○国務大臣(山中
貞則君) 私さっき要らぬことあ申しまして、いま法案づくりに没頭しておるからと申しましたのは、現在のきょうあすの時点のことを言ったのであって、そちらのほうのみにいま重点を移しまして交通のほうをないがしろにしているということを申し上げたわけではないので御了承願いたいと思います。
私の、
政府として掲げました五十年までの歩行者の
事故の半減、並びに自転車の歩行者に類する一番弱い
立場の
人たちの死亡
事故を半減したいというのは、悲願であり、政治の
目標として達成するための努力を怠ってはならぬと思いますし、その意味における効果は逐次出つつあると思います。しかし全体の死者というものは、それは御
承知のとおり交通もますます快適になり、みんながますますマイカー族になって運転免許を取り始めますと、やはりあらゆる要素がからみ合って非常に重大
事故、あるいは死亡その他の死傷者の数は非常に多い。
自動車対
自動車、
自動車のみの
事故というものがたいへんふえておる、このことを遺憾に思うわけです。そのためにはハンドルを握る人の問題としての飲酒運転禁止というものを徹底的にやろうという法律が皆さんの努力で実を実らせたことはすでに御
承知のとおりであります。これの実施はいま厳に行なわれていると私は思っております。そこでそれらの問題を、今後
交通事故というものはゼロにする
方法はないかということでありましょう。しかしやはりどのような取り締まりをやっても、交通という事情の上に
自動車というものが走っている以上は、やはり
事故というものは絶滅を期することははなはだ困難だというふうに私は思いますが、これは努力するしないの問題とは別な話です。たとえば一ぺん私冗談言って笑われたのですが、バキュームカーと衝突してそこら中がたいへんなことになったということはどうも見たことがありませんし、あまり聞いたことがない。そこらにはあの車だけにはどうも衝突も接触もしたくないのだという運転者の心理というものがどこかにあるような気がしてならない。そうすると、やっぱりきょうは人の身あすはわが身という気持ちで、私がいつも言っておりますように、
交通事故は加害者、
被害者はある日突然ある時間にそういう
立場に分かれるにすぎない。だから加害者も賠償を払うために自殺をしたりするような例もよく聞くのでありますけれ
ども、このような不幸というものを私たちはやはり見逃してはいけないのだ。しかしながら、絶滅を期するための努力というものを一生懸命やってもそれはなかなかむずかしいことであろう。さしあたりは日本においても歩行者
事故が五〇%近く、いわゆる走る凶器という
実態でありましたものが、最近は三五、六%近く
自動車自身もしくは
自動車対
自動車というような
事故による死傷者がふえてまいりました。これなどはどうもアメリカ型の走る棺おけというような意味の
自動車の姿になりつつあるのではないか。この点、非常に私たちが政策上死亡者を減らす上において、どうしても年率にすればふえていってしまう、こういうことが
原因になっているのではないかと考えてたいへん残念に思っているわけであります。
前置きが少し長くなりましたが、そこで
自動車の生産を制限し、もしくは使用を制限するかという問題であります。これは私たいへんむずかしい問題であると思います。ということは、私たちみんなは
自動車というものがあればそれだけ便利であるということも実際上日常
生活の上からも、あるいはそれぞれの
職業の分野からも、個人商店に至るまで知っております。その場合において、一定の規模以下のものは営業用として車を持ってはならぬ、あるいは一定の収入以下のものは、ましてや月賦等で車を買うようなことをしてはならぬ、隣のうちが
自動車を買ったからというので置き場もないのに集団住宅あたりでは
自動車をみんな持たなければ肩身が狭いというようなこと、そういうようなことで買うようなことはいかぬという、そういう制限もたいへんむずかしいでしょうし、一方
自動車の生産の面というのは、これは押えることというのは、なかなか国策でございますから、輸出のほうにその五分の四を向けろ、国内販売は幾らにしなさいという命令もなかなかできかねますし、輸出というものは国内市場の底辺というものがあって初めて輸出というものが確保できることは弱電産業その他の示すとおりでございます。それらの現象が、しかし最近は
自動車の問題とか、あるいは新しく予想される
自動車に対する諸負担の問題、いろいろの問題が重なりまして、最近は
公害問題等における
自動車の動く排出源の規制の問題、アメリカその他に輸出している車はきびしい規制に耐えるために、日本の国内単価でいえば五万円ぐらいのバーナーとか、あるいはスクリーン等をつけたものを出しておきながら、国内においてはそういうものをつけないで、そして販売をしておる業者のあり方というような問題等もいろいろと議論されてまいりました。いずれ遠からずこれらの問題は、アメリカにおいてはニクソンの勧告しました一九八〇年までというのを一九七五年までというきびしい上院の全会一致の修正がなされておりまして、そのためにアメリカの
自動車業界は、もし下院までこの上院修正どおりの内容で通るとすれば、おそらく一九七五年ないし七六年までには現在出しておる排気ガスの九〇%をカットすることを余儀なくされて、それ以外の車は市場に出ることができない、こういうたいへんきびしい
目標が示されつつあるわけでございます。これはひとりアメリカのことのみならず、日本もやがてアメリカにそのような規制があって、日本の車もその規制の中で輸出をすることになるでありましょうが、国内においてもアメリカにおける規制よりもゆるい排気ガス等を排出しながら走る車を生産することは許さないという時期はごく近く私もくると思うわけであります。現在のところ直ちに立法措置をもって日本においてもそれらの
自動車に対する規制をやるについてはもう少し議論が必要だと考えて、次の国会に
公害対策の観点からの
自動車そのものに対する規制法らしきものは出しませんけれ
ども、遠からずこれは皆
さま方と一緒になって議論をし、そして
自動車を交通の問題から
公害の問題という生命と環境を守る戦いの相手としてとらえていく
時代は近いというふうに考えておりますので、これは党派を越えた問題としていろいろと御意見を交換したいと考えます。