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1970-10-09 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月九日(金曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員の異動  十月九日     辞任         補欠選任      上林繁次郎君     沢田  実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 若林 正武君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 高山 恒雄君     委 員                 亀井 善彰君                 佐田 一郎君                 長屋  茂君                 初村滝一郎君                 矢野  登君                 大橋 和孝君                 西村 関一君                 安永 英雄君                 上林繁次郎君                 二宮 文造君                 渡辺  武君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        法務大臣官房訟        務部長      香川 保一君        法務省民事局付  清水  湛君        大蔵省理材局次        長        小口 芳彦君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  小島 康平君        農林政務次官   宮崎 正雄君        農林大臣官房参        事官       大場 敏彦君        農林省農政局長  中野 和仁君        農林省農政局参        事官       岡安  誠君        農林省農政局植        物防疫課長    福田 秀夫君        農林省農政局普        及部長      田所  萠君        農林省農地局長  岩本 道夫君        農林水産技術会        議事務局研究参        事官       長谷川新一君        林野庁林政部長  池田 正範君        林野庁業務部長  福田 省一君        通商産業省通商        局農水課長   豊田  整君        会計検査院事務        総局第四局長   田中  稔君    参考人        農林漁業金融公        庫総裁      大澤  融君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  本日は、農林省と、それに関係する農林漁業金融公庫決算につき審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それではこれより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 大橋和孝

    大橋和孝君 本日は、最近非常に社会問題にまで発展をいたしております残留農薬などによる食品汚染公害、あるいは環境破壊土壌汚染、あるいは鳥や家畜など、あるいはまた人体に与える影響などについて、農林省及び厚生省の方々に対しましていろいろお尋ねしたいと思うのであります。  まず、わが国で認可されているといわれる四百の種類に及ぶ農薬分類と、そしてまたそのメーカーの数、そしてその中で特に学会や国際的に問題となっている農薬について、また安全使用基準の基本的な考え方などについてひとつ伺っておきたい、こう思います。
  5. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) お答え申し上げます。  まず、今日登録になっております農薬種類でございますが、有効成分の数としますと、御指摘のとおり約四百種類あるわけでありますが、これを分類してみますというと、その目的からして、まず殺虫剤殺菌剤除草剤と分けることができるかと思いますが、殺虫剤は、さらにこれを有機合成農薬と、それから天然物農薬とに分けられると思います。  有機合成農薬といたしましては、稲とか、果樹野菜害虫対象といたしましたいわゆる有機燐剤というグループがございます。さらに、同じようにやはり稲、果樹野菜等害虫対象といたしましたカーバメート剤というグループがございます。それから、やはり目的としましては大体同じようなことでございますが、有機塩素剤というグループがあろうかと思います。以上有機燐剤カーバメート剤有機塩素剤、この三つに分けることができるかと思います。殺虫剤の中の有機合成農薬でございます。  さらに、殺虫剤の中の天然殺虫剤といたしまして、これは主として野菜害虫防除に使われると思いますが、天然殺虫剤がございます。たとえば、除虫菊だとか、ニコチンだとかというものでございます。  さらに、次は殺菌剤といたしましては、無機化合物農薬といたしまして、果樹とか野菜病害対象といたしました銅剤硫黄剤といったようなものがございます。それから有機合成農薬といたしましては、やはり果樹野菜病害対象といたしまして、有機硫黄剤、こういうものがございます。それから稲の病害対象といたしましては有機砒素剤がございます。さらに稲の病害用としましては、抗生物質剤、さらに有機燐剤というようなものがございます。有機燐剤と申しますのは、有機水銀剤にかわりましたいもち病防除用の薬でございます。  それから次に除草剤がございますが、除草剤としましては、大きく分けまして、水田用のものと畑作用のものとに分けることができるかと思います。水田用のものとしましては、フェノキシ系と申されますものに二四Dというような有名なものがございます。それからフェノール系と申されるものにPCPという、これまた非常によく使われている除草剤がございます。そのほかに水田用といたしましては、   〔委員長退席理事若林正武君着席〕 ジフェニールエーテル系といったようなものがございます。畑作用除草剤といたしましてはトリアジン系尿素系などという分類があろうかと思います。  そのほか農薬といたしまして登録されているものの中には、ネズミを殺す殺そ剤というような分類がございます。また、植物の生長調整剤というもの、これは発芽を抑制する発芽抑制剤として使われるとか、成長促進剤とか、種なしブドウをつくるジベレリンといったようなものがございます。  以上大まかな分類でございますが、四百種類分類を申し上げますと、そのようなことになるかと思います。  次に、この中で特に国際的、社会的に問題になっているものという御指摘でございますが、今日食品あるいは土壌中などの残留性でもって問題になっておりますのは、いずれも有機塩素系殺虫剤といわれるグループでございます。BHC、DDTなどの有機塩素系と申されているグループが国際的にも問題になっているようでございます。  その次に、安全使用基準についての考え方という御指摘でございますが、農薬残留に関する安全を確保するために、厚生省のほうで農作物中の残留農薬許容量というものを設定されておりますので、それに対応いたしまして残留農薬許容量を越えることのないように、農薬を適正に使用して国民保健衛生について万全を期するとともに、農産物の円滑な流通を確保するために、農林省といたしましては安全使用基準というものを設定しております。安全使用基準は、農林省におきまして実施いたしてまいりました残留調査の結果に基づきまして、そのような使い方をする限りにおいて許容量を越えることがないという使い方でございますが、その間には十分なまだ安全率を見積もって作成してございます。  大体、以上のようなものが御質問の御要旨に対する答弁になろうかと思いますが、一応これで終わります。  申しおくれましたが、製造者の数についての御質問でございましたが、農薬メーカーの数といたしましては約三百五十社ほどございます。そのうち、しかし全国的に多品目を製造している会社といたしましては、約四十社ございまして、この四十社でもって全農薬の九〇%のシェアを持っております。以上でございます。
  6. 大橋和孝

    大橋和孝君 BHCによる牛乳の汚染、それからカドミウムによる米の汚染、あるいはまた、いまおっしゃいました有機塩素系農薬によるキュウリとかジャガイモの汚染なんかによって、いま国民の中でも農薬による人体への影響などが非常に心配されているわけであります。この忍び寄る公害と申しますか、この不気味な不安感が高まっている中において、政府もやっと腰を上げていただいたようであります。この九月の二十五日に第五回の公害関係閣僚会議を開いて、新たに土壌汚染に関する防止法の制定、これに伴う農薬取締法大気汚染防止法水質汚濁二法などの改正検討することになったようであると聞いておりますけれども、しかし具体的なことはともかく、この基本的な考え方を、農林省厚生省両方から一ぺん伺っておきませんといけないと思うのでありますが、その点をひとつお聞かせ願っておきたいと思います。
  7. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) 農業生産の基盤であります土壌重金属類などによる汚染を防止いたしまして、農作物の生育の保全及び人の健康を害することのない農産物生産を確保するために、仮称でございますけれども土壌汚染防止法について目下鋭意検討して準備をしておるところでございます。  また、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法改正につきましては、関係の各省庁において検討しておるようでございますが、農薬取締法改正につきましても農林省において検討しておるところでございます。しかしながら公害関係の各法は公害対策本部において調整をはかることとなっておるのでございまして、農林省担当部面等におきましては目下その具体案検討中でございます。
  8. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 農薬、ことに残留農薬をはじめとしまする食品汚染の問題、これは私ども厚生省といたしましても国民の健康を守るという立場から、ことにそれらの慢性毒性についての実態調査、あるいは許容量設定ということについて鋭意検討調査を進めていますとともに、願わくばやはりその原因である農作物生産者側実態調査、あるいは御協力ということが肝心でございますので、それらの点につきましては農林省のほうにも申し入れまして、相協力して、これらの必要な基準設定についていま作業を進めておるところでございます。  それから、その他のいろいろな汚染源につきましては、ただいま大橋先生から御指摘のように、新たに土壌汚染についても十分に考慮すべきであるという意見厚生省のほうからも積極的に申しまして、それが今回の関係閣僚会議の決定になったものと思います。
  9. 大橋和孝

    大橋和孝君 私は、両省から御意見を伺いましたのも、非常にもうこうしていま私申し上げたようないろいろな食品に対して汚染があり、また、これによっての障害が起こるということが大きく問題になって、こういうふうな取り組みになったのでありますが、私は、こういうふうな問題は非常に重大でありますので、そういう意味でむしろ、おそきに失するというふうに感ずるわけであります。障害が起きてからこういうことに取り組んでいただくということでなく、やはり厚生省においても農林省においても、もっともっと先にこれに取り組むべきであって、人体影響を及ぼしてから、これはたいへんだというやり方では非常にまずいと思うわけであります。ところがいま、ちょっとお話を聞いておりましても、いろいろ調査研究等には、あるいはまた、いろいろな法律改正をしていただく取締法に対しましても、その過程においては非常にむずかしさもあると思いますけれども、私は、これは両省とも相提携をしていただいて、相協力をしていただいて、早急にこういうものをまとめてしまって、そうして悪いところは改正をして、そうして国民の不安を早くぬぐい去っていただきたい。これを希望いたしておきたいと思います。  その次に入りまして、私はお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、この農薬安全使用基準についてでございますけれども、これはまだWHOにおいても具体的に検討していないようであると私は思っておるわけでありますが、それだからこそ、わが国で率先してこの農薬規制に対して世界に範を示すくらいの意気がまえでやってもらいたいと私は思うわけであります。わが国で四百という数字国際比較としては多いようにも思うのでありますが、西欧あるいはアメリカなどの実情はどういうふうになっておるのか、この外国情勢についてちょっと伺っておきたいと思います。
  10. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 先ほど指摘がございましたように、またお答え申し上げましたように、わが国では約四百種くらいの農薬が使われておりますけれどもわが国気象条件温暖多湿等で、西欧諸国アメリカよりも非常に病害虫の発生に適しておること、さらには、また北のほうから南のほうまで非常に多種類農作物を栽培しておるという状況がございまして、農産物種類もたいへん豊富になっておりますけれども、この四百種類の中で、先ほど分類をいろいろ申し上げましたけれども、全国で非常にたくさん使われておる農薬は約六十種類くらいにしぼられるかと思います。  それから、諸外国情勢でございますが、これはなかなか諸外国の統計というのが十分なものがございませんので、非常に広く十分に明らかにするわけにまいらないのでございますが、われわれが調べました範囲内では、アメリカでは約五百種類農薬が使われているということを、例の大統領の諮問委員会であります委員会の中でそういう数字が出ております。それからスウェーデンでは約百二十五種類、オランダでは約三百種類という農薬が使用されているように聞いております。なお、残留許容量等を算定して農薬残留について規制している国は、直接所管でございませんので、あまり正確な数字でないので恐縮でございますが、七つか八つくらいの国であろうかと聞いております。
  11. 大橋和孝

    大橋和孝君 日本状況が北から南までとか、あるいは多湿だとか、いろいろお話しになったように、害虫とか、そういうものの問題も多いだろうと思うのですが、私がこれをちょっと比較して調べたところによりますと——私の考えが間違いかもしれませんが、この種類はもう少し減らしてもそれほど関係しないという、いろんな学者の意見、あるいはまた、そういうデータもあることだと思うのであります。そういう観点から、これを農林省としてはもっと再検討をいままでにされて、四百種類はやむを得ないんだとされているのか。いままでの経過からこれをやるならば、もっと百種類ぐらいは減らしてもいい。あるいはまた、毒性の相当きついやつは減らしやすいと考えるのでありますが、そういうことは検討済みで、この四百種類ができたかどうか、ちょっと伺いたい。
  12. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 農薬登録にあたりましては、その毒性急性毒性、さらにまた最近は慢性毒性その他の被害の問題を十分検討いたしまして登録いたしておるわけでありまして、今後、先ほど次官のほうから御説明いたしましたように、農薬取締法改正等も現在検討いたしておりますか、その中におきまして、この農薬毒性の見方というものを、慢性毒性あるいは残留性土壌に対する残留蓄積量、あるいは水の汚染等といった方面にまで拡大して考えまして、そのようなおそれのある農薬は今後登録しないようにしていきたいという方向検討いたしておりますし、また、すでに登録になっている農薬につきましても、そのような事態が明らかになったものにつきましては、この登録を取り消すことができるような方向に持っていきたい。そういった考え方でいま法の改正等検討しているところでございます。
  13. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっと委員長にもこれをお願いしたいのでありますが、いままでいろいろ農薬について研究をされて、どういう過程毒性が多いからこれは登録に入れないとか、こういうふうにいまおっしゃったわけですが、そういうような過程でいろいろデータを出された、その詳しいデータがあろうと思うのですが、いろいろの農薬に対してこれを資料としていただきたいのですが、それはできるんですか。
  14. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 非常に膨大なものがございまして、ちょっと私も想像つきませんけれども、一つの部屋にいっぱいになっているぐらいあろうかと思います。その中で特に何か代表的なものとか、そういうことでございますれば、提出することができると思います。
  15. 大橋和孝

    大橋和孝君 わりあいに毒性の多いものだとか、あるいはそういうものをどうしても農薬として使わなきゃならないもののうち、ことに毒性を比較したものを——ある程度制約はしていただいてもちろんいいと思いますが。
  16. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 実は、先ほども四百種の中で、現在非常に広く使われているのは六十種類かということを申しましたが、これは近年低毒性農薬というものが開発されておりまして、従来使っておりました農薬と入れかわりました。従来使っております農薬にいろいろ問題がありますので、これを指導によりましてすでに使うことを取りやめた農薬も幾つかございますが、その代替農薬として、近年低毒性のものが非常に次から次へ出ておりまして、登録の数は多くなっておりますが、毒性の強いものはいまほとんど使われなくなって、毒性の弱いものに今日変わっておりますので、いま毒性の強いということで資料を提出いたしますと、古い薬といいますか、現在あまり使われてない薬ということになろうかと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  17. 大橋和孝

    大橋和孝君 私がいま聞きたい目的は、最近農薬というものをふるいにかけるわけですが、そのふるいの中にかけられるものについて、どのようなデータが出ているかということを知りたい。もうオミットされているきついやつは要らない。しかし開発途上で、いま農林省において、あるいはまた、そういう農薬研究機関において、最近問題になっていて、そしてこれからふるいにかけられるものは、これはどこの差か。そういうことが知りたい。これだけの毒性であるから、これは取り入れられる。これはこういう毒性だから省くという、そういうところの振り分けの状況を私は調査してみたいと思いますから、そういう資料に重点をしぼっていただいたら私はいいと思いますが、できますね。
  18. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 毒性の強いものは、申請になってきてから、これは毒性が強いから登録を許さないというようなことはあまりございませんで、そこに至るまでにおいて——申請書を出すまでにおいて、すでにそういうものはやめさせておるものが大部分でございますので、毒性の強いものを過程において検討してやめさせたというものは、農薬になっていないということになろうかと思いますが、先生の御趣旨のような考え方でまとめてみたいと思います。
  19. 大橋和孝

    大橋和孝君 日本農村医学会とか、農薬中毒研究班に対しまして、厚生省のほうでは委託研究を依頼していらっしゃるようであります。本年度予算では二千万円だったと思うのでありますが、来年度は何か二千七百万円の調査研究費を出す予定であると聞いておりますが、この研究テーマあるいはまた研究陣のメンバー、そうしてその実施要領についてちょっと詳しく聞いておきたいと思いますが。
  20. 浦田純一

    説明員浦田純一君) これはこまかく申しますと、主管公衆衛生局のほうでございますが、便宜私からお答えいたします。  わが国におきます各種農薬中毒実態を把握するために、また農薬中毒早期発見並びに治療法を確立したいということがこの研究費目的でございますが、御指摘のように本年度日本農村医学会に二千万円を研究費として、先ほど申しましたようなテーマ研究を委託してございます。研究班長は長野県の佐久総合病院若月先生でございます。研究分担者といたしましては厚生連関係病院に所属する医師約五十人のチームでございます。その中身でございますが、さらに詳しく申し上げますと、急性及び慢性農薬中毒に関する情報収集とその解析、それから人体における農薬残留量調査及び中毒症状発現に関する実験的研究、それから各種農薬中毒治療に関する研究ということで、農薬中毒臨床例調査あるいは剖検、それから農薬散布者の健康の実態調査農薬による皮膚炎バッチテスト、それから人体内の有機塩素剤残留量調査有機水銀中毒におけるアレルギー学的研究、これは主として動物実験によるものであります。それから有機塩素系あるいは有機燐剤人体並びに動物実験による脳波学的研究有機燐剤によるガン障害実態並びに動物実験による原因追求に関する研究といったような中身でございます。
  21. 大橋和孝

    大橋和孝君 これは厚生連関係の方がおもであって、ほかにはあまりないのですか、まだあるのですか。
  22. 浦田純一

    説明員浦田純一君) そのほかにいろいろと分析関係の仕事がございますので、これらは地方衛生研究所チームに加わっていただいてやるようになっております。
  23. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま厚生連関係、それからまた、地方衛生研究所もやっておられるようですね。私も、そのいろいろデータをもらっておりますが、ここらに対して予算の配分なんということを考えますと、私は比較的その予算が少な過ぎると思うんですね。この研究は、厚生省のほうも御存じのように非常にめんどうなあれでございまして、予算的にも、あるいはまた機械の上からも、設備の上からも、いろんな複雑なものがあろうと思うのですが、じゃ地方衛生研究所あたりにはどれぐらい出ているのか。特にそういう方法で、厚生省としてはもっと予算というものを大きくして——七百万ふやしただけじゃなくて、もっと抜本的に、こういう問題ができたときにはやらなければならぬと思うのでありますが、これは何の基礎によって二千七百万くらいにしたのか、私は、ちょっとそこのところを聞いておきたい。
  24. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 私、主管のことでございませんので、その点については的確にお答えしかねますが、全体、私どもの所管しておりますいろいろな問題に対する調査研究費というものは、率直に申しまして必ずしも十分のものであるとは思っていないわけであります。しかしながら、農村保健の問題、ただいま申し上げましたテーマに関するような研究、これらはなるほど二千万円あるいは二千七百万円の要求額そのもの自体は少額という御指摘があるかと思いますが、全般的に、たとえば地方衛生研究所に対するいろいろな測定機械等財政的援助その他もございまして、また場合によりましては、さらに全体としての研究費の中からここに重点的に指向していくということもございまして、できるだけ私どもとしては不足ながらも、それらの中から必要最小限度のものは確保していきたいという考えでおります。また、スタートしたばかりでございまするので、今後それらの実績ともにらみ合わせながら増額につとめてまいりたい、このように考えております。
  25. 大橋和孝

    大橋和孝君 厚生省に私は、特にここで要望しておきたいと思いますが、局長のほうから担当の方にも、あるいはまた大臣のほうにも十分念を入れておいてもらいたい。というのは、この予算の問題ですが、いまちょっとその担当ではいらっしゃらないからお尋ねするのは無理かと思ったけれども、あえてお尋ねしておいたわけでありますが、この問題についてはもっと積極的に——私はこういう観点を持っているわけです。人体影響を及ぼすか及ぼさないか、あるいはまた慢性的な影響をどうするかということのほんとうの歯どめ役は、私は厚生省にあると思う。厚生省に、こういう問題について——人体障害ということ、あるいはまた、そういうふうな症状についての研究というものをもっと前向きにしてもらわなきゃならない。これは農林省のほうでも、もちろん研究をされることだと思いますし、やってもらわなければならないと思います。私は、人の生命の尊厳さからいって、そしてわれわれが日常とるもの、そういうものに対して害があるということは、非常に国民の感情からいえば不安の極になるものであって、一体何を食ったらいいんだということになるわけでありますから、そういう点では生命に関係を及ぼさないという意味においての研究、こうしたものの開発が私は特に必要であろうと思うのでありまして、私は、この予算獲得の上に特に注意をしてもらいたいし、また、これの取り組みに対しては急速にひとつ進めてもらいたいということを要望しておきたいと思います。  それから、農林省のほうにちょっとお尋ねしますが、農薬公害というものに対して、大体予算的にはどういうふうに取り組んでいただいて、そしてどういうふうな方向でこれがされているか。いま厚生省に聞いたように、ことしと去年と比べてみて、どういうふうな形になっているかということを、ちょっと聞かしていただけたらありがたいと思います。
  26. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 農薬の被害に関しましては、農林省といたしましては、残留性及び慢性毒性に関する問題が最近非常に問題になっておりますので、残留調査といたしまして四十二年から四十五年までの四カ年計画でもって、技術会議のほうにおきまして農薬残留に関する緊急調査というようなものを実施してまいりました。その予算が四カ年で約二億何千万円であったと——正確なことは覚えておりませんが、記憶いたします。それからその残留性につきましては、今後、ただいま申し上げましたような技術会議におきまして研究調査をして、残留調査方法なども含めまして、   〔理事若林正武君退席、理事和田静夫君着席〕 約四十数種の農薬につきまして、二十一の作物を対象といたしまして、おもな、そういった代表的なものを対象といたしまして農薬の使用方法とその残留性に関する研究をやってきたわけでございますが、四十六年度からはこれを行政ベースに移しまして、農政局のほうでそういった調査を続けていきたいと考えております。と申しますのは、都道府県におきましてもこの農薬残留問題に関する指導に科学的根拠を与えさせるために、四十四年、四十五年の二カ年をもちまして各都道府県に農薬の分析機器の補助を行なってまいりました。この予算が単年度で約七、八千万ほどだったと記憶いたしますが、そういうことで、四十四、四十五、二カ年でもって県の分析機器の設置を終わりましたので、県の協力も得まして、行政ベースでもってさらに農薬の使用状況残留実態に関する調査を続けてまいりたいと考えております。このために四十六年度は九千七百万ばかりの予算を要求いたしております。  さらに毒性の面といたしましては、わが国では慢性毒性の試験をしていただける法的な機関が非常に少ない、大学等で行なうだけでございまして、この能力も非常に少ないということでございますので、慢性毒性の試験を行なって新しい低毒性農薬の開発の促進にも充てたいということから、残留農薬研究所というようなものが財団法人で設立されたわけでございますが、その毒性試験の設備費といたしまして四十五年度に一億円の補助を行なっておりますし、引き続き四十六年度にも一億五千万円ほどを要求しております。さらに、あるいはこれは少し御質問の要旨とはずれるかもしれませんが、農薬残留毒性の対策の一環といたしまして、天敵の利用促進事業というものを本年度から実施いたしております。で、この予算が約一千二百万ばかりでございまして、これは今後も続けてまいる考えでございます。ちょっと要旨からそれたところもございまして恐縮でございますが、大体残留農薬対策に関する予算は以上のようなことでございます。
  27. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょうど私も、この残留調査あるいはまた慢性毒性調査研究というのは非常にむずかしいことだということを聞いておりますので、特にそういう点が伺いたかったわけでありますが、いま四十四年度から農薬研究所の建設を進めて、このごろは完成して公害のない農薬研究開発を進めようとしている。こういうふうに、いまおっしゃったようにやられているわけでありますが、この東京の小平市ですか——日本の植物防疫研究所の隣接地に残留農薬研究所というのを二カ年計画で建設された。いまおっしゃっていたような形であろうと思いますが、これに農林省はいまおっしゃったように本年度は一億円、来年度は一億五千万円ですかを投入されるような見込みでありますが、一体この研究所の内容、それからこれの詳しい状況をひとつ聞かしていただきたい。これは非常にいいことであり、これをもっとひとつ進めていただきたいという意味から、その内容を聞いておきたい。
  28. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 残留農薬研究所の設立の趣旨でございますが、これは農薬残留及びその毒性に関する各種の試験及び調査研究を行なうことを目的としておりまして、その結果といたしまして新しい時代の要請に沿ったような低毒性の新農薬の開発を促進してまいりたいというようなこと、それがひいては、そのことによりまして農業生産の安定した発展及び国民の健康の保全に寄与するというようなことを目的として設立されているわけでございまして、取り扱います事業といたしましては、農薬等の残留及び毒性に関する調査研究、さらには農薬等の残留及び毒性に関する各種試験の受託、それからさらに農薬等の残留及び毒性に関する試験技術の研修、情報の交換、技術及び知識の普及、それに加えまして慢性毒性試験などを行なうために必要な試験用動物の飼育、増殖、このようなことを仕事の内容として、目下設立準備が進んでおります。
  29. 大橋和孝

    大橋和孝君 先ほど申したように、こういうふうな研究所が国で前向きに進められるということは、非常にぼくはありがたいことだと思うのです。お話にありましたようにその内容もいろいろ多角的な考え方で進められているわけでありまして、これに対しましても相当の予算は組まれているようでありますけれども、私がいろいろ調べてみたところによりますと、この機械設備とかいろんなものに相当の費用がかかるものであるらしゅうございますので、私としてはこの点でどの程度の設備が必要なのか、そういうためにはこれだけの予算ではとてもとてもまだまだその第一歩を踏み出すぐらいの形でありますので、急速にこの設備がほんとうにその効力を発揮するのには、非常にまだ緑遠いというような感じもいたしますので、そういう点から申して、もっと積極的に前向きにするためには、どれほどのことをしなきゃならぬかということが、いまおわかりでしたら聞きたいのですが、そういうことはちょっと言いにくいと思いますが、特に私は要望として、これこれのものを推し進めるためにもっと前向きに予算獲得をして、こういう方面には比較的お金が入れにくいような状態にもあろうと思いますので、どうかひとつこれのうしろの歯どめをはっきりとできるように、いわゆる無害な農薬の開発ということに通ずる大きな道を、ここではっきりしてもらえるような予算、設備をしてもらいたい。  それから、まあ一つのスタートでありますから、これらの研究所も一カ所でありますけれども、これはまだまだもっと拡充をして、土地等の変化によってこの研究部面を変えていかなければならぬ面もありましょうが、研究の内容も非常に複雑だと思いますので、そういう意味からは、どういうところが専門にやるという形も必要かと私は思うわけでありますが、そういうふうなことに対して、特に前向きにこれを検討してもらいたいと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  30. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 残留農薬研究所につきましては、この種の研究所と申しますか、このような業務を行なう研究機関がわが国には非常に不足していると感じておりますので、専門家の御意見も入れましてなるべく権威のある、世界的にも権威の持てるようなものにいたしたいということを考えております。どの程度の設備投資をすればそういうことになるかというふうな点につきましては、従来も専門家の御意見も聞いてまいりましたけれども、今後とも専門家の御意見を聞きまして、御指摘のような方向で努力していきたいと思っております。  なお、厚生省のほうとも事の性格から共管にしていただいておりますので、厚生省とも十分協議してまいりたいと思います。
  31. 大橋和孝

    大橋和孝君 次に農薬残留許容量についてでございますが、昭和四十三年の三月三十日にブドウ、リンゴ、キュウリ、トマト、この四品目についてDDT、ガンマBHC、パラチオン、鉛、砒素の農薬について告示されております。四十四年の十二月二十六日にさらにまた四品目に三農薬、二品目に六農薬、六品目に八農薬残留許容量が告示されているわけでありますが、最近大阪市内で出回ったジャガイモとかキュウリなどにいずれも使用量を制限しているドリン系といいますかの農薬残留しておった。幾ら法で取り締まっても現実にこのようなことがあれば、国民の健康は保障されない。こういうようなことにもなると思うのでありますが、どうしてこのようなことが起こったのか、この点をひとつ聞いておきたいのです。
  32. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 最近いろいろキュウリ等におきましてドリン系の農薬が、残留許容量を越しているというようなお話が出ているのでありますけれども、ドリン系農薬と申しましても、アルドリン、ディルドリン、エンドリンの三つございますが、この三つにつきましては、厚生省のほうで食品衛生法に基づきまして、残留許容量がトマト、キュウリなど十二の作物につきまして、先生指摘のとおりきまっているのであります。それに伴いまして農林省といたしましては、先ほども御説明申し上げましたように、その許容量を越えない使い方というような考え方で、同時に安全使用基準設定いたしておりまして、アルドリン、ディルドリンにつきましては先ほどの十二作物の中では、トマト、キャベツについては土壌施用だけ、またキュウリにおきましては、その性質上種子粉衣というようなわずかな量しか使ってはならないというふうに規定しておりますし、またエンドリンにつきましての許容量設定は、その十二の作物については一切使用してはならないというようなきびしい規制をしておるわけでございます。この基準を守っている限り、許容量を越さないであろうということは、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、従来農林省でやってまいりました調査研究の結果から、十分安全を見積もっておりますので、越えないというふうに考えられておるのであります。しかしながら最近一部の地域において、残留許容量を上回るキュウリが市場に出荷されたというようなことになっておりますので、それにかんがみまして農林省といたしましては、土壌中に残留したものが、キュウリに吸われていくのだろうというようなことも考えられますし、そのようなことも最近明らかになってきたようでありますので、アルドリン及びディルドリンを前作に使用した地域では、麦類、イモ類を栽培しないように、さらにはまた麦類やイモ類を栽培する予定のあるところでは、アルドリンは使用しないようにという指導通達を出しまして、短期間にこれらの農薬の安全な、かつまた適正な使用方法を強力に推進していただくようにお願いしているところであります。
  33. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまのように安全を見越して規定をされているけれども土壌に使ったりなんかして残ったということで、話はわかると思うのでありますが、これは非常に毒性から言えばこわいわけでありますからして、   〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕 こういう問題は特に何かの規制をしなきゃ私はならぬと思います。ですからこういうことに対しては、もっとそういう危険のないような方法を講じてもらうことが必要であろうと思うし、将来それに対してはどういうふうにしたらいいかということなんかも、詳しく指示をしないと、またこれは続くのではないかと、こういうふうに思われます。特に注意をしてもらいたいと、こういうふうに思います。それからまた農薬メーカーのサイドで、禁止されているものはつくらせないということであります。そうしてむろん私は、輸入もしないし、農家にも使わせないといったような、何段階ものチェックのしかたがある、またそれをしなきゃできないのだと思うわけでありますけれども、現状のあり方の改善も含めまして、もっと徹底した取り締まりというか、監督というか、あるいはまた、そういう指導というか、こういうようなことを徹底化するチェックポイントをどういうふうにしていくかということを含めて、そうしていま一体こういうことに対してどういうふうにお考えになっているのか、将来はどういうふうにしていきたいと思われるのか、そういう点を私は少し聞いておきたい。
  34. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 先ほど農薬取締法改正検討しているということをお答えいたしましたときにも申し上げましたとおり、いま先生指摘のような問題がいろいろあろうかと思いますので、今後このような薬につきましては、まず登録の段階で先ほども申し上げたと思いますが、このようなことも十分調査いたしまして、非常に危険が考えられる薬というものは、もう登録をしないでいきたいというふうな方向考えております。一たん登録されておりましても、今回のようにいろいろな分析方法の進歩とか技術の進歩によりまして、いろいろ国民保健衛生上重大な影響があるということがわかってまいりました場合に、これを一定の手続を経て登録を取り消すとか、使用を禁止するとかできるような方向にしていきたいということを考えております。また現在、水生動植物に対する毒性というようなものを考慮いたしまして指定農薬というものがございますが、これは単に水生動植物に限らず、もっと広い意味の被害あるいは毒性対策ということにも拡大するような方向で、指定農薬というようなことに制度を拡大いたしまして、農薬の使用者とかあるいは使用できる場面というものを、さらに強く規制できるようにしていきたい。そのような方向で、いま申し上げましたようないろいろな方向で法改正について検討してまいりたいと考えております。
  35. 大橋和孝

    大橋和孝君 まあ非常にチェックポイントも、そういうふうな形でやっていただきたいと思いますけれども、これは考えてみますと、いまのような状態で私が一番不安に思うのは、何といっても急性、亜急性よりは慢性などのものだと思うのですけれども、こういうようなものに対して、いまおっしゃっているような形でチェックもされようし、研究もされようと思っておりますが、先ほどから繰り返して申すようではありますが、これに対して多額の費用が要るわけでありますが、そういうものとともに、疑わしいものは絶対使わない、こういうたてまえからおやりになると思いますけれども、そう言っておっても、なかなかこれがよほどの徹底をした取り締まりとかをしない限りまだ続くのじゃないかと私は思うのです。なかなかこれはほんとうに国民の側から考えて食べものが安全だというところまで持っていこうと思えば、私は早急にもっとやらなければならないと思うのでありますけれども、そういう意味で私はいまの質疑を取りかわしている中から申しましても、私はこれはなかなか不可能のような感じがするわけです。そのためにはもっと予算的にも、あるいはまたいろんな設備の上においても急速に大きな費用といいますか、予算化というものをしない限りできないし、また一面、先ほども申しているように、チェックポイントもぴっちりと、どうしたらいいかということを打ち出していただいて、そこで歯どめをしない限り、だらだらしてしまう。特に禁止になった薬がついていたというようなのは、土壌に使ったからまぎれてついてくるでしょうということでは済まされない問題で、それを食べて慢性中毒になってくる場合ですと、知らず知らずのうちに病気になってくるというような非常におそろしい問題ですね。ですから今後、慢性的な問題に対して疑わしいものは一切使用しないというところまでいけるのかどうか、あるいはまた、そういうことに対して今後どういうふうにしていかれるのか、どういうふうな方向を打ち出されるのか、一ぺん農林省厚生省のお考え方を少し聞いておきたいと思います。  それから第二点は、農薬汚染は、単に農作物ばかりでなく、空気あるいは魚やら、あるいは海水なんかも汚染しておるということでありますからして、こういう点から考えますと国際的な安全基準、使用基準が必要ではないか、もっと日本だけじゃなくて国際的にも考えなければならぬのじゃないかというところまでいまきているのではないかと思うのでありますが、こういうようなことに対して話し合う場をわが国が率先してつくり出していく、国際的に。こういうようなこともいまの時期でもう着手してもらわなければならないのじゃないかと思いますが、その点をあわせてひとつ御答弁願いたいと思います。
  36. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 慢性毒性につきましては、なかなかその検査研究の性質上、早急に結論が出てこないものもございます。しかしながら一方では、現在使用されておるものの中からも疑わしいものが使用されているのではないか。これらにつきましては今後使用の停止その他の措置を講ずればどうかという御意見かと思いますが、一般的に申しまして、私ども食品衛生を守る立場から、食品衛生の上におきましてはこれは添加物という問題があろうかと思います。それらにつきまして、現在の法制上からは疑わしきということでもってこれを使用停止をするということは、法律に基づくものとしては措置はとれないわけでございますが、これらにつきましてやはり国民の健康を保持する、事故が起こるのを未然に防ぐという意味から、何らかの措置がとれないかということで、現在厚生大臣の諮問機関といたしましての食品問題等懇談会において、これらのところの御意見がかわされているところでございます。私どもは、その結論を待ちまして、もしも必要であるならば、法的な措置も考えなければならないと思いますが、現在のところまでは、もっぱら指導によりましてメーカーの方々の御協力、御理解によって行なっているところでございます。  農薬につきましては、やはりそれと似たようなことかと思いますが、現在までにいろいろとすでに問題のありましたものにつきましては、農林省のほうにも申し入れまして、すでにしかるべき措置をとったものもあるわけでございます。  それから国際間の協力でございますが、お説のとおりであると思います。国連あるいはFAO及びWHOにおきましては、消費者保護並びに国際流通上の観点から、食品の国際規格作成の作業を行なってはおるところでございますが、食品中の残留農薬につきましても、その中の一つといたしまして検討が行なわれております。すでに穀類に残留する薫蒸剤につきましては、国際規格——これはまだ案の段階でございますが——この案が完成をしている状態でございます。わが国といたしましても、これに協力する方針でございまして、近く食品衛生調査会において穀類中の残留農薬の国際規格案の受諾につきまして、こちらでひとつわが国の立場からも審議を行なってまいろうという予定でございます。
  37. 大橋和孝

    大橋和孝君 穀類だけじゃなくて、もっといろいろ食品についてのあれは必要だろうと思いますので、これについての相当の前向きの準備が必要だろうと思いますが、その点どうですか。
  38. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 国際的なものだけに限って申しましたので、穀類だけのように聞き取れたかもしれませんが、国内的な問題としては、もちろん四十八年までに少なくとも現在使われております主要の農薬、それの食品中における残留量並びにそれに基づきましての許容量設定は全部済ませてしまいたい、目下三十九年以来引き続きこれは検討中でございます。現在、御承知のように、先ほど農林省のほうから御説明がございましたように、十二品目についての許容量設定されておる段階でございます。
  39. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは次に、全林野の労働組合で問題にしておるといわれております、ベトナムの戦争で使われておりました枯草作戦ですね、黄泉の国作戦といいますか、いろいろいわれておりますが、この二四五Tといいますか、ブラシキラーというこのフェノキシ系除草剤でありますが、これがいま日本で使用されていると聞いております。特にまた、これは妊婦なんかの体内に入りますと寄形児が生まれる、また鶏だとかそういうものの中には寄形的なものがたくさん出ているというのは、もうベトナムで報告されているわけでありますが、これが公然とわが国で使われているというわけで、全林野の労働組合の人たちはストライキまでやって、そしてすわり込みまでやってこれに反対しておるが、まだ使われておるというのでありますが、これは即刻やめさせる意思がありますか。その後の経過、その後の状態をちょっとお聞きしておきたいと思います。
  40. 福田省一

    説明員福田省一君) お答えいたします。  ただいま御指摘のブラシキラーでございますが、国有林の中におきまして造林いたします場合に、苗木を植栽したあとにはえてまいります雑草類がいろいろございます。それを従来は、かまあるいは刈り払い機で刈っておったのでございます。また植栽いたします前に、植栽するためにその場所のいろいろな地ごしらえが必要でございます。そういう場所にはササとか、あるいはいろいろな灌木がはえておりますので、これもやはり機械のことか、あるいはかまで刈っておったのでありますが、次第に伐採地点が奥地に入ってまいります。場所によってはそこの往復に半日以上も費やすというふうなこともございます。そういう場所につきましては人力をもってしてはなかなか労働力の調達もたいへんでございます。また、かりに労働力が調達できたといたしましても、能率の面から見まして非常にそれが落ちるということもございまして、昭和四十二年からただいま御指摘のございました二四五Tという薬剤を使いまして、地ごしらえの際に灌木類を枯らし、あるいは造林しましたあとにはえてきました雑草類を枯らしておるわけでございます。ただ、これは私たちは一応四十二年の六月に農薬として登録いたしまして、その登録による使用法によりましてこれを守っておるのでございます。きわめて濃度も薄く危険はないというふうに考えておるわけでございます。しかし、それではやはり十分でない場合もございます。ということは、過去において若干災害の出た場合もございます。そういったものを徹底的に除却したいということから、さらに林野庁の内部におきまして散布の基準を設けまして、この登録にきめられました使用法あるいは注意事項、あるいはそういったもの以上に規制をしておるのでございます。ただ、ただいま先生から御指摘のありましたように、いろいろと公害問題が最近きびしく批判されておるものでございますから、私たちといたしまして十分担当の部署、厚生省なりあるいは農政局等と十分に相談をいたしまして、間違いのないようにしてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  41. 大橋和孝

    大橋和孝君 これはもういま濃度を薄めているから、あるいはまた、いろいろなことをしているからというお話でございますが、これはベトナムの戦争に使われて、ベトナムにおいていままで——いま申したように奇形児が続出した。これは国際問題にもなるからというので、アメリカ自身、国防省が即時この使用を禁止しているわけです。これは薄めて使用するのじゃなしに、もう禁止してしまっているわけであります。それがわが国では、いずれにしてもこれが使われるということは、国民感情からして非常に許されないようなことだと私は思うわけでありますが、いまおっしゃいましたように、林野庁のほうではその効果とか、薬害とか、安全性の試験をしたとおっしゃっておるが、どこでどういうふうに、どういう計画で、どれくらいのお金を使って、その結果がどうなっておるのかということを詳しく一ぺん聞かしていただきたい。同時に、いままで日本において起こった障害についても少しく報告していただきたい。私もちょっと調べてはおりますけれども……。
  42. 福田省一

    説明員福田省一君) あとのほうから申し上げますけれども、どういう障害が出たかという点についてひとつお答えしておきます。  この除草剤散布に伴う公務障害の件数でございます。これは二四五T以外に、塩素酸系とかフェノキシ系とかいろいろございまして、この三種類が主でございますけれども、これは三十五年から四十四年までに四十三件ございました。災害を内容別に見ますと、皮膚炎が二十件、やけどが十六件、それから目の病気が七件となっておりまして、薬剤を種類別に見ますというと、塩素酸系が四十二件、フェノキシ系が一件となっておるのでございます。年度別に見ますというと、三十五年に一件、三十七年に七件、三十九年には六件、四十年には三件、四十一年には十七件と、こう増加したのでございますけれども、塩素酸系については防護の衣類、これは作業用の特殊手袋とか、あるいは防護衣、保護のマスク、保護のめがね、それから防護の足袋というものを必ずつけさせるようにいたしております。それで薬剤の全般についての取り扱いの指導も徹底するようにつとめてまいりまして、四十二年には五件、四十三年には二件、四十四年にはまた二件となりまして、除草剤使用の増加にもかかわらず、一応その件数は減少しておりまして、最近はまだ出ていない、そういう状態でございます。  それから、どこでどのような試験をしたのかという御指摘でございますが、これにつきましては、それぞれの実施をいたします地域に近い大学あるいは試験場その他いろいろの機関に委託いたしまして、その調査をしておるのでございます。で、その詳細につきましては、ただいま詳しい資料を持ち合わせてございませんので、後ほどお届け申し上げたいと思います。
  43. 大橋和孝

    大橋和孝君 検査をした結果につきましても、少しく御報告を願っておきたいと思う。
  44. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) いま林野庁のほうからお答えを申し上げましたように、この薬は四十二年に登録されておりますが、四十二年の時点におきましては、いわゆる急性毒性と申しますか、一般の毒性に関してだけのいろいろ調査が行なわれまして、その限りにおきましては非常に安全なものであって、毒物劇物などに指定されませんで、普通物として登録されております。効果が非常によろしいということと、そのような安全な薬だということで四十二年以来使ってきたわけでございますが、先生指摘のように、最近アメリカにおきましてこの催奇性の問題が云々されるに至りました。私どもが得ております情報では、昨年の十月に一番最初にこのような試験の結果がアメリカで発表されたと聞いておりますが、それにつきましては薬の純度等に問題があったわけでありまして、もう一ぺん再試験が行なわれまして、アメリカ厚生省といたしましては本年の四月十五日に初めて発表されました。それによりますと、妊娠初期のラットとマウスに比較的多量の二四五Tを注射いたしました場合に、ラットでは奇形を生じなかったけれども、マウスのほうでは奇形の発生が増加したというような報告がございます。それによりましてアメリカはその使用の規制を行ないまして、家庭とか湖沼の周辺、食用作物における使用を禁止いたしました。けれどもアメリカでも林野での使用は禁止いたしておりませんで、水源地帯だとか、あるいはレクリエーション地帯のみの使用を制限するというような指導を行なっているやに聞いております。わが国といたしましては、先ほど林野庁のほうからお答えいたしましたように、大体造林地にのみ使うというお話でございますし、またその使用量がアメリカではヘクタール当たり三・四ないし四・五キロの使用量だというふうに聞いておりますが、わが国ではヘクタール当たり二キログラムというような使用量になっております。ベトナムの枯葉作戦ではヘクタール一二・四キロの薬が使われたと聞いております。以上のような状態でございまして、現時点におきましては、まだわが国では、下草を刈るため、ごく一部におきまして、しかも同じ場所に二回目に使われることは何十年に一ぺんということになるかと思います。そのようなことで使われておりますが、いろいろ問題もあろうかと思いますが、林野庁のほうからお答えがありましたように、関係各省庁とも協議いたしまして、今後さらに情報の収集、あるいは他の代替手段等についても検討してまいりたいと考えております。
  45. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう一点。こういう薬はいまどういう経路で輸入されておるのか。あるいは日本でつくられておるのはどこでつくられておるのか、ちょっと伺いたい。ことに、この問題は、いまおっしゃいましたように、毒性はわりあい少ないとおっしゃいますけれども、少なくとも動物実験でもそういう結果が出ておりまして、これをある程度野放しにしたならばサリドマイドの二の舞になるような感じがいたしますので、後世まで害を及ぼすような毒性のあるものについては、もっともっと真剣にしなければならない。いまのあなたの答弁のようなぐあいに、それはもうだいじょうぶだというふうな考え方で、二へんとは使わないとかなんとかいうような軽い考え方でいくことが、将来に禍根を及ぼすようなことになろうと思うので、私はいまの答弁には非常に不満でありますとともに、ことに、こういう薬がどういう経路で入って、どこでつくられてどれくらい生産されておるかということを少し聞かしてください。
  46. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) 少しお答えのしかたがまずかったようで恐縮でございますが、ただいま申しましたのは現在使われるに至りました経緯を申し上げたつもりでございまして、最後に申し上げましたように、ことしになりましてこのような問題がアメリカでも取り上げられてまいりましたので、この毒性、そういった催奇性その他のことに関しましても至急検討いたしまして、しかるべき処置をとっていきたいというふうに各省庁とも協議してまいりたいと考えております。  製造しておりますところは、わが国では二四五Tにつきましては日産化学と石原産業、原体を製造しておりますのは保土谷化学工業と三井東圧化学の二社だということでございます。最初に私が申し上げました日産化学と石原産業は原体を製剤にする会社でございまして、原体は保土谷化学工業と三井東圧化学が製造いたしております。さらに製造量につきましては、二四五Tの乳剤、でき上がった製剤といたしまして四十四年度の製造量は七キロリットル、出荷数量も七キロリットルでございます。なお、そのほかに二四Dと二四五Tの混合の乳剤といたしまして四十四年度には二十キロリットル出荷されております。それから二四Dと二四五Tの混合を粒状にしました粒剤が千八百トンばかり出荷されております。
  47. 大橋和孝

    大橋和孝君 聞きますと、この使用量も相当ばく大であります。こういうようなことを考えますと、非常に私は危惧を抱くわけでありますからして、一般の農薬と同じように、この問題に対してはまた特別な条件があろうかと思いますから、特に私はこの問題に対しては研究を進めてもらいたい。そうしてこういうものは禁止してもらいたい。私はこういうような要望を持っておりますので、どうかひとつ省内においても、あるいはまた厚生省の側とも話し合いを進めて、こういうふうな非常に後世にまで影響を及ぼすようなものは使わずに済むように、何とかほかのものの開発を進めていくような形が望ましいと思いますので、特に要望して質問を終わります。
  48. 和田静夫

    ○和田静夫君 農林省関係ですが、一つは輸入ジュースの問題について、それから一つは農夫病の問題について、この二点について質問をいたします。農林大臣は午後になるようでありますから、残った部分については午後の冒頭に農林大臣に二、三のお答えを願うことにいたします。  まず、輸入ジュースをめぐる二、三の問題について質問をいたしますが、経済企画庁に最初に尋ねます。去る五月一日の閣議で経済企画庁長官が、濃縮ジュースの原料の緊急輸入を提唱されたようでありますけれども、それに至るまでの事情を簡単に説明してください。
  49. 宮崎仁

    説明員宮崎仁君) 御指摘のジュースの輸入の問題につきましては、御承知のとおり、ことしに入りましてジュースの需給関係が逼迫をしてまいりまして、このままでいくと、かなりの値上がりをするというような予想になりましたので、緊急にひとつジュースの輸入をして価格の安定をはかる必要があるということで問題になったわけでございます。いろいろの経過がございましたけれども先ほどお話しのとおり閣議の席におきましてそういったことが決定をせられまして、これに基づいての輸入が行なわれた。こういうふうに承知をいたしております。
  50. 和田静夫

    ○和田静夫君 物価対策でもってやられた、一言で言えば。そこで十五日の閣議で——今度はそれから約二週間たった十五日ですね、佐藤総理大臣のお声がかりがあって、緊急輸入が閣議決定された。ところが、この政府決定後の六月の下旬に全清飲ですね、正確には社団法人全国清涼飲料工業会、この全清飲が加盟各社に公表したアメリカ産原料のいわゆる果汁の分配価格ですね、これは一キロ当たり四百九十円。全清飲と同じアメリカの会社、これは確認をしてもらいたいのですが、サンキストレモンですね、アメリカの会社と取引をしている輸入業者が、全清飲に示した価格三百八十五円、これに比べて何と百円以上も高くつく。いまお答えのように物価安定政策としてとられたのが、実は百円以上も高くつくのです。こういうふうに伝えられた。これは事実ですね。
  51. 宮崎仁

    説明員宮崎仁君) このジュースの輸入は、御承知のとおり農林省のほうから、実需団体である清涼飲料関係メーカーと組合に割り当てがありまして、これを輸入業者を通じて輸入をするということでございますが、全清飲のほうが引き取りました価格が四百九十円であるということは聞いておりますが、それから先の取引なり価格の状況がどうであったのか、この辺は経済企画庁としてはつまびらかにいたしておりません。
  52. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ただいま御指摘になりました全清飲がその傘下の会員であります需要者つまり工場、ジュースメーカーに売り渡した価格は、いま御指摘のとおり四百九十円ということに聞いております。それから全清飲がインポーターから仕入れた価格はキロ当たり四百二十七円というぐあいに聞いております。
  53. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ農林省にお聞きしますが、きのうこういう経過が実はあったわけです。私は、まあいまの答弁との関係で少し割り高過ぎないかという疑惑を持った。農林省は当然これを調査されなければならないと思いますね。それから全清飲からも報告があった。そこで私は、昨日の自分の質問が終わってから農林省に対して報告の内容を教えてくれという形で電話をいたしました。確か食品油脂課です。ところが、ずいぶん皆さん譲り合ってなかなかお出ましにならぬ。二つくらいの課に行ったり来たり、二往復ぐらいされた。やっと永山さんという方が出られたのでありますが、その点を依頼して切ったら、また私の部屋に電話がかかってきた。また「どういうことでしょうか」と言う。そこでまあ用件をさらに言うと、そうしたら、しばらくして電話で全清飲の報告ではキロ当たり四百九十円、九十日手形の場合は四百九十二円、全清飲の手数料は二十三円という返事だったのです。それでよろしいかということでありましたから、私は、これは不満でありますが、農林省でお調べになったのはそれだけですかと、逆に反問したら、それだけですと言うから、それだけしか調べてないならけっこうだと言わざるを得ませんから、そこではけっこうだと答えたのでありますが、結局はそれ以上教えてもらえなかったのであります。そこで、これは大臣がお見えでありませんが、大臣に伺いたいのです依れども農林省はこの件でそれだけのことしか調べておられないのですか、全清飲の言うことを、報告があったものをそのまま納得してしまっている、そういうことなんですか。はっきりしていただきたいと思います。
  54. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 御連絡の過程においていろいろ不行き届きがありましたことをおわびいたしますが、全清飲の仕入れた価格は、ただいま申し上げました四百二十七円、それから四百九十円に至る——これは販売価格でごさいますが、過程といいますか、その加算された額の内訳はどういうことかと申しますと、国内運賃、金利、あるいはその他の諸掛かり、これが四十円というぐあいに私は聞いております。それから全清飲の手数料は五%でございますが、二十三円。御指摘のありましたように二十三円。四百二十七円プラス運賃、金利、その他の諸掛かり四十円、プラス二十三円。これが需要者の工場に対する売り渡し価格四百九十円ということであります。
  55. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、東京都心の中堅の輸入業者は、全清飲がかりにいまの五%をとったにしても——五%という仲介手数料というものが一体妥当なのかどうかはありますが、中小業者は一キロ四肝十円くらいで入手できることになりませんかという——たとえば東京、大阪間のトラックの運賃はいま三十キロの原料果汁で百五十円見当なんですが、そうすると四十円という額、あるいは手数料、そういうものについて農林省は一体全部妥当としているのか。私は、そういう意味で、もっとこのことは検討する必要があるし、国民の中には差額は一体どこへいっているんだろうという疑惑が実はある。これは後ほどこの焦点ですから述べますが、こういう点については何も聞き合わしたり調査をされたりはしなかった。あるいは何か聞かれている。だれしもが抱くような、そういう疑問について、農林省はうのみにするのじゃなくて、どうみずからが納得されたのか、まずお聞きします。
  56. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 個々のコストの費目といいますか、そういうものについて、運賃が幾らである、金利が幾らであるという内訳までは、いま私手元に持っておりませんので、そういう意味で的確なお答えができないのは申しわけなく思っておりますが、たとえば運賃にいたしましても、これは東京近傍、それから遠隔地というぐあいに、個々別々にもちろん運賃が違うことは当然でございますが、販売価格を決定するにあたりましては、全国でこの傘下の組合が数百あるわけでございますから——しかも、それか小さい中小メーカーでございますから、それが散在しておる。そういったところにいろいろ千差万別の運賃が出てくるわけでございますが、それをプールして、そういったことでやっておりますが、個別価格としては高いところ、あるいは安いところ、こういう差が出てくると思います。運賃につきましては、ただいま申されましたように、運賃が四十円のうちの相当部分ではないかと推量されるわけでございますが、これはただいま申し上げましたように、中小メーカーでございますから、したがって一カ所にかたまっておるわけではございません。分散しているといったこと、それから小口に輸送しなければならないということに伴う輸送費の増高ということもございましょう。あるいは冷蔵が必要な場合は特殊の冷蔵車も使うかと思いますので、通常の運賃よりもかさむといったことがあって、それが約三十円程度、その他金利、その他の諸掛かりを足して四十円、こういうぐあいに聞いておりますが、それ以上のこまかい費目につきましては、申しわけありませんが手元にございません。
  57. 和田静夫

    ○和田静夫君 冒頭に確認をいたしましたとおり、物価安定政策として閣議はそのことをきめた。いま申しましたように、今度の輸入濃縮ジュースの分配価格があまりにも割り高であるという意見が非常にあります。そういう意見に対して経済企画庁は、当初の政策目的関係について、このことをどのように今判断されておりますか。
  58. 宮崎仁

    説明員宮崎仁君) この緊急輸入が行なわれた目的がジュースの価格安定にあったわけでございまして、いまお話のようにメーカーのほうに四百九十円という価格でこれが売られたわけでございます。これは末端にまいりましても国内の価格に比べれば相当安い価格——当時の価格と比べて安い価格でございます。全体としてジュースの価格が、この措置もあって値上がりしてないということでございますので、それ相当の効果はあったというふうに判断をいたしております。ただ輸入のやり方、それから割り当てのやり方等については、私どものほうとしましてもいろいろ検討をいたしておりますが、もう少し何か競争原理を入れるような方法でやるということができないか。こういうことはかねてから主張もいたしておりますが、今回の場合についても、そういった感を持っております。
  59. 和田静夫

    ○和田静夫君 局長、あなたはそうだから答弁できない。当事者を出しなさいと言ったんだけれども——部下をあなたはかばう結果になるのか——あるいは部下の言ってることを裏切る結果になるかもしれません。たいへんな答弁をしております。もう一ぺんもとに戻りますが、全清飲に示した価格三百八十五円というのが輸入業者との関係ではあるんですよ。三百八十五円という全清飲に輸入業者が示しているそのルートをなぜ使わないのか。それとの関係でいけば、いま経済企画庁国民生活局長が述べたことというのは、昨日からきょうまで用意されて協議された答弁のしかたですよ。それじゃ次のことをあなたは否定されますか。米山経済企画庁物価政策課長が「たしかに緊急輸入を提案したのは経企庁だが、認可のあと、こんなことになっているとは……。まったく心外だ。」、この発言はなかったと言われますか。いまのあなたの答弁との関係で、あったと言われますか。
  60. 宮崎仁

    説明員宮崎仁君) この問題が、たしか読売新聞だったかと思いますが、新聞に取り上げられて、そしてどうもその輸入商社のほうから示された価格に比べて全清飲がメーカーに割り当てた価格が高過ぎるじゃないか、こういう御指摘がされておったようであります。そのことに関して米山君が、できるだけこれは価格を押さえるという趣旨でやられておるわけでありますから、そういった形で、もし非常に細工があるんだというような形とすれば、それはあまり好ましいことじゃない、遺憾であるという趣旨のことを言ったようでございます。ただ、何ぶんにも私どもとして、実際にこの輸入業者がたくさんあるわけでございましょうが、それと全清飲との間でどういうような交渉をされて、そして輸入業者を決定されたのか、その辺の事情をつまびらかにしておるわけではございませんので、もしそういうことであるならばということで、あの発言が行なわれたように、私、本日、本人から聞きましたが、そういうふうな趣旨だそうであります。  で、先ほど申しましたように、そういったようなやり方に問題があるとすれば、かねてわれわれはそういった面についてもう少し競争の原理を取り入れてやっていくようなやり方が考えられないかということを、これは農林省、通産省等にも申し上げておるわけでありますが、原則としてそういった運営を今後考えてもらいたい、こういう希望を持っております。
  61. 和田静夫

    ○和田静夫君 農林省、いまの答弁について——競争の原理を取り入れていくべきだという経済企画庁側の希望がありますが、農林省はなぜこれを取り入れられないんですか。後ほど私が申し上げるようないろいろのつながりがあって取り入れられないんでしょうか。
  62. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) その前に、ただいま先生の御指摘になりましたインポーターから全清飲にキロ当たり三百八十五円というような申し出があった、こういう御指摘がありましたが、私どもはそのようには実は聞いておりません。先ほど申し上げたように全清飲がインポーターから仕入れられました値段は四百二、三十円ということに聞いておりますので、その点、釈明を申し上げておきます。  それから競争原理、もちろん私ども競争原理について、それに逆行するような原理を主張するものではありません。ただ総合農政の一環として、果樹農業の振興というものがわが国農政の基幹でございますから、その中でも特に新しい需要開拓としてのオレンジジュースの部面におきましては、農林省におきましてもこれから最も力こぶを入れる分野の一つとして考えているわけでございます。当然そういう意味におきまして、輸入という問題と国内産果汁産業の振興、果樹果実生産者の問題、こういったことを考えて、計画的な必用的な輸入をはかるということが当然出てくるわけでございまして、ジュースの輸入にいたしましても、実需者である全清飲というものを対象にいたしまして割り当てをした、こういったことになっておるわけであります。それから全清飲の実需者に対しまして、わがほうから需要者の発注証明重というものを交付いたしまして、そしてその全清飲がどのインポーターに輸入業務を委託するか。それで、それがどういうぐあいにきまるかということは、これは私ども特に容喙をいたしておりません。全清飲の選ぶところに従っているということでございます。
  63. 和田静夫

    ○和田静夫君 六月から七月にかけてすでに三百トン輸入されたんですね。これは間違いありませんね。
  64. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 三百トン輸入されております。
  65. 和田静夫

    ○和田静夫君 そして、これはすでにある業者が売り出しています。その業者は、あなたのところにもよろしくとあいさつに行っているから御存じと思うが、その三百トンという原料はボトルにして何木ぐらいになりますか。
  66. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) いろいろなボトルの——容器の大きさがございますもので、何本とは一がいにちょっと申し上げられないということでございます。
  67. 和田静夫

    ○和田静夫君 いわゆる平均的に、普通の状態のボトルでどれだけになりますか。
  68. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 三百トンと申しますのは、これは五分の一の濃縮果汁でございますから、これが製品になる場合には五倍になる。それからボトルは大体、いまちょっと専門家に一応聞いてみたんですが、多いのは二百数十CCのものが平均的ですから、ちょっといま何ボトルになるか計算はすぐにできませんが、そういう状態でございます。
  69. 和田静夫

    ○和田静夫君 とにかく二百五十CCぐらいのもので、たいへんな数の本数がすでに供給されております。それなのに値段が下がらないというのは、閣議決定の線とは全然趣旨が合わないじゃないですか。
  70. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) まあ値段が下がらぬ、そういう御指摘でございますが、先ほど経済企画庁の局長から御説明いたしましたとおり、非常に値段が上がり勾配である。このままほうっておけば相当なジュースの暴騰があるということが推測されまして、そういったことに対応いたしまして緊急輸入ということをいたしましたわけでございますが、緊急輸入いたしました結果、ジュースの消費者価格の値上げは行なわれていない。つまり、価格の暴騰というものは防げている、こう思っております。  それから、輸入もので製品化されたジュースの大体の市販価格は、やはり国産のものに比べまして原料ぐらいの差です。一般的に言って原料の差、もちろん国産のほうは原料高でございますし、輸入ものは逆に原料の面において安いわけですから、製品の面においてもほぼ同等の原料価格の差があらわれて市販されているということになっております。
  71. 和田静夫

    ○和田静夫君 先ほど値が下がらない、だから値は横ばいだと、こう言われた。いま、まあ値段を上げないと、こう言われたけれども、その辺のことはひとつ明確にそれじゃ上げませんね。明確に上げませんね、これは。そこのところはいまのままの答弁でよろしいですか。念のために言っておる、あなたの立場も考えて。
  72. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) これは行政価格というものではもちろんございませんから、行政の力がどこまで関与できるかというところに問題がございますが、現在の需給状況におきましては、ジュースの値上げということは防げるのではないかと、こう思っております。
  73. 和田静夫

    ○和田静夫君 それで、全清飲から各ボトラーに分配されるいわゆる分配経路、これをちょっと説明してください。
  74. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 全清飲から四百二、三十社というところに分配されておりますが、これは内部で一定の希望をとりまして、その希望に応じてその数量を小口にトラックで運搬している、こういったところであります。
  75. 和田静夫

    ○和田静夫君 これは恐縮ですが、四百二十社から三十社にわたるところのリストと、そこまでいく経路をあとで資料にしてください。念のために申し上げておきますが、大臣が実はきょうお見えにならないものだから、この輸入ジュースの問題は、この次もう一ぺんやります。その前段的な質問ですから、それをいただきたい。それはよろしいですが。
  76. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 承知いたしました。
  77. 和田静夫

    ○和田静夫君 それをいただくことを前提にして、その経過で——その過程ですね、いわゆるいままでの過程、ボトラーにおろしている……。そこで不都合なことが起こっている。いま私は断定はしませんが、不都合なことがあるのですけれども、その報告なりその辺のことはキャッチされていますか。そのことだけひとつ……。
  78. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 不都合なことという御指摘がございましたが、まだ私の手元には現在把握しておりません。
  79. 和田静夫

    ○和田静夫君 現在は入ってきてない。それじゃ全清飲が輸入業務を発注した先はどこですか。
  80. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 私どもが聞いておりますのは日進通商株式会社、代表取締役山本英男というところだと聞いております。
  81. 和田静夫

    ○和田静夫君 日進通商株式会社ですね、そしていま山本英男。まあここに大臣がいないと困るんだけれども、この日進通商は資本金二百万円、正式の会社の設立は六月九日、その前の六月の四日に設立総会が開かれ、翌五日には通産省に輸入ワクを申請、六日後の十一日に通産省から許可を受けている。ここは通産省、せっかくお見えですが、間違いありませんね。
  82. 豊田整

    説明員(豊田整君) 間違いありません。
  83. 和田静夫

    ○和田静夫君 ところで緊急輸入の政府決定は五月十五日であります。先ほど確認したとおりです。つまり輸入がきまってから一カ月もたたないうちにこの日進通商は設立された。これはたいへんな輸入許可という関係では早わざをやっていることになるのですが、これはもうたいへんな問題が実はあるのです。まあ大臣は閣議で救われているようなものですがね。政府決定直後の五月下旬に、国内の大手の貿易商社の幾つかが軒並み全清飲に詰めかけて実は商談に入ろうとしたのです。ところが、すでに全清飲と、このいま確認をしてもらった日進通商との話がまとまってしまって、受け付けてもらえなかった。そして結局この全清飲は、何も正式に設立もされていなかった日進通商株式会社と先約を結んで、一方では、いま通産省が確認をされたように、通産省までがまぼろしの商社に輸入ワクを認めている。そういうことになっていたと、経過を追っていくと考えざるを得ないわけです。——通産省の農水産課に、日進通商の代表は農林省が全清飲に発行した輸入の許可書と、全清飲が日進通商に出した輸入の発注書を添えて、ワクを申請してきた、これは形式的に問題はないと。これはもちろん、通産省は形式的には問題はないとお答えしようと思って、立つ用意をされたのだろうけれども、これは言われなくたって私のほうは先にわかっています。そこで「日進通商それ自体も申請の前日に創立総会を開き、合法的な設立の手続を踏んでいた。何ら申請をこばむ理由がなかった」、これは答弁されなくても、そういうふうに言っていらっしゃいますから、そのとおりでしょう。あなた方は、なぜそんなに日進通商を——形式じゃありません、いま言った経過は明らかですが——優遇されなければならなかったのですか。
  84. 豊田整

    説明員(豊田整君) おことばを返すようでございますけれども、日進通商から割り当て申請を受けましたのは六月五日でございまして、その時点におきましては日進通商は法人格がないということを知らなかったわけでございます。
  85. 和田静夫

    ○和田静夫君 知らなかった……。
  86. 豊田整

    説明員(豊田整君) はい。五日の時点では知らなかったわけです。そこで日進通商という名前は私どもとしては聞いたことがございませんので、どういう会社であろうかということをその後調査いたしまして、九日の時点で法人格がないということを知ったわけでございまして、その申請時におきまして法人格がないということを理由に私ども申請を却下しておらないわけでございまして、九日の時点でどうするかということを寄り寄り内部で相談いたしましたところ、日進通商が法人格を取得したのは申請後であることは間違いございません。ただし、その申請時点におきまして会社設立中であったということも、これも疑いない事実でございまして、設立中の会社がそういう行為をとり得るかどうかという問題にしぼられるのじゃないかと思いますけれども、私どもの解釈といたしましては、こういった設立中の会社が受注を受け、しかも割り当て申請をするということは許されてしかるべきじゃないかという解釈のもとにやっておりまして、発券の段階におきましてはもちろん会社が有効に成立しているのを見届けまして十一日に交付しているというかっこうになっておりまして、私どもの解釈では、これは問題はないという、ふうに考えております。まあ蛇足でございますけれども、もし、かりに申請時における瑕疵があったと——どもとしては瑕疵ではないと思っておりますけれども、かりに瑕疵であると仮定いたしましても、それは十一日の段階では完全に治癒されているというふうに見ているわけでございます。以上でございます。
  87. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、そこはあまり重要じゃないのです。それだから通産省は実は呼んでなかったのです。そこよりも先ほど経済企画庁から御答弁があったように、物価政策的な観点からこのことをはかっているのですよ。そうすれば、たとえばその法律的な可否の問題よりも、設立中の会社とも折衝されたらよろしいでしょう。しかしながら、その他のところと折衝されてもいいわけです。いみじくも経済企画庁の米山課長は、農林省が緊急輸入を認める段階で、全清飲以外の各関係団体にも同時に割り当てるべきだったと思うという趣旨のことを言っている。そのことは少しも間違ってないと思うし、私も、それはそうだと思うのです。そういう意味においてたいへんおかしいと、こう思うのです。  そこで私は、最後の質問をしておきますが、私は、ここに日進通商の定款を持っていますし、役員名簿も持っておりますし、もちろん社団法人の全国清涼飲料工業会の関係登記書類も持っております。この日進通商株式会社の定款を見ますと、発起人や役員をやっておられた方、藤井正次さん、フジエさん、光雄さん、宣子さんといった方々、これは言わずと知れた農林省と非常に関係の深い競馬会の輸入をやっていたあの藤井兄弟、まあ名うての藤井さん兄弟でしょう。この弟さんがこの会社を始める——可否の問題をやるわけじゃないんですから——これからが本論なんです。直前に千二百万円の借金をかかえていらっしゃった。このことについては御存じですか。
  88. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 農林省としては承知しておりません。
  89. 和田静夫

    ○和田静夫君 日進通商と関係のあった、たとえば通産省なら通産省は御存じですか。
  90. 豊田整

    説明員(豊田整君) そういう事実は知りません。事実であるかどうかも知りません。
  91. 和田静夫

    ○和田静夫君 この問題については、ここでやめておきます。通産大臣と農林大臣の都合のいいときにあとでやります。  農夫症の関係に移ります。昨今、米の基本的な需給関係の変化に伴って、政府の米対策に協力しなかったならば食管法の改正もやらざるを得ないことになる、そういう衣の下によろいをのぞかせるような発言が政府責任者によって述べられています。私は、この問題をいま直接取り上げようとは思いませんが、実は最近の米問題は財政的観点のみが強くて、きょう問題にしようとする農家の生活実態や将来の展望というものが、実はうしろのほうに退けられて、そういった問題を顧みようとする態度に欠けている点、それを非常に遺憾に思っているんです。農家の仕事は、最近機械の導入などによって近代化されたとはいいますが、非常に重労働であることは、これは昔もいまも変わりません。しかも山村のようなところは近代化の手も及びません。また最近では省力のためなどというようなことで、とても農薬が、先ほど来も話があったように、農家の経営者の健康に悪い影響を与えるなど、農業労働についていろいろな困難が伴っています。そういうような実態を反映したものが私は農夫症であろうと思うのです。たいへん冒頭から抽象的な論議で恐縮ですが、そういう意味での農夫症の実態について農林省は全国的にお調べになったことがありますか。
  92. 田所萠

    説明員(田所萠君) 農林省におきましては生活改善事業という事業をやっておりまして、その中で農山漁家の健康生活管理特別事業というのをやっておるわけでございまして、全国的に網羅的な調査というものは農林省は直接はやっておりません。部分的にそういう事業のために、そういう対象の地域につきましてそういう実態というものを調査しておるわけでございます。
  93. 和田静夫

    ○和田静夫君 長野県の厚生連の佐久総合病院長の若月さんは、農村における健康問題について次のように述べられているのです。「農業の中にも多くの機械農薬が導入され、農村生活の中にも多くの電気器具が使われるようになり、ともかく形の上では、「近代化」の道を歩んだことは疑いない。しかし、この「近代化」「都会化」の実態を追求してみると、これを手放しで喜べない幾多の問題を見出す。つまり、その根底には相変らずの健康犠牲がつきまとつている。兼業農家のおびただしい増加、主婦農業、出稼ぎなどは、農家の生活、ことにその基礎としての健康の破壊をもたらしつつあるし、また農業の近代化とともに、従来とは異なった新しい型の健康障害も続々と生れている。」、さらに先生は、八千穂村の調査結果について、「われわれは、八千穂村で、この九年間全村健康管理を行なっているが、その「農夫症」発生の推移をみると、次第に、ごくわずかではあるが、減少の傾向をみせている。ところが、これを最近「兼業化」した農家と専業のままでいる農家とに分けて、さらにこれを主人・主婦別にみると、「兼業化」した農家ではとくに主婦において、農夫症がいちじるしく増加している。同じ農家内でも、兼業化によって、他産業に従事するようになった主人の方は、農夫症から解放されたのに反し、いわゆる「主婦農業」になった主婦の方はかえつて逆行の結果を示しているのである。」。そうして結論としては、「結局、近代化といっても、まつたくうわべだけのものに過ぎず、ものを重視して人間をまつたくかえりみない現在の農業政策の矛盾の中に、その根本的な問題が胚胎しているといわねばなるまい。」、まあこういうふうに農夫症をずっと専門的に扱っている——農夫症群とでもいいますか、専門的に扱っていらっしゃる長野県の佐久病院の院長や、あるいは石川県の能登半島の七尾にあります能登総合病院の院長奥田博士なんかがそう述べていますね。そうすると、農林省のいままでの農業政策というものが生産本位で、農家の健康や生活の改善を軽視してきたということについて、農林省は強く反省すべきであると思いますが、これはいかがですか。
  94. 田所萠

    説明員(田所萠君) 生活問題というのは非常にむずかしい問題でして、幅広いいろいろな困難な問題があるわけでございますが、農林省自体といたしましては、いままで農業の生産増強、要するに食糧の安定的供給というようなことに戦後の食糧不足時代から一生懸命になって努力してまいったわけでございますが、しかし最近は非常に生活という問題がやかましゅうございまして、農林省におきましても、戦後昭和二十三年に農業改良助長法というものが制定されまして、その中で農業の改良指導、それから生活の改善指導、それから青少年の育成指導、この三本の柱によりまして、実はやってまいったわけでございます。しかし、何といたしましても、その当時からの国内の情勢ということから、生活優先というような姿勢というものはなかなか強く打ち出せない時代にあったわけでございますが、生活改善事業におきましては、細々ながらそういう生活優先の指導を農村において二十年来実際やってまいったわけでございます。それで最近におきましては非常にそういう問題も強くなっておりますし、その当時の生活改善というのはどちらかといいますと、非常に貧困な時代でございますので、衣食住というような観点からの指導が非常に重点的にやられたわけでございますけれども、その後農村も豊かになってまいりました。そういうようなことから生活改善におきましても、生活と生産の調和ということに力点を置きまして、特に最近におきますような農村におきます経営のいろいろな変化ということに対応しまして、生活をどうすべきであるかというような点に力を置きまして、現在生活改善事業というものを進めておる段階でございます。
  95. 和田静夫

    ○和田静夫君 農林省昭和四十年度から健康生活管理事業を実施された。そして、さらにこれに加えて四十三年度から家族労働適正化事業を実施された。そこで健康生活管理事業の実施状況と各年度の国の予算額、それから県費等を加えた事業費の総額、また実施地域については、四年間の事業だそうでありますが、実施前と実施後の成果というものについて御説明を願いたいと思います。ただ昨日課長さんがお見えになって、かなり詳しい説明と資料をいただいておりますから、簡単に述べてください。
  96. 田所萠

    説明員(田所萠君) 農山漁家健康生活管理特別事業でございますが、これは昭和四十年から開始いたしております。それで予算額を申し上げますと、昭和四十年におきまして九百四十五万円、四十一年度が千二百六万五千円、四十二年度が千四百六十三万六千円、四十三年度が二千二十九万七千円、四十四年度が二千四百三十六万三千円、四十五年度が二千六百四万一千円でございます。そして実施した個所数でございますが、この事業は二カ年継続で一カ所をやるわけでございますが、四十年度におきましては二十七カ所、四十一年度で十五カ所、それから四十二年度で三十一カ所、四十三年度で四十カ所、四十四年度で四十六カ所、四十五年度で四十六カ所ということでございまして、合計二百五カ所において実施されておるわけでございます。
  97. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、これからなんですが、生活改良普及員の数は全国で二千二百五十五名で、三分の二が国の負担、三分の一が県の負担のようですが、四十三年度の普及員の人件費の総額と、それに対する国の補助額をちょっと。
  98. 田所萠

    説明員(田所萠君) いまちょっと四十三年度資料はさがさないとあれでございますが、四十五年度の金額は十四億四千百九万一千円でございます。
  99. 和田静夫

    ○和田静夫君 あと三年ぐらいたたないと、四十五年の決算は始まらないですよ、四十三年度決算ですから。
  100. 田所萠

    説明員(田所萠君) 後ほど数字を調べまして、すぐお知らせいたします。
  101. 和田静夫

    ○和田静夫君 後ほどじゃこれは勝負にならないのだが、それでは後ほど出してもらうことにして、たいへん悪いのですが、超過負担が自治体にたいへんあります。この問題は自治省の関係ですが、それじゃしょうがない、おたくではぐらかされてるわけですから、超過負担を含んで出してもらいたい。その解消の措置と経過、それも一緒にください。その辺で妥協しないと進まないですから。  日本の経済成長、工業化の進展がますます地域格差を増大させていることは言うまでもないのですが、特に農業は自然的条件に左右されますので、山村における農家の状況がますます悪化していくだろうことは予想されます。しかも、このような過疎の特色というのは、農夫症に代表されるような過酷な労働が若者を失ったところの老人、婦女の肩に重くのしかかってきている。そういった中で、米のような安定した生活源を失っていく農家の健康管理について、少しでも熱意を持って農家の健康管理を考えたことがあるのだろうかということを思うんです。私は特に、新潟の農村やら富山の農村、石川、福井の農村を歩く機会がしょっちゅうありますし、この一カ月間ほとんど北海道の道北と道東の地域の過疎の調査をずっとやってまいりましたから、この感じが非常に強いわけです。陋屋に入っていくと、寝たっ切りの老人が孤独をかこっているというようなものではありませんよ、死を急いでいるという状態が、言ってみればたいへんあるわけですね。ところがこれは答弁にはなかったんですが、あとからお答えをいただくわけですが、改善事業というものも努力をされていることは認めないわけではありませんが、私はもっともっと努力をしなければならない。そういう意味では、協力的に、大蔵省に皆さんと一緒に予算をもっと取るべきだという立場でぼくはものを言っているつもりなんです。少ない経費が計上されていますから、その限界性について私はいまあなた方を責める立場に決してありません。  ところで、いままでの農政というのは、先ほどから言っていますように、農産物生産のみに金を使って、そうして農家の生活や健康そのものに金を使うことが少なかったということは言うまでもありません。それは工業において生産基盤にのみ力を入れて、そうして生活環境の整備を怠ってきて、いまの公害という問題を生んでいるというやり方と実は全く一緒なんです。たとえばここに昨年の第四回国際農村医学界で石川県の能登総合病院の奥田幸造博士と栄養士の上田禧子さんという方が共同で発表された「農村栄養の問題・特に僻地農村の栄養について」という論文ですが、報告書を持っております。時間がありませんから全部読むわけにはいきませんが、「栄養摂取の状況は地域別、職業別、所得階層別等によりかなりの差がある。これは我が国の経済的、社会的、文化的諸条件を背景としているためと思えるが、又風土に由来する穀類中心の食習慣と、栄養に対する知識の欠如等に起因している」ということを述べておられる。「石川県は日本海に長く伸びている能登半島を含み、海岸、平野、山間、離島と、まことにユニークな地形をなしており、」「殊に能登半島は僻地農村を多くかかえ、海岸、平垣部、山間部と各ブロックの食生活に変化があり、低栄養とアンバランスが目立つ。」「能登は全般的に悪く、能登地方は魚などの豊富な地方であるにもかかわらず、経済的貧困と栄養知識の矛盾のため動物性食品の摂取が全般に少い。」、そうしていろいろのデータをあげられて、結論的には「農村漁村の過重労働と共に栄養の不足とアンバランスが農村の体力と健康に大きな影響を与えている」、こういうふうに結ばれていますが、そこで、私はこの際、先ほど申し上げたような形で、言ってみれば農家の生活や健康そのものに、もっと金を使い込む、そういう考え方に基本的に改めるべきである、こういうふうに思いますが、これは次官どうですか。
  102. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) 御指摘のように、いままでは生産方面に生産者自身も、あるいはそのほかの関係者も、これは目が向いておったと思います。しかし今日の段階におきましては、これは全般的に言えると思いますけれども、健康あるいは人命、そういうことについて従来よりより一そう重点を置いて考えるべき段階にきている、こういうふうに考えております。
  103. 和田静夫

    ○和田静夫君 それでは結論に入りますが、この約十年の間にパラチオン及びチップの生産禁止、そこでおそらくこの数年間に——禁止がされるまでの間に五千人をこす人の命が失われていると思いますけれども、このパラチオン及びチップの生産禁止は完全に進みますね。
  104. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) お話のとおり、特に急性毒性関係の薬でございますが、パラチオン及びチップ等につきましては、すでにその使用を禁止いたしておりますので、今後わが国の農業のほうで農薬として使われることはおそらくないというふうに考えております。
  105. 和田静夫

    ○和田静夫君 二つ目に、稲のいもち病防除のために水田に多量に散布していたフェニル水銀剤、これは全面的に禁止しましたが、フェニル水銀剤以外の水銀剤は——私はしろうとでありますが、先ほどわがほうの専門家であります大橋さんから質問があったけれども、これは相変わらず使われている。中毒学的にはむしろこのほうがおそろしいのだということを、私は各地方を回って専門的な方々に聞かされるのですが、この辺のことについてはどういう措置を講じておりますか。
  106. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) ちょっと私専門でございませんので、正確なお答えができかねるかもしれませんけれども、一般的に大量に使われます農薬としましての水銀剤、これはもう使っておりませんけれども、ごく一部、それはちょっと正確ではございませんけれども、種の消毒等につきましては、一部水銀剤の農薬が使われているということも聞いておりますけれども、これはいわばいろいろな影響につきましてはごく軽微というふうに実は聞いております。
  107. 和田静夫

    ○和田静夫君 これは、ちょっといまごく軽微だという最後の結論のところで、厚生省側のご意見を聞きたい。
  108. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 食品中に残留する農薬によるいろいろな人体、健康上への影響の問題でございますが、先ほど農林省のほうからもお答えがございましたように、現在水銀剤、あるいはパラチオン、あるいはBHC、DDT、これらにつきましては、使用の禁止あるいは生産停止等の措置がとられておるわけであります。ただいま御指摘の水銀剤を一部種子に使用するという点につきましては、私ども食品衛生上の立場からの観点で申し上げますと、食品のほうへの影響はないというふうに考えております。
  109. 和田静夫

    ○和田静夫君 ところで、日本昭和四十三年度農薬生産額は七百億、有効成分分類では三百種、銘柄では五千五百種にのぼっておるわけでございます。そうして、これは単位面積当たりの農薬の使用量というのは、アメリカの数倍以上、世界第一位。ヨーロッパではもっともっと少ない。東南アジアではまだ農薬使用が普及しておりません。日本が今日国際的な人体実験国であると、この部面についてはいわれているのです。どうしてそのように大量の農薬日本の農民が使うようになったか。またたとえば、北陸や新潟や長野などの——あるいは東北も一緒ですが、米作地帯の農民がこういう人体実験に供され続けなければならないか。社会的な原因からいえば、二つの面が考えられるといわれております。  一つは、農民が生産向上の名のもとに、危険なものを使わなければ生活していけない。そういう農業体質、他面では、農薬の合成技術の進歩に伴って、開発と生産が発展したわが国の化学工業の特殊事情、そういう二つが入り組んでいることでしょう、おそらく。そういうものが農薬使用の日本的特殊状態、そういうものを現出しておるんだろうと思うのです。もう一つ私がどうしても指摘しなければならぬのは、これらの危険毒物の使用が、いままで禁止されたものがございますけれども、多くは日本政府のルーズな管理下に野放しにされてきた、このところにあると思います。いま、先ほどの問題について、残留物の観点からいって危険がないんだと、こう言われますが、その辺の検討というものは、ぼくはもう少し進めなければならないと思う。なぜならば、この農薬の被害は目に見えるものとしては、それを取り扱う農民と、それから散布された周囲の被害の危険からです。ずっと大量使用が結果的には目に見えない形をとって、農業生産物である食品の中の残留毒性となっていることがわかるのです。散布された田や畑の土地から水に、水は用水からさらに川に、それから飲料水にというような形で、広範な環境汚染となって一般国民を脅かす公害となっておるのです。この辺の認識というものを、私たちはやはり共通に、いましなければならないと思うのです。それらについての見解を承りたいところですが、時間がなくなっていますからやめておいて、今日問題にしたいと思っておる農薬そのものをリードしている外国資本についてなんです。何でも非常に注意しなければならないのは、日本農薬資本の特殊な構造と性格だといわれておりますね。この日本農薬製造業者が——これは農薬要覧を昨晩繰ってみましたが、約百五十くらいある。その中には三井化学、日本曹達、日産化学、住友化学、三菱化成、昭和電工、これはどれもが公害問題で騒がれております。そういう総合化学工業会社もあるし、農薬を専業としているいわゆる農薬の大手メーカー日本農薬日本特殊農薬、北興化学、東和農薬、あるいは三共などのほかに、ソーダ工業を本業とする保土谷化学、旭電化などの自家製造の塩素を利用してBHCを製造しておるような会社もありますね。大ざっぱに言って大メーカーが原体をつくって、そうして小さなメーカーがそれを加工して商品にして、いろいろな名をつけて売っておる、そうして多彩である薬品名。これは専門家も指摘をしておりますが、その会社の大部分が研究所を持っていないという問題があります。独自の研究をしていない。したがって慢性中毒の実験もできない小メーカー、そういうような形のものについて、厚生省はこのまま放置しておきますか、何か対策をお持ちですか。
  110. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 生産者側の研究所、これはもちろんあるにこしたことはないと思うわけでございますが、国全体としては、食品慢性毒性あるいは急性毒性も含めてでございますが、食品衛生上の問題は、主として国立衛生試験所を中心として現在いろいろな観点からの調査並びに食品に対するチェックが行なわれておるわけでございます。ただいまこれらのメーカーから出る農薬毒性につきましては、これは第一義的には農林省のほうでいろいろと規制を設けて扱っておられるところでございますが、その際に公的な試験研究機関からの厳正忠実な、公正な試験結果が添えられて製品が出るというふうに承知しております。実際につきましては農林省のほうから御説明をいただきたいと思います。
  111. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) お話のとおり、まあ最近のように慢性毒性等が非常に問題になった場合におきましては、メーカー等が備えております試験設備等では必ずしも十分でないという問題がございまして、従来それらの点につきましては大学その他の研究機関にメーカーから委託をする、依頼をするということで試験をするというのが相当行なわれていたわけでございます。それにいたしましても、なかなか受けるほうの設備その他につきましても限度がございますし、相当な期間もかかるということから、十分な検定が行なわれ得ないといううらみもあったわけでございまして、先ほどお話しいたしたと思いますけれども農薬残留研究所につきまして新しく設立するというのも、そういうような方面の機関を整備するという意味からでございます。ただ、私どもといたしましては、設備等が不十分なままに新しい農薬を検定しないで登録するということは絶対いたさないつもりでございまして、自今は十分の検査ができて、その検定の上で安全ということがはっきりいたしました農薬についてのみ登録いたすというようなつもりで今後運営をしてまいりたい、かように考えております。
  112. 和田静夫

    ○和田静夫君 それはもう十分、そういう答弁だけではなくて、確実に進めてもらわなければならないと思います。  そこで、もう一つ注意しなければならないのは、先ほどちょっと申しましたが、わが国農薬生産外国資本との関係だと思うのです。一つは技術提携、一つは資本の導入がありますが、現在日本農薬メーカー外国との技術提携が大いに進んでいて、ちょっと調べてみますと住友化学工業がパラチオン、これはアメリカのサイアナミド社とドイツのバイエル社と提携、それからマラソン、これがアメリカのサイアナミド社と提携、それから三井化学工業のBHC、これがイギリスのICI社との提携、日産化学工業のEPN、これがアメリカのコンチネンタルオイル社と提携、デュポン社の特許使用、それから二四Dがアメリカのアムケムプロダクツ社との提携、そういうふうにあげていくと数限りなくある。とても一晩じゃ書き切らぬので、あきらめたのですが、私たちの国の農薬界でのいわゆる外資導入が、こういう形で提携と同時に一方では進んでおるのです。たとえば日本特殊農薬がドイツのバイエル社五〇%の出資、日本有機化学がアメリカのローモアンドホース社四七・五%の出資、日本農薬アメリカのACC社二〇%の出資。アメリカ農薬会社に言わせると、アメリカでは登録に際して長期の慢性毒性の検定が必要とされるものが日本では不要である。したがって、日本と少し提携したり資本を出したりして、まあ資本に追随を常にし続けているところの日本の政治的な弱体、行政的な弱体、その辺をえぐってやらしておけばいい。こういうことがアメリカの場合公然と語られていまして、全く屈辱的な状態だと思いますね。この辺についてはどういうように今後考えていかれ、措置をされようとしますか。
  113. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 実は、お話しの日本農薬メーカーとそれから外国資本といいますか、外国メーカーとの技術提携の問題、それから外国資本の導入の問題等につきましては、ちょっと私現在詳細な資料を持っておらないのでございますけれども、いまお話しの外国で相当規制がうるさいので、その農薬日本に流れ込んできているというようなおことばでございますけれども、私の聞いております限りにおきましては、もちろん日本につきましては風土その他がございまして、独得な薬——日本に古くからあります硫黄合剤その他の薬を除きましては、大体やはり万国共通といいますか、同じような種類農薬が使われているというふうに私どもは理解をいたしておるのでございます。たとえば、アメリカと比べましても、日本におきましては、先ほどお話がございましたとおり、農薬の使用量が非常に多いのでございますけれども、その大部分は、日本に古くからございます銅剤とか硫黄合剤というものを除きますと、除草剤が非常に多い。それらを除きますと大体アメリカと同じような種類農薬を使っておりまして、いまいろいろ慢性毒性その他につきまして問題のある農薬等につきましては、その使用量は面積当たりにつきましてはそうアメリカとは違っておらないという程度の使用量に日本ではなっておるということで、日本の特殊な性格から除草剤等の使用はございますけれども、それ以外は特に日本がゆるやかな基準によりまして危険な農薬を大量に使用しているということは必ずしも言えないのではないかというふうに実は考えております。ただ、私どもといたしましては、今後とももちろん外国とも連絡をとりまして、慢性毒性その他の毒性の検定、予防等につきましては、十分諸外国にもまさるとも劣らないような規制はぜひ続けてまいりたいと、かように考えておるのでございます。
  114. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、いま言われたとおり、慢性毒性の試験を登録の条件にされますか。
  115. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 現在の農薬取締法におきましては、その点が必ずしも明らかになっておらないのでございまして、現在私ども考えております法律改正におきましては、お話のように、そういうことを法律に明らかにいたしまして、その結果の上におきまして登録をきめるというふうにいたしたいと、かように考えております。
  116. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、それは次の国会にでも出されるわけですか。
  117. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) できるだけ早い機会におきまして御提案申し上げたいということで準備をいたしております。
  118. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、これはもうできるだけ早くというのではなくて、通常国会がきますから、そうすると新しい内閣が——よけいなことですが、生まれての通常国会ですから、新しい内閣でぶつかると思いますから、私はたいへん適切な措置だと思います。それではもう余分にこれ以上のことを追及しません。追いませんけれども、そこでもう一つ、どうしても考えておかなければならない問題は、生産者である農民の農業災害的なものだけではなくて、問題はむしろ地域住民ないし農作物を通して消費者全体の被害というのがずっと出てきている。この辺のことはやはりけさから問題になっていましたように、考えなければならぬと、こう思うのですね。そういう観点に立って土壌の殺菌やあるいは種子の消毒用のエチル水銀剤ですね、このセレサン石灰なるものについてどういうふうに一体これを考えられるのですか。一部の学者の方々、あるいはまあ私たちの場合もそうなんですが、フェニルは毒性が少ないということを主張されている向きが非常に多いのですね。酢酸フェニル水銀は確かに無機水銀に分解することがあるようです。私はしろうとですが、ところが最近のスウェーデンの報告をわれわれのグループ検討をしてみて——専門家のグループが私に伝えてくれたところによりますと、ある種の微生物によってはメチル化することがあり得ると、こういうのですね、スウェーデンでは。そうすると、事態はたいへん大きな危険をはらんでいるということになると思うのです。一たん水銀で汚染された水域というのは、水銀の流入がとまっても、その中の魚に入り込んで、水銀量はなかなか減少しない。水銀汚染影響というのは十年から百年後にまで及ぶであろうということがいわれておりますね。しかも、水銀がメチル化する危険性を持っておる、スウェーデン報告のものでは。そういう可能性があるということになったら私たちはかなわない。私たち日本人はすでに——私もだんだん薄くなってきましたが、まだ残っておる毛髪、頭の毛の中の水銀含有量は外国人に比べれば五倍から六倍あるといわれるし、多くのサンプルからそのことを私たちはすでに知らされて、公害問題が特に大きくなってきている。それから、農薬の散布に従事した農民、きょうの主題でありますが、その農民にそれが多いということは、私たちは全国的なサンプルでもって否定することができないくらいよく知っている。また、先ほど論議がありましたが、臓器内の水銀含有量が外人に比べて多い。胎児においても母体よりも多い。同時にまた、米の中の、あるいはその他の食品の中の水銀の含有量の異常な増加は、これは問題になっておりますように、平均して〇・一から〇・二PPM、散布回数が多いほど米の中の水銀量が多くなるということもすでに証明されていますね。しかも、米だけではない。他の野菜、果実においても全く同様に水銀の浸透が見られる。こういう事態について、これはどちらにお聞きするのですか、厚生省と両方ですか。どういうふうにお考えになっていますか。
  119. 浦田純一

    説明員浦田純一君) エチル水銀がメチル化するという報告につきましては詳細は承知しておりませんけれども、無機水銀が嫌気性のメタン発生菌によりましてメチル化するという報告があることは承知いたしております。そのために、工場廃水などにおきましては水質汚染の問題でございますが、これは水銀の規制を現在行なっているところでございます。それから農薬関係でございますが、これらにつきましては、先ほど農林省のほうからもお答えがありましたとおり、現在水銀剤の使用は、一部分を除いて、種子消毒の場合を除いて使用は停止されておるということでございます。いさいにつきましては農林省のほうから御答弁申し上げます。
  120. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) ただいまお話しのとおり、農林省で現在有機水銀剤のうち農薬として登録をいたしておりますのはウスプルンでございまして、これを種子消毒用に使っているということでございます。これはごく微量でございまして、それ以外の水銀剤は現在登録は抹消されております。
  121. 和田静夫

    ○和田静夫君 もう一つだけ聞いて結論にいたしますが、私に寄せられた、昨年の国際農村医学会で発表された人体及び食品における残留農薬の分析、米の中の水銀含有量とともに人体及び野菜中に残留する有機塩素剤データの発表、特にDDT、BHC、アルドリン、エンドリンの含有量等、これをずっと見ました。見たって、しろうとですから、なかなかすぐ理解ができないのですが、ただエンドリンが非常に検出されているという、そういう報告に触れましてね、私ばかりではこれはないと思うのですが、たいへん驚きました。厚生省基準になったエンドリンが、御存じのとおり、あの白菜などに多量に検出された場合がございますね。また農薬残留量が規制されているのはリンゴなんか、あるいは山梨なんかでもそうですがブドウなど四品目だけであります。もっともそれも十二月になると、厚生省のほうではエンドリンの食品残留基準を告示しました。そのほかにキャベツ、茶、イチゴ、ナツミカン、 ナシ、桃、ジャガイモ、ホウレンソウ、いま盛んに私たちが食っているこれらが追加をされましたが、また高原野菜で知られる長野県野辺山の農協がことしからエンドリンの使用を自発的にやめる話も、これはすでに有名な話でありますけれども、しかし最も大切な国民の主食である米とか麦とかが全く手つかずの状態であるというこの状態ですね。これについては、農林省厚生省はどういうふうにしていこうと思われるのでございますか。
  122. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 米の基準につきましては、ことしじゅうに定めまして、その中でエンドリンは検出せずという限度まで広めるようにしよう、その他についても規制を考えていくように農林省にお願いしたいと思います。
  123. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 厚生省のほうでそういうような農薬残留許容量が明らかになり次第、私ども農薬残留に関します安全使用基準をつくりまして、もしお話のようにエンドリンにつきまして検出せずというようなことになれば、私どもも、米等につきましてはおそらくは使用をしないということになるのじゃなかろうかと思いますが、それらの厚生省の内容等を承りまして至急私ども安全使用基準を定めて指導いたす所存でございます。
  124. 和田静夫

    ○和田静夫君 さっきの問題と、いまの問題と二つ明確なお約束ですから、四十四年度農林省決算をやるときに再びこの問題がこの場所で私から問題にならないように、明確に守っていただきたいと思います。  少しく本題から横にそれた感があったかもしれませんが、私は、この農薬の問題を論ずることによって、実は農民について幾つかの関係の問題が位置づけられる。こういうふうに考えたから、農薬問題というのを少し時間をかけ過ぎた感がありますがやってみたわけです。  そこで農家には、農業に従事していたから生ずる疾病、先ほど来冒頭言った農夫症、あるいはかまで傷をつける、たんぼでころんで何とかなる、そうして農薬公害その他などなどによって起こる疾病、もう農民いじめでずっと来た日本政府ですが、それに対して先ほど次官がたいへんよいお答えをされましたように、当然そういう趣旨にのっとって、被雇用者にあるような公務災害補償制度というようなものが私はもう完成されていいと思うのです。御存じのとおり、零細な、しかも身寄りのない農民に残されておるものは国民健康保険の給付だけである。ところが最近の過疎現象というのは無医村の部落というものをたくさん現出しています。医者だけじゃないのですよ。看護婦もいない、保健婦もいない。私は北海道の道北三十一市町村、そして道東のほうを二十四市町村回ってきたばっかりです、一カ月間で。最大の問題は、これは厚生大臣ともやりましたし、自治大臣ともいろいろ話し合ったところですが、何と言ったって、百万円出したってお医者さんが来ないということです。町長、市長の何層倍の給料を出しても、一人の医者を確保するために四苦八苦している。医者を一人連れてくることが町長や市長になる最大の条件ですよ。そういう状態になっているんですね。したがって、国保に入っているからいいなどとも言われるかもしれぬが、国保に入っていたところで絶対医療を受けられるという便宜というものはないんですよ、それらのところでは。この間地方行政委員会で、委員長と一緒に過疎地帯、福井、石川という山奥を見てきました。同じことです。国保に入っているからどうとかということではなくて、やっぱり私は、これらの農夫症を含んで、言ってみれば公傷病というような観点に立った研究と、それに対する対策というもの、そしてどこででも安心して遠出をして行って治療を受けられる。富山の五箇山の山の上におけるところの病人も、富山に出てきて市立病院に、公傷なるがゆえに自己の費用を考えることなくして療養することができる。多くの農夫たちが、自分は寝ておることはできないんだ、寝とったところで費用は払えないんだ、先生一服盛ってください、早く死なせてくださいというような、そういう形でしか治療が受けられないというような現状を放置しておくなどということは、私は許せないと思うのです。これについてどうぞ次官のひとつ御見解と御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  125. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) 過疎地帯に医者を確保する問題につきましては、もうみな非常な努力をしておりますけれども、なかなか解決がつかない、こういう状態でございまして、これはまあ単に農林省だけで片づく問題ではないと思いますが、政府も最近この問題については真剣に取り組んでおるのでございます。そこで、私たちの地方でも従来は大学等からわりあい簡単にある期間地方病院等に来ていただいていたのが、これもなかなかむずかしくなったということで、過疎地帯ばかりでなくて、町村立病院の経営自体に大きな問題がある、そういう段階でございますから、これはやっぱり真剣に取り組んで、そうして国民の何よりも健康、生命が第一でございますから、そうした点について、国民がただ居住地のいかんによって不公平になるようなことのないように、これは私は真剣に取り組んでやるべき問題だろうと、こういうふうに考えております。
  126. 和田静夫

    ○和田静夫君 そのとおりでありまして、そのことに強い期待を寄せたいと思うのですが、先ほど私が技術的に申し述べた分について事務的にお答え願いたいと思います。農民の公傷制度への構想とその補償についての分です。
  127. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) 公傷という意味はどういうことですか。
  128. 和田静夫

    ○和田静夫君 労働者災害補償的な、それと対応できるような——それは次官けっこうです、局長のところで。
  129. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 災害補償でございますか。
  130. 和田静夫

    ○和田静夫君 災害補償——申し上げましたとおり国保などがあると言ったって、次官がいみじくも言ったとおり、町立の病院にも来ない、国保病院なんかあったって医者がいないのです。だから最大の問題は、身近に医者がいなければ町に出たいわけです、治療のために。町に出るのには費用がないわけです。国保ではそんなものは保証されていないわけです。そうすると、労働者災害補償法などというような、それと同じ観点に立つところの補償制度が農民にあるならば、そのことによって農夫症患者も救われるでしょう、そういうような制度化への努力と検討というようなものについて、どうお考えになっておるか。
  131. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) いまお話しの農民が受けます、機械を操作します途中におきます傷害事故等につきましては、現在労働者災害補償保険法がございまして、その保険法の適用が昭和四十年に改正されましたので、農業者も一応入れるというような道は開かれておるわけでございますが、なかなか制度そのものにもいろいろ問題があるということもございましょうし、やはりPR等の不足ということもございまして、現在まだ加入状態が非常に低うございまして、約全国で五万人をちょっとこえるというような程度でございます。したがいまして、これらにつきましてはさらにこの制度のPR等を進めるということのほかに、要はその災害が起きないようにということでございますが、私どもは別途四十年ごろから機械の取り扱いにつきましての講習会をやったり、安全思想等につきましてのPR等も年々やっておるのでございますが、今後そういう面でさらに力をいたすということも実は考えておるのでございます。
  132. 和田静夫

    ○和田静夫君 それはわかっておるのです。ただ私がさっきから何べんも農薬公害の問題やら農夫症の問題を前提的に申し上げてきたのは、それらの大部分は該当させられない、チェックされてしまう、そういうことじゃ困るじゃないかと、農薬をずっと追ってきたところです。農薬によって農民が傷つき、発病していく形は、まさに公傷病です。そういう基準についてはもっと検討しなければならないのじゃないかということを言っているわけです。それは当てはめていかなければならない、それを補償するということでなければいかぬ。そのことがお約束願えますか。
  133. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) いまお話しのとおり、農薬の問題、それから一般的な過労からまいります農夫症の問題等たくさん問題があることは承知いたしておりますけれども、それを先生のおっしゃるとおりの形に、公傷といいますか、そういうような形でもって、国なり公共機関がある程度責任をもって何とかするということにつきましては、いろいろほかの制度との関係その他もございまして、直ちにはなかなか対策として取り上げにくい問題があるのではなかろうかと思っております。私どもといたしましては、先ほども申し上げましたとおり、農薬の問題、それから一般的な農夫症の問題につきましても、また、その根本的な問題ということもやはり私ども考えなければならない問題でございますが、そういう方面からのアプローチといいますか、そういうことから始めまして、現在の対応策としての公傷取り扱い等につきましては、なかなか困難なことがたくさんございます。研究はいたしてみようと思っておりますけれども、直ちに早急に結論が出るか、ちょっとお約束できかねます。
  134. 和田静夫

    ○和田静夫君 じゃ、とにかく私が申し上げておることに、そんなに間違いないと思いますし、この要求が不当な要求、献策だとは思いませんし、そういう観点に立って、あした、あさって結論を出すということにはもちろんならぬと思いますが、そういう検討というものをするということですね。前進的にする、前向きになってすると。特に災害補償法との関係では非常にきびしいチェックがある、その部分については早急に改善ができるわけですが、その辺は約束をしていただきたい。よろしいですか。
  135. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) いろいろ検討はいたしたいと思っております。
  136. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 午後一時三十分に再開することとして、休憩いたします。    午後一時休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  137. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十三年度決算外二件を議題とし、農林省とそれに関係する農林漁業金融公庫決算につきまして質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  138. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 不手ぎわから、ずいぶんごたごたしたわけで、少し頭にきたので荒れるかもしれませんが、そのつもりでひとつお願いしたい。  まあ、理財局次長はこの間の大蔵委員会である程度わかっていると思いますけれども、旧軍用地、これはいろいろな問題をはらんでおるわけです。そこで、この問題がいろいろな問題をはらんでいるということは、終戦直前の混乱期に買収されたものというものに特に問題がある、こういうことだと思います。そこで、この旧陸軍から大蔵省に移管をされた、それから大蔵省から今度は農林省に所管がえになった、こういうものがある。で、それはどのくらいの件数、面積もあわせてお教え願いたいと思います。
  139. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) ただいまの御質問は、大蔵省のほうから農林省に移管を行ないました旧軍未利用地の財産の総量はどのくらいになるかという御質問でございますけれども、その点につきましては、実は本日集計して持ってきておりませんので、この場で、実は申しわけありませんが、お答えできないわけでございます。
  140. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 次長、何日も前から頼んである、通告してあるのですよ。きょうは決算農林省関係でやろうというのでしょう。当然そのくらいのことはわからないことはないと思うのですよ。それで、集計してありませんとかなんとか言って、逃げられたんじゃ話になりませんよ。  じゃ、農林省はどのくらい受けておるんですか。農林省はわかっておるでしょう、自分で受けたんだから。
  141. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいま的確な数字を持ち合わしておりませんので、後ほど御報告申し上げたいと思います。
  142. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そういうことをまず初めから聞いていかないと、話が続かないじゃないですか。だから事前に通告しておるわけでして、ほんとうに怠慢ですよ。当然持ってこなくちゃならない資料だと私は思うんですよ。まあそういう総量はわからないと、いまのところは……。  じゃ、農林省に所管がえになった旧軍用地、これは所管がえをするには相当なきちっとした手続を踏まなきゃならない、また、あらゆるものを整備しなければならない。そこで、所管がえをしてあるんですから、そういうものを全部済まされた上で、これは明らかに国有財産であるということが確認された、その上でこれが所管がえになっておると私は思う。この点どうです。
  143. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 大蔵省から農林省に所管がえをいたしましたものは、たとえば、自作農創設特別措置特別会計に所管がえをするというふうなものがあったわけでございますけれども、これらにつきましては、昭和二十一年十一月九日でございますけれども、大蔵次官と農林次官との間において覚え書きがございまして、旧軍未登記財産の取り扱いにつきましてはこの覚え書きの中に、旧軍未登記のまま旧軍の買収関係書類を添付して農林省に移管するということになっておりまして、そういうふうにしたわけでございます。
  144. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それは二十一年ですか。二十一年にはそういう通達がなされたんですか。
  145. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 大蔵次官と農林次官との間におきます覚え書きでございます。
  146. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それはそれとして認めましょう。だけれども、それはいろんな諸般の事情があって、大蔵省で処理できないとか、あるいはまた、そのほかのいろんな事情があって、そういうものについては確か完全な財産として確認できなくても農林省のほうに所管がえをしてよろしいというようなことだと私は思う。そこで、お尋ねしておきたいことは、そうなりますと、この農林省に所管がえになったものの中には完全にこれが国有財産であるという確認——全部が確認できたということではないんですね。
  147. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 大蔵省のほうでは、農林省に移管しました財産につきましては、国有財産台帳に登載をされておりまして、それで、それぞれその当時の契約書とか、そういうふうな証憑書類、資料につきましてはいろいろあったと思いますけれども、たとえば挙証資料といたしましては土地の売り渡し証書、所有権移転登記承諾書、それからたとえば当時の軍が陸軍であるとすれば陸軍所管の不動産登記嘱託指定官吏からの登記嘱託書、そういうふうなものがございます。
  148. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は回りくどいことを聞いているのではないですよ。その所管がえになった中にはまだ国有財産であるという確認——これが完全にできたというものばかりが所管がえになったというわけではないんじゃないか。その中にはまだ国有財産として確認できないものまで——書類がすべて整わなければ完全なものとは言えないわけです。そういう立場からいうと、完全に国有財産であると、こう言い切れるものばかりではないでしょうと、こういうふうに聞いているわけです。
  149. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは国の立場といたしましては、国有財産台帳に登載されておる、それから契約書がある、その他御質問の意味におきます何もかもそろった完全な証拠書類、こういう意味の御質問であると思いますけれども、そういう意味におきましては、そういうふうなあらゆるものが全部そろっておる、そういうような状態ではないものがあったと思います。
  150. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あったと思いますというような無責任な話はやめてください。だから局長に来てもらいたいと言ったんです。何の断わりもない——局長はどういう都合で出られないとか、そういう話は何にもない、それであなたが出てきておる。局長のかわりに出てきたなら、あなたは責任を持って——こう思いますというようなあいまいな返事ではなく、はっきりした返事をしてもらいたい。  それで国有財産例規というものがあるんですよ。これの百四十七ページを見ますと、ほんとうは、これはあなたのほうにあるわけですから、あなたのほうで読んでもらいましょう。——時間ばかりとりますから、あなたのほうにはないようだから、資料を整えていないようだから私が申しましょう。これの五項というか、五条というか、これを見ますと、「軍用地であったものにつき、その買収当時所有権移転登記の未了のものは、代金の支払及び所有権の移転の完了を明瞭ならしめる関係書類を添附して、これを移管するものとする。代金支払未済のものは大蔵省において、その支払後移管するものとする。」、こうあるんです。ですから、全部こういうふうになったんですか。こじつけないで言ってください。
  151. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 御質問のような文章はございます。それで、どういうふうに処理したかという問題でございますけれども、当時の事情がよくわからないのでございますが、大蔵省として、国有地として活用したいというふうなものにつきましては、大蔵省のほうで代金の支払いあるいは所有権の移転を完了いたしまして処理したというふうなことであったというふうに想像いたします。
  152. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 何を次長言っていらっしゃるのですか。いま言ったでしょう。このとおりに、こういう例規があるということは、こういうふうに、いま読み上げたとおりになって初めてそれを国有財産として認められるという、裏を返せばそういうことでしょう。だから、そういうふうに全部なっておるのか、それで初めて国有財産といえるのではないかということを言っているのですよ。
  153. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) この点は、要するに所有権の移転登記が済んでいないということでございまして、あるいは代金の決済が済んでいるかどうか、これは問題があるわけでございますけれども、国有財産であるという点については国有財産であるというふうに考えております。
  154. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 どうもはっきりしないのですよ。なぜ、それじゃこんな例規をつくるのですか。こういうふうに掲げてあるということは、こういうものが全部整わなきゃいけないということを書いてあるんでしょう。それで初めて国有財産として認められるということなんですよ、これは。変に解釈しないでください。だれが読んだって、そういうふうにしか解釈できないじゃないですか。だから、そういうんだとすれば、まだまだ完全に国有財産だというふうに確認できないものが農林省にいったんだということになる。そのあとにもいろいろ出てくるんですよ、それを証明づけるものが。だから、あっさり答えてください。この文章を読んで、あほうでない限りは、だれでもこういう解釈だなということはわかるはずなんです。それをこじつけようとすると、いろいろ突っかかってくるから、すなおに返事をしてもらいたい。ですから、そういう意味からいえば、まだ大蔵省の段階で処置しなければならない問題があったんだということもいえるわけですよ。どうですか、それを認めるんですか。
  155. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 先ほどの、国有財産であるかどうかという問題については、契約がございまして、台帳に登載されているという面から申しまして、私のほうからは国有財産であるというふうに考えておるわけでございますけれども、おっしゃいますように、たとえば登記が未済であった、そういうふうなその他の点につきまして十分な——その他の書類が万全ではなかったというふうな点は、また事実でございます。それで、そういう状況におきまして、旧軍未登記財産がそんな状況におきまして農林省に移管されたというのは、先ほど申し上げました大蔵次官と農林次官との覚え書きによりまして、そういう状態のまま移管されたということでございます。
  156. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。いずれにしても、この例規にいろいろと、言うならば、旧地主をやはり守るという、そういう意味が十分に含まれていると思うのです、この中には。いろいろあとでもって、それを知らなければ読んで聞かしてあげますけれども、非常にここのところは大事なところなんです。あなたもどれだけかは、それは認めたという感じがするんですがね、いまの話からすると。  先へ移りたいと思いますけれども、そうしますと農林省のほうは、そういう完全にすべての書類等を——国有財産として必要な条件をまだ備えてないものも、この所管がえの中にはあったんだということを、それを知りながら引き継いだのかどうかということですね。
  157. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 農林省といたしましては、政府の所有する土地物件のうち、農地の開発または開発後におきます土地の利用に供すべきものと決定されたものを、所要の手続を経まして、国有財産法の規定に基づき大蔵省から農林省に所管がえを受けることにしておりまして、たてまえといたしましては、政府の所有する土地物件の所管がえを受けたということに相なっております。
  158. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 たてまえとしてはということは、まだ余裕がある——余裕があるということばはおかしいけれども、完全であるという話とはちょっと違う。たてまえということはですね。なるほど、そのたてまえ——たてまえはいま読んだとおりなんですよ。だから、そういうたてまえからいって、全部そういうものは完備しておるんだということでその所管がえを受けた、いわゆる引き継いだのかどうか、こういうことを聞いておるわけです。
  159. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 大蔵省の所管されておりまする財産でございまするから、そういう手続が完備しているものと推定をして、当時の関係者は自作農創設特別措置法に基づきます所要の手続をとり、また決定をして、さような措置をとったものと考えられます。
  160. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 また、あなたも考えられますですね。考えられますだとかなんとかいう想像的な話じゃ、話にならないですよ。事実を私は聞いているんです。完全であったのかどうかということを——事実を聞いているんです。あなたのほうは想像です。その点がわからないというなら、わからないではっきりしてもらいたい。この例規にもありますよ、そんなはずはないんですよ、この例規をあとでもって読んであげますけれども。そういう問題のものについては、農林省は引き継いだ上で、農林省が責任を持ってこれを解決する、そういうものがあるんです。一字一句、間違わないようにあとで読んであげますから。そういう、あなたのようなほおかぶりみたいな話は通用しないですよ。そういうことは初めからわかっているんです。わかっているからこそ、そういうことが例規の中にあるんです。そういうことにしどろもどろじゃ、どうしようもないじゃないですか。そういうことはわからないわけですね。あなたは想像的な話をいましたわけですけれども、私の質問に対する確答はできないということですか。
  161. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) この事案を知りましたのは最近のことでございまして、先生から御指摘を受けまして初めて知ったようなことでございまして、鋭意、その当時の経緯について調査せんさく中でございますけれども、何ぶん、非常に古いことでございまして、なお的確な経緯を掌握するに至っておりませんので、その辺、確たる御答弁ができかねる状況でございますが、大蔵省の所管する財産については所要の手続をとられた上で政府の所有であるというふうに現段階におきましては認定せざるを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  162. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 終戦から何年たつんですか。二十五年たっているんでしょう。それで私がこの問題を提起するまで何にも知りませんでしたというような話では——あなたもう、この問題は、土地の払い下げ等については局長さんクラスでもってできるわけでしょう、地方の財務部あたりの部長で払い下げできるのじゃないですか。そういう責任のある立場でもって、いまになってようやくそれがわかったのだというようなことでは、それでは国民がかわいそうですよ。どんなにそのことでもって泣いている国民がいるかわかりませんよ。これから調べると言われれば、これ以上なじってみたところでしかたがないでしょうが、少なくとも知の調査した中では、こういう例規を引いてみて、これと対照しながら考えてみると、いま申し上げたような問題には、そういう問題があるのだということを、この例規の中で認めている。だから、そういう問題については、こう解決すべしということも、はっきりうたわれているわけですよ。にもかかわらず、あなた方がその辺のところをぼかして、さっぱり返事をしてくれないということになりますと、こちらとしては先に進めるに非常に支障を来たすわけです。では、これ以上いまの点について追及してみたところで、それ以上の返事が出そうもありませんので、先へ進めていきたいと思います。  それでは、念のためにお尋ねいたしますけれども、問題があったかないかわからない。わからないということは、国の所有であるか、国民の、いわゆる旧地主の所有であるか、まだわからない。そういうわからなかった問題、そのためにいろいろとこれが表面化して、国と旧地主との間で所有権の所在の確認についていろいろと話し合ったという事例は、全然ないということになるのですか。それもわからないということなんですか。どうでしょう。
  163. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいまの御質問の意味をよくとりかねているわけでございますが、特定の事案について何かそういう御指摘のような問題があって、関係者と国との間で話し合われている例があるかないか、こういう御質問でございましょうか。
  164. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あなたは、いままでぼくが聞いたその質問に対して、それはこの間知ったので、さっぱりわからない——私は一つの問題を言っているのじゃないですよ。終戦直前の混乱期に買い上げられた、いわゆる旧陸軍が買収した土地全般にわたって話を進めているわけですから、あなた考え違いしないでくださいよ。そういう中には、それはあなたのいままでの答えではわからないということなんだけれども、わからないということは、いままで問題になった所有権の所在の確認、それがいずれにあるのか、その確認のために相手方と——いわゆる旧地主と話し合ってきたという、そういう経過というもの——そういうものが全然ないのかということを聞いているわけです。
  165. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) いまどの程度そういう問題があるか、的確な資料を持ってまいりませんので、的確なお答えができかねますることをおわび申し上げますが、先生指摘のような所有権をめぐる係争事案と申しますものはほかにもあります。
  166. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、その問題があるということだけはお認めになったわけですか。そうすると、それらに対してどういうような措置がとられてきたのか、折衝が行なわれてきたのか、その点について。
  167. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 事案の性格によりましていろいろ処理のしかた、解決の方法が異なっておりますが、中には訴訟になっておるものもございますし、また、関係者の話し合いによりまして話がついたものもあろうかと存じます。
  168. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 みんな、あろうかと思いますだね。それじゃ話にならないのですよ。こっちがくたびれてしまう。それで、この例規を見ますと、二二〇ページの七項にこういうことがあるのですよ。いままでの話をまとめて言いますと、あなた方はそんな問題はないみたいな口ぶりなんですよ。それは、国有財産は大蔵省から回ってきたのだから国有財産だと思って引き受けたとか、また大蔵省のほうでは、あたかも自分の台帳にあるからもうそれは自分のものだというような、そういう姿勢なんですね。だから、そういう姿勢ではだめですよということがここに書いてあるのです。いいですか。「管理換の協議される財産中移転登記、代金支払の関係等のため急速に処理困難なものがあるときは、これ等の財産については別紙要領二の(4)、(6)によって管理換し、農林省側に於てこれ等を解決することとするが、財務局は手持ち関係資料農林省側に引渡し、且農林省側の之が解決に協力する。」と、こうあるのです。いままでのあなた方の話を聞いておると、そんなことは何にも行なわれていないような感じですね。こういうようにあるのですよ。ですから、さっき大蔵省の理財局次長が言った話も私はわかる、わかるけれども、そういうものが農林省に引き渡されたときに、農林省はこういう姿勢でその土地については解決をはかっていきなさいということを言っておるわけです。いいですか。そういうふうに言っておるわけですよ。だから、ないということは言えないのです、そういう問題があるということだけは。完全な国の財産だと言い切れないものがあるのだということをここで言っておるのです。それをああでもない、こうでもないと、あなた方はごまかそうとするから、ついついこっちも興奮する、こうなるのです。はっきり今度は認めるべきものは認めなさい。  そうすると、そういう問題があるということを農林省はとにかく認めますね。
  169. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先ほども申し上げましたように、大蔵省所管の財産でありますから、適確な手続がとられて、政府所有物件であるという前提のもとに所管がえを受けておるわけでございますが、そのためのいろいろな必要な書類等についても徴求してやっておる、当時は古いことでございますから、そういうふうに推定せざるを得ないわけでございます。そういうことでやられたのでありますけれども、戦後非常に食料事情のきびしいときに、非常に膨大な件数の国有財産の処理をし、それを自作農創設の用に供しなければならなかったという、その急迫した事情のもとにおきましていろいろ事務上問題があったことも予測されるわけでございまして、私どもとしましては、当時の関係者が善意を持って努力したものであろうというふうに考えております。
  170. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 作文みたいなことを言わないでもらいたいね。いまぼくが言っておるのは、これは国でもってつくったものです。そこにこうあるじゃないかと言うのです。こうあるということは、問題のある土地も農林省に渡されている、そういう場合もあるのだということを言っているのです。それを何だかわけのわからないことを、あなたは言っているのだから処置ないですよ。わからなければわからない、わかりませんとはっきり言ったらどうですか。ほんとうに腹が立ってきますよ。こっちは一生懸命で調べ上げて、そして何とかきょうは責任ある皆さんからきちっとした答弁をいただけるだろう、そうすればこういった問題で多くの国民が苦しんでおる、そういう人たちも、これでもってどれだけか先の見通しが明るくなるだろう、こういうことで、いずれにしても解決の方向に進んでいくのじゃないか、こういうことで非常に、責任ある立場の皆さんの答弁を期待して来ている。何もそれじゃあなた、答えになっていないじゃないですか。ぼくは、あなた方がつくった——国のつくったものをもとにして、こういうふうに言っているじゃないか、こうやりなさいと言っているじゃないか。それをも否定しようとしている。だからなかなか先へ進まないのですよ。何だか知らないけれども、ぼやかそう、ぼやかそうという感じなんですね。まあそういったことでは、あなた方がつくって、そしてこれを全然無視するような姿勢というのは、もう例規が、これが泣きますよ。だからほんとうは、私はそういったことで順序を踏んで話をしたのだけれども——いまよけいな話をしているわけですけれども、ほんとうはそういう問題をはらんだ旧軍用地、そういう件数がどのくらい農林省のほうに渡ってきたのかということを聞いてみたいのですよ。それはわかりますか。
  171. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいま的確な資料を用意してございませんので、後ほど報告申し上げたいと思います。
  172. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ話にならないですよ、あなた。全然話が進まないじゃないですか。的確なといったって、あなたにお話をしたのはだいぶ前なのですよ。何をやっていたのですか、いままでだいぶ長い時間を与えてあるのですよ。非常に無責任ですね。もうそうなると、ほんとうに話になりませんね。じゃ、きょうは何を聞いてもだめでしょうかね。ここら辺でもって農林大臣どうですか、責任ある立場で、こういう姿勢でもっていいのですか、ちょうどいらっしゃるので申しわけありませんが。
  173. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) きょう私に出席要求のございました方々の御質問の中に、いまのようなお話がございませんでしたので、事務当局からも聞いておりませんが、先ほど来の御質疑、お答えを聞いておりますと、やはり十分そういう趣旨が徹底していなかったのじゃないかと思うのであります。私ども政府としてずっと事務当局を見ておりまして、やはり事務当局としてはそれぞれの手続に従ってじみちにやっておられると思うのでありますが、なお、ただいまのようなことについて、御質疑目的とされるところが政府側のほうの事務当局に徹底していなかったのではないかと思われますので、その点は農林省ばかりでありませんので、もちろん、政府側が不当なことをやろうとする意思があるわけはございませんし、十分に調査して国会で御納得のいくようにすべきであることは当然だと思いますし、われわれの指導監督もそういう方向でやっておるつもりでございます。
  174. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣のおっしゃることがわからないわけではありません。私も農地局長さんにだいぶ前にお会いしまして、こういう問題がありますと、そういったことについて一応お話を通してあるのです。で、きょうを迎えたわけなんです。だいぶ日にちがたつのです。ですから、当然そのくらいのことはわかっていていいと思うのですね。それがなおここでもってお答え願えないということは、これはあまりにも無責任ではないかと、こういうことで、いま大臣は予定していなかった問題ではありますけれども、国のこの問題処理にあたっての取り組み方、その姿勢というものが、これでは私はまずいのじゃないかということ——その点について大臣はどうお考えですかと、こういうふうにお尋ねしているわけです。
  175. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私どももいろいろな点で事務当局の説明にとかく不満を感じることもございますが、反面また考えてみますというと、終戦当時のことにつきましては、なかなかああいう混乱の時代でもございましたので、当時その衝に当たっておりました者が残っておれば、かなり明快な答えもできるかもしれませんが、先ほど農地局長のお答えの中に「であると思います」というふうな答弁申し上げておりますが、その辺のところが正直なところだと思うのでありますが、しかし、政府側は決して何省にかかわらず責任を回避するようなことを考えておりませんので、いまの具体的な問題につきまして、さらにもう少し検討をいたしましてからしたらいかがかと、そういうふうに考えるわけであります。
  176. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣のお話、わかります。国がごまかそうとしているという、そんなけちな考え方を持っているとは私も思いません。だけれども、何せ古いことだと言うけれども、その古いことが問題になっているから問題なんです。当然解決すべき問題が、それが解決できていないところが、それが問題なんだということなんでして、もうすでに解決できていれば何もこんなことを言う必要はないわけなんです。古い問題だったら当然解決していなければならない。それがいまだに尾を引いている。まだ、いつ解決できるかわからない。そういうことではここで本腰を入れて取り組まなければならないのじゃないかということが言えるわけでして、そういう意味で私はこの問題を提起しているわけです。これは私も建設的な立場で、国も困るだろう、国民も苦しむだろう、こういうことでこの問題を提起して何とか一日も早く解決さそうということで取り上げているわけです。にもかかわらず、相当な期間があるにもかかわらずですよ、ああでもない、こうでもないと言うならば、この問題についてただわからないと言っていけば事が済むと思うような、そういう当事者では話にならぬじゃないかと、こういうことを私は言っているわけなんです。そういう姿勢についてどうなんだということを大臣にお尋ねしているわけで、まあこの点ばかりにとらわれているわけにいきませんので、先に進みますけれども、いままでは総体的な、全体的な立場でお尋ねしたわけですが、今度は具体的にひとつ問題に入ってみたいと思います。  その前に、私は、きょうは大臣を要求はしておりません。あとの方が要求しております。そこで時間の関係がございますので、大臣は何時までおいでいただけるのか、その時間によって私も、あとの人とのつり合いがありますので、質問のほうを考えなければなりません。何時までおいでいただけますか。
  177. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  178. 森元治郎

    委員長森元治郎君) それじゃ速記を起こしてください。
  179. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣に御質問申し上げたいんですが、私は本問題については、去る七月に質問しました継続的な質問になろうかと思うのです。当時大臣を要求したんですけれども、大臣は不在でございまして参加していただかなかったので、きょう特に大臣に要望申し上げたいと思って御参加願ったわけです。  実は、盛岡市の岡部岩雄君と国との間の土地の所有権の係争事件について、ここで再び質問をするということになるわけであります。今度質問申し上げます大きな一つの理由は、政府の管理職である責任ある者が二枚舌を使っておるのではないかというような疑義をはさむような事実の書類を私は受け取っておるわけであります。実は、このことはどういうことかと申しますと、仙台法務局の訟務第二課長の高橋満夫君、青森営林局の訟務係長の辻山隆君、雫石営林署の庶務課長の兎原誉君、この政府側の公務員の三名——課長、係長であります。一方、こういう方と立ち会いの上で確認をした事項があるわけです。その立ち会いをしました方は弁護士の岡崎源一君です。なお、同じ弁護士の榊原孝君、先ほど申しました岡部岩雄君の秘書であります大久保安久君、この六名で立ち会いをしたという確認書が私の手元まで来ておるわけです。当時立ち会いの上でやったけれども、間違いはありませんかという双方署名をした確認ではございませんけれども、私、簡単に読み上げておきたいと思いますが、境界査定の立ち会い通知確認書です。「昭和四十五年一月二十八日、裁判所に対し原本取り寄せ申請を書面にて行ない、昭和四十五年四月二十二日、仙台高裁第二民事部の隣室において十時二十分ごろ控訴人側岡崎源一、榊原孝両弁護士、大久保安久、被控訴人側高橋満夫、兎原誉、辻山隆の立ち会いの上で、第一審において被告側の提出する境界査定立ち会い通知書は原本より直接の写しであることを確認し、原本つづりの一枚であることをそこで確認した。」と、こういうことになっておるわけです。  もう一つの問題は、境界査定立ち会い通知書及び領収書——乙第八号と書いてありますが、「昭和四十五年四月二十二日、仙台高裁第二民事部の隣室において、午前十時二十分ごろ、被控訴人側高橋満夫、兎原誉、辻山隆の証言で、第一審において被告側の提出した境界査定立会通知書の領収書は原本より直接の写しであることを確認した。右、相違ないことを控訴人側立会人それぞれ署名、捺印した。」、こういうふうに書いてあります。したがって、この三名の方から私に対して、こういう確認をしたのにもかかわらず、今度はこの三名がその確認書と変わったものを係争中の裁判で出したということが問題の焦点になるわけであります。   〔委員長退席、理事渡辺一太郎君着席〕  で、私は、この確認書は、昭和四十五年の四月二十二日の十時二十分ごろ仙台の第二民事部の法廷の隣室において国側が三人、控訴人側が三人——六人がその確認をした。しかもその乙の第七号、第八号証は原本より直接のコピーであることを確認したと、こういっておるわけですね。こういう点を考えてみますと、非常に問題ではないかという点が考えられますのは、控訴人側の岡崎源一弁護士は元仙台、名古屋の高検の検事長であります。うそを言うはずはないと思う。榊原孝弁護士は現在も岩手県の地労委の公益委員です。その方々が、政府が出した——いわゆる地方官庁で出しました乙の七号、八号証が原本直接の写しで、全部がペン書きで書かれておりますことを確認しておるわけです。ところが、過ぐる六月三日の法廷においては、印刷された用紙に記入されたものをその原本だということで再度出してきた。この確認した同一人が、今度は変わったものを提出するということについては、法治国家における、しかも官吏がそういうことが一体できるのかどうかということですね、私は、この点は非常に問題だと思うんです。それなら確認をしなければいいのに、双方から立ち会い三人ずつ出て、そうしてしかも確認をしておきながら、いやそれは間違いでしたと、実際の原本はこれですと、こうしてまた出しておるわけですね。で、そういう大胆不敵なことを故意的にやったと言わざるを得ないと私は思うんです。こういう点をどういうふうに大臣はお考えになるか、ひとつ大臣の所見をお聞きしたいと思うんです。
  180. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 本件の盛岡地方裁判所における第一審の判決では——国は、原本と相違ない旨の裁判官の確認を受けて、証拠書類を提出いたしましたけれども、第一審判決では、御存じのように、それらの証拠書類はすべて信憑性があるものと認定されておるわけであります。しかしながら、仙台高裁・第二審におきましては、ただいまるるお話のございましたような、議論が行なわれておりますような点についての主張なり反論なりが行なわれておる模様でございますので、これらの点につきましてはいずれ法廷において明らかにされるものと思いますが、もう少し担当の事務当局のほうから申し上げたいと思います。
  181. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣はお忙しいようですから、聞きたいことだけ大臣に先にお聞きしたいと思うんですが、私がお聞きしたいのは、むろん係争中でありますから、この問題の結論というものは私そこで行なわれるだろうと思うんです。ただ問題は、先ほど申しました三人の人物から見て、私はまさかうそは言うまいと、こう信ずるわけであります。そういう社会的な人たちが立ち会いをして確認したにもかかわらず、幾ら国との係争中の問題であっても、次の乙の第七、八号を出すということはもう全然違っておる、こういうことが常識的にできるのかどうか、こういう点が私には納得のいかない点であります。したがって、この問題について大臣は裁判の結果が出なければわからぬと、こうおっしゃいますけれども、私は、この問題だけで、次に出された書類はほとんどやっぱり裁判を有利に導かんがための逆の偽造書類ではないかというような感じを受けるわけです。したがって、これは実はそのときに三人立ち会った参考人、さらに控訴人側の立ち会い人の三人をここへ呼べれば事は早いんでありますけれども、時間的にもそういうことができなかったものですから、私は参考人を呼ぶことだけはこの際控えたのでありますが、こういう点を一ぺん大臣にもお調べ願いたいと思うんです。これは非常に私は、裁判の係争中ではございますけれども、法治国家としてのゆゆしき問題ではないかと思う。これは政府が確認しておきながら、それとは違いますという書類をあとから出すという、その精神ですね。それなら確認しなければいいんですよ。ここらがやっぱり問題の焦点に私はなろうかと思うんです。この点ひとつ大臣のほうでも十分私はお調べ願いたい、こういうふうに考えます。答弁はいいです、その問題については。  そこで、この問題のもっと詳細な欠陥のあることを私は申し上げてみたいと思うんですが、御承知のように、葛根田国有林境界線査定簿、乙の第五号、なお南葛根田、これも境界線の査定簿、乙の第六号証です、この作製年月日は明治四十年の七月三十日です。その作製者は山林属の大平虎之助となっております。ところが、境界査定立ち会い通知は明治四十年の八月二日に受け取っております。明治四十年ですよ。立ち会いは八月の二日で、かりにその日に立ち会いができたとしても、この査定簿の作製は立ち会いの日から数カ月を要するということは言うまでもないのであります。これは法的にも認められておることであります。ところが、この点について、第一審において、国側の代表の古川武弥氏が証言しておることがあります。   〔理事渡辺一太郎退席、委員長着席〕 その事実は——こうした経過に対して、次のように古川武弥氏が言っておるわけです。第一番には予備調査をやる、第二番には立ち会い通知を出す、第三番には立ち会い、第四番には測量、第五番には査定図、査定簿をつくる、第六番には査定通知の順になって、それが立ち会いの日の八月二日の三日前の明治四十年七月三十日、こういうふうに作製されておるわけです。ところが、八月二日となっておりますけれども、八月二日にそうした立ち会いをやったと言っておりますけれども、実はこれも同様の写しですが、これを見ますと、この順序からいきますと、作製は五つの過程を経なければやらないと、こう言っておるのでありますから、立ち会いをやった後にこの査定簿というものはできてこなければいかぬわけです。ところが、実際はいつつくったかといいますと、七月三十日にもうできておるわけです。明治四十年の七月三十日にこれができておるわけです。おかしいじゃありませんか。いま私が申し上げました順序でなければやらないということを、この国側の代表の古川武弥という人が言っておるにもかかわらず、実際問題としては、もうすでに査定をするまでにこの帳簿が——国有林の境界測量帳というものができておるのだ、ここらに一つ矛盾がございます。こういう点を、しかもこの写しを見ますと、死亡後の相続人の大久保千代松が立ち会いをしたと書いてあります。二日に出して翌日届いたものが立ち会いのできそうなはずがないですよ。ここに一つ大きな疑問があるわけです。  それから、この問題で一番問題になりますのは、いわゆる政府の方が、これは同筆であると立ち会いの上で確認した書類であったけれども、どうもそれでは政府が不利だと、こう考えて、別の書類を出したとしか思えないのであります。ここらが非常に私は大きな問題だと思うのです。これは一ぺん見てもらってもいいですが、この鑑定をやっております第一回に出した書類は、全部ペン書きの、しかも同一筆跡である。これは間違いないのであります。鑑定書でもそういう鑑定をしているのであります。この前、私が質問いたしましても、国は、いま係争中だから裁判の結果この問題は結論が出ることと思いますという、こういう御答弁をしておられますけれども、私は、それでは済まないのではないか、こういう心配をするわけですが、大臣、そういう点ではいままで報告も聞いておられないのか、この問題は全然御承知なかったのか、一応大臣のその間の実情をひとつお聞かせ願いたいと思います。御承知なのか、御承知でなかったのかですね。
  182. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) この前、当委員会であなたがお尋ねになるという話を聞きまして、当時若干事務当局から報告を受けましたけれども、その後、先ほど申し上げましたように、裁判も進行中でございますし、もちろん、先ほどのお話のような点があれば筆跡鑑定等も当然裁判所で行なわれるだろうと思います。まあ結果としては、私どもとしては裁判所の決定を尊重する以外にないと思いますが、私どものほうの出先の、つまり国家公務員でございますから、国家公務員は国家の利益を尊重する立場でできるだけの努力をいたすことは当然でありますけれども、また反面、公務員は民間人個人の利益、人格を尊重せざるを得ない、これは当然なことであります。両方の利益の調和をどこでとるかということですが、まあ何しろ古いことでもあり、ただいまお読み聞けのような事態が真実であるとすれば、だれが承ってもたいへんふしぎな点があると思いますが、裁判の係争中でもございますが、将来もあることでございますので、事務当局を督励して、できるだけその真相を把握するように努力をさしておる最中でございます。
  183. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 次に申し上げたいのは、これが確認した前の書類なのです。そこでやっぱり悪いことはできないものだなという気がするのですが、それは第一審で提出された乙の八号証の二にある大久保千代松という印鑑です。これはごまかすことはできないと思うのです。原本より直接のコピーの証拠としてこれは薄く写っております。それがこれです。コピーは朱印はなかなか出てきません。朱印はコピーでは写りません。したがって、ぼけております。この印鑑の径と、あとから出しました印鑑の径は相違があります。一ミリ違います。ここらが私は大きなエラーであったのではないかというような気がするのです。これがいまから三十年前ですが、大久保千代松氏が持っておった印鑑です。おそらくこの印鑑を使ったと思っております。これが先ほど申しましたその写しですが、こういうふうに大久保千代松というこの判はぼけております。この判がぼけておりますのはコピーでは写らないのです、朱印は。だから、ここらの問題を考えてみますと、まことにいろんなテクニックを使いながら、国としては一般社会人をごまかしながら、こういう悪らつなやり方をしておるのじゃないかということすらわれわれ第三者から見て私思うのです。  ここで申し上げたいことは、この岡部氏という方を私は質問する限りにおいては調べました。社会的な人物からいっても非常にりっぱな人です。これは事件屋か何かにかかっておるというなら私は質問いたしません。けれども、あまりにもりっぱな家庭であると同時に、歴史的な経営者でもあるし、そして、いま新しく自分たちのその事業をやるためのビルを建てようとして、それも途中でやんでおります。そういう人の問題について私は考えてみますと、いかにも国がこそくなことをやって、その民有林を逆にごまかそうとしておるのではないか、こういうことすらわれわれは考えざるを得ないのであります。したがって、先ほどお見せしましたように、これを見ていただけばよくわかります。どうぞひとつ見てください。印鑑の問題も、だれが見てもわかります。大臣一ぺん見ていただきます。これはしろうとが見たってわかります。  次にもう一つ申し上げますが、境界査定通知書の——これは前回も申し上げましたけれども、前回は資料不足で十分な質問ができなかったのですが、この件についてお尋ねしたいのは、境界査定処分の一番重要な書類ではないかと思うのです。あとでいいですから、これはもう、もし回答がここでできなければ、書類でひとつ出していただきたいと思うのです。  まず第一、明治四十年の、私は鉄道の事情を申し上げたいと思うのです。盛岡から雫石間が大正十二年の六月二十五日に開通したのです。それから、田沢湖から大曲間は大正十二年の八月三十一日にこれは開通した。全線の開通が昭和四十一年の十月二十日です。当時、盛岡から大曲、あるいは田沢湖線は、まだ鉄道のない時代であります。鉄道が全然なかった時代です。その時代に、下川原雫石郵便局長のことばをかりれば、当時、青森行の手紙は全部秋田回りであった、奥羽本線の大曲まで約六十数キロを飛脚で飛ばしていたというのが証言です。この事実を考えれば、乙の九号証に押しておられる印は、明治四十年の三月十四日午後雫石を発して翌日の午前中に青森には絶対に着かないということが言えるわけです。飛脚輸送でありますから絶対に着かない。現在何日かかるかということで試験をしたところが、配達証明でやってみたのですが、昭和四十五年の九月二十九日に、青森局から午前九時に出して九月三十日の午後雫石に着いております。速達で約一日半かかっているのです。したがって、境界査定の立ち会いをやるという通知を出して翌日着くはずはないじゃありませんか。常識から考えてみて、そんなに飛脚が速いということは言えないのです。これが一つであります。そこで普通は現在でも二日半から三日かかるようであります。明治四十年の、鉄道も自動車もない時代ですから、もちろん、速達なんというのは明治四十年には日本の郵政ではまだ取り扱っていなかった。これが事実であります。  そこで、これでもう一つ疑問を感じますことは、これも見ていただけばわかるのですが、陸中国岩手郡雫石村・大久保千代松、こう郵便で出したというのを写真にとった見本があります。そうすると、これはその当時、日本の場合は、御承知のように、消し印については、この郵便局のスタンプを見ますと、こう書いてあります。四十年三月十四日イ便と書いてあります。これは日本文字です。ところが、明治三十八年七月より日本字ではいかぬというので廃止になっております。アラビア文字に全部変更されております。したがって、スタンプを全部取りかえなさい、その間の余裕は見ましょうという法律がありました。ところが、これは依然として明治三十八年から約三年の間いまだに日本字を使っておるということです。もう一つ奇怪に感じますことは、大臣、ここにはイ便と書いてあります。書留には少なくとも割り判がなくちゃいけません。ここにはロ便と書いてあります。割り判にこんなことがあるのですか。郵政の規則上、イ便の消し印を押しておきながら、同じ判を押さなくちゃならないものを、ここにはロ便と書いてある。同じイ便でなぜ割り判しなかったか。ますます疑義が深まるのです。  こういう点を考えてみますと、これはまことに、いまの政府は大きな顔をして個人所有の土地の問題について係争をしておられますけれども、私は裁判でどう出るかわからぬという御答弁しかお聞きすることができないとは考えておりますけれども、あまりにも明白な偽造的なにおいがぷんぷんしている。そうして社会人を斯くような、立ち会い人をばかにしてかかっておる。しかも、国家公務員がそういうことを——裁判ならばどんなことをしてでも勝たなくちゃいかぬ、そういう態度を大臣はどうお考えになるのか。私は、これは法治国家としてゆゆしき問題だ。むろん正しいことは正しく主張していただかなければいけません、国の財産ですから。けれども、やった事実に対して次から次に偽造的なやり方の事実が明らかに出てくるような問題は、これは許すべからざることではないかという感すらするのであります。この点、大臣どうお考えになるか、ひとつ賢明な御答弁を願いたいと思います。私も国を憂える一人として、賢明な御答弁を願いたいと思います。
  184. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 国の利益をはかるのあまり不当なことを公務員がやるとは、私どもとして想像もつかないことでございますが、いろいろ承っておりますと、なかなかむずかしい事件のようでございます。これからもなお、そういうことについては私どもとしても十分注意をしなければなりませんが、要はやはり司法の判断を待って処置いたしたいと、こう考えております。
  185. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでは時間がまいりましたから、大臣はけっこうです。ほかの方はちょっとお待ちください。  香川訟務部長に御質問申し上げますが、先ほど私、来ていただいているのかと思ったら、大臣だけであったようですから、あらためて申し上げますが、実は、御承知のように、現在、岩手県で起こっております、国と岡部岩雄君との土地の所有権の——森林の所有権の問題で係争中の問題があります。前回も私質問しましたので、すでに御承知かと思いますが、この中で、仙台法務局の訟務第二課長高橋満夫、この方はもうすでに御承知だと思いますが、実は第一回に出しましたこの境界査定の通知書を通じまして、実は法廷に出ておる書類を確認したわけですね。で、その確認の立ち会いに、先ほど申しました高橋満夫というのが参加しておるわけです。片や、一方は弁護士二人、なお岡部岩雄の秘書を含めて三名、そしてこの営林局と、なお営林署と、この両方から立ち会いが出ておりますから、三人、三人の立ち会いをやっておる。その立ち会いをやって確認をしたけれども、いまはその立ち会いをやった書類は違うんであるといって、今度は別個の書類を出してきたわけです。それが一体、法務局のいかに訟務第二課とはいえ——訟務課とはいえ、そういうことをやってもいいのか、その点はどうお考えになりますか。法律を尊重しなくちゃならぬ国家公務員が、そういうことをやっていいかどうかという点について、どうお考えになるか、私はお聞きしたい。
  186. 香川保一

    説明員(香川保一君) いまお話しの立ち会いの件につきましては詳細は存じませんけれども、問題は、この訴訟で法廷に出しております通知書と領収書の問題じゃないかと思いますが、これは原本が営林署にございまして、それと同じ様式のものを——写しを作成いたしまして、法廷に書証として写しだということで差し出してあるわけでございます。したがいまして、この写しの筆跡と原本の筆跡が違うのは、これは当然のことでございますが、この筆跡の違う点から原本をかってにつくったんではないかというふうな問題が出されたように聞いておりまして、その関係の確認の立ち会いというふうなことがいま御質問なさったことだと思うのであります。これは裁判所に出しました書証は、まさに原本そのものではないわけでございまして、これは一審以来、また現在、高裁に係属しておるわけでございますが、その書証として使っておるのも原本に基づいて正写した写しでございます。その原本自身が偽造かどうかという点は、これは私どももよくそこのところは存じませんが、つまり裁判所に出したものは偽造したものでないということは、はっきりいたしておると思います。したがいまして、原本と筆跡の違う写しを裁判所に再度出すということは、特にどうこう非難されべきことでないというふうに考えております。
  187. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、その点でお聞きしておるんじゃないのです。しかも、法務関係は何といっても正しい立場に立って日本の法律を解明し、かつまた公正にやらなくちゃならぬ立場の人だと思います。そういう人が出しましたこの書類の確認を、双方三人ずつ出て立ち会いをやっているわけです。立ち会いをやった法務関係の方が、それとは違いますと言って新しいものを出してきたわけです、あなたのおっしゃるように。ところが、あなたがそれをおっしゃるなら、私一つ申し上げますが、これは写しだとおっしゃるけれども、コピーをやったのは間違いないでしょう。ここにちゃんと印が出ているわけであります、コピーの印が。そうでしょう。原本をコピーした印鑑がここに出ているわけです。朱印がコピーじゃ写りません。写りますか。私はそれを言っているのです。それをしかも、これは原本の写しだと言ってさらに新しく出してきた。立ち会いではこれだと言って認めた。法を守らなくちゃならない法務省関係のこの高橋君が、そういうことを社会人としてやってもいいのですかということを聞いている。それとも、正しいとおっしゃいますか、あなたは。
  188. 香川保一

    説明員(香川保一君) 原本をコピーしたものと、裁判所に提出いたしました書証との記載内容が食い違ってはないというふうに聞いているのでありますが、そうだといたしますれば、立ち会いで確認されたコピーしたものと同一記載内容の写しを再度高裁に出しても、これは書証の提出としては何ら違法ではないというふうに考えるわけでございます。
  189. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 したがって、この原本をコピーした、立ち会いしたものも出しても差しつかえない、こういうふうにおっしゃるわけですね。それはもうよくわかりました。大体それだけがあなたのほうに聞きたかった事項です。  今度は林野庁のほうにお聞きしますが、先ほど申しました第一回目に出しました領収書ですね。第七号と八号ですね。これの印鑑と今度出された印鑑が一ミリも違うわけです。印鑑の一ミリというのは大きな違いですね。こういう点は偽造と考えませんか。第一回目に出した印鑑と第二回目に出した印鑑とが違っているという事実がここに出ているのですが、これは偽造と考えませんか。
  190. 池田正範

    説明員(池田正範君) 印鑑の印影の問題でございますが、非常に古い問題でございまして、厳格には私どもわかりかねますが、最終的には、審理中の裁判の判断等を待つ以外にないと思います。
  191. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 すべて裁判にゆだねるという形の御答弁しかないのですが、それは私はおかしいと思うのです。裁判で結論を見るくらいなら、私はここであなたに質問しなくてもいいんです。国は間違っても私有財産を侵してはいかぬことなんです。そういうことを案ずればこそ、われわれは質問しているわけです。しかも明治時代の問題ですね。だから裁判だけにたよらないで、皆さんの見解を聞かしてくださいよ。なお、私、先ほど申し上げましたこの郵便の発送の問題について、これでも疑いはないとおっしゃいますか。これでも間違いはないと、こう信じられますか、どうですか、その点は。
  192. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先ほどの、雫石郵便局から青森の郵便局あてに出されました配達証明の問題でございますが、御指摘のように、明治四十年三月十四日の午後のロ便として発出されまして、受けたのは十五日の午前というふうになっておりますが、これは当時の郵便事情から考えて、どの程度の距離をその間の郵便に要したかという認定の問題になってこようかと思います。現在の速達便の配達状況とは比較になりませんので、ちょっと想定することが非常にむずかしいのでございますが、現在ではすでに御承知のような交通事情でございますから、即日、翌日の場合もありますし、また二、三日かかる場合もあるようでございますので、したがって当時、先生のおっしゃるように、飛脚便ということになりますれば、当然、これは汽車便のような迅速なわけにはいかないというようなことから、この間の距離が少な過ぎるというような常識的な疑問も一応はあるのだろうと思いますが、何ぶん私ども手元に、その当時一体どれくらいの距離を常識として持つべきであったか、ちょっと想定しかねるわけでございます。
  193. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、私が先ほど申しましたような鉄道便の事情というものは、あなたも想像がつかぬくらいむずかしいのですよ。その調査をやってみましたのが、私が先ほど申しましたように、盛岡——雫石間は、大正十年まで開通してないんです、鉄道は。大正十年ですから約十五年後にこの鉄道はかかったわけですね。したがって、明治四十年は飛脚しか使えなかった。そういう調査をしたところが、郵便局長から、それには相違ないという証明ももらっております。  そこで、私はもう一つお聞きしたいのですが、国側の代表古川武弥という者の証言によりますと、まず境界線を査定するためには順序がある。それは、一番が予備調査、二番が立ち会い通知、三番が立ち会い、四番が測量、五番が査定簿づくり——これに基づいてやるんだ、こういうことを言っているわけですね。政府側の代表者が言っておるんですよ。ところが、この査定図をつくるのは、それが終わらなければつくることはできないわけです。それが終わって初めてつくることができるわけです。こういう図面がそうなんです。ところが、これは査定もしないうちに、七月の三十日にできてしまっておるんです。通知は八月に出しておるのです。こういうことがあり得るかと言うんです、私は。これはいかに偽造といっても、あなたのほうから出ておる書類なんだから間違いない。裁判官もこれについてはチェックしていますよ。やはり立ち会いをした後にこういうものは作製しなければいかぬのが、これを見ますと、すでに明治四十年七月三十日に、境界査定官吏・山林属・大平虎之助というのがこれを作製していますよ。こういうところに問題があると思うのだが、それでも疑義を感じませんか、どうですか。
  194. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先生指摘のように、今日の立場に立ちますと、査定簿が立ち会いの期日よりも前にできるということは確かに常識的ではないかもしれませんが、やはり当時の事務処理の慣行等を考えなければならない面もあると思います。むろん本質的には、事実がどうであったかは裁判所の認定を待たなければなりませんが、ただ、その日付がそうであったからただちに偽造につながるかどうか、これは推定を差し控えますが、おそらく当時の実情からいたしますと、予備調査というのはかなり前から綿密にやられて、そうして予備調査は当然隣接人の立ち会いを求めてやられたのだろうと考えられます。そうすると、実際の立ち会いの期日までには、実際上の実務はほとんど終わっている、ほとんどというよりも全く終わっている。そうしてその日に、おそらく、交通の不便な土地でもございますから、この立ち会いの通知書を持って来て、そうしてこの場合には、御本人がかなりの立場の人であるし、文字云云の問題はないかもしれませんが、一般的にいうと、そこで書いたものに対して受領の判をとるということがかなり普通であったのじゃないかと考えられます。といたしますというと、この八月二日と七月三十日の日付の問題は、おそらく、これはよくわかりませんけれども、予備調査を完了した時点で、あらかじめ査定簿をつくっておいて、その日付を誤って書き込んだのじゃないかというふうにも考えられます。したがって、この七月三十日の、査定簿の作成者の上に書いてございます日付の意味がどういう意味であるかということについては、きわめて長い期間、前のことでございますので、よくわかりませんが、私どもとしては、確かにそのことは、御指摘のように、きわめて常識的ではないと思いますけれども、そのことがあるからただちにその簿冊自体がおかしいのじゃないか、偽造じゃないかというふうには考えておらないわけでございます。現在、本年の九月一日付で控訴人側から裁判所に対して鑑定の申し立てがなされているというように承知いたしておりますので、鑑定の結果おのずからこの点は明らかになるだろうというふうに考えているわけでございます。
  195. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは昔のことだから、あなたはいいかげんな見解を述べるが、想像とかで見解を述べないで——私は新しい書類をもってあなたに質問しておるわけですよ。これは、昔の農林省関係は全部でたらめだったと言うのですか、あなたは。あるいはそうかもしれませんね、あなたの見解を聞くと。ところが、昭和十三年十月十五日に、岡部岩雄は、岩手県岩手郡雫石町・雫石営林署長にあてて、山林境界立ち会い確認願というものを出しておるのです。こういう願い書を出しておるのです。これに対しては回答もなければ、何もないのです。昭和十三年です。したがって、これを三カ所の確認のためとして、立ち会い人を置きたいというので、境界の立ち会い確認願いを出しておるのです。それには一向振り向かないで、そしていよいよ本人が山を売るということになったら、国有林だと国は言っておるわけです。そうして、御承知のように、この岡部岩雄はずっと境界線に——こうした写真をとったのがあります。これに書いてあります。昭和十三年九月八日、この時期に境界線の確認をしたいから来てくださいと、こういったことが全部書いてありますよ。そうして山の管理人は三代にかけて管理してきてますよ。だから、あなたの先ほどの答弁を聞いておると、そういう過程は踏むけれども、現在がそうであって、昔はそうした書類を事前につくる場合もあると。——そういう事実があったことがありますか、ほかに。それを聞かしてくださいよ。どういう実例があるか。
  196. 池田正範

    説明員(池田正範君) 先生の、七月の末の期日と、それから八月の二日の期日との矛盾について、あるいはそういうふうな処理のしかたが当時の状態から見てあったかもしれない、ということになれば、必ずしも、そのことが直ちに、この査定簿を偽造であるときめつけるところにまではいかないのではないかというふうに申し上げたわけでございまして、そのことが、他に事実として、ほかに同様の例があったかどうかということについて申し上げたわけではございません。  それから、先ほどの、昭和十三年でございましたか、境界確定について立ち会いを申請されたという岡部氏の話につきましては、これは、またおしかりをいただくかもしれませんが、実は、当時の件名簿を公式に調べてみましたけれども、件名簿の中のどこにも載っておりませんので、どうも、正式には役所で受けつけていないのではないかというふうに考えられます。
  197. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは、あんたの答弁をかりるわけじゃないけれども、それなら取っていても、取っておらぬと言うのと同じだと思う。あんたのさっきの答弁はそうでしょう。想像で言いなさんなよ。昔だから事前に書類をつくることもあり得ると、想像で言ってる。私がいま申し上げたことを、それはないとあんたはおっしゃるかもしれぬが、岡部はあると言うわけだ。そんなら焼き捨てたかもしれぬと、こう言ってもいいがね、そういう不見識な答弁をするもんじゃありませんよ、想像をね。おかしな答弁だ、あんた。そんな、焼き捨てたって、これはしかたがないじゃないか。あんたはないと言うけれども、岡部は出したと言ってるわけだ。その書類があるわけだ。ちゃんと書留で出してるんだ。それには何の回答もない。だから、かってな言い方だが、国の役人が全部これは焼き捨てたと言ったってしかたがないじゃないか。そういう想像的な答弁をするもんじゃないですよ、こういう重要な問題のときに。  そこで、最後ですが、問題の解決は、あんたのおっしゃるように、裁判を待つ以外はないということは、私も十分それは理解しております。ただし、あまりにも、私が資料を拝見する中でふしぎな点が多過ぎる。しかも、国と民間の係争の問題について、これだけ欠陥を持つこの係争を、一体政府は自信を持ってやってるのか。もしこれが一官吏の仕事として間違いがあった場合には、国としてどういう責任をとるのか、岩手県の官吏の二、三人をやめさせるだけでは問題が済まないですよ。しかも、いま岩手県地方においては、こういうことは——これ一つは氷山の一角だという。国は、どうしてごまかし的なことをやって、個人所有地というものを侵害していくのか、ということまで評判に出ているということを私は聞いている。これは法治国家として許すべからざる問題であります。だから、裁判に勝つとか負けるとかいう問題でなくて、これだけの証拠書類が上がっておる事実から見て、国としては慎重にいま考えるべき時ではないかということを、私はむしろ忠告をしておきたいと思うのです。  これで私の質問を終わります。
  198. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは、引き続いて本題に入りたいと思います。  いまの話を聞いて見ましても、だいぶやはり国有地か民有地かということでもめているという問題が、あちらこちらにあるという感じを受けたのです。それで、それに対する処理のしかたが非常に国のほうは無責任である、そんな感じを受けたわけです。ひとつこれからの質問については、具体的な例を示してお話を申し上げるので、そのものずばりでお答えいただきたい、こう思います。  すでに調査を願っておりますのでわかっていると思いますけれども、問題は、千葉県八千代市高津新田字曽我野三百七十二番、三百七十三番、三百七十四番、こういう旧軍用地——旧軍隊が買い上げた、買収した土地があります。約一万坪、時価で坪一万円以上するだろう、非常に住宅の密集したところです。こういう土地がありますが、まあ御承知のように、これは終戦直前に、そういう混乱の中で旧陸軍が言うならば強制的に買収したものです。で、これが一応大蔵省の所管ということになったわけです。それまでの経過についてひとつお聞かせ願いたい。
  199. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの高津新田字曽我野三百七十二番、三百七十三番、三百七十四番の土地でございますが、本地は、昭和十八年九月二十日、旧陸軍省が習志野演習場の拡張用地として河端清太氏、川口常五郎氏から買収したものでございます。大蔵省は、昭和二十六年一月十六日に、本地を含みます周辺土地六万八千百十五坪でございますが、これを農林省——これは自作農創設特別措置特別会計でございますが、これに所管がえを行ないました。
  200. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 お話を聞いていると、あたかも国の財産であるように聞こえます。しかし、この問題についてひとつ突っこんでみたいのですけれども、それでは、これに対する、旧軍隊が買収したという契約書あるいはまた所有権の移転登記、それから、その土地についての金銭のいわゆる授受、これが明確に行なわれておったという証拠があるのか、ないのか。
  201. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) お尋ねの資料といたしましては、土地の売り渡し証書、それから所有権移転登記承諾書、それから千葉区裁判所大和田出張所あての陸軍省所管不動産登記の嘱託指定官吏からの登記嘱託書がございます。
  202. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私が聞いておるのは、たとえば、一つの物件に対して、これが売買される、そのときには契約書がなくちゃならない、あるいはあなたのほうでは売り渡し証書と、こういうことになっています、そういうものがあるかないか、あるいは代金の授受が行なわれているのかいないのかという、その明確な証拠があるかないか、それから移転登記が正式に行なわれておるのか、ないのかということを聞いているんです。
  203. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 契約書がございます。それから代金の支払いを証明する書類、その書類そのものを証明する書類はございません。それから移転登記はしてございません。
  204. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ということは、これが明確に国の財産であるという証明はできないということになりますね、そうすると。常識的にいって移転登記もされていない、金も払っているか払ってないかわからない。それで、それをもって国のものであるという——何も国の財産であるという証拠が一つもそろってない。だから、これは国の財産であるという公証力はもちろんないでしょうし、また、それだけでは国の財産であるという証拠にはならぬ。したがって、これは国の財産とは言い切れない。まあ、こう私は思うんですけれども……。
  205. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 契約書がございまして、契約によりまして所有権は国のほうに移ったというふうに考えられますので……。それからなお国有財産台帳に登載されています。そういうような点から国有財産であるというふうに考えておりますけれども、まあ御指摘のように、代金関係の授受、その書類はございませんし、それから移転登記も済んではおらないということであります。
  206. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ですから、その事実をあなたがそう認めているということは、これは国の財産であると確認できないじゃないかと、こう申し上げているわけです、そうでしょう。
  207. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 先生のおっしゃいますのは、常識的な意味ということではどうかというふうに考えるわけでございますけれども、国といたしまして、所有権の問題からいたしまして、国有財産であったかどうかという点につきましては、国有財産であるというふうに考えております。
  208. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あのね、国有財産であるという。国有財産であるとするならば、それはこの一つの、たとえばいま申し上げた土地に対して河端清太氏との間に金銭の授受が行なわれ、それから所有権の移転が行なわれ、そういったものがきちんとならないで、そしてこれはおれのものだということが世間に通用しますかと言うんです。あなたがえらそうに、私の言っていることが常識的なことであって、そういうことだけでは解決できないというようなえらそうな話をしておりますけれども、いま土地問題は大きな問題です。これっぽっちの土地だって場所によっちゃたいへんなものだ。何とか自分の所有権にしたい。悪徳不動産屋はごまかしてでも自分のもののように見せる、そういう時代だ。で、そういう時代に金がやりとりされたんだか、されないんだかわからない、所有権の移転登記は行なわれていないんだというような状態でもって、これはこっちのものですよなんて言ったって、そんなものが通るわけがないでしょう。だれが認めるんですか。じゃあなたは、代金を支払ってあるんだか、ないんだかわからないと言うんでしょう。払ってないとしたらどうなるんですか。それでも国のものだと言うんですか、契約書があるから。それはおかしいじゃないですか。どうですか、その点。
  209. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 売買契約によりまして契約書がございます。売買契約によりまして所有権は国に移ったというふうに考えるわけでございまして、代金の支払いにつきましては、これは明確ではないわけでございますけれども、まあ仮定といたしまして、もし代金の支払いがなかったということになれば、国が代金の支払いをしていないという債務不履行の問題が生ずるわけでございまして、そちらのほうの問題になるのではないかというふうに考えます。
  210. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 何を言っているんですか、あなた。あなたは、契約書があるから、それは法律的にいえばこっちのものだ、そう言っているんです。それじゃ金を払わなくてもその契約書がありさえすれば、金は払ってなくてもですよ、それは国のものだと、こうあなたは言いたいわけですね。金を払ってなくても契約書がある以上は国のものだ、こう調べもしないであなたは言い張るんですか。
  211. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 売買契約によりまして所有権は移転したというふうに考えております。
  212. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ金は払ってなくても、契約書さえあればそれは国のものである、それが世間一般、いかなる場合にでも通用するのだと、こういうことになりますね。私は、悪徳不動産業者を相手にして話をしているんではない、国を相手にしている、国民の利益を守る国を相手にしていま話をしている。いいですか、その辺をあなたいま間違えてはいけないよ。あなたの話を聞いていると、あなたが悪徳不動産屋で、それであくまでも契約書があるからこっちのものだと言っているような、そういうやりとりみたいだ。そうじゃない。やはり国民の利益を守る、財産を守るという国の立場、そういう立場の人といま話しているんです。ですから、それは最も常識的な判断でやるべきだ、そういうことですよ。それで移転登記だって行なわれてない。所有権が移転したという移転登記、それのまだ一歩手前なんです。移転登記してないじゃないですか。また見ましょうか。これに移転登記しろと書いてあるんですよ。そして、金の払ってないものは金を払いなさいと言っているんだ、この中に。そういうことをちゃんとやらないから問題になっている。だから、問題はごく常識的な考え方でやるべきだ。悪徳不動産屋みたいな根性で話し合いを進めたんじゃ、いつまでたったって解決しない。そういうことになりますと、まず登記も行なわれていない、これは認めますね。それから、金も払ってあるか払ってないかわからない。——払ってないのにきまっているんです。契約書をあなた読んでごらんなさい、契約書の第三条。
  213. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 「売買代金ハ所有権移転登記済後請求スルコト。」。
  214. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうですよ。契約書ですよ。あなたの言う契約書。「売買代金ハ所有権移転登記済後請求スルコト。」、いいですか、はっきりこういうふうにうたってあるのですよ。この間も申し上げたように、これは終戦直前のごたごたのときに買収された問題ですよ。いいですか。だから、一般の物件の取引のように即座にそこでもって金のやりとりが行なわれるという、そういったことも考えられない時代です。そこで、相手は権力を持った軍隊です。その軍隊が、一応しかしここでは、この売り渡し代金は「所有権移転登記済後請求スルコト。」——国としては所有権の移転登記が行なわれていないのですから、いないということは、これを売った人は請求できないということでしょう。請求できませんよ、こんないわゆる契約書では。移転登記されていないのですから、所有権は相変わらず河端清太氏のものになっている。にもかかわらず、その当時の軍隊に向かって、早く金を払えなんて言えないでしょう。契約書にもはっきりうたっているのです。だから、金の授受はない、所有権の移転が行なわれていないということは——いわゆる移転登記が行なわれていないということは、「売買代金ハ所有権移転登記済後請求スルコト。」というこの条文からいって、払われていないということが言えるわけですよ。こんなはっきりしたことはないじゃないですか。それをああでもないこうでもないと言うところに、私は少し国の姿勢もおかしいと思う。さっき言ったように、悪質不動産業者ではないのだから。そうして、そのほか、この例規を見ても、はっきり代金を払ってないものがありますよ。その分については代金を払いなさいとあるのですよ。ちゃんと読みましょうか。それでも納得しなかったら読みますがね。だから、これは常識的に言って、あなたは契約書というものを主張するけれども、金がはっきり授受されていないという、そういうことがわかっておって、これは国のものだと言って主張をするということは、私は国の姿勢がおかしいじゃないか、こう言いたいわけです。で、それは、はっきり認めざるを得ないと私は思いますよ。
  215. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) ただいまのお話でございますけれども、実は、この当時、軍がお話しのように買収いたしまして、それでいろんな面で事務が遅延いたしまして、そうして非常に時間がかかるというふうな事情があったわけでございます。それで、旧所有者からは代金の支払いを督促してまいったというふうな事情がございまして、それで旧海軍におきましては通牒を出しまして、そうして代金の支払いを促進しておるわけでございます。で、それによりますと、売り渡し書を徴するとともに代金の支払いを行なえという措置をとっておるわけでございまして、実は、これは海軍でございますので、お話の問題は陸軍でございますから、海軍と陸軍との相違があるわけでございますけれども、当時においてはそういうふうな事情もあったということを考えますと、先生のおっしゃった契約の文面にもかかわらず、代金の支払いをやったのではないかというふうな推定のつく面もあるわけでございます。
  216. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 推定ですね。確たる証拠じゃないですね。それを見せてください。——それを読んでください、払ったという証拠。
  217. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 読み上げます。「土地買収代金ノ支払促進二関スル件 経物第九十二号 経理局長、建設局長通牒 昭和十六年二月二十八日」とございまして、「首題ノ件二関シテハ地籍ノ実測、登記所ニ於ケル登記等ニ著シク日数ヲ要シ、従ッテ、代金ノ支払又遅延ガチニテ、多数売渡者中ニハ土地引渡後ニオケル生活ノ窮状同情スベキモノ」、その次の二字がちょっと読めないのでありますが、「社会問題トシテ顧慮スベキ状況ニ之アリ、将来軍備ノ整備上一大支障ヲナスノ虞レアリト認メラレ候ニツイテハ爾後左記ノ通り取扱ワレ、之が促進二一層努力相成リ度、追ッテ代金支払が十分促進セラレル場合ニ付従来ノ方法ニ依ラザルモ勿論差支エ之無キ」とございまして、「記」として一、二、三、四とございまして、八まであるわけでございますが、その第四号に、「売渡書ヲ徴スルト共二昭和十二年勅令第五八四号第一条ノ規定ニ依リ代金ノ支払ヲ行イ売渡書ノ日付ヲ以テ国有財産台帳二登録スルコト」ということがございます。
  218. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 何をあんた言ってるんですか。そんなことを聞いてるんじゃない。ごまかしたらだめですよ。ここのところは幾ら言ったって、あんた何とかごまかそうと、証拠があるんだから、その証拠についてぼくは尋ねているのに、とんでもないものを引っぱり出して、ここにあるんだと——それは国のほうが代金や何か全部支払った上で、一切の支払いが整った上で、そうして台帳に載せろと書いてあるんじゃないですか。あんた、自分の都合のいいところばっかりあれして、これにあるなんと言うのはおかしい。だから悪質不動産屋だと言うのですよ。  それで、それじゃまたここのところ、この問題だけでやると、なかなかこの問題は進まないので——こうあるのですよ。「此軍用地デアッタモノニ付其ノ買収当時所有権移転登記ノ未了ノモノハ代金ノ支払及ビ所有権ノ移転ノ完了ヲ明瞭ナラシメル関係書類ヲ添付シテ之ヲ移管スルモノトスル。代金支払未済ノモノハ大蔵省ニオイテ其ノ支払後移管スルモノトスル」とあるじゃないですか。こういうふうにやったんですか、ちゃんと。こういうふうにやったんですか。こういうふうにちゃんとあるんですよ。にもかかわらず、すべてがきちんとなってないということはおかしいじゃないですか。こういうふうに例規にある。これは国がつくったんだよ、あんた。旧軍用地についてはこういうふうにしなさいと言っている。ということは、こういうふうになっていないじゃないか、なってないということは、国の財産として明らかに認めるわけにはいかない、だれが考えても。そういうことが言えるわけでしょう。こういうふうにちゃんとやったんですか。まどろっこしくてしようがない。
  219. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 当時の事情を推定する以外にないわけでございますけれども、代金の支払いが未済であるということがはっきりしているものにつきましては、代金の支払いをしたのではないかというふうに思われます。
  220. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いやになりますよ、あなた、そんな子供だましみたいな。何度言ったらわかるのですか。認めなさいよ、そんなごまかしみたいなことばかり言っていないで。こういうふうにやったのだと。やっていなければやっていないでいいじゃないですか、そうでしょう。やったのですか、やっていないから全部がそろっていないのでしょう。大蔵省の段階の話をしているのですよ、そこが問題なんだ。
  221. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) この問題につきましては、結局こうなっておるわけでございますが、実際問題として、どうやったかというふうなことがよくわからないのでございますが、ただ農林省のほうに移管するにつきまして、ここに書いてあるような措置を万全にとって移管したかどうかというふうな点については、不備な点があったというふうに思います。
  222. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 だけれども、こういうことを大蔵省はやったのかと聞いているのですよ。そんな、それ以後の話は——まだそこまでいっていないのですよ。大蔵省の段階でそういう手続をやりなさいと書いてあるのに、それをやったのですかということを言っているのです。  じゃ河端氏との間に、そういったことがあるわけだけれども、大蔵省は河端氏のそういった問題について、どういうことで話し合いを進めてきたのですか。
  223. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これも実はわからないわけでございますけれども、河端氏とはその当時話を具体的にいろいろしていなかったのではないかと思われます。
  224. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこに問題があるわけです。もう少し親切に話し合ってあげれば、そのところは私は解決できると思うのですけれども——こういう例規があるでしょう。この例規というのは、その当時いろいろ問題が派生してきているので、その問題をとらえて、この問題についてはこうすべきだ、ああすべきだという、その現実の問題をとらえた上で、それでこういうものができているということは間違いない。それをなおやろうとしなかった、それを実行しようとしなかったところに問題がある。あなたのほうは言いっぱなしだ。そして出先のほうはどうだ。いばちゃって幾ら何と言ってこようとも、全然それを取り扱おうとしない。そして、こういう例規にあるような姿勢でもって、この問題解決に取り組もうというものは何もない。そこから問題が発生しているのです。だから、この例規のとおりに、出先がほんとうに真剣にこの例規を考えて、このとおりに実践していこうということであれば、いまごろこういう問題が全国的に三千三百十三件あると、この間言われたけれども、そんなにあるわけはないのです。あなた方がほんとうに根拠のないものを、おれのものだというふうに主張しようとするところから問題がまだ残っている。このとおりにやりさえすれば、問題なんかどんどん解決しているということなんですよ。その辺が非常に国民の立場を無視した一方的な国のやり方である、こう言う以外にない。それじゃもうこれ以上、あなたのところではどうしようもないので、今度は農林省のほうにお尋ねします。  農林省にこれが移ったわけですね。そうすると、農林省はどうですか、河端氏と交渉をやったんですか。金も払っていない、移転登記も行なわれていない、そういう土地なんですよ。そういう土地なんだから、当然、河端氏との交渉があってしかるべきじゃないか、こう思うのですが、その点どうですか。
  225. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) その当時の事情は、まだ詳細に調査ができておりませんので、当時の関係者が河端氏と交渉したかどうかという点については、ここで確答することができませんが、大蔵省の国有財産の台帳に登録されておる物件を政府所有の物件と見て、所要の手続で所管がえをしたことは事実であろうと思います。
  226. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 手続は——かってにこれを農林省がぶんどったり、大蔵省がぶんどったりすることはできませんよ。当然、手続というものが行なわれた、そんなことはわかっています、聞かなくても。だけれども、その手続をするまでの段階として、こういう問題をはらんでいるのだということをいま論じているわけですよ、いいですか。にもかかわらず、あなたがそういったそれ以後の話をしたのでは何にもならない。交渉はあったのかどうか、そのことについても、これは何も昔の話だからといって、国の立場でもってこちら側を固めなければわからないという問題じゃない。河端氏も生存していることだし、いま話し合ってみたって、その当時の状況というのはわかるはずです。そういう手が打たれているのか、打たれていないのか、どうですか、だいぶ長いのですよ。
  227. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) その当時、行政庁の側におりましてその件を担当していた人をさがすのに手間どっておりまして、なかなかそこのところの確認が十分できていない状況でございますので、はたして河端氏と話し合いが持たれたかどうかということを、ここで答弁申し上げることはできないわけでございます。
  228. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いいですか、局長、そんな無責任な話がありますか。あなた方は、これはさっきから言っているが、この例規は国でつくったのでしょう。そうじゃないですか。国がつくったのですよ。この管理がえについてこうあるのですよ。「管理換の協議される財産中移転登記、代金支払の関係等のため急速に処理困難なものがあるときは、これ等の財産については別紙要領二の(4)、(6)によって管理換し、農林省側に於てこれ等を解決することとするが、財務局は手持ち関係資料農林省側に引渡し、且農林省側の之が解決に協力する。」、こうあるのですよ。だから農林省は、そういう問題を持ったものについては、責任を持って解決しなければならない、こういうふうにうたってあるわけです。だから当然行なわれていなければならない。それが行なわれてきたのかどうか、その交渉がなされてきたのかどうか、こういうことを聞いているわけです。  それと、もう一つは、いわゆる一切のそういう書類が——いま局長は、ただ大蔵省から回されてきた書類、一応の通知か何か知らぬけれども、そういうものが回ってきたので、大蔵省のものだと思っていたのだ、こういうふうに言っているけれども、実際は、そういう関係書類を全部添付しろとここにある。大蔵省はちゃんとしたのですか。していればわかるはずだ、両方で。局長のほうから先に交渉するのがあたりまえなんです、これからいえば。
  229. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) おそらく関係書類を添えて所管がえを受けたものと思いますが、ただいま理財局次長から御答弁がありましたような書類を見て、しかも、大蔵省の国有財産として登録されておるという実態に即して判断が行なわれたものであると考えます。
  230. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 考えますとか、何とかというあなたの憶測じゃ困る。そこで、あなたは書類が整っていたものと思うと、こう言うんだ。ところが例規集によると、その一切の書類を添付しなければならない。ところが、その添付する書類が添付したくても整ってないんじゃないですか、この問題でさっきから言っているように。当然それは、所管がえするときに、問題の土地であるということは農林省がわからなくちゃならないのですよ。どうことばをかえて、あなた方が言おうとも、この例規から言うならば当然そうあるわけです。だからここで、がたがたがたがた回りくどいことを言っている問題ではない。そういう書類は、大蔵省はここにあるようにちゃんと添付していたんですか。添付したとすれば、これははっきりこの例規からいって、完全に国のものではないということが一応農林省でわかるわけですから、それが行っていれば、一応大蔵省は責任をのがれるかもしれない。だけれども農林省が今度はずぼらだということになる。行っているのですか。
  231. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これも状況がよくわかりませんけれども先生のおっしゃる意味において、完全な関係書類が行ったということではないと思います。
  232. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、完全な書類が行ったのではないと思うということは、それはまだ問題をはらんだ土地であるということが言えるのですよ。これは否定するわけにいかない。それについては、この例規にあるように、こういう処置のしかたをしなければならぬ。そういったことが何にも行なわれていなくて、それで国のものだ、国のものだと主張する国の姿勢というものは、これは国民のほんとうの利益というものを無視した一方的な、高慢な、横暴な態度と言う以外ないと私は思う。これはもう一ぺん考え直さなくちゃならない問題ですよ。  そうすると農林省に伺いますが、この例規にありますけれども、この問題のある土地については、代金等全部支払って移転登記を行なって、所管がえになったものについては農林省で全部やるわけです。そういうふうになっている。そういうふうにやれと書いてあるのですから。だから、これは移転登記を農林省はやったんでしょうね。間違いないでしょう、これは、農林省
  233. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいま先生指摘のように、この軍用地として買収され、大蔵省財産から農林省へ所管がえの過程におきますさまざまな問題に徴しまして、農林省としては所管がえは受けましたが、所有権の移転登記はやっておりません。
  234. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃあなた方は、何を基準にして行政をやっているのですか、やっているとか、やっていないとか言っているけれども、それで済む問題じゃないんですよ、こういったことは。その財産、それが民有地であるか、国有地であるかという、そういう確認をしなければ——そのためには、こういう手続を一切行なっていかなければならないということを言っているのですからね。それがひとつも行なわれないんじゃしようがないですね。じゃあここにこうありますよ。「都道府県知事が(2)の認可をしたときは、財務局長はその認可に係る土地物件を速かに農地事務局との間に引継を行うものとする。尚買収当時所有権移転登記未了のもので管理換前にその処理を了する暇のないものは、地方庁において財務局の協力を得て、管理換後農林省に移転登記する。」と、こういうふうに明確じゃないですか。なぜやらないのですか、農林省は。だから問題が起きるんです。
  235. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先ほどからたびたび申し上げておりますように、当時のこの案件をめぐります客観的な情勢なり、その事実関係がまだ明確な調査をなし遂げておりませんので、ここでこうだと断言することができないのははなはだ残念でございますが、先生御引用の例規は、自作農創設特別措置のために元軍用地及びその付属物件……。
  236. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 よけいなことは言わなくてもいいですよ。
  237. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) この移管を促進する——食糧事情が非常に窮迫しておったときに、多数のそういう国有財産の移管を促進して、急速に自作農の用に資するという政策目的がありまして、その業務に忙殺されておったわけでございまして、そういう客観的な情勢を勘案をいたしますと、そういう移管を急ぐという事情もわからぬわけではございませんし、その過程におきまして、先生指摘のいろいろ事務上のそごがあるいはあったかと存じますが、そういう情勢のもとで行なわれた措置であるというふうに判断をいたしております。
  238. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いいかげんなことを言いなさんな、あなた。忙しいから国民の財産は無視してもいいのだと、こういう言い方じゃないですか、あなた。そんなばかな話ないじゃないですか、あなた。忙殺されております——それは国だけが忙殺されているんじゃない。国民だってやらなくてもいい戦争をやってあっぷあっぷして、そして苦しんで苦しんで、苦しみ抜いて生きてきているんだ。その土地も大事な個人の財産です。その財産がどれほど失われたかわからない。せめて、あるものだけでも守ってやろうとするのが国の姿勢じゃないですか。それを、国が忙しかったから——そういったこともあったかもしれないが、そういうとぼけた答弁は成り立ちませんよ。そういう考え方でいるから、多くの国民が泣いているんですよ、さっきの話じゃないけれども。ああいう問題だって同じことだと私は思う。いずれにしても、そういう忙しかった事情もあったのだと、混乱した、また忙しかったということを、あなたは悪用しているんだよ。だから話をもとへ戻して、契約の問題だってですよ、そういうどさくさのときなんだから、どういうあなた契約が行なわれたか知っていますか。少なくとも私は十日以上も前からあなたに話をしている、二週間くらい前から話をしている。だから、そういう事情を少しでも調べようと思ったんですか。どういう事情でもって、これは契約が結ばれておるか言ってください、調べたんだろうから。あなたがそういうことを言うならば、言ってもらいたい。通告して時間がたっているんですから。
  239. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先生から御通知を受けまして、早速その当時千葉県庁におりまして、この案件を担当したという人をさがしまして調査を開始しようとしたわけでございますが、なかなかその人の所在等も不明でございましたし、また古いことでございまして、いろいろ記憶の薄れた点もございまして、十分な調査がまだできておらないという状況でございます。
  240. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、あなたに直接にお話したんですよ。そんな理屈は成り立ちませんよ。あなたに直接二週間程度前からお話ししてあるわけです。その調査する対象の人物がおらぬ——冗談じゃない、ほとんどもとの住所にいるじゃないですか。ほんとうに調査しようともしないで——そういう人たちとその当時のことを話し合ってみようという、そういうことも行なわないで、そしてここの席に来て答弁をしている。わからないはずですよ。わかるわけないですよ。雲をつかむようですね。とにかくいま申し上げたように、大蔵省にしたって、農林省にしたって、国民をほんとうに虫けらのように考えているんですよ。だからそんな横暴なことができるんです。一般世間でそういうことができるわけがないじゃないですか。金も払わぬ、登記も行なわれてない。しかも、通達もこのように出ているけれども、さっぱりそれを実行されない。あなた方は、国民を守ろうという精神、そういうものから逸脱をして、そしてあなた方官吏が横暴なことをやってきたという証拠になっちゃいますよ、これは。このとおりやっていれば解決できる問題が、解決できないんですから。そういう姿勢が、ここでもってずうっと話をしてきている間に明らかになってきた。これ以上、この点についてはしようがないと思うんですが、この本題中の本題に入りたいと思うんです。  所管がえになって、農林省は、その後、千葉県八千代市高津新田字曽我野七百七十番、七百七十一番、八百八十八、八百八十九、八百九十八の一から五、八百九十九の一から二及び九百番から九百十四番の土地約六千坪を高橋岩吉さんほか九名の方々に払い下げているわけです。これはいつ払い下げになったんですか。
  241. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 旧自作農創設特別措置法の規定によりまして、昭和二十六年七月一日に一部売り渡され、残りは農地法によりまして昭和二十九年七月一日に売り渡されております。
  242. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、これは農林省、登記されていますか、農林省の名義で。
  243. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいまお話に出ました高橋岩吉、江野沢定吉ほか八名に売り渡され、登記されております。
  244. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 売り渡されてからじゃないんですよ、売り渡したとき。高橋さんのものになってから登記されているんじゃなくて、農林省——またその先へいくと話が長くなっていくんですが、大蔵省から所管がえになったものでしょう、これは農林省が登記してあるかというんです、例規にあるように。
  245. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 農林省への移転登記はされておりませんで、土地所有者のままの登記からただいま申し上げました登記に移転されております。
  246. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 じゃ、とにかくこれは農林省のものとして登記されてないということだけは、これは明確ですね。  それじゃ、法務省にお尋ねしたいのですけれども、この地番はいつごろ登記されているのか。
  247. 清水湛

    説明員(清水湛君) 七百七十番と七百七十一番の土地につきましては、昭和二十八年二月二十六日に高橋岩吉名義に所有権保存の登記がされております。それから八百九十八番の一から五、それから八百九十九番の一から二、九百番から九百十四番、八百八十八番、八百八十九番につきましては、昭和三十年の三月二十二日に当時の千葉地方法務局大和田出張所が書きまして、それぞれ売り渡しを受けたもののために所有権保存の登記をされております。
  248. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、法務省にもう一度お尋ねしたい。そうすると、この地番にかかる土地が実在するというふうに解釈してよろしいですね。
  249. 清水湛

    説明員(清水湛君) この点につきましては、実は三百七十二番の先ほどから問題になっております土地と、三百七十三番の土地というものとの関係が非常に問題でございまして、現在これについては、裁判所で訴訟事件として係争中であるということを聞いております。私ども調査いたしました結果によりますと、どうも三百七十二番の土地というのは、先ほど申し上げました八百九十八番の一から五、八百九十九番の一から二、九百番から九百十四番、八音八十八番、八百八十九番、こういう土地と同一の土地ではないかという疑いが非常に濃厚になっている、こういう現段階でございます。
  250. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いずれにしても、実在することだけは間違いないですね。  そこで農林省、払い下げたのは農林省ですから、どこの土地が払い下げられたかわからないというばかな話はないと思う。これは明らかに実在する土地として登記をされている。したがって、当然その公図というものがなければならない。そうすると、農林省はその払い下げの当初どこに所在するのか、この七百七十と七百七十一と、それから八百九十八からずっといま申し上げた地番ですね。それは公図の上からどこを指しているのか、公図をもって御説明いただきたい。
  251. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) ただいま古い地番の公図しか持っておりませんので、ただいまの御質問の点をはっきりさせることができないわけでございますが、三百七十二番と三百七十四番を売り渡したわけでございます。
  252. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ここに公図があります。あなたは古いのしかないと言うけれども、それしかないですよ。それがほんとの公図なんですよ、それしかないです。この公図から言いますと、これはその周辺の一覧になったものです。法務省に請求しますと、別件のように、別表でもって返事が来るのです。それだけで見ていては、さっぱりわからないのです。ここに幸いなことに当時町会議員等に配られた公図がある。これには全部一貫してその問題の土地も掲げられている。これを見ますと、三百七十二、三百七十三、三百七十四——それはここにあるのです。そして、七百七十一というのは、この公図の上からいって、ここなんです。それで八百九十八以外のいま申し上げた土地は、ここに厳然とあるんです。これは明らかに別個のものじゃないですか。公図の上からいって別個のものでしょう。その点はっきりしてください。
  253. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 当時の事情は調査が完了していなくて明確でないものですから、はっきりしたことを申し上げかねるわけでございますが、ただいま先生の御指摘の問題は、察しまするに、当時農林省が国の財産を所管がえを受けて自作農創設のために売り渡しまする場合には、一たん旧登記簿を閉鎖いたしまして、新しく登記の設定をいたしまして売り渡すことにしておりましたが、たまたまこの事案につきましては、前の登記簿が閉鎖されていなかったために、またその登記を閉鎖する予定であったのに、それがおくれたという事情がありましたために、同一の土地について二つの登記が行なわれる結果になったのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  254. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あなたの話からすると、ずいぶん私から言わせればごまかしだと思う。これには三百七十二、三百七十三とちゃんと地番があるんですよ。その隣りの習志野練兵場というゼロ番地とは違うんですよ、ここは。あるんですよ。だからおかしいのです、その辺のところが。その地番がないというならばまた別です。あなたのような話も一応は納得できるわけですけれども、あるんですよ。だから、にもかかわらず、いま申し上げたような地番で払い下げられておるということは、まず、その点が別個のものであるか、あるいは同じものであるかということをしっかり確認しなければならないわけです。ですからそれを、何というのか、あっちの話をしてみたり、こっちの話をしてみたりじゃなくて、そのものずばりでもって——言いわけなんかどうでもいいから、そのものずばりでもって、これはこういうものですと、はっきり言ってください。
  255. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) たびたび申し上げておりますように、まだそこのところの調査が十分できておりませんので、的確にこうということは申し上げられないわけでございますが、同一物件の上に二つの登記が併存するという事実は、そのとおりなようでございます。
  256. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もう少しですからよろしくお願いします。  公図も法務省のほうへお願いして取りました。それから三百七十三、それから八百九十何がし、それと同一のものであるかどうかということも確認をいたしました。そうしますと、御返事が法務省民事局長からまいっております。千葉県八千代市、旧千葉県大和田町大字高津新田字曽我野三百七十二、河端清太の単独所有名義である。はっきりしておりますね。だれのものでもないのですよ。河端清太の単独所有名義である。これは明らかである。また右同所三百七十三番、現在は三百七十三番の一から三百七十三番の六十三まで六十三筆に分筆されている。その中には河端清太所有名義の土地はない。右同所三百七十四番、河端清太は持ち分二分の一の所有権の取得登記をしている。他の二分の一は川口キクノ他八名共有、河端清太は他の二分の一について農地法第五条の許可を停止条件とする所有権移転仮登記をしている。だから、この問題については、川口キクノさんたちと法廷和解ができて、これも完全に河端清太の所有になっているわけです、現在は。こういうふうに法務省のほうでは、はっきり河端清太所有であると、こういうふうに言ってきているわけですね。そうしますと、あとから言った地番の七百七十、七百七十一だとか、それから八百九十八、これらはどういうことになるのですか、どういうことに。不可解でしょうがないのです。
  257. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) どういう経緯でこういうことになったかという事実、実態が明確でないわけでございますが、同一の土地の上に二つの登記が併存するということで、この問題が訴訟で争われておるというふうに承っております。
  258. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 答弁になりません。いずれにしてもはっきりと、法的にいっても法務省のほうはこうだという回答をよこしてくれているわけです。公図を添えてよこしてくれているわけです。それが、そうすると、今度は法務省のほうにだんだん話が進んでくると思うのですがね。  法務省にお尋ねしたいのですけれども、地番というものはだれでもがかってにつくることができるのですか。
  259. 清水湛

    説明員(清水湛君) 土地の地番は、登記官が付することになっております。しかしながら、先ほどの売り渡した七百七十番等の土地について、新たに登録をし登記をするというような場合には、本件の場合ですと、千葉県知事とそれから管轄登記所であらかじめ話し合いをいたしまして——話し合いをするというか、予定地番を付してくる、それを登記所がそのまま認めるというようなことが行なわれたはずであろう。そういうことがこの登記の例で行なわれているわけでございますが、法律的には登記官が付するものであるということになっておるわけでございます。
  260. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 かってに地番をつくるというわけにいかないということでしょう。
  261. 清水湛

    説明員(清水湛君) はい。
  262. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、局長はこうだああだと言っているけれども、この大事なことを同じ土地に、三百七十二、三百七十四という厳然とある土地、しかも、それは農林省から払い下げを受けた。大蔵省から移管された。また、それらを農林省のほうでは百も承知じゃありませんか。百も承知で払い下げているのじゃありませんか。それが三百七十二である、三百七十四である、そんなことはわかっているんだ。わかっている上に、なぜ新番地をつくってまで登録をごまかさなくちゃならなかったかという問題、これは重要な問題になってくる。ああでもない、こうでもないじゃないんですよ。わかっているんですよ、どう逃げようともそんなこと。そんなことがわからないで国がやったとなれば、国の財産をまかしておけませんね。国民はおこりますよ。みんなわかっていて、なぜ新しい番地をつくったのですか、いいかげんな返事をしないでください。
  263. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、国の所有権の登記がなされております開拓財産につきましては、自作農創設特別措置法登記令という登記に関する特例がございまして、この規定によりまして、知事が必要であると認める場合には、登記用紙の閉鎖をいたしまして、その土地を一たん未登記の状態にし、開拓者、入植者への売り渡しの結果に基づいて売り渡し人名義で所有権保存登記をするということで、登記事務の簡略化の措置が規定されております。これは、その当時非常にたくさんな物件を一時に処理せざるを得なかったという特殊の事情に基づいてこの措置がきめられたわけでございますが、たまたま本件の土地につきましては、先ほど先生指摘の種々の事情によりまして、国への所有権移転登記がなされておりませんでしたために、登記用紙の閉鎖が時間的にずれてまいった。一方、この入植者への売り渡しも、営農の安定という見地、食糧の増産という見地から急ぐ必要があるということで、ただいまのような結果に相なったのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  264. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、あなたは、いまのあなたの論理からいうと、明らかにこの土地は問題があったのだ、問題があったのだけれども、こういう情勢だから急いでやったのだ。それならば、なぜその後においてきちっとした手を国として打たなかったのですか。のがれられませんよ、そんないいかげんなことを言って。どういう手を打ったのですか。——それは認めましょう、あなたの言ったことを。答えられないようですから。じゃこれは明らかに二重登記ということになりますね、法務省。
  265. 清水湛

    説明員(清水湛君) 私どもがいままで調査した結果によりますと、二重登記の疑いが農厚である、こういうふうに聞いております。ただ、しかしながら本件につきましては、はたして権利者がいずれであるかというようなことにつきまして、現在裁判所に事件が係属中であるというふうに聞いておりますので、その上ではっきりした措置をとりたいというふうに考えております。
  266. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 一つ申し上げておきますが、裁判問題を私が言っているのじゃない。裁判問題以前に問題があるから、それを論じてきているのです。それを、いずれ裁判で決着がつくだろうという、その答弁は何だ。そんなばかな話があるか。それならば、さっきの話じゃないけれども、何もここでもって論ずることはない。裁判だけ待てばいいんです。国の姿勢がそういうおかしなことをやっていて、それでいいのかということをただしている。それがまた正しいのかどうかということをただしている。裁判問題がどうのこうのということを論じているわけじゃない。だから、これに対して答える必要はないです。  そこで、二重登記ということは認められるのですか。
  267. 清水湛

    説明員(清水湛君) ただいままでの調査の結果によりますと、ほぼ二重登記であることは間違いない。しかし、完ぺきな調査を現段階まで尽くしたということではございませんでしたが、いままでの調査、現地の登記所の職員が現場を調査をし、あるいは関係省庁の話を聞き、いろいろな文書を照合した結果、ほぼ二重登記であることは間違いないというふうに考えております。
  268. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 二重登記ということは間違いないですよ。狭いところですよ。そんなでかいところではないですから。それをいまごろになって、二重登記であろうと思われますというような、そんなちょろくさい答弁をしていないで、もっと迅速にやってごらんなさい。ほんのわずかなところですから。それもやりもしないで、ああでもない、こうでもないと言ってもしょうがないのだから。すぐやるように、まだいままで手を打っていなかったら、いまからすぐ手を打ってくださいよ、忙しいかもしれませんけれども。すぐやらせなさいよ。すぐわかることですから。いつまでもいつまでも、そんなぼかしているような答弁では話になりませんよ。  そこで、もし二重登記であった場合には、それは認めるわけにいかないでしょうということを私は聞いているのですよ。
  269. 清水湛

    説明員(清水湛君) 二重登記は、法律上その存在が認められないことになっております。
  270. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、もう一度法務省に。その二重登記が許されない、そうだとすると、それはどうしたらいいのですか、これから。
  271. 清水湛

    説明員(清水湛君) これはまたおしかりを受けるかもしれませんけれども、少なくとも同一の土地について、二人の人間がお互いに権利者であると現在主張しているわけであります。そういう場合に、登記所としては、いずれの登記を抹消したらよろしいかということは、実体的な審査権のない登記官としては、これはきめかねる問題でございます。したがいまして、先ほどの話にもございましたように、裁判ではっきりと、AならAが権利者である、AではなくてBであるというふうに決着がつきましたときには、その裁判の指示に従って処理をしたいというふうに考えておる次第であります。
  272. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 裁判の話をしているのじゃないのですよ。そういう問題のある土地が、こういうふうになっているのですよ。だから裁判の結果どうのこうのというのではなくて、ほんとうはこれはあなたの問題じゃないのだけれども、そういったことを私は聞いているわけではない。二重登記という場合は、これは認められないから抹消しなければならない。いずれかを抹消しなければならぬという、こういうことですね。これは東京高裁でも結論は出せないのですよ。あなた、裁判のことばかり言うから、こっちもつられて言っちゃうのだけれども、あれは決着つかぬですよ。和解しろ、和解しろと言っても、いつまでたっても解決しないのだ。そうなってくると、どうすればいいのだということになります。法的にはいまわかりました。そこで、こういう国が二重登記をやったなんという問題はいままでに例を知っておりますか。
  273. 清水湛

    説明員(清水湛君) これは全国各地の登記所におきまして二重登記がされたという例はいままでも、そう数は多くはございませんけれども、ございます。しかしながら、国との関係で二重登記が生じておるということで、具体的に事件としてあらわれたというようなものがあるかということにつきましては、ちょっと私のほうできょうは手持ちの資料がございませんが、私の個人的な記憶の範囲では、どうもないように記憶しております。しかし、それは私のあくまでも個人的な記憶でありますから、正確なものではありません。
  274. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 まあ、世にもまれなるミステリーみたいな問題が起きているのです、ここのところで。だから、これはちょっと簡単に解決しない。いま言ったように高裁でもそうです。そうならば、これは農林省がこういうものをでっち上げた。新しい地番をでっち上げて登記させた。その辺にどうもすっきりしない問題があるように感ぜられるわけです。まあ、ある程度の調査を進めておりますけれども、そういう感じがするわけです。なぜわかっていながら二重登記したか。それは常識的に言って、三百七十二を河端氏が登記してあるのですから、これは河端氏が承知するわけはないですよ。こういうこそくな、インチキなことを現地の連中が考え出した、こうしか考えられない。そこでこういうインチキなことが起こってはならないんですよ。法務省がなぜこんなに簡単に二重登記を許したんですか。
  275. 清水湛

    説明員(清水湛君) 本来、法律的にはあり得べからざることが起こったということで、その原因がいずれにあるかということも、私どもただいま調査中でございます。ただ、先ほど農地局長が御答弁になりましたように、農地の売り渡しの登記の特例に従いまして、いずれは三百七十二番あるいは三百七十四番の土地の登記の抹消の申し出がされるという予定だったところが、それがされなかったという結果、こういうことになったのか。あるいは当時の登記所としては、千葉県の知事からの嘱託がある登記事務である。その場合に、千葉県で現地を測量した確定測量図というようなものが添付されてまいりますので、その正確さを疑わずに処理をした。通常、登記事務の場合には、官公署の嘱託にかかる件の場合には、そういう測量図等については、現地に行って調査を要しないというような扱いになっておりますので、そういうようなことから生じたのか。いずれにいたしましても、もう少し事実関係調査いたしてみたいというふうに考えております。
  276. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そういう言いわけ的な話はちょっとおかしな話で、ほんとうは登記所が受け付けるのに、調査しなくてもいいようになっているかもしれない、しかし、受け付けるときにそれがどういうものだ、どういう性質のものだ、どうだという、そういったことは、これはわかるはずですよ。そういったことが確認されなかったら、登記所というものには、でたらめなものばかり登記されてしまいますよ。その辺のところを私はおかしい話だなと、こう思うわけです。いずれにしても二重登記になっておる。それをやったのは農林省である。非常にこそくな手段だと言う以外にないと思う。そういったことを、それもしかも、まだ国の財産であるかどうかわからないというものを、しかも、これは聞くところによれば、この河端氏と国との間に話し合いが二十六、七年ごろに行なわれておったその間に売り飛ばされてしまった。わかっておって——最も悪質な手段という以外にないんですよ。もう国が悪質不動産業者を取り締まるその立場には立てない、そんなことでは。そういうことが行なわれているんですよ。国の所有権をどうだという問題は別としても、そういうこそくな手段でもってこれが登録されておる。というのは、これは国自体も国のものだというふうには認めていない、苦しまぎれにそんなことをやったというふうにしか考えられないじゃないですか。そこで、農林省はこの問題について、どう対処していくのか、明確にひとつ答えてください。   〔委員長退席、理事渡辺一太郎君着席〕
  277. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先ほど法務省のほうからお話がありましたように、本件は訴訟になっている事案でもあり、また、東京高裁において和解の手続が進められつつあるということも考えまして、それらの推移を見つつ、またなぜこういう事態が起きたかという実体関係関係方面と共同しまして的確に調査をしました上で、その処置を考えてまいりたいというふうに思います。
  278. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 また裁判の話が出ている。私は裁判の話をしているんじゃないですよ。それ以前の問題として、農林省としてこういうことをやったんだから、その問題に対して農林省として裁判の結果を待つということでなくて、農林省としては責任を持たなくちゃならぬでしょう。その態度はどうなんだ、こう言っているわけですよ、何回も同じことを聞きますが。
  279. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 農林省は非常に責任があるわけでございますが、この問題は関係するところがあちこち広うございますので、そういう点も配慮いたしまして、十分な当時の実体の調査に基づいて処理方針も考えていきたいと思います。特に旧所有者と、不幸にいたしましてその争いの相手方になっておる、現にここに入って生活をしておる人のほうも頭に置きまして、問題の処理を考えたいと思います。
  280. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 これがどういうものであるかということについて、河端氏が一応現占有者がそこを耕作しだしたその時点でこれを発見した。で、これはおれのだというふうに主張したところが、農林省から買い受けた人たちは——それは昭和三十年ごろですが、もうすでに払い下げが済んだ時点なんですが、農林省から買ったんだということを堂々と言わないのですよ。隠しておるのです。その辺のところにも疑問があるのですね。農林省から買ったんだったら堂々と農林省から買ったんだ、お前のものではないと言えるんじゃないですか。それを隠しておる。そんなことは書類上のはっきりした証拠がないからどうにも言えるでしょうけれども、そういう事実がある。ですからいずれにしても、これは私が言っておるのは、裁判なんということばを使ってもらいたくない、それ以前のものとして、農林省はどういう責任をとるのかということを聞いておるわけです。たとえば、具体的にいうならば、もういままでずっと一時間半も話をしてきて、国のものであるという確たる根拠はないじゃないですか。そうだとしたら、だれのものだということを言わなくてもわかっておるでしょう。その権利が守られなかったらめちゃくちゃになるんじゃないですか。だからその権利は守ります。それで国のでっち上げたものについてはそれを抹消するとか、そして農林省がでっち上げて払い下げをやったんだから、それらの人に対しては何らかの補償をするとか、そういう考え方で臨まなければ、これは解決しないですよ。高裁だってもう事情を十分調べて結論の出しようがないと言っておるんだ。また高裁がどう言おうとも、私の立場からするならば、これは裁判に持ち込んでいくものではない、それ以前の問題として解決してあげなければならぬ問題だと、こういう立場で追及をしておるわけですからね。ですからその辺を、二十五年もたっておるのですから、いままでほったらかしておいて、利益なんか何も守らないでほったらかしておいて、そしていま問題にされたら調べてみるとか何とか、そんなまどろっこしいことをやっていたんでは仕事も進まないし、国民が何といってもかわいそうだ。あなたの裁量でそれはどうにでもなる。だから私はきょう大臣を呼ばなかった。局長の立場でこれはこうする、払い下げだって局長でもってできるのです。だからそういう責任ある立場だから明快に答えなさいと言っておるのです。
  281. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) 先ほどから申し上げておりますように、いろいろ関係者が多うございまして、そういう現実の実態の上に立って判断をしてまいらなければならぬかと思います。で、なぜこういう事態が起きたかということも、もう少し詰めて明らかにしないと、はっきりした処置方針がきめかねるわけでございますが、まあ察しまするに、本来この土地は大蔵省が軍用地として取得をして国有財産として登録したものを農林省に所管がえをした。農林省としては、いずれ自作農創設特別措置法登記令の規定によりまして古い地番を閉鎖をして、閉鎖されたものを新地番によって入植者、開拓者に払い下げらるべきものであるという認識の上に立って行政措置が行なわれたというふうに考えておるわけでございまして、その辺誤りがあるのかないのか、その点が今後究明さるべき点でございますが、私どもは、大蔵省所管の財産を所管がえを受けたという見地に立って、一応正当な措置をしたという認定に立っておるわけでございますが、本日いろいろ御指摘を受けました点、なお究明すべき点が多うございますし、また一方、またおしかりを受けるかもしれませんが、当事者間の和解の手続も進められておるというふうに聞いておりますので、それらを総合勘案をして考え方をきめたいと思います。
  282. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もう最後ですから。あのね局長、あなたのそれ、逃げという以外にないですよ。あなたはいま二重登記になっている問題だけをあれして、それを究明するなんて、ていさいのいいことを言っているけれども、それ以前の問題を論じてきたんでしょう、お互いに。その段階でもって、国のものだというふうに確認できないという、そういう物件なんです、これはいうならば。それに対して、大蔵省もあなたたちも、ああでもないこうでもない——そして、あなたがそんなことを言うならば、農林省は所管がえになったその土地に対してクレームをつけなくちゃならない問題の土地である。   〔理事渡辺一太郎君退席、委員長着席〕 だから、それについては、当然二十五年もたっているのだから手が打たれていなくちゃならないんだ。それが何も手を打っていないんだよ。それがいまになって、この点が問題だから十分に究明するとか何とか、ていさいのいいことを言ったって、いままでがなっちゃいないんじゃないですか。そしてまた、私は一つ一つ、国のものであるというが、そうではないんだという、そういう証拠をそろえながらここまで進めてきたんじゃないですか。にもかかわらず、まだ裁判のことを言っている。それじゃ、三千三百件あるんだけれども、その資料をいま要求しているけれども、一つ一つ全部取り上げてでも、あなたがそんないいかげんな答弁をしているならば——もう、あなたが局長の間には解決できない。三千三百件あるんだよ全国に。そして責任ある立場のあなたから、ある程度明快な答えが出てこないということは、それはごまかしという以外にない。いままでやってきたことは、局長の権限で何でもやってきたんじゃないですか。大蔵省から受けてきたんだからどうだこうだ、だけれども農地法のこうこうで——こうこう農地法によってこれは払い下げた。それは自分たちの権限でやったんじゃないか。この問題だって、あなたの権限でもって結論が出せないわけじゃない。事情はいま申し上げたとおりじゃないですか。だから私はずるいというのです。それじゃ国民が泣くだけだというのです。これ以上とやかく論議いたしても、あなたの結論は出てこない。だけれども、納得のいく結論が出なかったならば、とことんまでこれは全国的に三千三百件以上の件数が残されているわけですが、これまでにもうすでに終わって泣いている人がいるわけで、こういったものを全部調べあげて、そうして今後も徹底的に追及していく、そういう考え方でいきますから、もう一度その辺についての、局長の責任ある権限を持ったその立場でもって、こういう方向で自分としては解決のめどをつけていきたい、こういうようなものをもう一回言ってください。
  283. 岩本道夫

    説明員(岩本道夫君) おしかりのほどはよくわかりますが、私としましては、いろいろ関係する範囲が広うございますので、なおよくこの実態調査した上で判断をしてまいりたいと存じます。
  284. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 最後に。まあそれ以上どうしようもない、逃げの一手でどうしようもない。そこでいずれにしても国の姿勢について、私は最後に一言言っておきたい。さっきから言っているように、これは国でつくったもの——いいですか、国でつくったものができている。それが全然実行されていないじゃないですか。何のためにつくったのですか、苦労して。いままであなた方の答弁を聞いていると、全然このとおりに——これに近いことも行なわれていない。当事者と話し合うということもしなければならない、それもやっていない。登記も、金も、この中には金が払ってないものについては、大蔵省が払えといっているのだよ。そういうものもあるのだよということを、これで認めているのだ。それにもかかわらず、あなた方はこれを一つも頭の中に入れないで、自分たちのいわゆる失敗を隠蔽するような答弁ばっかりしかしていない。そこで、これでは国の行政は行き詰まっちゃう。上層部の考え方がいわゆる出先機関で全部殺されている。そこからいろいろな問題が派生している、こうしか考えられない。これではほんとうに泣くのは国民だけですよ。ですから、そういう姿勢を今後厳然と改めなければならない。その点については、責任ある皆さんの立場でもって、ここで国民の皆さんに、ほんとうに言われるとおり一つも実践されてなかった、このとおりに——ということは、ほんとうに申しわけなかった、御迷惑をかけた、こう言うべきです、ほんとうをいうと。どうですか、政務次官。
  285. 宮崎正雄

    説明員宮崎正雄君) 国の不手ぎわで国民の皆さんに御迷惑をかけることは、これはもう厳に慎まなくちゃいけない。本件に関しましては、いろいろ事情はあったと思いますけれども、やはり役所側の、慎重を欠いたといいますか、不注意のために、国民の方々に御迷惑をかけた点があれば、これは即刻改め、また解決にすみやかに努力するように関係者全部で尽くすべきである、こういうふうに考えております。
  286. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あとこの問題については、次の機会に譲ることにいたしまして、一応きょうはこれでもって質問を打ち切ります。どうも長い間ありがとうございました。
  287. 渡辺武

    渡辺武君 私は、前回に引き続き、農薬残留問題について伺いたいと思います。  私は、これまで主として米に対するBHC残留の問題について、厚生省農林省にいろいろ質問を重ねてまいりました。この質問を通じて明らかになりました諸点に基づいて、今後の農薬残留規制の設定及びそれに基づく農林省安全使用基準設定についての政府の方針について伺いたいと思います。  この点について、まず、初めに指摘しなければならないことは、政府残留農薬の規制について、これまでいつも立ちおくれてきているのじゃないかというふうに思います。国民と国会の追及にあって、やっと規制を始めたというのがいままでの実情だったのじゃないかというふうに思います。たとえば、私がこれまで主として取り上げてきました米に対するBHC残留の問題につきましても、いろいろ御質問して——私の質問だけが原因であったわけじゃございませんけれども、しかし、一つのきっかけにはなったろうと思います。やっとことしじゅうにはBHC残留規制について基準設定するというような答弁が前回ありました。ところが、そのときによく伺ってみると、農薬残留性という点で、特別に重要だといわれているベータBHC、この点については、厚生省としていままで調査をしていなかった。したがって、今度の許容基準設定についても、ガンマについてはやるけれども、ベータについては設定できないのだというような御答弁がありました。それからまた、ほかの委員会でも問題になりました牛乳についてのBHCなどの残留の問題につきましても、あれほど昨年末から大きな問題になっていたにもかかわらず、いまだに許容基準設定の正式なものはない。指導基準ということで暫定的な基準が示されたにすぎない。しかも、その基準をよく見ると、WHOが発表しておる基準よりもはるかに高い基準、こういうような状態になっているわけです。  そこで、一体なぜこのように農薬残留の問題について、厚生省あるいは農林省が立ちおくれを示してきたのか。その原因には私はいろいろあると思う。たとえば、一番根本的な原因の一つは、これは国の行政の姿勢が大企業の利益を優先するというところに置かれていて、国民の健康、生命などについては二の次、三の次にされてきたというところにあるのじゃなかろうか、こういうふうに私は自分の質問を通じても痛感しました。たとえば、いまの米のBHCの問題について申しますと、いままでは穂ばらみ期まではBHCを使っていいのだということが方針として出されている。そこで、なぜかと思っていろいろ伺ってみると、メーカーBHC原体の在庫をたくさん持っているということが明らかになった。今度、八月の初めでしたか、九月の初めでしたか、今後BHCは米に使っちゃならぬという通知が出た。そこで、その点についてもいろいろ伺ってみましたところが、いままでメーカーの持っていたBHCの原体及び製品などの在庫については、これは在庫量も少なくなったし、輸出に使ったり、あるいはまた山林に使ったりして使うめどもつきました。したがって、使用禁止をしても、これはメーカーに打撃はございません。こういうようなことで、とにかくメーカーが損するかどうかということに第一の基準を置いている限りは、これは国民が自分の健康を守るためにいろいろ問題にしても、なかなか腰が上がらないということに私はならざるを得ないと思う。しかし、きょうはこの問題についてあらためて追及することはやめまして、もう一つの問題、これを伺ってみたいと思う。  もう一つ、政府の立ちおくれていた原因として考えられますことは、これは残留許容量安全使用基準設定について根本になる農薬毒性についての認識、ここに欠ける点があった。そこに一つの大きな原因があったのではないかというふうに思います。農林省厚生省ともに、最初農薬については人体に対する急性かつ直接の影響があるかどうかということを中心にして、農薬毒性、低毒性などを検討してきたんじゃないかと思うのです。したがって、農薬許容量、使用量の設定、それからまた安全使用基準などの設定については、この急性かつ直接の毒性ということに基づいて、農薬残留性とか、人体への蓄積とか、あるいはまた遺伝などの問題は軽視されてきたのではないか、こう思われます。ここに、農民に対する直接急性毒性については注意はしてきたけれども、しかし、それだけを避ければかまわないということで、世界に類のないような農薬の大量使用がわが国で特別に行なわれた。そして、それから当然起こる残留毒性の問題については最近まで、極言すれば一顧だにも注意が払われなかったというようなことになってきたのではないかというふうに思われます。さらに申し上げますと、分解しやすく、残留性は弱いけれども急性毒性の強いガンマBHCの問題に対しては、いろいろ問題にしようとしてきたけれども、しかし、残留性とか人体への蓄積や慢性的な影響という点では、ガンマの五倍以上も毒性があるというふうに言われているベータやアルファ、これについては、先ほど私申しましたようにまだ調査もしてない、研究もしてない。したがって、米についての残留許容基準をきめようという段階で、ベータ、アルファについては、きめることができないという事態になってきたのではないかというふうに思われます。どうでしょうか。厚生省の方からも、農林省の方からも伺いたいと思うのです。農薬毒性について慢性、残留性、したがって、また人体への遺伝というような点についてやはり欠けたところがあったんではないか、その点どうでしょうか。
  288. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいま御指摘農薬につきましての残留問題でございます。確かにこの問題は、つい最近とは申しませんけれども、われわれの検査体制といたしましても、古くはやっていなかったのでございます、農林省として正式に。これも行政面でございますけれども残留問題で農薬検査をやりましたのは四十三年からでございます。したがいまして、ただいま御指摘のようにまだ欠けておる点があるかと思います。この点につきましては、いろいろただいまBHC等の御指摘もございましたけれども、われわれといたしましても決して十分だったとはもちろん思っておりません。したがいまして、検査機構の拡充のため、あるいは御承知かと思いますけれども農薬残留研究所等も設けまして、こういう残留問題から人体なり、水、土壌を通じての公害的なものをなくすように極力努力したいと思います。
  289. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生指摘のように、残留農薬毒性問題につきましては、非常に欧米諸国に比べまして、日本の場合は立ちおくれていたわけでございます。それはどういうわけかと申しますと、実は、昭和三十八年に初めて添加物、農薬主管いたします食品化学課というものができたのであります。その当時までは、全く手がつけられてなかった。そういたしまして、昭和三十八年に厚生省食品化学課ができまして、そして初めて残留農薬予算を要求いたしまして、昭和三十九年から調査研究が始められた。その結果、現在までに十二の農作物につきましてようやく基準ができ、またその基準につきましても、それを取り締まる都道府県の体制というものも非常におくれておりました。当時、昭和四十年ごろには、その分析をいたします機器というものも都道府県にはそろっていなかったような状況でございます。ようやく現在各都道府県で試験ができるような状況になってきているというところでございます。先生指摘のように、これは非常に重大な問題でございますので、私ども農林省協力いたしましてできるだけ早く基準、規格を作成してまいりたいということで、今後とも努力を続けてまいるというふうに考えております。  それからまた、先生指摘のベータBHCの問題でございます。これにつきましては現在調査をいたしております。農作物につきましては、全部につきましてベータBHC調査を追加してやっております。
  290. 渡辺武

    渡辺武君 農薬残留性という点について欠けるところがあったという御答弁ですね。私も、今後克服するようにつとめられるということで非常にけっこうなことだと思います。その点ひとつさらに一そう努力していただきたいと思います。  さて、この問題はいま農薬という点から申しましたけれども、今度は、その規制対象農産物、この点からしても同じ原因から来るやはり欠陥があったんじゃないかというふうに私は思っております。たとえば、いま農林省の方から御答弁のありました十二品目ですね。これを見てみますと、イチゴだとか、夏ミカンだとか、ナシだとか、ブドウだとか、キャベツ、キュウリ、トマトなど、つまり直接なまで食べるもの、これが大体規制の対象の中心になっているわけですね。つまりこれはどういうところからきているのか、私は、いろんな事情はあるでしょうけれども、しかし、農薬について急性かつ直接の毒性、これを一生懸命問題にしてこられた。その問題にしたことが悪いというんじゃないですよ、けっこうなことですよ。もちろん、これは問題にしなきゃならぬことですけれども急性かつ直接の毒性ということだけを問題にする限り、直接なまで食べるもの、これがあぶないということでそれに調査が集中する。ところが、一方で農薬残留性、たとえば、いま私一つの例を申しましたけれども、ベータBHC、これは日光に当たっても分解しない、煮ても分解しない。また通常の料理方法程度の、焼いただけでは分解しないというようなものについて考えていなかったから、したがって、煮たり、焼いたりして料理して食べる、こういうようなものについて、この規制対象にするというようなことが、やはりおろそかにされてきたんじゃないかというふうに思うのです。ですから、今後は農薬残留性ということについてずっと調査し規制していくということであるならば、対象農作物につきましても、直接なまで食べるというものについてだけでなくて、煮たり、焼いたり、つまり料理して食べる。しかもなお残留するという農薬、この危険性も十分にみて規制対象検討すべきじゃないかというふうに思いますが、その点どうでしょうか。
  291. 小島康平

    説明員(小島康平君) この残留農薬調査対象食品につきましては、やはり直接食べるという問題と、そのほかに実は中に包み込まれますような豆とか、こういったようなものはまず汚染の危険は少ないだろうということであと回しにした。あるいはまた根菜類、つまり泥の中に入りましたものが食用部分になるようなものは——まいたものは直接つきませんから、汚染度が少ないだろうということで、大体直接にそのものがつくもの、外側に出ておりまして直接散布されるようなもので、かつ消費量の多いというものを大体優先いたしまして、すでに計画を立てたわけでございます。昭和四十八年までに大体八百屋で売っておりますものにつきまして完了するという予定で調査を急いでおるわけでございます。
  292. 渡辺武

    渡辺武君 こういうことなんですよ、御飯などは、これは言ってみれば、たいて食べるわけですね。熱をくぐるんです。ところがキュウリだとかトマトだとかいうものは主としてなまで食べるのですから、直接急性毒性を問題にするよりは、なまで食べる、そのことがおそらく問題の中心になるだろうと思うのです。そうして煮たり、焼いたりして食べる、そういうものは分解しやすいから——たとえばガンマのようなものでは、BHCでも分解しやすいから、そういうものはあまり問題にならなかったということじゃないかと思う。しかし、今後はその点は克服していただく必要があるのじゃないか、お米につきましては、先ほど申し上げましたように、今後許容基準などをいろいろ設定されるということでけっこうなことですが、肉だとか魚だとか、あるいは卵のようなもの、これはなまで食べる場合もありますが、同時に料理して食べるというようなものについても、至急にやっぱり検討してやる必要があるのじゃないかというふうに思うのですけれども、その辺どうでしょうか。
  293. 小島康平

    説明員(小島康平君) まず米の問題でございますが、実は、米は主食でもございますので、私ども昭和三十九年から調査を始めておったわけでございますが、途中で使用農薬の変更等の事情がありまして、今後やるように延びてしまったわけでございまして、この点は、私どもとしても軽視していたわけではないわけでございます。また、先生指摘の牛乳とか肉とかの問題につきましては、実は、私の所管外ではございますが、これは非常に重要な食品でございまして、牛乳につきましては今年度中に規格をつくるということで、現在厚生省のほうで調査を急いでおるような状況でございまして、まあ私どもとしても、こういった食品について、できるだけ早くやってまいりたいということで、計画をできるだけ繰り上げるような形で、現在農作物につきましても急いでおるわけでございますので、その点御了承いただければと思います。
  294. 渡辺武

    渡辺武君 まあ、お答えをいただきましたが、若干私の伺っている点と焦点がはずれたような御答弁なので、重ねて申しますが、つまり煮たり、焼いたり、普通の料理をして食べるもの——直接なまで食べるようなものでないもの、こういうものについても、今後十分にひとつ留意して規制対象品目の中にどんどん取り入れてやっていくおつもりがあるかということですが、どうですか。
  295. 小島康平

    説明員(小島康平君) その点でございますが、この農薬の規制というのは、当然に急性は絶対起きてはならないわけでございまして、急性中毒につきましては絶対起きてはならない。われわれの目標としておりますのは、一生食べ続けていても障害が出ないという慢性毒性の問題でございまして、農薬の中には、先生指摘のように、煮ても焼いても残るというものがございまして、私どもとしては、非常にきつく考えておりまして、たとえばリンゴのようなものでも、外側についたものでも全部一緒に食べてもだいじょうぶ、あるいは料理をして分解をする場合でも、その分解する前の状態におけるその量を基準にして許容量をきめるというふうに、非常にきびしい基準をとってやっておりますので、先生の御趣旨に沿えると思います。
  296. 渡辺武

    渡辺武君 それではさらに伺いたいと思うのですけれども、最近いろんな農薬が土の中に残留する。そして植物の中に吸収されているという事態があるという例が出ておりますね。私、以前に申しました長野の日本農村医学研究所、ここでは米の中にドリン剤がわずかではあったが、残留しておった。その原因を調べたところが、その前に野菜をつくっておる、その野菜にドリン剤を使っている、そのあとにお米をつくった。したがって、土中に残留したドリン剤が吸われて米の中に残留したということなんですね。ところが、これは長野県で起こっただけではなくて、高知県でも同じような問題が起こっている。これは御存じかと思いますが、念のために申しますと、高知県の衛生研究所の上田雅彦主任研究員ですか、この方がお調べになった。以前にタバコをつくって、そこにドリン剤を使っておった。そしてそのために土中にドリン剤が残留しておる。そのあとでキュウリをつくった。したがって、そのキュウリの中にドリン剤が非常に多量に含まれるというような現象があらわれた。土中に残留していたドリン剤のほぼ五〇%がキュウリに吸われたという例が出たということなんですね。私は、これは非常に大事な問題だと思うのです。今後、許容基準あるいはまた安全使用基準などを設定する場合に、この土中の農薬残留の問題、これを十分考慮してやっていかなければならないんじゃないか、こういうふうに思いますが、その点どうでしょう。
  297. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、実は、私どもドリン剤につきましては、非常に毒性の強い、また人体にも残留するものでございますので、非常にきびしい基準をこしらえて規制をしておるわけでございますが、先生先ほどの御指摘のように、高知県の衛生研究所で、そういった土中に残留する農薬をキュウリ等が吸い上げているということがわかりまして、私どものほうへ通知がございましたので、本年の四月二十一日付で全国に取り締まりを指示したわけでございます。先生指摘のように、これはその農薬を、たとえばキュウリをつくるときに使わなければいいというものではなしに、その前に使ったものが残っていて吸い上げるということが原因であるということが大体判明いたしましたので、これは農林省のほうにもお願いをいたしまして、全国にそういった土中に残留するような場所ではつくらないように、あるいは前作で、そういうものを使用しないようにという御指導をいただいておるわけでございます。非常にこの問題は重要でございまして、このドリン剤は人体残留するおそれもございますので、私どもとしては、米の規格につきましては、現在、案として考えておりますのは、ドリン系のものは一切検出してはならぬというような基準を設けたいと考えまして、農林省のほうにも、それに即した安全使用基準をお願いしておるような次第でございます。
  298. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまのドリン系の土壌を通じての被害の問題でございます。厚生省からもお話がありましたとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、厚生省残留基準残留許容量をおきめになりますと同時に安全使用基準をつくりまして、それを全部末端まで徹底させるということをいたしたわけでございますが、なお、ただいま御指摘のように、あと作に問題があるというようなことになってまいりますので、重ねて通達をいたしまして、土壌中に、いまお話のありましたアルドリンあるいはエンドリンを前作に使用した地域ではキュウリその他ウリ類は栽培しないように、あるいはこれらの作物を栽培するようなときもアルドリン、エンドリンは使用しないということを関係機関に通達をいたしまして、そういう被害の出ないような措置をとっておるわけでございます。なお、一そう今後ともそういう方向で進めていきたいと考えております。
  299. 渡辺武

    渡辺武君 いまおっしゃった厚生省から出された通達、それからまた農林省から出された通達、これをあとでけっこうですが、資料としていただけませんか。——お願いいたします。  そこで、もう少し伺いたいと思うのですけれども残留農薬が人間のからだに複合して作用する、相乗的に作用するというような点が当然これは考えられなければならぬ。日本人は米を食べる、米の中に農薬残留する。野菜を食べる、その野菜の中に農薬残留する。魚を食べる、その魚の中に残留する。肉を食べる、その中にも残留する。これでは個々の品目についてこの辺までがだいじょうぶでございますと言っても、たくさんの品目を食べれば、それが相乗的、複合的に人体に作用するということは、当然これは考えなければならぬ問題だと思うのですね。で、その点について、これはもう私が申し上げるまでもなく、専門家の皆さんのほうが御存じだと思うのですが、FAO、WHOの合同の農薬残留委員会(CCPR)といわれているところ、ここでネズミの約二年間にわたる一生で検査して、毎日薬を投与して検査する。そうして生体に何ら悪影響を及ばさない限度を最大安全量として、さらにこの百分の一を一日当たり摂取許容量ADIというふうに定めているというふうに聞きます。つまり、これは人体に対するいろいろな薬品の相乗作用、これを防ぐという目的設定されたものだというふうに私聞いておりますけれども、この方式ですね、これはまことにすぐれたものだと私は思いますが、これを日本でも採用すべきだと思いますが、そのおつもりがあるかどうかお聞かせいただきたいと思います。
  300. 小島康平

    説明員(小島康平君) 現在、厚生省農林省相談いたしまして、その結果を食品衛生調査会の農薬特別委員会にかけまして基準をこしらえているわけでございます。その基準設定の方式は、WHO、FAOの委員会の出しました結論に沿いまして、そこできめられました許容量の範囲をわれわれは越えないようにということで、農作物種類、それからそれに入っております許容量というものを定めております。私どもとしては、WHOの加盟国といたしまして、またFAOの加盟国といたしまして、WHO、FAOの基準は忠実に守ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  301. 渡辺武

    渡辺武君 重ねてお伺いしますけれども先ほど牛乳の例で私申し上げましたが、これはリンデンの例なんですけれども、WHOですでに牛乳へのリンデンの残留量について許容基準を出しているのですね。ところが、いままであれほど騒がれていながら、特に牛乳なんというのは赤ちゃんが飲むのですよ、赤ちゃんの主食です。あの幼いからだに影響があるだろうということは、これはおかあさんだけじゃない、普通常識ある人間はみんな心配している。ところがそれにもかかわらず、そのWHOの許容基準よりもはるかに高い許容基準で、これを指導基準として設定するというようなことをいままでやっておる。ですから、あなたがWHOやFAOの基準をなるべく守るようにしたいというのはけっこうなことだけれども、事実それが破られているのですからね。  で、重ねて私は伺いたいと思うのです。このADIの観念ですね、安全基準を一応きめて、さらにその百分の一、これまで許容基準を下げて考えるというこの考え方、これをほんとうにお取り入れになるかどうか、その点どうでしょうか。
  302. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生のおっしゃるように、これはWHOの基準というものをあくまで尊重してまいらなければならないわけでございまして、実は、私厚生省ということで出て参りましたが、牛乳の問題は、私所管外でございますが、農作物許容量の決定につきましては、これは牛乳も含めて当然考えるべきでございます。WHOの一日の人体許容摂取量というものはきまっておりまして、これ以上取ってはいけないという数字があるわけでございます。たとえば、アルドリン、エンドリンで申しますと、人間の体重一キログラム当たり〇・〇〇〇一ミリグラムというふうに非常に少ない量でございまして、私ども一日の摂取量がこれをこえないように現在許しておる作物もキュウリ、トマト、キャベツという三品目に限りまして、そうしてそこに〇・〇二PPMという許容量設定したわけでございまして、これはキュウリ、トマト、キャベツの一日のわれわれの摂取量を掛けて計算いたしますと、このWHOのきめました許容量の約半分程度にしかならないわけであります。  それからまた、先ほど御説明いたしましたように、私ども日本基準は、それをそのまま洗わないで食べても安全であるという計算のしかたをしておりまして、洗いました場合には、さらにその摂取量は少なくなるということで、そういうやり方をやっておりますので非常にきびしくなっております。これはアメリカ、ヨーロッパ等ではこのアルドリン、ディルドリン等は日本の大体五倍の許容量設定しておるわけでございますが、われわれとしては、日本の食習慣等を考えましてきびしく考えておるわけでございまして、牛乳等につきまして、BHC等の問題で基準をオーバーしたということは、まことに私ども遺憾な問題でございまして、農林省のほうにもお願いをいたしまして、できるだけ早くこれを下げるということをやっておるわけでございますが、先生の御指摘のように相当な安全量がとってある。これは百分の一どころか、ものによりましては三百分の一、五百分の一というふうにWHOはきつくしておるわけでございますが、そういう安全率というものは相当とってあるということで、BHCの場合には、できるだけ早く牛乳あるいは肉製品から下げるようにということで、実は農林省とも御相談をして努力しておる次第でございまして、そういった点、いままでにもつと早く手が打てなかったという点につきましては、まことに申しわけないことだと存じております。
  303. 渡辺武

    渡辺武君 これから、いろいろの例をあげて伺います。これは大事な問題ですから伺うんですが、農地にまいた農薬が、これが雨などで流れて川へ人ってプランクトンの体の中に入る。そのプランクトンを魚が食べる。小さな魚を大きな魚が食べるというようなことで、だんだん毒性が濃縮されていっているということが、先ほど申しました長野県の農村医学研究所の調査でもすでにもう明らかになっている。これは前の原子力の影響などが騒がれたころにもいろいろあるといわれたことですね。すでにこれが日本の国内でも農薬についてあらわれているということが、事実によって証明されているわけですけれども、その点考慮して許容基準などをやはり設定されるべきじゃないか、あるいは安全使用基準もその辺を考慮しなきゃならぬのじゃないかと思いますが、その辺どうでしょう。
  304. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生おっしゃるとおりだと存じます。で私は、食品化学課長といたしまして、農作物残留農薬許容量設定の作業をいたしております。非常に狭い範囲の中でWHOの許容基準を守るようにという努力をいたしておるわけでございます。先生おっしゃるように、こういうものが、環境全体を汚染するという問題は非常に大きなことでございまして、非常に残効性の高いと申しますか、安定していつまでも分解しないBHCとかDDTのようなものが、魚とか動物とかいうものを広く汚染して発見されるということは、将来にとっても非常にゆゆしいことだと思います。私どもとしては、こういった残効性の高いものでなくて、もっと不安定な分解してしまうような農薬が将来開発されるべきだというふうに考えておりまして、BHC、DDTの製造停止、そして今後は、これを日本の農業から使わなくするというような御指導を農林省がなさって、製造の停止をしていただいたわけでございます。たいへんけっこうな措置だと考えておる次第でございます。
  305. 渡辺武

    渡辺武君 今度は、農林省のほうに伺いたいと思うんですが、農林省は四十三年度から新しい農薬の許可にあたって、残留問題という点からチェックしているというふうに伺っておりますが、この点につきましても、いま私幾つかの点をあげて御質問しましたけれども、いま申し上げたような点からいろいろ不徹底な点があるんじゃなかろうかという気がするんです。たとえば、ここに私、四十三年五月二十五日付の農林省農政局長の通達「新農薬残留に関する登録上の取扱いについて」というのを持っています。これを見てみますと、慢性毒性の試験についてという項目がございまして、そこにこういうことが一番最初に書いてある。「原則として、ラットおよびマウス等二種類以上の実験動物を用いて、三ケ月以上にわたる期間の経口投与毒性試験を行なう。」というふうに書いてあるんですね。しかし、たとえば、これはアメリカの場合です。私どもアメリカのやっていることが何でもかんでもいいのだという立場に立っておりませんけれども、しかし、この点はわりあいにいい点だから例としてあげるんですけれどもアメリカとしては慢性毒性の試験のためにはネズミについては三カ月、ネズミと犬で二年間試験をした上で、さらに遺伝の影響を見るために、三世代もの実験を義務づけているというふうに聞いております。また、先ほどあげましたWHOとFAOの食品規格委員会総会の下部機構である農薬残留委員会は、さっき申し上げましたように約二年間ネズミの一生にわたって毒性試験を行なっているというふうに聞いております。日本はわずか三カ月間ということでは、残留性——特に、その点についてわれわれが考えなきゃならぬのは人体の次の世代への遺伝ですね。こういうようなことが非常に大事だと思うんですが、そういう点について十分考慮してやるべきじゃないか、チェックするときに。そう思いますが、どうでしょうか。特に、日本は私申し上げるまでもなく単位面積当たりの農薬使用量という点については他国にずば抜けて大きいという国でしょう。だから、日本人のからだに対して農薬がどれほど深刻な影響を与えるか、これが一世代だけじゃなくて次の世代、さらには次の世代というふうにいろいろ深刻な影響を与えるだろうということは、十分に予想してかからなきゃならぬと思うのですね。その点特に伺いたいと思います。
  306. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 確かに三カ月の試験でやるということにしております。それでその試験は、ただいま御指摘のようにほんとうは試験研究の期間がありますればもっとやるべきだと思います。そこで、われわれとしましては、いまは安全係数をそのかわり非常に大きくとっていくということでやっておりますけれども、御指摘の点もあり、諸外国でもそういうことになっておりますので、われわれとしましても、近い将来、これを二年に延ばしてやるという方向でやってまいりたいと考えております。
  307. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると何ですね、たとえば来年度予算案などの概算要求が出ておりますけれども、その中には、こういうふうな問題もすでに織りこんでの予算要求というものがなされているわけですか。
  308. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 先ほどの御答弁でちょっと触れましたのですが、既存の農薬検査所あるいは大学等に委託するだけでは、なかなかそういうふうにまいりませんので、残留農薬研究所というものをことしから設立して、国費も来年の要求で一億五千万円要求いたしまして、そうしてこれをつくりまして、そこで農薬慢性毒性の試験をする整備をしたいということで、着々それを進めておる段階でございます。
  309. 渡辺武

    渡辺武君 その残留農薬研究所について、私、時間があればもう少しいろいろ伺いたいのですが、きょうは時間もないので入りませんけれども、これはしかし国の費用が一億五千万円これから出す予定だとおっしゃいますけれども、しかしこれは何でしょう、研究所の設立費用の一部分ですね、設備などについては国が出す、しかしどうですか、これを国がまあいわばつくったも同然のようなものだというふうな感じの御答弁なんですけれども、そうはいかないんじゃないですか、どうですか。たとえば試験研究などについてですよ、国がいろいろ指導をするというようなことが、寄付行為の中には書いてないですね。設立や解散については、大臣の許可が必要だということは書いてあっても、研究体制その他について、国がどういうふうにするのかというようなことは書かれていない。しかも、もしメーカーがあれに出資をして、そうしていろいろメーカーの発言権が強くなるなどというようなことになりますと、これは国が出資した研究機関が、これが事実上メーカーの利益をはかるためにいろいろ活躍させられるというようなことにもなりかねないのですね。ですから、私はやはり、これは厚生省なり、農林省なり、やはり国が責任をもって自分のところで研究をするという体制をとらなければうそだと思う。私が伺いたいのは、研究体制の問題じゃなくて、いま申しましたように農薬のこの慢性毒性の試験について、もうすでに外国ではやっていることですから、その長所を取り入れて十分に、入念にやるかどうかということなんです。また、それをいつごろからおやりになるつもりなのか、それを具体的に伺いたかったわけです。どうでしょうか。
  310. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまの御指摘の点でございますが、先ほど私、近く二年に延長してやりたいということを申し上げたわけでございますが、現在それじゃ何年何月からということまで具体的にまだ煮詰まっておりません。はなはだ恐縮でございますけれども、できるだけそれを詰めまして、その体制をとっていくというふうにいたしたいと考えております。
  311. 渡辺武

    渡辺武君 それでは、この農政局長通達についてもう一つ伺いたいと思うんですけれども、これをずっと読んでみまして感ずることは、いわゆる分解変成農薬の問題ですね。この点について一言も触れていないんですね。しかし、これはやはりかなり重大な問題で、この分解変成農薬の危険性についても、私は十分チェックする必要があるんじゃないかというふうに思います。これはもう専門家のあなた方のほうがよく御存じのことだと思いますけれども、一昨年キュウリ、メロン、トマトなどについて全国にわたって奇病が発生しました。その奇病の原因がなかなかわからない。いろいろ調べたあげく、それ自体としては薬害のない塩素系のいもち防除剤のペンタクロルベンジルアルコールですか、   〔委員長退席、理事渡辺一太郎君着席〕  それからペンタクロルマンデル酸ニトリルというものが、まかれた土壌の中で有毒物に変成、変化した。特に堆肥などに使ったときに、それが有毒物に変化したということから起こったものだということが明らかになったといわれているんですね。この試験は、無害の農薬土壌の中で有害物に転化するということを私は示していると思うんです。これはたまたま植物に有害であったということであって、人体に有害でなかったからしあわせなわけですよ。もし、こういうことが起こって人体に有害であるということになったら、私は第二の森永砒素ミルク事件あるいはカネミオイル事件というものが全国に頻発するというおそれもなきにしもあらずだと思うのですね。人間の食べるものですから、この点は十分にやはり注意して検討しておく必要があると思うのですけれども、この分解変成農薬についても、許可を与えるときにチェックするおつもりがあるかどうか、その研究体制をとられるおつもりがあるかどうか、この点も伺いたいと思う。
  312. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいま御指摘の通達との関連でございますが、この通達の別紙におきましても、「残留農薬の安全性が実証または確認されなければならない。そのためには、農薬またはその分解産物は、次のような科学的資料に基づいて評価が行なわれなければならない。」ということで、ここにもありますように一応の対策はとっておるわけでございます。その土壌等に入りまして分解して薬が変わっていくという問題につきましては、私も実は、しろうとでございますけれども、いろいろそういう指摘があるようでございます。その点を十分含みまして、今後この残留農薬問題の研究の一つのテーマにするようにということでやっていきたいのでございます。
  313. 渡辺武

    渡辺武君 それから農薬の問題でもう一つ伺いたいんですが、先ほどもお話がありましたが、なるべく分解しやすいような農薬を使うようにしたいというお話がありましたけれども、最近天敵を使ったらどうかということが盛んに言われております。それからまた、こん虫の成長ホルモンですね、これを応用した農薬考えたらどうか、あるいはまた、放射線によってこん虫を不妊化するということで、害虫駆除をやったらどうかというような、いろいろなことが論ぜられているわけです。私は、こういう新しい方法に基づいて、自然の循環、あるいはまた人間と自然との正常な循環を確保することが、いま非常に重大じゃないかというふうに思うのです。ただ、きくからといって、どんどんどんどん農薬を使いまくって、そうしてついには人間にも被害が及ぶけれども、しかし自然自体が持っている循環というものを事実上破壊するということが、いま進行しているんじゃないかと思うんです。ですから、こういう新しい原理に基づく方法についてどのような研究がされているのか、これを伺いたいと思います。
  314. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまの天敵の利用の問題でございますが、農林省といたしましても残留性の防除、防御といいましょうか、そういうものの対策の一環として天敵の利用を促進する事業を本年度予算からつけております。それはミカンについての天敵、たしか二つか三つの虫だと思います。それとの関係でかなりの予算をとっておりますし、来年度予算は拡充をいたしたいと考えております。  それからなお、これは農林省のほうの技術会議での試験研究の問題でございますが、天敵あるいは害虫の不妊化法を取り入れまして、総合的な防除法をどうするか、単に薬がきくというものではなくて、総合的にどうするかという研究、これもまだ要求でございますが、一億四千万ほどの要求をいたしまして、ただいま御指摘のような自然との調和と申しましょうか、そういう面も考えました防除対策というのに力を入れていきたいと考えております。
  315. 渡辺武

    渡辺武君 けっこうなことだと思うんですけれども、私はこれは一つの何といいますか、体系の問題だと思うんです。原理、原則の問題だと思うんです。つまり、きくからといって有害性などについても十分な検討もしないでどんどんこれを使っちゃうというような体系で今後農薬を使うのか、それともまた人間のからだの安全あるいはまた植物の安全、家畜などについての安全、さらにはまた自然の循環そのものを十分に尊重して保持するという見地で農薬を使うのかという点の、これは原則の違いだと私は思うんですね。ですから、そういう点でうんと重要視して、この原則に基づいて今後の農薬などについての使用のやり方も考えていく必要があるんじゃないかと思います。もちろん、農薬は分解しやすい、残留性の少ないようなもの、また、そのほかに有毒性でないもの、こういうものを研究、開発することが必要です。どんどんやる必要があると思いますけれども、しかし問題は、いま言ったようなものの重点の置きどころをどこに置くかというところに、私は一番大きな問題があると思うんです。そういうおつもりがあってやられるのか、それとも、いまのような農薬使い方は依然としてやっていきながら、いまそのいわば補助的、副次的な手段として天敵なども考えるのか——もし、こんなことをやったら私は失敗すると思うんです。これは時間がないから申し上げませんでしたけれども、高知県の先ほど出ました衛生研究所ですね、あそこでもって研究したツマグロヨコバイという稲の害虫ですね、これとクモとの関係で非常におもしろい実験例が出ております。もう御存じだと思いますけれどもBHCに弱いクモのほうが先に死んじゃって、BHCに強いツマグロヨコバイがほかの害虫が死ぬために大量発生するというような形で、非常に重大な問題になってきていることが出ているんです。ですから、そういう意味で自然循環、人間と自然との与えられた正常な循環ということを保持するという見地を貫きながら農薬を使っていくということが、私は今後の大きな課題じゃないかというふうに思うんですね、その点どうでしょうか。
  316. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 確かに御指摘のとおり、戦後、合成化学薬剤が出てまいりまして、また戦後最近まで、食糧増産が主要な課題というようなことから、病害虫の防除ということに非常に力を入れてまいりました。したがって、現在では農薬の使用というのが、農業生産の前提と申しましょうか、あるいは必要欠くべからざる要素にもなっておるというふうに思っております。そして中心はやはりどうしても病害虫を殺す、なくするということであったわけでありますが、最近こういう、先ほどからるるお話のような問題も出ております。それは一つには、直接人体に危害を与える問題あるいは土壌を通してそういう問題が出てきておりますし、また、広い意味で自然環境あるいは御指摘のような自然循環という問題も出てきております。そういう論文等もいろいろ出てきたわけであります。その辺を、いまそれでは的確にそれをどういうふうにつかんでいくかという問題はなかなかむずかしい問題でございますけれども、そういう基本的な気持ちというものは、今後、われわれ忘れないようにしていきたいというふうに考えておりまして、あるいは後ほど御質問があるのかと思いますけれども、今後、できますれば、農薬取締法を直したいと思っております。そういう気持ちを入れたような考え方でやっていきたいというふうに考えております。
  317. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、いまの問題について、あなた方のほうで研究された資料などございますか。その天敵の活用だとか、あるいは自然循環を保持することを中心にしながらの農薬の使用というようなことで研究された資料、ございましたらいただきたいと思います。
  318. 長谷川新一

    説明員長谷川新一君) その例はございますそうですから、あとで……。
  319. 渡辺武

    渡辺武君 それでは農薬取締法の問題について幾つか伺いたいと思うんです。  現在の農薬取締法をよく読んで見ますと、まず最初に気がつくことは、一度登録された農薬が途中で有害だということがわかっても、法規違反がない限りは、登録を取り消すことができないということになっております。で、現在、先ほど来私申し上げましたように、米、牛乳その他にあらわれている事態から見れば、これでは三年ごとに登録の更新をするということになっていても、取り締まりという点では不十分ではないだろうかというふうに思いますけれども、その点どんなふうに考えておられるか、まず伺いたいと思います。
  320. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 確かに御指摘のとおり、現在の農薬取締法では一度登録しましたものを途中で法律違反がない限りは、それを取り消すという手だてはございません。しかし、先ほど来の御議論のように、新しい合成農薬がいろいろ出てまいりますので、科学的な進歩もあります。過去にわからなかったこともわかってくるというようなこともございますので、これをどういうふうに法文化するか、かなりむずかしい問題を含んでおると思いますが、われわれの現在の気持ちといたしましては、今度の改正案の中に、自後における科学技術の進歩によりまして、例えば残留性等で非常に有害だというようなものを取り消す、あるいは使用の規制を厳重にするというような規制方法を今度の法文に織り込んだらどうかということでいませっかく検討しております。
  321. 渡辺武

    渡辺武君 もう一つ伺いますけれども、何ですね、いまの農薬取締法ですと製造業者や、輸入業者ですね、これは登録を受けなければ販売を禁止されることになっておりますね、第二条ですか。ところが有害だとわかった場合に、その製造業者に製造を禁止するということがいまの農薬取締法ではできないと思うんです。また、違反をした場合に、違反者を処罰するということができない。罰則はありますけれども、防除業者が違反をしたという場合の罰則はありますね。しかしメーカー、これが違反したときの罰則がない。つまりメーカーを取り締まれないというのが、農薬取締法の私は一つの大きな欠陥だと思うんです。だから昨年末以来、先ほどお話のあったBHCやDDTの製造の禁止という問題についても、実は製造の禁止ではなくして、いわば業界が自主規制をしているという形で、生産がストップさせられているという状態じゃないんでしょうか。これではいま起こっているような事態に十分適応できないと思うんです。その点も改めるべきだと思いますが、そのおつもりがあるかどうか、伺いたいと思います。
  322. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いきなり製造禁止命令をかけるということになりますと、かなり問題があるかと思いますけれども、現在、現行法におきましても、登録農薬に関する取り締まりといたしましては、製造業者の検査等もできるということになっております。現在の法律では、つくりましたものを流通する面で押えるという体系になっておりますから、それを製造業者まで法律的に禁止命令が出せるかどうか、まだここで的確にそれまで入れるというお答えはできないわけでございます。ひとつ研究さしていただきます。
  323. 渡辺武

    渡辺武君 そういう点があるから、私が一番最初申しましたように、大メーカーの利益を第一にしているのじゃないかということが言わず語らずのうちに国民の間にわかってくるのですよ。そういうことでは、現実の事態に適応できないでしょう。もうすでにDDT、BHCについてメーカーに製造を自主規制してくれといって、あなた方は、どっちが——厚生省が指導されたか、農林省が指導されたか知りませんけれども、自主規制をしてもらっているという事態でしょう。国がその権限があって禁止するということになれば、これはまことにすぱっといくと思うのですけれども、あいまいもことしているわけですね。もう現実は、メーカーに対する直接の製造禁止処置あるいはそれに違反した場合のきびしい罰則などが法制化されなければならないような事態にきているのですよ。この点はやはり当然皆さんがやるべきだと思うけれども、その点どうですか。
  324. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、私今度の改正案では、事後に有害だというものについての登録取り消しをやることで研究しておると申し上げました。登録の取り消しをやりますと、当然これは売れません。売れないものをつくるということはないということで、登録の取り消しをやれば、自然それができるというふうに考えるわけでございます。なお先ほど申し上げましたように、法律全体の体系との関連もございますので研究をいたしたいと思います。
  325. 渡辺武

    渡辺武君 それはぜひひとつ、やるようにしていただきたいと思うのです。遠慮することはないですよ、国民の健康と命の問題ですからね。大メーカーであろうと、これは少しも。国民の支持がありますから、がんばってもらいたいと思うのです。  そのほか、あなた方がいま農薬取締法改正案を研究されておられるという点で、いま私が伺ったほかに、どういうものがあるか、それを伺いたいと思います。
  326. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいま御指摘がありました自後の、登録後の措置のほかに、われわれいま考えておりますのは、先ほどもお話が出ました残留性の問題、あるいは慢性毒性の問題につきまして、現在は行政指導的に検査をしておるわけでございます。それを法規で明確にいたしまして、登録に当たっても、それはそういうそれぞれの手続を経て、きちっとした試験の結果が要るということを法規でまず明確にすべきではないかということを考えております。  それからもう一つは、全部農薬をなくしてしまえばいいわけでございますがなかなかそういうわけにもまいりません。そこで食品の中への残留や、あるいは土壌、水等を通じましての広い意味での環境汚染的なことが問題になるというような農薬につきまして、現にPCPという除草剤につきましては水産動植物に対して使用規制ができるという法律がございます。それの範囲をもっと拡大をいたしまして、ただいま申しました農薬について、普通の農家の使用にまかしておってはあぶないというものについては、そういう使用の規制ということを新たに考えてはどうかということも考えておるわけであります。  それからなお、そういう指定農薬と申しましょうか、そういう指定をしまして使用を規制するという農薬のほかに、農薬残留許容量との関連での安全使用基準がございますが、そういうものも法律上制度化いたしまして、それを公示して趣旨の徹底をはかる、その他指導体制の強化についても、法律を直したほうがいいのではないかということで、まだこれは、われわれ事務当局での考えでございますが、これからいろいろな方面の御意見等も伺いながら成案を得たいと考えておるところでございます。
  327. 渡辺武

    渡辺武君 最近林野庁が除草剤BHCなどの農薬を国有林などに大量に使っているという問題が起こっております。これはもうすでに午前中、大橋委員質問された点でもありますので、私は、ほんの一、二の点だけ簡単にその点について伺いたいと思います。  もうすでに、この農薬の山林への大量使用によっていろいろな被害が出ているということは皆さんの耳に入っていらっしゃると思うのです。たとえば、青森県の天然記念物である下北半島のニホンザル、これが除草剤をまかれたために、食料になる草や何かがなくなってしまう。そうして危機におちいっているというような問題が出ております。また、全林野労働組合の調査報告を見てみますと、農薬の散布に従事している労働者が、その農薬のために死んでしまったとか、あるいはまた、いろいろな病気、負傷などの事故を受けた。あるいは保存中の除草剤を牛や馬が食べて毒死するというような事故が起きております。特に北海道では、養魚場のヤマベ五万尾、ニジマス二万尾が死亡した。青森県の営林局の管内でもイワナがたくさん死んだというような事故が起こっております。東北地方でも、山菜が被害を受けたというようなことや、農作物に被害があったというようなことが起こっております。特に、林野庁が造林のために私はまいていると思うのですが、その造林のために使っている除草剤が杉の造林木の生長点の枯渇や生長部分のよじれ、湾曲、変色などを引き起こしているというようなことが確認されております。こういう人畜、それからまた植物、これに対する直接的な被害ということも非常に大きな問題ですけれども、それだけではなくして、国有林に対する除草剤の使用が昭和三十七、八年ころから大量に急速にふえているということからして、非常に広範囲に農薬が使われている。そのことによって、先ほど私、特に問題としました自然循環が根本的に破壊される危険がいまあらわれてきているということを特に指摘したいと思うのです。農薬をまけばこん虫は当然死にます。こん虫が死ねば小鳥も死ぬということです。小鳥が死ねば、次にはどうなるのかといえば、その次には今度は有害なこん虫が大量発生するという可能性も出てくる。特に土壌の中の微生物が死ねば、土壌自身の循環がなくなってしまう。いわば土が死んでしまうのですね。植物発育の最も重大な条件である土が死ぬというようなことにもなりかねないと思うのです。したがって、私は、この点を農林省、特に林野庁が十分に認識された上で、またしたがって、十分な防除体制をとった上で山林に農薬をやっているのか、その点をまず伺いたいと思います。
  328. 福田省一

    説明員福田省一君) ただいま御指摘のございましたいろいろな除草剤につきまして、人体に対する被害その他の被害がたくさん出ているではないかという御指摘があったわけでございますが、御指摘のありましたように、薬剤を使用し始めましてから、幾つかの事例が出ております。それにつきまして、一々こまかに申し上げることもないかと思いますが、一例をあげますというと、下北のサル、ちょっと変わったサルの問題が出ております。これは、実はこの下北半島に生息しておりますサル、これはサルの北限であるということから、天然記念物に指定をしてほしいというような協議がまいっております。これにつきましては、サルの群が約四つございまして、そのうち三つについての協議がございますので、林野庁は、これに対してどうするか。残る問題につきましては、下北半島の佐井にございます。一つは大間にございます。これも協議がありますれば天然記念物としての同意を与えたい、こういうふうに思っておる次第でございます。それができますれば、この地区は、一応私たちは除草剤の散布についてはこれを中止したい、自然を保護したいと考えているわけでございます。  なお、いろいろと事故のありました問題につきましては、内部で、長官通達をもちましていろいろと農薬登録にきめられております注意事項以外に、こまかい注意を実は取りきめておるのでございます。その結果、事故はだいぶ減ってまいっておりますが、なお十分その点については留意してまいりたいと思っているわけでございます。
  329. 渡辺武

    渡辺武君 私も、林野庁で出されたいろんな防除対策についての資料は見せてもらいました。見せてもらいましたけれども、あれを読んでまず端的に気がつくことは、問題になったところは多少手直しをするということはやっておられるけれども、私、先ほど問題にしました、これはきくからといってむちゃくちゃに使うということで、自然の循環も何もかも考えないでやっているというその方式、これが依然として行なわれているんじゃないか、こういうことを考えざるを得ないわけですね。たとえばまあ私その辺の一、二の特徴的な例をあげますけれども除草剤として使われているものに、アメリカがベトナムで使っている枯れ葉剤、何といいますか、二四五丁というそうですけれども、これが含まれている。フェノキシ系農薬も使われているというふうに聞いております。ところが、この二四五Tというのは、すでにベトナムでも問題になりましたように、奇形児を生む、いわゆる催奇性というものの非常に強い薬だというふうにいわれております。こんな危険な農薬をまいて、しかも、山というのはこれは水源地です。あなた方の出された防除対策を読んでみますと、水源地に使用してはいかぬということが書いてある。しかし、ここは水源地だといわれているところだけが水源地じゃないのですよ。山林というのは、一般的に水源地だと見なければならぬ、そういうところへこういう危険な農薬がヘリコプターでばらまかれているというのが、いまの実情じゃないでしょうか。こういう人体に対する危険性あるいは家畜に対する危険性、植物に対する危険性、さらにはまた先ほどの、何回も繰り返して申しますけれども、山林のそれ自体が持っている自然循環そのものを破壊するという危険性、これについて十分に検討された上で使っておられるのかどうか。たとえばこの二四五Tについて、どのような検討をされて使っておられるのか、その点を伺いたいと思うのです。
  330. 福田省一

    説明員福田省一君) いま御指摘のございました、自然のたとえば土壌とか、その他植生についての検討はどうしたかという御指摘でございます。これらの問題につきましては、四十四年度土壌の小動物の問題あるいはそれに対する影響ということにつきまして、林業試験場におきましてこの実験を開始しております。それらの報告によりますというと、これは格別、現在のところでは、まだ継続実験中ではございますけれども、一時は減るようなことはあるけれどもまた回復するのだ、小動物の問題でございますけれども、そういったような指摘もなされております。その他水に対する影響、その他呼吸した場合にどうするか、いろいろな問題があるわけでございまして、それらの問題につきましても、この除草剤を使います場所は人里離れた非常に奥地の問題でございまして、水に対する影響はできるだけ顧慮いたしまして、その水系ははずしてこれをまくということもしております。また呼吸の問題につきましては、実際、許容量のこちらで調べたデータによりますというと、二千八百分の一くらいになっているということもございます。そういうデータも見ながら、今後十分に検討してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  331. 渡辺武

    渡辺武君 あなた方のところで実際仕事を担当して働いている林野の労働組合員ですね。これはこんな有害な農薬はやめてくれということを言っているんですよ。いま御答弁を聞いておりますと、いままで私BHCの問題について伺ったり、あるいはまた公害の問題についてなどで伺って、各官庁の御答弁がありましたけれども、それとほとんど変わりがないんですね。十分に注意してやりますと、これだけなんですね。しかし私は、問題の根本はどこにあるかと言えば、きくからといって有害なのにもかかわらず、めちゃくちゃにこれを使うというところに問題の根本があると思う。それは注意してもらうことは、これはけっこうです。注意してもらうにこしたことはない。十分に安全に使ってもらいたいと思いますけれども、しかし幾らあなた方、それは国有林だから人里に近いところじゃなくて、山奥に国有林があるのは当然のことですけれども、いまのように山に登る人が非常に多いというような場合は、これは幾ら人里離れているといったって、だいじょうぶだなんて言っちゃいられないのですよ。特に、いま申しますように自然循環という点で非常に大きな問題がある。土中の微生物について、一時は少なくなってもふえる可能性があるなんておっしゃっておられるけれども、私その林業試験場の試験結果というのを資料としていただきたいと思うのです。検討させていただきたいと思います。  こういう例があるんです。とにかくいま大気汚染でこの大気の中に一酸化炭素やら亜硫酸ガスやらBHCやらDDTやら、一ぱい入っている。これが雨でもってどんどんどんどん流れているために、もう東京都内二十三区の土の中に微生物が非常に少なくなって、東京都の土は死につつあるという研究結果が出ている。それだけじゃない。高い山の中だって土中の微生物というのは、どんどんどんどん減っているという研究結果がある。ですから、これはあとから回復するからだいじょうぶだなんて言っちゃいられないんですよ。一ぺんまいて自然循環が部分的にも破壊されれば、さらに農薬にたよらなければ雑草を除去することもできなければ、害虫を殺すこともできないという事態にますます追い込まれていく。現に、林野庁がこういう危険な農薬昭和三十七、八年から大量に使い始めたという一つの根本的な理由は、私はここにあると思う。これは自己矛盾です。ですから、これは私先ほど申しましたように、こういう有害な農薬を主にするやり方ではなくして、自然循環を保持し、人間のからだ、あるいはまた家畜のからだ、あるいは植物、これの生育を十分尊重し保持すること、これを第一にして農薬の使用を私は考えるべきだと思う。なぜ一体、労働者が働いているのに農薬をじゃかすかまいて労働者まで殺すというようなことをやるんですか、その理由を私は伺いたいと思う。
  332. 福田省一

    説明員福田省一君) けさほども実はお話し申し上げたのでありますが、現在私たちがなぜ除草剤を使うのかということでございますが、すでに御承知と思いますけれども、木材の使用量というものは日本で非常にふえてまいりました。国内で生産する量では足らない。その使用量の半分以上は外国から買っているような状態であります。そこで、ではなぜ足りないのかと申しますと、非常にまあ現在持っております森林が、生産性が低い森林であるということでございます。そこで、その生産性の低い森林を生産性の高い、生長のいい針葉林に変えていくというのが目的でございます。そこでそういう山は、現在だいぶ奥地のほうに残っているわけでございます。里山のほうは大体におきまして造林地が多くなっております。できるだけ、そういった奥地の生産性の低い山を生産性の高い山に切りかえていくために伐採するわけでございます。けさほど、お話しましたように、奥地のほうへ参りますと、なかなか一人では仕事ができない。行くのに何日もかかるという場所もございます。また無理に道路をつくったり、あるいは搬出設備をしますと、莫大な経費がかかるということもございます。そういうことから私たちは、その人手を省いて能率的にいい山をつくるために、薬剤を使用せざるを得ないということに実は理由があったのでございます。そこで、しかしながらそれじゃ、どの山もそういった山に切りかえちゃうのかという御指摘があるかと思います。その点につきましては、すでに御承知のように、自然の保護、あるいはそういう意味でレクリエーションの場としての森林の需要もございます。そういうふうな場所は、できるだけ私たちは保存してまいりたいと思うわけでございます。生産性の高い山に切りかえられる土壌条件あるいは立地条件のいい場所に限り、そういう経済性を重視し、そうでない場所はレクリエーションのセンターとして残していこうということでございます。もちろん御指摘のように、その場合いろいろ自然の植生の連続と申しますか、そういう生体系の循環の原則というものは尊重してまいらなければならぬということは十分考えておるわけであります。そういう点につきましても、今後試験場等におきましても十分研究を続けてまいりたいと思っております。それを実用化してまいりたいと思っております。また、身体等に対する影響につきましては、これは私たちしろうとで専門外でございますが、厚生省なりあるいは農政局の指示に従い、これを十分防止できるような体制をつくってまいりたい、かように存じます。
  333. 渡辺武

    渡辺武君 時間もだいぶ過ぎましたので、私、最後の一問だけで終わりたいと思います。きょうは、実は大臣においでいただいて、いま大きな問題になってきておる米の問題についても質問したいと思っておったのですが、大臣もおいでになりませんし、時間も過ぎましたので、農薬の問題で最後に一問だけして終わりたいと思います。  いまお話がありました人手がかかるという問題ですが、私はやはりそれは経済性ということは大事だけれども、経済性なるものを第一条件にして事をやったら、必然的にこれはいま言ったように、人の健康を無視したり、自然循環を無視したりということになって、そして長期間にわたっては、結局のところ経済性を破壊する道になると思う。ですから、その点はひとつ先ほど申しましたように、何回も繰り返し申しますけれども、自然循環、自然そのものの持つ作用というものを十分に尊重しながらやっていってほしいと思う。特に労働力の問題につきましては、林野庁はいま労働力不足だ、労働力不足だと盛んに宣伝して、これを農薬使用の一つの理由にしているようですけれども、これまで現場で働いている労働者の常用化に一番反対してきたのは私は林野庁だと思う。賃金もほかの官庁の労働者に比べては安いし、失業保険などの社会保障制度の全面的な適用もこばむし、単価の安い出来高賃金制、これを導入するなどして、実賃的な首切りをやってきたと思う。山林地帯ですから過疎地帯が多いし、過疎地帯にいる農民は、農業だけではなくして林野でも働きたいという気持ちがあるのだけれども、しかし、そのことを林野庁はこばみ続けてきたのが実情だと思う。みずから労働条件を悪くし、いま言ったようなことで労働力不足を持ち来たしたというのが、林野庁のいままでの政策の一つの重点であったのじゃないか。一方でそういうことをやりながら、人手がかからなくて済むから農薬をばらまくということで、いろいろな被害を生み出しているというところに現在の問題があるのじゃないかと思うのです。ですからその点で、何よりも現場に働く労働者、これを尊重するということを中心にして考えていっていただきたいと思う。この点を要望して質問を終わりたいと思います。
  334. 渡辺一太郎

    ○理事(渡辺一太郎君) それでは、他に御発言もないようですから、農林省関係決算につきましてはこの程度にいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十八分散会