運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-11-06 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月六日(金曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員の異動  十一月六日     辞任         補欠選任      亀井 善彰君     柳田桃太郎君      熊谷太三郎君     宮崎 正雄君      佐田 一郎君     後藤 義隆君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 若林 正武君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君     委 員                 長田 裕二君                 後藤 義隆君                 宮崎 正雄君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 西村 関一君                 沢田  実君                 二宮 文造君                 渡辺  武君    国務大臣        建 設 大 臣  根本龍太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        法務省民事局参        事官       味村  治君        大蔵省理財局次        長        小口 芳彦君        農林政務次官   宮崎 正雄君        林野庁長官    松本 守雄君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        建設省河川局長  川崎 精一君        建設省住宅局長  多治見高雄君        消防庁予防課長  永瀬  章君        会計検査院事務        総局第三局長   中村 祐三君        会計検査院事務        総局第五局長   石川 達郎君    参考人        住宅金融公庫総        裁        浅村  廉君        日本住宅公団総        裁        林  敬三君        日本住宅公団理        事        中込 達雄君        日本住宅公団理        事        尚   明君        日本住宅公団理        事        宮地 直邦君        日本住宅公団理        事        山下  武君        日本道路公団総        裁        前田 光嘉君        日本道路公団理        事        上林 英男君        首都高速道路公        団副理事長    御子柴博見君        阪神高速道路公        団理事長     森 寿五郎君        阪神高速道路公        団副理事長    関盛 吉雄君        東京首都整備        局建築指導部長  芳賀  力君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  昭和四十三年度決算外二件の審査のため、本日、東京首都整備局建築指導部長芳賀力君から意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  本日は、建設省及び住宅金融公庫とそれに関係する日本道路公団日本住宅公団首都高速道路公団及び阪神高速道路公団決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それではこれより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 二宮文造

    二宮文造君 参考人の方にはたいへん御多忙の中を御出席をいただきまして、ありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  私は、住宅問題特にマンション建設の問題に限りまして、若干具体例も引きながらお伺いをしたいと思うのですが、最初に、東京首都整備局の方にお伺いしたいわけでありますが、伝えられるところによりますと、都では来月の七日に予定されております都市計画地方審議会で、日照権の保護のため、これが主題みたいなかっこうになって、都内四カ所の住宅地に第一種高度地区と、このように指定を追加すると、こういうふうな趣旨で提案するようでありますけれども、それに至った趣旨について、概略だけ御説明を願いたいと思います。
  7. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 東京首都整備局建築指導部長芳賀でございます。  ただいまの点について、お答え申し上げます。  これは、都市計画のそういう地域地区変更につきましては、わが首都整備局で、局は同じでございますが、作業といたしましては都市計画第一部が担当しておるものでございます。それで、その都市計画地方審議会に提案される議案につきましての大体の説明は受けておりますが、現在、東京都の住居地域は大体二十三区におきまして六三%の広範囲にわたって指定されておりまして、その中にいわゆる高さを制限いたしまして、ある程度日照その他の住環境の良好な状態を保持するために高度地区を指定しておるわけでございますが、この高度地区が指定されておる場所が大体二十三区全体の六二%に及んでおります。このたび指定される場所は、目黒の大岡山、それから世田谷の玉川四丁目並びに桜上水、それから練馬の豊玉四丁目、新たにこの四地区が指定される予定と聞いておりますが、それらの場所は、やはり現実的に見まして、まだ低層の木造の住宅が多く、やはりその日照その他の点から見まして、現実的に客観的に見て、その環境を保持すべきである、そういうことを認めたので、それらの地区を指定する予定である、そのように聞いております。
  8. 二宮文造

    二宮文造君 そこで、現実都内二十三区の場合、いわゆる用途地域線引きといいますか、その状態を私も地図で拝見をしました。たとえば住居地域に並列して準工業地域がある、こういうようなかっこうでの用途地域線引き作業ですか、大体どういうことを基本にして、たとえば道路を境にするとか、あるいは種々意図があると思うんですが、どういう点でこういう線引き作業を進められたか。これもまた、その基本的な考え方だけでけっこうですから……。
  9. 芳賀力

    参考人芳賀力君) この点につきましても、わがほうとは関係のありません都市計画一部の仕事でございますので、私のまあ推察的な考えになるかと思いますが、やはり都市計画といたしましては、そこに住む人のいわゆるヘクタール当たり人口単位であるとか、すでに構成されている建築群であるとか、それからその建物の種類であるとか、そのようないろいろな点から検討することをまず第一点といたしまして、また、その次に第二点といたしましては、将来の発展を予測する方向におきまして、この地域は将来このような方向に向かうのが都市計画全体から見て適当である、そのように判断された、その二つの観点から指定されていくのであろうと考えております。そして、その区切りの点からまいりますと、やはり道路境であるとか、それから川の境域を境とするとか、または、がけ地をもって——高さの高低差をもってそれの境とするとか、そのような点で指定しておるのが現実的には多いようにわれわれは考えております。
  10. 二宮文造

    二宮文造君 それでは大体、守備範囲の問題に入りたいと思いますが、都では建築申請を受け付ける、それから確認までに大体どれぐらいの時日を要しておりますか。
  11. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 建築出願が出されましたときに、われわれはその書類を審査いたすわけでございますが、建築確認は、出された建築計画建築基準法並びにこれに基づく条例に照らし合わせまして、その計画が法的にいわゆる合法性である、そういうふうに認めた場合には、われわれは、法的には三週間、二十一日間をもって確認するように法定されておるわけでございまして、それによって確認という行為をするわけでございます。確認という行為は、行政官のいわゆる裁量的な点が少なく、あくまでもそういうふうな法に合致しておるということを公的に認定する行為でございます。しかし、事、日照的な問題に関連いたしまして、付近方々が、非常にそういうものにつきまして、その建築が喜ばしい建築ではないという意思表示をはっきりされておる場合には、やはり付近住民の御意思を相当尊重申し上げまして、いろいろ業者に、これらの出された建築につきまして、やはり法的には違法性がなくとも、ある程度譲れるものは譲ることができないか、そういうことを勧奨いたしまして、そういう点の円満な話のうちに確認するのが現実的には多いわけでございまして、そういうようなことで日数が多少延びておるわけでございます。大体平均いたしまして、日照問題によってトラブルの生じますのは、出願されている件数の大体六分の一ぐらいあるのではないかと思いますが、そういうふうな点で話し合いをいたしまして、最終的には確認に至るわけでございますが、多いものは六カ月以上、大体平均いたしますと三カ月ぐらい、その確認にそういうふうな問題の生じたものはかかっておるようでございます。
  12. 二宮文造

    二宮文造君 その場合、たとえば出願者のほうはやはり予定がありますから早急に確認してもらいたい、またその付近住民はそれじゃ困るということで、両者話し合いがつかない、こういう場合は、結局都としては建築基準法に合致しているかどうか、そのことだけで最終的に決定せざるを得ないと思うんですが、そういう係争関係を都としてはどういうふうに処理されておりますか。間に立つ都が仲介の労をとる、そういう立場でやっていらっしゃるか、あるいは相互に交渉をして、いわば都としてはその背後にあって意見を聴取する、こういうような態度をとっておられるのか、その点どうでしょう。
  13. 芳賀力

    参考人芳賀力君) これはケース・バイ・ケースによっていろいろなやり方がございますが、原則といたしましては、やはり両者話し合いを第一義にしておりまして、それである程度話し合いが進んでまいりまして、もう少し煮詰めるにはどうしてもそこにある程度役所が中に入ってほしいというような業者からの意見もございますので、その場合にはわれわれが中に入りまして、われわれの部屋を提供申し上げたりいたしまして、まあ話し合いを進めておるわけでございますが、最初申し上げましたとおり、やはり法的に合致しておるものはわれわれは確認せざるを得ないという点がございますので、やはりそういう点で最終的には確認いたすわけでございますが、反対者の方もやはり不本意ながらもある程度、法の現実等から照らし合わせまして、これもやむを得ないというような、ある程度の御納得のいく線までわれわれが忍耐強くその両者の仲を取り持ちまして、最終的には確認に至っておるわけでございます。
  14. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっとおきまして、具体的な問題を申し上げたほうが話が早いかと思います。しかし、その具体例に入ります前に、法務省民事局の方がいらっしゃっているようでございますので、この日照権の認定の問題について、いわゆる法務省見解、これはどういう御見解をお持ちなのか、総括的にお伺いしておいて具体例に入りたいと思います。
  15. 味村治

    説明員(味村治君) 日照権の問題は、もともと太陽光線の日射を受けまして健康な生活を保持する、こういったような生活上の利益という観点から考えられるべき問題であろうかと存じております。それの理論構成といたしましては、いろいろ最近説があるわけでございますが、ただこの日照権の問題は被害者だけの立場ではございませんで、その日照をさえぎる方——現在狭小な土地にかなりの建物建てなければならない、こういったような宅地の高度利用あるいは土地高度利用という関係からその建物建てなければならない、そういった人と、その建物によって日照をさえぎられるという人との利益比較考量の問題であるというふうに考えられているわけでございます。そして建物建てようとする人のその建物によって、日照をさえぎられる人が、まあ普通であれば受忍する、当然受忍してしかるべきだという限度を越えるようなことになりますれば、そこで日照権侵害ということになって不法行為を構成する。したがって損害賠償請求もできる。  それから、そういう日照権侵害につきまして差しとめの請求ができるか——そういう建物建築差しとめ請求ができるかという問題が一つあるわけでございますが、これはいろいろな考え方がございますけれども、やはり損害賠償だけでは片がつかない、やはり差しとめを請求して建物建築を中止しなければ、日照権といいますか、生活上の利益を十分保護できないというような事態がございますれば、これは差しとめの請求もできるというふうに考えております。  そこで問題は、受忍限度をどういうふうにして判断するかということでございますが、これにつきましては現在判例傾向といたしましては、次のような要素を考慮して決定するという大体の傾向にあるようでございます。  一つ加害者意図でございます。加害者が実際上必要がある、そのために建物建てたのか、あるいはまあ極端に言えば、いやがらせのために——被害者に対して日照妨害といういわゆるいやがらせのために建てたのか、極端な場合にはそういう例もあるわけでございまして、そういった加害者意図社会的妥当性と申しますか、そういうことを一つ考慮するわけでございます。  それから二番目に考えられますのは、加害行為の態様でございまして、これは主としてやはり建築基準法に違反しておるかどうか、高度制限に違反しておるかどうかといったようなことが考慮されるわけでございます。ただ建築基準法に違反しているから直ちに日照権侵害だ、あるいは建築基準法に違反していないから日照権侵害にならぬ、論理必然的にそうなるわけではございませんで、建築基準法に違反しているかどうかということは、先ほど申し上げました加害者意図と並びまして、一つ受忍限度を判定する要素という考えでございます。  それから判例にしばしば出てまいりますのは、地域性ということでございまして、その地域住宅地域であるのか、あるいは商業地域であるのか、あるいは高層化した都市化地域であるのかというようなことで、まあ郊外の住宅地域でございますれば日照範囲は非常に広く要求されるのが通常でございますから、したがって日照権侵害に対する受忍限度というのは非常に拡大されるということになるわけでございます。  それからあと考慮されておりますのが、損害を回避することができなかったかどうか、たとえば日照は非常に少ないけれども、乾燥機の設置で足りはしないかといったような一種日照に対する代替的な措置が可能かどうかというような事情、それから被害程度が非常に激しいかどうか。一日じゅう日がささないという例もございましょうし、一日に四時間なら四時間しか日がささない、いろいろ被害程度もあるわけでございまして、非常にそういった具体的な事情をいろいろ勘案いたしまして総合的に受忍限度範囲内かどうかということを決定するというのが判例傾向でございますし、法務省としてもそのように考えております。
  16. 二宮文造

    二宮文造君 もう答弁をいただいたわけで、当然確認する必要はないわけでありますけれども、四つの条件をいま総括的にお話しになったその中で、日照時間ということもやはり物理的な条件として、その日照権受忍限度としては日照時間というのも当然条件一つになると、こういうことですね。
  17. 味村治

    説明員(味村治君) ただいま申し上げたとおりでございます。
  18. 二宮文造

    二宮文造君 そこで具体例に入りたいと思いますが、具体例とは申しながら、私はここで建築基準法の問題とか、消防法の問題とか、いろいろな問題が出てまいりますので、法改正問題等も含めて、具体的な事例でもって考え方を伺いたいと思うわけであります。  まず、三月の五日に都に対しまして、地番東京都渋谷区幡ケ谷一の三十の一、建築申請者は、建築主のあれは永田町二の十の二、秀和株式会社代表取締役小林茂氏の申請で、マンション建築申請が出ておりますが、その後の経過ですね、都のほうに対していろいろな地域の方のお話もございましょうし、その後の経過概略説明いただきたいと思います。
  19. 芳賀力

    参考人芳賀力君) この申請はことしの三月の五日に出されまして、東京都といたしましては、三月六日・三十五号で受理したものでございます。そこでその後、五月の二十七日に消防法関係の合議を得るために消防庁のほうに回しまして、そして大体その後一般審査を終わったわけでございます。  この場所を申し上げますと、京王線幡ケ谷駅近くでございまして、地域といたしましては準工業地域、準防火地域、第四種の容積地区でございます。そうしてこの建物敷地の軸といたしましては、いわゆる南北軸に建つものでございまして、東西軸よりは比較的日陰の影響も少ないような建物配置をしておりますし、その付近にはすでに住宅公団の八階建て建設されておりますし、その隣には帝国石油の五階の建築が建っております。そしてこの建物が建った場合に一番陰の影響の多い北側はどうなっておりますかと申し上げますと、すぐうしろ京王電車電車の線路敷きになっておりまして、そのほかに一列に住宅、いわゆる商店街がありまして、その北に甲州街道が連なっておるわけでございまして、比較的われわれといたしましては日照影響の少ない建物と思って、実は率直に申し上げますと楽観いたしておったわけでございます。ところが付近方々が、おもに住宅公団に住んでおられる方々から、このマンション建築確認しないでほしいというような陳情が五月二十七日に出されまして、その後都議会の各党から、党派をこえましてこの陳情者のために何とかこの建築日照影響の少ないようなふうに、建築変更をするとか、場合によっては確認しないようにというような御意見がございましたので、われわれはその話し合いの必要を認めまして、第一回の話し合いを六月十二日、それから二、三度その点の話し合いがございまして、第三回の話し合いは九月の十一日に行なわれて、目下その話し合いが継続中と、そのように聞いておるわけでございます。  それで、最初に申し上げましたとおり、客観的にわれわれサイドで見ました場合には、いわゆる準工業地域でもございますし、相当の将来の発展も予測される場所でございますので、やむを得ないと考えておったものでございますが、日照の点につきましては、やはり太陽光線が奪われるという被害者立場から考えますと、やはり地域関係なく主観的に考えれば、いずれも同じことでございますので、やはりそういう方々の御趣旨も尊重いたしまして、何とか円満な話し合いがつくようにと、われわれ努力しておるわけでございます。  この建物で一番影響を受ける住宅公団建物は、西側の点でございまして、西側の窓が比較的日照影響を受けるわけでございまして、そして、現実的に日照影響を受けるのは、一日の時間帯から申しますと、大体一時半からそれ以後じゃないかと考えております。それで、また今度建ちます建築住宅公団建物との建物間隔は大体二十六メーターぐらいでございますので、われわれサイドから見た場合には、その影響は少ない、そのように考えられるのが現実でございまして、目下話し合い中でございますが、最終的にはわれわれは確認せざるを得ないものと、そのように考えております。
  20. 二宮文造

    二宮文造君 最後の一言が気になるのですが、「最終的には確認せざるを得ない」、この都の態度は、いわゆる地域住民方々との話し合いが決裂した場合はと、こういうような意味になるわけですか。
  21. 芳賀力

    参考人芳賀力君) この建設と申しますのは、非常に皆さまの解釈上いろいろな差異があると思いますが、やはりいま出されている計画は、法的には合法的なものでございますが、われわれはいかにそれだけの権利があっても、なるべく付近住民意思を尊重して、譲るべきは譲るべきであると、われわれサイド建築主のほうに勧奨しているわけでございますが、やはり実際問題といたしまして、われわれ過去のいわゆる体験的なものから申し上げますと、やはり企業でございますので、やはり利益を度外視してまでやるということは、現実的にはむずかしいのじゃないかと思いますので、やはり最終的にはこれ以上どうも進展は見られない、そのようにわれわれが判断いたしました場合を考えておるわけでございます。
  22. 二宮文造

    二宮文造君 そこで、つまらぬ質問になりますけれども、部長さんは現地をごらんになりましたでしょうか。
  23. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 実際その敷地に立ち至って見ませんですが、私たちはよくそこを通りまして、現実的にその場所をよく知っておりますので、それと写真で私は判定いたしております。
  24. 二宮文造

    二宮文造君 確かにおっしゃるとおり、当該の地番は準工業地域になっております。しかし、そのすぐ隣に道路もなく、ただ土地を隔てたまま住宅公団建物あるいは帝石建物が建っておりますが、これはもう道路もなく、境界もなしにすぐ隣は住居地域になっております。そういう事情も御承知の上で、法の解釈上やむを得ない、こういう立場ですか。
  25. 芳賀力

    参考人芳賀力君) その点もよく存じております。そしてその点につきまして、都市計画の指定ございますが、かつてはその地域全体がいわゆる準工業地域であったそうでございます。それがたまたまそこに公団のそういうような建築が建ち、いわゆる住居的な建築も建つので、そこを準工業地域から住居地域変更したと聞いております。また現在、この場所は、ある建設会社材料置き場になっておったり、そういう点で、まだそういう点の将来計画がはっきりしないので、準工業地域を残した、そのようなことでございますので、この際、われわれが、再び都市計画にこのところをやはり準工業地域住居地域変更する意思ありやなしやということを聞いたわけでございますが、当分の間は変更する意思がない、そのように聞いております。
  26. 二宮文造

    二宮文造君 私も現地を見てまいりました。その上での質問でございますので、御承知おき願いたいと思います。  それから建築申請建物と、それから公団アパートとの間が大体二十六メートルの間隔があるから心配はないというふうなお話でございますが、この空地の二十メートルは秀和用地になります。六メートルは公団側用地になりますね。それで二十六メートルあるわけです。この秀和側の二十メートルは何に使われるか御承知ですか、申請が出ていると思うのです。
  27. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 聞くところによりますと、そこに駐車するような余地として保留しておく、このように聞いております。
  28. 二宮文造

    二宮文造君 この建物は長さが百二メートル、そしてその隣には帝石の五階建て、それから公団アパート、要するに二十メートルの幅で百数十メートルに及ぶ谷間がここにできるわけです。そこに駐車場が置かれるわけですね。それから、この秀和の反対側には道路がないのです。そしてその秀和用地のぎりぎりから、今度は向こう側の建物の境界まで約六メートル。そうするとこの六メートル、こっちは二十メートルで自動車が駐車する。そして細長い百三メートルの建物ができる。私は大体、防火、消防という立場から見ますと、非常に消火活動が至難になるのではないか。むしろ防火という考え方からいくと、この建築構造というものは一考すべきではないか。一方に八階建て、そして今度予定される十一階建て、こういうものが建って、その谷間に自動車の駐車場ができる。その新しい建物の向こう側には木造家屋がそれこそ林立しております、密集しております。こういう地帯で十一階建てというものを考慮することはちょっと無理ではないか、こう私は考えるのですが、これは消防庁の御意見もあわせて伺います。
  29. 芳賀力

    参考人芳賀力君) これは御視察の結果、いろいろ御意見がおありと思いますが、建築基準法によってわれわれは行政をやっております関係から、やはりあくまでも建築基準法並びにこれに基づく条例に基づいて行なっておるわけでございます。いろいろわれわれが建築申請書類を見ますときにおいて、交通問題やら火災の問題やら、いろいろ公害的な問題もわかるわけでございますが、この場所はいわゆる容積地区に指定されております。容積地区の根拠と申しますと、やはりその敷地の何倍まで建築をさせてもかまわない、そのかわり非常に設計の自由を尊重するということでございます。それで、これがもし十一階建てでなくて、べたに三階建てくらいにする場合には、敷地一ぱいにぎりぎりに建ててもやむを得ない設計になるわけでございます。ですから、先ほどわれわれが二十六メートルと申しましたのは、やはり上へ積み重ねることによってそれだけの間隔を生み出したのではないか、そのように考えておるわけでございますが、これは陳情の方の見方によりますと、やはりその谷間に駐車されるというのは非常に不愉快であるし、また、いろいろな点の公害も発生するというふうな御意見がわからないわけでもございませんが、やはり建築がぴったり建ち並ぶより、防火とかいろいろな点から、また一番付近の方が問題にされております日照の点からいいましても、それだけ離したということはプラスではなかったかと、われわれはそのように判断したわけでございます。
  30. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどの都の方の御説明によりますと、消防庁に対してもこの建築申請について大体打ち合わせ済みと、こういうふうなお話でございます。ただ私、消防庁のほうにはそういう具体的な事例をあまり明確に通告をしてないので、具体例として非常に答弁がしにくいかもわかりません。その点は了解しておりますから、お含みの上、答弁いただきたいのですが、消防法の第七条によって、建築確認申請を受けた場合は消防長ないしは消防署長の同意を得なければならぬ。この消防長ないし消防署長が同意を与える場合のおもな条件といいますか、観点はどういうところでございますか。
  31. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) 消防法の七条に建築確認の際の同意の規定がございます。この規定の中では法令で定めますところの防火に関する規定によって同意を与えるということになっております。
  32. 二宮文造

    二宮文造君 ですから、建物の構造とか、あるいは消火設備とか、そういうものだけを見て、そして同意をすべきかすべきでないか、こういう決定をなさるということでしょうか。
  33. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) まず建物自体につきまして、防火上の問題といたしますと、まず最初に、われわれのほうは、消防法の中にございます消防の設備の関係、消火栓その他がございます。それから避難階段とか避難、防火の関係、場合によりましては防火上の観点から敷地についても考慮する場合がございますが、いずれも防火上の規定に照らしてでございますので、建築基準法あるいは安全条例その他のものになりますが、多くはいま申しました二つのものが基準になるかと思います。
  34. 二宮文造

    二宮文造君 その場合、私は、一たん事があった場合に、消火活動、消防活動、これはやっぱり事故を未然に防ぎ、あるいは大きな事故を防ぐという意味からも、消火活動が至便であるというふうなことも考慮されていいんじゃないか、個人的にはこういう気持ちもするわけですが、現在の同意の手続の段階では、そういうことは考慮されない、こういう規定になっていると理解してよろしいでしょうか。
  35. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) 規定上は消火活動についての困難性ということは考慮されないことになっておりますが、現実的には非常にぐあいの悪いような場合は、やはり建築主のほうにお話を申し上げまして御考慮を願うような行為は行なうことはございます。
  36. 二宮文造

    二宮文造君 意見を伺いたいのですが、先ほど私が申し上げた、一方には八階建て公団アパートがある、一方には十一階建てマンションが建つ、そしてその間が二十メートル、そこに二百五十何世帯のマンションの方が入るわけですから、当然駐車も細長いところを駐車区域にする。まず百五十台から二百台ぐらいの駐車が予想されますが、そういうビルの谷間に、しかも裏側は京王線の軌道になっていて裏へは逃げられない。表側はたしかあれは六メートルか八メートルの道路だと思います。そらして、しかも道路に面した間口が四十メートルくらいしかない細長い敷地に百五十台ないし二百台の駐車場が設けられる、こういう建物の構造は消防の立場からどうでしょうか、御意見は。
  37. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) いまお話のように、非常に細長い建物ができまして……
  38. 二宮文造

    二宮文造君 建物の長さが百三メートルです。
  39. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) 隣にございます中層の建築物との間も非常に谷間になるようでございます。このような建築物が建ちました場合に、消防側の立場からいたしまして非常にまずいかどうか、現地にも少し聞いてみたのでございますが、現在ございます建築物あるいは申請が出てまいります建築物の中では、わりにいいほうだという考え方が返ってまいりました。しかしながら消火活動上、おっしゃるとおりに表のバス道路のほうが七メートルちょっとの道路でございまして、裏側が京王線の線路にまで及びます関係で、どうしましても火災の場合に攻めるのは道路側からしか攻められません。したがいまして、いろいろ火災が起きました場合の消防活動の体制については考慮しなければならない、この体制のほうを検討して災害に備えるという方法で考えたいと現地では言っております。この建物自体の危険性と申しますか、当否といいますか、あぶなさ自体はそれほど一あるにはあるのでございますけれども、それほど非常に大きいというほどではなさそうな考え方でおります。
  40. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっとその意味が私わかりませんが、建物が建ってしまう、それは建築基準法にもかなった、わりにいい構造の建物が建つ、隣もそうだ。だから火事があった場合の消防の体制を考えるだけという、その辺の答弁が私ちょっとわからないのです。ビルの谷間になって細長い建物で逃げ場がない、裏側にも逃げられない、そういうところに百五十台も二百台もの駐車場を予定するような建物の構造が未然に防止できれば、消防の側としては、これ以上のことはないでしょう。火事が起こってから、どういう消火のしかたをするかということを検討するよりも、そういう火事が起こっても心配がないように、その構造の変更という意見を出してもよろしいのではないか、こう思うのですが、再度答弁願いたい。
  41. 永瀬章

    説明員(永瀬章君) おっしゃいます駐車場の問題になりますと、確かにおっしゃるとおりに、ないにこしたことはございません。現地のほうでは、まだその辺がはっきりしないようなことを言っておりますので、まだ意見は申し上げておらないようでございます。確かに駐車場は、できるなら台数を減らすとかいうようなことで、活動上便利といいますか、活動上支障のないようにしていただくほうがよろしいかと存じております。
  42. 二宮文造

    二宮文造君 いまの消防庁の御意見を都のほうもしんしゃくをお願いしたいと思うのです。  それから日照権の問題、これは先ほど具体的に日照時間の問題で、さほど心配はない、南北に張っている建物だから心配がないというふうな御説明でございましたけれども、地域の方が、具体的に一番短い時間ではありますけれども、十二月二十一日の冬至の日の日照時間はどうなるかと、非常に精密に検討された図表を私持っているわけでございます。これは西側建物で、もうおそらく都のほうでも御承知だろうと思うのですが、ゼロ分、とにかく冬至において全然もう日照がないというのが、こんなにたくさん。この薄いブルーの色どりをしたところがもうほとんど日照がない。それからまた八〇分目の当たるのがわずかにこれだけに限られておりますが、こういうふうな事情も御了察の上で、日照はたいして問題がないように思うと、こういう御答弁だったんでしょうか。
  43. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 私は、たいして問題はないというような表現はしないと記憶しておりますが、要するに日照というものは、これはやはり場所的な関連性がございまして、商業地域とか、そういう場所におきましては一日全然日の当たらない建築がある場合にも、われわれ非常に同情しながらも、結果的には確認せざるを得ないのが現実でございます。ただ、この場合につきましては、公団建物の窓が西側にございまして、先ほどから申し上げておりますとおり、建物間隔が二十六メートルばかりございまして、実際に日が差し込んでくるのはまあ一時半以降の建物配置になっておりますが、それがまあ侵されるということでございます。それで、都議会にもこの建築につきましては請願が出されたのでございますが、ある委員の先生からは西日が入らなくてかえっていいのではないかという御発言があったぐらいでございまして、やはりそういう点、まあわれわれとしましてはできるだけの努力はしておるわけでございますが、この公団建物の三階以下は独身の方が住んでおるそうでございまして、比較的日中は部屋においでにならない。まあその上の方が日照影響を受けるわけでございまして、まことにお気の毒ではありますが、やはりこの現実の問題としてやむを得ない、そのようにわれわれは考えたということを申し上げたわけでございます。
  44. 二宮文造

    二宮文造君 そこで、いつもこういう日照権の場合は加害者立場に立って問題を巻き起こす——巻き起こすと言っては語弊がありますが、問題を起こす、そういう立場にある公団ですね、住宅公団の場合、たとえば金町の住宅の場合ですね、当初の予定変更されて、付近方々に非常に御迷惑をかけるような部分については設計変更をして五階建てに直した。そういうふうに近所の方々にも配慮をしたような設計をなされたようにも伺っておりますが、今度は公団のほうが被害者立場に立つわけでございますが、公団考え方はどうでしょうか。隣にこういうマンションが建つ。そしてそこに入っていらっしゃる方々が非常にまあ生活権を脅かされる、こういうことで非常に心配をされておりますが、公団考え方はどうでしょうか。
  45. 林敬三

    参考人(林敬三君) いま御質問のありましたように、公団はやはり大きな市街地建築住宅を方方に建てておりますわけでございまして、その場合、面開発と申しますか、そういう特に江東地区におきましての一万坪、一万五千坪、二万坪にわたりますような、あるいはもっと大きいところ、これは大規模な敷地を持っておりますので、周辺とできるだけよく話をいたしまして、そして建物敷地をずらすとか、あるいは高さをある程度切って、そして日照影響のないところの高さを加えると、そういう配慮をいたしてまいっておることは仰せのとおりでございます。また一般の市街地、たとえば青山通りに面しましたようなところの市街地というようなところになりますと、これは主として商業地域でございますし、地主と共同して店舗などの施設の上を利用して住宅建設する場合が多いのでありまして、その場合は周辺にも高層ビルも相当建っておりましたり、あるいは周辺の人たちの常識といいますものも、相当程度日照がお互いに害されても、これはそういう地域であるからというようなところの特殊性を持っております場合が多いのでありまして、いままで三百三団地つくっておりますが、しかし特に深刻な紛争というものをあまり起こしておらない。まあしかし、よく話し合って、こちらとしてもできるだけの——そこに公団の人も住むわけでございますし、今後のこともありますので、周辺の方との調和をいたすようにしておるわけでございます。非常に大きな影響を及ぼします場合に変更した例もございます。  さて、御指摘のこの幡ケ谷の市街地住宅でございますが、その隣に秀和レジデンスがつくられるという問題が出てまいりました。私どもとしても、いままではたしかに加害者といってはいけせんが、いろいろと、公団建物が建つからもう少し日当たりをということのお話を受けている場合が多かったのですが、今度はこちらが被害を受ける立場になっております。ことに、入っていらっしゃる方の、一階のほうとかあるいは南に寄ったほうというものに相当程度日照影響というものを受けることになったので、まことに公団といたしましてはやはり遺憾なことと思っております。それで、秀和のほうとも公団としてもお話し合いをいたしておりますし、また、居住者と秀和と、そこへ公団が立ち会いましてお話をいたすというようなことをいたしまして、これを極力日照影響を少なくするように話し合いをいま進めておるところでございます。何ぶんにも公団としては、法的に、だからどうするという権限を持っておりませんので、建築申請が出て東京都で確認をして、なさるということになってきますと、法的にそういうことについての対抗手段は持ちませんですが、しかし秀和のほうは、これは株式会社でありますけれども、やはりそこに建物建て住宅を提供して人々をお住まわせになる、こういう仕事でありますし、私のほうは公共的、公益的立場のものでありますが、やはりそこに人に入ってもらって住んでいただく、そういう意味においては同じものでございまして、秀和さんのほうの居住者というものが、もしそういう事態になったときは、やはり秀和さんは非常にお困りになると思うのでありますし、その状態というものは立場を振りかえてみれば、よくわかっていただけると思っておりますわけでございまして、極力これは、いかに建築基準法上合法と言われましても、影響の大きいものでございますから、とくと話を進めて、あくまで私のほうは、これはお願いする立場といいますか、あるいは訴える立場といいますか、主張する立場と申しますか、そういうことで話をなお進めてまいって、適当な妥結を得たいと、かように考えております。
  46. 二宮文造

    二宮文造君 大体、公団考え方ははっきりいたしました。私、先ほど二百数十戸と、こう申しましたけれども誤りでございまして、高さ三十八メートル、申請によりますと高いところは三十一メートルとなっておりますが、塔屋の関係で三十八メートル、それから総戸数が三百五十七戸、地上十一階建て、長さ百三メートル、これは先ほど申しましたけれども、そういうたいへんな建物になるわけでございます。  そこで、さらに公団にお伺いをしたいわけですけれども、いま法的には何とも言いようがない。ただ秀和さんに立場をかえて考えてもらえば、自分が被害者になる場合はそれ相当の思惑も出てくるのじゃないだろうか。いわば向こう様まかせの話のようでございますけれども、中に住んでいらっしゃる方にとってはたいへんな問題になるわけです。不幸にしてこれが確認され、そしてまた建築をされた場合に、非常に住居条件が悪くなってくるわけでございますけれども、この場合に公団としてはどういうふうな措置をお考えになっておりますか。現在よりは少なくとも住居環境が悪くなる、こういう場合に住居者に対して公団はどういうふうな措置をお講じになりますか。
  47. 林敬三

    参考人(林敬三君) ただいまの御質問でございますが、いま申し上げましたように、秀和さんのほうとは、私のほうも間に入りましたり、あるいは直接にいろいろとこの問題について話をしておるところでございます。そこで、仮定といたしましても、これがもし法的に許可になったときに私のほうがどうするかということをいま申しますことは、話し合いとしても非常にいまぐあいが悪いのでございまして、この話を離れて考えますとき、いろいろ天災地変その他でもって状態が悪くなった場合が出てまいります、あるいは社会の変化とかで。そのときは、そのときの公団のいろいろの立場から、できる限りのことはいたしておりますのですが、この問題についてもう引いちまったらどうか——私は引いてもらいたくない。これは秀和さんに考え直してもらいたいという念願を依然として持っておるわけでございますので、それから先の問題については、そのときということでお聞きを願います。
  48. 二宮文造

    二宮文造君 わかりました。とにかく公団側としては秀和さんに考え直してもらいたい、そういうことでいま考え方を整理している、こういうような立場でございますから、よくわかります。  そこで、それでは秀和さんに対するいわば交渉といいますか、話し合いの前面にお立ちになるのは入居者でしょうか、公団でしょうか。公団の希望はよくわかったわけです。公団が積極的に申請者に対して話し合いを進めていく御意図がありますかどうか、この点をお伺いしたい。
  49. 林敬三

    参考人(林敬三君) 被害を受け、影響を受けます一番の第一次的な方は入居者であると存じます。同時に、その財産を持っております公団としてまた同じように影響を受けるわけでございまして、これはどっちがどうということは言えないと思うのであります。しかし深刻に直接生活条件影響を受けるというのは入居者の方でございまして、公団はそれの管理者、持ち主という立場においてまたひとしくその影響を受けるものとして相手にも話をする、こういうことであると思います。
  50. 二宮文造

    二宮文造君 総裁、そうでしょうか。もし公団アパートが私企業だったらどうします。財産の価値がそれだけ減るのですよ。入居条件が悪くなるのですよ。私企業の場合には、いわゆるマンション経営者は一番に立って、入居者よりも何よりも一番まつ先に出願者に対してマンション経営者は交渉すると思うのですが、公団の場合は一番お困りになるのが入居者であって、第一次的にはその方々が交渉するべきであって、公団はむしろそのうしろからプッシュする、こういうような姿勢をとるのだとおっしゃったのですけれども、これはちょっと考えが違うのじゃないでしょうか。
  51. 林敬三

    参考人(林敬三君) これに順位をつけるということはむずかしい。それぞれ、片方は居住者としての、影響を受けるものとしての主張をする、片方はこれを持っており、かつ管理するものとしての主張をする、両方ともそういう立場にあると存ずるのでございます。そこで私がまず第一にと、こう申しましたのは、この問題について一番切実に訴える力を持つと申しますか、そういう気持ちを表現したわけでございます。
  52. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと御答弁がはっきりしないのですけれども、大臣がお見えになったので、大臣の答弁をいただきながら、問題を若干またお伺いしてみたいと思うのですが、大臣の御出席前に私のほうから提起をしましたのは、お聞き及びかわかりませんけれども、幡ケ谷公団の八階建てアパートがある。それに隣接して十一階建て、高さ三十八メートルの、しかも長さが百三メートルという膨大なマンション建てられる。そこで日照権の問題、あるいは事故があったときの問題こういうことで地域住民の方が非常に心配をしていらっしゃるわけです。また都としても確認申請を三月の五日に受けて、今日までまだ確認を出していない。早晩これには決着をつけなければならない。こういう、マンション建築をめぐって、いわゆる日照権あるいはその住居環境がこわされるという問題でトラブルが起こっているわけでございますが、具体例は別として、そういう場合に建設省はどういう行政指導をなさるおつもりなのか。一般的な問題でもけっこうですから、まず大臣から答弁をいただきたい。
  53. 多治見高雄

    説明員多治見高雄君) 御質問のいままでの質疑応答の経過を大臣は御存じないものですから、ちょっとお答えを私からかわって申し上げます。  日照権の問題は非常にむずかしい問題でございます。われわれといたしましては、国際的ないろいろな事例その他いまお話しのような日照権についての権利の保護という問題についていろいろ検討いたしておりますが、はっきり申し上げまして、実は具体的な結論はまだ出ていないということで、ケース・バイ・ケースといいますか、そのときそのときの事情に応じましてできるだけ最善の解決をしたいということで努力をしておるというのが実態でございます。
  54. 二宮文造

    二宮文造君 これは建設省にお伺いしたいのですが、用途地域を指定する場合に、ここまでは住居地域だ、隣はすぐ準工業地域だ、これで容積制限とかなんとかがまた変わってくるわけですね。この場合に、この住居地域に隣接するある一定の面積は緩衝地帯みたいなものにしなければ、そして何かの制限を設けるような考え方をしないと、この用途地域の指定の意味がなくなってくると思う。ここまでは住居地域だ、ここから一センチこっちに寄れば準工業地域だと、こうなってきますと、この準工業地域にいわゆる制限を緩和された建物が建つ。その結果は住居地域がたちまち侵害されるわけですね。こういうような緩衝地帯当該の場所がまさにそのとおりなんですが、そういうことは考慮する必要があるのじゃないでしょうか。また確認の場合にも、将来それが用途地域変更意図がないということだけで申請を検討するのではなくて、こういう隣接した場所、しかも付近がほとんど商業地域あるいは住居地域、こうなっている場合には、考慮をすべき何ものかがあるのじゃないか、こう思うのですが、この点はどうでしょうか。
  55. 多治見高雄

    説明員多治見高雄君) いま二宮委員の御指摘のように、このケースは非常に特殊なケースでございまして、住居地域と、隣はすぐ準工業地域ということで、地域の境界線に接しているわけです。したがいまして、この場合は容積制限がたまたま同じ四〇〇%という地域になっておりますが、地域性が違いますために、すぐ隣のところの制限と、こちらの制限が違う。そこで緩衝的な中間地帯を設けなければいかぬじゃないかというお話でございますが、私もまさにそのとおりだと考えております。ただ、これは私の所管でございませんので、私からお答えするのは適当じゃないと思いますけれども、何かやっぱりそういったことは考えなければいけないのではないかということは、今回の事例を見て、われわれも今後検討を要する問題が起こるというふうには考えられます。ただ、地域性を性格上から確かめて工業地域商業地域住居地域というふうにきめる場合に、その間の緩衝地帯をどうするかという問題は、これは今後検討しなければいけない問題であるというふうに考えられます。
  56. 二宮文造

    二宮文造君 私に与えられた時間があとほんとうにわずかになってきまして、この問題の取り扱い方でございますけれども、公団のほうでこの用地を買収して——私も現地を見ましたけれども、相当数の方がいまのアパートにいらっしゃる。子供さんが屋上で自転車で飛び回っております。飛び回ってといったって、洗濯のほしざおの間をかき抜けての自転車のあれですから、あるいはあぶないといえばあぶないし、子供さんの遊び場としては屋上は適切ではございません、面積も狭いし。また、あの辺が非常に密集地帯になっておりますから、一つの緑地帯みたいな関係、あるいは子供の遊び場という考え方公団用地を買収する、あるいは都が遊び場をつくる、あるいは区がつくる、こういうふうなことで、この問題の地点を防火上の立場もありますし、考慮をするということは、公団をはじめ都としてはお考えになっておりませんかどうか。また、これは相手方もあるわけですから、向こうの意図もあるし、考慮としてはどうでしょう。
  57. 林敬三

    参考人(林敬三君) お話しのように、だいぶ密集しているところでありますし、付近に適当な子供の遊び場をもっと広くとれればということは、まさしくそのとおりだと思います。そこで、都か区でそういうことをしてくだされば、私どもとしてはまことにありがたい、適切な措置だと思って双手をあげて賛成するところでございます。ただ公団でそれを買ってつくるかという問題になりますと、公団は御承知のように、政府資金やあるいは民間資金を借りてそれを七十カ年で返すという計画で、借りかえ、借りかえをやりながら経営をしているところでございまして、現在あそこでそれをやりますというだけのゆとりをどうしても生み出せないという状態と存じます。
  58. 二宮文造

    二宮文造君 これは都とか区は私の領分の外でございますので、あえて考え方を伺うわけにはまいりませんけれども、御答弁いただけますか。
  59. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 日照権問題のこのようなケースの場合に、必ずその土地を都か区に買って遊園地にしてほしいという希望を述べられることがたびたびございます。そのために、私どものほうは建設局の公園緑地課等に行きまして、何とか買ってもらえないものだろうかということを話すわけですが、やはり東京都といたしましては都市計画計画公園でもまだ予算の関係上買えないのが現実である。それがこのような日照権の問題の反対のあるたびに買っていたのでは切りがない。それで、とても要求に応じられない、そのように言っております。それで、このような反対があった場合に、反対者が単に反対するばかりでなく、この企業がそれを転売してもいいというふうな民事上の契約ができるような場合には、なるべく売ってくれないかということをわれわれは建て主側に話しまして、そしてそのような点で合意が成立しまして、それにふさわしい値段で買ってくれる方があらわれた場合には、その業者がその土地を転売することによってそのマンション建築をとりやめたというような件がございます。区なんかで予算を計上しまして、子供の遊び場をその方面にほしいと思ってさがしておるとき、その場所にこういうものがございまして、値段とそういうものが折り合いました場合には成功いたしますが、それ以外の場合にはほとんど希望的な意見で終わっているというような状況でございます。これが現実でございます。
  60. 二宮文造

    二宮文造君 大臣、六十三国会の例の建築基準法の改正の審議にあたりまして、大臣からこういう答弁があるのです。日照権そのものからすれば非常に不満足な形になっておるわけであります。漸次これは今後の法律運営あるいは事例の積み重ねの結果、だんだん修正あるいは改善しなければならぬと思います。こういうふうな、これはまあ切り抜きの答弁の用い方ですから、前後がございますですが、大方の期待はいま問題になっております日照権、これをめぐりましていろいろな意見が出てまいっております。具体的に、たとえばこの問題のように申請者から確認申請が出された。建築基準法から照らしてみると、これはむしろ通さざるを得ない。確認せざるを得ない。しかし現段階としては確認の衝にある都としては地域住民の方が非常に心配もし、反対もしていらっしゃるので、まず両者話し合いをしてくれ、こういうふうな態度をとっておられるようです。また、そういう場合に、大臣として、こういう問題を円満に解決する何か行政指導の中でうまい手は大臣の頭の中には出てきませんか。
  61. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 日照権の問題は、御承知のように非常に都市の過密化現象のときに出てきた問題でございます。従来は日本ではあまり論ぜられなかったのでございます。海外におきましても、この日照権問題というのは法律上の定説がないのです、御承知のように。ニューヨークのような、あるいはロンドンのような非常な過密の都市、そういうところではむしろ日照権以上に、より都市機能を持ったところの条件を具備すべきだということで、そこにほとんど住宅がなくなってしまうわけですね。そこにはない。ところが日本のように、特に東京、大阪等、にわかに急激に都市化したところは、住宅地と商業都市、工業都市、これが雑然と雑居しておるような状況で、これが深刻に出てきたということでございます。これはどっちから見ても生活をしておる人、あるいはこれを利用する人にとっては非常に重大な問題になってきておるわけでございまするが、日照権をどうこれを確立し、かつこれを制限するかということになりますと、これは建設省のあではなくして、これはいわば、何と申しましょか、現在では民事上の争いになる結果が多いので、これは裁判所の判決が非常に重大な問題になってくると思います。したがいまして、具体化な事例について裁判所が日照権を認めておるところもございますし、これに対して否定的な回答をしておるものもある。   〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕 そうしたところの判決の集積の後、おそらくこういう日照権なるものの具体的な法律上の一つの定義というか、これが出てくると思う。しかし、それまで行政上ほうっておくわけにはいかない。そこで御承知のように建設省としてはいわゆる北側斜線なるものを設けまして、用途指定と同時に北側斜線で、でき得るだけこの高度利用日照権との調和をはかっておるというのが現状でございます。そういう観点から、先ほど二宮さんが御指摘になりましたそれはわかるけれども、限界地帯の問題は、片一方は法律上権利があるという、確かに法律上権利があるだろうけれども、被害を受けるのも事実だ。そのために緩衝地帯を設ける必要があるのではないかという御意見は、これは非常に傾聴に価することだと思います。ただ、法律上いままではそうした緩衝地帯を設けるという構想が出てきていなかったわけです。これを今後十分に検討してまいりたい。いま第一線と申しますか、現実にそうした問題を調和していく立場にあるのが都道府県でございます。それで建築主事がそうした問題をそれぞれの地域に従って行政指導もしくは勧奨することによってその妥結をはかるというのが現在の状況でございまして、そういうふうな指導は今後もしていかなきゃいけない。しかし、ただいま直ちに日照権の問題を明確に民事上の権利としてどう規定するかについては、私どもいまの所管では申し上げられぬのでございます。今後十分にこれは関係方面とも連絡の上、検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  62. 二宮文造

    二宮文造君 それで私、要望やら、あるいは今後の対策なりのことになってくるわけですけれども、それらを含めて最後に一言申し上げたいんですが、あの道路は、先ほどの説明によりますと、幅員が七メートルです。   〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕  京王線幡ケ谷に行きます、いわば幹線道路みたいになっておりますね。公団アパートができて入居者が非常にふえたということもありましょうし、通学路としても非常に大事な道路です。もしあそこでこれだけの建物建築作業が始まった場合、一体どれだけの交通障害になるだろうかということを心配するわけです。とにかく、もう道路はそれ一本しかないのです。横にも、前にも、うしろにも、もう全然ない。幅員七メートル、しかもちょっと交通信号が出ると、もう百メートルぐらい交通渋滞するようなひんぱんな交通路を擁するところ、しかも間口が四十メートルぐらいしかない。そういうところへ三百七十五世帯、それから地上三十八メートル、十一階、そういう建物建築作業が始まったら、これはたいへんなことになるではないか。それからまた、先ほども言いましたように、防火上、消防活動上非常に心配な建物の構造になっている。さらにまたビルが高層化しますと、いつも問題になりますのは風害の問題です。日照権と同じように付近の人が非常に心配をするのは高層建築のもとでは、何か風速が屋上よりも倍に加速されるそうですね。そうしますと、もう近所に建っている二階建ての木造建築、これが一体どれだけの被害を受けるだろうか、私先ほど緩衝地帯が必要じゃないかといったのは、そういうことも含めてのことでございます。また日照権で、いま現に住んでいらっしゃる方が非常に住宅の入居条件が悪くなってしまう。これらのことを考えて、総合しますと、確認をしなければならない都の立場はわかりますけれども、第一義的にやはり建物の所有者である公団、それからまた入居者、それと建築主との間で、もう少し煮詰まった、いわゆる相互の理解が十分に固まらない間は確認は出せないと、こういうふうな指導をなさることを私は一番に都にお願いをしたい。  それからまた、公団に対しては、私は私企業であれば当然第一義的に交渉の矢面に立たれる、こういう立場公団はとるべきだと思う。まああるいは一歩譲っても入居者と同じような、何と言いますか、ボルトをもって相手方と交渉をする、こういうふうなことも考慮されるべきではないだろうか。  また第三番目に、建設省としては、こういうふうなマンション建設について、まあ第一義的には権限を委譲しているわけですから、都とかそういうところにはなりますけれども、ただ建物の構造とかそういうものの建築基準法ではなくて、相隣関係というものをもう少し明確にするような建築基準法の取り扱いというものも考慮すべきではないだろうか、こういう問題点を私はここで感じるわけでございますが、それぞれのお立場で御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  63. 多治見高雄

    説明員多治見高雄君) ただいま御提起になりました日照権の問題、相隣関係の問題、いろいろございまして、われわれといたしましてもこの点は非常に建築行政上の今後の検討すべき問題ということで検討はいたしております。ただ現在の建築基準法のたてまえといたしましては、現行法にございますように——承知のようにわざわざ確認ということばを使っておるわけでございまして、通常行政上、認可あるいは許可というような自由裁量の面を入れた行政行為でございますが、基準法に関しましては、これは確認ということばで自由裁量の余地が非常に少ないということをあらわした趣旨から、こういう法律ができているというふうにわれわれは受け取っているわけでございます。条文にもございますように、「建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基く命令及び条例の規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基いてこれらの規定に適合することを確認したときは、その旨を文書をもつて当該申請者に通知しなければならない。」という規定になっておるわけでございまして、通常建築許可というふうにいわれておりますけれども、一般の行政執行上の概念でいいまする許可という概念とはだいぶ違って、要するに技術的に法令に適合しているかどうかということを建築主事が技術的な立場確認して、確認した結果、これは法令に適合しているということを通知するというのが法律上のたてまえでございます。ただ、そうは申しますけれども、現実の社会生活建築許可がおりましたということで、行政的にこの建築は認められたんじゃないかということで、いま先生の申されました相隣関係その他いろいろな民事上の争いについても一つの大きな根拠になるということには、われわれもよく気がついているわけでございまして、この点をどう調和を保って今後の行政を運営するかということが、一つの大きな問題だろうというふうに考えておるわけでございまして、十分今後検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  64. 芳賀力

    参考人芳賀力君) 建築基準法はいまお話しのとおり建物の権利義務の関係を調整したりする、そのような法律ではございませんが、まあわれわれといたしましては、できる限りその住民の御趣旨を尊慮いたしまして、三月に受け付けたものを、第一原則的には二十一日間で確認すべきものではございますが、現在までその話し合いのために努力しているわけでございますので、今後とも十分その話が煮詰まるようにわれわれも努力いたしたいと思います。ただ、どこが最終結論かと申しましても、おのおの主観がございますから、全員が認めるというようなことはなかなか現実的にむずかしい問題でございますが、やはりわれわれが客観的に、また過去のいろいろな体験的なものから、この線がやむを得ないというふうな判断がわれわれとして下せるような場合には、そのとき確認をいたしたいと、そのように考えております。
  65. 林敬三

    参考人(林敬三君) 私企業ならばこの問題は、自分が第一に立ってもっとボルトを上げて努力すべきではないかというお話でございますが、この問題が起こりましたときから公団立場として、やはりこれはたいへんな被害者で、それで非常に心を砕いて努力はいたしております。ただ、やや蛇足になりますが、私企業の場合はどうしても利益ということを主にいたします。私のほうは、同じような場合になりますと、これを受けるほうでありますが、さっきの問題を起こすほうの場合になりましたときは、公益機関というものはやはりそこに利益追求一本やりではいけないという立場で、ずいぶん控えるところがあるという態度をとっております。しかし、こういう場合になりますと、私企業の立場でもやはり信用が第一で、私は同じだと思いますが、その点よくお話をして、できるだけ影響の少ないような結論を生み出すような努力をいたします。ただ、これは公団というものが、先ほども申しますように、法的な、権能的なきめ手というものを持っていない。それで被害を受ける立場として主張するというだけでございますだけに、よしおれに全部まかせておけと胸をたたく態度というものが入居者の方にできないという立場がありまして、いわゆる水鳥の足のような努力に表面なるのでございますが、むしろ私企業でないだけに、よけいこれは大事なこととして努力をいたしておりますし、また今後もいたしますので、御了承をいただきたいと思います。
  66. 和田静夫

    ○和田静夫君 公団住宅政策、そしてそれとの関係における国有地利用、その国有地利用との関係における河川敷問題などについて、限られた時間でありますが、端的にお聞きいたします。  八月二十八日の全国紙は、一斉に来年度から公団住宅の家賃がことしよりも三一%から五三%値上げされて、いまなら二万円前後で入居できる3DKが三万円前後になる、こういうふうに報じております。これはどちらでもいいのですが、ほんとうのことですか。
  67. 尚明

    参考人(尚明君) 住宅公団は、来年度の建設にあたりまして、現在よりもいろいろな点において供給する住宅を改善しようと考えまして、たとえば面積それから建て場所、すなわち都市に向かって通勤する時間が短いように近間に建てる。そのほか設備等の改善を加えまして、それによりまして予算を組みまして、その予算のもとにそういう建設をいたしたいという意思表示としての予算要求をしておるわけでございます。その結果、いろいろの点に改善を加えましたので、それから計算をいたしますと、つまり近くて広い住宅、そして設備環境のいい住宅になりますが、家賃が計算上上がるということになった次第でございます。ただ、私どもは、その予算が認められた中におきまして、今度実行上の場所におきまして、たとえば現在建っている場所と同じ場所に同じような住宅をつくった場合は、これは単に物価の値上がりだけが影響するわけでございますが、住宅公団住宅全体のレベルアップということで予算を要求して、そのレベルアップの全体の計算をいたしましたものは、家賃が一部三万円をこえる、あるいは二万数千円になるものが出てきたということでございます。ですから実行上、ことし建てました場所へ同じようなものを来年建てましたものが上がるということではございません。なお非常に高くなるものにつきましては、本年から始めましたいわゆる傾斜家賃というのを適用いたしまして、当初は安く五年あたりで高い家賃になっていくという方策もあわせて予算の要求の中で要求をいたしている次第でございます。
  68. 和田静夫

    ○和田静夫君 公団住宅家賃が値上げをされる原因というのは、いま言われたような形と、さらには用地費あるいは建築費などというようなものの高騰、こういうものがからんできています。私はきょう、具体的なやりとりよりも建設大臣と住宅政策についての政治的な一つの結論といいますか、そういうものを求めて二、三の意見を申し述べて見解を承りたいと思うのですが、いわゆる高度経済成長期に入って、そしてそれを経てあらゆる面で先進国化した。昨日、防衛庁の決算をやったのですが、中曽根防衛庁長官はそういうような金の使い方の対比をされますが、どこか狂ってはいるのですが、とにかく対比をされますから私はあえて言うのですが、道路に幾ら使わせる、防衛費に幾ら、しかしながら世界的に見てみれば、舗装が全くおくれている。言ってみれば道路が存在をしない日本の実情を無視して数字だけを照らし合わせて得々とされるなどということでありますから、それらを解消するためにも、きょうは若干の論議をしたいのですが、この先進国化したというわが国で、住宅だけは御存じのとおり後進国並みであると言って過言ではないと思いますね。特に過疎過密現象が激しい。そして言ってみれば大都市を中心とするところの住宅事情というものは後進国並みである。人間生活というものを中心に考えてみれば、特に大都市における住宅難の解消というものは、これはもうどう考えてもいまのような状態では解消しそうにもないと思われるのですね。そうした中でこの公団住宅に対する庶民の期待というものは、これまたたいへんなものなんですね。便利なところの、あの募集時におけるところの何十倍というような倍率を見ただけでも、それが言えると思う。しかるに政府は、この期待を、持ち家政策の方向へ誘導をされようとしている節がどうも私には考えられるのであります。先ほど述べた新聞記事が出たあとで西武鉄道不動産部が、公団に月三万円払うくらいならば二戸建てを買うという趣旨の広告を出しました。それがまたたいへんな反響だったようなんです。西武鉄道不動産部の関係者が次のように述べているのですね。「七月末から売り出している鎌倉逗子ハイランドの分譲住宅の下見客が、この前の日曜日には三百組を越えています。いままで百組せいぜいだから、やっぱりあの広告がきいたんでしょうね。おかげで、だいぶ売れてます」、宣伝もあるかもしれませんが、こういう談話がある週刊誌にも載っていました。この誘導策に実は私は反対であります。サラリーマンの階層分化を深めると思うからです。いわゆる持ち家政策が、いま現にあるところの住宅難解消にマッチしたものかということにもたいへん実は疑問を感じます。いつぞやも私は建設大臣に申し上げましたが、公団の賃貸住宅の量質面における充実にやはり行政投資を私は集中すべきだと思うのです。そのほうがどう考えてみても行政効果があがると考えます。私は、あなたから行政的な説明を、先ほども言いましたように期待をいまいたしません。政治的に考えて、このことはどうですかということ、力のある建設大臣根本さんでありますから、そういう側面に実は照らした御答弁を求めたいのです。ここへの行政投資を大量にふやす、または国有地をそういう方向に使ったりして公団の家賃をお下げになるつもりはありませんか。これは二つ目です。たとえば公務員住宅ですね、公務員住宅がたいへん話題になります。公務員住宅の家賃がたいへん安いのです。2DK、これは安いというのはあたりまえかもしれません。言ってみれば公団住宅の家賃をそこへ持っていくのが至当かもしれません。2DK、3DKで、三千円、三千五百円程度、公務員住宅も、もちろん場所建物などの種類によって多少の幅はありますが、高級官僚クラスの4LDKが最高六千八百円ですね。このほかにも敷地約百三十坪、建坪六十五坪の一戸建ての家賃がわずかに三千三百円という、言ってみれば公務員住宅でありますからあれでしょうが、他との対比においては信じられないような場所もあるのですよ。これとの比較で公団の高い家賃に御存じのとおり民衆は怒っているわけです。この辺を勘案されながら、いかがお考えですか。
  69. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 住宅政策についての基本的な考え方、政治的な判断をどう思うということのようでございます。それで、私はどうも、日本においてこの住宅問題がなぜ深刻であるかということにあたって、現実住宅需要者が非常に多い、一般サラリーマン、一般国民がこれを手に入れていくにはほとんど絶望に近い困難性がある。だから国が行政住宅を思い切ってやれ、こういう提案をみな言うのです。これは提案であると同時に願望であるとは思います。しかし、なぜ日本においてこういう住宅難が非常に深刻であるかということの総合的な原因探求が足らないし、そしてそれに対する具体的な対策の提案もなくやっている向きが私は多いと思う。これを一々私は長く説明する時間がありませんが、端的に言えば、よその国に比べて非常に住宅予算が足らないということは、御存じのように戦争によって日本の都市という都市がほとんど壊滅に頻しました。したがって住宅の蓄積がもうほとんどゼロに近いということが一つ。それから住宅問題の非常に大きな大事な問題は、戦時中、戦後、家賃統制で、入居者保護の立場において、民間で企業的に住宅建てるということは事実上これは経済的に不可能なことです。そういう状況と、もう一つ土地問題です。土地問題は、御承知のように他の諸外国には農地制度というものがございません。ところが、これは戦後の日本の食糧の非常に不足なときに外貨も全然ない、しかも年々一千万石も海外から——日本の当時のいわゆる植民地から入らなくなった。こういうことから、よその国に見ない——農地を原則として宅地、工場用地にしないという固定した土地政策をとった、これが一つの大きな原因です。それから日本においては公共用地、そうしたものへの土地収用がほとんど不可能に近くなりました。これはいわゆる国家権力との戦い、あるいは独占資本との戦いだと称する、特に革新勢力のような方々が、公共のために土地を取得すること、これに力をもって対抗した。こういう条件が全部重なってきております。そこで、どうしてもこれは従来の住宅政策ではできないということで、御承知のように住宅公団をつくるとか、あるいは住宅金融公庫をつくって、これでかろうじてこうした難問題に対抗する一つの政策としてやってきたわけです。ところがこれには、先ほど公団の総裁からお話しになりましたように、これは全部財投資金と借り入れ資金でございます。しかも最近になりますというと、住宅に対する欲求が質量ともに非常に変わってきました。住宅はなるべく快適な、いい条件のところに、しかも安くと、こう言っております。しかも公団がそれぞれのところで住宅をつくりますと、遊び場がない、学校がない、あるいはマーケットがない。こういうことも地方団体では負担し切れないから、今度は公団でこれの公的な負担をせよと。しかも安くせいということで、非常にこの要求はみなそれぞれあれでありますけれども、そうしたことが、政府政策住宅をやるときに非常に大きな障害になってきているということであります。ところが一方において、日本の高度安定成長の結果、国民所得は相当にふえています。それから各企業等の収益もふえておりますので、現在平均すると一六、七%の年率のベースアップがある。そこで私が提案しているのは、企業で相当収益が上がっておるところでは、企業自体で持ち家政策をやりなさい。企業自体が相当な収益が上がっておりますから、経済力がある。そういうところで自分の従業員に対する持ち家政策をやる場合、そのために税制上の優遇をいたしまして、従業員の持ち家政策をやったものに対しては、税制上のこれは優遇措置を講ずる。場合によっては政府財投資金でやっていこう。そうしますれば、これは先ほどの話のように企業者は非常に過度の競争になっている。これも緩和できる。しかも一面においては、各企業も安定し、その従業員もむろんそのほうが定着する。こういう政策でありまして、私は、政府政策住宅を減らして、民間に依存しようということではない。この点を基本的にひとつ御認識を願いたい。したがって私は、日本のようにほとんどの企業がずっといままでの経過から見れば安定しているところでは、できるだけ企業が自分の力をもって従業員に持ち家政策をやりなさい。幸いにして最近は、労働省も、あるいは総評系統も勤労者の財産権、その一つとして持ち家政策を言ってきたことは、私はその意味においてはけっこうなことだ。そういう意味に御理解願いますれば、私がいままで申したことが、何か和田さんのおっしゃるように、政府がやることをやらずに、民間にごまかしてやらせるということではない。この点をひとつ御理解いただきたいと思います。  それからその次に、これは、私は建設省自体が自己反省をいたし、考え方を変えようと言って、いまやりつつあるのでありますが、従来は、これは官庁はみな縦割り主義で、同じ建設省でも、住宅関係住宅局だけがやる。ところが道路局とか河川局は、住宅のほうには関係はないと言っていますが、これは非常に関係がある。たとえば首都圏内においても相当宅地として開発し得る条件を持っているところがある。それで私は、首都圏の事務局並びに住宅局にも命じまして、大幅な宅地造成をいままでのように単年度的な計画ではだめだと、少なくとも十年計画でこの首都圏でどれだけの住宅需要があるか、それにはどれだけの宅地が必要であるか、それを首都圏内で十年間でまかなうにはどうしたらいいかということを検討をさせました。これに基づいて調査しますれば、どういうところが残っているかというと、まず第一に水のないところ、そして道路、交通機関が整備されていないために、これは現在宅地として問題にならない。ところが、建設省では道路局があり、河川局があるのであります。しからば、水の問題はどうして解決するかというと、河川局だけでは解決できません。ほとんど大部分は、これは慣行水利権によって押えられている。水は現実にある、あるけれども、これは渇水期の水のアロケーションを中心としてやられておって、現実に水田がどんどん減っている、しかも経営規模等が違って水が減っておるにもかかわらず、農民の慣行水利権ということで使えないのです。だから、私は農林省に対し、この慣行水利権の検討をいたしまして、水田農民にははっきりと農林省と建設省が協力して水を確保してやる、そうして絶対に不安のないようにして、あとの水はこれは都市用水、工業用水に使う道を開こうじゃないか、あるいはまた、場合によっては河川敷を利用してもう少し水を貯水して、これをやるということまでを私は河川局に命じております。  それから、従来の道路も、たとえば国道何号線あるいは高速自動車道路、地方道路というものをみんな一線一線長期計画を立てて、そうして十兆何千億という予算を立てておるけれども、その地域開発のためにどう機動的に利用するかについてはまだ考えが足らない。それで私は首都圏内部において、あるいはまた近畿圏、中部圏というふうに過密現象が出てきて、大きく社会的流動が起こっておるところにおいては、それにあまりこだわらずに、たとえ地方道であろうとも、ここに大きな団地を形成する、あるいは新しい都市づくりをやるという場合には、これに思い切って道路投資をしなさい、それくらいのことはやっていいはずだ。いままではあまりにも道路等の延長だけを考えて、これの社会構造の変化に伴う機動的な配分のしかたが足らないじゃないか、これは実は大蔵省にも相談をしで機動的にやらせる方針をいま進めさせております。こういうことになってまいりますれば、公的な住宅関係が改善されるのみならず、そうした条件が整ってきますれば、先ほど申しましたように、企業自体が職住近接の政策をとりながら、企業自体で自分の持ち家を従業員のために持っていくということも非常に可能になってくるのです。私は、ことしから北関東の三県に対して百万都市構想をやることをすすめております。群馬県、栃木県、茨城県、しかも私は、そこの関係者、特に知事諸君に対しては、土地を全部買い取ろうとするから非常に高いものにつき、農民にも抵抗がある、借りてやりなさいというのです。そして、農民には、現在水田をやっていて米十俵とれるならば十俵分を地代として支払う。長期計画としてやる。そうすれば農民も抵抗なく相当これには協力してくれる。そういうふうなやり方をしますれば、私は住宅用地も十分とれる、企業が過密都市から出ていって地方分散もできる、そうした発想を今度やるべきだということで進めておる次第でございます。  いずれにいたしましても、和田さん御提案のように、これから発想を変えなきゃいかぬと思うんです。従来の一つ傾向によって頭がみんな固定しているから問題解決ができないのであって、もうちょっと発想を変えればいろいろの問題が私はできるというふうに考えまして、そのためには、これは役所だけではなかなかできぬです。まあ端的に申しまして、役人の方々は法律で与えられた権限をいかに忠実に守るかということでありますから、創造性がないのは当然であります。その創造性を切り開くのは、これは政治的な判断である。それでありますから、国会の諸先生からいろいろと問題を提起してもらう、私も従来のあれにとらわれずに考えて、そこの合意を得たところから行政の行き詰まりを打開していく。これが私は政治家の任務だと思う。その意味において、私は虚心に野党の方々意見でも何でも聞いております。そうして、いいと思ったことは実行を検討さしまして行政のベースに乗せてやろう、こう思っておる次第でございます。この住宅問題は、私は党派を越えて内政上の最大の問題でありまするので、一生懸命やりまするから、どうぞひとつどしどしと御叱正並びに御提案をいただきたいものと存ずる次第であります。
  70. 和田静夫

    ○和田静夫君 いまの御答弁に非常に私は期待をいたします。がんばってもらいたいと思います。  国有地の利用問題についての答弁が抜けておりましたが……。
  71. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 国有地は、私はできるだけこれは住宅政策に、特に都市周辺ではこれをやるべきだということを提案しておるわけです。したがいまして、これにはいろいろ問題がありまするが、まず第一に建設省としてなし得ることは、すでに前に建て住宅、しかもだいぶ時代おくれになっているところの公共住宅は、これをもう一回再開発するということです。ところが、これがまた現在入っている人が非常に安いところに入っているものだから、がえんじない。しかし何とかして、これはいままでもう十年も前にやったところは、非常に便利もいいところに平家建てとか、二、三階のものなんです。これを少なくとも十階ぐらいにしたら非常に収容力ができてくる。これはすぐやりたいということで進めております。  その次には、いまいろいろ問題になっておりまする軍事基地の返還に伴う利用の方法、これはいろいろ各省から要求がありますが、私のほうとしては第一原則としてはこれは住宅政策に提供さしてほしい。ところが、これは各地方とわれわれとの意見の対立があります。いろいろな地区から、長年われわれの苦労したところです、もし軍事基地が返ってきたならば、これを都市公園にしてほしい、あるいはその区のレジャーセンターをつくるところにしてくれというような要求があります。それもよくわかります。しかしながら、私は何としても、やはり首都圏全体を見た場合、国民感情としても、もちろんそういう都市公園とか、そうした健康の場もつくりながら、第一前提条件としては私は住宅政策に使わしてもらいたい。それから先ほど御指摘のありました公務員住宅、これははなはだ日本の行政が縦割り行政というもので困ったもので、大蔵省所管なんです。大蔵省は財産と管理権とを持って、よこさんですよ、実際のところを言うと。何も大蔵省がそんなことをしなくたっていいじゃないかと私は主張しているんです。大蔵省は自分の財産の上にああいうものをつくってよこさないものだから、われわれの住宅政策と非常に差が出てくる。それを国民から見れば、同じ政府のやっておることだから、一体公務員を特別優遇して、一般国民をはなはだ冷遇しているじゃないかといわれた場合に、まことに申し上げようがないのです。で私は、公務員住宅は大蔵省所管でもやむを得ない、いまのところ力をもってとるわけにはいかないから。そこで私は、せめて公務員住宅も高層化しなさい。高層化してもう少し土地利用を高度にやっていきますれば、それほど国民からの批判もないんじゃないか。そしてまた、今度それをやっていきますれば、いままでの公務員住宅を一般公営住宅なりあるいは公団住宅なりに転用できることも出てくるのじゃないか。こういう気持ちで交渉さしていますけれども、なかなかこの問題は実は進んでいっておりません。で、こういう問題もひとつ自分の力が足らないから皆さんのお助けを願うとまでは言わないけれども、これは十分に、いま御指摘にありましたように、国家的な問題として、政治的な問題として検討すべき問題である、かように考えておる次第であります。
  72. 和田静夫

    ○和田静夫君 最近、公団住宅と自治体との間で紛争がかなり起こっています。これも先ほど、公務員は創造性がなかなか出てこないんだという、かなりきびしいことを言われたんですが、法律のワク内で考えていくと、なかなかやっぱりそういう創造的な解決ができにくい。そういう意味では建設大臣の政治的な計らいというものが非常に大切だと思うのです。船橋やら町田やらたくさんありますが、自治体の言い分というものはもっともだと思う、道路にしたって、学校にしたって、水にしたって。その点は一体どういうふうに解決されるつもりですか。
  73. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) まず第一に、地方自治体と政府政策住宅でいろいろ対立が出てくる問題は、税制上の問題、これが非常に大きな問題だと思うのです。住宅ができましても、これが貸し家住宅とか何とかでありますと、いまの公団住宅は地方自治体に税収がほとんど入らないんですね。そうして住民はみんな東京に通勤しているというような方々です。しかも、そういう状況でありながら、その地域社会としては学校もつくってやらなきゃならぬ、幼稚園もつくってやらなきゃならぬ、運動場もつくってやらなきゃならぬ。だから抵抗する。ところが、これを住宅公団で負担せいと言えば、今度は入居料が高くなる。そして解決できない問題がそのままになっておるわけです。それで私が昨年以来言っていることは、地方自治体にやはり税収の道をあけてやるべきだ。それで固定資産税の評価がえ、それから農地に対する固定資産税の改定の時期だから、これをやるべきだ。それからもう一つ都市計画税、これで考えてやる。それからもう一つは、これは自治省の問題ですが、いまの人口がぐんぐんふえて公的支出が必要なようなところは、人口急増のときにあたっては、特平の割り当て方を重点的にやるべきだと思うのです。そういうような施策がないものだから、全部が住宅公団にかかってくる、あるいはまた民間デベロップーの負担になってくる。地方自治体で民間のマンションなりデベロッパーがやるならば、それでは学校を持て、幼稚園を持て、何を持てと、こういうふうに言われて、それが住宅を高くしておる。これはおかしいんじゃないか。だから私は、やはり税制上とそれから財源配分の点をこれは考えてもらわなければ困るということを提案しているわけでございます。  それから水の問題については、もうこのごろは、先ほど申し上げたように農林省との間で慣行水利権の調整ができれば、かなり私はこれはいけるだろうと思っています。ただ問題は、今度は下水の問題です。大都市における下水のおくれていることはまことに深刻なものです。で、この状況でいくならば、私は、公害の中で、みんな大気汚染だあるいはカドミウムだ何だといっておりますけれども、下水の整備されないところで公害を論じたって、これはどうも本末転倒になるんじゃないかとすら考えております。そこで従来は、下水は市町村単位の事業でありましたが、今度はやはり広域下水道を思い切ってやらせなければいかぬ、それは下水道法を変えて都道府県を実行主体にさして、そこには思い切った政府投資をしなければいかぬ。しかし現在のところでは、なかなか大蔵省は言うことを聞きません。それで私は、これは現在の住民のみならず、将来その地域に住む人のためにもなるから、下水については地方の起債を相当思い切って認めるべきだ。これは消化し得る能力があるんです、地方自治体では。そういうふうな思い切った措置を講じなければいかぬ。ところがややもすると、そういう社会資本の充実が必要だということを公害のときには言っておるけれども、一方今度、予算編成になると、そういうふうに公共投資をやると景気を刺激するという、全然別の議論で制約されるというのはおかしいと私は思う。景気がたとえ刺激されても生活環境がよくなることによる利益のほうが、より大きいはずだと私は主張しておるんです。ところが、どうしてもいまの一般の傾向は、必要だ必要だと言いながら、総合的判断になると、景気論と物価論でこれはだめだと。ところが、そういうふうな物価でも、こういう社会資本が充実しなければ、どんどん逆に上がらざるを得ないんです。そこに私は、一般の日本の財界人というか、財界のエリートの方々と少なくとも意見の相違が現実にあります。これは、それぞれの日本の国民、団体がそれぞれの利益のために大いに主張することはいいけれども、これを踏まえて総合的判断をするのが私は政治だと思う。政治は政府と国会との二つによってやっていることだから、私はその意味において、少し型破りなことをときどきやりますけれども、最後の判定は国会の判定、これが大きくこういう問題を解決するのに役立つ、こう思いまして、私は与野党問わず言うべきことは言って、そうして批判を受ける。そうして国民合意の上でこういう問題を解決しなければならぬと考えている次第でございます。
  74. 和田静夫

    ○和田静夫君 建設大臣の答弁はかなり大胆で、私があなたに期待しているのは、首都圏整備法ができて十三、四年、そうして佐藤内閣の実力者といわれる保利官房長官でもあの事業計画はついにつくれなかった。その次の坪川建設大臣もやれなかった。しかしあなたは、私に本会議で約束されて、十四年ぶりで、ともあれ法違反をずっとやってきた内閣の姿を改めて事業計画を出された。そういう意味ではたいへん敬意を払っているんですが、そういう意味においていまこの問題になっておる自治体と公団住宅をめぐる問題については、いまも認められましたように自治体の側に言い分が非常にあるし、それは正当性をかなり持っておりますから、そういう観点に立った解決のしかたというものを、早急にやっていただかなくちゃならぬ、そう思います。  そこで、時間もだんだんなくなってきましたので、次に入りますが、河川敷で民有と官有のいわゆる境界のあるのが相当あるのです。これは事務当局でいいのですが、全国で何カ所ぐらいありますか。
  75. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 全国の河川敷は、これは一級水系については国、二級水系については都道府県ということになっておりまして、なお一級水系につきましても直接国で管理しておる区間は限られておるわけでございます。全国的な数、統計はちょっと手元にございませんが、国が直接管理しております河川敷の面積が全国で約二十三万ヘクタールでございます。その中で、特に現在まだ調査の行き届いてない範囲が民有地で約二万四千町歩ぐらいございます。約一〇%程度でございます。
  76. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで大臣、この境界がはっきりしないものについて、建設省の側では何か民間にやってしまうのだという見解をとっていらっしゃるようなんですが、それはほんとうでしょうか。
  77. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) やはり河川は公共物でございますので、これを簡単に民間に払い下げをするとか、そういうことは私どものほうでは考えておりません。
  78. 和田静夫

    ○和田静夫君 大蔵省にちょっと尋ねますが、国民の大切な財産である国有地が、いわゆる民有、官有の境界がさだかならずということで、営利会社などにいたずらに占有されてしまっているということは、許されないことだと思うのです。きょうはその問題について具体例をあげて二、三やるのですが、早急に財務局を通じて測量調査をして境界をはっきりさせて、そしてすでにそこに居すわってしまっている会社などには賃貸契約なり売買契約なりをすべきだと思うのですが、それはいかがですか。
  79. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) おっしゃるとおり、そういうふうな不分明なところがございますれば、国といたしましても調査をいたしまして、そしてその実情を明らかにしました上で、適切な管理、処分の方法を講ずるというつもりでおります。
  80. 和田静夫

    ○和田静夫君 最後の適切な処分のしかたというのは、どういうふうにお考えになっておりますか。
  81. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは、その実情を調べませんと、個々の事情があると思いますけれども、おっしゃいますように賃借料をとるとか、あるいはどいてもらうとか、あるいは事情によっては払い下げるとか、いろいろな方法があると思います。
  82. 和田静夫

    ○和田静夫君 建設省は、東京都西多摩郡日ノ出村細尾三一一五番地の土地等をめぐって行政訴訟が起こっていることを御存じですか。
  83. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 管理者である東京都に対しまして、地元の浜中さんという方から東京地裁に対して行政訴訟が提起されておるということは、東京都から聞いて承知いたしております。
  84. 和田静夫

    ○和田静夫君 その原告は東京都西多摩郡日ノ出村大字大久野三〇三四に住む浜中力蔵、浜中喜代治の両氏、被告側は美濃部東京都知事ほか三名の都職員、こういうことになっているのです。この訴訟に対して東京都が昭和四十四年七月二十三日付で訴えの却下を求める答弁書を提出しております。その理由として述べられているところには、こうあるのです。「本件河川は、原告らが訴状において自認するように、河川法第四条に規定する一級河川であり、かつ同法第九条第二項の規定によって指定がなされ都知事が国の機関としてその管理を行なっているものであり、本件河川敷地は国有地であって都の所有地ではない。」、ここで都側が本件河川敷地は国有地である、こういう判断は昭和四十二年の十月に関東財務局が東京都の西多摩事務所の土木課をして実はなさしめた結論であります。大蔵省、これは確認されますね。
  85. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 大蔵省といたしましては、そういう調査をしたことはございません。おっしゃるのは東京都であろうと思います。
  86. 和田静夫

    ○和田静夫君 昭和四十二年十一月、関東財務局がこの調査をおやりになっている。そのことは御存じないわけですか。
  87. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 私どものほうで少し調べましたところ、東京都の財務局の用地部がやったというふうに聞いております。
  88. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、このお手元にお渡しております土地の略図、これは去る六月の公判で都側が出したものです。ごらんのとおり都の財務局の測定結果によって——いま都と言われますから、都にしておいて、都の財務局の測定結果によって国有地である、そして、そこを日本セメント株式会社が社有地と主張している土地ということが実にはっきりしているわけですね。これはどうですか。国有地でありますか。
  89. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) お話しのように現地東京都に登記簿かございまして、この公図によって判断するのが一つの手がかりになるわけでございますが、この河川は昭和四年に準用河川になりまして、以後河川法が改正され、さらに一級河川等の制度ができまして、四十一年から一級水系になっているわけでございます。四十四年以降につきましては、特に出水とかそういった河状を変更するような現象はないわけでございますが、公簿のできておる時点と、現在の河川の周辺の状況というのは相当変わったところがあるようでございます。したがいまして、現存しております東京都の公図からだけでは必ずしもはっきり判断できないものがあるというようなことです。一方これを所有しておると主張しております日本セメントでございますが、これも昭和三年ごろにこの土地をたしか手に入れたはずでございます。その会社のほうでもやはりいろいろ公図を元にして、それから購入当時の面積なり図面等を参考にしていろいろ検討しておりますけれども、やはり境界については異論があるというふうなことで、その後先ほどお話しのように東京都におきまして国有地の管理の委任を受けている立場から、いろいろ公図を元にしたりして現地での測量を行なったわけでございます。しかしやはり境界線を確定するということは官地と、それから民地の所有者である日本セメントの間で協議が整いませんと、この境界というのは確認できないわけでございます。その点につきましてはいまだに合意に達していないわけでございます。したがいまして現在の時点でそういった係争の問題もございますし、今回の行政訴訟がどの程度範囲にとどまるかわかりませんけれども、さらに境界の確認という点についてはまだまだ問題があるのじゃないかと思います。
  90. 和田静夫

    ○和田静夫君 先ほど冒頭に答弁されましたこの官地と民地の、言ってみれば境界の数字の中にはこの部分については入っていませんか、御答弁なすった中には。二十三万ヘクタールの部分については。
  91. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 先に申し上げましたように、私どものほうでは直轄管理をしております区域については統計資料がございますが、全国的にわたりますと、これは相当な面積になりますので、それについては資料は持っておりません。したがいましてこの土地については、私どものほうのはその数字の入ってない資料でございます。
  92. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、いまお手元にあります図面の一というところですね、これはすでに一級河川ですね、この河川はそこに取水管がありますね。これでは日本セメントの河川法違反が行なわれている。こういうような訴えと調査結果があるのですが、これは建設省は、いままでの答弁によれば調査をされてないようですが、今後はされるおつもりがありますか。
  93. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 河川の管理上の問題は、この区域が国有地であるかどうかという問題、それから河川として国有地ではあるけれども、必ずしも河川の区域ではなくて、普通の財産でもいいんじゃないかというような、効用なり利用の面の両方の問題があろうかと思いますが、河川関係につきまして問題があれば、私どものほうも東京都を通じましてできるだけ十分調べるようにいたしたいと思っております。
  94. 和田静夫

    ○和田静夫君 いま言ったように、ここは訴えの中に随時出てくる指摘のあるところですから——これは全く一例ですが、全国的にこれから点検してみたいと思いますが、早急に一ぺんやっていただきたいと思います。さらに図面のDですね、これも先ほどの財務局の測量結果によりますと国有地内ですね。ここに井戸と揚水場の建物敷地がある。これは約四十年間にわたって日本セメントの不法占有ということになるわけです、その前提は東京都の答弁書が正なるものと考えた場合。したがって、東京都の答弁書どおりの国有地であるかどうかということを、建設省として調査結果を早急に出していただきたいと思うのです。それが出ますと、いま渡してある図面のDの部分について申し上げたことが言える。そうなりますと、これはもう河川法の第二十七条の土地の掘さく等の許可条件に違反しますから、日本セメントは当然百二条に基づく罰則適用ということに私はなると思うのです。これはいかがですか。
  95. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) ただいまお話の問題につきましてやはり一番問題になるのは、国有地か民有地か、境界がどこか、その辺が一番基本になるのじゃないか。その辺からいろんなケースが出てくるわけでございます。したがいまして、できるだけその境界の確認を急ぐということが大事だろうと思うのです。東京都では現在東京都なりの一つ解釈を出しておるわけでございます。私どもも特にその内容をこまかく承知しておるわけではございませんが、なお十分東京都の判断の基礎等を調べまして、やはり境界の確認というのは、相手方の日本セメントのまた合意がなければ、係争のしっぱなしということになりますので、その点について両者の円満な合意が成立いたしませんと確認できないのじゃないかと思います。そういった確認を急ぐとともに、あとあとまた東京都を通じて今後の処置等についてもよく協議をし、指導をしていきたいと思います。
  96. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃともあれきょうの場合、東京都が答弁書に明らかにしたような形での結論について建設省が調査を早急に行なう。——大体いつごろまでにこれはやっていただけますか。
  97. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) 現在この地域は、東京都が管理を委任されておる区間でございますので、私どものほうが直接手を下して調査をするという筋にはまいらぬと思いますけれども、できるだけ督促をいたしまして、早くそういった合意に達するように私どものほうも努力をいたしたいと思います。期限の点につきましては、これは相手方もございますので、いつまでということはちょっと無理かと思いますが、相当長年にわたった問題でございますので、その点を一気にすぐに解決できるかどうか、疑問でございますけれども、できるだけ誠意を持って努力をいたしたいと思います。
  98. 和田静夫

    ○和田静夫君 とにかくこれは一ペん、もう国有地であると明確に裁判所に出したものですから、したがってこれは国有地であるかどうかという問題について早い機会に力を入れて努力してもらいたい。この場合に同時に東京都を通じてでも何でもいいですから、この機会に二、三の疑問をこれから申し上げておきますので、それらについても調査結果を出していただきたいと思います。  先ほども申しました図面Dの部分に関すること、それからさらに図面Cですね。昭和二十五年、さっき述べたDの部分における揚水場、現在の右側に日本セメントがかってに移転しておるのですね、許可なしに。同時に井戸を二つ掘っている。その揚水場の建物敷地、これが言ってみれば国有地の中にあるわけですから、十九年間にわたって日本セメントが不法占有をしている、こういうことになります。で、そうなりますと、河川法二十六条に基づく工作物新築などに関する許可条件に違反をしておりますから、当然百二条に基づく罰則適用が私は起こると思う。それからこれらの場合に、国有地からの不法給水、これが先ほど述べられたように、昭和三年の三月、東京府知事平塚広義さんの許可を除いては、その後一切の許可を日本セメントはとっておりませんから、したがってこの部分で大量の用水が盗取されてきたということになる状態がありますね。そうすると、これは流水の占用許可問題との関連が私は当然起こると思います。その辺の調査結果もひとつお願いをしたいと思います。これは地元民にとってはたいへんなことなんであって、いままで個々の地元民の方々も違法行為の調査方の依頼を、関係官庁や、あるいは警察、あるいは検察に対してもたいへん熱心にされておるのですね。しかしながら、どうも日本セメントがどこかの料亭で酒席を用意するというような所作を通じて、これらがどうもはねられていっておる——そういうことは古いことで時効にかかっておる部分がありますから、具体的にはここへ出さないのですが、たくさんあるのですね。したがって私は、これはたいへん疑義に思います。そうして、きょうこれを一例として取り上げたのは、冒頭大臣に申し上げましたように、官地と民地の関係における河川敷を中心とする不明確な部分がたいへんだくさんあるのです。すでに直接管理をされておる部分でも先ほど冒頭に答弁があったとおりです。これらは一ぺん総体的に調査を完了されるように私はこの機会に希望いたしたいと思いますが、いかがですか。
  99. 川崎精一

    説明員(川崎精一君) お話のようにかなり民有地が直接管理をしておる区間にもございまして、まだ調査が十分行き渡ってないわけでございますが、中でもやはり特に都市周辺あるいは非常に開発の進んだ河川の周辺の利用価値の高いところに問題が出てくる場合が非常に多いわけでございます。したがいまして、私どものほうでも、この四十五年度から、とりあえずそういった緊急的に境界を確認するなり、民地の状態を調べる必要があるというようなところを選び出しまして、ほほ五年ぐらいで当面問題になりそうなところは解決したいというようなことで、計画的にそういったものを進めたいというようなことで、大蔵省等とも話をいたしまして、本年は二千万円程度の予算で大体緊急を要するところを逐次解決していく、全般的にも先ほど申し上げましたように相当膨大な面積になりますので、これにつきましては、問題のあるところ、あるいは河川のさらに改修を行なうつど、そういったものは解決していくというようなことの二本がまえで、できるだけそういった不分明なものをなくするように努力を進めておる最中でございます。
  100. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣、いまお聞きのとおり五年間ぐらいという年月をかけてやられるということですが、これは督促をしていただいて、早い機会に全体の状況が明らかにわれわれでも見ればわかるように——ふくそうしているところがかなりあるわけですが。そういう期待をしたいわけですが、いかがですか。
  101. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) ただいま河川局長から答弁したとおり、督促させます。実は私は、どうもいままで河川敷の利用が非常に進んでいっていないと思っております。これも一時は、建設省の事務当局の少し抵抗があったのですが、河川敷の占める面積は膨大なものです。ところが、これは十年に一向とか何年に一回の水害のために河川敷を確保しておるわけです。それも治水の意味で非常に大事ですけれども、同時に、今日のように都市周辺の骨材が非常にない、あるいはまた土地が少ないときに、いままでの治水の一点だけからの、従来どおりのやり方だけでは、これはどうも私は国民感情としても納得いかぬものがあるだろうという気がしたのです。都市周辺では、最近は骨材は河川敷ではとれない——これは治水上の問題もあるので、ずっと遠くの山からでも山砂利をとってくる。これがダンプ公害を起こしておる。さらには海外から輸入しなければ骨材がないというような今日、従来の慣行というか、従来の事務的な治水上の安全だけでいいのかということで、河川敷の再開発を検討することを私は指示しております。そういうことになりますれば、必然的にいま御指摘になりました河川敷内における民有地との境界を明定し、あるいはまた、これをできるだけ国有化すべきだと私は思っております。そういう観点から、これは長年の、とにかく河川法ができて以来今日まで、古い慣習上のいろいろの問題があるようでございまするから、一挙にこの膨大な河川敷を完全に調査を完了するためには、人的にも予算的にもいろいろ問題がありますけれども、まず一番権利が相錯綜し、かつ利用価値の多い都市周辺のところからやるように指示しておる次第でございます。御趣旨を体しましてできるだけこれは早く完了するように督促いたしたいと思っております。
  102. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 午後一時に再開することとして、休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時八分開会   〔理事和田静夫君委員長席に着く〕
  103. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) 委員会を再開いたします。  昭和四十二年度決算外二件を議題とし、休憩前に引き続き質疑を続行いたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 私の持ち時間が非常に限られておりますから、簡潔に質問いたしますので、御答弁も要領よくお願いしたいと思います。  私は、きょう二つの問題を取り上げたいと思います。一つは、多摩ニュータウンの開発の件で、住宅公団東京国際カントリークラブから用地買収した、この点について。もう一つは、東京国際カントリークラブの姉妹会社である菅平国際カントリークラブ、これが昭和四十二年から菅平に造林事業をやっています。この点についてです。  で、住宅公団の総裁にまずお伺いしますが、この多摩ニュータウン開発で住宅公団東京国際カントリークラブから全面買収した土地、これがあると思うんですが、その公簿面積と実測面積——どのくらいありましたか、お教え願いたいと思います。
  105. 林敬三

    参考人(林敬三君) 買収いたしました公簿面積は、三十八万一千八百七十九平米でございます。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 実測は。
  107. 林敬三

    参考人(林敬三君) ちょっとお待ちください。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 実測は、おわかりになりませんか。
  109. 林敬三

    参考人(林敬三君) 実測はまだ終了いたしておりませんので、明確なことはわかっておりません。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 こちらにいただいた四十八万七千平米というのは、これは実測じゃないわけですか。——じゃあ実測は、さがしといてください、総裁。また、あとでお答えいただきますから。
  111. 林敬三

    参考人(林敬三君) はい。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 この公団の取得した用地の中に、すなわち町田市の下小山田町字奈原等の地域ですね。——すみません、これは公団じゃなくて、大蔵省の国有財産総括課長さんですか。——その中に国有地があったわけですが、もし御調査しているならば、その結果をお教え願いたいと思います。
  113. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 国有地が全部で五〇三三・九七平米ございます。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 何筆になりますか。
  115. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは一件脱落地がございますけれども、それを含めまして十三筆でございます。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 この国有地の払い下げの手続は、とってあるんでしょうか。
  117. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) まだとっておりません。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、払い下げの手続をとらずして、すでに国際カントリークラブがゴルフ場をオープンする予定地として造成して、これを今度は住宅公団が買収した、こういう過程です。また後ほど、こまかい点についてはっきりしていきたいと思いますが、こういう払い下げ手続をとってない国有地が、すでに十年この方国際カントリークラブの所有地である、しかもそれが、やがて二年になろうとする間、住宅公団のものであった、こういうことについてはどうなんでしょうか、これは。
  119. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは至急に手続をとりまして払い下げる、あるいは、使用した分については使用料を取る、そういう措置を講じたいと思います。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 総裁、この点については総裁のほうはどうですか。これは知っていましたか、国有地があったことを。
  121. 林敬三

    参考人(林敬三君) このゴルフ場敷地内に国有地のあったことは、公団としては初めから存じております。しかし、そういうところはよくあるのでございまして、このゴルフ場の中だけでなく、多摩の全体の敷地の中にもまだほかにもございます。それから、多摩でなくても、ほかのところにも、広い面積になりますと、いわゆる畦畔、里道と申しますか、あぜ道のようなところが国有地になって残っているものがよくあるのでございます。そこで、それは大蔵省と公団でもって現地で実際を測量、確認をいたしまして、そして申請を出して現物出資をしていただく、こういうことを毎年いたしておるわけでございます。  それで、多摩について申しますならば、昨年の十月四日に、この多摩のほかの地域につきましては、第一回の国有地の払い下げの申請をいたしておりますし、このゴルフ場のところの中のものにつきましては、本年の五月二十日に申請の手続をいたしておるわけでございます。  それで、なおつけ加えて申しますならば、個人の所有者との間に非常に畦畔などのところの争いがあるというようなものについては、大蔵省に特に頼みまして先にその境界の確定をやるわけでございますが、そういうことの争いのないところでは、逐次、大蔵省のいろいろ順番もあり、日程もございますし、周辺の地主の立ち会いの手続もとりまして確定をして、現物出資を受けているというのが、いままでの実情でございます。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 次長さん、まだ手続が完了していないわけでしょう、払い下げの。
  123. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) ただいまの総裁の答弁にもございましたように、申請が出ているわけでありますけれども、大蔵省としてはまだ手続は完了していないわけでございます。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうですね、申請は出ていますが、完了していないんです。しかも、公図を見れば、すでに東京国際カントリーが畦畔あるいは里道を含めてゴルフ場にしていることも、これは公図上はっきりしていると思いますね。住宅公団は専門家ですから、こういうような公図を見て、それでこういう用地を全面買収する。全面買収するとまに公図を見て、ここに畦畔があった、里道があった、こういう確認もされたと思うのです。だから国有地があったと、こうおっしゃるわけです。それでその国有地全体を含めて全面買収をしたのですから、その分として土地代を払っているのですか。どうですか、この点。
  125. 林敬三

    参考人(林敬三君) 国有地を含めておりません。これは公簿買収によったものでありまして、その周辺の地域の慣行がみなそういうことでありますので、東京都あるいは東京住宅供給公社及び公団が打ち合わせをいたしまして、ここは公簿買収でいくということにいたしまして、民有地として登記簿に表示された土地のみについて買収をいたしましたのでありまして、公簿の登記簿に表示されていない無籍地を国有地と認めまして、そしてあとは出資をしてもらう、こういうたてまえをとっておりますわけでありまして、決してこれを二重に買うというようなことはいたしておりません。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは全面買収ですね。これは区画整理をしてここを買収したわけじゃないでしょう、全面買収方式でしょう。ですから、その中にはすでに畦畔とか里道が入っている。現在これは多摩ニュータウンとして、もうブルドーザーが入って整地されているんじゃないですか。実際には公簿の中の地番には入っていませんね、これは地番がゼロですから。だけど、全面買収ということは、その中にもうすでに入っているわけじゃないですか。ですから、東京国際カントリークラブがそれをゴルフ場として、もう整地していたわけじゃないですか。公簿に地番一つ一つは出ていないかもしれません。よろしいですか、国有地の地番一つ一つは……。それだから買ってない、売ってないと、こう言うかと思いますけれども、全面買収をしたのですから、全部の三十八ヘクタールに対して土地代十四億というものを出したのじゃないですか。その中には国有地も、もうすでに入っちゃってるわけですよ。住宅公団では買ったつもりじゃなくたって、実際には。その点どうですか。
  127. 林敬三

    参考人(林敬三君) 全面買収と、この場合申しますのは、いわゆる俗称でございまして、いわゆる国有地を除いたところを全面買収するわけでありまして、あとの国有地はごくわずかの、いわゆる里道、畦畔でございますけれども、しかし、これまた、その区域の中の全体で十三カ所に及ぶわけでありまして、これを除いて買収をし、そうして、これは無償でもって出資をしていただく、こういうことであわせると、まあ全面取得ということになるというわけでございます。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃいま、その畦畔や里道というのは、ちゃんとこう形が残っているのですか。現在はどうなっていますか。
  129. 山下武

    参考人(山下武君) お答えいたします。  公図と、それから公団がつくっております図面といいますのは、その公図をもとにいたしまして、公団が具体的な工事を進めるための図面として作成するわけでございます。先ほどの御質問によります公簿の面積、これは登記簿に載っておる面積をそのまま買収するわけでございまして、その中には当然国有地、畦畔等の面積は全部除かれておるわけでございます。そういうことでございます。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、私は、現状はどうなっているのかと聞いているんですよ。現状はすでに畦畔とか里道とかになってないんじゃないですか、全部多摩ニュータウンの住宅地の一環として造成されているんじゃないですか。
  131. 山下武

    参考人(山下武君) ただいまの現状と、それから公簿の面積、登記簿の具体的な面積というものとは一応別でございます。要するに、公団が買収いたします、全面買収する面積は、全部公簿に基づいて買収するわけでございます。したがって、その公簿の中には、いまのような国有地、畦畔というようなものは含まれていないということでございます。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはさっきからわかっていると言うのです。公簿に国有地ゼロ番地なんか出ているわけがないじゃないですか、そうでしょう。公簿に出ているのはちゃんと地番がある。ゼロ番地国有地が住宅公団に他から転ずるというのはおかしな話です。現状はどうなっているか、畦畔や里道なんかないじゃないですか、残っている、残っている、買収してないなんて言っても。だから私は、全面買収方式じゃないですかと先ほどから言っているわけですよ。住宅公団は、いや公簿というものの中には国有地は入ってないんだ、無番地は入ってないんだ、こう言っても、現実は全面買収ですから、もう無番地を含めて現に住宅地として造成されちゃっているわけですよ。その分としてカントリーのほうには代金が払われているんじゃないですか、現状はどうなっているんですか。
  133. 山下武

    参考人(山下武君) 少し詳しく申し上げますと、工事をするに先立ちまして、具体的な写真であるとか、いろいろ現地のほうで具体的な立ち会いをいたしまして、ここが国有地である、ここが畦畔であるということを確認いたしました上で、それをはっきりと記録として確保しておくわけでございます。したがいまして、その工事はそのあとで行なわれるということでございますので、どこに国有地があって、どういう内容の、どういう形の国有地であるかということは、あらかじめ確認しておくわけでございます。そういうことでありますから、別に、その工事をやったために、それが全然わからなくなっているというようなことではありません。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことはきまっていますよ。公図があるんですから、工事をやったが、どこに畦畔、里道があった——そんなしろうとの質問をしているんじゃないですよ。現状は畦畔、里道を含めて造成されちゃっている。要するに、全面買収で三十八ヘクタールを買ったんでしょう、十四億で。その中にはもう入っている。その分として十四億払っているわけでしょう。だから現状は、畦畔、里道を含めて住宅地として造成されちゃっているわけじゃないですか。  次長さんは、いま、国際カントリーのほうから十年間にわたる使用料を取ると、こうおっしゃったですけれども、これは国有地を、悪いことばで言えば、がめていたわけですね。ですから、この点についてはどうされますか。
  135. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 東京国際カントリークラブから使用料を徴収いたします。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 総裁、要するに使用料を徴収するというわけですよ、十年間の。そうなると、そういう土地を十四億で買収したんですよ。使用料を徴収しなきゃならないんです、理財局のほうでは。そうでしょう、国有地として使っていたんですから。無断で十年間。そうはっきり言っているのですよ、大蔵省のほうでは。そのまま住宅公団は買ったんですね、全部を十四億で。その中に、国際カントリーが無断で十年間がめていた土地が含まっているのですよ。それだけ除いて十四億を払った、そういうことじゃないでしょう。全面買収をしたんですから、それも当然含まれているのですよ。その事実を知っておりますか。国際カントリーというのは十年間国有地をがめて無断で使用して、使用料を取られなきゃならないというようなことを知っていますか。住宅公団、この点について。
  137. 林敬三

    参考人(林敬三君) 東京国際カントリーは、御承知のように昭和三十五年に……
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がないですから——その事実を知っていましたか、知っていませんでしたか。
  139. 林敬三

    参考人(林敬三君) それはもう公団で当然知っております。その知っているというのに限度があります。大蔵省に対して使用料を払っていたか払っていないか、さようなことは公団は存じません。しかしながら、国際カントリーのほうから公団が買ったあの面積、その中には国際カントリー所有の分と、それから国有財産とがあるということは初めから知っておりました。そうして十四億の対価というのは、民有地に対する対価でございまして、国有地に対しては対価を払っておりません。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは詭弁です。国際カントリーが十年間違法に土地を持っていたということを、知っていたか知っていなかったか、それを答えてください。十年間違法に土地を持っていたということを知っていたか知っていなかったか、それだけでけっこうです。
  141. 山下武

    参考人(山下武君) ただいま総裁がお答えいたしましたように、その区域は公簿の中に示された面積でありまして、国有地は含んでいない。それでその国有地は、公団は知っていたか、知っていなかったかということですが、それは最初から十三カ所、合わせて五千平米の国有地であるということは確認しておるわけでございます。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは困りますね。国際カントリーが、十年間違法でその土地を持っていたということを——国有地を使っていたことを、知っていたか、知らないか……。
  143. 林敬三

    参考人(林敬三君) 違法でもって使っておったか、合法で使っておったか、その点は公団は存じません。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこをはっきり言ってくれなきゃいけないんですよ。これははっきり理財局のほうで認めている。違法で、使用料も払わないで、国有財産の国有地を、悪いことばですけれどもがめて使っていた。これは十年間も払わなかった。そういう土地を買ったんですよ、住宅公団が十四億で。その分を除いているなんて、これはいまここで指摘されたから詭弁として言うんです、そういうことを。前々からそんなことを知っていたら、どうして理財局にただされてやってくれないんですか、そういうことを知っていたんだったら。いまここで指摘されたから、いや、それは引いてあるんです、それは買っていませんと言う。だって、全面買収というのは、その中に入っているんじゃないですか。——じゃ国有地の払い下げ手続が完了していませんね。そのままでしょう。それを今度これからはっきり手続をとる、これはいいと思います。これはもう事後でもしょうがない。で正式に完了する、これはもうそうせざるを得ませんよ、事後措置としましては。ところが、それ以前の問題として、そういう不法に持っていた土地であるものを——皆さん方専門家は、多摩ニュータウンに対しては間違いはないと、いままで言われてきた。ところが、そういう不法に所有していた土地に対して、一年半も二年もかかるのに何も手を打たないで、いままでこれを買いっぱなしで、造成を始めて、ブルドーザーが入ってどんどん造成しているじゃありませんか。住宅地になっているじゃありませんか。
  145. 山下武

    参考人(山下武君) 公団の買収いたします土地の中には、いまのような国有地が含まれておる場合が間々あるわけでございます。したがいまして、それがどのくらいあるかということにつきましては、事前に具体的な調査をいたしまして、大蔵省と立ち会いまして、ここに国有地がある、畦畔があるということを確認するわけでございます。したがいまして、ただいまはっきりしていないのじゃないかという御質問でございますけれども、これははっきりしております。十三カ所の積算をいたしまして、五千平米余の国有地を、具体的に現物出資で大蔵省のほうにお願いしておった、こういう実情でございますから、非常に明快でございます。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 大蔵省のほうは、これはいつごろ関知しましたか、国有地があったということは。
  147. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 住宅公団のほうからそういうふうなお話があったわけでございますから、そのときに大蔵省では知ったということでございます。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのときというのは、いつですか。はっきりもう一回言っていただきたいのですけれども。
  149. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 四十五年の五月二十八日でございます。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは、私たちが言ったから一生懸命これをお調べいただいたのじゃないですか。大蔵省のほうはそれじゃその係の方に聞いてくださいよ。それまで調べてなかったじゃないですか。
  151. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 大蔵省の本省といたしましては、先生のほうからお話がございまして知ったわけでございます。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 知らなかったじゃないですか。はっきり言わなきゃだめですよ。住宅公団は、どうしてそういうことを知っていたなら、はっきり本省のほうへ、しかるべき使用料を取れと言う、このくらいの親切心がないですかね。
  153. 山下武

    参考人(山下武君) 公図をとります場合には、公団は当然、具体的なそういう国有地があるかどうかにつきましては調査をするわけでございます。それで、そういった調査をいたしました結果は、当然国有財産の末端の局でございます財務局のほうとよく連携をとりまして、財務局のほうと具体的な話し合いを進めておるわけでございまして、財務局のほうから本省のほうに上がる期間が少し長かったということと思います。現地では全部承知していただいております。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 何か話がおかしくなりましたね。理財局次長さん、いまおっしゃったように、末端と本省との連絡が悪かったと、こういうことなんでしょうか。
  155. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) おっしゃるとおりであれば、そういうことはあろうと思います。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 おっしゃるとおりという「おっしゃる」は、どのことばを受けて……。
  157. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) つまり、住宅公団と直接折衝をいたしておりました大蔵省の出先機関では、そのことは知っていたはずでございますけれども、本省のほうに対して連絡がおそかったということでございます。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 五月ですか、届けたのは。いまはもう十一月、やがて半年になろうとしています。やっぱり国有財産の処理というのはそんなに時間がかかるんですか。どこへ届けたのかわかりませんけれども、出先の末端というのはどこかわかりませんけれども、そんなにおそくなるものですか。
  159. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 直接住宅公団と折衝をしておりますのは関東財務局の立川出張所でございまして、出張所のほうから関東財務局に案件が上がってくるわけでございます。それから、関東財務局のほうから本省に上がってくる。そういう経過がございまして、それぞれ所要の時日を要するわけでございますけれども、もっと早急に処理できなかったかというような御質問であれば、それは、処理は急ぐべきであったということだろうと思います。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、それじゃその次ですね。住宅公団からもらったのですが、国際カントリーの役員、その代表取締役、理事長、監査役あたりを読んでいただけますか。
  161. 山下武

    参考人(山下武君) お答えいたします。  株式会社東京国際カントリークラブとしての役員は、代表取締役が北村貞治さん、専務取締役が合田信一さん、それから取締役が大森宅二さんほか八名でございます。それから監査役は、いまちょっと古い資料かもしれませんですが、三人ございまして、中釜昇さん、大谷文四郎さん、大沢保夫さん、この三人でございます。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 クラブの役員の理事長は……。
  163. 山下武

    参考人(山下武君) 次に、国際カントリークラブの役員のほうでございますが、理事長が北村貞治さん、常任理事が市川政章さん及び落合勲さん、理事が合田信一さんほか十五名、このように聞いております。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 前理事長は倉石さんだったけれども、大臣になられたと同時にやめられた。こういうことをお伺いしております。これは確認したわけじゃございません。そのほか、監査役の大沢保夫さんというのは倉石農林大臣の秘書官である、こういうことも承っております。この次、もう一つの問題があるわけですけれども、まあ大臣、いまお聞きいただきまして、私また繰り返すまでもなく、全貌はおわかりかと思いますけれども、国際カントリークラブの前理事長倉石忠雄さん——農林大臣が大臣になる前ですけれども、理事長をやっていらっしゃいました。それで、その秘書官の大沢さんが監査役をやっていらっしゃる。また、もう一つ問題がございますが、それはまあ次の問題ですから、一つだけの結論として御意見を承りたいと思うのですけれども、そういう政界の大物の方、あるいはその秘書官の方がこういうことにタッチされている、そういう会社が——倉石さんに聞いてみて、知っていたか知っていないか、この点も私はきょう確かめてみたかったと思うのです。あるいはそういう場合、往々にして名前だけを貸したとか、こういうケースもあるかと思います。私、そういうようなことも十二分に存じておる。だから、こういう席上でやっぱりいろいろ確かめてみたい、いろんな評判があるわけですから。こう思ったわけですけれども、残念ながらおいでになりませんのですからね。こういう方が役員をしているところが、十年間、国有地があったにもかかわらず、払い下げ手続もとってない。使用料も当然払ってない。これから大蔵省で取るべきだ。しかも、住宅公団のほうは、ちょっとこれは私了解できないのですけれども、全面買収ですから、当然畦畔やあるいは里道なんかもその中に入っちゃうわけですが、まだ、払い下げの手続も完了していない。申請中です。ですが、片方においてはすでにもう住宅の造成にブルドーザーが入っちゃっている。どこが畦畔だか里道だか、わかりやしません。これから、これを成規の手続をとって払い下げを受けるというわけです。ともかく、そういうような多摩ニュータウン開発についての、何かこう、はっきりしないものがここにあるのですね。一つ、大蔵省の国有財産のほうで末端とのやりとりがうまくない。この点はまあ建設大臣の所管ではございませんけれども、その点についての御意見を。住宅公団と本省と、もっとじかに接触をすれば当然こういう問題は起こらなかったのじゃなかろうか。あるいは、国有地というものがありながら、十年間もただで、無償で使っていた。こういったものについても当然今後は相当手を打たなきゃならないのじゃないですか。これはまだゴルフ場の三分の一です、住宅公団が買ったのは。三分の二の国際カントリーのゴルフ場が残っています。三分の一だけを調べてみても〇・五ヘクタールという国有地が出てきた。三分の二も地続きですから、まだまだ国有地が出ることは間違いない。さらには、これと同ケースがほかにもあった、たまたま国有地が入っていますと、こう住宅公団の総裁のほうも言っていますから、こういう問題についてどう対処するのか。さらには、ある土地住宅公団が取得すると、こういう問題が起こる、このことについて、はたしてそれでいいものかどうか。以上三点ですけれども、どうでしょう。
  165. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 私が答弁するのは、どうも適当じゃないような問題もたくさんあるようです。まず第一に、国有地の管理の問題を建設大臣から答弁するのは適当じゃないと思うのです。  それから、住宅公団が取得する土地、これは取得というのには二色あるわけです。一つは買収する問題、あるいは国有地を出資もしくは返還してもらうという場合があると思いますが、私は、野党の方々の盛んに要求されるように、住宅過密地帯の場所においてはでき得るだけ公有地を活用せよ、こう言われておることでありますから、民間の土地と相交錯して存在する公有地等は、民間の土地を買収するとき、あわせて公有地も取得することについては何ら差しつかえないと思います。けっこうなことだと思います。だが、そのときにどういう手続上の完全を期するかいなかが問題だと思いますが、その点には、いままでの質疑応答を聞いていると、何ら瑕疵はなかった。はっきりと入手するために調査の結果、民有地のほかに公有地がある、いわゆる国有地がある、その点は除外して売買契約をし、国有地については現物出資を要求したという点について何ら瑕疵はない、こう思います。  それから、いまの倉石農林大臣の件でございますけれども、これはどうも私は全然初耳でございますから、いま、どういう経緯かと言われても申しかねる次第でございます。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後にいまの問題は、まとめてまたお聞きしたいのですが、次の問題に進みたいと思います。  国際カントリーの姉妹会社に菅平国際カントリーというのがありまして、菅平高原ゴルフ、これをつくっております。場所は菅平です。昭和三十八年、地元の菅平牧場畜産農業協同組合から土地を借りて開設した、こういうものですが、その一角に、ゴルフ場の近くに造林計画をするために——これは五一・四八ヘクタールですか、これの計画を一応説明してもらいますが——造林計画があって、そこが別荘地になっているという問題があるものですから、その点をまず説明してもらいましてこの問題に入りたいと思いますので、林野庁長官、すみませんが、四十二年から四十四年まで国庫補助金が出ているわけですが、この団地造林の国庫補助金事業の概略でけっこうですから御説明願いたい。面積、補助金、総事業費、あるいは植えたもの、あるいは補助金の始まった年月日、このくらいでけっこうです。
  167. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 四十二年度、カラマツを三十ヘクタール強、事業費が百六十二万五千円、補助金額、これは国費と県費と両方入れてございます、それが百十一万二千円。四十三年度、カラマツ二ヘクタール三〇、十一万四千円、七万三千円。これは前が事業費で、あとが補助金額でございます。四十四年度、十八ヘクタール強、百三十一万円、八十四万五千円でございます。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 いつから補助金は出ているか、補助金の申請年月日を……。
  169. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 申請年月日は、それぞれの年度の……。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 開始の……。
  171. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 初めのは四十二年の八月でございます。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 この国庫補助金の造林地域の中に別荘地があるということ、これは確認していますでしょうか。
  173. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 別荘地が、その事業計画につきまして始まる前に三ヵ所ございましたが、これはその事業計画から除外されております。その後新しい別荘地が幾つかできておるようでございます。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 ただいまの造林面積五一・四八ヘクタールのうち十七・七九ヘクタール、大体十八ヘクタールくらい、これは別荘地になっております。こういうことで私どもも確認してございます。要するに、この別荘地は植林、造林の補助金の対象になっているわけです、五十一ヘクタールの中で。それが現地へ行ってみますと、これは造林されていない。計画の中ですが別荘地になっております。この別荘地に補助金が開始されたのが四十二年の八月。しかも四十一年から入居の公募が行なわれているのですよ。ちゃんとこのパンフレットがありましてね、権利金が六十万円、それから土地代が大体年間一万八千円、このようなことですでに公募が行なわれて、その後に補助金が四十二年、四十三年、四十四年と三年間にわたって出ている、こういうことです。ですから、当然これは造林計画で提示したものとは現状は違うのじゃないか、こういうふうに私たちは確認しているわけですが、その点いかがでしょう。
  175. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) この団地造林計画というものは知事が認定いたすことになっております。農林大臣の承認を得て認定をいたしますが、それは市町村、旧市町村の区域を認定するわけでございます。その中の具体的な事業計画、これは造林者が計画を立てることになります。それを知事が承認するということでありまして、林野庁としては、町村の地域内に団地造林事業をやりたいという県の申請に対して承認を与えておりますが、具体的にどこをどうするのだということは、通例の場合、本省はそこまで見ておりません。で、実際にこれは、その後調査いたしましたところでは、この四カ所、三年度分、五十一ヘクタール分はすべて造林をされて、造林をしたあとの確認を得てから補助金を交付しております。ただ、四十二年度に造林したものがその後干害を受けた——乾燥の害でございます。そういう害を受けて、造林したものが消えてなくなっておるというところ、それをまた災害造林をやっておるが、四十五年度もまた被害を受けておりますので、そういう被害を受けたあとで植えたものがなくなっておるというところはあるようでございます。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 別荘地一七・七九ヘクタールは、いま言ったように五十一ヘクタールの造林計画の中に初めから別荘地としてできております、現に、そういうところがもう造林計画の中に入っているわけですよ。それも補助金の対象になっていたわけでしょう。ですから、当然補助金の対象にすべきところじゃなかった、こういうことですよ。それでいかがでしょう。そうなると、これはやはりバックさせなければならないのじゃないですか。
  177. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 林野庁としては県に対して、計画が適正であるかどうかの認定を十分行ないなさいという指導をつとめておりますが、本件の場合には、そういう確認がきわめて不十分であったということは認めざるを得ないところでございます。そこで、交付いたしました補助金を返還してもらうという方向で、なお細部につきまして今後実地について検討したいと思います。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに初めから、補助金をもらって別荘にカラマツを植えるという造林計画だったのですよ、この計画というのは現地に行ってみますと。だから、造林するために補助金をもらったのじゃなくて、もう造林計画の以前に別荘地は別荘地としてゴルフ場のそばにつくり、その入居公募もどんどんしていた。四十一年からやっていますからね。それで現地に行ってみますと、その別荘地の自分の庭にカラマツを植えた、だから、カラマツを植えるために初めから補助金を取った、こういう形になっている。非常にうまくないケースで補助金の適正化法か何かに当然これは触れるものだと思いますし、これはもう適正化法に触れるとするならば、相当の処置もしなければならぬ。ただお金だけをバックすればいいと、こういう性質のものじゃなかろうと思うのですよ。その点いかがですか。これは虚偽の事実の申告ですからね。
  179. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 申請に出ております造林者は菅平牧野畜産協同組合でございまして、その畜産組合が持っておる土地に造林をしたいということでその申請書が出ておったわけです。その土地がすでに観光開発株式会社のほうへ貸されておった。賃貸借契約が行なわれておったという事実がわからないままやっておったことになるわけでありまして、当然、そういうことが事実であるならば返還をしてもらうということで検討をいたしたいと思います。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がだんだんなくなりますので急いでやりますけれども、これは返還だけでなくて、当然適正化法に違反する、告発だってあり得る。こういうケースはきびしくやっぱり取り締まるべきケースじゃないか。これをあわせて検討いただきたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、菅平観光開発株式会社の理事長が、また、ここに書いてありますけれども、これは一番新しいのですけれども、倉石忠雄さん。その他有名な方が入っていらしゃいますけれども、ここの監査役がさっき言った秘書官の大沢さん、しかも社長の西沢さんが倉石さんの現在秘書、こういうことです。私は、先ほどの住宅公団の御答弁のときも言ったように、倉石さんがこういうことに一々関与されているのかどうか、そこまで私聞きたかった。ですけれども、こういう国庫補助金についても申請が非常にうまくない。現実においてはこれはバックしなければならない。こういう補助金のもらい方をしておるわけです。いま言ったように別荘地をつくっている、そこに造林計画なんということがあるわけです。しかも、そこに御自分の秘書が社長になっている。御自分も発起人なり理事長になっておる。それから、先ほどの東京国際カントリーのほうも倉石さんの秘書官の大沢さんがまた監査役になっている。こういうことで非常にやはり第三者が見ると、何だあの住宅公団が多摩ニュータウンのため入手した土地も、それから菅平の造林補助金の問題も、何かそこに出てくるのは倉石さんであり、秘書官であり、秘書の方じゃないか、どうもおかしいじゃないか。この疑惑は、私ならずともだれでも起こってくるのですよ。それで私は、きょうここに農林大臣に来ていただいて、そういう一般の疑惑をぜひはっきり打ち消していただきたいと好意的に思ったのですが、きょう出られない。出られない理由は何なんですか。きょう農林大臣がおいでになれない理由は。
  181. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 出られない理由は私存じておりません。長官、政務次官が出席しろということで出てまいりました。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 一昨日の外務省の所管のときに、社会党の先生と私で農林大臣を要求したのですが、そのときには渉外事務かなんかでいらっしゃらない。きょうもすでに数日前から農林大臣にぜひ出席していただきたい、こういう問題があるから——私はむしろ好意的に、こんなことははっきりしたほうがいい、一言農林大臣の口から打ち消してもらいたかった。私はこういう希望を持っていたのですけれども、何か打ち消すどころか——すべて関連しているようなこともはっきりしていますから、ここに出てきていただきたいと思ったが、また出ていらっしゃらない。長野の旅行だということですね。これは政務次官、言いにくいことを私言いますけれども、長野市長選挙たけなわ、八日が投票日、その長野市長選挙の応援じゃなかろうか、こういうことも話に出ておる。こうなりますと、これはもう国会軽視もはなはだしい。こういうふうに思われるのですけれども、政務次官、この点について大臣にもお伝えいただきたいと思いますし、国会へぜひ御出席をいただきたい。特に御自分のことですから、そういう要求があったにもかかわらず、何か市長選挙の応援にでも行っているのじゃなかろうか、こういうこともあって、はたしてこれでいいものかどうかということですけれども、まだこの結論の前に一言、まず農林大臣が出ていらっしゃらないことについて非常に遺憾に思うわけです。これは今回だけじゃなく、おとといもそうなんですよ。代理で出ていただいて、当事者じゃなくて申しわけないですけれども、その点どうですかね。
  183. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) どういう理由で大臣が本委員会に出られないかという理由は、私聞いておりません。ただ、大臣が本日やむを得ない用事で出席できないので代理として決算委員会に出るようにと、こういうことでありまして私出席したわけでございます。  それから、先ほどの造林の問題に関しまして、まあゴルフ場なりの役員の関係と造林の問題とは、私は、そういうこまかいことまでおそらく大臣が知ってはいらっしゃらないのじゃないか、というのがわれわれの判断でございます。したがって、たまたまそういう関係があるように見えますけれども、そういうような造林関係と大臣とが——もっと大きな問題ならあるいは想像できるかもしれませんけれども、こんな問題に一々大臣が——おそらく耳にも入っていないのじゃないかというのが、これが私の判断でございます。  以上、御答弁申し上げます。
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 会計検査院、いらっしゃいますか。——いま政務次官、御当人でなくては当然答弁できないと思いますけれども、私は、こんなちっぽけな問題——ちっぽけじゃないと思いますよ。いまは、土地は十坪、二十坪だってたいへんですよ、土地がなくて住宅難で。ですから私は、この〇・五ヘクタールの土地、これが不正に使われていたということは、これは大きな問題だと思います。しかも、住宅公団のほうは成規の手続を踏んだと思いますけれども、大蔵省のほうはこれは全然関知しなかった。こういう問題がまだ一ぱいあるのじゃないか。そうすると、不正に使われているところはここだけじゃなかろう、もっとあるのじゃなかろうか。それは当然大蔵省にも調べてもらいたいと思います。さらにこういう補助金、たとえ額は二百万円にしましても、これにこういういろいろな方が関連しているということは、これは疑惑を持たれてもしようがない。政治家たる出は一点の疑惑を持たれるような政治をやるべきじゃない、こう思うわけですよ。これは疑惑を持つほうが悪いのじゃなくて、持たれるほうが悪いのじゃないか、こう思います。会計検査院の検査局長立場から、いまの国庫補助金の問題、これが適正に使われていない、申請どおり使われていない、また国有地にしましても、確かに三十八ヘクタールの中の〇・五ヘクタールで、比較すれば小さい。だけれども、〇・五ヘクタールというものは世間から見れば、ものすごい金額ですよ。この土地は大体一平方メートル九千円、すると四千五百万円から五千万円の値段ですよ。こうなりますと、そういうものが非常に不当に使われていたということについては、やはり検査院としてもこういうような問題について今後どのように対処していかれるか、お伺いしたいのです。
  185. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) ただいままでの話を総合いたしますと、関係官庁あるいは事業所は、公団としましては住宅公団、大蔵省、それから林野庁があるわけでございます。私、担当いたしておりますのは住宅公団でございますが、住宅公団の多摩ニュータウンの建設につきましては、これは相当大規模な工事でもございますし、われわれも従来から念を入れて検査をいたしておるわけでございます。御趣旨の線に沿いまして、今後も十分な検査をいたしたいと考えております。さらに大蔵省あるいは林野庁関係につきましては、私直接の担当ではございませんが、帰りまして御趣旨を伝えて遺憾のないようにしたい、かように考えておるわけでございます。
  186. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、亀井善彰君、熊谷太三郎君及び佐田一郎君が委員を辞任され、その補欠として柳田桃太郎君、宮崎正雄君及び後藤義隆君が選任されました。
  187. 渡辺武

    渡辺武君 大臣も御承知だと思いますけれども、いま旧市街地、新市街地を問わず区画整理をめぐる住民のいろいろな反対運動が全国各地で起こっております。中には、東京のあるところのように、自由民主党の有力議員の一人がこの区画整理反対運動の責任者に名を連ねているというような例まで出ております。政府は今後、新全国総合開発計画その他に基づいて大規模な市街地の整備造成を行なおうということにしておられますけれども、八月の都市計画中央審議会の答申にも述べられておりますように、この多くの部分を土地区画整理方式で行なおうとしております。もし、いままでのようなやり方で、これほど大規模な土地区画整理が行なわれる、それによって都市の整備造成が行なわれるというようなことになりますと、住民の反対運動はますます大規模なものにならざるを得ないというふうに思われます。  ところで、住民の反対の原因を調べてみますと、やれ減歩の問題、換地の問題、清算金の問題について等々、いろいろの原因があります。しかし、中でも大きいのは、公共用地の取得が土地の買収方式などで行なわれた場合と比べてみまして、区画整理の場合は住民の負担と犠牲が非常に大きい、非常に不公平に行なわれているというところに原因の一つがあるのじゃないかというふうに思われます。現在、たとえば東京都を施行者とする戦災復興区画整理東京都北部第四、三十一地区というのがありますけれども、ここの事情を調べてみますと、清算金の徴収に反対する運動をいま行なっております。住民の不満の一つは旧中仙道、現在の国道一七号線でありますが、国道一七号線や巣鴨駅前の広場の拡幅のために平均減歩率約三〇%、総地積でいいますと七万二千平方メートルの土地が減歩として無償で提供されている。しかも、この提供者の多くには、現在さらに清算金の徴収がかかってきているというような状態です。ところが、すぐ隣に千石一丁目というところがございますけれども、そこなどは買収方式でやられましたために、同じ国道一七号線に私有地をいろいろ出していながら、しかも坪当たり六十万円から七十万円の補償を受けている。非常に不公平が行なわれているというところに住民の反対の大きな原因があるわけです。私は、このような不公平が行なわれる限り、住民の不満は消えることがないだろうというふうに思います。そうしてこの反対運動のために、政府の都市計画事業そのものが今後非常に重大な困難にぶちあたるだろう、これは避けられないというふうに思います。そこで大臣は、このような不公平、不平等、これを改める措置を講ずべきだと思いますけれども、これはどうでしょうか。また、区画整理ですでに犠牲を受けた住民の負担をやわらげるために何らかの措置を講ずべきだと思いますけれども、この点どう思われるか、伺いたいと思います。大臣の時間が少ないので、私初めに大臣の御答弁をいただきたいと思って御質問しているわけです。具体例をあげましたけれども、しかしこれは、私の質問はこの具体的な例に関するだけじゃなくて、一般的にこういう問題が起こっておるわけですから、方針としてお聞かせいただきたい。
  188. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 御承知のように、区画整理事業、これはなぜこういう問題をやっておるかと申しますと、従来非常に無秩序に、民間デベロッパーあるいは投機業者によって都市周辺地区土地の値上がりを期待したための土地の買収がなされ、そしてまた、そこに無秩序に公共施設の伴わない宅地がどんどんどんどん出てきている。これがいわゆるスラム化している。これをどうしても改善しなければならぬというので、市街地開発の立法措置を二つつくったわけです。これは国会の皆さんのたいへんな御支持を得てできた。そうしますというと、この市街化区域に編入されたところでは、下水、道路、それから公園、緑地、あるいは学校用地等、相当これは公共的な施設をつくる必要があります。で、政府はでき得るだけこれらの新しい市街地形成のために必要なる助成はやるけれども、すべてがすべてを国費でやるということは財政上許されません。そこで、できるだけ地方自治体と地元住民の協力によってこれを開発していきたい。その一環として取り上げられるのが区画整理事業の設定でございます。区画整理事業をやることによって、その地域が全体として利益を受けることになります。減歩された分は、ある意味においてはそれだけの土地が少なくなるからマイナスの面がありますが、そのかわりその地域全体が、道路という公共施設がよくできてくるというと、地価もそれだけ上がるし、都市機能もそれだけ上がってくるということで、大体これはみんなの御承認を得なければできない事業でございまするから、そこでこれは全体として区画整理事業でやる方式は進めるべきだ、こう思っています。ただし、その際においていろいろのいわゆる不満感が出てくることも事実でございます。ある人は、自分の持っておる土地がいま一番いい条件だと思っているところを道路にされたり何かしたら、区画整理事業は歓迎すべきだけれども、ただ自分の土地を取られることは困るという利害関係が出てくるのは事実でございます。そこで、これは公平に何割なら何割ということであとで補てんするということをやっているわけでございます。原則として、私は、いま渡辺さんが言われた個々の不平がどこにもあることは事実でございまするけれども、しかしよく話をしていけば、大部分のものがこの区画整理事業でむしろ円満にいく、こういうふうに感じております。  それから、区画整理事業でやった場合と道路拡幅等を公共の経費でやった場合との不公平、これは現在のところは私はどうにもならない。隣の区では公共の経費で道路の拡幅をしたのに、こちらのほうでは区画整理事業でやったから損したという感じはあるであろうけれども、しかしそれは区画整理事業としてやる場合には一定の手続と合意が必要でありまするから、それができてやったものについて、他の隣のほうで公共経費でやったから、それだけの分を補助するということは、これはいまのところ考えていないという段階でございます。ただし、区画整理事業はどこまでもこれは地域住民の利害関係者の合意でやることですから、それだけ慎重に、時間がかかってもやむを得ないと考えておる次第でございます。
  189. 渡辺武

    渡辺武君 私は大臣、もう少し実情をよくつかまれて御答弁いただきたいと思うですね。いま公園や学校などができると地域住民には有利だというようなおことばがありましたけれども、しかし、いま区画整理で問題になっているところの実情をよくひとつ見ていただきたいと思うのです。そういうことで問題が起こっているところはほとんどないのですよ。大部分は、これは公共団体施行の区画整理で、大体それが中心ですよ。主として幹線道路、このために土地を減歩でもって提供した、こういう例ですね、これが非常に多いのです。つまりこれはほとんど国が責任を持ってやるべき工事ですよ。それを区画整理という手段で住民に負担をかぶせながらやっていっているというところに、私はこの区画整理事業を採用する建設省意図があるのじゃないかというふうに思います。ですから、いま申しました巣鴨の駅の近所の区画整理の場合をとってみましても、同じ国道十七号線で土地はただで取られているところと、すぐ隣りは坪当たり六十万から七十万という補償をもらって土地を出しているところと、画然と分かれているのですよ。こんな不公平なこと、許すことができますか。ここに問題の核心があるのです。しかも、土地をとられた上、清算金まで出さなきゃならぬ。住民が不満を持つのは当然のことですよ。しかも、この三十一地区住民の一部がいま建設大臣に審査請求を出しております。しかし、これは一部であって、不満を持っている住民はまだまだたくさんある。不満は出したいけれども、審査請求の期間がもう過ぎてしまったために審査請求も出せないという全く無権利な状態に突き落とされてしまっているのが実情です。しかも、よく調べてみますと、いまも申しましたように七万数千平方メートルの土地を出さしておきながら、国や都が使ったお金はどのくらいか、総事業費五億六千七百三十一万円、そのうち国は一億二千六百七十五万円ですか、ほんのわずかなものですよ。一平方メートル当たりにすれば、わずか八千百円という費用がかかっているにすぎない。あなた方はよく受益者負担、受益者負担と言うけれども、最大の受益者はだれかといえば国と自治体です。ですから、住民に不当な負担がかかっている、土地はただどりされた上に清算金まで払わなきゃならぬという実情におかれている、その住民の深刻な苦しみ、この負担は最大の受益者である国や自治体が負担すべきじゃないか、緩和すべきじゃないか、もう少しお金を出して、そうしてこの清算金を全部負担する。いま清算金の問題が起こっておりますから、そのくらいの措置は私はとっていいんじゃないかと思う。そうして、この区画整理によって損をした人たちに十分な補償を出す。損をしたものに対する補償、その金を住民から清算金として徴収するなんというようなことは、これはもう言語道断と言っていいほどひどいやり方じゃないですか。当然、国や自治体がこういう点については、めんどう見て負担をすべきだというふうに思います。同時に、これはあとから詳しく申しますけれども、清算金の問題だけじゃなくして、減歩して公共用地のために土地をただで出している。全然無償ですよ。こういう問題についても、最大の受益者である国と自治体が応分の負担をすべきだというふうに思います。その点どうでしょう、重ねて伺いたい。
  190. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) どうも私は、渡辺さんの、国と公共団体が最大の受益者で、住民が損しているというその発想がおかしいですよ。一体現在の民主社会において国家とは何ぞ。国というものは、結局これの主権は国民にあります。地方自治体の住民が主権者なんです。その人たちの生活環境をよくするために地方自治体は地方税をいただき、それを使ってやっているんです。国は国民全体の利益のためにやっているのであって、都市計画なり都市改造は国の利益のためで、住民の損になるという発想自身が私はちょっとおかしいと思う、基本的に。それで、ただ御承知のように、地方自治体なり、それから一つのコミュニティとしての地域住民が、状況の変化によって現状ではとても都市機能もなくなっていく。生活環境が悪くなってきておる。それで何とか解決しなきゃならぬ。しかし、非常に大きな事業で金のかかることであるから、とうてい自分たちの負担ではできないから地方自治体に参加してもらう。その地方自治体も力が足りないから国が援助するという立場でありまして、どうもそこが私は基本的に違うように思うのでありますが、ここで議論する時間もないようでありますから、それだけの違いがあるということだけ申し上げておきます。  また、次に、いまのは具体的な問題であるがゆえに、私は実は事務当局から答弁させようといたしたのでありまするが、まあ非常に、市街地の開発のための手法としての区画整理事業全体についての基本的な御質問であったから私が概括的に申し上げたんで、若干そこに観点の相違があったと思いますが、しかし、具体的な問題については十分にお話を聞いて、私は何にもとらわれておりません。是正すべきものは是正し、それから御理解できないための誤解に基づくいろいろの御抵抗もあるでしょう。そういうものは、できるだけ円満に話し合いをしていきたいと思います。具体的な問題について、ここで話が進んだようでありますから、ひとつ事務当局から御説明いたさせまして、しかる上に、また議論を進めていただきましてもけっこうでございます。
  191. 渡辺武

    渡辺武君 いま大臣の立場なるものの御説明がありましたけれども、ちょっと新憲法以前の立場じゃないでしょうか、いまおっしゃった大臣の立場というものは。
  192. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 私は、新憲法なるがゆえに……
  193. 渡辺武

    渡辺武君 新憲法で国民の権利というものが非常に尊重されて、条文の中に盛り込まれておる。これは国家権力によって国民の権利が著しく侵害されたという戦前の痛い経験からして、ああいう国民の権利を保障する措置が新憲法に明示されているわけであって、国家権力とそうして国民とは一体のものだなんという議論は、これはもうちょっと新憲法の立場から言えば成り立ちませんよ。さらには、また具体的に区画整理の点から言えば、区画整理にもいろいろあります。個人施行の区画整理もあれば、組合施行の区画整理もある。いま大臣のおっしゃっているのはそういうものですね。しかし、たとえば地方公共団体施行の区画整理なんということになりますと、これは施行者が公共団体ですよ。そうして、国がきめた都市計画を実行するために、それに適応するように施行者が区画整理をやっていくわけであって、住民意思なんというものは、これはほとんど無視されてやられるというのが、これが普通のやり方ですよ。大臣、もう少し実情を調べられて答弁なども考えてやってほしいと思います。私は、三十一地区の例を具体例として申し上げましたけれども、しかし私は、いまのこの政府の区画整理政策と言ってもいい、一般的な問題について大臣に質問したわけですから、大臣、時間がある限りひとつ私の質問にお答えいただきたい。事務当局に聞くことは、さらにあとで詳しく聞きたいと思います。  そこで伺いますけれども、大臣は、そうしますと、たとえば土地の買収方式などで公共施設の造成が行なわれておる場合と、区画整理事業などでやられておる場合と、非常に不公平があるということはお認めになりますか。そうして、いままでのいろいろな紛争は、そういう不公平から起こってきているのがほとんどすべてだが、そこに何らの解決の手も打とうとされないのでしょうか。重ねて伺いたいと思います。
  194. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) ここで議論はいたしたくありませんけれども、あなた方の国家観とわれわれの国家観と違うから、これはやむを得ません。あなたのほうは反体制だと言うし、われわれは現状において、これは十分国民と国家は一体となってこの仕事を行なうという立場に立っていますから。まあしかし、これ以上議論はいたしません。  それから、この不公平といいますけれども、何が公平で、何が不公平かということも、これはいわゆる感じの問題も非常にあると思います。フィーリングです。たとえば、ある人はその区画整理事業によって非常にこの周辺がよくなるということで、そのために自分たちがある程度土地を提供することも是としてこれに賛成する人もあるわけです。ところが、それは自分たちが犠牲ばかりしいられておるということで反対もあるということです。したがって、ここで公平論というものを厳密に言うということは、なかなかこれはむずかしいと思います。ただし、この不公平な処遇を受けておるというようなものが圧倒的多数であるならば、それは区画整理事業が成立できません。これはたとえ公共団体が中心であろうが、あるいは純粋の地域住民の発意によろうが、そうなると思います。したがいまして、これはやはりその関係者の受け取り方も非常に問題がありまするので、政府は決してこれこれの区画整理事業をやれと命じて、それに反対するものは弾圧するなんということは全然考えておりませんから、その点を何か政府が権力をもって区画整理事業を強制しておるような受け取り方ではないかと思うのですが、そうじゃないのですよ。ただ、そこに地方自治体が区画整理事業を発意してくるのは、たとえば道路、国道なら国道、あるいは駅前の改造をやる場合に、それだけでは効果があがらない、それを一つの契機として、相当広範囲にわたって、街路も、それからその他全体として区画整理をして、その地域の環境全体をよくしようという発意に基づいているものだと思うのです。そうでなければこれは成立しないのです。だから、そういう前提でありまするから、その区画整理事業は、国家権力で押しつけて、それで損したもので補償せいというような発想では、ちょっとこれはわれわれとしては理解しかねているわけであります。でありまするから、具体的にどことどこの区画整理事業がこれこれの不平と不満がある、だからこれはどうするかということは、これは具体的なケース・バイ・ケースになります。その問題についてお話があるならば、これは現実にその監督に当たる事務当局とよく話し合いをして、そこでなるほどと思いますれば、私は改正なり、あるいは政治指導をする必要があるならばしなければならない、こう思っています。
  195. 渡辺武

    渡辺武君 大臣の立場はよくわかりました。それでは区画整理をめぐる紛争というものは、これは解決できませんね。その点ははっきり申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  次に伺いたいのは、区画整理事業では、先ほども話が出ました通常減歩という措置がとられる。特に、公共団体施行の場合には、この減歩によって幹線道路とか、駅前広場などのいわゆる公共施設がつくられております。これが公共団体施行の区画整理の最大の眠目だと思う。つまり多くの住民は、生活のため、営業のために使っていた零細な土地を提供して、しかも何らの補償も受けない。しかし、施行者のほうは公共用地をほとんどただ同然で提供させることができるということで、安上がりな土地収得の手段として、この区画整理方式が大々的に行なわれるということじゃないかと思うのです。しかし、これは住民にとってはたいへんなことで、当然ここに大きな不満が生まれてくる、こういうことになると思う。ところが、土地区画整理法の全条項を調べてみましても、この減歩、とりわけ公共施設のための減歩については何の法定もされていないというのが実情であります。これは非常に奇怪きわまりないことだと私は思う。減歩、とりわけ公共施設のための減歩の法的な根拠は何なのか、この点を伺いたいと思います。
  196. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 土地区画整理法の中において、減歩がどういう法律の根拠に基づいて考えられているかというお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、現行土地区画整理法には明文の条文をもって減歩ということを書いた規定はございません。私どもは減歩というものにつきましては、土地区画整理法の法律の趣旨、たてまえからいきまして、そういうふうな制度でもって、この区画整理事業が運用されているというふうに考えているわけでございます。申し上げるまでもございませんが、土地区画整理事業は、先生よく御承知のように、これは当該区域の公共施設の整備改善と、それから一般の宅地の利用増進、こういう二つの目的を達成するために区域内の区画形質を変更する、あるいは公共施設の新設または変更を行なっていく、こういうことを内容にいたしました事業であるわけでございます。したがいまして、公共施設の整備改善のために土地の区画形質が変更される。その変更に伴いまして、関連の宅地が結果的にいわゆる公共減歩を受けるといいますことは、これは区画整理法の法律の趣旨からいたしまして、当然予定いたしておる。そういうことが前提となって、こういう仕組みができているというふうにわれわれは理解いたしております。また、この土地区画整理事業といいますのは、宅地の利用の増進をはかるために行なわれるものであるわけでございます。したがいまして、その減歩といいますものは、その宅地の利用増進の範囲内において減歩を受けるというのが原則でございまして、当然その範囲内において減歩というものが設定をされなければならないというふうに私ども指導いたしておるわけでございます。一応お答えいたします。
  197. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、法には何も明示された明文がない。ところが、あなた方は解釈でやっているということになりますですね。これはたいへんな問題ですよ。土地といえば個人の私有財産です。それが公共のために提供させられる。しかも無償で提供させられる。これは重大問題です。ところが、そのことについては法に何ら明示されたところもない。官僚であるあなた方の解釈によってそれをやっておる。とんでもないことではないでしょうか。あなた方の解釈は権力による悠意的な解釈であって、合憲なものなのかどうかという疑いを国民に抱かせる。そこで私は伺いたいと思いますけれども、旧特別都市計画法の第十六条には一割五分以上減歩した場合には、その一割五分をこえる部分については、補償金を交付するという趣旨のことが書かれておりまして、これを裏から言えば一割五分までの減歩は無償だということが、旧特別都市計画法の十六条に書かれておる。これが昭和二十四年五月の改正によって削除されたと聞いておりますけれども、この削除された理由は何なのか、これを伺いたいと思います。
  198. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) お尋ねの戦災復興土地区画整理事業施行当初の根拠法でございました御指摘の特別都市計画法、この法律の十六条には、一五%以下の宅地総価額の減少につきましては補償を要しないものとされている。逆に一五%以上のものにつきましては補償しなければならない、こういうような規定があったわけでございます。これにつきましては、補償金の交付、あるいは補償を要しないというようなことにつきまして、当時の法律におきましてきめられておりましたような一五%という一律の基準を定めるといいますことは、これは妥当ではないというようなことから、いろいろ当時関係方面におきまして検討をなされました結果、この規定が改正でもって削除されたわけでございますが、その趣旨とするところは、区画整理といいますものは全国至るところにおいて行なわれるわけでございますが、区画整理事業の施行によりまして、宅地の利用の増進がかりにありましても、宅地の総価額が施行前よりも減少する、つまり公共施設等のために取られますこと等によって、総価額が施行前よりも減少した場合に補償金を交付する主義が妥当と考えられましたために、昭和二十四年の五月の法律七十一号をもちまして改正されたわけでございます。で、この規定改正の趣旨は、現行の土地区画整理法の制定に伴いまして百九条の規定で承継されて現在に至っております。この百九条といいますものは、一五%とか、そういうふうな基準じゃございませんで、区画整理事業の施行の前後を比較いたしまして、その地区内の総地積の総価額を算出して、施行前の総価額よりも施行後の総価額が減少したという場合には、これは当然にその差額分は減価補償金といたしまして施行者が補償する、こういうふうな制度として現在土地区画整理法の中に継承されているわけでございます。
  199. 渡辺武

    渡辺武君 いま御説明がありましたが、それは公式の見解ですか、それとも、あなたの個人的な見解ですか、伺いたいと思います。
  200. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) これは建設省としての公式の見解でございます。
  201. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、建設省としての公式の見解なるものは事実と違っておりますね。ここに私は、昭和二十四年四月二十三日、特別都市計画法の一部を改正する法律案についての政府の提案理由というもののコピーを持っております。赤木正雄君、これはどういう方か私まだ調べておりませんが、とにかく政府委員として、政府の代表として提案理由の説明をなされた、この方の御説明が当時の政府の公式な見解であること、これは明らかです。それには、あなたのおっしゃったこととは全く違ったことが言われているんです。あまりいいかげんな答弁は私はしてもらいたくない。ここは国会の正規の委員会です。どういうことが書かれているか、時間もないから初めのほうははしょりますけれども、この十六条、これは「一割五分以下の地積については、補償の規定を設けておらないのであります。」、いま、あなたがその点はちょっと言われましたな。「一割五分以下の地積」の減少、これについては「補償の規定を設けておらないのであります。」と言って、その次に、こういうことを言っておる。「これは土地区画整理の施行により、一般宅地の利用が増進し、その価格が高騰する実情を考慮したものでありますが、」云々として、そうして次に「然るに新憲法第二十九條第三項の規定によりますと、私有財産は正当な補償の下に公共のために用いることができるのでありまして、この規定の精神に照しますと現行の規定は適当と考えられません。よって」云々ということで、この十六条、これが憲法二十九条第三項違反の規定であるということを理由にして、これは削除された。決して一五%がどうのこうのということじゃないのですよ、あなたが言っているように。この提案理由の説明の中にもはっきり書かれているように、「土地区画整理の施行により、一般宅地の利用が増進し、その価格が高騰する実情を考慮」して、そうして一五%までの減歩は無償だというふうに従来きめていたけれども、これは憲法二十九条第三項違反になる。憲法二十九条の三項というのは、これはあなたも御存じのように、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定です。ですから、土地の値上がりを理由にして個人の土地、これを減歩と称して無償で取るということは、これは正当な補償なくして私有財産を公共のために用いるということであるから、したがって、これは憲法違反の規定になるということで削除された。これが政府委員説明の内容なんです。あなたの説明は全然そのことを抜きにしておる。  そこで私は、申し上げたいんですけれども、この事情は非常に重要だと思うんです。いまも申しましたとおり、土地の価格が値上がりしたということを理由として一五%まで減歩をして、しかもそれが無償でもって公共施設に使われる、これは憲法二十九条第三項違反だということが、この十六条削除の経過を通して非常に明らかだと思う。ですから、公共団体施行の区画整理などの場合に、区画整理によって地価が高騰したことを理由に正当な補償もなしに減歩地を幹線道路や駅前広場などの公共用地に使うということは、これは憲法第二十九条三項違反であるということは、この点からして私は明らかだと思う。この点どう思われますか。
  202. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 私の御説明が不十分であったかと存じますので、補足して申し上げますが、私は当時の政府委員の答弁と違ったことを申し上げたつもりはございません。私が申し上げましたのは——特別都市計画法の十六条が削除されましたときの審議の過程におきまして議論されましたことは、区画整理事業におきまして、区画整理事業の施行前と後と比較いたしまして、そこでいろいろ土地の価格の比較が行なわれるわけでございますけれども、旧特別都市計画法におきましては、十六条ではそれを一五%ということで一律にきめまして、一五%までの減歩はいいが、それ以上に出る場合は、これは補償しなければならない、こういう立て方になっておったわけでございます。ところが、いろいろ議論をいたしますと、そういう一律に一五%というふうにきめますことも問題である。つまり一五%以下は、これは当然補償しないんだというようなことになりますと、地区によりましては一五%以下であっても、整理前後の比較におきまして価値が減少するという場合もなきにしもあらず、そうなってくると、それこそまさに憲法二十九条三項に抵触するんじゃないかというふうな議論等からいたしまして、この際、そういう画一的な一律の率を法律で書くことは適当じゃない、妥当じゃないということから、その規定が削除されたということを、先ほど私申し上げたわけでございます。なお、その考え方は現行法では百九条におきまして、そういう画一的な率じゃございませんで、減価補償金という規定でもって、その趣旨が今日の土地区画整理法に引き継がれておる。現行の百九条は、そういう一律の規定じゃございませんで、区画整理事業をやりました際に、前と後と比較いたしまして、その地区内の総地積の総価額に対して、その総価額が前よりも減少した場合は、これは当然に差額分は施行者が地主に補償する、こういう条項のたてまえになっておるわけでございます。そういうことを申し上げたわけでございます。
  203. 渡辺武

    渡辺武君 もう一回繰り返して申しますが、憲法二十九条の第三項には「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と、はっきりきめておる。これはもう絶対的な原則、これを曲げることは許されない。いいですか、私有財産である土地を公共のために使うときは正当な補償をしなければならぬということです。これは、土地の値段が上がろうと、下がろうと、そんなことには無関係だ。上がっても下がっても、とにかく土地を公共の用に供したときには、これは正当な補償をしなければならない、これが憲法の規定です。ですから、その限度が一五%とかどうとかいうようなことじゃないんですよ。一五%であろうと二〇%であろうと、土地の値段が上がろうと下がろうと、個人の財産である土地を公共の用に供したときには、これは正当な補償をしなければならぬ、これがこの法の示しているところです。あなた方は、この憲法の条項に基づいて法の解釈をしなければならぬ、この憲法の条項に基づいていろいろな施策もやらなければならぬと思うのです。そうでしょう。ところでどうですか。あなたのあげられた百九条、これはあなたのおっしゃったように、確かに減価した場合には補償するということです、一言に言えば。しかし、そういう規定はあるけれども、それでは区画整理の施行によって、施行後の土地の総価額が施行前の土地の総価額よりも上がった場合には、補償しなくてもいいというような規定が法のどこに書いてありますか。その点をお答えいただきたい。
  204. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) いまの減価補償といいますのは、百九条にございますように、区画整理事業の施行区域内の全体といたしまして整理前後を比較いたしまして、その価額の関係で下がったものについては減価補償をする、こういう立て方でございます。それから先ほどからいろいろお話が出ていますように、いわゆる公共減歩といいますか、個々の宅地にかかりますところの減歩について憲法論のお話であるわけでございます。これにつきましては、私は先ほど区画整理法上は明文の規定がない。しかし、法の趣旨、たてまえといたしまして、その考え方といたしましては、私どもは、憲法との関係におきましても何ら疑いがないということで、今日まで運用してまいっております。これについて若干の係争事件がありまして、争われた事案がございますが、一、二の実例も別に違憲ではないというような判決例が出ているようなわけでございまして、私どもはそういうふうに理解しておりますことを御了承いただきたいと思いますが、ただ、この問題は減歩の率なり、程度の問題だと思います。減歩というもの、そのものは区画整理法のたてまえからいって当然憲法の関係から認められている。具体の個々の事業に適用される減歩についてそれが高いか低いか、高い場合に問題になるわけでございます。それが著しく高い場合に、先生御指摘のような議論が実は出てくるわけでございます。
  205. 渡辺武

    渡辺武君 それは、あなた方の解釈は全然憲法違反ですよ。そうでしょう。憲法では個人の財産を公共のために使った場合には正当な補償をしなければならぬという大原則をはっきりうたっているんですよ。いいですね。ところが、あなた方は法に明文もないのにかかわらず、かってな解釈をやっていいですか。区画整理をやったあとで、この土地の値段が上がった、その総額と施行前のこの土地の総額とを比べて、施行後のほうが高くなったら減歩については補償しなくてもいいんだ、こういう見解をとっているわけでしょう。これは憲法違反じゃないですか。いまも申しましたように、土地の値段が上がろうと下がろうと、公共の用に供した場合には、私有財産には正当な補償がされなければならぬ。ところが、土地の値段が上がったからという理由で個人の財産を公共の用に無償で没収する、これは憲法違反ですよ。あなたのおっしゃるとおり、この土地区画整理法にはどこを見たって、あなたが言っているような条文は一つもないのです。土地の値段が上がったときには減歩は無償で取っていいということは一つもない。なぜないか、そんな条項を盛り込んだら明々白々たる憲法違反の条項ということになるからです。それは旧特別都市計画法の十六条の削除のいきさつを考えてみてもおわかりでしょう。いまも申しましたとおり一五%までは土地の値段が値上がりしたからという理由でもって減歩は無償なんだというのが十六条の趣旨だ。ところが、それが憲法二十九条三項違反ということで削られている。ですから、いまの土地区画整理法に、土地の値段が施行後上がった、そのことを理由として減歩は無償で公共の用に使ってもいいのだということは、根本の趣旨としては旧法の十六条、これと全く同じことです。だから、そういうことをあなた方は盛り込むことができない、政府としても憲法違反が明らかだから。そこで、法の条文にもないことを、あなた方がかってな解釈でもってやっておるというのが、いまの実情じゃないですか。しかも、あなた方のかってな解釈によってどういう事態が生まれておるか。旧法によれば、一五%以上の減歩をやったときは補償する、いずれにしても無償で取られる分は一五%までだ。いまはどうであろうか、二〇%であろうと、三〇%であろうと、減歩はすべて無償ということでもって取っているじゃないですか。旧法以上の憲法違反をあなた方官僚のかってな解釈でもってやっておる。ここに私は重大問題があると思う。こういうような憲法違反の解釈、それに基づく公共用地としての減歩の無償没収、こういうことは直ちにやめるべきだと思う。そうして、いままで公共団体施行などで幹線道路や駅前広場など公共施設のために無償で出さした減歩については、国が責任を持って補償すべきだ、その点どうですか。
  206. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 先ほどからの憲法論の問題につきましては、確かに御議論のある問題かと思います。しかしながら、繰り返してくどいようでございますが、区画整理法といいますものは、前段に申し上げましたように、公共施設の整備とあわせて宅地の利用増進をはかるというために、手段としてできるだけいわゆる換地と申しますか、土地の形質の変更と申しますか、換地操作でもって、この運用をやって行くのがたてまえでございます。そこで、換地というものについて、はたして減歩を伴った換地が憲法違反になるかどうかという議論がここにおいてあったわけでございますけれども、私どもは、その点につきましては、これは換地操作によりまして、結果的に宅地利用の増進が従前よりもあった場合には——公共減歩をかりに受けましても、それ以上に宅地の利用増進的な価値があった場合におきましては、これは憲法上の問題は起きないのではないかというふうなことで、法律の施行をしてきておるわけでございます。  それからもう一点、幹線道路とか駅前広場とか、そういうものにつきましての区画整理事業を行ないます際に、国、公共団体等がもう少し負担すべきじゃないかというお尋ねかと思いますが、これは一般論といたしましては、先生の御意見も十分理解できるわけであります。最近の私どもの区画整理事業につきましては一そういう大規模な駅前広場あるいは交通幹線に関連いたしましての区画整理事業につきましては、別途、管理者負担金という制度が区画整理法上にございまして、それを活用することによりまして、区画整理事業とは別な立場から、別途、公共施設管理者が負担金を出すというふうなことで運用している事業もございます。
  207. 渡辺武

    渡辺武君 いま宅地の利用増進ということを言われましたけれども、あなた方、宅地の利用増進ということを何でもってはかっておるか。これは結局のところ、区画整理事業の施行後に土地の値段が上がったか下がったかということでもってやっているでしょう。全部価額に換算している、そのこと自体が非常に間違っておると思う。思うけれども、かりに、そういうあなた方の立場に立って、値段でもって考えてみても、これは憲法に規定されている補償じゃない。区画整理事業をやった結果として土地の値上がりが行なわれたということは、これは一つの経済的な帰結である。国が減歩について補償をしたということじゃない。全くかってな、恣意的な解釈で、憲法違反のことをやっておると言わざるを得ないじゃありませんか。結局のところ、減歩として幹線道路などに土地を提供した人は、これは補償されていないのだ、国から、あるいは自治体からも補償されていない。無償で没収されておるんですよ。いま、あなたは管理者負担金ということを言われた。なぜ管理者負担金を出すようになったか。これは不公平が行なわれて住民の不満が非常に激しいから、それを緩和するために出された。そもそも、この区画整理事業というものは、これは土地の買収方式などで幹線道路などをつくる場合と比べてみると不公平だということを、あなた方が認識した、そのために出されたものだと思います。しかし、その点を抜きにしても管理者負担金というのは何に使われるか。減歩に対する補償金として使われているわけじゃないでしょう。これは事業費として使われている。ですから管理者負担金が出されているからといって、憲法違反じゃないなんという議論は成り立ちませんよ。これは特に、私は、時間がないので、あなた方の後日の参考までに申し上げておきますけれども、あなた方は、区画整理をやって住民が反対したときに、こういうことを言うでしょう。土地区画整理法百九条には減価補償の規定がある。これは、土地が値下がりをして損をした場合には、これを補償するという規定。だから減価しなくて地価が上がったような場合には、これは補償しなくてもいいんだ、減歩は無償で出すのが当然だ、こういうことを盛んに説明しておられる。しかし、法の解釈というものは、これは憲法に基づいてやって、初めて有効な解釈といわれるんです。憲法第二十九条は、何回も申しますように私有財産を公共の用に供したときには、これは正当に補償されなきゃならない、これが原則です。土地の値段が上がろうと下がろうと、このことについては変わりはない。当然これは補償しなきゃならぬ。ただ、百九条がここに盛り込まれたというのは、これは断わるまでもないけれども、念のための規定として、注意規定として、この百九条は減価の場合は特にこうしなさいということを盛り込んだにすぎない。あなた方か裏解釈などをやるということは、これは法の明文にもないことを、官僚がかってな解釈によって憲法違反の事実、これを国民に強制するということにほかならない。その点をひとつよく考えていただきたい。  ところで、時間がないので次に移りますけれども、あなた方が憲法第二十九条違反をやって、そうして土地の無償没収をやっているから、先ほども何回も申しましたように、ほかの場合と比べてみて著しく不公平、不平等なことが区画整理の場合生まれておりますね。たとえば土地収用法の九十条、これは土地の収用にあたって企業利益との相殺の禁止ということをきめた条文だと思いますけれども、区画整理方式で公共の用に使う土地を減歩として無償で出させるというやり方は、この土地収用法九十条と著しく均衡を欠く。そうして、法のもとに平等でなければならない国民に著しい不平等な扱いをやっているというふうに思いますけれども、その点どうでしょうか。
  208. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) たびたび申し上げますように、区画整理法の公共減歩というのは当然地域社会におきますところの宅地の利用の増進をはかるために、お互いの利益のためにやる事業でございまして、したがいましてその区域内におきまして十分な区画道路もなければ、あるいは小公園もない、そういうふうな地域を区画整理で整然と区画割りをして、区画道路をつくり公園をつくる。そういう公共利用地と申しますか、そういう公共施設は、即、その地域内の権利者——土地の所有者、借地権者などといった、そういう関係者の利便の増進になるから、こういう事業をやるということでございまして、公共施設のための減歩というものも、そういうところから発想が出ておるわけでございまして、したがいまして、先生のおあげになりました土地収用法の九十条のたてまえとは趣旨を異にしておるというふうに私どもは理解をいたしております。
  209. 渡辺武

    渡辺武君 いいかげんなことを答弁されちゃ困りますよ。私は先ほどから、公共団体施行の場合に特に限ってあなたに申し上げておる。区画整理が、個人施行でやられる場合あるいは組合施行でやられる場合、こういうような場合は、それは地域の人たちが自主的にいろいろ地域の利便をはかるためにやるという場合で、これもかなり多いと思う。しかし、公共団体施行でやる場合は、たいがい幹線道路をつくるためとか、駅前広場をつくるためで、地域住民の自主的なものじゃない。国や地方自治体が都市計画によって定めたその計画を実行させるためにやる場合が非常に多い。それを混同させて、その場のがれの言いわけにしようと思っても通りませんよ。実際、地域住民はいろんな被害を受けている。そんな言いのがれは通らないと思う。つまり土地収用法によって公共団体が土地を収用する、その場合に、土地収用法の九十条によれば、その公共施設、たとえば幹線道路を敷いたことによって残地の値段が上がっても、その残地の値段の上がったことを理由にして、土地収用のための費用を相殺しちゃいけない。つまりただ取りしちゃいけないということが、土地収用法の九十条にはっきり盛り込まれていると言われている。ところが区画整理の場合はどうですか。あなたのいま言ったような理屈にもならない理屈をこねて、そうして、土地収用の場合と全く同じ幹線道路をつくるというような場合に、土地の値上がりを理由にして減歩と称して、ただでもって土地を取り上げているじゃないですか。著しく不平等な扱いですよ、これは。その点は、あなた認めるべきだと思うけれども、どうですか。不平等ですよ。
  210. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 区画整理にもいろいろタイプがあるわけでございまして、先生御指摘の巣鴨地区の戦災復興区画整理事業は、国道十七号線とか、巣鴨の駅前とか、そういうものを含みました、そういう公共施設の整備もあわせ含めました戦災復興の区画整理事業でございます。したがいまして、そういう重要な公共施設の整備を含んだ内容のものでございますので、東京都知事施行の、行政庁施行の区画整理事業で今日まで実施してまいったわけでございます。行政庁施行の、公共団体施行の区画整理でございますから、その区画整理事業の費用は一切公共団体が持ってやる、その事業費に、まあこれに対しまして、国のほうからも補助金が出てまいっておるわけでございます。そういう区画整理事業の事業費を全部公共団体が持ってやるということは、その費用でもって広場なり幹線道路を整備する、それからその地域内のいろんな区画道路をその費用でもって一切整備をしてあげる、こういう内容の事業になるわけであります。したがいまして、でき上がりました結果が、はたして——まあ減歩というものも当然入ってまいりますから、地区内の権利者の地価との関係で、どういうことになるかということになるわけでございますが、まあ本件の場合は、結果的には減価補償金というようなものも東京都から一部出ておるわけでありまして、減歩率にいたしましても、二三・四%の減歩率になっておったかと思いますが、他の類似の戦災復興区画整理事業と比較いたしまして、この区画整理事業が非常に著しく不均衡であるとか、住民に非常に負担をしいているというふうな内容になっているとは、私どもは理解いたしていないわけでございます。
  211. 渡辺武

    渡辺武君 私の伺ったことに率直に、端的にお答えいただきたいと思うのです、時間もないので。  私の伺っているのは、これは巣鴨駅の周辺も一つの例ですけれど、公共団体施行の場合には、これは幹線道路その他の公共用のために、個人の私有財産である土地を無償でもって出させている。ところが他方で同じ幹線道路などをつくるための土地収用を行なう場合、土地収用法九十条によって道路が敷かれたことによって残地の値段が上がっても、そのことを理由にして無償で取っちゃいけないという趣旨のことが書かれている。国民というものは法のもとに平等でなければならない、憲法の規定によれば。その国民がこういう不平等な扱いを受けているじゃないか。その点、認めるかどうかということを私は伺っているのです。端的にお答えいただきたい。
  212. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 巣鴨の例でお話が出ておるわけでございますが、こういったケースの区画整理事業の場合は、先生のお考えのように、そういう幹線道路の築造用地の買収、築造の費用まで一切区画整理事業の地区内の住民がかぶっている。したがって、その隣接のところは区画整理事業じゃなく、いわゆる単独事業でやっているので街路にかかるものが時価によって買収される。それは不公平じゃないかという指摘だと思います。区画整理事業というのは、これはなかなか明快な説明がむずかしゅうございますけれども、区画整理事業を公共団体が施行者としてやります場合、事業の内容といたしましては、幹線道路の整備もありますれば、あるいは区画街路の整備、あるいは公園の整備とか、そういう一切がっさい含んでおるわけでございまして、そういう区画街路的なものの整備も公共団体の負担で一切やるわけでございます。幹線道路関係も公共団体が当然やるわけでございます。そういうものを一切がっさい公的な機関の負担においてやります。ただし、減歩はその関係の権利者が負担するというふうな総合的な関係になっております。それが全体としてはたしてバランスがとれているかどうかというふうな議論になろうかと思います。区画整理事業でなく、いわゆる単独事業でやる街路の場合と、区画整理事業でそういう幹線道路を生み出す場合と、それを同じ方法で比較して公平、不公平というような議論をいたしますと非常にむずかしいわけでございます。一がいに言えないと思います。
  213. 渡辺武

    渡辺武君 あなたは区画整理の場合は複雑だとか、むずかしいとか言うけれども、それは事態をごまかそうとするから、そういうことになるのですよ。問題は実に単純明快じゃないですか。幹線道路のような公共施設のために個人の財産である私有地、これが減歩と称して無償で提供させられている。この減歩については補償は行なわれていない。あなたは事業費などと言うけれども、これは個人の手に渡る補償じゃない。憲法が規定している補償という概念のものとは離れたものです、違ったものです。すなわち区画整理、特に公共団体施行の区画整理で公共施設がつくられる場合には、減歩と称して土地が無償でもって取られている。ところが同じような公共施設をつくる場合に、土地収用法でやられた場合はどうなのだ。これは無償で取っちゃいけないということが書かれている。その公共施設をつくることによって残地の値段が上がっても、そのことで相殺しちゃいけない。つまり無償で取っちゃいけないということが書かれている。全く違うじゃないですか。法のもとで著しい不平等が行なわれている。それをごまかそうとするから複雑だとか困難だとか、むずかしいとか、いろいろなことを言うのです。時間がないから私、先を急ぎますが、こういう不公平が行なわれている。  土地収用法九十条は、いま申し上げたとおり、その点については憲法二十九条三項の規定にのっとって、公共用のために個人の財産を無償で取るということ、これを禁止している。ところが区画整理の場合は、まさしくこの土地収用法九十条と根本的に違うということからも明らかなように、憲法第二十九条三項に全く違反した憲法違反の行為を、あなた方はさまざまの理屈を並べて——複雑だとか、むずかしいとかいうような理屈にもならないことを並べて、公然とやっているということなんです。したがって、こういう不平等な、憲法違反の行為、これによって起こる減歩、こういうことを公共団体施行などの形でもってやることは、私はやめるべきだと思います。あなた方が憲法に忠実である限り、やめるべきだと思います。そうして従来、こういうやり方で無償で土地を取られた住民には、責任をもって平等に補償すべきだと思います。この点どうですか。
  214. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) いろいろ私の説明に不十分な点があったかと思いますが、いまお尋ねの、こういう区画整理事業をやめるべきだというふうな御質問につきましては、これは重大な問題でございますし、私一存でお答えできるものではないと思いますが、私の見解といたしましては、現在の立て方からいいまして若干先生と見解を異にいたしますけれども、現行の制度のもとにおいてやはり公共団体の施行なり、そういうものの区画整理事業は進めていくべきであるというふうに考えております。また、その進め方につきましていろいろ改善すべき点は、今後改善を加えていきたいというふうに考えております。
  215. 渡辺武

    渡辺武君 それでは先ほど来、話の出ている東京都北部三十一地区の具体的の問題について一、二伺って、時間もなぐなりましたので、やめておきたいと思います。  この三十一地区の場合、二十七万五千平方メートルの宅地が区画整理によって二十万三千平方メートルに減少しております。減歩率平均二六・一%、あなたは先ほど二十何%と言われましたけれども、公式に発表されているものは二六・一%、ですから七万二千平方メートルが減歩しております。しかも、これが何に使われたかといえば、先ほど来何回も申しておりますが、主として国道十七号線、それからまた駅前広場の拡幅のために使われている。ところでこの事業に使われた国と都の費用はどれほどか。総事業費五億六千七百三十一万、そのうち国の負担分が一億二千六百七十五万円ということなんです。ですから、これを一平方メートル当たりに直してみれば八千百円にしかならない。一平方メートル当たり八千百円、しかもこれは個人に渡った補償じゃない。憲法できめられた補償じゃない。そうじゃなくて、これは事業費なんです。これは公共施設をつくるためには、国や自治体が当然負担しなければならないものですよ。当然出すべきものですよ。しかし、かりに国や自治体の支出という点から見たって、一平方メートル当たりわずか八千百円という、全くこれはお話にもならないようなお金しか出していない。そうして、そのことによって、いま言ったような七万平方メートル以上の土地を公共用のために使われておるという状況。ですから住民のほうは、土地をただ取りされた上に総額二億二百十七万円、実質一億二千八百七十一万円の清算金をさらにいま徴収されようとしている。土地をただ取りされた上に、一軒当たり最高百万円、平均すれば二十万から三十万という金を取られているという状況です。これは不当きわまりないことといわなければならない。したがって私は、この住民に対する不当な扱い、これをあなた方は常識に立ち戻って、特に官吏としての常識、憲法の規定に立ち戻って、これらの住民の負担をなくすために、さしあたりあまりに少な過ぎる国の支出、これをふやして、そうしてこの区画整理によって損害を受けた人たちに対する補償を正当にするとともに、この清算金の徴収などというのはやめるべきだ、ただにすべきだというふうに思いますけれども、その点どう思いますか。
  216. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) 三十一地区の区画整理事業の内容でございますが、先ほど御指摘の総事業費が五億七千万何がしということになっておりますのは、この事業は、昭和二十三年からスタートいたしまして、営々として今日までやってまいった長期のもので、五億七千万何がしかの事業費が長期にわたりまして投資されてきましたところの事業でございます。現在の貨幣価値では相当な額になるかと思います。これが第一点。それから清算金の問題につきましては、清算金の徴収、交付といいますのは区画整理事業にはつきものでございます。といいますのは、複雑な性質を持ったところの土地変更がある、その結果、どんぴしゃりと等価のものと換地できることは非常にむずかしい。当然、そこにでこぼこがあります。そのでこぼこを修正いたしますために、清算金を徴収し、あるいは交付するというふうな場合が出てくる。この清算金の徴収、交付について、清算金の交付はいいが、徴収の分を公共団体が肩がわりしたらどうだろうかという御指摘かと思いますが、現在の区画整理事業のたてまえといたしましては、清算金の徴収、交付の穴埋めを公共団体の負担においてするということは、これはできないというふうに私どもは思うわけでございます。
  217. 渡辺武

    渡辺武君 その法律の明文にもないことを、かってに解釈して、そうして無償で減歩と称して土地を取り上げるというような、ひどいことをやっておきながら、自分の都合の悪いところになると、法律にきまっていないからというようなことです。しかし、法律でそういうことを禁止しているわけじゃない。あなたも言われているように、管理者負担金というものが出されている。したがって、これは合法的に十分出すだけの条件がある。あなた方がほんとうに住民立場に立ってやろうとさえするならば、そのぐらいのことはやれないことはない。これは法律の問題じゃない。重ねて言います。当然、住民の深刻な負担、これは国の責任及び施行者である都の責任で私は解決すべきだと思う。特に費用について十分に出すべきだというふうに思います。  なお、時間がないから、最後に一言、二言申し上げておきますけれども、大体、あなたは先ほどから宅地の利用増進、利用増進と言っていながら、先ほどの御答弁では、施行前の土地の地価と、施行後の換地の地価がどんぴしゃり一致するかどうかということをうっかり漏らしております。それでもわかるように、土地区画整理法では、換地の条件としては値段なんということは一言も言ってない、地積、環境その他——つまり利用する条件がどうか、そのことが適合するように換地をやればいいということを言っているのに、あなた方は、そういう点を一切がっさい無視してしまって、値段がつり合うかどうかということでもって換地を進める。そうして、そういうやり方の上で清算金の徴収というようなことをやっているわけです。そのために——現地へ行って聞いてごらんなさいよ、いろいろな矛盾が出ている。私の耳に入っただけでも、ある七十歳以上のお年寄りで、いまはもう働くことができない、収入の道もほとんどないという人が、これが区画整理のために家の庭を取られてしまった。家がまっ暗になってしまった、昼間でも電気をつけている。また、家のすぐ前に広い道ができたために年寄り夫婦はうっかり道も歩けない。こういうことなんです。あなた方は幹線道路が通れば、やれ地価が上昇する、やれ土地の利用度が増進すると言うけれども、いまは全く違いますよ。幹線道路が敷かれれば、どういうことになりますか。公害の原因が住宅地区にできるということなんです。土地の利用度はがた落ちになる。ですから、土地の利用度ということに中心を置いて換地計画あるいは清算金などの計算をやるなら、これはいいけれども、そういうことでなく、土地の利用度ががっくり下がってしまったところの老人に十五万、十六万というべらぼうな清算金がかかってくる、収入もないお年寄りにですよ。  もう一つの例をあげましょう。ある人が土地を持っていた。その土地は横長の土地で、その土地に二軒家を建てて、一軒を貸し家として人に貸して、そうしてその家賃の収入をあげていた。ところが今度、区画整理でもって換地としてもらった土地は正方形の土地だ。一軒しか家が建てられない。したがってこの人は家賃の収入も出てこない。ところが施行者のほうは何と言っているか。いや土地が正方形になったから利用度が上がったんだ、したがって土地の値段も上がった、ということで、清算金二十五万円をふっかけてきている、こういうような状況。全くむちゃくちゃなことがいま行なわれているんですよ。しかも調べてごらんなさい、この三十一地区の区画整理の施行のいままでの経過を。法律を無視したことを数々やっておりますよ。いま、あなたもおっしゃいましたように、これは長期にわたっての区画整理。だから先ほど私申しました、昭和二十四年に旧特別都市計画法が改正される以前から区画整理は始まった。だから当時は、一五%以上の減歩の場合で補償があると住民は思っておった。またそういう説明を受けておった。ところが昭和二十四年にこの法律が改正されて、そうして一五%以上の減歩でも何の補償もないという状態にさせられてしまった。しかも、その説明をただの一回もやっていない。ですから、いま清算金を取られようとしている人たちは約束が違うじゃないかということを言っている。ところが、それに対してどうですか。法律というものは官報で公布される、だから官報で公布されたことを知らないのは、あなた方の責任だと言って開き直っておる。言語道断でしょう。しかも法の趣旨から言えば、清算金などというものは、これは換地計画をつくって発表して、縦覧期間を設けて——換地計画をつくって、そのあとで、それと同時に清算金というものが発表されるわけです。仮換地の指定というのはその後に行なわれるのが普通なんです。これは法律の条文をよく読めば、そういう手続こそが最も合法的なものだということが明らかなんです。ところが、この三十一地区の場合は換地計画も清算金も何にも発表しない。そうして仮換地、仮換地でもってどんどん移転をさして、事業をやってしまって、そうしてその最後の段階で換地計画及び清算金を明らかにしている。法律違反のことを公然とやって、そうして清算金を払え、払えと言って、いま住民にたいへんな圧力をかけている。これが実情ですよ。一々あなたに伺いたいと思ったけれども、時間がないから私の口から全部しゃべったけれども、こういう実情をよく調べて、この不法不当なやり方を改めるべきだと思う。特に先ほど申しましたように、この不法不当なやり方はあなた方にも責任がある。区画整理法に何もないことをかってな解釈でもって、憲法違反でもって土地を取り上げる、そういう解釈をどんどんやって、めちゃくちゃなことをやらしているのはあなた方、したがって国の責任と都の責任、費用についても解決すべきだというふうに思います。その点、最後に、あなたの答弁を伺いたい。
  218. 吉兼三郎

    説明員(吉兼三郎君) たびたび申し上げますように、制度論につきましても先生と若干見解を異にいたしますので、前段にいろいろお答え申し上げましたことで御了承いただきたいと思います。  それから、三十一地区の問題につきましては、現在関係者から不服審査法に基づきます不服の申し立てが出ております。いま私どものほうで、担当のほうで審理中でございます。先生からきょういろいろ御指摘の点も、私、十分承知いたしました上で、この審査に当たりたいと思っております。
  219. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) 他に御発言もないようですから、建設省関係決算につきましてはこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十分散会      —————・—————