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1970-09-04 第63回国会 参議院 公職選挙法改正に関する特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月四日(金曜日)    午前十一時一分開会     —————————————    委員異動  九月四日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     河田 賢治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井川 伊平君     理 事                 高橋文五郎君                 柳田桃太郎君                 林  虎雄君                 多田 省吾君     委 員                 渡辺一太郎君                 安永 英雄君                 横川 正市君                 上林繁次郎君                 河田 賢治君    国務大臣        自 治 大 臣  秋田 大助君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        内閣法制局第三        部長       荒井  勇君        総理府総務副長        官        湊  徹郎君        総理府統計局長  岡部 秀一君        自治省行政局選        挙部長      中村 啓一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法改正に関する調査  (選挙制度に関する当面の諸問題に関する件)     —————————————
  2. 井川伊平

    委員長井川伊平君) ただいまから公職選挙法改正に関する特別委員会を開会いたします。  まず委員異動について報告いたします。  本日、岩間正男君が委員を辞任され、その補欠として河田賢治君が選任されました。     —————————————
  3. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 選挙制度に関する当面の諸問題に関する件を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。  なお、政府側からは秋田自治大臣中村選挙部長荒井第三部長岡部統計局長がお見えになっております。
  4. 多田省吾

    多田省吾君 私はまず、参議院地方区定数是正がどの程度進んでいるか、また十八歳の選挙権引き下げについて、それからビラ規制の問題、それから統一地方選挙定数是正の問題、それから政治資金規正法による政治団体調査について、それから、第七次選挙制度審議会発足について、さらに選挙庁の問題、こういった問題について若干質問さしていただきます。  まず第一に、参議院地方区定数是正については、第六次選挙制度審議会答申によって、先回七月九日の委員会におきましても、秋田自治大臣答申精神に従って作業を進めると、このように答弁なさったのであります。七月九日の前回委員会からもすでに二カ月たっております。また大臣は、第七次選挙制度審議会発足は秋ごろだろう、それと前後して参議院地方区定数是正についても大綱を打ち立てたいと思う、このように答弁なさっておられるわけです。またこの二カ月間でその作業がどの程度進んでいるか。  それから、もう一つの問題は、答申は三県六人増、また三県六人減と、こういう案でございました。これは調整委員会の第一案でございます。で、私たちは、その精神はけっこうだけれども減のところもあるし、なかなか実現困難ではないかということで、調整委員会の第三案の東京大阪神奈川を人数ふやす六人増案を支持したわけでありますけれども答申が出た以上はこの答申に沿ってやってもらいたいということです。ところが、あの調整案というものは昭和四十四年の十二月三十一日現在の住民基本台帳人口をもとにして、相当アンバランスのところだけを直すということで立てられたわけでございますが、このたびの昭和四十五年の三月三十一日の住民基本台帳によりますと、これははっきりと自治省行政局から昭和四十五年の七月に「住民基本台帳に基づく全国人口世帯数表」ということで、昭和四十五年三月三十一日現在として発表されているわけです。それによりますと、二人減のところは栃木、群馬、岡山県であった。ところが同じ四人区でありながら、岡山県よりもむしろ熊本県のほうが人口が少なくなっているわけです。ちなみに申し上げますと、岡山県は百七十三万九千五百七名に対しまして、熊本県は百七十三万八千百六十五名と少なくなっている。これは答申の線に沿って法案ができた場合に、岡山県のほうが納得しないのじゃないか、こういうアンバランスも出ております。こういったことに関連いたしまして、せっかく大臣参議院地方区定数是正審議会答申の線に沿って作業を進めていきたいとおっしゃっておられる。すでに秋でございます。第七次選挙制度審議会発足しようとしております。一体どの程度その作業が進捗しているか、また今後このような新たにできたアンバランスをどうするか、その辺の御見解を承りたいと思います。
  5. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 参議院定数是正の問題につきましては、審議会答申を尊重しまして、案を次の最も早い国会、と申しましても臨時国会にはこれはどうかと思います。通常国会のほうがいいのじゃなかろうかと思っております。それに出すべく努力しております。もちろん答申趣旨を尊重いたしまして出すことは申すまでもございません。それが具体的にどこまで進んでいるかということになりますと、確定成文化まではまだ至っておりませんけれども答申趣旨を尊重して出そうということにつきまして、いろいろ準備を進めておるわけでございます。  なお、第七次の選挙制度審議会発足につきましてはいろいろ準備の段階がございますので、ある程度のことをそろそろ始めておって、まだこれも確定には至りませんが、準備工作には入っているのでございます。  さて、熊本岡山住民登録によるいろいろ問題点が御指摘でございます。しかし、この点は、住民登録台帳の数によって最終的な決定をするということはいかがかと存じます。第六次選挙制度審議会におきましていろいろ案を練られましたときには、その点住民台帳等も考慮されたことは経過的に考えられますけれども、最終的にはやはり全国統一調査である国調というものが基礎になってやはり考えられていると考えておりますので、確定的な国調の結果によるべきものである、こう考えております。
  6. 多田省吾

    多田省吾君 大臣のおっしゃるように、確かに決定的な人口国勢調査の結果によるべきであると思います。しかしながら、前回国勢調査昭和四十年十月の国勢調査でございましたから、相当人口に移動がございます。そうしてこの前の第六次選挙制度審議会のいわゆる調整案におきましても、昭和四十年の国勢調査の結果だけを重視してつくったものではないと思うのです。やはり昭和四十四年十二月三十一日の住民基本台帳等参考にしたようでございます。そうしますと、今度の国勢調査昭和四十五年十月でございますから、各県の人口確定するのはこの前の委員会でも統計局長から五月の末であると、こういうお話がございました。そうしますと、今度の通常国会に提案するときには間に合わないわけですね。で、答申趣旨を尊重するということはよくわかりますけれども、しかし、昭和四十五年の三月三十一日の住民基本台帳人口がすでに岡山県よりも熊本県のほうが減っている。もし、その住民基本台帳人口が三月三十一日現在のものですから、それが五月の初めごろあの審議会に提出されていたならば当然また結果が違っていたんじゃないか、こういうおそれがあるわけです。それからもう一つは、やはり県民感情として、もし答申どおり法案ができた場合にどうしても岡山県等は納得できないんじゃないかと、こういうことも考えられます。そういったこともあわせて、大臣国勢調査の結果が一番基本になるんだというお考えはよくわかりますけれども、具体的にその作業を進めます場合にはやはりこれはなかなか納得できない問題であると、こう思うわけです。ですからそれをどうお考えになるのか。全然考えられないのか。昭和四十五年三月三十一日現在の岡山県よりも熊本県のほうが人口が減っているということを全然考慮に入れないと、それでもし国勢調査の結果がそれと同じような傾向を示すならば、これはまたまたしこりが残る。  その点と、もう一つは、調整案の第三案あたり相当賛成者がいたようでございますが、そういったものも採用するお考えはないものかどうか。この二点をまたさらにお伺いしたいと思います。
  7. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 問題の熊本県と岡山県の住民台帳登録人口の差がことしの三月三十一日現在で仰せのごとくございまして、熊本岡山よりも少なくなっている、その数字は千三百四、五十でございます。ごく僅少でございますが、住民登録のことでございますので、これはそのときたまたまそうであったのか、微妙なところでございます。あるいは来年の選挙当日あるいはその当時これがどういうふうにまた逆転しないものでもないというような微妙な数字でございます。したがいまして、これを基礎にしていままた判断をしてしまうということもどうかと思われるわけでございまして、やはり基本的には国調確定人口による。そうすれば国調によるこの基本的態度をとらざるを得ない。しかし、御指摘の点は確かに問題点でございますので、十分留意して今後の処置に当たりたいと思いますけれども基本的にはやはり国調によるべきであるという基本的態度によって私ども判断をしてまいりたいと、こう考えております。
  8. 多田省吾

    多田省吾君 そうしますと、昭和四十年の国調によるのか、昭和四十五年のこの次に調査する国調によるのかという問題です。  それからもう一つは、大臣は千数百名の違いだとおっしゃいますけれども岡山県はだんだん人口増加県なんですね。昭和四十年の国調では百六十四万、昭和四十四年の十月は百七十三万、昭和四十四年の十二月は百七十四万、またこのたびの昭和四十五年の三月はやはり百七十四万と、岡山県はだんだんふえていく傾向にある。ところが熊本県は、昭和四十年の国調では百七十七万で、もう十三万も岡山県と開いて多かったわけですが、昭和四十四年の十月は百四十六万とぐんと減った。また四十四年の十二月には百七十六万、またこのたびは百七十三万八千と減少していく県ですね。ですからこの住民基本台帳といえどもこういった傾向になるだろう。そういった観点から、これは千何百名をいつ逆転するかわからないとおっしゃいますけれども増加県と減少県ということを考えますとこれはちょっと問題じゃないか。  それからいわゆる第三案の神奈川大阪東京だけを二人ずつふやすような第三案のことは全然お考えに入れていないのかどうか、この三点をお伺いしたいと思います。
  9. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) この定数是正法案は、先ほども申しましたとおり、次の通常国会には出さなければならぬと思っております。そうしますと、それまでにはっきりした確定人口によって積算せざるを得ないわけでございますので、住民台帳はこうなっているだろうということで処置をすることはいささかどうかということが考えられるものでございますので、確かに仰せのとおり、ことしの三月三十一日現在の住民登録人口は、岡山熊本審議会答申をいただいたときとは逆転の形、しこうして人口趨勢上その大勢は変わらないであろうということは推測をされる——理論的には私が言ったようにいろいろの場合があり得るわけです。しかし、それによって、直ちに推測によってこの問題を決定するというわけにもいきかねるのではなかろうかと考えておるわけでございます。そこで減少のほうはひとつ置いておいて、いわゆるプラ・マイのマイナスのほうは置いて、プラスだけこの際やったらどうかというお説でございます。これは十分お説として尊重したいと思いまするが、自治省立場としては、現在のところはあくまで第六次選挙制度審議会答申を尊重して立案をいたしたいと、こういま考えておるところでございますが、お説の点は十分参考に承っておくところでございます。
  10. 多田省吾

    多田省吾君 次に、選挙権年齢を十八歳に引き下げたらどうかということがいま各方面から言われているわけでございます。野党各党もほとんどみなその意見に賛成しているようでございますし、また、自民党内におきましても、参議院石原慎太郎氏の主張に続いて昨日は中曽根防衛庁長官まで選挙年齢は十八歳に引き下げるべきだという主張研修会でなさっているようでございます。まあ現職の大臣がそのように公の揚で発言するくらいですから、これは相当自民党内でも大きな世論として高まりを見せているのじゃないかと、こう思います。まあそれはそれとしまして、自治省では行政局長らを欧州に調査団として派遣しまして、そしてこの十八歳に選挙権引き下げる問題についても主要テーマとして取り上げるのじゃないかというようなことが言われているわけでございます。まあ積極的に取り組んでいこうじゃないかということでございますけれども、そうなりますと、私は第七次選挙制度審議会諮問をなさったほうがよろしいのじゃないかと、こう思うわけです。前回諮問をしないという仰せでございましたが、この点はもう一回お伺いしたいと思います。  それからもう一点は、十八歳に選挙権引き下げるときに憲法民法の問題はどうなるのかということです。ある新聞報道によりますと、自治省選挙部では、選挙年齢引き下げには、公職選挙法だけでなく民法改正も必要だと、こうおっしゃっているようでございます。ちなみにいままでの憲法民法問題を考えてみますと、昭和三十四年十二月二十三日の憲法調査会第二委員会の十三回の会議におきまして、鵜飼信成教授参考人として、憲法の十五条三項に成年者による普通選挙の原則があるが、年齢引き下げても違反ではない、民法の三条にある成年は満二十歳という、それ以下であればたとえ十三歳でもけっこうなんだという、こういう意見を発表しているわけです。ですから憲法改正の必要もないし、民法改正の必要もない。それから田上穣治委員、それからこれは佐藤専門委員——いまの人事院総裁だと思いますが——そういう有力な方々も、憲法はそのままにしておいていいんだ、そして民法成年満二十歳にこだわる必要もない、現行憲法現行民法のもとで十八歳に引き下げることも可能である、こういう意見ですね。ところが「時の課題」ことしの九月号に奥原唯弘近畿大学教授は、その改正の必要があるのではないか、こういう意見を述べております。  それからこの前、自治大臣憲法の十五条を参考に引かれて、いろいろ問題があるというようなことをこの前の委員会で申されておりますから、憲法民法問題もちょっとひっかかってくるんじゃないかと思いますけれども大臣としてはいまのところどのように考えておられるのか、この二点をお伺いしたいと思います。
  11. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 選挙年齢十八歳の問題につきましては、行政局長をヨーロッパに派遣しまして、この点を研究するよう旅行の使命、調査項目に加えてあることは事実でございます。しこうしてこの問題は、御承知のとおり、英国で過般の選挙から実施されたのでございます。総選挙に実施されたそのときの状況等もつぶさにその地で検討をし調査をしてもらいたいと思っておるわけでございます。なおしからば、もう直ちに次の来たるべき選挙制度審議会答申項目に入れたらどうかということでございますが、この点につきましては、いましばらく慎重な検討を要するものと私どもとしては考えておりますので、調査検討自治省としていたしますが、これを審議会答申項目に審議していただく、そして答申を受ける項目にするかということにつきましては、いましばらく検討の時間をかしていただきたい、こう思っておる次第でございます。英国等におきましても、これが実施までは相当時日を要して慎重な検討をしたようでございますので、わが国におきましても当然そのことは必要と考える次第でございます。  それから憲法十五条の問題でございますが、成年者普通選挙を十五条は保障しておるのでございますが、その成年者とは何歳であるかということは明記されていないわけでございます。もし十八歳に選挙年齢引き下げるとすれば民法との関係もあり、憲法条文改正を要するかということにつきましては重要な、重大な問題でありまして、ひとつ法制局等見解もただしていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても民法の三条でございますか、成年者年齢は満二十歳ということが書いてあるわけでございまして、これとは無関係で理論的にかりにあり得ましても、実際上これを自然に考えまして民法成年者を二十歳と規定し、憲法におきましては「成年者による普通選挙を保障する」として選挙法で十八歳というのでは、これはどうも実際上いろいろ不都合も生じるのではなかろうか。憲法自体規定変更を要しないといたしましても、民法規定につきましてはやはり憲法に発するいろいろの規定との調和、乖離のないような措置は、私はまだ十分な検討をしておりませんが、実際上の見地からは必要ではなかろうか、それがごく自然ではなかろうかと考えております。ただ繰り返しますが、憲法自身規定の書き方の変更を要するかどうかにつきましては、ひとつ専門家の御意見を徴していただきたいと存じます。
  12. 多田省吾

    多田省吾君 選挙部新聞社の方におっしゃったのかどうかは、これはわかりませんけれども、確かに大臣と同じようなことをおっしゃっているわけです。選挙法改正と同時に民法改正が必要なんだ、いま大臣お話はその御趣旨だと思いますけれども、しかし、憲法調査会の第二委員会では鵜飼教授民法改正も必要ない、田上教授佐藤専門委員も必要ない、民法成年とは私的な取引における行為能力考えられるだけであって、憲法にある成年選挙能力参政能力、これを認める年齢だと思う、何も民法成年と必然的に同じでなければならないということは言えない。ですから民法成年の満二十歳にこだわらずに民法改正しなくても十八歳でいけるのではないか、こういうのが多数意見のように思うわけですが、これから御検討ということもありますけれども、じゃ法制局の第三部長、どのようにお考えですか。
  13. 荒井勇

    説明員荒井勇君) ただいまの選挙権を付与する年齢引き下げるために、まず第一に憲法規定改正をする必要があるかという点につきましては、憲法は「成年者による普通選挙を保障する」と書いているだけでございまして、その年齢を具体的に定めていないということは、これを法律の定めるところにゆだねているのであるというふうに考えられるわけでございます。憲法制定施行の当時、民法には「満二十年ヲ以テ成年トス」という定めもございましたし、憲法制定施行の当時の関係者考え方は、これを多分に念頭に置いておったものというふうに考えられますけれども、しかし、ともかく成年年齢決定法律にゆだねられているという意味ではその年齢引き下げをすることは別に憲法改正を要せず、法律改正をもって足りるというふうに解されるわけでございます。  その次に、しからば民法との関連はどうか、憲法調査会の第二委員会での議事等も引用してお尋ねがございました。その中で鵜飼教授が言われていることでございますけれども憲法十五条第三項では成年者による普通選挙をいわば最低保障として保障しているのであって、その成年に達しない者による選挙権というものを認めるのもそれは可能なんだということを、その趣旨のことを言われておられますが、これは少数説であると思いますし、まあ私どもはその説をとるべきではないのではないかというふうに考えております。それは憲法十五条第三項は、まさに成年者による普通選挙そのものを保障したのであって、未成年者にも選挙権を与えるということを考え規定したものではないのではないかというふうに考えるわけでございます。で、民法上の成年とは何かといえば、それは民法趣旨からいいまして、現在の経済社会において私法上の行為能力を認めるのにふさわしい一般的な心身成熟が達せられたと見られる年齢を言うのだ、それから他方選挙権の行使にかかわるところの成年とは何かといえば、それはその趣旨からいいますと、公選による公務員を選ぶための選挙に参加するのにふさわしい、その一般的な心身成熟が達せられたというふうに認められる年齢を言うのだと、だから理論的に両者が必ず必然的に一致しなければならないということはないであろうということは言えると思いますが、それは実際的な見地から見ますと、その自己のために私法上の行為をするのについて十分なその判断力を備えているというふうには見られない、そういう年齢の者に、公的な選挙についてその十分な判断力成熟しているのだというふうに認められるかどうかというと、そこには多分に問題があるのではないかというふうに考えられるわけです。諸外国の例を見ましても、両者は一致しているのがまあ普通である。で、イギリスにおきまする最近の選挙年齢引き下げ私法上の成年年齢引き下げ関連し、そちらのほうがむしろ主体となった形で行なわれているというような経緯もございます。したがって、その純粋な理論的な可能性として民法第三条の成年年齢改正なしに公職選挙法第九条の選挙年齢改正をするということは、そういう純理論的な立場考えた場合に、考えられないことはないと思われますけれども両者の事実上の密接な関係から見ますと、一方を全く無視して他方だけがまあ独走するということは困難ではないかというふうに考えられると思っております。
  14. 多田省吾

    多田省吾君 私は鵜飼教授の説は多数意見と申したのじゃなくて、田上穣治委員、それからそれに賛成された佐藤専門委員、まあいまの人事院総裁だと思いますけれども、少なくとも法制局長官までやられた方ですから、相当権威のある御判断ではないかと、こう思っているわけですね。それを私は多数意見と申し上げたのです。いまのお話ですと、憲法改正の必要ないだろうと、民法の場合は理論的には改正の必要はないけれども、また疑義が残るというようなお話でしたけれども、率直に言ってどうなんですか。
  15. 荒井勇

    説明員荒井勇君) いまの御質問の中で、先ほどもございましたけれども佐藤専門委員というのは佐藤功教授でございまして、いまの人事院総裁佐藤達夫さんではございません。で、その点も、さきのお答えで申し上げましたように、純粋な理論的な可能性としては、民法上の成年と、それから選挙年齢をきめているところの憲法十五条三項でいう成年者成年というものが理論的な可能性としては全くその論理、必然的に一致しなければならないというものではないということは申し上げているわけでございます。たとえば民法で申しますと、七百五十三条で、未成年者婚姻したときは、その婚姻をしたことによって成年者とみなされるというような規定がございますけれども、そういうことは、その経済社会における私法上の行為能力というものは、未成年者であっても婚姻をした者については認めるということでございまして、それは公的な選挙権を認める年齢というものとしては取り上げていないわけで、そういう点でも民法上の成年というものと選挙年齢にかかわるところの成年というものは現に取り扱いも違っているわけでございます。そういうように理論的に違いますけれども、実際的なその経済社会において、自己のために私法上の行為をするというのに十分な判断力を備えているか、それを一般的に見まして備えている年齢と見られるかというその観点と、公的な国政に参加をして選挙権を行使するというのにふさわしい判断力を備えているかという点を対して見ますと、やはりその両者の間には密接な関連があるのではないのかというように考えるのが至当ではないかというように思っております。
  16. 多田省吾

    多田省吾君 私ははっきりいまの部長の御答弁は納得できませんけれども大臣は大体民法改正をする必要があるのではないかとおっしゃっておりますし、部長のほうはまだ少しその辺詰めてからということのようですけれども、これは内閣法制局、あるいは自治大臣のはっきりした政府の態度というものを、憲法判断、あるいは民法判断におけるはっきりした態度というものを示してもらいたい、こう思います。  それから先ほどお聞きしましたけれども行政局長調査団として欧州に派遣なさり、選挙年齢引き下げ問題も調査なさるというお話しでしたけれども、それはどの程度やられるのか。もう一つは、先ほどもお尋ねしましたけれども、それくらい積極的にやられるのでしたら、やはり国会委員会なり、あるいは選挙制度審議会もあるのでありますから、そういった方面においても、やはり引き続いて調査をなさったほうがいいんじゃないか、こう思いますが、この二点をお伺いいたします。
  17. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 民法憲法関係につきましてはさらに検討をしてまいりたいと思います。選挙権十八歳引き下げの問題につきましては、わが国における成年の政治意識の実態、その他法体系との関連等をよくにらみ合わせまして、いましばらく慎重に検討させていただきたいと思っておりますが、どの程度ヨーロッパにおいて行政局長調査をせしめるかという点につきましては、何ぶん向こうの日程も詰まっておりますので、十二分にどうこう、どうこう、なお詳細の調査項目を示したわけでもございませんので、大体の状況等につきまして調査をしてもらいたい、こういうことでございます。
  18. 多田省吾

    多田省吾君 次に、ビラ規制の問題でお伺いいたします。この前の委員会でも大臣並びに選挙部長は、首長選挙、衆参選挙、その他の県会をはじめ市町村選挙等の選挙においては、政党の政治活動に違いがあるわけです。それを統一したいと、たとえば昨年の東京都議会の選挙におきまして、府中市長選挙もありまして、その府中市に限っては、いわゆる選挙のやり方が政党によっても違ってきたわけです。こういったアンバランスは是正したいというお話で、政党の政治活動の自由、特にビラ活動の自由を制限するような方向ではなくて、それを認めながら、そのアンバランスを是正するのだという御答弁があったように記憶しております。ところが昨日の自民党選挙調査会等におきましても、もう七月末に自民党首脳の間に合意なりができておる、そうしてこの前の京都府知事選挙の結果から、政党や政治団体の政治活動の自由を選挙期間中ある程度の制限をするのはやむを得ないのではないかというように意見が一致したとか、あるいは昨日の選挙制度調査会におきましては、ビラとか機関紙の無制限配付を規制したい、宣伝車、シンボルマークの無制限使用を制限したい、そうしてこれらの政治活動の主体が政党や政治団体の法人であることから、実際に規制措置を順守させて、違反した場合は罰則を設けていくつもりだ、こういうようなこともおっしゃっているようでございます。だいぶ政府の立場自民党選挙制度審議会の御意見とが食い違っているわけですね。私思うのに、昨年六十一国会で公選法を改正して自由化を認めたばかりなのに、これをまた制限するというのは非常に不見識だと思いますし、また政府は関知しない、まあ議員立法で自民党が議員立法するんだというようなニュアンスも感ぜられますけれども、やはり自治省として、これはいずれにしても非常に責任のある、関係の深いところだと思います。こういうことで、ことしまた自治省のほうでそのアンバランスを是正するために今度の通常国会選挙法改正を出したいとおっしゃっているわけですから、その辺の調整をどうなさるのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
  19. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) この点につきましては、しばしば当委員会でも申し上げたと記憶いたしておりますが、京都の知事選挙の経験に徴し、また、その後各地の首長選挙等にもその傾向が看取されるわけでございまするが、過度な選挙に関する政治活動が非常に政党のその点に関する費用の増大を来たし、かつはあまり過度のために選挙の公正という点についていささかどうだろうかと思われるような実情も考えられますので、金のかからない公正にして冷静な選挙というものの観点から、何らかの反省と改善を加えるべきではなかろうかと考えるわけでございまして、その内容につきましてはいまだ成案は得ておりませんけれども関係各方面の御意見等を十分徴し、参考にしつつ、これは自治省の責任において何らかの成案を得まして国会に御提案申し上げたい、こういうつもりではおります。
  20. 多田省吾

    多田省吾君 そうしますと、まあ自民党の議員立法じゃなくて、このビラ規制の問題につきましては、——少し規制というのは当たらないと思いますが、選挙活動の自由化につきましては政府の選挙法改正は一本で通すつもりですか。
  21. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) ただいまのところ、そのつもりで考えております。
  22. 多田省吾

    多田省吾君 この場合、この委員会選挙部長等のお話のように、それは自由化を規制するのじゃなくて、あくまでも自由化をそこなわないようにしてアンバランスを是正するのだ、こういう現在お考えでございますか。
  23. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 大体その考え方でございます。
  24. 多田省吾

    多田省吾君 次に、政治資金規正法による政治団体調査について若干お尋ねします。  この前の委員会選挙部長から、千五百数十団体の政治団体につきましてアンケート調査をやっているというお話でございましたが、大体その結果はどのようになりましたか、お尋ねしたいと思います。
  25. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 多田先生からお話のありました政治資金の収支報告書につきましての提出励行方について、関係団体に御連絡をいたしておりますことは先般御報告をいたしたところであります。で、私どもどうも千五百の政治団体がある、しかし、毎年の収支の届け出は半分ぐらいしか来ないということでございましたので、中には届けば出ておりますけれども、ほとんど活動をしていない、あるいは事実上は消滅をしたような団体もあるのではないか。そこでそういう意味でこの際届け出のあります全政治団体について洗いざらい洗ってみたいということで、関係団体にいろいろ連絡をいたしております。現在の時点では全体で千四百九十五の団体がございますが、そのうちどうしても、幾らお願いしてもあて先がよくわからないということで返ってきたものが四百件ございます。で、残りの約千百程度の団体の中で、なおどうしても郵便は返ってこないけれども連絡がうまくつかないというのが六百件程度ございます。私どもは何とかこの機会に、政治団体のそういう意味でのいろいろな実態というものをぜひ当たってみたいと存じまして、残りの未回答の団体につきましては、極力いろいろな方途を通じまして御連絡をして、とにかく実態がどうなのかということを明らかにいたしたいというふうに存じている次第でございます。
  26. 多田省吾

    多田省吾君 で、四百も回答がない、回答があるどころか舞い戻ってきたというのですね、あて先不明で。あとの六百も連絡つかない。そうしますと、過半数がもう連絡つかないということですね。で、こういったものをまた一掃する手段もないということで、これは当然政治資金規正法を次の通常国会改正案を出して、こういった問題を処置する必要があるのじゃないか、こう思いますし、また、第五次選挙制度審議会において緊急措置すべき事項として、あの答申された政治資金改正案の大綱に沿った、答申に沿ったやはり改正案を同時に出すべきであると私は思うわけでございますが、大臣いかがでございますか。
  27. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 未回答がたくさんあるし、返ってきたものもたくさんある。これでは意味をなさぬじゃないか、ここいらについては何らかの法改正を必要としないかという点は確かにお説のとおりでございまして、検討をしてみたいと存じております。しこうして政治資金規正法改正の問題につきましては、その必要性をもちろん認めているのでございますが、過去三回、国会で審議未了になった経過等にもかんがみまして、どうしたらいいのか、とにかく金のかからない選挙にして、公明な選挙ができるように、政治資金を、平素の政治活動についても考慮すべきところでございまして、いま御指摘のありました政党と選挙との関連、これの活動等につきましては、金がかかり過ぎている問題がございますので、そういう点との関連も考慮いたしまして、いまいろいろ検討中でございますが、直ちに次の国会に出すかどうかにつきましては、いまだ結論を得ておりはしないところでございまして、せっかくさらにいまのようないろいろの問題点がございますので、多方面からの検討をいまやっているところでございます。
  28. 多田省吾

    多田省吾君 政治資金規正法の問題につきましては、従来からもたびたび言われておりますし、第五次選挙制度審議会答申すら、その答申どおり改正案も政府は出していないわけです。また、今度の第六次選挙制度審議会答申の、参議院地方区の定員是正の問題だって、まあ秋ごろにはというお示しにもかかわらず、いまもってほとんど成案どころか方向さえも示していないような現状です。こういったことでは第七次選挙制度審議会発足なんというのはおよそ危ぶまれるわけでございますけれども、特にこの政治資金規正法改正案につきましては、もうぜひとも次の通常国会に提出していただいて、いま言ったような不良団体を一掃するような法律も加味して提出していただいて、いまの国民の政治不信を一掃するためにもこれはぜひやっていただきたいことだと思います。またやるべき義務が政府にあると思うんです。  それからもう一つは、この前もちょっとお話がありましたけれども、こういった不良団体については、義務づけられているところの報告もしないような不良団体については、会社、法人からの政治献金等については法人の税法等も考えたいと、税金等も考えたいというようなことも大臣はおっしゃったわけでございますけれども、そういう現行の政治資金規正法でも罰則があるわけです。もう届け出がありながら毎年の報告がないものにつきましては、違反すると「五年以下の禁錮又は五千円以上十万円以下の罰金」あるいは届け出事項に変更があったときには七日以内に届けるように、こういった条文がはっきりあるにもかかわらず、なぜそれをやろうとしないのか、これはどうですか。
  29. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 多田委員からお話のありました政治資金規正法に基づく政治資金の収支の届け出という点の励行の一つの手段として、税法上の取り扱いについても検討の余地はないかという点が先般の委員会でも御指摘がございました。私どもはその後、大蔵省の関係当局といろいろ打ち合わせをいたしております。で、会社の、その他の団体のいわゆる政治献金が政治資金規正法政治団体の収入として報告をされていないということになりますと、ほんとうに政治資金として寄付されたのか、あるいは政治資金として支出されたのかということが形の上で明らかでないというような面から、法人の損金算入の取り扱いについて何らかの手段がないのかということを中心に、ただいま事務的にいろいろ打ち合わせをいたしておる段階でございます。  それから次にお話のありましたのは、確かに仰せのように、政治資金規正法で厳重に報告をしろ、期限を切って報告をしろ、またそれに違背をすると罰則があるという立て方になっておるわけでありますが、私どもとしては政治団体のことでありますので、何とかこの際行政的に各団体にあるいはしつこくお願いをして届け出の励行をしていただくように相つとめたいと思っておりまして、特に本年の政治資金規正報告をめぐって私どもはそういう姿勢でぜひ行政上順守していただくような形に各団体に強く訴えたいと思っております。司法上の問題になりますと、また別途の機関が働くことになりますが、私どもとしてはさしあたって行政上励行をしていただくことについて十分相つとめていきたいと考えておるところでございます。
  30. 多田省吾

    多田省吾君 この前の、政治団体を総ざらいしてアンケート調査等やられたというようにお聞きしましたけれども、現在四月末で自治省に登録されている二県以上の都道府県にわたるところの千四百九十五団体ですか、この団体につきまして私は資料要求等いたしまして、その千四百九十五団体のそれぞれにつきまして、団体名それから代表責任者、それから所在地、会計責任者、届け出の年月日、それから特に昭和四十四年の上半期、下半期における報告の有無それからアンケート調査の結果、あて先不明であったとかあるいは連絡がつかないとかあるいは報告があったとか、その別を明示されてひとつ御提出をいただきたいと思いますがいかがでしょうか。
  31. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 御指摘の資料は、調整して提出いたしたいと思います。
  32. 多田省吾

    多田省吾君 次に私は、来年の統一選挙定数是正につきましてお尋ねいたします。まあこれは選挙法並びに自治法によってはっきりと新しい国勢調査の結果によって、地方選挙の定数は是正するとはっきりあるわけです。  この前、私は各県でどういう要望をしているかということをお聞きしましたところが、選挙部長は、はっきり明言なされなかったのでありますけれども昭和四十五年六月二十三日付で、神奈川県議会議長から県議会の意見書として、国勢調査統一地方選挙の議員定数に関する意見書というものが、内閣総理大臣自治大臣、総理府総務長官にあてて提出されていたわけです。こういったことをやはりおっしゃっていただかないと、私たちにはわからないわけですね。  その意見書の内容は、お手元にあると思いますけれども、   地方議会議員の定数は、官報で公示された最  近の国勢調査結果の人口により決定されてい  る。   最近の人口動態の激変からして、来年四月に  行なわれる統一地方選挙は、たまたま本年十月  に施行される国勢調査による人口基礎に議員  定数是正を行ない、施行されるべきである。   しかるに、新国勢調査の結果をこれに使用す  ることは、事務的に困難であり、現行定数によ  り統一地方選挙を行なうやに仄聞するが、これ  は住民の意思を十分反映しなければならない代  議員制度のたてまえからして民主主義に反する  ものであり、また各般にわたる精度の高い電算  機の導入など情報化時代といわれる今日、納得  のいかないものである。   よって政府におかれては、地方議会が最近の  人口実態にあたった議員定数で選挙が行なわれ  るよう配慮し、必要によっては、特別立法の措  置を講ずる等時期を失することなく、これが実  施について特段の努力をされるよう強く要望す  る。   以上、地方自治法第九十九条第二項の規定に  より意見書を提出する。    昭和四十五年六月二十三日   内閣総理大臣   自治大臣殿   総理府総務長官      神奈川県議会議長 加藤  詮 こういった意見書が提出されているわけです。こういった意見は、やはり人口の激変の埼玉、千葉等においても、まあ同じように考えていらっしゃるんじゃないかと私は思うわけです。これに関しまして自治省はまだはっきりした態度を示しておられないようでございます。もちろんこれは国勢調査のことも関連しますから、いろいろむずかしいととはあると思いますけれども、少なくとも私はこういった神奈川県議会等のようなところから、はっきりと民主主義を守るためにという名目で意見書が出ている以上、これを無視することはできないじゃないか。しかも昭和二十五年の国勢調査の結果によって、昭和二十六年の統一地方選挙は全部四十六都道府県が定数是正をして新しい選挙に臨んでいる、そういう先例もあるわけですよね。今回に限ってなぜそれができないのか。またこのような神奈川県議会の意見書というものに対して政府はどのように考えていらっしゃるか。まずそれを伺いたい。
  33. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 神奈川県会からの御要望はよくその趣旨はわかります。理論的にまたそうあるべきだと思います。しこうしてこの十月に行なわれる国調の結果が、いつ確定数の形において発表されるかという時期の問題と関連があってこの問題を解決しなければならないわけであります。いろいろ内閣統計局とも折衝いたし、また折衝中でございますが、どうも三月もだいぶ末日近くでないと第一回の一番早いものが出てこないというまあ事務的な事情があるようでございます。コンピューターも使って早くできるのじゃないか、こういうことでございますが、正確を期する意味においてコンピューターは使用しないということでもあるようであります。また、いわゆる家族の核化が進んでおりますので、なかなか手間を要するという点もあるようでございます。いろいろの事情がありまして、まあ三月末ころから第一回の発表が出てくるということであります。従前は二月中に全部まとまった、国調の結果が確定数でまとまったというような状況から、新国調によりまして統一地方選挙を全部行なうことができたわけであります。今回はそれがいま申したような関係で物理的に不可能である。三月末に出まして、都道府県の分について、従前と違って、これは選挙区の確定あるいは市の定員を当てはめてそれからその措置を講ずるということは相当の時間を要するわけであります。日時を要するわけであります。それと選挙の期日、告示の日取り等々を考慮いたしますと、都道府県につきましてはどらも理屈どおりの措置を講ずることがなかなか困難ではないか、ほぼ不可能ではなかろうかというようなことをいま感じておるわけでございまして、技術的に、事務的にいろいろ詰めておりますが、どうもその点理論どおり実施できないという悩みにわれわれ逢着をしてはなはだ困っておるわけであります。事実上、どうもまことに遺憾であるが、やむを得ず不確定人口ということになりますと実際に即しましてどらかと思う感じを皆さまにお与えすると思いますが、過去にさかのぼらざるを得ないという余儀なき事情になるのではなかろうかというふうにいま見ているところでございます。
  34. 多田省吾

    多田省吾君 このような地方選挙だけではなくて、参議院選挙、衆議院選挙におきましても定数の問題は非常にいま重大な問題です。ですから大臣は今度の第七次選挙制度審議会に衆議院の定数是正諮問するつもりだと再々おっしゃっておる。きのうも中曽根防衛庁長官あたりが、一閣僚の立場でありますけれども研修会等で衆議院の定数是正は緊急の急務であるというようなことも言っているようでございますし、参議院の地方区の定数是正も最小限度でありますけれどもこのたび答申が出たわけです。ところが、やはりこの統一地方選挙においても相当定数のアンバランスというものが特に人口移動のはなはだしい神奈川、千葉、埼玉においては非常に著しい、そういう結果が出ております。それを放置いたしますと、やはりいま直接民主主義の請求というものが非常に高まっておりますけれども、それもその一原因ではないかと思うわけです。特にこの地方選挙におきましては、選挙法あるいは自治法にはっきり定まった法律事項を積極的に順守しようとしない態度は、私は非常に責められるべきではないか、こう思います。いま一般論はわかりましたけれども、たとえば昭和四十五年の三月三十一日現在の住民基本台帳人口によっても、県議会あたりでも、神奈川県あたりは十二名増、千葉県は八名増、埼玉県は十一名増、その他定数条例をしいているようなところもありますけれども、そういったものも含めますれば、九十名ぐらいの異動があってしかるべきだと思う。しかも、昭和二十二年の統一地方選挙においても、定数是正がなされており、昭和二十六年の統一地方選挙においても、このときも国勢調査と重なっておりますけれども、約百十八名の定数増をしているわけです。また、三十四年、三十八年、四十二年と、それぞれ国勢調査の結果に基づいた定員是正をやっておりますから、この前までは比較的アンバランスというものは少なかったわけでありますけれども、今回人口移動がはなはだしいために相当のアンバランスになっている、これを放置していてよろしいのかという問題でしょう。ですから私は神奈川とか、そういう強い要望のある県は、特に特例を設けて、その県の事情に合った選択を許すべきである。あるいは選挙を少しおくらすとか、統計を早めるとか、あるいは概数表でやるとか、いろいろのことが考えられるわけです。そういった特例も大臣はいまのところ全然考えられておらないわけですか。
  35. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 理論的にはまさに確定人口によりなるべくその近いものを、また選挙当日のものを使うということは、理論上当然のことであります。その点をわれわれは否定しているものではございませんが、こういう問題が二十年に一回御承知のとおり出てくるわけです。前回は二十五年の十二月一日に国調がございまして、二十六年の四月に統一地方選挙があったわけであります。このときには、確定人口が二月中旬に出たのでございます。今回も来年度そういうことになり得るならば、当然そういう措置を、前回と同じ措置をとるべきであります。そこでまあ事務的に統計局と打ち合わせをしておったわけでありますが、三月下旬にならなければ、どうも確定数の発表が始まらないという御見解が統計局からなされておりますので、そこで先ほど申し上げましたような点についてのいろいろ矛盾を感じているのでございますが、都道府県につきましては、選挙区の区画及びそれに当てはめる定数の点につきまして決定にはある程度の時日を要します。それと統一地方選挙はどうしても四月中にやりたいというような時間的関係考えてまいりますと、理論どおりいかない悩みに悩んでおるのだと、こういうわけでございます。
  36. 多田省吾

    多田省吾君 総理府副長官にお尋ねいたしますけれども、いま自治大臣お話の中に、昭和二十五年の国勢調査人口集計は二月ごろだと、だが今回は五月にならなければできないと、非常におそいわけです。昭和二十五年といいましても、人口が九千万以上あったわけです。今回は一億三百万と言いますけれども、一〇%ほどの人口増にもかかわらず、三ヵ月もおくれてしまう、この前も統計局長にお聞きしましたら、昭和二十五年のときには臨時職員が千百七十一名人間がついたのでありますけれども、今回はわずか臨時職員が二百名ほどである、せっかくの電算機も人口集計にはほとんど利用できないということで、どうしてもおそくなるのだというお話であります。こういったことは国勢調査の結果と、統一地方選挙定数是正の問題との関連、あるいはこの国勢調査が行なわれるということは、事前に総理府としても御承知であったにもかかわらず、こういった不手ぎわを生じております。私は臨時職員も当然昭和二十五年に劣らずつけるべきであったと思いますし、また総理府の中で遊んでいる人はいないと思いますけれども、比較的忙しくない人を選んでこの国勢調査の集計に参加させるとか、いろいろな手段を講じて、やはり自治法や選挙法に定められた法律事項は順守すべきである、そういう立場からもやはり国勢調査人口集計ということに関しては相当積極的に前向きに総理府としても私は指導監督すべきではないかと、こう思いますけれども、副長官は、この国勢調査について、どのように考えておられますか。
  37. 湊徹郎

    説明員(湊徹郎君) ただいまお話がございました点、過般、局長のほうからもいさい資料をあげて御説明申し上げてあったと思いますが、実は、国勢調査そのものをいかにして遂行するかというそのこと自体が、実は予算編成の当時からかなり問題であったわけでございます。  ただいまお話がございましたように、前回の二十五年は社会情勢等からお考えになってもおわかりのように、まあどちらかというと過剰人口で、農村などはむしろ過剰人口で次三男対策をどうする、こういうことが議論された時期でございましたし、臨時の職員も、期間の長い短いを問わず、集めればすぐ集まる。むしろ何倍もそれに応じてお集まり願える方々があった。こういう情勢の中で行なわれたのが二十五年の国勢調査でございますし、今回の場合は約二百人の臨時職員ということですが、現に統計局は非常に数も多うございますし、欠員になった。その欠員の補充ですら実は率直に言って容易でない。したがって、パートタイムに近い限られた期間の仕事に臨時を求めると、こういうことになりますとなかなか実際問題としては二回、三回の募集を通じてもお集まりいただけないというふうな状況のもとで国勢調査を遂行すること自体にかなりの困難性があることは事実でございます。  で、同時に自治省のほうから前々お話もございましたし、統計のねらいというものはもちろん正確にかつ速く客観的な資料をそれぞれ各分野で御活用願うところにねらいがあるわけでございますから、自治省とも相談をいたしまして、極力時期を早める努力を私ども内部でもいたしておったのでございますが、ただいま申しました事情に加えて、さらに二十五年といいますと戦後間もない時期で、統計の数も非常に少のうございましたが、今日では経常的な統計たとえば労働力調査であるとか、あるいは家計調査であるとか、消費者物価の調査であるとか、そういう経常的なもののほかに、それぞれ各省庁からあるいは委託を受け、要請を受けてやっております統計の種類が非常にふえて、統計局部内のやりくりもなかなか思うにまかせない。こういう現状でございまして、いままでずいぶん私どもも部内の努力によって極力時期を早めるように局長のほうにも指示をしてまいっておったのでありますが、先ほど話がございましたように、まあ小さな府県等はわりあいに集計が早くできるでございましょうが、それでもやっぱり三月末がぎりぎりで、大半は四月、大きなところはやはり五月に入らないと確定的なものははじき出せないと、こういうふうな実は内情にあるわけでございます。
  38. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、そういういま総理府副長官がおっしゃったようなことは、もう去年から、初めからわかっていたことでございまして、それにもかかわらず臨時職員等を二百名しかとらなかったのか、また極力努力しますとは言っても、それじゃやはりどうしてもその人数確保が大事でしょうから、どうやってその人数確保をするかというようなことを当然考えなくちゃいけないと思うのです。そういう具体的なことについては一つも手をつけないで、ただ至難である至難であるとおっしゃっているだけでは、非常に私はよくないのではないかと思います。  で、なるほど統計資料はふえたかもしれませんけれども、統計技術等は進でいると思いますし、また人口集計はやはり同じなんですから、昭和二十五年当時と人口集計については同じ事項なんですから、それすらおくれるということは、ちょっと私は納得できないです。これからもこういった人口集計を早めるための手段というものを、前向きの手段というものを、どのようなことを考えていらっしゃるのですか。
  39. 岡部秀一

    説明員岡部秀一君) 先ほど副長官からお話がございましたとおり、一にかかってこれは人海戦術でやるしか方法がないということでございます。もちろん機械は使いますけれども、これには使えないという事情を御承知願いたいのですが、OMRという読み取り装置機を設置してやるんですけれども、これにかけますマークシートが七千万枚という数字に予測されております。これは富士山の三倍の距離になるわけですが、これを一つ一つ入れていくわけですね。入れていって、あと計算になると、これは一項目の人数だけを計算する時間と、二十二項目を計算する時間、これは問題じゃない、一挙にできてしまう、こういうのですが、そのマークシートをOMRへかけるということ、これを全部やり切るのが二年間と、こういう状況でございます。これは機械にかける。かけるというそこがネックになっておる。機械にかかっちゃえばさあっと簡単なんです。かけるというそこにネックがある。これはどうしても手集計しか方法がない、手集計となるとこれはどうしても人海戦術でやるしか方法がないという状況、これはただいま副長官からお話があったわけですが、その後われわれのほうも何とか人員確保ということに積極的な手を実は打っておるのでございます。たとえば、四月の一日に二十四人が入っておりますが、この二十四人をわれわれが採るのについては千二百二十六人の初級合格者全部に呼びかけまして、二十四人を確保、こういう状況でございます。それからそのほかの臨時的な職員につきましては、やっぱり四月一日で二十一人採用いたしておりますが、これは百二十一人に呼びかけをすることができて二十一人と、こういう状況になっております。また、六月に九十七人採用いたしておりますが、これが五百三十八人に呼び出しの手を打ちましてたった九十七人、それからただいま現在八月で四百三十二人に呼び出しをかけて、まあ百人確保できるかどうかと、こういう状況で、われわれとしては、それについては新聞広告その他を通じて実は全力をふるってこのようにやっております。このようにして早く入れて、ほかの統計を十月までに繰り上げてやっちゃう、やれるものは、材料のあるものはやってしまって、そうすると、あと手があきますから、それを全部国勢調査の人数計算に充てると、こういう積極的なやり方をとっております。今後もなおこの問題につきましては、もう何回も何回も公募いたしまして人員を確保していきたい、このように実は思っておる次第です。
  40. 多田省吾

    多田省吾君 それで自治大臣に、先ほどお尋ねした中でお答えいただけなかったのがあったわけですが、神奈川県等は、こういった意見書等も出して、どうしてもやりたいというところは特例を設けて選挙時期をおくらせるとか、あるいは集計を早めさせるとか、あるいは回収表でやらせるとか、いろいろ方策もあると思うのですが、そういう特例をお認めになることはないんですか。一切それは認めないと、統一的にやっていく、できないと、こういう現状認識でございますか。
  41. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) ただいま統計局のほうからお話しのありましたとおり、人口の多いところはどうしてもおくれることになるわけでありまして、多いところほどおくれてくるという関係から統一地方選挙施行する場合に予定される一、二の日を予想して考えてみましても、それにちょっと間に合いかねるのではなかろうかということは考えられます。しからばそれだからこそそれを抽出してやれということになりますと、ある県は抽出して、まあかりに早くできるといたしましても、やはりある県は予想されるけれども、まあ比較的少ないと思うからやらないという差をつけることもこれはできないと存ぜられます。一律に取り扱わなければなりません。そこで、やはり事務局に、技術的に、また、お話のありましたとおり三月末日に初めて最初のものが出てくるという状況では、どうも都道府県の分につきまして、新国調を全部にあてはめるということはなかなか困難だ。理論的には十分多田先生と同意見でございますけれども、実際上、技術上、どうも不可能だ。その間に差等をつけることも、これはいかがかと考える、こういうわけでございます。
  42. 多田省吾

    多田省吾君 まあ、各県ともこういった問題については早くきめてもらいたいという要望も強くあるわけでございます。統一地方選挙定数是正については四十三年度どおりやるとか、あるいは今回の四十五年の国勢調査にはっきりまかせるとか、こういった決定はいつごろなされるのですか。
  43. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) なお統計局ともいろいろな問題ございますので、そういう点をさらにしっかり詰めまして、なるべく早く、ひとつ選挙をされる方々の利便を考えまして、大体の方針を決定いたしたいと考えております。
  44. 多田省吾

    多田省吾君 次に、第七次選挙制度審議会発足につきましては、前回大臣はさっそく発足させたいと、こうおっしゃっておられるわけです。いまいろいろ関係者にも当たっておられるようでありますけれども、大体もう秋でございます、九月になりますと。大体何月ごろ発足されるおつもりか。それから諮問の内容については、従来選挙年齢の十八歳引き下げ参議院定数是正参議院の全国区の選挙制度、こういったことはおっしゃっていたようでありますが、この諮問等がなされるというわけでありますが、大体諮問の内容は、項目はどのくらいになりますか。それから任期の問題もあります。大臣は私見ですがとおっしゃって、一年を二年にできればというお話もあったのですが、これは選挙制度審議会等の改正が必要と思いますが、これはどうお考えになっておられますか。それから先ほども地方区の定数是正にからんで、三月三十一日現在の住民基本台帳人口が五月に発表されないためにいろいろ不手ぎわも生じたようでございます。こういった事情も、前回も申し上げましたように、非常に前回は少なかったわけです。第七次選挙制度審議会においては、やはり万全を期すために、審議会に事務局等を設けたほうがいいのじゃないかと、このように私は思います。第七次選挙制度審議会に関しまして、発足の時期、諮問内容、任期、事務局設置等につきましてお答え願いたいと思います。
  45. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 審議会発足のめどにつきましては秋ごろということを申しておるのですが、いまだ決定的な段階になっておりません。もうしばらくお待ちを願いたいと思います。  審議会の内容項目につきましては、まだこれも確定的な決定に至っておりませんが、およそ前申し上げましたようなことは関係者の間におきましていろいろ話し合っておるところでありますが、十八歳の選挙年齢引き下げということにつきましてはただいま申し上げたとおりでございます。  なお、任期につきましては、私見は申し上げたとおりでございまして、皆さま方の御意見をさらに徴しまして、それがしかるべきかというような世論等の動向を見きわめた上で適当な措置を講じたいと存じております。  事務局につきましては、従前自治省選挙部を御利用願っておるところでございます。いろいろ専門的な知識も要するのでございまして、事実上これを引き続いて御利用願うことがしかるべきではなかろうかと、この際考えておる次第でございます。
  46. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、この第七次選挙制度審議会発足につきましては、この前の答申にあった参議院地方区定数是正に何らかの大綱といいますか、方向といいますか、そういったものをやはりきめないと発足しにくいという状況もあるのじゃないかと思います。関連もしてくるのじゃないかと思います。ですから、最初にお聞きしたわけでございますけれども、いろいろたいへんな状況はよくわかりますけれども、しかし、十月、十一月たっても状況の変化はないわけでございますから、やはりここで早く参議院地方区定数是正についての方向をきめて、そうして大臣がいつもおっしゃっておられるように、秋ごろ、九月十月ごろ、もう発足して、任期は二年くらいがいいとおっしゃっているのですから、早目に発足して、十分審議を尽くされたほうがいいんじゃないか、このように思うわけでございますが、再びお尋ねしますが、この参議院地方区定数是正にからんで、方向を大体いつごろまでに審議せられるのか。またそれに伴って第七次選挙制度審議会発足も、いつごろ発足なさろうとしているのか、大体のことを、ひとつめどをおっしゃっていただきたいと思います。
  47. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 参議院の定数に関する答申、これはもう尊重して立案をしたいと言うておりますので、その点については変りはないわけでございまして、それが審議会発足時期に、私は、全然無関係であるとはこの際申し上げませんが、それよりは問題は人的なことでございますので、その折衝が相手のあることでありますから、いましばらくお待ちを願いたい、こういうことを申しておるわけでございます。したがって、この答申を受ける項目等につきましては、もちろん大体前に申し上げました内容にするつもりでございますけれども、この点はまだはっきりしておりませんが、ほぼそういうことで折衝に当たっているわけでございます。どうぞ御了承願いたいと思います。
  48. 多田省吾

    多田省吾君 それでは時間もたっておりますので、最後は選挙庁についてお尋ねいたします。  第六次選挙制度審議会におきましても、選挙の管理機構というものが非常に弱体でありますので、その中枢機構として、いわば選挙局から選挙部への格下げというものは、非常に国民の選挙に関する関心を弱めたような傾向にありますし、やはり議会制民主主義を重んじなければならないこの現日本において、非常にこれはまずいことであるという意見が大勢を占めたわけでありますが、この審議会においても、選挙庁に昇格さしたらどうかという意見が非常に強かったわけであります。もちろん行政簡素化というにしきの御旗もありまして、それも非常に大事です。しかしながら、そういった国民全体の生命にかかわる公害局の設置であるとか、あるいはこういった議会制民主主義を守るために一番大事な選挙についての管理機構の中枢である選挙庁というような問題はやはり、選挙部長もおっしゃっているように、次元の違う問題でありまして、それは非常に重要な問題であると思います。行政簡素化自体は、これはいろいろやり方もありましょうし、またいまの各省の機構等においても、アメリカのように予算局を設けたり、あるいはPPBS方式を用いたりすれば、もっといわゆる公正な、合理的な運営が、しかも、行政の簡素化等も合理的にできるのではないか、こういうことを私も考えております。それはそれとしまして、この選挙庁という問題は行政簡素化だから見送らなければならないということは絶対にないと思うのです。そういう意味で私は、むしろ選挙部を応援するような形でありますけれども、議会制民主主義を守るために非常に大事なことでありますから申し上げるわけでございます。で、昭和二十六年前は全国選挙委員会というものがございまして、それが選挙の中枢であったわけでございます。管理機構の中枢であったわけでございます。そのときにはたしか課は二つでありましたけれども、二課十四係、係は十四ございまして、五十七名の人数で運営していたわけでございます。ところが、昭和二十六年から選挙局が発足しまして、しかもこのたびは選挙部になった。わずか二課、五つの係にすぎない、そして人数も部長以下三十三名にすぎない、こういう状況でございます。で、そのために、これからも上林委員も質問するそうでございますけれども、地方の選挙管理機構も非常に弱体でございますためにいろいろな問題が最近起こっております。それから国民の強い関心の的になっている政治資金規正の方向も、やはりどうも選挙部の人数が少ないために、体制が弱いために、どうしても強力な政治資金規制ができないのじゃないかということもあるんじゃないかと思うんです。こういったことに関連しまして、このたび自治省選挙庁に昇格させるべく概算要求をなされたとお聞きしておりますけれども、大体課や係についてどの程度具体的に考えておられるのか、その見通しはどうなのか、お尋ねしたいと思います。
  49. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 課や係の具体的な点につきましては事務当局から答えてもらうことにいたしまして、御承知のとおり、自治省としては今回選挙庁という構想を打ち出して、これが実現をはかっておるわけでございます。この点に関しましてもたいへん御理解のある御発言を賜わりまして心強く、かつうれしく思っておるわけでございまして、もうこれが庁としての必要性は、民主政治の確立、選挙の重大性にかんがみまして、申し上げる必要はないと思います。しかし、世間には、ややもすると、部から局を飛んで、いわゆる三段飛びに庁を要求することについてのいろいろ批判が新聞等においても散見するところでございます。しかし、ただいま申し上げたような必要性から庁を主張しておる。この点については、お説のとおり、簡素化あるいは機構の合理化等の見地はもちろんのことでありますが、同時にその必要性から政府部内全体としての行政機構の簡素化、いわゆるプラス、マイナス、定員等につきましてもいろいろ考慮の中で、私は選挙庁というものを主張する根拠というものは十分あるものであると、確信を持ってこの点を主張しているわけでございますので、ひとつ御支援を願いたいと思います。  しこうして、具体的には現在の行政局選挙部を拡充いたしまして自治省の外局たる選挙庁といたしたい。そこで特に第一線の選挙管理委員会の指導をもっと強化するような部門、また選挙制度審議会の事務局としての機能を果たすその部門及び選挙に関する啓発等を十分今後やっていかなければなりませんが、そういう部門等を重点的に拡充強化していきたいという方針のもとに、この選挙庁というものを主張いたしておるわけでございます。  具体的な機構、内容等につきましては、事務当局からお答えいたします。
  50. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 多田先生からお話のありました選挙庁の問題につきましては、ただいま大臣お話にございましたように、主として四つの機能を強化をしたいということでございまして、全国に一万数千人の選挙管理委員が都道府県、市町村におられますが、それらの中央の連絡機構としての機能を伸ばしていきたい。  二番目には、これからやはり選挙制度の根本にいろいろな問題があるようでございますので、それらの審議を願っていくことが必然の方向であろうと思っておりますが、そういう場合の調査機能というような点について、さらに力を入れなければいけないのじゃないかと思っております。  また第三には、よくいわれておりますような選挙民の啓発という面の機能の強化ということを考えております。  さらにそれから四番目には、政党の法的ないろいろなお立場がさらに大きくなってまいりますが、そういう際の連絡というような面について必要な機能が出てくるのではないかと考えておりますが、そういう四つの機能を果たし得るような形でぜひやってまいりたいと思っております。  人数とか課の数というようなことにはあえてこだわっておるわけではございませんで、そういう意味合いの機能を果たし得ますように、選挙の事務を担当する部門というものの発言が重いような形になっていくことを念願をしているところでございます。
  51. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、現在地方で起きておる幾つかの問題を取り上げまして自治省考え方をお尋ねしてみたい、こう思います。  そこで、まず最初に、神奈川県の清川村で昭和四十二年六月二十五日に村長選挙があった。その結果、新聞にも出ておりますので名前を申し上げますが、山田氏が八百五票、山本氏が八百三票、したがって山田氏が当選ということが確定されたわけでございますけれども、この決定について、山本氏がこれを不服として村選管に異議の申し立てをやった、こういう事件があるわけでございますが、この内容についてひとつ詳しく御説明をいただきたい、こう思います。
  52. 中村啓一

    説明員中村啓一君) ただいま上林先生から御指摘のございました事案は、四十二年の六月二十五日に行なわれました神奈川県清川村の村長選挙にかかわる案件でございます。  選挙が六月十八日告示になり、立候補いたしましたのが山田浅次という方とそれから山本務本という方、いずれも無所属の方でございまして、山田浅次さんは当時の村長であったわけでございます。この二人が争いましたが、いずれもその村の名望の士というふうに承っておりますが、村をまつ二つに分けての選挙になりまして、二十五日開票をいたしましたところが、現村長でありました山田浅次さんが八百五票、それから山本務本さんが八百三票、二票の差で山田浅次さんに勝利がいったわけであります。そこで、八百三票をとりました山本派から異議の申し出がありました。主としてその理由は、山田さんの有効投票の中に他事記載が多いというような理由であったようであります。異議の申し立てをやりましたのが選挙の翌日の六月二十六日でございまして、村選管は早急に結論を出すべきだということで、同月の二十九日に選挙管理委員会としての決定をいたしました。その決定は、やや奇妙でありますが、両方とも得票数が八百二票で同数であるという決定をいたしております。そこで山本派、山田派両方から、それではおもしろくないということで、県の選挙管理委員会に審査の申し立てがございました。県の選挙管理委員会は、翌々月の八月二十八日に裁決をいたしました。当選人の山田さんの票がむしろ少なく県の選管の裁定では七百九十七票である、不服を申し立てました山本さんのほうが八百票で三票多いという決定でございます。したがって、かりに当選をしました山田派はそれには不満で東京高裁に提訴をいたしました。去る本年の八月十八日高裁は判決をいたしまして、県の裁決を支持をいたしました。したがって、山田さんの当選を取り消して山本さんの当選が有効であるという県の選管の裁決が高裁では支持をされております。  なお現在上告期間中でございまして、期限が九月七日ということになっているようでありますが、これからさらに上告があるかどうかということは関係者の今後の動きにかかわるということになっております。大体の事案の概要であります。
  53. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこでこれはかりにでございますけれども、もしかりに山本候補が山田氏にかわって当選人であるということが決定された場合、どういうことになりますか。
  54. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 県の裁決が裁判所において終局的に容認をされるということになりますと、裁決の効果として山田さんの当選が失われまして、山本さんの当選が確定するわけでありますが、確定の手続は、当該清川村選挙管理委員会で裁決に従ってそれを確認をするという形できまるわけでございます。
  55. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、期限はもう来年の何月ですか、残りわずかということなんですね。いままでやってきたいろんな、山本さんが村長としていろいろといままで裁決されたものもあるでしょうし、そうしたいろんな問題が残ってくると思うんですね。そういった問題についてはどう処理していくかというのが大きな問題じゃないかと、こう思いますが、この点どうでしょう。
  56. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 上林先生の仰せは、こういう選挙のような行政事案につきまして訴訟があっ場合の審査、確定の現在の法制度にも触れてのお話かと存じますが、いろんな議論はあり得ると思いますが、現在選挙につきましてはできるだけ事柄を早く確定するようなことにいたしたいということで行政上の不服審査の制度をとっております。したがって、県の選挙管理委員会選挙後二カ月早々で事柄の決着をつけようとしたわけでありますけれども、しかし、いまの日本全体の法律の制度としてやはり最終的な確定は裁判所にゆだねるという立て方になっているものですから、その後三年以上も経過をしたという形であります。いずれにしましても、法制的には山田さんの当選が選挙管理委員会確定をされて、それが正式に公の機関で否認されるまでは山田さんは有効に村長として職務を行ない得るという現在の立て方になっておりますので、事案が裁判所において最終確定をすれば、それに従った措置がとり得るという形でございます。
  57. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それは法的に明らかなんですか。
  58. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 当選人の当選は選挙管理委員会が第一義的にやりまして、それが法律上の制度として有効に取り消しの効果が出るまではその当選は有効なものという現在の仕組みでございます。
  59. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは、二転、三転したわけです、この選挙の結果がですね。なぜそういう二転、三転しなければ最終的な結果がわからないか、ここに私は問題があると思うのです。なぜかということなんです。
  60. 中村啓一

    説明員中村啓一君) この清川村の実態は、私ども関係の方々からいろいろ承っておりますが、やはり全く村を二分しての争いであったということから、かなり選挙戦も激しかったようでございます。そういう形でほとんど票がすれすれでありましたので、一つ一つの票の読み方というものに、やはりかなり意見が分かれる余地があったというのは事実のようでございます。まあ主として開票にあたりましての投票記載の有効無効、投票記載の読み方というようなものをめぐって深刻に争いがあったように考えております。
  61. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その辺のところがちょっと明らかじゃないんですけれども、こういう問題はこれだけじゃなくて、ほかにも異議申し立て等があってというような問題が、この問題に限らずほかにもある。そこでその結果の、いわゆる選挙の問題が、これは一つのこういったケースの問題点だろうと思います。そこでこの裁判の迅速化、これをやっていかなければ非常に不公平なものになる、こういうことが言えると思うのですね。そこで裁判の迅速化ということについて、これは裁判所の仕事だということでなくて、自治省として選挙を進めていくその主宰者としてそういった点についてどういうふうに考えておられるのかということですね。裁判所としても昭和四十二年の十二月には最高裁の事務総長から、高裁長官あるいは地方裁判所長あてに裁判の迅速化ということについては通達が出ておる。にもかかわらずその後さっぱり改革されていかない、これは一つ問題点だろうと思います。この点をどういうふうに今後いわゆる改革していくかということが一つの大きな問題じゃないか、こう思います。この点どういうふうにお考えになっておりますか。
  62. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 上林先生の仰せのように、選挙裁判がいわゆる行政事案としても、また特に刑事の案件としても非常に時間がかかり過ぎるということは前々から指摘をされておりますやはり一つの大きい問題だろうと思っております。従来それを解決するためにいろいろな論議もございまして、一部では特に裁判所の中に選挙を専掌する部門をつくって、いわゆる選挙部を置いてやったらどうかというような論議も従来の審議会の中で言われてきておったところでございます。しかし、裁判をそういうふうに専門的に分けてしまうということにつきましては、いまの裁判制度の上から問題だというようなことで今日に至っておるわけでございます。ここでいま直ちに裁判迅速化についてかような考え方があり得るということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、いずれにしても、一つの大きい宿題であるということで、これからいろいろな機会に論議をしていっていただきたいことだと思っております。
  63. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、この問題についてちょっと大臣にお尋ねをしてみたいと思うのですが、たとえばブラジルとか、フィリピン、あるいはギリシア、グァテマラだとか、ボリビアというふうなこういう低開発国といいますか、それらの国の、私の調べたところでは十六カ国にわたるわけですけれども、こういう国々は選挙に対する裁判、そして管理、こういう問題を一括してやっておるということで、非常にそういった点で、こういった問題は、選挙に対する裁判等については非常に迅速化がはかられておるということなんです。こういった方向をやはりとっていかなければ、いまの体制が体制がと言っているうちは、いつまでたってもこれは解決できないんじゃないか。やはり抜本的なというか、そういった考え方で進めていかなければならぬじゃないか、こういうふうに考えるのですが、この点について大臣としてどういうふうにお考えになるのか。
  64. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) ただいまの上林先生の御意見、ただいま中村選挙部長からお答えしましたところとその軌は一にいたしておるところと思います。何か選挙訴訟を取り扱う特別の機構を考え選挙に関する裁判の迅速を期するということは一つ考え方であると思うのでございますが、この点は法務当局とも連絡をいたしまして、今後何らかの考慮をするということが必要かと存じますが、何ぶんいろいろ関係方面もあるデリケートな問題もその中にあると思うので、検討させていただきたいと思います。しかし、根本的にはこういう訴訟を起こす原因をなくすように選挙に関するあらゆる方面の啓蒙開発に十分尽くすということが必要だろうと考えられるのであります。
  65. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 では次の問題にいきます。  これもおもしろい問題で、兵庫県の加古川の市長選ですが、昭和四十一年七月に行なわれた。これはだいぶ古いですね。この間、次の市長選が行なわれたわけですけれども、そのときに、したがって前々回ですね、四十一年の七月に行なわれたときに、やはり決定を不服として異議の申し立てがあった。ところが、これが覚え書きを手交して、そしてこれが暗黙のうちに葬られておるというような問題があるわけなんです。この点につい  て調査をお願いしてあったわけなんでございますけれども、これについてひとつ御説明いただきた  いと思います。
  66. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 上林先生からお話のありました事案の一つ、加古川市長選挙をめぐる問題がございます。選挙がありましたのは昭和四十一年七月十七日のことでございまして、二人の候補者がありまして、一人は一万七千七百九票とりました。次の人は一万六千六百十一票とりました。したがって、一万七千七百九票をとった人が当選になったわけでございます。その後落選をした人からどうも開票に疑問があるということで、異議の申し立てをしたいという意向がありました。しかし、市の選挙管理委員会としては開票に疑問があるなんていうことは、まことにどうも体面上困るから、ひとつそういう異議の申し立をやめてほしいということで話し合いをいたしまして、そこでこれが非常に妙なことで恐縮をいたすわけですが、この市長の任期が終わったら、開票結果についてあなたに全部票を見せてあげますという覚え書きをやったようでございます。そこで異議申し立ては、じゃやめようということになったというような事案がありました。で、四年たちまして、ことしの七月十九日に任期満了によって新しい選挙が行なわれまして、その当時の市長さんはさらに再選をされたわけでございます。そこで四年前落選をなさった人が覚え書きをたてにとって、ぜひ前回の票を見せろという話に出て、それが表に出て問題になったということでございます。事柄はどういう意味ででも選挙管理委員会というような立場でなすべきことではございませんでして、いろいろ県の選挙管理委員会とも相談したようですが、とにかくそういう法外もない覚え書きというものはとても有効なものとも言えないし、また神聖な開票の一つ一つをそういう覚え書きのゆえをもって見せるわけにはいかないということで相手方に連絡をして、相手方も不承不承それで終わってしまったというのが事案の全体でございます。
  67. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いまのお話しわかりました。そこでこの中に市の恥になるという理由が含まれておる、こういうことがいわれておるわけですけれども、市の恥になるとか恥にならないとかいう問題ではないだろうと思います。そこでその辺のところの事実関係はどうかということなんですがね。
  68. 中村啓一

    説明員中村啓一君) その点について、私どもも聞ける範囲で事情を探ったわけでございますが、どうもやはり選挙関係者として開票に疑問を持たれるというようなことはとてもたまらないということで、当時の選挙管理委員長なり委員なりの関係者が集まって、その当時の関係者としてはそれが一番いいんだという気持ちになって事柄を処理したようでございました。しかし、いずれにしても、その点は私どもとしては、はなはだ遺憾な措置であったと感じております。
  69. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題についてはこれ以上申し上げませんけれども、いずれにしても不手ぎわであるということには間違いありませんね。これがどっからどうしてそういう選挙管理委員会等からそういう不手ぎわな問題が起きてくるかということが私は問題じゃないか、こう思いますが、それはそれとしまして、もう一件お尋ねをしてみたいと思うんですけれども、これは九月一日の新聞でございますけれども、大分の久住町というところがあります。そこの当選確定になった町会議員が最高裁から連座制の適用を受けておる、したがって、これは議員として失格したわけですね。にもかかわらず、一年七カ月もの長い間ほっかぶりをしてその議員の席におったという問題が報道されているわけですけれども、この問題御承知ですか。
  70. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 詳細につきまして承知をいたしてはおりません。
  71. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、これにつきましてはこれ以上お尋ねしてもお答えがないということですか。調べてからということですか。
  72. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 上林先生から選挙管理なりをめぐる問題で、どうもまことに恥ずかしいことを申し上げなければいけないことを恐縮に存じますが、先ほど来の問題あるいはただいま御指摘のような点、私ども選挙関係者が十分にそういうことはごくごくの例外ではございますけれども、そういうことが国会で取り上げられたということは、選挙管理に当たる全体のたいへん反省をしなければいけない問題でありますので、会議その他で十分なる注意の喚起をいたして、こういう御指摘を受けないようにぜひ対処いたすつもりでございます。
  73. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題もこれ以上申し上げませんけれども、とにかく町の選管も失格したということについて、最高裁からそういった判決が出たと、それが報道されておる、報道されておっても問い合わせもしようとしなかったということなんですが、そういったようなことで、したがって本人にも辞職のすすめもやらないというような状態で一年七カ月過ごしてしまった、こういう問題なんですよ。ですから、これは選挙管理のずさんさといいますか、それに尽きると思うんです。こういった問題、いまお話があったように、こういう問題が起きていかないように十分注意をしていくということでございますので、まあ詳しいことがわからなければ、これは一回現地に問い合わせをやって、その事実を明らかにして、なお今後こういう問題が発生しないように手を打っていかなければならぬ、こう思います。そこで、いままで何点かお尋ねをいたしました。  それからもう一つお尋ねしておきたいことは、つい最近に鎌倉市の市長選挙がございました。このときに大体二百枚ぐらいの入場券が紛失されたという問題がある。それがどうしてこれが二百枚からの多くの入場券が行くえ不明になってしまったのか、これは明らかになっていない。その後これについて何らかの事実をつかんでおられるかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  74. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 初めにお話のありました大分県の久住町の件につきましては、なお実態を把握した上であらためて申し上げますが、関係者がいま知っておる限度では、最高裁の通知を忘れていたため、こういう結果になったということでありますけれども、その点はよく事実関係を調べましてあらためて申し上げます。  それから先般八月二十三日に行なわれました鎌倉市長選挙の際におきまして、入場券がかなりの枚数、約三百枚といっておりますですが、確かに配ったはずなのに届いていないという事態があったようでございます。その事態は選挙の前にわかりました。関係者がいろいろな照会を選管にしたことによりまして、わかりました。したがって、選管としては、とにかく応急の措置をとりますとともに、入場券が二重に——二重にと申しますか、本来の選挙人でない人が出てまいった入場券によって別の投票をする、一人が二票投票するというような結果にならないように最善の措置をとったようでございました。したがって、選挙管理委員会の報告によりますと、二重投票の事実は認められなかったということでございます。まあ聞いてみますと、大体従来とも入場券を配布するにあたりまして、鎌倉市の選挙管理委員会は郵送によっておるようでございます。で、まあ何回かの選挙で二、三十枚はどこかへ消える、それが盗難かどうなのか、なおはっきりつかみかねますけれども、そういうことはあったけれども、まあ今度のように三百枚ということになりますと、非常な激増でもありますし、事柄の真実をきわめなければいけないということで関係者におきまして、警察と連携をとっていろいろな調査をやっておるようでございます。鎌倉市としてもひとつ徹底的に警察と相談をして原因の追求をしたいということで、現在考えておるところであります。
  75. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題なんですけれども、表書きですね、入場券の。郵送の場合の住所表示ですね、これについてこの印刷については印刷会社に、東京協栄センターに入場券の作成を依頼したということであります。これを発送する責任者というのは、これはだれがやったんですか。
  76. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 鎌倉市の場合におきましては、選挙人の名簿の抄本の作成でありますとか、あるいは入場券の作成につきましては電算機によってやるということで東京協栄センターに委託をしてやったようでございまして、関係者として必要な職員が随時見ておったようであります。しかし、そういう結果になりましたので、あらためて選挙管理委員会なり市の関係者としては先月の二十八日ですか、警察の捜査官と一緒に東京協栄センターへ行きまして、まあ抜き打ち的に無差別で検証をやったようであります。しかし、その結果は協栄センターの作業過程における問題はなかったということのようでございます。
  77. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 作業上では問題はないということですね、これはやはり二重投票は行なわれていなかった、したがって、これは問題ではなかったんだというような問題では私はないと思う。それならば何も入場券を郵送する必要はない。その点に考え方を明らかにしておかないと、また今後こういう問題が発生するという可能性はあるというふうに考えます。十分この点は厳重に御調査の上しかるべく措置をとっていくべきである、こう考えます。  そこで、最後に、大臣にお尋ねをしたいんでありますけれども先ほど多田委員のほうから、選挙庁の問題がございました。そこで中央部のいわゆる選挙管理体制の拡充強化、こういった立場からそういったことが考えられているわけでございます。で中央の管理体制の強化もさることながら、いま申し上げたように、地方にはいろいろな問題が発生しておるわけです。その問題についてはいろいろな理由、原因があろうと思います。しかし、問題があるということは事実である。その問題の発生する一つのやはり原因として地方の選挙管理体制の欠陥というもののこれはあらわれである、こういうふうに感じます。そこでやはり中央の管理体制の強化とともに地方の管理体制の強化ということについて大臣はどのようなお考えを持っておられるのか、また、今後どういう方向に進めていこうというような考えを持っておられるのか、その点についてひとつお答えを願いたい。
  78. 秋田大助

    国務大臣秋田大助君) 確かにただいま上林先生から御指摘の数々の選挙管理上その他の選挙事務上の不手ぎわに発したいろいろの問題、これらはすべて地方における選管の機構上あるいは機能上の不備を、あるいは欠陥を一部示すものであろうと思います。したがって、これらの地方選管の機構あるいは機能上の強化整備、その事務処理の適正化をはかるためにも、自治省としても指導上の点に意を注ぐとともに、また地方首長の方々にはこれらの点について積極的な御協力を平素要望いたしておるところでございまして、ただいまのことにつきましてはさらにさらに意を用いまして、配慮をいたして、適正にしてまた適当な、間違いのない選挙管理上の事務処置あるいは管理処置が行なわれるよう配意いたしてまいりたいと存じております。
  79. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この中央の管理体制の強化は当然私もあるべきだと思います。しかし、それがなされたからといって地方における選挙に対する体制が強化されるというものではないと思います。いろいろ具体的な問題が私はあると思うんです。それで具体的な問題を幾つかあげてお尋ねをしてみたいと思うんですが、たとえば選挙管理委員、これは現在非常勤である、これはやっぱり常勤にする必要があるんじゃないか、常勤にすることによってそこにいわゆる責任感というものが当然起きてくる、そういういわゆる選挙管理委員会委員の常任化ということも一つの私は方法ではないか、こういうふうに考えるわけですが、この点の方向について大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  80. 中村啓一

    説明員中村啓一君) お話のございましたように、都道府県に選挙管理委員が、また市町村にも同じく選挙管理委員がそれぞれ四名置かれております。まあ選挙管理委員のお立場は、やはりほんとうに選挙の公正が担保されるような意味で目を光らせていただくというところにあるものと存じております。したがって、お仕事の実態から必ずしも常勤でないといけないというふうなものではないのじゃないかというのがいままでの法制の立て方でございます。しかし、まあ選挙人に対しまする政治啓発というようなことも選管の仕事なので、せめて一人ぐらいの委員は常勤にしたらどうかという動きのあることも事実でございまして、いま直ちにそれをすべて常勤化というふうな形にまで踏み込むのも選挙管理委員の性格として問題の余地はあろうかと思いますが、選挙管理委員さんがほんとうに選挙管理の第一線の指導にどんどんお働きをいただけるような姿に、いろんな面の配慮は進めていきたいというふうに存じております。
  81. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、いまのお話ですと、その管理委員会委員の常任化ということについては、今後その方向には考えていないと、こういうふうに理解していいんですか。
  82. 中村啓一

    説明員中村啓一君) まあ選挙管理委員のことを規定をいたしております現在の地方自治法では、委員は「非常勤とする。」とあるわけでございます。その立法の趣旨は、申し上げましたような公正担保ということに主眼を置いてのことでございました。しかし、選挙管理委員制度が発足をして二十数年たちまして、その間やはり選挙管理委員の手による選挙啓発というものが常時必要だという動きが次第に出てきておることも事実でございます。そこで私どものいまの考え方では、直ちに法制を切りかえて常勤にしなければいけないというまでに踏み切るにはなお検討する余地があろうかと思いますが、しかし、選挙管理委員会の運営につきまして、いまよりもさらに活発に委員さんがそれぞれの役所へ来てお働きになれるような余地として、必要な財政上の配慮なり何なりという点について、私どもとしては充実をしていくように考えていきたいというふうに存じておるわけでございます。
  83. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いままで申し上げた地方に起こっておるいろいろな問題がある、そういう問題とは選挙管理委員会というのは関係がないと、こう考えていいんですか。
  84. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 選挙管理委員一つの政党に片寄らないで、大所高所の立場に立って選挙管理の政治的な中立性の確保をはかるというところに設置のねらいがあると思います。しかし、また同時に、選挙管理委員制度は、市町村長なり都道府県知事と離れて選挙の最高責任者という面もあるわけでございますので、事柄について責任がないわけではございません。
  85. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そういった体制、理屈の上ではいまおっしゃったことはわかりますよ。だけれど現実にはそういう問題が発生しているということは、あなたのおっしゃるとおりに選挙管理委員会それ自体が運営されておらない、そういったところに私は問題が起きてきている一つの原因があるんじゃないか、こう思うわけです。そういう意味で、いわゆる常任化が今後必要なんじゃないか、こういうふうに申し上げているわけです。その点どうお考えになりますか。
  86. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 上林先生の仰せ趣旨はとくと理解をいたします。私どももやっぱり選挙管理、選挙啓発の面についてさらに選挙管理委員が活躍をするという余地をなお多くしていくのが好ましい方向だと思っております。したがって、そういう意味で選挙管理委員さんが十分にお働きになりますような体制に事務的な面について事務当局が配慮をするというようなことについても推し進めますし、また、必要な財源的な配慮というような面についても考えていきたいというふうに思いますので、方向としては上林先生の仰せとそれほど違いません。しかし、法律制度の上で直ちに常勤にするというのにはちょっと踏み切りかねておるということでございます。
  87. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その点はわかりました。私も、いま一つ規定された法律がある、そういう中で直ちにやれということを申し上げているのではなくて、幾多の事件を取り上げて、それがどういうところから起因するのか、方向としてはこうあるべきじゃないかということを申し上げている、その方向を示していただきたいと、こういうふうにお尋ねをしているわけです。そうなりますと、財源的な措置やいろいろな問題もあるわけで、その点についてもいまの御答弁でわかりました。  そこで、これもまた具体的になりますけれども、啓発職員の問題がたびたび出てまいりましたけれども、やはり啓発の専門職員というものはどうしても私は必要だと思います。これについてやはりこれからの考え方ですね、それをどういうふうにこの問題について考えていられるか、この点ひとつお答えいただきたい。
  88. 中村啓一

    説明員中村啓一君) 選挙啓発にあたりまして選挙管理委員会がどういう役割りをになうかということについては、論議をすると非常にむずかしい問題も多いようでありますけれども、したがってまた、選挙啓発ということは選挙管理委員会だけが専売特許のようにやるべきものではないと思いますが、したがってまた、選挙啓発はごく多元的に行なわれるべきだと思いますけれども、しかし、やはりそういう多元的に行なわれます啓発事業について、連絡調整の役割りを選挙管理委員は果たすべきだというふうに存じます。そういう意味ではやはりそれぞれの主として市町村でありますが、啓発にたんのうな職員を確保していくということはぜひ必要なことだと存じております。で、初めにお話のありました選挙管理委員としての活動、これも選挙啓発という面で非常にやるべきことが多いと思います。そういう意味で初めのお話しの選挙管理委員の活動経費の拡充ということとあわせまして、私どもとしては啓発職員の確保、それに必要な活動経費の確保ということにつきましては、いま十分だとはとうてい言い得ないと思います。もっともっとこれを充実するように努力をしていきたいと思います。
  89. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。で、いずれにいたしましても、このいままで取り上げてきたいろいろな問題、それは地方の選挙管理体制というものが不備なところから、開票の結果、実際に票をとっている人が落選して、そして少ない者が当選しておるというような問題、これは選挙にとって大きな問題だ。そういった不手ぎわが起きているということはいま申し上げてきた地方の管理体制というものが非常に甘い。したがって、そういった中で、こういう問題が起きてきているのだということを私は強く感ずるわけでして、そういった点を本気になって取り組んでいかない限り、幾ら中央の体制を強化拡充したところで、私は現地の体制が甘いのでは、これは自治省考えているような効果をあげることはできないのじゃないか。こういうふうに強く感じるようなわけでございます。その点ひとつ十分にいま申し上げたことにつきましては御考慮いただきまして善処されんことを要望いたしまして終わりたいと思います。
  90. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 本件はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十三分散会