○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、
建築基準法の一部を改正する
法律案に反対の討論を行ないます。
この法案は
住居専用地域におけるボーリング場、トルコぶろの排除など
用途地域の純化、建蔽率の若干の緩和、有毒ガス発生建材の
規制、避難用昇降機の設置など、防災対策の強化など一定の積極的な側面を持っています。しかし同時に、
都市の中高層化を促進しながら、それに伴って激しくなる
関係住民の生活環境の破壊については、現行
規定のまま放置するなど
都市住民の生活を守る上で、どうしてもわが党の反対せざるを得ない内容を含んでおります。
その第一は高さ
制限の廃止、
容積制度の全面的な適用など、
都市の
既成市街地内の中高層化を促進しながら、その周辺の低層
住宅に住む
関係住民の
日照、通風の確保、風害対策など生活環境を維持するための必要な
規定に欠けています。これは高層ビル、マンションなどの
建築によって、一方的に住民へ被害を与えている現状を放置するにとどまらず、逆にこれを合理化し、一そう
都市住民の生活環境の悪化を導くことにならざるを得ません。この点についてわが党は
日照、通風の権利など
都市住民の生活環境を維持するために守らなければならない権利を条文の中に明記すること。
二、高層
建築物に、この権利を守る上で必要な
最低限度の
規制を加えること。
三、
特定行政庁は高層
建築物、大
工場等の
建築の
確認にあたっては
関係住民の発言権を認め、また、
建築行為者に
関係住民との協議を義務づけること。
四、権利の侵害にあたっては補償の義務を明記すること、などを主張します。
第二は、取り締まり問題についてであります。もともと違反
建築は
住宅難、地価の高騰に起因するものであり、佐藤内閣の高度成長政策によって一そうの人口の
都市集中を進められながら、
住宅は個人まかせとする
住宅政策のもとでその原因が拡大再生産されつつあることは明白であります。こうした
状況のもとにおける取り締まりには多くの矛盾と一定の限界があります。現在
既成市街地内には現行の
建築基準法が制定される以前にすでに建てられ、その適用を受けていない多数の
住宅があります。これらの
住宅の改築にあたっては法の適用を受けることになっており、これを厳格に適用すれば私道
基準、建蔽率
制限などによって従前の
建築面積より著しく小さくなり、実際上改築が不可能となる場合も少なくありません。また、
都市周辺部の新市街地においても、家族構成の変化に伴って増改築を必要とする住民もまた多数います。しかも、このような生活上やむを得ない
理由によるものが違反
建築の大きな部分を占めていることも周知のことでありまして、これを厳格に取り締まれば、一方で
住宅難を一そう深刻化することは必至であります。にもかかわらず、本改正案は悪質な違反と同一な扱い、一律に取り締まりを強化することにしております。
わが党は、こうした一律の取り締まりを改め、生活上やむを得ない必要に基づいて行なう増改築については、それが道路上に
建築されるなど著しく
近隣住民に迷惑を及ぼすものでない限り、取り締まりは緩和すべきであると
考えます。また、改築にあたって移転を希望する者については、公営
住宅への入居など代替措置をとることによって、ざる法といわれてきた
建築基準法の執行を実効あるものにすることが必要であると
考えます。こうした措置をとりながら、他方、
自分の利益のために他に被害を与えて顧みない悪質な違反や取り締まりの緩和に便乗して
近隣住民に著しく迷惑を与える違反
建築に対しては、町づくりの上からも適正な取り締まりを強化することが必要であります。そのために被害を受ける
近隣住民から工事の停止、是正を求める申し立てのできる
制度を設けて住民の協力を得なければなりません。
以上の
理由で、わが党は
建築基準法改正案に反対するものであります。