都の下水の状況聞いていたら十年はおろか三十年ぐらいたたなきやなかなかできないというふうに言われているわけでありまして、そんなような状態で放置しておいては、一方でその水を飲んでるわけですから、もっときびしいものがあってしかるべきではないかと思うわけですよ。ですから、その料金どころの云々じゃなくて、もっとその施設拡充のためにはどれだけの負担を持つ、国はどれだけの負担を出すということでやらなければ、これはもう人間の命に関係のある問題だと思うんですね。ですから、これが下水でもって処理しなければできないというのならば、これはもっとそこのところをきびしく考えてもらった将来に対する展望の計画を立ててもらわぬ限り、いまのような状態で流しておいてはとてもならぬと思う。通産省のおっしゃっているように、何らか処理施設を考える――黒川工業のしているという、個人的な工業に対して云々をするわけじゃありませんけれども、いままでの本工場に対してはあんまりやっていなくて、いなかのほうにつくった分工場にサンプル的なものができているだけであって、全部移動してやればああいうふうなこともできるかもしれませんが、いま現在ではできないということがむしろかえって証明されているようなものですから、そういう点を考えたならば、そんなふうに何とか処理をすることを考えるとか、あるいはまた下水道の拡充に対しても、そういう手ぬるい考え方ではならぬので、いま淀川の水質汚濁の問題というのは相当深刻なものじゃないかというふうに考えるわけです。これは必ずしも京都市ばかりじゃなくて、まだほかの県等からも出ておりますけれども、一番大きな都会が中間にあるということは、その河川に対する責任はやっぱり大きく取らなければならぬ。こういう問題は一京都市だけではできないと思うわけでありますから、国がやっぱり相当大きなバックアップをしなきゃならぬ。ほかにもやらなければならぬところがたくさんありますけれども、大阪のあれだけ大きな人口が飲んでいるわけでありまして、そこらのところはひとつ十分考えなければ、健康の問題がたくさんあると思います。これは建設省、通産省及び厚生省のほうにおいても、これを特にひとつ考えてもらわなければいかぬし、特に飲料水の問題から考えるならば、厚生省のほうにおいても大きな問題としてやらなきゃいかぬ。いま、どちらかといえば、こういう公害問題とかあるいはまた汚水処理の問題というものが非常にばらばらになっているわけですから、なかなかそれがうまくいかぬと思うわけです。もっとそれが一つにまとめて効果があらわれるような方向、金を出す方向をひとつ明確にしてもらわなければいかぬと思いますので、そこのところをひとつ十分に把握してこの問題に取り組んでもらいたい、強く要望しておきたいと思います。
  99. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 私、さっき質問急いで落としちゃったんですが、大臣、東京の多摩川が非常によごれちゃってもうこれ以上薬で処理ができないというのが新聞に出ていますね。これはたいへんなことだと思う、上水道。これらに対してどういうふうな対応をされるか、どうして飲料水の確保をされるかというようなことを私はこの際聞いておきたいけれども答弁すると時間がかかるでしょうから、いずれはいつかの機会に明らかにしたいと思いますから、責任ある回答を用意しておいてほしい。これはたいへんなことで非常に不安を持っておりますから、どうぞひとつその点お願いします。
  100. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 私は、前回の質問に引き続いて、援護行政に関する質問を行なうものでございます。  すなわち昭和二十年にブーゲンビル島で死亡した第十七軍第六師団第二十三連隊第七中隊所属の陸軍軍曹吉池袈裟次の援護法による遺族年金及び弔慰金の申請が却下されて、その決定資料となった有村大尉が作成したといわれる死亡者一覧表に記載された死亡原因が実に疑問にたえない。こういう事実に基づいて、私は、援護行政の迅速な円滑な、そして公正な推進ができるように大臣にお願いしてこの質問を続けたいと思うのです。  まず第一に、私は次のことをお伺いしたい。長野県の中野市の先ほどの陸軍軍曹吉池袈裟次の遺家族でありまする吉池きよ子より提出されました遺族年金及び弔慰金申請が昭和二十七年十二月六日に出された。この申請に対して昭和二十八年十月三日に却下の通知が遺家族に届いたわけです。この間約十ヵ月で、吉池きよ子はその却下に対して不服でありまするので、不服の申し立てをしたのが昭和二十九年の四月二十八日。これを計算してみますと、今日、昭和四十五年九月現在で十六カ年四カ月余の、いな十七カ年もの月数を経ておるわけです。私は実に不可解きわまる援護行政のやり方であると考える。さらに私は先般この問題に関する質問の一端をやったわけでありまするが、そのときに援護局長昭和三十四年にこの不服申し立てを受理していると答弁されております。かりに昭和三十四年に受理したとするなら、二十九年に提出した書類はその間一体どこをどうさまよっておったのか。さらにその受理されて以来今日までどれくらいたっているかというと、五年間もたっている。私はこれが援護行政であろうかと疑わざるを得ない。この点を大臣御承知でありますか、まずこの点からお伺いしておきます。
  101. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) たいへん武内さんからの御質疑が具体的な案件でございまして、私は、まあ厚生省の責任者ではありますが、こうした一つ一つの具体案件につきましてはそれぞれ関係当局をして処理せしめておるわけであります。もちろん私にいろいろの面での責任はあるわけでございますが、その具体的な処理につきましては援護局長から答弁をさせていただきたいと思います。
  102. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) ただいま先生が御指摘の点につきましてお答え申し上げます。  二十九年に不服申し立てが出まして、当方には三十四年に、七月でございますが受け付けております。この間まあどこで時間を食っておったのか、おそらく長野県でいろいろの準備をされておったのではないかという推測をしているわけでございます。しかしながら三十四年から現在まで約十年くらいの年月がたっております。仰せのとおり、非常に長くたっていることにつきましては、担当局としても非常に遺憾だと考えておりまして、申しわけなく思っておりますが、いろいろ複雑な事情を含んでおるという点で非常に長年月を要したこと、それから四十一年からは類似案件につきまして、これは法律的にも確定したものでございますけれども、いろいろ陳情その他が出ておりましたので、それらの調査等もやっておりましたために現在まで引き続いてこの案件が検討されてきたという事情があるわけでございます。
  103. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 長野県で停滞しておるということは、私は実にこれこそ疑問に感ずる。これはいずれ明らかにしたいと思います。  さらに驚くべきことがある。それは昭和四十一年にブーゲンビル島で戦った第二十三連隊の連隊長をはじめ当時の将校、戦友たちが連名で死亡事実更改に関する要請書を長野県、宮崎県及び援護審査会あてに提出しておる。ところが奇怪なことにこの書類が行くえ不明になっているらしい。これは昭和四十五年五月三日朝日新聞の「戦友が無実を証明した書類が行方不明に」という見出しで記載された記事であります。そういうような奇怪な事実がある。しかも長野県、宮崎県ではこの要請の妥当であることを認めて厚生大臣の決裁を求めるために援護局調査課に書類を回送したが、援護局からはナシのつぶてで何の返事もなかった。これは長野県では長野県厚生課で昭和四十一年四月二十二日付で援護局へ送付している。宮崎県援護課では昭和四十一年六月二十七日付で厚生省援護局に送付しているわけであります。長野県はその上に係員を二回援護局に派遣して、早く書きかえの措置を要請に基づいてできるように援護局に具申しているわけであります。ところが援護局では、いやそれは調査中なんだと、こういう返事を繰り返すだけであった。結局再三の具申、陳情に対して、県はそんなことに口を出すな、こう言ってくぎをさしたと、さらにこれについて西村調査課長は次のように語っている。そのような書類を受け取った記憶はありません、記録も調べたがなかった、こう言っておるわけであります。実際に書類が行くえ不明になっているとするならば、援護業務の私は驚くべき粗漏であると言わざるを得ない。そうでないとするならば作為的なことであって、全く許しがたい官僚独善のしわざであると言わざるを得ないと考えるんであります。私は、これらの西村調査課長の話等と、このくぎをさした事実等から考えて、書類を知らないはずがないと考える。しかも二回にわたって長野県から係員が要請に上京しておることを考えて、全くこの事実を知らないはずがないと考える。私は赤紙  一枚で戦地におもむいた兵士の遺家族をあたたかく抱いて更生援護する業務をになっている厚生省援護局のこれが行政の姿だとどうしても考えられない。私は、だから最初援護行政の公正な、迅速な、円滑な推進を希望する立場からこういう質問をするんでありますので、どうか大臣ひとつこういう事実があったかどうか、大臣のお考え、これからどうしていくかを承りたい。
  104. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、これは一つ一つの具体例でございまして、私が調べます場合には、どうしても援護局長を通じまして省内の担当官に状況を聞く以外にはございません。これまで私が援護局長から報造を受けたところによりますと、この案件につきましては、今回法律が改正せられる以前の年金を支給されない事態に該当するような資料が主でございまして、したがって年金の給付の手続が進められなかったと、しかしまた一方におきましては、だんだん時代の意識も変わりまして、こうした案件に対しても年金を支給するように援護法の改正を行なうべきであると、こういうようなふうに考えられてまいりまして、国会におきましてこの事案を含む案件につきまして前向きの処理ができるようになりましたので、既住の処理は別といたしまして、この吉池さんの案件につきましては改正された法に準拠して年金の手続が進められることになりました、こういう実は報告を受けておるわけでございます。従来の経緯は経緯といたしまして、法の改正によりましてこうした案件がカバーされることになったことをもって私は愁眉を開きまして、よかったとこう思っておるわけでございます。
  105. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) ただいま武内先生の関係者からの書類の問題につきましては、当方には宮崎からの原本は保管してございます。それから長野県からのものにつきましては、実は写しを私どもは長野県から受け取っております。この件につきましては、西村調査課長が存ぜぬと言ったと先生仰せられましたけれども、いつの時点で調査課長がその点を言ったのか、少なくとも現在はその点は部内ではよく意思疎通がはかられている、その時点でたまたま調査課長がその書類を見なかったのかどうか、そこはつまびらかにできませんけれども、現在ではそういう事情でございますので、一応両方とも書類につきましては当方は一部は写しを受け取って、両方承知いたしております。
  106. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 元来、不服申し立てに対する援護処理方法でいろいろな疑問とうわさが世間に流れております。たとえば、いや、あの援護局へ不服の申し立てをしたってそれはもう審査をしないんだ、こういううわさが流れておる。全くおかしい話なんですが、それからどんな有利な資料を追加提出しても、これはもうさきに却下した当時の資料を金科玉条のごとくに守って、それ以外のものは目をつぶって審査しないのだといううわさが流れておる。私はそんなことはあり得ないと考えるので、そこで公明公正な審査を要求する立場から次のようなことをお尋ねしたい。  その金科玉条のごとくに堅持されておりまする有村一覧表、これは「歩兵第二十三連隊等死因未詳者状況一覧表」という名前。ここで私は次のことをお尋ねしたい。有村大尉はいかなる資格でいかなる権限をもってこの一覧表を作成したのか、これが第一点。しかも第二十三連隊連隊長、第十七軍司令官等は本土へ帰還しているわけであります。軍の責任者が帰還しておって、一中隊長が部隊に関する報告書をどうしてつくる権利があるのか。私は実にこれは機構上からいっても考えられない問題だ、それが第一点であります。  第二点は、この有村大尉が作成して提出したという一覧表はどういう名前かというと、先ほど申し上げますように「歩兵第二十三連隊等」と「等」がついている。これは有村大尉が第七中隊の中隊長であるから、自分の統率する中隊であるならば私は権限があると思う。それが自分の統率する中隊の範囲をこえて、ほかの部隊、しかも「第二十三連隊等」となっているから、二十三連隊以外の者も含めた報告書であることが考えられる。一体そういう権限が一中隊長にあったのかどうか、私はこの点に最も大きく疑問を感ぜざるを得ない。有村大尉が第十七軍司令官神田正種中将の委嘱を受けたのか、第二十三連隊連隊長福田環中佐の委嘱を受けたのか、その点が全く不明確であります。その点が第二。  私は時間がないのでまとめて申し上げます。しかもこの有村大尉が作成した一覧表について有村大尉自身がこう言っている。復員の際、帳面上の人員と現在員との差について、私の印鑑で事務下士官に全部処理させた、部隊としては何とか形をつけて復員したというのが事実で、これらの責任は全部私にありますと、こういう報告であります。しかもこの有村大尉に協力してその一覧表作成に当たった原口准尉が、これもまたこういうことを言っている。憲兵隊から部隊へ通報があれば、それが口から口へ伝わって死刑ということに結局なってしまう。だから吉池君の刑死は決して確率甲というわけにはいかない。それは事実刑死だとはっきりしていない、つまりうわさとかあるいは想定ともいうべきものでございます。さらにこの原口准尉は、二十三連隊主計中尉の高橋久能という人に次のようにまた語っている。このことは終戦後上陸地でつじつまを合わせるためにつくったもので、軍法会議からの通報や何かではなくて、いろいろな人のうわさや何かを、話し合いを集めてつくったものでございます、こういうようなことを言っておる。私は、そこで作成に当たって有村大尉がいかなる権限でそういう報告書をつくったのか。その報告書に、このような作成者自身が言っているものに信憑性があるのかどうか、私はその点からまず入っていきたいと考えております。さらに福田連隊長は何と言っているかというと、これらの者は後日いろいろな形で処理されたが、もし処刑に関する書類があったとすればこれはまさに終戦後の事務処理の要求に基づいた作文にすぎないと、こう言っている。そうして軍司令官が何と言っているかというと、福田君が言うように、私は軍法会議の残存書類等もあったことは全然知らない、こういうようなことを言っておるわけであります。軍司令官も知らない、連隊長も全然知らないことが、一中隊長によってつくられたその一片の一覧表というもの、その一覧表によって兵隊さんに死刑のらく印を押し、その兵隊さんの遺家族を出口のない牢獄で泣かしているということは、私は援護局が一体どういう仕事をやっているのか疑わざるを得ない。この点どう考えますか。
  107. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) 私どもは、戦後処理の問題、すなわち戸籍上の問題あるいは恩給権のいろいろ通算その他基礎の問題、そういうものは書類に基づきましていろいろやっているわけでございますが、それの根拠となるべきものは外地部隊の留守業務規程によって私どもはやっております。これはたぶん勅令に基づきます陸軍大臣の訓令に基づくものと思いますが、そのおもなものをあげますれば、留守名簿、それから死亡者連名簿、それから生死不明者連名簿、そのほか、各県に復員のときに通知いたします戦時死亡者生死不明の件等につきまして、そのほか死亡者留守宅渡し停止相なりたくというような通牒等がそれぞれ県に出されておりますが、そういうもろもろのいわば公文書によりまして私どもはその処理をいたしているわけでございます。  先生が何か一覧表というふうなことをおっしゃいましたけれども、私ども厚生省援護局としては、その一覧表というふうなものに基づいてやっているわけではございません。この死亡者連名簿、留守名簿その他の書類につきましては、それは部隊長、連隊長だと思いますが、それが復員庁のほうに正式の書類として提出したものでございます。いろいろ上官の方がこの書類につきましてお話しになっている点につきましては、私どもはそれなりのいろいろの背景についてはよく事情はわかりますけれども、私どもとしては、いま申しましたその諸般の文書によりまして処理をいたしているわけでございます。
  108. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 一覧表というのが誤解があるならば、死亡者連名簿でけっこうです。ただそれが一覧表というもので表示されているから私はそう言うだけです。では、この一覧表について今度お尋ねしたい。  そこでこの連名簿に記載されている吉池等の死亡年月日についての問題であります。まずそこから入ってお尋ねいたします。私はこの死亡年月日がまことにこの事件を解決する重大なかぎであると考えます。ところがこれが人によっていろいろまちまちだ。有村大尉の報告によれば、吉池らの二人の死亡は昭和二十年八月十二日であるとされてあります。ところが、私はここに重大な発言者が出てきたことを御指摘申し上げたい。それは私が殺しましたという憲兵が出てきました。私が吉池ら下士官の死刑を執行しましたとみずから語っております。それによると、処刑の数は三名と記憶している一これはその人が殺したのは三名と言っているけれども、まあ三名でもいい。このブーゲンビル島から約二千メートルくらい離れたムグアイという孤島で、無人島であります。ここへ漁労に出るようなふうに誘い出して三名を死刑にしたというのであります。そのときに特に吉池はきわめて平気だった、死刑におびえるような恐怖や不安を感ずる様子はいささかもなかった、ほかの諸君も大体そのとおりであったが、多少ほかの二人は何だろうかと、こういうような不安げな発言もあった、ところが吉池は、なにたいしたことはないから行ってみようじゃないか、こう言って立ち上がった、ムグアイ島に行くや穴を三つ掘って、目隠しをしてうしろ手に縛りあげて、一名一弾で至近距離で射殺した、拳銃は――ここですよ。拳銃は豪州軍から借りた、たまは豪州軍からもらった、こういう証言です。これを考えると、八月十二日は終戦直前の日だ。豪州軍と相通じて銃を借り、たまをもらうような状態になったのは終戦後であるに違いない。私はここに大きな食い違いが出てきておることを発見せざるを得ない。さらにその憲兵は何と言っておるかというと、処刑の月日ははっきりしませんけれども、九月中旬以降だと記憶している、そこでさらに彼は言っている。陸軍刑法のどの条項を適用して殺したらいいかをいろいろ協議した結果、すなわち上官殺害というと殺した相手を見つけにゃならぬ、これは不可能だ、一番証拠の残らない敵前逃亡にすることにきめたんだ、こういうようなことを言っておる。そうしてまだ重大なことがある。このことについてはいまでも上司に一いまも上司があると言えるのかどうかわからぬが。いまも上司だった人々から、真実を語るなとときどき連絡がある、これはだれが語ったかというと、新潟県北魚沼郡小出町伊藤栄一という、この人もブーゲンビルの十七軍主計曹長で復員してきた人であります。しかもこの憲兵は同じ新潟県の出身であるところでよく知り合っているわけであります。こういうようなまことに重大な事実食い違いが出てきている。一体これをどういうふうに解釈したらいいのか。私は、したがって有村報告書の死亡年月日から考えて、そこに大きな作為が用いられておることを考えざるを得ない。しかも、これについて次のような事実がさらに明らかになってきたわけです。豪州軍によって日本軍の兵器や食糧が押えられた後のことでありまするが、食糧と日用品の配給は現在員と在庫数量の「日計」が豪州軍に毎日報告されなければならぬ。この仕事をやっておったのが主計曹長伊藤栄一。当時憲兵隊に拘禁されている者のうちで四名の死亡者を隠し、死亡者の配給分を憲兵隊が取って食っておった事実が明らかになりました。主計曹長の伊藤君が非常に憤慨して、この憲兵隊に対して、過配給分、配給分の規定量をこえた分をこれからの配給から減らしていくことを申し渡した。たいへんろうばいした憲兵隊が同じ新潟県出身の憲兵を伊藤君のところに陳謝によこした。伊藤君は、ここでこういうようなことをやってはいかぬ、いやしくも軍兵士が一日七勺の配給で腹を減らしているときにそういうようなことをやってはいかぬじゃないかということで、過配給分の相殺を減量によって相殺することに話をつけた。そのときその憲兵隊が死亡者の分を食っておったという事実から考えて、やはりこれも終戦後であって、日にちが全然有村大尉報告書と合わぬことになってくると考えざるを得ない。しかも、いろいろな報告によりますると、もう一つ憲兵からの手紙があります。これは熊本県八代市の人で憲兵の曹長をしておりました。その人がよこした手紙には、私は十七軍司令部付憲兵でブーゲンビル憲兵隊長として終戦を迎えた者ですが、軍法会議の判決で死刑の判決を受けた者は一人もありません、私も現職当時相当の逃亡者を逮捕しましたが、一応取り調べて終了後みんな部隊に帰しました、二十年八月十二日は軍法会議を開くような状況ではありませんでした、これは憲兵です。こういうような事実が出てまいりました。有村大尉報告のまず日数が違う。事実が違う。こういうようなことが出てまいりましたので、一体何によって援護局はこの援護審査を進めてきたのか、疑わざるを得ない。そこで時間がないといってはたいへんだから、もう少し内容に入っていく。  そこで、この公判があったかどうかということ、軍法会議が開かれたかどうかということについては、もう私はいろいろなそういう人たちの報告を見ても、全然なかったと考えざるを得ないし、その有村報告の事実を疑わざるを得なくなってくる。まず第一、吉池らが逃亡したというならば、逃亡調書というものがなければならぬはずなんです。これがあったかどうか、第一。第二は吉池らが死刑に処せられるにあたっては、少なくとも一兵士といえども軍法会議を開いて公判調書を作成して判決文に基づいて死刑の執行がなければならないはずだ。これが軍法会議法第百十二条で規定されている。この事実があったかどうか。さらにかりにあったとして、死刑を執行するならば、死刑執行始末書というものをつくらなければならない。これは軍法会議法第五百六条によってそう規定されております。こういう事実があったかどうか。私はまずその点を明らかにしていただきたい。  そこで私は次のことをつけ加えたい。日本は法治国である、日本の政治は法律によって公正に執行されなければならないものだと考える。いわんや官吏はそういう法律に基づいて忠実に行政に当たらなければならぬものであると考えざるを得ない。ところが一片の一中隊長の報告だけにたよって、法律できめなければならぬ公判調書、判決文及び死刑執行始末書の不存在について一体どう考えるか。何によって吉池らが敵前逃亡をやって死刑になったというらく印を押すのか、私はその点をお伺いしたい。
  109. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) お答え申し上げます。  第一の時日の点でございますが、先生はムグアイ島とおっしゃいましたが、私はファウル島ではないかと思うわけでございますが、終戦後ファウル島におきまして先生がおっしゃったような上官殺、あるいはそこまでおっしゃいましたかどうかわかりませんけれども、そういう事犯がありまして、処刑をされた方があるようでございます。これについては判決書が残っているようでございます。そのことと当該事件の八月十二日とがどう混乱されているか、あるいはどうされているか、そこのところは明らかにされませんけれども、当方の書類としては八月十二日ということになっておりまして、別にまた二十一年にファウル島でそういう事件があったことは私ども聞き及んでおります。  第二点、軍法会議があったかどうかという問題につきましては、八月にこれは有期刑でございますが、受けまして、長崎で戦後釈放された方もおりまして、判決書もこれは保存がございますので、これは一部判決書が豪軍にとられたというような申し立てもございますが、このブーゲンビル軍の中で軍法会議が行なわれたという事実は証明できると思います。  それから先生が一中隊長の書類だけで権威のないもので処理しているではないかと言われますけれども、再三先ほどから申しますように、この部隊の責任者は連隊長と思いますが、陸軍大臣の命令によりましてつくりました諸般の文書によりまして、私どもは二百万の戦死者の恩給権あるいは戸籍等を処理しておりまして、決していいかげんな一片の書類によってやっているというふうには思いません。もちろんいろいろ複雑な事件等がありますので、そういう点につきましては、もちろんいろいろな証拠がありますれば遺族のことも考えまして手厚くやっているわけでございます。何か援護局が非常に冷たいというようなことを冒頭に申されましたが、少なくとも私どもは他の官庁と比しましてそういうことはないと、さように確信しております。
  110. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 そこなんです。いやしくも人間の生命を支配する人間の人権に関する問題を処理するのに、人のうわさで処理することはもってのほかだと私は考えます。これを処理する有力な国家の機関によってつくられた明らかな物証でなければならぬと考えます。一体それがないじゃないですか。人のうわさで抑留する、その当時の兵隊のうわさを聞いてやるなんということはもってのほかだと考えております。しかも、その当時の裁判官十何名かが何と言っているかというと、ある第一の人は、下士官吉池らという者は聞いたこともない、死刑者は一人もありませんでした、これが一人。第二は、私は逃亡者ばかりとらえて裁判いたしましたが、終戦後のことであって、一律に禁こ三カ月で、死刑は一人もありませんでした、こういう人。さらに第三、これは副官で裁判官をやった人ですが、私は第十七軍の副官として、また同臨時軍法会議判士として、吉池らの事件や類似の事件があった記憶は全然ありませんと。さらに第四、これも裁判官、刑死があったということは何かの間違いではないですか、これが第四。第五、食糧収集のため出されて、姿が見えなくなればその当時逃亡と考えられていたのだ、こういうことを報告している。これも裁判があったかどうかは触れていない。第六、これも裁判官の態度、吉池という下士官の被告人については聞いたこともない、死刑執行があったということも全然知らない。第七、これも判士、吉池という下士官の刑死について全く記憶がない。第八、吉池らの事件については全く知りません、こう言う。しかも事件の摘発、逮捕、拘禁、死刑の執行に関する責任者でなければならない第十七軍憲兵隊長伊藤太一憲兵少佐――これははっきり言っておく。憲兵隊長でさえ次のように言う。職務上私は死刑を執行したということを隠すことはできません、しかし吉池ら軍曹を処刑したという記憶はありません、これは先ほど申し上げた伊藤栄一君に対してこの憲兵隊長が手紙をよこした中でそう言っている。下士官の氏名の記憶は最もないし、そういう死刑を執行したということは全然知りません、こういう手紙もある。こういうふうにしてこの事件処理関係者がそういうことはなかったと言っておる。そのほか副官の陸軍少佐の判士で判士長をやった人、その人も、私の裁判担当中の被告の氏名は全然記憶がないが、軍法会議が開かれないことだけはたしかである、こう言う。こういうように裁判関係者が軍法会議をすら開かなかったということを言ってあるのに、しかも最も肝心な公判調書がない、判決文がない、死刑を執行したという死刑始末書がない、一体何によって死刑という人間にらく印を押しているのか、私は援護行政の本質を疑わざるを得ない。しかも、局長はいまそういう業務を処理する規程というものは復員業務の規程によってやったというのですが、これは一体法律であるのか、法律じゃないじゃないですか。業務規程なんだ。業務を処理する規程だ。しかも法律によってつくられなければならない公判調書や判決文、死刑執行始末書というものはないにかかわらず、業務処理の規程を唯一の金科玉条としてこれを堅持していくというのは、私は実に疑わざるを得ない。しかも、これはこの業務処理の規程というものは、第二次世界大戦以前につくられたものだ。日本の軍隊が不敗の戦いを続けてきた当時の復員規程だ。軍旗ひらめくもとで戦勝にかがやく将兵が日本へ帰ってくるときの処理規程じゃないか。敗戦における混乱の処理をこんな当時の古い規程で処理するなんというのはもってのほかだと思う。ここで今日なお援護局には戦争の化石がごろごろしているのじゃないかと考えざるを得ないとよく言われている。私も行ったことがあるのです。かつて市ケ谷に援護局の業務をやっておった役所があった当時行ったことがある。全く軍隊に来たかと疑わざるを得なかった。今日なおいろいろなうわさを聞くと、援護局には憲法がないのじゃないかということを言われている。民主主義憲法がないじゃないかとさえ言われている。私は今日ではそういうばかな話はないと考えるのであります。そういうことはもう一切改めたほうがいいのじゃないかと思う。一体これについてどう考えますか。大臣、この行政はひどいです。
  111. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) お答え申し上げます。先生の御議論に対しまして御意に添えなかったことは残念に思いますが、軍法会議がなかったという方もいらっしゃるようでございますが、当方には軍法会議のあった、もちろんこれは一般論でございますが、あったという証拠もございます。それから御推察のように、非常に戦いの激しい、しかも大混乱の時代、また戦地でございますので、法務官等もいろいろかわっているようでございますので、その点はいろいろ御理解いただきたいと思うわけでございます。それから一片の中隊長の書類と申しますが、これは軍に関しまする勅令によりまして留守業務規程は陸軍大臣が定めるようにいたしておりまして、先生が申されるように形式的には法律ではございませんけれども、これはいわば現在で言いますれば、私どもの人事を扱っておる一つの規程と同じように、軍人に関しまするいろいろな人事規則でございますので、これは外部との権利関係を規定するものではございませんで、法律でなくて、勅令によって定められている、陸軍大臣がこれをきめたというふうに御理解いただきたいと思います。この留守業務規程によりまして、私ども二百万の戦死なすった方のいろいろな戸籍上の問題、それから恩給その他の問題を処理しているわけでございます。
  112. 武内五郎君(武内五郎)

    武内五郎君 そういうことはもうだめなんです。信を置きがたい。第一に戦死した説さえ出ておる。吉池らがりっぱに戦死いたしました、こういう証言をしておるものも出ておる。しかも、これは同郷から同じように銃をとって戦死に行った人も二人そういう証言をしておるし、同郷でない人も、第七中隊が敵に切り込みをやって七十数名全滅と、こういうことも言われておる。これはもう態本県、宮崎県の兵隊だそうです。だから、だんだん考えてみると、どこに信を置いていいのかわからない。私は、信を置くものは、いやしくも法律によって国家の機関がつくった書類に信を置くよりほかないじゃありませんか。それをいくらそのうわさがこうであった、兵隊の帰ってきたのがいるから話を聞いたら、いやその報告が正しいものでございますと、こういうようなことは、これはもう政治をとる国家の機関の発言では絶対ないと思う。  時間がなくなりましたので、私は残念なんです。そこで私はよく大臣に承っておいていただきたいと思います。以上のようなことで言いたいことがまだたくさんあります。第一、その有村報告を出した後に有村という人が何と言っておるか。私はそういう報告によってらく印を押された人々の亡霊が夜な夜なまくら元に立つ、しかも、いっこの事実を究明されるか、そのために政府機関に呼び出されることを心配しておる、まくらを高くして寝ることができませんと。私は、こういうような精神の平衡を失った報告というものに信を置くなんということは、もう考えられるものじゃないのじゃないですか。いやしくも国民の生命、国民の人権を預かる政府によってこういう行政がとられたことが実に残念です。こういうケースはまだまだたくさんあります。そこで、こういうケースがたくさんあるから、あえて私は大臣に訴えたい。あくまで、援護行政はもちろん、日本の政治というものは人間の尊重、人権の尊重という立場に立って、しかもそれが法を厳守するという立場を堅持しつつ行政の執行に当たらなければならぬと思う。それが全然無視されつつある。こういようなことで吉池らに逃亡の罪ありとかりにするとしても、罪三族に及ぶという封建時代以前の野蛮な観念に盲従して、罪のない遺家族を出口のない牢獄に苦吟をさせるというようなことはあってたまるものじゃない。こんな悲惨な政治があってはならぬと思うのであります。しかも幾百万の同胞の生命が戦場にさらされておるかはかり知れない。そうして日本の国の財貨が破壊されてしまった。そういう戦争を指導した人たちが国に帰ってきて恩給を取っているじゃありませんか。国の恩典に浴している。そういう事実を考えて、信憑性のきわめて乏しい一片の報告書にこだわって、父や夫を家庭から奪い取っておる、人間の極限に追い込んでおる、困苦の限りをなめさせて、戦場の露と消えた多くの人々がどれだけあるかわからない。しかもそれにらく印を押して遺家族に重い十字架までしょわせるというような、私はそういう政治があってはならぬと思う。私は大臣にお願いする。こういう事実を一日も早く処理してしまう、きれいさっぱりにして終戦処理の実をあげていただくことを、私は今日ここでもう時間がないからお願いしておきます。
  113. 説明員(武藤琦一郎君)(武藤き一郎)

    説明員武藤琦一郎君) 時間がございませんので、とりあえず私から前座をつとめさせていただきます。武内先生のいろいろのお話、私ども非常に感銘深く承っておるわけでございますが、この援護法ができまして、それから恩給法が復活しましていろいろ亡くなった方の援護というものは、当初は、おっしゃるとおり、十分ではございませんでした。その後やはり生還された方、関係された方は、何とかしてこの関係者を救いたいということでいろいろ私どもに陳情にお見えになりました。その間いろいろ矛盾もあり、あるいは前言をひるがえされたりいろいろ事情がございまして、なかなかこの事実関係をはっきりするということは非常にむずかしいわけでございます。それで、私どもとしては、やはりこういう問題は制度的にすべて解決していただきたいという態度で今日までまいってきたわけでございますが、当該事件につきまして、ことしの国会で改正になりましたけれども、この改正の時期が決して早くなかった、むしろおそきに失したという点につきましては先生と同感でございます。援護局といたしましては、今後まだ取り残された方も若干ありますから、こういう方々につきましては、早く制度改正をお願いいたしまして前向きで遺族援護に取り組みたいと、かように考えます。
  114. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 えらい時間がないようでありますから、ひとつ答弁のほうも要領よく簡潔にお願いしたいと思います。  きょうは、九月十五日の敬老の日を前にいたしまして、老人問題について、特に高齢者対策について政府のお考えをお聞きしたいと思うわけであります。  昭和四十六年度の厚生省の予算の概算要求の出た時点で厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思うわけでありますが、この七〇年代に向かって厚生行政のビジョン、あるいはまた重点施策というものをひとつ厚生大臣としてどうお考えになっておるか。しかも、この老人の人口がふえようという現段階においてこれを重点施策としておそらく考えられておると思うわけでありますから、その厚生行政のうちの重点施策の中でこの老人対策というものをどういうふうにお考えになって、どういうふうなビジョンを持ってこれから七〇年代に向かって進められていくのか、こういうことをひとつお聞きしたいと思います。
  115. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 私は六十歳を過ぎました老人だからというわけではございませんが、広く最近の現象を考えまして、老齢者対策というものは現在と昔と考え方を変えていかなければならない事象が多くあらわれてまいったと思いますし、そのことは今後一そうその傾向を顕著にいたすと思います。簡単に申しますと、第一に、諸外国では百年以上もかかったような人口老齢化の現象が、もう私ども御承知のような事情で、わが国におきましては二、三十年の間に同じような事態が生じつつあります。つまり老齢層の割合が非常にこの十年、二十年の間にふえてくるということと、もう一つはこれは非常に大切なことだと思いますが、いままで家庭福祉として取り扱われた老齢者対策というものが核家族というような現象で考えられますように、これがどうしても社会福祉の問題として取り上げなければならないような事態にまいってきておる。つまり量質ともに老人の福祉対策というものは大きな政治課題になりつつあると私は認識をいたすものでございます。しからばどういう角度において処すべきかということをいろいろ考えまして、明年度の概算要求も準備をいたしております。その一つは、所得保障の問題あるいはまた医療保障の問題もございます。さらにまた老齢階層がふえてまいりましたけれども、平均年齢は高くなっておりますことでも示されますように、元気で社会参加ができるような老齢者がたくさんございますので、こういう人々に社会参加の意識を持っていただくことも私は老齢者対策の一つの大きな柱であるべきだと思います。しこうして、そういう中におきまして私どもが一番悩みますことは、やはり老齢者の多い中で老齢者だけの家族の数も非常にふえてきているということ、中には一人暮らしの老人さえもかなりの割合を占めておる。また他方においては身動きのできない寝たきり老人の方々もふえてきておることでございまして、それぞれいま申しましたような角度に着目をいたしまして、それぞれの制度上あるいは予算上の施策を立ってまいりたいと思います。また施設などにつきましても、寝たきり老人などに対して特別養護老人ホームというものの割合が私は少な過ぎると考えますので、そういう施設につきましてもできるだけの配慮をいたしてまいりたいと思います。また、このことは国会やまたひとり政府だけの意識の中で発展させることなしに、国民全体としてこの問題を取り上げたいということで、私どもが主唱をいたしまして、今月の二十日、二十一、二十二日の三日間にわたりまして、日本では初めての試みでございますが、名前は適当かどうか知りませんが、老後を豊かにする国民会議というようなことを仕組みまして、総理大臣にも御出席をいただき、むしろ総理の主唱という形にいたしまして、いま私が申し述べましたような事柄につきまして、広く国民の間の有識者の意見を取り上げたり、またこの問題につきまして民間ボランティア等も含めました解決の道をも開いてまいりたい、こういうような試みもいたしておる次第でございます。
  116. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 仰せのように、やっぱりこのごろは非常に医学、薬学なんかの関係で長命になっておるわけです。人口の構造もおっしゃるとおり変わってきておるわけであります。また住宅の不足の問題あるいは低賃金などの要因もありまして、平均寿命の延長と出生率の低下、これもまた老化現象を来たしていることは御指摘のとおりでありますが、特にこのごろでは六十年には二〇・三%幾らまでふえると、こういうようなことも言われております。こういう老人、老齢化の状態に対して、いまおっしゃいましたように、総合対策というものを一体として厚生省でやっていただかなければ、これに対してなかなかできないと思うわけです。それがいまおっしゃったような区分になっているだろうと思うわけでありますけれども、特にまた総合対策としてどういうふうにこれからより具体的に考えていかれるのか。その点も一つ、その総合対策としてどんなふうにお考えになっておるか聞いておきたいと思います。  それから、また社会福祉審議会で現在老人福祉全般について審議をされておると聞いております。それもほぼ作業が終わってこの十五日、敬老の日には御発表になると、こういうふうなことを聞いているわけでありますが、その発表は別といたしまして、答申の内容は大臣のお手元にはおわかりでございましょうから、その全貌は発表になってから聞けばいいのでありますが、その審議の中でそのアウトラインと、それからほぼどういうところがそのポイントであったかということなんかも聞いておけば、総合対策としてのとらまえ方もできると思うわけでありますから、そういうふうな経過についてのアウトラインと主要なところをひとつ教えていただきたいと思います。
  117. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 中央社会福祉審議会というのがございまして、その中に特に老齢者に対する部会を設けまして、これはまあ私がいま大橋先生にお答えいたしましたような各角度をどう味つけをして取り上げるかということ以外にないと想像いたしますが、この部会のほうから審議会の総会に対して部会の検討案が、中間報告が今月中旬ごろになされると聞いております。しかし、私は、せっかくのお尋ねでございますけれども、大臣として、その組み立て方がどんなものかまだ内容を受けておりません。おそらく部会から総会に報告があって、そして今度はそれを総会でしばらくの期間検討して、総会できまったところを大臣の私に御答申としてお示しいただけるのではないかと思いますので、私が早手回しに部会にまで入っていろいろ自分の意見らしいものを述べたりいたしておりません。しかし、厚生省のほうでは、御存じのように、わざわざ老人福祉課というものまで設けておりまして、老人福祉課長がここにきておりますが、老人福祉課長がそのことに参画しておるようでございますので、そちらのほうから答弁をさしていただきたいと思います。
  118. 説明員(永原勘栄君)(永原勘栄)

    説明員(永原勘栄君) ただいま大臣からお答えいたしましたように、審議会で議論をされておるポイントだけ五点ばかり申し上げたいと思います。  第一点は、従来、審議会のほうでは老人福祉という狭い分野だけに限って御審議をいただいておりましたけれども、今回は狭い範囲からそれを広く取り上げまして、年金の問題、それから医療費の問題、それから住いの問題、それから就労と、各省にまたがる老人全般の問題について御審議をいただいているというのが第一の特徴でございます。それから第二の問題点は、老後問題を保護的あるいは消極的にとらえるというような問題だけにとどまらないで、むしろ老人を社会のエネルギーとして活用する。そういうようないわゆる老年開発の方向を今後強めるというような点が強調された点でございます。それから第三点は、そういうように老年開発を進めるかたわら、やはり寝たきり老人でございますとか、一人暮らしの老人あるいは障害の老人というような方々に対しては万全の施策をさらに講ずべきである、というような点が第三点でございます。それから第四点は、老後を豊かにするための政策というのは、もちろん政府の施策が大柱になるわけでございますけれども、個人あるいは家庭、地域社会、政府を含めた、いわゆる国民的な合意によって福祉対策を進める、そういうことが強調された点でございます。それから第五点は、老後対策へのいわゆる認識といいますか、配慮というものが政府全体の施策の中に縦断して流れる、そういうような配慮で政策を進めてほしいというような点が審議会の中から出た主要点でございます。  以上でございます。
  119. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 非常に審議会の方向が重点的にやってもらっていて、私もこれは非常にありがたいと思うわけでございますが、先まど来大臣がおっしゃったように、こういう点は今後のビジョンとして非常に大事な方向であろうと私も思って今度の質問に立ってるわけであります。特にこの数字にもあらわれておりますように、この人口の老齢化は、わが国においては非常に急速に進んでるわけでございまして、そういう意味で西欧諸国との差はなくなってきておりますけれども、西欧先進諸国における老齢対策というものに比べてみますと、わが国のそれは非常に低水準であるということを言わざるを得ないわけであります。根本的なこの思想の違いがあらわれているのじゃないかと思われるほどでありまして、戦後、この家族制度がいまおっしゃいますように崩壊されて、そして核家族となったわけでありまして、いま日本はその過程にあるわけであります。老人は社会からあるいはまた家庭からも締め出されようとしているわけでありますからして、年金なり、医療なり、住宅なり、雇用安定、これは国が当然手を差し伸べなければならない。また、昔のように、大臣のおっしゃいました家庭での老人福祉であってはならないわけでありまして、今日のこの老人の悲劇もそこにあるのではないかと、こういうふうに考えられるわけであります。老人福祉といわれるこの分野へ少なくとも施策を進めていくと言われるけれども、今後老人の人口は増加していくのに、今日の老人問題を何ら解決するところにいま現在ではなっていないと思いますからして、老人福祉というと何か暗い面だけを想像するわけでありますけれども、ほんとうにこの保障が、何と申しますか、非常に貧困のためであるといわなければならぬわけでありまして、単なる老人のための保護政策ではなくて、いまおっしゃっておりますような積極的なその老齢者の開発という、あるいはまた老人になって社会の第一線から当然のように引退するのではなくて、老人がまた積極的に社会に参画していくという、またそれを社会的に保障するということがなくてはならぬというのがほんとうの大事なところではないかと思うのですが、その老齢開発といまおっしゃっておりましたが、厚生省とこれは労働省にもちょっとお伺いしたいと思うのですが、どのようにこの老齢開発というものを進められるか、そのところをもう少し具体的にお話を承っておきたいと思います。
  120. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 私と大橋さんとおおむね同じ意見と思いますが、平均寿命が延びまして相当の年齢になりましても、これは私どもをはじめ、できるだけ自分の経験を生かして社会のためにも貢献したいという意欲がある老齢者がたくさんあることであります。しかし、また世の中に定年制等もございまして、従来の仕事から離れる場合も多いわけでありますので、第二の就職のチャンスをお世話できるようなそういう機関、たとえば老齢者のみを専門とする職業あっぜん所にいたしましても、従来、私は厚生省に来て聞いてみますと、そういう老齢者専門の職業紹介所はたしか全国で二十カ所ぐらいしかないと、こういうことでございますが、それはあまりひどいと私は思いますので、少なくとも各府県とか、あるいは保健所などが置いてありますような、厚生省がよく申す政令市というようなものにはそういう老齢者の職業紹介所みたいのものを設けるべきであるし、また労働省の御所管でございます職業安定所などにも老齢者コーナーというようなものでもつくっていただいて、そして政府が、所管にかかわらず、一体となって老齢者の社会活動をもう一度お願いをできるような機会を豊富にするというようなことをまず考えてまいりたいと思います。また、そういうことばかりでなしに、単なる老人クラブということでなしに、年寄りの方々が集まられてそこで一緒に仕事をする、相談をするような機会といいますか、施設といいますか、そういうことも考慮したいと思いますし、さらにまた広い意味の社会福祉施設などの職員が非常に不足をいたしておりますので、そういう場合には老齢者の方々に、社会福祉施設専門職員でなくても、補助職員となって働いていただくような、そういうようなことをお願いをすることもこの問題の一つの大きな解決になるように私は考えます。これらにつきましては、関係方面からまた有効な御意見をいただいて進めてまいりたいと思います。
  121. 説明員(住榮作君)(住榮作)

    説明員(住榮作君) 労働省の雇用政策というような観点から考えてみますと、御承知のように、日本の労働力供給というのは、若年労働力が減って労働力人口そのものが高齢化いたしてまいります。そういうような意味で、こういう中高年齢の労働力をどのように生かしていくか、今後の雇用政策の中心の課題であると考えておるわけであります。そういうような観点から、結局中高年の方、長い職業生活を経てこられた結果、非常に貴重な経験、知識がございますわけで、そういう貴重な人材を生かしていくというのが非常に大事なポイントになると思うのでございますが、いまも厚生大臣からお話がございますように、われわれまず職業紹介面においてほんとうに高齢者の立場になって職業紹介に当たるというような意味で、たとえば人材銀行、大都会では人材銀行を設けて紹介をいたしておりますし、人材銀行のない安定所におきましては、高齢者コーナーというコーナーをつくっております。さらに市町村等におきましても高齢者のための職業相談コーナー等も庁舎の中につくっていただきまして、安定所との連携を保ちながら就職のあっぜんをいたしておりますとともに、厚生省のほうの社会福祉協議会が無料の職業紹介を行なおうとされる場合には積極的に許可をいたしまして、できるだけそういうように幅広く職業のあっせんに当たって人材として生かしていきたい、こういうような考え方でおるわけでございます。  さらにまた高齢者を雇い入れる事業主に対しまして奨励金の制度も本年度からつくりまして実施をいたしておるというような体制をとっております。そういうような意味で、今後の雇用政策の非常に大きな問題でございますので、私どもとしましては、積極的に対策を進めていかなければならないというように考えておるわけでございます。
  122. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 これについてもっと積極的ないろんな質問をさしていただきたいと思うわけですが、まずいま行なわれておりますいろいろ老人対策個々の問題からお伺いしていったほうが全体に対してのいろんなことが明らかになると思いますから、まず所得保障についてちょっとお伺いしておきたいと思うんですが、現在の医療保険については抜本対策が審議されているわけでありますが、公的な年金について、各種審議会がありながらこの抜本改革について何ら諮問をされておりません。  各制度間には非常に格差が大きくて、その意味では公的年金を高い水準に統合すべきだ、改革案が示されなければならない、こういうふうに思うわけでありますが、この水準を高めていく努力が私は特にここで必要だと思うんであります。たとえて申しますならば、支払い開始の年齢なんかを見ましても、国家公務員共済では五十五歳からでありますし、厚生年金では女子と坑内夫を除いては六十歳からであります。国民年金に至りましては六十五歳からであるということで、福祉年金は七十歳からというふうになっておりまして、なかなかこういう問題を見てみますと、総合調整の必要性はいまさら言うまでもないと、こう思うんでありますが、このことに対しましては、厚生省としては一体どのように考えておられるのか。もういまごろになったらひとつ一本化にしてレベルの高いところに移すべきではないか、こういうふうにも考えるわけでございます。その辺のところの御所見をお伺いしたいと思います。
  123. 説明員(廣瀬治郎君)(廣瀬治郎)

    説明員(廣瀬治郎君) ただいま先生御指摘のように、わが国の公的年金制度は非常にばらばらになっております。その大もとは厚生省で所管しております厚生年金と国民年金制度でございますが、そのほか御承知のように、国家公務員の共済組合あるいは地方公務員等八つの制度に分かれております。そのほか年金に類する恩給制度というのが分かれております。このように制度が分かれておりますが、これは先生御承知のように、共済組合等それぞれ独自の目的を持って独自の沿革があって発生したものでございまして、その目的なり沿革からいたしまして、内容もいろいろ食い違った点があるのは事実でございます。しかし、いまやわが国が皆年金時代に入っておりますので、でき得れば制度の一本化なりあるいは調整をいたしまして、その間にそごのないようにしたいと私どもは考えておりますが、これは何しろすでにでき上がっておる制度で、目的も若干食い違っておる点もあるわけでございまして、なかなか現実にはむずかしい問題もございますが、実は総理府にございます社会保障制度審議会からも政府に対しましてそういうような意見が出ておりまして、すべて制度を一本にできないといたしましても、できるだけその内容を調整し、今後の年金額の引き上げ等につきましても共通の考え方でやるようにという意見が出ておりまして、それを受けまして総理府にございます審議室が中心になりまして関係各省集まりましていろいろ相談をしておるところでございます。なお、まだいろいろ問題が残っておりまして、完全な結論は出ていない状況でございますが、政府といたしましても、できるだけ統一すべきところは統一したいということで各省それぞれ協力して検討しておる最中でございます。
  124. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 医療保険制度の中でもいろいろ格差が問題となって、それをどうするかということが審議会あたりでも審議されておるわけでありますが、年金も同じことでありまして、いまもお話のとおり、これはどうかひとつ高いレベルに統合していけるようにしなければいかぬ、こう思うわけであります。特に遺族年金の最低保障額の低さは特に問題があると私は思うのでありますが、最低の保障額の引き上げはもうほんとうにいまとなれば緊急な問題であり、大幅に引き上げる必要があると思うのであります。現在厚生年金は月額八千円でありますが、せめて一人当たりの国民所得の六割ぐらいの程度までには引き上げる必要があるのじゃないか、こういうふうに考えられるわけであります。昭和四十四年度の一人当たりの国民所得は四十六万四千四十円でありますので、これを月に直しますと、三万八千六百七十円、その六割といいますと二万三千二百二円になるわけでありますが、せめてこのくらいの水準に引き上げないと、現在の物価高では年金の名に値しないように私は思うわけでありますが、端的に金額を示して厚生省の考え方を聞いておきたいと思います。
  125. 説明員(廣瀬治郎君)(廣瀬治郎)

    説明員(廣瀬治郎君) わが国の年金制度はまだ全般的に水準が低いといわれておるわけでございますが、その中で特に問題になりますのは、ただいま御指摘の遺族年金といわれております。これは御承知のように、遺族の年金でございますから、従来もらっていた本来の年金の半分、二分の一ということになっておりまして、実額は非常に低くなっておるわけでございます。これは厚生年金のみならず、もともと恩給がそういうことになっておりまして、おそらく想像しますのに、その恩給の思想が厚生年金にもそのまま取り入れられておるのじゃないかと思います。この点は、単に厚生年金だけではなしに恩給、それから先ほど申しました共済組合も同じように二分の一になっておりますが、との点は、御指摘のように、非常に低いわけでございまして、今後単に最低保障だけではなしに、年金そのものの水準の引き上げという問題を重要な問題として前向きで十分に検討していきたいと考えております。
  126. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 次は、スライド制の問題についてちょっとお尋ねしておきたいと思うのですが、総理府統計局が発表いたしました四十四年度の平均の全国の消費者物価指数は総合で一二三・五となっており、昭和四十年度の一〇〇と比べますと二三・五%も上昇しておるということになっておるわけであります。この物価の値上がりは低所得者の階層ほど影響が大きいと言わなければならないのでありまして、どこまでもこうした状態はインフレとして続くわけでありますから、年金の低い水準にさらに拍車をかけて、その水準を引き下げるような効果をその物価高は示しておるようになるわけであります。ですから、わが党としましては、初めから年金にスライド制ということを導入しようということを強調してまいりましたし、また物価、賃金の上昇に見合ったスライドをせよということを主張したのでありますが、年金関係の法案審議の際にも、また附帯決議にも衆参で取りつけたこともあるわけであります。今日の物価高とスライド制の導入につきまして、具体的に今後どのように対処されようとしているのか、まず大臣のお考えをちょっと聞かしていただきたい。
  127. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) これはもう最も古くて新しい問題のようになってまいりました。また、形の上では、大橋さん御承知のように、国民年金法あるいは厚生年金保険法の中にもスライド制を示唆するような条文がございまして、私どもでも、そういう条文を根拠といたしまして、おおむね四年に一度ぐらいの割合でございましたか、物価あるいは生活水準を考慮して年金額の改定をいたしております。その時期は年金の再計算をやる時期とも合致させるようにいたしまして、最近では、たしか昨年の十二月現在かで計算をいたしまして、いわゆる二万円年金というようなベースをはじき出しておるわけであります。しかし、あの昨年の十二月はじき出したのは、もうそれより二年前からの作業によって去年の十二月の改正というものをやったと私は思うものでございまして、いつも政府のやり方はそういうふうにずれたりおくれたりすることはやむを得ませんので、今のような時代においては四年、五年待つことなしに、もう来年あたりの概算要求についてもできるものからやろうということにいたしまして、そういう前向きの厚生年金の金額の引き上げの計算を実は概算要求の中にも出しておるわけでございます。これはさらに根本的にはお互いが掛けてきておる掛け金の問題と、それからそれを財源とするそれの運用益等もございましょうが、年金額の問題との関連もありまして、いまの形は、御承知のように、積み立て方式というものをとっておるわけでありますが、ほんとうにスライド制をやろうということになりますと、昔掛けたわれわれの拠出金、掛け金が少なくても、受け取るときは物価が上がっているのだからたくさんの、掛け金を根拠としない金額を受け取らなければならないということになりますと、積み立て方式というものが維持できなくなって、とにかくそのとき集まったお金でそのときの支払いをするというような、いわゆる賦課方式に踏み込まざるを得ないということにも実はなってまいります。正直に申しますと、いまは積み立て金方式を原則としながら、一部賦課方式にもなっておるように私は思うわけでありまして、私は、賦課方式が決して悪いもの、これは最悪なものだ、排除すべきものだとは考えませんので、状況に応じましてはさらに賦課方式を加味する程度、限度というようなものも考えていきつつ、スライド制というようなものの実施ということにも進むことを検討いたしたいと、かように思っております。
  128. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 現実において、お年寄りがいまもらっている金額ではいまの物価高で全然問題にならないわけですから、こういう点から言えば、いま所得のところでも申しましたように、年金も上げなければならないけれども、ある程度スライドしなくてはとても生活のささえにならないという現況を踏まえますと、これに対して国のほうからも相当あれすることも必要でありましょうし、いま言うておるような方式をひとつ考えてもらって、もっともっと現状に即するものにしてもらいたいということが非常に私の深く要望したいと思う点であります。  それからまた、このもう一つの問題は、老齢年金給付は、現在その額によって課税されているわけですね。他の年金も同様でありますが、この年金制度の本来の趣旨からも、これらに課税することは一切不当であると思うわけであります。長い間国のために尽くしてきた老人がやっともらえるその年金に対して、これを課税の対象にするというようなことは、何としてもこれは間違っていると思うわけでありますが、せめて老齢年金の無税化ぐらいはしなければならないのではないかと、私はこういうように思います。厚生省のほうでは、この問題に対して理解されているだろうと思うのでありますが、その点のひとつまた特に御見解を聞きたい。  それから、次にもう一つあわせて聞いておきたいと思うのですが、最近、新聞の読者の声欄で私見たわけですが、老齢福祉年金の受給者が何よりも楽しみにしておりますところの、わずか現行では千八百円、十月からは二千円になるだろうと思いますが、この老齢福祉年金を受けるのに、役所の窓口で、前年度の所得とかあるいはまた家族構成とか、あるいは扶養者の収入の高とか、何やかんやとうるさい事柄を審査の対象として受けるわけでありますが、このために、老齢福祉年金はありがたい、ほしいと思うけれども、そのことに対して何かおびえるような感じがするのだということが新聞の投書欄に出ておりましたのを読みました。非常に問題ではないかと思うのであります。職務上それはしかたがないと言えばそれまでかもしれませんけれども、そうでなくて、もっともっとあたたかい行政が必要である。特にそうしためんどうさはできるだけ省いてやらせるようにしなければならぬものだと思うわけでありますが、その点もお伺いしたいし、所得制限の大幅な緩和も同時に必要である。年金をもらっているために、たとえば寝たきり老人が一部負担したり、所得制限のワクにひっかかって金を出させられたりしているわけでありまして、そういう点から申しましても、この非常にわずかな金額でありますからして、特にこういう点は考えてもらわなければならぬのじゃないかと思うわけでありますが、その点と、同時にまた、その手数の問題なんかに対して、全国の役所のほうの窓口の指導なんかも今後厚生省のほうとしてはつとめてやっていかなければならぬ、こう思うわけでありまして、この点についてもあわせてお伺いしたいと思います。
  129. 説明員(廣瀬治郎君)(廣瀬治郎)

    説明員(廣瀬治郎君) 最初の課税の問題でございますが、御承知のように、年金の中には老齢年金のほかに遺族年金、それから障害年金がございます。現在遺族年金と障害年金は非課税になっておりまして、老齢年金だけが非課税になっていないわけでございます。私ども厚生省といたしましては、同じ社会保障給付でありますので、老齢年金も遺族、障害と同様にぜひ非課税にしたい、これは大蔵省の関係がありますが、していただきたいということで毎年要望をしているわけでございます。ただ、どうして現在この取り扱いが違うのかということをいろいろ検討してみたわけでございますが、遺族なり、障害というものは、これは全くもう偶発的に予期しないときにその事故が起きる。ただ、老齢年金は一定の年齢になるということで、これは何年後になれば何歳になるということが当然予期されるからということじゃなかろうかと考えているわけでございますけれども、いずれにしても、私どもといたしましては、同じ社会保障の給付でございますので、老齢年金も遺族、障害と同じように、ぜひ非課税にしていただきたいということで、毎年の税制改革のときに御要望申し上げているわけでございます。  それから第二の老齢福祉年金をもらうときの手続きでございますが、先生御指摘の投書を私も拝見いたしましたが、これは、ただ一つの問題は、福祉年金には一定の所得制限があるということに関連するわけでございまして、これは御承知のように、七十歳以上の人全部ということにはなっておりませんので、一定の所得のある人には御遠慮してもらうというしかけになっておりますので、どうしてもその年齢がどうであるとか、所得がどうであるとかというのを口で言ってもらって、筋立てて言ってもらえばそれでいいわけでございますが、やはり役所の仕事としてはきちっとしたしかるべき証明書も必要だということで、やむを得ずそういう書類等もいただいているわけでありますが、なお、事務の簡素化という点につきましては、今後とももっと検討しまして、簡素化すべき点があれば大いにそういう方向にもっていきたいと考えております。  それから最後の所得制限の問題でございます。これは御承知のように、毎年所得制限は少しずつ上げているわけでございまして、その考え方は、従来は、いままで福祉年金をもらっている方が今後も普通の状態であれば引き続きもらえるようにという考え方で、賃金なり物価が上がってきますので、それに比例して上げておったわけでございますが、やはりそういうことでございますと、去年までもらえた人がやはりたまたまちょっとむすこの月給が上がったためにもらえなくなるというようないろいろなケースもございますし、やはりもう少し所得制限をするとしても、もっと大幅に緩和すべきではないかという国会の御意見も終始聞いておるわけでございまして、私どもは、明年度におきましては相当思い切った所得制限の緩和をはかりたいと、そのように考えております。
  130. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 私も、その所得制限を上げて松下幸之助さんに払ってもいいというようなことをしようというわけじゃありませんけれど、しかし、わずかな年金でおるときに、この制限があって、しかもおっしゃってるように、もらっておったのがもらえなくなったり、何か不労なお金のためにもうできないとか、そういうようなことに影響するほど年金が保障されてるわけじゃありませんので、これはもうひとついまの手続の緩和の問題も、所得制限の問題も、課税の問題なんかも、ぜひひとつ重点的にやってもらわないと――まあ、そういう考え方はよく私も了解できますけれども、考え方だけではいけませんので、もうこれはわれわれ五年前にもこういうことを言っておった覚えがあります。何年たっても同じことであり、その間には物価はどんどん上がってるということでありますと、非常にこれは問題が大きいと思うんです。ですからひとつもう腰を据えて大臣のほうでよろしくお願いをしておきたいと思います。特に今年度ぐらいはきっちりとやってもらわなけりゃならない大事な問題だと私は考えております。  それから、その次には医療保障についてでございます。私も社会保障制度審議会の委員をやっておりますが、いまこの医療の抜本対策というものが審議をされてるわけであります。非常にむずかしい問題が錯綜してると思いますけれども、まぼろしの抜本対策だと言われておるように、政府ではこの抜本対策というものを口にしだしてから五年、もう二千億の赤字をかかえて、健康保険も累積赤字で困っておると、こういうような現況であって、抜本対策の見通しというものをもう少し厚生省としてはもうはっきりとしてもらわんけりゃならない。こういう時期だと思いますので、この医療の抜本対策に対してどう厚生省、大臣は考えておられるのか。もうはっきりとしたものにして、ほんとに皆保険であり、医療がほんとに社会保障であるということを明確にすべきじゃないかと私は思うわけであります。ここで触れるところの老人にしても病気になりやすいということ、非常に病気が多いということ、そしてまた老齢化してくるために、その健康に自信がないという状態のときには、この健康保険の抜本改正によって考えなければならないという考え方ではなくして、老齢者に対する医療というものは全然これと切り離して、ことしあたり全額公費負担ということをやるべきではないか、そういう時期ではないかと思うのであります。この問題に対して国でまだ行なわれてないのに、すでに地方自治体ではぼつぼつその公費負担ということを打ち出してる自治体がたくさん出てきました。というのは、それほど地方においてはそういう要望が大きい、その要望にこたえざるを得ないので、政府はまだやってないけれども、地方自治体では少しずつやらなければいけないというつき上げというか、要請というのがあるからだろうと考えるわけでありますが、そういう観点からも、厚生省としてはひとつこの辺で積極的に公費負担というものをばっと打ち出してしまって、抜本改正と少々切り離してでもやってもらう御意思はないのか、大臣の御決意のほどをひとつ聞いておきたい。
  131. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) 先般も私自身が、大橋先生が委員をされております社会保障制度審議会にも出向きまして、従来厚生省から御検討をお願いをいたしております医療保険の抜本改正につきまして、審議の促進のお願いをいたしてきてるわけでございます。これはもう大橋先生も御承知のように、何とか幾つかの保険について合理的な編成がえのみならず、また、一番需要の高い老齢者に対する保険給付の問題などにつきましても方向づけをしていただくことがきわめて必要な事態になっておると考えるものでございますので、私どもが御諮問申し上げました考え方に対する御批判の部分がいかにあっても、私はそれをいとうものではございませんが、何らかの方向を審議会のほうからも一刻も早く厚生省のほうへ与えていただきますことを心からお願いをしたり、期待をいたしておるわけでございます。最近におきましても、医療給付の趨勢を見ますると、薬価基準なんかの薬の価格は引き下げをしました。しかし、全体といたしましては、御存じのとおり、保険で使います薬なども昔のような制限はできるだけ解きまして高価な薬でも保険で使えるようにしたり、また医療の需要なども非常に高まっていることなども反映している結果だと思いますが、毎月の医療給付費が相当の。パーセンテージで増高をいたしておるわけでございまして、したがって、各種の保険財政とも、いまのままでは動きがとれなくなることも見通しがつくような状態であります。したがって、財政措置ばかりを申すわけでは決してございませんが、合理的な方向も含みながら抜本改正をやり、それの一環としての老人医療の問題もできるならば解決をさせていただきたい。それと切り離して老人医療は公費だけでというわけにも、いま私ども踏み切れないような状態でありますので、いずれにいたしましても抜本改正に対する御答申をいただきまして、またそれに対する私どもも御答申に含まれるであろういろいろな見解も十分そしゃくをいたしましてこの解決をはかってまいりたい、こういう気持ちでございます。
  132. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 老人の公費負担というのは、いま大臣のお話では、これはもう保険の改正の中でやっていくのだ、公費負担だけは離されないのだという御意向のようですが、先ほどから申しましたように、これだけ老人の人口がふえてまいりますとなかなかそういうことにはならないので、やはり老人に対する特別なそういう措置がなかったら私は当然できないことじゃないかと思うのですね。ですから、これはいまのところまだそういう段階にあるのかもしれませんけれども、特にこれはひとつ考えてもらって、公費負担というものをやってもらわなければいかぬ。何となれば、あちこちの地方自治体でやっている。年齢は七十歳でやってみたり、八十歳でやってみたりしているところはありましょうけれども、老人医療の無料化もやっておりますし、むしろそれで公で負担しているわけでありますから、やはりこれはひとつできるだけ政府においても、もう老人の公費負担というものはぜひ制度化してもらうような方向に持っていっていただきたい。私は特に要望しておきたいと思います。  医務局長にちょっと伺いますけれども、老人医療という診療科目の検討ですね、老人科というものなんかも外国ではかなりやられているようであります。ですからして、わが国でも少し研究されて、老齢人口が急増している中でありますから当然研究されなければならない。最近では国立の小児病院というのがあるのでありますが、国立の老人病院というのはまだできていないようであります。これだけ老齢人口がふえてきたというなら、こういうものを国立で持たれて、そして早く老人のいろいろな病気対策をやっていかなければ、老齢人口がうんとふえたときになってにっちもさっちもいかないということになると思いますので、それを私はお願いしておきたい。  それから、来年度の予算にテレホンセンターを設けるという話を聞いておるのであります。一人暮しの老人に福祉電話で相談に応ずることを考えると、これも非常に私は大事なことだと思うので、ひとつせいぜいやってもらいたいと思っているわけであります。そのほか寝たきりの老人もおるわけでございますから、巡回相談だとかあるいは家庭奉仕、そういうことなんかももっともっと考えてもらわなければなかなかできないのじゃないかと思うのでありますが、そういう点についてちょっと医務局長
  133. 説明員(松尾正雄君)(松尾正雄)

    説明員(松尾正雄君) 御指摘のとおり、老人の人口がふえてまいりましたが、同時に診療を受けます率というものも、老人の場合他の年齢に比べて顕著にふえてきております。そういう傾向から見まして、現在の病院の中に入院している率を見ましても、昭和三十年に比較いたしますと、十年後には数倍というような高さで実は老人が入ってきているわけでございます。そういうようなことでございまして、いわば一つの傾向として、すでにいろんな各種の病院というものがすでに老人化しつつあるというのが一つの現実の傾向でございます。また専門病院の話がございましたが、先生は御専門でいらっしゃいますように、老人の場合の病気というものは、非常に方々のところにいろんな故障が出てまいりまして、いわばいろんな病気が重なって出てくるということが一つの特徴かと存じます。そういう意味では、一つの単科の老人科というような科でもって引き受けるということはなかなかむずかしい問題でございまして、各科の専門分野が共同いたしまして老人の病気に当たるというのが妥当ではないかというふうに考えられておるわけでございます。いずれにいたしましても、国立等におきまして相当数そういう問題の老人の収容につとめております。専門病院については、ただいま申しましたような技術的な問題もあろうかと存じますので、十分慎重に検討さしていただきたいと思います。
  134. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 労働省にちょっとお伺いしたいと思うんですが、兵庫県の川西市で、高齢な失業者などに就労事業を実施することに対して、市会では満場一致でこの件を可決しておるわけであります。また五千名以上の署名を集めて市長にあるいはまた労働省に交渉を約束しているようであります、市長を通じて。私にも地元から熱心な陳情がきているわけです。文書も預かっておるわけでありますが、あるいはまた京都におきましても、失対事業に携わってる人たちの中で、もっと地域の近くで、しかもその高齢者に適当な職業を与えてほしい、働く仕事を与えてほしいという陳情があり、非常に切なるものがあるわけであります。これはただ川西市とか京都だけの問題ではありませんで、全国的な問題であろうと思うわけでありますが、先ほどから私がいろいろ述べておりますけれども、今日のこの労働問題は、過去のように、単に老人の保護政策ではなくて、能力開発という意味からも考えてみるならば、私はこの川西市の実情なんかを見ておりますが、高齢者に対する雇用政策について労働省はどういうふうに考えておられるのか。特に老人に適した職業を開発してあげるということが必要じゃないか。失対の就労状況なんか見ておりますと、高齢者があの暑い炎天干しで道路の、何といいますか、作業を手伝っておるのを見るとほんとうに痛々しい。この暑さ、思いやられるほどの炎天の中であの年の人が仕事をしてまともにできるのか、またそれは健康にどうなのか。見てるわれわれ若い者――若くもありませんけれども、若い者としては見るに忍びぬではないか、こういうような状態では。私は、いまのような老齢者の職業を開発するという意味からもっと手厚いいろんな方法がされるべきじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、そういう点について、もっと老齢若向きの室内作業とかあるいは軽作業とか、こういうものを開発して、そういう人たちに適応した仕事で能率を上げてもらうというふうなことのほうがよりベターではないかと思うのであります。そういう点でこの雇用政策といいますか、こういうようなものを労働省としてもうしっかりと打ち出してもらわなければいかぬと思うのでありますが、その点いかがでございましょうか。
  135. 説明員(住榮作君)(住榮作)

    説明員(住榮作君) 先ほども申し上げましたように、非常に重要な問題であると考えておるわけでございます。私どもの考え方といたしましては、やはり高齢者といえども民間の職場で働いていただく、これが一番大事なところかと思いまして、そういうような観点から、現在、たとえば中高年齢者の雇用率というような制度をひとつつくってみたらどうであろうかというような意味で検討をいたしております。その他先ほども申し上げましたように、職業紹介の強化はもちろんのこと、就職しやすいような各種の援護制度を積極的に考えていく。中高年齢者に対する就職しやすいような条件は何か、どういうような援助をしたらいいか、こういうような観点から施策の点について検討をいたしておるわけでございます。  それから失対問題について御指摘がございましたが、先生御承知のように、現在失対に働いている就労者の平均年齢、まあ五十七歳というようなことになっておりまして、六十歳以上の方も四割くらいの割合になっております。従来失対事業、主として屋外の事業でございましたが、そういった就労者の実態に即応いたしまして、最初に失対事業の事業計画を立てるに当たりまして、事業主体である県ないし市町村と、そういう就労者の実態を十分踏まえた上でそれに適合する仕事、そういうものをつくり出していこう、こういう努力をしております。現在かなりの部門がそういった就労者の実態に即するような作業に変えてきつつあります。屋内作業等につきましても年々その割合をふやしておりまして、炎熱下あるいは寒い中で作業をするという場合におきましても、そういう場合の安全管理、衛生管理等につきまして事務費等の面でいろいろこまかい考慮を払いまして対策を立てておる次第でございます。
  136. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 もう一つ続けてお尋ねしておきたいと思うのは、定年制の問題でありますけれども、現存五十五歳、五十七歳くらいとなっておりますけれども、老人の能力開発、そして何よりも労働力不足というおりから考えますと、定年を六十歳くらいまで延ばしていいんじゃないか、こういうことを思うのでありますが、就業の継続あるいは再就職のあっせんをする方向に持っていりてもらいたいし、定年六十歳ということで一応ピリオドを打っても、あとからそういうふうなことができるような形にしてもらいたいと思うんですが、その点はいかがでございましょうか。  それから時間がございませんから、固めてお尋ねしますから御答弁願いたいと思うのですが、老人の雇用問題は、まず第一に老人に合った仕事、職種の開発が先ほど申したように必要であります。これに手をつけておられるのかどうか。また第二に、人材銀行、先ほどもおっしゃいましたが、これは就労あっぜんは一体どのような程度に行なわれておるのか。その何かいい実績があったら聞かしていただきたい。労働省は六十五歳未満、厚生省は六十五歳以上の就労あっせんをするというように行政的にばらばらな面がちょっとあると思うのであります。雇用対策が少しばらばらに行なわれておるわけでありますが、行政的にもっと力を入れて、一元化して中高年齢の雇用対策というものをかっちりと樹立してもらう必要があると思うんですが、これの将来計画があれば一言及んでおいていただきたい。またもう一つ、高齢者の就労のむずかしさは現在の技術革新の目まぐるしい進歩の中ではあろうと思うのでありますけれども、高齢者に合った職種の開発ということ。特に職業訓練の面でこれは重要ではないかと思うのであります。職訓のほうでもこれを取り組んでいかれるのか。いま抜本的な策を立ててもらわないといかん時期ではないかと、こういうふうに思うわけでありますが、この点について簡単にお答え願います。
  137. 説明員(住榮作君)(住榮作)

    説明員(住榮作君) 定年の問題でございますが、御指摘のとおりと思います。  そういう意味で、現在の定年の状況は五十五歳とか、逐年それが延びておるような現状でございますが、できるだけ行政指導によりまして、定年がさらに延びていくような努力をしてまいりたいと思います。  それから人材銀行等の実績でございますが、現在人材銀行は七ヵ所でございますが、いままで扱っております総数で見て見ますと、大体求人といたしまして約三万件、求職といたしまして四万四千件、こういうような状況で、人材銀行を通じて就職された者の割合は一万二千五百二十五人ということで、就職率としては約二八%程度、こういう状況になっております。その他、高齢者コーナー等につきましても、これは四十二年からやっておりますが、大体扱いましたのが十九万件ぐらいの相談を扱っております。そのうち就職した者が十九万件のうち約一万五千件、こういうような状況でございます。それから労働省のほうでは、主として高齢者といいましても大体六十五歳までというような観点から人材銀行高齢者コーナーで扱っておるわけでございますが、六十五歳以上の者を扱ってはいけないというようなことではもちろんございません。先ほど申し上げました社会福祉協議会の無料職業紹介の許可等によりまして、できるだけ広い窓口において幅広く職業紹介をしていく、こういうことが私は老人の再就職の対策として効果的な方法じゃないだろうか、こういうように考えておるわけでございます。  それから老人に適する職種の開発でございますが、私どものほうにあります職業研究所等におきましてそういった研究を始めておるわけでございます。御指摘のとおり、そういう面での研究なり、開発というものは積極的にやっていかなければならないというように考えておる次第でございます。
  138. 説明員(石黒拓爾君)(石黒拓爾)

    説明員(石黒拓爾君) 高年齢者に対する職業訓練について申し上げます。  御承知のごとく、職業訓練校におきましては、青少年に対する養成訓練と、中高年を中心とする能力再発訓練、いわゆる転職訓練と、ほぼ半々のウエートでやっております。この能力再開発訓練のほうにおきまして当然高年齢者に対する訓練も行なうわけでございますが、正直なところ申し上げますと、これにおきまして高年齢者がこの訓練を受ける比重というのは、あまり高いものではありません。なぜそうかという理由はたくさんあると存じますが、一つには、従来の能力再開発訓練は、一ぺん職をやめて求職者になって、それから半年ないし一年の間に訓練を受ける。こういう一。へん職をやめるということと、それから相当長い間の訓練を受ける。これが高年齢者にはなかなかむずかしい点があるんじゃないかということで、そこを改善いたしまするために、二、三年前から人材銀行とパラレルに人材セミナーというのをやりまして、高年齢者専用の短期の訓練を行なっております。しかしながら、これは場所的にも限定されておりますし、また内容もホワイトカラー職種に片寄っておりますので、実は明年度から現役の労働者に対する成人訓練、大人の訓練というものを全国的に行なおうということで、ただいま予算要求をいたしております。定年間近な方々が新しく転進されるという場合に、やめてしまう前に、夜間でも何でもいいから訓練校に通いまして、比較的短期間の補充的な訓練をもってさらに転進できるというような方法を考えてみたいというふうに思っております。
  139. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 建設省にちょっとお伺いをしたいのですが、核家族の進行に伴いまして老人が家庭から締め出されるということで、子供や夫婦が離れていくというさびしさを持っているわけでございますが、イギリスあたりでは、孫の家からスープのさめない距離というようなことが打ち出されておるようであります。住宅政策ということから考えますと、これは非常に大事なことでありまして、老人と子供夫婦がいつもみそ汁のさめない距離にいる政策としてわれわれも打ち出しているつもりでありますが、公営住宅建設計画の中で、老人向きの低家賃住宅を一階につくるとか、老人向きのところに住宅をつくって、その上のほうに子供夫婦がいるといったような、血の通うようなあたたかい住宅政策というものが必要じゃないかと思うわけでありますが、こういうものの考え方は一体どうなっているのか、これは建設省のほうに伺いたい。  もう一つは、時間がありませんからまとめてお伺いしますが、文部省のほうにひとつお尋ねしたいと思うのでありますが、これはこの時代の急激な変化に対応できない老人たちに、何かの形で社会教育、再教育というものが必要だと私は思うわけであります。社会教育も、上からの押しつけではなくて、老人の意見なり考え方を十分に取り入れたものでなければならないし、この情報化社会といわれているなかで、老人が社会から取り残されてしまって離れていくさびしさというものが出てくるわけでありますから、老人ホームとかあるいはまた適当なところに講師などを招いて、みずから社会にとけ込むような努力もする必要がありましょうし、九月十五日の一日敬老の日と定めて、老人集会も開かれるようでありますので、テレビを使って老人向けの番組をつくるとか、あるいはまた社会教育をするとか、いろいろなことが考えられると思うのでありますが、文部省もひとつ子供さんたちの社会教育に力を入れることも必要でありますけれども老人対策として積極的に力を入れてもらいたい、こういうふうに思うのでありますが、文部省の老人に対する社会教育に対しての考え方をひとつ伺っておきたい。  それからもう一つは、二十二日に、何か先ほども大臣のほうからもお話がありました国民会議というのが政府で考えられているようでありますけれども、その内容についてちょっと触れていただけましたらと思います。その三点。
  140. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) それじゃ私から最後の点を。  三日間を計画いたしております。これは政府自身の主催ではございません。老齢者問題について関心を持たれるであろう各種の団体の代表の方々を国民会議の主催者と、こういうことになっていただきまして、その中には、たとえば青年会議所でありますとか、ライオンズとかロータリー・クラブとか、あるいは町村会、都道府県会、あるいはテレビ、新聞等、広報関係の機関の組織等の代表の方も入っているわけであります。もちろん全国社会福祉協議会とか、あるいは老人クラブなどの全国連合会の代表の方も入っております。  最初の二日間は、幾つかの分科会に分かれていただきまして、たとえば所得問題とか、医療問題とか、住宅問題とか、いま先生がお取り上げの老齢者の方々の社会的再参加の問題でありますとか、そういう幾つかの課題による分科会を設けまして、そこで全国から公募した方々の代表によるディスカッスをいたしまして、またシンポジウムと申すのでしょうか、研究討論会のようなこともいたしまして、最後の仕上げを三日目の二十二日に日比谷の公会堂で行なうということになっております。総理大臣からも激励のことばといいますか、あいさつがあるはずでございます。また、全国から老齢者政策に関する作文等も募集いたしておりまして、そういうものの発表や、各分科会の代表の方々の意見表明もあるはずでございます。また、私が漏れ承っているところによりますと、最初の二日間の分科会には、皇太子殿下御夫妻が非常に御熱心で、ひとつ見学できるか、こういうふうな御希望もあるやに承っておりますけれども、これはまことに異例なことだと思っております。そういうことで、これは、先ほども申し上げましたような、国民全体が、この問題がわが国の社会上の問題として非常な大きな課題になることをお互いに認識しつつこれに対処する意識を持つという、こういうことでございます。あるいは最後に老齢福祉憲章というようなものが打ち出されるかどうか、あるいはその辺の準備もあるかと思っております。総会には、日比谷公会堂に入れる限りの各方面の代表の方々――千人ぐらいはあれ入れるでございましょうか、そういうことを始める計画をいたしておりますので、よろしく御協力をお願いをいたします。
  141. 説明員(滝沢慧君)(滝沢慧)

    説明員(滝沢慧君) 公営住宅のうち、老人世帯に向け住宅に対する建設省の方針についてお答えいたします。  この制度は、昭和四十年から創設されまして、ことしで六年目になりますが、逐次老人世帯向けの住宅の戸数はふえてまいりまして、本年度は計画では六百七十二戸昭和四十年度にこの制度が始まりましたときは二百五十戸でございましたが、逐年戸数の内容が増加してまいっております。公営住宅につきましては、御承知のように、低額所得者のために都道府県なり市町村が建設する住宅でございまして、国が三分の一もしくは三分の二を補助するものでございますが、この老人世帯につきましては、特定のワクを設けまして、これは各年度の初めに各府県から状況を聴取しまして、ワクを設定しまして、このワクにつきましてはすべて優先入居ということにしまして、特別に扱っております。一般のものにつきましては抽せんで、五倍とか十倍とか、東京あたりでは五、六十倍でございますけれども、その老人住宅につきましては全部事業主体の希望どおり戸数をつけております。この建設にあたりましては、新設でやる場合と、あき家が生じますので、あき家でやる場合がありますが、あき家の場合は、利点と申しますと、昔つくったものはわりあい都心にありまして、そのわりあいに家賃が安いというわけで、あき家のものもなかなか希望があるようでございます。あき家でやります場合には、たとえばその棟で、ある世帯からおじいさんおばあさんが別れるといった場合には、なるべくその棟の中でお世話するというようなことをやっております。新設にあたりましても、われわれの指導方針といたしましては、これは老人だけの団地はつくってはいけないと、これは厚生省ともいろいろ打ち合わせまして、そういうことをするのは非常にまずいということをわれわれ考えておりますので、一般の住宅と同じような中身でやりまして、割り当てます住宅としましては、老人でございますので、高いところはまずいであろうと、それで中層並びに高層の住宅につきましてはすべて一階、それからあとは一階建てもしくは二階建て、二階建てのものは一階と二階を一緒に使う住宅でございますので、とにかく地面についているところのものを割り当てると、そういうような方針でございます。なお、その個々の設計にあたりましては、特に老人住宅だからといっても、現在の公営住宅では特に設計をどうということが具体的にできませんけれども、こまかい配慮といたしましては、庭園とか、そういったものが老人のまあ余暇にも利用できるようになるべく考慮をするとか、そういったことについてできるだけ配慮するように各都道府県に指示しております。以上でございます。
  142. 説明員(鹿海信也君)(鹿海信也)

    説明員(鹿海信也君) 文部省の高齢者対策につきまして御説明申し上げます。  文部省では、これまでは高齢者学級の委嘱というわずかな事業をいたしております。大橋先生御指摘のとおり、教育委員会のほうでしつらえましたような学級でございます。調査をいたしますと、希望する内容のものがない、あるいは仲間がいない、あるいは家庭の理解が得られないので参加しにくいというようなこと、したがいまして、私どもは今日高齢者の方々により積極的な生きがいを持っていただくためには、教育的な施策をもっと大きな立場で進めなければならないということで、来年度は新しい構想をつくって、これはまた高齢者の方々の希望される内容にいたしましても、あるいは置かれております環境、あるいは経歴といたしましてもまちまちでございますから、実証的に各地方で研究いたしまして、そして各地方にあわせて資料を出していきたいということで、来年、再来年、二カ年かかりまして、実証的な研究をして資料をつくるということを考えております。それには高齢者の方々の中から、ボランティア活動と申しますか、積極的に仕事に参加していただきまして、家庭の中に閉じ込もっている高齢者の間をそのボランティアの高齢者の方々がつなぐということ、そしてこれは教育的施策と申しましても、高齢者対策につきましては、文部省のみでなし得ることではございませんので、地域のほかの福祉関係の方々とか、ほかの関係者の方々にもお入りいただき、またそういうボランティアの高齢者の方々にもお入りいただき、役所のほうと高齢者の方々が一緒になって推進研究委員会組織いたしまして、常時各家庭に啓発資料をつくって送り、家庭の理解を深め、そうしてボランティアになられた高齢者の方々によって身近の高齢者を家庭から引き出してくるというような実験を重ねてやって資料をつくり、でき上がりました資料を全国に配付するというようなことを、来年、再来年に考えている次第であります。
  143. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 厚生省の社会局とか、老人福祉課だけでいろいろ処理するものでないということはいままでからるる論議をされていたわけでありますが、私はここでひとつ大臣に対して提言を申し上げたいと思うわけでありますが、こういうふうにして非常に老人問題が大事な関係にありまして、もっと総合的に取り扱わなければならないという観点から、内閣直属の老人対策本部を設けて、また同時に老人の総合審議会を設ける、あるいはまた総合の研究所を設けるということで、もっと老人対策というものを国をあげてやるようなことをひとつ厚生大臣のほうから大いに提案をしていただいたらどうだろうかというようなことも考えているわけでありますが、いずれにしましても、この老人問題について大臣がひとつ積極的にやってもらいたい、こういうように思いますので、所信を聞いておきたいと思います。
  144. 国務大臣(内田常雄君)(内田常雄)

    ○国務大臣(内田常雄君) この課題を推進いたしますための政府機構についての御意見もございましたが、これにつきましては御提言のごとき施策をすることが私は必ずしも最善の方法とも思いません。私どもは私どもだけの仕事とはもちろん考えませんで、労働省はもちろん、政府部内各省庁の協力のもとに、また財政的の理解も得ながらこの問題は重要課題として積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  145. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 まあ、厚生省だけでやっても十分できるというお話でありますけれども、もう厚生省のほうがその指導権をとって、労働省とかあちこちでなしに、ひとつまとめた根本的な老人対策というものをもう出しておいてもらう必要があると思いますので、要望をしておくような次第であります。  それからちょっと問題は変わりますけれども先ほどから公害の問題も出ておりましたが、最近非常に問題になっておりますのは、毛染の薬なんであります。フェミニンとか、ロレアルとか、レブロンとかいう薬が出ているようであります。何かカラーシャンプーとかいって非常に何かこのごろ何と申しますか、テレビあたりでも広告しているのでありまするが、ああいうものから失明をしたり、目の病気をなさったりするものがあるので、これはひとつ確実なデータをもってやらないとたいへんなことになると思う。こういう状態については、一体どうなっているのか。しかもこのごろ英国の会社でエイボンという会社ができて、ホーム・パーマということで計画をして、なかなか大資本を投じてやっているが、これもいろいろ考えないと、たとえばいま美容師とか理容師法なんかの技術やらいろいろな勉強をしたものでなかったら美容に携わってはいけないというあの法律のたてまえからいきますと、法律無視にもなるのではないか。案外こういうふうなことが宣伝されていきますと、美容師ではあっても美容所でこの美容をやらなければならぬという規則に束縛されてこの権衡が保たれているいまの美上容師法が無視されることになるのではないかという観点もあるのでありますから、私はこの点についてひとつお考えを聞きたい。  もう一点は、スプレーなんかもわりあい検査がされて、あれが爆発であるとか、いろいろ規制をされているようでありますけれども、案外こうしたシャンプーのものだとか、あるいはまた美容院で使っているようなものはスーパーの店で売られておる。これは美容師があってもなきがごとしという状態でどんどん売られているような傾向もあるようであります。特に美容師さんは三年くらいは経験を持たなければ開店はできないという規定になっておるのですが、これが往々にして無視されて行なわれておる。話を聞くと、「業」としてはいけないけれども個人が使う分は禁止の規定はないと、こういつておりますけれども、やはり個人がやって顔をはらしたり、中毒も起こればあるいはまたいろいろな問題が起こってくるわけであります。こういう点なんかを考えてみますとなかなか大きな問題があろうと思いますが、この問題についてはどうか。だからして、そういうような薬に対して確実なデータがあるのかどうなのか。また家庭薬を売る、そういうふうな会社がどんどんやっていくことに対してどういうふうにして規制されるのか。一体そういうような規定を薬務のほうではどう考えておるか。最近は全身美容というのが盛んに行なわれておりますが、美容といえは、大体これは一面からいえばマッサージなんかも入っておるようでありまして、いろいろな問題がありますけれども、逆にまた美容師法から考えてみても、美容ということに関係すれば、もう少しこういう規制をしなければならぬと思うので、いま非常にこの過渡期にありまして、美容所で美容師法にのっとって正規な美容術がやられておるのにもかかわらず、一方ではそういうくずれたものがどんどんと出てくる社会情勢に対しては非常に考えなければならない。こういう点についてひとつ時間がありませんから率直な御回答をいただきたい。  それからもう一点は、この管理美容師法ができまして、いま講習会が非常に行なわれているのですが、講習会の科目を見てみますと、あれは四十八時間ときめられているのだが、法律では厚生大臣の指示によってということになりますから、私は厚生大臣が指示を出されていると思うのであります。ところがこの管理美容師の法の中に書いてあることからいえば、これは衛生的な管理ということになっておるわけですね。そのたてまえを考えてみますと、この中にこの理美容所の衛生管理の問題はただ二科目だけであって、あとの三科目は理美容所の管理概論とか、あるいは理美容所の経営管理だとかということになっておりますと、何かいわゆる衛生的管理ということとはほど遠いことをやっておる。しかもそれが二十二時間であって、四十八時間中に二十二時間も占めている。こういうことになれば、何か法のたてまえを使って別な指示をしておるというふうにも考えられるわけですが、そういうことがあっては法のたてまえとは違った方向にいくのじゃないかと思うのです。実際からいえば、この三科目はやめてしまって、ほんとうに衛生管理、公衆衛生学とか、そういうふうな衛生管理に必要な二科目で十分に足りるのじゃないかと私は思うのですが、その辺の検討をひとつまとめて御答弁願って私の質問を終わります。
  146. 説明員(加藤威二君)(加藤威二)

    説明員(加藤威二君) 染毛剤につきましては現在メーカーが約三十社くらいございまして、最近非常にこの染毛剤を使われる向きが多いようでございますが、これは薬事法上は一部化粧品でございますが、大体医薬部外品ということで取り扱いをいたしております。これにつきましては、個々に申請がありました場合に、製造の承認につきましては厚生大臣のところで一つずつチェックして、それで無害のものについて承認している。ことに新しい成分等を含んだ場合には薬事審議会にはかって、そこの薬事審議会でオーケーが出たものについてのみ承認するというやり方をやっております。ただ、これは使用上間違いますと、ことにまた個人差がございまして、人によっては皮膚にかぶれを起こすというような場合もあるようでございますので、特に使用上の注意ということをこの製品にははっきり書かせるということをやっております。ことしの四月にはさらにその使用上の注意につきまして薬事審議会で再検討していただきまして、さらに厳重に注意項目を書くということで、事故のないようにメーカーを指導いたしておるわけでございます。私どものほうに入っております報告では、事故の件数もそう多くないようでございますが、今後これがますます使われる量がふえてまいると思いますので、そういう点におきまして業者の指導の徹底をはかってまいりたいというぐあいに考えております。
  147. 説明員(浦田純一君)(浦田純一)

    説明員(浦田純一君) ホームパーマの毛染めを一般家庭で使っていることについては、ただいま薬務局長から御説明したとおりでございます。  第二点の全身美容、これについての取り締まりはどうなっているかということでございますが、これはそれぞれあん摩マッサージ法あるいは美容師法の定めるところによってやらなくちゃならないことはもちろんでございますが、必ずしも現態勢で全般的にそういった観点からつくられておるかということについてはいささか疑問もございますので、御趣旨に沿って検討していきたい。  それから管理理美容師の講習会の件でございますが、御指摘のように、確かに労務管理あるいは経営管理の面合わせまして、先生まあ二十二時間とおっしゃいましたが、十数時間の講義時間がございます。これらにつきましてはいろいろと御意見もあろうかと思いますが、衛生管理を十分に行なうためにあるいはまた料金の安定といったこともはかる意味もございまして、ある程度は経営に関する知識が必要じゃないかという点もございましてこのような時間を設けたことでございますが、なお、さらに本来の衛生知識の普及向上はこれで十分かどうかということについては、今後の問題として検討いたしたいと思います。
  148. 大橋和孝君(大橋和孝)

    ○大橋和孝君 またあとから詳しく質問します。
  149. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。     ―――――――――――――
  150. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) この際委員異動について御報告いたします。  武内五郎君が委員辞任され、その補欠として松井誠君が選任されました。     ―――――――――――――
  151. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  152. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 私は、中鉄バスの紛争解決の問題で質問いたします。  昨日、衆議院でも社労で質問があったようでありますから、もう要点だけ、中心点だけ簡単に質問いたしますから要領よくお答え願います。  百二十日間のストライキでなお紛争解決しないままに第一組合がストライキ続行中、それから第二組合が働いておる。労政局としては、地方労働委員会の職権あっせんもついに会社側が拒否いたしましてあっせん打ち切りを九月二日に通告されておるようでありますが、今後どのようになるとお見通しでありますか。
  153. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) ただいま先生のおことばにもございましたように、非常に長期のストライキでございまして、事態が複雑になって解決が非常に困難な事態になっております。そこで、御指摘のように、地労委のあっせんがずいぶん努力をされたようでありますけれども不調に終わりました。中鉄支部の組合側の意向としましては、中労委にあっせんをやってもらいたいというようなことでございます。そこで中労委におきまして、そのような組合側の意向に基づきまして現在係の者が現地に参りまして、そうして労使、それから地労委、それから県といったところの関係方面と接触をいたしまして、中労委においてどのような解決のめどがあるか、あるいはまたどのような形がいいのか、現地で、たとえば地労委で勧告いたしましたような自主交渉によってどの程度進展が見られるのかといったような点につきまして調査をいたしまして、その結果を持ち帰りまして中労委において関係委員の方々が相談をし、そうして中労委がどのように対処するかということをきめようというのが現段階でございます。
  154. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 会社側があっせんを拒否している大きな理由は、第二組合と妥結した条件以上のものがあっせんに出たから、もしこれで受諾するならば第二組合に対する信用をなくすると、そういうのが一番大きな理由のようであります。言うならば、争議中に第二組合をつくって第二組合を働かしておいて、そしてもう第一組合とは一切交渉の余地はない、あっぜんが地労委のあっせんでしょうが中労委のあっせんでしょうが、第二組合が妥結したものが至上であるということでいきますならば、第一組合はつぶれる以外はないわけです。しかも岡山県の東北地方は現在まで約半分は運行しているわけですから、言うならば、もう第一組合をつぶすために地労委のあっせんも拒否して、あと中労委がどんなに努力を払われても同じ結果じゃないかと思うが、いかがでしょうか。
  155. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) いまおっしゃいましたように、この会社は関係組合が二つございまして、私鉄総連系統の組合と、それから同盟系統の組合とあるわけでございます。したがって、会社のほうの考え方といたしまして、第二組合との関係、いわゆる同盟系の組合との関係、これを考えるということはこれは当然のことだと思うんでありますが、それを考えるということで直ちに解決不可能ということになるかどうか、その辺のところがひとつの大きなポイントであることは御指摘のとおりだと思います。それからもう一つは、これは労使双方でございますが、中鉄支部組合のほうも会社に対して非常な不信感を持っている。会社もその組合に対して不信感を持っている。そういう不信感をどういうふうに払拭して解決していくかということがやはり相当大きな問題ではないかと思います。そういうようないろいろな観点につきまして、中労委といたしましてもあっせんをする以上は、やはり何とか解決していかなければならぬということを頭に置きまして現在調査をしているということだと思います。
  156. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 労働者八百九十名ぐらいの中で第一組合のほうが過半数でございますが、第一組合のほうはストライキ中でありますので第二組合が働いておる。現在の路線の半分ぐらいを動かすためにオーバーロードをやっておる。三十六条協定の締結権は第一組合にあるわけであります。三十六条協定しないまま女子、少年を働かし、あるいは超過勤務をやっている、こういうことに対して労働基準局長はどういう見解ですか。
  157. 説明員(和田勝美君)(和田勝美)

    説明員(和田勝美君) 私のほうで八月二十一日に中鉄の会社側の者を岡山の基準局に呼びまして事情を聴取いたしました。その結果によりますと、この会社は各事業所の単位を会社一本でなくて八つの営業所、本社それから修理工場、一応こういうものを一つ一つ事業所として従来扱ってきている。その八つの中で六つのものは三十六条協定については過半数の代表権を確認できて、それぞれ届け出があって三十六条協定が生きておりますが、二つの事業所につきましては過半数代表権がないというので、監督署のほうに届出のありましたものを拒否しております。したがって、現在三十六条協定がないという状態でございます。その二つのそういう事情を八月二十一日に聞きまして、八月の二十九日に常務に岡山の局のほうに来てもらいまして、どうも違法問題があるから是正するように口頭の注意をしておきまして、九月の五日及び七日に二つの三十六条協定のない事業所について監督を実施いたしました。その結果、時間外勤務につきましては、実は拘束時間の問題と実労働時間の問題がございますが、監督署のほうの見解による実労働時間から見ますと、二人の方について時間外勤務の事実がございまして、これは三十六条協定がないから違反である。それから休日労働につきましては、これはもう少し多い件数の休日労働の違反があるということを監督で確認いたしましたので、九月九日の日に文書によりまして会社に対して是正命令を出しております。九日でございますのでまだ一昨日のことでございますが、五日、七日の監督に続いてそういう是正命令を出した、こういう実情でございます。
  158. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 そうしますと、この違反の問題は検察庁に起訴したら基準法違反ですね。
  159. 説明員(和田勝美君)(和田勝美)

    説明員(和田勝美君) 私どもとしましては、是正命令に従って是正をいたす、私どもが考えているような是正ができるならば起訴処分ということにまではいかない、かようにいまのところ考えております。ただし、向こうが拒否をするということになりますれば、事情によって、そういういま先生の御指摘のような処理にいかざるを得ないこともあり得ると、かように考えております。
  160. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 超過勤務によって、過労のためにバスが道路左側に寄り過ぎてたんぼに落ちて、久世町で乗客二十一人がけがしたという新聞記事がございます。それで町民の皆さんの話によりますと、ストライキで働いておる者がオーバーロードのために事故が起こったというようなことでありますが、労働省ではこういうことの調査をされたことがございますか。
  161. 説明員(和田勝美君)(和田勝美)

    説明員(和田勝美君) 八月の二十九日にバスの転落事故がございまして、二十三人の方が重軽傷を負われましたが、私どものほうが現地からの報告を聞いております限りにおきましては、路肩に前車輪が落ちたのをバックをせずに前進をして路上に出ようとしたために、後輪が落ちて転落したということでありまして、私どもが得ている報告では、当該運転者に対する労働時間が長かったのでこういう状態になったというようには報告を受けておりません。
  162. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 その点もいま正確に調査してもらっておりますが、この基準法違反、超過勤務をやらして過労をやっているということも事実のようでありますから、これが直ちにこれに結びつくかどうかということについては今後調査もしたいと思います。  そのような状態で、現在まで運行しておった路線の約半分を運転しておる。その削減された路線の住民はそのストライキのために非常に迷惑をしておるわけです。だから、組合があっせんを受諾するときの大きな中心には、市民の足を奪ってはならぬということで受諾をしたようであります。ところが会社側としては、組合をつぶすということもありましょう、あるいは第二組合に対する信義もありましょう、それで拒否してまいっておる。そこで、あとこの会社のほうの様子は、八月の十七日の日に広島の陸運局長に書面を出して、同業他社による代行運行などの助力を仰ぎたいという申請をしておる。運輸省としては、全般的な需要供給を考えながら運転免許を許可してあるのでありますが、このようにかってにストライキしておるから、半分だけは他社にまかしてもらいたいというようなことで書面を受け取られて、どういうような処置をされておるのでしょうか。
  163. 説明員(小林正興君)(小林正興)

    説明員(小林正興君) 先生お尋ねのとおり、陸運局長に対しまして他社による代行バスの要望があったことは私ども聞いております。一般的に他社による代行バスということは考えられないわけではございませんが、現在の段階でそういった申請は出ておりませんし、またかりに出たといたしましても、緊急度合いあるいはこれが労使紛争中の場合にはいかなる影響を与えるかということにつきましては、十分慎重に判断した上でないと、この代行バスを認めるかどうかということについて即断できないと思います。
  164. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 町長は町会にはかって、足を奪われたところの地域にスクールバスを運転して、子供の足を守るとか、地域住民の皆さんも困りますので、そのスクールバスに親も一緒に乗って一般営業のようなかっこうで足を守っておるというような現象もありますが、御存じですか。
  165. 説明員(小林正興君)(小林正興)

    説明員(小林正興君) ただいまのお尋ねは、現に運休中の路線にかかる市町村等で、みずからのスクールバス等の自家用車を用いて臨時応急の足の確保をはかるということについては、私どもといたしましては、道路運送法にたとえば共同使用の許可とかあるいは有償運送の許可とかいろいろな定めがございますが、そういった線に沿って判断をしていくということでございます。これはその地元地元の必要性を最もよくおわかり願える当該市町村において、そういった自家用車、たとえばスクールバスのようなものを臨時に活用するというようなことにつきましては、臨時応急の措置としてこれが許可等については対処していきたいと思っております。
  166. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 ストライキも百二十日間でありまして、四ヵ月です。すなわち、市町村としても学校は始まりましたし、困っているわけですね。許可するのじゃなくて、いま許可されておるわけですか。成規の許可はおそらくないと思うのです。市町村が応急措置としてやっていくと思うのですが、これに一般の住民も乗っておって、もし事故が起こるとか、その他道路交通法上の問題もございましょうが、このような事態を認めていくという態度ですか。これは違法だから早急に処置しなければならぬという態度でしょうか。
  167. 説明員(小林正興君)(小林正興)

    説明員(小林正興君) 先生のお話の点は、いわば運送のことについてはしろうとの市町村がバスを運行するわけでございますので、事故等いろいろな問題があることは当然でございまして、したがって、こういったことは一般論として望ましいことではございません。しかしながら、一方、ストが長期化いたしまして地元の足が確保されないというような場合には、必要最小限度やむを得ない範囲でこういったものを認めていく、そういう考え方でおるわけでございます。
  168. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 私どもも、先般、関係者数名参りまして社長にも会うし、県知事にも会うし、いろいろ話してまいりました。そのときに問題が解決すると思って帰りましたが、以来、なおこういうふうな情勢です。それで中央労働委員会が乗り出して御努力願いましても、普通のわれわれの常識による労使間の紛争として解決しないのではないかと私考えるのです。と同時に、これは過疎地域のバス営業についてはここだけじゃございませんですね。岡山県だけじゃございません。方々にございますが、全般的な問題として、運輸省としてどういうふうなお考えであるのか。きょうは自治省は見えておりませんので、また後日これは論議しなければなりませんけれども運輸省としては、過疎地域のバス営業に対してはどういうふうな御見解であるか、お聞きしておきたいと思います。
  169. 説明員(小林正興君)(小林正興)

    説明員(小林正興君) 御承知のとおり、過疎化が非常に進んでまいりまして、この中鉄バスの事業区域におきましても同様でございますが、年々輸送量が減っておる。一方、運賃等による手当て等は逐次進めておりますが、運賃の改定によってだけではこういった問題は解決しないというようなことで、やはりその後の輸送需要といいますか、輸送の情勢にマッチしたある程度路線の再編成、こういったこと、あるいは事業の合理化というようなことは当然事業者がやるものと考えております。しかし、これにもまた限界がございますので、国あるいは地方公共団体として、いわゆる補助の制度も考えておるわけでございまして、現在では、昭和四十年度から車両購入費についての補助の制度を設け、それから四十一年には路線の維持補助金という制度を設けております。本年度からは、やむなく廃止される路線につきましては、これにかわって市町村が代替ハスを動かすための車両購入補助というような制度も本年度から始めております。こういったことで、国としての措置もとっておるわけでございますが、やはりある程度の路線の整備といいますか、合理化も必要だろうと思いますし、また、運賃改定の必要な面もございましょうし、あるいは国の補助も必要だと、そういうことを背景といいますか、前提といたしまして、事業者あるいは関係の交通労働者がやはり公益事業を守るという方向で対処していただきたいと思っておる次第でございます。
  170. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 委員長に最後にお願いをしたいのですが、私この問題を扱ってみまして、バス運送事業者にもたくさんいままで長い間触れてきました。それからバス労働組合にもたくさん触れてまいりましたが、常識上からいって、この会社の社長のいまの考えは第一組合員に対する不信感、これはあらゆる力で屈服させなければならないという考え方、もう一つは過疎地域のバス営業についてはもうやっていけぬ、現状ではやっていけぬと、こういう二つの問題があるような気がするんです。したがって、私は、中央労働委員会が乗り出しますけれども、そのことによっては解決しないのではないかと考えます。早急に会社の社長あるいは二、三の関係者をこの委員会に呼んで、解決の方向は一体どうかということを論議したいと思いますから、社長並びに関係者をここに招致して審議する機会をつくることを御検討願います。
  171. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) 理事会で相談いたします。
  172. 小柳勇君(小柳勇)

    小柳勇君 以上で質問を終わります。
  173. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 私は、国鉄の仙台鉄道局管内の不当労働行為を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  直接のきっかけは、去る六月に社会党の本部からの要請で仙鉄管内の郡山、福島、長町、それから小牛田、そういうところの機関区の不当労働行為調査を同僚の数名といたしました。それがきっかけでありますが、われわれは、この問題をこれだけ切り離して特別に問題にするというのでは実はございません。そうじゃなくて、動力車労組全体にかかってきている同様の問題、あるいは国労を含めて国鉄全体のそういう職場の中におけるあり方あるいはさらに広げて政府企業に特に最近ひどくなっている合理化の攻撃、そういう労働強化に対する抵抗の弾圧をする弾圧面の強化、第二組合の育成の問題、そういう一連の動きが全国的にいわば露骨化をしている。そこでわれわれはこれをひとついわばきっかけにして、組織的に系統的に衆参両院でこの不当労働行為を中心として労務管理のあり方を追及していかなければならぬという立場であります。そういう意味で、きょう実は私はそういう意味のはしりでありますけれども、この不当労働行為、仙鉄管内の全部をきょうはとてもお伺いはできません。いわばその総論的な問題だけをきょうは取り上げさしていただく、それももう六時に近いわけでありますから、ほんの骨組みだけをお尋ねをするということにならざるを得ません。私もできるだけ簡単にお尋ねをいたしますから、お尋ねの事項に限ってひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  現地を調査に行きまして私がきわめて奇異に思ったことの一つは、あらゆる職場での訴えでありますけれども、いわゆる家庭訪問という方法が執拗にとられている。これはもう御承知のとおり、家庭訪問というものは、一体どういう目的で職員の家庭に対する訪問をされるのか、その対象は一体職員なのか、家族なのか、そういう点からまずお聞きをしたいと思います。
  174. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 国鉄で労働関係を担当いたしております山口であります。  ただいま先生からお話のございました家庭訪問のことに限ってお答え申し上げます。  国鉄の職場は非常に危険の多い職場でございまして、特に雪国では非常に労働条件が悪うございます。盛岡の局は非常に傷害事故の多いところでございましたが、家庭訪問その他で傷害事故をなくそうという運動をやりまして、過去数年非常に成績をあげまして労働大臣表彰も数回受けるような、ほとんど傷害無事故の実績をあげるようになりました。仙台の局はその隣でございまして、相変わらず実は傷害事故が隣の局であるのに減らないということで、家庭訪問そのものはこの御指摘不当労働行為問題以前から局で始めておったものでございます。
  175. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 現地でその目的を聞きますと、一つは、いまあなたの言われたような事故防止、一つは、違法なストをやろうとしているその違法なストを解除するようにという説得なんです。もう一つは、どうも国鉄の職場の中では時間がなくて十分な話し合いの時間がないので家庭にまで延長をして組合員、職員と話しをして、国鉄経営について理解をしてもらう、こういうようないろいろな事情があるようであります。いまのあなたのお話では事故防止ということに最大の重点を置かれている。いま盛岡の例を引かれましたが、それが事故がなくなったのと家庭訪問と具体的に因果関係があるかないかはこれは簡単にわからない。しかし、この職場での長が言われたように、職場では十分な時間がないので国鉄の経営その他を十分に理解をしてもらうために職員と話し合いの場を家庭に持つのだというような議論があったことは、私は非常におかしいと思うのです。その職場の管理のしかたで、どうしても職員との間に十分な時間の余裕がなければ、十分な時間のとれるようないわば仕組みにすればいいではないか。何も家庭にまで延長する必要はない。二時間も三時間も家庭でねばられて、多くの職員の訴えるところでは、そのために自分の休養時間というものがだめになっちゃう。非常に重要な運転という業務に携わる職員ですから、休養を十分にとっておかなければならぬ。そういう意味で十分な休養の時間として家庭に帰るとそういうような訪問がある。あなたの言われたように、事故を防止をするためという名目の家庭訪問というのが、逆に今度は休養が不十分で事故の温床にもなりかねない、そういういわば苦衷を訴えている。そういう実情を御存じですか。
  176. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) いまお話の件でございますが、発生的には先ほど申し上げたとおりでございます。家庭訪問によって不当労働行為が行なわれているというようなトラブルは現実には起こっております。これは昨年来第三者機関に上がりまして、現在審理中でございます。  背景を申し上げますと、そういう傷害事故防止を前提にしました家庭訪問から、不当労働行為めいたものに移ったという雰囲気でございますが、御承知のように、仙台の局は、先ほど第二組合とおっしゃいました鉄道労働組合の発祥の地でございます。したがいまして、国鉄労働組合と鉄道労働組合とがほぼ五千人ぐらいでせり合っているというかっこうになっております。したがいまして、組合員の獲得の激しさは他にちょっと類のないくらいのところでございます。これにわがほうの管理者が加わるというようなことは極力戒めておりまして、御指摘のような家庭訪問によってこの不当労働行為めいたことをやっているということはないと信じております。なお、現在第三者機関による御審議をいただいております。来月、再来月ぐらいには大体決着がつくという段取りになっております。
  177. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 私は、家庭訪問と不当労働行為関係というものをまだお尋ねしているわけではないのです。これはすぐあとでお尋ねしようと思いましたけれども、最初にお断わりしましたように、どうかひとつお尋ねしたことだけをお答えをいただきたい。不当労働行為の問題は、その段階になればまたお尋ねをします。  しかし、いま私がお尋ねしているのは、不当労働行為の問題とは切り離して考えて、家庭訪問による労務管理のあり方がおかしいということをまず言いたいわけです。労働者としては、家庭へ帰れば一〇〇%自分の時間だと思っている。しかし指導助役とか指導機関士という人たちが手みやげを持ってやって来るそうでありますが、やって来ていろいろな話し合いになる、すぐ追い返すわけにいかない、事実上そこに拘束された時間というものが生まれてくる、こういうことを無神経に行なって一体いいのか。戦争前は、たとえば役人は天皇の官吏という考え方がありました。二十四時間中拘束されているのがあたりまえだという考え方があった。何かそういう考え方の延長として考えているのではないか。拘束時間というものはきちっと協約できまっておるわけですね。それを無神経に家庭にまで乗り込んできて拘束するということが一体許されるものかどうかということが一つ。  もう一つ、先ほどお答えをいただきませんでしたけれども、職員が対象なのか、家族が対象なのか。家族が対象だという説明もございました。しかし、これも私はおかしいと思うのですけれども、国鉄が労働契約を結んでいるのは職員である、家族ぐるみ雇用しているわけではない。奥さんであろうと親子であろうと、ともかくそれは独立の人格なわけでしょう。そういうものにいろいろ国鉄の事情を言わなければならないということで家庭に入ってくる、いわゆる奥さんは心ならずも応待しなければならないということになる。そういう形で拘束をするということが当然の権利であるかのように行なわれているそのこと自体がおかしいじゃないかということです。そういう方法をとる以外にないのなら別ですよ。しかし、そういう方法をとらなくても、いろいろな方法が考えられるにもかかわらず、家庭訪問という形式が非常に執拗に組織的に行なわれている。このことをどうお考えになるかということを端的にお答えいただきたい。
  178. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 家庭訪問自体を取り上げましてどうこうということはちょっとお答えしにくいのでありますが、度を過ぎればこれは当然不当なことであると思います。ただ国鉄の場合にはわりあい家庭的なつき合いというものがいろいろな関係でございまして、身内が同じところへつとめているというような状態も非常に多うございまして、したがいまして、単に職制であるからというだけではなくて、そういう個人的なつながりを背景にした家庭訪問が行なわれているものと思っております。もしそれが行ぎ過ぎであれば、これは先生のおっしゃるとおりかもしれません。
  179. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 私がこんなことをお尋ねをするのは、先ほどあなたが言われたような不当労働行為と直接につながっておるからです。この家庭訪問という機会をつかまえて、あるいはむしろ家庭訪問の目的自体であると私は考えるのですけれども、やはりそこで動労の脱退、第二組合に入ったらどうかという勧誘が相手を見て露骨に言うことがあります。遠回しに言うことがあります。おどかしながら言うこともあるし、なだめながら言うこともある。いろいろ手段は違いますけれども、結局はそのことが行なわれる機会としては非常にこれが利用されておる。そういうことを私が言いますと、それはあなたがいま言われたように、いま仲裁に申し立てて審理中、これは確かにそうです。何しろ密室で行なわれたのでありますから、あった、ないと言うことは水かけ論になるかもしれません。しかし、少なくともそういう不当労働行為が行なわれる場所として家庭訪問というものをわれわれが見ておる。家庭訪問はそういう意味で問題になっておるということが現実の問題であることは間違いがない。だとすれば、そういうものをやはりこの際疑いを晴らす意味でもやめたらどうか。最近の情報を聞きますと、われわれの調査の結果かどうかはわかりませんけれども、多少下火になったそうではあります。あなたは先ほど家族的なということを言われましたけれども、その国鉄の家族、国鉄一家と言われる、そういう家族的な考え方もあるいは場所によれば必要かもしれない。しかし何かそういう家族主義というのは昔の温情主義、そういう意味では非常に前近代的な労使関係、そういうものを温存する考え方にもつながっておるわけですね。先ほど言いましたように、雇用しておるのはおやじさん一人なんです。おやじさん一人を労働時間中拘束するということでしか私は国鉄としてはやれないはずだと思う。それを家族まで巻き込んで、いわゆる勤務時間を越えてそういうことができるという考え方自体が私は近代的な労使関係としてはおかしいと思う。いわんや、それがその不当労働行為の温床になるとすれば、なおさら私は考えるべきじゃないか。労政局長がおいでになりますからお尋ねをしたいのでありますが、そういう労組のあり方ですね、そういうものを適当とお考えになるかどうか、いかがですか。
  180. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) 具体的に事案の内容につきまして詳細に把握をいたしておりませんので、ただいまお尋ねの事案について適当かどうかというお答えにはならないかと思いますが、御指摘のように、国鉄というものが日本の社会における非常に大きな存在であり、そしてそれが公社という形で経営されておる。その中での労使関係につきましては、やはりわれわれが期待いたしますのは最も近代的で最も模範的なものであるべきだという考えを持っております。そういう意味におきましては、労組法の規定にあります不当労働行為の禁止の規定が、国鉄においてはわれわれの期待といたしましては民間よりはさらに厳格に考えられる、そしてそのような疑いの持たれるような不当労働行為的な行為というものは行なうべきではない、これは基本原則として言えるかと思います。ただ具体的にただいまの家庭訪問という問題でございますが、私ども労働行政で担当いたしております安全衛生、安全というような面から言いますと、やはりその安全を確保するということのために、たとえば汽車を運転する方だけでなしに、家族の御協力ということは当然あるわけでございます。一般工場におきましても、やはり朝気持ちよく出勤するということが安全あるいは災害防止に役立つというようなことがございますから、そういった面について、たとえば家族の日ごろの協力に感謝するというようなことはどこの事業所においても行なわれておるということでありまして、安全面から言えば望ましいということが言えると思いますが、御指摘のように、この労働組合運動、特にその組織ということが非常に問題になっておりますときにそれをやることが適当かどうかということにつきましては、当局側におきましても慎重な配慮が必要ではないかというように考えます。
  181. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 先ほどもちょっと言いましたように、動労を脱退して第二組合に入れという、そういう勧誘というのがこれは家庭で行なわれるばかりではなくて、職場でも行なわれているわけでありますが、行なわれるチャンスというのは家庭訪問が圧倒的に多い。たとえば郡山での訴えでは、私が知った限りでも約七十例くらい、具体的な何月何日、だれが来て、どれくらいいて、どういう話をして、何を手みやげに持って来たか、そういう資料が整理されておる。はなはだしいのは、何か動労を脱退して第二組合に入るという脱退届けと、加入の申し込み書ですか、それともう一つ何か三つの文書が一枚の紙で、切り取り線でつながっている。そういうものまでおみやげに置いていっておる。そういう具体的な資料をわわれれは持っている。しかし、私はいまここでそういう具体的な事実を、いわば各論的にお聞きするわけではありませんから、そういうことについて、いまは申し上げません。しかしそういう温床になっているということは事実です。私が聞きたいのは、さらにそういう不当労働行為というのは、この組合脱退、あるいは組合の加入というものをすすめるということだけではなくて、どこでもよくやられる手ですけれども、たとえば昇給昇職に差別をつける、こういうことも――そういうことはございませんという答弁が必ず返ってくるに違いない。個個の事例を一つ一つとってみればそれぞれに何がしかの理由が、やっぱりもっともらしい口実がある。しかしこれを大量的に監察するということになればやはり動かしがたい具体的な資料として私は出てくると思う。そういうことはいま申しませんけれども、これは長町ですか、の話ですけれども、昇給昇職についての理由というのをここ数年公表することがなくなった。あるいは職掌といいますか、それの理由も最近は公表しなくなった。したがってどういう理由で昇職になり、昇給になったのかという理由が一般にはわからなくなってしまった。これを考えてみればそういう差別待遇のしっぽをつかませないとする配慮ではないかという疑いを持たざるを得ない。こういう不当労働行為の数は非常にたくさんあるわけでありますけれども、しかしこれを私はいま問おうとするのではなくて、これが実は出てこざるを得ないような背後の労務管理というものが基本的に問題じゃないか。労政局長先ほど国鉄の職場というのは非常に近代的だということをおっしゃいましたけれども、少なくともわれわれが見た限りでは逆でございますね。労務管理についての基本的な考え方が非常に古いと私は思う。そのことを具体的にお伺いをしていきたいと思う。  最初にたいへんとっぴな質問になると思いますけれども、国鉄では一体安保条約あるいは安保体制、そういうものに賛成か反対か、いかがでしょう。
  182. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) たいへんむずかしい御質問で当惑いたしますが、国鉄ではというその意思はちょっと代表いたしかねます。私自身は考えを持っておりますが、これもこういう高い場で申し上げるのは恐縮でございますので、ごかんべん願います。
  183. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 もちろん個人おのおのしかるべき考えを持っている、それはそれでけっこうです。私はあなた個人のお考えをお聞きしたのではなくて、もちろん国鉄としてはいかがでございましょうということをお聞きしている。それが答えられないというのは、そういうことにはノータッチであるべきだ、こういう考え方が前提に立っているとすれば、私はそれなりに了承いたします。そういう意味ですか。
  184. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 国鉄といたしましては、これは政府の機関でございますから、政府の御方針にマッチしているのが当然かと思います。ただここで取り上げて、安保条約と国鉄の立場ということを取り上げて伺われますと、ちょっと御容赦を願いたいと申し上げるわけでございます。
  185. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 私がこんなことを聞くのは、仙鉄の労働課ですか、労働課で、一九七〇年問題シリーズというのを出しておるわけであります。それの中に、第四集ですけれども、安保は賛成か反対かというのがあるのです。これはもう明らかに、安保賛成そういう立場からのこれは文章です。この一九七〇年問題というシリーズはどういう性格で、配付先はどこなのかというようなことは御存じですか。
  186. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) どのような冊子がどういうルートで配られたのか、現在承知しておりません。
  187. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 これは実はあなたの先ほど言われた不当労働行為の救済の申し立ての中でも出てくる文章です。したがって、私は国鉄としては当然御存じだろうと思いますけれども、何集まで出ているかわかりませんが、手元にある第四集というのはひどいものである。これは労働課ですから、労働課でつくって国鉄職員に配付するものに違いない、ガリ版で刷って。それによりますと、たとえばこういうことが書いてあるんですね。「アカ」――これは赤、白の赤ですね。「(アカ)それは社会党と日共である。彼等だけが即時破棄を唱えているのであり、大多数の国民は安保を必要としていることがアンケートでもはっきりしている。」、こういうように安保廃棄を主張する勢力はまずアカだときめつけるわけですね、なぜアカかというと、「その侵略主義は、サンフランシスコ条約に反対して、日本からアメリカを追いださなければソ連も中共もその野望即ち日本侵略ができないからである。それが安保条約の完全破棄なのである。」、つまり赤の勢力が安保廃棄といっているのは、ソ連や中国のためにいっている。ソ連や中国の侵略を助けるためにいっているということからアカだという定義が出てくる。そして、そのアカが労働組合と具体的にどういう関係にあるかというと、「このアカが我々の周囲をいかに多くとりまいていることかが判るのである。今にしてこの真実を見究わめ、対策を講じ自らの国を自らの手で護らなければ、我々は、これ等分子のじゅうりんするところとなり、労使共々死へと追いやられることを知らねばならない。」というような趣旨のことが書かれてある。私は、まあ、これを書いた男はヒステリーじゃないかと思うんですけれどもね。こういう考え方というものが安保反対という者の考え方の中にあることは私も知っています。しかし、それは国内で安保賛成、その安保賛成の勢力の中で一番反動的な極右的な考え方、ともかくそれを仙鉄の労働課でそういう考え方を配って、それがおそらく職制がそういう考え方に基づいて職員を教育せよという、そういうPRの文章の基礎になるに違いない。これは、国鉄は安保賛成か反対か私は意見は言えませんというような立場からいえばきわめておかしいわけです。つまり特定の政治問題について、これが継続自動延長がいいのか、廃棄がいいのか、長期固定化がいいのかというきわめて高度な政治的な問題について国鉄が、少なくとも職制がこういう意見を職員に教育をする、こういうことは一体許されるのか。
  188. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 当時どういういきさつでそういうことになっておるのか確かめませんと、ちょっとお答えしにくい問題でございますから、管理者、職員通じまして、いろいろな意見を持った者がおるはずでございます。それがその資格においていろいろの議論はあり得ると思います。それがどういうルートでどういう意図で配られたのかわかりませんが、職員の中でも政治的な意見を吐き、管理者側もそれに対応して意見を吐くということはあり得ることではないかと思います。
  189. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 このシリーズの性格を御存じないわけはないと思うのですけれども、とにかくこれは私の知っておる限りでは、去年の初めのころから第九集か十集くらいまで出ておる。これは仙鉄の労働課が作成をしておる。したがって、特定の個人が安保条約について何がしの意見を述べたなどというものとは全く違う。そしてこれは単に安保の問題、こういうことが出ておるのでは実はない。ここから実は労務管理の基本的な方針というものが出ておる。それがたとえばその少し前の第二集というのには露骨に出てきておる。こういう考え方が具体的に労務管理にどう影響してきておるかといういきさつが出てきておる。こういうことを書いてある。たとえば「企業が従業員教育をどんなに行なっても差支えない。今までこの点が片手落ちであった。組合は組合員に対して、いろいろの学習を通じて企業を攻撃してきたが、企業も従業員に対して民主的な労働組合のあり方を教育し、これに反するものを批判する権利を有する。」、こういう一項目があるのです。その前に例によってアカ攻撃を盛んにやって、そしてそのあとでのことですから、したがってこれは民主的な労働組合のあり方を教育をする権利があるというのは、現在の動労なら動労の組合のあり方に批判をし、そして国鉄が考えている民主的な労働組合とはいかなるものかという、そういうものの教育というものにつながる。当然現在の組合の批判というものを含まざるを得ないわけです。こういう考え方は一体許されるものかどうか。言論の自由と支配介入というものとの関係は確かにむずかしい。いろいろ微妙な問題があります。しかし団結権の保障のためにはそういう使用者の言論の自由というものは制限されなければならない。基本的には私はそうだと思いますし、そのことには異論がないだろうと思いますし、まずそれじゃそこからお伺いをしていきたいと思います。
  190. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 安保の問題で当惑いたしておりますが、背景としましては、安保の改定期に相当大がかりな違法なストライキが行なわれる、そうしますと非常にトラブルが起こり、列車がとまる。それは現場の管理者にとっては非常にたいへんなことでございます。そういうことを予防したいという心情が働いておるのだと思います。  それから後段の使用者側が組合に対して批判をするということでございますが、これは組合が自分できめるべきことを明らかに立ち入って批判をするのは、これはいけないかと思いますが、当局当局立場で組合のあり方というものをある程度批判することは、これは当然ではないかと思います。ただ、いままでの慣行で言いますと、どちらかといえば当局側がおとなになるという慣行がございます。そういう点では多少刺激をするところがあるかもしれません。
  191. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 労働省にお伺いをしたいのですけれども、いまの言論の自由と支配介入の問題、これについて基本的に労働省としてはどういうようなお考えをお持ちになっておりますか。
  192. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) 確かに非常にむずかしい問題でございますが、一般的に言えますことは、労使双方とも言論の自由があるということであります。ただし、不当労働行為、組合法第七条で規定しておりますような条項に該当する行為を使用者は行なってはならない、基本原則はそうであります。そこで具体的にはどのような言論や行動不当労働行為に該当するかどうかということになるわけでございまして、たとえば、従来いままでの判例、裁判所の扱い等を見てみますというと、労働組合の主張に対しまして、使用者側が使用者側の立場で相手の非を論難するというようなことについては、これは言論の自由の範囲内である、労働組合側も会社の方針について自分の組合としての立場で会社の方針が不当であるということも言論の自由の範囲内である。しかし、それにさらに、たとえば表現、言論の自由等がございますけれども、たとえば、強制をするあるいは脅迫をする、あるいは利益誘導をするというようなことが加わりまして、そうして、この組合から脱退したほうがいいぞ、あるいはこれに加入したほうがいいぞというようなことになりますというと、これはまさに組合法の七条に該当をして、不当労働行為になる、これが大体の組合法の解釈と言論の自由に関しての判例の一般的な傾向かと思います。ただ、その場合に個々具体的な事件がそれじゃその限界、どこに触れるか、越えるか越えないのかというようなことは、その個々の事件につきまして客観的な情勢がどうなのか、それから行動態様がどうだったのかというようなことを調べてみないとわからない。したがって、個別それぞれのケース・バイ・ケースにつきまして、いま申し上げましたような基本的な立場に立ちまして、個別に決定をするということが労働委員会並びに裁判所でとっております態度でございます。
  193. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 いま言われた強制とか脅迫、そういうものを伴わなければ不当労働行為にならない、こういう考え方は労働省の昭和三十三年ですか――に出した通達に書いてある。それはアメリカのタフトハートレー法ですか、それのいわば引き写しの考え方ですね。しかし、私から言わせれば、そういう考え方も実は日本の労働運動の現実に照らしてはおかしいと思う。日本の労働運動というものはもっとアメリカよりもそういう意味においてはおくれておる。労働者個人個人の自覚が足りない。したがって、使用者に威嚇や脅迫の意思がなくても、そうだと感ずるような弱さというものを労働者は持っている。そういうアメリカと日本との違いというものを考えると、アメリカのそういうものの考え方の引き写しは、私はほんとうはおかしいと思う。あなたは、いまそれが判例や学説の大勢であるかのように言いましたけれども、むしろ私は逆だと思うのですね。昭和四十年に大阪の地労委の出した、よく引かれる例ですけれども、三菱製紙の裁定ですね。これなんかも明らかにいまあなたの言われたのとは違う。もっときびしい条件をつけている。しかし、ここはそんなことを議論する場所ではありませんからさしおきますけれども、いまのこの民主的労働組合のあり方を教育する権利があるという考え方ですね。これはあなたの考え方によれば、そのことだけを抽象的に考えれば、そのこと自体不当労働行為でないかもしれません。しかし、先ほど言いましたように、民主的な労働組合のあり方を教育をするということは、現在の労働組合のあり方に対する批判をどうしても伴わざるを得ない、あるいは幹部批判を伴わざるを得ない。そういういわば一歩踏みはずせば不当労働行為になりかねない、そういう紙一重のところにある問題だと思うのですね。だとすれば、あなたが先ほど言われたように、国鉄というような職場というものが近代的だとするならばそういう前近代的な不当労働行為の疑いが起きないような、そういう慎重な配慮があってしかるべきである。したがって、不当労働行為に近つくことのないようなそういう配慮が必要である、そういうことを考えると、民主的な労働組合のあり方を教育する権利があるといって、いわば積極的にそういうことをPRすることがはたして一体適当かどうか。国の権力という、いわばその最も強大な権力を後にしょっておるその国鉄が、中小企業のおやじの言うようなことを言っていて一体いいのかどうか、そういう点の御意見を伺いたいと思います。
  194. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) わが国の労働法制のたてまえにおきましては、憲法によりまして団結権、団体行動権を保障をいたしております。したがいまして、労働者が団結をいたしまして、労働条件等の問題について使用者と対等に交渉を行なう、そうしてそれをきめていくということが基本的なたてまえになっておるわけでございます。そして労働者の団結が強固であればあるほど個々の交渉も公正なものになるというのが大前提になっておるわけでございますが、さらに加えまして、いま御指摘のありましたように、たとえばヨーロッパの法制では全然ございません不当労働行為制度というものを取り入れまして、これはワグナー法、タフトハートレー法等のアメリカ法の系統の制度を取り入れたわけでございますが、さらにその上に使用者側からする不当介入あるいは差別取り扱いといったようなものを禁止をしようということになっております。したがいまして、この不当労働行為制度と、それから憲法、労組法で規定されております団結権の保障に基づく自由な組合員の意思による組合の設立、そしてその団結の強化というものは、いわば車の両輪のような関係で作用をしてまいると思うのであります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、個々具体的なケースがどう当たるかということはほんとうに具体的なケースを詳細に検討してみないとなかなか結論が出ない。現に各労働委員会等におきまして、非常に詳細な審問をいたしまして、事実確認をしながら法律の趣旨を達成しよう、結論を出そうということをやっておりますので、言論の自由というものと  これも憲法で保障されておる。それと、それからいま申し上げた団結権、それから労使関係の正常化というもの、それから不当労働行為制度、そういうものが個々具体的なケースでどのように調和するかという問題だと思うのでございます。したがって、そういう意味におきまして、私どもは、先生の御指摘でございますけれども、日本の労働組合運動は非常に発展をしてまいりましたし、社会の中におきまして、労働組合の占める地位というものは非常に高くなってきておる。今後さらに発展するだろうということを期待をいたしておるのでございますが、現在の法制下におきます不当労働行為制度、それから団結権の保障というものが十分に活用をされるということを期待をいたしておるわけでございます。  それで、国鉄が民間の企業に比べて近代化されておるかどうかということは、一がいには、なかなかいろいろな局面があるかと思いますので、言い切れないと思いますけれども、しかし、非常に公共性の強い事業をやっておることは、これは確かなことでございますので、いま申し上げましたような規定の運用につきましても、民間よりはさらに慎重に、できれば模範的な運用ができるようにということを私どもは期待をいたしております。
  195. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 決して模範的ではないという具体的な問題を一つじゃ申し上げましょう。  いま私が読み上げましたこの第二集の先ほど申し上げましたすぐあとに、こういうことが書いてありますね。「労働組合が加盟している上部団体が反安保を支持した場合どうするか。(1)そもそも、労働組合が上部団体に加盟することは、自分の運動を進める上にプラスになるからであって、マイナスになるような間違った決定に対して従う必要はない。」、こういうことが書いてあるのですよ。こうなると、私は逃げも隠れもできない不当労働行為だと思う。先ほど局長が言われましたように、労働組合が自分できめるべき問題、そういう問題に使用者が介入するのは不当労働行為だというお話がありましたね。そのとおりだと思います。この上部団体に加入をすることがプラスかマイナスか、そういうことは組合員自身が決定すべき問題でしょう。それをマイナスであるとすれば従う必要はない、こういうことを職員に呼びかけるというのは、これはもう明らかに不当労働行為にならざるを得ないのじゃないですか。まず労働省から伺いましょう。
  196. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) 労働組合法では、労働組合の組織運営に対して支配介入してはならないという規定がございます。したがいまして、いま言われましたような、私も現物は見ておりませんのでわかりませんが、先ほど来申し上げておりますように、個々具体的なケースとして、それが支配介入であるということになれば不当労働行為になるかと思いますが、いまお聞きした限りでは何ともお答えしかねるのではないかと思います。もう少し詳しく事態全体を見ないと結論を出すことはできないのではないかと思います。
  197. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 これはこの文書がそっくりそのまま職員全体に伝わったという保証は必ずしもありません。しかし、こういうことを職員に訴えようという労働課の姿勢だけははっきりしている。こういう姿勢が適当だと思いますか。
  198. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) そこで、先ほど来申し上げておりますように、言論の自由ということの限界を越えているかどうかということになるのだと思います。したがって、先ほども申し上げましたように、だから国労を脱退せよ、だから鉄労に入れ、あるいはだから動労を脱退せよ、こういうことになれば、これは明らかに不当労働行為だと思いますが、いまおっしゃいましたようなことをどういう形でどう浸透したかということを関連いたしますが、そういう点をたとえば労働組合の基本的な考え方として、上部団体についてみずからの考えで加入なり脱退なりきめるべきだという大原則、その大原則を、具体的にどのように介入して、そしてそれに影響を与えたかということとあわせて考えませんというと結論が出ない。したがって、不当労働行為事件というものにつきましては専門の公労委という機関があるわけでございます。ここで慎重に検討する。ただいまお示しになりましたような仙台の管理局の事件につきましても、現在公労委で審査の最中でございますので、公労委が必ずや公正な結論を出すということを期待いたしておるわけでございます。これについて現在労働省がそれはいいとかいかぬとかいうことを軽々に申し上げるということは適当でないというふうに考えます。
  199. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 どうも労使の間に立って中立か、少なくとも労働者の利益を守ろうという立場の人の御発言とは私は聞きとれない。  私がお伺いしているのは、具体的にこのことが全職員に伝わったという保証はないにしても、こういう考え方、つまり上部団体に加入をすることがプラスかマイナスか、そういうことを使用者のほうで判断をしてマイナスだという判断をしたら従う必要はないということを教育してもよろしい、こういう考え方が適当かどうかということをお伺いしたのです。それが具体的に不当労働行為になるかならないかという質問ではない。不当労働行為になる可能性も十分持っておる、そういう考え方が適当かどうかという問題をお伺いいたした。しかし、まあ押し問答をしていてもしかたありませんからやめますけれども、これは国鉄のほうとしてはどうですか。こういう考え方を認める立場にあるわけですか。
  200. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) ちょっと切り離した質問なので、お答えが。ヒントがはずれるかもしれませんが、労働課でつくりました資料そのものが全部現場にそのままなまで配られるというものではございません。労働課の中にもいろいろな立場の人間がおります。そういう人間がおのおのの意見を出し合って議論する、これは当然であると思いますが、いまお話のものがどの程度に配付されるか、どういう目的で書かれたものか、調べてみないとちょっとわかりません。
  201. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 それはあとで資料要求のときにまたお願いをしますが、最後の資料をひとつ出してお尋ねをしたいと思うのです。これは国鉄のほうでは御存じだと思いますが、こういう私らから言わせれば非常に反動的な労務管理の方針、不当労働行為にいわば不感症になっているようなそういう考え方、こういうものが具体的に現実として出てきたのが仙局五人委員会、仙局というのは仙台鉄道管理局という略でありますが、仙局五人委員会、こういうものがあってここでいろいろな動きをしておる、これはもう国鉄では御存じですね。
  202. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 五人委員会の件は、現在公労委に提訴されている中に項目として入っているかと思います。
  203. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 この五人委員会と称する組織が五月の二十六日に作成をした文書というのに、こういうことが書いてありますね。「五月三十日にストをひかえた今週はこの情勢をふまえて、今まさに沈みつつある戦艦に乗っているバカはいない。乗り移るには今が時期ではないか。とにかく組合にストライキを止めさせなければ大変なことになるぞ……」、こういう論旨をもってPRをしておる。こういうことが文書化をされておる。これはおそらく御存じだと思うのです。「今週は」ということを書いてあるところを見ると、おそらく毎週一回ずつくらいはこういうものを作成しやっておったに違いないと思うのです。この五人委員会の性格というものはどういうものですか。
  204. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) これは昨年、御承知と思いますが、EL・DLの電気機関車、ディーゼル機関車の乗務員を一人にするか二人にするかという問題で、労使間で中央で相当紛争が起こり、これの解決のための手段として動力車労働組合は全国的に大きな闘争をかまえるという形になっております。この闘争に対して、このストが行なわれることをできるだけ避けたいということで、各地区でいろいろそのストが行なわれないような対策を勉強する会ができております。仙台の五人委員会はそのうちの仙台のものであると承知しております。
  205. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 その五人というのは、具体的にはどういうポストの人ですか。
  206. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) いま手元にちょっと資料を持ってまいっておりませんが、動力車関係の仕事をやっている補佐その他が中心になっていたと記憶いたしております。
  207. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 いわば職制かそれに近い人たち、そして労務関係、直接の労務関係に携わっているかあるいは間接にでもそれに携わっている、そういう人たちのグループだと私は聞いておる。これは、いま言ったように、これはどういう意味かはすぐおわかりだと思いますけれども、いかがですか。「沈みつつある戦艦に乗っているバカはいない。」、この意味はおわかりですか。
  208. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) ちょっとわかりかねます。
  209. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 その前に「最近の各地の話題を総合すれば、最早動力車労働組合の前途は、組合幹部のあらゆる面における指導性が欠如しているので、崩壊の一途をたどっている、という雰囲気である。」、こういう前文があって、「沈みつつある戦艦に乗っているバカはいない。」ということばが出ている。こうなればもう明瞭でしょう。つまり動力車労組という沈みつつある戦艦からいま乗り移るべき時期なんだ、これはまさに不当労働行為そのものずばりである。しかも、これはもうこのあと具体的にどうPRをされたかという保証はないけれども、それは大いにPRをしようという、そういうことでわざわざつくられた文書、わざわざ集められた組織、これはもう明らかに不当労働行為である。逃げ道はないんじゃないですか。
  210. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 現在、第三者機関に提訴されております。逃げるとか逃げないというつもりは毛頭ございません。公正な第三者機関で審理中でございますから、その結果を待ってお答えしたいと思います。
  211. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 当事者としてそういう御答弁をされるのはある意味でやむを得ませんので、労政局のほうにお伺いします。  いま御説明がありましたように、課長補佐クラスの五名、それも労務に関係をしておる五名、それが、この文書からうかがわれるところでは、おそらくは毎週少なくとも一ぺんずつやっておるらしい。それがこの五月の二十六日には、まさに沈みつつある戦艦から乗り移れという、そういうPRを今週は大いにやろうじゃないかということをきめておる。具体的にそれがどういうようにPRをされたかは、先ほどの話と同じように具体的な証明はいまのところありません。しかし、こういう考え方になれば、これはもう明らかに不当労働行為を志向をしておるといわざるを得ないじゃないですか。
  212. 説明員(松永正男君)(松永正男)

    説明員(松永正男君) 事態全般はわかりませんが、御質問だけに限定して考えますというと、そのような考え方で組合の切りくずしをやったということになれば明らかに不当労働行為でございます。
  213. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 これはまあ当然だと思うのですね。  もうこれでとりあえずの質問はやめますけれども、最後に一つ資料の要求を委員長のとりなしでお願いをしたいと思う。  それは、いま私が申し上げました、こういう幾つかの文章を引用しましたけれども、こういう文章、類似の文章がたくさんあるわけです。私はやはり不当労働行為かどうかという個々の問題を判断するときに、大量に起こっておるかどうかという問題もさることながら、やはり労務管理の基本的な考え方がどうあるのかというそのことをはっきりさせる資料がまず必要だと思います。聞くところによりますと、これはまあ名前は伏せますけれども、ある若い機関区長などは不当労働行為をやったって罰金を払えばいいじゃないか、そういうことを公言しておる。そういう不当労働行為に対する不感症にならざるを得ないような労務管理の考え方が基本的にある。そのことを私は具体的に調査をしたい。そういう意味で資料をお願いをしたいわけです。  一つは先ほどから引用しておりました一九七〇年問題集、これは一集からいつまであるのかしりませんけれども、最近のものまで。それからいわゆる仙鉄の労働課なんですけれども、労務管理資料というのがあります。それからもう一つこれは名称必ずしも正確じゃないかもしれませんけれども、労働事務必携、いずれも仙鉄局の作成、そこで労務管理について基本的にどう考えておるかという調査の材料にしたい。もう一つは、これは東北支社なんですけれども、東北支社の主催の運転業務研究会というのがありますね。そこでその研究会に出席をした人たちの手になる私たちが望む職場管理というもの、私たちが望むと書いてありますけれども、実はこれは率直にいえば国鉄が望む職場管理の裏返しというか、そのことを実は意味しておると私は思う。そういう意味で、国鉄が間接的に望んでおる職場の管理のあり方がこれでわかるわけです。そういう意味で、これはいずれも去年の初めごろから、いわば安保を前にしてこういう動きが非常に露骨になっておると思いますから、去年の初めから最近までのもの。それからもう一つ事故についての資料をいただきたい。これは現地に調査に行ったときもお願いをして、しかるべき人から承諾を得ておるのですけれども、この事故というのは、事故のあと始末について差別が行なわれておるという問題、第一組合員の起こした事故と第二組合員の起こした事故とでどうも差別があるという、そういう問題からも必要と思いますけれども、もっと早く言うならば、機関助士廃止の問題をめぐって、前とあとと具体的に事故の状況がどうなっておるのか。これは交通安全の観点からも必要でありますし、そういう意味で仙鉄機関区内の去年の初めごろからの事故の状態、件数、こういうものを資料としていただきたい。  そういう資料をいただいて具体的な質問に入っていきたい。このように考えます。
  214. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) いま御要求のございました五種類ほどの資料でございますが、現在お出しできるようなものがありますかどうか、一応取りそろえまして、また先生のもとに伺いまして御意見を伺いながら調整したいと思います。と申しますのは、労務管理必携とは現場長に限定で配っておりますので、余部があるいはないかもしれません。先日も実は参議院の法務委員会のほうで同じような資料の御要求がございまして、これは大阪のほうの御要求がございまして、大阪のほうも手持ちがございませんので、大体全国同じようなものをつくっておりますので、東京の分を出しましてごかんべんを願った経緯がございます。したがいまして、御要求のございました点は、もう一度帰りまして、御意見を伺いながら調整をいたしたいということをお許しいただきたいと存じます。
  215. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 法務委員会で要求された資料というのは、私がいま申し上げましたような文書の資料と全然違う。私が要求した事故に対する資料、これみたようなものですね。そういう意味でならわかるんだけれども、私の要求した文書の資料まで何かそういう意味ではぐらかされたのでは困る。
  216. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 文書の資料をはぐらかすというつもりは毛頭ございません。労務管理必携そのものでございます。これが限定版で出しておりますので、仙台で最近つくっておりますかどうかよくわかりません。私先ほど間違いましたが、衆議院の社会労働委員会から資料の要求がございまして、さがしましたが新しいものがございませんので、東京の労務管理必携をお出しして御容赦をいただいた経緯がございます。そのことを申し上げたわけでございます。事故の統計その他はこれは調製いたします。
  217. 松井誠君(松井誠)

    松井誠君 余部がなければコピーでとれるわけでしょう。ですから現物そのものではなくても、現物の写しであることが正確にわかればいいんですから、何もよそのものを持ってこなくったって、そのものずばりを下さい。
  218. 説明員(山口茂夫君)(山口茂夫)

    説明員(山口茂夫君) 労務管理必携はかなり判例等も入れました大部のものでございます。数百ページあるのでございます。大体内容は各局同じでございますので……。
  219. 藤原道子君(藤原道子)

    ○藤原道子君 松井委員だけでなく私もほしい。
  220. 委員長(佐野芳雄君)(佐野芳雄)

    委員長佐野芳雄君) それでは資料をもし用意でさましたら各委員にひとつお願いできればと思います。  他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十五分散会