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国務大臣(
山中貞則君) 財源の、主として
地方自治体の
公害防止、もしくは排除事業に対する財源措置の問題でございますが、大蔵省も来年度の予算では重点のわずかな項目の中に
公害対策の費用というものを入れておりますし、当然
地方自治作の財源につきまして、現在ある交付税制度をやめて補助金にしろとか、あるいは現在の
政府債でない年金事業団等の融資等も活用できるようにしろとか、いろいろな御
意見がございましたが、これらの技術的な問題は今後詰めることにいたしまして、
基本的には国の財政と
地方財政とは、毎年借りたのか返したのか、何かやったりとったり変なことをしておりますから、ああいうようなこと等もこれからやめてもらって、国のやるべきこと、並びに
地方のやるべきこと、それぞれに予算措置もきちんと整ったもので措置していかなければならぬだろうというふうに考えております。
第二点の事業者負担の問題につきましては、これはもう
基本法の第二十二条で、すでに別に
法律で算出方法等まで書いたものをつくれ、
法律をつくれと
指示されておるわけでありまして、これをいままで三年有半ほっておいたという
責任は
政府にございまして、まことに申しわけないことだと思います。四十一年に厚生
大臣に
公害対策審議会が答申いたしましたときの
考え方、
厚生省が
各省調整をいたしまして原案でもって出たときの
考え方、さらに調整がなって、なってといえばきれいに聞こえるのですが、傷だらけになって
国会に提出されましたときの
国会提出法案、さらにそれが
国会において修正されて、現在のように人命尊重と生活環境を入れた第一条第二項というものが、明らかに
国会においてせめてここは明らかにせいと修正された経緯等から考えたときに、当然それらの問題もメスを入れなければなりませんし、また「別に
法律で定める。」となっておりますもののうち、
公害の
紛争処理法というものはすでに先
国会で通しまして、現在は事務局をつくって、有識者五名を充てて、
国民の
相談の窓口、そして刑法以前の
相談で処理できるものはあっせん、仲介等をしようという
努力の準備中でございますが、いま
一つ残ったのが御
指摘の費用負担の問題でございます。先般通産省の産業構造審議会の小
委員会が答申を中間報告の形で出していただきました。これを拝見いたしますと、はなはだばく然といたしておりまして、企業の負担の
考え方の方向について述べたりまとめたというようなことで、初めからどうも土台がはっきりいたしておりませんし、
法律で求めておる少なくとも最低幾らの負担をどのような算出方法を根拠としてするのかということについては
指摘しておりません。これらの点をはなはだ遺憾とするものでありますので、これからさらに私の手元で調整をいたしまして、これも次の
国会に企業の費用負担区分に関する
法律を
基本法の命ずるとおり提出したいと考えますし、その内容は、国がどのような特例措置をとり得るか、財源上の特例措置をとり得るか、
地方はどのようにしてそれを補い得るか、またその前提に、企業はいかなる
公害の種類ごとにどの程度の負担を最低しなければならない義務を負うのか、これらを明確にして提出をしたいと考えます。
第三点の無過失
責任の問題と
公害罪の問題でございますが、これは私の手元で初めから取り上げて
議論をいたしますのにはあまりにも純
法律的なあるいは法技術的な問題が強いわけでございますので、いわゆる現在の過失または故意ということによって受けた権利というものをめぐって
公害の加害者、
被害者というものが争いを展開しておりますが、これが万全でなく、また非常に、逆に言うと、不完全であるためにどのようなむだな時間が投ぜられているかは、力の弱い
被害者の
立場の人々がそれを故意または過失と立証することが科学的にもあるいは物理的にも立証が困難である、能力的にも、資金的にも乏しいということから考えますと、このままではいけないということが明らかに言えると思うのであります。そこで無過失
責任というものをはっきりと、かりに
公害に限るか限らないかの問題もありますが、それをつくる場合において、はたしてそれが実際上、法運営上に、原子力のような問題とはまた少しく性格を異にいたしますし、また、かといって一般の普通災害とも違いますから、ここらのところは法務
大臣と
相談をいたしておりますが、
基本的には無過失
責任罪、単独罪にしますか、あるいは
公害罪というものの中に入れますか、いずれにしても加害者も含めて検討をしようということで、
大臣も積極的でございますが、ただいま部内において全く純粋な
法体系論、法理論上の問題からの
議論が現在展開されておりますので、しばらくこれも模様を見たいと思いますが、これも
対策本部といたしましては、次の
国会に提案をしなければならぬと考えておる次第でございます。
次に、
地方自治体に
権限を
委譲した場合の
権限の内容について工場閉鎖、移転もしくは自動車の通行禁止等の
権限を自治体の長に与えたらどうか。ここらの点はやはり
権限の問題の中で
基準設定の
権限と
規制の
権限とは少しく野放しでおまかせするについては問題が存在しようかと考えます。たとえば水系に例をとってみますと、
一つの水系に幾つもの県が
関係をしておる。
公害から見れば、加害県と
被害県があるという場合に、
被害県のほうが加害県の
知事に向かって幾ら声を大にして呼びかけても、私の県は苦心惨たんして誘致した企業である、さらに私の県内には
被害は起こっていないというようなことで言を左右にされたんでは、これは
権限を
地方に譲りっぱなしにしたことによってさらに
住民不在の混乱が起こるおそれがありますので、こういうケースは
中央においてさらに私
ども手元で引き上げて再調整をするということも考えておかなければ、ただただ全面的に
規制権限を与えるというだけではたいへん問題があろうと存じます。ことに中小零細企業等におきまして、県を異なって同じような現象で、海面はつながっておるのに、県が違うだけで一方のほうの中小零細企業は倒産の危機に瀕し、一方は何とかやっていけるということでも困りますので、これらのことを十分に勘案をいたしまして、
規制を全面的にまかし得るものと、あるいはまかせる場合に上限を定めておかなければあぶない問題と、あぶないというのは失礼になりますから、
ばらばらになるおそれがある問題、こういう問題を含めましてもう少し検討の時間をかしていただきたいと考えます。