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国務大臣(
山中貞則君) 人の健康にかかる
公害犯罪の処罰に関する法律案という一応の仮称をもっていま
作業をいたしております俗にいう
公害罪、これは刑法の特例でございますので、刑法の特別法として制定を
予定し、次の
臨時国会に提案をすべく準備が進んでおることは先ほどの法務省の
答弁によって明らかなところであります。
無過失責任に関する問題は、挙証責任の転換の問題と関連をいたしますけれ
ども、これは民法の特別法として議論しなければならない別の分野でございますので、民法の中から
公害に関する分野のみをどのように抽出して、しかもこれを無過失責任という立場において賠償を決定づけようとするか、これは法理論上、法体系上、あるいは裁判の維持上、たいへんむずかしい問題があるようでございます。私しろうとでございますが、十分そのむずかしさは私もわかります。次の
臨時国会に間に合わせるべく夏以来
努力いたしてまいったのでありますが、それらの法務省の中の議論並びにいろいろ学者の議論等、
現実の問題としてもなかなか
臨時国会までには間に合わないという見通しが立ちましたので、たいへん遺憾でありますけれ
ども、これを
臨時国会において提案することは見送る、しかしながら、その過程において
要請されましたと申しますか、裁判、司法関係側の意向として、一般行政法等の中においてもそのような思想を、たとえば原子力基本法等のごとく明確なる範疇のものはいろいろ検討されておる法律の中で取り入れられるだけ取り入れてほしいと、それを受けて民事法の裁判をやりたい。
自分たちも引き続き純粋の特別民法としての無過失責任というものを打ち立てるための研究
努力をいたしますと、できれば次の通常国会までに間に合わせたいということで双方
努力をいたしておるところでございます。先ほど
内田厚生
大臣から
お話がございましたように、前の国会で御審議、通過決定いたしました
公害紛争
処理法による中央
公害審査
委員会が十一月一日発足をいたしました。たいへん優秀なメンバーを幸いにして——こんないやがる
仕事でございますから心配いたしておりましたが、それにもかかわらず集めることができました。集めるというのは失礼でございますが、お集まりいただくことができまして、私としては、この中央
公害審査
委員会の御活動は——先般、法の権力を背景にしないで、厚生省が
ほんとうに苦心惨たん、あっせんの労をとられて、水俣病の一部、
部分的な解決をした、これらのものがすべて今後は厚生省にわずらわして苦労をかけることなく、
政府全体において行政の中における可能な限りの分野として、和解のあっせん、調停、仲裁等につき当事者間の合意を得らるべき
努力を続ける機関ができた。このことは一歩前進であり、この運用いかんによって私は非常にこれは貢献をし得るものと考えるわけでございます。某通信社と申しますか、報道機関の
調査によりますと、日本の大企業大手百社の社長もしくは副社長等会社の責任ある地位の人々に対するアンケートの集計の結果を見まして、私は非常に興味を持ったのでありますが、いま一見、いかにも企業というものはがんこで、裁判にとことん持ち込んで争おうではないかという姿勢をとっているやに見受けるのでありますけれ
ども、事実はそうでないということがうかがわれるのでありまして、このアンケートのたとえば裁判に持ち込んでもいわゆる黒白をつける、いたしかたがないという考え方の人はわずか百人のうち二名しかおりません。大多数、ほとんど九〇%の方々が
地域のお互い同士の話し合いにおいて解決したいというアンケートになっている。さらに第三者のあっせん、すなわち今回出発いたしました中央
公害審査
委員会みたいなものによって調停その他の労をとってもらって片づけたいということに圧倒的な希望を示しておられます。このことは私も静かに考えてみますと、やはり企業というものは、反社会的な企業のイメージを植えつけられることはやはり避けなければならないし、避けなければ企業そのものが反社会的企業、場合によっては殺人企業のイメージを与えた結果、新規の社員募集さえ困難になってくる、あるいは当然必要とする企業の進出さえもあちこちで断わられていくというような
事態に遭遇しておる事実等から勘案をいたしまして、ある意味ではもっともな結果であるようにも受け取られるわけであります。このことは結局は中央
公害審査
委員会がどの
程度お役に立てるであろうかと思っておりました私の危惧を、逆に中央
公害審査
委員会はたいへん忙しい役所に、
機能になるのではないか、これはたいへんうれしい、と申しては語弊がありますから、その表現は採用しないことにいたしましても、予期せざる信頼なりあるいは委託を受けて活動することになるのではないかということを、いま思っておるわけでございます。
さらに、現在の行政の限界の一ばいにおいて、裁定というところまでいけませんので、そこらの点は憲法上の制約もこれあり、やはり無過失責任というものをどうしても民法の特別法によってさらに補完をしていただくということが必要になってくることは、
内田厚生
大臣の言われたとおりでございまして、
政府の姿勢として、意見の違う、意思の疎通を欠く点はございませんので、なるべく早くそのような体系が行政法規の中においても、あるいは特別法の、民法の中においても打ち立てられるように
努力をしてまいりたい所存でございます。