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渡辺武君
理由にならぬじゃないですか。個々の人がこれは確かにかかわっている、しかし全体としてみれば定期昇給延伸者、これが勤務成績が良好でないという
理由によって延伸をさせられているという、ほかの部局にあまり例のないような
事件が頻発している。しかもそれが全税関労働組合に集中している。これは定期昇給延伸だけじゃないのです。特別昇給もやられていない。昇任も昇格も、特に全税関労働組合員には異常と思われるほどにやられていない。もちろん全税関労働組合員だけじゃない、税関というところは婦人に対して特別な差別をやっている。婦人で定期昇給延伸者、昇任、昇格のやられていない人はたくさんあります。異常な事態ですよ、これは。だから私は申し上げている。しかし幾ら押し問答を繰り返しても、あなた方は自分が法によって与えられた、国民によって与えられた権限さえも適正に運用してこの問題を取り上げようとしないということが明らかになりました。実際これはもうあきれ返った
態度だと言わざるを得ない。私はあなた方がそのような
態度をとっていらっしゃる以上、私は税関で行なわれている差別の実態について、もう少し事実を皆さんに申し上げざるを得ない。時間は惜しいけれ
ども、そのことをやらざるを得ない。たとえば谷川
局長はこの前の御
答弁の中で、「りっぱな勤務をした者も、そうでない者も一律に定期昇給の時期になったら昇給をしていくということは、かえって悪平等じゃないでございましょうか。」ということを言っておられる。この御
答弁を伺うと、まるで定期昇給延伸という処置を受けた人は勤務成績が悪かった人だというふうに受け取られます。ところが私の調べた事実は、全くこれと正反対です。勤務成績の良好な人が勤務成績不良だという
理由によって定期昇給延伸措置を受けている。たくさんあります、この例は。
全部申し上げることはできないので、私は一、二の実例を御参考までに申し上げてみたいと思う。まず、横浜税関の千葉税関支署の保税課に勤めていらっしゃる成尾衛君という人がおります。この人は
昭和四十三年三月の十五日、関税法違反犯則摘発功労者として、税関長の表彰とともに金一封をもらっている人です。しかし税関長の表彰を受けたまさにその日、つまり
昭和四十三年の三月十五日になりますけれ
ども、その日の勤勉手当は通常の場合よりも〇・〇五カ月分減額されて支給されている。そうしてその一カ月
あとの四月一日には、通常昇給すべきところが昇給がなかった。そこで成尾という人が上司である森監視
課長に、なぜ昇給しなかったのかと
理由を尋ねたところが、税関長表彰は勤務上の一部ではあるが反則摘発そのものになされたものである、君は一年を通じて総合的に成績が悪かったのであるという
理由だった。さらに成尾さんは、同年十月の一日に通常昇格すべきところを昇格しなかった。だからこの成尾さんの同僚は、
昭和四十三年四月一日に定期昇給をして、三カ月
あとの同年七月一日に七等級に昇格しているのに、この成尾さんの場合には四月一日に定期昇給すべきところ三カ月延伸させられ七月一日にやっと昇給、同僚は昇給後三カ月たって昇格しているけれ
ども、成尾君の場合は十月一日には昇格するはずですが、とうとう昇格しないで、さらに三カ月おくらせられて昇格した。この昇格をおくらせた
理由についても聞いたところが、
課長は、六年間勤務成績が不良だったというだけで、何らほかの根拠を示さない。しかしこの成尾君は、六年間を通じて無断欠勤は一回もなかった。長期欠勤もない。ところが
昭和三十九年には、前に表彰を受けたもののほかに人命救助をしたということで税関長表彰を受けて、水上
警察署からは金一封を受け取っている。なおこのときの税関長の表彰のことばの中に、国家公務員として模範になるものだということばが入っている。それだけじゃない、この成尾君の職場でも、かつて三回ないし四回も税関長から表彰を受けた課に属して、表彰を受けた課の構成員の一人なんです。こういう人が、これがただ勤務成績が悪いという
理由だけでもって、ほかに何の根拠もない。どういうことが勤務成績が悪いということに該当するのか、その
説明も何にもない、そして定期昇給延伸措置を受けている。これは
一つの例です。
もう
一つ例をあげましょう。これは東京税関の外郵出張所勤務の酒井保という人、この人は
昭和二十六年三月に旧高専を卒業して、人事院五級職試験に合格して、
昭和二十六年十一月十六日に横浜税関監査部に旧五級一号俸として採用され、
昭和二十七年に東京税関に配置がえされて今日に至っているけれ
ども、酒井君はこの間、
昭和二十七年の通信研修の結果がきわめて良好であったということで、税関長表彰を受けた。その翌年の二十八年四月に特別昇給をした。その後さらに関税法違反にかかる犯則
事件摘発によって
大蔵大臣表彰を一回と税関長表彰を二回も受けている。これは普通の概念で言えばまことに勤務成績良好な人だと思わなきゃならぬ。ところがこの酒井君は、現在同僚や一年後輩はどんどん昇任、昇給しているのに、全税関組合員を除いて全員が特別昇給を一回ないし二回も行なっている、役付きにもなっているというのに、いまだに一回も昇任していない、役付きになっていない。この結果、酒井さんは同期の人と比較して賃金の面では一年間約十万円から十五万円の違いが出てきている。同期のうち最も早く昇任し、最も多く昇進している人と比べると、年間二十万円もの差が生まれた。そこで酒井さんが、なぜ一体この昇任がおくれているのか、また職員ならだれでもが命ぜられている都外研修出張、その他の出張からはずされているということについて
質問したところが、部長も税関のカウンセラーも
指摘することはない、総合的に判断されてやったことだ、こう言うだけで、一向に
理由を示さない、これも
一つの例です。
私は時間がないからこのたった二つの例でがまんしなければなりませんけれ
ども、もしあなた方が必要とするならたくさんの例を申し上げることができる。たくさん例をここにいま持ってきております。これは一、二の例を申し上げたにすぎません。ところが、だれが見ても成績良好だと思われる人が、総合的判断だとかあるいはまた勤務成績良好でないと判断したという、
理由にもならない
理由によって定期昇給延伸の措置を受けている。その反面で、だれが見てもこれは勤務成績上どうか、問題があると思われるような人がどしどし昇任、昇格措置を受けている。
こういう例がある。たとえば汚職で懲戒処分を受けて一たん降格された人でも特別昇給をして、そうしてその後さらに昇格しているというような例、これを一、二、例の
一つとして申し上げてみたいと思います。
名前はこういう事例ですから、申し上げませんけれ
ども、横浜税関の山下埠頭出張所につとめていらっしゃるSという方ですけれ
ども、この人は
昭和三十八年から
昭和三十九年のころ、汚職で懲戒処分を受けた。当時五等級から六等級に降格された。ところがその後
昭和四十年以降特別昇給を三回行なって、このときに受けた処分を事実上回復してしまった。現在五等級に昇格して係長となっている。
もう
一つの例をあげますと、神戸税関のTという係長、係長になる前は汚職で懲戒処分を受けたけれ
ども、現在は五等級に昇格して係長となっている。こういうことなんですよ。
私はいまも申しましたように、時間がないからほんの一、二の例を申し上げただけだけれ
ども、しかし、この一、二の例を見ていただいただけでも、税関というところがどんなひどい人事をやっているかということがおわかりになっていただけると思う。特に定期昇給の延伸、これを勤務成績良好でないという理屈をつけてやっているということが、このひどい差別待遇を生み出している根源であるということがわかっていただけると思う。それから、ついでですから言ってしまいますけれ
ども、この前、谷川
局長は、先ほ
ども申されたと思うのですけれ
ども、決して私
どもはどの組合に所属しているからなんということでは差別はしておりません。決して不公平な
取り扱いはしておりません、こういうことを言っておられる。根拠のある調査もなさらないで、何の根拠にも基づかないで、ただそういうことをこの
委員会で言明される。これはいいかげんな無
責任な
答弁だというよりしようがない。私はもう
一つ全税関労働組合に対する組合員であるということを
理由とする差別が行なわれているという明々白々の証拠をここに
一つ申し上げておきましょう。
昭和二十五年に五等級試験に合格して二十六年横浜税関に採用されたSという方、この方は本年五月まで全税関の組合員でしたけれ
ども、このSさんの同僚はすでにずっと以前から昇格して係長になっていたのに、Sさんはいままで昇任も昇格もしていなかった。そこで全税関横浜支部は、不当な差別であるとして数回にわたって
当局に交渉した。人事院とも交渉した。ところがSさんが全税関組合員である間は昇給はただの一回も実現されていない。ところがSさんがことしの五月に組合を脱退するやいなや六月一日付で五等級にさっそく昇格する。そうして職制に昇任した。引き続いて七月一日付で特別昇給をした。Sさんと同じ資格で同じときに採用された横浜税関の藤田という方は、現在もなお全税関の労働組合員であるがゆえに六等級のままで据え置かれている、こういう次第です。また組合としての
要求を机の上にペン立てに書いておいたというだけで特別昇給もやられなければ、定期昇給も延伸させられたという例もある。あるいは
要求を書いたりボンを胸にぶら下げたというだけで特別昇給を全部カットされたという例もある。これはたくさんあります。これらのことは全税関の労働組合に対して全く不当な差別措置が行なわれているということを、私は明々白々と示す事実じゃないかと思う。谷川
局長はこの問題についてどう思われるか。こういう実情を自分でお調べになるおつもりがあるかどうか。