○国務大臣(内田常雄君) たいへんむずかしい問題で、私も正直に申しましてほんとうに悩んでいる問題でございます。また、私もまあ、いわば僻地出身の政治家の一人といたしまして、
和田先生のおあげになっているような事柄につきましては、これまでも悩んでまいっておる一人でございます。が、しかし、さて厚生大臣として一刀両断の名案があるかというと、一刀両断の名案はございませんので、いろいろの方面からこの僻地医療の問題の解決につとめなければならないと私は今日
考えておる次第でございます。
その第一は、僻地医療、僻地における医師の確保の問題でございますが、医師の絶対数につきまして
和田先生もお触れになりましたが、これは、私は正直にずばり言うと、医師の絶対数も決して十分ではないと思います。したがって、文部省に対しましても、医師の養成数の相当思い切った増加を要請し続けております。しかし、これは見る人によりましては、医師の絶対数が必ずしも不足しておらないという見方もございますし、また欧米先進国に比べて、日本の医師の人口比例が少な過ぎるといういまのお説でございましたが、これも私が厚生当局から知らされているところによりますと、ソ連とアメリカは日本に比べまして非常に人口対比の医師の数が多うございますけれ
ども、その他の諸国におきましては、むしろ日本におきますよりも医師の人口対比は低い状態にあるようでございます。それらのことも頭に置きましても、しかし、とにかく少なくともこういうことは言えると思います。医師の配置状況がきわめて不均衡で、相対的には——レラティブには医師がきわめて不足の状態にある。これは私が記憶いたしておる数字にいたしましても、日本の平均は、人口十万人当たりに対し医師数は百十二、三人でございますが、しかし、七
大都市あるいはその他の
大都市にこれらの医師は集中をいたしておりまして、これらの
大都市におきましては、人口十万人当たり百数十人になっておりますけれ
ども、
地方の町村を平均いたしますと、人口十万人当たりの医師の数というものは、
昭和四十三年ごろの数字ですが、その後あまりそれから著しく改善しているとは思いませんが、人口十万人当たり五、六十人——五十五人か、六十人未満であったと記憶しております。それは、今日の日本の医療需要が非常に多く顕著になっていること、また国民皆保険制度というもので、どんないなかに参りましても、国民健康保険制度というものがしかれております状態のもとにおきましては、まことに遺憾な状態であると
考えますので、したがって、やはり総体的には医師の数をふやしてまいること。第二番目は、ふやされた医師について、できる限りそれらの医師が僻地で診療に従事し得るような
体制を整えること。この二つの対策をとるほかございません。第一の点におきましては、先ほどお触れになりました自治省構想もございますが、これは、私はもう批判をここであらためていたしませんが、同じ六年の養成課程でございますので、中学の上に六年の養成課程を乗せるよりも、高等学校の上に六年の養成課程を乗せても、これはでき上がりの時期は同じでございますので、やはり今日の医術が非常に進歩向上しておる点からいたしますと、高等専門学校よりも新しくその医学部をふやしていただくこと、あるいは医学部のない大学に医学部を置いてもらうこと、もう
一つは、現在ある医学部の定員を思い切って増加してもらうこと、この三つ以外にございません。前の二つの場合におきましては、御承知のように、医師の養成について一番問題がありますのが大学医学部の付属病院の問題でございまして、これを新しく設置しなければ今日の大学設置基準におきましては医学部あるいは医科大学をつくることはできません。しかし、そのためには何十億という
費用がかかりますし、またせっかくつくっても養成された医師が非常に多くこれらの付属病院にそのまま吹きだまっておるような状態におるということを
考えますときに、御承知のように、
厚生省が持っておりまする非常に多くの国立病院等を、新しく医学部が設けられる場合にはそれを教育病院として提供する。
厚生省の国立病院ばかりでなしに、最近
地方に公立病院、専門病院などでりっぱなものもございますので、必ずしも今日の大学設置基準どおりの付属病院ということによらないで、これらの幾つかのすぐれた
地方の病院を教育病院として提供することによって、新しい大学卒業の生徒の者の養成を早めてもらいたいと提案し、また文部省に正面から申し入れておるわけでございます。これは文部省も非常に深刻にこの問題は
考えてくれておるわけでございますが、それにいたしましても、やはり医師ができ上がりますのは六年先、七年先あるいはさらに研修等の問題も加えますと、それ以上の先でございますので、やはり当面の間に合いませんと私は思います。
そこで、もう
一つ僻地に医師を確保する方策としては、さっき
和田さんからお触れになりました
厚生省の政策としていままでとられてきましたことのほか、と申しますか、そのうちの重点事項と申しますか、やはり僻地に回り得るような医師を抱いておる僻地診療の親元病院という制度を強化いたしまして、これは国立のみならず公立、私立等の病院につきまして、親元病院の資格を強化して、そのためには国からもできる限りの助成をする。国の助成ばかりでなしに、さっき御批判のございました僻地医療振興協会というものを、これを必ずしも私は特殊法人であることは必要とも思いませんが、僻地医療振興協会というような、かゆいところに手の届くような、そういうものも考慮いたしまして、いま申し上げました第二の親元病院からの定期的な、あるいは不定期的な医師団あるいはパラメディカルの組み合わせの僻地への派遣というものが容易にやり得るような方途をやはり講じていかざるを得ない。こういうことで明
年度の施策を講じるつもりでおります。
第二点の税負担の問題でありますとか、勤務医の処遇の改善問題でございますとか、この処遇改善問題につきましては幸い国家公務員、したがってまた
地方公務員である勤務医につきましても、今回の人事院勧告はかなり親切な、事情に適した勧告をされておりますので、私
どもは非常にその点について期待を寄せておるものでございます。税の問題その他の問題もございますが、これらはいろいろからみがある問題でもございます。医捺費の問題にしても、またしかりでございますが、私
どもはそれらに対する関心も怠らずに、僻地医療問題の解決に資するような、そういう
姿勢をできる限りとってまいるつもりでございます。