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国務大臣(
山中貞則君) 御
意見は私も全く同感と言ってよろしいと思います。ただ、借家住まいをしながら月賦で食うや食わずというのもちょっと何でしょうが、ほかのものはがまんしても
自動車を持って、そうして日曜日朝早くから家族全部で行くことに喜びを感じておる、小市民という表現もまたおかしいかもしれませんが、一般の
人たちのささやかな希望と申しますか喜び、ソ連あたりにおいては、車を申し込んでも何年たっても買うこともできないということから考えれば、
日本人のそういうある
意味では少し背伸びをしておると思うんですけれ
ども、車を自分は持っているんだ、あるいは車に乗った親子の写真をいなかのおとうさんおかあさんに送って上げることにも
一つの喜びを持っているような、小市民的な
日本人のすなおな喜び方というものもこれをとめるわけにはなかなかいかないと思いますが、ただ、アメリカで何人に一台の車であるから
日本もまだどんどんふえていいんだ、アメリカと絶対同じ水準に
自動車の保有台数がいかなければならないんだということは、
日本の場合にはどうであろうか。先ほ
ども申しましたとおり、もともと狭い四つの島国の中で六割は山岳地帯でありますから、その残りの
分野に世界最大の過密度をもって人間が住んでおる。この全く極端な状態の中で
自動車のみがどんどんふえていく状態というものは、幾ら輸出に貢献する基幹産業でありましても、やはり大きな問題の存するところでありましょう。したがって、たとえば現在は
自動車を購入する際は車庫証明が要ります。これはみんな車庫証明をとって
自動車を買っているはずですが、何と路上駐車の多いことか。しかも、それは確かに車庫証明をとっているけれ
ども、この人は架空の、あるいは友だちの、あるいはつとめ先のどこかを申告しただけであって、事実は自分のうちの前に平気で朝までとめておくのだ。私はこの
委員会でしたか、大雪の朝に
自動車の天井に一尺近く雪を乗せているやつは全部とっつかまえて、車庫証明はうそだというので取り締まれと。ただ、二度目はみんな雪を払ってきますから、一ぺんでだめになるだろうと言って、半分笑い話のようなことでしゃべったことがありますが、これらの問題等から考えても、やはり
日本人が車を必要以上に持っているんじゃないかという疑問をどうしても私は抱かざるを得ません。かといって、これを所得幾ら以上の者でなければ車を持つべからずということも言えないところでございましょうから、これらのことは、今後
日本の
国民生活と車という問題について一人一人
国民の問題として、また
政治の問題として当分
議論の続くところであろうと考えます。
なお、都市政策につきましても、これほど車がふえるものとは都市政策の比較的新しいところでも考えていなかったでありましょうし、戦後一番戦災の中から模範的な都市
計画をしたと思われます名古屋市でも、
自動車の脅威が全くない都市とは言えないということを考えますと、これからの東京を
中心とする大都市における
自動車というものに対してどのような見方でとらえなければならないのか、
自動車というものが必需品であっても、それは動いて物と人を運ぶ時間だけの必需品であって、これがとまって、それも乗っていないときには路上の障害物であるということを考えた場合に、障害物たらしめないで
道路の上に車がとまっていない状態にするためには、地上もしくは地下に徹底的な国家政策を持った駐車場というもの、一般市民が利用できるようなものをつくらなければならない事態もくるであろう。あるいはアメリカあたりみたいに、都会のすぐ外郭部に相当大きなスペースを持ったショッピングセンターみたいなところが、あるいは私鉄その他と連携をいたしながらマイカー族の広い駐車場を提供して、そのかわりそこの場所からは大量輸送の鉄道もしくはバスでもって都心の勤務地へ運んでいくというような形態等は、すでに外国においては見られる例でございますので、
日本の都市
計画も幾らおくれたとはいっても、これからやっていく場合には少しでも先手に回るような政策をとっていく必要がある。そうでなければ、いまに
中央自動車縦貫
道路等が完全開通などいたしますと、
日本じゅうの至るところの県のナンバーが東京に殺到することを考えただけでも、りつ然たらざるを得ないわけでありますから、われわれみんなで知恵をしぼって、これからの新しい都市政策の
あり方、ことに立体的な構造についての十分な
検討を先手をとる政策の
展開が必要であると考えます。