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1970-10-08 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月八日(木曜日)    午前十時二十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 若林 正武君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君     委 員                 亀井 善彰君                 佐田 一郎君                 長屋  茂君                 初村滝一郎君                 矢野  登君                 大橋 和孝君                 西村 関一君                 二宮 文造君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        警察庁刑事局保        安部長      長谷川俊之君        法務省入国管理        局審判課長    植村 英満君        外務大臣官房領        事移住部領事課        長        熊谷 直博君        外務大臣官房領        事移住部旅券課        長        佐々木正賢君        大蔵政務次官   藤田 正明君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省関税局長  谷川 寛三君        大蔵省理財局次        長        小口 芳彦君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        厚生省児童家庭        局長       坂元貞一郎君        建設省計画局長  小林 忠雄君        会計検査院事務        総局第一局長   中込 良吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  前回に引き続き大蔵省決算につきまして審査を行ないます。  この際、参考人出席要求について御報告いたします。前回委員会和田静夫君から、また今回大橋和孝君から、岩佐富士銀行頭取参考人として出席を求める件につきまして、その取り扱い理事会協議の結果、呼ぶという方針を再確認し、その時期については委員長理事会にはかって決定することといたしました。  それではこれより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 和田静夫

    和田静夫君 実は、たいへん恐縮ですが、外務大臣をお呼びをしておりまして、それを冒頭やる予定でしたが、まだお入りになりませんから、大蔵大臣質疑を始めながら途中で外務大臣に緊急な問題でありますので、一言そちらに入ることを冒頭申し上げておきます。  例の富士銀行事件で、大蔵大臣お尋ねをいたします。私は、今回の富士銀行事件をずっと追ってみまして、一番けしからぬと思っているのは、実は銀行側態度なのであります。大衆の金を預かっているということをどうもお忘れになっているんじゃないか。そういう責任感がまあ頭取ニューヨーク談話を見ても、あるいは佐々木頭取のいろいろのところでお話しになっているのを読んでみても、どうもそういう感じがいたします。富士銀行の幹部が、もしほんとうにみずからの保身よりも大衆の金を預かっているのだということの重要性について認識をしていたならば、この事件発覚後直ちに銀行が知り得ている事件のありのままを公表して、その失策のよって来たる原因を究明し、直すべきところはお互いが直して、みずから責任をとるべきである。しかるに、銀行のとった態度はどらだったかということを冒頭に若干振り返ってみますと、事件が外に漏れたと知った段階で、佐々木頭取みずからが幾つかの雑誌などの記事をつぶすために動いているし、あるいは担当の重役や部長や次長副長課長課長補佐に至るまで、お家の一大事だとばかりに、まあ手づるという手づるのほとんどと言っていいくらいのものをたどってつぶしにかかった、そういうこと。で、私は、このことについては富士銀行の中にある具体的な事件をいまあげますから、抽象的に言っているつもりはありません。結局つぶしがきかなくて事件が外に出てしまったので、しかたがなしにいろいろな談話を発表し始める。ところが、その談話をずっと追ってみますと、これはまたたいへんふしぎなのでありまして、談話内容が、刑事捜査やその他の事件のいわゆる真相がだんだん明らかになっていくに従って変わってきているのであります。銀行側がまあ本委員会などに参考人としてある意味で出てきたがらない風潮があるのも、菅沼らの取り調べの進行とともに何が出てくるかもわからない。その前によけいなことを権威のあるところではしゃべりたくない。そういうことなのではないかと実は考えられる節があります。そらして岩佐頭取は、御存じのとおり遠くアメリカにいて、そこで、十九億とはずいぶん高い授業料でしたなどと、まあのんきなことを言っているわけです。本来、きょう富士銀行問題で決算委員会が開かれることなどは、岩佐さんがIMFの総会にお出かけになる前におわかりになっているわけですから、誠意があるのならばこの委員会やりとりというものを十分に彼が関知できるところにいて、そのやりとりを通じて、みずからの姿勢を含んで、後ほど触れますが、銀行組織運営などに対するしろうとの意見も十分にくみ上げる、そういう態度というものが私は必要だと思っているのです。そういう意味では実にけしからぬ話であります。本日、過日の私の本委員会における要求どおり岩佐頭取参考人として出席されるならば、最も追及しておきたかったことの一つ、そして何も追及ばかりでなく、われわれも建策をしたかった一つは実はこの辺にあります。  ところで、私は大蔵省から最近におけるおもな銀行不祥事件概要という資料をいただいて、ここに持っておりますが、ずいぶんたくさんあります。このほかにもまだ実は幾つかあります。とれもきょうの委員会で若干のことを明らかにしたいと思っておりますが、このいただいた資料に載っていない事件、つまり銀行局報告されていないが、やはり不祥事件が起こっている、そういう問題についても、私は実は見のがしておくことはできないと、こら思っております。なぜこんなに同様な事件が次々と起こるのだろうか、私はいろいろしろうとなりに考えてみました。一つ要因として、私は、こういうことが言えるのではないかと思うのです。今度の富士銀行事件でも、菅沼という中堅職員商品相場における失敗ということが、一つ要因としては確かに存在しているようであります。堅実さがまあ身上とされている銀行員が、こうした投機に走っている場合が意外に多いということであります。これは、私は銀行警察大蔵省銀行局の三者に実は責任があると思うのです。いままであなた方が、こうした不祥事件が起こっても、三者で協議して、たいてい刑事事件にはされておりません。今度の菅沼の場合だって、できれば刑事事件にしないでおさめたかった節が、つぶしにかかったというような動きその他のもので感じ取れました。三菱銀行船橋支店の場合もそういう形でおさめておって、現在当事者はちゃんと生活しています。そらしたあなた方の態度が一貫してあるために、銀行中堅職員不正事件を起こしたら全く一生を台なしにしてしまうという、そういう突き詰められた気分になっていないのではないか、それが今度のような大事件を引き起こす一つ要因になってきているのではないか。  そこで、私は、まず第一に、大蔵大臣はこれを契機に、銀行における不正事件が起こったならば、どんどん表に出して事件にしていくという態度に改めるべきだと思うのでありますが、その辺はまず、いかがですか。
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま和田委員からお話しのとおりだと思います。すでに大蔵省では、富士銀行事件、その他最近相次ぐ銀行不祥事件の結果にかんがみまして、六月何日でありましたか、銀行局長名をもちまして通達を出しております。ただいま和田委員のおっしゃるとおりの措置をすべきであるという指導をいたしておる、かように御承知を願います。
  5. 和田静夫

    和田静夫君 それでは申し上げますが、大蔵大臣はこの有馬哲こと金東善富士銀行雷門支店取引を始めるようになった動機、これが何か、すでに御存じになっていると思うんでありますが、御存じでしょうか。
  6. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 雷門支店取引先からの紹介で取引を始めたというふうに報告を受けております。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと失札いたしまして、外務省見えましたので、外務省質問に入りますが、外務大臣がどうしても外交用件おいでになれないということでありますが、外務省に対してちょっと緊急の質問をいたします。  昨晩、私が知り得ましたこれは確かな情報でありますが、有馬哲こと金東善身柄引き渡しの件で韓国政府からフランス政府クレームがつきました。その事実関係日本政府としての方針、見通しについて、三点について明確にしてください。
  8. 熊谷直博

    説明員熊谷直博君) 御説明申し上げます。  外務省のほうに韓国のわが大使館から昨日公電が入りまして、韓国において大使館担当官が、韓国政府法務省当局とそれから外務省当局に、非公式に韓国政府態度を当たった事実はございます。外務省当局回答によりますと、これはまだ韓国政府部内で協議を終わっていないので確定的なことは言えないということでございます。韓国法務省当局見解では、韓国ICPO——国際刑事警察機構加盟国であるということと、それから本件は、事件が発生しましたのは日本であるということ、それから日本フランス政府に対して引き渡し請求及び一般的な協力を請求している、依頼しているということによりまして、韓国政府としては日本引き渡し要求——本件について協力的な態度をとるというような見解法務省当局は言っております。  いま御質問のありましたフランスにおいてのことでございますが、在フランス韓国大使館からフランス法務当局に対してコンタクトがあったということは、私ども通報を受けております。ただ、このコンタクト内容がどういうものであるか、それからそれに対してフランス当局がどのような回答をとっているかということについてはまだ詳細な通報を受けておりませんので、いまのところ何とも申し上げられませんのですが、先ほど御説明申しましたように、韓国法務当局ICPO加盟国であるということを理由にしまして、本件につき日本政府協力的な態度をとるものと私どもは期待いたしておりますので、パリにおける仏韓間のコンタクトも、本件には、日本捜査と申しますか、フランスに対する協力要請には支障にならないものと考えております。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 これはたいへん重要なんで、したがって、外務大臣に出てきてくれと私は言っているんですが、私の知り得た情報は間違いありませんか。いまあなたが、韓国がいわゆるICPO加盟をしている、そういう関係において、韓国の、言ってみれば友好と善意を信じているんだということを述べられたんです。そこで、どっちみちこれは明らかになることですから、日本外務省が、ここでこのことを知りませんですといまお答えになった、そんなことで済まされる問題じゃないと思う。したがって、この委員会はまだ続きますから——そして、もう一つは、実はきょう富士銀行頭取がここへお見えにならなくなっている理由一つが、言ってみれば菅沼もつかまった、有馬もつかまった、その取り調べということが理由になって、理事会がかなり紛糾している。私はそのときも、有馬がいつ日本に来れるものやら保証というものがないということ、このことはたいへん私にとっては、きょう富士銀行頭取がここに出てこない理由一つにつながっている。そこで、いまの答弁は満足することができません。そして、あなた自身もいまの答弁でもってこの場をのがれても、この次の富士銀行問題を取り扱うときに明るみに出る問題ですから、そうはなりません。あなたのためにもいまの答弁はためになりません。したがって、韓国政府フランス政府クレームをつけた、このことについて、もっと責任ある方々と相談を願って——大体時間が三十分、あなた方のためにおくれましたから、一時まで私の時間がありますから、その間に明確な、外務省としての、外務大臣としての態度を明らかにしてください。  それから、具体的ないまの問題に関する質問か続けます。  昭和四十年から四十二年にかけまして、先ほど銀行局長が御答弁になったように、雷門支店得意先係をやっていた人がおられる。名前も知っていますが、いまやはり、ちゃんとした生活をされている人ですから、迷惑がかかるといけまんから、ここでは公表しませんが、かりにAといたしましょうか。あるいはUならUといたしましょうか。たとえばこのUという人物が、当時の富士銀行における一・一・三運動の中で——一人一日三人獲得という一・一・三運動の中で、得意先のこれも会社社長——もっと突っ込んで塗装業会社社長とでも言いますか——から金東善を紹介された。そして金が四十一年に富士銀行に百万円の口座を開いている。この金をつかんできたという得意先係のUが四十年六月から四十二年の八月にかけて、ある商店主——時計屋なら時計屋とまではっきりされている、時計屋さんの預金を  その印鑑も自分が預かっている。入金取り継ぎ伝票だけを記入して、それを銀行入金にせずに三千三百万円の使い込みをやっている。一説によれば、この三千三百万円のうちの一千何百万円かが金に貸し付けられているといわれています。これが四十二年の八月に発覚をして、そしてUは富士銀行を退職することになって、支店長次長副長が減給なり戒告なりあるいは譴責などの処分を受けています。これもあなた方は刑事事件にしていません。この事件銀行局にも報告が行っていますし、警察も当然知っているわけです。ここまでの部分についてはいかがですか。
  10. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ただいま御指摘になりました事実はすべてそのとおりでございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 この雷門支店得意先係をやっていたUという人物が三千三百万円の使い込みをやって、四十二年八月にやめさせられた。そして菅沼は当時そのことを見ていますよね。そして有馬への不正融資が始まったのは、この前の銀行局長答弁どおり九月からなんです。この連続的な関係ですね、こういう関係から、もしあなた方がこのUの事件刑事事件にしてきびしく処断をしていたならば、菅沼もその処置などを知りながらやすやすとは不正融資に踏み切れなかった。そういう意味では今度の事件は起こらなかったのではないか。これは大蔵大臣、いかがですか。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あるいはお話のようなことになったかもしらぬ、こういうふうに思います。つまり、そのUという人の問題をうやむやにした、こういうことが菅沼事件を巻き起こしたということにつながってくる、そういう可能性が認められるような気もします。そういうような次第でありますので、先ほども申し上げましたが、六月には銀行局長通牒をもちまして、こういう事件の処理はうやむやにしては相ならぬといろ指導をしている、かように了承しております。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 発覚のきっかけについてでありますが、警察庁お尋ねをいたします。  一説によりますと、トムソンがその倒産前のどさくさに、経理部に保存されていたところの小切手数枚が紛失をしている。そのうちの三枚、額面は一億円、小切手三枚がいろいろと出回って、六月の末ごろにある人が雷門支店に金にかえてくれと言ってあらわれた。ところが、振り出し人有馬となっている上に、振り出し日が空白であったので、雷門支店支店長竹村さんが不審に思ってトムソンの新しい社長に連絡をとった。社長のほうはいま一億円引っぱり出されたらたいへんでありますから、どうしようもないということで警視庁の某刑事を連れて実は雷門支店にあらわれた。そのときにトムソン社長としては、刑事であるということを相手方に知られないことを好ましく思っておったんでしょうが、某刑事はひょいと竹村支店長に名刺を出してしまった。そこで竹村さんが驚いて、これは内部でいまいろいろつぶそうとしている十九億円問題がばれたわい、したがって警視庁刑事がやってきたわい、こういうふうに早合点をして、本店に連絡するのを忘れて警視庁に飛び込んで、何ぶんよろしく、こういうことになっている。それで警視庁も、何かあるなあと感づいた、こういうふうに伝えられていますし、これはまあ、かなり信憑性があります。ところが昭和四十五年の十月七日付の大蔵省銀行局による「富士銀行雷門支店における不正融資事件概要」という資料によりますと、事件発生端緒はこうなっているんです。これは少し長いですが、たいへん重要なので読みますと、「三月二十五日ごろ、同行外国部業務係担当者外為損益決算見込み作業の一環として、一月分支店管理表」カッコしていろいろありますが、「を検討したところ、たまたま雷門支店外為損益が不当に赤字となっていることに気づき、その理由担当菅沼(以下本人とする)に照会したところ、手数料金利未収があり、近くこれの回収があるから補てんされるとの一応の説明があった。二、当該外国部業務係担当者は上記の説明につき全面的には納得できないまま、次いで三月三十一日同行主計課に到着した二月分支店管理表と対比したところ、未収手数料金利回収のみにてはカバーできないほどに赤字が増大をしていた。そとで詳細に検討した結果、その原因が買入れ外為勘定残高が異常に高いことにあることを発見した。三、同行外為取り扱い処理方式として、支店勘定となる買入れ外為の大部分不渡分であるため、当該外国部業務係担当者は、このように多額の不渡分があることに不審を抱き、外国部審査係に照会をした。外国部審査係も同様の疑問を持ち、四月一日本人に対し直ちに出頭して説明するように要求した。四、しかし、本人は再三の要求にもかかわらず出頭しなかったので、四月二日午後支店長に直接電話したところ、本人は四月二日朝本店説明に行くと称して出かけたまま、行方不明になっているということが判明した。そこで不審が一層強くなったので、同日中直ちに雷門支店段階で調査させた結果、本事件が判明するに至った。」これはどちらがほんとうですか。
  14. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 最初に端緒を得たのは、具体的にどんな状況端緒を得たのかということは私ちょっと存じておりません。で、六月末ごろに何かあるということの聞き込みはあったようでございます。それから内々で何かあるんじゃないかということから捜査は一応やっておったというふうに承知しております。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、いまの答弁によると、私の前段のほう、言ってみれば六月の時点において起こった状態を警視庁関係というのはやっぱり知りながら捜査が少しずつ問題になっていった。そうすると、大蔵省説明部分というのは、その限りにおいてはたいへんここが、言ってみればまやかされている、こういうことになるんです。私は、したがって、この大蔵省の要約されておる概要というものには、その点について非常に不信感を持ちます。そういう意味で、これは何も警察の調べが菅沼に関して行なわれなくたって、きょうここに富士銀行頭取がお見えになればわかったことなんです。その辺が、言ってみれば、前回の蒸し返しをやろうとは思いませんが、どうも自民党のほうで出したくないという意向があることと、大蔵官僚銀行というものにおける結びつきが不明朗な形で動いておるということを、この部分についてたいへん残念ながら指摘をしなければなりません。私をしてこう言わせないためには、岩佐頭取がきょうおいでになっていれば、この辺は明らかになったと思う。  この大蔵省説明を簡単に言いますと、雷門支店買い入れ外為勘定残高が非常に高いことから、雷門支店外為損益が不当に赤字となっておることに外国部業務係担当者が気づいたのです。それが事件発覚端緒となったということになっております。ところがなお、去る九月二日の本委員会において、近藤銀行局長は私の質問お答えになって、こう述べられておるのです。「本店買い入れ外国為替が発生いたしましたときは円で受領する、円貨受領のものを除きましてはすべて本部に移管されることになっておりまして、支店にそのまま残されるということは非常に限られたものになるわけでございますが、本来その限られたものであるはずの金額が雷門支店の場合には非常に大きいということがいまの注目を引いて、発覚端緒になったということでございます。」。  そこで銀行局長お尋ねいたしますが、昭和四十三年の十一月、これは本店コンピューターを入れたときもかなり私は興味を持って、予算委員会やら地方行政委員会でも伺ったのですが、コンピューターについてはあとで若干承りますが、本店コンピューターを導入されて買い入れ外為勘定円貨受領のものを除いてすべて本店に移管をされた、その月ですね、十一月。四十三年十一月以前の何カ月かと対比的に、四十三年十二月以降四十五年三月まで各月雷門支店買い入れ外為勘定残高をいま示していただけますか。それで、それらの数字と対比して各月雷門支店外為損益も示してください。
  16. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 買い入れ外為推移を申し上げますと、四十三年の十一月、雷門支店の月末残が三億九千六百万円でございます。十二月が二億八千七百万円、一月が一億五千六百万円。その前は十月が五億七千万円、九月が五億七千六百万円、それから月中の平均残高で申しますと、九月が五億一千五百万円、十月が五億五千四百万円、十一月が四億五千六百万円というふうになっております。そしてその後この残高は逐次、いま御指摘のとおり減っていくべきはずでございますが——ほかの店では現に減ってきているわけでございます。ところが、雷門支店におきましては、菅沼の犯罪が行なわれましたために、外為残高が減らずに推移をしたということは御指摘のとおりでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、大体私の調査によっても同じような数字が出ていますが、そうしますと、いま、あとのほらで触れられなかった部分ですが、この四十四年の十二月に六億七千万という形のたいへん大きなものになっているんですが、四十五年一月、三月とおりてくる、三月の時点でわかった。そんなことにはならんですね。切りかえのときからのことをずっと数字でとっていけば、そんなことにならんです。しにがって、三月の発覚というのは、数字の上からいって、おそ過ぎるわけですね。ここに、富士銀行内部頭取以下が——頭取は、あとで触れますが、夢の殿堂ができ、コンピューターを入れたときに多くの人を集めて、その前で言われたんですがね。言ってみれば、感知しながら内部においてまあいろいろの操作が行なわれた。これはもうコンピューターを信じ、この数字の類推を信じていけば、私の言ったことが明確になってくるでしょう。そして、警察庁側が答弁されたように、私が第一の段階で申し上げたような形のことが裏づけされてくるんです。いかがですか。
  18. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 筋としては、ただいまおっしゃったとおりであります。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 とにかく、私の述べたとおり、こういうことになりました。新聞によりますと、富士銀行コンピューターを導入したことが犯行を助けた。各支店で分割処理していた買い入れ外為勘定本店が一括しておくことになって、その結果が勘定総額は年間数千億円に達し、未決済分の発見がおくれたということでありますが、これほど、言ってみれば皮肉なことはありません。岩佐頭取は、あの夢の殿堂ともいわれた新しい富士銀行本店が開店を始めるにあたっての祝賀会で、コンピューター導入によって大衆の金をさらに一そう安全なものにしたいとあいさつをされた。それがまさに裏目に出た。大蔵大臣——七〇年代はコンピューターと政治ということがたいへん大きな問題でありますが、そこまで大蔵大臣に求めるのではなくて、ここに起こった問題、これに基づくところは、私はやはり頭取責任問題というものが明らかだと思うんですが、この部面についてはいかがお考えになりますか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまお話しコンピューター頭取責任ですが、この関係につきましては、私もさあ関係があるのかないのか、何か申し上げる自信を持っておりません。ただ、申し上げられますことは一般的なことでありまして、まあコンピューター銀行業務に導入する、これは非常に私は必要になってきている、こういうふうに思うんです。ただ、コンピューター銀行業務が使われるという形になっちゃまずい。やっぱりあくまでも、コンピューター銀行の管理運営のために使いこなす、この態度というものが大事ではないか、そういうふうに思うんです。コンピューターが仕事をするからいいやといって仕事をまかせておくというようなことになれば、大事な銀行家としての勘、そういうようなことがかさんでくるというようなことになると、いろいろな問題がまた起こる素地をつくっていくというふうに考えますので、コンピューターの導入と銀行管理がいかにあるべきかという問題は、こういう機会にあらためて考え直してみる必要があるのじゃあるまいか、そういう感じを深くするのでございます。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 去る九月二日の本委員会におきまして、私の質問に答えられて、近藤銀行局長は、菅沼不正融資十九億四百万円の形成のされ方の具体的ありようについて、四十二年九月の三百七十万円と、そして四十五年二月−三月の間の約九億の数字を出しただけで、その中間でどのような姿でそれが形成されていったかということを明らかにしておられません。何年何月に具体的にどのような形で、どのような手形割引なり外為買いなりがあって、その結果として十九億四百万円になったかということをお示し願いたい。
  22. 近藤道生

    説明員近藤道生君) トムソンに対する不正融資の開始は四十二年の九月でございます。そのときから、その九月中の月中の不正融資の純増が四百万円、十月が五百万円、十一月——これは不正融資残高として九百万円減っております。それから次の十二月が二百万円減っております。それから四十三年の一月が一千四百万円ふえております。二月が二百万円減っております。三月が三百万円減っております。四月が二千七百万円ふえております。それから五月、六月と異同がございませんで、七月に八百万円ふえております。それから八月に二百万円、九月に三百万円。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 八月の二百万円は、ふえでございますか。
  24. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ふえでございます。十月が二百万円、十一月が四百万円、十二月が八百万円の減、四十四年の一月が三千四百万円、二月が三千七百万円、それから三月が三千二百万円、四月が三千七百万円、五月が三千二百万円、六月が七千九百万円、七月が一千四百万円、八月が五千六百万円、九月が二千五百万円、十月が六千三百万円、十一月が五千九百万円、十二月が二億三千一百万円。四十五年になりまして、一月が一億一千九百万円、二月が一億八千六百万円、それから三月一日から四月一日まででございますが、八億四千二百万円、それから四月に四千万円ふえまして、十九億四百万円ということでございます。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、これは警察関係の調べとのかね合いになりますが、したがって、あまり深い突っ込み方をこの場でやろうとは思いませんが、融資延べ三十億円ということが漏れ出し始めていますね。これはほんとうですか、どらですか。
  26. 近藤道生

    説明員近藤道生君) その点は、私どもは全く聞いておりません。  それから、ただいま申し上げました数字につきましても、なお警察当局取り調べが進みまして、あるいは異同があるかもしれないというふうに考えます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 実は私は、富士銀行から大蔵省に上がっている報告書ですね、それを再三資料として要求いたしました。まあざっくばらんに言えば、われわれのほうに銀行局のほうが先に示すと、今後他の銀行から、つくられた報告書が上がってくるだろうなどというような危惧の念も漏らされました。私は決して、それを了解したつもりはないのです。なぜならば、そのときに、どうせ銀行からお見えになるから、銀行と一問一答して、そして大蔵省にそれを裏づけてもらえばということで、まあ一応そういう話に耳を傾けておりました。ところが、銀行がきょうお見えにならない。非常にその点残念なんですが、もしほかの銀行が、ここにわれわれが富士銀行というこんな大きな問題について論議をした機会に求めた資料を出すことによって、まじめな報告をしてこなくなるのではないかという考え方が皆さん方にあるとするならば、まじめな報告をしなかったならば、これは銀行法三十四条、三十五条に関連をする違反になるわけですから、それは言ってみれば理屈にならないのですよ。したがって、たいへん残念であるけれども報告書をそのまま私に提示をされないということは、その時点報告書には、結果的には虚偽の報告があるのではないかというふうに私は考えざるを得ません。虚偽の報告はないと、ここで明確にお答えされますか。
  28. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 実は、お手元に差し上げております。先ほど一部をお読み上げいただきました分は、富士銀行からの書面による報告書及び口頭による報告を全部集約いたしまして、事実関係を全部網羅いたしたものでございます。したがいまして、その中に書かれておりますことと報告書自体の間に事実の相違は一切ございません。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 私の言っているのは、あとからいわゆる報告義務期間を越えて事件発覚してきてから出されてきたものをずっと集約されて、それはつくられますから、いま言われたとおりだと思います。いわゆる報告義務期間内において報告されておる書類について、そこに立ち返ってみれば、その時点においては結果的に虚偽申告、こういうことになっているのではないかと私は言っているのです。それはそうでしょう。
  30. 近藤道生

    説明員近藤道生君) たとえば、施行細則八条、銀行法三十四条に基づく報告、これあたりは、科目の立て方が、当時においては、富士銀行自身も買い入れ外為ということでつけておったものが実は手形貸し付けであったというようなことはあろうかと思います。それ以外は事実に反することは一切報告申し上げておりません。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 それですから、確かにいま言われたとおり、一部に、言ってみれば結果的に虚偽になっている報告が出されておった、こういうことになります、その部分は。
  32. 近藤道生

    説明員近藤道生君) これは虚偽、いわゆる官庁を欺罔するという銀行法上の欺罔には当たりませんが、結果においては虚偽ということはおっしゃるとおりであります。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 富士銀行報告は、結果において銀行法上にいうところのいわゆる虚偽に当たる。こういうことになりました。  菅沼の手記の信憑性やテープの信憑性などは警察でお調べですから、私は何も言いませんけれども、手記やらあるいはテープやらが出て、その上菅沼がつかまったりなどして、そしてやっと観念をしたのでしょう。佐々木頭取日本コカコーラからのトムソンヘの融資あっせんがあったことを認められました。これは認めざるを得なくなったのですね。あれは、当初は認めておりませんが、白状してしまったのですね。それで、私はそういう経緯があったものだから、十月七日付の「富士銀行雷門支店において発生した事件概要」というもののまとめを銀行局としてもう出しても、隠しておく必要がなくなったというようなことになっておるんじゃないかと思うのです。  この十月七日付の資料には、こういうふうにありますね。日本コカコーラ株式会社との取引状況、「同行は、かねてより日本コカコーラ株式会社との取引工作を行なってきたが、四十三年八月ごろ同社より取引開始の内諾を得て、四十四年三月三日同行品川支店において取引開始の運びとなった。取引内容は、貸し出しはなく預金取引(当座預金、通知預金、定期預金)のみであり、現在までの約一年半の取引状況は、預金額が夏場の需要期に増加し、冬場に減少するという業種の季節変動を明らかに示しており、預金係数と不正融資額との連動は見受けられない。」。あなた方はここで「預金係数と不正融資額との連動は見受けられない。」といっていらっしゃるわけですが、ここでいう「連動」とは何か。そして、その「連動」が見受けられないありさまを、これは数字でもって説明してくれと言ったところで、善意の第三者に関することだとかなんとか言って説明されないかもしれないが、数字で一体説明できるのですか。
  34. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 通常、導入預金の場合に型として二つ特徴がございまして、一つは貸し出し額とほとんど連動した動きということ、もう一つは、事件発覚などをいたしますと導入預金が全部引き出されるという二つの特色があるわけでございますが、日本コカコーラの預金の場合には、それ自体の、コカコーラの売り上げに伴う動き、つまり夏場の需要期に非常に預金がふえるというようなシーズナルな動き方を非常に規則正しくやっておる預金の残高の移動でございまして、本件菅沼不正融資というものとは全く無関係の動きをしておること、それからまた菅沼有馬の逃亡後におきましても、また、ことしの夏場においてほぼ需要期を控えての通常の預金残高の動きをしておるということから、まあ一応通常の導入預金とは違う感じを持たれるということをここで申し上げておるだけでございまして、それ以上に、実際に心理的にあるいは主観的にどういうことが行なわれたか、その辺については目下警察当局でお調べになっておられるわけでございまして、私どものほうでそれ以上突っ込んだ分析はできないのでございますが、預金の動きと貸し出しの動きとの連動関係と申し上げるのはそういう意味でございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 佐々木頭取も、この日本コカコーラからのトムソンヘの融資あっせんがあったことを記者会見で認めた。これはきょう副頭取にも出てきてもらえばはっきりするわけですが——だけれども日本コカコーラの預金残高は、十九億四百万円にとても匹敵しないと思うのですね。私は、こんな子供だましな——私は全くしろうとですけれども、こんな議論は実は通用しないと思いますね。だれも信用しないと思うのですよ。これは二つの点で非常にばかにしておると思うのですが、ばかにしている例をあとからあげますが、さっきの私の二つ目の質問についてはいまここでは具体的に数字は提示されないわけですか、銀行局長
  36. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 二つ目の質問とおっしゃいますと……。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 言ってみれば、具体的に連動が見受けられないありさまを数字で示してもらいたいということです。
  38. 近藤道生

    説明員近藤道生君) コカコーラの預金の数字はここにございますが、これは全く善意の第三者の預金でございますので、この席で申し上げることをはばからしていただきまして、先ほど申し上げたような抽象的な説明で御了承いただければ幸いと思います。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 まあそうなればしようがありませんから、私の調査で少しのことを述べる以外にありません。  私の調査によりますと、日本コカコーラの預金残高というものがわかってきているのです。たとえばいま言われたとおり、四十四年の八月という夏場、これなんかには十三億をこえる形になっていると思うのです。それから四十五年に、こらずっと見てきますと、やっぱり夏場になって、六月で十六億をこえ、七月で二十六億をこえ、また八月で十五億をこえるなどというような形に、私の調査結果が正しいとすればなっていると思うのですね。これらを実は考えてみると、取引高は、これらをずっとあれにしていくと、四十四年度弧三百七十八億にのぼりますよ。しかも毎年二割から三割ふえているのですね。そうすると、まあ頭取が出てくると思いますから、頭取質問するために考えた話ですから、あとあまりこんなことでいじめようとは思いませんけれども、こうなってくると、佐々木発言というのは、残高だけをずっと問題にしているけれども、いま申し上げたような取引高の大きさについてはほおかぶりしているのです。そういうところに私は子供だまし的な議論がある、そういうふうに思う。  それから、佐々木発言がわれわれしろうとといいますか、国民といいますか、他人をばかにしているもう一つの点は、しろうとなりに考えてみて、だれも、何も十九億四百万円全部を富士銀行の幹部が知っていた、そしてトムソンに貸し出されたなんというようなことは言っていないのですね。そんなことはどこでもだれも言っていないと思うのです。私はこういうふうに思うのです。私の分析は誤りないと思うのです。日本コカコーラから取引開始の内諾を得たのは四十三年八月。そうすると、先ほどのおたくの概要で、トムソン株式会社からの借り入れ申し出を拒絶した経緯があります。「四十四年一月下旬、トムソンから同行雷門支店を経由して不動産担保で手形貸し付け二千万円の申し出があった。同行本部は、たとえ不動産担保の裏づけがあっても、倒産寸前の内容不良先に授信することは考えられないとして回避方を指示した。その後、同社より再度たっての借り入れ申し込みがあり、一方、同行品川支店においては日本コカコーラ株式会社との取引開始直前でもあったために、これらの関係を考慮するという見地から、再度同行本部は、トムソン株式会社への融資につき協議を行なった。その結果、四十四年二月上旬本件は」——ですから、トムソン——でしょう、「内容的に問題にならない不良企業であり、たとえ日本コカコーラ株式会社と関連があるにしても、取引すべきでないとの結論に達し、再度取引を回避するよう指示した。」、これは四十四年の一月下旬から二月上旬にかけてであります。つまり、この間にコカコーラ極東支配人ロバーツと金東善——有馬哲との関係で、日本コカコーラから富士銀行に対してトムソンヘの融資あっせんがあった。一応内諾は得たけれどもほんとうにコカコーラの預金が得られるかどうかについて富士銀行としては最も不安な時期なんですね、これは。で、この時期、富士銀行外国部は、トムソンヘの融資あっせんとコカコーラの預金との関係について問い合わせをしたり、調査をしたりしていますよ。結局表面上は四十四年二月上旬、本件内容的に問題にならない不良企業であり、たとえ日本コカコーラと関連があるにしても取り上げるべきではないとの結論に達して、再度取引を回避するよう指示をした。そういう結論を出した。表面上は確かにそうだと思いますが、実際は二月の段階で高橋富士銀行外国部長兼任重役の、斉藤調査役を介した菅沼への指示があります。その指示でトムソンに金が出ています。私は、この金を問題にしているのであります。この金額は幾らですか。
  40. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 高橋取締役からの命令で出された金額というものを、私ども報告を受けておりません。いずれその辺は警察当局取り調べによってあるいははっきりするかと思いますが、具体的なその金額ははっきりいたしておりません。  それから、全体としての本事件の背景として、おっしゃるように預金獲得ということに狂奔するという銀行の基本姿勢が、いろいろな面でこのようなダブルチェック・システムを実際上働かなくするというようなことに働いたということは、まことにそのとおりであろうと存じます。ただ、いまの日本コカコーラからの直接の預金、トムソンヘの融資をしろという依頼はなかったという報告は受けております。コカコーラ・エクスポート社から電話があったという事実は聞いております。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 いま、最後の答えがちょっと——だれから電話がかかったのですか。
  42. 近藤道生

    説明員近藤道生君) コカコーラ・エクスポートという全然別の会社でございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 これはまあ、いまのところについてはどうせ答弁は、おわかりにならぬと言われるだろうということは予想していましたがね。しかしこれは、そう言われたところで、捜査の過程で明るみに出る問題でありますし、これがずっと明るみに出てきて、頭取責任問題というようなことは当然出てくることと思います。しかもこれは、さっき冒頭に理事会報告がありましたように、きょうは大蔵の決算がこれで終わることになっていましたが、そうはならなくて、富士銀行問題に対する決算はもう一ぺん行なわれますから、どっちみち次回ぐらいまでの間には明らかになることなので、何も捜査結果を待たなくても、どうですか銀行局長、ここで、この辺の数字について、金額についてお答えになっておいたほうがいいのじゃないですかね。
  44. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ただいまも申し上げましたように、高橋重役から特にそういう指示があったという事実を聞いておりませんので、その辺は、あるいは捜査の結果そういうことになるかもしれませんが、現在の状況では、私どものほうでははっきりいたしておりません。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 時間をかしましょう、私も。どっちみちこの辺は取り調べが進んでいますから、やはりこの大蔵省資料によりますと、事故金の処理の問題のところで「十九億円のうち五億円は新会社、ゼネラル・ベンディング株式会社に債権譲渡しており、これは新会社の収益により七年以内に回収する計画を立てている。また、残額十四億円のうち、六億円は今後担保処分(不動産、動産、預金など)と捜査の進展に伴い発見されるであろう隠匿資金などにより回収し、残額約八億円を回収不能見込み額として当九月期決算において有税償却する予定である。」、こうなっています。銀行側のこの報告をそのままうのみにしますと、こういうことになるんでありますが、これが損害を少なく見せようとする銀行側のインチキであることは、もうこれは明らかだと思うのです。  まず第一点、債権譲渡したゼネラル・ベンディングという新会社、これはいつできましたか。
  46. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ことしの八月十四日に日本コカコーラとの契約を締結いたしまして、八月十日に設立されております。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 四十五年の八月十日ですね。
  48. 近藤道生

    説明員近藤道生君) そのとおりです。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 この会社は丸紅飯田がつくった会社であります。丸紅飯田といえば、まあ少しわかっているものは富士銀行に首っ玉をつかまえられている会社であり、だれでも知っています。丸紅飯田が富士銀行の言いなりにならなかったならば、この丸紅飯田がどうなるかなどということは常識的にわかっているわけですから、富士銀行の言いなりになるのはあたりまえでありますが、この会社に言うことを聞かせて、新会社に出資をさせて五億の借金を肩がわりをさせる、損害をできるだけ少なく見せようというのでありますから、富士銀行は私どもずいぶんあくどいことをやると思っているのです。これを指導監督する立場にある銀行局の側が、こんな措置、この銀行側見えすいた報告というものをうのみにする手はないと私は思うんですが、これは、その部分についてはうのみですか。そういう部分についての監督などというものはないわけですか、行政指導というものはないわけですか。
  50. 近藤道生

    説明員近藤道生君) この会社が将来富士銀行の計画どおりの返済ができるようにうまくいくかどうか、あるいは、いま先生が御指摘になりましたようにうまくいかずに、それだけの債権の確保に役立たないような結果に終わってしまうか。それは、まさにこれからの問題でございまして、一応富士銀行といたしましては、これがちゃんと動くと、そしてその結果、債権の確保に役立つという判断を現状においては下しておりますので、その結果を見まして、もし先生がおっしゃるような面が出てまいりますれば、それは、そのときにおいては私どもとしても、まあ処理をするというふうに考えております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 これだけの事件の事後処理について、私はそういう危倶を持つ。それをあなたは私どもしろうとの危倶だと言われるかもしれぬが、言ってみれば、政治に携わる者が一つの先見性を持つということは大切なことですから、そういう意味で私の先見というものは大体当たるのですよ。これを、そのときになったならば処置しますなどと言うならば、この事件の事後処理ということでの銀行局の、指導官庁としてのいわゆる立場というものはないじゃないですか。大蔵大臣、いかがですか、ここは。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) かような事件が起こりました際に、債権の確保につきましては、これはもう銀行が努力しなければならぬというふうに思います。また、大蔵省といたしましても、そのようなことが実現できるように、まあ指導もし、協力もするということだと思います。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 指導し、協力をされていって、結果的に私の言ったとおりになるということは目に見えています。そのときには、私の意見に従ってなどというようなことではもうおそ過ぎます。これは意見として述べておきます。  そういう意味では、やっぱり富士銀行についてもっと強い姿勢というものを私はとってもらう必要があると思います。ところで、この中で、先ほど読み上げました中で、「残額十四億円のうち、六億円は今後担保処分(不動産、動産、預金など)と、捜査の進展に伴い発見されるであろう隠匿資金などにより回収し、」こうなっています。いまのところ明らかになった担保物件を全部明示してください。
  54. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 現在までのところほぼ明らかになっておりますものは、預金といたしまして一億五千万円、代金取り立てといたしまして七千九百万円、それから自動車及び機械類といたしまして五千五百万円、不動産関係で二億六千万円、大体その辺のところがほぼ明らかになっております。しかし、今後まだこの数字は動き得る可能性のあるものと考えております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 すみません、ちょっといま言われた総計幾らになりますか。
  56. 近藤道生

    説明員近藤道生君) さらにそれでは、鉱業権マイニングといたしまして三千万円、それから動産関係で三百万円、そのほかに八十万円ほど、その他が約二千万円余ございまして、それらを合計いたしまして約六億ということになっております。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 たいへん具体的なことなんで恐縮ですが、たとえば、うわさされる横浜のマンション、これはどのくらいになっておりますか。
  58. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 大体一億ぐらいと踏んでおるようでございます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 まあ横浜のマンションが一億円に見積もられているのですよ。この勘定からいくと、実は調度品だけで三千万円以上のものをかけていることになる、非常に非常識な話なんです。また、銀行側有馬が地区トムソンからだまし取った土地などの担保物件を七億円相当取っているのですが、これはそういうことはありませんか。
  60. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 不動産の設定登記済み分といたしまして一億六千万円ございます。そのうち若干のものが第三者提供になっておりますが、この部分がそれに該当いたしますかどうか、この辺はいずれ司直の手によって明らかにされることと考えております。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 まあこの辺は司直の手によって明らかになるでしょう。けれども、私が言いたいのは、たとえば地区トムソンから判こをみな取り上げてしまってなどというような形で、実は価値のないものを非常に大きく見積もる、こういう形のもので現状を糊塗しようとしております。とても常識では考えられないことをやっております。で、たとえばこの地区トムソン側に言わせると、われわれは銀行に提供したものではない、自動販売機購入のために津上文化機器に渡したものである、したがって返してくれ。こう言っている。返さなければ法廷に持ち出すと、こう言っておりますから、明らかに将来法廷に持ち出される。有馬との関係で争われる。そういうものを富士銀行はしっかり押えて、そうしてこれでもってこうなんだ——この辺のことも、実は頭取が来てくれれば一発でわかることなんですが、そういうやり方をしている。こんな話をそのまま報告とのかね合わせで大蔵省が信じているというのは、これは非常におめでたいのじゃないかと思うのだね。銀行局といったら、近藤局長以下、われわれに対してはたいへん防備が固くて、もう少しも何にも漏れないのだけれども、どうして銀行に対してはこんなにおめでたいのですか。
  62. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 今回の不祥事件そのものにつきましては、たびたび申し上げておりますように、本来、その金をちゃんと預かるべき銀行が、預かった金についてあのように巨額の不祥事件を起こして世の中を騒がした、それ自体につきましては、まことに私ども責任を痛感しております。申しわけないと思っているわけでございますが、ただ、一たん起こりました事件につきまして、いかにして銀行が債権を確保してまいるか、その辺につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、やはり債権確保のための手段をできるだけ講じてまいる。もちろんそのために、いわゆるあこぎなことをやるということはよろしくないと思いますが、預金者保護ということが銀行行政の一つの眼目であると存じますが、預金者保護という線に沿いまして、できるだけ債権の確保をはかる。そうして最終的に償却額もできるだけ少なくして、決算委員会に御迷惑をかける範囲も少なくするというようなことが最終的には望ましいと存じますので、そういう意味での債権確保のための銀行の努力はできるだけやらせるべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 その辺のところはもう少し捜査が進んでいったら、この次の委員会でもう少し突っ込みますから……。まあ私の言っていることは大体間違いないですよ。近藤銀行局長たる人が、もっとすなおに私の計算を認めてもいいと思うのです。  法務省にちょっと尋ねますが、私はここに提示していただいた有馬哲こと金東善が例の特別在留資格をとるにあたって必要とされた昭和三十九年七月十三日付の異議申し立て書を持っています。賀屋興宣法務大臣に出したその申し立て書ですね。これは形式的な書類で、実際にこの許可を出すにあたっては、賀屋法務大臣が中心的に考慮されるわけでしょう。で、その人物——考慮するためには、出てきた人物について、いろいろ調べなければなりませんね。これはお調べになるんでしょう……。
  64. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  金東善の在留特別許可を与えるにつきましては、法務省入国管理局におきまして、一件記録に基づきまして局長以下幹部が集まりまして協議をいたしまして、その結果を大臣に答申いたしまして、書類で決裁をいただく、こういうふうにしておるのが慣例でございます。金東善の場合も、その例に従ってなされたものと考えられます。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 そこで問題は、この人は歴然として——この前の委員会で私が指摘したとおり前科もありますね。執行猶予中でもある、懲役八カ月で執行猶予三年の人でした。当時昭和三十九年というのは、治安問題について政府がたいへん神経をとがらしている状態がありましたね。ずっとたいへんあったときです。それで法務大臣は、このときに治安当局に意見を求められておりますね、この人物について。あなた方が協議をする中で、治安当局との関係における協議というものがないことはないでしょう。やられましたか——やられましたね。あなた方が基礎調査をやられるときに。
  66. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  記録によりますれば、本件では、事実調査をいたしました東京入国管理事務所のほうへは、警察等から刑事事件等に関するものの若干は来ておりますけれども、入国管理局のときに直接治安機関に照会をしたような記録は残っておりません。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃこういうふうに聞きましょう。通常どういうような協議をされますか。
  68. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  入国管理局には裁決諮問委員会と申します、これは内規でございます委員会がございまして……
  69. 和田静夫

    和田静夫君 組織機構はわかっておりますから……。  具体的にそこに持っていくまでの間に、あなた方はどういうふうに基礎資料をつくられましたか。
  70. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  委員会に出すためには、入国管理事務所から記録が進達されてまいります。その記録を審判課の私のところで検討いたしまして、その結果を要旨にまとめまして委員会報告をいたしまして、そこで協議の上、きまるのでございます。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、あなたのところで検討をされるときに、あなただけが検討するわけじゃありませんでしょう。
  72. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  私だけが検討するわけじゃございません。しかしながら、検討の中心は記録に基づくものでございますので、特に入国管理局の中で直接調べたりということはいたしておりません。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、こういう事件が起こってしまってから、ひるがえってそういう検討の方法で十分だとお思いになりますか。
  74. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  本件の在留特別許可を与えた事案につきましては、通常の手続で十分であろうというふうに、記録を後になって検討いたしましても、私はそのように考えるのでございます。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 懲役八カ月・執行猶予三年という形で、この人は韓国にお帰りになるのが当然であって、あなた方の検討が誤っていたがゆえに特別在留許可が与えられている。そして素質があった人でありますからこのような事件にからんでいく、そういうことになったんじゃないんですか。
  76. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  この前も申し上げたかと存じますが、本件につきましては、金東善が不法入国いたしましたのは  二十五年の六月でございます。そして、この事件発覚いたしましたのが、入管で調べましたのは三十九年でございましたので、当時の状況からいたしますと、平和条約の発効前に不法入国をして、もぐっておった人間であるということ、当時日本人と結婚しておったという事実、そういうことが考慮されて在留特別許可を受けたものというふうに思われるのでございます。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 それはわかっているんです。不法入国は時効だと、それは前にもお聞きしました。その後でしょう。言ってみれば、ほかの外国人のものでもって有馬を名乗るようになって、有馬何がしといってアメリカに行った。それらが引っかかって実刑でしょう、執行猶予がついておりますが。そして三十九年の事態を起こした。そして、私この間も言ったが、そのときの妻なんというものは、日本人の女性に次から次へ渡り歩いているわけです、すぐ。パーにしちゃって。そうでしょう。そうだから、あなた方は二年なりのものを一年の期間にして、だんだん金東善についてつぼめている。したがって、私が言いたいのは、最初に賀屋さんに異議申し立てが出て、そのときあなたが、あなたのところで書類審査だけでもって特別在留許可をすると言われるから言うのですよ。あなたのところでは、たとえばこの人に対するところの−入国管理事務所を通じてもいい、あるいは警察庁を通じてもいい、いろいろのことが検討されるという条件があったならば、当然韓国に帰っているでしょう。特別在留許可というものが与えられる条件というものは、私は、この人は満たしていなかった。満たしていないものを、あなた方が満たさせたから結果的には、こういう問題にかんでいくという形になったというふうにお思いになりませんか。
  78. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  この調査の件に関しましては、通常やっておりますのは、繰り返して申し上げますが、審判課におきましては書類審査でございますが、記録を見て、まだ足りないということがあれば、もちろん地方入国管理事務所を通じて調査をさせることもございます。また、そのほかに照会するということも当然ございます。ただ本件につきましては、記録上こういうことをやった形跡はございませんので、普通たくさんの事件でやられておると同じように書類審査審査した結果、この要旨をまとめて裁決委員会報告し、裁決委員会で在留特別許可を与えてしかるべしという結論が出て、大臣に答申されたものと、そのように考えるのでございます。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 機械的ないわゆる筋道を追っているのじゃないですよ。あなたは法律の専門家だから、そういう立場以上に出られないでしょうけれども決算委員会の場でいまひるがえって考えてみて、あなた方があのときに、それをもっと不適格性についてしっかり判断をされて、そして特別在留許可を与えてなかったら、金東善はいなかったと思う、国内には。そうすれば、この事件は起こらなかったかもしれませんよ。そうすると、すでに一定のいわゆる欠格条項をそういう意味では持っていた人、それが当時の妻——許可を受けたらすぐ離婚するような妻、その人の父、本人にとっては義父、それからの理由書と身元引き受け人があったという文書調査だけでもって、こういう特別許可になるのですか。そういうことでいいんですか。そのことを私は言っているのです。
  80. 植村英満

    説明員(植村英満君) 御説明申し上げます。  筋としては先生のおっしゃることもなるほどと思いますが、当時の裁決の状況といたしましては、本件と同程度のような事案であるならば、在留特別許可を与えておる実情でございますので、本件でも妻の、あるいは妻の父、そういったものの嘆願、こういったことを考慮して、在留特別許可を与えたものというふうに考えております。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 わからんね、わからんですよ。いまのことはさっぱりわかりません。私はこの前の委員会のときにも触れました。その辺のことを明らかにしたいけれども、あなた方はあなた方の立場以上には出ないことを一生懸命言われる。時間のことを横から言われますから、私はこういうふうにこの問題を締めくくっておきますが、次にもう一ぺん時間がありますから、この問題についてはもう少しやります。それでこういうふうに言っておきます。賀屋法務大臣に対して、いま技術的にはあなたが言われたような技術的な操作を通じて、この金東善の特別在留資格のアグレマンを与えるにあたって、私はこの問題について——誤解をしてもらっては困るけれども、政界の大ものが動いている。一説によると、それは外為法改正にからんでコカコーラとの関係が深いとうわさされる元大蔵大臣田中角榮さんではないかという風聞もありますが、ともあれそういう大ものが、いってみればプレッシュアをかけたという事実には、いまのあなたのお答えでは、他に相談しない、耳をかさないということでしょう。ないとここで答えておきますね。そのことだけ簡単に答えていただきます。
  82. 植村英満

    説明員(植村英満君) そういうことは聞いておりませんし、ないと私は思います。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁お尋ねをいたしますが、最近銀行局報告されていないもので、銀行不正事件が東京や千葉などで二、三件起こっているはずでありますが、警察庁はすでにこれは探知をされておりますか、いかがですか。
  84. 高松敬治

    説明員高松敬治君) ちょっと具体的にどこの事件でございましょうか。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 逆に具体的にという質問がありましたから、私のほうはいま調査を進めているものについて申し上げますので、答弁していただきます。  一つは新橋の協和銀行一つは船橋の三菱銀行
  86. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 現在、捜査に着手しておるというふうには聞いておりません。私どもは具体的にいまの二つの銀行について、事件があって現在捜査しているというふうな報告は受けておりません。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 これはあとで、その部分についてのお調べを願いまして、私、資料として、いまの結論だけでけっこうですが、伝えてもらえますか。
  88. 高松敬治

    説明員高松敬治君) はい、調べてあとで御連絡いたします。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 最後に、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、岩佐頭取はニューヨークで、今後このような事件が起きないよう組織面を改めたと、こら述べられています。どのように改められましたか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本事件に関連いたしまして、富士銀行でも非常に反省をいたしておるわけです。事務組織の改正等もやりたいというような話がございますが、詳細につきましては、私はまだ報告を受けておりません。しかし、鋭意そういうことで各般の施策を講じておる、さように承知しております。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 実は理事会で、改めたという談話ですから、それは富士銀行頭取に出てきてもらって、改めたというところを聞こうと思ったら、与党のほうからはそんなものは警察関係だからと言われて——そこのところはわかるけれども、これだからやはり委員会へ出てきてもらわなければ困ると思ったのです。何もわからないことを言うつもりは全然なかったけれども、結局、私は大蔵大臣が困られると思ったから善意で言ったのですが、案の定お答えになれぬわけです。  もう一つ——あとでいいです。こうなったら時間の関係がありますから。さらに運用面にも今後意を用いてもらいたい。これは組織を改めた、運用面は今後意を用いてと、この二つに分かれているのです。これについても、おそらく大蔵大臣報告を受けてないと、いまの答弁からするとそうなると思いますから、後ほど銀行局のほらから組織で改めたことはこういうふうに改めた、運用面で改めることはこういうふうにしているという資料をいただきたいと思いますが、これはいただけますか。
  92. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 提出いたします。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 全く最後になりましたが、外務省、私が冒頭に申し上げましたことにつきまして、答弁を。
  94. 熊谷直博

    説明員熊谷直博君) お答え申し上げます。  これは外務省の幹部と相談した結果、協議をいたしました結果でございます。韓国政府との間に本件をめぐりましてトラブルや摩擦が起こるということは、非常に好ましくございませんので、これを避ける意味におきまして、韓国側、韓国の出先機関とも連絡をよくいたしまして、適宜これを説明するというような配慮をいたしていくつもりでおります。  ただ、申し上げておきたい点は、この引き渡しという問題自体はあくまでも日本政府の交渉相手というものはフランスの政府であるということでありまして、韓国政府に正式にこの件につきまして協力を要請するというような性格のものではないと考えております。
  95. 和田静夫

    和田静夫君 私もそう言っているんですよ。したがって、フランス政府との関係でとんざを来たすような状態——日本の政府はフランス政府フランス政府韓国政府、そういう関係で、一方にクレーム関係、そうすると、フランスの政府と日本の政府との関係においては、これは方針や見通しを明らかにしてもらわなきゃ何とも言えませんが、その辺は韓国政府とのトラブルを起こさないような配慮をしながらフランス政府との折衝の過程等について、いま答弁できないことを後ほど私に説明する。そういうふうにいまの答弁をとってよろしいですか。これはすぐ事実関係は明らかになることですから。
  96. 熊谷直博

    説明員熊谷直博君) そのとおりでよろしゅうございます。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、これは間違いなくやってください。  これは全く最後ですが、旅券のことです。法務省関係で後ほどもう一ぺんやりますが、もうあと十五分もらったんですが、私のあと大橋さんが続きますからあれですが、これはまさにミスプリントがないかどうかということだけなんですが、銀行局長お尋ねをしますが、まず一つは、富士銀行の行員は他の営利企業との関係における兼業ができますかということが一つ。そして菅沼は兼業をしていましたか、この二つをちょっと簡単に。
  98. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 特別の場合に特別の承諾を得た以外にはできないたてまえになっております。そして、菅沼の場合にはやっておりません。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、族券でありますが、菅沼御存じのとおり、昭和四十五年の三月で退職していますね。四十四年の六月現在、日本フード・マシナリー株式会社取締役貿易部長、これが身元申告書です。間違いありませんね。
  100. 佐々木正賢

    説明員佐々木正賢君) 私のところに提出されました申請書の略歴によりますと、四十四年六月から日本フード・マシナリー株式会社取締役貿易部長ということになっております。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 なっていますね。それから北田和代、これは株式会社トムソンのデザイン部長北田和代、こうなっておりますね。
  102. 佐々木正賢

    説明員佐々木正賢君) 同じく旅券の申請書によりますと、四十三年八月から申請時現在まで株式会社トムソンにつとめておるということになっておりまして、所属先のところに株式会社トムソンデザイン部長ということになっております。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 そこで私はちょっとたいへん疑問に思うのは、まず一つは、警察庁お尋ねをいたしますが——この前、なぜ告訴しなかったかという私の質問に対して、銀行局長は当事者におまかせしてあります。そこで課長お尋ねしたら、その点については協議がなかったろうと、こう言われた。今度は、告訴しておれば菅沼をチェックできたろうと外務省に聞いたのですが、してなかったからチェックできなかった。海外逃亡を逆の意味から、告訴しなかった富士銀行は助けたことになるのではないかということを述べた。この告訴するしないという問題については、当時銀行警察庁との関係はトップの間で話し合いがなされましたか、なされませんでしたか。
  104. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 告訴の問題につきましては、警察庁銀行の間で若干の話し合いをしていたようでございます。しかし、この種の事件については告訴がなければ犯罪の捜査ができないという事件でもございませんし、とにかく事実を早く固めることが先決であるということで、いろいろ警察庁としても調べていたようでございます。九月十九日になりまして正式に告訴がございました。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 あとであったことはわかっております。  そこで旅券課のほうですが、時間がないので簡単に答えてもらえばいいのですが、こういうふうに思うのですね。たとえば北田和代さんのこの旅券——香港へ行かれました。明確に略歴の昭和四十三年八月からトムソンのデザイン部長などという形のもの、これは間違いであるということは——間違いであるかどうかは別として、当時すでに事件が起きておっても自由にこういう形のものが出るのですか。たとえば、私が一九六一年に議員でないときに海外に出ていくときにはたいへんあなた方にいじめられて、もう前日に飛行機がとれているのに旅券がなかなか出なかった経験を持っている、たいへんなことだったのです。ところが、こういう人たちは非常に当時も疑惑を受けておったけれども、あなた方のところはすうすう通っていく。一面では北田何がしさんという人に旅券を提供しておいて、香港にやって、おとりに使うというふうに協議なされたのじゃないかと思わざるを得ないところがあるのですが、こういうような、たとえば菅沼の場合だって、略歴をちょっと見てみれば富士銀行の重要な職務にある者が兼業できないぐらいのことは、あなたのところでわかるはずですね。こういうものは全然チェックしないで流していくのですか、この辺はどういうことになるのですか。
  106. 佐々木正賢

    説明員佐々木正賢君) 御承知のように、旅券の発給件数というものは非常に膨大になってきておりまして、現在毎日約三千件ぐらいの受け付け発給ということになっています。それで私のほうでは書類面だけの審査、これによって出しているのでございまして、理屈がつくものであれば、かつ必要な添付書類がそろっておれば、それで出すようにしております。あるいは昔であれば、相当やかましく言ったことがあるかもしれませんけれども、海外渡航の自由化といいますか、そういうものにマッチしまして、できるだけ申請者の便宜をはかって、全部できるだけ早く旅券を出すようにやっておりまして、まあ、こういう事件に特別に、たとえば警察当局から逮捕状その他が出ているからという連絡事項でもございますればとにかくといたしまして、そういうふうな配慮は、特に実質的な面における審査はやっておりません。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 そういうことだったら、私の思想条件をあれした形で旅券が出なかったということになると思いますけれども、単にこの形式だけでずっと押していくという形で今後ともいかれるわけですか。
  108. 佐々木正賢

    説明員佐々木正賢君) もちろん、今後ともそういう方針であります。ただ、旅券発給制限該当事由といいますか、それは十三条で特約な規定がございまして、これ以外は原則として発給拒否ができないということになっておりまして、添付書類その他がそろっておれば自動的に旅券はお出しずるというたてまえになっております。
  109. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  110. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 速記をつけて。
  111. 大橋和孝

    大橋和孝君 ただいま和田理事のほうから非常に詳しく質問がありました。私は、この質問の立て方がほんとうに国民の側から——私もしろうとであります。もちろん国民もこういう事柄に対してはしろうとでございます。が、しろうとであればあるほどこういう問題に対しては非常に疑惑というか、あまりにもショックが大きいと思うのです。私は、きょうの質問の根本は国民の側に立って、あまりそういうことに詳しい知識がなくて、しかも、お互い国民がなげなしのお金を、零細な金を貯金をして、そしてそれを将来の設計にもどうこうしようとする、非常に信頼を持ってこの銀行関係に預金をしておる。この銀行業務を、こういう観点からして、これを監督しておられる大蔵省、特に銀行局——これに対する非常な国民に対しての疑惑を解くような方向の質疑というものが行なわれないと、私は非常に将来とも国民に対しては相すまないことでもあろうし、非常に大きな問題を将来に残すのではないか、こういうように考えるわけであります。そういう観点で、私は非常にこの和田理事のいままでの質問の立て方とは変わった立て方で国民のサイドで、もうそういう知識のない者でも決算委員会の中で、こういう質疑が行なわれたということが即一般庶民の安心感とか、あるいはさもあろうと納得ができるようにしていきたいというのが、私の考え方なんです。そういう意味で、この質疑の中で、それをするためにはこまかしい質疑もありましょうけれども、こういう過程であって、ここのところを、こういうふうにしていくのだというはっきりとした、しろうとにわかるような答弁の行なわれ方がないと、先ほどから聞いておりましても、非常にそれはいままでのたてまえであり、いろいろな事務上の手続からしても、当然そうではありましょうけれども、聞いて納得がいかない。どうしてこの十九億という不正融資がそんな簡単にできているのか、その監督行政をやっている大蔵省はどうしていたのだということが、もう少し庶民の納得のできるようなサイドからひとつこの回答を与えてほしい。そして、この質疑の中で取りかわしをしてほしいというのが、私の念願であります。  そういう意味で、私は第一番目に警察当局に対しては、いままでいろいろやってこられたでありましょう、捜査の過程もありましょうし、また、秘密で伏せておかなければならない問題もありましょうけれども、こういう事件についての取りかわしで、かくかくこういうことでこうやりましたという方向、いままでの捜査過程をひとつ示していただきたい。あるいはまた、和田理事がいろいろ質問したことと重複することがあるかもしれませんが、時間がありませんから、そういう部分は、回答済みであるということを言っていただいたら私はいいと思いますが、そういうことで警察側でのいままでの状況を庶民のサイドで、こういうようにやってきているので、これは非常にいいんだというものがあれば、そういう過程をひとつ示していただきたい。同時に、大蔵省においても非常に責任が重いと思いますから、大蔵省独自で調査をして、かくかくであって、こういうような状態だから、こうでありますということを庶民の前に出して、ある程度なるほどとうなずけるような答弁をここでいただきたい。これは大臣からひとつお聞かせ願いたいと思います。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先般来、近藤銀行局長から詳細にお答え申し上げておりますが、大蔵省におきましても、事件概要につきましては、銀行当局から報告も徴し、またその報告に基づきまして、事件の全貌についての最終的な結論が出ない今日におきましても、尽くすべき点は尽くすということで、銀行の業務の運営のやり方、また銀行の業務運営の制度的側面等につきまして、銀行におきましては改善を加えつつある、こういうようなことであります。  なお、この事件を契機といたしまして、他の金融機関におきまして、こういう不祥事が起きないようにという措置を講じなければならないというように考えまして、金融機関全般に対しまして、この事件を契機といたしまして、その運営を戒めるという諸般の措置をとっている最中でございます。
  113. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 警察といたしましては、先ほど申し上げましたように、六月の末から少しうわさがございまして、それに基づいて捜査の内定をやっております。八月の二十日に富士銀行から正式に被害の申告がございまして、それで自後証拠書類の収集とか、関係者の取り調べをずっと行なってまいりまして、九月十一日に菅沼正男と金東善に対して背任の逮捕状を取りまして、容疑事実は四十五年三月三日から四十五年三月三十一日の間における七億七千六百八十二万円の背任、こういうことであります。次いで九月十一日に香港、そのほか三十カ国に対しまして被疑者の所在確認、送還に対する協力方をICPOを通じまして手配いたしました。また外務省に対しましても、同日協力をお願いいたしました。次いで、九月一三日に警視庁捜査二課員四名を香港に派遣いたしまして、香港領事館及び現地の香港警察協力のもとに現地における捜査活動を行なってまいりました。これは九月二十二日に帰国いたしました。それで十月一日に菅沼正男を香港警察本部において不法滞在の容疑で逮捕いたしました。十月五日に香港の中央裁判所において罰金刑を受けました。で、罰金刑を受けました菅沼警視庁から行きました捜査員が帯同して日本のほうに戻ってまいりました。途中で逮捕状を執行して、現在留置、取り調べ中でございます。  それから金東善につきましては、九月三十日になりまして、フランスICPOから金東善の所在について、ニースの山荘にいるらしいというような連絡がございました。次いで、十月一日にフランスのインターポールに対しまして、金であるかどうかの確認をやってもらうということをやり、同時に外交ルートを通じても、あるいはICPOのルートを通じても仮拘禁を要請いたしました。それで十月四日にパリにおいて、パリの第十六区の警察の手によって金が予防拘禁をされた。現在フランスのほうで、これについての審問を行なうように現在なっております。私どもといたしましては、そういうことで外務省と緊密な連絡をとりながら、世界の三十カ国余の国にそれぞれ手配をして、現地警察の非常な御協力によって両名を発見し、身柄を確保することができました。金につきましても、私どもは近いうちに日本に対して身柄の引き渡しが行なわれるだろうということを期待している状況でございます。
  114. 大橋和孝

    大橋和孝君 菅沼有馬がつかまった話をいまいろいろ警察庁から聞きましたが、その段階でこの富士銀行岩佐頭取が、先ほど和田理事からもお話がありましたが、ニューヨークで警察庁や各国の警察の努力を感謝する談話を発表したわけでありますが、その談話の中で、高い授業料であったというようなことを言っております。先ほどから申しているように、国民の側からこれを考えてみますと、一体どういうことなんだろうという非常な疑問を持つわけであります。捜査当局に対して、これだけ世間を騒がしておきながら、一片の謝意も示さないで、しかも、こういう談話を発表した。こういうような段階をわれわれ庶民の側から考えてみますと、一体この銀行界のいわゆるトップに位する富士銀行で、ことに金融機関という信頼が非常に持たれておらなければならないところで、この銀行界の体質というものは一体どんなものであろうかと、何か非常に深い信頼を欠く感じに打たれるわけであります。こういう点、私は小さな一つのことではなくて、信頼度を最も中心とするこういう金融機関、しかも、その頭取がこういう言を軽々しく発するということに対しては、非常に大きな憤りを感ずるわけであります。庶民としては、こういう態度では、一体金融機関というものはどうなるんだろうという感じを持つわけだろうと思いますが、こういう問題に対して、どのように責任を感じておられるのか。私は特に銀行局長は監督の責任にあるのだから、どういうふうにそれをとらえておられるのか。しかも、また政府機関としてはこれをどういうふうにとらえておられるのか。これは大臣がおられたら、私はそういうことは国民に対してなるほどと思われるような答弁をいただいておかないと、こういうことから大きな疑惑を起こす一つのもとになると思うので、お尋ねしておきたいと思うわけです。
  115. 近藤道生

    説明員近藤道生君) 富士銀行頭取が海外における記者会見でどういうニュアンスで答弁をされましたか、詳細なことはわかっておりませんが、銀行局といたしましては、先ほど申し上げましたように、これだけの大事件を起こしたということ、ことに最も高い公共性を要求されております銀行が、このような非常に大きな不祥事件を起こしたということにつきましては、銀行経営のあり方の基本にまず非常に大きな問題があるのではなかろうか。特に最近におきまして業務量拡大、量的競争ということが非常に大きく表面に出、そういうことが行き過ぎますと、たとえば店内におきましても相互の牽制制度が、預金獲得のほうに目を奪われて牽制制度自体が働かなくなってしまうといったような、いろいろな現象を生じまして、そのために、このような不祥事件を生じてきておるというようなことがございますので、この際まさにここ一、二年間、銀行行政といたしましても、量の競争から質の競争へ、あるいは公共性の重視というようなことで推進をいたしてまいっておるわけでございますが、公共性の自覚というものがますますこの際大切なことになるということを強く痛感をいたし、そのためにたとえば職員の教育訓練、人事配置、人事管理、かような面にわたりましても、できるだけ具体的な改善の方法を講じていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  116. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) ただいま銀行局長から答弁いたしましたように、富士銀行頭取の言われたことにつきましては、前後の事情がよくわかりませんので、何とも申し上げようがないのであります。ただ、政府当局といたしましては、今後信用を維持すべき銀行でありながらも、このような大規模な不祥事件を起こした。また、富士銀行のみならず各銀行におきましても、いろいろな不祥事件を頻発しているわけであります。そのようなことに対しましては、今後とも厳重に指導をやっていくつもりでおります。
  117. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの問題は、まあはっきりしていないから言いようがない。それはわかると思いますが、しかし、そういうことが報じられておることは知っておられると思う、新聞紙上あたりに報じられておることは。そういうことに対しては、やはり事実を早く究明して、そういう軽々しく行動をしないことをもう少し明確にさしておかないと、ことがうやむやに済んでいくことは、いかにも裏のほうに何かいろいろなことが動いているのではないかということになれば、そういうことの想像もできていくし、何かそういうことがそらぞらしく言えるということならば、何かそこにあるのではないかという疑惑をよけいつくることになろうかと思います。また、事実そういうことがあったから、そういうことが言えるのではないかと思うわけであります。そういう点からいえば、こういうことを言うことは、事実があるかないか、そういうことを早急に調査をしてもらって、そういうことであれば、そういうことはもっと明確に反論をして、間違ったことをただして、そうして国民の前にはっきりとさせるべきである。何かこういう場当たり的なことがあったということが報じられたからには、もうそういうことはなかったということを明確にしておかない限り、国民の疑惑というものは永久に残るわけです。私は、そういう観点から、この問題は軽々しい問題ではないということを指摘しているわけであります。こういう問題については、特に今後、言った、言わないという話ではありましょうけれども、これが大きな疑惑のもとになるという観点から、私はすぐこれを究明しておきたいと思います。これは私の希望として申し上げておきます。  それから私が、ここでもう一つお尋ねしたいのは、菅沼有馬の犯罪的な動機が、直接的にはどういうことであったかは別といたしまして、その原因の中に、先ほど銀行局長からお答えがありましたように、やはり預金獲得競争であるということが明らかであるということは、いえると思います。また銀行界の体質全体、そのものを変えない限り、こういうような事件はまだまだ起こるのではないか。特に最近のほかの各銀行におきましても、不祥事件が少額ではなくて高額になっている。すぐ何千万とかというふうな形にその額が大きくなりつつある。こういうことなんかを考えてみますと、やはりこういう事件の再犯防止のために全国の銀行協会は、さらに金融界全体の過当な預金獲得競争なんかを自粛して、また大蔵省も監査して、規制を強化する方針を出したということが報じられておりますけれども、これに対して、具体的にもう少しこういう席において、国民の前に早くこれを明らかにしてもらわないと、から念仏のような、通り文句のようなことを聞くだけでは、私が先ほどから言っている国民の感情というのは、非常におさまらない点があろうと思います。それで特に、私は一言尋ねておきたいことは、検査官はいま現在何人いらっしゃるか、私が調べた範囲では八十人そこそこしかいないということですが、この人数できびしい監査を一体ほんとうにできるのかどうか、こういうことなんかもひとつはっきりしておかないと、うたい文句だけになるおそれがあります。この点は、どんなものであるかということをお聞かせ願いたい。それからまた、大衆預金を集めて経営を進める銀行は、私企業であっても、社会的な影響は先ほど来申しておるように非常に甚大であります。不祥事件を続発させている今日でありますからして、社会的責任はきわめて大きいということは先ほど申したとおりでありますけれども、従来ややもすると、経営の事故責任内部のみで処理をして、非常に秘密を守っておる。不祥事件などが起きても、できる限りこれを秘密にしていこう、そして内部でこれを押えていこうということが、非常に大きく今度の問題を起こしておると私は思います。今回の富士銀行事件も、それと同じようなことが行なわれておったのではないか。あまりにも大きなお金であるにもかかわらず、秘密が守られておるというようなことが非常に大きな問題だと思いますが、国民の少額の預金を預かって、これに依存するところの銀行は、もっと国民に経営の実態そのものを知らしめるような義務もあるわけでありますから、いままでは冷たい銀行という感じ方を持っているわけでありますが、むしろそれを脱皮して、ほんとうに実態を知らせながらやる必要がある。こういう面で、私は銀行局のほうではどのように指導されるか。これから、こういう事件があったあとでどうされるかということも、もっと明確にしておいてもらわないといけないのではないか。ただ、単に通り文句だけでは、きれいな文句だけではだめなのでありまして、そういうことを私は聞かしていただきたい。  以上の三点について伺います。
  118. 近藤道生

    説明員近藤道生君) ただいま御指摘のとおり、今回の不祥事件にかんがみまして、銀行の監査、検査等の制度につきましても、できるだけ具体的に改善の方法を講じてまいらなければならないというふうに考えております。まず、本省の検査官はおっしゃるとおり八十人前後、財務官は二百人くらいでやっておるわけでございますが、この人数は諸外国あたりの検査官の人数に比べますと、かなり少ないということは申し上げられると存じます。そこで、これらを徐々に増員をしてまいる。ただ、御承知のように機構、定員につきまして、現下の情勢では、これを直ちに大幅に増員するということはなかなかむずかしい情勢もございますが、少なくともその質的向上、あるいは検査のやり方をくふういたしまして、大銀行に対しましては、従来三年ちょっとくらいの周期で回っておったわけであります。あるいは二年半から三年、それをだんだん大銀行の場合に短縮してまいるというようなくふうをいたしてやってまいりたいと思います。それから銀行側自体の監査、検査等につきましても、これは各行はそれぞれ従来からのしきたりとか、人的配置とかという問題もございますから、一律にこうしろ、ああしろということはかえって弊害もあり、効果もあがらない面もあろうかとは存じますが、たとえば、一般的に申せますことは、得意先係で預金の増強にばかり使っておるような人を、いきなり支店の幹部に持ってまいるというようなことがございますと、本来チェックすべき点を見落としてしまう。チェックができないといったようなことがひんぴんと出てまいりまして、いろいろと問題を起こす。したがって、そのようなことがございませんように、預金得意先係をまずたとえば検査官なら検査官に配属いたしまして、検査官として鍛え、そしてそれを支店の幹部として使うというようなことによりまして、チェックすべき点が非常に明らかになる。たとえば、そういったような人事管理、研修、そういったことを各行なりに従来のしきたりを踏まえながら改善をいたしていくということで、いま各行それぞれ独自に研究をいたさせております。そのようなことが間もなく具体的にでき上がってまいると思いますので、そういう方向を通じまして、できるだけ今後不祥事件を絶滅に近い形に持っていくということを努力いたしておるわけでございます。
  119. 大橋和孝

    大橋和孝君 局長にもう一問だけ。  先ほどから聞きまして、これも私の気持ちからして十分ではないと思いますが、しかし、局長の側としてはあるいはそういうことを言わなければならないと思います。けれども、いま申したように、これは傾向としては非常に大きなそうした不正が起こりつつあるときでありますから、私は、一律にやれとは申しませんけれども、もっともっと信頼にこたえられるような調査というものがあってしかるべきだと思います。そういうことに対しては今後これを機会にやるということだけはひとつ明確にしてもらいたい、こういうふうに思います。これをひとつ要望しておきます。  それから、もう一つの問題でありますが、今度の問題で、私は、先ほどからの観点から申しまして、預かるばかりではなくて、貸し出しの面、あるいは振りかえの面、あるいは決済の業務面でも銀行の近代化とか、大衆化が必要であると思うわけであります。今回のこの事件で、支店の一副長が十九億という巨額な金額を個人で、たとえそれが不正融資であったとはいえ、出せるということ、出したということ、このシステムについては幾ら説明を聞きましても、なかなか庶民の感情では理解できないわけです。これは不正であるとか、あるいは隠しておったとか、いろいろなことはあろうと思います。しかし、受け取るほうでは、こんな金が一人の副長でできるということは感情的に考えられないと思うわけであります。納得がいかない。これは銀行のガラス張りの行政というか、その企業の内容からいろいろ限度はあると思いますけれども、何らかの形で手をつけなければ依然として銀行は国民のものではない。あるいはまた、銀行法の改正なんかもしなければ、指導する、すると言っておりましても、思い切った指導にはならない、こういうようなことも考えられるわけでありまして、私はこの際に、銀行法の改正まで進めていかなければならぬのではないかというようなことを、自分では想像いたしておりますが、局長としては、これに対してどうお考えになりますか。ガラス張りの銀行行政の面から見て、あるいはまた国民に対する、ほんとうに国民と密着するような銀行であるというたてまえからいけば、いまのようなことが行なわれるということに非常に疑義があると同時に、もっと銀行法そのものも、この際にはメスを入れなければならぬのじゃないか。たとえば大衆化とかあるいは業務のいろんな近代化とかいう観点から申しましても、私はそれが必要じゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  120. 近藤道生

    説明員近藤道生君) その点につきましては、金融制度調査会が過去二年半の議論を通じまして、今後の銀行、金融機関はどうあるべきかということについて、いろいろと結論を出しております。その中には、公共性の重視というようなことも特にうたわれておるわけでございますが、今後この金融制度調査会の答申の線に沿いながら、場合によっては、いまお示しがありましたような法令の改正というようなところまでいくべきかいなか、その辺は今後の動きを見ながら考えてまいりたいと思いますが、とりあえずは、やはり何と申しましても、再々申し上げておりますように、預金獲得競争ということにあまりにもウエートが置かれ過ぎておる、この基本姿勢をどういうふうにして直してまいるか。そのための具体的なチェックポイント、そういうことにつきまして人事管理、教育訓練といったようなことを含めまして、具体的に検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  121. 大橋和孝

    大橋和孝君 警察庁にお伺いしたいのですが、このたびの事件は、香港警察フランス警察協力で犯人が逮捕されて、菅沼の引き渡しはされたけれども有馬のほうは、まだフランス警察取り調べが済んで、それから外交ルートを通して日本警察に引き渡される。こういうことになっているようでありますが、犯人の引き渡し条約というものは現在どのようになっているのか。特に、これはアメリカとは何かできておるようでありますが、ほかとはできていない。いままでは日本は島国であったために、そのようなことはあまり必要なかったと思うのでありますが、これに対して最近は、いままでそうしたことがないので非常におくれるんじゃないかというようなことが考えられているわけでありますが、こういう問題についてどう思うか。特に、有馬が一体、いまの警察庁では、日本に引き渡されるのはどのくらいのめどになるのか、そのような見通しを聞かしてもらいたいと思います。それから九月十二日に警察捜査官が香港に四人行かれた。これは十日間の捜査であまりきめ手もなくお帰りになったということをわれわれ聞いておるわけでありますが、この四人の捜査の費用が総額で二十万円であったと、こういっているわけです。十日間ですから一日二万円、ですからこんなのでは電話連絡とか、あるいは何かすれば出ていってしまうお金であって、あまりにも私ども常識的に考えると少額ではないかというふうに感じられるのでありますが、これは一体もっとお金なんかを必要に応じて出せないのかということも、私は庶民側の感情としてこれを持ったわけであります。これは何の基準によって算定されておるのか、あるいはまた十日で何か明るい見通しができるという考えのもとに十日でやられたのか、あるいはまた、いろいろそういうところに形だけの捜査で終わってしまっても、あまりそれに対しては、徹底的なものを考え出して手がかり云々のことは初めから考えなくて行なっておられたのか、費用と時間が何もできないとすればむだになるわけでありますから、非常に問題であろうと思うのであります。また話を聞きますと、この四人はあまり外国語にも十分通じておらなかったために、なかなか香港警察とも意思疎通がうまくいかなかったとかということを聞いたわけでありますが、派遣されるときには人選なんかに対しては、どんなふうな基準でやっておられるのか、あるいはまた、外国での捜査の実態とその権限はどこに置かれておるのか、ICPOの機構とか加盟国、その捜査権というのは一体どういうふうになっておるのか、こういう点につきましても、ひとつまとめて、時間がありませんので、御返答いただきたいと思います。
  122. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 逃亡犯罪人の引き渡しにつきましては、御承知のように条約を結んでいるところはアメリカとだけでございます。他の国々については条約がございません。ただ、国内法的には逃亡犯罪人引渡法という法律がございまして、その第三条に条約に基づかないで行なわれる場合についても規定がされておりまして、その場合には請求国から日本国が行なう同種の請求に応ずべき旨の保証がなされるときには引き渡してもいいというふうな規定になっております。いわゆる相互主義の保証でございますが、現在のように条約のありますのはアメリカだけでございますから、その他の国につきましては、日本から外国に要求するときもこの同じような相互主義の保証をやりまして、そうして外交ルートで請求をする、こういうことになるわけでございます。ヨーロッパでは全部の国ではございませんが、大部分の国について、ヨーロッパ内部の引き渡し条約というのがございます。それでわりあいにそういう手続が簡便にいけるようなシステムになっているように聞いております。そこで、今度の香港の場合には、これは向こうの不法滞在ということで、向こうから国の外へ出たところをこちらが連れてくるという形になりましたが、フランスの場合には、こちらもいわば正式の手続でみずから引き渡しの要求をいたしておるということで、向こうはそれに応じまして、仮拘禁という手続で現在審問その他を進めているわけでございますが、見通しにつきましては、明確にいつごろという回答に接しておりませんが、向こうの仮拘禁は遠い国の場合は三カ月間できることになっておりますが、そんなにも長くかかるまい、いずれ近いうちに、高等裁判所における審問手続が終われば引き渡しを受けるというような段階になってまいろうというふうに考えております。  それから香港へ参りました捜査員のことで御質問がございましたが、日本警察官が外国に参りましても、現地において犯罪捜査を行なうことはできません。犯罪捜査を行なうものはあくまでもそこの国の警察官でございます。日本警察官がそこに参りましても、まあいろいろな調査をしたり、いろいろ現地の警察に連絡をとり、捜査を依頼するという実際的な行為がおもでございまして、そこにおいて正式な犯罪捜査ができるわけではございません。これはもちろん外国から日本に来ても同じことでございます。そこで、国際的にICPO——国際刑事警察機構というものができておりまして、現在大体百カ国ちょっと、二、三年前で百カ国でございましたから、もう百カ国をこえておると思いますけれども、それぞれの国が加盟いたしまして、お互いに情報交換、あるいはいろんな調査、そういう措置について協力をしていく、こういうふうな団体ができ、国連のいわば外務機関のような形で現在もやっております。ただいまちょうどブラッセルで本年度の年次総会をやっておるところでございます。そういう機構を通じまして、お互いに国際的な捜査協力をやってまいろう、こういう体制で、今度もそれにいろいろお願いしたわけでございます。香港に参りました四人は、いずれも警視庁捜査二課の課員でございます。現実にこの捜査をやっていた者が行っております。したがって、語学という点になりますと、これはたいへん不十分でございまして、向こうに行った者も相当苦労したと思いますが、幸い現地の日本の香港にある領事館のお方、総領事以下たいへんこれに御支援をいただきまして、香港警察も非常に協力をしてくれまして、ついに、あそこに滞在している間には発見できませんでしたけれども、しばらくしてからこれを発見することができた。こういう状態になったと思います。それから費用が二十万というお話でございますが、これは予算上のたてまえはすべて地方費でいく、府県費でございます。したがって、国費ではなしに東京都の予算でもって行っておる。もちろん旅費は正式に支給したはずでございます。二十万というのは、旅費以外のいろんな捜査費というものであったように私は聞いております。で、まあ少ないといえば少ないような気もいたしますけれども、現在のたてまえでは部費で支弁するということに——地方費で支弁するということになっているものですから、大体一ぱい一ぱいに使って帰ってきたというふうに、私どもは聞いておる状況でございます。
  123. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間も迫っておるようで、私これからまだいろいろ、先ほど和田理事が質問されたそれに近いように、詳しくもう少しただしたい点がたくさんございまして、銀行局側にあるいはまた詳しくお聞きしたいと思いますが、局長も帰られましたし、詰めた議論はまだ他の機会もあるようですから、私それに譲りたいと思います。  それで、最後に私、ひとつまとめてお尋ねしておきたいことは、こうした先ほどからのいろんな、大まかな、国民の感情から照らしての、非常に納得できない点がたくさんあるわけでありますが、こういうものを知るために、私はいままでの警察庁の調査の点についても、あるいはまた大蔵省側からもこういう問題に対しては、特に積極的にこういう際の議論には参加をしてもらって、そうしてその実情を知らしめて、国民に納得させるということが最も必要だと思いますが、そういうことを詰めていくためには、まだむずかしい点もありましょうけれども、十分なものが出てこない。それならばいままでのいろんな議論の集約を考えてみても、じゃこれからやっぱりこうすればこういうことはなくなるのだなあとか、あるいは、そういうことであったとすれば、こういうところに間違いがあったのかということが受け取れないわけですから、ですから私は、司直の手によって明確になって、それでわかるだろうというのではなくて、その前の方法として、まあこうした決算委員会の場あたりでは、十分な質疑のやり取りの中で、国民に信頼を与えるということが最も必要だろうと思います。そういう点は、私はじみちに申し上げて、これからこまかしいことをして初めて、あるいはそういうことにもなっていくかと思って、いろいろ質問をしてきたのでありますけれども、私はそこで一つ最後に、そういうことはこの次の機会に譲りまして、ここでお尋ねしておきたいことは、こういう事柄は、なかなか簡単には国民感情は解けないと思うわけであります。だからして、そういうことに対して私は、今後大蔵省、ことに銀行局関係では非常に抜本的に、先ほど申したように、銀行の管理の状態あるいは法的にも、あるいは今後のたてまえについても明確にするというようなたてまえ——こういうことをすれば、これが防ぎ得ることになり得るのだ、そうするためにはどうしていくんだという、もっともっと何といいますか、具体的なこまかしいことではなくて、その大筋——こういうふうにしていけば、こういうことが処理していけるんだということを、この際、明確に答弁をしていただきたい。それができないとすれば、次の機会に何かそれができるようなたてまえを、十分に論議の上で、大蔵省内でそれをきめてもらいたい。それからまた、今度の問題でも警察庁に申し上げたいのは、こういう事件が起こった、すぐ外国へ飛んだ、こういうような状態のときに、国内の警察庁としてはどういうふうなことができ、今後処理ができると思うということを、ある程度明らかにしないと、今後ともまた、そういう事柄は起こり得ることになろうと思います。いろいろな意味で国民の不安をかう。そういう観点からいえば、私は、外国とのいろいろ取りきめももっと明確にして、そしてどういう段階で堂々としてすぐ犯人の引き渡しができる、逮捕ができるということが明確にならないと——少なくともアメリカとはそうした条約が結ばれているけれども、ほかの国にはないんだと。幸い日本が島国であるために、そういうことの非常に要求が少なかったから、そのままにうっちゃられておった。陸続きの西欧諸国ではそういう取りきめがなされておる。こういう段階では、やはりこういうふうに出すということを、ひとつこういう際には早く明確にしてもらいたい、こういうふうに私は思うわけであります。その点がなされない限り、ただ、いままでの方式どおりに調査をして、あるいはまた調べて、あるいは警察庁のほうでそれの処理ができていくと、こういうことは、私はいまの段階ではあり得ない、こういうふうに思うわけであります。ですから、そういう点、ここである程度今後の——じゃ大蔵省内ではこういうふうにいたします、警察庁内ではこういうふうにいたしますということをひとつ明確にしておいてもらって、大筋の方向を打ち立ててもらわないと、やはり国民感情としてはおさまらないのじゃないか。だからして、そういうことの大筋を早く具体化さして、そういう方向に持っていってもらいたい、こういうことを私は思うわけでありまして、そのことを聞いて、私は質問はたくさん用意いたしておりますけれども、もう局長もいないし、大臣もいないところでやっておりましてもつまりませんから、この次の機会に譲りまして、もっとこまかしい質問をびっしりさしていただきたいと、こう思います。
  124. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 大橋委員が言われましたように、現在まだ捜査段階でありますので、解明されない点がたくさんあります。具体的にいろいろ申し上げることができないわけでございますが、しかし捜査段階におきましても、大蔵省といたしまして、次のようなことはやりたいというふうに考えております。  まず第一に、従来までの銀行に対する検査、この周期の問題、この周期がはたして適当であったろうかどうか、あるいは検査の内容、しかたがはたして適切なものであったかどうか、この辺のことを大いに反省し改善をしていきたい。また、基本的には金融機関自体が内部の監査を十分にやることが、これが必要であろうかと思います。金融機関の内部監査機構を効果的に発揮させるようなわれわれの指導大蔵省指導ということを重点的に行ないたい、かように考えております。
  125. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 御指摘のように、従来日本といたしましては、外国からいろいろ調査を頼まれたり、被疑者の所在の確認を求められたことがむしろ多かったのでございますけれども日本のほうから外国に対していろいろ頼む、あるいは捜査員を派遣するというようなことがございませんでした。それで今後、国際的な交通が、飛行機にしろ船にしろ、こういうふうにひんぱんになってまいりますと、やはりそういう点についての配慮はまさにもっともっと必要であろうということを私どもはたいへん痛感いたしております。  それでやり方といたしましては、ヨーロッパのように多国間に条約をつくるということが一つの方法でございます。しかし、これは実際問題としてなかなか各国の法制も違いますし、それから主権的な、国家主権というようなものについての考え方もいろいろで必ずしも同一でございませんで、むずかしい面もあろうかと思います。それでまあ今度やりましたように、一つのお互いに相互主義の保証を取りつけることによって実際これをやっていくというふうな方向、そういうふうな一つの国際慣習を事実上もっともっとやっていく、そのためには日本も、外国から依頼を受けたときには、日本ももっともっと一生懸命にやっていくというふうなことがぜひとも必要であろうかと思います。それからさらには、それに伴う国内法的な手続もやや繁雑な点がございます。こういうものはもっと簡略な手続を考えていきまして、お互いに相手方の要望にすぐ沿い得る、そういうふうな方向に私どももぜひ今後持っていきたいと思いますし、またICPOにおいても多年それがいろいろ問題になっておるところであります。そういう方向で今後さらに法制的にも、あるいは予算的に申しましても、先ほど外国へ派遣した捜査員の費用が地方費だということを申しましたけれども、これも私はできれば国費のほうがよろしいというふうに思います。そういうふうな点も含めましていろいろ今後検討しまして、日本の国内から海外に逃亡していっても、外国におきましても、日本と同じようにつかまるというふうな形にぜひ国際協力を推進してまいりたい。そして、それに伴う必要な措置を早急に検討してまいりたい、かように考えております。
  126. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 午後二時再開することとして、休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  127. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十三年度決算外二件を議題とし、大蔵省決算について質疑を続行いたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣もいらっしゃいませんし、また銀行局長もいらっしゃらないということです。まあだれが答えても事実関係というものは変わりなかろうと、私は、こう確信しまして、大乗的な立場から富士銀行の問題について質問したいと思います。  すでにもうマスコミ関係で種々報道されておりますし、また午前中も質疑がありました、そういう面は私はなるたけ省きまして、私が調べたなりの観点——いままで報道されてなかろう、こういうことだけにしぼって触れてみたいと思います。  まず、大蔵省の審議官の方にお伺いしますが、本年の六月二十九日——昭和四十五年六月二十九日、富士銀行からトムソンに対して一億円の融資がされておる、こういう事実は御存じでございましょうか。
  129. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 御指摘のような事実はありました。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 一つずつ簡明に質問しますから、簡明にお答え願いたいと思います。  そのときの貸し付けの決定者。富士銀行のだれが貸し付けの決定者であったか、そこまでおわかりならばお教えいただきたいと思います。
  131. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 申しわけございません。正確にはお答えできかねますが、正式の稟議があったことは間違いございません。したがいまして、富士銀行雷門支店においての貸し付けであろうと思われます。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 普通、一億の融資をする場合——これは常識的なお答えでけっこうです、もし御存じなければ。私は、大体このストーリーを知っているわけですけれども、大体どのレベルでこういう貸し付け決定というものはなされるのが常識であろうか——こういうことはどうでしょうか、御専門の立場から。大体この貸し付け決定というものは、支店長段階なり本店の重役なり、常識的にはどのレベルでの決定がなされるものでしょうか。
  133. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 支店の権限としましての五千万円の限度をこえておりますから、本店に対しまして稟議があったものと思われます。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはいままで菅沼あるいは有馬、こういう者を中心にしての貸し付けは——菅沼の手記ではだれか上司に関係者がいたのじゃないか。いや、それはいなかったと、こういう供述もございました。要するに、この問題については、本店関係ないしはまあ幹部の策動と言うては失礼かもしれませんが、そういうものはなかったと、こう言われていたわけですが、私はこの点に触れていきたいと思うわけです。ここでは明らかに本店のだれかがこの貸し付け決定者としていたであろうことは、これはもう常識的で、事実だと思います。そうすると、この貸し付けの理由ですね、それは何であったか。
  135. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 六月の二十五日に振り出し人トムソン小切手一億円が交換を通りまして支払いを求められてきたわけでございます。そのときにトムソンのほうからの小切手の金額の由来につきまして疑義がありますということで、詐取されたという理由でもって不渡りの返却をしてまいったわけでございます。当時富士銀行におきましては、すでに問題になっております事件発覚いたしておりまして、株式会社トムソンはまだそのときには営業中でございまして、その間におきまして、けさほど来御議論もございました債権の保全のためのいろいろ折衝をしておりました。それでいまその会社再建のために尽力をいたしておりますという関係から、直ちにこの小切手の不渡りという事態を避けて、取引停止処分を避けたほうがいいという判断をいたしました。そういうような場合には、小切手法上不渡りの異議申し立てをしますための供託金というものを手形交換所に出すわけでございます。そうしますと、直ちには不渡り処分というものは行なわれないということになっております。そのための供託金の資金としまして、この一億円を融資したようでございます。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに供託金として——ただしこれは供託法に基づいた供託金ではなくして、要するに預かり金としてですね不渡り防止のための。
  137. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) そのようでございます。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、もうすでに事実関係は明らかになっていました。四月二日にはすでに有馬は逃亡している。四月から五月にかけまして富士銀行本店の幹部の方、これは副頭取も含めてですけれどもトムソン関係者と折衝している。さらに六月十七日には香港で有馬と管理課長が会っている。さらに七月二十五日に倒産になっていますね。そうすると六月二十九日の前の時点にはもう不正も発覚した。それを何とかして解決するための善後策に相当な努力を尽くして手も打たれて、しかも一カ月後には倒産している。こういうことなんです。そうすると、これは専門的な知識のある方がごらんになられて、はたして、こういうトムソンに対して供託金を貸し付けるということがどうなるでしょうか、私たちしろうとはこれはおかしいんじゃないかなと、こういうふうに思いますけれども、専門的な御知識を持たれた方がそういう面から見て、この貸し付けというのは、これはあたりまえなんだ、倒産を防ぐためには。こうお考えになるのかどうか、いかがでしょうか。
  139. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 株式会社トムソンは、その後七月二十五日に取引停止処分を受けまして実質上倒産をいたしております。したがいまして、いまからさかのぼりまして、六月の二十九日前後になお不渡りを出さないように再建をはかるということは、結果から見ますれば、確かに見込み違いであったということは言えると思いますけれども、その当時におきましては、銀行として株式会社トムソンというものの再建によって保全をはかっておったということのようでございます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、結果論はそうだろうと思います、これはもう既成の事実ですから。結果論じゃなくて、それじゃ四月以降トムソンの月間の出入金はどうなっていますか。
  141. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) お尋ねの点は、おそらく株式会社トムソン富士銀行雷門支店におきます当座の出入りだろうと思います。その当座の一口座から払い出されました金額は本年一月一億三一千百五十二万円、二月一億八千百二十七万円。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 四月以降……。
  143. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 四月六千六百八十三万円、五月百三十七万円、六月千百三万円、七月二十万円、以上でございます。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 私たち、そういう出入金額を見まして、明らかにこれはもう倒産、歯車が回ってないんじゃないですか。トムソンの営業が行なわれている、その倒産を防ぐために、こういうことよりも、もうすでにその帳簿じりを見るともう営業していない状態と同じじゃないですか、そんなじゃないですか。専門的な知識からみて、はたしてそれは倒産を防げる段階であるというデータがそこに出ている。こう御判断になるのか。先ほどから社会党の先生方がしろうとしろうととおっしゃっているが、私もそういう部類に属しますけれども、少なくとも、そういう出入金から見ると、もうこれは倒産、歯車が回ってない。そういうものに対して倒産防止というのは、ちょっとおかしいんじゃないか、いかがですか。
  145. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 株式会社トムソンのその当時におきます将来性につきましては、いろいろな見方があったと思います。おそらく銀行当事者としましては、株式会社トムソンの将来性をそのとき買ったのでありまして、われわれがその立場に立ったときに、どういうふうに判断するかというのは、実はここで申し上げられるわけでございません。しかし、銀行当事者としましても、どうもその後のトムソンから出てまいります手形、小切手等に簿外のものがいろいろ出てきた。それからそのほか、いろいろ簿外の債務の把握も非常にむずかしいというようなことが出てまいりましたし、経営者につきましても、疑問の点が出てきたということで、これはどうも株式会社トムソンというものの再建というのは非常にむずかしいのじゃないかということを判断いたしまして、新会社を設立しまして、この日本コカコーラからの原液を受けて、むしろそちらのほうで債権保全をはかるという構想に切りかえたようでございます。したがいまして、おっしゃるように、なぜそういうふうに早く見きわめをつけなかったかという点につきましては、確かにおっしゃるとおりであると思います。その当時におきましては、なかなかトムソンの将来性というものについては、判断がうまくできなかったということは、率直に申し上げて、言わざるを得ないと思います。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 私はそんなことを——早く見きわめをつけなかったかとおっしゃった……それは自分でおっしゃって、自分で答えていらっしゃるわけです。私、そんなことおっしゃらないわけですよ。要するに、結果的に見てうまくなかったとおっしゃるのです。私は、そうじゃなくて、結果的に見ないまでも、いままで三月前までのことはいろいろ論じられているのです、七億七千万円不正融資したとかなんとか。それじゃ四月以降どうだったかということをお尋ねしたわけです。そうなりますと、いまの時点から見て、結果的にはトムソンというものが、要するに、そういう再建——立て直すという、そういう会社じゃなかった、能力がなかったと、こう見ざるを得ない。ところが四月、五月、六月、七月という段階でも、明らかに二十万円や百万円しかないのです。それがはたして営業をやっているという状態であるのかどうか、歯車が回っていてこそ何とか倒産防止と、一億の融資と、こうなるのじゃないですか、よろしいですか。ですから、いまからたどって、六月二十九日の時点からもう一歩さかのぼって、そうして富士銀行内部のことを、いまから皆さん方がどう思うかということじゃないです。専門家の知識を——そういう経理状態のトムソンに対して、歯車は回っていませんよ、これは明らかに、だれが見たっていまの帳簿じりでは……それに対して富士銀行本店が一億の、これはまあ供託金云々——これから出しますよ、だれが持って行ったのか。そういうことも問題があるのですけれども、とりあえず一億の融資をしたということは、これは何らか本店側のある人は背任行為だ、こういうふうにおっしゃる人もある。私は、そこまで断定できるかどうか、若干疑問があると思いますけれども、当然そう見ざるを得ない。十九億四百万という不正事実を隠すために、要するに、不渡りを何とか出すまい、こういうことの一つの操作である、こういう観点も見られます。ですから結果論としてじゃなくて、あくまでもそういう営業状態のトムソンに対して六月二十九日に本店の指示をもって、決定権をもって一億出したということは、これは非常に皆さん方の目から見ておかしいとお思いになりませんか。こう言うのですけれどもね。
  147. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 株式会社トムソンのやっております仕事の内容について、そのとき将来性をどう判断するかということは非常にむずかしい問題だと思います。そのときの資産状態のみならず、その後におきますところの事業が一体どういうふうに動いていくかということを総合的に判断しなければならない問題だと思いますので、いまから私どもに判断を求められても十分の答えはできませんけれども、やはりそれはその衝にあった当事者が将来性ありと思って判断をした。その辺を率直に受け入れざるを得ないというふうにお答えするよりほかしようがないと思います。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、これは常識的に見まして、不正が発覚し、社長が逃げちゃって、しかも関係者が盛んに善後策を講じ、しかも香港まで飛んで有馬さんに会った、こういう状況があるわけですよ。それの営業状態は、月間の収支を見ましても、いまおっしゃったとおり百万だ二十万だ。四月まではどうにかもちましたね。それ以後は全然営業停止状態ですよ。いいですか。それに対してどういう将来性の見通しがあったかどうか。こういうことは、確かにおっしゃるように、これはその人の主観の問題でしょうね。それはしようがないと思います。ただ、専門家の知識から見て、よろしいですか、そういう経営状態のところに一億というものを、こういうべらぼうな善後策というもの、事件発覚や何かあって、それに融資するということは、それじゃこれは正当と見ますか、あたりまえだと見ますか、こんなことはざらにあると見ますか。
  149. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 一億円の融資というのは、先ほど来申しましたように、小切手を不渡りにするかしないかという一応ペンディングするための供託金でございますから、その紛議が終われば一応ケリのつく問題でございます。この当該事件におきましては、その後不渡りというものが随所に出まして、この一億円というのは、そういうふうにペンディングしておった問題が結局悪いほうに——というのは不渡りに終わったわけでございます。これは回収されておりますから、その一億円というのは普通の融資ではございませんで、いわば暫定的に事態を凍結しておくというための融資でございます。その間の事情を一応しばらく遷延したというための融資でございます。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、このあと質問しようと思っていたのですが、供託の問題は。そういう関係というものじゃないですよ。だから私は、通常の供託法によったものじゃない、こういうことを念を押しましたね。まあ、あとのほうを言っちゃいますけれども、この供託金は、要するにトムソンに対しての債権者であれば、これは差し押えできる性質のものでしょう。先のほうに質問が行っちゃいますが、差し押えの対象になるものじゃないでしょうか、この一億は。
  151. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) その点の法律関係につきましては、現在私どもつまびらかにいたしておりません。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 ほんとうですか。
  153. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ほんとうでございます。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 正式の供託法に基づいたものは、これはちゃんとした手続がある。ところがこれは預かり金ですよ、手形交換所の。それを債権者がいたら差し押えできませんか。そこは法的にはっきりしていませんか。ほんとうですか。変なこと言っちゃだめですよ。私みたいなしろうとだってそんなこと——ほんとうですか。差し押えできるかできないか。債権者がいたらこれは差し押えできる性質のものじゃないですか。正式な供託法に基づいていないんじゃないでしょうか。だからこそ、私は預かり金でしょうと言ったじゃないですか。とんでもない話ですよ。しろうとだってわかりますよ。それなら法的にはっきりしていますよ。
  155. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私がつまびらかにいたしておりませんというのは、私の不明を申し上げたわけでございます。現在私どもが知っております事態では、手形交換所にこの一億円というものを不渡り申し立て供託金として供託されたということでございまして、そこのところの、これに対する他の債権者がどういうふうな法的な権限を持ち得るかという点につきましては、私ども現在、申しわけございませんけれども、ここで正確なお答えができないのでございます。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 法的権限云々、それも若干条件としてつけるでしょうね。他の債権者がいれば、これは差し押えできる条件であるかどうか、そういう供託金であるかどうかということについてイエスかノーかは——ノーですか。そうすると、債権者の法的条件というものをはっきりしないと、これは差し押えできないわけですか、はっきりしてください。
  157. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) その点は再々私の不明を申し上げておるとおり、後刻法律的に解明をいたしまして御返事をさせていただきたいと思います。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 行天課長補佐さん、いらっしゃいますか。課長補佐のほうがよっぽどわかる、聞いてください。
  159. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) いま来ておりません。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 再三接触したのですよ、そのことは。これは間違いなく正式な供託法に基づいておりませんから、早い者勝ちで差し押えできます。結果的にはそうなっていませんよ。ちょっとだれか聞いてください、行天課長補佐に。だから私は言った、あなたの言うことは正式な大蔵省見解でしょうね、間違いありませんねと。だめですよ、ここに来てそんな変なことを言ったのじゃ。そんなことを間違えたら審議官、とんでもないことになりますよ。これは差し押えられる範疇に入る供託金ですよ。だから何回も言うように、正式の供託法に基づいていない預かり金でしょう。何回も繰り返したじゃありませんか。債権者があれば早い者勝ちでこれは差し押えられる可能性がある金ですよ。そうなれば要するに、結果的には実害はなかった、だけれども実際は、これこそ結果論からいって実害はなかっただけであって、本来ならば富士の金じゃないのですよ、トムソンのですよ。だからこそ、この預かり書も、要するに提供金の預かり書であります。これはどこになっておりますか。これは提供者の預かり金の領収——トムソンじゃないですか。
  161. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 不渡り申し立て供託金を供託しましたのは株式会社トムソンでございますから、株式会社トムソンの金というのは、これは間違いございません。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃありませんか。富士の金じゃないのですよ。交換所に預けたのはトムソンだから、トムソンのものじゃないですか。実害はなかったかわからない。これは富士のほうで差し押えている。だけれども現実には、要するにそれは銀行に預けたのだから、自分のほうが先に手をつけたわけです。だけれども、この金というのは富士のものじゃなくて、完全にトムソンに融資したものですよ、完全に。そうでしょう。ですから融資したものであって、これはもし債権者が先に手をつければ、これは富士のものではなくなってしまいますよ、トムソンの金として供託したのですから。そういう性格のものであるということは、これはもうはっきりしていると、何回か私は課長補佐の行天さんに接触したのですよ。これは間違いないでしょう。
  163. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私も冒頭から申しましたように、富士銀行が一億円融資したわけでございますから、その金が富士銀行の金だとは申しておりません。融資を受けました株式会社トムソンの金であることは、初めから間違いないわけでございます。それを株式会社トムソンが供託しました場合に、供託の目的でありますところの、この小切手の所持人としまして、その小切手をもとにしましてそのお金をほしいといってきた人、その人の権利の中に入るのか、あるいは一般的にだれでも債権者がそれに手をつけられるのか、そこに疑義があるということを申し上げたわけでございます。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 では、だれでもということじゃなくて、法的資格を持った債権者がいたら——いまおっしゃる何らかの資格、条件の整った債権者がいたら、これは差し押えできる金でしょう、一歩譲って。
  165. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) それは供託でございますから、供託の目的に応じてその供託権限者と申しますか、そういう人の権利の中に入ると思いますけれども、そこの権限を行使しないで、ペンディングのままに置いておくのが供託制度でございますから、そこで直ちに権限の発動があるとは、私は思わないのでございます。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 これを何回もやり返していても話が前に進みません。要するに、一歩譲って、その法的な権限を行使できる債権者がいたら、これは差し押えできる性格のものであるんですよ。それを言うと、また変なことを言うから、その一点だけどうですか、はっきりしてくださいよ。
  167. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 供託目的のために供託されたものでございますから、その目的のために行使されると思います。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 けっこうです。要するに、条件の整ったものがいれば当然、これは供託ですから、供託目的のために差し押えすることも可能である、こういうことですね。ですから要するに、これはあくまでも、先ほど言いましたように、目的は供託だから戻ってきた金ですとおっしゃったけれども、そこが問題だと言うんです、私は。決してこれは富士銀行の手から一応はトムソンに融資したものがまた富士に返ったから問題はないということを御主張になろうとすると、何か一連のことは、富士の行為というものを、失礼な話ですけれども、守っている、銀行当局側がカバーすることを目的に、何か弁明するための姿勢があるんじゃないかという疑いが出てくる。そうじゃなくして、明らかにこれはトムソンのものである。預かり書だってトムソンのもの、その伝票を持っているわけです。当然資格の備わったものがいれば差し押さえできる。だから実害はなかったというものの、これは一億融資、なぜ本店がかかわり合って一億を融資したかということなんですよ。そうすると、十九億四百万という不正事件は、これは何としてでもやっぱり明るみに出したくないということだったのか、あるいはトムソン側がさらに自分の預金がないことを知って、それで一億の、要するにから手形を持ってきて、一億くれと、こう言ったのか、そこらあたりが問題になるかと思うんです。  それからもう一つ、ただいまも言いましたように、これは銀行側が完全にこの事実を知っていて、そして貸したということは背任行為にもつながるんじゃないかという疑惑がある。そこはいいです、またさらに進みますから。  いま一億を供託したということですね、これはいつしたか。それからその関係書類——関係書類というのは、東京手形交換所あての不渡り手形取りやめ請求書、供託金の預かり書、それに添付した理由書、このようなものはどうなっているか、ひとつお教えいただきたいんですけれども
  169. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私どものほうでは、そういう事実を富士銀行から聴取しましただけで、それの書類等については見ておりません。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、これは資料要求をしますので、お出し願えますか。
  171. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 供託の書類ですか。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 手形交換所あての不渡り取りやめの請求書、それから預かり書、それから理由書、みんな添付して。それが問題ですよ。これを資料要求しますから、お見せ願えますか。
  173. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) そういう書類をできるだけ取りまして、提出いたします。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、まさか私は出すとはおっしゃらないのじゃないかと思ったんですが、これが出てくればこの事実関係ははっきりするんです。ということは、一応いままで明らかになっているのは、先ほど和田先生から御指摘のあった三枚不明になった、そのうちの一枚であるのか、これはどうでしょうかね。そこまではわかりませんですか。
  175. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私ちょっと途中から参りましたので、三枚とおっしゃいますのがよくわかりませんが。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 三枚なくなっているんですよ、どさくさまぎれに、あの事件のときに。
  177. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 三枚のうちの一枚であるかということでございますが、私が努力をしますと申しましたのは、六月二十九日関係の供託金の手続関係の書類です。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうも話が食い違いますね。どさくさまぎれに三枚の手形がなくなっているんですよ。それに日付があったかとか、一億と書き込んだとか、こういうことは、いまの話じゃなくて既成の事実なんです。そのことは御存じでしょうね。さらに話を進めますが、それがわからなきゃ質疑応答になりはしませんよ。
  179. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私は三枚というのは知りません。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから銀行局長に出てくれと言ったんじゃないですか。話が進みはしませんよ。困ります、それじゃ政務次官。ですから私は何回も何回も——だれだってちょっとしたことで頭の痛くなることがありますよ。そんな簡単な事実を知らなくて、それで私が苦労し、関係者が苦労した、この質問に対して答えようとする——りっぱな態度です。このことは既成の事実です。それじゃ話は進まない、うまくないですよ、政務次官、これじゃ。だから銀行局長を頼みますと言ったのですが、審議官から、何でも答えられますと。これでは答えられないじゃないですか。わからないじゃないですか、事実関係が。
  181. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 銀行局長出席すべく、けさから容体が悪いのを押してここにおったわけです。きのうも一日休み、きょうに備えておったわけであります。午前中いろいろ質疑の途中にあぶら汗を流して、たいへん容体が悪くなって欠席せざるを得ないことになったのでございます。  そこで、ただいまの三枚ということですが、小切手が不明になったということは聞いております。いずれにしろ、その三枚のうちの一枚であるかどうかということはわからないと思います。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 政務次官の御答弁ですみません、お疲れのところ。そうすると、その日付があったかどらかはどうでしょう。
  183. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) いまの供託関係の不渡り異議申し立て書であるとか、一連の書類に関しましてはまだ見ておりません。いま審議官が答えましたように極力それらを手にいたしまして資料として提出いたすつもりであります。
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどは日付がなかったのじゃないか、こういう話がありましたね、午前中和田先生のほうから。これにもし日付がないのに一億の金が出たなんといったらたいへんなことじゃないですか。
  185. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 日付があったかなかったかということにつきましては、なお今後資料を集めて、その結果において御返答申し上げたい。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、そういう資料を集めて、検討していただいてお出しになる、こういうことですから、私は、知らないものを教えろといっても無理だと思いますが、ここがやはり大きな一つのポイントじゃないでしょうか。三枚紛失した、その紛失したものの一枚であるのか、あるいは日付があったのかなかったのか、六月二十九日という日付があったという話と、なかったという話がある。あったならあったなりに、その請求書に六月二十九日と書いてあったのか、手形交換所にいったものに——それを見なければわかりません。これは提出していただけるというからはっきりします。もし、これに日付がなかったら大問題。こういうことにもなるかと思いますが、政務次官、その点の関係書類を至急に御提出願って、日付の問題、紛失したその一部であるのかないのか。なぜ私がこういうことを言いますかというと、先ほど言いました。はたしてこれは十九億四百万という不正事件富士銀行——富士銀行には申しわけないけれども、不正の発覚を防ぐために、そうして一億をトムソンのほうに融資して、何とかここで策動しよう。ところが、まあまあ発覚しちゃった。こういう性質のものか、それともトムソンのほうはみずからの預金がないことを知っていて、さらに一億というものをよこせ、そういう種類の小切手であるのか、それが私たちの調べによりますと——調べというよりも聞きましょう。この小切手を持ってきた人はだれですか。一億融資のときに小切手を持ってきた人は何というお名前の人ですか。
  187. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 先ほど来問題になっております供託金関係につきましては、私どもは先ほど来申し上げたことしか聴取いたしておりませんので、後刻その点については調べます。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。それはおたくが知らないのであって、知っていますよ。行天課長補佐さん、いらっしゃいませんか。ちゃんとその人からはっきり聞いていますよ。それじゃだめだ、わかっているのですよ、政務次官。だから聞いていることをどんどんこうやってやったのです。知っているのです、私ども。早く呼んでもらいたいですね。どなたがその小切手を持ってきたか。行天課長補佐さん、いらっしゃいませんか。とんでもない答弁ですよ、それは。知っているのですよ、だれが小切手を持ってきたか。それはどういう関係の人か知っているのですよ。大蔵省の審議官のほうに話がないなんて、とんでもないですね、審議官がそれを知らないというのは。銀行局長は知っているのかもわからないですよ。
  189. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 小切手を持ってきたとおっしゃいますのは、裏書き人のことでございますか。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうです、すみません。持ってきたということばは……。
  191. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 裏書き人でございますれば、共同金属株式会社社長中野某という方です。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、私そそっかしいものですから。中野さんと有馬さんとの関係は、どういう関係でしょうか。
  193. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 有馬という人と中野という人の関係は、私ども承知しておりません。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは有馬さんの妹さんの御主人、要するにトムソン関係者ですよ。トムソン関係者は、みずからのトムソン内部のことについては当然これはツーツーですね。預金も何もない、それをさらに富士に対して一億よこせと、こういうことです。常識的にこういうことが考えられるかどうか。これこそ、はっきりとお答えをいただけると思いますけれども、どうでしょうか。専門家——また専門家ということばをつけます、専門家として常識的にそういうことが考えられるか。
  195. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 預金がないのに小切手の呈示がございましたから、当然不渡りになるはずだったものでございます。それを、先ほど来申し上げましたように、一時異議申し立てという形で供託したのが……。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは違うんですよ、供託金というのは。要するに、トムソン関係者が自分で知っているわけですよ、預金なんかない、不渡りになるというのを知っているわけでしょう。それにもかかわらず一億円の不渡りになるべき小切手を持ってきたわけです。それに富士のほうから一億出しているのです。そうすると、先ほど何かわかったような、わからないような御答弁が返ってきたことは、ますますおかしくなるじゃないですか、ここで。トムソン関係者の方——妹のお婿さんが、預金なんかありはしない、不渡りになるであろう、こういうものを持ってきた。富士銀行のほうだってトムソンのことはよく知っているわけです。いまおっしゃるのは、いや将来性を見てどう判断するかわからないと、こうおっしゃいました。だけれども、不渡りになるということがわかっているのを持ってこられて、それに富士銀行本店決裁で一億出されたというのは、持ってくるほうも持ってくるほうですけれども、出すほうも出すほうじゃないですか。
  197. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) その出し方でございますけれども、出して、それが直ちに小切手を持ってきた人間に渡りませんで、供託金となっておったということは、しばらく事態を静観するという意味で出たのだと思います。
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからその供託金は、どの債権者も差し押えできる性格の供託金であって——供託、供託とおっしゃるけれども、それは現にトムソンのものと変わりないですよ。だから、債権者で法的資格があるものが出てくれば差し押えられるのですよ。要するにトムソンのものじゃないですか、供託といっても。そうでしょう。トムソンに富士から融資したものを供託して、それをトムソンが倒産したときに、法的条件を備えた人がその供託金を差し押えるとなれば、これは早い者勝ちじゃないですか。供託、供託ということですりかえようとしているのですけれども、これは正式の供託法に基づいたものの場合はそうですが、これは預かり金ですから、そうはならないのですよ。
  199. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 供託の目的ということで出ている金でございまして、他の第三者がすべてその供託中に、それを差し押えられるかどうかという点は先ほど来申し上げておるように……。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、すべてではなくて、法的資格を備えた債権者が出た場合、差し押えられるでしょう。
  201. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 供託した目的がたとえば、ここで申せば、裏書き人でございます中野という人の目的のために供託したわけであります。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 必ずしも富士に戻ってくる性格の金ではない場合があるのじゃないですか。結果的には実害はなかったけれども、必ずしもそうならない場合が起こってくるでしょう。
  203. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 第三者が供託されました金を差し押えた場合に、富士銀行と株式会社トムソンとの間におそらく融資についての約定があると思いますけれども、その約定のもとにおきまして、第三者たる債権者が差し押えたとします。第三者たる債権者との権利関係につきましては、いましばらく法律的に検討させていただきたいと思います。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、これは驚きましたね。私は、そういうことが即座に御答弁できないとはとてもじゃないが、考えられません。だけれども、これを蒸し返すと時間がなくなっちゃって皆さんに御迷惑をかけるので……。とんでもないですよ、そんなことは。私は、先ほどから御自分を不明だ、不明だとおっしゃいますけれども、いや、不明な方ではない、聡明そのものだという感じがしますけれども。そんなことをこれから検討しますなんということはとんでもない話です。明らかにこれは——よしましょう。はっきりしてください、その点。困ります。——まあいいです。  その不渡りの差し止め請求をするという場合は、詐欺とか盗難とか契約不履行とか、そういうときに限るのじゃないでしょうか。それを本件のように、銀行からその金を出して、それで不渡り取り消し処分を請求するなんというケースがありますか。おかしくないですか、こういうケースは。
  205. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 本件に関しましては、振り出し人たる株式会社トムソンから詐取されたという理由でもって不渡り返却があったものであります。そういう場合に異議の申し立てがあったものとしての供託でございます。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 詐取といいましても、結果的にはこれから究明されていくわけですね。現実に盗まれた、あるいは契約が不履行だった、あるいは現実に詐取された、こういうはっきりしたものについて交換所の手形が不渡りにならないように差し止め請求の供託金をするわけですね。それが本件の場合のように、それを銀行が立てかえて、それで不渡り取りやめの処分請求をするというようなケースが考えられますか。御専門家の目から、見識から、かつてこういうケースは考えられますか、銀行がその振り出し人の肩がわりをする……。
  207. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) それが当時、先ほど来のお話の将来性の問題はございますけれども、再建中であるというので、しばらくその供託金を融資したのでございます。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあそうなりますと、また話はもとへ戻っちゃいまして、業務の不振、不正が発覚し、社長は逃亡している。すでにそういういろいろな既成の事実をまぜて、営業なんか改善していやしません。そういう御答弁がとっとっと返ってきますと、もう何か銀行側の弁護をするための御答弁としか思えない、こういうことになりかねませんよ。首を振り振りしたって、私は近眼なもので見えませんけれども、どういう意味であるのか。まあ、そういうことで、ひとつこれについて、いまの資料を出していただければ、その日付があるかどうか、その日付が幾日であるかどうか、そういうことがはっきりしますれば、さらにこの一億円の融資の問題については解明されるのじゃないか、こう思います。また、その資料が出たら、さらに深くこの問題をやりたいと思います。  それからもう一つ、監督官庁として年二回大蔵と日銀が監査をする、ただし、また随時これもできる、こういうことですね。こういう不祥事件が出て、政務次官は、このいままでのあり方が必ずしもよくなかった、こういうことはお感じになられていると思うのですが、この検査とか考査とかの問題について、年二回、二年に一回、年一回ずつになるわけですが、そういう検査、考査のやり方に不備があったから、こういう問題が発覚できなかったのではないかと思うのですけれども、こういう検査、考査についても、当然何か前向きに検討される必要があると思うのですけれども、具体的なお考えはお持ちでしょうか。
  209. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 従来まで、おっしゃるとおりに周期というものがございまして、ある銀行によっては二年半になり、ある銀行によっては二年になるというふうな、多少その銀行の信用程度、あるいは客観的に見て、この銀行ならば間違いないとか、あるいはこの銀行は検査を早めたほうがよかろう、そういうことでその周期が大体きまっておる——といっても流動的ですけれども、そういう周期があったわけでございますが、そのような周期をいかにすべきであろうか、もっと早く短期に回すべきではないだろうか、あるいは検査の内容が少し上すべり過ぎたのではないか、もう少し深く突っ込んだ検査にすべきではないか。午前中に、たしか大橋委員だったと思いますが、銀行の検査をやる人間の数が足りないじゃないかというふうな御質問がありましたけれども、現在本省に八十人、財務局に二百人おりますけれども、これで人数が足りないとすれば、これをふやしてでも、今後検査の方面のことは十分にやるべきではなかろうかというふうな反省は十分にしておりますし、また、それを研究中でございます。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで一応警察庁のほうに——刑事局長さんは広島からわざわざおいでくださって、お忙しいところをいらっしゃった、こういうお話を聞いておりますけれども、先ほど本格的な調査は八月二十日からやったと、それから富士銀行の告発がなかったからできなかったのだと、あるいは六月末ごろから内偵はしてきたと、このような幾つかの点をおっしゃいましたけれども、そうすると、富士銀行大蔵省が公表したのは八月十九日ですね。それを待って、八月二十日から本格的な調査に入ったと、こう言えるわけでしょうか。
  211. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 先ほども申し上げましたように、富士銀行から正式な被害申告がございましたのが八月二十日でございます。それ以前の時点におきましては、警視庁としては、何と申しますか、われわれのことばで申しますと、その内偵を続けていたと、その間において、あるいはトムソン関係者からいろいろ事情を聞いて調べたり、七月、八月、そういうふうなことで日を過ごしておったわけでございます。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、八月二十日以前、正式に届け出があった前には、富士銀行のほうとは接触関係はどうだったのでしょうか。
  213. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 富士銀行とも一応接触はやっております。ただ、事態が警察のほうに必ずしも明確につかめなかった。それから銀行のほうでも、いろいろいま調査をしているところだからもう少し待ってほしいという話もあったようでございます。そういうことで八月二十日から本格的な捜査に入った。まあ九月十四日の告発はその後の時点でございました。で、告発があってから本格的ということではございません。八月二十日から大体本格的に入ったと、こういうことでございます。
  214. 黒柳明

    ○黒柳明君 七月二十四日に、聞くところによると北海ベンディング、北海道のトムソンみたいな関係のあれですね。橋場さんという方から告発があった、有馬に対して。こういう話を聞きますが、それはどうでしょう。
  215. 高松敬治

    説明員高松敬治君) その話は、私は存じておりません。
  216. 黒柳明

    ○黒柳明君 これもそうすると刑事局長さん御存じないのだね、弱ったですね。だれか御存じの方いらっしゃるかな、警察庁の方。これは政府側を通しまして、はっきり警察庁見解として私は聞いているのですけれども、そうなると、一番最高のメンバーの方にいろいろ聞かなければうまくないということになりますね。七月二十四日、北海ベンディングの社長の橋場さんという方から告発されているのです、有馬が。
  217. 高松敬治

    説明員高松敬治君) そういう告発があったという話は私いままで全然聞いておりません。調べてみます。
  218. 黒柳明

    ○黒柳明君 すぐ調べて、これも既定の事実ですからね。これは私どもの調べに間違いありません。二十四日に橋場さん——要するに四月の二日、有馬さんが逃亡した後に実際にこのトムソンに顔を突っ込んでいた、こういう方です。同系列の会社ですからね。その橋場さんから告発があった。それについて警視庁のほうは、どのように処理されたのかということをお聞かせ願いたいわけですよ。
  219. 高松敬治

    説明員高松敬治君) ただいま聞かせております。
  220. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうなりますと、その問題は、これもはっきりしませんと先に進めません。そうすると、いま行くえ不明の金がスイスの銀行、ニース支店とか、香港支店とか、架空名義で預金されているとかなんとか一応報道されておりますけれども、こういう国際関係の金融会社、銀行、こういうところに預けられているとすれば、そういうものを調査するということに関しては、どの程度可能なものであるかどうか、これはいかがでしょう。行くえ不明の金が十四億あるとかなんとか、こういわれておりますですね。
  221. 高松敬治

    説明員高松敬治君) 現在、有馬の身柄はまだフランスにございますし、私どもとしてはどういうふうになっているのか、現在のところ全然把握できておりません。それから外国のそういう銀行に対する調査方法というふうなものにつきましても、いろいろ問題があるようでございます。いま研究をいたしておるところでございます。
  222. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから外務省の方ですね。犯人の引き渡しの件ですけれども、何かアメリカ一国とまだ協定を結んでいるだけだというわけですが、こうした事態が発生して、当然やっぱり何らかの国際的な犯人の引き渡し協定というようなものを関係国とつくる、こういう必要性が生じたのではないかと、こう思いますけれども、こういう点についてはどうでしょうか、方法としては。
  223. 熊谷直博

    説明員熊谷直博君) 国際的にこういう要請が出てきたということは、あるいは国際関係がこのように複雑になってきましたので、あるいはそのとおりと存じます。いままで日本はアメリカとのみしか引き渡し条約がなかったということにつきましては、この条約自体がもうすでに戦前の条約でございまして、あるいはそのころの状況では日本との犯罪人引き渡しの要請がアメリカとの間ぐらいにしかなかったという、そういう国際関係であったかと思います。各国とも外国の犯罪人の引き渡しの国内法がございまして、これで一応条約がない場合の規制をしております。それで、国際関係でも条約がない場合でも引き渡しができるように、一応なっております。  そこで、フランスの場合についても、日仏の間には現在条約がございませんので、先方の一九二七年法という法律に従ってやっておるという状況でございますが、こういうような件につきまして、条約をつくるとか、国際協定をつくりますという場合には、わが国におきましては、たとえば法務省とか、それから警察庁とか、外務省はもちろんでございますが、いろいろ検討しなければいけません。日本の外国人の犯罪人引き渡し法の主管庁も法務省になっておりますので、関係者がいろいろ協議しなければいけないと思います。まだその協議を具体的にはやっておりません。
  224. 黒柳明

    ○黒柳明君 おわかりいただいたですか、いまの……。まだですか。  政務次官、要するに、刑事責任は当然これから追及され、明るみに出ていくと思うのですけれども、やっぱり銀行側の道義上の責任というものを取り締まる当局としては、きちっとこの際すべきじゃないか。通達は出ていますよ。だけれども一片の通達——こういう不祥事件があったからという非常に抽象的な通達、それは毎回、と言っては失礼ですけれども、繰り返されてきているわけですよ。にもかかわらず、ますます最近ひんぱんに起こっているのですね、そういう事件というものが。ですから、この際、刑事責任が明るみに出るとともに、やっぱり道義上の責任というものを、はっきり銀行当局にさせる必要があるんじゃないかと、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。
  225. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) おっしゃるとおりでありまして、銀行としてのそういう道義的責任をもちろん感ずべきでありましょうし、また行政指導当局といたしましても、それらにつきましては大いに関心を持つところでございます。まあ、何せ事件はいま捜査中でございますので、どのような責任がはたしてあったかというふうな明確なことは出ておりません。しかし、いずれにしろ、このような世間を騒がしたということに対しましては、それらの責任という問題が生じてくると思います。どのように責任がとられるかということにつきましても、今後の問題であろうかと思います。しかし、この道義的な責任銀行当局はもちろんのことでありますが、われわれ監督、行政指導する当局といたしましても、大いに今後強くこの面につきまして姿勢を正すというふうなことだけではなくて、実質の形におきましても、そのようなことを取り計らっていきたいというふうに思っております。
  226. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうも時間がたちますので、また、もう一人ございますので……。  七月二十四日北海ベンディングの橋場さんから告発されました。その前に、すでに三回も事情聴取が行なわれているわけです。ですから、それに対して私の言いたいことは、これはもうはっきりしています、間違いございません。言いたいことは、どういう事情があれ、そこの見解もお伺いしたかったわけですけれども、もっとその時点で、この調査というものが真剣に食い込んでいれば、こういうパリに行ったり、あるいは菅沼だってその間に二回も帰ってきていますから、もっと早く逮捕に至ったんじゃないか。要するに、いまフランスに行きまして、フランス側が、あるいは韓国側がそれに介入して引き渡しがちょっとむずかしいという事態になる前に、事件——もっと希望的観測を言うならば、処理の方向に向かったんじゃなかろうかなと、こういうふうに思うわけです。そういう事実がすでに七月二十四日以前にもあったし、二十四日には告発状も出ていると、こういうことです。この点、待っていてもお返事は来ない、時間もかかります。またこの次委員会が開かれることでもありますし、先ほどの書類も出てきますし、そういうことを含めまして、これをいまからどうこうと言ったって始まりません。ひとついまのことも十二分に検討していただきまして、何かそんなことはないと思いますけれども大蔵省大蔵省銀行の弁護に立っているみたいに、警察警察で結果的には手の打ち方がおそかった。各紙にもそういう国民の世論として述べられています。そういうことが二度と繰り返されませんように、七月二十四日という時点に明かるみに出て、そして今度はもう一歩やはり警察の立ち入りがおそかったんじゃないかと、こういうふうに私は感じます、そういう事実がありましたものですから。ひとつそのあたりも十二分に検討されて、しっかりした処置をしていただきたい、こう思うわけです。——着きましたですか。
  227. 高松敬治

    説明員高松敬治君) たいへん手間どりまして申しわけございません。橋場賢一という人だと思いますが、この人につきましては、七月の二十八日にこの人から話を警視庁で聞いておるようでございます。しかし、いま一応概略のこういうふうな背任があるんじゃないかという程度の話で告発は出ておりません。警視庁といたしましては、たしか七月の二十七日から八月の十三日まで関係者にいろいろ聞いておりますが、確かに御指摘のように多少もたもたいたしておりました感じもいたしますけれども、これはなかなか全貌がつかみ切れなかったというふうな点に一番原因があったようでございます。  なお、御指摘の点、今後またよく検討してみたいと思っております。
  228. 黒柳明

    ○黒柳明君 ひとつもたもたしていたというように御発言がありましたけれども、そういうことがないように、一番たよるべき存在の警察庁が結果的にももたもたしていたというような御発言があるようなことがあるとすると、これは今回の事件については、非常にやはりこういう不祥事に発展する可能性があったということの、いま裏づけの御答弁だと思いますけれども、そういう姿勢がないように希望しまして、私は終わります。
  229. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 先ほどから、黒柳委員から何回か大蔵当局銀行側を弁護しているような感じを受けるというお話がございましたが決して弁護しておりません。事実は事実として申し上げているわけでございます。このような不祥事ができたことに対しましては大蔵当局にもちろん責任はございますし、そうして、事実を解明して天下に謝するところは謝すべきであるし、直すべきところは直すべきであると考えております。決して特に銀行を弁護するようなことは一切いたしておりません。
  230. 二宮文造

    ○二宮文造君 午前中に引き続きまして、たいへん長時間の質疑になっております。関係者の方もさぞお疲れであろうと思いますけれども、私も問題点を集約し、限られた時間の中で質疑をきしていただきたいと思うわけであります。  私の質疑は、渋谷区広尾四丁目一番地に所在いたします社会福祉法人福田会、大蔵大臣福田と同じ書き方ですが、福田会に対する国有財産の貸し付けの問題を中心にお伺いをするわけでありますが、なぜこういう質問をするかと申しますと、御承知のように日建グループによる事件というものが社会をにぎわしまして今朝来の質疑によりますと、富士銀行の十九億円にのぼる融資の問題、これまた世間の問題となっておりますけれども、私は同じような意味において、むしろそれよりも大きな社会的な影響を及ぼすのが日建グループの事件ではないかと思うわけであります。被害者の総数が千数百名、被害金額が被害者のいわゆる建築者関係を除きまして、いわゆるマンションを購入したいという、そういう被害者での総額が二十億円をこえている、こういう問題から考えてみますと、むしろこのほうが大きな問題ではないかと思うわけであります。しかもその日建グループの問題が、これから質疑をいたします社会福祉法人福田会に非常につながりを持ってくる。福田会も一面からいえば被害者のような立場にもなるのじゃないか。そこで関係者として厚生省からもお出かけを願いましたし、また警察庁のほうからも御足労をお願いしたようなわけでございまして、その点を踏まえての御答弁をお願いしたいと思うわけであります。  まず、問題の性質上いわゆる日建グループの事件につきまして、今日までの概略を警察当局から容疑事実、容疑者また捜査の経緯などについてお伺いをしておきたいと思います。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕
  231. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) お答え申し上げます。日建グループの事件捜査につきましては、容疑といたしましては出資の受入、預かり金の法律違反の容疑と、それから宅建業法の重要事項不告知の容疑で捜索しているわけでありますが、八月の二十日及び八月の二十一日に警察庁におきましては株式会社日本建設協会の事務所外二十二カ所につきまして捜索をいたしました。多数の資料を得まして目下これの解明につきまして懸命に努力をいたしておるところでございます。
  232. 二宮文造

    ○二宮文造君 その二十数カ所に及ぶ捜索個所あるいは日建グループとして捜索を受けた会社名をお差しつかえのない範囲内で答弁願いたい。なるべく詳細に願いたい。
  233. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) お答え申し上げます。  捜索をいたしました場所は株式会社日本建設協会、日本コーポ株式会社、株式会社東京住宅センター、サードリー株式会社、日本建物株式会社、山甚物産株式会社、日本ビルド株式会社、ゼネラルストアー株式会社、武藤真吾居宅、玉枝八重子居宅、日建協会代表取締役多々見茂平居宅、ハウジング代表取締役高橋七郎居宅、元コーポ総務部長森昌三居宅、ゼネラル、山甚代表取締役滝山隆居宅、住宅センター代表取締役六車繁旦居宅、それからコーポ代表取締役小川明郊居宅、コーポ常務渡辺昭一居宅、元日建協会営業部長有尾敏春居宅、武藤真吾の秘書箕輪淳子居宅、元コーポ代表川田正斉居宅、ビルド代表武藤義久居宅、住宅センター代表取締役西出友政居宅、サードリー代表取締役ギルバート・フレデリック・フーゴウワルタ居宅、以上二十三カ所であります。
  234. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから容疑者というのは、一体この場合はどうなるのでしょう。
  235. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) お答え申し上げます。  日本建設協会が先ほど申しました宅建業法それから出資等の法律違反の容疑があるということで捜索に着手して、いま取り調べておるわけでございまして、具体的にそのだれがいわゆる容疑者となるのかということは、これからの捜査の結果きまるわけでございます。現在のところ、建設協会の会社が容疑者といえば容疑者と、こういうことでございます。
  236. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから家宅捜索を受けました武藤真吾氏、いろいろな名前をお使いのようですけれども警察庁がいままでに武藤真吾氏が使い分けた名前について御存じでしょうか。
  237. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) 現在私の記憶にありますのは、武藤真吾、それから玉枝真吾と姜仁和、以上三つでございます。
  238. 二宮文造

    ○二宮文造君 それで、結局、現在ですね、私先ほどちょっと概略申し上げましたけれども、被害総額はこれらのマンションの預かり金あるいはマンションの、何といいますか、宅建業法の十八条の重要事項不告知の疑いと、これらの関係で出てきた被害金額がいま一応二十億七千万円と、こう伝えられておりますが、大体この辺だということでよろしゅうございますか。
  239. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) ただいませっかく調査中でございまして、正確なところは調べてみなければわからないわけでございますが、いま先生のおっしゃったようなところは当たらずといえども遠からずという状況だと考えております。
  240. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで問題を本題に返しまして、渋谷区広尾四丁目一番地の社会福祉法人福田会に国有財産を貸し付けるに至った経緯並びに現状について、時間がございませんので、肝心なところは御承知だろうと思いますから、かいつまんで御報告願います。
  241. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) 御質問のお述べのものにつきましては、福田会に対しまして、土地四千二百二十七坪十三、これが明治四十三年以降、宮内省から福田会が無償貸し付けを受けていたわけでございますが、これが昭和二十二年四月一日に皇室から物納されまして、大蔵省所管の普通財産となりましたので、これを福田会に貸し付けておるわけでございます。で、その間いろいろな事情がございましたけれども、かいつまんで申し上げますと、四千二百二十七坪十三のうち、福田会が夫利用の状況にあった土地が千九百坪余りございまして、国有地の効率的な利用というふうな観点から、国から返還を求めたわけでございます。それで昭和三十九年十一月三十日に七百十三坪九十三を返還してまいりました。それからなお、未利用地の返還を申し入れておりましたところ、昭和四十二年七月十日に返還の確約書が提出されまして、これに基づいて昭和四十二年八月三十一日に千二百二十六坪〇二を返還してまいりました。それからさらに福田会が株式会社日本建設協会との間に昭和三十七年に融資を受けたことに伴いまして、懸案になっておりました建物が存在しました敷地、これが七十三坪九八ございましたが、これにつきましては昭和四十二年の十月二十七日に契約の解除の措置をとっております。このような事情によりまして現在二千三百十三坪二〇を福田会に貸し付けているわけでございます。
  242. 二宮文造

    ○二宮文造君 ただいま日本建設協会の名前が出てまいりましたけれども、それはあと質問にからめてまたお伺いいたします。  そこで、この貸し付け料の納入状況、これはどうでしょう。
  243. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) これは年月を追って申し上げますと、昭和二十八年一月十日に四十万三千八百九十七円、これが昭和二十二年四月一日から二十七年三月三十一日まででございます。それから三十三年五月二十二日に二百三十八万八千九百二十六円、これは二十七年四月一日から三十二年三月三十一日まで。三十四年八月二十一日、八十九万一千二百円、これは三十二年四月一日から三十三年五月六日まで。それから三十六年四月二十日、二百八十一万六千六百八十三円、これは三十三年五月七日から三十六年三月三十一日まで。次が三十七年七月十七日、八十四万二千五百十円、これが三十六年四月一日から三十八年三月三十一日まで。三十八年の七月一日に百五十六万一千四百二十四円、これは前と同じ期間のものに対応するものでございます。それから三十九年十一月二十一日に百六十四万一千三百四円、これは三十八年四月一日から三十九年三月三十一日までに相当するものでございます。四十四年十二月二十四日に四百二十四万八千五百四十四円、これは三十九年四月一日から四十五年三月三十一日まで。次に四十五年四月六日でございますが、百二十五万二千七百二十円、三十九年四月一日から四十二年三月三十一日まで。次に四十五年でございますが、四十五年五月二十日に三十五万一千二十八円、これが四十五年四月一日から。以上のとおりでございます。
  244. 二宮文造

    ○二宮文造君 要するにそういう説明をいただきますと、この福田会からの貸し付け料の納入は非常にスムーズでなかった。滞りながら支払われていた、納入されていたということで、これがあわせて福田会の経理内容についても非常に苦慮しておったという事実を証明しているんじゃないかと思います。  そこで、国のほうでは四十二年十二月二十五日、四十三年一月十九日の二回にわたりまして仮差し押えを行なっておりますが、これはいわゆる貸し付け料の納入のために福田会が逗子に所有していた土地、建物に対しての仮差し押えをやったんであろう、このように考えますが、そのとおりでよろしいですか。
  245. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) おっしゃるとおりでございます。
  246. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこでこの質問をしながら思い返すのは、あの社会福祉法人の日本ベル協会の経理が非常にずさんであった、結局国から補助金を出したけれども、その建物もあるいは国有地の払い下げを受けた土地建物も、所期の目的に使われないまま、社会福祉法人日本ベル協会はおそらく強制解散された、こういうふうに私認識をしておるんですが、同じような社会福祉法人が事業を遂行していく上に資金的な手詰まりとか何とかのために、問題を引き起こしがちでありますけれども本件もまさしくそうではないかと、このように心配するわけです。そこで、国有財産の点はちょっとおきまして、あとでまた問題が出てきますが、厚生省の方お見えだろうと思いますので、福田会の事業内容についてお伺いしたい。
  247. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 福田会が社会福祉事業をやっておりますのは、戦前から歴史がずっと古いわけでございますが、戦後社会福祉法人となりまして、社会福祉事業をやり始めたわけでございますが、これは社会福祉事業のうち、養護施設の経営と精神薄弱児施設の経営、この二つの事業をおもな事業としておるわけでございます。大体定員としましては、養護施設のほうは本院、分院がございますが、それぞれ五十名くらいの定員でございます。それから精神薄弱児施設のほうは十五名くらいの定員でございます。この養護施設の経営と精神薄弱児施設の経営と、こういう社会福祉事業の経営をやっている社会福祉法人でございます。
  248. 二宮文造

    ○二宮文造君 一般的なことをお伺いしますけれども、この社会福祉法人が基本財産を処分しますときには、たしか厚生大臣の認可が必要だろうと思うんですが、これはそのとおりでしょうか。
  249. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 基本財産といいますのは、御承知のように、その法人にとって一番大事な財産でございます。これを処分しようというときには、手続的にいまおっしゃられたように、主管大臣たる厚生大臣の承認をとることになっております。
  250. 二宮文造

    ○二宮文造君 それからもう一つは社会福祉法人の会計内容、経理内容というものは、もちろんこれは都の認証ですから、都が一義的にやるんでしょうけれども、厚生省のほうも、その点については第二義的にでも全体を掌握していくという面で、経理内容指導というものはなさっておりますか。
  251. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 社会福祉法人の会計経理につきましては、いま御指摘のように、厚生大臣なり各都道府県知事が責任を持っておりますので、そういう責任を遂行する意味におきまして、指導監督の当然責任もまたある、こういうことにたてまえ上相なるわけでございます。
  252. 二宮文造

    ○二宮文造君 福田会の三十八年度決算書を見ますと、日本建設協会から借り入れ額三千七百五十万、こういうふうに計上をされておりますが、それで、ちょっとさかのぼりますけれども、この福田会と日本建設協会が社名を変更しました日本建物株式会社というところの間に、昭和三十八年二月五日に渋谷・広尾四の一、家屋番号一ノ十四、十五を対象としまして、その家屋を担保にして、債権額七千五百万円の停止条件つき債務弁済契約を締結して抵当権を設定しておる。この間の三十八年の決算書には三千七百万という借り入れ金、それからこの抵当権設定の場合には七千五百万円、こういうふうな債権額になっておるんですが、この面の経理内容について厚生省は御存じでしょうか。
  253. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 結論から先に申し上げますと、本来、先ほど申し上げましたように、責任が厚生大臣にあるわけでございますが、いま御指摘の事実の詳細につきましては、正確な事実関係を実は厚生大臣としましてつかんでおりません。一応、社会福祉法人側からの申し分は承知しておりますが、それがほんとうに正確な事実であるかどうかということの確認まではいたしておりません。
  254. 二宮文造

    ○二宮文造君 いままでは事実を確認なさってなかったことはわかります。でなきゃ、こんなたいへんなことにはならないと思うんです。毎年福田会は決算書を出しております。しかし、その決算書をはたして認証した都のほうで見たのかどうか、あるいはまた、それが都を経由して厚生省に指示をされて、厚生省のほうでも指導監督という立場でこの経理内容を分析して、社会福祉法人の経営というものに適切な指導はなさったかどうか、この点がはなはだ疑問な事実があがってくるわけです。ちょっとややこしくなりますけれども、問題点だけをあげてみますと、三十八年度の決算書には、いま申しましたように、三千七百五十万円の日本建設協会の借り入れ金が計上されているわけです。それが三十九年になりますと、元金が三千八百九十六万四千八百五十五円に変わっております。さらに四十年度には、元金三千八百九十六万四千八百五十五円、利息六千九百十五万四千五百五十一円。四十一年度の決算書を見ますと、元金は同じ、利子が八千九十五万九千二百六十四円。四十二年度になりますと、元金は元のままで、利子が百三十八万三千七百五十円、延滞利息が六千四百十一万三千七百五十円。さらに四十三年度を見ますと、元金も減りまして三千四百四十七万九千七百十五円、延滞損害金三千百三十五万五千四百六十七円。それで四十四年度になりますと、これがいきなり出資受け入れ金というかっこうに計上されまして、三千四百四十七万九千七百十五円、要するに四十三年度に元金として記載された金額、それが出資受け入れ金という項目にあげられているわけです。厚生省はこういうふうな数字をごらんになって、その前後のいきさつというものを御承知でなきゃならぬ。この数字のいきさつというものを厚生省のほうから説明をしていただきたい。おそらくもう福田会から事情を聴取されたと思いますので、その点について御説明を願いたい。
  255. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) いま先生るる申されました事実は、決算書の面での数字でございます。これは私どもも実は先般来から、社会福祉法人福田会の幹部のほうからその間の事情の経緯を聞いておるわけでございますが、福田会の事務当局説明によりますと、先ほど申されました七千五百万円の債務弁償契約というものは締結をしていない。
  256. 二宮文造

    ○二宮文造君 締結してない……。
  257. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) はい。それからその後訴訟が起きておりますが、この訴訟の過程におきましても福田会のほうはこれを容認をしていない、こういうことでございます。  ところが、いまお述べになりましたように、決算書の面では元金、利子、それぞれまあ幾多の変遷をしてきているわけでございますので、いまそこのところの事実関係というものは、はなはだ申しわけありませんが、私どもまだ確認をするところまでいっておりません。非常に説明のしにくいといいますか、納得しがたい決算書の経理になっていることは、これはもう否定できないわけでございます。数日前からそこらあたりの納得いく説明なり、事実関係福田会の事務当局から聞いておるわけでございますが、きょう現在、まだ私ども納得いくところまで説明がなされていないわけでございます。
  258. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は心配なんです、はっきり言いますと。この福田会というのは、非常に由緒のあるいわば社会福祉法人としては先覚者に属する社会福祉法人です。しかも、児童福祉法による措置児と、精薄児童、精薄者を対象にして、今日まで多大の貢献をしてきた、そういうところです。この由緒のある福田会が足場になって、そしてその日本建設協会から金を借りたのがそもそもの運の尽きで、もうでたらめな経理内容を、それもきのうやきょうに始まったことではないのです。三十八年からそういうことをやっているにもかかわらず、最近に至って厚生省が、しかも私どものほうからこういう事実がありますがと申し上げて、初めて、あわてて福田会から事情を聴取するというような社会福祉法人の指導監督のあり方、これははなはだ私は問題だと思う。ベル協会のときにもそれを申し上げた。そのときにも言を左右にしてその中心は避けられましたけれども、結果として私が心配をしたような命令解散になってしまった。この福田会も、今後の経営はどうなるかわかりませんけれども。そこで、そういうずさんな経理内容、あるいは厚生省の指導監督の不徹底、これが幾多の問題を引き起こしているわけです。  具体的に申し上げますと、三十八年の六月十四日に、福田会は八王子の上柚木字二号七十四番外十七筆、合計二万一千六百八十八平米、約六千五百九十五坪の土地を取得したわけです。これは売買で取得をしました。この土地を取得するのについて、厚生省に何らかの説明がありましたか、あったはずです。その間の経緯についてお伺いしたいし、この土地の購入をあっせんしたのが日本建設協会、後の日本建物があっせんをしているわけですが、その間の経緯を御説明願いたい。
  259. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 福田会は、いま先生の申されましたように、非常に明治以来伝統ある社会事業の経営団体としまして今日まで至ってきたわけでありますが、戦後になりまして、先ほど来の話がございました国有財産の借地料の返済なり、あるいは戦災によりまして施設が失われた、その戦災による施設の復興、あるいは後援会等が逐次崩壊していったというような、もろもろの事情がありまして、財政的に非常に戦後になりまして苦しくなってきた。したがいまして、戦後そういう財政的窮乏を打開するというような立場から、民間の金融業者等から借り入れ等をやってやり繰りしてまいったわけでありますが、なかなか思うようにまいらないということで、三十七年になりまして、八王子市に精薄児施設を移転したいというような計画を立てまして、八王子市内の土地を購入をいたしたわけでございます。そして、このときの土地が六千五百九十五坪でございます。こういう土地を八王子市内に購入をいたしましてここに精薄児の関係施設をつくる、こういうことに相なったわけでありますが、この場合のいわゆる土地購入資金というものが、先ほど来から出ております日本建設協会というものから融資を受けて土地の購入をやっている、こういうことに相なっているわけでございます。ただ、その後この土地が多摩ニュータウンの建設用地に内定しているというようなことが後ほどになってわかりましたために、この移転計画というのは結局結論において中止した、こういうことになっているようでございますが、ここら付近のいきさつにつきましては、私ずっと前のことで恐縮でございますが、当時の関係者等にも一部当たってみましたが、厚生省自身には特に別段お話がなかったように承っておるわけでございます。
  260. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうではないのです。なぜそれでは渋谷で国有財産を借りておる、そこにある施設を八王子市に移す、そのための用地を買う建設資金を日本建設協会から借りる、融資を受ける、融資をする日本建設協会の側には反対給付がなかったらこんなことはしないのです。反対給付の条件は、広尾の土地があきますから、そこにマンションを建てて、マンションを運営して経常費用をそこから取りたい、こういうふうな話で、この八王子市の土地を購入したわけです、資金を借りたわけです。その場合に、大蔵省は社会福祉法人が将来そういうふうな経営でもって経常資金をまかなわなくちゃならぬだろう、やむを得ないだろうというようなことで大蔵省はOKの返事を出した、いいでしょう。手続がまだ終わっていない話し合いの段階で、厚生省のほうではそんなことをすると本業の社会福祉事業がおろそかになるから好ましくないということでこの計画がおじゃんになった、こういう話なんですがね。厚生省には全然話がなかったということはないと思うのです。この点どうでしょう。
  261. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) ちょっと正確なことばの表現でお答えいたさなかったために誤解を招いたようです。八王子市の土地購入の日本建設協会との関係、ここらのいわゆる内部的な取引関係については、厚生省はいさい承知していなかった。しかし、八王子市のほうに移転するということと、同時に、いまおっしゃいました広尾の国有財産の敷地内にいわゆる共用住宅といいますか、賃貸し住宅というものをつくる、いわゆる収益事業としてそういうような事業経営をやるということにつきましては、東京都を通じまして厚生省のほうに話がきております。その結果、広尾のほうに建てる予定のいわゆる賃貸し住宅というものについて、社会福祉法人の収益事業として経営をするということについては、結局それは無理だという厚生省と東京都の相談の結果の話が社会福祉法人のほうに伝わっている。その結果、この収益事業というのは、結果において実現を見なかった。こういうことについては厚生省も承知しておるわけでございます。
  262. 二宮文造

    ○二宮文造君 それが福田会の命取りになった。相談があったから、まずいだろうといって断わった。断わっただけで私は厚生省の指導監督がそれで事足れりとは思いませんよ。現にその土地を買ったことも厚生省は知っている、一部施設をつくったことも知っている。金の出場所がどういうことになったか、その後の追跡調査、追跡の指導というものが当然なさるべきだった。また、さかのぼりますけれども福田会のほうは毎年決算書を出しているわけです。その決算書を見ればどういう経理内容になっているかということは当然わかると思うんですがね。それが大蔵省にも非常に迷惑をかけるし、福田会の経理を行き詰まらせることにもなったわけです。どういうふうなことになったかといいますと、まずそういう金を貸してもらったので、福田会としてはとりあえずその謝意を表明しなければならない。大蔵省から借りている土地、広尾の土地に建物をつくって、そこに武藤真吾氏にただで貸したわけです、家賃ただ。さてそれがその後日本建設協会、すなわち日本建物株式会社ですが、そこと福田会との係争関係になって、この福田会が広尾につくった建物がどういうかっこうになったか厚生省御存じですか、結論として現状はどういう形になっているか御存じですか。大蔵省御存じなはずです。どちらでもけっこう、その経緯を御説明願いたい。   〔理事若林正武君退席、委員長着席〕
  263. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) こちらのほうで存じております範囲内で申し上げますが、問題の、おっしゃる建物につきまして昭和三十八年の二月六日に抵当権が設定をされております。そしてその後日本建設協会は融資額の返済につきまして昭和四十二年の七月十七日に東京地裁に訴訟を提起いたしまして抵当権実行のための不動産競売を申し立て、昭和四十二年八月三十日に東京地裁は競売手続の開始を決定したわけでございます。大蔵省ではこのような事情に対処いたしますために昭和四十二年の四月十日に建物の居住、それから土地の返還を求めていたわけでございますが、昭和四十二年の七月の十日には福田会から建物居住者の退去と、その土地の返還に関する確約書が出てまいりましたので、国は問題の解決を福田会にゆだねていたわけでございます。ところが東京地裁の不動産競売開始決定がなされましたために、昭和四十二年の十月二十七日に建物、敷地について契約解除をした決第でございます。
  264. 二宮文造

    ○二宮文造君 正確ではありません。大蔵省が差し押えを解除したのはおっしゃるとおり四十二年十月六日、それ以前に、日本建設協会の後の称号であります日本建物株式会社から四十二年の八月三十日、それ以前ですれ、いまの十月六日以前に東京地方裁判所の競売手続開始が始まりました。四十四年四月二十日にそれを競落しております。競落者は先ほど捜査を受けたと言われた山甚物産が二分の一の持ち分、それから玉枝八重子、これはどういう人かわかりません。ただ武藤真吾氏が玉枝真吾という名前を使っていたので、その関係関係があるのではないかと類推をしますが、玉枝八重子という二人の持ち分になって競落をされ、それがさらに四十五年五月一日、売買予約で相手権利者は株式会社大童、そこに所有権移転請求の仮登記がされております。さらに昭和四十五年六月十七日この株式会社大童に所有権移転がなされております。しかも昭和四十五年六月十九日これに横戸登代子という人を権利者として停止条件つき代物弁済契約のいわゆるそのための仮登記がされておりますが、八月の十八日に権利放棄をされておりますから、もとの大童に戻っております。しかも、いまの理財局のお話によりますと、あとの整理を福田会にまかした、そして差し押えを解除した。さらに、居住者を出しますという誓約があったのでそれを待ったけれども、それも実行されないので解約をした。解約をしても現に大童の所有権になる建物は現存しておりますし、そこに現にだれが住んでいるということも御承知だろうと思うんです。にもかかわらず、契約解除をしながら、この権利保全のために国のほうが何ら措置をされてないのはどういうわけですか。
  265. 小口芳彦

    説明員(小口芳彦君) その点につきましては、契約の解除をいたしまして、なお問題が残るわけでございます。昭和四十五年の二月二十六日に法務省に対しまして、建物住居土地明け渡し請求の訴訟の提起、現状不変更の仮処分の申請手続を依頼いたしまして、今後は訴訟の方法によって解決するというつもりでございます。
  266. 二宮文造

    ○二宮文造君 訴訟の方法によって解決に持っていくと。法務省のほうは、この訴訟はいつ開始されるんですか。いらっしゃらない。よろしい。建物ですね。だれが住んでいたかということを追っかけてみました。この建物は、床面積が百二十三・九六平方メートル、約四十坪くらいの建物です。五部屋、車庫つき、家賃はただです。三十八年十二月に玉枝真吾が融資の謝礼として無償貸与を受けました。その後、日本建物株式会社代表取締役高橋七郎氏、この人も捜索を受けております。この人が入居し、現在は外川雄機という表札になっております。そこで、私は、この大童の所有権になっておりますが、これは私は問題だと思う。しかも、この大童は日建グループの捜査対象にもなっておりません。しかし、創設当時の取締役の名簿には武藤真吾氏が名を連ねております。したがって、これは、債権者の立場でか、あるいは、その所有者の、資本提供者の立場でかわかりませんが、日建グループと裏表の関係になっているということを警察庁当局に私は提起をしておきたい。こう思うんです。警察庁はこの面について何か説明をいただくことはありませんか。
  267. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) 宅地会社大童につきまして御指摘のように武藤真吾が設立当初から、本年六月十日まで取締役に就任しておったという事実は警視庁のほうの調べでわかっております。これが今回捜査をいたしております日建グループとの事件とどういうふうにつながるかというようなことは、いまの段階ではまだわからないわけでございますが、その事実がありましたことは承知いたしておりまするし、十分今後捜査の場合に考慮に入れてやっていきたいと考えております。
  268. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、もっと私捜査資料として提供いたしておきます。といいますのは、この株式会社大童の取締役である船橋一、武藤真吾氏が経営する日本ビルド株式会社、これの設立が四十五年五月七日ですが、それから四十五年七月十五日、要するに事件が騒がれ始めたあとまで同社の取締役であった、また取締役の外川照雄、先ほど外川雄機と申し上げましたけれども、それと名前は違いますが、外川氏は新宿区新宿二丁目八十七番地に所有するスワン万年筆株式会社、これは昭和二十二年二月十日設立、昭和三十九年五月三十一日株式会社スワン万年筆本舗と商号変更し、そのころだろうと思うのですが不動産売買業、建設工事の請負も営業目的とし、資本金千百五十二万円、この代表取締役が外川照雄氏です。しかも問題の武藤真吾氏はスワン万年筆株式会社業務部長の肩書きで去る七月十一日からホンコン、フィリピン、シンガポールなどへ商用、要するにそれはマンション建設にかかる合併会社の設立というような目的で旅券を申請いたしました。七月十一日午前九時半羽田発、マレーシア航空、台北経由シンガポール行きの便の切符を予約した、こういう関係も出てきております。これら一連の関係を考えますと、この株式会社大童、あるいはスワン万年筆、そういうのがまだ先ほどの捜索個所としてはあげられておりませんけれども、これは日建グループの裏表、どういう関係にあるのか、きわめて濃厚な関係にある、これをひとつ警察庁のほうでごしんしゃくを願いたい。なぜ私はこういうことを申し上げるかといいますと、二十億円にのぼる被害者が、その弁済、その償却のためにどういう手を打とうか非常に苦慮いたしております。しかも、おそらく警察庁当局でも苦慮されていると思いますが、隠れ財産というものがどういう形であるのかわからない、これはひとつ被害者をカバーする意味において御考慮を願いたい意味で、私はあえて問題にいたしました。さらにこの福田会の八王子の六千五百九十五坪でしたか、この土地が福田会の決算書によりますと——これは厚生省ですよ、三十八年には千三百一万円とこのように決算書に出ているわけです。ところが三十九年度には千三百八十一万九千九十円と評価がえをし、四十年度には三千八百三十万五百円と評価がえをし、そうして四十四年の四月一日に日本コーポラチブ株式会社、この会社はその後四十四年九月二十二日にホームデパートと商号を変え、四十四年十月十一日にはサードリー株式会社と商号を変更いたしました。このサードリーは先ほどの捜索個所に入っておりましたが、それに売買によって所有権を移転した、こういうことになっております。ところが福田会の決算書には売買による収入は一銭も計上されていない、福田会によりますと売買したのではない、権利書を持っていかれた、こういうふうな説明をしておりますが、厚生省はこの間の経緯をおつかみでしょうか。
  269. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 八王子の六千五百九十五坪の土地の売買につきましては、いま先生お述べになったようなことで、買い上げ価格は千三百二十二万六千円というようなふうに聞いておりますが、この土地の所有権の移転登記を三十八年の六月二十五日にやっております。ところが、これにつきましては、四十二年の七月十二日でありますが、日本建物株式会社から、八王子の土地建物を日本建物株式会社の所有にするようにというような要請がありまして、結果として、四十四年の三月二十二日に土地の権利書と所有権の移転書類を、当時の社会福祉法人福田会の理事長から日本建物株式会社のほうに手渡しているということは、福田会のほうの言い分でございます。ただ、この手渡した理由がどういう理由かということについては、事実関係はっきりいたしませんが、どうも、そこに何らか圧力が加わったんじゃないかというようなことがいわれているということを聞いております。
  270. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、もう一つ整理したいんですが、借りた金が三千七百五十万でしょう、日本建設協会から融資を受けたのが。その三千七百五十万円の融資に対して、福田会は今日までどういうふうな支払いをしているか。これは事情聴取されましたか。当然されなければ、厚生省が決算書をごらんになる上に判断に苦しんだと思うのです。
  271. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 福田会のほうからの説明によりますと、三千七百五十万円ですか、この借り入れ金につきましては、福田会自身としては結局返していないわけであります。そこでこのことは、結論としましては、裁判に実は持ち込まれたわけでございます。この裁判の結果、本年の七月の六日に両者間に和解が成立をいたしまして、そうして七千三百二十六万円の返還債務が福田会から日本建物株式会社にあるということが確認されまして、その債務の返還方法としまして、現金による返還が八百万円、土地建物による代物弁済としまして、先ほど来から問題になっております八王子の土地建物、その他神奈川県の逗子に一部土地建物がありますが、そのような土地建物による代物弁済を合わせまして七千三百二十六万円の返還債務があるということになって和解が成立しているということでありますので、結局、先生お尋ね日本建設協会からの借り入れ金の返済はまだやっていない。こういうことになるかと思います。
  272. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと待ってくださいよ。その八王子の土地は、すでにサードリーの所有になっているのですよ。それは、サードリーの所有になったのはいつですか。四十四年四月一日に、この土地は日本コーポラチブ株式会社に所有権を移転しているのですよ。いま先ほどの、和議が成立したというのは、四十五年の七月六日とおっしゃった。ことしの七月六日とおっしゃった、それ以前に、もうすでに所有権は移転してしまっている。それが、ホームデパートとかあるいはサードリーとか、商号が転々と変わってきている。それからまた八王子の土地は、いま言われるところによりますと、多摩ニュー・タウンで、これは先買いや先行投資なんかやってわき上がったのだろうと思いますけれども、大体坪三万円見当、時価にすると二億円相当分になる、こういうふうにいわれているのです。それが詐害行為なのか、あるいは強奪したのか、承諾の上で取ったのか、とにかくいまはサードリーに移ってしまっている。こういう事実があることを警察庁当局は御承知願いたい。これはおそらくそういう法的な手続はあると思うのですが、詐害行為にも似るような財産の処分は、おそらくいまの時点では私はできないのじゃないかと思うのですが、これはどうでしょうか。いわゆるサードリーから所有権を他に移転させないための何らかの手続はあるのでしょうか。これがすなわち被害者の債権を保全をするということにつながるわけですけれども、これがもう善意の第三者に売られてしまいますと、被害者はまた泣きどころになるわけです。聞くところによりますと、捜索をして、印鑑その他所有権移転の手続に必要なものは、いま捜査当局のほうに管理されているので、そういう面では財産の保全が可能ではないかという話も、これは耳にしたことですからわかりませんが、この点は的確な御答弁はできましょうか、法律問題になりますが。
  273. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) 不勉強で、それほど的確な答弁ができないのはまことに申しわけないわけでございますが、警察捜査をいたし、またそれを、問題の会社のいろいろな証拠資料を押収したからといって、それが直ちに民事上のいろいろなことに影響するものではないというふうに思うのでございます。日本建設協会のいろいろな債権を確保するためには、民事の手続によりまして、それを散逸しないようにするには方法があると私は思います。
  274. 二宮文造

    ○二宮文造君 それから先ほどの福田会に戻りますが、福田会は逗子の分院を売っておりますね、厚生省児童局長、逗子の分院を売っているでしょう。あれは基本財産として計上したものです、ずっと経理をしてきたものです。その逗子の分院の処分にあたって、厚生大臣の認証といいますか、許可といいますか、それを取っておりますか、手続上。
  275. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 逗子の養護施設の分院につきまして若干の土地建物を持っていたわけでありますが、これを老朽化したというような事情のために、一部売却して新しく施設をつくり直しているわけでありますが、このことについては、いま御指摘のように基本財産の中に入っているわけでありますので、当然手続としましては厚生大臣の承認を得るという手続が、先ほどありましたように必要になるわけでございます。で、この手続は、四十一年の五月二十八日に基本財産処分の承認を厚生大臣としてしておるわけでございます。
  276. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですから厚生省としてはその間にノータッチじゃなかったわけなんですよね。福田会とそういう手続の往復なんかを通じて経理内容についても御存じだった。それが先ほど言いましたようにずさんな経理——とにかくつくった決算書表ですね、それを出してきているのをもうそのまんま目こぼしで通してしまっているという指導のあり方ですね、これは私、はなはだ問題だと思う。これは今後の問題にしまして、私きょう提起をしておきたいことは、国有財産がある一定の目的のもとに売り払いをされたりあるいは貸し付けられたりしている。ところが現状はしばしばその目的に反する場合が非常に多い、それがこういう問題を起こしてくるわけです。私ここで現在の国有財産の貸し付けですね、この貸し付けについて、目的に合致した貸し付けのしかたをしているかどうか。これはこの際、全国有財産について確認をされる必要があると思うんですが、この作業をおやりになるかどうか、これをまず政務次官にお伺いしたい。これは大事なことです。  それから厚生省には、私、社会福祉法人として取り上げたのはたったの二つです。しかし、ベル協会のように、にっちもさっちもいかなくなって命令解散をされた。おそらくこの福田会もこういうかっこうでいきますならば、よほどの財政の援助がない限り、あるいは寄付金の援助がない限り、遠からず解散に追い込まれるでしょう。すでにもう四十四年度か五年度かの決算書を見ますと、いままでになかった人からの名儀で二千万円の借り入れを計上しなきゃならぬ、こういうかっこうになっております。したがって、社会福祉法人のいわゆる経理内容、こういうものについて的確なものさしをつくって全社会福祉法人を監査、あるいはそのための適切な指導をなさる意思があるかどうか、これをお伺いしたい。  それから警察を含めて、まあ捜査当局といいますか、これは民事、刑事両方含みますけれども、この日建グループの問題はきわめて影響するところ大きい。私も被害者同盟の代表の方にお目にかかりました。なけなしのお金をはたいて債権の保全に追い銭を負ったり、あるいは零細な金を集めて弁護費用をつくったり、被害者同盟としては自分たちの債権を確保したい、いまもう懸命です。しかも、私が提示をしましたような問題を含めて相当に隠れ財産といいますか、まだつかまれてない財産があるんではないか。これが転売をされたりあるいは合法的に処分されたりしますと、これらの被害者の方々は泣きつらにハチ、どうしようもない、しかもこの日本建設協会は建設大臣認可の宅建業者です。したがって建設省にも被害者に対しては重大な責任がありますし、捜査当局あるいは日建グループの指導監督の官庁である建設省がこの被害者の救済といいますか、債権保全というものに鋭意努力をされるかどうか、それぞれ方針を承ってきょうの質問は終わりにしておきたいと思います。
  277. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) ただいまの二宮委員の御要求でございますが、国有財産の貸し付け目的にはたして実情が合致しているかどうか、これらを一斉に点検する用意ありやいなや、こういう質問だったと思います。従来まで貸し付け量の改定期——約三年ごとでありますが、この改定期ごとにそのような実情の調査を行なっておったわけでありますが、御要望によりまして今後一そうこの実情に適しているやいなやということにつきましては、一斉点検という形になりますか、それともこの三年ごとという契約改定ごとにやっておったことを期間を短くしますかは、いまから検討をいたしまして、実情にそぐうように使っているかどうかの調査を綿密にやっていきたいと思います。
  278. 坂元貞一郎

    説明員坂元貞一郎君) 社会福祉法人の会計経理のやり方が非常にずさんであったということがこの福田会の問題の一番大きな原因になっていることを私ども率直にまあ認めざるを得ないわけでございます。したがいまして、今後全国的にこの社会福祉法人——いまたまたま三千五百くらい全国に数があるわけでございますが、先般二宮先生申されましたように、ベル会館の問題にしましても、また今回の福田会の問題にしましても、社会福祉法人としまして社会福祉事業法に基づく法人格を与えられて福祉事業の使命達成のためにやらなければならぬりっぱな法人としまして、私ども今後この指導監督というものについては厳に配意してまいりたい、したがいまして、現在十分都道府県等が指導監査がなされていない面もあるようでございますので、全国的にながめまして今後社会福祉法人の経理内容、業務指導全般につきましての指導監督というものをさらにさらに徹底させるための方策を早急に検討をいたしたいと、かように思っているわけでございます。
  279. 小林忠雄

    説明員(小林忠雄君) 日本建設協会は東京都知事の免許で、まして宅地建物取引業を営んでいるわけでございますので、宅地建物取引業法上の指導監督権は東京都知事にあるわけでございます。ところが東京都知事が建設協会に対しまして行政処分をするための聴聞の通知をいたしましたところ、その直前に実は廃業をいたしましたので、宅地建物取引業法上の行政指導というものは残念ながらできない状態でございます。そこで業法違反について東京都知事が建設協会を告発しております。なお事業の投資者、あるいは入居予定者あるいは入居者等の損失はもっぱら民事上の問題でございますけれども、宅地建物取引業者の監督官庁としての限界がございますけれども、できるだけ権利保護をはかりますために東京都がいろいろその間にあっせんをしております。たとえば建ちかけのマンションが立ちぐされになっているような種類のものにつきましては、建設業者との間に都が入りまして、購入者と直接契約をして建設を進めていくというようなことを何件かいたしておるわけでございます。ただ、この種の事件は建設省としましては、まあ直接監督の立場ではございませんけれども、この種の事件の将来の発生を防止するといろためには、どういたしましても基本的に法律上の措置が不十分であると考えておりますので、現在住宅宅地審議会に諮問をいたしまして、不動産取引全般についての法律改正のための検討を続けているわけでございます。
  280. 長谷川俊之

    説明員長谷川俊之君) 警察がこの種事件捜査をいたしますのは、先生御承知のとおり被害者をなるべく少なくし、今後そういった被害者が出ないように、こういうことで刑事事件として捜査をするわけでございます。しかしながら、警察は御承知のように民事の個々の債権の問題につきましては介入できないたてまえになっておるわけでございます。いずれ被害者の方が中心となりまして、民事のいろいろな手続をおやりになると思いますが、私ども裁判所等のそういう手続に対しまして、法に反しない限りにおきまして十分の御協力をしていくということにつきましては、そのつもりでやっていくべきものと考えております。
  281. 二宮文造

    ○二宮文造君 大蔵省、厚生省それから警察当局それぞれの御答弁については、私は方向として大体了承します。ただ、小林計画局長の御答弁には私は納得できない。よろしいですか。都知事の認可による宅建業者である。それが告発をしようとしたら、解散をしたから、廃業をしたからもう何ら打つ手がないのだ。ただ将来としてはこういう問題に対して善処しなければならぬというふうな言い方ですけれども、そうではないと思います。宅建業者、宅建業法を総括してその指導監督されるのが建設省の立場である。しかもこれは何もあの告発の時点、廃業の時点で問題が起きたのじゃなくて、それまでにいわゆる不当表示の問題だとか、あるいは民間放送のコマーシャルだとか、そういうものについて巷間種々のうわさがあったわけであります。その間に建設省は何ら手を打ってない。そういういわば指導監督行政がずさんであった。おろそかであったがゆえに千数百人の零細な方々の金を集めた。二十億円以上という被害金額が出た。法的にはどうするこうするとは申しておりませんけれども、しかしそれらの方々の、要するに建設省の指導監督がまずかったことによってこういうふうな事件を起こした。そういう道義的な責任といいますか、心理的な立場といいますか、そういうものに立って被害者の方々と懇談もし、あるいはまたそれらの方々が民事の訴訟を起こすあるいはそれらのことについて何らかのやはりサポートといいますか、そういうものをして差し上げるだけのものは十分私は建設省にはある。聞くところによりますと、これは被害者の一部の方がおっしゃっておりましたけれども、大体こういう宅建業者あるいは建て売り業者というのは自転車操業なのだ、これがついつい建物が建っていれば何とか操業できるけれども、ああいうふうに警察捜査の手を入れたから、そこで融資がとまって倒れたのだ、自転車操業は、この業界の通例なんだ。捜査が入ったから会社が倒れた。したがって、被害者に迷惑をかけたというような、あなたがそういう言い方をしたとは思いませんけれども、被害者が聞いておりますと、そういうふうに受け取れるような建設省側の発言というものは、私は不謹慎だ、気の毒だと思うのです。それは法の上でどうこうということではありませんけれども、宅建業者全体を今後指導していくという立場に立って、被害者の方々とも懇談をし、その解決へのやはりあっせんといいますか、そういうものも当然なさってしかるべきではないか、それらの努力も含めて、将来の事件を未然に防いでいく法の改正を考える、こういうふうな答弁なら納得ができますが、再度御説明をいただきたい。
  282. 小林忠雄

    説明員(小林忠雄君) 今回の不祥事件は必ずしも宅地建物取引業法の監督が不十分であったためにだけ起きたわけではないとは思いますけれども、その相当部分責任がやはり監督官庁としてあるということは事実でございますので、いままでの監督が不十分であった、そのために多数の方に損害を及ぼしたということについては、建設省としてはまことに申しわけないことであると考えております。なお、今後の問題につきまして、事実上いろいろお世話をいたすことができますれば、応分の建設省といたしましても力添えをいたしたいと思います。ただし、先ほど申しましたように、この種の業態が、物ができない前に何ら担保なく金を集めて起業をしているということにつきましては、これは何らか法律上の規制をしなければ、やはり金融が逼迫したときに非常に危険である。したがって、こういうものについては、やはり立法措置をとって、将来の損害の発生を防止するということが政府の責任であると考えますので、その方向で法律案の作成その他の作業をいたしたいと思います。
  283. 二宮文造

    ○二宮文造君 現実の事件が問題ですよ。
  284. 渡辺武

    渡辺武君 私は、大蔵省関税局が税関に働いている労働者.特に全税関労働組合に対して行なっております不当な差別措置について、前回に引き続いて御質問したいと思います。  最初に私は前回、この問題を調査するために大蔵省の本省、それから財務局、それから税関、これらについて、昭和四十年度から四十四年度までの五カ年間にわたる定期昇給者、延伸者の数及び人事院規則三十四条に定められてあるその延伸理由別の内訳について資料の提出をお願いしました。ところが大蔵省は国政調査権が人事管理権のどこまで及ぶか疑問であること、また個人要求資料であるとの二点を理由として提出要求に応ぜられませんでした。大蔵省が傘下の関税局がやっているこのひどい事態に、いわばすねに傷持つ身として資料要求に応ずるのに難色を示すだろうということは、私も当時予想しましたけれども、しかし私の要求した資料は、個々の個人についての昇給延伸理由を明らかにしたいということではなくして、人事院規則の定めた延伸理由別の延伸者数です。これは国政調査の最も普通の対象であって、官庁の人事権云々によって拒むことのできるものじゃないと思います。議員個人の要求だから応じられないという理由も正当なものじゃないというふうに思います。しかし、事態を急速に解決するという技術的な理由から、私はこの資料要求委員会としてあらためて取り上げていただきたいと思います。委員長、このいま申し上げた私の資料要求委員長として大蔵省に御要求いただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  285. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御要求の趣は承りました。
  286. 渡辺武

    渡辺武君 谷川関税局長に伺います。前回、私確実な資料に基づいて税関で行なわれている不当な差別についていろいろ御質問しましたが、この不当な差別の実情についてその後御調査なさったか。調査されたならばその内容を明らかにしていただきたいと思います。
  287. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 前回お答え申し上げたとおりでございますが、私のほうでは、たとえば昇給の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、すべて給与関係の法律なりあるいは人事院の規則等に従いまして適正に実施しておるところでございまして、いろんな条件によりまして差別などは一切いたしておりません。もう前回お答え申し上げたとおりでございます。
  288. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまのあなたの資料要求は、理事会でそれを要求することにきのう勇めましたので要求いたします。
  289. 渡辺武

    渡辺武君 前回私があなたにいろいろ御質問したことは架空のことを申し上げたのじゃないんです。私も根拠のある確実な資料に基づいてあなたに御質問したわけです。ところがあなたは、その事実を調査されないままで、やれ適切な処理をしているとか、不公平はやっていないとかというような御答弁をなされた。私はそのときには第一回のことでもあるので、あえてあなたの適正な処理をやっているという、その根拠については追及いたしませんでした。しかしきょうは違いますよ、きょうはこの前払が質問してから一カ月たっている。いいですか、その一カ月の間、あなたは調査も何もなさらなかったのですか、どうでしょうか。もし調査をされないとすれば、国会を軽視するもはなはだしいと思う。また同時に、あなたが関税局長として責任のある立場に立っている以上、職務怠慢だと言わなければならない。調査したかどうか、その点をひとつおっしゃっていただきたい。
  290. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) これは調査するとかせぬとかいうことじゃございません。だが、責任を持って人事関係のことは関税局で責任を持ってやっておるのでございますので、前回お答え申し上げましたとおり、私は個々の方がどういう組合に属しておるか存じませんけれども、適正にやっているということを申し上げたまででございまして、責任は私のところにありますので、調査する、せぬという問題ではございません。常にそういうことでやっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  291. 渡辺武

    渡辺武君 常にやっておるとおっしゃるけれども、私は不当な差別が行なわれているということを事実に基づいてあなたに質問している。あなたも、と思う、なんてことじゃなくて、事実に基づいてやられていないならやられていない、やられているならやられている、公明正大な態度でこの委員会で御答弁なさっていただきたい。そうでしょう。事実を調査もせず適正な処置が行なわれているとか、公正に行なわれているとか、これはいい加減な答弁じゃないですか。委員会であなたはうそをつくつもりですか。国会を軽視するもはなはだしいと言わなければならない。私は調査してくださいということを要求している。調査しますか、事実を。
  292. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 私は責任を持ってお答えをもちろんしております。しかし、どういう方がどういう組合に入っておるとか、そういうことを一々調査をしてやりますことは、かえって全体の非常に円滑にいっております、和気あいあいのうちにやっております各税関の空気を乱すことになると思うのです。そうじゃなくて、私はこの間も申し上げましたように、とにかく法律の趣旨に従いまして私も一々見ております。見て、従来の関税局長も一々全体のあれを見ましてやっておるところでございまして、いま申しましたように、何組合に属しておるかということは私も存じませんが、これは責任を持ってお答えしております。間違いございません。
  293. 渡辺武

    渡辺武君 答弁にならぬ答弁ですよ。あなたの目からは和気あいあいにやられているかもしれないけれども、被害を受けた労働者の立場に立ってごらんなさい。深刻なものです。また、これはもう少しあとから明らかにしますけれども、税関で働く労働者一般は決して和気あいあいとやられているなんということは考えていない。私は事実をもってあなたに質問している。あなたが責任を持って答弁するなら、事実に基づいて答弁していただきたい。  それでは次に人事院の給与局長の尾崎さん、お見えになっているんですか——前回の御答弁を私承っておりますと、関税局の定期昇給などについての不当な差別については、救済機関があるので、労働者がそこに提訴すればよろしいと、人事院としては特別に調査することはしないというような趣旨のことをお答えになりましたけれども、その後、人事院としてこの税関の不当差別の事実ですね、調査されたかどうか。
  294. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 前回も申し上げましたように、私ども給与当局といたしましては、いろいろなそういう実情についてできるだけつまびらかにすることが必要でございますが、ほかにいろいろ仕事もございますので、当面の問題につきましては、大体各省とも現在の段階では昇給延伸者というのは大体二%程度というふうに把握しております。で、税関の場合もそれと大同小異というふうに考えておりまして、その点では各省に比べて非常に違うということは現在の段階ではないんじゃないかということでございまして、個々の問題につきましては、私どもの人事院といたしましては、特別に公平局を設けまして、その担当が行なうという中の役割りになっておりますので、そういう関係で処理いたしたいということであります。
  295. 渡辺武

    渡辺武君 この前と同じような御答弁をなさっておられる。しかし、私はこの前いろいろ具体的な根拠のある資料で関税局がほかの官庁と比べて異常に不当差別をやっている。特に定期昇給延伸ということについて、勤務成績が良好でないということを理由にする延伸者の数が非常に多い。このことは全税関労働組合員、ここに集中している。だから、不当差別の疑いが非常に濃厚じゃないかということをあなたに申し上げた。定期昇給延伸者の比率が全体の労働者の中で何。パーセントあるかどうかなんというようなことを私は申し上げたのじゃない。いいですか、私がこの委員会であなたに質問しない前ならば、いまあなたの答弁を伺って、じゃよろしくお願いしますと言っても、あるいは済むかもわからぬ。しかし、私はこの前、いま申しましたように十分信頼のおける資料に基づいてあなたに質問している。それからもう一カ月たっているんですよ。国会でこれだけ問題にされて依然としてあなた方は……。あなた方の自身の任務でしょう、人事院の。それをやろうとしない。それはお忙しいこともあるでしょう。しかし、別の問題とは違うんです、これは。法を無視して全く不当な差別待遇が行なわれ、その対象になった労働者は非常に深刻な苦しみを抱いている。大問題ですよ、これは。頭をかしげていらっしゃるけれども、調査すればそれくらいのこと頭をかしげなくてもすぐわかる。それをまだやらないというのは、あなた方自身の国会を軽視すること、私ははなはだしいと思う。特に人事院として、あなたよく御存じのとおり、給与法の第二条の第三号、人事院の権限がはっきりきめられておりましょう。あなた方は被害を受けた労働者が、これが提訴して私の問題を取り上げてくださいということを受動的に待つまでのこともない。あなた方職権で、給与法で定められたいろんな状態が、これが適正に運用されているかどうかということを調査する権限をちゃんと持っているのです。そうでしょう。あなた御自身御存じだと思いますが、念のために読んでみますと、第二条の第三号「職員の給与額を研究して、その適当と認める改定を国会及び内閣に同時に勧告すること、」、それからその次が問題「この法律の実施及びその実際の結果に関するすべての事項について調査するとともに、その調査に基づいて調整を命ずること」とはっきり書かれている。職権でできるのですよ。何でやらないのですか。私やってほしいと思うのですけれども、どうですか。これからすぐおやりになる意図があるかどうか。
  296. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、いま御指摘になりましたすべての事項を調査するというのはもちろんでございますけれども、予算の範囲内かつ業務の繁閑の関係もございまして、あらゆることについて調査するということは事実上それは不可能でございます。したがって、私どもとしてはやはり全体としてのバランスという関係を維持していく、適正に持っていくように維持するということが当局としては任務ということにならざるを得ないわけでございまして、そういう点で申し上げますと、先ほど申しましたように、各省庁に比べて税関当局の昇給延伸の割合というのが非常にはなはだしく違うということではないわけでございます。そういう点から申しますと、さらに個々人の問題を調べるかといえば、それは先ほど申しましたように、私どもの中ではそういう部局を特に設けておるものでございますから、それはそれでやっていくというたてまえになっているわけでございます。
  297. 渡辺武

    渡辺武君 それでは特に設けている部局でもってやりますか、調べますか、この実情を。税関の実情ですよ。すべての官庁のあらゆる問題を調べろなんて言っているのじゃない。この税関の実情、あなた方やるつもりがありさえすればできることでしょう。
  298. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 個々の問題につきましては、訴えがございました場合にそれをやるというたてまえになっておるわけでございます。
  299. 渡辺武

    渡辺武君 私は訴えを待ってやってくださいと言っているのじゃない。あなた方職権でできるからおやりなさい。やるのが当然ですよ、これは。国会で私がこうやって問題にして、それも架空のことを言っているのじゃない。確実な根拠に基づいて言っている。あなたは調査もしないで、ほかの部局と変わりはないのだなんて、そんなこと言えますか。私は調査をして、ほかの部局と違っている、特別に異常な事態が起こっている。ひどいですよ、この税関でやっていることは。だからこれは国会で問題にしている。  もう一回聞きますよ。あなた方自分の法律で与えられた権限を正しく適用して、職権をもって調べるかどうか。どうでしょうか。
  300. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 御指摘の問題は、結局は個々の問題、私どもが思いますのには、個々の問題まで入ってまいりまして、そうしてその職員の勤務成績が良好であるかどうかということまで突き詰めていく必要がございます、この問題は。そういう点を、私どもの給与当局としてそこまで個々人について勤務成績が良好であったかどうかということを、公平な観点で突き詰めていくということは、私どもの給与当局としてはそこまでいくことは不可能でございます。それはやはり個々の問題として公平的な観点で処理するという以外に方法はないというふうに思います。
  301. 渡辺武

    渡辺武君 理由にならぬじゃないですか。個々の人がこれは確かにかかわっている、しかし全体としてみれば定期昇給延伸者、これが勤務成績が良好でないという理由によって延伸をさせられているという、ほかの部局にあまり例のないような事件が頻発している。しかもそれが全税関労働組合に集中している。これは定期昇給延伸だけじゃないのです。特別昇給もやられていない。昇任も昇格も、特に全税関労働組合員には異常と思われるほどにやられていない。もちろん全税関労働組合員だけじゃない、税関というところは婦人に対して特別な差別をやっている。婦人で定期昇給延伸者、昇任、昇格のやられていない人はたくさんあります。異常な事態ですよ、これは。だから私は申し上げている。しかし幾ら押し問答を繰り返しても、あなた方は自分が法によって与えられた、国民によって与えられた権限さえも適正に運用してこの問題を取り上げようとしないということが明らかになりました。実際これはもうあきれ返った態度だと言わざるを得ない。私はあなた方がそのような態度をとっていらっしゃる以上、私は税関で行なわれている差別の実態について、もう少し事実を皆さんに申し上げざるを得ない。時間は惜しいけれども、そのことをやらざるを得ない。たとえば谷川局長はこの前の御答弁の中で、「りっぱな勤務をした者も、そうでない者も一律に定期昇給の時期になったら昇給をしていくということは、かえって悪平等じゃないでございましょうか。」ということを言っておられる。この御答弁を伺うと、まるで定期昇給延伸という処置を受けた人は勤務成績が悪かった人だというふうに受け取られます。ところが私の調べた事実は、全くこれと正反対です。勤務成績の良好な人が勤務成績不良だという理由によって定期昇給延伸措置を受けている。たくさんあります、この例は。  全部申し上げることはできないので、私は一、二の実例を御参考までに申し上げてみたいと思う。まず、横浜税関の千葉税関支署の保税課に勤めていらっしゃる成尾衛君という人がおります。この人は昭和四十三年三月の十五日、関税法違反犯則摘発功労者として、税関長の表彰とともに金一封をもらっている人です。しかし税関長の表彰を受けたまさにその日、つまり昭和四十三年の三月十五日になりますけれども、その日の勤勉手当は通常の場合よりも〇・〇五カ月分減額されて支給されている。そうしてその一カ月あとの四月一日には、通常昇給すべきところが昇給がなかった。そこで成尾という人が上司である森監視課長に、なぜ昇給しなかったのかと理由を尋ねたところが、税関長表彰は勤務上の一部ではあるが反則摘発そのものになされたものである、君は一年を通じて総合的に成績が悪かったのであるという理由だった。さらに成尾さんは、同年十月の一日に通常昇格すべきところを昇格しなかった。だからこの成尾さんの同僚は、昭和四十三年四月一日に定期昇給をして、三カ月あとの同年七月一日に七等級に昇格しているのに、この成尾さんの場合には四月一日に定期昇給すべきところ三カ月延伸させられ七月一日にやっと昇給、同僚は昇給後三カ月たって昇格しているけれども、成尾君の場合は十月一日には昇格するはずですが、とうとう昇格しないで、さらに三カ月おくらせられて昇格した。この昇格をおくらせた理由についても聞いたところが、課長は、六年間勤務成績が不良だったというだけで、何らほかの根拠を示さない。しかしこの成尾君は、六年間を通じて無断欠勤は一回もなかった。長期欠勤もない。ところが昭和三十九年には、前に表彰を受けたもののほかに人命救助をしたということで税関長表彰を受けて、水上警察署からは金一封を受け取っている。なおこのときの税関長の表彰のことばの中に、国家公務員として模範になるものだということばが入っている。それだけじゃない、この成尾君の職場でも、かつて三回ないし四回も税関長から表彰を受けた課に属して、表彰を受けた課の構成員の一人なんです。こういう人が、これがただ勤務成績が悪いという理由だけでもって、ほかに何の根拠もない。どういうことが勤務成績が悪いということに該当するのか、その説明も何にもない、そして定期昇給延伸措置を受けている。これは一つの例です。  もう一つ例をあげましょう。これは東京税関の外郵出張所勤務の酒井保という人、この人は昭和二十六年三月に旧高専を卒業して、人事院五級職試験に合格して、昭和二十六年十一月十六日に横浜税関監査部に旧五級一号俸として採用され、昭和二十七年に東京税関に配置がえされて今日に至っているけれども、酒井君はこの間、昭和二十七年の通信研修の結果がきわめて良好であったということで、税関長表彰を受けた。その翌年の二十八年四月に特別昇給をした。その後さらに関税法違反にかかる犯則事件摘発によって大蔵大臣表彰を一回と税関長表彰を二回も受けている。これは普通の概念で言えばまことに勤務成績良好な人だと思わなきゃならぬ。ところがこの酒井君は、現在同僚や一年後輩はどんどん昇任、昇給しているのに、全税関組合員を除いて全員が特別昇給を一回ないし二回も行なっている、役付きにもなっているというのに、いまだに一回も昇任していない、役付きになっていない。この結果、酒井さんは同期の人と比較して賃金の面では一年間約十万円から十五万円の違いが出てきている。同期のうち最も早く昇任し、最も多く昇進している人と比べると、年間二十万円もの差が生まれた。そこで酒井さんが、なぜ一体この昇任がおくれているのか、また職員ならだれでもが命ぜられている都外研修出張、その他の出張からはずされているということについて質問したところが、部長も税関のカウンセラーも指摘することはない、総合的に判断されてやったことだ、こう言うだけで、一向に理由を示さない、これも一つの例です。  私は時間がないからこのたった二つの例でがまんしなければなりませんけれども、もしあなた方が必要とするならたくさんの例を申し上げることができる。たくさん例をここにいま持ってきております。これは一、二の例を申し上げたにすぎません。ところが、だれが見ても成績良好だと思われる人が、総合的判断だとかあるいはまた勤務成績良好でないと判断したという、理由にもならない理由によって定期昇給延伸の措置を受けている。その反面で、だれが見てもこれは勤務成績上どうか、問題があると思われるような人がどしどし昇任、昇格措置を受けている。  こういう例がある。たとえば汚職で懲戒処分を受けて一たん降格された人でも特別昇給をして、そうしてその後さらに昇格しているというような例、これを一、二、例の一つとして申し上げてみたいと思います。  名前はこういう事例ですから、申し上げませんけれども、横浜税関の山下埠頭出張所につとめていらっしゃるSという方ですけれども、この人は昭和三十八年から昭和三十九年のころ、汚職で懲戒処分を受けた。当時五等級から六等級に降格された。ところがその後昭和四十年以降特別昇給を三回行なって、このときに受けた処分を事実上回復してしまった。現在五等級に昇格して係長となっている。  もう一つの例をあげますと、神戸税関のTという係長、係長になる前は汚職で懲戒処分を受けたけれども、現在は五等級に昇格して係長となっている。こういうことなんですよ。  私はいまも申しましたように、時間がないからほんの一、二の例を申し上げただけだけれども、しかし、この一、二の例を見ていただいただけでも、税関というところがどんなひどい人事をやっているかということがおわかりになっていただけると思う。特に定期昇給の延伸、これを勤務成績良好でないという理屈をつけてやっているということが、このひどい差別待遇を生み出している根源であるということがわかっていただけると思う。それから、ついでですから言ってしまいますけれども、この前、谷川局長は、先ほども申されたと思うのですけれども、決して私どもはどの組合に所属しているからなんということでは差別はしておりません。決して不公平な取り扱いはしておりません、こういうことを言っておられる。根拠のある調査もなさらないで、何の根拠にも基づかないで、ただそういうことをこの委員会で言明される。これはいいかげんな無責任答弁だというよりしようがない。私はもう一つ全税関労働組合に対する組合員であるということを理由とする差別が行なわれているという明々白々の証拠をここに一つ申し上げておきましょう。昭和二十五年に五等級試験に合格して二十六年横浜税関に採用されたSという方、この方は本年五月まで全税関の組合員でしたけれども、このSさんの同僚はすでにずっと以前から昇格して係長になっていたのに、Sさんはいままで昇任も昇格もしていなかった。そこで全税関横浜支部は、不当な差別であるとして数回にわたって当局に交渉した。人事院とも交渉した。ところがSさんが全税関組合員である間は昇給はただの一回も実現されていない。ところがSさんがことしの五月に組合を脱退するやいなや六月一日付で五等級にさっそく昇格する。そうして職制に昇任した。引き続いて七月一日付で特別昇給をした。Sさんと同じ資格で同じときに採用された横浜税関の藤田という方は、現在もなお全税関の労働組合員であるがゆえに六等級のままで据え置かれている、こういう次第です。また組合としての要求を机の上にペン立てに書いておいたというだけで特別昇給もやられなければ、定期昇給も延伸させられたという例もある。あるいは要求を書いたりボンを胸にぶら下げたというだけで特別昇給を全部カットされたという例もある。これはたくさんあります。これらのことは全税関の労働組合に対して全く不当な差別措置が行なわれているということを、私は明々白々と示す事実じゃないかと思う。谷川局長はこの問題についてどう思われるか。こういう実情を自分でお調べになるおつもりがあるかどうか。
  302. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) いろいろお話を伺いまして恐縮しておりますが、まあ、なんでございます、犯則、つまり密輸の取り締まりをやって表彰を受けるということは、これはまあ税関でやっておりますが、私のところでやっておりますが、これは密輸摘発についての表彰でありまして、まあ昇格とか昇給になりますと、一年間なり、それからまた勤勉手当の場合はそれ以前の六カ月なりの勤務状態を、総合的と申し上げて恐縮でございますが、全体として評価をいたしまして、そうしてりっぱな方を昇格、昇任させるということになるわけでございます。ことに昇格になりますと、これは幹部でございますから、ただ単にいろいろ監視がじょうずだという技術的なテクニックの点でのりっぱな成績が上がっているというだけでは登用するわけにはいきません。税関の大ぜいの部下を掌握する幹部の登用をする場合でございますから、ただ密輸の取り締まりで功労があった、それからいろいろ鑑定のほうの知識が豊富であるというだけでは幹部に登用するわけにはまいりません。そういう点をはっきり申し上げておきたいのでございますが、でございますから、単に税関長から表彰されたからといって、いまお話がありましたようなふうには私ども取り扱いをいたしません。りっぱな仕事をしていただいたことは確かでございますけれども、たとえば幹部になりますと、別な判断を要します。それから昇給をさせるということになりますと、これは、私は昇給は権利じゃないと思っております。だからこの間申し上げたのですが、やはりりっぱな人とそうでない人と区別しませんと、全体の士気にも影響いたしますから、それは総合的と申し上げて恐縮でございますが、やらせていただかざるを得ないと思っております。それからこまかい話になりますが、組合を脱退したから昇格したとか、それから懲戒を受けた者を知らぬ間にまたそれを救ってやったとか、そういうことは絶対にございません。まあ非行を犯したことによって懲戒処分をいたしますが、その後やはり前非を悔いてりっぱな仕事をする方につきましては、それ相当の処置をいたしませんと、数年前に懲戒処分を受けたから、これもアウトだということになったら、これはこれこそ私は人事管理上非常に暗い面が出てくると思います。ですから一度非行を犯しましても、その後それを悔いてさらにそれをカバーするだけのりっぱな行為をしてくれる者につきましては、また別な判断で、いつまでも数年前の非行を追及することをしてはいかぬ、かように思っております。それからまたこまかい話になりますが、ペン立てを立てておったから、闘争のリボンをつけておったから不利な取り扱いをしたということですが、これはそれだけのことではやりませんですよ。それはいろいろそれにまつわる、やはり職場の秩序を乱すという事実があったからそれ相当の処置をしたわけでございまして、私はここで具体的に申しません。もう申しませんが、リボンを、職場の中で反対闘争か何かのリボンをつけておったからおまえはもうだめだと、それからペン立てを、何か知りませんが、管理者の気に食わぬペン立てを立てておったから不利だ。それだけじゃございません、よくお調べください。やはりそれにまつわる、管理者の命令に従わない、職場の秩序を乱す、その人をそのまま扱ったらやはり管理体制が確立できないという判断が管理者にありましたからそうすることになりましたわけで、決してそういうことはめちゃくちゃなことをやっているわけじゃございません。何かお話を伺っておりますと、ほんとうに税関という職場は暗い職場のようにあれするのでございますが、私は今後とも注意はいたしますが、気持ちよく皆さんが働いていただけますように、それからまた私どもも職員の皆さんをよく指導いたしまして、みんながその定期昇給の時期には昇給してくださるというふうに、勤勉手当をもらうときにはみんなが所定の勤勉手当をもらえるように、みんながりっぱな仕事をしてもらうように、これからも今後とも指導していきたい、かように考えております。
  303. 渡辺武

    渡辺武君 私はあなたに一般論を伺っているわけじゃないのですよ。私は事実を申し上げた。その事実についてあなたはちゃんと把握しておりますか。
  304. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) ここで私その事実を一々お答えをしていきますことにつきましても、個々の方の問題でございますから、名前が出ましたので、たいへん恐縮でございますから一般的に申し上げたのでございますが、決して抽象的な——総体的にお聞きいただきますと抽象的じゃございません。もう一度申し上げますと、密輸の摘発につきましての表彰を受けても、だからといって昇給しない場合もある、賃金をカットされる場合もございます。それからいま申しましたように、特に幹部に登用する場合には、単なる技術的な面で優秀であるというだけでは登用はいたしません。やはり税関の中核として部下を率いてやっていけるだけの指導的な人でなければ登用いたしません。そういうことで、決して抽象的なお答えはしていないつもりでございます。
  305. 渡辺武

    渡辺武君 やはり抽象的であることは明らかです。私はあなたにうそを申し上げているのではないのですよ。職場の秩序を乱したというなら、どういうように職場の秩序を乱したのか、上司の命令を聞かなかったというなら、どういう条件のもとで、どういう命令が出て、どういう理由で聞かなかったのか、そういう点を明らかにしてもらわなければ、あなたの言うことをそのままなまでもって聞くわけにはいかぬ。それからまた、私は一、二の例を申し上げただけなんだけれども、全税関労働組合の約六十人に対して、私数字をあげました。定期昇給延伸、しかも勤務成績良好でないという理由でもって定期昇給の延伸が行なわれている。一つ二つではないのです。きょう申し上げたのは、そのうちの著しい例を一、二少ない時間の中で申し上げたにすぎない。これらの実情をよく調査もされないで、ここでもっていい加減なことを言われたって、だれも信用できるものではないですよ。一般論でどのように取りつくろうとも、現実に行なわれている事実は否定すべくもない。調査されますか、どうですか。
  306. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 大蔵の当局といたしましては、給与法なり人事院規則に基づいて適正にやっているつもりでもございますし、そのまた自信もございますが、しかし一方、渡辺委員言われたような、これまた批判があるとすれば、われわれとしてもその批判をまた聞くべきであろうかと思います。そのような批判を心いたしまして、今後ともそのようなことがないようにつとめるつもりでございます。なお、一つ一つの個人の名前をあげられまして、この委員会におきましていろいろと討議することはいかがであろうかと思います。これはひとつ避けたいと思いますので、個々の具体的な例は、われわれのほうからは答弁といたしましては遠慮させていただきたいと思います。
  307. 渡辺武

    渡辺武君 それでは実情をよくお調べになりますですね。もしお調べになったら報告していただけますか、その点どうでしょう。
  308. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 幾度も申しておりますが、これは私のところの責任でございまして、最終的に私が把握をいたしまして、いま政務次官もお答えいたしましたように、責任を持って、決して不公平なことはもうしませんと申しておりますので、これをひとつお信じいただきます以外に何ともしようがないのではないか、最終的に私がやっておることでございますから、先ほど政務次官からもお答え申し上げ、私かうもお答え申し上げましたように、今後ともひとつ外部から不信をこうむらないように、従来以上に適正にやりますということを申し上げておりまから……。
  309. 藤田正明

    説明員(藤田正明君) 実情を調べて云々ということでございますが、実情を調べますと、また個個の問題に立ち入ってきますし、個人の名前も出ることがあるかと思いますが、ただいま谷川関税局長から申し上げましたように、そのような御批判があるとすれば、今後ともその点は十分留意いたしてやっていくつもりでございます。
  310. 渡辺武

    渡辺武君 今後留意して不公平な処置をやらないように、この委員会局長とそれからまた政務次官が言明されたということを私はっきり記憶しておきます。  人事院の方に伺いますけれども、先ほど申しました給与法二条に基づいて、実情把握の権限を持っている。私はこれはただ単なる権限ではないと思う。人事院として、その与えられた機能を正当に果たすために当然やるべき義務だと思う。また組合から人事院に何回も行って、これら実情について、あなた方に詳しくお話をしているのじゃないかと思いますが、こういう実情を把握しておられますか、また把握しておられないとするならば、人事院としてその権限を適正に生かして、私は調査さるべきだと思う。その点どうですか、重ねてお伺いいたします。
  311. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 人事院と申しましても幾つかの機能がございますけれども、私は給与のほうの担当でございますが、給与のほうといたしましては、昇給問題といたしましては、法令の上で昇給期間を満たし、そうして勤務成績が良好であるという場合には昇給をすべきものでございまして、そうでなくて勤務成績が良好でない、良好であるという上司の証明が得られないという場合には、これは昇給ができないという法令の規定になっておるわけで、その関係から申しますと、いまのお話の関係といたしましては、適法であるということに結局なるかどうかという問題でございますけれども、まあ個々の問題になってきますと、やはり当然われわれのほうの調査をかりにいたしましても、一応少なくともかっこうとしては適法であるという形になってくるわけでございまして、それ以上私どものほうの局としては入れないということになるわけでございます。したがって、その問題はさらにほんとうにそうであるかどうかという問題になりますと、これは個々の問題で実情を公平に調べるということになってまいりますから、それは個々の問題として公平局がございますので、個々の問題として検討処理するというたてまえになっておりますので、そういう方法で処理をいたしたいということでございます。
  312. 渡辺武

    渡辺武君 私はね、手続をあなたに伺っているんじゃないですよ。そういう手続になっているぐらいのことは私も知ってますわ。いま私が申し上げたのは、税関の実情なんです。不当な差別をやっている。違法行為をやっている。その事実を申し上げた。それを調べもしないで、調べても結局のところは適法だということになる。そうすると、個々の問題に入ってくるかうそれはまたそれでもって提訴すればよろしいと。一体表面的に適法だなんていうことにどうしてなってくるんですか、あなた調べもしないで。だから、そういうことになるかどうかわからぬからお調べくださいと言っている。それがあなた自身の権限でしょうが。どうですか。
  313. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 少なくとも税関のほうでかりに昇給の延伸ということが勤務成績のゆえをもって行なわれたという場合には、法令の規定によって勤務成績の良好であるという証明が得られなかったということになるわけでございます。税関のほうでそういう手続がなされてないというふうには、私どものほうとしまして承知しておりません。その手続はなされておるということは確かでございます。ですから、そういう点は適法であるということになるわけでございます。ですから、それ以上の問題につきましては、個々の問題として処理せざるを得ないということだと思います。
  314. 渡辺武

    渡辺武君 手続を伺っているんじゃないですよ。手続は何度おっしゃられたって、ああそうでございますかと言うにすぎない。いま税関で行なわれているこの不当なやり方ですね、これは給与法の適用に誤りがあるからこそこういうことになっている。そうでしょう。特定の組合員に対して、勤務成績が良好でないということを理由にして不当な差別が行なわれている、この点を私は申し上げているんです。何回言っても押し問答になりますかう、私はあなたに要望しますけれども、あなた方職務に忠実であるならば、法によって与えられた権限を正しく行使して、独自な立場で職権によって調査すべきだと思う。  さて、いま谷川局長もそれからまた政務次官も、今後不公平なことはやりませんということを申された。しかし、幾らここで皆さんが言明されても、いままで不公平をやるに至ったその根源があるので、その根源を改められない限り、私はあなた方の言明を信ずるわけにいかぬ。言明していただいたことはこれはけっこうだ。大いにこれから不公平なことをやらないようにしていただきたい。しかし、それを具体的に保障するために、やはりいままで不公平をやるに至ったその原因を明らかにして、これを取り除くようにしていかなければならぬと思う。そこで、なぜ一体このようなひどい差別処置、労働者に対する不当な、言ってみれば懲戒処分的な行為が行なわれたのか。その一つ理由は、関税局が人事院の出した給与実務通知甲第三二六号、人事院規則九−八の運用についてというのがありますが、これの第一項に基づいて、さらにまたこれを悪用しているところに私は一つの大きな理由があると思う。谷川局長は、前回関税局は人事院のこの甲第三二六号なる通知に基づいてやっている旨答えられておりますけれども、この通知の第一項は人事院規則九−八の三十四条にいう定期昇給の資格要件としての勤務成績の証明は、「勤務評定記録書その他その者の勤務成績を判定するに足ると認められる事実に基づいて行なえ」と書いております。定期昇給の資格の判定に勤務評定など持ち込むという人事院のこの通知は、国家公務員法及び給与法に反する違法なものである、このような内容の通知を出すことは人事院の越権行為だと私は思う。しかしきょうはもう時間もないので、この問題に入る前に定期昇給の資格の判定に、勤務評定記録書やあるいはその者の勤務成績を判定するに足ると認められる事実など持ち込むことが、不可避的に定期昇給と、恣意的、差別的、懲罰的に運用させることになるという点を明らかにしたいと思います。  まず関税局長に聞きますけれども、税関では勤務評定は年何回やるのか、また定期昇給は年に何回あるのか、この点まず伺いたいと思う。
  315. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) お答えいたします前に、もう一ぺん御了解得なければならぬと思いますが、何かいまのお話を伺っておりますと、私たちの態度を御了承をいただいたのですが、従来不公平な取り扱いをしておったように聞こえるのでございますが、従来とも私ども適正にやったと確信をいたしておりますが、今後とも従来以上に注意をしてやりますと申し上げたのでございますから、誤解のないようにお願いしたい。  それからいまの御質問の勤務評定は、年一回でございます。それから定期昇給は年四回実施をいたしております。
  316. 渡辺武

    渡辺武君 年一回の勤務評定で、年四回行なわれる定期昇給の資格要件をどういうふうにして判断できますか、判断できないじゃないですか。
  317. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 私の答弁お答え申し上げたのがちょっと舌足らずでございました。年四回と申しましたのは、そういうチャンスがあるけれども、一人の方につきましては年一回しかありません。年四回昇給のチャンスがございます。しかし同一の方につきましては年一回しか昇給いたしません。その何回かに分けて一いろいろな方を四回に分けましていたします。
  318. 渡辺武

    渡辺武君 年一回やるという勤務評定は何月ですか、私は三月と聞いていますけれども、どうですか。
  319. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 三月でございます。
  320. 渡辺武

    渡辺武君 定期昇給は、一月、四月、七月、十月、この四回行なわれる。その機会が個々の人に与えられているわけです。だとすればこの四回についてこの勤務評定を取り入れて、そうして勤務成績良好かどうかといろ判定を下す、どうしてできますか、三月にやるやつをですね、たとえば十月の定期昇給、三月の勤務評定でどうして適用できますか。
  321. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 定期に勤務評定をいたしますのは、三月に一年間の勤務の状況を、いろいろ職場の職務の程度に応じまして判定をいたします。しかしその昇給の機会は、いま申しましたように四回ございますので、その後の勤務の状態をしょっちゅう見ております。全体の、これは公表はいたしませんけれども、紙に記録をいたしますのは一回でございますが、もうそれで回定しているわけじゃございません。常にその方の勤務の状態を見ておるわけでございますので、御心配ないと思われます。
  322. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、その勤務の状態を見て、そうして定期昇給の適格要件である勤務成績が良好かどらかということを判定する人はだれですか、どういう立場にある人ですか。
  323. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) これは申し上げるまでもございません。職場には係長もおれば、課長補佐もおる、課長もおりますので、ある課の者の昇給につきましては、課長がいろいろその他の幹部の意見も聞きまして、常時把握をしております。それを上級の者に上申をする、推薦をする、それをまあ人事担当の部長が、まあ税関で申しますと総務部長になりますか、全体をにらんで、全税関のことをにらんで、どなたを昇給させるかというふうに決定をさせることにした、そうして税関長の判こをいただくわけであります。
  324. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、結局のところ、いわゆる監督すべき地位にある人たち、普通のことばでいえばいわゆる職制、これが労働者の勤務状況を見て、そうして定期昇給させるだけの勤務成績良好かどうかということを判断すると、こういうことになりますね。局長はこの前の御答弁の中に、一人でやるんじゃない、たくさんでやるから、だからして決していいかげんなことはやらぬのだというような趣旨の御答弁をしておられましたが、一人でやろうと、複数でやろうと、その立場が職制である以上、もしこれらの人たちが意思を一致させて、全税関労働組合員であるからこれは勤務成績良好だという証明を与えないようにしようとすれば、これは容易にできることじゃないですか。それについて適正な判断を行なえるということは何の保証もないじゃないですか。だとすれば、勤務成績を判断をしてその上で定期昇給をさせることができるかどうかということをきめるというようなやり方では、必然的に私は判断の中に職制の悪意的判断が入っておる、こうならざるを得ないと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  325. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) 私がこの間もお答え申し上げたのと逆に御解釈をいただいておるのでたいへん残念でございますが、私どもはそういうことのないように複数の者で、ちゃんと人事院の関係の規則にもそう書いてございます、複数でやれと。一人じゃいま申し上げましたように恣意的な判断がまじるおそれがなきにしもあらず、それを複数で牽制しながら適正な評価をするようにということになっておるわけでございます。私どもそれに従ってやっておるわけでございまして、何人もが話し合われて一人の人を悪い評価をするようにするということはこれは考えられません。これはひとつ私どもを信用していただきませんと、これはどんな職場でもそうだろうと思います、勤務評定のやり方というものは。これはもうひとつ信用していただきまして、決していまお話しのあったようなことはやっておりません、法令に従いまして適正にやっておりますので。
  326. 森元治郎

    委員長森元治郎君) そろそろ締めくくってください。
  327. 渡辺武

    渡辺武君 委員長のおことばもありますので、私まだこの問題についてずっと明らかにしたいと思いますけれども、なお残された点はいずれの機会にすることにしまして、最後に、先ほども申しましたけれども、今後ともということがついておりましたけれども、不公平なことはやらぬ、差別はやりませんということを申されましたけれども、現実にいままで差別が行なわれている。そしてその根拠になっている一つの大きな問題点は、これは定期昇給という賃金の問題に、これは日常労働者の意識からすれば、労働者は普通に勤務すれば、当然に昇給するものだと思っている。そこへ勤務成績が良好かどうかという判断を持ち込む。そして職制が、この人は定期昇給させていいかどうかということを判断して、そしてやっている。ここにはどうしても職制の恣意的な判断、いま谷川局長は、絶対そんなことはありませんと言っているけれども、事実そういうことになっているから、私はこの委員会で問題にせざるを得ない。税関というところは、労働組合を分裂させて、そしてそのもとのいわゆる第一組合、これに対して定期昇給の延伸措置というものを武器にひどいことをいままでやってきた。その結果がいま私が質問しているような事態になってあらわれてきている。その根源は、いま申しましたように、定期昇給というそのことの中に、労働者の勤務成績が良好かどうかという恣意的な判断がどうしても入り込むようなやつをそこに取り入れているというところに、私は一番大きな原因一つがある。したがって、あなた御自身の言明に、もし責任を持たれるなら、こういうやり方はやめるべきだと思う。その点どうですか。
  328. 谷川寛三

    説明員(谷川寛三君) これはどうしようもございません。法律に、一般職の職員の給与に関する法律の第八条第六項にそう書いてあるのです。とにかく「十二月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは、……昇給させることができる。」と、こう書いてあるのでありまして、それを受けて人事院規則がございまして、その昇給させようとする者の勤務成績につきまして、監督者の証明を得ておかなければいけませんから、行なわれる場合は、いま申しましたように、たいへん残念でございますけれども——私いつも申しますように仲間でございますから、皆さんに昇給の時期になったら昇給していただきたい、喜んでいただきたい、そういう気持ちが一ぱいでございますが、それは悪平等になりますから、法令の定めるところに従ってやっておりますから、これはいかぬということになりますとどうしようもないということになりますので、御了承いただきたいと思います。
  329. 渡辺武

    渡辺武君 いま法律的な根拠と言われましたが、しかし、この法律的根拠は全然間違っております。そのことだけ申し上げて私の質問はきょうはやめておきます。
  330. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会