○国務大臣(
根本龍太郎君)
住宅政策についての基本的な
考え方、政治的な判断をどう思うということのようでございます。それで、私はどうも、日本においてこの
住宅問題がなぜ深刻であるかということにあたって、
現実に
住宅需要者が非常に多い、一般サラリーマン、一般国民がこれを手に入れていくにはほとんど絶望に近い困難性がある。だから国が行政
住宅を思い切ってやれ、こういう提案をみな言うのです。これは提案であると同時に願望であるとは思います。しかし、なぜ日本においてこういう
住宅難が非常に深刻であるかということの総合的な原因探求が足らないし、そしてそれに対する具体的な対策の提案もなくやっている向きが私は多いと思う。これを一々私は長く
説明する時間がありませんが、端的に言えば、よその国に比べて非常に
住宅予算が足らないということは、御存じのように戦争によって日本の都市という都市がほとんど壊滅に頻しました。したがって
住宅の蓄積がもうほとんどゼロに近いということが
一つ。それから
住宅問題の非常に大きな大事な問題は、戦時中、戦後、家賃統制で、入居者保護の
立場において、民間で企業的に
住宅を
建てるということは事実上これは経済的に不可能なことです。そういう状況と、もう
一つは
土地問題です。
土地問題は、御
承知のように他の諸外国には農地制度というものがございません。ところが、これは戦後の日本の食糧の非常に不足なときに外貨も全然ない、しかも年々一千万石も海外から
——日本の当時のいわゆる植民地から入らなくなった。こういうことから、よその国に見ない
——農地を原則として宅地、工場
用地にしないという固定した
土地政策をとった、これが
一つの大きな原因です。それから日本においては公共
用地、そうしたものへの
土地収用がほとんど不可能に近くなりました。これはいわゆる国家権力との戦い、あるいは独占資本との戦いだと称する、特に革新勢力のような
方々が、公共のために
土地を取得すること、これに力をもって対抗した。こういう
条件が全部重なってきております。そこで、どうしてもこれは従来の
住宅政策ではできないということで、御
承知のように
住宅公団をつくるとか、あるいは
住宅金融公庫をつくって、これでかろうじてこうした難問題に対抗する
一つの政策としてやってきたわけです。ところがこれには、先ほど
公団の総裁から
お話しになりましたように、これは全部財投資金と借り入れ資金でございます。しかも最近になりますというと、
住宅に対する欲求が質量ともに非常に変わってきました。
住宅はなるべく快適な、いい
条件のところに、しかも安くと、こう言っております。しかも
公団がそれぞれのところで
住宅をつくりますと、遊び場がない、学校がない、あるいはマーケットがない。こういうことも地方団体では負担し切れないから、今度は
公団でこれの公的な負担をせよと。しかも安くせいということで、非常にこの要求はみなそれぞれあれでありますけれども、そうしたことが、政府政策
住宅をやるときに非常に大きな障害になってきているということであります。ところが一方において、日本の高度安定成長の結果、国民所得は相当にふえています。それから各企業等の収益もふえておりますので、現在平均すると一六、七%の年率のベースアップがある。そこで私が提案しているのは、企業で相当収益が上がっておるところでは、企業自体で持ち家政策をやりなさい。企業自体が相当な収益が上がっておりますから、経済力がある。そういうところで自分の従業員に対する持ち家政策をやる場合、そのために税制上の優遇をいたしまして、従業員の持ち家政策をやったものに対しては、税制上のこれは優遇措置を講ずる。場合によっては政府財投資金でやっていこう。そうしますれば、これは先ほどの話のように企
業者は非常に過度の競争になっている。これも緩和できる。しかも一面においては、各企業も安定し、その従業員もむろんそのほうが定着する。こういう政策でありまして、私は、政府政策
住宅を減らして、民間に依存しようということではない。この点を基本的にひとつ御認識を願いたい。したがって私は、日本のようにほとんどの企業がずっといままでの
経過から見れば安定しているところでは、できるだけ企業が自分の力をもって従業員に持ち家政策をやりなさい。幸いにして最近は、労働省も、あるいは総評系統も勤労者の財産権、その
一つとして持ち家政策を言ってきたことは、私はその意味においてはけっこうなことだ。そういう意味に御理解願いますれば、私がいままで申したことが、何か和田さんのおっしゃるように、政府がやることをやらずに、民間にごまかしてやらせるということではない。この点をひとつ御理解いただきたいと思います。
それからその次に、これは、私は
建設省自体が自己反省をいたし、
考え方を変えようと言って、いまやりつつあるのでありますが、従来は、これは官庁はみな縦割り主義で、同じ
建設省でも、
住宅関係は
住宅局だけがやる。ところが
道路局とか河川局は、
住宅のほうには
関係はないと言っていますが、これは非常に
関係がある。たとえば首都圏内においても相当宅地として開発し得る
条件を持っているところがある。それで私は、首都圏の事務局並びに
住宅局にも命じまして、大幅な宅地造成をいままでのように単年度的な
計画ではだめだと、少なくとも十年
計画でこの首都圏でどれだけの
住宅需要があるか、それにはどれだけの宅地が必要であるか、それを首都圏内で十年間でまかなうにはどうしたらいいかということを検討をさせました。これに基づいて調査しますれば、どういうところが残っているかというと、まず第一に水のないところ、そして
道路、交通機関が整備されていないために、これは現在宅地として問題にならない。ところが、
建設省では
道路局があり、河川局があるのであります。しからば、水の問題はどうして解決するかというと、河川局だけでは解決できません。ほとんど大部分は、これは慣行水利権によって押えられている。水は
現実にある、あるけれども、これは渇水期の水のアロケーションを中心としてやられておって、
現実に水田がどんどん減っている、しかも経営規模等が違って水が減っておるにもかかわらず、農民の慣行水利権ということで使えないのです。だから、私は農林省に対し、この慣行水利権の検討をいたしまして、水田農民にははっきりと農林省と
建設省が協力して水を確保してやる、そうして絶対に不安のないようにして、あとの水はこれは都市用水、工業用水に使う道を開こうじゃないか、あるいはまた、場合によっては河川敷を利用してもう少し水を貯水して、これをやるということまでを私は河川局に命じております。
それから、従来の
道路も、たとえば国道何号線あるいは高速自動車
道路、地方
道路というものをみんな一線一線長期
計画を立てて、そうして十兆何千億という予算を立てておるけれども、その
地域開発のためにどう機動的に利用するかについてはまだ
考えが足らない。それで私は首都圏内部において、あるいはまた近畿圏、中部圏というふうに過密現象が出てきて、大きく社会的流動が起こっておるところにおいては、それにあまりこだわらずに、たとえ地方道であろうとも、ここに大きな団地を形成する、あるいは新しい都市づくりをやるという場合には、これに思い切って
道路投資をしなさい、それくらいのことはやっていいはずだ。いままではあまりにも
道路等の延長だけを
考えて、これの社会構造の変化に伴う機動的な配分のしかたが足らないじゃないか、これは実は大蔵省にも相談をしで機動的にやらせる方針をいま進めさせております。こういうことになってまいりますれば、公的な
住宅関係が改善されるのみならず、そうした
条件が整ってきますれば、先ほど申しましたように、企業自体が職住近接の政策をとりながら、企業自体で自分の持ち家を従業員のために持っていくということも非常に可能になってくるのです。私は、ことしから北関東の三県に対して百万都市構想をやることをすすめております。群馬県、栃木県、茨城県、しかも私は、そこの
関係者、特に知事諸君に対しては、
土地を全部買い取ろうとするから非常に高いものにつき、農民にも抵抗がある、借りてやりなさいというのです。そして、農民には、現在水田をやっていて米十俵とれるならば十俵分を地代として支払う。長期
計画としてやる。そうすれば農民も抵抗なく相当これには協力してくれる。そういうふうなやり方をしますれば、私は
住宅用地も十分とれる、企業が過密都市から出ていって地方分散もできる、そうした発想を今度やるべきだということで進めておる次第でございます。
いずれにいたしましても、和田さん御提案のように、これから発想を変えなきゃいかぬと思うんです。従来の
一つの
傾向によって頭がみんな固定しているから問題解決ができないのであって、もうちょっと発想を変えればいろいろの問題が私はできるというふうに
考えまして、そのためには、これは役所だけではなかなかできぬです。まあ端的に申しまして、役人の
方々は法律で与えられた権限をいかに忠実に守るかということでありますから、創造性がないのは当然であります。その創造性を切り開くのは、これは政治的な判断である。それでありますから、国会の諸先生からいろいろと問題を提起してもらう、私も従来のあれにとらわれずに
考えて、そこの合意を得たところから行政の行き詰まりを打開していく。これが私は政治家の任務だと思う。その意味において、私は虚心に野党の
方々の
意見でも何でも聞いております。そうして、いいと思ったことは実行を検討さしまして行政のベースに乗せてやろう、こう思っておる次第でございます。この
住宅問題は、私は党派を越えて内政上の最大の問題でありまするので、一生懸命やりまするから、どうぞひとつどしどしと御叱正並びに御提案をいただきたいものと存ずる次第であります。