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国務大臣(
根本龍太郎君) どうも高道な国策全般にわたるあれでありまする。私、総理
大臣でも
農林大臣兼務でもありませんので、はなはだこれお答えにくいのですが、まあせっかくでございますから、責任がないとは言わないけれ
ども、所管のこととまたはそういう意味でありますから、今日までなった経緯についてひとつ私の
考えを申し述べます。
御承知のように、米が非常に過剰になったということは、一つは営農技術、農薬、こういうものの非常な進歩もさることながら、価格
政策の大きな作用をしておるわけでございます。他の農産物についてはほとんど価格保障がないにもかかわらず、お米についてはもう価格の保障がはっきりできている。その上に今度は
生産されたものが全量無条件で買い取られておる、こういう結果、現在
日本にある農産物のうちでは一番安定かつ有利な農産物になったわけでございます。一労働時間当たりの
所得からすれば、現在ミカンの次にお米なはずでございます。しかもその上に共済制度が、これが裏づけされています。そういうふうになりますというと、だれ人も一番楽をして
所得が多くなりたいというのが、これは
農民の念願でございまするから、急速に造田が行なわれてまいりました。しかもそれが一番造田が大きく伸びた
ところは北海道でございます。あるいはまた従来限界
生産地で、水田をつくることが必ずしも容易でなかった
ところのものが、あるいはビニールをもって砂地あるいは特殊土壌でもやれるようになった。
機械化が非常に進んでまいりましたのでごく簡単に、土木機械で簡単に造田ができる。それから水利
関係が有利になったということで、この四、五年間に
政府施策以上に急激にふえてしまった。一方において
生活の水準が向上するとともに、
日本の
国民の食
生活の構造が変わってまいりまして、米をなるべく食わずに他の畜産物並びに野菜、くだもの等に集中した、このために需給のバランスがもう
政府が
考えておったこととは大きな差が、しかも急速に出てきた。これが現在米における一つの矛盾だと思います。これがもし自由経済であるならば、それだけの過剰がありまするならば、必然的にこれは
農民みずからが採算上合わなくなるから
減反していくが、
食管制度ではそれをやらないことになっております。そこで、本来ならば米価買い上げ値段を下げるか、あるいは買い付け制限をすれば、おのずからこれは
調整がとれるけれ
ども、その
政策は現在の
農民に対して非常なショックを与えるからそれはやらない。そこで四十四年度は値段を押えておる、そうして買い上げは無制限にやる。ここで
相当減反もしくは減収するであろうと思った
ところが、やっぱり何としてもいま一番お米が有利でありまするから、全然
減反はありませんで、北海道のごときはもう一年にたしか五千五百ヘクタールか、それよりもまだふえておる、こういうような
現状でございます。そこで今回はやむを得ずに——これは非常にいい
政策とは申されません、
農民にとりましても
政府にとっても。そこで非常手段として、
減反いわゆる作付転換並びに
休耕にした、こういうことだと思います。これに対して
農民の
認識も、昨年までは御承知のように米価闘争運動であり、もうたいへんな反対であったが、
事態を
認識してくると同時に、これは何らかの形で
農民も
協力して米の
生産調整をしなければ、幾ら政治的闘争をやるとかいっても、これは物理的にも食管そのものがつぶれてしまう。こういうような
認識から、
政府がいまの減産奨励について何らかの積極的な保証をしてくれるならば、われわれも
協力しようということで今日に来たっております。
ところでそういう
段階にまいりまして、先ほど
田中先生から御指摘のように、論理的に正確を期するならば、将来を
見通して
日本の
地域を主産地形成をするという
観点、適地適作の
観点からして、
地域的な任務分担を明確にして、そうしてそれがどのように未来につながっていくかということを明示すべきだ。これは確かにそのとおりに
考えられてしかるべきだ。しかしこれをいますぐに来年度に実行するということは、これは時間的にもなかなか無理である。そこで知事さん並びに
農業団体の
諸君といろいろ折衝協議の上、やはり
地域の特殊性あるいは
農民の意識、転換の難易等を一番よくわかっておるのは
地方自治体であり、同時に
地方の
農業団体である。これらの
諸君に自発的に
自分の構想を持って、そうして
計画を立てて、これに
政府が
協力するということがより現実的であり、
農民もより安心してついていける。そういうことでこういう
政策をとったということでございます。
そうして、これに関連して、いま
田中先生が御心配になっておる、こういうような過程においてせっかく造成された
農地が、あるいは
工場誘致とかなんかという名のもとに民間のデベロッパーあるいは
産業経営者によって
土地が無
計画に取得されて、スプロール化あるいはまた工場公害が
地方にまでいくということが非常に心配じゃないか、そのとおりでございます。そこで、御承知のように、
農地転換の緩和をはかりましたものの、これについては厳密なる規制をすることになっているのであります。すなわち、
農業振興地帯あるいは
基盤整備等、
政府によって
施策として
相当強力に実施した
土地改良地区は、これは原則として
農地転換をせず、どこまでも
農業の基盤としてこれは起こしていく、その他の
ところにおいて
工場誘致あるいは宅地等に転換するけれ
ども、そのときには
農林省、通産省あるいは
建設省と綿密なる連携のもとにこれは団地構成をしていく、こういう打ち合わせをしているのであります。そういうような構想のもとに立地された場所については、
建設省としては従来の道路あるいは下水、そうしたものの
計画を弾力的に活用しまして、総合
農政上あるいは中小企業振興のために団地等が
地方にいった場合に、そこには道路を弾力的に
予算づけをしまして、たとえそれが県道あるいは国道でなくとも公共事業として
相当大幅にこれを援助してつくってやり、そうして街路等も
整備してやる。こういうふうにして、
田中先生御心配の点は、もうできるだけ
関係各省が
協力して未然に大きな障害が出ないように
協力していこうという方策をとっておるのでございます。ただ、その方策をとったものの、現実にはまだなかなかスピードはそこまで上がっていっていません。それから最近において、私も
都市周辺における水田の転用緩和等を見て、かなりこれは民間デベロッパーによる
土地の買いあさりが
相当出るんじゃないかと心配していろいろ調べてみました。
ところがそれほどないようです。ということは、現在御承知のように金融引き締めのほうが
相当響いていっています。そうして一番大きく響いているのが大企業についてこれがいっているのであります。したがいまして、大手の
諸君が、転用を緩和したことによって急速に水田その他を買いあさっている向きがむしろ少なくて、逆に、われわれのほうに何とか金融をめんどう見てくれ、あるいは
開発銀行の金を使わしてくれとか、あるいは住宅金融公庫の資金を何とか優先的にめんどう見てくれということを陳情に来るほどでございまして、現在の
段階では私は大きく企業の
土地買い占めということはないんじゃないか、こう思っています。それから、特に大きな
土地需要と見られておるような大きな企業ほど資金繰りが悪くて、むしろ設備投資の
計画をスローダウンしている。こういうような見地から見ても、この一年は少なくともそうしたことがそう大きく障害となって出てこないのではないかという、実は
見通しを持っている次第でございます。