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1970-04-24 第63回国会 参議院 公害対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十四日(金曜日)    午後一時三分開会     —————————————    委員異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      河田 賢治君     須藤 五郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松井  誠君     理 事                 中津井 真君                 内田 善利君     委 員                 奥村 悦造君                 川上 為治君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 加藤シヅエ君                 亀田 得治君                 小平 芳平君                 須藤 五郎君    国務大臣        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       青鹿 明司君        経済企画庁国民        生活局参事官   西川  喬君        厚生省環境衛生        局公害部長    城戸 謙次君        通商産業省企業        局立地公害部長  柴崎 芳三君    最高裁判所長官代理者       最高裁判所事務       総局民事局長    矢口 洪一君    事務局側       常任委員会専門       員         中原 武夫君    説明員       厚生省環境衛生       局水道課長     国川 建二君       厚生省環境衛生       局食品衛生課長   鴛淵  茂君       厚生省薬務局薬       事課長       山高 章夫君       通商産業省企業       局立地公害部公       害第一課長     児玉 清隆君       通商産業省鉱山       保安局鉱山課長   下河辺 孝君       建設省河川局河       川計画課長     川崎 精一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害紛争処理法案内閣提出衆議院送付) ○公害紛争処理法案衆議院送付予備審査) ○公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 松井誠

    委員長松井誠君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨二十三日、河田賢治君が委員を辞任され、その補欠として須藤五郎君が選任されました。     —————————————
  3. 松井誠

    委員長松井誠君) 公害紛争処理法案閣法第一八号)、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案閣法第二〇号)、以上、いずれも衆議院送付公害紛争処理法案(衆第五号、予備審査)、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 割り当て時間が六十分ですから、大まかな大事な基本的な問題だけ長官に若干お尋ねしたいと思うんです。  その前に、今度の紛争処理法提案理由説明の中にも書かれておるんですが、公害関係紛争裁判所に持ち出しても、なかなかはかばかしくいかない、こういうことがこの紛争処理法提案一つ理由にもなっているわけですね。そこで、きょうは裁判所から民事局長来てもらったわけですが、かいつまんで言うと、どういうところに問題があるのかという点ですね、もちろん個々のケースによっていろいろ事情が異なるわけですが、大体一般的に議論されておる問題点というものはあるわけですね。その点について、まず局長からお答えを願います。全部で一時間ですから、ひとつ簡潔に局長のほうでお願いします。
  5. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者矢口洪一君) お尋ねのむずかしい点ということでございますが、まず事案の事実の認定が非常にむずかしいということでございます。事実と申しますのは、結局原因と結果を、それがある原因からある結果が生じたと申します場合に、その結びつきを全部ひっくるめて事実と申し上げておるわけでございますが、その認定が非常にむずかしいということでございます。  それから次に、何ぶんにも新しい問題でございますので、これを救済するについてどういう救済のしかたをすればいいかということの法律問題がむずかしいということでございます。損害賠償ということだけでやるのでございますれば、これはまた事実の認定被害範囲をどう認定するかという問題でございますが、その前にこれは差しとめていくとかということになりますと、そういった法律構成が可能であるかどうかという点についての法律問題が非常にむずかしい。大体大きく分けてこの二点になるのではないかと存ぜられます。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういうことだと思います。  そこで、そのことは単に問題が司法裁判所にかかったときだけむずかしいわけじゃないんです。この紛争処理法処理をする場合でも同じことなんですね。和解、調停あるいは仲裁と、こういう三つの手段がここに書かれておるわけですが、これはいずれにおいても出てくる問題です。基礎がはっきりしないことには前進しないわけですから、ただ裁判でやる場合には一そうはっきりしないと処理しにくいということであって、非常に共通した面があるわけですね、処理しにくいという点では。だから、そこで私は、このいま司法裁判所で問題を扱うときに困っておる、そのことについて基本的な抜本的なやはり考え方というものを制度として打ち出していきませんと、同じことが行政機関の中でもだらだら続くんじゃないかという気がしておるわけです。端的に言いますならば、事実関係ということをどうはっきりさせるかということがまず第一でしょう。訴訟の場合ですと、まず請求する者からそれを明らかに証明していくと、普通の事件であれば。されたほうがその反証を出すと、こういう普通の順序ですね。それに対してどうもそれでは被害者に気の毒だと、そういうことから最近は裁判所でもその立証責任転換といいますかね、そういうことについて相当考慮をされておるようですが、その辺の問題をもう少し制度としてはっきりする必要があるんじゃないかと私は思っているんです。  それからもう一つは、そういう因果関係が明確になった現在の制度ですと、いわゆる故意過失というものが前提になりますね。その点の争いというものが、また次には残るわけでしょう。そこに入っていきますと、また非常に判断のしにくい問題が出る。しかも材料は加害者側がすっかり持っておる。なかなか被害者のほうはその辺が、やはり立ち向かうに不利な点があるのですね。だからそれをさっぱり解決しようと思えば、ともかく因果関係がある程度明確になれば、もうあと反証加害者側ですべきだ。そこが、そういうやり方で、まあ半ば因果関係立証責任転換しておいて、そこさえ明らかになれば、あとはもう故意過失の問題は問わないで、いわゆる無過失責任を課していく、そこまで発展しませんとね、中途半端だと思うんです。裁判所もそれで困ってるわけでしょう、その二点で。大きくいえば二点。
  7. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者矢口洪一君) ただいま御指摘のとおりでございますけれども、その点が一番大きな問題として取り上げられておるわけでございます。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、総務長官にお尋ねしたいんですがね。いろいろ公害関係のことを担当されて御苦労願ってることはわかるわけですが、たとえば基本法の、第三条、四条、五条、六条、この辺に、事業者なり国なり地方公共団体、住民なりの責務というものが書いてあるんですが、しかし、何といっても最大の責務は、これは第三条ですね。原因者ですよ、原因者。この辺の書き方をずっと見ますとね、無過失賠償責任に一歩進まれてもいいような感じまでするんですよ。だから、そのことに対してもう一歩踏み出してもらえないかということを、いろんな問題にぶつかってみて感じておるんです。挙証責任転換と、無過失賠償責任、これを制度的に明確にする。総務長官、どうですか。
  9. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 亀田委員先ほどからおっしゃっております、現在の司法制度の中に、訴訟に持ち込まれた場合の阻害要因、さらにそれに加うるに、現在訴訟係争中のものを見ますと、今度は裁判手続その他で、またさらに問題の本件を離れたような争いなどが、それが本流になってしまっているようなケースもあるように思います、過程においてですね。そこで、行政権の中では裁判権の分野に入ることはできない、限界が厳然としてあるわけですから。公害対策基本法に基づいて紛争処理法案を出すということにいたしましても、なかなかその限界の問題がむずかしゅうございまして、しかし、かといって、いま一番公害の問題に対して考えなければならない政治の姿勢は、どんなに国の経済が発展していきましても、やはり国民生存権、人命健康というようなものが、まず大切にされる環境でなければならぬということが、どうしてもそこに埋没してはならないことであろう。そのためには、司法制度そのものでは、やはり制度の中で争うわけでありますから、いろんな、やり方によっては長引かせることも可能でありますし、そこで、訴訟問題にしない形で、両者に一〇〇%の因果関係等の承認が得られなくとも、ここらでひとつどうですかという意味で御相談を願うということで、そこで円満に片ずくパーセントがふえればふえるほど、少なくとも裁判の上で結果がはっきりしないために、病床に呻吟しもしくは痛みに苦しみあるいは不幸にして生命を失う、なお、片づかないという人々が、少しでも何%でもこの制度の中で救われていくケースがあればという念願をもって、一応今回の法案提出いたしたわけでありますが、そのようなことが前提になっております場合に、私はいま出しておる法律が、全部これでよろしいとも思っておりませんし、これから先、日本公害もアメリカにおいてさえ、あのようなきびしい措置が次々と打ち出されておりますし、大統領の姿勢から見ましても、公害白書みたいな姿勢を打ち出している。大企業に一日一万ドルというような罰金もどんどん取り立てるようなことをやっていっているようであります。日本も遠からず公害問題は、この程度のものでは間に合わない日はもう近い。少なくとも、われわれとしては、もっと一歩前進して、政府姿勢として、国の工業を発展しても、その中に人間性生命、健康というものが取り残されていくことのない国家を先手を打たなければならぬ時代はもう近いのだということを考えております。しかし、今回出しました法案は、前国会におきまして、衆議院委員会等において通過をいたした実績等もございますし、そこでとりあえずは、委員会において修正されましたものを今回は原案といたしまして、さらにそれぞれの意見等がございましたものを、われわれとしては、虚心たんかい承りまして、さしあたりこの段階で出発をさせていただくというつもりでございまして、決してこれで完ぺきで十分だというつもりではおりません。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁のほうで、公害関係にタッチしている裁判官を集めて挙証責任の問題等検討されたようですね。その結論の模様、その結論的なものを出す会議でもないようですが、模様は大体聞いておりますが、しかしどうなんですか、いままでのその法体系をそのままにしておいて、非常に大幅な挙証責任転換をやっていくということは可能なのかどうか。訴訟指揮ということだけで、そうしてまた訴訟指揮だけにまかすのであれば、これはやはり裁判官によってまちまちな結果が出てくるわけでして、そういう点について検討されておることは、非常に私は前向きのいい姿勢だとは思っておりますが、そこまで来るのであれば、刑事訴訟法なりあるいは民事訴訟法なり、あるいはどういう場所で規定していいか、立法論としてはちょっと問題があろうと思います。何らかのやはり法的な措置というものをとらなければ、あまり思い切った実効のあがる訴訟指揮ができないんじゃないですか。実際問題として相手があるわけですから、相手はやはりいろんな理論を展開するわけですから、どうなんです。
  11. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者矢口洪一君) 挙証責任転換ということになりますと、御指摘のとおりでございまして、運用あるいは訴訟指揮だけで、それを完全にやってのけるということは、亀田委員も十分御承知のように、いまの訴訟法規定そのものからは無理でございます。ただ事実推定理論でございますとか、蓋然性の理論といったものを大幅に大胆に取り入れていくことによって、相当程度までの実効を期し得るのではないかというのが、御指摘の会同で出てまいりました意見の大勢であったわけでございますが、これとて現に進行中の事件で、まだまだ緒についたばかりの問題でございますので、私ども、はたしてそれで十分であるかどうか、いましばらくの経過を見てまいりませんと、何とも実務的に申し上げられない。ただ方向としては、そういった方向精一ぱいの努力をしていきたいというふうな考えを現在のところ持っておるわけであります。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば規則等相当こまかい点、規定してある事項がありますね。それにならって必要な程度に具体化していくというふうなことはできるんじゃないですか。
  13. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者矢口洪一君) 訴訟手続プロパーの問題になりますと、ある程度規則でやることも可能でございますが、もとに戻りまして不法行為、それに基づく損害賠償という問題になりますと、これは実体法規の問題に入ってまいりますので、やはりある程度ルールだけでまかなうということはきわめて困難な面があるのではないかと考えております。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、なおさらどこかで無過失責任の問題と訴訟責任の問題、これは制度的にも明確にしませんと、私は司法裁判所だけじゃなしに、公害に関するあらゆる紛争において徹底を欠くと思うんです。だから、方向としてはそういう方向で考えておるということは、総務長官これはお答え願えますか。
  15. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほども申し上げましたように、立法司法行政三権の分かれ目の問題にどうしても踏み込んで議論がされなければなりません。私は、この法律案衆議院を通過いたしました後も、私の役所の内部でさらにこれを展開するためにはどこまで行けるものなのか等については勉強会をいたしておりますが、方向としては、いま言われた方向をやはり国家の、国の姿勢として国民に示すべき時期にもう来ておるというふうに考えます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、今度の法案、第三十五条ですね。「調停をしない場合」ということが書いてありますね。調停委員会にかかったんだけど、調停をするのに適当でないと認めると、そういう場合には調停をやめることができる。こういうふうなことが書いてあるんですね。そういう場合に、これは調停委員見解によって非常に違ってくるわけですね、実体法がはっきりしておりませんから。多少不明確であってもまあ大体この原因者原因をばらまいていることは間違いないんだから、その体制でいくんだというその実体法がきちっとしておれば、どなたが調停委員になりましても、調停を打ち切るというようなことはない。そうでないと、それがすべて調停委員気持ちによって、いやこんな程度はお気の毒だけれども、どうもこれ以上進めるわけにはいかぬというようなことで、打ち切られる、また賠償しなきゃならぬ立場にある人は、できるだけそういう議論を出したり、それに引きずられる、引きずられない、いろいろありまして、せっかくの制度が非常に信用を失墜するということになると思うんですね。だから、総務長官先ほどお答えになったような気持ちが腹の中にちゃんとあるならば、この法案が通った後のやはり運用のしかたですね、この面について十分ひとつ検討されて、そうして相当きちんとした方針というものをやっぱり出してほしいと思うんですね。それはそういう方針を出しても、それは総務長官個人見解だと、実体法がそろっておらぬと、そういう理屈も出てくると思いますよ。弁護士がついたりいろいろするとよけいに。しかし、そういう基本方針総務長官のほうでないということになれば、よけいぐらぐらするわけですから、その点を私非常に一番心配している点なんです。だからどういう通達等を出していいか、これもなかなかむずかしい問題だと思いますが、これこそ最高裁なりの経験等も取り入れよく検討されて、適当なしかも強い指導というものをお願いしておきたい、そういうことをやってくれますか。
  17. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たてまえとしては調停の成立することを願ってやるわけですけれども、いまおっしゃったような現象が必ず起こるケースがあると思います。そのときにはやむを得ず打ち切りますが、その際は今度は一般の司法にゆだねられるということになるわけでありまして、私どもこの法律に基づく限度というものは、どうしてもそのあたりのところで非常にむずかしい範囲がございます。しかし、少なくとも調停に持ち込んだら打ち切りとか、そういうことにならないように運営並びにその人選その他やはり十分に配慮して、一体何のためにこの法律をつくったのであるかという基本がはっきりと姿勢に出るように努力していきます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 それでは次にこの三十三条ですね。文書提出あるいは立入検査に関する規定があるわけです。これは私は非常に有効な規定だと思います。それは実際、被害者加害者紛争が起きた場合でも、先ほども申し上げたように、加害者のほうがいろいろな専門的な知識を持っているし、またそれに関するデータも持っているわけですね。なかなか見せないわけですよ、外部に対して。特に紛争が起きてくるとよけいふたをしてしまうわけですね。まあ司法裁判所に行きましても一定のルールを通じないと、それを無理やりに裁判所が引き出すというわけにまいりませんし、こういう点で非常に困っているのが事実なんです。だから、この規定が置かれたということ、これは法律の中の一番いい点だと思いますね。だからこれをもう最大限ひとつ活用してほしいのです。しかし、これに対する保証が弱いですね。それだけに、重要な条文であるだけに。相手だって自分の手のうち見せることになりますから抵抗しますよ、それは。ところが、それに対する保証はどこへ行きましたか、罰則五十二条でしょう。これじゃ弱いですよ。こんな過料ぐらい幾らでも出しますよ。せっかくいいところに着眼しておりながら、こんなことじゃいかぬですよ。もうちょっと何とかできぬですか、これ。どうですか、長官。まあ無過失賠償責任もいま明記しろとか、挙証責任転換規定をどっかに設けろというと、これはなかなかたいへんですが、この保証規定はもう少し強いものじゃないと、私はせっかくの三十三条というものが光ってこぬと思うのですが、画龍点睛を欠くというのはこのことですよ。どうですか。
  19. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かにおっしゃるようなことも否定はできないと思います。ただ、かりに一万円ぐらい何でもない。これは常識だと思うのです。相手はおそらく企業と考えてよろしいでしょう。しかし、かりに正当な理由なく応じなかったという場合において一万円という過料を納めたということは、金額で一万円損しただけでなくて、過料を納めた行為があったということは、そのあとに、おそらくそれで解決しないわけですから、展開するであろう加害者被害者関係において相当不利益立場をみずからつくり出すことになりますから、この一万円は相当きけるのじゃないかと思う。金額じゃないと思うんですが、私どうも法律関係はあまり率直に言って詳しくありませんで、私の答弁で足りないところは審議室長からも答弁いたさせます。
  20. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 過料の点でございますが、やはり民事調停あるいは建築工事と同じような事案と権衡をとりまして一万円としたわけでございます。  なお、いま長官から御答弁がございましたけれども、協力しない場合いろいろ不利益を、これは明文はございませんけれども、受けるということもございましょうし、過料を払うようなことになりました場合には、そのあと調停仲裁及び訴訟にまいりました場合にいろいろ事実上不利益なことになるんではないかと、かように考えておるわけでございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 まあほかの調停の場合のつり合い、こう言われるんですが、公害問題とほかの個人間の普通の民事的な調停、これは質が違うわけなんですよ。そこに着目してくれなければいかぬですよ。だから、同じ文書の不提出であっても、質が違うわけですね。それをほかの場合には大体この程度過料になっておれば他とのつり合いをとったなんて、それは形式だけです。そんなものは実質的には非常な不公平ですよ。だから、大体そういう点について立法作業をする人はするのですがね、新しいことに着手しようというのに、あまり前の制度がどうやったとかこうやったでは、そんなことにとらわれ過ぎちゃどうもいかぬと思うんですよ。どうです。
  22. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まあ役人の答弁ではそういう法律上のバランスのことになると思います。私は常識的に考えて、この制度の中で立ち入り検査資料提出故意に拒んだという場合に、一万円の過料に処せられたのか、百万円の過料に処せられたのかは、おそらく被害者は大多数の弱い不特定多数の人々でしょうし、加害者は弱いといっても百万円で逃げられるものならば、最終的に逃げられるものならば百万円を多しとしない企業側が大多数であると思います。したがってこれを、金額を、一万円は惰性であるということもいえると思いますが、問題は過料を納めさせられたということの事柄自体というものではなかろうかと思うのですけれども、そこらのところはどうも私にも、一万円でなければいけないし、一万円ではいけないし、十万円ならいいという自身もございません。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 私は金額のことだけ言っているんじゃないのです。金額も私はやはり影響があると思いますね。ほかの制度の場合には大体二万円になっておるが、この公害問題については最高百万円という数字が出ておる。これ、あなた、ちょっと注目を引きますよ、それだけでも。普通はなかなか法律のしまいのほうの過料なんというものは、あまり委員会審議の対象にもならぬ。しかし、今度は三十三条というものは重大であるだけに、この五十二条も非常に大事なんです、これは。だからそこまで深く検討されなかったのだろうと思いますが、もし御検討願えるものならそれは私はやってほしいと思うのです。  それともう一つは、この保証のしかたいろいろありますよ。たとえば民訴の場合であれば、出すべき書類を出さぬという場合には、それじゃ持ってこぬでもいい、そのかわり裁判所はこちら側の主張を認めますよと、これが痛いわけですね。だからたいてい出してくるわけですよ。何か過料もそうだが、そのほかにそういう趣旨のひとつ補償規定をほしいと思うのですが、どうですか。
  24. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 不利益推定明文を置いたらどうかということではないかと思うのでございますが、これはただいま御答弁申し上げましたように、事実上の問題として、やはり正当の協力がなければ委員会運用——正当な協力が得られないことに対しまして不利益調停を受けることも事実上の問題としてあり得るのではないかと思っております。あえて明文を設けなくても、事実上の扱いとしてそういうふうなことになるのではないかというふうに考えております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 それはちょうど最初にぶつかった問題と同じように、規定がなければ不利益を与えてやろうと思っても、ちょっとちゅうちょする人が多いのじゃないですか。出さぬからけしからぬ、感情的にやってしまえと、その気持ちだけじゃ私は通らぬと思うのですよ。だからそれはやはり何らかの規定がないとね、そうせぬと、あまり調停委員会は感情的だということになってしまってね。民訴ほどの強い規定でなくてもいいが、何かもう少しこう文書の、ともかく実態を調停委員が握るということが早期に解決するために一番大事なんだから、これに対してもう少し私は考えてほしい。これはまあ少し実行したあとでもいいですが。これは一番大事な点です。どうですか。
  26. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 衆議院の前の国会の審査の段階で専門調査委員というものを入れるべきだ、でないといまおっしゃるように、調停委員だけではその種の専門の防衛側というものに太刀打ちできないおそれがあるということがございまして、今回はなるほどそうだということで入れてあるわけでございますが、おそらくいまちょっと最高裁のほうで聞いたのですけれども、やはりこの行政の中で過料を納めさせられているというケースが持ち込まれた場合においては、それは非常に見過ごすことのできない一つの大きな要素になり得るということを聞いたのでありますけれども、これはやはり企業側としてもこういう場合には、たかが一万円であるからということの前に、ここの段階でせっかく調停等に応じようとして話し合っているのに、立ち入り検査や資料の提出そのものを拒むことによって、せっかくの話し合いというものをふいにした上に、将来の訴訟関係その他において大きなデメリットを自分自身がつくるのだということは、私は相当な覚悟でないとやらないのじゃないかと思うのですけれども、まあその点で、私も法律の中に一万円を納めなかった者はそのあと相当不利益になるぞということを書いたほうがいいのかどうかよくわかりませんが、一応こういうことで書いておけば、当事者は十分にこの効果はわかるはずであると思っております。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 たとえばこういうことまで及ぶのですか。不利益というのは、企業経営上必要な融資とかいろいろな問題がありますね、経済上の問題、そういう点について政府はいままで援助しているものがあれば援助しない。ともかく社会的に有害な問題が出ていてその究明に協力しない、そういうものは社会的な存在の意味が半減するという意味で、いま申し上げたような援助なり協力はしないということを打ち出しても私はふしぎではないと思うんですがね。そのことが非常に大きなやはり痛手になると思いますが、その不利益を受ける受けるといっているのは、そういうことも含めての長官の腹ですか。
  28. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この法律の段階はそこまで考えておりません。しかし、最近工業国家で、外国においてはすで融資されておるものについては引き揚げ、融資を願っておるものについてはこれを断わるというような、罰金とか、そういうもの以前の政治の姿勢を示しつつある国もあるようでございまして、この公害問題はこれから多種多様な形態を伴ってわれわれ政治家の責任を要求してくると思うのです。でありますので、やはり私としては、これは関係各省、直接の行政官庁ももちろん前提となるわけですけれども、政治の姿勢の問題として今後問われることが多いであろう、したがって、この法律がかりにそういうことを考えていないと申し上げますけれども、これから先はそういうことが行政法律を伴わなくとも政治の姿勢として打ち出さざるを得ない、あるいは打ち出すべきであるということが将来は、近い将来検討される時期はあり得ることだと考えます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 そういう面もあわせて整えていきませんとなかなか押されてしまうという感じがするので、ぜひ長官のほうでひとつ今後も重要な関連事項として検討を続けてほしいと思います。  そこで、調停なり仲裁の段階で向こうが出してきた文書ですね、これはもし調停あるいは仲裁が途中でできないということになってやまった、司法裁判所争いが持ち込まれる、当然これは司法裁判所で当事者が使っていいわけでしょうな。当然なことですが……。
  30. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者矢口洪一君) そのように考えております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 九条一項で、これも大事なことですからひとつ念を押しておくだけですが、「委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」これは結局委員長及び委員だけの義務であって、この当事者にはこれはかかわってこない、そういうことですね。総務長官、御答弁願います。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりです。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 一応文書関係が今度の新しい制度によって相当明確につかめてくる、こうなりますと、調停にしても仲裁にしても、裁判でもいままで非常に困っていた一つの障害が取り除かれることになる。そういう意味でこの法律の効果というものを実は非常に私も注目しているんです。実際の和解の仲介、調停仲裁ということよりもむしろその部分に非常に私としては注目しているんです。  それから関係官庁が、委員会から要求があれば文書を出さなければならぬという規定がどこかにありましたね、四十三条、これはひとつ何ですね、励行さしてくれぬといかぬですね。「求めることができる。」と、こうなっておるのですが、出すか出さぬかは自分のほうの判断だということではこれは困るわけでして、国民には制裁までつけて出せと、当事者に出せというわけですから、これは非常に痛いわけです。役所のほうは言ってみたら第三者でしょう。そんなにしぼる実質的な理由は私は薄いと思うのです。ところが、具体的な問題等が起きてくるとちょっと出し渋ったりする、そういうこともあったわけですね。その資料の評価は、これはまた委員会なりお互いに議論を戦わしたらいいんで、要求されたものはこれはちゃんと出さなければいかぬですからね。まあ役所の場合には特に私はそういう意味で積極的な協力を願いたいと思うのですね。要求するほうは必ずしもわからぬですから、どんなものとどんなものとあるのか提出を求められるほうが一番知っておるんですから、だからA、B、Cのこの資料を出してくれといってきた場合でも、いや、実はA、B、Cだけじゃなしに、D、E、Fとあるのだというような場合には、それをくっつけて出すくらいなやはり積極的な姿勢がほしい、それがどっちに有利であろうが不利であろうが。そういうことがやはり国民全体に対して、なるほどこれは政府も本腰でこの法律に取り組んできているということの一つのまた証明にもなるのでね。総務長官だけは非常に担当の大臣として張り切っておっても、各省がこれに協力せぬと、だめです。これは厚生省をそういう意味で呼んでいたのですが、だれか来ていますか、通産省はちょっと忘れたが来ますか。ほんとうはこれ大臣に来てもらわぬといかぬ。一言だけ協力すると言ってもらえばいいんだが……。
  34. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いままでこの法律がありませんと、基本法にその考え方をうたってありましても、実際私どもがふだん見聞することの一つに、厚生省はどちらかといえば、おおむね省の中でも、いろいろあった経過もありますけれども、おおむね被害者の人命、健康等の立場に立って資料その他、ものの言い方をしておるようです。それからこれもまたおおむねですが、通産省は人命とかそういうことは考えないとは言いませんが、やはりどちらかというと、厚生、通産両省では意見がかみ合わない、事実認識についても二つのデータが、しかもそれぞれ権威ある学者を頼んだような形で出てくるようになったケースが多いように思います。しかし、今回の法律公害紛争処理についてはちゃんとこういう法律ができておって、この法律の名のもとに関係各省、本省間だけでもそういう要求をすることができるという立場を与えられますと、ちょっと自分たちの一方的な見解だけでは済まない。それを提出を求められて出さなければ呼びつけられもするわけでしょうし、そういうようなことで調べられたりしますから、やはりその役所の姿勢の問題にも及んできますので、相当前進するであろうと思います。また地方公共団体でも、その団体の長の立場にもよるでしょうが、私どももこれまた見聞してきたところの中には、地方公共団体のところで、厚生省にすら上げないで、事実関係のはっきりしたもの等の資料が眠っていたというようなこともあると思いますけれども、それが今回は、そういうものを関係地域の行政機関の一長、地方の長に対して求めることができるわけですから、相当意欲的に運営すれば前進することは可能であると思っております。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 これはひとつ法案が通った直後、閣議あたりでひとつ提案をして、申し合わせばやっぱりしてほしいと思います。まあ厚生省などは比較的いいと言われますけれども、いやそれでもなかなかものによるんですよ、特に薬品関係などによるとなかなか渋るのですよ、なかなか。だからそういうことではいかぬから、それでぜひ四十三条、これは役所のことですから、これも積極的にひとつ総務長官が中心になって鞭撻をしてもらう。問題が出てからだとなかなか閣議決定できませんから、これが通った直後にひとつ——何でしたら委員長にお願いして、その閣議決定を先に持ってきてもらって、そうして委員会で採決をやってもらうほうが一番われわれけっこうだと思うのですよ。お願いしておきます。
  36. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ポストは人によって定まるものでもございましょうが、たまたま私の在任中に、こういう、ある意味で工業国家に一方的に変貌しつつあり、人間性という問題かなおざり視されたきらいのある世相に対してメスを入れようという法律を私があずかって通すということには大きな意義があると思います。その私が通過前か、通過後にしても、閣議で各閣僚に頼むぞよと総理の前で言わなきゃならぬというのも、ちと私としては、政治家の面目にも関する問題でもありますので、むしろ私のときにこの法が成立しましたならば、これの運営についてきびしい姿勢をとっていって、それでなおかつ障害ありと見るならば、私は政治の姿勢として、私の役所の長は内閣総理大臣佐藤榮作と書いてありまして、その次に私が並んでいることに役所の機構表、一覧表の中ではなっておりますから、やはり政治の姿勢は私のところで示すべき政府全体の義務があると思いますので、どうしても各省がこの法律の命ずるそのような方向に非協力であるとするならば、虎の威ではありませんが、総理を含めた全閣議の責任において、それをさらに推進することが必要になるかもしれませんが、私のときに誕生いたしますので、十分な意欲を持ってやってみたいと思うんですが、いかがでしょう。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 まあひとつその元気に期待しておきます。  それから、今度初めてこういう法律かできて、その法律によって中央並びに地方の機構ができるわけですね。中央のほうは略称中央委員会というんですか、この選び方がこれはなかなか重要だと思うんですね。当初発足のときに、なるほどと思われるような方を据えませんと、これは相当荒療治をやらなければならぬような場面にも直面する問題ですからね。おそらく総務長官のほうで、そういう人はそうざらにいるわけでもない、法律を提案したときからよしこれとこれだというぐらいのことをお考えになっていると思うんですが、その辺はどうですか。
  38. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まだ具体的に下交渉をするとかというようなことは考えておりませんが、法律が成立いたしますならば、直ちにそのような考え方をもって、しかもたいへんそれらの人人、この人がいいと思う人にはあるいは迷惑がられるかもしれないと思うんですけれども、この法律の持つ意義、しかも今日の社会構造の中における人間という弱い動物の置かれた立場を明らかに私たちが守ろうとしているんだと、その意欲等について説得もいたしまして協力を願うようにしたいと考えております。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 これはひとつ自民党だけで狭く考えないで、広くやはり検討してほしいと思うんです。非常に大事な機関ですよ。第一、営利事業その他金銭上の利益を目的とする業務はできないわけですね、これにつきますと。まあ給与が出るわけですが、これはどのくらい考えているんですか、ほかの仕事はできないんですからね。しかもこの法律の責任者になるわけですからね。
  40. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 附則におきましてやられておるわけでございますが、委員長が二十八万五千円でございます。それから常任の委員が二十六万円ということになっております。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 ほんとうにこの仕事をやってくださったら決して高い給料じゃないですね、安過ぎるくらいかもしれぬですわ。まあいろいろつり合いでそういうことになるんだと思うがね。それからこれは政治団体の役員であることはいけないが、一党員であることは差しつかえないんですか、機構上は役員はいかぬが党員であることは。
  42. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 法律にございますように、役員は禁止規定をもっていかぬことになっております。党員は差しつかえございません。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくこの委員長並びに委員の適格な人を当初選ぶことは非常に大事な点だと思います。私これは長官も同感だと思いますが、ちょうど約束の時間になりましたので、以上大事な点と思われた点だけをお尋ねして、長官に対する質問はこれで終わります。
  44. 内田善利

    ○内田善利君 私も時間が限られておりますので、この紛争処理法案につきまして、六十一、六十二国会ですでに審議されておりますが、水俣病にいたしましても、その他四日市、阿賀野川等、発病以来十五年ないし二十年にして初めて公害病として認定され、またその後いまだに補償すら確立されていない、こういう現状でありますが、一日も早くこういった紛争処理法案が早く発効されんことを——慎重審議の上発効されることを希望するわけでございます。本日は、この紛争処理法案の中で問題とされておる中央公害紛争処理機関の性格について、次に仲裁申請にあたって当事者双方の合意を必要とすることが妥当であるかどうか、次に、基地公害の適用除外の問題、この三つの大きな問題について質問したいと思います。  まず第一の、中央公害紛争処理機関の性格でありますけれども、園出前厚生大臣は、以前、この中央公害審査委員会なるものを、私としては公正取引委員会のような強力な権限を持った紛争処理機関が望ましいと、そのように発言をされておるわけですが、この法案によりますと、御承知のとおり、準司法的機能を持った機関でありますので、ある程度行政から独立した権限を行使するものでなければ、事案の公正な解決はできないのではないかということなんですけれども、省庁並みの三条機関にして強力な権限を持った、また施策の上でも強い権限を持ったものでなければならないのではないかということで、この法案が八条機関であります関係で、これでは、大企業に比べて弱い立場にある被害者、これを守るという面で非常に期待か乏しい。このように考えられるわけですけれども、この点について、衆議院あるいはまた参議院でも審議されておりますが、もう一度明快にお答え願いたいと思います。
  45. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 三条機関にすべしというのも見識のある見解であると考えます。三条機関に置かれている公取みたいな委員会というもので今後はこういう問題を処理していかなければならない事態が、あるいは行政分野の中だけでも起こり得る可能性は否定できないとは考えます。しかし、ただ、三条機関にしただけではだめでございますから、やはりその場合には一歩進めて裁定権というものを与えなければならないだろうと考えるのです。その裁定につきましては、衆議院においても、与野党一致して、法律の附則に、裁定制度を今後検討しろという実は修正の話し合いが行なわれて一致したわけなんですが、私といたしましては、法律というものは、国が国民に対してこの目的のもとにこういうことを行なうということを明らかにするのでありまして、それを、その附則に、政府は検討をしますということが入る法律の形はどうもおかしいということで、御相談いたしまして、私は、部内では、そのような附則を入れるくらいなら、はっきりと、三条機関で裁定制度、権能を与えるような法律をむしろ挿入したらどうだろう、条項の挿入はどうだろうという検討もしてみたのですが、やはり司法行政との接点の問題で、一両日ではとても片づきませんでした、結論を得られませんでしたので、やむを得ず、御相談をいたしまして、法律の形上おかしいので、法律の中の附則にそのようなことをうたうのはやめていただいた次第でございますが、それは、逃げたわけではなくして、三条機関に移行して裁定制度その他を踏まえたものをつくり得るかどうかの検討は私たちのほうでやらしていただきたい。こういうことにしたわけでございます。  なお、蛇足かもしれませんが、総理府に土地調整委員会という三条機関がございます。これは、当初、鉱区権設定と、その地域の主として農地等との紛争処理するための各大臣の裁定に対して、それを一応スクリーンする役目のために出発したようでございますが、今日では、土地収用法等の大臣裁定の問題等についても、土地収用法自体で土地調整委員会の議を経るということにいたしてありますために、だいぶまたあらためて新しい時代に対応する機能も備えつつあるわけでありますが、この土地調整委員会という三条機関をいまの権能のままで私ども遊ばしておくのはもったいないと考えまして、できるならば、この公害紛争の裁定をも含めまして、よろず紛争とも申しませんが、いまの土地調整委員会、あるいは今回の公害紛争のさらに一歩進んだ調停等にかかわる権能を処理する委員会というようなものに換骨奪胎することは不可能であろうかということで、いま役所の中では盛んに議論をいたしておりますが、これからは、法務省等あたりも意見を聞きながら、そういう方向に進めるかどうかの具体的な検討をしてみたいと思いますけれども、いまここで三条機関だけに移すということについては、他の三条機関がそれぞれ特別な機関でありますだけに、私といたしましては、弁護士会あたりでも一部まだ異論が残っておりまするし、法的な問題を十分配慮した上で、行政の分野として踏み込むべきところの限度というものを自信をもって明らかにした後でなければ、ちょっと機関だけ三条機関にすることはいかがであろうかと考えておるところでございます。
  46. 内田善利

    ○内田善利君 衆議院での附帯決議に「今後裁定制度の採用等と国家行政組織法第三条機関への移行を前向きに検討し、速かに結論を出すよう努めること。」とこのように決議されておりますので、ひとつこの点よろしく推進方お願いしたいと思います。  次に、この中央公害審査委員会と都道府県の公害審査会との関係性ですけれども、二十四条の「管轄」に関して、中央公害審査委員会に持ち込まれる紛争と都道府県の審査会管轄の紛争の基準を設けておりますけれども、この点は非常にあいまいに思うわけですが、この「管轄」の規定以外に中央と都道府県との関係を述べたところはないわけですけれども、この点について、中央と都道府県との考え方の相違が起こったような場合はどう調整していくのか。どこでやるのか。この点はどういうようにお考えですか。
  47. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 中央委員会と都道府県の審査会等とはこれは上下の関係はございませんで、ただいま御指摘のございましたような二十四条の管轄権でもって管轄の範囲が定められておるわけでございます、ただ、実際の運用にあたりましては、やはり当然、中央地方の権衡をはかることが必要でございますので、十分処理のしかた、進め方等につきましては協議の場を持ちたいと考えておるわけでございます。なお、中央と地方の関係につきましては、三十八条でございますか、これは「事件の引継ぎ」の制度がございまして、地方で取り扱いました案件でも、これを中央に移して手続を進めることによって解決が期待できますものは、事件の引き継ぎという形でもって地方の審査会等から中央に上げられることになっておるわけでございます。
  48. 内田善利

    ○内田善利君 よくわかりました。  総理府のこの中央委員会の事務職員ですけれども、たしか十六名の予算がついたと思うのですけれども、この十六名の予算で十分であるのかどうか。公害問題が非常に多様化し複雑になってまいりますと、非常に事務も多忙になってくると思いますが、十六名で十分なのかどうか。お聞きしたいと思います。
  49. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 十六名のほかに兼務の職員五人合わせまして二十一名でございます。それで、私どもの当初の原案におきましては、この二十一人の職員でもって総理府の官房に公害審査室を設けましてそこで事務を処理することといたしたわけでございますが、衆議院法案の御修正がございまして、委員会の下に事務局を置くということになったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、二十一人の職員でもって事務を処理いたしますほか、専門調査委員制度がございまして、これは当初原案二十人でありましたが、同じく衆議院で「三十人以内」に修正を受けたわけでございます。具体的にどの程度の事務量ができるかちょっといま予測ができないのでございますが、極力これで処理いたしまして、どうしても事務処理上支障があるという場合にはまたあらためてその増員等も考慮いたさなければならない問題が出てくるのではないかと思いますが、とりあえず発足は二十一人でもってスタートさしていただきたいと、かように考えております。
  50. 内田善利

    ○内田善利君 委員会の構成について先ほど亀田委員からも質問がありましたが、仲裁の場合に、委員会の構成によってその問題解決に非常に大きな影響を与えると思うんですが、この六条に、委員長及び委員規定されているわけですが、仲裁委員は原則として、委員の中から両当事者の合意によって選出されると、このように規定されているわけですけれども、公害紛争のような非常に利害の対立しておる紛争にはこれで適当であるのかどうか、先ほど委員の選出について長官からお話がありましたが、この委員会の構成を労働委員会の構成のようにして、産業界の代表あるいは一般公益代表あるいは被害者代表というような構成にできないものかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  51. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一つの考え方でありますが、そういうふうに画然と三者構成にいたしますと、かえってうまくいかないという面も実際の運用上起こってくる可能性が私はあると思います。たとえば医療関係ではよく三者構成、何かそういうふうに準じた姿勢をとっていると、一方が委員を引き揚げてしまうと、もうその機能は停滞しちまって全然動かないということも私どもいやというほど知らされておるわけでありまして、だからそういうふうにはっきりと分かれた形が、見た目にはたいへん五分五分で、そして最も中正なる人がまん中におって軍配をあげるということが理想ですけれども、委員会の構成を麻痺させるようなことがあってはこれはなりませんので、やはり考え方は、基本は、あくまでも公害というものは、人間の尊厳を守るんであるというところに原則はあるわけでございますから、そういう趣旨を貫いた人選を行なって、そのもとで調停その他を行なうようにしたいと思っております。
  52. 内田善利

    ○内田善利君 先ほど質問があっておりましたが、仲裁の段階でもあるいは調停の段階でも中央公害紛争処理機関の企業に対する立ち入り検査権ですけれども、これが認められるわけですが、罰金制度もできておるわけですが、今度は企業立場から企業の秘密を保持すると、こういう立場から非常にいままでの企業立場からしまして問題が多いわけですが、この秘密保持ということについてはどのように考えておられるかお聞きしたい。
  53. 青鹿明司

    政府委員青鹿明司君) 一つ企業秘密が五十二条にいう「正当な理由」にどこまで入るかということになろうかと思いますけれども、やはり事業の経営上重大な影響があるというような場合には正当な理由に該当するのではないかと考えております。いずれにしても過料の徴収につきましては、これは裁判手続によらざるを得ないのではないかと思いますので、裁判所の判断にゆだねるべきではないかと考えております。  それからもう一つは、やはり秘密保持の問題でございますが、先刻亀田先生の御質問にもございましたように、委員長並びに委員の守秘義務の規定がございまして、知り得た秘密はこれは在職中また退職後も漏らしてはならないということをはっきり規定いたしておりまして、極力秘密の保持には配慮をしてまいりたい、このように考えております。
  54. 内田善利

    ○内田善利君 次に第二番目の、仲裁申請にあたっての当事者双方の合意の問題ですが、法案の眼目はあくまでも被害者の迅速な救済にあることは言うまでもないわけですが、仲裁に持ち込むためには相手側の合意を必要とすると、こういうことになっておるわけですが、事実上被害者加害者の同意を得なければ仲裁に持ち込めないのではないかと、このように危惧するわけですが、一般的に申しましても加害者は大きな企業でありますし、被害者はどうしても地域住民であるという関係性からしましても、このような仕組みでは実際仲裁が発動されるかどうか非常に危惧するわけですが、被害者立場に立ってそういうことはないかどうか、この点どう考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  55. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 大体いままで何とか片がついたケースを見ますと、知事さんあたりがあっせんに乗り出されまして、被害者と思われる人たちの意見を聞いて、そうして加害者と思われる会社と交渉などされまして話がついているケースが——少ないですけれども、大体のケースだと思うんです。ところで、こういう紛争処理法案によって、被害者加害者とが一緒に意見が合意に達して、国に、この機関に相談を持ち込んでくるわけはおそらくないでしょう。そこで合意に達するぐらいなら、もう話し合いを、どれだけそれじゃ慰謝料を払うとかいうようなことが話が進むわけですから、やはり被害者の方というものがこの紛争処理機関に訴えて、紛争処理機関が国の名において大体においておおむねこの企業原因者であろうと思われるところにいかがですかと、この制度に応じられてはいかがですかということで合意を見るというケースであろうと考えますが、当事者同士がもう国に持ってくる前に合意を得るなら、これはもう金額の問題その他でほぼ国にかりに持ってきても話は非常につきやすいところまで来ている問題だろうと考えます。
  56. 内田善利

    ○内田善利君 次は、最後の基地公害を除外した問題ですけれども、板付空港の近くに私はおりますが、非常に周辺住民の騒音に対する被害は想像を絶するような状況でありますし、この公害を見ましても、紛争処理法から基地公害を除外してもそれにかわるべき紛争処理方法があるのかどうか。現行の基地周辺整備法では仲介あっせんはできないのではないか、このように思うわけですが、いままで衆参両院で表明されました基地公害に対する態度では住民は納得していないのではないか、このように思うわけですが、この点についてお伺いしたいと思います。
  57. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は、昨年の審議のときには責任者でございませんでしたので、審議の経過等についてつまびらかではございませんが、今回はそのような議論前提といたしまして、防衛庁のほうで防衛庁設置法等の一部改正を国会に出しております。現在衆議院内閣委員会に出されておると思いますが、この中にただいま御指摘になりました防衛施設の周辺整備法の運用その他に関連をいたしまして、この公害問題に関しまして民間学識経験者で構成する防衛施設中央審議会というものを設けて、客観的な立場でいわゆる被害者たる国民あるいは全般の国民が、防衛施設の特殊性でこの公害紛争処理法案から除かれたとしても、防衛庁自体が民間の純粋の第三者構成による審議会の手を経て、そうしてそれに対策が講じられていくんだということが明確にされることがわかりましたので、この点は私も前の国会とは違ったところであって、国全体の姿勢としては、防衛庁のほうにもこの公害紛争処理法案に対応する姿勢が打ち出せたものと考えて、これで一応よろしいと考えておる次第でございます。
  58. 内田善利

    ○内田善利君 その長官の言われる基地の特殊性というのは理解できるわけですけれども、住民の立場に立ちますと、公害基本法にもありますように、騒音という公害を受ける住民の立場からしますと、そういったいま説明されたような特殊性ということは一応理解できても、受けている住民の側からしますと、あるいは騒音による公害また危険、そういったこと等は同じ被害を受けているわけです。ですから、そういったいろんな説明がありますけれども、紛争処理法案から基地公害を特別扱いにするということがどうしても住民にとっては納得できないのじゃないか、このように思うわけですが、いま長官が御説明になった防衛庁のほうで計画されておる法案が通過すれば、そういった不安が解消されるということであれば、住民も納得すると思いますけれども、その点ひとつ特別扱いにはしないで、同じ公害を受けている住民の立場を考えて進めていっていただきたい、このように要望したいと思います。
  59. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 防衛庁長官も列席して二人で答弁するとたいへん御納得をいただくのに都合がいいかと思いますが、防衛施設は逃げも隠れもできませんですね。もう明らかにそこにはっきりと存在が確認されて、騒音にいたしましても何にしても、いまの民間企業の河川の汚染とか水銀とかいろんな——いや、自分のところは出した覚えはない、そうでない証拠はどれだということを、少なくとも防衛施設に関する問題としてはあまり逃げ隠れもできない立場にありますから、その意味では、単に防衛の特殊性のみではなくて、そういう逃げも隠れもできない立場に関して起こった紛争について、民間の審議会というものがそれを処理していく、周辺地域の住民の苦情というようなものを処理をしていくということであれば、少なくとも基地周辺については周辺住民の方方の満足は得られなくても、その処理について納得を得られる方法は、今回の措置をとられることによって大いに前進するものであると考えますので、防衛庁長官をこの委員会にお呼びになるのかどうかわかりませんが、機会がありませんでしたら、念のために私どものほうからも御注文の次第、御意見を伝えておきたいと考えます。
  60. 内田善利

    ○内田善利君 きょうは防衛庁のほうもお願いしておったわけですけれども、都合によりまして来ていただけませんでしたので、その程度長官に質問をしたわけでございます。この防衛庁の問題につきましては、また次回にお願いするといたしまして、以上私はこの三点について、きょうは時間の関係で質問いたしました。私の質問はこれで終わります。  それでは水質規制法の法案審議の過程で質問させていただきますが、前回の委員会で、小平委員から質問がありました神通川流域の水銀の汚染状況について、その後の状況等をお聞きして、水質規制法に入っていきたいと思います。  この間の神通川流域のエチル水銀の規制の問題ですけれども、そのときの橋本公害課長はエチル水銀のような例は今回が初めてである。しかも今回の場合は工場排水から水銀が出たわけではなくて、排水口のどろから出たので、排水から水銀が検出されていない関係で証明はできない、このように言われたわけですが、どろから出ておって、排水から出ていないので証明できない、こういった関係はどういうことを言っておられるのか、説明願いたいと思います。
  61. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) おくれてまいりまして申しわけございません。実はこの間も橋本公害課長が先に説明をしまして、私はあとから参りましたので、正確にどういう意味で申し上げたのかわかりませんが、私どもとしましては、この間も小平委員の御質問にお答えしましたが、この問題につきましては、最初四十二年に小矢部川の水銀汚染問題に関連して対象水域としてとられまして、神通川の魚類の分析が行なわれまして、この結果相当の汚染があるということを発見したわけでございます。その後、四十三年度に相当大、かかりに調査をいたしまして、やはりこれは相当の汚染であるということを確認いたしまして、その後さらに四十四年度に追跡調査をする、つまり四十二年、三年、四年と四年がかりでやってまいったわけでございます。  で、実は最初の四十二年度、四十三年度の段階では、全くこの汚染の源がわかり喜んで、実は昨年の八月に発表いたしました「昭和四十三年度水銀による環境汚染調査について」という中をごらんいただきますと、これの汚染源が全くわからないと、神通川流域の地質的影響によるものか、あるいはその他の要因があるか、いま直ちに判断できない、こういうことになっておりまして、その結果、特にウグイとかコイとかフナとか、こういうものの多食についての警告を発するということにいたしたわけでございます。  ところが、ことしの、県では二月だと言っておるようでございますが、私ども聞きましたのは四月の四日でございまして、報告によりますと、一製薬会社からそういう汚染の源となる水銀が出ているんじゃないかということでございますので、その関係の資料についての分析を現在いたしているわけでございます。この分析につきましては、一回目はすでにどろにつきましての分析は終わっておりまして、新聞等にも報道されております。その後さらに採取しました排水口におきますところの分析をいまやっておるわけでございます。それから魚につきましての分析につきましても、実は水銀は非常に分析がむずかしいわけでございますので、クロスチェックという方式で、数カ所のところへ分析をお願いしておりますが、一つだけわかりましてあとがまだわかってないとか、いろいろな点で不明確なところがございますが、そのデータもおそらく今月末にはそろうだろうと思っております。それのそろいますのを待ちまして、水銀の専門家にお集まりいただきまして鑑定をしていただこう、こういうようないま段取りにしているわけでございます。  なお、健康調査でございますが、この点は新岡にもいろいろ出ておりますが、私ども県からの相談に対しましては、この地方に魚を大量に喫食する習慣がないということはともかくとしまして、十分なる関係者の調査をしまして、多食をしている人がおれば、当然その毛髪等についても慎重な調査をし、必要な場合があれば精密検査をする、こういうことでなければいかぬということを話しておりまして、これにつきましても、できるだけ早い機会に着手するように県でも段取りしているようないま段階でございます。
  62. 内田善利

    ○内田善利君 いまのお話で、四十二年に水銀が検出されておるわけですが、その後どういう調査をなさったのかわかりませんが、水銀の分析はむずかしいけれども、クロスチェックをやって、一つだけわかってあとはまだわからない、今月末に出そろう予定である、こういうことですが、急に魚の分析をなさったのか、四十三年、四十四年あるいはその間、魚に水銀が発見されてから調査はされなかったのかどうか、この点、お伺いしたいと思います。
  63. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ちょっとあるいは意味を取り違えているかもしれませんが、私ども四十二年度は、これは神戸大学の喜田村先生がこの分析を行なっておられます。四十三年度は東京歯科大学の上田先生とそれからクロスチェックは国立衛生試験所で行なっております。それから今度の四十四年度の調査でございますが、これは分析機関としましては、新潟大学それから東京歯科大それから富山県の衛生研究所、この三カ所で分析をいたしております。
  64. 内田善利

    ○内田善利君 その結果はどうであったのですか。
  65. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) この結果でございますが結果の中で、特にたとえば滝沢先生のデータによりますと、メチルとかエチルは分析ができましたが、トータル水銀あたりは一部しかまだあがっていないという状況でございまして、月末には間に合わしたいというお考えのようでございます。
  66. 内田善利

    ○内田善利君 あのように水俣病として騒がれ、阿賀野川が第二水俣病として騒がれておりながら、神通川に水銀が検出されたにもかかわらず非常に調査がずさんのように思うわけです。つきましては、先ほどの説明では、四月四日の日に初めて水銀が福壽製薬から出ておるということを知ったということでございますが、四月四日に富山市のホールで検討会が行なわれて、その席には県の衛生研究所長も出ておられるわけですが、排水口の下のどろから九、三〇〇PPMが検出されたという報告があって初めて知った、こういうことでありますね。
  67. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) いまのような問題を含めて全体的にわかっている範囲の数字をお聞きして、それに従って判断していっているような現状であります。
  68. 内田善利

    ○内田善利君 発生源が製薬会社であるということが判明したのは四月四日であった、そのようにいま言われたわけですね。
  69. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 水銀の汚染源が製薬会社が相当大きな寄与率を占めているだろうという意味合いにおきまして、製薬会社の名前を聞きましたのは四月四日、私直接じゃございませんが、会議に参加しましたうちの担当官が聞いたのが厚生省としては初めてでございます。
  70. 内田善利

    ○内田善利君 その後証者会見が行なわれているわけですけれども、その記者会見の際に、厚生省の藤井課長補佐が出席されておると聞いております。でこの発生源は不明だと、こういうことを書っておられるわけですが、名前を出して非常に恐縮ですけれども、福壽製薬が有力であると発表したのは、四日から十二日たった十六日の日に知事の発表で初めて明らかにされたのですね。四月四日にそういう事実があって、その後の記者会見ではまだ発生源は不明である、このような意味のことを言われておるわけです。住民としましては、水銀がすでに発生しておるということを知らなかった関係上非常に不安に思っておるわけですが、その後どういう……。ここでは藤井課長補佐も、発生源は不明である、こういう意味のことを言っておられますし、十六日の日に知事の発表で有力ということばが出ておるわけですが、その後どのような調査をして、結局製薬会社であると、そういうふうな確信に立たれたのか、この点お聞きしたい。
  71. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 事実関係でございますが、この記者会見は、うちの藤井技官と県の公害課長と二人で会見したそうでございまして、そのような発生源がどうかということにつきましては、特に質問がなかった、積極的にあるいはある意味の情報を申し上げるべきであったかどうかということは別といたしまして、事実関係としましては、質問がなく、不明であるということもその際は申さなかった、こういうことのようでございます。
  72. 内田善利

    ○内田善利君 薬事課長は来ておられますか。——製薬会社という関係から、その監督は薬務局長にまずあると思うのですけれども、薬務局長としてどのようにこの関係にタッチしてこられたか、その点、お聞きしたいと思います。
  73. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 薬務局といたしましては、富山県の神通川のあそこに水銀が多量に出たという話を聞きまして、それから県に照会すると同時に、その後四月の十三日に各県に対しまして、医薬品にかかる水銀及び水銀化合物の製造の実態の調査を依頼してございます。それからまた、さらに四月十六日に、医薬品製造業者の廃水及び廃棄物の処理につきまして適切な指導をとるように各県にお願いをしておるところでございます。なお、お話しの製薬会社につきましては、去る四月二十一日に社長と工場長を厚生省に呼びまして事情を聴取しまして、設備改善につきまして検討するように指示した、そういう措置をとっておる次第でございます。
  74. 内田善利

    ○内田善利君 製薬会社でありますから監督は厚生大臣にあると思いますので、厚生大臣にお聞きしたいと思いますけれども、きょうお見えになっておりませんので薬務局長にお聞きするわけですが、この設備——九三〇〇PPMもどろの下にあったということから、工排法からも十三条の規定によりましてチェックをすべきであると、こういうことになっておるわけですが、チェックはしてあったのかどうか。そのチェックには水銀は出ていなかったのかどうか、廃水処理施設は完全にあったかどうか、あるいはその回収装置といいますか、そういった測定機器といいますか、そういうものは完備しておったのかどうか、この点についてお伺いしたいと思うのです。
  75. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 廃水の関係でございますが、薬事法の施行規則の「薬局等構造設備規則」というのがございますが、「廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。」というのがございます。本来薬事法で工場等の設備構造を規定いたしておりますのは品質管理の面からこれを規定しているわけでございまして、したがって、そういう点から私ども工場を指導してまいったわけでございます。しかしながら、廃棄物による環境汚染ということがたいへん問題になってきておりますので、そういうことにとらわれませんで、今後薬事監視の際には今回の例のごときこともございますので、あわせてそういった点にも留意しながらこれを監視いたしまして、適切な措置をとっていくようにしてまいりたいと思っておるところでございます。
  76. 内田善利

    ○内田善利君 どうも詳しく御説明がいただけないようですけれども、廃水処理施設が完備しておったのかどうか、あるいは工排法でもチェックをすることが義務づけられておるわけですが、そのチェックの中にどのような調査がなされたのか、その点のお答えがないようでありますけれども、聞くところによりますと、この工場は四月一日には、自発的かどうか知りませんが、チメロサールですか、この製造を中止しておると、こういう状況でございますし、四月四日に関係者を集めて、四月十六日に記者会見で発表になった。ところが、機敏に工場はそのときには製造を中止していたと、こういった関係ですけれども、この辺はどうもふしぎな物語に見受けられるわけでありますが、この点を率直に簡明にお答え願いたいと思いますけれども、いかがでしょう。
  77. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 先ほど御質問のうちで工排法の点について申し落としましたので、あらためて申し上げさせていただきますと、工場排水等の規制に関する法律関係でございますが、この法律は主としてもっぱら指定水域の水質保全を目的としているものであろうかと存じますが、一般的な特定施設を設置しているものに対しましては、お話しのこの法律の三条で一般的に水質保全の義務を課しているわけでございます。この法律は、御承知のように、昨年の四月一日から都道府県知事に事業の監督を委任しているわけでございますが、この三条で、水質保全の一般的義務が工場の経営者にあるという点、そういう面からも十分指導する必要があったわけでございます。しかしながら、少なくとも本件に関しましてはそういう点で必ずしもまあ十分でなかったのではないかと思いますが、そういう点につきましては、今後厚生省所管の工場について、都道府県知事に対しましてあらためて適切な指導を行なうようにお願いしていきたいと思っております。なお、同工場がチメロサールの製造を中止したという点でございますが、これはおそらく県の公害防止条例の関係で、県から指導を受けて直ちに自粛をしたものと思っております。
  78. 内田善利

    ○内田善利君 それじゃあ県の衛生試験所のほうは四月一日以前にこの水銀の検出を知っておったわけですね。その点はどうですか。
  79. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) もう一度整理して申し上げますと、私どもとしましては、こういうような、まあ神通川の水系に水銀があるということは四十二年度からわかっております。四十二、四十三、四十四と調査して四十四年度の調査の途中でこの水銀を流している製薬会社を発見した、これが二月でございます。これは県条例による届け出もなされていないということを聞いております。それでその段階でどろを採取し、三月の末に分析を終わり、私どもが耳にしましたのが四月の四日でございます。それで私どもとしましては、この判断としては、現在の段階は相当この工場が寄与している割合が高いと思っておりますが、ただそのほかたとえば常願寺川あたりでも一部水銀が検出されているということもございますので、さらに今月末あるいは来月初め、このあたりで専門家にお集まりいただきました上で、現在そろっている限りのデータで、この段階で一番妥当な判断をしていただこうかと、こう考えているわけであります。
  80. 内田善利

    ○内田善利君 いま常願寺川の話がありましたが、ここの水銀の検出量は大体どのくらい出ておるのですか。
  81. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 神通川は平均しまして一・二ぐらいのメチル水銀に対しまして〇・六ないし七ぐらいのエチル水銀だと聞いております。
  82. 内田善利

    ○内田善利君 常願寺川のほうは発生源はわかりますか。
  83. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは全然まだわかっておりません。
  84. 内田善利

    ○内田善利君 話はまたもとに返りますが、四月四日にこの問題が明らかになってからの調査はどのように行なわれたのかお聞きしたいと思うのですが。
  85. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 四月四日以後の調査としましては、この工場の排水口のどろの彩取をしまして、その分析を現在いたしておるということが、これがその後のそういうような河川なりの調査としましてはただ一つの調査源でございまして、そのあとは、それまで出ましたむしろ資料の分析の結果を集まってくるのを待ちまして、それで判定していくというような段階に入っております。
  86. 内田善利

    ○内田善利君 その水銀を排出するプロセスといいますか、そういった工場は幾らぐらいあるのか、またその水銀を排出する種類、これはどういうものがあるか。
  87. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 水銀を使用なり製造している工場としましては、一つは食塩電気分解工場、それから次が塩化ビニールのアセチレン法によります合成の工場が、前者は電気分解に水銀を用いますし、後者は食媒用に水限を用いております。それから水銀化合物の合成の工場としまして、無機工業医薬品の関係、それからいま問題になっています医薬品の関係、農薬の関係等がございます。そのほか水銀の製造、精製の工場がございます。こういうのが一番いまのような問題を起こす対象の工場でございまして、私どもとしましては、四十年十二月末で、各都道府県に依頼をしまして調査をしました結果では百九十四ほどあるということでございまして、この中、実数にしまして八十二ほど現在までに工場調査として調べております。そのほか河川の調査に関連しまして相当数調べておりますので、まあ工場対象としては、調査は相当の率は調べておったわけでございますが、たまたまこの医薬品の関係は漏れておったわけでございます。  それから念のために申し上げますけれども、水銀の需要としましては、四十二年度の数字で申し上げますと、千八、百五十六トンでございますが、この中で、食塩電気分解工場が七百三十五トン、塩化ビニール合成の工場が四百九十一トン、それから水銀化合物の合成が三百七十四トンとなっておりまして、その中、水銀化合物の合成工場の中の医薬品は八トンと比較的比重の小さい種類の工場でありましたために、公害調査としましてはむしろ優先順位をつくりまして、問題の起きそうなところから重点的にやってまいりました関係もございますし、その他、ただいま薬務局からも御答弁申し上げましたような事情もございまして、たまたまこれがどうしてもつかまらなかった、こういうことではないかと思います。
  88. 内田善利

    ○内田善利君 福寿製薬はどの方法で水銀を、どの方法でやるわけですか。食塩の電気分解で出てくるわけですか、それともアセチレン法で出てくるのか。
  89. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは塩化第二水銀からチメロサールの合成をいたしているわけでございます。チメロサールと申しますのはエチル水銀チオサリチル酸ナトリウムでございます。それ自体エチル水銀となっておるわけでございまして、先ほどの電極だとか食媒に水銀を用いるということとはいささか意を異にしているわけでございます。
  90. 内田善利

    ○内田善利君 その福寿製薬と同じような工場はどこにありますか。
  91. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) ただいま私どもの手元でわかっている点について申し上げますと、兵庫県下に一社ございます。
  92. 内田善利

    ○内田善利君 兵庫県下に一社あるということですが、この工場についてもひとつ調査をお願いしたいと思いますが。
  93. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 私どもとしましては、その後四月の十日に兵庫県に対しまして排水等の調査を依頼してございます。
  94. 内田善利

    ○内田善利君 前回の委員会で橋本公害課長は、排水に出ていないから証明はできない、こういう意味の発言があったわけですが、いまいろいろお聞きしますと、工場もすでに製造を四月一日には中止したとか、その後四月四日、あるいは十二日、十六日といろいろ検討が行なわれているわけですけれども、排水口のどろの中にこんなに多量の水銀があったということは、やはりいままで水俣病その他非常に公害問題が問題になっているときに、非常に発言は安易な発言ではなかったかと、このように思うわけですが、きょう橋本公害課長見えておりませんので、その真意はわからないわけですけれども、また厚生大臣もお見えになっておりませんし、よくわかりませんが、結局このウグイの中には相当量の水銀が含まれておったし、またアユとかボラ等にも相当量の水銀が含まれているわけですが、この魚の中の水銀の量についてもう一度お教え願いたい。
  95. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) この四十二年に調べました場合が、一PPMを超過します割合が五〇%となっておりまして、四十三年に調べました場合が一PPM超過が四八・七%となっております。この場合これが去年の報告にも載っておりますが、最高はウグイが六・一二PPMというのがあったわけでございます。今回は最高で六・〇八PPMというウグイがとれておりまして、いま問題になっております神通大橋付近でまいりますと、一PPMを越えます比率が、時期によっても違いますが、三割ないし七割程度になっているというふうに聞いております。
  96. 内田善利

    ○内田善利君 ウグイの場合はよくわかりましたが、アユとかボラとか、そういうものにも相当量検出されると聞いておりますが、この点はどうでしょうか。
  97. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) いまウグイのことを申し上げましたが、これと同じような傾向を示しますのが、コイ、フナ、ウナギ、ナマズ、ニゴイ、オイカワ、こういうのがございます。それに対しましていまおっしゃいましたようなアユとかサケ、マスというようなもの、あるいは海と川との水がまじりますところにおります汽水質魚類と言われておりますボラ、こういうものには非常に水銀の影響は前者に比べますと少ないということでございます。
  98. 内田善利

    ○内田善利君 阿賀野川あるいは水俣の場合でもネコで試験されまして、大体五PPMから一〇PPMくらいでネコは狂い死にしたと、このように聞いておりますが、常食はしていなくても、六・〇八PPMも含まれておったということはやはり国民にとっては、あるいは地域住民にとってはたいへんな問題だと思うのです。それが四十二年に発見されておりながら、こういったことについて常食にしなければだいじょうぶだというような見解が発表されたわけですが、この点について、食品衛生課長に、見えておりましたらお伺いしたいと思います。
  99. 鴛淵茂

    説明員鴛淵茂君) ただいまの、魚を摂取することによる危険度でございますが、先ほど公害部長からお話がございましたように、昨年の八月に一応多量に継続的に摂取する場合は避けたほうがよろしいという警告は発しているわけでございます。食品衛生法上の関係から申しますと、この川に生息します魚が漁獲されまして市場に出て販売で流通する場合に、食品衛生法の規制がかかるわけでございます。この神通川の例では、お聞きするところによりますと、ほとんど市場の方には出てないで、大体年間の漁獲量が約三百キロ程度とお聞きしておりますので、量としても問題ございませんし、一人の、まあその川のそばに住んでる方が特にそのウグイを毎日多量に摂取するというようなことがない限りはまあそうは危険はないと考えておるわけでございまして、まあ警告を発しておるわけでございます。その販売面に関しないものは結局指導ということになります。まあいまのお話しのように、相当多量の水銀が特にウグイについては発見されておりますので、まあ危険はございませんけれども、避けたほうがよろしいかと存じます。
  100. 内田善利

    ○内田善利君 どうもその辺が納得ができないわけですけれども、地域住民の方々に不安を抱かせないという立場でそういう発言がなされておるのかどうかですね。六・〇八PPMあった、またいままでずっと調査してきておられるわけですから、そういうことを基本にしてそういう発言がなされておるのかどうか、この辺、私たちしろうとでは、少なくとも六・〇八あったということは非常に大きな衝撃でありますし、あの水俣病の患者の方々とお会いしまして非常にその悲惨な姿を見ておりますので、そういう事態にならないように、その点ひとつよく配慮していただきたいと思います。住民の方々に被害がなければ非常に幸いと思いますけれども、今後厚生省としては健康調査をされていくものと思いますけれども、いままで健康調査はされたことがあるのかどうか、また今後は健康調査をどのように具体的にやっていかれるのか、それをお聞きしたいと思います。
  101. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 現在までの健康調査でございますが、これは昨年の八月に四十三年度水銀による環境汚染調査というものを発表します前に、実は補完調査としまして、富山県にやってもらったのがございます。この場合には、漁業協同組合のほうにお願いしまして、ウグイ等を多食している人を出してもらって、この中から七名出てきた中の五名について毛髪の水銀量の調査をいたしております。この点、この時期でやりましたのはただ一回でございまして、私どもとしましては、水銀の汚染の範囲が熊野川等にも相当ひどくなっているということを知りましたのはこの四月の四日でございますので、この新しい汚染の状態を前提とした健康調査を毛髪調査から始めていこうということにしたいと思っているわけでございます。
  102. 内田善利

    ○内田善利君 四十二年から水銀が出ておるということを発見しておって、はっきりと水銀でこのように汚染されているということが四月四日にわかったと、これから健康調査はもっと精密にやっていくのだということだったと思いますが、やはりこういった水銀問題は特に大きな問題なわけですから、当然私は、これには十分指定水域にして健康調査をすべきではなかったかと、まあいまその被害者があるのかないのかさえも現状ではわからない状態ではないかと思います。ただ、七人ですか、六人ですか、たくさん食べておる人を調査したということですけれども、これはまあ魚の移動の面あるいはこれを常食としておるかどうか、あるいは子供たちはどのようにして食べておるか、非常に危険なわけですが、こういった健康調査は当然広域にわたって流域でやるべきではないかと、このように思うわけです。したがいまして、今後の健康調査は早急にその流域をよく検討されて調査していただきたいと、このように要望いたします。
  103. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) そのようにいたしたいと思っております。なお、先ほどちょっと申します場合に間違っておりますが、常願寺川と神通川のエチル水銀の濃度として申し上げました数字は、実は総水銀の数字でございまして、エチル水銀につきましては現在の段階ではまだ十分クロスチェックはできておりませんので、常願寺川にもエチル水銀が出ているということだけでございまして、それ以上の数字を申し上げるまでの段階には至っていないような状況でございます。
  104. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つ、薬務局の方に質問したいと思いますが、塩化第二水銀のチメロサールを製造する製造方法には問題はないのかどうか、その点ひとつお聞きしたい。
  105. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 塩化第二水銀の製造方法よりは、むしろその廃棄物の処理の点について十分に検討する必要があるのではないかということで、実は先般二十一日福寿製薬の社長及び工場長を呼んだ際もその点を十分に検討を指示したわけでございます。
  106. 内田善利

    ○内田善利君 それではこの問題は以上にいたしまして、水質保全法の関係に入りたいと思いますが、前回も小平委員から質問が出ておりましたが、愛知県で木曽川の水質の自動測定装置を犬山市の上水道の貯水ポンプ所に設置したと、こういうことで無人個所に設置されるのは全国で初めてのケースだということでありますが、大気汚染関係については、自動測定装置ができて非常にこの自動的な測定ができているわけですが、水質については、この自動測定装置はどの程度可能なのか。聞くところによりますと、この無人測定装置を装置すると、分立するおそれがあるというようなことも聞いておりますし、また、人間が、観測者が四六時中この水質を調査するというわけにもいかないと思いますので、この自動測定網の設置について、どのように考えておられるのか、水質保全課長さんにお願いしたいと思います。
  107. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 大気の場合におきます町あるいはCO一種類の測定と違いまして、水銀の場合にはいろんな項目がございます。現在満足すべき自動測定器と申しますのは、まだ開発されておりません。いろいろな試作品程度のものはあるようでございますけれども、二、三種類のものを測定できるようなものができたというような話も聞いておりますのですけれども、まだ実際の実用化の段階には、なかなか設置する場所、川の中でございますと、どういう場所に設置したらいいのか、そのような問題もございまして、非常に今回環境基準をきめましても感知体制をどうするかということが問題になっております。この点につきましては、今後いろいろメーカーのほうの方の協力を得まして、私たちのほうといたしましても、予算措置も考えまして、効率のいい機械を製作していくというような方向に進みたい。まだ現在のところは、その程度に考えておるような段階でございます。
  108. 柴崎芳三

    政府委員(柴崎芳三君) ただいま西川参事官からお話のありました機器がまだでき上がっていないという点でございますが、確かに現状はそのとおりでございまして、通産省もその点を重視いたしまして、工業技術院の名古屋の試験所と大阪の試験所で目下これを特殊なテーマといたしまして、研究させておるところでございますから、特にBODの自動測定器につきましては技術的に非常にむずかしい点がありまして、いつごろその開発研究が実現するか、まだはっきりめども立たない段階でございますが、できるだけこれを急がせて早く研究を完了させたい、かように考えております。
  109. 内田善利

    ○内田善利君 法案の総則の目的ですが、第一条一項、二項ですけれども、現行法の「産業の相互協和と公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。」という現行法が、改正案では、第一項として「国民の健康の保護及び生活環境保全と産業の相互協和に寄与することを目的とする。」と、こういうふうに一項できめまして、二項で「前項に規定する生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」と、こう改正されるわけですが、「前項に規定する生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」、このようになっておるのは、どうも生活環境保全が従になっておるような感じがするわけです。産業の健全な発展が生活環境保全の調和をはかるようにするというような文句なら納得いけるのですが、どうもこの法案の内容では、「生活環境保全」が従になって「産業の健全な発展との調和」というほうが主になっておるような感じがしますが、この点はいかがでしょう。
  110. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この目的の改正につきましては、これは公害対策基本法の趣旨を取り入れたものでございまして、公害対策基本法におきましては、「国民の健康を保護するとともに、生活環境保全することを目的とする。」、こういうふうにうたってございます。それでその第一条の二項におきまして「前項に規定する生活環境保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」と、「産業」ではございませんで、「経済」ということばを使っておりますが、そのような表現になっております。この目的の第二項に「生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」と申しますのは、この公害対策基本法と同じ精神で取り入れているわけでございます。ただ、公害対策基本法と今度の保全法の改正案とやや違いますところは、生活環境につきまして、公害対策基本法のほうにおきましては、第二条の定義におきまして、生活環境を一般に考えております生活環境よりも広義に解釈いたしております。いわゆる産業に類するもの、「人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む」と、こういうことが第二条の定義の中に入っております。公害対策基本法におきましては、「生活環境」というのをそのような狭義なものに加えまして、この産業で、動植物の生育環境でございますから、いわゆる農業あるいは水産業、このようなものも「生活環境」に取り入れているわけでございます。その点保全法のほうにおきましては、第一条の目的に「産業の相互協和」ということを入れておりまして、産業間の争いはこの第一条の「産業の相互協和」で読めるわけでございます。生活環境に対しましての問題で、「生活環境保全」は狭い意味の生活環境に考えております。その狭い意味の生活環境につきましては、やはり公害対策基本法におきましても同様に、「生活環境保全については、経済の健全な発展との調和」をはかるということになっておりますので、そのままその精神をとりまして、この「生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにする」と、こういうふうに入れたわけでございまして、あくまで公害対策基本法の精神と全く同一のものでございます。
  111. 内田善利

    ○内田善利君 どうも公害対策基本法そのものが人間生命の尊重という立場からつくられていないように思うわけですが、したがって、こういった法案もやはりその精神にのっとってつくられるということになると思うのですが、やはり人間の生命の尊重という立場から、こういった法案は制定すべきではないか、このように思うわけですが、第八条は「指定水域については、関係都道府県知事は、当該指定水域の水質の汚濁の状況をは握するため必要な測定を行なうものとする。」このようになっておりますが、先ほど水質の測定は、結局自動測定装置にしても県民でやれと、こういうことなんですね。
  112. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 一応指定水域につきましてのアフターケア等につきましては、従来は経済企画庁の予算をもちまして県にお願いしておったわけでございますが、今回の法律改正におきまして、提案の説明でも申し上げましたように、この公害行政というものに対しましては、地方自治体との協力関係を密接化するというようなことから、ここにいままでやっておりましたことをはっきり明文化したわけでございます。しかしながら、必要な測定につきましては、これは機関委任的な考え方を持っておりまして、その県の地方自治体の、ある意味において、義務というよりも権限的な考え方でこの条項を入れているようなわけでございます。
  113. 内田善利

    ○内田善利君 下水道の整備五カ年計画ですけれども、四十二年から四十六年までの五年間ですが、九千三百億円を投資して、普及率が面積比では三二・五%、人口比で五三・七%にする計画であったわけです。ところが、財源的な裏づけが不十分なために、地方では受益者負担制度を活用してやりくりをしておる、こういう状況ですが、その点について。
  114. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 下水道整備は、実は企画庁のほうの所管ではございませんで、建設省のほうの所管でございますので、ちょっと正確な答えは申し上げられないかと思いますが、公共用水域保全のためには今後下水道のウエートが非常に重要になってきております。特に都市部におきましては、排水の規制計画では目的を達成することはできない。で、規制をかけられない一般家庭下水、このような問題に対してはどうしても下水道を整備してもらう以外にはないわけでございます。その点につきまして、下水道のほうの整備のほうと公共用水域水質保全のために今後格段の努力をお願いしなければいけないというわけでもございますし、今回環境基準を閣議決定するに際しましても、特に閣議におきましては、御承知のように、下水道整備という問題を今後の重点的な方向にしなければいけないということは建設大臣も発言されたようなわけでございますけれども、また財源的な問題につきましては、私どもの水質保全を所管する官庁といたしまして、建設省とよく十分相談いたしまして、推進をはかってまいりたい、このように考えております。
  115. 内田善利

    ○内田善利君 河川の公害は、工場排水から家庭排水といいますか、にだんだん移行しつつある、こういう状況でありますが、今回の設定された環境基準は、いま申しました四十六年度までの下水道整備計画とどのような関係でつくられたのかどうか、その点。
  116. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 今回きめました環境基準につきましては、国民の健康、人の健康にかかわる項目は、二十一日閣議決定後直ちに適用され、これを維持するように努力しなければならないわけでございますが、生活環境にかかわります分につきましては、段階が、類型がございまして、今後早急にそれぞれの類型への水域の当てはめ行為がございます。その当てはめ行為を行ないます場合、現在きれいなところで、そのまま維持しようというところは直ちに環境基準を適用いたしますが、現在すでによごれきっているところ、あるいは進行しつつあるところ、このようなところにつきましては、やはり直ちに達成は困難でございますので、原則として五年以内というような達成期間を設けて当てはめ行為を行なうことになっております。この当てはめ行為をどの段階に当てはめるかということが達成期間ともうらはらになりますので、それを当てはめる行為を行ないますときに、下水道整備計画、あるいは工場の排水規制計画、あるいはその流域への立地規制計画、そのようなものを関係各省全部で総合して詰めまして、それに基づきまして当てはめ行為を閣議決定する、このように考えております。そのあてはめ行為を協議します段階におきまして、下水道の整備計画というものと十分調整をはかりたい、このように考えております。
  117. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つお聞きしますが、異臭魚の原因になっている海域の油分による汚濁ですけれども、この海域の油分については、測定方法が確立されていないと、したがって規制をされていないと、こういうことですが、この点についてお伺いしたいと思いますけれども。
  118. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 先生のおっしゃいましたように、油分につきましては、現在異臭魚のもととなります濃度が、これは実験その他から出てまいりまして、まあ水産庁の側におきましては、〇・〇一PPMと、こういうことを申しております。ところが、これを現在の海域なり何なりにおいて現在油がどのくらいあるだろうかということを測定します段階におきましては、〇・〇一PPMという油分は測定できないわけでございます。検出限界よりもずっと下回っておりまして、測定できません。実際その規制の上におきましては、現在、海域のたとえば四日市、鈴鹿、あるいは大竹、岩国、こういうようなところで、すでに指定水域に達しまして、排出規制をかけておりますが、このようなところでいわゆる排水の出口の規制をきめます場合には、目標水質〇・〇一PPMというようなことを十分念頭に置いて規制はやっております。  ただし、今回の環境基準の中におきましてその油分の目標値を入れるということは、〇・〇一PPMというものをかりに入れたとしましても、その〇・〇一PPMというものは、現在実際その海域がどうなっておるのかということは、測定技術がありませんのでわからないわけでございます。  そのような観点から、私どものほうの素案といたしましては、一応現在の測定技術というものを前提といたしまして検出されないと、このような案を考えたわけでございますが、それの素案では、実は関係省庁の同意が得られませんもので、やむを得ず今回の環境基準からは油分の項目は一応はずしました。しかし、これにつきましては、今後ともまた相談を、協議を続けてまいりまして、各省のコンセンサスが得られたならば中に入れるということを考えております。実際の排水規制を、水質保全法によります排水規制を考えますときには、当然その異臭魚の限界というものを念頭に置きまして排出規制をかけたい、このように考えております。
  119. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つお聞きしますが、窒素化合物ですけれども、窒素化合物は有害物質とわかっていながら、下水道では処理技術がおくれているために処理できないと、こういう状況にありますが、この水質測定技術あるいは処理技術の現状をお伺いしたいと思います。
  120. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 水の中に含まれます窒素につきましては、測定の技術はございます。ただ、これは除去する技術がございません。人間の屎尿の中からも出てくるわけでございますけれども、下水道を通じましてもこれが除去できません。水中におきます窒素化合物は、空気中におきます、大気の中におきます窒素化合物と違いまして、人間のほうに有害であるというのは私、まだ聞いておりませんのですけれども、問題となっておりますのは、農業用水に使いました場合のイネの徒長でございます。イネは生育期のときにはこれは窒素肥料を与えなければいけないわけでございますが、これがいわゆるしまいのほうになってきますと、イネが、窒素が過剰でありますとかえって伸び過ぎてしまいまして、それで倒れてしまうというようなことで、農業用水のほうに、農業のほうに非常に被害が出ているわけでございますが、現在この除去技術がないというようなことから、四十五年度におきましては、農林省並びに経済企画庁のほうにおきましてもこの窒素の問題を特定項目として取り上げて調査研究したいと、このように考えております。
  121. 須藤五郎

    須藤五郎君 きょうは水質保全法案に関連しまして幾つかの問題点について質問をしたいと思うんです。  水質環境基準につきまして、今月の二十一日に閣議決定を経てすでに実施の段階に入っているということを言っておりますが、私は、この環境基準が完全に達成されるとしましても、水質汚濁問題がすべて解消できるもんだとは考えていないわけです。しかしながら、現在の水質汚濁の実情に照らしてみますときには一応の改善が行なわれるのではないだろうかと、こういうようにまあ考えております。  そこで経済企画庁にまず聞きたいのですが、この環境基準設定の前提として、最近の各河川の汚濁の現状と汚濁の原因をどのように調査していらっしゃるのか。汚濁が進行しているのか停止しているのか、防止対策との関係はどうなっているのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  122. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 今回きめました環境基準につきましては、これは国民——人の健康にかかわる分とそれから生活環境にかかわる分と大別して二つの種類があるわけでございますが、これを数値的にきめました根拠といたしましては、これは現在の汚濁の状況あるいは汚濁の原因等の問題を離れまして、人の健康にかかわります分につきましては、疫学的見地から有毒限界に対しまして安全率をかけまして、これ以下という厚生省のほう——所管省であります厚生省のほうからの要望数字がございます。その数字と関係各省との間で詰めましてきめたものでございます。これは疫学的見地からのあれが非常に大きな要素になっております。  それから生活環境のほうにかかわります分につきましては、これは公共用水域のそれぞれの利水目的があるわけでございます。水道用水、水産用水、農業用水、工業用水それぞれいろいろな利水目的があるわけでございます。その利水目的に対しましてそれぞれの用水が利水者側といたしまして要望する水質基準があるわけでございます。その水質基準を基礎条件といたしまして決定いたしたわけでございます。  それで、現在の汚濁がこうであるから、そのままの汚濁を見込みながら基準をきめるというような考え方ではございませんで、それぞれの利水の要望する数値をその基礎条件といたしまして、それが非常に多岐多様にわたっておりますもんですから、ただ単に用途別をそういうふうにきめただけでは、これは実際に、それならばこの水域はどういうような目標にするのかというようなことがなかなか徹底いたしませんもんですから、現実の行政目標といたしますあれといたしまして、それぞれの目的から出ました数値を基礎条件といたしまして、これを類型別にまとめまして、それで今度は実際の水域につきまして現在の利用形態その他から考えまして、どの類型に当てはめたらいいだろうかということを別に閣議決定する、このような考え方で基準をきめたわけでございます。
  123. 須藤五郎

    須藤五郎君 この汚濁の問題ですがね、私は今日もまだ汚濁がどんどんどんどんと進行しておるのか、それとももう現在はその汚濁がとどまっておるのか、停止している状態なのか、それに対する防止対策としてどういうふうな対策を……。
  124. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この水質汚濁問題は、非常に地域的問題の性格が強うございまして、現在進行中のところもございますれば、よくなってきているところもございます。かつて非常に汚濁が進みましたたとえば隅田川のようなところは排水規制もかけましたし、それから下水道の整備も一生懸命やっております。で、かつての五年ないし十年前と比べますと現在だいぶきれいになってきている。ただこれをさらにきれいにするためには、今後まだまだいろいろなことを考えなければならぬのではないだろうかというようなことがあるわけでございます。そういう観点から見ますと、個々の水域の問題になりまするが、大勢的に見ますと、いわゆる大都市地域の都市河川といいますのは、ある程度汚濁が進み切ってしまっている。これにつきましては、今後いろいろな方策を講じまして、改善していく、もとへ戻していくという努力を続けなければならないのではないかと思います。地方の中小都市あるいは大都市の周辺地域、この辺のところが現在汚濁がいわゆる進行しつつある。将来も非常に汚濁されるのが心配される水域でございます。ただ最近の傾向といたしましては、その辺のところの汚濁源がいわゆる工場、事業場の排水といいますよりも、都市化の進展に伴います一般家庭の汚水に下水道の整備が追いつきませんので、大都市周辺の上流地域におきまして、なまのままの下水が出てきているというのが非常に大きなウエートとなってきております。今度環境基準を決定いたします場合にも、そういうようなところの周辺地域のところにつきましては、現在の水質を悪化させないというふうなことで、いろいろな立地その他につきましても、下水道の整備と見合いながら、計画的にこの開発をしていくというようなことが必要になるのではないか、その辺のところがございますので、排水規制だけでは回り切らないほど、これはもう私たち保全を所管いたしておりますけれども、はっきりいたしております。そのために環境基準というものをつくりまして、政府全般が一体となって環境基準を維持、達成できるように努力してまいりたい、このような考え方に立っているわけでございます。
  125. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、よくなってきているものもあると、しかし進み切ってしまって極限までいってしまっているものもある、それは引き戻すように手を打っておると、こういうことですね。  あんまり深く質問する時間がありませんから、次に移りますが、環境基準によりますると、国民の健康にかかわる基準については、閣議決定後直ちに全国一律に実施されたわけだと思いますが、ここにあげられました七種類のものは工場、鉱山などから排出されたものだと考えます。この中に環境基準、今度諮問された中にあげられている七種類のものです。最近の新聞によりましても、神通川流域における多量の水銀の流出、また東京多摩川におけるシアン化合物の検出が新聞で伝えられておりますので、環境基準を示しただけでなく、こうした発生源に対し、どのように周知させる手段を講じたのか、この点を伺っておきたいと思います。
  126. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 人の健康にかかわります分は、直ちにこれを維持達成できるように政府として努力しなければならないということになっておりますけれども、当面あれしました七項目があがっているわけでございますが、これは排出の基準ではございませんで、流水の中の基準でございます。そういたしますと、当然排水の直下におきましては、これより濃いのが出てくるわけでございます。その点から、いわゆる環境基準を維持達成しているかどうかということを定めます場合におきましても、基準点というものを設けまして、希釈されたあとにおきまして、一般の状態になったところで基準点を考えまして、その基準点におきまして維持達成して、いるかどうかというふうに考えてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。現在、ここにあがっております七項目のうちシアンにつきましては、これは指定水域につきましては、全部一一PPMというところを考えております。それから毒劇法におきまして二二PPMというものがかかっております。実際問題といたしましては、毒劇法による二二PPM、あるいは水質指定水域におきます一一PPM、これを守っておる限りにおきましては、流水の中に入りましたら直ちに希釈されまして、 排水口では出ますけれども、それからやや離れたところになりますと、当然もう希釈されまして検出されないということになるわけでございます。その点はもうすでにかかっておるわけで、これを検出するようなことになりますと、これは実際に排水しているほうが水質基準の違反かあるいは毒劇法の違反をやっている、こういうふうに考えざるを得ないわけでございます。  その次のメチル水銀につきましては、これも現在メチル水銀を出すおそれのある工場につきましては、メチル水銀は排水口において検出されないことという基準がかかっております。これは全国のメチル水銀を出すおそれのある工場は全部かかっておりますから問題はない。ただ、先生のいまおっしゃいました神通川その他はメチル水銀ではございませんで、トータル水銀のほうの話になっております。トータル水銀につきましては、実は今回の項目には入ってないわけでございますけれども、この点につきましては、いま現在厚生省のほうとも折衝中で、早急にこのトータル水銀の数値というもの、基準値というものを定めたい、で、健康にかかわる環境基準の中に追加をいたしたい、このように考えております。  それから有機燐は、大体農薬のほうから出てまいったわけでございますが、現在有機燐のあれは、農薬が全部危険の、毒性の高いものはパラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン、UPM、これは全部製造はやっていないわけでございますから、これのほうも使用するおそれはないのではないかというふうに考えております。  それからカドミウムにつきましては、これは鉱山関係のほうから出てくるわけでございますが、このカドミウム、鉛、それからクロムのほうも、シアンと同じように、六価クロムにつきましては全部シアンと同様な規制をかけております。カドミウム、鉛、砒素につきましては、早急に通産省のほうともお願いいたしまして、おそれのある鉱山につきまして点検をしなければならないだろう、で、点検をしまして、その結果必要があれば、排水規制をかけるというような方向に進まなければいけない。流水の中につきまして、大体私たちの感覚では、それほど、流水中におきまして、これ以上のものが出ておるところはほとんどないのではないだろうかと思っておりますけれども、一応通産省のほうと連絡をとりまして、一ぺん点検をしてみたい、このように考えております。
  127. 須藤五郎

    須藤五郎君 こういう毒物を出している工場に対しては、厳重に警告を発しておる。同時にこういう毒物の危険のある川ですね、それに対しては、その付近の人たちにその危険を知らして気をつけるようにしておる、こういうことは私は必要だと思うんですが、それをやっているんでしょうね、どうですか。
  128. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 今回この環境基準が定まりましたんで、これは地方公共団体とも通じて、ただいま現在、実はカドミウム等につきましては、かえって、カドミウムが検出されたということだけで、非常に地方住民に不安を与えておるようなケースもあるようでございます。流水中におきましてカドミウムが〇・〇一PPM以下であれば、これはいろいろな疫学的な見地や何かから十分検討して、これ以下であれば安全であるということが今回はっきりしたわけでございますから、その辺のPRも兼ねて、地方公共団体を通じまして周知、徹底させるような努力はいたしたい、このように考えております。
  129. 須藤五郎

    須藤五郎君 いま、あなたが神通川の流域の問題に触れられましたが、新聞によりますと、滝沢という新潟大学の助教授が自分で調べたデータをすっかり出されまして、厚生省のやっていることはどうもふに落ちない、学者の良心上ずさんなやり方に対しては許すことはできないという記事を新聞に発表していらっしゃるわけなんですが、富山県や厚生省は測定データを隠しておると、それから、こういうことも言っている。川魚をめしがわりに常食しなければだいじょうぶだ、こういうふうに無害説を打ち出しておると、こういうことが言われておるんですが、こういうことに対しまして、学者は良心上許さないからといって、いろいろな問題点を明らかにしていらっしゃるわけですが、これを全部ここで私が読み上げる時間的な余裕がありませんから、私はそれはしませんが、厚生省はこういうことに対して隠したり何かしないですべての問題を明らかにして、そしていささかも住民に被害を与えないと、こういう姿勢で臨まれておるのか。従来どこでもこういう問題が起こると通産省はどうもいわゆる企業側に立って、できるだけそれを隠すなり、過小評価をしていくという傾向が、通産省は従来もそうしたことがあったわけなんですが、厚生省としては、やはり直接人間の健康に関係のある省ですから、むしろ進んでこういうことを積極的に発表し、そうしてそれに対して対策を立てていくというのが私は本筋だと思うんですが、どうでしょうか。厚生省はこういう、新聞にあるような、非難されるような、学者に非難されるような行為は絶対にしていないのかどうなのか。
  130. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの点、まず多食の点でございますが、これは先ほどから私申し上げておりますように、私ども従来から方針を変えたわけでございませんので、この河川につきましては、四十二年、四十三年、こういうような水銀で汚染されているといった実態が明らかになってまいりまして、昨年の八月に発表しました四十三年度調査結果におきましても、特に多食についての警告を発しておるわけでございます。そのときの文章も、実はちょっと読んでみますと、「安全性を強調する予防的見地からこうした地域の」——これも汚染がある地域の底に住んでいますコイ、ウグイ、フナ、こういう「大きな魚について、漁業に従事する人々のなかで、長期かつ極端な大量の——たとえば毎日主食の一部となり得るような量において喫食するような異常な食習慣があるならば、これを改めていくことが今後一般的原則として普及徹底されるよう望まれる。」、こういう表現で警告を発しておるわけでございます。今回たまたま見つかりましたのが製薬会社であると、あるいは厚生省の所管であると、極端に言えばそういうことになるかと思いますが、そういうために表現を改めて特にこういうような表現をとっておるわけじゃございませんで、従来からそういう考え方で立っておるわけでございます。非常に多食をすると、長期に毎日多食をすると、こういうことの場合に非常に危険があるという警告を発しておるわけでございます。ただ純学問的に見ましたら、それをどれだけ食べたら問題があるのかという点につきまして、今後十分解明しなければいけないということで、四十四年度、四十五年度と各種の研究をやっておるわけでございまして、たとえば人間の水銀化合物摂取、排せつについての研究をやっていただいておりますものもございます。これは、たとえば食品の中にどれだけ水銀が入っているか、国民がそれをどれだけ通常食べているか、それがどれだけその中の水銀分が日々排せつされてどれだけたまっているか、こういうような点についての研究等もなされておりまして、こういうようなものを基礎としまして、将来いわば食品中の水銀のいわば限度と申しますか、こういうものを設定できれば一番いいと思っておりますが、現在はそこまで行っていないというような状況でございます。  それから新聞の記事のことでございますが、この点実はうちの担当の技官から先生のほうにもいろいろ電話でお話をお聞きしているようでございますが、いろいろ行き違いがございまして、若干事実と相違した点もあるかと思います。ここでその詳細を申し上げるのは適当でないと思いますが、近くこの滝沢先生も含めまして、分析をやっていただきました先生を中心に専門家のお集まりをいただきました上で検討をやっていく、こういう段階になっております。もちろん、厚生省の姿勢といたしましては、いま御指摘のように、全く客観的な立場でものを考えてまいりたいと思っておりますので、決してそれを隠したり何かしようなんということは当初から考えておりません。そのことははっきり申し上げておきます。
  131. 須藤五郎

    須藤五郎君 こういうことは、毎日食べなければいいとかなんとか、そういうことじゃなしに、やはり徹底的に調査をして、学者も交えて検討して、いささかも人にその害の及ばないような徹底した手を打っていってもらいたい、こういうふうに思います。  まあそれじゃその次に聞きますが、こういう点ですね、通産省にも私は聞いておきたいのです。通産省の方、見えていますね。それじゃ特にここにあげられましたところのこの七種類の物資ですね、先ほど厚生省の方が言った——依然として検出される事態があったら一体どのような措置を通産省としてとられるのか。通産省はいつも企業の側に立つくせがありますので、こういう問題が今後ずっと続くような事態があるならば、どういう措置をとられるのか。
  132. 児玉清隆

    説明員(児玉清隆君) 規制の問題はあとにいたしまして、現在私どもの扱っております業種は三十八ございまして、これは工排法によって役割りを課せられておるわけでございますが、そのうち三十一につきましては、都道府県知事に権限を委任いたしておりまして、直接私どもで扱っておりますのが七つでございまして、したがいまして、各担当の部局はそれぞれ県におりたり、あるいは通産局という立場でやっておりますけれども、一貫いたしまして一ここからは姿勢の問題に入りますが、私どもはやはり政府一体の原則ということでございまして、何省何省ということで姿勢が本来変わるべきではございません。したがいまして、産業行政立場からいたしましても、やはり国民の健康保全ということは第一義的に考えております。  それから生活環境の問題は、先ほど保全法の改正で問題になりましたように、産業と国民生活環境との調和という点はこれは配慮しながら各省とも打ち合わせてやっております。したがいまして、そういった観点からきめられております客観的な規制基準、これの違反につきましては厳正な立場で臨むという点は、私どももほかの省も一致しております。ただ手続上、たとえばアメリカの法律体系のように、すぐさま罰金とかいうことにまいっておりませんで、法の立て方自身が改善命令というものをかけるというワンクッション入っております。したがいまして、まずたとえば各県知事に権限が委任されておりますものにつきましては、県知事の厳正な判断によりまして改善命令ないしその次善勧告といった指導段階がございまして、その命令に違反したものについてはこれを告発するということで最近も厳重な通達を出しておるところでございまして、そういった違反事例が今後出ました場合には営業停止ないし告発という措置を十分とっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  133. 須藤五郎

    須藤五郎君 この環境基準を達成していく上で、これを達成し守っていくという点から申しますならば、各都道府県との関係がきわめて私は重要な問題になってくると思うわけですが、この基準設定にあたりまして各地方自治体とどのように連絡をとられたか、また地方自治体と相談の上でこれをつくられたのか、この点は企画庁に伺いたいと思います。時間がありませんから、要点だけ答えてください。
  134. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この基準設定につきましては、先ほども申し上げましたように、疫学的な問題、あるいはそれぞれの用水の基準からきまっております。今後都道府県と問題になりますのは、生活環境にかかわります当てはめ行為の問題でございます。この当てはめにつきましては、十分都道府県の意見を尊重しまして相談しながら当てはめ行為をきめてまいりたい、このように考えております。
  135. 須藤五郎

    須藤五郎君 この間つくった生活環境の基準ですね。これは地方自治体とは相談なしで経済企画庁独自の考えでつくられたということなのですか。
  136. 西川喬

    政府委員(西川喬君) ここに載っております生活環境にかかわります環境基準につきましては、先ほどから申し上げておりますように、利用目的というものの適応性というものを考えましてきめたものでございまして、この利水目的に対しましてそれぞれの要望する水質と申しますのは、これは関係各省から出されたものを基礎条件といたしております。それを集約的にまとめました分でございまして、これをつくる段階におきましては県との協議は入っておりません。関係各省の間で最終的に協議がととのったわけでございます。決して経済企画庁の独断ではございませんで、政府といたしまして関係各省の間で全部討議したものを決定したわけでございます。
  137. 須藤五郎

    須藤五郎君 全国公害行政協議会ですか、そこから三月十五日に政府に対しまして決議文が出されておると思いますが、この問題について、それではどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  138. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この決議文は三月十五日ではございませんで四月十五日でございます。この前公害課長会議がございまして、そこから出されてきたものでございます。この中に水質環境基準の適用にあたっては自主性を十分尊重されたい、こういう項目があるわけでございますが、この適用と申しますのが生活環境の場合の各水域のそれぞれの類型の当てはめ行為でございますが、現在はまだ当てはめ行為はやっておりません。早急にまとめまして、五月中には現在指定水域になっているところだけぐらいは当てはめ行為をやりたい、こういうふうに思いまして、現在作業を進めておる段階でございますので、この間におきまし七は都道府県の意見を十分尊重したい、このように考えております。
  139. 須藤五郎

    須藤五郎君 ここに、地方自治体の意見が出ておりますが、一つは、基準を適用する場合、自治体の自主性を尊重してほしい。二番目が、基準を達成するために国は法律、財政面で十分な対策をとられたい、この二つですね、大体中心は。この二つの中心的な決議は、政府は尊重してこれをこの線に合うような方向で行こうというお考えですか。
  140. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この二項目にも該当するようなあれが、環境基準を閣議決定いたします前の中央公害対策審議会におきましても附帯意見として出ております。で、中央公害対策審議会のほうでつきました附帯意見は「環境基準達成のための対策の具体的内容を早急に策定すること。」、それから「現在、助成対象となっている対策以外の対策も助成の対象とするよう速かに検討すること。その際、国、地方公共団体および企業の負担区分を明瞭にすること。」、それから「生活環境保全に関する環境基準において、各水域の該当水域類型の指定を行なう場合は、地方公共団体意見を尊重すること。」、このような三項目の附帯意見が中央公害対策審議会においてもついております。この附帯意見は、閣議決定の際にも長官のほうから御披露しておりますし、この三項目の附帯意見が大体、この一項、二項をそのまま取り入れていると思います。これに従いまして関係省の間で十分尊重してやってまいりたい、このように考えております。
  141. 須藤五郎

    須藤五郎君 この環境基準を達成するための施策として政府の示しておる内容は七点にわたってまさに列挙してあるのでありますが、実際の水質汚濁公害に関する官庁の複雑な入り組んだ現状とあわせまして、どこが最終的な責任と権限を持つのか、そしてこれらの施策のうち最も重点的なものは一体何なのか、そういう点を伺いたいと思います。
  142. 西川喬

    政府委員(西川喬君) この公共用水域水質保全問題につきましては、その実際の水域の利用実態も非常に多岐にわたっております。さらに原因となる汚濁のほうも多岐にわたっているというようなことから、非常に関係省が多くなっているわけでございますが、私たちといたしましては、やはりこれを形式的に一元化するよりも、このような非常に複雑多岐にわたる問題につきましては、関係省全部が、関係行政機関全部が認識を持ちまして総力をあげてやっていくべきが一番ではないだろうか、このように考えているわけでございます。一応経済企画庁といたしましては、この各省の総合調整官庁といたしまして、この一番水質保全基本的なあれとなります保全法を所管いたしまして基準を決定する。この基準を決定いたしましたら、それぞれの順守責任と申しますのはそれぞれ各省の工排法あるいは鉱山保安法、あるいは今度の新しい規制対象の追加によりましてそれぞれの法律によって関係省がやるわけでございますけれども、そういう関係省全部が深い認識を持ちまして協力してやっていくのが政府の総合施策といたしまして一番力強いことになるのではないか、このように考えているわけでございます。ただやはり、公共用水域保全法の基本法としての精神から申しまして、経済企画庁というものが最終的にはその責任を持たなければならないということは十分感じております。経済企画庁長官には勧告権もございますし、今後は十分調整官庁としての、責任を持った調整官庁としての力を各省の間の協力を得まして発揮してまいりたい、このように考えております。現在、この水質、第二の問題でございますが、やはりこの環境基準実施のための施策といたしまして、一番ウエートの高いのはやはり排水の規制、保全法に基づきます排水の規制及び社会資本の充実といたしましての下水道の整備、これがやはり一番ウエートが高かろうかと思っております。ただ、いまのこの都市化の状況を見ますと、必ずしもそれだけでは十分ではないので、今後新しい問題といたしまして土地利用の適正化とか、施設の設置の規制、このような方向においても何らかの力が加わってほしい。あるいは河川流況の改善、このような方向で力を加えていただきたい、こういうようなふうに考えております。
  143. 須藤五郎

    須藤五郎君 はい、わかりました。  そこで、下水の問題が出ていたわけなので、建設省に伺いたいわけですが、この基準に見合うように各河川の汚濁を防止するためには下水道の整備が決定的な役割りを果たすことと、こういうふうに私は思いますが、一説によりますと、総額十兆円の資金が必要と言われておりますが、下水道整備拡張についての対策をどういうふうに建設省は立てていらっしゃるか、まず伺っておきたい。
  144. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 実は下水の担当の者が参っておりませんので、私河川のほうを担当いたしておりますのですが、先生のおっしゃいますように、いろいろ工場の排水規制等を行ないましても、やはり相当最近の地域の発展状況を見ますと、下水道の占めるウエートが非常に高くなってくるのじゃないかということは、私どもも察せられるわけでございます。今後まあ環境基準が定まってまいりますと、それを政府としてどういうふうに達成をするか、それぞれどういうふうな分野を占めてやっていくかというのは、今後急いで検討さるべき問題じゃないかと思います。そのきまりました線で下水道のほうもできるだけ促進するようにやはり当然努力すべきだというふうに考えております。
  145. 須藤五郎

    須藤五郎君 きょうぼくは下水道関係の方に出席してもらうように注文しておいたのですが、下水道関係の方来ていないのですか。
  146. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 私の知っていることで一応御説明申し上げます。
  147. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではだれかかわって下水道のことを説明できますね。
  148. 西川喬

    政府委員(西川喬君) はい。
  149. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは……。
  150. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 下水道、直接いま企画庁の所管ではございませんですけれども、従来の環境基準閣議決定その他の段階におきまして、下水道のほうともいろいろ話し合っておりますこと、ちょっとお伝えいたしますと、ただいま先生のおっしゃいました十兆、これは全国の都市地域に、市街化区域に下水道を全部普及するのに必要な予算が十兆と、このように申しております。実は今回決定される——まだ決定にはなっておりませんですが、決定される運びになります新経済社会発展計画、これにおきましては、下水道のほうへの投資を一応二兆三千億と、このように考えておるようでございます。これは伸び率的に見ますと、前の発展計画と比べますと、一番伸び率を高くいたしております。この十兆と申しますのは、全部の地域に全部下水道が普及することになるわけでございますが、実際問題といたしましては、二兆三千億という投資で大体五カ年間達成というようなことから考えました場合に、環境基準がきめられましたら、やはりそこへ重点的な投資がある程度行なわれる。それから重点的な投資だけじゃなしに、現在の都市化の状況その他を考えました場合に、必ずしも全域に下水道ができなくても、現在なま下水のまま出ているものが処理できれば、それによって相当な進歩になるということで、下水道課のほうにおきましては二兆三千億と、新経済社会発展計画におきます今後五年間の二兆三千億というものが適確に配付されましたならば、大体今度の環境基準というものをそれぞれの当てはめ行為した水域につきましては、何とか達成できるんではないだろうか。ごく特殊な例外は出るかもしれませんのですが、その辺につきましては今後の当てはめ行為のときに十分協議いたしたい。すでに下水道課のほうにおきましては、ごく一部の地域につきましてはここはむずかしいというようなことを申してきております。それならば、そういうむずかしい水域につきましてはどのようなほかに対策があるだろうかというような問題について、今後具体的に政府の施策になるわけでございますから検討してまいりたい、このように考えております。
  151. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほど内田議員も少し触れられましたが、下水道整備に関係しまして、最近受益者負担金の徴収と、こういうことが非常に問題になってきておるわけですが、このこと自体私は非常に重大な問題だと思うんですね、受益者負担。ところが、政府方針としましては、このような負担金を徴収しておるところへの補助金を優先さしていくと、こういう方向をとってらっしゃると言うんですが、これはますます私は重大な問題だと思うんです。ということは、東京、大阪など大都市ほど拡張が緊急に必要となっておる。ところが、このような大都市では負担金の徴収ということは不可能なんですね。また、現在進行中の新下水道整備五カ年計画につきましても、産業下水、工業下水処理などの流域下水道につきましては補助率を二分の一にしておるのに、一般公共下水はそれよりも低い補助率になっておる。こうしたやり方は私は改めるべきものだと思いますが、その点につきます見解を聞いておきたいと思います。
  152. 西川喬

    政府委員(西川喬君) そのような問題になりますと、これは具体的にほんとに建設省の所管の問題でございますから、私がお答えしますのはどうかとも思いますですけれども……。
  153. 須藤五郎

    須藤五郎君 だって、あんた答えると言うたでしょう。
  154. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 申しわけありません。先ほどの質問の範囲でしたら、従来の折衝の過程で何とか答えられますが、いまのような問題になりますと、これはほんとの所管省の問題になりますので、経済企画庁といたしましてはそれに対してどうということはちょっと申し上げかねるかと思います。お許し願いたいと思いますが……。
  155. 松井誠

    委員長松井誠君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  156. 松井誠

    委員長松井誠君) 速記を起こして。
  157. 須藤五郎

    須藤五郎君 じゃあ具体的な例で少し聞きたいことがあるんですが、東京の隅田川での場合、隅田川を私例にとりますが、この環境基準の類型化の中ではおそらく最低のEですね。Eに位するだろうと思うんです。Eのところに置かれるだろうと思うんです。これではまだ魚も生きられないわけだと思いますが、百歩護りまして、その基準に到達するためにはどのような対策が必要なのか、そしていつごろまでに到達することができる見通しが立っておるのか、いわゆるEからその基準に到達するのにいつごろそれができるのかということです。関係省庁がそれぞれの分野から見解を私は聞かしていただきたいと思うのです。特にこの場合は隅田川ずいぶん長い川ですから、その川の位置によって多少違ってくると思うのですが、私が聞きたいのは、花火の名所のあの両国橋付近を例にとってこれらの問題についてひとつお答えを願いたいと思います。
  158. 西川喬

    政府委員(西川喬君) 隅田川につきましては、先生もおっしゃいますように、もうこれはE類型ということに当てはめすることになろうかと存じます。ほかに利水目的もございませんで、現在のところは生活環境だけということで、人に不快感を与えない程度の、臭気が出ない程度というところでまずE類型を目標にして施策を講ずることになろうかと思います。現在隅田川につきましては、かつて最悪のときには上流の新河岸川が入ってくるところでございますが、ここで六〇PPMくらいまで到達したことがございます。これはもう完全に死の川であったというような状況でございましたが、その後排水規制をかけましたこと、それから利根川からの浄化用水の導入を行ないましたこと、それから下水道の整備促進を行ないましたこと、これらのことによりまして現在隅田川はだいぶきれいになってきております、かつてと比べまして。大体最近あれでは一五から一・〇くらいの間のところまで下がってきております。これはかつての昭和四十年以前と比べますとBODで見ました関係でいいますと半減しております、BODの数値は。これをさらに一五ないし二〇のところを一〇にもつていきたいということの努力でございますけれども、現在隅田川の周辺に、隅田川の直接流域につきましてはほとんど八〇%以上下水道が完備してまいりました。もうあとわずかで隅田川へ直接水の入ります都市地域の下水道はおおむねできるのではないだろうか。結局残っておりますのが隅田川の支川——石神井川、新河岸川でございますが、こちらのほうでいまどんどん宅地化している、こちらのほうの下水道の普及率が非常に低いわけでございます。隅田川そのものに入ります下水が全部処理できましたあと、神田川、石神井川、新河岸川、そちらのほうの下水道がどの程度伸びるかということによるのが一番のあれではないか。排水規制につきましては、これはもういま都市河川といたしましては目一ぱいに規制いたしております。もうすでに下水道と同じ二〇PPMでなければいけないということは、すなわち、下水道へ入れなさい、直接川へ放流してはいけませんというような規制になっております。ですから、もう規制といたしましてはこれ以上規制することはできませんものですから、あと下水道の整備、それからまあ浄化用水の導入という問題があるわけでございますが、御承知のような首都圏地域でございますから、この浄化用水の導入も水資源のほうから見ましてなかなかむずかしいのではないだろうか。やはり下水道の整備以外にないだろう。神田川、石神井川、新河岸川、この上流のほうへ向けて下水道が伸びていくということを期待せざるを得ない、こういうふうに考えております。現在が一五−二〇まで下がってきておりますから、あとは下水道の整備で、私どもの感覚といたしましては、今後当てはめ行為のときに具体的に下水道計画を聞きまして、何年くらいでできるか、この達成年限を五年にするかあるいは特例といたしまして、七年ないし八年ぐらいにわずかながらでもやむを得ず延ばすかということが今後の問題で残っておりますが、隅田川は大体いくんではないだろうか。実は東京の問題にいたしますといま頭を悩ましておりますのは、東京の城南河川、これも指定水域になっている目黒川、立会川、呑川、あちらのほうの城南河川のほうの問題が下水道といたしましても非常に問題になるのではないか。隅田川はかえって見通しがある。一〇PPMにする見通しはあるというような状況になってきております。
  159. 須藤五郎

    須藤五郎君 ほかの省の方の意見は。
  160. 児玉清隆

    説明員(児玉清隆君) 通産省の所管のものにつきましては、いま西川参事官からお話しありましたように、すでに水質基準もきまっておりますし、それを各工場に守らしているという段階でございますので、そういった意味で行政目標としての環境基準ができたことに伴いまして総合的な施策がさかのぼって見直しをされるということでございますので、現在実施しております規制をそのまま厳正に適用していけば、いまのお話しのように、下水道の完備と相まちまして十分監督基準を達成できるというふうに考えております。
  161. 須藤五郎

    須藤五郎君 建設省の方は……。
  162. 松井誠

    委員長松井誠君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  163. 松井誠

    委員長松井誠君) 速記を起こして。
  164. 須藤五郎

    須藤五郎君 建設省の下水係の方が見えるまで、私は最後にこの問題に対する私たちの党の意見を申し述べて参考にしていただきたいと思うんですが、よい環境に住むのは人間の基本的権利である、公害はあらゆる社会に生きる人々の幸福を直接に脅かしている、これがこの間やられた国際シンポジウムで発表した東京宣言の一部だと存じておりますが、私は公害問題に取り組む基本的な態度である、こういうふうにも理解しておるわけです。今日の水質環境基準の質疑を通じましても痛感することは、公害行政が依然としまして各省庁ばらばらであると、こういうことが感じられるわけなんです。また、財政的な裏づけもきわめてはっきりしていない、あいまいな点がある。そしてこうしたことが長い間にわたって指摘されながら放置されていることはまことに許しがたいものではなかろうかと、こういうふうに思います。第一、東京都におきまして四月一日から公害防止条例を発足させております。これは国会論議を通じましても問題になり、政府の責任ある人の中から、この条例が法律の内容を上回るものだ、違法だ、こういう違法呼ばわりさえされておるわけです。しかし、これは私は正しくないことだと考えます。ほんとうに、真に東京都民の生命と健康を守り抜こうとする美濃部都知事の積極的な姿勢政府がむしろ謙虚に学ぶべきである、あれこれの干渉をするべきことではないと考えます。われわれ日本共産党は、公害問題に関する政府姿勢を変えることを強く求めたいと思います。  それはまず、公害の発生源、大企業、工場に対しましての規制をより一そう強化すること、公害の責任を追及して罰則を強めることだと考えます。さらに政府におけるばらばらの行政は、地方自治体に大幅な権限を与えて、公害問題に対する一元的な対策を確立することだと考えます。そうしてこれらの対策に見合うところの財政的な措置を直ちに講ずることが必要だと考えます。公害が人間の生存すらも脅かす脅威と呼ばれている今日、わが党は国民とともに今後と政府の抜本的公害政策の確立を要求してまいりたいと思います。だから政府当局におきましても、どうか、一企業の利益を守るという立場でなく、実際国民の健康をあくまでも守っていくという見地に立ちまして、十分な対策を立てて、そうしてよく地方自治体と相談して、下水道の問題でも地方自治体が経済的にできない場合は国がその費用を大幅に負担するという方向で下水完備をするように私はやっていっていただきたい、こういうふうに考えます。これがわれわれ共産党の意見でございますから、十分に考えていただきたいと思います。  それから、まだ回答をする人が見えていませんから、私もう一問だけそれじゃ追加しておきます。きょうは時間がなければやらないつもりで来たんですが、若干まだあるようですから。先日、衆議院のほうでわが党の米原議員が渡良瀬川の関係の問題について質問をいたしました。で、厚生省に伺いたいんですが、桐生市議会議事録にあることですが、桐生市水道局における検査の結果、水道じゃ口における砒素の量が〇・〇五PPMをこえた場合には、一日ぐらいなら人体に影響がないからとか、何日も続くときには検査はしなくてもよいなどという厚生省の指導があったと、こういうふうに市議会で市の水道局長が述べておるわけなんですが、これは環境基準できめられた河川における砒素が〇・〇五PPM以下であるということ、水道法における規定等からいいまして私はこういう指導をもしも政府当局がしたとするならばそれは重大な問題だと思うんですが、厚生省の見解を聞いておきたいと思います。  それから第二は通産省に聞きたいのですが、この渡良瀬川の砒素は、上流にある古河鉱業所から排出されたものであることはこれは明白だと思うんですが、通産省がその後にとった措置を聞いておきたいと思います。
  165. 国川建二

    説明員(国川建二君) ただいまの桐生市の水道水の水質につきましての御質問でございますが、桐生市の水道は水源が、御承知かと思いますが、渡良瀬川の表流水と伏流水を使用しております。先ほどお話がありました水質検査の結果、いわゆる水質基準で定めております〇・〇五PPM以上、こえた場合検査しないでいい。あるいはそういう水は給水していいというようなことを厚生省として、そういったことの指示とか、あるいはその取り入れに対してそういうことを言ったことはございません。もちろん給水せんの水質基準は法律上にも水道水の水質基準はきまっておるわけですから、それをこえないようにするのがたてまえでございますし、さらにはその水質について、まあ必要な場合、むしろ検査の回数をふやすとか、そのほか万全の措置をとるのがたてまえでございますので、そういうことが、まあどういうことでそういうことになったか、よくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、私どもとしては、水質基準を守るよう常々指導しておるわけでございます。なおこれに関しましては、最近いろいろそういう水質問題等もございますので、本年度の初めにおきましても局長通達をもちまして、特に水道の原水、あるいは給水せん水等につきましてもその水質検査を厳正に執行するよう全国に通達いたしておるところでございまして、そのようなことは私どもとしてはいたしておりませんし、考えていないというふうに考えております。
  166. 須藤五郎

    須藤五郎君 もちろんそういうことを厚生省が言ったとするならば、私はこれはたいへんなことだと思うんですけれども、しかし、ここに私はその桐生市の市議会の議事録をちゃんと持っているのです。リコピーして。その中でちゃんと水道局長がそういうことを述べておるわけですね。そうすると、これは公文書ですね。そうすると何ですか、厚生省はそんなことは絶対言ってない、それはいいかげんなことを桐生市の水道局長が言ったのだと、こういうことになるわけですか。それならば、あらためて私たちは、桐生市の市会においてその桐生市の水道局長の責任を問わなくちゃならぬということになるのですが、どうなんですか。ここには、厚生省にも聞き合わせたところ、「この山がずっと続くような場合はとめなければならないが、一日ぐらいなら人体にそれほど影響がないので、そう神経を使わなくてもよろしいのだということです。〇・〇五にもまだ検討の余地があるわけですから、これも一応というものでありますから。」こういうふうなあいまいなことばでやっておるんですね。それから「五月十三日、十四日は薄く消してあるのです。」これは消してあるんですよね、その間は。しかし、おそらくこのときは〇・〇七ぐらいあったものだと思う。ところが、水道局長は、「はかってないところは切りなさいとこの間言ったものです。」まあことばが変ですが、そういうふうな答えをしておるんですが、これを厚生省の指導があったからということを言ったというふうに桐生市の水道局長は答えておるのですね。これは私はたいへん重大な問題なので、ほんとうに厚生省がそういう指導をしてないということならば、これはもう一ぺん桐生市へ戻して、桐生市会で問題を明らかにしなければならないというふうに思っております。絶対ないですか。
  167. 国川建二

    説明員(国川建二君) 水道水の水質基準につきましては、水道法の第四条に定められておりまして、なおその具体的な試験、項目は、あるいはその数値等につきましては省令で定めてあるわけです。したがって、水道事業者といたしましては、その水道で供給する水質はその第四条に基づく水質基準に合致することが要求されておるわけでございます。したがって、法律的にもそういうたてまえになっておるわけでございます。私どもとしては、それをこえることを指導するといいますか、そういうことは絶対いたしていないわけでございます。ただこれは誤解を招くといけませんけれども、いわゆる水質基準は各国それぞれいろいろございますけれども、わが国の砒素につきましては〇・〇五PPM以下いうことになっております。その他の諸外国でも〇・〇五PPMを採用しているところもありますれば、あるいはWHOの水質基準、これは国際基準及びヨーロッパ基準ともこれは〇・二PPMというようなことになっております。そういったことの話はあるいはしているかもわかりませんけれども、水道局といたしましてそういうことを認めているわけではございません。
  168. 須藤五郎

    須藤五郎君 私のところへずっとデータが来ているわけですがね。これは昭和四十四年四月一日からずっと五月、六月、七月来ているわけですがね。その四月の八日ですか、そのときに〇・〇五PPMに達しているわけですね。そのときに川の水はどうか、こう言ったら〇・三PPMになっている。じゃ口が〇・五PPM。それから十五日が——一週間ほど検査していないんですよ、それはいま言ったように、〇・〇五PPM以上になれば検査してはいけないという指示があったから検査をしなかった、こういうことになっている。それから十七日の日に検査をしたら、川は〇・二五PPMでじゃ口で〇・〇五あるわけですね。その一週間がブランクになっちゃっているわけなんです。それから五月の七日から十二日ごろまで、それも七日に〇・五に達しているわけです。そうしてあと一週間ほどまたこの検査をしないで不検査ということになっている。これも厚生省から検査はしてはいけないということを言われているからしていないのだ、こうい意味の答弁をしているのですよ。こうなると一体厚生省として、ほんとうに責任を果たしているのかどうか、こういう指導をしたらけしからぬじゃないかということになるわけですね。もしも厚生省が指導していないのに、厚生省は指導しておりますというような、そんな無責任な答弁をして、市会で無責任な答弁をしたというならば、市会のその市の水道局長がけしからぬということになると思いますので、この点はやはり明らかにしておかなければならない点じゃないかとこういうふうに思います。  通産省の方来られましたか……
  169. 下河辺孝

    説明員(下河辺孝君) 渡良瀬川の砒素の問題につきましては、各方面にたいへん御迷惑をおかけして申しわけないと思っておる次第であります。  先日衆議院でございました委員会のその後の状況について教えろというようなことでございますので、かいつまんで申し上げますと、先日の委員会におきまして先生から、桐生の市役所の特別委員会の方々が鉱山の視察に行かれたときに、鉱山側の説明員が、砒素については鉱山は無関係である、こういうようなことを言っておるが、こういう態度は、考え方そのものがはなはだけしからぬではないかというようなお話がございまして、われわれとしまして、さっそく翌日本社の責任者、それから当日現場で委員会の方々に説明をしました責任者に当局に来てもらいまして、そのときどういう一体話をしたのか、説明したのかというようなことを、いろいろただしたわけでございますが、その説明によりますと、会社としましても、この渡良瀬川の砒素につきましてはかねがね問題もあった点でもあるし、また会社としましても、現場に砒素の対策特別委員会というものを社内組織としてつくって、その姿勢の強化をやっているところでもあるし、まあそういうような会社が無関係であるというようなことは言った覚えは実はないのだというような説明があったのでございますけれども、われわれとしましては、こういうような事柄でもありますから、いささかも誤解を与えるような言動というものは当然つつしむべきではないかという意味合いから、厳重に注意しておったという次第でございます。  なお、この砒素の問題につきましては、今月の初めころより東京の鉱山保安監督部が中心になりまして、さらにこの砒素対策としましての汚水処理の強化をはからなければいけないということから、抜本的な対策を検討して持ってくるようにという指示を行なっております。ほぼ今月末あるいは来月にはその計画案が出てくることと思いますので、それをもとに検討いたしました上で、今回〇・〇五という環境の基準が設定されたことを契機といたしまして、さらにこの規制を強化して改善を進めていきたい、このように考えております。
  170. 松井誠

    委員長松井誠君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      —————・—————