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1970-11-05 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月五日(木曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  十一月五日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     上林繁次郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 若林 正武君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 高山 恒雄君     委 員                 長田 裕二君                 亀井 善彰君                 熊谷太三郎君                 佐田 一郎君                 長屋  茂君                 矢野  登君                 西村 関一君                 上林繁次郎君                 二宮 文造君                 渡辺  武君    国務大臣        国 務 大 臣  中曽根康弘君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        会計検査院事務        総局第二局長   鎌田 英夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、峯山昭範君が委員を辞任され、その補欠として上林繁次郎君が選任されました。     —————————————
  3. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  本日は防衛庁決算につきまして審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。議事の都合により、防衛庁決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録末尾に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 和田静夫

    和田静夫君 では、最初にちょっと会計検査院に尋ねますが、四月十日のこの決算委員会で四十二年度の防衛庁決算のときに論議を若干しました問題、いわゆる防衛庁関係軍事有償援助にかかる前払いまたは概算払いによるものが、品物がまだ入手をしない、そういう関係精算未了になっておるものがかなりある。昭和四十二年度決算までは会計検査報告末尾にこれが記載されておりましたが、四十三年度からこれははぶかれている。防衛庁関係兵器の膨大な経費が前払いをされていたままどうなっているのか決算書を見て不明だということは、非常に重要なことだと思うんです。三十九年度、四十年度、四十一年度、四十二年度、四十三年度別に、防衛庁関係の未確認事項の本日現在の状況概要を御報告願いたいんですが、いまできますか。
  6. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) ただいまちょっと手元資料がございませんので、もし御要求でございましたら、後刻資料をもって提出いたしたいと、こう存じますが、いかがでございましょうか。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 いまから私、大体一時間大臣質問いたしますが、その間にまとめられますか。
  8. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 既往年度分でございましたならば、できると思います。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 四十二年度までできますね。
  10. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 昨年、つまり四十四年九月三十日現在の時点でお許し願えれば提出できます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ提出してください。
  12. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) はい、わかりました。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 さらにその中で、この前の決算委員会論議をしてありますが、思い浮かべてもらえればけっこうなんですが、三十九年購入の通信機器三千万円、これはどうなっているか明らかにしてください。これはいまできるでしょうか。
  14. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) これも調べまして後ほど提出いたしたいと思います。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 この防衛白書昭和四十五年十月の防衛白書というこの冊子を読ませていただきました。まあだれが書かれたか知りませんが、官庁文書にしては私は珍しくすぐれてたいへん美文調だと思うんです。問題は内容なんでありますが、冒頭お聞きしたいのは、例の徴兵を行なわないということば、これを削除した点についてでありますが、その辺のいきさつを大臣からまずお伺いしたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 草案の過程におきましては、「防衛力限界」の部で「憲法上の限界」という項の部分徴兵は行なわない、そういうふうに書いてありました。それを関係各省に回しまして意見を求めている過程において、内閣法制局のほうから参考意見が提出されました。それによりますと、なるほど多数説は徴兵は行なえないということである、しかし少数説の中には、緊急非常事態の場合には行なえるという少数説がある、その少数説は、国会論議の中においても過去において紹介されておりまして、たとえば非常事態の場合には知事さんが関係住民に対していろいろ役務を協力要請できる、そういう場合があり得るので、国家非常事態においては、その非常事態の場合に限って同じようにやれるのではないか、それは苦役ではないのではないか、そういう少数説がある。それはふだんそういうことはできない。しかし非常事態の場合には同じような性質でできるのだという少数説があるそうでございます。そういう少数説もあるので、官庁文書としてそういうことを書くのはいかがであろうかという、そういう参考意見参考として付せんがついてまいりました。それを私が見まして、そういう多数、少数に分かれているという徴兵問題のような大きな問題については、関係各省調和ということも必要だから、こちらの自主的判断においてそこのところは削除したのです。しかし、徴兵は行なわないというのは一貫した方針でありますから、防衛庁長官談話の中に、そのことをはっきり明言したわけでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 いま答弁で述べられましたように、この白書の発刊にあたっての防衛庁長官談話に「それは世界平和を念願する政治に指導され、国土と共同生活体防衛に徹し、海外脅威を与える攻撃的兵器を持たず、また海外に派兵せず、徴兵を行なわない。そして政府非核原則政策として維持している。」、こういうふうに談話でなっております。そこでこの白書では、いま述べられたように防衛力限界が、憲法上の限界政策上の限界とに分かれています。で海外派兵は、憲法上の限界に属しているわけです。非核原則政策上の限界に属している、こういうことになっている。これはいわゆる海外派兵は、憲法が改正されなくてはできないということである。核武装憲法を改正しなくても法理的には可能であるが、政策的にはそれを行なわない。したがって、現憲法下でも政策の変更として核武装をすることもあり得るということでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法理論政策論と両建てになっておるわけであります。それで核武装につきましても、他国に対して脅威を与えるような攻撃的性格を持っておるような核武装はできない。しかし防衛に徹する核武装の場合は、憲法上はそれは拒否されていない。そういうのが法制当局見解でございます。白書のような公の文書については、こういう憲法上の見解について疑義を残しておくことはよくありませんから、われわれは核武装の意思はありませんけれども、そういうポイントについては、法制上の明確な定義を出しておく必要がある。この問題については、そういう考えもありまして、いまのようなことが付言してあるのです。しかし、だからといって核武装しょうというのではありません。政府は一貫して非核政策をとっている。非核中級国家としての日本固有防衛戦略体制をつくっていこう、そういう方針であるのであります。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 それでは徴兵を行なわないということは、これは憲法上の限界なのですか、政策上の限界なのですか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは憲法上の定義については、いろいろ法理論が分かれると思いますが、私は多数説に従います。したがって私は徴兵ということはできないと、私個人は考えております。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 そこでちょっと前へ戻しますが、いま長官徴兵問題についてのお考えはわかりました。そこで、徴兵制をとっても憲法違反ではないという少数意見があるからという法制局側見解、それで削除した、こう言われますね。そうすると海外派兵をしても憲法違反ではないという少数意見だって、これは全くの少数意見としてはあるのですね。それなのにもかかわらず、そのことを理由にして——少数意見理由にして徴兵制を行なわない、とらないということのみを削られたのは、長官として何か理由がございますか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海外派兵が合憲であるという少数意見があることは私まだ不勉強にして知らないのであります。国会における法制当局正式言明も、海外派兵という定義にもよりますけれども、海外武力行使目的をもって兵を送るということは憲法違反である。武力行使目的をもってと、そういうふうにはっきり言っております。——それを海外派兵と称しております。そういうふうに法制局当局国会で言明しておるものですから、それをオーソライズされたものとして私たちは考えております。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 わかりました。そこでこの白書は、八十一ページに自衛官募集難を言っております。「昭和三〇年代後半から続いている募集難は、一時緩和されたものの、再び深刻な事態を迎え、将来にわたって募集難はますます深刻化する状況にあり」云々、こういうふうになっているわけですね。今後も一そう予想されるこの募集難を前に、政府徴兵制の採用を考えているのではないかということが——これはいま防衛庁長官からはっきりした答弁がありましたから、防衛庁長官としては、言ってみればいまのように徴兵制を行なわないという考え方を明確に述べられましたが、政府全体としては、将来にわたって手をしばられたくないということで、徴兵を行なわないということばを、憲法上の限界の項から削られたのではないかという疑惑があるわけです。そういうことはございませんか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことはございません。これは純粋に法理論の問題、それから官庁文書の扱いの問題として、わがほうと法制局当局との応答の間にそういうふうになってきたわけであります。閣議とかあるいは総理レベルで問題になったものではありません。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 ことしの一月二十六日から二十九日にかけて行なわれたアメリカ上院外交委員会安全保障協定対外公約小委員会の、日本と沖縄に関する聴聞会議事録が最近公表されましたが、この中で、ポール上院議員の「ジョンソン次官、あなたは(佐藤)首相がいった言葉の中に、日本軍韓国防衛のために使用し得るというふくみがあるかという質問を受けた。それにたいするあなたの答はどういうものでしたか。」、そういう質問に答えて、ジョンソン国務次官は「私の答は次のとおりです。「いや、私はこのコミュニケにそういう意味合いを読みとるものではありません。コミュニケはその問題には全くふれていないのです。しかし重要なことは、日本韓国防衛は直接日本自身の安全に関係があるということを明確に認めていることだと思う。」」、こう答えています。こうしたアメリカ側の期待にもかかわらず、まあ海外派兵憲法上の限界としてこれを行なわない。——先ほどの答弁の繰り返しになろうと思うのですけれども、ここで防衛庁長官は言明されておるが、よろしいですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであります。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 防衛白書やそれに付随したあなたの談話の中には明らかに、いまの答弁の中にもありましたが、攻撃的兵器防衛的兵器という区別があります。しかし、同じアメリカ上院聴聞会でそうした区別が、御存じのとおり全く意味がないことが確認されていますが、その点どのようにお考えになりますか。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカのような憲法と、それから兵の体系軍備体系及び世界史的な役割りを持っておる国は、アメリカ人自体がいろいろ考えアメリカの行ない方というものをきめるでありましょうが、それはアメリカのことであって、日本は、日本固有憲法を持って、日本固有国民的コンセンサスを持って、政府はいろいろ公約してきた政策を忠実にフォローしながら政策が進められて、経済繁栄国内的調和が保たれるわけであります。したがって、日本としては日本独自の道を追求するのが正しいのであるという、そういう観点から防衛体系あるいは防衛における定義というものも日本独自に考えていいと思っております。私は、そういう意味から攻撃的兵器防御的兵器というものはなかなか限界はつけにくいところがありますけれども、国民の皆さんにある概念を与えて、その限界の映像を示しておくということは大事であると思いますから、そういう意味においてそういう概念をつくるということに努力することは意味のあることであると思います。ですから、足の長い爆撃機あるいはB52のようなものとか、あるいはICBM、IRBM、そういうものは攻撃的兵器だと思うのでありまして、そういうものを例示して、そういうものは持てない、そう明言しているのであります。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、たとえば防衛的兵器長官なりの例示はどういうことになりますか。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう概念に入らない通常兵器は一応防衛的兵器考えられていいと思います。しかし、兵器というものは、非常に大事なことは、運用する方針、イデェといいますか、防衛政策基本方針というものが非常に大事なのでありまして、兵器というものは右にも移れ、左にも変われるという性格を持っております。それは科学技術平和利用に使われたり軍事利用に使われたりするのと同じようなものでありまして、一番大事な点はシビリアンコントロール。それを受けて政府当局憲法に忠実に政策を執行していく、またそういう政策を保有することだろうと思っております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 やはりこの同じ聴聞会日本防衛能力に触れております。サイミントン上院議員ジョンソン国務次官との間でいろいろありますが、最後の部分だけ読めば、サイミントンが「私としては日本極東の他のどの国よりもわれわれの同盟国になってほしいと思う。」、それに対してジョンソンは「われわれの全目標は、その方向にむかって進むことであります。」、そういう確認のやりとりがなされております。つまり日本防衛能力についてアメリカからも相当な評価がされているのでありますが、四次防が達成されたときのわが国自衛隊戦力、それは近隣諸国との比較においてどのようなものでありますか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛局長から答弁いたします。
  33. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 数量的に申し上げますと、陸上自衛隊諸国陸軍比較いたしますと、陸上自衛隊は四次防の防衛庁原案で十八万人体制を維持しようということでございます。十八万人ということは世界陸軍の中で大体二十一、二番目というところでございます。極東諸国で申し上げますと、中共韓国中華民国北鮮等はいずれも三十五万から五十五万、そういう数字でございまして、北鮮が三十五万、中華民国が四十万、韓国が五十五万という数字でございます。それに対して陸上自衛隊は十八万ということになります。  それから海上自衛隊諸国海軍比較いたしますと、これは四十五年現在では十三万数千トンでございますが、陸空に比べておくれておりますので、四次防原案ではこれを四次防末で十八万トン台に、それから四次防が完成した時点、これは実際には五次防の半ばごろになりますが、計画が完成した時点で二十四万数千トンぐらいに持っていきたいという原案でございます。それを世界諸国海軍比較いたしますと、米国、ソ連、英国というのはいずれも百万トンから以上で、とても比較になりませんけれども、その三大国は別といたしまして、フランスが四十五万、西ドイツが二十七万、イタリアが二十一万というのが四十五年現在の数字でございます。それ以下では中共が二十万、オランダが十六万というふうな数字になっておりますけれども、これらの諸国がいずれも増強しないと、かりにそういたしますと、二十数万ですと西ドイツの次になる。それから十八万トンという数字中共の次になる。ほかのほうが全然動かないと仮定した場合でございますと、こういう比較になります。  それから航空自衛隊のほうは、四十五年現在で機数が九百七十機でございまして、これは世界諸国で十四位になっております。で、四次防では機数は特にふやす計画にしておりません。中身戦闘機を新しい戦闘機に変える等の措置はいたしますが、機数は特別にふえませんので、大体この程度の陣容になろうかという推測でございます。数字比較いたしますと以上でございます。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 全体の総合戦力として対比した場合に、どういうことになりますか。
  35. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 数字比較はいま申し上げましたように、わりあい客観的に比較しやすいわけでございますが、総合戦力ということになりますと、これは国民的な基盤、その国の政治体制、全体的な軍事体制、すべてを総合しなければなりませんので、客観的に比較することはきわめて困難だと思います。ただ、日本専守防衛の面でとらえてみますと、一次防、二次防、三次防と進めてまいりました防衛費の漸増のペースが相当進んでまいりまして、日米安保体制のもとで専守防衛を引き受けるという役割りについて、いわば相当な水準に達してきたなという感じがいたします。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 いま言われた相当な水準というのは、どのくらいなんですか。相当な水準とはどういうことですか。
  37. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 一言で相当な水準と申し上げましたけれども、たとえば陸上自衛隊十八万人体制というのが三次防末でほぼ達成いたしました。先ほど申し上げましたように、スケールそのものは四次防計画でもそうふやす必要はなかろうという感じを持っております。ただ縦深性と申しますか、抗堪性と申しますか、第一線に行きます十八万のほかに、予備兵力というものが要るだろうというので、現在の三万数千人を六万人程度予備兵力をふやしたいと考えておりますし、それから戦車とかその他の各種火砲とか、あるいはヘリコプター等機動力、そういったものがまだ必ずしも十分でないというので、それを四次防で相当進めてまいろうということを考えておりますが、そういうことを前提にして考えてみますと、たとえばわが国への、考え得る侵略様相上限——一番きびしい場合を考えて、ある地域が侵攻される、本格的に侵攻されるというふうな事態考えてみた場合に、十八万人体制、それから予備がある、それから各種機動力なり火力があるということを前提にしますと、わが国のある地域の本格的な侵攻に対して相当な抵抗力を持ち得るであろう、排除力を持ち得るであろうというふうなことが申し上げられる。そういう意味で、相当な水準ということを申し上げたわけでございます。ただ、数字そのものでは、いくさといいますか、侵略といいますか、その様相はもちろんきわめて千差万別でありまして、一定標準を示すわけにもまいりません。数字でこの場合はどうだというふうに御説明申し上げることはむずかしいわけでございますが、軍事専門といいますか、防衛専門といいますか、そういう防衛専門の立場から申しまして十八万人体制中心にした、いま申し上げたようなことがそろえば、大体相当な水準ということになりますが、抑止力、かつ排除力という点から見て、まあまあこの辺でもいいんじゃなかろうかというふうな感じがする。一例を申し上げると、そういう意味でございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、もちろん条件が違いますが、日本の旧軍との関係において比較すると、何ぞう倍の総合戦力になるという判断をされて、それが今日の社会において相当水準であるとお考えになっておられるわけですか。
  39. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 総合戦力で申し上げますと、各種条件が違いますので比較することはなかなかむずかしいわけですが、たとえば火力指数——師団の持っております火力のある一定の時間に発射し得るたまの量、つまり結局、敵に与える破壊力というようなものを指数に換算する方式がございますが、そういう指数比較いたしますと、旧軍の一師団は、現在に比較しまして——これは兵力は二万数千人——二万三千人くらいが標準になっておりましたが、その旧軍の一個師団比較しまして、現在の標準的な師団は、人員は九千師団でございますが、その火力——人力では半分以下でございますけれども、火力は逆に倍ちょっとになっております。九千師団を一にしまして旧陸軍は〇・四八という比較になります。それから機動力をあらわします車両の数は、現在の九千師団を一にいたしますと旧軍は〇・二、つまり五倍でございます。それから戦車、これは現在の九千師団を一にいたしますと旧陸軍は〇・八、戦車中身は違いますけれども、形式的に比較いたしますと一対〇・八という比較になりまして、二万数千人に対応します九千師団が、火力車両戦車等においていずれもすぐれておる、小型だけれども中身はすぐれているということが申し上げられると思います。  しかし、もともと侵略様相考えた場合に、侵略者のほうももちろん二十年前よりはずっと中身がすぐれておりますので、それにバランスをとって、いまのような火力ではなお不足である、したがって四次防ではそれをふやしていくというふうな考え方をとっておるわけでございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 十月の当初から行なわれた北海道根釧原野における自衛隊総合演習、これは旧軍の、言ってみれば北海道におけるところの演習規模の何層倍の規模でしたか。
  41. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) ちょっと手元資料がございませんので、具体的にお答えすることはちょっといまできませんが、御必要であれば調べまして、資料としてお届け申し上げたいと思いますが、お尋ねは、この北海道師団中心にして最近演習をやりました。毎年やっておりますけれども、その演習の……
  42. 和田静夫

  43. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 規模でございますか。——あの師団中心にしました演習をこの間やりました。いま資料がまいりましたので御説明申し上げます。  この間の七師団中心とします演習参加人員は九千百六十五人——九千人ちょっとでございます。それから車両が約二千でございます。それから航空機が、各種ヘリコプターを合わせまして約三十機でございます。車両の中でおもなものは、戦車が百十一、それから装甲車が約二百、その他がその他の車両になっております。そういった規模でございました。こういった規模でございますが、旧軍の師団との比較を申しますと、いろいろな規模があると思いますが、人員にしますと、先ほど申し上げましたように、旧一個師団というものは約二万三千人から四千人ぐらいでございますから、それを中心にしての師団演習がかつて行なわれたろうと思います。したがって、人員は半分以下。車両とか航空機等は、おそらく旧軍よりは多い規模であったろうと思われます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 人数では少なかったが、航空機その他においては大規模であった。  そこで、もう一つお聞きしますが、これには仮想敵がありましたか。根釧原野でやられた演習に仮想敵はございましたか。
  45. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 仮想敵は、演習でございますのでつくっております。先ほど申し上げました九千人ちょっとの人員の中で、いわば赤軍と白軍といいますか、甲軍と乙軍といってもよろしいわけですが、攻めるほうと、守るほうとに分かれまして、さっき申し上げました九千人のうちで中心になりました七師団及び統裁部——失礼しました。統裁部は除きまして、中心になります七師団が約五千人の人員でそれを迎え撃つ、仮想敵のほうが約二千人というふうな想定で演習をいたしております。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば仮想敵の二千人というのは、北のほうからの侵略が行なわれたということを想定された上で設定された規模である、こういうことですか。
  47. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) ある侵略者が一部の地域を占拠して作戦中であるというところから状況を始めております。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、そのある侵略者というものに仮想的なものを設定されたわけですか。特に一番、言ってみれば日本列島の東の端でやられたこの演習は、私が言うように北の国境線から侵略が行なわれるという想定ですか。
  49. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) この七師団演習は、師団演習という規模と、それから広い演習場が北海道の東部にしかないというふうなところから、いま申し上げたような規模のものを仮想敵も想定しながらやっております。しかし陸上自衛隊は、これは陸上自衛隊に限りませんけれども、北部でもやりますが、同時に西部のほうでもやっております。中部でもやっております。そういう場合に、一種の仮想敵、乙軍なら乙軍のほうからある地域侵略があったと、それで甲軍がそれを迎え撃つ、それは九州のほうでもやっておりますし、いろいろな地域、東北のほうでもやっております。たまたまこの七師団の場合は北海道師団でございますし、北海道演習場を使いまして、その付近のところに敵が作戦中である、それを迎え撃つという想定をつくったと、こういうことでございます。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 いま根釧原野の演習までを含んで近隣諸国との戦力の対比や旧軍との対比で一定の路線が出てきているのですが、これは私たちをして言わしめれば軍事大国である、こういうような方向への道であると述べることができると思うのですが、佐藤総理は国連演説を通じてそのことを否定された。しかしながら防衛庁長官としては、やはり私が言うようなことをいまの実証の上に立って肯定されると思うのですが、長官、いかがです。
  51. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の保有力から見まして、軍事大国などというものとは、およそかけ離れたものであると私は思います。ソ連のドブナ演習の映画を見ましたけれども、あのドブナ演習では、戦車だけでも約二千両ぐらい持ってきておりましたし、戦術核兵器を使ったり、そういうような様相、まああれが軍事大国の姿じゃないか、師団単位のその程度演習しか日本ではできない情勢なんでありまして、軍事大国とはほど遠い存在であります。しかも一番大事なことは、国の政治方針が平和国家として徹すると、そういう点に一番重点があるのでありまして、そしてそのために、防衛目的としてのみ存在し得るわが自衛隊演習という性格から見ましても、いま申し上げたことに間違いがないと私は思います。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 私が言いたかったのは次のことですが、いまのような長官のお考えならば、そして軍事大国への道を、現在もそうでないし、将来も歩まないと言われるのであれば、長官が沖縄に行かれて沖縄九十六万県民大衆から、言ってみれば総すかんを食って、アメリカの基地の中でしかお話が最初にはできない、こういう状態で、しかも一個師団以上の自衛隊を将来沖縄に持ってくるのだというあの発言に、屋良主席からは、沖縄県民大衆の意向を十分にしんしゃくをして、この機会に自衛隊を駐留させることはやめてくれという、言ってみれば意思表示、それは屋良主席御自身のお考えであって、九十六万県民大衆の考えは違う、その声なき県民の声を聞くのが政治家であると参議院の沖特委であなたは答弁されたようだが、それら一連の方向をこの機会に改められる考えはございませんか。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は沖縄に参りましたが、総すかんを食らったという事実はございません。非常に歓迎をされました。ただ、一部の赤旗の諸君が空港で、新聞では二千人とありましたけれども、琉球警察の調査では五百人くらいの方がおいでになって、非常に色彩に富んだ歓迎をしていただいたわけでございます。  それで、自衛隊をあそこへ派遣するという問題について、いろいろ私、人に会って聞いてみましたけれども、内心は自衛隊が来ていいというお考えのようです。それで、その後、琉球新報が世論調査をやりましたが、その結果を見ますと、六〇対二〇の割合で自衛隊が沖縄に来るのは当然である、そういう考えが非常に多数を占めておりました。これは地元の新聞が無作為でやった世論調査で、私は信憑性があると思うのです。それは当然のことであって、わが主権のもとに復帰すれば、日本国民で沖縄を守るということはわが国民の嵩高な義務であると私は思います。本土だけを日本人が守って、沖縄の防衛アメリカにまかしておくということは、これは独立国家としてのやり方でないと私は思うのです。そういう考えから、日本に復帰した場合には、われわれ共同の責任において沖縄を守るという意思表示をしたのでありまして、そういう考えは沖縄の人々にも受け入れられたと私は思うのであります。もっとも、沖縄の方々は自衛隊の実態までよく御存じありませんので、これからつとめて自衛隊の実態をお知りいただくようにわれわれも積極的に努力いたしてまいりたいと思いますが、声なき声は自衛隊を歓迎している、私はそう信じております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 まあ沖縄の県民の意思として選ばれた政府主席が正式にその意思を代表して、佐藤内閣防衛庁長官である中曽根さんに、自衛隊を持ってこないようにという意思表示をされた、そのことを無視して声なき声が自衛隊を歓迎しているなどという論法は、これは私は少なくとも成り立たないと思います。したがって、その代表された意思について、防衛庁長官はもっと謙虚であるべきである、こういうふうに思います。世論調査にしても、言ってみれば復帰後の経済開発というような問題、そういうものに対して九十六万県民大衆はたいへんなおののきを持っている。それらに対して佐藤内閣自身が明確な指針を与え、そういう条件というものが先行しなければならないということを、私はお忘れになっているのではないだろうか、こういうふうに思います。  そこで、次に移りますが、白書は、「市民としての自衛官」という項をつくられているわけです。これは七三ページでありますが、「自衛官のあり方の基本は、まず民主的社会における立派な市民であることである。自衛官は一般の市民と同質の存在であり、制服を着た市民である。民主社会において市民にとって価値の高いものは自衛官にとっても価値の高いものである。市民の持つ道徳基準は、同じように自衛官の持つべきものである。」、こう述べているわけです。そこで私は、中曽根防衛庁長官御自身がいわゆる三軍の将にふさわしく、ここにいわれる市民の持つ道徳的基準をきっちりと順守している、そういう自信を当然お持ちになっていらっしゃると思いますが、お持ちになっていらっしゃいましょうか。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう努力をしてまいりたいと思っております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、閣僚として政治家としての中曽根防衛庁長官個人をめぐる幾つかの問題について若干の質問をして終わりたいと思います。  あなたをめぐって、いまさまざまなうわさが流れていますが、あなた自身、公の場所でこれにお答えになるほうが私はよいと思って、そういう意味でこの問題を取り上げる。また今日、中曽根さんにとってもお答えになる必要が特にあろうと思いますので、以下のことを二、三申し上げたいと思います。  まず、先月の決算委員会で、中曽根さんの後援政治団体である山王経済研究会、新政治調査会、近代政治研究会が政治資金規正法第十二条に基づく収支報告義務を、四十三年度、四十四年度について所定の期日までに怠っていたことについて私は指摘し、木村官房副長官内閣を代表して、これについてまあ頭を下げられましたが、まず、この点について長官はどのように弁明されますか。
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はわれわれのほうの落ち度でございまして、遺憾の意を表する次第であります。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 あなたはかって新日本新聞なる新聞を名誉棄損で告訴されたことがございますが、そのときの調べの中で、山王経済研究会は、財界人三十人くらいが中曽根さんを後援するため、会費として毎月二十万円くらいを払っているという堤清二さんの証言と、それを認められた中曽根さんの発言、これがなされていますが、これが事実といたしますと、山王経済研究会の四十四年度上半期収入二百二十四万五千円というのはたいへん少ないように思われますが、この数字には間違いがございませんか。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 山王経済研究会というのは私の後援団体ではありません。あれは青年実業家が集まって研究会をやっているのでありまして、その研究会の方々が幹事をきめて会費を徴収してやっておるので、私の政治的後援団体という性格を持っておりません。したがって幾らお金を集めているか私は知りませんが、月に二十万円集めたとか、堤さんがそういうことを言ったとか、私は知りません。また私そういう話をしたこともありません。いま新日本新聞に関係しました私の言動が出ておりましたけれども、もしそういうことが出ておれば、それは事実と相違いたします。そういう事実はございません。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 最近、中曽根さんは拓大の理事長をおやめになりましたが、おやめになりました理由をお聞かせ願いたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、拓大の総長になりましたときに、前任者の指示で、私立大学というところは非常にむずかしいところで、総長は理事長を兼任したほうがよろしい、それが兼任しなかったところに、いままでの大学のお家騒動があった。そういう強いサゼスチョンがありまして——理事会が全員一致でそういう意見を持っておりました。私、その意見に従いまして理事長も兼任したわけです。それでいろいろと拓大の建設をやりまして、私はかなりそれは効果があったように思います。しかし最近防衛庁長官になりまして、非常に多忙にもなり、かつ世論も考慮いたしまして適任者にできるだけ早くそういう仕事は渡したい。学長についてもそうでありまして、学長については就任当初から学長を選んで、どなたかにやっていただきたいと思って非常に努力をいたしました。しかし、私立大学の場合は学長を選ぶということは非常にむずかしいことで、軽率にやると、またお家騒動が起きたりする危険性があるわけです。それで最も適任であるとしてお願いした方が病気でどうしてもなれないという事情もあって延び延びになってきたわけです。しかし、最近教授会その他において学長を選んでいい、そういう空気が出てまいりましたので、その空気をよく把握して学長も選んだわけです。次いで理事長も——私の忙しいことを皆さんもお知りになって、やむを得ない。そういうお考えに変わってきましたから、理事長も辞任さしていただいて、理事会で新しい理事長を選ぶと、そういう段階になったわけであります。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 私はここに、昭和四十五年四月二十五日付と五月二日付の、あなたと植田専務理事にあてられた阿竹仙之助理事の質問書並びに拓大理事会各理事、監事にあてられたところの質問書を持っております。これらを読んでみますと、一般市民社会の常識ではとても考えられないことが、あなたが総長をしておられる拓大においては起こっているようであります。阿竹理事の質問書によりますと、たいへん長いですが、要約してみますと、「学校は学生寮建設用地として、四十四年十月十四日、国分寺市にある松井建設KKの土地一千七坪を坪単価十万五千円、総額一億五百七十八万余千円で買収し、同年十一月中に全額を支払った。学校が、かかる高額な土地買収を行ったのは三十八年の八王子の土地買収量のことである。ところが、この土地買収に関して、四十四年十月、十一月、十二月の三回の定例理事会を通じて、また、その後明らかとなった諸事情からして、次の如き、重大な問題が伏在しているのではないかと、疑問を深めている次第である。以下、疑問点の概要を簡単に述べる。」となっていて、この一億をこえる土地買収が理事会の承認なしに行なわれたことが質問の第一、そして、その関係を取りつくろうために理事会の会議録の偽造が行なわれたことが第二などと、きわめて詳細に書かれているわけです。この点については、この質問者の内容というものは真実でしょうか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事実ではありません。その質問書は非常にゆがめられた質問書で作為的なものであります。それで理事会の承認を得たかどうかということは、拓大には寮がありますけれども、非常にきたなくて不衛生的なものでありますから、学校騒動等のああいうほかの大学の状況考えて、至急いい寮をつくってやろう、そういうことを理事会でもきめ、そして約千坪程度の土地を買うということも決定し、そして小平市にその土地がありましたから、その買収も理事会で正式に決定しましたところが、小平市のその土地が急に所有者の都合でだめになりまして、そして次の理事会で、八王子に拓大は四十万坪の土地を持っているから、いずれそこへ学部をつくる。八王子と茗荷谷の本学との間にひとつつくろう。そういうことも理事会で決定をいたしまして、それで担当理事がその場所をさがしておったところです。そこで、たまたま国分寺の土地がありまして、値段も手ごろであり、理事、監事が現場も検証し、そして値段についても——二つ土地がそのところにありましたが、あとでもう一つの土地が八万五千円だという話でありましたけれども、二つ並んでいた土地のうち拓大が買ったほうは間口が十四間、奥行きがたしか七十間。もう一つの土地は間口が十間、奥行きが七十間、ああいうところは道路に面した間口によって地価が非常に違うわけです。もう一つは、拓大が買った土地は隣の人たちとの間に下水をつける話し合いがつきまして、それがつくという条件で買ったわけです。もう一つの土地は下水を放水する場がない。したがって、片方の拓大の土地がそれよりも間口の関係と、もう一つは下水の処置の問題で、高くなるということは、あたりまえのことです。そういうことで若干高かったことはやむを得ない。理事会も、大体それを電話で知らせまして——というのは、私学振興会からお金を借りなければなりませんけれども、その期限が非常に接近しておって、いままで三回くらいにわたって延ばしてもらったことであるところから、そういうわけで担当理事が関係の各理事に電話でこれを買いたいということを話して、みんなが了承いたしましたので、手付が打たれたわけです。阿竹さんも電話で了承をしているわけです。それを、あとになってそういうことをいうことは、非常に心外にたえないことで、何か作為的なものをわれわれは感ずるわけです。そうして、いまその土地は時価が十三、四万円になっております、十万五千円で買ったものが。というのは、都市計画法の改正で、建蔽率がよくなるという見通しがあって、いま買っておいても決して損はないという考えに立って、その値段で買ったわけです。  それと、議事録を偽造したということは、全くそれは事実と相違していることで、そのときつくった議事録は新しい人間が議事録を書いたために間違って書いたわけです。それを発見して担当理事が直させたわけです。その直させたものは関係者にいつも次の理事会でそれを了承してもらって、判こを押してもらっておる。そういうことで次の理事会で説明をして阿竹理事も了承して判こを押しているわけです。したがって、理事会としては承知していることなんです。そういうことを、あとになっていろいろ言っているということは、はなはだ心外でありまして、何らかの意図に基づく行為であると、こう考えます。全くそれは事務的な手違いのあったことは事実でありますけれども、しかし、それが行なわれるについては電話で了承をとり、あるいは次の理事会で了承をとって、本人もちゃんと判こを押しておる、そういう事実があるのであります。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 さらに、この質問書を私が読んで疑問に思った点をもう一つ明らかにしておいてもらいたいんですが、この「学校が買収した一軒おいて隣りの土地は前田建設の所有地である。面積は七百七十余坪、間口が幾分狭い点を除けば、地形や、その他の条件も学校の買収地とほとんど変わらない」、言ってみれば、そういう主張をずっと並べておる。この理事会では松井建設の値段はすこぶる安いと説明されていたが、実情はそっちのほうが安いのである。こういうような理由が並べられまして、そうして「松井建設は土地所有者として、また値段も特に安く取り計らってくれた売り主として説明があった。吾々は、これを社会通念に従って理解していたが、登記謄本を見ると、松井建設の名前が出てくるのは四十四年十月十四日の、ただの一日だけである。この日は、また、学校が同社と契約を結び、手付金として一千万円を支払った日でもあった。だから松井建設は、同日、前の土地所有者の春日建設より同地を買収し、同日学校へ転売した」、こういうことになっておる。「松井建設は、実際上は、ただの一日だけの土地所有者であったわけである。これは高い地価と共に全く意外なことであった」、こういうふうに述べられておる。それで、私も登記謄本をとってみたら、一日どころか数時間といっていいくらいなんです、登記関係でいけば。売り買いの事実関係は間違いないようですが、なぜこの土地買収が何時間地主としての松井建設を介在させなければならなかったのかということは、部外者であるわれわれもたいへん異様に感じているんですが、何かわざわざ値をつり上げるために松井建設を介在させたとしか思えないような状態もありますが、この辺はどうなんですか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、松井建設が前の小平の土地——さっき申し上げた最初の土地についていろいろあっせんしてくれた相手であったわけです。それがだめになったので、松井建設にさがしてくれと頼んで、松井建設がほうぼうをさがしたわけです。こういうことは不動産関係ではときどきあるので、人の土地をさがし回ってみて、相手が買ってくれるということがわかった場合に、自分がそれを手に入れて転売する、そういう情勢で、松井建設の力でいまの下水の放流、そういうことが解決したわけなんです。そういうこともあって、松井建設は、いよいよ拓大が買うということがわかりましたから放棄して、そしてそれを拓大に転売したというので、もし拓大が買わなければそういうことは行なわれないでしょう。これは不動産業者にはよくあることで、むしろ松井建設が入らないで中間省略の登記でやる、そして同じ値段を出すというほうが不正があるだろうと思うのです。ちゃんと登記を経て、成規の手続を経て転売するというほうがむしろ正しいやり方であると私は思っております。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 実はこの質問の中で、長官からこの機会に答弁をしてもらったほうがいいと思った原因の一つは、質問者の中に玉置和郎さんという自由民主党に所属をされる議員の方もいらっしゃるわけですから、そういう意味で私は質問の要旨というものに対する信憑性を一つは考えて、部外者であることも原因の一つですが、それとの関連で、市川市香取の地番二百九の三、これを言うまでもなく中曽根さんの拓大における秘書をやっておられる渡辺秀雄さんの所有の土地、この抵当権の解除の問題がうわさにのってきています。この土地の登記簿を見ますと、八州物産株式会社、これは八州物産の役員名簿がありますが、渡辺さんが取締役をやられています。この八州物産株式会社の日本トレーニング株式会社を抵当権者とする抵当権は、いまの土地売買のあった翌月の十二月十二日に解除——それが払われれば解除になるのはあたりまえなんですが、拓大関係者からの私への訴えによりますと——これも長官、解明されておいたほうがいいと思うので聞くんですが、三井物産と八州物産との関係において、外国貿易関係の繊維部門において関係があった。その三井物産がみずからの債権を日本トレーニング株式会社に移譲した。そのときは八百万円であったのが、防衛庁長官というよりも、中曽根さんが中に入られて、三井物産との交渉が五百万円ということで、そして結果的には日本トレーニング株式会社に五百万を支払われたのは中曽根さん御自身である、こういうふうに訴えられているんです。この点については、これは真実ですか。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その事実は全くございません。私はいま初めてそういう話を聞いたので、人をおとしいれんがための話であると私は思います。  それから玉置さんのことは、秘書が不用意に判こを押したそうです。玉置さんは、それを見て驚いて私のところへ釈明に参りました。砂防会館の四階の私の部屋におたずねになって、私の不用意で申しわけない、私の意思に反しているということで参議院議員の玉置さんがおいでになりました。いまの八州物産、三井物産の話は全く関知しません。それは、ためにするためのうそだと私は思います。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 例の安生事件で二、三の質問をいたしますが、あれは何人の学生を結果的には処分されましたか。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか十人か十二、三人くらいの拓忍会の学生を退学処分にし、それから譴責が一人か二人あったと思います。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 そのうちの二人の方は、中曽根総長になられてから制度をつくられた、言ってみれば総長推薦の一年生の学生である。これは総長推薦制度の問題もありますが、かなり多くの方——国会議員から、あるいは選挙区の方々から頼まれて、総長でありますから、そういう制度があれば、言ってみれば裏口入学をさせる。この二人の方は正規の試験では落第されたのを救われたんだそうでありますが、ただ総長推薦の場合は、推薦基準があるのですが、その基準にはどうも該当していない人のようです。御自身がやられたかどうかわかりません、お忙しい人ですから。まわりの人がやられたと思いますが、ともあれ総長推薦ということになっております。この二人の方は総長推薦の学生であったことは間違いありませんか。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私立大学ではどの大学でもやっておりますが、官立大学と違っていろんな推薦制度があるわけです。支部推薦などもあります。各県の支部から何名と割り当てて入れてあげるという、そういう制度もありますし、あるいは学校推薦というのもございます。校長先生の内申を中心に入れているということもあります。総長推薦というのは、理事会の推薦というものを総長推薦という名前にしておるので、それは私が全部入れるわけではありません。各理事がいろいろ頼まれたり、あるいは適当であると思うもの、あるいは支部推薦で漏れた人たちを救う。どうしても各県支部の中でこれはやってくれと先輩から頼まれたようなもの、そういうものを救う場として理事会で認定してやっている制度になっているわけです。だから私の関係者ばかりを入れるというのではなくて、理事会の保有している推薦制度である。そういうふうにお考え願いたい。それでその総長推薦についての小委員会をつくりまして、そして基準を設けてやっておるわけです。合格点を取らない場合でも何点以内なら入れてあげる。そういう制度になっております。その二人の者はその基準に合致して入れられたものであります。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 そこで総長推薦で入られた二人が、言ってみれば拓忍会事件の中心——だれかに扇動されたかされないかは別として、であった。そういうものからくる推薦者としての総長自身の責任などというものについては、何かお考えになっておりますか。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、入れるまでは、入れるということについて理事会の推薦としての責任は持ちますけれども、入った学生がどういう行動をとるかということについては自由であります。あるいは剣道部に入ります。柔道部にも入りましょうし、あるいは空手部にも入りましょうし、同好会にも入りましょう。私は、その二人が拓忍会におるということは夢にも知らなかった。それはおそらく入学のときにいろいろ各部からの誘引運動がありまして、そして善意をもって入った学生だろうと思うのです。しかし、そういうような事態に巻き込まれたということは、まことに気の毒であったと思っております。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 中曽根総長は、ときどき「学生諸君に訴える」という毛筆の文書を学生全員に配っているそうです。私たち一年かかっても書けないうなたいへん達筆なものですが、その一つに、私は拓大を心から愛する、愛するがゆえに奉仕しようと思ってきたのであるから、一銭といえども報酬をいただいていないと、こう書かれているのです。これはほんとうでしょうか。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりです。ある新聞に、交際費が二十五万あるじゃないか、そういうことが書かれてありましたが、交際費が二十五万であるということを私は承知しておりません。交際費があることは知っておりますけれども、二十五万という額になっているかどうか私知りません。  それから、その交際費を私のために使ったということはありません。交際費は、その新聞記事が出ておりましたから調べさせましたけれども、たいてい大学委員会を開いて教授と打ち合わをするとか、今度はどういうふうに教授会を運営するとか、あるいは入学試験その他に対する打ち合わせ、そういう場合に使っておるのでありまして、私が私のために、あるいは政治活動のために使ったことは一切ありません。自動車の場合といえども、自分のガソリン代で全部やっておるのであります。むしろ私にとっては持ち出しのほうが多いわけです。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 私の調査でもその二十五万がやはり問題になっている。二十五万という金額は防衛庁長官としてはたいした金額ではありまんが、問題は出されている文書との関係であります。中曽根さんのためにお使いになっていないと言われますが、これは若干調べてみたんですが——学生のために使うというような形で設置された交際費といわれるが、ところが、支払い先を若干調べてみますと、新橋の喜久屋、どんなところか知りません。大和銀行から一年四カ月の間に二十四回支払われた。それから六本木の胡蝶、これは三菱銀行。赤坂の松原、東海銀行。銀座の梨枝、神楽坂のハナムラ、とてもわれわれ知りもしないところですが、こういうところに、これは銀行を通して払われておりますから明確であります。学生のために使う、あるいはいま言われたような形で学校運営などのために使う——これが、こういう場所で行なわれて、使われた、こういうことですかね。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は喜久屋とか、そういうところへ行ったことはありません。私がいま知っている限りでは、松原というところで学部長との会合をやったり、あるいは理事会の会合をやったりしたことはございます。しかし、それらはおそらく——交際費と言われるが、いまの支出の名前を聞いてみますれば、それは私の交際費の費目にあたるお金ではなくて、理事会でいろいろ集まったり、あるいはいろいろな打ち合わせのとき使ったものだろうと思うんです。私の交際費というものは私に関係することで行なわれるべきであって、私の知らないところでありますから、それは何か費目か何かがあるいは違っているんじゃないですか。おそらくそれは、政党では会議費とか何かに入るべきお金だろうと思っております。私に関する限り、お金はびた一文拓大からもらったりしていることはありません。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 以上たいへんこまかい問題まであげつらいましたが、これらの問題は、実際問題として、拓大の総長、理事長、学長であった中曽根さん、そしてすでに学長、理事長をやめられた、それをめぐっていろいろ訴えられていることでもあります。きょうのやりとりを通じて、中曽根さんのいわゆる考え方というものが明らかになったのでありますが、ともあれ、中曽根さん自身は私もいつか申し上げましたが、一定国民に対する期待感、イメージを持たされている、そういう意味ではすぐれた一定政治家の一人なんですから、私は、こういう疑惑が生じておる原因になっているところのものを、 いまのやりとりを通じて、片手間に総長をやられるなんというのは不適当だという政務次官のお答えもあったわけで、この機会に私は、拓大の総長をおやめになったほうがよいのではないかと思います。市民としての道徳基準という防衛白書自衛官に対する部分を読みながら、その点に傷がつくような条件をお持ちになっているということは好ましいことでないのではないか。そういうような意味から手本を示す意味でも、私の期待にこたえられるほうがよろしいのではないか、こう思うんですが、いかがですか。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、私立大学というところは非常に複雑なところでありまして、先輩間に非常な派閥争いや勢力争いがある。これは早稲田大学の場合でも一部新聞に出たことがございます。各私立大学にはみんなそういう問題が内包している。私立大学の弊風であると私は思います。そういう勢力争いや派閥争いの飛ばっちりを受けた、そういう——私に言わしめれば責任のない、事実無根のようなことをこの機会に質問されることは、私は非常に迷惑いたします。私は、天地神明に誓って、拓大に関して悪いことをしているとは思いません。責任を持って自分がやっていることです。特に現代の政治家に一番大事なことは教育だと思っております。いろいろな経済問題もありましょうし、公害問題もありましょうが、学生を育てる、日本の若者を育てるくらい政治家にとって大事なことはないと私は思っております。たまたま矢部先生が拓大の総長をし、そうしておなくなりになり、その後継者難というところから矢部先生のゆかりの方たちが総長になれと言う、大学の事務については迷惑をかけないから——そういうお話でありましたので総長を引き受けました。私としてはできるだけの時間をさいて、ほとんど全力を注いでというくらいの情熱を持って拓大の教育にいままで当たってきたわけです。もちろん浅学非才でございますから万全なものではございませんけれども、自分としては誠意とベストを尽くしてきたつもりです。それが、いまのような質問をされるということは、はなはだ心外なんです。今日の政治家にとって一番大事なことは若者を育てるということなんで、そういう情熱と信念に燃えてやっているのです。私の進退については、これは私が決するところであります。私は自分の確信は曲げません。この情熱と信念、そして拓大を愛しているということで、だれが何と言おうと私は自分の確信に立ってやっていきたいと思っているのであります。すべてこれは私の所信に従ってやるということでお答えにかえさせていただきたいと思います。  特に、私立大学というところは、非常に怪文書や何かが回って、学友会長の争奪戦であるとか、理事の争奪戦であるとか、そういうことがひんぴんと行なわれて、そういうシーズンになると、いろんな中傷や何かがうず巻く世界であります。私は行ってみて非常に驚きました。官立大学にはないことであります。そういういままでの弊風を断とうと思って——特に拓大の内部には右翼的な先輩の集団があります。そういう右翼的な先輩の集団が拓忍会の学生なんかに影響を与えて、ああいう悲劇を起こした事実も否定できない。いま御質問の内容を聞いていますと、何らかそういう牽連関係があるのではないか、その御質問をあなたに頼んだ人は。そういう疑惑を私は持ちます。私は、拓大のそういう右翼暴力大学というイメージを消そうと思って、一部のそういうOBの右側の方たちと戦っているわけです、正直に言って。したがって、公の席上にまでそういうことを持ち出すということは、私ははなはだ遺憾に思っている次第でございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 質問がたいへん迷惑だと言われるから私は言わざるを得ないが、きょうの質問はこういう質問です。私が前に文部大臣質問をしたのは、あなたがとられた拓大における監視制度、あるいはいまなお続いていると言われるところのカメラによるところの学生に対する行動の監視などというのは、明確に私は憲法違反だと思っております。教育に対する情熱というものは私は評価しております。したがってこの前も、決算委員会でも、教育に対する情熱がおありになるならば、憲法違反——憲法九十九条に該当するような形では、国務大臣をおやめになりなさい。そうして総長や学長や理事長を続けられ、あなたの理想を達せられたらいいじゃないですか。私はそう思います。迷惑と言われるからそう言います。しかし少なくともこの中にも事実である部分があるわけですね。二人の方があなたの推薦で入られた学生であった事実はあるわけですから。したがって事実のものは事実、うそのものはうそと、あなたがどこかで明らかにされる機会をお持ちになる、そのことはあなたにとって大切なことだ、私はこういうふうに思ったから申し上げたわけで、そのことだけは申し上げておきたいと思います。
  81. 西村関一

    ○西村関一君 中曽根防衛庁長官が過般アメリカ合衆国を訪問されましてレアード国防長官にお会いになり、いろいろ胸襟を開いてお話しになったようでございます。その際、アメリカ日本における基地の返還についてお話があったように思います。また、その結果だろうと思いますが、逐次返還されつつあるようであります。そのお話し合いをなさるということは当然なことでありますし、また、日本をめぐる防衛は、安保条約、安保体制下にあるところの自主防衛、自主防衛を主とし安保体制を従とするというお考えをしばしば承っておるわけでございます。そういうお考えのもとでアメリカの国防の責任者であるレアード長官との話し合いの内容、そういう点についてこの機会に、新聞等につきましてはいろいろ報道されておりますけれども、委員会においてお聞かせをいただければ幸いと思います。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レアード国防長官にお会いする目的は、アメリカがニクソン・ドクトリンを発表いたしまして、アメリカ極東政策も変化がありますし、どういう展望を持っておられるか、また、われわれは、安保自動延長後は自主防衛中心にしてものを考えてきているので、そのわれわれの考え方も先方によく認識させる必要もあります。それから、いままで大体防衛関係アメリカとの連絡というのは、日本の制服が話し合いに参りまして、太平洋軍司令部あたりに行って話してきたのが中心であります。それではいけない、やはり国民に責任を持つ国民代表である政治家が直接話し合って防衛問題の一番大事な点を了解し合う、また、要望し合う。私は、東京−ホノルル間の事務レベルのラインを東京−ワシントン間の政治レベルのラインに変えるのだ、そう申しましたけれども、それがシビリアン・コントロールの一番大事な点である、そう考えましてレアード国防長官と話をしたのが事実であります。  それで、第一の私の考えは、両方の防衛当局の責任者同士で定期会談をやろう。また、日米安全保障条約の安保協議委員会の構成メンバーは、こちらが外務大臣防衛庁長官であるのに対して、先方はアメリカの大使と太平洋軍司令官、そういう官僚と申しますか、役人を相手に話を進めるものだけではいけない、少なくとも向こうの政治家も入ってこなければいけない。そういう意味で、その構成を変えたいと思っておったわけです。そういう話もした。また、在日米軍基地の整理統合も促進すべきである。そういう考えを持ちましたから、実情をわれわれは相手方に話し、また相手方の考えも聞き、両方合意の上で、段階的に在日米軍基地を整理していく。特に次の防衛計画を実施する段階になると、私はアメリカの軍隊がそう常時日本にいつまでもおる必要はないと思っておるわけですけれども、必要な部分だけを置いて、あとは自衛隊日本の本土を常に守るという体制に持っていきたい。そういう話し合いもしたくて行ってきたわけでございます。
  83. 西村関一

    ○西村関一君 中曽根さんがそういう端緒を開かれて、アメリカの国防の責任者と日本の国防の責任者がじかに会って話し合いをするということを初めてやられたということにつきましては、私は中身の問題は別といたしまして、その意図せられるところと、御努力に対して敬意を表するものでございます。私は野党の一員でございますけれども、野党の側から申しましても、日本防衛の問題を考える場合に、アメリカの国防省の責任ある人たちと話をするということも必要ではないかというぐらいに考えているんです。私自身は、かつてワシントンを訪問いたしましたときに、ペンタゴンに参りまして、大体実際に責任を持っておりますところのディピーティーセクレタリーの諸君と会って話をしたこともあるんでございます。そういう意味におきまして、党の立場は別といたしまして私自身は、中曽根さんのそういう態度に対して敬意を表するにやぶさかでないものでございます。そのお話し合いの結果、沖縄の防衛問題について沖縄返還後日本政府のとるべき態度は、防衛庁としてどのようにあるべきかということについてお話し合いはございませんでしたか。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 話し合いはございました。私は、沖縄返還と同時に、自衛隊を進出させて沖縄防衛役割りを果たさせたい。そうして事務的には、防衛局長とカーチス米海軍中将との間にその事務が進んでおりまして、いまその話し合いが順調に進んでいることを自分は喜んでいる。そして、それと同時に、返還の際には、アメリカの米軍基地と民政府と入り組んでいるようなところはできるだけ整理して、沖縄の県民に返してもらいたい。それが、アメリカが今後沖縄において県民の支持を得る非常に大事な要素になる。そういうことも強く要望してきたわけでございます。
  85. 西村関一

    ○西村関一君 中曽根長官は、去る十月二十一日の本院沖縄・北方問題特別委員会の場におきまして次のように答えておられるのであります。返還後は陸上千百人、海上七百人、航空千四百人、計三千二百人を配備する、四次防中にはその二倍を配備することが必要であるという答弁をしておられるのでございますが、それを現在の時点においても確認してよろしゅうございますか。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 目下そういう計画でございまして、先方とも話し合っておる次第でございます。
  87. 西村関一

    ○西村関一君 そのような計画のもとに進めておられるということでございますが、米軍の肩がわりのために今後自衛隊の配備がより強化増大していくんじゃないかということを心配するわけでございますが、その点はどうでございましょうか。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖縄におきましては、日本の主権に復帰すれば、当然日本国民で本土と同じに沖縄も防衛する責任がわれわれにあると思います。そういう意味自衛隊が進出することは当然のわれわれの責任であると考えておりますが、当面われわれが考えておりますのは、若干の陸上警備力、それから施設力——それはいろいろ校庭の整備とか、道路の整備とか、台風の際の災害とか、そういうことも考えまして、若干の施設力、それから防空能力、さらに沖縄近海における海上警備力、そういう必要最小限のものを配置しよう。現在のところは、防空関係におきましてレーダーサイトの引き継ぎ、あるいはナイキ、ホークの日本に対する引き継ぎ等について若干時間がかかります。これは特に航空自衛隊において要員が不足のためにすぐ引き継ぐわけにまいりません。それに若干時間をかげながら逐次われわれのほうへ引き継いでいく。そういう計画のもとに、当初は三千二百人ぐらいでありますが、終わりごろになれば六千人ぐらいになる。そういう計画でおるわけであります。
  89. 西村関一

    ○西村関一君 いま計画しておられますところの新防衛力整備計画、いわゆる四次防の中身の一つの重大な、大きな柱は沖縄の問題にあるというふうに考えられるのでございますが、この新防衛力整備計画の内容でございますが、立案の趣旨につきましては「長期的な展望のもとに」ということがうたわれております。特に新防衛力整備計画というふうに「新」ということばがついておりますのは、いままでの一次防、二次防、三次防と比べて、どういうところに「新」ということばをつけられる特色があるのでございましょうか。四次防は、いままでの防衛力整備計画と比べてどういう点に特色があるのか、その点をお伺いいたします。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは心がまえを「新」という形で出したのでございまして、いままでは安保条約の十年の固定期限内でございましたが、六月二十三日以降は自動継続されまして、双方とも一年の予告でいつでもやめられる体制になったわけであります。そういうふうにして日本防衛に関するわれわれの責任がいままでよりもさらに加重されてきておる、そういう意識の上に立って「新」ということばを使ったのでございます。
  91. 西村関一

    ○西村関一君 長期展望の点に立ってということでございますが、五カ年計画の上でどれくらいの年数をかけてお考えになっておられるか。アメリカあたりでいっておりますところのいわゆるローリング・システムというような考え方に立っておられるようにも思われるのでございまするが、どのくらいの展望を持ってこの計画をお立てになっていらっしゃいますか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) マクナマラがやりましたローリング・システムというのは、われわれの考えでは、アメリカのようにもうすでにいろいろな兵力が整備されて、それが大体更新されているという段階ではローリング・システムも妥当性があるように思うのです。五カ年計画をつくりましても、毎年毎年修正をしながら、常に新しい五カ年計画が毎年毎年、一年ずつ延びていくという、そういう形になります。しかし、日本の場合には、やはり五カ年計画でこの程度のものをまずつくりますという概貌を国民の皆さまにお知らせして、そして毎年度の努力はこうです、そういうふろしきの中身全体をお示しするということが日本の場合では必要である。なぜなれば、必要な兵力というものがまだ概成されていないわけであります。アメリカの場合はもうすでにワンセットそろっていて、それをどう更新していくかという性格を持っている。そういう点において、日本アメリカ性格の相違がございます。そういう考え方に立って一応十カ年ぐらいの前途を頭に描きながら、五カ年というものを国民の皆さまにお示しする、そういう考えで五カ年計画をつくっておるわけでございます。
  93. 西村関一

    ○西村関一君 そのようなお考えのもとで、中曽根さんがいつも言っておられます国防の基本方針というものとの関連において抵触するようなことがございませんですか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 抵触するとは考えられません。国防の基本方針は非常に弾力的な表現になっております。ですから、いまわれわれが次の防衛計画を行なうという場合に、内容自体はそれほど抵触するとは思いませんけれども、しかし、安保条約が自動継続になって、日本の客観情勢が異なって、また、日本の軍事大国とか軍国主義ということが海外から警戒されておるという、この事実を踏まえて、そういう誤解を払拭するというような努力を国防の基本方針においてもしたほうがよい、無用な誤解は避けたほうが賢明だ、そういう気持ちも私にありまして、国防の基本方針は改定したほうがいいと思っております。いままで私が国会で言明してきた線に沿って手続を慎重に進めながら改定していきたいと思っております。
  95. 西村関一

    ○西村関一君 いまお答えになりましたような点について、私もただしてみたいと思ったのです。そういう心配はない、あくまでも従来から言明している線に沿うて計画を進めていきたいということでございます。十年の長い期間にわたっての展望に立った国防計画をしていくという考え方の中に、勢い、どうしても軍事大国という線にすべり込んでいくんじゃないかという心配がされるので、あえてそういうことを伺ったのでございますが、何と申しましても、常に主張しておられますような自主防衛の五原則つまり憲法を守り国土防衛に徹する、外交と一体の立場に立って、同時に、諸国策の調和を保っていくという趣旨——いつも言っておられるところでございますが、そのことと、長期展望に立って防衛計画を整備してどこまでも進んでいこう、強化拡大していこうというような線につながる防衛計画に対して、こういう自主防衛基本方針というものとのからみ合いですね。その点も自分は十分に心得ておるという御答弁でございますが、そういう点について諸外国、特にアジアの諸外国は、日本が軍事大国になるんじゃないか、なりつつあるんじゃないかということをすでに言っておりますし、そういう心配もされておるのでございます。かつての日本の暗い過去がございますから、そういう疑惑を持つことも一面無理からぬことだと思いますし、そういう点に対して、防衛の責任者であるところの中曽根長官が解明をしていかれることが必要だと思うのです。その点いかがでございますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の新防衛計画の五兆二千億という数字がいろいろ論議を呼んでおるようでありますが、いままで各国のしてきた防衛努力を調べてみますと、たとえば、過去十カ年間——一九六一年から一九七〇年までに英国が国防費として使ったお金が約十七兆八千億円です。それからドイツが十五兆九千億円です。それからフランスが十三兆三千億円です。日本は三兆四千億円です。日本日本独特の位置や国柄がございますから、何も英独仏のまねをする必要はございませんが、概数で申し上げると、十七兆、十五兆、十三兆に対して日本は三兆という程度であります。そこで、一億の国民でこれだけ経済的にも繁栄している国家を守っていくということを考えてみますと、若干のお金はやはり出して守らなければいけない。いままでの過去の防衛努力はわりあいに時間をかけてやってきておりますが、今日この程度では適当と思われるスケールまでいっておりません。そこで、やはりある程度時間をかけつつ、この程度で一応いいというスケールまで到達して、それから横ばいとか、あるいは更新をしていくという形になっていくだろうと思うのです。それでスケールというのは、いわゆる通常兵器による限定戦に対して、北海道から沖縄まで自分で守るという、そういう形のものに整えていきたいという考えに立っておるわけでございます。  それで、諸国策との調和というものを考えてみますと、われわれのほうは、ベースアップを除いて残りが五兆二千億円に一応内定しておるわけでございますが、道路計画では十兆三千億円、約倍です。それから国鉄の計画を見ますと、新経済社会発展計画におきましては約五兆五千億円ぐらいだと思います。   〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕 それから郵政関係——電信電話関係が五兆二千億円程度であります。そういうことを考えてみますと、防衛努力に五兆二千億程度使っても、それほど過大ではないんじゃないか。国鉄よりも少ないし、電信電話と、同じぐらいで、国家の存立を守るという基本的なファンクションを維持していくために、その程度のものは国民にもお認め願えるのではないか、そういう気持ちがしておるわけでございます。
  97. 西村関一

    ○西村関一君 いま道路や国鉄やその他の予算の伸び、計算の伸び等と関連してお話がございましたが、何と申しましても、五兆二千億、これは人件費のベースアップを含めて五兆八千億くらいになるかと思いますが、それだけのものがずっと進んでまいりますと、完成いたしました暁におきましては、現存十一番目ぐらいの状態が、米・ソ・仏・英・西独・中国に次ぐところの第七位くらいになる。そういう予算の面から申します順位からいたしますと、これはかなり大きなものになるというふうに考えられるのでございます。この防衛費の占める割合は、これは比率から申しますと、非常に大きなものになるということを言わざるを得ないんでございます。そういうことに対しまして、いつも言っておられますところの社会保障とか、教育とか、民生関係の予算を圧迫するというような心配はございませんですか。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、われわれも一番関心を持ち、戒心している点でございますが、新経済社会発展計画におきまする社会保障の伸び、あるいは教育研究費の伸び、こういう点も実はいろいろ調査させてみておるんです。しかし、的確な数字がまだ出てきておりません。そこで、下水道はわかっておりまが、これは二兆六千億円ぐらい。あとは国鉄、電電、道路というようなもの、あとは港湾。それから空港整備、そういういろいろな形を見てみますと、国家の存立を守るというこの防衛に五兆千億円程度ならばまあまあではないか。おそらく社会保障や教育研究費はかなり伸びるであろう。そういう予測を持っておりまして、まずまず妥当な線ではないかと考えておる次第であります。
  99. 西村関一

    ○西村関一君 GNPに対する国防費の比率の問題ですが、やはり一%程度というところをめどにしておられますが、相当大きな金額になると思いますが、いかがでしょうか。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ラフなエスティメートでありますが、大体この間に、次の防衛計画の五カ年間に六百数十兆のGNPになります。その中の五兆二千億という数字は〇・九%から一%の間ぐらいであります。それで、数字的に見ましてもまあまあの線ではないかと、そう思っております。
  101. 西村関一

    ○西村関一君 金額の数字の問題もさることでございますが、中身の問題につきまして、今度の新防衛整備計画中身の問題ですが、先ほど来も少しお話がございましたように、海空の自衛力を漸増していくという計画のようでございますが、これはいままでも言っておられるとおりでございまして、あまり新味がないと思うんです。あえてその新防衛整備計画とうたっておられますことが、さきの質問に戻りますけれども、従来とあまり変わらない、何ら新味が出ていないというふうに思う。それから長期展望に立つという点は、いま言われたとおりであります。そういう点について、もう少しく中身の御説明をいただければいいと思うんですが、いかがですか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛力の漸増につきましては、われわれも非常に注意をして慎重に考えておるつもりでございます。それで、大体陸上については十八万体制で大体よさそうだと。あとは火力あるいは機動力を整備していく。まあ集中と機動力ということを非常に考えておるわけでございます。そして、空については九百何十機という、その数量は大体これでよろしい。しかし、機種を変えて質を高めていくということを考えておるわけでございます。  それから海については、非常にこれは足りない。それでようやく基幹単位ができたという程度でありまして、海のほうをかなり力を入れて追いつく必要がある、そう考えております。それで、新ということばは、これは先ほど申し上げましたように、自動継続になって一年の予告でいつでもやめられるという、そういう体制は、過去の体制と違いますから、われわれ防衛庁自衛官に対する心がまえ、そういう意味も含めまして新ということばを使ったたわけです。気がまえの問題でございます。
  103. 西村関一

    ○西村関一君 私も、防衛白書を読ませていただきましたし、またあなたの「日本防衛」の発刊にあたっての長官談話というものを読ましていただいて、中にはずいぶん高邁な防衛に関する理想といいましょうか、理念といいましょうか、そういうものが盛られておると思うんです。一口に申しましてですね、あなたの防衛に関するところの理念、哲学、そういうものをこの中からくみ取ることができると思うんでございますが、一口に申しまして、どういうことに要約されるとお考えですか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛とは、国民の合意による平和維持行為であります。そういうことであります。
  105. 西村関一

    ○西村関一君 国民の合意によるということは、どういう方法をもって国民の合意を得ていくか、これはまあいろいろあると思いますけれども、つまり国民が納得のいくような形において国を守っていくということだと思いますが、そういうことに対するあなたのお考えをもう少し突っ込んで聞かしていただきたいと思います。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いかに武器を整備しても、国民がその気持ちにならなければそれは全く無にひとしいものであり、残骸にすぎないわけであります。やはり国民が国を守る、あるいは国を守るということを支持する、そういう合意をつくって、その上に防衛というものが成り立つ。そういうことをいかに機構的に保障していくか、これが一般民主主義体制であり、それがまた文民統制ということになると思うんです。したがって、この民主主義体制及び文民統制ということを厳密に確立して、そして国民の支持と合意をその起点として、そうして自衛隊を建設し、自衛隊を管理していく、そういう観念にまた自衛隊員を徹せさせるということが必要であると思うんです。
  107. 西村関一

    ○西村関一君 あなたはこの文書の中で、国際情勢の分析をしておられる。わが国をめぐるところの国際情勢を見れば、非武装中立ということは非現実的なものである、これは現実に即さないものであるということばが見受けられる。社会党が御承知のとおり非武装中立の外交政策防衛政策をとっておることは御存じのとおりであります。まっこうからこれに挑戦しておられるというふうに受け取れるんでございますが、そういう考え方国民の中にある、非武装中立は非現実的であるという考えもあるということは承知しております。われわれも、われわれの立場を強く国民に訴えていかなければならぬと思います。そういう点について、あくまでも非武装中立ということは、非現実的だというふうにお考えになりますか。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は非現実的であると思います。現在の国際情勢を見ますと、あの米ソのような超強大国にいたしましても、集団の保障の中におりますし、そうでない中立を維持している国、非同盟を維持している国というのはみんな防衛力を持ち、戦闘力を持ち、軍隊を維持して、中立を維持しているわけです。したがって、中立ということはいろいろありますけれども、非武装と中立が結びついたという国は、少なくとも中級国家以上の国にはないのです。そういう世界の現実を見てみますと、各国ともみんなそういう分析を行ない、関心を持ち、おのおのの国の存立をはかっていくために国策を確立し、徹底し、遂行しているのでありまして、そういう体制を見ましても、非武装と中立と両方が結びついたことを一緒にやるということは、国際情勢から見ても現実的でない、そう思うわけです。
  109. 西村関一

    ○西村関一君 そうなりますというと、非武装ということの中身の問題になるんです。日本憲法の精神からいうならば非武装、それは自衛の手段を持つということではないのだ、それと、非武装であっても自衛の手段は持つべきだということとに結びつく論議になるかと思いますけれども、日本憲法の精神は、あくまでも非武装であるということには変わりがないと思うのです。そういう精神に立つ、それがやはり限りない軍備拡張の歯どめになっているというふうに考えるのでございます。われわれが言っておりますところの非武装ということも、そういうまる裸になって、全然何らの国を守る力を持たないということではないのです。それにかわるところのものを——武力よりは国民の道義心に訴えていく、また同時に、外交優先の立場に立って、日本の国を守っていこうというところに重点を置いているということなんでございます。そういう点に対して、まっこうから、そういう考え方が間違いだというふうにきめつけられることに対しまして——ほかの点についてはかなり傾聴に値する文章でございますけれども、そうまっこうからきめつけられるということに対して、これは自衛隊の立場を強調せられるあまりに、そういうことを言われるのだと思いますけれども、そういう外交優先ということについて——あなたが外交によるところの成果というものを、もっと強く高く評価していくという点につきまして、あるいはまた国民の合意を得るということの中には、国民の道義的精神を高く評価するという点につきまして、どういうふうに考えておられますか。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現代におきましては、第二次大戦あるいは第二次大戦前と様相は非常に変わってまいりまして、特に、日本のように専守防衛という考え方に立っておる国にとりましては、外交が非常に重要な要素を占める。そうして国際平和を確立する、国際紛争を平和裏に国際協力によって鎮圧していく、そうして戦争をなくしていく、そういう国際的努力が非常に重要な価値を持つ時代に入っておる、そう認識しております。ですから、防衛庁長官談話の中にも、日本の場合には外交がくずれれば防衛の半分は失われる。そうして国民の協力が得られなければ、防衛のすべてが存在しないということを書いておるわけであります。私は、この考えは変わっておりませんし、今後もそういう認識を持ってやっていくつもりなのであります。しかし、必要最小限の防衛力だけは持っておる必要がある。これもまた私の信念であります。しかし、その必要最小限の防衛力というものは表に出したり、ちらつかせたりすべきものではない。最後の保障として国民が持っておるべきものである。そういう認識に立ちまして平和外交、平和政策中心に打ち出しながらやっていかなければならぬと考えておるわけであります。
  111. 西村関一

    ○西村関一君 私は、時間がありませんので、防衛論争を繰り返し、あなたと論議をかわそうとは思いませんが、いまお話になりましたような外交の成果というものを高く評価するという見地に立ちまして、国連というものをどういうふうにお考えになっておられるか、国連の平和維持機構というものを強化するということにつきましては、どうお考えになっておられるか。それからまた、国連のセキュリティーパワー、これは国連憲章の改正の問題にもからんでまいりますけれども、そういうものを強化していくことによって、世界の平和を維持していこうという動きがあることは御承知のとおりでございます。つまりいまの米ソの両大国が力の均衡によるところで平和を保っていこうというような考え方は、もはや成り立たなくなったという現状におきまして、国連を強化する、国連の中においてお互いに平和を保っていこうという機能を強化していく、こういう考え方が進められておるということは御存じのとおりだと思います。そういう点につきまして、どうお考えになりますか。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国連は非常に重要な場所であると思います。米ソのような核を持っておる国が世界の前で話し合う、あるいは公約する、そういう場所が国連であります。そうして世界中の国々の国民が平和に関心を持ち、平和を達成していこうという協力行為が果たされるのは国連であります。日本のような国是の国にとっては、そういう面からも国連が着々と実績をあげて、そうして平和を維持していくという実績を積み上げていく、それに積極的に協力する必要があると私は思います。国連が、そういう意味で、ある程度統制力と実力をたくわえながら、世界平和について積極的に役割りを果たしていくということは、これからわれわれが国連問題について考えなければならない一つの重要ポイントであると思っております。
  113. 西村関一

    ○西村関一君 また、あなたはいままでの国会答弁の中におきまして、自衛隊の場は、国民教育の場であるということを言っておられるのであります。それはどういう意味でございましょうか。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊に入ってきました人の社会へ出てからの、いろいろな評判を聞いてみますと、幸いなことには自衛隊出は非常によろしい、信義もあるし、態度もりっぱでよろしい。そういうふうに歓迎されておる声を所々に聞きます。私は、そういう意味において、一つの国民教育としての機能も果たしておると思うのです。自衛隊を単に防衛の戦技を練習する、そういうところだけと考えないで、国民教育にもまた間接的には貢献している場所である。そういう観点に立って自衛官を大事にして、教育的な面についても力を入れて、市民としてもりっぱな市民を社会に送り出すという努力も自衛隊はしたらいいと、そう考えておるわけであります。
  115. 西村関一

    ○西村関一君 あなたは、ときどき自衛官と寝食をともにしながら若い者の声を聞いたり、その生活、訓練の実際に触れておられるということも聞いておるのでございます。あなたがそういう考え方のもとに実際にやっておられるということは、たいへんけっこうだと思いますが、自衛隊国民教育の一つの場であるということからであろうと思いますが、そのように今後進めていかれる上において、若い自衛官をどういう理念に立って、自分がその使命を果たしておるかということについての考え方の基本、そういうものを、はたして、どこに与えていくか、つまり自衛官の心がまえの問題ですが、それは国を守る気概を持てというようなことでは成り立たぬと思いますのです。そういう点につきましては、どういう考え方のもとに国民教育の場であるという立場を具体的に教育しておられるのか。
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「自衛官の心がまえ」というものをつくってありまして、それに基づいて自衛官を指導しておるわけでございます。それが教育の基本的な精神になっておるわけでございます。あとで資料としてお手元に差し上げたいと思います。
  117. 西村関一

    ○西村関一君 もう時間がありませんので、私は次の委員に席を譲らなければならぬのですが、自衛隊の違憲、合憲の問題につきましては、まだ裁判にかかっている問題でありますし、あくまで合憲という立場で、防衛庁長官としての計画を進めておられるのは当然だと思いますが、いずれにいたしましても、これだけの国費を使い、また予算を増強しながら国防の目的を達していこうということでございますが、そういうことの精神的な基盤というものがやはりこわれると思うのでございます。そういう点につきましては、またあらためていろいろ伺いたいと思います。  本日は、この程度質問を終わらせていただきます。
  118. 渡辺武

    渡辺武君 先ごろ防衛白書が発表されましたが、この白書発表の際の長官談話の中に、次のようなことが書かれております。「われわれは、相互安全保障上の日米協力の責任と限界を明確にし、」云々ということばが書かれておりますが、去る十月二十八日の衆議院内閣委員会で、この責任と限界とは何かという質問に対して、長官は、アメリカ限界としてはいわゆる極東の範囲というものをあげられました。そして条約できめられている限界をこの法規どおり守り、言うべきことは言って安受け合いしないことが大切だ、というような趣旨のことを述べていらっしゃいますが、この立場はいまもお変わりになっていないかどうか、まず、その点を伺いたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変わっておりません。
  120. 渡辺武

    渡辺武君 私がこれから長官にいろいろ質問することは、すでにこの参議院の内閣委員会でわが党の岩間議員その他が若干質問しておりますけれども、その質問に対する長官答弁に不明確な点がありますので、私はその点をただいまから伺ってみたいと思っております。  御承知のように、現在、沖縄にはアメリカ軍のいわゆる中央管理施設なるものが置かれております。これは今年二月十六日のアメリカ下院でのリーサー米陸軍長官の狂言で明らかなように、太平洋全域を活動範囲としている兵たん管理施設だということになっております。また、沖縄にはアメリカ軍の第一海兵緊急派遣部隊、これがおりますけれども、これまた、チャップマン米海兵隊総司令官の本年三月十一日のアメリカ下院軍事委員会での証言、それからまた、サイミントン委員会でのランパート高等弁務官の提出資料などによって明らかなように、常に太平洋全域に対する戦闘即応態勢にある部隊でもるということになっております。御存じのとおり、わが党は日米安保条約の廃棄、これを主張しております。沖縄については、核も基地もない沖縄の即時返還ということを主張しておりますけれども、しかし、いま申し上げたような部隊は、安保堅持の立場に立っている政府としても、その任務範囲が極東の範囲を越えるので、沖縄返還の際には、これを残して安保条約下に持ち込むことは許されないというふうに思いますけれども、この点どのようにお考えか。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在はアメリカの施政権下にありますから、アメリカの主権の範囲のことが行なわれますが、日本に復帰した暁は、日本憲法の中で日米安保条約が適用されるわけであります。したがって、その日以後は安保条約のワク内において機能が変更さるべきである。もし、それが拡大されておるならば縮減さるべきである。そういうふうに考え、また実行してもらうつもりでおります。
  122. 渡辺武

    渡辺武君 それでは伺いますけれども、現在岩国に第一海兵航空団というのが駐留しております。この第一海兵航空団は、ただいま申しました第一海兵緊急派遣部隊の一部でございます。これは明らかにいま長官の言われましたように、安保条約の目的と範囲から逸脱した部隊だ、日本に駐留する要件を欠いた部隊だというふうに考えますけれども、すでにこれが岩国にいるのです。これはもうすでに日本憲法が適用され、日米安保条約が適用されている本土の岩国にいる部隊です。したがって、これは即時撤退を要求すべきだと思うけれども、そうなさる意思がおありかどうか、この点を伺いたいと思います。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 岩国にある海兵隊は安保条約の適用下に運用さるべきであり、また、それを確保する考え方であります。
  124. 渡辺武

    渡辺武君 安保条約の適用下に置かれると言われましたけれども、この部隊の性格自身が安保条約第六条に明らかに違反した部隊じゃないですか。この前の六月十一日の参議院の外務委員会での質問に対する答弁で、宍戸防衛局長はこういうことを言っておられる。「沖縄には第一海兵派遣部隊というのがありまして、その中に第三海兵師団があります。さらにその指揮下に第一海兵航空団というのがありまして、第一海兵航空団というのが岩国にあります。」ということをはっきり答えていらっしゃる。そうしてこれらの部隊については、「太平洋地帯の偶発事件に即応する上陸隊であるというふうに考えておるようでございます。」という答弁をされておる。いいですか。つまり岩国にある第一海兵航空団というのは太平洋地帯の偶発事件に即応する上陸部隊だ、その中の一部隊、そういう性格を持ったものです。私ここにこの前のアメリカ上院サイミントン委員会の議事録を持っておりますけれども、この中でランパート高等弁務官が次のような資料を提出している。英語で書かれておりまして、一五〇五ページに書かれていることですけれども、私はこれを邦訳して申し上げますけれども、第三海兵師団についてはこういうことを言っている。「この(第三海兵)師団は……アメリカ太平洋軍司令部管轄下の全域にわたって、水陸両作戦その他のために戦闘即応態勢にある陸空部隊の中の陸上部隊である。」、岩国にあるのは第三海兵師団の指揮下にある部隊だということを宍戸さんは答えておられる。こういう部隊がいまいるのですよ。これは安保条約第六条、これはもう長官御存じのとおりですけれども、念のために私ここで読んでみます。一番最初にこう書いてある。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」、つまり極東の範囲だということがここにはっきり明示されている。ところがいま申しましたように、岩国にある部隊は太平洋全域を相手にして、そうして事があればいつでも出動するという部隊。安保条約第六条違反の部隊がいま岩国にいる。これをどうなさる。すぐに撤去を命ずるべきだと思う。この点どうですか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖縄にある部隊は、まだアメリカの主権下で、アメリカの自由に動かす権限下にあります。しかし、岩国に駐留しているものは安保条約下に存在するものでありまして、そのように運用され、またするようにわれわれはやっていきたいと思っております。
  126. 渡辺武

    渡辺武君 今後の運用の問題じゃない。安保条約第六条違反の部隊、これが岩国にいるということ、これが問題だ、そうでしょう。この点どうですか。
  127. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 岩国の部隊は、日本の安全並びに極東の平和と安全に寄与するという目的で駐留しておる部隊であると考えます。
  128. 渡辺武

    渡辺武君 それは長官おかしいですよ。いま私は、このサイミントン委員会に提出された高等弁務官の資料、これを証拠としてあなたに申し上げ、同時にまた宍戸防衛局長——あなたの配下が責任を持ってこの国会答弁された。これはもう太平洋全域に自由自在に出撃する、その目的を持った、そういう性格を持った部隊、これが安保条約第六条違反の部隊であるということは明らかじゃないですか。こういう部隊が岩国にいるということ、これ自身が大問題ですよ。当然、撤去を要求すべきだと思いますが、そのおつもりがあるかどうか、重ねて……。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約下に機能しておる部隊でありますから、要求する意思はありません。
  130. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、安保条約に違反して極東の範囲をはるかに逸脱して太平洋全域に自由に出撃できるという性格と任務を持った部隊、これが日本の本土にいま厳としているのに撤退を要求する意思はないということになりますと、このことが、つまりアメリカ軍の限界長官御自身が衆議院の内閣委員会で御答弁されたアメリカ軍の限界なるものが、これがすでに極東の範囲を越えて、アジア、太平洋全域に広がっているということをはっきりと物語っていると思う。つまり、本土の基地がすでに現在の沖縄同様に変えられてしまっているということを私ははっきり示していると思う。また、こういう安保条約を適用されると言われる返還後の沖縄——あなた方は沖縄が返還された暁には、安保条約とその関連取りきめはすべてそのまま沖縄に適用されますと繰り返し言っているけれども、安保条約の性格そのものがこうやって変わってしまっている。だとすれば、こういう海兵隊だけではなくして、先ほど申しました中央管理施設あるいは第七心理作戦部隊、こういうようなアジア太平洋全域を相手にしていつでも出撃できるというような部隊が、つまり安保逸脱の部隊、これが今後沖縄にたくさん残されるということが私は明らかじゃないかと思う。したがって、沖縄が引き続きアメリカのアジア太平洋の多角的軍事同盟体制の扇の要の役割りを演じさせられる、返還後もその役割りを演じさせられるということも明らかだというふうに思わざるを得ません。少なくとも、長官答弁はそのことをわれわれにはっきりと示しているというふうに思わざるを得ません。この点をはっきり申し上げて私は次の質問に移りたいと思います。  いまの長官の御答弁でも明らかになりましたように、こういう危険な安保条約のもとで先ごろも第四次防構想を発表されましたけれども、それにも見られるように、日本は急激な勢いで軍事力の拡大、軍国主義復活の道をいまばく進していると思います。こういう動きに対して、世界各国、特にかつて日本から侵略されたアジア諸国が、こうした動きに対して非難や警戒の念を高めているということは、もうすでに長官御自身よく御存じだと思う。日本国民もこの動きに対して重大な不安を感じております。そこで、こうした国際的な、国内的な非難から体をかわして、できるだけ平和的な装いをこらしながら、実質的にはアメリカに従属したもとでのいわゆる軍事大国にのし上がろうというところに当面の政府、とりわけ防衛庁長官の課題があるんじゃないかというふうに見受けられます。佐藤総理の国連演説だとか、あるいは長官御自身の訪米発言、あるいは今回の防衛白書、こういうものを見てみますと、このことが非常によくわかる。長官は、非核中級国家としての防衛構想というようなことを盛んに宣伝していらっしゃいますけれども、私は、こういうことばのもとで、まさに長官が進めておられることは、これが日本の軍国主義復活そのものだと思う。そこで伺いたいことは、先ほど他の委員に対する御答弁の中にもありましたが、長官の今回の訪米、これの目的は、これは基地の整理統合だとか共同使用だとか、沖縄防衛だとか、あるいは日米双方の防衛責任などについての話し合いということにあったというふうにいわれております。ところが、この火薬のにおいのふんぷんたる話し合いの中で、長官は、濃縮ウランの技術的知識のアメリカによる提供、それからまた第三国を交えた合弁事業設立などをアメリカに提案されておられます。私は、この問題は今後の日本の核政策、さらには日本民族の運命、こういうものにきわめて重大なる影響を及ぼすものだと思います。  そこで伺いますけれども、防衛庁長官は一体何の資格でこのような重大な提案をされたのか。発言内容の少なくとも骨子のすべては総理大臣科学技術長官には当然打ち合わせ済みのことだったと思いますけれども、その点どうなのか、また、原子力委員会がこのことを承知の上のことであったのか、以上三点についてまず伺ってみたいと思います。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治家として発言をいたしました。また私は、元科学技術長官、元原子力委員長という立場も持って申し上げたのです。そういうことも言ってきてあります。それから原子力委員長西田国務大臣に行く前に話してあります。また、事務次官にも電話で話してあります。外務省にも原稿では連絡してあります。総理大臣にも原稿はお渡しして読んでもらっております。
  132. 渡辺武

    渡辺武君 日本の原子力政策について、いろいろな政策などを決定するのは原子力委員会じゃないでしょうか。原子力委員会の議は経ておりますか。また科学技術長官に話してあるというふうにおっしゃいましたけれども、十月十三日の参議院の科学技術特別委員会の答弁によりますと、科学技術長官すなわち原子力委員長ですけれども、ノーハウの提供の打診は知っていたけれども、合弁事業については初耳だということを答弁しておられる。つまりこのことは、正規の機関である原子力委員会の議を経ないで、また科学技術長官、原子力委員長、この方も全貌を知らない、そういう提案をあなたはなさったわけです。そういうことになるのじゃないでしょうか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 西田さんにはよく話して参りましたし、事務次官にも、これは電話でありましたけれども、内容をよく話してあります。
  134. 渡辺武

    渡辺武君 いま長官は、政治家として提案されたというふうに言われましたけれども、あなたはただ単なる政治家じゃないと私は思う。現職の防衛庁長官、その点をお忘れになっていま御答弁されたのでしょうか。一体あなたが提案された相手方はだれだれだったのですか。アメリカの原子力委員会の委員長のシーボーグ氏には会われたのでしょうか、その点はどうですか。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは非公式の発言でありますから、シーボーグ氏に正式に政府として申し入れするとか、なんとかいう性質のものじゃないのです。それでレアード国防長官、ロジャーズ国務長官、キッシンジャー大統領補佐官あるいはマンスフィールド、フルブライト議員等に会いましたときには、私は断わって、私は防衛庁長官としての発言ではない、元科学技術長官、原子力委員長として日本の産業政策の将来を考えて自分の個人的意見を表明するのだと、そういうことを断わって、向こうもそういうこととして聞いておるわけですから、正式の答弁や何かはないわけです。それでいいのです。しかし、アメリカもそういう機運にありましたからそれに触発されて、原子力委員長から個人的に私に手紙が参りまして、前向きで検討して動き出しているという返事がありました。やはり言って、きき目があったのじゃないかと思います。
  136. 渡辺武

    渡辺武君 個人的な提案だからというふうにおっしゃいますけれども、かりに個人的な提案なら、なおさらアメリカの原子力委員長に会われなかった、話もされなかったということは非常に奇怪じゃないでしょうか。そうしてあなたはほかの委員会の答弁では、これは原子力の平和利用のための提案だというような趣旨のことを言っておられるけれども、平和利用のための提案なら、ますますシーボーグ原子力委員長に会って、個人的な提案ならばそういう提案をすることがこれが普通の姿じゃないかと思うのです。ところが、あなたが会って話されたのは、いまのおことばによりますと、レアード国防長官またキッシンジャーといえば、これは安全保障問題担当の大統領の補佐官でしょう。つまり、軍事関係の専門家ですよ。そこにそういう提案をされる。一体、原子力の平和利用のためになら、なんでそういう軍事専門——あなた自身も軍事専門家です、そういう同士の話し合いにならなくちゃならなかったのでしょうか。この点どうでしょうか。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 上院のマンスフィールド議員にも、あるいはフルブライト外交委員長にも話しておりますし、それからレアード国防長官は原子力委員長に橋渡しをしましょう、そういうことを言っておりました。それで原子力委員長から私に会いたいという話がありましたが、日程の調整がどうしてもできないので、向こうは旅行するというようなこともありましたりして、遺憾ながら会いたかったけれども会えなかったというのが事実であります。しかし手紙が参りまして、先ほど申し上げたような動きでいま動いているわけであります。
  138. 渡辺武

    渡辺武君 どうも人を納得させる答弁ではないような感じですね。納得できませんよ。大体政治家個人として個人的な提案をしたというふうにおっしゃっておられるけれども、正規の担当者でもない現職の国務大臣防衛庁長官が、日本の核政策の将来にかかわるような問題を、原子力委員会の同意も得ないで、かってに対外的折衝の爼上にのぼせる、このことは大きな問題じゃないでしょうか。長官も御存じのように、原子力基本法には「民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」という有名な民主、自主、公開の三原則がうたわれている。少なくとも長官の今度とられた態度、これはこの原子力基本法の三原則のうちの民主の原則にはずれた行為だと思うけれども、この点どう思われますか。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、前に科学技術特別委員長をしておりましたし、また先ほどのような前歴もありますし、日本のエネルギー政策には非常に重要な関心を持っている人間ですから、せっかくアメリカに行った際であり、アメリカのほうもそういうような内部情勢でもあるということを知っておりましたから、それを促進するという意味政治家として行動したのでありまして、国のためになれと思ってやっていることで、私はそれなりの成果があったと思っております。
  140. 渡辺武

    渡辺武君 主観的に国のためになるというふうに思うならば、どんなことをやってもいいのですか。その権限も何もない方が出かけていって、日本の原子力政策の将来にかかわる重大な問題を、しかも外交折衝の爼上にのぼせる。これは原子力基本法にうたわれている民主の原則に著しく反するじゃないですか。あなたはそう思われませんか。元科学技術長官、原子力委員長、これぐらいのことは十分御存じじゃないでしょうか、どうでしょうか。もう一回御答弁いただきます。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本法は、私は制定者の一人でありますが、逸脱しているとは思いません。
  142. 渡辺武

    渡辺武君 自分が原則をはずれることをやりながら、しかも、はずれていないというふうに開き直られる。私は長官の心理を疑いますね。なお重ねて伺いますけれども、わが国の原子力委員会は昭和四十三年に「核燃料政策について」という決定をしていると思いますけれども、その中で、今度問題になっている濃縮ウランについては、どのような方針を持っておられるか、長官御存じだと思いますが、おっしゃっていただきたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか濃縮ウランは昭和四十七年度までにいまの二つの方法をやらして、そして四十七年度においてどちらを選ぶかという見当をつけて進めよう、そういう政策であったと思います。
  144. 渡辺武

    渡辺武君 概略そのとおりです。しかし長官、肝心のことを言い忘れておられる。それは何かと言えば、この濃縮ウラン——ウラン濃縮についてというこの原子力委員会の決定、これの最も重大な核心は自主開発にある。自主的にやっていくのだというところが最も重要な核心です。私は、時間がないからこれは読みませんけれども、これがいままでの日本の原子力の開発について、特に濃縮ウランについての基本的な行き方であった。ところが、どうでしょうか。今度長官が行ってやられたことは、アメリカからウラン濃縮の技術を導入するのだ。しかも第三国を交えての合弁会社もつくろうというようなことです。国内で自主的にウラン濃縮の技術を開発していくというのが基本政策であるにもかかわらず、外国からその技術を導入してやっていこう。これは自主開発という原則に著しくそむくものだというふうに思いますけれども、その点どうでしょうか。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の現在の動力炉でも何でも、みんな外国からの技術導入でやっているので、時代の要求に合うか合わないか、タイミングの問題があるわけです。濃縮ウランにつきましても、日本のエネルギーのこれからの動向、状態を見ますと、とても間に合わぬ危険性がある。そうして油を輸入すれば公害で日本じゅうが煙だらけになる危険性がある。そういう情勢を読んでみると、できるだけ早く濃縮ウランを権利として手に入れるということが大事だ。恩恵的にアメリカから与えられているという状態から、権利として手に入れるのにはジョイントベンチャー以外にない。そういう日本の経済スピードを考えながら、それに合わせるように私は考えてやったことであります。
  146. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、長官の御答弁は、従来のこの原子力委員会の決定、これを公然ともう踏みにじってかまわないということなんですか。その点どうですか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 完全自主ということはあまりないのです。近ごろはいままでの技術を基礎にして、それをインプルーブするという形ですべて行なわれている。溶鉱炉にしてもそうですし、石油技術にしてもそうです。原子力についても日本は後発国家でありますから、ある程度蓄積された技術を手に入れて、その上に行なわれているわけなんです。いまやっているセパレーションにしても、あるいはウェーストディスポーザルにしても、大洗でやっているのも、みんなそういうことはやっているわけです。ですから日本のニードと経済需要のタイミングとの調整ということが非常に大事なので、そこに原子力委員会の政策もポイントがあるわけです。
  148. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないので端的に聞きますけれども、長官は従来も外国から技術を導入してやってきたのだということを言っておられましたが、アメリカからの軽水炉の技術の導入あるいは軽水炉そのものの輸入、これによって日本がいままで原子力発電をやってきた。その路線は長官自身が開かれた路線だと思う。そうでしょう。当時日本の学者はどういうことをこの点について言っていたか。この軽水炉の導入をやったならば、これは外国技術だ、当然日本の原子力開発の自主的な方向というのは、これはゆがめられていくだろう、妨げられるだろう。特にこの軽水炉によって大量の濃縮ウランが必要になってくるが、この濃縮ウランはアメリカ一国に依存せざるを得ない。こうなってくれば日本の濃縮ウラン開発の自主性というものもそこなわれる。こういうことを盛んに言っておられた。時間がないから読みませんけれども、科学技術庁原子力局編「原子力開発利用長期計画——解説と資料」という本にも、まさにその点を強調しております。「将来におけるわが国の原子力開発利用に関する自主性の確保ならびに核燃料の安定供給およびその有効利用をはかるうえに、必らずしも望ましいことではない。」ということをはっきり言っている。そういう路線を開かれたのは、長官御自身、今度長官のやられたことは、その点をさらに一そう激しくするものです。民主、自主、この二つの原則はもう破られた、あるいは破られようとしている。その上に今度のは、御承知のように、ガス拡散方式によるアメリカ技術の導入でしょう。これは膜をふやしさえすれば平和利用どころか軍事利用のための濃縮ウランもつくることのできる、そういう技術的可能性を持った技術導入、したがって、アメリカが秘密保持のためにいろいろな干渉を加えてくるということは、これは火を見るよりも明らかだ。日本の各新聞社の出された記事や社説などを見ても、その点一斉に指摘している。そういう意味ではこれは自主、民主、公開——最後の公開の原則にも著しく反すると私は思う。いままで日本の国内でのこの原子力開発、これはいま申しましたように平和利用を基礎としながら自主、民主、公開の三原則を守っていくということによって軍事目的に使われないという保障がなされていた。いまや長官アメリカでもって提案をし、まさに実現しようとしつつあるこの方式というのは、日本の原子力開発の軍事的な方向への前進を食いとめていた歯どめそのものをまっこうから粉砕する、こういうやり方だと私は思う。長官は、日本アメリカに従属しながらの核武装化の方向をお考えになりながら今度の提案をなさったんじゃなかろうか、この点を伺って終わっておきます。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう事実はございません。アメリカ世界がおもにおそれているのは、日本やドイツが核武装することだと思っております。そういう面から見まして、アメリカとジョイントベンチャーしたときに、それを核武装の方向へ持っていくということは、アメリカが賛成するとは思えぬじゃないですか。それより自分ひとりでつくられたときのほうを心配しているのじゃないですか。また、そのときのほらが世界中からの猜疑心を誘発することになるのではないでしょうか。私は、一九七〇年代の日本を見ると、できるだけ国際協力でそういう猜疑心をなくしていくことが賢明な道であると思っているわけです。
  150. 和田静夫

    ○理事(和田静夫君) 他に御発言もないようですから、防衛庁決算につきましてはこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時四十三分散会      —————・—————