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1970-10-08 第63回国会 参議院 公害対策特別委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月八日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  十月五日     辞任         補欠選任      森中 守義君     杉原 一雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         占部 秀男君     理事          小野  明君                 内田 善利君     委員          川上 為治君                 渡辺一太郎君                 加藤シヅエ君                 杉原 一雄君                 田中寿美子君                 小平 芳平君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   宮澤 喜一君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣官房内閣審        議官       植松 守雄君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        行政管理庁行政        監察局長     岡内  豊君        経済企画庁審議        官        西川  喬君        大蔵省主税局税        制第一課長    山内  宏君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局公害部長    曽根田郁夫君        農林省農政局長  中野 和仁君        農林省農政局植        物防疫課長    福田 秀夫君        農林省畜産局畜        産経営課長    藤井 伸夫君        水産庁次長    藤村 弘毅君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省公害        保安局公害部長  柴崎 芳三君        通商産業省公益        事業局長     馬場 一也君        運輸省船舶局次        席船舶検査官   尾花  皓君        建設省都市局長  吉兼 三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策樹立に関する調査  (大気汚染及び水質保全対策等に関する件)     —————————————
  2. 占部秀男

    委員長占部秀男君) それでは、ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月五日、森中守義君が委員を辞任されまして、その補欠として杉原一雄君が選任をされました。     —————————————
  3. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 次に、公害対策樹立に関する調査を議題とし、大気汚染及び水質保全対策等に関する件について質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言をお願いいたします。
  4. 小野明

    小野明君 まず初めに、総務長官お尋ねをいたしたいと思います。  総務長官は、この委員会でいろいろ積極的な発言公害対策についてなさっておられるわけであります。それから、一つはやっぱり経済との調和条項の削除あるいは土壌、産業廃棄物等公害に含める、こういった御発言があったわけでございます。  いままで閉会中における委員会での発言からいきますとかなりの法律の手直しあるいは新規立法というものがなされねばならぬと思います。それらの作業進捗状況臨時国会にはどれどれ、あるいは通常国会にはどれどれ、こういっためどがすでに立っておられると思いますが、それらについて概略御説明をいただきたいと思います。
  5. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 次の通常国会の前に開かれるであろういわゆる憲法の定めによって開催をされる臨時国会というものに大体間に合うものはすべて提出するつもりでございます。ただいま全部拾いあげるとすれば幾つになるかということでございますが、新規立法も含めますと大体二十以上になるであろう。しかし、これらをたとえば典型公害中、法律の別途定めてない悪臭の問題等、たいへんむずかしい法律になりそうですが、私も馬力をかけていま提出すべくやっておりますし、ただいま御指摘のような基本法に関する条項でもずいぶん改正がございますが、それを受けてまた各法律を変えていくという、自動的に改正する問題等もございます。結論としては、すべての公害に関する法律を全部整理して次の臨時国会に提出をしたいという願望のもとに努力をしておりますが、私のところ以外で、いま独自で、私のところとあまり連絡をおとりいただけないでもけっこうだからということでお願いをしておるのは、純然たる法務省プロパーの解釈が優先すべきであると考えられる公害罪並びに無過失責任もしくは挙証転換というあり方をどう法体系理論、さらに運用の的確さというもの等から実体論としても結論を詰められるかということをゆだねておりますが、その他は直接間接対策本部連絡をとりながら各省庁において作成中でございます。法務省もほぼ作業が終わったようでありまして、法務大臣はいつでも私と会談をする用意があるというところまできておりますので、今月中にはその方向もはっきりいたすと思いますが、そうなりますと、法務大臣関係閣僚会議に入っていただいて御相談をいただいて公害罪に関する一連の法務省提案にかかるものも次の国会に顔をそろえることができると考えております。
  6. 小野明

    小野明君 いままでの言明の過程からいきますと、かなり意欲的な解決というものが期待をされるし、国民もそういった一つ期待を持っていると思うのです。ただ反面、いまの自民党内閣体質からいって、さわるのはさわるけれども、肝心な点はやはり骨抜きになってしまう、こういう危惧があると思うのですね。そういった点についてはいろいろ長官お気づきの点もあるかと思いますが、いかなる点がそういうものに該当をするか、非常にむずかしいと思いますけれども、おわかりでしたらひとつ御説明をいただきたい。
  7. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 自民党体質、いろいろと自由にして民主的な政党で幅広い体質を含んでおります。一がいには言えないと思いますが、大別して言えることは資本主義前提に立っておる政党である。したがって、問題は、調和条項等議論がかつてありましたように、そのような基本的な姿勢の場合、肝心のところでぼけるのではないかという御心配だろうと思います。しかしながら、今日この問題は国際的な問題でもございますし、アメリカのラッセル・トレーン氏が参ることも皆さん御承知のとおりで、すぐ十二日には来日をいたします。また、昨夜は教育放送に出ておりましたOECD科学総局長キングさんも私をたずねて、さらにヨーロッパとの提携も呼びかけておられますし、そのような立場から考えますと、われわれの国内で小さな視野と言ったらおこられるかもしれませんが、いわゆる国内的な規模のみでこの公害の論争を行ない、そうしてその結論を賛否対立したまま一方の立場のみにおいてものごとを決定するという時期は、もうすでにはるかに過ぎておると私は思っているのです。ですから、やはり日本公害の問題で諸外国と議論をしても対抗し、また、日本がある意味においてどこも解決していないならば、その先べんたる措置立法で確立するというようなこと等もなし得る地位を、チャンスをいま与えられているのであるから、その地位を獲得するために私たちは全く政党政派をこえたものとしてとらえるべきであろう、私自身所管大臣としてそう考えております。OECDキング科学総局長も企業の費用負担等は非常にむずかしい問題だ、あるいは場合によってはこれは法律できめることのできる国があるかもしれぬというようなことを言っておりましたけれども、私どもはそれをきめようとしていまおるわけであります。これについては、もう大体通産、厚生両省も意見は出ておりますし、われわれは法律作成上の問題点が技術的にたいへんむずかしい負担する費用算出方法というものを法律に書かなければなりませんので、政令にゆだねるわけにいかぬ、そこらのところが技術上むずかしい問題が残っておるというようなこと等がございます。あるいはまた、先般の閣議で、すべての工場排水関係する業種の残ったもの十一を全部地方都道府県知事に委譲する、政令でそれはできますので閣議決定を行ないました。したがって、一番私自身もややどうかと思いました大蔵省の紙幣を印刷する工場についても地方にこれを委譲するということをやったわけであります。  あとは、大気汚染適用除外例の電気、ガス事業法にそれぞれ基づいた除外例をいかなる形で地方知事に委譲するかというようなこと等を、いま通産省部内のまず議論として詰めてもらいたいといって宮澤君にゆだねてあるわけでありますが、これらのもの全体を踏まえて、日本が今日の文明国家として世界の国々に、いわゆる人類環境汚染に対する戦いとしておかしな形で国際社会から見られることのないような法律をつくりたいと考えております。しかし、幾ら私が申し上げてもでき上がったものをごらんいただけなければ、単にことばの上だけの美辞麗句としか受け取られないやむを得ないことでありますので、問題は、結論を出して皆さま方国会の御審議をいただいて、それによって批判を受けたいと考えております。
  8. 小野明

    小野明君 予算要求の問題ですが、昨年から比べますと、かなり多額の一般予算には財投においても要求が出されておるようであります。ところが、公害防止施策から要求をされておる予算でありますけれども、かなり大蔵省から見ますと異なった見解があるやに承っております。その予算要求については、公害担当大臣としてはいかなる役割り、あるいはいかなる構想でもってこの予算要求を通していくか、その辺の御決意についても伺っておきたいと思います。
  9. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そこらのところは非常に大切なことでありますので、念を入れまして閣議で了解をとりまして、各省から全部担当大臣としての私が、それぞれの局長官房長等首脳部の諸君に各省から私のところに来ていただきまして、各省予算要求の額並びに算出の基礎、考え方公害に対する姿勢、そういうものを全部聴取いたしました。それに基づいて対策本部作業により、私が大蔵省に対して、対策本部長佐藤榮作という名において、公害予算に対する大蔵省査定について、という書類を送ることにいたしております。私の立場から見ましても、大蔵の一べつした大蔵省的な批判の言を待つまでもなく、新宿副都心や、あるいは札幌の集中暖房等が、同じ事業に同じ財源を二つの省から要求してけろりとしておるというような全くおかしな現象もありますし、また部局等の新設についても、そこまで言わぬでもいいじゃないかという、俗にいう便乗的なにおいなしといたしません。やはり私どもは最小の機構、能力において最大の努力をして効果をあげるというのが納税者に対する政治の責任である、行政責任であるということに思いをいたさなければなりませんので、そこらのところはあながち各省から出したものの応援団だけではなくして、やはり私の手元で場合によっては整理するものは整理する、必要ないと考えるものは必要ない旨を向こうに述べる、大蔵に述べて査定に資するというようなことをとりたいと思っております。
  10. 小野明

    小野明君 まあひとつしっかりやってもらいたいと思いますが、次に具体的な問題について二、三お伺いをしてまいりたいと思います。  経済企画庁お見えですね。——洞海湾汚染について先般企画庁のほうから県に大体の進め方というものが連絡があったということで新聞報道をされておるところなんです。洞海湾について地元ではいろいろ構想がありますけれども一体国がどうしようと、どうするんだと、この具体的な構想がないように私は思います。ですから、一体洞海湾をどうするのか、具体的な要点をひとつ簡略に説明をいただきたいと思います。
  11. 西川喬

    説明員西川喬君) 洞海湾につきまして現在汚水を出している工場排水規制、これが経済企画庁所管でございますが、排水規制につきましては、すでに水質審議会洞海湾部会をつくって現在審議中でございます。現在のところ今月の末の審議会には部会としての結論を出しまして、水域指定並びに基準の設定を行なう予定でございます。その場合に環境基準も定めるわけでございまして、環境基準の素案も大勢的にまとまってきておりますが、この環境基準を維持するために排水規制以外にどのようなことをしたらいいかという問題。それからいま先生がおっしゃいましたのは、洞海湾の底にたまっておりますヘドロ等措置の問題ではなかろうかと察するわけでございますけれども、それらの問題につきましては、これは政府の一体施策としていろいろ考えなきゃいかぬことでございますので、現在このヘドロの問題に対しましては所管運輸省のほうで検討しているようであります。水質規制のほうにつきましては、いま申し上げましたような次第で、現在着々と進行中で、近く結論が出るはずでございます。
  12. 小野明

    小野明君 ヘドロ運輸省所管になるわけですか。これは長官ですね、洞海湾対策といった場合にはやはりヘドロも含めて一本の対策がなされなければならぬではないか、こう思いますが、その点はいかがですか。
  13. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 水質汚濁という見地からいま経企庁が答えてそのような疑問が出たのだろうと思いますが、やはり疑問が出なくても、ヘドロというのは一体どこの役所所管だというのがいま公害対策閣僚会議でも雑談で出るぐらいでございますから、天然のいままで私たち普通辞書等ヘドロといってきて日常用語にしていなかったヘドロは、これはいかなる海の底にも、二千メートル以上の深海にもやはりヘドロはあるわけですけれども、私たちが今日、通俗に日常使っておるヘドロはいわゆる人間がつくり出したヘドロである。しかもそれが有毒物質を含んだり、あるいはいろんな浮遊物質の沈でんしたものである。いわゆる人工的に人間がつくり出した天然ヘドロの上積み、あるいは汚染された天然ヘドロということで問題が提起されておるというふうに見ていいんだろうと思いますが、これの所管はいわゆる法律的にいえば港湾の区域内はこれは運輸省である、河川は建設省もしくは知事である、あるいは湖沼等において内水面漁業者等が権利設定している場合はこれはやはり水産庁であろうし、私有水面は別でありますけれども一般海岸ではこれはもう建設省もしくは知事、普通の海面は水産庁というようなふうにいろいろとあろうと思いますが、しかし、やはりヘドロの問題は、全国的な立場のどこの省の所管かという角度からよりも、その場所、その起こっておる現象について相当に差があるわけです。だから田子の浦のようないわゆる製紙工場SSによる硫化水素ガスを発生するような現象港則法に触れるような港湾機能の麻痺というような地区に対するヘドロの扱い方、あるいはまた洞海湾の例を出されましたが、洞海湾のように私たちも長年空から見たり汽車の窓から見て、煙突の林立をすばらしいところだと思い、そして地区住民もそういう意識を持っていなかったとは言えない。しかし、海が赤茶けた色をしておることもみんな知っておりました。しかし、ここで海というものは本来美しい自分たち自然環境一つであるという考え方から見れば、いま洞海湾汚染がすぐに人の健康に支障を与える、あるいは環境として、あそこで海水浴する必要があるかどうかは別として、海というものが使えない海であるということ等について疑問が起こってくれば、やはり一体あれだけ長い間かかって北九州大工業地帯から排せつされたものが、細長く入り込んで、おそらく潮が千満するだけの還流しない水域にどうなっておるのかということで調べた結果は、やはり水の底の二メートルぐらいは人間がつくり出したヘドロが堆積しているらしいというようなことがわかってきた。それをどうするか。このままでほうっておくわけにいかぬだろう。それならばどうするかという問題で、田子の浦の焦眉の急という感じのものとは少し違った感触があると思いますし、その処理方法もまだ福岡あたりと具体的に話はしておりませんが、やはり県も中に入ってもらいませんと、地方にどんどん権限を委譲する際に知事を飛び越して北九州市というだけで話を進めるのはちょっとぐあいが悪いかと思いますが、市当局あたり構想では、八幡のバースあたりとかあるいは洞海湾の州の突き出したあたりとか、二、三カ所一応囲いをして、ヘドロを吸い上げてそこを埋め立てて覆土をして緑地帯あるいは公園等をつくりたいという、たいへん私はやり方によっては単純で金さえ出せば簡単に海もきれいにできるし、あと工場排水のほうの規制がかぶっていくわけでありますから、これから以上の汚染は防げるということを前提にするならば、ヘドロを埋め立てて一定の地域公園地帯で美しくなってそこに緑地帯もできるというようなことは、一つのわれわれ人類が気づかずに長い間汚染してきた償いをする意味では典型的な形をとり得る場所ではないかというふうに見ておるわけでありますが、要するにヘドロはその地域、その場所、その特質によってそれぞれどの省が主管になって、中心になって各省の協力を得るかということでそれぞれ場所は違っていくだろうと思いますが、どこが所管かきめておけといえば、やはりこれは公害対策本部が第一義的には所管をいたしますと言わざるを得ないと思います。
  14. 小野明

    小野明君 いま長官のお話しですと、洞海湾ヘドロは無害、あまり害がないというようなお話のように伺った。これはもう以前から死の海死の海ということで、シアンの排出がされておるということから見ましてもあるいはカドミの問題から見ましても非常に危険な海だ、こういう認識をしてもらわなければならぬわけですね。ですからこのヘドロをたとえばしゅんせつをするという方針をお持ちになりましても、いましゅんせつをするという方針のようにお聞きをしたわけですが、このヘドロ調査というものがやはりされておらなければ、一体どうするかという方針は立たないと思うんですね。その辺、このヘドロについての調査一体どういうふうになされておるのか、あるいはしゅんせつをするならしゅんせつをするという国の方針なのか、これは経企庁のほうからこの辺の方針があれば伺いたい。
  15. 西川喬

    説明員西川喬君) 海底のヘドロにどのようなものが入っているかというようなことについては調査をいたしております。ただ、そのヘドロをどう処理するかという問題になりますと、経済企画庁といたしましては、今後出てくるこのSS規制することによりましてヘドロの原因となる物質を除去する。しかし、過去の蓄積においてたまってしまったものをどうするかということになりますと、企画庁でこれを決定することはできませんので、現在、運輸省のほうにその検討をやっていただいておる、こういうことになっておるわけであります。
  16. 小野明

    小野明君 ヘドロの量についての内容物質については調査をなさっておるということですが、量についても調査しておりますか、どうですか。
  17. 西川喬

    説明員西川喬君) 企画庁といたしましては、ヘドロの量につきましては調査をいたしておりませんですが、港湾管理者でございます運輸省のほうにおいて堆積の厚さ、全体の量としてどのくらいということは調査しているように聞いております。
  18. 小野明

    小野明君 この洞海湾現地部会が開かれたときに、新居会長なり団のこれは方針と承っておるのですが、これは遠賀川の水量調査あるいは汚濁状況あるいは湾内の潮流等も調べてフラッシュ浄化法というようなことを発表されておるわけです。北九州の市民あるいは県民に発表したわけですよ。ところが、今回は、ヘドロしゅんせつとかあるいは周辺水域からのフラッシュ浄化法という問題については、審議されておる内容附帯事項としか書かれていない、こういうふうに発表されておるのですが、その辺については、一体この現地部会が乗り込んできて調査をされて、その方針として発表されたものは今日踏襲されておらぬように思いますが、この辺はどうですか。
  19. 西川喬

    説明員西川喬君) まだ部会としての報告は正式に出ておりませんですし、審議会のほうにおきましてそういう答申をいたしたということは承知いたしておりません。現地がどういう情報を流しておるか知りませんですけれども、そういうことは正式にはきまっておりませんですが、いずれにしても水質審議会権限といたしましては、排水基準を定めることでございます。それに伴いまして排水基準並びに環境基準を設定するわけでございますが、環境基準を守らせるため、あるいは排水基準を設定する上におきまして審議会としての権限以外のことについて、こういうことを留意したらいいではないか、留意しなければならないのではないかというようなことを、留意事項なりあるいは附帯決議として出すことがございます。ただいま申しましたようなしゅんせつの、あの堆積してしまったヘドロの処置、あるいは環境基準な守りますための浄化用水導入についての検討というようなことにつきましては、浄化用水導入しなさいということはこの水質審議会が決定すべき権限事項にございません。それで水質審議会といたしましては排水基準をこのように定めたのとあわせまして、浄化用水導入等のことをやったらいいんではないかというようなことを付帯して出すわけでございまして、審議会がそれを決定することは現在の水質審議会権限といたしましてはできないことになっております。
  20. 小野明

    小野明君 権限からいえばそういうことになるかもしれません。しかし、これから先は長官お尋ねをしたいと思いますが、洞海湾現地部会現地にきまして、これをフラッシュ浄化法によって浄化していく、あるいはヘドロについてはどうする。こういう方針が出された以上、やっぱりこれは洞海湾がこれによってきれいになるのではないか、一つの明るいめどができた、こういう期待を持つことはこれは当然です。しかし、審議会附帯事項としてしかこれを扱わない、役所権限としてはそのとおりだ、こういうふうに言われましても、それじゃ一体洞海湾浄化策というものはどうなるのだ、どうしてくれるのだ、こういう不満が出てくるのは当然のことだと思う。この辺については、長官のほうで総括をされるわけですから、もしありましたら、国の方針としては洞海湾についてはどうするのだと、こういう大綱だけでも、ひとつお示しいただければいいと思うのです。
  21. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たびたび方向を申し上げておりますが、やはり企画庁あたりが全国のすべての水系、水域に手を伸ばそうといっても、人間的にも能力に限界のあることでありますから、そこでやはり日常自分行政繁多の中で絶えず把握しておられる都道府県知事さんなりに権限その他を委譲していきたいということで、事実その方向に着手し、解決しつつあるわけでありますから、それらの問題をやはり福岡県内地域責任者である知事、あるいは直接の洞海湾関係のある北九州市等の地域の知恵を出し合って、こういうような構想というものはどうだということで企画庁に持ち込む、あるいは新全総計画の中における一つのプロジェクトとしての考え方を国のほうに実現を要望していくとか、そういうふうに国でやったらいいじゃないか、国が示さぬとはけしからぬとか、あるいはそんな触れ方ではいかぬのだという体制から一歩前進して、さらに自分たちはかく設計し、かく要望するというふうに、今後はそういうふうにしていきたいものである。そういう形で国と地方一体になって計画が設定されていくことが今後望ましいし、それならば国が、ときには対策本部が直接その中に入りまして融資その他の手はず、起債とか、そういうごめんどうを、大蔵等と折衝して財源の裏づけをしてあげるというような形に持っていきたいものだと考えておりますので、いまのような問題のフラッシュ浄化をするについても、やはり福岡県というものがひとつその作業を始める中に入って始めれば、これは地についた具体的な設計というものができるわけですから、事実足らなければ建設省あたりの応援を得ることも可能でありますし、そういう多角的なやはり国と地方一体になった環境浄化の努力というものをこれから期待していきたいと思います。
  22. 小野明

    小野明君 長官、それは少し私は誤っておるのではないかと思うのです。というのは、現地の希望、北九州市の希望、あるいは福岡県の意向というものもありましょう。しかし、この洞海湾の浄化という一つの科学的な問題で、これは地方も国もないのじゃないか。やっぱり国がこの浄化についてはどうだということで技術陣、頭脳陣を総動員してそしてこの浄化対策に乗り出してまいる、こういうことがあって初めて地方としてはその計画についてはどうだと、こういう意見が出てくるのが至当ではないか。国はまず大きな技術陣あるいは研究スタッフを持ち得る能力を持ちながら、まず地方地方だ、これでは一向に国の役目は何もないじゃないかと思います。特に公害対策本部という各省のばらばら行政を統括するという立場にある大臣としては、いまのお考えは少し改めてもらわなければならぬではないか。いかがです。
  23. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私も心の底では少し誤っているかなあという気持ちもします。というのは、どっちが正しいというわけでもないのですよ。それはいずれも両論あると思うのです。田子の浦の問題で静岡県の知事さんの御方針を受けて財政措置について懸命の努力をした。ところが知事さんが二転三転されると、どうも知事さんにまかしていくことはどうなんだろうかというような気がしてならないのが私の偽らざる真情でもあります。しかし、かといって、やはりこれは環境浄化という、ことに地域に身近な問題——清掃法等は市町村が中心でありますが、これらのすべての立場の人々がみんなで協議し合い、知恵を出し合い、必要な金は国がめんどうを見、また地方が必要な金に国がどれだけ援助できるか、そして地域の企業がこれまでの汚染源の起因者の一人であったことを自覚し、あるいは総理のことばを借りれば、よき隣人たるの存在を今後も続けようとするならば、地方自治体の住民の意思を無視して行動はできないというような、いろいろな角度から考えるときに、やはりいろいろ議論はあろうが、都道府県知事権限を委譲するということは、それが地域住民のために常時規制、監視、あるいはまた測定等の仕事がやりやすい、あるいは実情を把握しやすい。東京ではいろいろと問題になって、国会も陳情やそういうものがあったときしかその場所が問題にならないというのではいけないのではないかという、ある意味での反省ということによって、都道府県知事に大幅に権限委譲をしようという方向も、私は間違ってはいないと思うんです。ただ、それによって国が責任をのがれようとしておるんだとお考えならば、それは間違いである。先ほど申しましたように、この問題を処理できない政府というものは、すなわち政治生命がもう終わりに近づくというほどの大問題だと私は見ておりますから、政府の政治生命をかけてやるんだということであれば決して責任のがれはいたさないということであります。
  24. 小野明

    小野明君 ことばがなかなかうまいので、聞き漏らしがちなんですが、とにかく水質審議会洞海湾部会という現地部会を持って、どうするという方針を立てたわけですよね。であるならば、このヘドロしゅんせつ、あるいはその費用も含めて、この洞海湾の浄化についてはこうだと、これについて地元の意見を求めるというような、積極的な姿勢が私はほしいというわけですよ。その辺はどうなのかと。だから、自治体のほうの顔を立てるようなことをしないで、両者これは一体になってやらんならぬ問題でしょうけれども、せっかく現地部会等やったんだから、もう少し積極的な対策を示すなり、それの推進方を国でやってはいかがでしょうかと、こう言っておるわけです。
  25. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は、国がそういうことを全国の各地域について一々こういうことをやりなさいということを言いたしますと、やはりその原因者というものについてもものを言わなきゃなりませんし、福岡県は長年にわたって洞海湾汚染を放置し、というようなこともまくらことばにしてですよ、そういう言い方で臨んでいいものかどうか。そうしなければやはり、福岡県は全く責任はないんだと、国に責任があるんだと、まあ北九州市は地元だから騒がざるを得ないんだという、そういう責任を押しつけ合うようなことはやめよう。現状というものを正確に認識をして、そこから何をなすべきか、だれがその計画をまず考えるべきかについては、やはり地域の問題は地域が一番先に実態を知っておりますから、ものを言うはずです。やはり今度の洞海湾の問題でも、北九州市並びに市議会の諸君がどのような援助を国の出先から受けられたかしれませんが、一定の計画書というようなものまでつくっておられますが、私は、北九州市だけの責めではない、北九州市だけではいかぬから、福岡県も文書の中に当然同時に入って国と一体になってやるべきだということを言っておるくらいでありまして、一北九州市だけの問題ではないし、一福岡県だけの問題ではないとすると、全国的な問題になるわけでありますから、その全国的な問題では、あそこの海、ここの川ということを国が全部責任を持つんだという言い方もやってよろしいとも思うんです。やってよろしいとも思うんですが、やはり地方自治体の責任者というものが責任において立てる計画というものをなるべく実現できるようにしてあげるということが国の方針であって、国の基本は基準を示し、あるいは環境のあり方を示す、あるいはまたその規制基準を示すというようなことについて国が責任を持たなければならぬのではないか、そういうことで、地方自治体というものが公害対策の上では国に全部依存をして、国の考えがきまらなければ自分たち地域住民の環境浄化については何も計画を立てない、ものも言わないというふうに追い込んでいくことは、私はかえってどうだろうかという気がしてなりませんが、いまの洞海湾をめぐっての個々の問題でいわれると、じゃあ洞海湾なら政府が乗り出してみましょうといって言えないこともありませんし、乗り出して乗り出せないことはないと思います。隅田川に建設省が水を取り入れて流して、少しは水がきれいになって、魚が見えるようになったということもあるわけですから、私の部屋に建設から、あるいはまた経企から、運輸から全部集めて会議をしてやるならばできぬことはないと思うのですが、それでもやはりそのときには知事さんはそこに一緒におって相談をしてほしいものだというふうに考えるわけでございます。
  26. 小野明

    小野明君 権限とか機構の問題とか、そういうことを言っておればおっしゃるとおりかもしれません。しかし、全国的に洞海湾汚染というのは取り上げられておるし、もう危険な海だということで、地域住民も非常な不安を持っている。ところが、先般の発表で若干これはよくなる、明るい見通しになるかというような期待を持っておったんだから、ひとつ国がこの問題を積極的に取り上げてもらいたいと、こういうふうに私は申し上げておるので、お考えもわかるような気がしますけれども、やっぱり国の熱意が足りない、こういうふうに思います。しかし、これは時間がありませんから先に進みますが、同じく響灘も水域指定に含める、こういうことですね。  それで、続けて質問いたしますが、響灘については含めてほしいという地元の要望もあるわけで、湾口から出先ですからね、一連のものですから。これはどうですか、調査をしないでやるわけですか、それとも調査計画はありますか。
  27. 西川喬

    説明員西川喬君) 響灘については現在調査は特にやってはおりませんですけれども、現状が非常にきれいであるということでございます。それから排水口のほうの、現在工場がございますのは、戸畑側の新日鉄のところだけでございますが、工場の排水の水質調査はいたしてございます。それでそのようなことから現状のきれいな水域を保全するということで、環境上A水域というものを守るということは今後の水質規制で可能である。それからさらに若松側の埋め立て計画もございます。この埋め立て地に汚水を出すような工場があって、将来響灘をよごすようなことがあってはならないというようなことから、海水中の状況について調査はしてございませんが、現在のきれいさを維持するということから、調査のデータはなくとも基準はかけてしまう、新設に対しましてはきびしい基準をかけてしまうということにいたす予定で、八幡岬から現在の新日鉄のはじのところまで全部指定水域にする予定で考えております。
  28. 小野明

    小野明君 きれいな海だといいますけれども調査をしないでどうしてきれいな海だということが言えますか。それは洞海があれだけよごれて、あの出先はこれは当然、有明海のように、疑問を持つのはだれしも当然だと思うのです。東京湾とか、伊勢湾とか、大阪湾あるいは瀬戸内、これだけ大きなものは汚染水域調査計画があると聞きますが、響灘だけはどうして調査をやらないのか、その辺の意味が私にはわからぬ。そうして調査もやりませんでこれはきれいだからと言われることも私は非常に矛盾があると思うが、どうですか。
  29. 西川喬

    説明員西川喬君) 響灘全般にわたっては調査いたしておりませんですが、洞海湾から、よごれております洞海湾の水が出てまいりますその影響といいますか、いわゆる洞海湾の出口の影響範囲内の調査はいたしております。このデータは持っております。それが、大体海域といたしましては環境基準といたしましても、一番いいところでA類型というものをCOD二PPMと考えておりますが、現状では二PPM以下であるというところのあれは押えてございますが、それ以上のところにつきましては現状のまま維持するのだ。現在はいわゆる汚水源も出てはおりません。洞海湾だけであります。東のほうにまいりますと小倉地先の板櫃川、紫川等から出ておりますけれども、西のほうには現状としては汚濁源はないわけであります。今後汚濁源も出るおそれがあるから、これにつきましては規制をかけてしまうということで、現在調査がないからかけられないという問題ではないというふうに考えております。  それから今後の調査でございますけれども、指定水域になりまして、水質基準が設定されますと、そのあとはアフターケアといたしまして常時監視をすることになっておりますので、指定水域になりました響灘の地先海域につきましては、観測点を設けまして常時観測するというふうな体制になるわけでございます。
  30. 小野明

    小野明君 すでにこの地先の海面の藍島、馬島漁協というのは汚染で非常に漁民が心配をしておるわけです。ですから、湾口付近は調査は済んでおるのでしょうけれども、あの海域全般についてやはり、——そういうことを言われれば東京湾でも伊勢湾でも広いんですから、やはり調査を計画するということが言えませんか。やれませんかね。
  31. 西川喬

    説明員西川喬君) 洞海湾のほうから出てまいります問題につきましてはいまのような考え方でございますが、彦島、それから対岸の下関側からの汚染というものについては、現在まだ向こう側のほうの汚染源というものは調査いたしておりません。そのような観点から、今後のアフターケア、響灘の指定水域に伴います監視体制のアフタターケアとも合わせまして、対岸のほうから汚染源の調査というのは今後の調査計画に入れてやりたいと、このように考えております。
  32. 小野明

    小野明君 時間が過ぎて、足りませんで相すみませんが、もう一問だけ厚生省に聞きたいと思います。  大牟田の問題ですが、これはもうノリ、それから赤貝ですね、米と、カドミウム汚染がはっきり出ておるわけですね。これで、私はこの要観察地域に指定することをまだ厚生省が渋っておるという話ですが、どうしてですか。これはもうこれだけデータが出れば要観察地域にする条件というものははっきりあると思いますが、いかがですか。
  33. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 要観察地域の指定について渋っているということではございませんで、私どもただいままでに県から報告を受けましたのは、これは数字は先生御承知かと思いますので、あれだと思いますが、たとえば玄米についていいますと、平均〇・五七PPM、最高で一・〇九と、ただし、この場合に、検体が八つ程度でございますので、要観察地域に指定いたしますと、結局これはまあ本年度の公害対策緊急関係予算でいろいろ保有米の調査なり、あるいは検診について国費でめんどう見るというようなこともございますけれども、何よりも米の買い付けその他でいろいろとその指定に伴ういろいろな問題がございますので、やはり地域を特定するについて、との程度のどうも検体ではいかがかということで、私どもは一応報告を受けるとともに、できるだけ急いで、まあ玄米でいいますと、やはり二十ないし三十ぐらいの検体をよこしてもらいたいということで、県はそれを承知してやっておりますので、近々必要なデータが出そろうと思います。そうしますれば、それが要観察地域指定の基準に合っておれば、それに応じた措置をするということになると思います。なお、念のため、これは先生も御承知と思いますけれども、一応要観察地域の指定として、私どもが昨年全国の知事あてに通知いたしております暫定対策要領によりますと、この当該地域の住民のカドミウム摂取量、これは成人一日平均〇・三ミリグラムということになっておりますので、これを裏づけるデータが出そろえば指定の対象になるということでございます。
  34. 小野明

    小野明君 大体それは条件は具備すると思いますが、そのめどは、検体が出てくるめどはいつごろになりますか。
  35. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 県のほうの作業が急がれておれば、おそらく早ければ来週ぐらいにも県からデータが参るのじゃないかと思います。
  36. 小野明

    小野明君 そうすると予算不足で、要観察地域にすることを渋っているというような見方が現地ではされておりますが、そういうことはありませんね。
  37. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) そのようなことは全くございません。
  38. 小野明

    小野明君 最後に一問ですが、総務長官、十月七日の大牟田川の汚染について、県が発表したわけですよ。ヘドロの中のカドミウムが三七九PPM、それを単位を変えましてミリグラムの単位をとったわけですね。〇・三七九、これは福岡教育大学の調査は、PPMになっていたわけです。それを単位を変えてミリグラム、こういう単位をとりまして、非常にこれはただでさえわかりにくいデータ、公害問題をよりわからないようにしてしまう、そういう結果を生んでまいると思うのです。ですからこの発表のしかたに問題があるし、せっかくようやくわかりにくいPPMという単位が、わかり始めた時期でございますから、発表の場合はそれを三つ上げたり下げたりすればいいわけでしょうけれども、やはりPPMならPPMという呼称をきちっと統一するようにお願いをしたいと思いますが、この点を、総務長官なり厚生省でもいいですが、総務長官おわかりでしたらこの辺をひとつ御説明いただきたいと思います。
  39. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私も新聞だけの知識ですが、やはりまずいと思います。一般大衆というものが、もっとも私も含めてそうですが、速成科学者にならざるを得ないような感じがするわけですから、カメの子の勉強も始めた人もいるかもしれませんし、そういうようなことで、みながわかりやすい表示というものが統一されなければならぬと思いますから、PPMそのものもたいへんむずかしいとしても、おおむねなじんできつつあると思いますので、これはきょうは自治省来ていないようでありますが、私の本部から自治省のほうへ、都道府県で公害のそれぞれの微量重金属その他、人の健康に関する問題等基準の発表にあたっては統一して発表するようにされたい、調査もその前提において調査されたいというような連絡を、都道府県知事にとるようにさせたいと思います。
  40. 杉原一雄

    杉原一雄君 けさ起きて朝日新聞を手にいたしましたら公害関係の報道が四つありました。たぶん見落としはしなかったつもりでありますが、第一点は酷使——酷使というのは非常にきつく使うという意味ですが、「酷使に耐えるケヤキ」ということで、「公害で落葉、新芽ふき出す」というような記事があります。新宿御苑岩崎照夫庭園科長が言っているわけですが、光化学スモッグで「一年に二度も葉を出さなければならないケヤキがかわいそうです。」こう彼はことば短かに実は語っているわけです。先般九月二十八日、二十九日、富士市で私たち環境破壊から命と暮らしを守る全国活動者会議を開いたわけでありますが、ちょうどその会議場の同辺はケヤキの木が亭々と空にそびえているわけですが、いかんせん枯れて一枚の葉も持たない枯れ木、いまや葉が落ちて枯れようとしているケヤキ、まだ元気に命を保っているケヤキと周辺にはさまざまな樹木の様相を呈しております。私はきょうのこの新宿御苑のケヤキの片すみにおける問題提起を見ながら、そのころのことを実は思い返しております。あわせてきょうの報道の中に「人間生活にも悪影響」福岡で行なわれた第三十回の日本昆虫学会の研究発表会の中でこん虫がどんどん死んでなくなる。そのことはこん虫の運命とあわせ兼ねて植物その他自然破壊を行なわれている。だからということで、まあいろいろ昆虫学会から問題提起なり、政治に対する要望があがっていることが載せられているわけです。その中に、たとえば農薬乱用の禁止とかあるいは森林の乱伐、湿原地帯の無計画な埋め立てとか、こういうものに対する禁止、無軌道な観光、産業道路の建設防止、無制限な観光施設や工場建設の禁止、河川、湖沼などの汚染源除去、民有地の政府・自治体による買い上げなどこん虫保護地域の確保、自然保護教育の推進、大体七つの問題提起が昆虫学会から行なわれております。これが第二であります。第三の記事として、東京湾汚染の飛ばっちりが相模湾に移り、相模湾では釣り人ラッシュでたいへんな騒ぎであるという報道が行なわれております。言いかえるならば、東京湾の汚染は極度に達し、魚が住めない、魚釣りも不可能である、その現実を訴えている中に東京湾の現実が象徴されていると思います。あわせて小さい記事でございますけれども、その東京湾汚染源の一つとして、石油研究所も犯人の一つ、木更津の廃油捨て逃げというような、これはきわめて小さい記事でありますけれども、この種の記事が実は載っているわけです。一日の新聞紙をとってみても、きょうはまだ私は少ないほうでないかと思います。このような情勢を踏まえて、先ほど小野議員に対する答えの中で、臨時国会までには二十以上に及ぶ法律を改正あるいは新法の立案等について全力を傾けているという長官考え方は、私も妥当だと思うし、より一そうがんばっていただきたいものだというふうに冒頭長官にお願いしたいわけです。  そこで、きょう、明日にわたる私の質問は四つあるわけですけれども長官に焦点を合わせながら質問を続けていきたいと思いますが、一つは富士川の決戦だと、富士川の戦いだと言われていた火力発電反対闘争の問題ないしその後の結末の問題でありますが、いま二十の法律を云々ということでございましたが、この法律の中で特に火力発電が招かれざる客として全国各地でボイコットを受けているわけです。富士川だけではありませんし、北陸では能登半島の内灘でもそのような激しい反対、抗議にあっているわけです。でありますから、この問題の解決をする法制的な裏づけないしは行政的な努力、こうしたものについて長官から公害担当の立場からひとつ簡単に方針をお示しいただければと思うのです。
  41. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのですが。
  42. 杉原一雄

    杉原一雄君 やりましょうか。
  43. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) はい。
  44. 杉原一雄

    杉原一雄君 後ほど通産省から答えを求めようと思いますが、ただ先ほど長官が新しい立法、それから法の改正ということでございますが、私がこの間うちいろいろ火力発電の問題なり、電力開発の問題をめぐって調査し、自分なりに検討を加えておりましたが、何かいい方法はないだろうか、長官も心配しておるだろうと実は思うわけですね。その中ではからずもきのうの朝日の朝刊で問題を明らかにされたわけでありますが、このほど今後の電源立地対策ということで、仮称でございますけれども、「電源立地調整法」を今度の国会に提出する考えであるということが報道されておるわけです。でありますから火力発電が招かれざる客として各地でボイコットを受ける最大の理由は、やはりSO2の問題だと思いますし、その他いろいろ過去経過から来る不信感の問題等いろいろありますが、これに対処する処置として、この立法が通産省の中でいますでに成案として生まれようとしておる事実、これについて長官はどの程度に参画し、理解しておいでになるか、それからこの中で私が気にかかるのは、結局大気汚染防止法との関係であります。そこで同じ報道の中で、火力発電の停止命令など地方自治体にその権限を移さないということをこの法案の作成の過程で力説されておるわけであります。先ほど小野議員の質問に答えて、地方自治体に権限を委譲し、そうした公害対策をとることが本筋であるかのような御発言があったので、基本的な問題のとらえ方としては、私はそのことも了としたいと思うのでありますが、逆にこの問題に関する限りは自治体にその権限を委譲しないのだ、断わり書きが先に回ってくるところに私は問題があるようでございますから、その辺の関係ですね、この二つの関係、これはやはり対策本部責任者としてどう調整しようとしているのか、基本的な考え方があれば明示してほしい、こういうことです。
  45. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) わかりました。第一点の電源立地調整法、これは私の手元までまだ上がってまいっておりませんから、したがって、通産省の電力確保のための法律として、公害問題と別に議論をしておるのではないかと思います。一方大気汚染防止法という立場から言うならば、適用除外例に電気事業法、ガス事業法による事業は除外すると書いてあります。しかし、これは関係閣僚協の会合において、通産大臣としてはやはり電力等の広域供給の責任者でもあり、また電気ガス等の確保の責めも持っておるわけであり、単独立法があるわけでありますから、地方に委譲するについて、それが前提でありますが、どのようなことが必要かについて検討していただきたいということを言ってありますので、通産省が朝日の朝刊と言われたのですが、通産省としての責任において通産大臣がそのようなことを言われたのかどうか、それであるとすれば、私が一応通産省の中で検討してほしいと言ってあることを、通産大臣が背信行為をもって外に自分たちの考えを、かってにものを言われたということになるわけであります。そのようなことはないと私は信じておりますし、通産大臣ばかりでなく、これは厚生大臣の意見も聞かなければなりませんし、そのために関係閣僚協で私がまとめるわけでありますから、私自身の考えも当然入れてもらわなければなりません。その中間において各省がかってに意見を発表するのは、国民が迷惑をするわけであります。私は宮澤通産大臣の通産省を代表する責任ある発言とは思っておりません。したがって、途中でそのような記事が出ましても、やはり地方に委譲するにあたっては、たとえば知事さんが一電力会社の操業停止を命ずる、知事権限だけで停止された場合に、その電力会社の電力供給地区に住む人たちにとっては、これは電気というものはもう説明するまでもなく、全くの日常必需品のエネルギーでありますから、これはやはり広域供給で、とめなければならない事実があったらとめるにしても、その停止命令を出すにあたっては、やはりそれに代替供給をする地区、あるいは隣接した広域の供給体制で確保できるということがありませんと、やはり私は今度は逆に言うと、国民の生活条件維持の上から問題があると思っております。ですから、そのような意味においては、やはり国もこれは全く関知しないというような角度で、地方に委譲することはかえっていけないことになろうかと思いますから、そこらは河川とか、あるいは海洋とか、そういう場合に、都道府県が幾つかにまたがっていて問題が起こる場合には、中央が調整するということを内々きめて、閣僚協ではその方向に進もうといたしておりますが、所管大臣たる通産大臣の別途の電力の確保という国民の生活福祉を守る立場からのチェックというものがなしに行なわれるとすれば、かえって不親切になるのではないかというように考えておりますけれども、これはこれからどのようにするかという問題についての考え方を申し上げただけでありまして、きまったものではありませんし、これから関係省を集めた閣僚会議を開くなどして、その後に立法作業に移っていきたいと考えるわけであります。
  46. 杉原一雄

    杉原一雄君 内部の事情、いろいろわかりますが、それだからといって責任問題とか、そういうことでございませんので、こうした形のものがこうした形で発表されることによって、国民は、形のない形で参加できるので、かえってこのほうが私たちとしては幸いかと思うわけであります。ただ、問題の論点は、長官が今度問題をしぼっていかれる場合に、地域住民なり、地方自治体関係のほうでは、事の次第によっては、そうした火力発電なり原子力発電等の問題については、操業を停止したり、操短を命じたり、改善命令を出したりする権限を与えてもらいたいという気持ちは、私は一般的だろうと思うし、これは、私自身もそうあるべきでないかと思います。そういうことで、いまこの時点で、ここで問題とすることもどうかと思いますが、国民が参加していただくという意味では、かえっていいのではないか。そこで、いま長官考え方が出てまいったわけですが、そのことも、この記事の中では、一応公害対策本部考え方として併記されております。だから、本部としては、いまのこの通産当局の考え方よりも一歩進んで、公害規制については地方団体に大幅に権限を委譲する方針を打ち出していると、これで、まあ、先ほどおっしゃったように、電力、ガスの問題こういうふうに問題を分けて書いてありますので、対策本部考え方も並べてありますから、これは、国民は、両方とも国民の判断に従って今後の立法作業に参加できる。参加するきわめて絶好の機会ではないかと思いますし、いま長官がそのことを明らかにされたので、私も、率直に長官考え方をお出しいただいてけっこうだと思います。で、後ほど通産省のほうの考え方を、あらためて私聞く機会を、ここで留保いたしまして、次の問題に移っていきたいと思います。  先ほど洞海湾ヘドロの問題が出ましたが、これも後ほど、運輸なり建設なり、それぞれの立場から、対策なり、技術的な問題等についてお伺いしようと思いますが、一体、大づかみに考えて、このヘドロの問題を、長官はどの方向で問題を解決していくのが好ましいのか。これは、それを分けて考えるならば、緊急対策としてどうするのか、立法改善措置等を通じてどういう行政的な方向を打ち出そうとしているのか、そのことを、やはり、はっきりここで答えていただきたいわけです。と申し上げるのは、二十九日雨降る中で、私たち、江田書記長をはじめ、田子の浦のあの港、いまは港ではないですが、機能を完全に停止しておりますが、埠頭に立ってみました。全く九メートル幅の港が三メートル、もっと極端に言ったら水面にぶくぶく浮き上がっているわけでありますし、硫化水素のガスのにおいが、非常にぷんぷんとにおって不愉快な気持ちで一ぱいであったわけですが、ただ、これもある新聞の社説によりますと、もはや、これは外洋投棄も不可能である、   〔委員長退席、理事小野明君着席〕 囲い込みによってこれを処理しようとしても、これは地域住民の反対は当然起こるであろうし、だから、国際貿易港などということのメンツにかかわらないで、港湾の機能を停止してしまえ、港湾を締め切ってしまえというような問題提起さえ行なわれておるわけです。これほど事態がそこまで重大化しておるわけですから、先ほど申したように技術的な問題とかいろいろな法体制の改善の問題、その他の問題については所管のそれぞれの方からお伺いしますけれども長官、今日まで把握しているこの状況報告の上に立った長官独自の判断としてとりあえず、取り急ぎこの問題をどう解決したらいいかということをここにことば短かに言明をいただきたいと思います。
  47. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 洞海湾の問題は、これは北九州市より印刷物で直接に陳情も受けておりますし、これが洞海湾対策のきめ手であるということであれば、場合によってはやはり緊急な措置をとる対象になり得るものであると判断しております。  田子の浦の問題については、一つの試金石という意味で、知事さんにまず御意向を伺いまして、知事のやろうとされることに国が財政上の裏づけ、すなわち事業団に十億の緊急融資はもとよりのこと、いままで皆さん御承知のように、国の起債の対象として企業が負担すべきものを一時自治体が転貸債として借りかえて、支払いは企業の収入をもって国に返納していくという形態はなかったのでありますけれども、今日の公害事情、ことに田子の浦の緊急性から見て、これは大蔵としても新しい起債の先例となることを覚悟の上で踏み切ってくれたわけであります。しかし、その前提は竹山知事さんは洋上投棄ということを言っておられました。すでにそのときは船も改装発注しておるのだということを言っておられました。私としては、人間が地上でつくり出した繁栄のためのいわゆる不要なる残滓を人間の英知で処理するのにはもとの陸上で処理すべきが原則であると考えておりましたので、私は陸上処理を考えてもらえないかということをお願いしたのでありますが、自分にまずこの方法でやらしてくれということでございましたので、財源措置責任を持ってお引き受けをした、私の部屋に三時間くらい各省庁の首脳部が全員集まりまして、事務次官等とも連絡とりながら即決できめたわけでありますが、その後の経過は御承知のような経過をたどりまして、洋上投棄については黒潮の外に捨てる場合であっても、全国の漁業協同組合連合会の立場から   〔理事小野明君退席、委員長着席〕 やはり無視できない。あるいはまた、ことにカツオ、マグロ漁というものに従事する協同組合である日鰹連の諸君は、自分たちの専用漁場の問題であるということで問題が広くなりまして、そのこともありましょうが、知事さんはさらに上京されまして、洋上投棄はいましばらく見合わせたい、今度は湾内の移動を鈴川埠頭と貯木場にすることによって、当面の危機を切り抜けたい、こういうことを言ってこられました。私自身としては非常に心外でありましたので、その際思い切ってこの際陸上処理にされたらどうか、私自身地図を広げて委員会でも御指摘になりました、たしか当委員会ではなかったかと記憶いたしますが、あるいは衆議院だったかもしれませんが、砂利採取のあと穴があるではないか、あるいは堤防のところにブルをかけて、そうしてさらに第二防波堤みたいなものをつくってその中間に埋める手段はないのか、いろいろ差し出口まで申し上げたのでありますが、やはり湾内移動をやるということであります。その際に湾内移動されれば、やはり今度は住民の反対がありますよということも申し上げましたが、何をやっても賛成はしないだろう、どっちみちどこでやってもだれかが反対するのであるから、責任を持ってやるからということでお帰りになりました。しかしその後、こちらのほうから、私のほうの植松次席を内々で使者に出しまして督促いたしましたけれども、どうもそれらの態度がはっきりしておらないようであります。しかし、最近はようやく原則論である陸上処理ということが技術的な面から、あるいはまた行政的な面から検討を開始しておられるようでありますが、荏原製作所等の特殊なフィルターを使っての乾燥施設等を人家のあまり影響のないような場所を選んで、たとえば吉原埠頭あたりにそれを当面二台据えつけて、さらに四台稼働させることによって乾燥処理が可能である、それまではヘドロを脱水してビニール袋に詰めて硫化水素ガス等の発生しない陸上投棄をやろうというような方向にいま検討を進めておるということを承っておりますが、まだ連絡ございませんし、いま少しく私も模様を見ざるを得ないだろうと思っております。しかし、港湾機能というものは、その当時議論しましたときにはあともう十日あるいは二週間くらいで閉鎖のやむなきに至るであろう、事実船体腐食もしくは乗り組み員の場合によっては生命の安全ということから海員組合あたりで、改善しなければ田子の浦港に船を入れない等の申し合わせ検討等がなされておるという背景等もありましたから、緊急処理という事態であったことは間違いないんでありますけれども、しかし、完全麻痺というところまでにはいっていないようであります。しかし、まあこれらは、まず第一には工場の排水口の元せんを締め上げること、これが先決でありますし、出ないようにすればあとは排斥、排除するだけでありますから幾らでもわれわれの知恵で、科学技術でこれはできることであります。しかしながら、そのままで推移いたしますと、ヘドロは湾内に一定量蓄積をすると完全に港の機能停止には至らないが、上をすべるようにして駿河湾に流れ出していくおそれがある。事実そのようなことは次第に具体的になって、漁獲その他に影響が出てくるならば、これはまた別な時点から漁業者の資源の場を対策が二転、三転することによって影響を与えるということに重大問題に発展するおそれもありと私は見ておりますので、すみやかにいま陸上処理の案を具体化し、さらにそれについて督促をいたしておるという段階でございます。
  48. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは排水の問題ですから水の問題になると思いますが、水の問題については二つの法律があることは御承知のとおりです。そこでいま改定作業をお進めのようでありますが、公共用水域の水質の保全に関する法律という、この法律でどのような点を改善しようとして努力されているのか、たいへんこれは幅広い話ですから、なかなかお答えしにくいと思いますが、少なくとも私たち期待する三点があるわけです。その点についてどのような作業を進めているか。長官からお答えいただければ幸いですが、御無理ならそれぞれの所管からお聞きしたいと思います。  まず第一点として、水質基準について、指定水域という形をいまやっておるのでありますが、それもやめられて河川、湖沼あるいは港湾、沿岸海域、これを全国的基準を設けて強化するという点についてはどうか。  第二点としては、工場事業場または鉱山から公共用水域に排出される水質規制について先ほど話があるようにその権限地方公共団体に与えてはどうか。すでに反論が出ているわけですけれども。  第三点として、水質基準規制対象に重金属物質を加えるということについての見解はどうか。  この三点についてお伺いしたいと思います。
  49. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 現在、工場排水法と水質汚濁、いまの経企庁と両方分かれておりまする法律を一本にして水質汚濁法というふうに原則として作業を進めているわけでありますが、ただいまの御質問の三点の水質基準は全国一律にせよという方向で行っております。  第二点の事業場等の水質の規制については都道府県知事あたりのローカルに即した規制等ができるようにせよということは、国の定めた基準の上乗せを都道府県知事がやることが可能であるという方向に進めようということでありますから、御意見のとおりであります。  さらに、第三点の微量重金属等の人体に有害な物質についても規制をしていくということも御意見のとおり作業を進めておると考えております。
  50. 杉原一雄

    杉原一雄君 冒頭に二法を一つにまとめて、これを強化するという長官発言を非常に私大事にしていきたいと思います。しかし、いま質問を進める場合に、もう一つ工場排水等の規制に関する法案についての改正点についてこれまた三点ほど私たち考え方を述べて、それに対する見解を明らかにしてほしいのでありますが、第一点は、工場排水についてあくまでたれ流しをいまもなおやっているわけですから、その現状をわれわれ踏まえたという場合に、やはり許可制ということできちんと縛っていかなきゃならぬ。  また、第二点としては立ち入り検査の問題でありますが、少なくとも地方自治体が会社、工場に問題があるとした場合には立ち入り検査が可能であるということが法的に裏づけられる必要があるのではないか。  第三点は、一定基準を越えている汚濁に対してあるいは会社、企業の操業短縮なり、施設の改善なり、工場排水の水質基準規制などを命令する権限地方自治体に与えていただきたい。こういうことを実は考えるわけですし、あわせて最後に、長官から言明がありました水質汚濁防止法であろうと、どんな名前でもけっこうでありますが、現在の各省ばらばらの水に対する法的な規制は、私はやっぱり能率的に見ても、また、われわれが大衆次元から問題を提起する場合でも、どこの省へ持っていけばいいのか、さっぱりわからぬ。そのうちにもやもやにされてしまうといういままでの経過等を踏まえた場合に、何が何でも一本化してもらいたいと思うのでありますが、これは重ねて答弁を求めようとは思いません。先ほど申しました工場排水等の規制に関する法改正についての三点の考え方についてお伺いしたいと思います。
  51. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 第一点は、新しく設置される企業については、もちろん、工場排水法の現在の立場からいう基準に合致する施設を備えることを条件として許可をいたすわけでありますから、それが行なわれていない場合は勧告をし、さらに勧告に従わない場合は、第三点の命令権その他の行使につながっていくわけであります。したがって、いますでにある工場等についても、この作業は今後の法律ではきちんとなっていくと考えます。第一点は御意見のとおりであり、さらに第二点の立ち入り検査並びに付帯してそれらの施設についての改善命令やその他を出せるように、都道府県知事に渡せということも、そういう方向作業いたしております。
  52. 杉原一雄

    杉原一雄君 次は住民運動と企業と、あるいは地方自治体、企業と住民との間に協定を結ぶということがどんどん各地に自主的に行なわれている問題ですから、この問題をめぐって質問をしたい。ただ、この際頭に私はこびりついて離れない問題は、きのうの毎日夕刊の中で、きのう、産業公害特別委員会が衆議院であって、自民党の代議士が大臣に質問をしたことがあります。その大臣答弁の中で、私、これは真実を伝えていると思いますが、非常に耳ざわりになることばがあるわけです。いわゆる住民問題であります。「今の公害反対運動は情緒的になりすぎている。環境汚染規制基準が決まったものについては、企業はもちろん、住民もこれに協力する形で基準を守ってもらわなければならない」、こういう見解を明らかにしております。それでいろいろ具体的に若干の紹介を含めてあるわけですが、住民の皆さんがもっと理性的に問題に対処してもらいたいという大臣のお説教でありますが、これは私はそのまま実はいただけないわけです。このことに対して、では山中長官いかがですかと、あなたに聞きますと、あなたはぐあい悪いでしょうね。あなたはぐあい悪いでしょうからそういう答え方でなしに、いわゆる富士川火力発電の反対、あるいは富士市に起こっている田子の浦ヘドロに対する漁民なり、地域住民が公害対策市民協議会をつくって今日までがんばり抜いてきているこの事実、全国至るところにありますし、また、私は富山の県内においてもこの運動の今日まで先頭に立って戦ってきた一人ですが、長官のことばを聞くと、私は納得できないし、率直に言ったら腹が立つのであります。住民運動を政府がそういうとらえ方を現在においてしているのかどうか。長官は大所高所の立場からそれをどう理解しておられるかお聞きしたいと思います。
  53. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は全部責任とりますが、ほかの大臣の発言まではどうも責任とりかねる。たいへん情緒的な言い回しの宮澤君がここに参るようでありますが、そのときに本人から聞いていただきたいと思います。しかし、私は、企業側がはやり考えなければならないことは、すでに反社会的な企業としての存立が許されない地域住民の考え方というものが支配的になってきた。したがって、地域住民の意向を受ければ、市町村長も当然いままでは工場誘致に必死になって、地域の開発については工場誘致だと、われわれも低開発地域工業開発促進法あるいは過疎地域とか、新産都市その他いろいろの法律でその傾向を国としても認めてきたような推移があることを私たちは否定できないわけですけれども、しかし、地域においては、公害企業であるならば、建設にかかっているものでも、完成間近なものでも、初めて知った、それならばやめてくれというような場合もあるようでありますし、初めから企業誘致はやらなければならない、しかし、公害企業だけはいやだという声ももう普遍的になりつつあります。これは、住民並びに住民の声を反映しなければやっていけない地方自治体の責任者の偽らざる現在の姿だろうと思いますし、さらにそれらの運動というものの形態については、これはその場所場所によっていろいろと形態が違いますから、一律にこれはものを言うことはできないと思いますけれども、企業自身地域から、かりに何もなかったとしても、反社会的な企業である、極端に言うと殺人企業であるというようなイメージを受けますと、求人そのものさえ大学卒の志望者あるいは新規採用者を発表をしても、応募者がわずかしか来ないという現実を、これはある会社で起こったことで、公表されたことでありますけれども、各公害を出すおそれのある企業の経営者はひとしく大きなショックとして受け取っておると思うのです。そのように、選択を、就職する側からもするようになってくるという現状から考えても、ただいま申し上げました地域の感情を受けたそれぞれの県、市町村長の責任ある考え方の変化等と相まって、やはりこれを無視できないものとしてわれわれはすなおに受け取るべきではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  54. 杉原一雄

    杉原一雄君 いまの最後のところですが、私は富山ですが、五月の十八日に地方の新聞が三日市製錬所のカドミウムを発表してから全国的に大きな問題になっているわけですが、来年の春卒業する卒業生が、富山ですかと、富山ならいやですと、企業の選択ではないわけです。富山に来るのがいやなんです、こういうことが就職あっせんの過程で、学校の教師の就職指導の過程の中で非常にたくさん出てきているということを聞いております。これは一体住民運動の責任であるかということでありますけれども、これは賢明な長官は御判断のとおり、住民の責任ではない。住民が情緒的に言ったからそういう結果が生まれたのではなくて、現象が先に回って、その現象を起こしている人はだれか。住民ではないのです。カドミウムをたんぼにまき散らしておって、稲に米に吸わせて、それが消費地帯について問題になってきた。それを今日までひた隠しにしておった富山県、こうしたところに最大の原因がある。でありますから、情緒的責任という表現で、もしそのことを指摘されるなら、私は承服しかねますし、そういう政府の通産行政にしろ、公害行政にしろ、そういう態度では私はいかないのだというふうに実は思います。  先ほどちょっと申しました後半の問題で、いわゆる協定の問題です。住民闘争の中から、大企業といろいろな協定を結ぶ場合もあります。つまり、公害発生の取り約束とかあるいは補償の問題とか行なわれます。これは、自然発生的な問題でありますから、私はそれなりですぐれた協定が結べることを心から歓迎するわけであります。ただ、中央政府の立場として、たとえば横浜方式のごとき企業と地方自治体との協定についてどのような取りきめ方をし、どのように評価しておいでになるか、この方向公害対策一つの一環として、今後ともより積極的に進める、奨励するという立場をとろうとしておいでになるのか。いや、それは法的に引っかかるぞと、こういったような見解がもしあれば、長官の時間もほとんどないようですから、端的に長官からお答えをいただきたい。詳細は明日、自治省から、出てもらって質問をします。
  55. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の情緒的と言ったのは、通産大臣のお話のしかたが情緒的であると言ったのであって、私自身はそういうふうには思っていないということであります。誤解のないように。  ある温泉場で、富山市の例を引くまでもなく、何々市何々温泉というとお客さんが来なくなった。そこで隣の別な市に合併を申し入れてきたという、笑うに笑えない悲劇も新聞に出ておるようであります。こういうことを考えれば、やはり、企業も国ももっときびしい考え方を貫かなければならぬのだということを、ちょっとした社会面の記事であってもそういうことを感ずるわけです。  最近、私は公害というものを、さっき、けさ、朝日に目を通したら四つ出ておったというのですが、私自身も腹が減ったときに町を歩くと、食堂の看板がやたらに目に飛び込むように、あらゆるものを見ると、公害につながると、全部が電撃的に私は感ずるようになってしまったわけでありますが、それだけに必死の努力をしておるつもりであります。  そこで先ほどの、住民あるいはできればそれには自治体の責任者が中に入ってまとめて、取りきめみたいな、文書交換みたいなものをしてもらうことが私は望ましいと思います。しかしながら、それは、たとえば県のほうなり何なりが企業側なりというようなものと対立をして、そして国の法律をこえた基準を強制するということであればやはり法律違反であると言わざるを得ませんが、話し合いによってそういう条件で企業立地を受諾するというような立場で話し合いが進められる場合、これは好ましい方向のことでありますから、基準内容にしてもこれは目に角立ててものを言う必要のない取りきめであろう、当事者が納得しておる問題でありますから。これらの問題が被害者がおこったりしてこじれた場合には皆さまに前国会で御審議をわずらわしました公害紛争処理法案によって中央、地方においてそれぞれ法律をバックにした和解の仲介、あっせん、調停等を行なうということによって、十一月一日から中央公害審査委員会が出発をするわけでありまして、それらの問題は基本的にはそういうことは望ましいことである。ことに、間々そういうふうにうまくいかないということが多うございますから、法務省にお願いしている公害罪、無過失責任あるいは挙証責任の転嫁というような問題等議論されている背景を私たちは正確につかまえて行動しようとしておるつもりでございます。
  56. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは最後に、私、先ほど申したように富山の者ですが、日本鉱業三日市製錬、カドミウム汚染の問題土壌が七十ヘクタールないし百ヘクタールが汚染地区として指定されているわけです。たいへんなカドミウムの状態ですが、そこで公害基本法の改正に手をつけておられると思いますから、その改正の作業の中に土壌汚染の問題——先ほど悪臭の問題はむずかしいことだとおっしゃいましたが、そういう問題、あるいは産業廃棄物の問題等について、これをもうすでに定義の中に位置づけて対策を明確にしようとする意図がいまここにあるかどうか、簡単にお願いいたします。
  57. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 土壌汚染は典型六公害に加えて、基本法第二条に、土壌汚染として明記するつもりでございます。したがって、土壌汚染防止法というものを策定し、さらに媒体としてあるいは蓄積源としての土壌というものをそれでとらえますが、もう一つ前に農薬取締法というものがどうしても必要になりますので、これは土壌を汚染する農薬、汚染関係なく直接くだもの等に付着する農薬、残留農薬等を含めて農薬取締法の改正も、符節を合わせて土壌汚染防止法とともに立法していただくようにいま農林省で作業を進めております。  それから産業廃棄物については典型公害としてはなかなか入れにくい問題で、産業廃棄物が公害現象を起こした場合には、いま入れました土壌汚染を加えると七つの典型公害のいずれかの現象に必ずなるわけです。その前の産業廃棄物の公害らしきものといえば空間の不法占拠みたいな現象、もしかりに炭鉱その他で別な立法がないとすれば、もとの石炭のボタ山等は明らかにこういう形態になるのだと思いますが、そこで多うございますから、典型公害の中には入れませんが、第三条の「(事業者の責務)」というものに、まず事業者はそういう産業廃棄物が出ることは工業を営む上にこれはもう物理的に不可能であるとしても、しかし、それを第二条の典型公害の起こらないような状態にしなければならぬというものを入れたらどうかということを考えておりますが、これはまだ関係閣僚協できめておりませんが、一応関係閣僚協では第十二条の政府の責任の中に、したがってこれは当然地方自治体の責任も、政府の施策を受けて同じ基本法地方自治体も責任を負うわけですけれども、国が行なう施策の中に産業廃棄物というものも考えようかということでは話がついておりますが、ただ大蔵大臣あたりは、こういう法律にすると企業者自体は産業廃棄物の責任はないようなふうに法律の体裁がなるといけないという注意がありましたので、その後検討の結果、次の関係閣僚協にかける際にはさらに一歩前進して第三条「(事業者の責務)」に産業廃棄物のことばを明確に入れて表現していく方向検討したいと思っております。
  58. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは先ほど山中長官に対する質問、その中で特に火力発電のみならず、電源の立地対策の問題について先ほどお聞きでありましたから、通産省関係筋ではその長官の答弁をどのように理解しておられるか重ねて質問する必要がございますか。聞いておられたでしょうね。つまり電源立地調整法の問題です。これについてこれはあえてこの新聞がこれをすっぱ抜いたという表現は当たらないし、かえってすっぱ抜かれたことは、われわれは全貌がつかめて非常によかったと実はほっとしておるわけであります。前々からこうした動きがあることを人から注意を受けておったのでありますが、私はしろうとでございますから、なかなか実際をつかめないで困っておったわけであります。幸い報道いただきましたので、この立法の趣旨、ねらいはどこにあるのか、できれば、時間がございませんから、逐条についてお伺いする機会はございませんが、その点と、先ほど申しました大気汚染防止法の関連でございます。なかんずく火力発電の停止命令など地方自治体にそれを移さないということをことさら大きくうたわれているところに私は一つの大きな見解があるように思われますから、その辺のところを通産行政立場から理由があると思いますから、そうした理由を率直に大胆にお聞かせいただければきょうの質問は私はこれで終わりますから、明日の質問に移したいと思います。
  59. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 御質問が二つあったかと思いますけれども、最初にお話しになりましたいわゆる電源立地調整法という考え方でございますす。御承知のように、いま電気の需給は非常に窮屈な状況になっておりまして、ことし、来年とこのまままいりますと特に窮屈になる傾向がはっきりしております。電気の需給を円滑にいたしますのには当然たくさんの発電所をつくらなければ対応できないわけでございます。まあ電気は水力、火力、原子力とこうございますけれども、水力、原子力は別にいたしまして、火力発電所は御承知のように、非常に大量の重油を消費いたしますので、どこかの地域に発電所を建てようといたしますと、非常に大きな重油の消費源であるということから、現在の一般の公害問題と関連いたしまして、発電所を建設することにつきまして、発電所のほうでこういう公害対策をやって御迷惑をかけないようにしたいというプランを提示いたしましても、地元のほうでなるべくそういうものは来ないほうがいいという意味での御反対がございまして、十分地元の責任のある立場におられます知事なり市町村長なりからその発電所をつくるについて御納得がいただけない。したがって、発電所の建設計画を進めることができない。こういう状況が各地に出てまいっております。特に本州の中央部、電力会社で申しますならば、東京、中部、それから関西電力というような電力会社の管内におきましては、特にそういう傾向が顕著でございます。そこでわれわれといたしましては、電気は言うまでもなく非常に一般の国民生活、産業に欠くべからざるものでございますので、発電所の建設を円滑にやりますために、十分電力会社がその地域要求にマッチする公害対策を講ずるということは当然のことでございますけれども、そういうはっきりした対策がございまして、これが合理的に考えて十分その地域に御迷惑はかけないということがあることを前提にいたしました場合におきましては、その発電所の立地はできるだけスムーズにいくように御協力を願いたいというような趣旨のことを考えておるわけでございます。  それで、現在各電力会社が発電所をつくりますときに、各地元とそういうことでお話し合いをして納得を得られ次第建設をすると、こういうことになっておりますが、時間的に非常に窮屈な需給でございますので、そういうお話し合いが一そう円滑に進みますように、たとえば地域ごとに、そういうトラブルの起きました場合には、地元で、電力会社なり、あるいは関係地方自治体、あるいは通産局等が入りまして、全体のその地域の電気の需給から見まして、ここに発電所をつくることの必要性を十分御納得いただく。さらにまた、それを建てるについての電力会社側の十分な公害対策についても御議論をいただく。そしていわゆる納得が円滑にいきますようなそういう体制を考えてはどうか。こういうのが電源立地の円滑化ということに対する通産省の考え方でございます。  その具体的な方法といたしまして、たとえば各地にただいま申しましたような協議会をつくりますとか、あるいは発電所をつくるにつきまして、電力会社の言っておる公害対策が科学的に地域にほんとうに御迷惑をかけないというような、事前のいわゆる調査がしっかりなされておるということも必要でございましょうから、それらを織り込みましたような対策を実施をいたしますために、これは必ずしもそのために法律をもってしなければならないということもなかろうと思いますけれども立法化を含めましたそういう対策をどういうぐあいにやっていくかということを目下省内で検討しておる最中でございまして、特にいわゆる固定をいたしました電源立地調整法、そういうかっこうでなければただいま申しましたようなことが必ずしも実施できないものとも思っておりませんけれども、場合によっては立法化したほうがいいということであればそういうことも考えようという、わりあい間広の考え方で現在検討しておる、こういう段段でございます。  それからもう一つ、先生のお話しになりましたいわゆる電源立地調整法的な考え方と現在の大気汚染防止法における電気、ガスの取り扱いの問題との関連でございますが、これは特にこちらがこうであるからこちらがこうであるという関連は、先ほど山中長官もお述べになりましたように、特に関連はございません。現在の大気汚染防止法では電気、ガスはいわゆる適用除外となっておりますが、御承知のように、大気汚染防止法で各地域ごとに定められました排出基準はむろん発電所の施設につきましても適用になっております。ガスの発生施設につきましてもそのとおり適用になっておるわけでございます。ただ大気汚染防止法では、その排出基準を各事業者に守らせますのに、大気汚染防止法によりまして、一般の産業は特にその施設を見る固有の法律がございませんので、その大気汚染防止法で一括をいたしまして、いわゆる施設をつくる前に届け出させる、そして防止施設の計画を出させる、それが不十分であればそれを変更させる、あるいはその施設ができて実際の煙が出始めましたときに、その煙が基準以上であればあらためて施設の改善命令を出す、それに従わなければ操業の一時停止も含む処置を講ずる、こういうのが大気汚染防止法の体系でございますけれども、電気、ガスにつきましては、御承知のように、電気の保安、ガスの保安というような広い見地から電気、ガスの施設につきましては大気汚染防止法以上に、むしろ施設の許可制、それから工事計画の認可、検査等々を伴いますもっと綿密な施設をチェックする体系が昔からございますので、この大気汚染防止施設につきましても、基準はむろん大気汚染防止法の基準をそのまま受けますけれども、同時にそれを実際に守らさせていく手段は、むしろ大気汚染防止法よりは一そう密度の高いガス事業法、電気事業法のほうで一体にやるということのほうが合理的であるという見地から、この法律ができて以来、エソフォースの手段だけを防止法の条文をはずして電気事業法によってやるといういきさつになっておりますが、このたてまえが私は決して不十分なものとは考えておらないわけでございますが、ただ、現在そういうことで電気事業法、ガス事業法によっておりますと、いわゆる一般の産業は、大気汚染防止法によって全部都道府県知事に監視あるいは命令等の権限があるわけでございますが、地元において非常に大きな油を消費する発生源である電力、ガス等につきまして電気事業法、ガス事業法の体系によって通産大臣がやっておりますために、何といいますか、都道府県知事にいわゆる電気、ガスにについてどういうぐあいな処置が講じられておるかといういわゆる情報が直に法律的には伝わらないというような関係にございますので、これは都道府県知事はその地域全体の汚染状況の監視といいますか、保全の任務を持っておられますので、こういう点についてもう少し電気事業法における電気、ガスの規制関係とこの大気汚染防止法における都道府県知事の位置とどういうぐあいにこれをリンクさせれば非常に大気汚染防止の体系として御満足がいただけるであろうかということをいろいろ総理府を中心にいたしましてわれわれも考えておる、こういう段階でございます。
  60. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは先ほど前段の電源立地の調整法というものに触れられましたが、めど臨時国会ですか通常国会ですか、それをはっきりしてください。
  61. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 先ほども申しましたように、電源立地のそういう円滑にいかすための協議会なり、そういうシステムについて何かやりたいということは考えております。ただ先ほどもお答えいたしましたように、そういうことをやりますのに必ず法律をもってしなければならないかどうかという点はまだ検討いたしておりますので、したがいましてこの法律をつくるかどうか、法律というかっこうでやるかどうかということもまだそれを含めて検討中でございますので、したがいまして、これをいつの国会に出すかということにつきましてもまだきめておりません。
  62. 占部秀男

    委員長占部秀男君) これで午前の会議を終わります。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  63. 占部秀男

    委員長占部秀男君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  64. 田中寿美子

    田中寿美子君 山中長官に私最初お尋ねいたしますが、ずっと私もう半年近く農薬の問題をいつも御質問しているわけです。最近、農薬の公害について、だんだん政府も認識を深められたと思うんですが、あるいは行政の態度も少しは変わってきているように私思うんでございますけれども、特に農薬の環境汚染ということについて私長官汚染をしている事実を認めていただきたいということを申し上げて、そうおっしゃっていると思うんですけれども、なお念を押したいと思うんですが、この問題はいまの牛乳のBHC汚染の問題から注目され始めたわけですね。それでことしの春の委員会のときに、私は牛乳だけではなくて、肉類、特に牛肉には非常にたくさん入っていると思われるし、それから卵、魚類、そういうものも脂肪分の中のBHCの残留と、それからさらに野菜、くだもの、米というものの中にあるBHCなど有機塩素系の農薬の残留を調べてほしいということをずっとお願いしてきたわけですけれども、まだ厚生省のほうでもそういうところまで手がついていないように思います。その農薬の残留してくる経路を見ますと、一つはえさから、つまり稲わらや草などのえさから入ってくるもの、それから土壌にしみ込んで農薬が作物に入ってくるもの、それから水中にあるBHCその他の農薬が野菜や作物、それから草なんかにしみ込んでくる、そういう経路があると思うのです。それから水中のBHCなどが微生物に蓄積して、それを食べる魚や貝類などに循環してくる、あるいは動物にも循環してくる、そういう経路をとってくると思うんですね。それでどうしてもこれは環境汚染としてしっかりと認識していただかなければならないと思います。で、総理大臣までも、先日、九月十四日の東京新聞によりますと、閣議で、ホタルやドジョウがいなくなって困ったものだ、公害の中で農薬が一番心配だとおっしゃっていらっしゃるのですね。そう言われた発言がきっかけになって、農薬の規制をもっときびしくしようという考えが出てきたというふうに書かれているのですけれども長官は農薬公害対策のおくれをどういうふうにごらんになっていらっしゃって、どういうふうに取り組もうとしていられるかということ、これは農林大臣、厚生大臣いられませんが、公害対策副本部長でいらっしゃいますからその姿勢を伺いたいのです。それから環境汚染の事実をもちろんお認めになると思いますが、それならば、農薬の環境基準というものをつくる必要があると思うのですね。土壌とか水とか大気までもいま問題になっておりますが、そういうことについてどういう気持ちがおありになるかを最初にお伺いしたいと思います。
  65. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 午前中もお答えをいたしましたが、基本法第二条の典型公害に土壌汚染を加える。したがって、土壌汚染防止法——仮称的な法律検討中であります。さらにこれはお話しのとおり、農薬の面からも取り組まなければいけません。土壌汚染は、微量重金属の蓄積媒体、農薬等の健康に有害のものの蓄積媒体という性質を持つわけですから、これは典型公害で土壌汚染としてとらえられると思います。ですから関係法もできますが、一方においては直接くだもの等に薬剤等散布すること、そのことがまたたとえば洗浄が足りなかった場合にはそのまま入ってきてしまう、あるいは牛乳その他のおっしゃったような現象となるわけですから、やはり農薬取締法自体も、これは今回の典型公害に土壌汚染を入れることとあわせて改正をしてもらいたいということで、これは総理から私のほうにいまお話しのような指摘がありました。そこでまず、倉石農林大臣のほうに総理の目の前で、あなたのほうも農薬取締法を独自で、しかも土壌汚染の新しい立法に対応したものを中に持ちながら、農薬そのものの取締法の改正をしてほしいということで、いま田中さんのおっしゃったような感覚と申しますか、とらえ方でもって作業を具体的に進めております。
  66. 田中寿美子

    田中寿美子君 その態度をぜひ貫いていただきたいと思います。私、農林省、厚生省が農薬公害対策の取り組みで姿勢が少し不十分であったという点をずっと感じていたわけなんです。で、たとえば農林大臣は農薬くらいの問題じゃ委員会に出ておいでにならない。これは伝統的にそうらしいんですね、どうも調べてみると。米の問題とかもっと大きな問題でなければ絶対に出られない。それから農政局長も、農政局長は農薬問題を扱う必要はないと、もったいないというんですか、そういうような考え方が農林省の中にあるというふうに聞いている。もしそういう態度であったら、この際農薬問題がこんなに大きくなって環境汚染公害の非常に重要な問題になっているんですから、この態度は改めるべきだと思いますが、この点はきょうも局長も出ていらっしゃいません、課長さんしか出ていらっしゃいませんので、これは山中長官から、調整あるいは鞭撻することがお仕事になっていると思いますので、ぜひ現状の認識を強めていただいて、農薬問題も重大な農政問題であるということで、その点を督励していただきたい。  それから厚生省は、BHCの汚染状況について春から後ずっと毎月やるという前の環境衛生局長の御答弁でございましたけれども、あまり資料が出ていないんですね。で、全国のその調査が、できれば牛乳に焦点を置いてやっていくということですけれども、牛乳についても最近のデータを私いただきたいということで何べんも申し上げますけれども出していただけない。これは調査をしていらっしゃるのか、していらっしゃらないのか。あるいは牛乳だけでなくて肉類も魚も卵も野菜もというようなことが、厚生省のいまの状況では手にあまるという状況なのかどうか、その辺当局の方から伺いたいし、長官が、こういう農林や厚生の取り組みに対して公害対策副本部長として督励調整していただきたいということをお願いしたいと思います。
  67. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 農薬の食品に対する残留量の問題、ことに牛乳を中心としまして、肉製品、その問題を厚生省はどのように調査をしておるかというお尋ねでございますが、昭和四十五年の四月二十一日に食品衛生調査会の御意見もございまして、厚生省は農林省に対しまして、生産者への対策の徹底をお願いしたところでございます。また同時に、調査会の御見解に従いまして、全国的に各都道府県に対しその残留量を調査することを指示いたしております。それに先立ちまして本年の一月、二月に、これは厚生省のほうで所管いたしております研究費を使いまして、全国八道府県につきまして牛乳の中のBHCの残存量につきまして調査いたしておるわけでございます。おそらくは前委員会で前局長がその点の数字について説明申し上げたところであると思います。その後どうなっておるかということでございますが、三月以降につきましては八道府県の範囲をさらに広めまして、先ほど申しましたように、四月の二十一日の指示に基づきまして各都道府県に調査方を求めたのでございます。そのうち実は必ずしも報告が全部から得られたのではございませんが、そのうち報告がありましたものにつきまして、六月の成績につきまして七月二十三日に公表いたしておるところでございます。その後七月、八月の検査成績が逐次到着いたしておりますが、総体的に申しますと、全般的には幸いに農林省のほうの御指導のよろしきも得まして逐次漸減の傾向にあると言えます。全国的な傾向はそうでございますが、さらに細別して申しますと、関西以西の西日本地方では多少高い傾向でございます。もしもお求めであれば、集まった資料については手元にございますので、後刻差し上げてもよろしいと思います。  それから目下牛乳の検査について重点を置いてやっているところでございますが、牛乳以外の食品につきましては、乳製品、すなわち調製粉乳、バター、脱脂粉乳あるいは牛肉、鶏肉、豚肉につきましてBHCの残存量について調査いたして若干の結果を得ております。これらによりますと、いずれもいまのところ、いわゆる残存許容量と申しますか、その点から見た場合に不安はないものという数値であると心得ております。  それから全般的な農薬の残留量、残存量の調査でございますが、これらにつきましては、すでに総理のほうから御指示もございまして、いま精力的に関係の農薬の種類別及び関係の食品別にいわゆる総点検という形で調査を進めておるところでございます。  それから残存許容量と申しますか、それらの基準につきましてはいまだないものにつきましては、これも早急に設定すべく、関係の試験研究機関にその基礎的なデータの整備、検査につきまして指示いたしまして、目下取り急いで研究をいたしておる段階でございます。
  68. 田中寿美子

    田中寿美子君 長官の御意見聞こうと思いましたけれども、時間がたいへん取れるようですから、あとでまとめてもう少し伺いますけれども、いまおっしゃったようなことは、六月までのはもう承知しております。そうして春以来いろいろな日常口に入る食品についての調査をしてくれということをずいぶん要求しておりました。それで幾らかのものについて出たとおっしゃるなら、それはもう絶えず私が資料要求しているのですから、当然いただけるはずだと思うのですが、それをいただいておりませんので、それをぜひすぐにいただきたいと思います。  それから六月以降ですね、いまもう十月なんですよ。その最近のデータを知りたいということを、これも再三再四厚生省には私申し上げているわけなんです。で、なかなか春ごろの意気込みとは違って、夏ごろの段階までの意気込みとは違ってきたような気がしますので、それをもっときちんとしていただきたいと思います。  それから私、行政管理庁の行政監察局長さんにお尋ねしたいと思うのですが、行政管理庁は、やはり閣議で総理大臣が農薬の公害が一番心配だと言われたというので、農薬公害に関する行政監察をすることをきめられたという記事を見たのです。これは九月十四日の閣議ですね。それで行政管理庁が農薬公害の調整の監査をする、公害行政ですね、それに関連した行政の監査をなさるというのはよほど期するところがあるはずだと思うのですが、その目的は、農薬の人体及び畜産物、水産物に与える影響を中心にして調べ、その結果を関係機関に勧告して、政府の検討中の農薬取締法などに反映させることにあるというように聞いております。これは行政監察局が取り上げられました動機とか目的とか、それからその企画ですね、あるいは監察の項目など、わかりましたらお知らせいただきたいのです。
  69. 岡内豊

    説明員(岡内豊君) 監察として取り上げた動機でございますが、これは私ども地方の出先機関からは、現地で農薬に関連していろいろ事故が起こったような場合に報告が来ておりまして、その報告をいろいろ見ますと、これはやはり全国的に見たほうがいいのじゃないか、監察したほうがいいのじゃないかということで、これは実は春ごろから考えておったことでございまして、特に閣議発言が関連があるということではございません。  それで御承知のように、日本の農業生産というものは、戦後農薬の発達によって非常に生産性が向上したわけでございますが、その反面いろいろ農薬の取り扱いの不備によって死亡事故なり中毒事故を起こしているわけでございますが、そういったことでさらに最近は残留農薬の毒性がいろいろ問題になりまして、食生活に非常に不安を与えておるというようなことがございますので、その監察をやろうということにしたわけでございます。  それで監察のねらいといたしましては、まず第一がやはり農薬行政に関連いたしまして、これは農林省と厚生省が両方が関係があるわけでございますけれども、その間の連絡調整の問題なども現時点ではうまくいっていないのじゃないかというようなことも考えられますので、そういった点、行政の実施体制について見ていきたいということ。それから農薬の保管管理でございますが、その販売業者なり何なりの保管管理、それから農家における保管管理、これが非常に不十分な面があっていろいろ事故を起こしているということで、そういった点も見たい。それから非常に劇物毒物を含んだ農薬については、その取り扱いについていろいろ細心の注意事項、それぞれ通達が出ておるわけでございますけれども、実際の使用にあたってそれがどうも守られていない。そのために事故を起こしているというようなこともございますので、そういった点を見ていきたい。それから残留の農薬対策、これは検査体制も含めまして、一体どういうふうになっておるのだろうかということ、ただ試験研究の体制が若干不備なのではないかというふうにも考えられますので、そういった点を見ていきたい。それから取り締まり関係行政がどうなっておるか、そういったことも見ていきたい。そういったこの五点が大体の重点項目、こういうことに相なっております。
  70. 田中寿美子

    田中寿美子君 行政管理庁が農薬関係行政を監察するということはたいへん珍しく、初めてではないでしょうか。ぜひこれは相当徹底的にやっていただきたいけれども、何人ぐらいで、どんな規模でされるのかということ、それから行政監理委員会で出てきた結果を議論して勧告書をつくられるということですね、それはいつごろつくられるようになっておりますか。
  71. 岡内豊

    説明員(岡内豊君) 私どもの監察の実施体制でございますが、本庁の監察官室に大体監察官以下八名おりまして、それが具体的な計画を立てまして、管区地方局に流してやるわけでございます。大体十一カ所の府県を予定いたしております。それだけ見れば、従来のいろいろ地方から出てきた報告もございますので、大体結論が出せるのではないかというふうに考えておりますが、そこでいつごろできるかということでございますけれども、今月中に現地調査を終わりまして、来月一ぱいで報告書を取りまとめて、来月の下旬か再来月の上旬には各省庁に意見を申し上げたい、かように考えております。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 春以来の牛乳BHCの汚染の問題ですね、農林省が現地の酪農民たちへの指導がなかなか徹底しない、通牒はずいぶん出されるのですけれども、徹底していないわけです。行政監察はその八人くらいでとてもたいへんだろうと思うんですけれども、徹底してやっていただきたいと思うんです。   〔委員長退席、理事小野明君着席〕 それで、この際ひとつ申し上げておきたいんですけれども、四十五年、四十六年度の農林省の予算の中で残留農薬研究所の予算があるのですね、一億ずつ、合計二億入っているのですがね、そうしてすでにもうたしか七月か八月に建設が始まっているはずなんです。これは農薬のメーカーなどからも募金して四億か五億集めて、たいへん大きな予算で特殊法人を設置するということになっておりますね。で、この中身をやはり監察していただく必要があるのです。その案を私見たんですが、人体の安全、健康、自然や環境の破壊を防止することを主張するこれの中身、財団法人の役員ですね、農薬研究所の役員の案が出ていますですね、それを人体の安全、健康自然や環境の破壊を防止するための役員としてはたして適当なのかしらという気持がするわけであります。いま農薬の問題は非常に問題になっていて、BHC、たとえば有機塩素系の農薬がそろそろもう出回らなくなる。買い手もなくなってくる。次の新しい農薬の開発が始まっているわけです。それがまたどういう害をもっているか、急性毒性、慢性毒性というものを調べなければならないと思うのですね。それが新しい農薬を開発する会社の代弁になるような人ばかりじゃ困るわけなんです。ですから、この残留農薬研究所の役員の構成とか、それから計画書がありますね、趣意書というのが、この中にこういうことが書いてある、これは長官もお聞きいただきたいのですが、「新農薬の開発実用化にあたり農薬残留に関する安全性を確保するためには、十分な施設と専門家を整えた公正中立な試験機関において慢性毒性等の試験を行なうことが肝要であります。」とあるのですね。ですから、公正中立な専門家を入れるだけじゃなくて、役員の構成の中もそれが必要だろうと思うのです。その辺を十分監察していただきたいし、長官も総体的に公害対策を講じられる立場から、この点十分よく検討していただきたいわけなんです。で、第一この残留農薬研究所の事業計画を見ますと、私は非常に疑問に思うことがあるのです。たとえば「試験動物の飼育増殖」という項目があります。そこに「ラット、マウス」と書いてありますね。慢性毒性試験の施設の中にもラット約五千匹、マウス約六千匹など書いてあるのです。慢性毒性というのは、BHCでもわかりますように、一たん牛のからだの中に入ったら二年ないし七年は残るだろう、だから、かりにBHCを使わなくなっても牛乳に出てくるわけですね。そういう慢性毒性の検査にラットやマウスだけではしようがないだろうと私は思うのです。犬もサルも要るだろうし、それからもちろん牛体も調べる必要があるし、人間の解剖した内臓なんかも見なければならないと思うのです。その辺の計画などについて私は疑問があるものですからそれをどう思われるか。また行政監察ではその辺も調べていただきたいのですが、長官もその辺をどうお考えになるか。たいへん大きな予算を使うものであって、これは官庁の天下り人事に使われるようなことでは困るのです。
  73. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 農林大臣を呼んでいただきたいと思います。
  74. 岡内豊

    説明員(岡内豊君) この残留農薬研究所についても監察してはどうかということでございますが、これはまだ実際に業務が始まっておりませんので、私どものほうとしては、今回の調査では間に合わないので対象に入れておりません。聞くところによりますと、いま庁舎を建設中であるということで実際の業務は始まっておりませんので、ちょっと監察はできないと思うのでございますが。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 行政上の監察はできないけれども、それはプランの段階で、その構想の中に、最初これは農薬というのはずいぶん先々やらなければならないことがありますし、それから急性毒性だったらすぐにわかるけれども、慢性というのはたいへんなことだろうと思う。それで、ずいぶんお金をかけてやることだし、これほど農薬が問題になっている時期ですから、ぜひその内容も、こうやって趣意書もできているわけですから、その辺は調べてもらいたいと私は思います。  それからいま農林大臣は私要求したいと思います。最初要求してあったのですけれどもおいでにならないわけで、さっき申しましたように、農薬ごときものには農林大臣は出る必要はないといまでも思っていらっしゃる。しかし、いま農薬は公害として非常に大きく取り上げられているのですから認識を改めていただきたいと思いますので、きょうおいでいただけなければ次の機会に農林大臣を要求したいと思います。  それでは次に、農薬取締法のことをさっき長官もちょっと言われましたけれども、これも農林大臣が来られればもっとわかると思うのですけれども、急性毒性の禁止はわりあいはっきりする、しかし、慢性毒性というのは、最初登録して、使っているうちにその害が出てきたと、こういうものが禁止できるように、たとえば今回のBHCなんかはあれは禁止できなかったわけですね。ですから、国内向けの生産の停止ということを自粛して業界ではやっておられますけれども、こういうことが禁止できるようなふうにするというようなことをお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  76. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 現在、農薬取締法の改正に関しましていろいろ検討しておりますが、先生の御指摘もございますように、農薬のいろいろ公害的な要素ということも考えまして、国民の健康の保全、あるいは土壌あるいは水質等の汚染というようなものを防ぐというような観点から取締法の内容につきまして検討いたしまして、ただいま御指摘のございました使っているうちに、その害というものが慢性的な害だとか残留性がわかってきた場合にその禁止をできるようにするということかと思いますが、そういう方向で現在検討しております。
  77. 小野明

    ○理事(小野明君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 小野明

    ○理事(小野明君) 速記を起こして。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 きょう農林大臣お出になれないようですから。先ほどの残留農薬研究所の役員の案が出ておりますね。それに対して私がほんとうに農薬の被害を受けるものを代表するような委員を入れるべきであるということを言いました。その辺をどういうふうに考慮していらっしゃいますか、おわかりでしたら。
  80. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 残留農薬研究所は農林省と厚生省と共管にいたしておりまして、趣意書にありますように、公正中立な試験をするという意味から、また毒性あるいは人体に対する安全ということから厚生省のほうとの共管になっておりまして、まあその公正中立を期すというふうな面から、特に厚生省、農林省からも役員が入りまして指導監督をするというような考え方でできているというふうに思っております。
  81. 田中寿美子

    田中寿美子君 リストを見ますと、農薬工業会の代表がだいぶたくさん入っていらっしゃるわけですね。ですから、私も言いました。もうこういうふうに事態も進んでおりますので、その辺を十分考慮に入れた人事をしなければ、非常にたくさんのお金を使うことですし、もっとも工業会からもお金は出させるようですから、その辺で代表者が出てくるんだと思いますが、それは十分考慮してもらいたいということをお伝えいただきたいと思います。  それから農薬取締法ですけれども、あれ登録しますね、登録するときに農薬検査所で成分の分析をして——農薬検査所じゃなくて、大体登録する業者のほうに資料の提出を求めるようになっていますね。その資料の提出によって検査なさる。やはり農薬検査所でそれを全部しさいに検査なさるのですか、いままでのやり方では。
  82. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 登録に出てまいります件数が非常に多いものですから、一応業者のほうから、登録申請者のほうから成分の分析あるいは分析方法等々、薬効薬害等そういうものの公的の機関で行なった結果というものをいろいろ条件をつけまして提出を求め、その書類の審査をやりまして、必要に応じて見本を提出させ、その見本についての分析等々あるいは分析法の検討等もやっている次第でございます。
  83. 田中寿美子

    田中寿美子君 その辺に私は問題があると思うんです。だから今度農薬取締法の改正をなさる際に、登録する農薬は業者のほうから資料を提出させて、そのほとんど書類審査をしていらっしゃるわけでしょう。疑わしいものだけちょっと見るという程度だ。そうすると残留毒性なんていうのは、慢性毒性なんていうのは、ちょっと持ってきて資料見たぐらいではわからないし、それから検査も短期間ではわからないと思うんです。その辺をちゃんと把握できるような改正にしませんと農薬の取り締まりはもう全然しり抜けになってしまう。ですから、登録する際の検査の方法なんかも十分考え直していただきたいと思います。  それからBHCの製剤の成分を見ますと、ガンマBHCが一%、ベータBHCが一%内外、それからアルファが五%その他で、非常にBHCそのものは原体のほうは、たとえばBHC粉剤の中に含まれている比率は少ないけれども、増量剤というのが非常に多いわけですね、九二%ぐらい入っていますね。その増量剤の内容、成分についてはこういう場合も検査しないでいいわけですか。増量剤というのは鉱物質微粉等というふうになっているわけですね。それで片づけてあるわけですか。大体タルクでしょう、タルクの中身というのは別に調べないわけですか。
  84. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 先ほどお答えにちょっとことばが足りませんで申しわけございませんでしたが、業者のほうから、申請者のほうから出されると申しましても、そのデータは公的の機関で二カ所以上で行なって、またものによりましては三年以上のデータ、いずれも公的な機関を含まなければ自分の会社のものだけではだめだというような条件をつけておりますので、大学その他の公的機関の、急性毒性に関しましても、あるいは慢性毒性に関しましても、現在もそのように実施しております。そういった公的機関のデータを出させているわけでございまして、あとその機関の設備だとか人員だとかそういったことも含めまして厚生省と御相談いたしまして検討しているわけでございます。  それからただいまお話しございましたように、増量剤と申しますか、俗にキャリアと言っておりますが、このことにつきましても必要があれば検査をすることになっておりますが、大体キャリアとして入ってくるもの、それも含めた製剤としての毒性の検査等もお願いしておりますので、それも含めて有効成分と一緒にしての結果が出ている場合もあるということでございますし、それからタルクといういまお話がございましたが、タルクとかあるいはベントナイト等々、こういったものはほかのたとえば化粧品だとかその他いろいろなものにも農薬以上に一般に広く使われておりますので、その方面でこういうものの毒性というものはすでに明らかになっているものも非常に多いと聞いております。
  85. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのタルクも相当大量にどっからか取っているわけですがね。このごろは土壌の汚染はそれこそカドミウムもあるしあるいはABSなんかもあるし、いろいろなものがあると思いますので、その増量剤をいいかげんにしないということがまた大事じゃないかと思います。ですから農薬取締法を改正なさる際には、その検査をほんとうにやっていただきたいし、いま五千種類も登録されているわけですね。こうなってくると、もちろんその五千銘柄にとても手が回らないなんということでは困るし、今度は残留農薬研究所もできることですから、もっときびしくやらなければいけない。それから毒性の強いものについては指示薬扱いみたいなことができないかどうかということ。  それからもう一つは、これは長官も御存じじゃないかと思うんですが、農薬取締法の要綱案がだいぶ前にできたのに、このごろ私が求めても全然要綱案はいただけないわけなんです。どうもうわさによると、後退しつつあるんじゃないかということがある。そういう事実はないでしょうか。
  86. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) まず増量剤の検査もすべきであるというお話でございますが、確かに増量剤につきましてもその毒性等について検討したいと思いますが、農薬の銘柄は五千幾つございますが、有効成分としましては四百足らずでありまして、増量剤に至りますというと、すべて粉剤なら粉剤、水和剤なら水和剤というのは、大体ベントナイトとかタルクとかきわめて限られたものでございますので、このものについては一々やらなくても、同じ増量剤であれば幾つか検討しておけばよろしいかと思います。その他乳剤というような液剤もございますが、せいぜい一般有機溶媒あるいは界面活性剤でございまして、一般のアルコール等の有機溶媒、あるいは界面活性剤につきましても、これはクリーム状のものについて化粧品あるいは医薬品その他洗剤等に普通使われておるものを使っておりますので、それらの関係等も含めましてこのものの毒性については明らかになっているものもあると思いますし、またそうでないものは明らかにしていかなければならないと考えております。  それから取締法の中で指示農薬というようなお話がございましたが、私ども同様な方向で現在検討いたしております。現行法では水産動植物に対する毒性だけを対象にいたしまして指定農薬という制度がございますが、これを水産動植物だけに限らずその他人畜一般に対する被害、あるいは土壌、水等に対する残留汚染というようなことを対象に含めました指定農薬というような方向検討していきたいと考えております。  それからなお要綱につきましては、要綱案というものを担当原課においては検討しておりますけれども、これがまだ農林省案というほど課の上のほうの段階までオーソライズされておりませんで、そのようなまだ時間的余裕がございませんものですから、農林省案というものは全然まだ一度もできておりません。私どもの事務担当者がつくっておりますまだその段階の案でございますので、要綱案はまだ現在農林省案としてはないというようなところである、そういうようなことでございます。
  87. 田中寿美子

    田中寿美子君 その辺ちょっと最初の要綱案の原案ですか、それを手に入れた人もありますので、幾らか後退しつつあるというようなことがもしあるとすればたいへんですから、むしろ積極的に進めて相当農薬取締法はきびしくしなければならないだろうと思います。  それから今度農林省が春以来の牛乳のBHC汚染の状況のためいろいろと案をつくった例の地域指定の政策ですね、これはどういうふうな効果をあげておりますか。ちょっと実績をお話ししていただきたいんです。さっき厚生省のほうからデータを六月、七月に発表したものからあとのほうはまだどうも手に入っていないように言われておりますが、だけれども、刻々にこれは対応しなければならない問題なんですね。もうそろそろ新しい稲わらが出てくるわけです。はたしてその稲わらが全部きれいになったかどうかというようなこともあるし、ことし一ぱいには牛乳はきれいにするというような意気込みを厚生省は示していらっしゃった。ところが、刻々に対応するためには六月、七月ごろのデータでは困るわけです。最近のデータを把握していらっしゃるかどうか。資料として、全体として上がってこないとしても、一番汚染のひどかったところのデータを把握していらっしゃるかどうかということ。  それから農林省では地域指定をどのように実際に実施して、どんな効果をあげているというふうに把握していらっしゃるのか、ちょっとそれをお聞きしたいと思います。
  88. 藤井伸夫

    説明員(藤井伸夫君) ただいま先生のお話しの地域指定の件でございますが、これはわれわれのやっておりますBHCと乳牛用流通稲わら生産対策事業を示唆されておると思いますが、実はこの事業は四十五年産の稲わら、それから四十六年産の稲わらを対象に行なっておる事業でございます。この事業のねらいといたしましては、乳牛に給与します稲わら、これは大体が各酪農家が自給しておりますが、地域によって違いますが、おおむね一割程度は流通稲わらに依存しております。稲わらの清浄化の対策といたしましては、しばしば申し上げましたように、来年、四十五年度産の稲わらにつきましては、まず酪農家で当初から稲わらを乳牛に与えるということがはっきりしております場合には全然BHCを使わないこと。それからそれ以外の非酪農家につきましても流通等の問題等を考えてほかのものは使わないというようなことを指導しておるわけでございます。したがいまして、四十五年度産の稲わらにつきましては酪農家の生産します稲わら、これは指導の徹底によって全く無施用の、BHCから解放された稲わらであるというふうに考えておりますが、残りの一割程度の稲わらは、これは全くBHCが使われていないというような保証はないわけでございます。したがいまして、この流通の稲わらについて清浄なものを確保するというようなことをねらいといたしまして、各都道府県ごとに農協あるいは農協連が管内の乳牛の頭数を把握し、それに必要といたします稲わら量、それから自家産のものを差っ引いた要流通量、これを算定いたしまして、その管内の地域を指定して、そこにおきましては農協等が指導いたしまして、最初からBHCは使わせない。で、その稲わらを酪農家に確実に使用させるというような組織をつくらせまして、無施用の、BHCを使わない稲わら、これを生産いたします地域については安全な農薬を使いますために農薬の費用がかかる、この差額を補助するということをやっておるわけでございます。この対象の地域は、従来の稲わらの農薬の施用の実情等を勘案いたしまして、西日本二十一県について行なっております。東日本につきましては、こういった事業を行なわなくても従来無施用地域がかなりあるというような判断で、これは指導によって行なえるというような県との話もございまして、二十県にしぼって行なったわけでございます。したがいまして、そういったようなことで効果がまだあがっておりませんが、これを推進いたしますことによってかなりのきれいな稲わらが得られるというふうに考えております。
  89. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 先ほどの牛乳中のBHCの検査成績のその後の結果でございますが、多少ことばが足りませんで、六月以降のことについてどこまで調査されておるかということについて申し上げます。現在最新のものは九月のものまで入っておりますが、まとまったものといたしましては八月分まで結果が出ております。これは後刻先生に差し上げたいと思っております。なお、九月以降につきましては、従来の検査が予算措置が必ずしも十分でございませんでしたので、九月以降につきましては、これらを強化するために若干の予算措置を講じまして、毎月八道府県につきまして報告を求めるようにいたしております。これらの検査結果も判明次第、逐次公表していきたいと考えております。  以上でございます。
  90. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ牛乳を生産する農民やそれを売る立場の者はそう、ゆうちょうにしていられない状況にあるものですから、データはどんどんとっておるわけですね。私は実は厚生省から幾ら言っても新しいデータが入らないものですから、一部分メーカーのほうからとったものがございます。それで見ますと、確かに春ごろよりは落ちている。だけれども、厚生省の指導基準であるところの〇・一PPMの牛乳のBHCの残留量、指導基準ですね、それよりは相当高いところが最初に高く出た地区には残っておるわけです。ですから農薬の残留というものは非常にしつこいものであるということ、そうして厚生省が〇・一PPMまでに下げてしまうのを一体いつごろまでの見通しを持っておるかということを私はお伺いしたいわけです。それから農林省のいまの地域指定のことは四十五年産の稲わらからということでございますが、それでいま二十一県に対して七千四百二十四万円の交付金と申しますか、これは財源は地方競馬……財源は何でしたかしら。
  91. 藤井伸夫

    説明員(藤井伸夫君) 財源は地方競馬協会が行なっております酪農振興事業、この資金から出しております。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで東北のほうを一切抜いてあるわけですが、そっちから稲わらが行くという心配もあるわけです。ただし東北はBHCを使うことが少なかったからということでありますが、この約八千万円の財源ですね、たとえば愛知県あるいは福岡あたり地方自治体のほうからこれに差しついでお金をつけておるわけですね。この反当たり六十六円、七十七円、八十八円、百十円と、級別がございますね。これは非常にわずかなものなんで……これまで全部消化したかどうかわからないのでしょう。これは予算でしょう。それで、それがあまり少ないので、地方自治体がこれに差しついであるということが現実には起っておるのですね。それからそれのお金はBHCを使わないで別の代替農薬を使った米作農民に支払われるのか、それともそのほかのお金を使ったために稲わらの値段が高くなったというので高いお金を出さなければならない酪農民のほうに支払われるのか、どっちですか。
  93. 藤井伸夫

    説明員(藤井伸夫君) ただいまの七千三百万、これは実施面積を確定した数字でございますから、これは最後精算いたしましてもおそらくこの数字に相なると思います。  それから第二に、県が継ぎ足しておるのは、この単価が非常に低いせいじゃないかというふうに言われましたが、実はこれはBHCの値段とそれからそれにかわるべき薬剤の値段の差、これを出しまして、これを競馬の資金とそれから県でございますか、そのそれぞれ関係しますところで応分の負担をいたすというような関係で、競馬から全額出しておるわけでございません。まず単価の低いということは、これは実際の単価の差から出ておりますので、これは問題ないと思いますが、また、全額出しておりませんのは、県なり関係の市町村も相応の負担をしていただくというような考えで出しております。  それから第三に、与えますのは米作農家。これは酪農家自体、これは自分の経営で牛乳を生産いたすというようなことで、これはその酪農家自体の負担においてやっていただく。ただ、いわば全く関係のない米作農家に問題がございますので、与えますのはその米作農家というふうにいたしております。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 その辺少し考え方に問題があるんですね。で、酪農民のところへ行くと、自分たちが使ったんではないBHCのために牛乳が汚染される、その非難を受けると、それからまた米作農民に言わせれば、自分らは幾らBHCを入れたって別にかまわないんだと、それだからその分は、別の代替農薬を使った分お金が要るんだというような言い方になるとこれは困る。これはやっぱり農林省も指導をちゃんとしてもらわなければならない。米作農民のほうにこれは払っているわけですね。——わかりました。  で、先ほど農林省、まああなたの御説明で、地域指定といっても、これは農協が農民と話し合って、そして一定の農薬を入れない稲わらを買う交渉を、話し合いをして買い入れするようになっているんだと、そういう組織ができてるんだというふうにおっしゃった、まあつくらせるといまおっしゃったけどね。実際これは農林省、何もお役所にしてもらうのが能じゃないわけで、農民みずからもやらなきゃならないことは当然なんですけれども、実際問題としてはこのBHC農薬を除去するための、その残留を除去するための努力というのを現地に行ってみると、酪農の農民の組合でありますところの酪農業協同組合、それと農民と、それからそれに対するメーカーの指導ということで行なわれているんですね。たとえばメーカーのほうから、そのBHCに汚染されないようにしろと、もしもBHC汚染されたような牛乳を出したら買い入れ拒否することもあるというような通知を出している。そうすると、一応酪農協から今度は各農協に対してもそういうことを通達する、買い入れ拒否をせざるを得ない地域も生ずることがあり得ると。そうすると今度は農民のほうがね、農民と組合の間で誓約書を入れてるところがあります。たとえば徳島、奈良とかというところでそういう実例がありますけれども自分たちはそういう汚染された稲わらを使いません、もしもBHCが残留してるようなことがあって、それが許容量をこえてるときには買い入れを、取引が停止されてもやむを得ませんという誓約書まで入れてね、ずいぶん努力してるわけなんです。で、たいへん私そういう点で、まあ農林省がそれは指導したっていうふうに思えない節があるわけです。これはもう最初からそうなんですけれどね、農林省も厚生省もたいへん手ぬるいわけです。で、役所にどんどんやれやれと私あんまり言いたくはありませんけどね、でも手をかさなければならないと思うんですよ。非常に努力をしながらきていて、しかもこの十月、十一月ごろから新しい稲わらをどんどん牛に食べさせる時期になって、また汚染度が上がるということがあり得ないかどうか、非常にその点を心配するわけです。あなたは、もう絶対にこの地域指定の制度が実績をあげてそういうことはありませんとおっしゃいますか。
  95. 藤井伸夫

    説明員(藤井伸夫君) 私といたしましては、このいままでの指導も十分いっていませんでしょうが、この結果があらわれまして、新稲わらが出回る時期に相当低下するんではないかというふうに期待しておるわけでございます。さらに今後の問題といたしまして、そろそろ新しい稲わらもできる時期でございますので、これの利用を機会にさらにこの問題の対策を煮詰めていきたいと考えます。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、もうどうせ、それは厚生省、農林省、ほんとうに今度は機敏に対応していただかなければならない。もしも厚生省の指導基準をはるかに上回るような汚染が出てきたときには、今度は思いきったことをする、直ちにストップして別のえさなんかを与えるとか。去年はそれがたいへん緩慢だったわけです。もう二年目で、しかもBHCはだんだんなくなりつつある、生産もしなくなってきている時期なんですから。現在在庫量を調べていただきましたね、粉剤で七千トンですか。それで、もうわずかになっているものを回収しているところもあるわけでしょう。農協に回収をしてちゃんと置いているところもございますね。たとえば東海三県で八百五十トンのBHCを回収して、経済連の倉庫に入れてありますね。こういうことが各地でやられているわけですね。これは、私はBHC工業会の方に来ていただいてお話を聞きましたが、使い道があると思うのです、BHCというのは、ガンマだけでなくてほかの異性体なんかもほかに使う道もあるわけだから、回収して、製剤になってしまっているものはどうするのかちょっと私にわかりませんけれども、ですから回収してしまっても、農薬としては使わないという方法もあるのではないかと思うので、その点は強い対策をとっていただきたい。  それからそのBHC農薬の量のことですが、私は毎回毎回ここでお尋ねしてふに落ちなかったんですが、ようやく納得しました。ふに落ちました。それは、農林省の慣行だと思うのですけれども、ガンマ換算でというふうにおっしゃいますね。たとえば、四十五年度に手持ちであった三万トンというBHC原体を、ガンマ換算ですると三千何百トンというふうにいつもおっしゃるものですから、私がわからなくなる。換算というのは、ある単位であらわした数量を別の単位の数量に数え直すということですね、ほんとうは。だから、三万トンというBHC原体の中に七つの異性体が入っているわけですね。その中からガンマを取り出したと言われれば私も最初から迷わなかったのですが、ガンマ換算とおっしゃるので非常に迷ってわかりにくかったんですね。そこで、国際比較農薬使用量を出していただいたんですが、これも各国の農薬使用量カッコ有効成分換算としてあるわけです。私はFAOの原文を見たら、アクティブ・イングレディエンツとなっているだけで、別に換算ということばがないわけですが、農林省は換算といわなければいけないのかどうか。換算というのはそうでしょう、別の単位で数え直すことではないですか。ガンマの数量を引き出せばこれだといっていただけばわかるのですが、その辺いかがですか。
  97. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまのお話でございますが、私のほうの担当者の説明があるいは先生に誤解を招いたことかと思います。必ずしも換算でやらなければならないということではございません。  それから先ほどお尋ねがありましたBHCの残量ですが、先生お話しのように、やはり県の報告といいましょうか、調査によりますと、九月の在庫が七千トン程度ということになっております。これを稲には使わないということははっきりきめておりますけれども、今後いかに処置するかということは、至急検討いたしたいと考えます。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ時間がなくなりましたから、最後にですけれども、私もBHC問題はもういいかげん終わりたいんです。しかし、農薬の環境汚染の問題は次々とあとから今後も出てきます。ですから農薬そのものについては、まだ除草剤の問題もありますから、今後もあくまで取り上げていかなければならないと思っておりますが、農薬の環境汚染あるいは残留問題に対する対策ですね、あの愛媛大学の立川教授が研究なさっておるのを発表された、それによりますと、その農薬による環境汚染の実態がほとんど把握されていないということを、それはいままでそういう観点からやってきていないから、把握されてないのは当然だと思いますけれども、どうしてもこれはそれこそどこか地域をきめてでも、環境汚染調査を大至急やっていただきたい。それからその汚染調査の分折法がはっきりしていない。ことに新しい農薬としてBHCにかわるもの、カバーメート、燐酸系統の農薬やカバーメートなんていうものは、分折法がわかっていないそうですね。だから非常に問題だらけだろうと思います。それから慢性毒性について、知識が不十分だからたいてい慢性毒性があるものと仮定したほうがむしろ安全だ。で、いままでは有効成分の観点からばかり、農薬は考えていたと思うんです。つまりこの農薬は虫を殺すとか殺菌力があるとかいう立場からしか考えないから、ガンマの計算ばかりあなた方はおっしゃっておるわけです。私らが問題にしたのはベータだったわけで、ベータやアルファがからだの中に残留して、そうして慢性毒性を起こしている。いまではそっちの側の農薬が、農作物に有効である成分として問題にするだけではなくて、公害という立場から環境汚染をする部分、それから残留して慢性毒性を起こす部分について、うんと力を入れていただかなければならないと思うわけなんです。それで、特にまだガンマBHCの国際基準がないということが、いつも逃げ道になるわけですが、BHCは日本が一番使ってきたわけですね。ですから急いでBHCの許容基準というものをつくらなければいけない。いま八つの農薬、十二品目しか許容基準がきまっていない。残留基準がきまっておりませんね。これなんかはいつまでにどれだけのものをするつもりなのか、そういう見通しも農政局として持っていらっしゃるはずだと思うのです。ですからその辺をお伺いしまして、ついに農政局長がおいでいただきましたので、私はこれから今後農薬の問題にもっと本腰を入れていただきたいということをお願いして、いまのお答えで終わりたいと思います。
  99. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまのお話しの残留許容量につきましては、厚生省のほうできめるわけでございます。厚生省のほうからあるいはお答えがあるかと思いますが、農林省といたしましては、その許容量がきまり次第安全許容基準は即刻つくって、それの指導徹底をはかっていきたいというふうに考えております。  それから農薬と公害との関係でございますが、先生御指摘のことだというふうに、基本的にはわれわれも考えております。それで先ほど、私のほうの課長も御答弁申し上げたと思いますが、われわれとしましては、御指摘のように、人畜に直接あるいは間接に被害を与えるという面からのいろいろな調査あるいは分析その他も非常に不十分だということも承知しておりますので、そういう面の促進、あわせまして農薬取締法の改正につきましても、次の国会にはぜひ提案をいたしまして御審議をお願いしたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 一般的に農薬の慢性毒性につきましては、中にはまだ設定されていないものがございますのは、田中先生御指摘のとおりでございます。特にベータBHCの慢性毒性についてでございますが、これらは諸外国でも実はデータがほとんどないわけでございます。また、国際的に評価された実験成績も遺憾ながらないわけでございまして、しかしながら、日本のBHCの使用状況にかんがみまして、目下国立衛生試験所におきまして慢性毒性試験を実施中でございます。また、特に先ほど御説明申し上げました牛乳中あるいは食品中のBHCの残留量につきましてはアルファ、ベータ、ガンマ、データと、異性体につきましてもその分析を実施しておるところでございます。見込みと申しますと、これは今年度末を目標にひとつ許容基準の設定を実現さしたいと考えておるわけでございます。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、長野県の諏訪湖の汚濁防止対策につきまして、これに関係しまして、一つは政治姿勢の問題、第二には周辺の中小企業の対策について、第三には同様な全国の湖沼の汚濁防止対策、こういうような点についてお尋ねを最初にいたしたいと思います。  初めに、自治大臣においでいただきましたので、自治大臣にお尋ねいたしたいことは、公害につきまして、県や市が資料を持っているけれども、なかなか発表しないこと、そしていよいよ新聞に出たりして、周辺の住民がいろいろ苦状を言い出して、どうにもこうにもならなくなってから、ようやく資料を発表するというようなケースが多かったわけです。この諏訪湖周辺の問題としましては、東洋バルブという会社がありまして、これあとでそちらにお届けしますが、これはこの東洋バルヴの会社がつくった写真ですが、これには煙突が二本あって、二本とも煙が出ているのです。最近われわれが行って写した写真ですが、これには煙突が一本しか煙が出ておらないわけです。したがいまして、これは煙ではなくて、実際は何か粉じんですね。煙だったら、普通たばこの煙でも上へ上がるわけですが、こういうふうな全体的にずっと町をおおってしまう。これは何らかの粉じんがずっと、ある風向きによっては諏訪湖に全部落ちていく。ある風向きによっては全部市内に落ちていく、こういう状況がずっと長い間続いているのです。なぜ会社の写真は煙突が二本で、そしてわれわれが写した写真が煙突が一本しか粉じんが出ていないかといいますと、これは会社が集じん機をつけまして、一本の煙突はもう集じん機をつけたために一切出ないわけです。全部とってしまうという。一本の煙突はなおかつ吹き出しているわけです。一体住民としては何が吹き出されているのか、これがもう重大関心の的なんです。そして県はそれを分析して資料を持っているらしいといううわさもあるのです。それは県の発表は、心配ない、健康に被害はない、だいじょうぶだということ以外に発表をしておらないわけです。  それから、そういうように、公害調査というものが、国、県、市、そうした公的機関が早く調査かやって、正確なデータを発表し、また的確な対帯をとってくれさえすれば住民は安心できるわけですが、こういうように、ただだいじょうぶだ、だいじょうぶだ、こんなに出ているものが一体実物が何なのかということはだれも知らされておらない、こういうようなことは自治大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  102. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 公害関係につきましてはその状況等につきまして、これはもう正確に十分調査をさるべきである。しこうして自信のある公正と思われる結果が出ましたならばそれを公表される。また、公表されるものはそういう十分な調査の上公正だと思われるものが発表されることが適当であろうと存じます。もしかりにそういうもののデータができました上においてこれが公表を不当に拒むということは、これは地方の公共自治団体としてあり得べからざることであると考えます。したがって、もしそういうことがありますなら、自治省といたしましては、地方自治の実質を阻害しない範囲において適当と思われるものを御公表願えるように御指導を申し上げたいと存じます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 公正なるデータ、公正であるかどうかは、要するにこの粉じんを分析しさえすればこれは公正にも何にも機械に間違いさえなければ同じものが出るはずなんですがね。ですからそこでもう一つ伺いますが、幾ら県や市に言っても公表しない。そこで学者が調査をされた。そうしてその学者は岡山大学の小林教授ですが、その調査をされたことに対して市長さんや知事さんは——これは公選で出てくる方ですから、大臣として命令、指示というわけじゃもちろんありませんけれども、お考えだけを伺うわけですが、この学者が調査されることに対して市長はそのデータが出たら県へ出してくださいと、要するに発表されては困る。そしてまたこの新聞によりますと、市議会でもって市長が言うには、学者は真相を究明せず、軽々しく意見を発表すべきでないと、こういうようなことを言って問題になっているわけですが、要するに言われるとおり実行いたすとなりますと三十年も五十年も長い間そうした調査に一生をかけてやってこられた研究家が調査、分析したその結果は県へ出しなさいというわけです。発表するかしないかは県がきめるということになったのでは全く研究の自由というものがなくなって、しかも県では一体どんな人がきめるか。それはもう公害課というものが最近できて、そしてそれなりの専門家を集めているとは思いますが、必ずしも全部専門家とは思えないし、そういうわけで何十年のこうした分析の、実績のある、研究のある方が実際発表するという段になると、県のお役人が許可しなければ発表できないとか、県が発表するまでは預けっぱなしになると、こういうようなことはちょっといまの日本の政治として考えられないことじゃないか。それはまあなるべく発表してもらいたくないという趣旨もわかりますけれども、住民が心配するとか、あるいは漁業あるいは農業の農産物の出荷が停止されるとか、そういうおそれがあるので発表されたくないというその趣旨はわかりますが、要するにこんな目の前に出ている粉じんが何であるかぐらいはこれは分析したら発表することが当然じゃないかと、このように思いますが、いかがでしょうか。
  104. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 公害関係のいろいろ調査、また、これの判定等につきまして科学技術が進歩いたしておる今日でございますが、必ずしも現状でこれで間違いないんだという判断を決定的に下し得ない場合があろうかと思います。中間的な研究段階にとどまることも当然あろうかと思います。事案のような場合には、これはまあ健全な常識のもとに、不当に押えるというようなことはあってはならないと思います。健全な常識、判断に従って処置をすべきものと思いますが、ひとつ不当に押えることによっていたずらな不安を起こす場合もあってはならない。そういう場合は、よくこういうことも考えられるというような具体的な、いろいろ条件的な問題をあわせ説明することによって、不当な、間違った判断をされないような用意も十分しながら、しかし、公正に研究されるというような態度をとることが望ましいのじゃなかろうかと、まあ考える次第でございます。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあおっしゃるとおりだと思いますが、要するに公正といいますか、大臣のおっしゃる趣旨が、中間段階ということもあり得るわけですが、こうした一本の煙突から吹き出しているものの成分が何かぐらいは、私ももちろん専門家じゃないですけれども、そう変わりがあるわけないと思うのです。まあ、一万人の住民の健康に心配あるかないか判断するというような場合は、中間ということが十分あり得るし、あるいは何万ヘクタールという、あるいは何百ヘクタールという土壌が汚染されているかいないかを判断するような場合は、中間発表ということもあり得るわけですが、こんなはっきりした、煙突が一本しかないわけですから、どこから出ているものが何かぐらいのことは、県が持っていたら県が発表するのが当然だし、あるいはまた、学者が当然研究して分析した結果は発表しても一向差しつかえないというふうに思いますが、いかがですか。
  106. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 先刻来申し上げておりますとおり、まあ事案のような場合は、ほぼお説のようなことが言えるかと思います。要するに、公正に現代の科学技術をもって調査結果が出ましたものにつきましては、不当にこれを押えることのないようにいたしたい、こう考えます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 山中担当大臣はいかがでしょうか。
  108. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国立大学における研究、分析、そういうような試験の結果等については、実は国のほうの体制でも少し問題がありまして、文部省が国立大学等における研究成果その他を正確に把握しているかどうかについては、多分に疑問な点があります。予算でどこ大学の何教授のどのような研究に幾らやるというようなものは、やはり報告はとっていますから正確に持っている。それ以外にある意味では、ただいまのようなケースもあれば、俗にいう産学協同みたいな形から生まれてきたデータなんかもあるわけですね。そういうものは、実は国立大学の研究でありながら、文部省を通じてでもいろいろなルートでもなかなか把握していないという問題点があったと思うのです。だから、まあ大学の本部の公害データ・バンクというようなもの、そういうものも積極的に求めていく努力をしようと思っていますし、ただいまのようなケースの場合には、やはり中央がそういう単なる一地域、県、あるいは一地帯における煙突の何本という問題の分析結果というだけじゃなくて、やはり同業種の同じようなケースにおいてどのような排出物、あるいは浮遊物が見られるかというような問題の一つの試験結果になるわけですから、こういうものはやっぱり国立大学は全部データ・バンクに協力してもらえれば、国のほうにもそういうことをもらえるようになるようにしたいと思っているわけです。これは将来民間の研究所等のそういう意味のデータ・バンクも考えておりますが、まあそれにしても将来の話であって、いまのような場合は、やはり大学側がおそらく県から委託を受けて調査したのでしょうね。じゃないのですか。企業が委託したのですか。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 いいえ独自です。
  110. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 岡山大学が長野県に行って調べたわけですか。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 ええそうです。
  112. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そこらのところはよく意味がわかりませんが、まあ所在地域の大学でなくても、あるいは特殊なケースのところは出張調査というようなことをやるのかもしれませんが、普通は委託調査とかなんとかということで、大学の本来の仕事があるのでしょうから、そういうケースだと私思って聞いていたのですが、そうじゃないとすればそこらに、大学側の調査と県側との間に事前に何か意思の食い違いがあって、そのことが本質の大切なそういうデータは公開すべきであるという原則にまで響いた何かトラブルがあるかもしれません。しかし、それは県がいけないといったって岡山大学が発表して別段罰則があるわけじゃありませんし、そういうようなところなんかはローカルの何か入り組んだ事情があるのかもしれませんが、そういうものはやはり公開をしてそのデータはやっぱり活用していくべきものだと私は考えます。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 公開の原則ということでそれでわかります。  それで通産省にお尋ねしますが、こうした煙突から出る重金属、これに対する基準、排出基準はどうなっておりますか。その排出基準がありましたら、いま言う順番に基準を具体例としてお示し願いたい。  カドミウム、鉛、銅、亜鉛です。
  114. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) こういった粉じんにつきましては、現在の大気汚染防止法におきまして、すす、その他の粉じんという形で基準が設けられております。で、すすその他の粉じんの中には、ただいま御指摘の微量重金属はもちろん含まれておるわけでございますが、これらの微量重金属をそのままストレートで抜き出した形では基準は設けられておりません。で、たとえば東洋バルヴのような金属溶解炉を使っております工場のすす、粉じんの基準は一立方メートル当たり大体一グラムというようなことになっておるわけでございますが、その中のそれぞれの物質につきましては基準はございません。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 一立方メートル当たり一グラムですか。そうするとパーセントで言うと何%ですか。パーセントは。
  116. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ただいまの基準が体積当たりのグラムになっておりますので、ちょっとPPMで表現するのは、いま困難かと思いますが……。
  117. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いやいや、いまはパーセントは幾らかと聞いておられる。
  118. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ですからパーセント、あるいはPPMで表現するのは、濃度で表現するのはちょっと困難かと思います。これは計算方式はまた別にあるかと思いますので、計算結果を別途お届けいたしたいと思います。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 別途では非常に困るのですが、次の質問の都合上ですね。要するに、この粉じんをわれわれが屋根から集めて、それで分析を依頼した結果は、カドミウムが五二〇PPM、それから鉛が一〇万PPM、銅が二四〇〇PPM、亜鉛が七〇万PPM、それでそれだけのものがこの煙の中から出てきている。それだけの、この四種類の重金属が常時諏訪湖のほうに煙が行きますと、諏訪湖に落ちる。町のほうへ煙がいけば町へ落ちる。これはいまおっしゃった一立方メートル当たり一グラムに比べてどうですか。
  120. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) ただいま私が申しました基準は排出口におきます基準でございまして、排出口から出てまいりますガスの一立方メートル当たりのグラムで、したがいまして、そういったガスが出まして、そのガスが降下してまいりまして堆積した結果が先生の御指摘のPPMになっておるかと思います。したがいまして、直接ただいま御説明いたしました基準と屋根その他に堆積しております残留量との関係はちょっとつかみがたいわけでございますが、いずれにいたしましてもガス、すす、粉じんの中に含まれております微量重金属をカットするためにはその粉じんを高度の性能を有します電気集じん機で捕捉いたしまして、その段階でつかまえますれば今後堆積する原因物質がなくなるわけでございますので、現在まあそういう形で実は対策を考えておるわけでございます。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは私も先ほどこう説明しましたように二本の煙突のうち、もう一本は出てないわけですから、ですからそれは集じん機で捕捉すれば煙自体なくなるわけです。  問題は、この煙が普通の煙突の煙だと散っていくだけですけれども、こうした微量重金属によって湖がおおわれ、あるいはこれが町がおおわれているということは住民にとっては非常に心外なんですね。ですからまあそれはそういうことを住民に明らかにすべきことがむしろ対策を進め、また、こうしたカドミウム、亜鉛、鉛、これだけ大量に出ているということが諏訪湖汚染一つの原因ともなれば、そうすれば魚介類の保護とかあるいは農作物の影響とかそういういろいろな関係からこれを検査しなくちゃならないことが起きてくるわけです。ですから自治大臣には最後にお尋ねして、これで自治大臣の質問は終わりますが、こういうような場合ですね、やはり早く公表し、早く手を打つという姿勢であってほしいと思いますが、よろしいですか。
  122. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 先ほど来申し上げておりますとおり、いろいろそこに条件があろうと思います。そういう条件等をはっきりさせながらなるべく、中間的な段階にあるものもありますから、むしろくさいものにふたをするより出して、そして検討をしつつ公正な結果をお互いに期していくという態度が望ましいのではなかろうかと私は考えております。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 では経企庁お尋ねしますが、この諏訪湖及びその周辺の河川の水域指定はいつの予定か。
  124. 西川喬

    説明員西川喬君) 諏訪湖につきましては、すでに現地部会を設けまして審議を進めております。現在のところ現地部会も終わりまして、近く基本方針をきめる部会も開く予定にいたしまして、目途としては年内に指定水域にし、基準設定をする作業を進めております。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで何点かお尋ねしますが、指定水域になった場合に、まあ一番こうした大企業は、この諏訪湖周辺の企業にも大企業がありまして、大企業は工場排水もわりあいに設備をやっていらっしゃる。非常に専門家もごらんになってもこれは相当な設備だといわれるような設備もありますが、通産省にお尋ねしますが、問題は非常にメッキ工場が多いわけです。このメッキ工場の場合、ごく小さい工場でほとんど家内工業的な工場が多い。これは東京でも名古屋でも大阪でも同じ傾向があって、メッキ工場は小さい工場が多いわけです。これらのメッキ工場水域指定がかかりますと相当の浄化設備をしなければならないわけです。ところが、五、六百万円の浄化設備をするには、ほとんどいままで投資した金額と同じか、それ以上の浄化装置に金がかかるというような問題も現に起きてきているわけです。したがって、中小零細のメッキ工場に対しては、よほどの国が措置していかないことには、実際上経営ができなくなってしまうわけです。そういう点についていかがでしょうか、具体的に。
  126. 莊清

    説明員(莊清君) 中小企業、とりわけ零細中小企業に対します公害防除施設関係の助成策でございますが、御指摘のとおり、メッキその他零細企業でも公害発生源として無視できない業種がいろいろございます。これらのものに対しましては、企業の企業力が脆弱なためなかなか金融力もございません、担保力もございません。また、技術的に専門知識も自分の製品についてはあっても、防除に関する専門知識については十分こなし得る技術屋というのが少ない場合が通常でございます。この金融面及び技術面の両方につきまして、国も都道府県も一体になりまして今後指導助成を強化すべきである、かように考えております。  概要を申し上げたいと思いますが、まず、金融面の助成でございますけれども、中小企業関係につきまして特に関係の深いのは、公害防止事業団それから中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫、こういう政府関係の一連の金融機関がございます。これらにつきましては、来年度は特に意を用いまして、本年度の業務量に対しまして大体三倍以上の規模の予算上の手当てをする、こういう方針で目下大蔵省に申請をいたしております。  なお、公害防止事業団につきましては、中小企業が共同で処理施設をするというような場合には、金利のほうも三分五厘、単独でやる場合でも四分五厘というふうに、現在よりも相当思い切った貸し付け金利の引き下げということもあわせてぜひ実現したい、かように思っております。  なお、中小企業の振興事業団とか各県に置かれております近代化資金の貸し付けというふうな制度もいろいろございますが、それらにつきましても同様、来年度は特に公害ワクについて拡充するというようなことをいろいろいま検討をいたしております。  なお、金融機関からの借り入れもどうしても必要になる面がございますので、現在ございます出小企業信用保険法という法律を改正いたしまして、零細企業等が市中の銀行から資金を借りるという場合に、特別の公害関係の保険をつくりまして安い料率で保険がかけられる、保険がかかっておるから市中銀行も貸しやすい、こういうふうな制度も新設したいと考えております。  技術関係等につきましては全国十三の商工会議所に指導員を設置いたしてことしから指導を開始いたしておりますけれども、来年度は予算も七千万円くらいこの関係だけで確保しまして、大体指導費を倍増したいということで考えております。  なお、もう一つの技術面の指導でございますけれども、各県にそれぞれ県立の工業試験所というものが、機械、金属関係とか、繊維関係とか、いろいろ業種別に併置されております。そこへ通産省から予算をお渡しいたしまして公害関係の専門の指導技術員を設置していただく、あるいは中小企業関係のそういう技術指導を行なうために必要になってくる試験設備そのもの、試験研究設備そのものについての設置に対しての助成を行なう、こういうきめのこまかいことをいま立案いたしまして、中小企業庁のほうからまとめまして大蔵省のほうへいま鋭意折衝中でございます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまのきめのこまかいお話で、たとえば東京のメッキ工場でしたら、業者がありまして、それでこの業者に頼めば設備をしてくれて、それから今度は月幾らという契約で毎週技師が回ってきて点検をしてくれるというようなことが現在できているようですが、長野県諏訪のような場合にはそれができないわけです。ですから、いまのきめのこまかいところが、そういう県庁所在地はともかく、そういう地域にまで及ぶように、特にそうした工場の多い地域があればそういう地域へも及ぶように御配慮願いたいこと、これが一つと、それからもう一つは、そうした低利融資にもかかわらずなおかつ借りて返済し切れないという要するに公害防止施設、設備のほうが従来の設備よりもよけい高額な投資になるのだというようなきわめて小さいそういう企業があるわけですが、こうしたものには国も公害防止の機器を貸与するというような制度も検討してみたらいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
  128. 莊清

    説明員(莊清君) 最初に御指摘ございました一種の公害防止技術のコンサルタント・サービスの問題でございますが、現在商工会議所で指導員制度というのを設けたばかりでございますけれども、今後そういう商工会議所で何もかにも全部やるというわけに直接はまいりませんので、会議所を中心にそういう学識経験者のような方に御協力いただきまして、そういう方にときどき会議所にもおいでいただく、あるいは会議所のほうからごあっせんをして専門的な診断とか指導ということを、零細企業も受けやすいそういう体制で運営をすることに考えております。なお、県の公設の県立の試験所のほうにもそういう専門技術家がおられますので、公害関係ということで人件費のごく一部の補助等を現在考えておる。会議所のほう、県のほうともどもそういうサービスを強化していただきたいということで考えております。  第二の返済し切れないような業者には何か公的な機関が買い上げておいて安く貸し付けるという知恵はないかという御指摘でございますけれども、実は金額、規模は貧弱ではございますが、本年度から公害防止機器のリース制度というのを実は発足をさせております。この制度は興長銀債を預金部に引き受けていただきまして、その金をリース機器を調達する業者に長期資金として供給をしていく、機器を持たしておいて長期低利で貸し付けるという制度でございます。これを、現在約二十億程度でございますけれども、来年はこれを約五十億程度の資金規模まで拡充してまいりたいと考えております。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 今度は山中大臣にもお聞き願いたいのですが、結局そういうようにして公害防止施設をつくりましても、要するにメッキ工場でしたら、クロムとかそういうものがたまるわけです、スラッジがたまるわけです。これをどう処理するかということで、実際いま産業界でこれはどう処理していらっしゃいますか。もう山へ捨てれば山で浸透してきて何か被害が出る。あるいはわからないように海に捨てる。しかし、海に捨てるような力もない、そうした中小企業もあるし、また内陸部の企業はとても海になんか出られない。こうしたスラッジはどう処理したらよろしいか。
  130. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの零細企業の産業廃棄物の問題は、午前中から申し上げておりましていわゆる産業廃棄物の取り扱い、一義的には、第三条の事業者の責務というところでとらえていきたい。そういうことを法律で明らかにし、考え方を打ち出していきますと、やはりそういうことに対するどのような手段があるのか。その手段についてはどのような整備を配慮しなければならないかという問題が生まれてくると思いますが、ただいま個々のそういうケースの場合について、具体的に山にも海にも湖にも捨てられない、かといって滞積物としてどんどんスラッジがたまっていくというような問題の処理について、やはり的確にはこたえられませんが、共同処理施設なり、回収、再生が可能なものについてはそういう方向に回してもらうという研究体制が必要かと思います。なお、通産省から申しました予算も、一応私のほうで目を通しておりますが、対大蔵の最終的な詰めになりますと、通産省の要望するる——業界側の立場のよくわかる通産省等が要望する施策の中で、低利といいましても原資と逆ざやになる、そういう低利になりますと利子補給ということが一つむずかしい問題として登場しますし、この点が一つ残ると思いますし、こういうことにも力をかしたい。さらにまた、税制の問題租税特別措置で、来年は一連の公害関連の施設並びに企業等についての利潤を生まない施設を、公共の立場における企業としての着眼から、角度からつけることを強制し、もしくは余儀なくさせるということになりますから、そういう利潤を生まないものに対する租税特別措置というものに対する一連の配慮もしなければならないだろうと考えておる次第でございます。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 実際上スラッジの、メッキ工場の例で言いますと、またスラッジが一ぱいたまっちゃってせっかくの浄化槽もただ頭の上を水が流れていくだけです。そういうようなところもありますし、一たんたまったのをどうするのだというと市が集めてくれる。市が集めに来るまでただ待っている。市が集めて、今度は市はどこへやるか。毒性を抜くまでは実際現在はどうしようもないのが現状じゃないですか。いかがですか。
  132. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) スラッジを大きく分けますと、無機性のスラッジと、有機性のスラッジ、二つに分かれると思います。有機性のスラッジは、たとえば石油化学工場で活性炭法を使いましてあとで出てくるスラッジ、あるいは下水処理場等へ出てくるスラッジでございます。この有機性のものにつきましては、現在完全に燃焼させるというところに重点を置いて、技術開発を進めておるわけでございますが、湿式酸化法というのがございまして、圧力がまの中にそのスラッジを入れまして、下から酸素を吹き込みまして相当高温で燃焼させる方式でございますが、これがある程度緒についておりまして、いま少し技術開発を進めれば、有機性のものにつきましては相当程度この方式で燃焼処理できる可能性が出てまいります。ただ、下水処理場ではその量が非常に大きくなるためにこの方式だけでは解決できないということで、これはやはり公共的な立場から害のないところの埋め立て用に使うとか、何かそういった合理的な廃棄方法もあわせ考えていかなければならないかと思っております。  それから、先生御指摘のスラッジは無機性のスラッジになるわけでございますが、この中には水銀クロムその他いろいろ有害な微量重金属も含まれておりまして、かつ燃焼にも向かないということで非常にむずかしい点があるわけでございます。いろいろなアイデアを出しまして現在検討中でございますが、一つ考え方といたしましては、スラッジを完全に乾燥させまして、乾燥させますと量が非常に少なくなる。その乾燥させたスラッジの回りをアスファルトで囲みまして一つのれんが状のかたまりにいたします。こういたしますと、埋め立てに使う場合でも、その他そういった土木的な感じで処理するのに非常に扱いやすくなるということで、現在工業技術院でこのアスファルトの工加の方式を検討中でございますが、まだこれは実用に供するに至っておりません。そういった現況でございます。
  133. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) ただいまクロムメッキのスラッジの処理についてどうするかという御指摘でございますが、山中長官からお話がありましたように、回収できるものは回収して再使用をする。特にクロムが高い金属もございますので、水酸化クロムとして沈でん物の中に入っておるわけでございますが、これを重クロム酸として回収できればもう一度メッキに使えるわけでございます。この回収の技術につきまして、実験的にはこれはできるわけでございますが、経済的にできろ方法を来年度工技院のほうで研究開発について予算要求をいたしております。これが完成すれば重クロム酸として回収して再使用するというふうに考えております。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの通産省の御答弁のように、アイデアとしてはいろいろありますけれども、実際産業界はきのう、きょう困っているわけですね。  それから次に、今度はちょっと違いますが、みそ工場、このみそ工場は諏訪湖周辺に大きなみそ工場があって、一例をあげますとタケヤみそというみそ工場では五万PPMから六万PPMという、そういうものを一日五十トン、六十トンというものを諏訪湖の中へ流し込んでいるわけです。これはどこで規制されるわけですか。
  135. 西川喬

    説明員西川喬君) 今度の水質基準を決定するに際しまして、実は従来の公害法におきましてはみそ工場はまだ特定施設に入っておりませんでした。これは公害法のほうの政令を改正いたしまして特定施設に取り入れる。特定施設に取り入れますと、これは食品製造業といたしまして農林省の農林大臣の監督する対象工場となるわけでございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはわかっておりますが、要するに五十トン、六十トンをきのうもきょうもあしたも流し込んでいるわけです。それはだれも要するに水域指定にならなければ規制する人がいないわけです。ですから、諏訪湖もそうですが、よごしっぱなしで、それはみそ工場の排水なんというものはとても見られたものじゃないです。五万、六万というPPMですから。そういうものを流し込んでいるということ。それから、時間の関係で、結局工場排水のほうはいろいろ規制しましても、下水道ができないことには根本的なきれいな水にはならないわけです。ですから、公害防止計画を各地域によって立てますが、この公害防止計画が幾らできて川をきれいにするという目標ができても、結局下水道が建設されないことには何ら目標を達成する可能性がないんです。そこで下水道について二点お尋ねしますが、一つは下水道計画が画期的に進まなければならない、新しい五カ年計画を立てるということも承っておりますので、その点は簡単でけっこうです。  それからもう一つは、この下水道は地方の負担が多くて、そして実際諏訪湖周辺の下水道は百二十億あるいはほかの事業も入れて三百億というような負担が地方団体にとうていできるはずがないというような現状なんです。したがいまして、これは大臣にもお聞き願いたいんですが、将来——将来といいますか、いま激甚地ですね、激甚地ということばが該当するかどうか、要するに、下水道建設あるいはそうした工場排水規制、中小企業に対する防止対策、そうしたものをひっくるめて国の援助を大幅にふやす、従来現行法のままでは下水道は地方負担が多くてとうてい不可能だというところから下水道建設に対して地方団体の負担を軽くするために国の負担を特別な地域には特別にふやすということでもしない限り絶対に水をきれいにするという目標は達成不可能だ、このように思いますが、建設省それから大臣からお答え願いたい。
  137. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) お尋ねの前段の下水道の今後の計画におきましては、来年から第三次の下水道五カ年計画ということで財政当局のほうに要求いたしております。新計画におきましては御指摘の諏訪湖地区のような地域に対する広域的な、つまり流域下水道と私たち申しておりますが、そういう事業をかなり大幅に下水道事業の中核といたしまして取り上げてまいりたい。したがいまして、諏訪湖地区につきましても新規の採択個所として要求をいたしておる段階でございます。  それから下水道事業につきましての国、地方の負担関係でございますが、在来の一般の公共下水道は国の負担率が国庫補助対象事業につきまして十分の四でございます、四割補助でございます。それに対しましていま申し上げました流域下水道といいますものは、これは根幹になりますところの幹線の街路と処理場は県が事業主体になります。それにぶら下がりますところの公共下水道は所在の市町村が担当するという関係になるわけでございますが、流域下水道は県事業でございまして、二分の一の国庫負担でございます。関連いたします公共下水道は前段のとおりでございます。この場合に今後下水道事業が相当大幅に拡張されてまいりまして、地方負担の問題につきましては国庫補助率を引き上げるという問題と、それから地方負担に対する財政手当て、財源手当ての問題、二つの問題があろうかと思います。今度の五カ年計画では私どもは国庫負担の引き上げということは現在のところは考えておりません。当面とにかく事業を伸ばすということが非常に緊急であるということ、それから地方負担につきましては下水道事業が他の道路とか河川事業と違いまして、公営企業的な性格を持っております。つまり使用料でもって償還をしていくというふうな考え方事業でございますので、起債を大幅に充当するということで自治省とも十分緊密な連携をとりながらそういう面の大幅な起債の要求もいたしております。こういう体制でもって大体処理できるんじゃないかというふうに私どもは考えております。
  138. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいま局長が最後の段階で述べましたように、使用料を取る対象の事業はやはり補助率には一定の限界があろうかと考えます。その限界の中で今回の流域下水道は五割ということで県が行なうわけでありますから、その下水道の利用者一般の人々の料金と、またさらに、企業者が使う場合の料金とはそれぞれまたその利用率その他によって負担がおのずから違ってくるでありましょうし、そこらのところは知事の段階において実情に応じた負担というものを徴収することによって、本来その事業そのものの、場合によっては今回の企業の利用負担というものの中に頭から負担をしなければならない企業も出てくるかもしれません。しかしながら、不特定であってその中で特定できるような場合というものは、建設においては公共事業そのもので行なった後、利用負担率について相当な高額のものを徴収することによってそれにかえるというような、いろいろな知事さんの細工のしかたがあろうかと思います。これは法律で徴収料について押えておるわけではありませんので、ここらの点を勘案していけば、大体今回の五割補助の対象としての新しい市町村単位をこえた流域下水道の考え方というものは、一方の広域清掃事業的なものと相まって相当地域的に大きな効果をあげていくのではないかと思っております。
  139. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、実際下水道がどの程度進むか問題ですが、お話はお聞きしましたが、ちょっと時間の関係で次に行きます。  水産庁は見えておりますか。——水産庁のほうでは、いま申し上げた諏訪湖の要するに魚介類の保護、それから諏訪湖に限らず、この次質問いたしますが、田子の浦の海洋投棄、ヘドロの海洋投棄、こういうような点、そうした問題に対する水産庁の意見がそういう政策をきめる場合、どのように反映されているか。漁業組合はずいぶんいろいろな意見を出しますけれども、漁業組合は出すけれども水産庁からは何となく意見も出てこないような感じも受けるのですが、いかがですか。
  140. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 水産庁といたしましても、水産用の水質基準検討いたしまして、水産庁内部ばかりでなく、関係の大学の教授あるいは研究機関の学者等の意見を徴しまして、水産擁護としての水質基準検討いたしまして、水産用についての意見を経済企画庁のほうに出しまして、各地域についてこれを反映させているわけでございます。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 その意見があまり反映しないように思いますがね。  次に山中長官お尋ねしますが、田子の浦ヘドロは海洋投棄はやりませんね。海洋投棄はやめたわけですね。その場合、船を改装するのに一億二千万円かかったというのですが、この一億二千万円はどこが負担するかということで地元ではもめているのですが、いかがですか。
  142. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 海洋投棄はやりませんねと言われると、知事さんは一応延期したいと言ってこられておりますので、私からやめたということはちょっと言えないと思いますが、私は原則的に陸上の排出物は陸上で人知によって処理して、海をよごすなという原則に立っていることはお話をいたしました。しかし、その知事の考えによって、財源その他の手当てをして、転貸債というややこしい制度をとって静岡県から富士市、富士市が起こす起債について償還は富士市が責任を持って行なうかわりに、その財源は企業者が五年払いをするという新しい制度をつくったこともお話をいたしました。しかし、それはあくまでもその改装に要した費用、あるいはチャーター料、そういうものを行為として行なった場合に企業が負担をするのであって、それをもし最終的に知事の意見が海洋投棄はしないということであるとすれば、賛否は別として海洋投棄をやらないためにその船はむだな改装費を投じたということになりましょうし、あるいはまた、それを解決するのには、相当頑強な修復をしたわけですから、そのまた金がかかるという、まるで漫画みたいなことをやったことになるわけです。そういう負担は当然自分で約束をされた県知事責任において県費負担としてもらいたい。業者に負担させるべきものではありません。しかし、その船については、なお船内において沈でん池みたいなものの役目を果たさせながら、水分を相当大幅に上澄みを抜き取ってビニールに詰めて、先ほど午前中に説明しましたような過程の一つの海上工場処理施設みたいなことに使えるような可能性もあるとのことでありますから、いまそこらのところはもう少し模様を見たいと思いますが、要するに使用しなかった船のかかった経費は、知事責任でやると言われたんですから経費を負担してもらう。このことはローカルにおいてはどのような議論をしているか知りませんが、国の方針においてはゆらぎはございません。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣の御意向はわかりました。県負担ということは、県民にとっては迷惑な話です、そんな金を負担しろと言われることは。  それから最後に、通産大臣と山中大臣に一点お伺いして私の質問を終わりますが、いま公害裁判といわれる裁判が数多くあります。数多くありますが、一番悲惨な、また長期にわたる裁判として、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくと、これらの裁判がいま現に行なわれております。で、こうしたものは裁判中ですので、いま即企業が公害責任者として確定はしてないといえば確定はしてないと言えるでしょうけれども、そうした現に裁判中の企業の会社の社長あるいは重役、こうした方々がいろんな審議会へ出ているわけですね。通産省関係審議会にも出ておるし、また行政監理委員会とか、こういうところへも出ている方がいらっしゃる。現に裁判中の企業のそうした役員がそういう審議会行政委員会委員になっている。こうした点は何もこの委員をやめたからといって公害が片づくわけじゃないけれども、やはり道義的に考えて、私たちがこれだけ泣いているのに、しかし会社のほうでは社長や重役がそうしたまあ政府機関の委員を兼ねてやっているということに対して、こういう現状に対してどうお考えになりますか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 各種の審議会等の委員に、いわゆる学識経験者として各方面の方にお入りを願っておるわけでございますが、これは私どもそういう方々の学識経験というものを行政の上に反映をいたしたいと考えて、お願いをして審議を願っているものであります。たまたまそういう方が経営をしておられるといいますか、社長である会社に公害問題が発生した、そういう場合にどう考えるかというお尋ねと思いますけれども、まあ法律上、厳密な意味法律違反の行為をしてそれを続けておるといったようなことでありますと、これは学識経験もさることながら、考え直さなければならぬ場合もあるかと思いますが、法律上そうだということではないような場合に、学識経験を私ども行政の上で拝借をするということの妨げになるというふうには私は考えておりません。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 では、通産大臣、水俣病、イタイイタイ病、これは法律に反しておらないから差しつかえないということですか。私は何もこの委員をしていらっしゃることが法律上どうこうと言っているわけじゃないのです。ただ国民の見る目、実際の被害者が見る目からしまして、素朴な感情からしまして、そうした何百人の人、家族を含めて多数の人がこれほど悲惨な目にあっている。その企業のそうした立場の方がこうした政府の行政機関に入って意見を述べていることに対して、それは差しつかえないと、簡単にそう割り切れないものがあるわけです。ですからそういうことが差しつかえないかどうか、あるいは好ましくないと思われますが、そういう点を伺っておるわけです。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお話しのような問題については、いわゆる法廷で両者の間に争いが行なわれておるところでございますから責任の所在というものははっきりしたわけではございません。むろんその被害者が非常に苦しんでおられる、あるいはとにかく法律上の責任はともかく、会社が改善措置をとることが望ましい、そういうことは公害問題として私はたくさんあると思います。その限りでの御指摘が間違っていると思っておるわけではございません。しかし、そういう法律上の責任等が確定しないときに何となく好ましくないというようなことだけで私はものを決することはいかがなものであろうかと申しておるわけでございます。
  147. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) たとえば私のところで十一月一日から発足予定の中央公害審査委員会、そういうところの委員には、これはやっぱり不適格であると私は思います。しかし、その他の国会同意人事は相談ごとですから別ですが、政府が自分たちだけの判断でもって各省もしくは政府全体の責任で任命するというような場合においては、やはり何も企業の責任者であるからはっきりなってはならない——いわゆる欠格条項というものはもちろんあるわけですけれども、そうでない段階においてその他に非常に有識な人がおった場合に、それを使うことはけしからぬときめつけるのは、通産大臣がおっしゃるようにいまの段階ではそこまで言うのはどうだろうか、むしろ有用な人で欠格条項は明らかに定まっていないものについてはむしろどんどん意見を述べてもらう機会を持つことがいいんだ、しかし、公害関連の係争等起こしておる企業は、それは欠格条項に入るんだという概念を持って臨めということであればこれはまた別だと思いますが、しかし、それはやはり直接公害問題等関係を持っておる審議会委員会等に採用してはならぬ、任命してはならぬというのは当然正しい理論となりますので、私のほうはそういう配慮をいたしてやるつもりであります。
  148. 内田善利

    ○内田善利君 関連質問からしたいと思いますが、ただいま小平委員から東洋バルヴの降下ばいじんについて非常に驚くべき数字が発表になったわけですが、特にカドミウム五二〇PPM、鉛に至っては一〇万PPMといいますと〇・一グラム、それから亜鉛が七〇万PPMですね、これがPPMで言わないでグラムで言いますと〇・七グラム、これが粉じんとして降下しているということになればたいへんなことじゃないかと、私はいままでのいろいろな降下粉じんの調査データから想像してこれが真実ならばたいへんなデータであると、このように思います。したがいまして、まず最初に、ばい煙の場合はどうしようもないということでありますが、着地濃度の降下ばいじんに対する基準の設定がまだなされていないわけですが、これは困難なのかどうか、将来こういった粉じんの基準設定の考えがあるかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  149. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) ばい煙等の排出基準につきましては、現在の排出基準が必ずしも十分でございませんので、これを強化する方向検討を進めております。それからなお、粉じん中の特定有害物質規制につきまして私は浮遊粉じんにつきまして現在私どものほうで生活環境審議会の中に環境基準の専門委員会を設けまして御検討を願っておるところでございます。近々専門委員会としての一応の数値が出る取り運びになっております。ただこの場合その数字は浮遊粉じんを総量として規制するという考えでございまして、御指摘のように、その中の個々の有害物質規制するということが実はまだ残っておりまして、一応総量についての報告書が得られましたならば引き続き総量としてのほかに、その中における個々の有害物質規制等についても環境基準の設定できるように作業をお願いしたい、そういうふうに考えております。
  150. 内田善利

    ○内田善利君 いままでは水質についても非常に論議があったわけですけれども、最近は安中の製錬所にいたしましてもまた大牟田の大気汚染による米、土壌の汚染にいたしましても粉じんが非常に問題になってきている。この粉じんの規制についてはもう私は前々から基準を設定しろと、するように要求してきたわけですが、いまだにそれがなされていないわけです。特にいま仰せのとおり、環境基準においては総量だけだということですけれども、やはり問題になっている重金属はこの際ともに基準を設定すべきではないかと、このように思うわけです。というのは、たとえば有明海にいたしましても赤貝だけはだいじょうぶだ。ノリを食べたって実害はないとかそういう県衛生部の発表があっております。しかしながら、米も食べておるし、また水も〇・〇一PPMくらいの水を飲んでおる。そうしますと当然複合汚染ということも考えられますし、この際そういった土壌汚染については長官も言っておられるように典型公害の中に入れると、こういう前向きの姿勢でありますが、要するにこういった点でもカドミウムあるいは鉛でも〇・一グラムということはたいへんな数字です。そういったことから当然この中に入れていただきたいと、このように思いますが、どうでしょう。
  151. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) その点につきましては、十分考慮いたしまして検討いたしてまいりたいと思います。  それから、なお環境基準作業とはこれは別個でございますけれども大気汚染防止法が、来年度といいますか、臨時国会に提出予定で目下大気汚染防止法の改正項目をいろいろ検討いたしておりますけれども、その際におきましてもカドミウム等微量重金属系統につきましては現在すす、その他の粉じんといった中にそういう特定のものが入っておりませんので、政令で場合によれば追加するような方途を講じまして、法律の面でもはっきりした排出基準ができるように法令の整備も考えてまいりたいというふうに考えております。
  152. 内田善利

    ○内田善利君 この東洋バルヴがこのようにたくさんの重金属を排煙しているということなんですが、このデータによりまして通産省ではこの工場に対して指導助言されるのかどうか、この辺をまずお聞きしたいと思います。
  153. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 東洋バルヴにつきましては目下強力な指導を実施中でございます。   〔理事小野明君退席、川上為治君着席〕  その指導の内容でございますが、先ほど小平先生が御指摘のとおり工場が二つございまして、いままでは二本の煙突がございました。その二本の煙突のうち、第二工場につきましてはすでに三年前に約三千万円程度の金をかけまして電気集じん機を設置いたしました。御指摘のように、粉じんの排出がとまったわけでございます。ところが、第一工場のほうにはまだつけておりませんです。で、その電気集じん機と生産量とのアンバランスがその後相当目出ってまいりましたのでこれは基本的に全部に対して電気集じん機をつけるべきであるということで目下両方の工場に対しまして集じん機の設置を進めておる最中でございますが、この十一月末になれば工事は完成する予定でございます。それでこの集じん機の能力は粉じんの捕集率が九九・八%という、非常に高能率の集じん機を指導して設置さしておりますので、十一月以降におきましては、ほとんど粉じんの排出はとまるのではないかと、かように期待しておるわけでございます。
  154. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つカドミウムが五二〇PPM出ております。私はやはり土壌が相当汚染されておるのじゃないかと、その周辺の土壌が汚染されているのではないかと、このように思うわけですが、この東洋バルヴのキャリアがどのくらいあるのか知りませんし、その辺の考慮も入れなければならないと思いますけれども、土壌汚染についてあるいは周辺の住民の健康調査について、これは検討していくべきではないかと、そのように思うのですが、厚生省この点どうでしょう。
  155. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 実は諏訪湖の汚染につきましては、だいぶ前から指摘されておったのでありますけれども、特に四十三年の十月でしたか、岡山大学の小林教授がその調査の結果を発表されまして、地元に非常に大きな反響を与えまして、それで、実は翌月、四十三年の十一月だったと思いますけれども、当時の園田厚生大臣が長野で一日厚生省みたいなことを催した際に、県知事のほうから、国のほうも責任を持って調査してくれということがございまして、さっそく四十三年度研究委託費をもちまして、国と県が協力いたしまして、魚介類、まああそこの代表的なワカサギその他の魚介類等について、あわせて、いわゆるその場合、当時あまりそういうことば使っていなかったのですけれどもヘドロ等についても調査をいたしまして、その結果、いずれにしても調査の結果得られた数値からは、人の健康には全く支障がないという見解が得られましたので、当時その旨を発表いたしました。「諏訪湖に生育する魚介類は、現状においては人体に何ら影響を与えるものではなく、通常に食しても何ら支障がないと認められる。」しかし、なお引き続き観察の要がございますので、四十四年度におきましても、同じような調査を継続いたしましたが、その数字につきましても、大体同程度のものでございました。したがいまして、その後の経緯は存じませんが、いずれにしても、私どもとしましては、この調査で得られた限りにおいては特に住民の検診を必要とするほどのものではなかったというふうに考えております。
  156. 内田善利

    ○内田善利君 関連質問長くなりますが、土壌の調査はされたのかどうか。  それから、東洋バルヴのキャリアは何年ぐらいたっているのか、その辺お聞きしたいと思います。
  157. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 土壌の調査につきましては調査いたしておりません。
  158. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) キャリアにつきましては、現在手元にデータございませんので、至急電話で問い合わせてお答え申し上げたいと思います。
  159. 内田善利

    ○内田善利君 非常に長野県の一日内閣のお話を聞いたりして、だいぶ手を打っておったのだなと思っておったのですけれども会社の経歴年数もわからないし、土壌汚染調査もしないで、健康状態だいじょうぶであったという判断は少し軽々ではないかと、このように私は思います。  先ほどのに関連しますが、大牟田の場合も環境基準もまだ設定できない。その基準が一日〇・三ミリグラムですか、とるようなおそれがあれば、環境基準基準にして、要観察地域にしたいと、そういうような小野委員に対する答弁があっておりましたけれども、私はあの答弁を聞きながら米については、最高ですけれども、一・〇PPMとして計算してみました。水も〇・〇〇一PPMで一日一・五リットル摂取するものとして計算してみました。それから赤貝が二百グラムとして二PPMで計算してみました。これは福岡、長崎、佐賀の平均値です。それからノリも一グラムとして計算してみました。ところが、はるかにこえて〇・七八ミリグラムと、こういう計算になるのですが、これならば、数字の上では明らかに要観察地域になるじゃないかと、そのように私自身思ったわけですけれども、もう少し健康調査、健康被害等、こういう面については前向きにやっていっていただきたいと思うのです。長官対策副本部長になられて後の先を行くと、いままでは後手後手であったけれども、後の先を行くんだと、こういうお話もあっておりますが、やはり前向きの姿勢で打ち込んでいっていただきたいと、さっそく要観察地域にして健康調査をしたいと、こういう談話がどうして出てこないんだろうかと、そのように住民の立場に立って思うわけです。というのは、一・〇九PPMあった保有農家は非常に困っているわけです。早く要観察地域にならなければ、米も買い上げてくれないし、どうしていいか途方にくれているわけですね。そういったことを思い合わせてみますと、やはりこういった点については前向きの姿勢でやっていただきたいと、このように思っているわけです。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  そこで私の本論に入りますが、公害問題につきましてはいろいろ問題が提起され、相当多種多様な公害日本全土に起こっているわけですけれども、その公害の混乱の中に被害者の救済についてどのように手が打たれておるのか、公害の混乱の中に取り残されていっているのじゃないかと、このように思うわけです。昨年健康被害の救済法もできましたけれども、はたしてこれが適用されているのかどうかお伺いしたいと思いますが、先ごろ起こりました光化学スモッグによって立正高校の生徒その他たくさんの人たちが病気になって入院したり、あるいは二度、三度入院しておりますが、こういった生徒に対する補償などはどのようになされておるのか、この点についてまずお聞きしたいと思います。   〔委員長代理川上為治君退席、理事小野明君着席〕
  160. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 御承知のように、公害につきましては、本年二月から健康被害救済法が実際に給付を開始しておるわけでございますが、御承知のように、この法律はいわゆる公害病として認定いたしますのは地域並びに疾病を政令で特定いたしまして、それについてだけ所要の給付を行なうというたてまえになっております。現在この法律で給付を受けておりますのは約千八百名でございますけれども、これはこの法律にございますように、著しい大気汚染または水質汚濁によってその影響で疾病が多発した地帯について地域指定をして疾病指定するということになっております。いまお尋ねのように、たとえば光化学スモッグでございますか、こういうものは確かにそれ自体としてはあるいはいわゆる広い意味での公害による身体の異常あるいは疾病というふうにも考えられますけれども、先生御承知のように、この光化学スモッグによる人体影響として報告されておりますのは、いわゆる通常の疾病、特に長期的ないわゆる公害疾病と違いまして、おもな症状がたとえば粘膜刺激あるいは目まいというふうに、私も専門家でございませんけれども、いわゆる一過性のものでございますから、この救済法の対象として公害病として認定するということについては、やはりこの法律の性格からいって問題があるのではないかというふうに考えております。したがいまして、特にいま私どものほうとして特別補償とか、救済とか、こういうことはございませんけれども、いずれにしても一番大事なことは、光化学スモッグ等の、たびたび起こるものでもございませんけれども、一日も早くそういう原因を究明し、そのような自然現象を起こさないようにする予防に全力を尽くすということが第一義であろうかというふうに考えております。
  161. 内田善利

    ○内田善利君 厚生省はあの立正高校の被害者について調査をなさったことはありますか。
  162. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) これは都のほうから詳細なデータをいただきましたので、それで専門家の方々にも集まっていただきましてそれについていろいろ打ち合わせをいたしました。その結果、当面一番問題になるのは、光化学スモッグなるものは主として、たとえばオキシダント等の形においては従来からも測定のデータがありますけれども、この際の結論としての一番問題になりましたのは、やはり窒素酸化物、これはもともと七〇年代において一番大きな問題になるだろうということはかねて指摘されておりまして、事実、あの公害白書にもその旨うたわれてありますけれども、現実に光化学スモッグが起きたということで一番問題になる窒素酸化物と、これの対策を急がなければならないということがございまして、それでそれの環境基準設定のための専門委員会を来週中でございますか、近々発足させることにいたしております。
  163. 内田善利

    ○内田善利君 これは立正高校では杉並区議会にお願いして、杉並区議会ではこれを議決して、そうして都議会に申請をしたわけですけれども、全然回答があっておりません。この立正高校の実態は、入院者が十一名おります。そのうち重症者が四名——四肢の硬直が一名、呼吸困難か二名、意識もうろう者が一名、その他手足がしびれた者が七名、そのうち、ある女生徒などは非常に重症で、七月十八日に倒れて入院したわけですが、七月二十二日に退院しましたけれども、一時間ぐらいでまたしびれがきて入院しております。そうして七月二十六日に退院して、あとはぜんそく症状が起こって八月七日にまた通院と、そういう中毒症状で三回も通院している者が一人あり、こういった生徒の治療代、そういったものはどこからも出ていないわけですね。都からも出ておりません。ただ学校で父母の会が三万九千九百十八円、入院者一名について千円、治療だけの人には五百円と、わずかなお金でありますが、その見舞金として父母の会が出しているだけでありまして、非常に生活もたいへんであり、入院費を出すのがもうなかなかたいへんだったという一人の女生徒の場合もあります。こういったことを私があげましたのは、こういった原因者不明のこういう被害者、こういう人たちに対しては何ら救済の手がなされていない。ただ学校で父母の会がわずかなお金の中から救済あるいは見舞い金程度で出していると、こういった人たち、あるいは後ほど申しあげますけれども、地盤沈下によって学校ががたがたにくずれてきている、これなども原因者不明、こういった原因者不明によってできた被害者、こういう被害者の人たちに対する救済制度を早急に確立する必要があるのではないか、このように思うわけですが、この点について長官からお聞きしたいと思います。
  164. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの問題は、立正高桜の問題を具体的な例をとって、地盤沈下等にまで論及されたわけですが、非常にむずかしいケースだと思うんです。たとえば新聞等で、校庭で女の先生が子供たちと一緒に何か体育の指導していてヘア・ピンに落雷があったというようなこと等なんかも、たった一人の人がそういうふうになるのかなあと思って見たんですけれども、この予想し得ない状態で、これが原因が明確であれば別でありますけれども、それらの状態で、まだ世界各国で光化学スモッグによる被害というものが、加害被害、原因結果というものが明確に出ておりませんし、たいへんむずかしい問題で、やはり学問的にいまのオキシダントというものを究明していくというようなことがどうしても糸口にならざるを得ないだろうと思いますし、またアメリカ等においても、ロサンゼルス等を中心にそういう方向で進んでいるようでありますが、個人の被害という問題について、いまおっしゃるように、加害者が不明であるという場合にどうするかという問題については、なかなかこの公害法律の範囲内だけで議論ができるものかどうか。たとえば、日本は毎年台風とか、地震とかという被害がありますが、そういうような予想し得ざる突発的な被害に対して、個人共済というものが成り立つであろうかというようなことで、調査費を取っていま調査中でありますが、そのような制度というものを、不幸なことですけれども、災害列島日本というような形で今後制度が成り立つか、あるいは争ういう制度を推し進めていくかという問題等にも関連をしてくるだろうと思います。でありますので、私の言っていることは何言っているかわからないかもしれませんが、具体的にその立正高校の生徒に対して見舞い金を出すか出さないかという問題については、現在の法律のたてまえでは、ちょっと同情するしないの問題は別にして、支出の方法はないということだと思います。
  165. 内田善利

    ○内田善利君 いま個人災害共済制度のお話が出ましたけれども、私もあちこち災害の場に行きまして、どうしても災害の場合等は、個人災害共済制度が必要であると、このように思っておりますが、こういった光化学スモッグの場合でも、個人災害共済制度が適用されればそれでも私はいいと思います。何らかの方法で、こういう被害者を救済してやらなければ、公害のその中に何も言えないで取り残されていっている人たちがあるということをひとつ知っていただきたいと、このように思いますし、さらに、いまから質問しますことは、典型公害の中の地盤沈下についてお伺いしたいと思うんですが、この地盤沈下についても原因者が不明でございます。船橋では壁にひびができたり、あるいは窓ガラスが開かなくなったり、あるいはもう六年間で百二十センチも沈下してがたがたに校舎がなっておると、このような被害があっておりますが、こういった、被害を受けた原因不明の場合のやはり補償、こういうことについては前向きの姿勢で補償制度を確立していただきたい、このように要望いたす次第でございますが、この地盤沈下につきましては、日本全国がだんだんだんだん地盤が沈下しつつあると。未来学によりますと、だんだん日本列島は沈んでいってしまうというようなことも言われておるわけですが、この地盤沈下の中でも特に工業用水、これが問題ではないかと、このように思うわけですが、大気汚染あるいは水質汚濁と同時、この地盤沈下ということは三大公害一つではないかと思うのですが、この工業用水が現在日本ではどのくらいくみ上げられておるものか。そしてその工業用水と地盤沈下の関係、そして工業用水に対する対策などについて通産大臣にお聞きしたいと思います。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公害部長からお答え申し上げます。
  167. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 工業用水の使用量でございますが、昭和四十三年の実績で申し上げますと、一日当たり約六千五百万トンになっております。この六千五百万トンのうち、地下水にたよっておりますのは約千四百万トンでございまして、比率は大体二一、二%ということになっております。で、地下水のくみ上げと地盤沈下との関係でございますが、これは非常に重大な因果関係があるということが定説となっておりまして、通産省では昭和三十一年に工業用水法というものを設けまして、地盤沈下が非常に進行しておる地域に対しましては、その地域を指定いたしまして、工業用水道を設置して、工業用水道ができ上がりますと地下水のくみ上げを原則として禁止する、あるいは適正用水量の範囲内でとどめるというような対策を講じてまいりまして、具体的には東京都の江東地区あるいは城北地区あるいは四日市、さらに大阪市あるいは大阪府、神戸、尼崎というようなところに対しまして、工業用水道を現に付設しあるいは一部のものは建設中でございますが、関西方面では非常にこれは効果を出しまして、以前は年間十センチ以上の沈下があらわれたところも、現在はほとんど沈下がとまっておるというような現状でございます。
  168. 内田善利

    ○内田善利君 工業用水法ですけれども、工業用水法の中に私は欠陥があるように思うわけですが、工業用水道の整備によって地下水をくみ上げするわけですけれども、これを防止していくという立場から、工業用水道の建設費用、この負担についてですね、企業が負担すべきであると私は思うんですけれども、その建設費用は国と地方公共団体が持って企業は全然負担していない、こういうことなんですけれども、この点はどのように考えられておるのか。
  169. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 工業用水道の費用負担につきまして、国で大体三五%の補助金を出しまして、で、残りは県が原則として起債ということで、これは県の公営企業の一環として事業を行なっておるわけでございます。したがって、その水をもらう企業は、その水についての料金を支払うということで、公営企業の範囲内でかつ補助金を支出したということで、その補助金の部分は一応取り除きました料金を支払うという態勢でいっておりますので、実質的にはその料金において企業が負担しておるというメカニズムになっておるわけでございます。
  170. 内田善利

    ○内田善利君 この工業用水の場合ですね、通産省では地下水にかわる工業用水道の手当てがなければ規制地域の指定ができない、このように工業用水法でなっておるわけですけれども、これはちょっと企業保護に片寄り過ぎているのじゃないかと思うんですが、この点はどうなんですか。
  171. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 御指摘のように、地盤沈下地域の指定につきましては、工業用水道の計画があるか、あるいは現に工業用水道が存在しておるか、これが要件になっております。したがいまして、地盤沈下が相当進行しておるところでも、工業用水道の計画が、水利権の問題その他で実現の可能性がないところは指定できない形になっておるわけでございまして、この点が現在の——現在いろいろ考慮してまいりますと、地盤沈下の防止という目的から見まして相当欠陥があるというぐあいにわれわれも感じておりまして、地盤沈下が進行しておる地域につきましては直ちに地域指定し、現にくみ上げておる井戸につきましても何らかの規制をすること、あるいはこれから掘ります井戸につきましては、これは原則として禁止するというような方向規制体系を改めるべきではないかという考え方が通産省の内部にもあるわけでございます。そういう点を含めまして目下いろいろ検討しておる最中でございます。
  172. 内田善利

    ○内田善利君 それから天然ガスも地盤沈下に関係があると思いますが、新潟の例にもありますように、天然ガスについても規制措置を講ずべきであると、このように思いますが、この点はどうですか。
  173. 柴崎芳三

    説明員(柴崎芳三君) 天然ガスにつきましては、この工業用水道法はもちろん関係はないわけでございますが、天然ガスの採掘に二種類ございまして、非常に浅層で、浅い層から掘っております天然ガスと、非常に深い層から掘っておる天然ガスとあるわけでございますが、この浅い層から掘っております天然ガスにつきましては地盤沈下との関係が非常にはっきりしております。深層から掘りますものについてはいろいろまだ議論の分かれる点があるわけでございますが、しかし、それらを総括いたしまして、現に天然ガスを採掘しておるところで地盤沈下の現象が目立つ場合には、これは通産省の一般的な行政指導権限というようなことで、天然ガスの鉱業権者を指導いたしまして、地元の要望あるいは現実の地盤沈下の状況等々とあわせ考えまして、できるだけそういった地盤沈下というような現象を進めないような形で行政指導しておりまして、これは新潟におきましても、千葉特に船橋地域におきましても、そういった形で指導してまいっておるわけでございます。
  174. 内田善利

    ○内田善利君 工業用水は一日に六千五百万トン使っているわけですが、その中で地下水が千四百万トンということですが、上水道に利用する地下水は何トンぐらい上げているかわかりませんか。工業用水とそれから上水道に地下水を利用しているわけですが、そういったことによって日本列島はだんだん地盤が沈下しつつあると、このように報ぜられておるわけですけれども、水のことでありまして非常にいろいろ問題があるとは思いますが、水の有効的な使用あるいはこの工業用水、あるいは上水道の総合的な対策、こういうことは考えておられるのか、地盤沈下という典型公害一つでもありますし、地盤沈下対策としてどういう構想を持っておられるのか、長官並びに通産大臣にお伺いしたいと思います。
  175. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいままで両事務当局から局長答弁をいたしましたように、地盤沈下の原因には単に工業用水あるいは建築用の用水というようなものばかりでない、普遍的な水源地帯の上水道まで考えていかなければならないという現象が起こっておりますし、いま規制してある、先ほど答弁もありましたが、浅いところは影響が顕著であるから、洪積層という深い層まで掘って、その口径を幾らにした場合においてはというふうな規制のしかたをしておりますが、その深い洪積層そのものもやはり影響があるというようなことも言われ出しておりますし、そうするとやはり新しい概念で面の面でも相当幅広いとらえ方をしていかなければなりますまい。また、それらの地盤沈下全体の上水道あるいは地下水、そういうようなものを全体的にとらえると同時に、高い煙突であればいいといっていたのが、光化学現象ということから考えると、高ければ高いほど逆にそういう現象が起こりやすいのではないかという疑問を持つわけですけれども、やはり地下水の場合でも深ければいいということだけでは、それは解決し得ないのではないかという疑問にも取り組まなければならぬと考えますが、これらについては両事務当局がそれぞれただいま検討をいたしておるところでございますので、そういう方向に向かっても明確な法改正並びに基準の設定というものができれば、それで地盤沈下が食いとめられるかどうかについて大きな問題のあるところでありますが、少なくとも地盤沈下を食いとめる努力に向かっての新しい姿勢というものを示し得るならば示す必要があるというふうに考えております。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国は年々の降雨量は実は決して少なくありませんので、相当の量に及んでおりますけれども、それが水資源として利用されておる率というものは決して多くはないわけでございます。そういう観点から見ますと、これだけの降雨を水資源に有効に利用する方法というものはもっともっと研究の余地があるわけでございます。それはたとえば水源池をつくるということもそうでございますが、そういう方面の努力一つ。それから現在、工場、ことに製鉄工場などにそういう傾向が見られますが、回収水の利用というようなことも、これも技術発達とともにもっともっと可能になるはずであります。さらには将来、原子力発電が安くなりましたら海水の淡水化ということも考えられるかと思いますが、それらの努力を進めていくということがただいま御指摘のような問題の解決につながるというふうに考えております。
  177. 内田善利

    ○内田善利君 よくわかりました。  次に厚生省にちょっと聞きたいと思いますが、イタイイタイ病の診断基準はもう確立したのでしょうか。
  178. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先生のただいま御指摘のイタイイタイ病の診断基準は、公害病として認定されておりますいわゆるイタイイタイ病、これは富山県を指定しておりますけれども、このイタイイタイ病の診断基準ということなのか、あるいは現在暫定対策要領によりましてイタイイタイ病の予防のためにいわゆるカドミウム中毒症状についていろいろ鑑別診断等を行なっておりますけれども、その基準ということの意味なのか、あるいは私の取り違いがあるといけませんから申しますと、前者のほうの現実に富山県の一定地域を指定して認定患者として取り扱っておりますイタイイタイ病につきましては、地元のいわば審査委員会に具体的には認定をお願いしてあるわけでございますけれども、大体これは萩野先生が中心になってやっておられまして、エックス線のレントゲン写真とか、あるいは尿の検査等、臨床的な面で大体これが該当するのじゃないかというようなことでやっておりまして、ほぼ従来ずっとやっておりますので、基準としては一応固まっておるものと考えております。  それから現在、いま全国的にやっております要観察地帯等における、イタイイタイ病にならないようにその予防のためのいわゆるカドミウム中毒症の認定基準といいますか、診断基準、これにつきましては、私どものほうで専門の先生方にお集まりいただきまして鑑別診断研究班というものをつくっておりますけれども、そこで数年来検討を重ねまして、現在住民の第一次検診並びに第二次検診の、いわば検診の基準というものは固まっております。ただ第二次検診の結果、これはひょっとしたらあるいはイタイイタイ病のおそれがあるかもしれぬというものの精密検査、これは地方で行ないまして、そういうものは中央に上がってきておりますけれども、その最終の鑑別診断の基準についてはなおいろいろ意見がございまして、さらに引き続き検討したいという、そういう段階になっております。
  179. 内田善利

    ○内田善利君 大体わかりましたので質問はそれだけにしますが、有明海の赤貝とノリのカドミウムによる汚染福岡県、佐賀県あるいは長崎県から分析結果が出まして、全体が汚染されておるということが大体明瞭になってきたわけですが、そこで、熊本入れまして四県で合同研究調査をしていこうということになりまして、いろいろ分析方法あるいは対象の魚介類の、まあともに同じように調査していこうということでありますが、やはりこれはいろいろまちまちのようでありますので、国のサイドでこの有明海の調査はやっていくべきではないかと、あるいはこの四県合同の研究調査を国のサイドで指導助言していくべきではないかと、このように思いますが、この点はどうでしょう。
  180. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先般閣議で御決定願いました公害緊急対策費の中に、カドミウム、水銀等のいわゆる総点検の予算が計上されておりまして、これを全国的に行なうことにいたしまして、先般打ち合わせをいたしたところでございますが、その際、有明海につきましては総合的に私どもがいろいろ指導いたしまして、関係府県総合的にそのような調査を行なうということで打ち合わせを済んでおります。
  181. 内田善利

    ○内田善利君 そこで、先ほどからいろいろ複合汚染等の話をしたわけですが、やはり健康調査も、要観察地域になれば、あるいは県は独自でやると言っておりますが、そういったこと等をなされたならば、将来有明海をまあ私に言わせれば緊急に指定海域にして環境基準を設定していただきたいと、このように要望するわけですけれども、この点はどうでしょう。
  182. 西川喬

    説明員西川喬君) 現在有明海については、海域といたしましては大牟田地先海域だけしか指定水域になっておりませんですが、いまのような問題が出てきておりますけれども、これから調査をいたしますといいますと、やはりある程度の時間はかかる。私たちといたしましては現在、先ほどから山中長官のほうからも御答弁申し上げてますように、法律の改正によりまして全国に一律基準を設定すると、これは次期国会で成立しましたらもう来年度には施行になるわけでございます。一律基準を設定いたしまして、それに基づいてまずナショナル・ミニマム的なもので規制をかける。それからさらに、その後必要に応じて上乗せ基準——一律基準よりもよりきびしい基準を設定するときには、それぞれの地域におきまして地方の実態を一番よく知っております都道府県がこの上乗せ基準を設定するというような方向で進んでまいりますので、現在、今年度の作業といたしまして国のほうで指定水域にするというのは、緊急性のあるもの、従来現行方式によりまして調査を済ましておりまして緊急性のあるものに限りたいと、このように考えております。あらためて有明海を取り上げるというよりも、来年度からの新方式にまかせたい。来年度からの調査につきましては、全部国の委託調査というのを変えまして、新方式に従いまして、都道府県のほうにこの県のほうの要請に従いまして調査を補助するというような形で、相当予算ワクも拡大して要求いたしております。そのような方面で来年度以降の調査は府県の意向に従いまして調査費の配分をいたしたい、こんなふうに考えております。
  183. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つ質問したいと思いますが、公害企業の適正立地の誘導策ということから、昭和四十二年工場立地適正化法案というのが用意されたわけですが、この工場立地の適正化ということは、企業の分散あるいは工場立地の調整をするための便宜供与と、そういったことのために誘導策を講ずることだったと思いますが、そういう構想はどんなふうにいま考えられておるのか、工場立地適正化ということについて。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 工場立地の適正化に関する法律案というものを一度通産省として相当真剣に考えたことがございましたことは御指摘のとおりであります。これは、いまは新都市計画法でございますが、昔の都市計画法を全面改正いたします際に、そのうらはらとして工業立地の適正化というものを法体系で考える、つまりいわゆる市街化地域と調整地域というものの考え方との関連において考えたわけでございますが、当時非常に各省権限などがふくそういたしましたり、また一部に、必ずしも正解に基づくものとも思いませんでしたが、強い反対がございましたりいたしまして、これは法律案として御提出を申し上げるに至らなかったわけであります。しかし、事実問題としましては、いわゆるいまいわれております線引きでありますが、これによって市街化地域と調整地域というものが分けられることになりますし、また、新しい全国総合開発計画におきましてもいわゆる大規模工業地帯といったものの設定も考えております。そういうこととの関連、あるいは工業用水道——先ほど工業用水道に補助金があるということを政府委員から申し上げましたが、そういうこととの関連等々で、現実には行政の内部においてある程度の誘導の目的を達することができる、法律をつくりましてもそれがじょうずに動くかどうかということの問題もございましたために、ただいま法律案という形でそれを考えておることはございません。
  185. 内田善利

    ○内田善利君 非常に緑の自然に守られた日本列島がだんだんよごれていっているわけですけれども、この工場立地ということは非常に大きな問題ではないかと、そのように思うわけですが、その適正化ということがなされなければまだまだ美しい自然の日本汚染されていくのではないかと心配するわけですけれども、この点どこが、だれがこの工場立地の適正化をはかっていくのか、分散をしていくのか、非常に不安に思うわけですが、この点どうでしょうか。  それからもう一つ通産大臣にお聞きしたいことは、ここまで公害がエスカレートしてまいりますと、どうしても公害防止対策としては公害発生源に対する規制、これ以外にないと思うのです。企業が有毒物を出しさえしなければ公害が起こらないわけですから、やはり何といっても発生源対策ということを強硬に措置していただきたいと、このように思うわけですけれども、 この点どうでしょうか。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどお答えいたしましたことに一つお答え忘れしておりましたが、首都圏などには、法律の正確な名前をいま申し上げられませんが、工場の立地、建築についての制限の法律もございます。これは先ほどお答え申し上げることを一つ落としておりました。そういったようなことで、できるだけの規制を加えていくということでございます。そこで、何といっても公害の相当多くの発生源がそれらの工場でございますから、これは前にも申し上げたことがございますけれども、やはり企業に対して一番関係の深い私どもが、お互い共通の問題として企業とともにこの公害の問題に取り組んでいく、できる限り問題を先取りしていこうという、そういう行政の基本姿勢が一番大切なことではなかろうか、そのためには規制基準というものも年とともにきつくなっていくということもこれはもう当然のことでございまして、暫定期間においてはやはり企業に対して公害防止のためのいろいろな援助をしてまいらなければならない点もあろうかと思います。そういうことをしながら、社会の構成員の一つとしての企業が社会に対して持っているそういう責任というものを厳重に遂行するように指導してまいらなければならないと考えております。   〔理事小野明君退席、理事内田善利君着席〕
  187. 小野明

    小野明君 通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  午前中杉原君から出ました問題で、ちょうど山中担当大臣しかおられませんで当事者がおられませんものですから、あれですから、私からこの問題をお尋ねしたいと思います。  というのは、昨日衆議院の公害特別委員会がございまして、その席上通産大臣が言われた点で、毎日新聞の夕刊だったと思います、報道されているところで問題だと思われる点が二つほどございます。  その一つは、公害反対の住民運動は情緒的であって、理性的なものに改める。一体規制基準を守ってやればいいんだ。こういうふうに運動を規制する。通産大臣のお仕着せの住民運動といった考え方ですね。  第二点は、公害の人体への影響は医学的には解明されていない、だから云々というくだりがあるわけです。  それで、一方的にこれを解釈して大臣の基本姿勢を尋ねるというわけにはまいりませんので、この二点に関しての大臣の御答弁がいかがなものであったか。その真意というのは那辺にあるのか。その辺をまずお尋ねをしたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院の委員会におきまして、情緒的云々ということをお答えいたしましたことはそのとおりでございます。  お尋ねの趣旨は、これは火力発電の立地との関連においてのお尋ねであったわけでございまして、立地を受け入れる地元としてはなるべくそういうものはほしくない。しかし、他方でわが国の電力需給の将来を考えていくと電力というものが不足してしまうとどういうことになるのかと、こういう趣旨のお尋ねでございまして、それに対して私は、電力というものがかりに不足をするということになれば国民福祉に直接に甚大な影響を及ぼしますので、これも大事なことと考えておりますというような意味を申し上げたこととの関連でございます。  私が申し上げましたのは、公害というものが長い間なおざりにされてまいりましたから、いまこういうふうに大きく火の手が起こったということはこれは考えようによっては当然なことでありますし、お互いの自覚を高める意味でむしろ好ましいこととすら私は思っておりますと。しかし、しょせん公害規制あるいは公害の防止というものは計量的に数量的にとらえるということに落ちつかざるを得ないのではないであろうか。すなわち、私どもの住んでおる地球にいたしましても、あるいはそれを取り巻く大気にいたしましても、あるいは私ども人間そのものの人体にいたしましても、幾つかの元素とか化合物等を含んで、その適当なバランスの上に人間生活というものが成り立っておって、そのバランスがこわれるというときに公害問題というのが起こってくるというふうに考えられますので、したがって、そのバランスのこわれた部分を規制しなければならない。それで規制基準というものが生まれる。問題は、規制基準というものを設定をして、そうしてそれが科学的に正しいものであり、また発生源はその基準を厳格に守らなければならない。また守られているという国民的な信頼が確立されることがまず大事であろうと、そうして、そういう信頼が確立されれば、基準内のいわゆる許容限度であれば、これはその範囲でなら国民生活を、人間生活を脅かすことはない。その程度までまた基準というものは厳格にきめられるべきで、これはその基準をゆるくきめろという意見には反対でございますが、その範囲内でまず安心していける、こういうことにならなければならないのではないであろうか。先ほど申しました大気にしましても、地球にしましても、われわれの人体内におきましても、いろいろなそういう元素、化合物をたくさん含んでおるわけでありますから、たとえば世の中から鉛が全部なくなればいいとかシアンがなくなればいいとかいうことはだれもそうは思わないのであって、おのずから危険のない範囲でそれを規制しなければならないということで、全然なくなればいいということではない。ことに先ほどお話もありました光化学現象といったようなものは、おそらく一定の量の要素が反応し合ってそういう化学変化を起こすわけでありますから、これは一定の量の相対的な関係でそういう反応が生まれるのであって、片っ方のほうが多ければ多いほどそういう反応が生まれやすいということはおそらくない。また少ないから生まれにくいでありましょう——。したがって、いろいろなことを考えてみますと、公害というものはやはり計量的に規定されるのが行く行くはほんとうではないだろうか。また、その信頼の上に公害防止というものが成り立つのではないかということを申し上げたのであります。  いまそれをいきなり申しましたところで、長いこといかにも放置されておった問題でありますから、突然それを申しても無理なことかもしれないし、現在やや火の手がこれだけ燃え上がっておるということは決して私は悪いこととは思っておりませんが、問題の落ちつく先というものはやはりそういうふうに計量的にとらえられなければならないのではないか、こういう意味のことを申し上げたのであります。  人体に対する影響というのについても、同じような趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  189. 小野明

    小野明君 大臣のお話を聞きますと、理想的な、本の上に書かれた姿であるならば私もそのとおりだと思うのです。おっしゃるように、数字が信頼され、信頼される数字である、あるいは国民との間に信頼関係というものが成り立っておるならば、私もこういうことは申し上げない。現実は生きておるのですから、これは大臣も御承知のように、たとえば洞海湾を取り巻く二十二の工場がある。問題のあります六つの工場があるのですが、これらシアンが出されておる、有毒物が出されておるのですけれども、その数値というものが現実政府の手によって隠されておるわけですね。発表されていない。あるいは、きょうも午前中から質問があっておりますけれども、実際は有毒のばい煙あるいは排煙がありながら、これを地方自治体の手によってそのデータを隠している。あるいは、福岡県でも突然難解になりましてね、いままで使っておった単位をころっと変えまして、PPMを使わずにミリグラムを使って、国民の、県民の目をごまかしておる。こういうあらゆるデータがそのまま出され、その上でこの規制基準というものが書かれておるならばこれは私はまだしも、そういうものはやみくもにされておりながら規制基準を信用せい、こういうのは、いささか空理空論に流れてしまうのではないか。たとえば火力発電所の問題に関して大臣は言われているんですけれども、現実にそれでは脱硫の技術が実用化されておるか、この亜硫酸ガスの問題については煙突を高くするくらいのことしか対策はない。住民運動について批判をされておるんですけれども、私は公害防止の上で住民運動というのはきわめて重視をされなければならぬ問題だと思う。それはなぜか、おわかりのように、住民というのは被害者ですから、これ、公害防止の技術も開発されていない。そういった中では被害者である住民が運動を起こすというのはこれは当然のことである、これを情緒的だからもっと理性的なものに振りかえろ、こんなことをおっしゃっても全くこれはナンセンスな話なんですね。ですからそういう空理空論ではなくて、現実に通産省が行なっておる公害防止施策というものが、ずっと企業サイドに寄っておる、あるいは対策というものがおくれておる、こういう時点での公害防止の運動というものは一体どうなるのか、公害防止一体どう進めればよいか、こういうものを全部否定し去っておるように、私は大臣のことばを受け取るわけです、そうとしか受け取れぬでしょう。私はそういうふうに思いますが、大臣いかがでしょう。
  190. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 住民運動について、これを否定するあるいは批判するといったような趣旨で私は全然申したわけではありません。従来放置されておったところから見れば、そういうことが起ってくることは先ほども申し上げましたが、むしろ当然で、あるいは全体の意識を高める上で助けになることかもしれないとすら申しましたので、そういう趣旨で申したのでは全然ございません。  それから現在の規制に対するいろいろな体制、これが不十分であるということは、私も十分そういうことを認めます。通産省の行政が企業寄りで、現実にいまの段階であるかというお尋ねでございますが、私はそれはそうあってはならないというふうにつとめております。なお、従来の残滓があるいはあるかと思いますが、極力そうあってはならないということを、常に省内に申しております。したがって、これらをまとめまして、私のお答えいたしましたことは、現在の規制の体制が十分であるとか満足であるとか申したわけではさらさらなく、これだけ問題が盛り上がってきて、結局その落ちつくところは最終的にはこれだけの排出ならばまず危険ではない、それを越えるものは危険であるから排出してはならない、そういう規制基準についての合意あるいはそれを守る、守らなければならないという義務及び責任、それらのものが確立をしなければならないのであって、それで初めて公害行政というものが信頼を受けることになるであろう。しかし、その方法はやはり考えていけば、結局、客観的に科学的に計量的にこれをとらえるということになるのではないかという意味を申し上げたわけでございます。
  191. 小野明

    小野明君 それで住民運動を否定しないというおことばですが、これは私も了解いたしますけれども、現実このデータというものが、全部秘匿をされた中で規制基準というものができあがって、それを信頼せいというふうに言われてもこれはできない相談だと思うんです。かつて大臣は、いまの資本主義社会の中においても、企業は他に迷惑をかけてはならないという原則は貫かるべきである、こういうふうに言われたと思います。ですから規制数値云々という以前に、そういう姿勢でこの公害防止対策というものを推し進められていかれるお気持ちであるのかどうか、数値のみに云々と、数値はでたらめの上に成り立っておるということを私は申し上げたいのです。それより以前の基本姿勢というものについて再度お尋ねをします。
  192. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 数値がでたらめであるというお話になってまいりますと、これは現在の段階においていろいろなデータが隠されておるために正確な数値が把握できない、こういう場合があるのではないかと言われたと思います。私は、それはそういう場合があろうかと思います。それは現実にはしかしどのようにして起こってまいりましたかといいますと、いろいろな調査を国なり地方団体がいたしますときに、これが必ずしも法律に基づく調査権といったようなものでない、法体制の整備がおくれましたから現実が先へ進みました。そこで法的な権限に基づくものではないが、企業あるいは地方にあるところのデータを任意提出を求める、こういったようなことを過去において何回かいたしております。そういたしますと、法的な権限に基づいていない検査の報告を求める権利あるいは報告する義務というものが法律上存在いたしません場合には、これらのデータの提供というのはいわば任意の提供になるわけでありまして、その場合には提供を求める側も一応秘密は保持するという道義的な私は責任があろうと考えるわけでございます。少なくともそういう了解の上に出されたデータというものはそれなりの保護をしなければならない、こういうことから先ほどお話しのような国あるいは地方団体が企業から集めたデータを秘匿しておったというような事態が起こったわけでございます。そこでどうあればいいかということになれば、もう当然規制基準にかかっていって、それに関するデータというものは備えなければならない、また提出をしなければならない。虚偽のデータを提出するときはそれなりの罰則を受ける、こういうふうな法の整備が実はなされなければならないわけでありまして、そういう道にわれわれはいま進んでおるというふうに考えるわけでございます。
  193. 小野明

    小野明君 それから第二点の問題についてはまだお答えがないようですが、この公害の人体への影響は、医学的に解明されていないから云々、この問題ですが、すでにこの公害病と認定されている四日市ぜんそく、イタイイタイ病、水俣病で御承知のとおり、公害のおそろしさというものはいやというほど医学的に解明されている。ですから私は住民運動というものは起こってくると思うのです。この点は一体どういうお考え方ですか。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも先ほどのこととの関連で申し上げたわけでございますが、ただいま御指摘のような病気が人体に影響しておるということは、これはもう明らかであって、そのことを否定したのではございませんで、何が何PPM以上であれば人体にどのくらいの害があるか、そういう測定がまたどのような条件のもとに行なわれた場合にそうであるかといった場合についての計量的な証明というものがはっきりしておりませんでございましょう。したがって、そういうことを究明していくことが公害を厳密に規制するための一番正確なやり方ではないかということを申し上げたわけでございます。
  195. 小野明

    小野明君 それは、おわかりのように、医学上、学問上、疫学調査というものを経なければ出てこない問題である。しかし、これを公害防止という政治的な観点から見ますならば、大臣の見解というものはまさに誤っているのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  196. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっとただいまのお尋ね、もう少しふえんしていただきまして……。
  197. 小野明

    小野明君 従来、これらの病気で、大体公害が人体に及ぼす影響というものが明らかである。これは大臣が言われるのは、それぞれ疫学調査をやった上でその数値と病気との関係、これを明らかにしなければならぬというふうにおっしゃった。これは、学問上、医学上の問題であって、公害というものは、四日市ぜんそくとかイタイイタイ病とか、こういう病気を起こさない先取りした規制でなければならぬ、これが生きた公害対策ではないか、こういう観点から見ますならば、大臣のことばは私は現実に即さない、むしろ誤りではないか。公害対策を後退させるものではないかと思います。
  198. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は学問的に証明されない限り、明らかに病気であっても病気でないと言わなきゃならぬと申し上げたのではございません。学問的に究明されないけれども、どう考えてもこれが原因で病気になったというようなことはしばしばございますし、いま御指摘のケースも私はそうであろうと思います。私の申しましたのは、そこからさらに進んで、この程度の規制をしなければそういう公害が発生するぞということを、これはいますぐとは申しませんけれども、先々に向かってはっきり基準を立てていくためには、しょせんは学問に基礎を置かなければならないであろうということを申したわけでございます。
  199. 小野明

    小野明君 それで、もう時間もまいりましたから、この二点というのは、非常に公害防止対策なりあるいは被害者サイドから見ました場合に問題になる点でありますから、いまあえてお尋ねもいたしたわけであります。でありますから、一番国民が疑惑に思いますのは、通産省というのは発生源企業に対するやっぱりきびしい規制を持っておるかどうか、大臣がはたしてどういうお考えなのか、あるいは人間尊重というものについてどうなのか、こういう点を一番心配しておる矢先に、この二つのちょっと説明を要するような、長時間説明をしなければならぬような御発言があったところに私は問題があると思います。この点で通産大臣の再度公害防止に対する基本姿勢というものについて言明をいただきたいと思います。
  200. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま冒頭に申し上げましたとおり、このような問答が出てまいりましたのは、電力立地との関係であったわけでございます。  そこで、火力発電所が自分の近くに立地をするということは、だれしもおそらく愉快ではない。かりにそれが公害基本法にいうところのどの公害をも起こさないにいたしましても、あのようなものが近くにありますことは決して、第一、景色としてもよろしくないわけでございますから、だれもそれを特に好む人はないであろう。そこまでは私は明らかだと思います。  さて、そういう状態を続けていって、かりに国全体として電力が不足になったということになればどうなるかと申せば、これはもう一番端的には、いま病院で寝ておる人はおそらく死んでしまうかもしれない事態になりますことはすぐおわかりのことでございますから、そこでどう考えましても、もう電力——火力発電といったようなものははなはだ不愉快なものであるから、もうどこへきてもらっても困るというような事態になれば、これはまたそれなりに国民の福祉に大きな影響のあることでございましょうという、お尋ねに対してそういうことを申し上げたのであります。したがって、それは企業サイドというようなものの考え方ではございませんので、こういうふうに経済が進み、技術が進んでいく中で、ともすれば公害が発生しやすい。その公害をどうやって計量的に客観的にとらえて、われわれの生活に危険のない程度に押えておくか。しかも他方で電力は必要であろうし、また鉄道も必要であろう。そういう両方の需要を満たしていくということがわれわれの課題であるというふうに私は考えております。それは決して、いわゆる企業サイドというものの考え方ではございません。
  201. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣は何か一時間——五時に退席だというような話を伺ったんですが、   〔理事内田善利君退席、理事小野明君着席〕 通産大臣、この重大な公害問題が審議される場に時間を切って出席されるということは、公害の本家である通産省としては、ぼくは責任者としておもしろくないと思うんですよ。だから、やはりぼくはもっと出席すべきだと思いますよ。宮澤さんはその点は山中さんを見習われたほうがいいですね。山中さんは朝から終わりまでずっと毎日おられる。通産大臣ももう少し勉強してもらいたい。  第一ね委員長、この公害問題が審議されているとき、自民党の議員は一人も来てないじゃないですか、これでいいんですか。もっと出席するように委員長からやかましく督促してくださいよ。公害問題は野党だけの問題じゃないですよ、そうでしょう。自民党の議員が一人も——選挙運動に熱心なことはいいけれども、しかし、この公害問題をほっちゃらかしておいて選挙運動をやることはよくないですよ。注意してください。  それでまあ通産大臣が先に帰るという話ですから、通産大臣に対する質問から入りますがね。小害防止費用の問題で少し聞きたいと思うのですが、新聞報道によりますると、公害防止費用の増大等を理由に、石油業界、また静岡県でちり紙組合が製品の値上げを先日発表しました。このちり紙は発表すると方々からひやかされまして、漫画で、人の便所で公害処理かというような漫画すらも出たでしょう。まあさすが恥ずかしく思ったのでしょうか、ちり紙は撤回しました。ところが、石油業界は各社さみだれ的に値上げが始まっています。値上げ幅も灯油が一キロリットル千百円、ガソリンが同じく千円から千五百円、重油が一キロリットル五百円、こういうふうにほぼ同じような値上げ幅を示してきておる。  そこで質問をいたしますが、値上げ理由は一体何か。何で値上げをしなければならぬのかということを通産大臣に伺っておきたいと思います。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 不足でございましたら後ほど鉱山局長から補足をしてもらいますが、今回の値上げの動きというのは、私はそれを是認するという意味でお答えしておるんでございませんで、私が聞いておる解釈では、やはり一つは世界的な石油資源に対する需要増、ことに低硫黄のものについてはさようでございますけれども、世界的な低硫黄及びその他の石油資源に対する需要の増大、これがまたなぜであるかと申しますと、これは理由がいろいろ各国によってございますけれども、それから供給のやや伸び悩み、これには中東紛争などの関係がございます。そうしてさらに運賃、船賃でございます。船賃の上昇、これは船腹の絶対的な不足というふうに見られますが、この船賃の上昇はわが国の場合には一応長期契約を立てておるところが多うございますから、まともにはかぶっておりませんけれども、ある程度はかぶっておりまして、ことにこの最後のものが最近の値上げの一番の近因ではないかというふうに考えております。なかんずくわが国の石油精製業は御存じのとおり、いわゆるダウンストリームのほうだけを持っておるわけでございますから、ほとんどが。利益の調整が弾力的であるアップストリームのほうをよその国に持たれておるということで、企業的にはもともとかなり不利な条件にございます。その上に自己資本の構成比なども非常に低い、弱い、そういうことがあり、またともすれば従来過当競争気味である。そういったことの複合ではないか。まあ公害のための手当てというものを、ことに脱硫装置ということになれば、相当の大きなコストになるわけでございますが、これはやがて顕在してくる問題であろう。いま全然ないとは申しませんけれども、近因はただいま申し上げたような幾つかの複合ではないかと思っております。
  203. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、この値上げはやむを得ないのだという見解なんですか、どうなんですか。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもが基本的に考えておりますことは、自由競争を維持することによって物価が安定する、あるいは下がるということが基本的に大切なことであって、話し合い等々による値上げが行なわれることはこれはもとより違法でありますから許すことはできませんし、また便乗的なことについてもこれは不適当であると考えておるわけでございます。
  205. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 宮澤さんのお得意の経済法則の需要供給の問題がまず出てきたわけですが、そのほかにいまあなたがおっしゃったタンカーの運賃の値上げの問題も出ましたね。そこでこの運賃の値上げについて少し聞きたいのですが、運賃が値上げということで石油にはね返ってくるとするならば、出光興産は大きなタンカーを持っているでしょう。二十五万トン以上のタンカーも持っておりますね。だから出光興産の石油というものは自分のところの船で運搬ができるものだと思うのですね。私は昨日用意のために通産省の方に部屋に来てもらって話を聞きました。そうすると、原油の運賃は四十四年下期は一キロリットル千二百八十円だった。ところが、ことしの下期になるとそれが約倍以上二千円ほどプラスして三千三百五十七円になっておる。そのために石油の値段が高くなった、こう言うのですがね。そうすると出光タンカーの二十五万トンの船一ぱいを例にとりますと、これは一キロリットル、約一トンですね。これを千二百八十円で運んでおったときと三千三百五十七円になったときと比べると、トンについて大体二千円もうかるわけですね、出光の船は。そうすると二十五万トンタンカーだと一度行ってくると昨年よりも五億金がもうかるわけですね。一ぺん行ってくると出光タンカーは七億四千万円になるわけですね、運賃が。そうすると船のほうで、運賃で七億からもうけて、そうして運賃が高くなったといってまた石油にそれをぶっかけて石油のほうでもうける。運賃でもうけて石油でもうける二重のもうけをやっておるということになると思うのですが、どうなんですか、そこは。大臣答えなさいよ、大臣に質問しているのだから。
  206. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 具体的なことにつきましては後ほど局長から申し上げますけれども、まあ一般的に申しまして、たとえばいまのお話の中にはバンカーオイルのことは入っていないわけでございます。先ほど申しましたように、原油そのものの値上がりがございますものでございますから、タンカーが大きければ大きいほどバンカーオイルがどれだけ上がっておるということはこれはひとつ計算してみなければなりませんし、経営全体としてすべてが自社船で運ばれておるというふうにも考えられません。あまり具体的なことはその会社のことで私はわかりませんが、なおその会社はおそらく別途に脱硫装置で金を使っておるということが相当あるのではないかと思いますが、具体的な会社のことでございましたら鉱山局長から申し上げます。
  207. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 原油の輸送につきましては長期契約とスポットものの契約がございまして、約八五%は長期ものの契約をいたしております。これは運賃が動いておりません。いま先生の御指摘のありましたのはスポットものの運賃でございまして、一五%程度のものが非常に動いておるという状況でございます。  それからもう一点、出光タンカーのお話が出ましたけれども、これは自社保有のタンカーということになりますと、計画造船の中でそれほど高い比率でございませんので、十数%のものでございまして、この八五%のうちの六十数%が鋼船で積み取っておるわけでございますが、これは船会社の計画造船のものでございます。出光におきましても、鋼船、自社船による長期の安い運賃で輸送するとともに、スポットものの船を使うというのが実情になっておる次第でございます。
  208. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一ぺん、どこの会社はどこの船で一年間どれだけ運ぶかという表を出してください。それから議論しましょう。ぼくは出光の船だけはわかっているからいま出光の問題を出したのだが、自社船で運ばなくても、あなたみたいに、長い期間の契約になっているね。それならばその契約が切れるまで石油の値段上げませんか。そうじゃないでしょう。契約中といえども運賃値上げを理由に石油の値を上げるでしょう。どうなんですか。安い、前の契約で運んでいる石油は値は絶対上げませんか。どうですか。
  209. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘のとおりで、長期の契約による原油の輸送運賃は安いままで計算をし、それからスポットものの上がったものはこの上がった分を計算して、総合してコストを計算するという形になりますから、スポットものの上がった単価がそのまま価格に、コストに響くということではございません。八十数%の長期契約もので、動いていないものは、動いていないということでコストが計算されます。
  210. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこが非常に不明朗ですよ。どれだけが長期契約で現在入って、あとスポットものがどれだけ入るか、それをバランスをとるとこれだけの値段になる、その資料を出してこなければだめじゃないですか。それを出さないで、スポットものと従来の長期契約のものとバランスをとってこれだけ上がりましたと、そんなばかなことはないでしょう。それは出光は大体自分のところで運ぶのじゃないですか。出光タンカーがあるのでしょう。それは何も出光の石油は値上げする必要ないじゃないですか。何で上げるのですか。おかしいじゃないですか。
  211. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほども申し上げましたように、出光は出光の自社船で運ぶものについては値段は変わらないということでございまして、出光でスポットものを使うということによって総合的な運賃がかかるのでございます。総額的に申し上げまして、四十四年度の実績に比較しまして四十五年度の現在のフレートの値上がり状況を織り込んで、しかも長期用船を八五%と見込んで計算いたしますと、先ほど御指摘のように、千数百円スポットもので上がっておりますけれども、総合して計算しますと、三百七十円程度の値上がりにおさまるはずでございます。
  212. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 よく注意して答えてくださいよ。ぼくはあなたたちの答えの中から、あなたたち通産省が企業の側に足を入れて答弁しているか、国民の立場に立って答弁しているかということをぼくはよく聞いているのですからね、注意して答えてくださいよ。ほとんど出光は自社船で運ぶでしょうが、それでほかの会社は自社船がないから、よその船で運んでもらう。それではよその船で運んでもらう会社の石油の値段と自分のところの船で運ぶ会社の石油の値段と違わなければならないじゃないですか、その理屈だったら。どうですか。それが同じになるということはどういうことですか。それはあなた理屈が合わない。
  213. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 出光以外のところも自社船を持っておるところもございますし、それから船会社の計画造船で運んでおるものもございますが、計画造船で運んでおるものも運賃は安いわけでございまして、計画造船によって船会社が運航しておる船につきましても安い動かない運賃でいま輸送しておるわけでございます。
  214. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、あなたそういうふうに答えるから、よその会社は自社船がどれだけあるのか、自社船でどれだけ運ぶのか、それでほかの会社に頼んで運賃をかけて運んでもらうのはどれだけか、それの対比の合計から、それから出さないとほんとうの価格は出てこない。あなたのような言い方だったら、それを出さないで、そんなことを口先でやっておったって、だれも信用しない。一番たくさん船を持っているのはどこですか。出光は総生産の石油の何割を自社船で運んでいるのですか。言ってごらんなさい。そんなごまかしはだめだよ。
  215. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) いま手元に各社別の自社船比率は持っておりませんが、先生御指摘のように、自社船で全量運んでおるということは現実ではございません。出光といえども自社船で全量運んでいるという事態ではございません。
  216. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それ知っていますよ。いま出せなければ、出光は自社船でどれだけ運ぶ、三菱は自社船でどれだけ運ぶ、それを出しなさいよ、資料として。それから議論しましょう。いまのやり方ではぼくが聞いているのは、出光がたくさん自社船で運ぶと思うのですよ。それならば運賃の値上げを言うならば、出光の石油はよその石油よりも安くならなくちゃならないじゃないかというのです。だから自社船をほとんど持っていないところの石油はそれは高くなるかもわかりません、運賃が高くなれば。それでは話が合わないですよ、あなたの言っていることは。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 長期契約の……。   〔理事小野明君退席、委員長着席〕
  218. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 長期契約も聞きました。それじゃ長期契約の済むまで石油の値は上げぬということなんですか、どうなのか。
  219. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 長期契約部分については動かないわけでございますが、一五%前後のスポット分の動きだけはコストに反映するということを申し上げたわけであります。
  220. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、その長期契約が済んだ来年になると、いまよりもうんと石油の値が生がるということなんですか、どうなんです。
  221. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) この点につきましては、長期契約の中の特に邦船につきましては、計画造船で造船をし、できるだけ安く邦船で運ぶという基本でございますので、現在のレートにすぐはね返ることのないようにお願いしておるわけでございます。
  222. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こっちを押せばこっちがふくらんで、こっちを押せばこっちがふくらむ、あなたの答弁は。そういう答弁じゃものが結着してきませんよ。それじゃ自社船で全部運ぶことになったらうんと値下げますか。
  223. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 船会社としては計画造船でつくったものについてはできるだけ切り詰たコストで運賃をきめておる次第でございますので、私ここで詳しい知識ではございませんが、自社船とそれから船会社の計画造船の運賃構成とはそれほど差があるとは思えないのでございます。
  224. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これ資料出させないと、こっち押せばこっちがふくらんでいくので、決定的なあれが出てこない。だから資料ちゃんとそろえてくださいよ、今日の段階で。それから何だったら、自社船が来年度どれだけできる、それも出しなさいよ。それで議論しましょう。そんな船の運賃が上がったということで値を上げるというのはおかしいですよ、ただそれだけで。それだったら出光はうんとぼろもうけすることになりますよ。  それじゃ次に移りましょう。ガソリン、灯油等が小売りでは二重価格であるということを知ってますか、通産大臣。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは大口の需要者と小口という意味でございましたら、そういうことがございます。
  226. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 小売り値段でいろいろ安いのと高いのとがあるのですよ。私も事実石油ストーブを冬になりますと使いますから、一かん買いますよ。よその店でこれだけ、こっちの店ではこうだ、値段が違うのですよ。御存じでしょう。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはおそらく地域によりまして、店によりましてございますと思います。
  228. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 同じ地域で値段が違うのですよ。同じぼくの住んでいる豊中で値段が違う。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結局それはございましても私はふしぎでないので、小売りのマージンとかいろいろございますから、それは違ってさしつかえないのじゃございませんか。
  230. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、ぼくは聞いておきたいのですが、物価問題としてね。高いものが適正な価格なのか、安いほうが適正な価格なのか、どっちなんですか。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは現実の問題としましては、一言で申しましたら力関係とか、営業政策とかいうことになると思いますけれども、小売り店が自分のマージンを切ってどういうサービスをするかといったようなことに関係がございますから、おのおのの営業方針によることだと思います。
  232. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、小売りはそういうことがあってもいいといえば、卸のほうもそういうことがあっていいということになってくるわけですか。卸は一定しなければならぬということになるのですか。どうなるのですか。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それも卸と小売りとの関係から生まれることでございますから、卸の仕切り値段が全部一定でなければならぬということはないだろうと思います。
  234. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 石油を電力、鉄鋼などがたくさん使うわけでしょう。したがって、石油の値上げが電力料金、鉄の価格、こういうものにはね返ってくると思うのです。そうすると国民の生活、物価に大きな影響を与えるものだと、こういうふうに思いますが、電力、鉄鋼等大口需要家の値段も上がるのですか、今度の石油の値上げで。どうなんですか。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最近の石油製品の価格の値上がりにつきまして、先ほど幾つかの要因を申し上げましたが、その中で須藤委員は特にタンカーのレートについて言われたわけでございます。そこでわが国の場合、幸いにして平均で八五%程度のものが長期契約でございますので、いま世界のいわゆるトランパーのレートの上昇をまともにかぶらずに済んでおりますけれども、何がしかの影響はこれは否定できないことであります。そこで大口についても、おそらくは供給者の側は、それだけの価格の自然上昇分はある程度見てもらいたいということを言っておるのであろうと思いますけれども、両者で合意をしたということは私はまだ聞いておりません。
  236. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題は、先の問題と関連するわけですが、一年契約なら一年契約というのがありますね、大口使用の電力とか鉄鋼という場合。そうすると、その一年契約の値段が続く限り鉄鋼やそれから電力の値上げもしない、こういうことははっきり言えるのですか、どうですか。契約期間中は値上げをしないということははっきり言えるのですか。これは重要な問題だからはっきり言ってください。
  237. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 鉄鋼業界、電力業界と石油業界の値ぎめは半年ごとに交渉いたしております。
  238. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 主として公害のほうの話をひとつしてください。
  239. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは公害ですよ。  そうすると、半年は上がらぬと、半年たったあとは上がるかわからぬ。こういうことですね。平年は上がらぬとはっきり言ってください。
  240. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま現実に電力とか鉄鋼とかいうお話でございますから申し上げますけれども、まず第一に鉄鋼につきまして。確かに燃料としての油は上がり気味でございますから新しくどういうような大口契約をするか存じませんけれども、その結果鋼材の価格が上がるとかなんとかということでは私はないだろう。いまの市況から見ましてそういうふうには考えられません。  それから電力でございますが、これはもういつぞやも御指摘がありましたとおり、石炭の引き取りの問題とかいろいろな事情がございまして、一部いまの料金で苦しいかなと見ているところがございますけれども、当面電力料金の値上げを私として考える、あるいはそういう申請があるような事態にあるとは思っておりません。
  241. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういうふうに石油の値上げが電力料金の値上げや鉄鋼価格の値上げというふうなことになってくると、それがすべての物価に影響してくると、結局弱い国民だけが——公害ですね。公害ですよ。物価も公害一つですよ。値上げのしわ寄せを受けなければならぬということになるわけですね。だから、やはりそのもとであるところの石油の値上げなどということは、そう簡単にやるべきことじゃないですよ。できるだけ押えていくべき問題だと思いますよ。タンカーの値上げを一つ例にとったから、ぼくは出光のタンカーを例にとって話したのですが、そういう点を通産大臣としてはよく考えて処置していくべきだと、これはぼくの意見ですが、思いますよ。  そこで伺いたいのは、出光興産、三菱石油、大協石油、昭和石油、ゼネラル石油、共同石油、日本石油の昨年度各社別利益金は幾らか、ひとつ述べていただきたい。
  242. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 有価証券報告書によりまする税引き前の利益、これは日石が七十五億、三菱が三十億五千、出光が七十四億、それから共石が六億五千でございます。
  243. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはいつの利益ですか。
  244. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 四十四年度の税引き前の利益でございます。
  245. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼくは四十五年度を言ってほしいのですが、東洋経済社が「会社四季報」というものを出しておりますね。ぼくはここに持っているのですが、これは単位百万円と書いてありますが、そうすると昨年度の四十四年度は経常利益は四十九億八千二百万円ですね。そういうふうにこれに数字が出ておりますが、あなたの言うのが正しいのかどうか。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは下期とか上期とかどこの会社とか……。
  247. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは日本石油です。
  248. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 上期だけ……。
  249. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いや、これは四十五年三月決算です。
  250. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 御指摘の数字は四十四年度下期の実績だと存じますが、私どもの手元では四十九億と出ておりますからほぼ一致するのではなかろうかと思います。日石について下期——四十四年上期も入れますと、先ほど申しました七十五億になる。
  251. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 下期だけね、そうするとほかのものは出ますか。
  252. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほど御指摘のありました三菱石油については三十億五千万。下期だけでございますか。
  253. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 下期だけ。
  254. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 二十一億、出光が四十八億、共石が六億九千万、こういう数字になっております。
  255. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは次に、昨年度各社別に公害防止装置にどれだけの金を使っているか。
  256. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 恐縮でございますが、四十四年度の実績の見込みとしては脱硫装置のほか大気汚染、水質関係その他を入れまして三百九十億の投資になっております。実はこれにつきましては、各社からの個票を使ったそれぞれのもので計算をいたしておりまして、各社別の計算になっておりませんので、各社別はどうかという点ですぐお答えできないのでございますが、個票を計算機でこういう項目別に整理しておるのが手元の数字でございます。
  257. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 各社別はいまないということですね、手元に。  それでは、これもそこにないですね、各社別の設備投資が幾らかということは。
  258. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 計算をし直さなければこの数字は出てまいりません。時間をいただきたいと思います。
  259. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いまちょっと伺いましても、やはり相当会社はもうけておるわけですね。私の持っている資料ですと、日本石油にしましても三菱でも何でも非常に需要が好調でどんどんもうけておる、増資をやろうというようなことも考えておるということが出ているわけですが、そういう状態の中で、すぐ公害とかなんとかということを理由に石油の値上げをしてくるということの考え方ですね、ぼくはやはり考え直していかなければならない点だと思うのですが、私は国民の側から申しますなら、この石油の値上げということは、これはどうしても今日の状態では納得することができないと思うのですよね。第一、この値上げは第一に石油大企業の利益をそこなわずに公害防止費用を国民のふところからしぼり取ろう、しぼり出そう、こういう考えのもとに私は公害云々ということを口に出してきていると思うのですがね。  それと第二には、設備投資も企業の側から申しますなら、結局利潤拡大のための設備投資でしょう。これをわれわれの肩にかけてくるということは、これもあたらない。当然利益金から出費するのが私はほんとうだと思うのですが、こういうことを理由に石油の値上げの理由にするということは私は了承することができないと思うのです。公害をまき散らし、公害防止の世論が高まると、それを逆にとってこの間石油連盟の代表の方が、国民が青空をほしければ金を出して買えというような不届き千万なことを言っているわけですよ。ああいうことは聞きのがすことのできないことだと思うのですね。大体青空というものは私たちが生まれた瞬間から死ぬ瞬間までわれわれのものなんだ、ほんとうは。青空、美しい海、美しい川、すべてわれわれの、あんた、ものなんじゃないですか。それをかってに企業が汚しておいて、それで国民が青空をほしければ金で買えと言うのは何ごとですか。そんな言い方ありますか。そろいうことは私は許しておいてはいけないことだと思いますよ。これは政府当局もしっかりたしなめる必要があると思いますよ、そういう不届きなことを言う人間は。こういうものの考え方からくる物価値上げは、私は、これは国民は絶対に承知することはできないと思います。  そこで公正取引委員会おりますか。——公正取引委員会としてこの石油の値上げに対してどういう見解を持っていらっしゃいますか。
  260. 吉田文剛

    説明員(吉田文剛君) お答え申し上げます。  主として石油の元売り業者の値上げについてでございますが、私どもとしましては、独占禁止法の立場から言いますと、石油を各社が個々別々に上げることはこれは独禁法から見て違反ということは申せません。ただ協定をして値上げをするとかという事実があれば、これは違反として法律に基づいた措置をとるということでございます。  それで、八月の社長会で、これは八月十日に開催されました石油連盟の社長会で石油のタンカーのフレト・アップがあって困ったという程度の話が出たという事実はつかんでおりますが、ただ石油製品の値上げについてそこで合意が成立し談合があったという事実はいままでの調査ではまだつかんでおりません。しかし、疑いはございますので、現在関係各社の動きにつきまして十分監視を続けている状況でございます。
  261. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 須藤君ちょっと。通産大臣に五時までという約束ですから……。
  262. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 わかっている。  結局公取として各社がずっと競うて、ずっと値上げをしようという意見をみな持っておるわけですね、今日。その値上げ幅が各社によって条件が違うと思うのだよ、ぼくは。先ほども申しましたように、出光と三菱と、自社船を持っている会社と、えらい違いがあると思うのです。だから、それは同じような値上げをするのならば、これは公取の問題になってくるわけなんだがね。それともこういう条件で値上げすることがはたして公取の立場で正しいと思うのか、公取としてはどの程度の値上げが正しいと考えるのか、そこはどうなんですか、公取としては。
  263. 吉田文剛

    説明員(吉田文剛君) 公正取引委員会立場、独占禁止法の立場としましては、各社がどういう理由で値上げするかということまでは関与できません。ただ、話し合いの事実があって、それに基づいて値上げするということであれば、独占禁止法違反ということで措置ができると思います。それでお尋ねのように、続いて同じ値幅である期間を置いて値上げをするという場合に、はたしてそれが値上げの話し合いに基づくものであるのか、それともいわゆるプライスリーダー・シップで、どこか大手が上げて他が続くものであったとすれば、問題はあると思うが、単なるプライスリーダーであれば現在の独禁法では規制はできない。もし値上げの話し合いがあれば共同行為として規制できると、こういうふうに考えております。
  264. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、話し合いがなしにめいめいがかってに上げるんだったら、公正取引委員会としては、その値段が幾ら上がろうとそれに対しては意見を述べることもできないし、処置はできないということですね。国民が幾らそれからひどい目にあおうと、それは公正取引委員会の知ったことじゃないと、こういうことですね。
  265. 吉田文剛

    説明員(吉田文剛君) 知ったことではないということではございませんが、ただ、独占禁止法でそれを取り締まる根拠がないということでございまして、これは、各行政官庁に係がおられるわけですから、そちらのほうで指導をしていただくほうが筋ではないかと考えます。
  266. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたのその御答弁で、公正取引委員会のものの考え方というものが、ぼくはよくわかったわけですよ。公正取引委員会のあのほうの法律にはどういうことが書いてあるかということですよ。やはり国民の生活というものを考えていかなければならぬ、守っていかなければならぬということがあの中に書いておるわけですよ。それがあなたの答弁で出ていないですね。やはりかってに上げて、相談して上げないと幾ら上げても私は知ったことではない、ということでは情けない公取ですよ。それでは国民は公取を信頼しませんよ、そういうことを言っていると。通産大臣、私は国としましてこういうふうな国民の生活を守るという立場でやはり業界を指導していくべきだと思うんですが、通産大臣としてどういうふうな指導をやっていらっしゃるか聞いておきたいと思うんですよ。そうでないと、私は先ほどから大臣の答弁を聞いておりますと、やはり大臣の答弁も企業の立場で、国民の生活を守っておる立場でないような感じがするんですよ、大臣並びに政府委員の答弁を聞いておると。だからそれではいかぬと思うんです。やはり通産大臣としては、物価とも非常な関係のある省ですから、だから通産大臣としてこういう石油の値上げがすなわち電力の値上げ、鉄鋼の値上げ、ひいてはあらゆる物価にこれがはね返っていくというような立場にあるとき、この石油の値上げがされようとしているときに、それに対して通産大臣としてどういうふうな指導をしていかれようとしておられるのか、それを伺っておきたいと思います。それで通産大臣に対する質問は終わりますからどうぞ。
  267. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど公正取引委員会事務局長お尋ねの中で、まあうんと幾ら上げても知らぬのかというようなお話でございましたが、私どもの理念で申しますと、一社だけがそういうとっぴな値上げをするということは、もうとりもなおさず、お客さんをよそに取られるということでございますから、自由経済のもとで、そういうことが起こらないはずでございます。その場合、みんなが一緒にやればこれは不公正取引の疑いが濃厚でございますことは、先ほど公取からもお話があったとおりで、したがって、私どもとして基本的に最も大事なことは、そういう価格が自由な競争の中で形成されるように行政でやっていくことが一点でございます。  それから第二点は、わが国の需要は年々ふえてまいりますから、それだけの設備の増設、新設というものを需給を見ながら適正にきめていく。今年も八十万バーレルほどの増設を認めるわけでございますので、その両方のことが行政の基本になるだろうと思っております。
  268. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 山中長官お待ち遠さまでした。来年四十六年度の公害関係予算として、概算二千五百億というものが示されているように思うのです。しかもその中で財投が千三百億くらいですか、それからあとは一般会計から出すというようなことが伝わっておりますが、そこをはっきり示していただきたいと思います。
  269. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 植松内閣審議官より……。
  270. 植松守雄

    説明員(植松守雄君) 公害予算として予算要求をいたしておりますのは千六十一億でございます。そのほかに公害関連の予算が別にございましてこれが六十九億、それから最後にいまお話にございました財政投融資でございますが、これは地方団体の起債分も含めまして二千三百七十億でございます。
  271. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この一般会計並びに財投を合計すると私が承っておる二千五百億をずっとオーバーしているということですね。
  272. 植松守雄

    説明員(植松守雄君) そうでございます。
  273. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それは小さいところでどういうふうにどれだけ使うということは出ておりますか。
  274. 植松守雄

    説明員(植松守雄君) いま手元にございますのは各省別の数字でございまして、項目別には分けてはございません。ただし、大きな項目についてはある程度のことはお答えできると思います。
  275. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 各省別の来年度のあれがあればわれわれいただきたいと思いますが。
  276. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) よろしゅうございます。あとで出したいと思います。
  277. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょうでなくてけっこうです。それからまたいろいろ意見を述べたいと思います。  そこでどうですか、山中長官は、公害を一人でしょうような熱意を持ってがんばっていらっしゃるように見受けるのですが、来年度の予算でどのようなことがなされて、それで日本から公害をなくすことができるというようなお考えですか、どうなんですか。
  278. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害はまだ予測できないような形態のものも世界各国であり得ないことではないと思いますので、公害と私どもがいま概念的にとらえている、法律で規定しているというようなものについては、少なくともこれ以上ひどくならないし、改善するための措置がこれで前進を開始することは間違いないと思いますが、ただ予算は概算要求でございますので、先ほども一ぺんお答えいたしましたが、重複その他緊急性あるいは具体性等について若干私どもの本部が感触として大蔵省査定に当たっての参考意見を述べたいという閣議了解をとっておりますので、それらの感触をさらに添えてまいりますから、必要な場合はさらに上乗せもあり得ると思いますし、そこら大蔵省と、いわゆるかけ引きでなくて、国全体が公害というものにほんとうに腹を固めて、国会全体としても国民に向かって責任のとれるような、責任を問われることにたえ得るような予算の仕上げ方をしたいという気持ちでいるわけでございます。
  279. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 山中長官は衆議院のほうでこういう意見を述べられたと聞いているのですが、公害防止費用は原則として企業負担とすると、こういうふうに言明されていると聞いておりますが、公害対策本部としてコスト高論が出てきて、石油の値上げとか、なんとか、こういうことが出てくるわけですが、これに対してどういうふうに対処されようとするのか。
  280. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 企業が存在しなければ公害現象というものは起こらなかったことは自明の理であります。これは法律論以前の問題だと思うのです。ですから、企業の原因者がはっきりしておるものについて企業が全額負担をするという原則は当然の原則として成り立つと思うのです。しかし、それらの企業がそれらの公害防止施設等を、設備投資いたしましたりした場合に、これが直ちに収益に貢献しない施設でありますだけに、そこに企業の科学技術面の新しい分野での開発の努力、さらにそれを収益を生まないものを投資しても、それが製品のコストにはね返らない企業内努力のこの二つが要請されなければならないと考えます。かりにそれらの努力を怠って製品に価格を転嫁したという場合において、これは公正取引委員会とも関連ありますが、全部がそうしないでやるとすれば、これは企業の努力によってコストを吸収し得たところの製品は同じ製品で同じ品質で価格が安い。そして他の社の製品は安易に企業努力を怠ったというようなことにおいて、製品転嫁した場合における価格は、当然同じものであって高いということになるわけですから、これは消費者の選択の場において、先ほど通産大臣も言われたように、石油に例をとるまでもなく、その市場の売り手としての敗退を意味することになろうと思いますので、そのようなことは新しい企業の存立のためのモラルとして要求される事態が来ておるものと私は判断をしております。
  281. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間が迫ってまいりましたので、質問も急ぐことにいたしますが、この「鉄鋼界報」という印刷物が私のところへまいりまして、それを見ますると、公害防止施設に税額控除をせいということが出ているわけですね。ちょっとそれを読みますと「本来公害防止施設は生産に寄与するものではなく、しかも負担限度を超えようとしている。したがって、公害対策一層の推進のため、公害防止施設を新たに取得した場合、その投資額の一定割合を税額控除できる制度を創設すべきである。」という点ですね。それからもう一つは、公害防止設備についての固定資産税の非課税の範囲を拡大してもらいたい。高い煙突だとか、戻水設備というのですか、それからコークス炉ガス脱硫装置、集じん設備、こういうものをやるときは税制で処置してもらいたい、そういうことが言われておりますが、これに対してどうですか、大蔵省は。どういうふうにこれを評価し、この意見をどうするつもりですか、税制で特別扱いをするという考えか、いま祖税特別措置法で大企業には税制面でずいぶん私はもてなしをしていると思うのですが、大蔵省はなおこういうことで減税措置をとるのかどうか、どうですか、大蔵省は。
  282. 山内宏

    説明員(山内宏君) 御質問のような要望が出ておりますことは承知をいたしております。企業がみずから行ないます公害防止のための費用につきましては、これは原因者が負担をするというのはこれは大原則であるとわれわれ考えております。もちろんその公害対策事業についてはいろいろ社会的な問題も惹起いたしておりますし、そういう趣旨で税制においてもある意味での誘導措置を講ずるということはあり得ると思いますし、現に御承知のとおり、公害防止に関する特別措置制度もございますが、少なくとも、われわれの考え方といたしましては、国が補助金を出すのと同じような性格を持ちますところの税額控除という方式を新しく導入するということは現在のところ適当ではないと考えております。誘導のための租税の措置といたしましては、これは他のいろいろな政策目的、これは租税特別措置法はいろいろな目的がございますが、その目的に応じていろいろの特別措置を講じておりますけれども、それとのバランスから見ても、現在の特別償却制度、これが大企業に限らず中小企業においても当然こうむる恩典でございますけれども、こういう制度が至当であるかと考えます。
  283. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 長官はどういうふうにお考えになりますか。
  284. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 原則としては大蔵省の言うとおりでありますが、しかしながら、来年は租税特別措置法の中で公害対策については大手、中小、零細を問わずあらゆる配慮をやはりしていかなければならない補完措置を要する年になろうと思いますので、全部認めないというわけにはいかぬと思いますが、しかし、いま私はその陳情を聞いておりませんが、いま須藤委員の言われたようなことであるとするならば、その事柄については、大蔵省の言うとおり、それはあまりにドラスチック過ぎて、そういうような税額控除ということに結論を持っていかれるのは飛躍であると思う。それぞれの企業が圧縮記帳として……、倒産寸前の企業というのはいまの業種ではないと思います、いま言われた業種はそういう範疇に入らない、したがって、それらのものは現在の税法の、先ほど大蔵省の言いました特別償却、あるいは圧縮記帳等、現在一応正常な範囲において特別に認め得る限界と思える分野の範囲内において措置することに落ちつくのではなかろうかとも考えますが、税額控除という方法は、よほどの特別の場合がなければ、たとえば身体障害者の所得を何とかという特別の事情がなければ行なうべき制度ではないと考えております。
  285. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、公害防止施設は、大企業が社会と国民に対する当然の責務として完備すべきものだと、こういうふうに考えております。企業活動に当然含まれるべきものである、こういうふうに私は考えております。したがって、税制上の優遇措置をとるべきでない、またその必要もない、これが私たち考え方なんです。大蔵省並びに山中長官の話を聞いていると、私たちその考えと多少やっぱり違いがあるように思うのですね。ということは、やはり皆さん方が大企業の側に立っておる、こういうことに私はなると思うのですよ、これは私は新聞記事で非常におもしろいと思ったのですが、九月二十一日宇都宮市で開かれた一日内閣で、高校一年生の方が、総理に対して、自民党が企業から金を受け取っていることで政府・自民党が企業に公害防止を呼びかけるのは無理ではないかという質問を高校一年生がやっておるわけです。それに対して、総理はたじたじとしながら、政府は特定企業と癒着していると誤解されているが、そんなことは絶対ないと、こういうふうに総理は一応は答えてはいるわけです。しかし、自民党に対する政治献金表を見ますると、公害企業といわれる日本鉄鋼連盟、これが昨年一億一千四百十万円。電気事業連合会、これが一億円。それから日本自動車工業会八千百九十六万円。石油連盟が五千五十万円。あらゆる企業の元締めである日本銀行協会が一億二千万円と、こういうふうに献金をしているんですね。これではやはり私は大企業と癒着していると言われてもしかたがないのじゃないか。高校生はこういうものを見て、自民党や佐藤内閣は大企業とも癒着しているんだ、だから佐藤内閣の手ではこの大企業が出す公害を処理することはできないのだ、こういうふうに高校生は純な気持ちで解釈しておると思うのですがね。山中長官はこういう高校生の叫びを私はしっかりと受けとめて、そして自分の立場に立って、国民の立場に立って公害を絶対なくす、大企業の利益を守らないと、われわれは国民の健康を第一義として守っていくのだというこの信念を持ってぼくは山中長官がいかれることを希望するのですが、これは私の希望がいれられるかどうかは別としまして山中長官の決意を最後に聞いておきたいと思うんですよ。
  286. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一日内閣の高校生の話は別に置きます。これはまあ高校生が自分で完全につくった原稿であるかどうか等の問題もありましょうから、その話は別にして、指摘された事柄そのことについては、やはり私たちは謙虚に考えなければなりませんが一連のシリーズものの中で企業の関係者からこれは別段ギブ・アンド・テイクを意味しなくてもある意味の資本家としての、企業家としてのこれは保険みたいなものだということを言った人がおるようであります。これはおもしろい表現だと思うんですが、しかし逆に、自民党がそのようなことによって今日の公害問題、いわゆる太平洋もこえ地球的な規模になっているような問題についてそのようなことが原因となって実行すべきことができないということであったら、その保険は給付がされない、すなわち自民党内閣というものが国民からさよならされる。私は自民党の、党のことは言いたくありませんが、自民党内閣自民党というものが今後も国民の信頼を得て存立できるかどうかという問題の一つにこの公害問題の処理のしかた、姿勢というものがかかっておると覚悟しております。私のやり方が自民党から山中はやり過ぎである、体質山中は相いれないというならば、私に対して党から解任すべきである、山中はやめさせろという意見が出るはずでありますが、目下のところはいかなる理由でありますか、私の一連の国会の公的な場において話しておりますことについて、本部長である総理からも党からも異議は出ておりませんので、所信に向かって邁進するつもりであります。
  287. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 山中長官のそういう意見にそれはけしからぬということがもしも実際に出たら、それはたいへんじゃないですか。それこそもうたいへんなことになる。だから言う言わぬは別ですよ、これは口に出して言わぬと思うんです。そんなことを言ったらたいへんだから。しかし、実際にほんとうに国民の健康第一というところでぼくは貫いていくべきだと思うんですよ。ところが、先ほどからずっと聞いていると、自民党・政府の姿勢というものは今後も企業の利益の上に足を突っ込んでおる、こういうふうに受け取れる点がたくさんあるわけです。だからそうではなしに、ほんとうに国民の健康の立場に立ってやっていくべきだということを私は最後に言います。  それからもう一つ、最後に一問。これは運輸省来ていますか。——これもやはり企業の利潤追求の結果だと思うんですが、二十五万トンタンカーではあき足らぬ、百万トンタンカーをつくれといって、三菱重工は長崎のほうに百万トンタンカーのドックを建造しようとしておりますね。ところが、この大型タンカーの安全性について私は聞いておきたいんですが、近年タンカーはどんどん大型化していって、百万トンを目標にしている。ところが、日本の船長協会の調査、九月三十日発表の全日本海員組合の点検結果でも大型タンカーの安全性がきわめて不安定なものだ、こういうことが出ているわけです。ここに資料がありますが、「総点検の対象になっている大型船は、四十年度以降に建造された三万重量トン以上、または長さ二百メートル以上の鉱石専用船、鉱油兼用船、大型バラ積み船と二十次造船のタンカー計九十八隻。」を調べた。その結果「点検は海員組合も立会って日本海事協会が実施し、これまでに資料の集まった六十六隻分を分析した結果、一隻平均百十三カ所ものキ裂などの損傷が見つかった。」こう言っておるんですね。それで船長さんも非常に不安定なものだ、こういうふうに言っているんです。また、日本の港というものは非常なラッシュ状態で、いつ船が衝突するかわからぬという状態、「かりふおるにあ丸」のあの事故ではありませんが、大型タンカーがもし港の港湾内で事故でも起こせば、私は重大な災害が起こると思うんですね。そこで、事故は絶対ないということは私は言明できないと思うんですね、いつ何どき起こるかわからない。そのときの対策としてどういうことを考えておるのか。その対策の立たないままに百万トンタンカーというような声が出てどんどんと大型化していく。これは利潤追求の結果そういうふうになってくるのですが、運輸省としてどういうふうに考えているか、どういう対策を持っているか聞いておきたい。
  288. 尾花皓

    説明員(尾花皓君) お答えいたします。  去年とことしにかけまして、不幸にも大型船が沈没しております。これは突然破壊したということでございまして、ことしの二月十日の「かりふおるにあ」事故の直後、省としましてもこれはたいへんだということで、それじゃ類似の船について何とかその前兆的なものがあるのではないかということで調べました結果がいま海員組合の報告のものでございます。それからそのほかに、やはり年代的に相前後したものでございましたけれども、船齢のわりに衰耗が激しいという船が出てきましたので、そういうたぐいのタンカーを十五隻調べております。  これについて、まず前者についてでございますが、船というものは現在は全部溶接でできておりますので、昔のようなリベット船の場合にはなかなかそういうクラックというのがなかったわけでございまして、溶接船になりますと、一部私どもとしては小クラックだと思いますが、たとえば縦の骨と横骨のつなぎのところにちょっとピンでとめたような形で隅肉溶接というような溶接をやっております。そういうところがどうしても切れやすい。  それからもう一つは、二つの板が貫通したところに穴があいておりますが、そういうようなものはメンバーとしては非常にたくさんの数がございますので、一隻当たり数えるとやはり百という、あるいは百をこすものも出てきます。ですけれども、これはいままでも何とかこれを少なくしたいということですでに研究会も開いておりまして、だんだん少なくなっております。  それから現在問題を起こしたたぐいの船等も、今回の実験点検によりましたら、だいぶ「かりふおるにあ」が起こしたような損傷に導くものとはとても考えられない。それでちょっとがっかりしておる次第でございます。現在点検で見つかった範囲の傷というのは、従来検査ごとに発見しては補修し、そしてそこのところの力を分散させることによってだんだんとめていく。造船というのは、多分に一方において経験工学的なものがございまして、そういうふうにしてだんだんとまっておりまして、やはり現在そういうふうにして既存の船は直していく以外にないと思っております。  それから大型化についてでございますが、現在二十五万トンの船ができ、それから三十万トン、それから四十万トンの船が建造されようとしておりますが、この安全性につきましては造船技術審議会等でまず設計が可能かいなか、見通してどうかということがすでに決定されてこれは大体できる、これは材料とかそれから構造、工作等について検討しましてできそうであるということでまず見通しを立てておりまして、それから大型化に対しては現存船の損傷の傾向というのをじっと見詰めまして、だんだん逓減していくというようなこと、それからいろいろと大型船というか、その時点における最高の船の損傷等の手当てというものが一応解決した時点においてそれはこういうふうなスロットと申しますか、そこにカラーピースでふさぐということでほとんど解消するということが計算の上でもまた実績においても非常に顕著に出ておりますので、そういうふうな工作をすることによってできるということが、これは局内に設けました学識経験者を含めた委員会で決定されて、そして初めて三十万トン、さらに四十万トンまでの建造はよかろうということで現在建造にかかっておるわけでございます。  それから百万トンにつきましては、これは将来を見越してそういうこともあり得るんじゃないかということで一応そういう施設についての許可が出たものと考えておりますが、この建造許可のほうは船舶検査官の分野でございませんので深くは申し上げることができません。それで構造関係については、私ども検査のほうからフィードバッグして、技術的に可能であるというところで見ていっております。  それから、衝突については、これは相手船のあることで、いろいろこれは船で申しますと、その海上交通的なものも加味されるのではないかと思いますが、ただ船の構造が外力によってどうなるとか、外力で破れるのは相当航程の中を走らなければいけませんので、港湾等で起こる事故、これはやはり海上交通的な交通規制によって十分のがれるものと考えておりますので、いま御質問の点はそのようにすることが一次的なことではないかと考えております。
  289. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これで終わりますから。  小型船なら、かりに火災を起こしても被害はそう広がらずに済む場合がある。ところが、二十五万トン、三十万トンというやつがかりに東京湾で衝突して、火災を起こすと、その油が東京湾に流れ出ると、そうしたら東京湾がおそらく火に包まれてしまうということも起こりかねないわけですね。東京湾が火に包まれれば、その周辺の工場も被害を受けてたいへんなことになると、そういうことを予測するならば、そう簡単に大型船、大型船といって、大型船一本で進んでいっていいものかどうか。災害がかりに起こったとするならば、東京湾で二十五万トンの油が流れて火が出た、そういうときにどう対処しようと、そういうときの消火施設とか、そういうことを考えているのかどうか。そんなことを設備も何もしないでおいて、大型船、大型船でいくということには危険が伴うと思うのですよ。それをぼくは一つ聞いておるのです。だから、大型船ということは、そう簡単に何でもかんでも大型といって野方図にいくべきも  のじゃないと、私はそう思います。やはり、利潤追求の結果こうなるんだから、安全率というものが非常になくなってしまうと思うんですね。そのときにどうしますか。それだけ聞いておきましょう。もしも、火災が、二十五万トンの油が東京湾  に流れたときにどうするか。
  290. 尾花皓

    説明員(尾花皓君) これもちょっと私の所掌でございませんが、現在官房のほうに「安全・公害」というのがございまして、そちらで東京湾のこの大型船を入れるということについての問題についていろいろ議論されておりまして、大体二十五万トン以上のものはなるたけ入れないようにしようと、それから、そのかわりとして、東京湾外にCTS基地等を設けて、パイプラインでやるというようなことを考えております。それで、将来もうこういうふうな海上交通のふくそうするところに大型船を入れるということは、船の挙動と申しますか、非常に大きな船は自由がきかない、それから海は広いようでも、相当喫水が深うございまして、その通る幅というのは制約されるということから、これはやはりお説のように、ある大きさ以上のものは限るべきではないか、こういうことで運輸省内で検討を始めております。  それから火災等につきましては、これは船舶安全法の中に、消防設備で、船に比例して薬剤を持つようになっておりますし、それから爆発等につきましては、タンカーについてはこれはやはり爆発と申しますのは、ちょうどガソリンのガス爆発限界にあるときには爆発するようになるのでありますが、そこにならないようにコントロールするような設備ができておりますし、それからそのためにガス検知器等を設けておりまして、また発火源をなくするために電気設備は防爆型になっております。その安全施設についてはやはり小型船というか、大型船も同様であります。いま自主的にやっておりますが、大型船については消火剤等は二倍ぐらい持つというようなことを自主的にやっておりまして、相当考慮を払っております。
  291. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなことを言ったら、この間、和歌山県の下津で火災起こしているじゃないですか。あれ、何で火災起きたんですか。あんたの言うようにちゃんとしておったら、火事起こらぬじゃないですか。何で火災起きたのか。そうでしょう、下津で火災起こったでしょう。そういうむちゃなことを言っちゃいかぬよ。これだけの設備がありますからだいじょうぶなんていうこと言い切れますか。だって現に起こっているわけだ、下津で。二十五万トン以上がああいうことになったらどうしますか。処理できますか。もっと責任のあることを言いなさいよ。
  292. 尾花皓

    説明員(尾花皓君) 下津で起こりましたのは、船のバンカー中だと思いますが、ちょうど油のこぼれたところにたまたま隣りの小さなボートのほうの火の気によって一時に燃えたということがございます。こういうところに非常に注意をしまして、船のほうとしては、大型船に比例するだけの消火剤を持って安全法上は守るというふうなスタイルでやっているわけです。
  293. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ああいうことが起こり得るんですよ。小型船にも起これば大型船にも起こり得るんですよ。そのときにはどうするか、処置がないじゃないですか。
  294. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 須藤君、もう時間ですから……。
  295. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もういいです。
  296. 占部秀男

    委員長占部秀男君) 本日の調査は、この程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時四十六分散会