○国務大臣(内田常雄君) いつも
大橋先生の
お話をじゅんじゅんと承っておりまして、私も敬意を表し、また先生のお説には非常に同調をいたしておるものでございます。ただいまも
大橋先生から申されましたことは、私は全部ごもっともだと思います。しかし、私
どものほうの保険
局長の申しましたこともそのとおりでございますので、私が大臣として見れば、
局長のやったことももっともだけれ
ども、
大橋先生の言われることもまことにごもっともだという両方の私は実は板ばさみのところに立っております。そこで、私は当局にもいろいろの注文を大臣としてつけております。これはちょっと時間をかしていただきたいのでありますが、擬制
適用というのは、申すまでもなく、読んで字のごとく擬制
適用、擬制
適用だから本物ではなしにうその
適用と、わかりやすくいうと、ことばは悪うございますがそういうことで、
法律制度としてではなしにやってきてまいっておる。それは本来日雇い
労働者の健康保険
制度というものが失業対策事業として雇われておる日雇いの
方々あるいはまた健康保険
制度が
適用されている事業所に日雇いとして雇われておる
方々を
対象として、したがって、いわばそういう日雇いの
方々でございますので給料も高くない、昔はニコヨンといっておりました。今日はニコヨンではないわけでありましょうが、そういう安い給料の方を
対象といたしておりますために、改正はされましても日額給料の標準を四百八十円ぐらいのところにおきまして、そして四百八十円ぐらいの給料の方
——そういう人はほとんどありませんが、日額保険料二十円、また四百八十円以上の給料の方は日額二十六円ということでやってまいっております。したがって、擬制
適用の
方々とはもともと
事情が違っております。擬制
適用の
方々は日雇いさんでもなければ、むしろ自営業の
方々が多いわけであります。ただ職場が毎日違う場合が多いということで、非常に形が似ている。しかし、その
制度が行なわれました当時、まだ全国各市町村には国民健康保険
制度がなかったために、厚生省の全く便宜措置として一
課長の通牒でしばらくこの
制度でということでやってまいりました。私はその当時の厚生省の役人よくやったと思います。保険
制度がまだできない際に、擬制
適用という名前は悪いが、それだけ一人親方のめんどうを見てきたのだからえらかったと思いますが、それが十何年かやってまいりましたので、無理に無理を重ねてまいりました。この保険の
対象となっておられる方方は、現在で申しますと、本来の日雇いの方が六十万、擬制
適用の方が四十万、六対四ということになってまいっておりまして、しかも現状におきましては、これはいい悪いは別といたしまして、経済がここまで伸びてまいりましたので、日雇いさんという方がだんだん減ってまいりました。この保険の本来の
対象者は減ってまいりましたにもかかわらず、この擬制
適用の
方々は毎年五万人くらいふえております。いま申しましたように、現状におきましては六対四でございますが、このまままいりますと五対五になり、あるいは逆になるというような状況をたどることは間違いないわけであります。なぜならば、この擬制
適用と同じような事業をなさっておられる方は、よく言われますように大工でありますとかあるいは左官業でありますとか、あるいは植木屋さんも入りましょう、とび職も入りましょう、板金工も入りましょう。そういう
方々は何百万もおるわけでありますが、その一部の
方々が特別の
組織のもとに擬制
適用を受けておるわけでありますから、四十万人ということでありますが、これは四十万人でとまりません。毎年毎年ふえていく状況にあるでありましょう。しかしいまのこの
時点で見ましても、保険
局長から申しましたように、日雇い健康保険は全く大赤字になってしまって、百万人の
対象でありながら一千億をこえるような赤字になってしまっておる。なぜそうかと申しますと、ただいま申しますように一日二十六円の額でありますから、かりに月に二十日印紙を張ったといたしましても、これは五百円前後でございます。一年間にいたしましても五、六千円であります。しかしこれは二十日印紙を張る人とばかりは限りません。この保険の恩恵を受けますには、いろいろ二カ月間で二十八枚印紙を張れば保険の
適用を受けられるとか、過去六カ月間に七十八枚、一カ月にいたしますと十枚余りの収入印紙を張ればそれで保険の
適用を受けられるということのために、この保険の
対象になっている
方々が一年間に納められる保険料というものは五千円内外でございます。しかし保険給付のほうは、保険の内容というものは全体的に上がってまいってきております。また医薬も開発されまして、高い薬がどんどん保険給付の
対象になってまいりましたので、今日一年間で約五万円近い保険給付になっております。言いかえますと、現状におきましては五十円で五百円の買いものをするという
仕組みでございます。これに対しまして国はそのうち百分の三十五の国庫負担金を出しております。しかし百分の三十五の国庫負担金を出しましても、保険料があまり安いものでありますからこれは半分にもなりません。そこで赤字に赤字を重ねまして、どうしてもこの保険料のほうを合理的に
引き上げる、しかし
引き上げるばかりでは感触もよくないから、さらに給付のほうもよくするという改正案を昨年の国会にも御承知のとおり出したわけでありますが、いろいろの
事情で不成立でございました。先般の国会にも出しましたけれ
ども不成立でございます。国の
予算のほうは、二度も
法律案を出しておりますので、その
法律が通るたてまえの
予算を組んでおりますが、
予算といっても
対象のない
予算は組めませんので、結局は借り入れ金延納を認めてもらっておりまして、そこで借り入れ金で泳ぐわけでございますが、この法案が通りませんでしたので、
予算の上に乗っかっている借り入れ金の範囲、これは動きません。しかし借り入れ金といっても、どこでも貸してくれるということではありませんので、資金運用部の短期資金を実は借りあさって、そうしてお医者さんのほうの支払いをかろうじてしておるというのがうそ偽りのない
実情でございます。短期借り入れ金でありますから、年次を越すことはできませんので、食糧証券などと同じように、
予算で定められた保険の借り入れ金を認めてもらい、資金運用部から金を借りてすぐまた短期の借り入れ金で返すというような綱渡りをしておりますが、今回
法律が通らなかった、あるいはまた修正案も出ましたが、また修正案も通らなかった現状におきましては、何かこの保険
制度について手術をしないことにはこの保険
制度が動かなくなってしまうということで、ここは厚生省の考えておるところを御理解いただきたいのでありますが、単に擬制
適用の人ばかりでなしに、本来の日雇い
労働者に対する保険
制度というものが一緒につぶれてしまいます。そこでそれをつぶさないためには、擬制
適用の方にはこれは申しわけない形でありますが、それが本来の擬制
適用だから、それらの
方々にはこの際日雇い健保のほうから他の
——今日においては保険
制度ができております。国民健康保険なりあるいは政府管掌保険
制度がございます。今日、さらにこの擬制
適用の方方を見ますと、日雇いでないばかりでなしに、一人の親方で何人かの子分を連れた方がそのまま擬制
適用のもとに二十六円の保険料で入ってきているというのも現状でございまして、私
どものほうには、まことにけしからぬと、こういう苦情も出てきております。なぜならば、いまのとびさんでも大工でも左官でも、ある一部の人は二十六円でいくけれ
ども、他の多くの人々はやはり国民健康保険とか政府管掌健康保険に入りまして、それよりもある程度高い保険料を納めているわけでありますから、したがって、同じ職業、同種同業の
方々の間にも非常に不均衡感が起こりまして、そしてそれらが違った派閥といいますか、政治
団体といいますか、そういうものの結成をも誘致しているというような状況さえもあると、こういうわけでございますので、したがって、私
どもは、ほんとうに日雇い
労働者の健康保険の
制度をこの際維持するために、擬制
適用の
方々はそこからのいていただく、のいていただいただけでは、この人方は健康保険が受けられない、病気になっても健康保険が受けられない、あるいは生活の脅威になるということではいけませんので、その
方々のためにはできるだけの席を用意しようということを保険庁長官、保険
局長に私が厚生大臣として命じております。それは日雇い健保がなくなりましても、健康保険はもちろんなくなりません。なぜならば、今日は国民皆保険でありますからどれかの保険に入るわけでありますが、どれかの保険へ行けということだけでは厚生省として情が足りないから、ちゃんと行く道をこしらえるように厚生省はいろいろ考えろと。一番いい方法は、それは国民健康保険の中に一部門がありますが、国民健康保険
組合というのが先生御承知のとおりあります。これもいまは新しくはつくることを認めておりません。おりませんが、これはまあ早い話が、お医者さん方も国民健康保険
組合というものをつくっておられますし、あるいはその他の職業の同種同業の
方々も、全国一円、都市あるいは地域のそれぞれの単位としてそういう
組合をつくっておりますが、その
組合がこれはたまたま同種同業でできるから、その
組合に擬制
適用の
方々は御案内をして、そこでそれにひとつ何らか特別の心配をせよと。どうせいまの日雇い健保のほうは大借金でもたなくなる。もたなくなって、えらい赤字なんだが、とどのつまりは、そのしりは将来国が見なければならぬものでありますから、したがって、この際国民健康保険
組合のほうにその擬制
適用の方方に行っていただいた際には、国が何かいままでにない別の助成とか国庫負担ということまで考えろということを、実は私はみずから
大蔵大臣福田赳夫君のところまで乗り込んでいって、また閣議の席でもちょっとはずしていただいて、そういう原則的な話を実はいたしておると、こういうことでございまして、したがって、その擬制
適用の方方に本来あるべき姿に帰っていただく。それがほんとうのことでいいのでありますが、しかし急激に環境変化があってはいけませんので、激変緩和という処置もとってまいるようにせよということで、そのことにつきましても
事務当局のほうでめどをつけて着々と措置をいたしておる。ただ、今回、先生御指摘になりましたように、擬制
適用制度を廃止するしかたが国会の直後であったとか、また擬制
適用廃止について、
組合の
方々に一銭五厘のはがき一こんなものはないですが、七円のはがき一枚で、今度やめになったからと、こういうようなことで、しかも、その文章がまちまちであったり、はなはだ不親切な点もあったようでありまして、それについては私が訓戒もいたしておるわけでありますが、そういうことで、厚生省は厚生省として本来の日雇い労務者の方を守っていく。それから擬制
適用の方にも過去の実績等を勘案して無理のない措置を講じていこう、こういうことにいたしております。ただし、これはやっぱり知っている方も知らない方もあるものですから、私
どものほうの厚生省などにも日雇い健保の
適用を受ける
方々がたくさん押しかけてきておるんですが、これらの
方々は自分の保険がなくなると思って押しかけてきておりますが、そうではない方が多うございます。本来の日雇い健保の
適用を受ける人までも、自分の保険がなくなってしまう、厚生省けしからぬ、情がない、こう言うのでありますが、それはもう本来の法に基づく日雇い健保の
適用を受ける人はもちろんそのままでありまして、いままで給料の高い
方々が上にたくさん乗っかっておった、そのおもしがのきますから、これらの
方々は、むしろ将来への安心感が深まっているとも思うわけでありますが、それが一緒になりまして不安を来たしているというような状況もありますので、このことにつきましては、私
どももさらによく
関係の
方々にも徹底をさしたり、国会の諸
先生方にも御理解をいただいて、そうしてぜひこの急場を切り抜けるための措置を許していただきたい、私はこういう気持ちでございます。