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1970-09-03 第63回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月三日(木曜日)    午前十時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森 元治郎君     理 事                 和田 鶴一君                 若林 正武君                 和田 静夫君                 黒柳  明君    委員                 今  春聴君                 佐田 一郎君                 菅野 儀作君                 田口長治郎君                 長屋  茂君                 初村滝一郎君                 矢野  登君                 山崎 竜男君                 安永 英雄君                 沢田  実君                 二宮 文造君                 渡辺  武君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部長  坂本 史郎君        法務省刑事局参        事官       吉田 淳一君        厚生政務次官   橋本龍太郎君        厚生大臣官房審        議官       松下 廉蔵君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  小島 康平君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        農林省農林経済        局企業流通部長  森  整治君        農林省農政局植        物防疫課長    福田 秀夫君        農林省蚕糸園芸        局参事官     大場 敏彦君        食糧庁業務部長  中村健次郎君        通商産業省通商        局次長      楠岡  豪君        通商産業省公害       保安局鉱山課長  伊勢谷三樹郎君        通商産業省公害        保安局公害部公        害第一課長    児玉 清隆君        会計検査院事務        総局第三局長   中村 祐三君   本日の会議に付した案件     —————————————昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十三年度特別会計歳入歳出決算昭和四十三年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十三  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 森元治郎

    委員長森元治郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度決算外二件を議題といたします。  本日は厚生省決算につきまして審査を行ないます。  この際おはかりいたします。議事の都合により厚生省決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して会議録の末尾に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それではこれより質疑に入ります。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 和田静夫

    和田静夫君 去る三月二十五日、本委員会で、私は産業廃棄物処理清掃法との関係について幾つかの問題を取り上げました。そのときの厚生省答弁には、生活環境審議会答申を待ってという部分がかなりあったわけでありますが、その生活環境審議会の第一次答申が去る七月十四日に出されましたので、再度この問題を取り上げてこの機会にお聞きをしたいと思います。  その答申は「清掃法においては、国および地方公共団体責務が明示されているが、その内容家庭ごみ中心として、それぞれの分担を定めているものである。都市産業廃棄物処理処分についても、従来からその一部は取扱ってはいるが、近年の人口の都市集中経済社会の急速な発展は、廃棄物処理に関する需要を大きく変容させている。このような事態に対処するためには、これまでの市町村を単位とする清掃事業を充実強化させることはもちろんであるが、都市産業廃棄物対策についてはあらたな観点に立って対処する必要があるものと考えられる。」、こういうふうになっています。そして市町村都道府県、国の分担がそれぞれ列挙をされているわけです。  一方、三月二十五日、本委員会で、私の質問に答えて厚生省側はこういうふうに述べています。「特別法としましての清掃法では、市町村がやるのか、都道府県がやるのか、はっきりしないということでは、統一的な処理ができませんので、たてまえとしまして基礎的な地方公共団体でございます。また、ただいま御指摘のような住民の生活に最も密接な関係にある市町村事務として行なうというたてまえをはっきりしておる。」、この清掃法体系ですね、厚生省産業廃棄物についても清掃法体系でいくと何べんも言われているわけですが、市町村中心清掃法体系と、さきに示したところの市町村都道府県、国の事務分担ということとの関連、これは一体どういうことになりますか。
  5. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) ただいまの三月二十五日当決算委員会において和田委員の御質問にお答えした厚生省答弁の中身というものは、そのとおりでありまして、城戸公害部長より当時そのとおりの御答弁を申し上げました。ただ、それと同時に、同じ二十五日の決算委員会で、同趣旨でありますが、現在においては現行清掃法運用において処理していきたいと考えている、答申を待ちたいということを私から申し上げたわけであります。いまむしろ先生指摘になりました点は、その繰り返しになる面があるかもしれません。私どもは、あくまでもやはり現在の清掃法体系、また清掃事業実態から考え現行のいわゆる市町村第一義的責任者としての立場、またそれを補完する意味での国及び都道府県役割りというもの、これをくずしていく考え方はございません。また、当時も申し上げましたように、清掃法実体、非常に都市廃棄物あるいは産業廃棄物というものがふえてまいりました今日におきまして必ずしも実体に合わない部分等もあるということは事実であります。その当時から、要するに市町村としてでき得る範囲を越えるものについて、国あるいは都道府県というものが補完をしていくということを申し上げてまいりました。現在においてもその基本的左考え方において差異はございません。
  6. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、市町村都道府県、国の分担といってみても、それは並列的な関係ではなくて、清掃法体系でいくということであったならば、これは地方自治法でも改正をしない限り、その体系をくずすことはできないのでありますが、この市町村中心清掃法体系でいくとするたらば、あくまでも市町村清掃事務処理をする、そして都道府県なり国はこの市町村事務からはみ出る部分補完する、そういう関係であると私は思いますが、いかがですか。
  7. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) そのように御理解をいただいてけっこうであります。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 またこの答申はこういうふうにも述べているのであります。「排出者責任考え方は、清掃法においてもとり入れられている。すなわち、多量の汚物や特殊の汚物について、市町村長がそれぞれ排出者に対し、必要左処理処分を命ずることができるとしている。しかし、その体制は未だじゅうぶんなものとはいえない。なぜならば、排出者廃棄物処理処分しようとしても、最終処分先が得られない場合は、その責任を果すことができない結果となるからである。このことは、従来から環境計画上解決すべき重要な課題であったが、今後は都市産業廃棄物対策の樹立および推進により、排出者責任の原則が貫けるように体制明確化する必要がある。」この点は、私はさき委員会である具体例をあげました。そしていろいろ指摘をしたのであります。その場合どうなるかとお聞きをし接した。時間の関係もありますから読みませんが、三月二十五日の決算委員会議事録第四号の七ページの下段にそのやりとりがありますけれども厚生省側廃棄物処理上の法体系と、公害防止のそれとは別だと言ってあのときも逃げられたですね。私の指摘をした具体例は、まさに企業との関係での清掃法の穴であることをこの答申も認めたことになっていると思うので、その点についてはいかがお考えになっておりますか。
  9. 橋本龍太郎

    説明貴(橋本龍太郎君) その点につきましては、またあの当時の議論をそのまま蒸し返すような形になって恐縮でありますが、当時私どもは、むしろ先生が御指摘になりました具体例について、特別清掃地域であるかないかということ、それ自体公害の防除という点について何らかかわりはないものであるということを申し上げたわけです。そしてそれと同時に、いわゆる発生原因者たる企業が明確になるものについて、現行清掃法においてもこれに対して処分を命ずることができるという趣旨を申し上げております。ただ、その当時から、この議事録をいま読み返してみましても、先生の御質問の中に、また私ども答弁してまいりました中に、現実にそれだけでは補完し得ないものがあるということは御質問の中にも、答弁の中にも含まれております。そして私どもは、現在率直に申し上げまして、清掃法基本的な体系をくずす意思はございません。都市廃棄物あるいは産業廃棄物といわれるものの中において、市町村の手によっては最終的に処理処分の不可能なもの、いろいろな種類のものがあると思います。これについては都道府県事業主体とする広域的な処理計画にゆだねてまいりたいという基本的な考え方を今日あらためて確立したわけであります。法律だけの議論をいたしますなら、当時お答えを申し上げたことについて私どもは間違いはなかったと思います。現行法律体系においてもそれに対処し得ないものではございません。しかし、巨大化した今日の都市廃棄物あるいは産業廃棄物処理していく上に、広域的な処理体制のほうが効率的であること、効率の高いことは間違いはありませんし、また、現に最終処理処分市町村独自の手によって不可能な部分もあることは御指摘のとおりであります。そうした現状を把握しつつ私どもは今日の体制考えつつあるわけであります。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、何らかの形で清掃法はいじらなければなりませんね。どういう形で改定をされるつもりでいらっしゃるのですか、事務局でもけっこうですが。
  11. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 細部にわたりましては環境衛生局長補完説明をいたさせます。  私どもは、いわゆる清掃法対象になり得るもの、いわゆるごみ、あらゆる意味でのごみ対象にしたもの、家庭廃棄物については、従来の体系をくずす必要はないと考えますし、またこれをどうこうする意思はございません。しかし、いわゆる都市廃棄物といわれるもの、粗大ごみといわれるもの、あるいは産業廃棄物に類するもの、こうしたものについては現行清掃法運用のみで処分をするのではなくて、むしろ、そうしたものを対象にした一つ条文清掃法の中につけ加えてまいりたい。章を起こすことになりますか、条文追加のみに終わりますか、これは私どもまだはっきりしたことは申し上げられません。少なくとも現行清掃法の中に都市廃棄物あるいは産業廃棄物というものを対象とした条文をはっきり起こしてまいり、現行条文解釈上の疑問を生ずるような部分補完してまいりたい。  それと同時に、必ずしも明確ではないこれらの前処理段階からの議論、これは廃棄物全体について従来からあるわけであります。これをも清掃法の中に、はっきり取り入れ、体系をつけてまいりたいという考え方を持っております。そしてそれを実際に運用してまいります場合に、家庭用廃棄物については完全に市町村が従来と同じ体係をとっていっていただかなくてはなりませんし、同時に都市廃棄物あるいは産業廃棄物、いわゆる粗大ごみについても基本的には同じことであります。しかし、実際上それだけでは処理し切れない、対処し切れないものについて広域的な処理体制考えてまいりたい、このように考えております。
  12. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 清掃法改正問題に対する考え方については、ただいま政務次官から説明申し上げたとおりでございますが、若干補足いたしまして、現行清掃法改正を要するのではないかと検討している部分につきまして御説明申し上げます。  まず第一点といたしまして、広域処理体系が必要であるという旨の答申をいただいておりますので、それを受けまして、市町村、工場、事業場等におきまして処理処分の困難な都市あるいは産業廃棄物につきましては、都道府県事業主体とする処理体系が整備できるかどうかということについて検討しております。これが第一点でございます。  第二点といたしましては、やはり和田先生指摘のとおり、生活環境審議会からの答申の中にあります排出者責務でございますが、排出者について、前処理費用負担等排出者責任範囲明確化してまいりたいと考えております。  それから第三点といたしまして、都市産業廃棄物の収集、輸送、処理処分に関する技術基準等規定現行清掃法の中にも若干の規定はございますけれども、これらについての部分は新しくつけ加えられることになりますので、技術基準等規定考えていく必要があるのではないか。  それから第四点といたしまして、これら都道府県の行なう広域事業に対しまして何らかの形でもって財政の援助、資金のあっせんといったようなものの規定を検討していく必要があるのではないかと考えております。  その他、これは付随して起こることでございますけれども都市あるいは産業廃棄物範囲、つまり定義をより明確化していく必要があるのではないか。  以上のような諸点について検討している段階でございます。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 ずばり言って、厚生省はこの生活環境審議会の第一次答申の線というものは尊重されますか。
  14. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 十分尊重いたしたいと思います。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、厚生省公害対策連絡会議が八月の十七日に出した「都市産業廃棄物広域処理対策要綱」ですね「その中にこういう文言があります。「なお、広域化計画実施運営にあたっては、地方公共団体またはその連合体のほか地方公社方式による特殊法人等についても検討を加えるものとする。」——どうして広域処理公社がストレートに結びつくのか。生活環境審議会答申には、いまも読んだとおり、「広域処理」ということばはあっても、「公社」ということばは見当たりませんし、一方に、この問題についての科学技術庁答申がありますね。その科学技術庁答申は、広域行政としての自治体連合方式処理基本を置くと、こう述べております。なぜ厚生省はすく公社公団——まあ公団とは言わないが、公社公社と言うのですか。
  16. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 三月二十五日の先生の御質問自体の中に大阪の事例をあげて広域処理体制についての御指摘がございました。そうしてその先生の御質問自体大阪等で始めておりますいわゆる産業廃棄物処理公社という方式、あれをどう思うかという御指摘でございました。私どもそれに対してこれは決して悪いことではないという趣旨の御答弁を申し上げております。答申の中に運営についての点は触れられておりません。そうして私どもとしてまとめあげましたいわゆる処理要綱の中に、運営の問題を行政府としてやらないわけにまいりませんし、すでに自治体自体がこれらの問題に対処すべく地方公社というものを推進しておられる地域が現にある。その実情も考え、同時に、たとえば一つの例でありますけれども現行の新産業都市あるいは工業整備特別地域において府県をまたがって地帯が設定されておるようなケースもございます。そうした場合も両県の施策の中にばらつきがありましては実施に非常に支障を来たすわけでありますので、そうした場合に両県が合同して公社方式考えるというケースもありましょうし、そうした実態運営考え、特にすでにスタートしている大阪公社方式考えまして、私ども地方公社というものを考えるべきだと、一つの方向としてここにうたったわけであります。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 それは若干私もあとから論議しようと思うのですが、その前に、先に確認をされた市町村中心清掃法体系からして、その公社方式というのは、新しい行政主体が形づくられるわけですから、基本的に私は問題だと思うのですね。厚生省側がこれほど公社方式にこだわるとなると、大阪の問題はあとでまた触れますけれども、何か特別の理由でもあるのじゃないかと勘ぐりたくなるのですが、そういうことはありませんか。
  18. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 特別な理由はございません。なお、その当時の答弁をあらためて申し上げますと、いわゆる地方自治法との関係、先ほどから先生が御心配になっていることでありますが、地方自治法上、清掃市町村固有事務であることは当然でありますけれども、同時に、いわゆる都道府県の潜在的な事務であるという考え方も私どもは当時申し上げております。そうしてその中にございますような、その清掃法のたてまえからして、市町村中心としてこれらの業務を施行していく方式を打ち立てているわけでありますが、本来潜在的な業務としての権能を持っている都道府県に、関係市町村から事務委任が行なわれるようなケース、その結果、公社方式になったことについて、私ども異論を申し上げるつもりはないということであります。それぞれの地域特性によって対処のしかたがいろいろあると思います。公社方式に私どもは決して固執するものでもありません。また、広域処理体制公社方式ごり押しをするつもりはございません。むしろ、それぞれの地域特性に応じてそれぞれの地域が自分の地域を完全に生活環境を保全していく上に最もふさわしい方式をお考えに在り、それを中心として私ども考えていくことでありまして、公社方式というものを何もごり押しをする気持ちは決してございません。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、たとえば、さっき言いましたように、科学技術庁答申の中にあるような自治体連合方式などというものが、自治体のいわゆる協議、自発性を通じて出てきた場合には、それだって別に無視するつもりはない、そういうふうにとっといてよろしいですか、いまの答弁は。
  20. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 別に無視するつもりはございませんし、そういうものを拒否する意思もございません。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 私がさき委員会で、いま次官も述べられましたように、大阪府の産業廃棄物処理公社を取り上げたときに、地方自治法上の法解釈厚生省側はお示しになったわけですね。私が問題にしたいのは、あのときもちょっと触れましたが、そういうことではなくて、今日の産業廃棄物処理というすぐれて現代的な課題に、市町村中心清掃法体系を維持しつつ立ち向かっていこうと努力しておる。で、その後厚生省みずからもそう言われておるわけですが、したがって厚生省市町村行政力を充実をさせる、そういう努力をやっぱり十分にしていただく。まあいまの答弁で一応そのことを了としますが、そういう政治姿勢というものを問題に私もしたかったわけですね。そして、産業廃棄物広域処理ということで、大都市段階ではみんな真剣に考え事業計画がすでに立っておるんですね。厚生省公社方式を、いま言われたように、持ち出すのに特別な理由がないというのであったならば、なぜ大阪産業廃棄物処理公社にだけ財投計画で八億円の金をつけたかという問題が、やはり問題としては再燃するわけであります。この大阪産業廃棄物処理公社は、ちょっと邪推になるかもしれませんが、今度厚生省に戻られて環境整備課長になられた榊さんですかが大阪府にいて手がけられたものだから、そういう関係大阪府だけが特別扱いをされる、そういうことに結果的にはどうもなっているのでありますね。私はそういうことは許せないと思いますが、その辺の事情について、もう一回お尋ねします。
  22. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) ただいま特定の厚生省職員の名前をあげて御指摘がございましたが、そういうことは断じてないということを最初に明確に申し上げます。  大阪府だけに対してというお話でありますが、むしろ他の地域からも同様にそれぞれの方式に応じて広域処理体制についての具体的な御相談があれば、私どもはそれを受けるに決してやぶさかではございません。しかし、現在に至りましても大阪府よりほかの場所から同様な具体的な御相談はわれわれは受けておらないわけであります。大阪府は本年度から事業に着手するということでありますが、他の地域はそういう御計画自体がまだ具体的に何もない。出てきたものをわれわれは優先的に取り上げてきたわけでありますし、担当者の前任地であるからとか、あるいはそれがどうであるというような問題点は一切これについてはございません。この点は明確にさせていただきたいと思います。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、相談がないということですが、私はそういうお考え方ならば、たとえば中都市的なところのモデルケースとか、やっぱりどこかを選びながら、そうしてどのくらい金をつけるからなどというものが、言ってみれば指導そういうような姿勢、そういうものは、逆の意味では厚生省側に求められてしかるべきだと思うのです。そういう点について厚生省のお考えいかがですか。
  24. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) ただいま御指摘のようなことを私ども考えまして、八月三十一日大蔵省に提出をいたしました昭和四十六年度予算の概算要求の中に、八府県に対してモデルケースとして同様な試みをこちらからお願いをしておつくりを願おうかと思います。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 その内容を少し明らかにしてください。
  26. 浦田純一

    説明員浦田純一君) まず大阪府におきますような広域処理計画をつくるためには、関係地域市町村、あるいは場合によりましては府県が集まりまして、その地域における産業廃棄物実態、それから処理運搬等の全般的な計画についての分担責任明確化、そういったような計画を立てる必要があるのじゃないか、調査し、計画を立て、そのおのおのの役割りをきめるといったようなことが必要でございますので、来年度はただいまも申し上げました八都道府県に対しまして広域処理体系計画をつくるために広域処理推進連絡会議を設けさせる費用を組んでおるわけでございます。その推進会議の構想といたしましては、関係各省庁の出先機関、それから関係都道府県市町村学識経験者、それに産業界の代表の方なども入れて構成すればいかがかと、かように考えているわけでございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 総額幾らですか。
  28. 浦田純一

    説明員浦田純一君) ただいままだ概算段階でございますので、必ずしも数字は明確化されておりませんが、この都市産業廃棄物広域処理関係計画推進費といたしまして、約三千三百万円ほど予定しております。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 この問題では、都市化の波に洗われている市町村のすべてがたいへんな苦労をしながら努力をしているところでして、それで、大阪に限らず、おもな大都市では、みな独自に具体的な事業計画をつくっている。私はこのあと地方行政委員会が続いておりますから、これ以上突っ込んだ論議をしませんが、本年度のこの八億円、この八億円は、それらの大都市にも当然私は配分をされてしかるべきだ、こう思うのです。そういうふうに考えてよろしいですか。
  30. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 私はそうは考えておりません。むしろ具体的な処理対策をお考えになって御要請のある他の都道府県がありましたら、むしろこの八億円というワクは広がる性格こそ持つべきものでありまして、これをこま切れにいたして、現に具体的な計画をお持ちでないところにまで配分をいたす意思は、今日私どもは持っておりません。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 それではっきりしてきたのですが、したがって先ほど私が言った厚生省の指導、それから自治体側の自発的な事業計画に基づくところの、言ってみれば処理方式、そういうものがマッチをした場合には、この八億円というものは膨張させる、これとの見合いにおいて他にも同様な処置をしていく、そういうふうに約束をされた、いまの答弁はそういうふうにとってよろしいですか。
  32. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) そのとおりの性格のものであります。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 種痘の問題に移りますが、去る七月七日に種痘による事故に関連をして種痘液の適否の問題、種痘の実施の方法、被害者に対する救済の問題について厚生省に問いただしました。その後どのように措置をされましたか、まず伺っておきます。
  34. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま先生の御指摘のように、この春、種痘に関しまして若干の事故と申しますか、特異な副反応が起こりまして、いろいろと御心配をおかけしたことは私ども担当者といたしまして、たいへん遺憾なことであったと思っております。で、この問題が起こりまして以来、厚生省といたしましては種痘の実施につきまして、実施の方法あるいは実施にあたっての事前の健康状態の把握の方法、そういった点につきまして、何回か専門家の参集を求めまして逐次地方に対する指導を強化いたしてきております。それと並行いたしまして、種痘が件数としては比較的多いわけでございますが、その他の予防接種につきましても、十分な注意を払った上でもやむを得ない若干の特異な事故が起こっておるということに対しましては、その救済の措置につきましても、政府といたしまして何らかの措置をとらなければならないということで、並行して検討を進めてまいりました。  で、まず種痘の実施方法につきましては、六月の十八日と、それから六月二十九日、二回にわたりまして公衆衛生局長より各都道府県に対して通知をいたしまして、いま申し上げました種痘の実施方法について、例えば初回の種痘の実施、接種の薬液の量を少なくする。あるいは多圧の回数を減らすというような措置をとりましたり、また接種前にあらかじめ保護者から子供の健康状態等に関する詳しいカードを書いてもらいまして、それを担当の医師がチェックいたしまして健康状態の把握をして、万全を期するというような措置を指導いたしております。  それから、さらにこういった注意を行ないましてもそういった事故が起こったケースにつきましては、詳しい制度化は今後の検討にまつということでございますが、とりあえず国の措置といたしまして、地方公共団体にも要請いたしまして何らかの措置をとりたいということで、副反応に基づく疾病の医療費の公費負担あるいは重篤な後遺症が残った方に対する一時金あるいは不幸にしてなくなられた方に対しましての弔慰金の支給というような制度につきましては、七月三十一日の閣議において了解を得まして、すでに実施に移しておるところでございます。  さらに、種痘は予防接種実施規則によりまして秋九月から再開されることになっておりますので、そういったことに関してさらに間違いなきを期するために専門家の意見も聞きまして、伝染病予防調査会の予防接種部会の御意見を経まして、現在第一期の種痘が生後二カ月から十二カ月になっておりますのを、今後の種痘方針といたしましては生後六カ月から二十四カ月——一年半の間にできるだけからだのぐあいのいいときに予防接種を受けるようにというような指導をいたしまして、また、かかりつけのお医者さんがある場合には、そういったところで予防接種を受けるような、いろいろな点におきましてさらに間違いなきを期するように指導いたしております。  ただ御案内のことと存じますが、天然痘は現在日本では発生いたしておりません。ここ十五年発生いたしておりませんけれども、日本と交流の多い東南アジアにおきましては相当の発生を見ておるというような危険性があること。それから種痘以外にはこれを防ぎます的確な手段がないということ、さらに第一期の種痘を幼少時に行なっておきませんと、大きくなりまして危険になってから初めて種痘を行ないますと、非常に強い副反応が起こるおそれが多いというようなことから、やはり国民保健上、定期の種痘の実施は欠かせないという立場に立ちまして、できるだけ間違いなきを期しながら、さらに種痘を続けていくという方針をもちまして地方に対する適切な指導をいたしております。  それからワクチンの改良につきましても、今年度から相当の予算を組みまして、予防衛生研究所を中心といたしまして痘苗の改良に関する研究を早急に開始いたしております。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 そこで種痘の再開にあたって、いままでの池田、大連株、それに加えてイギリスのリスター株の併用を認めることになったようですね。そこで、池田、大連株の安全性について確信が一体おありになるのか。前回、私は矢追抗原について質問しました。それは検討するという答弁だったですね。その検討の結果は一体どうなったか。
  36. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 第一の痘苗の製造にあたりましての株の問題でございますが、現在、日本の生物学的製剤についての製造に対する基準痘苗の製造に使用いたします株につきましては、国立予防衛生研究所長が適当と認めたものであればいいということになっておりまして、特定の株の指定はいたしておりません。したがって、従来とも池田株、大連株、リスター株、エクアドル株等、いずれも世界で使用されております株につきましては、製造に使用して差しつかえないたてまえになっております。ただ、各国の痘苗の製造の状況を見ますと、それぞれ先進国におきましては自国において開発いたしまして、こういう非常にデリケートな医薬品のことでございますので、その株の歴史が自国において十分にわかっておる株を使用するということが医学的に一番安心であるというようなところから、わが国におきましても池田株、大連株が改良されながら今日に至ったわけでございますけれども、いま御指摘のリスター株につきましても、今後おそらく試験製造的な製品がだんだんと国内にも出てくることになるんではなかろうかと考えております。  それからもう一つ、矢追抗原の検討につきましては、前回も一御答弁申し上げたかと存じますが、矢追抗原につきましては、これは大連株を使いましての精製痘苗でございまして、現在のところ、なお痘苗といたしましての力価が必ずしも安定していないというような点もございまして、国際的な基準に達するというところまでいっていないように承知いたしております。なお、予防衛生研究所において今後痘苗の研究を進めます段階におきまして、当然矢追抗原も検討の一環に加えられるものと存じております。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 東京都は、現在リスター株の出回り方が少ない、あるいは出回っていない、そういうことを理由にして、それが出回るまで住民に不安があることも考えあわせて種痘を延期する。こういう発表を美濃部知事がされましたですね。国もリスター株の種痘液ができるまで再開を見合わす、そういうお考えはないわけですか。
  38. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 問題は池田株、大連株とリスター株との副反応に関する優劣の評価の問題であろうと存じます。で、いままでの資料によりますと、一部の資料としましては池田株、大連株のほうよりリスター株のほうが局所反応である発赤とか、硬結につきましては若干弱いというようなデータもございますが、全身反応、特に全身の発しんにつきましては池田株のほうが弱いというようなデータもございまして、特に種痘の副反応として最もおそれられております種痘後脳炎につきましては、池田、大連株、リスター株ともに、ある数の発生を見ておりまして、この点につきましては両株の間で学問的な相違は見られておりません。そういうような点から申しまして、池田株、大連株とリスター株とを副反応の面におきましての比較をするというようなことは、いまの学問におきましては困難でございまして、私どもといたしましては池田、大連株のかわりにリスター株を用いるというところまで踏み切る考え方はございません。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 予防接種実施規則の第七条によりますと、種痘は年二回以上、原則として三月から六月、九月から十二月。そこで、そういう規定があるのですが、東京都が来年まで延期するという場合に、これは機関委任事務ですから、自治法の百五十条に基づいて国が監督指導する権能がありますね。厚生省としてはどういうふうに対処するおつもりですか。
  40. 橋本龍太郎

    説明員橋本龍太郎君) 御承知のような新聞記事で、東京都の美濃部都知事の御発言につきまして、私どもとしては衛生局予防部のほうにその中身を確かめました。もしその時期において一切種痘を行なわない、来年の春まで種痘を行なわないというような状態でありますと、率直に申し上げて、もしその間に法定時期を過ぎる子供さんたちがありますと、やはりこれは問題があります。実は私どもとして都のほうに確かめたわけでございます。ところが東京都の種痘実施の延期の問題について、衛生局のほうから厚生省に返ってまいりましたのは、都知事が会見の席上、マスコミの報道機関の方々に発表されたものとは多少ニュアンスが異なりまして、専門家の意見を得て法律のワク内で考えていきたい、慎重に実施に踏み切りたいということが第一のようです。それと同時に、新聞では延期としてあるが、完全に延期するとは言っておらないということであります。ただし応急治療のネットワーク、あるいはVIGあるいはマルポランの供給などを完全整備し、従来とは異なった方法で実施をしたい。ただしこの異なった方法というそのことばの中身は明らかでございません。同時に、対象は生後六カ月から二十四カ月の希望者及び二歳をこえる者としたい。種痘はやめるわけにいかないので、事故に対する救済を考えておるという趣旨のようであります。これは衛生局自体が私どもに報告をしてこられたことでありますけれども、都区協議会、都と区の協議会において知事自体が発言をせられた内容であります。私どもは新聞に報ぜられたように、東京都が中止に踏み切られたというのは都知事のきわめて豊富なボキャブラリーの中で、多少ニュアンスの上で異なった点が出たのではないか、そのように考えております。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省は種痘の年齢を引き下げる、引き下げるというか繰り下げる、そういうことで近く全国に指示するという報道がなされております。厚生大臣の諮問機関である伝染病予防調査会の予防接種部会もそういうことについて結論を得ているようですが、予防接種法の第十条の規定と異なる措置をいわゆる実施する、そういうことになるわけですから、そういうような法的根拠、こういうような異例の措置をとるに至った理由、それを示してもらいたい。
  42. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 御質問のように、現在の予防接種法におきましては、第一期の種痘は生後二カ月から生後十二カ月の間に行なうというふうに定められております。ところが最近の専門家の意見によりましても、まあできるだけ若いうち——若いうちといいますか、生まれて間もない間に免疫を得させておくということは子供の保健衛生上、万一天然痘が侵入いたしました場合に大きな効果を持つということもありまして定められておる規定でございますが、反面、副反応の問題等考えてみますと、あまり発育の未熟の間に種痘を行なうということが、万が一心配な面もあるというような御意見もございまして、むしろ六カ月から二十四カ月ぐらいの間に行なうのが適当ではないかというような専門家の御意見をいただいております。ただ御指摘のように、これは法律で定められておることでございますので、法律の明文から申しますと六カ月、まあ六カ月以前は遠慮するといたしましても、少なくとも六カ月から十二カ月の間に受けなければならないということになるわけでございますが、現実の問題といたしまして予防接種法の定期の規定は、国民をそういった疾病から守って、できるだけ安全な間に免疫を得させるということを主体にして御制定になられた法律である。そういうふうに私ども解釈いたしまして運用してまいっております。したがって、今後また改正をお願いいたしますことは当然考えなければならないと存じますが、国民の間に不安もあることでございますので、暫定的な措置といたしまして、できるだけ定期に該当する者は六カ月から十二カ月の間に受ける。なお、それでそういった時期を経過して受けていない者がございます。で、一歳の接種率が八〇%を少し下回るような状況でございますので、そういった子供さんの中には、すでに十二カ月を過ぎましてなお初回の接種を受けていないという人もあるわけでございまして、こういった人たちを放置いたしまして二歳を過ぎますと、先ほど申し上げましたようにさらに種痘によって副反応が強くあらわれるおそれがあるというような点もございますので、今回の地方に対する指導といたしましては、できるだけ六カ月以後に受けるように気をつける、さらに十二カ月を過ぎた者につきましても、できるだけ二歳までの間に第一回の種痘に準じて種痘を受けることができるように、定期の接種に組み入れて住民を指導するような、そういうような通知をいたしておるわけでございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 予防接種法の施行規則の総則第三条、これによりますと、器の滅菌やらあるいは第五条の第二項では接種時の注意事項ですね、そういうものを規定されていますね。そうすると、これはきわめて常識的な内容のものが多いわけです。これをこのとおり実施しなければどういう弊害が出ますか。
  44. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いま御指摘のように、予防接種法の施行規則あるいは実施規則に定められております予防接種にあたっての注意事項というのは、御意見のように医学的にはきわめて常識的な問題でございます。こういうことは、たとえ規定がなくても、医師なりそういった保健衛生の関係者の常識として通常守られるものであろうと考えております。ただ反面、現在の予防接種はやはり市町村実施いたしまして集団的に行なう場合が多いわけでございまして、そういった面で特に予診に際してなかなか医師が一見しただけで判断することはむずかしいというような点もございますので、先ほど申し上げましたように、六月十八日あるいは二十九日の通知によりまして、あらかじめカードに保護者が書き込んでおきまして、児童の健康状態を事前に把握して万全を期するというような指導をいたしております。なお、いま御指摘の器の消毒等につきましては、これも当然の注意事項といたしまして、今回種痘の実施に関します公衆衛生局長通知、これはすでに八月五日に発出いたしておりますが、これに種痘に関する全注意事項を記載いたしました詳細な手引きをつけまして、これに従って間違いなく実施を行なうように地方に対して指導をやっておる次第でございます。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 同規則の第二章で種痘の実施方法について規定していますし、医学的に最も安全な方法というものについてずっとこの規則は並べておると思うのです。あるいはその法律や規則以外でも実施要領が作成されて通達をされていますね、いまもお述べになったとおり。そうすると、これらの指示に従わなかった場合、たいへん危険であるということが私は全体として留意をされながら述べられていることだと思うんですけれども、それはそういうふうに理解してよろしいですね。
  46. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 先ほど和田先生の御指摘のように、法に定められております事項は、現在の医学の常識に従いまして、きわめて平均的な注意事項を記載しておるわけでございます。したがいまして、当然私ども守られておると存じますが、一、二厳格に申しまして、もしこれにはずれておるというような場合があれば私どもも指導しなければなりませんけれども、直ちにそれがきわめて危険であるということに結びつきますかどうかは、これはケースによりまして医学的に判断をしなければならないものであろうと考えております。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 ところが、最近の実施方法は非常にずさんであることが再三指摘されていますね。そういった観点で私は一つの事例をあげたいのでありますが、宮城県の登米郡迫町の千葉幹子さん、生後何カ月でしたか一年でしたか、この前の決算委員会のやりとりをめぐって新聞報道に基づいて、実はこれらのいわゆる親権者の方々からいろいろの文書が届けられました。厚生省にも具体的にその一、二については紹介をしながら審議をしたことですから、すでにおわかりになっていると思うんですが、この事件は私の知っているところでは、実施が規則や要領に違反している、その点をまず確かめたいと思います。
  48. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま御質問のありました具体的なケースにつきましては、私どもといたしましても担当の課によりましてさっそく調査をいたしております。御指摘のように注射針の交換等につきましては、必ずしも十分な措置がとられていなかった点があるようでございますので、さらにこれは完全な調査をいたしまして措置をいたしたいと思っております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど申しましたとおり、種痘は国の義務です。ただ、国は規則や通達を出しておけばよい、言ってみればこれまでのあなた方の行政態度がこういう問題を呼んでいると言っても私は過言ではないと思うんです。したがって、そういう意味では、実施にあたっては規模や実施方法についての計画提出させるべきである、そういうふうに考えますが、その点が一つ。  時間の関係もありますから一緒に答弁してもらいますが、同時に、いまの問題ですね、いま御答弁にあったように種痘禍の問題で、宮城の迫の町長を告発をするなり、あるいは担当の医師には陳謝を要求するなり、いろいろな問題が起こっていますが、いま言われたとおり、明らかにミスがある、しかし、あなたのほうは調査をしてと言われますから、調査をしてミスがあった場合に、適当に処断をされるというわけですから、どのような形でもって、いわゆる対処され、処断をされますか。
  50. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 第一の点、実施計画についてさらに監督を厳重にすべきではないかという点でございますが、この点は御指摘のとおり、各市町村実施義務者でございまして、保健所においてこれは監督をいたすべき内容の仕事であろうと存じます。先ほど申し上げましたように、特に種痘につきまして全国的な詳しい指導方針を指示いたしておりますが、全体の予防接種につきましても、ただいま先生の御指摘にもございましたように、さらにそういった指導監督は強化いたさなければならないと考えております。  第二の点につきましては、これは接種の際における手落ちの問題これはその手落ちの程度なりその手落ちによりましてどのような害が起こっておるかというような具体的な内容によって異なろうかと思いますが、もしその過誤があったことが事故に結びついておりまして、何らかの障害が起こっておるということが明らかになれば、これはやはり何らかの法律的左賠償等の問題を考えなければならない場合も生ずるであろうと思っております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 いまの松下審議官答弁について大臣の見解をまずひとつ伺いたいと思うのです。  さらに同時に、大臣にこの事件についてちょっと伺いたいのですが、この千葉幹子さんという四十四年一月二十日生まれの方でありますが死亡された、乳児死亡と診断されて、県を通じて厚生省にはすでに書類が上がっておるのですが、保護者は種痘禍であると信じて疑いません。ところが県の調査内容は本人たちに明らかにされないし、積極的に問題の究明や、あるいは種痘と死亡の因果関係を明らかにさせようとしないのですね。こういうことは一体なぜだろうか、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  52. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) ただいまやってまいりまして、前後の関係がわかりませんが、種痘をはじめ義務的な予防接種のことにつきましては、もちろんこれまでもいろいろな注意は行なわれておったこととは思いますが、最近の、ことに人命尊重等のそういう時代にもかんがみまして、私は就任以来世論にもこたえまして、いままでのことにかかわらず、この問題はあらためて厚生省として新しく真剣に取り組むという態度をもって事務当局にも指示をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。たとえば補償という文字ではございませんが、事故のあったあとにおける特別対策などにつきましても、従来打ち出せなかったものを、今回不完全な形ではございますが、打ち出すことにいたしましたり、あるいは接種に関連する事前の予診と申しますか、そういうようなこと、あるいは種痘の方法その他に関連いたしましても思いを新たにして十分な措置を講ずべく諸般の措置をとってまいりましたし、さらに根本的にはワクチンそのものにつきましても、従来の考え方に固着せずに、広く深くその完全なワクチンというものを検討するというようなこと等の根本的な施策をもとらしておるところでございます。お尋ねの問題に関連いたしましても、いろいろ措置したり、究明したりしなければならない問題もあろうと思いますが、こまかい点につきまして、私はここに来たばかりで十分よくわかりませんので、担当の審議官なり、あるいは医務局長がおりますので、それらが答えてまいりましたことは、これは私が大臣としての私の考えを述べたものとして、私はその担当者が述べたとおりのことにつきまして責任を負ってまいりたいと思いますし、また不満足な答弁等がございましたら、後ほどさらに担当者等と打ち合わせまして和田先生をはじめ、いろいろと納得するような形を考えていくべきであるし、またいく所存でございます。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 補償問題を考える上に一番問題となるのは因果関係がはっきりしないということだと思うのですね。因果関係がはっきりしない理由というのは、それは一医学上の問題だけではなくて、言ってみれば、たとえば県に調査を依頼した、その調査内容などがやはり関係者に対して公表されない。そういうような県、市町村の態度による場合もたいへん多いと思うのであります。そういう意味では千葉幹子さんの問題についての県の調査方法の内容というものを明らかにしていただきたいと思いますが、その点について大臣の見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  54. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) それはまことにごもっともな御発言だと存じます。全く県がそういう因果関係につきまして、ことさらにネガティブな態度をとる必要もないことであると考えますので、その辺は客観的に判明し得る限りの事実を明らかにしていただけるように、私どものほうからも県に対して申し入れをいたしたいと思います。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 種痘禍について国の補償がきまりましたですね。その内容をひとつ説明していただきたいことと、自治体が独自で行なうことをきめたものはどのくらいあるのか、都は国に上積みすると言っていますが、国はこういう上積み等についてはどのように考えられるか、以上三点について。
  56. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 具体的な中身につきましては関係官をして答弁せしめますが、いま先生のおことばの中に、また和田先生ばかりじゃなしに、これまでこの問題につきまして補償ということばが使われておりますが、これもお気づきのように、私どもは補償ということばをことさらに使っておりません、特別措置と。これは、補償ということになりますと、いまの民法の法理でありますとか、あるいは国家賠償法などの規定によりまして、故意、過失というところに結びつけられ、それの立証がない限り、この損失補てんができない、特別措置がとれないということであろうかと考えまして、私どもはそこのところを大きく踏み切りまして、いわば無過失責任といいますか、そういうようなことも頭に置きながら特別措置ということばを使っております。したがって、このことは民事訴訟あるいは国家賠償責任等を追及するその手段によりまして正しい意味の補償の道を閉ざす趣旨ではございません。それに先立って、それとは別個に特別措置と、こういうことで今回の措置をとっておりますことをまず御了解をいただいておきまして、そして以下担当者から内容につきまして説明をいたさせます。
  57. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 今回、先ほど申し上げました七月三十一日の閣議で御了解を得ました措置の内容といたしましては、予防接種に関する重篤な副反応ということばを使っておりますが、重い副反応がありまして、そのために病気になった方、あるいはその病気に基因いたしまして後遺症が残った方、あるいは不幸にしてなくなられた方、そういった方につきまして医療費の支給、それから後遺症一時金の支給、弔慰金の支給、そういった措置を行なうことを内容といたしております。後遺症、それから死亡弔慰金につきましては、この制度発足のみならず、七月三十一日以前の事故によりまして後遺症になられた方、あるいは以前に死亡された方につきましても、証明ができます限り支給の対象にするというたてまえをとっております。で、支給の額につきましては、医療費のほうはこれは自分が負担いたしました医療費の実費でございます。それから後遺症一時金は、最高が十八歳以上の方につきまして三百三十万円、十八歳未満の方につきまして二百七十万円、後遺症の障害の程度に応じまして一級から三級までに分けて額をきめております。弔慰金につきましては、同じく最高が死亡時十八歳以上の方が三百三十万、十八歳未満の方が二百七十万円、これは死亡の時点によりまして額をきめるようにいたしております。そのような内容でございます。  それから第二点の御質問の、この制度を国が行ないます以前におきまして、予防接種の事故に関する何らかの措置をいたしておりましたところは、私どもの調べました限りでは埼玉県と千葉県の二県でございます。東京都も一部行なっておられたようでございますが、これは制度としては制定されておらなかったように聞いております。  それから、今度東京都が発表されましたような、国の措置の上に地方が独自にそれに、何と申しますか、上積みと申しますか、付加して支給されるということは、これは手厚い措置をとられるというような意味で、私どもは別段差しつかえないと申しますか、けっこうなことだと存じております。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 この問題は最後にしますが、いわゆる特別措置なら特別措置の年金制度ですね、というような形の意見がありますね。それについては大臣どういうふうにお考えになりますか。
  59. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これも和田先生御承知のように、今回の措置はとにかく法律を用いないで、当面の行政責任をもってする措置といたしまして、予算などにつきましても、従来あります予算の流用というようなことで踏み切ってこれを実行することにいたしました。したがいまして、これは今後でき得るだけ早い機会に、関係方面ともさらに打ち合わせを進めまして、恒久的左法律上の制度として打ち立てたいと私は考えておるものでございます。その際、一部の外国などで行なっておりますような特別措置の制度、あるいは年金でありますとか、あるいはその他の措置などもございますが、そういう措置も当然考慮の対象にいたしてまいりたいと思っております。しかしこれは、私、正直でございますので、ほんとうにそのことを申し上げますと、非常にそれが難航しそうだということをここで申し上げておかざるを得ないと思います。本格的法律にする際にはさらにより厚い、より完備した制度に当然なろうかということにつきましては、非常に難航しそうであるということも頭に置きながら私どもは進めてまいらなければならないと、かように思っております。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 心臓移植問題について二、三の問題で見解を求めますが、私はしろうとであります。ただ、きょうも与党のお医者さんである議員の方と、ここへ来るまでの間にいろいろ意見を拝聴しましたが、たとえば、あの心臓を一体移植しなければならなかったかということも、当然最初にみた内科医が、手術をした外科医との関係で、立ち会って処理をするとか、いろいろの医学的に見ては問題点が多いのではないかというような意見がまあ医学者の間でもかなり活発です。確かに疑点がかなり多くある。そこで私はきょうは厚生省決算でありますから、そういう立場から二、三の意見を述べたり、御見解を承りますが、和田教授の心臓移植に対する札幌地検の不起訴処分の決定が報ぜられて、その「和田教授の心臓移植を告発する会」には、坊秀男さんや古井喜實さんという元厚生大臣が含まれております。したがって厚生行政の責任者であった方々がその立場に立って告発する会というのが組織されている、その告発する会が、地検の発表を、まあ句点かにわたって駁論をしておられますね。これについて現在の内田厚生大臣は、この問題でどのような見解をまずお持ちになっているのか、お聞きいたします。
  61. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 私が現職の厚生大臣でおりますだけに、いまお述べになりました元の厚生大臣の諸先輩とはおのずから違った立場におりますので、きわめて明快なことを申し上げ得ない点もございますが、私はこれは非常に正直に申してむずかしい問題でございまして、医者の倫理並びに一般の人間としての倫理と、そして医学の進歩との接点の問題であると正直に考えます。しかしながら私は、医術というものは常に生と取り組むだけの面があるものであって、その生を犠牲にしても、その医学、医術の進歩をはかるべきものではないということだけは、私は厚生大臣としても申し述べ得ると思います。しかし、それは心臓の移植というものが絶対に許すべからざることであるというような意味では全くございませんで、これは御承知のように、たとえば角膜の移植でありますとか、あるいは法律にはございませんが、じん臓の移植のように、すでに医療行為としても一般に広く認められ、確立された医療の手段ではないだけに、そこにこれから開拓しなければならない分野もあり、同時にまたその反面、十分慎重な配慮を必要とする問題である、その両点の接点であると考えております。実はまだ結論が出ておりませんが、厚生省といたしましても、当然そういう問題はいろいろの角度から、単に医療行為、医術というだけの見地ではなしに、厚生省という国民の福利や、また人間の生命を医術とともに預かる役所といたしましては、一つの方向づけを検討する責任があると考えておる者でございまして、実は私すでに、この問題を対象とするわけではございませんが、内臓の移植に関しまして、省内に大臣の相談機関といたしまして、各方面の少数の代表者からなる懇談会を設けて検討をいたしております。各方面の代表者と申しますのは、いま申しましたように、医学、医術のみの世界の代表者ではなしに、たとえば哲学者でありますとかあるいは心理学者でありますとか、そういう方面の方々をも加えましたそういう懇談会を開きまして、会合していただいております。これは繰り返して申しますように、今回の問題だけに対処するものではなしに、内臓移植全体に対する考え方ということについて論議をしていただいておりますが、まだその結論が出ておらないような状態でございます。  以上をもってとりあえず私の考え方とさしていただきます。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 事が死の判定といったたいへんなむずかしい問題であります。しろうとがそう軽々しく判断を下してはいけないでしょうけれども、心臓移植をめぐる基本的な問題というのは、いままで死の判定は、判定を受けるほうの立場に立ってなされていた。それが今度は判定する側からなされるという点です。それだけに、人権尊重の立場から見て、私は不安は十分に正当性を持つものだと思うのです。今度の裁定書が、そのことを十分に意識せずに、死の判定は医者が行なうものなんだということを言っているだけなのは、私はたいへん問題だと、こう思っている。医者の中には「生きている人の臓器を取ることはもちろん問題はあるが、移植手術にはより新鮮なものがよいということですから、死の判定を早めてよいと専門家が言うのなら、できるだけ早めたほうがいいと考えます、心臓が動いている間は永遠に死ではないという考え方は私は賛成しない」と言い切る人もいるのです。私は、この発言に非常な不安を感じます。医学ではしろうとの地検こそ、裁定書でこの不安を表明すべきではなかったかと、こう思います。そういう意味では、検察の段階でもってこれが結論づけられてしまうということに対しては、どうしても私は一まつの危倶を持たざるを得ません。私は裁判所でもって、言ってみれば論理展開がなされ、あるいはいろいろの調べ方がされて、結論が、多くの良識ある討論を介添えにしながら得られていくということが正しいと思います。そういうような方向をとらなかった、結果的には。その間の事情について法務省の見解を求めたい。
  63. 吉田淳一

    説明員(吉田淳一君) 本件につきましては、札幌の検察庁におきまして、昨年告発があって以来、慎重な捜査をいたしまして、いろいろ多数の関係人を調べ、多数の証拠品を精密に検討いたしまして、今回の結論に到達したわけでございます。その詳しい報告につきましては、まだ法務省に入ってきておりません。かつ、本日は、刑事局長をはじめ関係局長課長が、年に一回の国税庁との合同の研修を毎年やっております、そこへ行っておりますので、関係者もおりませんので、詳しいことはお答えできかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、検察庁においては十分慎重な捜査を遂げた上、今回の結論に達したというふうに考えております。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 答弁になっていないのですが、しろうと目にもおかしいと思うのは、地検の裁定書と手術後の和田教授の発言に多くの点で食い違いがあるということです。和田教授は、この方は国家公務員ですね、札幌医大。この疑点について、一つ一つ学者としての見解もこまかく発表すべきだと思うのですが、そういう意味において、厚生大臣、何か示唆をされる用意はありませんか。
  65. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 死の判定につきましては、これは私は純粋な法学者でもなければ、いわんや医学者でもございませんが、いわば厚生省におります門前の小僧として私が理解をいたしておりますところによりますと、たとえば心臓の鼓拍の停止、あるいは肺臓の自発的な活動の停止と申しますか、あるいは瞳孔の反能の消失というような三点と、それからまた脳波といいますか、脳死ということばなどが使われておりますように、脳の機能の停止というような、いろいろの観点、どの観点をもって人間の死と確認すべきかということにつきましては、医学上におきましても多少の判定の違う意見もあるようにも私は聞いておりましたし、またさらに医学問題のみならず、さきにも私が触れましたように、人間の問題として考えますときには、医学を越えた見地も私はあろうかと思います。これはさきにも触れました角膜とか、じん臓とかいうことになりますと、摘出して移植しましても、以上の幾つかの点に直接触れるものがないものでございますから、おおむね確立された内臓の移植をされていたと私は考えますが、しかし、以上医学上の三点あるいは四点につきましては、そのいずれの点から見ても、死と確認をし得ないという疑いの証拠はないということで、検察庁は今回の判断を下されたというふうに、これは私は新聞のこまかい記事を精細に職業柄読みましたが、新聞の記事を通じまして、そういうふうに私は理解をいたしております。それに対しまして厚生大臣から、死の認定につきまして検察庁の判断を指揮する、指導するということは、これはまた私どもがなし得ないところだと、こういうふうに考えるものでございます。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 さっきの質問について、いわゆる和田教授に医学的な見解の一つ一つについて、もっともっと明確にさせる、そういうような示唆を厚生省の側としてもとるべきではないかと私は思います。どう考えていらっしゃいますか。
  67. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) この件に関しまして厚生省から和田教授に対して、一つ一つの問題を明確に答えるような示唆をしないかというお話でございますけれども、少なくとも私どもは、ここに上げられておりますいろいろな問題というのは、いわば学会でいろいろな議論をされるべき問題じゃないかというふうに考えております。したがいまして、行政当局がどうかというよりも、むしろ学会自身が死の問題についてはいろいろな正式な討論をやるべきじゃないかというふうに基本的には考えているわけでございます。  ただ、この問題とは切り離しまして、先ほど来大臣が申し上げられましたように、医学の進歩というものと患者の人権を守る、生命を守るということとが非常にデリケートな問題になってまいります。これは、医学の研究が進むにつれましてそういう問題は一そう顕著になるおそれがあろうかと存じます。したがいまして、そういう医学の進歩と患者の生命を守る、特に医者というものが、先ほど大臣がお答えになりましたように、死というものを見るのではなくて常に生という立場から見るという形に倫理上の問題として考えましたときに、今後こういう問題のあり方として基本的にどうあるべきであろうかということは、これは当然新しい進歩とともに起こってきた問題かと思います。これにつきましては、今回の問題でいろんな疑念をもたらしていることにかんがみまして、私どもは、厚生大臣の諮問機関でございます医道審議会というものがございますので、そこに何らかの形で審議をお願いしたいというふうに考えておるわけでございます。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 私も、前段でうかがわれました全学会的なものにしなければならないということにたいへん賛成なんです。たとえば、私は、この問題で最大の問題がどこにあったかということを考えてみると、これほど重要な問題が、言ってみれば和田教授の個人プレーで終始をした、そこが私はたいへん問題だったと思うのです。たとえば「告発する会」の声明書も、その中の一つに、「三人の鑑定人のなかに蘇生術や心臓内科の専門家がおらず、和田氏と同じ心臓外科医に鑑定させるのは、スリをスリ仲間に調べさせるようなものだ。」という声明があります。こういうふうに述べているのです。それから、最初に私が冒頭引用しましたように、議員でいらっしゃる医学者の二、三の人たちの意見を聞いてみても、なぜ内科医を立ち会わせなかったんだろうという疑問は当然残っているのですね。心臓移植の問題は、事医学の将来に重大なかかわりあいを持つものであればあるほど、いわば全学会的に調査に関係をさせて、そうして全学会的に結論を出すべきであったと思うのです。その点については大臣いかがです。
  69. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これは、お話は三人のそれぞれの分野における専門家であられる鑑定人のことにお触れになったようでありますが、もちろんこのお三人の鑑定人の選定につきましては、司法当局から厚生省が、いかなる範囲から鑑定人を選ぶべきか推薦してほしいという御委嘱を受けたわけでは全くございませんでした。また、私どものほうから、司法当局が御委嘱をなされた鑑定人の適否につきまして、刑事の課題に影響を及ぼすかもしれないような差し出がましい、鑑定人についての意見を、こちら側から進んで申し述べるということもでき得ないものと私は考えておるものでございまして、さような見地から、鑑定人の適否につきましては私どものほうからは申し上げ得ないことでございます。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 何か大臣変なことが先入観的にあるのか、答弁をどうもずらされますが、私がいま言ったことは、こういうような重要な問題については全学会的にもっと調査にかかわらせる、そういうようなことが必要ではないか、しろうと目に見ても。そういう意味においては、私厚生行政全体からいっても、そういうような示唆というものがなされてもいいんではないかというような考え方を述べているわけです。それはどういうことかといいますと、たとえば「学会は、学術集会と研究会を行なうという定款で動いているだけなので、和田さんを糾弾することはできない。」などという発言が昨日の毎日新聞にもあるのですが、そういう和田教授を糾弾をする、しないということは私たちは別問題だと思うのですよ。これほど重大な問題で全学会的に調査を行ない結論が出せないという学会のあり方はやっぱり問題だと思うのですね、逆の意味では。そうすると、人間の生命に関するこれらの問題について、その最高の責任者である厚生大臣あるいはその諮問機関等が、もっともっとこれらの問題についての示唆をすべきであったし、今後もそういうような努力というものがあってしかるべきではないか。学会の場合は、それを取り入れるか取り入れないかは別の問題です。いかがです。
  71. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これまで私どもは刑事事件に介入することはでき得なかった問題であると思いますが、心臓移植というような、外科医術の進歩の領域とそれが人間の生命なりあるいは医の倫理に関する接点の問題をどう考えていくかということにつきましては、これはひとり学会だけでなしに、私は厚生省課題であると考えるものでございます。したがいまして、さきにも触れました内臓移植の懇談会というものを通じまして、医学の専門的な立場からばかりでなしに、さきにも述べましたような心理学者、哲学者等の委員の方々の見解をもまじえて、私は一つの方向づけをしたいと思いますし、もう一つ医務局長もさっき触れましたが、厚生省に医道審議会というのがございます。これは別のものでございますが、ここに対しましてもこの問題を移しまして、そうしてこういう問題の取り上げ方、考え方、今後の方向につきまして議論をしていただきたいと、かように思っておる次第でございます。私が——もちろん私も厚生大臣でもありまた政治家でもありますが、私なりあるいはまた私のスタッフだけが、いまだここで確固としてこの問題に対する方向づけを申し上げ得るような段階には残念ながら至っていない。軽々しいことも申し上げ得ない、こういうことはひとつ御了解をいただきたいと思います。先入主は何にもございません。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 和田壽郎教授は心臓移植について「法解釈の確立望む」、記者会見で昨日述べておりますね。この問題での、言ってみれば全学会的な検討を通して法解釈の確立の作業をやっぱり急がなければならないと思うのです。そういう点については厚生大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  73. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 心臓のみならず一般の臓器移植という広い問題にわたりまして、そういう法制上のいろいろな措置をどの辺まで必要とするかどうかという問題、あるいは、そういう問題の中に、現在の医学の段階から見てどの辺までをそういう法的な措置の中にゆだねるべきかという範囲等につきましても、先ほど来申し上げてございます臓器移植懇談会でただいま検討しておるところでございます。したがいまして、その結論をまたなければ何とも申し上げられませんが、しかしながら、おそらく私どもが予定をいたしております、また私どももそうあるべきであろうと考えておりますものは、少なくとも死の判定基準というものについては、法律等において明記すべき問題ではない。あくまでこれは学問上客観的に常に時代とともにきちんとしたものをきめるべきだというふうに考えております。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 地行委から呼んで来ておりますので、最後に……。この前、質問して大臣と約束しております医者の不足問題、これについて見解と二、三の質問を述べますので、一括してお答え願いたい。  自治大臣が医者の専門学校という、あの構想を発表して、厚生省などからしろうとの思いつきと言われ、私も必ずしもあれに賛成ではないことはこの前も申し上げたとおりです。それはそれとして、それならば厚生省は一体この問題で何をし、あるいは何をするつもりかという声が、言ってみれば深刻な医師不足に悩む地域市町村長の間では強いのです。私自身も地方を回ってそういう声を聞きましたし、あるいは報道関係などにもそうした自治体の長の声というものがたくさん載せられております。それもそのはずで、御存じのように自治体病院の医師の不足というものはここ二、三年の間に急速に状況が悪化しております。自治体病院長の調査によりますと、四十四年の四月一日現在の常勤医師の充足状況というのは、定員に対して八〇.七%、人口比は欧米に比べて非常に劣悪な定員にさえ満たない状況であることは言うまでもないんですが、特に僻地やらあるいは過疎地帯の小さな病院においては、医者の不足による病院の閉鎖が続出をしております。中規模の病院でも耳鼻科であるとか、あるいは眼科であるとか、あるいは歯科であるとかいうような、一部の診療科はやはり医師の欠員を理由に閉鎖をしております。厚生省は、昭和三十一年度から年次計画を立てて僻地診療所の整備、巡回診療の実施及び患者輸送車の整備等施策の推進をはかっている。特に四十三年度からの五カ年計画においては、四十一年四月の無医地区調査の結果を基礎として、機動力の整備による医療の確保に重点を置いた施策を進めていく。そういうことですが、この僻地の医師確保ということでは何ら手がついていないのではないか。これについて、まず見解を伺いたいと思います。  二つ目には、例の自治大臣構想のすぐあと厚生省は、これは私の主観的な解釈かもしれませんが、例の広域市町村構想に見合う地域中核病院の充実とモータリゼーションの強化による地域医療の強化を内容とする構想を発表されました。しかし、この構想も肝心の医師不足には何ら手がついていません。医師不足という一般的な、そして今日的な課題について、私がここであらためて論ずる必要もないのでありますが、この解決というのは政府がよほど強い決意を持って総合的な施策を行なう必要があると思うんです。たとえば、診療報酬の抜本改正の問題、あるいは勤務医と開業医の税負担の不均衡の是正の問題、あるいは勤務医の待遇改善などの基本的な問題に対して、勇断をもって対処するのでなかったならば、根本的な解決が期待できないことは、私は明らかではないかと思うんです。この点について、今後どうするおつもりなのか。特に、僻地の医療不足どころか医師欠員についての対策ですね。医者が欠員をしている。この対策についてどうなのか。  三つ目は、厚生省は僻地医療振興会などという特殊法人をまた一つふやそうとしているようでありますが、これは一体どういうものなのか。  また、農村保健研究所構想というものが出ているんですが、それらについて……。これが四つ目。以上、四つについて答えていただきたいと思います。
  75. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) たいへんむずかしい問題で、私も正直に申しましてほんとうに悩んでいる問題でございます。また、私もまあ、いわば僻地出身の政治家の一人といたしまして、和田先生のおあげになっているような事柄につきましては、これまでも悩んでまいっておる一人でございます。が、しかし、さて厚生大臣として一刀両断の名案があるかというと、一刀両断の名案はございませんので、いろいろの方面からこの僻地医療の問題の解決につとめなければならないと私は今日考えておる次第でございます。  その第一は、僻地医療、僻地における医師の確保の問題でございますが、医師の絶対数につきまして和田先生もお触れになりましたが、これは、私は正直にずばり言うと、医師の絶対数も決して十分ではないと思います。したがって、文部省に対しましても、医師の養成数の相当思い切った増加を要請し続けております。しかし、これは見る人によりましては、医師の絶対数が必ずしも不足しておらないという見方もございますし、また欧米先進国に比べて、日本の医師の人口比例が少な過ぎるといういまのお説でございましたが、これも私が厚生当局から知らされているところによりますと、ソ連とアメリカは日本に比べまして非常に人口対比の医師の数が多うございますけれども、その他の諸国におきましては、むしろ日本におきますよりも医師の人口対比は低い状態にあるようでございます。それらのことも頭に置きましても、しかし、とにかく少なくともこういうことは言えると思います。医師の配置状況がきわめて不均衡で、相対的には——レラティブには医師がきわめて不足の状態にある。これは私が記憶いたしておる数字にいたしましても、日本の平均は、人口十万人当たりに対し医師数は百十二、三人でございますが、しかし、七大都市あるいはその他の大都市にこれらの医師は集中をいたしておりまして、これらの大都市におきましては、人口十万人当たり百数十人になっておりますけれども地方の町村を平均いたしますと、人口十万人当たりの医師の数というものは、昭和四十三年ごろの数字ですが、その後あまりそれから著しく改善しているとは思いませんが、人口十万人当たり五、六十人——五十五人か、六十人未満であったと記憶しております。それは、今日の日本の医療需要が非常に多く顕著になっていること、また国民皆保険制度というもので、どんないなかに参りましても、国民健康保険制度というものがしかれております状態のもとにおきましては、まことに遺憾な状態であると考えますので、したがって、やはり総体的には医師の数をふやしてまいること。第二番目は、ふやされた医師について、できる限りそれらの医師が僻地で診療に従事し得るような体制を整えること。この二つの対策をとるほかございません。第一の点におきましては、先ほどお触れになりました自治省構想もございますが、これは、私はもう批判をここであらためていたしませんが、同じ六年の養成課程でございますので、中学の上に六年の養成課程を乗せるよりも、高等学校の上に六年の養成課程を乗せても、これはでき上がりの時期は同じでございますので、やはり今日の医術が非常に進歩向上しておる点からいたしますと、高等専門学校よりも新しくその医学部をふやしていただくこと、あるいは医学部のない大学に医学部を置いてもらうこと、もう一つは、現在ある医学部の定員を思い切って増加してもらうこと、この三つ以外にございません。前の二つの場合におきましては、御承知のように、医師の養成について一番問題がありますのが大学医学部の付属病院の問題でございまして、これを新しく設置しなければ今日の大学設置基準におきましては医学部あるいは医科大学をつくることはできません。しかし、そのためには何十億という費用がかかりますし、またせっかくつくっても養成された医師が非常に多くこれらの付属病院にそのまま吹きだまっておるような状態におるということを考えますときに、御承知のように、厚生省が持っておりまする非常に多くの国立病院等を、新しく医学部が設けられる場合にはそれを教育病院として提供する。厚生省の国立病院ばかりでなしに、最近地方に公立病院、専門病院などでりっぱなものもございますので、必ずしも今日の大学設置基準どおりの付属病院ということによらないで、これらの幾つかのすぐれた地方の病院を教育病院として提供することによって、新しい大学卒業の生徒の者の養成を早めてもらいたいと提案し、また文部省に正面から申し入れておるわけでございます。これは文部省も非常に深刻にこの問題は考えてくれておるわけでございますが、それにいたしましても、やはり医師ができ上がりますのは六年先、七年先あるいはさらに研修等の問題も加えますと、それ以上の先でございますので、やはり当面の間に合いませんと私は思います。  そこで、もう一つ僻地に医師を確保する方策としては、さっき和田さんからお触れになりました厚生省の政策としていままでとられてきましたことのほか、と申しますか、そのうちの重点事項と申しますか、やはり僻地に回り得るような医師を抱いておる僻地診療の親元病院という制度を強化いたしまして、これは国立のみならず公立、私立等の病院につきまして、親元病院の資格を強化して、そのためには国からもできる限りの助成をする。国の助成ばかりでなしに、さっき御批判のございました僻地医療振興協会というものを、これを必ずしも私は特殊法人であることは必要とも思いませんが、僻地医療振興協会というような、かゆいところに手の届くような、そういうものも考慮いたしまして、いま申し上げました第二の親元病院からの定期的な、あるいは不定期的な医師団あるいはパラメディカルの組み合わせの僻地への派遣というものが容易にやり得るような方途をやはり講じていかざるを得ない。こういうことで明年度の施策を講じるつもりでおります。  第二点の税負担の問題でありますとか、勤務医の処遇の改善問題でございますとか、この処遇改善問題につきましては幸い国家公務員、したがってまた地方公務員である勤務医につきましても、今回の人事院勧告はかなり親切な、事情に適した勧告をされておりますので、私どもは非常にその点について期待を寄せておるものでございます。税の問題その他の問題もございますが、これらはいろいろからみがある問題でもございます。医捺費の問題にしても、またしかりでございますが、私どもはそれらに対する関心も怠らずに、僻地医療問題の解決に資するような、そういう姿勢をできる限りとってまいるつもりでございます。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 答弁では具体的な部分が二、三残っておりますが、私はあと質問することにいたします。したがって僻地におけるところの医師の不足しておるという点は、これはよくおわかりなんでありますから、この対策についてはとにかく早急にやっていただきたい。そういう希望だけを申し述べて終わりにしたいと思います。
  77. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 速記を起こして。
  79. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 まず質問に入る前に、政府側に特に留意してもらいたいのは、佐藤総理は七〇年代は内政の年と言っております、今日わが国は政府と国民一人一人の努力によって経済大国になって、後進国に対する経済援助も本年度は政府並びに民間を合わせまして四千五百億という膨大な金額になっております。このことはまことにけっこうなことでございます。しかしながら内政面においては、公害をはじめとして、まだまだ解決しなければならない問題、特に日の当たらない谷間のいろいろな問題、またひずみ是正の問題があるようでございます。このような問題の早急な解決があってこそ、総理の言う内政の年ということばが名実ともに生きるものと私は考えます。  そこで本日、公害問題をはじめとして谷間の問題、ひずみの是正の問題について質問をいたします。この際、総理のことばが名実ともに生きるような御答弁をいただきたい。これを強く要望いたしまして質問に移ります。  最初に、公害問題で関係各機関にお尋ねをいたしますが、政府は公害対策本部をつくって本腰を入れてこの問題と取っ組んでおりまするが、公害関係法律を再検討する場合に、企業責任というものをどのように考えておられるか。企業責任を現在以上にきびしく追及するような考えがあるかもわかりませんが、この基本的な構想をまずお聞かせ願いたいと思います。これは通産省にお願いします。
  80. 児玉清隆

    説明員(児玉清隆君) お答え申し上げます。  現在、公害対策基本法の見直し作業を各省それぞれやっておるわけでございますが、公害対策本部ができまして次の通常国会をめどに一応公害対策基本法の根本的な見直しということで私どもも大臣の命を受けまして、特に通産省は企業責任問題というものについてどうあるべきかという点を現在検討中でございます。特に第一条の第二項の調和条項の問題がひとつ問題になっております。それから費用負担そのものに関しまして公害対策基本法の第二十二条の問題がございます。  第一番目の、企業公害対策基本法そのものの生活環境にかかわる部分につきましての姿勢の問題でございますが、これにつきましては、「経済の健全な発展との調和」をはかるということになっておりまして、これは何人も異論のないところとして基本法制定のときに入れられたものでございますけれども、最近いろいろな議論が出ております。したがいまして通産省として現在考えておりますのは、こういった二者択一的な議論で現在の公害問題というものは解決するものではないというふうに考えております。したがいまして経済の健全な発展のあり方とか、あるいは生活環境の保全のあり方、これはいずれも最終的に国民の福祉につながる問題でございまして、まず国民の福祉は、一番最近の時点において考えた場合に、日本としてどういうふうに考えていくべきかというところから見直しを行ないまして、そうしてその中での位置づけとして企業責任のあり方、それから生活環境保全対策のあり方というものを具体的に考えていくことが一番建設的ではなかろうかというふうに考えております。したがいまして先般の閣僚協議会におきましても宮澤通産大臣から、第一条第二項の削除とかあるいはこれを残すとか、そういった問題のとらえ方でなくて、基本法全体についてもう一ぺん根本的に見直しをすべきではないかという発言をしておる次第でございます。  それから第二の、基本法第二十二条、企業者の費用負担の問題でございますが、費用負担の問題は大きく分けまして四つございまして、一つ事業者が自家の工場の中でたとえば集じん装置を設けるとか、排水処理装置を設けるとか、一〇〇%自己負担で処理施設を持つわけでございます。これは現在いわゆる公害防止のための投資ということで行なわれております。  それから第二は、共同処理場を設けまして——工場の外の場合が多いわけでございますが、そこで共同で排水処理をするといった事業でございます。これにつきましては参加します事業者が分担いたしまして、共同負担というかっこうで全額金を出しております。  それから第三番目の費用負担は、いわゆる第二十二条そのものでございますが、国または地方公共団体実施いたします公害防止関連の事業、これに対して応分の負担としてどこまで金を出していくかという問題でございます。で、一般の公共的事業としてこの第三のカテゴリーは実施されますので、一般の社会環境整備といった色彩もその事業の中には当然出てまいりますので、そういったものと本来的な公害防止事業というものとがミックスしたようなかっこうで事業が遂行されるわけでございます。したがいまして、その公害防止の効果がどの範囲か、それから負担をさせるべき事業者の範囲をどの辺にしぼるか、それから事業者側トータルとして幾らの金をどの割合で出すべきかといったことを、別に定める法律できめることになっております。この点につきましては先般六月の末に産業構造審議会という通産大臣の諮問機関で一応の中間答申を出されまして、政府はこれを受けたわけでございます。これも公害対策本部のほうにお示しをいたしまして次期通常国会までに何らかの法制化ということで現在段取りをつけているわけでございます。で、昨日ですか——厚生省の方もお見えになっておりますのであれでございますが、厚生省の研究会のほうでも一応二十二条の負担についての結論をお出しになっております。おそらく本部でこういった各種の意見を取りまとめまして、具体的にそれでは負担をになうべき事業者の範囲をどうするのかといった問題とか、負担割合等を今後事務的に詰めていくことになると思います。その場合の少なくとも通産省としての考え方は、やはり事業者の責任というものは現行法の公害対策基本法の第三条に書いてありますように、公害を防止する措置を講じなければならないという義務が一つございますし、それからあわせて国や地方公共団体実施します公害防止対策について協力しなければならないという責務が書かれております。したがいまして、その責務を完全に果たさせるということが、まず公害対策の基本だというふうに考えておる次第でございます。ただ、先生指摘のように、それが事業者といいましても、大企業の場合もございますし、中小企業の場合もございます。したがいまして、事業者が自分の責務を果たしやすいような形の措置をあわせとってやる必要がございます。責務を免除するということではございませんで、責任を果たし得るような基盤づくりをしてやるということを基本考えておるわけでございます。
  81. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ただいまいろいろ基本法の改正等について見解が述べられたのでありまするが、私はやはり企業そのものが生きていくような方法、精神で改正してもらいたいと思います。  ところで、長崎県の対馬のカドミウム汚染でございますが、現在あの対馬地区は東邦亜鉛という会社が営業いたしておりますが、当の鉱業権の継承はどのようになっておられるか。この件につきましては、去る七月の衆議院の商工委員会でも問題となっておりますので、すでに調査が済まされていることと思います。   〔委員長退席、理事若林正武君着席〕 で、対馬の場合に微妙なところもあるように聞き及んでおりまするが、鉱業権問題の結論によってはその後の対策もかなり違ったものになることと思います。そこで、いろんな意味で重要なポイントとなりますので、鉱業権の継承についての調査の結果と政府の御見解をお聞きしたいと思います。
  82. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) お答えいたします。御質問の対州鉱山につきましては、現在の鉱業権者は東邦亜鉛株式会社でございますが、それ以前の鉱業権者につきまして詳細なる調査を行ないました。その結果、この鉱区は以前は七つに分かれておりまして、七人の人々によって鉱業権が設定されております。それがすべて東邦亜鉛に継承されておるという実態が明らかでございます。そういたしまして、この七つの鉱区のそれぞれの鉱業権者につきまして継承されております状態を一つ一つ調べてまいりましたところが、七つのうち四つは明治三十八年の鉱業法の制定時点までその鉱業権者の名前が明確になってまいりました。で、三つは昭和十七年から鉱業権が設定されているという事実もまた明らかになったわけでございます。で、このことが対州鉱山におきます公害の補償問題にも密接な関係がございますということになりますが、それは鉱業法の百九条には、鉱山に公害が発生しました場合に、その発生時点が非常に古い場合でありましても、鉱業法で遡及できます限りその当時の鉱業権者とそれから現権者の連帯責任であるということが明記されておるわけであります。したがいまして、いまの調査の結果から考えられますことは、明治三十八年以降の権者が何らかの原因で公害の発生の原因をつくりました場合には、その当時の権者及び現在それを引き継いでおりますところの東邦亜鉛にその賠償の責任が連帯であるということになるわけであります。  ところで、この対州鉱山は非常に歴史の古い鉱山でございまして、私どもが調査いたしました文献によりますると、西暦七〇〇年当時から、すなわちいまから千二百年前から稼働されていたという事実があるわけでございます。で、しかも明治以前におきましてこの鉱山は銀鉱山ということで稼行されておりまして、現地で銀の製錬を行なっておるわけでございます、その銀の製錬のからみが鉱山の周辺に堆積されておりますが、このからみには亜鉛、すなわち亜鉛の中に含まれておりますカドミウムの高度の含有が認められております。現在対州鉱山におきまして公害が問題となっております樫根部落及び床谷部落はこの旧廃滓、製錬のからみと私ども申しておりますが、そのからみの上に部落が形成されておるということでございまして、したがって明治以前にすでに今日問題となっておりますカドミウム公害の原因が発生していたということになるわけであります。  で、冒頭に申し上げましたように、鉱業法の規定がございますが、いまの問題のように、明治以前においてすでに公害の原因が発生しているという事実がございます以上、今日の公害の原因をすべて東邦亜鉛株式会社一社のみに負担させるということは非常に法律的に見ましても問題があるところでございます。しかしながら、東邦亜鉛は昭和十七年以来約三十年にわたりまして同地区で稼行しておりまして、その間において今日の公害の発生に全く寄与しなかったという事実はないのでございまして、そういう意味合いで東邦亜鉛にもその責任の一半があるということは事実でございます。で、この点に関しまして、通産省といたしましては今日起きております公害の補償問題につきましては、企業に対しまして、県の指示に従いまして十分補償するよう指導しておるところでございます。  なお、問題はこれから先の土壌の改良問題、あるいは汚染されております地域の作付転換の問題という点になると思いますが、この点につきましては現在関係機関でその対策が協議または研究されておるところでございまして、現在までのところ、まだはっきりとした方針は定まっていないと私どもは聞いておりますが、もしそういう対策が定まりました場合には、通産省といたしましては企業に対し応分の協力をするように指導する所存でございます。
  83. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ただいま政府の調査結果を聞いたのでございますが、なかなかむずかしいようでございますので、もし調査資料がありますれば、私あとでいいから一部いただきたいと思います。  次に、農林省にお伺いしたいんですが、農林省は去る八月の十二日にカドミウムが玄米に一PPM以上、さらに精米で〇・九九PPM以上含まれている米は政府の買い入れの対象としないと決定したというような意味の報道があったわけでございますが、これは事実でございますか、御答弁をお願いしたい。
  84. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) 先生の仰せのごとく、八月の十二日にカドミウム汚染地域における農家の保有米のカドミウム濃度一PPM以上であるというふうに認定された米については買い入れをしないということをきめて、通達を出しております。ただ、そういう地域でございましても、本年とれます、あるいは今後とれます米につきまして、権威のある機関におきまして一PPM未満の米だということが証明された場合には、それは買い入れていく、こういうふうになっております。
  85. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 同じ報道によりますと——厚生省側にお伺いするのですが、一PPM以上の米を食品衛生法上の有害食品として指定する関係だということですが、通常の場合、ある食品が有害食品として指定された場合は、その食品を生産した企業等の責任において処分させるのが至当ではなかろうかと思うのですが、そういう考えはないか。あるいはまた指定するだけでそのまま放置しておくのか。さらに生産者に全く責任がない場合にはどのような措置をとるものか、これは厚生省に御答弁をお願いしたいと思います。
  86. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 現行の食品衛生法上、有害食品と決定された場合、この有害食品と認められた食品の処分につきましては、食品衛生法上は第一義的には、その所有者にその所有権に基づきまして自発的に処理されることが望ましいという考え方をとっております。なお食品衛生法上の禁止規定に違反いたしまして、製造あるいは貯蔵、販売等が行なわれます場合には、当該営業者に対して廃棄命令等を出すことができるたてまえとなっております。この場合、廃棄その他の措置はその処分権限を有するものにおいて行なうこととなるものと考えられます。したがいまして生産した企業——お米の場合は第一次的には農林省のほうから御説明いただけるものと思いますが、一般的に言いました場合には、生産した企業がすべての場合に処分しなければならないものとは限らないのでございます。また、この処分権限を有するもの、あるいはそうでないものという判定は、これはやはり取引等の実態に応じまして、個々に定まるものであると考えております。なお、当該食品の生産者が処分権限を有する場合におきましては、有害食品の生産についての責任の有無にかかわらず、やはり廃棄等の措置を講じなければならないものというふうに考えております。
  87. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 この長崎県の対馬の樫根部落というところで汚染米がとれたのは、これは農民に責任はない。かように解釈しているわけでありますが、このような米を政府は買い上げをしない。加えてまた公害食品に指定されるかもわからない。こういう場合には農民としては非常につらい立場になるであろうと考えるわけであります。こんなことを考えた場合に、私は汚染させた責任者は、すなわち企業側が——先に言うたように対州鉱山が農民の肩がわりをすべきだと思うのでございますけれども、先ほどの政府側の因果関係の調査によりますと、なかなかもって不明確な責任の所在のようでございます。そこで、この対馬の場合は、特に先ほどの説明で、千二百年という歴史を持つ古い鉱山でもあり、さらに先ほどの鉱業権の継承問題等も微妙なものがありますので、すべての責任がこれまた現在の会社にあるかどうか不明確のようでございます。このような場合に、国は鉱業法上の監督者としての責任上からも、あるいは血のかよった、あたたかい政治を行なうという意味からも、政府が責任を持って買い上げるか、あるいはまた何らかの形で賠償すべきだと考えるのでございますが、これに対する御所見をお伺いしたいと思います。農林省。
  88. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) いまのようなカドミウムの汚染によりまして、政府がその地帯の米を買い上げないというような事態が起こりました場合に、当然そこの農家は損害を受けるわけでございますので、その損害につきましてはそのカドミウム汚染の原因が企業にあるということがはっきりしておる場合には、当然、企業責任で賠償するべきであるというふうに考えておりますが、樫根部落のように責任者がはっきりしない場合等におきまして、これの補償についてどういうふうにするかということは、農林省といたしましても関係の各省と現在打ち合わせを行なっておるところでございます。  ただ、食糧庁におきまして食糧管理法に基づいてその米を買い上げるということは、食糧管理法のたてまえと申しますか、目的からいたしまして、国民食糧の確保ということで買い上げるわけでございますので、そういう趣旨からいたしますと、食品として有害である、食糧にならないというものも食糧管理法で買い上げるということにつきましては問題がございますので、そういったものは買い上げない。補償については別途各省連絡の上で考える、こういう考え方でございます。
  89. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 非常にむずかしいような考え方でございますが、農林省が買い上げないと決定したのは、現在の農家の保有米ですね、これだけを対象としておるのか。また、今度新しくできるところの四十五年度産米についても同様な考え方であるのか。これを私があえて申し上げるのは、現在の四十五年度産米の予約をただいま受け付けておるわけでございまするが、ここの樫根部落という部落は予約米の受け付けから除外されておる。そこで私は、大体四十五年度産米というものについては収穫時において詳細な調査をすべきではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。すなわち、要観察地域の米といえども、米の予約というものは一応すべて受け付けて、先ほど申したように収穫時に精密な検査を行ない、その時点で処理すべきではなかろうかと考えますし、また、そうすることがあたたかみのある農政ではなかろうかと、このよう左考え方をいたしておりますので、そういうことに基づいて農林省側に御答弁をお願いしたいと思います。
  90. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) ただいま申されました、政府が買い上げないことにしておるのは保有米か、あるいはこれから取れます四十五年産米かということでございますが、これは保有米につきましては本来政府は買い上げない。それはカドミウムの汚染があるとないにかかわらず、保有米について買い上げるということはやらないことにいたしております。それからカドミウムの含有量一PPM以上と判定された地域の米を買わないというのは、これは四十五年度産以降の米の問題でございます。ただ先生のおっしゃいますように、四十五年産米については実際に一PPM以上の含有量であるかどうかということはわからないわけでありますから、したがって、一応四十四年産米の保有米のカドミウムの濃度が一PPM以上で、この地域は一PPM以上の米が取れるというふうに認定された地域につきましては、一応そこの米は買わないというふうにはいたしておりますけれども、四十五年産米につきまして県の試験所等でカドミウムの濃度をはかっていただきまして、それが一PPM未満であるということがはっきりしたものにつきましては、その地域の米につきましても政府は買い入れをいたしますというふうにきめております。したがって、県のほうで、そういったこれから取れます四十五年産米については調査をしていただきまして、その上で一PPM未満ということが明らかになればそのものは買い入れをいたします。こういうふうにいたします。
  91. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そうすると、現在の樫根部落の米の予約というものは、検査をした結果予約を受け付けておらない。したがって、検査をした結果、一PPM以上あるから予約をしないということに解釈してよろしいですか。
  92. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) 四十五年産米の予約につきましては、これはまだ米の取れる前に予約をいたしておるわけでございまして、四十五年産米がはたして一PPM未満であるかどうかということが樫根部落の中の一部、神田原地区の約八ヘクタールの地域につきましては四十四年産米の保有米の濃度が一PPM以上でございますので、その地域の米は一応買い入れの対象にしない。ただ、そういったものを、でき上がって調査した結果、一PPM未満であれば買います、こういうことでございますから、私のほうとしては完全に買えるという保証がございませんので、予約の段階では予約はしない。しかし、でき上がったものが一PPM未満ということであれば、これは予約はなくても買い入れをいたす、こういうことにいたしております。
  93. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そうすると、農家はますます不安になるわけですね。現在、四十五年産米ができておる。その結果を待たなければこの米は先行きはどうなるのだろうというふうに非常に困っている。現地の話を聞きますと、政府が要らないお世話をするのだ。われわれは何百年前からこの土壌で取れた米を食べているのだ。ところが、政府が要らない基準をつくったために困っているのだというような私は声を聞くわけでありますが、これは政府の行政としてある程度の区切りというものをつくる意味においてこういう措置をしたと思いますが、現地ではそういう声がある。したがってその結果を待たなければというようなことでは、私は地元として納得がいきかねる。こう思いまするけれども、やはり答弁があったとおりに、将来一PPM以上あった場合には県のほうにおいて何らかの処置を——県と話し合っていたしたい、さらに企業側にも応分の賠償を要請いたしたいというようなお含みがあるようでございますので、私はこれ以上申し上げませんが、そういう米を政府で買わずに県で一応買い取るということは食管法上違法になりはしないかというふうに考えますが、この点いかがですか。
  94. 中村健次郎

    説明員中村健次郎君) カドミウムの含有濃度が一PPM以上ということで政府が買わないということになった米につきましては、これが食用に回わるということでは困るわけでございますから、その処分につきましては、県の指導で食用以外の用途に向くようにあっせんをしてもらいたいというふうにお願いをいたしております。その方法として県が一括買い上げて、そうして適当な食用以外の用途に向けるというふうにしていただくということであれば、これは食管法上農林大臣の許可でできることになっております。
  95. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そういう便法が農林大臣の許可に基づいて県においてできるということであれば、そういうことで一応私は了解をいたします。  次に、この問題で最後に厚生大臣にお尋ねいたしますが、このカドミウムの中毒症の診断及び治療についてでございますが、厚生省は研究班が認定した慢性中毒症の患者の自己負担分は国がみてくださいと言っているようだが、慢性とはどのような基準で判断をするのか。慢性中毒症とか何とか言わずに、カドミウム症の疑いのある人はすべて診断、治療について因果関係が不明確な場合は国が責任を持ってやるべきだと私は思います。そこで、国が負担されるかどうか、この点の大臣の御所見を承りたいと思います。
  96. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 技術的な問題にわたりますので、私、大臣にかわってお答え申し上げます。  カドミウム中毒につきましては、慢性という表現をよく用いておりますのは先生の御指摘のとおりでございます。これはカドミウム中毒が一般住民に起こります場合には、実態上相当長期間にわたり慢性の経過をたどるということが一般でございます。それ以外に何かと申しますと、カドミウムの急性中毒というのが学問上、医学上あるわけでございます。これら急性中毒は実際には工場その他で事故にあったような場合に急激に起こってくる一過性のものであります。したがいまして、ここでカドミウム中毒ということを公害のかかもりにおきまして申し上げます場合には、すべて慢性の経過をたどる慢性中毒であると申し上げてもよろしいかと思います。御指摘の、このような公害にかかわる健康被害というものに関しましては、イタイイタイ病など公害病と認定されましたものにつきまして、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法によって医療費その他をみるという処置が講ぜられることになっております。その対象として取り上げられるものは、事実上漏れるものはない。つまり、慢性カドミウム中毒と一般に申しておりますけれども先生方の頭にあります一般のカドミウム中毒、公害にかかわるカドミウム中毒というものがこのことを指しておるというふうに御理解いただきたいと思うのでございます。
  97. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 カドミウム問題はこれで終わります。  次に、カネミ油症事件について二、三お尋ねしてみたいと思います。  この事件は、皆さん御承知のとおりに、福岡県にあるカネミ倉庫のライスオイルが原因で、全身に黒い吹き出物ができたり、からだがだるくなったり、視力が衰えるという症状を起こして、ついに死者まで出した事件でございます。この事件は、昭和四十三年の秋、西日本一帯に発生したものでありますが、自来、一年十カ月余になりますけれども、補償問題の解決をはじめとして、その治療方法すら確立されていないのが現状でございます。このような状態におかれている患者の苦しみはいかばかりか、はかり知れないものがあります。去る七月十九日の朝日新聞には「油症患者・苦悩の日記」と題して、油症であるがゆえに結婚ができないお嬢さん、また、就職を断られた学生、黒板の字が見えない女子高校生などの例が詳しく報道されていたのでございます。このように苦しんでいる患者の数は全国で一千十九名でございまして、そのうち八名がなくなられている。この数字はことしの五月現在のものであるが、特に福岡県と長崎県にその患者が多いのでございます。前者は四百四名、うち二名が死亡。後者は四百二十八名、うち死亡が四名となっております。長崎県の場合は、患者は離島の半農半漁の辺地に多く、五島列島の玉之浦町で二百八十六名、奈留町で八十七名と相なっております。長崎県全体の患者の八割強を占めている数字でございます。この五島列島の玉之浦町の町長さんから私のところに「治療法を一日も早く確立してほしい」というような陳情が参っております。その一部を御紹介してみますると、「患者世帯の大半は半農半漁で、世帯主や家庭経済のにない手で罹病している人は六十名である。そのほとんどが倦怠感を訴え、労働力は低下し、生産性も極度に落ち、生活保護世帯に転落寸前の世帯もある実情でございます。一方、テレビ、新聞等で報道された黒い赤ちゃんが二名も生まれております。患者の妊婦は恐怖におびえ、またひどい脱毛症にかかって、人目を避けて外出する婦人もおり、精神的にも相当打撃を受けて、苦しい日々を送っておる実情でございます。早急な医療対策の確立が切望されております。そこで町においても、かかる窮状を救済するために、通院費、治療費、栄養補給費の一部として、患者一人当たり三千円、これとあわせて県がまた三千円の見舞金を支給するとともに、患者の会に対しても、乏しい町財政の中から三十万円を支出いたしております。また、昭和四十四年十月から相次いで四名が死亡し、油症との因果関係は究明されないままで、健康に対する不安は深刻である。」と訴えて来ております。  この町長からの手紙にもありまするように、油症の治療方法はまだ確立されていないというが、これはどこに原因があるのか。患者たちは毎日が苦しみと不安の連続でございます。この治療方法が確立されるのを待ち望んでおりまするので、その研究体制、あるいはこれを研究する費用等を含めて、もう少し厚生省は熱意を持ってもらいたい。今日まで治療方法の研究等に出した費用はどのくらいになっておるのか、年度別に数字だけでもようございますから、御答弁をお願いしたい。また幸いにして来年度予算に対して、その時期でもありまするので、これに対する大幅な予算要求をする考えがありまするかどうか。さらにまた治療方法はいつごろまでにはっきりするというような見通しがあるのかどうか。あわせて御答弁をお願いしたいと思います。
  98. 浦田純一

    説明員浦田純一君) いわゆるカネミ油症患者の治療の問題でございますが、まずお尋ねの現在までの油症患者の治療研究のために出しました予算を年度別に申し上げます。これは、国は油症患者の治療費という形で支出しているわけではございませんが、治療方法の確立ということを含めまして、いろいろと研究を願っている方々に出しておる予算でございます。この研究は、九大の樋口教授を班長といたしまして昭和四十四年に、それまで行なわれておりました油症のいろいろな研究を総合的に行なうために、九大、長崎大学、鹿児島大学、山口大学等、関係の大学、及び国といたしましては衛生試験所及び放射線医学総合研究所の先生方にお願いいたしまして、研究班を発足させたのでございますが、まずそれ以前の昭和四十三年度におきましては、総額二千四百六十五万二千円、うち厚生省関係は一千八百五十二万三千円でございまして、このときには農林省と一緒の研究をいたしております。昭和四十四年度におきましては三千二百十七万七千円でございまして、うち厚生省関係分といたしましては二千七十二万二千円でございまして、残りは放射線医学総合研究所関係の研究費でございます。それから昭和四十五年度におきましては、油症の治療法と予後に関する研究といたしまして一千万円を支出いたしまして、現在までのところ総額六千六百八十二万九千円が研究治療費のために支出されておるわけでございます。来年度におきましては、まだ予算が確定された段階ではございませんが、これまでに引き続きまして、先ほど御指摘のように、この特効的左治療法がいまだ確立しておりません段階でございますので、早急に結論を出すべく、引き続き研究費の支出を予定しておるわけでございます。  それから治療方針についてでございますが、確かに御指摘のとおりに、その治療法と申しますか、肺炎に対するペニシリンのような特効的な薬並びにその治療方法というものについては、残念ながらこの油症が医学史上初めての疾病であるということもございまして、これらの先生方には引き続きこれからも御検討を願わなくちゃならないのでございますけれども、いまだそのような特効的な治療法というものについては、発見されるに至っていないのでございます。しかしながら、では全然治療法がないのか、あるいは治療方針が立っていないのかと申しますと、それはそうではございませんで、これらの油症治療研究班におきまして、ことしの二月十八日に油症の治療方針というものを規定いたしまして、それぞれ内科的方面、皮膚科的方面、その他眼科、歯科、整形外科、各領域におきまする油症の症状につきまして、対症的な療法でございますけれども、必要な療法、その治療方針というものを示しているところでございます。なお患者さん方のいろいろな御苦労、御不幸につきまして、一刻も早くできれば特効的な治療薬といったようなものが発見されるべく研究班の今後の研究についても、できるだけ早く結論を得るように努力してまいりたいと思います。
  99. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そこでこの問題は、いま裁判中であると聞き及んでおりまするが、患者たちは非常に通院費とか、治療費等に苦しんでおるという実情であり、地元の町や県にまかせずに、国もひとつ大臣は企業側にも強く要請をして、何らかの処置で早目に解決するように御努力をお願いしたいと思いまするが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  100. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 実は私も、就任後まだそう日時がたっておりませんが、その期間におきましてカネミの責任者を呼び出しまして、私から強くお話のような会社側の処置につきましても要望をいたしました。さらにまた、国としてもできるだけのことをいたしたいと思っておりまして、一つの方法として御承知の世帯更生資金の貸し付け制度というのがございますが、従来の貸し付け運用の基準を、つい先ごろそのためにわざわざ変えまして、この資金運用ができるだけカネミ患者をかかえる世帯の方々のお役に立ち得るように、実ははからっておるのでございます。また今後も同じような考え方をもちまして、でき得る限り配慮をいたしてまいりたいと考えております。
  101. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 最後に私は、古い話でございますが、この問題が片づいておりませんので、この際特に発言をするわけでございますが、これは入営あるいは応召の途中でなくなった人々に対しての処遇問題について、具体的な例をあげて申し上げたいと思います。  昭和十八年四月九日、長崎県北松浦郡の鷹島村という離島と本土を結ぶ唯一の交通機関である定期旅客船の殿の浦丸、この船が突風のために遭難した事件でございます。この殿の浦丸には応召兵や入営兵、その付添人、見送り人らの百十四名が乗船しており、助かったのはわずかに十三名であったのでございます。当時の船長を初め役場の兵役係など百一名が死亡いたしております。これらの人々は、赤紙の召集令状を受け、勇躍出発をし、あるいはまた付添人として、見送り人として同行して、その途中で不可抗力の遭難事件にあい、事故死亡したわけでございます。鷹島村の人たちは、この定期船を利用しなければ九州本土には渡れない、入営することもできないのでございます。このような不可抗力の事故にあい死亡した人々に対しては、すべて私は入営した人々と同じように取り扱ってしかるべきではなかろうかと考えます。今日まで何らの援護措置もとられていないようでございますが、もし召集令状を受けた者が応召や入営を拒否し逃亡したならば、当時は軍法会議によって仮借ない厳罰に処せられていた事実から考えても、戦没軍人、軍属と同じように処遇されてもいいのではないか、かように考えるわけでございます。この問題は、同じような考え方から先輩の徳永議員も昨年の六月十七日の社会労働委員会でただしております。その内容は入営応召の途中であるとか、あるいは帰郷の途中であるとか、こういうものはもう少し援護法というものをあたたかく動かしていいんじゃないかと思うというふうに発言をいたしております。これに対して当時の援護局長は、いろいろと措置を検討しておるところでございます。かような答弁をしておるのでございまするが、厚生省当局といたしましては、この事情を十分勘案されまして、当時の国家総動員法、それに基づいての考え方もありまするから、来年度の予算編成に当たって、大臣はひとつ前向きの姿勢でこの問題に対処する考えはないかどうか、答弁し得る範囲内でひとつ答弁願えれば幸いと思います。
  102. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) これは実に、なかなか難問でございまして、今日まで残された幾つかの最もむずかしい問題の一つでございます。ことばを飾らずに正直に申しますと、この戦傷病者戦没者援護法という法律改正をもって対処するということは、これは今後においても非常にむずかしい問題であると思います。いま初村さんのおことばの中にございました、軍人、軍属と同じようにというおことばでございますが、この援護法は軍人、軍属という一定の身分を持った者であって、しかも恩給法の対象にならないいろいろなケースに対応する法律でございます。したがって、入営の途中あるいは除隊後——まだ軍人の身分を持たない、あるいはすでに軍人の身分がなくなった者に対する処置までも、いま申した援護法の中に取り入れる改正というものは非常に困難ではないかと考えますが、それはそれといたしまして、これは私も自民党議員の一人でございますので、私どもも何とかしたいという気持ちを持ってまいった者でございますが、明年度予算におきまして予算上の措置等の方法によりまして、でき得る限りの善処をしたいということで、現在措置の検討を進めております。
  103. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ただいま大臣の苦しい答弁のようでございますが、ひとつ前向きの姿勢で何らかの措置をとってもらいたいということを特に重ねて申しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  104. 若林正武

    ○理事(若林正武君) 十四時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  105. 森元治郎

    委員長森元治郎君) 委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十三年度決算外二件を議題とし、厚生省決算につきまして質疑を続行いたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  106. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は、厚生省関係として主として食品添加物の問題、チクロの問題と、それからあと農林、通産に関係をいたします果汁の問題についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。ちょっと問題が多岐にわたる面もあると思いますので、整理しながらやってまいりますが、答弁のほうもよろしく簡潔にお願いしたいと思います。  昨年の十一月十日にいわゆるチクロが使用禁止になりました。その使用禁止に伴ってとった行政措置、このことについてまずお伺いしたい。
  107. 浦田純一

    説明員浦田純一君) いわゆるチクロの使用販売等は昭和四十四年十一月十日をもって禁止をしたことは、先生の御指摘のとおりでありますが、この際とった措置を少し食品別に分けて申し上げますと、この際すでに製造されておりました食品につきましては、まず清涼飲料水については本年の一月三十一日まで、その他の食品につきましては本年の二月二十八日までの販売猶予期間を設けました。しかしながら、その後清涼飲料水を除くかん詰め、びん詰め、たる詰め及びつぼ詰めの食品につきましては本年九月三十日まで販売猶予期間の延長措置を講じたのでございます。
  108. 二宮文造

    ○二宮文造君 当時、そういう措置をとられたときに世間の評判がきわめて悪かったわけです。なぜ、政府が、厚生省がチクロの使用禁止をしたか、これはもう申すまでもなくアメリカで例の問題もありましたし、間髪を入れずというような状態で厚生省がそういう措置をとった。使用禁止の措置をとったのはけっこうですけれども、人体に害があるということでその使用禁止をした、またその疑いがあるという、そのことで使用禁止をしたにもかかわらず、製品について販売猶予期間を置いたということは、当時は非常に評判が悪かった。消費者を守るというほんとうの消費者行政の立場に立てば、当然廃棄処分にすべきじゃないか、こういうふうな意見が圧倒的だったと思います。当時の社説を振り返ってみてもそのようであります。にもかかわらず、なぜ販売猶予期間を設けたか、その点もう一つ立ち入ってお伺いしたい。
  109. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 確かに先生指摘のとおり、一たび人体の健康に対して有害であるという判定を下しました食品につきましては、即刻その販売あるいは使用の禁止ということをとる、その際にすでにありました食品については廃棄処分にするということが私は原則であると思うんです。しかしながら、実際の問題といたしまして、このような措置をとった場合にやはり行政の仕組みといたしまして、一般の、末端にまで知れわたり、それが十分に徹底するという事実上の期間というものと、それからその製品、食品を回収する、それに対する物理的な若干の猶予期間というものは最小限必要ではなかろうかと思うわけでございます。しかしながら、その猶予期間と申しますか、これをどの程度に定めるかということは、これはなかなか一がいには申せない点もあろうかと思います。早ければ早いほどよろしいということは当然でございますけれども、やはりその食品の流通のぐあい、あるいはその量、あるいはまた場合によりましては、これは一般的なことでございますけれども、実際に人体に影響を及ぼしますその度合いなどによりまして、個々の例については固まってこようかと思いいます。  御指摘のチクロでございますけれども、これは確かに十一月十日の時点におきましては、この使用、販売の禁止について一月三十一日まで、あるいは二月二十八日までの販売猶予期間を設けたのでございます。その後、一部のものにつきましてはさらに九月三十日までその販売猶予期間を延長したということについてのいろいろな御意見、いろいろな御批判ということはごもっともでございますが、まず第一段階の一月末まで、あるいは二月末までの猶予期間ということについては、これは純粋に物理的にやはりその程度の回収期間というものは設けてしかるべきではないかという判断に立っております。その後でございますが、これらはあくまでもまあアメリカがくしゃみをすれば日本がかぜをひくといったようなたとえもございますが、アメリカの緊急な措置に基づいた日本側の緊急の措置として決定したものでございまして、これらによる社会的な混乱、それからその後におきまするアメリカの一部食品の猶予期間の延長などの措置といったようなものもございまして、今年一月、国民の健康に支障のない最小限度の範囲内ということでもって、これら一部食品の販売についてさらに猶予期間の延長をしたということでございます。それらの食品につきましては先ほど私が申し上げたとおりでございます。
  110. 二宮文造

    ○二宮文造君 ただいまの説明によりますと、何だかアメリカが措置をとったから日本もそれに追随したということは言われたくないというふうなお説のようでございますが、事、人体に影響するような問題ですから、アメリカで注意をした、またそういう措置をとったならば、日本でもとるのは、これは当然でありまして、外交政策は追随されると困るのですが、人体の健康に差しつかえるような問題については、先を越していただきたい。追随して決して悪くない。私は追随して悪いとは決して申しておりません。ただ、いま御説明によりますと、何だか猶予期間を設けたのは、この使用禁止の規定を周知徹底させるのに若干の猶予が要る、あるいは製品の、そういう害のあるものの回収のために若干の猶予が要る、こういうふうな御説明でございましたけれども、私は全部違いまして、この猶予期間というのは、それまでにできた品物全部を消化してしまう、消化することを対象に猶予期間をお置きになったのではないでしょうか。この点、ちょっと趣旨が違うようですが……。
  111. 浦田純一

    説明員浦田純一君) あくまで実際上混乱の起こらないようにという趣旨から行なった措置でございます。
  112. 二宮文造

    ○二宮文造君 私、食品行政の場合、混乱の起こらないようにということよりも、人間の健康というものを中心に置くのが私は食品行政ではなかったろうか。業界の混乱あるいは流通ルートの混乱、そういうものよりも、先ほど私が申し上げたように廃棄処分にするほうが一番混乱を免れるのではないでしょうか。この点、重ねてお伺いしたい。
  113. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 確かに原則としては二宮先生のおっしゃるとおりでございます。しかしながら、実際問題としてやはりそこに若干の猶予期間というものが、原則の問題としては必要じゃなかろうかという趣旨でございます。
  114. 二宮文造

    ○二宮文造君 現実になぜ必要なんですか。その事実をお伺いしたい、なぜ必要か。
  115. 浦田純一

    説明員浦田純一君) それはやはり私どものほうでチクロの使用、販売等の禁止に伴う行政上のいろいろな通達、それが各都道府県を通じまして実際の消費者の方、あるいは販売店の方々の間に徹底するという、そういった意味での必要な期間でございます。  それから、それに基づきまして廃棄するということでございますけれども、廃棄するにいたしましても回収ということが行なわれなくてはならないのでございまして、この回収もやはりそれぞれのルートによって行なわれることが現実の姿じゃないでしょうか、それに要する期間のことでございます。
  116. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、それは一応おいておきましょう。ただ、いま回収ということばを再びお使いになったことを忘れないでいただきたい。  さらに私お伺いしたいのですが、いわゆるチクロ、サイクラミン酸塩ですが、これが食品添加物として指定になったのはいつですか。
  117. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 昭和三十一年五月二十五日でございます。
  118. 二宮文造

    ○二宮文造君 じゃ三十一年から四十四年十一月までは、あらゆる化学的な検査、そういうものを通して、人体に害がない、したがって食品添加物として使用してよろしいという、そういう行政措置をおとりになったのですね。
  119. 浦田純一

    説明員浦田純一君) お尋ねのチクロ指定の際の慢性毒性実験あるいはその他の実験の結果から判断いたしまして、その時点の学問的な水準といたしましては、安全性はこれらの実験を通じて確認されておるところでございます。また一九六七年でございますが、FAO及びWHOの合同食品添加物専門家委員会におきましてチクロの成分に関する種々の資料を持ち寄りまして、その安全性について検討したのでございますが、安全であるという評価がなされておるのでございます。しからばその後どうして急に、これが人体に有害であるかということでございますけれども、その後の学問の進歩、ことにいままで問題とされていなかった細胞レベルにおける影響といったようなものが、新しい学問の分野として急速に広がってまいりまして、それらの新しい学問の知見に基づいて、チクロの有害性、あるいはその他の添加物に対して、改めてそれらの点からの検討という問題がのぼってきたものと思います。
  120. 二宮文造

    ○二宮文造君 そういたしますと、私ここで確認をしておきたいことは、三十一年に指定になった、そして四十四年の十一月の時点まで——使用禁止になるまで、このチクロを使用した業者には過失もあるいは悪意もなかったということはお認めになりますね。
  121. 浦田純一

    説明員浦田純一君) それは認めます。
  122. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、先ほどおっしゃった回収ということばに引っかかるわけでありますが、先ほどの説明によりますと、猶予期間を設けたのは、その制度を、そのシステムを周知徹底させるために必要である。また、販売ルートを通じての回収をするにしてもそれだけのものが必要である、こういうふうなお話でございましたけれども、周知徹底もヘチマもないわけです。十一月の十日に使用禁止したわけです。それ以後使用されたものは食品衛生法によって処罰されるわけです。これはもう告示によってその日から守られなければならない。これで周知徹底はもう好むと好まざるとにかかわらず徹底されてしまうわけですね。ですから、私がお伺いしたいのは、回収をするのにも相当の猶予が必要だ、ではチクロ製品の回収の指示を与えられた事実があるかどうか、お伺いしたい。
  123. 浦田純一

    説明員浦田純一君) その時点におきまして都道府県に回収するように指導をいたしております。
  124. 二宮文造

    ○二宮文造君 どの程度に回収されましたか。
  125. 浦田純一

    説明員浦田純一君) つまびらかに回収率その他については実態を把握しておりません。かなりの回収をしたものと考えます。
  126. 二宮文造

    ○二宮文造君 農林省のほうはどうでしょうか。回収について、まあ農林関係だけでもこれこれのものが回収されたというふうな報告は受けておりましょうか。あるいは回収の作業があったかどうか。流通機構を通じての回収、あるいは保健所を通じて回収、そういう作業があったかどうか、お伺いしたい。
  127. 森整治

    説明員(森整治君) 農林省といたしましては、販売が禁止されるまでの間、どういう業界の間で、内部でどういう措置がとられたかということは、詳細には承ってはおりません。
  128. 二宮文造

    ○二宮文造君 詳細に承っておりませんではなくて、そういう作業が行なわれたということを耳にでもしたことがありますか。
  129. 森整治

    説明員(森整治君) たとえば、清涼飲料水なりにつきましては、業界のほうで結局ビンの回収のほうが必要でございますので、売れないという見込み分は廃棄をしたというふうに聞いております。
  130. 二宮文造

    ○二宮文造君 その場合にですね、厚生省と——まあそれはあとにいたしましょう。農林省にお伺いしますが、農林省の関係でもけっこうですが、この使用禁止の当時、十一月十日前後にいわゆるチクロを使用した製品として正常左流通価格で大体概算、どういう品目がどの程度に在庫しておったと掌握されておりますか、お伺いしたい。
  131. 森整治

    説明員(森整治君) 当時と申しますと、四十四年十月末の在庫につきまして業界からの聞き取りがございますが、清涼飲料につきましては約百五億、つけものにつきましては約百九十億、粉末飲料につきましては約五十億、アイスクリーム類につきましては七十億、しょうゆ、つくだ煮等につきましては四百三十四億、かん・びん詰めにつきましては三百四十八億、合計千百九十七億円というふうな推計が出されております。
  132. 二宮文造

    ○二宮文造君 それらの製品のいわゆる製造元といいますか、これはもう九〇%以上が中小企業関係ではないかと思うのですが、この点は概略でけっこうですが、心証をお話し願いたい。
  133. 森整治

    説明員(森整治君) ものによると思います。ものによると思いますが、中小企業関係が非常に多いというととは確かでございます。
  134. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、総計千百九十何億円という、それらの関係する業者にとってはばく大な金額にのぼる製品をかかえておったわけです。そしてまた、その品種によりましては、一月の三十一日とかあるいは九月の三十日とかで、もうそれできちっと販売が禁止される。こういうことになったのですが、その後業界がいろいろに措置をとって、商品を、何と言いますか、はかさなければなりませんから、そういう努力をやったと思うのですが、巷間、やはり期限をこえますと売れませんものですから、相当に値引きをして消化をしなきゃならぬという努力が業界で行なわれたと私聞くのですが、この点どうでしょう。
  135. 森整治

    説明員(森整治君) 確かに、たとえば、かん・びん詰めで申しますと九月三十日までの期限が来るわけでございます。相当値引き等が行なわれているというふうに聞いております。
  136. 二宮文造

    ○二宮文造君 相当どころではない。中には五割引き、五割以上値引きをして、とにかくもかん詰め、びん詰めについては九月の三十日ですか、これでもう売り切らなければなりませんから、もういま市場が非常に混乱をしている。スーパーマーケットなんかの目玉商品になっている、こういうふうな話も聞きます。ちょっと話がもとへ戻りますけれども、使用禁止をして、はたしてチクロが人体に影響を及ぼすかどうか、こういうことについての研究の努力厚生省のほうで続けているのでしょう。結果が出ましたか。
  137. 浦田純一

    説明員浦田純一君) チクロのその後の人体に及ぼす影響についての研究は続けてやっております。はっきりした結果はまだ得るに至っておりません。
  138. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は、その使用禁止をした措置が悪いというのではないのです。当然やるべきなんです。消費者行政の立場からも、あるいは食品衛生の立場からも当然やるべきだ。ただ問題は、善良な、いわゆる法のもとに善良な注意を払いながらやってきた業者が、いま聞きますと、千百九十七億円の在庫品をかかえた。また、厚生省のほうでは、回収の作業をしたといいますけれども、その回収の作業をするときの危険負担は業者の負担です。そうしますると、これは法に基づいて使用をし、製品をつくった。ある日突然に、人体に害があるということで、その販売期限がきめられてしまった。私は、それは猶予期限を置くのがけしからぬというのです。もう当然そこで廃棄をすべきだ。かりに九月三十日以降に持ち越されると思われるかん詰め類の金額は約四十億円と言われております。そういたしますと、それは十月一日以降は廃棄処分にするかあるいは自家消費にするかよりほかにない。そうしますと、小売り店かあるいは二次問屋か一次問屋か。話を聞いてみますと元卸のほうはほとんどもう手放してしまっているそうです。この四十億円というのは、おそらく地方の二次問屋かあるいは零細な小売り店の負担になったまま四十億円というものが持ち越される。そこで、総体的にこのチクロの使用禁止あるいは販売の禁止、このことによって業界がこうむった損害というのは大体どの程度になるか、これもひとつ農林省のほうでそういう数字をおつかみでございましたらお知らせ願いたい。
  139. 森整治

    説明員(森整治君) ただいま先生のお話のございました約四十億円というのは、業界が五月末に、九月三十日以降残るであろう在庫という推定をされた数字と承っております。そこで、その後かん詰めの最盛の需要期に入っておりまして、先ほどお話のございましたように値引きも相当行なわれて販売をされておることは事実でございます。そういたしますと、九月三十日でどのくらい残るであろうという問題が一つあろうかというふうに思います。で、その辺の把握が非常にいろいろ話が、またこういう問題でございますので、なかなかその実態が掌握しにくいということで、われわれも実は弱っておるわけですが、いずれにいたしましてもその四十億という数字は相当下回ってくるのではないだろうかというふうにわれわれは現在のところ考えております。
  140. 二宮文造

    ○二宮文造君 ですから、そういうものも概算序しまして、たとえば五月末の試算なら試算でも確定でもけっこうです。いわゆる清涼飲料水の部門では大体このぐらいの損害があったんじゃなかろうか、あるいはまたかん詰めについてはこういうふうな条件があるけれども大体これぐらいの業界の損害じゃなかろうか、トータルとしては一体これぐらいになるんじゃなかろうか。おそらく推定ですから流動的だろうと思いますけれども、その目安をもしおわかりでしたらお知らせ願います。
  141. 森整治

    説明員(森整治君) すでに販売が禁止されております清涼飲料、つけもの、粉末飲料、アイスクリーム類等につきまして、大ざっぱに言いまして約百億程度の損失があったのではないかという推定を立てております。それから先ほど残っております、九月三十日以降販売禁止になりますかん・びん詰めにつきましては、先ほどの五月末の業界の推定でございますと、残るのが四十億、値引き販売等によります損失は約百三十億という聞き取りでございます。
  142. 二宮文造

    ○二宮文造君 大体まあ五月末の推定では、値引きの損失等も計算をいたしますと、大体二百八十億ぐらいが業界の負担にかかると。これで私さらに心配をしますのは、十月の一日になったらその品物は一体だれが危険を負担するんですか。もう自家消費をするか、持っている段階で廃棄処分をするか、どちらかしかないわけです。自家消費なんかあまり私は賛成できない、害がある、疑わしいということで使用禁止になった、また販売猶予期限も一切れたのですから、そういう品物をたとえ小売店であろうが、その近親者であろうが、自家消費をするということは私は賛成できない。廃棄処分にすべきだと思うのですが、その場合にだれがその危険を負担するんでしょうか。
  143. 浦田純一

    説明員浦田純一君) このような場合の経済的損失はだれが負担するかという問題でございますが、これはまず原則としてはやはり所有権を持っておられる方が負担することになろうかと思います。そしてさらに実態上の問題といたしましては、当該食品の製造者あるいは販売者などの間にいろいろと契約があろうかと思います。いま実態上ほとんど販売店のほうにいっておるのではないかという御指摘でございますが、私ども個々の事情については詳細には承知しておりませんけれども、原則といたしましてやはり食品の製造者あるいは卸売り業者あるいは小売り販売業者というそれぞれの段階において契約関係があろうかと思います。したがいまして、それぞれの場合にその契約に応じて負担するといったような実際上の問題があろうかと思いますが、原則としてはやはり所有権者、またはそういった契約の中に基づいてのそれぞれの条項においてきまってくると思います。
  144. 二宮文造

    ○二宮文造君 あなたのおっしゃる契約の条項なんか何もないのです。普通の流通機構の中に契約なんてないのです。慣習だけがあるだけです。慣習というものは力関係で、いつの場合でも力関係で動かされるのが商慣習なんです。なるほど使用禁止をした、これはもう当然です。すべきです。私はそのとき販売も同時に禁止すべきだった、そうして回収をする、廃棄処分をする。当然善良な管理の立場で添加物を使ったんですから、その損害については国が補償をすると、こういう立場をとるのが消費者にも迷惑をかけないし、善良な注意でもって法のもとにきのうまでやってきた業者にも迷惑をかけない。その業者も非常に力のある大企業の場合には社内留保がずいぶんありますから、それで埋められるでしょうけれども、中小企業の場合には、まして小売り店やあるいは地方の二次問屋みたいな段階では、このチクロの販売禁止の問題が重大なネックになりまして、倒産あるいは家計のやりくりがつかないといういわゆる食品公害です。そういうものも流通の部面で起こってまいりますね。ですから、この問題でどうしろということは別として、将来もしもやはり細胞部分にまで研究が進んできたという、先ほどの御答弁からいうと、いついかなる場合にいま指定になっている食品添加物が禁止になるかもわからぬ、そういう場合にはあらためて今回のチクロの場合にとった措置というものを振り返りながら、消費者行政ないしはそういう中小企業を守るという立場で禁止と同時に廃棄処分にし、またその損害額については補償の道を開く、こういうような考えもあわせ持つべきではないかと思うのですが、厚生省はどうでしょう。また農林省もその点について御答弁願いたい。
  145. 浦田純一

    説明員浦田純一君) チクロあるいはこれに関連いたしまして、食品添加物のチクロは現在すでに禁止されたことでございますが、現在使用を許可されております食品添加物の使用が新しい研究事実に基づきまして使用の停止を将来行なったという場合に、その補償の責任はだれがとるかというふうう御指摘かと思います。また救済措置というものは考えられないかという御指摘だと思います。これは法律的な立場からの話ではなはだ恐縮でございますが、現在の食品衛生法上におきます食品添加物の取り扱いは、先生御承知のとおりであると思いますが、第六条によりまして、原則としては化学合成品である添加物は、使用は禁止されておるわけでございます。それが特に厚生大臣が人体に有害左影響を与えるおそれがないと認めた場合、もちろん、これは食品衛生調査会におきまして、専門の学者の意見も十分にしんしゃくしてのことでございますが、それに基づきまして、厚生大臣が特に支障がないと認めた場合に限って使用の許可を与えているわけでございます。したがいまして、これは厳密に申しますと、いわゆる権利という形でもって許されておるということではないわけでございます。したがいまして、まあ極端に言えば法律上だけの問題でございますけれども、使用しようと、しまいと、これは製造者側の、まあ判断にゆだねられるということでございます。したがいまして、新しい学問の進歩、新しい研究による事実ということによりまして、その使用を、いままで使われているものを使用を禁止するという場合におきましても、これは法のたてまえから申しますと、原則として、禁止を解除しているのが、また禁止されたということでございますので、これでもって厚生省あるいは政府の賠償の法律上の責任というものは、直接には生じてこないものじゃないかと考えております。  それから、チクロあるいは現在使用を許可しております食品添加物につきましては、それぞれの時点におきまする科学的な水準から判断して、私どもとしては最高の判断というものを与えておる、妥当な措置であるというふうに考えておりますので、その意味から申しましても、直接的には法律上の意味におきまして、国は責任を負うものではないというふうに考えております。しかしながら実際問題といたしまして、やはり善意でもって、悪意なくこれらの添加物を使用していろいろと物をつくり、販売してまいったという人たちの事業上の損失あるいはひいては生活上のいろいろな困窮といったような問題につきましては、私どもと立場が違います。食品衛生法上の問題とは立場が違うわけでございますけれども、すでにチクロの問題につきましては、昨年、禁止措置後、それぞれ農林省及び通産省に対しまして、金融面での救済措置、信用保証協会の保証額の拡大あるいは国税庁に対しましては税制面での優遇措置などについての配慮をお願いしているところでございます。そのようなことで、実際上の問題として、やはり何らかの形でもって、厚生省といたしましても、それらの困窮した業者に対して、できるだけ救済措置その他について、関係各省の御協力を得まして、講じていくべき点については努力してまいりたいと考えております。
  146. 二宮文造

    ○二宮文造君 私、その考え方が、実は食い足らないわけです。もっと話をもとに戻して考えてくださいよ。人体の健康に害があるという、そういうおそれでもけっこうです。そういうことで使用禁止をしたわけでしょう。ほんとうならその時点で売らないのが、健康を守るため、消費者を守るためには大事なことでしょう。そうするためには、直ちに廃棄処分にすべきではないか。おそれがあるんだから使用禁止にしたんだから、その時点でやるべきじゃないか、廃棄処分にすべきじゃないか。しかし、それにしても食品衛生法で、別表第二で指定されたような添加物を使ったときはやはりそれなりに業者を守ってやる。業者も安心して、いわゆる消費者を守る立場に協力できる、こういう道を開くためには、廃棄処分に伴う損害を何らかの形で政府が肩がわりをしてやるべきじゃないか、そういう道を開くのが食品衛生上大事なんじゃないかという提案を私はしたわけです。ところが、何だ、食品衛生法の六条の規定なんかをあなたは引っぱっておりますが、私、法律の読み方はよくわかりませんがね、第六条はあなたのおっしゃるような意味じゃないですよ。よろしいですか。なるほど見出しには、化学的合成品等の販売等の禁止と、こうなっておりますが、その第六条の本文を見ますと、「人の健康を害う虞のない場合として」よろしいですか、「虞のない場合として厚生大臣が定める場合を除いては、食品の添加物として用いることを目的とする」、そういう品物は、「製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」、例外規定を冒頭に述べて、これこれの添加物は使ってよろしい。それは人の健康をそこなうおそれが互いんだと厚生大臣が指定をしているんだ、こういう食品衛生法上の本文を見ますと、業者はある日突然に使用禁止をされて、その損害を自分がかぶらなければならぬという、そういう業者の感覚はこの第六条からは出てきませんがね。行政府としては通達するのは楽でしょう。だけども、毎日毎日激しい生存競争の中にある業界としては、特に力の弱い業者としては、今度の措置は非常に過酷だったし、ひいてはこういう手ぬるいやり方をやっているから、もしも十月以降にもぐって品物が出ていったら、結局、消費者に迷惑をかけることになりますよ。ですから、このチクロの場合はすでに過去のことですから、これはこれで、税制上の措置とか金融上の措置とかで業界のそういう要望に応ずる道を開くということですから、それは認めましょう。かゆいところに手が届くような措置をとっていただきたい。これから将来の問題については国の補償というものもあわせて考えて、消費者に迷惑をかけない、そういうふうな企画も必要ではないかと思うんですが、この点はどうでしょう。
  147. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 禁止措置をとった場合の補償問題でございますが、実は厚生大臣のもとに、これは厚生大臣の私的な顧問という形でございますが、食品問題等懇談会という、顧問の方方のお集まりをお願いいたしまして、食品行政全般についての問題点並びにそれに対する対策等についての御意見をお伺いしたわけでございます。先生指摘の禁止措置をとった場合の補償の問題、これも一つ問題点として取り上げられておるところでございます。将来、食品をめぐるいろいろな不安というものに対して、早急にやはり厚生省といたしましては、明確な方針を打ち出して、食品にからむ健康上の問題の不安といったものを解決してまいりたい。これに対する一つのささえといたしまして禁止措置をとった場合に補償措置を検討すべきであるという御意見でございます。これは単に厚生省一省の範囲内にとどまる問題ではないと思いますが、関係各省ともよく協議の上、何らかの形でもって一そう食品衛生行政全般についても、こういったような財政的左ささえがあろように、今後とも検討はしてまいりたい、このように考えております。
  148. 二宮文造

    ○二宮文造君 この問題について農林省、どうでしょう。
  149. 森整治

    説明員(森整治君) 私どもは、こういうチクロのような不慮の事態がむしろ今後出ませんように、いろいろ事前にわれわれもよく厚生省と連絡をとりましてやってまいるということが、まず先決ではなかろうかというふうに思います。ただ、先生指摘のような事態というものがないとは必ずしも言えないと思います。まあわれわれ食品の企業のほうを指導してまいります立場といたしましては、厚生省局長から申されましたようなことが、願わくばそういう方向のほうが望ましいというふうには考えております。
  150. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと待ってください。業界の損害というものを非常にシビアに考えなければならぬのは農林省のほうなんですよ。ですから農林省の姿勢が、将来食品添加物で人間の、消費者の健康にも差しつかえを起こす、そういうおそれがあった場合は、直ちに廃棄処分にして——ただし、そのはね返りを業界がかぶらないように補償をしてあげる。こういうことを農林省は真剣に考えるべきじゃないかと思うのですが、何だか、一切がっさいを厚生省のおっしゃるように将来は——というような言い方じゃ、ちょっと私は弱いと思うのですが、農林省の立場として、そういうことを研究し、立案し、予算獲得にまで努力をする、そういう方向づけをする決意があるかどうか、これをお伺いしたい。これは事務レベルでけっこうです。
  151. 森整治

    説明員(森整治君) 多少言いわけみたいになるかと思いますけれども、実はチクロの問題が出まして以来、業界のほうは添加物の使用につきましては非常に慎重でございます。そういうおそれのありそうなものにつきましては、なるたけ使わない方向でいろいろ研究をされておるようでございます。そういう意味から申しますと、先生のおっしゃいましたことにつきまして、われわれ全然異論を持っておるわけではございませんけれども、逆に使用禁止になった場合には何か補償をされるのだという前提でものを考えられますと、やはりこういう問題につきましては、むしろ若干うしろ向きの話になりはしないだろうか。これは私の意見でたいへん恐縮でございますが、そういう点もございますから、いろいろケース・バイ・ケースの事柄でございまして、私先ほど申しましたように、そういうことが起こらないようにお互いに努力をするということが一番先決の問題であって、不幸にしてケース・バイ・ケースとしましてそういう事態が起こった場合には、今度のチクロよりももっと何か中小企業等の保護を考えるということは当然ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  152. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと食い足りませんけれども事務レベルと私は注釈をしたわけでありますから、この辺で次の問題に入ります。  果汁の問題に入りたいと思います、同じように関係がございますので。先ほど厚生省のほうからお話があった食品問題懇談会ですか、懇談会の中間報告につきましても私申し上げようと思ったのですが、若干触れましたので、これはそのままにしまして、ただ食品衛生というものについて非常に問題が大きくなってきたという段階を認識していただき、同時に、公取のほうにお伺いしたいのですが、昭和四十四年ですか、四十三年ですか、オレンジジュースに関する種々の調査について主婦連の方に調査を委託された。四十四年の九月に主婦連のほうから報告書が出ておりますが、それの終わりのほうに、要望事項として一点、二点、三点、四点、見出しを申し上げますと、果汁飲料の名称を単純化して、その定義を確立してください。要するに、ジュースという名称の中に、果汁の含有率が一〇〇%以上のものだけをジュースとしてもらいたい。あとのものは果汁入り飲料というふうなことで、ここで区別をしてもらいたい。これが消費者行政の眼目じゃないか。あるいは自由で適正な商品選択ができるように、表示の義務づけを急いでもらいたい。——内容の表示がほとんどない。第三番目には、JASできめている試験法だけでは不十分なので、現状に即した天然果汁の有無の確認及び含有量測定の試験法を早急に確立してもらいたい。第四番目に、不当表示の取り締まり及び監視を強化してもらいたい。こういうふうな、概略四点にわたる要望事項が出ておりますが、調査を委託し、こういう報告を受けた公取としては、どういう措置をとり、また現在考えておられるか、お伺いしたい。
  153. 坂本史郎

    説明員(坂本史郎君) 主婦連からただいま先生のおっしゃったような要望が出ておりますことは、おっしゃるとおりでございまして、公正取引委員会としましては、こうした調査に基づきまして果汁飲料に関する公正競争規約の推進をはかりまして、たいへん時間がかかったわけでございますが、いろいろ業界を指導説得して、一応の成案を得ましたので、この七月の、ちょっと日ははっきり覚えておりませんが、二十二日かと思いますが、一応公聴会を開きまして、公述人の意見をいろいろと伺ったわけでございます。そこで原案に対するいろいろな意見が出たわけでございますが、その意見に基づきまして若干、公聴会に出しました原案を修正する必要もあるのではないかということで、現在その検討をしておる段階でございまして、この主婦連から出ました要望をできるだけ規約の中に取り入れたい、こういうふうに考え努力をいたしておる段階でございます。
  154. 二宮文造

    ○二宮文造君 厚生省のほうは主婦連のそういうような要望があったということは御存じでしょうか、果汁飲料についての表示の問題。
  155. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 直接ではございませんが、新聞その他でもって承知しております。
  156. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、食品衛生法では、果汁は現在どういうふうな規定で取り扱われておりますか。
  157. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 食品衛生法に基づきます食品添加物等の規格基準がございますが、その中で清涼飲料水の成分規格、製造基準及び保存基準を定めて規定してございます。
  158. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、ちょっとこの行政がばらばらのような気がするのです。公取のほうでは、主婦連、いわば消費者の要望を受け取って、そうして公聴会などを開いて、表示を明確にしていこう、一〇〇%以上の——まあ一〇〇%の天然果汁、これを果汁と称する、あるいはジュースと称する、こういうふうな整理をしていこう。こういう立場にあるのですが、やはりそれに合わせて食品衛生法のほうでも、果汁の規格あるいは清涼飲料水の規格というふうに、含有率によっての規格を再検討する、こういうふうなお考えはありますかどうか。
  159. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 飲料水の、ことに果汁飲料水の成分含有率の基準というものを表示しろ、公取委とそれから厚生省との間でばらばらになっているけれども、その点統一したかっこうでやっていけというふうなことだと思いますが、現行の私どもの食品衛生法に基づきます考え方といたしましては、主体はあくまで人体に対する影響いかんということでございまして、現在のままではその点まで突っ込んでいくということはいささか問題があるかと思いますが、先ほど申し上げました食品問題懇談会におきましては、食品衛生という立場もさることながら、やはり食品全般の問題としてあらためていまの法体系なり、現在行なっております種々の法律に基づく運用について検討してはどうかという意見も出ておるところでございます。私ども関係の官庁とよく連絡の上、これらについても今後検討を進めてまいりたいと思います。
  160. 二宮文造

    ○二宮文造君 ぜひそうすべきだと思うのです。というのは、メーカーが規制を受けるのは食品衛生で規制を受ける。そうして販売ルートへ回すときは今度は公取のほうの自主規制でしょう。おそらく法じゃないでしょう。ですけれども、まあ業界が懸命につくってきたこの自主規制を守っていかなきゃならぬ。そうしますと、そこにどうしてもばらばらだと盲点が出てまいりますから、やはりそのほうのズレのないように将来努力をしていただきたい。時間がありませんので、もっと申し上げたいんですが、その点を指摘するだけで次に入りますが、果汁の問題で最近ちょっと業界にトラブルを起こしました。これは主として通産、農林にお伺いしたいわけでありますけれども、濃縮果汁の緊急輸入の問題について若干質問をしたいと思うわけであります。でその前に、一応これは輸入禁止品目になっておりますが、たとえば濃縮果汁について、国内産の場合とそれからアメリカの場合と値段がどのように開いているか。この点、ひとつ農林でも通産でもけっこうですが、日米両国の濃縮果汁規格を同じに換算して、値段の開きがどのくらいあるか、ちょっとお伺いをしたいと思うわけです。
  161. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 濃縮果汁の日米の——主としてマーケットでございますが、日米の価格関係がどうなっているかということでございますが、近年のかんきつ濃縮果汁の生産量はわが国国内におきましても需要の堅調に対応いたしまして順調に伸びてきております。生産者価格もそのためにキログラム当たり大体、年によっていろいろ差異はありますが、五百円ないし六百円というところで、安定的な形で伸びてきております。これは最近の姿でございますが、四十四年産ミカンにつきましては、非常にミカンそのものの生産が悪かったということがございまして、原料ミカンの非常な値上がりを見た結果、また一方におきまして果汁含有率の高い濃縮果汁の需要の伸びということもございまして、ことしに入ってからの生産者価格は、キログラム当たり七百円以上、七百数十円というぐあいに、従来まあ五百円ないしは六百円という程度で推移してきたものに対しまして、四割ないしは五割という程度の上昇を見ております。  米国産のかんきつの濃縮果汁の価格でございますが、これは先般、これからも御指摘になろうかと思いますけれども、緊急輸入いたしました値段で、メーカーに渡されました値段は、キログラム当たり四百九十円ということでございますので、国産に比べましてかなり低い価格で入手できるということになっております。  なお、四十五年におきましては、今後またミカンがこれは逆に飛躍的に増産が期待されます。いろいろ災害等の影響もありますが、三割近くミカン増産が期待できるのではないかという見通しも立てられるわけでありますから、原料ミカンの価格もかなり下落するということも考えられます。したがいまして、来年の濃縮果汁の価格というものは、少なくともことしみたいなことはなくて、平年並みに安定した形に復帰するであろう、こう思っております。
  162. 二宮文造

    ○二宮文造君 農林省からいただいた資料によりますと、「濃縮果汁の輸入予想価格」、まあ「昭和四十三年」と、こういう表示でいただいておりますが、アメリカ産ですね、濃縮度五分の一、この場合に、輸入諸掛かりや関税等含めまして大体三百六十三円程度になろうかと、こういうふうな資料をいただいておるのですが、これはこのとおりでよろしゅうございますか。
  163. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) そのときによっていろいろ違いはございますが、三百数十円というような輸入予想価格を立てております。これは民間団体等の調べでそうなっております。
  164. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこでこれは結局、アメリカ産の場合が三百六十三円というのは、いわゆる輸入業者が、何といいますか、国内でメーカーに渡す値段というふうに考えてよろしゅうございますか。三百六十三円というのはどういう値段なんでしょう。この上に、何といいますか、マージンが加わるのでしょうか。一般論でけっこうですが。
  165. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 三百数十円と申し上げましたが、三百数十円から四百円、その辺のところで上下していると思います。これはいわば関税、それから輸入業者のマージン、そういったものが入った価格水準ではないかと思っております。それにさらにディーラー等が入りまして、運賃その他の諸掛かりも加算されるわけでございまして、これは需要者であるメーカーに渡す場合には相当のものが加算されて、現実の価格が形成されるということになります。
  166. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこでさらに、このデータに基づいてお伺いしますが、ここに出ている八%の手数料というのはすでに関税として三〇%もあげられております。もっと詳しく言いますと、CIF価格が——運賃、保険料込み値段で二百四十五円二十銭、関税が三〇%で七十三円五十六銭、輸入諸掛かりが一〇%で二十四円五十二銭、手数料が八%で十九円七十二銭、合計三百六十三円、こういうようになっておりますが、手数料八%というのは輸入業者のいわゆる手数料、マージンというふうに考えてよろしゅうございますか。
  167. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) おっしゃるとおり輸入業者が通常と言いますか、標準と言いますか、言い方はあると思いますけれども、輸入業者の手数料でございます。
  168. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで問題の、緊急輸入についてお伺いしたいのですが、通産でも農林でもけっこうです。どちらでもけっこうですが、三百トンの濃縮果汁の緊急輸入に至る経緯を——時間がありませんので、概略でけっこうです。
  169. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 経緯を簡単に御説明いたします。先ほども申し上げましたように、四十四年産ミカンは非常に減産いたしまして、前年に比べまして一五%の減産を見ているわけでございます。その結果原料ミカンの値上がりという影響を受けまして、濃縮果汁の価格も先ほど申し上げましたように、四、五割程度値上がりしている。一方、需要の堅調というものは相変わらず強い。ことに果汁の含有率の高い果汁製品の消費の伸びが強いということで、ことしに入りましてからの濃縮果汁の需給関係はかなり逼迫した経過をたどっておったわけでございます。こういうことの影響を受けまして、特に影響を受けました中小清涼飲料業者からオレンジ濃縮果汁の五百トン程度の緊急輸入をしてほしい、こういう申請がこの春にあったわけでございます。農林省といたしましては輸入ということになりますと、当然生産者団体という立場も考えなければなりませんし、生産者団体と需要者団体との調整をいたしまして、両方の意見をも十分考えながらこの問題を取り扱っていきたい、こういう態度をとりまして、とりあえず農協、生産者団体、そういったものの自販分——自分が販売をする自販分を二百トン程度その実需者に渡すあっせんをいたしました。その結果、五百トンから二百トンを引きました残りの三百トンにつきまして緊急輸入をすることとした次第でございます。その緊急輸入の割り当て先といいますか、対象は全国清涼飲料協同組合連合会という名前になっておりますが、これは大部分が中小メーカーを主体としておりまする実需者の団体でございますので、そういったものを対象といたしまして輸入割り当てをいたした。こういった経緯になっているわけでございます。
  170. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、その実務についてお伺いしたい。全清飲が割り当てを三百トン受けた。しして、その輸入をやった商社はどこなんです。それからまた、その商社が売り渡した価格は先ほど四百九十円ということを聞きましたけれども、その日時を追って概略を説明願いたい。
  171. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) 通産省から割り当てをいたしましたのは、ただいまお話のございました全国清涼飲料協同組合連合会が発注をいたしました先の日進通商株式会社でございます。発注されました年月日は六月の二日でございまして、六月のたしか五日に申請がございまして、通産省が割り当て書を交付いたしましたのは十一日でございます。それから、物が入ってまいりましたのは、第一回が七月の八日でございまして百十五トン余、それから第二回が七月二十八日で百十五トン余入ってまいりました。それから第三回が八月八日で六十九トン余入ってまいりまして、合計三百トンでございます。  品物が現実に、いつ輸入業者から協同組合側に渡されましたか、私どもはつまびらかにいたしておりませんけれども、アウトサイダーも含めまして四百五十七社に配分されたと聞いております。
  172. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで、私のほうからそれにまた補足するようになりますけれども、確かに、全清飲からいまお話のありました日進通商株式会社にあてて、六月の二日に発注があった。しかし、この日進通商という会社は、登記謄本によりますと、六月の九日に登記をしておりますね。資本金二百万円。ですから、おそらく全清飲が日進通商株式会社に発注をしたときには、まあ創立総会が終わったかどうかはわかりませんけれども、まだ法人の資格は持っていなかった。これはもう事実でございますね。六月の二日に発注を受けて、それから通産省のほうに日進通商が申請をしたのは六月の五日です。まだ法人登記もできていない。登記謄本によればいわゆる法人格も持っていない会社が割り当ての申請をした。そのときに、アプロクスですか、これは概算という意味らしいですが、三百トンで大体総額二十五万ドルという申請をしておるようでありますが、これを三百トンで割りますとキロ当たり約三百円……、いまのまあそれは別としまして、大体こういうふうなことで申請を受けたのですが、それで十一日に通産省としては許可証を——輸入割り当てをやっている。こういうことですね。資本金二百万円で設立中の会社。これは私非常に問題があると思いますが、すでに衆議院段階でこの辺のことは明らかになっております。  さて、この割り当ての方式が非常に好ましくないということは、もう通産省も農林も十分に反省をなさっている。ですからあえて申しませんけれども、この会社が輸入をしてからいわゆる発注者である全清飲に渡った値段が四百九十円ということに私は納得がいかない。なぜ緊急輸入をしたか。国内産が非常に高くなった。原料も高くなったけれども、もう一つはやっぱり物価対策として、物価政策上内容を落とすわけにもいかないし、そこで緊急輸入をしてもらいたいという全清飲の注文ですね。この三百円で買った、キロ三百円という概算の申請、これがはたして妥当かどうかはわかりませんけれども、先ほど伺ったところによりますと、大体三百六、七十円、運賃、保険料を払い関税を払い、あるいは入関手数料を払って、そうしてまた業者の八%のマージンも見込んで、三百六、七十円程度で入ったのではないか。それが全清飲の傘下の業者に四百九十円で入ったとしますと、国内の運賃諸掛かりもあったでしょう。ですけれども、運賃諸掛かりがあったとしても、また全清飲の手数料をキロ当たり二十三円ときめられたそうですが、それを引いたとしても、この輸入の商社はキロ当たり百円程度のまだ余得が出てくる。資本金二百万円で設立中の会社が、割り当てを受けてわずか一カ月足らずのうちに、キロ百円、三百トンで三千万円のマージンを取得するような割り当て方式は、はたして国内の流通機構の関係からも、あるいはまた輸入禁止品目を割り当てする立場からも妥当ではなかったのじゃないかと思うのですが、この点どうでしょう。
  173. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) ただいま割り当て方式につきまして御質問でございますが、濃縮果汁につきましては、需要者が、先ほど農林省のほうからお話がございましたように、非常に零細な、かつ多数の業者に渡るわけでございまして、しかも緊急輸入ということで、貨物が確実に需要者の手に渡ることが必要であろう。したがいまして、本来ならば個々の業者にそれぞれ割り当て限度を、発注限度を示しまして、それによりましてその業者ないしはそれから委託を受けた者に割り当てるのが通常でございますけれども一つ一つの規模が非常に小さくなりますので便宜上まとめまして、この協同組合連合会に一括割り当てた次第でございます。私どもとしましては、協同組合が組合員の総意に基づきましてこの仕事をやるわけでございますし、それから協同組合が輸入業者を選定し得ること、これが輸入業者割り当てをいたしましてそれがどこへでも好きなところへ売っていいということにいたしますと、品目が非常に……。
  174. 二宮文造

    ○二宮文造君 簡単に願います。聞いているところだけ言ってください。
  175. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) 輸入業者の立場が非常に強くなりますから、逆にかような発注方式にすれば確実に、かつコストも少なくて需要者に渡るだろうと考えたわけでございます。
  176. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうじゃないのです。じゃ農林省から答弁してもらいましょうか。先ほどの通例輸入商社のマージンは八%、大体そういうふうな資料をちょうだいしております。大体まあキロについて十九円ないし二十円くらいが輸入商社のマージンだというふうな価格積算の根拠をちょうだいしておりますが、今回の場合大体三百六、七十円と思われる雑費を見込んだ、あるいは八%の手数料を見込んだ輸入価格でありながら全清飲の傘下の業者に四百九十円で販売され、大体キロ百円当たり輸入商社のマージンが積み重なったというような今回の事件は、妥当ですかどうですか。こういうふうに私はお伺いしたのですが、この点どういうふうにお考えになりますか。
  177. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) ジュースの緊急輸入そのもの、それから割り当てそのものについては、先ほど私ども、それから通産省のほうから御答弁申し上げたとおり、特にそういうこと自体に差しさわりはなかったと思っております。ただその商行為におきましてどういう取引が行なわれたかということにつきましては、これは取引のことですからいろいろ高い安い、事情もあるいはあろうかと思っております。四百九十円というものは全清飲から各会社、会員である会社の工場渡しというところの値段でつけられたというふうに私どもは聞いておりますから、その中には、先ほど先生が御指摘になりましたように、全清飲の手数料二十三円というものが入っているようであります。それからさらに、いわば全清飲のコストといいますか、利子ですね、借り入れした利子そのものも若干入っているように聞いておりますし、それから国内運賃、これはプールして、いろいろ零細な工場ですから分散しておりますが、そういったプールの国内の運賃だとかというものも入っているということでございまして、そういうものをひっくるめますと、おそらく私ども正確に把握しておりませんが、四百三十円がらみのところというふうになるのではなかろうかと、こう思っております。まああと、それと輸入価格との差額が正しいかどうか、妥当かどうかという、こういう議論になりますと、これはいろいろ議論されるところがあると思います。
  178. 二宮文造

    ○二宮文造君 思い出していただきたいと思うのですが、バナナにしましてもレモンにしましても、輸入禁止品目に必ずペーパー業者というものがくっついてきて、それが政界の黒い霧につながったことは巷間をにぎわせた事件です。そしてこれほど安定をしてきて、また政界でもそういうものの黒い霧というものについては自粛をしてきた今日、なおかつ輸入禁止品目にからまる、こういう不当な利益をむさぼるような緊急輸入割り当て、これははたして妥当かどうか。当初から物価対策だとかあるいは原料が手に入りませんとか、そういうことは口実でありまして、要するにそういう問題にかこつけて、幽霊会社と言っちゃ失礼かもしれません、実態があるのですから——しかしペーパー業者に似たような会社を設立をして、本来ならばもっと安く、ほんとうに物価政策上その意味を生かすならば、もっと安くメーカーに渡せるものです。あなたはずいぶんおっしゃいました、借り入れ金の利子だとか国内の運賃だとか。一キログラムのものは国内どこへ運搬されても何十円とかかるわけじゃありません。どう考えてみてもこれは背後に黒い霧を含む事件です。したがって、この問題につきましては、緊急割り当てをしたのですから追跡調査も当然されるべきだ。あるいはまた、それを受け取った業者が——メーカーが従来つくってなかったよう左製品をつくって、国内産の高い原料をもってつくった業者のいままでの市場ルートをこわしていく、撹乱していく、いわゆる対抗商品をつくって市場撹乱をしたかもわからない。こういうことを考えてみますと、振り返ってみてこの緊急輸入の割り当ては妥当でなかった。今後やるべきじゃない。こういう結論が出てくると思うのですが、この点については再び濃縮果汁の原料が不足だとか、あるいはまたメーカーの要望だとかということを口実に、こういう緊急輸入のシステムを採用される考えがあるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  179. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) この濃縮ジュースの輸入は文字どおり緊急輸入でござい捜して、真にやはり原料を確保する必要があるときにという認識のもとに行なわれたものでございます。したがいまして、私ども輸入所管官庁といたしましては、やはり緊急の必要が真にあるということでございますれば、考えていくべきではなかろうかと存じております。ただ、もしいま二宮先生の御指摘のようなことがございますれば、むしろそのこと自体が悪いのであるというふうに考えられます。したがいまして、どうして輸入をうまく行なって、それを確実に、しかもコストを安くして生産業者のところへ届けるかということにつきましては、私どもまたもっと検討をいたしたいと思います。
  180. 二宮文造

    ○二宮文造君 あの、農林省にお伺いしたい。足りないから足りないからというのは、むしろその従の理由でありまして、高いから、そうして原料高が中小企業の製品にはね返るから緊急輸入をしてもらいたい、これが趣旨でしょう。ですから物価政策上でしょう。そして、そういうことでまあ農林省としては三百トンの内示書を渡したならば、この緊急輸入した品物が幾らで輸入され、そして幾らでそういうメーカーに渡されるかというところも、チェックはできないかもしれませんけれども当然行政指導すべきじゃないかと思うのですがね。この点、農林省のほうは貿易商社が幾らで輸入をした、そして諸掛かりはこうこうこうこうでございました。したがって末端のメーカーに売り渡す値段はこうなりましたというような報告はお取りになりましたか。もし取ったならば、先ほどもちらちらおっしゃっておりましたけれども、数字をあげて御説明をいただきたい。
  181. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) メーカーから輸入価格が幾らであったか、それからマージンが幾らであったか、そういうような、しさいなことについては、私どもは報告を徴取しておりません。
  182. 二宮文造

    ○二宮文造君 報告を取っていないのに、先ほど運賃とか、それからまた借り入れ金の利子だとか、そういうものを含めて四百三十円程度になりましたというふうな御説明でございますけれども、その四百三十円の積算をされる内訳をお持ちだろうと思うのです。それをお伺いしたい。
  183. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 確たる積算の基礎があって申し上げたわけではございませんが、まあ四百九十円ということで各会社に全清飲が渡したわけでございますが、その中には、先ほどこれは先生が御指摘になりましたように全清飲の手数料がございまして、これが二十三円、それから運賃とか、それからあとは利子とか、そういうものが原価要素としてあるということを申し上げたわけで、これが幾らということは申し上げておりません。まあ大観して四百二、三十円程度ではなかろうかという推察で申し上げたわけです。積み上げてこれこれこうだというふうに申し上げたわけではございません。
  184. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと待ってください。この二十三円は、あるいはその運賃とか借り入れ金の利子だとかいうのは四百二、三十円の中に入るものですか、外に出るものですか。
  185. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 四百九十円が最終の販売価格ということになると思いますが、その中に二十三円というものが入っているわけでございます。それから先ほど四百二、三十円ではなかろうかと申し上げたわけでございますが、その外に、それに運賃だとか、あるいは全清飲の手数料というものが加算されて四百九十円になったんだろうと、こう申し上げたわけです。
  186. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと私、そういう算術はないと思うんです。いいですか、先ほど普通の市場価格とアメリカの市場価格、それに運賃とか保険料とか関税とか、あるいは入関手数料とか輸入商社のマージンとかを含めて大体三百六十三円が通常の値段ですと、こういう資料をいただいているわけです。今回に限って四百二、三十円になるのはどういうわけですか。それだけアメリカのその品物が値上がりしたんでしょうか。
  187. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 今回の——先ほど申し上げましたように、日進通商が幾らの価格で輸入したか、それに関税と手数料を加算すれば幾らになるかということについては、私どもは数字は持っておりません。全清飲が日進通商から仕入れました値段は、これも私ども確たる報告を求めたわけではございませんが、大体四百二、三十円というふうに聞いておるということで、先ほど四百三十円と申し上げたわけです。全清飲の仕入れ価格です。それに国内運賃とか、あるいは利子だとか、全清飲の手数料というものを加算いたしますと、それが四百九十円になる、こういうことを申し上げたわけです。説明の順序がちょっと違いました。
  188. 二宮文造

    ○二宮文造君 わかりました。全清飲と輸入商社との間でマージンをにっちんしたんですね。大体三百六十円見当で入って、百二十円くらいが荒計算で利益が出てくる。それをまん中へ寄せていきますと大体四百二、三十円になるわけです。しかしメーカーにしますと、これほど迷惑な話はないですね。本来であればもっと安く買えたものです。それで彼らが言うところの、あるいは企業の内部の留保分にも回せたでしょうし、あるいは製品をよくし、あるいは値段を下げていわゆる物価政策にも協力できた。こういう変な商社を選び、設立中に輸入申請をするような会社、あるいは従来そういうジュースは仕入れてない、コンニャクなんかは仕入れた例があるようですけれども、ジュース類の仕入れの実績はないのです。新たにつくった会社ですから、あろうはずがない。そういうところを輸入商社に選んだ、御説明はいろいろ筋を立てて説明をされたんですが、振り返ってみると、これは非常に問題点が多過ぎる。かりに将来、緊急輸入があるとしても、こういうふうに振り返ってみて問題点をたくさん残すような内示書の渡し方、あるいは輸入申請の割り当てのしかた、これをするつもりですか。こういうことはやりませんと、こう確約をしますか、通産、農林両省に答弁いただきたい。
  189. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) 私、先ほど申しましたように、問題は全清飲と日進通商との関係でございます。私どもとしましては、ほかにもし同様の事情が起こりました場合、いまの方式についてでございますけれども、いまの方式そのものを今後絶対にやらないということはお約束できないと思います。
  190. 二宮文造

    ○二宮文造君 アフターケアの問題です。
  191. 楠岡豪

    説明員(楠岡豪君) ただアフターケアにつきましては、先ほどから御指摘のとおり、私どもとしては十分気をつけていきたいと思います。
  192. 大場敏彦

    説明員(大場敏彦君) 同様にアフターケアにつきましても十分気をつけていきたいと思います。
  193. 二宮文造

    ○二宮文造君 申し合わせの時間がきましたから、私ここで終わりにしたいと思いますが、いろいろな裏話は聞いております。裏話を聞いておりますが、あえてこの席で問題にいたしません。どうかひとつこの苦い経験を生かして、将来再び黒い霧を起こすような、こういう問題は起こさないようにしてもらいたい。  それから厚生大臣においでいただきましたので、最後に一言お伺いするわけですが、チクロの製品の問題、昨年の十一月十日に輸入禁止をした。そして業界の都合もあって販売猶予期限を設けた。私は、この販売猶予期限を設けたことに非常に疑問を感ずるのです。身体、健康をそこなうおそれがあるから使用禁止をした。厚生省は使用禁止をしたのだから、ほんとうに消費者を守るならば当然その時点で廃棄すべきなんです。廃棄処分になってこそ、画龍点睛とこうなるのですが、それがどうもしり抜けになった。しかも、そのしり抜けになったしり抜けのところはだれがかぶったかというと、業界がかぶったわけです。資本力の小さい中小企業が、伺ってみますと、大体二百八十億程度の損害——チクロを使用した製品について損害を受けた。この問題については税制の面とか金融の面とかということできめのこまかな措置をとって、業界の損失をカバーしていく方針だということも伺いました。しかし、ほんとうに消費者行政の立場から考えまして、あわせて中小企業の保護育成という問題もありましょうし、そういうことが起こった場合には使用禁止と同時に廃棄、あわせて製品価額の補償の問題も考慮してやっていくことが、中小企業の保護育成にもなるし、総じては消費者を守る立場にもなるのじゃないか。厚生省の一片の通達で使用禁止をする、販売禁止をすることは楽ですが、それに対して、いまこのチクロ問題でとった措置は手ぬるかったのじゃないかという質問を私はやってきたわけです。したがって、将来の問題として使用禁止と同時に廃棄処分にする。疑わしいから禁止するのですから販売も禁止する。販売も禁止して製品を回収して廃棄処分にする。こういうふうな大原則で厚生省は進んでいかれるつもりかどうか、大臣のひとつ政治的左判断をお伺いしたい。
  194. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 実は、御指摘のような問題もございますので、すでに担当の局長からお答え申し上げたことと思いますが、厚生省と申しますか、厚生大臣の諮問機関といたしまして、それぞれの方面の識見を代表する方々によりまして食品問題懇談会というものを先般つくりまして、御指摘のような問題にも触れながら検討を進めて実はまいっております。現在の食品衛生法のたてまえは、チクロというのは御承知のように化学的合成品の添加物で、天然自然の添加物ではなく、化学的合成品の添加物として厚生省が認めたもののみ食品の中に使われることになっておるのでありまして、認めるときの化学技術といいますか、あるいは衛生試験技術等の状況におきましては認めて十分だというものでありましても、その後のその方面の技術の発展とか、あるいはその他新しい事態の発生によりまして、認めてはあったが、それははずすことが国民の食品衛生上の見地から正しい措置だというようなものも残念ながら出てまいることも想定をされます。ことに、これは国会方面から御指摘もたびたびあるんですが、いま化学的合成品である添加物は三百数十種まだ残っておる。しかし、それを再点検して、さして必要のないもの、あるいは慢性毒性等のあるものはもちろんのこと、こういうものははずしたらどうかというよう女御意向もございますので、チクロ以後におきましても検討の結果、はずしたりしたものも、たしか幾つかあったと記憶しますし、今後もあり得ることであると思いますが、いまの法制の体制はそういう場合の損失補償の規定までを実は含んでおりません。このことは御指摘のように、当然中小企業などの立場を考慮いたしますときには、私、行政全般としては必要左課題になってまいると思いますが、何しろ食品衛生法というものが、まあ今日までの体系ですと衛生立法の体系でありますものですから、経営立法あるいは財政経済立法的な要素を含んでおりませんので、補償的要素が含まれておらなかったと思いますし、またその経営的要素を考慮しながら衛生行政をやるということになりますと、今日の公害の問題などにも関連をいたしますが、厚生省が衛生官庁、保健官庁としてそれに徹した措置がでなないという痛しかゆしの面もあるようでもございますので、その点につきましては、懇談会等も今後進めますが、十分打ち合わせの上、大所高所から合理的に私は、措置についてもう少し研究を進めさしていただきたいと思います。なお、チクロについて途中二月末日までに期限を延長いたしました時が——私の着任直前にございましたが、この点につきましては、事情は御承知のとおりでございますので、ここでは省かせていただきます。
  195. 二宮文造

    ○二宮文造君 大臣にお伺いしたいのは、補償ということがちょっと出ましたけれども、それは私の考えであって、大臣のおっしゃったような食品衛生に関する行政の立場からいえば、疑わしいから使用禁止をするんでしょう。人体の健康をそこなうという疑いがあるから禁止をするんですから、使用禁止と同時に販売禁止をやるべきじゃないか。それを猶予期間を設けて、その間に人体の中に入ってしまうというのはよくないじゃないか。使用禁止を同時に販売を禁止すべきじゃないか。そういう政治的な判断をおとりになるかどうか。
  196. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) そのものずばりのお答えとちょっとはずれますが、懇談会の意向におきまして、疑わしきものはとにかく一時使用停止をして、十分化学的検討を加えた上で、最終的に、終局的な使用禁止あるいは廃棄処分をさせるものと、それから再検討の結果害がないというものについては無害宣言等をして、再び食品衛生界に復帰させるというようなことも考慮しながら、とにかく疑わしきは第一次的に使用ストップをしたらどうかというような意見もございます。したがって、これはそのとおりに法律改正するということはきまっておりませんが、疑しいものをストップした場合には、直ちに全部廃棄させるということまで進み得る明確なるものと、一時ストップというものがあり得ると思います。なお、チクロにつきましては、これは御承知のとおり、清冷飲料その他乳幼児あるいは老人などが多量に摂取する危険のありますものは、当初使用禁止をきめた本年の二月末日という時期を動かさないで、それ以後は絶対使用禁止ということにいたしましたが、乳幼児、老人などが一時多量に摂取することがそれほどないようなケースのもの——かん詰めでございますとか、たる詰めでございますとか、そういうものにつきまして、いろいろの諸要素を総合配慮して九月末日に延ばした。こういうことに聞いておりますが、まあそういう例も今後はあまり出てまいらないと思いますので、前段私が申し上げましたような形で、つまり二宮さんのおっしゃるような意味で進むような形に相なるのではないかと考えております。
  197. 二宮文造

    ○二宮文造君 原則的に使用禁止をした場合に、同時に販売の禁止と、こういうことも考慮しなければならぬと、大体、ぐるぐる回っておりましたけれども、例外もありましょうけれども、そういうふうな判断と私は承っておきます。違っておればあと答弁してください。原則的にということ。  で、私は、果汁の問題あるいはまたチクロの問題こういうものを取ち上げましたのは、本題はミカンの問題であったわけです。ミカンは昭和三十年の調査ではたしか全国で三万九千ヘクタール、約三万九千町歩ぐらいしかミカンの植え付けがなかった。八十万トンぐらいしか生産がなかったわけです。それが、今日では十五万ヘクタールになり、昭和五十一年には生産量が四百万トンをこえるかもしれない、こういう状態になってまいります。そのミカンを左まで食べていくというのも限度がある、あるいはなまのまま輸出をするのも限度がある。あるいはまた、かん詰めで輸出するのも限度かある。やっぱり果汁という新たな加工分野が開けていかなければ、この四百万トンのミカンの生産というものを消化し切れない。せっかく総合農政というものを打ち立て、あるいはまた米作一辺倒では農家の所得が保障できない。あの農業基本法に基づいて、そうして果樹に転換した農家の方々が営々辛苦してミカンができるころになると、これまた、たいへんな悲劇を巻き起こすかもしれぬような現状にあるわけですね。したがって、この食品公害の問題とかあるいは果汁の問題とかは入り口でございまして、ミカンの生産並びに需要、あるいはそういうものをどうするか、加工はどうするかということを、私、きょう時間があればお伺いしたかったわけですが、そとまでは入れません。また、それにからんで、先ほどお願いしたように、緊急割り当てと称してペーパーマーチャントが介在するようなやり方は、今後絶対に慎んでもらいたい。また、この問題については追跡調査もして、しかるべく業者に対して、不当な利得に対して何らかの措置を講ずる、税金とかあるいは今後の問題について行政指導をする。そういうこともあわせお願いをして、私の質問を終わりにしたいと思います。ミカンのことについて多少資料を準備していただいたわけですが、質問に入れませんでしたことをおわびしておきます。じゃ以上です。
  198. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、農産物に対する有害農薬の残留の問題について御質問したいと思いますが、この点につきましては、六月九日の物価等対策特別委員会で、私、前に御質問したことがございます。そのときに、厚生省の小島食品化学課長さんのお答えをいただきましたが、米についての残留農薬許可量ですね、これをことしの秋には告示する考えであるというようなお答えでございましたけれども、すでに秋に入りつつあるわけですが、その後どのように進捗しておりますか。まずそれを伺いたいと思います。
  199. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 御指摘の米の農薬の残留許容量の問題でございますが、現在食品衛生調査会におきまして、審議、検討続行中でございます。見通しはどうかと申しますと——秋が来るということでございますが、若干その点では遅延しておりますけれども、ことしじゅうには食品の成分規格といたしまして告示できるものという見通しを持っております。
  200. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺ったのは六月の初めのころでして、そのときにもうすでに秋に告示するつもりであるというのに、まだ食品衛生調査会にも諮問をしていないという次第だったのですね。ですから私は、秋に告示するつもりだとおっしゃったけれども、はたしてそのとおりにいくかどうかと非常に疑問を持っておったのですが、まさにそのとおりになって、ことしじゅうというようなことは、非常にこれは残念だと思います。  さて、この食品衛生調査会に対する厚生省の諮問の内容ですね。これがどういう内容のものなのか。一、二点伺ってみたいと思います。たくさんあるでしょうから時間を節約する意味で私のほうから問題点を申し上げますけれども、エンドリン、アルドリンなんかのドリン剤ですね。それからBHC、DDT、これの残留許容基準をどの辺に考えておられるか。それからまたBHCの中でのガンマだけじゃなくて、アルファ、ベータなど異性体についてどれほどの許容基準を考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  201. 小島康平

    説明員(小島康平君) 現在、食品衛生調査会のほうでこれは御検討いただいておりまして、実は先月の三十一日にも残留農薬特別部会を開きまして、御検討いただいておりまして、まだ検討中の段階でございます。まだ数字については実は確定をいたしておりませんので、ちょっとどの程度になるかという見通しにつきまして、いまここで申し上げるような段階にまだなっておりませんが、いま作業を急いでおります。それから実際の残留量でございますが、これはたとえばBHCで申しますと、いままで私どものほうで調べましたものは、全国十三県の五十二検体につきまして調べていますが、たとえばそのうちの四十四検体につきましては、すべてが〇・〇一PPM以下であるというように非常に少ない数字でございまして、実はこれはBHCは油に溶けやすいものでございますので、米の中にあまり入ってまいらないというような結果を得ております。私どもとしては、現実に、こういった有機塩素剤がいろいろ問題になっております。米の中の残量は、試験の結果非常に少ないので安心しているような実情でございます。ベータBHCにつきましては、私どもベータの残量がガンマに比べましてどの程度であるかということにつきましては厚生省サイドとしては資料を持ってわりませんが、農林省さんのほうで実はおやりになった事例がございまして、それも拝見いたしますと、そんなに多くないということで、安心をしているような実情でございます。
  202. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、検査の結果を伺っているのじゃないのです。農林省として食品衛生調査会に諮問されるならば、諮問案があるはずですね。その諮問案の中でどれほどの許容基準を考えていらっしゃるかということを伺っている。特にその中で、いまおことばのありましたベータBHC、これについての規制も考えていらっしゃるのかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  203. 小島康平

    説明員(小島康平君) ベータBHCについての案があるかというお話でございましたが、実は私ども、世界的にこのBHCにつきましては、ガンマが有効体でございまして、ガンマについて規制をするということになっておりまして、私どもはガンマについて規制をしていくという考え方をとっております。それからベータにつきましては、これは不純物でございまして、当然こういうものは入ってこないのがよろしいということで、規制をつくりますと、そういうものを認めるということになりまして、そういうものは入ってこないようにということでベータにつきましての基準というものは考えていないという段階でございます。
  204. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは、まことに異なことを伺うという感じがします。ベータについての許容量を発表するとそれを認めることになる。そんなばかなことはありませんよ、そうでしょう。いま日本で市販されているBHCの中には事実上ベータが含まれているのです。これは事実です。それがすでにまかれて、そうして吸収されて米に残留しているのが事実じゃないですか。いまあなたのおっしゃいましたように、農林省の調査では、数字はおっしゃらなかったけれども、そういう事実があるということまで言っておられる。だとすれば、ベータについても当然許容量を確定しなきゃならぬ、これは当然のことじゃないですか。
  205. 小島康平

    説明員(小島康平君) 実は私ども、BHCにつきましては、世界的にガンマというものが有効体であり、そういうものを使うことになっておりまして、実はガンマの調査をやってまいったわけでございます。私どもは残念ながらベータについて、私の省としては実は追跡調査をやってなかったわけでございます。ベータにつきましては、先生の御指摘のように、実は日本では農薬の不純物として含まれる、そういうものが作物の中に入ってくるということが実は明らかになりまして、私のほうとしてはBHCにつきましては、これはガンマ、純粋のものを使っていただくようにということで昨年から考えておりましたところ、実は御存じのように、BHCによる全体的な汚染ということが問題になりましてBHCの生産を禁止いたしました。そして米にはもう将来使わないという形で農林省のほうから御処置をいただきましたというような形になっておりまして、実は先生の言われるように、私どもはべータを使っていいというような考え方を持っているわけでございませんで、当然ベータについてもある量以上あってはいけない、また使ってはむしろならないというような考え方で実はおるわけでございます。
  206. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、次に移らなくちゃなりませんけれども、もう一言だけ申し上げておきましょう。いいですか、BHCの中で、それはあなたのおっしゃるとおりですよ、ガンマが中心だということは。しかし、いままで日本でつくられているBHCの中には、先ほども申しましたように、ガンマだけじゃないんですね、ベータも入っていれば、アルファも入っている。特にアルファとベータが農薬の残留という点では特別に人体に深刻な影響を与えるおそれのあるもんだということで、ベータの規制ということが、これはもうその関係のことを少し調べられた人はすべてその点を要望しているというのが実情だと思う。いままで使ったBHCの中に入っている。だからして、今後米に残留しないようにその点を強く規制しなきゃならぬということなんですよ。それがこれから——この秋か今年じゅうかに発表する許容基準の設定の中に含まれていないということでは全然実情に合わないことになりはしないですか。これではBHCの中から不純物を除いてリンデンだけにしたいというふうにおっしゃっても、ベータについての規制がなければまぎれ込むかもわからぬ、そのおそれがかえって出るんじゃないですか。
  207. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生のおっしゃられるように、ベータにつきましては、毒性その他の面で非常に重要でございまして、私どもとしては、そういう面も十分に考えるべきだということは先生のおっしゃるとおりだと存じます。しかしながら私どもでは、実はこの米の調査は昭和三十九年から開始いたしました当時におきまして、私どもとしてはたいへん行き届かなかったわけでございますが、これはガンマというものに重点を置きまして調査を行ないました。私どもがいま手元に持ちまして、そして食品衛生調査会等で御相談いたしております資料はガンマについてでございまして、実は先生の御指摘もございますように、ベータの問題は、これは十分考えるべき問題だと存じます。しかしながら私のほうとしては、そういったような従来の実情がございまして、調査の資料が不十分であるというような点もございます。それからもう一つは、BHCにつきましては、こういうものは蓄積あるいは残効性が強いために全部むしろやめていただくというほうがよろしいのではないかという方針になっておるわけであります。その点をひとつ御了解いただければと存ずる次第でございます。
  208. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、今後発表するこの残留農薬許容基準ですね、いまからこれは非常に不十分なものだということが大体予想されるというふうに見ていいわけですね。ベータについては発表しないということでしょう。
  209. 小島康平

    説明員(小島康平君) 実は、お米の残留農薬の許容量につきましては有機塩素剤以外に有機燐剤等も実は考えております。これは全般的にいろいろな面から押えていくわけでございますが、それらが不十分だということではございませんで、BHCにつきましては先生指摘のように、私どもベータについての十分な調査を行なっていなかったという面がございます。しかしながら、私どもはBHCにつきましてはもう米には使っていただきたくないということで、農林省のほうとも御相談いたしまして、日本における生産等も中止あるいは禁止していただいておるような状況でございまして、BHCについては今後使われず、また実際の残留量もしたがって非常に小さなものになるというふうに考えておるわけであります。
  210. 浦田純一

    説明員浦田純一君) 補足して私のほうから御説明申し上げます。  御指摘のとおりBHCガンマ異性体については、これが主体でございまして、これが急性毒性を持っておるわけであります。一方、非常に分解しやすいという点があるわけであります。ベータ異性体につきましては、これは直接の有効成分ではございませんけれども、しかし不純物としてまじっておる。しかも、これが問題となりますのは、非常に分解しにくい、したがいまして蓄積作用があるのではないかという疑いが持たれているのは、これは事実でございます。FAOあるいはWHOにおきまして、これらの点につきましてどのように扱っておりますか、いままでどのように取り扱っておるかということにつきましては、ただいま食品化学課長から申し上げたわけでありますが、しかし私どもが問題意識を持っていないかというと、決してそうではありません。これは全面的に私どもとしてはBHCの使用禁止、特に米についての使用禁止をひとつ励行していただきたいということで、現に農林省のほうにもそういう措置をとっていただいておる現状でございます。それではベータ異性体についてのいわゆる許容量というものの設定については、どう考えておるかということでございますが、そのように世界的には、実は正直に申しまして資料が非常に乏しいのでございまして、したがいましてこれは私ども日本国内の独自の問題としてでも取り組んでいかなければならないということで、すでに牛乳に対するBHCのベータ異性体につきましては何とか許容基準を設けたいということで、これは国立衛生試験所において検討中でございます。今回の米の残留許容基準につきましては残念ながらまだベータ異性体につきましての基準は設定できませんけれども、このような角度から問題意識としては持っております。今後もこれについては早急に検討してまいりたいというふうに考えております。
  211. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう御答弁ならある程度わかるのですよ。小島さんのお答えですと、全く矛盾したことを言っておられる。そうでしょう。これから先ベータの入らないものをつくるつもりだからベータについての許容基準は定めない。だったらBHCもこれから先使わないというのだから、BHC全体についてガンマについても許容基準を定めないかというと、定める。全く矛盾しておられる。いまの御答弁なら、いままで手抜かりあって十分ベータについて調査していない。したがって資料がなくて定めることができない、そういうことですね。私、そう理解いたしました。それではなお今後、米についてやはりベータについても調査していただいて、それでこの点について必要に基づいてベータについての許容基準を定める意図があるということに理解していいですか。
  212. 浦田純一

    説明員浦田純一君) そのように努力してまいりたいと思います。
  213. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは次に移りますけれども、今日厚生省から非常に詳しい資料をいただきました。どうもありがとうございました。  それで、いまもおことばがありましたけれども昭和三十九年から米について残留農薬の実態を調べておられるという、その数字を国立衛生試験所の調査の結果として発表されております。ところがこれ拝見しますと、昭和三十九年、四十年、四十一年度という三年間のものだけしか書いてありません。で、ことしはもう四十五年度で、少なくとも四十二年、三年、四年度くらいの分は、これはもうちゃんと調べがついているのじゃないかと思いますけれども、どうしてそれが載っていないのか。もしデータがあればいただきたいと思うのです。  それから、いまの質問の中である程度わかりましたけれども、ベータについての数字がなくて、ガンマについての数字だけですが、ベータについては調査していなかったということなんですね。その点も伺いたいと思うのです。
  214. 小島康平

    説明員(小島康平君) 実は、先生にお届けしましたチーター米につきましての残留農薬の資料は、三十九年、四十年、四十一年度産米でございます。実は、今年度までずっと米につきまして調査を続けているわけでございますが、実情をざっくばらんに申し上げますと、国立衛生試験所のほうの実は検査が込んでおりまして、私どものところへ現在参っておりますのは四十一年産米までの五十二件の分が届いておるわけでございます。それからベータBHCにつきましては、先ほども説明いたしましたように、私どもとしては衛生試験所のほうへベータをやるようにという依頼をいたしませんで、実はベータについては資料を持っていないというのが実情でございます。
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、この前の物価特別委員会で私の質問に小島さんからお答えいただいた中で、BHCなどはほとんどゼロに近いというようなおことばがありまして、伺っていると、たいしたことはないので、心配することはないのだという印象だったわけですけれども、私その点で非常に疑問を持つのです。なぜかと申しますと、このガンマBHCの残留量は確かにおっしゃるとおり、調査結果から見てもあまり大きな数値になっていない。これは事実ですね。しかしいま申しましたように、残留性それからまた人体に与える慢性的な影響というような点で、大体ガンマに比べて五倍以上の毒性を持っているというのがベータの特性だと思うのですね。アルファも大体そういう性格だと思うのです。ところが、それについての数値がないということでは、これはあまり安心はできないというふうに私思います。その点どういうことでしょう。今度、食品衛生調査会に諮問する場合にも、これはたいしたことはないのだというような立場から諮問されては、これは国民はたまったものじゃないですよ。
  216. 小島康平

    説明員(小島康平君) 実は、私ども厚生省ではその検査資料を持っていないわけでございます。実はこの許容量の設定につきましては、農林省のほうと御協力いたしまして、農林省もまた独自のお立場から御調査をなさっておられるわけでございまして、農林省の御結果によりますと非常に微量であるということでございまして、私どもとしてはその資料によりまして現在ベータについては安心しておるというような実情でございます。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 その農林省が調べられたベータBHCの残留ですね、これは大体どのくらいですか。
  218. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) こまかい数字について、いま資料を持ってきておりませんですけれども、農林省といたしましては、実態調査でございませんで、BHCの使い方とそれに伴って米の中にどのくらい出てくるかという実験みたいなものを四十二年以来行なったわけでございますが、その結果によりますと玄米中全体のBHCでもって〇・一五PPM、白米にいたしますと〇・一PPM程度のものが検出されておりました。その異性体別の内訳の数字をいまちょっと私現在持っておりませんので、たいへん恐縮でございますけれども、ベータBHCはほとんど検出されませんで、大部分がアルファとガンマであったと記憶いたしております。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 その詳しい検査の結果を後ほどいただけますか。
  220. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 後ほど整理して提出いたします。
  221. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃお願いします。これはもう皆さん御存じだと思いますが、ことしの五月の初めに千葉県の衛生研究所で付近の医師が調査した結果を発表されておりますけれども、これは厚生省からいただいた資料の中にも入っておりますが、これを見てみますと、どうもいまのおことばの点とはだいぶ違った結果が出ている、米ぬか、玄米、白米ともにです。詳しい数字は申しませんけれども、ガンマよりもベータ、アルファのほうが残留量が多いですね、はるかに多いです。それで白米について言えば、ガンマに比べてベータ、アルファは大体二倍から三倍という残留量を示しているというのが特徴ですよ。この点非常に重大だと思うんです。慢性的な毒性という点でガンマより五倍以上も毒性が強いと言われている、その異性体の残留量が、これが二倍も三倍も多いということなんですよ。これは重視してもらわなきゃならぬ点だと思うんです。また長野県の農村医学研究所がやはり五月ごろに発表した数字ですね。これを検討しても、いまの千葉県の衛生研究所の例とほとんど変わりはない。私、最近、長野の農村医学研究所でさらに調査を続けておりますので、その調査結果を伺いましたけれども、その調査結果を見ましても、これは白米三十八検体について調べたものですけれども、ガンマBHCの含有量は最高〇・〇四五PPMですね。ところが、ベータBHCについては最高で〇・〇八八PPMという数字が出ている。大体ベータのほうが多いということは、この調査結果でも明らかだと思う。もっとも、これは最高の数字でして、私は一面だけ強調するつもりはないから、他の面も申しますけれども、ガンマBHCの場合は検出率が九七・四%、ベータBHCのほうは検出率が一八・四%、ですから平均値をとってみますと、ガンマBHCのほうは〇・〇一五PPM、ベータのほうは〇・〇〇五PPMというふうにベータのほうが平均値では少ない。少ないけれども、千葉の例からしましても、それから五月に発表された農村医学研究所の例からしても、そしてまた、いま申し上げた最高値の比較をとってみましても、ベータやアルファのほうがはるかにガンマよりも残留量が多いということは、これは明らかだと思う。この点を抜いて、これから先の許容基準を考えようというのは全くの手落ちだと言わなければならぬ。これは厚生省の重大な失態ですよ。これはもう、ベータが非常に危険だということは、きょう、きのうわかった話じゃない。とっくの昔からわかっている。三十九年度から調査を始めて、すでに四年も五年も調査を進めていながら、ベータについての何の調査もしてなかった、そんなばかなことがありますか。民間の調査でも、乏しい資材の中で調べて、こういう結果をはっきり検出することができている。国立衛生研究所がそのくらいのことをやることができないなんてばかなことがありますか。残念ですね。一体この点について、どう思われますか。
  222. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生たいへんお怒りでまことに申しわけないことでございますが、国立衛生試験所は、そういう試験ができないということは全くございません。実は私ども昭和三十九年から農薬全般に対しての調査を発表いたしましたときに、私どもとしてはBHCというのは、これはガンマであるということで実は計画を立てましたために、ベータのデータが入手できなかったわけでございます。それで、先生の言われましたように、ベータの問題が最近になりまして非常に大きな問題になりました。実は千葉県の資料、あるいは長野県の資料等についても私ども直ちに調査をいたしまして、長野県の農村医学会のデータにつきましては、あすこの佐久病院の院長の若月先生ともすぐお話をしたんでございますが、先生のお話では、何か古米で貯蔵中のものであって、実は自分のほうもああいう高いデータが出たということについては非常にふしぎに思っている。ほかのものをいろいろ調べてみても普通それほど出ないのだというお話でございました。私たちとしてはデータにつきましては非常に重要性があるので、十分調査してまいりたいと考えておる次第でございますが、実はいままでベータの資料を私ども入手していなかったということで、今後早急に調査を進めさせていただきたいというふうに考えております。
  223. 渡辺武

    ○渡辺武君 古米で、自分でもふしぎに思っているなんて若月さんは言っていませんよ。あなたにはそう言われたと、あなた言っていますが、私伺ったときはそうじゃなかったのですね。あの辺で現に配給されている配給米について調べたということを言っておられるし、最近私が、調べた結果を伺った場合にもそんなおことばはなかった。ちゃんと白米三十八検体について調べた結果だということで私伺っている。ですから、問題をそう軽々しく見るように見るようにというふうに見ちゃいかぬと思うのです。これは国民の健康についての非常に大事な問題ですよ。毎日毎日食べている国民の主食でしょう。そのように人間のからだに入り、そうして長期残留して、だんだんふえてきて健康に非常に大きな影響を与えるというそのベータBHCアルファBHCについてやっぱり厚生省として重要視してもらわなければ困る。まあこれから先調査も進めていくというおことばですので、その点を信頼してひとつぬかりなく急いでやっていただきたいと思う。  ところで、ガンマBHCの数字についても私は非常に疑問を持つのです。いま問題になっている長野県と千葉県、これの数値を、あなたのほうからいただいた国立衛生試験所の数字で見てみますと、長野県については、第一検体は検出せず、第二検体も検出せず、第三検体で痕跡と書いてある。痕跡があったということでしょう。千葉県では、第一検体については〇・〇〇九PPM、それから第二検体と第三検体は検出せず、こういうことになっているのですね。千葉県の衛生試験所の調べた数字あるいは長野の農村医学研究所で調べた数字は、はるかにこれよりも高い重大な内容を示している。特に長野の農村医学研究所では、ほんの少数の例だけれどもドリン剤まで残留しておったというような例までいっておるわけですから、どうもこの国立衛生試験所の数字は、何でこんなに低いのか、調査のしかたに何か問題があるんじゃないか、あるいは事実はかなり深刻なものが出たけれども、こういうような形で発表したのか、どうも疑わしいですね。一体これはどういう数字ですか。平均値ですか、これは。
  224. 小島康平

    説明員(小島康平君) 先生のおことばでございますが、私どもとしては科学的な事実を曲げて発表するというようなことはございません。先生へお届けしたデータは、私どもの国立衛生試験所においてやりました結果をそのまま差し上げた次第でございます。ただ、私どもがどうして長野県あるいは千葉県等におけるデータが高いのかということにつきましていま推測いたしておりますのは、実は昭和四十二年度あるいは昭和四十三年度におきましては、これは農林省の方がよく御承知だと思うのでございますが、何かいもちの発生が局部的にありまして、大量にBHCを使った場所があるようでございまして、そういった場合にはやはり相当その量が違ってくるのでないかというふうに私ども考えております。そういった何か特殊の状況があるのじゃないかというふうに推測をしておる次第でございます。
  225. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう問題のとり方はおかしいですよ。確実な根拠もなくてね。特別に使った場合があったからじゃないかと、そんなばかな話はないですよね。根拠もないのにそんな楽観論を振りまくというところに国民の疑惑の生ずる原因があるのです。この数字は、これはおそらく平均値だろうと思うのですけれどもね。どういう平均値の出し方をされておられるのですか。最高値と最低値ですね、これの平均をとっておられるのですか。それから三十九年、四十年、四十一年と三年間の結果を突っつきまぜにしちゃって平均値を出しておるのか。あるいは検出率なども入れて平均値を出しておるのか、その辺も伺いたいと思う。
  226. 小島康平

    説明員(小島康平君) 私どもは平均値を差し上げたのではございませんで、これは長野県の場合は、三検体を分析いたしましたそれぞれの数字をそのままお出ししておるわけです。
  227. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ、あまりその辺は、どうも追及する時間もないけれども、しかし、少なくとも千葉県の衛生研究所ですからね、そこで調べて、その結果を公式に発表しているんですし、それからまた長野の農村医学研究所、これは民間の機関ですけれども、しかし農村医学ということについてはもう長い間実績を積まれたりっぱな研究所だと思う。そういうところで研究結果を発表されて、そしてこの国立衛生試験所の発表と著しく食い違っているという点については、やはりすなおにその点はあなた方としても検討されるべきだと思う、特にベータについては、いままで一回も検討したことがなかったという重大な手落ちをやっておるという状況のもとでは。もっとやはり国民の健康のことを考えて徹底的な調査をしてほしいと思う。これは米のことじゃないけれども、野菜についても厚生省の発表ではどうも数字が低いですね。野菜について一言だけ申し上げておきますよ。厚生省の食品化学課で発表しました昭和三十九年度及び四十年度残留農薬実態調査結果というのを見ますと、リンゴのBHCの残留度、最高残留量は〇・〇八、平均は〇・〇一、キュウリは最高〇・二、平均が〇・〇一、トマト、ブドウなどについても出しておりますけれども、長野の農村医学研究所で調べた数字によりますと、これは野菜の種類が違いますけれども、レタスでは、これはガンマだけですけれども、最高値が〇・二一、平均値が〇・〇三、白菜が最高値〇・〇六、平均値〇・〇二、キャベツが最高値〇・〇九、平均値〇・〇四ということで、いずれも厚生省の発表より高いのです。こういうようなこともありますので、ひとつほんとうのところを謙虚に調べてほしい。やはり先ほどチクロのところでも話がありましたけれども、疑わしいと思ったら、国民の健康を守るという立場から徹底的にやはり調べて、そして真実を明らかにして、対策を急速に立てるということをひとつやっていただきたいと思うのです。  さて、次に伺いますけれども、農林省が八月十五日付で「BHC等による牛乳汚染防止対策の強化について」という通達を出していらっしゃいますけれども、この通達は、「今後BHC、DDTは一切稲作の病害虫防除に使用しないよう指導の徹底を図ること」というふうに述べておられますね。これはいままで農林省が一月二十八日付、それから六月二日付の通達で示しておりました、稲の穂ばらみ期以後は使用しちゃいかぬというこの通達を再確認した。つまりもう穂ばらみ期に入ったので今後は使っちゃいかぬ、しかしまた来年の穂ばらみ期前であったら使ってもいいということなんですか。それとも穂ばらみ期の前あとにかかわらず、全面的に今後BHC・DDTの使用を禁止するという意味なのか、この点を伺いたいと思う。  もう一つ、これは牛乳の汚染の問題についての通達なんですけれども、これは牛の飼料用に使う稲わら、これを作っているたんぼについてのものなのか、それとも稲作全体についての通達なのか、この二つを伺いたいと思います。
  228. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) あの通達をつくりましたときは、あの通達の前文のほうで記と書いてあります。いま先生、御説明のありました前文のほうからずっと読んでいただきますとわかりますが、あれをつくりましたときは、たまたま八月の末でありまして、穂ばらみ期に一応なっております。ごく一部の稲を除きまして穂ばらみ期になっておりますので、ことしはもはや、前から通達のとおり、ことしはBHC、DDTは使わないという趣旨で書きました。でございますから、あの通達としましては、ことしはもう穂ばらみ期がきたので以後稲作には一切使い、ません。こういう趣旨でございます。  しからば、いま先生の御質問にございました来年の穂ばらみ期まで使ってもよろしいかということでございますが、これにつきましては、よろしいともよろしくないとも、いまのところ言っておりませんで、来年はまた今後の客観情勢を見て考えたいと思っております。現在の客観情勢では、来年は穂ばらみ期以前は使える状態ではないと判断をいたしております。またBHCの在庫がほとんど、昨年の十二月から製造を中止しておりますから、在庫の残りがほとんどないと思いますので、そういう面から来年水田には使うことはないのではないかと考えております。  それから、もう一点、飼料用とする稲のことであるか、稲作全体のことであるかということでございますが、これはすべての稲作を対象として考えております。
  229. 渡辺武

    ○渡辺武君 この通達の一番ほんとうのところは、もう穂ばらみ期に入ったと、だからことしは使わないのだということなんですね。しかし来年、穂ばらみ期前になっておそらく使わないだろうということなんですね。その辺が非常に私は不徹底だと思います。いまこの厚生省の小島さんがBHCは全面的に使用禁止というような口ぶりで言っておられたようですが、そういうことではないということでしょう。ですから私は、やはり非常にこそくな態度をとっていらっしゃると思います。あなた方は。私は、この前の物価等対策特別委員会で、とにかくBHC、DDTを、これを稲作に使うということは非常に危険なことだから、一時的にも直ちに全面的な使用禁止をしてほしいということを申し上げました。ところが、そのときの御答弁では、穂ばらみ期前に使いまして、秋になって許容基準を発表するというようなことです。国民はこういう答弁を聞いてどう思いますか。一日も早く、こういう有害な農薬については禁止してほしいと思っているのに、穂ばらみ期前に使う、そして許容量の発表は秋だ。またきょう伺ったら、秋にはどうなるかわからぬ、今年じゅうだというようなことでしょう。これでは国民健康を守るというようなことについて、やはり政府の態度というものが非常に不徹底で、あいまいだというふうに判断せざるを得ないと私は思いますよ。もうこの米に対する農薬の残留については、私先ほど申し上げたとおりです。小島さんのおっしゃるような安易な状態ではなくして、やはり千葉や長野で調べた数字からしても、特にベータの問題については非常に重大な問題をはらんでいるということは明らかです。牛乳についてもそうだと思うのです。この八月十日でしたか、参議院の公害対策特別委員会で発表された数字を見ますと、牛乳についてのBHCの残留ですね、従来よりふえているというような数字が発表されておりますでしょう。特に西日本一帯では、厚生省の示した指導基準より軒並み高いという状況があるわけです。ですから、やはり直ちに全面的に使用禁止という措置を私はとるべきだと思う。その辺の態度をはっきりさせるべきだと思います。使用禁止だけではない、製造自身——いま業者が製造自粛ということでとめているにすぎないのですから、やはりはっきり製造禁止措置をとるべきだと思います。政府がそういうあいまいな措置をとっているうちに、もうすでに各地方自治体は自発的に使用禁止措置をとっていることも皆さん御存じのとおりではないですか。たとえば、五月二十五日でしたか、朝日新聞が報道しておりましたけれども、この朝日新聞社の調査した数字によれば、四十六都道府県のうち二十都道府県が、穂ばらみ期以前の当時にすでにBHCの回収、使用禁止を含む自主的な規制措置をとっている。そうして、農林省通達よりもきびしい方針をとっているということがすでに報道されているわけですね。ですから、その点で私は、政府が自分の責任で全面的な製造、使用禁止ですね、この措置をとるべきだと思いますが、その点どうでしょうか。成り行きまかせで、どうも在庫が少なくなったから、来年になったらおそらく使わないでしょうというようなことでは、政府の政治責任としてこれはもう責任を持てないのじゃないですか。
  230. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) BHCを直ちに全面使用禁止になぜしなかったかというお尋ねでございますけれども、たびたび御答弁申し上げてまいりましたように、ことしの穂ばらみ期まで、すなわち第一世代の二化メイ虫防除までは代替農薬の手当てが間に合わなかったということと、それから穂ばらみ期以前に使用をした場合の稲におけるBHCの残留調査をした結果、ほとんど残留していないというようなことから、食品衛生調査会のほうの御了解も得まして、ことしの穂ばらみ期までは使わざるを得ないという判断に立ちまして、全面禁止がその時点においてはできなかったわけでございます。ことしの穂ばらみ期以後使わせないということをすでに一月二十六日に通達しておりますので、まあ業界としましては原体の製造は中止しておりますけれども、それ以外の製剤も穂ばらみ期以前に使い切る分だけをつくるようにいたしたと思いますし、私どもとしましても六月の通達で穂ばらみ期以前に使い切る、必要な最小限の量しか販売してはならないというような通達を行なってまいったわけでございます。そしていま穂ばらみ期がまいりましたので、先ほど申しましたように、ことしはもう使わないわけでございますが、すでにBHCの原体もありませんし、製剤も残り少のうございますので、御指摘のとおり今後——ことしとは申しませんで、来年以後も水田につきましてはBHCは使用を全面禁止してまいりたいと思います。  それから、自主規制でなくて、政府の責任において製造を禁止せよという御指摘でございますが、これも製造禁止ができればよろしかったのでございますが、現在の法体系その他から、あの時点において製造禁止をさせるということに少し無理がございましたので、業界を指導いたしまして自主規制という形でもって製造をやめていただくといったようなことを指導したわけでございまして、今後、あれは自主規制が中心になっておりますけれども、再開を許すということをいたさない  つもりでございますので、水田については一切使わせないつもりでございます。
  231. 渡辺武

    ○渡辺武君 今後つくらせないというふうに言明されたので、それは非常にけっこうなことだと思うのですけれども、八月十日の本院の公害対策特別委員会での福田植物防疫課長の御答弁を伺っておりますと、BHC原体のメーカー在庫ですね、これは四十四年度末が九千八百五十トンで、現在は六千二百八十九トンだというふうな御答弁がなされているようです。それから製剤メーカーの製剤在庫はもうすでに非常に少ないというふうに答えておられますけれども、その数字は正しいことでしょうか。
  232. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) 前回御答弁申し上げましたとおりでございます。
  233. 渡辺武

    ○渡辺武君 なお福田さん、原体の在庫については輸出の見込みがついている、それから製剤の在庫のほうについては林業関係に使用するめどがついているというような御趣旨のことを答弁しておられるわけですね。私、この答弁を伺って痛感しましたのは、これはメーカーの在庫が非常に少なくなった。しかもいまある原体在庫についても輸出の見通しがついた。製品在庫についても林業関係で使う見通しがついた。もうこの辺で使用禁止措置をとってもメーカーには大きな影響がないというようなことから、使用禁止措置をとったのじゃあるまいか、そういう感じが非常に強くしました。現に、ある新聞は、今回農林省の出した告示の一つ理由として、使用禁止に踏み切ってもメーカー側に与える影響が少ないというようなことも報道しておりました。ですから、農林省が考えておられるのは、国民の健康にどれほど深刻な影響があるかという立場からではなくして、メーカーに損を与えるかどうかということで考えておられるのじゃないでしょうか。ですから昨年の暮に製造の自粛をさせた。しかし出荷のほうは野放し状態だ。そうして穂ばらみ期までBHCを使わしてきた。これもあの当時製造と使用を全面的に禁止をしたら、メーカーに大打撃があるというようなことでやらなかったのじゃないか。いまもきびしい措置をとれないというのも、そのためじゃないでしょうか。私は、そういうメーカーの利益をはかるという立場からこの問題を考えていただいたら国民はこれはたまったものではない。一つしかない命ですからね。国民の健康をどう守るかという立場からやってもらいたいと思うのです。その点どうでしょう。
  234. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) メーカーの利益をはかるということは全く考えたことはございません。初めから終わりまで一度も、少しも考えたことはございません。私どもが先ほど御答弁申し上げましたように、直ちに販売の停止ができなかったのは、農業生産を維持するという立場からだけでございます。農業生産を維持するために、代替農薬というものを直ちに考えたのですが、BHCは二化メイ虫、ウンカ、ヨコバイその他林業、蔬菜等に使われておりますが、このウンカ、ヨコバイ、二化メイ虫という稲作害虫については、代替農薬がすでに開発されております。そのウンカ、ヨコバイに使われておりますカーバメート剤は量的にも十分間に合うが、しかし二化メイ虫防除に使う有機燐剤は、これは蔬菜、果樹等にも使われておりまして、あの時点で直ちに二化メイ虫第一世代——六月、七月に防除する第一世代の二化メイ虫防除のBHCの製剤の製造を全部とめますというと——大体それまでBHCは二化メイ虫防除に使われておりましたのが全体の半分、三分の一から半分くらいを占めておりました。これはその前の年、四十四年に。パラチオン剤の一切製造を中止したわけでございます。元来、二化メイ虫はパラチオンがほとんど使われておったわけですが、パラチオンを中止した結果、BHCが半分くらいになったわけであります。それを全部とめた場合に、有機燐剤の製造が間に合わないということがございまして、第一世代の二化メイ虫の防除をどうするかという点が非常に心配だったわけでございます。一方、先ほど申し上げましたような稲の前期に使った場合にはBHCはほとんど残っておらないというデータがございましたので、その上で農業生産の面と国民保健衛生の面と両方考えまして食品衛生調査会の席でこの案を提出いたしまして、食品衛生調査会の御意見を伺いまして、その結果、いままでとってきたような措置をとったわけであります。
  235. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の持ち時間ももう尽きたようですので、まだたくさんお伺いしたいことはありますけれども、いずれかの機会にして、あと最後に一問だけ伺いたいと思います。  福田さんだけ責めるようで悪いのですけれども、事の順序でもう少し伺いたいと思うのです。やはりこの公害対策特別委員会の御答弁の中で、各県の在庫は目下調査中だというふうに述べていらっしゃいますけれども、調査の結果はどんなふうになったか、この御答弁をいただきたいと思うのです。  それからいま各地方自治体の中には、農家手持ちのBHCやDDTを買い上げているところがあるというふうに聞いております。私がじかに調べたところによりますと、愛知県では県が指導して農協や、それから県の経済連、これらに申し入れて農家手持ちのBHCを回収させているのが実情です。その回収見込み量ですけれども、これは愛知県全体で約三百二十トン、金額にすると約三千万円、かなり大きな数字です。現在回収しておる量は約二百五十トンで、未回収の分が七十トンあるということになっております。ところが問題は、この農協などが農家から回収したBHCですね。これをどうするかという問題、これは各メーカーが当然買い取って、そうして廃棄処分にする、必要な運賃もメーカーが出すというようにしなければ一切の負担は農民にかかってしまう。これはたいへんなことだと思う。だからその点、メーカーが有償でこれを引き取って廃棄するというように私は指導すべきだと思う。  もう一つ例をあげますと、これは静岡県の場合です。ここではBHCではなくDDTをお茶に使って大問題になりました。DDTの回収を五十八農協が一生懸命やっておる。すでに四万三百三十一リッター、約四十トンですが、現在DDTを回収したそうです。その中で四千二百八十三リッターは、これはメーカーと話し合いがついて、そうして引き取ってもらうということになっているそうですけれどもあとの残りの分はこれをどうするか、メーカーが引き取ってくれるのかどうか、これまた大問題になっておる。これは重大な問題だと思う。ですから政府の指導によって、メーカーがこれを買い上げて、必要な運賃その他も支払って、そうして廃棄処分にするという措置を至急講ずべきではなかろうかというように思います。  それから、もう一つは、先ほどBHCの原体を輸出に回わすということを報告されておりましたけれども、日本で使って悪いものをどうして輸出に回わすのですか。これは国際的信義からいってもやるべきではないと思う。大体政府のやり方は、公害問題についてもそうですけれども、全く有害物質の拡散政策、一酸化炭素にしても亜硫酸ガスにしても、煙突を高くして空中に拡散すればそれでいいのだ、こういう考え方が基礎にあるのじゃないですか。そのために、ますます広範囲に大気が汚染されるということになりますけれども、いまのBHCの原体を輸出するということも、これは同じ内容を持っている。こういうことは、私はやるべきではないと思う。国有林にまくという問題にしましても、これは大問題です。この間、青森県の下北半島に、これはBHCではないけれども二四D、二四五Tの除草剤を、これをまいたために木がすっかり枯れてしまった。あそこは日本でも有名な野生のサルの生息地で、サルが生活するのに困るというようなことが起こってきておる。ああいうところに農薬をまけば益虫その他が死んでしまって、自然循環が大幅に妨げられるし、それからまた、水に含まれて飲料水などが汚染されるし、いろいろな被害のあることは明らかであると思う。こんなことを国有林でやるということを許すということは、これは私は大問題だと思う。そういうことはやらせるべきではないと思う。ですから、その点についても、やはり原体在庫についてはベータあるいはアルファなどの異性体を取り除いて、ガンマだけのいわゆるリンデンに精製して、そうしてこれを適当なところに使うというような指導をすべきではないか。回収する分についてもそうだと思う。その点どうお考えか、この点をあわせて伺いたいと思う。
  236. 福田秀夫

    説明員(福田秀夫君) お答え申し上げます。いろいろ御指摘がございましたのですが、最初にまことに申しわけございませんが、各県の在庫等の調査結果でございますが、まだまとまっておりません。九月六日までに各県に出すように提出を督促しておりますが、県のほうからの提出が全部そろっておりませんので、この点がいまの時点では報告できないのが残念でございますし、また申しわけないと思います。  それから、その在庫をどうするかということでございますが、これはいま申しましたように調査結果がそろっておりませんので、その結果をみて、その量等々によりまして、いま御指摘のようにリンデン化その他により無害のほうに使えるかどうかという問題、また在庫の量が多ければ、そういうことでは応じ切れないので、また考えなければなりませんが、いずれにいたしましてもその調査結果を待ちまして前向きで検討いたしたいと思います。  先生、いろいろ愛知県、静岡県のデータで御指摘になりましたが、まことに申しわけございませんが、私どもそこまでこまかいものがそろっておりませんので、おわび申し上げます。  それから輸出に回すのは、まことに不穏当ではないかという御指摘がございましたが、これは政府は、そういうものはよその国へやってしまえという指導は毛頭いたしませんで、BHCにいたしましても、DDTにいたしましても、ことにDDTは世界で広く使われておりまして、今日なおDDTの製造を完全にやめてしまったという国は、日本のほか北欧に少しあるかと思いますが、非常にたくさんの国がなお製造し、かつ使っておりまして、需要がございまして、その需要の要求によりまして、それならばというので出しているというわけでございまして、こちらから押し売りしておるわけではございません。BHCの製造工場をつくりたいので、その指導をしてくれという国もあることでございまして、そのような需要のほうへ売っております。これはそれぞれ長期に摂取した場合に人体に長い間にはいろいろ影響があったり、環境被害に影響があることでございますけれども、残留許容量の設定されている幾つかの国でいろいろの量が設定されておりまして、日本は残留許容量もきびしいわけでございますけれども、許容量をきめておるところはその許容量まではそれぞれの作物に使っておりますので、輸出もそういう意味で需要があるものと考えております。  それから国有林のほうでございますが、これは私どもとしましては、林業に使うのは、先生指摘のように、あまり感心したことではないと思っております。林業害虫の代替農薬がないということを林野庁のほうに強く言われておりますので、ぜひ代替農薬の開発をやってもらいたい。これはことしか来年になくなってしまうので、ない、ないでは済まされないので、代替農薬の開発を急いでもらいたいということをお願いしておりますので、林業のほうも代替農薬ができると思っておりますし、そういったことで、今日までいま残っておるものを林業のほうに使うというようなことを申してきたわけでありますが、なるべく早くそれもやめていきたいと考えております。  それから異性体のガンマだけを使えば非常に毒が少なくなるし、残留もなくなるからリンデン化するように指導せよという御指摘でございますが、これもそのようにしておりまして、昨年十二月十日に原体の製造を中止させましたときに、現在持っておる原体もリンデン化するようにということで指導してまいりました。ただリンデン化の設備その他で、全部リンデン化するわけにはまいらないわけであります。従来リンデン化は、大体つくられたBHCの四分の一はリンデン化されておったようでございますが、今後はBHCの原件が少なくなるのでリンデン化ということも行なわれないかと思いますが、現在残っておるものにつきましては、極力リンデン化させるという方向で進めたいと思っております。
  237. 森元治郎

    委員長森元治郎君) では他に御発言もないようですから、厚生省決算につきましてはこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会      —————・—————