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1970-07-03 第63回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月三日(金曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐野 芳雄君     理 事                 上原 正吉君                 渋谷 邦彦君     委 員                 黒木 利克君                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 山崎 五郎君                 山下 春江君                 山本  杉君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 藤原 道子君                 柏原 ヤス君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  加藤 威二君        厚生省社会局長  伊部 英男君        労働省労政局長  松永 正男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (海外技術協力事業団の労働問題に関する件) ○社会保障制度等に関する調査  (痘瘡の予防接種に関する件)  (精神病院施設等に関する件)  (森永ミルク砒素中毒問題等に関する件)  (スモン病等に関する件)     —————————————
  2. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 大橋和孝

    大橋和孝君 前回に海外技術協力事業団の問題について質問をしたわけでありますが、まだロックアウトも続いているようでありますので、その後の経過はどうなっておるのか、詳しくひとつ説明してください。
  4. 沢木正男

    説明員沢木正男君) ロックアウト実施いたしまして以来、事業団側といたしましてはできるだけ早く正常な団体交渉を行ないたいということで、目下、団体交渉条件につきましていろいろ組合側理事者側との間において話し合いが続けられておるというふうに報告を受けております。
  5. 大橋和孝

    大橋和孝君 そんな通り一ぺんな答弁なら私も聞いているからわかっておるんです。もっとその間の詳しい状態を聞きたいから質問したのであって、こんな重要な事業団がそういうふうに長い間ロックアウトしたままでいいのか。あなたのほうは、それならそれで責任感じておるのですか。もっとそこのところを詳しく説明してくださいよ。
  6. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 組合側理事者側との交渉は、現在総務部長を通じて行なわれておりまして、十五日、それから二十九日、それから昨日と三、四回文書による団体交渉についての条件内容についての話し合いが行なわれております。その内容といたしまして、事業団側が二十九日に出しました文書内容は、たとえば、ただいま読みあげてみますと、「今次紛争根本的解決を図るため、双方積極的に問題に取り組み、秩序ある誠実な交渉を持つことは、かねて当事業団が貴組合に申し述べてきたところである。」というようなことで始まりまして、団体交渉人数の問題、団体交渉の時間の問題、それから団体交渉議題につきまして、組合側が要望しておる三つの議題につきまして、事業団側といたしましては、この人事の問題については、いわゆる経営権の行使として事業団専決事項であるから、労組法上正当な団体交渉事項たり得ないものと思量されるというようなことでございまして、それが組合側との意見が現在折り合わない。ただ、しかしながら団体交渉の時間の問題、それから人数の問題につきましては、昨日だいぶ歩み寄りが見られたようでございます。それから議題につきましても、一時金の値上げの問題とそれから人事の問題を切り離してやるというような点についても大体交渉がついたやに聞いております。昨日夕方現在の状況といたしましては、団体交渉に入る人数の問題について、組合側交渉委員の方が一応帰って相談してみる、それで今朝理事者側に返答するということで、現在その返答待ち状態であるというのが昨日までの状況でございます。
  7. 大橋和孝

    大橋和孝君 私が聞いているところによりますと、長期の間ロックアウトされたままになっておるわけですけれども、いまの交渉というのは団体交渉でなくて、事務的な打ち合わせですね。あなたのほうはなんだかんだ言って、ロックアウトしたままで、そしてなかなか話し合いを進めていない、私はそこのところに非常に疑義を持つわけですね。非常に何かこの海外技術協力事業団というのは毎日相当必要な——非常に大事な事業として考えられておるのにかかわらず、アジア全体の立場から考えても、それがこのわずかな事柄で、事務ベースでどういうふうにして団交を持つかという前段階の話にこれだけの時間がかかっているということが私は了解に苦しむわけですよ。しかも組合側は早く団交をして、そして早くロックアウトが解かれて就業をしたいという申し入れをしておるにもかかわらず、そういう状態であるということは非常にもう——いまおっしゃったような七項目か何かでいろいろなことを示しているわけですね、あなたのほうは。だから、そんな事柄はもう前から団交をやる上においてはあたりまえのことだろうし、そしてまたそういうことを押えるために、一方的にそういうことばかりにこだわるために団交がうまくいってないのが現状だろうと私は思うのですよ。そういう点でもう少しフランクな気持ち話し合いを進めていくという考え方を持てば、この問題はもっと早く片づくわけですよ。特にこの事業団状態をいろいろ考えてみるならば、これはあなたのほうの考え方においてもっともっと考えなければならないものがたくさんあると思うのですよ。こんな大事な事業団長期にわたって、ただそういうことにこだわって、そして組合を締め上げるというような形だけでもってそれができると考えることがおかしいと思うわけですが、あなたのほうのその考え方はどうなんですか。
  8. 沢木正男

    説明員沢木正男君) ただいま先生のお説のとおりでございまして、労使関係紛争につきましては、労使双方お互いに相手を信頼し、誠実に話しをするということが最も基礎として大切なことであると私も考えておる次第でございます。ところが、現在団体交渉やり方についての予備折衝を行なっておる段階におきまして、いまだ労使双方間にそういう信頼関係が生まれてないと見るのが現在話がつかない一番の原因であろうかと存じますので、われわれといたしましては、こういうふうな事態ができるだけ早く解消するように双方が信頼し合って早く正常な団体交渉に入ってもらいたいということは再三理事長にも伝えております。
  9. 大橋和孝

    大橋和孝君 特にこの問題の発端の中には非常にいろいろな問題を含んでおるわけです。先ほど言ったように含んでおるわけだが、それを相当の大事な事業をしているのだ、これをしているのだと言って、それは理屈をあげればあるわけでしょうけれども、われわれ第三者が外から見ても、誠意をもってこれを片づけて早くそれを軌道にのせようという考え方が満ちあふれておるというふうには見られないわけですね。私はそういう点に非常に不満に思う点が多いわけですよ。いろいろ労使間の問題ですからお互い解決するために時間のかかることもあり得る。しかし仕事をやると言っているのだったらなぜ仕事をさせないか。その点について、あなたのほうが言っていられるいまのいろいろな項目なり考えも、いままでの労使紛争の中ではもうごく初歩的なものだと思うのですね。そういうものにいまごろこだわってやっておるのではなくて、もう一歩乗り越えてもっとやらなければならないものだと私は考える。  特にその中で、ロックアウトの問題とはちょっと離れるわけですけれども、その考え方を私はもう少しただしてみたいと思うのです。今度のこの問題あたりでも、いわゆる海外事業の問題が非常に重大であるのにかかわらず、また相当の大きな予算をもってこれをやっているのにかかわらず、実際首脳部というものが天下り人事でほとんど終始しているわけですね。ことに問題にされているように、業務上のポスト争いをやっているような形でもって、そしてどんどんと首脳部短期間にかわっていく。そして相当高額な金を、所得を得ながらこういうことがどんどん行なわれている。だからして、そこでまじめに働いている従業員というものは、やはりこの海外技術協力をして日本のアジアに対する地位をも相当示そうというのにかかわらず、そういうふうな非常に無責任体制というか、非常に短期間の間に次々と頭がかわっていく、しかもそこへ来るポストお互いに競争されて行なわれているというような状態に対して非常に不満を持たれるのも私は当然だろうと思う。そういうことに対してのやはり組合理事者側との話し合いもいままではできておったわけですが、今度そういうことに対しては非常にこだわりがある。むしろそういうことのこだわりのために、今度のロックアウトの問題なんかでも、非常に末梢なことにとらわれて、そしていろいろなことをけ飛ばしてみな外へほうり出してしまっていこうという考え方、私はそういうものに何か行き詰まった考え方というか、あるいはまた非常に圧制的な考え方というか、そういうものがあるように感じられるわけでありますが、そういう点はどうなんですか。私は、ここらのところは改めてもらわなければ、今後この事業団というもののほんとうの使命を達成できないのじゃないかとまで感じるのですが。
  10. 沢木正男

    説明員沢木正男君) ただいまお説のとおり、海外経済協力事業というのは、国家といたしましても、後進国援助の中において非常に重要視しておる政策の一つでございまして、それがために、それを実施いたします技術協力事業団というものが、労使関係紛争なく常時活躍できるという状態が望ましいことは申すまでもないわけでございます。しかしながら、技術協力そのもの実施につきましては、いろいろ関係各省協力を得なければならないこともまた事実でございます。  それから内部登用というようなことにつきましても、昨年度以来すでに五、六名の者の内部登用ポストを与えておりますし、あとうる限り内部でそれに適任者があればこれを登用していくという政策事業団自身も切りかえて実を示しておるわけでございますが、六月一日発表されましたようなポストに適当な内部登用者がなかったがために、外から迎え入れたということでございまして、決して内部登用そのものを軽視しておるという覚えはございませんし、理事の選任につきましても、関係各省から与えられた人をうのみにしておるわけではございませんで、事業団理事長ないし会長自身が選びまして、適任者と認めた限りにおいてこれを登用するということで、組合側が主張しておりますような天下りを押しつけたというケースでないようにわれわれは考えておる次第でございます。したがいまして、今後とも内部から適当な適格者が育てばこれを登用するという方針は、事業団としても会長からことしの初めにも明示いたしております。事実実行もされておるわけでございまして、急激に全部を入れかえるというようなことは人事上の常識から申しましても私は無理が起こるのではないかというふうに考えております。
  11. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうおっしゃるけれども、この人材の養成やら登用ができないからといまおっしゃったのですけれども、しかし三十五名の全管理職のうちで二十五名が九省から天下っているんでしょう、事実。このようなことから考えてみたら、登用するいままでの養成内部でできないということは、できないんじゃなしに、してないというふうに解釈するのが当然じゃないか。三十五名中二十五名ですよ、これは九省から来ている。しかもその天下りで出向している人は、絶えずその出身母体の省に対していろんなことを常に意識しながら行動しているということに至っては、私は悪影響があるんじゃないかと思うんですが、その点についてあなたはどう考えているんですか。また部課長末端職制ですね。そういうものをたらい回しにしてどんどんやっているから、職員そのものほんとうに働く意欲が低下していくという実情もあるやに聞いているんですが、その点はどう把握しておるんですか。これは非常に重要な事業団を運営するにおいて、そういう人事がやられておったんでは、働く者もいやになるだろうし、また上に来る人も、出てきたところの母体本省のほうに対して気がねをしながら、わずかな期間だからといって点数をかせぐというような形でいって、どうして事業団そのものが円満にいくものですか。このような紛争が起こってくるのは当然じゃないかと思うんです。そういうことでやっているけれども、このときだけがたまたまそうであるということの答弁じゃ、ちょっと事実上おかしいじゃないですか。もっと明確に答弁してください。
  12. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 人事問題が労働条件に直ちに不利益、変更をもたらすという場合には労使間の交渉の対象になるものだと考えますけれども、私自身意見を申し上げさしていただきますならば、現在の状況というのは、事業団生成過程から申しまして、かつ技術協力実施の現在の官庁体制から申しまして、当然関係各省協力を得なければやっていけないというのが実態でございますので、その間、いま先生の御指摘ございましたような人々を急速に入れかえますということは、事業継続性あるいは各省協力体制に対して、一方において不便を生ずるというような面もございますので、徐々に人間が育っていくにつれて内部から登用するというのはきわめて無理のないやり方ではないかというふうに私自身考えておる次第でございます。
  13. 大橋和孝

    大橋和孝君 この状態で、無理がないという考えのもとに押していけば、非常に労使間の紛争の的になると思うんですね。ことにいわゆる管理職におられる方々はそういうような形で非常に短期間——まあ海外仕事を進める上にあれであるとするならば別なんですがね。そうでなくて非常に短期間で、そしていろんなポスト権力争いもし、あるいはまたいろいろな意味お互いにばらばらな姿勢で、その母体官庁に対して、非常にそちら向きの考えで動いておる。そういうようなことでは、下で働いておる者はやっぱり肌と肌で接触しておるわけですからね。あんたがいまおっしゃるようにすらっといっているのだったら、労使間の紛争は起こってこない。しかもその下の部課長あるいはまた末端職制人たちはあっちこっちにたらい回しされるだけだ。大体官庁につとめたならば、どういうポストに行ったならば次はどのポストへ行くのだという大体のコースがあるわけなんで、おそらくそれは官庁みなそういうことになるだろうと思う。それがもうでたらめのところに回されていくという形では、それは気持ちよく働けない。私ども、そうであるかないかといろいろ話を聞いているわけですが、結局、上のほうがそういうわけでありますからして、十分に通じない。こういうようなことが毎日の業務の中にあったとしたならば、当然これはうまくいかないし、これがやっぱり労使間の問題となって発展してくるのは当然だろうと思うんですね。それをあんたのほうは、もう何でもないんだから、それは除外してしまおうという態度一本でいくという、そうではなくて、やっぱり労使の間はもっと話し合いもでき、そしてお互い気持ちが通ずるようにしていかなければ労使間の紛争というものは必ず起こってくるにきまっておる。そういうふうなたてまえからいって、もう少しそういう点をおだやかに考え——私は必ずしもぶっこわし質問しているわけじゃない。できるだけうまくやってもらいたいから質問しているわけですが、そうするためには、理事者側のほうがやっぱり使っている者を抱きかかえるような気持ちにならぬ限り、ただたらい回しで、今度はここでいけると思ったやつをばっと左遷をするということがばんばん行なわれておったら、気持ちよく働けない。そういう意味からいって、この事業というものが大事な事業であり、そうして将来無限にやっていかなければならぬという事業である限り、もう少し理事者側では使っている者を抱きかかえるような気持ちでなかったらどうして円満にいくものですか。私がこういう質問をしたときに、あんたがそういうぶっきらぼうの、これはこうやということだけで押し通されることがそのまま通るという形であれば、私はこの紛争は、これはなかなかうまくいかぬと思うんです。私は、あんたのほうの考え方も変えさせ、働いている人たちお互い話し合いのできるという立場にもっていきたいと思っているから、この重要な時間をさいてもらって言っているわけです。非常にどうも社労の時間がないから、時間を節減せいということで来られているわけですが、いま私が言っているのもそこに意味があるわけです。それをいつまでたっても同じようなぶっきらぼうな答弁をしていたら、私はここで立って文句言う必要ないわけです。だから、そういうことから考えていけば、何かもう少しあたたか味のある将来への向け方をしてもらいたい。同時に、労使がうまくいかなければどういうことになるかわからないですよ。そういうことは大事なことだから私は申し上げておる。だから、これについてはもっと前向きの姿勢答弁してもらいたいと思う。——労政局長、そうでしょうね、聞いておられて。労使間の問題はそうだろうと思う。あんたのほうも、そちらの問題だということじゃなしに、労働者を庇護するという立場で、労働省のほうからも少々あたたかい気持ちで中へ入ってやってください。
  14. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 私の最初に申し上げましたように、労使間において誠実なる信頼関係が生まれるということが理事者側にとりましてもきわめて重要な問題であり、ましてや組合員にとりましては、気持ちよく働ける職場であるということが能率をあげる根本的な課題でもございまして、その点につきましては、従来理事者側の配慮が欠けておる点も多少あったかと存じます。今後につきましては、やはり理事者側組合員の働く職場を、気持ちよく働いて能率があげられるようにするという点について十分配慮するように、われわれのほうからも理事者に対しては十分申し伝えるつもりでございます。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 関連。これはこの委員会でもたびたびやっていることですから、あまりしつこく追及はしたくないんですが、しかし、政労協関係事業の性格からいっても、特に今度のこの争議が人事問題を中心としておるということからも非常に特殊なケースになるわけです。これが給与あるいは賃金の引き上げだとか何かの単純な労働条件の問題を中心にしておるならばいいけれども、人事問題が焦点になると、これは労働省答弁だけではわれわれはどうしても納得できないところもあるので、きょうは何か関係者を呼んだそうですが、関係者が出なかったということだけれども、この前呼んだあとですぐロックアウトということが行なわれておるというような事情から見ても、この際ひとつ委員長理事話し合いをして、次の委員会等には、まだ問題がそのままこじれているならば、責任者をぜひともひとつ呼んでいただきたい。そういうことをひとつ希望しておきます。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまもちょっと占部委員からも触れられましたが、この間のこれは衆参の社労で取り上げているわけですが、特にそのときに早期に平和的に解決をいたしますと、こう言っておって、その翌日もうロックアウトを出した。しかもそのロックアウトの問題は、私に答弁をしているその時間前からもう考えられておったというんですね。ですから、あのときの理事者側考え方というのは、もうロックアウトをやることはすでに話が済んでいてきまっておって、私に向かっては早期に平和的に解決しますということを言っておった。これは非常に国会軽視でもあるし、この委員会を冒涜したものだと私は考えているんです。こういうようなことは、やはり監督していられるその立場にある外務省のほうとしては、これはゆるがせにできぬじゃないですか。こういうことをやらしておいてもあなたのほうは別にどうもありませんか。
  17. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 外務省といたしましては、最初から現在に至るまで、現在のような異常事態ができるだけすみやかに解消して正常なる労使関係が成立することを望んでおる気持ちにおいては変わりございません。ただその正常なる労使関係を持ち来たらす方法につきましては、外務省としてはこの命令権はございませんので、話し合いによって理事者側組合側を説得して、できるだけ双方で正常な労使関係を早く確立して、仕事を正常な形に戻してもらいたいという希望を申し述べるしか方法がないわけでございまして、その希望を申し述べる点については、ほとんど毎日のごとくわれわれ理事者側にも話しておりますし、いまにおきましてもできるだけ早くこういう異常事態解決して正常な団交が持たれ、問題が解決するように希望しておる事実においては変わりはない次第でございます。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 外務省としては、いまもこの前の答弁もそうおっしゃっている。この前の答弁でも、ロックアウトするというようなことは非常に残念なことだから、早期解決しますと言っている。きょうも早く解決することを希望するよりほかに道がありませんと言っているわけだから、外務省としては一体この問題に対して収拾をどう考えていらっしゃるのか、どういう見通しを持っていらっしゃるのかちょっと聞かしてもらいたい。
  19. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 労使双方間の交渉に立ち入る権限はございませんけれども、われわれといたしましては、できるだけロックアウトのような状態が早く解消いたしまして、そして正常なる労使関係がもたらされる、そして仕事がノーマルにいくということが希望でございますので、現在行なわれております団体交渉に関する条件話し合いと申しますか、それができるだけ早く解決されて、正常なる団体交渉が実現することを助けるために、いろいろこうしてみたらどうかああしてみたらどうかというふうな点についてサゼスチョンを行なっておるというのが現状でございます。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう少し積極的に理事者側のほうに出ていって理事者によく話をしてやる、もっと早期ロックアウトを解除する、それからこの団体交渉も再開するということがほんとうに必要なんですが、これにもう一カ月以上もたっておる。しかし、あなたの言っておられることは、話を聞けばなるほど中にははいれないからそれに役立つように努力する以外にはないのだ、こういうふうなことになるのだけれども、いまさっき話したように、こういう大事なときに理事者側ロックアウトをしている、しかも働く者も働こうと言っているのに働けない。しかもいまさっき言ったように、上のほうは上でかわってしまう、しかも本省向けにいろいろなことを考えている、そうして下の者はでたらめにたらい回し人事をやっている。こういう現状をずっと続けておって、あなたのほうで、いまおっしゃっているように、それを指導するとか指導せぬということにはならないと思うのですね。だからもっと理事者側と積極的に話をして、少なくともロックアウトを早く解いて団体交渉のペースに乗せるということが必要じゃないでしょうか。この間も、私がそういう質問をしていたときにすぐそういうことをやったことに対しては非常に困るじゃないかということを言ったら、あなたは、あらゆる手段を尽くしてロックアウトをやめさして、そうして早期解決のほうに向けてやるのだということを言っておった。それがもう一カ月もやっておらぬじゃないですか。一カ月もたってそのままの状態が膠着しているという事態はどうも納得できぬですね、あなたの説明だけでは。そこらをもう少し熱があるというか、血が通うというか、もっとあたたかいというか、そういう気持ちをここらで出してもらわぬと、受け取る議事録なんか見るのですから、組合人たちも納得しないわけですね。むしろそうしたらこの膠着状態をよけい膠着状態に持っていくということにもなると思うのですね。ですからここらのところでは、直接には理事者のほうにまかしてやらしても、やはり外務省のほうから相当強いサゼスチョンを与えていかなければなかなかうまくいかないと思う。その点について特にあなたの決意のほどを言ってください。率先に言ってもらわなければ私の質問する意味もないと思うのですね。
  21. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 最初に申し上げましたように、理事者側も、ロックアウトを解除して正常なる仕事関係に就労できるというふうに組合側を信用する段階になればロックアウトを解除するにやぶさかでないと思いますが、残念ながら現在の団体交渉話し合いといいますか、予備折衝を通じまして、そういう信頼関係お互いにまだできておらないというのが現状であるがために理事者側ロックアウトを解除しないのではないかというふうに現在見ておるわけでございます。お説のように、こういう事態が望ましくないことは、外務省自身が一番痛手を受けるわけでございまして、事業団がこういう異常なる状態になった結果といたしまして、犠牲を受けるのは海外で働いておる専門家なり日本に来ておる外人の研修生でございます。われわれといたしましては、やはり正常なる労使関係が成立すると同時に、これらのいわば前線に働いておる人たちにできるだけ迷惑が及ばないような態勢を早くつくるということが外務省の基本的な希望でございますので、ただいま先生のおっしゃいましたような点を十分体しまして理事者にも十分話していきたいというふうに考えております。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 至急それをひとつやってください、熱意を込めてやってください。  それから私はちょっと労働省のほうにもお伺いしておきたいと思うのですが、これは衆参の両院での社労でやられた中で、やはり配置転換なり、これらも団体交渉のマターであるということが明確にされておったのですね。そういう点から考えましても、私は、今度の事業団側がそうでないということを主張して、そうして団体交渉のための事務折衝、こういうようなものも行き詰まり状態になっているわけでございますから、私は労働省の側も一ぺんそういうことがないように事務レベルの折衝を早く片づけて、そうして正常な団体交渉に入ってロックアウトを早く解こう、そういうようなことにしてもらわなければならぬと思うのですが、そういうことに対してひとつ労働省側も大きな力になってもらいたい。  それから私はもう一つここで、前の質問のときに、やはり労政局長のほうも、できるだけそれに対して指導、協力しようと言っておられたんですが、やっぱりこれまた一カ月以上放置した状態になっちゃった。これに対しても、労働財政の面からもう少し積極的にひとつやってもらえないものか、私はそう思うわけです。その点についてもひとつ伺いたい。相当強力なひとつあれをしてもらわなければだめじゃないか。それからまた、外務省が先ほど言っておられるように、早期解決すると言っておるけれども、このように非常に時間がかかっている点は、労働省側から考えてどういうふうに思われるのか。もっとそういう点を十分把握して、何とか外務省のほうに対してもあるいは理事者側に対してもひとつ強力な手を打って話し合いを進めて、そしてこの問題が早くルールに乗るようにしてもらったらどうか。こういうふうに思うんですが、その点についてちょっと聞かしてください。
  23. 松永正男

    説明員(松永正男君) この前の当委員会におきましても御質問がございまして、ロックアウトを行なったということによりまして紛争が深刻化した。したがって、解決が非常にむずかしくなったということを私は申し上げたのでございますが、やはり現在で約三週間ぐらいロックアウトを継続しておるというような事態でございます。先ほどるる御意見等ございましたように、特に開発途上国に対する技術援助という非常に大きな仕事しておられますので、私どもとしましても、紛争がとにかく早く解決する、そのためにはいろいろ御質問ありましたようないろいろな点もあるかと思うんでありますけれども、まず団交再開ということが何よりも大事だと思うんです。実は先週も田付理事長にもお会いしました。それから、昨日も担当理事に役所に来ていただきまして、私どもといたしまして、解決について必要なアドバイスはだいぶ長時間にわたりましていたしました。先ほど外務省のほうから御報告ございましたように、団交ではございませんけれども、団交再開についての話し合いというものを特にきのう、おとといあたり熱心にやっておるようでございます。いま御報告ありましたようないろんな問題点がございますけれども、総体としましては、解決に向かって少し動き出しておるというふうに私も感じますので、なお今後ともできるだけ早く再開ができるような方向で必要なアドバイスはどんどんしてまいりたいというふうに考えております。卒直に申しまして、その海外技術協力事業団労使関係をどう思うかということでございますけれども、まあ非常に失礼なことかもしれませんが、私が感じますのは、労使関係が非常に未熟であるということでございます。そして未熟な状態であるのに非常に深刻化してしまった。そこで、解決が非常にむずかしいかと思うんであります。労使関係をめぐる周辺のいろいろな問題、先ほど御指摘になりましたような問題、あるいは職員の気持ちというものがあるかと思うんでありますが、そういう基礎的といいますか、根本的な問題は、今後精力的に解決するということが必要でありましょうけれども、何はさておいて団交再開ということが必要だと思いますので、その面で私どももできる限りの協力をいたしたいというふうに考えております。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっとついでに私申しておきたいと思うんですが、このロックアウトされているのも、実際から言えば、これは違法なロックアウト、私のほうはそういうふうに思うわけですね。もうそんなことをしなくても、もっと団交話し合いがつくやつを不当にもロックアウトをしちゃったという、いま労政局長おっしゃっているように、ほんとうに感情的というか、もっともっと慎重にしなければならぬ理事者側がとる態度としては不当、違法だというふうに考えられるわけですが、しかも、その中でこの六月の給与では、ストライキ解除後に、六月の十二日まで賃金カットをして、七月に入ってからは、六月十三日以降のロックアウト中の賃金カットを通告してきておる。あるいはまたかってにロックアウトをしながら、賃金を一銭も払わない。しかも夏季のボーナスも支給しない。職員をこうして苦しめてやれば、ロックアウトによってまた賃金カットをして苦しめてやれば泣いて出てくるだろう。こういうようなふうなところが見えるのです、そのやり方で。働いている人というのは満足した気持ちで働けない。よけい深刻な状態に追い込んでいく、このように私には思えるわけです。こういう点に関して労政局長のほうも、労働者を庇護する立場から考えれば、こういうようなことは早く解除してやらないと、これはもう労使の間はますます悪くなる以外の何ものでもないと私は思うのです。これについて外務省あたりがもう少し理事者のほうに適切な指導をすべきだと、こう思うわけです。この点についてひとつ特に注意をしてもらって、そういうことのないようにして、ひとつこの問題を早く解決する方向に推してもらいたいと思うのですが、それはどうですか。
  25. 松永正男

    説明員(松永正男君) 私が先ほど申し上げましたように、ロックアウトで問題が深刻化したということは、たとえばストライキが行なわれました際には、労働組合側からする積極的争議行為という行為が行なわれた状態であるわけでありますが、これに対して経営者側はロックアウトをするということになれば、いわば両者とも力の対決というような形になる。そういうことでは、やはり両方感情も非常に激化いたしますし、そういう意味解決が非常にむずかしくなった、深刻化した、こういうふうに考えておるのであります。  その場合に、ロックアウトが合法か違法かというようなことは、これは非常に問題のあるところでございまして、まあ判例等におきましても、いろんな議論が行なわれておるのでありますが、私はロックアウトというものが経営者に認められた一つの争議手段である、これはもうそういうことだと思うんでありますが、ですから、合法、違法というような問題をいま議論をして、どっちが悪いと、あれは組合のほうが、たとえば非常に無秩序な団交をやるから経営者側がロックアウトをしたのだというような水かけ論になります。それよりはやはりいまの段階は、先ほど申し上げましたように、相当歩み寄りといいますか、解決のきざしが見えてきておる。ゆうべもそういう話し合いをやった結果、担当理事からあしたまたやります、あしたにまた期待しておりますというような話もございますので、そういう積極的解決に、建設の面に力を入れまして、そうして団交が再開した後におきまして、団交の中でまたいろいろの問題を平和的な形で話し合いをし、交渉をして処理をしていくという窓口をあけるということ、私はいまは全精力を使うべき段階であるというふうに考えておりますので、そういう面でお手伝いをいたしたいと考えております。
  26. 山本杉

    ○山本杉君 関連して。組合がピケを張って、そうして、理事者を中に入れないというようなことで一週間続いた。それで、ロックアウトをしたというふうに私たちは聞いているのですが、そういうようなことに対しては組合側は反省はないでしょうか、ちょっと伺いたいと思います。
  27. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま私が御答弁申し上げました趣旨も、この紛争の過程におきましては、確かに団体交渉状態が異常であったというような事態がございます。私どもが見ましても、長時間多数の人で、そうしてこの部屋から出られなかったという状態がある。あるいは事務室に入って妨害をする、あるいは管理者がはいれないというようなことがあったような報告を聞いておりますが、そのようないろんな経過を経まして、そういう状態が、私としましては、労使関係が未熟であるということを申し上げたのであります。また、それでは理事者側だけが正しくて組合側だけが悪いかというと、必ずしもそうでもない面もある。またロックアウトをしたということにつきまして、理事者側だけが悪くて、組合側が全くの被害者であるかというと、そうでない面もある。そういう意味におきまして、いまどっちがいい、どっちが悪いということをここで議論しましても、建設的な方向に向かわないということが私の認識でございますので、幸いに一昨日、昨日等団体交渉の窓口をあけるための折衝が行なわれておりますので、それを実らせるということで、私どもお手伝いをしたいと思っておるんであります。それで、そういう問題につきましては、また団交再開というような場面におきまして、今後の労使関係、それからまた組合側が非常に主張しておりますいろいろな人事異動等に対する問題、そういうものの処理、そういう問題につきましても、それぞれの方法によりまして相当時間をかけて問題解決をしていくことが必要なんじゃないか、ただいまはとりあえず、とにもかくにも団交の窓口をあけるということが必要ではないかということを申し上げたわけであります。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 私もそういう立場でいま話はしているのですがね。しかし、この団体交渉再開について、いま局長は、そういう面でお手伝いをしたいということなんですが、そこの中でひとつ私は考えてもらいたいのは、いままで相当の長い間あったことに対しては、先ほどから私が申しているようなぐあいで、もっとそれを短期間にやってもらいたかったわけですが、いまの段階におきましても、その前のことを考えてみれば、いかにもいろいろな点があったとはいうものの、これはやはり中労委の段階でも、組合側では団体交渉をしようということで、場所なんかも中労委のほうでこの事務所を使わせてもらってもそれを受けようと言うているのに、そういうものを拒否したという例もあるわけなんですね。こういうことなんかも私は組合のほうにも相当かちんときておる問題ではないかと思うのです。同時にまた、その後の問題を見ましても、いわゆる配置転換の問題、そういうようなものはのけていこうとかいう問題を強力に出してみたり、これはおそらく実質的な団体交渉という面からいっては、私はやはり不当労働行為に属するようなことだろうと思うのですね。ですからして、そういうふうなことがいろいろ職場転換やら、そういうような職場の編成の問題、そういうふうなことを含めてやはり団交の中に入れてもいいんじゃないかと思うわけです。これは当然私は団交の中の内容のものじゃないかと思うわけですが、こういうような問題もあるわけです。一方からいえば、こうやってやはり相当長い間賃金カットもするし、ボーナスなんかももうほかではきまっちゃっているのにほったらかされている。こういうようなことは、一つには苦しめる意味合いになるかもしれませんけれども、やはり団体交渉にのせ、そうしてこういう問題を早く解決しようというペースからいえば、もう少しこれにはあたたかい気持ちがなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。少なくとも早く団体交渉の場をつくって、そうしてやはり賃金の問題あるいはまたボーナスの問題、そういうようなことの問題も相当早く解決できるような方向にのせなければ、ますますこの状態では深刻化するのじゃないか。いまおっしゃっているようなことも、きのうぐらいからいろいろ歩み寄りの方向に進んでいるということも私は聞いております。非常にありがたいことだと思っております。ですけれども、そこで私はいま考えるのに、背景にそういうことがあると、そういうことになった話し合いの一つのいい窓口ができてもすぐこわれてしまうのじゃないかということを心配するわけです。ロックアウトしておいて、そうして賃金カットしておいて、これでもかこれでもかと、うしろであれを押えながら、そうして話を進めていくということになれば、やはりいつも迫力を感じながらフェアーな双方対等的な話し合いにならないわけですから、私はそういうことは早くそのロックアウトを解いて、そうして団交のルールにのって話し合いをして進めていく、これに両方が誠意を持ち、特に私は、労働者をかかえておる理事者側がある程度それを包み込んでやろうという親心があれば、これは非常にいい方向にいくのではないかと思うのですね。そういう点で、団交を進めるにあたって、いままでやってこられたようないろいろなことを反省して、やはりひとつその事柄をはっきりと意識して、もうそういうことの起こらないようにやってもらわなければならぬと思うから、そういう意味で、私はこの問題で三点提起するわけですから、どうかひとつその点を十分含めてこの問題に対処してもらいたいと思うのですが、そのお考えはいかがですか。
  29. 沢木正男

    説明員沢木正男君) 外務省といたしましては、繰り返し申し上げておりますように、現在の異常な状態が解消して、正常な団体交渉ができるだけ早く持たれるということが必要であるという考え方におきましては、ただいま労政局長のほうからも申し述べられたとおりでございます。それでこれには先ほどから何回も申し上げておりますとおり、理事者側とそれから組合側の相互信頼というものがやはり話し合いの基礎になるかと思いますので、これは理事者側もただいま先生がおっしゃいましたようなあたたかい使用者としての組合員を見ていくという気持ちというものを持って、そうして誠実にその交渉に当たるように指導いたしますとともに、組合側におきましても使用者の言うことを信頼して、かつ誠実なる交渉に入っていただきたいというふうに考えております。
  30. 占部秀男

    占部秀男君 いま質問の中で、ストは解いている、しかしロックアウトは続けている、こういうような状態だということをいまの質疑応答の中で聞いたんですが、労政局長、これはそのとおりですか。
  31. 松永正男

    説明員(松永正男君) 六月の十日だったと思いますが、事業団側ロックアウトをしたわけであります。その前に組合側が無期限ストということで、問題は先ほど大橋先生御指摘のような問題があったのでございますが、やったんでございます。その後私どもが報告を受けておりますところによりますと、労働組合のほうはロックアウトがありました翌日の十一日に全面無期限ストを解除をして、そうして団体交渉をやりたいということを言っております。したがいまして、形といたしましては、先生御指摘のように、組合側はストライキをやめた、こういうことを言っておるのであります。大体ロックアウトケースというのはわりあいに少ないんでありますけれども、民間でいままで起こりました事例を見ましても、まず組合がストをやる、で経営者側のほうがロックアウトをかける、組合のほうはやめたと、就労要求、こういう形になりまして、そこで団交再開といいますか、話し合いということになるというのが通例のケースであります。一般論として見ました場合には、ロックアウトというものが経営者側の権利である、それはそうでありますけれども、一般的な解釈としましては、防衛的なロックアウトというものが合法的なロックアウトであって、攻撃的なロックアウトは合法でないという判例等の解釈がございます。そこで防衛的であるか攻撃的であるかというようなことが問題になるわけでございますけれども、判例等にあらわれたものによりますと、たとえば組合側がストライキ解除通告をいたしましても、それがたとえばまたストライキに入るとかいうようなことが客観的に明らかである場合にはなお防衛的であるというような解釈の判例もございます。そこでこの具体的な現在の技術協力事業団ロックアウトが合法であるかどうかということになりますと、これは結局は裁判所の解釈というのが有権的な解釈になるわけで、この際にはたして防衛的なものであるのかどうかということを議論するということがいいかどうか、現実の処理の問題といたしまして疑問があるのでございますが、先週来私どものほうで報告を聞いておりますところによりますと、事業団側団体交渉再開についての七原則、七条件といいますか、そういうようなものを出しまして、そうしてその七条件というものを私どもが見てみますと、ごく大ざっぱなものの見方では、まあまあ常識的な団体交渉のあり方というものにつきまして、そう軌道をはずれたような意見ではないというふうに思われるのでございますが、昨日までの経過では団体交渉の再開についての話し合いというものが行なわれました。たとえば事業団側交渉委員は七人でなければいけないとか、組合側は三十三人だというようなことがありまして、昨日の段階では十人程度にふやしてもいいとか、十二、三人でもいいとかいうような具体的な話し合いになっておるようでございますが、同時にロックアウトにつきましても、ロックアウトを解除するという問題につきましても話し合いをしたいという意向はあるようでございます。現実にはまだ話し合いに入っていないようであります。  そこで、私どもの見方といたしましては、きょうも引き続いて話し合いをしまして、そして団交再開のいろいろな具体的な問題を話し合いをして、その話し合いがつけばさらにロックアウト問題にも及ぶということが期待をされますので、団交再開というものの一つの段階としてロックアウト問題についても労使話し合いをする、こういう段階に近くなるというふうに見ております。
  32. 占部秀男

    占部秀男君 ぼくはストを中止した後ロックアウトを続けておること自体に非常に問題があると思うのですよ。あると思うけれども、いま労政局長が言われたように、妥結の方向に向かっておるという際ですから、私はそれがいいか悪いかそういう点についてはもう一切言いません。ただ外務省に私どもが聞いておきたいことは、少なくともストを解いたということはロックアウト——つまり非常事態を解いたということであって、これはもう労使関係からいけば当然就労させるべき条件労働者側がつくったということなんです。いまの労働組合法であなたも御存じのとおり、このストライキをやめたということは、つまり団体交渉の線にのせようと労働組合側が意思表示をしたということに通ずるわけですよ。そういうようなときにロックアウトをあくまで続けている。民間産業でもこんなばかなやり方はないのです。民間産業の場合でも、ストを解除すれば当然ロックアウトは解除して正式に解決の方向へ向かう、団交を再開させようというのが普通のやり方です。いわんや政労協は政府の外郭団体、そういうような立場考えずにロックアウトを続けさせるというところに、この問題が依然として困難になっている一番大きな原因があると私は思う。こういう点は外務省としてはどういう指導をしたのか、その点をお伺いしたい。
  33. 沢木正男

    説明員沢木正男君) ロックアウトが長く続く状態が好ましくないことは申すまでもないことでございまして、われわれとしましても、できるだけ早くロックアウト状態が解消されるように理事者側にも何回か話し合いをしておるわけではございますが、ストライキといい、ロックアウトといい、これは労使双方が持っておる団体交渉労使関係の一つの手段でございまして、先ほど申し上げておりますように、理事者側においてロックアウトを解除いたしましても正常なる業務運営が保障されるということを信頼するに至れば、やはりロックアウトは解除されるものというふうに考える次第です。ロックアウトに入ります前の組合のストライキも二十四時間ストライキの切りかえ、切りかえということが行なわれておりまして、就労したらまたすぐストライキをかけられるというような不安があると理事者側でも簡単にロックアウトは解除されない。しからばそういう信頼関係がどうして生まれるかと言いますと、現在行なわれております団体交渉予備折衝を通じての組合の態度というようなものにもそれがやはり影響してくるのではないかというふうにわれわれ考えておるわけでございます。したがいまして、理事者側に対しましても、われわれできるだけ早くロックアウトを解除するような組合との信頼関係を打ち立ててもらいたいということにつきましては、われわれのほうからも強く理事者に訴えておるわけでございます。
  34. 占部秀男

    占部秀男君 関連ですから長くはやりませんが、確かにあなたが言われるとおり、ストライキ権はこれは労働組合が持っている、ロックアウトをする権利はあるいは資本家が、つまり使用者側が持っているかもしれない。しかしそれは争議の手段としては決して無制限ではないわけです。無制限ではない。あなたはロックアウトの問題をあたかも使用者側が自分の考え方で、労働者側の態度に納得できない間は無制限に使えるというような考え方を持っているかもしれませんが、法のたてまえは私はそうじゃないと思う。客観的な条件というものがあると思う。しかし、これをこのままやっていってもしようがないことだし、また労政局長が言われたように、どうにか団交の線に向かいつつあるというので、私はきょうはこれ以上はあなたを追及しませんけれども、どうか一日も早く団交の線にのせてもらいたい。そのためにはロックアウトを解くこと、労働者側がストを解けば使用者側はロックアウトを解く、そのことが平常な団交に進む道である、こういう点をもう一ぺんこの事業団理事者側にあなたのほうから教えてやってもらいたい。私はそう思うのです。以上です。
  35. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう時間もあまりありませんから私もあまり深追いはしないようにしますが、特に先ほど占部委員からもお話がありましたように、いまの段階では、私もきのうあたりからの様子を見ておりますと、ある程度の歩み寄りの方向が出つつあるということは認めるので、私がきょう質問をした主体は、そういう空気のあるところでもって、しかもいまおっしゃっているように、ロックアウトを唯一の武器のように考えて、あるいはまたいろいろな賃金から何からいろいろなものをやって、もっと苦しめてやろうという気持ちがあったのではこれは話にならぬのですから、どうぞそこのところを十分把握をしてもらって、理事者のほうにも十分アドバイスをしてもらいたいし、それをしっかりやってもらわなかったらうまくできないと思う。これは外務省のほうにもあるいは労政局長のほうにも十分その点をお願いしておきます。そしてすぐ団交が始まり、ロックアウトも解除されて、話し合いに進んでいくというふうに運んでもらいたい。もしそうでない限りは、私のほうもずっと様子を見ておりますから、次にも引き続いて今後も相当きびしくその態度については追及をしてみたいと思う。特に私どもいままでの、私がきょう腹立たしく思うことは議会軽視だと思うわけです、先ほども触れたように。ですからいまのそういうことを含めて相当ゆゆしい問題だと考えているので、正式な社会労働委員会でそう答えながら、しかもロックアウトをしていくというような考え方、そうだったらロックアウトになるかもしれませんということを一言言ってもいいと思うが、それを言わないというようなところに非常に理事者側に私も不信感を持っている。だから組合が持つのは当然だと思うわけですから、十分その点を思いをはっきり変えてもらって、そして私が先ほどからお願いしているような親としてのあたたかみというものを使用している者に持って問題を解決する。これをひとつ十分に強調してもらいたい。そして早く解決してもらいたいことをひとつ要望しますので、そのことをひとつ外務省のほうも、あるいは労働省のほうも特に強力なアドバイスをするということであってほしい。その点を決意のほどを聞いて私はやめます。
  36. 沢木正男

    説明員沢木正男君) ただいまこの委員会において御発言のありました御趣旨につきましては、十分われわれとしても体しまして、現在の状態がすみやかに正常なる状態に戻るように、団体交渉が早く始まりますように、われわれとしましては十分理事者側にも伝えるつもりでございます。
  37. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま外務省の経済協力局長の言われましたような線と、それから先ほど来私が申し上げましたような団交再開というような面につきまして努力をいたしたいと思います。
  38. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。     —————————————
  39. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 社会保障制度等に関する調査議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  40. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は、これから主として大臣に責任ある御答弁を求めたいと思います。  昨今、種痘禍による悲劇というものが次々に伝えられておりまして、まさに重大な社会問題化しておるわけでありますが、こうした実情にかんがみて、当局としてあるいは国として、これから予防接種法に基づく、いわゆる今後の伝染病予防というものに対する基本的な姿勢をまず伺いたいと思います。
  41. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 渋谷先生から御発言のございました種痘の予防接種につきましては、御承知のように、わが国でも明治年間からこれをいたして今日に至っております。近来のワクチンによる避けがたいと私どもが判断いたしておりました事故等につきましても、最近、専門家の方々の御意見を十分伺いながら再検討をいたしてまいりましたが、痘瘡そのものは戦後すでに十数年間も日本で発生したことはございませんけれども、しかし東南アジアその他の地域におきましては、なお痘瘡はしょうけつをきわめておりまして、今日の国際交通関係を考えますときには、やはりどうしてもこれに対する防衛対策というものを国として確立しておくことが絶対必要であるという判断に立っております。しかもその際、今日では国際情報なども十分発達をいたしておりますので、国際的に日本に痘瘡の伝染するおそれがあるような時期をとらえて、随時予防対策を講ずればいいんではないかということも考えられないわけではないことでございますが、そういうことにつきましても研究をいたしていただきましたところが、この痘瘡対策といたしましては、どうしてもどろなわ式の対策では間に合わない。またそういう事態のもとにおきましてワクチン接種等をいたしますと、非常に大きい副反応が憂慮されるので、やはり従来のたてまえどおり幼児のうちから何回にも分けて義務的な接種をいたして免疫性というものをつくってまいる以外に痘瘡予防の対策はないと、こういうことに現状においてはやはり戻ってまいってきております。でございますので、そういうことで私は進めてまいるほかないと思います。ただ、この際私は厚生大臣といたしましても、この予防接種につきましては、ワクチンにつきましてさらに従来の検討のしかたを反省しながら、徹底的な副反応を起こさないようなワクチンの検討というものを新しい出発点に立ったつもりでやりたいと考えますと同時に、また、これは生ワクチンの接種でございますので、万が一にもそれによって副反応等を起こすような避けがたい事態が発生をいたします場合には、その事後対策につきましても新しい見地に立って、これまではやっておらなかったような救済といいますか、対応の措置をもとるような方向で進めてまいりたい。こういう基本的な姿勢に立って、省内におきましても関係の諸君に検討を命じ、また厚生省にお集まりをいただいている専門家の方々にも引き続きその方向で検討をお願いいたしております。
  42. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回初めてこの種痘禍という問題が表面化したのではないだろうと、こういうふうに判断されるわけでございます。厚生省当局の資料を拝見いたしましても、戦後、少なくとも一年間に約十人の割合で死亡者が出ているということが報告されているわけです。となりますと、いま大臣の御答弁から判断いたしますれば、今後さらに引き続き日本の防疫体制を固めていくと、それは十分にわかります。けれども、その裏表になるべき問題としてそういう後遺症というような、いままで問題が起こった事実にかんがみて、その絶滅を期していかなければならない。これは国民の当然の要求だろうと私は思うんです。この点については一体いままでどういう検討がなされて、これからどういう対策をもって臨まれるのか、この点いかがでございましょうか。
  43. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 今後の対策につきましては、私がただいま申し上げたとおりの方向で新しい出発点に立ったつもりでやってまいります。従来の経緯につきましては、公衆衛生局長から説明をいたさせたいと思います。
  44. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 種痘の副反応、特に重篤な問題についてどういうふうな措置をいままでしていたかという点についてでございますが、これは現在、専門家によって委員会をつくりまして、この委員会で報告のあったことについて調査をする必要があれば現地におもむいて現地での調査をするというふうな、学者に委嘱をした調査をやっております。これが四十二年と四十三年では約二十二例の神経障害の調査をいたしております。なお、昨年新しく研究費を計上いたしまして、二十八名の専門家による研究班を組織いたしまして、もしも定められているとおりの事故の発生の報告があった場合には、この調査班、研究班から専門家が主治医と相談しながらどういう手当てをする、あるいは症状がどうなのかというふうなアドバイスをしながら、現在手持ちにあります特殊医薬品を使いながら治療していくというふうな態勢を昨年からとっているわけでございます。今後の問題にいたしましても、ただいま大臣お答えいたしましたが、こういう副反応の強いものの発見されたときには、できるだけ早く専門家による相談、アドバイスを受けて医薬品の使用を指導しながら治療をしていくというふうな問題が一点。  もう一点は、これは各国とも共通の問題でございますが、御承知のとおり、種痘による重篤な後遺症というのは、残念ながら現在の生ワクチンを使用する痘苗からは絶対避けられないという宿命的な問題を持っております。ただ、そういうふうな不幸な症例をどこまで減らすかということが各国とも非常に問題にし、研究しているところであります。したがいまして、そういうふうな重篤な副反応のできることを未然に予防できないかというふうな点が第一点として出てくる。これについても、もう数年来学者グループによる調査班をつくりまして、先ほど触れましたけれども、どういう症状の発生がどういう経過をたどったか、あるいは発見されたときにはどういう症状であったか、さらにワクチン接種とはどういう関係があったかというふうなことを学問的に詰めながら、もしもそこで事前の何らかの方法で予防する手だてがあるとすれば、その手だてを早く公式の形にのせる指示をしていくというふうな検討も現在やっておるわけでございます。できるだけ禁忌に該当するようなそういう事故を事前に発見する方法を検討する、一方、不幸にしてそういう事故があった場合には医薬品その他による、あるいは技術的な診断治療の指導をする、さらに不幸な転帰をとった者に対しては、ただいま大臣のお答えのとおりな応急の措置をとるというふうなことも考えながら現在後遺症に対処しておるわけでございます。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁を伺っておりますと、国民の受ける感情というものは非常に不安がやはり将来ともつきまとうということが残されるだろう、こういうふうに判断されるわけです。おそらく大臣もいまの答弁を専門的な立場に立って述べられた、その内容をお聞きになってそうお感じになったんではないかと思います。ただ、日本の場合には、予防接種法という法律に基づいて、強制接種をしなければならないというところにやはり問題があるわけでございます。そうした場合に、何人かに一人の割合で必ず今後も後遺症になり得るであろう、そういう発生が考えられるわけでございますけれども、そういうようなことで、いまは病気になったらどうするか。ワクチンの開発についていま検討している、それはけっこうだろうと思います。これからの開発に待って、さらによりよいものを使えばいいわけですけれども、じゃあ現状をどうするのかという問題はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、いかがでございましょう。
  46. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 先ほど来申し述べておりますように、痘瘡に対する対策というものを放棄するわけにまいりませんので、したがって、このワクチンによる接種の義務制というものは続けざるを得ないと私は考えております。これはひとり日本ばかりではなしに、おもなる先進的な諸外国におきましてもみな義務制をとっておると聞いております。そこで、ワクチンの宿命性といいますか、あるいは副反応に対する危険性というようなことにつきましては、これは私は学問上のことでつまびらかにいたしませんけれども、私は政治家といたしましては、たとえ夢のワクチンと言われましょうとも、先ほども申しますように、新しい見地に立っていまの株の改良なりあるいは新しい株の開発なり、そういうことのために費用も投入しながら研究をしていただくと、こういうことと同時に、渋谷委員が仰せられるように、不幸にして副反応による災厄を受けられた方々に対しましては、これまではそういう対策がなかったと思いますけれども、新しく国としてそれに対する救済なり特別保護なりというような、そういう仕組みをつくってまいりたいと前向きで考えて、そして現在その方途について進めております。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 救済制度の問題についてはあとから触れますけれども、いまの答弁を伺っておりますと、はたして国民は、ただいま私が繰り返し申し上げるようでありますけれども、述べましたように、これは絶対に不安感というものはぬぐい切れないと思うんです。大臣御自身も、最近いろいろ伝えられる報道を通じまして、あるいは現地に実際にいらっしゃってその人たちにお会いされて、その実情というものをごらんになったかどうかわかりませんけれども、やはり精神異常を来たしたり、どうにもならない子供をこれから何年も何年もかかえていかなくちゃならぬというようなことを考えましたら、これは実際人ごとじゃない。そういうことを非常に心配するあまり、ただいま申し上げたように、現状をどうするのかということです。はたしていまの答弁で国民が納得できるかどうかというと、私は非常に疑問だと思うんですよ。しかし、防疫体制の面からいけばこれはやむを得ないんだと、もう一つ何かここに事前の方策というものはないのか。かつて大臣はこういうことをおっしゃったことがある。予診というものを行なえば事前に防止できる方法というものは考えられるかもしれないと、その点についても早急に検討を加えて、そしてその方法を取り入れていきたいというような趣旨のことを談話として発表されたことがございます。そのように、何らかの方法はないのかということを私は具体的にお尋ねしているわけです。
  48. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 根本的のことは先ほど来申し上げているとおりでありますが、義務接種を続けざるを得ない場合におきましても、接種の時期とか、方法とかに関連いたしまして、私はさらに細心の処置をとる道があろうということを私は想到いたすものでありまして、そのために、実は先般来、私どものほうに所属する伝染病調査会の方々とは別に、この種痘の接種に関連する専門家の方々十数人にお集まりをいただきまして、現在でもこの諸先生方にいろいろ御指導を受けたり御相談をいたしておるのでありますが、それらの先生方のお知恵も拝借しながら、いま私が申し、また渋谷委員が仰せられました種痘についての予診その他の方法につきまして、改善できると思われる事項数点につきまして、先般それらを整備をいたしまして、種痘の衝に当たられる地方公共団体に、こういうことについてさらにひとつやってほしいという通達を出させました。八点ぐらいにわたると思いますが、その内容につきましては公衆衛生局長から申し述べさせます。
  49. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 接種時の被接種者に対する手当ての方法によって未然に副反応を防ぐ方法がないかどうか、具体的にどういうことがあるのかという点でございますが、これは全般的な事項につきましては、御承知のとおり、伝染病予防実施規則あるいは要綱によって事こまかに具体的に示されているわけであります。ただ、そういう要綱あるいは規則の検討の過程の中で、御承知のとおり、学問の推移というふうなこととの関連の中で、学者の中で意見のまとまった幾つかの予防接種実施するにあたっての注意すべき問題というのが出てきております。たとえば妊産婦についてはこれは全部はずすほうが適当である、あるいは従来乱刺法という方法をとっているけれども、この接種のしかたについてはむしろ多圧、現実にやっているわかりやすい多圧、押しつけるという、そういう方式に改めるべきだ、あるいは痘苗の塗り方が従来は三ミリから五ミリというふうな考え方がありましたけれども、最近の痘苗の精製あるいは力価の安定性というふうなことを考えると、三ミリないし三ミリ以下の量で足りるのじゃないかというふうな問題が出てまいります。これらのことは、いま大臣がお話ししましたとおり、通達をもって指導しております。  そのほかに、いま問題を提起されました予診の方式についてでございますが、従来これは主治医の判断にまかされておりました。ただ、連れてこられるおかあさんあるいは父兄の方々が一番赤ちゃんの健康状態をよく知っているんだというふうなことで、健康状態をできるだけ正しく把握をして、それによって予防接種が適当か適当でないかという判断をするためには、できるだけ家庭のそういうふだんの赤ちゃんの生活状態の中で健康がどんなふうになっているかというふうなことを判断する資料という形で、実はカードの方式を考えまして、これもカードによって家庭でできるだけ記録をしてもらう、それも予診のときに判断の重要な資料にするというふうなことも指導としては考えております。あるいはこれも学者の間ではまだ確定的ということではございませんが、欧米あるいは国内の研究者によりますと、現在第一期の種痘を行なっております年齢の問題が一つ出てまいります。これは現在では二カ月から十二カ月というふうな年齢を設けて初回の接種をやるようにきめられております。この二カ月から十二カ月というふうな線を設けた経緯の一つとしては、生後、母乳その他の胎盤を通じて赤ちゃんが免疫を持っているだろう、その免疫がなくならないうちに接種をすることが副反応を少なくする非常にいい方法だ、これがもしも月数が進んで母体からついた免疫がだんだん減っていくとその他の伝染病にかかる心配があるというふうな配慮から、なるべく早く種痘を接種するというふうな学者のおよそ意見があった。ところがだんだん学問的な究明がなされていくうちに、比較的早期には先天的に持った赤ちゃんの異常という状態が出にくいそういう月数がある、それを事前に把握するためには若干月数をおくらして、そういう先天的の異常状態を確認できるような時期になってから接種するほうがいいのではないか、あるいは母体の持っている免疫が赤ちゃんに与える度合いというのはそれほど問題にしなくてもいいのではないかというふうな意見がだんだん出てまいりました。先進諸国では、あるところでは六カ月から一年半、あるところでは一年から二年というふうな最初に種痘を行なう年齢が変わってきておりまして、この点については、私どもといたしましては、国内の学者の意見を聞きながら、少なくとも秋の種痘の開始時期までには各県、市町村に指示のできるような方向で考えてまいりたい、こう存じております。  大まかに申し上げまして予診の問題、それから接種時期の問題あるいは接種方法の問題、こういったことが副反応を防ぐ大切な手だてとして考えられる。こう思って、これも結論の出たものから逐次通知その他の方法によって指示をしているわけでございます。
  50. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま聞いておりますと、副反応の問題が何か最近にわかに起こったような印象を受けるのでございますね。そして急遽たいへんなことだということから本腰を入れて対策に乗り出したかのような御回答のようでございます。もうすでにこの問題は何年も前から起こっていたと私は思うのです。はたしてそれが種痘禍によるものであったかどうかわかりません。しかし少なくとも厚生省の資料によりますと、種痘禍による死亡、後遺症というデータが出ておるはずであります。どうしてそのときに根本的な対策が立てられなかったのかということが一つ。  それからもう一つは、種痘禍によって死亡あるいは後遺症になった幼児その他でございますが、その因果関係、はたしてその種痘禍によるものであったのかどうか、あるいは体質的に受け入れられなかったためにそういう反応が出たんだというふうに掌握なさっているのか。その辺も専門的というよりも国民の納得するような表現の方法でお答えをいただきたい。
  51. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して。渋谷委員が言われるように、いまの答弁を聞いておりましても、国民の不安は解消できない。若干前進したということは言えますけれども、とにかく二十六年から毎年十名内外の人の死亡が出ているということは、あなたのほうの統計で明らかになった。  それともう一つ、私がこの際伺いたいのは、種痘による後遺症ということが明らかなときには云々ということを言われた。私はこれはちょっとおかしいと思う。そういうことでいつも森永にしてもあるいはカネミにしても、水俣にしても、延び延びになった患者の苦痛というものははかり知ることができないと思う。ドイツあたりでは、聞き及ぶところによると、種痘後三日ないし十八日の間に発熱その他があった場合には後遺症として国が補償しておる、こういうことを私は聞いております。そこで、この間の学者の会議で検討したとおっしゃいましたけれども、十名の診断書を検討した結果、種痘後脳炎というのはたった一名である、それから疑わしいというものが一人、こういうふうな発表がございましたが、これでいいのでしょうか。体質にもよるでしょう、いろいろな合併症というようなものもあるでしょう、しかし、これは種痘によって起こったことは明らかだと思いますが、こういうことを専門的に調査しているうちに時がたってしまう。今後どういう方法でおやりになるのか。  私の知っている人が六カ月で種痘いたしまして、種痘後発熱をいたしまして保健所に参りまして、おかあさんが不安で訴えをしたときに保健所は何と答えているか、少々くらいな症状が出ることはしかたがない、ついにこの赤ちゃんは死んだのです。こういうときにもっと親切な指導はできなかったのか。私は、この点についてのあなた方の決意をあわせてお伺いしたいと思います。
  52. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 従来出ている種痘後脳炎の発生に対して根本的な対策が立てられなかったのはなぜかという第一点についてのお尋ねでございますが、これも御承知のとおり、重篤な副反応による合併症あるいは特に種痘後脳炎という問題は、学問的にも定型化されていないという学者の見解が現在もあるわけでございます。最終的に確定的なそのような種痘後脳炎の判定というのは病理学的な解剖に待たなければできないというふうな意見も出ているくらいでありまして、これは各国とも種痘後脳炎の学問的な究明ということについては学者の相当一生懸命な研究はありますが、残念ながらいまもって種痘後脳炎の解明というのは明らかにされていないというのが私ども承知している種痘後脳炎の実態であります。ただ問題は、一体その種痘とどこまで関係があるのか、あるいは種痘と関係がないのかどうか、ここが私は次に問題になるところだと考えます。  ただいま関連で藤原委員の御指摘になりました、先般集計されました十名余りの症例について学者の意見を求めたわけでございますが、この学者の意見が一部誤解された向きもありまして、この機会に私の見解を申し上げておきたいと存じます。先ほど申し上げましたように、この十一例の症例につきましては、病理学的な解剖を含めた一例については、これは学者の各専門の方々が全く異見がない、これは種痘後脳炎であろうというふうな判断を下されました。それから診断書によって種痘後脳炎という報告のあったものは十一例のうちたしか六例、疑いも入れまして六例だったと記憶しております。この六例というのが、従来、人口動態統計によって国に報告されてくる種痘後脳炎あるいはその合併症の死亡というふうな該当の中に入るわけでございますが、これらの死亡診断書の種痘後脳炎という報告のあったもので調査資料として検討をされた中には、データについて不足な分はあるけれども、この取り寄せられたデータから判断する限りにおいては、明らかに種痘後脳炎という判断はできないけれども、種痘との因果関係というのは相当あるものもある、あるいはこれはまず種痘と関係がないじゃないかというものについては残りの五、六例があるだろうというふうな見解がございまして、このときの学者の意見としてはこういうわれわれ専門家の意見であるけれども、これを行政がどういう形で受け取るか、今後措置をする場合にどういうふうにこの意見をとるかということは行政の当局の問題である。この点につきましては、私自身もその会合では、行政上の意見を求めることではなくて集められた十一例のデータについて学者の専門的な御意見を伺うということが趣旨であるということでこれは了解をいただいたわけでございます。多少御質問とそぐわない点があろうかと存じますけれども、今後私どもが行政的にそういう不幸な転帰をとった方々についてどういう措置をするのかというふうな行政上の配慮の中では、当然そういった、ただいま申し上げましたような対象についても検討の中に入れたいと、こういうふうに現在考えているわけでございます。十一名の中で学者の意見の一致した一例だけが今後の行政上の配慮をする場合の対象になるのだということではないということを申し添えておきたいと存じます。  なお、体質的な問題あるいは予防接種にある程度の関係があるのじゃないかという点についての渋谷委員の御指摘でございますが、現在、ただいま申し上げましたように、関係があるようであり、また接種を受けた赤ちゃんの個人的な体質によるようでもあるという点の検討につきましては、学者の中でも意見が必ずしも一致していない。私どもが種痘後の副反応をできるだけ避けたいという中には、そういう特異体質をどうやって事前に把握するか、それで該当——接種しないことが適当と判断される場合には排除する、あるいは時期をずらせる、あるいは予防的な何らかの方法を講じて接種をするというふうな対象をどうやってえり出すか、さがし出すかということが私は社会的な不安を除く大切な要素の一点だと考えております。そういうことで、先ほど申し上げましたけれども、予診の方法あるいは接種の方法、あるいはおかあさんに赤ちゃんの健康状態をよく確かめる、赤ちゃんの生活のヒストリーというようなものも頭に入れてふるい分けをするということが私は必要になってくる問題だと考えまして、先般来、各県に指示あるいは指導しているということでございます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま述べられた中で、これからもおそらく新しい開発を待たねばならない、特にこのワクチンの改良というものが必ず問題になるであろうと思われるのですけれども、少なくとも三年前にWHOから報告された内容を見ますと、日本のこの痘苗は非常に毒性が強い、こういうふうに言われているそうであります。この点いかがですか。
  54. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 現在痘苗に使われております株は、御承知の日本で開発されました池田株、大連株という二つの株をもとにして生ワクをつくっている。最近の傾向としてはほとんど全部池田株ということに片寄っている。これは昨年、それから一昨年行ないました学者、専門家によるいまのお話の池田株、それからWHOが力価の判断の基準という形で扱っておりますリスター株というもの、それからもう一つエクアドル株というのがございます。これらの三つについて例数が少ないのでございますが、五千人あまりの接種による副反応の比較検討をいたしました。これによりますと、接種をした局所に発赤あるいは固くしこりができる。この度合いはリスター株、エクアドル株は池田株に次いで少ないことがわかりました。ただし、発熱あるいは発疹というふうな全身的な一般症状については、むしろ池田株のほうが若干比率の上では高いというふうな数字が出ておりました。この従来の日本の株が適当なるか、あるいは外国あるいはWHOが力価の判定の基準に考えているリスターがいいかということについて実は昨年専門家によって海外の事情を見ていただいたのでございますが、これは一部公表されておりまして、あるいは渋谷委員すでにごらんかと存じますけれども、これによりましても、七ヵ国ですか調べまして、イギリスがリスター株を使っている。それからドイツは、州によってまちまちのようでございますが、あるところではリスター株、あるところでは、ドイツ自身が昔から開発してきたそういう株を使っている。フランスでは、フランス自身が開発した株を使っている。あるいはアメリカでは、アメリカ自身が開発した株を使っているというようなことで、学者の結論を背景にしますと、それぞれの国が歴史のある、ヒストリーのはっきりした、素性のはっきりした株を経験的にいろいろなデータから検討を加えて、これが現在のその国に一番適当だというような学者の意見のもとに使用している。したがって、もしも株の切りかえをするという場合には、ある程度のバックデータをもとにして、それから判断するのが適当だろうというような御意見もいただいております。私どもといたしましても、いろいろ不安を起こしております現状から考えまして、さらにただいま申し上げました現在の株の改良、精製あるいは他で使われている株の痘苗の検討、こういったものも今後早急に実施をしてまいりたい、こう思っているわけでございます。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ少なくともWHOの報告に基づけば、あるいはいまお話の中にありました、おそらく言われたことは予防接種リサーチセンターあたりの専門家が外国に行ったときの結論だろうと私は思うのですが、やはり比較した場合、いいものをとったほうがいいんじゃないかと、そういう感想を交えた意見も出ているようであります。そういう少しでも前向きにこの痘苗の開発ということに現在専心されている半面に、そうした諸外国で開発されたよりよいものをとりあえず次善の策としてやる考え方というものはないのかどうか。少なくとも死亡率あるいは後遺症の点から見た場合、いま述べられたエクアドル株であるとかあるいはリスター株の場合はきわめて少ないという証明がなされているようであります。そうしたことを考えてみれば、これは一刻を争う問題でもありますので、特に秋口にまた定期種痘が行なわれるということになっております関係もありますので、そうしたようなことをからめてそういう方法がとれないものなのかどうなのか、あるいは一方においては、これは学者間においてもたいへん異論のあるところで、厚生省もこれからあらためて検討し直すと言われた矢追抗原、こうしたものの評価というものは一体どう受け取るべきものなのかどうかですね。将来において日本で、あるいはこれはリスター株に近いのじゃないか——これはしろうと考えですから何とも言えませんけれども、もしそういうものが採用されるならば、もっと死亡率なり後遺症にかかる割合というものは激減するのじゃないかというふうにも考えられるわけでありますけれども、その辺の事情というものはいかがでございますか。
  56. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 種痘の痘苗の株の問題でございますが、いま公衆衛生局長からお答え申し上げましたように、必ずしも私どもといたしましても、リスター株のほうが現在の日本の使っております池田、大連株よりもあらゆる面でまさっているということであれば、これは即座にそっちのほうに切りかえるべきだと思いますが、いまの段階では必ずしもそうでもない。それから諸外国の例でも、必ずしも先進諸国はみなリスター株を使っているというわけではないという事情もございまして、その点で早急にリスター株に切りかえるということにはふん切りがつかないという現状でございますが、しかしやはり現在日本で使っております痘苗の何といいますか、力価が特に最初の、初期の種痘の場合少し強過ぎるのじゃないかという感じもするわけでございます。そういう意味におきまして、何かもう少し弱毒の株の開発といいますか、それを急いでやる必要があるという感じがするわけでございます。弱毒の株というのは——私も専門家じゃございませんが、聞くところによりますと、安定性が非常にしっかりしていないという弱点があるようでございますので、弱毒であって、しかも相当安定する株というものの開発というものを早急にやる必要があろうというぐあいに考えております。御指摘の矢追抗原株でございますが、これも問題は力価が安定しないという点が非常に難点でございます。弱毒性という点の特色はございますが、力価が安定しないということで、そういう意味におきまして、この矢追株につきましてもさらに検討を加えまして、もう少し何か力価が安定するというようなことになりますれば、これも採用の範囲内に入ってくるという感じがするわけでございます。そういう意味におきまして、日本の痘苗の株につきましても、もう少し副反応の弱い株というものを早急に検討する必要があると、いうぐあいに考えておるわけでございます。
  57. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 若干説明が不足をいたしましたが、手持ちの資料をちょっと御紹介いたしますと、先ほど申し上げました池田株とリスター株の接種による反応の比較研究がございますが、これでは感染した率、すなわち免疫を持った率は、池田株では九九・一%、それからリスター株では九六・一%、約三%ほど免疫を与える力というのは池田株がまさっている。それから反応が二つに分かれまして、先ほど申し上げました局所反応と全身反応、この局所反応を見ますと、先ほど申し上げました回りが赤くはれた部分の大きさの比較で局所反応の割合を見ておりますが、池田株の場合は二二・九ミリでございます。それからリスター株の場合は一七・六ミリ、約五ミリほどリスター株のほうが赤くはれている範囲が小さくなっている。それからしこりのできぐあいでございますが、池田株の場合は大きさが一八・二ミリ、それからリスター株の場合は一五・三ミリ、これも約三ミリほどリスター株が大きさが小さくなっている。これが局所反応で、局所反応の点につきましては、ただいま薬務局長申し上げましたとおり、若干リスター株のほうが局所反応が弱いということでございます。それから全身反応につきましては、発熱のぐあい、これは三十八度以上の熱のあったものでございますが、池田株では二五%、それからリスター株は二八・九%、約四%ぐらいリスター株においては発熱が多いようでございます。それから発しんのできるそういう副反応があったもの、これは池田株で二・七%、それからリスター株では八・六%、これも若干リスター株のほうが多くなっているようでございます。ただ、これらの調査では例数が五千名を切れるというふうな、数が少ないために、一体これを引き伸ばして全国民の状態に合わせられるかどうか。あるいは学問的にたえるようなリスター株と池田株の比較になるかどうか、この点については学問的ないろんな問題点があろうかと思いますけれども、一応こういうデータが出ていることを御紹介したいと思います。
  58. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっと関連ですから一つだけお伺いしておきたいと思うのですが、いまのようにしていろいろ研究されたものの発表がされておりますが、私は、ひとつ資料として、いままでの間にどういう団体で何ぼ研究費をつけて、そしてどういう結果が出た、こういうようなやつを逐年のをひとつ報告してもらいたい。一体ワクチンのための研究費、これは毎年どういうふうに出て、どういうところでどういう研究があって、どういう結果が出ているか、そして副反応についてこれの研究はどういうところでどういうことをやって、何ぼ金を使って、結果はどうだったということをひとつ表にして、資料としていただきたいと思います。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま力価の問題が御指摘ありました。この力価の点でいま池田株というものを引き合いに出して、ヨーロッパの株の場合と比較されたことを資料を通じておっしゃいました。反応が二、三ミリの違いでもって再発するという、いわゆる種痘をやっても伝染病にかかるその率というものは高いのだ、いまお話を聞いていると、そういう印象を受けるのです。ところがいままで、ヨーロッパの例も出ておりますので、あえて申し上げますけれども、少なくとも私がいままで調べた範囲では全然出ていないという報告もなされている。こうして考えてみた場合に、やはり弱毒性のものを使って、多少力価の点で不安定性があるかもしれませんけれども、むしろ後遺症とか死亡に至るということを防ぐ意味においては、そういう点の考慮というものは払われないものかどうか、この点いかがです。
  60. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) この点につきましては、大臣も最初にお答えいたしておりますし、薬務局長からも申されているとおり、少しでも副反応の出ないというふうな、そういう弱毒化された株の開発ということをぜひやりたいし、やるべきだと、こう考えております。ただ外国でも、御承知のとおり、種痘後脳炎の把握というのは学問的にも必ずしもできていないようでございまして、ある国によっては、年次が変わると、同じ株を使っていたろうと予想されるのでありますが、副反応の把握のしかたが、非常に結果においては数字にばらつきがあるというような実態もありますし、もしも国内で今後新しい株を国民に接種をするというふうな時点で、はたして外国で得たようなそういう結果が期待できるかどうかというような、実行段階においては問題点もあろうかと思います。そういう学問的な究明とあわせながら、できるだけ毒力の少ない、しかも免疫の保てる、そういう株の開発に対して早急に力を入れる必要があるし、入れたい、こう考えております。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、きょうの機会では結論が出ないようでありますが、将来の課題として残されておるように思うのでありますけれども、この被害状況につきまして、なぜいままで毎年公表が行なわれなかったのか。法律できめた以上は、当然国として責任をもって、こういう事情によってこうなった、これは国民に発表すべきではないか。発表して影響力が大きいとかえって国民に不安を助長させるという場合も、それはあるかもしれませんけれども、しかし、それに対して政府としてはこう考えている。いずれはこうして表面化してくる問題であることを思えば、やはり事前に政府として責任をもってその辺の経緯、また今後の対応策というものを示すべきが本来の姿ではないか、こう思うのでありますけれども、これは大臣いかがでございましょう。
  62. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私もおおむね同感の気持ちでございます。しかし、これは政府なり厚生省なりが副反応のことを隠しておったというようなことは全くございませんで、私が説明を受けているところによりましても、学会におきましても、副反応の問題はそれぞれの見地から公表をせられているそうでございますし、また厚生省の統計収覧におきましても、これはWHO等の約束といいたますか、規約がございまして、医師から報告されとおりのものを厚生省もその統計の中であらわし、またWHOにも報告をいたしておる、こういう次第でございます。決して仰せのような見地から隠しておるというものではございません。この機会に、こういう問題が出されましたことは非常に残念ではありますけれども、私どもはさらにこの際いろいろここで思いを新たにするための一つの機会として、これまでの問題をワクチンの宿命性というふうにあきらめてしまわないで、私は新しい出発点として前進してまいるということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 再確認しておきたいのですけれども、今後この種の事故が再び発生しないという見地から、とりあえず秋に種痘が行なわれるわけでありますので、現在の法律を変えるというわけには、いま国会も閉会中でありますからできません。そこで、先ほども御説明の中にありましたように、特に幼児——月数の非常に短い生後二カ月とか三カ月、こういう時期に接種した場合の死亡率なり罹病率が非常に高いことは、これは世界共通であります。したがいまして、せめてもその年齢の引き上げと申しますか、二カ月から十二カ月が第一回でありますから、十二カ月ぐらいぎりぎりの時期に到達しない者は接種しないという方法をとるとか、それからそのときにも、なおかつ健康状態が思わしくないというようなときにはもちろんこれは避けていただかなければならないのは言うまでもありませんけれども、はたして現在の保健所の機構あるいはその他の指定病院の状況において万全の措置というものがとられ得るものなのかどうなのか、その辺をもう一度責任ある御回答をいただきたい、こう思います。
  64. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私は専門家でございませんので、間違った判定を下してはこれまた非常に申しわけない結果になると思いますが、たとえば、第一期の種痘時期につきましては、先ほど公衆衛生局長からも御説明がありましたように、現在の法令では、生後満二カ月から十二カ月までの間にやるということになっておりますが、しかし、これにつきましては、ある一方の学者の方の御意見でしょうか、その時期は乳児の脳細胞がまだ固まらない時期であるので、そういう時期に接種をすると複合的な悪作用を起こす場合が多い、したがって、むしろそれは満一歳を経過して二歳に至るまでの間に接種してもいいではないかという意見もあるそうでございます。しかし、それについてはそうきまったわけではございませんので、両論あるそうでございますので、先ほども私が冒頭に述べましたように、私ども政治家あるいはまた医務行政官、これはここにおる村中君でも医学博士でありますけれども医務行政官でありますので、公衆衛生局長の判断あるいは大臣の判断ということでなしに、お願いをいたしておる専門家の方々に、ちょうど七月から九月までの種痘休止期間を利用して十分この問題を詰めていただきまして、その結果に従わせていただきたいと思います。しかし、私は政治家として万一両論があるのだと、これは株主総会の議決のように可否同数とかというようなことではなしに、考え方は両論あるのだということでありますならば、この接種時期というものにつきましては、やはりその行政的、社会的な判断もありますので、両論があってきまらない場合には、大臣として私のただいまの気持ちとしては、これは十二カ月を経たのちに接種をするということ、これはひとついかがであろうかということをこれらの委員の方にも、私の行政責任においておはかりをしてみたい気持ちであります。しかし、お説のように、法令は変えられませんので、したがって、行政指導あるいは説明要綱等によりまして、満十二カ月を経た場合にも第一期の種痘の取り扱いをシャットアウトしないように市町村にも——これは今日でも事故その他がありました場合には、その種痘の時期を過しても、あとから補充種痘ができることになっているはずでございますので、そういう形においてでも、法令改正に至るまではやりたいような気持ちでございます。しかし、私はここで断言はできません。というのは、私はもうその方面の専門家ではございませんので、とにかく私がここで政治家としての判断を申し上げますよりも、私がそういう気持ちである、したがって、九月までの間にぜひこの問題は学者の方々の御判断も詰めていただいて結論を得たいと、こういうことで進んでまいりたいと思います。
  65. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) これは先般の種痘の実施についてという指示によっても、各都道府県を通じて末端のほうに指導をしておりますから、従来やっております相当多数の接種者を一つの場所に集めて短時間にやるということにもしも問題があり、接種が適当でないと思われる対象を見過ごすというふうな危険なり、可能性があるとすれば、人数を減らすということ、あるいはよく見てもらっているふだんのかかりつけのお医者さんというようなところで、定期の予防接種にかえるというような方法も市町村医師会等との話し合いでやるような実は指導もいたしておりまして、この点はあえて保健所以外には接種する場所がないのだということではなくて、できるだけ特異体質を発見するあるいは副反応を未然に防ぐというような観点から、弾力的な実施方法を秋までに考えてまいりたい、こう存じております。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ弾力的もけっこうですが、この委員会でもしばしば問題にされてきましたことは、保健所の機能というものはもう手一ぱいであるという実情をみんな知っているわけですよ。そのことをおもんぱかって、はたして事故を防ぐために現在の状況で十分な機能が発揮できるのかどうなのかということを申し上げたわけです。しかし、現状を踏まえた上での判断では、おそらくそれ以上の局長答弁を求めるわけにはいかないだろうと思いますけれども、しかし、だからといって、これでいいわけではございませんので、大臣、その辺のこともあわせてお考えをいただきたい。  次に、一番問題なのは補償の問題だと思います。けさ、厚生省よりもむしろ大臣の所信だろうと私は思うのでありますけれども、とりあえず後遺症あるいは死亡した方々に対しては、見舞金として三百万あるいは百五十万、こういうぐあいに金額まで明示された発表がなされたようでありますけれども、これらの金額のきめ方、これはあくまでも一時的な見舞金のそういう趣旨のものなのかどうなのか、まずそこから伺ってまいりたいと思います。
  67. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 不幸にして後遺症に悩んでおられる子供さん方、あるいはそこまでは至らないけれども、副反応によって医療を必要としておる子供さん方、さらにはまた、全く不幸にして亡くなられた方々等に対する措置というものが、社会的に批判をされておりますとおり、今日まで考慮されておりません。一体、それは私の責任でできることかどうかわかりませんが、もちろんこれは予算も組んだりあるいは法律等をもつくらなければ正式にはできないことであろうと思いますが、しかし、私は、それを待たずに、できるだけこの問題については前向きでひとつ処理をしたいという考え方をもちまして、実は厚生省事務当局にもその検討を命じておるわけでございますが、また、財務当局などにも私がその考え方を訴えまして、ともにその検討を願っておるわけでありまして、正規には昭和四十六年度の予算なりあるいは次の国会における法律、制度の整備を待って出発をいたすべきものとは考えながら、それに先立って、行政上の措置あるいは責任によりまして、先ほど述べましたような方々に対する救済措置といいますか、特別対策を講じてまいるべく、せっかく私は努力をいたしております。しかし、いま渋谷さんからお述べになりました数字、またけさも一部の報道にはその数字が出ておりましたが、これは、まあ厚生省の事務の段階あるいは大蔵省などとの折衝の段階においてはいろいろな数字も出ておるかもしれませんが、私が全く踏み切った数字でもなければ、私が責任の持てる数字でもございませんので、幾らがいいかというようなことにつきましては、これはまだそこまで到達をいたしておりません。これはひとつ私の前向きの努力とともに、財務当局と相談してそれらの数字も出てくるものと御理解をいただきたいと存じます。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 財務当局と御相談なさることは当然でございましょうけれども、いま、冒頭に所信の披瀝がございましたように、行政的な措置としておやりになる、これはもう大歓迎だと私は思うのです。もちろん命はお金をもってかえるわけにはいきませんけれども、せめてもの何らかのお慰めができるということであるならば、これは早急にこれをとっていただきたい、こう思います。  そこで、いまのお話ですと、財務当局が拒否されればこれはしようがないのだというふうにも聞こえます。じゃ、そうなった場合、一体どうなさるおつもりなのか。せっかくの大臣のお考えになっていることが通らない、こういう心配がまた出てくるでございましょう。もっとその辺を、金額とまではいきませんけれども、大体のところでけっこうでございますから、いまこのくらいのところを考えているのだ、せめてそれくらいのことをおっしゃっていただいたほうが国の政治として、ほんとうに前向きにとおっしゃられた方向に行くんではなかろうか、こう思いますので、重ねて私はお伺いしておきます。
  69. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 渋谷先生の御熱心はわかりますが、全く金額については幾らがいいというようなことをここで申し述べるわけに、そういうところまでは行っておりません。(「勇気を持ちなさい。」と呼ぶ者あり)いや、それは、私は勇気は大いにあるほうでありますが、でありますから、いままで、明治年間以来やらなかったことを私がひとつ前向きで大蔵大臣をつかまえて折衝しようというわけでありますが、金額につきましては、これはぜひもうしばらく時間をかしていただきたいと思います。  できなかったらどうするかと、こういうお話でありますが、それは大蔵大臣は金を預かるお役所でございましょうが、私はまた人間の命や健康を預かる大臣でございますから、これは勝ち負けなしで五分と五分と、こう私は考えておりますので、そこをひとつぜひ……。あまりここで詰めて、そのときおまえ辞職するかと言われても、私は辞職しないつもりでおりますが、できるだけのことをやるんだということで、この上とも御理解、御協力をお願いいたしたいと思います。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 非常に歯切れのいい御答弁をなさる場合と歯切れの悪い御答弁をなさる場合とありますが、たとえば昭和四十五年度の厚生省の予算のワクの中から出せる方法はございませんか。
  71. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私はあると思う。あると思うんですが、それはやはり財務当局の承認がなければできませんので、これは金でありますから、補正予算を組むとか、予備費を要求するとか、あるいは渋谷さんがそこまでおっしゃるならば、厚生省の中にも予算があるわけでございますが、この予算ではございませんけれども、ああいうのは移用、流用と言うのでございましょうか、あるいは先食いと言うのでございましょうか、何かそういう点も、これは私もそのほうのことは、昔少し関係のあった人間でございますので、こうやればやれるのではないかというようなことも言ってみようと思います。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 非常に勘ぐった言い方で恐縮でございますけれども、すでに大臣がそれだけの腹づもりをされたという背景には、大蔵大臣あるいはその主要メンバーと内々のお話がなされて、金額の点まではどうかわかりませんけれども、おそらくそうしたことを踏まえた上で意のあるところをお述べになったのではあるまいかと思うのですが、この折衝は事前にあったのか、これからあらためてやるのか、その辺いかがでしょうか。
  73. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 折衝中でございます。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 さらに伺いたいことは、いま大臣が頭の中にえがいていらっしゃいます補償の対象には、どういう範囲を目途とされていらっしゃるのですか。
  75. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これも最終的には十分固まったところで申し上げ得るという段階ではございませんが、私は三つの対象を考えなければならないと思います。それは副反応で医療にかかっておられる方の医療費を見てあげるということがまず第一でございます。第二番目は、症状が固定したといいますか、副反応が固安して心身障害の状態に至ったお子さま方、これらの方々に対する特別の措置、これも症状が一級とか二級とかというような症状の標準もございますので、そういうことに応じての考え方になるでございましょうが、それが第二番目でございます。第三番目は、これまた一番むずかしい問題でございますが、不幸にして亡くなられた方々に対するお見舞いの措置といいますか、弔意の措置といいますか、それを第三番目の対象事項として考えねばなるまいと、こういうつもりでございます。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 罹病されたその対象については、いつごろまでさかのぼってお考えになるのですか。戦後ずっと現在に至るまでですか、まあそれが望ましいと思いますけれども。
  77. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私がここで断定的のことは申し上げられません。でありますから、それはもう皆さま方も政治家でいらっしゃるし、私も政治家として努力をいたしておりますので、私がここで申し上げることと結果がずれたりすることが万一ございましても、これはお許しを得たいと思いますが、その医療を要する状態が現に続いている限り、あるいはまたそれが固定して心身障害の事実が今日ある限り、その発生、その原因、つまり種痘をした時期がいつであろうと、私はこれに特別の、先ほど申し上げた方法をもって対処すべきだと考えて進むつもりでございます。
  78. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これからもおそらく事務当局でも問題になるであろうということを申し上げたのですが、疑わしいという場合にはどうなさるおつもりですか、疑わしいものまで含めてやはり補償の対象に考えていらっしゃるのかどうか。
  79. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私どもも、その点につきましては非常に関心を持ち、渋谷先生が関心を持たれるのも当然だと思いますが、これは先ほど公衆衛生局長が述べた中にも、そこに示唆がございますが、これはなかなかむずかしい問題でありますが、たとえば藤原先生もおっしゃったように、先般の学者の方々が寄って、十一の症例中、それらの学者の方々が判定されたその種痘後遺症と認められた者が一人ないし二人だというような意味においてではなしに、公衆衛生局長が述べられたような、あと五人でございましたか、六人でございましたかはそれに関連があると判断される、これは学問的にはともかく、行政的の措置の対象としては取り上げてしかるべき人を取り上げていいのではないかと思います。しかし、いずれにしましても、これは行政的の識見のある方、あるいはまたとの道の専門の方々にお集まりをいただきましたような一つの審査会のようなものを設けまして、そこでいま私が申し述べましたような考え方で、そこの審査というようなことで措置をやる場合には措置を講ずるほかないと思います。厚生省の私が判こを押して、私が陳情を受けたものはみなよろしいとか、あるいは一部の非常に厳格な専門的見地だけによってそれぞれにいかれるということではなしに進んでいかれるだろうかと思っております。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あとのほうがちょっと不鮮明だったものですから、もう一点くどいようですけれども確認しておきたいと思いますが、結論から言えば、権威ある専門家の診断によって症状が疑わしいと判断されても、それは補償の対象とすると、こう理解してよろしいわけでございますか。
  81. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ことばのやり取りになって恐縮でございますが、疑わしいということになると、お出しするのは疑わしくなるわけでございますから、何か適当ないい状況に合うようなことばのもとに、私は渋谷先生のお気持ち、私も渋谷先生と同じ気持ちの政治家でございますので、疑わしいということばを使わないで措置できるような何らかの措置を見出したいと思います。
  82. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまのその疑わしいとか言っているんですが、私は大臣にこういうことをちょっと尋ねたいと思うのですが、こういうのは非常に判定がいままでからいってむずかしいわけなんですね。だからして、これはほんとうであるか、いわゆるこの接種後の脳炎と判断するのは一人しかなかったとか、いろいろありますが、私はそうではなくて、今後は逆にそうでないというところがはっきりしておるものはもちろんあれになる、しかし、はっきりすることができないものは全部そこに含める。こういうようなことにやってもらえば、疑わしい範疇はみなそちらに入るわけです。私はそれくらいの十分な補償をやるというかまえを見せるべきではないかと思う。何となれば、一方には強制的に必ず種痘させるのですからね、これは法律に基づいて。そして種痘とは全然関係がないという証明ができたものは要らないと思いますが、証明ができ得ないものはみなその対象に含めるというような考え方はいかがですか。
  83. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 大橋先生はお医者さんであるとか伺っておりますので、私は御意見は十分拝聴いたしておきます。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私がいまそのことを伺ったのは、イギリスやフランス等の例も伺っております。疑わしいものは絶対に補償の対象にはしない。けれども西ドイツの場合にはもう疑わしいものまで全部包含して、いま大橋委員が言われたようなその措置が講じられておるということを考えますと、当然日本の場合は法律によって義務づけられておるわけでございます。ただし罰則はありましても、補償については何も保障がない。だからこの点を私はどうなさるおつもりなのかということをいまお尋ねをしたわけであります。願わくばそういうものまで含めて大臣の意のある配慮を願いたいものだ、こう考えるわけでございます。  そこで、この予防接種法というものの中身を見てまいりますと、やはり改正をしなければならないと思われる点があるかに私は判断するわけでございます。その中で、特にいま申し上げましたように、この補償制度という問題を一体どうお考えになるのか。それとも別個に新しい制度というものをつくるべきなのかどうなのか。その辺についての構想を承っておきたいと思うわけであります。
  85. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 伝染病予防法なりあるいは予防接種法なりにつきましては、私は、この際これも法律の態度としても、取り上げる範囲についても全面的に見直すべきだと考えますので、私たちでそのことを明示しようと思います。また補償といいますか、救済といいますか、私が申す格別の措置と申しますか、それをどの法体系で取り上げるかということにつきましても、まだ形式につきましてはそこまでいっておりません。むしろ、そういうことに先立って、先ほども述べましたように、行政措置として前向きにやって、そして国民的信頼感、安心感というようなものを与えたいというような気持ちで実はいっておりますので、最後の法的措置につきましては検討をさしていただきたいと思います。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 前後しましたけれども、補償の問題については、いつごろをめどとして実施されるおつもりなのか。私はいろいろな具体的な事実関係を知っているのです。それで実にけしからぬというような問題がやはりあるのです。医師がもっと早くそれを本人に教えてあげることができるならば、もっと死亡に至らずとも防げたのではないかという事実関係も知っております。いまここにありますけれども、あえてそのことは伏せておきます。そういう人たちの悲惨なことを思い浮かべてみますと、この補償という問題については、もう一刻をも争うのじゃないかと思うのです。しかもまた、後遺症にかかられた子供をかかえる親の気持ちを思うとき、断腸の思いだろうと私は思います。それを救済するのはやはり政治の力ではないかということは言うまでもありません、大臣がしばしばお述べになっておりますように。したがいまして、この補償についてはいつごろをめどとして——明確に何月何日からということは申されなくても、あらかじめそのくらいのことを表明なさって、後遺症にかかられたあるいは子供が死亡された方々に対するせめてもの慰めとしてあげていただきたい、こう思いますので、この点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  87. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私も全く同じ思いでございます。いいことをいたそうと思うのでございますので、これはあまりおくれますと値打ちがなくなりますので、できるだけひとつ早くやらしていただきたいという気持ちでございます。ただ、この七月からとか八月からとか、こういう点は申し上げにくいのでございますが、もちろん先ほど申しました法律なり予算なりの新しい成立を待ってということではございません。できるだけ早く私はやりたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  88. 大橋和孝

    大橋和孝君 関連で、私もいまの補償の問題でありますけれども、もちろんいま起こりつつあることでありますから、早くこういうことはしてもらわなければならぬと思うのですが、私は基本的にこの補償そのものに対して政府はどういうふうにするのだという、補償に対する法律もつくるべきじゃないかと思うので、どういうふうな構想でつくりたいということをいま明示しておいてもらえば、やはり多くのおかあさん方あるいは国民の皆さん方は補償のことに関してはある程度安心をすると思うのですね。ですから、少なくともこれはいままでの経緯からいって、必ず副反応があるのだし、それに対して補償をせなければいかぬということだけではいけないわけですから、これに対してはもう予防法も改正をして、またいろいろいままでのことも改正しておかなければならぬ。この予防接種法も改正する、あるいはまた別の法律をつくるならつくる、そういうことを明言するとともに、この補償に対しても、かくかくしかじかで補償をする、こういうようなことをひとつ国民の前にある程度の構想を発表することは、もう厚生当局としては必要ではないかと思います。そしてその線に沿うまでの間は、即刻こういうふうにして補償していくのだと、こういう形にしなければ私は不合理だと思うのです。ですから、法的に義務を課しているならば、法的にやはりそれを償う措置もしていかなければならない。これまた当然これから考えられることなんだと思うのですが、これについて大臣、どうですか。
  89. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) そういうふうにいたしたいと考えております。しかし、それを将来、法律制度ということの完成を待つよりも、それはそれでもちろん準備をいたし、また厚生省に付属して設けられております伝染病予防調査会のほうにもいわば法制部会のようなものを設けていただきまして、法制的措置も準備するのがいいと思いますが、しかし、私は先ほどから申しますように、それに先立って、これは税金でも取るということになりますと、もちろん憲法上法律が要るわけでありますが、福利、福祉の行政でございますので、行政法上も法律に先立って事実関係をやらしていただきつつ、先生のおっしゃるとおりの法制的整備についても整えてまいりたいと考えております。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 種痘についてはこの辺で終わりにしたいと思うのでありますが、ともかくいままで政府が述べられたとおりの方向に基づいて、特に補償の問題、そして特に予防措置として年齢の引き下げの問題等含めて、早急にひとつ措置をとっていただきたい。そういたしませんと、また次から次へ起こった場合、またまた新しい問題をかかえてその処理に当たらなければならないということになると、これこそまさに怠慢だというそしりを免れないわけでありますから、この点すみやかに措置をしていただきたいということを重ねて私は御要望申し上げておきたいと思います。
  91. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっとだけ関連させていただいて私も聞きたい。  それは、特に予防接種の副反応の問題で問題になるのは、先ほど答弁を聞いておりまして、やはり患者の体質ということも一つの大きな問題である。ところが患者の体質というものを知ることは非常に困難ですね、いまの状態では。ですから、むしろ私はこれに対していままでどういうふうな経過でやられてきたのか。特に私が聞きたいのは、アレルギーとかあるいはまたひきつけをする体質とか、いろいろあるわけでありますが、こういうものに対してもう少し開発されて、それを未然に発見して、そうしてそういう人に接種しなかったら、これはだいぶ省けるわけですね。ですから、これが治療に携わる方が厚生省の指定どおりやっていって医者がほんとうに発見できるかどうかというと、発見できませんね、なかなか。いろいろ問診をしてそういうことが問いただされたものはそれでもいいかもしれませんけれども、そうでないものはできてないという状態。これにひとつ大きくここで取り組んでもらうということが今後の予防接種の副反応、副作用というものを撲滅するために私は一番大事なことだと思うんです。非常にこれはおくれていると思う。だからこういうことに対しても、私は先ほどもちょっと資料を要求しましたけれども、どういうことがいままでやられておるかということもひとつ資料をいただきたい。あるいはまた、そういうことの研究開発がどうされておったかということも知らしていただきたい。  それからもう一つここで尋ねたいことは、こういう反応の起こったときの治療法であります。その治療法に対しては、いわゆるVIGなんかもいま問題になっているわけですね。これは日本でもできるわけであろうと思う。いまほとんど外国に依存をして、今度も外国に注文をされたようでありますから、これは入ってくると思います。まあマルボランについてもそうだろうと思うのでありますが、こういう問題に対しては一体どういうふうに考えていられるか。少なくとも、いままででもこういうのがあってすぐそういう治療法をすれば幾らか早く予防ができるというふうにも言われているのですが、そういう問題もひとつどういうふうに考えられているのか、この二つについてちょっと教えていただきたい。
  92. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) VIGのお話でございますが、これは先生御承知のように、VIGは種痘しました後に、その種痘がよくついた人の六週間以内の血液をとりまして、そしてその血液からとったガンマグロブリンでつくるというものでございます。このVIGはマルボランなんかと同様に、種痘接種後の発熱とか、発しんというような場合に治療用に使われるということでございます。これは今回の種痘の副反応の発生ということで、私ども急遽マルボランと、それからVIGの確保に努力したわけでございますが、たまたまVIGは国内に若干これを外国から輸入して持っていた業者がございますので、それから一応確保してあるということでございます。それからVIGを今後私どもも何とかしてつくってまいりたいと思いますが、これはただいま申し上げましたように、種痘した人の、そのよくついた人から六週間以内に血をとらなければいかぬということでございまして、そこに非常に難点があるわけでございます。諸外国では、たとえば軍隊をどっか外国に派遣するというような場合に、相当たくさんの兵隊に種痘する、それから血液をとってそうしてVIGをつくっているというような場合が多いようでございますが、日本はそういうことはできないわけでございます。結局、海外渡航者で種痘を受けられた方から血をちょうだいしてそれからつくるというようなことが考えられる方法でございます。そういう点でいろいろ難点はございますが、しかし、私どもといたしましては、マルボランとかあるいはVIGというような、そういう種痘後の副反応を治療する薬の確保というのはぜひ必要でございますので、そういう線で至急に研究を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  93. 大橋和孝

    大橋和孝君 VIG、マルボランあたりはやはり相当輸入に頼っておれば非常に高い薬ですね。これをやはり国で買い入れて、それで無償でやられる計画なんですね。それは当然そうされるべきだと思うのですが、そういうふうなことと同時に、こういうような薬はいま健康保険では使われていないわけです。しかし、これも私は使いようによっては一つは予防になるのじゃないかと思うのです。だから、先ほど渋谷さんからも矢追抗原の話も出ておりましたが、非常に年もとっているしアレルギーの人が、しばらく待てばそれでアレルギーがとれるわけじゃないわけですね。ですからして、やはりそういう体質の人はいつやっても危険はあるわけです。ですから、そういう人に対してはもう少し何と申しますか、弱毒化されたものを使うか、さもなければそうした予防的な処置をして、それから今度の接種をしなければならぬというようなことも考えられると思うのですが、そういう配慮なんかはいままであまりされていないように思うのですね。ですから、そういうことに対してはどのようにいまの段階では研究が進み、どのような段階でこれは実際に応用しようとされているのか、こういうような点なんかもひとつ明らかにしておけば、おかあさん方に安心してもらえるわけです。  それからもう一つ、アレルギー体質とか、そういう点、いま答弁がなかったのですけれども、そういうことをする方法として何か手がないのか。たとえばほかでもアレルギーを調べるためには、からだの中には害を及ぼさない程度に皮膚に反応させることによって反応を調べることができるわけですね。ですから、生ワクチンでももっと何かの段階で毒性をとってしまったものをほんのちょっと皮膚にあてて、そうしてほんの少しの抑圧法をやってみて、害を及ばないほどちょっとやってみてその反応を調べてみる、そうしてどうもなかったならばそういう人はやってみるということで、少なくとも前日なら前日にそういう反応を調べることができないものか。そのくらいのこともひとつ考えなければ、体質が悪い人は当然副反応が起こるのだということではあまりに——自分の子供の体質がどうだということでもって心配であろう。熱があったり何かすることはそれで予防できると思うのですけれども、しかし熱も何もなくてもそういうアレルギーがある、あるいはひきつける体質であってすぐそういうことが起こる人であれば、問診ばかりじゃなくて、問診でわからないというものに、アレルギーの反応の検査をする程度のことをひとつ考えてもいいのじゃないか。いまの段階でこれほどたくさん事故があるわけでありますからして、それをひとつもう一ぺん御答弁を願いたいのと、それからいま言っているようなことは国費でやらなければならぬと思う。当然国費でおやりになるだろうと思うのですが、その辺をひとつもう一ぺん聞かしていただきたいと思う。  それからまた、これは国内で、もう少し考えようによったらできると思うのです。たとえば港湾に働いているような人は、いわゆる相当そういう危険性があるために予防接種相当進められていると思います。あるいはまた第二期の種痘のほかに第三期なり何かのときにそういうことをやろうという——海外渡航で接種するようなときにそういうことをする。いま日赤で献血が行なわれておりますけれども、その献血の中に、もう少しそうした免疫の状態がどうであるとかいう検査機構を入れたならば、いままではそういうことを考えないで採血をしているからそのままになっているそういうものの中で、よく調べて採血すれば、これはかなり完全免疫、力価の高まっている人があり得ると思うのですね。そういう人から血液をいただいたのをまたそういう方面にやる、輸血によってこういう病気になった人を助けるのも、ガンマグロブリンをつくるのも、私は国民に対する気持ちは同じじゃないかと思うわけですね。そういうことからいえば、日本にもやはりそういうような外国との技術提携をしてガンマグロブリンの開発をすることのできる会社も何カ所かあるはずなんです。ですからして、私はこの献血の中にもう少しそういうことを織り込めばこういうような薬をもっと開発できるのではないかと私は思うのですね。そういう点についてももっと積極的な考え方を持つべきじゃないか。私は、日赤モノポリーでもってやられているいまの献血の問題に対しても、献血はそれでけっこうだと思いますが、まだまだいろいろの問題があると思う。この献血の問題については後ほど一ぺんまたいろいろまとめて質問させてもらうつもりでありますけれども、今度のこのいわゆるVIGの製造そのものに対しても、いま厚生行政の中で頭を使ってそういう方向に持っていくならば、私はあながちできないことはないと思うのですが、その点いかがですか。
  94. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) 第一点のマルボランあるいはVIGの治療、あるいは予防的にどういう形で使っていくのか、あるいは費用の点がどうなのかという点についてのお尋ねでございますが、先般の通知で二十八名の——これは種痘関係の臨床家がおもでございますが、研究班が昨年できまして、これが各県にほとんど配置されて、もっとも小さい県で飛んでいるところはございますけれども、二十八人、これに五、六名さらに追加をいま考えておりますが、この班員が中心になってもよりの県、市町村で事故が起きた場合には電話連絡を受けて、そこで電話で症状のわかる程度のものは判断するし、さらに行くことが適切である場合には現地に出向いて、そこで患者を見ながら治療の方法あるいはいま手持ちのマルボランの使用、あるいは今度VIGが入ってまいりますと、これを使うというふうな体制ができたわけでございます。これは研究として昨年発足いたしましたが、先般これらの専門家にお集まりいただきまして、ぜひそういうことのサーベイランスあるいは治療の問題については中核になろうというお約束をいただいております。ですから、さしあたっては、こういうところは研究の一環という形でいまの御指摘のような薬剤の使用ができる。それから、VIGの入る見通しが立てば、これの予算化については極力努力をしたい、こう考えております。  それから、もう一点の、第二点のアレルギー反応の研究をやって、皮内テストその他で事前にアレルギー状態を知る方法はないかという点でございますが、これは御承知のとおり、アレルギーの本体そのものが非常に多様でございまして、一部抗原性のわかっているものもありますし、あるいは不明のものがあるわけでございます。ただ、これらの抗原をさがしだすということ自体にも相当研究の時間がかかると思いますから、これは私は研究課題というふうなことで今後検討させていただきたいと。いまここでわかり得るアレルギー状態につきましては指導要領、それから規則、先ほど申し上げました通知、これらに、一応外国で行なっておりますそういう実施要綱からも取り上げて、相当幅広くあげております。ただ、これが御指摘のように、問診あるいは視診という過程の中でつかみ得ないという弱さはあるわけでございますが、これはむしろアレルギー反応におきまして、皮内テストが早く解決されればその分だけのアレルギーの予防ができるわけでございますから、これはぜひ研究というような形で検討させていただきたい、こう存ずる次第でございます。
  95. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間がないのでもう一つだけ伺っておきます。  何かこのアレルギーの問題なんかでも、それはいま非常にわかりにくい状態ではありますけれども、もうずっときょうのこの種痘問題で論議を聞いておりまして、非常にいままで取り組み方が甘いわけですね。そこで、私もあまりよくわからぬから、毎年、いままでそういうことの研究開発のために金が使われたのを一ぺん資料としていただいてこの次にもう一ぺんやりたいと思いますが、しかし、こういうような副反応の死に至るまで、これは相当の数なんですから、この問題についてはもっともっと予算をとって研究開発、またワクチンについてももっと弱毒化されたものをつくる、そしてたとえばいままで初めに一回でやったものをもっと弱毒化された、また力価の高いものを使って二回にして、初回の免疫を分けるということも考えられるだろうし、とにかく一年前後にやるのが比較的副反応が少ないということは、それだけの多少抵抗があるから少ないわけですから、そういうものをやってその次に相当の力価の高い接種をすればそれは予防できるという結論になろうと思うのですがね。そういう点のことなんかはもっと具体的に研究されていくべきだと思う。いまごろになって、騒がれて初めてそれが出てくるというようなことでは、私は非常に残念だと思うのですね。それと同時に、先ほどからも論議がありましたように、この時点で、いまの段階でできることをひとつよく国民の前に知らしめておかないと、いつまでたっても予防に対してあるいはそういうことが起こったときの処置に対しても、きっちりしたものをしておかないと非常に不安なわけですね。特に熱があったり何かしてこの次に延ばされようとした人は、いつになってそれが解消されるかどうかわからない、非常に不安なわけです。一応、この子供はそういう副反応が起こりやすい子供ですよということを証明されるわけですから、その親たちはこの次に受けるときには非常な不安さを持つわけです。それに対してはもっとそういうような事柄を十分にやらなければいかぬので、少なくともいまのVIGあたりはもっと予防的な見地からも使用するように、そうしてそういうような疑わしく、体質的に弱いという人にはそれをやってからやるというふうにするとか——それがどれほどの効果があるか、私はまだ詳しい学問的のことは存じませんけれども、しかしそういう抗原があるわけです。これはガンマグロブリンを使えば予防になるし、治療になるくらいですから、予防に使えば、量的にいってもそう多くなくて予防の効果はあると思うのです。そういう点をもう少し明確にして、国民には十分PRする必要があると同時に、私はいまここで特に声を大にして申したいのは、もっと予算を十分にして、こういうものの開発のためにはうんと金を取ってくださいよ。これは非常に必要だと思う。ですから、私は、いままでに金を使われたものを一ぺん見せてもらって、この次にどのくらい予算を組まれるかを微に入り細に入って伺いたいと思うのですが、少なくともそういうような人命に及ぶような問題があるときに、そういうことに対するお金の使い方というものはあまりにも少な過ぎる。そういうことを特に大臣にお願いしておきたいと思うのです。予算をしっかりと取って研究してもらいたい。それを速急に能率が上がるような仕組みにしてもらう、こういうことが必要じゃないか。研究班は何ぼよけいつくってもいいのじゃないか。ワクチンの研究班にしても、あるいはまた弱毒化するための——それには非常に日にちを要しますけれども、それにも金が要るわけですから、金をうんと取って研究さす、そしてまた、その研究効果があがれば非常に大きくこれを評価する、こういうようにしなければ、やる人も困るわけです。ですから、そういうような自然のルールに従ってやられるような道を厚生省では踏んでもらいたい。これが私の最後のお願いです。大臣の御所信を聞いておきたい。どうぞ国民が納得して安心するような方向をひとつ打ち出していただきたい。
  96. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 同感でございます。御意見ありがとうございました。
  97. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 速記を起こして。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大臣、いまお聞きのとおり時間がありませんので、こちらもはしょって申し上げます。  きょうは、これから精神病院の火災、医療保険、厚生団の問題、こういうふうにお伺いする予定でありました。しかし、事実上それはあと三時間か四時間かかかりますのでできませんので、精神病院の火災に限定しまして、それも少しくお尋ねしたいと思います。  今回の火災につきましてもたいへん遺憾なことであったと思うのです。現在、国公私立合計いたしますと千三百三十一あるそうでございますけれども、そのうちの約八五%が民間経営、あとの一五%が国公立、こういう状況のもとに置かれているわけであります。はたしてその管理運営の面、それから老朽化した病院について、特に国公立の場合、一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。きょうは消防庁の方も実はおいでいただいておるわけなんで、その経過、結果、所見を聞いた上で大臣の御答弁をいただこうと思っておりましたけれども、まずその基本的な問題ですね。これからもないとは言えない。起こり得る可能性も十分に含んでおりますがゆえに、特に老朽化した国公立の病院をまず軸にして、それから民間の病院をどう考えるかという点についてまず所信をお示しいただきたい。
  100. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) まず、先ほどの両毛病院の火災による患者さんの死亡のことについては、私どもといたしましてもまことに残念でございまして、心から弔意を表しております。  それにつきましても、御指摘のように、精神病院のあり方、ことに施設の鉄筋化等につきましては、私どもは十分配慮をいたさなければならない。あるいはまた中におられる患者さんの種類を考えましても、非常時における処置等につきましては十分の施策を平素から講じておかなければならないと思いまして、私はいま事務当局にもこれらの点を厳命をいたし、また現状をもただしております。  また、医療金融公庫などにつきましても私なりに調べてみましたところが、医療金融公庫の開業ちょうど十年になりますけれども、一般の病院に対する貸し出しの割合と精神病院に対する貸し出しの割合、これは金額ではございませんが、それをグラフにしたものを見ましても、精神病院に対する貸し出しの率は非常に多うございます。私の記憶に誤りなければ、医療金融公庫から貸し出しを設備について受けております精神病院の割合は八〇%前後くらいであったと思います。これに対して一般病院が医療金融公庫からお金を借りて施設の改善をいたしておる病院の割合は五〇%くらいであるわけでございますが、それでもわかりますように、私どもといたしましても、精神病院はできるだけ古い設備を鉄筋化に改める、あるいはまた防火施設等につきましても患者さんの安全をはかるような趣旨でやってまいってきております。ただ最近、これも私が承知いたしております数字によりましても、精神病院がここ数年間急速に増加をいたしておりまして、現在でも病床数がおそらく二十三万床余りであると思いますが、毎年一万数千床ずつふえてきております。ということは、古いものも直すでございましょうけれども、古いものを直すところに十分の手が回らないで、新しくつくられるものについては設備もおおむねいいものがつくられておるという状況にとどまっているので、この際さらに古い病棟の急速な新施設化につきましても一そうの力を入れなければならないと私は思います。現に、先般大惨事を起こしました両毛病院にも私どものほうから係官をさっそく派遣いたしました。その報告によりましても、第二病棟でございますか、新しい病棟のほうは鉄筋化ができております。今度焼けました病棟につきましても鉄筋化の計画ができておりまして、それを進める直前であったときにああいう火災になったわけでありますが、あれがもう少し早く鉄筋化されておったならば、あれまでの惨事には至らなかったと思うわけでございまして、その点からもまことに残念でございます。でありますから、そういう点にも留意をいたしながら、種類の違った患者さんを収容する施設でありますだけに、精神病院施設につきましてはさらに力を入れ、また、先般来、他の面で精神科の病院につきましては問題を起こしましたことも私は深く銘記をいたしておりますので、そういう点につきましてもさらに十分な留意を進めなければならない、こういう気持ちを持つものでございます。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これから一括して御質問申し上げます、時間がありませんから。  まず一つは、今回の罹災した両毛病院はまだいいほうだ、あれ以下のものがまだ相当数にのぼる、少なくとも全国の実態を見れば約三割弱が老朽化している、そういう危険を常にはらんでいる、こういうデータが出ているわけであります。いまも御説明ありましたけれども、一方において鉄筋コンクリートにした、いままさに焼けたところも鉄筋コンクリートにしようとした矢先のできごとであったと。先般来からしばしば御指摘申し上げておりますように、何か事が起こらなければ前向きに取り組まないという姿勢自体が非常に大きな問題ではないか、このように私は思うわけであります。しかも、今回の病院の状況をいろいろな角度から見た場合、また伺った場合、当直の看護人が六十歳をこえた老齢の人であった、あるいはまた資格者はたった一人しかいなかった、こういうことが伝えられているわけであります。そういうようないろいろな悪条件というものが重なって、起こるべくして起こったのが今回の人災とも言えるような災害ではなかったか、こういうふうに思うわけでございます。いま融資の問題等もおっしゃいました。なるほど年金福祉事業団であるとかあるいは医療金融公庫というものはございましょう。はたしてそういうところからそういう民間の病院に適切な融資が行なわれているのかどうなのか。また、希望に応じたような配慮がなされておるのかどうなのか。そうしてまた、精神病院として合理的な運営管理というものがなされていくような方向に現在向けられておるのかどうなのか。これが大きな問題だと思います。これを今後どう一体行政指導を通じて改められようとしているのか。この問題が一つ。  それから第二点は、特に仕事に従事する看護人、なかんづく看護人の問題が問題になるだろうと思うのでありますけれども、そういう人員配置については、たとえ民間の場合といえどもこれを厳格にチェックしていかなければならないのじゃないかという問題、これをどうされるおつもりなのか。  それから第三点、精神衛生法第四条によれば、各都道府県においては国公立の精神病院をつくらなければならないと、このように規定されておるわけでございますけれども、現状においては三つか四つの県には国公立の病院がいまだに設置されていない。そして第五条の項目によって政府が指定した要するに民間病院にこれは実はまかしている、こういう形態がとられているようでございます。そこに国としての責任というものがあるいは抜け穴になっているんではないかというようなことも心配するのであります。もし第四条の精神というものが守られないとするならば、これは明らかに憲法違反に通ずる問題にも発展しかねないというふうに考えるわけであります。特に特殊な病院でありますだけに、火災の予防についてはもう万全の措置をとってもなお足りないぐらいではないか。しかも消防庁の報告によりますと、ことしの三月にすでに通達を出しておりまして、そしてまた、ついこの間再び出したと、厳重に監督をしていたつもりであるけれども、やはり内部のそういう管理運営の面でそういうような事態に発展してしまったように思いますというような所感も聞いております。こういったことをあわせ考えまして、今後精神病院全体に対する行政の面について、さらに先ほどの所信に加えて、重ねていま申し上げた三点についてお聞かせをいただきたい。  これで私はこの質問をきょうのところは打ち切らしていただきます。
  102. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) お尋ね、また御意見がございました点につきましては、先ほど基本的な私の姿勢として申し上げたとおりでございまして、現状をもって私は十分であるなどとは決して考えておりませんので、先ほど申しました態度をもって精神病院の施設の万全を期するために一そうの努力をいたしてまいりたいと思います。  また医師、看護婦などの配置、これまた私どもから見ましても、医療法上の基準から考えて問題のところも決して少なくないようでございまして、お医者さんなり、パラメディカルの方などをも含めまして、これの充足には実は非常に頭を悩ましておりますけれども、だからといってそれで済むものではございませんので、御意見のありました第二点の看護人の人員配置等のことにつきましても、さらに十分私どもも指導を尽くしてまいりたいと思います。  第三点の、精神衛生法によりますと、国公立の病院を都道府県は必ず持つことになっているはずでございますが、それが最終的に至るまでその精神が徹底されないで、代用県立病院のようなもののままで残されているものがあることは御指摘のとおりであると存じますが、この点につきましては、私実情を十分存じませんので、医務局長から答えさしたいと思います。  いずれにいたしましても、私どもは決して怠って、事があるごとに言いわけをしたり、そのとき限りいろんな施策を講ずるということではございませんので、ちょうどここに私のところに来ておりますが、この精神病院の医療監視及び経営の管理、指導の実施につきましては本年の六月十日に医務局長から通達を出したばかりでございます。さらに今年の三月十四日に公衆衛生局長と医務局長の連名をもって、精神病院の運営管理に関する指導監督の徹底につきまして都道府県に通達を出しております。さらにまた、ことしの三月三日には全国の精神衛生主管課長会議を招集いたしまして、火災防止につきまして特に文書を配付して一斉点検、火災防止設備等についての指示をいたしております。昨年の十一月にも精神病院における火災事故の防止について通達をいたしておるわけでありますが、いわばこれは通達行政のような形になりますが、私がほんとうに残念に思いますのは、厚生省というのは、言うまでもなく、昔の内務省の系列の仕事を発展して引き継いでおりますために、厚生省の第一線は、たとえば地方厚生局というようなものが御承知のとおりございません。すべて都道府県を通じて都道府県に通達し、指導して厚生行政をやっておることは御承知のとおりでございます。先ほどお話がございました保健所などの問題につきましても、あれも御承知のとおり、都道府県ないしは特定市の施設というようなことでございますので、言いわけではございませんけれども、しばしば会議を招集したり通達というようなことでやっていって、できる限り人も出すようにいたしますが、こういう機構上の不満があるところをも克服いたしまして、私は、今後御指摘の点につきましては関係官を督励をいたして、また私も努力をいたしてまいりたいと思います。
  103. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は二時間以上の質問の予定でございましたのが一時間半となり、今度もう三十分しかない、何から質問しようかと思っていま頭の整理がまだついておりません。これだけ厚生行政が大きな問題を起こしておるときに、委員が心ゆくまで質疑ができない、こういうあり方はさらに今後検討していただきたいと思います。  私は、それぞれ分野を分けておりましたが、そうもまいりませんので混合するかもわかりませんが、御質問いたしたいと思います。  まず最初に、いまいろいろ起こっております森永のミルク事件、あるいはサリドマイド児の問題、カネミ油油症患者の問題、あるいはただいま議題となっております種痘後遺症の問題等々に対しまして、あるものは企業の責任は言うまでもないけれども、しかしその根源となるべきものは厚生省の指導、その責任を重く見なければならぬ、いや責任ありと考えておるわけでありますが、厚生省の薬物に対しての指導、取り締まり、そしてまた人の健康と生命を守る厚生行政に対して信念に欠けている点があるんじゃないか、こういうふうに考えられてなりません。したがって毒物、薬物等に対しての厚生省の指導、取り締まりがどのように行なわれているか、この点からお伺いしたいと思います。
  104. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 藤原先生御指摘のとおり、ここ十年以内を振り返ってみましても薬物等によるいろいろの事故が起こっておりますことは、私どもまことに残念でございますとともに、それらにつきましては法規の改正なりあるいはその行政指導の徹底なり——これは薬品ばかりではございません。森永粉乳のように、食品衛生に関する問題もございまして、私は、その点につきましては今後これらの点の改善につきましてできる限りの指導をいたさなければならないと存じております。また、それはたとえ過去の事件にいたしましても今後にわたって処理すべき幾多の点をかかえておりますので、それらの処理にあたりましては、私は人の命とかあるいは人の人権というようなものを十分に尊重をいたしながら、これらに対する対策を立てていかなければならない、かように考えております。
  105. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうも大臣、言いわけばかりじゃ済まないわけです。森永の問題はずいぶん古い問題ですけれども、それと同じような事件が相次いで発生するんです。  そこで、それならば私が政府に責任ありと言いますことは、たとえば森永ミルクの事件につきましても、あの事件は静岡県の清水の日本軽金属からアルミをつくる過程においてできた残渣、かすですね、これが洗かん剤に使われるというようなことを聞いたので、これを売り渡したい、しかし砒素が六%も含まれている、だからこれは劇物毒物取締法の対象になるんじゃないかということで、二十九年の十一月に静岡県衛生部を通じて厚生省に問い合わせているのですね。ところが、これに対して一年放置して、しかも関係ないという答弁が出ている。砒素が含まれていて、これをむやみに渡してはいかぬのじゃないかと私は思うのですけれども、厚生省では、その対象にはならぬと、一年後に回答を出しているのです。しかし、静岡県ではさらにこれに付記して衛生部では、取り締まりに十分注意をしていけとただし書きをつけて、厚生省の回答があって三日後に軽金属に回答している。ところが、この毒物劇物取締法によると、「特定毒物を含有する物の製造業者又は輸入業者が一定の品質又は着色の基準に適合するものでなければ、特定毒物を含有する物を販売し、又は授与してはならない」、こういうふうになっておるのですが、これはどういうふうに解釈したらよろしいのですか。毒物劇物の中の別表第一、そこに砒素ははっきり規定されている。したがって、この解釈はどのようにしたらいいのか。関係ないとして送り出したということについての、それからまた一年も経過したということについての御答弁を聞きたいと思う。
  106. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 昭和二十九年から三十年にかけての問題でございますが、一つは、この返事が非常におくれたということは関係各省と連絡等ということであったようでございますが、それにいたしましても、一年もおくれたということは、確かに行政の怠慢であったというぐあいに考えられます。まことに申しわけないと思います。ただ、その場合に、しかしそのおくれたことによってこの森永の事件が発生したというぐあいには私どもは考えておらないわけでございます。ということは、結局その砒素が含有しているそういう廃物でございますが、ボーキサイトからアルミニウムを製造したときの廃棄物の中に砒素が含まれている、その廃棄物が毒物劇物取締法にいう毒劇に該当するかどうかという質問が静岡県からあったわけでございます。それに対しまして、この毒劇法によります毒劇に該当するものといたしまして、砒素については、その化合物及びその砒素か、あるいはその砒素の化合物か、またこれらのいずれかを含有する製剤と、こういう規定になっておったのでございます。したがって、この廃物というものはどうしても製剤とは見られないということで、照会の件は、いわゆる毒物劇物には該当しないという返答を一年後に出したわけでございますが、私どもその当時のいきさつを調べてみますると、文書で出しましたのは一年後でございますが、半年くらい前に口頭で毒劇法には該当しないけれども、取り扱いには注意するようにという回答を口頭で静岡県のほうに連絡をしたということが記録に残っているわけでございます。先生の御指摘の特定毒物というのは、砒素は特定毒物ではございませんので、一般の毒物ということでございまして、特定毒物というのは、またさらに毒素の強いものでございますので、特定毒物の規定はすぐこれには適用されない、こういうことになっておるわけでございます。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 それなら砒素は害はないんですか。砒素の致死量は幾らですか。
  108. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 砒素は、砒素それ自体は毒物でございます。したがって、これは有害な物質であるということでございますが、特定毒物ということは、さらに非常に毒性の強いものが特定毒物というもので、たとえばこの前問題になりました四アルキル鉛、ガソリンから出る四アルキル鉛というふうなものは特定毒物になっておりますが、砒素は普通の毒物と、しかし毒物でございますから相当有害であるということは事実でございます。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 わからないですね。砒素は毒物だけれども特定の毒物ではない、それならこれは規制しないで野放しでいいですか。致死量はどのくらいですかと私聞いたのです。
  110. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 要するに、この照会に出てきましたものは、ボーキサイトからアルミニウムを製造するときにいろいろな廃棄物が出るわけでございます。いろいろなものがまざったものでございますが、その中に若干砒素が含まれておる、その物全体が毒物であるかどうか、こういうことでございます。ですから、その物全体として見るわけでございます。だから、その毒物劇物が一部含まれておりましても、その物全体が毒物である場合もあるし、毒物でない場合もあるわけでございます。そういうことでございまして、照会がありましたのは、その砒素が含まれた一つの何か雑物でございますが、それがそれ全体として毒物か劇物か、こういうことになるわけでございます。その場合に、それが一つの製剤であるというような場合には、これはいわゆる毒劇法にいうやはり毒物になるわけでございます。製剤でもない、一つの化合物というわけにもいかないというわけで、これは毒劇法の毒物劇物には該当しない、こういうことになったわけでございます。  それからその致死量でございますが、これはLD50と申しまして、動物にそれを飲ませたり何かしまして五〇%が死ぬ量というのがLD50ということで、毒性の一つの基準になっておりますが、これが体重一キロ当たり三十ミリグラムがこの砒素のLD50、ですから体重一キロ当たり三十ミリグラムのものが摂取されるとその動物の半分くらい死ぬ、この致死量と、こういうことになっております。
  111. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、そういうあなた方の考え方でこの取り締まりがあまりにも何というのですかね、お粗末になっておるのじゃないか。あなた方が言うのは、急性の毒物とか何かということを問題にするけれども、慢性毒性ということがあるわけですね。だからこの際薬事法を改正する考えがあるかどうか。さらに危険薬物の取締法というようなものも考えられていいんじゃないかと思いますが、どうですか。たとえばモニサイド、武田製品でございますが、エンドリンというのですか、これなどは農薬ではゼロになっておるのですよね。農薬では許してないのですよ。こういうものに対してどういう考えを持っておいでになるか。たとえて言えば、この薬にはこの程度に入っている、この薬にはこの程度に入っているというものが複合——相乗作用ですか、こういうことも非常に問題になっておる。だから薬事法に対しての政府の態度、対策ということをお伺いしたいと思います。
  112. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 確かに毒物劇物取締法は急性毒性を防ぐということで終始、初めからそういうねらいでこの法律ができておるわけでございます。したがって、慢性毒性というものについては一応これは別の問題ということになっておるわけでございますが、最近いろいろな面で慢性毒性ということが公害問題等ともからんで出てまいってきておるわけでございます。したがって、この毒物劇物取締法というものをそういう慢性毒性のほうまで広げるかどうかということが一つの問題としてわれわれも検討しておるところでございます。いまのところ私どもといたしましては、その慢性毒性までこれを広げるというふん切りはまだついておりませんが、さらにそういう点につきましていろいろ社会問題にもなっておる、あるいは公害の問題にもなっておるということで、そういう慢性毒性との関連ということにつきましてはさらに検討をしてまいりたいと思っております。
  113. 藤原道子

    ○藤原道子君 これだけ大きな社会問題になっておるのですからね。古い法律にしがみついていないで、時代に即してですね、もっと基本的な対策を立ててほしいのです。いま言われましたように、あなた方がさしつかえないと言ったこの砒素が混入した残留物ですか、これによって森永ではこういうことになっておるのですよ。多くの赤ちゃんが命を失い、さらに多くの患者を出しているのです。こういうことからしても、この点ひとつ厚生省としては真剣に考えてもらいたい。もしあのときに、これは危険であるというような回答がいっていたら森永の悲劇は起こらなかったのじゃないかと考えられる。ですから、それはあなた方は専門的な学者かもわからない。けれども、一般の人の不安という、現実に起こってくるいろいろな被害というものをどう考えているか。カネミ油だってそうですよ。しかもその対策になると非常に冷淡です。私どもは法律的にやったのだから関係ありません、こういうふうな答弁で押し通してしまう。私はこれは許せないと思う。古い法律だから急性の毒物だけを対象にしたが、慢性毒物までは考えていない、これでは国民は納得しないんじゃないか。私自身も納得いたしません。この点が一つと、さらに洗かん剤としてこれは払い下げたはずなんです。ところが、洗かん剤としていろいろ検討したけれども、国鉄では洗かん剤にも砒素が入っちゃだめだといって断わった。規制があるのですね。国鉄の規制はきびしいもののようです。砒素を含有したものは使えない。あるいは陶器に塗る業者に話がいっているのですけれども、これに対しても、どうも砒素が入っているから困る、これで断わられている。ところが、それが三転四転して製薬会社に払い下げている。ここに問題がある。洗かん剤にすら使えないといって磁器業者は断わっている。それから陶器の染料というものに使おうとしたけれども、これも危険だといってその業者は断わっておる。ところが、それを製薬会社が使ってしかも名前を偽って森永へ入れているのです。だからこの問題と、さらに私が追及したいのは、製薬会社というものに対しての指導、取り締まりはどのようにして行なっているか。洗かん剤や陶器、塗料にすら適しないといっているのに、それを製薬会社が使ったのですよ。しかも偽って森永へ入れているのですよ。ところが私がここでもう一つ解せないのは、この問題を愛知県の工業技術庁名古屋工業試験所の人が差しつかえないということで、この払い下げのあっせんに立ち会っているのは、これはどういうわけですか。この点をちょっと明らかにしてください。
  114. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 要するに照会のありましたものは、さっきも申し上げましたように砒素それ自体ではなくて、砒素が入っておるこういう一つの雑物でございます。それは急性毒性という面から見まして毒劇というものには該当しない、こういう正式な返事でございますが、その取り扱いには注意するようにということは口頭で注意したということでございますが、それが日本軽金属から最終の森永にいくまで五カ所くらいの会社を転々として売られていったというようなことのようでございます。それで最後にその製薬会社が名前を偽って森永乳業に入れたといういきさつについては、私は実は承知いたしておりません。さらに調べてみたいと思いますが、もしそういうことであったとすれば、きわめてけしからぬ話だと思います。製薬会社であれば砒素というものは、たとえそれが含まれた物質が毒劇法の毒劇でなくても、砒素は相当おそろしいものであるということは承知しておるはずでございますから、それを森永乳業という食品会社にもし名前を偽って売ったとすれば、これはその責任は非常に大きいと思います。そのいきさつについてはさらに調べてみたいと思いますが、ただ製薬の企業全体につきましては、私どももサリドマイド事件以降、あるいはアンプルかぜ薬事件以降最大限の努力をいたしまして、製薬企業がそういう意味の事故を起こさないということに最大限の努力をいたしておるということは、藤原先生もある程度御承知だろうと思いますけれども、詳しくは申し上げませんけれども、そういう方向で今後ともやりたいというぐあいに思っております。
  115. 藤原道子

    ○藤原道子君 これは驚きました。森永問題がこのくらい大きな問題になっていて、十五年も経過している。松野製薬がこれを名前を偽って森永へ売り渡したということも御存じないとはどういうわけなんです。森永がいま刑事裁判になっておりますけれども、それに対して海野弁護士が法廷において、あるいは証人調べの段階——ずいぶん詳しく出ておる。私はゆうべ徹夜でこれを読みました。だからきょうはうんと質問しようと思ったんですが、時間がないから抜き抜きで言っておるわけですが、とにかく製薬会社ですよ。しかも森永は二十五年以来第二燐酸ソーダを使っていた。ところがこの松野製薬は、前に森永へ入れていた何という会社だか、そこの包装と似たものをつくってくれ、最初持ってきた入れものでは森永が承知しないから、前に森永へ入れていた第二燐酸ソーダと同じような箱をわざわざつくらして、それで第二燐酸ソーダとして前に入れていた業者、取り次ぎ店を通じて森永へ入れておる。そうすると、森永とすれば前のものと同じだと思う。第二燐酸ソーダという名目にならないものをさらにそういう名前をつけて、しかも包装まで同じようにして搬入した。洗かん剤にも使えないという砒素入りのものを製薬会社が使うとは何事だ、しかもそれを偽って売り渡している。それを厚生省がきょうまで知らなかったということは私納得ができません。これについてさらにお答えを願いたい。
  116. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 厚生省ということではなく、私個人非常に不勉強で申しわけないと思いますが、そのいきさつの詳細を私個人承知していないということでございます。それで一応手元の資料で見ますと、松野製薬会社というものが、何か協和産業というやっぱり別の会社だと思いますが、そこに入れて、それから森永乳業に入っているというようなことになっているようございますが、その間のいきさつにつきましては、さらに私調査させていただきたいと思います。
  117. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこういうことを聞いたり見たりするにつけても非常に不安を持たざるを得ない。しかも、砒素入りの物質の払い下げにとにかく工業技術庁の名古屋工業試験所の方が中に入って、それで買い受け方のあっせんをしているんですよ。これで国民が黙っていられるものでしょうか。公務員が業者のあっせんをする。しかも、砒素が入っている、そういうことを知りながらだいじょうぶだからどうだ——これにちゃんと出ていますよ、証言が。こういうことをやっている。厚生省ではそんなことは知らないで製薬会社として認めている。これだけ薬がふえてきて、日本人ほど薬の好きな国民はないといわれるほど国民が薬を飲んでいる。そういうときにこういうルーズな取り締まりのあり方で、はたして国民が安心していられるでしょうか。いま製薬会社はどのくらいあるんですか。どういう指導をしておるんですか、これを伺います。
  118. 加藤威二

    説明員(加藤威二君) 製薬会社は大小合わせて約千七百くらいございますが、これは確かに森永事件というのは昭和二十九年から三十年以降でございますが、いまから十数年前でございます。その間に、この問題以外にサリドマイドの問題あるいはアンプルかぜ薬の問題というような問題が生じまして、やはり製薬企業の姿勢の問題あるいはそれを監督いたします厚生省の姿勢の問題という点も、この十数年間に私は相当まっすぐな方向に進んできているというぐあいに解釈いたしております。もちろんただいまで十分だとは申しません。まだまだ理想から言えば不十分だと思いまするけれども、十数年前に比べますると、相当これは厚生省の薬務行政に対する姿勢も、それから製薬企業のそういう責任感といいますか、そういうものも、その点十数年前に比べますると、相当しっかりしてきているというぐあいに考えておるわけでございます。この燐酸ソーダの事件につきましては、私、調査不十分で、先生に御満足のいくような回答ができないで申しわけございませんが、さらに詳細に検討いたしまして御返事申し上げたいと思います。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 こういう事情でとにかく森永ミルクによって犠牲者が出たわけなんです。そのときの解決方法にもいろいろ問題があると思いますが、きょうは詳しく追及できないのが残念でございますが、これに対して厚生省があっせんされて、五人委員会というものをつくったんですね。その経過は一切抜きにいたしますけれども、その結論として、死者に対する補償が一名ごとに金二十五万円贈呈すべし、しかもいままで香典その他の名目で出していた十万円を抜いて、たった十五万円の弔慰金ということになっている。それから患者に対しては、一人一万円を贈呈するを妥当とする、しかもいままで五万円出している人たちに対しては、あと五万円の追加をもって決定が実行されたものとする、こういうふうな五人委員会の結論なんですね。これは大臣、妥当でしょうか。それから、そのときには後遺症に対しても責任を持つというようなことでございましたが、大体その後どうなっておるか、これについてお伺いしたい。聞くところによれば、厚生省もさらに精密検査をするというようなことも伺っております。さらに後遺症はないというようなことが言われておりましたけれども、過日の丸山教授の発表によれば、たいへんな問題が提起されている、これについて厚生省はどのように考えておいでになるか。結局、中学生ですよね。この三年の中学生の七十八人の中で、砒素ミルクを飲んだ生徒が五十九人、二年生は二十一人のうち十八人、一年生は四人で、砒素ミルクを飲んだ者はゼロ、もうなくなったときですわね。そういうことが発表されているんで、これらに対して厚生省はどういうふうに考えておいでになるか。それから、厚生省が最近さらに精密検査をするということを打ち出されて、その全費用を百三十万円ですか、かけるというふうに聞いておりますが、百三十万円でどれだけの精密検査ができるのか。特定の医療機関でやらせるようでございますけれども、みんな被災者が納得のいくような精密検査というようなものは一体どうなんでしょうか、許されるんですか。特定のところでなきゃだめだといういままでの精密検査のあり方等を見てまいりましても、いろいろ患者さんたちが納得のいかない面が多々あると訴えているんです。ですから精密検査に要する費用百三十万円と限ったのはどういうわけか、それからどういう精密検査をおやりになるのか、あるいはまた信頼する医者に精密検査を受けるというようなことが認められるのかどうか、それから後遺症に対する政府の考え方はどうか、これについてひとつ伺いたいと思います。
  120. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 森永のドライミルクの中毒患者に対する補償の点でございますが、森永乳業株式会社がその後とった措置、それからそのときに五人委員会の御意見によりまして——これはすでに先生が御案内のとおりでございますが、五人委員会意見書といたしまして、死者の方に二十五万円、それから患者の方に一万円という額が妥当かという点でございますけれども、当時の委員会の委員の先生の御意見に従いまして、当事者の間でお話し合いになってきまったことでございまして、今日はたしてそれが妥当かどうか、またほかのいろいろな条件もついておりますので、総合的に御判断願いたいと思うわけでございます。  それでその後、昨年の十月に岡山市で開催されました日本公衆衛生学会の席上、大阪大学の丸山教授が、十四年後の森永の砒素中毒患者のその後の社会医学的な追跡調査をしたものを取りまとめた発表がなされまして、この調査内容につきましていろいろと論議を呼んだところでございます。これは丸山教授御自身といたしましては、後遺症ということばをあからさまに使ってはおられませんで、調査そのものは社会学的な問題として、その後の砒素中毒患者の方々の現状がどうかということをお調べになって取りまとめたものでございます。しかしながら、これが非常に学会あるいは世人の関心を呼びまして、そしてその後これについて国といたしましても何らかの措置を考えていかなくてはならないじゃないかということになりまして、とりあえずは一番の問題は、どのような診断基準によってこれらのいろいろと現在からだの異常を訴えておられる、つまり後遺症があるかないかといったことを御心配になっておられる方々の検診を実施するか、その検診の最も妥当な——学問的に考えまして最も妥当な方法を確立することが第一ではないかというのが一つ。  それから第二点は、何と申しましてもやはりこういった方々がおそらくまた全国的におられるかもしれない、そういった不安におののいておられる方がおられるかもしれないということで、その数と申しますか、実態をできるだけ把握する必要があるということでございまして、これらにつきましては学会のほうからの特に要望もございまして、第一の点については、先ほど御指摘のとおりに、診断基準を、検診の基準をつくるために百三十万円の予算を計上したわけでございます。そして現在それがどのように動いておるかと申しますと、まず第二点の患者さん方の数の把握ということでございますが、事件が起こりましてから非常に年数が経過しておるということで、実は残念ながら全国的には記録が散逸しておりまして、的確なところがいまだもってはっきりとつかめない。しかし不幸中の幸いと申しますか、事件の最も起こりました発端の地であります岡山県におきましては、そのときの処理記録という形で一部残っておりまして、したがいまして、とりあえず国といたしましては公正妥当な検診基準をつくるという第一の点につきまして、その岡山の方々を対象として至急につくっていきたいということで、さっそく岡山のほうとも連絡し、さらに学会の先生方にもいろいろとお願いを申し上げまして活動を開始したところでございますが、一部先ほど先生の御指摘のように、どうしてもやはりそのやり方につきまして患者さんの御家族の方々からいろいろと御疑問が出まして、納得がいく方法、たとえばこちらの希望している医療機関でもって検診を受けさせてほしい、あるいはこちらの希望している方でもって検診の診断の基準というものをつくってほしいといったようないろいろな御要望がございました。私どものほうといたしましては、いま県でできるだけそういった家族の方々あるいは患者さんの方々と御納得のいく線でお話し合いをしていくということで現在まだ続行中でございますが、何もこちらといたしましてはどこどこと特定の機関でやれということでございませんので、これは非常に重大なことでございますので、どうしてもしかるべき信用と、それから機能のある機関でもってしっかりしたものをつくっていただくということで、勢いそうなりますと公的な病院というふうなところが第一義的にはあがってくるのじゃないかということでございますが、いずれこれらの実際に検診する機関、その他この調査協力するいろいろな方々というもののチームワークをどのようにしていくかということについても納得のいく線で、早く所期の診断基準というものが設立されるように、こちらのほうからももっと強く勧奨いたしたいと思っております。したがいまして、百三十万円が妥当かどうかということにつきましては、とりあえずはこれでやっていく、またさらに何かその結果いろいろと問題が起こってまいりまして、その段階でもってこちらとしてどういうふうにするかということは、またすみやかにその後の措置を考えてまいりたいと思っております。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣は帰りたいという連絡があったのですが、大臣、まとめてひとつ御答弁を伺いたい。お聞きのとおり私の質問も中途はんぱですけれども、それでも重大な問題をはらんでいることはおわかりになったと思います。したがって、大臣はこの薬事法の改正と、そして毒物劇物取締法の中に慢性毒物を入れる検討用意があるかどうか。それから薬に対する不安が非常に多いので、いまはやっておりますモニター制度で大衆薬の規制を考えないか、考えたらどうか。それからいま国立衛生試験所の現状は非常に人員が少ない。現状を聞く予定でしたが、長くなりますから、国立衛生試験所の現状はたいへんな使命を達成するにはあまりにも貧弱である。しかも地方衛生研究所ではむずかしい試験はできない。だから、国立衛生試験所の現状はいまのままでいいと思うのか。試験用の動物さえ足りないというようなことを私は聞いております。そういう点で国立衛生試験所の強化、これに対する大臣のお考えを聞きたい。また末端のチェックする方法としてベルギーやフランスや、スエーデンなどでは医薬品検査センターというものを持って非常に努力をしておりますが、日本はそういう制度はございません。だから、これに対してのお考えをひとつここで明らかにしていただきたい。日本学術会議でも政府に臨床研究所が必要だということを勧告しているはずでございます。これらについてひとつお考えを聞きたいし、佐藤総理も何か考えているようなことを盛んに発言しているんですから、あなたがやろうと思えばできないはずはない。日本では古い薬がずっと残されて、一度許可したものはよほどのことがなければ、これを禁止することはできないという考えをとっておるようでございますけれども、これらの整理等は考えておられないか。とかく世間からは製薬会社に弱い厚生省と取りざたされておりますので、この点において今回こそ強い姿勢で臨んでいただきたい。サリドマイド問題にしても、この前言っておりますから重複は避けますけれども、これらに対してだって、あのとき政府がき然とした態度をとっておれば、こんな大きな被害は起っておりません。それの解決のためにも、世界各国はすでに妥結しているのに、日本はこれから裁判をやる。これからやるんだから、やってみなければわからない、こういうこの間の答弁でございましたが、しかし二百回、三百回やっても諸外国で結論が出なかった。それにさらに外国から学者を呼んで多額の費用を使って争ってだれが一体得をするのか、こういう点について、ひとつ大臣の心からなる決意を伺いさしていただきたい。  私は内田さんを責めるのは気の毒だと思う。従来のしわ寄せがずっと今日来ておる。だから医務局長だって看護婦問題について苦労しているのは気の毒だと思う。思うけれども、やらなければならないときに来ているんですから、これに対しての大臣の御決意を伺いたい。  ベーチェット問題については、あまり長くなりますのでこの程度にして、大臣の責任ある御答弁を、言いわけは要りませんから、これからやらんとする御決意だけをお伺いしたい。
  122. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) たくさん課題をいただきましたが、正直に申しまして、私、自信をもってお答え申し上げ得ない問題もございますが、しかし藤原先生の御指摘になられること、私もたいへんごもっともとして理解されますので、御意見の線に沿いまして、厚生省の諸君を督励して御期待に沿うような努力をいたしてまいりたいと思います。  一、二の問題につきましては、スモンにつきましては、御承知のとおり調査研究班を編成して相当の研究費をつけましてやってまいってきておりますが、明るい状況も出ているような点もございまして、私も意を強くいたしております。またベーチェットにつきましても、たびたび国会で御指摘がありますので、たいした研究費とは言い得ませんけれども、今回特別の研究費と申しますか、対応費を別扱いにいたしまして、これにつきましても研究班のようなものを持って対処いたすことに相なりました。国立衛生試験所の人員、予算、機構等につきましては、私も先般あそこに初めて参りましたが、ここまで大きくなった日本の経済力やら、あるいはまた人間生活の問題を考えますときに、あの程度のものでなしに、もっとお説のように、各府県の衛生研究所を実質的にも機構的にも指導し、また日本ばかりでなしに国際的にも十分な機能の一端をにない得るような、そういう仕組みにしたいという意図を、私も正直に実感をいたしてまいりました。また製薬会社に対するいろいろの御批判がございますが、幸か不幸か私はあの製薬会社に一つも関係がございませんので、全く借金なしに対応できる立場にございますので、これもいろいろの問題が多いこととは存じますが、決して製薬会社に弱い厚生省というふうに先入主をもってお考えいただきたくないと私は存じます。  薬事法あるいは毒物劇物取締法などの改正につきましては、厚生省は、正直に申しまして、ほんとうに間口が広うございまして、かなり一生懸命でやるつもりでございますが、私がそこまで入り込んでおりませんので、とうとい御意見として承らしていただきます。ありがとうございました。
  123. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣は時間がないからもうお帰りになってけっこうでございますが、あと十分か十五分、おなかがすいてお気の毒ですけれども、もうちょっとがまんしてください。  いま申し上げましたような点で、ひとつ前向きに処理していただいて、厚生省の機能をもっと強化するように、あなた方はもっと強く大臣を突き上げる態度でやってもらいたいことを強く要望いたします。  それで、ほかにも触れたい点ございますが、きょうはやめまして、いまスモン病について、大臣から、スモンとベーチェットの問題についてお話ございましたが、いまの研究の実態と、それから若干の費用を出したようだけれども、どのくらい出ているのか、これはスモンについて。それからベーチェットの問題につきましては、スモンも同じですけれども、まだ原因がわかっていないんですね。それで、非常に戦後日本に多くなったというんですか、戦前にもあったものが、わからないままできょうまできておるのか、このことをちょっと伺わしていただきたい。
  124. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) スモンの現況についてでございますが、昨年、総額三千五百万円を研究費として計上いたしまして、病原班、疫学班、病理班、それから臨床班と、四つの班を編成いたしまして、それぞれの部門ごとに研究を進めていただいておるわけでございます。四十四年の末に調査の結果が若干明らかにされましたが、これによりますと、四十二年、四十三年の二年間に医療機関で把握された患者の数が四千三百人、この中で明らかにスモンというふうな判定のあった者が約千八百人あったという報告が出ております。これを性別に分けますと、女性は男性の約二倍、年齢別には特に六十歳以上に多く集中しておるようでございます。それから四十四年度の末までになおったという報告が二百名、それから症状がよくなったという報告が千八百名、研究班としては受け取ったわけでございます。  このような疫学的な調査とあわせまして臨床班の検査報告によりますと、新聞その他ですでに御承知のとおり、従来スモンの診断には三種類くらいの診断基準があったと思いますが、この臨床班が総合的な検討をいたした結果、一つの診断基準ができました。四十五年はこの診断基準をもとにいたしまして、さらに引き続いて症例の調査をやっていくということに予定をいたしております。  なお、臨床班の扱いました治療でございますが、これも報道されておりますATP、ニコチン酸、あるいはステロイド療法、あるいは抗酵素系のB12ビタミン、こういったものの髄腔内注射、こういったことが臨床班の臨床例として報告がございました。また臨床統計の結論から社会医学的な考察、これは社会的と経済的と両方が含まれているものでありますが、患者のからだについた臨床的な調査だけじゃなくて、患者の周囲の生活調査を含めたそういうものも今後やっていく必要があると、こういうふうな意見が臨床班のほうから出ました。——前後しましたが、疫学班のほうからも同じように、患者のヒストリーについて今後、四十五年度は調査をしようじゃないかというふうなまとめができております。  なお、問題になっております病原班、原因が何かというふうな点についての班の調査でございますが、これは大きく分けまして感染説と非感染説。この感染説のほうでは、これも幾たびか新聞に出ましたが、ウイルス感染説、あるいはウイルスの中でも特に感染してから発病まで何年とかかる遅効性の——作用がおそく出てくる。そういうウイルスのほうのもの、あるいは細菌の中ではマイコプラズマの問題、あるいは舌が緑になる緑舌、こういう症状を起こす菌の研究の問題、こういった感染説の中での検討が行なわれているという報告がありました。  それから非感染説の中では、患者の尿の中からいろいろな重金属が出ている。これとスモンとはどういう因果関係があるのかという問題、あるいは農薬と関連して、有機燐剤の検討の問題、あるいはBHCの問題、こういったことを今後病原班としても非感染説の中で研究をしていく必要があるのじゃないかというふうなことが病原班のおもな報告のようであったわけでございます。  これらをもとにいたしまして、四十五年には約五千万円の研究費を現在計上いたしまして、去る二十九日に研究班の総括部会が開かれまして、ここで各班の四十五年の研究方針が討議されまして、その中でどういうふうな研究費の使い方をしようかというふうな検討が今後の幹事会にゆだねられたと、こういう経緯でございます。研究費から申しますと、三千五百万が一千五百万ふえて約五千万円。この研究費だけでは十分とは申せませんけれども、前年に比べて若干力の入った研究ができるんじゃないかと、こういう期待を私自身も持っておるわけでございます。
  125. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) ベーチェット病につきましては、一九三七年にトルコのベーチェット博士が報告をしたのが始まりでございますので、たぶん——私ども事実的にはまだ調べておりませんけれども、戦前から日本にもあったというふうに考えていいと思います。戦後、最近におきまして特にふえているのじゃないかという傾向でございますが、ただいま、まだ全国的な数字はつかめておりませんけれども、確かに医者の仲間でも注目をされて、多く報告をされるようになっておりますので、実際的にもふえていると思います。しかし、それはスモンその他の問題等もございまして、医者の診断技術と申しますか、そういうものが非常に高くなったということが一つ関連しているのではなかろうかと。原因につきましては、いまだ世界的に不明でございます。したがいまして、かりにふえたといたしましても、その原因が何であるかということは、まだお答えできないような実態でございます。
  126. 藤原道子

    ○藤原道子君 これはまだ原因も治療方法もわからないわけですね。それでベーチェット病は、この間も患者さんたちの会へ出てみたけれども、非常な悩みですよね。壮年に多いんですよね。男のほうがうんと多い。こういうことで非常な不安にかられている。ですから、これが研究費を十分にお取りになって、それで世界的にわからないからこそ日本でひとつ大いにその原因追及をしてほしい。ところが、いままではほとんど学者なりお医者さんが自己負担で研究していらしたというようなことですが、ことしやっと少しついただけですってね、研究費が。それで今後はどういう方針ですか。もっとよほど努力をしていただきたいと思うんですけれども。
  127. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) ベーチェット病に関しましては、私どもの知る限りでは、三十三年、四年ごろに続きまして文部省から一応の研究費が出ている事実がございます。四十年に厚生省でも一部、特に失明の問題がございますので、そういうものに関連した一部研究費が出されたことがございます。それで私どもは、本年度は、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、特別研究費を充てて、大体いま四百万程度を予定しておりますけれども、一応これでもって今後の研究の計画なり方向なりを非常に多角的に組み立ててまいりたい、こう思っておるわけでございます。非常にむずかしい問題でございますので、ただいま御指摘のように、世界中でも悩んでおりますけれども、この点こそむしろ御指摘のように、私どもも日本の医学その他の力を結集いたしましてやはり努力すべきものだと、また当然一年程度でこういうものが完結するような研究でございませんので、引き続き適切な研究調査体制を組みたいと考えております。
  128. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと聞きそこなったが、四十五年度幾ら出したのですか。
  129. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 四百万円でございます。
  130. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はあまりにも少ないと思って、いま四千万円の間違いじゃないかと思ったのですが、これはこの問題と取っ組んでいらっしゃるお医者さんとか、患者さんに対して四百万円ではあまり過小だと思うのです。これは大きな問題ですから、失明してもまだ病気も進んでいるというようなことで問題があるやに聞いております。これはぜひとも難病対策費というようなもので、スモンとあわせてベーチェットについても十分な研究をしていただきたい。さらに、いままで見えていた目が突然見えなくなるのですよね。性器の周囲に何やら病原ができるようでありまして、人間的のその悲惨さというものは想像に値するものがあると思うのです。この点についても十分お考えいただきまして、来年度予算ではうんとがんばっていただいて、この原因追及を世界に誇り得る成果が出るように努力していただきたい。  そこで続いてお伺いしたいのは、光明寮ってありますね、視力センター、こういうところへ行ってみると、やはりベーチェットの患者さんもだいぶいるのですね。ところがこれは病気が進行中だったらああいうところに入れないのですか——というような規定があるので入るのにずいぶん制限がある、目は見えなくなっているけれども、しかし内部の病原は進行しているのだというようなことで悩んでおりますが、これについては何とか対策は考えられないものか。それから少なくもだんだん目がつぶれることがわかっているのだから、少し目が薄あかりでも見えるうちに機能訓練を始めていただきたい、こういう希望がとても切実なんですね。目が見えるうちに習ったほうが習いいい、どうせだめなんだからそうしてほしいといっても、それがなかなか許されないということで悩んでおられましたが、これに対して私は早くやってやったほうがいいように思いますが、これはいかがでしょうか。  時間がありませんので重ねてお伺いいたしますが、職業訓練所について、労働省と、身体障害者職業訓練所というのですか、これに対して労働省でやっておられるところは、これは訓練費はむろんただで、くれる小づかいが一万四、五千円ぐらい出ているのじゃないですか。ところが厚生省の場合には機能訓練所というのですか、そういうところでは何も出ないのですね。それからこの間、患者さんたちの言うことによると、文部省の施設では教科書が無償で給付される、しかし、光明寮ではこれは教科書は買わなきゃならない、こういうことを訴えておりましたが、各省間でなぜそういうふうな違いがあるのか、いままで見えた目が見えなくなった人がこのごろ多いのでございますが、こういう人たちの不幸を考えるときに、もう少しあたたかい対策はできないものだろうか。この間つくづくそう思いましたので、これもあわせて御答弁願いたいと思います。
  131. 伊部英男

    説明員(伊部英男君) 光明寮におきまして、特に東京の視力障害センターにおきましては三百人中四十四名がベーチェットの方でございますし、全国約九百名のうち約一割程度がベーチェットの方と見込まれておるのでございます。この視力障害センターは、元来、中途失明者に対するいろいろな保護あるいは更生に対する援助を機能とするものでございまして、したがいまして訓練にたえるということがやはり現行体制におきましては前提となるのでございます。ただ、ベーチェットもその一例でございますが、医学的な管理を必要としつつ並行的に福祉的な活動も必要とするといったようなケースがふえつつあるように思われますので、この点は、関係局におきましてもなお問題を検討いたしたいと考えておるところでございます。  なお、訓練にたえるということでございますので、その前提が満たされます限り、失明をしなければ入所できないということはないわけでございます。  それから、身体障害者の職業訓練校、労働省関係と国立光明寮との取り扱いが違うという御指摘があったのでございますが、労働省関係は職業訓練といたしまして一つの雇用の継続という考え方で出発をしておるようでございますが、厚生省はこれに対しまして中途失明者に対する保護、リハビリテーション、自立更生を助けるということに重点があるのでございまして、労働省関係におきましては視覚障害者の職業訓練は行なわれていないのでございます。しかし職業訓練校全体といたしましては、御指摘のように、訓練手当が出ておるのでございまして、若干、比較をするのは必ずしも適当ではないのでございますが、国立光明寮におきましては日常諸費、あるいは大部分の方に対しまして食費を負担をいたしておるのでございまして、こういう点をも比較検討の際には考慮に入れていただく必要があると思いますが、いずれにいたしましても、現行の訓練手当は月千円でございますが、この改定につきましては今後とも努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  132. 藤原道子

    ○藤原道子君 もうやめますが、じゃ、失明しなければ入所できないということはないのですか、これを明確にひとつ。
  133. 伊部英男

    説明員(伊部英男君) 完全に失明をしなければ入れないということはございません。
  134. 藤原道子

    ○藤原道子君 わかりました。  それから、いまの食費免除をやっているというのですが、この間私調べたところでは、光明寮に生保患者が六十名おります。それから自費患者が四十五名、それから食費免除が百五十五名、その中にベーチェット病が四十名いるのです、東京のところで。こういうことで食費免除といわれてもなかなかたいへんなんですよね、いろいろな面からいって。だからこういう不幸な人だから厚生省も思い切って何とかもっと見てやるようにしてほしいのですよ。  それからまた、私はいろいろ問題点があるように思いましたが、これはほかへ譲るといたしましても、訓練に要する教科書は無料でやったらどうですか。
  135. 伊部英男

    説明員(伊部英男君) 生活保護を受けておられる方につきましては教科書を無償で支給をいたしておるわけでございますが、その他の方々につきましては、御指摘のような状況でございますので、なお検討さしていただきたいと思います。
  136. 藤原道子

    ○藤原道子君 それで、施設の状態も八畳に四人いるのですね、ほかの基準より少しきびしいように思うのです。それで、目の見えない人ですからやっぱり手探りになりますよね。八畳に四人では寝たり何かしているとぶつかったり何かする機会もあるらしいのです。そういう点ももう少しあれしたいと思いますけれども、お考えを願いたいことを要望しておきたいと思います。設置基準には医師を置くとなっているけれども、実際は保健婦が一人だけしかいない。  それから訓練中の事故の補償がないわけです。訓練中のこの事故の補償がないということは、労働省のほうでは事故の補償があるわけです。厚生省が健康と命を守る省でありながら、訓練中の事故に補償がないということは私はちょっと納得いかないのですけれども、この点についてのお考えを聞き、さらに今後の対策をもっとあたたかくしてほしいと思いますが、いかがでしょう。
  137. 伊部英男

    説明員(伊部英男君) 社会福祉施設全体につきまして施設の老朽あるいは不備等があることは、われわれも十分承知をいたしておりまして、これの急速な改善をいたしたいと考えております。国立関係の施設につきましても、本年度約九千万円の予算が全体としては投ぜられておりますが、なかなか一つ一つの施設に割りますと十分ではない面もあるわけでございますが、今後とも十分努力をいたしたいと思います。  訓練中の事故の問題につきましても、全社協等関係団体の御要望もございますので、ただいまいろいろ検討いたしておる段階でございます。
  138. 藤原道子

    ○藤原道子君 私やりたいことうんとあるんです。こんなに資料持ってきた。だけれども時間がないし、御迷惑だと思いますから、本日はこの程度にいたしたい。ただ厚生省の、大臣以上の権力を持っていると思うのよ、局長さんたち。ひとついま申し上げましたようなことで、厚生行政をうんと前進さしてほしい。首をかけてやってください。そのくらいの意気込みがあれば、前進すると思いますから。私は、きょうは森永、サリドマイド、種痘も要望したけれども、こちらがやるから私は放棄した。いろいろやりたいと思いましたけれども、概略をお伺いいたしましたが、また次の機会に譲らしていただきます。  どうも失礼いたしました。
  139. 佐野芳雄

    委員長佐野芳雄君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十二分散会